(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-06
(54)【発明の名称】MGOフィラーを含有する熱伝導性組成物および当該組成物が使用される方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20220330BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220330BHJP
C08K 3/014 20180101ALI20220330BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20220330BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20220330BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/013
C08K3/014
C08K9/06
C09K5/14 E
H01L23/36 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537773
(86)(22)【出願日】2018-12-29
(85)【翻訳文提出日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 CN2018125408
(87)【国際公開番号】W WO2020133374
(87)【国際公開日】2020-07-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フ、ショアリアン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チーカン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ホンユー
(72)【発明者】
【氏名】チョン、チョン
(72)【発明者】
【氏名】バグワガー、ドラブ
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、ダレン
【テーマコード(参考)】
4J002
5F136
【Fターム(参考)】
4J002CP031
4J002CP052
4J002CP122
4J002DA018
4J002DA028
4J002DA068
4J002DA078
4J002DA088
4J002DA098
4J002DB018
4J002DC008
4J002DE078
4J002DE098
4J002DE108
4J002DE148
4J002DE188
4J002DF018
4J002DJ008
4J002EX016
4J002EX036
4J002EZ007
4J002FA087
4J002FD067
4J002FD079
4J002FD099
4J002FD202
4J002FD208
4J002FD209
4J002GQ00
5F136BC05
5F136BC06
5F136FA53
5F136FA66
5F136FA71
5F136FA82
(57)【要約】
高熱伝導性組成物が提供され、かかる組成物は、(A)オルガノポリシロキサン組成物と、(B)フィラー処理剤と、(C)熱安定剤と、(D)熱伝導性フィラー混合物であって、(D-1)最大1μmの平均サイズを有する小粒子熱伝導性フィラー、(D-2)1~10μmの平均サイズを有する中間サイズのフィラー、(D-3)30μmを超える平均サイズを有し、かつ少なくとも酸化マグネシウムを含む大きいフィラーを含む、熱伝導性フィラー混合物と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(A)オルガノポリシロキサン組成物と、
(B)フィラー処理剤と、
(C)熱安定剤と、
(D)熱伝導性フィラーであって、
(D-1)最大1μmの数平均サイズを有する小粒子熱伝導性フィラー、
(D-2)1~20μmの数平均サイズを有する中間サイズの熱伝導性フィラー、
(D-3)20μmを超える数平均サイズを有する大きいサイズの熱伝導性フィラーであって、前記大きいサイズの熱伝導性フィラーは、酸化マグネシウム粒子を含む、大きいサイズの熱伝導性フィラー、を含む熱伝導性フィラーと、を含む、組成物。
【請求項2】
成分(A)が、
一般式(I)を有するオルガノポリシロキサンを含み
R
1
3Si-(R
1R
2SiO)
a(R
1
2 SiO)
b-R
3-SiR
1
3(I)
式中、各R
1は、独立して、C1~C6アルキル基であり、各R
2は、アリール基であり、各R
3は、酸素原子または二価の炭化水素基から選択され、下付き文字aは、0であるか、または少なくとも1の平均値を有し、下付き文字bは、少なくとも1の平均値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(B)が、シリコーンおよび/またはシランを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
成分(B)が、アルキルトリアルコキシシランおよびトリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンからなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記トリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンが、さらにアルケニル末端封止されている、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
成分(B)が、n-デシルトリメトキシシラン、ならびに、ジメチルビニルシロキシ末端およびトリメトキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンから選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
成分(C)が、それに関連する金属を含むまたは含まないフタロシアニンである、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(G)スペーサー、(H)酸化防止剤安定剤、(I)顔料、(J)ビヒクル、または(K)湿潤剤、およびそれらの組み合わせから選択される追加の配合成分をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の組成物を、熱源と放熱器との間の熱経路に沿って挿入することを含む方法。
【請求項10】
前記熱源が、(光)電子部品を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
