IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベー.エル.アー.ハー.エム.エス ゲーエムベーハーの特許一覧 ▶ ユニヴェルシタッツピタル バーゼルの特許一覧

特表2022-520931夜尿症の患者の治療応答を予測する方法
<>
  • 特表-夜尿症の患者の治療応答を予測する方法 図1
  • 特表-夜尿症の患者の治療応答を予測する方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-04
(54)【発明の名称】夜尿症の患者の治療応答を予測する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20220328BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20220328BHJP
   A61K 38/095 20190101ALI20220328BHJP
【FI】
G01N33/53 B
A61P13/02
A61K38/095 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543541
(86)(22)【出願日】2020-01-27
(85)【翻訳文提出日】2021-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2020051899
(87)【国際公開番号】W WO2020156988
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】19154045.9
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509091332
【氏名又は名称】ベー.エル.アー.ハー.エム.エス ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】521330839
【氏名又は名称】ユニヴェルシタッツピタル バーゼル
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】シュターデ,カトリン
(72)【発明者】
【氏名】キリスト-クライン,ミルヤム
【テーマコード(参考)】
4C084
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DB29
4C084NA20
4C084ZA81
(57)【要約】
本発明は、単一症候性夜尿症の治療を受ける対象が上記治療に応答するかを予測する方法であって、1回目に得られた上記対象の第1の試料中のプレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)又はその断片の第1のレベル(c1)を決定する工程と、2回目に得られた上記対象の第2の試料中のプレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)又は上記その断片の第2のレベル(c2)を決定する工程と、を含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一症候性夜尿症の治療を受ける対象が、前記治療に応答するかを予測する方法であって、
(i)1回目に得られた前記対象の第1の試料中のプレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)又はその断片の第1のレベル(c1)を決定する工程、
(ii)2回目に得られた前記対象の第2の試料中のプレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)又は前記その断片の第2のレベル(c2)を決定する工程、を含み、
a)前記1回目が、最低8時間の一晩絶食後、かつ午前6時~午前9時の間であり、前記2回目が、同日の午後6時~午後9時の間であり、
前記第1のレベルと前記第2のレベルとの比率(c1/c2)が、≧1.00である場合、前記対象は、前記治療に応答すると予測され、
b)前記1回目が、午後6時~午後9時の間であり、前記2回目が、最低8時間の一晩絶食後の翌朝の午前6時~午前9時の間であり、
前記第1のレベルと前記第2のレベルとの比率(c1/c2)が≦1.00である場合、前記対象は、前記治療に応答すると予測される、方法。
【請求項2】
前記断片が、コペプチン、アルギニンバソプレシン(AVP)、又はニューロフィジンIIである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記断片が、コペプチンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記治療が、デスモプレシン又はそのいかなる誘導体による治療である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が、5~17歳、好ましくは5~16歳、より好ましくは6~16歳、より好ましくは6~11歳である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1及び第2の試料が、体液、好ましくは血液、血漿、又は血清、より好ましくは血漿又は血清の試料である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記プレプロ-AVP又は前記その断片、好ましくはコペプチンのレベルが、発光イムノアッセイ(LIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、化学発光及び蛍光イムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(EIA)、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、発光系のビーズアレイ、磁気ビーズ系のアレイ、タンパク質マイクロアレイアッセイ、迅速試験形式、並びに希土類クリプテートアッセイからなる群から選択される方法を用いて決定される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、
a)前記第1及び第2の試料を、
(i)プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第1のエピトープに特異的な第1の抗体又はその抗原結合断片若しくは誘導体、及び
(ii)プレプロ-AVP又は前記その断片、好ましくはコペプチンの第2のエピトープに特異的な第2の抗体又はその抗原結合断片若しくは誘導体と、接触させる工程;、
b)前記第1及び第2の抗体又はその抗原結合断片若しくは誘導体と、プレプロ-AVP又は前記その断片、好ましくはコペプチンとの結合を検出する工程;、を含む、イムノアッセイであり、
場合によっては、前記第1の抗体及び前記第2の抗体が、液体反応混合物中に分散して存在し、蛍光若しくは化学発光の消光又は増幅に基づく標識系の一部である第1の標識成分が、前記第1の抗体に結合し、前記標識系の第2の標識成分が、前記第2の抗体に結合し、これにより、両方の抗体のプレプロ-AVP又は前記その断片、好ましくはコペプチンへの結合後、測定溶液中の得られたサンドイッチ複合体の検出を可能にする測定可能なシグナルが発生する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8に記載の方法に応答性があると決定されている対象に投与される、前記単一症候性夜尿症の治療に用いるデスモプレシン。
【請求項10】
対象における単一症候性夜尿症を治療する方法であって、デスモプレシンが、請求項1~9に記載の方法において、デスモプレシン治療に対する応答者であると決定されている対象に投与される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一症候性夜尿症(monosymptomatic nocturnal enuresis)の治療を受ける対象が上記治療に応答するかを予測する方法に関する。予測は、1回目の対象の第1の試料中のプレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)又はその断片の第1のレベルと、2回目の対象の第2の試料中のプレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)又はその断片の第2のレベルと、に基づく。
【背景技術】
【0002】
夜尿症(遺尿症、おねしょ(bedwetting)ともいう)は、通常膀胱制御が始まる年齢以降の睡眠中の不随意排尿である。ほとんどの小児は、4~7歳までに膀胱制御を達成する。単一症候性夜尿症(「単一症候性夜間遺尿症(monosymptomatic enuresis nocturna)」、略してMNE又はMENとしても知られる)は、小児によく見られる問題であり、7歳児の7~10%が罹患しているといわれる。MENは、その負担及び偏見のため、しばしば心理社会的問題をもたらす。夜間に尿を収容する膀胱の容量と夜間尿の生成との間の不一致と、その際に小児が目を覚まさないことが、遺尿発現の前提条件である(非特許文献1)。
【0003】
唯一の利用可能な医学的選択肢は、バソプレシン類似体のデスモプレシン(Desmopressin)である。遺尿症は膀胱容量を超えたときにのみ起こることが示されているため、この治療は、夜間の尿産生を機能的な膀胱容量以下の量に抑えることを目的とする(非特許文献2)。ただし、文献によると、90%以上の遺尿症の減少と定義される良好な治療反応を示すのは、患者の3分の1にすぎない(非特許文献3)。その結果、デスモプレシンを20~60μgの用量で4~12週間投与したにもかかわらず、3分の2の患者が夜尿症に対する治療に失敗する(デスモプレシン非応答者と定義される)。
【0004】
さらに、デスモプレシンによる治療は高価であり、小児を病気にする心理社会的圧力をもたらす場合がある。特に、治療に対する非応答者は、遺尿症の症状に悩まされる。さらに、潜在的な副作用として、水中毒や高血圧症等の危険性がある。したがって、デスモプレシン治療は、デスモプレシン治療の持続的利益の可能性が高い患者にのみ投与する必要がある。このことは、デスモプレシン治療を治療効果が良好な可能性の高い小児に限定するには、治療成功の予測因子が重要であり、早急に必要であることを意味する。ここで、アルギニンバソプレシン(AVP)は、水分バランスを調節する有力なホルモンであり、いくつかの研究では、夜の低いAVPレベルとその結果としての夜尿症との相関関係が示されている(非特許文献2、4及び5)。より具体的には、正常な対象と比較して、遺尿症の対象は、AVPの昼から夜へのレベルがわずかに増加するのみで、日内変動は有意により低い。例えば、非特許文献は、血漿アルギニンバソプレシン(AVP)の概日リズムを、6~17歳の78人の小児におけるデスモプレシン応答及び遺尿症状態と相関させた。遺尿症及びデスモプレシンに応答する患者は、遺尿症を有しない患者と比較して、アルギニンバソプレシン欠乏が夜間に最も顕著であった。残念ながら、AVPは、その不安定さのため測定が困難である(非特許文献7)。そのため、多くの検査法で血漿中のAVP濃度を測定することは信頼性に欠ける。循環におけるAVPの90%超が血小板に結合し、迅速に除去されるため、結果として、未処理の血液試料を長期間保管する場合に、AVPレベルが過小評価される。したがって、小児科では、AVPの測定値が臨床的に用いられることはめったにない。非特許文献8は、単一症候性夜尿症及び夜間多尿症の24人の小児におけるデスモプレシン治療の成果を予測するために、バソプレシン用の代理マーカーとして、バイオマーカーの尿中アクアポリン2及び血漿コペプチンを評価した。
【0005】
単一症候性夜尿症の治療を受ける対象が上記治療に応答するかを予測する確実な手段及び方法は、現在利用できない。
【0006】
したがって、本発明の技術的問題は、単一症候性夜尿症の治療を受ける対象が上記治療に応答するかを予測する手段及び方法の提供である。
【0007】
当該技術的問題は、本明細書の以下に提供され、添付の特許請求の範囲において特徴付けられるような、実施形態を提供することによって解決される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Kamperis et al.(2006),Am J Physiol Renal Physiol 291:F1232-F1240
【非特許文献2】Rittig et al.(1989),J Am Physiol Soc,256:F664-F671
【非特許文献3】Tauris et al.(2012),J Ped Urol 8:285-290
【非特許文献4】Evans and Meadow(1992),Archives of Disease in Childhood,67:184-188
【非特許文献5】Nalbantoglu et al.(2013),Urology 82:1120-1124
【非特許文献6】Rittig et al.J Urol.2008;179(6):2389-95
【非特許文献7】Robertson (2001),Endocrinol Metab Clin North Am 30:671-94
【非特許文献8】Hara et al.J Urol.2017;198(4):921-927)
【発明の概要】
【0009】
本発明は、夜尿症、特に単一症候性夜尿症の治療を受ける対象が、前記治療に応答するかを予測する方法であって、以下の:
(i)1回目に得られた上記対象の第1の試料中のプレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)又はその断片、好ましくはコペプチンの第1のレベル(c1)を決定する工程、
(ii)2回目に得られた上記対象の第2の試料中のプレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)又は上記その断片、好ましくはコペプチンの第2のレベル(c2)を決定する工程、を含み、ここで、
