(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(54)【発明の名称】Biettiクリスタリン網膜症を治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/86 20060101AFI20220325BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20220325BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220325BHJP
A61K 38/44 20060101ALI20220325BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220325BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220325BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
C12N15/86 Z ZNA
C12N15/864 100Z
A61K48/00
A61K38/44
A61K35/76
A61P27/02
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549223
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(85)【翻訳文提出日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 IB2020051558
(87)【国際公開番号】W WO2020174369
(87)【国際公開日】2020-09-03
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(71)【出願人】
【識別番号】518089687
【氏名又は名称】フリードリッヒ ミーシェー インスティトゥート フォー バイオメディカル リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100181168
【氏名又は名称】丸山 智裕
(72)【発明者】
【氏名】ベル,クリスティー エル.
(72)【発明者】
【氏名】クロル,ヤツェク
(72)【発明者】
【氏名】ユエトナー,ジョゼフィーヌ
(72)【発明者】
【氏名】マギー,テリー
(72)【発明者】
【氏名】ロスカ,ボトンド
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA44
4C084DC23
4C084MA58
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZB211
4C084ZB212
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA58
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA33
4C087ZB21
(57)【要約】
Biettiクリスタリン網膜症を有する対象を治療するために、異種CYP4V2遺伝子を網膜、例えば網膜のRPE細胞に送達するウイルスベクターが本明細書において提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5’から3’の方向に、
(i)5’ITR;
(ii)プロモーター;
(iii)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列;
(iv)ポリアデニル化(ポリA)シグナル配列;及び
(v)3’ITR
を含むベクターゲノムを含むウイルスベクター。
【請求項2】
前記プロモーターは、網膜色素上皮(RPE)特異的プロモーターである、請求項1に記載のウイルスベクター。
【請求項3】
前記プロモーターは、ProA18プロモーターである、請求項1又は2に記載のウイルスベクター。
【請求項4】
前記プロモーターは、配列番号2に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1又は2に記載のウイルスベクター。
【請求項5】
前記プロモーターは、ProB4プロモーターである、請求項1又は2に記載のウイルスベクター。
【請求項6】
前記プロモーターは、配列番号3に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1又は2に記載のウイルスベクター。
【請求項7】
前記ベクターゲノムは、前記ポリAシグナル配列と前記3’ITRとの間に配置されたスタッファー配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項8】
前記5’ITRは、配列番号1に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項9】
前記CYP4V2コード配列は、配列番号13、14、39、41、43、45、47又は49に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項10】
ポリAシグナルは、配列番号18又は19に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項11】
配列番号9、10又は11に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含むイントロン配列をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項12】
1)B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus)若しくはウッドチャック肝炎ウイルス(woodchuck hepatitis virus)配列を含む調節エレメント、及び/又は2)前記CYP4V2コード配列を含む前記組換えヌクレオチド配列のすぐ上流に位置するコザック配列をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項13】
前記ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、
i)配列番号1、2、13、18、及び22;
ii)配列番号1、3、13、18、及び22;
iii)配列番号1、2、14、18、及び22;
iv)配列番号1、3、14、18、及び22;
v)配列番号1、2、13、19、及び22;
vi)配列番号1、3、13、19、及び22;
vii)配列番号1、2、14、19、及び22;
viii)配列番号1、3、14、19、及び22;
ix)配列番号1、2、9、13、18、及び22;
x)配列番号1、3、9、13、18、及び22;
xi)配列番号1、2、9、14、18、及び22;
xii)配列番号1、3、9、14、18、及び22;
xiii)配列番号1、2、9、13、19、及び22;
xiv)配列番号1、3、9、13、19、及び22;
xv)配列番号1、2、9、14、19、及び22;
xvi)配列番号1、3、9、14、19、及び22;
xvii)配列番号1、2、13、16、18、及び22;
xviii)配列番号1、3、13、16、18、及び22;
xix)配列番号1、2、14、16、18、及び22;
xx)配列番号1、3、14、16、18、及び22;
xxi)配列番号1、2、13、16、19、及び22;
xxii)配列番号1、3、13、16、19、及び22;
xxiii)配列番号1、2、14、16、19、及び22;
xxiv)配列番号1、3、14、16、19、及び22;
xxv)配列番号1、2、9、13、16、18、及び22;
xxvi)配列番号1、3、9、13、16、18、及び22;
xxvii)配列番号1、2、9、14、16、18、及び22;
xxviii)配列番号1、3、9、14、16、18、及び22;
xxix)配列番号1、2、9、13、16、19、及び22;
xxx)配列番号1、3、9、13、16、19、及び22;
xxxi)配列番号1、2、9、14、16、19、及び22;並びに
xxxii)配列番号1、3、9、14、16、19、及び22
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項14】
アデノ随伴ウイルス(AAV)血清型8、9、2又は5カプシドをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項15】
1)それぞれ配列番号28、29及び30に対して約90%以上の同一性を有するVP1、VP2及びVP3アミノ酸配列を含むAAV9カプシド;又は2)配列番号27に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされるAAV9カプシドをさらに含む、請求項14に記載のウイルスベクター。
【請求項16】
1)それぞれ配列番号24、25及び26に対して約90%以上の同一性を有するVP1、VP2及びVP3アミノ酸配列を含むAAV8カプシド;又は2)配列番号23に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされるAAV8カプシドをさらに含む、請求項14に記載のウイルスベクター。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のウイルスベクターを含む組成物。
【請求項18】
網膜細胞において異種CYP4V2遺伝子を発現させる方法であって、前記網膜細胞を請求項1~16のいずれか一項に記載のウイルスベクターと接触させることを含む方法。
【請求項19】
Biettiクリスタリン網膜症(BCD)を有する対象を治療する方法であって、請求項17に記載の組成物の有効量を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項20】
BCDを有する対象の視力を改善するか、視覚機能若しくは機能的視覚を改善するか、又は視覚機能若しくは機能的視覚の低下を抑制する方法であって、請求項17に記載の組成物の有効量を前記対象に投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照及び配列表の組み込み
本出願は、2019年2月25日に出願された米国仮特許出願第62/810,257号明細書の米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張するものであり、この仮特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2020年2月22日に作成された、156,133バイト(オペレーティングシステムMS-Windowsで測定)の「PAT058468-WO-PCT SQL_ST25」という名称のファイルに含まれる配列表は、本明細書と共に提出され、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
Biettiクリスタリン網膜症(BCD)は、網膜に多数の小さい黄色又は白色の結晶様の脂質沈着物が蓄積し、それに続いて網脈絡膜萎縮及び進行性の視力低下が起こる常染色体劣性疾患である。BCDの患者は、一般的に、10代又は20代で視力の問題を認識し始める。患者は、多くの場合、視力の低下に加えて、夜盲症を経験する。患者は、通常、視野、殆どの場合に周辺視野も失う。色覚も損なわれることがある。
【0003】
視力の問題は、眼ごとに異なる割合で悪化することがあり、症状の重症度及び進行は、同じ家族内であっても、罹患した患者間で大きく異なる。しかし、BCDの殆どの患者は、40歳又は50歳までに法的に盲目になる。罹患した患者の大部分は、通常、視野の中心にある程度の視力を保持するが、一般的にはぼやけており、処方レンズで矯正することができない。
【0004】
BCDは、CYP4V2遺伝子の変異によって引き起こされる。ヒトの4番染色体の長腕に位置する遺伝子は、シトクロムP450ファミリー4サブファミリーVメンバー2をコードする。シトクロムP450ファミリーの酵素のメンバーとして、ω-ヒドロキシラーゼは、脂質代謝、具体的にはドコサヘキサエン酸(DHA)及びエイコサペンタエン酸(EPA)などの多価不飽和脂肪酸の酸化に関与する。少なくとも80の異なるCYP4V2遺伝子変異がBCDの患者で同定されている(Zhang et al.,Mol Vis 24:700-711,2018)。BCDを引き起こすCYP4V2遺伝子変異は、酵素の機能を低下又は消失させ、脂質分解に影響を及ぼすと考えられている。しかし、それらがどのようにBCDの特異的な徴候及び症状につながるかは、わかっていない。
【0005】
BCDは、世界で約65,000人が罹患していると推定されている(Xiao et al.,Biochem Biophys Res Comm 409:181-186,2011;及びMataftsi et al.,Retina 24:416-426,2004)。これは、東アジア系の人々、特に中国及び日本のバックグラウンドを有する人々によくみられる。現在、BCDに利用可能な治療法はない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一般に、組換えウイルスベクターと、組換えウイルスベクターを使用して、網膜疾患及び失明(例えば、BCD)に罹患している対象の網膜(例えば、網膜色素上皮(RPE)細胞)中にタンパク質を発現させる方法とに関する。
【0007】
本発明は、一態様において、網膜(例えば、ヒト網膜)に異種遺伝子を送達することができるウイルスベクターに関する。本発明は、網膜(例えば、網膜のRPE細胞)に異種遺伝子を誘導し得るウイルスベクターにも関する。本発明は、組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)であるウイルスベクターにさらに関する。特定の実施形態では、rAAVウイルスベクターは、当技術分野で知られるAAV血清型、例えば、限定はされないが、AAV1~AAV12などの中から選択され得る。特定の実施形態では、rAAVベクターカプシドは、AAV8血清型である。特定の他の実施形態では、rAAVベクターカプシドは、AAV9血清型である。特定の実施形態では、rAAVベクターカプシドは、AAV2血清型である。特定の実施形態では、rAAVベクターカプシドは、AAV5血清型である。特定の実施形態では、rAAVベクターは、改変野生型AAVカプシド配列に由来する新規合成AAV血清型である。
【0008】
一態様では、5’から3’の方向に、
(i)5’ITR;
(ii)プロモーター;
(iii)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列;
(iv)ポリアデニル化(ポリA)シグナル配列;及び
(v)3’ITR
を含むベクターゲノムを含むウイルスベクターが提供される。
【0009】
一実施形態では、ベクターゲノムは、5’から3’方向に、
(i)5’ITR;
(ii)プロモーター;
(iii)イントロン;
(iv)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列;
(v)ポリAシグナル配列;及び
(vi)3’ITR
を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、
(i)5’ITR;
(ii)プロモーター;
(iii)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列;
(iv)調節エレメント;
(v)ポリAシグナル配列;及び
(vi)3’ITR
を含む。
【0011】
一実施形態では、ベクターゲノムは、5’から3’方向に、
(i)5’ITR;
(ii)プロモーター;
(iii)イントロン;
(iv)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列;
(v)調節エレメント;
(vi)ポリAシグナル配列;及び
(vii)3’ITR
を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、ベクターゲノムは、約4.1kb以上且つ約4.9kb以下の長さを含む。別の実施形態では、ベクターゲノムは、約5kb以下の長さを含む。
【0013】
一実施形態では、ベクターゲノムは、ポリAシグナル配列と3’ITRとの間に位置するスタッファー配列を含む。いくつかの実施形態では、スタッファー配列は、約1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~75、75~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~400、400~500、500~750、750~1,000、1,000~1,500、1,500~2,000、2,000~2,500又は2,500~3,000ヌクレオチドの長さである。
【0014】
一実施形態では、5’ITRは、配列番号1に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0015】
一実施形態では、プロモーターは、網膜色素上皮(RPE)特異的プロモーター、例えば、ProA18プロモーター、又はProB4プロモーターであって、例えば、配列番号2、又は配列番号3に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、RPE細胞においてCYP4V2の発現を優先的に促進する。
【0016】
したがって、本発明は、配列番号2の核酸配列、又は前記配列番号2の核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有する核酸配列を含む、或いはそのような核酸配列からなる単離された核酸分子を提供する。単離された配列番号2の核酸は、ヒト又はNHPの網膜細胞、例えば、ヒト又はNHPのRPE細胞において、配列番号2の核酸配列に作動可能に連結された遺伝子を発現させる。
【0017】
したがって、本発明は、配列番号3の核酸配列又は前記配列番号3の核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有する核酸配列を含むか、又はそのような核酸配列からなる単離された核酸分子を提供する。配列番号3の単離された核酸は、ヒト又はNHP網膜細胞、例えばヒト又はNHP RPE細胞において、配列番号3の核酸配列に作動可能に連結された遺伝子を発現させる。
【0018】
いくつかの実施形態では、CYP4V2コード配列は、配列番号13、配列番号14、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47又は配列番号49に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0019】
一実施形態では、ポリAシグナル配列は、ウシ成長ホルモン又はシミアンウイルス40(simian virus 40)ポリAヌクレオチド配列を含み、例えば配列番号18又は配列番号19に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、3’ITRは、配列番号22に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0021】
