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特表2022-520862新規組換えジアミンオキシダーゼおよび過剰ヒスタミンによって特徴づけられる疾患の治療のためのその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(54)【発明の名称】新規組換えジアミンオキシダーゼおよび過剰ヒスタミンによって特徴づけられる疾患の治療のためのその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/53 20060101AFI20220325BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20220325BHJP
   C12N 9/06 20060101ALI20220325BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220325BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20220325BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220325BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220325BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220325BHJP
   C12Q 1/26 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 27/14 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 15/06 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 38/44 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220325BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
C12N15/53
C12N15/10 200Z
C12N9/06 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/19
C12N5/10
C12Q1/26
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61P37/08
A61P17/04
A61P11/06
A61P11/02
A61P27/14
A61P25/06
A61P17/00
A61P29/00
A61P15/00
A61P15/06
A61P1/04
A61P31/04
A61K38/44
A61K47/68
A61K45/00
A61K39/395 P
A61K39/395 D
A61K31/7088
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021548232
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(85)【翻訳文提出日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2020054197
(87)【国際公開番号】W WO2020169577
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】19157932.5
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508317424
【氏名又は名称】メディツィニシェ ウニベルジテート ウィーン
(71)【出願人】
【識別番号】507205623
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート・フューア・ボーデンクルトゥーア・ウィーン
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ベーム,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ジルマ,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ボルト,ニコル
(72)【発明者】
【氏名】グルドバクツ,エリーザベト
【テーマコード(参考)】
4B050
4B063
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4B050DD11
4B050FF14E
4B050LL01
4B063QA18
4B063QQ22
4B063QR02
4B063QS39
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA91X
4C076AA12
4C076AA94
4C076BB11
4C076BB13
4C076CC05
4C076CC07
4C076CC29
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE41M
4C076EE59
4C076EE59M
4C076FF11
4C076FF31
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA06
4C084AA07
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA18
4C084CA53
4C084CA56
4C084DC23
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA12
4C084ZA081
4C084ZA082
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZA341
4C084ZA342
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA681
4C084ZA682
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB131
4C084ZB132
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZC191
4C084ZC192
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB41
4C085BB44
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG06
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA05
4C086ZA08
4C086ZA33
4C086ZA34
4C086ZA59
4C086ZA68
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB35
4C086ZC19
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、低下したグリコサミノグリカン結合親和性を有する組換えヒトジアミンオキシダーゼ(DAO)であって、前記DAOは、グリコサミノグリカン(GAG)結合ドメイン中に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む組換えヒトジアミンオキシダーゼ(DAO)に関する。本発明はさらに、過剰ヒスタミンと関連する状態の治療における、特に慢性アレルギー疾患の治療における、より特にアナフィラキシー、アナフィラキシーショック、慢性蕁麻疹、急性蕁麻疹、喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、ヒスタミン中毒、頭痛、アトピー性皮膚炎、炎症性疾患、肥満細胞症、肥満細胞活性化症候群(MCAS)、子癇前症、妊娠悪阻、早期分娩、消化性潰瘍、呑酸、掻痒症および敗血症の治療におけるDAOの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する野生型ヒトジアミンオキシダーゼ(DAO)と比べて低下したグリコサミノグリカン結合親和性を有する組換えヒトDAOであって、前記DAOが、配列番号1のナンバリングに関して、グリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインの568~575位の任意の1つのアミノ酸の少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む組換えヒトジアミンオキシダーゼ(DAO)。
【請求項2】
さらに、配列番号1のナンバリングに関してアミノ酸123位の溶媒露出システイン(cys123)の少なくとも1つの修飾を含み、特に前記システインの修飾が、アミノ酸の置換、欠失または化学的部分とのカップリングであり、より特にcys123がアラニンによって置換されている、請求項1に記載の組換えDAO。
【請求項3】
GAG結合ドメインが、ヘパリン/ヘパラン硫酸結合ドメインである、請求項1または2に記載の組換えDAO。
【請求項4】
GAG結合ドメイン中の前記少なくとも1つのアミノ酸修飾が、アミノ酸の置換、欠失、挿入または化学的部分とのカップリングである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組換えDAO。
【請求項5】
GAG結合ドメイン中に2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは8つのアミノ酸置換を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組換えDAO。
【請求項6】
アミノ酸配列X1FX2X3X4LPX5のGAG結合ドメインを含み、式中、
X1が、任意のアミノ酸であり得て、特にAまたはS、より特にSであり、
X2が、任意のアミノ酸であり得て、特にKであり、
X3が、任意のアミノ酸であり得て、特にAまたはT、より特にTであり、
X4が、任意のアミノ酸であり得て、特にKであり、
X5が、任意のアミノ酸であり得て、特にKまたはT、より特にTである、
請求項1~5のいずれか一項に記載の組換えDAO。
【請求項7】
SFKAKLPK(配列番号33)、AFKAKLPT(配列番号34)、AFKTKLPK(配列番号35)、SFKTKLPK(配列番号36)、AFKTKLPT(配列番号37)、SFKAKLPK(配列番号38)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の組換えDAO。
【請求項8】
さらに、配列番号1に関して168位でアミノ酸置換を含む、特にAsnがGlnで置換されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の組換えDAO。
【請求項9】
野生型DAOと比べて延長された血漿内半減期を有し、特に前記半減期が、野生型DAOと比べて少なくとも1.5倍、特に少なくとも2倍長い、請求項1~8のいずれか一項に記載の組換えDAO。
【請求項10】
野生型DAOと比べて少なくとも10倍に増大したAUCを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組換えDAO。
【請求項11】
内皮細胞による内在化が、野生型DAOと比べて少なくとも10%、25%、50%、60%、70%、80%、特に90%低下している、請求項1~10のいずれか一項に記載の組換えDAO。
【請求項12】
GAG結合親和性が、特にヘパリン/ヘパラン硫酸結合親和性が、野生型DAOと比べて少なくとも10%、25%、50%、60%、70%、80%、特に90%低下している、請求項1~11のいずれか一項に記載の組換えDAO。
【請求項13】
配列番号2~16のいずれか一つのアミノ酸配列を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組換えDAO。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組換えDAOとヒトIgGのFcドメインまたはヒト血清アルブミン(HSA)とを含む融合ポリペプチドであって、組換えDAOの機能活性を保持する融合ポリペプチド。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載のDAOをコードする、特に配列番号17~32のいずれか一つの配列を含む、単離されたヌクレオチド配列。
【請求項16】
請求項15に記載のヌクレオチド配列を含む組換えベクターであって、特に、細菌、酵母、バキュロウイルス、植物または哺乳類の発現ベクターである組換えベクター。
【請求項17】
調節エレメントに作動可能に連結された、請求項15に記載のヌクレオチド配列を含む発現カセット。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか一項に記載の組換えDAOを含む組換え宿主細胞または宿主細胞株であって、宿主細胞が、CHO細胞、ベロ細胞、MDCK細胞、ピキア酵母(Pichia pastoris)細胞、SF9細胞からなる群から選択される組換え宿主細胞または宿主細胞株。
【請求項19】
請求項16に記載のベクターまたは請求項17に記載の発現カセットおよび請求項18に記載の宿主細胞または宿主細胞株を含む発現系。
【請求項20】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組換えDAOの産生方法であって、
i.請求項1~13のいずれか一項に記載のDAOをコードするヌクレオチド配列を発現ベクターにクローニングする工程と、
ii.前記ベクターを用いて宿主細胞を形質転換する工程と、
iii.DAOが発現される条件下において、形質転換された宿主細胞を培養する工程と、
iv.場合により宿主細胞の破砕により、宿主細胞培養からDAOを単離する工程と、および場合により
v.DAOを精製する工程
を含む産生方法。
【請求項21】
請求項1~13のいずれか一項に記載の組換えDAOおよび場合により1つ以上の賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項22】
過剰ヒスタミンと関連する状態の治療において、特に慢性アレルギー疾患の治療、より特にアナフィラキシー、アナフィラキシーショック、慢性蕁麻疹、急性蕁麻疹、喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、ヒスタミン中毒、頭痛、アトピー性皮膚炎、炎症性疾患、肥満細胞症、肥満細胞活性化症候群(MCAS)、子癇前症、妊娠悪阻、早期分娩、消化性潰瘍、呑酸、掻痒症、または敗血症の治療に使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の組換えDAO。
【請求項23】
過剰ヒスタミンと関連する状態の治療用、特に慢性アレルギー疾患の治療用、より特にアナフィラキシー、アナフィラキシーショック、慢性蕁麻疹、急性蕁麻疹、喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、ヒスタミン中毒、頭痛、アトピー性皮膚炎、炎症性疾患、肥満細胞症、消化性潰瘍、呑酸、掻痒症、または敗血症の治療用の医薬品を製造するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の組換えDAOの使用。
【請求項24】
DAOのGAG結合ドメインに、特に、配列番号1のナンバリングに関して568~575位のアミノ酸の1つ以上に特異的に結合する標的特異的リガンド。
【請求項25】
DAOのGAG結合ドメインへの、特に、配列番号1のナンバリングに関して568~575位のアミノ酸のいずれか1つ以上へのヘパリン/ヘパラン硫酸の結合を特異的に阻害する標的特異的リガンド。
【請求項26】
前記リガンドが、核酸、小分子阻害剤または抗原結合タンパク質からなる群から選択される、請求項23または24に記載の標的特異的リガンド。
【請求項27】
前記リガンドが、特に、
- 抗体または抗体断片、例えば、Fab、Fd、scFv、ダイアボディ、トリアボディ、Fvテトラマー、ミニボディ、ナノボディ、シングルドメイン抗体、例えば、VH、VHH、IgNARまたはV-NARのいずれか、
- 抗体ミメティック、例えば、Adnectin(商標)、Affibody(登録商標)、Affilin(登録商標)、Affimer(登録商標)、アフィティン、アルファボディ、アプタマー、アンティカリン、アビマー、DARPin(登録商標)、Fynomer(登録商標)、クニッツドメインペプチド、モノボディもしくはNanoCLAMP、または
- 1つ以上の免疫グロブリンフォールドドメイン、抗体ドメインまたは抗体ミメティックを含む融合タンパク質
からなる群から選択される抗原結合タンパク質である、請求項25に記載の標的特異的リガンド。
【請求項28】
DAOのヘパリン結合を調節する化合物の同定方法であって、
(a)配列番号1のDAO配列のアミノ酸の構造座標によって定義されるGAG結合ドメインのコンピュータモデルを構築する工程と、
(b)(i)前記化合物への分子断片のアセンブリング、
