(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(54)【発明の名称】吸入器用の気化器装置、消耗ユニット、吸入器及び製造方法
(51)【国際特許分類】
A24F 40/10 20200101AFI20220325BHJP
A24F 40/46 20200101ALI20220325BHJP
A24F 40/40 20200101ALI20220325BHJP
A24F 40/70 20200101ALI20220325BHJP
【FI】
A24F40/10
A24F40/46
A24F40/40
A24F40/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547852
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(85)【翻訳文提出日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 EP2020053879
(87)【国際公開番号】W WO2020169467
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】102019103987.8
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595112018
【氏名又は名称】ハウニ・マシイネンバウ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】コルニルス・ラッセ
(72)【発明者】
【氏名】ロンミング・ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】ヤクリン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ニーブーア・グンナー
(72)【発明者】
【氏名】ウルナー・ティム
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー・トーマス
【テーマコード(参考)】
4B162
【Fターム(参考)】
4B162AA06
4B162AA22
4B162AB01
4B162AB14
4B162AB23
4B162AC16
4B162AC18
4B162AC22
4B162AC27
4B162AD02
4B162AD03
4B162AE02
(57)【要約】
吸入器(10)用の気化器装置(1)が、気化器(60)に供給される液体(50)を気化する少なくとも1つの電気的な気化器(60)であって、液体(50)は、毛管力によって、入口側(61)から少なくとも1つの液体チャネル(62)を通って出口側(64)へ運び出され、そこで気化された液体(50)が、空気流(34)に供給可能である、気化器(60)と、気化器(60)を保持する支持体(4)と、気化器(60)に電気的に接触する少なくとも1つの電線(105a、105b)と、を備える。電線(105a、105b)は、平坦な接触領域(131)を有し、気化器(60)と、電線(105a、105b)の平坦な接触領域(131)とが、互いに材料結合により導電接続されている)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入器(10)用の気化器装置(1)であって、
気化器(60)に供給される液体(50)を気化する少なくとも1つの電気的な気化器(60)であって、液体(50)は、毛管力によって、入口側(61)から少なくとも1つの液体チャネル(62)を通って出口側(64)へ運び出され、そこで気化された液体(50)が、空気流(34)に供給可能である、気化器(60)と、
気化器(60)を保持する支持体(4)と、
気化器(60)に電気的に接触する少なくとも1つの電線(105a、105b)と、
を備える、気化器装置(1)において、
電線(105a、105b)は、平坦な接触領域(131)を有し、
気化器(60)と、電線(105a、105b)の平坦な接触領域(131)とが、互いに材料結合により導電接続されていることを特徴とする、気化器装置(1)。
【請求項2】
気化器(60)の外形は、ブロック状であり、
気化器(60)の1つの側(61、64)は、面状に電線(105a、105b)に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の気化器装置(1)。
【請求項3】
気化器(60)は、互いに反対の側に位置する2つの縁部分(132a、132b)を有する、特に矩形の底面を有し、互いに反対の側に位置する縁部分(132a、132b)のそれぞれが、電線(105a、105b)に接続されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の気化器装置(1)。
【請求項4】
支持体(4)が、電線(105a、105b)を保持する及び/又は電線(105a、105b)に材料結合により接続されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の気化器装置(1)。
【請求項5】
少なくとも2つの電線(105a、105b)が設けられていて、
支持体(4)が、電線(105a、105b)の間に貫通開口(104)を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の気化器装置(1)。
【請求項6】
支持体(4)が、セラミック基板(103)を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の気化器装置(1)。
【請求項7】
接触領域(131)が、金から成ることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の気化器装置(1)。
【請求項8】
気化器(60)が、金属化層(133)を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の気化器装置(1)。
【請求項9】
金属化層(133)が、ニッケル、金及び/又はパラジウムを含むことを特徴とする、請求項8に記載の気化器装置(1)。
【請求項10】
気化器(60)と金属化層(133)との間に、プライマが配置されていることを特徴とする、請求項8又は9に記載の気化器装置(1)。
【請求項11】
気化器(60)と電線(105)との間の電気的な接続部は、5mΩから20mΩの電気抵抗を有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一項に記載の気化器装置(1)。
【請求項12】
材料結合による接続部が、少なくとも部分的に第1の焼結材料(151)によって形成されていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項に記載の気化器装置(1)。
【請求項13】
