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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-07
(54)【発明の名称】内燃機関のスーパーノック軽減方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20220331BHJP
   F02P 7/02 20060101ALI20220331BHJP
   F02P 5/155 20060101ALI20220331BHJP
   F02B 1/10 20060101ALI20220331BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
F02D45/00 368A
F02D45/00 368S
F02D45/00 362
F02P7/02 303Z
F02P5/155 D
F02B1/10
F02B37/00 302G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021548169
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(85)【翻訳文提出日】2021-08-17
(86)【国際出願番号】 US2019047866
(87)【国際公開番号】W WO2020171845
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】16/280,518
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(71)【出願人】
【識別番号】521045737
【氏名又は名称】キング アブドラ ユニバーシティ オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シン、エシャン
(72)【発明者】
【氏名】シヴァサンカラリンガム、ヴェドハラージュ
(72)【発明者】
【氏名】ラマン、ヴァリナヤガム
(72)【発明者】
【氏名】アリ、モハメド ジャアシム ムバラク
(72)【発明者】
【氏名】イム、ホング ジー
(72)【発明者】
【氏名】モーガンティ、カイ ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】カルガテジ、ゴータム ティー
(72)【発明者】
【氏名】ディブル、ロバート ダブリュー
【テーマコード(参考)】
3G005
3G019
3G022
3G023
3G384
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA05
3G005EA16
3G005EA19
3G005FA22
3G005JA32
3G019AB01
3G019CA02
3G019DA01
3G019GA01
3G022EA01
3G022GA01
3G022GA15
3G023AA01
3G384AA01
3G384BA24
3G384DA55
3G384EA01
3G384EB03
3G384EB04
3G384FA33Z
3G384FA52Z
3G384FA56Z
3G384FA57Z
(57)【要約】
燃料を燃焼室に注入して、混合気を形成することであって、燃焼室が、シリンダヘッド、シリンダ側壁、およびシリンダ側壁内で往復運動するピストンを含む、形成することを含む,内燃機関を作動させる方法が開示されており、ここで、方法は、ピストンの検出された吸気または圧縮ストローク中に、混合気のプレイグニッションを検出することと、スーパーノック状態が発生する可能性があることを決定することと、検出された圧縮ストローク内にスーパーノック対策を展開することによって、スーパーノック状態の形成を軽減することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を作動させる方法であって、
燃料を燃焼室に注入して、混合気を形成することであって、前記燃焼室が、シリンダヘッド、シリンダ側壁、および前記シリンダ側壁内で往復運動するピストンを含む、形成することと、
前記ピストンの検出された吸気または圧縮ストローク中に、前記混合気のプレイグニッションを検出することと、
スーパーノック状態が発生する可能性のある状態で、前記内燃機関が作動していることを決定することと、
前記検出された圧縮ストローク内にスーパーノック対策を展開することによって、スーパーノック状態の形成を軽減することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記スーパーノック対策が、(a)点火時期を前進させること、(b)排気弁を開いて、燃焼および未燃焼の混合気を前記燃焼室内から前記燃焼室外に通過させること、ならびに(c)追加の燃料を前記燃焼室に注入することからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スパーク時間を前進させることが、前記シリンダが上死点に到達する前に前記混合気が燃焼される設定点まで、前記スパーク時期を前進させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
排気弁を開いて、燃焼および未燃焼の混合気を前記燃焼室内から前記燃焼室外に通過させることが、前記検出された圧縮ストローク中に前記燃焼室内に位置付けられたスパークプラグを通常の放電から遮断することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