デバイスであって、
a)熱源と、
b)請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物と、
c)放熱器と、を含み、
前記組成物は、前記熱源の表面から前記放熱器の表面まで延びている熱経路に沿って、前記熱源と前記放熱器との間に配置されている、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
高熱伝導性シリコーン組成物、それを調製および使用するための方法、ならびにそれを含有するデバイスを開示する。シリコーン組成物は、熱界面材料として、および電子デバイスの放熱材料の一部として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
電気通信業界は、5Gネットワークへの世代交代が進んでいるが、よりサイズの小さい高度に集積された電気デバイスは、消費電力が倍増し(パワーユニットは600W~1200W)、発熱量も増加して、放置すると性能が低下する。したがって、より高効率な熱管理システムが急務となっている。
【0003】
酸化マグネシウム(MgO)は熱伝導性であることが知られており、MgOを含有するさまざまな熱伝導性材料が知られている。JP6075261は、熱伝導率が1.5W/m・Kであり、組成物の粘度を下げるために表面処理された60~80マイクロメートル(μm)の粒子サイズを有するMgOフィラーを有する熱伝導性シリコーン組成物を記載している。US2009/0143522A1は、最大50μmの大きいサイズのMgOフィラーと、小さいサイズのフィラーとの組み合わせを有し、最大6W/m・Kの熱伝導率を提供する熱伝導性組成物を記載している。US5569684は、MgOフィラーの表面処理の方法が開示されており、フィラーの体積は全組成物体積の最大70%であったが、熱伝導率は特に高くなかった。CN105542476は、窒化アルミニウム(AlN)フィラーと一緒に、10μmおよび5μmの2つの粒度分布のピークを有するMgOフィラーを使用することを記載しているが、達成された熱伝導率は2W/m・Kよりも低い。したがって、密接に関連する従来技術のいずれも、これまでのところ、業界が現在要求している6W/m・Kを超える熱伝導率レベルを達成していない。
【発明の概要】
【0004】
6W/m・Kを超える熱伝導率を有するシリコーン組成物を提供し、その熱伝導性組成物は、オルガノポリシロキサンおよびMgOフィラーを含む。フィラーは、MgOのみを含むことができるか、またはMgOと、AlN、酸化アルミニウム(Al2O3)もしくは窒化ホウ素(BN)などの他の材料との組み合わせを含むことができる。本発明はまた、熱源と放熱器との間の熱経路に沿って本発明の熱伝導性組成物を挿入することを含む方法でもある。そのような熱源は、(光)電子部品、中央演算処理装置、電流変換器、電池、例えば、リチウムイオン電池、および主に電気によって電力を供給されるかまたは電気を伴う作動時に熱を生成するあらゆる他の部品およびユニットを含み得る。本発明の別の態様は、a)熱源、b)本発明の熱伝導性組成物、およびc)放熱器を含むデバイスであり、その組成物は、熱源の表面から放熱器の表面まで延びている熱経路に沿って、熱源と放熱器との間に配置される。熱源は、電子部品を含み得る。デバイスは、電気通信および/またはコンピューティング装置、例えば、サーバー、パーソナルコンピュータ、タブレットおよび携帯用デバイス、電子モジュール、特にパワーエレクトロニクスモジュール、自動車の電子制御ユニット、および電気車両のバッテリーパックであることができる。
【発明を実施するための形態】
【0005】
特に指定がない限り、すべての量、比および割合は、重量を基準とする。重量パーセントは重量%と表示する。必要に応じて、体積パーセントは体積%と表示する。以下の用語は、以下に説明する意味を付与することを意図して本明細書で使用する。
【0006】
冠詞「a」、「an」、および「the」は、それぞれ、1つ以上を指す。「組み合わせ」とは、任意の方法によって組み合わされた2つ以上のアイテムを意味する。「cSt」は、センチストークスを意味する。「DP」は、重合度、すなわち、ポリマー分子において見出されるモノマーの数を意味する。線状ポリシロキサンの場合、DPは、29Si-NMRによって、末端シロキシ単位(R3SiO-)の数と、鎖形成二価シロキシ単位(-R2SiO-)の数の比率から決定する。樹脂では、DPは、出発材料の構造から正確に計算される。他のポリシロキサンの場合、DPは、標準サンプルとしておよび既知の側鎖としてポリスチレンを使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定されたポリマーの分子サイズから計算され、メチル基が結合したシロキシ単位は約100g/モルである。「得る(May)」は選択を示す。「mPa・s」はミリパスカル秒を意味する。「表面処理」とは、粒子の表面にある反応性基のすべてまたは一部が、簡便な化学的または非反応性の手段によって非反応性にされていることを意味する。略語「W」はワット、「W/m・K」はメートルケルビン当たりのワット、および「μm」はマイクロメートルを意味する。本明細書で使用される場合、「アルキル」基は、脂肪族飽和基を意味し、特に明記しない限り、炭素および水素からなり、その非限定的な例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシル、オクタデシル、およびエイコシル、および3個を超える炭素原子が存在するときのそれらの異性体である。「シクロアルキル」は、一部またはすべての炭素原子が、環内に脂肪族不飽和を伴わない環状構造の形成に関与するアルキルを意味し、シクロペンチルおよびシクロヘキシルによって例示される。本明細書で使用される場合、「アルケニル」基は、脂肪族不飽和結合を有し、かつ炭素および水素からなる基を意味し、その非限定的な例は、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、エイコセニル、および3個を超える炭素原子が存在するそれらの異性体である。本明細書で使用される場合、「アリール」基は、環炭素原子から水素原子を除去することによって、単環式および多環式芳香族炭化水素から誘導される基を意味し、その非限定的な例は、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ベンジル、およびフェニルエチルである。本明細書で使用される場合、「Me」はメチル基(CH3-)を示し、「Vi」はビニル基(-CH=CH2)を示す。「ppm」という用語は、重量百万分率を指す。
【0007】