電線(105)が、少なくとも部分的に第2の焼結材料(152)によって形成されていることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか一項に記載の気化器装置(1)。
【請求項14】
気化器(60)と電線(105)との間の材料結合による接続部が、特に非導電性の接着剤を有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか一項に記載の気化器装置(1)。
【請求項15】
気化器(60)及び/又は接触領域(131)が、ろう接凸部(150)を有することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか一項に記載の気化器装置(1)。
【請求項16】
電線(105a、105b)は、気化器(60)の熱膨張係数の10%未満異なる熱膨張係数を有することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか一項に記載の気化器装置(1)。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか一項に記載の気化器装置(1)と、
液体リザーバ(18)と、
を備え、気化器装置(1)は、液体導通式に液体リザーバ(18)に接続されている、吸入器(10)用の消費ユニット(17)。
【請求項18】
請求項17に記載の消費ユニット(17)と、
ベースユニット(16)と、
を備える、吸入器(10)。
【請求項19】
気化器(60)と、支持体(4)と、少なくとも1つの電線(105a、105b)とを用意する、ステップと、
気化器(60)の平坦な接触領域において気化器(60)と電線(105a、105b)とを材料結合により導電接続する、ステップと、
を有する、請求項1から16までのいずれか一項に記載の気化器装置(1)を製造する方法。
【請求項20】
接続が、熱圧縮法を含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
接続が、超音波の使用を含むことを特徴とする、請求項19又は10に記載の方法。
【請求項22】
接続が、特に無圧の焼結を含むことを特徴とする、請求項18から21までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
接続前に、同時に加工される複数の気化器(60)を個別化することを特徴とする、請求項18から22までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
接続前に、複数のろう接凸部(150)を取り付けることを特徴とする、請求項18から23までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
接続が、特に非導電性の接着剤による接着を含むことを特徴とする、請求項18から24までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入器用の気化器装置に関し、気化器装置は、気化器に供給される液体を気化する少なくとも1つの電気的な気化器であって、液体は、毛管力によって、入口側から少なくとも1つの液体チャネルを通って出口側へ運び出され、そこで気化された液体が、空気流に供給可能である、気化器と、気化器を保持する支持体と、気化器に電気的に接触する少なくとも1つの電線とを備える。本発明は、消費ユニット、吸入器及び製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来慣用の吸入器又は電子タバコ製品は、ウィックコイル技術に基づいている。液体が電気的に加熱可能なコイルによって加熱され、ひいては気化されるまで、毛管力によって、液体が、ウィックに沿って液体リザーバから運び出される。ウィックは、液体リザーバと気化器として用いられる加熱コイルとの間の液体導通式の接続部として用いられる。
【0003】
従来慣用の吸入器では、ウィックコイル技術による気化器の電気的な接触は、単純である。コイルに電流を供給するだけでよい。これにより、コイルが加熱され、液体を気化できる。
【0004】
ウィックコイル技術の欠点は、液体の供給が不足すると、局所的な過熱がもたらされ、これにより、有害物質が生じ得ることである。このいわゆる「ドライパフ」を回避することが重要である。さらに、この種の気化器ユニットは、製造に起因して漏れが生じることが多いので、液体は、所望されない形で、例えば空気供給及び/又は蒸気導出を介して流出し得る。
【0005】
ウィックコイル技術の問題を回避するために、独国特許出願公開第102017111119号明細書に開示された技術を使用する、冒頭で述べた気化器が用いられる。その際、液体は、毛管力によって、入口側から液体チャネルを通って出口側へ運ばれ、そこでは、気化された液体が、蒸気及び/又はエアロゾルとして、空気流に提供可能である。気化器は、電線を介して、エネルギ源に電気的に接続可能である。しかしながら、電線への気化器の接続は、前掲の背景技術には記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102017111119号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、気化器への信頼性が高く効果的で電気的な接続部を有する気化器装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、独立請求項の特徴によって解決される。
【0009】
本発明によれば、電線が平坦な接触領域を有することが提案される。接触領域は、材料結合による導電接続部のために設けられた、電線の領域である。電線の平坦な接触領域は、電線と気化器との間に設けられた接続部のジオメトリを改善する。したがって、特に、接触領域は、湾曲した特に丸い横断面を有する電線において存在するように、点状ではない又は湾曲していない。したがって、接続領域に、電線と気化器との間の信頼性の高い電気的な接続部を形成できる。さらに、接触領域の平坦な構成によって、接続部を実現するためかつ電流伝送のために拡大された接触面を得ることができる。これにより、例えば高い接触抵抗ひいてはこれに伴う局所的な温度ピークを回避できる。
【0010】
本発明によれば、気化器と電線の平坦な接触領域とは、互いに材料結合により導電接続されていて、これにより、電線と気化器との間の信頼性の高い接続部が提供される。さらに、材料結合による接続部は、気化器を支持体上に保持できる、及び/又は支持体上の気化器の保持を補助できる。電線と気化器とから成る材料結合による接続部は、気化器装置を作製する又は組み立てるとき、気化器装置のコンポーネントの精密で電気的な接触、配置及び保持を可能にする。
【0011】
好適には、気化器の外形は、ブロック状であり、気化器の1つの側は、面状に電線に接続されていて、これにより、電線と気化器との間の電気的な接続部を効果的に構成でき、接触領域を効果的に利用できる。有利には、気化器は、正確に1つの側で、例えば入口側又は出口側で、電線に接続されていて、これにより、気化器装置の可能な限り単純なジオメトリが実現される。しかも、例えば、気化器の、特に互いに反対の2つの側が、例えばそれぞれ出口側又は入口側に対して垂直に、それぞれ少なくとも1つの電線に接続されていることも考えられる。
