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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-06
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/04 20060101AFI20220330BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
G01N27/04 F
G01N33/49 W
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549433
(86)(22)【出願日】2020-01-06
(85)【翻訳文提出日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2020050147
(87)【国際公開番号】W WO2020169258
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】1902361.3
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521370868
【氏名又は名称】センソキュア・アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100211236
【弁理士】
【氏名又は名称】道下 浩治
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,シュタイン・イーバル
【テーマコード(参考)】
2G045
2G060
【Fターム(参考)】
2G045DB01
2G045FB05
2G060AA01
2G060AB09
2G060AE19
2G060AF03
2G060AF08
2G060AG03
2G060BB08
2G060BB12
2G060BB14
2G060HA02
2G060HE03
2G060JA01
2G060KA01
(57)【要約】
本発明は、pCOの測定のための生理学的検知デバイスであって、前記デバイスは、(i)少なくとも部分的に二酸化炭素透過膜によって囲まれた閉じたチャンバと、(ii)前記チャンバ内の少なくとも2つの電極と、を備え、前記チャンバは、前記電極および前記膜と接触した、実質的に電解質を含まない液体を含有し、前記液体は少なくとも1つの金属または半金属イオンを含む、生理学的検知デバイスを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
pCOの測定のための生理学的検知デバイスであって、前記デバイスは、
(i)少なくとも部分的に二酸化炭素透過膜によって囲まれた閉じたチャンバと、
(ii)前記チャンバ内の少なくとも2つの電極と、
を備え、前記チャンバは、前記電極および前記膜と接触した、実質的に電解質を含まない液体を含有し、前記液体は少なくとも1つの金属または半金属イオンを含む、生理学的検知デバイス。
【請求項2】
前記少なくとも1つの金属または半金属イオンは、遷移金属、Li、Na、Be、Mg、B、Al、Ga、In、Tl、Nh、Si、Ge、Sn、PbおよびFlからなる群から選択される、請求項1に記載の検知デバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つの金属または半金属イオンは、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、Ag、Cd、Al、Ga、InおよびTl、好ましくはAl、Ni、Ag、Cu、CoおよびPdからなる群から選択される、請求項1または2に記載の検知デバイス。
【請求項4】
金属および/または半金属イオンの混合物、好ましくはCuおよびAlイオンの混合物が存在する、請求項1~3のいずれか1項に記載の検知デバイス。
【請求項5】
前記金属および/または半金属イオンの濃度は、0.01~20mmolL-1の範囲内にある、請求項1~4のいずれかに記載の検知デバイス。
【請求項6】
前記少なくとも1つの金属または半金属イオンは、水酸化物の形態で提供される、請求項1~5のいずれかに記載の検知デバイス。
【請求項7】
前記液体は、水、好ましくは、実質的に電解質を含まない水を含む、請求項1~6のいずれかに記載の検知デバイス。
【請求項8】
pCOを測定するための方法であって、前記方法は、請求項1~7のいずれかに記載の検知デバイスを用いることを含む、方法。
【請求項9】
pCOを測定するための、請求項1~8のいずれかに記載の検知デバイスの使用。
【請求項10】
pCOを測定するための方法であって、前記方法は、
