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特表2022-521006局所ラパマイシン製剤ならびに顔面血管線維腫および他の皮膚疾患の治療におけるそれらの使用
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  • 特表-局所ラパマイシン製剤ならびに顔面血管線維腫および他の皮膚疾患の治療におけるそれらの使用 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-04
(54)【発明の名称】局所ラパマイシン製剤ならびに顔面血管線維腫および他の皮膚疾患の治療におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/436 20060101AFI20220328BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220328BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220328BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20220328BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220328BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20220328BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220328BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
A61K31/436
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/08
A61K47/10
A61K47/20
A61K47/34
A61P17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549304
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(85)【翻訳文提出日】2021-10-13
(86)【国際出願番号】 US2020018816
(87)【国際公開番号】W WO2020172266
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】62/835,630
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/807,786
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519060232
【氏名又は名称】エイアイ・セラピューティクス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】リチェンステイン,ヘンリ
(72)【発明者】
【氏名】ロスバーグ,ジョナサン・エム
(72)【発明者】
【氏名】シュイ,ティエン
(72)【発明者】
【氏名】グロツケ,ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】ベケット,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ファンドリック,キース
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076AA94
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD55
4C076EE09
4C076EE31
4C076FF04
4C076FF43
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA05
4C086MA63
4C086ZA89
(57)【要約】
本開示は、局所投与用のラパマイシンのゲル組成物および関連組成物、ならびに皮膚の状態、疾患または障害の治療におけるそれらの使用を含む方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所投与用のゲル組成物であって、ゲル構造形成基剤、溶媒、抗酸化剤、前記組成物の酸性pHを維持するように適合された緩衝剤、ならびに界面活性剤、保湿剤、キレート剤、および防腐剤から選択される1つ以上の任意選択的な賦形剤の均質混合物中のラパマイシンの安定な懸濁液からなる、組成物。
【請求項2】
前記ゲル構造形成基剤が、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)およびポリ(アクリル酸)(PAA)から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ゲル構造形成基剤が、HECである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記HECが、前記組成物の総重量に基づいて、0.5~5%w/w、好ましくは、約1~2%w/w、または1~1.75%w/wの量で存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ゲル構造基剤が、PAAである、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記PAAが、前記組成物の総重量に基づいて、約0.1~3%w/w、0.1~2.25%w/w、または0.25~0.75%w/wの量で存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、プロピレングリコール(PG)、ジメチルイソソルビド(DMI)、およびジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol(登録商標)またはTC)から選択される溶媒を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記溶媒が、前記組成物の総重量に基づいて、約5~25%w/w、好ましくは、約10~15%w/wの量で存在するPGである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記溶媒が、DMIまたはTCである、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記溶媒が、前記組成物の総重量に基づいて、約5~25%w/w、好ましくは、6~8%w/wの量で存在する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記抗酸化剤が、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
界面活性剤を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記界面活性剤が、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリソルベート20、ステアリン酸PEG-40、ステアレス-20、ステアレス-100、セテス-20、セテアレス-20、およびラウリル硫酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記界面活性剤が、ポリソルベート80である、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記界面活性剤が、前記組成物の総重量に基づいて、約0.005~1%w/w、好ましくは、0.01~0.10%w/wの量で存在する、請求項13または14に記載の組成物。
【請求項16】
防腐剤を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記防腐剤が、ベンジルアルコールである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記ベンジルアルコールが、前記組成物の総重量に基づいて、約0.5%~3%w/w、好ましくは、0.5%~1.5%w/wの量で存在する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記ラパマイシンが、前記組成物の総重量に基づいて、約0.05%w/w~2.0%w/wの量で存在する、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記ラパマイシンが、前記組成物の総重量に基づいて、約0.10%、1.0%、または2.0%w/wの量で存在する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記ラパマイシンが、微粒子化ラパマイシンである、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記微粒子化ラパマイシンが、1~5ミクロンの範囲のD50によって定義される粒径分布(PSD)を有するラパマイシンの微粒子化粒子からなる、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記PSDが、1~2ミクロンの範囲のD10、および4~8ミクロンの範囲のD90によってさらに定義される、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が、前記ゲル構造形成基剤としてのヒドロキシエチルセルロース(HEC)、前記溶媒としてのジメチルイソソルビド(DMI)、および前記抗酸化剤としてのブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)を含む、請求項19~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物が、前記ゲル構造形成基剤としてのヒドロキシエチルセルロース(HEC)、前記溶媒としてのTC、および前記抗酸化剤としてのブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)を含む、請求項19~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物が、前記ゲル構造形成基剤としてのヒドロキシエチルセルロース(HEC)、前記溶媒としてのプロピレングリコール(PG)、および前記抗酸化剤としてのブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)を含む、請求項19~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が、前記ゲル構造形成基剤としてのポリ(アクリル酸)、前記溶媒としてのジメチルイソソルビド(DMI)、および前記抗酸化剤としてのブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物が、前記ゲル構造形成基剤としてのポリ(アクリル酸)、前記溶媒としてのジエチレングリコールモノエチルエーテル(TC)、および前記抗酸化剤としてのブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物が、前記ゲル構造形成基剤としてのポリ(アクリル酸)、前記溶媒としてのプロピレングリコール、および前記抗酸化剤としてのブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物が、0.025~0.25%w/wのポリソルベート80、および0.5~3.0%w/wのベンジルアルコールをさらに含む、請求項24~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記組成物のpHが、7.0未満、最も好ましくは、pH3~6の範囲である、請求項24~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記組成物の前記ラパマイシンが、5℃で少なくとも3ヶ月間、化学分解に対して安定であり、結晶成長に対して物理的に安定である、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記組成物が、酸性pH、好ましくは、7.0未満のpH、最も好ましくは、pH3~6の範囲で製剤化され、前記組成物が、25℃または40℃で、少なくとも1ヶ月間、化学分解に対して安定であり、結晶成長に対して物理的に安定であり、任意選択的に、前記組成物が、0.025~0.25%w/wのポリソルベート80、および0.5~3.0%w/wのベンジルアルコールをさらに含む、請求項26~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記組成物が、酸性pH、好ましくは、7.0未満のpH、最も好ましくは、pH3~6の範囲で製剤化され、前記組成物が、25℃または40℃で少なくとも3カ月間、および5℃または25℃で少なくとも6カ月間、化学分解に対して安定であり、結晶成長に対して物理的に安定であり、任意選択的に、前記組成物が、0.025~0.25%w/wのポリソルベート80、および0.5~3.0%w/wのベンジルアルコールをさらに含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項35】
療法で使用するための、請求項1~34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
皮膚の状態、疾患、または障害を治療する方法で使用するための、請求項1~34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
