(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-06
(54)【発明の名称】IL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220330BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220330BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220330BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20220330BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220330BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220330BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220330BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220330BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220330BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220330BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220330BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220330BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220330BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20220330BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220330BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220330BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220330BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220330BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220330BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220330BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C07K16/46
C07K16/24
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P37/06
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P17/06
A61P19/00
A61P29/00
A61P25/00
A61P13/12
A61P1/04
A61P27/02
A61K39/395 U
A61K39/395 D
A61K47/68
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546752
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(85)【翻訳文提出日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 KR2020005213
(87)【国際公開番号】W WO2020218791
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】10-2019-0049177
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519039227
【氏名又は名称】ワイ-バイオロジクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ボン・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ヨン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ギ・スン・ベク
(72)【発明者】
【氏名】ソク・ホ・ヨ
(72)【発明者】
【氏名】ブム-チャン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ウ・パク
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC07
4C076EE41
4C076EE59
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB17
4C085CC01
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、IL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体及びその用途に関するものである。本発明による二重標的抗体またはその抗原結合断片は、IL-17A及びTNF-αに対して高い特異性を示し、既存の単一標的抗体に比べて優れた中和能を示すだけではなく、IL-17とTNF-αとを同時抑制して迅速に炎症及び免疫反応を抑制するので、投与容量は減少しつつも、治療効果は増進される利点がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-17A(interleukin-17A)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片及びTNF-α(tumor necrosis factor-alpha)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含むIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体であって、
前記IL-17Aに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、
(i)配列番号1または配列番号8の重鎖CDR1;配列番号2、配列番号4、配列番号9及び配列番号11で構成された群から選択される重鎖CDR2;及び配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号10で構成された群から選択される重鎖CDR3と、
(ii)配列番号12の軽鎖CDR1;配列番号13の軽鎖CDR2;及び配列番号14の軽鎖CDR3を含むことを特徴とするIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体。
【請求項2】
前記IL-17Aに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2、及び配列番号3の重鎖CDR3;
配列番号1の重鎖CDR1、配列番号4の重鎖CDR2、及び配列番号5の重鎖CDR3;
配列番号1の重鎖CDR1、配列番号4の重鎖CDR2、及び配列番号6の重鎖CDR3;
配列番号1の重鎖CDR1、配列番号4の重鎖CDR2、及び配列番号7の重鎖CDR3;
配列番号8の重鎖CDR1、配列番号9の重鎖CDR2、及び配列番号10の重鎖CDR3;または
配列番号8の重鎖CDR1、配列番号11の重鎖CDR2、及び配列番号10の重鎖CDR3を含むことを特徴とする請求項1に記載のIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体。
【請求項3】
前記IL-17Aに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、配列番号15ないし配列番号26で構成された群から選択される重鎖可変領域Framework Region(FR)を含むことを特徴とする請求項1に記載のIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体。
【請求項4】
前記IL-17Aに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号15のFR1、配列番号16のFR2、配列番号17のFR3及び配列番号18のFR4;
配列番号19のFR1、配列番号16のFR2、配列番号20のFR3及び配列番号21のFR4;
配列番号22のFR1、配列番号23のFR2、配列番号24のFR3及び配列番号25のFR4;及び
配列番号22のFR1、配列番号26のFR2、配列番号24のFR3及び配列番号25のFR4で構成された群から選択される重鎖可変領域FRを含むことを特徴とする請求項3に記載のIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体。
【請求項5】
前記IL-17Aに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、配列番号27ないし配列番号33で構成された群から選択される軽鎖可変領域Framework Region(FR)を含むことを特徴とする請求項1に記載のIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体。
【請求項6】
前記IL-17Aに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号27のFR1、配列番号28のFR2、配列番号29のFR3及び配列番号30のFR4;または
配列番号31のFR1、配列番号32のFR2、配列番号33のFR3及び配列番号30のFR4の軽鎖可変領域FRを含むことを特徴とする請求項5に記載のIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体。
【請求項7】
前記IL-17Aに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号34ないし配列番号39で構成された群から選択される重鎖可変領域;及び
配列番号40または配列番号41の軽鎖可変領域を含むことを特徴とする請求項1に記載のIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体。
【請求項8】
TNF-αに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、
(i)配列番号54の重鎖CDR1、配列番号55の重鎖CDR2、及び配列番号56の重鎖CDR3;及び配列番号57の軽鎖CDR1、配列番号58の軽鎖CDR2、及び配列番号59の軽鎖CDR3;
(ii)配列番号60の重鎖CDR1、配列番号61の重鎖CDR2、及び配列番号62の重鎖CDR3;及び配列番号63の軽鎖CDR1、配列番号64の軽鎖CDR2、及び配列番号65の軽鎖CDR3;
(iii)配列番号66の重鎖CDR1、配列番号67の重鎖CDR2、及び配列番号68の重鎖CDR3;及び配列番号69の軽鎖CDR1、配列番号70の軽鎖CDR2、及び配列番号71の軽鎖CDR3;または
(iv)配列番号72の重鎖CDR1、配列番号73の重鎖CDR2、及び配列番号74の重鎖CDR3;及び配列番号75の軽鎖CDR1、配列番号76の軽鎖CDR2、及び配列番号77の軽鎖CDR3を含むことを特徴とする請求項1に記載のIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体。
【請求項9】
TNF-αに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、
(i)配列番号78の重鎖可変領域及び配列番号79の軽鎖可変領域;
(ii)配列番号80の重鎖可変領域及び配列番号81の軽鎖可変領域;
(iii)配列番号82の重鎖可変領域及び配列番号83の軽鎖可変領域;または
(iv)配列番号84の重鎖可変領域及び配列番号85の軽鎖可変領域を含むことを特徴とする請求項1に記載のIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体。
【請求項10】
TNF-αに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、アダリムマブ(adalimumab、製品名:ヒュミラ)、ゴリムマブ(golimumab、製品名:シンポニー)、セルトリズマブ(certolizumab、製品名:シムジア)及びインフリキシマブ(infliximab、製品名:レミケード)で構成された群から選択されることを特徴とする請求項9に記載のIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体。
【請求項11】
IL-17Aに特異的に結合する抗体の重鎖及び軽鎖;及びTNF-αに特異的に結合する抗体の重鎖及び軽鎖を含み、前記IL-17Aに特異的に結合する抗体及びTNF-αに特異的に結合する抗体の重鎖不変領域C-末端が互いに連結されていることを特徴とする請求項1に記載のIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体。
【請求項12】
抗体-抗体間の連結は、リンカ(linker)によって連結されることを特徴とする請求項11に記載のIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体。
【請求項13】
IL-17Aに特異的に結合する抗体の抗原結合断片;及びTNF-αに特異的に結合する抗体の重鎖及び軽鎖を含み、前記TNF-αに特異的に結合する抗体の重鎖不変領域C-末端にIL-17Aに特異的に結合する抗体の抗原結合断片が連結されていることを特徴とする請求項1に記載のIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体。
【請求項14】
前記抗体の抗原結合断片は、単鎖可変領域断片(Single-chain variable fragment,scFv)であることを特徴とする請求項13に記載のIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体。
【請求項15】
