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特表2022-520917繊維強化ポリマー複合ビーム、とくには風力タービンロータブレード用の桁ビームを製造するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-04
(54)【発明の名称】繊維強化ポリマー複合ビーム、とくには風力タービンロータブレード用の桁ビームを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/44 20060101AFI20220328BHJP
   B29C 43/12 20060101ALI20220328BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
B29C70/44
B29C43/12
F03D1/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532200
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(85)【翻訳文提出日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 US2018064832
(87)【国際公開番号】W WO2020122863
(87)【国際公開日】2020-06-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シュ
(72)【発明者】
【氏名】リアヒ,アミール
(72)【発明者】
【氏名】メルツハウザー,トマス
(72)【発明者】
【氏名】シェパード,ジュリー・アン
(72)【発明者】
【氏名】ロンドー,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】シリッグ,スコット・イヴァーソン
【テーマコード(参考)】
3H178
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
3H178AA02
3H178AA40
3H178BB75
3H178CC02
4F204AC05
4F204AD16
4F204AG07
4F204AH04
4F204AH31
4F204AM28
4F204FA01
4F204FA13
4F204FB01
4F204FB11
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
4F205AC05
4F205AD16
4F205AG07
4F205AH04
4F205AH31
4F205AM28
4F205HA09
4F205HA22
4F205HA37
4F205HB01
4F205HB11
4F205HF05
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK05
4F205HK31
(57)【要約】
風力タービンブレード用の桁ビームなどの中空複合構造を製造するための方法が、空気を通すが樹脂は通さない膜を金型ツール内に配置するステップを含む。マンドレルが、金型ツール内に配置され、マンドレルは、通気口を含む気密層に囲まれる。繊維強化材料が、金型ツール内のマンドレルの周りに配置され、膜は、繊維強化材料およびマンドレルの周りに少なくとも部分的にシールされる。金型ツールは、マンドレルからの通気配管をシールされた膜を貫いて金型ツールの外部へと延ばして閉じられる。マンドレルが金型ツールの外部へと通気されている間に、金型ツール内が真空に引かれ、真空が引かれている間に、樹脂が膜に向かって引き込まれるように、金型ツール内へとマンドレルの周りに樹脂が注入される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空複合構造(102)を製造するための方法であって、
空気に対して透過性かつ樹脂に対して非透過性の膜(116)を、金型ツール(110)内に配置するステップと、
前記金型ツール(110)内に、通気口(134)を含む気密層(126)に囲まれたマンドレル(108)を配置するステップと、
前記金型ツール(110)内の前記マンドレル(108)の周囲に繊維強化材料(104)を配置するステップと、
前記繊維強化材料(104)および前記マンドレル(108)の周囲で少なくとも部分的に前記膜(116)をシールするステップと、
前記金型ツール(110)を閉じるステップであって、前記マンドレル(108)からの通気配管(134)が前記シールされた膜(116)を通過して前記金型ツール(110)の外部へと延びるステップと、
前記マンドレル(108)を前記金型ツール(110)の外部へと通気しつつ、前記金型ツール(110)内を真空に引くステップと、
