(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-06
(54)【発明の名称】衝突耐性のある推進力およびコントローラを備えた無人航空機
(51)【国際特許分類】
B64C 17/00 20060101AFI20220330BHJP
B64C 27/08 20060101ALI20220330BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20220330BHJP
B64D 27/24 20060101ALI20220330BHJP
B64C 11/34 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
B64C17/00
B64C27/08
B64C39/02
B64D27/24
B64C11/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549185
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(85)【翻訳文提出日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2020054399
(87)【国際公開番号】W WO2020169686
(87)【国際公開日】2020-08-27
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521367385
【氏名又は名称】フライアビリティ・エスエイ
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】シドティ・アントニノ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルセシーニ・マシュー
(72)【発明者】
【氏名】パブクシディス・アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ダレル・ルドヴィク
(72)【発明者】
【氏名】ブリオ・アドリアン
(57)【要約】
垂直離着陸(VTOL)無人航空機(UAV)(1)は、マルチプロペラ推進システム(2)と、マルチプロペラ推進システム(2)を囲む外側保護ケージ(4)と、自律電源(7)と、感知システム(6)と、感知システム(6)に接続され、感知システムから測定信号を受信する制御システム(5)と、を含む。制御システムは、マルチプロペラ推進システム(2)に電気的に接続され、推進システムのモータ(10)を制御する。感知システムは、少なくとも、マルチプロペラ推進システムの向きおよび変位を測定するように構成された向きセンサおよび変位センサを含む。マルチプロペラ推進システムは、非同軸的に離間して配列された少なくとも2つのプロペラ(8)を含み、各プロペラは、プロペラブレード(9)に連結されたステータおよびロータを有するモータ(10)を含む。制御システム(5)は、少なくとも1つのマイクロプロセッサ(15)と、少なくとも1つの不揮発性メモリ(16)と、を含み、不揮発性メモリ内の少なくとも1つの制御プログラム(17)は、VTOL UAVの飛行またはホバリングのためにマルチプロペラ推進システムを制御するためにマイクロプロセッサ(15)によって実行可能である。制御システムは、障害物(26)との接触点(P)から遠位の少なくとも1つのプロペラ(8”)における推力を逆転させると共に、その接触点(P)から近位プロペラのモータ(10)を制御して揚力を発生させるように構成された、向きを安定させるためのプログラム(18)を含み、遠位および近位プロペラの推力は、UAVに揚力を及ぼして、それに対する重力(G)を打ち消し、かつ、前記接触点(P)の周りに回転モーメント(M)を加えてUAVの位置を安定させるか、または慣性に起因するトルクを打ち消すように、制御される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直離着陸(VTOL)無人航空機(UAV)(1)であって、
マルチプロペラ推進システム(2)と、
前記マルチプロペラ推進システム(2)を囲む外側保護ケージ(4)と、
自律電源(7)と、
感知システム(6)と、
前記感知システムから測定信号を受信するために前記感知システム(6)に接続された制御システム(5)と、を含み、
前記制御システムは、前記マルチプロペラ推進システム(2)に電気的に接続され、前記推進システムのモーター(10)を制御し、
前記感知システムは、少なくとも、前記マルチプロペラ推進システムの向きおよび変位を測定するように構成された向きセンサおよび変位センサを含み、
前記マルチプロペラ推進システムは、非同軸的に離間して配列された少なくとも2つのプロペラ(8)を含み、
各プロペラは、プロペラブレード(9)に連結されたステータおよびロータを有するモータ(10)を含み、
前記制御システム(5)は、少なくとも1つのマイクロプロセッサ(15)と、少なくとも1つの不揮発性メモリ(16)と、を含み、前記不揮発性メモリ内の少なくとも1つの制御プログラム(17)は、前記VTOL UAVの飛行またはホバリングのために前記マルチプロペラ推進システムを制御するように、前記マイクロプロセッサ(15)によって実行可能であり、
前記制御システムは、障害物(26)との接触点(P)から遠位の少なくとも1つのプロペラ(8”)における推力を逆転させると共に、前記接触点(P)から近位プロペラのモータ(10)を制御して揚力を発生させるように構成された、向きを安定させるためのプログラム(18)を含み、遠位プロペラおよび前記近位プロペラの推力は、前記UAVに揚力を及ぼして、それに対する重力(G)を打ち消し、かつ、前記接触点(P)の周りに回転モーメント(M)を加えて前記UAVの位置を安定させるか、または慣性に起因するトルクを打ち消すように、制御されることを特徴とする、VTOL UAV。
【請求項2】
前記マルチプロペラ推進システムは、矩形構成に配列されたプロペラを含む、請求項1に記載のVTOL UAV。
【請求項3】
前記マルチプロペラ推進システムは、非同軸的に離間して配列された複数対(8a、8b)のプロペラを含む、請求項1または2に記載のVTOL UAV。
【請求項4】
対の前記プロペラは、鏡像対称に配列されている、請求項3に記載のVTOL UAV。
