(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-05
(54)【発明の名称】ペットフード組成物及びその調製プロセス
(51)【国際特許分類】
A23K 20/163 20160101AFI20220329BHJP
A23K 50/40 20160101ALI20220329BHJP
【FI】
A23K20/163
A23K50/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021548700
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(85)【翻訳文提出日】2021-09-08
(86)【国際出願番号】 IB2020051403
(87)【国際公開番号】W WO2020170174
(87)【国際公開日】2020-08-27
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス, イザベル
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス, パウロ
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005AA06
2B150AA06
2B150AB04
2B150AE41
2B150DD48
2B150DD57
(57)【要約】
本発明は、嗜好性が向上した天然のゲル化剤として紅藻を含む、ペットフード組成物の製造方法に関する。本発明の組成物は、カラギーナン、アルギネート、アガー、ジェランガムなどの一般的に用いられる化学的に処理されたゲル化剤を含まないものとすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的に破砕された紅藻と、ヒドロコロイド増粘剤とを、水に混合することを含む、ペットフードのためのヒドロコロイド系の製造方法。
【請求項2】
カリウム源を添加してグレイビーを製造することを更に含み、前記グレイビーが、0.2~2重量%の機械的に破砕された紅藻を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記グレイビーが、0.3~0.6重量%の機械的に破砕された紅藻を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記グレイビーが、0.1~2重量%、好ましくは約0.17重量%の前記カリウム源を含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記グレイビーのpHを調整することと、任意選択で、ゲルが形成されるまで冷却することと、剪断して、剪断されたゲルグレイビーを製造することと、を更に含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記カリウム源が、塩化カリウムである、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ヒドロコロイド増粘剤の濃度が、前記グレイビー中、0.05~5重量%であり、好ましくは前記グレイビー中、約1重量%である、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記グレイビーのpHを7~9の間に調整する、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記グレイビーの粘度が、2000MPa.s超、好ましくは2000~6000MPa.sの間である、請求項2~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
食品チャンクを添加することと、加熱処理してペットフード組成物を形成することと、を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ペットフード組成物が、チャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記食品チャンクが、肉、グルテン、植物性素材、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記加熱処理が、80℃超の温度で少なくとも1分間、好ましくは少なくとも120℃で30~60分間である、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記紅藻が、ユーケウマ・コットニー(Eucheuma Cottonii)、ユーケウマ・スピノサム(Eucheuma Spinosum)、及びコンドルス・クリスプス(Chondrus Crispus)から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ヒドロコロイド増粘剤が、キサンタンガム及びローカストビーンガムから選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ヒドロコロイド系が、ジェランガム、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギネート、アガー、ペクチン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるゲル化剤を含まない、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
機械的に破砕された紅藻と、ヒドロコロイド増粘剤と、を含む、ヒドロコロイド系。
【請求項18】
