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特表2022-520843熱及び圧力を使用しない生物学的焼結
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(54)【発明の名称】熱及び圧力を使用しない生物学的焼結
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/00 20060101AFI20220325BHJP
   C04B 12/00 20060101ALI20220325BHJP
   C04B 14/06 20060101ALI20220325BHJP
   C04B 28/10 20060101ALI20220325BHJP
   C01F 11/18 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
C12N1/00 P
C04B12/00
C04B14/06 Z
C04B28/10
C01F11/18 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547827
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(85)【翻訳文提出日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 US2020018646
(87)【国際公開番号】W WO2020168342
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】62/806,346
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520118991
【氏名又は名称】バイオメゾン・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドシエ,ジンジャー・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ドシエ,ジェイ・マイケル
【テーマコード(参考)】
4B065
4G076
4G112
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA15X
4B065AA17X
4B065AA29X
4B065AA32X
4B065AA40X
4B065AA41X
4B065AA50X
4B065AC14
4B065AC20
4B065CA01
4B065CA10
4B065CA55
4B065CA60
4G076AA16
4G076AB09
4G076AB21
4G076AC10
4G076BA11
4G076BB01
4G076BC08
4G076DA30
4G112PA04
4G112PD00
(57)【要約】
本発明は、建設資材、石材、固体構造物を製造するための組成物、ツール及び方法、並びに、防塵を容易にする組成物を対象とする。より特定的には、本発明は、胞子及び/又は栄養細菌細胞が事前に添加されている少量の骨材を使用して、煉瓦、石材及び別の固体構造物を製造することを対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸カルシウムを溶解する酵素を発現する微生物を含む第1の水性媒体を提供すること;
炭酸カルシウムを溶解する酵素の活性を促進する条件下で前記第1の水性媒体を炭酸カルシウムと合わせること;及び、
カルシウムイオン及び/又は遊離炭素を収集すること;
を含む、方法。
【請求項2】
前記水性媒体が、塩類、アミノ酸、タンパク質、ペプチド、炭水化物、糖類、多糖類、脂肪酸、油、ビタミン及びミネラルのうちの1種類以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微生物が、アルファプロテオバクテリア(Alphaproteobacteria)、ベータプロバクテリア(Betaprobacteria)、ガンマプロバクテリア(Gammaprobactreia)、ファーミキューテス(Firmicutes)又はアクチノバクテリア(Actinobacteria)のうちの1種類以上の種、亜種、株又は血清型を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記微生物が、バリオボラックス(Variovorax)、クレブシエラ(Klebsiella)、シュードモナス(Pseudomonas)、バシルス(Bacillus)、エクシグオバクテリウム(Exiguobacterium)、ミクロバクテリウム(Microbacterium)、クルトバクテリウム(Curtobacterium)、ラタイバクター(Rathayibacter)、セルフィミ2(CellFimi2)、ストレプトミセス(Streptomyces)及び/又はラオウルテラ(Raoultella)のうちの1種類以上の種、亜種、株又は血清型を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
炭酸カルシウムを形成する方法であって、
炭酸カルシウムを形成する酵素を発現する微生物を含む第2の水性媒体を提供すること;
炭酸カルシウムを形成する酵素の活性を促進する条件下で前記第2の水性媒体を請求項1に記載の方法に従って収集された前記収集されたカルシウムイオン及び/又は遊離炭素並びに窒素源と合わせること;及び、
炭酸カルシウムを形成すること;
を含む、前記方法。
【請求項6】