前記皮膚の状態、疾患、または障害が、黒色表皮腫、ざ瘡、日光角化症、アレルギー性結膜炎、エナメル爪甲低汗症候群、被角血管腫、ファブリー病の被角血管腫、血管腫(サクランボ血管腫、老人性血管腫、くも状血管腫、イチゴ状血管腫、および房状血管腫を含む)、足白癬、アトピー性皮膚炎、細菌性腟症、亀頭炎、バナヤン・ライリー・ルバルカバ症候群、基底細胞癌、基底細胞母斑症候群、バート・ホッグ・デュベ症候群、水疱、青色ゴム乳首様母斑症候群、臭汗症、ブルック・シュピーグラー症候群、水疱性類天疱瘡、胼胝腫、カンジダ症、カルブンケル症、海綿状リンパ管腫、蜂巣炎、脳萎縮関連皮膚状態、肉芽腫性口唇炎、コンラディ・エルチナーマン病、角膜皮膚骨症候群関連皮膚状態、カウデン病、皮膚キャッスルマン病、皮膚幼虫移行症、皮膚サルコイドーシス、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、褥瘡、加齢または老化に起因する皮膚萎縮症、皮膚炎(接触性皮膚炎、薬剤誘発性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、貨幣状湿疹、口囲皮膚炎、神経皮膚炎、脂漏性皮膚炎、およびアトピー性皮膚炎を含む)、隆起性皮膚線維肉腫、皮膚糸状菌症、びまん性小嚢胞リンパ管奇形、円板状エリテマトーデス、異汗性湿疹、先天性角化異常症、膿瘡、湿疹、疣贅状表皮発育異常症、単純型表皮水疱症、表皮溶解性魚鱗癬、表皮母斑(疣状母斑、列序性母斑、炎症性線状疣状表皮母斑、および脂腺母斑を含む)、丹毒、多形紅斑、変異性紅斑角皮症、乳房外パジェット病、家族性円柱腫症、家族性多発性円板状線維腫、フィラリア症、限局性肢端過角化症、濾胞性過角化症、屈折異常を有する毛髪歯異形成を伴う濾胞性過角化症、フルンケル症、性器疣贅、歯肉増殖症、肉芽腫、ヘイリー・ヘイリー病、単純性血管腫、罹患したイヌの遺伝性足蹠過角化症、ヘルペス、蕁麻疹、化膿性汗腺炎、多汗症、固定性扁豆状角化症、白斑、豪猪状魚鱗癬、膿痂疹、色素失調症、乳児血管腫、虫刺症、若年性ポリポーシス症候群、カポジ肉腫、カポジ型血管内皮腫、ケロイド、小嚢胞性リンパ管奇形、ケロイド瘢痕疾患、萎縮性濾胞性角化症関連皮膚状態、毛孔性角化症、KID症候群、クリッペル・トレノネー症候群、黒子または肝斑、レルミット・ダクロス症候群、毛孔性扁平苔癬、苔癬様角化症(扁平苔癬、硬化性苔癬、慢性びらん性口腔扁平苔癬を含む)、狼瘡、限局性リンパ管腫、黒色腫、メルケル細胞癌、転移性黒色腫、小嚢胞性リンパ管奇形、汗疹または紅色汗疹、搾乳者結節、伝染性軟属腫、ムア・トレ症候群、多発性微小指状過角化症、蝿蛆症(せつ性蝿蛆症、および遊走性蝿蛆症を含む)、ネザートン症候群、神経線維腫症1型(「NF1」またはフォンレックリンハウゼン病とも呼ばれる)の皮膚および真皮の徴候、クモ状母斑、非黒色腫皮膚癌、オルムステッド症候群、爪白癬(白癬、足白癬、爪白癬、手白癬、股部白癬、体部白癬、頭部白癬、顔面白癬、白癬性毛瘡、渦状癬、黒癬、癜風、異型白癬、口腔扁平苔癬を含む)、GVHDによる口腔粘膜疾患、過成長症候群、先天性爪肥厚症、脂肪組織炎、爪囲炎、シラミ症、類天疱瘡疾患、尋常性天疱瘡、爪囲線維腫および爪下線維腫、ポイツ・ジェガース症候群、UV照射による光老化、色素斑(例えば、扁平母斑およびカフェオレ斑を含む)、粃糠疹、掌蹠過角化症、プロテウス症候群、プロテウス様症候群、外陰部そう痒症、乾癬、化膿性肉芽腫、マフッチ症候群の難治性血管内皮腫、レフサム病、酒さ、ロザイ・ドルフマン病、疥癬、強皮症、脂漏性角化症、セザリー症候群、シェーグレン・ラルソン症候群、扁平上皮癌、うっ滞性皮膚炎、スタージ・ウェーバー症候群、毛細血管拡張症、毛包上皮腫、トリコモナス症、結節性硬化症の皮膚癌徴候、膣イースト菌感染症、血管奇形(ポートワイン母斑およびリンパ管腫を含む)、尋常性白斑、疣贅、乾皮症、ならびに色素性乾皮症からなる群から選択される、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記皮膚の状態、疾患、または障害が、バート・ホッグ・デュベ症候群、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、加齢または老化に起因する皮膚萎縮症、神経線維腫症1型(「NF1」またはフォンレックリンハウゼン病とも呼ばれる)の皮膚および真皮の徴候、口腔扁平苔癬、GVHDによる口腔粘膜疾患、先天性爪肥厚症、スタージ・ウェーバー症候群、ポートワイン母斑およびリンパ管腫を含む血管奇形からなる群から選択される、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記皮膚の状態、疾患、または障害が、血管線維腫、血管腫、血管奇形、化膿性肉芽腫、本態性毛細血管拡張症、家族性多発性円板状線維腫、およびサクランボ血管腫から選択される、請求項36に記載の組成物。
【請求項40】
前記皮膚の状態、疾患、または障害が、顔面血管線維腫である、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
かかる治療を必要とするヒト対象の皮膚の状態、疾患または障害を治療するための方法であって、請求項1~34のいずれか一項に記載の局所組成物を、薄層の前記組成物で患部を覆うのに好適な量で、前記対象の皮膚の前記患部に適用することを含む、方法。
【請求項42】
前記皮膚の状態、疾患、または障害が、黒色表皮腫、ざ瘡、日光角化症、アレルギー性結膜炎、エナメル爪甲低汗症候群、被角血管腫、ファブリー病の被角血管腫、血管腫(サクランボ血管腫、老人性血管腫、くも状血管腫、イチゴ状血管腫、および房状血管腫を含む)、足白癬、アトピー性皮膚炎、細菌性腟症、亀頭炎、バナヤン・ライリー・ルバルカバ症候群、基底細胞癌、基底細胞母斑症候群、バート・ホッグ・デュベ症候群、水疱、青色ゴム乳首様母斑症候群、臭汗症、ブルック・シュピーグラー症候群、水疱性類天疱瘡、胼胝腫、カンジダ症、カルブンケル症、海綿状リンパ管腫、蜂巣炎、脳萎縮関連皮膚状態、肉芽腫性口唇炎、コンラディ・エルチナーマン病、角膜皮膚骨症候群関連皮膚状態、カウデン病、皮膚キャッスルマン病、皮膚幼虫移行症、皮膚サルコイドーシス、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、褥瘡、加齢または老化に起因する皮膚萎縮症、皮膚炎(接触性皮膚炎、薬剤誘発性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、貨幣状湿疹、口囲皮膚炎、神経皮膚炎、脂漏性皮膚炎、およびアトピー性皮膚炎を含む)、隆起性皮膚線維肉腫、皮膚糸状菌症、びまん性小嚢胞リンパ管奇形、円板状エリテマトーデス、異汗性湿疹、先天性角化異常症、膿瘡、湿疹、疣贅状表皮発育異常症、単純型表皮水疱症、表皮溶解性魚鱗癬、表皮母斑(疣状母斑、列序性母斑、炎症性線状疣状表皮母斑、および脂腺母斑を含む)、丹毒、多形紅斑、変異性紅斑角皮症、乳房外パジェット病、家族性円柱腫症、家族性多発性円板状線維腫、フィラリア症、限局性肢端過角化症、濾胞性過角化症、屈折異常を有する毛髪歯異形成を伴う濾胞性過角化症、フルンケル症、性器疣贅、歯肉増殖症、肉芽腫、ヘイリー・ヘイリー病、単純性血管腫、罹患したイヌの遺伝性足蹠過角化症、ヘルペス、蕁麻疹、化膿性汗腺炎、多汗症、固定性扁豆状角化症、白斑、豪猪状魚鱗癬、膿痂疹、色素失調症、乳児血管腫、虫刺症、若年性ポリポーシス症候群、カポジ肉腫、カポジ型血管内皮腫、ケロイド、小嚢胞性リンパ管奇形、ケロイド瘢痕疾患、萎縮性濾胞性角化症関連皮膚状態、毛孔性角化症、KID症候群、クリッペル・トレノネー症候群、黒子または肝斑、レルミット・ダクロス症候群、毛孔性扁平苔癬、苔癬様角化症(扁平苔癬、硬化性苔癬、慢性びらん性口腔扁平苔癬を含む)、狼瘡、限局性リンパ管腫、黒色腫、メルケル細胞癌、転移性黒色腫、小嚢胞性リンパ管奇形、汗疹または紅色汗疹、搾乳者結節、伝染性軟属腫、ムア・トレ症候群、多発性微小指状過角化症、蝿蛆症(せつ性蝿蛆症、および遊走性蝿蛆症を含む)、ネザートン症候群、神経線維腫症1型(「NF1」またはフォンレックリンハウゼン病とも呼ばれる)の皮膚および真皮の徴候、クモ状母斑、非黒色腫皮膚癌、オルムステッド症候群、爪白癬(白癬、足白癬、爪白癬、手白癬、股部白癬、体部白癬、頭部白癬、顔面白癬、白癬性毛瘡、渦状癬、黒癬、癜風、異型白癬、口腔扁平苔癬を含む)、GVHDによる口腔粘膜疾患、過成長症候群、先天性爪肥厚症、脂肪組織炎、爪囲炎、シラミ症、類天疱瘡疾患、尋常性天疱瘡、爪囲線維腫および爪下線維腫、ポイツ・ジェガース症候群、UV照射による光老化、色素斑(例えば、扁平母斑およびカフェオレ斑を含む)、粃糠疹、掌蹠過角化症、プロテウス症候群、プロテウス様症候群、外陰部そう痒症、乾癬、化膿性肉芽腫、マフッチ症候群の難治性血管内皮腫、レフサム病、酒さ、ロザイ・ドルフマン病、疥癬、強皮症、脂漏性角化症、セザリー症候群、シェーグレン・ラルソン症候群、扁平上皮癌、うっ滞性皮膚炎、スタージ・ウェーバー症候群、毛細血管拡張症、毛包上皮腫、トリコモナス症、結節性硬化症の皮膚癌徴候、膣イースト菌感染症、血管奇形(ポートワイン母斑およびリンパ管腫を含む)、尋常性白斑、疣贅、乾皮症、ならびに色素性乾皮症からなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記皮膚の状態、疾患、または障害が、バート・ホッグ・デュベ症候群、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、加齢または老化に起因する皮膚萎縮症、神経線維腫症1型(「NF1」またはフォンレックリンハウゼン病とも呼ばれる)の皮膚および真皮の徴候、口腔扁平苔癬、GVHDによる口腔粘膜疾患、先天性爪肥厚症、スタージ・ウェーバー症候群、ポートワイン母斑およびリンパ管腫を含む血管奇形からなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
顔面血管線維腫の治療を必要とするヒト対象において前記顔面血管線維腫を治療するための方法であって、請求項1~34のいずれか一項に記載の局所組成物を、薄層の前記組成物で患部を覆うのに好適な量で、前記対象の皮膚の前記患部に適用することを含む、方法。
【請求項45】
請求項1~34のいずれか一項に記載の組成物を作製するためのプロセスであって、
第1の容器中で、前記抗酸化剤を前記溶媒に溶解し、続いて連続的な混合の下で、前記ゲル基剤を添加することによって、溶媒相を調製することと、
第2の容器中で、前記界面活性剤、前記防腐剤、前記緩衝剤、および任意の任意選択的な賦形剤を水に溶解することによって、水相を調製することと、
連続的な混合の下で、前記微粒子化ラパマイシンを前記水相に分散させることと、前記水相を高剪断均質化に供することと、
連続的な混合の下で、前記溶媒相および前記水相が均質なゲル組成物を形成するまで、前記溶媒相を前記水相と組み合わせることと、を含む、プロセス。
【請求項46】
請求項1~34のいずれか一項に記載の組成物を含む、製品物品またはパッケージ。
【請求項47】
前記組成物が、密封されたまたは密封可能なエポキシコーティングされたアルミニウムチューブに含まれる、請求項46に記載の物品またはパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所ラパマイシン組成物、ならびに顔面血管線維腫および他の皮膚疾患および皮膚障害を治療するための関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚障害を有する患者は、他者との交流に関して恐怖の予期を経験する可能性があり、回避的コーピング(avoidance-coping)機序を発達させる可能性がある。これにより、社会的および娯楽的な活動または雇用において、完全にまたははまったく参加できなくなる可能性がある。最終的に、目に見える症状は、患者自身の見方および将来の認知を変えてしまう可能性がある。研究では、重度の皮膚疾患の治療が成功し、患者の症状が改善され、身体的外観が変わると、心理的症状の改善および生活の質の向上につながり得ることが示されている。
【0003】
結節性硬化症複合体(TSC)は、TSC1(ハマルチン)またはTSC2(ツベリン)遺伝子のいずれかの変異によって引き起こされる遺伝障害である。TSC1およびTSC2遺伝子産物は、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の活性を阻害するように作用する複合体を細胞内に形成する。mTORシグナル伝達経路は、細胞増殖および細胞生存を刺激する。TSC疾患状態では、TSC1またはTSC2遺伝子産物のいずれかが欠損しており、阻害複合体が形成できず、未制御のmTOR活性をもたらす。
【0004】
TSCは、身体の多くの部分における多数の非癌性腫瘍の成長を特徴とする。これらの腫瘍は、皮膚、脳、腎臓、およびその他の臓器に生じることがあり、場合によっては重大な健康問題につながる。ほとんどすべての罹患した人々は、異常に明るい色の皮膚のパッチ、隆起して厚くなった皮膚の領域、爪の下の成長などの皮膚の異常を有している。顔面の腫瘍は顔面血管線維腫と呼ばれ、TSCと診断された患者の90%超で発生する。3~4歳頃から症状が現れ始め、自然に良くならず、未治療のままにしておくと顔の美貌を損なう可能性がある。
【0005】
顔面血管線維腫の現在の治療には、とりわけ、血管レーザー、化学的剥離、皮膚切除、および電気乾固が含まれる。これらの治療は、顔の外観を改善するのにいくらか効果的ではあるが、結果はしばしば満足のいくものではない。加えて、これらの処置は費用がかかり、不快であり、しばしば、再発を防ぐために定期的に処置を繰り返す必要がある。
【0006】
マクロライド系抗生物質であるラパマイシンは、「シロリムス」とも称される。ラパマイシンおよびその誘導体は、Nishimura,T.et al.(2001)Am.J.Respir.Crit.Care Med.163:498-502、ならびに米国特許第6,384,046号および米国特許第6,258,823号にさらに記載されている。米国では、ラパマイシン/シロリムスは、1999年からFDAによって承認されており、臓器拒絶反応および腎臓移植の予防のために、Wyeth(Pfizer)からRAPAMUNE(登録商標)の商品名で市販されている。RAPAMUNE(登録商標)は、経口溶液(1mg/ml)または錠剤(複数の強度)の形態で入手可能である。ラパマイシン/シロリムスは、リンパ脈管筋腫症の治療用(LAM Therap.)に、2015年5月にさらに承認された。
【0007】
US2010/0305150(Novartis)には、神経皮膚障害(例えば、結節性硬化症を含むTSCによって媒介されるもの、および神経線維腫症1型(NF-1)によって媒介されるもの)を治療および予防するためのラパマイシン誘導体が記載されている。
【0008】
US7,416,724(ミシガン大学の委員会)では、結節性硬化症を有する対象を治療する方法が記載されており、当該対象に有効量のラパマイシンを投与することが含まれる。
【0009】
US6,958,153(Wyeth)では、大環状ラクトン抗生物質または免疫抑制性マクロライドを使用して皮膚障害を治療することが記載されており、局所組成物に製剤化されたラパマイシンを含み、ヒト対象において高濃度のラパマイシン(2.2%~8%)で有効性を示す。
【0010】