抗体-断片間の連結は、リンカ(linker)によって連結されることを特徴とする請求項13に記載のIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体。
【請求項16】
請求項1~15のうち、いずれか1項に記載の二重標的抗体またはその抗原結合断片をコーディングする、ポリヌクレオチド。
【請求項17】
請求項16に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項18】
請求項17に記載のベクターに形質転換された、細胞。
【請求項19】
次の段階を含む請求項1~15のうち、いずれか1項に記載の二重標的抗体またはその抗原結合断片の製造方法:
(a)請求項18に記載の細胞を培養する段階;
(b)得られた細胞培養液からIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体またはその抗原結合断片を回収する段階。
【請求項20】
請求項1~15のうち、いずれか1項に記載の二重標的抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む、自己免疫疾患の予防または治療用医薬組成物。
【請求項21】
前記自己免疫疾患は、リウマチ関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、多発性硬化症、間質性線維症、全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎、クローン病、炎症性腸疾患、自己兔疫性眼疾患、児童関節炎、ベーチェット病、IL-1受容体拮抗剤の欠乏(DIRA)、TNF受容体関連周期性症侯群(TRAPS)、新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID)、家族性地中海熱(FMF)、及びクリオピリン関連周期熱症侯群(CAPS)で構成された群から選択されることを特徴とする請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
請求項1~15のうち、いずれか1項に記載の二重標的抗体またはその抗原結合断片、及びそれに結合された薬物を含む、抗体-薬物接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
TNF-α(tumor necrosis factor-alpha)は、活性化された大食細胞とCD4+ T細胞、NK細胞などの兔疫細胞で生産される炎症性サイトカインであって、兔疫細胞の調節を通じて炎症反応を調節する役割を行う。TNF-αは、一部腫瘍細胞に対して出血性壊死と細胞自然死を誘導し、T-細胞の増殖を促進し、B-細胞の分化と増殖とを促進して免疫反応を活性化させる(Biotherapy.3(2):103-11、1991)。TNF-αは、正常の免疫反応のために、重要なサイトカインであるが、体内TNF-αの過剰発現などの不均衡が発生する場合、多様な自己免疫反応が起こる。また、前炎症性サイトカインとして自己免疫反応が発生する部位に他のサイトカインを増加させることで、その症状を加速させる(Annu Rev Immunol. 14:397-440, 1996; Inflamm Bowel Dis. 5(2):119-33, 1999)。
【0003】
このような自己免疫疾患に対する治療及び緩和のために、多様なTNF-α抑制剤が開発されており、代表的な例として、インフリキシマブ(Infliximab;商品名:レミケード(Remicade))、アダリムマブ(Adalimumab;商品名:ヒュミラ(Humira))、エタネルセプト(Etanercept、商品名:エンブレル(Enbrel))などがある。しかし、自己免疫疾患患者の10-30%は、TNF-α抑制剤治療に効果がなく、TNF-α抑制剤治療に効果があった患者の約60%は、効果の減少が発生して容量の増加または、代替療法への転換が必要である(Rheumatology (Oxford). 46(7):1153-6, 2007; Ann Rheum Dis. 65(6):746-52, 2006)。
【0004】
IL-17(interleukin-17A)は、代表的な炎症性サイトカインであって、T helper17細胞と知られたTh細胞グループによって生産される(J Exp Med. 1;183(6):2593-603, 1996)。IL-17は、IL-17A、IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、及びIL-17Fの総6個familyからなっており、特に、IL-17FがIL-17Aと最も高い相同性を示す。IL-17AとIL-17Fは、それぞれ同形二量体をなすか、互いに結合した異形二量体を形成する。二量体を形成したIL-17は、受容体であるIL-17Rと結合するが、IL-17Rは、IL-17RA、IL-17RB、IL-17RC、IL-17RD、及びIL-17REの5種のsubtypeがある。IL-17が受容体であるIL-17Rと結合すれば、ケモカインを誘導する信号伝逹システムを活性化し、ケモカインは、単核球、好中球などの免疫細胞を炎症部位に誘導する。IL-17は、TNF-αとIL-1などと共に作用し、これらの信号伝逹システムが多様な自己免疫疾患発病メカニズムで確認される(J Invest Dermatol. 131(3):677-87, 2011; N Engl J Med. 27;361(9):888-98, 2009; J Invest Dermatol. 133(1):17-26, 2013)。
【0005】
IL-17媒介自己免疫疾患の治療及び緩和のためのIL-17抑制剤が開発され、医薬品として許可された。2015年1月、FDAで重症プラーク乾癬治療剤としてIL-17抑制単一クローン抗体であるセクキヌマブ(secukinumab;商品名:コセンティックス(Cosentyx))を許可した。
【0006】
特に、セクキヌマブ(secukinumab)は、第3相試験のうち、TNF-α抑制剤に不応する強直性脊椎炎患者を対象にして試したが、ASAS20反応率は、投与方式によって45.5%~58.8%であった。従来、TNF-α抑制剤未投与患者のASAS20反応率が投与方式によって60%、66.3%であったことと比較すれば、以前のTNF-α抑制剤の露出とは関係なく、活性強直性脊椎炎患者にセクキヌマブが効果を示した(2014 ACR/ARHP annual meeting, ABSTRACT NUMBER: 819)。しかし、依然として、ASAS20未反応率が40%であり、ASAS40未反応率が60%であるということは、当該疾患に対する改善された治療剤の必要性を示す。
【0007】
そのような理由によっで、強直性脊椎炎及び軸性脊椎関節炎などに対してTNF-α抑制剤及びIL-17抑制剤の優秀な効能を考慮して、効能を強化し、副作用の問題を扱うコンビネーション(combination)治療が期待されている(Rheumatology (Oxford). 55(suppl 2):ii38-ii42, 2016)。また、以前の抗TNF-α治療法または、抗IL-17治療法に対する単一標的抗体に不適切な反応を有する患者に対して、二重特異的薬物に転換する必要性が報告された(Rheumatology (Oxford). 2017 Oct 12)。
【0008】
このような結果に基づいて、単一サイトカインに対する抑制よりは、正常免疫系を大きく損傷させないレベルでTNF-αとIL-17とを同時抑制し、迅速に炎症及び免疫反応を抑制することが、効果的で持続的な治療方法として期待される。また、そのような治療法は、TNF-α抑制剤に反応性のない患者と、耐性が生じた患者にも、適用して効果を期待することができる。このために、TNF-αとIL-17に対する免疫抑制剤をそれぞれ投与する併用療法があるが、投与回数と容量の増加による不便さと、それぞれの薬剤を生産することで、増加する生産コストを考慮すれば、最小限の投与と費用の減少が期待される二重抗体を利用することが効率的である。
【0009】
そこで、本発明者は、IL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体を開発しようと鋭意努力した結果、IL-17A及びTNF-αを同時に特異的に抑制する効能に優れた二重標的抗体を製造し、そのような抗体が所望の治療効果を奏しつつも、副作用の発生を低めることを確認することで、本発明を完成するに至った。
【0010】
本背景技術部分に記載の前記情報は、単に本発明の背景に係わる理解を向上させるためのものであり、よって、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者において、既知の先行技術を形成する情報を含まない場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US2015-0147327A1
【特許文献2】US-2017-0218092A1
【特許文献3】KR10-2015-0113199A
【特許文献4】KR10-2011-0016958A
【特許文献5】KR10-2018-0095719A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、IL-17Aに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、及びTNF-αに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含むIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体を提供することである。
【0013】
また、本発明が解決しようとする課題は、前記二重標的抗体またはその抗原結合断片をコーディングするポリヌクレオチドを提供することである。
【0014】
また、本発明が解決しようとする課題は、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、前記ベクターに形質転換された細胞、及び前記二重標的抗体またはその抗原結合断片の製造方法を提供することである。
【0015】
また、本発明が解決しようとする課題は、前記二重標的抗体またはその抗原結合断片を含む自己免疫疾患の予防または治療用医薬組成物を提供することである。
【0016】
また、本発明が解決しようとする課題は、前記二重標的抗体またはその抗原結合断片を含む抗体-薬物接合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するために、本発明は、IL-17Aに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、及びTNF-αに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含むIL-17A、及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体であって、前記IL-17Aに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、(i)配列番号1または配列番号8の重鎖CDR1;配列番号2、配列番号4、配列番号9及び配列番号11で構成された群から選択される重鎖CDR2;及び配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号10で構成された群から選択される重鎖CDR3、及び(ii)配列番号12の軽鎖CDR1;配列番号13の軽鎖CDR2;及び配列番号14の軽鎖CDR3を含むことを特徴とする、IL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記二重標的抗体またはその抗原結合断片をコーディングするポリヌクレオチドを提供する。
【0019】
また、本発明は、前記ポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0020】
また、本発明は、前記ベクターに形質転換された細胞を提供する。
【0021】
また、本発明は、(a)前記細胞を培養する段階;及び(b)前記培養された細胞からIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体またはその抗原結合断片を回収する段階;を含む前記二重標的抗体またはその抗原結合断片の製造方法を提供する。
【0022】
また、本発明は、前記二重標的抗体またはその抗原結合断片を含む自己免疫疾患の予防または治療用医薬組成物、または、前記二重標的抗体またはその抗原結合断片を個体に投与する段階を含む自己免疫疾患の予防または治療方法を提供する。
【0023】
また、本発明は、前記二重標的抗体またはその抗原結合断片、及びそれに結合された薬物を含む抗体-薬物接合体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】二重抗体候補SDA-0070をGFC(ゲルろ過クロマトグラフィー)FPLC(Fast protein liquid chromatography)精製した後、SDS-PAGEで分析したものである。
【
図2A】SDA-0070がIL-17AとTNF-αのみに特異的結合性を示し、非特異的結合性のない二重抗体であることをELISAで分析したものである。
【
図2B】SDA-0070がIL-17AとTNF-αのみに特異的結合性を示し、非特異的結合性のない二重抗体であることをELISAで分析したものである。
【
図2C】SDA-0070がIL-17AとTNF-αのみに特異的結合性を示し、非特異的結合性のない二重抗体であることをELISAで分析したものである。
【
図3】SDA-0070のIL-17AとTNF-α二重結合ELISA結果を示したものである。
【
図4A】ヒトHT-29細胞でSDA-0070の中和能を評価したものである。
【
図4B】ヒトHT-29細胞でSDA-0070の中和能を評価したものである。
【
図4C】ヒトHT-29細胞でSDA-0070の中和能を評価したものである。
【
図5A】HEKブルー由来細胞でSDA-0070の中和能を評価したものである。
【
図5B】HEKブルー由来細胞でSDA-0070の中和能を評価したものである。
【
図6】ヒトHT-29細胞でSDA-0070の精製法による中和能を評価して同等性を評価したものである。
【
図7A】ヒトHT-29細胞でSDA-0070の臨時発現生産物と安定化細胞を介した大量生産物の効能同等性を評価したものである。
【
図7B】ヒトHT-29細胞でSDA-0070の臨時発現生産物と安定化細胞を介した大量生産物の効能同等性を評価したものである。
【
