(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-06
(54)【発明の名称】押出ダイ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 3/26 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
B28B3/26 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547425
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(85)【翻訳文提出日】2021-10-12
(86)【国際出願番号】 US2020015847
(87)【国際公開番号】W WO2020167487
(87)【国際公開日】2020-08-20
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】アンテスバーガー,ティモシー ユージン
(72)【発明者】
【氏名】クーツ,ダナ ユージン
(72)【発明者】
【氏名】ダシュー,エリック ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】エリオット,ケヴィン ユージン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュージネック,ゲイリー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】サイドボトム,ニール ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
4G054
【Fターム(参考)】
4G054AA05
4G054AB09
4G054BD19
(57)【要約】
複数のピン及び上記複数のピンによって画定された複数のスロットを有する押出ダイを製造する方法であって、各上記ピンはベースを有し、上記方法は、コーティング材料を、上記押出ダイの上記ピンの上記ベースの側壁にわたって適用するステップ、及び上記複数のピンの上記ベースの上記側壁にわたって適用された上記コーティング材料の一部分を、切削工具を用いて除去するステップを含む、方法。いくつかの実施形態では、上記切削工具は、上記スロットの目標スロット幅に等しい切削幅を有する。いくつかの実施形態では、上記コーティング材料を上記ピンの上記ベースの上記側壁にわたって適用する上記ステップは、コーティング材料を、上記スロットの目標スロット幅を画定するのに必要な厚さより大きい厚さにオーバーコートするステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のピン及び前記複数のピンによって画定された複数のスロットを備える、押出ダイを製造する方法であって、
各前記ピンはベースを有し、
前記方法は:
コーティング材料を、前記押出ダイの前記ピンの前記ベースの側壁にわたって適用するステップ;及び
前記複数のピンの前記ベースの前記側壁にわたって適用された前記コーティング材料の一部分を、前記スロットの目標スロット幅に等しい切削幅を備える切削工具を用いて、除去するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
押出ダイを製造する方法であって、前記方法は:
前記押出ダイをコーティング材料でオーバーコートするステップであって、
前記押出ダイは、第1の側壁を有する第1のベースを備える第1のピンと、第2の側壁を有する第2のベースを備える第2のピンとを備え、前記第1のピン及び前記第2のピンは間にスロットを画定し、
前記押出ダイをオーバーコートする前記ステップは、前記第1のピンの前記第1の側壁にわたって第1のコーティング層を形成し、前記第2のピンの前記第2の側壁にわたって第2のコーティング層を形成するステップを含み、
前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層は、前記第1のピンと前記第2のピンとの間に低減されたスロット幅を画定し、前記低減されたスロット幅は、第1のコーティング層の第1の外面と第2のコーティング層の第2の外面との間で測定される目標スロット幅の0%~99%である、ステップ;並びに
前記スロットの切削後スロット幅が前記目標スロット幅に設定されるように、前記第1のコーティング層のオーバーコート部分及び前記第2のコーティング層のオーバーコート部分を前記スロット内から除去するステップ
を含む、方法。
【請求項3】
押出ダイを製造する方法であって、前記方法は:
押出ダイをコーティング材料でオーバーコートするステップであって、
前記押出ダイは、第1の側壁を有する第1のベースを有する第1のピンと、第2の側壁を備える第2のベースを有する第2のピンとを備え、前記第1のピン及び前記第2のピンは間にスロットを画定し、
前記押出ダイをオーバーコートする前記ステップは、前記第1のピンの前記第1の側壁にわたって第1のコーティング層を形成し、前記第2のピンの前記第2の側壁にわたって第2のコーティング層を形成するステップを含み、
前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層は、前記スロットを前記コーティング材料で完全に充填することにより、完全充填済みスロットを形成する、ステップ;並びに
前記スロットの切削後スロット幅が、前記第1のコーティング層の第1の外面と前記第2のコーティング層の第2の外面との間で測定される目標スロット幅に等しくなるように、前記コーティング材料の一部分を前記完全充填済みスロットから除去するステップ
を含む、方法。
【請求項4】
押出ダイであって、
前記押出ダイは:
ハニカムジオメトリに配置された複数のスロットを画定する複数のピンであって、前記複数のピンは、第1のピンと、前記第1のピンに隣接する第2のピンとを備え、前記第1のピン及び前記第2のピンのうちの少なくとも一方は、前記押出ダイの縦軸に対して平行でない側壁を備えるベースを備える、複数のピン;
前記第1又は第2のピンの側壁にわたって配置され、前記縦軸に平行な第1の外面を備える、第1のコーティング層;並びに
前記第1又は第2のピンの前記平行でない側壁にわたって配置され、前記縦軸に平行な第2の外面と、前記第2の外面の反対側の、前記縦軸に対して平行でない内面とを備える、第2のコーティング層
を備える、押出ダイ。
【請求項5】
押出ダイを製造する方法であって、
前記押出ダイは、第1の側壁を有するベースをそれぞれ備える第1のピンの列と、前記第1のピンの列に隣接し、第2の側壁を有するベースをそれぞれ備える、第2のピンの列とを備え、
前記第1の列の各前記ピン及び前記第2の列の各前記ピンは間にスロットを画定し、
前記方法は:
前記第1のピンの前記第1の側壁にわたって第1のコーティング層を形成し、前記第2のピンの前記第2の側壁にわたって第2のコーティング層を形成することによって、前記押出ダイをコーティング材料でオーバーコートするステップであって、前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層は、前記第1のピンの列と前記第2のピンの列との間に、低減されたスロット幅を画定し、前記低減されたスロット幅は目標スロット幅の0%~99%である、ステップ;並びに
前記第1のコーティング層の外面と前記第2のコーティング層の外面とが前記目標スロット幅を画定するように、前記第1のコーティング層のオーバーコート部分及び前記第2のコーティング層のオーバーコート部分を、前記第1のピンの列と前記第2のピンの列との間の前記スロット内から除去するステップ
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条の下で、2019年2月15日出願の米国仮特許出願第62/806,010号の優先権の利益を主張するものであり、上記仮特許出願の内容は、その全体が参照により本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は押出ダイに関する。特に本開示は、ハニカム押出ダイ、及びダイのピンをコーティング材料でコーティングし、その後上記コーティング材料の一部分を切削工具を用いて除去することによって、ハニカム押出ダイを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
押出ダイは、内燃機関の排気システムで利用される触媒コンバータ及び微粒子フィルタといった様々な用途のための発泡又はハニカムセラミック基板の成形に有用である。一部のセラミックハニカム体の成形は、セラミック形成用混合物をハニカム押出ダイを通して押し出すこと、そしてその後、素地押出成形物を乾燥、切削、及び焼成等の後続の製造ステップに供して、セラミックハニカム体を成形することを伴う。押出ダイの表面は、耐摩耗性を改善し、ダイの寿命を延ばすために無機粒子でコーティングしてよい。押出ダイ、特に被コーティング表面を有する押出ダイを製造するための方法及びシステムが引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、例えば自動車の触媒コンバータ及び微粒子フィルタを製造するために使用できる押出ダイ、例えばハニカム押出ダイを製造する方法を対象とする。押出ダイは、バッチ押出材料を流すことができる複数のスロットを画定する複数のピンを備えることができる。本明細書中で開示される方法は、切削砥石車等の切削工具を用いて機械加工することによって、所望の目標スロットが得られるように設計される。いくつかの実施形態では、スロットは、ピンをコーティング材料でコーティングし、その後上記コーティング材料の一部分を、上記スロットの目標スロット幅に等しい切削幅を有する切削工具を用いて除去することによって、画定される。いくつかの実施形態では、上記ピンは、上記コーティング材料の一部分を除去する前に、所望の目標スロット幅を達成するのに必要な厚さより大きい厚さを有するコーティング材料で、オーバーコートされる。いくつかの実施形態では、各上記ピンは、上記ピンの側壁上に配置された事前配置コーティング材料を有する。いくつかの実施形態では、コーティング材料の層は、各上記ピンの側壁上に直接配置される。いくつかの実施形態では、コーティング材料の層は、各上記ピンの上記側壁上に配置された上記事前配置コーティング材料上に配置される。
