(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-07
(54)【発明の名称】高調波関係を使用した分析対象物濃度モニタリングの方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1473 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
A61B5/1473
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549382
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(85)【翻訳文提出日】2021-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2020054459
(87)【国際公開番号】W WO2020169719
(87)【国際公開日】2020-08-27
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516043328
【氏名又は名称】アセンシア・ディアベティス・ケア・ホールディングス・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・ジェー・ザック
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ブイ・ブラウン
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK10
4C038KL01
4C038KL09
4C038KX01
4C038KY03
(57)【要約】
持続グルコースモニタリング(CGM)は、酸化/還元反応を駆動するためにCGMセンサの電極を介して周期的励起信号をヒト間質液に印加することと、電極を流れる電流を測定することとを含み得る。いくつかの実施形態では、測定された電流がサンプリングされてデジタル化され、励起信号の基本周波数の様々な高調波が抽出される。それぞれ少なくとも2つの高調波の関係のセットは、高調波のペア、トリプレットなどのセットのスペクトル振幅から生成され、関係のセットは、たとえば、既存の高調波関係のセットを有する高調波関係データベースの内容に基づくなどのグルコース濃度、およびそれらの高調波関係のセットが対応するグルコース濃度にマッピングされる。他の多くの実施形態が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物含有流体中の酸化還元反応を電子的に精査する方法であって、
第1の回路によって、周期的励起信号を前記分析物含有流体に印加するステップであって、前記周期的励起信号が基本周波数を有する、ステップと、
前記第1の回路が前記周期的励起信号を印加している間に、第2の回路によって、電流測定信号を生成するステップであって、前記電流測定信号が、前記分析物含有流体中の酸化還元反応によって生成される電流を示す大きさを有し、前記大きさが、少なくとも部分的に、前記分析物含有流体中の分析対象物濃度に依存する、ステップと、
第3の回路によって、前記電流測定信号をサンプリングするステップと、
前記第3の回路によって、前記電流測定信号を表すデジタル化された時間領域サンプルデータを提供するステップと、
前記デジタル化された時間領域サンプルデータに少なくとも部分的に基づいて複数の高調波信号を抽出するステップであって、前記高調波信号が前記基本周波数の高調波であり、各高調波信号が対応する強度を有する、ステップと、
前記複数の高調波信号の少なくとも一部に基づいて、高調波関係のセットを計算するステップと、
高調波関係データベースにアクセスするステップであって、前記高調波関係データベースが、複数の高調波関係のセットを含み、高調波関係の各セットが、対応する分析対象物濃度に関連付けられる、ステップと、
前記高調波関係データベースおよび前記計算された高調波関係のセットに基づいて、前記分析物含有流体中の分析対象物濃度の大きさを決定するステップと
を備える、方法。
【請求項2】
前記複数の高調波信号を抽出するステップが、
前記デジタル化された時間領域サンプルデータをデジタル化された周波数領域データに変換するステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記デジタル化された周波数領域データからパワースペクトル密度データを生成するステップをさらに備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記高調波関係データベースにアクセスするステップが、
ルックアップテーブルにアクセスするステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電流測定信号を表す前記デジタル化された時間領域サンプルデータを第1の装置から第2の装置にワイヤレスで送信するステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の装置がウェアラブルの持続グルコースモニタリングデバイスであり、前記第2の装置がスマートフォンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記電流測定信号をサンプリングするステップが、第1の時間の期間の第1のサンプリングレートでサンプリングするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のサンプリングレートが、毎秒10サンプルから毎秒1000サンプルの範囲である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の時間の期間が10秒から300秒の範囲である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記周期的励起信号の前記基本周波数が0.1Hz~10Hzの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記周期的励起信号の振幅が、150ミリボルトから500ミリボルトの範囲である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記分析物含有流体がグルコースを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記分析物含有流体中の前記分析対象物濃度の前記大きさを決定するステップが、分析物モニタリングシステムのウェアラブル部分によって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ウェアラブル部分のディスプレイ上に前記分析対象物濃度を表示するステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
信号対雑音比を改善するために、前記周期的励起信号のサイクル数を増加させるステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記分析物を少なくとも1つの分析物干渉物から区別するために、前記計算された高調波関係を採用するステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
分析物含有流体中の分析対象物濃度の対応する値に相関するあらかじめ定められた高調波関係情報のセットを生成する方法であって、
複数の分析物含有流体サンプルを提供するステップであって、前記複数の分析物含有流体サンプルの各々が、知られている分析対象物濃度を有する、ステップと、
前記複数の分析物含有流体サンプルの各々について、
第1の回路によって、周期的励起信号を前記分析物含有流体サンプルに印加するステップであって、前記周期的励起信号が基本周波数を有する、ステップと、
前記第1の回路が前記周期的励起信号を印加している間に、第2の回路によって、電流測定信号を生成するステップであって、前記電流測定信号が、前記第1の回路が前記周期的励起信号を印加している間に、前記分析物含有流体中の酸化還元反応によって生成される電流を示す大きさを有し、前記大きさが、少なくとも部分的に、前記分析物含有流体中の前記分析対象物濃度に依存する、ステップと、
第3の回路によって、前記電流測定信号をサンプリングするステップと、
前記第3の回路によって、前記電流測定信号を表すデジタル化された時間領域サンプルデータを提供するステップと、
前記デジタル化された時間領域サンプルデータから複数の高調波信号を抽出するステップと、
前記複数の高調波信号の少なくとも一部に基づいて、高調波関係のセットを計算するステップと、
高調波関係の前記セットを、前記分析物含有流体の前記知られている分析対象物濃度と関連付けるステップと、
前記知られている分析対象物濃度に関連付けられる高調波関係の前記セットを高調波関係データベースに記憶するステップと
を備える、方法。
【請求項18】
前記複数の分析物含有流体サンプルを提供するステップが、
複数のグルコース含有流体サンプルを提供するステップを備え、
前記複数のグルコース含有流体サンプルの各々が、知られているグルコース濃度を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記知られている分析対象物濃度に関連付けられる高調波関係の前記セットを前記高調波関係データベースに記憶するステップが、
高調波関係の前記セットをメモリに記憶するステップを備える、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記知られている分析対象物濃度に関連付けられる高調波関係の前記セットを前記高調波関係データベースに記憶するステップが、
高調波関係の前記セットを、持続グルコースモニタリングシステムのウェアラブル部分のメモリに記憶するステップを備える、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記知られている分析対象物濃度に関連付けられる高調波関係の前記セットを前記高調波関係データベースに記憶するステップが、
高調波関係の前記セットを、持続グルコースモニタリングシステムの非ウェアラブル部分のメモリに記憶するステップを備える、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