前記真空が引かれている状態で、樹脂が前記膜(116)に向かって引かれるように、前記樹脂を前記金型ツール(110)へと前記マンドレル(108)の周囲に注入するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記樹脂は、前記膜(116)と前記マンドレル(108)との間の1つ以上の位置において前記金型ツール(110)へと注入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記真空は、前記樹脂が前記真空によって前記マンドレル(108)の周囲の前記繊維強化材料(104)を通って前記膜(116)へと引かれるように、前記膜(116)の前記樹脂の注入(136)とは反対側に位置する1つ以上のポート(138)を介して前記金型ツール(110)内に引かれる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記繊維強化材料(104)と前記膜(116)との間に剥離層(118)を配置するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記膜(116)と前記金型ツール(110)との間にブリーザ層(124)を配置するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記膜(116)は、前記繊維強化材料(104)および前記マンドレル(108)を完全に囲む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記金型ツール(110)内の樹脂の流れのパターンを予測し、前記樹脂が前記金型ツール(110)内で最後に充てんされる1つ以上の空隙を特定するステップをさらに含み、前記膜(116)は、前記繊維強化材料(104)および前記マンドレル(108)を前記膜(116)内に完全に囲むことなく、前記最後に充てんされる空隙に対応する位置で前記金型(110)内に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記金型ツール(110)内の樹脂の流れのパターンを予測し、前記樹脂が前記金型ツール(110)内で最後に充てんされる1つ以上の空隙を特定するステップをさらに含み、前記真空は、前記最後に充てんされる空隙に対応する位置で前記金型ツール(110)内の1つ以上のポート(138)を介して引かれる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記金型ツール(110)は、雌型ツールまたは雄型ツールの一方である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複合構造(102)は、箱形ビーム構造であり、前記方法は、前記樹脂の硬化後に、前記箱形ビーム構造の端部の開口部(122)を通って前記マンドレル(108)を引き出すステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記マンドレル(108)は、圧縮性材料で形成され、前記方法は、前記マンドレル(108)を前記箱形ビーム構造の前記開口部(122)を通って引き出す前に、前記マンドレル(108)について真空に引き、前記マンドレル(108)を圧縮するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記真空は、前記マンドレル(108)を囲む前記気密層(126)の前記通気口(134)を介して引かれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記箱形ビーム構造は、より大きな閉鎖端(120)と、前記圧縮されたマンドレル(108)が引き出されるより小さな開放端(122)とを有して先細りである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記箱形ビーム構造は、風力タービンロータブレード用の桁構造(40)である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
通気口(134)を有する気密層(126)内に囲まれた前記マンドレル(108)を複数、前記金型(110)内に配置するステップをさらに含み、前記マンドレル(108)の各々が、前記複合構造(102)内に中空空間を定める、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本主題は、広くには、中空複合構造の製造に関し、より詳細には、風力タービンロータブレードに使用するための桁ビームを製造するための改良された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空の繊維強化ポリマー複合構造は、その構造特性ゆえに、とくには大型の風力タービンロータブレードにおける使用に関して望ましい。近年において、風力発電用の風力タービンは、発電効率および発電量の改善を達成するために、大型化している。風力タービンの大型化につれて、風力タービンロータブレードも著しく大型化しており(例えば、最大55メートルの長さ)、一体的な製造ならびに現場へのブレードの運搬および輸送が、困難になっている。
