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特表2022-520988ナノインプラント又はロールツーロールを用いた電子構造とアンテナ結合テラヘルツフィルムの製造方式・方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-04
(54)【発明の名称】ナノインプラント又はロールツーロールを用いた電子構造とアンテナ結合テラヘルツフィルムの製造方式・方法
(51)【国際特許分類】
   H01P 11/00 20060101AFI20220328BHJP
   H01P 1/00 20060101ALI20220328BHJP
   H01Q 9/16 20060101ALN20220328BHJP
【FI】
H01P11/00
H01P1/00 Z
H01Q9/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021548703
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 US2020019127
(87)【国際公開番号】W WO2020172476
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】62/808,275
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/816,907
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/817,489
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519090505
【氏名又は名称】レッドウェイブ エナジー, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REDWAVE ENERGY, INC.
【住所又は居所原語表記】5395 Pearl Parkway, Suite 130, Boulder, CO 80301 U. S. A.
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】ブラディー,パトリック,ケー
(72)【発明者】
【氏名】ペルツ,ブラッドリー
(72)【発明者】
【氏名】タッカー,ザカリー
(72)【発明者】
【氏名】ペルロフ,クレイグ
【テーマコード(参考)】
5J011
【Fターム(参考)】
5J011CA11
(57)【要約】
アンテナ結合テラヘルツ(ACT)フィルムには複数のレクテナがあり、それぞれにはアンテナとダイオードが付いている。ACTフィルムはナノインプリントリソグラフィ工程とロールツーロール工程を用いて製造されている。インプリント用テンプレートは、1つ又は複数の酸化物層で分離された2つの金属層を有するフィードストック上に重なっている。下部金属層を曝露するため、フィードストックがエッチングされる。レクテナ内でのダイオードへの短絡を回避するため、下部金属層の一部が切り落とされ下部金属層内に不連続部分が生み出される。メタマテリアルフィルムも作製される。ACTフィルムの製造を完了するため、レクテナフィルムとメタマテリアルフィルムの位置合わせを行い、レクテナフィルム内のレクテナがメタマテリアルフィルム内のメタマテリアルにある穴の上に配置されるようにする。整列したら、レクテナフィルムとメタマテリアルフィルムは接合される。
【選択図】 図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むACTフィルムの製造方法:
-複数のレクテナを有するロールツーロール基板上のレクテナフィルムの製造で、各レクテナは第1金属層、第2金属層及びダイオードを作製するための第1・第2金属層の間に挟まれた少なくとも一つの酸化物を含み、各レクテナはフィードストックへの一連のエッチングを用いて製造され、その間にダイオードの第2金属への短絡を避けるため第1金属のアンダーカット(切り落とし部分)が作製される。
-複数のメタマテリアルを有する基板上のメタマテリアルフィルムの製造で、各メタマテリアルにはその表面上に複数の穴がある。
-レクテナがメタマテリアル内の穴上に配置されるようにするレクテナフィルムとメタマテリアルフィルムの位置合わせ、及び
-整列している場合でのレクテナフィルムのメタマテリアルフィルムへの接合
【請求項2】
メタマテリアルフィルムの製造が以下からなる、請求項1に記載の方法:
-複数の構造体を有する電気メッキテンプレートの仮設基板上への配置
-電気メッキテンプレートのシード処理
-構造体を完全に封入するための電気メッキテンプレートのメッキ
-基板の貼り付け、及び
-仮設基板の除去
【請求項3】
さらに2枚のフィルムを整列させる前におけるメタマテリアルの表面上への孤立構造体の配置を含む、請求項1に記載の方法:
【請求項4】
さらにモアレ縞を使用して2枚のフィルムを整列させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
粗い位置合わせと精細な位置合わせの実施を含む、請求項4の方法。
【請求項6】
さらにx方向とy方向の双方での粗い位置合わせと精細な位置合わせを実施することを含む、請求項5の方法。
【請求項7】
第1金属の時間調整湿式エッチングを使用してアンダーカットが作られる、請求項1の方法。
【請求項8】
一連のエッチングを誘導するナノインプリント治具を使用して各レクテナが製造される、請求項1の方法。
【請求項9】
ナノインプリント治具がフィードストック上で転写される、請求項8の方法。
【請求項10】
さらに基板上での第1金属層の蒸着、
第1金属層上での少なくとも1つの酸化物の蒸着で各酸化物について一度に一層とすること、及び
溶着した最後の酸化物層上での第2金属層の蒸着による、
フィードストックの製造を含む、請求項1の方法。
【請求項11】
さらに第2金属層上でのナノインプリント治具の構築を含む、請求項10の方法。
【請求項12】
ナノインプリント治具に圧痕領域がある、請求項11の方法。
【請求項13】
第2金属層を曝露するための圧痕領域内でのナノインプリント治具の材料を通じたエッチング、
第1金属層を曝露するための圧痕領域内での第2金属層及び少なくとも一つの酸化物を通じたエッチング、及び
アンダーカットを形成するための十分な時間をかけた圧痕領域内での第1金属のエッチング
によりアンダーカットが形成される、請求項12の方法。
【請求項14】
ナノインプリント治具に圧痕領域がある、請求項9の方法。
【請求項15】
フィードストックを曝露するための圧痕領域内でのナノインプリント治具の材料を通じたエッチング、
第1金属層を曝露するための圧痕領域内でのフィードストックを通じたエッチング、及び
アンダーカットを形成するために十分な時間をかけた圧痕領域内での第1金属のエッチングにより
アンダーカットが形成されている、請求項14の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年2月20日出願米国仮出願第62/808.275号、2019年3月11日出願米国仮出願第62/816,907号及び2019年3月12日出願米国仮出願第62/817,489号の出願日の利点を主張するものであり、ここにそのすべてが全体としてその参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明の実施形態は、一般的には、電子構造と一般にそうした構造及び電磁放射からのエネルギーを収穫する構造を含むアンテナ結合テラヘルツフィルムを形成する構造と方法に関するものである。より具体的には、実施形態はナノ構造、メタマテリアルに関連している。近接場量子整流器(NFQ整流器)或いはレクテナと例えば赤外線、近赤外、可視光線スペクトルからのエネルギーを収穫し、ミリ波やテラヘルツエネルギーを取り込みそのような構造を含むフィルムに伝達する関連方法・方式である。
【背景技術】
【0003】
今や世界では安価な再生可能エネルギーへの即時の多大な必要性が生じている。皮肉にも、日光や熱の形で利用できるエネルギーは豊富に存在するが、社会のニーズを満たすためにそのようなエネルギーを使用するには、電気形態に変換する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低温廃熱は豊富であり広く存在する。一般的には、そのような低温廃熱は、例えば排ガス煙突や加熱廃水など大量に見つかっている。ある容積のガス又は流体を収穫するには、この目的で作製されたフィルムと接触する大きな表面積が必要となる。熱源を収穫して利用可能な電力に変換することが低コストで特に望ましい。次に低コスト製造技術が、廃熱収穫用電子フィルム・装置にとって重要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態は、一般的には電子部品、具体的にはNFQ整流器の製造方式・方法を対象としている。実施形態では、そのような電子構造とNFQ整流器構造を含むアンテナ結合テラヘルツフィルムなどのナノインプリントリソグラフィ及びロールツーロール(R2R)技術とフィルムを使用している。対をなすナノアンテナとダイオードのアレイ表面技術が、エネルギー収穫用途では極めて大きな利点となっている。廃熱回収の分野では、対象熱源の周波数スペクトルに合わせることができ、可動部がなく、安価に製造できることから、これらの方式は理想的である。