【0012】
好適には、支持体は、電線を保持する、及び/又は電線に材料結合により接続されていて、これにより、気化器装置の効果的でコンパクトな構成及び効果的な作製が促進される。電線と支持体との材料結合による接続によって、支持体と電線と気化器とを有する材料結合による接続部が生じる。
【0013】
有利には、気化器は、互いに反対の側に位置する2つの縁部分を有する、特に矩形の底面を有し、互いに反対の側に位置する縁部分のそれぞれが、電線に接続されていて、これにより、気化器の底面を効果的に利用でき、縁部分の間に電気抵抗ひいては液体の加温及び気化を生じさせることができる。
【0014】
好ましい一形態では、少なくとも2つの電線が設けられていて、支持体が、電線の間に貫通開口を有する。気化器は、例えば、貫通開口が気化器の入口側で支持体に配置されるように、配置可能である。貫通開口は、ウィック構造体が、液体を供給するために気化器の入口側に面状に接触できることを可能にする。しかし、貫通開口は、気化器の出口側で、支持体に配置されてもよく、これにより、気化器によって気化された液体を、出口側で溢流する空気流に提供可能である。
【0015】
好適には、気化器を保持するために、支持体が、セラミック基板を有し、これにより、気化器を保持する支持体が熱的に安定して構成される、及び/又は場合によっては気化器が熱的に支持体から分離される。セラミック基板は、気化器の動作時に生じる、例えば300℃までの温度と、気化器のライフサイクルにおいて例えば約200回から2000回発生する熱負荷変動とに対して化学的で機械的な安定性を有する。支持体は、液体及び/又はエアロゾル又は蒸気に接触していて、したがって、特に気化中に生じる温度において食品適合性又は生体適合性を有しなければならず、これは、セラミック基板によって促進されている。
【0016】
有利には、接触領域が、金から成り、これにより、良好な導電性を有する接触領域が提供される。接触領域は、気化器への材料結合による導電接続部に適している。金から成る接触領域は、気化されるべき液体又はエアロゾル又は蒸気に対して化学的に安定していて、それ自体公知の方法によって確実に作製及び加工できる。
【0017】
好適には、気化器は、金属化層を有し、これにより、電気的な接触面を用意でき、接触面は、接触領域で、電線に接続可能である。気化器は、例えば実質的に特にドーピングされたケイ素ブロックを有してよく、ケイ素ブロックは、表面に金属化層を有する。金属化層は、電線と気化器との電気的で材料結合による接触を容易にする。
【0018】
有利な一形態によれば、金属化層は、ニッケル、金及び/又はパラジウムを含有し、これにより、材料結合による接続部のために、導電性で公知の方法により効果的に処理されるべき気化器の表面を用意できる。
【0019】
好適には、気化器と金属化層との間に、プライマ、例えばアルミニウムから成るシード層が配置されていて、シード層上に、有利には無電解析出された金属化層が取り付けられている。
【0020】
有利には、気化器と電線との間の電気的な接続部は、5mΩから20mΩの電気抵抗を有し、これにより、熱への電気エネルギの所望されない変換が、気化のために生成される熱と比べて僅かに維持され、同時に、気化器に十分な電気エネルギを供給できる。
【0021】
好適には、材料結合による接続部が、少なくとも部分的に第1の焼結材料によって形成されていて、これにより、接続部を精密で効果的に作製できる。材料結合による接続部の焼結によって、気化器を支持体上に位置決めするときに大幅に時間の節約が得られる。この形態では、気化器の各接点を個別に電気的に接続(ボンディング)しなくてよい。機械的に安定した導電性の接続を、炉内での焼結によって、複数の気化器に対して同時に並行して実施できる。
【0022】
好適には、電線が、少なくとも部分的に第2の焼結材料によって形成されていて、これにより、電線を精密に配置して効果的に作製できる。
【0023】
有利な一形態によれば、気化器と電線との間の材料結合による接続部が、特に非導電性の接着剤を有し、これにより、気化器と電線との間の材料結合による接続部を作製できる。この場合、電線と気化器との間の電気的な接続部は、材料結合による接続部に関係なく形成できる及び/又は配置できる。特に、電気的な接続部は、材料結合による接続部よりも小さな領域に配置でき、これにより、気化器を的確に加熱する及び/又は気化器に電気的に接触できる。同時に、気化器は、面状に支持体に接続できる。
【0024】
好適には、気化器及び/又は接触領域が、ろう接凸部を有し、これにより、気化器と電線との間の、精密に局在化され効果的に構成される電気的な接続部を作製できる。特に、ろう接凸部は、有利な電気的な接触及び処理のために、金製の凸部であってよい。
【0025】
有利には、電線は、気化器の熱膨張係数の10%未満異なる熱膨張係数を有し、これにより、気化器装置の耐用期間が改善される。というのも、気化器が、動作時に300℃までの温度に加熱され、その耐用期間において約200回から2000回、周辺環境温度と気化器の動作温度との間の熱負荷変動にさらされるからである。熱膨張係数の10%未満の低い差は、電線と気化器との間の材料結合による接続部の領域に低い機械負荷しかもたらさず、したがって、接続部に臨界的な程度までは機械的な負荷が掛からない。
【0026】
本発明によれば、吸入器用の消費ユニットは、前述の気化器装置と液体リザーバとを備え、気化器装置は、液体導通式に液体リザーバに接続されている、吸入器用の消費ユニットを含む。気化器の入口側は、例えばウィック構造体を介して、液体導通式に液体リザーバに接続されている。本発明による吸入器は、消費ユニットとベースユニットとを有する。電線と気化器との間の材料結合による導電性の接続部によって、消費ユニット又は吸入器を効果的に組み立てることが可能である。
【0027】
前述の気化器装置を製造する方法は、気化器と、支持体と、少なくとも1つの電線とを用意する、ステップと、気化器の平坦な接触領域において気化器と電線とを材料結合により導電接続する、ステップとを有する。材料結合による導電性の接続部の容易として、特にウェハベースで任意選択的に相応の金属化部を気化器に取り付けることが可能である。気化器に対する対応部材として、電線の接触領域が設けられている。
【0028】
好適には、接続は、熱圧縮法を含む。有利には、接続前に、接触領域、支持体及び/又は気化器に、所定のボンディング領域で、熱圧縮に適した焼結ペーストが塗着される。例えば孔版印刷、スクリーン印刷及び/又はパッド印刷によって、接触領域に焼結ペーストを塗着できる。
【0029】
有利には、接続は、超音波の使用を含み、これにより、電線と気化器との間の熱圧縮による熱機械的な接続のための摩擦溶接熱が促進される。
【0030】