a)前記1回目が、最低8時間の一晩絶食後、かつ午前6時~午前9時の間であり、上記2回目が、同日の午後6時~午後9時の間であり、
上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率(c1/c2)が、≧1.00である場合、上記対象は、上記治療に応答すると予測されるか;又は
b)上記1回目が、午後6時~午後9時の間であり、上記2回目が、最低8時間の一晩絶食後の翌朝の午前6時~午前9時の間であり、上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率(c1/c2)が、≦1.00である場合、上記対象は、上記治療に応答すると予測される、方法に関する。
【0010】
他の態様では、本発明は、夜尿症、特に単一症候性夜尿症の治療を受ける対象が、上記治療に応答するかを予測する方法であって、以下の:
(i)1回目に得られた上記対象の第1の試料中のプレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)又はその断片、好ましくはコペプチンの第1のレベル(c1)を決定する工程、
(ii)2回目に得られた上記対象の第2の試料中のプレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)又は上記その断片、好ましくはコペプチンの第2のレベル(c2)を決定する工程、を含み、
a)上記1回目が、最低8時間の一晩絶食後、かつ午前6時~午前9時の間であり、上記2回目が、同日の午後6時~午後9時の間であり、
上記第1のレベルと上記第2のレベルとの差(c1-c2)が、≧0.5pg/mlである場合、上記対象は、上記治療に応答すると予測されるか、又は
b)上記1回目が、午後6時~午後9時の間であり、上記2回目が、最低8時間の一晩絶食後の翌朝の午前6時~午前9時の間であり、上記第1のレベルと上記第2のレベルとの差(c1-c2)が、≦-0.5pg/mlである場合、上記対象は、上記治療に応答すると予測される、方法に関する。
【0011】
両態様は組み合わされてよく、すなわち、特定の態様では、上記比率の決定に加えて、上記差を決定し、両方の値を、上記治療に対する対象の応答の指標として用いる。
【0012】
本発明の方法の好ましい態様では、上記断片は、コペプチン、アルギニンバソプレシン(AVP)、又はニューロフィジンIIである。本発明の方法の特に好ましい態様では、上記断片は、コペプチンである。
【0013】
本発明の方法の好ましい態様では、上記治療は、デスモプレシン又はそのいかなる誘導体による治療である。
【0014】
本発明の方法の好ましい態様では、上記対象は、5~17歳、好ましくは5~16歳、より好ましくは6~16歳、より好ましくは6~11歳である。
【0015】
本発明の方法の好ましい態様では、上記第1及び第2の試料は、体液、好ましくは血液、より好ましくは血漿又は血清の試料である。
【0016】
本発明の方法の好ましい態様では、上記プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンのレベルは、発光イムノアッセイ(LIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、化学発光及び蛍光イムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(EIA)、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、発光系のビーズアレイ、磁気ビーズ系のアレイ、タンパク質マイクロアレイアッセイ、迅速試験形式、並びに希土類クリプテートアッセイからなる群から選択される方法を用いて決定される。
【0017】
本発明の方法の好ましい態様では、前記方法は、以下の:
a)第1及び第2の試料を、以下の:
(i)プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第1のエピトープに特異的な第1の抗体又はその抗原結合断片若しくは誘導体、及び
(ii)プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第2のエピトープに特異的な第2の抗体又はその抗原結合断片若しくは誘導体
と、接触させる工程、
b)第1及び第2の抗体又はその抗原結合断片若しくは誘導体と、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンとの結合を検出する工程、
を含む、イムノアッセイであり、
場合によっては、第1の抗体及び第2の抗体が、液体反応混合物中に分散して存在し、蛍光若しくは化学発光の消光又は増幅に基づく標識系の一部である第1の標識成分が、第1の抗体に結合し、上記標識系の第2の標識成分が、第2の抗体に結合し、これにより、両抗体のプレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンへの結合後、測定溶液中の得られたサンドイッチ複合体を検出しうる測定可能なシグナルが発生する。
【0018】
一態様では、本発明は、夜尿症、特に単一症候性夜尿症の治療に用いるデスモプレシンであって、本発明による方法において応答性があると決定された対象に投与される、デスモプレシン、に関する。
【0019】
一態様では、本発明は、対象における、夜尿症、特に単一症候性夜尿症を治療する方法であって、本発明による方法において、デスモプレシン治療に対する応答者であると決定された対象に、デスモプレシンが投与される、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】単一症候性夜尿症の治療を受ける対象の試料の治療応答者及び非応答者における朝のコペプチン/晩のコペプチン比率の変化を、朝のコペプチンレベルと晩のコペプチンレベルとの比率で示す。デスモプレシンによる治療前のベースラインで、第1のレベルの朝のコペプチンは午前8時に測定され、第2のレベルの晩のコペプチンは午後8時~午後10時の間に測定された。治療応答あり(応答者)及び治療応答なし(非応答者)は、デスモプレシンによる4週間の治療後に決定された。応答者と非応答者との比率(朝のコペプチン/晩のコペプチン)の中央値を、表2に示す。
図2】単一症候性夜尿症の治療を受ける対象の試料の治療応答者及び非応答者における朝のコペプチン-晩のコペプチンレベルの振幅における変化を、差分コペプチン、すなわち朝のコペプチンレベルから晩のコペプチンレベルを減算したもので示す。デスモプレシンによる治療前のベースラインで、第1のレベルの朝のコペプチンは午前8時に測定され、第2のレベルの晩のコペプチンは午後8時~午後10時の間に測定された。治療応答あり(応答者)及び治療応答なし(非応答者)は、デスモプレシンによる4週間の治療後に決定された。応答者と非応答者との差分(朝のコペプチン-晩のコペプチン)の中央値を、表2に示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の目的は、夜尿症、特に単一症候性夜尿症(MEN)の治療を受ける対象が上記治療に応答するかを予測するインビトロ方法を提供することであり、治療、特にデスモプレシン療法を受ける対象者が良好な治療反応を示す可能性が高いかどうかの判断において、医療従事者に信頼できる情報を提供する方法を提供することである。この文脈では、文献によると、夜尿症の90%超の減少と定義される良好な治療応答を示すのは、患者の3分の1のみである(非特許文献3)。したがって、夜尿症、特にMENを有し、デスモプレシンに応答する患者を特定する手段及び方法が必要とされる。さらに、デスモプレシンは心理社会的問題、高額な費用、並びに水中毒及び高血圧等の潜在的に危険な副作用をもたらす場合があるため、デスモプレシン治療は、デスモプレシン治療からの持続的利益の可能性が高いこれらの患者にのみ投与する必要がある。
【0022】
デスモプレシンは、1-デアミノ-8-D-アルギニンバソプレシンであり、通常は酢酸塩として配合される。それは、1-(3-メルカプトプロピオン酸)-8-D-アルギニン-バソプレシン、1-デスアミノ-8-D-アルギニンバソプレシン、dDAVP、デスモプレシナ(Desmopresina)、デスモプレシン、デスモプレシナム(Desmopressinum)を含む、いくつかの同義語を有する。デスモプレシン含有薬剤についての商品名としては、Adin(登録商標)、Desmogalen(登録商標)、Desmospray(登録商標)、Desmotabs(登録商標)、Minirin(登録商標)、Nocutil(登録商標)、Novidin(登録商標)、Octostim(登録商標)、Diuretin(登録商標)、DesmoMelt(登録商標)、及びStimate(登録商標)が挙げられる。デスモプレシンは、例えば、本明細書の以下でさらに概説するように、経鼻、経口(どちらも好ましい)、又は静脈内に投与することができる。
【0023】
本明細書における夜尿症は、特に、単一症候性夜尿症(MEN)、すなわちさらなる症状のない夜尿症である。特に、用語「単一症候性夜尿症」は、不十分なバソプレシン放出によっておこる夜尿症をいう。単一症候性夜尿症は、生理的発達が遅れているか不完全な小児で起こる場合がある。
【0024】
特に、対象は昼間遺尿症、又はコペプチン等のプレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)若しくはその断片のレベルに影響を与える因子がない。そのような因子としては、下部尿路症状及び感染症、尿路の構造的異常、慢性疾患、特に、腎不全、高血圧、先天性心疾患、糖尿病、並びに尿崩症が挙げられる。用語「単一症候性夜尿症」、「単一症候性夜間遺尿症」、「MEN」、及び「MNE」は、本明細書では同義的に用いられる。
【0025】
本発明は、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象の試料中のプレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)レベル又はその断片、特にコペプチンの日内振幅の大きさと医学的治療に対する上記対象の応答性との間に関連があるという驚くべき発見に基づく。本文脈では、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象が上記治療に応答するかを予測する、プレプロ-AVP又はその断片、特にコペプチンのレベルを測定することを含む高感度かつ正確なアッセイが、本発明によって提供される。したがって、本発明の主題は、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象が上記治療に応答するかを予測するインビトロ方法である。本発明のさらなる主題は、高感度かつ正確なコペプチンアッセイである。添付の実施例では、臨床研究の結果が記載される。この臨床研究は、ベースラインでの、コペプチンによって反映されたプレプロ-AVPの大きさ日内振幅が、デスモプレシンによる治療に対する対象の応答と予想外に強い関連があることを示す。さらに、この研究は、コペプチンによって反映されたベースラインでの日内プレプロ-AVPの第1のレベルと第2のレベルとの計算された差又は比率が、デスモプレシン治療によって反映された、成功的治療の可能性を予測することを示した。
【0026】
より具体的には、本発明は、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象が上記治療に応答するかを予測する方法であって、この方法は、1回目に得られた上記対象の第1の試料中のプレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)又はその断片、好ましくはコペプチンの第1のレベル(c1)を決定することと、2回目に得られた上記対象の第2の試料中のプレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)又は上記その断片、好ましくはコペプチンの第2のレベル(c2)を決定することと、を含む、方法に関する。
【0027】
通常、プレプロ-AVP又はその断片の上記第1のレベルは、最低8時間の一晩絶食後、かつ午前6時~午前9時の間に得られ、プレプロ-AVP又はその断片の上記第2のレベルは、同日の午後6時~午後9時の間に得られる。すべての時間は、対象が住んでいる場所のローカルタイムゾーンに従う。本明細書では、上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率(c1/c2)が≧1.00である場合、上記対象は、上記治療に応答すると予測される。特に、上記第1のレベルと上記第2のレベルとの差(c1-c2)が≧0.5pg/mlである場合、上記対象は、上記治療に応答すると予測される。それにより、上記振幅は、治療前、又は治療開始中若しくは治療開始後にベースラインで測定されうる。好ましくは、上記振幅は、治療前のベースラインで測定されうる。
【0028】
同様に、本発明は、夜尿症、特に単一症候性夜尿症の治療を受ける対象が、上記治療に応答するかを予測する方法であって、(i)1回目に得られた上記対象の第1の試料中のプレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)又はその断片、好ましくはコペプチンの第1のレベル(c1)を決定する工程、(ii)2回目に得られた上記対象の第2の試料中のプレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)又は上記その断片、好ましくはコペプチンの第2のレベル(c2)を決定する工程、を含み、
上記1回目が、午後6時~午後9時の間であり、上記2回目が、最低8時間の一晩絶食後の翌朝の午前6時~午前9時の間であり、
