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▶ デナリ セラピューティクス インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(54)【発明の名称】抗TREM2抗体及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20220325BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N15/13 ZNA
A61K39/395 N
A61P25/28
A61P25/16
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021548668
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(85)【翻訳文提出日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 US2020019093
(87)【国際公開番号】W WO2020172450
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】62/808,141
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518086619
【氏名又は名称】デナリ セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Denali Therapeutics Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】デニス マーク エス.
(72)【発明者】
【氏名】ダンカン シェリー
(72)【発明者】
【氏名】リサインゴ キャスリーン
(72)【発明者】
【氏名】モンロー キャサリン エム.
(72)【発明者】
【氏名】パーク ジョシュア アイ.
(72)【発明者】
【氏名】プロロク レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】シー ジュ
(72)【発明者】
【氏名】スリヴァスタヴァ アンキタ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン レンゲリッチ ベティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルシュ ライリー
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA42
4H045DA76
4H045EA21
4H045FA74
4H045GA22
4H045GA26
(57)【要約】
一態様では、ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)タンパク質に特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、前記抗体は、可溶性TREM2(sTREM2)のレベルを減少させる。いくつかの実施形態では、前記抗体は、TREM2活性を増強する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトTREM2に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であって、
(a)G-F-T-F-T-α-F-Y-M-S(配列番号48)の配列を含むCDR-H1配列であって、αがDまたはNである、前記CDR-H1配列、
(b)V-I-R-N-β-β-N-β-Y-T-β11-β12-Y-N-P-S-V-K-G(配列番号49)の配列を含むCDR-H2配列であって、βがKまたはRであり、βがAまたはPであり、βがGまたはAであり、β11がAまたはTであり、かつβ12がGまたはDである、前記CDR-H2配列、
(c)γ-R-L-γ-Y-G-F-D-Y(配列番号50)の配列を含むCDR-H3配列であって、γがAまたはTであり、かつγがTまたはSである、前記CDR-H3配列、
(d)Q-S-S-K-S-L-L-H-S-δ10-G-K-T-Y-L-N(配列番号51)の配列を含むCDR-L1配列であって、δ10がNまたはTである、前記CDR-L1配列、
(e)WMSTRAS(配列番号8)の配列を含むCDR-L2配列、及び
(f)Q-Q-F-L-E-φ-P-F-T(配列番号52)の配列を含むCDR-L3配列であって、φがYまたはFである、前記CDR-L3配列
を含む、前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記CDR-H1配列が、配列番号4及び12のいずれか1つから選択される、請求項1に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項3】
前記CDR-H2配列が、配列番号5、13、及び25のいずれか1つから選択される、請求項1または2に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項4】
前記CDR-H3配列が、配列番号6、14、及び17のいずれか1つから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項5】
前記CDR-L1配列が、配列番号7及び23のいずれか1つから選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項6】
前記CDR-L3配列が、配列番号9及び18のいずれか1つから選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項7】
(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(c)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(e)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(f)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(g)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項8】
配列番号2、10、15、19、21、24、26、及び79のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項9】
前記V配列が、配列番号15に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項8に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項10】
前記V配列が、配列番号15に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項9に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項11】
前記V配列が配列番号15を含む、請求項10に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項12】
前記V配列が、配列番号24に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項8に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項13】
前記V配列が、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項12に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項14】
前記V配列が配列番号24を含む、請求項13に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項15】
前記V配列が、配列番号79に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項8に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項16】
前記V配列が、配列番号79に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項15に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項17】
前記V配列が配列番号79を含む、請求項16に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項18】
配列番号3、11、16、20、22、及び68のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項19】
前記V配列が、配列番号16に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項18に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項20】
前記V配列が、配列番号16に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項19に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項21】
前記V配列が配列番号16を含む、請求項20に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項22】
前記V配列が、配列番号22に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項18に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項23】
前記V配列が、配列番号22に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項22に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項24】
前記V配列が配列番号22を含む、請求項23に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項25】
前記V配列が、配列番号68に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項18に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項26】
前記V配列が、配列番号68に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項25に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項27】
前記V配列が配列番号68を含む、請求項26に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項28】
(a)配列番号15を含むV配列、及び配列番号16を含むV配列、または
(b)配列番号19を含むV配列、及び配列番号20を含むV配列、または
(c)配列番号21を含むV配列、及び配列番号20を含むV配列、または
(d)配列番号19を含むV配列、及び配列番号22を含むV配列、または
(e)配列番号79を含むV配列、及び配列番号22を含むV配列、または
(f)配列番号24を含むV配列、及び配列番号20を含むV配列、または
(g)配列番号26を含むV配列、及び配列番号20を含むV配列、または
(h)配列番号24を含むV配列、及び配列番号22を含むV配列、または
(i)配列番号26を含むV配列、及び配列番号22を含むV配列、または
(j)配列番号2を含むV配列、及び配列番号3を含むV配列、または
(k)配列番号10を含むV配列、及び配列番号11を含むV配列、または
(l)配列番号24を含むV配列、及び配列番号68を含むV配列
を含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項29】
ヒトTREM2に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であって、
(a)GFSIEDFYIH(配列番号29)の配列を含むCDR-H1配列、
(b)W-I-D-P-E-β-G-β-S-K-Y-A-P-K-F-Q-G(配列番号47)の配列を含むCDR-H2配列であって、βがNまたはQであり、かつβがDまたはEである、前記CDR-H2配列、
(c)HADHGNYGSTMDY(配列番号31)の配列を含むCDR-H3配列、
(d)HASQHINVWLS(配列番号32)の配列を含むCDR-L1配列、
(e)KASNLHT(配列番号33)の配列を含むCDR-L2配列、及び
(f)QQGQTYPRT(配列番号34)の配列を含むCDR-L3配列
を含む、前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項30】
前記CDR-H2配列が、配列番号30、39、41、及び43から選択される、請求項29に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項31】
(a)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(c)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(d)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む、請求項29または30に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項32】
配列番号27、35、37、38、40、42、44、45、及び46のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列を含む、請求項29~31のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項33】
前記V配列が、配列番号27に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項32に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項34】
前記V配列が、配列番号27に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項33に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項35】
前記V配列が配列番号27を含む、請求項34に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項36】
配列番号28または36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列を含む、請求項29~35のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項37】
前記V配列が、配列番号28に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項36に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項38】
前記V配列が、配列番号28に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項37に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項39】
前記V配列が配列番号28を含む、請求項38に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項40】
(a)配列番号27を含むV配列、及び配列番号28を含むV配列、または
(b)配列番号35を含むV配列、及び配列番号36を含むV配列、または
(c)配列番号37を含むV配列、及び配列番号36を含むV配列、または
(d)配列番号38を含むV配列、及び配列番号36を含むV配列、または
(e)配列番号40を含むV配列、及び配列番号36を含むV配列、または
(f)配列番号42を含むV配列、及び配列番号36を含むV配列、または
(g)配列番号44を含むV配列、及び配列番号36を含むV配列、または
(h)配列番号45を含むV配列、及び配列番号36を含むV配列、または
(i)配列番号46を含むV配列、及び配列番号36を含むV配列
を含む、請求項36に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項41】
ヒトTREM2に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であって、
(a)配列番号4、12、及び29のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、
(b)配列番号5、13、25、30、39、41、及び43のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、
(c)配列番号6、14、17、及び31のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、
(d)配列番号7、23、及び32のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、
(e)配列番号8及び33のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、ならびに
(f)配列番号9、18、及び34のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-L3配列
を含む、前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項42】
(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(c)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(e)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(f)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(g)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(h)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(i)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(j)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(k)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む、請求項41に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項43】
配列番号2、10、15、19、21、24、26、27、35、37、38、40、42、44、45、46、及び79のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む、請求項41または42に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項44】
配列番号3、11、16、20、22、28、及び36のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む、請求項41~43のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項45】
(a)配列番号2に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号3に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(b)配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(c)配列番号15に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号16に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(d)配列番号19に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号20に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(e)配列番号21に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号20に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(f)配列番号19に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(g)配列番号79に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(h)配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号20に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(i)配列番号26に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号20に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(j)配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(k)配列番号26に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(l)配列番号27に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号28に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(m)配列番号35に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(n)配列番号37に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(o)配列番号38に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(p)配列番号40に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(q)配列番号42に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(r)配列番号44に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(s)配列番号45に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(t)配列番号46に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(u)配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号68に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列
を含む、請求項41~44のいずれか1項に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項46】
ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であって、クローンCL0020306、クローンCL0020188、クローンCL0020188-1、クローンCL0020188-2、クローンCL0020188-3、クローンCL0020188-4、クローンCL0020188-5、クローンCL0020188-6、クローンCL0020188-7、クローンCL0020188-8、クローンCL0020307、クローンCL0020123、クローンCL0020123-1、クローンCL0020123-2、クローンCL0020123-3、クローンCL0020123-4、クローンCL0020123-5、クローンCL0020123-6、クローンCL0020123-7、及びクローンCL0020123-8からなる群から選択される抗体クローンによって認識されるエピトープと同じかまたは実質的に同じエピトープを認識する、前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項47】
クローンCL0020123、クローンCL0020123-1、クローンCL0020123-2、クローンCL0020123-3、クローンCL0020123-4、クローンCL0020123-5、クローンCL0020123-6、クローンCL0020123-7、及びクローンCL0020123-8からなる群から選択される抗体クローンによって認識されるエピトープと同じかまたは実質的に同じエピトープを認識する、請求項46に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項48】
配列番号1における
(i)アミノ酸残基55~63(GEKGPCQRV(配列番号70))、
(ii)アミノ酸96~107(TLRNLQPHDAGL(配列番号71))、及び
(iii)アミノ酸残基126~129(VEVL(配列番号72))
のうちの1つ以上を認識する、請求項47に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項49】
クローンCL0020188、クローンCL0020188-1、クローンCL0020188-2、クローンCL0020188-3、クローンCL0020188-4、クローンCL0020188-5、クローンCL0020188-6、クローンCL0020188-7、クローンCL0020188-8、クローンCL0020307、及びクローンCL0020306からなる群から選択される抗体クローンによって認識されるエピトープと同じかまたは実質的に同じエピトープを認識する、請求項46に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項50】
配列番号1におけるアミノ酸残基143~149(FPGESES(配列番号69))を認識する、請求項49に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項51】
ヒトTREM2に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号1における
(i)アミノ酸残基55~63(GEKGPCQRV(配列番号70))、
(ii)アミノ酸96~107(TLRNLQPHDAGL(配列番号71))、及び
(iii)アミノ酸残基126~129(VEVL(配列番号72))
のうちの1つ以上を含むかまたはそれらからなるエピトープを認識する、前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項52】
ヒトTREM2に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号1におけるアミノ酸残基143~149(FPGESES(配列番号69))を含むかまたはそれからなるエピトープを認識する、前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項53】
可溶性TREM2タンパク質(sTREM2)のレベルを減少させる、請求項1~52のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項54】
TREM2活性を増強する、請求項1~53のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項55】
食作用を増強するか、または骨髄細胞、ミクログリア、もしくはマクロファージの遊走、分化、機能、もしくは生存を増強する、請求項54に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項56】
神経炎症を増大させずにミクログリア機能を増強する、請求項55に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項57】
Sykリン酸化を増強する、請求項54に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項58】
TREM2リガンドの存在下でSykリン酸化を増強する、請求項57に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項59】
カニクイザルTREM2タンパク質との交差反応性を示す、請求項1~58のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項60】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1~59のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項61】
前記抗体がキメラ抗体である、請求項1~59のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項62】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項1~59のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項63】
前記抗体が完全ヒト抗体である、請求項1~59のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項64】
前記抗原結合断片が、Fab、F(ab’)、scFv、または二価scFvである、請求項1~59のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項65】
請求項1~64のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片と、
薬学的に許容可能な担体と
を含む、医薬組成物。
【請求項66】
ヒトTREM2タンパク質への結合について、請求項1~64のいずれか1項に記載の単離された抗体と競合する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項67】
請求項1~64のいずれか1項に記載の単離された抗体もしくはその抗原結合断片、または請求項65に記載の医薬組成物と、
その使用説明書と
を含む、キット。
【請求項68】
対象における神経変性疾患を処置する方法であって、請求項1~64のいずれか1項に記載の単離された抗体もしくはその抗原結合断片または請求項65に記載の医薬組成物を、前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項69】
