(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(54)【発明の名称】正極活物質、その製造方法、及びそれを含む正極を含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20220325BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20220325BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021548272
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(85)【翻訳文提出日】2021-08-17
(86)【国際出願番号】 KR2019018587
(87)【国際公開番号】W WO2020175781
(87)【国際公開日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】10-2019-0024389
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0176118
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521363413
【氏名又は名称】エスエム ラブ コーポレーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セオ ミン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジ ヨン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA13
5H050HA14
(57)【要約】
Liの一部がNaに置換され、Co元素以外の遷移金属(M)を含み、W、Mg及びTiのうち1種以上の元素を含むリチウム遷移金属酸化物を含む正極活物質、その製造方法、それを含む正極を具備したリチウム二次電池に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Liの一部がNaに置換され、Co元素以外の遷移金属(M)を含み、W、Mg及びTiのうち1種以上の元素を含み、S元素をさらに含むリチウム遷移金属酸化物を含む、正極活物質。
【請求項2】
前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式1で表される、請求項1に記載の正極活物質。
Li
xNa
1-xM
yM’
zO
2-tS
t・・・(化学式1)
前記化学式1で、
Mは、Co、W、Mg及びTiを除いた元素周期律表第3族ないし第12族元素から選択された1種以上の元素を含み、
M’は、W、Mg及びTiのうちから選択された1種以上の元素を含み、
0<x≦0.01、0<y<1、0<z<1、0<t≦0.01である。
【請求項3】
前記y及び前記zは、0<z(y+z)≦0.02を満足する、請求項2に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式2で表される、請求項1に記載の正極活物質。
Li
xNa
1-xM
1-(α+β+γ)W
αMg
βTi
γO
2-tS
t・・・(化学式2)
前記化学式2で、
Mは、Sc、Y、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd及びHgのうちから選択された1種以上の元素を含み、
0<x≦0.01、0<α≦0.01、0<β≦0.005、0<γ≦0.005、0<t≦0.01、0<α+β+γ≦0.02である。
【請求項5】
前記化学式2で、β及びγは、それぞれ0<β≦0.003、0<γ≦0.003である、請求項4に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記Mは、Ni、Mn、Al、V、Ca、Zr、B及びPのうちから選択された1種以上の元素を含む、請求項4に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記リチウム遷移金属酸化物は、単一粒子である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記リチウム遷移金属酸化物は、単結晶である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式3または4で表される、請求項1に記載の正極活物質。
Li
1-x’Na
x’Ni
y1’Mn
y2’W
α’Mg
β’Ti
γ’O
2-a’S
a’ ・・・(化学式3)
Li
1-x”Na
x”Ni
y1”Al
y2”W
α”Mg
β”Ti
γ”O
2-a”S
a” ・・・(化学式4)
前記化学式3で、
0<x’≦0.01、0<α’≦0.01、0<β’≦0.005、0<γ’≦0.005、0<a’≦0.01、0<α’+β’+γ’≦0.02、0.48≦y1’<1、0<y2’≦0.2、y1’+y2’+α’+β’+γ’=1であり、
前記化学式4で、
0<x”≦0.01、0<α”≦0.01、0<β”≦0.005、0<γ”≦0.005、0<a”≦0.01、0<α”+β”+γ”≦0.02、0.73≦y1”<1、0<y2”≦0.1、y1”+y2”+α”+β”+γ”=1である。
【請求項10】
前記化学式3で、0<β’≦0.003、0<γ’≦0.003、0<α’+β’+γ’≦0.016であり、
前記化学式4で、0<β”≦0.003、0<γ”≦0.003、0<α”+β”+γ”≦0.016である、請求項9に記載の正極活物質。
【請求項11】
前記リチウム遷移金属酸化物は、層状構造を含む、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項12】
前記リチウム遷移金属酸化物は、電気化学反応後、CuKα線を利用するXRD分析によって得たX線回折スペクトルの(003)面におけるピーク値(I
a)、及び(104)面におけるピーク値(I
b)の比率(I
a/I
b)値が1.0以上である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項13】
前記リチウム遷移金属酸化物の平均粒径(D
50)は、0.1μmないし20μmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項14】
Liの一部がNaに置換され、Co元素以外の遷移金属(M)を含み、W、Mg及びTiのうち1種以上の元素を含み、S元素をさらに含む前駆体化合物を製造する段階と、
前記前駆体化合物を熱処理し、正極活物質を得る熱処理段階と、を含む、正極活物質の製造方法。
【請求項15】
前記前駆体化合物を製造する段階は、
Li元素含有化合物、Na元素含有化合物、W元素含有化合物、Mg元素含有化合物、及びTi元素含有化合物のうち、M元素含有化合物、及びS元素含有化合物を混合する混合段階を含む、請求項14に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項16】
前記混合段階は、機械的混合する段階を含む、請求項15に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項17】
前記熱処理段階は、第1熱処理段階及び第2熱処理段階を含み、
前記第1熱処理段階の熱処理温度は、前記第2熱処理段階の熱処理温度より高い、請求項14に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項18】
請求項1ないし11のうちいずれか1項に記載の正極活物質を含む正極と、
負極と、
電解質と、を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規組成の正極活物質、それを含む正極、及び前記正極を含むリチウム二次電池に関する。
