(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-06
(54)【発明の名称】管構造、及び管構造を形成する方法
(51)【国際特許分類】
F16L 9/14 20060101AFI20220330BHJP
F16L 9/04 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
F16L9/14
F16L9/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549270
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(85)【翻訳文提出日】2021-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2020053993
(87)【国際公開番号】W WO2020169491
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】102019104536.3
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515157459
【氏名又は名称】サンドヴィック マテリアルズ テクノロジー ドイチュラント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヘッドバール, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】フロボース, トマス
【テーマコード(参考)】
3H111
【Fターム(参考)】
3H111AA01
3H111BA02
3H111BA28
3H111BA34
3H111CB04
3H111CB11
3H111CB14
3H111CB29
3H111CC13
3H111DA07
3H111DA08
3H111EA10
3H111EA14
(57)【要約】
本開示は、高圧用途のための管構造に関する。従来技術で公知の管の少なくとも1つの欠点を克服する管構造を提供するために、本開示に基いて、管構造が、金属製の内部管であって、内面及び外面を有する内部管と、内部管の外面を包囲する少なくとも1つのストランドであって、複数のヤーンを含み、少なくとも1つのヤーンが炭素繊維を有する少なくとも1つのストランドと、内部管を包囲する保護管とを有することが提案される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管構造(1)であって、
金属製の内部管(2)であって、内面(3)及び外面(4)を有する内部管(2)と、
前記内部管(2)の前記外面(4)を包囲する少なくとも1つのストランド(5)であって、複数のヤーンを含み、少なくとも1つの前記ヤーンが炭素繊維を有する、少なくとも1つのストランド(5)と、
前記ストランド(5)及び前記内部管(2)を包囲する保護管(6)と
を有する、管構造(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのストランド(5)が、織物、編組、編物、多軸配向性スクリム、又は、これらの何らかの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の管構造(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのストランド(5)が、チューブ状に形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の管構造(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つのストランド(5)は、炭素繊維の割合が少なくとも50%であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の管構造(1)。
【請求項5】
前記内部管(2)が、内径(D1)、外径(D2)、及び肉厚(w)を有する高圧管であり、前記肉厚(w)が、前記内径(D1)と等しく又は前記内径(D1)より大きいことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の管構造(1)。
【請求項6】