前記微生物が、スポロサルシナ・パステウリイ(Sporosarcina pasteurii)、スポロサルシナ・ウレアエ(Sporosarcina ureae)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、バシルス・スファエリクス(Bacillus sphaericus)、ミクソコックス・キサンタス(Myxococcus xanthus)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、バシルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)並びに/又はウレアーゼ及び/若しくは炭酸脱水酵素を産生する微生物のうちの1種類以上の種、亜種、株又は血清型を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記合わせることが、結合剤を添加することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記結合剤が、ポリマー、糖類、多糖類、炭水化物、脂肪酸、油、アミノ酸又はそれらの組み合わせを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の水性媒体を合わせることが、実質的に、前記第2の水性媒体を合わせることで実施される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
資材を製造する方法であって、
炭酸カルシウムを溶解する酵素を発現する微生物を含む第1の水性媒体を提供すること;
炭酸カルシウムを溶解する酵素の活性を促進する条件下で前記第1の水性媒体を炭酸カルシウムと合わせて、ルシウムイオン及び/又は遊離炭素を形成すること;
前記カルシウムイオン及び/又は遊離炭素を、炭酸カルシウムを形成する酵素を発現する微生物を含む第2の水性媒体と合わせること;及び、
炭酸カルシウムを形成すること;
を含む、前記方法。
【請求項11】
前記炭酸カルシウムが、建設資材を構成する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記建設資材が、煉瓦、薄い煉瓦、舗装材、パネル、タイル、ベニヤ、炭殻、ブリーズ、ベッサー(besser)、クリンカー若しくは通気ブロック、カウンタートップ若しくはテーブルトップ、設計構造物、ブロック、固体石材構造物、橋脚、土台、梁、壁又はスラブを構成する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の水性媒体及び/又は第2の水性媒体が、塩類、アミノ酸、タンパク質、ペプチド、炭水化物、糖類、多糖類、脂肪酸、油、ビタミン及びミネラルのうちの1種類以上を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
建設資材を製造する方法であって、
炭酸カルシウムを溶解する酵素を発現する微生物及び炭酸カルシウムを形成する酵素を発現する微生物を含む水性媒体を提供すること;及び、
前記水性媒体を、炭酸カルシウムを溶解する酵素の活性を促進する条件下で炭酸カルシウムと合わせて、カルシウムイオン及び/又は遊離炭素を生成させること;
を含み、炭酸カルシウムを形成する酵素を発現する前記微生物が、前記カルシウムイオン及び/又は遊離炭素を利用して炭酸カルシウムを形成する、前記方法。
【請求項15】
前記炭酸カルシウムが、建設資材を構成する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記建設資材が、煉瓦、薄い煉瓦、舗装材、パネル、タイル、ベニヤ、炭殻、ブリーズ、ベッサー(besser)、クリンカー若しくは通気ブロック、カウンタートップ若しくはテーブルトップ、設計構造物、ブロック、固体石材構造物、橋脚、土台、梁、壁又はスラブを構成する、請求項15の方法。
【請求項17】
炭酸カルシウムを溶解する酵素を発現する第1の微生物及び炭酸カルシウムを形成する酵素を発現する第2の微生物を含む、組成物。
【請求項18】
前記第1の微生物が、アルファプロテオバクテリア(Alphaproteobacteria)、ベータプロバクテリア(Betaprobacteria)、ガンマプロバクテリア(Gammaprobactreia)、ファーミキューテス(Firmicutes)又はアクチノバクテリア(Actinobacteria)のうちの1種類以上の種、亜種、株又は血清型を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記第2の微生物が、スポロサルシナ・パステウリイ(Sporosarcina pasteurii)、スポロサルシナ・ウレアエ(Sporosarcina ureae)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、バシルス・スファエリクス(Bacillus sphaericus)、ミクソコックス・キサンタス(Myxococcus xanthus)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、バシルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)のうちの1種類以上の種、亜種、株又は血清型を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記第1の微生物及び/又は前記第2の微生物が、胞子を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
さらに骨材を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
前記骨材が、砂、砕砂、粉石、破砕コンクリート、破砕煉瓦、石灰石、ケイ酸塩材料またはそれらの組合せを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記第1の微生物が、生存率を維持しかつ前記微生物の成長又は増殖を促進しない培地の中に懸濁された前記組成物の約1.0重量パーセント~約50重量パーセントを構成する、請求項17に記載の組成物。
【請求項24】
前記第2の微生物が、生存率を維持しかつ前記微生物の成長又は増殖を促進しない培地の中に懸濁された前記組成物の約1.0重量パーセント~約40重量パーセントを構成する、請求項17に記載の組成物。
【請求項25】
前記骨材が、前記組成物の約10重量パーセント~約95重量パーセントを構成する、請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