【0003】
これに関して、業界は、分離したブレードセグメントを製造し、現場へと運び、完全なブレード(「ジョイント式」ブレード)へと組み立てる組み立て式風力タービンロータブレードを開発している。特定の構造において、ブレードセグメントは、一方のブレードセグメントから他方のブレードセグメントの収容部分へと翼長方向に延びる桁ビーム構造によって互いに接合される。例えば、米国特許出願公開第2015/0369211号を参照すると、第1のブレードセグメントが、第2のブレードセグメントに収容部分において構造的に接続する長さ方向に延びる桁ビーム構造を有している。桁ビーム構造は、ブレードの内部支持構造の一部を形成し、負圧側桁キャップおよび正圧側桁キャップを有する箱形ビーム構造である。複数のボルトジョイントが、第2のブレードセグメントの収容端との接続のためにビーム構造上に位置し、複数のボルトジョイントが、ブレードセグメント間の翼弦方向ジョイントにも位置する。
【0004】
構造および重量に鑑み、桁ビーム構造は、ガラス布、引き抜き材、発泡体コア、および複合プレハブなどの複数の種類の材料からなる中空の繊維強化ポリマー複合材料であることが望ましい。そのような複雑な構造を製作する従来からのプロセスは、複数のプレハブ部品を製造し、次いで構造接着剤を使用して、それらの部品を互いに接合することである。しかしながら、そのような製造プロセスは、桁ビームの構造的完全性を損なうリスクを引き起こすだけでなく、コストおよび労働集約的でもある。
【0005】
米国特許第6,843,953号が、乾燥繊維複合材料プリフォームから作られる繊維強化プラスチック部品を、マトリックス材料を注入するための注入法によって製造するための方法を提供している。繊維複合材料プリフォームが、ツール上に配置され、第1の空間が、気体を通すがマトリックス材料は通さない膜をプリフォームの少なくとも一方側に配置することによって生成され、マトリックス材料が、第1の空間へと供給される。第2の空間が、気体物質もマトリックス材料も通さない箔によって、第1の空間と周囲との間に配置される。空気が、第2の空間からの吸引によって除去され、マトリックス材料が、リザーバから排気された第1の空間へと吸い込まれる。流動促進装置が、流動促進装置に面するプリフォームの表面の上方へのマトリックス材料の分配を生じさせることで、マトリックス材料をプリフォームへと垂直に浸透させる。
【0006】
本発明は、風力タービンブレードに関して上述した桁ビーム構造などの中空繊維強化複合構造を製造するための方法であって、所定の幾何学的形状の形成ツール内に配置されたすべての乾燥材料が、注入された樹脂によって均一に濡れて接合され、構造内の空隙空間が最小限である改良された方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3103626号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明の態様および利点は、一部は以下の説明において述べられ、もしくは以下の説明から自明であってよく、あるいは本発明の実施を通じて習得されてよい。
【0009】
一態様では、本開示は、風力タービンブレードの構造部品などの中空複合構造を製造するための方法に関する。本方法は、膜を金型ツール内に配置するステップを含み、膜は、空気に対して透過性かつ樹脂に対して非透過性の材料から形成される。マンドレルが、金型ツール内に配置され、マンドレルは、通気口を含む気密層に囲まれる。繊維強化材料が、金型ツール内のマンドレルの周りに配置される。繊維強化材料は、ガラス繊維材料、炭素繊維材料、引き抜きロッドまたはプレートなど、高強度で軽量な構造部品の構築に一般的に使用される既知の材料の任意の1つまたは組み合わせを含むことができる。そのような材料は、風力タービンブレードの構築においてとくによく知られている。
【0010】
本方法は、繊維強化材料およびマンドレルを少なくとも部分的に囲んで膜をシールするステップと、マンドレルからの通気配管をシールされた膜を通って金型ツールの外部まで延ばしつつ金型ツールを閉じるステップとを含む。次いで、マンドレルを金型ツールの外部へと通気しつつ、金型ツール内が真空に引かれる。真空が引かれている間に、樹脂が金型ツールへとマンドレルの周りに注入され、樹脂が膜に対して注入される/引き込まれる。樹脂を、膜とマンドレルとの間の1つ以上の位置において、金型ツールへと注入することができる。樹脂が硬化した後に、マンドレルと材料との組み合わせが、金型ツールから取り外される。次いで、マンドレルが取り出され、中空複合部品が残される。
【0011】
この構成によれば、気密層がマンドレルの周りで自身へとシールされるため、樹脂を注入するために乾燥繊維強化材料(「乾燥積層材料」)によって占められている空間から空気が除去されるとき、マンドレルと気密層との間の空間に大気が引き込まれ、この空間を膨張させて、樹脂を最も重要な場所において乾燥積層材料へと押し込む。
【0012】
