(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-06
(54)【発明の名称】男女共用非ホルモン性避妊薬
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20220330BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20220330BHJP
A61P 15/16 20060101ALI20220330BHJP
A61P 15/18 20060101ALI20220330BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220330BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/167
A61P15/16
A61P15/18
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61K31/4985 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549209
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(85)【翻訳文提出日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 US2020019373
(87)【国際公開番号】W WO2020172640
(87)【国際公開日】2020-08-27
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504256408
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【住所又は居所原語表記】1111 Franklin Street,12th Floor,Oakland,California 94607 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】リシュコ,ポリーナ ヴィ.
(72)【発明者】
【氏名】スキナー,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ハシン,リリヤ ガベレフ
(72)【発明者】
【氏名】タバルシ,エミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ベルトレ,アンブル エム.
(72)【発明者】
【氏名】キリチョク,ユーリイ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA861
4C084ZB211
4C084ZC411
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA28
4C086MA32
4C086MA34
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA60
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA86
4C086ZB21
4C086ZC41
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA07
4C206GA31
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA48
4C206MA52
4C206MA54
4C206MA72
4C206MA76
4C206MA80
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA86
4C206ZB21
4C206ZC41
(57)【要約】
男女共用で非ホルモン性の避妊製品、避妊組成物、避妊製剤、および使用方法は、作用が緩和で標的指向性を有するミトコンドリア脱共役剤を有効量含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
避妊を促進する方法であって、避妊を必要とするヒトに、作用が緩和で標的指向性を有するミトコンドリア脱共役剤を有効量含む組成物を投与することを含む方法。
【請求項2】
前記脱共役剤が、サリチルアニリドまたはその塩、例えば、そのエタノールアミン塩、例えば、ニクロサミドエタノールアミン(NEN)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱共役剤が、サリチルアニリド化合物またはその塩を含み、該サリチルアニリド化合物が、ニクロサミド、ブロモクロロサリチルアニリド、オキシクロザニド、ラフォキサニド、3-tert-ブチル-5-クロロ-N-(2-クロロ-4-ニトロフェニル)-2-ヒドロキシ-6-メチルベンズアミド、ジブロムサラン、メタブロムサラン、トリブロムサラン、および2-ヨード-N-フェニルベンズアミド(ベノダニル)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記脱共役剤が、サリチルアニリド化合物またはその塩を含み、該サリチルアニリド化合物が、下記の構造:
【化1】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、F、Cl、BrもしくはIなどのハロゲン、-OH、-NO
2もしくはO-フェニル-Clなどの、OおよびNから選択される置換ヘテロ原子、またはメチル、エチルもしくはtert-ブチルなどの低級(C1-C4)アルキルであり、mは1、2、3または4の整数であり、nは1、2、3、4または5の整数である)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記脱共役剤が、BAM15(N5,N6-ビス(2-フルオロフェニル)-[1,2,5]オキサジアゾロ[3,4-b]ピラジン-5,6-ジアミン)またはその塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、経口経路、外用経路、直腸経路、または膣経路で投与される、請求項1、2、3、4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、丸剤、クリーム剤、膣リング、膣フィルム、またはパッチ剤として投与される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、丸剤として経口投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、クリーム剤またはパッチ剤として外用投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、クリーム剤、パッチ剤、膣リング、または膣フィルムとして膣内投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、クリーム剤またはパッチ剤として直腸内投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
作用が緩和で標的指向性を有するミトコンドリア脱共役剤の避妊薬としての使用。
【請求項13】
前記脱共役剤が、サリチルアニリドまたはその塩、例えば、そのエタノールアミン塩、例えば、ニクロサミドエタノールアミン(NEN)を含む、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記脱共役剤が、サリチルアニリド化合物またはその塩を含み、該サリチルアニリド化合物が、ニクロサミド、ブロモクロロサリチルアニリド、オキシクロザニド、ラフォキサニド、3-tert-ブチル-5-クロロ-N-(2-クロロ-4-ニトロフェニル)-2-ヒドロキシ-6-メチルベンズアミド、ジブロムサラン、メタブロムサラン、トリブロムサラン、および2-ヨード-N-フェニルベンズアミド(ベノダニル)から選択される、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
前記脱共役剤が、サリチルアニリド化合物またはその塩を含み、該サリチルアニリド化合物が、下記の構造:
【化2】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、F、Cl、BrもしくはIなどのハロゲン、-OH、-NO
2もしくはO-フェニル-Clなどの、OおよびNから選択される置換ヘテロ原子、またはメチル、エチルもしくはtert-ブチルなどの低級(C1-C4)アルキルであり、mは1、2、3または4の整数であり、nは1、2、3、4または5の整数である)を有する、請求項12に記載の使用。
【請求項16】
前記脱共役剤が、BAM15(N5,N6-ビス(2-フルオロフェニル)-[1,2,5]オキサジアゾロ[3,4-b]ピラジン-5,6-ジアミン)またはその塩を含む、請求項12に記載の使用。
【請求項17】
前記組成物が、経口経路、外用経路、直腸経路、または膣経路で投与される、請求項12、13、14、15、または16に記載の使用。
【請求項18】
前記組成物が、丸剤、クリーム剤、膣リング、膣フィルム、またはパッチ剤として投与される、請求項12~16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記組成物が、丸剤として経口投与される、請求項17に記載の使用。
【請求項20】
前記組成物が、クリーム剤またはパッチ剤として外用投与される、請求項17に記載の使用。
【請求項21】
前記組成物が、クリーム剤、パッチ剤、膣リング、または膣フィルムとして膣内投与される、請求項17に記載の使用。
【請求項22】
前記組成物が、クリーム剤またはパッチ剤として直腸内投与される、請求項17に記載の使用。
【請求項23】
作用が緩和で標的指向性を有するミトコンドリア脱共役剤を有効量含む避妊製剤。
【請求項24】