US2012/0022095(Innova Dermaceuticals、US2013/0225630およびUS2013/0225631としても公開)では、概して、ラパマイシンを0.1重量%~2重量%含む局所ラパマイシン組成物を用いて、顔面血管線維腫および皮膚血管病変を治療する方法が記載されている。1%ラパマイシン軟膏(1日2回)を使用した顔への6週間の局所投与後、TSCに罹患している対象は、紅斑の減少および皮膚の質感の改善を示した。血清ラパマイシンレベルは、検出レベル(参照範囲4~20ng/ml)に達しなかった。
【0011】
WO2012/142145A1(Dow Pharmaceutical Sciences)では、毛細血管拡張症(顔面領域の炎症に通常関連する血管の拡張)を呈する皮膚状態を、ラパマイシンで治療することが記載されている。潜在的に治療可能な例示的な状態としては、酒さ、および他の皮膚障害、例えば、毛孔性角化症、血管線維腫、ポートワイン母斑が挙げられる。
【0012】
WO2018/031789A1(テキサス大学システムの評議委員会)では、顔面血管線維腫または他の皮膚病変を治療するための局所ラパマイシン組成物(0.1重量%~5重量%、液体グリコール、および皮膚科学的に許容される担体)が記載されている。
【0013】
2015年に発表された総説では、TSCにおける顔面血管線維腫の治療における局所ラパマイシンの使用に関する最近のデータが分析されている。Balestri et al.,J.Eur.Acad.Derm.Venereology(2015),29(1),14-20。合計84名の患者を含む16件の報告が検討され、その中で94%の患者で病変の改善が報告された。この研究は、ラパマイシン濃度が0.003%~1%の範囲にわたって、いくつかの異なる製剤(例えば、軟膏、ゲル、溶液、およびクリーム)が使用されたことに言及している。
【0014】
ある初期の試験では、TSC患者の顔面血管線維腫を治療するための低用量(0.003%または0.015%)の局所ラパマイシンの安全性および有効性が調査された。Koenig et al.,Drugs in R&D(2012),12(3),121-126.これは、有効性を主観的尺度に基づいて評価した小規模な研究(23人の被験者)であった。すなわち、治療によって患者らの状態が改善したか、悪化したか、または効果がなかったかの、患者の自己報告による評価であった。この尺度を使用して、併用治療群の患者の半数未満(ただし、ほぼ半数)が改善を報告した。著者らは、結果が統計的有意性に達しなかったことを指摘しており、ビヒクル単独の治療効果を排除することができないことを意味している。
【0015】
Truchuelo et al.Derm.Online J.(2012)8:15では、血管線維腫のサイズおよび密度の急速な改善を伴うクリーム基剤における1%局所ラパマイシン調製物を用いたTSCによる顔面血管線維腫の治療が記載されている。
【0016】
Bougueon et al.(2016)では、Transcutol(登録商標)(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)中の可溶化ラパマイシン(0.1%)が記載されており、クリームとして製剤化され、TSC患者の血管線維腫を治療するために使用されている。Bougueon et al.Int.J.Pharma.(2016)509(1),279-284。
【0017】
顔面血管線維腫ならびに他の皮膚疾患および障害を治療するための効果的な局所ラパマイシン製剤を開発するためにかなりの努力がなされているが、化学的には、非酵素的酸化分解に対して、ならびに物理的には、結晶の形成および成長に対して、冷却または冷蔵を必要とすることなく、室温で最大1年以上ラパマイシンを安定化させる改善された局所製剤の必要性が依然として存在する。さらに、血管線維腫ならびに他の皮膚疾患および障害の治療の標的領域である皮膚の真皮へのラパマイシンの送達も増加させながら、この生理化学的安定性を提供する必要性が存在する。本開示は、これらの必要性に対応するゲル組成物の形態のラパマイシンの局所製剤を提供する。
【発明の概要】
【0018】
本開示は、皮膚の状態、疾患、または障害の治療における、好ましくは、mTORシグナル伝達の異常な活性化に関連する顔面血管線維腫および他の皮膚病変を治療するための、化学的および物理的に安定な局所ラパマイシン組成物ならびにそれらの使用方法を提供する。また、本明細書に記載の化学的および物理的に安定な局所ラパマイシン組成物は、エタノールおよびイソプロパノールなどの刺激性アルコールを有利に含まず、かかる賦形剤を含む製剤と比較して刺激性が低い局所組成物を提供する。さらに、本明細書に記載の局所ラパマイシン組成物は、皮膚の標的層である真皮に、治療上適切な量のラパマイシンを効率的に送達する。
【0019】
実施形態では、本開示は、局所投与用のゲル組成物を提供し、ゲル構造形成基剤、溶媒、抗酸化剤、組成物のpHをpH6以下に維持するように適合された緩衝剤、ならびに界面活性剤、保湿剤、キレート剤、および防腐剤から選択される1つ以上の任意選択的な賦形剤の均質混合物中のラパマイシンの安定な懸濁液からなる。
【0020】
実施形態では、ゲル構造形成基剤は、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)およびポリ(アクリル酸)(PAA)から選択される。本明細書に記載の実施形態のいずれかによれば、ポリ(アクリル酸)は、架橋ポリ(アクリル酸)であってもよい。ゲル構造形成基剤がHECである実施形態では、HECは、組成物の総重量に基づいて、0.5~5%w/w、好ましくは、約1~2%w/w、または1~1.75%w/wの量で存在し得る。ゲル構造形成基剤がPAAである実施形態では、PAAは、組成物の総重量に基づいて、約0.1~3%w/w、0.1~2.25%w/w、または0.25~0.75%w/wの量で存在し得る。
【0021】
実施形態では、溶媒は、プロピレングリコール(PG)、ジメチルイソソルビド(DMI)、およびジエチレングリコールモノエチルエーテルから選択される(これらはまた、その商品名、Transcutol(登録商標)またはTCによって参照され得る)。実施形態では、PGは、組成物の総重量に基づいて、約5~25%w/w、好ましくは、約10~15%w/wの量で存在する。実施形態では、DMIまたはTCは、組成物の総重量に基づいて、約5~25%w/w、好ましくは、6~8%w/wの量で存在する。
【0022】
前述の実施形態のいずれかによれば、好ましい抗酸化剤は、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)である。
【0023】
前述の実施形態のいずれかによれば、組成物は、界面活性剤をさらに含み得る。実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリソルベート20、ステアリン酸PEG-40、ステアレス-20、ステアレス-100、セテス-20、セテアレス-20、およびラウリル硫酸ナトリウムからなる群から選択され、好ましくは、ポリソルベート80である。界面活性剤は、組成物の総重量に基づいて、約0.005~1%w/w、好ましくは、0.01~0.10%w/wの量で存在し得る。
【0024】
前述の実施形態のいずれかによれば、組成物は、防腐剤をさらに含み得る。実施形態では、防腐剤は、ベンジルアルコールである。実施形態では、ベンジルアルコールは、組成物の総重量に基づいて、約0.5%~3%w/w、好ましくは、0.5%~1.5%w/wの量で存在する。
【0025】
前述の実施形態のいずれかによれば、ラパマイシンは、微粒子化ラパマイシンである。実施形態では、微粒子化ラパマイシンは、1~5ミクロンまたは2~3ミクロンの範囲のD50によって定義される粒径分布(PSD)を有するラパマイシンの微粒子化粒子からなる。さらなる態様では、PSDは、1~2ミクロンまたは1.2~1.5ミクロンの範囲のD10、および4~8ミクロンの範囲のD90によってさらに定義される。ラパマイシンの微粒子化粒子は、約0.05%w/w~2.0%w/wの量で存在し得る。一部の実施形態では、ラパマイシンの微粒子化粒子は、組成物の総重量に基づいて、約0.1%w/w、0.3%w/w、1.0%w/w、または2.0%w/wの量で存在する。
【0026】
実施形態では、組成物は、ゲル構造形成基剤としてのヒドロキシエチルセルロース(HEC)、溶媒としてのジメチルイソソルビド(DMI)、および抗酸化剤としてのブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)を含み、組成物のラパマイシンは、5℃で少なくとも3ヶ月間、化学分解に対して安定であり、結晶成長に対して物理的に安定である。
【0027】
実施形態では、組成物は、ゲル構造形成基剤としてのヒドロキシエチルセルロース(HEC)、溶媒としてのTC、および抗酸化剤としてのブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)を含み、組成物のラパマイシンは、5℃で少なくとも3ヶ月間、化学分解に対して安定であり、結晶成長に対して物理的に安定である。
【0028】
実施形態では、組成物は、ゲル構造形成基剤としてのヒドロキシエチルセルロース(HEC)、溶媒としてのプロピレングリコール(PG)、および抗酸化剤としてのブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)を含み、組成物のラパマイシンは、5℃、25℃、または40℃で少なくとも3ヶ月間、および5℃または25℃で少なくとも6ヶ月間、化学分解に対して安定であり、結晶成長に対して物理的に安定である。
【0029】
実施形態では、組成物は、ゲル構造形成基剤としてのポリ(アクリル酸)、溶媒としてのジメチルイソソルビド(DMI)、および抗酸化剤としてのブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)を含み、組成物のラパマイシンは、5℃で少なくとも3ヶ月間、または25℃もしくは40℃で少なくとも1ヶ月間、化学分解に対して安定であり、結晶成長に対して物理的に安定である。
【0030】
実施形態では、組成物は、ゲル構造形成基剤としてのポリ(アクリル酸)、溶媒としてのジエチレングリコールモノエチルエーテル(TC)、および抗酸化剤としてのブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)を含み、組成物のラパマイシンは、5℃で少なくとも3ヶ月間、または25℃もしくは40℃で少なくとも1ヶ月間、化学分解に対して安定であり、結晶成長に対して物理的に安定である。
【0031】
実施形態では、組成物は、ゲル構造形成基剤としてのポリ(アクリル酸)、溶媒としてのプロピレングリコール、および抗酸化剤としてのブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)を含み、組成物のラパマイシンは、5℃で少なくとも3ヶ月間、または25℃もしくは40℃で少なくとも1ヶ月間、化学分解に対して安定であり、結晶成長に対して物理的に安定である。
【0032】
前述の実施形態のいずれかによれば、組成物は、界面活性剤、好ましくは、約0.025~0.25%w/wのポリソルベート80、および防腐剤、好ましくは、約0.5~3.0%w/wのベンジルアルコールのうちの一方または両方をさらに含んでいてもよい。
【0033】
好ましくは、前述の実施形態のいずれかによれば、組成物のpHは、好ましくは、7.0未満、最も好ましくは、pH3~6の範囲である。
【0034】
本開示は、療法で使用するための、前述の実施形態のいずれかの局所ラパマイシン組成物も提供する。
【0035】
本開示はまた、皮膚の状態、疾患、または障害を治療する方法で使用するための、前述の実施形態のいずれかの局所ラパマイシン組成物を提供する。実施形態では、皮膚の状態、疾患、または障害は、血管線維腫、血管腫、血管奇形、化膿性肉芽腫、本態性毛細血管拡張症、家族性多発性円板状線維腫、およびサクランボ血管腫から選択される。実施形態では、皮膚の状態、疾患、または障害は、顔面血管線維腫である。
【0036】
本開示はまた、皮膚の状態、疾患、または障害を治療する方法で使用するための、前述の実施形態のいずれかの局所ラパマイシン組成物を提供し、皮膚の状態、疾患、または障害が、黒色表皮腫、ざ瘡、日光角化症、アレルギー性結膜炎、エナメル爪甲低汗症候群、被角血管腫、ファブリー病の被角血管腫、血管腫(サクランボ血管腫、老人性血管腫、くも状血管腫、イチゴ状血管腫、および房状血管腫を含む)、足白癬、アトピー性皮膚炎、細菌性腟症、亀頭炎、バナヤン・ライリー・ルバルカバ症候群、基底細胞癌、基底細胞母斑症候群、バート・ホッグ・デュベ症候群、水疱、青色ゴム乳首様母斑症候群、臭汗症、ブルック・シュピーグラー症候群、水疱性類天疱瘡、胼胝腫、カンジダ症、カルブンケル症、海綿状リンパ管腫、蜂巣炎、脳萎縮関連皮膚状態、肉芽腫性口唇炎、コンラディ・エルチナーマン病、角膜皮膚骨症候群関連皮膚状態、カウデン病、皮膚キャッスルマン病、皮膚幼虫移行症、皮膚サルコイドーシス、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、褥瘡、加齢または老化に起因する皮膚萎縮症、皮膚炎(接触性皮膚炎、薬剤誘発性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、貨幣状湿疹、口囲皮膚炎、神経皮膚炎、脂漏性皮膚炎、およびアトピー性皮膚炎を含む)、隆起性皮膚線維肉腫、皮膚糸状菌症、びまん性小嚢胞リンパ管奇形、円板状エリテマトーデス、異汗性湿疹、先天性角化異常症、膿瘡、湿疹、疣贅状表皮発育異常症、単純型表皮水疱症、表皮溶解性魚鱗癬、表皮母斑(疣状母斑、列序性母斑、炎症性線状疣状表皮母斑、および脂腺母斑を含む)、丹毒、多形紅斑、変異性紅斑角皮症、乳房外パジェット病、家族性円柱腫症、家族性多発性円板状線維腫、フィラリア症、限局性肢端過角化症、濾胞性過角化症、屈折異常を有する毛髪歯異形成を伴う濾胞性過角化症、フルンケル症、性器疣贅、歯肉増殖症、肉芽腫、ヘイリー・ヘイリー病、単純性血管腫、罹患したイヌの遺伝性足蹠過角化症、ヘルペス、蕁麻疹、化膿性汗腺炎、多汗症、固定性扁豆状角化症、白斑、豪猪状魚鱗癬、膿痂疹、色素失調症、乳児血管腫、虫刺症、若年性ポリポーシス症候群、カポジ肉腫、カポジ型血管内皮腫、ケロイド、小嚢胞性リンパ管奇形、ケロイド瘢痕疾患、萎縮性濾胞性角化症関連皮膚状態、毛孔性角化症、KID症候群、クリッペル・トレノネー症候群、黒子または肝斑、レルミット・ダクロス症候群、毛孔性扁平苔癬、苔癬様角化症(扁平苔癬、硬化性苔癬、慢性びらん性口腔扁平苔癬を含む)、狼瘡、限局性リンパ管腫、黒色腫、メルケル細胞癌、転移性黒色腫、小嚢胞性リンパ管奇形、汗疹または紅色汗疹、搾乳者結節、伝染性軟属腫、ムア・トレ症候群、多発性微小指状過角化症、蝿蛆症(せつ性蝿蛆症、および遊走性蝿蛆症を含む)、ネザートン症候群、神経線維腫症1型(「NF1」またはフォンレックリンハウゼン病とも呼ばれる)の皮膚および真皮の徴候、クモ状母斑、非黒色腫皮膚癌、オルムステッド症候群、爪白癬(onychomycosis tinea)(白癬、足白癬、爪白癬(tinea unguium)、手白癬、股部白癬、体部白癬、頭部白癬、顔面白癬、白癬性毛瘡、渦状癬、黒癬、癜風、異型白癬、口腔扁平苔癬を含む)、GVHDによる口腔粘膜疾患、過成長症候群、先天性爪肥厚症、脂肪組織炎、爪囲炎、シラミ症、類天疱瘡疾患、尋常性天疱瘡、爪囲線維腫および爪下線維腫、ポイツ・ジェガース症候群、UV照射による光老化、色素斑(例えば、扁平母斑およびカフェオレ斑を含む)、粃糠疹、掌蹠過角化症、プロテウス症候群、プロテウス様症候群、外陰部そう痒症、乾癬、化膿性肉芽腫、マフッチ症候群の難治性血管内皮腫、レフサム病、酒さ、ロザイ・ドルフマン病、疥癬、強皮症、脂漏性角化症、セザリー症候群、シェーグレン・ラルソン症候群、扁平上皮癌、うっ滞性皮膚炎、スタージ・ウェーバー症候群、毛細血管拡張症、毛包上皮腫、トリコモナス症、結節性硬化症の皮膚癌徴候、膣イースト菌感染症、血管奇形(ポートワイン母斑およびリンパ管腫を含む)、尋常性白斑、疣贅、乾皮症、ならびに色素性乾皮症からなる群から選択される。