【0002】
本発明は、「中大型リチウム二次電池用高強度/長寿命/高安定性NiリッチNCA(>210mAh/g、@4.3V)正極素材開発」という題目の課題固有番号P0009541の産業通商資源部の資金支援を受けてなされた。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、1991年、ソニー社によって商用化された後、モバイルIT製品のような小型家電から、中大型電気自動車及びエネルギー保存システムまで、多様な分野において需要が急増している。特に、中大型電気自動車及びエネルギー保存システムのためには、低価型高エネルギー正極素材が必須であるが、現在商用化された正極活物質である単結晶型LiCoO2(LCO)の主原料であるコバルトは、高価である。
【0004】
最近では、製造コストを低くしながら、容量を極大化させるために、Niのモル比を、50モル%以上含む高ニッケル系正極活物質が注目されている。そのようなNi系正極活物質は、共沈法で合成した遷移金属化合物前駆体をリチウムソースと混合した後、固相に合成して製造される。しかし、そのように合成されたNi系正極素材は、小さい一次粒子が塊になっている二次粒子形態で存在し、長期間の充電/放電過程において、二次粒子内部に微細亀裂(micro-crack)が生じるという問題点が存在する。該微細亀裂は、正極活物質の新たな界面と、電解液の副反応とを誘発し、その結果、ガス発生による安定性低下、及び電解液枯渇による電池性能低下のような電池性能劣化が誘発される。また、高エネルギー密度具現のために、電極密度の増大(>3.6g/cc)を必要とするが、それは、二次粒子の崩壊を誘発し、電解液との副反応による電解液枯渇を誘発し、初期寿命急減を誘発する。結局、既存の共沈法で合成した二次粒子形態のNi系正極活物質は、高エネルギー密度を具現することができないことを意味する。
【0005】
前述の二次粒子形態のNi系正極活物質の問題点を解決すべく、最近、単粒子型Ni系正極活物質に係わる研究がなされている。該単結晶型Ni系正極活物質は、3.6g/cc超過の電極密度でも、粒子の崩壊が発生せず、すぐれた電気化学性能を具現することができる。しかし、そのような単結晶型Ni系正極活物質は、電気化学評価時、不安定なNi3+イオン、Ni4+イオンにより、構造的及び/または熱的不安定性により、バッテリ安定性が低下してしまうという問題点が提起されている。従って、高エネルギーリチウム二次電池開発のため、単結晶型Ni系正極活物質の不安定なNiイオンを安定化させる技術への要求が依然として存在する。
【0006】
一方、最近では、コバルトの価格が上昇することにより、正極活物質の価格が上昇し、いる。そのために、コバルト元素を含まない低価型正極活物質開発のための研究が進められているが、コバルト元素を含まない場合、相の安定性が低下してしまうという問題点が生じた。
【0007】
従って、コバルト元素を含まずに、高エネルギー密度を有し、高い電極密度を有する正極活物質の開発への要求が相当のものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、単結晶型Ni系正極活物質内にCoイオンを含まないにもかかわらず、不安定なNiイオンが安定化された高エネルギー密度特性及び長寿命特性が向上された正極活物質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一側面により、Liの一部がNaに置換され、Co元素以外の遷移金属(M)を含み、W、Mg及びTiのうち1種以上の元素を含み、S元素をさらに含むリチウム遷移金属酸化物を含む正極活物質が提供される。
【0010】
他の側面により、Liの一部がNaに置換され、Co元素以外の遷移金属(M)を含み、W、Mg及びTiのうち1種以上の元素を含み、S元素をさらに含む前駆体化合物を製造する段階と、前記前駆体化合物を熱処理し、正極活物質を得る熱処理段階と、を含む正極活物質の製造方法が提供される。
【0011】
さらに他の側面により、前述の正極活物質を含む正極と、負極と、電解質と、を含むリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0012】
一側面による正極活物質は、Coを含まないにもかかわらず、Liの一部がNa元素に置換され、Co元素以外の遷移金属(M)を含み、W、Mg及びTiのうち1種以上の元素を含むことにより、正極活物質に存在する不安定なNi陽イオンが安定化され、結晶構造が安定化され、それを含むリチウム二次電池は、高エネルギー密度及び長寿命特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】実施例1及び比較例1の正極活物質に係わるSEM写真である。
【
図1B】実施例1及び比較例1の正極活物質の粒度分布を示すグラフである。
【
図2A】実施例2及び比較例5の正極活物質に係わるSEM写真である。
【
図2B】実施例2及び比較例5の正極活物質の粒度分布を示すグラフである。
【
図3】実施例3及び比較例9のハーフセルに係わる寿命維持率グラフである。
【
図4】実施例3、及び比較例10ないし12のハーフセルに係わる寿命維持率グラフである。
【
図5】実施例4及び比較例13のハーフセルに係わる寿命維持率グラフである。
【
図6】実施例4及び比較例16のハーフセルに係わる寿命維持率グラフである。
【
図7】比較例1の正極活物質、及び比較例9のハーフセルの100サイクル充放電後の負極活物質のXRDグラフである。
【
図8】実施例1の正極活物質、及び実施例3のハーフセルの100サイクル充放電後の負極活物質のXRDグラフである。
【
図9】例示的な具現例によるリチウム電池の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下で説明される本創意的思想(present inventive concept)は、多様な変換を加えることができ、さまざまな実施例を有することができるが、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明によって詳細に説明する。しかし、それらは、本創意的思想を、特定実施形態について限定するものではなく、本創意的思想の技術範囲に含まれる全ての変換、均等物または代替物を含むものであると理解されなければならない。
以下で使用される用語は、単に特定実施例についての説明に使用されたものであり、本創意的思想を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。以下において、「含む」または「有する」というような用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わせが存在することを示すものであり、1またはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わせの存在または付加の可能性を事前に排除するものではないと理解されなければならない。以下で使用される「/」は、状況により、「及び」とも解釈され、「または」とも解釈される。
【0015】
図面において、さまざまな層及び領域を明確に表現するために、厚みは、拡大したり縮小したりして示されている。明細書全体を通し、類似した部分については、同一図面符号を付した。明細書全体において、層、膜、領域、板のような部分が、他の部分の「上」または「上部」にあるとするとき、それは、他の部分の真上にある場合だけではなく、その中間に、さらに他の部分がある場合も含む。明細書全体において、第1、第2のような用語は、多様な構成要素についての説明に使用されうるが、該構成要素は、該用語によって限定されるものではない。該用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみに使用される。
【0016】
以下において、例示的な具現例による正極活物質、その製造方法、及びそれを含む正極を含むリチウム二次電池につき、さらに詳細に説明する。