【0005】
いくつかの実施形態では、上記ピンは複数の列に配置され、これにより上記切削工具は、オーバーコートされたコーティング材料の一部分を、上記ピンの隣接する2つの列から1回のパスで除去でき、これによって、上記複数の列のピンによって画定される各上記スロットの上記目標スロット幅が、単一の機械加工操作で順次画定される。
【0006】
いくつかの実施形態は、複数のピン及び上記複数のピンによって画定された複数のスロットを有する押出ダイを製造する方法を対象とし、各上記ピンはベースを有し、上記方法は、コーティング材料を、上記押出ダイの上記ピンの上記ベースの側壁にわたって適用するステップ、及び上記複数のピンの上記ベースの上記側壁にわたって適用された上記コーティング材料の一部分を、上記スロットの目標スロット幅に等しい切削幅を有する切削工具を用いて、除去するステップを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、1つ前の段落に記載の実施形態による方法は、上記コーティング材料が上記目標スロット幅未満の低減されたスロット幅を画定するように、上記ベースの上記側壁をオーバーコートすることによって、上記コーティング材料を上記押出ダイのピンの上記ベース上に適用するステップを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、これ以前の段落のうちのいずれかに記載の実施形態による方法は、各上記スロットに関して、上記切削工具の1回のパスで上記コーティング材料の上記一部分を除去することにより、上記スロットを画定するステップを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、これ以前の段落のうちのいずれかに記載の実施形態による方法は、各上記スロットに関して、上記切削工具の2回以上のパスで上記コーティング材料の上記一部分を除去することにより、上記スロットを画定するステップを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、これ以前の段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記スロットの上記目標スロット幅は、約0.001インチ(0.0254mm)~約0.025インチ(0.635mm)である。いくつかの実施形態では、これ以前の段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記スロットの上記目標スロット幅は、約0.003インチ(0.0762mm)~約0.016インチ(0.4064mm)である。
【0011】
いくつかの実施形態では、これ以前の段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記切削工具は、上記ベースのうちの1つの上記側壁のうちの1つにわたってコーティングされた上記コーティング材料のうちの、少なくとも0.0005インチ(0.0127mm)の厚さを除去する。
【0012】
いくつかの実施形態では、これ以前の段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記コーティング材料は、上記ベースの上記側壁上にコーティングされた上記コーティング材料の上記一部分が上記切削工具を用いて除去された後に、0.0006インチ(0.01524mm)~0.006インチ(0.1524mm)の平均コーティング厚さを有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、これ以前の段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記切削工具は、ダイヤモンド粒子、立方晶窒化ホウ素粒子、炭化ケイ素粒子、酸化アルミニウム粒子、炭化ホウ素粒子、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される研磨材粒子を備える。
【0014】
いくつかの実施形態では、これ以前の段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記複数のピンのうちの2つの隣接する上記ピンの上記コーティング材料は、低減されたスロット幅を画定し、上記低減されたスロット幅は上記目標スロット幅の0%~95%である。
【0015】
いくつかの実施形態では、これ以前の段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記切削工具は切削砥石車である。
【0016】
いくつかの実施形態では、これ以前の段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記押出ダイの上記スロットは、ハニカムジオメトリを画定する。
【0017】
いくつかの実施形態では、これ以前の段落のうちのいずれかに記載の実施形態による方法は、上記コーティング材料を蒸着プロセスによって適用するステップを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、これ以前の段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記コーティング材料は、ホウ素ドープ炭窒化チタン及び炭窒化チタンのうちの少なくとも一方を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、これ以前の段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記コーティング材料を適用する上記ステップは、上記コーティング材料を上記ピンの上記ベースに直接適用するステップを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、これ以前の段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記ピンは、上記ベースの上記側壁にわたってコーティングされた事前配置コーティング材料を備え、上記コーティング材料を適用する上記ステップは、上記コーティング材料を上記事前配置コーティング材料上に適用するステップを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、これ以前の段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記コーティング材料は、上記複数のピンの最外側壁を画定する。
【0022】
いくつかの実施形態は、押出ダイを製造する方法を対象とし、上記方法は:上記押出ダイをコーティング材料でオーバーコートするステップであって、上記押出ダイは、第1の側壁を有する第1のベースを有する第1のピンと、第2の側壁を有する第2のベースを有する第2のピンとを備え、上記第1のピン及び上記第2のピンは間にスロットを画定し、上記押出ダイをオーバーコートする上記ステップは、上記第1のピンの上記第1の側壁にわたって第1のコーティング層を形成し、上記第2のピンの上記第2の側壁にわたって第2のコーティング層を形成するステップを含み、上記第1及び第2のコーティング層は、上記第1のピンと上記第2のピンとの間に低減されたスロット幅を画定し、上記低減されたスロット幅は、第1のコーティング層の第1の外面と第2のコーティング層の第2の外面との間で測定される目標スロット幅の0%~99%である、ステップ;並びに上記スロットの切削後スロット幅が上記目標スロット幅となるように、上記第1のコーティング層のオーバーコート部分及び上記第2のコーティング層のオーバーコート部分を上記スロット内から除去するステップを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、1つ前の段落に記載の実施形態による上記第1のコーティング層の上記オーバーコート部分は、上記第1の側壁の面積の少なくとも20%に等しい、上記第1のベース上のコーティング済み面積を占める。
【0024】
いくつかの実施形態では、直近の2つの段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記第2のコーティング層の上記オーバーコート部分は、上記第2の側壁の面積の少なくとも20%に等しい、上記第2のベース上のコーティング済み面積を占める。
【0025】
いくつかの実施形態では、直近の3つの段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記切削工具は、上記目標スロット幅に等しい切削幅を有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、直近の4つの段落のうちのいずれかに記載の実施形態による、上記第1のコーティング層の上記オーバーコート部分及び上記第2のコーティング層の上記オーバーコート部分は、上記切削工具の1回のパスで除去される。いくつかの実施形態では、直近の4つの段落のうちのいずれかに記載の実施形態による、上記第1のコーティング層の上記オーバーコート部分及び上記第2のコーティング層の上記オーバーコート部分は、上記切削工具の2回以上のパスで除去される。
【0027】
いくつかの実施形態では、直近の5つの段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記目標スロット幅は、約0.001インチ(0.0254mm)~約0.025インチ(0.635mm)である。いくつかの実施形態では、直近の5つの段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記目標スロット幅は、約0.003インチ(0.0762mm)~約0.016インチ(0.4064mm)である。
【0028】
いくつかの実施形態では、直近の6つの段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記低減されたスロット幅は、上記目標スロット幅の50%~99%である。いくつかの実施形態では、直近の6つの段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記低減されたスロット幅は、上記目標スロット幅の80%~95%である。