約10重量パーセント未満の水を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項27】
約5重量パーセント未満の水を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項28】
約2重量パーセント未満の水を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項29】
前記第1の微生物及び/又は第2の微生物の発芽及び/又は成長を促進する成分を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項30】
前記成分が、栄養素、糖質、多糖類、安定化剤、防腐剤、緩衝液及び/又は塩類を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記第1の微生物及び第2の微生物が、約6ヶ月以上生存可能であり続ける、請求項17に記載の組成物。
【請求項32】
前記第1の微生物及び第2の微生物が、約12ヶ月以上生存可能であり続ける、請求項17に記載の組成物。
【請求項33】
前記第1の微生物及び第2の微生物が、約24ヶ月以上生存可能であり続ける、請求項17に記載の組成物。
【請求項34】
前記第1の微生物及び/又は第2の微生物が、胞子を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項35】
さらに炭酸カルシウムを含む、請求項17に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への参照
本出願は、2019年2月15日に出願された米国仮特許出願第62/806,346号の優先権を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、炭酸カルシウムの酵素的分解及び再形成を含む生物学的焼結の組成物、ツール及び方法を対象とする。特に、本発明は、炭酸カルシウムを沈殿及び/又は溶解させる1種類以上の酵素を使用する、煉瓦、石材(masonry)及び他の固体構造物の製造、防塵、並びに、道路、小道及び他の固体表面の構築に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の煉瓦及びコンクリートの構造物は、石炭や木材などの天然資源の燃焼に大きく依存する。この依存により、大量のエネルギー資源が消費され、同様に大量の二酸化炭素が放出され、したがって、限られたエネルギー源に大きく依存する。これらの従来のプロセスの代替には、微生物によって誘発される方解石沈殿(MICP)として知られるプロセスが包含される。MICPは、エネルギー源としてのウレアーゼと尿素を、例えば、砂などの骨材と混合させることを含む。この酵素は、アンモニアと二酸化炭素の生成を触媒し、組成物のpHレベルを上昇させる。2番目の酵素である炭酸脱水酵素は、二酸化炭素の炭酸アニオンへの遷移を促進する。pHの上昇によって、カルシウムカチオンと炭酸アニオンを組み合わせたミネラル「沈殿物」が形成される。その混合物中に存在する粒子は、核形成場所として機能し、方解石結晶を形成するカルシウムからミネラルイオンを引き付ける。ミネラルの成長は、バイオセメント化又は互いに結合する砂粒子間のギャップを埋める。好ましくは、該粒子は、幅が少なくとも5ミクロンのギャップを含むが、その幅は必要に応じてより大きいことも又はより小さいことも可能である。得られた材料は、自然に形成された石材、煉瓦又は他の固体構造物と同様の組成及び物理的特性を示す。硬度は、少なくとも初期成分の構造物及び所望の細孔サイズに基づいて事前に決定することができる。
【0004】
炭酸カルシウムを溶解することができる酵素産生細菌としては、アルファプロテオバクテリア(Alphaproteobacteria)、ベータプロバクテリア(Betaprobacteria)、ガンマプロバクテリア(Gammaprobactreia)、ファーミキューテス(Firmicutes)又はアクチノバクテリア(Actinobacteria)などがある。バイオセメンテーションが可能な酵素産生細菌としては、スポロサルシナ・ウレアエ(Sporosarcina ureae)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、バシルス・スファエリクス(Bacillus sphaericus)、ミクソコックス・キサンタス(Myxococcus xanthus)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)又はヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)などがあるが、病原性菌株には適切な懸念を払う必要がある。これらの菌株のいずれかの組み合わせ、並びに、機能的変異株、突然変異及び遺伝子組換え株も同様に使用することができる。細菌組成物は、細胞がよく成長し及び増殖することを維持する及び/又は可能にするための栄養培地を含む。細胞のための、特に、本発明の細菌細胞のための様々なタイプの栄養培地は、既知であり及び市販されており、そして、増殖することなく生存能力を維持するために輸送に通常使用される最少培地(又は、輸送培地)、及び、酵母エキス及び糖蜜(これは、通常、成長及び増殖に使用される)を少なくとも含む。
【0005】
誘発されたセメンテーションによって建設資材を製造するこの方法は、低い内包エネルギーを示し、そして、大気圧及び広範囲の温度で生じ得る。周囲の温度と条件及び利用可能な骨材の含有量によって、出発成分として純粋な酵素、凍結乾燥酵素又は生細胞が利用されるかどうかが決まり得る。一般に、生細胞は、穏やかな気象条件が存在する比較的暖かい温度で使用されるが、純粋な酵素は、寒さや暑さの比較的極端な条件下で有利であり得る。砂の骨材と自然に誘発されたセメンテーションを使用する生物工学で作られた建築ユニットの導入は、地元で製造することが可能で環境に優しい可能性のある自然な代替手段を提供する。加熱することはほとんど又は全く必要ないため、費用と効率の両方でエネルギーを大幅に節約できる。
【0006】