【0006】
本明細書で説明する実施形態は、ナノインプリントリソグラフィ(NIL)とロールツーロール(R2R)を使用してフィルム上で電子構造を製造する方法に関するものである。NILとR2Rの工程の開発は高価であり時間がかかる。工程内の手順の複雑性や数を低減させることが、かなりの工程開発費節減や製造費削減につながっている。本明細書で説明するとおり、一つのそのような削減策として、多層スタック(積層)での主要構造部材のアンダ―カット(切り落とし)のエッチング(食刻)加工が挙げられる。
【0007】
製造する素子のナノスケールでのサイズゆえにモノリシック(一体的)に作製されていない場合、位置合わせがNILとR2Rの各工程では重要な課題となっている。多重構造体の整列は、自己整合インプリントリソグラフィ(SAIL)を使用して確実に行える。SAIL工程では、すべての素子部材をインプリント(転写)治具で一緒に組み立てる。液体ポリマー又はモノマーが基板に塗布され、治具が液体内に押し込まれる。ローラー又はその他の機械工具が、基盤、液体、インプリント治具を一つにまとめる。液体は紫外線又は熱で硬化され、インプリント治具が硬化したポリマー/モノマー(以下「ポリマー」)から分離される。
【0008】
最適な方法として、NFQ整流器を生み出すNILとR2Rの各工程は、サブトラクティブ(減算)法である。レイヤー(層)や材料を追加することができる一方、一般にこの工程は純粋にサブトラクティブ(減法)である場合には最も簡単である。本発明の一実施形態では、基板は完成品に到達するのに必要となるすべての材料でコーティング(被覆)される。この被覆基板は、フィードストック又はフィードストックスタックと呼ばれる。例えば、NFQ整流器を製造する場合には、1つ以上の薄い酸化物である金属と上部金属が基板上に溶着し、フィードストックを生み出す。一実施形態では、フィードストック基板とはロールツーロール法で使用できる基板のことである。
【0009】
一実施形態では、インプリントポリマーが表面に溶着し、転写構造と曝露フィードストック層のエッチングが段階的に進行する。ディファレンシャル(差動)エッチングにより、フィードストックのポリマー構造、金属又は酸化物を選択的にエッチングすることができる。ある実施形態では、NFQ整流器構造には1つ以上の酸化物層で分離された2つの金属層が含まれている。下部金属がエッチングされ、左アンテナリーフを形成する。上部金属がエッチングされ、右アンテナリーフを形成する。素子の中央部にある重複領域がダイオードを形成する。この実施形態では、単にレイヤーを減らしただけでは、右アンテナが下方にある下部金属から分離されないため、ダイオードへのショート(短絡)が発生する。
【0010】
この短絡問題を解決するため、下部金属を切り落とし除外する。この切り落としにより多数のその他の手順が省かれ、工程がかなり簡素化される。一実施形態では、この切り落としは金属の湿式エッチングで行われ、切り落としが望まれる箇所でのインプリント治具内の構造体である窪みとも呼ばれる圧痕を配置することで可能となる。
【0011】
このアンダーカット(切り落とし)工程が機能するための重要な要素とは、切り落とし領域でのインプリント治具内の圧痕構造、周囲の構造体よりも幅の狭い切り落とし領域、及びその他の永久層の下から材料を選択的に除去できる湿式エッチング又はその他の等方性エッチングである。この手法のある実施形態では、横方向エッチング速度がエッチング液温度の関数である湿式エッチング液が使用されている。この方法では、切り落とし用の横方向エッチング速度は規定エッチング液温度を設定し維持することで制御される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1は、一実施形態によるフィードストックスタックの上部にあるナノインプリント用多層テンプレート(型板)を示す。
【0013】
図1Aは、一実施形態による基板上の典型的なフィードストック及びポリマーナノインプリント治具層を示す。
【0014】
図1Bは、第2実施形態による基板上の典型的なフィードストック及びポリマーナノインプリント治具層を示す。
【0015】
図1Cは、第2実施形態による基板上の典型的なフィードストック及び対応するポリマーナノインプリント治具層を示す。
【0016】
図1Dは、線A-A’で取り入れた図1Cの断面図である。
【0017】
図2は、一実施形態による初回デスカムエッチング以後のフィードストックスタック上部でのナノインプリント用多層テンプレートを示す。
【0018】
図2Bは、第2実施形態による初回デスカムエッチング以後のフィードストックスタック上部でのナノインプリント用多層テンプレートを示す。
【0019】
図2Cは、線B-B’で取り入れた図2Bの断面図である。
【0020】
図3は、一実施形態による窪み領域内での金属M2とダイオード酸化物を除去するエッチング以後のフィードストックスタック上部でのナノインプリント用多層テンプレートを示す。
【0021】
図3Bは、第2実施形態による窪み領域内での金属M2とダイオード酸化物を除去するエッチング以後のフィードストックスタック上部でのナノインプリント用多層テンプレートを示す。
【0022】
図3Cは、線C-C’で取り入れた図3Bの断面図である。
【0023】
図4は、一実施形態による不動態化酸化物が溶着した後のフィードストックスタック上部でのナノインプリント用多層テンプレートを示す。
【0024】
図4Bは、第2実施形態による不動態化酸化物が溶着した後のフィードストックスタック上部でのナノインプリント用多層テンプレートを示す。
【0025】
図4Cは、線D-D’で取り入れた図4Bの断面図である。
【0026】
図5は、一実施形態による指向性エッチングにより水平面での不動態化酸化物を除去した後のフィードストックスタック上部でのナノインプリント用多層テンプレートを示す。
【0027】
図5Bは、第2実施形態による指向性エッチングにより水平面での不動態化酸化物を除去した後のフィードストックスタック上部でのナノインプリント用多層テンプレートを示す。
【0028】
図5Cは、線E-E’で取り入れた図5Bの断面図である。
【0029】
図6は、一実施形態による湿式エッチングにより下部金属でのアンダーカット(切り落とし部分)をも生み出しながら窪み領域内の下部金属を除去した後のフィードストックスタック上部でのナノインプリント用多層テンプレートを示す。
【0030】
図6Bは、第2実施形態による湿式エッチングにより下部金属でのアンダーカットをも生み出しながら窪み領域内の下部金属を除去した後のフィードストックスタック上部でのナノインプリント用多層テンプレートを示す。
【0031】
図6Cは、線F-F’で取り入れた図6Bの断面図である。
【0032】
図7は、一実施形態によるエッチングにより不動態化から取り残された側壁酸化物を除去した後のフィードストックスタック上部でのナノインプリント用多層テンプレートを示す。
【0033】
図8は、一実施形態によるアンダーカットを分かりやすく示すため省略されたナノインプリント用多層テンプレートを加えた透明寸法図を示す。
【0034】
図9は、一実施形態によるポリマーの最上層がエッチングにより除去された後のフィードストックスタック上部でのナノインプリント用多層テンプレートを示す。
【0035】
図9Bは、第2実施形態によるポリマーの最上層がエッチングにより除去された後のフィードストックスタック上部でのナノインプリント用多層テンプレートを示す。
【0036】
図9Cは、線G-G’で取り入れた図9Bの断面図である。
【0037】
図10は、一実施形態によるエッチングにより残りのナノインプリント用多層テンプレート層の外側にあるフィードストックスタックを除去した後のフィードストックスタック上部でのナノインプリント用多層テンプレートを示す。
【0038】
図10Bは、第2実施形態によるエッチングにより残りのナノインプリント用多層テンプレート層の外側にあるフィードストックスタックを除去した後のフィードストックスタック上部でのナノインプリント用多層テンプレートを示す。
【0039】
図10Cは、線H-H’で取り入れた図10Bの断面図である。
【0040】
図11は、一実施形態によるナノインプリント用多層テンプレートを除去した後のフィードストックスタック上部でのナノインプリント用多層テンプレートを示す。
