(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(54)【発明の名称】直線移動を生成させるためのシステム
(51)【国際特許分類】
H02K 33/02 20060101AFI20220325BHJP
H02K 33/06 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
H02K33/02 A
H02K33/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560526
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(85)【翻訳文提出日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 IB2020053184
(87)【国際公開番号】W WO2020202087
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2019/052799
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521441869
【氏名又は名称】ジェネルゴ エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】ティレッラ ヴィンチェンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ブルネッティ シモーネ
【テーマコード(参考)】
5H633
【Fターム(参考)】
5H633BB08
5H633BB10
5H633GG02
5H633GG17
5H633HH03
5H633HH08
5H633HH13
5H633JA02
(57)【要約】
本発明は、一般に、主方向に沿って自由に移動する電磁荷電体(30、MM)と、静磁場発生器(50、Bob)と、2つのバッファ要素(20、40;RM、RM;ML、ML;ΜΑ,ΜΑ;MF、MF)とを備える、直線移動を生成させるためのシステムに関する。電磁荷電体(30、MM)の主方向に沿った移動は、静磁場発生器(50、Bob)およびバッファ要素(20、40;RM、RM;ML、ML;ΜΑ,ΜΑ;MF、MF)によって制御される。静磁場発生器(50、Bob)には、式Ω=A・f(N)を通して得られた周波数Ωで、前記主方向に沿っていずれかの向きにおけるシステムの変位を生成するような電力プロファイルが交流で供給される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主方向に沿って自由に移動する電磁荷電体(30、MM)と、少なくとも1つの静磁場発生器(50、Bob)と、少なくとも2つのバッファ要素(20、40;RM、RM;ML、ML;MA、MA;MF、MF)とを備える、直線移動を生成するためのシステムであって、前記主方向に沿った前記電磁荷電体(30、MM)の移動が、前記静磁場発生器(50、Bob)および前記バッファ要素(20、40;RM、RM;ML、ML;MA、MA;MF、MF)によって制御され、前記静磁場発生器(50、Bob)が、前記主方向に沿ったいずれかの向きに前記システムの変位を生成するような電力プロファイルにより交流で電力供給され、前記システムには、以下の式:
【数1】
によって得ることができる周波数Ωを有するバイアスが供給される、直線移動を生成するためのシステム。
【請求項2】
前記電磁荷電体は、2つの端部(A、B)で閉じられた中空管(T)の内側を摺動する可動磁石(MM)であり、前記2つのバッファ要素は、弾性材料で作られ、前記中空管(T)の前記2つの端部(A、B)に配置された機械的バンパ(RM、RM)であり、前記静磁場発生器は、固定磁石(MF)としてさらに作用するコイル(Bob)である、請求項1に記載の直線移動を生成するためのシステム。
【請求項3】
前記電磁荷電体は、2つの端部(A、B)で閉じられた中空管(T)の内側を摺動する可動磁石(MM)であり、前記2つのバッファ要素は、前記中空管(T)の前記2つの端部(A、B)に配置されたバネ(M1、M1)であり、前記静磁場発生器は、固定磁石(MF)としてさらに作用するコイル(Bob)である、請求項1に記載の直線移動を生成するためのシステム。
【請求項4】
前記電磁荷電体は、2つの端部(A、B)で閉じられた中空管(T)の内側を摺動する可動磁石(MM)であり、前記2つのバッファ要素が、前記可動磁石(MM)を平衡位置に保持する前記中空管(T)の前記2つの端部(A、B)に配置されたばね(MA、MA)のシステムを備え、前記静磁場発生器は、固定磁石(MF)としてさらに作用するコイル(Bob)である、請求項1に記載の直線移動を生成するためのシステム。
【請求項5】
前記電磁荷電体は、2つの端部(A、B)で閉じられた中空管(T)の内側を摺動する可動磁石(MM)であり、前記2つのバッファ要素は、前記中空管(T)の前記2つの端部(A、B)に配置された2つの固定磁石(MF、MF)であり、前記2つの固定磁石(MF、MF)は、前記可動磁石(MM)を平衡位置に保持するように配置され、前記静磁場発生器は、固定磁石(MF)としてさらに作用するコイル(Bob)である、請求項1に記載の直線移動を生成するためのシステム。
【請求項6】
前記電磁荷電体は、中央ピン(PC)上を摺動する可動磁石(MM)であり、前記2つのバッファ要素は、前記中央ピン(PC)の2つの端部(A、B)に配置された2つの固定磁石(MF、MF)であり、前記2つの固定磁石(MF、MF)は、前記可動磁石(MM)を平衡位置に保持するように配置され、前記静磁場発生器は、固定磁石(MF)としてさらに作用するコイル(Bob)である、請求項1に記載の直線移動を生成するためのシステム。
【請求項7】
前記静磁場発生器(50、Bob)は、別個に電力供給される複数のコイル(Bob1、Bob2、…、BobN)を備え、前記コイルは、固定磁石(MF)としてさらに作用する、請求項1~6の1つまたは複数に記載の直線移動を生成するためのシステム。
【請求項8】
前記静磁場発生器(50、Bob)は、一緒に電力供給される複数のコイル(Bob1、Bob2、…、BobN)を備え、前記複数のコイルは、固定磁石(MF)としてさらに作用する、請求項1~7の1つまたは複数に記載の直線移動を生成するためのシステム。
【請求項9】
前記静磁場発生器(50、Bob)は、矩形波または正弦波または鋸歯状の電力プロファイルで電力供給される、請求項1~8の1つまたは複数に記載の直線移動を生成するためのシステム。
【請求項10】
反磁性カバー(CD)が存在し、平衡位置に戻るステップの間に、前記電磁荷電体(30、MM)の移動を減速する「磁気ブレーキ」として機能する、請求項1~9の1つまたは複数に記載の直線移動を生成するためのシステム。
【請求項11】