一実施形態では、イントロンは、ヒト成長ホルモン、シミアンウイルス40(simian virus 40)又はヒトベータグロビンイントロン配列を含み、例えば配列番号9、配列番号10又は配列番号11に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、調節エレメントは、B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus)又はウッドチャック肝炎ウイルス(woodchuck hepatitis virus)配列を含み、例えば配列番号16又は配列番号17に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0023】
一実施形態では、ベクターゲノムは、CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列のすぐ上流に位置するコザック配列を含み、例えば、そのコザック配列は、配列番号12、配列番号51、配列番号52又は配列番号53のヌクレオチド配列を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、ベクターゲノムは、5’から3’方向に、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む:
i)配列番号1、2、13、18、及び22;
ii)配列番号1、3、13、18、及び22;
iii)配列番号1、2、14、18、及び22;
iv)配列番号1、3、14、18、及び22;
v)配列番号1、2、13、19、及び22;
vi)配列番号1、3、13、19、及び22;
vii)配列番号1、2、14、19、及び22;並びに
viii)配列番号1、3、14、19、及び22。
【0025】
一実施形態では、ベクターゲノムは、5’から3’方向に、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む:
i)配列番号1、2、9、13、18、及び22;
ii)配列番号1、3、9、13、18、及び22;
iii)配列番号1、2、9、14、18、及び22;
iv)配列番号1、3、9、14、18、及び22;
v)配列番号1、2、9、13、19、及び22;
vi)配列番号1、3、9、13、19、及び22;
vii)配列番号1、2、9、14、19、及び22;並びに
viii)配列番号1、3、9、14、19、及び22。
【0026】
一実施形態では、ベクターゲノムは、5’から3’方向に、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む:
i)配列番号1、2、13、16、18、及び22;
ii)配列番号1、3、13、16、18、及び22;
iii)配列番号1、2、14、16、18、及び22;
iv)配列番号1、3、14、16、18、及び22;
v)配列番号1、2、13、16、19、及び22;
vi)配列番号1、3、13、16、19、及び22;
vii)配列番号1、2、14、16、19、及び22;並びに
viii)配列番号1、3、14、16、19、及び22。
【0027】
一実施形態では、ベクターゲノムは、5’から3’方向に、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む:
i)配列番号1、2、9、13、16、18、及び22;
ii)配列番号1、3、9、13、16、18、及び22;
iii)配列番号1、2、9、14、16、18、及び22;
iv)配列番号1、3、9、14、16、18、及び22;
v)配列番号1、2、9、13、16、19、及び22;
vi)配列番号1、3、9、13、16、19、及び22;
vii)配列番号1、2、9、14、16、19、及び22;並びに
viii)配列番号1、3、9、14、16、19、及び22。
【0028】
いくつかの実施形態では、ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)血清型8、9、2又は5カプシドを含む。一実施形態では、AAV8カプシドは、それぞれ配列番号24、25及び26に対して約90%以上の同一性を有するVP1、VP2及びVP3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、AAV8カプシドは、配列番号23に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。一実施形態では、AAV9カプシドは、それぞれ配列番号28、29及び30に対して約90%以上の同一性を有するVP1、VP2及びVP3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、AAV9カプシドは、配列番号27に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。一実施形態では、AAV2カプシドは、それぞれ配列番号32、33及び34に対して約90%以上の同一性を有するVP1、VP2及びVP3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、AAV2カプシドは、配列番号31に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。一実施形態では、AAV5カプシドは、それぞれ配列番号36、37及び38に対して約90%以上の同一性を有するVP1、VP2及びVP3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、AAV5カプシドは、配列番号35に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。
【0029】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載のウイルスベクターを含む組成物を提供する。一実施形態では、組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は、BCDを有する対象の治療に使用するためのものであり、例えばBCDを有する対象の視力の改善に使用するためのものである。
【0030】
網膜細胞において異種CYP4V2遺伝子を発現させる方法であって、網膜細胞を本明細書に記載のウイルスベクターと接触させることを含む方法も本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、網膜細胞は、RPE細胞である。
【0031】
別の態様では、Biettiクリスタリン網膜症(BCD)を有する対象を治療する方法であって、本明細書に記載のウイルスベクターを含む組成物の有効量を対象に投与することを含み、例えば、その組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、方法が提供される。
【0032】
さらに別の態様では、BCDを有する対象の視力を改善するか、視覚機能若しくは機能的視覚を改善するか、又は視覚機能若しくは機能的視覚の低下を抑制する方法であって、本明細書に記載のウイルスベクターを含む組成物の有効量を対象に投与することを含み、例えば、その組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、方法が提供される。
【0033】
一態様では、遺伝子カセットを含む核酸であって、その遺伝子カセットは5’から3’の方向に、
(i)5’ITR;
(ii)プロモーター;
(iii)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列;
(iv)ポリAシグナル配列;及び
(v)3’ITR
を含む核酸が提供される。
【0034】
一実施形態では、遺伝子カセットを含む核酸は、プラスミドである。
【0035】
いくつかの実施形態では、遺伝子カセットは、5’から3’方向に、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む:
i)配列番号1、2、13、18、及び22;
ii)配列番号1、3、13、18、及び22;
iii)配列番号1、2、14、18、及び22;
iv)配列番号1、3、14、18、及び22;
v)配列番号1、2、13、19、及び22;
vi)配列番号1、3、13、19、及び22;
vii)配列番号1、2、14、19、及び22;
viii)配列番号1、3、14、19、及び22;
ix)配列番号1、2、9、13、18、及び22;
x)配列番号1、3、9、13、18、及び22;
xi)配列番号1、2、9、14、18、及び22;
xii)配列番号1、3、9、14、18、及び22;
xiii)配列番号1、2、9、13、19、及び22;
xiv)配列番号1、3、9、13、19、及び22;
xv)配列番号1、2、9、14、19、及び22;
xvi)配列番号1、3、9、14、19、及び22;
xvii)配列番号1、2、13、16、18、及び22;
xviii)配列番号1、3、13、16、18、及び22;
xix)配列番号1、2、14、16、18、及び22;
xx)配列番号1、3、14、16、18、及び22;
xxi)配列番号1、2、13、16、19、及び22;
xxii)配列番号1、3、13、16、19、及び22;
xxiii)配列番号1、2、14、16、19、及び22;
xxiv)配列番号1、3、14、16、19、及び22;
xxv)配列番号1、2、9、13、16、18、及び22;
xxvi)配列番号1、3、9、13、16、18、及び22;
xxvii)配列番号1、2、9、14、16、18、及び22;
xxviii)配列番号1、3、9、14、16、18、及び22;
xxix)配列番号1、2、9、13、16、19、及び22;
xxx)配列番号1、3、9、13、16、19、及び22;
xxxi)配列番号1、2、9、14、16、19、及び22;並びに
xxxii)配列番号1、3、9、14、16、19、及び22。
【0036】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。
【0037】
用語「カプシド」は、ウイルス又はウイルスベクターのタンパク質コートを指す。用語「AAVカプシド」は、合計60のサブユニットから構成されるアデノ随伴ウイルス(AAV)のタンパク質コートを指し;各サブユニットは、アミノ酸配列であり、ウイルスタンパク質1(VP1)、VP2又はVP3であり得る(Muzyczka N and Berns KI(2001)Chapter 69,Fields Virology.Lippincott Williams&Wilkins)。
【0038】
用語「遺伝子カセット」は、例えば、制限酵素認識部位の1つ以上のセット間に(制限酵素認識部位間にまたがっている必要はない)1つ以上の目的遺伝子又は目的コード配列を保有し、且つそれを発現し得る、DNAの操作可能な断片を指す。遺伝子カセット又はその一部は、制限酵素を用いて断片を切り出し、これを新しいコンテクスト、例えば新しいプラスミド骨格に連結することにより、(多くの場合にプラスミドベクター中の)1つのDNA配列から別のDNA配列に移すことができる。
【0039】
用語「異種遺伝子」又は「異種ヌクレオチド配列」は、一般に、ウイルス中に天然に存在しない遺伝子又はヌクレオチド配列を指す。代わりに、異種遺伝子又は異種ヌクレオチド配列は、(例えば、ウイルス中で天然に結合していないプロモーターと結合することによって)天然に存在しない環境に置かれたウイルス配列を指し得る。
【0040】
「末端逆位反復」又は「ITR」という用語は、T形回文構造を形成し得るアデノ随伴ウイルス(AAV)及び/又は組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)に存在するヌクレオチド配列のストレッチを指し、野生型AAVの溶解潜伏ライフサイクルを完了するために必要とされる(Muzyczka N and Berns KI(2001)Chapter 69,Fields Virology.Lippincott Williams&Wilkins)。rAAVでは、これらの配列は、ゲノムパッケージング及び第二鎖合成において機能的役割を果たす。
【0041】
用語「作動可能に連結された」は、2つ以上のポリヌクレオチド(例えば、DNA)セグメント間の機能的関係を指す。一般的には、この用語は、転写される配列に対する転写調節配列の機能的関係を指す。例えば、プロモーター又はエンハンサー配列は、適切な宿主細胞又は他の発現系においてコード配列の転写を刺激又は調節する場合、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、転写可能な配列に作動可能に連結されているプロモーター転写調節配列は、転写可能な配列に隣接している。すなわち、それらは、シス作用性である。しかし、エンハンサーなどの一部の転写調節配列は、転写を増強するコード配列に物理的に隣接しているか又はごく近接して位置している必要はない。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「配列同一性パーセント」は、任意の所与の問い合わせ配列と対象配列との間の同一性の程度を指す。対象配列は、通常、問い合わせ配列の長さの約80パーセント~250パーセントの長さ、例えば問い合わせ配列の長さの82、85、87、89、90、93、95、97、99、100、105、110、115又は120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240又は250パーセントの長さを有する。2つのヌクレオチド配列又は2つのアミノ酸配列の同一性パーセントを決定するために、最適な比較を目的として配列をアラインする(例えば、最適なアラインメントのために第1及び第2のアミノ酸又はヌクレオチド配列の一方又は両方にギャップを導入することができ、また比較目的のために非相同配列を無視することができる)。次いで、対応するヌクレオチド位置又はアミノ酸位置におけるヌクレオチド又はアミノ酸残基を比較する。第1の配列中の位置が第2の配列中の対応する位置と同じヌクレオチド又はアミノ酸残基によって占められている場合、分子は、その位置で同一である(本明細書中で使用される場合、ヌクレオチド又はアミノ酸「同一性」はヌクレオチド又はアミノ酸「相同性」と均等である)。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適アラインメントのために導入する必要があるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮して、これらの配列によって共有される同一の位置の数の関数である。
【0043】
別の実施形態では、2つのアミノ酸配列の同一性パーセントは、両方のアミノ酸配列における対応する位置におけるアミノ酸の同じファミリー(例えば、正電荷、負電荷、極性及び非荷電性、疎水性)内のアミノ酸残基の保存の関数として評価することができる(例えば、両方の配列の特定の位置におけるバリン残基に代わるアラニン残基の存在は、高レベルの保存を示すが、両方の配列の特定の位置におけるアスパラギン酸残基に代わるアルギニン残基の存在は、低レベルの保存を示す)。本発明の目的のために、2つの配列間の配列の比較及び同一性パーセントの決定は、Blossum 62スコアリングマトリックスをギャップペナルティー12、ギャップ伸長ペナルティー4及びフレームシフトギャップペナルティー5で使用して達成することができる。
【0044】
用語「プロモーター」とは、作動可能に連結された遺伝子又はタンパク質をコードするヌクレオチド配列の転写を調節する配列を指す。プロモーターは、転写を指示するのに十分な配列並びに効率的な転写に必要なRNAポリメラーゼ及び他の転写因子の認識部位を提供し、細胞特異的発現を指示することができる。転写を指示するのに十分な配列に加えて、本発明のプロモーター配列は、転写の調節に関与する他の調節エレメントの配列(例えば、エンハンサー、最小プロモーター、Kozak配列及びイントロン)も含み得る。当技術分野で知られており、本明細書に記載のウイルスベクターに有用なプロモーターの例としては、ProA18プロモーター(例えば、配列番号2)及びProB4プロモーター(例えば、配列番号3)などのRPE特異性プロモーターが挙げられる。さらに、既知の調節エレメントを混合しマッチングさせることによって機能的プロモーターを作製するための標準的な技術が当技術分野で知られている。「トランケート型プロモーター」も、プロモーター断片から、又は既知の調節エレメントの断片を混合し、マッチングすることによって生成することができる。
【0045】
用語「CYP4V2」は、シトクロムP450ファミリー4サブファミリーVメンバー2を指す。ヒトCYP4V2遺伝子は、第4染色体上に見出され、例えば配列番号13に示すようなヌクレオチドコード配列を有する。一実施形態では、ヒトCYP4V2遺伝子のコドン最適化配列を使用することができる。このようなコドン最適化CYP4V2遺伝子の一例は、配列番号14に示すようなヌクレオチドコード配列を有する。「CYP4V2遺伝子産物」は、CYP4V2遺伝子によってコードされるタンパク質である。一実施形態では、例示的なヒトCYP4V2遺伝子産物は、配列番号15に示すようなアミノ酸配列を有する。一実施形態では、CYP4V2コード配列は、配列番号15のアミノ酸配列又はその機能的改変体若しくは断片をコードする。他の種に由来するCYP4V2コード配列及びCYP4V2遺伝子産物の例は、表2(例えば、配列番号39~50)に見出すことができる。「CYP4V2コード配列」、又は「CYP4V2遺伝子CDS」、又は「CYP4V2 CDS」という用語は、CYP4V2遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を指す。当業者は、CYP4V2コード配列がCYP4V2遺伝子産物又はその機能的改変体若しくは断片をコードするヌクレオチド配列を含み得ることを理解するであろう。一実施形態では、CYP4V2コード配列は、配列番号15、40、42、44、46、48、50のアミノ酸配列又はその機能的改変体若しくは断片をコードする。CYP4V2コード配列は、介在調節エレメント(例えば、イントロン、エンハンサー又は他の非コード配列)を含んでも含まなくてもよい。
【0046】
用語「対象」は、ヒト及び非ヒト動物を含む。非ヒト動物には、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)、マウス、ラット、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類及び爬虫類などの全ての脊椎動物(例えば、哺乳類及び非哺乳類)が含まれる。注記する場合を除き、用語「患者」又は「対象」は、本明細書では互換的に使用される。
【0047】
疾患又は障害(例えば、BCD)を「治療すること」又はその「治療」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば疾患又はその臨床症状の少なくとも1つの発症を遅らせるか、又は停止させるか、又は減少させることにより、疾患又は障害を改善させることを指す。「治療すること」又は「治療」は、対象によって認識され得ないものを含む少なくとも1つの身体的パラメータを軽減又は改善することも指し得る。「治療すること」又は「治療」は、身体的に(例えば、認識できる症状の安定化)、生理学的に(例えば、身体的パラメータの安定化)又はその両方で疾患又は障害を調節することも指し得る。さらに具体的には、BCDの「治療」は、BCDを有する対象に視覚機能、機能的視覚、網膜組織及び/又は生活の質の改善又は維持をもたらす作用を意味する。本明細書で使用される場合、「治療」は、BCDの症状の1つ以上が改善されるか、又はさもなければ有益に改変される方法を意味し得る。本明細書で使用される場合、BCDの症状の改善は、永続的であるか又は一時的であるかを問わず、持続的であるか又は一過性であるかを問わず、本発明の組成物及び方法による治療に起因又は関連し得る軽減を指す。本明細書で使用される「予防すること又は「予防」は、疾患又は障害の発症、又は進展、又は進行を予防するか又は遅延させることを指す。「予防」は、BCDに関連する場合、以下に記載するように、視覚機能、機能的視覚、網膜組織、生活の質及び/又はBCD疾患パラメータの悪化を、BCDを有し、前記悪化の危険性がある患者において予防するか又は遅延させる作用を意味する。疾患の治療及び/又は予防を評価する方法は、当技術分野において知られており、本明細書において以下に記載する。