【0041】
図11Bは、第2実施形態によるナノインプリント用多層テンプレートを除去した後のフィードストックスタック上部でのナノインプリント用多層テンプレートを示す。
【0042】
図11Cは、線I-I’で取り入れた図11Bの断面図である。
【0043】
図12は、一実施形態による金属M2をエッチングした後のフィードストックスタック上部でのナノインプリント用多層テンプレートを示す。
【0044】
図13は、一実施形態によるナノインプリント用多層テンプレートの残りの層部分を除去した後のフィードストックスタック上部でのナノインプリント用多層テンプレートを示す。
【0045】
図13Bは、第2実施形態によるナノインプリント用多層テンプレートの残りの層部分を除去した後のフィードストックスタック上部でのナノインプリント用多層テンプレートを示す。
【0046】
図13Cは、線J-J’で取り入れた図13Bの断面図である。
【0047】
図14は、一実施形態によるアンダーカット800を含む最終構造の透明寸法図及び分解寸法図を示す。
【0048】
図15は、一実施形態によるメタマテリアルを作製するための電気メッキ手順での電気メッキテンプレート又はインプリントパターンを含む構造を示す。
【0049】
図16は、一実施形態によるシード層が溶着した後にメタマテリアルを作製するためのインプリントパターンを有する構造を示す。
【0050】
図17は、一実施形態による銅などのメッキ材1702により完全にメッキされているインプリントパターンの特徴を示す。
【0051】
図18は、一実施形態による銅の反対側に接合された基板で裏向きの周期穴の表面を持つ銅を含むメタマテリアルを示す。
【0052】
図19は、一実施形態によるメタマテリアルが穴の周期的な配置を伴う表面を有することを示すために裏返されている完成メタマテリアルを示す。
【0053】
図20は、一実施形態によるメタマテリアル表面に追加されている典型的な完成構造体のスタンドオフ(孤立)構造を示す。
【0054】
図21は、一実施形態による2本の格子線の間にモアレ(干渉)縞つまり回転を得る方法を示す。
【0055】
図22は、一実施形態による交互ピッチ□1と□2を備えた格子4組を含むレクテナの典型的なレクテナ位置合わせマーク及び交互ピッチ□1と□2を備えた格子4組を含む対応するメタマテリアルフィルムの典型的なメタマテリアル位置合わせマークを示す。
【0056】
図23は、一実施形態によるモアレ縞を使用したレクテナフィルムとメタマテリアルフィルムの粗い位置合わせを示し、x方向のオフセットとy方向のオフセットは□1以下である。
【0057】
図24は、一実施形態によるモアレ縞を使用したx方向でのレクテナフィルムとメタマテリアルフィルムの精細な位置合わせを示す。
【0058】
図25は、一実施形態によるモアレ縞を使用したy方向のレクテナフィルムとメタマテリアルフィルムの精細な位置合わせを示す。
【0059】
図26は、一実施形態によるレクテナフィルムとメタマテリアルフィルムの位置合わせのための位置合わせ方式の概略図である。
【0060】
図27は、一実施形態によるロールツーロール環境で作動するよう構成された整列方式を組み込んだ典型的なロールツーロール方式の概略図である。
【0061】
図28は、一実施形態による電力出力シグネチャ調整を使用してメタマテリアルフィルムとレクテナフィルムの位置合わせを行うための典型的な方式の概略図である。
【0062】
図29は、一実施形態による複数のレクテナを含むレクテナフィルムを作製する工程のフローチャート(系統図)である。
【0063】
図30は、一実施形態による複数のメタマテリアルを含むメタマテリアルフィルムを作製する工程のフローチャートである。
【0064】
図31は、一実施形態によるメタマテリアルと組み合わさったレクテナの最終製品組み立て工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下の説明は、当業者が発明を行い利用することができるよう紹介しており、特許出願及びその要件との関連で記載している。説明する実施形態への各種の変更はそうした当業者にはすぐに分かり、本明細書の一般原則は他の実施形態に適用することができる。そのため、本発明は図に記載する寸法制限を含め以下に示す実施形態に限定しようとするものではなく、本明細書で説明する原則及び特徴と一致した最も広い範囲が許容される。図面は一定の縮尺で描かれていない。図に記載する寸法は、単に適用する特徴についての典型的な実施形態での模範として示すものであり、表示の縮尺に限定する、或いは図面のその他の特徴との比較で検討するものではない。
【0066】
アンテナ結合テラヘルツフィルム(「ACTフィルム」)は、ナノインプリントリソグラフィの周囲に構築されたロールツーロール製造を用いて製造されている。ACTフィルムは、次の2つのサブアセンブリ(部分組立品)からなる:(1) レクテナ又はNFQ整流器フィルム及び(2) メタマテリアルフィルム。一実施形態では、メタマテリアルはレクテナのアンテナの共振周波数に合わせて調整される。一実施形態では、NFQ整流器フィルムには、複数のNFQ整流器が製造されるロールツーロールフィルム基板が含まれている。一実施形態では、メタマテリアルフィルムには、複数のメタマテリアルが製造されるロールツーロール基板が含まれている。ACTフィルムの製造を完了するため、レクテナフィルムとメタマテリアルフィルムが整列し、レクテナがメタマテリアル内の穴の上に配置された後接合できるようになる。
【0067】
メタマテリアルフィルムを含む(以下に説明する)メタマテリアルは、エネルギー収穫用に予想されている周波数に合わせて調整される。この場合には、メタマテリアルは熱に関連するテラヘルツ(THz)範囲内の周波数に合わせて調整される。レクテナ及びメタマテリアルに関する詳細については、「メタマテリアルを利用した電磁放射の電気エネルギーへの変換方式・方法」と題する2015年6月19日出願米国特許出願第14,745,299号(「299特許出願」)及び「メタマテリアル、レクテナ及び補償方式を利用した電磁放射の電気エネルギーへの変換方式・方法」(「051特許出願」)と題する2017年9月14日出願米国特許出願第15,602,051号に記載されており、ここにその双方が全体としてその参照により本明細書に組み込まれている。
【0068】
一実施形態では、ACTフィルムの製造には、以下の表1及び図29~31の工程系統図に要約する多数の工程段階が組み込まれている。表1のサブアセンブリ手順番号は、図29~31のフローチャートにある手順番号に対応している。
【0069】
一実施形態に従ってACTフィルムの製造を開始するため、フィードストックが作製される。図1A及び1Bに、典型的なフィードストック103及び103aをそれぞれ示す。フィードストック103は、レクテナ1304製造用の典型的なフィードストックである。レクテナサブアセンブリフィルムには、複数のそのようなアンテナ1304が含まれている。フィードストック103aは、リフレクタ(反射板)の付いたレクテナ製造用の典型的なフィードストックである。
【0070】
図1Bに示すとおり、別の実施形態に従って表面処理ステンレス鋼(又はその他の)基板104a上でフィードストック103aを作製するため、(典型的な厚さを有する)以下の層がスパッタリング蒸着される。
(a) 1 μm SiO2分離層(導電性基板の場合のみ)
(b) 150 nm Al
(c) 720 nm SiO2分離層
(d) 150 nm Al
(e) 30 nm Ni
(f) 2.5 nm NiOx
(g) 1 nm Al2O3
(h) 10 nm Cr
(i) 150 nm Al
【0071】
例えば図1Bに示すとおり、以下の説明では、説明を簡単にするため及びレクテナとメタマテリアルの製造は上記のフィードストック用材料に限定されないことから、説明を分かりやすくするため一般基板104、一般第1金属109つまりM1、一般第2金属107つまりM2及び一般の一つ又は複数の酸化物108への参照を行っている。この取り決めを使用して、典型的なフィードストック103aでは、基板104が酸化ケイ素から作製される。金属107(M2)は、一層のニッケルと一層のアルミニウムからなる。金属109(M1)は、一層のクロムと一層のアルミニウムからなる。酸化物層108は、ニッケル酸化物とアルミニウム酸化物という2つの酸化物層からなる。そのため、フィードストック103aを使用すると、金属-絶縁物-絶縁物-金属(MIIM)ダイオードを有するレクテナ素子が得られる。
【0072】
フィードストック103と103aは、いくつかのパス(圧延孔型)で作製できる。図1Bを参照しながら、基板(a)、リフレクタ(c)及びアイソレータ(c)の曝露を真空下で同じパス内で達成する必要がある。注:この時点では、真空が壊れている可能性がある。次に金属107(M1)、(d)及び(e)、酸化物(f)及び(g)と金属109(M2)、(h)及び(i)の次回溶着は、真空を破壊することなく完了しなければならない。真空破壊により材料が酸素供給源に曝され恐らく材料スタックを破損することから、金属と酸化物の正確な制御が素子のダイオード機能にとって重要である。