前記紅藻が、ユーケウマ・コットニー(Eucheuma Cottonii)、ユーケウマ・スピノサム(Eucheuma Spinosum)、及びコンドルス・クリスプス(Chondrus Crispus)から選択される、請求項17に記載のヒドロコロイド系。
【請求項19】
前記ヒドロコロイド増粘剤が、キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、カシアガム、微結晶セルロースから選択され、好ましくはキサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガムから選択される、請求項17又は18に記載のヒドロコロイド系。
【請求項20】
前記ヒドロコロイド系が、ジェランガム、カッパカラギーナン、ラムダカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギネート、アガー、及び/又はペクチンから選択されるゲル化剤を含まない、請求項17~19のいずれか一項に記載のヒドロコロイド系。
【請求項21】
前記紅藻が、0.05重量%~5重量%の量で存在する、請求項17~20のいずれか一項に記載のヒドロコロイド系。
【請求項22】
前記ヒドロコロイド増粘剤が、0.05重量%~2重量%の量で存在する、請求項17~21のいずれか一項に記載のヒドロコロイド系。
【請求項23】
請求項17~22のいずれか一項に記載のヒドロコロイド系を含む、ペットフード組成物。
【請求項24】
前記ペットフード組成物が、チャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物である、請求項23に記載のペットフード組成物。
【請求項25】
前記組成物が、0.1~1重量%の、機械的に破砕された紅藻、カリウム源、ヒドロコロイド増粘剤、食品チャンクを含み、前記組成物のpHが7以上である、請求項23又は24に記載のペットフード組成物。
【請求項26】
前記組成物が、0.15~0.3重量%の紅藻を含む、請求項23~25のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項27】
前記組成物のpHが7~9の間である、請求項23~26のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項28】
前記カリウム源が、塩化カリウムである、請求項23~27のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項29】
前記塩化カリウムが、0.05~1重量%、好ましくは約0.085重量%で存在する、請求項23~28のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項30】
前記ペットフード組成物が、ジェランガム、カッパカラギーナン、ラムダカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギネート、アガー、及び/又はペクチンから選択されるゲル化剤を含まない、請求項23~29のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項31】
ヒドロコロイド増粘剤の濃度が、前記組成物中、0.025~2.5重量%であり、好ましくは約0.5重量%である、請求項23~30のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項32】
前記食品チャンクが、肉、グルテン、又は任意の他の植物性タンパク質源、及びこれらの組み合わせである、請求項23~31のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[背景技術]
ヒドロコロイド系を用いる市販のペットフード組成物、例えば、チャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物の多くでは、ゼリーのテクスチャを加工性及び嗜好性の両方に関して望ましいものにするために、カッパカラギーナン、アルギネート、アガー、又はジェランガムなどの、ゲル化するヒドロコロイドを単独で又は組み合わせて用いている。
【0002】
しかしながら、消費者は、望ましくない添加物の使用に関してますます懸念を抱くようになっている。したがって、これらのヒドロコロイド系に代替し、製品の外観、テクスチャ、及び嗜好性に関して同様の又は向上した品質をもたらす、天然成分を開発する必要がある。
【0003】
現在、製品の品質に悪影響を及ぼすことなく、ヒドロコロイドの量を低減するための解決策はない。欠点としては、缶内でのチャンクの沈降、並びに缶が充填されたときのグレイビー及びチャンクの量のばらつき(inconsistencies)が挙げられる。
【0004】
現在、ごく一般的には、ペットは生涯を通して同じ製品を摂取する。したがって、このような食品は、栄養を充足するものである必要があり、また消化についての問題を生じさせないものである必要がある。
【0005】
ペットフードに含まれる大量のヒドロコロイドは、消化に有害な影響(例えば、低糞便スコア)を及ぼすことが知られている。
【0006】
更に、従来のペットフード加工では、概して、グレイビーの粘度を充填のために特定の値を上回るものとすることを要しない2ステップでの缶充填を用いている。工業的に2ステップでの充填プロセスを用いることには、各缶内のグレイビー及び食品チャンクの量にばらつきが生じ得るという欠点がある。
【0007】