【0029】
いくつかの実施形態では、直近の7つの段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記低減されたスロット幅は、上記目標スロット幅より少なくとも0.001インチ(0.0254mm)小さい。
【0030】
いくつかの実施形態では、直近の8つの段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記切削工具は、切削砥石車である。
【0031】
いくつかの実施形態では、直近の9つの段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記方法は、蒸着プロセスを用いて上記押出ダイをコーティング材料でオーバーコートするステップを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、直近の10個の段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記押出ダイは、ハニカム押出ダイである。
【0033】
いくつかの実施形態は、押出ダイを製造する方法を対象とし、上記方法は:押出ダイをコーティング材料でオーバーコートするステップであって、上記押出ダイは、第1の側壁を有する第1のベースを有する第1のピンと、第2の側壁を備える第2のベースを有する第2のピンとを備え、上記第1のピン及び上記第2のピンは間にスロットを画定し、上記押出ダイをオーバーコートする上記ステップは、上記第1のピンの上記第1の側壁にわたって第1のコーティング層を形成し、上記第2のピンの上記第2の側壁にわたって第2のコーティング層を形成するステップを含み、上記第1及び第2のコーティング層は、上記スロットを上記コーティング材料で完全に充填することにより、完全充填済みスロットを形成する、ステップ;並びに上記スロットの切削後スロット幅が、上記第1のコーティング層の第1の外面と上記第2のコーティング層の第2の外面との間で測定される目標スロット幅に等しくなるように、上記コーティング材料の一部分を上記完全充填済みスロットから除去するステップを含む。
【0034】
いくつかの実施形態は、押出ダイを対象とし、上記押出ダイは:ハニカムジオメトリに配置された複数のスロットを画定する複数のピンであって、上記複数のピンは、第1のピンと、上記第1のピンに隣接する第2のピンとを有し、上記第1のピン及び上記第2のピンのうちの少なくとも一方は、上記押出ダイの縦軸に対して平行でない側壁を有するベースを備える、複数のピン;上記第1又は第2のピンの側壁にわたって配置され、上記縦軸に平行な第1の外面を備える、第1のコーティング層;並びに上記第1又は第2のピンの上記平行でない側壁にわたって配置され、上記縦軸に平行な第2の外面と、上記第2の外面の反対側の、上記縦軸に対して平行でない内面とを備える、第2のコーティング層を備える。
【0035】
いくつかの実施形態では、1つ前の段落に記載の実施形態による上記第1及び第2の外面は、機械加工表面である。
【0036】
いくつかの実施形態では、直近の2つの段落のうちのいずれかに記載の実施形態による上記第1のピン及び上記第2のピンはそれぞれ、上記押出ダイの上記縦軸に対して平行でない側壁を備える。
【0037】
いくつかの実施形態は、押出ダイを製造する方法を対象とし、上記押出ダイは、第1の側壁を有するベースをそれぞれ備える第1のピンの列と、上記第1のピンの列に隣接し、第2の側壁を有するベースをそれぞれ有する、第2のピンの列とを有し、上記第1の列の各上記ピン及び上記第2の列の各上記ピンは間にスロットを画定し、上記方法は:上記第1のピンの上記第1の側壁にわたって第1のコーティング層を形成し、上記第2のピンの上記第2の側壁にわたって第2のコーティング層を形成することによって、上記押出ダイをコーティング材料でオーバーコートするステップであって、上記第1及び第2のコーティング層は、上記第1のピンの列と上記第2のピンの列との間に、低減されたスロット幅を画定し、上記低減されたスロット幅は目標スロット幅の10%~95%である、ステップ;並びに上記第1のコーティング層の外面と上記第2のコーティング層の外面とが上記目標スロット幅を画定するように、上記第1のコーティング層のオーバーコート部分及び上記第2のコーティング層のオーバーコート部分を、上記第1のピンの列と上記第2のピンの列との間の上記スロット内から除去するステップを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、前段落のうちの複数の実施形態による上記第1のコーティング層の上記オーバーコート部分及び上記方第2のコーティング層の上記オーバーコート部分は、上記第1のピンの列と上記第2のピンの列ンとの間の上記切削工具の1回のパスで、上記第1のピンの列及び上記第2のピンの列から除去される。
【0039】
本明細書に組み込まれる添付の図面は、明細書の一部を形成し、本開示の実施形態を例示するものである。図面は更に、本説明と併せて、本開示の実施形態の原理を説明するのに役立ち、また、1つ以上の関連する技術分野の当業者が、本開示の実施形態を実施及び使用できるようにするのに役立つ。本開示は全体としてこれらの実施形態の文脈内で説明されるが、本開示の範囲をこれらの特定の実施形態に限定することは意図されていないことを理解されたい。図中、同様の参照番号は同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図2】
図1の押出ダイの部分斜視図及び
図1の押出ダイの複数のピンの吐出面の拡大図
【
図6】いくつかの実施形態による押出ダイのオーバーコート済みピン
【
図7A】
図6の押出ダイのピンからの、コーティング材料の第1の部分の除去
【
図7B】
図6の押出ダイのピンからの、コーティング材料の第2の部分の除去
【
図8A】いくつかの実施形態による押出ダイの、ずれたオーバーコート済みピン
【
図8B】コーティング材料の一部分を除去した後の
図8Aの押出ダイ
【発明を実施するための形態】
【0041】
自動車内の触媒コンバータ及び微粒子フィルタにおいて使用されるもの等のハニカムジオメトリを有するセラミックは、押出プロセスを用いて製造されることが多い。これらのプロセスで使用されるダイは典型的には、ステンレス鋼又は他の金属を用いて作製され、複数のスロットを画定する複数のピンで構成されたハニカムジオメトリを有し、上記複数のスロットにセラミック形成用混合物(又はバッチ材料)を流すことによって、素地ハニカム押出成形物を生成でき、上記素地ハニカム押出成形物に、例えば乾燥、切削、焼成等の更なる加工を施すことによって、最終的なセラミックハニカム製品を形成できる。
【0042】
押出ダイを通って流れるセラミック形成用混合物は、研磨性となり得る(即ち、押し出し中に押出ダイの表面を擦り減らす1つ以上のタイプの粒子を含有する)。例えば、セラミック形成用混合物は、押出ダイの表面に対して研磨効果を有し得るシリカ、アルミナ等といった成分を含む可能性がある。ハニカム形状の押出部を生成するために使用されるセラミック形成用混合物は研磨性であるため、セラミック形成用混合物は、押出ダイ内のピンの表面を摩損する可能性があり、これは、押出部に望ましくない不均一なジオメトリ及び/又は変わりやすい寸法をもたらす。ダイは摩滅しすぎると、指定された寸法公差内のハニカム構造の製造に使用できなくなる。
【0043】
ダイの耐摩耗性の向上によりダイの使用可能回数(例えば、ダイを通して押し出すことができるセラミック形成用混合物の体積及び/又は直線フィート数)を増やすために、コーティングをダイの表面上に適用できる。典型的なコーティング材料は、炭窒化チタン(TiCN)、ホウ素ドープ炭窒化チタン(B‐TiCN)、窒化チタン(TiN)、及び窒化チタンアルミニウム(TiAlN)を含むことができるが、他のコーティングも使用できる。
【0044】
1つ以上のコーティングは、蒸着プロセス等のいずれの適用可能なプロセスを用いて押出ダイの表面にわたって適用できる。蒸着プロセスを用いる場合、ダイの表面にわたって適用されるコーティング材料の厚さを、例えば堆積チャンバ内に配置されたインピーダンスディスクによって制御できる。このようにして、1つ以上のコーティングプロセスを用いて、押出ダイの特徴部分の最終寸法(例えばスロット幅)を設定できる。しかしながら、コーティングプロセス及び/又はコーティング材料の寸法を注意深く制御しても、こぶ、不均一な表面仕上げ、並びに(単一のダイ内の、及び複数のダイの間での)最終的な仕上がったスロット幅のばらつきといった欠陥がコーティングプロセス中に生じ得る。従って、いずれの欠陥を処理し、所望の寸法を達成するために、追加の後コーティング製造プロセスが必要となり得る。
【0045】
本明細書中で言及される「こぶ(nodule)」は、全体として、押出ダイのスロットの部分的な又は完全な閉塞をもたらし得る、被コーティング表面上の隆起部に関する。一部のこぶは、コーティングされた状態となる押出ダイの表面上の粒子(例えばちり又はほこり)の結果として形成され、これにより粒子にわたるコーティングに隆起部が生成される。コーティングされた押出ダイの寸法のばらつきはまた、蒸着プロセスに続く押出ダイの下層の特徴部分の寸法変化(例えば高温によって誘発される応力によって生じる反り又は曲がり)、機械加工中の切削工具の振動等といった、他の原因から生じ得る。スロットの閉塞及び寸法のばらつきは、最終製品の強度の弱化及び/又は押し出されたハニカム構造における裂け、孔等の形成といった、最終的なハニカム部品の性能又は特性に悪影響を及ぼす欠陥をもたらし得る。これらの欠陥は、制御が困難な蒸着プロセス又は他の製造プロセスの変数によって生じ得る。従って、こぶ等の欠陥を除去するため、及び/又は押出ダイの望ましくない寸法のばらつきを修正するために、ダイの被コーティング表面の後加工が望ましい場合がある。
【0046】
