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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-06
(54)【発明の名称】繊維
(51)【国際特許分類】
   D01F 8/04 20060101AFI20220330BHJP
   D02G 3/12 20060101ALI20220330BHJP
   D07B 1/06 20060101ALI20220330BHJP
   D02G 3/36 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
D01F8/04 A
D02G3/12
D07B1/06 Z
D02G3/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549350
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(85)【翻訳文提出日】2021-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2020054705
(87)【国際公開番号】W WO2020169843
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】1902389.4
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519458370
【氏名又は名称】ジアンシーン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ボウカー ローレン
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン ルイーズ
(72)【発明者】
【氏名】デニス サミュエル
【テーマコード(参考)】
3B153
4L036
4L041
【Fターム(参考)】
3B153AA45
3B153BB15
3B153CC12
3B153CC53
4L036MA04
4L036MA15
4L036MA34
4L036MA39
4L036RA24
4L036UA25
4L041BA02
4L041BA05
4L041BA06
4L041BA21
4L041CA02
4L041CA38
4L041CB21
4L041CB26
(57)【要約】
コアと、外部刺激の適用に応答して特性又は構造の変化を起こしやすい成分、例えば液晶と、外側シースと、を含む繊維が提供される。成分は、導電性であるか又は適用された刺激に応答して構造変化を起こすように適合されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側ポリマー層のシースで被覆された、導電性コア又は選択的に適用され得る適用された外部刺激に応答して構造変化を起こすように適合されたコアを含む繊維であって、前記繊維は、前記コアと前記外側ポリマー層との間又は前記外側ポリマー層内に挿入された応答性成分を更に含み、前記応答性成分は、前記外部刺激の適用に応答して特性又は構造の変化を起こしやすい、繊維。
【請求項2】
前記コアは、導電性であり、かつ電流を選択的に受け取るように適合されており、電流適用時の前記コアの加熱により熱変色効果を提供する、請求項1に記載の繊維。
【請求項3】
前記成分は、前記外側ポリマー層内に色成分を含む、及び/又は前記コアと前記外側ポリマー層との間の領域に配置されている、請求項1又は2に記載の繊維。
【請求項4】
前記色成分は、液晶を含む、請求項3に記載の繊維。
【請求項5】
前記成分は液晶を含み、前記コアに電力を適用し、それによって加熱及び選択的に適用された刺激を提供して、色変化を促すことで呈色が開始される、請求項3に記載の繊維。
【請求項6】
前記液晶は、前記コアと前記外側層との間に配置された非カプセル化液体を含む、請求項3~5のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項7】
前記液晶は、カプセル化され、前記外側ポリマー層内に分散されている、請求項3~5のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項8】
前記液晶は、液晶熱変色性色変化成分である、請求項4~7のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項9】
前記導電性コアは、鋼、アルミニウム又は銅線から選択される金属を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項10】
前記導電性コアは、予め選択された色を有し、それによって前記色は前記色変化繊維の外観に寄与する、請求項1~9のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項11】
前記外側ポリマー層は、透明又は半透明であり、それによって液晶が目に見える、請求項1~10のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項12】
前記外側ポリマー層は、熱可塑性ポリマーを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項13】