前記内部管(2)が、シームレス管であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の管構造(1)。
【請求項7】
前記内部管(2)が、冷間成形された管であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の管構造(1)。
【請求項8】
前記内部管(2)の材料が、炭素鋼、低合金鋼、及び高合金鋼から選択されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の管構造(1)。
【請求項9】
前記内部管(2)は、前記内面(3)上に存在する亀裂の深度が50μmを超えないような表面品質を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の管構造(1)。
【請求項10】
前記保護管(6)が金属から成ることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の管構造(1)。
【請求項11】
少なくとも、前記保護管(6)と、前記少なくとも1つのストランド(5)とが互いに摩擦結合により結合されており、又は、前記少なくとも1つのストランド(5)と、前記内部管(2)とが互いに摩擦結合により結合されていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の管構造(1)。
【請求項12】
15000バール以上の圧力が加えられた流体を案内するための、請求項1から11のいずれか一項に記載の管構造(1)の使用。
【請求項13】
管構造(1)を形成する方法であって、
金属製の内部管(2)を準備するステップであって、前記内部管(2)が内面(3)及び外面(4)を有する、準備するステップと、
複数のヤーンを含む少なくとも1つのストランド(5)を、前記内部管(2)の前記外面(4)上に施すステップであって、少なくとも1つ前記ヤーンが炭素繊維を有する、施すステップと、
前記ストランド(5)を前記内部管(2)と共に保護管(6)に挿入するステップと
を含む、管構造(1)を形成する方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのストランド(5)を前記内部管(2)の前記外面(4)上に施すステップ(101)は、前記内部管(2)の前記外面(4)の周りに織ること、当該外面(4)の周りを編組により覆うこと、又は当該外面(4)の周りに編むことを含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記内部管(2)を準備するステップが、シームレスなルッペを冷間成形して前記内部管(2)にすることを特徴とする、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管構造、管構造を形成する方法、及び管構造の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
管、特に金属管が、高負荷に晒される様々な技術分野において使用されている。上記技術分野の例として、内燃機関の噴射技術、及び化学工業が挙げられる。ここでは特に、長時間に亘って高圧力に耐えられることが管に要求される。
【0003】
従来技術では既に、12.000バールを超える圧力に耐えうる高圧用途のための管が知られている。このような高圧下では、管に非常に大きな負荷が掛かって、管に亀裂が入ることになりうる。亀裂が入ることによって、管が機能を発揮せず最悪の場合には管の破損が発生するという危険性が生じる。
【0004】
同じ材料組成では、管の耐圧性が、その肉厚が増大するほど向上することが知られている。なぜならば、管の内面から管の外面に向かう亀裂の拡大は、肉厚が増大するほどより長く続くからである。従って、高圧用途のためには通常、肉厚な管が使用される。圧力がより高くなるほど、管の肉厚が増大する。しかしながら、同じ内径の場合に肉厚が増大すると、管の外径及び自重も同様に増大する。このことは、多くの用途において、例えば、陸上車及び航空機での適用において欠点となる。
【発明の概要】
【0005】
従って、先に挙げた欠点の少なくとも1つを克服する管構造に対する必要性が生じる。さらに、従来技術で公知の管に対してさらに高い高圧に耐えうる管構造への必要性が生じる。さらに、このような管構造を形成する方法に対する必要性が生じる。
【0006】