典型的には、こぶ等の欠陥は、シミングと呼ばれることがあるプロセスを用いて被コーティング表面から除去される。シミング又は同様のプロセス中に、こぶは、小さなやすり(又は「シム(shim)」)を用いて被コーティング表面から個別に除去される。単一のダイ内に数百のスロットが存在できるため、上記スロットは、1インチ(2.54cm)のたった数千分の一のオーダーの幅を有する可能性があり、ダイの検査及びシミングプロセスは、極めて面倒で、費用がかかり、時間がかかる。従って、寸法が正確なハニカム押出ダイジオメトリを形成するための、より効率的なプロセスが望ましい。
【0047】
図1及び2は、いくつかの実施形態による押出ダイ100及び押出ダイ100のハニカム形成用構造102を示す。いくつかの実施形態では、押出ダイ100はダイ本体106を備え、これは、押出ラインの端部において押出ダイを他の構成部品に固定できるように構成された、プレート、フランジ、又は他の構造を備える。ダイ本体106は、押出ダイの流入口又は上流面(図示せず)に、その中に形成された複数の送り孔(いくつかは
図2に部分的に示されている)を備えることができる。押出ダイ100はまた、下流方向に配向された吐出面130に、ピン110のアレイを備える。ピン110の側壁112は、吐出スロット120の十字に交差するアレイを画定する。吐出スロット120の十字に交差するアレイは、ダイ100によって作製される押出成形物、例えばハニカムジオメトリを有する押出成形物の形状を画定する。このようにして、ピン110及びスロット120のアレイは共に、押出ダイ100のためのハニカム形成用構造102を画定する。押出ダイ100の吐出面130は、ピン110の端面114によって形成される。
【0048】
いくつかの実施形態では、ピン110は、本体106と同一の材料片から、一体として形成されるが、他の実施形態では、ピン110は、例えばピン支持層を介して、本体106に結合される。ダイ本体106は、ダイ本体106を通してセラミック形成用混合物を搬送するための送り孔116を備える。送り孔116は、ピン110の基部端において、ピン110及びスロット120と交差する。
【0049】
いずれの公知の、又は発見された材料を用いて、押出ダイ100を構成できる。主要なダイ要素の製作に好適な材料の例としては、工具鋼、いわゆる高速度鋼、マルテンサイト鋼、析出硬化鋼、及びマルテンサイトステンレス鋼等のステンレス鋼が挙げられる。例示的なマルテンサイトステンレス鋼としては、限定するものではないが、422ステンレス鋼及び450ステンレス鋼といった400シリーズステンレス鋼、並びに17‐4PHステンレス鋼等の析出硬化ステンレス鋼が挙げられる。
【0050】
図3は、堆積チャンバ300内で無機粒子320を基板310の表面312にわたって適用するための堆積プロセスを示す。
図3に示されているプロセスは、化学蒸着(CVD)プロセス又は物理蒸着(PVD)プロセス等の蒸着プロセスであってよい。1つ以上のガス330(例えばガス330a、ガス330b、及びガス330c)がチャンバ300へと導入されて、チャンバ300内に、表面312上に、又は表面にわたって堆積する無機粒子を形成する。いくつかの実施形態では、単一のガスが使用されているが、他の実施形態では、堆積される1つ以上の粒子に応じて複数のガスが使用されている。1つ以上のガス330は、無機粒子の1つ以上の要素のためのソースガスであってよい。1つ以上のガス330はキャリヤガスであってよい。いずれの好適なタイプのソースガス又はキャリヤガスを、適切な流量でチャンバへと導入することにより、無機粒子320を形成して、基板310の表面312にわたって適用できる。いくつかの実施形態では、無機粒子320は、表面312上に堆積される。表面312は、本明細書中に記載されるいずれの鋼材料金属材料で形成できる。
【0051】
本明細書中で使用する場合、「…上に配置された(disposed on)」は、第1の層/構成部品が第2の層/構成部品と直接接触することを意味する。第2の層/構成部品「上に配置された」第1の層/構成部品は、第2の層/構成部品上に堆積、形成、配置してよいか、又は他の方法で直接適用してよい。換言すると、第1の層/構成部品が第2の層/構成部品上に配置される場合、第1の層/構成部品と第2の層/構成部品との間に配置される層はない。同様に、「…上に適用された(applied on)」又は「…上にコーティングされた(coated on)」は、第1の層/構成部品が第2の層/構成部品と直接接触することを意味する。第1の層/構成部品が第2の層/構成部品「…にわたって配置された(disposed over)」と記載される場合、任意に、第1の層/構成部品と第2の層/構成部品との間に他の層が存在してよい。同様に、「…にわたって適用された(applied over)」又は「…にわたってコーティングされた(coated over)」は、第1の層/構成部品と第2の層/構成部品との間に他の層が存在しても存在しなくてもよいことを意味する。本明細書中に記載される層及び/又はコーティングは、いずれの1つの厚さ又は複数の厚さのものとすることができ、また連続的に又は断続的に表面にわたって適用できる。
【0052】
いくつかの実施形態では、基板310は押出機構成部品である。いくつかの実施形態では、上記押出機構成部品は、押出ダイ(例えば押出ダイ100)又は押出ダイの構成部品(例えばピン110)である。いくつかの実施形態では、基板310は、複数のピン110を有する押出ダイ100又は押出ダイ100の一部分によって形成され、複数のピン110のうちの1つ以上の側壁112は、基板310の表面312を画定し、堆積プロセス中にはこの表面312にわたって無機粒子が堆積される。基板310は例えば、押出ダイピン400(例えば
図4に示されているピン400a、400b、及び400cであり、これら全てを参照符号400によって総称する場合がある)のベース402とすることができる。以下に記載するように、ベース402は、粒子320によって直接コーティングできるか、又は事前配置コーティング材料420(堆積プロセス中に無機粒子の第2の層、例えばコーティング層422がこれにわたって適用される)でコーティングできる。換言すると、ベース402上のコーティング層407は、コーティング層420及び422を含む多層コーティングであり得る。
【0053】
無機粒子320は、本明細書中に記載されるいずれのタイプの無機粒子とすることができる。
図3に示されている堆積プロセスを用いて、本明細書中に記載されるいずれの個数の無機粒子層又は耐磨耗コーティング層を堆積できる。例えば、
図3に示されている堆積プロセスを用いて、炭窒化チタン及び/又はホウ素ドープ炭窒化チタン粒子、ホウ素粒子、窒化アルミニウムチタン(aluminum titanium nitride)粒子、窒化チタンアルミニウム(titanium aluminum nitride)粒子、及び窒化クロム粒子を適用できる。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される無機粒子のいずれの組み合わせが、基板310の表面312にわたって適用される。本明細書中に記載される無機粒子のうちのいずれの堆積は、基板310の表面312(例えば本明細書中に記載されるコーティング層)にわたって、無機材料の1つ以上の層を形成できる。本明細書中に記載される実施形態に従って適用された無機粒子は、基板310の表面312上に耐磨耗コーティングを形成できる。
【0054】
図4及び5は、いくつかの実施形態による押出ダイのピン400a~cを示す。ピン400a~cは、押出ダイ100のピン110であってよい。ピン400a~cは、隣接するピンの間にスロット401を画定し、これを通って使用中にセラミック形成用材料が押し出される。ピン400a~cはそれぞれ、ベース402と、ベース402の側壁406上に又はベース402の側壁406にわたって適用された、例えば上述の無機粒子320であるコーティング材料404で形成された、1つ以上のコーティング層407とを備える。コーティング材料404は、コーティング材料404でコーティングされたピン400a~cの最外側壁408を画定し、その一方で、ピン400a~cのコーティングされていない部分の側壁408は、ベース402によって画定される。
図4に示されるコーティング材料404は、各側壁406において概ね均一なコーティング厚さ405を有し、表面欠陥(例えば
図5に示されるこぶ410)を有しない。
【0055】
図5に示されているように、いくつかの実施形態では、ベース402の側壁406にわたって適用されるコーティング材料404は、概ね均一なコーティング厚さ405を有するが、1つ以上の表面欠陥、例えばこぶ410を含む。押出ダイ(例えばダイ100)を用いて作製された部品(例えばハニカム体)が均一なジオメトリを有することを保証するために、コーティング材料404中のこぶ410を除去することが望ましい場合がある。
図5に示されているように、均一な目標スロット幅440とは対照的に、ピン400bと隣接するピン400cとの間のスロット幅440’は、こぶ410が原因でピン400bの全長に沿って均一ではなく、従ってピン400bと隣接するピン400aとの間の目標スロット幅440と等しくない。
【0056】
本明細書中で使用する場合、「スロット幅(slot width)」は、2つの隣接するピンの(コーティングされた、又はコーティングされていない)最外側面の間で、これらのピン上の、ダイの吐出面に近いある位置において、上記最外側面のうちの少なくとも1つに対して垂直に測定される距離である。ハニカム押出ダイにおいて、スロット幅は、ハニカム押出ダイによって製造されるハニカム押出成形物の壁又はウェブの厚さに相当する。
【0057】
こぶ410を除去するためのシミングではなく、切削工具、例えば切削砥石車を用いて、コーティング材料404からこぶ410を除去できる。切削工具は、本明細書に記載される切削工具650であってよい。こぶ410は、切削工具によって、隣接するピン間のスロット401を通る切削工具の1回以上のパスで除去できる。
図5は単一のこぶ410を示しているが、ベース402にわたって適用されたコーティング材料404は、2つ以上の多数のこぶ410を有する。
【0058】
図6、7A、及び7Bに示されているように、いくつかの実施形態では、コーティング材料604は、間にスロット601を画定する複数のピン600a~cのベース602の側壁606にわたって適用される。
図6、7A、及び7Bに示されているピン600a~cは、押出ダイ100のピン110であってよいか、又はこれに似たものであってよい。