COの存在下での液体の伝導率の変化を測定するステップを含み、前記液体は、少なくとも1つの金属または半金属イオンを含む、方法。
【請求項11】
COの存在下での液体の伝導率の変化を増幅するための方法であって、前記方法は、前記液体に、少なくとも1つの金属または半金属イオンを添加することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理学的センサ、特に、例えばインビボ(in vivo)またはエクスビボ(ex vivo)の、例として身体組織または臓器内またはその表面上の二酸化炭素分圧(pCO)のための生理学的センサに関する。特に、本発明は、金属または半金属イオンを含むそのようなセンサに関する。本発明は、前記センサを用いて二酸化炭素分圧(pCO)を測定するための方法にも関し、更に、COの存在下における液体の伝導率の変化を増幅するための方法に関し、前記方法は、少なくとも1つの金属または半金属イオンを前記液体に添加することを含む。
【背景技術】
【0002】
虚血とは、臓器に対する血液供給の不足に関する医療用語である。深刻な場合、虚血は患部組織の壊死(梗塞)につながり得る。虚血の早期の可逆段階中に大幅に増大するパラメータである組織pCOを測定するためのセンサを提供することができる。そのようなセンサは、好ましくは、リアルタイムデータを通じて虚血事象の発症を特定する能力を提供する。
【0003】
虚血は、西洋諸国における最も一般的な死因である。このため、例えば、心筋梗塞、脳梗塞、および1つまたは複数の臓器への低潅流によって特徴付けられる他の症状が、死亡の主因である。虚血の検出が間に合えば、再潅流、虚血の回復が多くの場合に可能である。このため、虚血を早期に検出し、その後、(例えば、血栓または塞栓を溶解する役割を果たすストレプトキナーゼ、ウロキナーゼまたはt-PA等の薬剤を用いた)適切な化学治療、または外科的介入もしくは放射線介入を行うことにより、患部の臓器および患者の生命を救うことができる。心臓は、心電計(ECG)を用いて連続的に虚血を監視されることが可能であるが、他の臓器は、何らかの症状が検出される前に、重度の虚血となり、不可逆的損傷を被る場合がある。実際、多くの臓器が、虚血に関しては「無症状(silent)」である。無症状心筋梗塞の現象は、いまでは広く認識されている。更に、肝臓および腎臓は、臓器損傷が不可逆的になる前に症状を変えることなく、重度に虚血となる場合がある。
【0004】
臓器内または臓器の表面上のpCOと、その臓器における虚血の存在との間に明らかな相関があることが知られている。組織代謝性アシドーシス中、例えば任意の臓器または組織における虚血において生じる嫌気性代謝中、大量の二酸化炭素が形成される。COは、実際面では自由に細胞膜を透過でき、虚血において、COを運び去る血流が存在しないかまたは制限されているため、虚血組織において蓄積されたCOが生じ、虚血組織内または虚血組織上のpCOが増大する。通常、健康な身体では、血中(静脈血中)の最大pCOは7~10kPaであり、健康な(好気性)組織における最大pCOは、約1~6kPa高いが、最大値は臓器間で変動する場合があり、例えば、腎臓の場合8~12kPaであり、肝臓の場合、7~11kPaであり、腸漿膜の場合、8~12kPaであり、腸粘膜の場合、12~19kPaである。酸素供給が、重要な酸素送達レベル未満に降下する場合、組織内で測定されるpCO値が3~10倍上昇する場合があり、上昇したpCOレベルにより、嫌気性代謝が明確に示され、このため適宜、虚血が示される。
【0005】
特に、虚血の監視の技法の一部として、pCO測定に特に適した単純なセンサが、WO00/04386に記載されている。センサは、少なくとも部分的に、実質的に水密の二酸化炭素透過膜によって囲まれた閉じたチャンバを備える。チャンバは、少なくとも2つの電極と、脱イオン水等の実質的に電解質を含まない液体の液膜とを含む。液体は、膜および双方の電極と接触し、それによって、膜を横切る二酸化炭素は、液体内のプロトンおよび重炭酸イオンの濃度を増大させ、このため液体の伝導率を増大させる。非イオン性賦形剤が液体に添加される、このセンサに対する改善がWO2006/008505に記載されている。この賦形剤を含めることにより、液体のオスモル濃度の制御が可能になり、これにより、膜にわたって大きな浸透圧が存在する状況下で測定の潜在的誤差を回避する。
【0006】
しかしながら、感度の観点でそのようなセンサの制限が依然として存在する。センサのいくつかの目標用途では、感度および応答性の増大が必要である。これは、例えば、虚血の開始に伴うpCOの増大がより僅かである組織タイプ、または低速に発症する(例えば、感染症の発症では血管循環の減少が経時的に発症する)虚血を非常に早期に警告することが望ましい組織タイプにおけるものである。このため、依然として、感度を増大させた新たなセンサを開発する必要性がある。