樹脂が真空によってマンドレルの周囲の繊維強化材料を通って膜へと引かれるように、膜の樹脂注入部位とは反対側に位置する1つ以上のポートを介して金型ツール内を真空に引くことができる。
【0013】
特定の実施形態において、本方法は、繊維強化材料と膜との間に、穿孔されたフィルム層などの剥離層を配置するステップを含むことができる。
【0014】
さらに別の実施形態において、本方法は、膜と金型ツールとの間にブリーザ層を配置するステップを含むことができる。
【0015】
特定の実施形態において、膜は、繊維強化材料およびマンドレルを完全に囲んでもよい。他の実施形態において、膜は、例えば既知の空隙領域など、積層体の周りの個別の位置のみに配置されてもよい。この点に関して、本方法は、金型ツール内の樹脂の流れのパターンを予測するステップと、樹脂が金型ツール内で「最後に充てん」する1つ以上の空隙を識別するステップとを含むことができる。次いで、膜を、繊維強化材料およびマンドレルを膜の内側に完全に囲むことなく、最後に充てんされる空隙に対応する位置で金型内に配置することができる。
【0016】
さらに、本方法は、最後に充てんされる空隙に対応する位置で金型ツール内の1つ以上のポートを介して真空に引くステップを含むことができる。
【0017】
金型ツールを、雌型金型ツールまたは雄型金型ツールとして構成することができる。本発明が、金型ツールの種類または構成によって限定されないことを、理解すべきである。
【0018】
本発明は、本方法によって形成される複合構造の種類または構成によって限定されない。特定の実施形態において、複合構造は、箱形ビーム構造であり、樹脂の硬化後に、マンドレルは、箱形ビーム構造の端部の開口部を通って引き出される。箱形ビーム構造は、風力タービンロータブレード用の桁構造であってよく、とくにはジョイント式風力タービンブレードにおいてブレード部品を接続するために使用される桁構造であってよい。この点で、マンドレルを、発泡体材料などの圧縮性材料で形成することができ、本方法は、マンドレルを箱形ビーム構造の開口部を通って引き出す前に、マンドレルについて真空に引いて、マンドレルを圧縮するステップを含む。マンドレルを取り囲む気密層の通気口を介し、あるいは気密層の別の真空ポートを介して、真空に引くことができる。この実施形態は、箱形ビーム構造が、より大きな閉鎖端と、圧縮されたマンドレルを引き出すことができるより小さな開放端とを有して先細りである場合に、とくに有益である。
【0019】
本発明のこれらの特徴、態様、および利点、ならびに他の特徴、態様、および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲を参照して、さらによく理解されるであろう。本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を例示し、明細書と併せて本発明の原理を説明する役目を果たす。
【0020】
当業者へと向けられた本発明の最良の態様を含む本発明の充分かつ本発明を実現する開示が、添付の図面を参照して、本明細書において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示による第1のブレードセグメントおよび第2のブレードセグメントを有するジョイント式風力タービンロータブレードを示している。
図2】桁ビーム部品を有する第1のブレードセグメントの一実施形態の斜視図である。
図3】本発明の方法の実施形態に従って製造することができる中空複合構造の斜視図である。
図4a】本発明の一実施形態による一連の方法ステップを示している。
図4b】本発明の一実施形態による一連の方法ステップを示している。
図4c】本発明の一実施形態による一連の方法ステップを示している。
図4d】本発明の一実施形態による一連の方法ステップを示している。
図4e】本発明の一実施形態による一連の方法ステップを示している。
図4f】本発明の一実施形態による一連の方法ステップを示している。
図5a】圧縮性マンドレルを使用する実施形態を示している。
図5b】圧縮性マンドレルを使用する実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここで、本発明の実施形態を詳細に参照するが、その1つ以上の例が、図面に示されている。各々の例は、本発明を限定するのではなく、本発明を説明する目的で提示されている。実際には、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、本発明においてさまざまな修正および変更が可能であることが、当業者には明らかであろう。例えば、或る実施形態の一部として図示または説明された特徴を、別の実施形態において使用して、またさらなる実施形態をもたらすことができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲に含まれるような修正および変更を包含することが意図される。
【0023】