反磁性材料で作られた中央管(TC)が存在し、平衡位置に戻るステップの間に、前記電磁荷電体(30、MM)の移動を減速する「磁気ブレーキ」として機能する、請求項1~10の1つまたは複数に記載の直線移動を生成するためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、リニアモータに関する。特に、本発明は、電磁荷電体を利用して、それを含むシステムを主方向に沿って動かすモータに関する。特に、本明細書に記載されるリニアモータによって、システムの一主方向で、一つの向きへの移動が可能になる。本明細書に記載されるリニアモータは、外部バイアスの結果として一方向への移動を行い、そのような移動は、単純な振動を超える。
【背景技術】
【0002】
現在のモータは、運動を生成するための2つの一般的な原理に基づいており、2つのマクロな移動カテゴリー、すなわち、摩擦モータと可変質量モータとに分けることができる。
【0003】
摩擦モータとは、使用される動力手段にかかわらず、外部物体または表面に機械的に伝達される運動を生成し、モータが結合される物体と外部物体または表面との間のこの運動によって摩擦を生成する任意のモータを意味する。
【0004】
例えば、車のモータは、モータによって発生した動きを車の車輪に伝え、それによって道路の表面との摩擦の結果として、道路上の車の動きを発生させる。実際、車は、車輪とアスファルトの間に生じるこの摩擦によって動く。同様の例は、レールを有する列車の車輪、または列車の磁気浮上システムでさえもあり得る。
【0005】
第二のマクロカテゴリーは、可変質量モータ、すなわち、それらが実行しなければならない移動とは反対の方向に「質量を発射する」もので、作用/反作用の原理に基づくモータに関する。この種のモータの象徴的な例は、ロケットであり、ロケットは、そのロケットが意図した移動とは反対方向に、粒子の流れを放出する。
【0006】
特許文献1には、
(a)軸方向に移動可能な少なくとも1つの可動磁石であって、前記可動磁石が軸方向に磁化されている、少なくとも1つの可動磁石と、
(b)前記可動磁石と直列に軸方向に配置された2つのバンパ磁石であって、前記バンパ磁石は前記可動磁石を磁気的に反発させるように配向され、前記可動磁石が前記バンパ磁石の間に配置される、2つのバンパ磁石と、(c)可動磁石を軸方向に移動させるための少なくとも1つの界磁コイルと、を備える、電磁バイブレータ装置が記載されている。
【0007】
特に、特許文献1には、例えば、携帯電話や携帯電子機器に使用できる線形振動を発生させるために使用される装置が記載されている。
【0008】
特許文献2には、各種電子機器に使用できる安定した振動部を有する振動モータが記載されている。
【0009】
最後に、特許文献3は、上述の2つの特許文献に記載されたものと実質的に同じパーツを含む可撓性触覚アクチュエータを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/001484号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/248458号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第3343738号明細書
【発明の概要】
【0011】
本明細書で提案されるモータは、上記で概説した2つのマクロ原理のいずれにも基づいていない。
【0012】
実際、本明細書に記載されるリニアモータは、質量を放出せず、移動するために摩擦を使用せず、その代わりに、所望の方向にそれを押す力を生成する。
【0013】
さらに、摩擦モータとは異なり、自己走モータは、一定の加速度を発生し、したがって、摩擦がない場合(例えば、宇宙空間)には、理想的には、任意の速度に到達することができるので、到達可能な速度制限を有していない。
【0014】
本発明のさらなる特徴および利点は、非限定的な例として提供される以下の説明を、添付の図面に示される図を参照して、読むことで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】システムの移動につながる連続ステップにおけるシステムを示す。
【
図3】システムの移動につながる連続ステップにおけるシステムを示す。
【
図4】システムの移動につながる連続ステップにおけるシステムを示す。
【
図5】システムの移動につながる連続ステップにおけるシステムを示す。
【
図6】システムの移動につながる連続ステップにおけるシステムを示す。
【
図7】本発明によるシステムの異なる実施形態を示す。
【
図8】本発明によるシステムの異なる実施形態を示す。
【
図9】本発明によるシステムの異なる実施形態を示す。
【
図10】本発明によるシステムの異なる実施形態を示す。
【
図11】本発明によるシステムの異なる実施形態を示す。
【
図12】本発明によるシステムの異なる実施形態を示す。
【
図13】本発明によるシステムの異なる実施形態を示す。
【
図14】本発明によるシステムの異なる実施形態を示す。
【
図15】本発明によるシステムの異なる実施形態を示す。
【
図16】本発明によるシステムの異なる実施形態を示す。
【
図17】本発明によるシステムの異なる実施形態を示す。
【
図18】本発明によるシステムの異なる実施形態を示す。
【
図19】本発明による装置を試験する2つのロードセル間で測定された力の差の積分の傾向を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本説明によるパーツは、本発明の実施形態の理解に関連する特定の詳細のみを示すように、従来の符号を用いて、適切な場合に、図面に示している。本明細書に記載された説明を参照して、当業者に直ちに明らかになる詳細を強調しないためである。以下、本発明の
【0017】
図1を参照すると、一般に、本発明によるモータまたは移動システムは、限られた空間体積内で移動する電磁荷電体からなり、この電磁荷電体は、前記空間体積内での移動中に、制御された方法で電磁的に加速および減速される。
【0018】
このような加速/減速は、質量が移動する体積上に力を発生させ、空間の体積を移動できるようにする。
【0019】
【0020】
図1では、本明細書で提案された解決策の基本的な要素、すなわち、3つの磁石20、30、40を内部に含み、そのうちの1つ(符号30)が可動であり、2つ(符号20、40)が固定されている管10、例えば中空円筒と、電磁石またはコイル50とを識別することが可能である。2つの固定磁石20,40は、その対向する2つの端部AとBとで、管10の内側に固定されている。第三の可動磁石30は、管10の中央部Cに、配置されている。コイル50は、その外側部分で管10に固着される。図示の例では、コイル50は、端部Bから始まり、管10の周りに巻かれており、管10の長さの約4分の1にわたって延びている。特に、コイル50は、管の外側に配置され、固定磁石20を収容するパイプ10の部分を取り囲んでいる。3つの磁石20,30,40は、互いに対向する逆極を示すように配置されている。特に、