【0048】
「ウイルスベクター(virus vector)」又は「ウイルスベクター(viral vector)」という用語は、遺伝子送達ビヒクルとして機能し、ウイルス(例えば、AAV)カプシド内に包み込まれた組換えウイルスゲノムを含む非野生型組換えウイルス粒子(例えば、パルボウイルスなど)を指すものとする。特定のタイプのウイルスベクターは、「組換えアデノ随伴ウイルスベクター」又は「rAAVベクター」であり得る。ウイルスベクター内に包み込まれた組換えウイルスゲノムは、本明細書では「ベクターゲノム」とも呼ばれる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】後眼杯のフラットマウントにおけるChR2d-eGFP発現を示す顕微鏡写真である。眼杯をPFA固定眼から単離し、花弁状に切断し、eGFP蛍光を分析した。
【
図2】
図2A及び
図2Bは、ddPCRにより測定したChR2d-eGFPのmRNA発現レベルを示すグラフである。後眼杯(
図2A)及び神経網膜(
図2B)の両方のTM073に対する発現の倍率変化を示す。各試料について、ChR2d-eGFP発現をRab7対照発現に対して正規化した。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本開示は、選択されたプロモーター、AAVゲノム及びカプシド血清型の組合せを有する組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)からのCYP4V2の発現が、BCD、例えばCYP4V2遺伝子に変異(表1)を有する対象に対して強力且つ有効な治療を提供するという発見に部分的に基づいている。したがって、本開示は、網膜へCYP4V2コード配列の発現を指示する組換えウイルスベクター、ウイルスベクター組成物、ウイルスベクターの生成に有用なプラスミド、網膜へCYP4V2コード配列を送達する方法、網膜のRPE細胞においてCYP4V2コード配列を発現する方法及びこのようなウイルスベクターの使用方法を提供する。
【0051】
【0052】
【0053】
特に指示がない限り、ウイルス遺伝子カセットを保有する組換えプラスミド、パルボウイルスrep及び/又はcap配列を発現するパッケージングプラスミド並びに一過性且つ安定にトランスフェクトされたパッケージング細胞を用いて組換えパルボウイルス及びrAAVベクターを構築するために、当業者に知られた標準的な方法を用いることができる。このような技術は、当業者に知られている。(例えば、Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL 2nd Ed.(Cold Spring Harbor,N.Y.,1989);Choi et al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(2007))。
【0054】
ウイルスベクターが特定のタンパク質又は活性を発現する場合、関連する遺伝子は、天然に見出されるか、又は本明細書に開示される対応する遺伝子と同一である必要はない。タンパク質が機能的である限り、それは、本発明の一態様に従って使用され得る。当業者であれば、CYP4V2コード配列が機能的ω-ヒドロキシラーゼをコードするか否かを、ヒドロキシラーゼ活性を検出することによって容易に決定し得るであろう。簡潔には、目的タンパク質を脂肪酸及び他の必要な因子と混合し、インキュベートして、ヒドロキシル化反応を生じさせる。その後、ヒドロキシル化脂肪酸を質量分析によって測定することができる。例えば、Nakano et al.,Drug Metab Dispos 37:2119-2122,2009に記載されているような機能的アッセイを参照されたい。しかしながら、天然タンパク質との非常に高い配列同一性が一般に好ましい。例えば、大きい欠失(例えば、約50を超えるアミノ酸)は、本発明の特定の実施形態によれば、一般に回避すべきである。したがって、当業者であれば、本ウイルスベクター配列が、本明細書に記載される配列と異なり得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、ウイルスヌクレオチド又はアミノ酸配列は、本明細書中に提供される配列に対して約80%以上の同一性、例えば本明細書中に提供される配列に対して約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有する。
【0055】
いくつかの実施形態では、配列変化は、保存的置換である。このような変化としては、イソロイシン(I)、バリン(V)及びロイシン(L)のいずれかの、これらの疎水性アミノ酸の他のものへの置換;アスパラギン酸(D)のグルタミン酸(E)への置換及びその逆;グルタミン(Q)のアスパラギン(N)への置換及びその逆;並びにセリン(S)のトレオニン(T)への置換及びその逆が挙げられる。他の置換も、タンパク質の三次元構造における特定のアミノ酸の環境及びその役割に応じて保存的であると考えることができる。例えば、グリシン(G)及びアラニン(A)は、アラニン(A)及びバリン(V)と同様に、多くの場合に交換可能であり得る。比較的疎水性であるメチオニン(M)は、ロイシン及びイソロイシンと交換され得る場合がよくあり、バリンともときに交換され得る。リシン(K)及びアルギニン(R)は、アミノ酸残基の大きい特徴がその電荷であり、これらの2つのアミノ酸残基のpKの相違が重要ではない位置で多くの場合に交換可能である。さらに他の変化は、特定の環境では「保存的」であると考えることができる(例えば、米国特許出願公開第20110201052号明細書の表III;pages 13-15“Biochemistry”2nd Ed.Stryer ed(Stanford University);Henikoff et al.,Proc Natl Acad Sci USA 89:10915-10919,1992;Lei et al.,J Biol Chem 270:11882-11886,1995を参照されたい)。
【0056】
ウイルスベクター
本発明は、網膜(例えば、ヒト網膜)への異種遺伝子の発現を指示するウイルスベクターに関する。本発明の特定の態様では、発現は、網膜のRPE細胞に対して優先的に指示される。当技術分野で知られる様々なウイルスベクター(例えば、組換えアデノ随伴ウイルス、組換えアデノウイルス、組換えレトロウイルス、組換えポックスウイルス及び組換えバキュロウイルス)は、本発明で使用するために当業者により適合され得る。
【0057】
特に、本発明のウイルスベクターは、組換えアデノ随伴(rAAV)ベクターであり得ると考えられる。AAVは、効率的な複製を促進するためにヘルパーウイルスを必要とする小さい一本鎖DNAウイルスである(Muzyczka N and Berns KI(2001)Chapter 69,Fields Virology.Lippincott Williams&Wilkins)。ウイルスベクターは、ベクターゲノムとカプシドタンパク質とを含む。ウイルスベクターカプシドは、今日同定されているヒト及び非ヒトAAV血清型並びに依然として同定されていないAAV血清型を含む、当技術分野で知られるAAV血清型のいずれかから提供され得る(例えば、Choi et al.,Curr Gene Ther 5:299-310,2005;Schmidt et al.,J Virol 82:1399-1406,2008;米国特許第9,193,956号明細書;同第9;186;419号明細書;同第8,632,764号明細書;同第8,663,624号明細書;同第8,927,514号明細書;同第8,628,966号明細書;同第8,263,396号明細書;同第8,734,809号明細書;同第8,889,641号明細書;同第8,632,764号明細書;同第8,691,948号明細書;同第8,299,295号明細書;同第8,802,440号明細書;同第8,445,267号明細書;同第8,906,307号明細書;同第8,574,583号明細書;同第8,067,015号明細書;同第7,588,772号明細書;同第7,867,484号明細書;同第8,163,543号明細書;同第8,283,151号明細書;同第8,999,678号明細書;同第7,892,809号明細書;同第7,906,111号明細書;同第7,259,151号明細書;同第7,629,322号明細書;同第7,220,577号明細書;同第8,802,080号明細書;同第7,198,951号明細書;同第8,318,480号明細書;同第8,962,332号明細書;同第7,790,449号明細書;同第7,282,199号明細書;同第8,906,675号明細書;同第8,524,446号明細書;同第7,712,893号明細書;同第6,491,907号明細書;同第8,637,255号明細書;同第7,186,522号明細書;同第7,105,345号明細書;同第6,759,237号明細書;同第6,984,517号明細書;同第6,962,815号明細書;同第7,749,492号明細書;同第7,259,151号明細書;及び同第6,156,303号明細書;米国特許出願公開第2013/0295614号明細書;同第2015/0065562号明細書;同第2014/0364338号明細書;同第2013/0323226号明細書;同第2014/0359799号明細書;同第2013/0059732号明細書;同第2014/0037585号明細書;同第2014/0056854号明細書;同第2013/0296409号明細書;同第2014/0335054号明細書;同第2013/0195801号明細書;同第2012/0070899号明細書;同第2011/0275529号明細書;同第2011/0171262号明細書;同第2009/0215879号明細書;同第2010/0297177号明細書;同第2010/0203083号明細書;同第2009/0317417号明細書;同第2009/0202490号明細書;同第2012/0220492号明細書;同第2006/0292117号明細書;及び同第2004/0002159号明細書;欧州特許出願公開第2692731Al号明細書;欧州特許第2383346Bl号明細書;同第2359865Bl号明細書;同第2359866Bl号明細書;同第2359867Bl号明細書;同第and2357010Bl号明細書;同第1791858Bl号明細書;同第1668143Bl号明細書;同第1660678Bl号明細書;同第1664314Bl号明細書;同第1496944Bl号明細書;同第1456383Bl号明細書;同第2341068Bl号明細書;同第2338900Bl号明細書;同第1456419Bl号明細書;同第1310571Bl号明細書;同第1456383Bl号明細書;同第1633772Bl号明細書;及び同第1135468Bl号明細書;並びに国際公開第2014/124282号パンフレット;同第2013/170078号パンフレット;同第2014/160092号パンフレット;同第2014/103957号パンフレット;同第2014/052789号パンフレット;同第2013/174760号パンフレット;同第2013/123503号パンフレット;同第2011/038187号パンフレット;同第2008/124015号パンフレット;及び同第2003/054197号パンフレットを参照されたい)。
【0058】
本明細書の開示の目的のために、AAVは、ウイルス自体及びその誘導体を指す。別段の指示がない限り、この用語は、全てのサブタイプ又は血清型並びに複製能を有する形態及び組換え形態の両方を指す。用語「AAV」には、AAV1型(AAV1)、AAV2型(AAV2)、AAV3A型(AAV3A)、AAV3B型(AAV3B)、AAV4型(AAV4)、AAV5型(AAV5)、AAV6型(AAV6)、AAV7型(AAV7)、AAV8型(AAV8)、AAV9型(AAV9)、AAV10型(AAV10又はAAVrh10)、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ヤギAAV、ウマAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV及びヒツジAAVが含まれるが、これらに限定されない。「霊長類AAV」は、霊長類に感染するAAVを指し、「非霊長類AAV」は、非霊長類の哺乳類に感染するAAVを指し、「ウシAAV」は、ウシ哺乳類に感染するAAVを指すなどである。
【0059】
AAVの様々な血清型のゲノム配列並びに天然の末端逆位反復(ITR)、Repタンパク質及びカプシドサブユニットの配列は、当技術分野において知られている。このような配列は、文献又はGenBankなどの公的データベースにおいて見出し得る。例えば、GenBankアクセッション番号NC_002077.1(AAV1)、AF063497.1(AAV1)、NC_001401.2(AAV2)、AF043303.1(AAV2)、J01901.1(AAV2)、U48704.1(AAV3A)、NC_001729.1(AAV3A)、AF028705.1(AAV3B)、NC.001829.1(AAV4)、U89790.1(AAV4)、NC_006152.1(AA5)、AF085716.1(AAV-5)、AF028704.1(AAV6)、NC006260.1(AAV7)、AF513851.1(AAV7)、AF513852.1(AAV8)NC006261.1(AAV8)、AY530579.1(AAV9)、AAT46337(AAV10)及びAAO88208(AAVrh10)を参照されたい。これらの開示は、AAVの核酸及びアミノ酸配列を教示するために、参照により本明細書に組み込まれる。また、例えば、Srivastava et al.,J Virol.45:555-564,1983;Chiorini et al.,J Virol 71:6823-6833,1998;Chiorini et al.,J Virol 73:1309-1319,1999;Bantel-Schaal et al.,J Virol 73:939-947,1999;Xiao et al.,J Virol 73:3994-4003,1999;Muramatsu et al.,Virology 221:208-217,1996;Shade et al.,J Virol 58:921-936,1986;Gao et al.,Proc Natl Acad Sci USA 99:11854-11859,2002;国際公開第00/28061号パンフレット、同第99/61601号パンフレット、同第98/11244号パンフレット;及び米国特許第6,156,303号明細書を参照されたい。
【0060】
ウイルスカプシドを他のベクター成分と混合し、マッチングさせて、ハイブリッドシュードタイプウイルスベクターを形成し得、例えば、ウイルスベクターのITR及びカプシドは、異なるAAV血清型に由来し得る。一態様では、ITRは、AAV2血清型由来であり得る一方、カプシドは、例えば、AAV8、AAV9、AAV2又はAAV5血清型由来である。さらに、当業者は、ベクターカプシドがモザイクカプシド(例えば、異なる血清型由来のカプシドタンパク質の混合物から構成されるカプシド)又はキメラカプシド(例えば、マーカーを生成するため及び/又は組織親和性を変化させるための外来又は関係のないタンパク質配列を含有するカプシドタンパク質)であり得ることを認識するであろう。本発明のウイルスベクターは、AAV8カプシド(例えば、配列番号23によってコードされる配列番号24、25及び26)を含み得ることが考えられる。また、本発明のウイルスベクターは、AAV9カプシド(例えば、配列番号27によってコードされる配列番号28、29及び30)を含み得ることが考えられる。また、本発明のウイルスベクターは、AAV2カプシド(例えば、配列番号31によってコードされる配列番号32、33及び34)を含み得ることが考えられる。さらに、本発明は、AAV5カプシド(例えば、配列番号35によってコードされる配列番号36、37及び38)を含み得ることも考えられる。
【0061】
一態様では、AAVは、自己相補的アデノ随伴ウイルス(scAVV)である。
【0062】
さらに特定の態様では、ベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムは、約4.1kb以上且つ約4.9kb以下、例えば約4.2kb以上且つ約4.9kb以下、約4.3kb以上且つ約4.9kb以下、約4.4kb以上且つ約4.9kb以下、約4.5kb以上且つ約4.9kb以下、約4.6kb以上且つ約4.9kb以下、約4.7kb以上且つ約4.9kb以下、約4.8kb以上且つ約4.9kb以下、約4.1kb以上且つ約4.8kb以下、約4.1kb以上且つ約4.7kb以下、約4.1kb以上且つ約4.6kb以下、約4.1kb以上且つ約4.5kb以下、約4.1kb以上且つ約4.4kb以下、約4.1kb以上且つ約4.3kb以下、約4.1kb以上且つ約4.2kb以下、約4.2kb以上且つ約4.8kb以下、約4.3kb以上且つ約4.7kb以下、約4.4kb以上且つ約4.6kb以下、約4.1kb、約4.2kb、約4.3kb、約4.4kb、約4.5kb、約4.6kb、約4.7kb、約4.8kb又は約4.9kbの長さを有する。
【0063】
特定の態様では、本発明は、5’から3’の方向に、(i)ProA18プロモーター及びProB4プロモーター、並びにその活性断片から選択されるプロモーターと、(ii)CYP4V2(例えば、ヒトCYP4V2)コード配列を含む組換えヌクレオチド配列を含むベクターゲノム、ベクターゲノム、例えば、一本鎖ベクターゲノムに関連している。
【0064】
特定の態様では、本発明は、5’から3’の方向に、(i)5’ITR、(ii)プロモーター、(iii)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列、(iv)ポリアデニル化(ポリA)シグナル配列、及び(v)3’ITRを含むベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムに関する。本発明の特定の態様では、ベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、(i)5’ITR、(ii)プロモーター、(iii)イントロン、(iv)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列、(v)ポリAシグナル配列、及び(vi)3’ITRを含む。いくつかの実施形態では、ベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、(i)5’ITR、(ii)プロモーター、(iii)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列、(iv)調節エレメント、(v)ポリAシグナル配列、及び(vi)3’ITRを含む。本発明の特定の態様では、ベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、(i)5’ITR、(ii)プロモーター、(iii)イントロン、(iv)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列、(v)調節エレメント、(vi)ポリAシグナル配列、及び(vii)3’ITRを含む。ベクターのエレメントは、表2に記載の配列に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有する配列を有し得る。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