従って、本開示の第1の態様に基いて、金属製の内部管であって、内面及び外面を有する内部管と、内部管の外面を包囲する少なくとも1つのストランドであって、複数のヤーンを含み、少なくとも1つのヤーンが炭素繊維を有する、少なくとも1つのストランドと、内部管を包囲する保護管とを有する管構造が提供される。
【0007】
本開示に係る管構造の根底には、内部管を包囲する少なくとも1つのストランドによって内部管を強化するという構想が存在する。従って、一実施形態において、管構造は、従来技術で知られる管よりも高い圧力に耐えることが可能である。加えて、一実施形態において、高圧下にある管構造の寿命がより長くなることが実現されうる。さらに、一実施形態において、本開示に係る管構造は、保護管と内部管との間の摩擦結合を強化する。本開示の一実施形態において、管構造は15000バール以上の圧力に耐えられる。
【0008】
管の機能不全、及び管の破損は、亀裂が危機的なほど大きくなってから、例えば、亀裂が管の内面から管の外面と広がってから生じ始まることが多い。本開示に基いて、少なくとも1つのストランドが内部管を包囲しており、含まれる炭素繊維の特性に基いて、少なくとも一実施形態において、高圧下で内部管に亀裂が入りこの亀裂が内部管の材料中で広がるという危険を軽減する。このことにより、従来技術で知られる管に対して、管構造全体の機能不全の危険が低減される。
【0009】
複数のヤーンを含む少なくとも1つストランドであって、少なくとも1つの上記ヤーンが炭素繊維を有する少なくとも1つのストランドを使用することによって、一実施形態において、耐圧性が比較可能な従来技術で知られる高圧用途の管に対して、管構造全体の肉厚が低減され、これにより、管構造が取る設置空間が縮小される。本開示に係る管構造の肉厚は、保護管の外径と、内部管の内径と、の間の差分として計算される。
【0010】
さらに、本開示に係る管構造は、内径及び外径が同じである中実な管とより容易に比較される。後者の管は、金属に対して炭素繊維の材料密度がより低いことに基いている。
【0011】
本開示の意味における炭素繊維は、カーボンファイバ(Carbonfaser又はKohlefaser)とも称される。炭素繊維は、工業生産され、原材料に対して調整された化学反応によって、グラファイト状に配置された炭素に変換される。炭素繊維は、高い強度及び剛性を有すると共に、軸方向における破断伸度が低い。
【0012】
複数の炭素繊維が、更なる処理のために1つのヤーンにまとめられる。炭素繊維を用いたこのようなヤーンは、マルチフィラメントヤーン又はロービング(Roving)とも称される。本開示によれば、ヤーンという概念は、長くて薄い形成物として理解される。本開示の意味におけるヤーンは、一実施形態において、炭素繊維の他に、1つ以上の他の材料から成る繊維も有しうる。ヤーンは、本開示の意味において、ストランドを製造するための中間生成物として機能する。
【0013】
本開示の一実施形態において、少なくとも1つのストランドは、織物、編組、編物、多軸配向性スクリム、又は、これらの何らかの組み合わせから選択される。
【0014】
複数のヤーンを有する少なくとも1つのストランドは、一実施形態において追加的に、炭素繊維とは異なる1つ以上の材料から成り又は当該1つ以上の材料を用いた1つ以上のヤーンを含む。
【0015】
例えば、ストランドは、一実施形態において、炭素繊維の特性とは異なる少なくとも1つの特性を備えた材料から成る繊維を含むヤーンを追加的に有する。このような追加的な特性は、管構造の特徴に対して良い影響を与えうる。
【0016】
本開示の一実施形態において、少なくとも1つのストランドが、チューブ状又は長靴下状に形成されている。チューブ状又は長靴下状に形成されることによって、ストランドが内部管を周面方向に包囲しうることが保証される。
【0017】
本開示の一実施形態において、少なくとも1つのストランドの炭素繊維の割合は、少なくとも50%である。
【0018】
本開示の一実施形態において、少なくとも1つのストランドの炭素繊維の割合は、少なくとも90%である。
【0019】
本開示の一実施形態において、少なくとも1つのストランドは完全に炭素繊維で構成される。
【0020】
一実施形態において、内部管の伸びが、少なくとも1つのストランドの伸びよりも大きく、同時に、少なくとも1つのストランドの引張強度が、内部管の引張強度よりも大きい。
【0021】