図1に示す平衡状態では、第一の固定磁石20は、その正極20bが管10の外側、すなわち管10の端部Bに向かい、その正極20aが管10の中央部Cに向くように配置される結果となる。第二の可動磁石30は、その負極30aが第一の固定磁石20の負極20aに対向するように、中央部Cにおいて管10の内側に配置される。最後に、第三の磁石40は、その正極40bが管10の内側を向き、すなわち、管10の中央部Cの方を向き、その負極40aが管10の外側を向き、すなわち、管10の端部Aの方を向くように配置される。このようにして、第三の固定磁石40は、その正極40bが第二の可動磁石30の正極30bに対向するように、管10の内側に配置される。
【0021】
図1に平衡状態を示す。特に、2つの固定磁石20、40は、互いに対向する同符号の極の反発力によって可動磁石30を定位置に保持する。したがって、同じ符号の極間の反発力は、磁石を相互に反発させる。特に、2つの負極20aと30aとは互いに反発し、正極30bと40bとは互いに反発する。したがって、可動磁石30は、2つの固定磁石20,40に対して発生する2つの反発力がバランスしているので、管10の中央部Cに静止したままである。
図1の例では、コイル50に電力が供給されておらず、したがって、システムは、可動磁石30が中央部Cにおいて管10の中央に静止している平衡状態にある。当然ながら、本明細書に提供される説明は、磁石が極に対して逆の位置をとる二重の場合(dual case)にも適用される。したがって、固定磁石20は、管10の外側(端部B)に向く正極20aと、管10の中央部Cに向く負極20bとを有し、可動磁石30は、端部Bに向くその正極30bと、端部Aに向く負極30aとを有し、固定磁石40は、管10の中央部Cに向くその負極40aと、端部Aに向くその正極40bとを有している。また、この場合、同符号の磁石同士の反発力は、磁石同士を反発させる。
【0022】
ここで、
図2~
図5を参照して、システム動作をステップごとに説明する。
【0023】
図2は、初期の平衡状態を示す。上述したように、この状態では、可動磁石30は、管10の中央部Cにおいて、その平衡状態で静止している。このような可動磁石30は、2つの固定磁石20,40の向きによって同じ符号の極間に発生する反発力によって静止して保持される。
【0024】
したがって、時間t0に、平衡状態になる。
【0025】
図3を参照すると、コイル50が管10の端部Bに追加され、巻かれている。特に、コイル50は、管10の端部で固定磁石20に巻かれている。最初、このようなコイル50は給電されず、
図3では、
図2にも示されている平衡状態が残っている。換言すれば、可動磁石30は、2つの固定磁石20,40によって発生する反発力Fによって平衡状態に保持された中央位置にある。
【0026】
時間t1において、電磁場を生成するコイルの起動がある。
【0027】
図4では、コイル50は、例えば、矩形波、正弦波、または鋸歯状波パルスによって電力供給され、可動磁石30は、コイル50によって生成された増大した磁場によって、管10の端部に向かう方向に移動する。特に、可動磁石30は、2つの磁石20および30の同符号の極20aと30aとの間に作られた反発力FRによって押し出された固定磁石40に近づく。その結果、可動磁石30は、同符号の2つの極30bおよび40bに近づくことによって発生する反発力が可動磁石30を停止させている限り、固定磁石40に向かって(端部Aに向かう方向に)移動する。
【0028】
続いて、時間t2において、可動磁石30は、コイル50によって生成された電磁場と相互作用し、平衡状態の位置から固定磁石40により近い位置に移動する(実施形態は例に示されているが、コイル50に電力が供給される電力の反転を伴う二重の実施形態(dual embodiment)も考慮され得る)。
【0029】
より詳細には、コイル50に通電することにより、磁場の増大が発生し、これにより可動磁石30と固定磁石20との間の反発力が増大し、可動磁石30を固定磁石40に向かう方向に移動させるものである。可動磁石30は、可動磁石30の運動を反転する前に、最大アプローチの瞬間にシステム全体に伝達される動作エネルギーを獲得する。
【0030】
時間t3(
図5参照)において、コイル50がスイッチオフされるか、極性が反転されるか、または強度が低下され、通常の平衡位置以外の位置にある中央磁石30は、それを平衡状態に戻す傾向がある力を受け、完全なシステム(管10、磁石20、30、40およびコイル50)は、反対方向に等しい反対の力を受ける。
【0031】
図6を参照すると、時間t4において、加速されている可動磁石30は、原理的に通常の平衡位置を超えて移動し、さらに固定磁石20の方向に近づく傾向があり、これは、平衡位置を超えて再び反発し、この状況に放置されれば、再び平衡位置に到達するまで、可動磁石30の一連のより小さな振動が発生するであろう。
【0032】
代わりに、コイル50は、可動磁石30を減速させ、時間t2の状況でそれを拒絶するように、正確な瞬間で再活性化される(
図4参照)。
【0033】
時間t5において、システムを運動状態に保持するために、t2からt5までのステップが繰り返される。特に、管10、磁石20、30、40およびコイル50からなるシステムの変位は、
図5および
図6の矢印Sで示される方向に生じる。
【0034】
前進は、固定磁石40に対する可動磁石30の機械的推力の影響によって生じる。特に、磁石の摩耗を防ぐために、磁石間の衝撃を避け、2つの磁石を近づけすぎると、反発力で2つの磁石は離れる。
【0035】
簡単に言えば、このシステムは、コイル50のための電力として所与の周波数を有する一連のパルス(矩形波、正弦波、鋸歯状波)、すなわち、次いで下降するピークを有するインパルス性電力を提供することによって、一連の直線移動を生成する。特に、コイル50に電流を供給することによって、システム内に含まれる磁石の同じ電荷を有する極間の反発力により、システムの直線移動が得られる。このような直線移動は、真空中でも達成されるため、その運動は振動効果または摩擦によるものではない。
【0036】
したがって、本明細書に記載の解決策は、発生装置(例えば、電池)によってコイル50に通電することによって直線移動を得ることを可能にする。得られた移動は、コイル50に電力が供給される波形のパルスに依存する。
【0037】
コイル50の電力によって、システム全体をある方向に移動させるように、主軸に対して所与の方向に不均衡な推力を得ることが可能になる。したがって、コイル50に電力を供給するための異なるパルス振幅および周波数を選択することによって、システムの異なる応答を得ることができる。
【0038】
システムの電力供給は、直流ではなく、交流で行われ、モータの動きを生成するように、種々の範囲の周波数および種々の波形(例として、矩形波、鋸歯状波、正弦波などによって)で調整され、2つの軸に沿った種々のタイプの推力およびシステムの種々のタイプの加速度を生成することができる。
