IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エン・ベー・ベカルト・ソシエテ・アノニムの特許一覧

特表2022-521287自動車のドア又はテールゲートを開閉するためのアクチュエータ
<>
  • 特表-自動車のドア又はテールゲートを開閉するためのアクチュエータ 図1
  • 特表-自動車のドア又はテールゲートを開閉するためのアクチュエータ 図2
  • 特表-自動車のドア又はテールゲートを開閉するためのアクチュエータ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-06
(54)【発明の名称】自動車のドア又はテールゲートを開閉するためのアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20220330BHJP
   C22C 18/04 20060101ALI20220330BHJP
   C22C 38/04 20060101ALI20220330BHJP
   C22C 38/32 20060101ALI20220330BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20220330BHJP
   F16F 1/06 20060101ALI20220330BHJP
   C21D 8/06 20060101ALN20220330BHJP
【FI】
C22C38/00 301Y
C22C18/04
C22C38/04
C22C38/32
B60J5/10 M
F16F1/06 A
C21D8/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549238
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(85)【翻訳文提出日】2021-08-20
(86)【国際出願番号】 EP2020052133
(87)【国際公開番号】W WO2020173648
(87)【国際公開日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】19159435.7
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502385850
【氏名又は名称】エンベー ベカルト ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】NV Bekaert SA
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ キャルドン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン ヴェルメッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン ヴァン デ ヴェルデ
(72)【発明者】
【氏名】ピーテル ゲキエール
(72)【発明者】
【氏名】ヴィム ヴァン ハバー
【テーマコード(参考)】
3J059
4K032
【Fターム(参考)】
3J059AB11
3J059AD04
3J059AD06
3J059BA01
3J059BB01
4K032AA01
4K032AA02
4K032AA06
4K032AA11
4K032AA16
4K032AA19
4K032AA22
4K032AA31
4K032AA32
4K032AA36
4K032AA37
4K032BA02
4K032CE01
4K032CH04
(57)【要約】
自動車のドア又はテールゲートを開閉するためのアクチュエータは、圧縮コイルばねとモータとを備える。圧縮コイルばねは、圧縮コイルばねの圧縮力が解放されるときに、自動車のドア又はテールゲートを開けるために設けられる。モータは、自動車のドア又はテールゲートを閉じるために、圧縮コイルばねを圧縮するために設けられる。圧縮コイルばねは、螺旋状にコイル巻きされた被覆鋼線を備える。螺旋状にコイル巻きされた被覆鋼線は、鋼心と金属被覆層とを備える。鋼心は、合金鋼を備える。合金鋼は、0.8~0.95重量%の炭素と、0.2~0.9重量%のマンガンと、0.1~1.4重量%の珪素と、任意に、マイクロ合金元素、クロム、バナジウム、タングステン、モリブデン、ニオブ、又はボロンのうちの1つ又は複数と、任意に、アルミニウムと、不可避的不純物と、鉄とを含む。鋼心の微細構造は、伸線加工層状パーライトである。金属被覆層は、少なくとも84質量%の亜鉛と、好ましくは、アルミニウムとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドア又はテールゲートを開閉するためのアクチュエータにおいて、
- 圧縮コイルばねであって、前記圧縮コイルばねの圧縮力が解放されるときに、自動車のドア又は前記テールゲートを開けるための、圧縮コイルばねと、