丸剤、カプセル剤、座剤、クリーム剤、膣リング、膣フィルムまたはパッチ剤の形態である、請求項23に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月22日に出願された米国仮出願第62/808,861号の優先的利益を主張するものであり、その全内容が本明細書に援用される。
【0002】
配列表の組み込み
2020年2月20日に作成されたサイズが11KBのB19-097_ST25.txtという名称のファイルの全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
政府の助成
本発明は、米国国立衛生研究所より交付された助成番号GM111802、GM118939およびHD081403の助成に基づき、米国政府の支援を受けてなされたものである。米国政府は、本発明に関し一定の権利を有する。
【0004】
背景
世界では、何十億人もの人々が避妊を緊急に必要としている。National Health Statistics Reportによれば、避妊をしている生殖年齢の女性の62%が、主にホルモン剤と子宮内避妊具(IUD)に依存している21。しかし、ホルモン避妊薬は効果が高いものの、好ましくない副作用のために使用を中止する頻度が高いことが多く報告されている6,8,9。ステロイドホルモンは、様々な細胞種に対して多様な作用を及ぼすことから、うつ病、体重増加、異所性妊娠などの強力な副作用を伴う。アメリカ人女性のほぼ3分の1が、副作用のために使用開始から1年以内にホルモン避妊薬の使用を中止している。また、男性の避妊方法としては、実際には失敗率の高いコンドームと、手術による侵襲性の高いパイプカットしかないのが現状である。そのため、新たな男女共用の非ホルモン性避妊薬には大きな隠れたニーズがある。このような避妊薬は、世界の何十億人もの人々に使用される可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示では、作用が緩和で標的指向性を有するミトコンドリア脱共役剤であるDNP、ニクロサミド、およびBAM15が精子のミトコンドリアの脱共役を誘導することを示す。これらの化合物のうち最も強力なニクロサミドは、1μMという低濃度で、精子の振動数を14Hzから6Hzに減少させ(
図6A)、超活性化を抑制した(
図6C)。
【0006】
本開示は、作用が緩和で標的指向性を有するミトコンドリア脱共役剤を有効量含む、男女共用で非ホルモン性の避妊製品、避妊組成物、避妊製剤、および使用方法を提供するものである。
【0007】
本開示は、避妊を促進する方法であって、避妊を必要とするヒトに、作用が緩和で標的指向性を有するミトコンドリア脱共役剤を有効量含む組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0008】
本開示の方法のいくつかの実施形態において、前記脱共役剤は、サリチルアニリドもしくはその塩、またはサリチルアニリドもしくはその塩であり、塩としては、例えば、そのエタノールアミン塩、例えば、ニクロサミドエタノールアミン(NEN)が挙げられる。
【0009】
本開示の方法のいくつかの実施形態において、前記脱共役剤は、サリチルアニリド化合物もしくはその塩を含むか、またはサリチルアニリド化合物もしくはその塩であり、該サリチルアニリド化合物は、ニクロサミド、ブロモクロロサリチルアニリド、オキシクロザニド、ラフォキサニド、3-tert-ブチル-5-クロロ-N-(2-クロロ-4-ニトロフェニル)-2-ヒドロキシ-6-メチルベンズアミド、ジブロムサラン、メタブロムサラン、トリブロムサラン、および2-ヨード-N-フェニルベンズアミド(ベノダニル)から選択される。
【0010】
本開示の方法のいくつかの実施形態において、前記脱共役剤は、サリチルアニリド化合物もしくはその塩を含むか、またはサリチルアニリド化合物もしくはその塩であり、該サリチルアニリド化合物は、下記の構造:
【化1】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、F、Cl、BrもしくはIなどのハロゲン、-OH、-NO
2もしくはO-フェニル-Clなどの、OおよびNから選択される置換ヘテロ原子、またはメチル、エチルもしくはtert-ブチルなどの低級(C1-C4)アルキルであり、mは1、2、3または4の整数であり、nは1、2、3、4または5の整数である)を有する。
【0011】
本開示の方法のいくつかの実施形態において、前記脱共役剤は、BAM15(N5,N6-ビス(2-フルオロフェニル)-[1,2,5]オキサジアゾロ[3,4-b]ピラジン-5,6-ジアミン)もしくはその塩を含むか、またはBAM15(N5,N6-ビス(2-フルオロフェニル)-[1,2,5]オキサジアゾロ[3,4-b]ピラジン-5,6-ジアミン)もしくはその塩である。
【0012】
本開示の方法のいくつかの実施形態において、前記組成物は、経口経路、外用経路、直腸経路、または膣経路で投与される。
【0013】
本開示の方法のいくつかの実施形態において、前記組成物は、丸剤、クリーム剤、膣リング、膣フィルム、またはパッチ剤として投与される。
【0014】