図4~5のピン400a~c上のコーティング層407と同様に、コーティング層607は、コーティング材料604によって各ピン600a~c上に形成される。いくつかの実施形態では、ピン600a~cはコーティング層607を、ベース602の側壁606上に直接適用される単層として備えるが、いくつかの実施形態では、コーティング層607は、コーティング材料604を1つ以上の事前配置コーティング層上に、又は1つ以上の事前配置コーティング層にわたって堆積させることによって、適用される(即ちコーティング層607は単層又は多層コーティングである)。
【0059】
本明細書中で開示される実施形態の説明を容易にするために、
図6~8Bのコーティング層607はそれぞれ、2色の異なる色(比較的薄い色の部分及び比較的濃い色の部分)で示されている。より詳細には、コーティング層607は
図6~7Bにおいて、薄い色の内側部分と比較的濃い色の外側部分とによって例示されている。薄い色の内側部分は、コーティング層607に関する一連の最終目標寸法(これに対して目標スロット幅が達成される)を示し、濃い色の外側部分は、本明細書中でピン600a~cそれぞれのオーバーコート605と呼ばれる材料の余剰を示す。異なる複数の色を用いて示されているにもかかわらず、単層のコーティング材料604は、濃い色の部分及び薄い色の部分の両方を少なくともある程度含むことができ、例えば各コーティング層607の全体を、コーティング材料604の単一の連続した層で形成できることを理解されたい。
【0060】
本明細書中で使用する場合、オーバーコート(overcoating)は、コーティング材料が目標スロット幅の画定に必要な厚さよりも大きな厚さを有するように、押出ダイのピンの側壁にコーティング材料を適用することを意味する。本明細書中で開示される実施形態によると、1つ以上の更なる製造ステップ後に目標寸法(例えば目標スロット幅)を達成することを支援するために、オーバーコートを意図的に実施できる。
【0061】
オーバーコート605は、コーティング材料604の1つ以上のコーティング層607のオーバーコート部分である(即ちこれは、目標スロット幅640を達成するために除去しなければならない)。オーバーコート605は、オーバーコート厚さ620(これはオーバーコート部分と呼ばれる場合もある)を有する。コーティング材料604のオーバーコート605は、隣接するピン、例えば、隣接するピン600a及び600bの間に、目標スロット幅640と比べて低減されたスロット幅610を画定する。いくつかの実施形態では、コーティング材料604のオーバーコート605は、押出ダイのコーティングされた特徴部分の表面積の有意なパーセンテージを占める。例えば、いくつかの実施形態では、1つ以上の側壁606にわたるコーティング済み面積は、側壁606の面積の少なくとも20%(例えば
図2に示されている側壁面積113の少なくとも20%)に等しい。換言すると、コーティング材料604のオーバーコート605は、1つ以上の側壁606のうちの、該側壁の表面積の少なくとも20%に等しい面積にわたって配置できる。即ち、切削プロセスにより高い寸法精度及び欠陥のない表面を達成できるため、オーバーコートを用いて、表面の面積の大部分(例えば20%超)が、寸法が精密であり、欠陥を有しないことを保証できる。このようにして、極めて小さな欠陥を欠陥ごとに正確に修正しなければならないシミングに比べて、表面積の大部分をオーバーコートすることで、オーバーコートされた面積の全ての欠陥及び/又は寸法のばらつきを、切削プロセスによって迅速かつ同時に修正することができるため、特に有利である。より好ましくは、いくつかの実施形態では表面の面積の少なくとも50%がオーバーコートされる。いくつかの実施形態では、吐出面に隣接するピンの側壁の複数の部分がオーバーコートされる。いくつかの実施形態では、側壁606のうちの1つ以上の、略全体又は全体が、オーバーコート605を備える(即ち1つ以上の側壁606の表面積の最大100%がオーバーコート605によって占有される)。本明細書中に記載されるように、表面全体をオーバーコートすることにより、後に表面全体を目標寸法へと確実に機械加工でき、有利である。
【0062】
オーバーコート605によって提供される余分な厚さにより、低減されたスロット幅610は、目標スロット幅640(例えば
図7Bを参照)より小さいものとなる。いくつかの実施形態では、切削工具、例えば、切削工具650を用いて、コーティング材料604の1つ以上のオーバーコート605(即ちコーティング材料604のオーバーコートされた厚さ620)を除去することにより、所望のスロットジオメトリ(即ち目標スロット幅640)を画定する。例えば、切削工具650は、オーバーコート605の厚さ620を切削して、コーティング材料604及び機械加工表面609の目標コーティング厚さ630を画定する。このような実施形態では、切削工具650は、コーティング材料604の外面上のいずれの欠陥(例えばこぶ410)を同時に除去しながら、ピン600a~cの側壁606の均一な寸法を設定する。有利なことに、コーティング材料604のオーバーコート605の厚さ620を除去した後、1つ以上のスロット601を、目標スロット幅640に等しいスロット幅を有するよう、より精密に一貫して設定できる。オーバーコートを側壁から切削した後に押出ダイの吐出面におけるピンの表面(例えば表面114)上に残留する、(
図7Bのピン600c上に示されているような)いずれの余分な材料は、必要に応じて別個の切削ステップで除去できる。
【0063】
いくつかの実施形態では、低減されたスロット幅610は、目標スロット幅640の0%~99%(部分範囲を含む)である。例えば、いくつかの実施形態では、低減されたスロット幅610は、目標スロット幅640の0%、目標スロット幅640の10%、目標スロット幅640の20%、目標スロット幅640の30%、目標スロット幅640の40%、目標スロット幅640の50%、目標スロット幅640の60%、目標スロット幅640の70%、目標スロット幅640の80%、目標スロット幅640の90%、目標スロット幅640の95%、又は目標スロット幅640の99%、又は端点としてこれらの値のうちのいずれの2つを有する範囲内である。いくつかの実施形態では、低減されたスロット幅610は、目標スロット幅640の50%~99%である。いくつかの実施形態では、低減されたスロット幅610は、目標スロット幅640の80%~95%である。いくつかの実施形態では、最後の2つの範囲が好ましい。というのは、これらの範囲は、所望の寸法を達成するために除去しなければならない余分な材料の量を制御しながら、対応する表面が確実に十分にオーバーコートされることを補助するためである。
【0064】
いくつかの実施形態では、コーティング材料604は、コーティング材料604が2つの隣接するピンの間のスロットを完全に充填するよう、隣接するピンに適用できる。例えば、
図7は、完全充填済みスロット660を示す。完全充填済みスロット660に関して、スロット601の低減されたスロット幅610は、目標スロット幅640の0%である。目標スロット幅を達成するために除去しなければならない廃棄材料がより多く生成されるにもかかわらず、いくつかの実施形態では、特に、切削工具がオーバーコートの比較的厚い又は薄い部分に出くわした際に、切削工具又はピンが左右に振動する又ははずむことになる切削工具又は技法に関して、スロットを完全に充填することは有利であり得る。例えば、スロットの対向する側部におけるオーバーコートの凹凸により、切削工具がスロットを横切る際に、切削工具が次々に別の方向に偏る場合があり、これにより、切削工具を中心に置き続けるのがより困難となるが、この偏りは、スロットが完全に充填されたときに低減できる。いくつかの実施形態では、低減されたスロット幅610は少なくとも、精密な除去のための十分な厚さを厚さ620が有することを保証する、目標スロット幅640より小さい何らかの最小値である。例えば、いくつかの切削又は材料除去技法では、比較的厚い部分を除去するよりも、材料の極めて薄い層のみを除去することが相対的により困難となり得る。いくつかの実施形態では、低減されたスロット幅は目標スロット幅640より少なくとも0.001インチ(0.0254mm)小さく、これにより、厚さ620が少なくとも0.001インチ(0.0254mm)となる。
【0065】
いくつかの実施形態では、目標スロット幅640は、約0.001インチ(0.0254mm)~約0.025インチ(0.635mm)(部分範囲を含む)であり、例えばいくつかの実施形態では、目標スロット幅640は、0.001インチ(0.0254mm)、0.002インチ(0.0508mm)、0.0025インチ(0.0635mm)、0.0027インチ(0.06858mm)、0.003インチ(0.0762mm)、0.005インチ(0.127mm)、0.0075インチ、0.01インチ(0.254mm)、0.016インチ(0.4064mm)、又は0.025インチ(0.635mm)、又は端点としてこれらの値のうちのいずれの2つを有する範囲内である。いくつかの実施形態では、目標スロット幅640は、約0.002インチ(0.0508mm)~約0.016インチ(0.4064mm)である。いくつかの実施形態では、目標スロット幅640は、約0.003インチ(0.0762mm)~約0.016インチ(0.4064mm)である。
【0066】
切削工具650は、本明細書中に記載されるコーティング材料を機械加工するのに好適ないずれの切削工具であってよい。いくつかの実施形態では、切削工具650は、切削砥石車、例えばCNC工作機械で使用される切削砥石車である。切削工具650は、研磨材コーティング、例えばニッケル、チタン、又は銅ベースのコーティングでコーティングできる。切削工具650はまた、研磨材粒子、例えばダイヤモンド粒子、立方晶窒化ホウ素粒子、炭化ケイ素粒子、酸化アルミニウム粒子、又は炭化ホウ素粒子を備えることができる。いくつかの実施形態では、研磨材粒子は、1~50マイクロメートル(micrometers、μm)(部分範囲を含む)のサイズを有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、研磨材粒子の平均サイズは、1マイクロメートル、2マイクロメートル、5マイクロメートル、6マイクロメートル、10マイクロメートル、20マイクロメートル、30マイクロメートル、40マイクロメートル、45マイクロメートル、又は50マイクロメートル、又は端点としてこれらの値のうちのいずれの2つを有する範囲内である。