【0007】
驚くべきことに、本発明者らは、上記で説明したセンサ内の液体に少なくとも1つの金属または半金属イオンを添加する結果として、COに対する感度が大幅に増大することを発見した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、第1の観点から見ると、本発明は、pCOの測定のための生理学的検知デバイスを提供し、このデバイスは、
(i)少なくとも部分的に二酸化炭素透過膜によって囲まれた閉じたチャンバと、
(ii)前記チャンバ内の少なくとも2つの電極と、
を備え、前記チャンバは、電極および膜と接触した、実質的に電解質を含まない液体を含有し、液体は少なくとも1つの金属または半金属イオンを含む。
【0009】
第2の態様において、本発明は、上記で定義したような検知デバイスを用いることを含む、pCOを測定するための方法を提供する。
【0010】
更なる態様において、本発明は、pCOの測定のために上記で定義された検知デバイスの使用を提供する。
【0011】
別の態様において、本発明は、pCOを測定するための方法を提供し、前記方法は、COの存在下での液体の伝導率の変化を測定するステップを含み、前記液体は、少なくとも1つの金属または半金属イオンを含む。
【0012】
別の態様において、本発明は、COの存在下での液体の伝導率の変化を増幅するための方法を提供し、前記方法は、前記液体に、少なくとも1つの金属または半金属イオンを添加することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の実験セットアップの概略図である。
図2】金属イオンの添加前のCO検出を示す図である。
図3】CuOHの添加後のCO検出を示す図である。
図4】AlOHおよびCuOHの添加後のCO検出を示す図である。
図5】感度と金属イオンとの間の関係を示す図である。
図6】感度と濃度との間の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
「検知デバイス」および「センサ」という用語は、本明細書において交換可能に用いられ、その目的が、その環境における事象または変化を検出し、これを観測者または機器によって読み取り可能な「信号」に変換することであるデバイス、モジュールまたはサブシステムを意味することが意図される。
【0015】
本発明のデバイスは、チャンバ内の液体における少なくとも1つの金属または半金属イオンの存在によって、従来技術によるデバイスを上回る発展を表す。このため、液体は、2つ以上の金属および/もしくは半金属イオンの混合物を含むことができるか、または単一の金属もしくは半金属イオンのみが存在する。
【0016】
通常の金属イオンは、任意の遷移金属または周期表の1、2、13または14族からの金属を含む。本明細書において用いられる「半金属」という用語は、一般的な金属の特性および非金属の特性の中間の特性を有する化学元素を指すことが理解されよう。本発明において用いるための例示的な半金属は、ホウ素、シリコンおよびゲルマニウムを含む。
【0017】
1つの好ましい実施形態において、金属および半金属イオンは、遷移金属、Li、Na、Be、Mg、B、Al、Ga、In、Tl、Nh、Si、Ge、Sn、PbおよびFlからなる群から選択される。
【0018】
特に好ましい遷移金属は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、AgおよびCdを含む。
【0019】
別の実施形態において、金属および半金属イオンは、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、B、Al、Ga、In、TlおよびNhからなる群から選択される。
【0020】
本発明において用いるための金属および半金属イオンの特に好ましい群は、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、Ag、Cd、Al、Ga、InおよびTl、特にAl、Ni、Ag、Cu、CoおよびPd、例えばCuである。
【0021】
金属および/または半金属イオンの混合物が存在する場合、1つの好ましい実施形態は、CuおよびAlイオンの混合物である。別の好ましい混合物は、Cu、AlおよびNiイオンである。
【0022】
金属および半金属イオンは、各特定のイオンに適した任意の酸化状態にあることができるが、通常、イオンは+2または+3の酸化状態にある。
【0023】
