(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-06
(54)【発明の名称】触媒物品、及び排気ガスの処理のためのその使用
(51)【国際特許分類】
F01N 3/28 20060101AFI20220330BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20220330BHJP
F02D 41/30 20060101ALI20220330BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20220330BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
F01N3/28 301B
B01J23/63 A ZAB
F02D41/30
F01N3/10 A
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021539622
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(85)【翻訳文提出日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 US2020019148
(87)【国際公開番号】W WO2020172489
(87)【国際公開日】2020-08-27
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ハイイン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、エリック
【テーマコード(参考)】
3G091
3G301
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【解決手段】 密結合された触媒物品、及び内燃機関のための排気システムにおけるその使用が開示される。排気ガスの処理用の密結合された触媒物品は、上流基材と下流基材とを備え、上流基材は、下流基材から離れて配置されており、上流基材は、第1の三元触媒(TWC)組成物を含み、下流基材は、第2のTWC組成物を含み、第1及び第2のTWC組成物はそれぞれ、酸素吸蔵成分(OSC)を含み、下流基材におけるOSCの担持量は、上流基材におけるOSCの担持量よりも大きく、少なくとも2.2g/in3である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスの処理用の密結合された触媒物品であって、前記物品は、上流基材と下流基材とを備え、
前記上流基材は、前記下流基材から離れて配置されており、
前記上流基材は、第1の三元触媒(TWC)組成物を含み、前記下流基材は、第2のTWC組成物を含み、前記第1及び第2のTWC組成物はそれぞれ、酸素吸蔵成分(OSC)を含み、
前記下流基材における前記OSCの担持量は、前記上流基材における前記OSCの担持量よりも大きく、少なくとも2.2g/in
3である、密結合された触媒物品。
【請求項2】
前記下流基材における前記OSCの前記担持量が、2.2~4g/in
3、好ましくは2.4~2.6g/in
3、及び最も好ましくは約2.5g/in
3である、請求項1に記載の密結合された触媒物品。
【請求項3】
前記上流基材における前記OSCの前記担持量が、0.5~2g/in
3、好ましくは1~1.5g/in
3、及び最も好ましくは約1.3g/in
3である、請求項1又は2に記載の密結合された触媒物品。
【請求項4】
前記上流基材における前記OSCの前記担持量が、前記下流基材における前記担持量よりも少なくとも0.4g/in
3低い、請求項1又は2に記載の密結合された触媒物品。
【請求項5】
前記上流基材が、前記下流基材から1~5cm、好ましくは2~3cm離れて配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の密結合された触媒物品。
【請求項6】
前記上流基材の体積と前記下流基材の体積との比が、2:1~1:2、好ましくは1.5:1~1:1.5、より好ましくは約1:1である、請求項1~5のいずれか一項に記載の密結合された触媒物品。
【請求項7】
前記下流基材におけるOSCの総含有量が、前記上流基材におけるOSCの総含有量よりも大きい、請求項1~6のいずれか一項に記載の密結合された触媒物品。
【請求項8】