プレイグニッションを検出することが、(a)イオンセンサ、(b)圧力センサ、ならびに(c)クランク角度センサ、クランク速度センサ、およびクランク加速度計のうちの1つ以上からなる群から選択されるセンサによる感知を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記イオンセンサが、(a)交流位相ロックループ回路またはバンドパスフィルタ回路、および(b)スパークプラグからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記内燃機関がスーパーノック状態が発生する可能性がある状態で作動していることを決定することが、スパークプラグが放電される前にあるクランク角度で前記燃焼室内のイオン電流を感知することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記スーパーノック状態が発生する可能性があるという決定が、機関回転速度および機関負荷を評価することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記クランク加速度計が、前記ピストンに連結されたクランクシャフトの変化を検出する、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
シリンダヘッドおよびシリンダ側壁を含む機関シリンダと、
前記機関シリンダ内で往復運動するピストンであって、前記ピストン、前記シリンダヘッド、および前記シリンダ側壁が燃焼室を少なくとも部分的に画定する、ピストンと、
前記燃焼室内に延在するように位置付けられたスパークプラグと、
前記燃焼室内の状態をサンプリングするように位置付けられたイオンセンサと、
前記イオンセンサおよび前記スパークプラグと電子通信する機関制御モジュールであって、前記機関制御モジュールが、プロセッサと、前記プロセッサによって実行されると、
検出された吸気ストロークまたは圧縮ストロークのどのクランク角度で、前記イオンセンサが前記燃焼室内のイオン電流を感知するかを評価することと、
前記スパークプラグが放電される前にイオン電流が検出されたときに、前記検出された圧縮ストローク内でスーパーノック対策を展開することと、を行うコンピュータ可読命令セットを記憶するメモリと、を含む、機関制御モジュールと、を含む、内燃機関。
【請求項11】
前記燃焼室を選択的に閉じる排気弁と、
前記排気弁に連結されたリフト機構であって、前記リフト機構が、前記機関制御モジュールと電子的に通信している、リフト機構と、をさらに含む、請求項10に記載の内燃機関。
【請求項12】
前記イオンセンサが、直流回路または交流位相ロックループ回路またはバンドパスフィルタ回路からなる、請求項10に記載の内燃機関。
【請求項13】
前記燃焼室と選択的に流体連絡している吸気マニホルドを加圧するように位置付けられた圧縮機をさらに含む、請求項10に記載の内燃機関。
【請求項14】
前記機関制御モジュールが、前記ピストンが上死点に到達する前に、前記検出された圧縮ストローク中に前記スパークプラグを早期に放電する前記スーパーノック対策を展開する、請求項10~13のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項15】
前記機関制御モジュールが、前記検出された圧縮ストローク中に前記スパークプラグを放電して、前記ピストンが上死点に到達する前に前記燃焼室内に存在する混合気の残りのすべてを燃焼させる、請求項14に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月20日に出願された米国出願第16/280,518号の優先権を主張し、その開示全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、内燃機関に関し、より具体的には、スーパーノック軽減制御を有する内燃機関に関する。
【0003】
背景技術
過給機内燃機関には、吸気ストローク中に燃焼室に入る空気の量を増やすために吸気マニホルドを加圧するスーパーチャージャーまたはターボチャージャーが含まれる。特定の作動状態では、このような機関はスーパーノックを発生する傾向があり、スーパーノックは、燃焼室内の混合気が事前に点火し、シリンダ圧力が高くなり、機関構成要素が損傷する可能性がある状態である。
【発明の概要】
【0004】
したがって、スーパーノック軽減制御を含む内燃機関が望まれ得る。本明細書に開示されるように、内燃機関は、スーパーノックの状態がいつ発生するかを検出し、スーパーノック対策を展開して、検出された吸気または圧縮ストロークにおけるスーパーノック状態の形成を低減または排除する、スーパーノック軽減制御を含み得る。内燃機関の機関制御モジュールは、スーパーノックにつながる状態の存在、例えば、混合気のプレイグニッション、燃焼室内の圧力上昇の加速、またはスパークプラグの排出前の機関クランクシャフトの回転速度の異常な低下を感知することができる。これらの状態を早期に検出することにより、圧縮ストローク内で対策を展開して、検出された圧縮ストローク中のスーパーノック状態の形成を軽減または排除することができる。
【0005】
このようなスーパーノック対策の例としては、燃焼室への追加の燃料の注入、燃焼するためのスパークプラグ排出の前進、早期の混合気、排気弁を介した未燃または部分的に燃焼した混合気の早期排出、またはそれらの組み合わせが含まれ得る。このような対策を展開することにより、機関部品の損傷に伴う高圧を含むスーパーノック状態を回避または最小限に抑えることができ、それにより、機関部品を保護することができる。
【0006】
1つ以上の実施形態によれば、内燃機関を作動させる方法は、燃料を燃焼室に注入して、混合気を形成することであって、燃焼室が、シリンダヘッド、シリンダ側壁、およびシリンダ側壁内で往復運動するピストンを含む、形成することを含む。方法は、ピストンの吸気または圧縮ストローク中に、混合気のプレイグニッションを検出することと、スーパーノック状態が発生する可能性のある状態で、内燃機関が作動していることを決定することと、検出された圧縮ストローク内にスーパーノック対策を展開することによって、スーパーノック状態の形成を軽減することと、をさらに含む。
【0007】
1つ以上の追加の実施形態によれば、内燃機関は、シリンダヘッドおよびシリンダ側壁を含む機関シリンダと、機関シリンダ内で往復運動するピストンであって、ピストン、シリンダヘッド、およびシリンダ側壁が燃焼室を少なくとも部分的に画定する、ピストンと、燃焼室内の状態をサンプリングするように位置付けられたイオンセンサと、を含む。内燃機関はまた、イオンセンサと電子通信する機関制御モジュールであって、プロセッサと、コンピュータ可読命令セットを記憶するメモリと、を含む、機関制御モジュールを含む。機関制御モジュールは、プロセッサによって実行されると、検出された圧縮ストロークのどのクランク角度で、イオンセンサが燃焼室内のイオン電流を感知するかを評価することと、スパークプラグが放電される前にイオン電流が検出されたときに、検出された圧縮ストローク内でスーパーノック対策を展開することと、を行う。