好ましくは、接続は、焼結を含み、これにより、材料結合による接続部を簡単に用意できるよう準備できる。焼結による接続部の容易として、既にウェハベースで、適切な金属化部を気化器の接触面に取り付けることが可能である。電線自体も焼結によって作製できる。材料結合による接続部は、第1の焼結材料から形成できる、及び/又は電線は、第2の焼結材料から形成できる。接続部及び電線を1つの作業ステップで、及び/又は同一の焼結材料から作製することも可能である。有利には、接続前に、接触領域、支持体及び/又は気化器に、所定の焼結領域において、焼結に適した焼結ペーストが塗着される。電気的な接触領域と気化器との間の安定した接続部のために、接続部が、焼結ペーストの要求に応じて炉内で焼結される。有利には、焼結は、無圧であり、これにより、特に気化器に機械的な負荷が掛けられない。
【0031】
好適には、接続前に、同時に加工された複数の気化器の個別化が行われ、これにより、可能な限り効果的に複数の気化器装置を作製できる。複数の気化器を、ウェハ複合体に提供でき、この場合、ウェハ複合体は、数千の気化器を形成できる。ウェハ複合体は、例えば、ウェハソーによって個別化し、複数の分離した気化器を提供できる。そのために、それぞれ1つの気化器を、例えばピックプロセスによって、気化器を形成する複数のウェハ複合体から取り出すことができ、例えばフリップチップ実装によって、支持体の電線に材料結合により導電接続できる。
【0032】
好ましくは、接続前に、複数のろう接凸部を取り付けることが可能であり、これにより、電気的な接続部を効果的に作製できる。
【0033】
有利には、接続は、特に非導電性の接着剤による接着を含み、これにより、材料結合による接続部を効果的に作製できる。この場合、接着接続部は、選択された局所的な面に実現されてよく、一方、他の面は、意図的に非導電性の接着剤で濡らされず、つまり接着されず、電気的な接続に用いられる。
【0034】
以下、添付の図面を参照して、好ましい実施形態に基づいて本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】組み立てられた状態で気化器装置を斜視図で示す。
【
図4】組み立てられた状態で気化器装置を斜視図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、吸入器10用の気化器装置1及び支持体装置400の分解図を示す。気化器装置1は、気化器60に供給される液体50を気化する電気的な気化器60を有する(
図5及び
図6参照)。組み立てられた状態(
図2参照)では、気化器60は、支持体4によって保持されている。気化器60は、出口側64と入口側61とそれらの間に位置する液体チャネル62とを有し、
図6を参照して詳説される。
【0037】
支持体4は、セラミック基板103を有する(
図1参照)。本実施形態では、セラミック基板103は、実質的にプレート状である。例えば、セラミック基板103は、酸化ジルコニウムプレート、又はセラミック、特に低温焼成セラミックから成るプレートから形成可能である。支持体4は、平坦な接触領域131が形成された少なくとも1つの平坦な部分を有する。本実施形態では、支持体4は、セラミックである。代替的に、支持体4は、耐熱性プラスチックから形成可能であり、セラミックの気化器保持部を有してよい。
【0038】
基板103は、有利には、気化器60を形成する主な材料、例えばケイ素と同等の、特に最大で10%異なる熱膨張係数を有する。これにより、気化器60の動作中、支持体4と気化器60との間の機械応力は、僅かなままである。
【0039】
有利には、基板103は、低い熱伝導率及び/又は低い熱容量を有し、これにより、気化のために設定された熱が気化器60から導出されない及び/又は支持体4内に蓄積されない。これにより、気化器60は、支持体4及び/又は外部の構成部材から熱的に分離されている。支持体4の低い熱伝導率及び/又は熱容量によって、気化器60の、有利には低い熱慣性は損なわれない。これにより、気化器60は、時間的に精確に、特に迅速に加熱及び/又は再冷却でき、これにより、高いエアロゾル品質及びエアロゾル量の精確な調整が促進される。
【0040】
気化器60及び支持体4は、組み立てられた状態において支持体4が出口側64で気化器60に電気的に材料結合により接続されているように、配置されている。気化器60が空気流34に気化された液体を提供できるように、支持体4は、図示されていない貫通開口104を有する。貫通開口104は、気化器60の出口側64に配置されている。有利には、貫通開口104は、気化器60の、液体チャネル62(
図6参照)が設けられた面と少なくとも同じ大きさである。
【0041】
支持体4に、2つの電線105a、105bが設けられていて、電線105a、105bは、気化器60に材料結合により導電接続される(
図1参照)。電線105a、105bは、支持体4に材料結合により接続されている、又は支持体4に取り付けられている。電線105a、105bは、例えば銅を含有してよい。
【0042】
電線105a、105bは、材料結合による導電性の接続に適した接触領域131を有する。接触領域131は、例えば金、有利には、好適には5μmから50μm、さらに好適には8μから20μm、例えば10μmの金の層から形成されてよい。
【0043】
支持体4と気化器60とから成る複合体は、例えば、2つのハーフシェル108a、108bの間に配置され、ハーフシェル108a、108bは、支持体装置400として、例えば、気化器装置1とウィック構造体19とを気化器装置1に対して相対的に保持する役割を満たすので、外部の部品、例えば液体リザーバ18への気化器60の良好な液体接続部が存在する。
【0044】
ハーフシェル108a、108bは、有利には、気化に際して生じる温度で機械的にかつ化学的に安定したまま維持される高温プラスチック、例えばPEEKから形成される。
【0045】
上側のシェル108aに凹部180が設けられているので、支持体4と上側のシェル108aとの間に空気チャネル130が形成される。空気チャネル130を、吸入器10の動作時、空気流34が通流する。空気流34は、気化器60の出口側64を越えて流れる。気化器60は、空気流34に、気化された液体50を蒸気及び/又はエアロゾルとして提供する。
【0046】
下側のシェル108bには、図示されていない開口が設けられていて、開口を通って、ウィック構造体19が延在する。ウィック構造体19は、一方では気化器60の入口側61に接続されていて、他方では液体リザーバ18に液体導通式に接続されている。ウィック構造体19は、
図5及び
図6を参照して詳説される。
【0047】
電線105aを1つだけ設けて、電流を例えばハーフシェル108a、108b又はハウジング部分(図示されていない)を介して導出することも可能である。電線105a、105bの別の電気的な接触部及び/又は副空気チャネル101を、シェル108a、108bのうちの1つに設けることも可能である。支持体装置400は、一体的なシェル又は3つ以上のシェル部分から形成してもよい。
【0048】