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、原発性年齢関連タウオパチー、進行性核上性麻痺(PSP)、前頭側頭型認知症、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、嗜銀顆粒性認知症、筋萎縮性側索硬化症、グアム筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合(ALS-PDC)、大脳皮質基底核変性症、慢性外傷性脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ボクサー認知症(dementia pugilistica)、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病、ダウン症候群、家族性英国型認知症、家族性デンマーク型認知症、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、球状グリア性タウオパチー、認知症を伴うグアドループ型パーキンソニズム、グアドループ型PSP、ハラーフォルデン・シュパッツ病、スフェロイドを伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS)、ハンチントン病、封入体筋炎、多系統萎縮症、筋強直性ジストロフィー、那須・ハコラ病、神経原線維変化優位型認知症、ニーマン・ピック病C型、淡蒼球橋黒質変性症(pallido-ponto-nigral degeneration)、パーキンソン病、ピック病、脳炎後パーキンソニズム、プリオンタンパク質脳アミロイド血管症、進行性皮質下グリオーシス、亜急性硬化性全脳炎、及び神経原線維型老年認知症(tangle only dementia)からなる群から選択される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
神経変性疾患を有する対象においてsTREM2のレベルを減少させる方法であって、請求項1~64のいずれか1項に記載の単離された抗体もしくはその抗原結合断片または請求項65に記載の医薬組成物を、前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項71】
神経変性疾患を有する対象においてTREM2活性を増強する方法であって、請求項1~64のいずれか1項に記載の単離された抗体もしくはその抗原結合断片または請求項65に記載の医薬組成物を、前記対象に投与することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月20日に出願された米国特許仮出願第62/808,141号に対する優先権を主張し、その仮出願の開示は、その全体があらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)は、ミクログリアに発現する膜貫通受容体であり、食作用の調節、細胞の生存、及び炎症性サイトカインの産生において機能すると考えられている。TREM2の突然変異は、アルツハイマー病、那須・ハコラ病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、及び前頭側頭型認知症を含む神経変性疾患で同定されている。さらに、可溶性TREM2(sTREM2)のレベルの変化が、TREM2に突然変異を有するアルツハイマー病患者または前頭側頭型認知症患者の脳脊髄液において報告されている。
【0003】
TREM2活性またはsTREM2のレベルを調節する治療剤が依然として求められている。
【発明の概要】
【0004】
概要
一態様では、ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片が提供される。いくつかの実施形態では、TREM2に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、
(a)GFSIEDFYIH(配列番号29)の配列を含むCDR-H1配列、
(b)W-I-D-P-E-β-G-β-S-K-Y-A-P-K-F-Q-G(配列番号47)の配列を含むCDR-H2配列であって、βがNまたはQであり、かつβがDまたはEである、CDR-H2配列、
(c)HADHGNYGSTMDY(配列番号31)の配列を含むCDR-H3配列、
(d)HASQHINVWLS(配列番号32)の配列を含むCDR-L1配列、
(e)KASNLHT(配列番号33)の配列を含むCDR-L2配列、及び
(f)QQGQTYPRT(配列番号34)の配列を含むCDR-L3配列
を含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、CDR-H2配列は、配列番号30、39、41、及び43から選択される。
【0006】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、
(a)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(c)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(d)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号27、35、37、38、40、42、44、45、及び46のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列を含む。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号27に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号27に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号27を含む。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号42に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号42に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号42を含む。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号45に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号45に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号45を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号28または36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列を含む。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号28に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号28に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号28を含む。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号36に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号36に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号36を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、
(a)配列番号27を含むV配列、及び配列番号28を含むV配列、または
(b)配列番号35を含むV配列、及び配列番号36を含むV配列、または
(c)配列番号37を含むV配列、及び配列番号36を含むV配列、または
(d)配列番号38を含むV配列、及び配列番号36を含むV配列、または
(e)配列番号40を含むV配列、及び配列番号36を含むV配列、または
(f)配列番号42を含むV配列、及び配列番号36を含むV配列、または
(g)配列番号44を含むV配列、及び配列番号36を含むV配列、または
(h)配列番号45を含むV配列、及び配列番号36を含むV配列、または
(i)配列番号46を含むV配列、及び配列番号36を含むV配列
を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、TREM2に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、
(a)G-F-T-F-T-α-F-Y-M-S(配列番号48)の配列を含むCDR-H1配列であって、αがDまたはNである、CDR-H1配列、
(b)V-I-R-N-β-β-N-β-Y-T-β11-β12-Y-N-P-S-V-K-G(配列番号49)の配列を含むCDR-H2配列であって、βがKまたはRであり、βがAまたはPであり、βがGまたはAであり、β11がAまたはTであり、かつβ12がGまたはDである、CDR-H2配列、
(c)γ-R-L-γ-Y-G-F-D-Y(配列番号50)の配列を含むCDR-H3配列であって、γがAまたはTであり、かつγがTまたはSである、CDR-H3配列、
(d)Q-S-S-K-S-L-L-H-S-δ10-G-K-T-Y-L-N(配列番号51)の配列を含むCDR-L1配列であって、δ10がNまたはTである、CDR-L1配列、
(e)WMSTRAS(配列番号8)の配列を含むCDR-L2配列、及び
(f)Q-Q-F-L-E-φ-P-F-T(配列番号52)の配列を含むCDR-L3配列であって、φがYまたはFである、CDR-L3配列
を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、CDR-H1配列は、配列番号4及び12のいずれか1つから選択される。いくつかの実施形態では、CDR-H2配列は、配列番号5、13、及び25のいずれか1つから選択される。いくつかの実施形態では、CDR-H3配列は、配列番号6、14、及び17のいずれか1つから選択される。いくつかの実施形態では、CDR-L1配列は、配列番号7及び23のいずれか1つから選択される。いくつかの実施形態では、CDR-L3配列は、配列番号9及び18のいずれか1つから選択される。
【0012】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、
(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(c)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(e)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(f)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(g)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号2、10、15、19、21、24、26、及び79のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列を含む。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号15に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号15に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号15を含む。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号24に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号24を含む。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号79に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号79に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号79を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号3、11、16、20、22、及び68のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列を含む。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号16に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号16に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号16を含む。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号22に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号22に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号22を含む。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号68に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号68に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、V配列は、配列番号68を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、
(a)配列番号15を含むV配列、及び配列番号16を含むV配列、または
(b)配列番号19を含むV配列、及び配列番号20を含むV配列、または
(c)配列番号21を含むV配列、及び配列番号20を含むV配列、または
(d)配列番号19を含むV配列、及び配列番号22を含むV配列、または
(e)配列番号79を含むV配列、及び配列番号22を含むV配列、または
(f)配列番号24を含むV配列、及び配列番号20を含むV配列、または
(g)配列番号26を含むV配列、及び配列番号20を含むV配列、または
(h)配列番号24を含むV配列、及び配列番号22を含むV配列、または
(i)配列番号26を含むV配列、及び配列番号22を含むV配列、または
(j)配列番号2を含むV配列、及び配列番号3を含むV配列、または
(k)配列番号10を含むV配列、及び配列番号11を含むV配列、または
(l)配列番号24を含むV配列、及び配列番号68を含むV配列
を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、TREM2に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、
(a)配列番号4、12、及び29のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、
(b)配列番号5、13、25、30、39、41、及び43のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、
(c)配列番号6、14、17、及び31のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、
(d)配列番号7、23、及び32のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、
(e)配列番号8及び33のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、ならびに
(f)配列番号9、18、及び34のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-L3配列
を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、
(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(c)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(e)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(f)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3、
(g)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(h)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(i)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(j)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(k)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号2、10、15、19、21、24、26、27、35、37、38、40、42、44、45、46、及び79のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号3、11、16、20、22、28、36、及び68のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、
(a)配列番号2に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号3に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(b)配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(c)配列番号15に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号16に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(d)配列番号19に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号20に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(e)配列番号21に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号20に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(f)配列番号19に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(g)配列番号79に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(h)配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号20に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(i)配列番号26に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号20に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(j)配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(k)配列番号26に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(l)配列番号27に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号28に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(m)配列番号35に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(n)配列番号37に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(o)配列番号38に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(p)配列番号40に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(q)配列番号42に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(r)配列番号44に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(s)配列番号45に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(t)配列番号46に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(u)配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号68に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列
を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、TREM2に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、クローンCL0020306、クローンCL0020188、クローンCL0020188-1、クローンCL0020188-2、クローンCL0020188-3、クローンCL0020188-4、クローンCL0020188-5、クローンCL0020188-6、クローンCL0020188-7、クローンCL0020188-8、クローンCL0020307、クローンCL0020123、クローンCL0020123-1、クローンCL0020123-2、クローンCL0020123-3、クローンCL0020123-4、クローンCL0020123-5、クローンCL0020123-6、クローンCL0020123-7、及びクローンCL0020123-8からなる群から選択される抗体クローンによって認識されるエピトープと同じかまたは実質的に同じエピトープを認識する。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、クローンCL0020123、クローンCL0020123-1、クローンCL0020123-2、クローンCL0020123-3、クローンCL0020123-4、クローンCL0020123-5、クローンCL0020123-6、クローンCL0020123-7、及びクローンCL0020123-8からなる群から選択される抗体クローンによって認識されるエピトープと同じかまたは実質的に同じエピトープを認識する。特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号1における以下のエピトープ:(i)アミノ酸残基55~63(GEKGPCQRV(配列番号70))、(ii)アミノ酸96~107(TLRNLQPHDAGL(配列番号71))、及び(iii)アミノ酸残基126~129(VEVL(配列番号72))のうちの1つ以上を認識する。別の態様では、本開示は、ヒトTREM2に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片を特徴とし、この抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1における以下のエピトープ:(i)アミノ酸残基55~63(GEKGPCQRV(配列番号70))、(ii)アミノ酸96~107(TLRNLQPHDAGL(配列番号71))、及び(iii)アミノ酸残基126~129(VEVL(配列番号72))のうちの1つ以上を含むかまたはそれらからなるエピトープを認識する。いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、クローンCL0020188、クローンCL0020188-1、クローンCL0020188-2、クローンCL0020188-3、クローンCL0020188-4、クローンCL0020188-5、クローンCL0020188-6、クローンCL0020188-7、クローンCL0020188-8、クローンCL0020307、及びクローンCL0020306からなる群から選択される抗体クローンによって認識されるエピトープと同じかまたは実質的に同じエピトープを認識する。特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号1におけるアミノ酸残基143~149(FPGESES(配列番号69))を認識する。別の態様では、本開示は、ヒトTREM2に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片を特徴とし、この抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1におけるアミノ酸残基143~149(FPGESES(配列番号69))を含むかまたはそれからなるエピトープを認識する。
【0022】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体または抗原結合断片は、可溶性TREM2タンパク質(sTREM2)のレベルを減少させる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体または抗原結合断片は、参照抗体と比較して良好な効力で健常ヒトCSFまたはカニクイザルCSF中の可溶性TREM2タンパク質(sTREM2)に結合する。いくつかの実施形態では、参照抗体は、配列番号73及び74、配列番号75及び76、ならびに配列番号77及び78からなる群から選択される配列の組み合わせによって表される。いくつかの実施形態では、効力アッセイは、実質的に実施例11に記載されているように行われる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体または抗原結合断片は、TREM2活性を増強する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、食作用を増強するか、または骨髄細胞、ミクログリア、もしくはマクロファージの遊走、分化、機能、もしくは生存を増強する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、神経炎症を増大させずにミクログリア機能を増強する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、Sykリン酸化を増強する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、TREM2リガンドの存在下でSykリン酸化を増強する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、カニクイザルTREM2タンパク質との交差反応性を示す。
【0023】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体または抗原結合断片は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体または抗原結合断片は、キメラ抗体である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体または抗原結合断片は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体または抗原結合断片は、完全ヒト抗体である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体または抗原結合断片は、Fab、F(ab’)、scFv、または二価scFvである。
【0024】
別の態様では、本開示は、ヒトTREM2タンパク質への結合について、本明細書に開示される単離された抗TREM2抗体と競合する、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0025】
別の態様では、本開示は、TREM2に特異的に結合する本明細書に開示される抗体または抗原結合断片と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0026】
さらに別の態様では、本開示は、TREM2に特異的に結合する本明細書に開示される抗体もしくは抗原結合断片または抗TREM2抗体もしくは抗原結合断片を含む医薬組成物と、その使用説明書とを含むキットを提供する。
【0027】
なお別の態様では、本開示は、対象における神経変性疾患を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に開示される抗TREM2抗体もしくは抗原結合断片または本明細書に開示される抗TREM2抗体もしくは抗原結合断片を含む医薬組成物を、対象に投与することを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、アルツハイマー病、原発性年齢関連タウオパチー、進行性核上性麻痺(PSP)、前頭側頭型認知症、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、嗜銀顆粒性認知症、筋萎縮性側索硬化症、グアム筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合(ALS-PDC)、大脳皮質基底核変性症、慢性外傷性脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ボクサー認知症(dementia pugilistica)、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病、ダウン症候群、家族性英国型認知症、家族性デンマーク型認知症、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、球状グリア性タウオパチー、認知症を伴うグアドループ型パーキンソニズム、グアドループ型PSP、ハラーフォルデン・シュパッツ病、スフェロイドを伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS)、ハンチントン病、封入体筋炎、多系統萎縮症、筋強直性ジストロフィー、那須・ハコラ病、神経原線維変化優位型認知症、ニーマン・ピック病C型、淡蒼球橋黒質変性症(pallido-ponto-nigral degeneration)、パーキンソン病、ピック病、脳炎後パーキンソニズム、プリオンタンパク質脳アミロイド血管症、進行性皮質下グリオーシス、亜急性硬化性全脳炎、及び神経原線維型老年認知症(tangle only dementia)からなる群から選択される。
【0029】
さらに別の態様では、本開示は、神経変性疾患を有する対象においてsTREM2のレベルを減少させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に開示される抗TREM2抗体もしくは抗原結合断片または本明細書に開示される抗TREM2抗体もしくは抗原結合断片を含む医薬組成物を、対象に投与することを含む。
【0030】
なお別の態様では、本開示は、神経変性疾患を有する対象においてTREM2活性を増強する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に開示される抗TREM2抗体もしくは抗原結合断片または本明細書に開示される抗TREM2抗体もしくは抗原結合断片を含む医薬組成物を、対象に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】TREM2発現HEK細胞上の表面TREM2への例示的な抗TREM2抗体の結合を表す、代表的なフローサイトメトリーヒストグラムを含む。
図2】初代ヒトマクロファージ細胞における、例示的な抗TREM2抗体によるpSykシグナル活性化の代表的な用量反応曲線を含む。塗りつぶした黒丸(●)は、抗TREM2抗体を表し、白丸(○)はアイソタイプ対照を表す。
図3A】例示的な抗TREM2抗体により5分間前処理し、続いて脂質小胞を投与して細胞中のリポソーム反応を評価した後の、ヒトiPSCミクログリア細胞におけるpSykシグナル活性化の代表的な用量反応曲線を含む。
図3B】例示的な抗TREM2抗体により24時間前処理し、続いて脂質小胞を投与して細胞中のリポソーム反応を評価した後の、ヒトiPSCミクログリア細胞におけるpSykシグナル活性化の代表的な用量反応曲線を含む。
図4】例示的な抗TREM2抗体による刺激に応答した、ヒトTREM2/DAP12を発現するJurkat NFAT細胞におけるNFAT-ルシフェラーゼレポーター活性の代表的な用量反応曲線を含む。塗りつぶした黒丸(●)は、抗TREM2抗体を表し、白丸(○)はアイソタイプ対照を表す。
図5】例示的な抗TREM2抗体による処理に応答したヒトマクロファージ細胞における細胞生存の代表的な用量反応曲線を示す。