前記外側ポリマー層は、ナイロン、モダクリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアルキレン、熱可塑性加硫物、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性エラストマーポリマー、合成ゴム及び熱可塑性オレフィンから選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項14】
前記外側ポリマーのシースは、着色剤を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項15】
前記外側ポリマー層は、液晶の視覚効果を損なう成分を実質的に含まない、請求項1~14のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項16】
前記外側層中に分散又は溶解された着色剤、又は前記コアと前記外側層との間に配置された着色剤層を更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項17】
前記着色剤は、黒色を含み、前記液晶と混合されている、請求項16に記載の繊維。
【請求項18】
多数の相互連結された、請求項1~17のいずれか一項に記載の繊維を含む、布地。
【請求項19】
天然繊維又は人工繊維を含む、請求項18に記載の布地。
【請求項20】
前記導電性繊維及び、存在する場合には前記天然又は人工繊維は、布地内に所定の画像を表すように配列されている、請求項17~19のいずれか一項に記載の布地。
【請求項21】
請求項17~20のいずれか一項に記載の布地と、前記コアに電力を供給する手段と、を含む、衣類又は布地製品。
【請求項22】
電池、又は前記コアを外部電源に接続する手段を含む、請求項21に記載の衣類又は布地製品。
【請求項23】
制御可能な熱源の発生のための導電性コアと、外側ポリマー層と、前記コアと前記外側層との間又は前記外側層内に配置された液晶と、を含む繊維における、色変化を提供するための、液晶の使用。
【請求項24】
請求項1~17のいずれか一項に記載の繊維の製造方法であって、導電性コアと液晶とを、出口を有する第1チャネルに供給する工程と、ポリマー溶融物を第2チャネルに供給する工程と、前記ポリマー溶融物を前記チャネルを通してダイノズルから押出す工程と、を含み、前記第2チャネルは前記第1チャネルと同軸であって前記第1チャネルよりも直径が大きく、前記第1チャネルの出口は前記ダイノズルと同じ位置にあるか又は前記ダイノズルを超えて延び、それによって前記ポリマーは押出されて前記第1チャネルの周囲にシースを形成し、前記液晶が前記第1の出口から現れたときに前記コアの周囲に前記液晶を封入し、それによって本発明による繊維を形成する、方法。
【請求項25】
前記導電性コアに温度変化を引き起こし、それによって前記成分に外観の変化を引き起こすように、前記導電性コアに外部刺激を提供する、請求項1~17のいずれか一項に記載の繊維又は請求項18~20のいずれか一項に記載の布地において色変化効果を提供する方法。
【請求項26】
前記適用された外部刺激は、前記コアに電流又は構造変化を提供するために適用された外部刺激を提供するエネルギー源と通信可能であるアプリ又はデータストリームを使用してユーザーが制御可能である、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維に関し、特に、所望の機能的又は審美的効果を提供し、外部刺激が適用されると変化を起こす機能性コアを有する繊維に関する。本発明は、特に、繊維が熱変色性効果を提供するような導電性コアを含む繊維に関する。繊維は、布地及びパーソナルケア製品、例えばヘアエクステンションに有用である。
【背景技術】
【0002】
色変化化合物、センサー繊維等を含む繊維のような、機能的及び/又は審美的効果を提供する繊維は公知である。色変化繊維は、典型的には色変化材料を含み、温度の変化等の外部刺激に曝露すると、色変化材料の色の変化により色変化を起こす。熱変色性材料を分散相として含む織物製品及び玩具が公知である。天然顔料及び染料、合成染料、顔料、ロイコ染料及び液晶が、基材に色を提供するために使用されている。ロイコ染料及び液晶は、光(光変色性)又は熱(熱変色性)等の外部刺激に応じた色変化効果も提供し得る。色変化材料は、典型的には、繊維の表面に適用される。
米国特許出願公開第2008/0279253号明細書は、体温の変化の指標を提供する熱変色性衣類を記載している。外部刺激に対して応答し、刺激の存在又は変化の指標を提供し得るセンサー繊維も公知であり、例えば、熱応答性創傷包帯、及びエンジニアリング及び建築で使用される温度モニタリング材料である。コンポジットセンサー繊維は、米国特許第9810587号明細書に記載されている。
視覚的又は機能的効果を提供する公知の繊維は、典型的には、温度の変化等の環境の変化に応答して効果を提供する。
【発明の概要】
【0003】
本発明者らは、機能性コアを有する繊維を提供することによって、選択的に適用された外部刺激に応答して新規の機能的及び/又は審美的効果が提供される場合があり、上記コアは、コアに選択的に適用されたエネルギー源又は信号に応答し、次いで所望の機能的及び/若しくは審美的効果を繊維に提供することを見出した。
本発明は、第1の態様において、外側ポリマー層のシースで被覆された、導電性コア又は選択的に適用され得る適用された外部刺激に応答して構造変化を起こすように適合されたコアを含む繊維を提供し、該繊維は、コアと外側ポリマー層との間又は外側ポリマー層内に挿入された応答性成分を更に含み、応答性成分は、外部刺激の適用に応答して特性又は構造の変化を起こしやすい。