- モータであって、前記自動車の前記ドア又は前記テールゲートを閉じるために前記圧縮コイルばねを圧縮するための、モータと
を備え、
前記圧縮コイルばねが、螺旋状にコイル巻きされた被覆鋼線を備え、
前記螺旋状にコイル巻きされた被覆鋼線が、鋼心と金属被覆層とを備え、
前記鋼心が、合金鋼を備え、
前記合金鋼が、
0.8~0.95重量%の炭素と、
0.2~0.9重量%のマンガンと、
0.1~1.4重量%の珪素と、
任意に、マイクロ合金元素、クロム、バナジウム、タングステン、モリブデン、ニオブ、又はボロンのうちの1つ又は複数と、
任意に、アルミニウムと、
不可避的不純物と、
鉄と
を含み、好ましくは、これらからなり、
前記鋼心の前記微細構造が、伸線加工層状パーライトであり、
前記金属被覆層が、
少なくとも84質量%の亜鉛と、
好ましくは、アルミニウムと
を含む、
アクチュエータ。
【請求項2】
前記金属被覆層が、前記圧縮コイルばねの表面を提供する、
請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記金属被覆が、
亜鉛と、
少なくとも4重量%のアルミニウムと、
任意に、0.2~2重量%のマグネシウムと、
任意に、最大0.6重量%の珪素と、
任意に、最大0.1重量%の希土類元素と、
不可避的不純物と
を含む、好ましくは、これらからなる、
請求項1又は2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記金属被覆層が、
亜鉛と、
3~8重量%のアルミニウムと、
0.2~2重量のマグネシウムと、
不可避的不純物と
からなる、
請求項1又は2に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記金属被覆層が、
86~92重量%のZnと、
14~8重量%のAlと、
不可避的不純物と
を含む、好ましくは、これらからなる、
請求項1又は2に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記金属被覆層が、
亜鉛と、
3~8重量%のアルミニウムと、
任意に、最大0.1重量%の希土類元素と、
不可避的不純物と
からなる、
請求項1又は2に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記金属被覆層の質量が、20~80g/mである、
請求項1~6のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記金属被覆層が、球状化されたアルミニウムリッチ相を含む、
請求項3~7のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記被覆鋼線が、前記鋼心と前記金属被覆層との間に設けられる金属間被覆層を含み、
前記金属間被覆層が、FeAl相を含み、
好ましくは、前記金属間被覆層が、前記金属間被覆層及び前記金属被覆層の組み合わされた厚さのうちの30~65%を提供する、
請求項3~8のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項10】
前記被覆鋼線が阻止層を含み、
前記阻止層が、前記鋼心と前記金属被覆層との間に設けられ、
前記阻止層が、FeAl相によって設けられ、
好ましくは、前記阻止層の厚さが1μm未満である、
請求項3~8のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項11】
前記被覆層が、
亜鉛と、
不可避的不純物と
からなり、
好ましくは、前記金属被覆層の質量が、80g/mより大きく、より好ましくは、100g/mより大きい、
請求項1又は2に記載のアクチュエータ。
【請求項12】
前記合金鋼が、1より高い炭素当量を有し、
前記炭素当量が、C重量%+(Mn重量%/6)+(Si重量%/5)+(Cr重量%/5)+(V重量%/5)+(W重量%/5)+(Mo重量%/5)+(Nb重量%/5)と定義される、
請求項1~11のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項13】
前記合金鋼が、
個々の量が0.04~0.2重量%のマイクロ合金元素、バナジウム、タングステン、モリブデン、ニオブのうちの少なくとも1つ又は複数を含み、且つ/又は、
0.15~0.4重量%の量のクロムを含み、且つ/又は、
0.0005~0.008重量%のボロンを含む、
請求項1~12のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項14】
前記圧縮コイルばねの前記鋼線の前記微細構造が、97体積%より大きい伸線加工パーライトを含む、
請求項1~13のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項15】
前記合金鋼が、0.02~0.06重量%のAlを含む、