持続的分析物モニタリング(CAM)システムであって、
分析物含有流体に周期的励起信号を印加するように構成された第1の回路と、
電流測定信号を生成するように構成された第2の回路であって、前記電流測定信号が、前記分析物含有流体中の電流を示す大きさを有し、前記大きさが、前記分析物含有流体中の分析対象物濃度に少なくとも部分的に依存する、第2の回路と、
前記電流測定信号をサンプリングするように構成された第3の回路であって、デジタル化された時間領域サンプルデータを生成するようにさらに構成された、第3の回路と、
メモリに結合されたプロセッサであって、前記メモリが、記憶された高調波関係データベースを有し、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
前記デジタル化された時間領域サンプルデータから複数の高調波信号を抽出することと、
前記複数の高調波信号の少なくとも一部に基づいて、高調波関係のセットを計算することと、
前記高調波関係データベースにアクセスすることであって、前記高調波関係データベースが、複数の高調波関係のセットを含み、高調波関係の各セットが、対応する分析対象物濃度に関連付けられる、アクセスすることと、
前記高調波関係データベースおよび前記計算された高調波関係のセットに基づいて、前記分析物含有流体中の前記分析対象物濃度の大きさを決定することと
を行わせる、記憶された命令をさらに有する、プロセッサと
を備える、持続的分析物モニタリング(CAM)システム。
【請求項23】
前記第1の回路、前記第2の回路、および前記第3の回路がウェアラブルデバイスに配置されている、請求項22に記載のCAMシステム。
【請求項24】
前記プロセッサおよび前記メモリが前記ウェアラブルデバイスに配置されている、請求項23に記載のCAMシステム。
【請求項25】
前記命令が、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、前記デジタル化された時間領域サンプルデータを周波数領域データにさらに変換させる、請求項22に記載のCAMシステム。
【請求項26】
前記命令が、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、前記分析対象物濃度を送信するようにワイヤレス送信機にさらに指示させる、請求項22に記載のCAMシステム。
【請求項27】
持続グルコースモニタリング(CGM)システムであって、
ユーザの間質液の領域に挿入するように構成されたCGMセンサと、
前記CGMセンサに結合するように構成され、前記ユーザの外面に取外し可能に取り付けられるように構成された第1の電子回路であって、前記第1の電子回路が、前記CGMセンサに結合するように構成された周期的励起信号発生器と、前記CGMセンサに結合するように構成された電流センサと、前記電流センサに結合するように構成されたサンプリング回路とを含み、前記サンプリング回路が、サンプリングされた時間領域データを出力するように構成される、第1の電子回路と、
前記第1の電子回路に結合された第2の電子回路であって、前記第2の電子回路が、前記サンプリングされた時間領域データからあらかじめ定められた数の高調波を抽出することと、前記抽出された高調波に基づいて高調波関係のセットを生成することと、高調波関係の前記セットに基づいて血糖値を決定することとを行うように構成される、第2の電子回路と
を備える、持続グルコースモニタリング(CGM)システム。
【請求項28】
前記第1の電子回路および前記第2の電子回路が、前記CGMシステムのウェアラブル部分に配置されている、請求項27に記載のCGMシステム。
【請求項29】
前記第1の電子回路が前記CGMシステムのウェアラブル部分に配置され、前記第2の電子回路が前記第1の電子回路に通信可能に結合されている、請求項27に記載のCGMシステム。
【請求項30】
前記第2の電子回路が、前記ウェアラブル部分とは別の前記CGMシステムのポータブル部分に配置されている、請求項29に記載のCGMシステム。
【請求項31】
前記電流センサが電圧信号を提供するように構成され、前記サンプリング回路が、前記周期的励起信号発生器によって出力される周期的励起信号の基本周波よりも50~400倍大きいサンプリングレートで前記電流センサの前記電圧信号をサンプリングするようにさらに構成される、請求項27に記載のCGMシステム。
【請求項32】
前記サンプリングされた時間領域データがデジタル形式である、請求項27に記載のCGMシステム。
【請求項33】
前記第2の電子回路が、前記サンプリングされた時間領域データを周波数領域データに変換することによって、前記サンプリングされた時間領域データからあらかじめ定められた数の高調波を抽出するように構成される、請求項27に記載のCGMシステム。
【請求項34】
前記第2の電子回路が高速フーリエ変換回路を含む、請求項27に記載のCGMシステム。
【請求項35】
前記第2の電子回路が、プロセッサと、前記プロセッサに結合された、記憶された命令を有するメモリとを含み、前記命令が、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
前記サンプリングされた時間領域データからあらかじめ定められた数の高調波を抽出させる、請求項27に記載のCGMシステム。