上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率(c1/c2)が≦1.00である場合、上記対象は、上記治療に応答すると予測され、同様に、上記第1のレベルと上記第2のレベルとの差(c1-c2)が≦-0.5pg/mlである場合、上記対象は、上記治療に応答すると予測される、方法に関する。
【0029】
例えば、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象が上記治療に応答するかを予測する方法は、(i)1回目に得られた上記対象の第1の試料中のコペプチンの第1のレベル(c1)を決定することと、(ii)2回目に得られた上記対象の第2の試料中のコペプチンの第2のレベル(c2)を決定することと、を含む、方法であって、コペプチンの上記第1のレベルが、最低8時間の一晩絶食後、かつ午前6時~午前9時の間に得られ、コペプチンの上記第2のレベルが、同日の午後6時~午後9時の間に得られ、上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率(c1/c2)が>1.00である場合、上記対象は、上記治療に応答すると予測される、方法に関する。
【0030】
本明細書に開示し、添付の実施例に示すように、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの上記第1及び上記第2のレベルは、治療前のベースラインで測定することができる。したがって、本発明の方法の文脈では、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの上記第1及び上記第2のレベルは、上記治療の開始前の夜尿症、特にMENの治療を受ける対象の試料中で決定されうる。対象が治療に応答すると予測された場合、例えば、最低8時間の一晩絶食後、かつ午前6時~午前9時の間に得られた上記第1のレベルと、同日の午後6時~午後9時の間に得られた上記第2のレベルとの比率(c1/c2)が≧1.00である場合、対象のみが、夜尿症、特にMENの治療を受けることができる。他の例として、対象が治療に応答すると予測された場合、例えば、最低8時間の一晩絶食後、かつ午前6時~午前9時の間に得られた上記第1のレベルと、同日の午後6時~午後9時の間に得られた上記第2のレベルとの差(c1-c2)が≧0.5pg/mlである場合、対象のみが、夜尿症、特にMENの治療を受けることができる。
【0031】
プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第1及び第2のレベルは、本明細書で詳細に例示的に概説するように、当該技術分野において公知の方法によって決定することができる。
【0032】
プレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)レベル又はその断片、特にコペプチンの検出のための機能アッセイの感度は、特に5pg/ml未満、より好ましくは4pg/ml以下、さらにより好ましくは3pg/ml以下、最も好ましくは2pg/ml以下でありうる。例えば、機能的感度は、4.34pg/mlでありうる。一実施形態では、プレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)レベル又はその断片、特にコペプチンの検出のための機能アッセイの感度は、4pg/ml以下でありうる。他の実施形態では、プレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)レベル又はその断片、特にコペプチンの検出のための機能アッセイの感度は、3pg/ml以下でありうる。機能アッセイの感度(FAS)は、20%のアッセイ間変動係数(CV)で測定することができるアッセイの最低濃度として定義される(Spencer CA.1989.J Clin Immunoassay 12:82-9)。そのような機能アッセイが低感度であることで、プレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)レベル又はその断片、特にコペプチンと、夜尿症、特に単一症候性夜尿症の治療を受ける対象が上記治療に応答するかの予測との相関が可能になりうる。例えば、機能アッセイが低感度であることで、夜尿症、特に単一症候性夜尿症の治療を受ける対象が上記治療に応答するかの予測が可能になり得、プレプロAVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第1及び第2のレベルは、上記治療前に測定される。
【0033】
プレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)レベル又はその断片、特にコペプチンの検出のためのアッセイの検出限界は、特に100pg/ml未満、好ましくは10pg/ml以下、さらにより好ましくは3.00pg/ml以下、最も好ましくは2.77pg/ml以下でありうる。検出限界(LOD)は、所与の分析方法で確実に検出することができる成分の最低量又は濃度として定義される(MacDougall et al.1980.Analytical Chemistry 52:2242-49)。検出限界がそのように低いため、プレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)レベル又はその断片、特にコペプチンと、夜尿症、特に単一症候性夜尿症の治療を受ける対象が上記治療に応答するかの予測との相関が可能になりうる。例えば、検出限界が低いため、夜尿症、特に単一症候性夜尿症の治療を受ける対象が上記治療に応答するかの予測が可能になり得、プレプロAVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第1及び第2のレベルは、上記治療前に測定される。
【0034】
他の例として、本明細書に記載の機能アッセイの低感度及び本明細書に記載の低検出限界により、夜尿症、特に単一症候性夜尿症の治療を受ける対象が上記治療に応答するかの予測が可能になり得、プレプロAVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第1及び第2のレベルが上記治療前に測定される。
【0035】
例えば、免疫蛍光アッセイは、プレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)レベル又はその断片、特にコペプチンの検出に用いられうる。本発明の方法に用いることができる免疫蛍光アッセイとしては、Thermo Scientific(商標)のBRAHMS(商標)Copeptin pro AVP免疫蛍光アッセイが挙げられるが、これに制限されない。そのようなアッセイは、例えば、Morgenthaler et al.2008.Trends in Endocrinology and Metabolism 19(2):43-9、Mockel et al.2015.Eur Heart J.36(6):369-376、Timper et al.2015.J Clin Endocrinol Metab.100(6):2268-74、Roffi et al.2015.Eur Heart J.and Winzeler et al.2015.J Clin Endocrinol Metab.http://dx.doi.org/10.1210/jc.2014-4527に記載される。
【0036】
本発明の方法に従って用いられる用語「夜尿症、特に単一症候性夜尿症の治療を受ける対象が上記治療に応答するかを予測すること」は、治療中及び/又は治療後に、(単一症候性)夜尿症の患者が上記治療に応答する可能性を特定することをいう。これはまた、上記対象について、回復の見込みがある(応答者)又は回復の見込みがない(非応答者)の推定を含んでよい。本文脈では、治療中及び/若しくは治療後の夜尿症、特にMENの状態又は病態は、治療前の病態と比較されてよい。夜尿症、特にMENの病態を決定する方法は、当該技術分野で周知であり、夜に遺尿症をした日数及び/又は一晩あたりの遺尿症の回数の決定が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
応答は、症状の強さの変化及び/若しくは個々の症状の再発の頻度、並びに/又は本明細書に記載するような、プレプロ-AVPレベル又はその断片、特にコペプチンの変化によって示された、症状の部分的な緩和から症状の完全な寛解までの範囲でありうる。例えば、治療に対する応答は、遺尿症の減少によって示される。本発明の一態様では、週あたりの夜間の尿漏れがあった日数が少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%減少した場合、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象は、治療に応答する。本発明の他の態様では、上記対象が少なくとも10日間、好ましくは少なくとも12日間、より好ましくは少なくとも14日間連続して夜間の尿漏れがない場合、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象は、治療に応答する。
【0038】
治療直後又は一定期間後に応答が起こる場合がある。例えば、治療後4週間で応答が起こる場合がある。他の例では、治療後12週間で応答が起こる場合がある。本発明の一態様では、夜尿症、特にMENの患者における応答は、治療後4週間で起こる。好ましくは、夜尿症、特にMENの患者における応答は、治療後12週間で起こる。より好ましくは、夜間の尿漏れがあった日数が治療後4週間で90%減少した場合、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象は、治療に応答する。本発明の他の態様では、治療後4週間で14日間連続して夜間の尿漏れがない場合、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象は、治療に応答する。さらにより好ましくは、夜間の尿漏れがあった日数が治療後12週間で90%減少した場合、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象は、治療に応答する。本発明の他の態様では、治療後12週間で14日間連続して夜間の尿漏れがない場合、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象は、治療に応答する。
【0039】
夜尿症、特にMENの治療を受ける対象が治療に応答するかの予測は、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの上記第1のレベルと上記第2のレベルとの差若しくは上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率の閾値又はカットオフ値の決定によって見積ることができる。これにより、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象が治療に応答するかを予測する各々のカットオフ値は、対象又は複数の対象の1つ以上の試料中のプレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの測定値をいい、対象は、治療に応答するか、又は応答しない。
【0040】
プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチン等のマーカーもしくバイオマーカーの第1のレベルと第2のレベルとの差、又は上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率に関連する本明細書に開示されるすべての値は、一定のカットオフに「等しい若しくはそれを超える」又は一定のカットオフ「未満」と理解されるべきである。例えば、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第1のレベルと第2のレベルとの少なくとも0.5の差に関連する態様は、0.5のカットオフ値に等しい又はそれを超える、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンのレベルに関連するものと理解されるべきである。逆に、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンのレベルに関する実施形態は、0.5のカットオフ値未満の、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンのレベルに関連するものと理解されるべきである。
【0041】
夜尿症、特にMENの治療を受ける対象の、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチン等のマーカー又はバイオマーカーの第1のレベルと第2のレベルとの差、又は上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率のカットオフ値は、当該技術分野で既知の以前に記載した方法によって決定することができる。例えば、カットオフ値を確立するために、定量アッセイの変動性を見積る際に変動係数を用いるための方法は、当業者に既知である(Reed et al.,Clin Diagn Lab Immunol.2002;9(6):1235-1239)。
【0042】