(ii)小分子データベースからの化合物の選択、および
(iii)前記化合物のde novoリガンド設計
からなる群から選択される方法によって、潜在的調節化合物を選択する工程と、
(c)ヘパリン結合ドメイン中での前記化合物のエネルギー最小化配置を供給するために
、前記化合物のコンピュータモデルとGAG結合ドメインのコンピュータモデルとの間のフィッティングプログラム操作を行う計算手段を使用する工程と、
(d)前記化合物とヘパリン/ヘパラン硫酸結合ドメインとの間の会合を定量するために前記フィッティング操作の結果を評価して、前記化合物の、前記ヘパリン結合ドメインとの会合能力を評価する工程
を含む同定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリコサミノグリカン結合親和性が低下した組換えジアミンオキシダーゼ(DAO)に関し、該DAOは、グリコサミノグリカン(GAG)結合ドメイン中に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。
【0002】
本発明は、さらに、過剰ヒスタミンと関連する状態の治療、特に、慢性アレルギー性疾患の治療および/またはハイリスク妊娠の治療、より特に、アナフィラキシー、アナフィラキシーショック、慢性蕁麻疹、急性蕁麻疹、喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、ヒスタミン中毒、頭痛、アトピー性皮膚炎、炎症性疾患、肥満細胞症、肥満細胞活性化症候群(MCAS)、子癇前症、妊娠悪阻、早期分娩、消化性潰瘍、呑酸、掻痒症および敗血症の治療におけるDAOの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒスタミン(2-(1H-イミダゾール-4-イル)エタンアミン)は、局所免疫応答に関与する有機窒素化合物であり、消化器官の生理機能を調節し、かつ脳、脊髄および子宮に対する神経伝達物質として作用する。ヒスタミンは、炎症反応に関与し、かゆみの伝達物質として中心的な役割を有する。異種病原体に対する免疫応答の一部として、ヒスタミンは、好塩基球および隣接(nearby)結合組織に見出される肥満細胞によって産生される。ヒスタミンは、肥満細胞および好塩基性白血球の異染顆粒内に不活性型で貯蔵され、即時放出に利用できる。ヒスタミンはさらに、炎症の最中、好中球およびマクロファージによって新たに合成され得る。その放出後、ヒスタミンは、体内の多数の異なる細胞上で発現される4つの受容体(H~H)に結合する、強力な生理学的および病理学的な伝達物質である。その受容体へのヒスタミンの結合は、非常に特異的である。結合後、多数の下流活性が誘導される。急性アレルギー反応、例えば、花粉症、鼻水、目のかゆみ、またはより重症の例では呼吸困難を伴う喘息、例えば、特に抗生物質または造影剤の投与、落花生またはハチアレルギー等により引き起こされる急性・慢性蕁麻疹およびアナフィラキシーとも呼ばれる過敏症反応は、いくつかの伝達物質を放出する組織肥満細胞および血中好塩基球により仲介され、そのうち、ヒスタミンは、最も高活性な伝達物質の1つである。ヒスタミンが誘導する症状は、数ある症状の中でも、アナフィラキシー、血圧の低下を伴う過敏症反応、失神および呼吸困難、中でも、気管支痙攣、潮紅(皮膚の発赤)、掻痒症(かゆみ)、頻脈(高い脈拍数)、卒倒(失神)、低血圧症(低い血圧)、心窩部痛、腹痛、吐き気、嘔吐、下痢、疲労、記憶喪失、憂鬱、頭痛を含む。血中の過剰ヒスタミン(>10ng/ml、症状は1~3ng/mlで始まる)は、生命を脅かす。約100ng/mlの血中ヒスタミン濃度は、心停止をもたらし得る。特に妊娠中、高ヒスタミン血症は、特定の妊娠合併症、例えば、子癇前症、自然流産、早期分娩、妊娠悪阻をもたらし得る(Brew O.とSullivan M.H.F.,J.Reprod.Immunol.,72(2006),p.94-107、Maintz L.等,Human Reproduction Update,14,5,2008,p.485-495)。
【0004】
肥満細胞および好塩基球は、多数の異なる機能を有する免疫系細胞である。それにもかかわらず、肥満細胞およびヒスタミンは、数ある疾患の中でも、肥満細胞活性化症候群(MCAS)(すなわち赤ワインまたはチーズまたはその他の食品中のヒスタミン耐容不能性であり、文献中ではしばしばヒスタミン不耐性と記載される)、アトピー性皮膚炎(神経皮膚炎とも呼ばれる皮膚疾患)、肥満細胞症(皮膚および/または骨髄、肝臓または脾臓といった内臓における肥満細胞数の増加)、消化性潰瘍(過剰ヒスタミンに続く酸放出による胃または十二指腸の粘膜の損傷)、呑酸、頭痛、掻痒症、ことによるとさらに敗血症のような多数の疾患において重要な役割を果たす。ヒスタミンはさらに、ある種の疾患条件下に、例えば好中球およびマクロファージ中で誘導されるヒスチジンデカルボキシラーゼによって新たに合成され得る。
【0005】
さらに、ヒスタミンは、吸入または経口により、例えば、ヒスタミン含有食品、例えばチーズ、ワイン、缶詰め魚およびザウアークラウトの摂取により、外部から体内に入ることも可能である。ヒスタミンは、さらに、細菌叢の細菌によって産生され得る。
【0006】
ヒスタミン受容体HおよびHの活性に対抗する抗ヒスタミン剤が、数十年にわたり入手可能であり、鼻水ならびに皮膚および目のかゆみのような症状の治療に有効であると想定される。抗ヒスタミン剤は、世界的に最も頻繁に処方される薬剤の1つである。それにもかかわらず、徹底的なデータ分析により、いくつかの病態においては抗ヒスタミン剤の効き目が限定的であることが明らかに示された。例えば、慢性蕁麻疹患者の約25%は、抗ヒスタミン剤耐性であり、生活の質の低さに苦しむ。抗ヒスタミン剤による過敏症反応の治療は、広範囲にわたって実践されるが、効き目の高品質のデータが欠けており、かついくつかの文書では効き目の欠落が報告されている。アナフィラキシーガイドラインは、治療のためのヒスタミンH受容体遮断薬の使用を必ずしも推奨しない。これは、利益の証拠が明確ではないからである。アナフィラキシーにおけるヒスタミンH受容体拮抗薬の使用は避けるように推奨される。これは、症状を悪化させ得るためである。
【0007】
抗ヒスタミン剤の限定的な効き目は驚くことではない。いくつかの研究は、抗ヒスタミン剤は、2~3倍上昇したヒスタミン濃度の効果を遮断できるのみで、ヒスタミン濃度がそれを上回る場合は有効性がはるかに低いことを示した。アナフィラキシーまたは過敏症反応の最中、循環中のヒスタミン濃度は、正常者の100倍超に上昇し得て、肥満細胞症患者ではそれをさらに超え得る。肥満細胞症患者は、定常状態、非アナフィラキシー状態において継続的に、ヒスタミンおよびその代謝物の5~15倍上昇したレベルを有する。身体が、過剰ヒスタミンを十分に速く分解できないため、様々な症状の発生は必然の結果である。
【0008】
哺乳動物では、ヒスタミンは、2つの酵素、つまりジアミンオキシダーゼ(diamine oxidase、DAO、EC1.4.3.6)およびヒスタミン-N-メチルトランスフェラーゼ(HNMTまたは短くNMT、EC2.1.1.8)によって分解される。NMTは、N-メチルヒスタミンへのN-メチル化を触媒する。
【0009】
ヒトDAOの構造および阻害は、McGrath AP等(Biochemistry,2009,48(41),p.9810-9822)に概説される。DAOは、ヒスタミンからイミダゾールアセトアルデヒドへの酸化的脱アミノ化を触媒する。DAOは、肺および肝臓の細砕試料から外因性ヒスタミンを除去する酵素として最初に同定されたため、ヒスタミナーゼと命名された(Best CH.,J.Physiol.,1929,67,p.256-263)。続いて、ジアミンオキシダーゼと同定されたタンパク質が、アミロライド結合タンパク質と命名され、誤ったことにアミロライド感受性Naチャネルと関係づけられた。いくつかのデータベースは、なおもAOC1をABP1と呼ぶ。DAOとABP1とは、実際、同一タンパク質であることが、後に、751アミノ酸残基のタンパク質に相当するヒト遺伝子のクローニングも報告した原著者等(Novotny WF等,J.Biol.Chem.,1994,269,p.9921-9925)によって言及された。組換えヒトDAO(hDAO)の過剰発現は、昆虫細胞で達成された(Elmore BO.等,J.Biol.Inorg.Chem.,2002,7,p.565-579)。Elmore等によってさらに、DAOはヘパリン結合コンセンサス配列(残基568~575)を含有することが報告されたが、その構造からは、該ヘパリン結合ドメインが実際にヘパリンに結合するという推論は得られなかった。12merのヘパリン分子は、約5nm(50Å)長であり、DAO中の環状ヘパリン結合ドメインの直径は約25Åである。ヘパリン12merの分子量=284x12=3408Daである。LMWHは、DAOに強く結合はしないが、5000Da(18糖単位)の平均分子量を有する。HMWHのみがDAOに結合し、15000Daの平均分子量を有するが、それは、15000/284=52糖単位(一列)に相当する。
【0010】
大量の組換えhDAOの入手可能になったことにより、それが好む基質のin vitroでの同定が可能になり、ジアミンに対する明確な選好性が示された。特に、2つの異型ジアミン、ヒスタミンおよび1-メチルヒスタミンが優れた基質である。それぞれ、スペルミジン、プトレシンまたはカダべリンのような典型ジアミン基質中に存在する一級アミンのうちの1つの代わりにイミダゾール基を含有する。hDAOは、外因性ヒスタミンを分解するための最前線の酵素であり、DAOのレベルの低下は、ヒスタミン不耐性と直接に相関があることが示された(Maintz L.等,Am.J.Clin.Nutr.,2007,85,p.1185-1196)。DAO活性の低下は、妊娠の多発性異種合併症、例えば、糖尿病、切迫流産、稽留流産および絨毛性疾患において見出された(Maintz L.,等,2008)。
【0011】
血中での濃度上昇を回避しかつ身体を守るために、胃腸管において、DAOは、食事に由来するヒスタミンを分解する。それにもかかわらず、妊娠中を除き、DAO抗原、したがって活性は、血漿中で低いか、不在でさえある(Boehm T.等,Clinical Biochemistry 50,2017,p.444-451)。妊娠中、DAO活性は100倍超に上昇する。
【0012】
国際公開第02/43745号には、ヒスタミン介在性疾患を治療するための植物起源のDAOの全身性使用が開示されている。しかしながら、植物から直接に単離された酵素の投与は、主として、国際公開第02/43745号に開示されているマメ科植物は高いアレルゲン潜在性を有するという事実を考慮すると、アレルゲンは植物中で頻繁に見られるので、大きな問題である。
【0013】
国際公開第2006/003213号は、動物由来または組換え的に産生されたDAOの特定の投与剤形を記載する。
組換え野生型(wt)ヒト(rh)DAOのCHO細胞中での発現および精製が、Gludovacz E.等によって発表された(J Biotechnol.2016,227:p.120-130)。それでも、ラット中でのwt rhDAOのα相(分布相)半減期は、10分未満であり、かつ注入タンパク質量の80%超を含んだ。β相(消失相)半減期は、約3時間であった。ラットからヒトへと外挿法で推定するための生物製剤用換算係数(scaling factor)は約4~8であるため、組換えwtDAOのPK(薬物動態)プロファイルは、前臨床開発および臨床開発のためには適切でない。DAOの3つのグリコシル化部位を変異させたが、グリカン変異は、PKプロファイルを改善させなかった。グリカン変異がDAOの発現および活性に及ぼす効果は、Gludovacz E.等によって発表された(J.Biol.Chem.2018,293(3),p.1070-1087)。
【0014】
DATABASE UniProt Accession番号G3QJ02、2011、XP-002792064は、ニシゴリラ(Gorilla gorilla)由来のジアミンオキシダーゼ配列を開示する。
【0015】
DATABASE UniProt Accession番号Q9SXW5、2000は、エンドウ(Pisum sativum)由来のジアミンオキシダーゼ配列を開示する。
【0016】
国際公開第2012/028891号は、野菜由来のヒスタミナーゼを報告する。放出されたヒスタミンは、抗ヒスタミン剤により効果的に遮断または不活性化され得ないため、過剰ヒスタミンを素早く不活性化するための新規の治療法および予防法が、高い循環ヒスタミン濃度に苦しむ患者にとって著しく有益であろう。多数の患者が、上昇したヒスタミン濃度に何時間も苦しむ。それどころか、ヒスタミンの半減期は、アナフィラキシーおよび低血圧症の最中、腎臓のろ過および血流の低下ゆえに上昇している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、過剰ヒスタミンに関連する状態の改善された治療に対する高いかつ満たされていない需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
病態時、過剰ヒスタミンは、現在利用できる抗ヒスタミン剤により効果的に拮抗され得ない。ヒスタミンレベルの上昇は、煩わしい、重度の、衰弱させる、生命を脅かす症状を引き起こし、時に死を招く。
【0019】
本発明の目的は、過剰ヒスタミンの除去ならびにヒスタミン誘発性の疾患および状態の治療および予防に関する改善された投薬計画を提供することである。
この目的は、本発明により、個々の身体内での活性DAOの濃度を高めることで個々にヒスタミンの分解を援助するまたは可能にする組換え修飾DAOを供給することにより解決される。
【0020】
本明細書に記載される組換えヒトDAOの投与は、急性、亜急性、亜慢性、慢性および予防の状態において過剰ヒスタミンを分解可能にし、それによって、過剰ヒスタミン濃度を分解するために抗ヒスタミン剤が十分には有効でないいくつかの疾患に苦しんでいるまたは苦しむことになる患者に著しく有益である。それは、過剰ヒスタミンに苦しむ患者を対象としたまったく新しい治療選択を確立する。
【0021】
本発明によると、対応する野生型ヒトジアミンオキシダーゼ(DAO)のグリコサミノグリカン(GAG)結合親和性と比べて低下したGAG結合親和性を有する組換えヒトDAOが提供され、前記DAOは、グリコサミノグリカン(GAG)結合ドメイン中に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、特に、GAG結合ドメインが、配列番号1のナンバリングに関して568~575位のアミノ酸を含む。
【0022】
特に、GAG結合ドメインが、ヘパリン/ヘパラン硫酸結合ドメインである。
特に、該アミノ酸修飾は、DAOのGAG結合親和性の低下をもたらすが、ヒスタミンに対するその酵素活性は維持される。
【0023】
特定の一実施形態によると、DAOのGAG結合ドメイン中の該少なくとも1つのアミノ酸修飾が、アミノ酸の置換、欠失、挿入または化学的部分とのカップリングである。
本発明の特定の一実施形態によると、本発明の組換えDAOは、GAG結合ドメイン中に2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは8つのアミノ酸修飾を含む。特に、前記アミノ酸残基が、別のアミノ酸残基によって置換されている、特にアルギニンまたはリジンが、セリンまたはトレオニンによって置換されている。
【0024】
代替の一実施形態によると、組換えDAOが、アミノ酸配列X1FX2X3X4LPX5のGAG結合ドメインを含み、式中、
X1は、任意のアミノ酸であり得て、特にAまたはS、より特にSであり、
X2は、任意のアミノ酸であり得て、特にKであり、
X3は、任意のアミノ酸であり得て、特にAまたはT、より特にTであり、
X4は、任意のアミノ酸であり得て、特にKであり、
X5は、任意のアミノ酸であり得て、特にKまたはT、より特にTである。
【0025】
特定のさらなる一実施形態では、組換えDAOが、SFKAKLPK(配列番号33)、AFKAKLPT(配列番号34)、AFKTKLPK(配列番号35)、SFKTKLPK(配列番号36)、AFKTKLPT(配列番号37)、SFKAKLPK(配列番号38)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0026】
特定の一実施形態によると、本明細書に開示される組換えDAOは、さらに、配列番号1のナンバリングに関してアミノ酸123位の溶媒露出システイン(cys123)の少なくとも1つの修飾を含み、特に該システインの修飾が、アミノ酸の置換、欠失または化学的部分との結合である。
【0027】
好ましい一実施形態では、DAOの配列番号1のナンバリングによるcys123が、アラニンによって置換されている(cys123ala、C123A)。
本発明のDAOは、特に、血漿クリアランスの低下を示す。本発明は、特に、野生型DAOと比べて著しく延長された血漿内半減期を有する組換えDAOを提供し、特に前記半減期は、野生型DAOと比べて少なくとも1.5倍、特に少なくとも2倍長い。
【0028】
代替のまたはさらなる一実施形態では、DAOが、野生型DAOと比べて少なくとも10倍に増大したAUCを有する。
本明細書で提供される一実施形態によると、内皮細胞による組換えDAOの内在化が、野生型DAOと比べて少なくとも10%、25%、50%、60%、70%、80%、特に90%低下している。
【0029】