【0039】
ここで、本明細書に記載されるシステムの可能な実施形態のいくつかを説明する。
【0040】
システムの最も単純な図を
図7に示す。特に、この場合、管T、例えば、その端部AおよびBで閉じ、管Tの端部に2つの機械的バンパRMを備えた中空円筒に挿入される可動磁石MMと、単一のコイルBobとが存在する。
【0041】
コイルBobは、管T上で異なる位置をとることができる。特に、
図7a)において、コイルBobは、管Tの中央部Cの直下で、可動磁石MMの下で、管Tの第一の部分にある。逆に、
図7b)において、コイルBobは、再び、可動磁石MMの下で、管Tの第一の部分に位置し、管Tの端部Bの近傍に位置する。最後に、
図7cにおいて、コイルBobは、管Tの中央部Cに位置し、可動磁石MMの休止位置で管Tを取り囲んでいる。
【0042】
a),b),c)の3つの場合のシステムの操作では、コイルの位置に応じて、原理がほぼ同じであるため、モータ効率と周波数範囲のみが変化する。
【0043】
2つの機械的バンパRMは、シリコーンゴムのような弾性材料で作ることができる(
図7参照)。
【0044】
管Tは、既に言及したように、例えば、円形断面を有する中空円筒であっても、あるいは正方形、長方形、楕円形、六角形または他のタイプの断面を有する管であってもよい。
【0045】
1つまたは複数の代替実施形態では、2つの機械的バンパRMは、管Tの2つの端部AおよびBに配置された2つの弾性要素またはバネML(
図8参照)の形で作ることができる。この場合も、コイルBobは、
図8の実施形態(b)および(c)に示すように、異なる位置を仮定することができる。コイルBobは、
図7について説明したのと同じ位置を仮定することができる。すなわち、
・管Tの中央部Cの直下で、可動磁石MMの下で、管Tの第一の部分にあるか、
・可動磁石MMの下で、管Tの第一の部分にあり、管Tの端部Bの近傍にあるか、あるいは
・管Tの中央部Cにあり、可動磁石MMの休止位置で管Tを取り囲んでいる。
【0046】
あるいは、
図9に示すように、可動磁石MMは、バネMaのシステムによって平衡位置に維持され得る。特に、バネMaは、管Tの端部A,Bに固定されている。この場合も、
図7および
図8の実施形態a),b),c)に示すように、コイルBobは異なる位置をとることができる。
【0047】
他の可能な実施形態を
図10に示す。特に、この場合、システムは、端部AおよびBで閉じられた管Tを備え、管Tは、中央部Cの内側に可動磁石MMと、管Tの端部AおよびBでブロックされた2つの固定磁石MFとを有する。この場合も、可能な3つの位置に管Tに巻回された単一のコイルBobが存在する。
・管Tの中央部Cの直下で、可動磁石MMの下で、管Tの第一の部分にあるか、
・可動磁石MMの下で、管Tの第一の部分にあり、管Tの端部Bの近傍にあるか、あるいは
・管Tの中央部Cにあり、可動磁石MMの休止位置で管Tを取り囲んでいる。
【0048】
図10の実施形態では、磁石は、相互に異なる寸法を有することもできる。
【0049】
さらなる実施形態(
図11および
図12参照)は、
図10の解決策の特徴を、
図7、
図8または
図9の3つの変形例(a、b、c)のうちの1つと混合することによって得ることができる。特に、第一の端部に弾性ゴム製の機械的バッファRMと、管Tと可動磁石MMとの間に結合されたバネバンパMLまたはバネMAと、管Tの他方の端部Bに固定磁石MFとがあってもよい。あるいは、要素は、管Tの2つの端部AおよびBで相互に反転され得る。
【0050】
さらなる実施形態(
図11および
図12参照)は、
図10の解決策の特徴を、
図7、
図8または
図9の3つの変形例(a、b、c)のうちの1つと混合することによって得ることができる。特に、閉管Tを有するとことができ、閉管Tは、中央部Cの内部に可動磁石MMと、管Tの端部AおよびBに固定された2つの固定磁石MFとを有する。磁石は、相互に異なる寸法を有することもできる。この場合も、単一のコイルBobが存在する。これらの代替的な実施形態では、管Tの端部と固定磁石MFとの間に、シリコーンゴムなどの弾性材料製であり得る機械的バッファRMが存在し得る。変形例では、固定磁石MFを平衡位置に保持する1つもしくは2つのバネML、あるいはバネMAのシステムが存在してもよい。当然、固定磁石MFと機械的バッファRMのペアは、端部Aからのみであっても、あるいは端部Aと端部Bの両方からであってもよい。
【0051】
さらなる変形例によれば、管Tの端部AおよびBに固定された2つの固定磁石MFと、固定磁石MFと可動磁石MMとの間にシリコーンゴムのような弾性材料製であり得る2つの機械的バッファRMとが存在してもよい。他の代替実施形態では、固定磁石MFと可動磁石MMとの間に、中央磁石を平衡位置に保持する2つのバネMLまたはバネMAのシステムが存在しても、あるいは前述の要素の任意の組合せが存在してもよい。
【0052】
説明された可能な変形例のいくつかのみが図に示されている。
【0053】
他の様々な実施形態では、例えば、
図13を参照すると、システムは、閉管Tと、一対のコイルBob1およびBob2とを備え、閉管Tは、中央部Cに可動磁石MMと、2つの端部AおよびBで、管Tの端部に固定された2つの固定磁石MFとを有する。図a)、b)、c)は、2つのコイルBob1とBob2の位置決めの3つの例を示す。図示の例では、2つのコイルBob1およびBob2は異なる巻線数を有するが、2つのコイルBob1およびBob2の巻線数が等しい実施形態を想定することができる。あるいは、管Tに沿った2つのコイルBob1およびBob2の他の分布を考えることができる。
【0054】
サイズ(2つのコイルBob1とBob2の巻線数とサイズ、供給と周波数)を調整することで、システムの加速度をより効率的に調整することができる(
図13参照)。磁石は、互いに異なる寸法を有することもできる。
【0055】
さらなる実施形態は、
図13の解決策の特徴を、
図7、
図8または
図9の3つの変形例(a、b、c)のうちの1つと組み合わせることによって得られる。特に、第一の端部Aに一対のコイルBob1およびBob2と、弾性ゴム製の機械的バッファRMと、管Tと固定磁石MFとの間に結合されたバネバンパMLまたはバネMAと、次いで、可動磁石MMと、最後に管Tの他端Bに固定された固定磁石MF図を有する実施形態があり得る。あるいは、要素は、管Tの2つの端部AおよびBで相互に反転され得る。
【0056】
さらなる実施形態は、
図13の解決策の特徴を、
図7、
図8または
図9の3つの変形例(a、b、c)のうちの1つと組み合わせることによって得られる。特に、一対のコイルBob1およびBob2と、閉管Tとを有する実施形態とすることができ、閉管Tは、中央部Cの内側に可動磁石MMと、管Tの端部AおよびBで固定された2つの固定磁石MFとを有する。磁石は、相互に異なる寸法を有することもできる。これらの代替的な実施形態では、管Tの端部AおよびBと固定磁石MFとの間に、シリコーンゴムなどの弾性材料製であり得る2つの機械的バッファRMがあってもよい。変形例では、2つのバネML、またはバネMAのシステムが存在し得、これは、平衡位置で固定磁石MFを保持する。