MICPのもう1つの利点は、そのプロセスが小規模及び大規模の両方で利用することが可能であること、並びに、容易に自動化できることである。本発明の石材製造プロセスのバルク内容物は、岩石、砂、砂利及びほとんど全ての種類の石を含む、現地で入手可能なほとんど全ての材料であり得る。圧壊又は破壊して破片とすることなどの石の加工も現地で行うことができる。したがって、輸送コスト及び費用は最小限に抑えられる。本発明の組成物(現場で凍結乾燥及び水和されて提供され得る)、煉瓦のフレーム(別のやり方では利用できない場合)及び必要に応じて取扱説明書が、提供される必要がある全てである。輸送が必要な場合、これは、特に従来のコンクリートの配送に関連する現在の費用と比較して、配送費用のほんの一部に相当する。
【0007】
MICPプロセスのもう1つの利点は、主に鉱物、MICP及び緩い骨材(例えば、砂)を利用して、煉瓦などの「成長した」建設資材を製造することである。煉瓦及び別の建設資材を製造することが可能であるのみではなく、煉瓦自体を目的の場所にセメントで固定して、煉瓦を相互に及び/又は他の材料に「セメントで固定」し、それによって、建造物、支持構造物又は部材、壁、道路及び別の構造物を形成することができる。
【0008】
生物学的に成長した煉瓦や石材は、ポルトランドセメントモルタルの従来の使用を必要とせず、これにより、内包エネルギーが高い従来製造された建設資材に代わるものを提供することで、大気中の二酸化炭素を低減させることができる。細胞を使用して鉱物の沈殿を自然に誘発し、地元の骨材と迅速な製造方法を組み合わせることで、世界の建設業界全体で使用される地元の生態学的で経済的な建築材料の生産が可能になる。
【0009】
MICPは、建設に使用されるほぼ全ての形態の煉瓦、ブロック又は固体構造物を製造するために利用することができるが、大規模製造のための効率的な方法はまだ開発されていない。したがって、経済的でありかつ環境的に安全な石材の製造に一貫性を提供する迅速で便利なプロセスの必要性が存在する。さらに、MICPに必要な最初の成分が常に容易に利用できるとは限らない。カルシウム源は、多くの場合、固体炭酸カルシウムの形態でのみ入手可能である。したがって、カルシウムを入手する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、現在の戦略及び設計に関連する問題及び不利な点を克服し、建築材料の製造のための新しいツール、組成物及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態は、炭酸カルシウムを溶解する酵素を発現する微生物を含む第1の水性媒体を提供すること、炭酸カルシウムを溶解する酵素の活性を促進する条件下で前記第1の水性媒体を炭酸カルシウムと合わせること、並びに、カルシウムイオン及び/又は遊離炭素を収集すること、を含む方法を対象とする。
【0012】
好ましい実施形態では、前記水性媒体は、微生物の成長及び増殖のための塩類、アミノ酸、タンパク質、ペプチド、炭水化物、糖類、多糖類、脂肪酸、油、ビタミン及びミネラルのうちの1種類以上を含むか、又は、使用するまで最少培地の中に維持される。好ましくは、該微生物は、アルファプロテオバクテリア(Alphaproteobacteria)、ベータプロバクテリア(Betaprobacteria)、ガンマプロバクテリア(Gammaprobactreia)、ファーミキューテス(Firmicutes)又はアクチノバクテリア(Actinobacteria)のうちの1種類以上の種、亜種、株又は血清型を含む。好ましくは、該微生物は、バリオボラックス(Variovorax)、クレブシエラ(Klebsiella)、シュードモナス(Pseudomonas)、バシルス(Bacillus)、エクシグオバクテリウム(Exiguobacterium)、ミクロバクテリウム(Microbacterium)、クルトバクテリウム(Curtobacterium)、ラタイバクター(Rathayibacter)、セルフィミ2(CellFimi2)、ストレプトミセス(Streptomyces)及び/又はラオウルテラ(Raoultella)のうちの1種類以上の種、亜種、株又は血清型を含む。
【0013】
本発明の別の実施形態は、炭酸カルシウムを形成する方法を対象とする。この方法は、炭酸カルシウムを形成する酵素を発現する微生物を含む第2の水性媒体を提供すること、炭酸カルシウムを形成する酵素の活性を促進する条件下で前記第2の水性媒体を収集されたカルシウムイオン及び/又は収集された遊離炭素と合わせること、並びに、炭酸カルシウムを形成すること、を含む。カルシウムイオン及び/又は遊離炭素は、炭酸カルシウムを溶解する酵素を発現する微生物を含む第1の水性媒体を提供すること、炭酸カルシウムを溶解する酵素の活性を促進する条件下で前記第1の水性媒体を炭酸カルシウムと合わせること、並びに、カルシウムイオン及び/又は遊離炭素を収集すること、によって収集される。
【0014】
好ましくは、該微生物は、スポロサルシナ・パステウリイ(Sporosarcina pasteurii)、スポロサルシナ・ウレアエ(Sporosarcina ureae)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、バシルス・スファエリクス(Bacillus sphaericus)、ミクソコックス・キサンタス(Myxococcus xanthus)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、バシルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)並びに/又はウレアーゼ及び/若しくは炭酸脱水酵素を産生する微生物のうちの1種類以上の種、亜種、株又は血清型を含む。好ましい実施形態では、合わせることは、結合剤を添加することを含む。好ましくは、該結合剤は、ポリマー、糖類、多糖類、炭水化物、タンパク質、ペプチド、脂肪酸、油、アミノ酸又はそれらの組み合わせを含む。
【0015】
本発明の別の実施形態は、炭酸カルシウムを溶解する酵素を発現する微生物及び骨材材料を含む組成物を対象とする。
【0016】