【0008】
本開示において開示された技術のさらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載され、部分的に、説明から当業者に容易に明らかになるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を含む、本開示に記載される技術を実践することによって認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示の特定の実施形態の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照番号で示されている以下の図面と併せて読むと、最もよく理解することができる。
【0010】
図1図1は、本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、内燃機関の機関シリンダの一部分の断面図を概略的に示している。
図2図2は、本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、内燃機関のシリンダの一部分の部分的断面図を概略的に示している。
図3図3は、本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、ACまたはDCイオン電流を検出するための交流ACバンドパスフィルタ回路を概略的に示している。
図4図4は、本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、内燃機関のシリンダの一部分の部分的断面図を概略的に示している。
【0011】
ここで、様々な実施形態をより詳細に参照し、そのいくつかの実施形態が添付の図面に示される。可能な限り、図面全体を通して同じ参照番号を使用して、同じまたは類似の部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に記載されているのは、スーパーノック軽減制御を有する内燃機関、およびその作動のための方法の1つ以上の実施形態である。内燃機関は、ピストンの吸気ストロークまたは圧縮ストローク中に混合気のプレイグニッションを検出することができる場合がある。機関はまた、スーパーノック状態の発生の可能性を決定する機関制御モジュールを含み得、スーパーノック状態の発生の可能性が高い状態での混合気のプレイグニッションの検出時に、機関制御モジュールは、検出された吸気または圧縮ストローク内でスーパーノック対策を展開して、スーパーノック状態の形成を遮断し得る。
【0013】
本明細書で説明するように、スパーク点火内燃機関におけるスーパーノック状態は、燃焼がプレイグニッションによって開始される燃焼室内での混合気の不規則な燃焼の発生を指す。「プレイグニッション」は、スパーク時期の前に、スパーク以外の「ホットスポット」によって引き起こされる混合気の燃焼を表す。しかしながら、燃焼室内のプレイグニッションのタイミングおよびプレイグニッションの場所に応じて、プレイグニッションは、非ノッキング燃焼を含む、その後の異なる燃焼現象を引き起こす可能性がある。スーパーノックは、低速および高負荷の機関作動状態下で発生することがよくある。スーパーノック状態は、機関のサイクルごとに評価するときに散発的に発生するように見えるため、スーパーノック状態が発生するかどうかの正確な予測は、機関の作動状態だけと直接的に相関しない場合がある。そのような機関作動状態が存在することを決定することは、スーパーノック状態の可能性を決定するのに役立つ可能性がある。
【0014】
スーパーノックは、従来の機関ノックとは区別され、これは、スパークプラグによって開始される火炎伝播が燃焼室内のエンドガスを消費する前に、混合気のエンドガスが自動点火するためである。
【0015】
図1を参照すると、内燃機関100の少なくとも一部分の概略図が示されている。具体的には、図1は、内燃機関100の単一の機関シリンダ110を示している。しかしながら、当業者によって理解されるように、内燃機関100は、図1に示されるクランクシャフト180などの1つ以上のクランクシャフトの長さに沿って様々な構成で配設され得る機関シリンダ110などの、多数の機関シリンダを含み得る。
【0016】
内燃機関100は、少なくとも機関シリンダ110、吸気ポート171、排気ポート173、およびピストン120を含むことができる。吸気ポート171は、吸気マニホルド140で機関シリンダ110に接続する吸気ポート171を選択的に開閉するように位置付けられた吸気弁172によって調整される。同様に、排気ポート173は、機関シリンダ110を排気マニホルド150に接続する排気ポート173を選択的に開閉するように位置付けられた排気弁174によって調整される。
【0017】
機関シリンダ110によって上部および側部に画定され、ピストン120によって下部に画定された容積は、燃焼チャンバ122と呼ばれる。吸気ポート171および排気ポート173は、空気、混合気、および/または燃焼生成物が、機関サイクル中の様々な時点で燃焼室122に出入りすることを可能にする。スパークプラグ118は、時限電気バーストで燃焼開始を提供するために、燃焼室122に位置付けられた電極を含む。いくつかの実施形態では、スパークプラグ118は、燃焼チャンバ122の中心またはその近くに(例えば、円筒形の機関シリンダ110の壁に対して半径方向の中心またはその近くに)位置付けられ得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、吸気弁172および/または排気弁174は、1つ以上のカムまたはカムシャフト(図1には示されていない)に接続され得、1つ以上のカムまたはカムシャフトは、吸気弁172および/または排気弁174を選択的に開閉するのに役立ち、それにより、機関作動に合わせて、それぞれの吸気ポート171および排気ポート173の選択的な開閉を維持することができる。ピストン120は、接続ロッド182によってクランクシャフト180に連結され得る。機関シリンダ110は、シリンダヘッド114およびシリンダ側壁112を含むことができる。吸気ポート171および排気ポート173は、シリンダヘッド114上に配置することができる。さらに、燃料インジェクタ116およびスパークプラグ118は、シリンダヘッド114内に位置付けられ、燃焼室122内に延在して、その結果、燃料インジェクタ116およびスパークプラグ118は、燃焼室122内に存在する空気および/または混合気に作用することができる。スパークプラグ118は、スパークプラグ118を介して電気的に放電する点火システム119に電子的に連結され得る。