本発明の一態様では、カットオフ値は、治療に応答するであろう夜尿症、特にMENの治療を受ける対象から決定されうる。好ましくは、カットオフ値は、治療に応答するであろう夜尿症、特にMENの治療を受ける対象の母集団から決定されうる。より好ましくは、カットオフ値は、治療に応答するであろう夜尿症、特にMENの治療を受ける対象の母集団の中央値によって決定されうる。この場合、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの上記第1のレベルと上記第2のレベルとの差、又は上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率が上記カットオフ値に等しい又はそれを超える場合、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象の試料は、治療に応答する。逆に、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの上記第1のレベルと上記第2のレベルとの差、又は上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率が上記カットオフ値未満である場合、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象の試料は、治療に応答しない。
【0043】
プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの母集団平均レベルもカットオフレベルとして用いることができ、それによって、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象の、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチン等のマーカー又はバイオマーカーの第1のレベルと第2のレベルとの差、又は上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率は、対照母集団からのカットオフ値と比較され得、対照群は、夜尿症、特にMENの治療を受ける10人、20人、30人、40人、50人超、又はそれよりも多い対象を含むことが好ましい。
【0044】
本発明の一態様では、カットオフ値は、治療に応答しないであろう夜尿症、特にMENの治療を受ける対象から決定されうる。この場合、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの上記第1のレベルと上記第2のレベルとの差、又は上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率が上記カットオフ値未満である場合、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象の試料は、治療に応答しない。逆に、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの上記第1のレベルと上記第2のレベルとの差、又は上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率が上記カットオフ値に等しい又はそれを超える場合、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象の試料は、治療に応答する。
【0045】
加えて、確立された技法に従って参照レベル又はカットオフとして用いるための統計的に有意な値を示すために、機能アッセイの感度を決定することができる。研究所は、臨床的に関連するプロトコルによって、アッセイの機能的感度を独立して確立することが可能である。「機能的感度」は、変動係数(CV)が20%(又はいくつかの他の所定の%CV)を生じる濃度と見なすことができ、したがって低分析物レベルでのアッセイの精度の尺度である。したがって、CVは、標準偏差(SD)の標準化であり、少なくともアッセイのほとんどの有効範囲で、分析物の濃度の大きさに関係なく変動性の概算値が比較しうる。
【0046】
さらに、ROC分析に基づく方法を用いて、2つの臨床患者群間の統計的に有意差を決定することができる。受信者動作特性(ROC)曲線は、モデルの適合確率の並べ替え効率を測定して、応答レベルを並べ替える。ROC曲線はまた、診断試験の基準点の設定にも役立ちうる。対角線からの曲線が高いほど、適合度が高い。ロジスティック適合に3つ以上の応答レベルがある場合、一般化されたROC曲線を生成する。そのようなプロットには、各応答レベルの曲線があり、これは、他のすべてのレベルに対するそのレベルのROC曲線である。例えば、SASのJMP12、JMP13、Statistical Discovery等、好適な参照レベル及びカットオフを確立するため、この種類の分析ができるようにすることが可能なソフトウェアが利用可能である。
【0047】
カットオフ値は、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチン等のマーカー又はバイオマーカーの第1のレベルと第2のレベルとの差、又は上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率について同様に決定することができる。適切なカットオフを決定する文献、例えば、Terence Chanらの(Terence Chan et al.(Expert Rev.Mol.Diagn.2011;11(5),487.496)は、当業者に利用可能であり、これには、感度及び特異性に基づいて計算される正及び負の尤度比等の指標も診断試験の強度の見積りに有用であると記載される。一般的に、当該値は、複数のカットオフ値(CV)に対する受信者動作特性曲線としてグラフ化される。曲線下の面積の値を用いて、診断上最も妥当なCVを決定する。この文献は、CV(アッセイ及び研究デザインによるカットオフ値)の変動、及びカットオフ値を決定するための好適な方法について記載する。カットオフ値は、診断試験の基準点の設定にも役立ちうる。
【0048】
診断試験及び/又は予後試験の感度及び特異性は、試験の分析の「品質」依存するだけでなく、それらはまた、異常な結果を構成するものの定義にも依存する。実際には、受信者動作特性曲線(ROC曲線)は、「応答者」及び「非応答者」の母集団における変数の値とその相対頻度をプロットすることによって計算することができる。いかなる特定のマーカー(プレプロ-AVP又は上記その断片、好ましくはコペプチン等)も、応答者及び非応答者のマーカーレベルの分布は重複する可能性が高い。そのような条件下では、試験は応答者と非応答者を100%の精度で完全に区別することはなく、重複する面積は、試験が応答者と非応答者を区別することができない場所を示してよい。それより下では試験が非応答者を特定するように見なされ、それより上では試験が応答者を特定するように見なされ、又はそれを下回るかあるいは上回ると試験が他の特定の条件を示す、閾値が選択される。ROC曲線の下の面積は、知覚された測定値が状態の正しい識別を可能にするであろう確率の尺度である。試験結果が必ずしも正確な数を与えない場合でも、ROC曲線を用いることができる。結果をランク付けできる限り、ROC曲線を作成することができる。例えば、「非応答者」試料に関する試験の結果は、程度に応じてランク付けされうる(例えば、1=低い、2=正常、及び3=高い)。このランキングは、「応答者」母集団の結果と相関し、ROC曲線が作成される。これらの方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、Hanley et al.1982.Radiology 143:29-36を参照されたい。好ましくは、閾値は、約0.5より大きい、より好ましくは約0.7より大きい、さらにより好ましくは約0.8より大きい、さらにより好ましくは約0.85より大きい、及び最も好ましくは約0.9より大きいROC曲線面積を提供するように選択される。この文脈における用語「約」は、所与の測定値の+/-5%をいう。
【0049】
ROC曲線の横軸は(1-特異性)を表し、これは偽陽性率とともに増加する。曲線の縦軸は、感度を表し、これは真陽性率とともに増加する。したがって、選択された特定のカットオフについて、(1-特異性)の値が決定され得、そして対応する感度が得られうる。ROC曲線の下の面積は、測定されたマーカーレベルが状態の正しい識別を可能にするであろう確率の尺度である。したがって、ROC曲線下面積は試験の有効性の決定に用いることができる。
【0050】
本発明の文脈では、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチン等のマーカー又はバイオマーカーの第1のレベルと第2のレベルとの差、又は夜尿症、特にMENの治療を受ける対象が治療に応答するかを予測することができるレベルにあるか、若しくはそれを超える上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率は、陽性及び陰性の尤度比として理解することができる。したがって、陽性尤度は、治療に応答する対象として理解されるべきである。次に、陰性尤度は、治療に応答しない対象として理解されるべきである。したがって、上記比率又は値が一定のカットオフ値に等しいか、それを超える場合、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象の値は、治療に応答する。
【0051】
本明細書に開示されるプレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンのタンパク質レベルの値は、好ましくは、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象から得られた試料における測定値をいう。したがって、本明細書で開示する値は、用いられる検出/測定方法に応じてある程度変動することがあるか、又は異なる自動化システムによって変動することがあり、本明細書で開示する特定の値は、他の方法によって決定された対応する値を読み取ることも意図する。
【0052】
本明細書において、本発明の特定の態様では、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの上記第1のレベルと上記第2のレベルとの差が少なくとも0.5pg/ml、少なくとも0.6pg/ml、少なくとも0.7pg/ml、又は少なくとも0.8pg/mlであるとき、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象は、上記治療に応答すると予測される。あるいは、上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率(c1/c2)が少なくとも0.5、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも1.0、少なくとも1.1、少なくとも1.2、又は少なくとも1.3であるとき、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象は、上記治療に応答すると予測される。
【0053】
本発明による方法の一態様では、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象は、(まだ)治療されていない。本文脈では、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの少なくとも第2のレベルは、治療開始前の同日又はその3日以内に獲得しうる。特に、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第1のレベルは、最低8時間の一晩絶食後、かつ午前6時~午前9時の間に得られ、第2のレベルは、同日の午後6時~9時の間に得られ、治療は、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第2のレベルが対象から得られた直後に開始することができる。好ましくは、治療は、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第2のレベルが得られてから0~48時間後に開始される。例えば、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第2のレベルが得られてから48時間後に治療を開始することができる。
【0054】
あるいは、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第1のレベルは、午後6時~午後9時の間に得られ、上記第2のレベルは、最低8時間の一晩絶食後の翌朝の午前6時~午前9時の間に得られ、治療は、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第2のレベルが対象から得られた直後に開始される。これに関連して、治療は、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第2のレベルが得られた後、同日又は3日以内に開始することができる。好ましくは、治療は、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第2のレベルが得られてから0~48時間後に開始される。例えば、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第2のレベルが得られてから48時間後に治療を開始することができる。
【0055】
本発明による方法の他の態様では、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象(上記対象が上記治療に応答すると予測される)は、(すでに)治療されている。本文脈では、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第1及び第2のレベルは、治療が開始されてから4週間後に得られる。好ましくは、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第1及び第2のレベルは、治療が開始してから12週間後に得られる。より好ましくは、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第1及び第2のレベルは、治療が開始されてから4週間~12週間後に得られる。この場合、すでに実施されている治療を継続するか、又はプレプロ-AVP若しくはその断片、好ましくはコペプチンの第1のレベルと第2のレベルとの差又は比率に基づいて療法を適応させることができる。療法は、当該技術分野において既知の療法を適応させるためのいかなる従来の方法によっても適応させることを理解されたい。例えば、これに限定されないが、療法は、医学的治療のための薬剤の用量を増加させることによって、及び/又は薬剤投与間隔をより短くすることで適応させることができる。好ましくは、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象に投与される薬剤の用量を増加させる。