特に明記しない限り、粘度は、粘度ガラスキャピラリー(CTM0004 A)を使用して、ASTM D-445、IP 71に基づく方法によって、25℃で測定し、液体の動粘度は、重力流を使用して、一定量のサンプルが校正済みのガラスキャピラリーを通過するのに要する時間を測定することによって、決定された。特に明記しない限り、粒子サイズは、操作ソフトウェアに従って、レーザー回折粒子サイズアナライザー(例えば、CILAS920粒子サイズアナライザーまたはBeckman Coulter LS 13 320 SW)によって決定し、数平均粒子サイズとして示した。1μmよりも小さい粒子の場合、走査型電子顕微鏡を使用して粒子サイズを視覚化および測定する。便宜上、平均粒子サイズは、8-11 ASTM D4315に従って表面積を測定することに基づいて、または、さまざまなメッシュサイズのふるいを使用して各粒群(size fraction)の累積重量から平均を計算することによって、推定され得る。試験方法は、試験方法番号付きで日付が示されていない場合、この文書の優先日における最新の試験方法を指す。試験方法の参照は、試験協会の参照と試験方法番号との双方を含む。本明細書では、次の試験方法の略語および識別子が適用され、ASTMは米国材料試験協会を指し、ENはヨーロッパ電気標準規格を指し、DINはドイツ工業品標準規格を指し、ISOは国際標準化機構を指す。
【0008】
熱伝導性組成物
本発明の熱伝導性組成物は、(A)オルガノポリシロキサン組成物と、(B)フィラー処理剤と、(C)熱安定剤と、(D)(D-1)最大1μmの数平均サイズを有する小粒子熱伝導性フィラー、(D-2)1~20μmの数平均サイズを有する中間サイズの熱伝導性フィラー、および(D-3)酸化マグネシウム(MgO)のみを含み得るか、または窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、もしくは窒化ホウ素(BN)などの他の材料を含む粒子を含み得る20~200μmの数平均粒子サイズを有する大きいサイズのフィラー、の小さい、中間の、および大きい異なる平均粒子サイズを有する少なくとも3つの群を含む、熱伝導性フィラーと、を含む。組成物は、全組成物の少なくとも70体積%をもたらす量の熱伝導性フィラーを含み、他の熱伝導性粒子をさらに含み得る。粒子サイズに関係なく、MgOフィラー粒子の総量は、組成物全体の65体積%以下である。
【0009】
(A)ベースポリマー。熱伝導性組成物の成分(A)は、オルガノポリシロキサン組成物である。成分(A)の例は、一般式(I)を有するオルガノポリシロキサンを含み、
R1
3SiO-(R1R2SiO)a(R1
2SiO)b-R3-SiR1
3(I)
式中、各R1は、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価の有機基、すなわち、好ましくは1、2、3、または最大6個の炭素原子からなる直鎖または分岐鎖アルキル基である。R1はメチル基であってもよい。各R2はアリール基である。R2はフェニル基であってもよい。各R3は、酸素原子または二価の炭化水素基から選択される。R3が、酸素原子であるか、または二価の炭化水素基であるかは、式(I)のオルガノポリシロキサンを調製するために使用される方法によって決まる。二価の炭化水素基は、1つ以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上の炭素原子からなることができ、同時に、一般に、最大6個、最大10個、または最大12個の炭素原子からなる。好ましくは、R3は、酸素原子である。下付き文字「a」は、0であってもよいか、または少なくとも1の平均値を有し、下付き文字「b」は、少なくとも1の平均値を有する。一般式(I)は、成分(A)の集合分子の平均分子式を示している。下付き文字「a」および下付き文字「b」は、合計(a+b)が、10以上、20以上、40以上の範囲の粘度を有し、かつ同時に、100以下、200以下、300以下、または最大400mPa.sであるが、良好な加工性のためには20~400mPa.sの範囲が望ましい粘度を有する式(I)のオルガノポリシロキサンを提供するのに十分であるような平均値を有し得る。例示的な粘度は100mPa.sである。合計(a+b)は、20以上、50以上、および80以上の範囲の正の数、かつ同時に最大100、120、150、または200の正の数である。合計(a+b)は、好ましくは20~150の範囲であり得る。a/bのモル比は、0~、0.2~、あるいは代わりに0.38~最大4.2の範囲であり得る。
【0010】
式(I)のオルガノポリシロキサンは、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)からDOWSIL(商標)510 Fluidまたは550 Fluidとして利用可能なトリメチルシロキシ末端封止ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)コポリマーであってもよい。DOWSILはThe Dow Chemical Companyの商標である。
【0011】
下付き文字「a」がゼロであるとき、式(I)のオルガノポリシロキサンは、さまざまな供給源から市販されているトリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンであり得る。
【0012】
式(I)のオルガノポリシロキサンは、文献に完全に記載されている周知の方法によって、例えば、対応するオルガノハロシランの加水分解および縮合または環状ジオルガノポリシロキサンの平衡化などによって調製され得る。例えば、オルガノポリシロキサンは、リチウム触媒を使用して環状ジオルガノポリシロキサンの開環重合によって調製され、ケイ素結合ヒドロキシル基を有するオルガノポリシロキサンが生成され得る。その後、ケイ素結合ヒドロキシル基を有するオルガノポリシロキサンをアルコキシシランと反応させて、成分(A)を調製することができる。あるいは、成分(A)としての使用に好適なオルガノポリシロキサンは、例えば、米国特許第4,962,174号に開示されているような方法によって調製され得る。
【0013】
成分(A)のオルガノポリシロキサンは、成分(A)が、10~400mPa.s、またはより具体的には10以上、20以上、40以上、かつ同時に100以下、200以下、300以下、または最大400mPa.sの粘度を有する限りにおいて、分岐していてもよく、分岐点に少量のモノアルキルシロキサン単位(R1SiO3/2)を有し得る。
【0014】
成分(A)は、1つの単一のオルガノポリシロキサンであることができるか、または、次の特性、すなわち、構造、粘度、平均分子量、シロキサン単位、および配列のうちの少なくとも1つが異なる2つ以上のオルガノポリシロキサンを含む組み合わせであることができる。
【0015】