通常、金属または半金属イオンは、適切な水酸化物、塩、または必要とされる金属もしくは半金属イオンの錯体の添加によってインサイチュ(in situ)で生成される。当然ながら、本発明には金属/半金属イオンが必要とされるため、当業者は、液体に添加されたときに金属イオンを生成するように解離する適切な水酸化物、塩、および錯体を選択することが可能であることになる(すなわち、水酸化物、塩、または他の錯体は液体内で可溶性である)。金属および/または半金属イオンが水酸化物の形態で提供される場合、特に好ましい。
【0024】
例示的な塩は、硝酸塩、酸化物、炭酸塩、酢酸塩および硫酸塩を含む。
【0025】
例示的な錯体は、一酸化炭素、二酸化炭素、水、亜硝酸塩およびアンモニア等の配位子を含む金属錯体を含む。
【0026】
1つの特定の実施形態において、金属および/または半金属イオンは、好ましくはCuおよびNiイオンを含む、層状複水酸化物の形態で提供することができる。
【0027】
代替的な実施形態において、金属および/または半金属イオンは、液体に、通常溶液に直接添加される、分離されたイオンとして提供することができる。好ましくは、この溶液は、デバイス内の液体と同じ液体を含み、すなわち、好ましくは水溶液(例えば、少なくとも80wt%の水を含む)であり、特に好ましくは、実質的に電解質を含まない水(すなわち、脱イオン水)である。
【0028】
更に別の実施形態では、金属および/または半金属イオンは、センサ内に存在する金属表面または界面から、例えば1つまたは複数の金属を伴う化学反応または電気化学反応を介して、インサイチュ(in situ)で生成される。1つの特定な例は、イオンが、金属層スタックのガルバニック腐食の結果として生じる電食生成物である例である。このシナリオにおいて、ガルバニ系列における十分な分離(例えば>0.2)を有する2つの金属を、電解液と共にセンサに添加することができ、卑金属が腐食生成物として金属イオンを生じる。この実施形態は、スタック内に異なる金属層を含めることを通じて、金属錯体および金属イオンのインサイチュ(in situ)での提供も可能にすることができる。例えば、PdおよびCuは、CuイオンおよびCuOH錯体を生じさせることができ、AuおよびNiは、NiイオンおよびNiOH錯体を生じさせることができる。生成されるイオン/錯体の相対的量は、pH等の要因に依拠し、システムに電位差をかけることができる。
【0029】
液体内の金属および/または半金属イオンの濃度は、0.01~20mmolL-1の範囲、好ましくは0.5~18mmolL-1の範囲、より好ましくは0.1~15mmolL-1の範囲、更により好ましくは0.25~12mmolL-1、例えば0.5~10mmolL-1の範囲とすることができる。
【0030】
好ましくは、電極と接触する液体は、水溶液(例えば、少なくとも80wt%の水を含む)であり、特に好ましくは、実質的に電解質を含まない水である。実質的に電解質を含まないとは、液体が、37℃で水溶性の5mMの塩化ナトリウム溶液のイオンオスモル濃度以下、好ましくは500μMの塩化ナトリウム溶液のイオンオスモル濃度以下、より特別には、10-5~10-6MのHCl溶液のイオンオスモル濃度以下のイオンオスモル濃度を有することを意味する。液体が水であるときの実質的に電解液を含まない液体は、脱イオン水と呼ばれる場合もある。
【0031】
例えば、イオンの生成または中和によってコンダクタンスを増減させるようにCOと反応する他の溶媒も同様に用いることができる。しかしながら、実際には、脱イオン水または蒸留水が特に良好に機能することがわかっている。いくつかの実施形態では、0.1~100μM、好ましくは0.5~50μM、より特別には約1μMの濃度の強酸(例えば、HCl)を、脱イオン水または蒸留水に添加することができる。この僅かな酸添加の機能は、通常、液体のpHを6以下に維持し、水酸化イオンによるコンダクタンスへの大きな寄与を回避し、pCOの測定の線形性を維持することである。他の実施形態では、上記で酸について定義した濃度と類似した濃度で塩基を添加することができる。塩基の目的は、通例、大気のCOに起因した酸性化について補正することである。
【0032】
本発明の1つの実施形態において、チャンバ内の液体は、非イオン性賦形剤を更に含むことができる。このようにして、チャンバ内の液体のオスモル濃度は、液体の電気特性に影響を及ぼすことなく、膜を横切る液体の放出を防ぐように、増大させることができる。賦形剤は、少なくとも等張濃度を有するべきであり、すなわち、0.9%w/v NaClの水溶液と同じ浸透性であるべきである。このため、チャンバ内の賦形剤のオスモル濃度は、0.9%w/vの水溶性NaClのオスモル濃度よりも高くすることができ、好ましくは、1.8%w/vの水溶性NaClのオスモル濃度よりも高くすることができる(等張濃度の2倍)。4.5%w/vの水溶性NaClのオスモル濃度よりも高いオスモル濃度(等張濃度の5倍)、または更には9%w/vの水溶性NaClよりも高いオスモル濃度(等張濃度の10倍)を用いることができる。