【0056】
本発明による方法の他の態様では、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象(上記対象が上記治療に応答しないと予測される)は、(すでに)治療されている。この場合、プレプロ-AVP若しくはその断片、好ましくはコペプチンの上記第1のレベルと上記第2のレベルとの差又は比率に基づいて、すでに実施されている治療を止めることができる。
【0057】
本発明の方法に従って用いられるとき、対象は、人間の小児、十代の若者、又は若年成人である。より好ましくは、対象は、5~17歳、好ましくは5~16歳、より好ましくは6~16歳、より好ましくは6~11歳である。
【0058】
用語「単一症候性夜尿症」は、睡眠中に不連続に起こる小児のいかなる遺尿症発現をいう。国際小児尿禁制学会(International Childern’s Continence Society)によると、夜尿症は、睡眠中に不連続に起こる5歳以上の小児の遺尿症発現と定義される。特に、遺尿症は単一症候性と非単一症候性の形態に分けられる。単一症候性夜尿症は、いかなる他の下部尿路症状がなく、膀胱機能障害の病歴がない小児の遺尿症と定義される。本明細書で用いられる「単一症候性夜尿症の治療を受ける対象」は、対象又は患者がMENと診断されたことを意味する。好ましくは、対象は、他の下部尿路症状、例えば、排尿の頻度の増加又は減少、昼間尿失禁、尿意切迫(urgency)、排尿開始困難(hesitancy)、腹圧排尿(straining)、微弱尿線(weak urinary stream)、断続排尿(intermittency)、習慣性排尿延期姿勢(voiding postponement maneuver)、残尿感(feeling of incomplete micturition)、排尿後尿滴下(post-micturition dribble)、及び性器又は下部尿路の疼痛がない状態でMENと診断される。夜尿症は、これらの症状のいずれかと遺尿症と組み合わせて、非単一症候性と定義する。単一症候性夜尿症は通常、一次性と二次性の形態に分けられる。夜間に遺尿しない十分な期間が達成していない小児は、一次性夜尿症である。夜尿症の小児の推定80%がこれに該当する。尿漏れのない期間が少なくとも6か月の後に遺尿症を発症した小児は、二次性夜尿症である。二次性夜尿症は、しばしば、小児の脆弱な時期に、異常にストレスの多い出来事(例えば、親の離婚、兄弟の誕生)に起因する。しばしば、便貯留及び準最適昼間排尿習慣が関連する(Neveus et al.(2006),J Urol 176:314.、von Gontard et al.(1999),Pediatr Nephrol 13:662)。遺尿症、特にMENを診断する方法は、当該技術分野で周知であり、尿検査、身体検査、及び遺尿症の頻度が挙げられるが、これらに限定されない。用語「診断」は、本明細書では一般的な用語として用いられ、別段の定義がない限り、特定の状態を特定するという意味での診断だけでなく、特に早期発見、未治療患者若しくは治療した患者のモニタリング、及び療法の経過、予後のモニタリングのための、及び未治療又は治療した患者の療法ガイダンスのための、特に一定の治療に対する応答者又は非応答者の特定のための、一定の状態又は一定の状態を有すると疑われるリスクがある無症候性又は高リスク母集団のスクリーニングも含むことを意図する。
【0059】
本明細書で用いられる用語「試料」は、患者又は対象から得られるか又は単離される、生物学的試料である。本明細書で用いられる「試料」は、例えば、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象が治療に応答するかを予測する目的で得られた体液若しくは組織、尿、又は唾液の試料をいう。本明細書では、上記試料は、体液、好ましくは血液、血漿、血清、より好ましくは血漿又は血清の試料である。本発明の好ましい態様では、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンのレベルは試料中で決定され、上記試料は血液、血清、又は血漿の試料である。最も好ましい態様では、マーカーは血漿試料中で決定される。さらに、当業者は、いくつかの試験試料が分画又は精製の手順、例えば、全血を血清又は血漿の成分に分離することに続いて、より容易に分析されることを理解するであろう。
【0060】
本発明の文脈における「血漿」は、遠心分離後に得られる抗凝固剤を含有する血液の実質的に無細胞の上清である。例示的な抗凝血剤としては、EDTA又はクエン酸塩等のカルシウムイオン結合化合物、及びヘパリン酸塩又はヒルジン等のトロンビン阻害剤が挙げられる。無細胞血漿は、抗凝固処理された血液(例えば、クエン酸塩処理された、EDTA又はヘパリン処理された血液)を、例えば、2000~3000gで少なくとも15分間遠心分離することによって得ることができる。
【0061】
本発明の文脈における「血清」は、血液を凝固させた後に収集される全血の液体画分である。凝固した血液(血餅)が遠心分離されると、血清が上清として得られうる。
【0062】
本発明による方法は、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象が治療に応答するかの予測に特によく適する。本明細書で用いられる場合、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象が治療に応答するかを予測するために用いられる「上記第1のレベルと上記第2のレベルとの差」又は「上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率」は、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象が治療に応答するかの予測と「上記第1のレベルと上記第2のレベルとの差を「相関させること」又は「上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率を相関させること」の意味であってよい。特に、上記第1のレベルと上記第2のレベルとの差は、朝のプレプロ-AVP、好ましくはコペプチンの第1のレベルから晩のプレプロ-AVPの第2のレベルを減算したものをいい、第1及び第2のレベルは、同日に決定されうるか、又は第2のレベルは、第1のレベルが決定された1日後に決定されうる。好ましくは、プレプロ-AVP又はその断片の上記第1のレベルは、最低8時間の一晩絶食後、かつ午前6時~午前9時の間に得られ、プレプロ-AVP又はその断片の上記第2のレベルは、同日の午後6時~午後9時の間に得られる。あるいは、プレプロ-AVP又はその断片の上記第1レベルは、午後6時~午後9時の間に得られ、プレプロ-AVP又はその断片の上記第2のレベルは、最低8時間の一晩絶食後の翌朝の午前6時~午前9時の間に得られる。
【0063】
さらに、上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率は、朝のプレプロ-AVP、好ましくはコペプチンの第1のレベルを、晩のプレプロ-AVPの第2のレベルで除算したものをいうが、第1及び第2のレベルは、同日に決定される。
【0064】
好ましくは、プレプロ-AVP又はその断片の上記第1のレベルは、最低8時間の一晩絶食後、かつ午前6時~午前9時の間に得られ、プレプロ-AVP又はその断片の上記第2のレベルは、同日の午後6時~午後9時の間に得られる。
【0065】
一態様では、本発明の方法は、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象が上記治療に応答することを予測する、≧1.00の上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率(c1/c2)に関する。
【0066】
特定の態様では、本発明の方法は、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象がその治療に応答することを予測する、≧0.5pg/mlの上記第1のレベルと上記第2のレベルとの差(c1-c2)に関する。
【0067】
あるいは、上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率は、晩のプレプロ-AVP、好ましくはコペプチンの第1のレベルを、翌朝のプレプロ-AVPの第2のレベルで除算したものをいい、第2のレベルは、第1のレベルの1日後に決定される。
【0068】
好ましくは、プレプロ-AVP又はその断片の上記第1レベルは、午後6時~午後9時の間に得られ、プレプロ-AVP又はその断片の上記第2のレベルは、最低8時間の一晩絶食後の翌朝の午前6時~午前9時の間に得られる。
【0069】
一態様では、本発明の方法は、上記第1のレベルと上記第2のレベルとの比率(c1/c2)が、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象が上記治療に応答することを予測するために、≧1.00であることに関する。
【0070】
特定の態様では、本発明の方法は、上記第1のレベルと上記第2のレベル(c1-c2)との差が、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象が上記治療に応答することを予測するために、≦-0.5pg/mlであることに関する。
【0071】
それにより、上記レベルは、治療前、又は治療開始中若しくは治療開始後のベースラインで測定されうる。好ましくは、上記レベルは、治療前のベースラインで測定されうる。例えば、上記レベルは、同じ治療日のベースラインで測定することができ、少なくとも第2のレベルは、同じ治療日のベースラインで測定されうる。好ましくは、上記レベルは、治療の0~48時間前のベースラインで測定されうる。例えば、上記レベルは、治療の48時間前のベースラインで測定されうる。
【0072】
一態様では、本発明の方法は、MENを治療される対象が上記治療に応答するかを予測する方法に関し、マーカープレプロ-AVP又はその断片は、上記対象の試料中で決定される。「プレプロ-AVP」は、バソプレシン遺伝子によってコードされ、19アミノ酸のシグナル配列、アルギニンバソプレシン、及び2つの関連タンパク質、ニューロフィジンII及び糖ペプチド、コペプチンを含む前駆体タンパク質をいう。抗利尿ホルモン(ADH)としても知られているアルギニンバソプレシン(AVP)は、高血漿浸透圧、低血漿容積、及び低血圧の条件において、視床下部で生成され、神経下垂体から放出される。AVPは、3つの異なる受容体(V1aR、V1bR、及びV2R)に結合する。V1aRは広く発現するが(Nature 1993:356:523-526)、V1bR及びV2Rはそれぞれ下垂体及び腎臓集合管でより特異的に発現する(Nature 1992:336-339及びFEBS Lett 1994:356:215-220)。好ましくは、本発明の方法で用いられるようなプレプロ-AVP又はその断片は、配列番号1(164アミノ酸)を含む。より好ましくは、本発明の方法で用いられるようなプレプロ-AVP又はその断片は、本質的に配列番号1からなる。さらにより好ましくは、本発明の方法で用いられるようなプレプロ-AVP又はその断片は、配列番号1からなる。本発明によるこれらのポリペプチドはまた、グリコール化、脂質化(lip(o)idization)、又は誘導体化等の翻訳後修飾があってよい。
【0073】
一態様では、本発明は、夜尿症、特にMENを治療する対象が上記治療に応答するかを予測する方法であって、マーカーコペプチン、AVP、又はニューロフィジンIIが、上記対象の試料中で決定される、方法に関する。好ましくは、本発明の方法で用いられるようなAVP又はその断片は、配列番号2(断片:プレプロ-AVPのアミノ酸20~28)を含む。より好ましくは、本発明の方法で用いられるようなAVP又はその断片は、本質的に配列番号2からなる。さらにより好ましくは、本発明の方法で用いられるようなAVP又はその断片は、配列番号2からなる。本発明によるこれらのポリペプチドはまた、グリコール化、脂質化(lip(o)idization)、又は誘導体化等の翻訳後修飾があってよい。
【0074】