本発明の別の実施形態は、建設資材を製造する方法を対象とする。この方法は、炭酸カルシウムを溶解する酵素を発現する微生物を含む第1の水性媒体を提供すること、炭酸カルシウムを溶解する酵素の活性を促進する条件下で前記第1の水性媒体を炭酸カルシウムと合わせてカルシウムイオン及び/又は遊離炭素を形成すること、該カルシウムイオン及び/又は遊離炭素を、炭酸カルシウムを形成する酵素を発現する微生物を含む第2の水性媒体と合わせること、並びに、炭酸カルシウムを形成すること、を含む。
【0017】
本発明の別の実施形態は、建設資材を製造する方法を対象とする。この方法は、炭酸カルシウムを溶解する酵素を発現する微生物と炭酸カルシウムを形成する酵素を発現する微生物のコンソーシアムを含む水性媒体を提供すること;この媒体を炭酸カルシウムと合わせてカルシウムイオン及び/又は遊離炭素を形成すること、並びに、炭酸カルシウムを形成すること、を含む。
【0018】
本発明の別の実施形態は、炭酸カルシウムを溶解及び形成する酵素を発現する微生物並びに骨材材料を含む組成物を対象とする。好ましくは、該炭酸カルシウムは、建設資材を構成する。好ましい実施形態では、該建設資材は、煉瓦、薄い煉瓦、舗装材、パネル、タイル、ベニヤ、炭殻、ブリーズ、ベッサー(besser)、クリンカー若しくは通気ブロック、カウンタートップ若しくはテーブルトップ、設計構造物、ブロック、固体石材構造物、橋脚、土台、梁、壁又はスラブ(例えば、コンクリート)を構成する。
【0019】
本発明の別の実施形態は、微生物の混合物を含む組成物を対象とし、ここで、微生物の1つの群は、第1の条件への曝露時に炭酸カルシウムを溶解し、及び、微生物の別の群は、第2の条件下(ここで、該第2の条件は、該第1の条件と同じであり得るか、実質的に同じあり得るか、又は、異なり得る)で炭酸カルシウムを形成する。好ましくは、該組成物は、さらに、骨材材料(例えば、石灰石、砂、ケイ酸塩材料又はそれらの組み合わせ)を含んでおり、及び、好ましくは、該骨材材料は、該組成物の、約10重量パーセント~約95重量パーセント(例えば、約20重量パーセント、約30パーセント、約40パーセント、約50パーセント、約60パーセント、約70パーセント、約80パーセント、約90パーセント)である。使用するのには骨材の比較的高いパーセンテージが一般的であるが、骨材の比較的低いパーセンテージは、貯蔵又は輸送のための濃縮された形態の組成物であり得る。好ましくは、細胞及び/又は胞子としての前記第1の微生物は、アルファプロテオバクテリア(Alphaproteobacteria)、ベータプロバクテリア(Betaprobacteria)、ガンマプロバクテリア(Gammaprobactreia)、ファーミキューテス(Firmicutes)又はアクチノバクテリア(Actinobacteria)のうちの1種類以上の種、亜種、株又は血清型を含んでおり、並びに、さらにまた、好ましくは、第1の微生物は、該組成物の約10重量パーセント~約40重量パーセントを構成する。好ましくは、細胞及び/又は胞子としての前記第2の微生物は、スポロサルシナ・パステウリイ(Sporosarcina pasteurii)、スポロサルシナ・ウレアエ(Sporosarcina ureae)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、バシルス・スファエリクス(Bacillus sphaericus)、ミクソコックス・キサンタス(Myxococcus xanthus)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、バシルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)又はヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)のうちの1種類以上の種、亜種、株又は血清型を含む。好ましくは、組み合わされた該第1の微生物及び第2の微生物は、該組成物の約10重量パーセント~約100重量パーセント(例えば、約15パーセント、約20パーセント、約25パーセント、約30パーセント、約35パーセント、約40パーセント、約45パーセント、約50パーセント、約55パーセント、約60パーセント、約65パーセント)を構成する。該組成物の非骨材成分の比較的高いパーセンテージは、貯蔵用途又は輸送用途のために一般的であるが、非骨材成分の比較的低いパーセンテージは、使用のためにより一般的である。好ましくは、該組成物は、骨材材料を含んでいなくてもよく、ここで、該骨材材料は、特定の用途のために必要に応じて使用前に添加される。好ましくは、該組成物は、約25重量パーセント以下の水、20重量パーセント以下の水、10重量パーセント以下の水、約5重量パーセント以下の水又は約2重量パーセント以下の水を含む。該組成物は、さらにまた、該第1及び/又は第2の微生物の発芽及び/又は成長を支持する成分、例えば、栄養素、糖質、多糖類、緩衝液、塩類、安定化剤、防腐剤なども、含むことができる。好ましくは、該第1及び第2の微生物は、該組成物中で、3ヶ月以上、6ヶ月以上、9ヶ月以上、12ヶ月以上、24ヶ月以上又は36ヶ月以上、生存し続ける。
【0020】
本発明の他の実施形態及び利点は、以下の説明において部分的に記載されており、及び、部分的には、この説明から明らかであり得るか、又は、本発明の実施から学ぶことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
微生物によって誘発される方解石沈殿(MICP)として知られるプロセスを使用した石材及び他の建築材料の製造は、多くの米国特許に広く記載されている(例えば、米国特許第8,728,365号、第8,951,786号、第9,199,880号及び第9,428,418号を参照されたい;これらは、それぞれ、参照によりその全体が組み込まれる)。これらのプロセスでは、ウレアーゼ産生細胞又はウレアーゼ酵素を骨材と混合させ、尿素及びカルシウム源と一緒にインキュベートする。方解石結合が骨材粒子間に形成され、固体構造物となる。このプロセスによって建築材料の製造が可能であるが、製造には、一般に、大規模製造を目的とした標準化が必要である。
【0022】