図1から看取されるように、気化器60は、有利には、特にチップ状のフラットヒータである。気化器60は、ブロック状であり、出口側64は、組み立てられた状態で、平坦な接触領域131において、電線105a、105bに面状に接続されている。
【0049】
図2は、組み立てられた状態で気化器装置1を斜視図で示す。本実施形態では、気化器60の入口側61は、接触領域131において、電線105a、105bに面状に、材料結合により導電接続されている。これにより、気化器60は、接触領域131を介して、支持体4に、電気的にかつ機械的に接続されているとともに保持されている。
【0050】
気化器60は、互いに反対の側に位置する2つの縁部分132a、132bを具備する矩形の底面を有する。気化器60は、縁部分132a、132bのそれぞれ1つにおいて、電線105a、105bのうちの1つに接続されている。電線105a、105bは、それぞれ接触領域131から端部分205a、205bにまで延在する。端部分205a、205bにおいて、気化器装置1は、外部の部品、例えば加熱電圧源71から電気エネルギを気化器60に供給するために接触可能である。端部分205a、205bは、有利には、外部の部品の接触部にろう接するために、又は支持体4と相俟って差込式コネクタとして構成されている。
【0051】
端部分205a、205bは、有利には、気化器60に電気エネルギを供給するために、支持体4の、気化器60の上流側に位置する端部122に配置されている。気化器60の上流側に位置する端部122は、電気的な接触部を介して、外部の部品、例えば吸入器10のベース部16に機械的に及び/又は電気的に接続するように構成された端部である。電線105a、105bは、好適には、空気チャネル130に対して平行に延在する。
【0052】
電線105a、105bの間に、支持体は、貫通開口104を有する。貫通開口104は、気化器60の入口側61に配置されている。有利には、貫通開口104は、電線105aの接触領域131と電線105bの接触領域131との間に配置されている。貫通開口104を通って、ウィック構造体19が延在可能であり、これにより、気化器の入口側61に液体導通式に接触される。貫通開口104は、有利には、ウィック構造体19の形状に対応する形状を有する。
【0053】
接触領域131において、任意選択的に、電線105a、105bに複数のろう接凸部150が設けられている。ろう接凸部150は、有利には金から形成されていて、例えば熱圧縮によって、気化器60と電線105a、105bとの間の導電性の接続部を形成できる。
【0054】
電線105a、105bと気化器60との間の接続を機械的に及び/又は熱的に向上させるために、接続部は、接着剤を有してよい。接着剤は、特に非導電性であってよく、これにより、導電性の接続部が損なわれない。有利には、接着剤は、低い熱伝導率を有し、これにより、気化器60から支持体4への入熱が低減される。
【0055】
図1及び
図2に示された気化器装置1を作製するために、電線105a、105bを有する支持体4及び気化器60が用意される。
【0056】
気化器60は、ウェハ複合体に存在してよい。ウェハ複合体から、複数の気化器60が作製される。複数の気化器60は、例えば様々なエッチング方法及び被覆方法によって、特にウェハ複合体が液体チャネル62の作製によって構造化されることによって作製される。
【0057】
気化器60には、電線105a、105bとの接続部を用意するために、金属化層133が設けられてよい。金属化層133は、直接、気化器60に又はプライマ、例えばアルミニウムから成るシード層に取り付けることが可能である。金属化層133は、無電解析出されたニッケル、金及び/又はパラジウム、又はそれらの材料組織から成ってよい。これは、プロセスを並行して行うために、複数の気化器60に対して、例えばウェハ複合体に同時に生じ得る。
【0058】
任意選択的に、ろう接凸部150は、気化器60の表面若しくは気化器60の金属化層133に、及び/又は電線105a、105b若しくは有利には接触領域131におけるセラミックの支持体4の表面に取り付けることが可能である。有利には、そのために、接触領域131において、電線105a、105bにそれぞれ金の層が取り付けられる。その上に、ろう接凸部150を配置できる。
【0059】
代替的に、材料結合による接続部に適した焼結ペーストが、有利にはセラミックの支持体4の電線105a、105bに、又は気化器60の所定の接触面上に印刷及び/又は塗布される。
【0060】
次いで、ウェハ複合体が個片化され、これにより、複数の気化器60が用意される。個別化された気化器60は、例えば、ピックプロセスによってウェハ複合体から取り出される。フリップチップ実装によって、気化器60は、熱圧縮法により有利にはセラミックの支持体4の電線105a、105bに接合される。熱圧縮法は、摩擦圧接熱の導入によって超音波を使用することによって改善できる。任意選択的に、気化器60と支持体4とから成る複合体は、非導電性の接着剤によって機械的に安定化できる。
【0061】
この場合、複数の支持体4が、1つの支持体複合体に存在してよく、支持体複合体上には、複数の気化器60が配置され、取り付けられる。これにより、支持体複合体に存在する支持体4が気化器60に装着されかつ接続された後で、形成された気化器装置1を個別化できる。
【0062】
次いで、気化器装置1又は気化器60と支持体4とから成る複合体が、2つのハーフシェル108a、108bの間に位置決めされる。次いで、支持体構造体400を、気化器インサート100、消費ユニット17及び/又は吸入器10内に組付け可能である。
【0063】
図1及び
図2では、気化器60と支持体4とから成る、材料結合による導電性の複合体が、ろう接凸部150を用いて、熱圧縮法によって作製されている。
【0064】
図3及び
図4は、
図1及び
図2に示された、焼結材料151、152を用いた、ろう接凸部150による接続部に対する代替例を示す。
図3及び
図4では、
図1及び
図2との相違点について説明される。
【0065】
図3は、気化器装置1及び支持体装置400の分解図を示し、そこでは、気化器60上に、第1の焼結材料151が設けられていて、これにより、電線105a、105bとの材料結合による導電性の接続部が生成される。
図4は、気化器装置1の斜視図を示す。
【0066】
支持体4上の電線105a、105bの接触領域131及び/又は気化器60の表面上の接触領域は、例えば金の層による特に無圧の焼結のために構成されている。
【0067】
電線105a、105bは、第2の焼結材料152から成る。第2の焼結材料152は、セラミック基板103又は支持体4上に塗布され、焼結後に電線105a、105bを形成する。焼結によって、第2の焼結材料152、ひいては電線105a、105bは、支持体4に材料結合により接続される。
【0068】
第1の焼結材料151は、第2の焼結材料152と同一の材料から成ることも考えられる。この場合、単一の焼結プロセスで、材料結合により支持体4に接続された電線105a、105bと、同時に気化器60と電線105a、105bとの間の接続部とを作製できる。
【0069】