本開示の意味における管は、さらに管構造も長手方向に延びる中空体であり、一実施形態において、管の長さが、管の直径よりも基本的に大きい。一実施形態において、本開示の意味における管は、さらに管構造も長手方向に延びる中空円筒体である。ここで、本開示の意味における管又は管構造としての機能にとっては、本体の内部に、流体、即ち液体又は機体を案内するための空いた断面が存在することが重要である。
【0022】
本開示の一実施形態において、内部管はシームレス管であり、即ち、管の長手方向に(溶接)継ぎ目がない管である。長手方向に溶接された管に対するシームレス管の利点は、管の寿命の延長、同じ強度でより軽量を実現するという可能性、及び内面のより良好な品質である。溶接された管と、外径が同じで肉厚も同じであるシームレス管とを比較すると、シームレス管の方が、より高い周方向応力に耐えうる。これにより、溶接された管と比較して肉厚がより薄いが同じ周方向応力に耐えることが可能なシームレス管を製造することが可能である。この理由から、材料を節約し重量を下げることが可能である。従って、シームレス管と、内部管の外面を包囲する少なくとも1つのストランドと、を組み合わせることが、従来技術で知られる高圧用途の管と比較して肉厚をより小さくすること及び重量を削減することに対してさらに有利に作用しうる。
【0023】
本開示の一実施形態において、内部管が、その長手方向に溶接された管である。
【0024】
本開示の一実施形態において、内部管が、冷間成形された管である。冷間成形によって、内部管の金属のひずみ硬化が実現される。ひずみ硬化によって、原材料の強度、及びこれにより、変形された内部管の引張強度及び耐圧性を向上させることが可能である。ここで、引張強度とは、内部管の原材料が、破損し又は裂ける前に耐えられる機械的な最大引張応力として理解される。従って、このように製造される管の特性は合目的的に、冷間成形及びこれに伴うひずみ硬化によって変えられる。本開示の意味における冷間成形とは、金属の再結晶温度より低い温度での変形として理解される。
【0025】
本開示の一実施形態において、内部管がオートフレッテージ加工される。
【0026】
本開示の一実施形態において、内部管の内面にバニシング加工が施される。
【0027】
高圧技術において、様々な金属材料が、管及び他の部品を製造するために使用される。本開示の一実施形態において、内部管の材料が、炭素鋼、低合金鋼、及び高合金鋼から選択される。特に、高い動的な耐圧性が、高合金鋼から成る管であって、ひずみ硬化又は焼き戻しされた後に、少なくとも内部管の内面にバニシング加工が施された管で実現される。
【0028】
本開示の一実施形態において、内部管がステンレス鋼管である。本開示の一実施形態において、内部管がオーステナイト系ステンレス鋼から成る。
【0029】
本開示の一実施形態において、内部管は耐食性を備える。この特徴は、高圧用途用の管の投入のためには有利である。なぜならば、内部管の腐食が始まると、即ち、内部管が徐々に分解すると、内部管の耐圧性が損なわれるからである。
【0030】
本開示の他の実施形態において、ひずみ硬化された内部管は、引張強度(Rm)が少なくとも900MPaである。一実施形態において、ひずみ硬化された内部管は、引張強度(Rm)が少なくとも1.100MPaである。
【0031】
本開示の一実施形態において、内部管は、重量%でC≦0.08、8≦Mn≦10、Si≦1、P≦0.06、S≦0.03、19≦Cr≦21、5≦Ni≦7、0.15≦N≦0.4、1.5≦Mo≦3、残分のFe及び通常生じる不純物で構成されるオーステナイト系ステンレス鋼から成る。一実施形態において、本原材料が、重量%でC≦0.040により表される。本開示の他の実施形態において、内部管は、重量%でC≦0.08、8≦Mn≦10、Si≦1、P≦0.03、S≦0.03、19≦Cr≦21.5、5.5≦Ni≦7.5、0.15≦N≦0.4、1.5≦Mo≦3、残分のFe及び通常生じる不純物で構成されるオーステナイト系ステンレス鋼から成る。一実施形態において、上記原材料が、重量%でC≦0.04により表される。
【0032】
先に定義されたオーステナイト系ステンレス鋼は、例えば、21-6-9ステンレス鋼として、サンドビック(Sandvik)社から市販されている。上記ステンレス鋼は、UNS S21900とも称される。この材料は、Mnの含有量が高くてNiの含有量が低く、添加物としてNを含むことにより卓越している。上記鋼は、硬化された状態において機械的強度が高く、-230℃までの温度での衝撃強度が非常に良好であり、高温での耐酸化性が非常に良好であることを特徴としている。