一般に、本主題は、中空複合構造を製造するための方法であって、金型内で成形具として使用されたマンドレルを複合構造の開口部を通って取り外すことが不可能である方法に関する。本方法が、複合構造の特定の種類または意図される用途に限定されないことを、理解すべきである。しかしながら、本方法は、風力タービンブレードの製造に使用される先細りの複合ビーム構造の製造においてとくに有用であり、この点に関して、本方法および関連のマンドレルの例示的な実施形態(ただし、これらの実施形態に限られない)は、本明細書において、ジョイント式風力タービンブレードの製造に使用される桁ビーム構造を参照して説明される。
【0024】
図1および図2を参照すると、翼弦方向ジョイント34から反対方向に延びる第1のブレードセグメント30および第2のブレードセグメント32を有するジョイント式ロータブレード28が示されている。第1のブレードセグメント30および第2のブレードセグメント32は、ブレードセグメント30、32の接合を容易にするために、両方のブレードセグメント30、32へと延びる内部支持構造36によって接続される。矢印38は、図示の例における分割式ロータブレード28が、2つのブレードセグメント30、32を含むこと、およびこれらのブレードセグメント30、32が、ブレードセグメント30の内部支持構造36を第2のブレードセグメント32に挿入することによって接合されることを示している。
【0025】
とくに図2を参照すると、第1のブレードセグメント30は、内部支持構造36の一部を形成し、かつ第2のブレードセグメント32との構造的な接続のために長さ方向(例えば、翼長方向)に延びる桁ビーム構造40を含む。桁ビーム構造40は、桁部分42から突出することによって延長桁部分を形成する延長部として、第1のブレードセグメント30と一体に形成されてよい。桁ビーム構造40は、負圧側桁キャップ46および正圧側桁キャップ48に接続された向かい合うせん断ウェブ44を有している箱形ビーム複合構造である。端部構造54が、桁ビーム構造44に接続され、ボルト管52を含んでいる。
【0026】
図には示されていないが、第2のブレードセグメントは、ジョイント線34の位置に収容部分を含み、桁ビーム構造44は、ブレードセグメント30、32を接合するために収容部分へとはめられる。ボルト管52が、収容部分の端面の収容スロットに嵌まり込む。
【0027】
上述したように、本方法は、桁ビーム構造44の製造にきわめて有用であり得るが、これは、本方法の限定的な実施形態ではない。
【0028】
桁ビーム構造44は、繊維材料の積層および硬化のプロセスにて、繊維強化複合構造として製造される。桁ビーム構造44は、より大きな(断面積の)閉鎖端120(図3)から、より小さな開放端122へと次第に細くなる先細りの外形を有する。この構成において、従来からの剛体マンドレルは、さらに詳しく後述されるように、そのようなマンドレルを桁ビーム構造44の小さな端部122を通って容易に取り出すことが不可能であるため、この製造プロセスに適さないかもしれない。
【0029】
本開示は、上述した桁ビーム構造44と同様の中空繊維強化部品などの中空複合構造102(図3)を製造するための方法を提供する。方法100の一実施形態が、図4a~図4fに示される。
【0030】
図4aが、従来からの繊維の積層および硬化のプロセスにおいて使用される第1の金型ツール(雌型)110を示している。構造部品102の外面は、金型ツール110の内面によって定められる。
【0031】
図4bにおいて、膜材料116が、金型ツール110内に配置される。この材料116は、空気に対して透過性であるが、樹脂の流れに対しては不透過性であるように選択される。この膜材料116の例は、VAP(登録商標)(真空アシストプロセス)膜である。当業者であれば、これらの特性を有する他の材料が利用可能であり、本発明が膜116としてのいかなる特定の材料にも限定されないことを、理解できるであろう。
【0032】
さらに、図4bは、金型ツール110内で膜116と金型ツール110との間に配置されたブリーザ(または、「スペーサ」)層124を示している。このブリーザ層124は、通気性であり、金型ツール110内が真空に引かれるときに膜116を金型ツール110の内面から離しておくように機能する。このブリーザ層の例は、Airtech Econoweaveブリーザ材料である。当業者であれば、これらの特性を有する他の材料が利用可能であり、本発明がブリーザ層124としてのいかなる特定の材料にも限定されないことを、理解できるであろう。
【0033】
さらに、図4bは、膜116に隣接して金型ツール110内に配置された剥離層118を示している。繊維材料の積層および樹脂硬化のプロセスにおける剥離層118の使用は、技術的に周知である。一般に、剥離層118は、穿孔されたナイロンフィルムまたはナイロン布など、樹脂が容易には付着しない多孔質材料である。この剥離層118を使用することにより、繊維強化材料を超えて外側に流れる余分な樹脂を、複合構造を金型ツール110から取り外す際に複合構造102から容易に「剥離」させることができる。
【0034】