【0067】
いくつかの実施形態では、切削工具650は、目標スロット幅640に等しい切削幅652を有する。有利なことに、これにより、スロットの最終寸法を、例えば切削工具650の1回のパスで迅速かつ効率的に設定できる。いくつかの実施形態では、切削工具は、目標スロット幅640に等しいブレード幅(これは切削幅652である)を有するブレードを有する。このような実施形態では、コーティング材料604のオーバーコート605の厚さ620は、スロット601を通る切削工具650の1回のパスにより、スロット601を画定する一方又は両方のピン600から除去される。いくつかの実施形態では、オーバーコート605の厚さ620は、切削工具650の2回以上のパスにより、スロット601から除去される。このような実施形態では、切削工具650は、目標スロット幅640より小さい切削幅652を有することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、切削工具650は、ピンの隣接する列によって画定されたスロットを通る1回のパスで、オーバーコート605の全て又は一部を、複数のピンから除去できる。例えば、切削工具650は、第1のピンの列と第2のピンの列、例えば
図2に示されるピン110の第1の列111と第2の列119との間を通過できる。このような実施形態では、切削工具650は、隣接する列によって画定されるスロットを通過するときに、これら2つの列の中の隣接するピンそれぞれの間に目標スロット幅を画定する。いくつかの実施形態では、切削工具650は、ピンの隣接する2つの列の間のオーバーコート605を1回のパスで除去し、これによって、スロットを画定する隣接するピンの各ペアから厚さ620を単一の機械加工動作で順次除去することにより、スロットの全長にわたって目標スロット幅640を画定する。隣接する2列のピンの間のオーバーコート605を1回のパスで除去する能力を有することにより、オーバーコート605の関連する部分及びいずれの欠陥、1つ以上の例えばこぶ410を迅速かつ効率的に除去できる。このようにして、コーティング材料内の欠陥(例えばこぶ、寸法のばらつき等)を全て除去するのに1日以上かかる場合があるシミングプロセスとは対照的に、ダイ内の全てのピンを数時間以内に機械加工できる(そして目標スロット幅を達成できる)。
【0069】
いくつかの実施形態では、切削工具650によって除去される切削の深さ(例えば厚さ620に関するオーバーコート605の一部分、及び/又は
図2で提供されている座標系に関する表面113に対するy方向)は、少なくとも0.0005インチ(0.0127mm)の厚さを有する。いくつかの実施形態では、切削の深さ、又はスロットを通る切削工具650の1回のパス中に切削工具650によって除去される材料の厚さは、少なくとも0.0005インチ(0.0127mm)である。いくつかの実施形態では、切削の深さは厚さ620に等しい(即ち厚さ620は1回のパスで除去される)。いくつかの実施形態では、切削の深さは、厚さ620より小さい。いくつかの実施形態では、切削の深さは、切削工具の幅に対して0.0001インチ(0.00254mm)の範囲内の厚さを有する。
【0070】
いくつかの実施形態では、オーバーコート605が除去された後のコーティング材料604の目標コーティング厚さ620は、0.0006インチ(0.01524mm)~0.006インチ(0.1524mm)(部分範囲を含む)である。例えばいくつかの実施形態では、除去されるオーバーコート部分620は、0.0006インチ(0.01524mm)、0.001インチ(0.0254mm)、0.002インチ(0.0508mm)、0.003インチ(0.0762mm)、0.004インチ(0.1016mm)、0.005インチ(0.127mm)、又は0.006インチ(0.1524mm)、又は端点としてこれらの値のうちのいずれの2つを有する範囲内である、厚さを有する。
【0071】
いくつかの実施形態では、切削工具650は、2,500~20,000表面フィート/分(SFPM)(762~6096m/分)(部分範囲を含む)の周速度で回転できるブレードである。例えば、いくつかの実施形態では、周速度は、2,500SFPM(762m/分)、5,000SFPM(1524m/分)、10,000SFPM(3048m/分)、15,000SFPM(4572m/分)、17,000SFPM(5181.6m/分)、又は20,000SFPM(6096m/分)、又は端点としてこれらの値のうちのいずれの2つを有する範囲内である。
【0072】
いくつかの実施形態では、押出ダイが本明細書中で開示される実施形態に従って製造された後の、押出ダイを通るセラミック形成用材料の送込み速度は、0.1~30インチ/分(IPM)(0.254~76.2cm/分)(部分範囲を含む)である。例えば、いくつかの実施形態では、送込み速度は、0.1IPM(0.254cm/分)、0.2IPM(0.508cm/分)、0.5IPM(1.27cm/分)、1IPM(2.54cm/分)、1.4IPM(3.556cm/分)、2IPM(5.08cm/分)、3IPM(7.62cm/分)、4IPM(10.16cm/分)、5IPM(12.7cm/分)、6IPM(15.24cm/分)、7IPM(17.78cm/分)、8IPM(20.32cm/分)、9IPM(22.86cm/分)、10IPM(25.4cm/分)、15IPM(38.1cm/分)、20IPM(50.8cm/分)、25IPM(63.5cm/分)、又は30IPM(76.2cm/分)、又は端点としてこれらの値のうちのいずれの2つを有する範囲内である。
【0073】
時折、ハニカム押出ダイ内のピンが曲がる、反る、又は歪むことがあり、ダイを通して押出成形された部品のジオメトリを確実に均一とするためには、これを修正する必要がある。例えば、押出ダイのピンの歪みは、例えば高い押出圧力によって使用中に、又は例えば化学蒸着プロセス等の高温製造プロセス中に温度によって誘発される応力によって製造中に、生じ得る。シミングと同様に、各ピンを検査すること及び手動で真っ直ぐにすることは、極めて面倒で、時間及び費用がかかるプロセスであり、これが不正確に実施された場合には、ダイに損傷をもたらすおそれがある。いくつかの実施形態では、歪んだピンをそれぞれ手動で真っ直ぐにするのではなく、例えば
図8A及び8Bに示されているように、曲がったピンベース802bを、コーティング材料804のオーバーコートでコーティングできる。本明細書中に記載されるように、1つ以上の目標寸法、及びピンに関して全体的に真っ直ぐな、又はその他の点で所望のジオメトリを精密に達成するために、オーバーコートを除去できる。いくつかの実施形態では、ピン800a~cは、ベース802a~cの側壁806上に直接適用されたコーティング層817を備える。いくつかの実施形態では、ピン800a~cは、事前配置コーティング層上に適用されたオーバーコート層815を備える。オーバーコート815は、上述のオーバーコート605と類似したコーティング材料804の1つ以上のコーティング層817のオーバーコート部分である。
【0074】
例えば、スロット801を画定する複数のピン800a~cは、押出ダイの縦軸、例えば押出ダイ100の縦軸150に対して平行な少なくとも1つのベース802aを備えることができる。押出ダイの縦軸(例えば縦軸150)は、押出ダイ面の中心を通って延在し、材料が押出ダイを通って押し出される方向に対して平行である、軸である。この軸は、押出ダイの押出軸と呼ばれる場合がある。
【0075】
ピン800a~cは更に、押出ダイの縦軸に対して平行でない少なくとも1つのベース802bを備えることができる。このような実施形態では、コーティング材料804はベース802a及び802bに適用され、2つの隣接するピン、例えばピン800b及び800c並びに/又はピン800a及び800bの間に、低減されたスロット幅810を画定する。いくつかの実施形態では、コーティング材料のオーバーコートは、隣接するピンベースに適用される。平行でないベース802bを補正する、スロット801の目標スロット幅840を達成するために、切削工具、例えば上述の切削工具650を用いて、コーティング材料804の一部分を除去することにより、押出ダイの縦軸に対して平行な外面812を有するピン800a~cのうちの隣接するペアそれぞれに関して、目標スロット幅840を画定できる。
【0076】
本明細書中のスロット幅を有する押出ダイに与えられた寸法範囲(例えば0.001インチ(0.0254mm)~約0.025インチ(0.635mm)のスロット幅を有する押出ダイ)に関して、「平行な表面又は側壁(parallel surface or side wall)」は、縦軸(例えば縦軸150)に対して平行な方向に延在するか、又は縦軸に対して+/-0.25~2.0°以下の角度を有する、表面又は側壁を意味する。これに対応して、本明細書中で与えられた寸法範囲に関して「平行でない表面又は側壁(non‐parallel surface or side wall)」は、縦軸に対して+/-0.25~2°超の角度を有する表面又は側壁である。特に比較的長い長手方向長さを有するピンに関して、スロット幅が狭いほど、一般に小さい範囲の(例えば0.25°に近い)角度に限定されることを理解されたい。同様に、特に比較的短い長手方向長さを有するピンに関してスロット幅が広いほど、大きな(例えば2°に近い)ずれを許容できる。
【0077】
図8A~8Bでは、ピン800a~cは、第1のベース802aの側壁806にわたって配置されたコーティング材料804と、第2のピンベース802bの第1の側壁807及び第2の側壁808にわたって配置されたコーティング材料804とを備える。
図8A~8Bに示されているように、押出ダイは、比較的平行なピンと、平行でないピンとの組み合わせを備えることができる。より詳細には、ピン800a及び800cは平行なものとして示されているが、ピン800bは平行でないものとして示されている(ピン800bの軸が