本開示の方法のいくつかの実施形態において、前記組成物は、丸剤として経口投与される。
【0015】
本開示の方法のいくつかの実施形態において、前記組成物は、クリーム剤またはパッチ剤として外用投与される。
【0016】
本開示の方法のいくつかの実施形態において、前記組成物は、クリーム剤、パッチ剤、膣リング、または膣フィルムとして膣内投与される。
【0017】
本開示の方法のいくつかの実施形態において、前記組成物は、クリーム剤またはパッチ剤として直腸内投与される。
【0018】
本開示は、本開示の、作用が緩和で標的指向性を有するミトコンドリア脱共役剤の避妊薬としての使用を提供するものである。
【0019】
本開示の使用のいくつかの実施形態において、前記脱共役剤は、サリチルアニリドもしくはその塩、またはサリチルアニリドもしくはその塩であり、塩としては、例えば、そのエタノールアミン塩、例えば、ニクロサミドエタノールアミン(NEN)が挙げられる。
【0020】
本開示の使用のいくつかの実施形態において、前記脱共役剤は、サリチルアニリド化合物もしくはその塩を含むか、またはサリチルアニリド化合物もしくはその塩であり、該サリチルアニリド化合物は、ニクロサミド、ブロモクロロサリチルアニリド、オキシクロザニド、ラフォキサニド、3-tert-ブチル-5-クロロ-N-(2-クロロ-4-ニトロフェニル)-2-ヒドロキシ-6-メチルベンズアミド、ジブロムサラン、メタブロムサラン、トリブロムサラン、および2-ヨード-N-フェニルベンズアミド(ベノダニル)から選択される。
【0021】
本開示の使用のいくつかの実施形態において、前記脱共役剤は、サリチルアニリド化合物もしくはその塩を含むか、またはサリチルアニリド化合物もしくはその塩であり、該サリチルアニリド化合物は、下記の構造:
【化2】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、F、Cl、BrもしくはIなどのハロゲン、-OH、-NO
2もしくはO-フェニル-Clなどの、OおよびNから選択される置換ヘテロ原子、またはメチル、エチルもしくはtert-ブチルなどの低級(C1-C4)アルキルであり、mは1、2、3または4の整数であり、nは1、2、3、4または5の整数である)を有する。
【0022】
本開示の使用のいくつかの実施形態において、前記脱共役剤は、BAM15(N5,N6-ビス(2-フルオロフェニル)-[1,2,5]オキサジアゾロ[3,4-b]ピラジン-5,6-ジアミン)もしくはその塩を含むか、またはBAM15(N5,N6-ビス(2-フルオロフェニル)-[1,2,5]オキサジアゾロ[3,4-b]ピラジン-5,6-ジアミン)もしくはその塩である。
【0023】
本開示の使用のいくつかの実施形態において、前記組成物は、経口経路、外用経路、直腸経路、または膣経路で投与される。
【0024】
本開示の使用のいくつかの実施形態において、前記組成物は、丸剤、クリーム剤、膣リング、膣フィルム、またはパッチ剤として投与される。
【0025】
本開示の使用のいくつかの実施形態において、前記組成物は、丸剤として経口投与される。
【0026】
本開示の使用のいくつかの実施形態において、前記組成物は、クリーム剤またはパッチ剤として外用投与される。
【0027】
本開示の使用のいくつかの実施形態において、前記組成物は、クリーム剤、パッチ剤、膣リング、または膣フィルムとして膣内投与される。
【0028】
本開示の使用のいくつかの実施形態において、前記組成物は、クリーム剤またはパッチ剤として直腸内投与される。
【0029】
本開示は、作用が緩和で標的指向性を有するミトコンドリア脱共役剤を含む避妊製剤を提供する。いくつかの実施形態において、前記避妊製剤は、作用が緩和で標的指向性を有するミトコンドリア脱共役剤を有効量含む。いくつかの実施形態において、前記避妊製剤は、丸剤、カプセル剤、座剤、クリーム剤、膣リング、膣フィルムまたはパッチ剤の形態である。
【0030】
本開示には、本開示の個々の実施形態のすべての組み合わせが包含される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A-C】精子細胞におけるミトコンドリアを利用したエネルギー生成を模式的に示した一連の図である。(A)ミトコンドリア内でのエネルギー変換の概略図。(B)ミトコンドリアにおけるATP産生と熱産生のメカニズム。ミトコンドリアには、ミトコンドリア外膜(OMM、イオンや1500Da未満の低分子が自由に透過できる)とミトコンドリア内膜(IMM、透過性がより厳密に制御されており、ATPや熱を産生する装置を含む)の2つの膜がある。電子伝達系(ETC)は、IMM内外のポテンシャル差(Δψ)を生み出し、このポテンシャル差をATP合成酵素(AS)が利用してATPを生成し、またこのポテンシャル差をH
+リーク経路が利用して熱を産生する。文献1に変更を加えたもの。(C)精子は、尾部の一部である中片部に密集したミトコンドリアが生成するエネルギーを利用する。ETCにより作り出されたプロトン勾配がATP合成の駆動力になる。活発に遊泳する精子細胞では、細胞内のATP消費により、ANTを介したATP/ADP交換が活発に行われることで、ANTを介したH