図7C】ヒトHT-29細胞でSDA-0070の臨時発現生産物と安定化細胞を介した大量生産物の効能同等性を評価したものである。
【
図8A】HEKブルー由来細胞でSDA-0070の臨時発現生産物と安定化細胞を介した大量生産物の効能同等性を評価したものである。
【
図8B】HEKブルー由来細胞でSDA-0070の臨時発現生産物と安定化細胞を介した大量生産物の効能同等性を評価したものである。
【
図9】SDA-0070のADCC分析のためのCD64結合力調査結果を示したものである。
【
図10】SDA-0070のADCC分析のためのCD16a結合力調査結果を示したものである。
【
図11】SDA-0070のADCC分析のためのBSA結合力調査結果を示したものである。
【
図12】SDA-0070のIL-17AとTNF-αに対する同時結合能を調査した結果である。
【
図13】商用RA-FLS細胞でSDA-0070のIL-17A、TNF-αに対する同時中和能評価結果を示したものである。
【
図14】商用RA-FLS細胞でSDA-0070のIL-17Aに対する中和能評価結果を示したものである。
【
図15】商用RA-FLS細胞でSDA-0070のTNF-αに対する中和能評価結果を示したものである。
【
図16A】患者由来RA-FLS細胞でHumira、SDA-0070、及びLY3114062のTNF-α及びIL-17Aに対する中和能評価結果をそれぞれ示したものである。
【
図16B】患者由来RA-FLS細胞でHumira、SDA-0070、及びLY3114062のTNF-α及びIL-17Aに対する中和能評価結果をそれぞれ示したものである。
【
図16C】患者由来RA-FLS細胞でHumira、SDA-0070、及びLY3114062のTNF-α及びIL-17Aに対する中和能評価結果をそれぞれ示したものである。
【
図17】C57BL/6マウスでSDA-0070のTNF-α及びIL-17Aに対する中和能を確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
取り立てて定義されない限り、本明細書で使用された全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野で熟練された専門家によって通常的に理解されることと同じ意味を有する。一般的に、本明細書で使用された命名法は、本技術分野でよく知られており、通常的に使用されるものである。
【0026】
本発明による二重標的抗体は、炎症性サイトカインであるTNF-αとIL-17Aをさらに効率的に抑制することで、自己免疫疾患を抑制する効能を有し、TNF-αとIL-17Aそれぞれの標的に対する結合能がある。特に、非漂的抗原タンパク質には全く結合せず、ただヒトTNF-αとヒトIL-17AまたはIL-17A/Fのみに特異的に結合する優れた特異性を示し、TNF-αのみを単独標的する抗体(ヒュミラ;Humira)、IL-17Aのみを単独標的する抗体(セクキヌマブ;secukinumab)及び既存のTNF-αとIL-17A二重抗体(LY3114062)に比べて優秀な効能を示す。
【0027】
したがって、本発明は、一観点において、IL-17Aに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片及びTNF-αに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含むIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体に関するものであって、
【0028】
前記IL-17Aに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、(i)配列番号1または配列番号8の重鎖CDR1;配列番号2、配列番号4、配列番号9、及び配列番号11で構成された群から選択される重鎖CDR2;及び配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号10で構成された群から選択される重鎖CDR3、及び(ii)配列番号12の軽鎖CDR1;配列番号13の軽鎖CDR2;及び配列番号14の軽鎖CDR3を含むことを特徴とするIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体に関するものである。
【0029】
本発明における用語、「二重標的抗体」は、1つ以上の標的に結合能または拮抗能を有する抗体を意味し、2個の互いに異なる標的に対する結合能または拮抗能を有する抗体が結合された形態または一標的に対する結合能を有する抗体と他の標的に対する拮抗能を有する物質が結合されている抗体を意味する。
【0030】
本発明の二重標的抗体の1つの標的である「IL-17A」タンパク質は、全ての種に由来するものでもあり、例えば、ヒト、サルのような霊長類由来のもの、またはマウス、ラットのようなげっ歯類由来のものなどでもある。IL-17は、リウマチ関節炎(Rheumatoid arthritis;RA)、乾癬(Psoriasis;PsA)、全身性エリテマトーデス、クローン病、多発性硬化症、全身性硬化症、ベーチェット病などの自己免疫疾患に係わる免疫システムの非正常的発現と関連している。
【0031】
本発明において用語、「抗体」は、多クローン抗体及び単クローン抗体をいずれも含み、2個の全長軽鎖及び2個の全長重鎖を有する完全な形態だけではなく、抗体分子の断片も含む。
【0032】
完全な形態の抗体は、2個の全長軽鎖及び2個の全長重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖とジスルフィド結合で連結されている。重鎖の不変領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)及びエプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスでガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)及びアルファ2(α2)を有する。軽鎖の不変領域は、カッパ(κ)及びラムダ(λ)タイプを有する。基本4鎖抗体単位は、2個の同じ軽鎖(L)及び2個の同じ重鎖(H)からなる異種4量体糖タンパク質である。軽鎖は、N-末端に可変領域(VL)を有し、次いで、その他の端部に不変領域を有する。重鎖は、N-末端に可変領域(VH)を有し、次いで、それぞれα及びγ鎖に対して3個の不変領域(CH)、及びμ及びεアイソフォームに対して4個のCH領域を有する。「可変」という用語は、可変領域の特定部分の配列が抗体間において大きく異なることを示す。可変領域は、抗原結合を媒介し、特定抗原に対する特定抗体の特異性を規定する。可変性は、軽鎖及び重鎖可変領域のいずれもで超可変領域(hypervariable region; HVR)、すなわち、CDR(complementarity determining region)と呼ばれる3個のセグメントに集中される。可変領域のさらに高度に保存された部分は、フレームワーク領域(Framework Region;FR)と呼ばれる。重鎖及び軽鎖可変領域は、N-末端からC-末端にFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4構造を有する。
【0033】
本明細書で使用される用語、「重鎖」は、抗原に対する特異性を与えるのに十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVH及び3個の不変領域ドメインCH1、CH2及びCH3を含む全長重鎖及びその断片をいずれも意味する。
【0034】
また、本明細書で使用される用語、「軽鎖」は、抗原に対する特異性を与えるのに十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVL及び不変領域ドメインCLを含む全長軽鎖及びその断片をいずれも意味する。
【0035】
抗体の抗原結合断片または抗体断片とは、抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab')2及びFvなどを含む。
【0036】
「Fv」断片は、完全な抗体認識及び結合部位を含有する抗体断片である。このような領域は、1個の重鎖可変ドメインと1個の軽鎖可変ドメインが、例えば、scFvで堅く事実上共有的に連合された二量体からなる。
【0037】
「Fab」断片は、軽鎖の可変及び不変ドメインと、重鎖の可変及び第1不変ドメイン(CH1)を含有する。F(ab')2抗体断片は、一般にヒンジシステインによってそれらのカルボキシ末端近くで共有的に連結される一対のFab断片を含む。
【0038】
「単鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含むが、これらドメインは、単一ポリペプチド鎖内に存在する。Fvポリペプチドは、ScFvが抗原結合のために目的とする構造を形成可能にするVHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカをさらに含みうる。
【0039】
一実施例において、本発明による抗体は、Fv形態(例えば,scFv)であるか、完全な抗体形態である。また、重鎖不変領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)またはエプシロン(ε)のうち、いずれか1つのイソ型からも選択される。例えば、不変領域は、ガンマ1(IgG1)、ガンマ3(IgG3)、またはガンマ4(IgG4)である。軽鎖不変領域は、カッパまたはラムダ型でもある。
【0040】
本発明の抗体は、単一クローン抗体、多特異的抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖Fvs(scFV)、単鎖抗体、Fab断片、F(ab')断片、ジスルフィド結合Fvs(sdFV)及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体、または、前記抗体のエピトープ結合断片などを含むが、それらに限定されるものではない。
【0041】
前記単一クローン抗体は、実質的に同質的抗体集団から収得した抗体、すなわち、集団を占めている個々の抗体が微量で存在する自然突然変異を除いては、同一のものを指称する。単一クローン抗体は、高度に特異的なので、単一抗原部位に対抗して誘導される。
【0042】
前記「ヒト化」形態の非ヒト(例えば、ミュリン)抗体は、非ヒト兔疫グロブリンに由来の最小配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、受容者の超可変領域からの残基を目的とする特異性、親和性及び能力を保有している非ヒト種(供与者抗体)、例えば、マウス、レット、ウサギまたは、非ヒト霊長類の超可変領域からの残基に代替させたヒト兔疫グロブリン(受容者抗体)である。
【0043】
前記「ヒト抗体」は、ヒト兔疫グロブリンに由来する分子であって、相補性決定領域、構造領域を含む抗体を構成する全てのアミノ酸配列全体がヒトの兔疫グロブリンで構成されていることを意味する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含んで当業者に公知された多様な技術を使用して製造することができる。ヒト抗体は、抗原試験接種に反応して抗体を生産するように変形されたが、その内因性ローカスが機能しないトランスジェニック動物、例えば、免疫処理されたゼノマウス(xenomouse)に抗原を投与して作製されうる。従来のイキセキズマブ(ixekizumab)は、ヒト化抗体であるが、本発明による抗体は、ヒト抗体である。
【0044】
重鎖及び/または、軽鎖の一部が特別な種に由来するか、特別な抗体分類または亜分類に属する抗体内の相応する配列と同一であるか、それと相同性である一方、残りの鎖は、さらに他の種に由来するか、さらに他の抗体分類または亜分類に属する抗体内の相応する配列と同一であるか、それと相同性である「キメラ」抗体(兔疫グロブリン)のみならず、目的とする生物学的活性を示す前記抗体の断片が含まれる。
【0045】
本明細書に使用されたような「抗体可変ドメイン」は、相補性決定領域(CDR)、及びフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む抗体分子の軽鎖及び重鎖部分を指称する。VHは、重鎖の可変ドメインを指称する。VLは、軽鎖の可変ドメインを指称する。
【0046】
「相補性決定領域」(CDR)は、抗原結合のために必要な存在である、抗体可変ドメインのアミノ酸残基を指称する。各可変ドメインは、典型的に、CDR1、CDR2、及びCDR3と確認された3個のCDR領域を有する。
【0047】
一実施例において、本発明による二重標的抗体またはその抗原結合断片において、前記IL-17Aに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2、配列番号3の重鎖CDR3;配列番号1の重鎖CDR1、配列番号4の重鎖CDR2、配列番号5の重鎖CDR3;配列番号1の重鎖CDR1、配列番号4の重鎖CDR2、配列番号6の重鎖CDR3;配列番号1の重鎖CDR1、配列番号4の重鎖CDR2、配列番号7の重鎖CDR3;配列番号8の重鎖CDR1、配列番号9の重鎖CDR2、配列番号10の重鎖CDR3;または配列番号8の重鎖CDR1、配列番号11の重鎖CDR2、配列番号10の重鎖CDR3を含んでもよい。
【0048】
「フレームワーク領域」(FR)は、CDR残基以外の可変ドメイン残基である。各可変ドメインは、典型的に、FR1、FR2、FR3、及びFR4として確認された4個のFRを有する。
【0049】
一実施例において、本発明による二重標的抗体またはその抗原結合断片において、前記IL-17Aに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、配列番号15ないし配列番号26で構成された群から選択される重鎖可変領域FRを含んでもよい。具体的に、配列番号15のFR1、配列番号16のFR2、配列番号17のFR3、及び配列番号18のFR4;配列番号19のFR1、配列番号16のFR2、配列番号20のFR3、及び配列番号21のFR4;配列番号22のFR1、配列番号23のFR2、配列番号24のFR3、及び配列番号25のFR4;及び配列番号22のFR1、配列番号26のFR2、配列番号24のFR3、及び配列番号25のFR4で構成された群から選択される重鎖可変領域FRを含んでもよい。
【0050】