【0017】
一側面による正極活物質は、Liの一部がNaに置換され、Co元素以外の遷移金属(M)を含み、W、Mg及びTiのうち1種以上の元素を含み、S元素をさらに含むリチウム遷移金属酸化物を含んでもよい。
一般的に、層状型単結晶正極活物質は、充放電過程において、構造的安定性を維持するために、Coを正極活物質組成内に含む。しかし、Coの高い価格により、構造的安定性のために、Coの含量を高める場合、製造コストが顕著に増大し、産業的適用が困難である実情である。そのために、Coを含まない高容量の正極活物質に係わる研究が持続的になされているが、充放電時、相転換による非可逆容量が顕著に増大する限界点が存在する。
【0018】
本発明の発明者は、Coを含まないにもかかわらず、高ニッケル系リチウム遷移金属酸化物のLiのうち一部をNaに置換し、Coを除いた遷移金属(M)に、W、Mg及びTiのうち1種以上の元素を置換し、酸素のうち一部をS元素に置換することにより、充放電にも、非可逆相の発生を抑制するだけではなく、構造的安定性を有する正極活物質を製造した。一般的に、高ニッケル系リチウム遷移金属酸化物の場合、Co不在の場合、不安定なNi(III)イオン及びNi(IV)イオンに起因する電解液との副反応による正極活物質の劣化、及びそれによる構造的変形による寿命特性が劣化される。しかし、本発明の発明者は、Coの代わりに、W、Mg及びTiのうち1種以上の元素、望ましくは、W元素、Mg元素及びTi元素を同時に正極活物質結晶内に導入し、不安定なニッケルイオンを還元させ、構造的安定化がなされることを確認した。それだけではなく、Liが位置する格子空間にNaが置換される場合、リチウムに比べ、イオン半径が大きいNaの介入により、充電状態において、リチウムの脱離時、リチウム遷移金属酸化物内の酸素原子間の反撥力による結晶構造の膨脹が抑制され、その結果、反復的充電時にも、リチウム遷移金属酸化物の構造的安定性が達成される。また、Oの一部をSに置換することにより、Sと遷移金属との結合力が増大し、リチウム遷移金属酸化物の結晶構造の転移が抑制され、その結果、リチウム遷移金属酸化物の構造的安定性が向上される。NaをLiの格子空間に導入し、SをOの格子空間に導入することにより、遷移金属との結合力を増加させるだけではなく、充電状態において、酸素原子間の反撥力を低減させることができるので、構造的安定性が顕著に向上する。
【0019】
一具現例によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式1によっても表される:
LixNa1-xMyM’zO2-tSt・・・(化学式1)
前記化学式1で、Mは、Co、W、Mg及びTiを除いた元素周期律表第3族ないし第12族元素から選択された1種以上の元素を含み、M’は、W、Mg及びTiのうちから選択された1種以上の元素を含み、0<x≦0.01、0<y<1、0<z<1、0<t≦0.01である。
【0020】
一具現例によれば、前記y及び前記zは、0<z(y+z)≦0.02を満足することができる。ここで、zは、W、Mg及びTiのうちから選択された1種以上の元素のモル比を意味する。従って、前記リチウム遷移金属酸化物の遷移金属において、W、Mg及びTiのうちから選択された1種以上の元素のモル比は、0超過0.02以下でもある。
【0021】
例えば、前記y及び前記zは、0<z(y+z)≦0.016でもある。
【0022】
一具現例によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式2によっても表される:
LixNa1-xM1-(α+β+γ)WαMgβTiγO2-tSt・・・(化学式2)
前記化学式2で、Mは、Sc、Y、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd及びHgのうちから選択された1種以上の元素を含み、0<x≦0.01、0<α≦0.01、0<β≦0.005、0<γ≦0.005、0<t≦0.01、0<α+β+γ≦0.02である。
【0023】
一具現例によれば、前記化学式2でMは、Ni、Mn、Al、V、Ca、Zr、B及びPのうちから選択された1種以上の元素を含んでもよい。
【0024】
例えば、前記化学式2でMは、Ni、Mn、Al、Zr及びPのうちから選択された1種以上の元素を含んでもよい。
【0025】
一具現例によれば、前記xは、0<x≦0.01でもある。ここで、xは、化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物において、Liに係わるNaの置換モル比を意味する。前記化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物のLiの一部がNaに置換されることにより、構造的安定性が向上されうる。Liが位置する格子空間にNaが置換される場合、リチウムに比べ、イオン半径が大きいNaの介入により、充電状態において、リチウムの脱離時、リチウム遷移金属酸化物内の酸素原子間の反撥力による結晶構造の膨脹が抑制され、その結果、反復的充電時にも、リチウム遷移金属酸化物の構造的安定性が達成される。
【0026】
一具現例によれば、前記αは、0<α≦0.01でもある。ここで、αは、化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物において、M元素に係わるWの置換モル比を意味する。Wが前記範囲に置換される場合、リチウム遷移金属酸化物の構造的安定性が向上される。Wの置換モル比が0.01を超える場合、結晶構造上のねじれによる構造的安定性の低下が誘発され、不純物としてWO3が形成され、電気化学的特性の低下が招かれてしまう。
【0027】
一具現例によれば、前記βは、0<β≦0.005でもある。ここで、βは、化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物において、M元素に係わるMgの置換モル比を意味する。Mgの置換モル比が前記範囲を満足する場合、充電状態において、リチウム遷移金属酸化物の構造的膨脹が抑制されうる。
【0028】
一具現例によれば、前記γは、0<γ≦0.005でもある。ここで,γは、化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物において、M元素に係わるTiの置換モル比を意味する。Tiの置換モル比が前記範囲を満足する場合、充電状態において、リチウム遷移金属酸化物の構造的膨脹が抑制されうる。
【0029】
前述のW、Mg、Tiが、前記モル比で前記リチウム遷移金属酸化物に置換される場合、充電状態において、リチウム脱離時にも、リチウム遷移金属酸化物内における、酸素間の相互作用による結晶の構造的膨脹抑制により、構造的安定性が向上し、寿命特性が向上される。
【0030】
一具現例によれば、α、β及びγの和は、0<α+β+γ≦0.02でもある。例えば、α、β及びγの和は、0<α+β+γ≦0.016でもある。α+β+γが前記範囲を満足する場合、リチウム遷移金属酸化物の構造的安定性が保証される。α+β+γが0.02を超える場合、不純物相が形成され、それは、リチウム脱離時、抵抗として作用するだけではなく、反復的充電時、結晶構造の崩壊が引き起こされてしまう。
【0031】
一具現例によれば、前記化学式1において、β及びγは、それぞれ0<β≦0.003、0<γ≦0.003でもある。
例えば、前記化学式1で、β=γでもある。β=γである場合、例えば、Mg及びTiのモル比が同一である場合、充電時及び放電時、リチウム遷移金属酸化物内の電荷均衡がなされ、結晶構造の崩壊が抑制され、構造的安定性が向上し、その結果、寿命特性が向上される。
【0032】
一具現例によれば、前記aは、0<a≦0.01でもある。例えば、0<a≦0.005、0<a≦0.003または0<a≦0.001でもある。ここで、aは、化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物において、O元素に係わるSの置換モル比を意味する。