ヒドロコロイドの量を低減したペットフード製品の配合を可能とする、技術的解決策の開発が明らかに必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態による、紅藻を含むさまざまなチャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物を、参照として用いたカッパカラギーナンゼリーのレシピによるものと併せて示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
定義
本開示及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「1つの」、すなわち「a」、「an」及び「the」には、別段の指示がない限り、複数の参照物も含まれる。したがって、例えば、「ヒドロコロイド増粘剤(a hydrocolloid thickener)」又は「ヒドロコロイド増粘剤(the hydrocolloid thickener)」についての言及は、2つ以上のヒドロコロイド増粘剤を包含する。「X及び/又はY」という文脈で使用される用語「及び/又は」は、「X」若しくは「Y」又は「X及びY」と解釈すべきである。本明細書で使用する場合、「例」及び「例えば」という用語は、特に用語の列挙が続くときには、単に例示的及び図示的に用いられるものであり、排他的又は包括的なものでない。
【0010】
本明細書で使用する「約」は、数値範囲内の数を指すものと理解され、例えば、参照する数字の-10%から+10%の範囲、-5%から+5%の範囲内、又は一態様では参照する数字の-1%から+1%の範囲内、具体的態様では参照する数字の-0.1%から+0.1%の範囲内の数を指す。更に、本明細書における全ての数値範囲は、その範囲内の全ての整数(integers)、整数(whole)又は分数を含むものと理解されたい。更に、これらの数値範囲は、この範囲内の任意の数又は数の部分集合を対象とする請求項をサポートすると解釈されたい。例えば、1~10という開示は、1~8、3~7、1~9、3.6~4.6、3.5~9.9などの範囲をサポートするものと解釈されたい。
【0011】
本明細書で表される全ての百分率は、本明細書に明記されているように、グレイビー、剪断されたゲルグレイビー、ペットフード組成物、又はチャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物における総重量%を指す。最終組成物は、特に明記しない限り、水を含む。実施例におけるレシピは、どの程度の重量%であるのかについて当業者が理解するための例を示す。pHについての参照がなされる場合には、値は標準的な装置により25℃にて測定されるpHに相当する。「量」は、参照された成分の、組成物1回分当たりの総量若しくは組成物の別個の単位当たりの総量であってよく、及び/又は参照された成分の、乾燥重量による重量%であり得る。更に、「量」は、ゼロを含み;例えば、化合物の量の記述は、ゼロを除外する範囲を伴わない限り、化合物が存在することを必ずしも意味しない。
【0012】
用語「食品」、「食品製品」、及び「食品組成物」とは、動物による摂取を意図し、その動物に少なくとも1種の栄養素を提供する、製品又は組成物を意味する。更に、この点において、これらの用語は、当該製品又は組成物が、摂取の準備が整った形態であること、及びそれを元に摂取可能な製品又は組成物が作られる単なる中間製品ではないこと、を意味しているものの、いくつかの実施形態では、他の食品組成物を加えることができる。用語「ペットフード」又は「ペットフード組成物」とは、ペットによる摂取が意図される任意の食品組成物を意味する。用語「ペット」とは、本開示により提供される組成物から恩恵を得られる、又はかかる組成物を堪能することのできる、任意の動物を意味する。例えば、ペットは、鳥類、ウシ科動物、イヌ科動物、ウマ科動物、ネコ科動物、ヤギ、オオカミ科動物、ネズミ、ヒツジ又はブタといった動物であってもよいが、ペットは任意の好適な動物であり得る。したがって、用語「キャットフード組成物」とは、ネコによる摂取が意図される任意の食品組成物を意味する。
【0013】
用語「完全かつバランスのとれた」は、食品組成物について言及する際、動物栄養学の分野で認められた権威の推奨に基づき、既知の必要な栄養素の全てを、適切な量及び割合で含有しており、したがって、栄養補給源を追加せずとも、生命を維持し、又は生産を促進する食餌の唯一の供給源としての役割を果たすことができるという意味である。例えば、米国飼料検査官協会(AAFCO)によって規定された基準に従って配合された完全かつバランスのとれた食品組成物などの、栄養バランスのとれたペットフード及び動物用食餌組成物は、当技術分野において広く知られており、広く使用されている。
【0014】
用語「コンパニオンアニマル」とは、イヌ又はネコを意味する。
【0015】
「ウェットフード」とは、含水率が約50%~約90%、一態様では約70%~約90%であるペットフードを意味する。「ドライフード」とは、含水率が約20%未満、一態様では約15%未満、特定の態様では約10%未満であるペットフードを意味する。「セミモイストフード」とは、含水率が約20%~約50%、一態様では約25%~約35%のペットフードを意味する。
【0016】
「グレイビー」は、熱処理後の冷却時にゼリーになる、粘稠な液体を指す。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「チャンク・イン・ゼリー」は、食品チャンクから構成されており、おおよその比を25/75~約60/40としてゼリーと混合された、食品製品を指す。本明細書で使用するとき、ヒドロコロイド系は、グレイビー、ゼリー、及び他の半固体組成物を指す。