【0037】
本開示はまた、前述の実施形態のいずれかの局所ラパマイシン組成物を、皮膚の状態、疾患、または障害を治療する方法で使用するために提供し、皮膚の状態、疾患、または障害は、バート・ホッグ・デュベ症候群、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、加齢または老化に起因する皮膚萎縮症、神経線維腫症1型(「NF1」またはフォンレックリンハウゼン病とも呼ばれる)の皮膚および真皮の徴候、口腔扁平苔癬、GVHDによる口腔粘膜疾患、先天性爪肥厚症、スタージ・ウェーバー症候群、ポートワイン母斑およびリンパ管腫を含む血管奇形からなる群から選択される。
【0038】
本開示はまた、かかる治療を必要とするヒト対象における皮膚の状態、疾患または障害を治療するための方法を提供し、本方法は、本明細書に記載される局所ラパマイシン組成物を、薄層の組成物で患部を覆うのに好適な量で、対象の皮膚の患部に適用することを含む。実施形態では、黒色表皮腫、ざ瘡、日光角化症、アレルギー性結膜炎、エナメル爪甲低汗症候群、被角血管腫、ファブリー病の被角血管腫、血管腫(サクランボ血管腫、老人性血管腫、くも状血管腫、イチゴ状血管腫、および房状血管腫を含む)、足白癬、アトピー性皮膚炎、細菌性腟症、亀頭炎、バナヤン・ライリー・ルバルカバ症候群、基底細胞癌、基底細胞母斑症候群、バート・ホッグ・デュベ症候群、水疱、青色ゴム乳首様母斑症候群、臭汗症、ブルック・シュピーグラー症候群、水疱性類天疱瘡、胼胝腫、カンジダ症、カルブンケル症、海綿状リンパ管腫、蜂巣炎、脳萎縮関連皮膚状態、肉芽腫性口唇炎、コンラディ・エルチナーマン病、角膜皮膚骨症候群関連皮膚状態、カウデン病、皮膚キャッスルマン病、皮膚幼虫移行症、皮膚サルコイドーシス、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、褥瘡、加齢または老化に起因する皮膚萎縮症、皮膚炎(接触性皮膚炎、薬剤誘発性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、貨幣状湿疹、口囲皮膚炎、神経皮膚炎、脂漏性皮膚炎、およびアトピー性皮膚炎を含む)、隆起性皮膚線維肉腫、皮膚糸状菌症、びまん性小嚢胞リンパ管奇形、円板状エリテマトーデス、異汗性湿疹、先天性角化異常症、膿瘡、湿疹、疣贅状表皮発育異常症、単純型表皮水疱症、表皮溶解性魚鱗癬、表皮母斑(疣状母斑、列序性母斑、炎症性線状疣状表皮母斑、および脂腺母斑を含む)、丹毒、多形紅斑、変異性紅斑角皮症、乳房外パジェット病、家族性円柱腫症、家族性多発性円板状線維腫、フィラリア症、限局性肢端過角化症、濾胞性過角化症、屈折異常を有する毛髪歯異形成を伴う濾胞性過角化症、フルンケル症、性器疣贅、歯肉増殖症、肉芽腫、ヘイリー・ヘイリー病、単純性血管腫、罹患したイヌの遺伝性足蹠過角化症、ヘルペス、蕁麻疹、化膿性汗腺炎、多汗症、固定性扁豆状角化症、白斑、豪猪状魚鱗癬、膿痂疹、色素失調症、乳児血管腫、虫刺症、若年性ポリポーシス症候群、カポジ肉腫、カポジ型血管内皮腫、ケロイド、小嚢胞性リンパ管奇形、ケロイド瘢痕疾患、萎縮性濾胞性角化症関連皮膚状態、毛孔性角化症、KID症候群、クリッペル・トレノネー症候群、黒子または肝斑、レルミット・ダクロス症候群、毛孔性扁平苔癬、苔癬様角化症(扁平苔癬、硬化性苔癬、慢性びらん性口腔扁平苔癬を含む)、狼瘡、限局性リンパ管腫、黒色腫、メルケル細胞癌、転移性黒色腫、小嚢胞性リンパ管奇形、汗疹または紅色汗疹、搾乳者結節、伝染性軟属腫、ムア・トレ症候群、多発性微小指状過角化症、蝿蛆症(せつ性蝿蛆症、および遊走性蝿蛆症を含む)、ネザートン症候群、神経線維腫症1型(「NF1」またはフォンレックリンハウゼン病とも呼ばれる)の皮膚および真皮の徴候、クモ状母斑、非黒色腫皮膚癌、オルムステッド症候群、爪白癬(白癬、足白癬、爪白癬、手白癬、股部白癬、体部白癬、頭部白癬、顔面白癬、白癬性毛瘡、渦状癬、黒癬、癜風、異型白癬、口腔扁平苔癬を含む)、GVHDによる口腔粘膜疾患、過成長症候群、先天性爪肥厚症、脂肪組織炎、爪囲炎、シラミ症、類天疱瘡疾患、尋常性天疱瘡、爪囲線維腫および爪下線維腫、ポイツ・ジェガース症候群、UV照射による光老化、色素斑(例えば、扁平母斑およびカフェオレ斑を含む)、粃糠疹、掌蹠過角化症、プロテウス症候群、プロテウス様症候群、外陰部そう痒症、乾癬、化膿性肉芽腫、マフッチ症候群の難治性血管内皮腫、レフサム病、酒さ、ロザイ・ドルフマン病、疥癬、強皮症、脂漏性角化症、セザリー症候群、シェーグレン・ラルソン症候群、扁平上皮癌、うっ滞性皮膚炎、スタージ・ウェーバー症候群、毛細血管拡張症、毛包上皮腫、トリコモナス症、結節性硬化症の皮膚癌徴候、膣イースト菌感染症、血管奇形(ポートワイン母斑およびリンパ管腫を含む)、尋常性白斑、疣贅、乾皮症、ならびに色素性乾皮症からなる群から選択される皮膚の状態、疾患、または障害。実施形態では、皮膚の状態、疾患、または障害は、バート・ホッグ・デュベ症候群、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、加齢または老化に起因する皮膚萎縮症、神経線維腫症1型(「NF1」またはフォンレックリンハウゼン病とも呼ばれる)の皮膚および真皮の徴候、口腔扁平苔癬、GVHDによる口腔粘膜疾患、先天性爪肥厚症、スタージ・ウェーバー症候群、ポートワイン母斑およびリンパ管腫を含む血管奇形からなる群から選択される。
【0039】
本開示はまた、顔面血管線維腫の治療を必要とするヒト対象における顔面血管線維腫を治療するための方法を提供し、本方法は、本明細書に記載される局所ラパマイシン組成物を、薄層の組成物で患部を覆うのに好適な量で、対象の皮膚の患部に適用することを含む。
【0040】
本開示はまた、本明細書に記載の局所ラパマイシン組成物を作製するためのプロセスを提供し、このプロセスは、第1の容器中で、抗酸化剤を溶媒に溶解し、続いて連続的な混合の下で、ゲル基剤を添加することによって、溶媒相を調製することと、第2の容器中で、界面活性剤、防腐剤、緩衝剤、および任意の任意選択的な賦形剤を水に溶解することによって、水相を調製することと、連続的な混合の下で、微粒子化ラパマイシンを水相に分散させることと、水相を高剪断均質化に供することと、連続的な混合の下で、溶媒相および水相が懸濁した微粒子化ラパマイシンの均質なゲル組成物を形成するまで、溶媒相を水相と組み合わせることと、を含む。
【0041】
また、本明細書に記載の局所ラパマイシン組成物を含む製品物品またはパッケージも提供される。物品またはパッケージの実施形態では、組成物は、密封されたまたは密封可能なエポキシコーティングされたアルミニウムチューブに含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1A】(A)希釈剤中の0.2mg/mlのラパマイシン標準物質を用いたアイソクラティック法
図1B】(B)0.2mg/mlのラパマイシン標準物質を用いたグラジエント法
図1C】(C)15μg/mlのセコラパマイシンを用いたグラジエント法、を使用したHPLCクロマトグラムを示す。以下の表1は、HPLC法のさらなる詳細を提供する。
図2】5℃、25℃および40℃で、pH3、5および非緩衝で1週間保管した後の、ラパマイシンのpH安定性のスクリーニングの結果を示す。
図3】5℃、25℃および40℃で1週間保管した後の、ラパマイシンの安定性に関する溶媒(10%)および温度の結果を示す。PG:プロピレングリコール、TC:ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol(登録商標))、DMI:ジメチルイソソルビド。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本開示は、mTORシグナル伝達の異常な活性化に関連する顔面血管線維腫および他の皮膚病変を治療するための方法における、局所ラパマイシン組成物およびそれらの使用に関する。「ラパマイシン」および「シロリムス」という用語は、互換的に使用され得、分子式C5179NO13および分子量914.172g/mol、CAS番号53123-88-9を有するStreptomyces hygroscopicusによって産生される大環状ラクトンを指す。本開示は、改善された局所ゲル製剤を提供し、活性成分であるラパマイシンの物理的安定性および化学的安定性の両方を示す。例えば、本明細書に記載の組成物は、優れた物理化学的安定性を示し、ラパマイシンの結晶成長および化学分解の両方に対して、周囲温度で安定である。本明細書に記載の物理化学的に安定な組成物は、優れた用量均一性、および皮膚の標的真皮層へのラパマイシンのより効果的な送達をさらに提供する。本明細書に記載の製剤は、セコラパマイシンAまたはBへの分解を含むラパマイシンの分解に対して化学的に安定している。これは、セコラパマイシンがmTORの不十分な活性化剤として機能している可能性があるため、本局所製剤の文脈では特に不利であり、ラパマイシンの治療適用を通して、そのシグナル伝達経路を阻害することが求められた。
【0044】
現在、市販の液体ラパマイシン溶液には2種類あり、1つは経口剤、もう1つは注射剤である。経口溶液(Rapamune(登録商標))は、水性基剤中にあり、レシチン、グリコール、ヒマワリ油、パルミチン酸アスコルビル、大豆脂肪酸、エタノールおよびポリソルベート80を含むリン脂質賦形剤ブレンドを含む。保管は、2~8℃である。注射用ラパマイシン溶液(Torisel(登録商標);テムシロリムス、ラパマイシンのジメチルプロピオン酸エステル)は、dl-α-トコフェロールおよびクエン酸を含むアルコールおよびプロピレングリコール中の非水溶液である。保管は、2~8℃である。したがって、これらの両方の市販のラパマイシン製剤は、長期保管および安定性のために冷蔵を必要とする。対照的に、本局所製剤は、室温(25℃)で、少なくとも6ヶ月間、好ましくは、1年またはそれ以上の間、物理的および化学的に安定しているラパマイシンゲル組成物を提供する。
【0045】
Transcutol(登録商標)に可溶化され、市販の保湿剤Vanicream(商標)にクリームとして製剤化されたラパマイシン(0.1%)は、TSC患者における血管線維腫の治療に実験的に使用されている(Truchuelo et al.Derm.Online J.(2012)8:15)。本局所製剤は、物理的および化学的に安定なラパマイシンゲル組成物を提供し、Vanicream(商標)中で製剤化されたラパマイシンと比較して、皮膚の真皮層への優れた薬物送達を提供する。
【0046】
本明細書に記載の製剤のこれらの特性および他の有利な特性は、参照製剤と比較して、皮膚へのラパマイシンの改善された標的送達を提供する。
【0047】
局所ラパマイシン組成物
本開示は、微粒子化ラパマイシンを含むゲル組成物の形態の局所ラパマイシン製剤およびそれを作製する方法を提供する。ラパマイシンは、白色からオフホワイト色の粉末であり、一般に水に不溶性であり、わずか2.6μg/mlの非常に低い溶解度を有すると考えられている。ラパマイシンは、ベンジルアルコール、クロロホルム、アセトン、およびアセトニトリルに容易に溶解する。ラパマイシンの異性体、例えば、異性体Bおよび異性体Cが知られており、米国特許第7,384,953号に示されるような構造を有する。典型的には、ラパマイシンは、異性体Bと異性体Cの混合物である。溶液では、ラパマイシンの異性体Bおよび異性体Cが相互変換し、平衡に達している。文献では、一般に、以下に示す形態である異性体Bの形態で、ラパマイシンの構造が描写されている。
【化1】
【0048】
本明細書に記載の組成物および方法の実施形態では、APIは、30:1未満または35:1未満の異性体B:C比を有するラパマイシンである。実施形態では、APIは、30:1超または35:1超の異性体B:C比を有するラパマイシンである。一実施形態では、ラパマイシンは、3.5%~10%の異性体C含有量を有する。
【0049】
非酵素的な酸化分解を受けやすい不十分な水溶性薬物として、ラパマイシンは、多くの製剤化の課題を提示する。加えて、以下の実験セクションで詳細に説明されるように、ラパマイシン懸濁製剤は、固体結晶の形成および成長に感受性であることが見出され、ラパマイシンの安定した均一な懸濁液を得るという目標に対してさらなる課題を提示した。
【0050】
本明細書で提供されるゲル組成物中のラパマイシン粒子の粒径分布(PSD)は、好ましくは、1~5ミクロンの範囲のD50によって定義される。D50というパラメータは、50%での累積サイズ分布に対応するサイズ値を指し、試料の50%がそれを下回る粒子のサイズを表す。実施形態では、製剤のラパマイシン成分は、D10およびD90パラメータによってさらに定義され得、10%または90%での累積サイズ分布に対応するサイズ値を表す。実施形態では、本明細書に記載のゲル組成物のラパマイシンの粒径分布(PSD)は、0.5~1.6ミクロンの範囲のD10、1~5ミクロンの範囲のD50、および4~8ミクロンの範囲のD90によって定義される。PSDは、当該技術分野で既知の方法、例えば、レーザー回折によって決定され得る。本明細書に記載の局所製剤中のラパマイシンのPSDは、ゲル組成物中に分散した薬物粒子の含量均一性を確保するために、上記の指定された比較的狭い範囲内に維持されなければならない。例えば、薬物粒子の沈降または凝集によって証明される含量均一性の欠如は、不正確な投薬およびバイオアベイラビリティの低下をもたらし得、それによって組成物の安全性および有効性に悪影響を及ぼす。
