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特表2022-521202液圧式の単層熱間プレスまたは多層熱間プレスに使用するためのプレスパッドならびにプレスパッド・プレス金属薄板ユニットおよびプレスパッド・加熱プレートユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-06
(54)【発明の名称】液圧式の単層熱間プレスまたは多層熱間プレスに使用するためのプレスパッドならびにプレスパッド・プレス金属薄板ユニットおよびプレスパッド・加熱プレートユニット
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/32 20060101AFI20220330BHJP
   B27M 3/00 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
B29C43/32
B27M3/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547866
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(85)【翻訳文提出日】2021-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2020054156
(87)【国際公開番号】W WO2020169556
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】202019000828.4
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514013967
【氏名又は名称】ヒュック ライニッシェ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】HUECK Rheinische GmbH
【住所又は居所原語表記】Helmholtzstrasse 9, D-41747 Viersen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ エスペ
【テーマコード(参考)】
2B250
4F204
【Fターム(参考)】
2B250BA02
2B250BA03
2B250DA04
2B250FA21
2B250FA31
2B250HA01
2B250HA03
4F204AC03
4F204AG01
4F204AJ05
4F204FA01
4F204FB01
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ01
4F204FQ17
(57)【要約】
本発明は、液圧式の単層熱間プレスまたは多層熱間プレスに使用するためのプレスパッド(1)であって、面状の支持構造体(2)と、皿ばね(8)、コイルばね、板ばねまたは波形ばねのような多数の金属製のばね要素(3)とを備え、ばね要素(3)は、支持構造体(2)に結合されており、支持構造体(2)内にまたは支持構造体(2)に接して分配されて配置されている、プレスパッド(1)に関する。面状の支持構造体(2)は、金属製のプレートまたは繊維製の面状形成物、特に経編地または緯編地またはフリース材料または織布であってよい。最後の事例では、ばね要素(3)は、好ましくは繊維製の面状形成物の経糸(6)と緯糸(7)との交差点(18)に配置されている。さらに、本発明は、プレスパッド・プレス金属薄板ユニットまたはプレスパッド・加熱プレートユニットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧式の単層熱間プレスまたは多層熱間プレスに使用するためのプレスパッド(1,1’)であって、面状の支持構造体(2)と、多数の金属製のばね要素(3)とを備え、該ばね要素(3)は、前記支持構造体(2)に結合されており、該支持構造体(2)内にまたは該支持構造体(2)に接して分配されて配置されている、プレスパッド(1,1’)。
【請求項2】
前記支持構造体(2)は、金属製のプレート、好ましくは前記単層熱間プレスまたは多層熱間プレスのプレス金属薄板または加熱プレートであり、前記ばね要素(3)は、前記プレートに接着かつ/またはろう接かつ/または溶接かつ/または形状接続的に結合されていることを特徴とする、請求項1記載のプレスパッド(1,1’)。