【0073】
一実施形態では、フィードストックの薄い層が途切れのないスパッタ成膜に順応する。フィ―ドストックの作製は、図29の工程系統図及び表1ではステップ1と呼ばれる。
【0074】
ACTフィルム工程では、さまざまな基板の選択肢がある。最良の基板とは、寸法安定性に優れ表面が滑らかであり低価格で、かつ耐熱性が高いものである。表2に、それぞれの長所と短所とともに、現時点での望ましさの順で候補となる基板材料を列挙している。
【0075】
例えばフィードストック103又は103aなどのフィードストックを作製した後、紫外線硬化性フォトポリマーの均一な厚さでフィードストックを被覆してナノインプリント治具101が作製される。これは、リバースグラビアコーターなどで達成できる。一実施形態では、次に被覆フィードバックがパターン化された石英ローラーを使用してインプリント(転写)され、石英ローラー内部からの紫外線によりポリマーはインプリントとバッキングローラーの間のロール間隙にある間に固定される。次にインプリントされたフィードストックは熱硬化段階又は第2紫外線硬化段階に入り、ポリマーの架橋が完了する。
【0076】
一実施形態では、最終フォトポリマー(感光性樹脂)は後続の工程段階で使用される湿式金属エッチング液と適合している。これを酸素プラズマでエッチングし、アッシング(灰化)又は類似の工程を用いた工程段階の最後に除去できる必要がある。一実施形態では、インプリント段階又は層の高さは約0.5ミクロンである。一実施形態では、グラビアコーティングは約1ミクロンである。ナノインプリント治具101の作製は、図29の工程系統図及び表1ではステップ2と呼ばれる。図1及び1Cに、それぞれフィードストック103及び103aの上部にある典型的なナノインプリント治具101を示す。図1Dに、フィードストック103aについての典型的な実施形態の図1Cでの線A-A’で取り入れた断面積を示す。
【0077】
図1図13を参照すると、レクテナ1304を含む第1サブアセンブリは、基板104、フィードストック層103及びナノインプリント治具101からなる。或いは、このフィードストックは基板104及び/又はナノインプリント治具101を含むものと称することもできる点に注意すべきである。
【0078】
図13を参照すると、一実施形態では、レクテナ又はNFQ整流器1300が製造される。一実施形態では、NFQ整流器1300は2つのアンテナ層1302aと1302b及びダイオード1304からなる。動作中、電流がアンテナリーフ1302a及び1302bで生成され、ダイオード1304が配置されている給電点に供給される。ダイオード1304が作動してアンテナリーフで発生した電流を整流し、それにより直流電流が得られその他の素子に電力を供給するのに使用できる。
【0079】
アンテナリーフ1302aは、第1金属109(M1)で作られ、アンテナリーフ1302bは第2金属107(M2)で作られる。ダイオード1304は金属M1とM2及び一つ以上のダイオード酸化物108からなる。一実施形態では、金属M1とM2は多層である。例えば、金属M1はニッケル薄層を有するアルミニウムであり、金属M2は上部にアルミニウムの付いたクロム薄層である。アンテナで使用する金属の要件はダイオードのものとは異なるため、そのような変異は重大である。一実施形態では、金属M1とM2は同じ金属である。
【0080】
高周波数で導電性が高くなるようにするには、アンテナ金属が通常必要となる。したがって、一実施形態では、アルミニウムは双方の金属M1とM2での一次導電性金属である。金属-絶縁物-金属(MIM)ダイオード又は金属-絶縁物-絶縁物-金属(MIIM)ダイオード中の金属は、その異なる仕事関数及び必要なトンネリングや反対称ダイオード挙動に対して酸化物で障壁を確立する様式であるがゆえに選択されている。一実施形態では、ダイオード1304には、例えばNiOやAl2O3などの一つ以上のダイオード酸化物108が含まれている。この例で分かりやすくするため、フィードバックストックAl-Ni-NiO-Al2O3-Cr-Alのフルスタック(全積層)としている。図103aに示すとおり、反射板(リフレクタ)金属及び分離領域も追加できる。
【0081】
図1を参照すると、本発明の一実施形態では、図1に示すとおり多層ナノインプリントテンプレート101がフィードストック103や基板104と組み合わされている。一実施形態では、基板104はロールツーロールフィルムの一部である。図1に、基板上にナノインプリントテンプレートとフィードストックを含むそのような構造を再現する多くの形態のうちの一つだけを示す。
【0082】
図1に示すとおり、一実施形態では、ナノインプリント治具101は多数の層(レイヤー)101a、101b、101cを含む。層の数はレクテナ1300を作るのに必要となるエッチングの数と種類に対応する。例えば、一実施形態では、ナノインプリント治具には3つの層がある。図1にも示すとおり、ナノインプリント治具101の層により、作製すべき所望のレクテナ1300の形状が定まっている。例えば、図1に示すとおり、ナノインプリント治具101は、レクテナ1300のアンテナリーフ1302aに相当する第1アンテナリーフ111及びレクテナ1300のアンテナリーフ1302bに相当するアンテナリーフ112さらにダイオード1304に相当する重複領域110の形状を有する層を含む。したがって、例示する実施形態では、レクテナ1300はボウタイアンテナである。
【0083】
一実施形態では、ナノインプリント治具101はエッチングにより選択的に除去できるポリマーから作られている。本明細書で説明するとおり、レクテナ1300の製造は自己整合インプリントテンプレートでの特定の特徴を有する代替エッチングを伴っている。
【0084】
図1Aに、ナノインプリント治具ポリマー101を備えた基板104上の典型的なフィードストック103を例示する。一実施形態では、フィードストック103には、第1金属の上部に一つ以上の酸化物108を備えた基板104の上部に配置された第1金属109及び酸化物108の上部に配置された第2金属107が含まれている。
【0085】
窪み又は圧痕であるインプリント治具101内の領域102によりダイオード1304に相当する領域110付近の領域への湿式化学エッチングアクセスが可能となり、そこでアンダーカット800(図8参照)が形成される。一実施形態では、アンダーカットエッチングが本項で説明する一連のエッチングのほぼ最後に行われる。
【0086】
図2を参照すると、ナノインプリントテンプレートポリマー101の第1エッチング、つまりデスカムエッチングにより、領域202で金属107(M2)が曝される。領域202は、アンダーカット領域を形成する圧痕構造の結果を示す。デスカムエッチングの後、この圧痕構造が開いてM2を曝露する。一実施形態では、デスカムエッチングにより約0.05 μmの残留インプリント素材が除去され、窪み又はビア領域102が取り除かれる。CHF3をいくらか備えた酸素プラズマRIEを使用して、デスカムエッチングを行うことができる。
【0087】
時間はインプリント工程に左右される。一実施形態では、エッチング時間及び工程パラメータは特定のポリマー選択により決定され、影響を受けており、この段階ではステップ2で選択したグラビアコーティングの厚さである。一実施形態では、フォトポリマーのエッチング時間は10秒又はほぼ10秒である。デスカムエッチングは、図29の系統工程図及び表1ではステップ3と呼ばれる。図2及び2Bに、それぞれフィードストック103及び103aの上部にある典型的なナノインプリント治具101を示す。図2Cに、デスカムエッチング以後の典型的な実施形態についての図2Bにて線B-B’で取り入れた断面図を例示する。
【0088】
次に、図3に示すとおり、金属107(M2)及びダイオード酸化物108をエッチングして、領域302で金属109(M1)を曝露する。ダイオード110への短絡を回避するため、金属109(M1)は、アンテナリーフ領域111と112の間で不連続としなければならない。ダイオード領域110付近の狭い領域は、必要な不連続を生み出すためのアンダーカット(切り落とし)に使用される。
【0089】
例えば、フィードストック103aを備えた実施形態では、このエッチングによりビア102で150 nmの上部金属アルミニウムが除去される(例えば図1Bのフィードストック103aのアルミニウム層(i)参照)。一実施形態では、エッチングはCyantek Al-12S(シアンテック)などのエッチング液を用いた30°Cの湿式エッチングである。浸漬タンクを使用する場合、エッチング液をエッチング中に攪拌する必要がある。一実施形態では、例えばアルミニウム(Al)などのこの金属は、毎回30秒又は約30秒である。一実施形態では、フォトポリマーはエッチング液による影響を受けない。このAl金属エッチングは、図29の工程系統図又は表1ではステップ4と呼ばれる。