前記第1及び/又は前記第2のTWC組成物がそれぞれ、支持体上のPd、Pt、及びRhから選択される1つ以上の白金族金属を含み、好ましくは、前記第1及び/又は第2のTWC組成物が、別個の層に提供されるPd及びRhを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の密結合された触媒物品。
【請求項9】
前記白金族金属に対する前記担体が、アルミナ、シリカ-アルミナ、アルミノ-シリケート、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-セリア、及びアルミナ-ランタンからなる群から独立して選択される、請求項8に記載の密結合された触媒物品。
【請求項10】
前記第1及び第2のTWCの前記OSCがそれぞれ独立して、セリア又はセリウム含有混合酸化物を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の密結合された触媒物品。
【請求項11】
前記第1及び第2のTWCの前記OSCがそれぞれ独立して、酸化セリウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の密結合された触媒物品。
【請求項12】
前記下流基材における総セリウム含有量が、前記上流基材における総セリウム含有量よりも大きい、請求項10又は11に記載の密結合された触媒物品。
【請求項13】
前記下流基材における総セリウム含有量が、前記上流基材における総セリウム含有量よりも少なくとも35%大きい、好ましくは少なくとも40%大きい、より好ましくは少なくとも45%大きい、請求項12に記載の密結合された触媒物品。
【請求項14】
第1及び第2基材が、それぞれ、フロースルーモノリスであり、好ましくは、コーディエライト、コーディエライト-αアルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、マグネシウムシリケート、ジルコン、ペタライト、α-アルミナ、又はアルミノシリケートを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の密結合された触媒物品。
【請求項15】
単一の缶又はハウジングに提供される、請求項1~14のいずれか一項に記載の密結合された触媒物品。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の密結合された触媒物品を含む、排気ガス処理システム。
【請求項17】
前記上流基材を横切る酸素レベルを監視するように配置された第1及び第2の酸素センサを更に備える、請求項16に記載の排気ガス処理システム。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の排気ガス処理システムを備えるガソリンエンジン。
【請求項19】
請求項17に記載の排気ガス処理システムを備える内燃機関からの排気ガスを処理する方法であって、前記エンジン内の空燃比を調整する手段を更に備え、前記方法が、
前記上流基材を横切る酸素レベルを監視することと、前記監視された酸素レベルの変化に応じて、前記空燃比を調整することとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気ガスの処理用の触媒物品に関する。具体的には、本開示は、内燃機関からの排気ガスを処理するための、密結合されたTWC触媒物品に関する。
【0002】
三元触媒(three-way catalyst、TWC)は、3つの同時反応を触媒することを意図している:(i)一酸化炭素の二酸化炭素への酸化、(ii)未燃炭化水素の二酸化炭素及び水への酸化;並びに(iii)窒素酸化物の窒素及び酸素への還元。典型的なTWC中の活性成分は、高表面積酸化物上に担持された白金、パラジウム、及びロジウム、並びに酸素吸蔵成分のうちの1つ以上を含む。
【0003】
3つの反応は、TWCが化学量論的点で又はその付近で作動するエンジンから排気ガスを受け取ると、最も効率的に生じる。当該技術分野において周知のように、内燃機関において燃料が燃焼したときに放出される一酸化炭素(CO)、未燃炭化水素(HC)、及び窒素酸化物(NOx)の量は、主に燃焼筒内の空燃比に影響を受ける。化学量論的にバランスのとれた組成を有する排気ガスは、酸化ガス(NOx及びO2)及び還元ガス(HC及びCO)の濃度が実質的に一致しているものである。この化学量論的にバランスのとれた排気ガス組成物を生成する空燃比は、典型的には14.7:1として与えられる。