いくつかの実施形態では、5’及び3’ITRは、それぞれ約130~約145ヌクレオチドを含む。ITRは、AAVゲノムの効率的な増殖に必要であり、これらの配列の対称の特徴は、配列にヘアピンを形成する能力を与え、これは、第2のDNA鎖のプライマーゼ非依存的合成を可能にする、いわゆる自己プライミングに寄与する。AAV血清型2の5’及び3’ITR(例えば、それぞれ配列番号1及び22に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列)が使用され得ることが考えられる。他の態様では、他の好適な血清型由来のITRは、本明細書に記載されるように、当技術分野で知られる任意のAAV血清型の中から選択され得、例えば、ITRは、AAV8、AAV9又はAAV5由来であり得る。これらのITR又は他のAAV成分は、既知の又は依然として同定されていないAAV血清型から、当業者が利用可能な技術を使用して容易に単離され得、例えば、AAV配列は、文献又はデータベース(例えば、GenBank、PubMedなど)において利用可能であるような公開された配列を参考として、合成又は他の好適な手段によって得ることができる。代わりに、このようなAAV成分は、学術的、商業的又は公共の供給源(例えば、American Type Culture Collection,Manassas,VA)からも単離又は入手することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、AAVベクターの5’又は3’ITR領域は、例えば、末端分解部位(trs)を欠失/変異させることにより、ΔITRを形成するように変異され、得られるAAVゲノムは、二量体逆位反復DNA分子を形成することによって自己相補的(sc)になる。一実施形態では、ΔITR配列は、配列番号54を含む。さらなるΔITR配列は、例えば、Wang et al.,Gene Therapy,2003,10:2105-2111;McCarty et al.,Gene Therapy,2003,10:2112-2118;及びMcCarty et al.,Gene Therapy,2001,8:1248-1254(これらの各文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、当技術分野で知られている。
【0089】
特定の実施形態では、RPE特異的プロモーターは網膜のRPE細胞、例えば、ヒトRPE細胞におけるCYP4V2の発現を優先的に標的化するために使用され得る。RPE特異的プロモーターの例としては、ProA18プロモーター又はProB4プロモーターが挙げられる。例えば、ProA18プロモーターは、配列番号2に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を有することができ、ProB4プロモーターは、配列番号3に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を有することができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、ベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムは、イントロン配列を含み得る。例えば、イントロンは、ヒト成長ホルモン(hGH)イントロン、シミアンウイルス40(Simian Virus 40)(SV40)イントロン又はヒトベータグロビンイントロン、例えばそれぞれ配列番号9、10又は11に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列であり得る。
【0091】
一実施形態では、ベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムは、CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列を含む。CYP4V2コード配列は、配列番号13、14、39、41、43、45、47又は49に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を有し得る。特定の一実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号14に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するCYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列を含む。
【0092】
さらに、ベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムは、異種CYP4V2遺伝子に作動可能に連結された調節エレメントを含み得る。調節エレメントは、適切な転写の開始、終結及びエンハンサー配列、スプライシングシグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を増強する配列;タンパク質の安定性を増強する配列;並びに必要に応じて、コードされた産物の分泌を増強する配列を含み得る。多数の調節配列が当技術分野で知られており、利用することができる。本発明の調節エレメント配列としては、表2に記載されるもの、例えばB型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus)調節エレメント(HPRE)及びウッドチャック肝炎ウイルス(Woodchuck hepatitis virus)調節エレメント(WPRE)が挙げられ、これらは、それぞれ配列番号16及び17に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を有し得る。
【0093】
一実施形態では、ベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムは、ポリAシグナル配列を含む。本発明のポリAシグナル配列としては、表2に記載されるもの、例えばウシ成長ホルモン(bGH)ポリAシグナル配列及びシミアンウイルス40(Simian Virus 40)(SV40)ポリAシグナル配列が挙げられ、これらは、それぞれ配列番号18及び19に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を有し得る。特定の一実施形態では、ベクターゲノムは、bGHポリAシグナル配列を含み、これは、配列番号18に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み得る。
【0094】
したがって、一態様では、本発明は、5’から3’の方向に、(i)5’ITR(例えば、配列番号1)、(ii)プロモーター(例えば、配列番号2又は3)、(iii)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列(例えば、配列番号13、14、39、41、43、45、47又は49)、(iv)ポリAシグナル配列(例えば、配列番号18又は19)、及び(v)3’ITR(例えば、配列番号22)を含むベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムに関連している。本発明の特定の態様では、ベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、(i)5’ITR(例えば、配列番号1)、(ii)プロモーター(例えば、配列番号2又は3)、(iii)イントロン(例えば、配列番号9、10又は11)、(iv)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列(例えば、配列番号13、14、39、41、43、45、47又は49)、(v)ポリAシグナル配列(例えば、配列番号18又は19)、及び(vi)3’ITR(例えば、配列番号22)を含む。いくつかの実施形態では、ベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、(i)5’ITR(例えば、配列番号1)、(ii)プロモーター(例えば、配列番号2又は3)、(iii)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列(例えば、配列番号13、14、39、41、43、45、47又は49)、(iv)調節エレメント(例えば、配列番号16又は17)、(v)ポリAシグナル配列(例えば、配列番号18又は19)、及び(vi)3’ITR(例えば、配列番号22)を含む。本発明の特定の態様では、ベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、(i)5’ITR(例えば、配列番号1)、(ii)プロモーター(例えば、配列番号2又は3)、(iii)イントロン(例えば、配列番号9、10又は11)、(iv)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列(例えば、配列番号13、14、39、41、43、45、47又は49)、(v)調節エレメント(例えば、配列番号15又は17)、(vi)ポリAシグナル配列(例えば、配列番号18又は19)、及び(vii)3’ITR(例えば、配列番号22)を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、ベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムは、スタッファーポリヌクレオチド配列をさらに含み得る。スタッファーポリヌクレオチド配列は、ベクターの機能又は活性を妨げないように、ベクター配列の任意の所望の位置に位置させることができる。一態様では、スタッファーポリヌクレオチド配列は、ポリAシグナル配列と3’ITRとの間に位置する。一般的に、スタッファーポリヌクレオチド配列は、不活性又は無害であり、機能も活性も有さない。種々の特定の態様では、スタッファーポリヌクレオチド配列は、細菌ポリヌクレオチド配列ではなく;スタッファーポリヌクレオチド配列は、タンパク質又はペプチドをコードする配列ではなく;またスタッファーポリヌクレオチド配列は、ITR配列、プロモーター、CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列及びポリAシグナル配列と異なる。いくつかの実施形態では、スタッファー配列は、配列番号20又は21に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列であり得る。種々のさらなる態様では、スタッファーポリヌクレオチド配列は、約1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~75、75~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~400、400~500、500~750、750~1,000、1,000~1,500、1,500~2,000、2,000~2,500又は2,500~3,000ヌクレオチドの長さである。
【0096】
したがって、特定の実施形態では、ベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、(i)5’ITR(例えば、配列番号1)、(ii)プロモーター(例えば、配列番号2又は3)、(iii)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列(例えば、配列番号13、14、39、41、43、45、47又は49)、(iv)ポリAシグナル配列(例えば、配列番号18又は19)、(v)スタッファー配列(例えば、配列番号20又は21)、及び(vi)3’ITR(例えば、配列番号22)を含む。本発明の特定の態様では、ベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、(i)5’ITR(例えば、配列番号1)、(ii)プロモーター(例えば、配列番号2又は3)、(iii)イントロン(例えば、配列番号9、10又は11)、(iv)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列(例えば、配列番号13、14、39、41、43、45、47又は49)、(v)ポリAシグナル配列(例えば、配列番号18又は19)、(vi)スタッファー配列(例えば、配列番号20又は21)、及び(vii)3’ITR(例えば、配列番号22)を含む。いくつかの実施形態では、ベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、(i)5’ITR(例えば、配列番号1)、(ii)プロモーター(例えば、配列番号2又は3)、(iii)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列(例えば、配列番号13、14、39、41、43、45、47又は49)、(iv)調節エレメント(例えば、配列番号16又は17)、(v)ポリAシグナル配列(例えば、配列番号18又は19)、(vi)スタッファー配列(例えば、配列番号20又は21)、及び(vii)3’ITR(例えば、配列番号22)を含む。本発明の特定の態様では、ベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、(i)5’ITR(例えば、配列番号1)、(ii)プロモーター(例えば、配列番号2又は3)、(iii)イントロン(例えば、配列番号9、10又は11)、(iv)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列(例えば、配列番号13、14、39、41、43、45、47又は49)、(v)調節エレメント(例えば、配列番号16又は17)、(vi)ポリAシグナル配列(例えば、配列番号18又は19)、(vii)スタッファー配列(例えば、配列番号20又は21)、及び(viii)3’ITR(例えば、配列番号22)を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、ベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムは、コザック配列も含み得る。コザック配列は、真核生物のmRNAに存在し、コンセンサス(gcc)gccRccAUGG配列を有し、翻訳プロセスの開始に関与する配列である。コザック配列は、CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列のすぐ上流に位置し得る。いくつかの実施形態では、コザック配列は、GCCACC(配列番号12)である。代わりに、ベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムは、GCCGCC(配列番号51)、GACACC(配列番号52)又はGCCACG(配列番号53)のコザック配列を含む。
【0098】
本発明の特定の態様では、ウイルスベクターは、例えば、配列番号23に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる、それぞれ配列番号24、25及び26に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するVP1、VP2及びVP3アミノ酸配列を含むAAV8カプシド並びに5’から3’の方向に、ヌクレオチド配列の以下のセットの1つに対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含むベクターゲノムを含む:
i)配列番号1、2、13、18、及び22;
ii)配列番号1、3、13、18、及び22;
iii)配列番号1、2、14、18、及び22;
iv)配列番号1、3、14、18、及び22;
v)配列番号1、2、13、19、及び22;
vi)配列番号1、3、13、19、及び22;
vii)配列番号1、2、14、19、及び22;
viii)配列番号1、3、14、19、及び22;
ix)配列番号1、2、9、13、18、及び22;
x)配列番号1、3、9、13、18、及び22;
xi)配列番号1、2、9、14、18、及び22;
xii)配列番号1、3、9、14、18、及び22;
xiii)配列番号1、2、9、13、19、及び22;
xiv)配列番号1、3、9、13、19、及び22;
xv)配列番号1、2、9、14、19、及び22;
xvi)配列番号1、3、9、14、19、及び22;
xvii)配列番号1、2、13、16、18、及び22;
xviii)配列番号1、3、13、16、18、及び22;
xix)配列番号1、2、14、16、18、及び22;
xx)配列番号1、3、14、16、18、及び22;
xxi)配列番号1、2、13、16、19、及び22;
xxii)配列番号1、3、13、16、19、及び22;
xxiii)配列番号1、2、14、16、19、及び22;
xxiv)配列番号1、3、14、16、19、及び22;
xxv)配列番号1、2、9、13、16、18、及び22;
xxvi)配列番号1、3、9、13、16、18、及び22;
xxvii)配列番号1、2、9、14、16、18、及び22;
xxviii)配列番号1、3、9、14、16、18、及び22;
xxix)配列番号1、2、9、13、16、19、及び22;
xxx)配列番号1、3、9、13、16、19、及び22;
xxxi)配列番号1、2、9、14、16、19、及び22;並びに
xxxii)配列番号1、3、9、14、16、19、及び22。
【0099】
いくつかの実施形態では、ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、配列番号1、2、14、18及び22;配列番号1、2、9、14、18及び22;配列番号1、2、14、16、18及び22;配列番号1、2、9、14、16、18及び22;配列番号1、3、14、18及び22;配列番号1、3、9、14、18及び22;配列番号1、3、14、16、18及び22;又は配列番号1、3、9、14、16、18及び22に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態では、AAV8カプシドは、カプシドタンパク質VP1、VP2及び/又はVP3の部分組合せを含み得る。
【0100】
本発明のウイルスベクターは、例えば、配列番号27に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる、それぞれ配列番号28、29及び30に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するVP1、VP2及びVP3アミノ酸配列を含むAAV9カプシド並びに5’から3’の方向に、ヌクレオチド配列の以下のセットの1つに対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含むベクターゲノムを含み得ることも考えられる:
i)配列番号1、2、13、18、及び22;
ii)配列番号1、3、13、18、及び22;
iii)配列番号1、2、14、18、及び22;
iv)配列番号1、3、14、18、及び22;
v)配列番号1、2、13、19、及び22;
vi)配列番号1、3、13、19、及び22;
vii)配列番号1、2、14、19、及び22;
viii)配列番号1、3、14、19、及び22;
ix)配列番号1、2、9、13、18及び22;
x)配列番号1、3、9、13、18及び22;
xi)配列番号1、2、9、14、18及び22;