さらなる一実施形態によると、本明細書に記載されるDAOのGAG結合親和性、特にヘパリン/ヘパラン硫酸結合親和性が、野生型DAOと比べて少なくとも10%、25%、50%、60%、70%、80%、特に90%低下している。
【0030】
本明細書では、さらに、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15もしくは16のアミノ酸配列を含む、または配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15もしくは16のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する組換えDAOまたはその機能性の誘導体もしくは類似体が提供される。
【0031】
ヒトDAOはさらに、分泌および小胞体での残留に関与する多重N-グリコシル化部位を有する。特に、Asn-168のグリカンは、主に、二分岐型から四分岐型にシアル化される。
【0032】
一実施形態によると、本明細書に記載される組換えDAOはさらに、1つの修飾、特に配列番号1に関して168位でアミノ酸置換を含む。特に、該修飾が、168位での単一修飾である。より特に、AsnをGlnで置換する。特に、前記修飾は、本明細書に記載されるDAOのPKを改善(increase)する。より特に、DAOは、配列番号106のアミノ酸配列を含む。
【0033】
本明細書では、さらに、配列番号17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31もしくは32のいずれか1つによってコードされる、または配列番号17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31もしくは32のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する組換えDAOまたはその機能性の誘導体もしくは類似体が提供される。
【0034】
本明細書では、さらに、本明細書に記載されるDAOまたはその機能性の類似体もしくは誘導体をコードする、特に配列番号17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31もしくは32の配列またはその断片を含む、単離されたヌクレオチド配列が提供される。
【0035】
本発明の特定の一実施形態によると、本明細書に記載される組換えDAOとヒトIgGのFcドメインまたはヒト血清アルブミン(HSA)またはその断片とを含む融合ポリペプチドが本明細書で提供され、該融合ポリペプチドは、組換えDAOの機能活性を保持する。
【0036】
本明細書では、さらに、本明細書に記載される組換えDAOとヒトIgGのFcドメインとを含む、配列番号56~70のいずれか1つの配列を含むまたは配列番号56~70のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する融合ポリペプチドが提供される。
【0037】
本明細書では、さらに、本明細書に記載される組換えDAOとヒトIgGのFcドメインとを、またはその機能性の誘導体もしくは類似体を含む、配列番号72~102のいずれか1つによりコードされる、または配列番号72~102のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する融合ポリペプチドが提供される。
【0038】
さらに、本明細書に記載されるヌクレオチド配列を含む組換えベクターが、本明細書では提供され、特に該ベクターは、細菌、酵母、バキュロウイルス、植物または哺乳類の発現ベクターである。
【0039】
一実施形態によると、本明細書では、調節エレメントに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含む発現カセットが提供される。
一実施形態によると、本明細書に記載される組換えDAOを含む、細菌、酵母、バキュロウイルス、植物または哺乳類起源の組換え宿主細胞または宿主細胞株が本明細書では提供され、該宿主細胞は、特に、CHO細胞、ベロ細胞、MDCK細胞、ピキア酵母(Pichia pastoris)細胞およびSF9細胞からなる群から選択される。
【0040】
さらに、本明細書に記載される、ベクターまたは発現カセットおよび宿主細胞または宿主細胞株を含む発現系が本明細書では提供される。
一実施形態によると、さらに、本明細書に記載される組換えDAOの産生方法であって、
i.DAOをコードするヌクレオチド配列を発現ベクターにクローニングする工程と、
ii.前記ベクターを用いて宿主細胞を形質転換する工程と、
iii.DAOが発現される条件下において、形質転換された宿主細胞を培養する工程と、
iv.場合により宿主細胞の破砕により、宿主細胞培養からDAOを単離する工程と、および場合により
v.DAOを精製する工程
を含む方法が本明細書では提供される。
【0041】
一実施形態によると、組換えDAOおよび場合により1つ以上の賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
特に、該医薬組成物は、静脈内、筋肉内および皮下によるか、または投与の別の非経口経路、例えば、腹腔内または髄腔内投与が可能である。
【0042】
さらなる一実施形態では、医薬組成物を調製するための組換えDAOの使用が提供される。
特に、過剰ヒスタミンと関連する状態の治療において、特に慢性アレルギー疾患またはヒスタミンの上昇もしくはDAO活性の低下と関連する疾患の治療、より特にアナフィラキシー、アナフィラキシーショック、慢性蕁麻疹、急性蕁麻疹、喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、ヒスタミン中毒、頭痛、アトピー性皮膚炎、炎症性疾患、肥満細胞症、肥満細胞活性化症候群(MCAS)、子癇前症、妊娠悪阻、早期分娩、消化性潰瘍、呑酸、掻痒症および敗血症の治療に使用するための組換えDAOが提供される。
【0043】
本発明の一実施形態では、組換えDAOの使用が、過剰ヒスタミンと関連する状態の治療用、特に慢性アレルギー疾患またはヒスタミンの上昇もしくはDAO活性の低下と関連する疾患の治療用、より特にアナフィラキシー、アナフィラキシーショック、慢性蕁麻疹、急性蕁麻疹、喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、ヒスタミン中毒、頭痛、アトピー性皮膚炎、炎症性疾患、肥満細胞症、肥満細胞活性化症候群(MCAS)、子癇前症、妊娠悪阻、早期分娩、消化性潰瘍、呑酸、掻痒症および敗血症の治療用の医薬品の製造に含まれる。
【0044】
代替の一実施形態では、DAOのGAG結合ドメインに、特に、配列番号1のナンバリングに関して568~575位のアミノ酸の1つ以上に特異的に結合する標的特異的リガンドが本明細書では提供される。
【0045】
代替的に、DAOのGAG結合ドメインへの、特に、配列番号1のナンバリングに関して568~575位のアミノ酸のいずれか1つ以上へのヘパリン/ヘパラン硫酸の結合を特異的に阻害する標的特異的リガンドが本明細書では提供される。
【0046】
特に、該リガンドは、核酸、小分子阻害剤または抗原結合タンパク質からなる群から選択される。
代替の一実施形態では、該リガンドが、特に、
- 抗体または抗体断片、例えば、Fab、Fd、scFv、ダイアボディ、トリアボディ、Fvテトラマー、ミニボディ、ナノボディ、シングルドメイン抗体、例えば、VH、VHH、IgNARまたはV-NARのいずれか、
- 抗体ミメティック、例えば、Adnectin(商標)、Affibody(登録商標)、Affilin(登録商標)、Affimer(登録商標)、アフィティン、アルファボディ、アプタマー、アンティカリン、アビマー、DARPin(登録商標)、Fynomer(登録商標)、クニッツドメインペプチド、モノボディもしくはNanoCLAMP、または
- 1つ以上の免疫グロブリンフォールドドメイン、抗体ドメインまたは抗体ミメティックを含む融合タンパク質
からなる群から選択される抗原結合タンパク質である。
【0047】
一実施形態によると、DAOのヘパリン結合を調節する化合物の同定方法であって、
(a)配列番号1のDAO配列のアミノ酸の構造座標によって定義されるGAG結合ドメインのコンピュータモデルを構築する工程と、
(b)(i)前記化合物への分子断片のアセンブリング、
(ii)小分子データベースからの化合物の選択、および
(iii)前記化合物のde novoリガンド設計
からなる群から選択される方法によって、潜在的調節化合物を選択する工程と、
(c)ヘパリン結合ドメイン中での前記化合物のエネルギー最小化配置を供給するために
、前記化合物のコンピュータモデルとGAG結合ドメインのコンピュータモデルとの間のフィッティングプログラム操作を行う計算手段を使用する工程と、
(d)前記化合物とヘパリン/ヘパラン硫酸結合ドメインとの間の会合を定量するために前記フィッティング操作の結果を評価して、前記化合物の、前記ヘパリン結合ドメインとの会合能力を評価する工程
を含む同定方法が本明細書では提供される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1-1】野生型DAOおよび修飾DAOのアミノ酸配列およびヌクレオチド配列を示す。アミノ酸配列に関して、太字は、wt配列に対する置換に関し、下線付き文字は分泌シグナルに関し、太字斜体文字はFcに関し、下線付き太字斜体文字は、IgG1ヒンジ領域のリンカー配列に関する。
図1-2】同上。
図1-3】同上。
図1-4】同上。
図1-5】同上。
図1-6】同上。
図1-7】同上。
図1-8】同上。
図1-9】同上。
図1-10】同上。
図1-11】同上。
図1-12】同上。
図1-13】同上。
図1-14】同上。
図1-15】同上。
図1-16】同上。
図1-17】同上。
図1-18】同上。
図1-19】同上。
図1-20】同上。
図1-21】同上。
図1-22】同上。
図1-23】同上。
図1-24】同上。
図1-25】同上。
図1-26】同上。
図1-27】同上。
図1-28】同上。
図1-29】同上。
図1-30】同上。
図1-31】同上。
図1-32】同上。
図1-33】同上。
図1-34】同上。
図1-35】同上。
図1-36】同上。
図1-37】同上。
図1-38】同上。
図1-39】同上。
図1-40】同上。
図1-41】同上。
図1-42】同上。
図1-43】同上。
図1-44】同上。
図1-45】同上。
図1-46】同上。
図1-47】同上。
図1-48】同上。
図1-49】同上。
図1-50】同上。
図2】組換えヒトDAO野生型およびヘパリン/ヘパラン硫酸変異体のヘパリンセファロース溶出プロファイルを示す。
図3】Hepmut1、4および7バリアントは、DAO_WTと比べて50%低い塩濃度においてヘパリンセファロースから溶出する。
図4】DAO_WTおよびHepmutバリアントと共にインキュベーション後のSK-Hep1細胞溶解物のウエスタンブロットを示す。
図5】Hepmut4バリアントは、DAO_WTと比べて低下した、SK-Hep1細胞への結合を示す。
図6】DAO_WTおよびHepmut4の等温滴定熱量測定を示す。
図7】(a)線形y軸目盛りおよび(b)対数y軸目盛りを示す。1mg/kgDAOバリアントの静脈内注射後、Hepmut4は、野生型DAOタンパク質と比べて、AUC(曲線下面積)を19倍超に増大させる。
図8】腹腔内注射後、Hepmut4は、DAO_WTタンパク質と比べて、AUCを16倍超に増大させる。
図9】1mg/kgのDAO野生型および異なるHepmutバリアントを使用して測定した値の平均を示す。
図10】1mg/kgで投与したDAO野生型タンパク質と比べて遅いヘパリン/ヘパラン硫酸結合ドメイン変異体のクリアランスを示す。
図11】DAO野生型タンパク質と比べて遅いヘパリン結合ドメイン変異体のクリアランスを示す。
図12】1mg/kgで投与したDAO野生型タンパク質と比べて遅いヘパリン結合ドメイン変異体のクリアランスを示す。
図13】1mg/kgで投与したDAO野生型タンパク質と比べて遅いヘパリン結合ドメイン変異体のクリアランスを示す。線形y軸目盛り。
図14】1mg/kgで投与したDAO野生型タンパク質と比べて遅いヘパリン結合ドメイン変異体のクリアランスを示す。最初の90分間を示す。線形y軸目盛り。
図15】それぞれ6匹または4匹のラットに1mg/kgで投与した、Fc-DAO野生型の、Fc-Hepmut4と比べて急速なクリアランスを示す。平均値と標準偏差を示す。線形y軸目盛り。
図16】それぞれ6匹または4匹のラットに1mg/kgで投与した、Fc-DAO野生型の、Fc-Hepmut4と比べて急速なクリアランスを示す。平均値と標準偏差を示す。対数y軸目盛り。
図17】Fc-DAO-Hepmut4は、1mg/kgの静脈内投与後に、AUCの著しい増大を示す。対数y軸目盛り。
図18】Fc-DAO-Hepmut4は、1mg/kgの静脈内投与後に、AUCの著しい増大を示す。線形y軸目盛り。
図19】DAO変異体のウエスタンブロットを示す。
図20】DAO_WTとcys123変異との間ではDAO活性の重要な差異は見られない。
【発明を実施するための形態】
【0049】
異なる指定または定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語は、技術分野におけるその通常の意味を有し、当業者には明らかである。例えば、標準的手引き、例えば、Sambrook等,“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”(第2版),第1-3巻,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Lewin,“Genes IV”,Oxford University Press,New York,(1990)およびJaneway等,“Immunobiology”(第5版または最近の版,Garland Science,New York,2001)を参照する。
【0050】
特許請求の範囲の主題は、特に、天然(野生型)産物のバリアントであり得る人工産物、またはそのような人工産物を使用するもしくは産生する方法に関する。天然構造に対するある程度の配列同一性があり得るものの、例えば、特に、単離した核酸配列、アミノ酸配列、融合構築物、発現構築物、形質転換した宿主細胞、および修飾タンパク質に関する、本発明の材料、方法および使用は、「人造」または合成であるため、「自然の法則」の結果とは見なされないものと理解される。
【0051】
本明細書で使用される用語「含む(comprise)」、「含有する」、「有する」および「含む(include)」は、同義的に使用され得るため、さらなる一員または部分または要素を許容する非限定型の定義と理解される。「なる」は、なる定義の特徴に関するさらなる要素を伴わないもっとも限定型の定義と見なされる。したがって、「含む」は、より幅広く、「なる」定義を含有する。
【0052】
本明細書で使用される用語「約」は、同じ値または任意の値から+/-5%異なる値に関する。
ヒトDAOモノマーは、約751個のアミノ酸を含み、酵素的に活性なダイマーを形成する。DAOダイマー中の14個のシステインのうちの10個が、S-S形成に関与し、4個は関与しない。特に、システイン123および633は、ジスルフィド結合形成に関与しない。
【0053】
本明細書で使用されるように、アミノ酸は、64個のトリプレットコドンによってコードされる20個の天然アミノ酸に関する。これら20個のアミノ酸は、中性電荷、正電荷および負電荷を有するものに分けられる:
「中性」アミノ酸を、以下、それぞれの3文字表記および1文字表記および極性と共に示す。
【0054】
アラニン:(Ala、A)非極性、中性;
アスパラギン:(Asn、N)極性、中性;
システイン:(Cys、C)非極性、中性;
グルタミン:(Gln、Q)極性、中性;
グリシン:(Gly、G)非極性、中性;
イソロイシン:(Ile、I)非極性、中性;
ロイシン:(Leu、L)非極性、中性;
メチオニン:(Met、M)非極性、中性;
フェニルアラニン:(Phe、F)非極性、中性;
プロリン:(Pro、P)非極性、中性;
セリン:(Ser、S)極性、中性;
トレオニン:(Thr、T)極性、中性;
トリプトファン:(Trp、W)非極性、中性;
チロシン:(Tyr、Y)極性、中性;
バリン:(Val、V)非極性、中性;および
ヒスチジン:(His、H)極性、正(10%)中性(90%)。
【0055】
「正」電荷アミノ酸:
アルギニン:(Arg、R)極性、正;および
リジン:(Lys、K)極性、正。
【0056】
「負」電荷アミノ酸:
アスパラギン酸:(Asp、D)極性、負;および
グルタミン酸:(Glu、E)極性、負。
【0057】
本発明のDAOの「修飾」という用語は、アミノ酸の置換、付加、欠失、変異および挿入を含むが、それらに限定されない任意のアミノ酸配列変化に関する。修飾は、化学選択的修飾でもあり得る。そのような修飾は、化学的部分との結合またはカップリングであり得て、ただし、安定な共有結合が、少なくともその1つは生体分子である2分子間で形成される。そのような結合は、1つ以上のアミノ酸残基と形成され得て、例えば、マレイミド、ヨードアセトアミド、イソアセトアミド、2-チオピリジン、3-アリールプロピオロニトリル、フッ化ベンゾイル、イソチオシアネート、イソシアネート、ジアゾニウム塩、PTAD、NalO4またはPLPとの結合であるが、それらに限定されない。
【0058】