図8Aに示されており、これは、ピン800bの側壁808に対して平行であり、縦軸150に対して平行でない)。例えば、側壁806にわたって配置されたコーティング材料804は、押出ダイの縦軸(例えば縦軸150)に対して平行な、機械加工された(即ちオーバーコート815の除去後の)外面812を有する。側壁808にわたって配置されたコーティング材料804は、押出ダイの縦軸に平行な機械加工された外面814と、側壁808にわたって配置されるが、縦軸に対して平行でない内面816とを有する。従って、側壁808にわたって配置されたコーティング材料804の厚さ820は、外表面をピン800の残りの部分及び縦軸150に対して平行とすることができるよう、ピン800bの長さに沿って変動し、これによって、ピンのベース802bを真っ直ぐにする必要なしに、曲がった又は角度を有する(即ち平行でない)ピン800bを補正できる。
図8Aは単一の平行でないピン800bを含むピン800を示しているが、1つの押出ダイの2つ以上のピンが平行でなくてもよく、(一方又は両方が平行でない)いずれの2つのピンの間の目標スロット幅を、
図8A~8Bに示されているように補正できる。
【0078】
様々な実施形態について本明細書中で説明してきたが、これらは限定としてではなく、例として提示されている。改変及び修正は、本明細書で提示されている教示及び指導に基づいて、本開示の実施形態の意味、及び本開示の実施形態の等価物の範囲内にあることが意図されていることは、明らかであろう。従って、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書で開示されている実施形態に対して、形式及び細部の様々な変更を実施できることは、当業者には明らかであろう。本明細書で提示されている実施形態の要素は、必ずしも相互排他的ではなく、当業者には理解されるように、様々な状況を満たすために相互に交換できる。
【0079】
本開示の実施形態について、ここでは、添付の図面に図示されている本開示の実施形態を参照して詳細に説明しており、添付の図面では、同様の参照番号を用いて、同一の又は機能的に類似した要素を指す。「一実施形態(one embodiment)」、「ある実施形態(an embodiment)」、「いくつかの実施形態(some embodiment)」、「特定の実施形態(certain embodiment)」等への言及は、記載されている実施形態がある特定の特徴部分、構造又は特徴を含み得るものの、全ての実施形態が上記特定の特徴部分、構造又は特徴を必ずしも含むわけではない場合があることを示している。更に、このような句は、必ずしも同じ実施形態について言及しているわけではない。更に、ある特定の特徴部分、構造又は特徴が、ある実施形態に関連して記載されている場合、明示的に記載されているかどうかにかかわらず、上記特定の特徴部分、構造又は特徴を他の実施形態に関連して実現することは、当業者の知識の範囲内であるものとする。
【0080】
以上の例は、本開示の限定ではなく例示である。当該技術分野で通常目にする、また当業者に明らかな、様々な条件及びパラメータの他の好適な修正及び適合は、本開示の精神及び範囲内である。
【0081】
ある要素又は構成部品を記述するために使用される不定冠詞「a」及び「an」は、これらの要素又は構成部品が1個又は少なくとも1個存在することを意味している。これらの冠詞は、慣習的には、修飾されている名詞が単数名詞であることを示すために採用されるが、本明細書中で使用される場合、冠詞「a」及び「an」は、具体例においてそうでないことが言明されていない限り、複数も含む。同様に、定冠詞「the」もまた、本明細書中で使用される場合には、これもまた具体例においてそうでないことが言明されていない限り、修飾されている名詞が単数であっても複数であってもよいことを示す。
【0082】
本明細書において上限値及び下限値を含むある数値の範囲が挙げられている場合、特定の状況下でそうでないことが明記されていない限り、上記範囲はその端点、並びに上記範囲内の全ての整数及び分数を含むことを意図したものである。ある範囲が定義されている場合、請求対象の範囲を、挙げられている具体的な値に限定することは意図されていない。更に、量、濃度又は他の値若しくはパラメータが、範囲、1つ若しくは複数の好ましい範囲、又は好ましい上限値及び好ましい下限値のリストとして与えられている場合、これは、いずれの範囲上限又は好ましい値といずれの範囲下限又は好ましい値とのいずれのペアから形成される全ての範囲を、このようなペアが個々に開示されているかどうかにかかわらず、具体的に開示するものとして理解されたい。最後に、用語「約」がある値又はある範囲のある端点を記述する際に使用される場合、本開示は、言及された具体的な値又は端点を含むことを理解されたい。
【0083】
本明細書中で使用される場合、用語「約(about)」は、量、サイズ、処方、パラメータ、並びに他の量及び特徴が正確ではなく、かつ正確である必要がないものの、必要に応じて許容誤差、換算係数、丸め、測定誤差等、及び当業者に公知のその他の因子を反映した、おおよそのもの、及び/又は大きい若しくは小さいものであってよいことを意味している。
【0084】
上では、指定された機能の実装及び上記機能の関連性を図示する機能構築ブロックを利用して、1つ以上の実施形態を説明した。これらの機能構築ブロックの境界線は、本明細書では、説明に便利となるように任意に定義されている。指定された機能及びその関連性が適切に表現される限り、別の境界線を定義することもできる。
【0085】
本明細書中で使用される句法又は用語法は、説明を目的としたものであり、限定を目的としたものではないことを理解されたい。本開示の範囲は、上述の例示的実施形態のいずれによっても限定されないものとし、以下の請求項及びその均等物に従って定義されるものとする。
【0086】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0087】
実施形態1
複数のピン及び上記複数のピンによって画定された複数のスロットを備える、押出ダイを製造する方法であって、
各上記ピンはベースを有し、
上記方法は:
コーティング材料を、上記押出ダイの上記ピンの上記ベースの側壁にわたって適用するステップ;及び
上記複数のピンの上記ベースの上記側壁にわたって適用された上記コーティング材料の一部分を、上記スロットの目標スロット幅に等しい切削幅を備える切削工具を用いて、除去するステップ
を含む、方法。
【0088】
実施形態2
上記コーティング材料を上記押出ダイの上記ピンの上記ベース上に適用する上記ステップは、上記コーティング材料が上記目標スロット幅未満の低減されたスロット幅を画定するように、上記ベースの上記側壁をオーバーコートするステップを含む、実施形態1に記載の方法。
【0089】
実施形態3
各上記スロットに関して、上記切削工具の1回のパスで上記コーティング材料の上記一部分を除去することにより、上記スロットを画定するステップを更に含む、実施形態1又は2に記載の方法。
【0090】
実施形態4
各上記スロットに関して、上記切削工具の2回以上のパスで上記コーティング材料の上記一部分を除去することにより、上記スロットを画定するステップを更に含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
実施形態5
上記スロットの上記目標スロット幅は、約0.001インチ(0.0254mm)~約0.025インチ(0.635mm)である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0092】
実施形態6
上記スロットの上記目標スロット幅は、約0.003インチ(0.0762mm)~約0.016インチ(0.4064mm)である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
実施形態7
上記切削工具は、上記ベースのうちの1つの上記側壁のうちの1つにわたってコーティングされた上記コーティング材料のうちの、少なくとも0.0005インチ(0.0127mm)の厚さを除去する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
実施形態8
上記コーティング材料は、上記ベースの上記側壁上にコーティングされた上記コーティング材料の上記一部分が上記切削工具を用いて除去された後に、0.0006インチ(0.01524mm)~0.006インチ(0.1524mm)の平均コーティング厚さを有する、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0095】
実施形態9
上記切削工具は、ダイヤモンド粒子、立方晶窒化ホウ素粒子、炭化ケイ素粒子、酸化アルミニウム粒子、炭化ホウ素粒子、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される研磨材粒子を備える、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0096】
実施形態10
上記複数のピンのうちの2つの隣接する上記ピンの上記コーティング材料は、上記側壁上にコーティングされた上記コーティング材料の上記一部分を除去する前に、低減されたスロット幅を画定し、上記低減されたスロット幅は上記目標スロット幅の0%~95%である、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
実施形態11
上記切削工具は切削砥石車を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0098】
実施形態12
上記押出ダイの上記スロットは、ハニカムジオメトリを画定する、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0099】
実施形態13
上記コーティング材料を適用する上記ステップは蒸着プロセスを含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0100】
実施形態14
上記コーティング材料は、ホウ素ドープ炭窒化チタン及び炭窒化チタンのうちの少なくとも一方を含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0101】
