IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノボキュア ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2022-521367XELOX又はFOLFOXと組み合わせたTTフィールドを用いる胃癌の治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-07
(54)【発明の名称】XELOX又はFOLFOXと組み合わせたTTフィールドを用いる胃癌の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/282 20060101AFI20220331BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220331BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220331BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20220331BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20220331BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220331BHJP
   A61N 1/40 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
A61K31/282
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/7068
A61K31/513
A61K31/519
A61N1/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021539031
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(85)【翻訳文提出日】2021-07-02
(86)【国際出願番号】 IB2020051390
(87)【国際公開番号】W WO2020170164
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】62/808,923
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/912,483
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/932,834
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519275847
【氏名又は名称】ノボキュア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】モシェ・ギラディ
(72)【発明者】
【氏名】カルニート・ゴットリブ
(72)【発明者】
【氏名】ローザ・シュナイデルマン
(72)【発明者】
【氏名】ウリ・ウェインバーグ
(72)【発明者】
【氏名】エイナヴ・ゼエビ
【テーマコード(参考)】
4C053
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C053LL20
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC43
4C086CB09
4C086EA17
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB14
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA86
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
フォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチンを対象者に投与する工程、並びに前記対象者の目標領域に交流電場を印加する工程によって、胃癌を治療する方法及び胃癌細胞の生存能を低下させる方法が提供される。いくつかの例において、XELOX、FOLFOX、及び個別のその構成成分等の化学療法剤が、対象者に投与され、続いて前記対象者に交流電場が印加される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者における胃癌を治療する方法であって、
オキサリプラチン及びカペシタビンを対象者に投与する工程、並びに
100~400kHzの間の周波数を有する交流電場を、前記対象者の目標領域に印加する工程
を含む方法。
【請求項2】
少なくとも印加の一部分が、オキサリプラチン及びカペシタビンの投与後並びにオキサリプラチン及びカペシタビンが対象者の体から排出される前に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
交流電場の周波数が120~180kHzの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
交流電場の周波数が145~155kHzの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
オキサリプラチン及びカペシタビンが、治療上有効な用量で投与され、少なくとも目標領域の一部分において、交流電場の電界強度が少なくとも1V/cmである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数が、120~180kHzの間である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数が、145~155kHzの間である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
胃癌細胞の生存能を低下させる方法であって、
オキサリプラチン及びカペシタビンを前記癌細胞に投与する工程、並びに
100~400kHzの間の周波数を有する交流電場を、前記癌細胞に印加する工程
を含む方法。
【請求項10】
少なくとも印加の一部分が、少なくとも投与の一部分と同時に行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
交流電場の周波数が120~180kHzの間である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
交流電場の周波数が145~155kHzの間である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
オキサリプラチン及びカペシタビンのそれぞれが、治療上有効な濃度で前記癌細胞に送達され、前記癌細胞の少なくともいくつかにおいて、交流電場の電界強度が少なくとも1V/cmである、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、交流電場の周波数が、120~180kHzの間である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、交流電場の周波数が、145~155kHzの間である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
対象者における胃癌を治療する方法であって、
フォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチンを対象者に投与する工程、並びに
100~400kHzの間の周波数を有する交流電場を、前記対象者の目標領域に印加する工程
を含む方法。
【請求項18】
少なくとも印加の一部分が、フォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチンの投与後並びにフォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチンが対象者の体から排出される前に行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
交流電場の周波数が120~180kHzの間である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
交流電場の周波数が145~155kHzの間である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
フォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチンが、治療上有効な用量で投与され、少なくとも目標領域の一部分において、交流電場の電界強度が少なくとも1V/cmである、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、交流電場の周波数が、120~180kHzの間である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数が、145~155kHzの間である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
胃癌細胞の生存能を低下させる方法であって、
フォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチンを前記癌細胞に投与する工程、並びに
100~400kHzの間の周波数を有する交流電場を、前記癌細胞に印加する工程
を含む方法。
【請求項26】
少なくとも印加の一部分が、少なくとも投与の一部分と同時に行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
交流電場の周波数が120~180kHzの間である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
交流電場の周波数が145~155kHzの間である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
フォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチンのそれぞれが、治療上有効な濃度で前記癌細胞に送達され、前記癌細胞の少なくともいくつかにおいて、交流電場の電界強度が少なくとも1V/cmである、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数が、120~180kHzの間である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数が、145~155kHzの間である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
対象者における胃癌を治療する方法であって、
フルオロウラシルを対象者に投与する工程、及び
100~400kHzの間の周波数を有する交流電場を、前記対象者の目標領域に印加する工程
を含む方法。
【請求項34】
少なくとも印加の一部分が、フルオロウラシルの投与後及びフルオロウラシルが対象者の体から排出されるか、又は枯渇する前に行われる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
交流電場の周波数が120~180kHzの間である、請求項17に記載の方法。
【請求項37】
交流電場の周波数が145~155kHzの間である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
フルオロウラシルが、治療上有効な用量で投与され、少なくとも目標領域の一部分において、交流電場の電界強度が少なくとも1V/cmである、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
フルオロウラシルの投与が、対象者へのフルオロウラシルの直接投与によって達成される、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
フルオロウラシルの投与が、対象者へのフルオロウラシルの間接投与によって達成される、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
フルオロウラシルの間接投与が、対象者の体内でフルオロウラシルに変換されるプレプロドラッグを対象者に投与することによって達成される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数が、120~180kHzの間である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数が、145~155kHzの間である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
胃癌細胞の生存能を低下させる方法であって、
フルオロウラシルを前記癌細胞に投与する工程、及び
100~400kHzの間の周波数を有する交流電場を、前記癌細胞に印加する工程
を含む方法。
【請求項45】
少なくとも印加の一部分が、少なくとも投与の一部分と同時に行われる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有する、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
交流電場の周波数が120~180kHzの間である、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
交流電場の周波数が145~155kHzの間である、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
フルオロウラシルが、治療上有効な濃度で前記癌細胞に送達され、前記癌細胞の少なくともいくつかにおいて、交流電場の電界強度が少なくとも1V/cmである、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数が、120~180kHzの間である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数が、145~155kHzの間である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
対象者における胃癌細胞の生存能を低下させる方法であって、
フルオロウラシルを対象者に投与する工程、及び
100~400kHzの間の周波数を有する交流電場を、前記対象者における胃癌細胞に印加する工程
を含む方法。
【請求項53】
フルオロウラシルの投与が、対象者へのフルオロウラシルの直接投与によって達成される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
フルオロウラシルの投与が、対象者へのフルオロウラシルの間接投与によって達成される、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
フルオロウラシルの間接投与が、対象者の体内でフルオロウラシルに変換されるプレプロドラッグを対象者に投与することによって達成される、請求項54に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許仮出願第62/808923号(2019年2月22日出願)、第62/912483号(2019年10月8日出願)、及び第62/932834号(2019年11月8日出願)の利益を主張し、これらの仮出願のそれぞれは、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
世界的な発生率の低下にもかかわらず、胃癌は、世界で4番目に一般的な癌(約1,000,000/年の発生)であり、世界で2番目に一般的な癌死の原因(約750,000/年)であり続けている。近代における全身療法の改善にもかかわらず、進行した胃癌患者の長期間の生存率は低いままである。
【0003】
XELOXは、オキサリプラチン及びカペシタビンからなる化学療法レジメンである。FOLFOXは、胃癌のための現在の標準的治療である。FOLFOXは、3種の薬剤であるフォリン酸(ロイコボリン)、フルオロウラシル(5-FU)、及びオキサリプラチンからなる胃癌の治療のための化学療法レジメンである。
【0004】
腫瘍治療電場(TTフィールド)は、低強度で中間周波数の交流電場を印加することによって施される効果的な抗新生物治療法である。TTフィールド療法は、脳腫瘍である多形性神経膠芽腫の治療に関して、FDAの承認を受けている。TTフィールド療法は、装着携帯型デバイス(Optune(登録商標))を使用して行われる。この送達システムは、4つの粘着性で非侵襲的な絶縁された「トランスデューサーアレイ」、電場ジェネレーター、充電式電池、及び携帯用ケースを含む。トランスデューサーアレイは、腫瘍付近の皮膚に貼り付けられ、電場ジェネレーターに接続される。
【0005】
前臨床設定において、Inovitro(商標)システムを使用したTTフィールドは、高誘電率セラミックによって絶縁されたトランスデューサーアレイの垂直な対の使用によってin vitroで印加されうる。Inovitro(商標)(TTフィールド実験台システム)は、TTフィールドジェネレーター及びプレート毎に8つのセラミックシャーレを有するベースプレートからなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Schellens、The Oncologist、2007;12:152-15
【非特許文献2】Hannekeら、Cancer Research、63、7609~7612頁、2003年11月15日
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
オキサリプラチン及びカペシタビン又はフォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチンを対象者に投与する工程、並びに前記対象者の目標領域に交流電場を印加する工程によって、対象者における胃癌を治療する方法が提供される。この交流電場の周波数は100~400kHzの間である。
【0008】
いくつかの例において、オキサリプラチン及びカペシタビン又はフォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチンを対象者に投与する工程、並びに前記対象者の目標領域に交流電場を印加する工程によって、対象者における胃癌を治療する方法が提供される。この交流電場の周波数は100~400kHzの間である。
【0009】
いくつかの例において、オキサリプラチン及びカペシタビン又はフォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチンを胃癌細胞に投与する工程、並びに前記胃癌細胞に交流電場を印加する工程によって、胃癌細胞の生存能を低下させる方法が提供される。この交流電場の周波数は100~400kHzの間である。
【0010】
いくつかの例において、フルオロウラシルを対象者に投与する工程、及び前記対象者の目標領域に交流電場を印加する工程によって、対象者における胃癌を治療する方法が提供される。この交流電場の周波数は100~400kHzの間である。
【0011】
いくつかの例において、フルオロウラシルを胃癌細胞に投与する工程、及び前記胃癌細胞に交流電場を印加する工程によって、胃癌細胞の生存能を低下させる方法が提供される。この交流電場の周波数は100~400kHzの間である。
【0012】
いくつかの例において、フルオロウラシルを対象者に投与する工程、及び前記対象者における胃癌細胞に交流電場を印加する工程によって、対象者における胃癌細胞の生存能を低下させる方法が提供される。この交流電場の周波数は100~400kHzの間である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のAGS細胞におけるオキサリプラチンの例示的な細胞毒性効果を示す図である。
図2】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のオキサリプラチンで処理したAGS細胞における7AAD/アネキシンV染色を用いた例示的な細胞アポトーシス分析を示す図である。
図3】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のAGS細胞におけるオキサリプラチンの例示的なクローン原性に対する効果を示す図である。
図4】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のAGS細胞におけるオキサリプラチンの包括的効果を示す図である。