+リークが抑制され、ΔψはATPの生成のみに使われる(#1)。細胞の活動が低下すると、ATPの消費量が減り、Δψが増加し、活性酸素種(ROS)の産生が増加する(#2)
2,3。この段階では、ROSの産生増加を活発なADP/ATP交換によって抑制することはできないため、代わりにANTを介したプロトンリークが増加する(#3)。このプロトンリークによりΔψが熱に変換されてΔψが通常の値に戻り、活性酸素の産生が減少する。しかし、精子内でANT2とANT4を介して生じるプロトンリークによってΔψが減少するとき、ミトコンドリアはこのエネルギーを熱として放散し、精子の運動の駆動力となるATPを十分に産生することはできない
12。
【0032】
【
図2】作用の緩和なミトコンドリア脱共役剤であるニクロサミド、BAM15、および2,4-ジニトロフェノールの化学構造をまとめて示したものある。
【0033】
【
図3A-B】ミトコンドリアを用いたパッチクランプ法を説明するための模式図をセットで示したものである。(A)マイトプラスト(IMM全体で構成される小胞)の調製。(1)遠心分離により細胞溶解物からミトコンドリアを分離。(2)低圧フレンチプレスによるOMM除去。(3)KCl溶液中でマイトプラストを単離。OMMの残存物(矢印)がIMMに付着している。(B)マイトプラストを用いたパッチクランプ記録法。ギガオームシール(マイトプラストアタッチ状態)を形成した後、ピペット下のメンブレンパッチを高振幅の電圧パルスで破壊することにより、全IMMを横切る電流(I)を記録するホールマイトプラスト状態を形成することができる。また、パッチピペットをマイトプラストから引き上げて、1つのチャネルの活動を記録するインサイドアウトモードにすることもできる。
【0034】
【
図4】一連のグラフ(上段)と、ANT媒介性H
+電流(I
H)の調節因子を示した模式図(下段)である。左図:2μMのアラキドン酸(AA)で活性化されたI
Hが、浴液中の1mMのADPで一過性に阻害され(2)、その後回復する(3)。コントロールの電流を黒色で示す。中央図:左図のI
Hの時間経過を示したグラフである。骨格筋のマイトプラスト。0~-160mVの範囲で段階的に変化させた際のI
Hの大きさを測定した。右図:2と3の時点におけるI
HのADPによる阻害率を示したグラフである。-160mVで測定したI
Hの残存率をコントロールに対するパーセンテージで示す(n=8)。細胞質のアデニンヌクレオチドによる一過性のI
H阻害についての説明。c-stateのANTは、輸送経路に存在する脂肪酸(FA)アニオンとともにI
Hに関与する(1)。細胞質のADP
3-がc-stateに結合し、FAアニオンを追い出して輸送経路を遮断し、これによりI
Hが抑制される(2)。ANTの構造が変化すると、ADPは解離してマトリックス(ピペット)溶液に入り込む(2、3)。FAアニオンはm-stateのANTに再び結合し、I
Hを回復させる(4、5)。細胞質のADPは、AACがm-stateである間はI
Hを阻害できない(5)。予備データは文献(Bertholet, A. M. Chouchani. , E.T.; Kazak, L.; Angelin, A.; Fedorenko, A.; Long, J.Z.; Vidoni, S.; Garrity, R.; Cho, J.; Terada, N.; Wallace, D.C.; Spiegelman, B.M.; and Kirichok, Y. Proton Transport is an Integral Function of the Mitochondrial ADP/ATP Carrier Nature Jul;571(7766):515-520 (2019))からの引用である。
【0035】
【
図5A-B】FAおよびDNPによって活性化されるH
+リークにANTが必要であることを示すグラフである。a, WTおよびANT1
-/-の心臓のマイトプラストにおいて、2μMのAAにより誘導された電流の代表的な例。右図:WTおよびANT1
-/-のマイトプラストにおける-160mVでのI
H電流密度。b, WTおよびANT1
-/-の心臓のマイトプラストにおいて、50μMのDNPにより誘導された電流の代表的な例。右図:WTおよびANT1
-/-のマイトプラストにおいて、50μMおよび200μMのDNPにより誘導された-160mVでのI
H電流密度。
【0036】
【