代替的に、既に設けられた電線105a、105bを有する支持体4を用意し、気化器60と電線105a、105bとの間の材料結合による接続部のみを第2の焼結材料152から形成してもよい。
【0070】
第1の焼結材料151との接続部を作製するのに、ろう接凸部の取付けは不要である。そのために、有利には、焼結に適した焼結ペーストが、有利にはセラミックの支持体4の電線105a、105b上に印刷される又は塗布される。気化器60が個別化された後で、気化器60は、電線105a、105b上の第1の焼結材料151上に位置決めされる。
【0071】
代替的に、第1の焼結材料151は、気化器60の所定の接触面上に印刷できる及び/又は塗布できる。気化器60が個別化された後で、気化器60は、電線105a、105b上に位置決めされる。
【0072】
電気的な接触領域131と気化器60との間の安定した接続のために、支持体4と気化器60とから成る複合体に、炉内で、第1の焼結材料151と、任意選択的には電線105a、105b用の第2の焼結材料152とが焼結される。
【0073】
図1及び
図2並びに
図3及び
図4に示された実施例は、気化器60から支持体4への僅かな熱伝導と同時に、気化器60の電気的な接触を可能にする。気化器60と電線105a、105bとの間の電気的な接続部は、5mΩから20mΩの電気抵抗を有する。電気的な接続部、つまりろう接凸部150及び/又は第1の焼結材料151の横断面及び/又は長さ若しくは厚さの適合によって、気化器60からの熱伝導と、電線105a、105bと気化器60との間の電気的な抵抗とから生じる、支持体4に導入される熱は、最小限に抑えられる。
【0074】
図5は、吸入器10又は電子タバコ製品を概略的に示す。吸入器10は、ハウジング11を有する。ハウジング11には、少なくとも1つの空気入口開口231と、吸入器10の吸い口端部32における空気出口開口24との間の空気流チャネル30が設けられている。この場合、吸入器10の吸い口端部32は、端部を意味し、端部において、消費者が吸入を目的として吸い込み、これにより吸入器10に負圧を加え、空気流チャネル30内に空気流34を生成する。
【0075】
吸入器10は、有利には、ベース部16と、消費ユニット17又は気化器タンクユニットとから成る。消費ユニット17又は気化器タンクユニットは、気化器装置1と液体リザーバ18とを有し、特に交換可能なカートリッジの形態で構成されている。空気入口開口231を通って吸い込まれた空気は、空気流チャネル30内で、少なくとも1つの気化器装置1へ又は気化器装置1を通って導かれる。気化器装置1は、液体リザーバ18に接続されている又は接続可能であり、液体リザーバ18内には、少なくとも1種の液体50が貯蔵されている。
【0076】
気化器装置1は、液体50を気化する。液体50は、毛管力によって、有利にはウィック又はウィック構造体19によって液体リザーバ18から気化器装置1に供給され、気化された液体を、エアロゾル/蒸気として、出口側64で空気流34に提供する。
【0077】
気化器60の入口側61に、有利には、
図5に略示されているように、多孔質の及び/又は毛管の液体導通性のウィック構造体19が配置されている。液体リザーバ18とウィック構造体19との間に、液体インタフェース及び/又は複数の液体路が設けられてよい。したがって、液体リザーバ18は、ウィック構造体19から距離を置いて配置されてもよい。ウィック構造体19は、気化器60の入口側61に、有利には面状に接触し、入口側で気化器60の全ての液体チャネル62を覆う。気化器60とは反対の側では、ウィック構造体は、液体導通式に液体リザーバ18に接続されている。液体リザーバ18は、その寸法で、ウィック構造体19よりも大きくてよい。ウィック構造体19は、例えば、液体リザーバ18のハウジングの開口に挿入可能である。複数の気化器装置1を1つの液体リザーバ18に対応付けてもよい。ウィック構造体19は、一般に、ワンピース又はマルチピースであってよい。
【0078】
ウィック構造体19は、多孔質の及び/又は毛管の材料から成り、この材料は、毛管力に基づいて、気化器60によって気化される十分な量の液体を液体リザーバ18から気化器60へ受動的に補充し、これにより、液体チャネル62の空動作及びそれに起因する問題が防止される。
【0079】
ウィック構造体19は、有利には、非導電性の材料から成り、これにより、電流によるウィック構造体19内の液体の所望されない加温が回避される。ウィック構造体19は、有利には、低い熱伝導率を有する。ウィック構造体19は、有利には、綿、セルロース、アセテート、ガラス繊維織物、ガラス繊維セラミック、焼結セラミック、セラミック紙、アルミノシリケート紙、金属フォーム、金属スポンジ、適切な供給量を有する他の耐熱性の、多孔質の及び/又は毛管の材料のうちの1種又は複数の種類の材料、又は前述の材料のうちの2種以上の材料の複合体から成る。有利で実用的な実施形態では、ウィック構造体19は、少なくとも1種のセラミック繊維紙及び/又は多孔質セラミックを含有してよい。ウィック構造体19の体積は、好適には1mm3から10mm3の範囲、さらに好適には2mm3から8mm3の範囲、その上さらに好適には3mm3から7mm3の範囲にあり、例えば5mm3である。
【0080】
ウィック構造体19が導電性の及び/又は熱伝導性の材料から成るとき、ウィック構造体19と気化器60との間に、有利には、絶縁層が設けられていて、絶縁層は、電気絶縁性の及び/又は熱絶縁性の材料、例えばガラス、セラミック又はプラスチックから成り、絶縁層には、絶縁層を通って延在する、液体チャネル62に対応する開口が設けられている。
【0081】
液体リザーバ18の有利な容積は、0.1mlから5ml、好適には0.5mlから3ml、さらに好適には0.7mlから2mlの範囲にある、又は1.5mlである。
【0082】
電子タバコ10は、電気的なエネルギ蓄積器14と電子式の制御装置15とをさらに有する。エネルギ蓄積器14は、通常、ベース部16に配置されていて、特に電気化学的な使い捨て電池又は再充電可能な電気化学蓄電池、例えばリチウムイオン電池であってよい。消費ユニット17は、エネルギ蓄積器14と吸い口端部32との間に配置されている。電子式の制御装置15は、ベース部16(
図5に示されているように)及び/又は消費ユニット17又は気化器インサート100に、少なくとも1つのデジタルデータ処理装置、特にマイクロプロセッサ及び/又はマイクロコントローラを有する。
【0083】
ハウジング11内に、有利には、センサ、例えば、圧力センサ又は圧力スイッチ又は流量スイッチが配置されていて、この場合、制御装置15は、センサから出力されるセンサ信号に基づいて、消費者が吸入するために吸入器10の吸い口端部32で吸い込むことを確定できる。この場合、制御装置15は、気化器装置1を制御し、これにより、液体リザーバ18から液体50がエアロゾル/蒸気として空気流34に提供される。
【0084】
気化器装置1又は少なくとも1つの気化器60は、消費ユニット17の、吸い口端部32から離反する側の部分に配置されている。これにより、気化器装置1の効果的で電気的な連結及び制御が可能である。空気流34は、有利には、軸方向で液体リザーバ18を通る空気流チャネル30を通って、空気出口開口24に通じる。