【請求項5】
前記プロペラブレード(9)は、時計回りおよび反時計回り両方の回転方向において同じ空気力学特性を有するように対称である、請求項1から4のいずれか一項に記載のVTOL UAV。
【請求項6】
一対の同軸プロペラの前記プロペラは、独立して制御されるように構成された方法で前記制御システムに接続されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のVTOL UAV。
【請求項7】
前記プロペラのうちの少なくともいくつかは可逆であり、時計回り方向または反時計回り方向に回転するように前記制御システムによって制御され得、または、代わりに、前記プロペラのうちの少なくともいくつかは、前記プロペラによって生成される推力の量および推力の方向に応じて、依然として同じ方向に回転しながらそれらのブレードのピッチを変えることによって可逆である、請求項1から6のいずれか一項に記載のVTOL UAV。
【請求項8】
前記マルチプロペラ推進システム、前記電源、および前記制御システムは、サスペンション要素(11)を介して前記外側保護ケージに連結された内側支持構造体(3)上に装着されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のVTOL UAV。
【請求項9】
前記外側保護ケージは、前記マルチプロペラ推進システムを囲むケージを形成するコネクタ(14)によって互いに接続された複数のビーム(13)を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のVTOL UAV。
【請求項10】
前記外側保護ケージは、前記マルチプロペラ推進システム(2)の周りにほぼ球形の形状を形成する、請求項9に記載のVTOL UAV。
【請求項11】
前記感知システムは、前記VTOL UAVの向きおよび速度の変化を測定するために、少なくとも1つのジャイロスコープおよび少なくとも1つの加速度計を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のVTOL UAV。
【請求項12】
前記感知システムは、外部物体からの前記VTOL UAVの距離を検出し、任意選択的に前記外部物体に対する前記UAVの速度を計算するように構成された、光学センサ、超音波センサ、またはマイクロ波センサを含み得る、少なくとも1つの距離センサを含む、障害物感知システム(20)を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のVTOL UAV。
【請求項13】
前記感知システムは、前記外側保護ケージ(4)と外部物体(26)との接触を検出するように構成された少なくとも1つの近接センサを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のVTOL UAV。
【請求項14】
前記マルチプロペラ推進システムは、正方形または矩形構成(Re)で離間して配列された4つのプロペラ(8)または四対(8a、8b)のプロペラを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のVTOL UAV。
【請求項15】
非同軸的に離間して配列された複数のプロペラは、本質的に同じ平面(B)内で回転する、請求項1から14のいずれか一項に記載のVTOL UAV。
【請求項16】
前記モータおよび前記プロペラは、それらが生成する推力を、k=1秒当たりのそれらのホバリング推力の8~50倍の割合で変化させるように構成されている、請求項1から15のいずれか一項に記載のVTOL UAV。
【請求項17】
1つ以上のプロペラが、それぞれ、前記プロペラを囲むダクト内に装着されている、請求項1から16のいずれか一項に記載のVTOL UAV。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
本発明は、保護外側ケージ、ならびに、外部物体との接触によって引き起こされる外乱を低減し、UAVが他の障害物に有意な速度で衝突するのを防止することを可能にする推進システムおよびコントローラ、を備えたVTOL(垂直離着陸)無人航空機(以下、「UAV」とも呼ぶ)に関する。
【0002】
本発明の特定の実施形態の技術的利点は、障害物、構造物、物体、人間などに近接した飛行を含むさまざまな適用において、UAVのロバスト性を向上させるか、またはUAVの新たな用途を容易にすることを可能にすることができる。このような適用は、例えば、屋外または屋内のインフラの点検または監視、資産の監督などである。
【0003】
VTOL航空機は、一般に、重力に逆らう上向きの力(揚力)を生成する推進システム(例えば、1つ以上のプロペラ)のおかげで飛行する。このような輸送機関は、低速飛行(ホバリング飛行)、垂直離陸または垂直着陸が可能であり、一般に、安定した向きのままであるか、または横向きに移動するために、それらの向きまたは方向を制御する制御システムを有する。航空機が安定した向きにないとき、例えば、その推進システムが主として上向きでない力を発生させる場合、航空機は、急速に揚力を失うか、または推進システムが力を発生させる方向に向かって速度を得る場合がある。
【0004】
UAVは、一般に、ホバリング飛行時に安定した向きのままであるように、または横向きに移動するためにわずかに傾斜するように、制御される。ホバリング飛行では、コントローラは一般に、一定の高度を維持するためにドローンにかかる重力を相殺するホバリング推力を加える。推力は、各プロペラによって生成される各力ベクトルを合計した結果として得られる力である。一般的には、コントローラは、傾斜している間はホバリング推力よりも大きな推力を加え、推力が傾いているにもかかわらず重力を相殺し、横向きに移動する間、同じ高度を維持する(
図1参照)。
【0005】
ドローンの向きを制御して、例えば安定した向きに戻すために、制御システムは、一般に、各プロペラによって生成される相対的な力を変化させることによって、典型的には、下に傾斜した側のプロペラによってより多くの力(F2)を生成すること(
図2)によって、ドローンの角速度および向きに影響を与えるトルクを加えている。
【0006】