【0004】
排気ガスの酸化ガスと還元ガスとの間の組成バランスを定義する方法は、排気ガスのラムダ(λ)値であり、これは、実際のエンジン空燃比/化学量論的エンジン空燃比として定義することができる。λ値が1は、化学量論的にバランスされた(又は化学量論的)排気ガス組成物を表す。λ値が>1は、過剰のO2及びNOxを表し、組成物は「リーン」として記載される。λ値が<1は、過剰のHC及びCOを表し、組成物は「リッチ」として記載される。空燃比が生成する排気ガス組成に応じて、エンジンが「化学量論的」、「リーン」又は「リッチ」として動作する空燃比を指すこともまた、当該技術分野において一般的である。
【0005】
TWCを使用したNOxのN2への還元は、排気ガス組成物が化学量論的にリーンであるときは効率が低下することを理解されたい。同様に、TWCは、排気ガス組成物がリッチであるとき、CO及びHCを酸化する能力が低くなる。したがって、課題は、TWC内の排気ガスの組成を、可能な限り化学量論的組成物に近いまま維持することである。
【0006】
排気ガス組成が設定点よりわずかにリッチな場合、未反応CO及びHCを消費するため、すなわちガス組成物をより化学量論的にするために少量の酸素が必要とされる。逆に、排気ガスがわずかにリーンになると、過剰な酸素を消費する必要がある。これは、排気組成がわずかにリッチな場合に酸素を放出し、排気組成がわずかにリーンな場合に酸素を吸収する酸素吸蔵成分(oxygen storage component、OSC)の開発によって達成された。最新のTWCにおける最も一般的に使用されるOSCは、酸化セリウム(CeO2、セリアとも呼ばれる)又はセリウムを含有する混合酸化物、例えば、Ce/Zr混合酸化物である。
【0007】
異なるTWC触媒を、同じ若しくは異なるブリック上で、又はゾーニングによってのいずれかで組み合わせることが知られている。米国特許第6497851号では、上流触媒及び下流触媒を有する排気ガス処理装置を開示している。上流触媒は、酸素吸蔵成分を実質的に含まない触媒材料を有する。下流触媒は、少なくとも炭化水素の酸化に有効な触媒材料を有し、耐熱金属酸化物担体及び酸素吸蔵成分上に分散された1つ以上の触媒金属成分を含む。上流触媒から酸素吸蔵成分を排除することにより、上流触媒中のCO酸化量が低減されるので、運転温度が低下する。したがって、上流触媒の耐久性を向上させることができる。
【0008】
米国特許第8640440号では、内燃機関の排気ガスから微粒子を除去するための触媒活性微粒子フィルタを開示している。フィルタは、2つの層からなる触媒活性コーティングを有し、両方の層は活性アルミナを含む。第1の層のアルミナは、パラジウムで触媒活性化される。第2の層は、ロジウムと、酸素吸蔵セリウム/ジルコニウム混合酸化物と、を含む。第1の層は、流入排気ガスと直接接触し、第2の層は、流出排気ガスと直接接触している。
【0009】
米国特許第7922988号では、上流ゾーン及び下流ゾーンを有する触媒材料を有する排気ガス処理システムを開示している。触媒材料は、キャリア、内側層、及び外側層を含む。内側層は、担体及びパラジウム成分を含む。上流ゾーンにおいて、触媒材料の内側層は、第1の酸素吸蔵成分を含む。下流ゾーンにおいて、触媒材料の内側層は、第2の酸素吸蔵成分を含む。第2の酸素吸蔵成分は、第1の酸素吸蔵成分よりも多い量で存在する。
【0010】
エンジンが定常状態にあるとき、空燃比が化学量論的であることを確実にすることは比較的容易である。しかしながら、エンジンが車両を推進するために使用される場合、必要とされる燃料量は、運転者がエンジンにかける負荷要求に応じて一時的に変化する。これにより、三元変換のために化学量論的な排気ガスが生成されるように空燃比を制御することが特に困難になる。排気ガス酸素(EGO)(又はλ)センサからの排気ガス組成物に関する情報を受け取るエンジン制御ユニット、いわゆる、閉ループフィードバックシステムを使用することによって、空燃比を制御することが知られている。このようなシステムの特徴は、空燃比の調節に関連するタイムラグがあるため、わずかにリッチな化学量論的(又は制御セット)点とわずかにリーンとの間で、空燃比が振動する(又は摂動する)ことである。この摂動は、空燃比及び応答周波数(Hz)の振幅によって特徴付けられる。空燃比を制御するための閉ループフィードバックシステムにおいて使用される排気ガス酸素センサは、米国特許第4202301(A)号で説明されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、従来技術の欠点を解決する改善されたTWC触媒を提供すること、又は少なくともそれに商業的に有用な代替物を提供することが目的である。より具体的には、空燃比を調整するためのタイムラグにもかかわらず、排気ガスの効率的な処理を可能にするTWC触媒を提供することが目的である。