さらに他の実施例において、本発明による二重標的抗体またはその抗原結合断片において、前記IL-17Aに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、配列番号27ないし配列番号33で構成された群から選択される軽鎖可変領域FRを含んでもよい。具体的に、配列番号27のFR1、配列番号28のFR2、配列番号29のFR3、及び配列番号30のFR4;または配列番号31のFR1、配列番号32のFR2、配列番号33のFR3、及び配列番号30のFR4の軽鎖可変領域FRを含んでもよい。
【0051】
前記CDR1ないしCDR3及びFRを含み、本発明による二重標的抗体またはその抗原結合断片において、前記IL-17Aに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、例えば、配列番号34ないし配列番号39で構成された群から選択される重鎖可変領域を含んでもよい。また、本発明による抗体またはその抗原結合断片は、例えば、配列番号40または配列番号41の軽鎖可変領域を含んでもよい。
【0052】
一実施例において、本発明による二重標的抗体またはその抗原結合断片において、前記IL-17Aに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、次の重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含んでもよい:
(i)配列番号34の重鎖可変領域及び配列番号40の軽鎖可変領域;
(ii)配列番号35の重鎖可変領域及び配列番号41の軽鎖可変領域;
(iii)配列番号36の重鎖可変領域及び配列番号41の軽鎖可変領域;
(iv)配列番号37の重鎖可変領域及び配列番号41の軽鎖可変領域;
(v)配列番号38の重鎖可変領域及び配列番号40の軽鎖可変領域;または
(vi)配列番号39の重鎖可変領域及び配列番号41の軽鎖可変領域。
【0053】
本発明の二重標的抗体の1つの標的である「TNF-α」は、活性化された大食細胞とCD4+ T細胞、NK細胞などの免疫細胞で生産される炎症性サイトカインで兔疫細胞の調節を通じて炎症反応を調節する役割を行う。前記TNF-αタンパク質は、全ての種に由来するものでもあり、例えば、ヒト、サルのような霊長類由来のもの、またはマウス、ラットのようなげっ歯類由来のものなどでもある。TNF-αによる免疫活性化は、リウマチ関節炎(Rheumatoid arthritis;RA)、強直性脊椎炎(ankylosingspondylitis)、炎症性章疾患(inflammatoryboweldisease、psoriasis)などの自己免疫疾患を媒介する。
【0054】
本発明による二重標的抗体において、TNF-αに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、TNF-αに結合してTNF-α活性を阻害する特性を有する抗体であれば、制限なしに使用可能であり、アダリムマブ(adalimumab;製品名ヒュミラ)、ゴリムマブ(golimumab;製品名シンポニー)、セルトリズマブ(certolizumab;製品名シムジア)及びインフリキシマブ(infliximab;製品名レミケード)で構成された群から選択されるもの、またはそれらの変異体が望ましいが、それに限定されるものではない。
【0055】
本発明による二重標的抗体において、TNF-αに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、(i)配列番号54の重鎖CDR1、配列番号55の重鎖CDR2、及び配列番号56の重鎖CDR3;及び配列番号57の軽鎖CDR1、配列番号58の軽鎖CDR2、及び配列番号59の軽鎖CDR3;(ii)配列番号60の重鎖CDR1、配列番号61の重鎖CDR2、及び配列番号62の重鎖CDR3;及び配列番号63の軽鎖CDR1、配列番号64の軽鎖CDR2、及び配列番号65の軽鎖CDR3;(iii)配列番号66の重鎖CDR1、配列番号67の重鎖CDR2、及び配列番号68の重鎖CDR3;及び配列番号69の軽鎖CDR1、配列番号70の軽鎖CDR2、及び配列番号71の軽鎖CDR3;または(iv)配列番号72の重鎖CDR1、配列番号73の重鎖CDR2、及び配列番号74の重鎖CDR3;及び配列番号75の軽鎖CDR1、配列番号76の軽鎖CDR2、及び配列番号77の軽鎖CDR3;を含むことが望ましい。さらに望ましくは、(i)配列番号78の重鎖可変領域及び配列番号79の軽鎖可変領域;(ii)配列番号80の重鎖可変領域及び配列番号81の軽鎖可変領域;(iii)配列番号82の重鎖可変領域及び配列番号83の軽鎖可変領域;または(iv)配列番号84の重鎖可変領域及び配列番号85の軽鎖可変領域;を含むものであるが、それに限定されるものではない。
【0056】
TNF-αに特異的な抗体の配列は、下記表1(重鎖CDR及び重鎖可変領域)及び表2(軽鎖CDR及び軽鎖可変領域)に記載された通りである。
【0057】
【0058】
【0059】
本発明の一実施例では、抗TNF-α抗体重鎖の核酸配列(配列番号86)の3'-末端にリンカを導入し、その後に最適化を通じて獲得した抗IL-17A VH及びVLを用いたscFv核酸配列(配列番号87)を連結した後、これを用いてHEK293F細胞でTNF-α及びIL-17Aの活性を同時に抑制する二重標的抗体を発現させた。
【0060】
前記二重抗体は、互いに異なる2つの種類の抗原(標的タンパク質)に結合することができる抗体であって、遺伝工学または任意の方法によって製造された形態でもある。本発明による二重抗体は、複数の抗体がリンカに連結された形態でもある。
【0061】
前記リンカは、2つの互いに異なる融合パートナ(例えば、生物学的高分子など)を水素結合、静電気的相互作用、ファンデルワールス力、二硫化結合、塩橋、疎水性相互作用、共有結合などを用いて連結することができる連結体を意味するが、具体的には、生理学的条件または、他の標準ペプチド条件(例えば、ペプチド精製条件、ペプチド保存条件)下で少なくとも1つの二硫化結合に参与することができる少なくとも1つのシステインを有し、単にそれぞれの融合パートナを連結する役割以外にも、融合パートナの間に一定サイズの間隔を与える役割を遂行するか、または融合体に柔軟性または強直性を提供するヒンジ(hinge)の役割を遂行することができる。前記リンカは、非ペプチドリンカまたはペプチドリンカでもあり、ペプチド結合、二硫化結合などによって直接連結されることをいずれも含んでもよい。
【0062】
前記ペプチドリンカは、複数のアミノ酸配列またはモチーフが繰り返された形態のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0063】
前記非ペプチドリンカは、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol;PEG)単独重合体、ポリプロピレングリコール単独重合体、エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテルのような生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸またはそれらの組合せでもある。具体的には、ポリエチレングリコール単独重合体でもあり、当該分野で既に知られているそれらの誘導体及び当該分野の技術レベルで容易に製造可能な誘導体も本発明の範囲に含まれうる。
【0064】
前記リンカを通じて直接または間接的に連結される部位は、特に制限されないが、Fc部分、Fab'、 F(ab')2、Fab、Fvなどでもある。
【0065】
本発明において、前記二重標的抗体は、IL-17Aに特異的に結合する抗体の重鎖及び軽鎖;及びTNF-αに特異的に結合する抗体の重鎖及び軽鎖を含み、前記IL-17Aに特異的に結合する抗体及びTNF-αに特異的に結合する抗体の重鎖不変領域C-末端が互いに連結されていることが望ましく、前記TNF-αに特異的に結合する抗体の重鎖不変領域C-末端にIL-17Aに特異的に結合する抗体の抗原結合断片が連結されていることが望ましいが、それに限定されるものではない。
【0066】
本発明による二重標的抗体において、前記抗体-抗体間の連結または、前記抗体-断片間の連結は、リンカによる結合、化学的直接結合または遺伝工学融合(genetic fusion)などの多様な方法によっても連結され、望ましくは、リンカ(linker)(配列番号88)による結合であるが、それに限定されるものではない。
【0067】
また、前記抗体の断片は、単鎖可変領域断片(Single-chain variable fragment,scFv)であることを特徴とする。
【0068】
本発明の具体的な実施例において、本発明者は、IL-17A遺伝子をクローニングしてIL-17A抗原タンパク質を製造し、これをライブラリファージと反応させてIL-17Aに特異的に結合するscFv-ファージを収得し、これを大膓菌に感染させて増幅させるパンニング過程を3回繰り返して遂行した。
【0069】
また、本発明者は、結合能が大きい3次パンニングした多クローンファージ抗体群から単一クローン抗体を選別し、そのELISA分析を遂行して単一クローン抗体をさらに選別した。このように選別した単一クローンファージの配列分析を通じて6種の単一クローン抗体のVH及びVLのCDR領域のパターン及びポリペプチド配列を確認した(表4及び表5)。
【0070】
前記選別した6種の単一クローンファージのうち、7H3C11FWのscFvを抗TNF-α単一抗体であるヒュミラ重鎖核酸配列の3’-末端にクローニングして、IL-17A及びTNF-αに二重特異的な抗体であるSDA-0070を製造した。このように作製された二重標的抗体は、ELISA分析を通じて、TNF-αとヒトIL-17AまたはIL-17A/Fのみに結合する結合特異性を確認し、IL-17AまたはTNF-α単一標的抗体及び既存のTNF-αとIL-17A二重抗体(LY3114062)に比べて特異的結合能及び中和能が顕著に優秀であることを確認した。
【0071】
したがって、本発明のIL-17A及びTNF-αに特異的に結合する二重標的抗体は、IL-17A及びTNF-αに同時に強い抗原結合能を有することを確認した。
【0072】
本発明の抗体または抗体断片は、特性が保持される限り、可変領域内での変異が起きた抗体または抗体断片も本発明の権利範囲に含まれる。そのような例として、可変領域でのアミノ酸の保存的置換(conservativesubstitution)が起きた抗体が挙げられる。保存的置換は、元のアミノ酸配列と類似した特性を有する他のアミノ酸残基への置換を意味するが、例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジンは、塩基側鎖を有しており、類似した特性を有し、アスパラギン酸とグルタミン酸は、酸側鎖を有するという点で、類似した特性を有する。また、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファンは、非電荷極性側鎖を有するという点で、特性が類似しており、アラニン、バリン、ロイシン、トレオニン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニンは、非極性側鎖を有しているという点で、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンは、芳香族側鎖を有しているという点で、類似した特性を有する。したがって、前述したように類似した特性を有するグループ内でアミノ酸置換が起きても、特に特性変化を示さないという点は、通常の技術者には自明なものなので、本発明による抗体の特性が保持される限り、可変領域内での保存的置換による変異が起きた抗体も本発明の権利範囲に含まれる。
【0073】
上述した生物学的均等活性を有する変異を考慮すれば、本発明の抗体または抗体断片のポリペプチド配列は、配列番号に記載の配列と実質的な同一性(substantial identity)を示す配列も含むと解釈される。前記の実質的な同一性は、前記本発明の配列と任意の他の配列を最大限対応するようにアラインし、当業界で通常用いられるアルゴリズムを用いてアラインされた配列を分析した場合に、少なくとも61%の相同性、より望ましくは、70%の相同性、さらに望ましくは、80%の相同性、最も望ましくは、90%の相同性、望ましくは、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上同じ配列を意味する。配列比較のためのアライメント方法は、当業界に公知されている。NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)は、NBCIなどから接近可能であり、インターネット上でblastp、blasm、blastx、tblastn、及びtblastxのような配列分析プログラムと連動して利用することができる。BLSATは、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/から接続可能である。このプログラムを用いた配列相同性比較方法は、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_help.htmlで確認することができる。
【0074】
本発明は、他の観点で、前記二重標的抗体またはその抗原結合断片をコーディングするポリヌクレオチドに関するものである。
【0075】
本発明の二重標的抗体またはその抗原結合断片をコーディングするポリヌクレオチドを分離して抗体またはその抗原結合断片を再組合的に生産することができる。ポリヌクレオチドを分離し、それを複製可能なベクター内に挿入してさらにクローニングするか(DNAの増幅)、またはさらに発現させる。これに基づいて、本発明は、さらに他の観点で前記ポリヌクレオチドを含むベクターに関するものである。
【0076】
「ポリヌクレオチド」は、複数の核酸を例として、DNA(gDNA及びcDNA)及びRNA分子を包括的に含む意味を有し、核酸で基本構成単位であるヌクレオチドは、自然のヌクレオチドだけではなく、糖または塩基部位が変形された類似体(analogue)も含む。本発明の重鎖及び軽鎖可変領域をコーディングするポリヌクレオチドの配列は変形されうる。前記変形は、ヌクレオチドの追加、欠失、または非保存的置換または保存的置換を含む。
一実施例において、本発明による二重標的抗体またはその抗原結合断片をコーディングするポリヌクレオチド、例えば、IL-17Aに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の重鎖可変領域をコーディングするポリヌクレオチドは、配列番号42ないし配列番号47で構成された群から選択され、軽鎖可変領域をコーディングするポリヌクレオチドは、配列番号48または配列番号49でもあり、TNF-α(tumor necrosis factor-alpha)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の重鎖領域をコーディングするポリヌクレオチドは、配列番号86でもあり、軽鎖領域をコーディングするポリヌクレオチドは、配列番号89でもある。