有利には、機能的又は審美的効果は、選択に基づいて開始され、効果の性質、効果が発揮される時機、及び効果が発揮される条件に関して、ユーザーによって制御され得る。効果は、色の変化であってもよく、ユーザーは、特定の予め選択され、予めプログラムされた温度で表れる色の範囲を予め選択してもよい。効果は、所定の基準又は事前プログラムに従って正確に制御又は調整され得る。
【0004】
用語「機能的」は、本明細書で使用するとき、審美的な効果(例えば、色の変化)、又は物理的特性の変化(例えば、流動性及び剛性の増大)をもたらす材料の構造変化によって提供される効果、又は審美的変化と構造的変化の両方による効果の提供を意味する。
コアが導電性である場合、電流適用時のコア加熱による熱変色性効果を提供するように電流の選択的適用が用いられてもよい。繊維は、好適には、外側シース内又はコアと外側シースとの間に挿入された領域内に配置された熱変色性成分を含む。
外部刺激の適用に応答して特性又は構造の変化を起こしやすい成分は、外部刺激が選択的に適用されると構造変化を起こす成分を含んでもよく、又は該成分で作製されてもよい。
【0005】
好ましい実施形態では、上記成分は色変化材料、特に液晶を含む。別の実施形態では、上記成分はガリウムを含み、ガリウムから本質的になっていてもよい。導電性コアを介して29℃を超える温度まで熱を適用すると、固体ガリウムが溶融し、それにより、繊維は29℃未満の温度では剛直となり得、29℃を超える温度では可撓性又は可鍛性となり得る。ガリウムを含む本発明による繊維は、温度によりその物理的挙動又は形態が変化して、「形状シフト」効果を提供し得る。これは、繊維が布地又は衣類に使用されたとき、硬質から可鍛性への順応可能な物理的変化を可能にする。温度の結果として構造変化を起こす任意の他の材料を用いてもよい。
本発明の繊維は、任意の好適な用途に用いて審美的効果を提供することができ、人工毛髪繊維としての使用又は布地の形成に特に好適である。
本発明は、選択的に適用された電流に応答して変色する、色順応性繊維(colour-adaptive fibre)の提供において特に有用である。本発明者らは、導電性コアを繊維内に設け、該コアに電流を適用することで、コアが正確に加熱されて精密に制御された熱変色性効果を提供することを見出した。
【0006】
本発明は、第2の態様において、導電性コアと、外側ポリマー層と、色成分とを含む導電性繊維であって、色成分は外側ポリマー層内にあり、及び/又はコアと外側ポリマー層との間の領域に配置され、色成分は液晶を含む、繊維を提供する。
有利には、本発明は、予め選択したある範囲の色が、特定の、予め選択され、予めプログラムされた温度で表れることを可能にする。次いで、ユーザーは外部刺激の提供を開始する。外部刺激は、ユーザーによって開始され、又は任意の他の供給源、例えば、アプリ(app)又は他のデータ源から提供されて、予め設定された信号又は信号パターンをコアに提供し得る。外部刺激は、コアを加熱する電流でもよく、又は予め選択した色変化と相関して必要な温度変化をもたらすデータ信号又はデータストリームを含んでもよい。外部刺激を変化させることで、繊維の持続時間、色、強度、又はその他の変数が、所望に応じて調整され得る。外部刺激によって提供される効果は、単に環境又はその他の制御されない外部刺激に応答するのではなく、ユーザー又はプログラムによって適宜制御される。外部刺激によって提供される効果は、予めプログラムされ得るデータストリーム又はアプリの使用、例えば世界の気候パターン等の気候に関する情報の使用等の好適な手段によって制御されてもよく、又は該手段から開始されてもよい。
【0007】
本発明による繊維は、機能的効果及び/又は審美的効果の卓越した組合せを、寸法安定性及び人工毛髪製品又は布地として使用するための「感触」を含む、所望の物理的特性の提供と共にもたらす。繊維の審美的効果は、利用分野で予想される温度において、所望の色変化を有する又は色が変化しない液晶を用いることで、所望の用途に従って調整できる。特定の審美的効果を提供するために、他の成分も液晶と共に含まれてもよい。従って、ユーザーは、所望の審美的効果を提供する製品の調整において大きな柔軟性を与えられ、その一方で液晶は中空のシースによって保護され、液晶を基材又は繊維に結合するという検討課題が生じない。
用語「感触」は、本明細書で使用するとき、使用状況における外観/視覚及び触覚特性を含む繊維の感覚的認識、例えば、べたつき、質量、幅、繊維の動き等を指す。例えば、人工毛髪又は人工毛皮に用いられる繊維の感触は、布地の製編に用いられる繊維に望ましい感触特性とは異なるであろう。
【0008】
人工毛髪繊維又は毛皮として用いたとき、繊維の「感触」は、天然毛髪又は毛皮の「感触」特性を基準にして、繊維の見え方(例えば、繊維の光沢及び艶、並びに繊維がどの程度天然に見えるか)、繊維の質量及び幅、並びに触感及び触覚性を含めた、塊を形成しないこと、繊維の動き等が評価される。
布地に用いたとき、繊維の「感触」は、布地に関連し、望ましくは天然布地に近い特性、例えば触感(特に着用時の皮膚に対して)、自然な柔軟性等を指す。
用語「寸法安定性」は、本明細書で用いるとき、温度、湿度、圧力又はその他の周囲条件の変化が起きた場合でも、材料が当初の特性を維持すること、及び繊維がその可撓性を維持すること、を意味する。
【0009】