障害物に接近して飛行するように設計された航空機は、典型的には推進システムおよび制御システムを囲む保護外側ケージを備えていることが多い。これらの保護ケージは、航空機が障害物に衝突したり、地面に落下したときに、外部物体が、回転するプロペラまたは制御表面などの傷つきやすい部品を損傷したり、衝突エネルギーを吸収したりするのを防止する。これらは一般に、推進システムによって生成される揚力にあまり影響を与えずに、開口部により空気流が構造物を通過できるように、形成される。
【0007】
航空機が障害物に接触した場合、保護外側ケージがUAVの損傷を防ぐことができる。しかしながら、障害物との接触は、航空機の向きを乱し得る比較的大きな外部トルクおよび力を引き起こす可能性があり、これにより、UAVは、(重力の引く力により)高度を失うか、または推進システムが指す方向に向けて著しく速度を上げる場合があり、それは、UAVを、さらなる障害物に高速で衝突する危険にさらす。
【0008】
UAVの向きが乱されたときに破滅的な衝突が起こるリスクを減らそうとして、標準的なコントローラは、UAVが著しく速度を上げる前に、できるだけ早くUAVを安定した向きに戻すためにトルクを生成するが、そのような回復は、別の障害物との第2の衝突が通常起こり、破滅的な衝突を発生させる、雑然とした空間では、不可能である可能性が高い。
【0009】
場合によっては、航空機が障害物に接触した場合、例えば、障害物の接触力、摩擦、粘着性または形状、周囲のかぎ状のもの(hooks)などにより、航空機が障害物に接触したままになることがある。この場合、UAVは障害物にヒンジ式に付着し、障害物との接触点の周りを回転する。標準的なコントローラは、自由空間でドローンを安定した向きに戻すトルクを生成するように設計されているが、多くの場合、この状況に対処できない。UAVが障害物にヒンジ式に付着している場合、通常、標準的なコントローラはヒンジにより反対方向に望ましくないトルクを生成し(
図3a)、これは航空機の向きをさらに乱す可能性があり、最終的には衝突につながる(
図3b)。
【0010】
上記を鑑み、本発明の目的は、前述した欠点を克服し、障害物との衝突の状況下で安定した飛行および迅速な修正措置を可能とし、衝突のリスクを低減する、VTOL UAVを提供することである。
【0011】
多用途で機敏なVTOL UAVを提供することは有利である。
【0012】
限られたスペース内で、また障害物の間を、安全で制御しやすい方法で飛行できるVTOL UAVを提供することは有利である。
【0013】
本発明の目的は、請求項1に記載のVTOL UAVを提供することによって達成されている。
【0014】
本明細書には垂直離着陸(VTOL)無人航空機(UAV)が開示され、これは、マルチプロペラ推進システムと、マルチプロペラ推進システムを囲む外側保護ケージと、自律電源と、感知システムと、感知システムから測定信号を受信するために感知システムに接続された制御システムと、を含む。制御システムは、マルチプロペラ推進システムに電気的に接続され、推進システムのモータを制御する。感知システムは、少なくとも、マルチプロペラ推進システムの向きおよび変位を測定するように構成された向きセンサおよび変位センサを含む。マルチプロペラ推進システムは、非同軸的に離間して配列された少なくとも2つのプロペラを含み、各プロペラは、プロペラブレードに連結されたステータおよびロータを有するモータを含む。制御システムは、少なくとも1つのマイクロプロセッサと、少なくとも1つの不揮発性メモリと、を含み、不揮発性メモリ内の少なくとも1つの制御プログラムは、VTOL UAVの飛行またはホバリングのためにマルチプロペラ推進システムを制御するように、マイクロプロセッサによって実行可能である。
【0015】
制御システムは、障害物との接触点(P)から遠位の少なくとも1つのプロペラにおける推力を逆転させると共に、その接触点(P)から近位プロペラのモータを制御して揚力を生成するように構成された、向きを安定させるためのプログラムを含み、遠位および近位プロペラの推力は、UAVに揚力を及ぼして、それに対する重力(G)を打ち消し、かつ、前記接触点(P)の周りで回転モーメント(M)を加えてUAVの位置を安定させるか、または慣性に起因するトルクを打ち消すように、制御される。
【0016】
推力の逆転は、プロペラの回転方向の変更、または可変ピッチプロペラブレードのピッチの変更のいずれかによって得ることができる。さらに別の実施形態では、推力は、一対のプロペラの第2のプロペラのスイッチをオンにし、かつ一対のプロペラの第1のプロペラのスイッチをオフにするか、または第1のプロペラにおける推力を減少させることによって、逆転され得、第1および第2のプロペラは、それぞれ反対の方向に推力を生成するように構成される。通常飛行中、第2のプロペラは静止していてよく、一方、第1のプロペラは飛行のための揚力推力(lift thrust)を生成する。後者の実施形態では、プロペラは必ずしも可逆である必要はなく、それぞれが単一方向に回転するように構成され得る。
【0017】
有利な実施形態では、マルチプロペラ推進システムは、矩形構成に配列されたプロペラを含む。
【0018】
有利な実施形態では、マルチプロペラ推進システムは、非同軸的に離間して配列された複数対のプロペラを含む。
【0019】
有利な実施形態では、対のプロペラは、鏡像対称に配列される。
【0020】
有利な実施形態では、プロペラブレードは、時計回りおよび反時計回り両方の回転方向において同じ空気力学特性を有するように対称である。
【0021】
有利な実施形態では、一対の同軸プロペラのプロペラは、独立して制御されるように構成された方法で制御システムに接続される。
【0022】
有利な実施形態では、前記プロペラのうちの少なくともいくつかは可逆であり、プロペラによって生成される推力の量および推力の方向に応じて、時計回り方向または反時計回り方向に回転するように、制御システムによって制御され得る。代替的な変形例では、前記プロペラのうちの少なくともいくつかは、可変ピッチのブレードを有し、依然として同じ方向に回転しながらそれらのブレードのピッチを変えることによって可逆である。
【0023】
変形例では、前記プロペラのうちの少なくともいくつかがダクト内に封入され、有利な揚力および空気力学特性を提供する。
【0024】