ニューロフィジンは、ニコチン摂取(Robinson A.G.,Isolation,assay,and secretion of individual human neurophysins,J Clin Invest 1975;55:360-367)、悪性及び非悪性系の抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(syndrome of inappropriate ADH secretion、SIADH)、及び腎性尿崩症(nephrogenic diabetes insipidus)(Pullan P.T.,Clappison B.H.,Johnston C.I.,Plasma vasopressin and human neurophysins in physiological and pathological states associated with changes in vasopressin secretion,J Clin Endocrinol Metab 1979;49:580-587、North W.G.,LaRochelle F.T.,Jr.,Melton J.,Mills R.C.,Isolation and partial characterization of two human neurophysins:their use in the development of specific radioimmunoassays.J Clin Endocrinol Metab 1980;51:884-891)のためのマーカーとして記載される。好ましくは、本発明の方法で用いられるようなニューロフィジンII(neurophsin II)又はその断片は、配列番号4(断片:プレプロ-AVPのアミノ酸32~124)を含む。より好ましくは、本発明の方法で用いられるようなニューロフィジンII(neurophsin II)又はその断片は、配列番号4から本質的になる。さらにより好ましくは、本発明の方法で用いられるようなニューロフィジンII(neurophsin II)又はその断片は、配列番号4からなる。本発明によるこれらのポリペプチドはまた、グリコール化、脂質化(lip(o)idization)、又は誘導体化等の翻訳後修飾があってよい。
【0075】
一態様では、本発明は、夜尿症、特にMENを治療される対象が上記治療に応答するかを予測する方法であって、マーカーコペプチンが、上記対象の試料中で決定される、方法に関する。コペプチンは、AVP前駆体のC末端の生物学的に不活性な分解産物であり、AVPと等モル量で生成される。ただし、AVPとは対照的に、コペプチンは安定し、半減期が長く、血小板に結合しないため、AVPよりもかなり高い血漿濃度で見出される。コペプチンは、AVP放出のための安定かつ感度の高いマーカーであることが見出された。それは、AVPとともに化学量論的に放出されるようであり、室温で数日間安定であり、3時間以内に検出することができる(非特許文献7)。本文脈では、AVPに近似のコペプチンは、対照と比較して、夜尿症、特にMENの患者において大幅に少なく、わずかな遺尿症だけの患者と比較して、重度の遺尿症患者においてより少ないことが示される。一態様では、本発明は、MENを治療される対象が上記治療に応答するかを予測する方法であって、マーカーコペプチン又はその断片が、上記対象の試料中で決定される、方法に関する。好ましくは、本発明の方法で用いられるようなコペプチン又はその断片は、配列番号3(断片:プレプロ-AVPのアミノ酸126~164)を含む。より好ましくは、本発明の方法で用いられるようなコペプチン又はその断片は、配列番号3から本質的になる。さらにより好ましくは、本発明の方法で用いられるようなコペプチン又はその断片は、配列番号3からなる。本発明によるこれらのポリペプチドはまた、グリコール化、脂質化(lip(o)idization)、又は誘導体化等の翻訳後修飾があってよい。
【0076】
プレプロAVP、コペプチン、AVP、又はニューロフィジンIIのペプチド及びその断片は、本明細書に記載の方法に用いることができることも本明細書では想定される。プレプロ-AVP、コペプチン、AVP、若しくはニューロフィジンII等のタンパク質又はペプチドの本文脈中において本明細書で言及されるように、用語「断片」は、より大きいタンパク質又はペプチドに由来しうるより小さいタンパク質又はペプチドをいい、したがって、これらは、より大きいタンパク質又はペプチドの部分配列を含む。上記断片は、より大きいタンパク質又はペプチドからのアミノ酸のうちの1つ以上の欠失により、より大きいタンパク質又はペプチドに由来しうる。プレプロ-AVP、コペプチン、AVP、又はニューロフィジンIIの「断片」は、好ましくは少なくとも長さが6アミノ酸、最も好ましくは少なくとも12アミノ酸残基の断片に関する。そのような断片は、好ましくは、本明細書に記載するような免疫学的アッセイで検出可能である。したがって、プレプロ-AVPの断片は、例えば、コペプチン、AVP、又はニューロフィジンIIからなる群から選択することができ、好ましくは、本明細書では、断片はコペプチンである。したがって、プレプロ-AVPの断片は、本発明の文脈では、好ましくは、コペプチン、AVP、又はニューロフィジンIIからなる群から選択することができ、最も好ましくは、本明細書では、断片はコペプチンである。
【0077】
プレプロ-AVPポリペプチド若しくはその断片、コペプチンポリペプチド若しくはその断片、AVPポリペプチド若しくはその断片、又はニューロフィジンIIポリペプチド若しくはその断片のレベルが、プレプロ-AVPポリペプチド若しくはその断片については配列番号1、AVPポリペプチド若しくはその断片については配列番号2、コペプチンポリペプチド若しくはその断片については配列番号3、又はニューロフィジンII若しくはその断片については配列番号4に示すような、少なくとも75%の配列同一性、例えば、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性であって、より高い値の配列同一性が好ましい配列同一性を有すると決定されることも本明細書では想定される。本発明によれば、2つ以上のアミノ酸配列の文脈における用語「配列同一性」、「相同性」又は「ホモロジーパーセント」又は「同一」又は「同一性パーセント」又は「同一性パーセンテージ」は、当該技術分野で公知の配列比較アルゴリズムを用いるか、又は手動アライメント及び目視検査によって測定した場合、比較ウィンドウにわたって(好ましくは全長にわたって)、又は測定された指定された領域にわたって最大の対応が得られるように比較及び整列されたときに、同じ、又は特定の同じ割合のアミノ酸を有する、2つ以上の配列又は部分配列をいう。例えば、70%~90%以上の配列同一性を有する配列は、実質的に同一であると見なすことができる。そのような定義は、試験配列の相補体にも適用される。好ましくは、記載された同一性は、少なくとも約5~約8アミノ酸の長さの領域にわたって、より好ましくは少なくとも約25~約35アミノ酸の長さの領域にわたって、さらにより好ましくは少なくとも約65~約83アミノ酸の長さの領域にわたって、さらにより好ましくは少なくとも約115~約148アミノ酸の長さの領域にわたって、最も好ましくは全長にわたって存在する。当業者は、例えば、当該技術分野で既知であるように、CLUSTALWコンピュータープログラム(Thompson Nucl.Acids Res.2(1994),4673-4680)又はFASTDB(Brutlag Comp.App.Biosci.6(1990)、237-245)に基づくもの等のアルゴリズムを用いて、配列間/配列の間の同一性パーセントを決定する方法を知っているであろう。
【0078】
本明細書で用いられる用語「プレプロ-AVP又はその断片のレベル」は、対象から得られた試料中のマーカープレプロ-AVP又はその断片の分子実体の量をいう。換言すれば、マーカーの濃度は、試料中で決定される。したがって、用語「プレプロ-AVP又はその断片のレベル」は、対象から得られた試料中のマーカープレプロ-AVP又はその断片の分子実体の量をいう。上記のように、プレプロ-AVPの断片、好ましくはコペプチンを検出及び定量化することができることも本明細書では想定される。断片がプレプロ-AVP、好ましくはコペプチンのレベルの明確な決定を可能にする限り、断片は、いかなる長さ、例えば、少なくとも約5、10、20、30、40、50、又は100個のアミノ酸を有することができる。また、コペプチンの断片を検出及び定量化することができる。本発明の好ましい態様では、コペプチンのレベルが測定される。
【0079】
プレプロ-AVP、好ましくはコペプチンの決定はまた、例えば、分子の特定の部分に指向された抗体又は他の親和性試薬を用いることによって、又は、質量分析を用いてタンパク質の一部分を測定することによって分子の存在及び/又は量を決定することによって、これらの分子の特定のサブ領域を測定及び/又は検出することも包含する。本発明の好ましい態様では、コペプチンのレベルは、アッセイ、好ましくは診断アッセイにおいて決定される。本明細書で言及されるように、「アッセイ」又は「診断アッセイ」は、診断の分野で適用されるいかなるものであってよい。そのようなアッセイは、一定の親和性を有する1つ以上の捕捉プローブへの検出される分析物の結合に基づいてよい。本発明の文脈では、「捕捉分子」は、標的分子又は目的の分子、すなわち分析物(すなわち、本発明の文脈では、試料からのプレプロ-AVP、好ましくはコペプチン)の結合に用いられうる分子である。したがって、捕捉分子は、空間的にも、表面電荷、疎水性、親水性、ルイス供与体及び/又は受容体の存在又は不在等の表面の特徴に関しても適切に成形され、標的分子又は目的の分子に特異的に結合する必要がある。これにより、結合は、例えば、イオン、ファンデルワールス、π-π、Σ-π、疎水性若しくは水素結合相互作用、又は捕捉分子と標的分子又は目的の分子との間の上記の相互作用のうちの2つ以上の組み合わせによって媒介されうる。本発明の文脈では、捕捉分子は、例えば、核酸分子、炭水化物分子、RNA分子、タンパク質、抗体、ペプチド、又は糖タンパク質を含む群から選択されうる。好ましくは、捕捉分子は、抗体であり、標的又は目的の分子に対して十分な親和性を有するその断片を含み、組み換え抗体又は組み換え抗体の断片、並びにその少なくとも12アミノ酸の長さを有する変異体鎖から誘導される上記抗体又は断片の化学的及び/又は生化学的に修飾された誘導体を含む。プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンのレベルを決定する好適な方法は、本明細書において以下に詳細に記載される。
【0080】
コペプチン等のプレプロ-AVP又はその断片のレベルに加えて、さらなるマーカー、臨床スコア、及び/又はさらなる臨床パラメータ等の対象のさらなるパラメータが決定されうる。したがって、コペプチン等のプレプロ-AVP又はその断片は、マーカーパネルの一部でありうる。したがって、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象が治療に応答するかの予測は、一実施形態では、機能的膀胱容積、睡眠断片化、周期性四肢運動障害(periodic limb movement disorder、PLMD)の兆候(睡眠の非急速眼球運動段階中の手足の不随意運動、膝、股関節、又は足首の屈曲など)の見積り、心拍数、血圧、拡張期血圧、収縮期血圧、年齢、性別、機能的膀胱容積、プロラクチン阻害ホルモンのレベル、ニューロフィジンのレベル、バソプレシンのレベル、プロスタグランジンのレベル、アクアポリン1のレベル、アクアポリン2のレベル、アクアポリン3のレベル、アクアポリン4のレベル、プロアドレノメデュリン及びその断片のレベル、並びにプロエンドセリン-1及びその断片のレベルからなる群から選択される少なくとも1つの実験室パラメータ又はさらなるマーカーをさらに決定及び用いることによって改善されうる。
【0081】
本明細書で用いられる用語「マーカー」、「代理」、「予後マーカー」、「因子」又は、「バイオマーカー」若しくは「生物学的マーカー」等は互換的に用いられ、測定可能かつ定量可能な生物学的マーカー(例えば特定の酵素濃縮物若しくはその断片、特定のホルモン濃縮物若しくはその断片、又は生物学的物質又はその断片の存在)に関し、これらのマーカーは、疾患/障害/臨床状態リスク等の健康及び生理学に関連する見積りの指標として有利である。さらに、バイオマーカーは、正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、又は治療的介入に対する薬理学的反応の指標として客観的に測定及び評価される特性として定義される。バイオマーカーは、生物学的試料中で(血液、血漿、尿、又は組織試験として)測定されうる。
【0082】
本明細書で用いられる、パラメータは、特定のシステムを定義の一助となりうる特性、特徴、又は測定可能な要因である。パラメータは、疾患/障害/臨床状態リスク等の健康及び生理学に関連する見積りにとって重要な要素である。さらに、パラメータは、正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、又は治療的介入に対する薬理学的反応の指標として客観的に測定及び評価される特性として定義される。
【0083】
したがって、対象の試料中のプレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの決定されたレベルは、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象が治療に応答するかの予測のために、単独で、又は他の予後的に有用な研究用又は臨床用パラメータと組み合わせて用いることができる。
【0084】
本発明によれば、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンのレベル、及び/又は他のマーカー若しくはパラメータは、MENの治療を受ける対象が治療に応答するかを予測するマーカー及びパラメータとして用いられる。当業者は、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチン、及び標準的な分子生物学的実践に従って上記で概説した他のマーカー又はパラメータのうちのいずれか1つの同定、測定、決定、及び/又は定量化のための手段をうる又は開発することができる。プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンのレベル、及び他のマーカー又はパラメータは、マーカーの濃度を確実に決定するいかなるアッセイによっても決定することができる。
【0085】
プレプロ-AVP若しくはその断片、好ましくはコペプチン、並びに/又はさらなるマーカー及び/若しくはパラメータのレベルは、イムノアッセイによって決定することができる。本明細書で用いられる場合、イムノアッセイは、抗体若しくは抗体結合断片若しくは免疫グロブリンの使用を通して溶液中の巨大分子/ポリペプチドの存在又は濃度を測定する生化学的試験である。