【0033】
本開示の一実施形態において、内部管が、内径、外径、及び肉厚を有する高圧管である。ここで、肉厚が内径と等しく又は内径より大きい管が、本開示の意味における高圧管として称される。ここでは、内部管の肉厚は、内部管の外径と内部管の内径との間の差分として定義される。本開示の意味における高圧管は、一実施形態において、圧力が1300バールより高い流体を案内するために役立つ。
【0034】
本開示の一実施形態において、内部管が、少なくとも内面上に存在する亀裂の深度が50μmを超えないような表面品質を有する。より良好な表面品質によって、亀裂の形成、拡散及び増大に対する内部管のより良好な耐性も得られる。従って、内部管の表面品質が高いほど、高圧が加わった際に内部管が割れる危険性が低減される。
【0035】
一実施形態において、少なくとも内部管の内面上に存在する亀裂の深度は20μmを超えない。一実施形態において、少なくとも内部管の内面上に存在する亀裂の深度は10μmを超えない。一実施形態において、少なくとも内部管の内面上に存在する亀裂の深度は7μmを超えない。一実施形態において、最大亀裂深度について規定された限界値は、内部管の内面のみならず、全表面について該当する。このように高い表面品質によって、存在する亀裂が内部管の内面から内部管の外面の方向にほとんど拡散しえず、これにより、内部管は高い耐圧性を有する。
【0036】
内部管が、自身の中へと案内される流体と接触する箇所では、十分に高い表面品質を獲得することが重要である。なぜならば、小さな凸凹ですら、高圧下の流体と接触した際に亀裂が生じることになりうるからである。従って、本開示の一実施形態において、内部管の内面の表面品質は、内面の加工によって、例えばバニシング加工によって、最大亀裂深度についての先に挙げた限界値が維持されるように形成される。
【0037】
少なくとも1つのストランド、及び内部管を包囲する保護管が、環境の影響から少なくとも1つのストランドを保護する。保護管によって、例えば、組み立てられた状態で管構造を包囲する材料による少なくとも1つのストランドの摩損が低減される。このような環境の影響は、さもなければ、少なくとも1つのストランドの弱化又は破壊をもたらしうる。
【0038】
本開示の一実施形態において、保護管は金属から成る。本開示の一実施形態において、保護管と内部管とは同じ材料から成り、他の実施形態において、保護管と内部管とは、互いに異なる材料を有する。後者の実施形態には、保護管及び内部管のための合目的的に異なる特性であって、特定の用途に対して調整された管構造を獲得するために任意に互いに組み合わされる上記特性が提供されうるという利点がある。
【0039】
本開示の一実施形態において、保護管は、非鉄金属(NE金属)から成る。鉄以外の全ての金属と、鉄が主元素として含有されておらず又は純鉄(Fe)の割合が50%を超えない金属合金とが、本開示の意味におけるNE金属として称される。この意味におけるNE金属の例は、銅、アルミニウム、航空機アルミニウム、亜鉛、青銅、及び真鍮である。
【0040】
本開示の一実施形態において、保護管がシームレス管である。少なくともシームレス管が保護管として使用される際に、内部管が、当該内部管の外面を包囲する少なくとも1つのストランドと共に軸方向に、保護管の開口に導入されると理解されたい。
【0041】
本開示の一実施形態において、保護管は、当該管の長手方向に溶接された管である。長手方向のシーム溶接によって、内部管を少なくとも1つのストランドと共に、より簡単に保護管に導入することが可能となる。保護管が金属から成る一実施形態において、保護管は、帯状体の金属板から形成され、長手方向にシーム溶接された保護管となる。本実施形態では、最初に内部管を、当該内部管を包囲する少なくとも1つのストランドと共に、金属帯状体の上に置き、この金属帯状体を折り曲げ、続いて長手方向にシーム溶接して、少なくとも1つのストランドを包囲する保護管を形成することが可能である。
【0042】
本開示の一実施形態において、少なくとも1つのストランドが内部管に対して同心円状に延在する。保護管自体は、ストランド及び内部管に対して同心円状に延在する。従って、少なくとも1つのストランドが、内部管と保護管との間に存在する。形状結合が発生し、これにより、少なくとも1つのストランドは径方向に内部管を超えて動くことも、保護管を超えて動くこともできない。形状結合のみが生じている場合に、保護管と、ストランドと、内部管とは軸方向に互いに動きうる。