【0033】
酸素元素の一部がSに置換されることにより、遷移金属との結合力が増大し、リチウム遷移金属酸化物の結晶構造の転移が抑制され、その結果、リチウム遷移金属酸化物の構造的安定性が向上される。
【0034】
一方、Sの置換モル比が0.01を超える場合、S陰イオンの反撥力により、結晶構造が不安定になり、むしろ寿命特性が低下される。
【0035】
一具現例によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、単一粒子でもある。単一粒子は、複数の粒子が凝集されて形成された二次粒子、または複数の粒子が凝集され、凝集体の周囲がコーティングされて形成された粒子とは、区分される概念である。前記リチウム遷移金属酸化物が単一粒子の形態を有することにより、高い電極密度においても、粒子の崩れを防止することができる。従って、リチウム遷移金属酸化物を含む正極活物質の高エネルギー密度の具現が可能になる。また、複数の単一粒子が凝集された二次粒子に比べ、圧延時、崩れが抑制され、高エネルギー密度の具現が可能であり、粒子の崩れによる寿命劣化も防止することができる。
【0036】
一具現例によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、単結晶を有することができる。単結晶は、単一粒子とは区別される概念を有する。該単一粒子は、内部において、結晶の類型及び個数にかかわらず、1つの粒子によって形成された粒子を称するものであり、該単結晶は、粒子内にただ1つの結晶を有するものを意味する。そのような単結晶のリチウム遷移金属酸化物は、構造的安定性が非常に高いだけではなく、多結晶に比べ、リチウムイオン伝導が容易であり、多結晶の活物質に比べ、高速充電特性にすぐれる。
【0037】
一具現例によれば、前記正極活物質は、単結晶及び単一粒子である。単結晶及び単一粒子によって形成されることにより、構造的に安定し、高密度の電極の具現が可能であり、それを含むリチウム二次電池が、向上された寿命特性及び高エネルギー密度を同時に有することができる。
【0038】
一具現例によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式3または4によっても表される:
Li1-x’Nax’Niy1’Mny2’Wα’Mgβ’Tiγ’O2-a’Sa’ ・・・(化学式3)
Li1-x”Nax”Niy1”Aly2”Wα”Mgβ”Tiγ”O2-a”Sa” ・・・(化学式4)
【0039】
前記化学式3で、0<x’≦0.01、0<α’≦0.01、0<β’≦0.005、0<γ’≦0.005、0<a’≦0.01、0<α’+β’+γ’≦0.02、0.68≦y1’<1、0<y2’≦0.3、y1’+y2’+α’+β’+γ’=1であり、前記化学式4で、0<x”≦0.01、0<α”≦0.01、0<β”≦0.005、0<γ”≦0.005、0<a”≦0.01、0<α”+β”+γ”≦0.02、0.78≦y1”<1、0<y2”≦0.2、y1”+y2”+α”+β”+γ”=1である。
【0040】
例えば、前記化学式3で、0<β’≦0.003、0<γ’≦0.003、0<α’+β’+γ’≦0.016であり、前記化学式4で、0<β’’≦0.003、0<γ”≦0.003、0<α”+β”+γ”≦0.016でもある。
【0041】
例えば、前記化学式3で、0.78≦y1’<1、0<y2’≦0.2、0<a’≦0.001でもある。
【0042】
例えば、前記化学式4で、0.88≦y1”<1、0<y2”≦0.1、0<a”≦0.001でもある。
【0043】
前記組成を満足するリチウム遷移金属酸化物は、内部において、不安定なNiイオンを安定化させることができ、高エネルギー密度及び長寿命安定性を保有することができる。
【0044】
一般的なコバルト非含有(Co-free)高ニッケル系正極活物質の場合、不安定なNiイオンの安定化が必須であるが、結晶内の遷移金属サイトのうち一部に、W、Mg及びTiが導入されることにより、正極活物質が全体的に電荷均衡をなすことができるようになり、Ni(II)イオンから、不安定なNi(III)イオンまたはNi(IV)イオンへの酸化を抑制し、不安定なNi(III)またはNi(IV)は、Ni(II)に還元されうる。一方、遷移金属の一部を、異種元素であるW、Mg及びTiに置換することによる伝導度の損失は、Oの一部をSに置換することによって補償され、Liの一部をNaに置換することにより、充放電時の構造的変形によるLiの伝導度低下も抑制することにより、単結晶の構造的に安定した高容量及び長寿命の正極活物質を得た。
【0045】
一具現例によれば、前記リチウム遷移金属酸化物の平均粒径(D50)は、0.1μmないし20μmでもある。例えば、前記平均粒径(D50)は、0.1μmないし15μm、0.1μmないし10μm、1μmないし20μm、5μmないし20μm、1μmないし15μm、1μmないし10μm、5μmないし15μm、または5μmないし10μmでもある。前記リチウム遷移金属酸化物の平均粒径が前記範囲に属する場合、所望する体積当たりエネルギー密度を具現することができる。前記リチウム遷移金属酸化物の平均粒径が20μmを超える場合、充放電容量の急激な低下をもたらすことになり、0.1μm以下である場合、所望する体積当たりエネルギー密度を得難い。
【0046】
一具現例によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、層状構造を含むことにもなる。
【0047】
他の具現例によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、層状構造及び岩塩構造を含む層状岩塩型構造を有することにもなる。
【0048】
リチウムニッケル系遷移金属酸化物の場合、電気化学的反応により、層状構造が岩塩構造に相転移が容易に起こりうる。特に、構造的安定性が落ちるコバルト非含有正極活物質の場合、相転移がさらに容易に起こりうる。該岩塩構造は、非可逆相であるので、容量低下を引き起こす。従って、電気化学的反応による層状構造から岩塩構造への転換を抑制することが高容量特性及び長寿命特性の観点において望ましい。
【0049】
一具現例によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、電気化学反応後、CuKα線を利用するXRD分析によって得たX線回折スペクトルの(003)面におけるピーク値(Ia)、及び(104)面におけるピーク値(Ib)の比率(Ia/Ib)値が1.0以上でもある。一般的に、前記Ia/Ib値が1.0以上、例えば、約1.1である場合、層状構造を有すると判断するが、本発明の一具現例によるリチウム遷移金属酸化物は、電気化学反応後にも層状構造を維持することができる。
【0050】
以下、一側面による正極活物質の製造方法について詳細に説明する。
【0051】
一側面による正極活物質の製造方法は、Liの一部がNaに置換され、Co元素以外の遷移金属(M)を含み、W、Mg及びTiのうち1種以上の元素を含み、S元素をさらに含む前駆体化合物を製造する段階と、前記前駆体化合物を熱処理し、正極活物質を得る熱処理段階と、を含む。
【0052】
一具現例によれば、前記前駆体化合物を製造する段階は、Li元素含有化合物、Na元素含有化合物、W元素含有化合物、Mg元素含有化合物及びTi元素含有化合物のうち、M元素含有化合物、及びS元素含有化合物を混合する段階を含んでもよい。
【0053】
前記正極活物質に係わる内容は、前述のところを参照する。
【0054】
前記混合段階は、前記特定元素含有化合物を機械的混合することを含む。前記機械的混合は、乾式によって遂行される。前記機械的混合は、機械的力を加え、混合する物質を粉砕して混合し、均一な混合物を形成するものである。該機械的混合は、例えば、化学的に不活性であるビード(beads)を利用するボールミル(ball mill)、遊星ミル(planetary mill)、撹拌ボールミル(stirred ball mill)、振動ミル(vibrating mill)のような混合装置を利用しても行われる。このとき、混合効果を極大化させるために、エタノールのようなアルコール、ステアリン酸のような高級脂肪酸を選択的に少量添加することができる。