xii)配列番号1、3、9、14、18及び22;
xiii)配列番号1、2、9、13、19、及び22;
xiv)配列番号1、3、9、13、19、及び22;
xv)配列番号1、2、9、14、19、及び22;
xvi)配列番号1、3、9、14、19及び22;
xvii)配列番号1、2、13、16、18、及び22;
xviii)配列番号1、3、13、16、18、及び22;
xix)配列番号1、2、14、16、18、及び22;
xx)配列番号1、3、14、16、18、及び22;
xxi)配列番号1、2、13、16、19、及び22;
xxii)配列番号1、3、13、16、19、及び22;
xxiii)配列番号1、2、14、16、19、及び22;
xxiv)配列番号1、3、14、16、19、及び22;
xxv)配列番号1、2、9、13、16、18、及び22;
xxvi)配列番号1、3、9、13、16、18、及び22;
xxvii)配列番号1、2、9、14、16、18、及び22;
xxviii)配列番号1、3、9、14、16、18、及び22;
xxix)配列番号1、2、9、13、16、19、及び22;
xxx)配列番号1、3、9、13、16、19、及び22;
xxxi)配列番号1、2、9、14、16、19、及び22;並びに
xxxii)配列番号1、3、9、14、16、19、及び22。
【0101】
いくつかの実施形態では、ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、配列番号1、2、14、18及び22;配列番号1、2、9、14、18及び22;配列番号1、2、14、16、18及び22;配列番号1、2、9、14、16、18及び22;配列番号1、3、14、18及び22;配列番号1、3、9、14、18及び22;配列番号1、3、14、16、18及び22;又は配列番号1、3、9、14、16、18及び22に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態では、AAV9カプシドは、カプシドタンパク質VP1、VP2及び/又はVP3の部分組合せを含み得る。
【0102】
本発明の特定の態様では、ウイルスベクターは、例えば、配列番号31に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる、それぞれ配列番号32、33及び34に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するVP1、VP2及びVP3アミノ酸配列を含むAAV2カプシド並びに5’から3’の方向に、ヌクレオチド配列の以下のセットの1つに対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含むベクターゲノムを含む:
i)配列番号1、2、13、18、及び22;
ii)配列番号1、3、13、18、及び22;
iii)配列番号1、2、14、18、及び22;
iv)配列番号1、3、14、18、及び22;
v)配列番号1、2、13、19、及び22;
vi)配列番号1、3、13、19、及び22;
vii)配列番号1、2、14、19、及び22;
viii)配列番号1、3、14、19、及び22;
ix)配列番号1、2、9、13、18、及び22;
x)配列番号1、3、9、13、18、及び22;
xi)配列番号1、2、9、14、18、及び22;
xii)配列番号1、3、9、14、18、及び22;
xiii)配列番号1、2、9、13、19、及び22;
xiv)配列番号1、3、9、13、19、及び22;
xv)配列番号1、2、9、14、19、及び22;
xvi)配列番号1、3、9、14、19、及び22;
xvii)配列番号1、2、13、16、18、及び22;
xviii)配列番号1、3、13、16、18、及び22;
xix)配列番号1、2、14、16、18、及び22;
xx)配列番号1、3、14、16、18、及び22;
xxi)配列番号1、2、13、16、19、及び22;
xxii)配列番号1、3、13、16、19、及び22;
xxiii)配列番号1、2、14、16、19、及び22;
xxiv)配列番号1、3、14、16、19、及び22;
xxv)配列番号1、2、9、13、16、18、及び22;
xxvi)配列番号1、3、9、13、16、18、及び22;
xxvii)配列番号1、2、9、14、16、18、及び22;
xxviii)配列番号1、3、9、14、16、18、及び22;
xxix)配列番号1、2、9、13、16、19、及び22;
xxx)配列番号1、3、9、13、16、19、及び22;
xxxi)配列番号1、2、9、14、16、19、及び22;並びに
xxxii)配列番号1、3、9、14、16、19、及び22。
【0103】
いくつかの実施形態では、ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、配列番号1、2、14、18及び22;配列番号1、2、9、14、18及び22;配列番号1、2、14、16、18及び22;又は配列番号1、2、9、14、16、18及び22;配列番号1、3、14、18及び22;配列番号1、3、9、14、18及び22;配列番号1、3、14、16、18及び22;又は配列番号1、3、9、14、16、18及び22に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態では、AAV2カプシドは、カプシドタンパク質VP1、VP2及び/又はVP3の部分組合せを含み得る。
【0104】
本発明の特定の態様では、ウイルスベクターは、例えば、配列番号35に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる、それぞれ配列番号36、37及び38に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するVP1、VP2及びVP3アミノ酸配列を含むAAV5カプシド並びに5’から3’の方向に、ヌクレオチド配列の以下のセットの1つに対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含むベクターゲノムを含む:
i)配列番号1、2、13、18、及び22;
ii)配列番号1、3、13、18、及び22;
iii)配列番号1、2、14、18、及び22;
iv)配列番号1、3、14、18、及び22;
v)配列番号1、2、13、19、及び22;
vi)配列番号1、3、13、19、及び22;
vii)配列番号1、2、14、19、及び22;
viii)配列番号1、3、14、19、及び22;
ix)配列番号1、2、9、13、18、及び22;
x)配列番号1、3、9、13、18、及び22;
xi)配列番号1、2、9、14、18、及び22;
xii)配列番号1、3、9、14、18、及び22;
xiii)配列番号1、2、9、13、19、及び22;
xiv)配列番号1、3、9、13、19、及び22;
xv)配列番号1、2、9、14、19、及び22;
xvi)配列番号1、3、9、14、19、及び22;
xvii)配列番号1、2、13、16、18、及び22;
xviii)配列番号1、3、13、16、18、及び22;
xix)配列番号1、2、14、16、18、及び22;
xx)配列番号1、3、14、16、18、及び22;
xxi)配列番号1、2、13、16、19、及び22;
xxii)配列番号1、3、13、16、19、及び22;
xxiii)配列番号1、2、14、16、19、及び22;
xxiv)配列番号1、3、14、16、19、及び22;
xxv)配列番号1、2、9、13、16、18、及び22;
xxvi)配列番号1、3、9、13、16、18、及び22;
xxvii)配列番号1、2、9、14、16、18、及び22;
xxviii)配列番号1、3、9、14、16、18、及び22;
xxix)配列番号1、2、9、13、16、19、及び22;
xxx)配列番号1、3、9、13、16、19、及び22;
xxxi)配列番号1、2、9、14、16、19、及び22;並びに
xxxii)配列番号1、3、9、14、16、19、及び22。
【0105】
いくつかの実施形態では、ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、配列番号1、2、14、18及び22;配列番号1、2、9、14、18及び22;配列番号1、2、14、16、18及び22;又は配列番号1、2、9、14、16、18及び22;配列番号1、3、14、18及び22;配列番号1、3、9、14、18及び22;配列番号1、3、14、16、18及び22;又は配列番号1、3、9、14、16、18及び22に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態では、AAV5カプシドは、カプシドタンパク質VP1、VP2及び/又はVP3の部分組合せを含み得る。
【0106】
ウイルスベクターを生成する方法は、当技術分野でよく知られており、当業者が、表4に記載されるウイルスベクターを含む本発明のウイルスベクターを生成することを可能にするであろう(例えば、米国特許第7,465,583号明細書を参照されたい)。一般に、rAAVベクターを作製する方法は、本発明のウイルスベクターの作製に適用可能であり、これらの方法の主な相違は、包み込まれる遺伝子エレメントの構造である。本発明によるウイルスベクターを作製するために、表3に記載される遺伝子エレメントの配列を使用して、カプシド化ウイルスゲノムを作製し得る。
【0107】
表2に記載される遺伝子エレメントは、環状プラスミド又はウイルスゲノム、例えば一本鎖又は自己相補的ウイルスゲノムと関連しているが、当業者であれば、DNA基質が、プラスミド、裸のDNAベクター、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)又はウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、エプスタイン・バー・ウイルスベクター、AAVベクター、バキュロウイルスベクター、レトロウイルスベクターなど)(これらに限定されない)を含む、当技術分野で知られる任意の形態で提供され得ることを理解するであろう。代わりに、本明細書中に記載されるウイルスベクターを作製するために必要な表2中の遺伝子エレメントは、パッケージング細胞のゲノムに安定に組み込むことができる。
【0108】
本発明によるウイルスベクター粒子は、当技術分野で知られる任意の方法によって複製されパッケージングされる配列を許容細胞又はパッケージング細胞に導入することによって作製され得、これらの用語は、当技術分野で理解されている通りである(例えば、「許容」細胞は、ウイルスによって感染又は形質導入され得;「パッケージング」細胞は、ヘルパー機能を提供する安定に形質転換された細胞である)。
【0109】
一実施形態では、CYP4V2ウイルスベクターを作製する方法であって、パルボウイルス複製を許容する細胞に、(a)本発明のベクターゲノムを生成する遺伝子エレメントを含むヌクレオチド化合物(下記に詳細に又は表2に記載)、(b)ベクターゲノムを生成するために、(a)のベクターゲノム配列を複製するのに十分なヌクレオチド配列、(c)パルボウィルスカプシド内にベクターゲノムをパッケージするのに十分なヌクレオチド配列を、パルボウィルスカプシド内にカプシド化されたベクターゲノムを含むウイルスベクターが細胞内に十分に作製される条件下で提供することを含む方法が提供される。好ましくは、パルボウイルス複製及び/又はカプシドコード配列は、AAV配列である。
【0110】
複製及びパッケージングのために、以下に記載される遺伝子カセットを有するヌクレオチド配列を細胞宿主に導入する任意の方法が使用され得、このような方法としては、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、線状ポリエチレンイミンポリマー沈殿、マイクロインジェクション、カチオン性又はアニオン性リポソーム及び核局在化シグナルと組み合わせたリポソームが挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
本明細書に記載されるウイルスベクターは、例えば、トリプルトランスフェクション又はバキュロウイルス媒介ウイルス産生など、当分野で知られた方法を使用して作成され得る。当技術分野で知られた任意の好適な許容細胞又はパッケージング細胞は、ベクターを産生するために使用され得る。哺乳類の細胞が好ましい。また、複製欠損ヘルパーウイルスから欠失した機能を提供するトランス相補性パッケージング細胞株、例えば293細胞又は他のE1aトランス相補性細胞も好ましい。また、当技術分野で知られているDNA修復に欠陥のある哺乳類細胞又は細胞系も、これらの細胞系は本明細書に記載のプラスミドに導入された変異を補正する能力が損なわれているために好ましい。
【0112】
遺伝子カセットは、パルボウイルス(例えば、AAV)cap及びrep遺伝子のいくつか又は全てを含み得る。しかし、カプシド及び/又はRepタンパク質をコードするパッケージングベクターを細胞に導入することにより、cap及びrep機能のいくつか又は全てがトランスで提供されることが好ましい。遺伝子カセットは、カプシド又はRepタンパク質をコードしないことが最も好ましい。代わりに、安定に形質転換されてcap及び/又はrep遺伝子を発現するパッケージング細胞株が使用される(例えば、Gao et al.,Hum Gene Ther 9:2353-2362,1998;Inoue et al.,J Virol 72:7024-7031,1998;米国特許第5,837,484号明細書;国際公開第98/27207号パンフレット;米国特許第5,658,785号明細書;国際公開第96/17947号パンフレットを参照されたい)。
【0113】
さらに、新しいウイルス粒子を増殖させるために、ヘルパーウイルス機能がウイルスベクターに提供されることが好ましい。アデノウイルス及び単純ヘルペスウイルスは、いずれもAAVのヘルパーウイルスとしての役割を果たし得る。例えば、Bernard N.Fields et al.,VIROLOGY,volume 2,chapter 69(3d ed.,Lippincott-Raven Publishers)を参照されたい。例示的ヘルパーウイルスとしては、単純ヘルペス(HSV)水痘帯状疱疹、サイトメガロウイルス及びエプスタイン・バー・ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。感染多重度(MOI)及び感染期間は、使用するウイルスの種類及び使用するパッケージング細胞株に依存するであろう。任意の好適なヘルパーベクターが使用され得る。ヘルパーベクターは、例えば、Xiao et al.,J Virol 72:2224,1998に記載されるように、プラスミドであることが好ましい。ベクターは、上述のように、当技術分野で知られた任意の好適な方法によってパッケージング細胞に導入することができる。
【0114】
汚染性ヘルパーウイルスを含まないベクターストックは、当技術分野で知られる任意の方法によって得ることができる。例えば、組換え一本鎖又は自己相補性ウイルス及びヘルパーウイルスは、サイズに基づいて容易に識別され得る。ウイルスは、ヘパリン基質に対する親和性に基づいてヘルパーウイルスからも分離され得る(Zolotukhin et al.,Gene Ther 6:973-985,1999)。好ましくは、汚染性ヘルパーウイルスが複製能力を有さないように、欠失した複製欠損ヘルパーウイルスが使用される。さらに別の方法として、二重ウイルスのパッケージングを仲介するためには、アデノウイルスの早期遺伝子発現のみが必要であるため、後期遺伝子発現を欠くアデノウイルスヘルパーを利用し得る。後期遺伝子発現に欠陥のあるアデノウイルス変異体は、当技術分野で知られている(例えば、ts100K及びts149アデノウイルス変異体)。
【0115】
ヘルパー機能を提供するための1つの方法は、効率的なAAV産生に必要なヘルパー遺伝子の全てを保有する非感染性アデノウイルスミニプラスミドを使用する(Ferrari et al.,Nat Med 3:1295-1297,1997;Xiao et al.,J Virol 72:2224-2232,1998)。アデノウイルスミニプラスミドで得られるrAAV力価は、野生型アデノウイルス感染の従来の方法で得られる力価の40倍である(Xiao et al.,J Virol 72:2224-2232,1998)。この方法では、アデノウイルスと同時トランスフェクションする必要がない(Hoelscher et al.,J Virol 68:7169-7177,1994;Clark et al.,Hum Gene Ther 6:1329-1341,1995;Trempe and Yang,(1993),in,Fifth Parvovirus Workshop,Crystal River,FL)。
【0116】
以下に限定されないが、rep及びcap遺伝子を別々の発現カセット上に分割して、複製能力のあるAAVの生成を防止する方法(例えば、Allen et al.,J Virol 71:6816-6822,1997を参照されたい)、パッケージング細胞株を使用する方法(例えば、Gao et al.,Hum Gene Ther 9:2353-2362,1998;Inoue et al.,J Virol72:7024-7031,1998;米国特許第5,837,484号明細書;国際公開第98/27207号パンフレット;米国特許第5,658,785号明細書;国際公開第96/17947号パンフレットを参照されたい)及び他のヘルパーウイルスを含まないシステム(例えば、米国特許第5,945,335号明細書を参照されたい)を含む、rAAVストックを作製する他の方法が記載されている。
【0117】
ヘルペスウイルスは、AAVパッケージング法においてヘルパーウイルスとしても使用され得る。AAV Repタンパク質をコードするハイブリッドヘルペスウイルスは、よりスケーラブルなAAVベクター産生スキームを有利に促進し得る。AAV-2 rep及びcap遺伝子を発現するハイブリッド単純ヘルペスウイルスI型(HSV-1)ベクターが記載されている(Conway et al.,Gene Ther 6:986-993,1999及び国際公開第00/17377号パンフレット)。
【0118】
要約すると、複製及びパッケージングされる遺伝子カセット、パルボウイルスcap遺伝子、適切なパルボウイルスrep遺伝子及び(好ましくは)ヘルパー機能は、ベクターゲノムを担持するrAAV粒子を産生するために細胞(例えば、許容細胞又はパッケージング細胞)に提供される。遺伝子カセット、及び/又はパッケージングベクター、及び/又は安定に形質転換されたパッケージング細胞によってコードされるrep及びcap遺伝子の組み合わされた発現は、ウイルスベクターカプシドが本発明によるウイルスベクターゲノムをパッケージするウイルスベクター粒子の産生をもたらす。ウイルスベクター、例えば一本鎖ウイルスベクターは、細胞内で集合することができ、当業者に知られており、実施例に記載される任意の方法によって回収され得る。例えば、ウイルスベクターは、標準的なCsCl遠心分離法(Grieger et al.,Nat Protoc 1:1412-1428,2006)、イオジキサノール遠心分離法又は当業者に知られる様々なカラムクロマトグラフィー法(例えば、Lock et al.,Hum Gene Ther 21:1259-1271,2010;Smith et al.,Mol Ther 17:1888-1896, 2009;及びVandenberghe et al.,Hum Gene Ther 21:1251-1257,2010を参照されたい)によって精製され得る。
【0119】