【0043】
本開示の一実施形態において、保護管が、内部管及び少なくとも1つのストランドの上に装着される。従って、保護管と少なくとも1つのストランドとの間、及び、少なくとも1つのストランドと内部管との間に径方向に密な形状結合が生じ、これにより、少なくとも1つのストランドは径方向に、内部管及び保護管に対して動くことができない。
【0044】
本開示の一実施形態において、保護管と少なくとも1つのストランドとがさらに、摩擦結合により互いに結合されている。
【0045】
本開示の一実施形態において、保護管と、少なくとも1つのストランドと、内部管とが互いに摩擦結合により結合されている。一方では、保護管と少なくとも1つのストランドとの間の摩擦力、他方では、少なくとも1つのストランドと内部管との間の摩擦力によって、少なくとも3つの構成要素が互いに軸方向にずれることが防止される。保護管と少なくとも1つのストランドとの間の摩擦結合によって、管構造全体の特性を改良することが可能であり、これにより、管構造は、より高い圧力に耐えることが可能であり、内部管の内部での亀裂の形成、拡散、及び増大が阻止される。
【0046】
本開示の他の態様に基いて、先に記載した実施形態のうちの1つに係る管構造が、15.000バール以上の圧力が加わった流体を案内するために使用される。本開示の一実施形態において、管構造が18.000バール以上の圧力が加わった流体を案内するために使用される。
【0047】
本開示の更に別の態様に基いて、管構造を形成する方法が提供され、
本方法は、
金属製の内部管を準備するステップであって、内部管が内面及び外面を有する、準備するステップと、
複数のヤーンを含む少なくとも1つのストランドを、内部管の外面上に施すステップであって、上記ヤーンの少なくとも1つが炭素繊維を有する、施すステップと、
ストランドを、内部管と共に保護管に挿入するステップと
を含む。
【0048】
先の記載において、本開示の実施形態に係る管構造の特徴が説明された限りにおいて、本開示に係る方法は、管構造を形成するための対応するステップを有する。加えて、記載される方法によって、本開示に係る管構造の一実施形態が形成されうる。
【0049】
少なくとも1つのストランドを内部管上に施すために、少なくとも1つのストランドが内部管を包囲するということをもたらすあらゆる方法が想定される。例えば、少なくとも1つのストランドが、円筒状の編組(Rundgeflecht)の形態により、例えば靴下又はハイソックスのように内部管の上に装着される。しかしながら、本開示の一実施形態において、少なくとも1つのストランドを内部管の外面上に施すことは、内部管の外面の周りに織ること、当該外面の周りを編組により覆うこと、又は当該外面の周りに編むことを含む。上記の織ること、編組により覆うこと、又は編むことによって、少なくとも1つのストランドと内部管との間に形状結合が生じ、これにより、少なくとも1つのストランドはもはや径方向に、内部管に対して動くことが出来ない。
【0050】
本開示の一実施形態において、上記の織ること、編組により覆うこと、又は編むことは、径方向の形状結合の他に、少なくとも1つのストランドと内部管との間の力結合又は摩擦結合も生じるように行われる。本開示の一実施形態において、上記の織ること、編組により覆うこと、又は編むことは、少なくとも1つのストランドが、当該ストランドの全長に亘って管構造の長手方向に、力結合又は摩擦結合により内部管と結合されるように行われる。
【0051】
本開示の一実施形態において、内部管を準備することは、シームレスなルッペを冷間成形して内部管にすることを含む。冷間成形法が、金属製の中空の半製品、即ちルッペを変形させて完成した内部管とするために使用される。冷間成形法によって、管の内径及び外径が変更され、非常に厳密に寸法決定される。加えて、管の表面特性を改善するためには冷間成形が適している。更に、冷間成形によってひずみ硬化がもたらされ、これにより、このようにして製造される管の特性が、合目的的に変更される。ひずみ硬化によって、原材料の強度、及びこれにより、変形される管の引張強度を向上させることが可能である。
【0052】
本開示の一実施形態において、シームレスなルッペを冷間成形し内部管にすることは、冷間引き抜きである。本開示の一実施形態において、内部管は、金属製のルッペを引き抜きダイに通して、任意に引き抜き内部工具を介して引き抜くことによって製造される。引き抜き内部工具は、固定心金引き又は浮きプラグ引き(Ziehkern)でありうる。