【0019】
図1は直接注入構成(すなわち、燃料が燃料インジェクタ116によって直接燃焼室122に入る)を示しているが、ポート注入方式(間接注入と呼ばれることもある)が他の実施形態において適切であり得、ここで、燃料は吸気ポート171に注入され、続いて燃焼室122に送られることを理解されたい。したがって、燃焼室122への燃料の「注入」(すなわち、「通過」)は、直接注入、ポート注入(間接注入)、またはその両方を含み得る。
【0020】
内燃機関100は、圧縮および膨張ストローク中に燃焼室122内に存在する混合気の繰り返される燃焼によって作動することができる。混合気の燃焼は、燃焼室122をさらに加圧し、これにより、ピストン120がシリンダヘッド114から離れるように並進することを引き起こす。ピストン120の並進は、クランクシャフト180を回転させる。ピストン120がシリンダヘッド114から離れるように並進するとき、混合気の燃焼からの燃焼室122内の高圧は、クランクシャフト180の回転に向けられる。クランクシャフト180は、上死点位置(シリンダヘッド114に対するピストン120の最も近い位置に対応する)、および下死点位置(シリンダヘッド114に対するピストン120の最も遠い位置に対応する)を通って回転し得る。1つ以上の実施形態では、他の機関構成が企図されるが、内燃機関100は、4ストローク機関として作動することができる。そのような実施形態では、吸気、圧縮、動力、および排気のストロークは、規則的かつ連続的な方法で循環する。吸気ストロークでは、ピストンは、下方に移動し、空気および/または燃料は、吸気ポート171を通って燃焼チャンバ122に入ることができる。圧縮ストロークでは、ピストン120がシリンダヘッド114に向かって移動するのにつれて、空気および/または燃料が圧縮される。燃料はまた、吸気ストローク中または圧縮ストロークの初期に燃焼室122に注入される。動力ストロークにおいて、ピストンは、燃焼された混合気によってシリンダヘッド114から押し出され、これは、TDCの近くまたはTDCでの混合気の燃焼のために、ここで、高温高圧になっている。排気ストロークでは、ピストン120は、シリンダヘッド114に向かって移動して、排気ガス(燃焼反応の生成物)を、開いた排気ポート173を通して燃焼チャンバ122から排出させる。
【0021】
内燃機関100はまた、吸気マニホルド140に近接して位置付けられた圧縮機90を含む。圧縮機90は、吸気マニホルド140内にある空気の圧力を増加させるので、吸気ストローク中に、より大きな質量の空気を燃焼室122に向けることができる。圧縮機90は、排気マニホルド150内に位置付けられたタービン(図示せず)に連結され得る。タービンは、燃焼生成物からエネルギーを抽出し、そのエネルギーを使用して、吸気マニホルド140内に向けられた空気を加圧する。このような圧縮機90およびタービンシステムは、「ターボチャージャー」と呼ばれる。他の実施形態では、圧縮機90は、内燃機関100の回転ハードウェア、例えば、クランクシャフト180に連結され得る。このような回転連結圧縮機90は、「過給機」と呼ばれる。
【0022】
内燃機関100はまた、機関制御モジュール80を含む。機関制御モジュール80は、コンピュータ可読命令セットおよびルックアップテーブルを記憶するプロセッサ82およびメモリ84を含み得る。機関制御モジュール80は、燃料インジェクタ116、スパークプラグ118と電子通信している点火システム119、スロットル位置センサ(図示せず)などの様々な機関センサ、吸気マニホルド圧力および温度センサ(図示せず)、およびその回転範囲全体にわたってクランクシャフト180の角度配向を検出するクランク角度センサ181を含む、内燃機関100の様々な構成要素と電子通信している。機関制御モジュール80は、様々な機関センサを評価して、機関の作動状態およびオペレータからの電力需要を決定することができる。機関制御モジュール80は、燃料インジェクタ116を制御することによって燃焼室122に供給される燃料のタイミングおよび量を変更することができ、また、スパークプラグ118の排出のタイミングを変更することができる。機関制御モジュール80は、燃料スケジュールおよびスパーク時期スケジュールでプログラムされ、これにより、内燃機関100は、電力供給、燃料消費、および排出目標を満たす事前定義された特性に従って作動することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、内燃機関100は、燃焼室122内のイオンの存在を感知するように位置付けられたイオンセンサ190を含み得る。図示の実施形態では、イオンセンサ190は、スパークプラグ118に組み込まれている。理論に拘束されることなく、混合気の燃焼は、燃焼室122内でイオンを放出する。これらのイオンは、燃焼室122内にイオン雲を作り出すことができる。イオン雲は、一般に、イオン濃度が増加した領域を指し、これは、燃焼室122を満たすか、または部分的に満たす可能性がある。イオンセンサ190は、電極間に印加された電圧を介してイオン電流を誘導することにより、イオン雲を検出することができる。スパークプラグ118の放電前の圧縮サイクルでイオン電流が検出された場合、燃焼室122で検出されたイオン電流は、混合気のプレイグニッションによって引き起こされたと推測することができる。したがって、燃焼室122内のプレイグニッションの早期検出は、その後のスーパーノック状態の形成を軽減するための対策を展開することを可能にし得る。