色成分は、色変化を提供しても固定色を提供してもよい。
導電性コアは、好適には、所定の制御可能な電流をコアに供給し、コアの正確な加熱を可能にする電気回路又は電源に接続される。
構造変化成分は、所望の色又は構造変化を、正確な温度で、所定の時間の後にもたらし得るように、所望の効果に従って選択され、繊維内に配置される。ユーザーは、導電性コアへの電力入力を選択及び変更して、精密に調整した効果を提供し得る。
一実施形態では、繊維は、導電性コアと外側ポリマー層との間に、色成分を含む中間層を有する。中間層は、コアの一部又は全部を封入して、コアと外側ポリマー層との間に障壁を提供し得る。
色成分は、固定色を提供してもよく、又は適用された外部刺激、例えば温度、圧力若しくは張力、及び電気エネルギーによる色変化を提供してもよい。
好ましい実施形態では、色成分は液晶を含み、コアに電力を適用し、それによって加熱及び制御された形で呈色を引き起こす選択的に適用された刺激を提供することで呈色が開始される。
【0010】
カプセル化液晶又は非カプセル化液晶を用いてもよいが、非カプセル化液晶が好ましい。液晶は、可逆的(液晶はある状態から別の状態へと変化して元の状態に戻り得る)でも、不可逆的(その場合、液晶は変化した状態を維持し、元の状態に戻ることはできない)でもよい。
液晶は、光学活性有機化学物質を、封止若しくはカプセル化して(例えば、マイクロカプセル化による)、又は未封止で(例えば、多分散形態で)、オイルとして含む。
液晶は、種々の手段及び材料によってカプセル化されてもよく、好適には、液晶への適合性がある公知のカプセル化材料、例えば、アラビアガム及び/又はグルタルアルデヒド架橋ゼラチン等のゼラチンとアラビアガムとの混合物を含む。公知の又は後に考案された他のカプセル化材料を用いてもよい。他の種類のカプセルの例としては、シロキサンベースのカプセル、熱可塑性ポリマーベースのカプセル、及び熱硬化性ポリマーベースのカプセルが挙げられる。
好適な液晶としては、典型的にはコレステロール又はその他のステロール誘導化合物(コレステリルカーボネートエステル等)をベースとするか、又はこれらを含む、コレステリック液晶が挙げられる。他の好適な液晶としては、キラルネマチック液晶等の非ステロール系化合物、例えば安息香酸フェニルエステルが挙げられる。好ましくは、液晶はキラルネマチック液晶、例えば安息香酸フェニルエステルからなるか、又は主成分としてのキラルネマチック液晶と微量成分としてのコレステリック液晶との組合せからなる。
好適な液晶は、LCR Hallcrest等の様々な供給源から入手できる。安息香酸フェニルエステル等の非コレステロール系液晶は、高反射率を有する明るく強烈な色効果を提供し、高級製品に好適である。コレステリック型液晶は、典型的には、非コレステリック液晶よりも強度が低い着色効果を提供するが、コストが低く、より大規模な市場に適する可能性がある。非コレステリック液晶とコレステリック液晶との混合物を用いて、製品性能及びコストを最適化してもよい。好ましい実施形態では、液晶は、好適には、非コレステリック液晶のみを含む。
液晶は、入射白色光を選択的に反射することによって色を示す。液晶は、温度の上昇又は低下に従って光の特定の波長を反射でき、無色から赤色まで、可視スペクトルの他の色(赤、オレンジ、黄、緑、青)を順に経た後、更に高温(「透明点」として知られる)で再度無色になり得る。各色の出現の持続時間は、特定の色が長時間観察されるように帯域幅を変えることで調整でき、これは他の色を優先して特定の色を「選択除外」すること、例えば、赤から青へ、緑を減じて、2ト-ン効果を生じること、又は赤、オレンジ、黄色で3トーン効果を生じることができることも意味する。液晶が無色の状態にあるとき、その下にあるコア又は繊維の他の成分の色が見える場合がある。このような色の変化は可逆的であり、冷却すると、逆の色変化が起こる。色変化が始まる温度(「開始点」又は透明点と呼ばれる)、及び色変化が起こる温度全体(「帯域幅」と呼ばれる)は、液晶の組成に従って調節できる。
【0011】
それぞれの成分、好ましくは色成分は、液晶と、任意選択で、固定色である染料及び/又は顔料と、を含む。染料は、任意の色、例えば、黒、赤、又は青であってもよい。好ましい実施形態では、色成分は、油溶性染料、カーボンブラック、酸化鉄、マイカ、黒鉛 合成メラニン及びポリドーパミン顔料を含む。好適な黒色染料又は顔料の例としては、MINISOの商標名で入手可能な製品が挙げられる。染料及び/又は顔料は、意図する所望の効果に従って選択されてもよい。顔料は、よりシンギュラー(singular)な色変化を提供し得る。
特に好ましい実施形態では、色成分は、黒色成分、例えば、油溶性黒色染料、カーボンブラック及びカーボンナノチューブ(例えばVANTA BLACKとして入手可能)を更に含む。
【0012】
一部の実施形態では、「スタティック」な色が要求され得る。用語「スタティック」は、本明細書で使用するとき、特定の用途の通常使用の範囲内で色の変化を示さない色変化材料を指す。従って、色成分は、呈色の能力はあるが使用条件下で通常は色変化を示さず、固定色を示す。色成分は、組成物が使用される条件で単色を示す任意の材料を含み得る。単色は、色が変化しない着色剤、例えば、染料及び/又は顔料によって提供されてもよく、又は色変化が可能であるが、組成物の通常の使用条件下では色変化を起こさない液体着色剤、例えば液晶又はロイコ染料によって提供されてもよい。