【0090】
また、フィードストック103aを備えた実施形態では、ビアである領域102内の海面金属から上部クロム(Cr)金属(例えば図1Bのフィードストック103aのCr層(h)参照)を除去するためのエッチングが行われる。一実施形態では、このエッチングはCyantek Cr-14などの希釈エッチング液を使用した室温湿式エッチングである。一般にそのようなエッチング液は選択性が非常に高い。一実施形態では、Crエッチング時間は10秒又は約10秒である。一実施形態では、アルミニウムエッチング液はクロム上にとどまる。同じエッチング液の中で双方の金属をエッチングすることが可能となる(ただし恐らく望ましくない)。このCr金属エッチングは、図29の工程系統図及び表1ではステップ5と呼ばれる。
【0091】
図3及び3Bに、フィードストック103aの窪み又はビア領域202で金属109(M1)を曝露するための金属107及び酸化物層108のエッチングの結果を示す。図3Cに、金属109(M2)と酸化物層108がエッチングされた後での典型的な実施形態についての図3Bにおいて線C-C’で取り入れた断面図を例示する。
【0092】
次に、一実施形態において、図4に例示する不動態化の段階で不動隊化酸化物400の一層が側壁を含む構造全体に溶着する。この不動態化段階は、金属109(M1)及び金属107(M2)の間でのエッチングに選択性がない場合にこの時点でのみ必要となる。このようなケースとは、金属109(M1)が金属107(M2)と同じ場合である。
【0093】
一実施形態では、不動態化段階において、CVD層が表示のとおり溶着する。これにより、垂直面・水平面ともにすべての曝露表面が覆われる。一実施形態では、CVD層の厚さと組成は、25 μmの厚さでSiNである。後続の工程段階を監視するために視覚的なコントラストがいくらかあるのは有用である。この不動態化段階は、図29の工程系統図及び表1ではステップ6と呼ばれる。図4と4Bに、不動態化酸化物のフィードストック103aへの塗布の結果を示す。図4Cに、不動態化層塗布後についての図4Bにおいて線D-D’で取り入れた断面図を例示する。
【0094】
次に、図5に示すとおり、不動態化材料の指向性エッチングによりコーティングされた側壁500しか残らなくなる。そのような指向性エッチングは、例えば酸素及び/又はフッ素系ガスを使用した反応性イオンエッチング装置(RIE)で達成することができる。このRIEエッチングにより水平不動態化層が取り除かれ、上部金属層の曝露端部が後続の金属エッチングから保護されるようになる。一実施形態では、RIEエッチング時間は30秒から1分の間である。この指向性エッチング段階は、図29の工程系統図及び表1ではステップ7と呼ばれる。図5及5Bに、フィードストック103aに適用された指向性エッチング段階の結果を示す。図5Cに、不動態化層の塗布後において図5Bで線E-E’から取り入れた断面図を例示する。
【0095】
フィードストック103aを使用した実施形態では、Ni界面金属(例えば図1Bでのフィードストック103aの層(e)参照)となる。これは、室温湿式エッチングである。一実施形態では、Niエッチング時間は10秒又は約10秒である。この段階は、アルミニウムエッチング液によってもニッケルが除去される場合には、必要とはならないであろう。Transene(トランセーン)社のNiエッチング液TFGの希釈版をこの段階で使用することができ、図29の工程系統図及び表1ではステップ8と呼ばれる。
【0096】
次に、図6に示すとおり、湿式エッチングにより圧痕領域602内で金属109(M1)が除去される。湿式エッチングによっても、金属109(M1)内にアンダーカット800が生み出され、短絡したダイオードが除去される。基板104は窪み領域602から目に見えることが分かる。アンダーカットはこれで完了するが、工程内にはいくつかの段階がまだ残っている。
【0097】
アンダーカットを決定する横方向湿式エッチングは、例えばエッチング液温度を制御して慎重に制御される。例えばAlの湿式エッチング液は、非常に温度依存的である横方向エッチング速度を有する。約55°C以上の温度では、横方向エッチング速度は縦方向エッチング速度と同じかそれ以上である。この場合での温度の慎重な制御が、アンダーカットの制御にとって重要である。正確なエッチング時間は、金属の厚さ、必要となるアンダーカットの長さ及びエッチング液の温度によって決まる。このアンダーカットは金属M1と金属M2を分離するのに役立つだけでなく、レクテナ1300のダイオード1304に相当する能動ダイオード素子110の領域も定まる。アンダーカット法によるダイオード1304の寸法の規定は、小さなダイオード1304構造を生み出すのにしばしば有利であるため、非常に重要である。説明するアンダーカット法により、さらに小さな構造を生み出すのに使用されるインプリント技術の小規模制限を超えることが可能となる。
【0098】
フィードストック103aの例でのアルミニウムなどの金属107(M1)の湿式エッチング(例えば図1Bのフィードストック103aの層(d)参照)がある。一実施形態では、典型的なフィードストック103aでのAlなどの金属(M1)の湿式エッチングは約40°Cで行われ、30秒又は約30秒である。浸漬タンクを使用した場合、エッチング液はエッチング工程実施中攪拌する必要がある。アルミニウムエッチング液をまず厚さ150 nmのアルミニウムを切断した後、横方向エッチングが始まる。横方向エッチング速度はエッチング液の温度の強い関数である。温度が1°C変化しただけでも横方向エッチング速度に大きな影響を及ぼす可能性がある。一実施形態では、横方向エッチングは、最終構造で能動ダイオード領域(つまり上部・下部アンテナアームの間でのダイオード領域)を分離するためにビアの各側面で100 nm延長する必要がある。この時点での何らかの過剰エッチングは、短絡を避けるため慎重なものとなる。このエッチングは、能動ダイオードの一方の端の位置を定めるのに役立つため、この段階を制御するよう注意を払う必要がある。エッチング以後の状態を以下の2つの図に示す。第2の図では、フォトポリマーを表示しておらず、上部金属・ダイオード層を半透明状に示している。
【0099】
このアンダーカットエッチングは、図29の工程系統図及び表1ではステップ9と呼ばれる。図6及び6Bに、フィードストック103aの窪み又はビア領域202で金属107を曝露するための金属109と酸化物層108のエッチングの結果を示す。図6Cに、金属109(M2)と酸化物層108がエッチングされた後における典型的な実施形態についての図6Bでの線F-F’で取り入れた断面図を例示する。
【0100】
次に、図7に示すとおり、各種の特徴を持つ側壁上にある残留不動態化酸化物400が除去され、フィードストック103の上部にある残留NILポリマー101は残っている。この段階は、後続の金属M2とダイオードのエッチングにより同時に側壁層が除去された場合には、必要とならないであろう。この時点では第2の不動態化がさらにアンダーカットを削減するのに望ましくなることがある。ビアの正確な位置は、アンダーカットの特定の性質や性能により決まり、必要な場合には再配置することができる。
【0101】
図8は、良く見えるようにするためインプリントポリマーを除去している、アンダーカット800を作製した後におけるアセンブリ(組立品)の透視図である。図に示すとおり、金属109(M1)は、連続的な金属107(M2)の下にあるアンダーカット(不連続)である。この時点で第2不動態化段階を追加して、金属109(M1)層の後続エッチング実施中におけるアンダーカットの更なる発生を制限する不動態化酸化物の追加を制限することができる。
【0102】
次に、図9に示すとおり、ポリマーナノインプリントテンプレート101の層205が除去され、金属107(M2)が曝露される。インプリント層の除去により、素子の輪郭が露わになる。一実施形態では、恐らくいくらかのCHF3を有する酸素プラズマRIEが使用される。時間は、ステップ高(段差)に依存する。一実施形態では、フォトポリマーのエッチング時間は1分又は約1分である。
【0103】
インプリント層を除去する段階は、図29の工程系統図及び表1ではステップ10と呼ばれる。図9及び9Bに、インプリント層除去の結果を示す。図9Cに、金属109(M2)と酸化物層108がエッチングされた後の典型的な実施形態についての図9Bにおいて線F-F’で取り入れた断面図を例示する。
【0104】
次に、エッチングがフィードストック103から行われる。図10に、フィ―ドストックスタック103全体からのエッチングの後にポリマー層が取り残されたレクテナ1300の構造を示す。この段階は、例えば塩素などのガスを使用したRIEエッチングにより、又は金属・酸化物層に固有の異方性湿式・乾式エッチングの組み合わせにより達成することができる。