【0024】
イオンセンサ190は、機関制御モジュール80と電子通信している。図1に示される実施形態では、イオンセンサ190は、スパークプラグ118に組み込まれ、その結果、スパークプラグ118を使用して、燃焼室122内のイオン電流の存在を検出することができる。スパークプラグ118は、燃焼室122内のイオン電流の存在を検出するために使用され得る電極117を含む。図2を参照すると、いくつかの実施形態では、イオンセンサ190は、スパークプラグ118から独立しており、かつ燃焼室122内でサンプリングするように位置付けられた独立型センサであり得る。
【0025】
燃焼室122内の混合気の燃焼によって生成されたイオンは、所定の周波数帯域、例えば、約8kHz~約13kHzで変動し得る、イオンセンサ190によって検出され得る。この周波数帯域内のイオン電流の変動を検出することは、混合気のプレイグニッションイベントに対応する可能性がある。イオン電流が変動する傾向がある周波数帯域は、機関ハードウェアおよび/または機関負荷状態に基づいて変化する可能性がある。いくつかの実施形態では、周波数帯域は、スーパーノック状態が形成される可能性が高くなる既知の状態に基づいて標的化され得る。
【0026】
もう1つの実施形態によれば、イオンセンサ190は、直流センサであり得る。1つ以上の代替の実施形態では、イオンセンサ190は、交流センサであり得る。交流センサが利用される実施形態では、バンドパスフィルタ回路または位相ロックループ検出回路を組み込むことができる。例えば、ここで図3を参照すると、イオンセンサ190は、バンドパスフィルタ回路192に連結され得る。図示のように、バンドパスフィルタ回路192は、信号発生器194、アナログバンドパスフィルタ196、積分半波または全波整流器197、およびパルス遅延発生器トリガーなどの閾値検出器199を含む。積分半波または全波整流器197は、積分コンデンサおよび抵抗器の組み合わせを含み得る。一実施形態では、信号発生器は、ピークツーピークで測定された20~110ボルトの電圧で10kHzで作動することができる。アナログバンドパスフィルタ196は、10kHzで作動することができる。バンドパスフィルタ回路192は、0.5メガオームの第1の抵抗器195および1.0メガオームの第2の抵抗器198を含み得る。バンドパスフィルタ回路192は、イオンセンサ190に対して測定されるイオン電流信号がいつあるかを検出する。バンドパスフィルタ回路192はまた、入力信号からのノイズをフィルタリングして、イオン電流の検出の誤検出の可能性を低減することができる。バンドパスフィルタ回路192はまた、検出された周波数でのイオン電流の検出を可能にして、混合気中のプレイグニッションスポットの発生後すぐに発生期のイオン電流の検出を可能にし得る。追加の実施形態では、位相ロックループ制御の原理に基づいて作動する位相ロックループ検出回路を利用することができる。
【0027】
再び図1を参照すると、作動中、イオンセンサ190は、燃焼室122内のイオンの発生期の存在に対応するイオン電流信号の存在または新たな存在を迅速に検出することができる。イオンセンサ190はそのようなイオン生成を迅速に検出するので、機関制御モジュール80は、イオンが検出される検出された圧縮ストローク内で対策を展開することができる。そのような対策を(例えば、同じ機関ストローク内で)迅速に展開することができることにより、機関制御モジュール80は、検出された圧縮ストローク中の燃焼室122におけるスーパーノック状態の形成を軽減することができる。いくつかの実施形態では、スーパーノック対策は、ピストンが圧縮ストロークで上死点に到達するかなり前に展開される。この迅速な展開により、スーパーノックを引き起こす可能性のある状態をリアルタイムで修正することができる。
【0028】
燃焼室122内のイオンの存在は、燃焼室122内での燃焼の開始を示し得る。燃焼室122内のイオン電流の存在は、イオンの存在を示している。したがって、スパークプラグ118の放電前のイオンの存在は、混合気のプレイグニッションを示している可能性がある。したがって、燃焼室122内のイオン電流の早期検出を使用して、燃焼室122内にスーパーノック状態が存在する可能性を決定することができる。例えば、内燃機関100が、スーパーノックが発生する可能性がある状態、または発生する可能性が高い状態(例えば、低速高負荷状態)で作動している場合、スパークプラグ118の排出前の燃焼室122内のイオンの検出は、スーパーノック状態がありそうなことを示し得る。1つ以上の実施形態では、スーパーノックが発生する可能性がある、または発生する可能性が高い状態には、毎分3000回転未満の機関速度および少なくとも17バールの負荷が含まれ得る。さらに、いくつかの実施形態では、ピストンが圧縮ストロークで移動している間に、イオンの存在がいくつかのクランク角度にわたって検出され得、これは、スーパーノック状態が可能であること、またはスーパーノック状態の可能性があることをさらに示し得る。したがって、内燃機関100の機関制御モジュール80は、測定された圧縮ストローク中にスーパーノック対策を開始して、燃焼室122内のスーパーノック状態の形成を軽減することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、燃焼室122で検出されたイオン電流の量はまた、燃焼室122で消費される燃料の量に対応する。したがって、機関制御モジュール80は、いくつかのクランク度にわたって消費された燃料の量から決定して、スーパーノック状態が発生する可能性がより高いことに対応する量で混合気が消費されているかどうかをより正確に決定することができる。
【0030】