【0057】
本明細書に示される全ての実施形態において、システム加速度は、2つのコイルBob1およびBob2のサイズ、巻線の数および大きさ、電力および周波数を調節することによって、より効率的に調節することができる。磁石は、互いに異なる寸法を有することもできる。
【0058】
図14を参照すると、単一のコイルBobが存在し、閉管T上に巻かれており、閉管Tが中央部Cの内側に可動磁石MMと、管Tの端部AおよびBに固定された2つの固定磁石MFとを有するさらなる実施形態が考えられる。この代替の実施形態では、管Tの反磁性カバーCDも、2つの固定磁石MFの間の管Tの位置に設けられ、平衡位置に戻るステップの間、可動磁石MMの移動を減速する「磁気ブレーキ」として働くことを目的とする。磁石は、互いに異なる寸法を有することもできる。
【0059】
図14に示す実施形態の変形例は、閉管T上に巻かれた一対のコイルBob1およびBob2を備え、閉管Tは、中央部Cの内側に可動磁石MMと、管Tの端部AおよびBに固定された2つの固定磁石MFとを有する。この実施形態では、管Tの反磁性カバーCDは、2つの固定磁石MFの間の管Tの位置に設けられ、平衡位置に戻るステップの間に、可動磁石MMの移動を減速する「磁気ブレーキ」として働くことを目的とする。磁石は、また、互いに異なる寸法を有することができ、「磁気ブレーキ」CDは、2つのコイルBob1とBob2との間、またはコイルBob1およびBob2と閉管Tの一つの端部(AまたはB)との間に配置されてもよい。
【0060】
より詳細には、磁気ブレーキとして働く反磁性カバーCDは、反磁性材料のカバーであり、これは、前記反磁性カバーCDによって覆われた管Tの領域の内側を移動するときに可動磁石MMを制動するために使用される。反磁性カバーCDは、銅、アルミニウム、グラファイト、または任意の強い反磁性材料で作ることができ、受動的(すなわち、電力供給されていない単純なカバー)、または能動的(すなわち、可動磁石MMの通過の直前に作動される銅、グラファイト、またはアルミニウムコイル)のいずれかとすることができる。例えば、反磁性カバーCDは、管Tの上方に嵌め込まれた中空円筒であってもよい。
【0061】
代替的に、ブレーキ作用は、単一のコイルの場合でも、電源の極性を反転させることによって、あるいは一対のコイル)を、1つが発射または加速用に、1つは制動用に設けることによって、得ることができる。
【0062】
本明細書に記載される解決策のさらなる実施形態は、
図15を参照して説明される。特に、この場合、閉管T上に巻かれた多数のコイルBob1、Bob2、…、BobNが存在し、閉管Tは、中央部Cの内側に可動磁石MMと、管Tの端部AおよびBに固定された2つの固定磁石MFとを有する。システム加速度は、N個のコイルのサイズ、巻き数および大きさ、電力および周波数を調整することによって、より効率的に調整され得る。磁石は、互いに異なる寸法を有することもできる。
【0063】
詳細には、複数のN個のコイルを設ける目的は、2つの固定磁石MFのうちの1つに向かって可動磁石MMを「発射」させ、したがって、可動磁石MMを方向に向かって加速させるステップ中に、ガウスライフルに類似した状況を作り、可動磁石MMを逆方向に戻すステップ中に磁気ブレーキとして働かせることである。したがって、コイルは、可動磁石MMに対する位置に応じて、かつ、可動磁石MMが起動される時間の関数として、その一般的な形状のベースに力を生成する。
【0064】
特に、ガウスライフルは、共通軸上に配置されたリニアモータによって、磁気または電磁加速度を使用して、金属弾丸を非常に高速で発射する銃身(barrel)である。
【0065】
複数のコイルを用いて、可動磁石MMの推力と加減速度を、より良く制御しながら管理することができる。また、電源装置および調整可能な周波数の矩形波発生器で、各コイルを個別に管理することが好ましい。したがって、強力な磁場を発生させるように、できるだけ狭い太径の一連のコイルを有することが好ましいであろう。逆に、システムを重くしすぎないようにするために、中間の妥協点を見出さなければならない。ほど良い妥協点として、システムが重すぎることを避けるように、パルスとして2つまたは3つのオフセットコイルを使用しても、加速および減速を精度良く管理することができる。
【0066】
さらなる実施形態は、
図15に示す実施形態から得ることができ、この実施形態では、平衡位置に戻るステップの間、可動磁石MMの移動を減速する「磁気ブレーキ」として働くことを目的として、管Tの1つ以上の反磁性カバーCDが2つの固定磁石MFの間の管Tの様々な位置に追加されている。この場合も、磁石の大きさは互いに異なっていてもよい。
【0067】
上述の実施形態の全てに適用することができる更なる変形例は、更なる磁気ブレーキとして反磁性材料からなる中央管TCを使用することを想定している。
図16は、更なる磁気ブレーキとして反磁性材料からなる中央管TCの使用を想定した実施形態の一例を示す。
【0068】
図17を参照して、本発明によるシステムのさらなる実施形態を説明する。この実施形態では、中央ピンPCが設けられており、その上を可動磁石MMが摺動し(この実施形態では中央に穿設される)、その中央ピンPCに2つの固定磁石MFが端部Aおよび端部Bで固定される。
【0069】
当然、上述した全ての変形例をこの実施形態に適用することもできる。
【0070】
特に、実施形態は、一層大きな効率に基づいて記載され、2つの固定磁石を有するマルチコイルシステムが最も効率的であり、一方、単一磁石、単一コイルおよび機械的反発力手段を有する第一のシステムは、最も効率的ではない。
【0071】
最後に、垂直方向または種々の方向への移動を可能にするために、組み立て可能な複数のシステムからなるシステムを作ることが可能である。
【0072】
実質的に、本明細書に記載されるシステムは、ライフル(管)の端部に2つのプラグがあり、弾丸に取って代わる磁石が、運動エネルギーを伝達し、システム全体を動かすために、バッファ要素(バネ、磁石など)に、特にそれらのうちの1つに所与の方向および向きで、繰り返し接近させる、および/または接触させられるガウスライフルとして振る舞う。
【0073】
当然、適切な変換手段を用いて、円運動を利用する移動システムを想像することも可能である。
【0074】
ここで、応用例を説明する。記載された例では、管Tは、衝撃および高温に耐えるプラスチック材料で作られる。代替の実施形態では、管Tはまた、セラミック、焼結セラミック、木材、厚紙、加硫繊維、またはエポキシ樹脂に浸漬された木材もしくは厚紙から作製されてもよい。
【0075】