本明細書中に開示される試薬及び方法は、本発明のウイルスベクターの高力価ストックを好ましくは実質的に野生型の力価で作製するために使用され得る。また、パルボウイルスストックは、約1010vg/mL~約1013vg/mL、例えば、少なくとも又は約1010vg/mL、6.6×1010vg/mL、1011vg/mL、5×1011vg/mL、1012vg/mL、5x1012vg/mL、1013vg/mL、5x1013vg/mL又はそれを超える力価を有することが好ましい。
【0120】
ウイルスベクターの生成に使用するための核酸
本発明は、ウイルスベクターの生成に有用な核酸にも関する。本発明の特定の態様では、ウイルスベクターの生成に有用な核酸は、プラスミドの形態であり得る。ウイルスベクタープラスミドとも呼ばれるウイルスベクターの生成に有用なプラスミドは、遺伝子カセットを含むことができる。ウイルスベクタープラスミドの遺伝子カセットは、少なくともプロモーター、異種CYP4V2遺伝子、ポリAシグナル配列及び5’及び3’ITRを含む。
【0121】
異種遺伝子及び他のエレメントの組成は、得られるベクターの用途に依存する。例えば、異種遺伝子配列の1つのタイプは、レポーター配列を含み、これは、発現されると、検出可能なシグナルを生成する。このようなレポーター配列としては、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、例えば、CD2、CD4、CD8、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質及びそれに対する高親和性抗体が存在するか、又は従来の手段によって産生され得る、当技術分野でよく知られた他のものを含む膜結合タンパク質並びにとりわけヘマグルチニン又はMycからの抗原タグドメインに適切に融合した膜結合タンパク質を含む融合タンパク質をコードするDNA配列が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、レポーター配列がLacZ遺伝子である場合、シグナルを有するベクターの存在は、β-ガラクトシダーゼ活性についてのアッセイによって検出される。レポーター配列がGFP又はルシフェラーゼである場合、シグナルを有するベクターは、ルミノメーターにおける色又は光の生成によって視覚的に測定され得る。
【0122】
異種遺伝子配列は、それらの発現を駆動するエレメントと関連する場合、酵素アッセイ、放射線アッセイ、比色アッセイ、蛍光アッセイ又は他の分光アッセイ、蛍光活性化セルソーティングアッセイ並びに酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)及び免疫組織化学を含む免疫アッセイを含む従来の手段によって検出可能なシグナルを提供する。
【0123】
異種遺伝子は、生物学及び医学において有用な産物、例えばタンパク質、ペプチド、RNA、酵素、ドミナントネガティブ変異体又は触媒RNAをコードする非マーカー配列であり得る。望ましいRNA分子としては、tRNA、dsRNA、リボソームRNA、触媒RNA、siRNA、小ヘアピンRNA、トランススプライシングRNA及びアンチセンスRNAが挙げられる。有用なRNA配列の一例は、治療動物における標的ヌクレオチド配列の発現を阻害又は消滅させる配列である。
【0124】
また、異種遺伝子を用いて、遺伝子欠損を修復又は改善することもできる。このような遺伝子欠損としては、正常な遺伝子が正常レベルよりも低いレベルで発現される欠損又は機能的な遺伝子産物が発現されない欠損が挙げられる。本発明では、異種遺伝子配列がCYP4V2コード配列であり得ることが考えられる。表2にCYP4V2コード配列の例、配列番号13、14、39、41、43、45、47及び49を示す。
【0125】
本発明の一態様は、5’から3’の方向に、以下のヌクレオチド配列のセットの1つに対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットを含む核酸に関する:
i)配列番号1、2、13、18、及び22;
ii)配列番号1、3、13、18、及び22;
iii)配列番号1、2、14、18、及び22;
iv)配列番号1、3、14、18、及び22;
v)配列番号1、2、13、19、及び22;
vi)配列番号1、3、13、19、及び22;
vii)配列番号1、2、14、19、及び22;
viii)配列番号1、3、14、19、及び22;
ix)配列番号1、2、9、13、18、及び22;
x)配列番号1、3、9、13、18、及び22;
xi)配列番号1、2、9、14、18、及び22;
xii)配列番号1、3、9、14、18、及び22;
xiii)配列番号1、2、9、13、19、及び22;
xiv)配列番号1、3、9、13、19、及び22;
xv)配列番号1、2、9、14、19、及び22;
xvi)配列番号1、3、9、14、19、及び22;
xvii)配列番号1、2、13、16、18、及び22;
xviii)配列番号1、3、13、16、18、及び22;
xix)配列番号1、2、14、16、18、及び22;
xx)配列番号1、3、14、16、18、及び22;
xxi)配列番号1、2、13、16、19、及び22;
xxii)配列番号1、3、13、16、19、及び22;
xxiii)配列番号1、2、14、16、19、及び22;
xxiv)配列番号1、3、14、16、19、及び22;
xxv)配列番号1、2、9、13、16、18、及び22;
xxvi)配列番号1、3、9、13、16、18、及び22;
xxvii)配列番号1、2、9、14、16、18、及び22;
xxviii)配列番号1、3、9、14、16、18、及び22;
xxix)配列番号1、2、9、13、16、19、及び22;
xxx)配列番号1、3、9、13、16、19、及び22;
xxxi)配列番号1、2、9、14、16、19、及び22;並びに
xxxii)配列番号1、3、9、14、16、19、及び22。
【0126】
いくつかの実施形態では、遺伝子カセットは、5’から3’の方向に、配列番号1、2、14、18及び22;配列番号1、2、9、14、18及び22;配列番号1、2、14、16、18及び22;又は配列番号1、2、9、14、16、18及び22;配列番号1、3、14、18及び22;配列番号1、3、9、14、18及び22;配列番号1、3、14、16、18及び22;又は配列番号1、3、9、14、16、18及び22に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態では、遺伝子カセットを含む核酸は、プラスミドであり得る。
【0127】
表2のエレメントを組み込む方法は、当技術分野でよく知られており、当業者が、本明細書に記載の方法を用いて本発明の核酸及びプラスミドを生成することを可能にするであろう。
【0128】
医薬組成物
一態様では、本発明は、薬学的に許容される担体と共に製剤化された本発明のウイルスベクターを含む医薬組成物を提供する。組成物は、BCDの治療又は予防に好適な1種以上の他の治療剤をさらに含有することができる。薬学的に許容される担体は、組成物を増強若しくは安定化させるか、又は組成物の調製を容易にするために使用することができる。薬学的に許容される担体としては、生理学的に適合性がある溶媒、界面活性剤、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが挙げられる。
【0129】
本発明の医薬組成物は、当技術分野で知られる種々の方法によって投与することができる。投与の経路及び/又は様式は、所望の結果に応じて変化する。投与は、網膜下であることが好ましい。薬学的に許容される担体は、網膜下、硝子体内、静脈内、皮下又は局所投与に適していなければならない。
【0130】
組成物は、無菌であり且つ流動性がなければならない。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には必要とされる粒径の維持により、且つ界面活性剤の使用により維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、マンニトール又はソルビトールなどのポリアルコール及び塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。一実施形態では、組成物は、pHが約6.5~8.0、例えばpH6.5~7.5及びpH6.5~7.0の、界面活性剤として1×PBS及び0.001%PLURONIC(商標)F-68を有する緩衝液を含むことができる。
【0131】
本発明の医薬組成物は、当技術分野でよく知られており、且つ日常的に実施されている方法に従って調製することができる。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Co.,20th ed.,2000;及びSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。医薬組成物は、GMP条件下で製造されることが好ましい。一般的に、本発明の医薬組成物では、治療に効果的な用量又は有効な用量のウイルスベクターが使用される。ウイルスベクターは、当業者に知られた従来の方法により、薬学的に許容される剤形に製剤化され得る。投薬レジメンは最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように調節される。例えば、単回ボーラス投与であり得るか、数回の用量を経時的に投与し得るか、又は治療状況の緊急性によって示されるように用量を比例的に減少又は増加させ得る。投与の容易さ及び用量の均一性のために、非経口組成物を単位剤形に製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される単位剤形は、治療対象の単位用量として適した物理的に個別の単位を指し、各単位は、必要とされる医薬担体と関連して所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を含有する。
【0132】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬レベルは、患者に対して毒性がなく、特定の患者、組成物及び投与方法で所望の治療応答を達成するのに有効な量の活性成分を得るように変化させることができる。選択される投薬レベルは、使用される本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物及び/又は材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全般的健康及び病歴などの因子を含む、種々の薬物動態学的因子に依存する。
【0133】
医師又は獣医は、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルより低いレベルにおいて、医薬組成物で使用される本発明のウイルスベクターの用量を開始し、所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増加させることができる。一般に、本明細書に記載されるようなBCDの治療に有効な本発明の組成物の用量は、投与の手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬物及び治療が予防的であるか治療的であるかを含む様々な因子に応じて変化する。治療用量は、安全性及び有効性を最適化するために漸増する必要がある。ウイルスベクターを網膜下投与する場合、用量は、約1×108ベクターゲノム(vg)/眼~約1×1012vg/眼の範囲であり得る。例えば、用量は、約1×108vg/眼、2.5×108vg/眼、5×108vg/眼、7.5×108vg/眼、1×109vg/眼、2.5×109vg/眼、5×109vg/眼、7.5×109vg/眼、1×1010vg/眼、2.5×1010vg/眼、5×1010vg/眼、7.5×1010vg/眼、1×1011vg/眼、2×1011vg/眼、2.5×1011vg/眼、5×1011vg/眼、7.5×1011vg/眼又は1×1012vg/眼以上であり得る。
【0134】
本明細書に記載されるウイルスベクターは、主に1つの眼当たり1回の用量として使用され、以前の投与でカバーされていない網膜の領域を治療するための反復投与の可能性を伴う。投与量は、治療が予防的であるか治療的であるかによって変化し得る。
【0135】
上記の個々のセクション及び実施形態で言及された本発明の様々な特徴及び実施形態は、必要に応じて、他のセクション及び実施形態に必要な変更を適宜加えて適用される。したがって、1つのセクション又は実施形態で指定された特徴は、必要に応じて、他のセクション又は実施形態で指定された特徴と組み合わせることができる。
【0136】
治療用途
本明細書に記載されるウイルスベクターは、それを必要とする対象に本発明のウイルスベクターを有効量投与することにより、眼関連疾患の治療にとって治療的に有用な濃度で使用され得る。例えば、ウイルスベクターは、例えば、配列番号23に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる、それぞれ配列番号24、25及び26に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するVP1、VP2及びVP3アミノ酸配列を含むAAV8カプシド並びに5’から3’の方向に、ヌクレオチド配列の以下のセットの1つに対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含むベクターゲノムを含む:
i)配列番号1、2、13、18、及び22;
ii)配列番号1、3、13、18、及び22;
iii)配列番号1、2、14、18、及び22;
iv)配列番号1、3、14、18、及び22;
v)配列番号1、2、13、19、及び22;
vi)配列番号1、3、13、19、及び22;
vii)配列番号1、2、14、19、及び22;
viii)配列番号1、3、14、19、及び22;
ix)配列番号1、2、9、13、18、及び22;
x)配列番号1、3、9、13、18、及び22;
xi)配列番号1、2、9、14、18、及び22;
xii)配列番号1、3、9、14、18、及び22;
xiii)配列番号1、2、9、13、19、及び22;
xiv)配列番号1、3、9、13、19、及び22;
xv)配列番号1、2、9、14、19、及び22;
xvi)配列番号1、3、9、14、19、及び22;
xvii)配列番号1、2、13、16、18、及び22;
xviii)配列番号1、3、13、16、18、及び22;
xix)配列番号1、2、14、16、18、及び22;
xx)配列番号1、3、14、16、18、及び22;
xxi)配列番号1、2、13、16、19、及び22;
xxii)配列番号1、3、13、16、19、及び22;
xxiii)配列番号1、2、14、16、19、及び22;
xxiv)配列番号1、3、14、16、19、及び22;
xxv)配列番号1、2、9、13、16、18、及び22;
xxvi)配列番号1、3、9、13、16、18、及び22;
xxvii)配列番号1、2、9、14、16、18、及び22;
xxviii)配列番号1、3、9、14、16、18、及び22;
xxix)配列番号1、2、9、13、16、19、及び22;
xxx)配列番号1、3、9、13、16、19、及び22;
xxxi)配列番号1、2、9、14、16、19、及び22;並びに
xxxii)配列番号1、3、9、14、16、19、及び22。
【0137】
いくつかの実施形態では、ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、配列番号1、2、14、18及び22;配列番号1、2、9、14、18及び22;配列番号1、2、14、16、18及び22;又は配列番号1、2、9、14、16、18及び22;配列番号1、3、14、18及び22;配列番号1、3、9、14、18及び22;配列番号1、3、14、16、18及び22;又は配列番号1、3、9、14、16、18及び22に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。特定の他の実施形態では、AAV8カプシドは、カプシドタンパク質VP1、VP2及び/又はVP3の部分組合せを含み得る。
【0138】
治療を必要とする対象には、CYP4V2遺伝子に1つ以上の変異(例えば、表1)を有する者が含まれ得る。より具体的には、本発明は、CYP4V2コード配列配列(例えば、ヒトCYP4V2タンパク質、例えば配列番号15をコードするヌクレオチド配列)を含むウイルスベクターの有効量を、それを必要とする対象に投与することにより、BCDを治療する方法を提供する。いくつかの態様では、CYP4V2コード配列(例えば、ヒトCYP4V2タンパク質、例えば配列番号15をコードするヌクレオチド配列)を含むウイルスベクターの有効量を、それを必要とする対象に投与することにより、BCDを有する対象の視力を改善する方法が本明細書において提供される。いくつかの態様では、CYP4V2コード配列(例えば、ヒトCYP4V2タンパク質、例えば配列番号15をコードするヌクレオチド配列)を含むウイルスベクターの有効量を、それを必要とする対象に投与することにより、BCDを有する対象における視力の低下を予防する方法が本明細書において提供される。特定の態様では、本発明は、対象のBCDの治療に使用するためのCYP4V2コード配列を含むウイルスベクターを提供する。一実施形態では、本明細書に記載のウイルスベクターは、当業者に知られた方法を用いて網膜下又は硝子体内に投与することができる。一実施形態では、本方法は、対象がBCDに関連する1つ以上のCYP4V2変異(例えば、表1を参照されたい)を有するか否かを決定するために、対象の遺伝子型決定すること及び本明細書に記載されるウイルスベクターを投与することにより、BCDについてBCDに関連する1つ以上のCYP4V2変異を有する対象を治療することを含み得る。特定の実施形態では、BCDを治療する方法で使用するために本明細書で提供されるウイルスベクターは、プロモーター、例えばProA18又はProB4プロモーターに作動可能に連結されたCYP4V2コード配列配列(例えば、ヒトCYP4V2タンパク質、例えば配列番号15をコードするヌクレオチド配列)を含む。
【0139】
組換えAAVの使用は、網膜疾患の治療に適しており且つ安全であることが示されている。例えば、Bainbridge et al.,N Engl J Med 358:2231-2239,2008;Bainbridge et al.,Gene Ther 15:1191-1192,2008;Hauswirth et al.,Hum Gene Ther 19:979-990,2008;Maguire et al.,N Engl J Med 358:2240-2248,2008;Bennett et al.,Lancet 388:661-672,2016;及びRussell et al.,Lancet 390:849-860,2017を参照されたい。本明細書に記載されるウイルスベクターは、とりわけ、BCDの進行を治療且つ予防し、視力の喪失を減少させるために使用され得る。
【0140】
本発明は、本発明のウイルスベクターを、それを必要とする対象、例えばCYP4V2遺伝子に1つ以上の変異(例えば、表1)を有する対象に投与することにより、RPE細胞においてCYP4V2コード配列を発現させる方法にも関する。本発明は、それを必要とする対象の網膜のRPE細胞においてCYP4V2コード配列を発現させる際に使用するための本発明のウイルスベクターにも関する。本発明は、BCDを有する対象の網膜、特に網膜中のRPE細胞に、CYP4V2コード配列を送達及び発現させる方法も意図する。CYP4V2コード配列を、それを必要とする対象に、対象の網膜及び/又はRPE細胞を本明細書に記載のウイルスベクターと接触させる(例えば、網膜下又は硝子体内に投与する)ことによって送達することが考えられる。代わりに、CYP4V2コード配列は、本明細書中に記載されるようなウイルスベクターを対象に投与することにより、対象に送達される。