【0053】
本開示の一実施形態において、シームレスなルッペを冷間成形して内部管とすることは、冷間ピルガー圧延である。
【0054】
本開示の一実施形態において、内部管を提供することは、内部管の内面にバニシング加工を施すことを含む。バニシング加工は、金属性の部品において非常に高い表面品質を形成するための変形方法を指している。
【0055】
本開示の一実施形態において、保護管と少なくとも1つのストランドとの間の摩擦結合が、保護管の冷間成形によってもたらされ、ここで、冷間成形の前の保護管の内径は、冷間成形後よりも大きい。保護管が冷間成形される間、少なくとも1つのストランドは内部管と共に保護管の内部に延在している。
【0056】
本開示の一実施形態において、冷間成形は、引き抜きダイを通す冷間引き抜きである。ここで、本開示の一実施形態において、保護管と、少なくとも1つのストランドと、内部管とが一緒に、引き抜きダイを通して引き抜かれる。
【0057】
保護層の上記冷間成形によって、一実施形態において、内部管と、当該内部管を包囲する少なくとも1つのストランドと、当該ストランドを包囲する保護管と、の間の径方向の密な形状結合がもたらされる。従って、少なくとも1つのストランドは径方向に、内部管及び/又は保護管に対して動くことが出来ない。
【0058】
一実施形態において、保護管と、その内部に延在する少なくとも1つのストランド及び内部管と、の冷間成形によって、保護管と、少なくとも1つのストランドとの間の摩擦結合がもたらされる。一実施形態において、保護管と、その内部に存在する少なくとも1つのストランド及び内部管と、の冷間成形によって、内部管と、少なくとも1つのストランドとの間の摩擦結合がもたらされる。一実施形態において、保護管と、その内部に延在する少なくとも1つのストランド及び内部管と、の冷間成形によって、保護管と、少なくとも1つのストランドと、内部管と、の間の摩擦結合がもたらされる。保護管と、少なくとも1つのストランドと、内部管との間の摩擦力によって、当該構成要素間での軸方向の相対運動が防止される。
【0059】
本開示の一実施形態において、保護管の冷間成形後に、内部管と、少なくとも1つのストランドと、保護管とが、少なくとも1つのストランドの全長に亘って、管構造の長手方向に互いに摩擦結合より結合されている。
【0060】
炭素繊維を含む複数のヤーン同士の摩擦、又は、複数の炭素繊維同士の摩擦によって、少なくとも個々の炭素繊維が弱化又は破壊されるということが起こりうる。これにより、ヤーンから形成されたストランドの特性が不利に変更され、例えば、ストランドの引張強度が低下する。保護管の冷間成形によって、管構造の構成要素間の摩擦結合がもたらされる一実施形態では、従って、個々のヤーンの間及び/又は個々の炭素繊維の間の互いの摩擦又は影響が低減される。これにより、管構造におけるヤーン又はストランドが、少なくとも1つのストランド及び内部管の上に保護管を冷間成形することによって保護される。
【0061】
本開示の更なる利点、特徴、及び利用可能性が、実施形態についての以下の記載、及びこれに属する図によって明らかになる。本開示の実施形態の実現についての以下の記載は、添付の図面をと合わせて考察すると、より分かり易い。示される実現は、詳細に記載される構成には限定されない。図面では、同様の構成要素が同じ符号によって示されている。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】本開示の一実施形態に係る管構造の実現の概略的な断面図である。
【
図2】本開示の実現において管構造を形成するための、本開示に係る一方法の実現のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1は、本開示の一実施形態に係る管構造1の一実現の概略的な断面図である。管構造1は内部管2を有し、内部管2は、内面3及び外面4を含む。ここでは、内部管2の外面4が、ストランド5によって包囲されている。ストランド5自体は、保護管6によって包囲されている。
【0064】
内部管2は、「21-6-9」で示されるオーステナイト系ステンレス鋼から成る、ひずみ硬化されたシームレス管である。内部管2は、冷間引き抜きによって製造され、これによりもたらされたひずみ硬化により、引張強度が1.100Nである。加えて、内部管2は、内径D1及び外径D2、並びに肉厚wを有する。ここで、内部管2の肉厚wは、内部管2の内径D1より大きい。従って、高圧管である。内部管2の冷間引き抜きによって、内部管2は高い表面品質を有し、これにより、内面3上に存在する亀裂の深度が10μmを超えない。