請求項1~14のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドア又はテールゲートを開閉するためのアクチュエータに関する。アクチュエータは、モータと鋼線圧縮コイルばねとを備える。
【背景技術】
【0002】
SUV(Sports Utility Vehicle、スポーツ用多目的車)は、人気が増加していることが知られている。SUVは、大きく、そのため、重いテールゲートを有する。そのようなSUVのテールゲートを開閉するために、アクチュエータに鋼圧縮コイルばねを使用することが知られている。
【0003】
モータ作動式テールゲート開閉アクチュエータを使用する傾向は増加している。米国特許出願公開第2018/0216391A1号明細書及び米国特許出願公開第2017/0114580A1号明細書は、そのようなアクチュエータを開示している。
【0004】
そのような典型的なアクチュエータでは、テールゲートは、圧縮モードで作動する鋼線コイルばねの力を解放することによって開けられる。テールゲートは、モータの作動によって閉じられる。それによって、モータは、鋼線コイルばねを圧縮する。そのような用途のための鋼線コイルばねは、非常に厳しい要件を満たさなければならない。第1の要件によると、テールゲートを開閉するためのアクチュエータをできるだけコンパクトにするために、コイルばねは小さい直径を有しなければならない。ばねは、一貫した方法で高い圧縮力に耐えることができなければならない。ばねの緩和は所定の圧縮のためのばね力を変化させるので、ばねの緩和は小さくなければならず、それは、アクチュエータを開閉するテールゲートの作動に対してはマイナス材料であろう。さらにまた、テールゲートの開閉サイクルの必要な回数をばねの高い負荷のもとで耐えなければならないという点で、ばねは十分な疲労抵抗を有しなければならない。SUVのテールゲートのサイズのために、使用されるばねは長い長さを有する。
【0005】
自動車のテールゲート開閉アクチュエータのためのコイルばねを製作するためにマルテンサイト微細構造を有する鋼線を使用することが知られている。マルテンサイト微細構造を有する鋼線は通常、焼入れ焼戻し熱処理操作によって製造される。
【0006】
独国実用新案第202004015535U1号明細書は、自動車のテールゲート開閉システムを説明している。システムは、鋼線コイルばねを備える。ばねは、少なくとも1mmの直径を有する鋼線から作られる。鋼線が作られる合金鋼は、0.5~0.9重量%の炭素と、1~2.5重量%の珪素と、0.3~1.5%のマンガンと、0.5~1.5重量%のクロムと、鉄と、不純物とを含む。合金鋼は任意に、0.05~0.3重量%のバアネデアム、並びに/又は、0.5~0.3重量%のニオブ及び/若しくはタンタラムを含む。鋼線は、パテンティング操作、及びその後の伸線加工によって作られる。次いで、鋼線は、マルテンサイト微細構造、2300N/mmより大きい引張強さ、及び、40%を超える破断時断面積の減少を得るために、焼入れ及び焼戻しされる。得られた鋼線は、コイルばねに冷間成形され、それは、次いで、200℃~400℃の温度で応力緩和される。ばねは、その耐久性を高めるために、ショットピーニングすることができる。
【0007】
硬鋼線で作られるコイルばねが存在する。欧州規格EN 10270-1:2011は、「Steel wire for mechanical springs-Part 1:Patented cold drawn unalloyed spring steel wire」と題される。表題は非合金のばね用鋼線(unalloyed spring steel wire)について言及しているが、規格のセクション6.1.2は、マイクロ合金元素の添加が製造業者と購入者との間で同意されてもよいことを示している。規格は、2つの方法でばね用鋼線を区別している。第1の方法は、静的負荷(S)又は動的負荷(D)による方法である。第2の方法は、引張強さの低(L)、中(M)、又は高(H)による方法である。組み合わされた2つの方法は、機械的特性(その間の引張強さRm)及び品質要求が、鋼線径の関数として、規格EN 10270-1:2011の表3で与えられる、ばね用鋼線の5つのグレード(SL、SM、DM、SH、及びDH)を提供する。一例として、直径3.8~4mmの鋼線については、グレードDH(最も高い指定引張強さを有するグレード)の引張強さRmは、1740~1930MPaである必要がある。
【0008】