【0086】
例えばサンドイッチ、酵素結合免疫吸着アッセイ、発光イムノアッセイ、迅速試験形式、ポイントオブケア試験(point-of-care testing)に好適なアッセイ、例えばKryptorのシステム(BRAHMS/Thermo Fisher Scientific)等の均一系アッセイ等の様々な形式でのイムノアッセイを用いることができる。好ましい実施形態では、少なくとも長さが12アミノ酸であるプレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンのレベルは、イムノアッセイにおいて測定される。少なくとも長さが12アミノ酸であるコペプチン又はその断片のレベルを測定することが特に好ましい。本発明の文脈では、上記プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンのレベルは、発光イムノアッセイ(LIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、化学発光及び蛍光イムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(EIA)、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、発光系のビーズアレイ、磁気ビーズ系のアレイ、タンパク質マイクロアレイアッセイ、迅速試験形式、並びに希土類クリプテートアッセイからなる群から選択される方法を用いて決定される。アッセイは、本明細書の以下でさらに概説するように、均一系の相又は不均一系の相で行うことができる。好ましい検出方法は、例えばラジオイムノアッセイ、化学発光及び蛍光イムノアッセイ、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、Luminex系のビーズアレイ、タンパク質マイクロアレイアッセイ、例えば、免疫クロマトグラフィーストリップ試験等のポイントオブケア試験及び迅速試験形式に好適なアッセイ等の様々な形式におけるイムノアッセイを含む。そのようなアッセイは、一定の親和性を有する1つ以上の捕捉プローブへの検出される分析物の結合に基づくことができる。
【0087】
プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチン及び場合によっては抗体認識に基づく他のマーカーの決定は、本発明の好ましい態様である。本明細書で用いられる用語「抗体」は、免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原と特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含有する分子をいう。本発明によると、抗体は、モノクローナル抗体並びにポリクローナル抗体であってよい。好ましくは、抗体は、モノクローナルでありうる。特に、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンに特異的に結合する抗体が用いられる。目的の分子、例えばプレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンに対するその親和性が、目的の分子を含有する試料中に含まれる他の分子に対するよりも、少なくとも50倍高い、好ましくは100倍高い、最も好ましくは少なくとも1000倍高い場合、抗体は特異的であると見なされる。所与の特異性を有する抗体をどのように開発しそして選択するかは、当該技術分野において周知である。本発明の文脈では、モノクローナル抗体が好ましい。抗体又は抗体結合断片は、本明細書に定義されたマーカー又はその断片に特異的に結合する。特に、抗体又は抗体結合断片は、本明細書で定義されたプレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンのペプチドに結合する。したがって、本明細書で定義されたペプチドはまた、抗体が特異的に結合するエピトープでありうる。さらに、本発明の方法及びキットでは、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンに特異的に結合する抗体又は抗体結合断片が用いられる。さらに、本発明の方法及びキットでは、プレプロ-AVP又はその断片、及び場合によっては本発明の他のマーカーに特異的に結合する抗体又は抗体結合断片が用いられる。
【0088】
本発明による方法が特に好ましく、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンが、試料中のプレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの決定に用いられる。ある種の態様では、マーカーのレベルは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定される。ある種の態様では、HPLCは、イムノアッセイと合わせることができる。本発明のある種の態様では、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンは、サンドイッチイムノアッセイで測定される。このサンドイッチイムノアッセイでは、例えば、試料中のプレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチン等の1つのマーカーに対して2つの抗体が適用される。特に、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンが、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの異なる部分配列、又はその断片に特異的に結合する2つの抗体の使用によって決定される場合、これは好ましい。
【0089】
本発明によるインビトロ方法の好ましい態様では、抗体のうちの一方が標識され、もう一方の抗体は、固相に結合されるか、又は固相に選択的に結合されうる。
【0090】
アッセイの特に好ましい態様では、抗体のうちの一方が標識される一方で、もう一方の抗体は、固相に結合されるか、又は固相に選択的に結合されうるかのいずれかである。好ましい実施形態では、この方法は、不均一系サンドイッチイムノアッセイとして実施され、抗体のうちの1つはいかなる選ばれた固相、例えば被覆試験管(例えばポリスチロール試験管;被覆管;CT)若しくは例えばポリスチレンで構成されたマイクロタイタープレートの壁上、又は磁性粒子等の粒子に固定され、それにより、他の抗体は、検出可能な標識に近似するか又は標識への選択的に付着しうる基を有し、形成されたサンドイッチ構造の検出に有利である。好適な固相を用いて一時的な遅延又はその後の固定化も可能である。
【0091】
本発明による方法は、均一系の方法としてさらに具体化することができ、検出される抗体/複数の抗体、及びマーカー、例えば、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンによって形成されたサンドイッチ複合体が、液相中で懸濁されたままである。この場合、2つの抗体が用いられる場合、両抗体が検出系の一部で標識され、それが、当該両抗体が単一のサンドイッチに統合される場合にシグナルの発生又はシグナルの誘発をもたらすことが好ましい。そのような技術は、特に蛍光増強又は蛍光消光検出方法として具体化されるべきである。特に好ましい態様は、例えば、米国特許出願公開第4882733号、欧州特許第l0180492号、又は欧州特許第l0539477号、及びそれらで引用された従来技術に記載されるもの等、対で用いられる検出試薬の使用に関する。このようにして、反応混合物中の単一の免疫複合体中に直接両標識成分を含む反応生成物のみが検出されるように測定することができる。例えば、そのような技術は、上記で引用された出願の教示を実装する、商標名TRACE(登録商標)(Time Resolved Amplified Cryptate Emission)、又はKRYPTOR(登録商標)の下で提供される。したがって、特に好ましい態様では、本明細書で提供される方法を実行するために診断装置が用いられる。例えば、本明細書で提供される方法のプレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチン、及び/又はいかなるさらなるマーカーのレベルが決定される。
【0092】
好ましい態様では、第1及び第2の抗体が共に液体反応媒体中に分散され、それにより、蛍光若しくは蛍光の消光又は増強に基づく標識系の一部である第1の標識成分が第1の抗体に結合し、それにより、この標識系の第2の標識成分は、両方の抗体がプレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンに結合した後、測定溶液中に形成されたサンドイッチ複合体を検出できる検出可能なシグナルが発生するように、第2の抗体に結合される。この代替形態の一態様は、希土類クリプテート又はキレート等の標識系を、蛍光又は化学発光染料と組み合わせて含む。特定の好ましい態様では、標識系は、希土類クリプテートを、特にシアニンタイプの蛍光又は化学発光染料と組み合わせて含む。さらに好ましい態様では、検出は、競合イムノアッセイによって実行される。好ましい態様では、ラジオイムノアッセイが用いられる。マーカーのレベルは、例えば、質量分析法によって又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって決定することができ、これは、イムノアッセイ又は質量分析に基づく手法と合わせることができることも本明細書では想定される。当業者は、マーカーのレベルを確実に決定することができる限り、利用可能ないかなるアッセイを用いることができることを理解する。
【0093】
一態様では、この方法は、
a)試料を
(i)プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第1のエピトープに特異的な第1の抗体又はその抗原結合断片若しくは誘導体と、
(ii)プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの第2のエピトープに特異的な第2の抗体又はその抗原結合断片若しくは誘導体と、接触させる工程、
及び
b)第1及び第2の抗体又はその抗原結合断片若しくは誘導体と、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンとの結合を検出する工程、を含む、イムノアッセイである。
【0094】
通常、本文脈では、抗体のうちの一方が標識され、もう一方の抗体は、固相に結合させるか、又は固相に選択的に結合されうる。例えば、第1の抗体及び第2の抗体は、液体反応混合物中に分散して存在し、蛍光若しくは化学発光の消光又は増幅に基づく標識系の一部である第1の標識成分が、第1の抗体に結合し、標識系の第2の標識成分が、第2の抗体に結合し、これにより、両方の抗体のプレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンへの結合後、測定溶液中の得られたサンドイッチ複合体を検出できる測定可能なシグナルが発生する。
【0095】
本明細書に記載したように、標識系は、希土類クリプテート又はキレートを、特にシアニンタイプの蛍光又は化学発光染料と組み合わせて含む。
【0096】
原則として、放射性同位体、酵素、蛍光標識、化学発光標識、又は生物発光標識、及び金原子及び染料粒子等の光学的に直接検出可能な色標識による標識等、上記タイプのアッセイに適用することができるすべての標識技術を用いることができ、これらは、特にポイントオブケア(POC)試験又は迅速試験で用いられる。不均一系サンドイッチイムノアッセイの場合には、両方の抗体は、均一系アッセイの文脈では本明細書に記載されるタイプによる検出システムの一部を示しうる。
【0097】
さらに、質量分析手法を用いて、プレプロ-AVP又はその断片を検出及び定量化することができる。本文脈では、本発明の一態様では、プレプロ-AVP又はその断片、好ましくは、コペプチンはまた、質量分析(MS)に基づく方法によって決定することができる。本明細書で用いられる用語「質量分析」又は「MS」は、化合物をその質量によって同定する分析方法をいう。このような方法は、上記生物学的試料又は上記試料からのタンパク質消化物(例えば、トリプシン消化物)中の、例えばプレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの1つ以上の修飾又は未修飾断片ペプチドの存在、量又は濃度を検出することを含み得、場合によってはクロマトグラフィー方法を用いて試料を分離し、そして調製され、かつ場合によっては分離された試料をMS分析にかける。例えば、特にプレプロ-AVP又はその断片、好ましくはコペプチンの量を決定するために、選択反応モニタリング(SRM)、多重反応モニタリング(MRM)、又は並列反応モニタリング(PRM)質量分析をMS分析に用いることができる。
【0098】
質量分析の質量分解及び質量決定能の向上のため、試料は、MS分析前に処理されうる。したがって、本発明は、免疫濃縮技術と組み合わせることができるMS検出方法、試料調製に関する方法及び/又はクロマトグラフィー方法、好ましくは液体クロマトグラフィー(LC)、より好ましくは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、又は超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)に関する。試料調製方法は、溶解、分画、ペプチドへの試料の消化、枯渇、濃縮、透析、脱塩、アルキル化、及び/又はペプチド還元のための技術を含む。ただし、これらの工程は任意選択的である。分析物イオンの選択的検出は、タンデム質量分析(MS/MS)によって実施することができる。タンデム質量分析は、質量選択工程(本明細書で用いられる用語「質量選択」は、特定のm/z又は狭い範囲のm/zを有するイオンの単離を意味する)、続いて選択されたイオンの断片化、及び得られた生成物(断片)イオンの質量分析によって特徴付けられる。当業者は、本明細書に記載のマーカーの決定/定量化に好適なアッセイを認識する。当業者は、質量分析法によって試料中のマーカーのレベルをどのように定量化するかを認識する。さらに、レベル(カットオフレベルを含む)は、相対的定量を決定する方法又は目的のタンパク質若しくはその断片の絶対定量を決定する方法等の質量分析に基づく方法によって決定することができる。