【0085】
液体リザーバ18に貯蔵された、調量されるべき液体50は、例えば、1、2―プロピレングリコール、グリセリン、水、少なくとも1つのアロマ(フレーバ)及び/又は少なくとも1つの作用物質、特にニコチンから成る混合物である。しかし、液体50の前述の成分は、必須ではない。特に、アロマ及び/又は作用物質、特にニコチンを省略できる。
【0086】
消費ユニット若しくはカートリッジ17又はベース部16は、有利には、消費ユニット若しくはカートリッジ17に関する情報又はパラメータを保存するための不揮発性データメモリを有する。データメモリは、電子式の制御装置15の一部であってよい。データメモリには、有利には、液体リザーバ18内に貯蔵された液体の組成についての情報、プロセス経過、特に出力制御/温度制御についての情報、状態監視又はシステムチェック、例えば漏れチェックについてのデータ、コピー防止及び偽造防止に関するデータ、消費ユニット又はカートリッジ17の明確な識別のためのID、シリアル番号、製造日及び/又は有効期限、及び/又はパフ数(消費者による吸入パフの数)又は使用時間が保存されている。データメモリは、有利には、制御装置15に電気的に接続されている又は接続可能である。
【0087】
吸入器10及び/又は外部メモリ(外部メモリは、適切にかつ公知の形で少なくとも一時的に通信技術的に吸入器10に接続できる)には、特に喫煙挙動に関するユーザ関連のデータも保存でき、好適には、吸入器の閉ループ制御及び開ループの制御にも利用できる。
【0088】
気化器インサート100が、液体リザーバ18内に挿入するために設けられている。そのために、液体リザーバは、少なくとも1つの挿入開口を有し、挿入開口には、気化器インサート100を挿入でき、特に押込み可能である。気化器インサート100は、支持体装置400と支持体4と気化器60と収容する基部83を有する。基部83は、周面31を有し、周面31は、空気流34が通流可能な空気流チャネル30を包囲する。
【0089】
基部83は、液密であって、液体50を気化器インサート100の内室に進入させず、これにより、空気流チャネル30及び/又は消費ユニット17からの液体50の所望されない流出が阻止される。気化器インサート100の封止部は、液体50がウィック構造体19を通り、これに続いて気化器60を通る経路をとることしかできず、気化された状態で空気流34に提供されるように構成されている。
【0090】
支持体装置400によって気化器60の領域に形成された空気チャネル130は、気化器60の下流側で空気流チャネル30に移行する。空気チャネル130は、支持体装置400によって形成された、空気流チャネル130の流れ部分と解してよい。
【0091】
気化器60の下流側で空気チャネル130及び/又は空気流チャネル130に通じる付加的なチャネル、特に少なくとも1つの副空気チャネル101は、ガスエアロゾル混合物と副空気流102の新鮮空気との混合をもたらすこと、及び/又は後処理及び/又は再凝縮のプロセスを制御することができる。
【0092】
図6による気化器装置1は、好適には導電性の材料、特に半導体材料、好適にはケイ素から成る、ブロック状の、好適にはモノリシック加熱体又は気化器60を有し、気化器60と液体リザーバ18との液体導通式の接続部のための貫通開口104を具備する支持体4をさらに有する。そのために、有利には、貫通開口104内にウィック構造体19が配置されている。
【0093】
気化器60全体が導電性の材料から成る必要はない。例えば、気化器60の表面が導電性である、例えば金属である、被覆されている又は好適には適切にドーピングされていると十分であり得る。この場合、表面全体が被覆されなくてよく、例えば、不導体又は半導体の基体上に、金属の又は好適には非金属の又は非金属に被覆された金属の導体路を設けてよい。気化器60全体を加熱することも必須ではなく、例えば、気化器60の一部又は加熱層が出口側64の領域で加熱されれば十分であり得る。
【0094】
有利には、気化器60は、少なくとも、電気的な接触のために設けられた接触面上に金属化層133を有する。
【0095】
気化器60には、複数の微細チャネル又は液体チャネル62が設けられている。微細チャネル又は液体チャネル62は、気化器60の入口側61を気化器60の出口側64に液体導通式に接続する。入口側61は、
図6には示されていないウィック構造体19を介して液体導通式に液体リザーバ18に接続されている。ウィック構造体19は、毛管力によって液体リザーバ18から気化器60へ液体を受動的に送るために用いられる。
【0096】
液体チャネル62の平均直径は、好適には5μmから200μmの範囲、さらに好適には30μmから150μmの範囲、その上さらに好適には50μmから100μmの範囲にある。これらの寸法に基づいて、有利には、毛管現象が生成されるので、入口側61で、液体チャネル62内に進入する液体が、液体チャネル62が液体で満たされるまで、液体チャネル62を通って上昇する。気化器60の多孔度と称されてよい、気化器60に対する液体チャネル62の体積比は、例えば10%から50%の範囲、有利には15%から40%の範囲、その上さらに有利には20%から30%の範囲にあり、例えば25%である。
【0097】
気化器60の、液体チャネル62が設けられた面の辺の長さは、例えば、0.5mmから3mm、好適には0.5mmから1mmの範囲にある。気化器60の、液体チャネル62が設けられた面の寸法は、例えば0.95mm×1.75mm、又は1.9mm×1.75mm、又は1.9mm×0.75mmであってよい。気化器60の辺の長さは、例えば0.5mmから5mmの範囲、好適には0.75mmから4mmの範囲、さらに好適には1mmから3mmの範囲にあってよい。気化器60の面(チップサイズ)は、例えば1mm×3mm、2mm×2mm又は2mm×3mmであってよい。
【0098】
気化器60の幅b(
図6参照)は、好適には1mmから5mmの範囲、さらに好適には2mmから4mmの範囲にあり、例えば3mmである。気化器60の高さh(
図6参照)は、好適には0.05mmから1mmの範囲、さらに好適には0.1mmから0.75mmの範囲、その上さらに好適には0.2mmから0.5mmの範囲にあり、例えば0.3mmである。さらに小さい気化器60を作製し、設置し、そして適切に作動させてもよい。
【0099】
液体チャネル62の数は、好適には4から1000の範囲にある。このようにして、液体チャネル62への入熱を最適化し、安定した高い気化能力及び十分に大きな蒸気流出面積を実現できる。
【0100】
液体チャネル62は、正方形、長方形、多角形、丸形、オーバル形又は他の形状のアレイの形態で配置されている。アレイは、s列とz行とを有するマトリックスの態様で構成可能であり、この場合、sは、有利には2から50の範囲にあり、さらに有利には3から30の範囲にあり、及び/又はzは、有利には2から50の範囲、さらに有利には3から30の範囲にある。このようにして、安定した高い気化能力を有する、液体チャネル62の効果的で容易に作製可能な配置を実現できる。