驚くべきことに、炭酸カルシウムを溶解する酵素を生成する微生物及び/又はその酵素自体による炭酸カルシウムの溶解からカルシウムを収集することが可能であり、それによって、カルシウムイオン及び炭素イオンを形成することができるということが見いだされた。炭酸カルシウムを溶解する酵素を産生する微生物としては、以下のものなどを挙げることができる: アルファプロテオバクテリア(Alphaproteobacteria)、ベータプロバクテリア(Betaprobacteria)、ガンマプロバクテリア(Gammaprobactreia)、ファーミキューテス(Firmicutes)又はアクチノバクテリア(Actinobacteria)の種、亜種、株又は血清型、例えば、バリオボラックス(Variovorax)、クレブシエラ(Klebsiella)、シュードモナス(Pseudomonas)、バシルス(Bacillus)、エクシグオバクテリウム(Exiguobacterium)、ミクロバクテリウム(Microbacterium)、クルトバクテリウム(Curtobacterium)、ラタイバクター(Rathayibacter)、セルフィミ2(CellFimi2)、ストレプトミセス(Streptomyces)及び/又はラオウルテラ(Raoultella)の種、亜種、株又は血清型。これらの酵素によって生成されるカルシウムイオン及び潜在的に遊離炭素イオンは、炭酸カルシウムを生成する酵素を発現する微生物によって利用することができる。炭酸カルシウムを生成する酵素を産生する微生物としては、以下のものなどを挙げることができる: スポロサルシナ・パステウリイ(Sporosarcina pasteurii)、スポロサルシナ・ウレアエ(Sporosarcina ureae)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、バシルス・スファエリクス(Bacillus sphaericus)、ミクソコックス・キサンタス(Myxococcus xanthus)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、バシルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)並びに/又はウレアーゼ及び/若しくは炭酸脱水酵素を産生する微生物の種、亜種、株又は血清型。
【0023】
熱及び圧力を使用しない生物学的焼結のプロセスは、炭酸カルシウムを形成する酵素を産生する微生物を使用して炭酸カルシウムを再形成するために利用することが可能なカルシウム源として、炭酸カルシウムを分解する酵素を産生する微生物を利用する。同様の方法で、カルシウムの溶解は、さらに、炭酸カルシウム形成のための炭素源として使用することが可能な炭素も遊離させる。
【0024】
酵素によって製造されるカルシウム及び炭酸カルシウムは、標準化することが可能であり、それに応じて製造プロセスが強化される。標準化は、生菌のコレクションに水性媒体を添加して水性混合物を形成させ、及び、その水性混合物を、増殖を促進する条件下でインキュベートすることによって、達成される。炭酸カルシウムを溶解する細胞の場合、細胞を炭酸カルシウム固形物と混合させる。炭酸カルシウムを形成する場合、該細胞又は酵素を、炭酸カルシウムを形成するための原料と混合させる。栄養細胞又は酵素を粒子(例えば、形成される固体構造物と一致する及び/又は類似する炭酸カルシウム粒子又は骨材粒子)と混合させてスラリーを形成することが可能であり、及び、そのスラリーを、水性成分(本質的に水であり、細胞ではない)の少なくとも一部を除去することによって濃縮することができる。細胞の保持は、水などの液体の移動を可能にするが細胞を保持するサイズ又は平均サイズ及び組成の骨材粒子を利用することによって達成することができる。これらの超微細な骨材粒子は、スラリーとして維持することが可能であり、又は、さらなる液体を必要に応じて除去して、粉末又は固体構造物を形成することができる。
【0025】
本発明の一実施形態は、炭酸カルシウムを溶解する微生物及び/又は炭酸カルシウムを形成する微生物のスターター培養を形成するための方法を対象とする。水及び溶解された水性材料を添加又は除去することができ、並びに、該微生物を必要に応じて添加又は除去することができる。微生物は、スラリーとして維持することが可能であり、又は、粉末形態若しくは固体形態として乾燥させることが可能である。好ましくは、該微生物は、温度の変化又は他のほとんどの外部条件に対して比較的耐性がある水性形態又は乾燥形態で維持し、したがって、長期間維持することができる。このようにして、大規模な製造作業を調整するために多数の微生物を維持することができる。
【0026】
最初の段階において、胞子形成細菌を、好ましくは胞子及び/又は栄養細胞の形成を促進する条件下で、培養する。培養条件には、塩類、アミノ酸、タンパク質、ペプチド、炭水化物、糖類、多糖類、脂肪酸、油、ビタミン及びミネラルのうちの1種類以上を含む水性媒体が包含される。炭酸カルシウムを溶解する好ましい微生物には、バリオボラックス(Variovorax)、クレブシエラ(Klebsiella)、シュードモナス(Pseudomonas)、バシルス(Bacillus)、エクシグオバクテリウム(Exiguobacterium)、ミクロバクテリウム(Microbacterium)、クルトバクテリウム(Curtobacterium)、ラタイバクター(Rathayibacter)、セルフィミ2(CellFimi2)、ストレプトミセス(Streptomyces)及び/又はラオウルテラ(Raoultella)が包含される。炭酸カルシウムを形成する好ましい微生物には、スポロサルシナ・パステウリイ(Sporosarcina pasteurii)、スポロサルシナ・ウレアエ(Sporosarcina ureae)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、バシルス・スファエリクス(Bacillus sphaericus)、ミクソコックス・キサンタス(Myxococcus xanthus)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、バシルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)並びに/又はウレアーゼ及び/若しくは炭酸脱水酵素を産生する微生物のうちの1種類以上の株が包含される。微生物は、使用するまで最少培地の中で維持し、そして、水性培地中で、好ましくはインキュベーション時に生理学的pH及び約25~40℃の温度である水性培地中で、培養する。好ましくは、インキュベーションは、約6時間~約6日間、さらに好ましくは、約1~3日間、又は、細菌あたり所望の数の胞子及び/又は栄養細胞を生成させるために必要なだけ短い時間で実施する。