成分(A)は、互いに反応して架橋を形成することができる1つ以上のシロキサン成分を含む硬化性混合物であってもよい。硬化性成分(A)は未硬化のままであってもよく、熱伝導性シリコーン組成物の調製中に硬化してもよく、熱伝導性シリコーン組成物が、熱伝導性シリコーン組成物を介して熱が伝導される耐熱性アイテムの近位に配置された後に、硬化してもよく、または、熱伝導性シリコーン組成物に添加する前に、ヒドロシリル化によって硬化してもよい。成分(A)は、部分的または完全に硬化して、ショア00(5~85)の粘度/硬度を有する硬化組成物を与えることができ、その硬度を測定することができない柔らかいパテテクスチャーを有し得る。硬化性混合物の硬化メカニズムは、添加硬化、凝縮硬化、またはUVラジカル硬化を含めて、特に限定されない。
【0016】
成分(A)の総量は、成分(A)に選択されたオルガノポリシロキサンおよび成分(B)に選択された熱伝導性フィラーを含むさまざまなファクターによって決まる。しかしながら、成分(A)の総量(すなわち、組み合わされたすべてのオルガノポリシロキサン)は、熱伝導性組成物中のすべての成分の総体積の2体積%~35体積%、あるいは10体積%~15体積%、あるいは10体積%~35体積%の範囲であり得る。
【0017】
(B)フィラー処理剤。熱伝導性組成物の成分(B)は、フィラーの表面処理のための反応性シランおよび/または反応性シリコーンを含む。処理剤および処理方法は、当技術分野で知られており、例えば、米国特許第6,169,142号(第4欄42行~第5欄2行)を参照されたい。
【0018】
成分(B)の量は、さまざまなファクターに応じて、例えば、成分(D)に選択されたフィラーの種類および量に応じて、またフィラーが、その場で、または熱伝導性組成物の他の成分と組み合わされる前に、成分(B)で処理されるか否かに応じて、変化し得る。とにかく、熱伝導性組成物は、成分(B)を、0.1重量%~2重量%の範囲の量で、およびその間の任意の値の量で、含み得る。
【0019】
成分(B)は、以下の式を有するアルコキシシランを含むことができ、
R5
rSi(OR6)(4-r)、(II)
式中、下付き文字rは1、2、または3であり、好ましくはrは3である。
【0020】
各R5は、独立して、1個以上、好ましくは6個以上であり、かつ同時に50個以下、好ましくは18個以下の炭素原子の一価の炭化水素基などの一価の有機基である。R5は、飽和または不飽和、分岐または非分岐、および非置換であることができる。R5は、アルキル基およびアリール基によって例示され、特に、メチル、エチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、フェニル、またはフェニルエチル基と、以下に記載するR6のいずれかとの組み合わせによって例示される。好ましくは、R5はデシル基である。
【0021】
各R6は、1~4個の炭素原子、あるいは1~2個の炭素原子のアルキル基であってもよい。成分(B)のアルコキシシランは、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、フェニル-トリメトキシシラン、フェニルエチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシル-トリエトキシシラン、およびそれらの組み合わせによって例示される。成分(B)は、n-デシルトリメトキシシランであり得る。
【0022】
成分(B)はまた、アルコキシ官能性オリゴシロキサンでもあり得る。アルコキシ官能性オリゴシロキサンおよびそれらの調製方法は、当技術分野で知られており、例えば、EP1403326B1およびUS6844393を参照されたい。好適なアルコキシ官能性オリゴシロキサンとしては、下式のものが挙げられる。
[R7
sR8
(3-s)SiO(R7
tR8
(2-t)SiO)m(R8
2SiO)n(R8
u(OR9)(2-u)SiO)o]vSiR8
[4-(v+x)](OR9)x(III)
【0023】
この式では、各R7は、独立して、アルケニル基から、例えば、2個以上かつ同時に6個以下、8個以下、10個以下、12個以下の炭素原子を有する、環状のアルキルまたはアリール基に対して結合されたアルケニル基(例えば、ビニルシクロヘキシル、ビニルフェニル、ビニルベンジル、ビニルフェネチル)から選択することができ、R7は、好ましくはビニル、アリル、またはヘキセニルである。各R8は、独立して、少なくとも1個の炭素原子および最大20個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル、シクロアルキル、アリール、およびアラルキル(すなわち、アリール置換アルキル、例えば、ベンジルまたはフェネチル)基から選択することができ、R8はハロゲン化され得る。好ましくは、R8はメチルまたはエチルである。各R9は、互いに同じであっても異なっていてもよく、アルキル、アルコキシアルキル、アルケニル、またはアシルであってもよく、各々好ましくは1、2、3、4、6、または最大10個の炭素原子を有し、直鎖、分岐鎖、もしくは環状であり得る。好ましいアルキルは、メチル、エチル、またはプロピルであり、好ましいアルコキシアルキルは、メトキシエチル、エトキシエチル、またはメトキシプロギルであり、好ましいアルケニルは、ビニル、アリル、またはイソプロペニルであり、アシルはアセチルであり得る。すべての下付き文字は整数であり、各々は次の範囲または選択肢から選択され、下付き文字sは0~3であり、下付き文字tは1または2であり、下付き文字uは0、1、または2であり、下付き文字vは1、2、または3であり、下付き文字xは0~3であり、但し、合計(v+x)が1~4になるようにvおよびxは選択される。下付き文字m、n、およびoは、各々独立して、0~100の整数であり、但し、sが0のとき、mは1以上であり、xが0のとき、uは0または1であり、同時にoは1以上であり、合計(m+n+o)は1以上かつ200以下である。好ましくは、m、n、およびoは、各々独立して1以上、5以上、または10以上であり、かつ同時に10以下、25以下、50以下、または75以下、最大100である。好ましいオリゴシロキサンは、(MeO)3Si(OSiMe2)110OSiMe3などのトリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンであることができ、また(MeO)3Si(OSiMe2)25OSiMe2Viによって例示されるように、末端にアルケニル基も含有し得る。成分(B)は、モノジメチルビニルシロキシ末端およびモノトリメトキシシロキシ末端ジメチルシロキサンであり得る。
【0024】
金属フィラーは、アルキルチオール、例えば、オクタデシルメルカプタンなど、ならびに脂肪酸、例えば、オレイン酸、ステアリン酸、チタン酸塩、チタン酸塩カップリング剤、ジルコン酸塩カップリング剤、およびそれらの組み合わせで処理することもできる。