【0018】
本明細書で使用するとき、用語「半固体」は、物理的特性が液体のそれと固体のそれとの間にある材料を指す。
【0019】
本明細書で使用するとき、用語「チャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物」は、食品チャンクから構成されており、おおよその比を25/75~約60/40としてゼリーと混合された、キャットフード製品を指す。
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「機械的に破砕された海藻」は、典型的には、すりつぶされた海藻、粉砕された海藻、切断された海藻を指す。好ましくは、すりつぶし、粉砕し、又は切断した後のそれぞれの海藻片の最大平均径(the maximum average longest diameter)は、150μm~3mmの間である。いずれも化学的に変性された、例えばアルカリ処理された、カラギーナン及び/又は半精製カラギーナンとは対照的に、海藻は水洗されている。機械的に破砕された海藻は、化学的に変性されたものではない。
【0021】
用語「カリウム源」は、カリウムイオンを含有する任意の化合物を指す。一実施形態では、カリウム源は、塩化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語「容器」は、缶、パウチ、又はトレーを指すことがある。
【0023】
用語「植物性タンパク質源」は、当該技術分野において既知の植物由来のタンパク質を指す。一実施形態では、植物性タンパク質源は、小麦グルテン、エンドウ豆タンパク質、卵タンパク質、大豆タンパク質、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0024】
本明細書では、食品チャンクとして用いられる肉及び肉副産物は、屠殺された温血動物の、新鮮な状態の又は適切な処理によって保存されたあらゆる肉質部分、及び温血動物の体又は体の部分の加工から生じたあらゆる製品及び副産物であることを意味すると理解される。肉は特に、鶏、ウサギ、ウシ、又は羊からの肉、及び臓物を意味すると理解される。臓物は、肺葉、及び肝臓又は腎臓を意味すると理解される。肉副産物は、上述の動物の枝肉から得られたミール/粉を意味すると理解される。本明細書では、魚及び魚副産物は、肉及び肉副産物の定義に含まれると見なされる。魚及び魚副産物は、新鮮な状態の、又は適切な処理によって保存された、魚又は魚の部分、及びそれらの加工の副産物を意味すると理解される。サケ又はイワシは、魚として用いることができ、魚粉は、副産物として用いることができる。
【0025】
本明細書で説明される実施形態は、製品と方法とで互換的に用いることができる。例えば、ヒドロコロイド系の製造方法、又はチャンク・イン・ゼリー配合物の製造方法などの方法の文脈で説明されるヒドロコロイド増粘剤はまた、製品、例えば、グレイビー系、チャンク・イン・ゼリー系、又はヒドロコロイド系の文脈においても用いることができる。
【0026】
本明細書で開示される組成物には、本明細書にて具体的に開示されない任意の要素が存在しない場合がある。したがって、「含む/備える(comprising)」という用語を用いた実施形態の開示は、特定されている構成成分「から本質的になる(consisting essentially of)」実施形態、及び「からなる(consisting of)」実施形態の開示を含む。同様にして、本明細書で開示される方法には、本明細書において具体的に開示されない任意の工程が存在しない場合がある。したがって、「を含む」という用語を用いた実施形態の開示は、特定されている工程「から本質的になる」実施形態、及び「からなる」実施形態の開示を含む。別途記載のない限り及び直接的に明言のない限り、本明細書に開示される任意の実施形態を、任意の他の実施形態と組み合わせることもできる。
【0027】
別途記載のない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語、並びにいかなる略語も、本発明の属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同様の意味を有する。本明細書に記載のものに類似又は等価の任意の組成物、方法、製品、又はその他の手法若しくは材料を本発明の実施に使用できるが、好ましい組成物、方法、製品、又はその他の手法若しくは材料が本明細書に記載される。
【0028】
本明細書において引用又は参照される全ての特許、特許出願、刊行物、及びその他の参考文献は、参照により、法によって許容される範囲で本明細書に援用される。これらの参照についての論考は、該参照においてなされる主張を要約することを意図するにすぎない。このような特許、特許出願、刊行物、若しくは参考文献、又はこれらの任意の部分が、本発明の関連する先行技術についてのものであるとの了解はなされず、かつこのような特許、特許出願、刊行物、及びその他の参考文献の正確性及び適切性について異議申し立てをする権利は明確に保有される。
【0029】
実施形態
本発明において、本発明者らは、1ステップでの充填及びヒドロコロイドの減量を可能にする、天然のゲル化系の使用を発見した。更に、本発明のヒドロコロイド系には、カラギーナン、アルギネート、アガー、ジェランガムなどの、一般的に用いられる化学的に処理されたゲル化剤が含まれなくてもよい。本発明において、要となる条件(pH、温度、及びカチオン量)を調節することによって、ヒドロコロイド系を用いるペットフードの製造プロセス中に天然の紅藻のゲル化を生じさせることができる。紅藻由来の不溶性繊維画分は、概して最終製品のゼリーに残る。この不溶性繊維のゲル強度への寄与は、従来の可溶性カラギーナンと比較して少ないものの、最終的なゼリーは優れたテクスチャを有し、それにより、最終製品は、向上した品質、外観、及び嗜好性を有する。