図5】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のAGS細胞における5-FUの例示的な細胞毒性効果を示す図である。
図6】TTフィールドを用いる場合と用いない場合の5-FUで処理したAGS細胞における7AAD/アネキシンV染色を用いた例示的な細胞アポトーシス分析の結果を示す図である。
図7】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のAGS細胞における5-FUの例示的なクローン原性に対する効果を示す図である。
図8】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のAGS細胞における5-FUの例示的な包括的効果を示す図である。
図9】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のAGS細胞におけるロイコボリンの例示的な細胞毒性効果を示す図である。
図10】各ロイコボリン濃度における例示的なアポトーシス分析(7AAD及びアネキシンV染色の細胞画分の割合)を示す図である。
図11】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のAGS細胞におけるロイコボリンの例示的なクローン原性に対する効果を示す図である。
図12】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のAGS細胞におけるロイコボリンの例示的な包括的効果を示す図である。
図13】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のAGS細胞における各化学療法単独及びFOLFOXの例示的な細胞毒性効果(***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05)を示す図である。
図14】TTフィールドを用いる場合と用いない場合の化学療法で処理したAGS細胞における7AAD/アネキシンV染色を用いた例示的な細胞アポトーシス分析を示す図である。
図15】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のAGS細胞における各化学療法単独及びFOLFOXの例示的なクローン原性に対する効果(***p<0.001、**p<0.01)を示す図である。
図16】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のAGS細胞における各化学療法単独及びFOLFOXの例示的な包括的効果(***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05)を示す図である。
図17】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のKATO III細胞におけるオキサリプラチンの例示的な細胞毒性効果を示す図である。
図18】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のオキサリプラチンで処理したKATO III細胞における7AAD/アネキシンV染色を用いた例示的な細胞アポトーシス分析を示す図である。
図19】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のKATO III細胞におけるオキサリプラチンの例示的なクローン原性に対する効果を示す図である。
図20】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のKATO III細胞におけるオキサリプラチンの例示的な包括的効果を示す図である。
図21】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のKATO III細胞における5-FUの例示的な細胞毒性効果を示す図である。
図22】TTフィールドを用いる場合と用いない場合の5-FUで処理したKATO III細胞における7AAD/アネキシンV染色を用いた例示的な細胞アポトーシス分析を示す図である。
図23】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のKATO III細胞における5-FUの例示的なクローン原性に対する効果を示す図である。
図24】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のKATO III細胞における5-FUの例示的な包括的効果を示す図である。
図25】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のKATO III細胞におけるロイコボリンの例示的な細胞毒性効果を示す図である。
図26】各ロイコボリン濃度における例示的なアポトーシス分析(7AAD及びアネキシンV染色の細胞画分の割合)を示す図である。
図27】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のKATO III細胞におけるロイコボリンの例示的なクローン原性に対する効果を示す図である。
図28】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のKATO III細胞におけるロイコボリンの例示的な包括的効果を示す図である。
図29】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のKATO III細胞における各化学療法単独及びFOLFOXの例示的な細胞毒性効果(***p<0.001、**p<0.01)を示す図である。
図30】TTフィールドを用いる場合と用いない場合の化学療法で処理したKATO III細胞における7AAD/アネキシンV染色を用いた例示的なアポトーシス分析を示す図である。
図31】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のKATO III細胞における各化学療法単独及びFOLFOXの例示的なクローン原性に対する効果(***p<0.001)を示す図である。
図32】TTフィールドを用いる場合と用いない場合のKATO III細胞における各化学療法単独及びFOLFOXの例示的な包括的効果(***p<0.001)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に記載される態様は、癌(例えば、胃癌)を治療するための、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル(「5-FU」)、ロイコボリン(フォリン酸としても公知)、及びカペシタビンのうちの1つ又は複数と組み合わせた腫瘍治療電場(「TTフィールド」)の使用に関する。
【0015】
別の態様において、TTフィールド治療は、癌を治療するために、オキサリプラチン、5-FU、ロイコボリンと組み合わせることができる(本明細書では「FOLFOX」とも言及される)。更に別の態様において、TTフィールド治療は、癌を治療するために、オキサリプラチン及びカペシタビンと組み合わせることができる(本明細書では「XELOX」とも言及される)。
【0016】
胃癌は、TTフィールドとフォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチンとの組合せを用いて治療される場合がある。胃癌は、TTフィールドとフルオロウラシルとの組合せを用いて治療される場合もある。「治療すること」という用語は、寛解すること、阻害すること、増殖を低減すること、転移を阻害すること、同じことを行う医薬品を処方することを指す。
【0017】
本発明の一態様は、対象者における胃癌を治療する方法に関する。この態様は、オキサリプラチン及びカペシタビンを対象者に投与する工程、並びに100~400kHzの間の周波数を有する交流電場を、前記対象者の目標領域に印加する工程を含む。
【0018】
いくつかの例において、少なくとも印加の一部分は、オキサリプラチン及びカペシタビン(「薬剤」)の投与後並びにオキサリプラチン及びカペシタビンが対象者の体から排出される前に行われる。「対象者の体から排出される」という用語は、例えば、(1)前記薬剤のうちの1つ又は複数の実質的に全てが体から排出されることになる、肝臓又は体の別の場所における前記薬剤のうちの1つ又は複数の代謝、又は(2)前記薬剤がその治療効果の実質的に全てをもはやもたらさないように、対象者の血流中の前記薬剤のうちの1つ又は複数の濃度を低下させることを指す。本明細書で使用する場合、「実質的に」という用語は、約50、60、70、80、90、又は100%を上回ることを指す。
【0019】
いくつかの例において、印加は、少なくとも72時間の持続時間を有する。72時間の電場の印加は、単回の72時間間隔で達成されてもよい。代替方法として、電場の印加は、休止によって中断されることがある。例えば、それぞれ12時間の持続時間で、セッション間に2時間の休止がある6セッション。「休止」という用語は、電場が印加されない時間の間隔を指す。
【0020】
いくつかの例において、交流電場の周波数は120~180kHzの間である。いくつかの例において、交流電場の周波数は145~155kHzの間である。
【0021】
いくつかの例において、オキサリプラチン及びカペシタビンは、治療上有効な用量で投与され、少なくとも目標領域の一部分において、交流電場の電界強度は少なくとも1V/cmである。これらの例のいくつかにおいて、印加は、少なくとも72時間の持続時間を有し、交流電場の周波数は、120~180kHzの間である。これらの例のいくつかにおいて、印加は、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数は、145~155kHzの間である。
【0022】
本発明の別の態様は、胃癌細胞の生存能を低下させる方法に関する。この態様は、オキサリプラチン及びカペシタビンを前記癌細胞に投与する工程、並びに100~400kHzの間の周波数を有する交流電場を、前記癌細胞に印加する工程を含む。本明細書で使用する場合、「生存能を低下させること」という用語は、増殖を減少させること、アポトーシスを誘導すること、又は癌細胞を死滅させることを指す。
【0023】
いくつかの例において、少なくとも印加の一部分は、少なくとも投与の一部分と同時に行われる。
【0024】