【0051】
所望のPSDを有するラパマイシン粒子を得るために使用され得る薬物粒子を微粒子化するための方法としては、ジェットミル、ウェットミル、ボールミル、および高圧均質化が挙げられる。
【0052】
以下の実施例で詳細に説明されるように、本出願人は、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリ(アクリル酸)、およびセテアレス-20/セトステアリルアルコールの形態でゲルまたはクリームの構造形成基剤を含む多数の局所組成物を試験した。「ポリ(アクリル酸)」および「ポリアクリル酸」という用語は、本明細書において互換的に使用され、「PAA」は、これらの用語の略語として本明細書において使用され得る。PAAは、Carbomer(商標)という商品名でも知られている。ゲルまたはクリームの構造形成基剤(本明細書において単に「ゲル基剤」または「クリーム基剤」とも呼ばれ得る)の各々は、予備製剤化(preformulation)試験で同定されたラパマイシンのリード溶媒としての3種類の溶媒の各々を用いて製剤化された。これらは、プロピレングリコール(PG)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol(登録商標)またはTC)、およびジメチルイソソルビド(DMI)であった。また、予備製剤化作業では、ラパマイシンが、抗酸化剤の存在下、酸性pHで最も安定であることも確立された。予備製剤化研究では、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)が抗酸化剤としてビタミンEよりも優れていることが、さらに特定された。様々な製剤を、経時的かつ異なる温度条件下で、それらの物理的安定性および化学的安定性の試験に供した。この研究では、4つのリードゲル組成物が、必要な生理化学的安定性を有することが特定された。これらは、安全性(最大耐容用量)および有効性(皮膚の真皮層に送達されたラパマイシンの量)を決定するために、さらなるインビボ試験に供された。以下の実施例のセクションで実証されるように、リード製剤は、Vanicream(商標)中のラパマイシン製剤と比較して、皮膚の真皮層に10~100倍より多くのラパマイシンを送達するのに有効であった。
【0053】
したがって、本開示は、局所ラパマイシンゲル組成物を提供し、ゲル構造形成基剤、溶媒、抗酸化剤、組成物のpHをpH6以下に維持するように適合された緩衝剤、ならびに界面活性剤、保湿剤、キレート剤、および防腐剤から選択される1つ以上の任意選択的な賦形剤の均質混合物中のラパマイシンの安定な懸濁液を含む。
【0054】
実施形態では、組成物のpHは、5.5~6.0であるか、またはpHは、4~5である。
【0055】
実施形態では、微粒子化ラパマイシンは、0.05%w/w~2.0%w/wの量で、ゲル組成物中に存在する。一部の実施形態では、ラパマイシンは、0.1%w/w、0.3%w/w、または1.0%w/wの量で、ゲル組成物中に存在する。実施形態では、微粒子化ラパマイシンは、10%未満のラパマイシン異性体Cを含む。実施形態では、微粒子化ラパマイシンの粒径分布(PSD)は、1.2~1.5ミクロンの範囲のD10、2.4~2.8ミクロンの範囲のD50、および4.5~5ミクロンの範囲のD90によって定義される。
【0056】
実施形態では、ゲル組成物は、ゲル構造形成基剤としてのヒドロキシエチルセルロース(HEC)またはPAA、ならびにジメチルイソソルビド(DMI)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(TranscutolまたはTC)、およびプロピレングリコール(PG)から選択される溶媒を含む。一実施形態では、ゲル構造形成基剤は、PAAであり、溶媒は、ジメチルイソソルビド(DMI)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(TranscutolまたはTC)、およびプロピレングリコール(PG)から選択される。一実施形態では、ゲル構造形成基剤は、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)であり、溶媒は、プロピレングリコールである。一部の実施形態では、PAAは、カルボマー、例えば、800~1000、好ましくは、950~1000の範囲の分子量を有するカルボマー、例えば、Carbomer(商標)980である。ゲル構造形成基剤は、組成物の総重量に基づいて、HECの場合、約0.5~5%w/w、好ましくは、約1~2%w/w、もしくは1~1.75%w/w、またはPAAの場合、約0.1~3%w/w、0.1~2.25%w/w、もしくは0.25~0.75%w/wの量で存在し得る。溶媒は、DMIまたはTCの場合、組成物の総重量に基づいて、約5~25%w/w、好ましくは、6~8%w/w、またはPGの場合、約5~25%w/w、好ましくは、約10~15%w/wの量で存在し得る。
【0057】
実施形態では、抗酸化剤は、αトコフェロール(トコフェロールまたはビタミンEとも称される)、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、クエン酸一水和物、エリソルビン酸、オレイン酸エチル、フマル酸、リンゴ酸、モノチオグリセロール、リン酸、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、クエン酸一水和物、酒石酸、およびチモールから選択され得る。実施形態では、好ましい抗酸化剤は、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)である。
【0058】
実施形態では、組成物は、界面活性剤、保湿剤、キレート剤、および防腐剤から選択される1つ以上の任意選択的な賦形剤を含む。一般に、任意選択的な賦形剤は、各々、2%w/w未満の量で存在する。本開示におけるすべての重量パーセンテージは、ゲル組成物の総重量に基づいている。
【0059】
実施形態では、組成物は、鉱油、セスキオレイン酸ソルビタン、ワセリン、セレシン、メチルパラベンまたはプロピルパラベン、オレイン酸PEG-6、およびポリエトキシル化ヒマシ油のうちの1つ以上を含まない。
【0060】
組成物が界面活性剤を含む実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート(好ましくは、ポリソルベート80(「PS80」、Tween(商標)80、モノオレイン酸ソルビタン、またはオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンとも称される)、ポリエチレングリコール(PEG)脂肪酸エステル(ラウリン酸、オレイン酸、およびステアリン酸のエステルを含み、モノエステル(ラウリン酸PEG-8、オレイン酸PEG-8、ステアリン酸PEG-8、オレイン酸PEG-9、ラウリン酸PEG-10、オレイン酸PEG-10、ラウリン酸PEG-12、オレイン酸PEG-12、オレイン酸PEG-15、ラウリン酸PEG-20、およびオレイン酸PEG-20)、ならびにジエステル(ジラウリン酸PEG-20、ジオレイン酸PEG-20、ジステアリン酸PEG-20、ジラウリン酸PEG-32、およびジオレイン酸PEG-32)、ならびに前述のモノエステルおよびジエステルのうちのいずれかの混合物を含む)から選択されてもよい。さらなる実施形態では、界面活性剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化ドセシルトリメチルアンモニウム、ドセシル硫酸ナトリウム、塩化ジアルキルメチルベンジルアンモニウム、塩化エドロホニウム、臭化ドミフェン、スルホンコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、コール酸ナトリウム、およびタウロコール酸ナトリウムから選択され得る。実施形態では、界面活性剤は、0.10%w/w未満の量で存在する。好ましい界面活性剤としては、ポリソルベート80が挙げられる。
【0061】
組成物が保湿剤を含む実施形態では、保湿剤は、アルギン酸アンモニウム、シクロメチコン、グリセリン、ポリデキストロース、プロピレングリコール、ヒアルロン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、トレハロース、トリアセチン、トリエタノールアミン、およびキシリトールから選択され得る。
【0062】
組成物がキレート剤を含む実施形態では、キレート剤は、クエン酸一水和物、エデト酸二カリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、マルトール、エデト酸ナトリウム、およびエデト酸三ナトリウムから選択され得る。
【0063】
組成物が防腐剤を含む実施形態では、防腐剤は、抗菌剤または抗真菌剤などの抗微生物剤であってもよい。好適な防腐剤は、例えば、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ホウ酸、ブロノポール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチルパラベン、二酸化炭素、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルブタノール、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、ジメチルエーテル、エチルパラベン、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、イソプロピルアルコール、乳酸、モノチオグリセロール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、安息香酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、ソルビン酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、プロピレングリコール、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ソルビン酸、およびエデト酸であり得る。実施形態では、防腐剤は、1.5%w/w未満の量で存在する。好ましい防腐剤は、ベンジルアルコールである。
【0064】
一部の実施形態では、ゲル組成物は、0.1~2.0%w/wのラパマイシン、または約0.1%w/w、0.3%w/w、1%w/wもしくは2.0%wのラパマイシン、ゲル基剤としてのヒドロキシエチルセルロース、溶媒としてのプロピレングリコール、および抗酸化剤としてのブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)を含む。実施形態では、ゲル基剤および溶媒は共に、組成物の約15%w/wを含む。実施形態では、ゲル組成物は、0.01~0.10%w/wのポリソルベート80、および0.5~1.5%w/wのベンジルアルコールをさらに含む。実施形態では、ゲル組成物は、5℃および25℃で少なくとも6ヶ月間、および40℃で3ヶ月間、ラパマイシンの結晶成長に対して物理的に安定であり、非酵素性ラパマイシン分解産物の形成に対して化学的に安定である。この組成物の例示的な特定の実施形態は、以下の表A-A2に提供される。
【表1】
【表2】
【表3】
【0065】
一部の実施形態では、ゲル組成物は、0.1~2.0%w/wの微粒子化ラパマイシン、ゲル基剤としてのポリ(アクリル酸)、溶媒としてのDMI、および抗酸化剤としてのBHAを含む。実施形態では、ゲル基剤および溶媒は共に、組成物の約8%w/wを含む。実施形態では、ゲル組成物は、0.01~0.10%w/wのポリソルベート80、および0.5~1.5%w/wのベンジルアルコールをさらに含む。実施形態では、ゲル組成物は、5℃で少なくとも6ヶ月間、25℃または40℃で少なくとも2ヶ月間、ラパマイシンの結晶成長に対して物理的に安定であり、非酵素性ラパマイシン分解産物の形成に対して化学的に安定である。
【0066】
一部の実施形態では、ゲル組成物は、0.1~2.0%w/wの微粒子化ラパマイシン、ゲル基剤としてのポリ(アクリル酸)、溶媒としてのTC、および抗酸化剤としてのBHAを含む。実施形態では、ゲル基剤および溶媒は共に、組成物の約8%w/wを含む。実施形態では、ゲル組成物は、0.01~0.10%w/wのポリソルベート80、および0.5~1.5%w/wのベンジルアルコールをさらに含む。実施形態では、ゲル組成物は、5℃で少なくとも6ヶ月間、25℃または40℃で少なくとも2ヶ月間、ラパマイシンの結晶成長に対して物理的に安定であり、非酵素性ラパマイシン分解産物の形成に対して化学的に安定である。
【0067】
一部の実施形態では、ゲル組成物は、0.1~2.0%w/wの微粒子化ラパマイシン、ゲル基剤としてのポリ(アクリル酸)、溶媒としてのプロピレングリコール、および抗酸化剤としてのBHAを含む。実施形態では、ゲル基剤および溶媒は共に、組成物の約13%(w/w)を含む。実施形態では、ゲル組成物は、0.01~0.10%w/wのポリソルベート80、および0.5~1.5%w/wのベンジルアルコールをさらに含む。実施形態では、ゲル組成物は、5℃で少なくとも6ヶ月間、25℃または40℃で少なくとも1ヶ月間、ラパマイシンの結晶成長に対して物理的に安定であり、非酵素性ラパマイシン分解産物の形成に対して化学的に安定である。
【0068】
本明細書に記載のゲル組成物を作製するための例示的なプロセスにおいて、ゲルは、溶媒相および水相の2相に配合され、溶媒相は、ゲル基剤、溶媒、および抗酸化剤を含み、水相は、緩衝剤、界面活性剤、防腐剤、および任意の任意選択的な賦形剤を含む、酸性化水性溶液(pH4~6)中に分散されたラパマイシンの微粒子の懸濁液を含む。例示的なプロセスによれば、ゲル組成物は、溶媒相および水相の均質な混合物として記載されてもよく、溶媒相は、ゲル構造形成基剤(または「ゲル基剤」)、溶媒、および抗酸化剤を含み、水相は、懸濁液中のラパマイシンの微粒子化粒子、緩衝剤、水、および、存在する場合、1つ以上の任意選択的な賦形剤を含む。
【0069】
組成物は、例えば以下のように調製される。溶媒および水相を別々に調製し、次いで組み合わせる。溶媒相は、抗酸化剤を溶媒に溶解し、続いて連続的な混合の下で、ゲル基剤を添加することによって調製する。水相は、精製水に、緩衝剤、界面活性剤、防腐剤、および任意の任意選択的な賦形剤を溶解させ、次いで、連続的な混合の下で、微粒子化ラパマイシンを水相に分散させ、続いて水相を高剪断均質化に供することによって調製される。次いで、連続的な混合の下で、溶媒相および水相が均質なゲル組成物を形成するまで、溶媒相を水相と組み合わせる。