【0033】
チャンバ内でのプロトンおよび重炭酸塩反応に対し不活性の任意の適切な非イオン性賦形剤を用いることができる。賦形剤は、液体、例えば水において可溶性でもあるべきである。また、賦形剤は、望ましくは、静脈内の使用のために認められた薬剤賦形剤であり、チャンバへの充填を容易にするために低粘度を有する。賦形剤は、好ましくは、滅菌可能であり、貯蔵安定性であるべきである。望ましくは、賦形剤は、微生物の増殖を阻害するべきである。
【0034】
適切な賦形剤はポリエチレングリコール(PEG)であり、現在好ましい賦形剤はプロピレングリコールである。
【0035】
本発明のpCOセンサの主要構成要素は、電極チャンバと、電極チャンバの壁の少なくとも一部を形成するCO透過膜と、前記チャンバ内に表面を有する(または前記チャンバに内面を与える)第1のおよび第2の電極と、膜ならびに第1および第2の電極と接触する電極チャンバ内の上記で定義した液体とである。センサは、AC電源、コンダクタンス(または抵抗)測定デバイス、信号発生器(測定手段の一部とすることができる)、および任意選択で信号送信機を含むか、またはこれに接続可能である。
【0036】
本発明のセンサデバイスを用いてpCOが測定されるメカニズムは簡単である。純粋なプロトン性溶媒、例えば水においては、イオン種の不足に起因して、電気抵抗が高い。COの添加の結果として、HおよびHCO イオンが(水により)形成され、このため、電気抵抗が低減する。センサにおいて抵抗の低減の原因となる唯一の要因は、膜を通過するCOであるため、抵抗の変化により、pCOが測定されることが可能になる。
【0037】
O+COの平衡定数からH+HCO 平衡まで、CO濃度はαpCOに等しい(ここで、25°Cにおけるαは0.310である)。プロトンの電気伝導率はGH+=349.8 S.cm/molであり、水酸基の電気伝導率はGOH-=198.3 S.cm/molであり、重炭酸塩の電気伝導率はGHCO3-=44.5 S.cm/molである。HおよびOHの濃度は逆に変動し、HおよびHCO の濃度は、pCOに正比例する。このため、OH-の寄与が最小限であるため、溶液の総コンダクタンスは、効果的にはpCOに比例する。このため、溶液の伝導率Gsolutionは以下によって与えられる。
solution=θH+[H]GH++θOH-[OH]GOH-+θHCO3-[HCO ]GHCO3-
ここで、θH+、θOH-およびθHCO3-は、3つのイオン種の活量係数である。
【0038】
以下の表1は、例として、測定されたpCOおよびpH値、ならびにH、OHおよびHCO 濃度の対応する計算値を示し、pCOの増大に伴うHおよびHCO の増大を示す。
【0039】
【表1】
(pCOおよびpHは、37℃で標準的な血液ガス測定装置ABL(R)System625を用いて測定される)。
【0040】
電気伝導率は、本発明のセンサ内の溶媒膜において測定される。これは、一定の電圧(または電流)を電極に印加し、COが膜を通って溶媒に入る際の伝導率の変化に対応する電流(または電圧)変化を測定することによって行うことができる。しかしながら、好ましくは、一定のピーク値を有する交流正弦波機能電圧が印加され、電極にわたる電圧降下が測定される。このとき、溶液の伝導率は、電極を通過した電流を、電極にわたる電圧降下で除算したものに等しい。
【0041】
pCOセンサは、交流電位を電極に印加することによって機能し、それによって、液体に交流電流を生じさせることができる。液体は、コンダクタンスを変更するために二酸化炭素と反応するべきである。電位は、20~100,000Hz、好ましくは100~10,000Hzの周波数を有することができる。
【0042】
本発明のpCOセンサは、100~10,000Hzの周波数で電極にわたる交流電位を印加するように構成された電源を設けられるか、またはこれに接続可能である。周波数は、好ましくは1kHzよりも高い。周波数は、好ましくは5kHz未満であり、より好ましくは2kHz未満である。100Hz未満の周波数において、pCO測定の感度は、電解分極に起因してより低く、更には機器の応答時間が過度に低速になるのに対し、10kHzを超える周波数において、感度は、センサにおける静電容量の低インピーダンスに起因して再び低くなる。
【0043】
電源はAC電源とすることができるか、または代替的に、DC源を発振器と併せたもの、すなわち、共にAC電源を構成する組合せとすることができる。
【0044】