いくつかの例において、印加は、少なくとも72時間の持続時間を有する。72時間の電場の印加は、単回の72時間間隔で達成されてもよい。代替方法として、電場の印加は、休止によって中断されることがある。例えば、それぞれ12時間の持続時間で、セッション間に2時間の休止がある6セッション。
【0025】
いくつかの例において、交流電場の周波数は120~180kHzの間である。いくつかの例において、交流電場の周波数は145~155kHzの間である。
【0026】
いくつかの例において、オキサリプラチン及びカペシタビンのそれぞれは、治療上有効な濃度で前記癌細胞に送達され、前記癌細胞の少なくともいくつかにおいて、交流電場の電界強度は少なくとも1V/cmである。これらの例のいくつかにおいて、印加は、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数は、120~180kHzの間である。これらの例のいくつかにおいて、印加は、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数は、145~155kHzの間である。本明細書で使用する場合、「治療上有効な濃度」という用語は、意図された目的(例えば、癌の治療)を達成するために十分な1種の薬剤又は複数の薬剤の濃度を指す。
【0027】
本発明の一態様は、対象者における胃癌を治療する方法に関する。この態様は、フォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチンを対象者に投与する工程、並びに100~400kHzの間の周波数を有する交流電場を、前記対象者の目標領域に印加する工程を含む。
【0028】
いくつかの例において、少なくとも印加の一部分は、フォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチン(「薬剤」)の投与後並びにフォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチンが対象者の体から排出される前に行われる。「対象者の体から排出される」という用語は、例えば、(1)前記薬剤のうちの1つ又は複数の実質的に全てが体から排出されることになる、肝臓又は体の別の場所における前記薬剤のうちの1つ又は複数の代謝、又は(2)前記薬剤がその治療効果の実質的に全てをもはやもたらさないように、対象者の血流中の前記薬剤のうちの1つ又は複数の濃度を低下させることを指す。本明細書で使用する場合、「実質的に」という用語は、約50、60、70、80、90、又は100%を上回ることを指す。
【0029】
いくつかの例において、印加は、少なくとも72時間の持続時間を有する。72時間の電場の印加は、単回の72時間間隔で達成されてもよい。代替方法として、電場の印加は、休止によって中断されることがある。例えば、それぞれ12時間の持続時間で、セッション間に2時間の休止がある6セッション。「休止」という用語は、電場が印加されない時間の間隔を指す。
【0030】
いくつかの例において、交流電場の周波数は120~180kHzの間である。いくつかの例において、交流電場の周波数は145~155kHzの間である。
【0031】
いくつかの例において、フォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチンは、治療上有効な用量で投与され、少なくとも目標領域の一部分において、交流電場の電界強度は少なくとも1V/cmである。これらの例のいくつかにおいて、印加は、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数は、120~180kHzの間である。これらの例のいくつかにおいて、印加は、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数は、145~155kHzの間である。
【0032】
本発明の別の態様は、胃癌細胞の生存能を低下させる方法に関する。この態様は、フォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチンを前記癌細胞に投与する工程、並びに100~400kHzの間の周波数を有する交流電場を、前記癌細胞に印加する工程を含む。本明細書で使用する場合、「生存能を低下させること」という用語は、増殖を減少させること、アポトーシスを誘導すること、又は癌細胞を死滅させることを指す。
【0033】
いくつかの例において、少なくとも印加の一部分は、少なくとも投与の一部分と同時に行われる。
【0034】
いくつかの例において、印加は、少なくとも72時間の持続時間を有する。72時間の電場の印加は、単回の72時間間隔で達成されてもよい。代替方法として、電場の印加は、休止によって中断されることがある。例えば、それぞれ12時間の持続時間で、セッション間に2時間の休止がある6セッション。
【0035】
いくつかの例において、交流電場の周波数は120~180kHzの間である。いくつかの例において、交流電場の周波数は145~155kHzの間である。
【0036】
いくつかの例において、フォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチンのそれぞれは、治療上有効な濃度で前記癌細胞に送達され、前記癌細胞の少なくともいくつかにおいて、交流電場の電界強度は少なくとも1V/cmである。これらの例のいくつかにおいて、印加は、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数は、120~180kHzの間である。これらの例のいくつかにおいて、印加は、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数は、145~155kHzの間である。本明細書で使用する場合、「治療上有効な濃度」という用語は、意図された目的(例えば、癌の治療)を達成するために十分な1種の薬剤又は複数の薬剤の濃度を指す。
【0037】
本発明の別の態様は、対象者の胃癌を治療する方法に関する。この態様は、フルオロウラシルを対象者に投与する工程、及び100~400kHzの間の周波数を有する交流電場を、前記対象者の目標領域に印加する工程を含む。
【0038】
いくつかの例において、少なくとも印加の一部分は、フルオロウラシルの投与後及びフルオロウラシルが対象者の体から排出されるか、又は枯渇する前に行われる。いくつかの例において、印加は、少なくとも72時間の持続時間を有する。72時間の電場の印加は、単回の72時間間隔で達成されてもよい。代替方法として、電場の印加は、休止によって中断されることがある。例えば、それぞれ12時間の持続時間で、セッション間に2時間の休止がある6セッション。
【0039】
いくつかの例において、交流電場の周波数は120~180kHzの間である。いくつかの例において、交流電場の周波数は145~155kHzの間である。
【0040】
いくつかの例において、フルオロウラシルは、治療上有効な用量で投与され、少なくとも目標領域の一部分において、交流電場の電界強度は少なくとも1V/cmである。これらの例のいくつかにおいて、印加は、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数は、120~180kHzの間である。これらの例のいくつかにおいて、印加は、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数は、145~155kHzの間である。
【0041】
いくつかの例において、フルオロウラシルの投与は、対象者へのフルオロウラシルの直接投与によって達成される。いくつかの例において、フルオロウラシルの投与は、対象者へのフルオロウラシルの間接投与によって達成される。フルオロウラシルの間接投与は、例えば、対象者の体内でフルオロウラシルに変換されるプレプロドラッグ(例えば、カペシタビン)を対象者に投与することによって達成されうる。
【0042】
本明細書で使用する場合、「間接的」又は「間接」という用語は、体内(例えば、肝臓)でフルオロウラシルに変換される前駆体、プレプロドラッグ、プロドラッグ、又は異なる薬剤を対象者に投与することを指す。例えば、Schellens、The Oncologist、2007;12:152-15、Hannekeら、Cancer Research、63、7609~7612頁、2003年11月15日を参照。いくつかの例において、前駆体、プレプロドラッグ、プロドラッグ、又は異なる薬剤を対象者に投与することは、副作用を減少させるか、又は望ましい方法で薬物動態を変えることで、有利となりうる。
【0043】
本発明の別の態様は、胃癌細胞の生存能を低下させる方法に関する。この態様は、フルオロウラシルを前記癌細胞に投与する工程、及び100~400kHzの間の周波数を有する交流電場を、前記癌細胞に印加する工程を含む。
【0044】
いくつかの例において、少なくとも印加の一部分は、少なくとも投与の一部分と同時に行われる。
【0045】
いくつかの例において、印加は、少なくとも72時間の持続時間を有する。72時間の電場の印加は、単回の72時間間隔で達成されてもよい。代替方法として、電場の印加は、休止によって中断されることがある。例えば、それぞれ12時間の持続時間で、セッション間に2時間の休止がある6セッション。
【0046】
いくつかの例において、交流電場の周波数は120~180kHzの間である。いくつかの例において、交流電場の周波数は145~155kHzの間である。
【0047】
いくつかの例において、フルオロウラシルは、治療上有効な濃度で前記癌細胞に投与され、前記癌細胞の少なくともいくつかにおいて、交流電場の電界強度は少なくとも1V/cmである。これらの例のいくつかにおいて、印加は、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数は、120~180kHzの間である。これらの例のいくつかにおいて、印加は、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数は、145~155kHzの間である。
【0048】
いくつかの例において、フルオロウラシルの投与は、前記細胞へのフルオロウラシルの直接投与によって達成される。他の例において、フルオロウラシルは、前記細胞に間接的に投与されうる。
【0049】
本発明の別の態様は、対象者における胃癌細胞の生存能を低下させる方法に関する。この態様は、フルオロウラシルを対象者における胃癌細胞に投与する工程、及び100~400kHzの間の周波数を有する交流電場を、前記対象者における胃癌細胞に印加する工程を含む。