特に、セラミックは、経年変化の影響を受けないことに加えて、高温に対して極めて耐性があり、機械的に強く、重くないという利点を有する。
【0076】
さらに、焼結セラミックは、従来のセラミックと同じ利点を有するが、従来のセラミックよりも優れた特徴を有し得る。
【0077】
木材は比重が低く、熱伝達が低いため、コイルで発生した熱が中央の磁石に伝わるのを防ぐ。
【0078】
反対に、炭素は、木材と同様の特徴および利点を有するが、比重がより低い。
【0079】
加硫された繊維は、木材および炭素と同様の特徴を有するが、優れた機械的強度を有し、均質な材料である構造上の欠陥を示さず、優れた電気アイソレータでもある。
【0080】
エポキシ樹脂に浸漬された木材、炭素、または加硫繊維は、浸漬前の3つの材料と同じ特徴を有するが、おそらくより高い構造強度を有する。
【0081】
さらに、更なる実施形態では、管Tは、アルミニウム、グラファイトまたは金属で作ることもできるが、強い反磁性または強磁性の材料は、場合によっては、システム性能を制限することがあるように見える。
【0082】
そのため、セラミック、プラスチック、木材、紙などの反強磁性材料または磁化しない材料が好ましい。
【0083】
考慮される実施形態では、管Tは、0.5cm~300cmまで変化し得る長さと、0.1mm~600mmの間に含まれる内径とを有する。使用される磁石(MMおよびMF)は、好ましくは、高い磁化度と、動作中に磁石自体の内部で発生する可能性のある渦電流による良好な熱抵抗とで選択される。
【0084】
一例として、
図18を参照すると、長さ130mmのプラスチック管Tを、内径11mm、外径15mmで使用することができる。直径10mm、高さ35mmの軸方向磁化N52を有する2個のネオジム磁石MFを、管Tの端部AとBにエポキシ接着剤で固定する。
【0085】
2つの磁石MFは、2つの磁石の一方MF1のN極(または正極)が管の内側に面し、S極(または負極)が外側に面するように固定され、他方MF2は、S極(または負極)が管Tの内側に面し、N極(または正極)が外側に面するように固定される。
【0086】
先のMF1およびMF2と等しい可動磁石MMは、他の2つの磁石MF1およびMF2によって生成される反発力によって磁気浮上に保持され、2つの磁石MF1とMF2との間で管Tの内側に配置される。
【0087】
例えば、管Tの周囲に直径0.25mmのエナメル銅線コイルBobを巻き、10~25mmの長さ、外径25mmの全体的な寸法を得るようにしてもよい。コイルBobは、可動磁石MMと、2つの固定磁石MF1およびMF2のうちの1つとの間に、特に
図18で、MMとMF2との間に配置される。説明した実施形態では、コイルBobは、この場合に、静止時の可動磁石MMの端部から約7mmに位置している(特に、可動磁石MMは、静止時に、管Tの中央Cに位置している)。
【0088】
コイルBobには、0.5~250Hzの周波数、特に約5Hzの周波数で、50%のデューティサイクルの矩形波パルスを介して電力が供給される。
【0089】
コイルは、高容量コンデンサ(電動コイルから生じるリターン効果を避けるために、好ましくは出力に2つのダイオードを備えた電解コンデンサ)に接続されたアダプタを管理するソリッドステートリレーによって生成された50%デューティサイクルの矩形波で駆動することができる。特に、鋸歯状または正弦波の波形も、駆動のために許容される。さらに、非常に狭く高いパルスを有する波形が好ましい。
【0090】
最後に、重量の増加を考えると、エナメル銅製のコイルよりも、エナメルアルミニウム製のコイルを使用することが好ましい。
【0091】
コイルが磁石に垂直な場合、コイルが発生する実効磁場の割合は最大であるので、コイルは傾斜せずに垂直であることが好ましい。
【0092】
本明細書に記載のシステムは、航空宇宙分野で使用することができる。
【0093】
実施形態の例として、内径11mm、壁厚2mmの140mmメタクリレート管Tを考える。管Tの両端には、プラスチックネジ、0.75mmピッチおよび調整ワッシャを有する二成分エポキシ樹脂で接着された2つの「プラグ」がある。また、2つのネジの底部に、もう一つのメタクリレートを接着し、固定磁石(軸方向磁化N50および寸法:直径10mm、高さ17mmのネオジム磁石)を、二成分エポキシ樹脂を用いて接着した。そこで、両端に固定された磁石の北側と南側とが対向するように配置された2つの磁石を、管Tの両端に接着する。
【0094】
他の2つと同じ第三の可動磁石が、管の中央に配置され、管の中央で「浮上」して保持する他の2つの磁石によって反発されるように配向される。
【0095】
それぞれ長さ15mmおよび25mm、壁厚2mmの2つのメタクリレートコイル担持管を、ピッチ0.75mmのプラスチック材料製の2本のネジおよび調整ワッシャを用いて配置する。プラスチック材料製のワッシャは、巻かれたワイヤコイルを保持するためにコイルを摺動させる2つの管の端部にシアノアクリレート系で接着され、ワッシャは外径50mmである。
【0096】
コイルには、総径0.25mmの変圧器用エナメル銅線を巻いている。コイルは、25mmに等しい全体的な外径を達成するように巻かれる。
【0097】
この装置は、コイルの点火時に、中心の可動磁石が、より長い(長さ25mmである)コイルの後ろに位置する磁石の方へ押されるように、電力が供給される。2つのコイルは、9ボルトの電圧と50%のデューティサイクルの4.37Hz矩形波の周波数で並列に電力供給される。矩形波は、0ボルト~9ボルトで始まる。電源回路は、IRF540に接続されたArduino Nanoによって、矩形波を発生させ、9ボルトのバッテリーによって電力供給されるプロトタイプ位相で構成される。このようにして、システム全体の重みは約90グラムであり、テーブル上で直線的に押すことによって200グラムの重みを置き換えることができる。
【0098】
当然、適切なスケールファクタを適用することによって、異なる分野および種々の用途に使用することができる、より高いリターンを有するより大きなシステムを作ることが可能である。
【0099】
プレートに取り付けられた衛星の内部に配置することができ、衛星を全方向に移動できるように、横軸に沿って360°、縦軸に沿って360°の向きで移動できる。
【0100】
材料のコストが非常に安いことを考慮すると、銅製のコイルが中央の磁石を「浮揚」させて管に接触させないという事実と、消費量が極めて少ないということは、現在使用されている他のタイプのモータよりも好ましく、燃料を必要とせずに、ソーラーパネルからも取ることができる電気エネルギーのみを必要とし、宇宙空間において任意の距離に到達することを可能にする。このタイプの多くのシステムのアレイは、宇宙船用のモータとして使用することもできる。
【0101】
このようなシステムでは、一定の加速度であることにより、空間において任意の速度を達成することが可能となり、宇宙探査に使用することができる。
【0102】
システム速度は、周波数および電源電圧を変化させることによって調整できる。