【0141】
いくつかの態様では、本発明は、BCDを有する対象の網膜を本発明のウイルスベクターと接触させることにより、対象の網膜のRPE細胞においてCYP4V2コード配列を発現させる方法をさらに含む。特定の態様では、対象の網膜のRPE細胞に本発明のウイルスベクターを接触させる。
【0142】
BCDなどの眼疾患の治療及び/又は予防は、視覚機能、機能的視覚、網膜組織及び/又は生活の質に臨床的に関連する測定値を用いて、眼科医、検眼士又はヘルスケアの専門家が決定できる。BCDの治療は、視覚機能、機能的視覚、網膜組織及び/又は生活の質を改善又は維持することが意図される任意の行動(例えば、本明細書に記載されるウイルスベクターの投与)を意味する。さらに、BCDに関連する予防とは、本明細書で定義されるように、視覚機能、機能的視覚、網膜組織及び/又はBCD表現型の悪化を、網膜における黄色又は白色の結晶様沈着物の数及び/又はサイズの減少など、前記悪化のリスクがある対象において抑制、予防又は遅延させる任意の行動(例えば、本明細書に記載されるウイルスベクターの投与)を意味する。
【0143】
視覚機能には、例えば、視力、低照度での視力、視野、中心視野、周辺視野、コントラスト感受性、暗順応、光ストレス回復、色識別、読み取り速度、補助装置(例えば、大きい書体、拡大装置、望遠鏡)への依存、顔認識、自動車の操作の習熟度、日常生活の1つ以上の活動を実行する能力及び/又は視覚機能に関連する患者が報告した満足度が含まれ得る。したがって、特定の実施形態では、BCDの治療は、対象が予め指定された程度の暗順応に至るまでの時間の10%、20%又は30%以上の増加の少なくとも10%、20%又は30%の減少又は欠如を有する場合に始まると言うことができる。さらに、BCDの治療は、対象が若い年齢で早期の重度の夜盲症及び遅い暗順応を示し、その後、視力、視野及び色覚の進行性の喪失が起こり、資格のあるヘルスケア専門家、例えば眼科医及び検眼士によって法的盲に至ったと決定された場合に始まると言うことができる。
【0144】
視覚機能の例示的な尺度としては、スネレン視力、ETDRS視力、低輝度視力、アムスラーグリッド、ゴールドマン視野、標準的自動視野測定、マイクロペリメトリー、ペリーロブソンチャート、スキルカード、石原カラープレート、ファーンスワースD15又はD100カラーテスト、標準網膜電図、多焦点網膜電図、読む速度の有効性が認められた試験、顔認識、運転シミュレーション及び患者が報告した満足度が挙げられる。したがって、BCDの治療は、ETDRSスケールで2本以上の線(又は10文字)の獲得又は視認喪失がないことよって達成されると言うことができる。さらに、特定の態様では、BCDの治療は、例えば、網膜電図によって測定される網膜機能の喪失の改善又は遅延;例えば、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)によって測定される網膜構造の進行の改善又は遅延;例えば、種々の照度での迷路による、歩行ナビゲーション喪失の改善又は遅延;及び/或いは読む速度(1分当たりの単語数)の10%、20%若しくは30%の増加又は少なくとも10%、20%若しくは30%の減少がなくなったときに始まると言うことができる。さらに、いくつかの態様では、BCDの治療は、対象が、石原テストで正しく特定されたプレート又はファーンスワーステストで正しく並べられたディスクの割合において、少なくとも20%の増加又は20%の減少の欠如を示す場合に始まると言うことができる。したがって、BCDの治療は、例えば、暗順応速度の改善、視力の改善又は視力喪失速度を遅くすることによって決定することができる。
【0145】
治療又は予防され得る網膜組織の望ましくない態様には、例えば、網膜における脂質の小さい黄色又は白色の結晶様沈着物の蓄積、網膜萎縮、網膜色素上皮萎縮、網膜血管の狭窄、色素凝集及び網膜下液が含まれる。網膜組織を評価する例示的な手段としては、眼底検査、眼底撮影、蛍光眼底血管造影、インドシアニングリーン蛍光造影、OCT、スペクトラルドメイン光コヒーレンストモグラフィー、走査レーザー検眼鏡、共焦点顕微鏡、補償光学、眼底自己蛍光、生検、剖検及び免疫組織化学が挙げられる。したがって、本明細書に記載されるウイルスベクターは、例えば、網膜萎縮の進行速度の減少並びに/又は網膜における黄色若しくは白色の結晶様沈着物の数及び/若しくはサイズの減少によって決定される対象のBCDの治療に使用され得る。
【0146】
BCDの治療は、例えば、生活の質の改善又は維持によっても決定され得る。当業者は、生活の質が多くの様々な試験、例えば国立眼病研究所NEI-VFQ25アンケート調査(National Eye Institute NEI-VFQ25 questionnaire)によって決定され得ることを理解するであろう。
【0147】
本発明の治療薬で治療される対象には、ビタミン及びミネラル製剤、低視力補助具、盲導犬又は低視力患者を補助することが知られている他の装置など、網膜ジストロフィーに有効であることが知られている他の治療薬又は装置を施すこともできる。
【0148】
現在、BCDの治療に承認された他の治療剤は、存在しない。他の新しい治療法が出現すれば、本発明の組成物及び新しい治療法は、臨床的に必要であれば順に又は同時に連続して投与することができる。
【0149】
以下は、本発明の例示的な実施形態である。
【0150】
1.5’から3’の方向に、
(i)5’ITR;
(ii)プロモーター;
(iii)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列;
(iv)ポリアデニル化(ポリA)シグナル配列;及び
(v)3’ITR
を含むベクターゲノムを含むウイルスベクター。
【0151】
2.ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、
(i)5’ITR;
(ii)プロモーター;
(iii)イントロン;
(iv)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列;
(v)ポリAシグナル配列;及び
(vi)3’ITR
を含む、実施形態1のウイルスベクター。
【0152】
3.ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、
(i)5’ITR;
(ii)プロモーター;
(iii)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列;
(iv)調節エレメント;
(v)ポリAシグナル配列;及び
(vi)3’ITR
を含む、実施形態1のウイルスベクター。
【0153】
4.ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、
(i)5’ITR;
(ii)プロモーター;
(iii)イントロン;
(iv)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列;
(v)調節エレメント;
(vi)ポリAシグナル配列;及び
(vii)3’ITR
を含む、実施形態1のウイルスベクター。
【0154】
5.ベクターゲノムは、約4.1kb以上且つ約4.9kb未満の長さを含む、実施形態1~4のいずれか1つのウイルスベクター。
【0155】
6.ベクターゲノムは、ポリAシグナル配列と3’ITRとの間に配置されたスタッファー配列を含む、実施形態1~5のいずれか1つのウイルスベクター。
【0156】
7.スタッファー配列は、約1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~75、75~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~400、400~500、500~750、750~1,000、1,000~1,500、1,500~2,000、2,000~2,500又は2,500~3,000ヌクレオチドの長さである、実施形態6のウイルスベクター。
【0157】
8.5’ITRは、配列番号1に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、実施形態1~7のいずれか1つのウイルスベクター。
【0158】
9.プロモーターは、網膜色素上皮(RPE)特異的プロモーターである、実施形態1~8のいずれか1つのウイルスベクター。
【0159】
10.プロモーターは、ProA18プロモーター又はProB4プロモーターである、実施形態9のウイルスベクター。
【0160】
11.プロモーターは、配列番号2又は配列番号3に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、且つRPE細胞におけるCYP4V2の発現を促進する、実施形態10のウイルスベクター。
【0161】
12.CYP4V2コード配列は、配列番号13、配列番号14、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47又は配列番号49に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、実施形態1~11のいずれか1つのウイルスベクター。
【0162】
13.ポリAシグナル配列は、ウシ成長ホルモン又はシミアンウイルス40(Simian Virus 40)ポリAヌクレオチド配列を含む、実施形態1~12のいずれか1つのウイルスベクター。
【0163】
14.ポリAシグナル配列は、配列番号18又は配列番号19に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、実施形態13のウイルスベクター。
【0164】
15.3’ITRは、配列番号22に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、実施形態1~14のいずれか1つのウイルスベクター。
【0165】
16.イントロンは、ヒト成長ホルモン、シミアンウイルス40(Simian Virus 40)又はヒトベータグロビンイントロン配列を含む、実施形態2及び4のいずれか1つのウイルスベクター。
【0166】
17.イントロンは、配列番号9、配列番号10又は配列番号11に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、実施形態16のウイルスベクター。
【0167】
18.調節エレメントは、B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus)又はウッドチャック肝炎ウイルス(woodchuck hepatitis virus)配列を含む、実施形態3及び4のいずれか1つのウイルスベクター。
【0168】
19.調節エレメントは、配列番号16又は配列番号17に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、実施形態18のウイルスベクター。
【0169】
20.ベクターゲノムは、CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列のすぐ上流に位置するコザック配列を含む、実施形態1~19のいずれか1つのウイルスベクター。
【0170】
21.コザック配列は、配列番号12、配列番号51、配列番号52又は配列番号53のヌクレオチド配列を含む、実施形態20のウイルスベクター。
【0171】
22.ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、
i)配列番号1、2、13、18、及び22;
ii)配列番号1、3、13、18、及び22;
iii)配列番号1、2、14、18、及び22;
iv)配列番号1、3、14、18、及び22;
v)配列番号1、2、13、19、及び22;
vi)配列番号1、3、13、19、及び22;
vii)配列番号1、2、14、19、及び22;並びに
viii)配列番号1、3、14、19、及び22
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、実施形態1のウイルスベクター。
【0172】
23.ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、
i)配列番号1、2、9、13、18、及び22;
ii)配列番号1、3、9、13、18、及び22;
iii)配列番号1、2、9、14、18、及び22;
iv)配列番号1、3、9、14、18、及び22;
v)配列番号1、2、9、13、19、及び22;
vi)配列番号1、3、9、13、19、及び22;
vii)配列番号1、2、9、14、19、及び22;並びに
viii)配列番号1、3、9、14、19、及び22
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、実施形態2のウイルスベクター。
【0173】
24.ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、
i)配列番号1、2、13、16、18、及び22;
ii)配列番号1、3、13、16、18、及び22;
iii)配列番号1、2、14、16、18、及び22;
iv)配列番号1、3、14、16、18、及び22;
v)配列番号1、2、13、16、19、及び22;
vi)配列番号1、3、13、16、19、及び22;
vii)配列番号1、2、14、16、19、及び22;並びに
viii)配列番号1、3、14、16、19、及び22
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、実施形態3のウイルスベクター。
【0174】
25.ベクターゲノムは、5’から3’の方向に、
i)配列番号1、2、9、13、16、18、及び22;
ii)配列番号1、3、9、13、16、18、及び22;
iii)配列番号1、2、9、14、16、18、及び22;
iv)配列番号1、3、9、14、16、18、及び22;
v)配列番号1、2、9、13、16、19、及び22;
vi)配列番号1、3、9、13、16、19、及び22;
vii)配列番号1、2、9、14、16、19、及び22;並びに
viii)配列番号1、3、9、14、16、19、及び22
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、実施形態4のウイルスベクター。
【0175】
26.ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)血清型8、9、2又は5カプシドを含む、実施形態1~25のいずれか1つのウイルスベクター。
【0176】
27.AAV8カプシドは、それぞれ配列番号24、25及び26に対して約90%以上の同一性を有するVP1、VP2及びVP3アミノ酸配列を含む、実施形態26のウイルスベクター。
【0177】
28.AAV8カプシドは、配列番号23に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる、実施形態26のウイルスベクター。
【0178】
29.AAV9カプシドは、それぞれ配列番号28、29及び30に対して約90%以上の同一性を有するVP1、VP2及びVP3アミノ酸配列を含む、実施形態26に記載のウイルスベクター。
【0179】
30.AAV9カプシドは、配列番号27に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる、実施形態26のウイルスベクター。
【0180】
31.AAV2カプシドは、それぞれ配列番号32、33及び34に対して約90%以上の同一性を有するVP1、VP2及びVP3アミノ酸配列を含む、実施形態26に記載のウイルスベクター。
【0181】
32.AAV2カプシドは、配列番号31に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる、実施形態26のウイルスベクター。
【0182】
33.AAV5カプシドは、それぞれ配列番号36、37及び38に対して約90%以上の同一性を有するVP1、VP2及びVP3アミノ酸配列を含む、実施形態26に記載のウイルスベクター。
【0183】
34.AAV5カプシドは、配列番号35に対して約90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる、実施形態26のウイルスベクター。
【0184】
35.実施形態1~34のいずれかのウイルスベクターを含む組成物。
【0185】
36.薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、実施形態35の組成物。
【0186】
37.網膜細胞において異種CYP4V2遺伝子を発現させる方法であって、網膜細胞を実施形態1~36のいずれかのウイルスベクターと接触させることを含む方法。
【0187】
38.網膜細胞は、RPE細胞である、実施形態37の方法。
【0188】
39.Biettiクリスタリン網膜症(BCD)を有する対象を治療する方法であって、実施形態36の組成物の有効量を対象に投与することを含む方法。
【0189】
40.BCDを有する対象の視力を改善するか、視覚機能若しくは機能的視覚を改善するか、又は視覚機能若しくは機能的視覚の低下を抑制する方法であって、実施形態36の組成物の有効量を対象に投与することを含む方法。
【0190】
41.BCDを有する対象の治療に使用するための、実施形態36の組成物。
【0191】
42.BCDを有する対象における視力の改善に使用するための、実施形態36の組成物。
【0192】
43.遺伝子カセットを含む核酸であって、遺伝子カセットは、5’から3’方向に、
(i)5’ITR;
(ii)プロモーター;
(iii)CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列;
(iv)ポリAシグナル配列;及び
(v)3’ITR
を含む核酸。
【0193】
44.核酸は、プラスミドである、実施形態43の核酸。
【0194】
45.遺伝子カセットは、5’から3’の方向に、
i)配列番号1、2、13、18、及び22;
ii)配列番号1、3、13、18、及び22;
iii)配列番号1、2、14、18、及び22;
iv)配列番号1、3、14、18、及び22;
v)配列番号1、2、13、19、及び22;
vi)配列番号1、3、13、19、及び22;
vii)配列番号1、2、14、19、及び22;
viii)配列番号1、3、14、19、及び22;
ix)配列番号1、2、9、13、18、及び22;
x)配列番号1、3、9、13、18、及び22;
xi)配列番号1、2、9、14、18、及び22;
xii)配列番号1、3、9、14、18、及び22;
xiii)配列番号1、2、9、13、19、及び22;
xiv)配列番号1、3、9、13、19、及び22;
xv)配列番号1、2、9、14、19、及び22;
xvi)配列番号1、3、9、14、19、及び22;
xvii)配列番号1、2、13、16、18、及び22;
xviii)配列番号1、3、13、16、18、及び22;
xix)配列番号1、2、14、16、18、及び22;
xx)配列番号1、3、14、16、18、及び22;
xxi)配列番号1、2、13、16、19、及び22;
xxii)配列番号1、3、13、16、19、及び22;
xxiii)配列番号1、2、14、16、19、及び22;
xxiv)配列番号1、3、14、16、19、及び22;
xxv)配列番号1、2、9、13、16、18、及び22;
xxvi)配列番号1、3、9、13、16、18、及び22;
xxvii)配列番号1、2、9、14、16、18、及び22;