電源は、好ましくは、電極において液体を通る最大電流密度が、50A/m以下、好ましくは30A/m以下、より好ましくは20A/m以下、特に10A/m以下、および最も好ましくは約1A/m以下であるようになっている。20A/m以上のより高い電流密度値は、より高い周波数、例えば1~10kHzにおいてのみ用いられるべきである。
【0045】
最小の最大電流密度は、検出限界まで測定されるが、10-8A/mまでの値が使用可能である。しかしながら、最小の最大電流密度は、通常、少なくとも0.1μA/mである。
【0046】
そのような電流密度および電圧周波数で動作することおよび、適切な構造により、センサは、電極の電解分離の結果として生じる正確性の大きな損失を伴うことなく、COが移る液体のコンダクタンス/抵抗を測定することができる。
【0047】
特に高い正確性のために、電極にわたる電位または電流(このため、電極間の液体の抵抗またはコンダクタンス)は、電圧発生器または電源の周波数と同じ周波数にセットされたロックイン増幅器を用いて測定される。
【0048】
更に、検出にハイパスフィルタを組み込んで、100Hz未満の周波数、好ましくは150Hz未満の周波数を有する電流を選別して除くことが好ましい。フィルタは、好ましくはパッシブフィルタであり、例えばキャパシタおよび抵抗器である。電源および検出器回路部は、望ましい場合、本発明のセンサに含められ、この場合、センサが無線であることが望ましい場合、好ましくは、センサには、信号がリモートで検出されることを可能にする手段、例えば送信機、例としてRF送信機も設けられる。このようにして、センサは、例えば危険な状態にある患者に埋め込むことができる。患者に、例えば患者の皮膚に電気的に接続される更なる電極が設けられてもよい。この更なる電極からの信号は、患者からの電磁雑音を補償するために、センサからの信号を用いて処理することができる。
【0049】
電解分離の影響は、液体と接触する電極の表面積を増大させることによって、例えば、膜の平面から離して配置されたウェル内に電極を置くことによって、または非平面電極表面、例えば、粗いまたはざらつきのある表面を用いることによって、大きく低減される。したがって、通常、液体接触部に対する電極の表面積の比を可能な限り大きくし、可能な限り大きな膜との接触面積にわたって液体深さを可能な限り浅くすることが望ましい。このようにして、応答時間が低減され、電解分離が低減され、より低い周波数を用いることができ、浮遊容量の影響が大きく低減される。
【0050】
電極における抵抗に対する電気抵抗増大は、液体が膜と接触するゾーンにおける電極間で液体を通る電気的経路の断面積を制限することによって、例えば、電極間の経路の一部にわたって液体の深さを減少させることによって、および/または各電極と液体との間の比較的大きな接触面積を確保することによって達成することができる。
【0051】
膜における、および電極間の液体の抵抗は、電極間の膜にわたって液体チャネルを画定するために構造要素を用いることによって、例えば、そのようなチャネルが形成される絶縁チャンバ壁部分にわたってもしくはこれに隣接して膜を例えばエッチングによって配設することによって、増大させることができる。同様に、液体の深さを画定するために、膜とチャンバ壁との間に多孔スペーサを配設することができる。
【0052】
実際に、測定コンダクタンスが圧力と共に変動するには、そのようなスペーサを、使用時に受ける圧力条件下で、膜が十分に可撓性であり、膜の後ろの液体深さが十分小さい場合に使用することが重要である。
【0053】
好ましい構成において、センサは、長手方向軸を有するセンサ本体と、センサ本体の長手方向軸を横切る方向に離間された少なくとも2つの電極と、センサ本体の軸から外方に延び、隣接する支持部材間で、電極間の流体経路を提供する少なくとも1つの液体チャネルを画定する複数の支持部材と、支持部材によって支持され、液体チャネルの外壁を提供する気体透過膜とを備える。
【0054】
この構成は、臓器に挿入するのに適した長手方向の形状を有するセンサのコンパクトな構成を提供する。更に、支持部材は、膜に対する物理的支持を提供し、正確な測定を可能にする小さな断面積の液体チャネルを画定することが可能である。
【0055】
上述した電解分離の影響を低減するために、電極は、液体チャネルよりも大きな断面積を有するセンサ本体における凹部に位置することができる。このようにして、電極の周囲の電流密度は、液体の体積が大きくなることによって低減する。
【0056】
センサの電極は、長手方向に、例えばセンサ本体の長手方向軸に平行に延びることができる。同様に、液体チャネルは、センサ本体の長手方向軸を、例えば長手方向軸に対し垂直に横切ることができる。好ましい構成において、センサは複数の液体チャネルを含む。例えば、センサは少なくとも3つの液体チャネルを備えることができる。