【0025】
(C)熱安定剤。熱伝導性組成物は(C)熱安定剤を含む。インダンスレンブルー、テルフェニル、フタロシアニン、または金属フタロシアニンは、特定の種類のシリコーンエラストマーに熱および電離放射線の存在下での劣化に対する耐性を付与する好適な熱安定剤の例である。銅フタロシアニンおよびインゴイド染料などの多核ベンゼノイド化合物もまた、有機過酸化物を使用して硬化されたシリコーンエラストマーの熱安定性を改善することが知られている好適な熱安定剤である。特に、共役した金属原子を含むまたは含まないフタロシアニンは、望ましくは、熱伝導性組成物中に含まれる。
【0026】
好適なフタロシアニン化合物は式(IV)で表され、金属キレート状態は式(V)で表される。
【化1】
【0027】
式(IV)および(V)において、Xは、各々独立して、水素またはハロゲン原子を表す。好適なハロゲン原子は、塩素、臭素、およびヨウ素である。式(V)において、Mは、銅、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、亜鉛、白金、およびバナジウムから選択される金属原子である。Mが銅のとき、すべてのXは水素である。好ましくは、フタロシアニン化合物は29H,31H-フタロシアニンであり、好ましい金属キレート化フタロシアニン化合物は29H,31H-フタロシアニナト(2-)-N29,N30,N31,N32銅である。フタロシアニン化合物は、PolyOne Corporation,Avon Lake,Ohio,USAからStan-tone(商標)40SP03または50SP01などとして市販されている。
【0028】
成分(C)は、熱伝導性オルガノポリシロキサン組成物中に、重量単位で、フタロシアニン化合物が、組成物全体の、望ましくは0.01重量%以上、0.05重量%以上、さらには0.07重量%以上、かつ同時に、望ましくは5.0重量%以下、0.2重量%以下、さらには0.1重量%以下であるような量で存在する。
【0029】
(D)熱伝導性フィラー。本発明の熱伝導性組成物は、相乗的に作用して高い熱伝導性を提供するフィラー粒子の3つの異なる群によって特徴付けられる。3つの群の各々は、フィラー粒子が含む材料の粒度分布および種類によって定義される。粒子は、電子顕微鏡写真によって判定されるように、アスペクト比が3:1以下である限り、球形、ほぼ球形、半球形、または不規則形状であり得る。一部の粒子では、アスペクト比は2:1から30:1の範囲である。
【0030】
群(D-1)は、最大1μmの数平均サイズを有する小粒子熱伝導性フィラーを含む。数平均サイズは0.1μmほどであり得る。群(D-1)の粒子は、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、および窒化アルミニウムからなる群から選択される1つの粒子、または2つ以上の粒子の任意の組み合わせを含み得る。
【0031】
群(D-2)は、1~20μmの数平均サイズを有する粒子を含む。μm単位の数平均サイズは、2以上、3以上、5以上、7以上であり得、かつ同時に、17以下、15以下、12以下、10以下、7以下、6以下、または1以上の小さいサイズの粒子を含有するときは、5以下、さらには4以下であり得る。中間サイズの粒子は球形または不規則形状であり得る。好ましい材料は窒化アルミニウムである。フィラーは、窒化アルミニウムの表面層を有する金属フィラーであり得る。
【0032】
群(D-3)は、20~200μmの数平均サイズを有する粒子を含む。μm単位の数平均サイズは、30以上、40以上、50以上、70以上、100以上、120以上、150以上であり得、かつ同時に150以下、100以下、70以下、50以下、またはさらには40以下であり得る。好ましい材料は酸化マグネシウムである。
【0033】
群(D-1)、(D-2)、および(D-3)の各々は、2つ以上の均質なフィラー群を含み得る。例えば、各群は、粒度分布プロットに2つ以上のピークを有する粒子を含み得る。(D-1)は、酸化亜鉛および酸化アルミニウムの両方を含有するなど、異なる組成を有する粒子を含み得る。群(D-1)、(D-2)、および(D-3)の各々における粒度分布は、標準偏差値が1の場合もあれば、1未満の場合もあり、中心付近の分布がより狭いことを示している。中心値の周りの上下の分布曲線は一般に対称であるが、一方の側がもう一方の側に比べて長いテールを有する場合がある。
【0034】
熱伝導性組成物は、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、または酸化マグネシウム以外の材料から作製された追加の熱伝導性粒子(「追加のフィラー」)をさらに含み得る。追加のフィラーは、アルミニウム三水和物、チタン酸バリウム、酸化ベリリウム、炭素繊維、ダイヤモンド、グラファイト、水酸化マグネシウム、金属粒子、オニキス(onyx)、炭化ケイ素、炭化タングステン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。追加のフィラーは、金属フィラーであり得る。好適な金属フィラーは、アルミニウム、銅、金、ニッケル、銀、およびそれらの組み合わせから選択される金属の粒子、および代わりにアルミニウムによって例示される。好適な金属フィラーは、それらの表面上に層を有する上記金属の粒子によってさらに例示され、その層は、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化ニッケル、酸化銀、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0035】
追加のフィラーは、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)、またはそれらの合金を含み得る。合金は、金(Au)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、銅(Cu)、鉛(Pb)、スズ(Sn)、またはそれらの組み合わせを含み得る。合金の例としては、Ga、In-Bi-Sn合金、Sn-In-Zn合金、Sn-In-Ag合金、Sn-Ag-Bi合金、Sn-Bi-Cu-Ag合金、Sn-Ag-Cu-Sb合金、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Ag合金、Sn-Ag-Cu-Zn合金、およびそれらの組み合わせが挙げられる。フィラーは、共晶合金、非共晶合金、または純粋な金属であり得、また溶解性であり得る。溶融性フィラーは、50℃~250℃、あるいは150℃~225℃の範囲の融点を有し得る。
【0036】