再び図2を参照すると、いくつかの実施形態では、内燃機関100は、燃焼室122内の圧力を感知するように位置付けられた圧力センサ290を含み得る。一実施形態では、圧力センサ290は、内燃機関100のシリンダヘッド114に連結され、圧力センサ290の一部分は、燃焼室122内に延在するように位置付けられ得る。圧力センサ290は、機関制御モジュール80と電子通信している。圧力センサ290は、燃焼室122内の圧力を評価する。機関制御モジュール80または別の処理コンピュータは、様々なクランク角度で圧力センサ290によって燃焼室122内で測定された圧力を、各圧縮ストロークの公称圧力プロファイルと比較することができる。各圧縮ストローク中に測定された圧力を比較することにより、機関制御モジュール80は、瞬間的に測定された圧縮ストロークが公称圧力プロファイルから逸脱しているかどうかを決定することができる。測定された圧縮ストロークの圧力プロファイルが公称圧力プロファイルの圧力を超える場合、混合気のプレイグニッションにより、燃焼室122内の圧力が公称プロファイルよりも速く上昇していると想定することができる。そのようなサイクルでは、機関制御モジュール80は、測定された圧縮ストローク中にスーパーノック対策を開始して、燃焼室122におけるスーパーノック状態の形成を軽減することができる。
【0031】
再び図1を参照すると、クランクシャフト180の瞬間回転速度は、混合気のプレイグニッションが発生している圧縮ストローク中に遅くなる可能性がある。燃焼室122内部の圧力は、混合気のプレイグニッションとともに増加する可能性があり、これは、ピストン120がシリンダヘッド114に向かって移動する抵抗を増加させる可能性がある。したがって、燃焼室122内の圧力の増加は、クランクシャフト180の回転速度を遅くする可能性がある。いくつかの実施形態では、クランクシャフト180の回転速度の低下は、クランクシャフト180の位置、速度、または加速度を評価するセンサによって測定され得る。そのようなセンサは、例えば、クランク角度センサ181、クランク速度センサ(図示せず)、またはクランク加速度計183を含み得る。センサ、例えば、クランク角度センサ181およびクランク加速度計183は、機関制御モジュール80と電子通信している。機関制御モジュール80または別の処理コンピュータは、クランクシャフト180が、内燃機関の100個の燃焼室122のうちの1つ内の圧縮ストローク中に回転速度の瞬間的な減少を示しているかどうかを決定することができる。クランクシャフト180のそのような回転速度の低下が検出された場合、機関制御モジュール80は、測定された圧縮ストローク中にスーパーノック対策を開始して、燃焼室122におけるスーパーノック状態の形成を軽減することができる。
【0032】
上記で強調したように、スーパーノック状態は、燃焼室122内に存在する混合気が、スパークプラグ118の放電によって引き起こされる火炎面の開始前に、かつ通常は低速高出力機関状態で予点火するときに、起こり得るか、または起こる可能性がある。スーパーノックが発生する確率には多くの要因が関与し、現在開示されているシステムおよび方法を利用して、スーパーノックが発生する可能性または比較的高い確率を識別し、予防措置を展開することができることを理解されたい。例えば、スーパーノックが発生する可能性が1%、5%、10%、25%、さらには50%の場合、予防措置を採用することができる。本開示による内燃機関100の実施形態は、混合気のプレイグニッションが検出される内燃機関100の圧縮ストローク中にスーパーノック対策を展開することができる。検出された圧縮ストローク内にそのようなスーパーノック対策を展開することにより、内燃機関はスーパーノック状態の形成を軽減することができ、これは、スーパーノック状態が存在する場合よりも低いシリンダ圧力が燃焼室122に示されることをもたらす可能性がある。さらに、スーパーノック状態は散発的に現れるため、スーパーノック対策は、スーパーノック状態が発生する可能性が高いことに対応する圧縮ストロークでのみ展開され得る。スーパーノック対策の選択的展開は、スーパーノック対策の展開が必要でないときに、内燃機関100が目標の燃料消費量および電力供給レベルで作動することを可能にする。
【0033】
一実施形態では、スーパーノック対策は、ピストン120が上死点に到達する前にスパークプラグ118を放電するためにスパーク時期を進めることを含む。そのような実施形態では、スパークプラグ118は、混合気のプレイグニッションが検出されるとすぐに放電され得、その結果、スパークプラグ118から混合気を通して拡大する火炎面は、ピストン120が上死点に到達する前に拡大する。いくつかの実施形態では、スパークプラグ118の排出は、ピストン120が上死点に到達する前に、すべての混合気が点火および/または燃焼され得る設定点に設定され得る。スパークプラグ118の排出が進むと、検出された、したがって進んだサイクルの内燃機関100の電力出力が低下する。補正は単一の機関シリンダに展開される可能性があるため、機関の総出力が大幅に低下することはない。いくつかの実施形態では、スパークプラグ118の放出のタイミングを進めることは、燃焼室122内の混合気の加熱および圧力上昇が、混合気の未燃部分を自動発火させる可能性があり得るので、内燃機関100内に従来の機関ノッキングを導入し得る。しかしながら、スパークプラグ118の放出のタイミングの前進は、燃焼室122内に形成されるスーパーノック状態につながる状態の継続を遮断する可能性がある。
【0034】
混合気の早期点火は、ピストン120が上死点に到達する前に、燃焼室122内の圧力の増加をもたらすであろう。この圧力は、選択された機関シリンダ110の選択されたサイクルの機関電力を低下させ、スーパーノック対策が展開されるサイクルにわたって内燃機関100の燃料消費を増加させる。スパークプラグ118の排出のタイミングの前進は、内燃機関100によって供給される電力を減少させ、内燃機関100の燃料消費を増加させるが、スーパーノック状態で経験したものと比較して、内燃機関100の構成要素が経験する最大圧力を減少させ、それにより、スーパーノック状態によって引き起こされる損傷からそれらの構成要素を保護することになる。スーパーノック状態の間に機関構成要素が経験する高圧は、機関構成要素を損傷する可能性があるため、従来の機関ノックに関連する圧力を含む、スーパーノック対策に関連する圧力が好ましい。
【0035】