色成分は、スタティック液晶と、任意選択で固定色である染料及び/又は顔料と、を含み得る。染料は、黒又は青、例えばカーボンブラックであってもよい。好ましい実施形態では、着色剤は、カーボンブラック、酸化鉄、マイカ、黒鉛 合成メラニン及びポリドーパミン顔料を含む。好適な黒色染料又は顔料の例としては、MINISOの商標名で入手可能な製品が挙げられる。染料及び/又は顔料は、意図する所望の効果に従って選択されてもよい。顔料は、よりシンギュラーな色変化を提供し得る。
用語「シンギュラー」は、「2トーン」カラーシステムを指し、スタティックな色、又は無色から着色へ、若しくは着色から無色へ、若しくは第1の色から第2の色への顕著な色変化、又は液晶で典型的に観察される従来の色のスペクトル(赤、緑、及び青)及びこれらの色の間での移行とは異なる2色間での色の変動のいずれかである。例えば、シンギュラーな液晶系は、赤を示さずに緑と青等の2色の間で変動し得る。用語「シンギュラー」は、特定の所定温度又は個別に適合された温度よりも高温又は低温で観察される単色も指す。
【0013】
一実施形態において、色変化特性は、異なる液晶を混合すること、例えば、20~25℃で活性化する液晶混合物を30~35℃で活性化する混合物と混合することで、液晶の複数の系を同じ繊維内に組み合わせることによって増強され得る。有利には、活性化範囲が異なる複数の液晶を有する繊維は、同じ繊維内で、異なる温度で複数の色変化を起こすことができ、より広い温度範囲にわたって強力な効果を提供する。更に、異なる温度応答性液晶を含有する複数の繊維が、同じ布地内で組み合わされ、織り合わされて、異なる時点で活性化し得る場合もある。
一実施形態では、液晶は、外側ポリマー層のポリマー内に分散される。液晶が外側層にあることから、色効果は容易に観察者に見える。
別の実施形態において、液晶は中間層を提供し、外側ポリマー層とコアとの間に挿入される。液晶がカプセル化されていない場合、外側ポリマー層は液晶を適切な位置(外側ポリマー層とコアとの間に挿入)に保持されるように作用する。外側ポリマー層は、好適には、中間液晶層の色の変化が、観察者に対する所望の視覚的効果を提供するように選択され、透明又は半透明であり得る。
導電性コアは、コーティング、ドープ、又は別の方法で、導電性材料(例えば黒鉛)を含む、金属又は非導電性材料であってもよい。好ましくは、コアは、鍛造可能及び押出可能で、製造を促進する。好適な金属の例としては、鋼、アルミニウム及び銅が挙げられる。好ましくは、導電性コアは、高レベルの熱エネルギーを低抵抗の繊維に送達できるように、高い抵抗を有する。
コアは、導電性材料の単一フィラメントを含んでもよく、又はより高い電流又は加熱容量の提供を可能にするように、一つに又は別々に絡み合った複数のフィラメントを含んでもよい。
導電性コアは、特定の色を有するように選択されてもよく、又は材料に染色又はコーティングされて、色効果に寄与する所望の色を提供してもよい。一実施形態において、コアは黒色の表面を有し、又は黒色の表面を提供するように染色若しくはコーティングされて、光を反射し、上にある液晶の色の鮮やかさを増強する。
好適には、コア材料は、良好な導電特性と高い抵抗とを有し、迅速、一定、且つ安定な加熱と、コア材料を布地への製編又は製織における使用に好適なものにする可撓性とを提供する。コアは、可撓性改善のため、単一コアではなく、複数のフィラメントを含んでもよい。好適なコア材料の例としては、BEKINOX VNの商標名でBekaertから入手可能なステンレス鋼製マルチフィラメントが挙げられる。コアは、好適には「S」型の撚りを有し、ポリマーシースへの把持を補助し、加工を促進する。
【0014】
コアに加えて、繊維は、安定化フィラメントを繊維の中に更に含んでもよい。安定化フィラメントは、任意の細長い天然又は合成材料、例えば、綿、カーボン、ナイロン及び押出可能なポリマー等であってもよい。フィラメントは、好適には、コアと共に押出機供給材料に供給される。安定化フィラメントは、繊維の形成を、特に大スケールで適切に安定化し、ポリマーシース、応答性成分及びコアの押出速度の増大を可能にする。安定化フィラメントは、その形成時のポリマーシースの把持においてコアを補助する。安定化フィラメントは、応答性成分への色効果を増強するように、例えば黒、青、又は赤色に着色されてもよい。
【0015】
外側ポリマー層は、コア及びコアと外側層との間の成分に対するシースとして作用する。外部刺激の適用時に構造又は特性の変化を起こしやすい成分、例えば色成分は、外側ポリマー層内に存在してもよく、又は外側ポリマー層とコアとの間の領域に配置されてもよい。
外側ポリマー層は、好適にはポリマーを含み、該ポリマーは好適には溶融流動可能であり、未延伸状態で良好な可撓性を示す。材料は、好適には清澄でもあり、望ましくは半透明又は透明で、所望の効果(例えば色変化)の観察を容易にする。外側ポリマー層は、特に繊維が布地の製造に用いられる場合に、物理的摩耗及び摩損への耐性も好適であり、典型的な製編プロセスにおいて弾性を提供し、繊維の外観を保持し、繊維の内部成分を物理的損傷から保護し、又は非カプセル化液晶の場合には破壊及び漏洩から保護する。望ましくは、ポリマーは、製編プロセスにおける応力白化にも耐性である。好適には、ポリマーは、非粘着性の仕上げを得るように選択され、標準的な製編プロセスで、ポリマー自体又は製造装置に固着することなく使用できる。
【0016】