【請求項3】
前記支持構造体(2)は、繊維製の面状形成物、特に経編地または緯編地またはフリース材料または織布であり、前記繊維製の面状形成物を形成する糸(6,7)の少なくとも一部が、金属から成っているかまたは金属を含んでおり、前記金属は、特に黄銅、銅、青銅、鋼、特に特殊鋼によって形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載のプレスパッド(1,1’)。
【請求項4】
前記支持構造体(2)は、金属製のプレートと繊維製の面状形成物とから形成され、前記ばね要素(3)は、前記繊維製の面状形成物および/または前記金属製のプレートに結合されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のプレスパッド(1,1’)。
【請求項5】
前記ばね要素(3)は、皿ばね(8)またはコイルばねまたは板ばねまたは波形ばねであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のプレスパッド(1,1’)。
【請求項6】
前記ばね要素(3)は、前記繊維製の面状形成物の糸(6,7)に結合、特に形状接続的に結合されており、前記ばね要素(3)は、好ましくは前記繊維製の面状形成物の経糸(6)と緯糸(7)との交差点(18)に配置されていることを特徴とする、請求項3から5までのいずれか1項記載のプレスパッド(1,1’)。
【請求項7】
前記ばね要素(3)は、前記繊維製の面状形成物の前記糸(6,7)を案内する貫通孔(17)を有することを特徴とする、請求項6記載のプレスパッド(1,1’)。
【請求項8】
前記ばね要素(3)は、少なくとも4つの貫通孔(17)を有し、該貫通孔(17)のうちの2つの貫通孔を通して経糸(6)が案内され、残りの2つの貫通孔を通して緯糸(7)が案内されていることを特徴とする、請求項7記載のプレスパッド(1’)。
【請求項9】
前記ばね要素(3)は、互いに等間隔を置いて離されて、特に互いに交差する列を成して、特に前記経糸(6)および/または前記緯糸(7)に沿って配置されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のプレスパッド(1,1’)。
【請求項10】
前記ばね要素(3)は、部分的にエラストマー材料内に埋め込まれており、好ましくは、シリコーンエラストマーまたはフルオロシリコーンエラストマーまたは両方の前記エラストマーのブレンドポリマーまたはコポリマー内に埋め込まれており、前記ばね要素(3)は、前記プレスパッド(1,1’)の、互いに向かい合って位置している両方の側に、好ましくは前記プレスパッド(1,1’)の表面(26)のそれぞれ一部を形成していることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のプレスパッド(1,1’)。
【請求項11】
前記エラストマー材料内に、熱伝導性を高めるための粒子、特に金属または鉱物から成る粒子が、それぞれ、好ましくは特にナノ粒子の形態で含まれていることを特徴とする、請求項10記載のプレスパッド(1,1’)。
【請求項12】
請求項1から11までの少なくとも1項記載のプレスパッド(1,1’)を備えるプレスパッド・プレス金属薄板ユニットまたはプレスパッド・加熱プレートユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧式の単層熱間プレスまたは多層熱間プレスに使用するためのプレスパッドに関する。さらに、本発明は、プレスパッド・プレス金属薄板ユニットおよびプレスパッド・加熱プレートユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば合板、パーティクルボード、MDFプレート、HDFプレートまたはマルチプレックスプレートのような集成材プレートの被覆は、通常、アミノプラスト樹脂が含浸された高級パルプ紙によって行われる。これらの紙は、様々な装飾がプリントされていてもよいし、単色であってもよい。アミノプラスト樹脂は、予備凝縮されたメラミン/フォルムアルデヒド樹脂から成っているかまたはメラミンと尿素またはフェノールとクレゾールとから成る混合樹脂から成っている。予備凝縮された樹脂は液相にあり、したがって、紙ウェブには、乾燥ゾーンおよび冷却ゾーンを備えた特殊な含浸通路において良好に含浸が行われる。樹脂のポリ凝縮は、加熱された乾燥ゾーンにおいて、約150℃~170℃の温度で再び励起され、続く冷却ゾーンにおいて、所望の凝縮程度に応じて中断される。このようにして得られた紙ウェブは、僅かな水分含有量を有しており、強固であり、ひいては、プレス設備、特に液圧式の単層熱間プレスまたは多層熱間プレスの形態のプレス設備での後続処理のために搬送可能である。