これらのフィラーは市販されている。例えば、MgO粒子は、Denka,Japanから入手可能であり、異なる粒子サイズの酸化アルミニウムは、Denka,JapanからDAWシリーズの製品として市販されており、また、共に日本のShowa DenkoまたはSumitomo Chemical Co.から市販されている。ZRIはまた、酸化アルミニウムの商業的供給源でもある。酸化亜鉛は、例えば、American Zinc Recycling Corp.,Pittsburgh,PA,U.S.A.(KADOX(登録商標)という商標で)またはZochem LLC,Dickson,TN,U.S.A.から市販されている。AlN粒子は、日本のToyo AluminumまたはMaruwaから入手可能である。金属フィラーは、例えば、Indium Corp.,Utica,NY,U.S.A.、Arconium Specialty Alloys Company,Providence,RI,U.S.A.、およびAIM Metals & Alloys LP,Montreal,Canadaから入手可能である。アルミニウムフィラーは、例えば、Toyal America,Inc.(Naperville,IL,U.S.A.)およびValimet Inc.(Stockton,CA,U.S.A.)から市販されている。銀フィラーは、Metalor Technologies SA,Switzerlandから市販されている。
【0037】
熱伝導性組成物の総体積に対して、熱伝導性フィラーの全体としての好ましい体積比は、少なくとも70体積%、好ましくは80、85、90、95、または97体積%であるが、98体積%以下である。熱伝導性フィラー内では、MgOの量は、熱伝導性フィラーの総量に対して、少なくとも5体積%であり、15体積%以上、25体積%以上、40体積%以上、かつ同時に50体積%以下、55体積%以下、または65体積%以下であり得る。シリコーン組成物中のMgOの好ましい体積比は、シリコーン組成物の総量に対して、5~65体積%の範囲であり、10体積%以上、20体積%以上、30体積%以上、40体積%以上、かつ同時に、50体積%以下、60体積%以下、または64体積%以下であり得る。熱伝導性フィラー粒子の形状は特に限定されないが、丸い粒子は、組成物中の熱伝導性フィラーの高充填時に粘度が望ましくないレベルに増加するのを防ぐことができる。
【0038】
追加の配合成分
成分(A)が硬化性組成物であるとき、熱伝導性組成物は、(E)硬化性触媒および/または(F)硬化抑制剤をさらに含み得る。熱伝導性組成物は、(G)スペーサー、(H)安定剤、(I)顔料、(J)ビヒクル、(K)湿潤剤、および(L)難燃剤から選択される1つ以上の追加の配合成分をさらに含み得る。
【0039】
(E)硬化触媒成分(E)はヒドロシリル化反応を促進する触媒である。好適なヒドロシリル化触媒は、当技術分野で良く知られており、市販されている。成分(E)は、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、もしくはイリジウム金属、またはそれらの有機金属化合物、有機金属錯体、もしくは有機配位子、あるいはそれらの組み合わせから選択される白金族金属を含み得る。
【0040】
成分(E)は、成分(A)および(B)の総重量に対して、重量単位で、白金族金属の含有量が、一般に0.01ppm以上、0.1ppm以上、1ppm以上、2ppm以上、またはさらには5ppm以上であり、同時に、一般に1,000ppm以下、500ppm以下、200ppm以下、またはさらには150ppm以下であるような量で、使用される。
【0041】
(F)硬化抑制剤。成分(F)は、硬化性組成物の早期硬化を防止し、硬化速度を調整し、工業条件下での組成物の取り扱いを改善するための抑制剤である。さまざまな抑制剤は、当技術分野で知られている。硬化性熱伝導性シリコーン組成物中のそのような抑制剤の量は、硬化メカニズムに基づいて異なるが、成分(A)の0.0001~5重量%の範囲内であり得る。
【0042】
(G)スペーサー。成分(G)は、スペーサーであり、すなわち、熱伝導性のない粒子である。スペーサーは、有機粒子、無機粒子、またはそれらの組み合わせを含み得る。スペーサーは、少なくとも50μmから、少なくとも100μmから、または少なくとも150μmから、かつ同時に、最大125μmまたは最大250μmの範囲の粒子サイズを有し得る。スペーサーは、ガラスまたはポリマー(例えば、ポリスチレン)ビーズなどの単分散ビーズを含み得る。スペーサーの量は、粒子の分布、配置中に適用される圧力、および配置中の温度などのさまざまなファクターによって決まる。成分(G)を添加して、硬化性組成物の硬化生成物の結合線の厚さを制御することができる。熱伝導性シリコーン組成物は、少なくとも0.05重量%、あるいは少なくとも0.1重量%、かつ同時に最大1重量%、あるいは最大2重量%、最大5重量%、または最大15重量%の添加されたスペーサーを含有し得る。
【0043】
(H)酸化防止剤安定剤。成分(H)酸化防止剤安定剤は、0.001重量%~1重量%の範囲の量で熱伝導性シリコーン組成物に添加され得る。好適な安定剤は、当技術分野で知られており、市販されている酸化防止剤であり得る。好適な酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、およびフェノール系酸化防止剤と安定剤との組み合わせが挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、完全に立体障害のあるフェノール類および部分的に立体障害のあるフェノール類が挙げられる。安定剤としては、有機リン誘導体、例えば、三価有機リン化合物、ホスフィット、ホスホネート、およびそれらの組み合わせ;チオシナジスト、例えば、スルフィド、ジアルキルジチオカルバメート、ジチオジプロピオネート、およびそれらの組み合わせを含む有機硫黄化合物;ならびに立体障害のあるアミン、例えば、テトラメチル-ピペリジン誘導体が挙げられる。
【0044】
市販の安定剤としては、ビタミンE、およびBASF Corporation,Charlotte,North Carolina,USAからの、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)を含むIRGANOX(登録商標)1010が挙げられる。
【0045】
(I)顔料。好適な成分(I)顔料の例としては、容易に商業的に入手可能なカーボンブラックが挙げられる。顔料の量は、選択した顔料および所望の色の色合いを含むさまざまなファクターによって決まるが、存在するときには、顔料の量は、熱伝導性シリコーン組成物中のすべての配合成分の合計重量に基づいて、0.0001重量%~1重量%の範囲であり得る。熱安定剤成分(C)も、色(しばしば青または緑)を提供し得るが、成分(I)から特に除外される。
【0046】