【0070】
より詳細な例示的なプロセスでは、抗酸化剤であるBHAを、溶媒であるプロピレングリコールに添加し、混合して溶解する。BHAが溶媒に完全に溶解したら、連続的に混合しながら、ゲル基剤、ヒドロキシエチルセルロースを添加する。別個の容器(container)または容器(vessel)中で、精製水に、界面活性剤のポリソルベート80、防腐剤のベンジルアルコール、緩衝剤のクエン酸ナトリウム/クエン酸、およびキレート剤のエデト酸二ナトリウムを順次添加し、各成分を、次の成分を添加する前に溶解させる。次いで、微粒子化ラパマイシンを水相に添加し、連続的に混合しながら分散させる。次いで、水相を、高剪断ホモジナイザー、例えば、Ross高剪断ホモジナイザーを30分間使用して均質化する。均質化後、水相を直ちに、連続的な混合に供し(例えば、Lightninミキサーで)、続いて溶媒相を添加し、ゲルを水和するために、約45分間連続的な混合を維持する。
【0071】
本開示はまた、本明細書に記載の局所ラパマイシンゲル組成物を含む製品物品またはパッケージを提供し、密封されたまたは密封可能なエポキシコーティングされたアルミニウムチューブに含まれる。実施形態では、組成物は、5℃で少なくとも6ヶ月間、および25℃または40℃で少なくとも1、2、3、5、または6ヶ月間、物理的および化学的に安定である。
【0072】
使用方法
本開示はまた、ラパマイシンを必要とする対象の皮膚、特に皮膚の真皮層に、ラパマイシンを局所的に送達するための組成物を提供する。本開示はまた、対象の皮膚に有効量の本明細書に記載の局所ラパマイシンゲル組成物を適用することによって、かかる治療を必要とする対象において、皮膚の状態、疾患、または障害を治療するための方法も提供する。本明細書に記載の方法の文脈において、「治療する」、「治療」、および「治療すること」という用語は、皮膚病変の重症度、持続期間、または進行の軽減を指し、例えば、紅斑の存在および/または程度、平均の病変サイズ、患部における病変の数または密度、および関与割合のうちの1つ以上を含む臨床パラメータによって評価される。したがって、治療の有効性は、例えば、これらの臨床パラメータのうちの1つ以上の減少によって決定され得る。「治療すること」という用語はまた、顔面血管線維腫、血管腫、血管奇形、化膿性肉芽腫、本態性毛細血管拡張症、家族性多発性円板状線維腫、およびサクランボ血管腫などの新しい皮膚病変の出現の低減を包含し得る。
【0073】
治療を必要としている対象は、好ましくは、ヒト対象である。実施形態では、対象は、LAMまたは結節性硬化症複合体(TSC)と診断されたヒト対象である。実施形態では、必要とする対象は、血管腫、血管奇形、化膿性肉芽腫、本態性毛細血管拡張症、家族性多発性円板状線維腫、およびサクランボ血管腫から選択される皮膚の状態、疾患、または障害を呈する対象である。実施形態では、血管奇形は、ポートワイン母斑またはリンパ管腫である。実施形態では、必要とする対象は、プロテウス症候群、ブルック・シュピーグラー症候群、脂腺母斑、表皮母斑、口腔扁平苔癬、肉芽腫性口唇炎、神経線維腫症1型、過成長症候群、または歯肉増殖症と診断されたヒト患者である。本開示の文脈において、「患者」という用語は、概して、診断を有するヒト対象を指す。
【0074】
実施形態では、皮膚の状態、疾患、または障害は、黒色表皮腫、ざ瘡、日光角化症、アレルギー性結膜炎、エナメル爪甲低汗症候群、被角血管腫、ファブリー病の被角血管腫、血管腫(サクランボ血管腫、老人性血管腫、くも状血管腫、イチゴ状血管腫、および房状血管腫を含む)、足白癬、アトピー性皮膚炎、細菌性腟症、亀頭炎、バナヤン・ライリー・ルバルカバ症候群、基底細胞癌、基底細胞母斑症候群、バート・ホッグ・デュベ症候群、水疱、青色ゴム乳首様母斑症候群、臭汗症、ブルック・シュピーグラー症候群、水疱性類天疱瘡、胼胝腫、カンジダ症、カルブンケル症、海綿状リンパ管腫、蜂巣炎、脳萎縮関連皮膚状態、肉芽腫性口唇炎、コンラディ・エルチナーマン病、角膜皮膚骨症候群関連皮膚状態、カウデン病、皮膚キャッスルマン病、皮膚幼虫移行症、皮膚サルコイドーシス、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、褥瘡、加齢または老化に起因する皮膚萎縮症、皮膚炎(接触性皮膚炎、薬剤誘発性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、貨幣状湿疹、口囲皮膚炎、神経皮膚炎、脂漏性皮膚炎、およびアトピー性皮膚炎を含む)、隆起性皮膚線維肉腫、皮膚糸状菌症、びまん性小嚢胞リンパ管奇形、円板状エリテマトーデス、異汗性湿疹、先天性角化異常症、膿瘡、湿疹、疣贅状表皮発育異常症、単純型表皮水疱症、表皮溶解性魚鱗癬、表皮母斑(疣状母斑、列序性母斑、炎症性線状疣状表皮母斑、および脂腺母斑を含む)、丹毒、多形紅斑、変異性紅斑角皮症、乳房外パジェット病、家族性円柱腫症、家族性多発性円板状線維腫、フィラリア症、限局性肢端過角化症、濾胞性過角化症、屈折異常を有する毛髪歯異形成を伴う濾胞性過角化症、フルンケル症、性器疣贅、歯肉増殖症、肉芽腫、ヘイリー・ヘイリー病、単純性血管腫、罹患したイヌの遺伝性足蹠過角化症、ヘルペス、蕁麻疹、化膿性汗腺炎、多汗症、固定性扁豆状角化症、白斑、豪猪状魚鱗癬、膿痂疹、色素失調症、乳児血管腫、虫刺症、若年性ポリポーシス症候群、カポジ肉腫、カポジ型血管内皮腫、ケロイド、小嚢胞性リンパ管奇形、ケロイド瘢痕疾患、萎縮性濾胞性角化症関連皮膚状態、毛孔性角化症、KID症候群、クリッペル・トレノネー症候群、黒子または肝斑、レルミット・ダクロス症候群、毛孔性扁平苔癬、苔癬様角化症(扁平苔癬、硬化性苔癬、慢性びらん性口腔扁平苔癬を含む)、狼瘡、限局性リンパ管腫、黒色腫、メルケル細胞癌、転移性黒色腫、小嚢胞性リンパ管奇形、汗疹または紅色汗疹、搾乳者結節、伝染性軟属腫、ムア・トレ症候群、多発性微小指状過角化症、蝿蛆症(せつ性蝿蛆症、および遊走性蝿蛆症を含む)、ネザートン症候群、神経線維腫症1型(「NF1」またはフォンレックリンハウゼン病とも呼ばれる)の皮膚および真皮の徴候、クモ状母斑、非黒色腫皮膚癌、オルムステッド症候群、爪白癬(白癬、足白癬、爪白癬、手白癬、股部白癬、体部白癬、頭部白癬、顔面白癬、白癬性毛瘡、渦状癬、黒癬、癜風、異型白癬、口腔扁平苔癬を含む)、GVHDによる口腔粘膜疾患、過成長症候群、先天性爪肥厚症、脂肪組織炎、爪囲炎、シラミ症、類天疱瘡疾患、尋常性天疱瘡、爪囲線維腫および爪下線維腫、ポイツ・ジェガース症候群、UV照射による光老化、色素斑(例えば、扁平母斑およびカフェオレ斑を含む)、粃糠疹、掌蹠過角化症、プロテウス症候群、プロテウス様症候群、外陰部そう痒症、乾癬、化膿性肉芽腫、マフッチ症候群の難治性血管内皮腫、レフサム病、酒さ、ロザイ・ドルフマン病、疥癬、強皮症、脂漏性角化症、セザリー症候群、シェーグレン・ラルソン症候群、扁平上皮癌、うっ滞性皮膚炎、スタージ・ウェーバー症候群、毛細血管拡張症、毛包上皮腫、トリコモナス症、結節性硬化症の皮膚癌徴候、膣イースト菌感染症、血管奇形(ポートワイン母斑およびリンパ管腫を含む)、尋常性白斑、疣贅、乾皮症、ならびに色素性乾皮症から選択される。
【0075】
実施形態では、皮膚の状態、疾患、または障害は、バート・ホッグ・デュベ症候群、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、加齢または老化に起因する皮膚萎縮症、神経線維腫症1型(「NF1」またはフォンレックリンハウゼン病とも呼ばれる)の皮膚および真皮の徴候、口腔扁平苔癬、GVHDによる口腔粘膜疾患、先天性爪肥厚症、スタージ・ウェーバー症候群、ポートワイン母斑およびリンパ管腫を含む血管奇形から選択される。
【0076】
本明細書に記載の局所ラパマイシン組成物は、治療有効量のラパマイシンを、それを必要とする対象の皮膚の真皮層に送達するのに有効である。実施形態では、20mg用量として適用される本明細書に記載の組成物は、ミニブタ(minipig)アッセイにおいて、16~41μgのラパマイシンを、1gの皮膚の真皮層に送達するのに有効である。
【0077】
本明細書に記載の組成物は、全身曝露を回避しながら、治療有効量のラパマイシンを対象の皮膚に送達するための方法において特に有用である。好ましくは、本明細書に記載の局所組成物を介してラパマイシンが投与された対象は、組成物を対象の皮膚に適用した後の12~24時間以内に、1または2ng/ml未満のラパマイシンの血中レベルを示す。
【0078】
実施形態では、本明細書に記載の組成物中のラパマイシンの量は、顔面血管線維腫または他の皮膚病変(血管腫、血管奇形、化膿性肉芽腫、本態性毛細血管拡張症、家族性多発性円板状線維腫、およびサクランボ血管腫を含む)を治療するのに有効な量である。
【0079】
実施形態では、ラパマイシンの有効量は、局所ラパマイシン組成物の適用のための本明細書に記載の方法に従って皮膚に適用される量である。例えば、本明細書に記載の方法によれば、患部に適用される組成物の量は、概して、約5立方センチメートル(cm)、または約5~20cm、または約15~20cmの範囲である。本明細書に記載の方法によれば、組成物は、治療される病変を含む皮膚の領域である皮膚の患部に、患部を、薄層の組成物で覆うのに好適な量(例えば、患部に適用される約5~20cmまたは約15~20cmの範囲の量)で、好ましくは、1日1回または1日2回適用される。実施形態では、適用は、1日1回である。実施形態では、局所ラパマイシン組成物は、患者の顔などの患部に局所的に適用される。実施形態では、ポンプを使用して、規定量の組成物、例えば、約1gm(または約5~20cm、または約15~20cm)を分配するために使用される。分配された量を、皮膚の患部に適用し、湿潤または洗浄することなく、好ましくは、一晩そのままにする。実施形態では、組成物は、1日に1回適用される。実施形態では、組成物は、1日に2回または3回適用される。組成物は、好ましくは、室温で保管して使用する。
【0080】
さらなる実施形態は、以下の実施例から明らかになるが、一部の主要な態様において本発明を例示するものであって、決してその範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0081】
以下のセクションでは、上述の必要性を満たす局所ラパマイシン組成物の配合を説明する。本実施例は、半固体組成物中の活性医薬成分(API)としてのラパマイシンを製剤化する独自の課題について説明し、これには、組成物中のAPIの均質な懸濁液を得ること、保管中および温度の上昇での経時的な化学分解からAPIを保護すること、ならびに製剤中のAPIの結晶成長を回避することの難しさが含まれる。実施例はさらに、本明細書に記載の組成物を化学的および物理的に安定化させる形態で、これらの問題に対する解決策を提供する。
【0082】
好適な溶媒系を確立するために、予備製剤化作業を行った。実施例1は、試験した溶媒およびさらなる製剤化のための3つのリード溶媒の選択を記載する。また、これらの初期研究は、組成物が、ラパマイシンの安定した均質な懸濁液の形態をとることを確立した。実施例2および3は、必要な安定性を有する組成物を得るために行われた実験を記載している。
【0083】
予備製剤化作業には、ラパマイシンおよび任意の分解産物を検出するための信頼性の高い堅牢なHPLC法、pH安定性試験、局所溶媒スクリーニング、溶媒適合性試験、ならびに抗酸化剤スクリーニングの開発も含まれる。予備製剤化段階に続いて、ラパマイシン製剤の試作開発を行った。これは、40℃で1ヶ月後に(外観および粘度に基づいて)安定性試験のためにラパマイシンを含む8~10種類のクリームおよびゲルのビヒクルを調製することからなった。化合物を6~8種類の活性製剤に関して試験し、最初に水性ビヒクル基剤の外観、粘度、およびpHを試験した。最も望ましい予備製剤化の下流試験は、予備製剤化データに応じて、25℃、および5℃または40℃のいずれかで、1ヶ月間および3ヶ月間の保管で実施した。これらの実験から、4つのリード製剤が得られ、以下の実施例1~3に記載する。
【0084】
リード製剤を、前臨床ミニブタ(minipig)モデルにおいて、ラパマイシンの耐容性および皮膚への送達について試験した。要約すると、これらの実験により、4つのリード製剤のすべてが、Vanicream(商標)製剤と比較して、より高い量のラパマイシンを皮膚に送達するのに有効であることが示された。これらの実験を、以下の実施例4に記載する。
【0085】
実施例1:予備製剤化
ラパマイシンを、ラパマイシンの不純物/分解産物の可能性があるセコラパマイシンを効率的に検出するために、改変アイソクラティック法を使用して、高圧液体クロマトグラフィー分析(HPLC)によって検出した。HPLC分析は、紫外可視検出器を使用してAgilent 1200装置を用いて実施した。表1に、2つのHPLC法の仕様を示す。第1の方法(RAP_1_LC.Mと称される)は、0.05~0.4mg/mLにわたって線形であり、相関係数が0.999を超え、反復注入における相対標準偏差(RSD)が2%未満であり、そのため、予備製剤化作業には十分である。図1Aは、考えらえる不純物/分解産物であるセコラパマイシン(希釈剤フロント内または希釈剤フロントに非常に近接して溶出する)と共に、ラパマイシン標準物質のHPLCクロマトグラムを示す。セコラパマイシンをより正確に検出するために、アセトニトリル勾配を10%から55%、勾配時間を2.5から15分にし、方法の実行時間も35分に増加させた。加えて、pH安定性のスクリーニング(以下で論じる)の結果に基づいて、酢酸緩衝液を、pH4.5の20mMリン酸緩衝液に置き換えた。方法の実行時間が、55℃ではより長かったため、緩衝液のpHを低くして、アッセイ中の分解の可能性を最小限に抑えた。この方法は、表1で、RAP_2_LC.Mと表記されている。RAP_2_LC.Mグラジエント法は、0.05~0.4mg/mlの範囲にわたって線形であり、相関係数が0.999を超えた。反復注入の%RSDは、2%未満であった。0.2mg/mLのラパマイシンを用いたクロマトグラムを示すと共に(図1B)、純粋な15μg/mLのセコラパマイシンのみのクロマトグラムを示す(図1C)。セコラパマイシンは、ラパマイシンのメインピークに対して、約0.7の相対保持時間(RRT)で溶出した(図1A~B)。これらの結果に基づいて、RAP_2_LC.Mグラジエント法は、プロトタイプ製剤の開発および試験におけるラパマイシン分析に許容されると考えられた。
【表4】
【0086】