【0105】
図1Bのフィードストック103aを使用した実施形態では、これは以下のような一連のエッチングで達成される。Al層のエッチング(図1Bでのフィードストック103aの層(i))では、基本的には前回エッチングされていなかったAl層のエッチング領域までステップ4を繰り返す。このAlエッチングは、図29の工程系統図及び表1ではステップ11と呼ばれる。各Cr層(図1Bでのフィードストック103aの層(h))では、基本的には前回エッチングされていなかったCr層のエッチング領域までステップ5を繰り返す。Crエッチングは、図29の工程系統図及び表1ではステップ12と呼ばれる。
【0106】
RIE SF6エッチングは、NiOとAl2O3の各層(図1Bでのフィードストック103aのダイオード層(f)及び(g))をエッチングするのに使用される。一実施形態では、ダイオードエッチング時間は30秒又は約30秒である。別の実施形態では、湿式エッチングを使用して酸化物層をエッチングしている。湿式エッチングを使用することで、本工程のこの時点では真空段階が回避される。ダイオード層エッチングは、図1B(29?)の工程系統図及び表1ではステップ13と呼ばれる。
【0107】
Ni層(図1Bでのフィードストック103aの層(e))は、基本的には前回エッチングされていなかったNi層のエッチング領域までステップ8を繰り返しながらエッチングされる。Niエッチングは、図1B(29?)の工程系統図及び表1ではステップ14と呼ばれる。
【0108】
次に、Al層(図1B中のフィードストック103aの層(i))は、基本的に前回エッチングされていなかったこのAl層のエッチング領域までステップ4を繰り返しながらエッチングされる。Alエッチングは、図29の工程系統図及び表1ではステップ15と呼ばれる。図10及び10Bに、それぞれフィードストック103及び103aからのエッチングの結果を示す。図10Cに、フィードストック103aからのエッチングの結果についての図10Bにおいて線G-G’で取り入れた断面図を例示する。
【0109】
次に、図11に示すとおり、ポリマーインプリントテンプレートの別の層が除去され、ナノインプリント治具101の右アンテナリーフ203上の残留ポリマーインプリント構造が残っている。したがって、フォトポリマーが下部アンテナアーム1302a上で除去される。ナノインプリント治具101の左アンテナリーフ204は、金属107(M2)、ダイオード酸化物108及び下部金属109(M1)を含む満杯ダイオードスタック(積層)が含まれているため、依然として不完全である。この異方性エッチングは、例えば酸素プラズマを使用したRIE工程により達成することができる。これは、基本的にはステップ10の繰り返しである。このナノインプリント治具101の層除去は、図29の系統工程図及び表1ではステップ16と呼ばれる。図11及び11Bに、領域204でのナノインプリント治具101のポリマー除去の結果を示す。表11Cに、領域204でのポリマー除去の結果についての図11Bにおいて線H-H’で取り入れた断面図を例示する。
【0110】
次に、図12に示すとおり、エッチングによりポリマー領域204の下にあった金属107(M2)の左アンテナリーフから上部金属が除去される。酸化物層108は、この図では残留することが示されている。金属107(M2)を除去するエッチングに応じて、これらの非常に薄い酸化物は除去されることもあり残留することもある。そうした酸化物は極めて薄いため、この領域内で酸化物層108が存在していても素子には影響を及ぼさない。この異方性エッチングは、金属107(M2)に固有である湿式エッチングにより、又は金属107(M2)が除去された後に終了するよう時間調整された(例えば塩素プラズマなどの)RIEエッチングのいずれかにより達成することができる。これは、基本的には領域204の下での図1Bのフィードストック103aでの層(i)についてAlエッチングのステップ4を繰り返したものである。このAlエッチングは、図29の系統工程図及び表1ではステップ17と呼ばれる。
【0111】
フィードストック103aを使用した実施形態では、Cr層もエッチングされ、基本的には図1Bでのフィードストック103aの層(h)についてステップ5を繰り返したものである。このCrエッチングは、図29の工程系統図及び表1ではステップ18と呼ばれる。
【0112】
次に、図13に示すとおり、ナノインプリント治具101ポリマーの残りの部分が除去され、レクテナ1300の最終版が残る。このポリマーの最終除去は、(例えばアッシングなどの)酸素プラズマエッチングを使用してステップ10の工程を繰り返すか、ポリマーを溶解する化学物質を用いた湿式エッチングにより達成することができる。
【0113】
ナノインプリント治具101の残りの部分の除去は、図29の工程系統図及び表1ではステップ19と呼ばれる。図13及び13Bに、ナノインプリント治具101残留物の除去の結果を示す。図13Cに、領域204でのポリマー除去の結果についての図13Bにおいて線I-I’で取り入れた断面図を例示する。
【0114】
図14に、アンダーカット800が目に見えるようにしたレクテナ構造体1300の分解図を例示する。この時点で品質保証試験を行って素子の歩留まり及び製造効率を求めることができる。
【0115】
一実施形態では、作製するメタマテリアル材料はその表面での一連のパターン形成されている又はされていない穴又は支柱を含んでいる。例示する実施形態では、メタマテリアルはその表面上にパターン形成された(周期的な)一連の穴がある銅を含む。メタマテリアルサブアセンブリ(部分組立品)は、そのようなメタマテリアルを複数含んでいる。メタマテリアルを製造するため、第2サブアセンブリでは以下の主要工程段階が実施される。
ステップ3001(図30参照): インプリントポリマー又はモノマーを使用して電気メッキテンプレートを転写する
ステップ3002(図30参照): 電気メッキに対応するためメッキテンプレート上にシード層を蒸着する
ステップ3003(図30参照): テンプレートの上方及び周囲にめっきすることにより電気メッキを完了させる
ステップ3004(図30参照): 熱伝導基板をメッキ金属の上部にラミネート(積層化)する
ステップ3005(図30参照): 仮設基板を離層しすべての残留インプリントポリマーモノマーをメタマテリアルから除去する
ステップ3006(図30参照): 孤立ピラーのパターンを形成しレクテナフィルムとの整列及び接合の準備を整える
【0116】
図15に、電気メッキ段階の電気メッキテンプレート又はインプリントパターン1501を含む構造体1500を例示する。ステップ3001では、透明なインプリント治具を使用して、ポリマー又はモノマー1504が仮設基板1506上にインプリントされ紫外線硬化される。一実施形態では、仮設基板1506はロールツーロール処理で使用されている基板の一部である。図15に、基板シート上で構造体1500を再現している多くの事例のうちのただ一つを示す。
【0117】
一実施形態では、ポリマー又はモノマー1504は紫外線硬化性であり図15に示す形状を形成・硬化することができる。インプリントパターン1508下方にあるスカム層1502を除去する必要はない。後の段階で剥離層として使用される。
【0118】
一実施形態では、インプリントパターン1508は構造体1508a及び1508bなどの構造体の周期的な配置により特徴付けられる。図15に例示する実施形態では、そうした構造体は24 μmごとの周期により周期的に配列された支柱であり、つまり各構造体はその最も近接した構造体から24 μmだけその四方のそれぞれで分離している。表示する実施形態では、その構造体は正方形であり、各辺は3 μmで高さ2.6 μmである。この構造体の配置、サイズ、形状により、接合するレクテナのテラヘルツ周波数で共振するメタマテリアルが生じる。
【0119】
代替実施形態では、構造体は周期的な移動を行う必要がなく、同じサイズ又は同じ形状を有している。その代わり、この構造体では、その結果生じるメタマテリアルが使用するレクテナの調整周波数で共振するようなお互いの形状と配置を備えている必要がある。
【0120】
メッキテンプレートが完了したら、ステップ3002でメッキを行うための電気的に連続した経路を提供するためシード金属1602が蒸着される。この金属は、熱気がロール全体に渡り均質に発生するようにするため、メッキ電解液で安定し十分な導電性を有する必要がある。一実施形態では、シード層材料は速度2 nm/sで厚さ100 nmまでスパッタリングされる銅である。この溶着速度を仮定すると、ロールのすべての部分を50秒間銅蒸気に曝す必要がある。図16に、シード層が溶着した後の構造体1500に対応するフィルムロール又は基板シート1600の一部分を例示する。図16では、メッキテンプレート構造の側壁は溶着していない。ただし、一部の側壁溶着は許容できる。
【0121】