【0055】
前記機械的混合は、酸化雰囲気で行われるが、それは、遷移金属供給源(例:Ni化合物)において、遷移金属の還元を防ぎ、活物質の構造的安定性を具現するためのものである。
【0056】
前記リチウム元素含有化合物は、リチウムの水酸化物、酸化物、窒化物、炭酸化物、またはそれらの組み合わせを含んでもよいが、それらに限定されるものではない。例えば、リチウム前駆体はLiOHまたはLi2CO3でもある。
【0057】
前記Na元素含有化合物は、Naの水酸化物、酸化物、窒化物、炭酸化物、またはそれらの組み合わせを含んでもよいが、それらに限定されるものではない。例えば、NaOH、Na2CO3、またはそれらの組み合わせでもある。
【0058】
前記W元素含有化合物は、Wの水酸化物、酸化物、窒化物、炭酸化物、またはそれらの組み合わせを含んでもよいが、それらに限定されるものではない。例えば、W(OH)6、WO3、またはそれらの組み合わせでもある。
【0059】
前記Mg元素含有化合物は、Mgの水酸化物、酸化物、窒化物、炭酸化物、またはそれらの組み合わせを含んでもよいが、それらに限定されるものではない。例えば、Mg(OH)2、MgCO3、またはそれらの組み合わせでもある。
【0060】
前記Ti元素含有化合物は、Tiの水酸化物、酸化物、窒化物、炭酸化物、またはそれらの組み合わせを含んでもよいが、それらに限定されるものではない。例えば、Ti(OH)2、TiO2、またはそれらの組み合わせでもある。
【0061】
前記M元素含有化合物は、Co、W、Mg及びTiを除いた元素周期律表第3族ないし第12族元素から選択された1種以上の元素の水酸化物、酸化物、窒化物、炭酸化物、またはそれらの組み合わせを含んでもよいが、それらに限定されるものではない。例えば、Ni0.8Mn0.1(OH)2またはNi0.95Al0.05(OH)2でもある。
【0062】
前記S元素含有化合物は、Sの水酸化物、酸化物、窒化物、炭酸化物、アンモニウム化物、またはそれらの組み合わせを含んでもよいが、それらに限定されるものではない。例えば、(NH4)2Sでもある。
【0063】
前記熱処理段階は、第1熱処理段階及び第2熱処理段階を含んでもよい。前記第1熱処理段階及び前記第2熱処理段階は、連続して遂行されるか、あるいは該第1熱処理段階後、休息期を有することができる。また、前記第1熱処理段階及び前記第2熱処理段階は、同一チャンバ内でもなされ、互いに異なるチャンバ内においてもなされる。
【0064】
前記第1熱処理段階における熱処理温度は、前記第2熱処理段階における熱処理温度よりも高い。
【0065】
前記第1熱処理段階は、熱処理温度800℃ないし1,200℃においても遂行される。前記熱処理温度は、例えば、850℃ないし1,200℃、860℃ないし1,200℃、870℃ないし1,200℃、880℃ないし1,200℃、890℃ないし1,200℃、または900℃ないし1,200℃でもあるが、それらに限定されるものではなく、前記範囲内において、任意の2つの地点を選択して構成された範囲をいずれも含む。
【0066】
前記第2熱処理段階は、熱処理温度は、650℃ないし850℃においても遂行される。前記熱処理温度は、680℃ないし830℃、690℃ないし820℃、700℃ないし810℃、650℃ないし800℃、650℃ないし780℃、650℃ないし760℃、650℃ないし740℃、650℃ないし720℃、または680℃ないし720℃でもあるが、それらに限定されるものではないで、前記範囲内において、任意の2つの地点を選択して構成された範囲をいずれも含む。
【0067】
一具現例によれば、前記第1熱処理段階における熱処理時間は、前記第2熱処理段階における熱処理時間よりも短い。
【0068】
例えば、前記第1熱処理段階における熱処理時間は、3時間ないし10時間、4時間ないし9時間、または5時間ないし8時間でもあるが、それらに限定されるものではなく、前記範囲内において、任意の2つの地点を選択して構成された範囲をいずれも含む。
【0069】
例えば、前記第2熱処理段階における熱処理時間は、15時間ないし25時間、18時間ないし23時間でもあるが、それらに限定されるのではなく、前記範囲内において、任意の2つの地点を選択して構成された範囲をいずれも含む。
【0070】
前記第1熱処理段階は、800℃ないし1,200℃の熱処理温度において、3ないし10時間熱処理する段階を含んでもよい。
【0071】
前記第2熱処理段階は、650℃ないし850℃の熱処理温度において、15ないし23時間熱処理する段階を含んでもよい。
【0072】
前記第1熱処理段階は、前駆体化合物が、層状構造の正極活物質を形成すると共に、粒子の成長を誘発し、単結晶の形状をなすようにする。前記第1熱処理段階においては、二次粒子形状のリチウム遷移金属酸化物内のそれぞれの一次粒子が急激に成長し、粒子間応力に耐えることができなくなることにより、一次粒子の内部が現れながら、互いに融合され、二次電池用単結晶正極活物質が形成されると見られる。前記第2熱処理段階は、第1熱処理段階におけるよりは低い温度で熱処理を長期間遂行することにより、第1熱処理段階で生成された層状構造の結晶度を高くする。該第1熱処理段階及び該第2熱処理段階を介し、単一相、単結晶、単一粒子の高ニッケル系コバルト非含有正極活物質が得られる。
【0073】
一具現例によれば、前記製造方法によって製造されたリチウム遷移金属酸化物は、単結晶、単一粒子であり、前記単結晶は、層状構造を有することができる。また、前記リチウム遷移金属酸化物の平均粒径は、0.1μmないし20μmでもある。
【0074】
また、前記正極活物質の製造方法によって製造されたコバルト非含有リチウム遷移金属酸化物は、W元素、Mg元素及びTi元素は、構造内M元素サイトに置換され、S元素がOサイトに置換され、Na元素がLiサイトに置換されることにより、既存のNi2+の酸化を抑制するだけではなく、既存に存在する不安定なNi3+イオンのNi2+イオンへの還元が誘発され、構造的安定性及び高密度のリチウム遷移金属酸化物が得られる。また、還元されたNi2+イオンとLi+イオンとがイオン半径が類似しており、Li/Ni無秩序化(disordering)が促進され、Li脱離時、空格子をNiイオンが充填することにより、結晶の構造的安定性が図られる。
【0075】
他の側面によれば、前述の正極活物質を含む正極が提供される。
【0076】
さらに他の側面によれば、前記正極と、負極と、電解質と、を含むリチウム二次電池が提供される。
【0077】
前記正極、及びそれを含むリチウム二次電池は、次のような方法によっても製造される。
【0078】
まず、正極が準備される。
【0079】
例えば、前述の正極活物質、導電剤、バインダ及び溶媒が混合された正極活物質組成物が準備される。前記正極活物質組成物が、金属集電体上に直接コーティングされ、正極板が製造される。代案としては、前記正極活物質組成物が、別途の支持体上にキャスティングされた後、前記支持体から剥離されたフィルムが金属集電体上にラミネーションされ、正極板が製造されうる。前記正極は、前述のところで列挙された形態に限定されるものではなく、前記形態以外の形態でもある。
【0080】
前記導電剤としては、天然黒鉛、人造黒鉛のような黒鉛;カーボンブラック;炭素ナノチューブのような導電性チューブ;フルオロカーボン、酸化亜鉛、チタン酸カリウムのような導電性ウィスカ;酸化チタンのような導電性金属酸化物;などが使用されうるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、導電剤として使用されうるものであるならば、いずれも使用される。