次に、ラパマイシンが0.1mg/ml超の溶解度を有する1:1のエタノール:水のブレンドを使用して、ラパマイシンのpH安定性を試験した。20mMのクエン酸緩衝液を、pH3、5および7で調製した。pH7の緩衝液を除いて、これらの緩衝液は50%エタノール中に混和可能であった。より高いpHを得るために、緩衝液の濃度を低下させるのではなく、第3の溶液を非緩衝水で調製した。pHの測定には、Thermo Scientific電極を備えたOrion 710a+pHメーターを使用した。0.1mg/mLのラパマイシンの溶液を、pH3、5および7で調製し、5℃、25℃、および40℃で1週間保管した。図2に示された結果は、ラパマイシンが酸性pHでより安定であることを示す。
【0087】
次に、表2に示すように、10種類の異なる溶媒におけるラパマイシンの溶解度を試験した。溶解度のスクリーニングは、重量分析によって実施した。ガラスバイアルに、既知の量のAPIを既知の量の溶媒に添加し、試料を、バイアルローテーター(VWR)を用いて室温で回転させた。APIが完全に溶解した場合、さらに既知の量が追加された。最後のAPI添加後、試料を少なくとも48時間回転させた後で、重量測定の結果を決定した(すなわち、a%w/w超、またはa%w/w未満)。これらの試験は、ラパマイシンがジメチルイソソルビド(DMI)およびジエチレングリコールモノエチルエーテル(TC)に最も高度に可溶性であることを示した。
【表5】
【0088】
TCおよびDMI中のラパマイシンの飽和溶解度は、それぞれ15.5%および20.6%(w/w)であった。ラパマイシンの水溶性に対する溶媒の効果を推定するために、飽和溶解度を、水中および選択された溶媒の10%溶液中で測定した。すべての溶液を、5mMのクエン酸緩衝液でpH4.5に緩衝した。PGは、溶解度に対してほとんど効果がなく、一方、TCおよびDMIは、溶解度を約1.5~2.0μg/mL増加させた。表3に、結果を要約する。
【表6】
【0089】
次に、図3に示すように、プロピレングリコール(PG)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(TC)、およびジメチルイソソルビド(DMI)の3種類の異なる溶媒中で、ラパマイシンの安定性を試験した。ラパマイシン(0.2%w/w)の溶液を、各々、DMI、TC、およびPGの3種類の溶媒で調製し、5℃、25℃、および40℃で1週間保管した。図3は、ラパマイシンがプロピレングリコール(PG)と最も適合性が高く、ジメチルイソソルビド(DMI)と最も適合性が低かったことを示す。
【0090】
次に、抗酸化剤スクリーニングを実施し、ラパマイシンを安定化させる抗酸化剤を特定した。ジエチレングリコールモノエチルエーテル(TC)では、1週間後に著しい分解があり、TCが過酸化物を生成し得ることから、抗酸化剤スクリーニングのための溶媒として選択した。ラパマイシン溶液(0.2%w/w)を、以下の抗酸化剤を用いて、Transcutol(登録商標)中で調製した:(1)抗酸化剤なし、(2)0.01%のブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、(3)0.002%のdl-α-トコフェロール(ビタミンE)、および(4)0.01%のBHA+0.002%のビタミンE。表4に、1、2、および4週間保管した後の結果を示す。
【表7】
【0091】
抗酸化剤を組み込むことで、温度およびすべての時点の両方で溶液の安定性が著しく改善した。40℃での4週間のデータを使用して、2つの抗酸化剤の主な効果およびそれらの相互作用を、アッセイ値について計算した(Box et al.,1978)。BHAの正の効果(+23.8)は、ビタミンE(+11.6)の正の効果の2倍であった。ビタミンEは弱い抗酸化剤であるため、相互作用は負の値(-9.8)を有し、ビタミンEをBHAと組み合わせても、BHA単独で使用した場合のアッセイ値を有意に改善しなかった。これらの結果およびその水溶性に基づいて、BHAをラパマイシン製剤の抗酸化剤として選択した。
【0092】
要約すると、予備製剤化作業の主な結果として:(1)ラパマイシンは、酸性pHで最も安定である。プロピレングリコール(PG)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol(登録商標)またはTC)、およびジメチルイソソルビド(DMI)の3つの有望な溶媒が特定された。BHAが、ラパマイシンの安定性を維持するのに好適な抗酸化剤であることが示された。溶解性および溶液安定性に基づいて、顔への適用に好適な水性ベースの製剤は、懸濁剤である必要がある。
【0093】
実施例2:クリームおよびゲルのビヒクルの製剤
クリームを1シリーズ、およびゲルを2シリーズ用意した。構造形成剤として、シリーズ1のゲル(ゲル1A、1B、および1C)は、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)を利用し、シリーズ2(ゲル2A、2B、および2C)のゲルは、カルボマー980を利用した。以下の表5に詳述するように、クリームのシリーズ(クリームA、クリームB、クリームC)は、セテアレス-20およびセトステアリルアルコールを利用した。試験した製剤間の他の主な違いは、溶媒であった。「A」と表記されたゲルおよびクリームは、ジメチルイソソルビド(DMI)を利用し、「B」と表記されたものは、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol(登録商標)またはTC)を利用し、「C」と表記されたものは、プロピレングリコール(PG)を利用した。
【表8】
【0094】
各ビヒクル基剤を、予備製剤化作業で特定された3種類の溶媒のうちの1つで製剤化した:「A」は、7.5%w/wのDMI、「B」は、7.5%w/wのTC、および「C」は、12.5%w/wのPG。ビヒクルの組成を、以下の表に要約する(多くの成分がそれらの機能に関して色分けされている)。活性製剤についての配合技術は、本書の後半で説明する。
【0095】
9つの製剤の各々におけるラパマイシンの安定性を、外観および粘度の変化について、最初に40℃で1ヶ月間試験した。粘度測定は、ブルックフィールド回転粘度計を使用して実施した。各製剤タイプのパラメータは、ヒドロキシエチルセルロースゲル:(1)RV粘度計、スピンドル#14、12rpm、(2)カルボマーゲル:LV粘度計、ヘリパススタンド、スピンドル#95、3RPM、および(3)クリーム:LV粘度計、ヘリパススタンド、スピンドル#95、0.3rpm、であった。表6および表7に示されるように、pH、粘度、または外観に有意な変化はなかった。
【0096】
また、9つの製剤の各々を、3回の凍結/融解サイクルに供し(-20℃で3日間、続いて室温で4日間)、各サイクル後に外観を評価した。外観の変化は観察されなかった。これらの結果に基づくと、9つのビヒクルすべてが、微粒子化ラパマイシンとの配合に好適であろう。
【表9】
【表10】
【0097】
実施例3:ラパマイシンの配合および安定性試験
以下は、100~300gスケールにおけるラパマイシン製剤の配合ステップの概要である。配合中、少量の試料を顕微鏡で調べることによって、API分散体の均一性を確認した。APIの配合には、ステンレス鋼プロペラブレード(直径1.5インチ)およびIKA Eurostar 200オーバーヘッドミキサーを用いて、低剪断混合を実施した。高剪断混合は、GLHホモジナイザーを用いて、10mmのステンレス鋼ローターステーターヘッドを使用して実施した。
【0098】
ゲル1:ヒドロキシエチルセルロース(HEC)基剤
ヒドロキシエチルセルロースゲル基剤の形成には、以下の調製ステップが必要である:主容器に、水(すすぎ用に5%を確保)、クエン酸(酸および塩)、EDTA、グリセリン(使用する場合)、ポリソルベート80、およびベンジルアルコールを添加すること、オーバーヘッドミキサーでプロペラブレードを用いて均質になるまで混合すること、APIを添加すること、固体が分散するまで混合すること(約10~20分間)、10mmローター/ステーターホモジナイザーを使用して高剪断混合を開始し、少なくとも20分間均質化を継続し、均質化後にプロペラ混合に戻すこと、別個のスラリー容器に、溶媒(ジメチルイソソルビド、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、またはプロピレングリコール)、BHA、フェノキシエタノール(使用する場合)、およびHECを組み合わせ、ポリマースラリーが均一かつ滑らかになるまで混合すること、主容器に、スラリー容器の内容物を、プロペラブレードで混合しながら添加し、スラリー容器の残留内容物を、確保していた水ですすいで主容器に入れること、HECが水和する間、ゲルを動かし続けるために混合速度を上げること、ならびに製剤を少なくとも60分間混合して、必要に応じて、ステンレス鋼のスパチュラを使用して側面をこすり落とし、HECを水和させること。
【0099】
ゲル2:カルボマー980基剤
カルボマー980ゲル基剤の形成には、以下の調製ステップが必要である:主容器に、水(すすぎ用に5%を確保)、EDTA、グリセリン(使用する場合)、ポリソルベート80、およびベンジルアルコールを添加すること、オーバーヘッドミキサーでプロペラブレードを用いて均質になるまで混合すること、APIを添加すること、固体が分散するまで混合すること(約10~20分間)、10mmローター/ステーターホモジナイザーを使用して高剪断混合を開始し、少なくとも20分間均質化を継続し、均質化後にプロペラ混合に戻すこと、別個の溶媒容器に、溶媒(ジメチルイソソルビド、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、またはプロピレングリコール)、BHA、およびフェノキシエタノール(使用する場合)を組み合わせ、溶媒相が均一になるまで混合すること、主容器に、溶媒容器の内容物を、プロペラブレードで混合しながら添加し、溶媒容器の残留物を、確保していた水ですすいで主容器に入れ、製剤を少なくとも10分間混合すること、カルボマー980の粉末を主容器にゆっくり添加し、添加が終わってから少なくとも45分間混合すること、ならびに水酸化ナトリウム溶液を添加し、ゲルが硬くなるにつれてプロペラ速度を上げ、必要に応じて、ステンレス鋼のスパチュラを使用して側面をこすり落とし、ゲルのpHを5.5~6.0にすべきこと、必要に応じて、pHを調整し、さらに混合すること。
【0100】
クリーム基剤のビヒクル
カルボマー980ゲル基剤の形成には、以下の調製ステップが必要である:主容器に、水、EDTA、グリセリン(使用する場合)、クエン酸(酸または塩)、および10%のセテアレス-20を添加すること、オーバーヘッドミキサーでプロペラブレードを用いて均質になるまで混合すること、APIを添加し、固体が分散するまで混合すること(約10~20分間)、10mmローター/ステーターホモジナイザーを使用して高剪断混合を開始し、少なくとも20分間均質化を継続し、均質化後にプロペラ混合に戻し、主容器の内容物を60~65℃に加熱すること、別個の脂質容器に、皮膚軟化剤、セトステアリルアルコール、残りのセテアレス-20、BHA、およびパラベンを組み合わせ、60~65℃に加熱し、脂質容器の内容物が均一になるまで混合して、温度を60~65℃で維持すること、プロペラブレードで混合しながら、脂質容器の内容物を主容器に添加すること、製剤を少なくとも10分間混合し、10mmローター/ステーターホモジナイザーを使用して高剪断混合を開始すること、高剪断混合を継続しながら、主容器を冷却すること、主容器の内容物が45℃に達したら、高剪断混合を停止し、プロペラ混合に戻すこと、ならびに、必要に応じて、ステンレス鋼のスパチュラを使用して側面をこすり落とし、30℃に達するまで混合を継続すること。
【0101】
プロトタイプの活性製剤では、ラパマイシン濃度は、1.0%w/w、または10mg/mlであった。ラパマイシンの方法および予備製剤化作業の経験に基づいて、抽出には以下の慣行を使用した:0.5gの製剤を25mLのフラスコ(0.2mg/mLのラパマイシン)に添加すること、0.05%のクエン酸を含む50%のアセトニトリル(HPLC希釈液)を使用して、希釈液中の溶解性および安定性を確保すること、穏やかな加熱を使用して、クリーム製剤を分散させること。各製剤基剤間の主な違いが溶媒であったため、各製剤基剤(ゲル1、ゲル2、またはクリーム)から1つのビヒクルを選択した。「B」製剤は、Transcutol(登録商標)を含み、3種類の溶媒の中で、ラパマイシンを中間レベルで可溶化したため、抽出の確認のために選択された。ゲル抽出は、以下のステップを使用して試験した:0.5gのゲル1Bまたはゲル2Bのビヒクルをメスフラスコに添加すること、アセトニトリルに5mg/mlのラパマイシンを1mL添加し、バイアルに15mLのHPLC希釈液を添加し、ボルテックスしてゲルを分散/溶解させること、小さな撹拌棒を入れ、15分間混合すること、撹拌棒を除き、フラスコをHPLC希釈液で容量に合わせ、混合すること、および0.45ミクロンのナイロン製注射器フィルターを通してアリコートを分析用の琥珀色HPLCバイアルに濾過すること。
【0102】
クリーム抽出は、以下の手順に従って試験した:0.5gのクリームBのビヒクルをメスフラスコに添加すること、アセトニトリルに5mg/mlのラパマイシンを1ml添加し、バイアルに15mLのHPLC希釈液を添加し、ボルテックスしてクリームを分散させること、フラスコを50℃の水浴に入れ、穏やかに混ぜてクリームを定期的に融解/分散させること、浴槽から取り出し、小さな撹拌棒を入れ、15分間混合すること、撹拌棒を除き、充填ラインのやや下までHPLC希釈液を添加し、フラスコを20分間静置して、温度を平衡化させること、およびフラスコをHPLC希釈液で容量に合わせ、混合し、0.45ミクロンのナイロン製注射器フィルターを通してアリコートを分析用の琥珀色HPLCバイアルに濾過すること。抽出実験を2回実施し、結果を表8に示す。
【表11】
【0103】
すべての回収率の結果は、いずれも99~101%であった。これらの結果に基づいて、抽出方法は、ラパマイシン活性製剤に好適であると考えられた。
【0104】
次の7つの製剤を、1%微粒子化ラパマイシンと配合するために選択した:ゲル1A、ゲル1B、ゲル1C、ゲル2A、ゲル2B、ゲル2C、およびクリームC。ゲル製剤に焦点を当てようと決めたのは、部分的には、クリーム中での凝集による。クリームBは、比較データを提供するために保持された。表9は、7つの製剤の各々を、ラパマイシンと配合し、上に記載の抽出方法を使用して、製剤の上層、中層、および下層の薬物含有量の均一性を試験することから得られた初期結果を示す。
【表12】
【0105】