図6】例示的な抗TREM2抗体の抗TREM2抗体濃度の関数としての、代表的な可溶性TREM2レベル(sTREM2)を示す。
図7】例示的な抗TREM2抗体で処理したヒトマクロファージにおける細胞あたりの平均pHrodo蛍光強度を示す棒グラフである。
図8A】ミエリンで処理し、続いて例示的な抗TREM2抗体またはアイソタイプ対照とともにインキュベートした、iPSCミクログリアにおける脂質蓄積の代表的な顕微鏡画像である。
図8B図8AでイメージングしたiPSCミクログリアのNile Red染色(脂質蓄積を示す)の代表的な棒グラフである。
図8C】ミエリンで処理し、続いて例示的な抗TREM2抗体とともにインキュベートした、iPSCミクログリアにおけるコレステリルエステル種の定量化レベルを示す棒グラフを含む。
図8D】ミエリンで処理し、続いて例示的な抗TREM2抗体とともにインキュベートした、iPSCミクログリアにおけるトリアシルグリセリド脂質種の定量化レベルを示す棒グラフを含む。
図8E】ミエリンで処理し、続いて例示的な抗TREM2抗体とともにインキュベートした、iPSCミクログリアにおけるコレステリルエステル種の定量化レベルを示す棒グラフを含む。例示的な抗TREM2抗体とのインキュベーションの前にミエリンウォッシュアウトステップが含まれるiPSCミクログリアについてのデータを表す。
図8F】ミエリンで処理し、続いて例示的な抗TREM2抗体とともにインキュベートした、iPSCミクログリアにおけるトリアシルグリセリド脂質種の定量化レベルを示す棒グラフを含む。例示的な抗TREM2抗体とのインキュベーションの前にミエリンウォッシュアウトステップが含まれるiPSCミクログリアについてのデータを表す。
図9】例示的な抗TREM2抗体の例示的なマウス血漿薬物動態プロファイルを含む。
図10A】TREM2 cDNA KI(huTrem2KI/KI)マウスに注入した例示的な抗TREM2抗体に関する、マウス血漿中の総可溶性TREM2(sTREM2)の変化を示す棒グラフを含む。
図10B】TREM2 cDNA KI(huTrem2KI/KI)マウスに注入した例示的な抗TREM2抗体に関する、マウス血漿中の抗体に結合したTREM2の変化を示す棒グラフを含む。
図11A】ヒト化し配列最適化した例示的な抗TREM2抗体の、HEK細胞中のヒトTREM2に対する用量反応結合曲線を含む。
図11B】ヒト化し配列最適化した例示的な抗TREM2抗体の、HEK細胞中のヒトTREM2に対する用量反応結合曲線を含む。
図12A】ヒト化し配列最適化した例示的な抗TREM2抗体による、HEK293-H6細胞におけるpSykシグナル活性化の用量反応曲線を含む。
図12B】ヒト化し配列最適化した例示的な抗TREM2抗体による、HEK293-H6細胞におけるpSykシグナル活性化の用量反応曲線を含む。
図13】ヒト化し配列最適化した例示的な抗TREM2抗体による処理に応答した、ヒトマクロファージ細胞における細胞生存の用量反応曲線を示す。
図14A】ヒト化し配列最適化した例示的な抗TREM2抗体による処理に応答した、iPSCミクログリアにおける脂質クリアランスの用量反応曲線を含む。
図14B】ヒト化し配列最適化した例示的な抗TREM2抗体による処理に応答した、iPSCミクログリアにおける脂質クリアランスの用量反応曲線を含む。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
I.緒言
TREM2は、ミクログリア、樹状細胞、マクロファージ、及び破骨細胞の細胞表面に発現する膜貫通受容体である。特定の理論に束縛されるものではないが、リガンド結合後、TREM2は膜貫通アダプタータンパク質であるDNAX活性化タンパク質12(DAP12)とシグナル伝達複合体を形成し、次に、プロテインキナーゼSRCによってチロシンリン酸化されると考えられている。活性化TREM2/DAP12シグナル伝達複合体は、Sykキナーゼなどのキナーゼを動員しリン酸化することにより、細胞内シグナル伝達を媒介すると考えられている。TREM2/DAP12シグナル伝達は、食作用、細胞の増殖及び生存、炎症性サイトカイン分泌などの活性、ならびにミクログリア及びマクロファージなどの細胞の遊走を調節する。TREM2は調節された膜内タンパク質分解を受け、膜結合性完全長TREM2が、メタロプロテアーゼADAM10によって、細胞からシェディングされるsTREM2部分と、ガンマセクレターゼによってさらに分解される膜に保持されたC末端断片とに切断される。sTREM2のレベルの変化が、アルツハイマー病または前頭側頭型認知症を有し、かつTREM2に突然変異を有する患者において報告されている。さらに、TREM2の突然変異は、食作用の障害及びミクログリア機能の低減などの機能の変化に関連する。
【0033】
以下の実施例セクションに詳述するように、ヒトTREM2に特異的に結合し、TREM2/DAP12シグナル伝達複合体の1つ以上の下流の機能を調節する抗体を作製した。したがって、一態様では、本開示は、抗TREM2抗体及びその抗原結合断片を提供する。したがって、一態様では、本開示は、抗TREM2抗体及びその抗原結合部分を提供する。
【0034】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、TREM2活性を増強する(例えば、食作用を増強するか、または骨髄細胞、ミクログリア、もしくはマクロファージの分化、機能、遊走、もしくは生存を増強する)。したがって、別の態様では、TREM2活性を、例えば、神経変性疾患を有する対象において増強する方法が提供される。
【0035】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、sTREM2のシェディングを低減させる。したがって、別の態様では、sTREM2のレベルを、例えば、神経変性疾患を有する対象において減少させる方法が提供される。
【0036】
II.定義
本明細書で使用する場合、文脈上明らかに別段に示されている場合を除き、「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」という単数形には、複数の指示対象が含まれる。したがって、例えば、「抗体」への言及は、2つ以上のそのような分子などの組み合わせを任意選択的に含む。
【0037】
本明細書で使用する場合、「約」及び「およそ」という用語は、数値または範囲で指定された量を修正するために使用される場合、その数値及び当業者に公知の値からの妥当な偏差、例えば、±20%、±10%または±5%が、記載された値の意図する意味の範囲内であることを示す。
【0038】
本明細書で使用する場合、「TREM2タンパク質」という用語は、遺伝子TREM2によってコードされる骨髄細胞発現トリガー受容体2タンパク質を指す。本明細書で使用する場合、「TREM2タンパク質」は、任意の脊椎動物、例えば、限定されるものではないが、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)、及び他の哺乳動物の天然の(すなわち、野生型)TREM2タンパク質を指す。いくつかの実施形態では、TREM2タンパク質は、UniprotKBアクセッション番号Q9NZC2(配列番号1)に同定される配列を有するヒトTREM2タンパク質である。
【0039】
本明細書で使用する場合、「抗TREM2抗体」という用語は、TREM2タンパク質(例えば、ヒトTREM2)に特異的に結合する抗体を指す。
【0040】
本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリンフォールドを有するタンパク質であって、その可変領域を介して抗原と特異的に結合する、タンパク質を指す。この用語は、インタクトなポリクローナル抗体、インタクトなモノクローナル抗体、一本鎖抗体、二重特異性抗体などの多重特異性抗体、単一特異性抗体、一価抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体を包含する。「抗体」という用語はまた、本明細書で使用する場合、Fab、F(ab’)、Fv、scFv、及び二価scFvを含むがこれらに限定されない抗体断片であって、その可変領域を介して結合特異性を保持する、抗体断片も含む。抗体は、カッパまたはラムダのいずれかに分類される軽鎖を含有し得る。抗体は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンに分類される重鎖を含有し得、これらは順に、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEという免疫グロブリンクラスをそれぞれ定義する。
【0041】
例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、各対が1つの「軽」鎖(約25kD)及び1つの「重」鎖(約50~70kD)を有する、2つの同一の対のポリペプチド鎖から構成される。各鎖のN末端は、抗原認識を主に担う約100~110個以上のアミノ酸の可変領域を規定する。「可変軽鎖」(VL)及び「可変重鎖」(V)という用語は、これらの軽鎖及び重鎖のそれぞれを指す。
【0042】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、生殖系列可変(V)遺伝子、多様性(D)遺伝子、または結合(J)遺伝子に由来し(かつ定常(Cμ及びCδ)遺伝子セグメントには由来せず)抗体に抗原と結合する特異性を与える、抗体重鎖または軽鎖中のドメインを指す。通常、抗体可変領域は、3つの超可変「相補性決定領域」が散在する4つの保存された「フレームワーク」領域を含む。
【0043】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域によって構築された4つのフレームワーク領域に割り込む、各鎖中の3つの超可変領域を指す。CDRは、抗原のエピトープへの抗体結合を主として担っている。各鎖のCDRは、通常、N末端から順番に付番してCDR1、CDR2及びCDR3と称され、通常、特定のCDRが位置する鎖によっても識別される。したがって、VCDR3またはCDR-H3は、それが見出される抗体重鎖の可変領域に位置し、一方、VCDR1またはCDR-L1は、それが見出される抗体軽鎖の可変領域に由来するCDR1である。
【0044】
異なる軽鎖または重鎖の「フレームワーク領域」または「FR」は、種内で比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域、すなわち構成要素である軽鎖及び重鎖のフレームワーク領域を組み合わせたものは、CDRを3次元空間に配置し整列させるように機能する。フレームワーク配列は、生殖系列抗体の遺伝子配列を含む公共のDNAデータベースまたは公開されている参照文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は、ヒト及びマウス配列に関する「VBASE2」生殖系列可変遺伝子配列データベースに見出すことができる。
【0045】
CDR及びフレームワーク領域のアミノ酸配列は、当該技術分野における様々な周知の定義、例えば、Kabat、Chothia、国際ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)、AbM、及び観察された抗原接触(「Contact」)を使用して決定され得る。いくつかの実施形態では、CDRは、Contact定義に従って決定される。MacCallum et al.,J.Mol.Biol.,262:732-745(1996)を参照されたい。いくつかの実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、及び/またはContact CDR定義の組み合わせにより決定される。
【0046】
「抗原結合部分」及び「抗原結合断片」という用語は、本明細書において互換的に使用され、その可変領域を介して抗原(例えば、TREM2タンパク質)に特異的に結合する能力を保持した1つ以上の抗体の断片を指す。抗原結合断片の例としては、Fab断片(VL、V、CL及びCH1ドメインからなる一価断片)、F(ab’)断片(ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片から構成される二価断片)、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、相補性決定領域(CDR)、V(軽鎖可変領域)、ならびにV(重鎖可変領域)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
「エピトープ」という用語は、抗体のCDRが特異的に結合する抗原の区域または領域を指し、数個のアミノ酸または数個のアミノ酸の一部、例えば、5個または6個以上、例えば、20個以上のアミノ酸、またはそれらのアミノ酸の一部を含み得る。例えば、標的がタンパク質である場合、エピトープは、連続したアミノ酸(例えば、線状エピトープ)、またはタンパク質フォールディングによって近接するタンパク質の異なる部分からのアミノ酸(例えば、不連続エピトープもしくは立体構造的エピトープ)で構成され得る。いくつかの実施形態では、エピトープは、1つのアミノ酸において(例えば、セリンまたはスレオニン残基において)リン酸化される。
【0048】
本明細書で使用する場合、「エピトープを認識する」という語句は、抗TREM2抗体に関して使用する場合、抗体CDRが、抗原(すなわち、TREM2タンパク質)と、そのエピトープにおいて、またはそのエピトープを含有する抗原の部分において相互作用するか、またはそれに特異的に結合することを意味する。
【0049】
本明細書で使用する場合、「多重特異性抗体」という用語は、2つ以上の異なる抗原結合部分を含む抗体を指し、各抗原結合部分は、異なる抗原を認識する異なる可変領域、またはその可変領域を介して2つ以上の異なる抗原に結合する抗体の断片もしくは部分を含む。本明細書で使用する場合、「二重特異性抗体」という用語は、2つの異なる抗原結合部分を含む抗体を指し、各抗原結合部分は、異なる抗原を認識する異なる可変領域、またはその可変領域を介して2つの異なる抗原に結合する抗体の断片もしくは部分を含む。
【0050】
「モノクローナル抗体」は、細胞の単一クローンまたは単一細胞株より産生され、それらの一次アミノ酸配列と同一の抗体分子からなるか、またはそれから本質的になる抗体を指す。
【0051】
「ポリクローナル抗体」は、集団中の異なる抗体が抗原の異なるエピトープに結合する、不均一な抗体集団から得られた抗体を指す。
【0052】
「キメラ抗体」は、定常領域またはその一部が、変化されているか、置換されているか、または交換されており、その結果、抗原結合部位(すなわち、可変領域、CDR、またはその一部)が異なるまたは変化されたクラス、エフェクター機能、及び/または種の定常領域に連結しているか、あるいは可変領域またはその一部が、異なるまたは変化された抗原特異性(例えば、異なる種に由来するCDR及びフレームワーク領域)を有する可変領域によって変化されているか、置換されているか、または交換されている抗体分子を指す。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、ある供給源または種(例えば、マウス)に由来する可変領域と、別の供給源または種(例えば、ヒト)に由来する定常領域とを含むモノクローナル抗体である。キメラ抗体を作製する方法は、当該技術分野において説明されている。
【0053】
「ヒト化抗体」は、CDR外の非ヒト免疫グロブリンに由来する最低限の配列を含有する非ヒト供給源(例えば、マウス)に由来するキメラ免疫グロブリンである。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ(例えば、2つ)の抗原結合可変ドメイン(複数可)を含み、CDR領域は、非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に実質的に対応し、フレームワーク領域は、ヒト免疫グロブリン配列のフレームワーク領域に実質的に対応する。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、通常、ヒト免疫グロブリン配列の少なくとも一部を含み得る。抗体ヒト化の方法は、当該技術分野において公知である。
【0054】
「ヒト抗体」または「完全ヒト抗体」は、典型的にはヒト生殖系列遺伝子に由来する、ヒト重鎖及び軽鎖配列を有する抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト細胞によって、ヒト抗体レパートリーを利用する非ヒト動物(例えば、ヒト抗体配列を発現するように遺伝子操作されたトランスジェニックマウス)によって、またはファージディスプレイプラットフォームによって産生される。
【0055】
「特異的に結合する」という用語は、試料中のエピトープまたは標的に対して、別のエピトープまたは非標的化合物(例えば、構造的に異なる抗原)に結合するよりも、より高い親和性で、より高い結合力で、及び/またはより長い持続時間、エピトープまたは標的に結合する分子(例えば、抗体またはその抗原結合部分)を指す。いくつかの実施形態では、エピトープまたは標的に特異的に結合する抗体(またはその抗原結合部分)は、他のエピトープまたは非標的化合物よりも少なくとも5倍高い親和性、例えば、少なくとも6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、25倍、50倍、100倍、1,000倍、または10,000倍以上の親和性で、エピトープまたは標的に結合する抗体(またはその抗原結合部分)である。本明細書で使用する場合、特定のエピトープまたは標的「への特異的な結合」、「に特異的に結合する」または「に特異的である」という用語は、例えば、結合するエピトープまたは標的に対して、例えば、10-4M以下、例えば、10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、または10-12Mの平衡解離定数Kを有する分子によって示され得る。ある種に由来する標的(例えば、TREM2タンパク質)に特異的に結合する抗体が、その標的(例えば、TREM2タンパク質)のオルソログにも特異的に結合し得ることが、当業者には理解されよう。
【0056】
「結合親和性」という用語は、本明細書では、2つの分子間、例えば、抗体(またはその抗原結合部分)と抗原との間の非共有結合相互作用の強度を指すものとして使用される。したがって、例えば、別途示さない限り、または文脈から明らかでない限り、この用語は、抗体(またはその抗原結合部分)と抗原との間の1:1の相互作用を指し得る。結合親和性は、平衡解離定数(K)を測定することにより定量化することができ、これは、結合速度定数(k、時間-1-1)で除した解離速度定数(k、時間-1)を指す。Kは、複合体形成及び解離のカイネティクスを、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)法(例えばBiacore(商標)システム)、KinExA(登録商標)などの結合平衡除外法、及びBioLayer干渉法(例えば、ForteBio(登録商標)Octetプラットフォームの使用)を使用して測定することにより決定することができる。本明細書で使用する場合、「結合親和性」は、抗体(またはその抗原結合部分)と抗原との間の1:1の相互作用を反映するような正式な結合親和性のみならず、強力な結合を反映し得るK値が算出される見かけの親和性をも含む。
【0057】
「交差反応する」という用語は、本明細書で使用する場合、抗体を産生させた抗原とは別の抗原に結合する、抗体の能力を指す。いくつかの実施形態では、交差反応性は、抗体を産生させた抗原とは別の種に由来する抗原に結合する、抗体の能力を指す。非限定的な例として、ヒトTREM2ペプチドに対して産生された本明細書に記載の抗TREM2抗体は、異なる種(例えば、サルまたはマウス)に由来するTREM2ペプチドまたはタンパク質との交差反応性を示し得る。
【0058】
「単離された」という用語は、核酸またはタンパク質(例えば、抗体)に関して使用する場合、核酸またはタンパク質が、その天然状態において会合していた他の細胞成分を本質的に含まないことを示す。純度及び均一性は、通常、電気泳動(例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、高速液体クロマトグラフィー)などの分析化学技法を使用して判定される。いくつかの実施形態では、単離された核酸またはタンパク質(例えば、抗体)は、少なくとも85%純粋、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、または少なくとも99%純粋である。
【0059】
「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸及び合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様の形で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物を指す。天然アミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるもの、ならびにそれらのアミノ酸が後で修飾されたもの、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、及びO-ホスホセリンである。天然α-アミノ酸には、限定されないが、アラニン(Ala)、システイン(Cys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、フェニルアラニン(Phe)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、アスパラギン(Asn)、プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、バリン(Val)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、及びこれらの組み合わせが含まれる。天然α-アミノ酸の立体異性体には、限定されないが、D-アラニン(D-Ala)、D-システイン(D-Cys)、D-アスパラギン酸(D-Asp)、D-グルタミン酸(D-Glu)、D-フェニルアラニン(D-Phe)、D-ヒスチジン(D-His)、D-イソロイシン(D-Ile)、D-アルギニン(D-Arg)、D-リジン(D-Lys)、D-ロイシン(D-Leu)、D-メチオニン(D-Met)、D-アスパラギン(D-Asn)、D-プロリン(D-Pro)、D-グルタミン(D-Gln)、D-セリン(D-Ser)、D-スレオニン(D-Thr)、D-バリン(D-Val)、D-トリプトファン(D-Trp)、D-チロシン(D-Tyr)、及びこれらの組み合わせが含まれる。「アミノ酸類似体」とは、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基及びR基に結合している、α炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。そのような類似体は、修飾R基(例えば、ノルロイシン)または修飾ペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造を保持する。「アミノ酸模倣物」とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様の形で機能する化学化合物を指す。アミノ酸は、本明細書では、一般に知られている3文字の記号、またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨されている1文字の記号のいずれかにより言及されている場合がある。
【0060】
「ポリペプチド」及び「ペプチド」という用語は本明細書において互換的に使用され、単一鎖中のアミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマー及び非天然アミノ酸ポリマーに適用される。アミノ酸ポリマーは、全てがL-アミノ酸のもの、全てがD-アミノ酸のもの、またはL-アミノ酸及びD-アミノ酸の混合物を含み得る。
【0061】
本明細書で使用する場合、「タンパク質」という用語は、単一鎖ポリペプチドの1つのポリペプチドまたは二量体(すなわち、2つ)または多量体(すなわち、3つ以上)のいずれかを指す。タンパク質の単一鎖ポリペプチドは、共有結合(例えば、ジスルフィド結合)または非共有結合相互作用によって連結され得る。
【0062】
「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、任意の長さのヌクレオチドの鎖を互換的に指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、及び/またはそれらの類似体、あるいはDNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼにより鎖に組み込むことができる任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。本明細書において企図されるポリヌクレオチドの例としては、一本鎖DNA及び二本鎖DNA、一本鎖RNA及び二本鎖RNA、ならびに一本鎖DNAと、二本鎖DNAと、一本鎖RNAと、二本鎖RNAとの混合物を有するハイブリッド分子が挙げられる。
【0063】
「保存的置換」、「保存的突然変異」という用語は、あるアミノ酸の、類似の特徴を有すると分類され得る別のアミノ酸による置換をもたらす変化を指す。このように定義された保存的アミノ酸グループの分類の例としては、Glu(グルタミン酸またはE)、Asp(アスパラギン酸またはD)、Asn(アスパラギンまたはN)、Gln(グルタミンまたはQ)、Lys(リジンまたはK)、Arg(アルギニンまたはR)、及びHis(ヒスチジンまたはH)を含む「荷電/極性グループ」、Phe(フェニルアラニンまたはF)、Tyr(チロシンまたはY)、Trp(トリプトファンまたはW)、及び(ヒスチジンまたはH)を含む「芳香族グループ」、ならびにGly(グリシンまたはG)、Ala(アラニンまたはA)、Val(バリンまたはV)、Leu(ロイシンまたはL)、Ile(イソロイシンまたはI)、Met(メチオニンまたはM)、Ser(セリンまたはS)、Thr(スレオニンまたはT)、及びCys(システインまたはC)を含む「脂肪族グループ」を挙げることができる。各グループ内で、サブグループを特定することもできる。例えば、荷電または極性アミノ酸のグループは、Lys、Arg及びHisで構成される「正に荷電したサブグループ」、Glu及びAspで構成される「負に荷電したサブグループ」、ならびにAsn及びGlnで構成される「極性サブグループ」を含むサブグループに細分することができる。別の例では、芳香族または環状のグループは、Pro、His及びTrpから構成される「窒素環サブグループ」、ならびにPhe及びTyrから構成される「フェニルサブグループ」を含むサブグループに細分することができる。さらなる別の例では、脂肪族グループは、サブグループ、例えば、Val、Leu、Gly及びAlaから構成される「脂肪族非極性サブグループ」、ならびにMet、Ser、Thr及びCysから構成される「脂肪族微極性サブグループ」に細分することができる。保存的突然変異の分類の例としては、前述のサブグループ内のアミノ酸のアミノ酸置換、例えば、限定されないが、正電荷を維持することができるような、Argの代わりにLysまたはその逆;負電荷を維持することができるような、Aspの代わりにGluまたはその逆;遊離-OHを維持することができるような、Thrの代わりにSerまたはその逆;及び遊離-NHを維持することができるような、Asnの代わりにGlnまたはその逆、が挙げられる。いくつかの実施形態では、疎水性アミノ酸は、疎水性を保持するために、例えば活性部位中で天然疎水性アミノ酸に対して置換される。
【0064】
2つ以上のポリペプチド配列との関連における「同一の」またはパーセント「同一性」という用語は、比較ウィンドウにわたって、または配列比較アルゴリズムを使用して、もしくは手動アラインメント及び目視検査により測定される指定領域にわたって、最大限一致するように比較及びアラインメントされる場合に、同じであるかまたは特定のパーセンテージ、例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%以上、特定の領域にわたって同一であるアミノ酸残基を有する、2つ以上の配列または部分配列を指す。
【0065】
ポリペプチドの配列比較では、通常、1つのアミノ酸配列が参照配列として機能し、これを候補配列と比較する。最大アラインメントを得るために、当業者が利用可能な様々な方法、例えば、視覚的アラインメントまたは公知のアルゴリズムを使用した公的に利用可能なソフトウェアを使用してアラインメントを実施することができる。そのようなプログラムとしては、BLASTプログラム、ALIGN、ALIGN-2(Genentech,South San Francisco,Calif.)またはMegalign(DNASTAR)が挙げられる。最大アラインメントを得るためのアラインメントに用いられるパラメータは、当業者によって決定され得る。本出願の目的のためのポリペプチド配列の配列比較では、デフォルトパラメータを用いて2つのタンパク質配列をアラインメントするための、BLASTPアルゴリズムの標準タンパク質BLASTを使用する。
【0066】
本明細書で互換的に使用される「対象」、「個体」及び「患者」という用語は、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類(例えば、ラット、マウス及びモルモット)、ウサギ、雌ウシ、ブタ、ウマならびに他の哺乳動物種を含むがこれらに限定されない哺乳動物を指す。一実施形態では、対象、個体、または患者はヒトである。
【0067】
本明細書で使用される「処置する」、「処置」などの用語は、一般に、所望の薬理学的及び/または生理学的効果を得ることを意味する。「処置する」または「処置」は、患者の生存における緩和、寛解、向上、生存期間もしくは生存率の増加、症状を減少させることもしくは疾患を患者がより耐えられるものにすること、変性もしくは減退の速度を緩慢にすること、または患者の身体的もしくは精神的幸福を向上させることなどのあらゆる客観的及び主観的パラメータを含む、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病または本明細書に記載の別の神経変性疾患)の処置または改善における成功のあらゆる兆候を指し得る。症状の処置または改善は、客観的または主観的パラメータに基づき得る。処置の効果を、処置を受けていない個体または個体のプールと、または処置前もしくは処置の間の異なる時点での同じ患者と比較することができる。
【0068】
「薬学的に許容可能な賦形剤」という用語は、限定されないが、緩衝液、担体、または保存剤などの、ヒトまたは動物における使用に生物学的または薬理学的に適合する非活性医薬品成分を指す。
【0069】
本明細書で使用する場合、薬剤(例えば、本明細書に記載の抗体)の「治療量」または「治療有効量」は、対象における疾患の症状を処置するか、軽減させるか、緩和するか、またはその症状の重症度を低減させる薬剤の量である。薬剤(例えば、本明細書に記載の抗体)の「治療量」は、患者の生存の向上、生存期間もしくは生存率の増加、症状を減少させること、損傷、疾患もしくは状態(例えば、神経変性疾患)をより耐えられるものにすること、変性もしくは減退の速度を緩慢にすること、または患者の身体的もしくは精神的幸福を向上させることが可能である。
【0070】
「投与する」という用語は、生物学的作用の所望の部位に薬剤、化合物、または組成物を送達する方法を指す。これらの方法としては、局所送達、非経口送達、静脈内送達、皮内送達、筋肉内送達、髄腔内送達、結腸送達、直腸送達、または腹腔内送達が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、本明細書に記載の抗体は、静脈内投与される。
【0071】
「対照」または「対照値」という用語は、基準値またはベースライン値を指す。適切な対照は、当業者により決定され得る。場合によっては、対照値は、同じ対象または実験内のベースラインに対して決定される場合があり、例えば、抗TREM2抗体による処理前に採取したsTREM2の測定値は、同じ対象におけるsTREM2レベルの処理後測定値に対する対照値であり得る。他の場合では、対照値は、対照対象(例えば、健常対照もしくは疾患対照)に対して、または対照対象の集団(例えば、健常対照もしくは疾患対照、例えば、10、20、50、100、200、500、1000以上の対照対象の集団)における平均値に対して決定される場合があり、例えば、ベースライン時または処理後のいずれかの対象のsTREM2レベルの測定値は、健常対照の値と比較され得る。
【0072】