タンパク質表面では遊離システインがめったに生じず、化学選択的修飾に向く優れた選択である。特に、本明細書に記載される修飾DAOのアミノ酸123位および633位のCysは溶媒露出である。溶媒露出cys123の特異的な置換により、特に、cys123をala123へと交換することにより、そのように生み出されたDAOは、高次凝集体をもたらす、ジスルフィド結合または別の分子間相互作用を形成できなくなる。組換えDAOをCHO細胞中で発現すると、DAO分子の特定の割合(約20%~30%)が、ダイマーのみならずテトラマー、ヘキサマー、さらにはオクタマーさえも形成する。この高次オリゴマーは記載されており、未知の機能を有する天然バリアントと見なされ得る。該高次オリゴマーは、フォールディングおよび小胞体からゴルジ体への輸送および細胞外環境への分泌の最中に形成されるのか、または概して細胞外環境においてのみ形成されるのか分かっていない。それでも、それらのテトラマーおよびさらに大きなオリゴマーは、本明細書に記載される組換えDAOの発現、精製、特性化、標準化、および最適な調合の選択を困難にする。DAOの表面上の比較的溶媒露出したシステインの変異により、特にCys123の変異により、宿主細胞、特にCHO細胞の上清中にはDAOダイマーのみが見出される。
【0059】
さらに、特定のさらなる一実施形態によると、アミノ酸633位のシステインも、cys123に関して本明細書に記載されるように修飾され得る。Cys633もまたジスルフィド結合の形成に関与しない。
【0060】
塩基性条件下、システイン残基は脱プロトン化され得て、ソフトな求電子剤、例えば、マレイミドおよびヨードアセトアミドと反応するチオラート求核剤を生成する。その結果、炭素-イオウ結合が形成される。システイン残基の別の修飾は、ジスルフィド結合の形成を含む。還元されたシステイン残基は、外因性ジスルフィドと反応し、タンパク質上で新たなジスルフィド結合を生成する。2-チオピリドンおよび3-カルボキシ-4-ニトロチオフェノール等、過剰のジスルフィドが頻繁に反応の促進に使用される。電子不足アルキンは、別の求核性アミノ酸残基の存在下にタンパク質のシステイン残基と選択的に反応することが示された。アルキンの置換に応じて、この反応は、切断可能なバイオコンジュゲート(アルキノン誘導体を使用する場合)または加水分解安定性のバイオコンジュゲート(3-アリールプロピオロニトリルを使用する場合)を産生できる。
【0061】
修飾という用語の範囲内には、天然アミノ酸の、非天然アミノ酸による置換も含まれる。非天然アミノ酸は、普遍遺伝暗号によりコードされない。通常、それらの非天然アミノ酸は、天然には、特に植物および細菌における代謝産物として見出され得る。そのような非天然アミノ酸は、D-アミノ酸、ホモアミノ酸、N-メチルアミノ酸、アルファメチルアミノ酸、beta-アミノ酸、beta-アミノ酸、beta-ホモアミノ酸、ACHC、ペプチド、または特に13Cおよび/もしくは15N原子で置換された重アミノ酸、特にE-アセチルリジン、アラニン(3-アミノプロピオン酸)、6-アミノカプロン酸、?-アミノ酪酸、シトルリン、アセトアミドメチル保護システイン、ジメチルリジン、ヒドロキシプロリン、メルカプトプロピオン酸、メチルリジン、3-ニトロチロシン、ノルロイシン、ピログルタミン酸、カルボベンゾキシから選択され得るが、それらに限定されない。
【0062】
本明細書で使用される用語「GAG結合ドメイン」は、ヘパリン/ヘパラン硫酸、コンドロイチン/デルマタン硫酸、ケラチン硫酸(keratin sulfate)およびヒアルロナンを含む4種すべてのグリコサミノグリカンとの結合または相互作用に関与する、DAO内の領域に関する。ヘパリン/ヘパラン硫酸との結合が好ましい。ヘパリンは肥満細胞中に存在する。ヘパラン硫酸は、ほぼすべての細胞、例えば内皮細胞上に存在する。
【0063】
「GAG結合」という用語は、DAOとグリコサミノグリカン、特にヘパリンまたはヘパラン硫酸との相互作用/結合に関する。GAGは、多数の異なる種類のタンパク質と、たいていは、負に帯電した硫酸基およびウロン酸とタンパク質中の正に帯電したアミノ酸との間の静電相互作用を介して結合する。ヘパリン結合親和性は、当業者には公知の任意の方法により測定できる。GAG-タンパク質の相互作用の分析には多数の方法が利用可能であり、いくつかは、K値の直接的な測定を提供する。一般的な方法は、共有結合したGAG鎖、通常はヘパリンを含有するセファロースカラム上でのタンパク質のアフィニティー分画を含む。結合したタンパク質を、異なる濃度の塩化ナトリウムで溶出し、溶出に必要とされる濃度は、全体的にKと比例する。高親和性相互作用は、結合したリガンドを置換するために少なくとも1M NaClを必要とし、それは、10-7~10-9MのK値に換算される(生理学的塩濃度下に平衡結合により測定)。低親和性(10-4~10-6M)のタンパク質は、「通常」条件(0.15M NaCl)下では結合しないか、または溶出に0.3~0.5M NaClしか必要としない。この方法は、GAGタンパク質の相互作用は完全にイオン性であるという想定に基づき、異なるGAG結合タンパク質を比較する場合に、相対的親和性の評価に使用できる。代替法は、親和共電気泳動(affinity co-electrophoresis)、分析用超遠心、円二色性、競合ELISA、蛍光顕微鏡検査、イオン移動度質量分析法、等温滴定熱量測定、レーザー光散乱、NMR、表面プラズモン共鳴、X線であり得て、それにより、詳細な熱力学データ(ΔH[エンタルピーの変化]、ΔS[エントロピーの変化]、ΔCp[モル熱容量の変化]等)、反応速度データ(会合速度および解離速度)およびGAG-タンパク質相互作用の原子接合に関する高解像度データを供給するが、それらの方法に限定されない(Esko JD.等,Essentials of Glycobiology,第3版,第38章,2017)。
【0064】
特に、本明細書に記載されるDAO変異体は、ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸に対する減少した結合を有するか、または結合の低下を示す。特に、組換えDAOのヘパリン/ヘパラン硫酸結合親和性は、野生型DAOと比べて少なくとも10%、25%、50%、60%、70%、80%、特に90%低下する。特定の方法によると、ヘパリンセファロースクロマトグラフィーを使用して結合親和性を測定し、ただし、DAOバリアントを、低塩濃度でインキュベートし、高まる塩濃度で溶出する。DAOタンパク質のピークを有する塩濃度(280nmでの吸光度を使用して測定)を、DAOが溶出されるmM塩濃度として使用する。
【0065】
本発明のDAOはさらに、内在化される野生型DAOと比べて低下した内皮細胞への内在化を示す。特に、内皮細胞による内在化は、野生型DAOと比べて、少なくとも10%、25%、50%、60%、70%、80%、特に90%低下している。
【0066】
特に、GAG結合ドメインは、配列番号1のナンバリングに関して568~575位のアミノ酸を含む。前記ドメイン内で、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたはすべてのアミノ酸が修飾されていてもよい。
【0067】
DAOモノマーは、一次アミノ酸配列中に24個のリジンおよび44個のアルギニンを含有し、そのうちの大部分は分子の表面にある。別のリジンおよびアルギニンがヘパリン結合に関与しているように思われる。568~575位のアミノ酸を含むGAG結合ドメインに加えて、DAOの表面上のさらなるリジンまたはアルギニンが、ヘパリン/ヘパラン硫酸結合に関与し得る。
【0068】
これらのリジンおよび/またはアルギニンの1つ以上の修飾が、組換えDAOのヘパリン/ヘパラン硫酸結合をさらに低下させ得る。
DAOの「酵素活性」という用語は、プトレシンまたはヒスタミンのような適切な基質の、アミノブチルアルデヒドまたはイミダゾールアセトアルデヒドへの酸化的脱アミノ化を触媒するポリペプチドの能力に関する。酵素活性の維持とは、本発明のDAOが、対応する野生型DAOと同じまたは類似の酵素活性を有することを意味する。野生型活性の少なくとも80%、特に少なくとも90%である酵素活性を、野生型DAOと類似の酵素活性と解釈する。
【0069】
DAOの酵素活性の測定には、技術分野において公知の任意の方法を使用できる。それらの方法は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)媒介ルミノール酸化を使用するアッセイ(Bartko J.等,Alcohol.2016 Aug;54:p.51-9)、Holmstedt B.O.とTham R.(Acta Physiol.Scand.,1959,45,p.152-163)およびBardsley W.G.等(Biochem.J.1972,127,p.875-879)により記載される分光光度法、質量分析法(Gludovacz E.等,2016)、液体シンチレーション測定(Okuyama T.とKobayashi Y.,Archives Biochem.Biophys.,19661,95,p.242-250)、滴定アッセイ法、マノメトリックアッセイ法、蛍光アッセイ法、生物学的アッセイ法または放射性アッセイ法(Zeller EA.,The enzymes,(J.B.SumnerとK Mayback編)第II巻,A部,p.536,Academic Press,New York 1951;Shore P.A.等,J.Pharmacol.,Exptl.Therap.127,1959,182;Ahlark A.,Acta Physiol.Scand.Suppl.,1944,28,9)であり得るが、それらに限定されない。
【0070】
「機能性バリアント」または「機能活性バリアント」という用語は、天然アレルバリアントならびに変異体または任意の別の非天然バリアントも含む。技術分野では公知のように、アレルバリアントは、本質的に核酸またはポリペプチドの生物学的機能を変化させない、1つ以上のヌクレオチドまたは1つ以上のアミノ酸の置換、欠失または付加を有するものと特徴づけられる、核酸またはペプチドの代替型(alternate form)である。
【0071】
機能性バリアントは、ポリペプチド配列またはヌクレオチド配列の配列変化、例えば、1つ以上の点変異により得られ得て、該配列変化は、本発明の組み合わせにおいて使用した場合、不変のポリペプチド配列またはヌクレオチド配列の機能を維持または改善する。そのような配列変化は、(保存的)置換、付加、欠失、変異および挿入を含み得るが、それらに限定されない。保存的置換は、その側鎖および化学特性において類似するアミノ酸のファミリー内で起こる置換である。そのようなファミリーの例は、塩基性側鎖、酸性側鎖、非極性脂肪族側鎖、非極性芳香族側鎖、非荷電極性側鎖、小さい側鎖、大きい側鎖等を有するアミノ酸である。
【0072】
点変異は、特に、異なるアミノ酸に関する1つ以上の単一(非連続的)またはダブレットのアミノ酸の置換または交換、欠失または挿入において、非操作のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列の発現をもたらす、ポリヌクレオチドのエンジニアリングと理解される。
【0073】
代替の一実施形態では、組換え手段によりGAG結合ドメインを、DAOのポリペプチド内の任意の位置に導入してもよい。各ドメインは、アミノ酸配列X1FX2X3X4LPX5からなり得て、X1は任意のアミノ酸、特にAまたはS、より特にSであり、X2は任意のアミノ酸、特にKであり、X3は任意のアミノ酸、特にAまたはT、より特にTであり、X4は任意のアミノ酸、特にKであり、X5は任意のアミノ酸、特にKまたはT、より特にTである。特定の一実施形態では、アミノ酸配列SFKAKLPK(配列番号33)、AFKAKLPT(配列番号34)、AFKTKLPK(配列番号35)、SFKTKLPK(配列番号36)、AFKTKLPT(配列番号37)、SFKAKLPK(配列番号38)の1つ以上を、本明細書に記載されるDAOポリペプチドに導入する。
【0074】
本明細書で使用される用語「配列同一性」は、2つのアミノ酸配列間または2つのヌクレオチド配列間の関連性と理解され、配列同一性または配列相補性の度合いにより記載される。親ヌクレオチド配列または親アミノ酸配列と比べた、バリアント、ホモログまたはオーソログの配列同一性は、2つ以上の配列の同一性の度合いを示す。2つ以上のアミノ酸配列は、対応する位置において、100%までの一定程度で同じまたは保存されたアミノ酸残基を有し得る。2つ以上のヌクレオチド配列は、対応する位置において、100%までの一定程度で同じまたは保存された塩基対を有し得る。
【0075】
配列類似性検索は、過度(例えば、少なくとも50%)の配列同一性を有するホモログの同定には効果的かつ確実な戦略である。頻繁に使用される配列類似性検索ツールは、例えば、BLAST、FASTAおよびHMMERである。
【0076】
配列類似性検索は、過度の類似性、および共通祖先を反映する統計的に有意な類似性の検知により、そのような相同タンパク質または相同ポリヌクレオチドを同定できる。ホモログは、本明細書では異なる生物における同一タンパク質と理解されるオーソログ、例えば、そのようなタンパク質の、異なる生物または種におけるバリアントを含み得る。
【0077】
2つの相補性配列の%相補性を特定するためには、2つの配列のうちの一方を、その相補性配列へと変換して、%相補性を、前記のアルゴリズムを使用して第1の配列と第2の変換した配列との間の%同一性として計算できるようにする必要がある。
【0078】
本明細書に記載されるアミノ酸配列、ホモログおよびオーソログに関する「同一性パーセント(%)」は、配列をアライメントしてから必要であればギャップを導入して最高パーセントの配列同一性を達成した後に、任意の保存的置換は配列同一性の一部と見なさずに、特定のポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同じである、候補配列中のアミノ酸残基の百分率と定義される。当業者は、比較対象の配列の全長にわたる最高のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムも含めて、アライメント測定用の適切なパラメータを特定できる。
【0079】
本明細書に記載される目的には、NCBI BLASTプログラムバージョン2.2.29(2014年1月6日)を使用して、次の例示的パラメータ:プログラム:blastp、文字列長さ:6、期待値:10、ヒットリストサイズ:100、ギャップコスト:11.1、マトリクス:BLOSUM62、フィルタ文字列:F、遺伝暗号:1、ウィンドウサイズ:40、閾値:21、Composition-based stats:2に設定したblastpを用いて、2つのアミノ酸配列間の配列同一性を特定する。
【0080】
例えば核酸分子またはその一部のヌクレオチド配列、特にコードDNA配列に関する「同一性パーセント(%)」は、配列をアライメントしてから必要であればギャップを導入して最高パーセントの配列同一性を達成した後に、任意の保存的置換は配列同一性の一部と見なさずに、DNA配列中のヌクレオチドと同じである、候補DNA配列中のヌクレオチドの百分率と定義される。ヌクレオチド配列同一性パーセントを特定する目的でのアライメントは、当該技能の範囲内にある様々なやり方で、例えば、一般的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成可能である。当業者は、比較対象の配列の全長にわたる最高のアライメント達成するために必要な任意のアルゴリズムも含めて、アライメント測定用の適切なパラメータを特定できる。
【0081】
最適なアライメントは、配列のアライメントに適切な任意のアルゴリズムを使用して特定でき、その非限定的な例は、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wunschアルゴリズム、Burrows-Wheeler変換に基づくアルゴリズム(例えば、Burrows Wheeler Aligner)、ClustalW、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies、novocraft.comから入手可能)、ELAND(Illumina、サンディエゴ、CA)、SOAP(soap.genomies.org.cnから入手可能)およびMaq(maq.sourceforge.netから入手可能)を含む。
【0082】
本明細書に記載されるDAOは、配列番号2~16のアミノ酸配列、および配列番号2~16のいずれかと90%、95%、99%の配列同一性を有するそれらの任意の機能性バリアントを含み得る。
【0083】
組換えDAOは、野生型DAOと比べて延長された血漿内半減期を有し、特に、前記半減期は、野生型DAOと比べて少なくとも1.5倍、特に少なくとも2倍長い。
薬物の作用または物理的存在の期間は、その半減期として公知である。それは、体内または全血中または血漿中での薬物の濃度または量が半減するために必要な期間である。薬物の半減期は、通常、薬物の血漿または血清中での量と関連付けて考える。薬物の血漿内または血清内半減期は、薬物が血漿または血清からいかに素早く消失するかに依存する。薬物分子は、身体から消失し得るか、別の体液区画、例えば細胞内液へと移行し得るか、または血中で破壊され得る。血漿からの薬物の除去はクリアランスとして知られ、様々な体組織中での薬物の分布は分布容積として知られる。
【0084】