【0103】
静電現象によって動きを発生させるのに、磁場の代わりに電場を用いる類似のシステムを考案することが可能である。また、送られるアンペア数、電圧および周波数および波形に関して、各ワイヤが異なる方法で給電される二重電力のバイファイラコイルの使用を考慮することができ、ここで、2つのパルスは相互に逆極性で送ることもできる。一本鎖コイルの代わりにバイファイラコイルを使用することにより、システムの加速度の管理がより正確になる。
【0104】
さらに一般化すると、各ワイヤがアンペア数、電圧、周波数および波形に関して異なる方法で給電される、3つ以上のワイヤを有するコイルを考案することも可能である。
【0105】
実験室試験は、ロードセルを用いて、対象物内のシステムによって生じた力を測定する目的で行われてきた。試験は、上記のうちの2つの異なる実施形態を実装する2つの異なるプロトタイプについて実施した。
【0106】
特に、
図19は、供給された電力に対するシステムの反応を測定するために使用される2つのロードセルの読み取り値間の差の時間積分を示す。2つのロードセルの配置が与えられると、互いの差は、同じ方向に測定された力の合計を提供する。2つのロードセルから測定された力の平均値を得るために、読み取り値の差を2で割る。
【0107】
試験は、試験されたシステムが主方向に沿った2つの方向のうちの1つでより大きな力を発生することを示した。
【0108】
ここで、電磁荷電体を用いたリニアモータを有することを可能にする公式と、このシステムの基礎となる理論について、電磁荷電体を含むシステムを主方向に沿って動作するように設定するために、述べる。
【0109】
リニアモータを正しく作動させるのに適した周波数を導出する式は、最も有望な周波数がフィボナッチ数列に関連していることを観測することによって得られた。
【0110】
2つの「固定」磁石のうちの1つ、すなわち、モータの端部に存在する符号20、40またはMFによって図に示される磁石の磁化状態を変化させ、固定磁石が移動する間にモータ自体の可動磁石30またはMMと相互作用する方法を変化させるという概念に要約できる理論から出発して、経験的プロセスに従った。
【0111】
したがって、解決策は、第一の固定磁石、例えば、20またはMF1の最大過磁化デルタを作り出すことであり、可動磁石30またはMMができるだけ近い場合には過磁化になり、可動磁石30またはMMができるだけ遠い場合、すなわち第二の固定磁石40またはMF2の近くにある場合には不足磁化になる。
【0112】
図中の符号50、Bob、Bob1によって示される一次コイルは、この場合、オフであるとき、単一のコイルモータの単純な場合(例えば
図18を参照)、それは、以前増加または過磁化されていた固定磁石20またはMF1の「基線」磁場を部分的に打ち消す逆磁場を発生するという利点を有する。
【0113】
より一般的には、リニアモータに存在する磁場の総和は、可動磁石30またはMMが第一の固定磁石20またはMF1と相互作用するときに最大でなければならず、可動磁石30またはMMが第二の固定磁石40またはMF2と相互作用するときに最小またはゼロでなければならない。
【0114】
固定磁石MFが存在しない上述の実施形態の場合、コイル50は、電力が供給されると、電磁石となり、インパルス状に電力が供給されると、可動磁石MMを周期的に過磁化し、不足磁化する可変で不均一な場を生成する。コイル50は、モータ本体に固定されているので、真の「固定磁石」と考えることができる。
【0115】
他の実施形態では、メインコイル50またはBob1よりも少ない巻線を有する1つまたは複数のコイルBob2~BobNが建設的に追加されて、可動磁石30またはMMの平衡位置への戻り時間を遅くし、次いで、メインコイル50、BobまたはBob1が第一の固定磁石20またはMF1を再び過磁化する時間を与える。
【0116】
一次コイル50として、コイルBob1~BobNも、それらに電力が供給されると電磁石になり、インパルス状に電力が供給されると、可動磁石MMを周期的に過磁化し、不足磁化する一連の可変で不均一な場を生成する。コイルは、モータ本体に固定されているので、真の「固定磁石」MFと考えることができる。
【0117】
実験では、必要なパルスを与えて、最も単純なパルス波形、すなわち矩形波を最初に採用した。リニアモータの移動に適した周波数は、1~99%の間でデューティサイクルを可変する矩形波発生器を通して得られ、使用した周波数範囲は0.01Hz~1000Hz(精度0.01Hzで)の間に設定された。
【0118】
システムは、0~30ボルト/0~5アンペアの低インピーダンス電源によって給電された。
【0119】
0~30ボルト/0~5アンペアの低インピーダンス電源は、調整可能な電源と並列に、22,000pFの大容量のフラッシュ型電解コンデンサを配置することによって得られた。
【0120】
4.37Hz(50%のデューティサイクル)に等しいモータの幾何学的構成パラメータに依存しないように見える「基本的である」一般的に有効な周波数を経験的に求めて見つけた。それから、様々な高調波を探索し、それらを解析し始めた。
【0121】
基底周波数を整数で乗算または除算することによって、基底高調波が識別されると、解析されるべき中間数を求め、結果をチェックし、このように進めた。
【0122】
解析した種々の周波数の間に数値比があるように見え、一般的に有効である(すなわち、理論的にはモータ構成パラメータに独立しない)ことが分かった。
【0123】
解析した数値的関係は、周波数をHzで計算するための次の公式を導いた。
【数1】
【0124】
Hzで示される任意の周波数Ωは、1と100との間の自然数である可変「N」に依存する関数「f(N)」を自然数「A」(好ましくは、1と5との間に限定されない)に乗算することによって得ることができる。
【0125】
「f(N)」は、選択された数「N」、すなわち、選択された数「N」が奇数か偶数かに応じて、二つの異なった関数「f1(N)とf2(N)」を含む。
【0126】
導出された関数である関数「f(N)」は、「N」の関数として示されるが、それらを区別し、標準的な数学的形式に従ってそれらの導出を理解可能かつ明白にするために、頂点に数を追加する。
【0127】
任意の整数である可変「k」は、関数「f(N)」を定義するために導入される。
【0128】
したがって、適用される2つの派生関数は、数値「N」が「2k+1」として正式に示された奇数である場合、「f1(N)」になり、関数「f2(N)」は、数値「N」が「2k」として正式に示された偶数である場合に使用される。
【0129】
ここでは、単純な一次数式である関数「f1(N)とf2(N)」を具体的に定義する。
【0130】
この関数は、選択された数「N」に2の平方根を乗算することによって得られ、その結果に、ヴィスワナス変数として知られる約1.13198824に等しい変数「Vc」に10-1を乗じた結果に等しい積の結果が加算される。