自動車を運転するときの、アクチュエータが発する騒音を防止するために、圧縮コイルばねにフロック加工することが一般的となっている。短い織物繊維、たとえば、ポリアミド系繊維の層は、ばねの巻取り後、接着剤層によって圧縮コイルばね上に接合される。このように、アクチュエータの強く圧縮されたばね上で防音機能を果たすビロード層が作られる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、自動車のドア又はテールゲートを開閉するためのアクチュエータに関する。アクチュエータは、圧縮コイルばねとモータとを備える。圧縮コイルばねは、圧縮コイルばねの圧縮力が解放されるときに、自動車のドア又はテールゲートを開けるために設けられる。モータは、自動車のドア又はテールゲートを閉じるために圧縮コイルばねを圧縮するために設けられる。圧縮コイルばねは、螺旋状にコイル巻きされた被覆鋼線を備える。螺旋状にコイル巻きされた被覆鋼線は、鋼心と金属被覆層とを備える。好ましくは、螺旋状にコイル巻きされた被覆鋼線の直径d(mm)は、2~5mmである。鋼心は、合金鋼を含む。合金鋼は、0.8~0.95重量%の炭素と、0.2~0.9重量%のマンガンと、0.1~1.4重量%の珪素と、任意に、マイクロ合金元素、クロム、バナジウム、タングステン、モリブデン、ニオブ、又はボロンのうちの1つ又は複数と、任意に、アルミニウムと、不可避的不純物と、鉄とを含み、好ましくは、これらからなる。鋼心の微細構造は、伸線加工層状パーライトである。金属被覆層は、少なくとも84質量%の亜鉛と、好ましくは、アルミニウムとを含む。
【0010】
本発明の利益は、アクチュエータにおける機械的特性、耐用年数、及び騒音防止に関するすべての要件を満たすアクチュエータが得られることである。今日では、テールゲートを開閉するためのアクチュエータの圧縮コイルばねに、マルテンサイト鋼線が使用されている。ばねは、後被覆され、フロック層が設けられる。後被覆作業は通常、自動車用途で典型的に必要とされるレベルの耐食性を達成するために行われる。自動車のドア又はテールゲートを開閉するためのアクチュエータに必要とされる鋼線は、好ましくは、2~5mmの直径を有し、高い強度及び十分な延性を有しなければならない。これらの直径の(マルテンサイト微細構造を有する)焼入れ及び焼戻しされた鋼線は、最も高い強度を有する。このような焼入れ及び焼戻しされた鋼線で作られ、標準的な後処理(たとえば、応力除去、ショットピーニング、後被覆、及びフロック加工)が行われた、螺旋状にコイル巻きされたばねは、優れた疲労寿命、ばね力の小さい緩和、耐用年数、及び騒音減衰の組合せを提供する。マルテンサイト鋼線の知られている特性(及び、マルテンサイト鋼線から作られる螺旋状にコイル巻きされた圧縮ばね上で実行されるプロセス)に完全に適合する、テールゲートを開閉するためのアクチュエータのためのばねに対する高い要求(高い圧縮力、許容される小さい緩和、疲労寿命要件、耐用年数要件、騒音の発生がない)のために、当業者は、テールゲートを開閉するためのアクチュエータのための圧縮コイルばねの製作のために、マルテンサイト鋼線を使用し、硬引き線(硬引き線は伸線加工パーライト微細構造を有する)を使用しないという技術的偏見を有する。本発明で選択される合金鋼は、驚くべきことに、自動車のドア又はテールゲートを開閉するためのアクチュエータで使用するための厳しい要件を満たす圧縮コイルばねを得るために必要な鋼線特性(強度、降伏強さ、延性)の組合せを有する伸線加工パーライト微細構造を有する被覆鋼線を提供する。さらにまた、後被覆作業及び圧縮コイルばね上へのフロック層の提供は必要ない。金属被覆層は、自動車を運転するときに、アクチュエータの圧縮コイルばねで騒音が発生しないように、十分に騒音を防止する。金属被覆層は、アクチュエータの圧縮コイルばねに、したがって、アクチュエータに、必要な耐用年数も提供する。
【0011】
好ましいアクチュエータでは、金属被覆層は、圧縮コイルばねの表面を提供する。
【0012】
好ましくは、アクチュエータは、2つのコネクタを備え、一方はアクチュエータをドア又はテールゲートに接続するためのものであり、他方はアクチュエータを自動車の車体に接続するためのものである。
【0013】
好ましくは、合金鋼は、個々の量が0.04~0.2重量%のマイクロ合金元素、バナジウム、タングステン、モリブデン、ニオブのうちの少なくとも1つ又は複数を含み、且つ/又は、0.15~0.4重量%の量のクロムを含み、且つ/又は、0.0005~0.008重量%のボロンを含む。
【0014】
好ましくは、合金鋼は、0.02~0.06重量%のアルミニウムを含む。このような実施形態は、圧縮コイルばねの製造に使用される被覆鋼線のより高い延性のおかげで、より良好な圧縮コイルばねを提供する。
【0015】
好ましい実施形態において、合金鋼は、1より高い炭素当量を有する。炭素当量は、C重量%+(Mn重量%/6)+(Si重量%/5)+(Cr重量%/5)+(V重量%/5)+(W重量%/5)+(Mo重量%/5)+(Nb重量%/5)と定義される。より好ましくは、合金鋼は、1.05より高い、より好ましくは、1.1より高い炭素当量を有する。より好ましくは、合金鋼は、1.4より低い、より好ましくは、1.3より低い炭素当量を有する。
【0016】
好ましくは、合金鋼の炭素含有量は、0.93重量%未満、より好ましくは、0.9重量%未満である。
【0017】
好ましい実施形態において、合金鋼は、0.15~0.4重量%のCr(より好ましくは、合金鋼は、0.35重量%未満のCr、さらにより好ましくは、0.3重量%未満のCr)と、任意に、0.04~0.2重量%のVとを含む。