血漿中薬物濃度時間曲線下面積(AUC)は、薬物、すなわち本明細書に記載される組換えDAOに対する、該薬物の用量投与後の身体の実際の曝露を反映し、μg/分/mlで表現される。この曲線下面積は、身体からの薬物の消失速度および投与用量に依存する。身体が除去する薬物の総量は、ゼロ時(薬物の投与時)から無限時までの各期間に消失した量を合計または積算することで評価できる。この総量は、投与用量のうちの体循環に到達する画分に相当する。AUCは、薬物が線形動力学に従う場合は用量に正比例する。AUCは、薬物のクリアランスに反比例する。つまり、クリアランスが高ければ高いほど薬物が体循環中で過ごす時間が短くなり、血漿内薬物濃度の低下が早くなる。したがって、そのような状況では、薬物に対する身体曝露および濃度時間曲線下面積がより小さくなる。
【0085】
本明細書に記載される組換えDAOは、野生型DAOと比べて少なくとも2倍、少なくとも5倍、10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも30倍に増大したAUCを有する。
【0086】
用語「発現」は次のように理解される。発現産物、例えば、本明細書に記載される融合タンパク質の所望のコード配列を含有する核酸分子を、発現目的で使用してもよい。その配列で形質転換またはトランスフェクトされた宿主は、コードされるタンパク質を産生できる。形質転換を達成するためには、発現系をベクターに含めてもよいが、関連DNAを宿主染色体に組み込むことも可能である。特に、この用語は、例えば、ベクターに運ばれて宿主細胞に導入される外来DNAによりコードされるタンパク質を発現するための適切な条件下での、宿主細胞および適合性ベクターに関する。
【0087】
コードDNAは、特定のポリペプチドまたはタンパク質に対する特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列である。プロモーターDNAは、コードDNAの発現を開始するか、または代わりに調節、仲介もしくは制御するDNA配列である。プロモーターDNAおよびコードDNAは、同じ遺伝子由来でも異なる遺伝子由来でもよく、同じ生物由来または異なる生物由来であり得る。組換えクローニングベクターは、頻繁に、クローニングまたは発現用の1つ以上の複製システム、宿主中で選択するための1つ以上のマーカー、例えば、抗生物質耐性、1つ以上の核局在化シグナル(NLS)および1つ以上の発現カセットを含む。
【0088】
本明細書で使用する「発現ベクター」は、適切な宿主生物内での、クローニングされた組換えヌクレオチド配列、すなわち組換え遺伝子の転写およびそのmRNAの翻訳に必要とされるDNA配列と定義される。発現を得るために、所望の発現産物、例えば本明細書に記載されるDAOをコードする配列を、典型的には、転写を制御するプロモーターを含有する発現ベクターにクローニングする。適切な細菌プロモーターおよび真核生物プロモーターは、技術分野において周知である。核酸の発現を制御するために使用されるプロモーターは、特定の用途による。例えば、構成的強力プロモーターは、典型的には、融合タンパク質の発現および精製に使用される。それに対して、発現産物を、遺伝子調節のためにin vivoで投与する場合、発現産物の特定の使用に応じて、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターのいずれか一方を使用できる。さらに、投与のための好ましいプロモーターは、弱いプロモーター(weak promoter)であり得る。プロモーターはさらに、トランス活性化応答性エレメント、例えば、低酸素応答エレメント、Gal4応答エレメントおよびlacリプレッサ応答エレメントを含んでもよい。発現ベクターは、発現カセットを含み、さらに通常は宿主細胞内での自律複製開始点、またはゲノム組込み部位、1つ以上の選択マーカー(例えば、アミノ酸合成遺伝子、または抗生物質、例えば、ゼオシン、カナマイシン、G418もしくはハイグロマイシンに対する耐性を与える遺伝子)、多数の制限酵素切断部位、適切なプロモーター配列、およびその成分が互いに作動可能に連結されている転写ターミネータを含む。
【0089】
「発現カセット」は、ベクターの規定の制限部位に挿入され得る、発現産物をコードするDNAコード配列またはDNA断片に関する。該カセットの制限部位は、適切な読み枠へのカセットの挿入を確保するように設計されている。一般的に、外来DNAを、ベクターDNAの1つ以上の制限部位に挿入し、次いで、ベクターにより、伝達性(transmissible)ベクターDNAと一緒に宿主細胞内へと運ばれる。挿入または付加されたDNAを有するDNAの断片または配列、例えば発現ベクターは、「DNA構築物」とも呼ばれ得る。
【0090】
組換えDAOの発現には、適切なフォールディング、転写後修飾および酵素活性を可能にする任意の適切な宿主細胞または細胞株を使用できる。特に、組換え宿主細胞は、CHO細胞、COS細胞、ベロ細胞、MDCK細胞、ピキア酵母細胞、SF9細胞、ヒト細胞株、例えば、HEKおよびHeLaから選択され得る。
【0091】
本明細書で使用する用語「ベクター」は、自律複製ヌクレオチド配列ならびにゲノム組込みヌクレオチド配列を含む。ベクターの一般型は、概して、付加的(外来)DNAを難なく受容する、二本鎖DNAの自立分子(self-contained molecule)であり、かつ適切な宿主細胞へと難なく導入できる「プラスミド」である。プラスミドベクターは、頻繁に、コードDNAおよびプロモーターDNAを含有し、かつ外来DNAの挿入に適切な1つ以上の制限部位を有する。特に、「ベクター」または「プラスミド」という用語は、それによりDNA配列またはRNA配列(例えば、外来遺伝子)を宿主細胞へと導入して、宿主を形質転換し、導入された配列の発現(例えば、転写および翻訳)を促進するための媒体に関する。ベクターを細胞内にトランスフェクトし、安定的トランスフェクションの場合は、DNAを相同組換えによってゲノムに組み込んでもよく、または細胞に一過性にトランスフェクトしてもよい。特に、ベクターは、細菌、酵母、バキュロウイルス、植物または哺乳類の発現ベクターである。
【0092】
外来ヌクレオチド配列を宿主細胞内に導入するための公知の方法のいずれかを使用できる。それは、リン酸カルシウムトランスフェクション、ポリブレン、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、リポソーム、マイクロインジェクション、裸DNA、プラスミドベクター、ウイルスベクター、エピソーム同様に組込み、およびクローニングされたゲノムDNA、cDNA、合成DNAまたは別の外来遺伝物質を宿主細胞内に導入するための別の周知の方法のいずれかの使用を含む(例えば、Sambrook等を参照)。
【0093】
哺乳類の発現ベクターの例は、アデノウイルスベクター、pSVおよびpCMVシリーズのプラスミドベクター、ワクシニアウイルスベクターおよびレトロウイルスベクターならびにバキュロウイルスを含む。サイトメガロウイルス(CMV)およびSV40のプロモーターが、哺乳類の発現ベクター中で遺伝子発現を駆動するために一般的に使用される。非ウイルスプロモーター、例えば伸長因子(EF)-1プロモーターも公知である。
【0094】
前記のベクターおよび宿主細胞を使用して、本発明は、DAOをコードするヌクレオチド配列を発現ベクターにクローニングする工程、宿主細胞、特に哺乳動物細胞を前記ベクターで形質転換する工程、形質転換した宿主細胞をDAOが発現される条件下で培養する工程、場合により宿主細胞の破砕により宿主細胞培養からDAOを単離する工程または細胞培養上清からDAOを単離する工程、および場合によりDAOを精製する工程の連続工程を含む、組換えDAOの産生方法を提供する。
【0095】
さらに、本明細書で提供される組換えDAOを含む医薬組成物が記載される。特定の一実施形態によると、本明細書に記載されるDAOまたはその機能性バリアントを含むそのような医薬組成物を、過剰ヒスタミンと関連する任意の状態、特に>1ng/ml血漿中濃度の過剰ヒスタミンの治療、特に慢性アレルギー疾患の治療、より特にアナフィラキシー、アナフィラキシーショック、慢性蕁麻疹、急性蕁麻疹、喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、ヒスタミン中毒、頭痛、かゆみ、嘔吐、頻脈、低血圧症、心停止、アトピー性皮膚炎、炎症性疾患、肥満細胞症、肥満細胞活性化症候群(MCAS)、子癇前症、妊娠悪阻、早期分娩、消化性潰瘍、呑酸、掻痒症および敗血症の治療に使用する。
【0096】
特に、本明細書に記載される医薬組成物はさらに、診断または療法に使用する場合に薬学上許容される担体または賦形剤、例えば増量剤を含む。それらの医薬組成物は、本発明に従って、ボーラス投与または点滴としてまたは持続点滴により投与可能である。そのような投与手段の手助けに適切な医薬担体は、技術分野において周知である。
【0097】
薬学上許容される担体は、概して、本発明により提供されるDAOと生理学的に相容性であるあらゆる適切な溶媒、分散媒、被覆材、等張剤および吸収遅延剤等を含む。薬学上許容される担体のさらなる例は、滅菌水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等ならびにそれらいずれかの組み合わせを含む。
【0098】
薬学上許容されるさらなる担体が、技術分野において公知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Gennaro,AR,編,Mack Publishing Co,1985)に記載される。液剤は、溶液、乳剤または懸濁液であり得て、かつ賦形剤、例えば、懸濁化剤、可溶化剤、界面活性剤、防腐剤およびキレート剤を含み得る。
【0099】
非経口投与に使用される例示的な剤形は、例えば、溶液、乳剤または懸濁液としての、皮下注射、筋肉内注射または静脈内注射に適切な剤形を含む。
本明細書に記載されるDAOを、特に、患者、例えば、癌を患う患者への投与時の臨床結果を含めて有益または所望の結果を達成するために十分な量または活性を意味する治療有効量で投与する。そのようなものとして、有効量またはそれと同意の量は、投与される状況に依存する。有効量は、そのような疾患または障害を治療、予防または阻止するために十分な化合物の量を意味すると意図される。
【0100】
そのような有効量に相当する、化合物、すなわち本明細書に記載される組換えDAOの量は、様々な要因、例えば、特定の薬物または化合物、医薬製剤、投与経路、疾患または障害の種類、治療される患者または受容者の個性等に依存するが、それでも当業者によって日常的に確定され得る。
【0101】
本発明の特定の一実施形態によると、組換えDAOが、Fcまたはヒト血清アルブミン(HSA)であり得るがそれらに限定されない第2の部分に結合された融合タンパク質が提供される。
【0102】
特定の一実施形態によると、Fcに結合されたDAOとFcとが、配列番号40~70のいずれか1つを、または配列番号40~70のいずれか1つと少なくとも80%、特に少なくとも85%、90%、95%、99%の配列同一性を有するその機能性断片を含む。
【0103】
特定の一実施形態によると、Fcに結合されたDAOとFcとが、配列番号72~102のいずれか1つによって、または配列番号72~102のいずれか1つと少なくとも80%、特に少なくとも85%、90%、95%、99%の配列同一性を有するその断片によってコードされる。
【0104】
本発明のコンテクストにおいて、用語「融合ポリペプチド」は、(必ずしもそうではないが)主に、ペプチド結合によって互いに接続されたアミノ酸配列に関する。本発明の融合ポリペプチドに従う用語「融合した」は、少なくとも2つの異なる起源のアミノ酸配列、つまり本明細書で定義される修飾DAO、および第2の部分、特にヒトIgGのFcドメインまたはアルブミンが、互いに共有結合によって、直接的またはアミノ酸配列を連結(joining)(架橋、結合、共有結合)するアミノ酸リンカーもしくはスペーサーを介するかのいずれか一方で連結されているという事実を指す。融合は、技術分野において周知の化学結合法または遺伝子工学法によって行い得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、本明細書で定義されるDAOポリペプチドが、そのC末端を介して、ヒトIgGのFcドメインまたはHSAのいずれか一方と共有結合している。つまり、いくつかの実施形態では、N末端からC末端の方向に、本発明による融合ポリペプチドが、DAOポリペプチドおよびFcドメイン成分またはHSAのいずれか一方を含む。
【0106】
別の実施形態では、本明細書で定義されるDAOポリペプチドが、そのN末端を介して、ヒトIgGのFcドメインまたはHSAのいずれか一方と共有結合している。つまり、いくつかの実施形態では、N末端からC末端の方向に、本発明の融合ポリペプチドが、Fcドメイン成分またはHSAおよびDAOポリペプチドを含む。
【0107】
本明細書で使用される用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって接続されるアミノ酸残基に関する。ポリペプチド配列は、一般的に、遊離アミノ基を含有するN末端から遊離カルボキシル基を含有するC末端へと記される。ポリペプチドは同じくアミノ酸配列、ペプチドまたはタンパク質と呼ばれることもあり、例えば、マンノシル化、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化またはリン酸化によって修飾されてもよい。
【0108】
「共有結合した」または「共有結合」という用語により、指定のドメインが、共有結合によって接続または連結されることを意味する。
特に、本明細書で使用するように、用語「Fc融合ポリペプチド」は、全長Fcドメインを含む、ならびにFcドメイン断片(例えば、全CH2ドメイン、全CH3ドメイン、CH2断片、CH3断片、またはその組み合わせ)を含むタンパク質を含む本開示のDAOを含む。Fc融合タンパク質は、ヒンジ領域の全体または一部を含むことも可能である。
【0109】
本明細書で使用されるように、Fc領域は、第1の免疫グロブリン定常領域ドメインおよびその断片を除く、抗体の定常領域を含むポリペプチドを含む。したがって、Fc領域は、IgA、IgDおよびIgGの最後の2つの免疫グロブリン定常領域ドメイン、ならびにIgEおよびIgMの最後の3つの免疫グロブリン定常領域ドメイン、場合によりそれらのドメインに対するフレキシブルなN末端ヒンジ領域に関する。IgAおよびIgMの場合、Fc領域がJ鎖を含み得る。IgGの場合、Fcが、免疫グロブリンドメインCgamma2およびCgamma3(Cγ2およびCγ3)ならびに場合によりCgamma1(Cγ1)とCgamma2(Cγ2)との間のヒンジ領域を含む。Fc領域の境界は異なり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、そのカルボキシル末端に残基C226またはP230を含むと定義され、ただし、そのナンバリングは、Kabatに規定されるEUインデックスによる(Kabat等,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版 Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。Fcは、単独でのその領域に関し得て、または抗体、抗体断片もしくはFc融合タンパク質のコンテクストにおけるその領域に関してもよい。
【0110】
本明細書に記載されるDAOポリペプチドと融合させたHSA配列は、野生型配列(配列番号103)または野生型配列と90%、特に少なくとも95%、より特に少なくとも99%、より特に少なくとも99.9%の配列同一性を含み得る。場合により、DAOとHSAとの間に、特に2~約10アミノ酸残基を含むリンカー配列が含有される。
【0111】
特定の一実施形態によると、DAOのGAG結合、特にヘパリン/ヘパラン硫酸結合が阻害されているため、DAOの内在化の低下および体循環におけるDAO量の増加がもたらされ、それは、AUCにより特定できる。本明細書に記載されるようなDAOの修飾により、DAOが、確かに、著しく低下したヘパリン/ヘパラン硫酸結合を示す。
【0112】
体循環におけるDAOを上昇させるためのさらなる選択は、ヘパリン/ヘパラン硫酸結合ドメインに特異的に結合する標的特異的リガンドを供給することである。特に、抗体または抗体断片または任意のリガンドが、DAOにヘパリン結合ドメイン近傍で結合し得ることによりヘパリン結合ドメインへのアクセスを妨害する。代替案は融合タンパク質であり、融合タンパク質の部分が、ヘパリン結合ドメインを覆い隠しその機能を妨害するため、変異、またはヘパリン結合ドメインに直接的に結合する抗体と同じ効果を有する。
【0113】