ゲル製剤の各々は、組成物全体にわたってラパマイシンの均一な分布を示し、それぞれのビヒクルのpHまたは粘度に有意な変化はなかった。対照的に、クリームの含量均一性は不良であった(RSDが9.0%)。クリームCの顕微鏡検査では、製剤中に微細な結晶粒子の大きな凝集体が見られた。プロセスを通して、ラパマイシン粒子の分散体の顕微鏡的品質を確認した。クリームCの場合、ラパマイシンの分散体は、高剪断で混合しているときでさえ、油相を添加した後、凝集した証拠のみを示した。
【0106】
次に、6つの製剤の各々を、25℃または40℃のいずれかで1ヶ月間保管した後、ラパマイシンの安定性について試験した(表10)。ラパマイシンの含量均一性、ビヒクルのpHもしくは粘度、またはゲル製剤のいずれかについてのバルク外観に有意な変化はなかった。セコラパマイシン形成を含む新しい不純物ピークは特定されなかった。
【0107】
クリームCについては含有均一性に著しい変化はなかったが、2つの結果は標的濃度の90~110%の範囲外であった。これは、微粒子化ラパマイシン粒子の凝集に起因して、低い含量均一性を有する製剤の特徴である。ラパマイシンの結晶成長の証拠は、クリームCでも観察された。
【表13】
【0108】
次に、5℃、25℃、または40℃で1ヶ月間保管した後の各々のゲル製剤の顕微鏡検査により、ラパマイシンの結晶成長を評価した。表11に示すように、ゲル1Aおよび1Bは、より高い温度での結晶成長の証拠を示した。
【表14】
【0109】
25~100ミクロン(長さ)の範囲のラパマイシンの結晶成長の証拠は、直方体状の結晶および分野内の微粒子の枯渇として観察された。凍結融解サイクルにさらされたものを含めて、確保していたビヒクル製剤でも結晶は観察されなかった。ビヒクルの試料中には結晶が見られなかったことから、これは賦形剤の問題(すなわち、賦形剤の沈殿)ではないように思われた。ゲル1Bは、結晶形成の量が最も多く、さらなる分析から排除された。
【0110】
残りの5つの製剤を、25℃または40℃で3ヶ月間保管した後のラパマイシンの安定性(表12)について、ならびに5℃、25℃および40℃で3ヶ月間保管した後の結晶成長についてさらに試験した(表13)。いずれの製剤も、5℃では結晶成長を示さなかったが、25℃または40℃で3ヶ月間保管した後では、ゲル1Cのみが、結晶成長を示さなかった製剤であった。
【表15】
【表16】
【0111】
ゲル1Cのラパマイシンバッチの実証
異なる濃度の微粒子化ラパマイシン(0.1%、1.0%、および2.0%w/w)のバッチを、ゲル1C(PG/HEC)中で調製した。これらの開発バッチは、プロトタイプバッチについて上述した処理に基づいて、2.0kgスケールで製造された。バッチ混合は、Lightnin’ Mixerおよびultra Turrexホモジナイザーを用いて実施した。実証バッチは、クエン酸ナトリウム/クエン酸を使用して調製され、酸性pHをpH3~5の範囲に維持し、抗酸化剤としてのBHAが含まれた。ベンジルアルコールに含まれる他の賦形剤には、防腐剤としてPS80、EDTAが含まれた。開発バッチからのバルク薬物製品を、次の3つのチューブタイプに充填した:1)ラミネートブラインドエンドチューブ(laminate blind end tube)(品番7347)、ラミネートネイザルチップチューブ(laminate nasal tip tube)(品番7336)、およびエポキシコーティングされたアルミニウムブラインドエンドチューブ(epoxy-coated aluminum blind end tube)(品番7343)。0.1%、1.0%、および2.0%のラパマイシンの3つの実証バッチについての完成品の分析試験は、バッチの各々が、異粒子を含まない白色からオフホワイトのゲルとしての物理的外観、API(ラパマイシン)の量、5mgの試料あたり50ミクロン超の粒子数としてアッセイされたAPI粒子サイズ、pH、粘度、ならびにベンジルアルコールおよびBHAの量に関して、満足のいくものであることを示した。
【0112】
3つのラパマイシン濃度のためのラミネートブラインドエンドチューブおよびエポキシコーティングされたアルミニウムチューブを、5℃、25℃および40℃での安定性についてモニタリングした。表14に、ラミネートブラインドエンドチューブ中の3つの濃度のラパマイシンの1ヶ月間の分析を要約する。表15に、3つの異なるラパマイシン濃度の製剤についての6ヶ月間のデータの安定性の結果を提供する。
【表17】
【表18】
【0113】
実施例4.ゲル製剤の耐容性および皮膚浸透性
5日間の皮膚耐容性試験
ミニブタ(minipig)は、皮膚薬の試験に適しているため、モデルシステムとして選択した。5日間の試験を実施して、ゲル製剤1C(「ゲル1C」)の皮膚に対する1日1回の局所塗布の最大耐容用量(MTD)を評価した。治療は、ビヒクルのみ(0%のラパマイシン)、ならびに0.3%、1%、および2%のラパマイシンであった。
【0114】
試験ゲルの最初の塗布の前日に、各動物の体幹の背面および側面から毛を刈った。必要に応じて、さらなる剪毛を行った。皮膚の機械的応力による干渉を最小限に抑えるために、剪毛と塗布との間の時間を最大にするように心がけた。大腿背部の未処理の皮膚を対照として使用した。2匹の雄のゲッチンゲンSPFミニブタは、3×3cm(9cm)の8つの領域が、背中にマークされた。表16に示されるように、1日1回(24時間毎)、動物1匹あたり2つの指定された領域(反復)の各々に、5日間、試験ゲルを適用した。指定された領域に試験ゲルを均一に広げ、皮膚へ穏やかにマッサージした。適用部位は、翌朝、次の適用の前に、ゲルが目に見えて残っていたときだけ、すすいだ。これらの場合、ぬるま湯で湿らせたガーゼまたはペーパータオルですすいだ。8つの適用部位は、カバーせずそのままにした。温度は、21℃+/-3℃に維持した。部屋を、06:00時から18:00時まで照明して、12時間の明暗サイクルを得た。動物は、1日2回給餌され、水は自由に摂取できた。
【表19】
【0115】
死亡率、臨床兆候、皮膚反応、体重、および食物摂取量をモニタリングした。投与量(ml/kg体重)は、皮膚表面積の10%の試験領域あたり0.75mL/kgであり、19.5mg/cmに相当した(1mlの試験物品は、1gに相当する)。皮膚刺激性は、2015年7月28日に採択されたOECD化学物質試験ガイドラインNo.404:「急性皮膚刺激/腐食性」に従ってスコアリングした。以下は、紅斑および痂皮の形成を評価するために使用されるスコアリングレベルである。
【表20】
【0116】
その他の皮膚反応(例えば、落屑、裂開、かさぶた、剥離、壊死)を記録し、以下のように内部SOP手順に従って関連する領域をスコアリングした。
【表21】
【0117】
この試験の過程で死亡した動物または犠牲になった動物はなく、試験期間を全体通して臨床徴候は観察されなかった。皮膚反応は観察されなかった。ゲル1C適用期間中に1匹の動物が体重減少した(3%)ことを除いて、摂食量に明らかな影響はなかったが、これは、その変化が10%未満であり、食物摂取における関連する減少または異常な臨床徴候が観察されなかったことから、偶発的で、毒性学的に関連していないと考えられた。5日間の研究の結論は、ミニブタに対して、1日1回、0(ビヒクル)、0.3、1、および2%のラパマイシンゲル1C製剤を皮膚に適用した後、臨床所見、ラパマイシンに関連する皮膚反応、または体重もしくは食物摂取に対して明らかな影響は観察されず、すべての3つの濃度のラパマイシンゲル1C製剤ならびにビヒクルゲル製剤自体は、十分に耐容性であることが実証された。
【0118】
4つのラパマイシン製剤の皮膚浸透性
ミニブタにおける単回皮膚用量のADME(吸収、分布、代謝、および排泄)研究は、Vanicream(商標)基剤中の4つの局所ラパマイシン製剤および1%ラパマイシン製剤を使用して実施した。5匹の雄のゲッチンゲンミニブタを研究に使用し、製品試験に関してFDAが要求する検証済皮膚ADME試験のための標準化された条件の下で維持した。研究で試験した4つの局所製剤は、製剤1ゲル1C(PG/HEC)、製剤2ゲル2A(DMI/PAA)、製剤3ゲル2B(TC/PAA)、および製剤4ゲル2C(PG/PAA)と命名された。研究では、すべての試験ラパマイシン製剤は、白色からオフホワイト色の硬質ゲルとして特徴付けられた。Vanicream基剤中のラパマイシン製剤は、1%のラパマイシンを含んだ。Vanicream基剤製剤は、白色のクリームとして特徴付けられた。すべてのラパマイシン製剤は、5℃で保管された。表17に、ADME研究の実験設計を示す。
【表22】
【0119】
ラパマイシン製剤を、12時間+/-30分毎に1日2回、皮膚に均一な層で直接適用することによって皮膚に投与した。すべての動物は無傷の皮膚を有していた。第1の適用の前に、小動物クリッパーで毛を短く刈るによって、背側表面を整えた。皮膚を傷つけないように注意した。各部位は約5cm×5cmであり、脊椎の両側のほぼ同じ場所に位置した。(11時間38分~11時間51分の曝露後)残った試験材料は、逆浸透(RO)水に浸したガーゼで部位を穏やかに拭き取り、続いて乾燥したガーゼで拭き取った。予定された安楽死の前に、試験部位を同じ方法ですすいだ。投与初日を1日目とした。
【0120】
死亡率/罹患率のチェックは、1日2回実施した。ケージぎわの観察は、1週目の間、1日1回実施し、1日目の観察は、1日目の適用後1~3時間に実施した。無作為化の日に、詳細な臨床観察を実施した。無作為化の日および1日目に、個々の体重を記録した。動物は、2日目にペントバルビタールナトリウム注射によって安楽死させた(ラパマイシンゲル製剤の適用後12時間+/-30分)。安楽死の後、各動物から4つのスキンパンチ生検(各部位からの完全な厚さの皮膚の2つの8mm生検試料)を採取した。各生検試料を秤量し、液体窒素中で凍結した。生検を皮膚層(例えば、表皮、真皮など)に分離し、ラパマイシン濃度を分析した。分析には、超高性能液体クロマトグラフィーと共に、正電子イオン化(ES1+)モードのApplied Biosystems/MDS Sciex API 5500 UHPLC-MS/MSシステムと連結されたShimadzu Nexera(登録商標)UHPLCを備えたタンデム質量分析(UHPLC-MS/MS)法を使用した。本方法を、0.2mLの抽出試料を使用して、1~5000ng/mL(4~20,000ng/gの皮膚組織)の濃度範囲にわたって較正した。ラパマイシンおよび内部標準物質(IS、アスコマイシン)を、1:1(v:v)のDMSO:ACNを用いたタンパク質沈殿および抽出によって、ブタの皮膚から抽出した。ACNは、アセトニトリルを指す。回帰分析を含む統計分析、ならびに算術平均および標準偏差を含む記述統計量は、Watson Laboratory Information Management System(LIMS)およびMicrosoft Excelを使用して行った。
【0121】
組織を分離するために、凍結した生検試料を室温で解凍した。皮下脂肪組織および/または筋肉は、存在する場合、除去した。角質層は、Blenderm(商標)を使用して最大20回テープ剥離することによって、パンチ生検から除去した。テープは、皮膚にこすり付けることによって適用し、すぐに剥がした。これは、表皮層を除去しないように注意して行われた。角質層を除去するために使用したすべてのテープは、個別の、固有にラベル付けされたクライオバイアルに維持され、-70℃を維持するように設定された冷凍庫に保管した。次に、メスおよびピンセットを使用して生検試料を削って、真皮から表皮層を除去した。表皮層を採取し、個別の、固有にラベル付けされたクライオバイアルに配置し、秤量し、-70℃を維持するように設定された冷凍庫に保管した。残りの真皮層を秤量し、個別の、固有にラベル付けされたクライオバイアルに配置し、-70℃を維持するように設定された冷凍庫に保管した。切片化される組織の各層には、別個のピンセットおよびメスを使用した。各生検試料を処理する間に、ピンセットをアルコールで洗浄した。各生検試料の3つの分離された層を、それぞれ個別の、固有にラベル付けされたクライオバイアルに入れ、分析のために生体分析研究所に出荷した。
【0122】
結果
本研究では、臨床徴候または早期死亡は認められなかった。無傷の全厚生検パンチ、ならびに全厚生検パンチの分離された皮膚層(角質層、表皮層、および真皮層)におけるラパマイシンの濃度を測定した。ラパマイシンの濃度および全生検試料の重量の概要を、それぞれ表18および表19に示す。テープストリップは、角質層におけるラパマイシンの濃度を決定するために使用される重量の大部分を占めるため、この濃度は、この皮膚のバリア層におけるラパマイシンの実際の濃度を正確に反映するものではない。したがって、この結果は、この研究において評価された他の組織層から得られたものと同等にみなされるべきではない。
【表23】
【表24】
【0123】
すべての試験製剤は、表皮層および真皮層の両方において、測定可能な濃度のラパマイシンをもたらした。4つすべてのラパマイシン試験製剤(ゲル1C、2A~C)は、皮膚の全層および全厚生検に、Vanicream(商標)中の1%ラパマイシン対照よりも有意に高い濃度のラパマイシンを送達した。製剤2(ゲル2A)は、Vanicream(商標)中の1%のラパマイシン対照と比較して、約10倍量の最高量のラパマイシンを真皮層に送達した。製剤1(ゲルIC)は、最高量のラパマイシンを表皮に送達し、製剤2(ゲル2A)と比較して、約2倍量を送達し、Vanicream(商標)中の1%ラパマイシン対照と比較して、約100倍量を送達した。製剤3(ゲル2B)および製剤4(ゲル2C)は、それぞれ、ほぼ等量のラパマイシンを真皮層および表皮層に送達した。重要なことに、製剤3および製剤4は、Vanicream(商標)中の1%ラパマイシン対照よりも、約10倍量のラパマイシンを真皮に送達し、Vanicream(商標)対照よりも、約20倍量のラパマイシンを表皮に送達した。真皮は、顔面血管線維腫の治療において、ラパマイシンの重要な活性部位である。これらの結果に基づいて、製剤を、真皮で測定されたラパマイシンの量でランク付けすると(最高から最低への順序)、ゲル2A>ゲル2C>ゲル2B>ゲル1Cとなる。
【0124】
本発明の様々な実施形態は、上記の詳細な説明および実施例に記載されている。これらの説明は、上記の実施形態を直接開示しているが、当業者は、本明細書に示され、説明される特定の実施形態の修正および変形を構想し得ることを理解されたい。開示された説明および実施例に含まれる任意のかかる修正および変形もまた、その中に含まれることが意図される。別段の定めのない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される単語および語句は、それらの通常の明白な意味を当業者に与えることが理解される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
【国際調査報告】