III.抗TREM2抗体
一態様では、TREM2タンパク質に特異的に結合する抗体及びその抗原結合断片が提供される。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトTREM2タンパク質に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、他のTREM様受容体(例えば、TREM1)に比べてTREM2に対して選択的である。
【0073】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、本明細書に開示される1つ以上の相補性決定領域(CDR)配列、重鎖可変領域配列、及び/または軽鎖可変領域配列を含む抗体である。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、本明細書に開示される1つ以上のCDR配列、重鎖可変領域配列、及び/または軽鎖可変領域配列を含み、本明細書に開示される1つ以上の機能特性、例えば、TREM2活性を増強する(例えば、食作用を増強するか、または骨髄細胞、ミクログリア、もしくはマクロファージなどの細胞の遊走、分化、機能もしくは生存を増強する)抗体、あるいはsTREM2のレベルを減少させる抗体をさらに含む。
【0074】
抗TREM2抗体配列
いくつかの実施形態では、抗TREM2またはその抗原結合断片は、以下の本明細書に記載の抗TREM2抗体:クローンCL0020306、クローンCL0020188、クローンCL0020307、及びクローンCL0020123のいずれかに由来する、重鎖配列もしくはその一部、及び/または軽鎖配列もしくはその一部を含む。これらのクローンのCDR、重鎖可変領域、及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、略式の配列表に記載されている。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、キメラ抗体である。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、ヒト化及び/または親和性成熟抗体である。
【0075】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、
(a)配列番号4、12、及び29のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するか、または配列番号4、12、及び29のいずれか1つのアミノ酸配列に対して最大2つのアミノ酸置換を有する、重鎖CDR1(CDR-H1)配列、
(b)配列番号5、13、25、30、39、41、及び43のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するか、または配列番号5、13、25、30、39、41、及び43のいずれか1つのアミノ酸配列に対して最大2つのアミノ酸置換を有する、重鎖CDR2(CDR-H2)配列、
(c)配列番号6、14、17、及び31のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するか、または配列番号6、14、17、及び31のいずれか1つのアミノ酸配列に対して最大2つのアミノ酸置換を有する、重鎖CDR3(CDR-H3)配列、
(d)配列番号7、23、及び32のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するか、または配列番号7、23、及び32のいずれか1つのアミノ酸配列に対して最大2つのアミノ酸置換を有する、軽鎖CDR1(CDR-L1)配列、
(e)配列番号8及び33のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するか、または配列番号8及び33のいずれか1つのアミノ酸配列に対して最大2つのアミノ酸置換を有する、軽鎖CDR2(CDR-L2)配列、ならびに
(f)配列番号9、18、及び34のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するか、または配列番号9、18、及び34のいずれか1つのアミノ酸配列に対して最大2つのアミノ酸置換を有する、軽鎖CDR3(CDR-L3)配列
からなる群から選択される1つ以上のCDRを含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、(a)~(f)のうちの2つ、3つ、4つ、5つまたは6つ全てを含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、(a)のCDR-H1、(b)のCDR-H2、及び(c)のCDR-H3を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、(d)のCDR-L1、(e)のCDR-L2、及び(f)のCDR-L3を含む。いくつかの実施形態では、最大2つのアミノ酸置換を有するCDRは、参照配列に対して1つのアミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態では、最大2つのアミノ酸置換を有するCDRは、参照配列に対して2つのアミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態では、最大2つのアミノ酸置換は、保存的置換である。
【0077】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、
(a)配列番号4、12、及び29のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、
(b)配列番号5、13、25、30、39、41、及び43のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、
(c)配列番号6、14、17、及び31のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、
(d)配列番号7、23、及び32のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、
(e)配列番号8及び33のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、ならびに
(f)配列番号9、18、及び34のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-L3配列
からなる群から選択される1つ以上のCDRを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、(a)~(f)のうちの2つ、3つ、4つ、5つまたは6つ全てを含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、(a)のCDR-H1、(b)のCDR-H2、及び(c)のCDR-H3を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、(d)のCDR-L1、(e)のCDR-L2、及び(f)のCDR-L3を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、
(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(c)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(e)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(f)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(g)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(h)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(i)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(j)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号2、10、15、19、21、24、26、27、35、37、38、40、42、44、45、46、及び79のいずれか1つに対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2は、配列番号2、10、15、19、21、24、26、27、35、37、38、40、42、44、45、46、及び79のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号3、11、16、20、22、28、36、及び68のいずれか1つに対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号3、11、16、20、22、28、36、及び68のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号2、10、15、19、21、24、26、27、35、37、38、40、42、44、45、46、及び79のいずれか1つに対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号3、11、16、20、22、28、36、及び68のいずれか1つに対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2は、配列番号2、10、15、19、21、24、26、27、35、37、38、40、42、44、45、46、及び79のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号3、11、16、20、22、28、36、及び68のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、
(a)配列番号2に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号3に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(b)配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(c)配列番号15に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号16に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(d)配列番号19に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号20に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(e)配列番号21に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号20に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(f)配列番号19に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(g)配列番号79に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(h)配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号20に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(i)配列番号26に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号20に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(j)配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(k)配列番号26に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(l)配列番号27に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号28に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(m)配列番号35に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(n)配列番号37に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(o)配列番号38に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(p)配列番号40に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(q)配列番号42に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(r)配列番号44に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(s)配列番号45に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(t)配列番号46に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、または
(u)配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列、及び配列番号68に対して少なくとも85%の配列同一性を有するV配列
を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、本明細書に開示されるコンセンサス配列により包含される1つ以上の配列を含む。非限定的な例として、コンセンサス配列は、重鎖配列または軽鎖配列(例えば、CDR)を、同じ(または類似の)生殖系列に由来する抗体に対してアラインメントすることにより同定することができる。いくつかの実施形態では、コンセンサス配列は、同じ(または類似の)長さの配列及び/または少なくとも1つの極めて類似したCDR(例えば、極めて類似したCDR3)を有する配列を含有する抗体から生成され得る。いくつかの実施形態では、それらの抗体におけるそのような配列は、保存されたアミノ酸またはモチーフ(すなわち、配列における変化がタンパク質機能を変化させ得る場所)及び/または変異が配列に存在する領域(すなわち、配列の変異がタンパク質機能に著しく影響を与える可能性が低い場所)を同定するためにアラインメント及び比較され得る。あるいは、コンセンサス配列は、重鎖配列または軽鎖配列(例えば、CDR)を、同じまたは類似の(例えば、重複する)エピトープに結合する抗体に対してアラインメントして、保存されたアミノ酸またはモチーフ(すなわち、配列における変化がタンパク質機能を変化させ得る場所)及び変異が配列のアラインメントに存在する領域(すなわち、配列の変異がタンパク質機能に著しく影響を与える可能性が低い場所)を決定することにより同定され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のコンセンサス配列は、本明細書に開示される抗TREM2抗体と同じまたは類似のエピトープを認識する抗体に対して同定され得る。例示的なコンセンサス配列は、配列番号47~52を含む。配列番号47~52のコンセンサス配列において、大文字は、アラインメントした配列(例えば、アラインメントしたCDR配列)間で完全に保存されているアミノ酸残基を表しており、一方、「X」またはギリシア文字(例えば、「α」、「β」、「γ」、「δ」、「ε」、または「φ」)は、アラインメントした配列間で完全には保存されていないアミノ酸残基を表す。「X」またはギリシア文字によって記された位置に挿入するためにアミノ酸を選択する場合、いくつかの実施形態では、アミノ酸は、アラインメントした配列中の対応する位置に見られるアミノ酸から選択されることが理解されるであろう。
【0085】
クローンCL0020123及びCL0020123のバリアント
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体またはその抗原結合断片は、
(a)GFSIEDFYIH(配列番号29)の配列を含むCDR-H1配列、
(b)W-I-D-P-E-β-G-β-S-K-Y-A-P-K-F-Q-G(配列番号47)の配列を含むCDR-H2配列であって、βがNまたはQであり、かつβがDまたはEである、CDR-H2配列、
(c)HADHGNYGSTMDY(配列番号31)の配列を含むCDR-H3配列、
(d)HASQHINVWLS(配列番号32)の配列を含むCDR-L1配列、
(e)KASNLHT(配列番号33)の配列を含むCDR-L2配列、及び
(f)QQGQTYPRT(配列番号34)の配列を含むCDR-L3配列
を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号30、39、41、及び43から選択されるCDR-H2配列を含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号27、35、37、38、40、42、44、45、及び46のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号27、35、37、38、40、42、44、45、及び46のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号28及び36のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号28及び36のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3配列を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号27に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号28に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号28のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号27に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号28に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号28のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号29、30、及び31のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号27に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する、重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号32、33、及び34のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号28に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する、軽鎖可変領域を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、結合について、本明細書に記載の抗体(例えば、配列番号29、30、31、32、33、及び34のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を含む抗体、または配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体)と競合する、抗体である。
【0095】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3配列を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号42に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号36のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号42に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号36のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号29、43、及び31のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号42に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有する、重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号32、33、及び34のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有する、軽鎖可変領域を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、結合について、本明細書に記載の抗体(例えば、配列番号29、43、31、32、33、及び34のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を含む抗体、または配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号36のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体)と競合する、抗体である。
【0101】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3配列を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号45に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号45のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号36のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号45に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号45のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号36のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号29、41、及び31のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号45に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有する、重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号32、33、及び34のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号36に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有する、軽鎖可変領域を含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、結合について、本明細書に記載の抗体(例えば、配列番号29、41、31、32、33、及び34のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を含む抗体、または配列番号45のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号36のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体)と競合する、抗体である。
【0107】
クローンCL0020188、CL0020306、CL0020307、及びCL0020188のバリアント
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体またはその抗原結合断片は、
(a)G-F-T-F-T-α-F-Y-M-S(配列番号48)の配列を含むCDR-H1配列であって、αがDまたはNである、CDR-H1配列、
(b)V-I-R-N-β-β-N-β-Y-T-β11-β12-Y-N-P-S-V-K-G(配列番号49)の配列を含むCDR-H2配列であって、βがKまたはRであり、βがAまたはPであり、βがGまたはAであり、β11がAまたはTであり、かつβ12がGまたはDである、CDR-H2配列、
(c)γ-R-L-γ-Y-G-F-D-Y(配列番号50)の配列を含むCDR-H3配列であって、γがAまたはTであり、かつγがTまたはSである、CDR-H3配列、
(d)Q-S-S-K-S-L-L-H-S-δ10-G-K-T-Y-L-N(配列番号51)の配列を含むCDR-L1配列であって、δ10がNまたはTである、CDR-L1配列、
(e)WMSTRAS(配列番号8)の配列を含むCDR-L2配列、及び
(f)Q-Q-F-L-E-φ-P-F-T(配列番号52)の配列を含むCDR-L3配列であって、φがYまたはFである、CDR-L3配列
を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号4及び12から選択されるCDR-H1配列を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号5、13、及び25から選択されるCDR-H2配列を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号6、14、及び17から選択されるCDR-H3配列を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号7及び23から選択されるCDR-L1配列を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号9及び18から選択されるCDR-L3配列を含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号2、10、15、19、21、24、26、及び79のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号2、10、15、19、21、24、26、及び79のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号3、11、16、20、22、及び68のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号3、11、16、20、22、及び68のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0111】
クローンCL0020188及びCL0020188のバリアント
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3配列を含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号15に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号16に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号15に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号16に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号4、5、及び17のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号15に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する、重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号7、8、及び18のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号16に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する、軽鎖可変領域を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、結合について、本明細書に記載の抗体(例えば、配列番号5、17、7、8、及び18のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を含む抗体、または配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体)と競合する、抗体である。
【0117】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3配列を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号79に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号79に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号4、5、及び17のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号79に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有する、重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号23、8、及び18のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有する、軽鎖可変領域を含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、結合について、本明細書に記載の抗体(例えば、配列番号4、5、17、23、8、及び18のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を含む抗体、または配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体)と競合する、抗体である。
【0123】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3配列を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号4、25、及び17のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有する、重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号23、8、及び18のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有する、軽鎖可変領域を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、結合について、本明細書に記載の抗体(例えば、配列番号4、25、17、23、8、及び18のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を含む抗体、または配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体)と競合する、抗体である。