【0030】
ペットフードの製造プロセス中、紅藻を含有するグレイビーを食品チャンクと混合することができる。この段階では、粘度は、概して特定の値(2000mPa.s、20℃、20rpm、ブルックフィールドRVT)よりも高く、好ましくは2000~6000mPa.sの範囲内であり、これにより塊を懸濁させることができ(沈降は生じない)、缶に、適正な量の食品チャンクを確実に充填することができる。目標とする粘度、最適な缶充填、及び製品の品質は全て、本発明で達成することができる。
【0031】
この技術によりまた、チャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物などのペットフード組成物における、加工されたカッパカラギーナン(粉砕、熱アルカリ抽出、アルコール沈殿、乾燥、任意選択の漂白及び粉砕)の使用を回避するという利点ももたらされる。機械的に破砕された紅藻(好ましくは5mmの最大平均粒子長を有する)は、加工条件を調整することによって代わりに用いることができる。最終製品は、外観及び嗜好性の点で、従来のヒドロコロイド系と同様の特性を有する。
【0032】
更に、紅藻由来の剪断されたゲルグレイビーは、ゲル化させながら海藻溶液に流動場を適用することによってうまく形成することができる。結果として、元の静止状態のゲル(quiescent gel)とは大きく異なるレオロジー特性を有する微細ゲル化粒子の懸濁液を形成することができる。剪断されたゲルグレイビーは、「弱い」ゲルと「強い」ゲルとの間の流動挙動を示し、明確に特定された降伏応力及び予定どおりに一定のままである粘度を有する。本明細書において、チャンク・イン・ゼリーなどのペットフード組成物の製造プロセスにおいて、海藻由来の剪断されたゲルグレイビーを形成することができることが初めて示された。これにより、ヒドロコロイド(キサンタン、ローカストビーンガム)の総量(the total number)を有意に低減させると共に、最適な粘度及びゲル強度の値を維持することが可能になる。ヒドロコロイドの量のこの低減により、ネコの糞便の粘稠性を改善させることができる。
【0033】
チャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物などのペットフード組成物の製造に、海藻を含む剪断されたゲルグレイビーを使用することの別の利点には、時間が経過しても粘度がほとんど低下しないことから工業生産のフレキシビリティをより高めることができるというものがある。
【0034】
したがって、本発明は、概して、例えばチャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物などのペットフードに用いるヒドロコロイド系のための天然のゲル化剤として、紅藻を使用する方法に関し、前記ゲル化剤の嗜好性は、従来の非天然のヒドロコロイド系などのヒドロコロイド系の嗜好性と同等であり得る又はそれを凌ぎ得る。更に、このような使用により、ペットフード用途において、用いられるヒドロコロイドが少なくなるという更なる効果をもたらすことができる。例えば、プロセス中の追加の冷却及び剪断ステップにより、ヒドロコロイドの総量を5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、又は更には60%も低減させることができる。
【0035】
具体的には、本発明は、機械的に破砕された海藻と、他の成分とを水に混合して、ヒドロコロイド系を形成することを含む、ヒドロコロイド系の製造方法に関する。更に、本発明は、機械的に破砕された海藻と、他の成分とを水に混合してグレイビーを製造することと、食品チャンクを添加してペットフード組成物を製造することと、を含む、チャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物などの、グレイビー、ペットフード組成物の製造方法に関する。
【0036】
一実施形態では、ペットフード組成物、例えば、チャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物の製造プロセスは、機械的に破砕された紅藻と、カリウム源と、ヒドロコロイド増粘剤とを水に混合してグレイビーを製造することと、グレイビーのpHを調整することと、任意選択で、ゲルが形成されるまで冷却することと、剪断して、剪断されたゲルグレイビーを製造することと、食品チャンクを添加することと、熱処理することと、冷却してチャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物を製造することと、を含んでもよい。
【0037】
具体的には、本発明は、チャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物の製造方法であって、
機械的に破砕された紅藻と、カリウム源と、ヒドロコロイド増粘剤とを水に混合してグレイビーを製造することであって、グレイビーが、0.2~2重量%の機械的に破砕された紅藻を含む、グレイビーを製造することと、
pHを7以上に調整することと、
任意選択で、ゲルが形成されるまで冷却することと、
剪断して、剪断されたゲルグレイビーを製造することと、
食品チャンクを添加することと、
剪断されたゲルグレイビー及び食品チャンクで容器を充填することと、
容器を少なくとも75℃まで加熱処理することと、