再び図2を参照すると、一実施形態では、内燃機関100は、燃焼室122内に存在する混合気に点火するように位置付けられた第2のスパークプラグ124を含み得る。第2のスパークプラグ124は、機関制御モジュール80によるスーパーノック状態の形成の検出時にのみ放電されるように構成され得る。いくつかの実施形態では、点火システム119は、スパークプラグ118を放電して混合気に点火するのに十分な電荷が圧縮ストロークの初期に蓄積されていない可能性がある。そのような場合、点火システム119は、指定された燃焼室122の圧縮サイクルの初期に第2のスパークプラグ124の電荷を保持することができる。したがって、混合気のプレイグニッションが検出されると、第2のスパークプラグ124は、混合気に点火し、燃焼室122を通して初期火炎面を開始するのに十分な電荷を有する。
【0036】
一実施形態では、スーパーノック対策は、混合気のプレイグニッションが検出される圧縮ストローク中の混合気および混合気の燃焼部分の排出を含む。内燃機関100のいくつかの実施形態は、油圧または電子リフト機構175を有する排気弁174を含み得る。リフト機構175は、機関制御モジュール80と電子通信している。通常の作動下では、リフト機構175は、所定のスケジュールに従って排気弁174を選択的に開閉して、排気ポート173でそれぞれ燃焼室122を選択的にベントおよびシールする。機関制御モジュール80が、混合気のプレイグニッションが圧縮ストロークで発生したと決定した場合、機関制御モジュール80は、検出された圧縮ストローク中にリフト機構175に排気弁174を開いて、燃焼室122内の圧力を低下させるように、ならびに未燃および燃焼した混合気を燃焼室122の内部から燃焼室122の外部に通過させるように命令するスーパーノック対策を展開することができる。そのような状態では、機関制御モジュール80はまた、検出された圧縮サイクル中にスパークプラグ118が放電することを遮断することができる。検出された圧縮ストローク中にリフト機構175で排気弁174を開くことは、燃焼室122におけるスーパーノック状態の形成につながる状態を遮断することができる。例えば、燃焼室122の内容物は、リフト機構の起動によって排出され得る。
【0037】
さらに別の実施形態では、スーパーノック対策は、燃焼室122に燃料を追加注入して、燃焼室122内に存在する混合気を冷却し、混合気を濃縮して、スーパーノック状態の継続的な形成の可能性を低減すること、および混合気のプレイグニッションのために燃焼室122内に形成された、いくつかの火炎面を急冷することを含む。そのような実施形態では、機関制御モジュール80が、圧縮ストローク中に混合気のプレイグニッションが発生したことを感知すると、機関制御モジュール80は、燃料インジェクタ116に、検出された圧縮ストローク中に燃料を燃焼室122に注入するように指示することができる。検出された圧縮ストロークで追加の燃料を注入することにより、追加の燃料は、混合気を冷却することができ、それにより、プレイグニッションによって引き起こされる混合気のさらなる燃焼を停止または遅延させることができる。したがって、追加の燃料の注入は、スーパーノック状態が燃焼室122内に形成されることを遮断することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、スーパーノック対策は、スーパーノック状態が発生し得る、または発生する可能性が高い機関状態で展開されるように選択され得る。例えば、スーパーノック状態は、スロットルチップインに対応する低速高出力機関状態で発生する可能性がある。スーパーノック状態は、アイドル時、および最大エンジン速度でまたは最大エンジン速度の近くで全開スロットルで作動しているときを含む、他の機関状態で発生する可能性が低いので、スーパーノック対策を展開することは、望ましくないエンジンノック、出力低下、または燃料消費量の増加などの望ましくない影響を引き起こし得る。
【0039】
機関制御モジュール80は、スーパーノック状態が起こり得る、または起こる可能性がある機関状態に対応するスーパーノック対策スケジュールを含み得る。機関がこれらの状態内で作動するとき、機関制御モジュール80は、混合気のプレイグニッションが検出されたときにスーパーノック対策を展開するように選択される。機関がこれらの状態外で作動するとき、機関制御モジュール80は、スーパーノック対策を展開することからロックアウトされる。このような機関状態ではスーパーノック状態が形成される可能性が低いため、機関制御モジュール80は、健全な機関作動を維持するための対策を展開する必要がない。したがって、スーパーノック状態が発生する可能性が低い機関状態ではスーパーノック対策を展開しないことを選択することにより、エンジン出力および燃費は、点火時期を維持すること、および空燃比を化学量論比に近づけることで維持することによって、維持され得、エンジンにスーパーノック状態が発生する心配はほとんどない。
【0040】
ここで、本開示による内燃機関は、吸気または圧縮ストローク中に機関の燃焼室に存在する混合気のプレイグニッションを検出する要素を含むことを理解されたい。機関がスーパーノック状態の形成に対応する状態下で作動しているとき、機関制御モジュールは、スーパーノック対策を展開して、検出された圧縮ストロークにおけるスーパーノック状態の形成を遮断することができる。スーパーノック対策を展開することは、燃焼室内の圧力状態が上昇することをもたらすが、スーパーノック状態が完全に発生することが許可されている場合と比較して、燃焼室内の圧力状態を低下させ得る。燃焼室内のスーパーノック状態の完全な発生を遮断することは、機関の健全性を確実にし、スーパーノックによる機関の早期故障を停止することができる。
【0041】