【0129】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3配列を含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号68に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号68のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号68に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号68のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号4、25、及び17のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有する、重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号7、8、及び9のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号68に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有する、軽鎖可変領域を含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、結合について、本明細書に記載の抗体(例えば、配列番号4、25、17、7、8、及び9のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を含む抗体、または配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号68のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体)と競合する、抗体である。
【0135】
クローンCL0020306
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3配列を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号2に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号3に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号2に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号3に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号4、5、及び6のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号2に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する、重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号7、8、及び9のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号3に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する、軽鎖可変領域を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、結合について、本明細書に記載の抗体(例えば、配列番号4、5、6、7、8、及び9のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を含む抗体、または配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体)と競合する、抗体である。
【0141】
クローンCL0020307
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3配列を含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号12、13、及び14のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する、重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号7、8、及び9のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する、軽鎖可変領域を含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、結合について、本明細書に記載の抗体(例えば、配列番号12、13、14、7、8、及び9のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を含む抗体、または配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体)と競合する、抗体である。
【0147】
抗TREM2抗体の結合特性
いくつかの実施形態では、TREM2タンパク質に特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、細胞(例えば、ヒトマクロファージなどの内在的にTREM2を発現する一次細胞もしくは細胞株、または例えば、以下の実施例セクションに記載されているようなTREM2を発現するように操作されている一次細胞もしくは細胞株)上に発現するTREM2に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のTREM2タンパク質に特異的に結合する抗体は、精製もしくは組換えTREM2タンパク質もしくはその一部に結合するか、またはTREM2もしくはその一部を含むキメラタンパク質(例えば、TREM2を含むFc融合タンパク質もしくはTREM2の外部ドメインを含むFc融合タンパク質)に結合する。
【0148】
いくつかの実施形態では、ヒトTREM2タンパク質に特異的に結合する抗体は、別の種の1つ以上の他のTREM2タンパク質との交差反応性を示す。いくつかの実施形態では、ヒトTREM2タンパク質に特異的に結合する抗体は、カニクイザル(「cyno」)TREM2タンパク質との交差反応性を示す。いくつかの実施形態では、ヒトTREM2タンパク質に特異的に結合する抗体は、マウスTREM2タンパク質との交差反応性を示す。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、ヒトTREM2、cyno TREM2、及びマウスTREM2との交差反応性を示す。
【0149】
結合親和性、結合カイネティクス、及び交差反応性を分析するための方法は、当該技術分野において公知である。これらの方法としては、固相結合アッセイ(例えば、ELISAアッセイ)、免疫沈降法、表面プラズモン共鳴(例えば、Biacore(商標)(GE Healthcare,Piscataway,NJ))、結合平衡除外法(例えば、KinExA(登録商標))、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別(FACS)、BioLayer干渉法(例えば、Octet(商標)(ForteBio,Inc.,Menlo Park,CA))、及びウエスタンブロット分析が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ELISAを使用して、結合親和性及び/または交差反応性を判定する。ELISAアッセイを実施するための方法は当該技術分野において公知であり、以下の実施例セクションにも記載されている。いくつかの実施形態では、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して、結合親和性、結合カイネティクス、及び/または交差反応性を判定する。いくつかの実施形態では、結合平衡除外法を使用して、結合親和性、結合カイネティクス、及び/または交差反応性を判定する。いくつかの実施形態では、BioLayer干渉法アッセイを使用して、結合親和性、結合カイネティクス、及び/または交差反応性を判定する。
【0150】
抗TREM2抗体によって認識されるエピトープ
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、本明細書に記載の抗体クローンによって認識されるエピトープと同じかまたは実質的に同じヒトTREM2のエピトープを認識する。本明細書で使用する場合、「実質的に同じ」という用語は、本明細書に記載の抗体クローンによって認識されるエピトープに関して使用する場合、本明細書に記載の抗体クローンによって認識されるエピトープと同一であるか、そのエピトープ内にあるか、またはそれとほぼ同一であるか(例えば、そのエピトープに対して少なくとも90%の配列同一性を有するか、またはそのエピトープに対して1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換、例えば保存的置換を有する)、あるいはそのエピトープと実質的に重複する(例えば、そのエピトープと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または95%重複する)エピトープを抗TREM2抗体が認識することを意味する。
【0151】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、クローンCL0020306、クローンCL0020188、クローンCL0020307、及びクローンCL0020123からなる群から選択される抗体クローンによって認識されるエピトープと同じかまたは実質的に同じヒトTREM2のエピトープを認識する。
【0152】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、TREM2のストーク領域内のエピトープでヒトTREM2に結合する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号1の残基129~172または残基131~169を含むか、その中にあるか、またはそれらからなるヒトTREM2のエピトープを認識する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号1の残基129~148を含むか、その中にあるか、またはそれからなるヒトTREM2のエピトープを認識する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号1のアミノ酸残基143~149を含むか、その中にあるか、またはそれからなるヒトTREM2のエピトープを認識する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、(例えば、Sykなどのキナーゼのリン酸化を誘導することによって)TREM2/DAP12シグナル伝達を活性化し、TREM2のストーク領域内のエピトープでヒトTREM2に結合するアゴニストである。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、TREM2のストーク領域内のエピトープでヒトTREM2に結合し、プロテアーゼ(例えば、ADAM17)によるTREM2の切断を阻害する。
【0153】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、TREM2のIg可変(IgV)ドメイン内のエピトープでヒトTREM2に結合する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、(例えば、Sykなどのキナーゼのリン酸化を誘導することによって)TREM2/DAP12シグナル伝達を活性化し、TREM2のIgVドメイン内のエピトープでヒトTREM2に結合するアゴニストである。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、以下:(i)配列番号1のアミノ酸残基55~63(GEKGPCQRV(配列番号70))、(ii)配列番号1のアミノ酸96~107(TLRNLQPHDAGL(配列番号71))、及び(iii)配列番号1のアミノ酸残基126~129(VEVL(配列番号72))のうちの1つ以上を含むかまたはそれらからなるエピトープでヒトTREM2に結合する。
【0154】
抗TREM2抗体の機能特性
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体(例えば、開示されている1つ以上のCDR配列、重鎖可変領域配列、及び/または軽鎖可変領域配列を有する抗体)は、本明細書に開示される1つ以上のTREM2活性において機能する。例えば、いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、sTREM2タンパク質のレベル(例えば、細胞表面から細胞外試料にシェディングされたsTREM2のレベル)を調節し、TREM2/DAP12シグナル伝達複合体と相互作用するキナーゼ(例えば、Sykキナーゼ)の動員もしくはリン酸化を調節し、及び/または食作用、細胞増殖、細胞生存、細胞分化、サイトカイン分泌、もしくは細胞遊走などのシグナル伝達複合体の下流の1つ以上の活性を調節する抗体である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗TREM2抗体は、参照抗体と比較して良好な効力で健常ヒトCSFまたはカニクイザルCSF中の可溶性TREM2タンパク質(sTREM2)に結合する。いくつかの実施形態では、参照抗体は、配列番号73及び74、配列番号75及び76、ならびに配列番号77及び78からなる群から選択される配列の組み合わせによって表される。いくつかの実施形態では、効力アッセイは、実質的に実施例11に記載されているように行われる。
【0155】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、リガンドによって誘導される1つ以上のTREM2活性(例えば、本明細書に記載のもの)を増強する。いくつかの実施形態では、リガンドは、脂質リガンドである。TREM2脂質リガンドの例としては、1-パルミトイル-2-(5’-オキソ-バレロイル)-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POVPC)、2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)、7-ケトコレステロール(7-KC)、24(S)ヒドロキシコレステロール(24OHC)、25(S)ヒドロキシコレステロール(25OHC)、27-ヒドロキシコレステロール(27OHC)、アシルカルニチン(AC)、アルキルアシルグリセロホスホコリン(PAF)、α-ガラクトシルセラミド(KRN7000)、ビス(モノアシルグリセロ)リン酸(BMP)、カルジオリピン(CL)、セラミド、セラミド-1-リン酸(C1P)、コレステリルエステル(CE)、リン酸コレステロール(CP)、ジアシルグリセロール34:1(DG34:1)、ジアシルグリセロール38:4(DG38:4)、ジアシルグリセロールピロリン酸(DGPP)、ジヒドロセラミド(DhCer)、ジヒドロスフィンゴミエリン(DhSM)、エーテルホスファチジルコリン(PCe)、遊離コレステロール(FC)、ガラクトシルセラミド(GalCer)、ガラクトシルスフィンゴシン(GalSo)、ガングリオシドGM1、ガングリオシドGM3、グルコシルスフィンゴシン(GlcSo)、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)、Kdo2-リピドA(KLA)、ラクトシルセラミド(LacCer)、リゾアルキルアシルグリセロホスホコリン(LPAF)、リゾホスファチジン酸(LPA)、リゾホスファチジルコリン(LPC)、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)、リゾホスファチジルグリセロール(LPG)、リゾホスファチジルイノシトール(LPI)、リゾスフィンゴミエリン(LSM)、リゾホスファチジルセリン(LPS)、N-アシル-ホスファチジルエタノールアミン(NAPE)、N-アシル-セリン(NSer)、酸化ホスファチジルコリン(oxPC)、パルミチン酸-9-ヒドロキシ-ステアリン酸(PAHSA)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルエタノール(PEtOH)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、スフィンガニン、スフィンガニン-1-リン酸(Sa1P)、スフィンゴミエリン(SM)、スフィンゴシン、スフィンゴシン-1-リン酸(So1P)、及びスルファチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
sTREM2シェディングの調節
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、試料中のsTREM2タンパク質のレベル、例えば、細胞表面から細胞外試料にシェディングされたsTREM2のレベルを変化させる。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、sTREM2のレベルを減少させる。
【0157】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、処理した試料中のsTREM2の量が対照値と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%以上減少する場合、sTREM2のレベルを減少させる。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、処理した試料中のsTREM2の量が対照値と比較して、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍以上減少する場合、sTREM2のレベルを減少させる。いくつかの実施形態では、対照値は、無処理試料(例えば、抗TREM2抗体で処理されていないTREM2発現細胞からの上清、もしくは抗TREM2抗体で処理されていない対象からの試料)または適切な非TREM2結合抗体で処理された試料中のsTREM2の量である。
【0158】
いくつかの実施形態では、sTREM2のシェディングは、体液、例えば、血液、血漿、血清、尿、または脳脊髄液を含む試料を使用して測定される。いくつかの実施形態では、試料は、脳脊髄液を含む。いくつかの実施形態では、試料は、細胞培養物からの上清(例えば、ヒトマクロファージなどの内在的にTREM2を発現する一次細胞もしくは細胞株からの、または例えば、以下の実施例セクションに記載されているようなTREM2を発現するように操作されている一次細胞もしくは細胞株からの上清)を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、試料中のsTREM2のレベルは、免疫測定法を使用して測定される。免疫測定法は、当該技術分野において公知であり、限定されないが、酵素多重免疫測定法(EMIA)などの酵素免疫測定法(EIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、微粒子酵素免疫測定法(MEIA)、免疫組織化学法(IHC)、免疫細胞化学法、キャピラリー電気泳動免疫測定法(CEIA)、放射免疫測定法(RIA)、免疫蛍光法、化学発光免疫測定法(CL)、及び電気化学発光免疫測定法(ECL)が含まれる。いくつかの実施形態では、sTREM2レベルは、ELISAアッセイを使用して測定される。いくつかの実施形態では、sTREM2レベルは、以下の実施例セクションに記載されているELISAアッセイを使用して測定される。
【0160】
キナーゼの動員またはリン酸化の調節
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、TREM2/DAP12シグナル伝達複合体(例えば、限定されないが、Syk、ZAP70、PI3K、Erk、AKT、またはGSK3b)と相互作用するキナーゼのリン酸化を誘導する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、天然TREM2リガンドの結合を遮断せずに、TREM2/DAP12シグナル伝達複合体と相互作用するキナーゼのリン酸化を誘導する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、TREM2リガンド(例えば、脂質リガンド)によって誘導されるTREM2/DAP12シグナル伝達複合体と相互作用するキナーゼのリン酸化を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、Sykのリン酸化を誘導または増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、抗TREM2抗体で処理した試料中のSykリン酸化のレベルが、対照値と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%以上増加する場合、Sykのリン酸化を誘導または増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、抗TREM2抗体で処理した試料中のSykリン酸化のレベルが、対照値と比較して少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍以上増加する場合、Sykのリン酸化を誘導する。いくつかの実施形態では、対照値は、無処理試料(例えば、抗TREM2抗体で処理されていないTREM2発現細胞を含む試料、もしくは抗TREM2抗体で処理されていない対象からの試料)、またはTREM2リガンドで処理されているが抗TREM2抗体では処理されていない試料、または適切な非TREM2結合抗体で処理された試料中のSykリン酸化のレベルである。
【0161】
試料中のリン酸化(例えば、Sykリン酸化)を検出及び/または定量化するために、いくつかの実施形態では、免疫測定法が使用される。いくつかの実施形態では、免疫測定法は、酵素免疫測定法(EIA)、酵素多重免疫測定法(EMIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、微粒子酵素免疫測定法(MEIA)、免疫組織化学法(IHC)、免疫細胞化学法、キャピラリー電気泳動免疫測定法(CEIA)、放射免疫測定法(RIA)、免疫蛍光法、化学発光免疫測定法(CL)、または電気化学発光免疫測定法(ECL)である。いくつかの実施形態では、リン酸化は、増幅発光近似均質アッセイ(amplified luminescent proximity homogenous assay)(AlphaLISA(登録商標)、PerkinElmer Inc.)を利用する免疫測定法を使用して検出及び/または定量化される。
【0162】
いくつかの実施形態では、リン酸化は、1つ以上の細胞、例えば、1つ以上のTREM2発現細胞(例えば、ヒトマクロファージもしくはiPSC由来ミクログリアなどの内在的にTREM2を発現する一次細胞もしくは細胞株、または例えば、以下の実施例セクションに記載されているようなTREM2を発現するように操作されている一次細胞もしくは細胞株)を含む試料を使用して測定される。いくつかの実施形態では、試料は、体液、例えば、血液、血漿、血清、尿、または脳脊髄液を含む。いくつかの実施形態では、試料は、組織(例えば、肺、脳、腎臓、脾臓、神経組織、もしくは骨格筋)またはそのような組織からの細胞を含む。いくつかの実施形態では、試料は、(例えば、ヒト対象または非ヒト対象からの)内因性体液、組織または細胞を含む。
【0163】
食作用の調節
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、死細胞デブリ、組織デブリ、アミロイドベータ粒子、または異物の食作用を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、天然TREM2リガンドの結合を遮断せずに食作用を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、TREM2リガンド(例えば、脂質リガンド)によって誘導される食作用を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、抗TREM2抗体で処理した試料中の食作用のレベルが、対照値と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%以上増加する場合、食作用を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、抗TREM2抗体で処理した試料中の食作用のレベルが、対照値と比較して少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍以上増加する場合、食作用を増強する。いくつかの実施形態では、対照値は、無処理試料、TREM2リガンドで処理されているが抗TREM2抗体では処理されていない試料、または適切な非TREM2結合抗体で処理された試料中の食作用のレベルである。
【0164】
いくつかの実施形態では、食作用は、標識基質を用いた食作用アッセイを使用して測定される。食作用アッセイは、当該技術分野において公知である。いくつかの実施形態では、食作用アッセイは、TREM2を内在的に発現する細胞、例えば、ヒトマクロファージまたはミクログリアを含む試料で実施される。いくつかの実施形態では、食作用アッセイは、TREM2を発現するように操作された細胞を含む試料で実施される。いくつかの実施形態では、食作用は、以下の実施例セクションに記載されているヒトマクロファージ食作用アッセイを使用して測定される。
【0165】
細胞の分化、機能、遊走、及び生存の調節
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、ならびにiPSC由来ミクログリア及び疾患関連ミクログリアを含むミクログリアの)細胞遊走、細胞生存、細胞機能、または細胞分化を増強する。疾患関連ミクログリア及び疾患関連ミクログリアを検出する方法は、Keren-Shaul et al.,Cell,2017,169:1276-1290に記載されている。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、1つ以上の細胞タイプ(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、またはミクログリア)の細胞遊走を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、1つ以上の細胞タイプ(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、またはミクログリア)の細胞生存を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、1つ以上の細胞タイプ(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、またはミクログリア)の細胞機能を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、1つ以上の細胞タイプ(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、またはミクログリア)の細胞分化を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、骨髄細胞の遊走、生存、機能、及び/または分化を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、マクロファージの遊走、生存、機能、及び/または分化を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、ミクログリアの遊走、生存、機能、及び/または分化を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、ミクログリア活性化を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、疾患関連ミクログリアの遊走、生存、機能、及び/または分化を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、天然TREM2リガンドの結合を遮断せずに、細胞遊走、細胞生存、細胞機能、または細胞分化を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、TREM2リガンド(例えば、脂質リガンド)によって誘導される細胞遊走、細胞生存、細胞機能、または細胞分化を増強する。
【0166】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、抗TREM2抗体で処理した試料中の活性(例えば、遊走、生存、機能、または分化)のレベルが、対照値と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%以上増加する場合、細胞遊走、細胞生存、細胞機能、または細胞分化を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、抗TREM2抗体で処理した試料中の活性(例えば、遊走、生存、機能、または分化)のレベルが、対照値と比較して少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍以上増加する場合、細胞遊走、細胞生存、細胞機能、または細胞分化を増強する。いくつかの実施形態では、対照値は、無処理試料(例えば、抗TREM2抗体で処理されていない試料)、TREM2リガンドで処理されているが抗TREM2抗体では処理されていない試料、または適切な非TREM2結合抗体で処理された試料中の活性(例えば、遊走、生存、機能、または分化)のレベルである。
【0167】
いくつかの実施形態では、細胞遊走は、走化性アッセイを使用して測定される。走化性アッセイは、当該技術分野において公知である。いくつかの実施形態では、細胞遊走アッセイ(例えば、走化性アッセイ)は、TREM2を内在的に発現する細胞、例えば、ヒトマクロファージを含む試料で実施される。いくつかの実施形態では、細胞遊走アッセイ(例えば、走化性アッセイ)は、TREM2を発現するように操作された細胞を含む試料で実施される。いくつかの実施形態では、細胞遊走は、以下の実施例セクションに記載されているヒトマクロファージ走化性アッセイを使用して測定される。
【0168】
いくつかの実施形態では、細胞生存は、細胞生存率アッセイを使用して測定される。細胞生存率アッセイは、当該技術分野において公知である。いくつかの実施形態では、細胞生存アッセイ(例えば、細胞生存率アッセイ)は、TREM2を内在的に発現する細胞、例えば、ヒトマクロファージを含む試料で実施される。いくつかの実施形態では、細胞生存アッセイ(例えば、細胞生存率アッセイ)は、TREM2を発現するように操作された細胞を含む試料で実施される。いくつかの実施形態では、細胞生存は、以下の実施例セクションに記載されているヒトマクロファージ生存率アッセイを使用して測定される。
【0169】
いくつかの実施形態では、細胞機能は、その細胞に適した機能アッセイを使用して測定される。例えば、いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞機能は、例えば、以下の実施例セクションに記載されているように、食作用アッセイを使用して評価される。
【0170】
いくつかの実施形態では、細胞分化は、TREM2を内在的に発現する細胞の分化能力を評価することにより測定される。例えば、いくつかの実施形態では、細胞分化は、例えば、実施例セクションに記載されているように、単球から分化するマクロファージの能力を評価することにより測定される。
【0171】
いくつかの実施形態では、ミクログリアの活性化は、インビボで測定される。いくつかの実施形態では、ミクログリア活性化は、TSPO-PETイメージングを使用して測定される。TSPO-PETイメージング法は、当該技術分野において公知である。
【0172】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、神経炎症を増大させずにミクログリア機能を増強する。神経炎症のレベルは、限定されないが、TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-1ra、TGFβ、IL-15、またはIFN-γなどのサイトカイン(例えば、炎症性サイトカイン)のレベルを測定することにより判定され得る。いくつかの実施形態では、サイトカインレベルは、免疫測定法、例えば、酵素免疫測定法(EIA)、酵素多重免疫測定法(EMIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、微粒子酵素免疫測定法(MEIA)、免疫組織化学法(IHC)、免疫細胞化学法、キャピラリー電気泳動免疫測定法(CEIA)、放射免疫測定法(RIA)、免疫蛍光法、化学発光免疫測定法(CL)、または電気化学発光免疫測定法(ECL)を使用して測定される。