xxviii)配列番号1、3、9、14、16、18、及び22;
xxix)配列番号1、2、9、13、16、19、及び22;
xxx)配列番号1、3、9、13、16、19、及び22;
xxxi)配列番号1、2、9、14、16、19、及び22;並びに
xxxii)配列番号1、3、9、14、16、19、及び22
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、実施形態43の核酸。
【0195】
46.CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターを含むベクターゲノムを含むウイルスベクターであって、プロモーターはProA18プロモーターであるウイルスベクター。
【0196】
47.CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターを含むベクターゲノムを含むウイルスベクターであって、プロモーターは、ProB4プロモーターである、ウイルスベクター。
【実施例】
【0197】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために提供されるが、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の他の変形形態は、当業者に容易に明らかであり、添付の特許請求の範囲に包含される。
【0198】
実施例1:AAV-ITRプラスミドの構築
1.1.AAV-ITRプラスミドのクローニング:
個々のプラスミドエレメントのヌクレオチド配列を表2に記載する。配列は、合成されるか又は商業的に購入された。表3は、構築された各プラスミドに存在するエレメントを記載する。標準的な分子生物学的クローニング技術を用いて、表3に記載のプラスミドを作製した。カナマイシン耐性を有するプラスミド骨格を骨格及び出発物質として使用した。個々の配列エレメントを制限酵素部位にクローニングするか、又は平滑末端クローニングを用いてクローニングした。
【0199】
プラスミド骨格に含まれる抗生物質耐性遺伝子カセットは、AAVベクターの産生において役割を果たさないため、当業者は、代替のプラスミド骨格及び/又は抗生物質耐性遺伝子カセットを使用して、同じウイルスベクターを産生し得る。
【0200】
1.2.rAAVベクターを産生するためのトリプルプラスミドトランスフェクション:
組換えAAV(rAAV)ウイルスベクターを、トリプルトランスフェクション法によって作製した。トリプルトランスフェクションの方法は、当技術分野で知られている(Ferrari et al.,Nat Med 3:1295-1297,1997)。簡潔には、AAV-ITR含有プラスミド(表3に記載)、AAV-RepCap含有プラスミド(Rep2及びCap8を有する)及びアデノ-ヘルパープラスミド(AAV複製サイクルの完了を補助する遺伝子を有する)を293個の細胞に同時トランスフェクトした。細胞を4日間培養した。培養期間の終わりに、細胞を溶解し、培養上清及び細胞溶解物中のベクターを、AVBセファロースアフィニティカラム(GE Healthcare Life Sciences)を用いてカラムクロマトグラフィーにより精製した。当業者は、標準的なCsCl勾配遠心法(Grieger et al.,Nat Protoc 1:1412-1428,2006に基づく方法)も使用され得ることを理解するであろう。
【0201】
代わりに、上記の細胞トランスフェクション及び培養方法により、GMP様rAAVベクターを作製することができる。次いで、収集した細胞培養材料を、Lock et al.,Hum Gene Ther 21:1259-1271,2010;Smith et al.,Mol Ther 17:1888-1896,2009;及びVandenberghe et al.,Hum Gene Ther 21:1251-1257,2010によって記載された方法に基づくカラムクロマトグラフィーによって処理する。
【0202】
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
実施例2:hGHイントロン、bGHポリAシグナル配列及びHPREの包含はeGFPの発現増強を提供する
HPREの有無にかかわらず、異なるイントロン、異なるポリAシグナル配列を含み、HPREを含むか又は含まない、異なるエレメントを含有する、ChR2d-eGFPを発現するAAV8ベクターを、網膜における最適な遺伝子発現のための最良の組み合わせを決定するために設計した。
【0212】
方法
C57BL/6マウスに、eGFPに融合したチャネルロドプシン(ChR2d-eGFP)を発現し、異なるエレメント、例えば異なるイントロン(例えば、hGHイントロン及びSV40イントロン)、ポリAシグナル配列(例えば、bGHポリAシグナル配列及びSV40ポリAシグナル配列)を含み、HPREを含むか又は含まない1×109vgのAAV8ベクターを網膜下に注入した。4週間後、眼をマウスから採取し、いくつかを4℃で一晩、1mlの4%パラホルムアルデヒド(PFA)固定液で固定し、その後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に置いた。次に、これらの眼をペーパータオルで乾燥させ、35mm皿に移した。眼の外側から外来組織並びに角膜及び水晶体を除去し、次いで眼杯を1mlのPBSに浸漬した。次いで、網膜を眼杯から取り出し、両方を花弁状に切断し、スライド上に載せた。Zeiss Axio Imager M1蛍光顕微鏡及びAxioVisionソフトウェアを用いてeGFP蛍光像を得た。蛍光像は、全て2.5倍の倍率及び同じ露光時間で撮像した。
【0213】
他の採取した眼を神経網膜と後眼杯とに分離し、ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)を使用してChR2d-eGFP mRNA発現の分析のために凍結した。簡単に述べると、Qiagen RNeasy Mini Kitを用いて組織試料からRNAを単離し、次いで200ngのRNAを使用し、ThermoFisher ScientificからのHigh-Capacity cDNA Reverse Transcription Kitを用いてcDNAを生成した。各試料について1ngのcDNAをddPCR Supermixに添加し、eGFP(Mr04097229_mr;ThermoFisher Scientific)を認識するプライマー及びプローブ並びにマウスRab7(Mm00784318_sH;ThermoFisher Scientific)を各反応に添加した。ddPCRは、製造業者のプロトコル(Bio-Rad)に従って行った。各試料について、ChR2d-eGFP発現をRab7対照発現に対して正規化した。
【0214】
結果及び結論
5つの異なるAAV8ベクターを構築し、マウスの網膜下に注入した。注入の4週間後、マウスから眼を採取し、ChR2d-eGFP発現をフラットマウント及びddPCRの両方によって試験した。後眼杯のフラットマウントは、hGHイントロンを含むベクターを注入した眼においてeGFP蛍光が最も高かったことを示した(
図1)。また、bGHポリAシグナル配列の包含は、SV40ポリAシグナル配列を有する同じベクターと比較してわずかに高い蛍光を示した(AAV8-TM078対AAV8-TM073)。
【0215】
ChR2d-eGFP発現レベルをより定量的に分析するために、分離した神経網膜及び後眼杯試料から単離したmRNAについてddPCRを行った。結果は、後眼杯において、発現がHPRE(AAV8-TM075)の添加によって最も有意に増強されたことを示した(
図2A)。また、bGHポリAシグナル配列を含むベクターは、SV40ポリAシグナル配列を含むそれぞれのベクターと比較してより高い発現を示した(AAV8-TM078をAAV8-TM073及びAAV8-TM079をAAV8-TM074と比較されたい)。神経網膜において、HPREの添加は、再びeGFP(AAV8-TM075)の発現レベルの増強をもたらしたが、発現の最大の増加は、bGHポリAシグナル配列(AAV8-TM078及びAAV8-TM079)の添加から観察された(
図2B)。
【0216】
まとめると、これらの結果は、網膜における遺伝子発現のための最適な発現カセットがhGHイントロン、bGHポリAシグナル配列及びHPREエレメントを含み得ることを示している。したがって、これらのエレメントの1つ、2つ又は3つ全てを含むベクターをBCDの治療のためのCYP4V2 cDNAの送達のために構築した。
【0217】
実施例3:Cyp4v3ノックアウトマウスの網膜下へのAAV-CYP4V2ベクターの注入は、疾患の進行を抑制する。
Cyp4v3は、ヒトCYP4V2のマウスオルソログである(82%の同一性)。Cyp4v3遺伝子を、CRISPR/Cas9を用いてノックアウトし、Cyp4v3ノックアウトマウスにCYP4V2を発現するAAVベクターを約1×109vg/眼で注入する。注入後、異なる時点でマウスを眼底撮影及び光コヒーレンストモグラフィーにより検査し、網膜に存在する結晶性沈着物の数及びサイズを測定する。さらに、マウスを視覚機能(例えば、視力、暗順応)及び機能的視覚(例えば、運動性試験)について評価する。対照注入眼(AAV-eGFPベクター)と比較して、CYP4V2を発現するベクターを注入した眼は、結晶性沈着物の数及び/若しくはサイズの減少並びに/又は視覚機能及び/又は機能的視覚の改善を示し、RPE細胞におけるCYP4V2の発現の成功及びCYP4V2タンパク質機能の回復を実証する。
【0218】
実施例4:AAV-ProA18又はAAV-ProB4ベクターの非ヒト霊長類の網膜下への注入は、RPE細胞における遺伝子発現をもたらす
合成プロモーター配列を、MluI/NheI/AscI及びBamHI/EcoRI/BglII制限部位を含む短いフランクを有するGENEWIZによって化学的に合成した。EF1a又はhROプロモーターを置換するpAAV-EF1a-CatCh-GFPに適切な制限部位組合せを用いて、ProB18及びProB4プロモーター配列をサブクローニングした。pAAV-EF1a-CatCh-GFPプラスミドはアダプターPCR法及びpcDNA3.1(-)-CatCh-GFPを用いたClontech In-Fusionキットにより構築した。
【0219】
HEK293T細胞を、分岐ポリエチレンイミン(Polysciences)を用いて、AAVトランスジェンプラズミド、選択したカプシド(BP2)に対するAAV Rep2及びCap蛋白質をコードするAAVヘルパープラスミド及びアデノウイルス遺伝子を保有するpHGT1-Adeno1ヘルパープラスミドで同時トランスフェクトした。直径15cmの1つの細胞培養皿は、HEK293T細胞の80%コンフルエンスでプラスミド混合物を同時トランスフェクトした。7μgのAAV導入遺伝子プラスミド、7μgのRep2及びCapをコードするプラスミド、20μgのAAVヘルパープラスミド及び6.8μMのポリエチレンイミン(5mlのDMEM中)に含有する細胞トランスフェクション混合物を室温で15分間インキュベートした後、10mlのDMEMを含有する細胞培養皿に加えた。トランスフェクションの60時間後、細胞を回収し、150mMのNaCl及び20mMのトリス-HClを含有する緩衝液(pH8.0)に再懸濁した。細胞を、凍結融解サイクルを繰り返すことによって溶解し、MgCl2を添加し、1mMの最終濃度とした。プラスミド及びゲノムDNAを、37℃で10分間、250Uml-1のターボヌクレアーゼで処理することによって除去した。4,000r.p.m.で30分間遠心分離することにより、細胞残屑を除去した。AAV粒子を精製し、Millipore Amicon 100 Kカラム(カタログ番号UFC910008;Merck Millipore)で濃縮した。プロテアーゼKを用いてAAV粒子を変性させた後、TaqMan逆転写PCRによってカプシド化されたウイルスDNAを定量した。力価は、1ml当たりのゲノムコピーとして計算した。
【0220】
マウスにおけるAAV投与のために、2.5%イソフルランで麻酔したマウスに眼注入を行った。水晶体付近の強膜に鋭い30-G針で小さい切開を入れ、この切開を通して、マイクロマニピュレーターに保持した鈍い5μlのHamiltonシリンジ(Hamilton Company)を用いて、2μlのAAV懸濁液を網膜下/硝子体内空間に注入した。
【0221】
非ヒト霊長類におけるAAV投与のために、50マイクロリットルのAAV粒子懸濁液を眼科医及び中国のKunmingの第三者契約者と共同して網膜下に注入した。3ヶ月後、単離した眼杯をPBS中4%のPFA中で一晩固定し、続いてPBS中、4Cで洗浄工程を行った。固定した眼杯を受けた後、感染した網膜領域を切除し、10%正常ロバ血清(NDS)、1%BSA、0.5%Triton X-100を含有するPBSで室温にて1時間処理した。3%NDS、1%BSA、0.5%Triton X-100を含有するPBS中、室温で5日間、モノクローナルラット抗GFP Ab(Molecular Probes Inc.;1:500)及びポリクローナルヤギ抗ChAT(Millipore:1:200)で処理した。二次ロバ抗ラットAlexa Fluor-488Ab(Molecular Probes Inc.;1:200)、抗ヤギAlexa Fluor-633及びHoechstでの処理を2時間行った。切片を洗浄し、ガラススライド上にProLong Gold退色防止剤(Molecular Probes Inc.)でマウントし、Zeiss LSM 700 Axio Imager Z2レーザー走査型共焦点顕微鏡(Carl Zeiss Inc.)を用いて撮像した。
【0222】
以下の表4及び表5は、マウス及びNHP網膜細胞における発現を駆動する合成プロモーターProA18及びProB4の能力を要約する。ProA18とProB4はともに、NHPのRPE細胞において遺伝子発現を導く。
【0223】
【0224】
【0225】
実施例5:RPE細胞を標的とするための最良のカプシド血清型を決定するためのAAVベクターのカニクイザルの網膜下への注入。
CMVプロモーターからGFPを発現するAAV2、AAV6、AAV8及びAAV9ベクターを1眼当たり1×1011vgの用量でカニクイザルの網膜下に注入した。注入の4週間後、サルの眼におけるGFP発現を、生存時、眼底自家蛍光撮像により、また採取後に免疫組織化学により調べた。さらに、GFP mRNA及びAAVゲノムDNAのレベル及び局在をインサイチューハイブリダイゼーションにより評価した。
【0226】
試験した4つの血清型は、全てが光受容体及びRPE細胞におけるGFP発現を促進した。発現は、注入部位の近くで観察され、末梢領域への広がりの程度は様々であった。GFP発現は、試験したいずれの血清型についても視神経又は脳切片で検出されなかった。
【0227】
実施例6:RPE特異的発現の最良のプロモーターを決定するためのカニクイザルの網膜下へのAAVベクターの注入。
RPE特異的プロモーターからGFPを発現するAAVベクターをカニクイザルの網膜下に1眼当たり1×1011vgの用量で注入する。RPE特異的プロモーターには、ProA18及びProB4が含まれる。注入の4週間後、サルの眼におけるGFP発現を、生存時、眼底自家蛍光撮像により、また採取後に免疫組織化学により調べる。さらに、GFP mRNA及びAAVゲノムDNAのレベル及び局在をインサイチューハイブリダイゼーションにより評価する。2つの異なるプロモーターは、いずれもRPE特異的GFP発現を示すが、発現レベルは、可変である。
【0228】
実施例7:ヒト網膜組織におけるAAV駆動遺伝子発現
ヒト網膜組織を除核したヒト眼球から用意し、そこから網膜を、細いはさみを用いて切出す。RPE特異的プロモーターからGFPを発現するAAVベクターをヒト網膜組織と共にインキュベートする。RPE特異的プロモーターには、ProA18及びProB4が含まれる。AAV誘導GFP発現をウイルス投与の6~8週後に調べる。注入6週間後、ヒト網膜組織におけるGFP発現を免疫蛍光及び撮像により調べる。2つの異なるプロモーターは、いずれもRPE特異的GFP発現を示す。
【0229】
実施例8:NHP及びヒト組織におけるProA18又はProB4プロモーター下のCYP4V2のAAV駆動性発現
ProA18又はProB4プロモーター下でヒトCYP4V2を発現するAAVベクター(「AAV-ProA18-CYP4V2ベクター」又は「AAV-ProB4-CYP4V2ベクター」)を、実施例7に記載のように、ヒト網膜組織と共にインキュベートする。ウイルス投与の6~8週間後、CYP4V2遺伝子発現を調べる。注入の6週間後、ヒト網膜組織におけるCYP4V2発現が検出される。
【0230】
AAV-ProA18-CYP4V2ベクター又はAAV-ProB4-CYP4V2ベクターは、カニクイザルの網膜下に1眼当たり1×1011vgの用量で注入する。注入4週間後、サルの眼におけるCYP4V2発現を採取後に免疫組織化学により調べる。さらに、CYP4V2 mRNA及びAAVゲノムDNAのレベル及び局在をインサイチューハイブリダイゼーションにより評価する。ProA18及びProB4プロモーターは、サルの眼において、CYP4V2遺伝子のRPE特異的発現を誘導する。
【0231】
本開示を詳細に記載してきたが、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、変更形態、変形形態及び均等の態様が可能であることが明らかであろう。さらに、本開示における全ての実施例は、非限定的な実施例として提供されていることが理解されるべきである。例えば、全ての特許、公開された特許出願及び非特許刊行物を含む、本明細書中に引用されたいかなる参照文献もその全体が参照により援用される。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2021-10-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
関連出願の相互参照及び配列表の組み込み
本出願は、2019年2月25日に出願された米国仮特許出願第62/810,257号明細書の米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張するものであり、この仮特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2021年7月30日に作成された、140,827バイト(オペレーティングシステムMS-Windowsで測定)の「PAT058468-WO-PCT SQL_ST25」という名称のファイルに含まれる配列表は、本明細書と共に提出され、参照により本明細書に組み込まれる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0097
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0097】
いくつかの実施形態では、ベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムは、コザック配列も含み得る。コザック配列は、真核生物のmRNAに存在し、コンセンサス(gcc)gccRccAUGG配列(配列番号55)を有し、翻訳プロセスの開始に関与する配列である。コザック配列は、CYP4V2コード配列を含む組換えヌクレオチド配列のすぐ上流に位置し得る。いくつかの実施形態では、コザック配列は、GCCACC(配列番号12)である。代わりに、ベクターゲノム、例えば一本鎖ベクターゲノムは、GCCGCC(配列番号51)、GACACC(配列番号52)又はGCCACG(配列番号53)のコザック配列を含む。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】