【0050】
いくつかの例において、少なくとも印加の一部分は、少なくとも投与の一部分と同時に行われる。
【0051】
いくつかの例において、印加は、少なくとも72時間の持続時間を有する。72時間の電場の印加は、単回の72時間間隔で達成されてもよい。代替方法として、電場の印加は、休止によって中断されることがある。例えば、それぞれ12時間の持続時間で、セッション間に2時間の休止がある6セッション。
【0052】
いくつかの例において、交流電場の周波数は120~180kHzの間である。いくつかの例において、交流電場の周波数は145~155kHzの間である。
【0053】
いくつかの例において、フルオロウラシルは、治療上有効な濃度で対象者に投与され、対象者における胃癌細胞の少なくともいくつかにおいて、交流電場の電界強度は少なくとも1V/cmである。これらの例のいくつかにおいて、印加は、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数は、120~180kHzの間である。これらの例のいくつかにおいて、印加は、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数は、145~155kHzの間である。
【0054】
いくつかの例において、フルオロウラシルの投与は、対象者へのフルオロウラシルの直接投与によって達成される。他の例において、フルオロウラシルは、対象者に間接的に投与されうる。
【実施例
【0055】
(実施例1)
目的及び設計
ある試験の目的は、FOLFOX(オキサリプラチン、5-FU、及びロイコボリン)とTTフィールドの組合せ治療の有効性を、胃癌細胞株AGS及びKATO IIIにおいて試験することであった。この試験で評価される治療転帰には、(1)細胞毒性効果、(2)アポトーシスの分析、(3)クローン原性に対する効果、及び(4)包括的効果が含まれた。
【0056】
各細胞株をinovitroシャーレに播種し、TTフィールドを用いる場合と用いない場合で、各化学療法剤(オキサリプラチン、5-FU、及びロイコボリン)を単独で用いて、また特定の濃度の3種全ての組合せ(FOLFOX)を用いて処理した。
【0057】
処理時間は、2種の試験した細胞株において効果的であることが知られている周波数(150kHz)並びにKATO IIIでは1.6V/cm RMS及びAGSでは1.0V/cm RMSの強度において72時間であった。処理の間、24時間(「時間」)毎に全てのシャーレの培地を取り換えた。
【0058】
72時間の処理後、培地及び細胞を回収し、細胞数によって細胞毒性を決定した。アポトーシス分析のため、細胞(前記培地からの細胞を含む)を、アネキシンV及び7AADで染色した。クローン原性に対する効果の試験をするために、細胞を播種してコロニーとした。
【0059】
6~14日後にコロニーを固定して染色し、計数してクローン原性に対する効果を決定した。包括的効果を、前記細胞毒性効果と前記クローン原性に対する効果を乗じて算出した。
【0060】
(実施例2)
処理
実験開始の24時間前に、細胞をinovitroシャーレ及びペトリ皿に播種した。表記された濃度の各化学療法の構成成分単独又はFOLFOXを含有する培地及び対照培地を細胞に加え、前記シャーレをTTフィールドに接続する(SOP-BI-009でのように)か、又は37℃、5%CO2下で72時間増殖させた。各処理を8回繰り返し行った(8枚のシャーレ)。24時間毎に培地を取り換えた。実験の最後に、前記細胞を回収し、細胞数によって細胞毒性を決定し、少数の細胞を播種してコロニーとし、アポトーシス分析のため、前記細胞(培地からの細胞を含む)を、アネキシンV及び7AADで染色した。
【0061】
(実施例3)
デバイス及び材料
TTフィールドは、治療する胃癌細胞において効果的であることが知られている周波数(150kHz)並びにKATO IIIでは1.6V/cm RMS及びAGSでは1.0V/cm RMSの強度で印加された。TTフィールドジェネレーター(Inovitroシステム)を使用して前記細胞を処理した。このデバイスは、患者に対するTTフィールド印加を模倣するためを開発された。
【0062】
(実施例4)
細胞株
AGS:ATCC(登録商標) 番号:CRL-1739(商標)
完全増殖培地:10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン含有のATCC処方F-12K培地
細胞継代:3~40
倍加時間:15時間
KATO III:
ATCC(登録商標) 番号:HTB-103(商標)
完全増殖培地:20%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン含有のATCC処方イスコフ改変ダルベッコ培地
細胞継代:3~40
倍加時間:37時間
【0063】
(実施例5)
化学療法
オキサリプラチン:Sigma社参照番号:Y0000271 ロット番号005P37 有効期限:31/10/2018。PBSで5mMに再構成。-20℃で保存。
5-FU:Sigma社参照番号:PHR1227 ロット番号LRAA9039 有効期限:01/12/2020。DMSOで0.4Mに再構成。4℃で保存。
ロイコボリン:Sigma社参照番号:PHR154 ロット番号LRAA418 有効期限:01/12/2019。水で10mMに再構成。-20℃で保存。
【0064】
(実施例6)
統計解析
細胞毒性効果:各処理から少なくとも5枚のシャーレにおける細胞数の平均及び標準偏差をExcelソフトウェアで算出した。これらの繰り返しからの平均を算出して平均及び標準誤差を出し、GraphPadソフトウェアを用いて、エラーバーと共にXY点グラフで対照(薬剤処理なし)に対する割合として表示する。有意性は、GraphPadソフトウェア用いた二元配置ANOVAと続く多重比較によって評価された。
【0065】
アポトーシス効果:各処理から少なくとも5枚のシャーレにおける各マーカー染色(アネキシンV及び7AAD)の細胞画分の平均をExcelソフトウェアで算出した。これらの繰り返しからの平均を算出して平均を出し、GraphPadソフトウェアを用いて、積み重ね棒グラフで表示する。
【0066】
クローン原性に対する効果:各ウェルからのコロニーをImageJソフトウェアを用いて計数した。各処理から少なくとも5つのウェルのコロニー数の平均及び標準偏差をexcelソフトウェアで算出した。これらの繰り返しからの平均を算出して平均及び標準誤差を出し、GraphPadソフトウェアを用いて、エラーバーと共にXY点グラフで対照(薬剤処理なし)に対する割合として表示する。有意性は、GraphPadソフトウェア用いた二元配置ANOVAと続く多重比較によって評価された。
【0067】
包括的効果:各コロニー数を、そのシャーレの細胞毒性効果の割合で乗じ、各処理の平均及び標準偏差をExcelソフトウェアで算出した。これらの繰り返しからの平均を算出して平均及び標準誤差を出し、GraphPadソフトウェアを用いて、エラーバーと共にXY点グラフで対照(薬剤処理なし)に対する割合として表示する。有意性は、GraphPadソフトウェア用いた二元配置ANOVAと続く多重比較によって評価された。
【0068】
前記実験は、TTフィールド+化学療法群の包括的効果における評価が、同等の化学療法剤濃度のみ又はTTフィールドのみの効果と比較して有意であるかどうかを判定するために行われた。
【0069】
(実施例7)
実験の組立て及び結果
A.AGS+オキサリプラチン:
実験開始24時間前に、15*103の細胞を各シャーレに播種した。オキサリプラチン含有の培地を、25、50、100、200、及び400nMの濃度で使用し、前記細胞に加えた。各濃度毎にTTフィールドを用いるシャーレ8枚及びTTフィールドを用いないシャーレ8枚。TTフィールドを用いるシャーレをTTフィールドに72時間接続し、TTフィールドを用いないシャーレを標準条件(37℃、5%CO2インキュベーター)で増殖させた。24時間毎に培地を取り換えた。
【0070】
72時間の処理後、培地及び細胞を回収し、細胞数を計数して(SOP-BI-009でのように)細胞毒性を立証した。各濃度毎に少なくとも3回繰り返した結果をTable 1(表1)及び図1に示す:
【0071】
【表1】
【0072】
前記細胞を分析してAGSとオキサリプラチンのアポトーシス効果を決定した。各濃度毎に少なくとも3回繰り返した結果をTable 2(表2)及び図2に示す:
【0073】
【表2】
【0074】
更に、少数の細胞を播種してコロニーとし、6~14日後にコロニーを固定して染色し、計数してクローン原性に対する効果を決定した。各濃度毎に少なくとも2回繰り返した結果をTable 3(表3)及び図3に示す:
【0075】
【表3】
【0076】
包括的効果を、前記細胞毒性効果と前記クローン原性に対する効果を乗じて算出した。各濃度毎に少なくとも2回繰り返した結果をTable 4(表4)及び図4に示す:
【0077】
【表4】
【0078】
(実施例8)
AGS+5-FU
これらの実験において、実験開始24時間前に、15×103の細胞を各シャーレに播種した。
【0079】
5-FU含有の培地を、0.5、1.5、4.5、13.5、及び40μMの濃度で、TTフィールドを用いるシャーレ8枚及びTTフィールドを用いないシャーレ8枚の細胞に加えた。TTフィールドを用いるシャーレをTTフィールドに72時間接続し、TTフィールドを用いないシャーレを標準条件(37℃、5%CO2インキュベーター)で増殖させた。24時間毎に培地を取り換えた。
【0080】
72時間の処理後、培地及び細胞を回収し、細胞数を計数して細胞毒性を立証した。各濃度毎に少なくとも2回繰り返した結果をTable 5(表5)及び図5に示す:
【0081】
【表5】
【0082】
アポトーシスに関して前記細胞を分析した。各濃度毎に少なくとも4回繰り返した結果をTable 6(表6)及び図6に示す:
【0083】
【表6】
【0084】
更に、少数の細胞を播種してコロニーとし、6~14日後にコロニーを固定して染色し、計数してクローン原性に対する効果を決定した。各濃度毎に少なくとも2回繰り返した結果をTable 7(表7)及び図7に示す:
【0085】
【表7】
【0086】
5-FU単独及びTTフィールド処理を伴う場合の包括的効果を、前記細胞毒性効果と前記クローン原性に対する効果を乗じて算出した。各濃度毎に少なくとも2回繰り返した結果をTable 8(表8)及び図8に示す:
【0087】
【表8】
【0088】
(実施例9)
AGS+ロイコボリン
実験開始24時間前に、15×103の細胞を各シャーレに播種した。
【0089】
ロイコボリン含有の培地を、0.2、1、及び5μMの濃度で、各濃度に対してTTフィールドを用いるシャーレ8枚及びTTフィールドを用いないシャーレ8枚の細胞に加えた。TTフィールドを用いるシャーレをTTフィールドに72時間接続し、TTフィールドを用いないシャーレを標準条件(37℃、5%CO2インキュベーター)で増殖させた。24時間毎に培地を取り換えた。
【0090】
72時間の処理後、培地及び細胞を回収し、細胞数を計数して細胞毒性を立証した。各濃度毎に2回繰り返した結果をTable 9(表9)及び図9に示す:
【0091】
【表9】
【0092】
アポトーシスに関して前記細胞を分析した。ロイコボリン単独ではアポトーシスに対する大きな効果を示すことが期待されないため、結果を繰り返し求めることはなかった。これらの実験のうちの1つの結果をTable 10(表10)及び図10に示す:
【0093】
【表10】
【0094】
更に、少数の細胞を播種してコロニーとした。6~14日後にコロニーを固定して染色し、計数してクローン原性に対する効果を決定した。ロイコボリン単独では大きな効果を示すことが期待されないため、結果を繰り返し求めることはなかった。1つの実験の結果をTable 11(表11)及び図11に示す:
【0095】
【表11】
【0096】
ロイコボリン単独及びTTフィールド処理を伴う場合の包括的効果を、前記細胞毒性効果と前記クローン原性に対する効果を乗じて算出した。1つの実験の結果をTable 12(表12)及び図12に示す:
【0097】
【表12】
【0098】
(実施例10)
AGS+FOLFOX
実験開始24時間前に、15×103の細胞を各シャーレに播種した。
【0099】
15~25%の細胞数減少を示す濃度でオキサリプラチン単独、5-FU単独、及びロイコボリン単独、並びに3種全ての化学療法剤の混合物(FOLFOX)を含有する培地を、各化学療法に対してTTフィールドを用いるシャーレ8枚及びTTフィールドを用いないシャーレ8枚の細胞に加えた。前記濃度は以下の通りであった:オキサリプラチン-50nM、5-FU-0.5μM、ロイコボリン-5μM。
【0100】
TTフィールドを用いるシャーレをTTフィールドに72時間接続し、TTフィールドを用いないシャーレを標準条件(37℃、5%CO2インキュベーター)で増殖させた。24時間毎に培地を取り換えた。
【0101】
72時間の処理後、培地及び細胞を回収し、細胞数を計数して細胞毒性を立証した。各濃度毎に3回繰り返した結果をTable 13(表13)及び図13に示す:
【0102】
【表13】
【0103】
アポトーシス効果に関して前記細胞を分析した。各濃度毎に2回繰り返した結果をTable 14(表14)及び図14に示す:
【0104】
【表14】
【0105】
更に、少数の細胞を播種してコロニーとした。6~14日後にコロニーを固定して染色し、計数してクローン原性に対する効果を決定した。各濃度毎に少なくとも2回繰り返した結果をTable 15(表15)及び図15に示す:
【0106】
【表15】
【0107】
前記化学療法の包括的効果を、前記細胞毒性効果と前記クローン原性に対する効果を乗じて算出した。各処理毎に少なくとも3回繰り返した結果をTable 16(表16)及び図16に示す:
【0108】
【表16】
【0109】
(実施例11)
KATO III+オキサリプラチン
実験開始24時間前に、20×103の細胞を各シャーレに播種した。
【0110】
オキサリプラチン含有の培地を、50、100、200、400、及び800nMの濃度で用意し、各濃度に対してTTフィールドを用いるシャーレ8枚及びTTフィールドを用いないシャーレ8枚の細胞に加えた。TTフィールドを用いるシャーレをTTフィールドに72時間接続し、TTフィールドを用いないシャーレを標準条件(37℃、5%CO2インキュベーター)で増殖させた。24時間毎に培地を取り換えた。
【0111】
72時間の処理後、培地及び細胞を回収し、細胞数を計数して細胞毒性を立証した。各濃度毎に少なくとも2回繰り返した結果をTable 17(表17)及び図17に示す:
【0112】
【表17】
【0113】
アポトーシス効果に関して前記細胞を分析した。各濃度毎に少なくとも3回繰り返した結果をTable 18(表18)及び図18に示す:
【0114】
【表18】
【0115】
更に、少数の細胞を播種してコロニーとし、6~14日後にコロニーを固定して染色し、計数してクローン原性に対する効果を決定した。各濃度毎に2回繰り返した結果をTable 19(表19)及び図19に示す:
【0116】
【表19】
【0117】
包括的効果を、前記細胞毒性効果と前記クローン原性に対する効果を乗じて算出した。各濃度毎に2回繰り返した結果をTable 20(表20)及び図20に示す:
【0118】
【表20】
【0119】
(実施例12)
KATO III+5-FU
実験開始24時間前に、20×103の細胞を各シャーレに播種した。
【0120】
5-FU含有の培地を、1.5、4.5、13.5、及び40μMの濃度で、各濃度に対してTTフィールドを用いるシャーレ8枚及びTTフィールドを用いないシャーレ8枚の細胞に加えた。TTフィールドを用いるシャーレをTTフィールドに72時間接続し、TTフィールドを用いないシャーレを標準条件(37℃、5%CO2インキュベーター)で増殖させた。24時間毎に培地を取り換えた。
【0121】
72時間の処理後、培地及び細胞を回収し、細胞数を計数して細胞毒性を立証した。各濃度毎に少なくとも3回繰り返した結果をTable 21(表21)及び図21に示す:
【0122】
【表21】
【0123】
アポトーシス効果に関して前記細胞を分析した。各濃度毎に少なくとも3回繰り返した結果をTable 22(表22)及び図22に示す:
【0124】
【表22】
【0125】
更に、少数の細胞を播種してコロニーとし、6~14日後にコロニーを固定して染色し、計数してクローン原性に対する効果を決定した。各濃度毎に少なくとも3回繰り返した結果をTable 23(表23)及び図23に示す:
【0126】
【表23】
【0127】
包括的効果を、前記細胞毒性効果と前記クローン原性に対する効果を乗じて算出した。各濃度毎に少なくとも3回繰り返した結果をTable 24(表24)及び図24に示す:
【0128】
【表24】
【0129】
(実施例13)
KATO III+ロイコボリン
実験開始24時間前に、20×103の細胞を各シャーレに播種した。
【0130】
ロイコボリン含有の培地を、2.5、5、及び10μMの濃度で、各濃度に対してTTフィールドを用いるシャーレ8枚及びTTフィールドを用いないシャーレ8枚の細胞に加えた。TTフィールドを用いるシャーレをTTフィールドに72時間接続し、TTフィールドを用いないシャーレを標準条件(37℃、5%CO2インキュベーター)で増殖させた。24時間毎に培地を取り換えた。
【0131】
72時間の処理後、培地及び細胞を回収し、細胞数を計数して細胞毒性を立証した。ロイコボリン単独では大きな細胞毒性効果を示すことが期待されないため、実験を繰り返し行わなかった。1つの実験の結果をTable 25(表25)及び図25に示す:
【0132】
【表25】
【0133】
アポトーシス効果に関して前記細胞を分析した。ロイコボリン単独ではアポトーシスに対する大きな効果を示すことが期待されないため、結果を繰り返し求めることはなかった。1つの実験の結果をTable 26(表26)及び図26に示す:
【0134】
【表26】
【0135】
更に、少数の細胞を播種してコロニーとし、6~14日後にコロニーを固定して染色し、計数してクローン原性に対する効果を決定した。ロイコボリン単独では大きな効果を示すことが期待されないため、結果を繰り返し求めることはなかった。1つの実験の結果をTable 27(表27)及び図27に示す:
【0136】
【表27】
【0137】
包括的効果を、前記細胞毒性効果と前記クローン原性に対する効果を乗じて算出した。1つの実験の結果をTable 28(表28)及び図28に示す:
【0138】
【表28】
【0139】
(実施例14)
KATO III+FOLFOX
実験開始24時間前に、20×103の細胞を各シャーレに播種した。
【0140】
15~25%の細胞数減少を示す濃度でオキサリプラチン単独、5-FU単独、及びロイコボリン単独、並びに3種全ての化学療法剤の混合物(FOLFOX)を含有する培地を、各化学療法に対してTTフィールドを用いるシャーレ8枚及びTTフィールドを用いないシャーレ8枚の細胞に加えた。正確な濃度は以下の通りであった:オキサリプラチン-50nM、5-FU-1.5μM、ロイコボリン-5μM。
【0141】
TTフィールドを用いるシャーレをTTフィールドに72時間接続し、TTフィールドを用いないシャーレを標準条件(37℃、5%CO2インキュベーター)で増殖させた。24時間毎に培地を取り換えた。
【0142】
72時間の処理後、培地及び細胞を回収し、細胞数を計数して細胞毒性を立証した。各濃度毎に少なくとも3回繰り返した結果をTable 29(表29)及び図29に示す:
【0143】
【表29】
【0144】
アポトーシス効果に関して前記細胞を分析した。各濃度毎に2回繰り返した結果をTable 30(表30)及び図30に示す:
【0145】
【表30】
【0146】
更に、少数の細胞を播種してコロニーとし、6~14日後にコロニーを固定して染色し、計数してクローン原性に対する効果を決定した。各処理毎に少なくとも4回繰り返した結果をTable 31(表31)及び図31に示す:
【0147】
【表31】
【0148】
包括的効果を、前記細胞毒性効果と前記クローン原性に対する効果を乗じて算出した。各処理毎に少なくとも4回繰り返した結果をTable 32(表32)及び図32に示す:
【0149】
【表32】
【0150】
(実施例15)
合格基準
(a)全ての実験は以下の合格基準を満たした。
(b)各繰り返しは、セクション6iii及び6ivに明記される基準を満たす少なくとも5枚のシャーレを含む。
(c)各実験は少なくとも2回繰り返された。
(d)記録が、技術的失敗を示唆する外れ値(温度<35.0℃又は>39.0℃、電気抵抗<50Ohm又は>400Ohm)を示す場合、シャーレを不適合とした。