代替案として、ヘパリン/ヘパラン硫酸とDAOのGAG結合ドメインとの結合を阻害する。リガンドは、特に、抗体または抗体断片、例えば、Fab、Fd、scFv、ダイアボディ、トリアボディ、Fvテトラマー、ミニボディ、ナノボディ、シングルドメイン抗体、例えば、VH、VHH、IgNARまたはV-NARのいずれかからなる群から選択される抗原結合タンパク質;抗体ミメティック、例えば、Adnectin(商標)(多様化ループを含むβシートサンドイッチフォールドを抗体可変ドメインと共有するが、一次配列の点で抗体と異なり、ジスルフィド結合を含まない単一ドメイン構造を有する)、Affibody(登録商標)(プロテインAのIgG結合ドメインの1つの足場に基づく3つのヘリックスの束からなる単純小タンパク質)、Affilin(登録商標)(構造的にはヒトユビキチンに由来し、そのタンパク質の表面露出アミノ酸の修飾により構築されており、ディスプレイ技術、例えば、ファージディスプレイおよびスクリーニングにより単離。Affilinは、抗原に対するその親和性および特異性の点で抗体に似ているが、構造の点では似ていないため、抗体ミメティックの類型になる)、Affimer(登録商標)(標的分子に、抗体の特異性および親和性と類似する特異性および親和性で結合する小タンパク質)、アフィティン(抗原に選択的に結合する能力を有する人工タンパク質)、アルファボディ、アプタマー、アンティカリン、アビマー、DARPin(登録商標)(典型的には標的タンパク質への高特異的かつ高親和性の結合を示す、遺伝子工学による抗体ミメティックタンパク質)、Fynomer(登録商標)(特定タンパク質を標的とする特異的かつ高親和性の結合ドメインをもたらすために操作され得る、FynキナーゼのヒトSH3ドメインに由来する小さい結合タンパク質(7kDa))、クニッツドメインペプチド、モノボディもしくはNanoCLAMP(CLostridal Antibody Mimetic Proteins)、または1つ以上の免疫グロブリンフォールドドメイン、抗体ドメインまたは抗体ミメティックを含む融合タンパク質であり得る。
【0114】
さらに、DAOのヘパリン結合を調節する化合物の同定方法であって、
(a)配列番号1のDAO配列のアミノ酸の構造座標によって定義されるGAG結合ドメインのコンピュータモデルを構築する工程と、
(b)選択する工程であって、
(i)前記化合物への分子断片のアセンブリング、
(ii)小分子データベースからの化合物の選択、および
(iii)前記化合物のde novoリガンド設計、
からなる群から選択される方法によって、潜在的調節化合物を選択する工程と、
(c)ヘパリン結合ドメイン中での前記化合物のエネルギー最小化配置を供給するために
、前記化合物のコンピュータモデルとGAG結合ドメインのコンピュータモデルとの間のフィッティングプログラム操作を行う計算手段を使用する工程と、
(d)前記化合物とヘパリン/ヘパラン硫酸結合ドメインとの間の会合を定量するために前記フィッティング操作の結果を評価して、前記化合物の、前記ヘパリン/ヘパラン硫酸結合ドメインとの会合能力を評価する工程
を含む同定方法が提供される。
【0115】
用語「構造座標」は、軸系に関連した、1つ以上のアミノ酸残基の位置を定義する1セットの値に関する。この用語は、分子の三次元構造を定義するデータセットに関する(例えば、デカルト座標、温度因子および占有率)。構造座標は、若干修飾されてもよく、それでもほぼ同じ三次元構造を与える。構造座標の固有セットの尺度は、生じる構造の平均二乗偏差である。互いに3Å、2Å、1.5Å、1.0Åまたは0.5Å未満の平均二乗偏差で異なる三次元構造(特に、ヘパリン/ヘパラン硫酸結合ドメインの三次元構造)を与える構造座標は、当業者によって非常に類似すると見なされ得る。
【0116】
本明細書で使用されるように、用語「コンピュータモデルの構築」は、原子構造情報および相互作用モデルに基づく、分子構造および/または機能の定量的かつ定性的分析を含む。用語「モデル化」は、従来の数値ベース分子動力学エネルギー最小化モデル、インタラクティブコンピュータグラフィックスモデル、修正分子機構モデル、距離幾何学および別の構造ベース拘束モデルを含む。
【0117】
用語「フィッティングプログラム操作」は、化学的部分、酵素活性中心、結合ポケット、分子または分子複合体またはその一部の構造座標を、該化学的部分を、該酵素活性中心、該結合ポケット、分子または分子複合体またはその一部と会合させるために利用する操作に関する。これは、酵素活性中心の形状および静電的相補性を調和させるために、化学的部分を、酵素活性中心において配置、回転または平行移動させることで達成され得る。共有結合相互作用、非共有結合相互作用、例えば、水素結合、静電相互作用、疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用、および非相補的な静電相互作用、例えば、反発的な電荷-電荷相互作用、双極子-双極子相互作用、電荷-双極子相互作用を最適化してもよい。代替的に、化学的部分と酵素活性中心との結合の変形エネルギーを最小化してもよい。
【0118】
以下の項目は、本明細書で提供される本発明の特定の実施形態である。
1.グリコサミノグリカン結合親和性が低下した組換えジアミンオキシダーゼ(DAO)であって、前記DAOが、グリコサミノグリカン(GAG)結合ドメイン中に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む組換えジアミンオキシダーゼ。
【0119】
2.さらに、配列番号1のナンバリングに関してアミノ酸123位の溶媒露出システインの少なくとも1つの修飾を含み、特に該システインの修飾が、アミノ酸の置換、欠失または化学的部分とのカップリングである、項目1に記載の組換えDAO。
【0120】
3.配列番号1のナンバリングによる123位のシステインがアラニンによって置換されている、項目1または項目2に記載の組換えDAO。
4.GAG結合ドメインがヘパリン/ヘパラン硫酸結合ドメインである、項目1~3のいずれか1つに記載の組換えDAO。
【0121】
5.GAG結合ドメイン中の該少なくとも1つのアミノ酸修飾が、アミノ酸の置換、欠失、挿入または化学的部分とのカップリングである、項目1~4のいずれか1つに記載の組換えDAO。
【0122】
6.GAG結合ドメイン中に2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは8つのアミノ酸置換を含む、項目1~5のいずれか1つに記載の組換えDAO。
7.GAG結合ドメインが、配列番号1のナンバリングに関して568~575位のアミノ酸を含む、項目1~6のいずれか1つに記載の組換えDAO。
【0123】
8.アミノ酸配列X1FX2X3X4LPX5のGAG結合ドメインを含み、式中、
X1は、任意のアミノ酸であり得て、特にAまたはS、より特にSであり、
X2は、任意のアミノ酸であり得て、特にKであり、
X3は、任意のアミノ酸であり得て、特にAまたはT、より特にTであり、
X4は、任意のアミノ酸であり得て、特にKであり、
X5は、任意のアミノ酸であり得て、特にKまたはT、より特にTである、項目1~7のいずれか1つに記載の組換えDAO。
【0124】
9.SFKAKLPK(配列番号33)、AFKAKLPT(配列番号34)、AFKTKLPK(配列番号35)、SFKTKLPK(配列番号36)、AFKTKLPT(配列番号37)、SFKAKLPK(配列番号38)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、項目7または項目8に記載の組換えDAO。
【0125】
10.前記DAOが、野生型DAOと比べて延長された血漿内半減期を有し、特に前記半減期が、野生型DAOと比べて少なくとも1.5倍、特に少なくとも2倍長い、項目1~9のいずれか1つに記載の組換えDAO。
【0126】
11.前記DAOが、野生型DAOと比べて少なくとも10倍に増大したAUCを有する、項目1~10のいずれか1つに記載の組換えDAO。
12.内皮細胞による内在化が、野生型DAOと比べて少なくとも10%、25%、50%、60%、70%、80%、特に90%低下している、項目1~11のいずれか1つに記載の組換えDAO。
【0127】
13.GAG結合親和性が、特にヘパリン/ヘパラン硫酸結合親和性が、野生型DAOと比べて少なくとも10%、25%、50%、60%、70%、80%、特に90%低下している、項目1~12のいずれか1つに記載の組換えDAO。
【0128】
14.配列番号2~16のアミノ酸配列を含む、項目1~13のいずれか1つに記載の組換えDAO。
15.項目1~14のいずれか1つに記載の組換えDAOとヒトIgGのFcドメインまたはヒト血清アルブミン(HSA)とを含む融合ポリペプチドであって、組換えDAOの機能活性を保持する融合ポリペプチド。
【0129】
16.項目1~15のいずれか1つに記載のDAOをコードする、特に配列番号17~32の配列を含む、単離されたヌクレオチド配列。
17.項目16に記載されるヌクレオチド配列を含む組換えベクターであって、特に、細菌、酵母、バキュロウイルス、植物または哺乳類の発現ベクターである組換えベクター。
【0130】
18.調節エレメントに作動可能に連結された、項目17に記載のヌクレオチド配列を含む発現カセット。
19.項目1~15のいずれか1つに記載の組換えDAOを含む組換え宿主細胞または宿主細胞株であって、該宿主細胞が、CHO細胞、ベロ細胞、MDCK細胞、ピキア酵母細胞、SF9細胞からなる群から選択される組換え宿主細胞または宿主細胞株。
【0131】
20.項目17に記載のベクターまたは項目18に記載の発現カセットおよび項目19に記載の宿主細胞または宿主細胞株を含む発現系。
21.項目1~15のいずれか1つに記載の組換えDAOの産生方法であって、
i.項目1~15のいずれか1つに記載のDAOをコードするヌクレオチド配列を発現ベクターにクローニングする工程と、
ii.前記ベクターを用いて宿主細胞を形質転換する工程と、
iii.DAOが発現される条件下において、形質転換された宿主細胞を培養する工程と、
iv.場合により宿主細胞の破砕により、宿主細胞培養からDAOを単離する工程と、および場合により
v.DAOを精製する工程
を含む産生方法。
【0132】
22.項目1~15のいずれか1つに記載の組換えDAOおよび場合により1つ以上の賦形剤を含む医薬組成物。
23.医薬組成物を調製するための、項目1~15のいずれか1つに記載の組換えDAOの使用。
【0133】
24.過剰ヒスタミンと関連する状態の治療において、特に慢性アレルギー疾患の治療、より特にアナフィラキシー、アナフィラキシーショック、慢性蕁麻疹、急性蕁麻疹、喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、ヒスタミン中毒、頭痛、アトピー性皮膚炎、炎症性疾患、肥満細胞症、肥満細胞活性化症候群(MCAS)、子癇前症、妊娠悪阻、早期分娩、消化性潰瘍、呑酸、掻痒症および敗血症の治療に使用するための、項目1~15のいずれか1つに記載の組換えDAO。
【0134】
25.過剰ヒスタミンと関連する状態の治療用、特に慢性アレルギー疾患の治療用、より特にアナフィラキシー、アナフィラキシーショック、慢性蕁麻疹、急性蕁麻疹、喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、ヒスタミン中毒、頭痛、アトピー性皮膚炎、炎症性疾患、肥満細胞症、消化性潰瘍、呑酸、掻痒症および敗血症の治療用の医薬品を製造するための、項目1~15のいずれか1つに記載の組換えDAOの使用。
【0135】
26.DAOのGAG結合ドメインに、特に、配列番号1のナンバリングに関して568~575位のアミノ酸の1つ以上に特異的に結合する標的特異的リガンド。
27.DAOのGAG結合ドメインへの、特に、配列番号1のナンバリングに関して568~575位のアミノ酸のいずれか1つ以上へのヘパリン/ヘパラン硫酸の結合を特異的に阻害する標的特異的リガンド。
【0136】
28.前記リガンドが、核酸、小分子阻害剤または抗原結合タンパク質からなる群から選択される、項目26または項目27に記載の標的特異的リガンド。
29.前記リガンドが、特に、
- 抗体または抗体断片、例えば、Fab、Fd、scFv、ダイアボディ、トリアボディ、Fvテトラマー、ミニボディ、ナノボディ、シングルドメイン抗体、例えば、VH、VHH、IgNARまたはV-NARのいずれか、
- 抗体ミメティック、例えば、Adnectin(商標)、Affibody(登録商標)、Affilin(登録商標)、Affimer(登録商標)、アフィティン、アルファボディ、アプタマー、アンティカリン、アビマー、DARPin(登録商標)、Fynomer(登録商標)、クニッツドメインペプチド、モノボディもしくはNanoCLAMP、または
- 1つ以上の免疫グロブリンフォールドドメイン、抗体ドメインまたは抗体ミメティックを含む融合タンパク質
からなる群から選択される抗原結合タンパク質である、項目28に記載の標的特異的リガンド。
【0137】
30.DAOのヘパリン結合を調節する化合物の同定方法であって、
(a)配列番号1のDAO配列のアミノ酸の構造座標によって定義されるGAG結合ドメインのコンピュータモデルを構築する工程と、
(b)(i)前記化合物への分子断片のアセンブリング、
(ii)小分子データベースからの化合物の選択、および
(iii)前記化合物のde novoリガンド設計
からなる群から選択される方法によって、潜在的調節化合物を選択する工程と、
(c)ヘパリン結合ドメイン中での前記化合物のエネルギー最小化配置を供給するために
、前記化合物のコンピュータモデルとGAG結合ドメインのコンピュータモデルとの間のフィッティングプログラム操作を行う計算手段を使用する工程と、
(d)前記化合物とヘパリン/ヘパラン硫酸結合ドメインとの間の会合を定量するために前記フィッティング操作の結果を評価して、前記化合物の、前記ヘパリン結合ドメインとの会合能力を評価する工程
を含む同定方法。
【0138】
本明細書に記載される実施例は、本発明の説明に役立ち、それに関する限定とは意図されない。本発明の異なる実施形態を、本発明により記載した。本明細書に記載および例証される技術に関して、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、多数の修正形態および変形形態が可能である。それゆえ、実施例は例証であるのみで、本発明の範囲を限定はしないと理解される。
【実施例
【0139】
実施例1
修飾GAG結合ドメインを有するDAO:
概要:DAOのGAG結合(ヘパリン/ヘパラン硫酸結合ドメイン)のアミノ酸を変異させた。DAOのヘパリン結合ドメイン中での変異後、その変異体を用いて動物実験を行った。ラットにおいて、短いアルファ相半減期はほぼ消失させることができ、ベータ相半減期は6時間に延長された。アルファ相半減期は、薬物の、中枢区画から末梢区画への再分布の進行による血漿内濃度の低下速度に関し、ベータ相半減期は、薬物の代謝または排出に起因する消失の進行による低下速度に関する。曲線下面積(AUC)は、20倍超に増大した。ラットにおける6時間の半減期は、外挿法によりヒトにおける24~48時間と推定され、それは、過剰ヒスタミンによる、急性および亜急性の状態の治療に確かに十分である。例えば、アナフィラキシーまたはMCASの事象は、数時間から1~2日間続き、アナフィラキシーは、10~20%の患者では二相性であり得て、第2の発病が24時間以内に起こり得ることを意味する。いくつかの変異を試験すると、ヘパリン結合ドメイン内の異なる二重変異体が、薬物動態(PK)パラメータにおいて最も顕著な改善を示した。DAOはダイマーであり、ヘパリン結合ドメインは、両方とものモノマーからなる環構造を形成するため、4つの変異は互いに接近して位置する。それにもかかわらず、DAO野生型およびDAO変異体の発現、安定性および活性は同じである。
【0140】
修飾システインを有するDAO
DAOをCHO細胞中で発現させると、DAO分子の特定の割合(約20%~30%)は、ダイマーのみならずテトラマー、ヘキサマー、さらにはオクタマーさえも形成する。この高次オリゴマーは、未知の機能を有する天然バリアントと見なされ得る。該高次オリゴマーは、フォールディングおよび小胞体からゴルジ体への輸送および細胞外環境への分泌の最中に形成されるのか、または概して細胞外環境においてのみ形成されるのか分かっていない。それでも、それらのテトラマーおよびさらに大きなオリゴマーは、rhDAOの発現、精製、特性化、標準化、および最適な調合の選択を困難にする。したがって、DAOの表面上の比較的溶媒露出したシステインを変異させたところ、その変異体では、CHO細胞の上清中にDAOダイマーのみが見出される。
【0141】
ヘパリン/ヘパラン硫酸結合ドメイン中の2つの点変異および別個のシステイン中に単一変異を有するDAO構築物が、特定の実施形態である。
次の表は、組換えDAOを示す。リジンおよびアルギニンを極性アミノ酸で交換するトレオニンおよびセリンでの変異が、アラニンおよびグリシンよりも好ましかった。それが、もとのままの立体配座を維持するために役立った。
【0142】
【表1】
【0143】
Hepmut4変異が、ヘパリンへの結合の最も著しい損失を示した。Hepmut6は、齧歯動物において存在するGly/Gln/Thrで570/571/572を置換する三重変異である。齧歯動物配列中のグルタミンは同じく、負電荷の硫酸塩に結合でき、時にはアルギニンまたはリジンを置換できる。これまでのすべての動物実験は、齧歯動物で行った(マウスおよびラット)。
【0144】
以下は、野生型およびHepmutバリアントの精製DAOをヘパリンセファロースから溶出するためにKClおよびNaClを使用したヘパリンセファロース実験からのデータである。ヘパリンは、セファロースに非可逆的にカップリングされており、精製DAOを、低塩濃度でインキュベートしてから、KClまたはNaClの濃度を直線勾配で上昇させた。DAOタンパク質のピークを有する塩濃度(280nmでの吸光度を使用して測定)を、DAOが溶出されるmM塩濃度として使用する。
【0145】