【0003】
含浸された装飾紙は、いまや相応に選択された集成材プレートと一緒に単層または代替的に多層を有していてもよい液圧式の熱間プレス内で使用される。圧力および熱の作用のもと、まず、予備凝縮されたアミノプラスト樹脂が液状になり、液状の樹脂の粘性は、更なる分子架橋によってさらに上昇し、最終的に強固な表面が形成される。表面形成のためには、構造化された艶消しのまたは光沢のある表面を備えた金属製のプレス金属薄板が、装飾紙またはアミノプラスト樹脂と接触する。プレス金属薄板は、通常、表面を摩耗および損傷に対して保護するためにクロムめっきされている。クロム層は、さらに、被覆工程(ライニング)後に、樹脂層からの申し分ない分離を行うことができるという機能を有している。金属製のプレス薄板は、例えば黄銅、合金MS64または材料AISI410またはAISI630から成っていてよく、今日、鋼薄板が、より高い硬度およびより長い耐用寿命に起因して好まれる。
【0004】
集成材プレートは、使用分野に応じて種々異なる材料密度を有しており、ゆえに、種々異なるプレス圧をも必要とする。HDF材料(高密度ファイバボード)製の床板プレート(フローリングプレート)の製造時には、固有のプレス圧は特に高く、約400N/cm~600N/cmである。それというのも、プレートの材料密度は約800N/cm~1000N/cmであるからである。未加工プレート自体は、極めて僅かな固有クッション作用を有し、被覆工程時に圧縮されねばならない厚さ誤差を有している。基本的にすべてのプレート材料は、程度の差こそあれ大きな厚さ誤差を有している。その他の誤差は、各プレス設備自体によって、特にプレス設備に設けられたプレス金属薄板および加熱プレートによって生じる。
【0005】
上述した誤差が補償されないと、被覆された集成材プレートの表面の形成時に、かなりの表面欠陥が生じる。ゆえに、プレス設備は、基本的に相応のプレスパッド、特に圧力補償織布または圧力補償マットの形態のプレスパッドを備えている。プレスパッドは、加熱プレートとプレス金属薄板との間に固定される。プレスパッドは、熱安定性でなくてはならず、すなわち、200℃~230℃の温度でも分解することが許されず、良好なばね作用または復元力と、高い熱伝導性とを有していなくてはならない。このとき、被覆プロセス中の均等な圧力分布と迅速な熱流とは、極めて特に重要なファクタである。上述したように、アミノプラスト樹脂は圧力および熱の作用下で再び液状になり、フォルムアルデヒドと水とが蒸気の形態で放出される。樹脂は、金属製のプレス金属薄板と集成材プレートとの間に位置しているので、システムは気密に閉鎖され、相応の蒸気が、プレス設備のサイクルによって設定された短時間のうちに紙ウェブおよびプレート表面内に拡散しなくてはならない。プレス圧が不均一であることに基づき、このことが行われないと、気泡が樹脂層内に閉じ込められたままになり、のちに、表面上の乳白色の曇った斑点として見えることになる。このような欠陥のあるプレートは、更なる使用のためにもはや適していない。高い加熱プレート温度(約200℃~230℃)に基づいて、プレスパッド用の適切な材料の選択肢は比較的僅かである。最近数十年で、シリコーンゴムベースのエラストマー材料が適していることが証明されており、シリコーンゴムとフルオロシリコーンゴムまたはフルオロゴムとから成る混合材料およびコポリマーも使用される。従来技術によるプレスパッドは、典型的には、エラストマー材料を含む糸を備えた織布としてあるいは多くの場合、金属製の支持織布を内部に備えた被覆されたマットとして形成されている。
【0006】
欧州特許出願公開第1136248号明細書に基づき、シリコーンとフルオロシリコーンゴムとから成るコポリマーを含む、織布を有するプレスパッドが公知である。コポリマーは、経糸または緯糸として使用される被覆された糸の形態でプレスパッド内に一体に加工されている。熱伝導性を高めるために、金属製の添加物がエラストマー材料に加えられてよい。