【0131】
関数「f1(N)」については、0.005に、1と「N」を2で除算して得られた最低整数との和を乗算した結果を加算する。
【0132】
関数「f2(N)」については、0.004に、1と「N」を2で除算した結果との和を乗算した結果を減算する。
【0133】
次いで、2つの関数「f
1(N)とf
2(N)」のそれぞれは、呼出し関数「g(n)」を定義し補正する第二の補正関数を含み、この呼び出し関数は、「f
1(N)」と「f
2(N)」のどちらであるかに応じて異なっている。
【数2】
【0134】
補正関数「g(n)」は冗長性を避けるために挿入される。実際、「g1(n)とg2(n)」自身の定義から分かるように、この両方とも挿入される同じ関数「f(N)」に依存する。
【0135】
関数「g1(n)」および「g2(n)」は、0~30の整数である変数「n」にも依存する。
【0136】
したがって、関数「f(N)」に3つの変数「A」、「N」、「n」の様々な値を挿入し、「f(N)」の補正関数である関数「g(n)」を加算するか減算するかを決定することによって、線形で、かつ単純な方法で様々な数値を得ることができる。
【0137】
例えば、上記の式でA=2、N=3、およびn=3にすると、8.6Hzを得る。
【0138】
変数A=1、N=3、およびn=0を配置することによって、4.37Hzについても同様のことを行うことができる。
【0139】
本明細書に記載されるモータは、上記の式から導出されるHz単位の任意のΩ周波数を使用して、反復または不平衡(デューティサイクルが10~90%)の、可変DCパルス発生器によって電力供給される場合、それ自体に推力を生成することができる。
【0140】
これらのインパルスを適用すると、主に周波数に依存し、次いで、適用された波形に依存する、ゼロでない正味の推力が発生する。
【0141】
前述のように、矩形波、鋸歯状波または半波の正弦波、あるいは、それらが衝撃的でかつ示された周波数である限り、時間の経過と共に振幅および形状が変化するパターンを使用することができる。
【0142】
電圧パラメータの変化量は、アンペア数パラメータの主に、また、より少ない程度ではあるが、主に、二次的に、モータを何らかの方法でバイアスさせ、その移動方向を調整することができる。
【0143】
簡単に言えば、前述の公式から得られたすべての周波数は、移動時に有効であるが、単一モータの特徴的な構成パラメータはその効率と方向応答を決定する。
【0144】
言い換えれば、得られた同じ周波数は、2つのモータを(1つまたは複数のパラメータに対して)、異なるように(1つを前進で、もう1つを後退で、または1つを高速前進で、もう一つを低速前進で)動かすことができる。
【0145】
ゼロでない推力、すなわちゼロとは異なる力の積分推力は、周波数を適用することによって前述の式から得られる。他の周波数を適用することにより、先に引用した文献に記載された解法のように、ゼロの力、したがって、単純な振動が生じる。
【0146】
実験レベルで、3種類のサイズのモータで種々の試験を行った。例えば、3つの異なる内径サイズが11、16、および21mmの透明メタクリレート製の長さ140mmの装置を使用し、端部に磁石を固定し、調整可能な支持体上に2成分エポキシ接着剤で接着し、プラスチックネジ(ピッチ1mm)を用いて、磁石間の相対距離を変化させる。磁石は、使用した直径より1mm小さかった。N52磁化のネオジム磁石を用いた。
【0147】
使用した磁石の長さは、管内での転倒または逆転を避けるために、その直径の1.5倍~2倍であった。装置は、コイルが摺動し、管の全長に沿って位置決めできるように、プラスチックネジによって調整可能な支持体上に置かれたコイルを用いて構成された。
【0148】
基本的には、上述の装置の支持体は、平らで滑らかな側面を低摩擦面として、Styrodur CとStyrodur 3035(建築用パネルに使用されるポリスチレンの一種)を掘って接着し、低摩擦指数のプラスチック支持体の上に配置した。
【0149】
様々な周波数およびコンフォメーションを使用し、コンフォメーションおよびモータにかかわらず、いくつかの数値が再帰的に現れることが注目された。そこで、基底周波数が存在し、この周波数は、より大きな、またはより少ない程度の動きを発生する可能性があると仮定し、多くの試みの後、4.37Hzの値が見出された。
【0150】
様々な倍数および約数を試験することによって、我々は、それらがすべて変位を生成したことに気付いた。
【0151】
次いで、いくつかの試験プロトタイプを、そのパラメータを同様に試験するために、より長い管(280mmまで)とより短い管(70mmまで)で構築した。
【0152】
最後に、様々なタイプの潤滑剤で試験を行い、その効果がより低い摩擦でより良く見ることができるかどうかを調べ、式に記載された周波数が、モータが一方向または別の方向へ移動することが分かった。他の周波数は、所定の位置で振動させる(oscilllate)ことによって、振動(vibrations)を発生させるだけである。また、他の波形と同じ周波数を使用することを試みたが、それらの周波数は機能するように見えた。
【0153】
好ましい周波数は、全て、100Hz未満の周波数に特に関心を持つ式から導出することができるが、これは、それらの周波数に対して最適化されたモータを得ることがより容易であるためである。
【0154】
物体の慣性質量は、その磁場の変動によって変化し、したがって、慣性の変動を作り出すことができ、こうして、モータおよびその構成要素の磁化を変化させることによって、質量を生成する(上述のように、所与の時間において)。
【0155】
すなわち、高慣性または「増加した質量」で第一の衝撃を生成し、「減少した質量」で第二の衝撃を生成するために、この「質量」デルタは慣性の変化を生成し、物体が移動して外向きの力を生成することを可能にする。
【0156】
したがって、正確なモーメントにおける質量の変動が最も重要であり、そうでない場合には、それらのモーメントが守られない場合には、単純な振動であり、移動は得られない。
【0157】
したがって、モータは、(ロケットのような)特定の種類の可変質量モータとみなすことができ、その中では、「質量」の変化量は、与えられた「衝撃」または磁気ピストンと2つのバッファ磁石との間の相互作用に関連して、モータ自体の過磁化または不足磁化によって生成される(相互作用について言及し、相互作用するために衝突する必要はないが、磁気反発によって非常に接近して反発するだけであるため、実際の衝撃ではない)。
【0158】
最後に、可動磁石の代わりに、ガスまたはプラズマがシステム内部の可動質量として使用される代替実施形態を考え出すことも可能である。
【0159】
当然、本発明の原理にもかかわらず、構造および実施形態の詳細は、純粋に例として記載および図示されたものに関して広く変化し得るが、その変化を理由として、本発明の範囲から逸脱することはない。
【国際調査報告】