図2は、組換えヒトDAOの野生型(WT)およびヘパリン変異体のヘパリンセファロース溶出プロファイルを示す。Hepmutバリアントは、DAO_WTと比べて早く溶出し、精製したDAO_WTおよびhepmutバリアントを、HiTrapヘパリンHP(ハイパフォーマンス)1mlカラム上に、50mM HEPES緩衝液(pH7.4)および0.2ml/分の流量を使用してロードした。溶出は、1M塩化ナトリウムを含む50mM HEPES(pH7.4)の0%~70%の直線勾配を使用して、60分の勾配時間で行った。rh=組換えヒト。KCl溶出には、精製rhDAOバリアントを、HiTrapヘパリンHP1mlカラム上に、10mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.2)および0.2ml/分の流量を使用してロードした。溶出は、1M塩化カリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.2)の0%~100%の直線勾配を使用して、60分の勾配時間で行った。この溶出プロファイルは示さないが、ピーク溶出時の塩濃度を以下に示す。
【0146】
表2および図3は、生の結果と、DAO野生型タンパク質を用いたデータに基づく正規化した結果も示す。2つの塩の実験からの平均値および標準偏差(SD)を計算し、棒グラフとして示した。棒の上方の数字は、表中の数字に対応する。DAO_WTに関しては、数字は溶出の塩濃度を表し、変異に関しては、DAO_WTの塩濃度との差異を示す。
【0147】
DAO_WTは、372mM NaClまたは310mM KClの塩濃度でヘパリンセファロースから溶出した。Hepmutは、それより著しく低い塩濃度で溶出した。NaCl溶出プロファイルとKCl溶出プロファイルとの間の相関係数Rは97%であり、p値は0.0056である。したがって、両プロファイルを組み合わせて平均値とSDを計算することが正当化されるように思われた。平均値±SDを、棒の高さ(平均値)およびエラーバー(±SD)で表す。
【0148】
【表2】
【0149】
図3は、DAO_WTと比べて50%低い塩濃度でヘパリンセファロースから溶出するHepmut1、4および7バリアントを示す。このデータは、表2による。
表3は、NaClおよびKClに関する、DAO_WTと比べた変異体のΔ塩濃度を示す。例えば、200mMは、変異体をヘパリンセファロースから溶出するには、DAO_WTと比べて200mM少ないNaClが必要であったことを意味する。
【0150】
【表3】
【0151】
このデータに基づくと、Hepmut4が最も弱いヘパリン結合変異体であるかもしれないが、Hepmut1およびHepmut7との差異は著しくはない。Hepmut2における単一リジン残基の変異は、ヘパリンセファロースとの親和性を低下させる。
【0152】
血清および血漿は、合わせて約145~150mMのNaおよびKならびに100mMのClイオンを含有する。Hepmut1、4および7のバリアントの、ヘパリンセファロースからの溶出は、血清中のイオンの生理的濃度の近傍であるため、これらの変異体は、in vivoでは最小活性であるはずで、それは、以下に細胞を用いてin vitroならびにラットおよびマウスにおいてin vivoで示されるように、そのとおりである。
【0153】
これらのデータは、DAOが、ヘパリン/ヘパラン硫酸結合ドメインを介してヘパリンに結合することを明確に示す。この結果をより大きなコンテクストにおいてとらえると、2つのアルギニンの変異を有するHepmut4を用いて、アルギニン残基のたった2/88=2.3%のみを変異させたにもかかわらず、DAO配列中の48個のリジンおよび88個のアルギニンアミノ酸(それらの大部分は表面露出している)のうちの1~2個のアルギニン/リジン残基の変異が、ヘパリン結合をほぼ無効にする。
【0154】
マウスおよびラットにおけるDAO_WTのクリアランスは、Hepmutバリアントと比べて著しく迅速である。ヘパリン結合ドメインが曲線下面積(AUC)値の減少に関与していると推測された。ヘパリン結合変異体は、低塩濃度でヘパリンセファロースから溶出し、ヘパリンまたはヘパラン硫酸の結合が低下していることを示唆する。
【0155】
次の実験一式では、DAOが結合するのみならず実際に内皮細胞へと内在化されて細胞内で小胞染色を示すことが見出された。Hepmutバリアントは、内皮細胞によってもはや内在化されない。内皮細胞は、静脈内投与後にDAOに曝される(血液細胞以外の)最初の細胞である。内皮細胞は血液と直接接触している。内皮細胞は、皮下投与後にもDAOに曝される。なぜなら、DAOは、リンパ系を介して血液区画に輸送されるからである。
【0156】
肝臓癌患者由来の、内皮細胞様の不死化細胞株であるSK-Hep1細胞をDAO_WTおよびHepmutバリアントと共にインキュベーションした後の免疫蛍光顕微鏡検査は、Hepmutバリアントの内在化が阻害されたことを示した。SK-Hep1細胞を、精製した組換えヒトDAOおよびHepmutバリアント(陰性対照=rhDAOの添加なし)の20μg/mlと共に60分間、37℃でインキュベートし、150mM塩化ナトリウムを含む150mMグリシン緩衝液(pH3.0)で2回およびPBSで1回洗浄して、膜結合性のDAOを除去した。固定および透過処理後、細胞を、ウサギ作製抗ABP1(ABP1=アミロライド結合タンパク質1、DAOの別名)抗体(Sigma Aldrich)の1:500希釈液とインキュベートした。Alexa Fluor 488標識ロバ抗ウサギ(H+L)(Jackson Research、711-545-152)の1:500希釈液を二次抗体として使用した。DAPIを、核の対比染色に使用した。HCX PL APO 63x/1.30グリセロール浸対物レンズならびにフィルタセットA4(DAPI用)およびL5(Alexa Fluor 488)を装備した倒立DMI-6000B顕微鏡(Leica Microsystems)を用いた蛍光顕微鏡検査により細胞を分析した。類似の結果が、内皮細胞(EC)研究に使用される典型的ECであるHUVEC=ヒト臍帯静脈内皮細胞を使用して得られた。
【0157】
Hepmut4およびHepmut7バリアントは、SK-Hep1細胞内への著しく低下した取込みを示したのに対して、Hepmut1は、DAO_WTの小胞様染色と似た、いくらかの染色をもたらした。これらの結果は、HepmutDAOバリアントが、EC内への取込みを妨げることを示したのみならず、DAOが細胞によって内在化することを初めて示した。DAOがECの表面に結合してDAOが細胞内に局在化したことが示されたが、細胞とDAOとのインキュベーション、およびDAO_WTが内在化したという証明は、DAO受容体の存在を示唆する。DAOが、EC上に存在するヘパラン硫酸グリコサミノグリカン、(ヘパリンは、人体の肥満細胞内にのみ存在する)に結合し、Hepmutバリアントは、もはや効果的に結合できないため内在化しないことが確認された。それが、同じく、本明細書に記載される、in vivoでのラットおよびマウスのデータに反映される。
【0158】
前記で考察した免疫蛍光データは、さらにウエスタンブロッティングデータに反映された。Hepmut4およびHepmut7のウエスタンブロッティングの信号に対するDAO_WTおよびHepmut1のウエスタンブロッティングの信号には6倍超の差異が存在する。これらのデータは、免疫蛍光データと一致する。Hepmut4およびHepmut7は、SK-Hep1細胞によって内在化されなかった。
【0159】
図4は、DAO_WTおよびHepmutバリアントとインキュベーション後のSK-Hep1細胞溶解液のウエスタンブロットを示す。A.レーン1:陰性対照、2:rhDAO_WT、3:rhDAO-Hepmut1、4:rhDAO-Hepmut4、5:rhDAO_Hepmut7。SK-Hep1細胞を、精製した各DAOバリアント(陰性対照=rhDAOの添加なし)の20μg/mlと共に37℃で60分間インキュベートし、150mM塩化ナトリウムを含む150mMグリシン緩衝液(pH3.0)で2回およびPBSで1回洗浄して、膜結合性のDAOを除去した。次いで、RIPA緩衝液を加えて超音波処理により細胞を溶解した。細胞溶解液をSDS-PAGEゲル上にロードしてからPVDF膜上にブロッティングした。膜をブロッキング後、精製したrhDAOで免疫化したウサギ由来の血清IgG分画の1:1000希釈液と共にインキュベートした。この工程に続いて、β-アクチンmABAC-15(Invitrogen)の1:5000希釈液とインキュベーションした。IRDye(登録商標)800CWヤギ抗ウサギIgG(H+L)二次抗体およびIRDye(登録商標)680RDヤギ抗マウスIgG(H+L)(Li-Cor)の1:5000希釈液を二次抗体として使用した。Odyssey Infrared Imaging System(Li-Cor)を使用して膜を700nmおよび800nmでスキャンした。B.バンド強度を、精製したrhDAO_WT(図示せず)に対して特定し、内在化したrhDAOの量を計算するために使用した。
【0160】
in vitroアッセイにおけるDAO_WTおよびHepmut4バリアントのSK-Hep1細胞に対する結合は、約5倍低い。DAOを、グリコサミノグリカン上のAlexa488蛍光色素で標識し、SK-HEP1細胞と共にインキュベートした。このアッセイは、マイクロタイタープレートで行う。蛍光シグナルは、洗浄および細胞溶解後に測定する。
【0161】
図5では、Hepmut4バリアントが、DAO_WTと比べて低下した、SK-Hep1細胞との結合を示す。
SK-Hep1細胞を96ウェルプレート中で増殖させ、0~8μg/mlの、Alexa488標識したrhDAO_WTおよびrhDAO-Hepmut4と共に60分間、37℃でインキュベートした。細胞を、150mM塩化ナトリウムを含む150mMグリシン緩衝液(pH3.0)で2回およびPBSで1回洗浄して、膜結合性のDAOを除去した。RIPA緩衝液を用いて細胞溶解後、Tecanプレートリーダーを使用して蛍光強度を測定した。三つ組の平均値と平均値の標準誤差(SEM)を示す。
【0162】
ラベルフリーの結合親和性を測定するための最新式の手段である等温滴定熱量測定(ITC)を使用して、DAO_WTおよびHepmut4の、高分子量ヘパリンおよび低分子量ヘパリン(HMWH、LMWH)との結合もさらに試験した。
【0163】
図6は、DAO_WTおよびHepmut4のITCデータを提供する。
160μMの高分子量ヘパリン(HMWH、Gilvasan、平均分子量=15kDa)および低分子量ヘパリン(LMWH、Lovenox、平均分子量=4.5kDa)の25x1μl注入を使用して、12.5μMの精製rhDAO_WTおよび12.0μMの精製rhDAO_Hepmut4を、等温滴定熱量測定(MicroCal PEAQ-ITC、Malvern)した。緩衝液は、150mM KClを含む50mM HEPES(pH7.3)であった。結合は、rhDAO_WTとHMWHとに関してのみ、423nMのK値で認められた。
【0164】
両成分のDAOタンパク質と2つのヘパリン分子とも不変かつ固定化されていないため、真の結合親和性の測定を可能にした。ヘパリンセファロースは、分子が1つのヘパリン分子から次のヘパリン分子へと滑走する多価マトリクスである。DAO_WTは、423nMのK値でHMWHに結合したのに対して、Hepmut4はHMWHに結合しなかった。DAO_WTは同じくLMWHには結合しなかった。
【0165】
DAO_WTおよびHepmut4の、C57BL6マウスへの静脈内注射
体重が約20グラムのC57BL6マウスの尾静脈に、DAO_WTおよびHepmut4タンパク質を1mg/kgで注射した。2つの精製DAOバリアントのタンパク質濃度および酵素活性は同等であった。タンパク質精製は、最近刊行されたように行った(Gludovacz 2016)。線形y軸目盛りおよび対数y軸目盛りを示す。
【0166】
図7には、線形y軸目盛り(a)および対数y軸目盛り(b)を示す。1mg/kgDAOバリアントの静脈内注射後、Hepmut4は、野生型DAOタンパク質と比べて、AUC(曲線下面積)を19倍超に増大させる。測定値(時点当たりn=3~4匹のマウス)±標準偏差を示す。DAO濃度は、自身で開発した、マウスDAOまたはラットDAOは認識しないヒトDAO ELISAを使用して測定した(Boehm 2017)。半減期およびAUCのデータを次の表に要約する。
【0167】
【表4】
【0168】
DAO_WTを使用した場合は約10分である、短時間のアルファ分布相半減期を排除するために、半減期は、60~1680分までで計算した。Hepmut4バリアントを使用すると、循環からのこの非常に迅速なDAOの消失は、もはやほぼ存在しない。60~1680分まで単一指数関数的に減衰する関数を使用した高度の曲線あてはめが存在する。
【0169】
DAO_WTおよびHepmut4の、C57BL6マウスへの腹腔内注射
体重が21グラムのマウスに、DAO_WTおよびHepmut4タンパク質を1mg/kgで腹腔内注射した。図8に示すように、腹腔内注射後、Hepmut4は、DAO_WTタンパク質と比べて、AUC(曲線下面積)を16倍超に増大させる。各時点は、3匹のマウスの平均値を表すため、全体で15匹のDAO_WTマウスおよび15匹のHepmut4マウスを使用した。平均値と標準偏差を示す。DAO濃度は、最近刊行されたヒトDAO ELISA(Boehm 2017)を使用して測定した。AUCデータを次の表に要約する。半減期データは含まない。なぜなら、腹腔内空間からのDAO_WTおよびHepmut4の吸収は同じであると想定する必要があったが、それは当てはまらないかもしれないからである。
【0170】
【表5】
【0171】
DAO_WTならびにHepmut1、4および7の、ラットへの静脈内注射
図9は、1mg/kgのDAO野生型および異なるHepmutバリアントを使用した測定値の平均値±標準偏差(SD)を示す。1mg/kgで投与したDAO野生型タンパク質と比べて遅いヘパリン結合ドメイン変異体のクリアランス。DAO_WTはn=9;Hepmut1はn=4;Hepmut4はn=5;Hepmut7はn=4;線形y軸目盛り。平均値とSDを示す。
【0172】
図10は、1mg/kgで投与したDAO野生型タンパク質と比べて遅いヘパリン結合ドメイン変異体のクリアランスを示す。DAO_WTはn=9;Hepmut1はn=4;Hepmut4はn=5;Hepmut7はn=4;対数y軸目盛り。平均値とSDを示す。
【0173】
DAO_WTおよびHepmut7は、短時間のアルファ相半減期を示し、最良適合曲線を得るために2つの方程式を使用する。それでも、Hepmut7のアルファ相半減期は、DAO_WTと比べて著しく長い。半減期は以下に示す。Hepmut1およびHepmut4に関しては、単一指数関数減衰が、最高の調整済み決定係数および最低のp値を有する最良適合を示す。これは、元データを含む図においても認められる。
【0174】
図11には、異なる導出(derived)指数方程式を使用した曲線を示す。これらの曲線を、後に示すAUCおよび半減期を計算するために使用した。
図11:1mg/kgで投与したDAO野生型タンパク質と比べて遅いヘパリン結合ドメイン変異体のクリアランス。DAO_WTはn=9;Hepmut1はn=4;Hepmut4はn=5;Hepmut7はn=4;対数y軸目盛り。これらの曲線は、最良適合指数方程式を用いて生成した。
【0175】
図12、13および14は、DAO野生型タンパク質を使用した場合の速いクリアランスを観察するために、最初の90分間を示す。
図12は、1mg/kgで投与したDAO野生型タンパク質と比べて遅いヘパリン結合ドメイン変異体のクリアランスを示す。DAO_WTはn=9;Hepmut1はn=4;Hepmut4はn=5;Hepmut7はn=4;対数y軸目盛り。最初の90分間のみを示す。
【0176】
以下は、それらの図の線形y軸バージョンである。
図13は、1mg/kgで投与したDAO野生型タンパク質と比べて遅いヘパリン結合ドメイン変異体のクリアランスを示す。DAO_WTはn=9;Hepmut1はn=4;Hepmut4はn=5;Hepmut7はn=4。これらの曲線は、最良適合指数方程式を用いて生成した。線形y軸目盛り。
【0177】
図14は、1mg/kgで投与したDAO野生型タンパク質と比べて遅いヘパリン結合ドメイン変異体のクリアランスを示す。DAO_WTはn=9;Hepmut1はn=4;Hepmut4はn=5;Hepmut7はn=4;最初の90分間のみを示す;線形y軸目盛り。
【0178】
DAO_WT処理ラットでのアルファ相半減期は短いことから、0分からと同様に5分から240分および1440分までのAUCを計算した。10分以内のデータ点は、かなりばらつきがあるようである。データを以下の表に要約する。
【0179】
【表6】
【0180】
Hepmutバリアントに関しては、0~1440分または5~1440分は、大きく影響はしないが、DAO野生型タンパク質に関しては、5分での開始は、AUCを著しく減少させた。最良適合指数方程式を用いて計算したDAO濃度は、理論上のDAO濃度を上回るため不可能である。AUCの著しい増大は、0~1440分の時間ウィンドウを使用しても同じく明らかに認められる。
【0181】
この実験一式においても、Hepmut4バリアントが、最強の効果を示す。それは、半減期データにも同じく反映される。
【0182】
【表7】
【0183】
【表8】
【0184】
結論として、DAOの推定上のヘパリン結合ドメイン中の変異は、ラットにおいて、1mg/kg体重の静脈内注射後にAUCを著しく増大させる。パフォーマンスが最善の変異体は、2つのアルギニンを除去した二重変異体Hepmut4である。これは、予測およびヘパリンセファロース溶出データに良く一致する。
【0185】