【0101】
液体チャネル62の横断面は、正方形、長方形、多角形、丸形、オーバル形又は他の形状であってよい、及び/又は長手方向で部分的に変化する、特に拡大する、縮小する又は一定のままであってよい。
【0102】
1つ又は各々の液体チャネル62の長さは、好適には100μmから1000μmの範囲、さらに好適には150μmから750μmの範囲、その上さらに好適には180μmから500μmの範囲にあり、例えば300μmである。このようにして、気化器60から液体チャネル62への十分に良好な入熱で、最適な液体吸収及び配分形成を実現できる。
【0103】
2つの液体チャネル62の間の距離は、好適には、液体チャネル62の内法直径の少なくとも1.3倍であり、この場合、この距離は、2つの液体チャネル62の中心軸を基準とする。この距離は、好ましくは、液体チャネル62の内法直径の1.5倍から5倍、さらに好ましくは2倍から4倍であってよい。このようにして、気化器60への最適な入熱及び液体チャネル62の十分に安定した配置及び壁厚さを実現できる。
【0104】
前述の特徴に基づいて、気化器60は、ボリュームヒータと称されてもよい。
【0105】
気化器装置1は、好適には、制御装置15によって制御可能な加熱電圧源71を有する。加熱電圧源71は、電線105a、105bを介して、接触領域131(
図6には示されていない)において、気化器60の、それぞれ反対の側の縁部分132a、132bで、気化器60に接続されているので、加熱電圧源71によって生成される電圧Uhが、気化器60を通る電流を生じさせる。導電性の気化器60のオーム抵抗に基づいて、電流によって、気化器60の加熱がもたらされ、したがって、液体チャネル62内に含まれる液体が気化される。このようにして生成された蒸気/エアロゾル6は、液体チャネル62から出口側64へ逃げ出し、空気流34と混合される。詳しくいうと、消費者の吸込みに起因する、空気チャネル30を通る空気流34が確認されると、制御装置15が、加熱電圧源71を制御し、その際、自発的な加熱によって、液体チャネル62内にある液体が、蒸気/エアロゾルの形態で、液体チャネル62から運び出される。
【0106】
電線105a、105bへの気化器60の電子的な又は電気的な接続を、
図1から
図4を参照して、説明する。
【0107】
好適には、吸入器10のデータメモリに、使用される液体混合物に適合された電圧曲線Uh(t)が格納されている。これにより、電圧経過Uh(t)を使用されるリキッドに適合させて設定することが可能となるので、気化器60の加熱温度、ひいては毛管の液体チャネル62の温度も、それぞれのリキッドの既知の気化動力学に従って気化プロセスにわたって時間的に制御でき、これにより、最適な気化結果を取得可能である。気化温度は、好適には100℃から400℃の範囲、さらに好ましくは150℃から350℃の範囲、その上さらに好ましくは190℃から290℃の範囲にある。
【0108】
気化器60は、有利には、薄膜層技術を用いて、ウェハの部分片から作製できる。ウェハは、好適には1000μm以下、さらに好適には750μm以下、その上さらに好適には500μm以下の層厚を有する。気化器60の表面は、有利には親水性であってよい。気化器60の出口側64は、有利には、微細構造化されてよい、又は微細溝(マイクログルーブ)を有してよい。
【0109】
気化器装置1は、液量が、好適には、消費者のパフあたり1μlから20μlの範囲、さらに好適には2μlから10μlの範囲、その上さらに好適には3μlから5μlの範囲、典型的には4μlの液量が配量されるように構成されている。好適には、気化器装置1は、パフあたり、つまり1秒から3秒のパフ時間あたりの液量/蒸気量に関して調整可能である。
【0110】
以下、例示的に、気化プロセスの経過を説明する。
【0111】
初期状態では、電圧源71又はエネルギ蓄積器14は、加熱プロセスにおいてスイッチオフされている。
【0112】
液体50を気化するために、気化器60用の電圧源14、71が起動される。その際、電圧Uhは、気化器60、ひいては液体チャネル62における気化温度が、使用される液体混合物の個々の気化特性に適合されるように調整される。これにより、局所的な過熱及びこれにより汚染物質生成のおそれが阻止される。
【0113】
液体チャネル62の容積に対応する又はそれに関連する量の液体が気化されていると、直ちに加熱電圧源71が停止される。リキッドの特性及び量は、有利には、正確に知られていて、気化器60は、測定可能な、温度に依存する抵抗を有するので、この時点は、極めて正確に特定又は制御できる。
【0114】
加熱プロセスの終了後に、液体チャネル62は、大体において又は完全に空になっている。この場合、加熱電圧71は、ウィック構造体19を通って液体が補充されることによって、液体チャネル62が再び充填されるまで、スイッチオフされたままである。充填されると、直ちに、加熱電圧源71をスイッチオンすることによって、次の加熱サイクルを開始できる。
【0115】
加熱電圧源71によって生成される、気化器60の制御周波数は、一般に、有利には1Hzから50kHzの範囲、好ましくは30Hzから30kHzの範囲、その上さらに有利には100Hzから25kHzの範囲にある。
【0116】
気化器60用の加熱電圧Uhの周波数及びデューティサイクルは、有利には、気泡沸騰中の気泡振動の固有振動数又は固有周波数に適合されている。したがって、有利には、加熱電圧の周期長さ1/fは、5msから50msの範囲、さらに有利には10msから40msの範囲、その上さらに有利には15msから30msの範囲にあってよく、例えば20msであってよい。気化された液体50の組成に応じて、記載の周波数以外の周波数を、気泡振動の固有振動数又は固有周波数に最適に適合されてよい。
【0117】
さらに、加熱電圧Uhによって生成される最大の加熱電流は、好適には7A以下、さらに好適には6.5A以下、その上さらに好適には6A以下であり、最適には4Aから6Aの範囲にあるべきで、これにより、過熱を回避しつつ濃縮された蒸気が保証されることが判明している。
【0118】
ウィック構造体19の供給量は、同様に最適に気化器60の気化速度に適合されているので、十分な液体50をいつでも補充でき、気化器60より手前の領域の空動作が回避される。
【0119】
気化器装置1は、好適には、MEMS技術に基づいて、特にケイ素から作製されていて、したがって、有利には微小電気機械システムである。
【0120】
有利には、前述の記載に基づいて、有利には少なくとも入口側61で平坦な、Siベースの気化器60と、有利には様々な孔径を有する1つ又は複数のその下に位置する毛管構造体19とから成る層構造が提案される。気化器60の入口側61に直接に配置されたウィック構造体19は、気化器60の入口側61での気泡の形成を阻止する。というのも、気泡がそれ以上の供給作用を妨げ、同時に、補充されるリキッドによる冷却不足に基づく気化器60の(局所的な)過熱を招くからである。
【国際調査報告】