【0173】
IV.抗体の調製
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体応答を誘導するための抗原または抗原混合物で動物(複数可)(例えば、マウス、ウサギ、またはラット)を免疫化することにより調製される。いくつかの実施形態では、抗原または抗原混合物は、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント)と併せて投与される。初回免疫化後、抗体産生を向上させるために、1回以上の後続する抗原(複数可)の追加免疫注射が投与され得る。免疫化後、抗原特異的B細胞が、例えば、脾臓及び/またはリンパ組織から回収される。モノクローナル抗体を作製するために、B細胞を骨髄腫細胞と融合させ、続いて、抗原特異性についてスクリーニングする。抗体を調製する方法は、以下の実施例セクションにも記載されている。
【0174】
目的の抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子を細胞からクローニングすることができ、例えば、モノクローナル抗体をコードする遺伝子を、ハイブリドーマからクローニングして組換えモノクローナル抗体を産生させるために使用することができる。モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子ライブラリもまた、ハイブリドーマまたは形質細胞から作製される。あるいは、ファージまたは酵母ディスプレイ技術を使用して、選択した抗原に特異的に結合する抗体及びFab断片を同定することができる。抗体はまた、二重特異性にすることができる。すなわち、2つの異なる抗原を認識することができる。抗体はまた、異種コンジュゲート、例えば、2つの共有結合的に連結した抗体または免疫毒素であり得る。
【0175】
抗体は、原核生物発現系及び真核生物発現系を含む、任意数の発現系を使用して産生され得る。いくつかの実施形態では、発現系は、哺乳動物細胞の発現、例えば、ハイブリドーマまたはCHO細胞発現系である。多数のそのような系が、商業的供給元から広く入手可能である。抗体がV及びV領域の両方を含む実施形態では、V及びV領域は、例えば、ジシストロン性発現ユニット中で、または異なるプロモーターの制御下で、単一のベクターを使用して発現され得る。他の実施形態では、V及びV領域は、別個のベクターを使用して発現され得る。本明細書に記載のVまたはV領域は、任意選択で、N末端にメチオニンを含み得る。
【0176】
いくつかの実施形態では、抗体は、キメラ抗体である。キメラ抗体を作製する方法は当該技術分野において公知である。例えば、マウスなどの1つの種の抗原結合領域(重鎖可変領域及び軽鎖可変領域)が、ヒトなどの別の種のエフェクター領域(定常ドメイン)に融合されたキメラ抗体を作製することができる。別の例として、抗体のエフェクター領域が異なる免疫グロブリンクラスまたはサブクラスのエフェクター領域で置換された、「クラススイッチされた」キメラ抗体を作製することができる。
【0177】
いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。一般に、非ヒト抗体は、その免疫原性を低減させるためにヒト化される。ヒト化抗体は、通常、非ヒト(例えば、マウス可変領域配列に由来する)である1つ以上の可変領域(例えば、CDR)またはその一部、及び場合により非ヒトであるいくつかのフレームワーク領域またはその一部を含み、ヒト抗体配列に由来する1つ以上の定常領域をさらに含む。非ヒト抗体をヒト化させる方法は、当該技術分野において公知である。トランスジェニックマウス、または他の哺乳動物などの他の生物を使用して、ヒト化抗体またはヒト抗体を発現させることができる。抗体をヒト化させる他の方法としては、例えば、可変ドメインリサーフェイシング(variable domain resurfacing)、CDRグラフティング、特異性決定残基(SDR)グラフティング、ガイド選択(guided selection)、及びフレームワークシャッフリングが挙げられる。
【0178】
ヒト化の代替として、完全ヒト抗体を作製することができる。非限定的な例として、免疫化時に、内在性免疫グロブリン産生の非存在下で、ヒト抗体の完全なレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を産生させることができる。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合型欠失により、内在性抗体産生が完全に阻害されることが説明されている。そのような生殖系列突然変異マウスへのヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの導入により、抗原曝露の際にヒト抗体の産生がもたらされる。別の例として、ヒト抗体は、ヒトモノクローナル抗体を産生する細胞株を作製するための初代ヒトB細胞を使用するなどの、ハイブリドーマベースの方法により産生され得る。
【0179】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレイまたは酵母ディスプレイ技術を使用して産生され得る。ファージディスプレイでは、可変重鎖及び可変軽鎖遺伝子のレパートリーは、ファージディスプレイベクター中で増幅され、発現される。いくつかの実施形態では、抗体ライブラリは、ヒト源から増幅された天然のレパートリーである。いくつかの実施形態では、抗体ライブラリは、重鎖配列及び軽鎖配列をクローニングし、組換えて、様々な抗原特異性を有する抗体の大型プールを作製することにより作られた合成ライブラリである。ファージは通常、抗体断片(例えば、Fab断片またはscFv断片)を提示し、これは、次いで目的の抗原への結合についてスクリーニングされる。
【0180】
いくつかの実施形態では、抗体断片(Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、V、またはVHHなど)が作製される。抗体断片を産生するための様々な技法が開発されている。従来、これらの断片は、インタクト抗体のタンパク質分解消化により得られていた。しかしながら、これらの断片は、現在、組換え宿主細胞を使用して直接産生され得る。例えば、抗体断片は、抗体ファージライブラリから単離され得る。あるいは、Fab’-SH断片は、E.coli細胞から直接回収され、化学的にカップリングされてF(ab’)断片を形成し得る。別のアプローチによると、F(ab’)断片は、組換え宿主細胞培養物から直接単離され得る。抗体断片を産生するための他の技法は、当業者には明らかであろう。
【0181】
いくつかの実施形態では、抗体または抗体断片は、インビボでの半減期の延長をもたらすために、別の分子、例えば、ポリエチレングリコールにコンジュゲート(ペグ化)されるか、または血清アルブミンにコンジュゲートされる。
【0182】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗TREM2抗体(またはその抗原結合断片)を含む多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体が提供される。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対して結合特異性を有する抗体である。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)は、TREM2に対する結合特異性を有し、かつ少なくとも1つの他の抗原に対する結合特異性を有する。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)は、2つの異なるTREM2エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)は、細胞表面におけるTREM2クラスター化を誘導することができる。共焦点FRET顕微鏡を使用して受容体クラスター化を測定するための例示的な方法は、Wallrabe et al.,Biophys.J.,2003,85:559-571に記載されている。多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)を作製する方法としては、宿主細胞中での2対の重鎖及び軽鎖の組換え共発現、「ノブイントゥホール(knobs-into-holes)」エンジニアリング、分子内三量体化、ならびに別の抗体のN末端またはC末端への抗体断片の融合、例えば、タンデム可変ドメインが挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
V.核酸、ベクター及び宿主細胞
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗TREM2抗体は、組換え法を使用して調製される。したがって、いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載の抗TREM2抗体のいずれか(例えば、本明細書に記載のCDR、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のうちのいずれか1つ以上)をコードする核酸配列を含む単離された核酸;そのような核酸を含むベクター;ならびに抗体をコードする核酸を複製するため及び/または抗体を発現するために使用される核酸が導入された宿主細胞、を提供する。
【0184】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド(例えば、単離されたポリヌクレオチド)は、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合部分(例えば、「抗TREM2抗体配列」の表題で前述のセクションに記載されているもの)をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、以下の略式の配列表に開示されている1つ以上のアミノ酸配列(例えば、CDR配列、重鎖配列または軽鎖配列)をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、以下の略式の配列表に開示されている配列(例えば、CDR配列、重鎖配列、または軽鎖配列)に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、異種核酸、例えば、異種プロモーターに作動可能に連結されている。
【0185】
本開示の抗体、またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含有する好適なベクターには、クローニングベクター及び発現ベクターが含まれる。選択されるクローニングベクターは使用される予定の宿主細胞によって異なり得るが、有用なクローニングベクターは、一般に自己複製する能力を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼの単一の標的を有し得、及び/またはベクターを含有するクローンの選択に使用することができるマーカーの遺伝子を保有し得る。例としては、プラスミド及び細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)及びその誘導体、mpl8、mpl9、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにpSA3及びpAT28などのシャトルベクターが挙げられる。これら及び他の多くのクローニングベクターが、BioRad、Strategene、及びInvitrogenなどの商業的供給業者から入手可能である。
【0186】
発現ベクターは、一般に、本開示の核酸を含有する複製可能なポリヌクレオチドコンストラクトである。発現ベクターは、エピソームとして、または染色体DNAの不可分の一部としてのいずれかで宿主細胞内で複製し得る。好適な発現ベクターとしては、プラスミド、ウイルスベクター(アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスを含む)、及び他の任意のベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0187】
本明細書に記載のポリヌクレオチドまたはベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞には、原核細胞または真核細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、原核生物である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、真核生物、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ系細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ヒト細胞、例えば、ヒト胚腎臓(HEK)細胞である。
【0188】
別の態様では、本明細書に記載の抗TREM2抗体を作製する方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、抗体の発現に適した条件下で本明細書に記載の宿主細胞(例えば、本明細書に記載のポリヌクレオチドまたはベクターを発現する宿主細胞)を培養することを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、その後宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収される。
【0189】
VI.抗TREM2抗体を使用する治療方法
別の態様では、本明細書に開示される抗TREM2抗体(例えば、前述のセクションIIIに記載されている抗TREM2抗体)を使用する治療方法が提供される。いくつかの実施形態では、神経変性疾患を処置する方法が提供される。いくつかの実施形態では、1つ以上のTREM2活性を(例えば、神経変性疾患を有する対象において)調節する方法が提供される。
【0190】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患を処置する方法が提供される。いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、アルツハイマー病、原発性年齢関連タウオパチー、進行性核上性麻痺(PSP)、前頭側頭型認知症、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、嗜銀顆粒性認知症、筋萎縮性側索硬化症、グアム筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合(ALS-PDC)、大脳皮質基底核変性症、慢性外傷性脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ボクサー認知症、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病、ダウン症候群、家族性英国型認知症、家族性デンマーク型認知症、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、球状グリア性タウオパチー、認知症を伴うグアドループ型パーキンソニズム、グアドループ型PSP、ハラーフォルデン・シュパッツ病、スフェロイドを伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS)、ハンチントン病、封入体筋炎、多系統萎縮症、筋強直性ジストロフィー、那須・ハコラ病、神経原線維変化優位型認知症、ニーマン・ピック病C型、淡蒼球橋黒質変性症、パーキンソン病、ピック病、脳炎後パーキンソニズム、プリオンタンパク質脳アミロイド血管症、進行性皮質下グリオーシス、亜急性硬化性全脳炎、及び神経原線維型老年認知症からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、アルツハイマー病である。いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、那須・ハコラ病である。いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、前頭側頭型認知症である。いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、パーキンソン病である。いくつかの実施形態では、本方法は、ヒトTREM2タンパク質に特異的に結合する単離された抗体もしくはその抗原結合断片(例えば、本明細書に記載の抗TREM2抗体)、または本明細書に記載の抗TREM2抗体を含む医薬組成物を、対象に投与することを含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗TREM2抗体(またはその抗原結合部分もしくは医薬組成物)は、TREM2の突然変異を特徴とする神経変性疾患の処置に使用される。いくつかの実施形態では、TREM2の突然変異を特徴とする神経変性疾患は、アルツハイマー病、例えば、TREM2のR47H突然変異を特徴とするアルツハイマー病である。
【0192】
いくつかの実施形態では、対象(例えば、神経変性疾患を有する対象)において1つ以上のTREM2活性を調節する方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、sTREM2のレベルを調節すること、TREM2/DAP12シグナル伝達複合体と相互作用するキナーゼ(例えば、Sykキナーゼ)の動員またはリン酸化を調節すること、食作用(例えば、細胞デブリ、アミロイドベータ粒子などの食作用)を調節すること、細胞遊走(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、ミクログリア、及び疾患関連ミクログリアの遊走)を調節すること、及び/または(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、ミクログリア、及び疾患関連ミクログリアの)細胞分化を調節することを含む。いくつかの実施形態では、神経変性疾患を有する対象において1つ以上のTREM2活性を増強する方法が提供される。いくつかの実施形態では、神経変性疾患を有する対象においてsTREM2のレベルを減少させる方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象において1つ以上のTREM2活性を調節する方法は、ヒトTREM2タンパク質に特異的に結合する単離された抗体もしくはその抗原結合部分(例えば、本明細書に記載の抗TREM2抗体)、または本明細書に記載の抗TREM2抗体を含む医薬組成物を、対象に投与することを含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、処置される対象は、ヒト、例えば成人ヒトまたは小児ヒトである。
【0194】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患を有する対象においてプラーク蓄積を低減させる方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載の抗体または医薬組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象は、アルツハイマー病を有する。いくつかの実施形態では、対象は、神経変性疾患の動物モデル(例えば、5XFADまたはAPP/PS1マウスモデル)である。いくつかの実施形態では、プラーク蓄積は、例えば、陽電子放出断層撮影(PET)スキャニングを使用してアミロイドプラークイメージング及び/またはタウイメージングによって測定される。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体の投与は、ベースライン値(例えば、抗TREM2抗体の投与前の対象におけるプラーク蓄積のレベル)と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%、プラークの蓄積を低減させる。
【0195】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、治療有効量または治療有効用量で対象に投与される。約0.01mg/kg~約500mg/kg、または約0.1mg/kg~約200mg/kg、または約1mg/kg~約100mg/kg、または約10mg/kg~約50mg/kgの1日用量範囲が使用され得る。しかしながら、投与量は、選択した投与経路、組成物の配合、患者の応答、状態の重症度、対象の体重、及び処方医の判断を含む、いくつかの要因によって変化し得る。投与量は、個々の患者による必要に応じて経時的に増加または減少され得る。特定の場合では、患者に最初に低用量を与え、次いで、患者が耐えられる有効な投与量まで増量する。有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0196】
本明細書に記載の抗TREM2抗体の投与経路は、経口、腹腔内、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、髄腔内、吸入、局所、病巣内、直腸、気管支内、経鼻、経粘膜、腸内、眼もしくは耳への送達、または当該技術分野で公知の他の任意の方法であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、経口投与、静脈内投与、または腹腔内投与される。
【0197】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体(及び任意選択で別の治療剤)は、長時間にわたり、例えば、少なくとも30日間、40日間、50日間、60日間、70日間、80日間、90日間、100日間、150日間、200日間、250日間、300日間、または350日間以上対象に投与される。
【0198】
VII.医薬組成物及びキット
別の態様では、ヒトTREM2タンパク質に特異的に結合する抗体を含む医薬組成物及びキットが提供される。いくつかの実施形態では、医薬組成物及びキットは、神経変性疾患の処置に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、医薬組成物及びキットは、1つ以上のTREM2活性、例えば、Sykリン酸化の調節(例えば、増強または阻害)に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、医薬組成物及びキットは、sTREM2レベルの調節(例えば、減少)に使用するためのものである。
【0199】
医薬組成物
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物が提供される。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、前述のセクションIIIに記載されている抗体またはその抗原結合断片である。
【0200】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載の抗TREM2抗体を含み、1つ以上の薬学的に許容可能な担体及び/または賦形剤をさらに含む。薬学的に許容可能な担体には、生理学的に適合性があり、活性剤の活性を妨害しないか、またはさもなければ阻害しない任意の溶媒、分散媒またはコーティング剤が含まれる。様々な薬学的に許容可能な賦形剤が、当該技術分野において周知である。
【0201】
いくつかの実施形態では、担体は、静脈内投与、筋肉内投与、経口投与、腹腔内投与、髄腔内投与、経皮投与、局所投与または皮下投与に適している。薬学的に許容可能な担体は、例えば、組成物を安定化させるように、または活性剤(複数可)の吸収を増大もしくは減少させるように作用する、1つ以上の生理学的に許容可能な化合物(複数可)を含み得る。生理学的に許容可能な化合物としては、例えば、グルコース、スクロースもしくはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸もしくはグルタチオンなどの抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、活性剤のクリアランスもしくは加水分解を低減させる組成物、または賦形剤または他の安定剤及び/または緩衝液を挙げることができる。その他の薬学的に許容可能な担体及びその製剤は、当該技術分野において周知である。
【0202】
本明細書に記載の医薬組成物は、当業者に公知の様式で、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥プロセスによって製造することができる。以下の方法及び賦形剤は、単に例示的なものであり、決して限定するものではない。
【0203】
経口投与のために、抗TREM2抗体を、当該技術分野で周知の薬学的に許容可能な担体と組み合わせることにより製剤化することができる。そのような担体によって、処置される患者の経口摂取用に、化合物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、エマルション、親油性懸濁液及び親水性懸濁液、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、懸濁液などとして製剤化することが可能となる。経口使用のための医薬調製物は、化合物と固体賦形剤とを混合し、任意選択で得られた混合物を粉砕し、顆粒の混合物を加工して、所望により適切な助剤を添加後に錠剤または糖衣錠芯を得ることにより、得ることができる。好適な賦形剤としては、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖類などの充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース調製物、及び/またはポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられる。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えば、アルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤を添加することができる。
【0204】
抗TREM2抗体を、例えば、ボーラス注射または持続注入によるなど、注射による非経口投与用に製剤化することができる。注射の場合、化合物(複数可)を水性または非水性溶媒、例えば、植物性または他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステルまたはプロピレングリコールに溶解、懸濁または乳化させることによって、ならびに必要に応じて、可溶化剤、等張剤、懸濁剤、乳化剤、安定剤及び保存剤などの従来の添加剤とともに、調製物に製剤化することができる。いくつかの実施形態では、化合物は、水溶液、例えば、ハンクス液、リンゲル液、または生理食塩水緩衝液などの生理学的に適合性のある緩衝液中で製剤化することができる。注射用製剤は、保存剤を添加した単位剤形、例えばアンプルまたは複数回用量の容器で提供することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルションなどの形態をとることができ、また、懸濁剤、安定剤、及び/または分散剤などの製剤化剤を含有することができる。
【0205】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、例えば、活性剤を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックス中の徐放性製剤、制御放出製剤、持続放出製剤、時限放出製剤または遅延放出製剤での送達用に調製される。様々な種類の徐放性材料が確立されており、当業者に周知である。現在の持続放出製剤には、フィルムコーティング錠剤、多粒子またはペレット系、親水性または親油性の材料を使用したマトリックス技術、及び孔形成性賦形剤を含むワックス基剤の錠剤が含まれる。徐放性送達系は、その設計に応じて、数時間または数日にわたって、例えば、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、16時間、20時間、または24時間以上にわたって化合物を放出することができる。一般に、徐放性製剤は、天然または合成ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)などのポリマー性ビニルピロリドン;カルボキシビニル親水性ポリマー;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの疎水性及び/または親水性ヒドロコロイド;ならびにカルボキシポリメチレンを使用して調製することができる。
【0206】
通常、インビボ投与に使用するための医薬組成物は、滅菌されている。滅菌は、当該技術分野において公知の方法、例えば、加熱滅菌、蒸気滅菌、滅菌濾過、または照射によって実現され得る。
【0207】
本開示の医薬組成物の投与量及び望ましい薬物濃度は、想定される特定の用途に応じて変動し得る。適切な投与量または投与経路の決定は、十分に当業者の技術範囲内である。好適な投与量は、前述のセクションVIにも記載されている。
【0208】
キット
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体またはその抗原結合断片を含むキットが提供される。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、前述のセクションIIIに記載されている抗体またはその抗原結合断片である。
【0209】
いくつかの実施形態では、キットは、1つ以上の追加の治療剤をさらに含む。例えば、いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の抗TREM2抗体を含み、神経変性疾患、例えばアルツハイマー病の処置に使用するための1つ以上の追加の治療剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、神経変性疾患の認知症状または行動症状の処置に使用するための薬剤(例えば、抗うつ薬、ドパミンアゴニスト、または抗精神病薬)である。いくつかの実施形態では、治療剤は、神経保護剤(例えば、カルビドパ/レボドパ、抗コリン剤、ドパミン作用薬、モノアミンオキシダーゼB(MAO-B)阻害剤、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤、グルタミン酸作動性薬、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、カンナビノイド、カスパーゼ阻害剤、メラトニン、抗炎症剤、ホルモン(例えば、エストロゲンもしくはプロゲステロン)、またはビタミン)である。
【0210】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の抗TREM抗体を含み、sTREM2レベルを測定するための1つ以上の試薬をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の抗TREM抗体を含み、TREM2活性を測定するための(例えば、Sykリン酸化を測定するための)1つ以上の試薬をさらに含む。
【0211】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の方法の実施のための指示書(すなわち、プロトコル)を含む説明用資料(例えば、前述のセクションVIに記載されている治療方法のためのキットを使用するための説明書)をさらに含む。説明用資料は通常、書面または印刷物で構成されるが、そのようなものに限定されない。そのような説明書を保管することができ、それらをエンドユーザーに伝達することができる任意の媒体が、本開示により企図される。そのような媒体としては、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、磁気テープ、磁気カートリッジ、磁気チップ)、光学媒体(例えば、CD-ROM)などが挙げられるが、これらに限定されない。そのような媒体には、そのような説明用資料を提供するインターネットサイトへのアドレスが含まれ得る。
【実施例
【0212】
VIII.実施例
本発明を、具体的な実施例によってより詳細に説明する。以下の実施例は、例証目的で提示されるにすぎず、決して本発明を限定するようには意図されていない。
【0213】
実施例1.抗TREM2抗体の作製及び初期特徴付け
マウスFcが融合したヒトTREM2 ECDの組換え発現及び精製