【0012】
したがって、本発明の第1の態様では、排気ガスの処理用の密結合された触媒物品であって、この物品は、上流基材と下流基材とを備え、
上流基材は、下流基材から離れて配置されており、
上流基材は、第1の三元触媒(TWC)組成物を含み、下流基材は、第2のTWC組成物を含み、第1及び第2のTWC組成物はそれぞれ、酸素吸蔵成分(OSC)を含み、
下流基材における前記OSCの担持量は、上流基材におけるOSCの担持量よりも大きく、少なくとも2.2g/in3である、密結合された触媒物品を提供する。
【0013】
ここで、本発明を更に説明する。以下の節において、本発明の異なる態様は、より詳細に定義される。そのように定義された各態様は、別途明確に示されていない限り、任意の他の態様又は複数の態様と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0014】
本開示は、排気ガスの処理用の密結合された触媒物品に関する。本明細書で使用するとき、触媒物品は、排気ガスシステムの成分、特に排気ガスの処理用のTWC触媒を指す。本明細書に記載の触媒物品は、本明細書に記載の複数の下位成分を含む。
【0015】
「密結合された」とは、触媒物品がエンジンのエキゾーストマニホールドにごく近接して設置されることを意味する。すなわち、好ましくは、触媒物品は、車両の床下ではなく、エンジンベイ内に設置される。好ましくは、触媒物品は、エンジンマニホールドの下流に提供される第1の触媒物品である。密結合位置は、エンジンに近接することにより、非常に熱くなり得る。
【0016】
本発明者らは、上流基材から離れて配置された下流基材を提供することにより、炭化水素(HC)、NOx、及びCO排出物を、典型的には25%超低減することができることを発見した。下流基材は、上流基材のTWC組成物のOSC担持量よりも多い、少なくとも2.2g/in3のOSCを有するTWC組成物を備えている。下流基材から離れて配置された上流基材を提供することによって、酸素センサを使用して、上流基材を横切る酸素レベルを監視することができる。次いで、上流基材を横切る酸素レベルに基づいて、排気ガスの空燃比を正確に調整することができる。調整に関連するタイムラグにより、下流基材に入るガスは、上流基材によって処理されなかった過剰なNOx又はHC/COを依然として有し得る。下流基材のTWCでは、少なくとも2.2g/in3のOSCが提供される。このOSCの担持量は、エンジンからの排気ガスの空燃比が補正される前に、望ましくない種が排気システム内に更に放出されることを回避するために、十分な酸素が吸収/放出されることを可能にする。したがって、触媒物品は、空燃比を調整するためのタイムラグにもかかわらず、排気ガスの効率的な処理を可能にする。
【0017】
触媒物品は、上流基材及び下流基材を含み、これらはそれぞれTWC触媒組成物を含む。上流は、使用時に、エンジンを出る排気ガスの流れに対して、基材がエンジンマニホールドに近いことを意味する。同様に、各基材は、使用時にエンジンマニホールドにより近いため「上流」の端部を有する。これは、エンジンを出る排気ガスが、上流基材の上流端とまず接触することを意味する。下流基材の下流端は、排気ガスが触媒物品を出て排気システムを通って進行する場所である。
【0018】
上流基材及び下流基材のそれぞれは、(例えば、排気ガスが通過するための)複数のチャネルを含んでもよい。上流基材及び下流基材のそれぞれは、金属又はセラミック基材であってもよい。
【0019】
上流基材及び下流基材のそれぞれは、モノリスであってもよい。モノリスは、当該技術分野において周知である。各モノリスは、ディーゼル排気などの燃焼エンジン排気ガスから微粒子を濾過するのに好適なフロースルーモノリス又はフィルタリングモノリスであってもよい。
【0020】