ステップ3003では、メッキテンプレート構造を完全に封入するため、メタマテリアルを構成する素材はメタマテリアル材料でメッキされる。一実施形態では、メタマテリアルは銅である。そのような実施形態では、銅がステップ3003でのメタマテリアルとなっている。シード層が溶着した後、メッキテンプレート構造を完全に封入するため銅のメッキが行われる。一実施形態では、20 mA/cm2という電流密度を誘導するため、シード層への電気的導通を行う必要がある。この電気的導通は、ロールの端部に向かう構造体の上側への直接接触により行うことができる。メッキ電解液は、主に硫酸銅(II)五水和物と硫酸からなる。この溶液は強酸性でpHは-0.25である。標的メッキ厚は構造体を越えて拡張している必要がある。メタマテリアルのウェハー生産における現在の標的厚さは、合計6 μmの場合テンプレート構造高さの2倍よりも大きい。約7 μmというメッキ溶着速度の場合、ロールの単一領域の総溶着時間は約15分である。この時間は、潜在的には電流密度の増大と標的厚さのより低い値への設定の組み合わせにより削減することができる。重要なのはただテンプレートが完全に封入されていることのみである。したがって、ロール全体にわたりメッキが均質であれば、標的厚さをほぼ半減させることができる。図17に、銅などのメッキ材料1702により完全にメッキされている構造体1508a及び1508bなどの構造を例示する。妥当なインプリントポリマーはメッキ処理による影響を受けない点に注意が必要である。
【0122】
ステップ3004では、基板1802が形成されつつあるメタマテリアルに追加される。一実施形態では、銅メタマテリアルのパターン化された側面は下向きに作製される。下向きの銅メタマテリアルのパターン化された側面を作ることで、電気メッキ深さの精度公差が減少し、平坦なメタマテリアル表面が確実になる。メタマテリアルは、(究極的にレクテナ1304などのレクテナに整列し接合されている場合)レクテナに面した開口部を有する必要がある。図17でのメッキ構造は、その基板に対して裏返す必要がある。これは、まず銅を例えばステンレス鋼などの基板1802としての熱伝導シートに接合することで達成できる。図18に、銅の反対側に接合された基板1802に対し下向きである周期的な穴の表面を持つ銅を含むメタマテリアルを例示する。
【0123】
一実施形態では、熱伝導基板1802の素材は、一般的な金属から選択できる。例えば、ロールツーロール基板として一般的に使用されている各種金属のいずれも許容できる。一実施形態では、基板1802の接合方法では最高300°Cまでの温度に耐えられる接着剤を使用している。
【0124】
基板1802がメッキ銅の上部に取り付けられた後、フィルムが溶剤に浸漬されステップ3005でインプリントポリマー1504が除去される。またインプリントポリマー1504の除去は仮設基板1506の分離をもたらす。一実施形態では、溶剤により迅速かつきれいにポリマーモノマーが除去される。最終メタマテリアル構造内のすべての材料は熱伝導性とし、真空適合性を得るため低ガス放出とする必要がある。図19に示すとおり、この工程の結果は完成メタマテリアル1900であり、例えば穴1906aや1906bなどの穴の周期的な配列を持つ表面1904を有する銅素材1902を例示するため裏返している。
【0125】
ステップ3006で、孤立構造体がメタマテリアル1900の表面1904上に構築される。メタマテリアルフィルムとレクテナフィルムを整列させ接合する前に、その二つのフィルムの間に分離距離を設定するため、孤立支柱がメタマテリアルの表面上に構築されている。図20に、孤立構造体2004a、2004b、2004c、2004dがメタマテリアル表面1904に追加された後における典型的な完成構造体2002を例示する。一実施形態では、各孤立構造体1904a、1904b、1904c、1904dの間の距離は1 mmに設定されているため、孤立構造パターンのメタマテリアル構造体の残りとの整列は必要ない。一実施形態では、各孤立構造体は正方形であり、各辺の大きさは5 μm、高さは1 μmである。一実施形態では、例えば孤立構造体1904a、1904b、1904c、1904dなどの各孤立構造体が、曝露され発生している紫外線感応性ポリマーを使用して作製され、パターン化されている。一実施形態では、紫外線感応性ポリマーはメタマテリアルが受ける高温に適合している。
【0126】
一実施形態では、ともに整列し接合されるレクテナフィルムとメタマテリアルフィルムの間で必要となる距離を設けるための任意の形状と配置を有する4つ以上又はそれ以下の孤立構造体が存在する可能性がある。
【0127】
たった一つのレクテナと関連するメタマテリアル素子の製造を説明してきたが、本明細書で開示するロールツーロール製造を用いると、多数のそのような素子を上記のロールツーロール工程を使用して一度に製造することができる。「299 特許出願」及び「051 特許出願」で説明されているとおり、作動中、熱の存在下で、メタマテリアルの穴の上に電界が生成される。そうした電界の周波数に合わせて調整されているレクテナは、その上に配置されている場合電流を発生させる。その結果、レクテナフィルムとメタマテリアルフィルムが互いに接合している場合にレクテナフィルムによりレクテナがメタマテリアル内の穴の上に配置されるようにするための適切な位置合わせが必要となる。
【0128】
ACTフィルムの製造は、上記のとおり複数のレクテナ1304を含むレクテナフィルムと複数のメタマテリアル1900を含むメタマテリアルフィルムという二つのサブアセンブリフィルムのコーティングを伴っており、それらはともに位置合わせされ接合されている。これらの表面上での構造体の位置合わせはその動作にとって極めて重要であり、±250 nmの精度で行う必要がある。
【0129】
業界や文献で入手できる位置合わせ手法がいくつか存在する。そうした手法は主に3つのカテゴリに分類されている。幾何学的撮像では、二つの幾何学的なマークが光学顕微鏡を通じて比較される。この手法は、対物レンズの光学的回折限界に限定されている。ただし、画像解像度は上記の位置合わせ仕様を満たしていない。強度ベースの検出方法では、位置合わせ格子マークからの回折ビームの臨界強度値が測定される。この方法は、位置合わせマークに対する光源と検出センサーの位置合わせによる影響を受けやすくなる可能性がある。特に動的システムではフィルムに対するレーザー光源と検出センサーの位置の校正(キャリブレーション)がかなり複雑である。第三の方法は、位相ベースの検出方法で、わずかに周期の異なる二つの回折ビームからのビート信号の位相が測定される。位置ずれは、回折界を撮像して顕微鏡型システムに変換することで捕捉される。一般に、マスクウェハーレベルでのナノスケール変移は、高分解能光学装置による検出・処理が容易である大規模回折変動に対応している。使用する光源の種類と捕捉する位置ずれの性質に応じて、回折方式が選択される。
【0130】
本発明の実施形態では、位置合わせを下記で説明するモアレ法を用いてロールツーロール工程として実施している。これは、各フィルム層での位置合わせマークの使用を伴う光学的手法である。この方法を採用できるようにするには、少なくとも一つのフィルム層が透明となっている必要がある。光学電荷結合素子(CCD)センサー及びコンピュータ駆動制御ステッピングモーターはフィードバックループを閉じるため、連続位置合わせに影響を及ぼす。図27に示すとおり、フィルムがプレスローラーに向かって移動したら位置合わせが行われ、孤立構造体の上部にある接着剤により接合されるようになる。
【0131】
モアレ縞は、透明な隙間を持つ不透明な裏地のパターン(模様)が別の類似のパターンに重なり合った場合に発生する可能性のある大規模な干渉パターンである。モアレ干渉パターンが出現するには、その二つのパターンが完全には同じではなく、移動、回転し、異なったただし近接したピッチを有する必要がある。モアレ縞は、光学装置やCCDにより検出することができる。コンピュータ支援コードを使用して、サブミクロンスケール(光学)画像からナノスケールでの位置ずれを予測することができる。図21に、モアレ縞を得る一つの方法、つまり二組の格子線の間での回転を示す。図21に示すとおり、画像が適切に整列した暗色の垂直線2104a及び2104bであれば、モアレ縞は、モアレパターン2102a及び2102bが互いに重なり合っている場合に出現する。モアレ縞は、相対オフセット角度を有する重畳微細格子によるものである。
【0132】