【0077】
本発明の核酸は、前記ヌクレオチド配列に対して実質的な同一性を示すヌクレオチド配列も含むと解釈される。実質的な同一性は、本発明のヌクレオチド配列と任意の他の配列を最大限対応付けてアラインし、当業界で通常用いられるアルゴリズムを用いてアラインされた配列を分析した場合、最小80%の相同性、さらに望ましくは、最小90%の相同性、最も望ましくは、最小95%の相同性、望ましくは、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の相同性を示すヌクレオチド配列を意味する。
【0078】
前記抗体を暗号化するDNAは、通常の過程を使用して(例えば、抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを暗号化するDNAと特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することで)容易に分離または合成することができる。前記DNAをさらにクローニングするか、発現させるために、多様なベクターを利用することができる。ベクター成分には、一般的に、次の1つ以上が含まれるが、それらに制限されない:信号配列、複製基点、1つ以上のマーカー遺伝子、増強因子要素、プローモーター、及び転写終結配列。
【0079】
本明細書において使用される用語、「ベクター」は、宿主細胞で目的遺伝子を発現させるための手段であって、プラスミドベクター;コズミドベクター;バクテリオファージベクター;及びアデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びアデノ随伴ウイルスベクターのようなウイルスベクターなどを含む。前記ベクターで抗体をコーディングする核酸は、プローモーターと作動的に連結されている。
【0080】
「作動的に連結」は、核酸発現調節配列(例えば、プローモーター、シグナル配列、または転写調節因子結合位置のアレイ)と異なる核酸配列との機能的な結合を意味し、これにより、前記調節配列は、前記異なる核酸配列の転写及び/または解読を調節することになる。
【0081】
原核細胞を宿主とする場合には、転写を進めることができる強力なプローモーター(例えば、tacプローモーター、lacプローモーター、lacUV5プローモーター、lppプローモーター、pLλプローモーター、pRλプローモーター、rac5プローモーター、ampプローモーター、recAプローモーター、SP6プローモーター、trpプローモーター及びT7プローモーターなど)、解読の開始のためのリボソーム結合部位及び転写/解読終結配列を含むことが一般的である。また、例えば、真核細胞を宿主とする場合には、哺乳動物細胞のゲノムに由来のプローモーター(例えば、メタロチオニンプローモーター、β-アクチンプローモーター、ヒトヘモグロビンプローモーター及びヒト筋肉クレアチンプローモーター)または哺乳動物ウイルスに由来のプローモーター(例えば、アデノウイルス後期プローモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプローモーター、SV40プローモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プローモーター、HSVのtkプローモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プローモーター、HIVのLTRプローモーター、モロニーウイルスのプローモーター、エプスタイン・バーウイルス(EBV)のプローモーター、及びロウスサコマウイルス(RSV)のプローモーター)が用いられ、転写終結配列としてポリアデニル化配列を一般的に有する。
【0082】
場合によって、ベクターは、それにより発現される抗体の精製を容易にするために、異なる配列とも融合される。融合される配列は、例えば、グルタチオンS-トレンスポラゼ(Pharmacia、USA)、マルトス結合タンパク質(NEB、USA)、FLAG(IBI、USA)及び6xHis(hexahistidine;Quiagen、USA)などがある。
【0083】
前記ベクターは、選択標識として当業界で通常用いられる抗生剤耐性遺伝子を含み、例えば、アンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ジェネティシン、ネオマイシン及びテトラサイクリンに対する耐性遺伝子がある。
【0084】
本発明は、さらに他の観点で、前記言及されたベクターに形質転換された細胞に関するものである。本発明の二重標的抗体を生成させるために使用された細胞は、原核生物、酵母または高等真核生物細胞でもあるが、それらに制限されるものではない。
【0085】
大腸菌(Escherichiacoli)、バチルス・サブチルス及びバチルス・チューリンゲンシスのようなバチルス属菌株、ストレプトマイセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)(例えば、シュードモナスプチダ(Pseudomonas putida))、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)及びスタフィロコッカス(Staphylococcus)(例えば、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylocus carnosus))のような原核宿主細胞を利用することができる。
【0086】
また、宿主細胞として動物細胞に対する関心が最も大きく、有用な宿主細胞株の例としては、COS-7、BHK、CHO、CHO-S、CHOK1、DXB-11、DG-44、CHO/-DHFR、CV1、COS-7、HEK293、BHK、TM4、VERO、HELA、MDCK、BRL3A、W138、HepG2、SK-Hep、MMT、TRI、MRC5、FS4、3T3、RIN、A549、PC12、K562、PER.C6、SP2/0、NS-0、U20S、またはHT1080でもあるが、それらに制限されるものではない。
【0087】
本発明は、さらに他の観点で、(a)前記形質転換された細胞を培養する段階;及び(b)得られた細胞培養液から前記二重標的抗体またはその抗原結合断片を回収する段階;を含む、前記二重標的抗体またはその抗原結合断片の製造方法に関するものである。
【0088】
前記細胞は、各種培地で培養することができ、培地としては、市販用培地を制限なしに使用可能である。当業者に公知されているその他の全ての必須補充物が適当な濃度に含まれる。培養条件、例えば、温度、pHなどが発現のために選別された宿主細胞と共に、既に使用されており、これは当業者に明白であろう。
【0089】
前記抗体またはその抗原結合断片の回収は、例えば、細胞培養液を遠心分離または限外ろ過して不純物を除去し、その結果物を、例えば、親和性クロマトグラフィーなどを用いて精製することができる。追加のその他精製技術、例えば、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどが使用されうる。
【0090】
本発明は、さらに他の観点で、前記二重標的抗体またはその抗原結合断片及びそれに結合された薬物を含む抗体-薬物接合体に関するものである。
【0091】
前記薬物には、化学物質、放射性核腫、免疫治療剤、サイトカイン、ケモキン、毒素、生物作用剤及び酵素阻害物質などが含まれる。例えば、本発明の抗体またはその断片は、抗癌剤と直接あるいは間接的に結合され、前記抗癌剤の例としては、アシビシン、アクラルビシン、アコダゾール、アクロニシン、アドゼレシン、アラノシン、アルデスロイキン、アロプリノールナトリウム、アルトレタミン、アミノグルテチミド、アモナファイド、アンプリゲン、アムサクリン、アンドロゲン、アングイジン、アフィジコリングリシネート、アサレイ、アスパラギナーゼ、5-アザシチジン、アザチオプリン、バチルスカルメットゲラン(BCG)、ベイカーズアンチフォル、β-2-ジオキシチオグアノシン、ビスアントレンHCl、ブレオマイシンサルフェート、ブスルファン、ブチオニスルフォキシミン、BWA773U82、BW 502U83/HCl、BW 7U85メシレート、セラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、クロロキノキサリン-スルホンアミド、クロロゾトシン、クロモマイシンA3、シスプラチン、クラドリビン、コルチコステロイド、コリネバクテリウムパルブム、CPT-11、クリスナトール、シクロシチジン、シクロホスファミド、シタラビン、シテンベナ、マレイン酸DABIS、ダカルバジン、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デアザウリジン、デクスラゾキサン、ジアンヒドロガラクチトール、ジアジコン、ジブロモズルシトール、ダイデムニンB、ジエチルジチオカルバミン酸、ジグリコールデヒド、ジヒドロ-5-アザシチジン、ドキソルビシン、エチノマイシン、エダトレキセート、エデルホシン、エフロルニチン、エリオット溶剤、エルサミトルシン、エピルビシン、エソルビシン、リン酸エストラムスチン、エストロゲン、エタニダゾール、エチオホス、エトポシド、ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フィルグラスチム、フィナステリド、酢酸フラボン、フロクスウリジン、リン酸フルダラビン、5’-フルオロウラシル、Fluosol(登録商標)、フルタミド、硝酸ガリウム、ゲムシタビン、酢酸ゴセレリン、ヘプスルファム、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ホモハリントニン、硫酸ヒドラジン、4-ヒドロキシアンドロステネジオン、ヒドロキシ尿素、塩酸イダルビシン、イホスファミド、4-イポメアノール、イプロプラチン、イソトレチノイン、ロイコボリンカルシウム、酢酸ロイプロイド、レバミゾール、ダウノルビシンリポソーム、リポソーム封入ドキソルビシン、ロムスチン、ロニダミン、メイタンシン、塩酸メクロレタミン、メルファラン、メノガリル、メルバロン、6-メルカプトプリン、メスナ、バチルスカルメットゲランのメタノール抽出物、メトトレキサート、N-メチルホルムアミド、ミフェプリストン、ミトグアゾン、マイトマイシン-C、ミトタン、塩酸ミトザントロン、単球/マクロファージ、コロニー刺激因子、ナビロン、ナフォキシジン、ネオカルチノスタチン、酢酸オクトレオチド、オルマプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パラ、ペントスタチン、ピペラジンジオン、ピポブロマン、ピラルビシン、ピリトレキシム、塩酸ピロキサントロン、PIXY-321、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、プレドニムスチン、プロカルバジン、プロゲスチン、ピラゾフリン、ラゾキサン、サルグラモスチム、セムスチン、スピロゲルマニウム、スピロムスチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌル、スラミンナトリウム、タモキシフェン、タキソテール、テガフール、テニポシド、テレフタラミジン、テロキシロン、チオグアニン、チオテパ、チミジン注射、チアゾフリン、トポテカン、トレミフェン、トレチノイン、塩酸トリフロペラジン、トリフルリジン、トリメトレキサート、TNF(tumornecrosisfactor)、ウラシルマスタード、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビンゾリジン、Yoshi 864、ゾルビシン、シトシンアラビノシド、エトポシド、メルファラン、タキソテール、及びタキソールなどが挙げられる。
【0092】
本発明は、さらに他の観点で、前記二重標的抗体またはその抗原結合断片、または、前記抗体-薬物接合体を有効成分として含む自己免疫疾患の予防または治療用組成物に関するものである。本発明は、例えば、(a)本発明による二重標的抗体またはその抗原結合断片、または、前記抗体-薬物接合体の薬剤学的有効量;及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む自己免疫疾患の予防または治療用薬剤学的組成物でもある。
【0093】
本発明は、さらに他の観点で、個体に必要な有効量で本発明による二重標的抗体またはその抗原結合断片、または、前記抗体-薬物接合体を投与する段階を含む自己免疫疾患の予防または治療方法に関するものである。
【0094】
前記自己免疫疾患は、リウマチ関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、多発性硬化症、間質性線維症、全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎、クローン病、炎症性腸疾患、自己兔疫性眼疾患、児童関節炎、ベーチェット病、IL-1受容体拮抗剤の欠乏(DIRA)、TNF受容体関連周期性症侯群(TRAPS)、新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID)、家族性地中海熱(FMF)、及びクリオピリン関連周期熱症侯群(CAPS)で構成された群から選択されうるが、それらに限定されるものではない。
【0095】
「予防」は、本発明による組成物の投与で自己免疫疾患を抑制させるか、進行を遅延させる全ての行為を意味し、「治療」は、自己免疫疾患発展の抑制、自己免疫疾患の軽減または完治を意味する。
【0096】
本発明の組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、薬剤学的組成物の製剤化に通用されるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、それらに限定されるものではない。本発明の組成物は、前記成分以外に潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁液剤、保存剤などをさらに含んでもよい。
【0097】
本発明において、「個体」は、本発明の二重標的抗体を投与して軽減、抑制または治療されうる状態または疾患を病んでいるか、そのような危険がある哺乳動物を意味し、望ましくは、ヒトを意味する。
【0098】