好ましくは、上流基材及び/又は下流基材はそれぞれ、フロースルーモノリスである。フロースルーモノリスは当該技術分野において周知であり、典型的には、排気ガスが使用中に流れる複数のチャネルを含む。チャネルは、排気ガスを処理するための触媒材料を備えている。チャネルは、排気ガスを処理することができる触媒の表面積を増加させるための多孔質壁を有してもよい。好ましくは、フロースルーモノリスは、コーディエライト、コーディエライト-αアルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、マグネシウムシリケート、ジルコン、ペタライト、α-アルミナ、又はアルミノシリケートを含む。基材は、30~70%(例えば45~65%)又は35~60%などの20~75%の多孔率を有し得る。
【0021】
好ましくは、触媒物品は、単一の缶又はハウジング内に提供される。すなわち、上流基材及び下流基材は、それらの配置方向及び間隔がガス流に対して維持され得るように、単一の構成要素として互いに対して保持される。これは、確実な酸素検知のために特に重要である。あるいは、上流基材及び下流基材は、別個のハウジング内に提供され得る。
【0022】
上流基材は、下流基材から離れて配置されている。好ましくは、上流基材は、下流基材から1~5cm、好ましくは2~3cm離れて配置されている。距離は、上流基材の下流面と下流基材の上流面との間のガス流経路に関連して測定される。この間隔は、触媒物品の寸法を最小化するのを助け、同時に、信頼性の高い酸素検知測定値を得ることができる。
【0023】
第1及び第2の基材は、それらの体積に関連して説明することができる。好ましくは、上流基材は、上流基材と下流基材との相対サイズ比が2:1~1:2、好ましくは3:2~2:3、最も好ましくは約1:1であるように、下流基材と同様の体積を有する。
【0024】
上流基材は、第1の三元触媒(TWC)組成物を含み、下流基材は、第2のTWC組成物を含む。TWC組成物は当該技術分野において周知であり、特定の成分は当業者によって容易に選択され得る。TWCは、典型的には、典型的にセリアを含む酸素吸蔵成分(OSC)と共に、高表面積支持体上に提供される1つ以上の白金族金属(PGM)を含む。TWC組成物は、概ね、基材上にウォッシュコートで提供される。
【0025】
OSCは、多価状態を有し、酸化条件下で酸素若しくは亜酸化窒素などの酸化剤と能動的に反応することができ、又は還元条件下で一酸化炭素(CO)若しくは水素などの還元剤と反応するエンティティである。好適な酸素吸蔵成分としては、セリウム含有種、例えば、セリア又はセリウム含有混合酸化物が挙げられる。プラセオジムはまた、OSCとして含まれ得る。好ましくは、OSCは、1つ以上の混合酸化物を含むか、又はそれからなる。OSCは、セリア、又はセリウムを含む混合酸化物であり得る。OSCは、セリウム及びジルコニウムの混合酸化物;セリウム、ジルコニウム、及びネオジムの混合酸化物;プラセオジム及びジルコニウムの混合酸化物;セリウム、ジルコニウム、及びプラセオジムの混合酸化物;又はプラセオジム、セリウム、ランタン、イットリウム、ジルコニウム、及びネオジムの混合酸化物を含んでもよい。第1及び第2のTWCのOSCはそれぞれ独立して、セリア又はセリウム含有混合酸化物を含んでもよい。好ましくは、第1及び第2のTWCのOSCはそれぞれ独立して、酸化セリウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。
【0026】
下流基材におけるOSCの担持量は、上流基材におけるOSCの担持量よりも大きく、少なくとも2.2g/in3である。好ましくは、下流基材におけるOSCの担持量は、2.2~4g/in3、好ましくは約2.4~約2.6g/in3、及び最も好ましくは約2.5g/in3である。好ましくは、上流基材におけるOSCの担持量は、約0.5~約2g/in3、好ましくは約1~約1.5g/in3、及び最も好ましくは約1.3g/in3である。好ましくは、下流基材におけるOSCの担持量は、上流基材における担持量よりも少なくとも0.4g/in3高い。より好ましくは、下流基材におけるOSCの担持量は、上流基材におけるOSCの担持量よりも少なくとも1g/in3高い。
【0027】
上流基材内のOSCの担持量が0.5g/in3未満であるとき、上流基材のTWC特性は、エンジンがリッチ又はリーンで動作しているときに、排気ガスの処理を行うには不十分であり得る。上流基材におけるOSCの担持量が1.5g/in3を超えると、特許請求される構成のコスト効果が低減される。
【0028】
下流基材におけるOSCの担持量が2.2g/in3未満であると、下流基材は、酸素吸蔵が不十分であるため、エンジン化学量論の変化に好適に応答することができない場合がある。上流基材におけるOSCの担持量が4g/in3を超えると、下流基材を製造するコスト及び複雑性が望ましくないほど高くなる。