有利な実施形態では、マルチプロペラ推進システム、電源、および制御システムは、サスペンション要素を介して外側保護ケージに連結された内側支持構造体上に装着される。
【0025】
有利な実施形態では、外側保護ケージは、マルチプロペラ推進システムを囲むケージを形成するコネクタによって互いに接続された複数のビームを含む。
【0026】
有利な実施形態では、外側保護ケージは、(UAVの意図された用途および目的に応じて)マルチプロペラ推進システムの周りに、ほぼ球形、正方形、卵形、ディスク形、またはさまざまな他の形状を形成する。
【0027】
有利な実施形態では、感知システムは、VTOL UAVの向きおよび速度の変化を測定するために、少なくとも1つのジャイロスコープおよび少なくとも1つの加速度計を含む。
【0028】
有利な実施形態では、感知システムは、外部物体からのVTOL UAVの距離を検出し、任意選択的に外部物体に対するUAVの速度を計算するように構成された、光学センサ、超音波センサ、またはマイクロ波センサを含み得る、少なくとも1つの距離センサを含む、障害物感知システムを含む。
【0029】
有利な実施形態では、感知システムは、外側保護ケージと外部物体との接触を検出するように構成された少なくとも1つの近接センサを含む。
【0030】
有利な実施形態では、マルチプロペラ推進システムは、正方形または矩形構成(Re)で離間して配列された4つのプロペラまたは四対のプロペラを含む。
【0031】
有利な実施形態では、非同軸的に離間して配列された複数のプロペラは、本質的に同じ平面内で回転する。
【0032】
有利な実施形態では、非同軸的に離間して配列された複数のプロペラは、2つ以上の平面内で回転し、いくつかのプロペラが互いに重なり合うことができる。
【0033】
本発明は、いくつかのプロペラと、1つ以上のプロペラによって生成された推力方向を迅速に逆転することができるモータコントローラと、に依存する推進システムの使用、ならびに、障害物にヒンジ式に付着した場合であっても、コントローラがVTOL UAVを安定した向きに戻すトルクを生成することを可能にする方法を提案する。
【0034】
UAVにおいてプロペラにより生成される推力方向を逆転させることが知られており、WO2015105554では、一対のプロペラの推力を逆転させて地上でのローリングモードを可能にし、US9650135では、プロペラの推力を逆転させてUAVを逆さまの向きで飛行させることができる。しかしながら、本発明は、これまで提案されていなかった、障害物との飛行中の衝突に対処するための新しい制御スキームを提供する。
【0035】
コントローラは、向き、角速度、手動パイロット入力、加速度または他の測定もしくは状態推定を使用して、ドローンを安定させる力を生成するプロペラおよびモータコントローラにコマンドを適用することができる。VTOL UAVは動的システムであり、コントローラは、(回転軸に直交する、プロペラブレードの平面に対する)傾斜角に依存し、かつUAVの構成、プロペラの数、およびプロペラに対する接触場所に依存する、静的コマンドを適用し、その後、VTOL UAVの現在の運動を考慮に入れた動的コマンドを追加することができる。静的コマンドの効果は、VTOL UAVをさまざまな傾斜角度で静的に保持することによって観察され得る。その後、任意の動的コマンドが、VTOL UAVの運動を考慮するために、これらのコマンドに追加され得、例えば、PID(比例積分微分)コントローラで一般的に使用されるような、微分成分、またはVTOL UAVの角速度に比例するコマンドを追加する。
【0036】
UAVの向きの識別は、向きセンサ、例えば、ジャイロスコープ、加速度計、慣性測定装置(IMU)、磁力計、距離センサ、画像(vision)、地平線検出など、またはセンサの組み合わせを用いて行うことができる。VTOL UAVの中心を通り、安定した向きに関してUAVが周囲を回転する傾斜軸(ヨー軸に対応する)が識別され得、上方に傾斜したUAVの側において、傾斜軸から遠位にあるプロペラまたはプロペラ群は、UAVの上向き方向に沿って向けられている場合は正の、また、UAVの下向き方向に沿って向けられている場合は負の、結果として生じる力F1を生成するように、制御される。下方に傾斜したUAVの側において、傾斜軸から遠位にあるプロペラまたはプロペラ群は、結果として生じる力F2を発生させるように、制御される。傾斜角30°~150°で、負の力F1は、プロペラの1つ以上の回転方向を逆転させることによって、制御され得る。
図12は、さまざまな接触点のための傾斜軸を示し、さまざまなマルチロータ構成についてF1およびF2を生成するために使用されるプロペラ群を示す。
【0037】
標準コントローラは、F1およびF2に対する正のコマンドを生成し(
図3aおよび
図4a)、したがって、一般に、ヒンジ点Pの周りにトルクMaを生成し(
図4b)、これは、UAVをその安定した向きからさらに離れるように動かすが、本発明の実施形態によるUAVは、力F1およびF2(
図7および
図11a)を加え、これは、UAVをその安定した向きに戻すトルクMを生成する(
図11b)。
【0038】
ヒンジ点Pの周りのトルクは、推進システム、重力および慣性項に関連するさまざまな項で構成される。正のトルクが安定化すると仮定すると、ホバリング飛行に典型的な正のF1およびF2は常に負の寄与を生じ、重力は90°の傾斜角度まで安定していることが分かる。衝突前の速度による慣性項は常に不安定である。
【0039】
【0040】
普遍性を失うことなく、システムが安定するための十分条件は、ヒンジ点の周りのトルクが常に正(安定)であり、VTOL UAVの初速度および慣性に関連する定数よりも高いことである。この関係は、F1および/またはF2が負であるのが有利であることを明確に示している。また、迅速な修正措置に有利な、一般的には高い推力対重量比は、このような状態では望ましくないことを示す。
【0041】
定数rtは、プロペラの質量中心からの距離と保護フレームの基準長との比である。これは、常に正の数で、プロペラがどのくらい保護フレームの近くに配置されているかを示す。
【0042】
障害物との衝突はしばしば動的な状況を発生させるので、推力振幅を変化させるためのコマンドに迅速に反応することができるモータおよびモータコントローラを使用することは有利である。
【0043】