【0007】
欧州特許出願公開第0735949号明細書に記載されたプレスパッドは、一方の糸類内にシリコーンエラストマーを有し、他方の糸類内に金属糸を有している。シリコーンエラストマーを有する糸は、周壁・芯糸として形成されていてよく、例えば、糸芯はワイヤから成り、糸周壁はシリコーンエラストマーから成っている。
【0008】
西独国実用新案公開第202012005265号明細書に基づいて公知のプレスパッドでは、特定の糸が熱伝導糸として形成されており、この糸は、プレスパッド表面に対して可能な限り垂直なその経過に基づいて、より直接的な熱伝達を可能にすると言われている。
【0009】
さらに、欧州特許出願公開第1300235号明細書および西独国特許出願公開第2319593号明細書に基づき、金属織布製のプレスパッドがそれぞれ公知であり、このプレスパッドは、次いで、シリコーンゴムによって実質的に全面にわたって被覆される。欧州特許出願公開第1300235号明細書の教示によれば、プレスパッドの表面に向いて位置している金属糸、特にその輪またはループは、被覆工程の枠内で掻取りによって露出しており、これによって、プレスパッドと加熱プレートまたはプレス金属薄板との金属的な接触を得ることができる。さらに、熱伝導性を高めるために、シリコーンエラストマーに粒子を添加することができる。この公知のプレスパッドには、上述した構成に関連して、エラストマーマトリックス内に粒子状の添加物を加えることによって、エラストマーマトリックスの弾性およびその復元特性に不都合な影響が及ぼされるという欠点がある。
【0010】
公知のプレスパッドは、特にその復元力またはばね作用に関して、材料疲労という欠点を有していることが多い。公知のシリコーンエラストマーと、芳香族のポリマー、特にポリアミド製の糸を備えた代替的に使用されるプレスパッドとは、約200℃~230℃を上回る持続温度でこのようなエージングプロセスを有している。したがって、このようなプレスパッドは、比較的早期に交換されねばならず、これによって、プレス設備の停止時間が生じ、環境に対する負荷が高められることになる。それというのも、特に公知の材料または材料混合物から成るプレスパッドでは、リサイクルの可能性が極めて低いからである。特に床板プレートの被覆時には、長い使用時間にわたる高い復元値と、極めて大きな熱伝達とを有するプレスパッドが必要になる。これまでは、床板領域のためのHDFプレートの被覆(ラミネート)時には、公知のプレスパッドを備えたプレートフォーマット交換が不可能である。それというのも、パッドが、選択されたプレートフォーマットで強く圧縮され、より大きなフォーマットへの後での交換は、プレス品に痕跡を残すからである。
【0011】
さらに、本発明に係るプレスパッドは、いわゆる高圧プレス設備にも使用することができ、この高圧プレス設備では、例えばプリント基板のためのベース材料の形態のいわゆる高圧ラミネートが、熱が加えられたプレスによって製造される。このような使用のための、耐熱性のプラスチックフリースと、このプラスチックフリースに接着されたPTFEシートとから成るプレスパッドが、西独国実用新案公開第20011432号明細書に基づき公知である。このようなプレス工程時の長いサイクル時間に基づいて、この高圧パッドでは金属は不要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の根底にある課題は、可能な限り長い時間にわたって疲労なしに維持され続ける極めて高い弾性的な復元能と、大きな熱伝導性との点で優れたプレスパッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、本発明によれば、冒頭に述べた形態のプレスパッドから出発して、支持構造体に結合されており、この支持構造体内にまたは支持構造体に接して分配されて配置されている多数の金属製のばね要素によって解決される。
【0014】