実施例2
修飾GAG結合ドメインを有するFc-DAO:
さらに、ヘパリン結合変異を有するFc-DAO融合バリアントも試験し、PKパラメータが、9時間のベータ相半減期およびAUCの増大によりさらに改善した。Fc-ガンマ受容体との高親和性相互作用に関与するアミノ酸を除去し、FcRNとの相互作用に関与するアミノ酸は変化させなかった。
【0186】
Fc-DAO_WTおよびFc-DAO-Hepmut4の、ラットへの静脈内注射
以下は、1mg/kgのFc-DAO野生型およびFc-Hepmut4のタンパク質を静脈内注射した後の6匹および4匹のラットからの線形目盛りおよび対数目盛りを使用した結果である。Fc-DAO野生型を用いた場合は4時間だけ測定した。それにもかかわらず、Fc-Hepmut4バリアントを用いて測定したように、外挿法により1680分まで推定するために導出指数関数を使用できる(以下を参照)。Fc-DAO融合タンパク質は、DAO野生型タンパク質と類似して非常に短時間のアルファ分布相半減期を示す。この融合バリアントの大部分は、20分以内に血漿から除去される。その後、半減期は、30、120および240時点の値を用いて計算して、約120分である。
【0187】
Fc-Hepmut4は、血漿中ではるかに安定である。DAOクリアランス機構は、Fc部分に対して明らかに支配的である。ラットにおけるヒトIgGの半減期は数日であり、この半減期は、主に、Fc部分の、FcRN受容体への結合により決まる。
【0188】
図15は、それぞれ6匹または4匹のラットにおいて1mg/kgで投与したFc-DAO野生型の、Fc-Hepmut4と比べて急速なクリアランスを示す。平均値と標準偏差を示す;線形y軸目盛り。
【0189】
図16は、それぞれ6匹または4匹のラットにおいて1mg/kgで投与したFc-DAO野生型の、Fc-Hepmut4と比べて急速なクリアランスを示す。平均値と標準偏差を示す;対数y軸目盛り。
【0190】
両データセットは、0.001未満のp値および>97%の調整済み決定係数値により、単一指数関数的に減衰する関数に最良適合できる。Fc-DAO野生型タンパク質に関しては、30分後の半減期が、時点30分、120分および240分からのデータに基づいて、120分であると計算された。2因子(two factor)指数減衰曲線あてはめは収束しなかった。Fc-DAOデータを外挿法により24時間まで推定するために最良適合方程式を使用する。その曲線を以下に示す。
【0191】
図17では、Fc-DAO-Hepmut4が、1mg/kgの静脈内投与後にAUCの著しい増大を示す;対数y軸目盛り。
図18では、Fc-DAO-Hepmut4が、1mg/kgの静脈内投与後にAUCの著しい増大を示す;線形y軸目盛り。
【0192】
曲線下面積は、静脈内注射から0分後および5分後から240分後または1440分後までで計算した。最初の数分での曲線あてはめは、Fc-DAOデータの0分における非常に高い値をもたらしたため、5分で開始するAUCも計算した。
【0193】
【表9】
【0194】
次の表にAUCの比を示し、計算した半減期を示す表が続く。
【0195】
【表10】
【0196】
【表11】
【0197】
Fc-Hepmut4バリアントはFc-DAOと比べて血漿中でより安定である。これは、非融合DAOバリアントを使用したマウスおよびラットのデータと一致する。それでも、Fc-Hepmut4の半減期は、IgG抗体と比べて依然としてむしろ短い。DAOクリアランスは、より遅いFcクリアランス機構に対して依然として支配的なようである。
【0198】
実施例3
修飾GAG結合ドメインおよび修飾cys123を有するDAO:
システイン123および633は、DAOダイマーのジスルフィド結合の形成には関与しない。
【0199】
タンパク質残基の相対的露出表面積または相対的溶媒露出度(RSA)は、残基の溶媒曝露の尺度である。式:RSA=ASA/MaxASA(式中、ASAは溶媒露出表面積であり、MaxASAは最大限可能な溶媒露出表面積または残基である)によって計算できる。ASAとMaxASAの両方とも一般的にはÅで測定する。
【0200】
RSA Cys123
Cys123=148Åのうちの93.84Åが露出=63.4%(モノマーB)
Cys123=148Åのうちの90.72Åが露出=61.3%(モノマーA)平均値=62.4%
RSA Cys633
Cys633=148のうちの34.62が露出=23.4%(モノマーB)
Cys633=148のうちの33.49が露出=22.6%(モノマーA)平均値=23%
Cys123は表面にあり、これは珍しいことである。アミノ酸システインは、おそらく、酸化可能であることから、タンパク質中、最もまれかつ「最少および最高度の」保存アミノ酸である(Marino SMとGladyshev VN,J Mol Biol.2010 Dec 17;404(5):p.902-16)。DAOは、まさにその、cys123の酸化を引き起こしかねない過酸化水素を生成し、その結果、そのシステインは、機能を著しく妨げかねないジスルフィド結合を形成し得る。そのシステインは、酵素中の触媒的アミノ酸として高度に保存されており、ジスルフィド結合の形成に関与するのであれば、DAO中でもそうである。Cys633は、構造内のより深くにあり、あまり接近できないため、凝集体形成には重要でないかもしれない。高いDAO濃度では役割を果たすかもしれない。
【0201】
DAOダイマーは、露出した2つのCys123アミノ酸を有し、1つのダイマーは、別のダイマーとジスルフィド結合を形成でき、テトラマーをもたらすが、2つのダイマーと相互作用してヘキサマーを形成することもできる。分泌シグナルを欠くDAOの、純粋にアミノ酸(732)に基づく分子量は、ダイマーでは166872Daであろう。テトラマーは333744Da、ヘキサマーは500617Daであり、オクタマーは667489Daであろうが、グリカンが、その分子量を約25%増大させるであろう(Elmore,2002)。DAOのモノマーまたはダイマーの高さは約65Åであるが、テトラマーでは130Å、ヘキサマーおよびオクタマーでは、それぞれ195Åおよび260Åに増大する。DAOの多量体スタックの構造についてはデータがない。凝集体は剛性または可撓性であり得る。これらの凝集体は確実に、より免疫原性である。なぜなら、2ダイマー間でネオエピトープが形成され得て、2回または3回反復し得て、潜在能力を、ならびに有効性および安全性に関して起こりそうな不利な結果を伴い得るからである(以下を参照)。
【0202】
【表12】
【0203】
DAOの高次凝集体が記載された。Paolucci等(Biochimie.1971;53(6):p.735-49)は、ヒト胎盤DAOの分子量が125kDa±5の1~4倍数、言い換えると、125、250、375および500kDaからなることを発表した。Tufvesson(Scand J Clin Lab Invest.1978 Sep;38(5):p.463-72)は、ヒト羊水からの精製後に、この場合もまた245kDaおよび485kDaの、ダイマーおよびテトラマーに相当するDAO分子量を発表した。Wilfingseder等(Inflamm Res.2002 Apr;51 Suppl 1:p.89-90)は、ウエスタンブロッティングを用いてヒト胎盤DAOの「複合体形成」を示した。
【0204】
異なるDAO発現プラスミドを、一過性発現させるためにExpiCHO細胞へとトランスフェクトした。培養の7日後に上清を用いて直接にウエスタンブロッティングを行った。その結果を図19に示す。
【0205】
図19:レーン1:HiMark標準;レーン2:陰性対照(空プラスミド);レーン3:rhDAO_WT;レーン4:rhDAOΔ123;レーン5:rhFc-DAO;レーン6:rhFc-DAOΔ123;レーン7:rhDAO-Hepmut4;レーン8:rhDAO-Hepmut4Δ123;レーン9:rhFc-DAO-Hepmut4;レーン10:rhFc-DAO-Hepmut4Δ123。rhFc=DAOを含む組換えヒトFc融合タンパク質;各培養上清の15μlをロードした。非還元条件下でSDS-PAGEを行った。抗体:MUVウサギ血清#408、1:5000。
【0206】
Cys123からAla123への変異は、組換えヒト野生型DAOおよびHepmut4バリアントの四量体化および高次凝集体形成を完全に妨げた。rhFc-DAO融合構築物では何の効果もない。それは、このFc融合バリアントでは凝集体形成がCys123によって引き起こされるのではなく、おそらく、同じくシステインを含有するFc部分によって引き起こされることを示唆する。
【0207】
メルカプトエタノールを使用した還元条件下では、ジスルフィド結合が開裂し、野生型DAOおよびHepmutsバリアントにも融合バリアントにも、テトラマーまたは高次凝集体が見られない。分子量は、71~117の間であり、単にアミノ酸に基づいて、83.436Daであると推定されるであろう。これらのデータは、cys123からala123への変異がDAOの四量体化および高次n量体バリアントを完全に妨げることを明らかに証明する。Cys633は関与しない。
【0208】
高次n量体バリアントのパーセントを大まかに定量するために、ImageJソフトウェアを使用して各レーンのシグナル強度を測定した。WTレーンと対応するcys123変異体レーンとを比較するために、同等サイズの領域を選択し(示すとおり)、シグナルプロファイルを生成した。各レーンの曲線下面積(AUC)を計算した。
【0209】
【表13】
【0210】
Cys123とAla123変異との間の平均値(SD)の差異は、レプリケート1および2からのデータを組み合わせて平均すると、WTおよびHepmut4変異体に関して、約19%(5.5%)である。Fc-DAOバリアントに関しては、平均値(SD)の差異は、-6%(15.4%)であり、言い換えると、cys123からala123への変異は異ならない。
【0211】
したがって、ala123変異は、概して製造および品質管理のために、さらには免疫原性の低下に関しても著しい利点を有するため、この変異はさらに臨床的にも非常に重要である。凝集体はより免疫原性であることが周知であるため、この変異を使用するとrhDAOの免疫原性が低下するであろう。
【0212】
Bartko(Alcohol.2016 Aug;54:p.51-9.)またはGludovacz 2016に記載された標準的DAO活性アッセイを使用して、上清のDAO活性を試験した。この場合、cys123からala123への変異はDAO活性に影響を及ぼさないことが確認された。図20には、DAO活性を示す。WT DAO、Hepmut4またはFcバリアントを100%に設定し、cys123からala123への変異体と比べた。DAO_WTとcys123変異との間にはDAO活性の著しい差異がないことが示される。
【0213】
実施例4
Asn168グリコシル化変異体の生成
Asn-168の部位特異的変異導入
N-グリコシル化部位のアスパラギンAsn-168(AAT)をグルタミン(CAG)で置換するために、部位特異的変異導入を用いて、DAO発現プラスミド(Gludovacz E.等,2016,J.Biotechnol.,227,p.120-130)中の対応するコドンを変異させた。したがって、次の5-リン酸化プライマー:Asn-168、CAGaccacaggcttctcattc(順方向、配列番号104)およびgaggaagaactgatgcag(逆方向、配列番号105)を用いてPCRを行った。Phusionポリメラーゼ(Thermo Fisher Scientific)を使用した:アニーリング温度:56.3℃;伸長時間、4分、30サイクル。ライゲーション(T4 DNAリガーゼ、New England Biolabs)および最終プラスミドの増幅を行った。配列の正しさは、DNAシーケンシングにより検証した(Eurofins MWG Operon)。すべてのクローニング技術は、Green M.R.とSambrook,J.(2012),Molecular Cloning:A Laboratory Manual 第4版 Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYおよびメーカー説明書に従って行った。
【0214】
rhDAO、競合タンパク質およびグリコシル化変異体の、ラットおよびマウスへの静脈内投与
ラットおよびマウスの取扱いに関する実験プロトコルは、地方動物福祉委員会およびオーストリア科学研究経済省によって認可され(GZ 66.009/0152-WF/V/3b/2014)、ARRIVEガイドライン(Kilkenny,C等,Br.J.Pharmacol.(2010)160,p.1577-1579)に完全に従って行った。頸静脈へのバスキュラーアクセスポート(離脱式シラスティックカテーテル付き齧歯動物用バスキュラーアクセスポート、Hugo-Sachs Elektronic-Harvard Apparatus)の植設には、ケタミン(100mg/kg)およびキシラジン(5mg/kg)の腹腔内注射によりラットを麻酔する。挿管後、連続的な従量式換気(O-空気混合物+1.5%イソフルラン)を介して麻酔を維持する。外科手術部分の毛皮を脱毛し、続いてヨード液(Betaisodona、Mundipharma)で消毒する。鎮痛のためにメタミゾール(100mg/kg)を皮下投与する。ラットの背側に約1cmの皮膚切開を行い、バスキュラーアクセスポートのバルーンを皮下に配置する。ポートを生理食塩水でフラッシュしてから、バルーンを、縫合線で肩甲骨間に固定する。左の頸静脈の部位で第2の皮膚切開を行い、カテーテル挿入のために頸静脈を切り開く。露出した左の頸静脈で小さく切開し、カテーテルを挿入し、絹糸(7-0)で固定する。皮下組織および皮膚を、単純断続縫合線(4-0)で閉じる。外科手術は無菌的に行う。平均的な外科手術時間は約2時間である。術後鎮痛は、ピリトラミドおよびグルコースを含む自由飲水(250mL飲料水中にピリトラミド30mgおよび10%グルコース10mL)で与える。実験中、バスキュラーアクセスポートを、アルガトロバン(Argatra 100mg/mL;Mitsubishi Pharma)10μg/mL、組織プラスミノーゲン活性化因子(Alteplase、Actilyse、Boehringer Ingelheim)0.3μg/mL、および凝固を防ぐための0.9%NaCl中クエン酸ナトリウム0.38%を含有する溶液で満たす。
【0215】
所定の時点に、短時間のイソフルラン麻酔下に、静脈採血(0.5mL)を行い、抗凝固用のクエン酸ナトリウムを含有する管に入れる。4時間以内に血漿を調製し、分析まで-32℃で保管する。生理食塩水(0.9%NaCl)を用いた置換液(0.5mL)をラットに与える。最終採血時点後に、ケタミン/キシラジン(35mgおよび5mg/kg)の深麻酔下に、ペントバルビタール(300mg/kg)の過量投与により殺処分する。体重約400gの雄ラット(Sprague-Dawley)および体重約20gの雌マウス(C57BL/6N)を含む。
【0216】
Sprague Dawley雄ラットは、市販業者(Janvier Labs、Le Genest-Saint-Isle、フランスおよびDivision Laboratory Animal Science and Genetics、Medical University of Vienna、Himberg、オーストリア)から購入する。ラットは、管理された標準条件下(人工的な明暗サイクル12:12、室温22±2℃、湿度45±10%)に収容する。ラットは、2匹の集団(マクロロン製の3つのケージ)で飼育し、環境エンリッチメントを与える。ラットは、水およびラット用完全飼料への自由なアクセスを有する(ラットおよびマウス用の完全飼料sniff R/M-H、sniff Spezialdiaeten GmbH)。
【0217】
雌マウス(C57BL/6N)は、市販業者(Charles River Laboratories,Sulzfeld、ドイツおよびDivision Laboratory Animal Science and Genetics、Medical University of Vienna、Himberg、オーストリア)から入手する。マウスは、管理された標準条件下(人工的な明暗サイクル12:12、室温22±2℃、湿度45±10%)に収容する。マウスは、5匹の集団(マクロロン製の2つの長いケージ)で飼育し、水、およびラットに対して前記のマウス用完全飼料への自由なアクセスを有する。
【0218】
静脈内投与後のラットおよびマウス中でのrhDAOの急速な血漿クリアランス
精製したrhDAO、野生型rhDAO、およびHepMut1からHepMut7変異のうちのいずれか1つまたはさらにCys123および/もしくはAsn168Gln変異を含むHepMut1からHepMut4のいずれかを含有するrhDAOを、1mg/kgでラットおよびマウスに静脈内投与し、指定の時点に血液サンプルを採取する。DAO抗原濃度を、最近刊行されたヒトDAO ELISA(Boehm T.等,2017,Clin.Biochem.,50,p.444-451)を使用して測定する。分布(アルファ)相半減期および消失(ベータ)相半減期は、ラットではそれぞれ約3分および230分であり、マウスではそれぞれ約11分および110分である。ラットでは、注入量の90%超が10分以内に血漿プールから除去される。マウスでの急速クリアランスはいくぶん遅い。
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【国際調査報告】