好適には、外側ポリマーシースは、液晶と不混和性又は多くとも部分的に混和性であるポリマーを含み、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、モダクリル(約35~85%のアクリロニトリル単位で改質された熱可塑性ポリマー)、熱可塑性ポリウレタン(例えばBASFのELASTOLLAN系列)、熱可塑性エラストマー(例えばDowのAFFINITY系列)、熱可塑性オレフィン(例えばEPDM)、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、熱可塑性加硫物(例えばExxonのSANTOPRENE)等の広範なポリマーから選択されてもよい。
好適には、ポリマーは、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン及びモダクリルから選択される。好適なポリウレタンとしては、エーテルベースのポリウレタン、及び好ましくはエステルベースのポリウレタン、例えばELASTOLLAN 1180が挙げられる。他のポリマーを使用してもよいが、好ましさは劣る。好適なポリマーの例としては、商標名ELASTOLLAN B85A 1000でBASFから入手可能なポリウレタン、及びSchulmanから入手可能なナイロン6 NATURAL BS10が挙げられる。
好ましい実施形態では、ポリマーシースは、ポリオレフィン、より好ましくはポリエチレン、ポリブチレン及びポリプロピレンを含む。ポリマーシースは、コポリマー、好ましくはポリマー改質に好適な熱可塑性エラストマー、より好ましくは2つ以上のアルケンのコポリマー、特に1~4炭素のアルケンと6~10炭素のアルケンとのコポリマー、例えばエチレン-1-オクテン、LG ChemからLUCENEの商標名で入手可能なもの、例えばLUCENE LC670、及びアイソタクチックポリプロピレン、例えばExxonMobilからVISTAMAXX 6202で入手可能なものが挙げられる。好ましい実施形態では、ポリマーシースは、ポリプロピレンのみからなるか、又は50~99%、60~90%、特に70~85%のポリプロピレンと、1~50%、10~40%、特に15~30%の熱可塑性エラストマーとを含み、好ましくは2つのオレフィン、特にエチレン-1-オクテンのコポリマーを含む。
【0017】
繊維は、シースの空洞内及び/又はポリマーシース内に、色成分の1つ以上の追加成分を含んでもよい。一実施形態において、追加成分は、1つ以上の更なる色成分を含む。空洞内で使用するとき、更なる色成分は、好ましくは、油性であってもよい染料又は粉末顔料、特に暗色成分、例えばカーボンブラック、VANTA BLACK等のカーボンナノチューブを含む。ポリマーシース内に包含する場合、追加の色成分は、粉末顔料又は顔料分散体、例えば無機粉末顔料であってもよいが、好ましくは油溶性染料、例えば赤色染料及び黒色染料である。好適な染料の例としては、SUDAN Black B及びSUDAN IIIが挙げられる。好適には、更なる色成分は、0.1~3%、特に0.2~0.6%の濃度で用いられる。
カプセル化液晶が空洞又は外側シースに存在する場合、任意の追加の色成分は、液晶のカプセル化への支障を避けるため、水性となる。非カプセル化液晶を用いる場合、染料は、好適には油溶性染料、好ましくは黒色油溶性染料又は赤色油溶性染料を含む。カプセル化液晶を用いる場合、油溶性染料はカプセル体の中に使用され、カプセル化液晶と密に混合され得る。可溶性染料をカプセル体の外側に用いる場合、カプセル化材料との有害相互作用のリスクを低減するため、かかる染料は水溶性とすべきである。
シースの空洞内及び/又はポリマーシース内に単独で又は複数組み合わせて含まれ得る更なる任意選択成分としては、50℃未満の温度で固液相変化を起こし、温暖時の可撓性と低温時の固体との間で剛性の変化をもたらす成分(例えば、ガリウム)、温度の変化による不透明度及び構造の変化をもたらし、典型的には温暖時に透明且つ可撓性であり、低温時に不透明且つ硬質であるワックスが挙げられる。
【0018】
繊維は、外側シースに更なる色成分を更に含んでもよい。着色剤は、好適には固定色であり、視覚外観又は液晶の特性強化を可能にするか又は増進する。着色剤は、任意の色、例えば、赤、オレンジ、黄、緑、青、藍、紫、茶、及び黒であってもよい。より明るい色は、真珠光沢又は乳白光効果を示し得る。着色剤は、任意の所望の濃度でポリマーシースに粉末として組み込むことができる。好適な着色剤の例としては、BASFから入手可能なSicopal(登録商標)、Magnapearl(登録商標)DFシリーズ、Eupolen(登録商標)、Micranyl(登録商標)、Microlen(登録商標)系列が挙げられる。外側シースはロイコ染料を含んでもよく、これは色変化に関して可逆的でも不可逆的でもあり得る。
繊維組成物は、UV安定剤を更に含み得る。液晶は、UV放射の影響による分解を起こしやすい場合がある。系に適合する任意の公知のUV安定剤を用いてもよい。好ましいUV安定剤としては、BASFのTinuvin(登録商標)、ベンゾフェノン-4、アボベンゾン、ホモサレート、オクトクリレン、ベンゾフェノン-5、エチルヘキシルジメチルPABA、酸化チタン、酸化亜鉛、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、PEG-25PABA、フェニルジベンズイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム等のUV安定剤が挙げられる。