金属製のばね要素は、エラストマー材料または芳香族のポリマー材料に比べて2つの利点を有している。1つには、金属製のばね要素は、金属材料に基づいて極めて高い弾性係数、つまり、大きなばね剛性を有することができる。このことは、ばね要素の変位、つまり、変形が比較的少ない場合にも、復元力が既に極めて大きいということを意味している。高い弾性係数と同時に大きな破断伸びとを有する金属は、例えば鋼、特にばね鋼である。しかしながら、基本的には、例えば銅合金(例えばベリリウム銅)のような他の金属材料も可能である。大きなばね定数にもかかわらず、金属製のばねはその復元特性を極めて長い時間にわたって維持するので、本発明に係るプレスパッドは、相応に長い耐用寿命を有している。もう1つには、金属製のばね要素は、極めて良好な熱伝導能を有しているので、特に基本的に比較的好ましくない熱伝導特性の点で目立つ大きな割合のエラストマー材料を有するプレスパッドと比較して、本発明に係るプレスパッドによって熱伝達にプラスの影響が与えられる。
【0015】
これによって、本発明は、初めて、熱伝導性特性に関しても、ばね特性(復元性)に関しても同じように有利であるプレスパッド部材の使用を可能にする。従来技術では、両方の特性(熱伝導性および復元性)を最適化するためには常に異なるコンポーネント、例えば復元性のためにはエラストマー材料、良好な熱伝導性のためには金属材料、特に金属糸が使用されていた。本発明の枠内では、支持構造体は、例えば金属製のプレート、好ましくは単層熱間プレスまたは多層熱間プレスのプレス金属薄板または加熱プレートによって形成されていてよい。プレス金属薄板または加熱プレートとのばね要素の結合の、最後に述べた両事例では、それぞれプレス金属薄板とばね要素とから成るユニットまたは加熱プレートとばね要素とからユニットが形成される。好ましくは、ばね要素はそれぞれのプレートに接着かつ/またはろう接かつ/または溶接かつ/または形状接続的に結合され、形状接続的な結合は、例えばプレートに設けられた相応の切欠きまたは貫通孔内へのばね区分の挿入によって行われる。
【0016】
プレートの形態の支持構造体の代わりに、本発明によれば、繊維製の面状形成物の形態の支持構造体も可能である。特に繊維製の面状形成物は、経編地または緯編地またはフリース材料または織布として形成されていてよく、繊維製の面状形成物を形成する糸の少なくとも一部が、金属から成っているかまたは金属を含んでいる。金属は、特に黄銅、銅、青銅、鋼、特に特殊鋼によって形成されていてよい。
【0017】
さらに、金属製のプレートと繊維製の面状形成物との組合せによって支持構造体を形成することも可能である。好ましくは、このような変化形態では、ばね要素は、繊維製の面状形成物にかつ/または金属製のプレートに結合されている。さらに、繊維製の面状形成物と金属製のプレートとの間の適切な結合が必要であり、この結合は、繊維製の面状形成物の糸とプレートとの間で、例えば接着、または溶接、またはろう接、または形状接続的な結合の形態で行われる。形状接続的な結合では、例えば繊維製の面状形成物の糸が、金属製のプレートに設けられた貫通孔または切欠きを通して案内される。
【0018】
金属製のばね要素として、好ましくは皿ばねまたはコイルばねまたは板ばねまたは波形ばねを使用することができる。
【0019】
本発明の好適な構成によれば、ばね要素を繊維製の面状形成物の糸に結合、特に形状接続的に結合する、つまり、好ましくは経糸と緯糸との交差点に配置することが提案される。この目的のために、ばね要素は、繊維製の面状形成物の糸、特に上述した経糸および緯糸を案内する貫通孔を有していてよい。特に好適な実施形態は、ばね要素が、それぞれ4つの貫通孔を有しており、これらの貫通孔のうちの2つの貫通孔を通して経糸が案内され、残りの2つの貫通孔を通して緯糸が案内されているプレスパッドによって形成される。こうして、それぞれの糸の交差箇所を特に有利に形成することができる。
【0020】
プレスパッドのばね特性の可能な限り良好な均一性を得るためには、ばね要素は、互いに等間隔を置いて離されて、特に互いに交差する列を成して、さらに特に支持構造体として働く織布の緯糸および/または経糸に沿って配置されていることが望ましい。こうして、一種のマトリックス構造体と、ばね要素の特に簡単な配置形態とが生じる。
【0021】
本発明の別の構成では、ばね要素は、部分的にエラストマー材料内に埋め込まれており、好ましくは、シリコーンエラストマーまたはフルオロシリコーンエラストマーまたは両方の上述したエラストマーのブレンドポリマーまたはコポリマー内に埋め込まれてよいことが特定されている。好ましくは、ばね要素の区分または部分は、プレスパッドの、互いに向かい合って位置している両方の側に、プレスパッドの表面のうちのそれぞれ一部を形成している。こうして、特に良好な熱伝達が得られる。それというのも、プレスパッドの両表面における熱が、プレスパッドの金属製の接触面を通してプレス金属薄板または加熱プレートに伝達されるからである。これに関連して、特に好ましくは、ばね要素は、完全にプレスパッドの厚さ全体にわたってプレスパッドを貫通して延在しており、これによって、熱の透過を最適化することができる。