(e)技術的失敗が示唆されなくとも、特定のシャーレにおいて測定された細胞毒性効果が(他のシャーレの平均-(2×他のシャーレの標準偏差))未満、又は(他のシャーレの平均+(2×他のシャーレの標準偏差))超である場合、シャーレを不適合とした。
【0151】
AGS+オキサリプラチンの結果
AGS細胞におけるオキサリプラチン単独の細胞毒性効果に比べてオキサリプラチン+TTフィールドの細胞毒性効果は有意に高い(二元配置ANOVA p<0.001)。アポトーシスアッセイにおいて、我々は、アポトーシスの異なる段階にある残存細胞の割合が上昇していることを確認できる。この上昇は、オキサリプラチン単独処理細胞に比べてオキサリプラチン+TTフィールド処理細胞ではより高い。アポトーシスにおけるこの上昇は、クローン原性に対する効果及び包括的効果に置き換えられ、この結果は、オキサリプラチン単独処理細胞に比べてオキサリプラチン+TTフィールド処理細胞のコロニー数における有意な減少を示す(二元配置ANOVA p<0.001)。
【0152】
AGS+5-FUの結果
AGS細胞における5-FU単独の効果に比べて5-FU+TTフィールドの細胞毒性効果は有意に高い(二元配置ANOVA p<0.001)。アポトーシスアッセイにおいて、我々は、アポトーシスの異なる段階にある残存細胞の割合が上昇していることを確認できる。この上昇は、5-FU単独処理細胞に比べて5-FU+TTフィールド処理細胞ではより高い。アポトーシスにおけるこの上昇は、クローン原性に対する効果及び包括的効果に置き換えられ、この結果は、5-FU単独処理細胞に比べて5-FU+TTフィールド処理細胞のコロニー数における有意な減少を示す(二元配置ANOVA p<0.001)。とりわけ、フルオロウラシルとTTフィールドの間の相互作用は、AGS細胞で認められる包括的効果に基づいて、相乗的である。
【0153】
AGS+ロイコボリンの結果
予想どおり、AGS細胞において、ロイコボリン単独では細胞毒性効果、アポトーシス効果、及びクローン原性に対する効果は認められない。認められる効果はTTフィールドによるもののみであった。
【0154】
AGS+FOLFOXの結果
FOLFOX単独の効果に比べてFOLFOX+TTフィールドの細胞毒性効果は有意に高い(二元配置ANOVAに続く多重比較 p<0.001(5-FUから除外))。更に、TTフィールド単独の効果に比べてTTフィールド+FOLFOXの細胞毒性効果も有意に高い。アポトーシスアッセイにおいて、我々は、アポトーシスの異なる段階にある残存細胞の割合が上昇していることを確認できる。この上昇は、FOLFOX単独処理細胞に比べてFOLFOX+TTフィールド処理細胞では明らかに高い。コロニーアッセイにおいて、各化学療法でのTTフィールドの効果は顕著であるが、化学療法の付加的効果はない。各化学療法単独、FOLFOX単独、及びTTフィールド単独に比べて各化学療法及びFOLFOX+TTフィールドの包括的効果は有意に高い(二元配置ANOVAに続く多重比較 p<0.05)。
【0155】
KATO III+オキサリプラチンの結果
KATO III細胞におけるオキサリプラチン単独の効果に比べてオキサリプラチン+TTフィールドの細胞毒性効果は有意に高い(二元配置ANOVA p<0.001)。アポトーシスアッセイにおいて、我々は、アポトーシスの異なる段階にある残存細胞の割合が上昇していることを確認できる。この上昇は、オキサリプラチン単独処理細胞に比べてオキサリプラチン+TTフィールド処理細胞ではより高い。アポトーシスにおけるこの上昇は、クローン原性に対する効果及び包括的効果に置き換えられ、この結果は、オキサリプラチン単独処理細胞に比べてオキサリプラチン+TTフィールド処理細胞のコロニー数における有意な減少を示す(二元配置ANOVA p<0.001)。KATO IIIにおけるTTフィールド単独のクローン原性に対する効果及び包括的効果は極めて高い(それぞれ40%及び32%)。したがって、低濃度オキサリプラチンにおける付加的効果はない。
【0156】
KATO III+5-FUの結果
KATO III細胞における5-FU単独の効果に比べて5-FU+TTフィールドの細胞毒性効果は有意に高い(二元配置ANOVA p<0.001)。アポトーシスアッセイにおいて、我々は、アポトーシスの異なる段階にある残存細胞の割合が上昇していることを確認できる。この上昇は、5-FU単独処理細胞に比べて5-FU+TTフィールド処理細胞ではより高い。アポトーシスにおけるこの上昇は、クローン原性に対する効果及び包括的効果に置き換えられ、この結果は、5-FU単独処理細胞に比べて5-FU+TTフィールド処理細胞のコロニー数における有意な減少を示す(二元配置ANOVA p<0.001)。
【0157】
KATO III+ロイコボリンの結果
予想どおり、KATO III細胞において、ロイコボリン単独では細胞毒性効果、アポトーシス効果、及びクローン原性に対する効果は認められない。認められる効果はTTフィールドによるもののみであった。
【0158】
KATO III+FOLFOXの結果
FOLFOX単独に比べてFOLFOX+TTフィールドの細胞毒性効果は、TTフィールド単独と比べたFOLFOX+TTフィールドの細胞毒性効果と同様に、より高い(しかし、有意ではない)。この結果は、アポトーシスアッセイ並びにクローン原性に対する効果及び包括的効果において、十分に反映されている。考えられる説明としては、KATO III細胞においてTTフィールド単独及びFOLFOX単独は、高い細胞毒性効果及びクローン原性に対する効果を示すため、その組合せは、拮抗的ではないものの、あまり効果的ではないということである。
【0159】
一般的な結論
AGS細胞に関する結果によると、TTフィールドと組み合わせた各化学療法単独及びFOLFOXにおいて、包括的効果が有意に上昇している。KATO III細胞に関する結果は、同じ傾向を示すが有意ではなく、恐らく、この細胞株が単独の各処理に対して感受性が高いためであろう。
【0160】
付属書類Aに明記されている周波数、電界強度、及び持続時間を用いて、これらの実験は実施されたが、それらのパラメータは変更されるであろうことに留意されたい。例えば、周波数は、145~155kHzの間、120~180kHzの間、又は100~400kHzの間であってよく、電界強度は、0.5~5V/cmの間、又は少なくとも1V/cmであってよく、持続時間は、8時間よりも長くて良い。
【0161】
(実施例16)
TTフィールドをXelox又は個別のその構成成分と組み合わせて用いた胃癌の治療に関する現在進行中の治験
治験デバイス-TTフィールド-モデル:NovoTTF-100L(P)150KHz
治療時間:1日当たり少なくとも18時間の平均(月平均)使用
治験薬:オキサリプラチン:50mg/バイアル、カペシタビン:500mg/錠、12錠/箱
XELOX化学療法:オキサリプラチン:130mg/m2、各治療サイクルの1日目に2~6時間のiv GTT(耐糖能試験)、3週間(21日間)/治療サイクル、カペシタビン:1000mg/m2、経口、各治療サイクルの1~14日目に1日2回、3週間(21日間)/治療サイクル、
XELOX:21日間/治療サイクル。
【0162】
治験責任医師は、地元の臨床診療に従って、中国のNMPAによって承認されており、対応する適応症に対して許容される先発医薬品又は後発医薬品であるオキサリプラチン、カペシタビンを患者に処方するであろう。投与量は、治験実施計画書の治療用量に準拠するべきである。
【0163】
HER-2陽性患者に対しては、XELOXレジメンを基に、トラスツズマブが許容され、これは以下の通りとする。
オキサリプラチン:130mg/m2、1日目に2~6時間のiv gtt、3週間毎に1回、
カペシタビン:1000mg/m2、経口、1~14日目に1日2回、3週間/サイクル、
トラスツズマブ:1日目に点滴で8mg/kgの開始用量、続いて6mg/kgを3週間毎に1回注入。初回注入は約90分間かけて行い、その後、患者における前記薬剤の忍容性が高い場合は、30~60分間に短縮してもよい。治療の遅延又は中断があった場合、1週間以内の遅延であった場合は、維持用量(6mg/kg)が直接使用されるであろうが、1週間を超える場合は、負荷用量(8mg/kg)が再度用いられるべきである。21日間毎が治療サイクルである。
HER2発現陽性の同定方法:治験施設の病理部によって最近得られた、原発巣又は転移巣の病理学的な検査又は検討の結果のうち、腫瘍細胞の免疫組織化学的(IHC)染色は少なくとも1回は3+を示すか、又は腫瘍のIHC染色は2+を示し、更に蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)若しくは免疫発色in situハイブリダイゼーション。
【0164】
被験者数
過去のデータに基づき、これまでに全身療法を施されていない患者であって、局所性の進行した、若しくは転移性の進行した胃食道接合部腺癌又は胃腺癌の患者のORRは、第一選択化学療法において45%と推定される。化学療法と同時にTTフィールドを用いた患者におけるORRは、45%を上回るであろうことが想定される。被験者数は、この治験が有効性の推定試験であることから、95%信頼区間の幅等の推定される精度に従って決定される。異なるORRのそれぞれは、以下に示される95%CIの範囲内に含まれる。このため、95%CIの下限値の少なくとも30%を確保するために、少なくとも45名の患者を登録する必要がある。しかし、10%の脱落率を考慮して、50名の患者を実際には登録するであろう。
【0165】
【表33】
【0166】
解析対象集団
治験企図(ITT)-同意説明文書に署名し、本臨床試験に含まれる全ての患者。
最大の解析対象集団(FAS)-少なくとも1回用量の治験薬を投与され、ベースライン時に測定可能な腫瘍を有する全ての患者。
治験実施計画書に適合した対象集団(PPS)-FAS集団中の、少なくとも1回の腫瘍の治療後画像評価を受け、コンプライアンスが良好で、治験実施計画書の重大な違反又は治験実施計画書からの逸脱がない全ての患者。
安全性評価対象集団(SS)-少なくとも1回用量の治験薬を投与され、安全性評価を受けた全ての患者。
【0167】
有効性の解析
有効性の主要評価項目:
有効性の主要評価項目は、治験責任医師に評価されたORRである。
客観的奏効率(ORR):治験治療を受け、RECISTに従って評価された最良総合効果(BOR)を有する患者の割合。
完全奏効(CR)又は部分奏効(PR)として1.1。
【0168】
有効性の副次的評価項目