回転方向を変更する際の遅れは動的な状況で不安定な挙動を引き起こす可能性があるため、回転方向を迅速に変更することができるモータおよびモータコントローラを使用することが有利である。
【0044】
生成する推力を、k=1秒当たりの公称ホバリング推力(力)の8~50倍の割合で変化させることができる、モータおよびプロペラを使用することが有利である。例えば、プロペラ当たりの公称推力が4Nの場合、推進システムは、1秒当たり4×8=32N~1秒当たり4×50=200Nの割合でその推力を変化させることができなければならない。
【0045】
時計回りまたは反時計回りのどちらにも回転する場合、両方向に力を生成することができるプロペラを使用することが有利である。ブレードが回転軸に直交する平面Bの周りで対称となるプロペラを、プロペラがいずれの方向に回転しても同じ力を生成するようにして使用することが有利である。
【0046】
一方向にのみ回転しながら両方向に推力を加えることができる、可変のピッチ角を有するプロペラを使用することが有利である。
【0047】
下向きの力を生成するように最適化されたいくつかのプロペラを使用することが有利であり、一方、他のプロペラは、上向きの力を生成するように最適化され、これにより、所望の方向に力を加えることができる反応性を増大させる。本実施形態では、反対方向の力を生成する前にプロペラが方向転換するのを待つのではなく、命令された設定点に近い回転速度からプロペラが加速を開始することを可能にする。また、この実施形態は、動力効率を向上させることができる、上向き揚力のために最適化されたプロペラを使用することを可能にする。プロペラがいずれの方向に回転しても同じ力を生成するように、ブレードが回転軸に直交する平面Bの周りで対称であるいくつかのプロペラで構成されることが、この実施形態にとって依然として有利である。
【0048】
UAVが障害物と接触していない状況で本発明の実施形態によるUAVを使用することは、UAVの迅速な安定を可能にすると共に、高度の損失および望ましくない方向の加速度を低減するので有利である。
【0049】
本発明のさらなる目的および有利な特徴は、特許請求の範囲、詳細な説明および添付の図面から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1a】従来の垂直離着陸(VTOL)無人航空機(UAV)の概略的な簡略図であり、UAVに作用する推進力および重力を図示している。
【
図1b】従来の垂直離着陸(VTOL)無人航空機(UAV)の概略的な簡略図であり、UAVに作用する推進力および重力を図示している。
【
図2】従来の垂直離着陸(VTOL)無人航空機(UAV)の概略的な簡略図であり、UAVに作用する推進力および重力を図示している。
図1aおよび
図1bに類似した図であり、UAVの向きを修正するためにUAVにトルクを加える推進力を図示している。
【
図3a】障害物と衝突する
図1a~
図2に示すような従来のVTOL UAVの概略的な簡略図である。
【
図3b】障害物と衝突する
図1a~
図2に示すような従来のVTOL UAVの概略的な簡略図である。
【
図4a】UAVの向きを修正しようとする
図3aのUAVのプロペラによって加えられる推進力のグラフ図である。
【
図4b】
図4aに示す力をプロペラに加えたときの、接触点の周りでのUAVの傾斜角度に依存する、障害物との接触点の周りでUAVに加えられたモーメントのグラフ図である。
【
図5a】本発明の一実施形態によるVTOL UAVの図である。
【
図5b】本発明の一実施形態によるVTOL UAVの図である。
【
図5c】本発明の一実施形態によるVTOL UAVの図である。
【
図5d】本発明の一実施形態によるVTOL UAVの図である。
【
図6a】本発明の別の実施形態を示す、
図5a、
図5cと同様の図である。
【
図6b】本発明の別の実施形態を示す、
図5a、
図5cと同様の図である。
【
図7】本発明のさらに別の実施形態を示す、
図5aと同様の図である。
【
図8】本発明の一実施形態によるUAVの感知および制御システムの概略ブロック図である。
【
図9】本発明の一実施形態によるUAVの、
図3aに類似した図である。
【
図10a】本発明によるUAVの別の実施形態の、
図9と同様の図である。
【
図10b】本発明によるUAVの別の実施形態の、
図9と同様の図である。
【
図10c】本発明によるUAVの別の実施形態の、
図9と同様の図である。
【
図10d】本発明によるUAVの別の実施形態の、
図9と同様の図である。
【
図11a】UAVの向きを修正しようとする
図9によるUAVのプロペラによって加えられる推進力のグラフ図である。
【
図11b】
図9に示す力をプロペラに加えたときの、接触点の周りでのUAVの傾斜角度に依存する、障害物との接触点の周りでUAVに加えられたモーメントのグラフ図である。
【
図12】種々のマルチロータ構成で推力F1、F2を生成するために使用される、種々の接触点およびプロペラ群に対する傾斜軸を概略的に示す。
【0051】
図5a~
図10dを参照すると、本発明の実施形態によるVTOL UAV1は、外側保護ケージ4の内側に装着された内側支持構造体3によって支持されたマルチプロペラ推進システム2を含む。外側保護ケージ4は、コネクタ14によって互いに接続された複数のビーム13から形成され得、これらのビームは、組み合わせてほぼ球形の外側保護ケージを形成し、任意選択的に平坦化された部分または開口部を有する、例えば三角形のフレームモジュール12を形成する。本発明の範囲内では、UAVの意図された用途および目的に応じて、他の外側ケージ形状および形態、例えば、ほぼ正方形、卵形、ディスク形、およびさまざまな他の形状、が提供され得る。
【0052】
VTOL UAV1は、マルチプロペラ推進システム2と共に内側支持構造体3によって支持され得る、例えば充電式バッテリの形態の、電源7と、制御システム5と、感知システム6と、をさらに含む。しかしながら、感知システムの要素は、例えば位置センサまたはカメラ23のように、一部が外側保護ケージ4上に装着されてもよい。本発明の実施形態によるVTOL UAV1aは、さらなる構成要素、特に、内側支持構造体3上および/または外側保護ケージ4上に装着された画像取得および照明システム23を含むことができる。
【0053】