【0057】
支持部材は、センサ本体の長手方向軸を横切ることができる。例えば、支持部材は、周方向においてセンサ本体の長手方向軸に対し垂直にすることができる。好ましい構成において、支持部材は、センサ本体の長手方向軸の周りに形成されたリングの形態をとる。支持部材の断面は、任意の適切な形状とすることができる。特に、実質的に三角形、特に鋸歯状の断面を有する支持部材は、特に、射出成形によって容易に形成されることがわかっている。代替的に、実質的に矩形の断面を用いることができる。支持部材は、例えば、射出成形によって、センサ本体と一体形成することができる。センサは、好ましくは、少なくとも4つの支持部材を備える。センサ本体および/またはセンサは、通常、円筒形とすることができる。膜は、センサ本体を取り囲むように構成することができる。
【0058】
説明された形状は、任意の適切なセンサに適用することができる。好ましい構成において、センサはpCOセンサである。
【0059】
センサが適所に液膜を用いて構築される場合、電極は、好ましくは、液体の抵抗が貯蔵に伴って大幅に変化しないように不活性物質から作製されるか、または不活性物質をめっきされる。適切な材料は、白金(特に白金黒)、金、銀、アルミニウムおよび炭素を含む。金が特に好ましい。通常、溶媒和イオンを生成しない不活性電極が好ましい。
【0060】
膜は、COに対し透過性の任意の材料とすることができ、液体の溶媒、任意の電解液および水に対し実質的に不透過性である。ポリテトラフルオロエチレン、例えばTeflon(R)、シリコーンゴム、ポリシロキサン、ポリオレフィンまたは他の絶縁ポリマー膜を、例えば0.5~250μmの厚みにおいて用いることができる。通常、膜が厚いほど、センサの応答時間が低速になる。しかしながら、膜が薄いほど、不均一性または穿孔もしくは他の損傷のリスクが高まる。しかしながら、従来から、膜の厚みは1~100μm、好ましくは50~100μmとなる。
【0061】
本発明のセンサのチャンバの壁は、任意の適切な材料、例えばプラスチックとすることができる。好ましくは、材料は、滅菌、例えば放射線滅菌(例えばガンマ線を用いる)または熱滅菌(例えば、オートクレーブ滅菌において用いられるような約121℃の温度を用いる)において通例用いられる条件に耐えることが可能であるべきである。熱滅菌の場合、液体は、通常、滅菌後にセンサに滅菌充填される。チャンバの壁および膜は同じ材料、例えば、自立型の壁およびより薄い気体透過膜を有するように機械加工されたTeflon(R)からなることができる。本発明のセンサは、通常、比較的安価であるため、従来技術のセンサと異なり、使い捨てのデバイスとすることができる。更に、電極チャンバは、(小型化が克服不能なインピーダンス問題を課すセンサを含む従来技術によるガラス電極と異なり、)困難を伴うことなく極度に小さく作製することができる。この構成は、センサ、特に、人間を含む動物の組織に容易に挿入することができるpCOセンサを提供する。このセンサは、監視中に組織内に保持することができ、監視が完了すると容易に除去することができる。
【0062】
デバイスは十分小さいため、監視される組織に過度の外乱を生じさせない。結果として、デバイスは、2mm、好ましくは1mmの最大直径を有することができる。本発明によるセンサは、臓器、導管または組織、例えば、脳、心臓、肝臓、腎臓、消化管または筋肉の表面上またはそれらの中でpCOを測定するのに特に適したサイズおよび構成を有して容易に生成される。これは、移植中および移植後、集中治療中、負傷後等に、臓器、導管または組織の機能が監視されることを可能にし、このため虚血の早期の検出を可能にするため、特に興味深いものである。
【0063】
センサによって測定される分圧は、定量化された値とすることができるか、または単純に、pCOが、pCO測定場所のロケーションに従って変動する場合がある、虚血または非虚血を示す1つまたは複数の閾値よりも高いかまたは低いかの指示とすることができる。
【0064】
センサは、pCOの単一の測定のために用いることができるか、またはより好ましくは、危険な状態にある患者、例えば集中治療中の患者、臓器または組織の移植手術を受けているかまたはそこから回復中の患者、不安定狭心症を有すると診断された患者、冠動脈バイパス手術から回復中の患者、(例えば骨格筋の)外傷を受けた患者、または血液量減少を患う(例えば、ショック状態の)患者を連続してまたは繰り返し監視するために用いることができる。
【0065】
デバイスは、それぞれの生理学的パラメータのための複数のセンサを備えることができる。例えば、デバイスは、センサのアレイを備えることができる。そのようなセンサは、例えば、二酸化炭素分圧、酸素分圧、温度、pHまたはグルコース濃度のうちの1つまたは複数を測定することができる。現時点において好ましい実施形態において、デバイスは、温度センサおよびpCOセンサを備える。