一実施形態では、位置合わせは、メタマテリアルフィルムとレクテナフィルムの間で200 nm以下の整列(アライメント)を達成するためのモアレパターン検出機能を備えた上記の幾何学的撮像と位相系検出の組み合わせを用いて行われる。一実施形態では、位置合わせマークは、交互ピッチA1及びA2を有する四(4)組の格子を含む。図22は、交互ピッチA1及びA2を備えた4組の格子2204a、2204b、2204c、2204dを含むレクテナフィルムのための典型的なレクテナ位置合わせマーク2202と交互ピッチA1及びA2を備えた4組の格子2208a、2208b、2208c、2208dを含む対応メタマテリアルフィルムのための典型的なメタマテリアル位置合わせマーク2206を示す。メタマテリアルフィルムがレクテナフィルムに整列している場合、2204a、2204b、2208a、2208bの組により相補的格子パターン(図柄)が形成される。同様に、メタマテリアルフィルムがレクテナフィルムに整列している場合、2204c、2204d、2804c、2804dの組により相補的格子パターンが形成される。中心レクテナ位置合わせマーク2202では、より幅の広い痕跡で作られる十字マーク2210が垂直・水平方向での初期の粗い位置合わせに使用される。同様に中心レクテナ位置合わせマーク2206では、より幅の広い痕跡で作られる十字マーク2212が垂直・水平方向での初期の粗い位置合わせに使用される。十字マーク2210には二つの軸があり、そのうちの一つである軸2210aは幅w1を有し、他方の軸2210bは幅w2を有する。同様に、十字マーク2212には2つの軸があり、そのうちの一つである2212aは幅w1を有し他方の2212bは幅w2を有する。
【0133】
例えば発光ダイオード(LED)などの広帯域光源により、CCDセンサーで相補的な組からなる同一のモアレパターンが撮像される。フィルム間での位置ずれは、相補的な組からなるモアレパターンの間での拡大位相変移を引き起こす。x及びy方向での横方向格子位置ずれをΔx及びΔyと定義し、x及びy方向で観察されたモアレバターンでの対応する位相変移をΔX及びΔYと定義する。その場合以下のとおり位置ずれ係数MつまりΔXΔx又はΔYΔyは、A1とA2の差に反比例する。
ここでΔAはA1とA2の差である。A1とA2の5%相対差は20倍という拡大係数と同等である。この手法の大きな利点とは、検出されるΔXとΔYは光源及び光学機器の位置合わせマークに対する相対位置とは無関係であるというものである。一つの重要な注意点とは、モアレパターンは全周期変移A1の後に同一になるという点である。そのため、幾何学的撮像手法を用いて最初の粗い位置合わせを行う必要がある。初回の粗い位置合わせは、図22に示す内側十字マーク「+」2210と2210に適用される。粗い位置合わせにより、A1精度の範囲内で格子の組み合わせ2202a、2202b、2202c、2202d及び2208a、2208b、2208c、2208d(例示のとおり組1~4)が重なり合う必要がある。そのような粗い位置合わせを図23に例示しており、ここでx方向2302でのオフセットとy方向2304でのオフセットは、A1以下である。寸法の初回推定値は、次のとおりである: w1 = w2 = 4 μm、A1 = 1 μm及びA2 = 0.95 μm。粗い位置合わせの十字マークは、正確に整列する必要はない点に注意すること。□1の精度の範囲内で整列していれば良い。
【0134】
粗い位置合わせの後、CCDにより例示のとおりモアレ縞のΔX変移が得られ、例えば図24でモアレ縞2402は粗い位置合わせ2300に付随している。この情報がマイクロコンピュータに送信され、整列が達成されるまでステッピングモーターによりフィルムのうちの一つのx位置を調整する。x方向でのそのような精細な位置合わせを、図24に示す整列済みのx方向格子組2414に付随するモアレ縞2408で例示する。
【0135】
x方向での精細な位置合わせの後、CCDにより例示のとおりモアレ縞のΔY変移が得られ、例えば図24でモアレ縞2502はx方向の精細な位置合わせ2501でのy方向格子に付随している。この情報がマイクロコンピュータに送信され、整列を達成するまでステッピングモーターによりフィルムのうちの一つの位置を調整する。y方向でのそのような精細な位置合わせを、図25に示す完全に整列済みのy方向格子組2506に付随するモアレ縞2504で例示する。この時点で、必要な精度の範囲内での整列が達成されている。
【0136】
図26は、一実施形態によるレクテナフィルムとメタマテリアルフィルムを整列させる位置合わせシステム2600の概略図である。このシステムには、LED照明を備えた顕微鏡光学装置が含まれている。一実施形態では、顕微鏡光学装置2602の光学倍率は40倍である。反射板2505によりLED 2604から放射された光がレクテナフィルムとメタマテリアルフィルムに向けられ、格子セットを照らしてモアレ縞パターンを取得する。反射板2505により、照らし出されたモアレ縞パターンがCCDアレイ2606に到達できるようになり、モアレ縞画像を取得してx方向とy方向で精密な位置合わせを行える。一実施形態では、CCDアレイ2606は4メガピクセルの解像度を有する。システム2600には、さらにモアレパターンを処理するコンピュータ2608及びレクテナフィルムとメタマテリアルフィルムを整列させるXYステッピングモーター2612を制御するマイクロコントローラ2610(及び/又は代替手段としてLabview(ラボラトリ仮想計測器エンジニアリングワークベンチ))が搭載されている。
【0137】
図27は、例えばロールツーロール環境で作動するよう構成された位置合わせシステム2600などの位置合わせシステムを組み込んだ典型的なロールツーロール装置の概略図である。上記のとおり形成されたメタマテリアルを含むメタマテリアルフィルムロール2702と上記のとおり形成されたレクテナを含むレクテナフィルムロール2704が上記のとおりメタマテリアルフィルムロール2702とレクテナフィルムロール2704を整列させる登録アクチュエータ(作動装置)2706を過ぎて供給され、レクテナがメタマテリアル内の穴上に配置されるようになる。整列すると、接着剤2707を使用してメタマテリアルフィルムがレクテナフィルムに接合される。必要な場合には、メタマテリアルフィルム及びレクテナフィルムの巻き戻しを、巻き戻しスプール2710を用いて行う。位置合わせと接合が完了したら、完成パネルが型抜き治具2708を使用して作製される。
【0138】
代替位置合わせ手法は、メタマテリアルフィルムとレクテナフィルムがケーシング構造内に配置された場合のレクテナフィルムの電力出力シグネチャの使用を伴っている。電力バス出力はA/Dコンバータ(アナログ/デジタル変換装置)を通過してコンピュータワークステーションに送達され、電力・位置決め最適化アルゴリズムを実行する。メタマテリアルフィルムとレクテナフィルムの間の関係の制御は、最適化ソフトウェアにより電動リニアステージを通じて行われる。電力出力信号を生成するため二つのフィルムの間に数°Cの温度差が必要となる。最適化ハンティングアルゴリズムを開始させるのには、パネルケースでの初回位置合わせで十分である。1 μmステップでの牛耕式検索により、プレートが最大144ステップ以内及び平均72ステップですぐ近くに位置決めされる。精細な位置決めは、簡単で「欲張りな」ステップを進めて調節するか、その他の類似のアルゴリズムで最終位置合わせを行うことができる。位置合わせが完了したら、端部が接合されパネルが密封される。
【0139】
図28は、電力出力シグネチャ調整を用いて一実施形態によるメタマテリアルフィルム2802とレクテナフィルム2804を整列させるための典型的なシステム2800の概略図である。メタマテリアルロール2802とレクテナロール2804は、ロールツーロール装置を通じて供給される。2つのフィルムの間に温度差がある限り、レクテナ層2804内のレクテナは電力を出力する。その出力電力はA/Dコンバータ2806を通じてコンピュータ2808に供給される。コンピュータ2808は出力電力を解析し、最大出力電力が見つかるまでモーターを制御してメタマテリアルロール2802とレクテナロール2804を整列させる。
【0140】
図29は、上記のとおり一実施形態による複数のレクテナを含むレクテナフィルムの作製に関する工程系統図である。図29に例示する各ステップは、上記で詳述している。
【0141】
図30は、上記のとおり一実施形態による複数のメタマテリアルを含むメタマテリアルフィルムの作製に関する工程系統図である。図30で例示するステップは、上記で詳述している。
【0142】
図31は、上記のとおり一実施形態によるメタマテリアルと組み合わさったレクテナの最終製品組み立ての工程系統図である。ステップ3101では、レクテナフィルムとメタマテリアルフィルムが整列し接合される。ステップ3102では、接合レクテナ・メタマテリアル組立品がパネルに提出される。品質保証試験と梱包がステップ3103で実施される。
図1
図1A-1B】
図1C-1D】
図2
図2B
図2C
図3
図3B
図3C
図4
図4B
図4C
図5
図5B
図5C
図6
図6B
図6C
図7
図8
図9
図9B
図9C
図10
図10B
図10C
図11
図11B
図11C
図12
図13
図13B
図13C
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
【国際調査報告】