感知システム9は、特に、位置、向き、および変位感知システム19と、障害物感知システム20と、を含むことができる。位置、向き、および変位感知システム19は、特に、UAV1の向きおよび加速度および加速方向を測定することができる1つ以上のジャイロスコープおよび1つ以上の加速度計を含むことができる。加速度計はまた、UAVと障害物との衝突を検出することができる。
【0054】
さらに、ジャイロスコープおよび/または加速度計およびモータフィードバックまたはモータコマンドを使用して、ドローンに加えられるトルクまたは力を推定することができ、これにより、UAVの外側保護ケージ4と障害物との間の接触を検出するか、または接触点(P)を示すことができる。
【0055】
障害物感知システム20は、特に、外部物体からのUAVの距離を決定し、任意選択的に前記障害物に向かう変位の速度を決定するように構成された、距離センサ、例えば光学および/または超音波センサを含むことができる。マイクロ波またはミリ波センサのような他の距離センサも使用することができる。
【0056】
障害物感知システムはまた、UAVの外側保護ケージ4と障害物との間の接触を検出することができる、磁気近接センサ、例えばホール効果センサ、または容量センサおよび/もしくは圧電センサを含んでもよい。
【0057】
上述した各種センサは、当技術分野ではそれ自体既知であり、形成される測定に応じて、外側保護ケージ4または内側支持構造体3上に装着され得る。
【0058】
さらに、感知システムは、光学センサ、距離センサ、WiFiまたは電波に基づく全地球測位システム(GPS)および局所測位システムを含むナビゲーション感知システムを含むことができ、このような全地球および局所ナビゲーションシステムもそれ自体周知である。
【0059】
制御システム5および電源7は、好ましくは、内側支持構造体3上に直接装着される。内側支持構造体3は、有利には、サスペンション要素11を介して外側保護ケージ4に連結され得、サスペンション要素は、例えば、さまざまな構成の弾性ポッドまたはスプリングを含み得、任意選択的に、例えば、内側支持構造体3と外側保護ケージ4との間の弾性運動を減衰させるための、さまざまなショックアブソーバーに見られるような減衰機構をさらに含む。
【0060】
制御システム5は、少なくとも1つのマイクロプロセッサ15と、制御プログラム17が記憶された少なくとも1つの不揮発性メモリ16と、を含む電子回路を含む。制御プログラムは、少なくとも、感知システム6から受信した入力に応じてマイクロプロセッサ15によって実行される、向きを安定させるためのプログラム18を含む。
【0061】
感知システム6の各種センサは、制御システムの電子回路に接続され、測定信号を制御システムに送信し、制御システムは、マルチプロペラ推進システムに接続されて、マルチプロペラ推進システムのモータ10を制御するための制御信号を送信する。
【0062】
マルチプロペラ推進システムは、離間して非同軸的に配列された複数のプロペラ8を含む。
【0063】
好ましい実施形態では、4つのプロペラが矩形配列Reで配列されており、4つのプロペラは、プロペラの回転軸Aに直交する実質的に同一の平面B内に配列され得る。プロペラは、安定性とヨー軸周りの制御を改善するために、平面Bに対してわずかな傾斜角度(典型的には1°~5°)を有することができる。プロペラは、いくつかのプロペラが互いに重なり合うことができるように、プロペラの回転軸Aに直交する複数の平面内に配列されてもよい。
【0064】
図6a、
図6bおよび
図7に示され、
図9に概略的に示された実施形態では、クワッド配列(quad arrangement)の4つの単一プロペラ8があり、プロペラブレードは、本質的に、同一の平面Bまたはオフセットした平面内で整列され得、例えば、隣り合うプロペラのブレードが重なり合うことを可能にする。
【0065】
プロペラは、例えば
図7に示すような実施形態において、プロペラの効率および推力を増加させるのに役立つ空気ダクト21によって囲まれ得る。
【0066】
有利な実施形態では、
図5a~
図5gに示される実施形態に示されるように、クワッド配列で配列された、四対8a、8bのプロペラがある。
【0067】
この実施形態では、プロペラの対8a、8bはまた、離間して非同軸的に、正方形または矩形の形態Reで配列される。
【0068】
有利な実施形態では、対8a、8bのプロペラは、ロータ軸が整列し、モータおよびブレードが鏡像対称になるように、同軸的に配列され得る。
【0069】
各プロペラ8、8a、8bは、ステータとロータとを含むモータ10によって回転駆動されるプロペラブレード9を含み、好適な実施形態では、ロータがプロペラブレード9に直接連結される。
【0070】
プロペラブレード9は、有利な実施形態では、対称的なブレード形状を含み得、プロペラブレードは、同様の空気力学特性を有して時計回りおよび反時計回りの両方の方向に回転し得る。しかしながら、多くの用途では、ブレード回転の可逆性が制御の場合にのみ使用されることを考慮すると、非対称形状を有するプロペラブレードを設けることが可能であり、通常および一般の飛行モードは、プロペラブレードの特定の回転方向に基づく。
【0071】
上述の実施形態は、離間して非同軸的に配列された1組の単一プロペラ8を有するマルチプロペラ推進システムに特に有利であるが、
図5a~
図5gに示される実施形態では、各対8a、8bのプロペラは、一方向にのみ回転するように構成され得る。飛行中、片側(例えば底側)のプロペラのみが回転していてよく、反対側(例えば上側)のプロペラは静止していてもよい。障害物と衝突すると、先に静止していた上側のプロペラを駆動し、底側の飛行プロペラのスイッチをオフにするかまたはその推力を減少させることによって、遠位側の対のプロペラにおいて、推力を逆転させることができる。したがって、推力を逆転させるために、対または複数のプロペラのうちの1つのスイッチをオンにし、残りのスイッチをオフにするか、または減速させる。後者の実施形態では、モータは可逆である必要はない。
【0072】
しかしながら、好ましくは、
図5a~
図5gに示す実施形態では、各対8a、8bのプロペラブレード9は、時計回りおよび反時計回りの両方の方向に(すなわち可逆的に)回転され、さまざまな可能な飛行モードにおいて大きな柔軟性を提供し、かつ、高いペイロードを運搬し、それにもかかわらず高度な飛行制御と機敏性を提供することができる。
【0073】