【0018】
合金鋼がVを含むとき、好ましくは、合金鋼は0.15重量%未満のVを含む。
【0019】
好ましくは、圧縮コイルばねは40mm未満の外径を有する。
【0020】
好ましくは、圧縮コイルばねは、無負荷状態で、40cmより長い長さを有する。好ましくは、60cmより長い長さを有する。
【0021】
好ましくは、圧縮コイルばねの長さは、無負荷状態で、1000mm未満である。
【0022】
好ましくは、圧縮コイルばねは、3~8のばね指数を有する。ばね指数は、ばねの鋼線の直径に対するばねの直径の比である(ばね指数を計算するためのばねの直径は、無負荷状態での、ばねの外径と内径との平均である)。
【0023】
好ましくは、被覆鋼線の直径は、2~4mm、より好ましくは、2.5~3.8mmである。
【0024】
好ましくは、圧縮コイルばねは、5~10°のピッチ角を有する。そのような圧縮コイルばねは、自動車のテールゲート開閉アクチュエータで、有利に使用することができる。
【0025】
好ましくは、圧縮コイルばねを螺旋状にコイル巻きするために使用される被覆鋼線は、式2680-390.71×ln(d)によって計算される値より高い引張強さR(MPa)を有する。より好ましくは、被覆鋼線の引張強さR(MPa)は、式2720-390.71×ln(d)によって計算される値より高く、より好ましくは、式2770-390.71×ln(d)によって計算される値より高く、さらにより好ましくは、式2800-390.71×ln(d)によって計算される値より高い。関数「ln(d)」は、被覆鋼線の直径d(mm)の自然対数を意味する。鋼線の機械的特性を測定する引張試験は、「Metallic materials-Tensile testing-Part 1:Method of test at room temperature」と題されるISO 6892-1:2009に従って行われる。
【0026】
好ましくは、圧縮コイルばねの製作に使用される被覆鋼線の引張試験における破断時の絞りZは、40%より大きい。絞りZは、Z=100×(S-S)/Sで計算され、Sは引張試験開始前の被覆鋼線の原断面積であり、Sは引張試験での破断後の被覆鋼線の最小断面積である。
【0027】
好ましくは、合金鋼は0.3~0.6重量%のMnを含む、又は、合金鋼は0.6~0.9重量%のMnを含む。
【0028】
好ましくは、鋼心は、ばねに、少なくとも95体積%、より好ましくは、少なくとも97体積%の伸線加工層状パーライトを含む。
【0029】
好ましい実施形態において、鋼心の微細構造におけるベイナイトの体積パーセントは、0.2%~2%、好ましくは、0.5%未満である。このような実施形態は、驚くべきことに、本発明について特に有利であると示された。微細構造がこのような量のベイナイトを含むとき、層状パーライトは非常に優れていて、最適なばねのコイル巻き及び優れた機械的ばね特性の達成のために好ましく、ベイナイトが悪影響を与えないことを示す。限られた量のベイナイトは、被覆鋼線の延性にとって重要である。少量のベイナイトは、鋼心の製作プロセスにおける適切なパテンティング操作によって実現することができる。被覆鋼線の鋼心の微細構造におけるベイナイトの体積パーセントは、適切なエッチング液を使用した光学顕微鏡法又は走査型電子顕微鏡法によって判定することができる。
【0030】
任意に、金属被覆層は、個々の量が1重量%未満である、他の活性元素を含む。
【0031】
好ましくは、金属被覆層の質量は、圧縮コイルばねの表面において、120g/m未満、より好ましくは、20~80g/m、より好ましくは、60g/m未満、さらにより好ましくは、圧縮コイルばねの表面において、40g/m未満である。
【0032】
好ましくは、金属被覆は、少なくとも88重量%の亜鉛、より好ましくは、少なくとも90重量%の亜鉛を含む。より好ましくは、金属被覆層は、少なくとも93重量%の亜鉛を含む。
【0033】
好ましくは、金属被覆は、亜鉛と、少なくとも4重量%のアルミニウム、好ましくは、14重量%未満のアルミニウムと、任意に、0.2~2重量%のマグネシウム(好ましくは、0.8重量%未満のMg)と、任意に、最大0.6重量%の珪素と、任意に、最大0.1重量%の希土類元素と、不可避的不純物とを含む、好ましくは、これらからなる。
【0034】
好ましくは、金属被覆層は、86~92重量%のZnと、14~8重量%のAlと、不可避的不純物とを含む、好ましくは、これらからなる。好ましくは、このような金属被覆層は、35~60g/mの質量を有する。このような金属被覆層が、薄く作ることができ、さらに、良好な防食性を有することは特に有利である。薄い被覆層は、圧縮コイルばねのコイル巻きも容易にする。
【0035】
好ましくは、金属被覆層は、亜鉛と、3~8重量%のアルミニウムと、任意に、最大0.1重量%の希土類元素と、不可避的不純物とからなる。好ましくは、このような金属被覆層は、60~120g/mの質量を有する。