本発明において、「投与」は、ある適切な方法で個体に所定の物質を導入することを意味し、本発明の二重標的抗体を含む組成物の投与経路は、目的組織に到逹可能である限り、如何なる一般的な経路を通じても投与されうる。投与経路は、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与でもあるが、それらに制限されない。しかし、経口投与時、タンパク質は、消化されるので、経口用組成物は、活性薬剤をコーティングするか、胃での分解から保護されるように剤型化することが望ましい。また、本発明の薬剤学的組成物は、活性物質が標的細胞に移動可能な任意の装置によって投与されうる。
【0099】
本発明による組成物の適した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって多様であり、通常の熟練された医師であれば、所望の治療または予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方することができる。例えば、本発明の薬剤学的組成物の1日投与量は、0.0001-100mg/kg、例えば、1mg/kg~2g/kgの投与量で投与されうる。前記抗体またはその抗原結合断片は、単一または数回投与されうる。本明細書において用語「薬剤学的有効量」は、自己免疫疾患を予防または治療に十分な量を意味する。
【0100】
本発明の組成物は、個別治療剤で投与するか、他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤と順次にまたは同時に投与されうる。
【0101】
本発明の組成物は、当該発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施可能な方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/または賦形剤を用いて製剤化することで、単位容量形態に製造するか、または多容量容器内に入れて製造されうる。この際、剤型は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液の形態であるか、エキス剤、散剤、坐剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤の形態でもあり、分散剤または安定化剤をさらに含んでもよい。
【実施例】
【0102】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これら実施例は、ただ本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲が、これらの実施例によって制限されるものではない。
【0103】
実施例1:IL-17抗原発現及び精製
1-1:IL-17Aタンパク質発現ベクターの作製
IL-17Aの細胞外ドメイン遺伝子をクローニングするために、ヒトIL-17A cDNA(Sino biological、中国:配列番号50)を鋳型とし、表3に記載のプライマーを用いて重合酵素連鎖反応(polymerase chain reaction, PCR)を実施した。増幅されたPCR産物をN293Fベクターに挿入し、IL-17AのC-末端にHis-tagが融合されたタンパク質を発現するIL-17A-N293Fベクターを作製した。作製されたIL-17A-N293FベクターでDH5α大膓菌細胞を形質転換(transformation)させた後、アンピシリン(ampicillin)抵抗性菌株を選別した。sfiIとxhoI制限酵素による切断及びシーケンシグを通じてIL-17A-His遺伝子(配列番号51)の挿入如何を確認した。類似した方式で、マウスIL-17A-Hisを発現するベクターも製造した。
【0104】
【0105】
1-2:IL-17A抗原の発現及び精製
ヒトIL-17A-His(hIL-17A-His)またはマウスIL-17A-His(mIL-17A-His)抗原を生産するために、HEK293F細胞をfreestyle media (Gibco, cat. A13835)に5 x 105 cells/mlに接種した後、1日間培養し、1-1で製造されたIL-17A-N293FベクターをHEK293F細胞にPEI (polyethylenimine, Aldrich, cat. 408727)形質感染(transfection)した。プラスミドとPEIとを1:2(w/w)で混ぜてポリプレックス(polyplex)を形成させた後、細胞に形質感染させた。7日培養した細胞培養液をSDS-PAGE後、PVDF membraneでtransferして抗HisHRP抗体を処理し、ECL基質で発現を確認した。
【0106】
発現されたhIL-17A-HisとmIL-17A-His培養液をそれぞれNi-NTA columnで分離精製した後、SDS-PAGEしてCBR-250で染色することで、タンパク質を分析した。
【0107】
実施例2:IL-17抗体の選別
2-1.バイオパンニング
hIL-17Aに特異的に結合する抗体候補の選別のためにファージディスプレイ技術とヒトB細胞のnaive cDNAで構成されたYmax-nABLライブラリ(YBiologics、韓国)を用いた。
【0108】
実施例1で製造されたhIL-17A-Hisを免疫吸着チューブ(Immuno tube)にコーティングし、ライブラリファージを入れた後、室温で2時間反応させた後、1 X PBSTと1 X PBSで洗浄後、抗原に特異的に結合したscFv-ファージを溶出させた。溶出されたscFv-ファージを再び大膓菌に感染させて増幅させるパンニングを通じて陽性ファージのpoolを得て、1次パンニングで増幅されたファージを対象にしてPBST洗浄の回数を増加させたことを除いては、1次パンニングと同じ方法で2次と3次パンニングを反復遂行した。
1~3次のパンニングを通じて導出されたhIL-17Aファージ抗体poolのCFU確認時、3次パンニングのoutput CFUは、1~2次パンニングのoutput CFUよりも約10倍ほど増加したと確認された。
【0109】
2-2:IL-17Aに特異的な抗体選別
各ラウンドのパンニングを通じて得られた陽性ポリScFv-ファージ抗体poolに対して抗原特異性を調べるために、ポリファージELISA(enzyme linked immunoassay)を遂行した。パンニングに使用されたヒトIL-17A-His抗原、及びマウス抗原に対する交差結合有無を確認するためのマウスIL-17A-His抗原をコーティングした免疫プレート(immuno-plate)に各ラウンドで得られたファージpoolでダイレクトELISA (direct ELSIA)を遂行した。その結果、hIL-17A-His抗原に対する結合能が3次ポリScFv-ファージで主に増加し、3次パンニングの陽性ファージpoolに抗IL-17Aファージ抗体が増加したことを確認した。
3次パンニングの陽性ファージpoolからランダムに単一クローンが含まれたE.coliを選別して2xYT/C培養液が処理された96-ディープウェルプレート(96-deep well plate)で37℃ 300rpmでミドログ(mid-log)器で培養後、ヘルパーファージ感染を誘導した。6000rpm 10分間遠心分離して細胞をペレット化して上澄み液に存在する溶出されたモノscFvファージのみ獲得した。
【0110】
ヒトIL-17A-His、BSAをそれぞれ0.4ug/mlでMaxisorb 96well ELISAプレート(Nunc、Denmark)にコーティングし、3%脱脂牛乳が含まれたPBSTで遮断した後、前記で獲得されたモノscFvファージを各抗原がコーティングされたウェルに加えた。前記ELISAプレートは、PBST 0.05%で3回洗浄し、抗M13-HRP(Horse Radish Peroxidase)抗体をPBST 0.05%に希釈してウェルに加えて1時間反応させた。OPD (o-phenylenediamine dihydrochloride)基質を10分間処理して発色させた後、2N H2SO4を処理して反応を中止した。発色されたプレートをSpectraMax ELISA reader (Molecular device、米国)を用いて490nmで吸光度を測定した。その結果、対照抗原として使用されたBSAに結合する信号対比で、hIL-17A-hisに対する結合信号が最小3倍以上強い数十余種のモノscFvファージクローンを選別した。
【0111】
前記選別された単一クローンに対してDNA精製キット(Qiagen、ドイツ)を使用してファージミド(phage mid)DNAを分離した。分離されたDNAの塩基配列、重鎖及び軽鎖の配列を分析して配列が互いに異なる特異的クローンを確認した。次いで、親和性増進のための重鎖の変更を目的とする親和性成熟(affinity maturation)を進め、IL-17Aに特異的なscFvを選別した。IL-17Aに特異的な抗体の配列は、下記表4(重鎖CDR及び重鎖可変領域)及び表5(軽鎖CDR及び軽鎖可変領域)に記載された通りである。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
実施例3:IL-17AとTNF-αを標的とする二重抗体の製造
3-1:二重抗体生産
抗IL-17A抗体及び抗TNF-α抗体であるヒュミラを融合した二重抗体を製造するために、前記実施例2で製造した抗IL-17A抗体単一クローンのうち、7H3C11FWのscFvをヒュミラ重鎖核酸配列の3’-末端に連結し、それをSDA-0070と名付けた。
【0117】
抗TNF-α抗体であるヒュミラ(アダリムマブ)は、重鎖可変領域を含むアミノ酸配列(配列番号90)及び軽鎖可変領域を含むアミノ酸配列(配列番号91)に基づいて遺伝子合成を通じて製造した。次いで、抗TNF-α抗体であるヒュミラ重鎖の核酸配列(配列番号86)3'-末端にリンカを導入し、その後に最適化を通じて獲得された抗IL-17A VH及びVLを用いたscFv核酸配列(配列番号87)を連結した。このように製造された二重抗体重鎖アミノ酸配列は、配列番号92と示した。
【0118】
このような二重抗体をタンパク質として生産及び製造するために生産細胞としてHEK293Fを用いて臨時発現を誘導した。N293Fと名付けられたベクター内に前記二重抗体の核酸配列を挿入して作製したプラスミド構造体をポリエチレンイミンと混ぜてポリプレックスを形成し、HEK293F細胞に処理して形質感染させた後、フリースタイル(Gibco、米国)培地を用いて6日間培養した。培養液を8000rpmに遠心分離して細胞残骸を除去し、ボトルトップフィルター(bottle top filter: Millipore, Steritop-GP Filter Unit. Cat. No. SCGPS01RE)を用いて純粋培養液を獲得した。
【0119】
3-2:抗体の精製
培養液内に存在するTNF-α/IL-17A二重抗体を分離精製するために、1次精製としてProtein Aレジン(KANEKA、日本)を用いてaffinity精製した。空カラム(Bio-rad、BR731-1550)に4mlのProtein Aを入れた後、100mlのDPBS(LB001-02)でレジンをパッキング及び洗浄した。レジンが充填されたカラム内に培地を注入して1ml/分の流速で流した(Bio-Rad、EP-1 Econo pump、USA)。150mlのDPBSで洗浄後、0.1M glycine-HCl(pH 3.3)10mlで溶出した。溶出液に1M Tris-HCl(pH 9.0)を10%添加してpHを中和させ、Amicon Ultra-15(Millipore、UFC901096)を用いてDPBSでバッファを交換した。この過程を約3回繰り返した後、1ml程度に濃縮されたとき、中止し、濃度を確認した。濃度測定は、Epoch(Biotek、米国)を用いてUV定量した。
【0120】
高分子物質を除去するために、2次精製としてSuperdex200レジン(GE healthcare、米国)を用いたGel filtrationクロマトグラフィーを実施した。移動相であるDPBS(welgene、韓国)で2CV平衡化(equilibration)し、1次精製タンパク質を0.22μmシリンジフィルター(Millipore、SLGP033RB)でろ過した後、10mlだけsample loopにローディングした。ローディングされたタンパク質をカラムに注入し、目的分子に該当する分画をpoolingした。Poolingした分画は、Amicon Ultra-15(Millipore、UFC905096)を用いて濃縮し、0.22μmシリンジフィルター(Millipore、SLGP033RB)で滅菌ろ過した。
【0121】
3-3:SDS-PAGE及びHPLC
精製されたタンパク質を還元または非還元バッファと混合して準備した。タンパク質の分離のために、アクリルアミド分離ゲル(Translab、韓国)を各12%で作製してランニングタンク(BioRad、米国)に装着し、1Xランニングバッファを満たしてサンプル2μgをローディングした。分離ゲルには、タンパク質サイズマーカー(BioRad、米国)をローディングしたウェルを1つずつ含めた。ローディング終了後、ランニングタンクに(-)から(+)方向に電極を連結し、200Vで電気永動し、ローディングバッファのbrilliant blue染料がゲル末端に至るまで電気永動した。電気永動後分離ゲルをクマシブルー染め付け試薬で染色して脱色バッファで脱色した後、蒸溜水(Distilled water,D.W.)で残余試薬を除去し、マーカーと精製タンパク質分離様相を分析した(
図1)。ゲルろ過クロマトグラフィー(GFC)精製後、Size Exclusion(SE)-HPLCに分析して抗体を確認した。
【0122】
実施例4:二重抗体の結合特異性分析
二重抗体の抗原特異的結合特異性を確認するためにELISAを遂行した。ヒトIL-17AとマウスIL-17A(R&D system、米国)、マーモセットIL-17A(Sino biological、中国)、シノモルグスIL-17A、ヒトTNF-α(Peprotech、米国)、ヒトIL-17F(R&D system、米国)、ヒトIL-17A/F(R&D system、米国)、BSAをそれぞれ15nMで96ウェルプレートに37℃でO/Nコーティングした。以後、3%脱脂牛乳/PBST 0.05%にコーティングされていない部分を遮断させた後、66nM、6.6nM、0.6nMのIL-17A抗体をプレートに添加して37℃で1時間反応させ、抗ヒトFc-HRP(pierce、米国)を1:3000希釈して1時間反応させた。次いで、TMB基質(BD、米国)を10分処理して発色させた後、2N H2SO4を処理して反応を中止した。発色されたプレートをSunrise ELISA reader(TECAN、スイス)を用いて450nmで吸光度を測定した。
【0123】
その結果、ヒトTNF-α単一標的抗体とは異なって、二重抗体は、ヒトTNF-αだけではなく、ヒトIL-17Aと結合し、マーモセット、シノモルグス種及びヒトIL-17A/Fヘテロ二量体(heterodimer)に対する結合を保持していた(