【0065】
ストランド5は複数のヤーンから成り、複数のヤーン自体は完全に炭素繊維から形成される。ストランド5は、図示される実施形態において、チューブ状の織物であり、内部管2を周面方向に靴下のように包囲している。
【0066】
保護管6は、アルミニウムから成り、かつ溶接継ぎ目7を有しており、溶接継ぎ目7は、管構造1全体に亘って長手方向に延在している。保護管6と、ストランド5と、内部管2とは、管構造1の長手方向全体に亘って互いに摩擦結合により結合されている。
【0067】
図2には、
図1に示した管構造1を形成する方法の一実現のフローチャートが示されている。第1のステップ100において、内部管2が提供され、ここでは、シームレスなルッペが、オーステナイト系ステンレス鋼「21-6-9」から冷間成形されて内部管2となる。
【0068】
ここで、冷間成形は、引き抜きダイを通じたシームレスなルッペの冷間引き抜きによって行われる。引き抜きダイが内部管の外面を加工し、このようにして、内部管2の外径D2を決定する。加えて、内部管の内面3を加工しこのようにして内部管2の内径D1を設定するために、心金引きが使用される。さらに、引き抜きダイを通じた、かつ引き抜き心金を介した冷間引き抜きによって、内部管2の表面品質が、少なくとも内面3においてはバニシング加工によって向上する。
【0069】
ステップ101において、完全に炭素繊維から成る複数のヤーンを用いて内部管2の外面4の周りに織ることで、ストランド5が内部管2の外面4に施される。上記の織ることによって、内部管2とストランド5との間に摩擦結合が生じ、これにより、ストランド5はもはや径方向に、内部管2に対して動くことが出来ない。追加的に、上記の織ることによって、ストランド5と内部管2とが、ストランド5の全長に亘って管構造1の長手方向に、互いに摩擦結合により結合される。従って作用する摩擦力により、ストランド5はもはや軸方向に、内部管2に対して動くことが出来ない。
【0070】
ステップ102において、ストランド5が内部管2と共に保護管6に導入される。このために、保護管6が、ストランド5及び内部管2の上に装着され、これにより追加的に、ストランド5と、内部管2と、保護管6との間の径方向の摩擦結合が生じる。
【0071】
図2に係る方法によって得られる
図1の管構造1は、高圧に対して耐性があり、15.000バール以上の圧力が加わった流体を案内するのに適している。
【0072】
本来の開示について、本明細書の記載及び図面、並びに特許請求項の範囲から、当業者には推測される全ての特徴は、当該特徴が特定の他の特徴との関連においてのみ具体的に記載されていた場合でも、個々に、及び、本明細書で開示された他の特徴若しくは特徴群との任意の組み合わせにおいて、それが明示的に排除されておらず又は技術的事情によりこのような組み合わせが不可能若しくは無効ではない限りは、組み合わせることが可能であることに注意されたい。ここでは、明細書の記載を短くて読み易くするために、想定される特徴の組み合わせの全てを包括的に明示的に提示することは行わない。
【0073】
本開示が、図面及び先の明細書の記載において詳細に提示され記載されてきたが、このような提示及記載は例示のためにのみ行われており、特許請求の範囲に定義される保護の範囲を限定するものとしては考えられない。本開示は、開示された実施形態には限定されない。
【0074】
当業者には、開示された実施形態の変形例が、図面、明細書の記載、及び添付の特許請求の範囲から明らかであろう。特許請求項において、「有する(aufweisen)」という文言は、他の構成要素又はステップを排除せず、不定冠詞の「1つの(或る)(eine又はein)」は、複数形を排除しない。特定の特徴が、異なる請求項で特許請求されているという事実からは、これらの組み合わせが排除されない。特許請求項における符号は、保護範囲を限定するものとは考えられない。
【符号の説明】
【0075】
1 管構造
2 内部管
3 内面
4 外面
5 ストランド
6 保護管
7 溶接継ぎ目
D1 内径
D2 外径
W 肉厚
100 内部管を準備する
101 内部管上にストランドを施す
102 内部管をストランドと共に保護管に挿入する
【国際調査報告】