【請求項36】
前記命令が、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
フーリエ変換、離散フーリエ変換、高速フーリエ変換、およびゲルツェル変換の1つまたは複数を含む変換動作をさらに実行させる、請求項35に記載のCGMシステム。
【請求項37】
前記第1の電子回路が、前記間質液のおおよその血糖値に少なくとも部分的に基づいて選択された周波数を有する周期的電圧信号を生成するために、前記周期的励起信号発生器を採用するように構成される、請求項27に記載のCGMシステム。
【請求項38】
持続グルコースモニタリング(CGM)の方法であって、
周期的励起信号発生器によって、振幅および基本周波数を有する周期的励起信号を生成するステップと、
前記周期的励起信号をCGMセンサの電極に印加するステップと、
電流センサ回路によって、測定された電流信号を生成するために前記CGMセンサを通る電流を検知するステップと、
サンプリング回路によって、時間領域サンプルデータのセットを生成するために、前記測定された電流信号をサンプリングレートで、一定期間、ビット分解能でサンプリングするステップと、
時間領域サンプルデータの前記セットを周波数領域データのセットに変換するステップであって、周波数領域データの前記セットが、少なくとも、前記基本周波数のあらかじめ定められた数の高調波の各々の強度を含む、ステップと、
前記あらかじめ定められた数の高調波の各々の強度に基づいて高調波関係のセットを生成するステップと、
高調波関係の前記セットに基づいて血糖値を決定するステップと
を備える、方法。
【請求項39】
前記励起信号を印加するステップが、
ポテンシオスタットによって前記周期的励起信号を印加するステップを備える、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記周期的励起信号が正弦波である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記周期的励起信号が三角形である、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記基本周波数が0.1Hzと10Hzの間である、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記サンプリングレートが毎秒10サンプルと毎秒1000サンプルの間である、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記周波数領域データが、前記基本周波数のあらかじめ定められた数の高調波の各々の位相角をさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
検知するステップが、
前記CGMセンサからの前記電流を0.1%から1%の範囲の精度の抵抗器に流すステップを備える、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
時間領域サンプルデータの前記セットを周波数領域データのセットに変換するステップが、
ゲルツェル変換動作を実行するステップを備える、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
時間領域サンプルデータの前記セットを周波数領域データのセットに変換するステップが、
フーリエ変換、離散フーリエ変換、高速フーリエ変換、およびゲルツェル変換の1つまたは複数を含む変換動作を実行するステップを備える、請求項38に記載の方法。
【請求項48】
前記周期的励起信号を生成するステップが、間質液のおおよその血糖値に少なくとも部分的に基づいて選択された周波数を有する前記周期的励起信号を生成するステップを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項49】
分析物モニタリングシステムであって、
分析物含有流体に周期的励起信号を印加するように構成された第1の回路と、
電流測定信号を生成するように構成された第2の回路であって、前記電流測定信号が、前記分析物含有流体中の電流を示す大きさを有し、前記大きさが、前記分析物含有流体中の分析対象物濃度に少なくとも部分的に依存する、第2の回路と、
前記電流測定信号をサンプリングするように構成された第3の回路であって、デジタル化された時間領域サンプルデータを生成するようにさらに構成された、第3の回路と、
メモリに結合されたプロセッサであって、前記メモリが、記憶された高調波関係データベースを有し、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
前記デジタル化された時間領域サンプルデータから複数の高調波信号を抽出することと、
前記複数の高調波信号の少なくとも一部に基づいて、高調波関係のセットを計算することと、
前記計算された高調波関係のセットに基づいて、前記分析物含有流体中の前記分析対象物濃度の大きさを決定することと
を行わせる、記憶された命令をさらに有する、プロセッサと
を備える、分析物モニタリングシステム。
【請求項50】