モータ10は、有利には、ロータの角度位置を検出するために、例えばステータに装着されたホール効果センサまたは光学エンコーダの形態の、ロータ位置センサを含み得る。これは、ロータの方向の特に急速な変化を可能にする。ロータの正確な位置を知らなければ、ロータ方向の逆転の制御は、より困難であり、信頼性が低い。
【0074】
図5a~
図5gに示され、
図10a~
図10dに概略的に示されている実施形態では、一対の同軸プロペラのプロペラ8はそれぞれ、モータ10と、プロペラブレード9と、を含み、好適な実施形態では、プロペラブレード9は鏡像対称に装着され、ロータ軸Aが整列している。対の2つのプロペラ8a、8bは、種々のモードで、同一方向に推力を生成する方向に回転する両方のプロペラを含む第1のモード、または、対のプロペラがそれぞれ反対の方向に推力を生成する方法で、同時に動作され得る。
【0075】
さらなる動作モードは、対のプロペラのうちの1つのみが回転し、一方向または反対方向に推力を生成するものである。モータに適用される制御に応じて、対のプロペラのそれぞれによって生成される推力は、個別に制御され、互いに独立して変化して、ドローンの非常に精密で安定した制御を可能にする非常に迅速な応答を可能にすることができる。
【0076】
図9に概略的に示された変形例では、非同軸配列、例えばトライ、クワッド、ペンタまたはヘキサ形態(tri, quad, penta or hexa formation)で配列された、離間したプロペラが、制御され得、障害物26と接触したときに、接触点Pから遠位のプロペラ8”が、(モータのロータの回転方向を変えることによって)逆転した推力F1の方向を有して、接触点Pの周りで回転モーメントMを生成することができ、これは、動的衝突の場合、重力Gによって生成される回転モーメントおよび接触点Pの周りの回転の慣性モーメントを考慮して、接触点Pに近い近位プロペラ8’の推力によって生成される回転モーメントを相殺する。したがって、遠位プロペラ8”および近位プロペラ8’の相対推力が、それに応じて制御されて、UAVを安定させることができる。90°を超える傾斜角度の場合、接触点に近いプロペラの推力F2の方向は、逆転されるように制御することもできる(
図11aにも示されている)。UAVの飛行方向、または物体を静的に押すときのUAVの一般的な推力方向との関連で、遠位プロペラ8”は、UAVの後端部のプロペラに対応し、近位プロペラ8’は、UAVの前端部のプロペラに対応する。
【0077】
また、遠位プロペラ8”の推力を逆転させることによる回転モーメントMの制御は、接触点Pの周りでのUAVの静止位置もしくは保持位置を生成するために、または特定の用途において有用であり得る障害物26に対するUAVの傾斜角度αを変更するために、またはより安定した静止位置もしくは保持位置を可能にする位置で角度αを調整するために使用され得る。
【0078】
図11a~
図11bに示すように、垂直線に対する(ロータブレード9の平面Bに垂直である)推力軸Tの傾斜角度αに応じて、UAVを静止位置に保持するために各プロペラにより加えられる推力F1、F2の量は、特に30°~150°の範囲の、傾斜角度αに依存する。力F1およびF2ならびに回転モーメントMは、UAVの構成、推進システムの数、および推進システムに対する接触場所に応じて、(
図11a~
図11bのグレー領域によって図示されるように)それらの厳密な値が変動し得る。
【0079】
図5a~
図5gおよび
図8に示す実施形態では、遠位の対のプロペラ8a”、8b”によって生成される合成推力F1a+F1bは、近位の対8a’、8b’によって生成される合成推力F2a+F2bと比べて変動され得、
図9に示す場合と同様に、遠位の対8a”、8b”は、全体的に負の推力を生成し得るが、近位のプロペラ対8a’、8b’は、正の推力を生成し、接触点Pの周りでの回転モーメントMは、重力Gによって生成される回転モーメントを考慮して、障害物26に接する静止保持位置について、または衝突時の慣性モーメントを補償するために、調整され得る。この実施形態では、プロペラの対のプロペラ8a”、8a’のうちの1つは、飛行中、特に衝突が予想される飛行中に、静止していてよい。また、プロペラ8b’、8b”は上向きの揚力に最適化され得る。あるいは、下向きの推力を生成するプロペラ8a”、8a’のうちの1つは、特に衝突が予想されるときに、下向きの推力の小さな振幅を発生させるように回転していてよい。UAV1の回転の原因となる障害物26との衝突時に、UAVの飛行のための揚力を生成するプロペラ8b”と比較して推力を生成しないかまたは下向きの推力を生成するプロペラ8a”は、非常に迅速に下向きの推力を生成するように動作されて(その対の他方のプロペラ8b”はスイッチをオフにされ得)、障害物26とUAVの衝突時の慣性によって示される回転モーメントを相殺するためにUAVの回転モーメントMを操作する際のプロペラ8a”、8b”の反応性を著しく増大させることができる。
【0080】
逆推力を生成するための対のプロペラの準備ができた状態は、UAVのオペレータによって手動で制御されてもよいし、感知システムによって自動的に制御されてもよく、それによって、UAV1が障害物26からある特定の距離以内にあるとき、プロペラ対8a、8bは、例えば、対のプロペラのうちの1つのスイッチをオフにすることによって、または、対のプロペラのうちの1つを、UAVの飛行のための揚力を生成する対の他方のプロペラよりも低い振幅の逆推力で回転させることによって、逆推力を迅速に生成するための、準備ができた状態で動作するように構成されてもよい。
【0081】
図5a~
図5g、
図6a、
図6bおよび
図7に示すようなプロペラ対のクワッド配列では、離間して配列されたプロペラのそれぞれ、または離間して配列されたプロペラ対のそれぞれは、感知システム6から入力される信号ならびに所望の飛行モードおよび制御に応じて、UAVの飛行またはホバリングのためにピッチ、ヨーおよびロール軸の周りのUAVの所望の向きを維持するように、独立して推力を生成するように動作される。
【0082】
〔特徴部のリスト〕
垂直離着陸(VTOL)無人航空機(UAV)1
マルチプロペラ推進システム2
非同軸的に離間して配列されたプロペラ
非同軸的に離間して配列されたプロペラの対
クワッド配列
プロペラ8
プロペラブレード9
対称のブレード