【0066】
本発明は更に、上記で定義したようなセンサを用いることを含む、pCOを測定するための方法に関する。別の態様において、本発明は、pCOを測定するための方法を提供し、前記方法は、COの存在下での液体の伝導率の変化を測定するステップを含み、前記液体は、少なくとも1つの金属または半金属イオンを含む。
【0067】
本発明は、上記でpCOの測定について定義したセンサの使用にも関する。
【0068】
別の態様において、本発明は、COの存在下での液体の伝導率の変化を増幅するための方法に関し、前記方法は、前記液体に、少なくとも1つの金属または半金属イオンを添加することを含む。全てのこれらの実施形態において、液体および金属/半金属イオンは、センサの文脈で上記で説明したように定義することができる。
【0069】
ここで、以下の非限定的な例および図面を参照して本発明を更に説明する。
実施例
【実施例1】
【0070】
図1に示す実験セットアップが構築された。COおよびNの気体混合物が、ディフューザを通じて脱イオン水内で泡立てられた。混合物の組成は、2つのコンピュータ制御された質量流量コントローラーによって制御された。2つの40mLビーカが、周囲温度において脱イオン水を充填された。各ビーカは、気体ディフューザおよび2つのセンサ(タイプS1およびS2のそれぞれ1つ)を含んでいた。ビーカ2は基準センサも含んでいた。センサS1およびS2は、円筒形ポリマーキャリア基板の外側に径方向に反対に位置する金のストライプ電極から構成された。S2電極間隔は、約0.7mmであり、長さは5mmであり、S1間隔は約1.7mmであり、電極長さは10mmであった。基準センサは、1mm離して懸架された直径175μmの2つの10mm円筒形鋼電極で構成された。センサは、アナログデジタル変換器および調整電子部品を通じてPCに接続された。
【0071】
気体混合物の組成は、30分の期間にわたって、0%のCO、6%のCO、10%のCO、14%のCO、6%のCOおよび0%のCOのシーケンスに従って時間と共に変動し、センサの応答がこれに続いた。結果が図2に示される。
【0072】
次に、銅水酸化物(2.5mmolL-1)がビーカ1に添加され、気体混合物の組成は、30分の期間にわたって、0%のCO、6%のCO、14%のCO、20%のCO、6%のCOおよび0%のCOのシーケンスに従って時間と共に変動し、センサの応答がこれに続いた。結果が図3に示される。脱イオン水のみを含むビーカ2内のセンサ1および2と比較して、金属イオンが存在するビーカ1内のセンサ1および2について信号が大幅に増大することを見て取ることができる。金属水酸化物の添加によって、COに関する感度が、最大約9倍増大することが示される。
【実施例2】
【0073】
ビーカ1に1:1の比のAlOH(3.2mmolL-1)およびCuOH(2.5mmolL-1)が添加された点を除き、実施例1に説明したのと同じ実験が繰り返され、気体混合物の組成は、30分の期間にわたって、0%のCO、6%のCO、10%のCO、14%のCO、20%のCO、6%のCOおよび0%のCOのシーケンスに従って時間と共に変動し、センサの応答がこれに続いた。結果が図4に示される。ここでもまた、脱イオン水のみを含むビーカ2内のセンサ1および2と比較して、金属イオンが存在するビーカ1内のセンサ1および2について信号が大幅に増大することを見て取ることができる。
【実施例3】
【0074】
感度の増大に対する金属イオンおよび濃度の変化の影響が、実施例1について説明されたのと同じセットアップを用いて調査された。結果が図5および図6に示される。
【0075】
図5は、脱イオン水に添加されたとき、NiOH、AlOHおよびCuOHの全てがCO測定に対する感度の増大をもたらし、CuOHが最も高い増大を示すことを示す。NiOH、AlOHおよびCuOHの濃度は、それぞれ、2.7mmolL-1、3.21mmolL-1および2.56mmolL-1であった。
【0076】
図6は、広い濃度範囲にわたって、CuOH、AlOHおよびNiOHの混合物について感度の大幅な増大が観測されることを示す。0.1%の混合物1は、それぞれ10.24mmolL-1、12.84mmolL-1および10.8mmolL-1の濃度でNiOH、AlOHおよびCuOHを含む。濃度は、毎回2分の1に下げられ、このため、0.05%の混合物1は、0.1%の混合物1の半分の濃度のNiOH、AIOHおよびCuOHを含み、以下同様である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】