ヒトTREM2(UniProtKB ID-Q9NZC2)の外部ドメイン(残基19~172)を、N末端領域にマウスIgGカッパ鎖V-III、アミノ酸1~20(UniProtKB ID-P01661)に由来する分泌シグナル、及びC末端領域にマウスFcタグ(TREM2 ECDとFcの間にGGGGS(配列番号64)を有する)を含めて、pRKベクターにサブクローニングした。
【0214】
Expi293F(商標)Expression System Kitを製造業者の指示に従って使用して、精製したプラスミドをExpi293F(商標)細胞(Thermo Fisher)にトランスフェクトした。N-結合型グリカンの成熟を阻害し、グリコシル化の不均一性を低減させるために、高マンノシダーゼIの阻害剤であるキフネンシン(Sigma)をトランスフェクション直後に1μg/mLの濃度で培養物に添加した。トランスフェクトした細胞を、オービタルシェーカー(Infors HT Multitron)内で、6%COの湿潤雰囲気中、37℃、125rpmでインキュベートした。トランスフェクションの16時間後に、ExpiFectamine(商標)293 Transfection Enhancer1及び2を細胞に添加し、培地上清をトランスフェクションの96時間後に回収した。清澄化した上清にEDTA不含プロテアーゼ阻害剤(Roche)を補充して、-80℃で保管した。
【0215】
rhTREM2-Fcの単離のために、清澄化した培地上清をHiTrap MabSelect SuRe Protein Aアフィニティーカラム(GE Healthcare Life Sciences)にロードし、200mMのアルギニン及び137mMのコハク酸塩緩衝液(pH5.0)で洗浄した。融合タンパク質を、pH3.0の100mM QBクエン酸塩緩衝液及び50mM NaCl中に溶出させた。溶出直後に、pH8.0の1M Tris-HCl緩衝液をタンパク質溶液に添加してpHを中和した。Superdex 200 increase 10/300 GLカラム(GE Healthcare Life Sciences)でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、タンパク質凝集体を分離した。SEC移動相の緩衝液を、タンパク質保存緩衝液でもあるpH8.0の20mM Tris-HCl、100mM NaCl及び50mMアルギニンで保持した。全てのクロマトグラフィーステップを、AKTA pureシステムまたはAKTA Avantシステム(GE Healthcare Life Sciences)により実施した。
【0216】
Hisタグ付きTREM2 ECDの組換え発現及び精製
TREM2(UniProtKB-Q9NZC2)の外部ドメイン(残基19~172)を、N末端領域にマウスIgカッパ鎖V-III、アミノ酸1~20(UniProtKB ID-P01661)に由来する分泌シグナル、及びC末端領域に6X-Hisタグ(配列番号65)を含めて、pRKベクターにサブクローニングした。配列決定によって挿入を確認し、マキシプレッププラスミド精製を実施した。
【0217】
Expi293F(商標)Expression System Kitを製造業者の指示に従って使用して、精製したプラスミドをExpi293F(商標)細胞(Thermo Fisher)にトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、オービタルシェーカー(Infors HT Multitron)内で、6%COの湿潤雰囲気中、37℃、125rpmでインキュベートした。トランスフェクションの16時間後に、ExpiFectamine(商標)293 Transfection Enhancer1及び2を細胞に添加し、培地上清をトランスフェクションの96時間後に回収した。
【0218】
回収した培地にpH8.0の1Mイミダゾールを10mMの最終濃度まで補充し、孔径0.4ミクロンのNalgene(商標)Rapid-Flow(商標)使い捨てフィルターユニット(Thermo Fisher)を使用して濾過した。HisPur(商標)Ni-NTA Resin(Thermo Fisher)をMQ水で洗浄し、ロード緩衝液(pH8.0の20mM Tris、150mM NaCl、及び10mMイミダゾール)で平衡させた。グラビティフロー(gravity flow)法を使用してアフィニティー精製を実施した。回収した培地を樹脂にロードし、非特異的に結合したタンパク質を50mM及び100mMイミダゾールを補充したロード緩衝液で洗浄した。結合したHisタグ付きTREM2外部ドメインをpH8.0の20mM Tris、150mM NaCl、及び200mMイミダゾールで溶出させた。溶出したタンパク質をAmicon 10kDaコンセントレータを使用して濃縮し、濃縮したタンパク質をAKTA Avantシステム(GE Healthcare Life Sciences)を使用したゲル濾過クロマトグラフィーでさらに精製した。このタンパク質を、1×PBSで平衡させたHiLoad Superdex 200 16/600(GE Healthcare Life Sciences)カラムにロードし、1×PBSを泳動用緩衝液として使用して溶出させ分画した。溶出画分を、変性及び天然条件下でのポリアクリルアミド(PAGE)ゲルでの電気泳動によって分析した。溶出画分を、分析用サイズ排除クロマトグラフィー及びインタクトタンパク質質量測定によりさらに特徴付けた。PAGE及び分析的特徴付けからの結果を使用して、高度にグリコシル化されたタンパク質画分をプールし、これらを分取して-80℃で保管した。
【0219】
抗体の作製
げっ歯類(マウス及びラット)を、rhTREM2-Fc免疫原または完全長Trem2受容体を発現するBWZ細胞を用いた標準プロトコルを使用して免疫化した。様々な時点で採取した血清を使用して、免疫化全体を通して力価を測定した。抗原特異的免疫応答の検出を、rhTREM2-Fc免疫原及び完全長TREM2を発現するBWZ生細胞を用いたフローサイトメトリーを使用して実施した。候補抗体の選択基準には、フローサイトメトリーで検出したげっ歯類抗体の産生及びTREM2への結合の特異性を含めた。抗体分泌細胞を、脾臓、リンパ節、及び骨髄を含む動物の免疫組織から単離した。
【0220】
単一細胞懸濁液を分析し、分泌された抗体の結合特性を判定した。抗体分泌細胞をマイクロ流体デバイスにロードし、ナノリットル容量の反応チャンバー中に単離し、蛍光及び明視野画像ベースの顕微鏡アッセイを使用して分泌された抗体の検出を可能にした(例えば、米国特許第9,188,593号を参照されたい)。抗原をコートしたマイクロビーズに結合する抗体の検出、ビーズ上に固定化した抗体に結合する可溶性蛍光標識抗原の検出、及び細胞表面発現抗原に結合する抗体の検出を含む、結合アッセイを実施した。細胞表面発現抗原には、細胞表面に提示された組換え型と天然型の両方の抗原が含まれた。
【0221】
画像分析を使用して、所望の特性を有する抗体を産生する単一細胞の存在を示している陽性の蛍光シグナルを呈するチャンバーを同定し、チャンバーの内容物を回収して、384ウェルプレート中で溶解した(例えば、米国特許第10,087,408号を参照されたい)。次いで、単一細胞溶解物をRT-PCRに供し、重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を増幅した。次いで、得られたアンプリコンを配列決定し、選択した単一細胞から対形成した重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のcDNA配列を決定した。得られた配列を手動で検査及び分析して、配列多様性及び体細胞超変異を判定した。スクリーニングデータ及び配列多様性に基づいて、発現のために配列を選択した。発現した抗体を試験して、抗原結合特異性を確認した。
【0222】
抗TREM2抗体の一次スクリーニング
抗体の一次スクリーニングを、TREM2発現HEK293細胞、野生型iPSC、及びTREM2ノックアウトiPSCで以下の通り実施した。
【0223】
1.TREM2発現HEK細胞におけるTREM2結合に関するスクリーニング
ヒトTREM2/DAP12を安定して発現するHEK293細胞株を、野生型ヒトTREM2及びDAP12を発現するベクター、ならびにDAP12のみを発現するベクターでそれぞれ細胞をトランスフェクトすることにより作製した。安定発現クローンを選択し、細胞表面TREM2の発現をフローサイトメトリーで評価した。APCコンジュゲートラット抗ヒト/マウス-TREM2モノクローナル抗体(R&D、カタログ番号MAB17291)を使用して、表面TREM2の発現を検出した。最も高い野生型TREM2の発現レベルを示すクローンを選択し、「HEK293-H6」と命名した。DAP12を安定して発現しているクローンをウエスタンブロットにより分析し、選択したクローンを「HEK293-DAP12#1」と命名した。
【0224】
ヒトTREM2を高発現するHEK293(HEK293-H6)及びGFPを高発現するHEK293(B5)を0.05%トリプシンにより回収し、37℃で2時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を遠心分離し、FACS緩衝液(PBS+0.5%BSA)で2回洗浄した。混合細胞を、ヒトTrustain FcX溶液(Biolegend、カタログ番号422302)を含むFACS緩衝液に、細胞株あたり10/mLの密度で再懸濁させた。混合した細胞株を96ウェル丸底プレートにウェルあたり200,000細胞で播種し、室温で20分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を遠心分離し、約0~200nMの用量設定の抗TREM2抗体とともに氷上で45分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を遠心分離し、FACS緩衝液で3回洗浄した。次いで、細胞を二次抗体(Alexa Fluor 647 AffiniPure F(ab’)2 Fragment Goat Anti-human IgG(H+L)、Jackson ImmunoResearch Laboratories、カタログ番号109-606-088、1:800希釈)とともに、氷上で30分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞をFACS緩衝液で3回洗浄し、100μLのFACS緩衝液に再懸濁させ、フローサイトメトリー(BD FACSCanto II、San Jose,CA)により分析し、各試料につき30,000事象を得た。細胞あたりの平均蛍光強度をFlowJoソフトウェアで算出し、用量反応結合曲線の作成に使用した。
【0225】
図1は、HEK293-H6細胞の細胞表面受容体TREM2に結合する例示的な抗体の代表的な結果を示す。
【0226】
TREM2依存性pSykシグナル伝達の活性化の評価
TREM2依存性pSykシグナル伝達の活性化を、Perkin-Elmerの市販のAlphaLisaアッセイを使用して、ヒトマクロファージ細胞中またはHEK293-H6細胞中で測定した。
【0227】
70%DOPC及び30%POPSを含有する脂質小胞の使用を含む全ての実験では、脂質小胞を実験から2週間以内に次のように調製した:7mgのDOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)及び3mgのPOPS(1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン)をガラスバイアル内のクロロホルム中に合わせ、Nガス流下で1~2時間、または完全に乾燥するまで乾燥させた。脂質混合物を1mL HBSSに(最終脂質濃度が約10mg/mLになるように)再懸濁させ、2~3分間ボルテックスした。続いて、脂質懸濁液を、1つの100nm孔径の膜で構成されたAvantiミニエクストルーダを使用して押し出し、10mg/mLで小さな単層小胞を形成した。
【0228】
1.細胞への抗体の投与
アッセイの前日、ヒトマクロファージ細胞またはHEK293-H6細胞を、ポリ-D-リジンでコーティングした96ウェルプレートに、それぞれ100,000細胞/ウェルまたは40,000細胞/ウェルで播種した。抗体をPBSで300nMから希釈を開始し、段階間で3倍に希釈した10段階の段階希釈の用量設定を行った。アンタゴニストの用量反応曲線については、70%のDOPC及び30%のPOPSを最終濃度1mg/mLで含有する脂質小胞も抗体/PBS混合物に含めた。Biotek405/406プレート洗浄機を使用して細胞をHBSSで3回洗浄した後、Hamilton Nimbusリキッドハンドラーを使用してウェルあたり50μLの抗体/PBS(小胞を含むかまたは含まない)溶液を添加した。次いで、細胞プレートを37℃のインキュベータに5分間移した。プレートをはじいてリポソーム/抗体溶液を除去し、リキッドハンドラーを使用して1μMのPMSFを含有する40μLの溶解緩衝液(Cell Signaling Technologies、CST)を添加した。次いで、溶解物を-80℃で凍結するか、またはAlphaLisaアッセイで直ちにアッセイした。
【0229】
ヒトマクロファージ細胞を以下の通りアッセイ用に調製した。ヒト単球を、RosetteSepヒト単球濃縮カクテルプロトコル(Stemcell Technologies、参照#15068)に従って新鮮血液から単離した。単離した単球を洗浄緩衝液(PBS+2%FBS)で洗浄し、10mLのACK溶解緩衝液(ThermoFisher Scientific、カタログ番号A10492)に再懸濁させ、赤血球を溶解させた。20mLの洗浄緩衝液を添加して細胞溶解を停止させ、試料を遠心分離し、培地(RPMI、10%Hyclone FBS、1%ピルビン酸ナトリウム、1%Glutamax、1%非必須アミノ酸、及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン)でもう一度洗浄した。次いでヒト単球を、250mLフラスコで、50ng/mLのヒト組換えM-CSF(Gibco、カタログ番号PHC9501)の存在下の培地中でマクロファージ細胞に分化させた。新鮮ヒトM-CSFを3日目に添加し、続いてヒトマクロファージを5日目に回収してアッセイに使用した。
【0230】
2.AlphaLisaアッセイ
Perkin Elmer pSyk AlphaLisaキットの標準プロトコルを使用して、細胞溶解物をpSykについてアッセイした。簡潔に述べると、10μLのライセート/ウェルを不透明な白色の384ウェルOptiplate(Perkin Elmer)に移した。次に、5μLのAcceptor Mix(アクセプタービーズの使用溶液(working solution)を含有する)をウェルごとに添加し、続いてプレートをホイルシールで密封し、室温で1時間インキュベートした。続いて、5μLのDonor Mix(ドナービーズの使用溶液を含有する)を、減光条件下で各ウェルに添加した。プレートを再度密封し、室温で1時間インキュベートした。最後に、Perkin Elmer EnVisionプレートリーダーでAlphaLisaの設定を使用してプレートを読み取った。
【0231】
図2は、初代ヒトマクロファージ細胞におけるpSykシグナル活性化に関する代表的な抗TREM2抗体の用量反応曲線を示す。塗りつぶした黒丸(●)は、抗TREM2抗体を表し、白丸(○)はアイソタイプ対照を表す。各曲線は3つの独立した実験の平均値を表しており、EC50値を以下の表1に示す。結果は、抗TREM2抗体が初代ヒトマクロファージのTREM2-DAP12 ITAMシグナル伝達を活性化することができることを示す。
【0232】
iPSCミクログリアにおけるリポソーム反応アッセイ
TREM2アゴニスト抗体及びホスホチジルセリン含有(phosphotidylserine-containing)リポソームは、TREM2を介してpSykを活性化する。リポソーム存在下でのSykシグナル伝達に対する抗TREM2抗体の作用を理解するために、iPSCミクログリアを抗TREM2抗体で前処理した後、細胞内のリポソーム反応を評価した。
【0233】
アッセイの前に、iPSCをまず、市販のキット(StemCell TechnologiesのSTEMdiff Hematopoietic Kit)を使用して、造血前駆細胞(HPC)に分化させた。HPCを初代ヒトアストロサイトを含有するプレートに移し、14~21日間共培養した。共培養物中の浮遊細胞が主に(>80%)成熟ミクログリアであると同定してから、ミクログリアをアッセイに使用した。
【0234】
アッセイの2日前、ヒトiPSCミクログリアを、ポリ-D-リジンでコーティングした96ウェルプレートに30,000細胞/ウェルで播種した。IMDM、10%Hyclone FBS、及び1%Pen-strepを含有する培地で抗体を100nMに希釈し、抗体溶液を37℃で24時間または5分間細胞に投与した。続いて、細胞をHBSSで1回洗浄し、次いで、70%のDOPC及び30%のPOPSを1mg/mLで含有する脂質小胞を37℃で5分間投与した。プレートをはじいてリポソーム溶液を除去し、1μMのPMSFを含有する30μLの溶解緩衝液(Cell Signaling Technologies、CST)を添加した。次いで、溶解物を-80℃で凍結するか、またはAlphaLisaアッセイで直ちにアッセイした。Perkin Elmer pSyk AlphaLisaキットの標準プロトコルを使用して、細胞溶解物を前述の通りにpSykについてアッセイした。
【0235】
図3A及び図3Bは、抗TREM2抗体とインキュベートし続いて脂質小胞を投与して細胞中のリポソーム反応を評価した、ヒトiPSCミクログリアにおけるpSykシグナルの活性化を示す。白色バーは、対照としての、脂質小胞の代わりにPBSとのインキュベーションを示す。データは、2~7回の独立した実験の平均値及び標準誤差を表す。図3Aは、抗体で5分間で前処理したiPSCミクログリアのデータを示し、図3Bは、抗体で24時間前処理したiPSCミクログリアのデータを示す。結果は、ヒトiPSCミクログリアを抗TREM2抗体で前処理することにより、リポソームにより誘発されるホスホSykシグナルがアイソタイプ対照と比較して増大することを示しており、これは、抗TREM2抗体が、細胞内のpSykシグナル伝達の脂質活性化を妨げるのではなく、代わりに増強することを示す。
【0236】
ヒトTREM2 NFATレポーターアッセイ
ヒトTREM2/DAP12を発現するJurkat NFAT細胞株を以下の通りに作製した。Jurkat NFATレポーター細胞をヒトTREM2及びDAP12のレンチウイルスベクター発現に感染させ、10%HyClone FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMIで培養した。安定発現クローンを、ピューロマイシン及びゼオシンの存在下で選択した。細胞表面TREM2の発現を、ビオチン化抗TREM2抗体(配列番号66及び67)を使用してフローサイトメーターによって評価した。最も高い野生型TREM2の発現レベルを示したクローンを選択し、以下に記載されるアッセイのために、hTrem2/NFAT Jurkatレポーター細胞と命名した。
【0237】
アッセイの前日、96ウェルプレートに抗TREM2抗体またはアイソタイプ対照を、0~500nMの用量設定(45μL/ウェル、合計12段階)で予めコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。一晩インキュベートした後、予めコーティングしたプレートをPBSで2回洗浄し、次いで200μLの新鮮培地(10%Hyclone FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI)中のhTrem2/NFAT Jurkatレポーター細胞(10細胞/ウェル)をプレートにロードした。プレートを37℃で24時間インキュベートした後、50μL/ウェルのquantlucia溶液を各ウェルに添加して十分に混合した。分析のために、20μLの溶液を各ウェルから取り出し、ルミノメーター(Perkin Elmer Envision)でシグナルを測定するために384ウェルの白プレートに移した。
【0238】
図4は、レポーター遺伝子ルシフェラーゼの検出によって測定されたNFATの活性化に関する代表的な抗TREM2抗体の用量反応曲線を含んでおり、活性化のEC50値を以下の表1に示す。図4の結果は、アイソタイプ対照と比較して、候補抗TREM2抗体は、NFAT活性化と、転写応答を活性化するのに十分な下流シグナル伝達とを誘導することが可能であったことを示す。
【0239】
ヒトマクロファージ細胞における生存アッセイ
ヒト単球を、RosetteSepヒト単球濃縮カクテルプロトコル(Stemcell Technologies、カタログ番号15068)に従って単離した。単離した単球を洗浄緩衝液(PBS+2%FBS)で洗浄し、10mLのACK溶解溶液(ThermoFisher Scientific、カタログ番号A10492)に再懸濁させ、赤血球を溶解させた。20mLの洗浄緩衝液を添加して溶解を停止させた。細胞懸濁液を遠心分離し、培地(RPMI1640+10%FBS+ペニシリン/ストレプトマイシン)で1回洗浄した。細胞を10細胞μL/mLの密度で培地に再懸濁させ、以下に記載する生存アッセイに使用した。
【0240】
アッセイの前日、96ウェルプレートに抗TREM2抗体またはアイソタイプ対照を、0~200nMの用量設定(45μL/ウェル、合計12段階)で予めコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。一晩インキュベートした後、予めコーティングしたプレートをPBSで2回洗浄し、次いで低濃度のヒトM-CSF(5ng/mL、Gibco、カタログ番号PHC9501)の存在下で、ヒト単球(10細胞/ウェル)をプレートにロードした。37℃で5日後、培地を吸引し、100μL PBS+100μL Celltiter-glo培地(Promega、カタログ番号G7571)を各ウェルに添加した。10分間のインキュベーション後、細胞培地をルミノメーターの使用に適合したマルチウェルプレートに移し、細胞生存率に関する発光を記録した。
【0241】
図5は、低M-CSF条件下でのヒトマクロファージ細胞における細胞生存の代表的な抗TREM2抗体の用量反応曲線を示しており、生存に関するEC50値を以下の表1に示す。結果は、TREM2アゴニスト抗体が、低M-CSF条件下で、細胞機能を調節してヒトマクロファージ細胞の生存を促進するための転写応答を誘導するのに十分な、受容体活性化能力を有することを示す。
【0242】
抗体のBiacoreカイネティック測定
表面プラズモン共鳴(Biacore(商標)8K機器)を使用して、ヒト及びカニクイザルTREM2 ECDについて抗TREM2抗体の親和性を測定した。抗TREM2抗体を、Human Fab Capture Kit(GE Healthcare Life Sciences、カタログ番号28958325)を使用して、Biacore Series S CM5センサーチップ(GE Healthcare Life Sciences、カタログ番号29149604)上で捕捉した。組換えヒトTREM2または組換えカニクイザルTREM2の3倍段階希釈液を、30μL/分の流量で注入した。抗体の結合を300秒間モニタリングした後、HBS-EP+泳動用緩衝液(GE Healthcare Life Sciences、カタログ番号BR100669)中で600秒以上抗体の解離をモニタリングした。結合応答は、空のフローセルからRU値を差し引くことによって補正した。カイネティクス分析には、kon及びkoffの同時フィッティングの1:1Languirモデルを使用した。K結合値を以下の表1に示す。
【0243】
(表1)抗体のインビトロ特性
NB:結合の検出なし
ND:未測定
【0244】
実施例2.ヒトマクロファージ細胞における可溶性TREM2レベル及び食作用挙動の調節
ヒトマクロファージにおける可溶性TREM2用量反応アッセイ
ヒトマクロファージ細胞を前述の通りに作製した。アッセイの前日、ヒトマクロファージ細胞を、ポリ-D-リジンでコーティングした96ウェルプレートに100,000細胞/ウェルで播種した。抗体を、ヒトマクロファージ培地(RPMI、10%Hyclone FBS、1%ピルビン酸ナトリウム、1%Glutamax、1%非必須アミノ酸、及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン)で300nMから希釈を開始し、段階間で3倍に希釈した10段階の段階希釈の用量設定を行った。細胞に抗体を投与して24時間インキュベートした。抗体とのインキュベーション後、プレートをスピンダウンしてデブリを除去し、可溶性TREM2の測定のために上清を採取した。
【0245】
可溶性TREM2を以下の通り測定した。簡潔に述べると、MSDスモールスポットストレプトアビジンプレート(Meso Scale Discovery)を、ビオチン化抗hTREM2ポリクローナル抗体(R&D Systems)で4℃で一晩コーティングした。次いで、プレートを室温で1時間、3%BSA/TBSTでブロッキングした。試料及び標準物質を、SDS含有緩衝液中で5分間、95℃に加熱することにより調製した。調製した試料及び標準物質を、ブロッキング後、アッセイプレートにおいて3%BSA/TBSTで1:10に希釈した。3%BSA/TBSTで希釈したTREM2-Hisタンパク質を、絶対定量の標準物質として使用した。室温で2時間インキュベートした後、プレートをTBSTで洗浄した。一次検出抗体であるスルホタグ付きヤギ抗ヒトTREM2(R&D Systems)を3%BSA/TBSTで希釈し、プレートに添加して、室温で1時間インキュベートした。TBSTで洗浄後、2×MSD読み取り用緩衝液Tを使用してMSDプレートを発色させ、続いてMSD Sectorプレートリーダーを使用して検出した。Prism7.0ソフトウェア(Graphpad)を使用して標準曲線をフィッティングすることにより、MSD値をsTREM2の絶対定量に変換した。TREM2シェディングの調節を、培地中で特定の抗TREM2抗体を含まずに培養した細胞からの可溶性TREM2に対して正規化した、抗TREM2試験抗体とともにインキュベートした細胞からの可溶性TREM2の比として表した。
【0246】
図6は、抗TREM2抗体濃度の関数としての、代表的な可溶性TREM2レベル(sTREM2)を示す。結果は、抗TREM2抗体が、一晩の処理後にヒトマクロファージ細胞中のsTREM2レベルを用量依存的に減少させることができることを示す。
【0247】
ヒトマクロファージにおける食作用アッセイ
ヒトマクロファージ細胞を前述の通りに作製した。アッセイの2日前、ヒトマクロファージ細胞を、ポリ-D-リジンでコーティングした96ウェルプレートに80,000細胞/ウェルで播種した。RPMI、10%Hyclone FBS、1%ピルビン酸ナトリウム、1%Glutamax、1%非必須アミノ酸、及び1%ペニシリン-ストレプトマイシンを含有する培地中に、抗体を100nMで希釈した。次いで、37℃で24時間、細胞に抗体溶液を投与した。次に、細胞核及び細胞膜を10分間染色した後、pHrodo-ミエリンを5μg/mLで添加した。続いて細胞を37℃で4時間インキュベートした。pHrodo蛍光を、ハイコンテント共焦点顕微鏡(Opera Phoenix)で細胞ごとに測定し、蛍光強度を機器ソフトウェアで定量化した。
【0248】
pHrodo-ミエリンを、Safaiyan et al.(2016,Nature Neuroscience 19(8):995-998)に記載されている方法を使用して、野生型C57Bl/6マウス脳(Jackson Laboratories)からミエリンを精製することによって調製した。精製後、ミエリンをPBSに再懸濁させ、DC Protein Assay Kit2(BioRad、カタログ番号5000112)を使用して、1mg/mLのタンパク質濃度に調整した。マイクロスケール標識キット(ThermoFisher、カタログ番号P35363)を製造業者の指示に従って使用して、pHrodo-redでミエリンをタグ付けした。ミエリンを10,000gで5分間ペレット化して上清を除去し、これらのステップを3~5回繰り返すことにより、過剰な標識を除去した。
【0249】
図7は、ヒトマクロファージ細胞における食作用アッセイの代表的な結果を示す。TREM2処理マクロファージ細胞の顕微鏡画像中でpHrodo蛍光を検出し定量化して、測定値をアイソタイプ対照の測定値と比較することによってミエリンの食作用を測定した。結果は、例示的なTREM2アゴニスト抗体で処理したヒトマクロファージが、アイソタイプ対照と比較してpHrodo-ミエリン食作用を増大させることを示しており、これは、抗TREM2抗体が細胞中のミエリンデブリの有益なクリアランスを可能にすることができることを示す。
【0250】
実施例3.iPSCミクログリアにおける脂質蓄積の調節
脂質貯蔵アッセイ
アッセイの前に、iPSCをまず、市販のキット(StemCell TechnologiesのSTEMdiff Hematopoietic Kit)を使用して、造血前駆細胞(HPC)に分化させた。HPCを初代ヒトアストロサイトを含有するプレートに移し、14~21日間共培養した。共培養物中の浮遊細胞が主に(>80%)成熟ミクログリアであると同定してから、ミクログリアをアッセイに使用した。
【0251】
細胞(iPSCミクログリア、30,000細胞/ウェル)を、完全血清培地入りのPDLコーティング96ウェルプレートに播種した。37℃で24時間後、精製した非標識ミエリン(最終濃度50μg/mL、Safaiyan et al.(2016,Nature Neuroscience 19(8):995-998)に記載されている方法を使用して野生型C57Bl/6マウス脳(Jackson Laboratories)から精製した)をウェルに添加した。37℃で24時間脂質処理した後、抗TREM2抗体またはRSV対照を100nMの最終濃度までウェルに添加した。細胞を37℃でさらに48~72時間インキュベートしてから、細胞を採取またはイメージングした。ミエリンウォッシュアウト実験では、24時間のインキュベーション期間後にミエリンを除去し、その後の24~48時間のインキュベーションのために抗体含有培地と交換した。
【0252】
Nile Redイメージングでは、上清を除去し、1μMのNile Red(ThermoFisher、カタログ番号N1142)及び1滴/mLのNucblue(ThermoFisher、カタログ番号R37605)を含有する生細胞イメージング緩衝液(Life Technologies、カタログ番号A14291DJ)中で、細胞を37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション期間後、染色溶液を除去し、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定した。次いで、Opera Phoenixハイコンテント共焦点イメージャーでAlexa568及びDAPI照射設定を使用して、細胞をイメージングした。機器に付属のHarmonyソフトウェアのスポット検出アルゴリズムを使用して、脂質スポットを分析した。図8Aは、ビヒクルまたはミエリン(最終濃度50μg/mL)のいずれかで24時間処理した後、アイソタイプ対照または例示的な抗TREM2抗体(CL0020123)と72時間インキュベートしたiPSCミクログリアの代表的な顕微鏡画像を含む。図8Bは、図8Aの顕微鏡画像で使用したものと同じ抗TREM2抗体の代表的な棒グラフである。細胞ごとの総スポット強度によってNile Red染色の定量化を実施し、データを、同じ顕微鏡試料の異なる視野における3回の技術的反復試験の平均値及び標準偏差として示す。
【0253】
リピドミック分析のために、細胞を氷上に保持しながらPBSで1回洗浄した。1:100の内部標準物質を含有する70μL容量の9:1メタノール:水溶液を、96ウェルプレート中の細胞に添加した。プレートを振盪器で4℃、1200rpmで20分間撹拌した後、300×gで5分間遠心分離した。上清の50μL試料をLCMSバイアルに移し、機器で分析するまで-80℃で保持した。
【0254】