図2A)。また、IL-17リガンドファミリに該当するIL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E及びヒトRAGE-his、ヒトErbB2-his、ヒトVEGF-his、ヒトCD93-His、ヒトHMGB1-Hisの非漂的抗原タンパク質に対する結合は現われていない(
図2B及び
図2C)。すなわち、本発明の抗体は、ヒトTNF-αとヒトIL-17AまたはIL-17A/Fにのみ結合が増進した非常に特異的な抗体であることを確認することができた。
【0124】
実施例5:ELISAを用いた二重抗体の2抗原同時結合能評価
二重抗体の標的であるIL-17AとTNF-αに対する同時結合能を分析するために、標的抗原TNF-αをコーティングし、残りの標的抗原IL-17Aを用いて検出する酵素免疫分析法を使用した。
【0125】
TNF-α(peprotech、米国)をDPBS(ウェルジン、韓国)に0.26μg/mlに希釈して96ウェルプレート(corning、米国)にウェル当たり100ul処理した後、4℃に16時間定置してコーティングした。洗浄バッファとしては、PBS-T(0.1% Tween20)を使用し、ブロッキングには、Skim milk(BDbiosciences、米国)をPBS-Tに3%に希釈して使用した。抗体試料を6.6nMから10倍ずつ段階希釈して660fMまで総5ポイント希釈し、希釈した抗体試料を96ウェルプレートにウェル当たり100ulずつ処理して25℃で1時間反応させた。IL-17A-His(ワイバイオロジックス、S0995)を2.25μg/mlに希釈してウェル当たり100ul処理し、25℃で1時間反応させた後、2次抗体で抗His-HRP(Thermofi sherscientific、米国)を1:5000に希釈してウェル当たり100ul処理して25℃で1時間反応させた。基質としては、TMB(sigma aldrich、米国)を使用し、ウェル当たり100ulずつ入れて20分反応させた後、2.5N H2SO4で基質反応を停止し、MultiskanTM GO Microplate Spectrophotometer (thermofisher scientific、米国)で450nmで吸光度を測定した。
【0126】
その結果、単一抗体では、結合反応が全く現われず、二重抗体は、濃度勾配によってTNF-αとIL-17Aの同時結合反応が現われた(
図3及び表6)。
【0127】
【0128】
実施例6:HT-29細胞分析を用いたSDA-0070陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)精製物の効能評価
試験のために使用したHT-29(Homo sapiens colorectal adenocarcinoma)(韓国細胞株銀行、韓国)は、ヒト大腸線癌腫由来細胞株であり、IL-17とTNF-αに反応じて多様な兔疫性サイトカインと兔疫性ケモカインであるCXCL-1(human GRO-α)などを分泌すると知られている。10%ウシ胎児血清(Gibco、米国)と1%抗生剤、Anti-anti (penicillin/streptomycin/anti-mycoplasma;Gibco、米国)が含まれたRPMI1640(hyclone、米国)培地を使用して3回以上継代培養した細胞を使用した。
【0129】
中和能試験は、IL-17Aに対する単独中和能、TNF-αに対する単独中和能、IL-17A、TNF-α同時中和能三種を遂行した。IL-17AまたはTNF-αを単独希釈するか、共に混ぜて希釈物を調剤し、抗体試料は、736pMで2倍ずつ希釈して0.36pMまで総12個濃度で最終処理されるように希釈した。各希釈された抗体と先立って作製した抗原希釈物を96ウェルプレートに混合して37℃で1時間反応させた。抗原-抗体反応が完了したプレートにトリプシン-EDTA処理して回収したHT-29細胞をウェル当たり7.5x104細胞で接種(seeding)し、37℃、5% CO2環境で48時間培養し、48時間後、細胞を除いた培養液を回収した。回収した培養液は、ELISA kit Human CXCL-1(R&D systems、米国)を用いて培養液内のCXCL-1濃度を測定することで、抗体の抗原に対する中和能を評価した。
【0130】
SDA-0070に対する中和能比較試験結果、単一標的抗体に比べて二重抗体のIL-17Aに対する中和能と、TNF-αに対する中和能が多少優秀であり、これにより、IL-17A、TNF-α同時中和能も優秀な傾向を示した(
図4A~
図4C及び表7)。下記表7は、HT-29細胞を用いたSDA-0070クローンの阻害能評価結果である。
【0131】
【0132】
実施例7:レポータ細胞分析を用いたSDA-0070 CEX精製物の効能評価
IL-17受容体であるIL-17RA及びIL-17RCを発現するHEK-BlueTM IL-17細胞株(In vivogen、米国)とTNF-α受容体であるTNFRI及びTNFRIIを発現するHEK-BlueTM TNF-α細胞株(In vivogen、米国)を使用し、IL-17AとTNF-αに対する中和能を評価した。HEKブルー細胞株の培養には、10%ウシ胎児血清(Gibco、米国)と1%抗生剤、Anti-anti (penicillin/streptomycin/anti-mycoplasma;Gibco、米国)が含まれたDMEM-HG(hyclone、米国)を使用し、各受容体とSEAP発現を保持する選択抗生剤としては、ゼオシン(zeocin;In vivogen、米国)が使用された。HEK-BlueTM IL-17細胞株には、抗生剤混合製品であるHEK-BlueTM Selection(In vivogen、米国)が追加的に使用された。実験に使用された全ての細胞は、最小3回以上継代培養したものを使用し、培養プレートで細胞回収時accutase(Merck Millipore、ドイツ)を使用した。IL-17A(R&D、米国)は、最終濃度0.6ng/ml、TNF-α(R&D、米国)は、最終濃度0.4ng/mlになるように、それぞれ抗原希釈物を作った。各抗体試料は、736pMで2倍ずつ希釈して0.36pMまで総12個濃度で最終処理されるように希釈した。希釈された抗体と抗原希釈物を96ウェルプレートで混合して37℃で1時間反応させた。抗原-抗体反応が完了したプレートにaccutaseで回収した HEK-BlueTM IL-17細胞とHEK-BlueTM TNF-α細胞をウェル当たり5x104細胞で接種(seeding)し、37℃、5% CO2環境で24時間培養し、24時間後、細胞を除いた培養液を回収した。回収した培養液にQUANTI-BlueTM培地(In vivogen、米国)溶液を入れ、37℃に培養し、発生する基質反応速度によって20分~60分内にMultiskanTM GO Microplate Spectrophotometer (thermofisher scientific 、米国)で622nmで吸光度を測定した。
【0133】
SDA-0070_CEX精製物に対するHEKブルー中和能比較試験結果、IL-17の単一標的抗体であるセクキヌマブ(secukinumab)対比で優秀な効能を示し、TNF-αの単一標的抗体であるヒュミラ(Humira)と類似した効能を示した(
図5A及び
図5B及び表8)。下記表8は、HEKブルー細胞株を用いたSDA-0070のIC50結果である。
【0134】
【0135】
実施例8:HT-29細胞分析を通じる精製法による物質効能同等性評価
8-1:陽イオン交換クロマトグラフィー精製
二重抗体に対する精製工程を改善するために、既存のゲルろ過クロマトグラフィー(GFC)カラム(GE healthcare、イギリス)外に陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)カラム(Thermofisher scientific poros、米国)を用いた。
【0136】
陽イオン交換クロマトグラフィーレジン(Thermo、米国)をカラムに充填した後、移動相Aであるsodium acetateバッファで平衡化されたAKTA Pure L(GE healthcare、米国)に連結し、5CVだけ移動相Aを流して平衡化した。1次精製産物は、移動相Aで透析し、0.22μmシリンジフィルター(Millipore、米国)でろ過して注入した。移動相Aを5CVだけ流して非付着タンパク質を除去し、濃度勾配による移動相B(移動相A+1M NaCl)を流しつつローディングされたタンパク質を溶出した。溶出液は、透析バッグ(Spectrumlabs)に入れてDPBS(welgene、韓国)で最小4時間間隔で2回透析した。透析したタンパク質は、amicon Ultra-15(Millipore、UFC905096)を用いて20mg/mL以上に濃縮し、0.22μmシリンジフィルター(Millipore、SLGP033RB)で滅菌ろ過した。
【0137】
8-2:精製法による中和能比較
GFCカラム(GE healthcare、イギリス)を使用した抗体試料精製物とCEXカラム(Thermofisher scientific poros、米国)を使用して精製した抗体試料精製物のHT-29細胞でのIL-17A、TNF-α同時中和能を比較して精製法の差が効能に影響を与えるかについての同等性評価を遂行した。
【0138】
試験のためにHT-29細胞株(Homo sapiens colorectal adenocarcinoma)(韓国細胞株銀行、韓国)を10%ウシ胎児血清(Gibco、米国)、1%抗生剤、Anti-anti (penicillin/streptomycin/anti-mycoplasma;Gibco、米国)が含まれたRPMI1640(Hyclone、米国)培地を使用して3回以上継代培養した細胞を使用した。
【0139】
IL-17A(R&D systems、米国)とTNF-α(R&D systems、米国)の希釈物を作り、抗体試料は、736pMで4倍ずつ希釈して0.7pMまで総6個濃度で最終処理されるように希釈した。希釈された抗体と抗原希釈物を96ウェルプレートに混合して37℃で1時間反応させた。抗原-抗体反応が完了したプレートにトリプシン-EDTA処理して回収したHT-29細胞をウェル当たり7.5x104細胞で接種(seeding)し、37℃、5% CO2環境で48時間培養し、48時間後、細胞を除いた培養液を回収した。回収した培養液をELISA kit Human CXCL-1(R&D、米国)を用いて培養液内のCXCL-1濃度を測定することで、抗体の各抗原に対する中和能を評価した。
【0140】
HT-29細胞に対する抗体試料のIL-17A、TNF-α同時中和能試験結果、GFCカラム精製試料とCEXカラム精製試料とのIL-17Aと、TNF-αに対する同時中和能が類似したレベルに保持されることが確認できた(
図6及び表9)。下記表9は、HT-29細胞を用いたGFC及びCEX精製法による効能を評価したものである。
【0141】
【0142】
実施例9:HT-29細胞分析を用いたHEK293及びCHO-S由来の試料間物質効能同等性評価
HEK293臨時発現システムで生産した抗体試料SDA-0070_CEXとCHO-S細胞株システムを通じて生産し、2次CEX精製を経た試料SDA-0070_RD1601を用いてHT-29細胞における中和能を評価し、生産細胞株による効能同等性を比較した。
【0143】
試験のためにHT-29細胞を10%ウシ胎児血清(Gibco、米国)と1%抗生剤、Anti-anti (penicillin/streptomycin/anti-mycoplasma;Gibco、米国)が含まれたRPMI1640(hyclone、米国)培地を使用して3回以上継代培養した細胞を使用した。中和能試験は、IL-17Aに対する単独中和能、TNF-αに対する単独中和能、IL-17A、TNF-α同時中和能の3種で遂行した。IL-17A単独中和能試験のためにIL-17A(R&D、米国)は、最終濃度3.75ng/mlに希釈し、TNF-αに対する単独中和能試験のために、TNF-α(R&D、米国)は、最終濃度1.17ng/mlになるように希釈した。IL-17A、TNF-α同時中和能試験のためにIL-17Aは、最終濃度2.5ng/ml、TNF-αは、最終濃度0.39ng/mlになるように希釈した。抗体試料は、736pMで2倍ずつ希釈して0.36pMまで総12個濃度で最終処理されるように希釈した。希釈された抗体と抗原希釈物を96ウェルプレートに混合して37℃で1時間反応させた。抗原-抗体反応が完了したプレートにトリプシン-EDTA処理して回収したHT-29細胞を接種(seeding)し、37℃、5% CO2環境で48時間培養し、培養液を回収した。回収した培養液は、ELISA kit Human CXCL-1(R&D、米国)を用いて培養液内のCXCL-1濃度を測定することで、抗体の抗原に対する中和能を評価した。
【0144】
同一クローンのHEK293臨時発現システム生産試料SDA-0700_CEXとCHO-S細胞株生産試料SDA-0070_RD1601との中和能比較試験の結果、IL-17とTNF-αに対する中和能に差が発生しなかった(
図7Aないし
図7C、及び表10)。下記表10は、HT-29細胞を用いた生産システム間の効能を比較したものである。
【0145】
【0146】
実施例10:レポータ細胞分析を通じるHEK293及びCHO-S由来の試料間物質効能同等性評価
HEK293細胞株臨時発現システムで生産した抗体試料SDA-0070_CEXとCHO-S細胞株システムを通じて生産した抗体試料SDA-0070_RD1601のHEKブルー由来細胞での中和能を評価し、生産細胞株による効能同等性を比較した。
【0147】