実施形態15
上記コーティング材料を適用する上記ステップは、上記コーティング材料を上記ピンの上記ベースに直接適用するステップを含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0102】
実施形態16
上記ピンはそれぞれ、上記ベースの上記側壁にわたってコーティングされた事前配置コーティング材料を備え、上記コーティング材料を適用する上記ステップは、上記コーティング材料を上記事前配置コーティング材料上に適用するステップを含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0103】
実施形態17
上記コーティング材料は、上記複数のピンの最外側壁を画定する、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0104】
実施形態18
押出ダイを製造する方法であって、上記方法は:
上記押出ダイをコーティング材料でオーバーコートするステップであって、
上記押出ダイは、第1の側壁を有する第1のベースを備える第1のピンと、第2の側壁を有する第2のベースを備える第2のピンとを備え、上記第1のピン及び上記第2のピンは間にスロットを画定し、
上記押出ダイをオーバーコートする上記ステップは、上記第1のピンの上記第1の側壁にわたって第1のコーティング層を形成し、上記第2のピンの上記第2の側壁にわたって第2のコーティング層を形成するステップを含み、
上記第1のコーティング層及び上記第2のコーティング層は、上記第1のピンと上記第2のピンとの間に低減されたスロット幅を画定し、上記低減されたスロット幅は、第1のコーティング層の第1の外面と第2のコーティング層の第2の外面との間で測定される目標スロット幅の0%~99%である、ステップ;並びに
上記スロットの切削後スロット幅が上記目標スロット幅に設定されるように、上記第1のコーティング層のオーバーコート部分及び上記第2のコーティング層のオーバーコート部分を上記スロット内から除去するステップ
を含む、方法。
【0105】
実施形態19
上記第1のコーティング層の上記オーバーコート部分は、上記第1の側壁の面積の少なくとも20%に等しい、上記第1のベース上のコーティング済み面積を占める、実施形態18に記載の方法。
【0106】
実施形態20
上記第2のコーティング層の上記オーバーコート部分は、上記第2の側壁の面積の少なくとも20%に等しい、上記第2のベース上のコーティング済み面積を占める、実施形態18又は19に記載の方法。
【0107】
実施形態21
上記切削工具は、上記目標スロット幅に等しい切削幅を備える、実施形態18~20のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
実施形態22
上記第1のコーティング層の上記オーバーコート部分及び上記第2のコーティング層の上記オーバーコート部分は、上記切削工具の1回のパスで除去される、実施形態18~21のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
実施形態23
上記第1のコーティング層の上記オーバーコート部分及び上記第2のコーティング層の上記オーバーコート部分は、上記切削工具の2回以上のパスで除去される、実施形態18~22のいずれか1つに記載の方法。
【0110】
実施形態24
上記目標スロット幅は、約0.001インチ(0.0254mm)~約0.025インチ(0.635mm)である、実施形態18~23のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
実施形態25
上記目標スロット幅は、約0.003インチ(0.0762mm)~約0.016インチ(0.4064mm)である、実施形態18~24のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
実施形態26
上記低減されたスロット幅は、上記目標スロット幅の50%~99%である、実施形態18~25のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
実施形態27
上記低減されたスロット幅は、上記目標スロット幅の80%~95%である、実施形態18~26のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
実施形態28
上記低減されたスロット幅は、上記目標スロット幅より少なくとも0.001インチ(0.0254mm)小さい、実施形態18~27のいずれか1つに記載の方法。
【0115】
実施形態29
上記切削工具は、切削砥石車を含む、実施形態18~28のいずれか1つに記載の方法。
【0116】
実施形態30
上記押出ダイを上記コーティング材料でオーバーコートする上記ステップは、蒸着プロセスを含む、実施形態18~29のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
実施形態31
上記押出ダイはハニカム押出ダイである、実施形態18~30のいずれか1つに記載の方法。
【0118】
実施形態32
押出ダイを製造する方法であって、上記方法は:
押出ダイをコーティング材料でオーバーコートするステップであって、
上記押出ダイは、第1の側壁を有する第1のベースを有する第1のピンと、第2の側壁を備える第2のベースを有する第2のピンとを備え、上記第1のピン及び上記第2のピンは間にスロットを画定し、
上記押出ダイをオーバーコートする上記ステップは、上記第1のピンの上記第1の側壁にわたって第1のコーティング層を形成し、上記第2のピンの上記第2の側壁にわたって第2のコーティング層を形成するステップを含み、
上記第1のコーティング層及び上記第2のコーティング層は、上記スロットを上記コーティング材料で完全に充填することにより、完全充填済みスロットを形成する、ステップ;並びに
上記スロットの切削後スロット幅が、上記第1のコーティング層の第1の外面と上記第2のコーティング層の第2の外面との間で測定される目標スロット幅に等しくなるように、上記コーティング材料の一部分を上記完全充填済みスロットから除去するステップ
を含む、方法。
【0119】
実施形態33
押出ダイであって、
上記押出ダイは:
ハニカムジオメトリに配置された複数のスロットを画定する複数のピンであって、上記複数のピンは、第1のピンと、上記第1のピンに隣接する第2のピンとを備え、上記第1のピン及び上記第2のピンのうちの少なくとも一方は、上記押出ダイの縦軸に対して平行でない側壁を備えるベースを備える、複数のピン;
上記第1又は第2のピンの側壁にわたって配置され、上記縦軸に平行な第1の外面を備える、第1のコーティング層;並びに
上記第1又は第2のピンの上記平行でない側壁にわたって配置され、上記縦軸に平行な第2の外面と、上記第2の外面の反対側の、上記縦軸に対して平行でない内面とを備える、第2のコーティング層
を備える、押出ダイ。
【0120】
実施形態34
上記第1の外面及び上記第2の外面は、機械加工表面である、実施形態33に記載の押出ダイ。
【0121】
実施形態35
上記第1のピン及び上記第2のピンはそれぞれ、上記押出ダイの上記縦軸に対して平行でない側壁を備える、実施形態33又は34に記載の押出ダイ。
【0122】
実施形態36
押出ダイを製造する方法であって、
上記押出ダイは、第1の側壁を有するベースをそれぞれ備える第1のピンの列と、上記第1のピンの列に隣接し、第2の側壁を有するベースをそれぞれ備える、第2のピンの列とを備え、
上記第1の列の各上記ピン及び上記第2の列の各上記ピンは間にスロットを画定し、
上記方法は:
上記第1のピンの上記第1の側壁にわたって第1のコーティング層を形成し、上記第2のピンの上記第2の側壁にわたって第2のコーティング層を形成することによって、上記押出ダイをコーティング材料でオーバーコートするステップであって、上記第1のコーティング層及び上記第2のコーティング層は、上記第1のピンの列と上記第2のピンの列との間に、低減されたスロット幅を画定し、上記低減されたスロット幅は目標スロット幅の0%~99%である、ステップ;並びに
上記第1のコーティング層の外面と上記第2のコーティング層の外面とが上記目標スロット幅を画定するように、上記第1のコーティング層のオーバーコート部分及び上記第2のコーティング層のオーバーコート部分を、上記第1のピンの列と上記第2のピンの列との間の上記スロット内から除去するステップ
を含む、方法。
【0123】
実施形態37
上記第1のコーティング層の上記オーバーコート部分及び上記方第2のコーティング層の上記オーバーコート部分は、上記第1のピンの列と上記第2のピンの列ンとの間の上記切削工具の1回のパスで、上記第1のピンの列及び上記第2のピンの列から除去される、実施形態36に記載の方法。
【符号の説明】
【0124】
100 押出ダイ
102 ハニカム形成用構造
106 ダイ本体
110 ピン
111 第1の列
112 側壁
113 側壁面積、表面
114 ピン110の端面
116 送り孔
119 第2の列
120 吐出スロット、スロット
130 吐出面
150 縦軸
300 堆積チャンバ
310 基板
312 表面
320 無機粒子
330、330a、330b、330c ガス
400、400a、400b、400c、600a~c、800a~c 押出ダイピン、ピン
401、601、801 スロット
402、602 ベース
404、604、804 コーティング材料
405 コーティング厚さ
406、606、806 ベースの側壁
407、607 コーティング層
408 ピンの最外側壁
410 こぶ
420、422、817 コーティング層
440、640、840 目標スロット幅
440’、610、810 スロット幅
605、815 オーバーコート、オーバーコート層
609 機械加工表面
620 オーバーコート厚さ
630 目標コーティング厚さ
650 切削工具
652 切削幅
660 完全充填済みスロット
802a ベース、第1のベース
802b ベース、第2のピンベース
802c ベース
807 第1の側壁
808 第2の側壁
812 外面
814 機械加工された外面
816 内面
820 コーティング材料の厚さ
【国際調査報告】