図6A-C】ミトコンドリア脱共役剤(MU)が精子の生理機能および受精能力に与える影響を示した一連のグラフである。ニクロサミドは、精子の運動性を顕著に低下させ、ミトコンドリアの脱共役を誘導し、受精を阻害する。A)ヒト精子をスイムアップ法で精製し、文献(Mannowetz, N., Naidoo, N. M., Choo, S. A., Smith, J. F. & Lishko, P. V. Slo1 is the principal potassium channel of human spermatozoa. eLife 2, e01009, doi:10.7554/eLife.01009 (2013))に記載の方法と同様にして、精子のベース振動数(BF、単位:Hz)をコントロールHS溶液((1)、ビヒクルコントロール(DMSO)含有(2)、およびMU(1μMニクロサミドエタノールアミン(NEN)、0.76μM BAM15、または5μM DNP)含有)中で測定した。データは標準的な箱ひげ図で示しており、中央の線は中央値を表し、箱の上下の境界線は第1四分位値と第3四分位値を表し、ひげはそれぞれ最大値と最小値を表す。外れ値は含まれていない。Xはサンプルの平均値を表し、各点は個々のデータポイントを表す。B)ヒト精子のミトコンドリア膜電位(MMP)の評価。ヒト精子を0.1%DMSO(ビヒクルコントロール)中、1μM NENまたは0.75μM BAM15の存在下で15分間インキュベートした。その後、各条件のサンプル(条件ごとに精子中片部を少なくとも100個)に対して、45nMのMitoRed(細胞膜透過性のローダミン系色素)を用いて蛍光強度を測定し、各サンプルの評価を行った。MitoRedは、ミトコンドリアに局在し、赤色の蛍光を発する。MitoRedとミトコンドリアの相互作用は、ミトコンドリアの膜電位に依存する。脱共役状態にあるミトコンドリアでは、発生する蛍光量が少ない。データは(A)と同様、標準的な箱ひげ図で示す。C)受精能を獲得したヒト精子の超活性化運動性に対するsMUの影響。(11)に記載の方法と同様にして、細胞を4時間かけて受精能獲得状態に誘導した。イメージングを行う2分前に4μMプロゲステロンを添加し、超活性化(HA)を惹起した。各細胞を、「超活性化している」または「超活性化していない」のいずれかで評価した。細胞数N>45個。エラーバーはWilson/Brown法で計算した95%CIを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
ミトコンドリアは、ミトコンドリア電子伝達系(ETC)とATP合成酵素
22という、ミトコンドリア内膜(IMM)に存在する2つの巨大な輸送タンパク質複合体のH
+輸送活性の共役によりATPを生成する。具体的には、ETCは、クレブス回路から供給される高エネルギーの電子供与体をエネルギー源として、ミトコンドリアのマトリックスからH
+を汲み出し、IMMの内外で電気化学的なH
+勾配(Δψ)を生じさせる。ATP合成酵素は、Δψに従ってH
+をミトコンドリアのマトリックス内に戻し、放出されたエネルギーを利用してADPと無機リン酸からATPを合成する。化学浸透圧理論に基づいて考えれば、ETCとATP合成酵素の間のエネルギー伝達を最大化するためには、IMMのH
+(およびその他のイオン)コンダクタンスをゼロに近づける必要がある。しかし、あらゆる組織のIMMでH
+リークが生じることは広く認識されている。IMMを横断するH
+リーク(I
H)は、脱共役タンパク質(UCP)によって媒介される。UCPは、ATP合成酵素と同様に、Δψに従ってH
+をミトコンドリアのマトリックスに戻すが、ATPは生成せず、放出されたエネルギーを熱として放散させる。この現象は、ミトコンドリアの脱共役として知られており、ミトコンドリアの機能および完全性にとって極めて重要な現象である(
図1)。遊離脂肪酸(FA)は、UCPを介するH
+リークを活性化する生理活性物質である。熱産生に特化した組織である褐色脂肪とベージュ脂肪におけるミトコンドリアの脱共役は、中核体温の維持と体重の制御に役立っており
3,23-25、この脱共役は、褐色脂肪とベージュ脂肪に特異的な脱共役タンパク1(UCP1)を介して起こる。褐色脂肪とは対照的に、通常の体細胞や生殖組織で起こるミトコンドリアの脱共役は「軽度」であるため、I
Hは低い。しかし、ほとんどの組織で起こっているこの軽度の脱共役は、熱産生、体重、健康的な代謝、生殖能力に大きな影響を与えている可能性がある
3,26。
【0038】
さらに、この軽度の脱共役により、ミトコンドリアでの活性酸素種(ROS)の生成が抑えられ、ミトコンドリアの完全性が保たれている12。細胞内での活性酸素の発生は、ミトコンドリアのETCからの電子の流出が制御されず、この電子が酸素と結合することが主な原因である。IMM内外のポテンシャル差をわずかに低下させる軽度のミトコンドリアの脱共役は、ETCによる活性酸素の発生を防ぐ主要なメカニズムの1つである。実際、軽度の脱共役は、FA、ROS、過分極したΔψによって増強/活性化されることが示されている12,27。軽度のミトコンドリアの脱共役は重要であるものの、褐色脂肪以外の組織におけるUCPの分子的な正体は不明のままであった。
【0039】