【0099】
本明細書で用いられる用語「治療」は、医学的治療をいい、バソプレシンの類似体(複数可)の投与を含むがこれらに限定されない様々な治療及び療法戦略を含む。
【0100】
本発明の方法に従って用いられる場合、用いられる夜尿症、特にMENの治療用の薬物は、デスモプレシンであることが好ましい。デスモプレシン(1-デスアミノ-8-D-アルギニンバソプレシン、dDAVP)は、バソプレシンの類似体である。デスモプレシンは、バソプレシンと比較して、血圧上昇作用を低下させ、抗利尿作用を高める。この薬理学的プロファイルにより、デスモプレシンは、血圧を大幅に上昇させることなく、抗利尿薬として臨床的に用いることができる。デスモプレシンは、錠剤形態及び経鼻スプレーの両方で酢酸塩として市販されており、一次性夜尿症(PNE)及び中枢性尿崩症に対して一般的に処方される。
【0101】
デスモプレシンは、静脈内、皮下、鼻腔内、及び経口で投与することができる。経鼻スプレーを介したデスモプレシンの鼻腔内投与は、中枢性尿崩症の患者及び一次性夜尿症の小児(6~16歳)における維持療法として承認されている。デスモプレシンの経口錠剤剤形は、中枢性尿崩症及び一次性夜尿症の治療にも承認されている。夜尿症、特にMENの患者では、デスモプレシンの抗利尿効果により、夜間の尿量が減少し、膀胱が保持しなければならない尿の量が減少し、それにより、遺尿症の発生が減少又は排除される。好ましくは、デスモプレシンは錠剤の形態で投与される。より好ましくは、デスモプレシンは舌下錠剤の形態で投与される。デスモプレシンは、薬学的に許容可能な塩、例えば酢酸デスモプレシンとして配合されうる。
【0102】
本発明の他の態様では、デスモプレシンは、通常、1日あたり40~400μg、例えば100μg、200μg、400μg、又は好ましくは約120μgの用量で適用される。
【0103】
本発明はさらに、キット、キットの使用、及びそのようなキットが用いられる方法に関する。本発明は、本明細書の上記及び下記に提供される方法を実施するキットに関する。本明細書に提供される定義、例えば方法に関して提供される定義はまた、本発明のキットにも適用される。特に、本発明は、夜尿症、特にMENの治療を受ける対象が治療に応答するかを予測するキット及びキットの使用であって、キットが、上記対象の試料中のプレプロ-AVP又は上記その断片、好ましくはコペプチンのレベルを決定するための1つ以上の検出試薬を含み、場合によっては、上記検出試薬が、少なくとも2つの抗体を含み、抗体のうちの一方が標識され、もう一方の抗体は、固相に結合されるか、又は固相に選択的に結合されうる、キット及びキットの使用、に関する。
【0104】
この使用の文脈では、第1及び第2の抗体は、液体反応混合物中に分散して存在することができ、蛍光若しくは化学発光の消光又は増幅に基づく標識系の一部である第1の標識成分が、第1の抗体に結合し、上記標識系の第2の標識成分が、第2の抗体に結合し、これにより、両方の抗体のプレプロ-AVP又は上記その断片、好ましくはコペプチンへの結合後、測定溶液中の得られたサンドイッチ複合体の検出を可能にする測定可能なシグナルが発生し、場合によっては、上記標識系が、希土類クリプテート又はキレートを、特にシアニンタイプの蛍光又は化学発光染料と組み合わせて含む。
【0105】
加えて、キットは、血液試料等の試料を得るのに有用な物品を含んでよく、例えば、キットは、容器を含んでよく、上記容器は、上記容器をカニューレ又はシリンジに取り付けるための、例えば、所定量の試料を上記容器に引き込むのに好適であるように大気圧未満の内圧を呈する、血液単離に好適なシリンジである装置を含み、かつ/あるいは加えて、洗剤、カオトロピック塩、リボヌクレアーゼ阻害剤、グアニジニウムイソチオシアネート、グアニジニウム塩酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のキレート剤、及びそれらの混合物、並びに/又はニトロセルロース、シリカマトリックス、強磁性球体、受皿(cup retrieve spill over)、トレハロース、フルクトース、ラクトース、マンノース、ポリ-エチレン-グリコール、グリセロール、EDTA、TRIS、リモネン、キシレン、ベンゾイル、フェノール、鉱油、アニリン、ピロール、クエン酸塩、及びそれらの混合物を収容する濾過システムを含む。
【0106】
本明細書で用いられる場合、「検出試薬」等は、本明細書に記載の、例えば、プレプロ-AVP又は上記その断片、好ましくはコペプチンのマーカー(複数可)を決定するのに好適な試薬である。このような例示的な検出試薬は、例えば、本明細書に記載のマーカーのペプチド又はエピトープに特異的に結合するリガンド、例えば抗体又はその断片である。そのようなリガンドは、上記のようにイムノアッセイに用いることができる。マーカー(複数可)のレベルを決定するイムノアッセイで用いられるさらなる試薬もキットに含まれ得、本明細書において検出試薬と見なされる。検出試薬はまた、MSに基づく方法によってマーカー又はその断片を検出するために用いられる試薬にも関連しうる。したがって、そのような検出試薬はまた、MS分析のために試料を調製するために用いられる試薬、例えば酵素、化学物質、緩衝剤などでありうる。質量分析計も検出試薬と見なすことができる。本発明による検出試薬はまた、例えば、マーカー(複数可)のレベルを決定及び比較するために用いられうる較正溶液(複数可)でありうる。
【0107】
本明細書に引用されるすべての文書は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0108】
配列
配列番号1(プレプロ-AVPのアミノ酸配列):
【0109】
【化1】
配列番号2(AVPのアミノ酸配列):
【0110】
【化2】
配列番号3(CT-pro-AVP(コペプチン)のアミノ酸配列):
【0111】
【化3】
配列番号4(ニューロフィジンIIのアミノ酸配列):
【0112】
【化4】
【0113】
以下の非拘束的な実施例は、本発明を例示する。
【実施例
【0114】
概要-単一症候性夜尿症(MEN)の小児における治療応答の予測用コペプチン。
【0115】
この実施例は、コペプチンを検出することにより行われた。ただし、本明細書の上記で概説したように、本発明はまた、プレプロ-バソプレシン(プレプロ-AVP)又はその他のペプチド断片を検出することによって行うことができる。
【0116】
調査対象母集団
単一症候性夜尿症の小児100人。除外基準は、尿路のコペプチンレベル若しくは機能障害への既知の又は起こりうる影響による因子を考慮する。
【0117】
選択基準:
5~16歳の小児
単一症候性夜尿症の診断
可能であれば、尿流量測定及び膀胱超音波検査の完了
可能であれば、遺尿症発現の自宅記録グラフの完了
デスモプレシン治療を用いる意欲
【0118】
除外基準:
昼間遺尿症の小児
下部尿路症状及び感染症の小児
尿路の構造的異常を持つ小児
慢性疾患、特に腎不全、高血圧、先天性心疾患、糖尿病、及び尿崩症を持つ小児。
【0119】
仮説
ベースラインでの日内コペプチン振幅は、療法終了時の成功的治療を予測する。
【0120】
主要及び副次的な目的
第1研究の主要な目的は、ベースラインでの1日のコペプチン変化の振幅(すなわち、朝と晩とのコペプチンの差)が、4週間の治療後のデスモプレシンに対する治療応答を予測するかの検討である。
【0121】
第2研究の主要な目的は、成功したデスモプレシン治療応答に関して、日内コペプチン振幅の予測精度を推定することである。
【0122】
評価項目
主要評価項目:14日間連続して夜間の尿漏れがない、又は1週間あたりの夜間の尿漏れがあった日数の90%の改善として定義された、4週間後のデスモプレシン治療に対する成功的応答(9)。
【0123】
副次的評価項目:デスモプレシン240μgに増量した患者の8週間後のデスモプレシンに対する治療応答。
【0124】
研究設計
これは、MENの小児100人における2段階の前向き観察研究である。患者は5回の診療を受け、各診療は約30分の所要時間を有する。これらの診療のうちの2回は患者の自宅で行われる(表1)。
【0125】
研究期間にわたる参加者の管理
【0126】
【表1】
【0127】
研究手順の詳細
登録日:
1.すべての患者、又はそれぞれの患者の代理人は、インフォームドコンセントフォームに署名するよう求められる。
2.同意後、適格基準が判断される
3.遺尿症についての1週間の日誌を完了する。
4.MENに焦点を当てた標準化された病歴アンケートが実施される。
【0128】
検査日:
すべての参加者は、120μgの舌下錠剤によるデスモプレシン治療を開始する前に、第1の血液試料を採取するために、検査日の午前8時に病棟に到着する。日誌は、研究担当看護師又は研究担当医師に渡される。同日に、就寝前に舌下錠剤の第1の摂取の直前に、第2の血液試料を採取するために、研究担当看護師が午後8時~10時の間に患者の自宅を訪問する。デスモプレシン治療の4週間後、患者は小児泌尿器科を訪れ、午前8時に他の血液試料を採取する。同日に、研究担当看護師が患者の自宅を訪問し、就寝前の午後8時~午後10時の間にコペプチンについての血液試料を採取する。
【0129】
患者がデスモプレシン治療に対して十分に応答しなかった場合、用量を1日あたり240μg舌下錠剤に増量する。すべての患者は、デスモプレシン療法の開始から12週間後に診察を受ける。診療前に、すべての患者は1週間の日誌の記入を完了する。診察ごとに、体温、血圧、及び心拍数等の臨床パラメータが取得される。
すべての血液検査を、キャピラリー血液採取によって取る。
【0130】
研究の終了:
120μgのデスモプレシンによって開始した12週間後に研究が終了する。
【0131】
血液採取
各時点で1つの管を収集する。キャピラリー採血については、血液採取ごとに500μlの血液が必要である。4回すべての診療の場合には、患者は2000μlの血液(すなわち2ml)を与える。したがって、推定される失血量は、小児の採血の許容限度を大きく下回る(9)。コペプチンは、化学発光サンドイッチイムノアッセイで測定され、アッセイの検出下限は0.4pmol/lである。
【0132】
安全性の潜在的リスク及び有害事象の見積り
デスモプレシンは、特に非常に高用量の治療及び大量の水分摂取において、低ナトリウム血症、水中毒、及び高血圧等の副作用をもたらす場合がある。120μg、それぞれ240μgの舌下錠剤の投与は、良好な安全性プロファイルを有することが示された(10.11)。推定される失血量は、12週間で2mlであり、小児の採血の許容限度を大きく下回る(9)。良き臨床上の基準についてのICHガイドライン(ICH Guidelines for Good Clinical Practice)に概説されるすべての推奨事項は、この臨床試験全体を通じて遵守される。
【0133】
統計的方法、試料サイズの考慮、及びデータ処理
この研究の目的は、ベースライン(デスモプレシン療法の開始前)での日内コペプチン振幅が、療法終了時の成功的治療を予測することができるかの検討である。研究の第2段階では、成功的なデスモプレシン治療応答の可能性を予測する推定されたベースラインのコペプチン振幅が確認される。ロジスティック回帰モデルを用いて、日内コペプチン振幅が成功的治療の成果を説明しているかを検討する。
【0134】
面談、臨床試験、及び血液採取によって得られたすべての関連する臨床及び実験室パラメータは、secuTrialのデータベースに入力される。コペプチンレベルは、アリコート血漿試料の完了時にバッチ分析で見積られる。特に明記しない限り、離散変数は係数(パーセント)として、連続変数は平均±標準偏差(SD)又は中央値(四分位範囲)として表現される。
【0135】
研究の第1の段階については、ベースラインでの日内コペプチン振幅を用いて、成功的治療の成果(=遺尿症の90%の減少)を予測できることを示しうるように試料サイズを計算した。
【0136】
ロジスティック回帰モデルを用いて、日内コペプチン振幅が成功的治療の成果を示すかを検討する。試料サイズを、α=5%の有意レベルで少なくとも90%の検出力(1-β=0.9)を確実にするように設定した。患者の30%が治療に成功すると仮定すると、20%の脱落率を考慮して、41人の評価可能な患者を確保するために52人の患者を募集する必要がある。
【0137】
研究の第2の段階では、後半の患者100人を用いて、ベースラインでの推定日内コペプチン振幅のppVを計算する。詳細な方法を、分析プランに記載する。
【0138】
すべての関連する臨床、実験室パラメータ、及び検査結果を、Excel(登録商標)のデータベースに入力する。資格基準を満たしていない有志の参加者は交代する。参加者は、いつでも研究から離脱することができる。離脱の理由を文書化する。すべての利用可能なデータを用いて、結果を要約する。欠損データを得るために多数の試みが行われるが、欠損データは帰属されない。
【0139】
結果
臨床試験は2つの段階で分析され、患者の第一の部分のデータ(日内のコペプチン振幅及び12週間後のデスモプレシン療法の成功)は、ロジスティックモデルを確認し、理想的なカットオフを推定するために用いられる。成功的デスモプレシン治療応答の可能性を予測するベースラインコペプチン振幅のカットオフを計算する。第2の研究部分のデータを用いて、95%信頼区間とともに予測精度を推定する。
【0140】
【表2】
図1
図2
【配列表】
2022520931000001.app
【国際調査報告】