ポリマーシースは、他の添加剤を含んでもよい。好適な添加剤の例としては、生分解性及び抗菌特性を提供する添加剤、例えば銀、好適にはナノ粒子としての銀が挙げられる。好適には、UV安定剤及び他の添加剤は、従来量、典型的にはポリマーシースの0.1~5質量%で用いられる。
【0019】
繊維は、好適には、単糸として、ヘアエクステンション又は他のヘア製品として使用されてもよく、又は人工毛皮若しくは布地(例えば、編布地)を提供してもよい。本発明による繊維又は布地は、編布地、織房(woven tassle)、刺繍、かぎ針編み、ウイッグエクステンション、ヘアエクステンション、人工毛皮、玩具、人形、ブラシ、及び人工毛髪のサンプルを展示して効果を例示するカラーボードの形態であってもよい。
本発明は、更なる態様では、例えば製織又は製編によって相互連結された、本発明による繊維を多数含む布地を提供する。モノフィラメント繊維は、バルクで使用して、数本のモノフィラメント繊維を一緒に絡み合せることによって、マルチフィラメント糸を作製することもできる。繊維又は糸は、既存の衣服又は布地の上にパターン又はデザインを手動又は機械で細密刺繍するためのモノフィラメント又はマルチフィラメントとしても使用できる。
繊維又は糸の太さは、伝統的に糸質量(yarn weight)と呼ばれ、繊維又は糸の押出中の引抜きプロセスを変更することで特定の用途に合わせて調整でき、引抜きを増大すると繊維又は糸の太さが減少する。導電性コアは、この目的のためにも選択でき、より厚い導電性コアは、全体により重い質量の繊維又は糸の作製を可能にする。繊維又は糸質量は、0.1ply~16plyの範囲をとることができ、従って、刺繍から厚手の編物までの様々な布地用途を可能にする。いくつかの例の糸質量(ply)及び編物用途を表1に示す。
【表1】
【0020】
繊維は、好適には、ユーザーからの要求に応じて、例えば透明から不透明、艶消から光沢、可逆的色変化及び不可逆的色変化の効果を提供するように適応される。
布地は、好適には、布地又は繊維が用いられている技術分野における任意の該当する規制又は工業規格、例えば、機能性布地の質量規定、洗濯堅牢度、摩擦堅牢度、UV堅牢度、並びに本発明の繊維及び布地が用いられ得る自動車、航空及びその他の旅行業界の規制に準拠する。
好適には、繊維は、ISO 105-B02:2014に定められた基準に適合する耐光性を有する。所望に応じて、繊維は、公知のUV吸収剤を、好ましくは外側ポリマー層内に含み得る。
繊維又は該繊維から製造された布地は、好適には、耐摩耗性であり、ISO 12947-2:2016に定められた基準に適合する。
繊維が布地へと製編又は製織される場合、糸は、製編に好適か否かを判断するために張力を解放したときに好適な撚り及び回復をもたらす。
【0021】
本発明は、更なる態様において、本発明による繊維又は糸の外観の観察可能な変化を制御する方法を提供し、該方法は、繊維又は布地の所定の外観の入力標本(input representative)を外部刺激源に提供し、適用される外部刺激を発生する工程を含み、適用された外部刺激は、繊維のコアに運ばれ、繊維の成分の構造又は特性に変化を生じる。
適用された外部刺激は、コアに電流又は構造変化を提供するために適用された外部刺激を提供するエネルギー源と通信可能であるアプリ又はその他の製品を使用してユーザーが制御可能となり得る。例えば、効果は、ユーザーによってアプリを介して開始されて、選択された時間で、及び/又は予め選択された外部条件、構造変化を開始するための導電体へのエネルギー入力、又は色の変化をもたらすためのコアへの電流、に応答して開始されてもよい。
好適には、入力は、外部刺激源と通信して刺激を発生するアプリによって提供される。好適には、刺激は電流の形態であり、電流は繊維のコアの中を通過する。構造変化又は特性の変化を起こしやすい繊維の成分は、好適には色成分であり、特に色変化成分である。好ましくは、色変化成分は、熱変色性成分、例えば液晶を含む。
繊維は、全体のうちの一成分部分として、又は布地の別個の領域としての「パッチ」、例えば編糸又は物品として、物品又は布地に組み込まれてもよい。好適には、繊維、布地、又は該繊維若しくは布地を含む物品は、外部刺激、例えばデータストリーム又は電流を受け取るように適応された制御装置を含む。好ましくは、制御装置は、電子回路基板を含み、直接入力又はデータストリームから、例えばアプリから、回路基板への入力に応答して発生する刺激又は信号を繊維に提供するように適応されている。
【0022】
更なる態様では、本発明は、入力を受け取るように適応された制御装置と、該入力に応答して繊維又は繊維のシリーズの特性又は構造の変化をもたらすように制御装置に操作可能に接続された本発明による繊維又は繊維のシリーズと、を含む色変化繊維、布地又は物品を提供する。
本発明は、入力を受け取るように適応された制御装置と、該入力に応答して繊維又は繊維のシリーズの特性又は構造の変化をもたらし、それによって物品の外観の変化をもたらすように制御装置に操作可能に接続された本発明による繊維又は繊維のシリーズと、を含む色変化繊維又は布地を含む表面パッチを備える物品、例えば衣料品、衣服、履物等の品物を更に含む。
外部電源は、ポータブルエネルギー源、例えば電池であってもよく、好適には導電性コアに操作可能に連結されている。好ましくは、電源は、1個の電池又は一連の電池であり、可能な限り小型且つ軽量である。電源は、好ましくは布地又は他の製品に、出来るだけ目立たずに組み込まれる。典型的に3~4.5Vの電源を有する現在の電池システムを、着用可能な布地、衣料品、靴及び繊維に用いてもよいが、上記よりも低電圧又は高電圧の規定の電池が使用されてもよい。他の用途、例えば、自動車又は他の旅客用座席における布地の使用において、電池は好適には5~24Vの電源を有する。任意選択で、エネルギー源は、ソーラーエネルギー又は運動エネルギーハーベスティング等の再生可能エネルギー源からも得られる。