【0036】
好ましくは、金属被覆層は、亜鉛と、3~8重量%のアルミニウムと、0.2~2重量(好ましくは、0.8重量%未満)のマグネシウムと、不可避的不純物とからなる。このような金属被覆層が、薄く作ることができ、さらに、良好な防食性を有することは特に有利である。薄い被覆層は、圧縮コイルばねのコイル巻きも容易にする。このような金属被覆層は、たとえば、60g/m未満とすることができる。好ましくは、25~60g/mとすることができる。
【0037】
好ましくは、金属被覆層は、球状化されたアルミニウムリッチ相を含む。そのような球状化されたアルミニウムリッチ相は、伸線加工時に、被覆鋼線が伸線エネルギによって加熱されるとき、さらに大きな範囲では、圧縮コイルばねをコイル巻きした後に、応力除去熱処理が圧縮コイルばねに対して行われたときに作られる。球状化されたアルミニウムリッチ相は、金属製圧縮コイルばねの耐食性を改善し、それにより、より薄い金属被覆層を使用することができると信じられている。
【0038】
好ましくは、被覆鋼線は、鋼心と金属被覆層との間に設けられる金属間被覆層を含む。金属間被覆層は、FeAl相を含む。より好ましくは、金属間被覆層は、金属間被覆層及び金属被覆層の組み合わされた厚さのうちの30~65%を提供する。金属被覆層への損傷なしに鋼線を圧縮コイルばねにコイル巻きすることを可能とするために、金属間層は金属被覆層の必要な接着性を作るので、金属間層は有利である。より薄い金属間被覆層は、ばねをコイル巻きするとき、剥離する恐れがあり、より厚い被覆は、コイル成形適性が良好ではない恐れがある。FeAl相を含む金属間被覆層は、鋼心上に金属被覆層を加えるために、二重浸漬プロセスを適用したときに得られる。第1の浸漬は、亜鉛槽で行われる。FeZn層は、鋼表面上に形成される。第2の浸漬は、Zn及びAlを含む槽で行われる。第2の槽において、第1の槽で形成されたFeZn層は、FeAl相を含む金属間被覆層に変わる。
【0039】
好ましくは、被覆鋼線は阻止層を含む。阻止層は、鋼心と金属被覆層との間に設けられる。阻止層は、FeAl相によって設けられる。好ましくは、阻止層の厚さは1μm未満である。このような阻止層を有する被覆鋼線は、金属被覆層を加える単一の浸漬プロセスを使用して得ることができる。鋼の表面は、たとえば、ゼンジミアプロセスによって活性化され、鋼線は、溶融Zn及びAlを含む槽に浸される。鋼線は、槽への浸漬後に拭き取られて、冷却される。
【0040】
好ましい実施形態において、金属被覆層は、亜鉛と、不可避的不純物とからなる。より好ましくは、金属被覆層の質量は、80g/mより大きい、より好ましくは、100g/mより大きい。
【0041】
好ましい実施形態において、合金鋼は0.15~0.35重量%のSiを含む、又は、合金鋼は0.6~0.8重量%のSiを含む、又は、合金鋼は0.8~1.4重量%のSiを含む。
【0042】
より好ましい実施形態において、合金鋼は0.6~1.4重量%のSi、より好ましくは、0.8~1.4重量%のSiを含む。伸線プロセスの中間ステップにおいて金属被覆を加えるときに、Siを多く含むことにより、熱浸漬プロセスでの鋼線の強度の低下を防ぐことができ、高強度の被覆鋼線を得ることができるので、このような実施形態は特に有利である。
【0043】
好ましい実施形態において、合金鋼は、0.83~0.89重量%のCと、0.55~0.7重量%のMnと、0.1~0.4重量%のSiと、0.15~0.3重量%のCrと、0.04~0.08重量%のVと、任意に、0.02~0.06重量%のAlと、不可避的不純物とからなり、残部は鉄である。
【0044】
好ましい実施形態において、合金鋼は、0.83~0.89重量%のCと、0.55~0.7重量%のMnと、0.55~0.85重量%のSiと、0.15~0.3重量%のCrと、0.04~0.08重量%のVと、任意に、0.2~0.06重量%のAlと、不可避的不純物とからなり、残部は鉄である。
【0045】
好ましい実施形態において、合金鋼は、0.9~0.95重量%%のCと、0.2~0.5重量%のMnと、1.1~1.3重量%のSiと、0.15~0.3重量%のCrと、不可避的不純物とからなり、残部は鉄である。
【0046】
好ましい実施形態において、螺旋状にコイル巻きされた被覆鋼線は、非円形断面、好ましくは、長方形又は正方形断面を有する。螺旋状にコイル巻きされた被覆鋼線の断面が非円形である実施形態の場合、この鋼線の直径は、相当直径である。相当直径は、非円形断面を有する線材と同じ断面積を有する、円形断面を有する線材の直径である。
【0047】