前記第1の回路、前記第2の回路、前記第3の回路、前記プロセッサ、および前記メモリが、前記分析物モニタリングシステムのウェアラブル部分に配置されている、請求項49に記載の分析物モニタリングシステム。
【請求項51】
前記分析物モニタリングシステムの前記ウェアラブル部分上のディスプレイであって、分析物情報を表示するように構成されたディスプレイをさらに備える、請求項50に記載の分析物モニタリングシステム。
【請求項52】
前記第1の回路および第2の回路が、前記分析物モニタリングシステムのウェアラブル部分に配置され、前記第3の回路、前記プロセッサ、および前記メモリが、前記分析物モニタリングシステムの非ウェアラブル部分に配置される、請求項49に記載の分析物モニタリングシステム。
【請求項53】
分析物モニタリングシステムであって、
分析物含有流体に周期的励起信号を印加するように構成された第1の回路であって、前記周期的励起信号が、前記分析物含有流体中のおおよその分析対象物濃度に少なくとも部分的に基づいて選択された基本周波数を有する、第1の回路と、
電流測定信号を生成するように構成された第2の回路であって、前記電流測定信号が、前記分析物含有流体中の電流を示す大きさを有し、前記大きさが、前記分析物含有流体中の前記分析対象物濃度に少なくとも部分的に依存する、第2の回路と、
前記電流測定信号をサンプリングするように構成された第3の回路であって、デジタル化された時間領域サンプルデータを生成するようにさらに構成された、第3の回路と、
メモリに結合されたプロセッサであって、前記メモリが記憶された命令を有し、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに
前記デジタル化された時間領域サンプルデータから複数の高調波信号を抽出することと、
前記複数の高調波信号の少なくとも一部に基づいて、高調波関係のセットを計算することと、
前記計算された高調波関係のセットに基づいて、前記分析物含有流体中の前記分析対象物濃度の大きさを決定することと
を行わせる、プロセッサと
を備える、分析物モニタリングシステム。
【請求項54】
前記第1の回路、前記第2の回路、前記第3の回路、前記プロセッサ、および前記メモリが、前記分析物モニタリングシステムのウェアラブル部分に配置されている、請求項53に記載の分析物モニタリングシステム。
【請求項55】
前記分析物モニタリングシステムの前記ウェアラブル部分上のディスプレイであって、分析物情報を表示するように構成されたディスプレイをさらに備える、請求項54に記載の分析物モニタリングシステム。
【請求項56】
前記第1の回路および第2の回路が、前記分析物モニタリングシステムのウェアラブル部分に配置され、前記第3の回路、前記プロセッサ、および前記メモリが、前記分析物モニタリングシステムの非ウェアラブル部分に配置される、請求項53に記載の分析物モニタリングシステム。
【請求項57】
前記メモリが、記憶された高調波関係データベースを含み、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
前記高調波関係データベースにアクセスすることであって、前記高調波関係データベースが、複数の高調波関係のセットを含み、高調波関係の各セットが、対応する分析対象物濃度に関連付けられる、アクセスすることと、
前記高調波関係データベースおよび前記計算された高調波関係のセットに基づいて、前記分析物含有流体中の前記分析対象物濃度の大きさを決定することと
を行わせる、記憶された命令をさらに有する、請求項53に記載の分析物モニタリングシステム。
【請求項58】
分析物含有流体中の酸化還元反応を電子的に精査する方法であって、
分析物含有流体中のおおよその分析対象物濃度を決定するステップと、
前記決定されたおおよその分析対象物濃度に少なくとも部分的に基づいて、前記分析物含有流体に印加するために、周期的励起信号の周波数を決定するステップと、
第1の回路によって、前記周期的励起信号を前記分析物含有流体に印加するステップと、
前記第1の回路が前記周期的励起信号を印加している間に、第2の回路によって、電流測定信号を生成するステップであって、前記電流測定信号が、前記分析物含有流体中の酸化還元反応によって生成される電流を示す大きさを有し、前記大きさが、少なくとも部分的に、前記分析物含有流体中の分析対象物濃度に依存する、ステップと、
第3の回路によって、前記電流測定信号をサンプリングするステップと、
前記第3の回路によって、前記電流測定信号を表すデジタル化された時間領域サンプルデータを提供するステップと、
前記デジタル化された時間領域サンプルデータに少なくとも部分的に基づいて複数の高調波信号を抽出するステップであって、前記高調波信号が前記周期的励起信号の基本周波数の高調波であり、各高調波信号が対応する強度を有する、ステップと、
前記複数の高調波信号の少なくとも一部に基づいて、高調波関係のセットを計算するステップと、
前記計算された高調波関係のセットに基づいて、前記分析物含有流体中の分析対象物濃度の大きさを決定するステップと