【0027】
好ましくは、胞子形成又は栄養細胞形成が誘発されるが、誘発段階は必要ではなく、該微生物は、遠心分離に付すことができるか又は他の方法で濃縮することができ、好ましくは、さらなる成長及び/又は増殖を誘発することなく該微生物を維持する培地又は別の適切な液体を有しているペーストに再懸濁させることができる(階層溶液(status solution))。あるいは、微生物は、濃縮することなく骨材と混合させる必要があり得るが、これは、栄養細胞のバッチを製造するのに好ましい可能性がある。好ましくは、該組成物は、さらに、骨材材料(例えば、石灰石、砂、ケイ酸塩材料又はそれらの組み合わせ)を含む。好ましくは、該骨材は、該組成物の、約10重量パーセント~約99重量パーセント(例えば、約20重量パーセント、約30パーセント、約40パーセント、約50パーセント、約60パーセント、約70パーセント、約80パーセント、約90パーセント、約95パーセント)で含まれることができる。使用するのには骨材の比較的高いパーセンテージが一般的であるが、骨材の比較的低いパーセンテージは、貯蔵又は輸送のための濃縮された形態の組成物であり得る。好ましくは、組み合わされた該第1の微生物及び第2の微生物は、該組成物の約10重量パーセント~約70重量パーセント又はそれ以上(例えば、約15パーセント、約20パーセント、約25パーセント、約30パーセント、約35パーセント、約40パーセント、約45パーセント、約50パーセント、約55パーセント、約60パーセント、約65パーセント)を構成する。該組成物の非骨材成分の比較的高いパーセンテージは、貯蔵用途又は輸送用途のために一般的であるが、非骨材成分の比較的低いパーセンテージは、使用のためにより一般的である。好ましくは、該組成物は、骨材材料を含んでいなくてもよく、ここで、該骨材材料は、特定の用途のために必要に応じて使用前に添加される。典型的には、該第1の微生物及び第2の微生物は、比較的等しい量で存在する。しかしながら、分解されるべき炭酸カルシウムが大量にある用途では、第1の微生物が優勢であることができ、逆に、形成されるべき炭酸カルシウムが大量にある場合は、第2の微生物が優勢であることができる。それぞれの量は、特定の用途に対して必要に応じて当業者が決定することができる。好ましくは、該組成物は、約25重量パーセント以下の水、20重量パーセント以下の水、10重量パーセント以下の水、約5重量パーセント以下の水又は約2重量パーセント以下の水を含む。該組成物は、さらにまた、該第1及び/又は第2の微生物の発芽及び/又は成長を支持する成分、例えば、栄養素、糖質、多糖類、緩衝液、塩類、安定化剤、防腐剤なども、含むことができる。
【0028】
必要に応じて胞子形成又は栄養細胞形成に続いて、培養物を骨材粒子と混合させる。骨材粒子は、天然砂、非天然砂、リサイクル砂若しくは砕砂、鉱石、砕岩若しくは砕石、鉱物、粉砕若しくは破砕されたガラス、採掘屑、紙、廃材、製造プロセスからの廃石、プラスチック、ポリマー、粗面化された材料及び/又はそれらの組み合わせを含むことができ、そして、ビーズ、グレイン、ストランド、繊維、フレーク、結晶又はそれらの組み合わせの形態であることができる。好ましくは、該骨材粒子は、メッシュサイズが100以下の粒子(約150μm以下の粒子)を含んでおり、さらに好ましくは、メッシュサイズが200以下の粒子(約75μm以下の粒子)を含んでおり、又は、さらに好ましくは、メッシュサイズが300以下の粒子(約38μm以下の粒子)を含む。
【0029】
好ましくは、胞子及び/又は栄養細胞及び/又は骨材の水性混合物を、微生物及び骨材の接着又は保持を促進する結合剤と合わせる。接着は、疎水性結合、親水性結合、イオン結合、非イオン結合、共有結合、ファンデルワールス力又はそれらの組み合わせを介して、微生物と骨材との間で起こり得る。結合剤としては、限定するものではないが、ポリマー、糖類、多糖類、炭水化物、ペプチド、タンパク質、脂肪酸、油、アミノ酸又はそれらの組み合わせのうちの1種類以上を挙げることができる。好ましい結合剤は、無毒性及び/又は生分解性であり、さらにまた、好ましくは、当該胞子に対して無害であり、そして、胞子の最終的な発芽又は栄養細胞の増殖を阻害又はさもなくば妨害しない。さらにまた、好ましくは、該組成物は、当該微生物の生存能力に対して又は当該組成物若しくは最終製品を扱う仕事をする個人に対してリスクをもたらす毒物、毒性物質又は成分を含有しない。
【0030】
好ましくは、水性の成分及び混合物は、蒸発及び/又は濾過(例えば、熱が補助する蒸発、圧力が補助する濾過、及び/又は、減圧が補助する濾過)によって除去する。蒸発及び/又は濾過に付した後、当該スラリー又は骨材粒子及び微生物は、1mL当たり、約10~約1014の胞子及び/又は細胞、好ましくは、約10~約1012の胞子及び/又は細胞、さらに好ましくは、約10~約1011の胞子及び/又は細胞を含む。該水性成分は、胞子及び/又は栄養細胞に困難を及ぼすことなく、並びに、ウレアーゼ産生細菌の培養を開始する際の将来の使用のために保存される乾燥粉末又はブロックに困難を及ぼすことなく、さらに除去することができるか又は完全に除去することができる。
【0031】
胞子を含む骨材は、長い貯蔵寿命を有している。好ましくは、貯蔵寿命は、約3ヶ月、約6ヶ月、約9ヶ月若しくは約12ヶ月の貯蔵の後で、約80パーセントを超える生存率(好ましくは、約90パーセント、約95パーセント又は約99パーセントの生存率)をもたらし、又は、約1年、約2年、約3年、約4年若しくは約5年の貯蔵の後で、約80パーセントを超える生存率(好ましくは、約90パーセント、約95パーセント又は約99パーセントの生存率)をもたらす。栄養細胞を含む骨材は、幾分短い貯蔵寿命を有し、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月又は約6ヶ月の貯蔵の後で、約80パーセントを超える生存率(好ましくは、約90パーセント、約95パーセント又は約99パーセントの生存率)を有している。