導電性コアは、コアに入る電力を制御して繊維の加熱が微調整されるように、好適に電気開路に接続可能である。提供される電力及び対応する温度変化は、好適には、所定の色シフト又は変化を用いて較正され、それによって、観察された色変化を調整する機会をユーザーに与える。
好ましい実施形態では、制御装置は、電源、例えば24V電源と、制御システムとを備える。電源は、好ましくは、熱を発生して呈色を開始するために電力を繊維又はパッチに送達するために使用される。好適には、制御システムは、繊維又はパッチの温度を、例えばサーミスタ又は熱電対を使用してモニタし、パルス幅変調(PWM)を通じてパッチの特定の温度を維持する。
任意の制御方法を用いてもよいが、比例-積分-微分(PID)法が好ましく、これは、特定の目標温度の設定と、精密制御を可能にするためのパッチへの電力のパルス送信を伴う。次いで、到達した温度の誤差を制御システムによって測定及び記録し、PWM信号のパルスの長さを増加又は削減することで出力が調節される。
好ましい実施形態では、パッチ又は繊維はジュール加熱により励起され、コアの温度が上昇して繊維中の熱変色性化合物がその表面に当たる光を変調して、可視色のシフトを生じる。
最適には、パッチは90~150オームの抵抗を有する。好適には、コアに適用される最大電流は約150mAで、30秒以内にパッチの加熱及び視覚的変化の刺激を可能にする。
【0023】
更なる態様では、本発明は、本発明による繊維の製造方法を提供し、該方法は、導電性コアと、応答性成分、好ましくは液晶とを、出口を有する第1チャネルに供給する工程と、ポリマー溶融物を第2チャネルに供給する工程と、ポリマー溶融物を第2チャネルを通してダイノズルから押出す工程と、を含み、第2チャネルは第1チャネルと同軸であって第1チャネルよりも直径が大きく、第1チャネルの出口はダイノズルと同じ位置にあるか又はダイノズルを超えて延び、それによってポリマーは押出されて第1チャネルの周囲にシースを形成し、応答性成分が第1の出口から現れたときにコアの周囲に応答性成分を封入し、それによって本発明による繊維を形成する。
好ましくは、ポリマー溶融物は、溶融物のより均一な流動を促進し、より安定な繊維を提供する「スパイダー」ダイを通して押出される。
適用される外部刺激の適用は、特定の条件(例えば、温度、日光レベル、ヒト等の哺乳動物のセンサーへの近接、及び導電性コアに供給されている電流)を検出するセンサーによって開始されてもよい。
好適には、本発明の繊維は、ワイヤーコーティングダイ、好ましくは図1に示す「スパイダー」ダイを用いた押出によって製造される。液晶及び任意選択の他の成分は、混合され、所望の色効果に従って調整される。コア及び液晶は、液晶がコアの周囲に層を形成するように、チャネル1(供給A)を通過し、ダイノズル2から出る。外側ポリマーシースを形成するためのポリマー溶融物は、外側の同心チャネル3(供給B)を通過し、コア及び液晶の周囲にコーティングを形成した後、ダイノズル2から出て、液晶の周囲にシースを形成し、外側ポリマー層とコアとの間の中間層に液晶を封入する。チャネル1は、好適には、ノズル2の出口を超えて延び、その結果、液晶は、コアの周囲に直接形成する外側ポリマーよりもむしろ、形成された外側シース及びコア内の空洞に流れ込み得る。好適には、形成された繊維は、制御された速度で、アタッチメントによって巻き取り機に慎重に引き出される。巻き取り機の速度を変えることによって、外側シースの厚さを所望の厚さに調節できる。
【0024】
図2は、導電性コア4と、機能的又は審美的成分6を維持するためのシースを提供する外側ポリマー層5とを有する、本発明による繊維の断面図及び透視図を概略的に示す。
本発明を、以下の非限定例によって例示する。特記のない限り、全ての百分率及び部数は質量によるものであり、全ての測定は25℃におけるものである。
【実施例
【0025】
本発明による繊維は、外側ポリマーシースが通る外側同軸ゾーンと、液晶が通過するための中間同心チャネルを有するダイ(dye)にコアを通すことで調製した。外側ポリマー層は、コアの周囲に液晶を封入して本発明による繊維を生成した。
【0026】
表2に列挙した成分を有する繊維を調製した。中間層又は外側層が、それぞれ液晶又はポリマーへの追加成分を含む場合、それぞれの成分を、層の主成分と予め混合した。外側ポリマーは、引抜速度30~60rpm、及び入口/中央/出口バレル温度240~320/240~260/250~260で押出した。中間層は手動で導入した。
【表2】


【0027】
繊維は、液晶中間成分を導入しながら、コアの周囲にポリマーを押出すことによって製造した。全ての繊維は、適切に形成され、コア上に液晶の均一コーティングを有しても可撓性で、糸への加工及び布地への製織に好適であった。
【0028】
各実施例について、電気刺激をコアに適用すると、コアは少なくとも35℃の温度に達し、液晶を刺激して色を変化させる。ネマチック液晶のみを含有する実施例は、鮮やかさ及び色変化の強度がより大きかった。
液晶に油溶性染料を含めて、実施例6~10を繰り返した。提供された染料は、色の輝度が増強された。
図1
図2
【国際調査報告】