前記バインダとしては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、あるいはそれらの混合物、金属塩、またはスチレンブタジエンゴム系ポリマーなどが使用されうるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、バインダとして使用されうるものであるならば、いずれも使用される。他のバインダの例としては、前述のポリマーのリチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩またはNa塩などが使用されうる。
【0081】
前記溶媒としては、N-メチルピロリドン、アセトンまたは水などが使用されうるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野で使用されうるものであるならば、いずれも使用される。
【0082】
前述の正極活物質、導電剤、バインダ及び溶媒の含量は、リチウム電池で一般的に使用されるレベルである。リチウム電池の用途及び構成により、前述の導電剤、バインダ及び溶媒中の1以上が省略されうる。
【0083】
次に、負極が準備される。
【0084】
例えば、負極活物質、導電剤、バインダ及び溶媒を混合し、負極活物質組成物が準備される。前記負極活物質組成物が、3μm厚ないし500μm厚を有する金属集電体上に直接コーティングされて乾燥され、負極板が製造される。代案としては、前記負極活物質組成物が、別途の支持体上にキャスティングされた後、前記支持体から剥離されたフィルムが、金属集電体上にラミネーションされ、負極板が製造されうる。
【0085】
前記負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに、導電性を有したものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、銅、ニッケル、銅の表面にカーボン表面処理を施したものが使用されうる。
【0086】
前記負極活物質は、当該技術分野において、リチウム電池の負極活物質として使用されうるものであるならば、いずれも可能である。例えば、リチウム金属、リチウムと合金可能な金属、遷移金属酸化物、非遷移金属酸化物及び炭素系材料からなる群のうちから選択された1以上を含んでもよい。
【0087】
例えば、前記リチウムと合金可能な金属は、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、Sb、Si・Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Siではない)、Sn・Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Snではない)などでもある。前記元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、SeまたはTeでもある。
【0088】
例えば、前記遷移金属酸化物は、リチウムチタン酸化物、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などでもある。
【0089】
例えば、前記非遷移金属酸化物は、SnO2、SiOx(0<x<2)などでもある。
【0090】
前記炭素系材料としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはそれらの混合物でもある。前記結晶質炭素は、無定形、板状、鱗片状(flake)、球形または纎維型の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛でもあり、前記非晶質炭素は、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メゾ相ピッチ(mesophase pitch)炭化物、焼成されたコークスなどでもある。
【0091】
該負極活物質組成物において、導電剤、バインダ及び溶媒は、前記正極活物質組成物の場合と同一のものを使用することができる。
【0092】
前述の負極活物質、導電剤、バインダ及び溶媒の含量は、リチウム電池で一般的に使用するレベルである。リチウム電池の用途及び構成により、前述の導電剤、バインダ及び溶媒中の1以上が省略されうる。
【0093】
次に、前記正極と前記負極との間に挿入されるセパレータが準備される。
【0094】
前記セパレータは、リチウム電池で一般的に使用されるものであるならば、いずれも使用可能である。電解質のイオン移動に対して低抵抗ありながら、電解液含湿能にすぐれるものが使用されうる。前記セパレータは、単一膜または多層膜でもあり、例えば、ガラスファイバ、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはそれらの組み合わせ物のうちから選択されたものであり、不織布形態でもよく、織布形態でもよい。また、ポリエチレン/ポリプロピレン2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレン3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層セパレータのような混合多層膜が使用されうる。例えば、リチウムイオン電池には、ポリエチレン、ポリプロピレンのような巻き取り可能なセパレータが使用され、リチウムイオンポリマー電池には、有機電解液含浸能にすぐれるセパレータが使用されうる。例えば、前記セパレータは、下記方法によっても製造される。
【0095】
高分子樹脂、充填剤及び溶媒を混合し、セパレータ組成物が準備される。前記セパレータ組成物が、電極上部に直接コーティングされて乾燥されてもセパレータが形成される。または、前記セパレータ組成物が、支持体上にキャスティングされて乾燥された後、前記支持体から剥離させたセパレータフィルムが電極上部にラミネーションされ、セパレータが形成されうる。
【0096】
前記セパレータ製造に使用される高分子樹脂は、特別に限定されるものではなく、電極板のバインダとして使用される物質がいずれも使用されうる。例えば、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、またはそれらの混合物などが使用されうる。
【0097】
次に、電解質が準備される。
【0098】
例えば、前記電解質は、有機電解液でもある。また、前記電解質は、固体でもある。例えば、ボロン酸化物、リチウムオキシナイトライドなどでもあるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、固体電解質として使用されうるものであるならば、いずれも使用可能である。前記固体電解質は、スパッタリングのような方法により、前記負極上にも形成される。
【0099】
例えば、該有機電解液は、有機溶媒にリチウム塩が溶解されても製造される。
【0100】
前記有機溶媒は、当該技術分野において、有機溶媒として使用されうるものであるならば、いずれも使用される。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートのような環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネートのような鎖状カーボネート;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブテロラクトンのようなエステル類;1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2-ジオキサン、2-メチルテトラヒドロフランのようなエーテル類;アセトニトリルのようなニトリル類;ジメチルホルムアミドのようなアミド類などがある。それらを、単独または複数個組み合わせて使用することができる。例えば、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを混合した溶媒を使用することができる。