【0029】
基材上の触媒成分の総含有量は、基材体積及び触媒成分の担持量を参照することによって決定することができる。好ましくは、下流基材におけるOSCの総含有量(すなわち総質量)は、上流基材におけるOSCの総含有量よりも大きい。
【0030】
第1及び第2のTWCのOSCがそれぞれ独立して、セリア又はセリウム含有混合酸化物を含む場合、下流基材における総セリウム含有量(すなわち、存在するセリウム原子の総質量)は、上流基材における総セリウム含有量よりも大きくてもよい。好ましくは、下流基材における総セリウム含有量は、上流基材における総セリウム含有量よりも少なくとも35%大きい、より好ましくは少なくとも40%大きい、最も好ましくは少なくとも45%大きい。
【0031】
第1及び第2のTWC組成物はそれぞれ、酸素吸蔵成分(OSC)を含む。好ましくは、OSCを形成する成分は同じであるが、担持量は上記のように異なる。
【0032】
好ましくは、OSC成分及びPGMの担持量(以下で論じる)は別として、製造の複雑性を低減するために、第1及び第2のTWCは、実質的に同じであってもよい。
【0033】
好ましくは、第1及び/又は第2のTWC組成物はそれぞれ、支持体上のPd、Pt、及びRhから選択される1つ以上の白金族金属(PGM)を含み、好ましくは、第1及び/又は第2のTWC組成物が、別個の層に提供されるPd及びRhを含む。パラジウム成分とロジウム成分とは、200:1~1:200の重量比を有してもよい。好ましくは、パラジウム成分とロジウム成分とは、100:1~1:100の重量比を有する。より好ましくは、パラジウム成分とロジウム成分とは、50:1~1:50の重量比を有する。最も好ましくは、パラジウム成分とロジウム成分とは、15:1~1:15の重量比を有してもよい。好ましくは、第1のTWC組成物は、第2のTWC組成物よりも高いパラジウムの担持量を有する。
【0034】
PGMに対する担体は、アルミナ、シリカ-アルミナ、アルミノ-シリケート、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-セリア、及びアルミナ-ランタンからなる群から独立して選択されてもよい。好適な支持体は、当該技術分野において周知である。好ましくは、高表面積担体は、少なくとも70m2/g、例えば、少なくとも80m2/g、少なくとも150m2/g、又は少なくとも200m2/gの表面積を有する。
【0035】
更なる態様によれば、本明細書に記載されるような、密結合された触媒物品を含む排気ガス処理システムが提供される。
【0036】
所望により、排気システムはまた、更なる触媒又はフィルタなどの追加の構成要素を含むことができる。更なる構成要素の例としては、NOxトラップ、炭化水素トラップ、選択的触媒還元(SCR)触媒、触媒スートフィルタ(CSF)、選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒、アンモニアスリップ触媒(ASC)、ガソリン微粒子フィルタ(GPF)、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。このような構成要素は、当該技術分野において周知である。
【0037】
好ましくは、排気ガス処理システムは、上流基材を横切る酸素レベルを監視するように配置された第1及び第2の酸素センサを更に備える。すなわち、第1の酸素センサは上流基材の上流に位置し、第2の酸素センサは上流基材の下流に位置する。これは、上流基材中の処理前後で、排気ガスの酸素レベルを評価することができることを意味する。酸素センサは周知であり、任意の従来の酸素センサを好適に用いることができる。
【0038】
所望により、本明細書に記載の触媒物品を残した後、任意選択で、排気ガス流は、次いで、適切な排気管を介して排気システムの更なる構成要素に搬送され得る。
【0039】
一実施形態では、本明細書に記載の触媒物品を残した後、排気ガス流は、次いで、下流のNOxトラップに搬送されて、排気ガス流中の残りのNOx排出汚染物質を吸着させることができる。更なる排気管を通してNOxトラップから、NOxトラップの出口を受容するSCR触媒を配置して、NOxトラップによって生成された任意のアンモニアを、還元剤としてアンモニアを使用して窒素及び水を形成するための窒素酸化物を還元する選択的触媒還元触媒で、更なる排出を処理することができる。SCR触媒から、排気管は、テールパイプ及びシステム外に導くことができる。