そのため、2,4-ジニトロフェノール(DNP)などの化学的プロトノフォアが、研究や治療の目的でIHやミトコンドリアの脱共役を誘導するために広く使用されてきた。DNPは、疎水性で膜溶解性の弱酸で、膜輸送タンパク質を利用せずに生体膜を横断してH+を運ぶことができる。FA(同じく疎水性の弱酸だが、プロトノフォアとしての作用が弱い)との違いは、プロトン化した形だけでなく、H+と結合していない負の電荷を帯びた形でも膜を通って拡散できることである。古典的なモデルによれば、DNPは、プロトン化した形で脂質二重層を通ってH+を運び、通り抜けた側でH+放出する。その後、アニオンの形で膜を横断して再び拡散し、別のH+と結合して、先のサイクルを繰り返す。DNPを用いてミトコンドリアのATP産生においてΔψが必須であることが実証され22,28、このことは化学浸透圧理論を裏付ける重要な証拠となっている。その後に、DNPが体のエネルギー消費と熱産生を増加させ、脂肪蓄積と体重を劇的に減少させることが示された29。ただし、DNPはヒトにおいて重大な副作用を引き起こす可能性がある。DNPは標的タンパク質を持たない単純な化学的プロトノフォアと考えられていたため、DNPの有効性や安全性を向上させることはできなかった29。
【0040】
しかし、最近の報告では、DNPのような既知のミトコンドリア脱共役剤が膜プロトノフォアとして作用するという古典的な定説に対して異が唱えられている2,30。報告されているデータでは、作用の緩和なミトコンドリア脱共役剤が、主にアデノシンヌクレオチドトランスポーター(ANT)タンパク質と相互作用することでH+リークを引き起こすことが強く示されている。
【0041】
ヒトとマウスでは、ANTタンパク質にはいくつかのアイソフォームがあり、それぞれ組織特異的な発現パターンを有する。ANT4は、精巣と精子細胞で特異的に発現し、他の器官では発現が完全に抑制されている。ANT4を欠損させた雄マウスは、造精機能が低下し、完全な不妊になることが明らかになっている13。ただし、これらのマウスは生存しており、不妊であること以外は正常な発達と生理機能を示すことは注目すべき重要な点である13。ANT4は以前から避妊薬のターゲットとして提案されており、ANT4のATP/ADP交換輸送体としての活性を阻害する化合物を探索するための創薬スクリーニング14が過去に実施されている。しかし、探索されたリード化合物は、ヒトのANTの他のアイソフォームも阻害するような非特異的な化合物であったため、広範な細胞毒性を示した。
【0042】
本開示では、全く異なるANT輸送様式、すなわち、特定の薬理学的介入に応答してプロトンを伝導し、ミトコンドリアの脱共役を誘導する能力に焦点を当てている。ミトコンドリアの軽度の脱共役は、現在、体重減少、糖尿病の治療、さらには抗がん治療の手法として認められている15。したがって、このANTの機能は、標的細胞に細胞毒性を与えることなく、ATPの産生効率を低下させることができると考えられる。
【0043】
本開示のいくつかの実施形態において、ANT4タンパク質は、ADP/ATPトランスロカーゼ4(ANT4)(UniProtKB-Q9H0C2;solute carrier family 25のmember 31(SLC25A31);転写産物バリアント1としても知られている)のアミノ酸配列:
を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなるものであってもよく;または
の配列を含むか、もしくは該配列からなる核酸によってコードされていてもよい。
【0044】
本開示のいくつかの実施形態において、ANT4タンパク質は、ADP/ATPトランスロカーゼ4(ANT4)(UniProtKB-Q9H0C2;solute carrier family 25のmember 31(SLC25A31);転写産物バリアント2としても知られている)のアミノ酸配列:
を含むか、もしくは該アミノ酸配列からなるものであってもよく;または
の配列を含むか、もしくは該配列からなる核酸によってコードされていてもよい。
【0045】
我々は、ニクロサミドエタノールアミン(NEN)およびBAM15(N5,N6-ビス(2-フルオロフェニル)-[1,2,5]オキサジアゾロ[3,4-b]ピラジン-5,6-ジアミン)などの化合物群を、作用が緩和で標的指向性を有するミトコンドリア脱共役剤として精子で作用し、精子無力化剤として利用できる化合物として同定した。この作用の原理は、精子ミトコンドリアの脱共役(sMU)により、精子からエネルギーが奪われ、精子が卵子を見つけて受精することができなくなるというものである。精子で発現するANTを介してH+リークを活性化する特異的な物質の探索は、非ホルモン性避妊薬を開発するための新たな戦略の1つである。実際、我々のデータにおいて、NENは、ヒト精子のミトコンドリアの脱共役を誘導し、精子の振動数を顕著に減少させ、精子の超活性化を顕著に抑制することが確認されている。NENは、経口のサリチルアニリド誘導体であり、1958年に米国食品医薬品局(FDA)から寄生虫であるサナダムシの感染症の治療薬としてヒトへの使用が承認されている16,28。また、NENは、ミトコンドリアの内膜を横断するプロトン輸送を誘導して、グルコースと脂肪酸の酸化を無駄に繰り返させることで、ミトコンドリア脱共役剤として作用することが明らかになっている2, 15, 31, 32。NENが有するミトコンドリアの脱共役作用は、消化管に寄生するサナダムシを殺滅するのに十分であり、またNENは、ヒトに対する安全性プロファイルも優れている20。