好ましくは、圧縮コイルばねの被覆鋼線の鋼心は、75%より大きい伸線縮小率を有する。鋼心が伸線加工された線材、又は、鋼心自体は、パーライト微細構造を作るために、パテンティング操作を受け、続いて、鋼線伸線作業が行われる。伸線縮小率(%)は、100×(A-A)/Aと定義され、Aはパテンティング後且つ伸線加工前の線材又は鋼心の断面の面積に等しく、Aはばねの製造に使用される伸線加工された鋼心の断面の面積に等しい。伸線変形の間、パーライト粒は、鋼心の長手方向に向けられる。パーライト粒の向きのレベルは、鋼心の伸線縮小率で決定される。伸線縮小率は、たとえば、縦断面に対する(すなわち、圧縮コイルばねにおける被覆鋼線の長手方向に沿った)光学顕微鏡法によって、圧縮コイルばねにおける被覆鋼線の鋼心の伸線加工された層状パーライト微細構造の評価から評価することができる。
【0048】
好ましい実施形態において、無負荷状態における長さの63%と37%との間の圧縮コイルばねの20000回の圧縮負荷サイクルの後、その長さの63%における負荷損失は、最初のサイクルでのその長さの63%における負荷と比較して、5%未満(好ましくは、3%未満)である。
【0049】
本発明のアクチュエータで使用される圧縮コイルばねは、
- 鋼線材を提供するステップと、
- パーライト微細構造を得るために、鋼線材又は鋼線材から線材加工された鋼線をパテンティングするステップと、
- パテンティング操作の後、且つ、伸線加工の前又は伸線加工ステップの間に、熱浸漬によって鋼線材又は鋼線上に金属被覆を加えるステップであって、金属被覆が、少なくとも84質量%の亜鉛と、任意に、アルミニウムとを含む、加えるステップと、
- 75%より大きい伸線縮小率で、パーライト微細構造を有するパテンティングされ金属被覆された鋼線材、又は、パーライト微細構造を有するパテンティングされ金属被覆された鋼線を伸線加工し、それによって、金属被覆鋼線を得るステップであって、金属被覆鋼線の鋼心が、伸線加工パーライト微細構造を有し、好ましくは、2~5mmの直径d(mm)を有する、得るステップと、
- 被覆鋼線をコイルばねへと螺旋状にコイルを巻くステップと、
- 任意に、コイルばねの熱応力除去を行うステップと
を含む方法に従って作ることができる。鋼線材は合金鋼を含む。合金鋼は、0.8~0.95重量%の炭素と、0.2~0.9重量%のマンガンと、0.1~1.4重量%の珪素と、任意に、マイクロ合金元素、クロム、バナジウム、タングステン、モリブデン、ニオブのうちの1つ又は複数と、任意に、ボロンと、任意に、アルミニウムと、不可避的不純物とからなり、残部は鉄である。螺旋状にコイル巻きされた被覆鋼線の鋼心の微細構造は、伸線加工された層状パーライトである。
【0050】
好ましくは、伸線作業により、式2680-390.71×ln(d)によって計算される値より高い引張強さR(MPa)を有する被覆鋼線がもたらされる。より好ましくは、伸線加工により、式2720-390.71×ln(d)によって計算される値より高い、より好ましくは、式2770-390.71×ln(d)によって計算される値より高い、さらにより好ましくは、式2800-390.71×ln(d)によって計算される値より高い引張強さR(MPa)を有する被覆鋼線がもたらされる。関数「ln(d)」は、被覆鋼線の直径d(mm)の自然対数を意味する。鋼線の機械的特性を測定する引張試験は、「Metallic materials-Tensile testing-Part 1:Method of test at room temperature」と題されるISO 6892-1:2009に従って行われる。
【0051】
パーライト微細構造を得るパテンティングステップは、線材又は線材から伸線加工された鋼線に対して行うことができる。パテンティングステップは、線材製作プロセスのインラインステップとして、たとえば、ダイレクトインラインパテンティングによって行うことができる。パテンティングステップは、適切な溶融金属槽(たとえば、Pb)、又は、代替手段(流動層、溶融塩、及び水性高分子など)を使用することで知られているパテンティング技術によって、線材又は線材から伸線加工された鋼線に対して行うこともできる。伸線加工前に、酸洗及びワイヤ被覆ステップを行うことができる。
【0052】
好ましくは、圧縮コイルばねを作る方法は、コイルを巻いた後に、圧縮コイルばねを熱的に応力除去するステップを含む。より好ましくは、熱応力除去熱処理ステップは、圧縮コイルばね形成後に、450℃より低い温度で、圧縮コイルばねに対して行われる。より好ましくは、応力除去熱処理ステップは、300℃より低い温度、より好ましくは、250℃より低い温度で行われる。
【0053】
任意に、他のプロセスステップ、たとえば、熱間硬化又は複数の常温硬化を、応力除去後に、圧縮コイルばねに加えることができる。熱間硬化は、ばねが、しばらくの間、高温で、圧縮状態に維持されることを意味する。常温硬化は、ばねが、室温で、多数のサイクルの間、圧縮されることを意味する。このような硬化操作により、ばねは、より厳密な制限されたばね緩和要件を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】SUVのテールゲートを開閉するためのアクチュエータを備えるSUVを示す。
図2】自動車のテールゲートを開閉するためのアクチュエータを示す。