【0040】
更なる態様によれば、本明細書に記載される排気ガスシステムを備えるガソリンエンジンが提供される。更に、本開示は、本明細書に記載されるエンジンを備える、乗用車などの車両を含むことができる。
【0041】
更なる態様によれば、本明細書に記載される排気ガス処理システムを備える内燃機関からの排気ガスを処理する方法であって、エンジン内の空燃比を調整する手段を更に備え、この方法が、
上流基材を横切る酸素レベルを監視することと、監視された酸素レベルの変化に応じて、空燃比を調整することとを含む、方法を提供する。現代のガソリンエンジンでは、空燃比は、コントローラを使用してルーチン的に制御される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
これから、以下の非限定的な図に関連して本発明を説明する。
【
図2】
図2は、本明細書に記載の触媒物品を備える排気処理システムとエンジンとを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、排気ガス処理システムの一部を形成するハウジング5を備える触媒物品1を示す。ハウジング5は、上流ブリック10及び下流ブリック15(本明細書では上流基材及び下流基材とも呼ばれる)を収容する。ハウジング5は、概ね円筒形であり、上流及び下流ブリック10、15は、ハウジング5を充填するように対応して成形される。ハウジング5は、燃焼エンジン(
図1には図示せず)から排気ガスを受け取るための入口6を有する。ハウジング5は、排気ガス処理システム(例えば、炭化水素トラップなど)内を前方に進行する処理された排気ガスの出口7を有する。
【0044】
上流及び下流ブリック10、15は、コーディエライト製のモノリシックハニカムフロースルー基材である。上流ブリック10は、概ね平坦な円形の上流に面する面20と、概ね平坦な円形の下流に面する面25と、を有する。下流ブリック15は、概ね平坦な円形の上流に面する面30と、概ね平坦な円形の下流に面する面35と、を有する。上流ブリック10の下流に面する面25は、下流ブリックの上流に面する面35から間隔Xだけ離れて配置されている。
【0045】
上流ブリック10は、TWC組成物を含む。例えば、組成物は、Pd、Rh、アルミナ、及びOSC成分を含む。下流ブリック15はまた、TWC組成物を含む。例えば、組成物は、Pd、Rh、アルミナ、及びOSC成分を含む。上流ブリック10におけるOSC成分の担持量は、下流ブリック15における担持量よりも小さい。
【0046】
間隔Xは、約2~3cmである。上流ブリック10の下流に面する面25及び上流に面する面30は実質的に平行であるため、間隔Xは実質的に一定である。
【0047】
触媒物品1は、第1の酸素センサ40及び第2の酸素センサ45を含む。第1の酸素センサ40は、上流ブリック10の上流に位置する。第1の酸素センサ40はハウジング5の一部として示されているが、別個に上流に設けられてもよい。第2の酸素センサ45は、下流ブリック15の上流及び上流ブリック10の下流に位置する。
【0048】
酸素センサ40、45は、標準的なデバイスであり、センサに提示されるガス中に存在する酸素のレベルを判定するように働く。したがって、センサ40、45は、ハウジング5を通って流れるガスへのアクセスを必要とする。センサは、関連するガスを測定するために使用することができるという条件で、ハウジング5から離れていてもよい。間隔Xは、上流ブリック10と、酸素測定を行うことができる下流ブリック15との間に排気ガスの領域を提供する役割を果たす。
【0049】
図2は、触媒物品1とガス連通した内燃機関50を示す。触媒物品1は更に、排気ガス処理システム8の残部55とガス連通しており、排気ガス処理システム8は、少なくとも環境へ少なくとも環境への出口を含むが、他の触媒物品(ガソリン微粒子フィルタ、炭化水素トラップ、及び/又はSCR触媒)も含むことができる。
【0050】
使用中、燃焼エンジン50からの排気ガスは、エンジン50を出て、触媒物品1に流れ、途中で第1の酸素センサ40を通過する。第1の酸素センサ40は、酸素レベルを監視し、この情報をエンジン50内の空気/燃料比のコントローラにリレーする。
【0051】
次いで、排気ガスは、上流ブリック10に接触し、そこで、TWC触媒は、排気ガスの少なくとも一部を処理する。次いで、排気ガスは、上流ブリック10を離れ、上流及び下流ブリック10、15の間の間隔Xに入る。第2の酸素センサ45は、酸素レベルを監視し、この情報をエンジン50内の空気/燃料比のコントローラに渡す。