Kaplan-Meier方法は、腫瘍無増悪期間(TTP)、無増悪生存期間(PFS)、及び全生存期間(OS)における生存時間関数をそれぞれ推定するために使用され、それらの生存曲線プロット、TTP中央値、PFS中央値、12ヵ月全生存率及びこのそれぞれの95%信頼区間(95%CI)が得られるであろう。詳細に関しては統計解析計画を参照されたい。
【0169】
特定の実施例は、in vitro試験について記載されるが、その試験結果は、in vitroにおける癌細胞の代わりに、(例えば、Optune(登録商標)システムを用いた)生体への投与及び印加を実施することによって、in vivo状況にまで広げられうることに留意されたい。
【0170】
in vitro状況において、特定の実施例で検討される種々の薬剤の癌細胞への送達は、その薬剤又はその複数の薬剤が、癌細胞を保持している容器に投入された最初の時点(t1)から、その薬剤又はその複数の薬剤が除去されるか、又は枯渇する時点(t2)まで継続されることに留意されたい。結果として、TTフィールドが、癌細胞にt1~t2の間印加される場合、印加ステップは、送達ステップの少なくとも一部と同時になるであろう。in vivo状況において、前記薬剤又は前記複数の薬剤の癌細胞への送達は、その薬剤又はその複数の薬剤が、(例えば、全身投与後)患者の体内で循環しているか、又は癌細胞の近くに投入された最初の時点(t1)から、その薬剤又はその複数の薬剤が患者の体内から排出されるか、又は枯渇する時点(t2)まで継続されうる。結果として、TTフィールドが、癌細胞にt1~t2の間印加される場合、印加ステップは、送達ステップの少なくとも一部と同時になるであろう。
【0171】
本発明は、特定の実施形態を参照して開示されているが、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の領域及び範囲から逸脱することなく、記載された実施形態への多くの修正、変化、及び変更は可能である。したがって。本発明は、記載された実施形態に限定されるものではないが、以下の特許請求の範囲の文言及び同等物によって定義される全範囲を有することが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
【手続補正書】
【提出日】2021-08-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者における胃癌を治療する、又は胃癌細胞の生存能を低下させる方法で使用するためのオキサリプラチン及びカペシタビンの組合せ物であって、
前記方法が、オキサリプラチン及びカペシタビン前記対象者又は癌細胞に投与する工程、並びに100~400kHzの間の周波数を有する交流電場を、前記対象者又は前記癌細胞の目標領域に印加する工程
を含む、組合せ物
【請求項2】
少なくとも印加の一部分が、オキサリプラチン及びカペシタビンの投与後並びにオキサリプラチン及びカペシタビンが対象者の体から排出される前に行われる、請求項1に記載の組合せ物
【請求項3】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有する、請求項1に記載の組合せ物
【請求項4】
交流電場の周波数が120~180kHzの間である、請求項1に記載の組合せ物
【請求項5】
交流電場の周波数が145~155kHzの間である、請求項1に記載の組合せ物
【請求項6】
オキサリプラチン及びカペシタビンが、治療上有効な用量で投与され、少なくとも目標領域の一部分において、交流電場の電界強度が少なくとも1V/cmである、請求項1に記載の組合せ物
【請求項7】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数が、120~180kHzの間である、請求項6に記載の組合せ物
【請求項8】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数が、145~155kHzの間である、請求項6に記載の組合せ物
【請求項9】
少なくとも印加の一部分が、少なくとも投与の一部分と同時に行われる、請求項1に記載の組合せ物
【請求項10】
オキサリプラチン及びカペシタビンのそれぞれが、治療上有効な濃度で前記癌細胞に送達され、前記癌細胞の少なくともいくつかにおいて、交流電場の電界強度が少なくとも1V/cmである、請求項1に記載の組合せ物
【請求項11】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、交流電場の周波数が、120~180kHzの間である、請求項10に記載の組合せ物
【請求項12】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、交流電場の周波数が、145~155kHzの間である、請求項10に記載の組合せ物
【請求項13】
対象者における胃癌を治療する、又は胃癌細胞の生存能を低下させる方法で使用するためのフォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチンの組合せ物であって、
前記方法が、フォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチン前記対象者又は癌細胞に投与する工程、並びに100~400kHzの間の周波数を有する交流電場を、前記対象者又は前記癌細胞の目標領域に印加する工程
を含む、組合せ物
【請求項14】
少なくとも印加の一部分が、フォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチンの投与後並びにフォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチンが対象者の体から排出される前に行われる、請求項13に記載の組合せ物
【請求項15】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有する、請求項13に記載の組合せ物
【請求項16】
交流電場の周波数が120~180kHzの間である、請求項13に記載の組合せ物
【請求項17】
交流電場の周波数が145~155kHzの間である、請求項13に記載の組合せ物
【請求項18】
フォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチンが、治療上有効な用量で投与され、少なくとも目標領域の一部分において、交流電場の電界強度が少なくとも1V/cmである、請求項13に記載の組合せ物
【請求項19】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、交流電場の周波数が、120~180kHzの間である、請求項18に記載の組合せ物
【請求項20】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数が、145~155kHzの間である、請求項18に記載の組合せ物
【請求項21】
少なくとも印加の一部分が、少なくとも投与の一部分と同時に行われる、請求項13に記載の組合せ物
【請求項22】
フォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチンのそれぞれが、治療上有効な濃度で前記癌細胞に送達され、前記癌細胞の少なくともいくつかにおいて、交流電場の電界強度が少なくとも1V/cmである、請求項13に記載の組合せ物
【請求項23】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数が、120~180kHzの間である、請求項22に記載の組合せ物
【請求項24】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数が、145~155kHzの間である、請求項22に記載の組合せ物
【請求項25】
対象者における胃癌を治療する、又は胃癌細胞の生存能を低下させる方法で使用するためのフルオロウラシルを含む薬剤であって、
前記方法が、フルオロウラシルを前記対象者又は癌細胞に投与する工程、及び100~400kHzの間の周波数を有する交流電場を、前記対象者又は前記癌細胞の目標領域に印加する工程
を含む、薬剤
【請求項26】
少なくとも印加の一部分が、フルオロウラシルの投与後及びフルオロウラシルが対象者の体から排出されるか、又は枯渇する前に行われる、請求項25に記載の薬剤
【請求項27】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有する、請求項25に記載の薬剤
【請求項28】
交流電場の周波数が120~180kHzの間である、請求項25に記載の薬剤
【請求項29】
交流電場の周波数が145~155kHzの間である、請求項25に記載の薬剤
【請求項30】
フルオロウラシルが、治療上有効な用量で投与され、少なくとも目標領域の一部分において、交流電場の電界強度が少なくとも1V/cmである、請求項25に記載の薬剤
【請求項31】
フルオロウラシルの投与が、対象者へのフルオロウラシルの直接投与によって達成される、請求項25に記載の薬剤
【請求項32】
フルオロウラシルの投与が、対象者へのフルオロウラシルの間接投与によって達成される、請求項25に記載の薬剤
【請求項33】
フルオロウラシルの間接投与が、対象者の体内でフルオロウラシルに変換されるプレプロドラッグを対象者に投与することによって達成される、請求項32に記載の薬剤
【請求項34】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数が、120~180kHzの間である、請求項33に記載の薬剤
【請求項35】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数が、145~155kHzの間である、請求項33に記載の薬剤
【請求項36】
少なくとも印加の一部分が、少なくとも投与の一部分と同時に行われる、請求項25に記載の薬剤
【請求項37】
フルオロウラシルが、治療上有効な濃度で前記癌細胞に送達され、前記癌細胞の少なくともいくつかにおいて、交流電場の電界強度が少なくとも1V/cmである、請求項25に記載の薬剤
【請求項38】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数が、120~180kHzの間である、請求項37に記載の薬剤
【請求項39】
印加が、少なくとも72時間の持続時間を有し、その交流電場の周波数が、145~155kHzの間である、請求項37に記載の薬剤
【国際調査報告】