(J)ビヒクル。追加の成分(J)は、溶媒または希釈剤などのビヒクルである。成分(J)は、例えば、混合および送達を助けるために、熱伝導性シリコーン組成物の調製中に添加され得る。成分(J)の全部または一部は、熱伝導性シリコーン組成物が調製された後にさらに除去され得る。成分(J)は有機溶媒であり得る。あるいは、成分(J)は、0.5cSt~10cSt、あるいは1cSt~5cStの範囲の粘度を有するポリジアルキルシロキサン流体(例えば、ポリジメチルシロキサン)であり得る。ビヒクルとして使用するのに好適なポリジメチルシロキサン流体は、当技術分野で知られており、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)からDOWSIL(商標)200流体およびOS流体の商品名で市販されている。ビヒクルの量は、成分(A)のオルガノポリシロキサンおよび成分(D)のフィラーの種類および量を含むさまざまなファクターによって決まるが、ビヒクルの量は、熱伝導性シリコーン組成物中のすべての配合成分の合計重量に基づいて、0.0001重量%~3重量%、あるいは0.0001重量%~1重量%の範囲であり得る。
【0047】
(K)湿潤剤。追加の成分(K)は、湿潤剤または界面活性剤である。好適な湿潤剤としては、湿潤剤として作用することが当技術分野で知られているアニオン性、カチオン性、および非イオン性界面活性剤が挙げられる。好適な界面活性剤としては、シリコーンポリエーテル、エチレンオキシドポリマー、プロピレンオキシドポリマー、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー、他の非イオン性界面活性剤、およびそれらの組み合わせが挙げられる。組成物は、組成物の重量に基づいて、最大0.05重量%の界面活性剤を含み得る。アニオン性湿潤剤は、TERGITOL(商標)No.7によって例示され、カチオン性湿潤剤は、TRITON(商標)X-100によって例示され、非イオン性湿潤剤は、TERGITOL(商標)NR 27によって例示され、これらはすべて、The Dow Chemical Company,Midland,Michiganから入手可能である。
【0048】
熱伝導性組成物の作製方法
上記の熱伝導性組成物は、遠心ミキサー(Hauschildから市販されている)またはBaker-Perkinsミキサーなどの任意の簡便な混合装置を使用して、好ましくは周囲温度(20~25℃)以上の温度で、すべての配合成分を混合することによって、作製することができる。
【0049】
熱伝導性組成物の用途
上記の熱伝導性組成物は、熱界面材料(TIM)として使用され得る。熱伝導性シリコーン組成物は、熱源と放熱器との間の熱経路に沿って挿入することができる。熱伝導性シリコーン組成物は、熱源(例えば、(光)電子部品)および放熱器に任意の順序でまたは同時に適用することによって挿入することができる。熱伝導性シリコーン組成物は、任意の簡便な手段によって、例えば、熱伝導性シリコーン組成物を、湿式分配、スクリーン印刷、ステンシル印刷、または溶媒流涎することによって、挿入することができる。
【0050】
本発明によるデバイスは、a)熱源、b)上記の熱伝導性シリコーン組成物、およびc)放熱器を含み、その熱伝導性シリコーン組成物は、熱源の表面から放熱器の表面まで延びる熱経路に沿って、熱源と放熱器との間に配置される。
【0051】
本明細書に記載の方法およびデバイスでは、熱源は、発光ダイオード(LED)、半導体、トランジスタ、集積回路(IC)、または分離デバイスなどの(光)電子部品を含み得る。放熱器は、ヒートシンク、熱伝導性プレート、熱伝導性カバー、ファン、循環冷却剤システム、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0052】
熱伝導性シリコーン組成物は、熱源(TIM1)と直接接触させて使用され得る。例えば、熱伝導性シリコーン組成物は、(光)電子部品およびヒートスプレッダーに任意の順序でまたは同時に適用することができる。あるいは、熱伝導性シリコーン組成物は、第1の放熱器および第2の放熱器(TIM2)と直接接触させて使用され得る。熱伝導性シリコーン組成物は、第1のヒートスプレッダー(例えば、金属カバー)およびその後の第2のヒートスプレッダー(例えば、ヒートシンク)へのいずれかに対して適用され得るか、または熱伝導性シリコーン組成物は、第2のヒートスプレッダーに対して、およびその後に第1のヒートスプレッダーに対して適用され得る。
【実施例】
【0053】
これらの実施例は、本発明を当業者に例示することを意図しており、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定することを必ずしも意図していない。熱伝導性シリコーン組成物のサンプルは、以下の配合成分を使用して調製する。使用される成分を、以下の表1に示す。成分(A)は(a-1)によって例示される。成分(B)は(b-1)、(b-2)、および(b-3)によって例示される。成分(C)は(c-1)によって例示される。成分(D-1)は、(d1-1)および(d1-2)によって例示される。成分(D-2)は、(d2-1)および(d2-2)によって例示される。成分(D-3)は、(d3-1)および(d3-2)によって例示される。
【表1】
【0054】
d1-1の粒子サイズは、走査型電子顕微鏡によって決定した。他のすべての粒子については、粒子サイズは、Beckman-CoulterカウンターLSを使用したレーザー回折法によって決定した。
【0055】
シリコーン組成物の調製-実施例で使用される成分の量を表2に示す。本発明のシリコーン組成物を調製するための成分を、Flack Tek Inc.からのSpeedMixer(商標)DAC 400.1FVZで混合した。熱安定剤(c-1)(銅フタロシアニン:CuPc)、シリコーンマトリックス成分(a-1)、および適切な表面処理剤(b-1、b-2、またはb-3)を計量し、SpeedMixerのカップに入れた。次いで、小さいサイズのフィラー(0.2μm)(d1-1)および中間サイズのフィラー(2μm)(d2-1)を計量し、カップに添加した。この混合物を、SpeedMixerによって混合した(1000rpmで20秒間、次いで1500rpmで20秒間)。混合後、大きいサイズのフィラー(>10μm)(d3-1、d3-2など)を計量し、添加し、次いで、同じ混合条件下でSpeedMixerによって混合した。得られたペーストをカップにこすり落とし、同じ混合条件下で上記のサイクルをさらに2回繰り返した。試験前に、サンプルを室温で一晩置いた。
【0056】
特性評価-熱伝導率(TC)は、Hot Disk transient technology sensor C5501(Hot Disk AB,Goteborg,Sweden)によって、2~5s/500mWの加熱時間および電力で測定した。各シロキサン組成物を2つのカップに充填し、平面センサーをカップの内側に配置した。器具のポイント50~150と50~190との間で選択された温度ドリフト補正および時間補正による、微調整された分析を使用した。