【0022】
エラストマー材料との金属製のばね要素の組合せに関連して、エラストマー材料内に、プレスパッドの熱伝導性を高めるための粒子を添加することが好適であると言える。この粒子は、特に金属または鉱物から成る粒子であり、この粒子は、好ましくはナノ粒子として形成されていることが望ましい。
【0023】
以下に、図面に示した実施例に基づき本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係るプレスパッドを概略的に示す図である。
図2図1に示したばね要素の鉛直断面図である。
図3】別の本発明に係るプレスパッドを概略的に示す図である。
図4図3に示したプレスパッドの鉛直断面図である。
図5】従来技術による単層熱間プレスを示す鉛直断面図である。
図6】本発明に係るプレスパッド・加熱プレートユニットを示す鉛直断面図である。
図7】本発明に係るプレスパッド・プレス金属薄板ユニットを示す鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示した実施例は、液圧式の単層熱間プレスまたは多層熱間プレスに使用するための本発明に係るプレスパッド1’を含んでいる。従来技術のように、プレスパッド1を単層熱間プレスまたは多層熱間プレスの加熱プレートとプレス金属薄板との間に配置することが特定されており、これによって、プレス金属薄板または加熱プレートに存在した厚さ誤差を補償するのと同時に、プレス金属薄板への加熱プレートから出る熱の伝達を可能にすることができる。
【0026】
本発明に係るプレスパッド1は、面状の支持構造体2と多数のばね要素3とを含んでいる。面状の支持構造体2は、織布の形態で形成されており、この織布は、2つの糸類4,5、つまり、経糸6および緯糸7を含んでいる。経糸6と緯糸7とは共に黄銅製のワイヤ撚り線の形態で形成されていて、互いに織られて平織りを形成している。したがって、経糸6は、緯糸7の上下に交互に延び、緯糸7は、経糸6の上下に交互に延びている。
【0027】
プレスパッド1のばね要素3は、金属製の皿ばね8の形態で形成されている。単層熱間プレスまたは多層熱間プレスへの使用時に、皿ばね8は、変形していない状態で単に円形に環状の上側の縁部9だけで、単層熱間プレスまたは多層熱間プレスの加熱プレートに接触しており、同様に、円形に環状の下側の縁部10だけで、単層熱間プレスまたは多層熱間プレスのプレス金属薄板に接触している。両縁部9,10は、それぞれ円形の接触線11,12を形成している。しかしながら、ばね要素3の逆向きの方向付けも可能であり、このような方向付けでは、上側の縁部9がプレス金属薄板に接触し、下側の縁部10が加熱プレートに接触している。
【0028】
さらに、皿ばね8は、傾斜した(円錐の)側方部分15を有しており、この側方部分15は、第2の接触線12の直径に対して第1の接触線11の直径を小さくしている。図2には、皿ばね8が断面図で示してあり、ここで、皿ばね8は円錐台形状に示されている。
【0029】
単層熱間プレスまたは多層熱間プレスにおけるプレス工程時に、ばね要素3は、平らな上側の接触面13が形成されるように変形させられる。同時に、平らな下側の接触面14が形成される。このとき、両接触面13,14のうちの一方の接触面が、単層熱間プレスまたは多層熱間プレスへの使用時に加熱プレートに接触しているのに対して、両接触面13,14のうちの他方の接触面は、プレス金属薄板に接触している。これによって、皿ばね8は、プレス工程中にほぼ中空円筒の形状になる。
【0030】
皿ばね8は、縁領域16に4つの貫通孔17を備えており、これらの貫通孔17は、それぞれ互いに90°の角度を成して1つの円上に配置されており、製造を簡単にするために、それぞれ皿ばね8の円形の外縁部に向かって開放していてもよく、このように構成されていると、緯糸7または経糸6の糸端部を「挿通する」必要がなく、側方から「挿入する」ことができる。ばね要素3の、互いに向かい合って位置している2つの貫通孔17を通して、糸類4,5のそれぞれ1つの糸6,7が貫通するのに対して、残りの両貫通孔17は、相応に他方の糸類4,5の糸6,7を収容するために設けられている。経糸6と緯糸7との交差点18は、実質的にばね要素3の中心軸線19に相当している。皿ばね8は、互いに等間隔を置いてプレスパッド1に配置され、プレスパッド1において90°の角度を成して交差する列を形成している。したがって、プレスパッド1は、簡単に巻くことができ、かつ運ぶことができる。