【0101】
また、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリルのような重合体電解質に電解液を含浸したゲル状重合体電解質や、LiI、Li3N、LixGeyPzSα、LixGeyPzSαXδ(Xは、F、Cl、Brである)のような無機固体電解質を使用することができる。
【0102】
前記リチウム塩も、当該技術分野において、リチウム塩として使用されうるものであるならば、いずれも使用される。例えば、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、LiC4F9SO3、LiAlO2、LiAlCl4、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(ただし、x、yは、自然数である)、LiCl、LiI、またはそれらの混合物などである。
【0103】
図9から分かるように、前記リチウム電池1は、正極3、負極2及びセパレータ4を含む。前述の正極3、負極2及びセパレータ4がワインディンされるか、あるいは折り畳まれ、電池ケース5に収容される。次に、前記電池ケース5に有機電解液が注入され、キャップ(cap)アセンブリ6に密封され、リチウム電池1が完成される。前記電池ケース5は、円筒状、角形、ポーチ型、コイン型、または薄膜型などでもある。例えば、前記リチウム電池1は、薄膜型電池でもある。前記リチウム電池1は、リチウムイオン電池でもある。
【0104】
前記正極と前記負極との間にセパレータが配され、電池構造体が形成されうる。前記電池構造体がバイセル構造に積層された後、有機電解液に含浸され、得られた結果物がポーチに収容されて密封されれば、リチウムイオンポリマー電池が完成される。
【0105】
また、前記電池構造体は、複数個積層され、電池パックを形成し、そのような電池パックが、高容量及び高出力が要求される全ての機器にも使用される。例えば、ノート型パソコン、スマートフォン、電気車両(EV:electric vehicle)などにも使用される。
【0106】
また、前記リチウム電池は、寿命特性及び高率特性にすぐれるので、電気車両(EV)にも使用される。例えば、プラグインハイブリッド車両(PHEV:plug-in hybrid electric vehicle)のようなハイブリッド車両にも使用される。また、多量の電力保存が要求される分野にも使用される。例えば、電気自転車、電動工具、電力保存用システムなどにも使用される。
【0107】
以下の製造例、実施例及び比較例を介し、本発明についてさらに詳細に説明される。ただし、該実施例は、本発明を例示するためのものであり、それらだけにより、本発明の範囲が限定されるものではない。
【実施例】
【0108】
(正極活物質の製造)
実施例1
100gのNi0.8Mn0.2(OH)2、41.8gのLi2CO3、3.0gのWO3、0.27gのMgCO3、0.24gのTiO2、0.45gのNaOH、及び0.75gの(NH4)2Sを、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、920C°で8時間、及び700C°で20時間熱処理し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0109】
実施例2
100gのNi0.95Al0.05(OH)2、42.4gのLi2CO3、3.0gのWO3、0.27gのMgCO3、0.24gのTiO2、0.45gのNaOH、及び0.75gの(NH4)2Sを、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、880C°で4時間、及び700C°で20時間熱処理し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0110】
比較例1
100gのNi0.8Mn0.2(OH)2、41.8gのLi2CO3を、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、920C°で8時間、及び700C°で20時間熱処理し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0111】
比較例2
100gのNi0.8Mn0.2(OH)2、41.8gのLi2CO3、0.45gのNaOHを、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、920C°で8時間、及び700C°で20時間熱処理し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0112】
比較例3
100gのNi0.8Mn0.2(OH)2、41.8gのLi2CO3、3.0gのWO3、0.24gのTiO2を、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、920C°で8時間、及び700C°で20時間熱処理し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0113】
比較例4
100gのNi0.8Mn0.2(OH)2、41.8gのLi2CO3、3.0gのWO3、0.27gのMgCO3、0.24gのTiO2、0.45gのNaOH、及び0.2gのNH4Fを、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、920C°で8時間、及び700C°で20時間熱処理し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0114】
比較例5
100gのNi0.95Al0.05(OH)2、42.4gのLi2CO3を、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、880C°4時間、及び700C°で20時間熱処理し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0115】
比較例6
100gのNi0.95Al0.05(OH)2、41.8gのLi2CO3、0.45gのNaOHを、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、880C°で8時間、及び700C°で20時間熱処理し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0116】
比較例7
100gのNi0.95Al0.05(OH)2、41.8gのLi2CO3、3.0gのWO3、0.24gのTiO2を、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、880C°で8時間、及び700C°で20時間熱処理し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0117】
比較例8
100gのNi0.95Al0.05(OH)2、41.8gのLi2CO3、3.0gのWO3、0.27gのMgCO3、0.24gのTiO2、0.45gのNaOH、及び0.2gのNH4Fを、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、880C°で8時間、及び700C°で20時間熱処理し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0118】
(ハーフセルの製造)
実施例3
実施例1で得た正極活物質:導電剤:バインダを、94:3:3の重量比で混合し、スラリーを製造した。ここで、前記導電剤としては、カーボンブラックを使用し、前記バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、N-メチル-2-ピロリドン溶媒に溶解させて使用した。