【0032】
本発明の別の実施形態は、本発明の方法によって作製された胞子添加骨材を含む組成物を対象とする。好ましくは、骨材粒子は、メッシュサイズが100以下の粒子(約150μm以下の粒子)、メッシュサイズが200以下の粒子(約75μm以下の粒子)又はメッシュサイズが300以下の粒子(約38μm以下の粒子)である。さらにまた、好ましくは、該組成物は、結合剤又は保持剤を含む。該結合剤は、胞子及び/若しくは栄養細胞と骨材粒子との間の接着を促進し、並びに/又は、該保持剤は、骨材粒子及び/若しくは胞子及び/若しくは栄養細胞のサイズを増加させ、それらの保持を促進する。
【0033】
好ましくは、該組成物は、約50重量パーセント未満の液体を含んでおり、さらに好ましくは、約10重量パーセント未満の液体を含んでおり、さらに好ましくは、約5重量パーセント未満の液体を含む。好ましい組成物は、1mL当たり、約1010~約1015の胞子及び/又は栄養細胞を含む。
【0034】
本発明の別の実施形態は、建設資材を製造方法する方法を対象とし、ここで、該方法は、炭酸カルシウムの溶解液を微生物及び/又は酵素と合わせること、続いて、微生物及び/又は酵素を用いる炭酸カルシウムの製造における溶解から得られたカルシウム及び/又は炭素を利用すること、を含む。固体炭酸カルシウムは、型枠の中で形成することができるか、又は、必要に応じて押し出すことができる。押し出された炭酸カルシウムは、押し出されたときの基本的な形状を保持し、時間の経過とともに固化して、所望の硬度の固体構造物になる。
【0035】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例証するものであり、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【実施例
【0036】
実施例1 炭酸カルシウムを溶解させるための微生物産生
天然源及び「American Type Culture Collection (ATCC)」から入手した確立された培養液から、バリオボラックス(Variovorax)、クレブシエラ(Klebsiella)、シュードモナス(Pseudomonas)、バシルス(Bacillus)、エクシグオバクテリウム(Exiguobacterium)、ミクロバクテリウム(Microbacterium)、クルトバクテリウム(Curtobacterium)、ラタイバクター(Rathayibacter)、セルフィミ2(CellFimi2)、ストレプトミセス(Streptomyces)及びラオウルテラ(Raoultella)の培養物を生成させた。培養物は、使用の準備ができるまで、最少培地(例えば、増殖又は発芽を促進することなく生存率を維持するためのpH平衡塩類溶液)の中で維持する。
【0037】
実施例2 炭酸カルシウムの溶解
実施例1の微生物を固体形態の炭酸カルシウムと混合してスラリーを形成し、それに、特定の培養に必要とされる成長及び増殖のための成分(例えば、これには、糖質、糖類、多糖類、炭水化物、脂肪酸、脂質、ビタミン、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、塩類、pH緩衝液、ミネラル及び/又は追加の成分が含まれ得る)を添加する。該微生物は、炭酸カルシウムを溶解し、カルシウムイオン及び遊離炭素が形成される。
【0038】
実施例3 炭酸カルシウムを溶解させるための微生物産生
天然源及び「American Type Culture Collection (ATCC)」から入手した確立された培養液から、スポロサルシナ・パステウリイ(Sporosarcina pasteurii)、スポロサルシナ・ウレアエ(Sporosarcina ureae)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、バシルス・スファエリクス(Bacillus sphaericus)、ミクソコックス・キサンタス(Myxococcus xanthus)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、バシルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)の培養物を生成させた。培養物は、使用の準備ができるまで、最少培地(例えば、増殖又は発芽を促進することなく生存率を維持するためのpH平衡塩類溶液)の中で維持する。
【0039】
実施例4 炭酸カルシウムの形成
実施例3の微生物を実施例2に従って生成されたカルシウムイオン及び遊離炭素と混合させ、それに、特定の培養に必要とされる成長及び増殖のための成分(例えば、これには、糖質、糖類、多糖類、炭水化物、脂肪酸、脂質、ビタミン、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、ミネラル、塩類、pH緩衝液及び/又は追加の成分が含まれ得る)を添加する。該微生物は、炭酸カルシウムを形成する。
【0040】
本発明の別の実施形態及び使用は、本明細書中に開示されている本発明の明細事項及び実施を考慮することで、当業者には明らかであろう。全ての刊行物、米国及び外国の特許及び特許出願を包含する、本明細書中で引用された全ての参考文献は、参照により具体的かつ完全に組み込まれる。用語「含む(comprising)」は、これまでに使用されている場合、用語「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含することが意図されている。さらに、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、限定することを意図するものではない。明細書及び実施例は例示的にのみ考慮されるべきであって、本発明の真の範囲及び精神は以下の特許請求の範囲によって示されていることが意図されている。
【国際調査報告】