【0031】
皿ばね8の緊張していない(力が加えられていない)長さ21が、経糸6および緯糸7の直径20に対して増大していることに基づいて、プレスパッド1の上側の接触面が、個々の皿ばね8の上側の接触面13の全体によって形成されるのに対して、プレスパッド1’の下側の接触面は、個々の皿ばね8の下側の接触面14の全体によって規定される。これによって、加熱プレートおよび/またはプレス金属薄板の種々異なる厚さを皿ばね8のばね弾性作用を用いて補償することを保証することができ、ばね弾性作用の程度は、皿ばね8の外径22、内径23、材料厚さ24および緊張していない長さ21を変えることによって変化し、ひいては、単層熱間プレスまたは多層熱間プレスにおける具体的な要求に適合させることができる。これによって、経糸6および緯糸7は、プレス金属薄板または加熱プレートに接触しない。極めて直接的に、つまり、短い経路でプレス金属薄板を貫いて延在している皿ばね8の熱伝導特性に基づいて、プレス金属薄板への、加熱プレートから出る熱の良好な伝達が行われる。
【0032】
本発明に係るプレスパッド1’の別の実施例が、図3に示してある。プレスパッド1’は、同様に織布の形態の面状の支持構造体2と、多数の金属製のばね要素3とを含んでいる。図1に示したプレスパッド1’とは異なり、図2に示したプレスパッド1’は、耐熱性のエラストマー材料製の両側の被覆層25を有している。したがって、図1に示したプレスパッド1’は、実質的にエラストマー材料内に埋め込まれている。さらに、加熱プレートまたはプレス金属薄板が単にばね要素3にだけ接触することを保証するために、被覆層25は、図4において良好に認識できるように、それぞれのばね要素3の領域で隔てられている。したがって、プレスパッド1’の下側の表面26は、部分的にばね要素3によって形成される。
【0033】
従来技術による単層熱間プレス27が、図5に示してある。この単層熱間プレス27は、2つの加熱プレート28と2つのプレス金属薄板29とを含んでいる。本発明によれば、既に従来技術のように、それぞれ1つの本発明に係るプレスパッド1’,1を単層熱間プレス27の加熱プレート28とプレス金属薄板29との配置することが特定されている。両プレス金属薄板29の間には、被覆すべき集成材プレート30が挿入され、この集成材プレート30は、図示されていない装飾紙によって覆われている。単層熱間プレス27から出る熱と、集成材プレート30に加えられる圧力とを用いて、装飾紙は集成材プレート30に結合される。
【0034】
本発明に係るプレスパッド・加熱プレートユニット31の、図6に示した実施例は、単層熱間プレスまたは多層熱間プレスの本発明に係るプレスパッド1,1’と加熱プレート28とを含んでいる。この実施例では、プレスパッド1,1’は、ただ1つの部材が形成されるように加熱プレート28に接着されている。
【0035】
本発明に係るプレスパッド・プレス金属薄板ユニット32の1つの実施例が、図7に示してある。プレスパッド・加熱プレートユニット31とは異なり、本発明に係るプレスパッド1,1’は、単層熱間プレスまたは多層熱間プレスの加熱プレート28にではなく、プレス金属薄板29に、例えば接着によって結合されており、これによって、同様にただ1つの部材を形成している。
【符号の説明】
【0036】
1’ プレスパッド
1 プレスパッド
2 支持構造体
3 ばね要素
4 糸類
5 糸類
6 経糸
7 緯糸
8 皿ばね
9 上側の縁部
10 下側の縁部
11 接触線
12 接触線
13 上側の接触面
14 下側の接触面
15 側方部分
16 縁領域
17 貫通孔
18 交差点
19 中心軸線
20 直径
21 緊張していない長さ
22 外径
23 内径
24 材料厚さ
25 被覆層
26 表面
27 単層熱間プレス
28 加熱プレート
29 プレス金属薄板
30 集成材プレート
31 プレスパッド・加熱プレートユニット
32 プレスパッド・プレス金属薄板ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】