前記スラリーをAl集電体に均一に塗布し、110℃で2時間乾燥させ、正極電極を製造した。極板のローディングレベルは、11.0mg/cm2であり、電極密度は、3.6g/ccであった。
前記製造された正極を作業電極として使用し、リチウムホイルを相対電極として使用し、EC(エチレンカーボネート)/EMC(エチルメチルカーボネート)/DEC(ジエチルカーボネート)を、3/4/3の体積比で混合した混合溶媒に、リチウム塩として、LiPF6を1.3Mの濃度になるように添加した液体電解液を使用し、一般的に知られている工程により、CR2032ハーフセルを作製した。
【0119】
実施例4
実施例1で得た正極活物質の代わりに、実施例2で得た正極活物質をそれぞれ使用した点を除いては、実施例3と同一方法により、ハーフセルを作製した。
【0120】
比較例9ないし16
実施例1で得た正極活物質の代わりに、比較例1ないし8で得た正極活物質をそれぞれ使用した点を除いては、実施例3と同一方法により、ハーフセルを作製した。
【0121】
【0122】
評価例1:正極活物質の組成評価
実施例1及び比較例1、並びに実施例2及び比較例5で合成した正極活物質につき、700-ES(Varian)装備を利用し、ICP(inductively coupled plasma)分析を進め、その結果は、下記の表2及び表3にそれぞれ記載されている。
【0123】
表2及び表3を参照すれば、比較例1及び実施例1、並びに比較例5及び実施例2のICP分析結果、実施例1及び実施例2の正極活物質の場合、NaがLiサイトに0.01モル置換されることが分かり、0.01モルのW、0.003モルのMg、0.003モルのTiが遷移金属サイトに置換されることが分かる。Sは、遷移金属、またはLiのモル数に影響を与えないと見られ、Oの一部を置換するものと見られる。ICP分析時、真空で分析を行っても、微量の大気中の酸素及び二酸化炭素の流入により、物質に含まれた酸素の化学量論的値は、分析し難い。
【0124】
【0125】
【0126】
評価例2:正極活物質の粒度評価
実施例1及び比較例1、並びに実施例2及び比較例5で合成した正極活物質の外観を、Verios 460(FEI社)装備を利用し、SEMイメージをそれぞれ得て、
図1A及び
図2Aに示されている。また、Cilas 1090(scinco社)装備を利用し、粒度分布をそれぞれ測定し、下記表4及び
図1B、並びに表5及び
図2Bに示されている。
【0127】
表4、及び
図1A及び
図1Bを参照すれば、実施例1の単粒子型正極活物質は、比較例1の単粒子型正極活物質に比べ、粒径に大きい変化が観察されておらず、それは、追加の元素が、リチウム遷移金属酸化物粒子内に導入され、一部元素を置換して存在することを示唆している。
【0128】
また、表5、並びに
図2A及び
図2Bを参照すれば、先立っての実施例1で述べた通り、実施例2の場合も、追加元素の導入が、粒径に変化をもたらしていないので、追加元素が、リチウム遷移金属酸化物粒子内に導入され、一部元素を置換して存在することを示唆している。
【0129】
【0130】
【0131】
評価例3:常温寿命評価
実施例3,4、及び比較例9ないし16で作製したハーフセルを、10時間休止させた後、0.1Cで4.3VまでCCモードで充電した後、0.05Cに該当する電流までCVモードで充電を進めた。次に、0.1Cで3.0VまでCCモードで放電し、化成工程を完了した。
次に、常温(25℃)で、0.5Cで4.3VまでCCモードで充電した後、0.05Cに該当する電流までCVモードで充電を進めた。次に、1Cで3.0VまでCCモードで放電を進め、該過程を総100回反復した。
初期容量に対し、100回の充電後及び放電後の容量維持率を計算し、その結果は、下記表6に示される。また、サイクルによる容量維持率を示したグラフは、
図3ないし
図6に示される。
【0132】
【0133】
表6並びに、
図3及び4を参照すれば、実施例3及び比較例9の常温寿命結果によれば、Na、W、Mg、Ti、Sの元素をさらに含む正極活物質を適用した実施例3の場合、100サイクルにおいて、約15%高い寿命維持率を示した。それは、実施例3で使用した正極活物質がCoを含まないにもかかわらず、構造内リチウムサイトにNa元素が導入され、ニッケルイオンの自発的還元が抑制され、電気化学的に非活性的な相上生成が抑制される。さらに、構造内のW元素、Mg元素及びTi元素の導入は、構造内Niイオンの秩序化(ordering)を上昇させ、構造的安定性を向上させ、遷移金属と酸素との結合強度を増大させ、電気化学評価時、構造内酸素放出を抑制させ、電解液との副反応を抑制することができる。さらに、酸素サイトに置換されるS元素は、酸素対比で、電気陰性度が高く、遷移金属と酸素との結合力を上昇させると共に、活物質の伝導度を向上させることができる。従って、それは、5種の追加元素導入は、正極活物質の構造的安定性を提供するだけではなく、活物質の伝導度を向上させることにより、電気化学的寿命安定性を向上させることができる。また、実施例3は、Na元素が導入された比較例10、Ti元素が導入した比較例11、及びNa、W、Mg、Ti、Fの元素が導入した比較例11に比べ、100サイクルにおいて、最大約11%向上された寿命特性を示した。それは、Na及びSが導入され、W、Mg、Tiのうち少なくとも1種の元素が導入される場合、シナジー効果が生じるということを示唆している。
【0134】
表6、及び
図5及び
図6を参照すれば、ニッケル・アルミニウム系正極活物質を使用する実施例4の場合も、Na、W、Mg、Ti、Sを正極活物質内に導入することにより、そのような元素を含まない比較例13に比べ、100サイクルにおいて、約23%向上された寿命特性を示した。また、実施例4は、Na元素が導入された比較例14、Ti元素が導入された比較例15、及びNa、W、Mg、Ti、Fの元素が導入された比較例168に比べ、100サイクルにおいて、最大約18%向上された寿命特性を示した。
【0135】
評価例4:常温寿命評価
実施例3及び比較例9のハーフセルの100回充放電後、負極から負極活物質を採取し、XRD測定を進めた。結晶内相変化を確認するために、実施例1及び比較例1の正極活物質(充放電の実施前)についても、XRD測定を進めた。
その結果を
図7及び
図8に示した。
【0136】
図7及び
図8を参照すれば、XRDグラフにおいてI
(003)は、層状構造を示すc-axisに係わる回折インテンシ値であり、I
(104)は、電気化学的に非活性的な相である岩塩(rock-salt)構造に係わる回折インテンシ値である。従って、I
(003)/I
(104)の比率が大きくなるほど、層状構造において、rock-salt構造に、相転移が十分に生じていないことを示すものである。比較例1の場合、100サイクル後、I
(003)/I
(104)の比率が1.11から0.91(比較例9)まで低下した。それは、結晶内にrock-salt構造が主相(main phase)として存在することを示唆している。それと対照的に、実施例1及び3の場合、100サイクル後、I
(003)/I
(104)の比率が約1.1に維持されることが分かり、それは、実施例1の正極活物質の層状構造が、100サイクル後にも、相転移なしに維持されることを示唆している。従って、実施例1のCo非含有単結晶/単粒子型Ni系正極活物質に、電気化学的に安定した5種の元素(Na、W、Mg、Ti、S)を導入することが結晶の構造的安定性を向上させることができるということを示唆する。
【0137】
以上においては、図面及び実施例を参照し,本発明による望ましい具現例について説明されたが、それらは、例示的なものに過ぎず、当該技術分野において、当業者であるならば、それらから、多様な変形、及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解することができるであろう。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって定められるものである。
【国際調査報告】