図4cが、剥離層118に隣接する金型ツール110内の繊維強化材料104の配置を示している。適切な繊維強化材料104は、当業者にとって周知であり、ガラス繊維、金属繊維、または炭素繊維を含むガラスプライ、鉱物繊維、およびポリマー繊維の任意の組み合わせを含むことができる。繊維強化材料104は、芳香族ポリアミド、ポリエチレン、ポリウレタン、またはアラミド繊維などのポリマー繊維を含んでもよい。繊維材料104は、異なる種類の繊維材料を含んでもよく、複合材料を形成することができる。繊維材料104は、一方向または多方向の繊維、プリプレグ、繊維ボード、または繊維マットの形態であってよい。図に示されている実施形態において、繊維強化材料104は、上述の桁ビーム構造40の桁キャップ46、48に対応する位置に炭素引き抜きロッド106を含む。引き抜きロッド106は、最終的な複合構造102(とくには、桁ビーム構造44)の桁キャップ部分の構造的な完全性を付加する。
【0035】
さらに、図4cは、桁ビーム構造44のせん断ウェブ構成要素44に構造的剛性を付加するように機能する金型ツール110内の繊維マットまたはボード107の配置を示している。
【0036】
図4dが、金型110内のマンドレル108の配置を示している。マンドレル108は、剛体構造であってよく、あるいは複合構造102の所望の形状に対応する所定の形状を持つ堅固な中立状態(非圧縮状態)と、繊維強化材料104、106、107の積層および硬化時に所定の形状を維持するための中立状態における剛性とを有する圧縮性材料114から形成されてよい。マンドレル108は、気密層126によって囲まれている。通気配管134が、樹脂注入のプロセスにおいてマンドレル空間を通気するように気密層126と共に構成されている。本方法が、ビーム構造の設計に応じて、金型110における複数のマンドレル108の使用および配置も含むことを、理解すべきである。例えば、ビーム構造がウェブによって隔てられた個別の中空空間を有する場合、それぞれの中空空間を定めるために別個のマンドレル108が使用される。
【0037】
さらに、図4dは、気密層126と繊維強化材料104との間の金型ツール110内への樹脂注入/導入部位136を示している。複数の注入部位136が、マンドレル108の周りに、金型ツール110に沿って長手方向に設定されてよいことを、理解すべきである。
【0038】
図4eが、追加の炭素引き抜き材106および/またはガラス繊維プライなど、マンドレル108を覆う追加の繊維強化材料104の配置を示している。追加の引き抜き材106は、桁ビーム構造40の反対側の桁キャップに構造的な剛性および強度をもたらす。通気配管134は、マンドレル108の上に配置された繊維強化材料104を通って延び、あるいはそのような繊維強化材料104の間を延びる。
【0039】
さらに、図4eは、追加の繊維強化材料104の上部に折り返されてシールされた剥離層118、膜116、およびブリーザ層124を示している。通気配管134も、層118、116、124を貫いて延びる。
【0040】
図4fにおいて、第2の金型ツール112(金型キャップ)が、繊維/マンドレルの積層を覆って設置される。通気配管134も、金型ツール112のポートを通って延びる。金型ツール112には真空ポート138が構成されている。樹脂注入のプロセスにおいて金型110/112内を真空に引くために、複数の真空ポート138を設けてもよいと理解される。
【0041】
樹脂の注入および硬化のプロセスは、図4fの構成で行われ、樹脂は、1つ以上の真空ポート138を通って金型110/112内が真空に引かれるときに、1つ以上の樹脂注入部位136を通って注入される。マンドレル108の周囲が真空に引かれているとき、繊維強化材料104の中および周囲の空気は、樹脂が膜116に対して引き込まれ/注入されるにつれて、膜116を通って排出される。気密層126によって囲まれたマンドレル空間は、通気配管134を介して通気される。乾燥積層材料が占める空間から既存の空気が排気されるとき、大気が通気配管134を通って気密層とマンドレルとの間の空間に引き込まれ、したがって気密層126を膨張させる。乾燥積層材料は真空下で固化する(したがって、それらの厚さが特定の時間期間において減少する)ため、気密層126とマンドレルとの間の空間は、それに応じて膨張する。
【0042】
樹脂が硬化した後に、金型ツール112が取り外され、複合構造102が金型ツール110から取り出される。マンドレル108が、複合構造102の開放端を通って取り出される。通気配管134が取り除かれる。剥離層118、膜116、およびブリーザ層124が、複合構造102の周囲から取り除かれる。この時点で、複合構造102について任意の数の仕上げ処理を実行することができる。
【0043】