この点は、軽度の毒性があり、重大な副作用の発生率が許容できないほど高いDNP29とは異なる。ニクロサミドは、既存薬再開発スクリーニング試験により、in vivoおよびin vitroで抗生物質耐性細菌に対して強い活性を有することが示されており33、また、別の試験により、ジカウイルスの複製に対する阻害作用を有する可能性があることも示されている19。さらに、ニクロサミドは最近、糖尿病32や、ヒトの神経膠芽腫腫瘍34、大腸がん、卵巣がん15,18,35で使用されているという特徴もある。ニクロサミドの脱共役作用の正確な分子メカニズムは完全には解明されていないが、FAやDNPと同様に、ANTを介してH+リークを活性化することでミトコンドリアの脱共役を誘導すると考えられており、実際に、我々のデータにおいても精子のミトコンドリアで同様の挙動を示すことが確認されている。したがって、我々のデータや、ニクロサミドの優れた安全性、抗菌性および抗ウイルス性から、NENを使用した製品が、抗菌作用および抗ウイルス作用だけでなく、避妊効果を発揮することが示唆される。
【0046】
以下の記載および本明細書全体を通して、別異に解される場合または別段の記載がある場合を除き、「a」および「an」という用語は1以上のものを表し、「または」という用語は「および/または」を表す。本明細書に記載されている実施例および実施形態は、単に本発明を説明するためのものであり、これらの実施例および実施形態に基づいて、様々な変形または変更が可能であることは当業者には明らかであり、またそのような変形または変更は本願の精神および範囲ならびに添付の請求項の範囲に含まれるものである。本明細書に引用されたすべての出版物、特許および特許出願、またこれらに記載の引用文献は、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に援用される。
【実施例】
【0047】
実施例1
非脂肪組織における主要なミトコンドリア脱共役タンパク質としてのANTの同定
【0048】
我々は、完全な状態のミトコンドリア内膜全体からなる小胞(IMM:いわゆるマイトプラスト、
図3)を用いて直接パッチクランプ記録を行った。この方法により、本来の膜環境のもとミトコンドリアのイオンチャネルおよびトランスポーターの機能を高解像度に解析することができる
10, 36, 37。最近、我々はこの方法を用いて、脂肪酸(FA)が褐色脂肪のミトコンドリアの熱産生を担うタンパク質である脱共役タンパク質1(UCP1)を介するH
+リークを誘導するメカニズムを明らかにした
37。しかし、UCP1は脂肪に特異的であり、体の大部分を占める非脂肪組織における熱産生のメカニズムはまだよくわかっていない。ここでは、全IMMを用いるパッチクランプ法により、非脂肪組織におけるUCP1に依存しないFA誘導性のH
+リークを直接測定できることを示す。
【0049】
ANTは、非脂肪組織のIMMを横断するH
+リークに関与しており、脂肪酸(FA)の存在下でのみH
+を伝導する(
図4および5)
10。さらに、全IMMを用いるパッチクランプ法により、ミトコンドリア脱共役剤であるDNPは、ANTを介したプロトンリークを強力かつ特異的に活性化すること、そしてANTの内因性活性化物質であるFAを模して、ANT依存性のミトコンドリアの脱共役を薬理学的に調節する作用を有することが示された。ANTを介したI
Hは、古典的なANT阻害剤であるカルボキシアトラクチロシド(CATR、
図5)により阻害される。
【0050】
ANT1欠損マウスの心臓(心臓ではANT1が主要なアイソフォームである)においてDNPにより誘導されるI
Hを記録した。この実験により、DNPにより誘導されるI
Hは、主にANTに依存していることが明らかになった(
図5B~D)。この結果から、これまで提案されていたモデルとは異なり、DNPは単純な化学的プロトノフォアとしてミトコンドリアの脱共役を誘導するのではなく、ANTを標的にしていることが示唆された。したがって、ミトコンドリア脱共役剤により活性化されるI
Hをパッチクランプ法により全IMMで記録することができること、そしてこの電流がANTを介するものであることがデータにより実証された。
【0051】
実施例2
ヒト精子のミトコンドリアの脱共役による精子の運動性の低下および受精の阻害
【0052】
ここでは、DNP、ニクロサミド、およびBAM15という3つの既知のミトコンドリア脱共役剤について、精子のミトコンドリアの脱共役を誘導する能力を調べた
13, 38, 39。
図6Bに示すように、BAM15とNENはともに、ミトコンドリアの脱分極により評価されるsMUを強く誘導することが分かる。重要なことは、この2つの化合物のうちより強力な化合物であるニクロサミドが、1μMという低濃度で、精子の振動数を14Hzから6Hzに減少させ(
図6A)、超活性化を抑制した(
図6C)ことである。
【0053】
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【配列表】
【国際調査報告】