当業者には、特許請求される主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される実施形態に対して様々な修正および変更がなされ得ることが明らかであろう。したがって、本明細書は、本明細書に記載の様々な実施形態の修正および変更を網羅することが意図されるが、そのような修正および変更が、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内であることを条件とする。本開示に記載されている様々な詳細は、本記載に付随する図面の各々に特定の要素が示されている場合であっても、これらの詳細が本開示に記載されている様々な実施形態の必須構成要素である要素に関連することを意味すると解釈されるべきではないことに留意されたい。むしろ、本明細書に添付された特許請求の範囲は、本開示の広がりおよび本開示に記載の様々な実施形態の対応する範囲の1つの表現として解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2020-01-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を作動させる方法であって、
燃料を燃焼室に注入して、混合気を形成することであって、前記燃焼室が、シリンダヘッド、シリンダ側壁、および前記シリンダ側壁内で往復運動するピストンを含む、形成することと、
スパークプラグを使用して、前記混合気の燃焼を開始することと、
圧力センサ、クランク角度センサ、クランク速度センサ、およびクランク加速度計のうちの少なくとも1つを使用して、前記混合気のプレイグニッションを検出することと、
スーパーノック状態が発生する可能性のある状態で、前記内燃機関が作動していることを決定することと、
前記内燃機関がスーパーノック状態が発生する可能性のある状態で作動しているとの前記決定に基づいて、および前記混合気のプレイグニッションの前記検出に基づいて、スーパーノック対策を展開することによって、スーパーノック状態の形成を軽減することであって、前記軽減することが、
前記ピストンの圧縮ストローク中に、前記スパークプラグを通常の放電から遮断することと、
(a)排気弁を開いて、燃焼および未燃焼の混合気を前記燃焼室内から前記燃焼室外に通過させること、および(b)前記混合気を、化学量論比の近くから逸脱させることのうちの少なくとも1つを実行することと、を含む、軽減することと、を含む、方法。
【請求項2】
シリンダヘッドおよびシリンダ側壁を含む機関シリンダと、
少なくとも1つの吸気弁および少なくとも1つの排気弁と、
前記機関シリンダ内で往復運動するピストンであって、前記ピストン、前記シリンダヘッド、少なくとも1つの吸気弁および少なくとも1つの排気弁、ならびに前記シリンダ側壁が燃焼室を少なくとも部分的に画定する、ピストンと、
前記燃焼室にスパークを提供するように位置付けられたスパークプラグと、
圧力センサ、クランク角度センサ、クランク速度センサ、クランク加速度計、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むセンサと、
記センサおよび前記スパークプラグと電子通信する機関制御モジュールであって、前記機関制御モジュールが、プロセッサと、前記プロセッサによって実行されると、
前記圧力センサ、クランク角度センサ、クランク速度センサ、およびクランク加速度計のうちの少なくとも1つからの入力に基づいて、混合気のプレイグニッションが存在するかどうかを評価することと、
スーパーノック状態が発生する可能性のある状態で、内燃機関が作動していることを決定することと、
前記内燃機関がスーパーノック状態が発生する可能性のある状態で作動しているとの前記決定に基づいて、およびプレイグニッションの検出に基づいて、スーパーノック対策を展開することによって、スーパーノック状態の形成を軽減することであって、前記軽減することが、
前記ピストンの圧縮ストローク中に、前記スパークプラグを通常の放電から遮断することと、
(a)前記排気弁バルブを開いて、燃焼および未燃焼の混合気を前記燃焼室内から前記燃焼室外に通過させること、および(b)前記混合気を、化学量論比の近くから逸脱させることのうちの少なくとも1つを実行することと、を含む、軽減することと、を行うコンピュータ可読命令セットを記憶するメモリと、を含む、機関制御モジュールと、を含む、内燃機関。
【請求項3】
前記燃焼室を選択的に閉じる排気弁と、
前記排気弁に連結されたリフト機構であって、前記リフト機構が、前記機関制御モジュールと電子的に通信している、リフト機構と、をさらに含む、請求項に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記燃焼室と選択的に流体連絡している吸気マニホルドを加圧するように位置付けられた圧縮機をさらに含む、請求項に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記機関制御モジュールが、前記ピストンが上死点に到達する前に、検出された圧縮ストローク中に前記スパークプラグを早期に放電する前記スーパーノック対策を展開する、請求項2、3、および4のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記機関制御モジュールによるスーパーノック状態の形成の前記検出に基づいて放電されるように構成されている、第2のスパークプラグをさらに含む、請求項2、3、4、および5のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項7】
追加の燃料が、前記混合気を前記化学量論比から逸脱させるために、圧縮ストローク中に前記燃焼室内に注入される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記内燃機関がスーパーノック状態が発生する可能性がある状態で動作していることを決定するステップが、機関回転速度および機関負荷を評価することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記スーパーノック対策が、前記検出された圧縮ストローク中に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記圧力センサが、各圧縮ストローク中に測定された圧力を比較することによって様々なクランク角度で機関制御モジュールと協働して、瞬間的な測定された圧縮ストロークが公称圧力プロファイルから逸脱しているかどうかを決定し、その結果、前記機関制御モジュールが、このような逸脱に対応して前記スーパーノック対策を開始する、請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】