冷却してチャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物を製造することと、
を含む、製造プロセスに関する。
【0038】
一実施形態では、グレイビーは、0.3~0.6重量%の機械的に破砕された紅藻を含んでもよい。グレイビーが含む機械的に破砕された紅藻が0.2重量%未満である場合、ゲルが形成される可能性は低い。
【0039】
一実施形態では、紅藻は、ユーケウマ・コットニー(Eucheuma cottonii)、ユーケウマ・スピノサム(Eucheuma Spinosum)、コンドルス・クリスプス(Chondrus Crispus)、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0040】
一実施形態では、紅藻はユーケウマ・コットニー(Eucheuma Cottonii)及びコンドルス・クリスプス(Chondrus Crispus)から選択される。
【0041】
一実施形態では、カリウム源は、塩化カリウムである。
【0042】
一実施形態では、グレイビーは、0.1~2重量%、好ましくは約0.17重量%の塩化カリウムを含む。
【0043】
一実施形態では、ヒドロコロイド増粘剤は、キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、カシアガム、微結晶セルロースからなる群から選択され、好ましくはキサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、及びこれらの混合物から選択される。
【0044】
一実施形態では、ヒドロコロイド増粘剤は、キサンタンガム及びローカストビーンガムから選択される。
【0045】
一実施形態では、ヒドロコロイド系、ペットフード組成物、及び/又はチャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物は、ジェランガム、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギネート、アガー、ペクチン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるゲル化剤を含まない。
【0046】
一実施形態では、ヒドロコロイド増粘剤の濃度は、グレイビー中、0.05~5重量%であり、好ましくはグレイビー中、約1重量%である。
【0047】
一実施形態では、ヒドロコロイド増粘剤の濃度は、前記チャンクアンドゼリーのキャットフード組成物中、0.5重量%未満である。
【0048】
一実施形態では、グレイビーのpHを7~9の間に調整する。
【0049】
一実施形態では、追加のステップは、海藻のゲル化点に達するまで冷却し、続いてグレイビーのpHを調整した後剪断することと、食品チャンクを添加する前に、剪断されたゲルグレイビーを作製することと、を含んでもよい。
【0050】
一実施形態では、グレイビーの粘度は、食品チャンクが添加されたときに1ステップでの充填のための安定な懸濁液を形成することができるよう、2000MPa.s超(20rpm、20℃、RVTブルックフィールド)である。例えば、一態様では、許容可能なレベルのばらつきで、およそ等量のグレイビーと食品チャンクとをそれぞれの容器内に入れることができる。
【0051】
一実施形態では、食品チャンクは、肉、グルテン、又は任意の他の植物性タンパク質源、及びこれらの組み合わせである。
【0052】
一実施形態では、容器の熱処理は、80℃超の温度で少なくとも1分間、好ましくは少なくとも120℃で30~60分間である。
【0053】
一実施形態では、冷却及び剪断ステップは、
海藻のゲル化点(約45~60℃)に達するまで水を添加して、温度を低下させるステップと、
得られたグレイビーを海藻のゲル化点以下で剪断して、1ステップでの充填プロセスを可能にする、2000MPa.s超(20rpm、20℃、RVTブルックフィールド)の粘度を有する、安定した剪断されたゲルグレイビーを形成するステップと、を含む。
【0054】
一実施形態では、グレイビーを、食品チャンクと、およそ50:50の比率で混合する。
【0055】
本発明はまた、本明細書で上述したプロセスによって製造された、チャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物にも関する。
【0056】
更に、本発明は、機械的に破砕された海藻と、他の成分とを水に混合して、ヒドロコロイド系を形成することを含む、ヒドロコロイド系に関する。更に、本発明は、チャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物などの、グレイビー及びペットフード組成物であって、組成物が、0.1重量%~1重量%の、機械的に破砕された紅藻、カリウム源、ヒドロコロイド増粘剤、食品チャンクを含み、かつ組成物のpHが7以上である、グレイビー及びペットフード組成物に関する。
【0057】
一実施形態では、チャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物は、0.15重量%~0.3重量%の紅藻を含む。
【0058】
一実施形態では、チャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物のpHは7~9の間である。
【0059】
一実施形態では、カリウム源は、塩化カリウムである。
【0060】
一実施形態では、塩化カリウムは、前記チャンクアンドゼリーのキャットフード組成物中、0.05~1重量%で存在し、好ましくは約0.085重量%で存在する。
【0061】