【0057】
押出速度(ER)は、Nordson EFD分配装置(Nordson Corporation,Westlake,Ohio,USA)によって測定した。サンプル材料は、30ccシリンジにパッケージし、0.62MPaの圧力で分配した。1分で分配されたサンプルの重量を、押出速度として使用した。
【0058】
表2に、本発明の実施例(Inv)および比較例(Comp)の熱伝導性シリコーン組成物の配合を体積比で示した。フィラーの総体積はすべてのサンプル間で一定に保った。
【0059】
【0060】
すべての実施例は、(D-1)フィラーとして0.2μmの酸化亜鉛(d1-1)および(D-3)フィラーとして129μmのMgO(d3-6)を含有していた。比較例5では、これらはプレミックス(d3-7)として提供した。本発明の実施例1は、(D-2)として2μmの球状Al2O3(d2-1)を含有していた。比較例3は、(D-2)として11μmのAlN(d2-2)を含有し、他のすべての比較例は、(D-2)を含有していなかったが、追加の(D-3)成分を含有していた。比較例はどれもグリースの形態へと配合することができず、それらはすべて粉末状となり、使用可能な一貫性(usable consistency)を有していなかった。実用例1は、優れた熱性能ならびに許容可能な流量を示した。
【0061】
次いで、熱伝導率を上げる試みとして、表3に示すようにMgOの量を増やした。
【0062】
【0063】
比較例6および7では、MgOが総フィラー体積の60体積%を構成しており、組成物のテクスチャーは、グリース形態ではなく粉末状になった。特に、MgOのみを使用した比較例7では、フィラー体積が他よりも少なかったにもかかわらず(75.46%対83%)、混合物は粉末になり、それ以上処理することができなかった。MgOの体積比を下げること(発明の実施例2および4)またはより多くの油を添加することによって(発明の実施例3)、総フィラー体積分率を下げると、組成物が粉末状になりすぎることが防止された。さらに、より大きなフィラーとしてMgOおよびAlNを組み合わせた発明の実施例5、6、および7は、それらの高いTC特性を維持しながら、改善された流量を実証した。
【0064】
材料の熱伝導率および流量という2つの重要な特性は、一般に矛盾する。しかしながら、成分比を最適化することによって、本発明者らは、熱伝導率および流量の両方が従来のAl2O3組成物よりも優れているMgO含有組成物を特定した。表4は、アルミニウム系である比較例8と、マグネシウム系である発明の実施例8を示している。
【0065】
【0066】
産業上の利用可能性
上記の熱伝導性組成物は、熱発生部分または熱保有部分から、デバイスのヒートシンクまたは放熱部分に熱を伝達するためのさまざまな電子デバイスにおける熱界面材料としての使用に好適である。その熱伝導性組成物は、以前はそのような使用のために対応することができなかった6W/m・Kを超えるより高いレベルの熱伝導性を提供し、熱伝達の効率および有効性を改善し、同時に、実用的な取り扱い可能性を提供する。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)オルガノポリシロキサン組成物と、
(B)フィラー処理剤と、
(C)熱安定剤と、
(D)熱伝導性フィラー
とを含む組成物であって、
前記熱伝導性フィラーが、
(D-1)
0.1~1μm
未満の
サイズの酸化亜鉛粒子、
(D-2)
球形の2~6μmのサイズのAl
2
O
3
粒子、
(D-3)
ほぼ球状の、平均サイズ100~150μmを有する酸化マグネシウム粒子、を含
み、
前記酸化マグネシウム粒子の総量は、前記熱伝導性フィラーの5~55体積%の範囲である、組成物。
【請求項2】
成分(A)が、
一般式(I)を有するオルガノポリシロキサンを含み、
R
1
3Si-(R
1R
2SiO)
a(R
1
2SiO)
b-R
3-SiR
1
3 (I)
式中、各R
1は、独立して、C1~C6アルキル基であり、各R
2は、アリール基であり、各R
3は、酸素原子または二価の炭化水素基から選択され、下付き文字aは、0であるか、または少なくとも1の平均値を有し、下付き文字bは、少なくとも1の平均値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(B)が、シリコーンおよび/またはシランを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
成分(B)が、アルキルトリアルコキシシランおよびトリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンからなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記トリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンが、さらにアルケニル末端封止されている、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
成分(B)が、n-デシルトリメトキシシラン、ならびに、ジメチルビニルシロキシ末端およびトリメトキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンから選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
成分(C)が、それに関連する金属を含むまたは含まないフタロシアニンである、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(G)スペーサー、(H)酸化防止剤安定剤、(I)顔料、(J)ビヒクル、または(K)湿潤剤、およびそれらの組み合わせから選択される追加の配合成分をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の組成物を、熱源と放熱器との間の熱経路に沿って挿入することを含む方法。
【請求項10】
前記熱源が、(光)電子部品を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
デバイスであって、
a)熱源と、
b)請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物と、
c)放熱器と、を含み、
前記組成物は、前記熱源の表面から前記放熱器の表面まで延びている熱経路に沿って、前記熱源と前記放熱器との間に配置されている、デバイス。
【国際調査報告】