特定の実施形態において、膜116は、図示の実施形態のように、繊維強化材料104およびマンドレル108を完全に囲むことができる。他の実施形態においては、膜116を、例えば樹脂が完全には注入されない既知の空隙領域など、マンドレル108の周りの個別の位置にのみ配置してもよい。この点に関して、本方法は、金型ツール110/112内の樹脂の流れのパターンを予測するステップと、樹脂が金型ツール110/112内で「最後に充てん」する1つ以上の空隙(まったく充てんされないかもしれない空隙を含む)を識別するステップとを含むことができる。次いで、膜116を、繊維強化材料104およびマンドレル108を膜116の内側に完全に囲むことなく、最後に充てんされる空隙に対応する位置で金型110内に配置することができる。この構成は、それが膜116の使用を最も必要とされる領域のみに最小化するという点で、コストの観点から有益であり得る。
【0044】
さらに、本方法は、真空が空隙の場所において直接引かれ、樹脂が空隙へとさらに引き込まれるように金型ツール110/112の真空ポート138を最後に充てんされる空隙に対応する位置に配置するステップをさらに含むことができる。
【0045】
上述したように、初期の金型ツール110が図面においては雌型ツールとして示されているが、方法100は、雄型ツールにおいても同様に容易に実行することができ、本発明は、金型ツール110/112の種類または構成によって限定されないことを、理解すべきである。
【0046】
やはり上述したように、本発明は、方法100によって形成される複合構造102の種類または構成によって限定されない。特定の実施形態において、複合構造102は、箱形ビーム構造であり、樹脂の硬化後に、マンドレル108は、箱形ビーム構造の端部の開口部を通って引き出される。図5aおよび図5bを参照すると、複合構造102は、閉じたビーム端部120およびより狭い開いたビーム端部122を有する風力タービンロータブレード28用の先細りの箱形桁構造40(図2および図3)であってよい。この実施形態において、マンドレル108を、発泡体材料などの圧縮性材料で形成することができ、方法100は、マンドレル108を箱形ビーム構造のより狭い開口部122を通って引き出す前に、マンドレル108について真空に引いて、マンドレルを圧縮するステップを含む。真空源130を使用し、マンドレル108を取り囲む気密層内の通気口134または別の真空ポート132を介して真空に引き、マンドレル108の圧縮および収縮をもたらすことができる。気密層126は、例えば、発泡体材料を覆って噴き付けまたは他のやり方で付着された弾性材料であってよく、あるいは発泡体材料が挿入される弾性バッグ、ラッピング、またはスリーブであってよい。
【0047】
マンドレル108の全部または一部を形成するために使用される圧縮性材料の種類は、さまざまであってよい。特定の実施形態において、圧縮性材料は、繊維材料の積層および硬化のプロセスにおいて自身の所定の形状を維持するための充分な剛性を持つ中立状態を有する任意の適切な固体ポリマー発泡体材料であってよい。特定の実施形態において、固体発泡体材料は、とくにはコストを考慮して、連続気泡発泡体材料であってよい。固体発泡体材料は、独立気泡発泡体材料であってもよく、独立気泡発泡体材料は、一般に、連続気泡発泡体よりも剛性が高いが、著しく高価である。さらに、独立気泡発泡体が利用される場合、独立気泡発泡体は、マンドレル108を構造部品102から取り外すために、真空の適用によって充分に圧縮可能でなければならない。
【0048】
本明細書は、例を用いて、本発明を最良の態様を含めて開示すると共に、あらゆる装置またはシステムの作製および使用ならびにあらゆる関連の方法の実行を含む本発明の実施を当業者にとって可能にする。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者であれば想到できる他の例を含むことができる。そのような他の例は、それらが特許請求の範囲の文言から相違しない構造要素を含んでおり、あるいは特許請求の範囲の文言から実質的には相違しない同等の構造要素を含んでいる場合、特許請求の範囲の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0049】
28 ジョイント式ロータブレード、風力タービンブレード、分割式ロータブレード
30 第1のブレードセグメント
32 第2のブレードセグメント
34 翼弦方向ジョイント、ジョイント線
36 内部支持構造
40 桁ビーム構造、箱型桁構造
42 桁部分
44 桁ビーム構造、せん断ウェブ
46 負圧側桁キャップ
48 正圧側桁キャップ
52 ボルト管
54 端部構造
102 中空複合構造、構造部品
104 繊維強化材料
106 炭素引き抜きロッド、炭素引き抜き材、繊維強化材料
107 繊維マットまたはボード、繊維強化材料
108 マンドレル
110 金型ツール
112 金型ツール
114 圧縮性材料
116 膜、膜材料、層
118 剥離層
120 より大きな閉鎖端、閉じたビーム端部
122 より小さな開放端、開いたビーム端部、開口部
124 ブリーザ層
126 気密層
130 真空源
132 真空ポート
134 通気配管、通気口
136 注入/導入部位
138 真空ポート
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図5a
図5b
【国際調査報告】