IL-17受容体IL-17RA及びIL-17RCを発現する HEK-BlueTM IL-17細胞株(In vivogen、米国)とTNF-α受容体TNFRI及びTNFRIIを発現するHEK-BlueTM TNF-α細胞株(In vivogen、米国)を使用してIL-17AとTNF-αに対する中和能を評価した。HEKブルー細胞株の培養には、10%ウシ胎児血清(Gibco、米国)と1%抗生剤、Anti-anti (penicillin/streptomycin/anti-mycoplasma;Gibco、米国)が含まれたDMEM-HG(hyclone、米国)使用し、各受容体とSEAP発現を保持する選択抗生剤としては、共通的にゼオシン(zeocin;In vivogen、米国)が使用された。HEK-BlueTM IL-17細胞株には、抗生剤混合製品であるHEK-BlueTM Selection(In vivogen、米国、hb-sel)が追加的に使用された。実験に使用された全ての細胞は、最小3回以上継代培養したものを使用し、培養皿で細胞回収時、accutase(MerckMillipore、ドイツ)を使用した。IL-17A(R&D、米国、7955-IL-025/CF)は、最終濃度0.6ng/ml、TNF-α(R&D、米国、210-TA-020/CF)は、最終濃度0.4ng/mlになるようにそれぞれ抗原希釈物を作り、各抗体試料は、736pMで2倍ずつ希釈して0.36pMまで総12個濃度で最終処理されるように希釈した。希釈された抗体と抗原希釈物を96ウェルプレートに混合して37℃で1時間反応させた。抗原-抗体反応が完了したプレートにaccutaseで回収したHEK-Blue IL-17細胞とHEK-Blue TNF-α細胞を接種(seeding)し、37℃、5% CO2環境で24時間培養し、24時間後、細胞を除いた培養液を回収した。回収した培養液にQUANTI-BlueTM培地(In vivogen、米国)溶液を入れて37℃に培養し、発生する基質反応速度によって20分~60分内にspectrophotometer(Thermofi sherscientific、米国、 MultiskanTM GO Microplate Spectrophotometer)で622nmで吸光度を測定した。
【0148】
同一クローンのHEK293臨時発現システム生産試料SDA-0070_CEXとCHO-S細胞株生産試料SDA-0070_RD1601間の中和能比較試験結果、細胞由来による2つのタンパク質の効能差は発生しなかった(
図8A及び
図8B、及び表11)。下記表11は、HEKブルー由来細胞を用いた各タンパク質の効能を比較したものである。
【0149】
【0150】
実施例11:ヒトFcRn抗原に対する抗体の親和度評価
Octet QK分析装備(Fortebio Inc、米国)を使用してヒトまたはサルFcRn(Sino biological、中国)抗原に対する抗体の親和度を測定した。Octet分析装備は、BLI(Bio-Layer Interferometry)原理を適用してバイオセンサー表面に結合されたタンパク質層の厚さ変化を測定することで、タンパク質とその他生物分子の結合状況をリアルタイムでモニタリングすることができる。
【0151】
ニッケルがコーティングされているNi-NTAバイオセンサー(Fortebio Inc、18-5101)を使用してタンパク質のC-末端にヒスチジン残基が結合されているヒトまたはサルFcRn-His抗原を固定させ、ここに濃度別に準備した抗体ヒュミラ及びSDA-0070をそれぞれ結合させて親和度を求めた。
【0152】
ヒトFcRnに対する全ての抗体の親和度調査結果、SDA-0070は、pH6.0での結合速度(Kon) 1.6X106 1/Msと正常IgG構造であるヒュミラと類似した結合速度を示し、解離速度(Kdis)は、1X10-3 1/s未満と低く現われた。KDは、わずかな解離速度(Kdis)差が反映され、ヒュミラは、6.4X10-10 Mレベルであり、SDA-0070は、5.0X10-10 Mレベルであった。pH7.4環境で解離速度(Kdis)は、SDA-0070がヒュミラと類似したレベルである5.83X10-3 1/sであった。また、サルFcRnでも、ヒトFcRnの結果と類似して分析された。二重抗体の構造差にもかかわらず、正常構造のIgGと類似したレベルのFcRn親和度を示した。下記表12は、SDA-0070とヒトFcRn、サルFcRn間のKinetic parameterを示したものである。
【0153】
【0154】
実施例12:ADCC主要タンパク質に対するSDA-0070の結合評価
SDA-0070の抗体依存性細胞障害作用(antibody-dependent cell mediated cytotoxicity; ADCC)における結合力を測定するためにIndirect-ELISAを実施した。ADCCは、ターゲット細胞の表面に結合した抗体のFc領域をNK細胞が認識し、その細胞をターゲットとして細胞毒性を示す現象である。NK細胞の表面にあるCD16、CD64などは、抗体のFcと結合して活性化信号を触発して感染細胞の細胞死滅を誘導することになる。
【0155】
SDA-0070のCD64とCD16に対する結合を評価するために、陽性条件抗体として、IgG1形態の抗体(Sigma aldrich、米国)1種とヒュミラ(Abbvie、米国)を使用した。陰性条件抗体として、IgG4(Sigma aldrich、米国)抗体1種を共に使用した。1μg/mlのヒト型組換えFcガンマRIIIA/CD16aタンパク質(R&D systems、米国)、ヒト型組換えFcガンマRI/CD64タンパク質(R&D systems、米国)とBSA(Sigma aldrich、米国)をDPBSを用いて100μlずつ96ウェルプレート(NUNC、96 well plat bottom)に処理して12時間以上反応させてコーティングした。結合を試す前記抗体群を1380nMから4倍段階希釈して100μlずつ処理して2時間反応させた。2次抗体Peroxidase-AffiniPure F(ab’)2 Fragment Goat Anti-Human IgG, F(ab’)2 Fragment Specific (Jackson Immune research、米国)を処理して1時間反応させた。TMBを処理して発色を確認し、H2SO4を処理して基質反応を停止させた後、450nmで分光光度計(Thermo Scinentific、米国)を用いて感知した。
【0156】
抗体群のFc部分がNK細胞由来のCD64に結合する程度を測定した結果、SDA-0070の結合力は、ヒュミラ及びIgG1対照群の結合力と同等なレベルであった(
図9)。
【0157】
また、抗体群のCD16aに対する結合力は、IgG1 control抗体の場合が最も優秀であり、次にSDA-0070とヒュミラ抗体が互いに類似していた(
図10)。BSA結合力においては、SDA-0070及び対照群抗体いずれもで反応がないことを確認した(
図11)。
【0158】
実施例13:SDA-0070のIL-17AとTNF-α同時結合能分析
下記のようにOCTETを用いてSDA-0070のTNF-αとIL-17Aに対する同時結合の様相をリアルタイムで確認した。
【0159】
Octet QK分析装備(Fortebio Inc、米国)を使用し、AHCバイオセンサー(Fortebio Inc、米国)に抗体がFc領域を通じて結合可能にした。SDA-0070を10ug/mlの濃度で1x Kinetics buffer(Fortebio Inc、米国)に希釈してAHCバイオセンサーにローディングして結合させた。センサーに結合されたSDA-0070は、安定化時間を通じて未結合状態を確認した。各条件によってTNF-α20nM(Peprotech、米国)またはKinetics bufferのみを処理してTNF-α結合をリアルタイムで比較し、以後、各条件によってIL-17A 15nM(R&D systems、米国)またはKinetics bufferのみを処理してIL-17A結合をリアルタイムで比較した。
【0160】
その結果、ELISAを使用して確認した結果と同様に、SDA-0070が2つの抗原を同時に認知して結合することをリアルタイム結果資料を通じて確認した(
図12)。
【0161】
実施例14:抗IL-17Aと抗TNF-α抗体中和能分析
TNF-αまたはIL-17Aによって炎症性サイトカインであるhIL-6発現が誘導される細胞と知られたRA-FLSの商用細胞(Cell application、米国)をヒト潤滑膜細胞(Synoviocyte)培地(Cell application、米国)が入っている96ウェル細胞培養プレートの各ウェルに2 x 104細胞で接種(seeding)し、37℃、5% CO2条件で24時間培養した。本実施例では、TNF-α単一標的抗体であるヒュミラ(Abbvie、米国)、IL-17A単一標的抗体であるセクキヌマブ(secukinumab;Novartis、スイス)、TNF-αとIL-17A二重抗体であるLY3114062(Eli lilly、WO2014137961、米国)と共にSDA-0070を評価した。1.87ng/mlのhTNF-α(R&D system、米国)、18.7ng/mlのhIL-17A(R&D system、米国)に抗IL-17Aであるセクキヌマブ抗体を17664pMから4倍ずつ段階希釈して混合し、SDA-0070、LY3114062または抗TNF-α抗体であるヒュミラは、4416pMから段階希釈して混合した後、混合物をそれぞれ37℃で1時間反応させた。
【0162】
混合物を前記で培養されたRA-FLS細胞に処理し、24時間、共に培養した。その後、培養液のみ取ってhIL-6測定用ELISA kit(R&D system、米国)に処理し、hIL-6発現量を分光光度計(MultiskanGO、Thermo Scinentific、米国)を用いて測定した。
【0163】
その結果、SDA-0070二重抗体が単一抗IL-17抗体または単一抗TNF-α抗体処理群に比べてさらに優秀なIL-6分泌阻害能を示すと確認された(
図13~
図15、及び表13~表15)。
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
実施例15:患者由来RA-FLS細胞を用いたSDA-0070のIL-17A及びTNF-α中和能評価
本実施例では、商用RA-FLS細胞ではないリウマチ関節炎患者の纎維母細胞類似潤滑膜細胞(Rheumatoid arthritis-fibroblast like synoviocyte;RA-FLS)を分離及び培養してSDA-0070の活性を評価した。滑膜組織切片を細く切った後、Dulbecco’s modified Eagle’s medium (WelGENE Inc.韓国)で1mg/mlの2型コラーゲン分解酵素(Worthington Biochemical Corporation)を添加して反応させた。DMEM (supplemented with 10% fetal bovine serum (FBS), 1% P/S)、1%P/S)で再浮遊させた後、細胞ろ過器(40μm cell strainer)でろ過し、100mm培養皿に付着させた。付着された細胞のみを繰り返して培養して使用した。
【0168】
分離培養された患者由来のRA-FLS(RA03)細胞を24ウェルプレートに5x10
4細胞/mlに接種して37℃で培養した後、各細胞にヒュミラ、SDA-0070、及びLY3114062をそれぞれ10
3, 10
2, 10
1, 10
0, 10
-1, 10
-2, 及び10
-3pMずつ処理し、1時間後、TNF-α10ng/ml(R&D systems、米国)とIL-17A50ng/ml(R&D systems、米国)を同時処理して48時間目に細胞培養液を回収した。回収した培養液を3500rpmで5分間遠心分離して上澄み液を得て、超低温冷凍庫に保管してELISA実験用として用いた。細胞培養液内のIL-6濃度を測定するために、Human IL-6 ELISA(R&D systems、米国)を用いて分析した。
RA-FLS(RA03)からTNF-α+IL-17A誘導IL-6生産条件で抗体処理群のIC50値(pM単位)を確認した。その結果、IC50値が低い順からして、SDA-0070: 0.3694 pM, LY3114062: 1.420 pM、ヒュミラ:1.966pMと分析された。SDA-0070が二重抗体としてTNF-α及びIL-17Aを同時に阻害する効能が最も優秀であり、LY3114062に比べては、約3.8倍、TNF-αの単一標的抗体であるヒュミラに比べては、約5倍優秀であることを確認した(
図16A~
図16A)。
【0169】
実施例16:C57BL/6マウスでのIL-17A、TNF-α機能抑制能測定
In vivo実験を通じて二重抗体投与によるIL-17A/TNF-α刺激による血清内KC濃度変化を確認した。
【0170】
C57/BL6雄、6週齢マウスにPBS、SDA-0070(40μg/マウス)、LY3114062(40μg/マウス)、セクキヌマブ(30μg/マウス)、及びヒュミラ(30μg/マウス)をグループ当たり5匹ずつ注射した。1時間後、TNF-α(R&D systems、米国)0.5μg/マウス及びIL-17A(R&D system、米国)6μg/マウスを皮下注射し、4時間後、血液を得た。採血された血液を5000rpmで10分間遠心分離して血清を得て、超低温冷凍庫に保管し、Quantikine ELISA Mouse CXCL1/KC Immunoassay kit(R&D systems、米国)を用いてKC(CXCL1)濃度を測定した。
【0171】
抗マウスKC抗体がコーティングされているマイクロプレートに分析用希釈液に希釈されたマウス血清を処理し、2時間、常温で反応させた。洗浄バッファで5回洗浄した後、マウスKC Conjugateを100μlずつ処理した後、2時間、常温で反応させた。洗浄バッファで5回再び洗浄した後、基質溶液を100μlずつ添加して30分間反応させ、停止液で反応を停止させた後、Spectrophotometerを用いて450nmでO.Dを測定した。
【0172】
その結果、抗体を処理した群は、いずれも陽性対照群(TNF-α + IL-17A combination only)に比べて、統計的に有意に低いKC levelを示し、その中、SDA-0070処理群が最も低いKC levelを有するということを確認した。SDA-0070処理群は、ヒュミラ処理群よりもp=0.0012と統計的に有意に効能に優れ、SDA-0070処理群は、LY3114062処理群よりもp=0.0138と統計的に有意に効能に優れた。すなわち、In vivoで二重抗体投与によるIL-17A/TNF-α刺激による血清内KC濃度変化を確認した結果、SDA-0070のIL-17A及びTNF-αの2抗原に対する中和能が優秀であるということを確認した(
図17)。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明による二重標的抗体またはその抗原結合断片は、IL-17A及びTNF-αに対して高い特異性を示し、既存の単一標的抗体に比べて優れた中和能を示すだけではなく、IL-17とTNF-αとを同時抑制して迅速に炎症及び免疫反応を抑制するので、投与容量は、減少しつつも、治療効果は増進される利点がある。
【0174】
以上、本発明の内容の特定部分を詳細に記述したところ、当該技術分野の通常の知識を有する者にとって、このような具体的な技術は、単に望ましい実施態様に過ぎず、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白であろう。よって、本発明の実質的な範囲は、請求項とそれらの等価物によってのみ定義される。
[配列表]
【配列表】
【国際調査報告】