図3】本発明の場合の圧縮コイルばねを示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、テールゲート14と、テールゲートを開閉するためのアクチュエータ16とを備えるSUV12を示す。アクチュエータ(図2は自動車のテールゲートを開閉するためのアクチュエータ16を示す)は、圧縮コイルばね18と、モータ20とを備える。アクチュエータは、2つのコネクタ22、23を備え、一方はアクチュエータをドア又はテールゲートに接続するためのものであり、他方はシステムを自動車の車体に接続するためのものである。圧縮コイルばねは、圧縮コイルばねの圧縮力が解放されるときに、テールゲートを開けるために設けられる。モータは、テールゲートを閉じるために圧縮コイルばねを圧縮するために設けられる。使用することができる圧縮コイルばねの例は図3に示され、このようなばねは長さLとピッチpとを有する。
【0056】
圧縮コイルばねは、螺旋状にコイル巻きされた被覆鋼線を備える。螺旋状にコイル巻きされた被覆鋼線の直径d(mm)は、好ましくは、2~5mmである。螺旋状にコイル巻きされた被覆鋼線は、鋼心と金属被覆層とを備える。
【0057】
鋼心は、合金鋼を含み、合金鋼は、0.8~0.95重量%の炭素と、0.2~0.9重量%のマンガンと、0.1~1.4重量%の珪素と、任意に、マイクロ合金元素、クロム、バナジウム、タングステン、モリブデン、ニオブ、又はボロンのうちの少なくとも1つ又は複数と、任意に、アルミニウムと、不可避的不純物と、鉄とを含み、好ましくは、これらからなる。
【0058】
表Iは、鋼心のために本発明で使用することができる合金鋼の特定の例を(合金鋼内の元素の最小及び最大重量%とともに)提供する。
【0059】
螺旋状にコイル巻きされた被覆鋼線の鋼心の微細構造は、伸線加工された層状パーライトである。
【0060】
【表1】
【0061】
このような圧縮コイルばねの特定の例は、被覆鋼線でコイル巻きされ、被覆鋼線の鋼心は、伸線加工パーライト微細構造及び3.4mmの直径を有する。圧縮コイルばねは、無負荷状態で、0.8mの長さLを有する。例示的なコイルばねのばね指数は6.5である。ばねのピッチpは15.2mmである。圧縮コイルばねの外径は26.8mmである。
【0062】
圧縮コイルばねをコイル巻きするために使用される被覆鋼線を製造するために、直径10mmの鋼線材が使用された。
【0063】
鋼線材は、0.86重量%のCと、0.63重量%のMnと、0.2重量%のSiと、0.22重量%のCrと、0.06重量%のVと、0.04重量%のAlと、不可避的不純物と、残部の鉄とからなる合金鋼を備える。これは、表Iの組成「A」の合金である。炭素当量は、0.86+(0.63/6)+(0.2/5)+(0.22/5)+(0.06/5)=1.169である。
【0064】
直径10mmの鋼線材は、パーライト微細構造を提供するためにパテンティングされ、次いで、熱浸漬によって金属被覆が設けられた。使用された熱浸漬プロセスは、最初に、溶融亜鉛の槽に鋼線を浸し、続いて、10重量%のアルミニウムと残部の亜鉛とを含む槽に鋼線を浸す二重浸漬プロセスであった。熱浸漬された鋼線の金属被覆層は、10重量%のアルミニウムと、残部の亜鉛とからなる。
【0065】
直径10mmの、パテンティングされて熱浸漬された線材は、直径3.4mmの鋼線に伸線加工された。これは、88.4%の伸線縮小率が適用されたことを意味する。結果として得られた鋼線は、伸線加工パーライト微細構造を有する。被覆鋼線の引張強さRmは2354MPaである。Rp0.2の値は1990MPaであり、これはRmの値の84.5%である。鋼線の引張試験における破断時の絞りZは44.1%である。
【0066】
3.4mmの伸線加工線の金属被覆は45g/mであった。
【0067】
この被覆鋼線を圧縮コイルばねにコイル巻きした後、250℃の無負荷状態で、圧縮コイルばねを30分間維持することによって、熱応力除去操作が行われた。
【0068】
圧縮コイルばねの被覆鋼線は、鋼心と金属被覆層との間に金属間被覆層を含んだ。金属間被覆層は、金属間被覆層及び金属被覆層の組み合わされた厚さの45%を提供した。金属間被覆層はFeAl相を含んだ。金属被覆層が球状化されたアルミニウムリッチ相を含むことが観察された。
【0069】
コイルばねを作るために使用された被覆鋼線のサンプルは、250℃の炉温で30分間、炉内で熱処理を受けた。この熱処理の後、被覆鋼線サンプルに対して引張試験が行われた。引張強さRmは2426MPaである。Rp0.2の値は2366MPaであり、これは引張強さRmの97.5%である。破断時の絞りZは42%であった。
【0070】
圧縮コイルばねの鋼心の分析は、鋼心が、97体積%より大きい伸線加工パーライトと約1体積%のベイナイトと有する伸線加工パーライト微細構造を有することを示した。
【0071】
圧縮コイルばねが、自動車のテールゲートを開閉するためのアクチュエータで使用された。被覆鋼線の金属被覆は、圧縮コイルばねの表面を提供した。
図1
図2
図3
【国際調査報告】