【0052】
次いで、排気ガスは、下流ブリック15を通過し、そこで、TWC触媒は、排気ガスの少なくとも一部を処理する。次いで、排気ガスは、出口7から下流ブリック15を出て、排気ガス処理システム55の残部に入る。
【0053】
コントローラは、酸素センサ40、45から得られた酸素レベルデータに基づいて空気/燃料比を操作する。提供される情報に基づいて、空気/燃料比は、エンジン内で動的に制御されて、望ましくないリーン状態又はリッチ状態に対処することができる。第2の酸素センサ45の後の下流ブリック15の存在により、空気/燃料比が調節されている間、触媒物品1が任意のリッチ又はリーンピークを平滑化することができる。
【0054】
ポジティブ点火エンジンを操作するために必要な燃料噴射制御は、高圧コモンレール燃料噴射システムを通じて得られ、エンジンはガソリン直噴(gasoline Direct Injection、GDI)エンジン、あるいは火花点火直噴(spark ignition direct injection、SIDI)又は燃料層状噴射(Fuel Stratified Injection、FSI)と呼ばれる。
【実施例】
【0055】
これから、以下の非限定的な実施例に関連して、本発明を説明する。
【0056】
3つの触媒物品(実施例1~3)を、ガソリンエンジンからの排気ガスの処理における性能について試験した。物品はそれぞれ、TWC触媒でウォッシュコートされた2つの触媒ブリックが提供された。ブリックはコーディエライトで作製され、同じサイズ及び多孔率を有した。各触媒物品において、2つのブリックの間の間隔は1インチ(25.4mm)であった。
【0057】
上流触媒ブリックは、3つの触媒物品のそれぞれにおいて同一であった。各実施例では、上流ブリックを、CeZr混合酸化物をOSCとして用いて三元(Pd-Rh)触媒でウォッシュコートし、Pd及びRhを別個の層に提供した。各上流ブリックは、総ウォッシュコート担持量、総OSC担持量、及び総セリウム担持量がそれぞれ、2.75g/in3、1.3g/in3、及び750g/ft3であり、PGM比(Pt:Pd:Rh)は0:63:6.5g/ft3であった。
【0058】
下流ブリックをそれぞれ、CeZr混合酸化物をOSCとして用いて三元(Pd-Rh)触媒でウォッシュコートし、Pd及びRhを別個の層に提供し、PGM比(Pt:Pd:Rh)は0:27:6.5g/ft3であった。しかしながら、各実施例では、下流ブリックにおけるOSC担持量を変更した。
【0059】
実施例1(比較)では、下流ブリックは、総ウォッシュコート担持量、総OSC担持量、及び総セリウム担持量がそれぞれ、2.75g/in3、1.3g/in3、及び750g/ft3であった。
【0060】
実施例2(比較)では、下流ブリックは、総ウォッシュコート担持量、総OSC担持量、及び総セリウム担持量がそれぞれ、3.23g/in3、1.8g/in3、及び1100g/ft3であった。
【0061】
実施例3(本発明)では、下流ブリックは、総ウォッシュコート担持量、総OSC担持量、及び総セリウム担持量がそれぞれ、3.93g/in3、2.5g/in3、及び1400g/ft3であった。
【0062】
触媒物品(実施例1~3)は、150000マイル相当まで加速エージングを受けた。エージング後、触媒物品は、2018年式1.5L GTDI SULEV30準拠乗用車を使用して、連邦試験手順(FTP)に基づいて試験した。
【0063】
各場合の上流ブリックにわたって酸素レベルを測定し、空燃比を制御するために使用した。下流ブリックから出るNOx、非メタン炭化水素(NMHC)、及びCOのレベルを処理プロセス中に測定した。
【0064】
【0065】
上記の結果に示されるように、NMHC+NOx及びCO排出は、高いOSCレベルを有する後側触媒を用いて20%超低減することができる。これは、リーン/リッチスパイクが過剰なNOx又はHC/COと共にリアブリックに入る原因となる低速のA/F比フィードバックループに対処するのに役立つ。
【0066】
特に明記しない限り、本明細書における全ての百分率は、重量によるものである。
【0067】
本発明の好ましい実施形態について詳細に説明してきたが、本発明の範囲又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、変形がなされ得ることが当業者には理解されるであろう。
【国際調査報告】