エレクトロスプレー質量分析法(QTRAP 6500+Sciex、Framingham,MA,USA)と連結した液体クロマトグラフィー(Shimadzu Nexera X2システム、Shimadzu Scientific Instrument,Columbia,MD,USA)によって、脂質レベルを分析した。各分析のために、試料5μLを、55℃で0.25mL/分の流量を用いてBEH C18 1.7μm、2.1×100mmカラム(Waters Corporation,Milford,Massachusetts,USA)に注入した。陽イオン化モードの場合、移動相Aを10mMギ酸アンモニウム+0.1%ギ酸を含む60:40のアセトニトリル/水(v/v)で構成し、移動相Bを10mMギ酸アンモニウム+0.1%ギ酸を含む90:10のイソプロピルアルコール/アセトニトリル(v/v)で構成した。陰イオン化モードの場合、移動相Aを10mM酢酸アンモニウムを含む60:40のアセトニトリル/水(v/v)で構成し、移動相Bを10mM酢酸アンモニウムを含む90:10のイソプロピルアルコール/アセトニトリル(v/v)で構成した。勾配を、0.0~8.0分で45%Bから95%Bへ、8.0~9.0分を99%Bで、9.0~9.1分で45%Bへ、9.1~10.0分を45%B、のようにプログラムした。エレクトロスプレーイオン化を、次の設定:カーテンガス:30、コリジョンガス:中等度に設定、イオンスプレー電圧:5500(陽性モード)または4500(陰性モード)、温度:250℃(陽性モード)または600℃(陰性モード)、イオン源ガス1:50、イオン源ガス2:60、を適用して陽イオンモードまたは陰イオンモードのいずれかで実施した。Analyst 1.6.3(Sciex)を、多重反応モニタリングモード(MRM)で使用して、以下のパラメータ:滞留期間(msec)及びコリジョンエネルギー(CE)、デクラスタリング電位(DP):80、エントランス電位(EP):10(陽性モード)または-10(陰性モード)、及びコリジョンセルイグジット電位(CXP):12.5(陽性モード)または-12.5(陰性モード)を用い、データ取得を実施した。非内在性の内部標準物質の混合物を使用して、脂質を定量化した。脂質を、それらの保持時間及び市販の参照標準物質(Avanti Polar Lipids,Birmingham,AL,USA)のMRM特性に基づいて同定した。
【0255】
図8C及び図8Dは、24時間のミエリン処理後に例示的な抗TREM2抗体で72時間処理したiPSCミクログリア細胞の細胞溶解物中で質量分析によって検出された、コレステロールエステル(CE)(図8C)及びトリアシルグリセリド(TAG)脂質種(図8D)のレベルを示す。図8E及び図8Fは、例示的な抗TREM2抗体を用いたミエリンウォッシュアウト実験に供したiPSCミクログリア細胞の細胞溶解物中で質量分析によって検出された、コレステロールエステル(CE)(図8E)及びトリアシルグリセリド(TAG)脂質種(図8F)のレベルを示す。図8C~8Fで生成されたLC/MSデータを、CEデータについては内部標準物質に対して正規化し、TAGデータについては個々の脂質種ごとにミエリン+アイソタイプ対照に対して正規化した。
【0256】
iPSCミクログリアにおける脂質蓄積はミエリン処理によって誘導され、これは、中性脂質染色(Nile Red)の増大によって、及び細胞溶解物中の特定の脂質種を検出するためのLC/MSによって反映される。図8A~8Fに示すデータは、細胞中の中性脂質染色の減少によって、ならびにLC/MSで測定したCE及びTAG脂質種レベルの減少によって示されるように、例示的な抗TREM2抗体を用いたミエリン曝露後のiPSCミクログリア細胞の処理が、脂質種の蓄積を低減させたことをまとめて示している。抗体処理の結果としての脂質レベルの低減は、24時間~72時間の範囲の様々な時点で観察された。脂質レベルの低減が脂質取り込みの遮断によって引き起こされる可能性を排除するために、抗TREM2抗体の添加前にミエリンを除去するミエリンウォッシュアウト実験を実施した。図8Fは、抗TREM2抗体がアイソタイプ対照と比較して、抗体処理前にミエリンウォッシュアウトしたiPSCミクログリアの脂質レベルも低減させたことを示す。
【0257】
実施例4.抗体の機能的エピトープビニング
TREM2抗体エピトープビンを、TREM2タンパク質上の競合結合によって決定した。エピトープビニング実験を、古典的なサンドイッチエピトープビニング構成方法を使用して、Carterra LSA機器で25℃で実施した。全ての試験抗体を、アミンカップリングによってHC30Mチップ上に固定化した。次いで、試験抗体について複数のサイクルのサンドイッチ競合結合を実施した。各サイクルを、抗原(Hisタグ付きTREM2 ECD)の注入と、それに続く固定化抗体への分析物抗体の注入で構成した。各サイクルの終わりに、1.25M NaClを含有する低pH緩衝液(pH=3)を注入することにより固定化抗体の表面を再生した。エピトープ結合データをCarterraソフトウェアによって評価し、競合マトリックス及びエピトープビンを作成した。結果を表2に示す。
【0258】
抗TREM2抗体のエピトープビニングによって、(1)ストーク結合アゴニスト、及び(2)IgVドメイン結合アゴニストの2つのアゴニストビンを同定した。同じビン内の抗体は同じ機能、例えば、脂質リガンドによるTREM2-DAP12 pSyk活性化の阻害(アンタゴニスト抗体)、抗体のみによるpSykの活性化(ストーク結合アゴニスト、IgVドメイン結合アゴニスト)を示す。
【0259】
(表2)機能的クラスによって注釈を付した抗TREM2抗体ビン
【0260】
実施例5.TREM2ストークペプチドへの抗体結合
ヒト及びマウスTREM2ストーク領域ペプチドへの結合について、TREM2抗体を評価した。試験したペプチドには、(1)完全長ストーク領域(ヒトTREM2のアミノ酸129~172、UniProtKB Q9NZC2;マウスTREM2のアミノ酸131~169、UniProtKB Q99NH8)、及び(2)ADAM10/17切断部位を含有するトランケートされたストークペプチド(ヒト/マウスTREM2のアミノ酸149~163)が含まれた。TREM2ストークペプチドへの抗体結合を、標準的なサンドイッチELISAを使用して検出した。簡潔に述べると、96ウェルハーフエリアELISAプレートを、4℃で一晩、ストレプトアビジンでコーティングした。翌日、1%BSA/PBSで希釈したビオチン化TREM2ストークペプチドをプレートに添加し、1時間インキュベートした。次いで、1%BSA/PBSで希釈した抗体を添加して1時間インキュベートした。ペプチドに結合した抗体を、1%BSA/PBSで希釈した抗ヒトカッパ-HRP二次抗体(Bethyl Laboratories,Inc.)で検出した。プレートを、検出試薬(One-step TMB Ultra、Thermo)との反応、及び標準的な分光光度測定装置(BioTek(登録商標))による450nmでの吸光度(A450)の測定によってアッセイした。結果を以下の表3に示す。データを正規化した値として示す(バックグラウンドに対する倍率、バックグラウンド=アイソタイプ対照)。
【0261】
(表3)TREM2ストークペプチドへの抗TREM2抗体の結合
【0262】
表3は、表2のエピトープビニングデータを裏付けるヒト及びマウスストーク領域のペプチド-抗体結合相互作用を示す。表3のデータに基づくと、特定の抗TREM2抗体が結合すると思われる部位は、TREM2細胞外ストーク領域中のアミノ酸129~148に対応する。
【0263】
ADAM17によるTREM2ストークペプチド切断を阻害する抗TREM2抗体の能力もまた、蛍光偏光アッセイを使用して分析した。まず、TREM2ストークペプチドを、ストレプトアビジンを含むアッセイ緩衝液(25mM Tris pH7.5、2.5μM ZnCl、0.005% Brij-35)中に調製した。次いで、抗TREM2抗体を、室温で30分間TREM2ストークペプチドとプレインキュベートした。プレインキュベーション期間後、ADAM17(R&D systems、カタログ番号930-ADB)を添加して、37℃で20時間ペプチドとインキュベートした。翌日、試料をアッセイ緩衝液でさらに希釈し、不透明な黒色の384ウェルプレートに移した。続いて、Perkin Elmer EnVisionプレートリーダーで蛍光偏光を測定した。抗TREM2抗体とプレインキュベートしたTREM2ストークペプチドの蛍光偏光を、完全長TREM2ストークペプチド及び酵素対照(ADAM17を含む完全長TREM2ストークペプチド)の蛍光偏光と比較した。
【0264】
TREM2ストーク結合抗体は蛍光偏光を著しく増大させ、ADAM17によるストークペプチド切断の部分的阻害が実証された(クローンCL0020141、CL0020188、CL0020313、CL0020308)。IgV結合抗体CL0020107は、TREM2ストーク領域ペプチドに結合しなかったため、蛍光偏光アッセイにおいてペプチド切断に対する影響を示さなかった。
【0265】
実施例6.抗TREM2抗体の薬物動態分析
抗TREM2抗体の薬物動態プロファイルを、マウスで評価した。C57BL/6Jマウスを、Jackson Laboratory(ストック番号000664)から2ヶ月齢で購入し、7日間の薬物動態(PK)試験及び標的結合試験に使用した。ヒトTrem2 cDNA KIホモ接合マウス(huTrem2KI/KI)を、3ヶ月齢で、24時間の標的結合試験に使用した。ヒトTrem2 cDNA KIマウスの作製及び繁殖について、以下に説明する。
【0266】
ヒトTREM2 cDNA KIマウスモデルの作製
ヒトTREM2 cDNA KIマウス(huTrem2KI/KI)を、以下の通りに作製した。ヒトTrem2 cDNA-pA配列をマウスTrem2内在性ATG開始部位に挿入した。ヒトTrem2 cDNA-pAの挿入によりマウスTrem2のエクソン1配列が置換され、これにより、内在性マウスプロモーターによって駆動されるヒトTrem2 cDNAの発現、及び内在性マウスTrem2の発現の破壊が可能となる。huTrem2KI/KIマウスを、相同組換えを使用してC57BL/6遺伝的背景で作製した。
【0267】
huTrem2KI/KI標的化ベクターの場合、長い相同性アーム(LA)は、ヒトTrem2 cDNA-pA配列の5’末端の約3.6kb上流に伸長し、短い相同性アーム(SA)は3’の約2.3kb下流からFRT隣接Neoカセットまで伸長する。長い相同性アームと短い相同性アームの両方をC57BL/6 BACクローン(RP23:358G22)から増幅し、次いでアンピシリン選択カセットを含有する約2.4kbのpSP72(Promega)バックボーンベクターにサブクローニングした。hUBS-gb2 FRTに隣接するネオマイシンカセットをhTrem2-pAカセットのすぐ下流に挿入することにより、約13.6kbのサイズの標的化ベクターを得た。10μgの標的化ベクターを制限酵素NotI(New England Biolabs)で線状化し、次いでエレクトロポレーションによってFLP C57Bl/6(B6)胚性幹(ES)細胞にトランスフェクトした。G418抗生物質で選択した後、生存クローンをPCR分析用に増殖して、陽性組換えESクローンを同定した。PCRスクリーニング用のプライマー配列(配列番号53=5’-AGG AAT GTG GGG AGC ACG GAG-3’及び配列番号54=5’-TGC ATC GCA TTG TCT GAG TAG GTG-3’)により、bghpAエレメントから3’領域の外側の短い相同性アーム(SA)の下流までの領域を含有する2.81kbの断片を増幅した。5つのクローンを陽性として同定し、さらなる増殖のために選択した。Neoカセットを、ESクローン増殖中にFlp導入遺伝子によって除去した。
【0268】
5つの陽性クローンから抽出したゲノムDNAを、まず、シーケンシング解析によって特徴付けた。1.19kbの産物を、プライマー(配列番号55=5’-ACC CTA GTC CTG ACT GTT GCT C-3’、配列番号56=5’-TAT AGG AAC TTC GCG ACA CGG ACA C-3’)により増幅および配列決定し、5’ゲノム/neoカセット接合部及び3’KIカセット接合部を確認した。シーケンシングの結果により、5つのクローン全てにヒトTrem2 cDNA-pA配列が挿入されていることを確認した。
【0269】
5つの陽性クローンを、短いアーム及び長いアームを標的としたプローブを使用したサザンブロッティング分析によってさらに特徴付けた。Ssp I及びBam HIで消化したES細胞ゲノムDNAを、短いアームのプローブ及び長いアームのプローブとそれぞれハイブリダイズさせた。5つのESクローン全てが、長いアームと短いアームの両方で正しい相同組換え事象を保持していることを確認した。短いアームのプローブ(658bp)の増幅用のプライマー配列は、(配列番号57=5’-ACA GGA GGG ACC TAC CTT CAG3’、配列番号58=5’-GCC TGC CTT TCA GAG ACC TCA GTC-3)である。長いアームのプローブ(681bp)増幅用のプライマー配列は、(配列番号59=5’-CCT CTC CGG CTG CTC ATC TTA CTC-3’、配列番号60=5’-GTC TCT CAG CCC TGG CAG AGT TTG-3’)である。
【0270】
次いで、5つのES細胞クローン全てをC57BL/6胚盤胞に注入した。1つのクローンからの子を、PCRジェノタイピングによる生殖細胞系列伝達で確認した。ジェノタイピング用のプライマーは、(配列番号61=pr1:5’-CGC CTA CCC TAG TCC TGA CTG TTG-3’、配列番号62=pr2:5’-AAA GCC TAC AGC ATC CTC ACC TC-3’、及び配列番号63=pr3:5’-GCA TCA TGG GGT TGT AGA TTC CG-3’)である。野生型のpr1/pr2のPCR産物は、658bpである。KI対立遺伝子のpr1/pr3のPCR産物は、469bpである。
【0271】
抗体投与及び血漿/CSFの採取
PK分析のために、C57BL/6Jマウスに抗TREM2抗体または対照IgGを10mg/kgで静脈内(IV)尾静脈注射により投与した(投与容量は約200μL/マウス、各群ごとにn=3)。血液試料を、投与の1時間後、24時間後、4日後、及び7日後に採取した。最初の3つの時点での血液試料は、3mmランセット(GoldenRod動物用ランセット)を使用して顎下出血によって採取した。7日目の最終の終末血液試料は、心臓穿刺によって採取した。血液をEDTAチューブ(Sarstedt Microvette 500 K3E、カタログ番号201341102)に採取し、ゆっくりと反転させて混合し、4℃で遠心分離した。血漿(最上)層を1.5mLエッペンドルフチューブに移し、分析まで-80℃で保管した。
【0272】
24時間の標的結合試験では、C57BL/6Jマウスを使用してマウス代替抗TREM2抗体を試験し、huTrem2KI/KIマウスを使用してヒト抗TREM2抗体を試験した。マウスに抗TREM2抗体または対照IgGを100mg/kgで静脈内(IV)尾静脈注射により投与した(投与容量は約200μL/マウス、各群ごとにn=5)。TREM2のベースラインレベルを判定するために、投与の24時間前に血液試料を採取した。末端血液及びCSF試料を投与24時間後に採取した。血漿調製物を前述の通りに調製した。CSF試料を採取するために、頭蓋骨後方に矢状切開を行い、皮下組織及び筋肉を分離して大槽を露出させた。予め引き伸ばしたガラスキャピラリーチューブを使用して、大槽を穿刺し、CSF試料を採取した。次いで、CSFを4℃で遠心分離して血液残渣を除去し、CSF上清を0.5mLのLow Protein LoBindエッペンドルフチューブ(Eppendorf、カタログ番号022431064)に移し、分析まで-80℃で保管した。
【0273】
インビボ抗TREM2抗体の血漿レベルの分析
抗TREM2抗体のPK分析では、一般的なヒト抗FcサンドイッチELISAを使用して、マウス血漿中の総抗体濃度を定量化した。384ウェルMaxiSorpプレートを、1μg/mLの抗huFcロバポリクローナル(Jackson Immunoresearch)で一晩コーティングした。アッセイ緩衝液(PBST、1%BSA)中で1:2,000または1:20,000に希釈した血漿とインキュベートした後、HRPにコンジュゲートした抗huFcロバ抗体(Jackson Immunoresearch)を検出試薬として添加した。5パラメータロジスティック回帰を使用して、個々の抗体ごとに3倍希釈を使用して2nMから2.7pMまでの標準曲線を作成した。
【0274】
図9は、特定の抗TREM2抗体の代表的なマウスPKプロファイルを示す。抗体クリアランス速度(CL[mL/日/kg])を、表した各抗体について7日間にわたって示しており、通常のエフェクターレスアイソタイプ対照と比較する。図9に示す各抗体は、アイソタイプ対照と比較して同等のクリアランス速度を示した。
【0275】
インビボ標的結合:sTREM2の血漿レベル
可溶性TREM2(sTREM2)の血漿レベルを測定するために、ヒトTrem2 cDNA KIマウス(huTrem2KI/KI)を採血し、次いで100mg/kgの抗TREM2試験抗体またはアイソタイプ対照で静脈内処置した。投与の24時間後にマウスから採血した。血漿を血液試料から得て、以下のように実施したMSDアッセイで評価した。MSD SECTORプレートを、PBSで希釈した1μg/mLの捕捉抗体(R+D抗TREM2抗体、カタログ番号MAB17291-100)でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。試料ウェルを未希釈のMSD Blocker Aで1時間ブロッキングした。血漿試料を0.05%Tween-20(TBST)を含有するTris緩衝生理食塩水中の25%MSDブロッカーAで1:20に希釈し、プレート上の各試料ウェルに添加し、次に、これを室温で2時間インキュベートした。続いて、検出抗体(MSDスルホタグ付きヤギ抗ヒト、カタログ番号R32AJ-1、1:1000)を各試料ウェルに添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした。Biotekプレート洗浄機を用いて各試料ウェルについてTBST洗浄を実施した。検出試薬(MSD読み取り用緩衝液)を添加し、MSD Meso SectorS600リーダーを使用して測定して、抗体へのsTREM2結合の結果を得た。
【0276】
図10A及び10Bは、例示的な抗TREM2抗体に関する、huTrem2KI/KI血漿中の総sTREM2レベル(図10A)及び抗体に結合したsTREM2のレベル(図10B)を示す。総sTREM2アッセイ及び結合したsTREM2のアッセイについて、データを投与前のsTREM2のベースラインレベルに対して正規化した。結果は、抗体による24時間の処置後のアイソタイプ対照と比較して、抗TREM2抗体で処置したマウス間で総循環sTREM2レベルが著しく変化しなかったことを示しており、これは、総循環sTREM2レベルが抗体投与後の初期の時点で影響を受けないことを示唆する。対照的に、抗体に結合したsTREM2のレベルは、アイソタイプ対照と比較して抗TREM2抗体を注射したマウスで高かった。
【0277】
実施例7.抗TREM2抗体の配列最適化及びヒト化
例示的な抗TREM2抗体を配列最適化し、ヒト化してから、結合カイネティクス及び結合特異性について特徴付けした。
【0278】
配列最適化を、化学修飾を受けやすい残基(例えば、アスパラギン脱アミド化モチーフ(NG)、アスパラギン酸異性化モチーフ(DS))、ならびに酸化される可能性のある残基(トリプトファン(W)及びメチオニン(M))のCDR配列内を探索することにより、ならびにそのような配列の傾向を取り除くために保存的及び生殖系列残基によってアミノ酸置換することにより行った。次いで、ヒト化し配列最適化した抗TREM2抗体のバリアントを、Biacore及びHEK293-H6細胞への用量設定した細胞結合を使用して、結合カイネティクスについて分析した(代表的なプロトコルについては、実施例1を参照されたい)。
【0279】
ヒト化し配列最適化した抗体CL0020188のバリアントの結合特性の分析結果を表4に示す。CL0020188 CDR-H2配列(配列番号5)及びCDR-L1配列(配列番号7)中のNGモチーフを修飾し、ヒトフレームワーク領域上にグラフティングして分析した。表4は、HEK293-H6細胞における、Biacoreによって測定したK値、及び用量設定した結合アッセイによって測定したEC50値を示す。
【0280】
(表4)配列最適化しヒト化したCL0020188のバリアントの結合特性
3m=VにおけるA24G/L45P/V48L
【0281】
表4に示すように、ヒト化し配列最適化したCL00201088のクローンは、Biacoreで測定した場合、親抗体(K=9.5nM)と比較してhTREM2に対して同様の親和性値を示した。これは、表4に示すHEK293-H6細胞の細胞結合の結果と一致していた。親抗体(EC50=0.44nM)と比較して、ヒト化し配列最適化したクローンは、HEK293-H6細胞中で発現したTREM2に対して同等かつナノモル以下の親和性を示した。総合すると、結果は、親抗体と、ヒト化し配列最適化したバリアントとの間の同等の結合カイネティクスを示す。
【0282】
ヒト化し配列最適化した抗体CL0020123のバリアントの結合特性の分析結果を表5に示す。CL0020123 CDR-H2配列(配列番号30)中のNG及びDSモチーフを修飾し、ヒトフレームワーク領域上にグラフティングして分析した。表5は、HEK293-H6細胞における、Biacoreによって測定したK値、及び用量設定した結合アッセイによって測定したEC50値を示す。
【0283】
(表5)配列最適化しヒト化したCL0020123のバリアントの結合特性
1m=VにおけるR71A
2m=VにおけるV67A/R71A
【0284】
親抗体(K=0.10nM)と比較して、ヒト化し配列最適化したクローンは、Biacoreで測定した場合、hTREM2への結合について約4倍高いK値を示した。一方、HEK293-H6細胞における用量設定した細胞結合アッセイでは、ヒト化し配列最適化したクローンは、TREM2に対して同等かつナノモル以下の親和性を示した。
【0285】
実施例8.配列最適化しヒト化した抗TREM2抗体のインビトロ特徴付け
配列最適化しヒト化した例示的な抗TREM2抗体(実施例7)を、実施例1及び3に記載のインビトロ法によって評価した。TREM2発現HEK細胞におけるTREM2結合、HEK-H6細胞におけるTREM2依存性pSykシグナル伝達、ヒトマクロファージ細胞の生存を促進する能力、及びiPSCミクログリアにおける脂質蓄積を調節する能力に関して、抗体を評価した。図11~14は、代表的な抗TREM2抗体の結果を示す。抗TREM2抗体は、TREM2を発現するHEK293-H6細胞を用いたアッセイにおいて良好な細胞結合を示した(EC50値は0.34nM(図11A)及び0.08nM(図11B))。抗TREM2抗体はまた、TREM2を発現するHEK293-H6細胞におけるpSykシグナル伝達も活性化させた(図12A及び12B)。さらに、抗TREM2抗体は、マクロファージの生存を誘導し、CL0020188バリアント抗体でより良好な生存活性が観察された(図13)。最後に、抗TREM2抗体は、ミエリン処置したiPSCミクログリアにおける脂質蓄積を低減させる能力を示した(図14A及び14B)。
【0286】
実施例9.配列最適化しヒト化した抗TREM2抗体のマウスPK
配列最適化しヒト化した特定の抗TREM2抗体(実施例7)の薬物動態プロファイルを、実施例6に記載したものと同様の7日間の薬物動態(PK)試験について野生型マウスで評価した。各投与群にはn=3マウスを含めた。表6は、配列最適化しヒト化した例示的な抗TREM2抗体(実施例7)のPK特性を示す。
【0287】
(表6)抗TREM2抗体のマウスPK特性
【0288】
実施例10.配列最適化しヒト化した抗TREM2抗体のcyno PK
抗TREM2抗体の薬物動態プロファイルを、ナイーブカニクイザルで評価した。2~4年齢のナイーブカニクイザル(体重およそ2~3kg)に、静脈内ボーラス注射により抗TREM2抗体を注射した。投与用量には3mg/kg及び25mg/kgを含め、用量群あたりn=3匹のサルを用いた。血液試料(約1mL)を、投与前、ならびに投与の10分後、30分後、1時間後、6時間後、12時間後、及び24時間後、ならびに3日後、7日後、10日後、14日後、17日後、21日後、24日後、及び28日後に採取した。試料を約5℃で冷却してから遠心分離して血漿を得て、分析まで-70℃で保管する前に、得られた血漿をドライアイス上に維持した。血漿試料を、以下の通り抗TREM2抗体レベルについて分析した。
【0289】
抗TREM2抗体PK分析では、Meso Scale Discovery(MSD)プラットフォームで、一般的な抗ヒト_IgGサンドイッチ電気化学発光免疫測定法(ECLIA)を使用して、サル血漿中の総抗体濃度を定量化した。簡潔に述べると、1%のカゼインベースのPBSブロッキング緩衝液(Thermo Scientific,MA)をMSD GOLD 96ウェルスモールスポットストレプトアビジンコーティングマイクロタイタープレート(Meso Scale Discovery,MD)に添加し、およそ1時間インキュベートした。プレートのブロッキング及び洗浄ステップに続いて、0.5μg/mLの使用溶液中のビオチン化抗ヒト_IgGヤギ抗体(SouthernBiotech,AL)をアッセイプレートに添加し、1~2時間インキュベートさせた。インキュベーション及び洗浄ステップに続いて、血漿試験試料(すなわち、抗TREM2ヒト化抗体を含む試料)をアッセイプレートに添加し、1~2時間インキュベートした。アッセイプレートに添加する前に、試験試料を0.5%カゼインベースのPBSアッセイ緩衝液(Thermo Scientific,MA)中で1:100のアッセイ最小希釈倍率(minimum-required-dilution)(MRD)で希釈する必要があり、その結果、1%の最終血漿マトリックスとなることに留意されたい。抗TREM2抗体分析物の捕捉及び洗浄ステップに続いて、0.4μg/mLの使用溶液で二次ルテニル化(ruthenylated)(SULFO-TAG)抗ヒトIgGヤギ抗体(Meso Scale Discovery,MD)をアッセイプレートに添加し、およそ1時間インキュベートした。最後に、インキュベーション及び洗浄ステップに続いて、アッセイ読み取り用緩衝液(1×MSD読み取り用緩衝液T)をアッセイプレートに添加し、アッセイ試料シグナルを生成した。MSDプレートリーダーからの試料シグナルの読み取りは、電気化学発光(ECL)シグナルの形式であり、ECL単位(ECLU)で表された。前述の全てのアッセイ反応ステップは、周囲温度で、(必要に応じて)プレートシェーカーで振盪しながら行った。このアッセイは、19.5~2500ng/mL(または1:100のMRD後では0.195~25ng/mL)の動的な較正標準範囲を有しており、1:2で段階希釈した8つの標準的段階に加え、ブランク血漿試料を用いた。血漿試料濃度を、重み付けした4パラメータ非線形ロジスティック回帰にフィッティングさせたアッセイ較正標準曲線から逆算した。表7は、配列最適化しヒト化した例示的な抗TREM2抗体(実施例7)の薬物動態(PK)特性を示す。
【0290】
(表7)抗TREM2抗体のカニクイザルPK特性
【0291】
CL0020188バリアントは、カニクイザルにおいて、異なる用量レベル間で類似した低クリアランスレベル、及び線形の薬物動態プロファイルを示した。さらに、カニクイザルへのバリアントの投与に関連する臨床病理所見は認められなかった(データは示さず)。
【0292】
実施例11.抗TREM2抗体の比較
ヒトTREM2及びカニクイザルTREM2に対する抗TREM2抗体の親和性を、Biacoreによって測定した(実施例1に記載)。抗TREM2抗体の効力を、MSDアッセイにより、健常ヒト志願者のCSF試料(Innovative Research)及び健常カニクイザルのCSF試料(Worldwide Primates)において測定した。各抗体の効力を、そのEC50によって判定した。簡潔に述べると、捕捉抗体(ビオチン化ヤギ抗ヒトTREM2、R&D Systems、カタログ番号BAF1828)でコーティングしたMSD GOLD 96ウェルスモールスポットストレプトアビジンプレート(MSD、カタログ番号L45SA)を、アッセイ緩衝液(25%(v/v)MSD Blocker A(MSD、カタログ番号R93BA-A)、75%(v/v)TBST)で1:3に希釈した生体液試料とともに、室温で1時間インキュベートした。ウェルをTBSTですすいだ後、スルホタグ付き抗TREM2抗体を段階希釈(11段階にわたり4倍希釈)でプレートのウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。ウェルをTBSTで洗浄し、MSD読み取り用緩衝液(MSD、カタログ番号R92TC-3)をウェルに添加した。MSD Meso Sector S600装置を使用して、試料からのシグナルを測定した。各抗体のEC50値を、4パラメータ可変勾配非線形回帰によって決定した。参照抗体#1及び#2は、WO2018/195506に記載されている4C5及び6E7に対応する。参照抗体#3は、WO2019/028292に記載されているAL2p-58に対応する。参照抗体#1の可変領域を、配列番号73及び74に表す。参照抗体#2の可変領域を、配列番号75及び76に表す。参照抗体#3の可変領域を、配列番号77及び78に表す。結果を表8に示す。
【0293】
表8に示すように、本明細書に開示されるCL0020188バリアント及びCL0020123バリアントは、参照抗体と比較してヒトTREM2に対してより強い親和性を有し、健常ヒト志願者対象から単離されたCSF試料においてsTREM2により強力に結合する。さらに、CL0020188バリアントは、参照抗体と比較してカニクイザルTREM2に対してより強い親和性を有し、健常カニクイザル対象から単離されたCSF試料においてsTREM2により強力に結合する。これは、同じ条件下で所定量のsTREM2に結合するための半数効果濃度(EC50)に到達するために必要な抗体の相対量によって実証される。表8に示すように、CL0020188及びCL0020123抗体と比較すると、EC50を達成するには、より高い相対量の参照抗体#1、#2、及び#3が必要である。
【0294】
(表8)抗TREM2抗体の特性比較
【0295】
実施例12.抗TREM2抗体のエピトープマッピング
ペプチドレベルで抗TREM2抗体のエピトープを同定するために、水素重水素交換(HDX)質量分析を使用した。組換えヒトTREM2を単独で、または抗TREM2抗体と混合して、酸化ジュウテリウム標識緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウム、pH7.0)とともに、20℃で0秒間、60秒間、600秒間、及び3600秒間インキュベートした。水素/重水素交換を、等量の4M塩酸グアニジン、0.85M TCEP緩衝液(最終pH2.5)を添加することによりクエンチした。次いで、クエンチした試料をペプシン/プロテアーゼXIII消化及びLC-MS分析に供した。簡潔に述べると、クエンチした試料を、20℃に保持したペプシン/プロテアーゼXIII充填カラム(2.1×30mm)に注入し、得られたペプチドを、Q Exactive(商標)HF-Hybrid Quadrupole-Orbitrap Mass Spectrometer(ThermoFisher)と連結させたWaters Acquity UPLC(Waters Corporation)で構成したUPLC-MSシステムを使用して分析した。ペプチドを、-6℃に保持した50mm×1mmのC8カラムで、2%から31%の溶媒B(溶媒B:アセトニトリル中の0.2%ギ酸、溶媒A:水中の0.2%ギ酸)の16.5分の勾配を使用して分離させた。質量スペクトルをMSのみのモードで記録した。HDX Workbench(Pascal et al.2012.Journal of The American Society for Mass Spectrometry 23:1512-1521)を使用して、未加工のMSデータを処理した。重水素レベルを、重水素化ペプチドとその天然型との間のt0での平均質量差を使用して算出した。Mascot softward(Matrix Science)を用いてヒトTREM2配列に対するMS/MSデータを検索することにより、ペプチドの同定を実施した。プリカーサーイオン及びプロダクトイオンの質量許容差は、それぞれ10ppm及び0.02Daであった。
【0296】
HDX質量分析の結果に基づくと、CL0020188及びCL0020188のバリアントは、アミノ酸残基143~149(FPGESES(配列番号69))でヒトTREM2(配列番号1)に結合するが、他方、CL0020123及びCL0020123のバリアントは、(i)アミノ酸残基55~63(GEKGPCQRV(配列番号70))、(ii)アミノ酸96~107(TLRNLQPHDAGL(配列番号71))、及び(iii)アミノ酸残基126~129(VEVL(配列番号72))でヒトTREM2に結合する。
【0297】
IX.略式の配列表
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
【配列表】
2022520868000001.app
【国際調査報告】