モータ10
ロータ
ステータ
ロータ位置センサ
ホールセンサ
内側支持構造体3
サスペンション11
プロペラダクト21
外側保護ケージ4
フレームモジュール12
ビーム13
コネクタ14
制御システム5
マイクロプロセッサ15
メモリ16
制御プログラム17
向きを安定させるプログラム18
感知システム6
向き感知システム19
ジャイロスコープ
加速度計
障害物感知システム20
距離センサ
光学センサ
超音波センサ
電磁レーダ
磁気近接センサ
位置感知システム22
電源7
バッテリ
重心Cg
接触点P
G 重力
F プロペラ推進力
M 力のモーメント(トルク)
T 推力(重心Gにおける推進システムの合成力)
障害物26
【0083】
〔実施の態様〕
(1) 垂直離着陸(VTOL)無人航空機(UAV)(1)であって、
マルチプロペラ推進システム(2)と、
前記マルチプロペラ推進システム(2)を囲む外側保護ケージ(4)と、
自律電源(7)と、
感知システム(6)と、
前記感知システムから測定信号を受信するために前記感知システム(6)に接続された制御システム(5)と、を含み、
前記制御システムは、前記マルチプロペラ推進システム(2)に電気的に接続され、前記推進システムのモーター(10)を制御し、
前記感知システムは、少なくとも、前記マルチプロペラ推進システムの向きおよび変位を測定するように構成された向きセンサおよび変位センサを含み、
前記マルチプロペラ推進システムは、非同軸的に離間して配列された少なくとも2つのプロペラ(8)を含み、
各プロペラは、プロペラブレード(9)に連結されたステータおよびロータを有するモータ(10)を含み、
前記制御システム(5)は、少なくとも1つのマイクロプロセッサ(15)と、少なくとも1つの不揮発性メモリ(16)と、を含み、前記不揮発性メモリ内の少なくとも1つの制御プログラム(17)は、前記VTOL UAVの飛行またはホバリングのために前記マルチプロペラ推進システムを制御するように、前記マイクロプロセッサ(15)によって実行可能であり、
前記制御システムは、障害物(26)との接触点(P)から遠位の少なくとも1つのプロペラ(8”)における推力を逆転させると共に、前記接触点(P)から近位プロペラのモータ(10)を制御して揚力を発生させるように構成された、向きを安定させるためのプログラム(18)を含み、遠位プロペラおよび前記近位プロペラの推力は、前記UAVに揚力を及ぼして、それに対する重力(G)を打ち消し、かつ、前記接触点(P)の周りに回転モーメント(M)を加えて前記UAVの位置を安定させるか、または慣性に起因するトルクを打ち消すように、制御されることを特徴とする、VTOL UAV。
(2) 前記マルチプロペラ推進システムは、矩形構成に配列されたプロペラを含む、実施態様1に記載のVTOL UAV。
(3) 前記マルチプロペラ推進システムは、非同軸的に離間して配列された複数対(8a、8b)のプロペラを含む、実施態様1または2に記載のVTOL UAV。
(4) 対の前記プロペラは、鏡像対称に配列されている、実施態様3に記載のVTOL UAV。
(5) 前記プロペラブレード(9)は、時計回りおよび反時計回り両方の回転方向において同じ空気力学特性を有するように対称である、実施態様1から4のいずれかに記載のVTOL UAV。
【0084】
(6) 一対の同軸プロペラの前記プロペラは、独立して制御されるように構成された方法で前記制御システムに接続されている、実施態様1から5のいずれかに記載のVTOL UAV。
(7) 前記プロペラのうちの少なくともいくつかは可逆であり、時計回り方向または反時計回り方向に回転するように前記制御システムによって制御され得、または、代わりに、前記プロペラのうちの少なくともいくつかは、前記プロペラによって生成される推力の量および推力の方向に応じて、依然として同じ方向に回転しながらそれらのブレードのピッチを変えることによって可逆である、実施態様1から6のいずれかに記載のVTOL UAV。
(8) 前記マルチプロペラ推進システム、前記電源、および前記制御システムは、サスペンション要素(11)を介して前記外側保護ケージに連結された内側支持構造体(3)上に装着されている、実施態様1から7のいずれかに記載のVTOL UAV。
(9) 前記外側保護ケージは、前記マルチプロペラ推進システムを囲むケージを形成するコネクタ(14)によって互いに接続された複数のビーム(13)を含む、実施態様1から8のいずれかに記載のVTOL UAV。
(10) 前記外側保護ケージは、前記マルチプロペラ推進システム(2)の周りにほぼ球形の形状を形成する、実施態様9に記載のVTOL UAV。
【0085】
(11) 前記感知システムは、前記VTOL UAVの向きおよび速度の変化を測定するために、少なくとも1つのジャイロスコープおよび少なくとも1つの加速度計を含む、実施態様1から10のいずれかに記載のVTOL UAV。
(12) 前記感知システムは、外部物体からの前記VTOL UAVの距離を検出し、任意選択的に前記外部物体に対する前記UAVの速度を計算するように構成された、光学センサ、超音波センサ、またはマイクロ波センサを含み得る、少なくとも1つの距離センサを含む、障害物感知システム(20)を含む、実施態様1から11のいずれかに記載のVTOL UAV。
(13) 前記感知システムは、前記外側保護ケージ(4)と外部物体(26)との接触を検出するように構成された少なくとも1つの近接センサを含む、実施態様1から12のいずれかに記載のVTOL UAV。
(14) 前記マルチプロペラ推進システムは、正方形または矩形構成(Re)で離間して配列された4つのプロペラ(8)または四対(8a、8b)のプロペラを含む、実施態様1から13のいずれかに記載のVTOL UAV。
(15) 非同軸的に離間して配列された複数のプロペラは、本質的に同じ平面(B)内で回転する、実施態様1から14のいずれかに記載のVTOL UAV。
【0086】
(16) 前記モータおよび前記プロペラは、それらが生成する推力を、k=1秒当たりのそれらのホバリング推力の8~50倍の割合で変化させるように構成されている、実施態様1から15のいずれかに記載のVTOL UAV。
(17) 1つ以上のプロペラが、それぞれ、前記プロペラを囲むダクト内に装着されている、実施態様1から16のいずれかに記載のVTOL UAV。
【国際調査報告】