一実施形態では、ヒドロコロイド増粘剤は、キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、カシアガム、微結晶セルロースからなる群から選択され、好ましくはキサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、及びこれらの混合物から選択される。
【0062】
一実施形態では、ヒドロコロイド増粘剤は、キサンタンガム及びローカストビーンガムから選択される。
【0063】
一実施形態では、ヒドロコロイド系、及び/又は、チャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物などのペットフード組成物は、ジェランガム、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギネート、アガー、ペクチン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるゲル化剤を含まない。
【0064】
一実施形態では、ヒドロコロイド増粘剤の濃度は、組成物中0.025~2.5重量%であり、好ましくは約0.5重量%である。
【0065】
一実施形態では、ヒドロコロイド増粘剤の濃度は、ペットフード組成物中、例えばチャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物中、0.25重量%未満である。
【0066】
一実施形態では、食品チャンクは、肉、グルテン、又は任意の他の植物性タンパク質源、及びこれらの組み合わせである。
【実施例】
【0067】
実施例1.海藻の物理的特性
海藻の物理的特性、例えばゼリー化などを比較した。レオメーターで温度掃引サイクルを行い、考察するいくつかのヒドロコロイド系のゲル化温度を求めた。
【0068】
海藻のユーケウマ・コットニー(Eucheuma Cottonii)及びコンドルス・クリスプス(Chondrus Crispus)のレオロジー性能を、半精製カッパカラギーナンと比較して、ゲル化速度(ゲル構造から得られる機械的スペクトル)を把握した。特に塩化カリウムイオンの存在下では、海藻のユーケウマ・コットニー(Eucheuma Cottonii)により形成されたゲル構造について有望な結果が得られた。
【0069】
【0070】
これらのゲル化温度は、レトルト処理せずに水中でゼリーを試験することにより得られた。加工/レトルト処理したチャンクの場合、結果は同じ傾向を示すものとなる。
【0071】
塩化カリウム及び炭酸カリウムの存在下で、海藻のユーケウマ・コットニー(Eucheuma Cottonii)により形成されたゲル構造について、有望な結果が得られた。
【0072】
2通りの試験を行った。1つ目の試験は、pH=7で、0.15%のKCl及び0.3%のグアーガムを用いて行った。2つ目の試験では、pH=8.5で、0.15%のKCl、0.3%のグアーガム及び0.4%のK2CO3を用いた。
【0073】
ユーケウマ・コットニー(Eucheuma Cottonii)及び半精製カッパカラギーナンは、同様のゼリー化温度を示すことが観察された。ゼリー化温度に関して、ユーケウマ・コットニー(Eucheuma Cottonii)と、C.クリスプス(C.Crispus)との間には顕著な違いがある。KCl及びpH=7では、ゼリー化温度は、カッパカラギーナンの場合38℃前後、ユーケウマ・コットニー(Eucheuma Cottonii)の場合35℃、C.クリスプス(C.Crispus)の場合28℃である。
【0074】
粘度及びゼリー化温度に関して、ユーケウマ・コットニー(Eucheuma Cottonii)と、C.クリスプス(C.Crispus)との間には顕著な違いがある。K2CO3及びpH=8.5では、ゼリー化温度は、カッパカラギーナンの場合50℃前後、ユーケウマ・コットニー(Eucheuma Cottonii)の場合48℃、C.クリスプス(C.Crispus)の場合40℃である。
【0075】
実施例2.チャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物に用いるゼリーのレシピ
さまざまなチャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物のゼリーのレシピを以下の表2に示す(ゼリーの重量%として表記)。
【0076】
市販品の同じ紅藻種(コンドルス・クリスプス(Chondrus Crispus))(NUWEN BY SETALG-AGROALIMENTAIRE(Presquile De pen Lan,22610 Pleubian,FRANCE)から入手可能)をさまざまな粒径で用いた。
【0077】
【0078】
実施例3.紅藻を含むチャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物の製造プロセス
コンドルス・クリスプス(Chondrus Crispus)の紅藻を、上記の表に列挙した量で他の粉末(炭酸カリウム、塩化カリウム、増粘剤、香味剤)と乾式混合した。乾燥混合物をB22分散槽(Karl Schnell)に添加し、塩及び増粘剤が完全に可溶化するまで、室温にて3000rpmで混合した。この時点で、紅藻を水相中に分散させた。次いで、海藻と可溶化した塩及びガムとを含有する分散液を、肉塊と混合し、1ステップでのプロセスを用いて缶内に移した。次いで、缶を密封し、滅菌ステップ(120℃で少なくとも30分間)でレトルト処理した。
【0079】
出来上がったチャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物を
図1に示す。組成物が最適な形状を保持していることを見ることができる。チャンクは、ゼリー中に均等に分布した。T1~T5の組成物は、参照と同程度に良好であった。
実施例4.紅藻を含むチャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物のゲルの堅さ
Rheo TA XT2テクスチャーアナライザーを使用して、表2のレシピによって製造したゼリーの硬度特性を測定した。ゼリーは、食用グルテンチャンクを除き、実施例2に記載の原材料を全て含んでいた。
【0080】
チャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物を加熱した。得られたグレイビーを、1mmのふるいでふるい分けすることによってグルテン塊から分離した。冷却してゲル化を生じさせ、得られたゼリーの硬度を、直径12mmの円筒形プローブ、速度0.5mm/秒、及び貫入10mmを用いて、室温での針入度測定によって測定した。5回の反復測定を行い、4mmでの貫入力を記録した。
【0081】
表3に、さまざまなレシピのチャンク・イン・ゼリーについて、最大力及びゲルの堅さを示す。レシピ2~6で海藻の量及び塩濃度を変えることで、さまざまなテクスチャレベルが得られた。
【0082】
【0083】
実施例5.紅藻を含むチャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物に対するネコによる嗜好性についての結果
製品の性能を、技術的な嗜好性評価によって測定した。この評価は、ペットに対する官能性についての有効なパネリストー(validated pet sensory panelists)を用いる、制御した環境下でのキャットフード選好の定量的な測定を実施することを含んだ。
【0084】
用いた比較試験は2つのボウルを対とした嗜好性試験であり、同時に提供した2種類の食品のそれぞれの摂取量を定量することによって、2種類の食品間の選好を測定した。各食品の平均摂取率(%)を主要な従属測定値とし、有意差はP値<0.05に設定した。
【0085】
驚くべきことに、ゲル強度に違いがあるのにもかかわらず、以下の表4に示すように、ネコは参照製品と海藻試用品とを区別せず、有意差は見られなかった。
【0086】
【0087】
実施例6.紅藻由来の剪断したゲルグレイビーを有するチャンク・イン・ゼリーのキャットフード組成物
海藻組成物を含むさまざまなチャンク・イン・ゼリーの重量%でのレシピ。市販品の同じ紅藻種(コンドルス・クリスプス(Chondrus Crispus))を用いた(NUWEN BY SETALG-AGROALIMENTAIRE(Presquile De pen Lan,22610 Pleubian,FRANCE)から入手可能)。
【0088】
【0089】
グレイビー参照の調製に用いるプロセスは、実施例2におけるものと同じである。グレイビーT1及びT2の調製プロセスは、以下のものであった:
紅藻、塩化カリウム、ガムを50%の水(分散槽内の約100Lの水)に、80℃で混合する。
炭酸カリウムでpH8.5に調整する。
ゲルが形成されるまで(約45℃)、残りの50%の水(冷温15℃)を添加する。
温度を80℃から50℃まで下げる。
得られたグレイビーを、剪断したゲルグレイビーが形成され最終粘度4000MPa.s(20rpm、40℃、RVTブルックフィールド)になるまで、Ystralミキサ内で10分間(3000rpm)剪断する。
剪断したゲルグレイビーをチャンクと混合する。
1ステップでの充填を20℃で行う。
130℃で加熱処理する。
【0090】
剪断したゲルグレイビーの手法を用いることの利点には、用いる添加ヒドロコロイドの総量の、1.3%から0.5%までの大幅な(siginificant)低減が含まれる。ヒドロコロイドの総量のこのような低減により、ネコの糞便の粘稠性が改善されることが予想される。
【0091】
剪断したゲルグレイビーの手法を用いることの別の利点は、時間が経過しても粘度が室温で一定のままであることである。この一方で、粘度の低減は、典型的には、グアーガム及びキサンタンガムなどの増粘剤が用いられる場合にのみ示される。
【0092】
実施例7.チャンク・イン・ゼリー製品の消化性試験
チャンク・イン・ゼリー製品に対し、糞便の粘稠性(FC)についてのインビボ試験(ネコ及びイヌ)を行った。海藻製品に関し、糞便の粘稠性は、半精製カッパカラギーナンを用いる標準によるものと同様又はそれよりも高いものであった。C.クリスプス(C.Crispus)のゼリーの場合、キサンタン及びキャロブ(carob)の量が少なくても糞便の粘稠性は良好であった。流体ゲル技術を用いると、ユーケウマ・コットニー(Eucheuma Cottonii)の場合、糞便の粘稠性が改善(72%~89%)される。
【0093】
ヒドロコロイド(HC)の総量が糞便の粘稠性(FC)に対し示す効果についての試験では、HCの量が少なくてもFCが良好であることが示されている。総ヒドロコロイドが同じ濃度である場合、カッパカラギーナン及び海藻では同等の良好な糞便粘稠性が得られる。ヒドロコロイドの量を低減させ、流体ゲル技術を用いると、海藻では標準と比較して糞便粘稠性について改善された結果が得られる。
【0094】
結論として、試験した3とおりのヒドロコロイド系で許容可能な糞便スコアを比較すると、流体ゲル技術によりゼリー中に海藻を使用し、かつHCの総量を低減させた場合に、明らかに糞便スコアが改善される。この改善の理由は、流体ゲルを用いた場合に使用されるヒドロコロイド(%)が、標準的なゼリーと比較して有意に少ない(約50%未満)ためである可能性がある。
【国際調査報告】