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年2月22日に出願された、「Methods and Apparatus for Analyte Concentration Monitoring Using Harmonic Relationships」と題する米国仮特許出願第62/809,039号の優先権を主張し、これは、参照によりその全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、一般に、分析物含有流体中の分析対象物濃度を決定することに関する。
【背景技術】
【0003】
多くの用途では、分析物含有流体中の分析物の濃度を決定する必要がある。特に1つの用途は、人の血液中のグルコース濃度の決定である。人の血糖値を決定することは、糖尿病の管理および制御にとって重要である。そのために、血糖モニタリング(BGM)の方法および装置が開発された。しかしながら、BGMの方法と装置では、手のひらや前腕など、体の他の部分から血液を採取する場合もあるが、通常は「フィンガースティック」によって採取する血液サンプルが必要であり、BGMの結果は持続的ではなく、血液サンプルが採取されたときの血糖値の単一のスナップショットである。
【0004】
人の血糖値をより厳密に監視し、糖尿病患者に急速に発生する可能性のある血糖値の変化を検出するために、持続グルコースモニタリング(CGM)のための方法および装置が開発された。CGMシステムは「持続的」と呼ばれるが、測定は通常、真に持続的ではなく、数分ごとに実行される。埋込み可能な部分と埋込み不可能な部分があるCGM製品は、取り外して交換する前に、数日間、最大で数週間着用し得る。
【0005】
既存のCGM製品は、そのような測定がフィンガースティックなどによる採血を伴うことを必要とせずに、人の血糖値の頻繁な測定を提供する。これらの既存のCGM製品では、CGMシステムを調整するために、時折のフィンガースティック、およびBGMシステムの使用を必要とする場合がある。CGM製品は、皮膚の下に配置されるように挿入されるセンサ部分、および皮膚の外面、たとえば腹部または上腕の後ろに接着される埋め込まれていない処理部分を含み得る。血中のグルコース濃度を測定するBGMシステムとは異なり、CGMシステムは間質液中のグルコース濃度を測定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
改善されたCGMの方法および装置が所望される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの例示的な実施形態では、分析物含有流体中の酸化還元反応を電子的に精査する方法が提供される。本方法は、第1の回路によって、周期的励起信号を分析物含有流体に印加するステップであって、周期的励起信号が基本周波数を有する、ステップと、第1の回路が周期的励起信号を印加している間に、第2の回路によって、電流測定信号を生成するステップであって、電流測定信号が、分析物含有流体中の酸化還元反応によって生成される電流を示す大きさを有し、その大きさが、少なくとも部分的に、分析物含有流体中の分析対象物濃度に依存する、ステップと、第3の回路によって、電流測定信号をサンプリングするステップと、第3の回路によって、電流測定信号を表すデジタル化された時間領域サンプルデータを提供するステップと、デジタル化された時間領域サンプルデータに少なくとも部分的に基づいて複数の高調波信号を抽出するステップであって、高調波信号が基本周波数の高調波であり、各高調波信号は対応する強度を有する、ステップと、複数の高調波信号の少なくとも一部に基づいて、高調波関係のセットを計算するステップと、高調波関係データベースにアクセスするステップであって、高調波関係データベースが、複数の高調波関係のセットを含み、高調波関係の各セットが、対応する分析対象物濃度に関連付けられる、ステップと、高調波関係データベースおよび計算された高調波関係のセットに基づいて、分析物含有流体中の分析対象物濃度の大きさを決定するステップとを含み得る。
【0008】
別の例示的な実施形態では、分析物含有流体中の分析対象物濃度の対応する値に相関するあらかじめ定められた高調波関係情報のセットを生成する方法は、複数の分析物含有流体サンプルを提供するステップであって、複数の分析物含有流体サンプルの各々が、知られている分析対象物濃度を有する、ステップと、複数の分析物含有流体サンプルの各々について、第1の回路によって、周期的励起信号を分析物含有流体サンプルに印加するステップであって、周期的励起信号が基本周波数を有する、ステップと、第1の回路が周期的励起信号を印加している間に、第2の回路によって、電流測定信号を生成するステップであって、電流測定信号が、第1の回路が周期的励起信号を印加している間に、分析物含有流体中の酸化還元反応によって生成される電流を示す大きさを有し、その大きさが、少なくとも部分的に、分析物含有流体中の分析対象物濃度に依存する、ステップと、第3の回路によって、電流測定信号をサンプリングするステップと、第3の回路によって、電流測定信号を表すデジタル化された時間領域サンプルデータを提供するステップと、デジタル化された時間領域サンプルデータから複数の高調波信号を抽出するステップと、複数の高調波信号の少なくとも一部に基づいて、高調波関係のセットを計算するステップと、高調波関係のセットを、分析物含有流体の知られている分析対象物濃度と関連付けるステップと、知られている分析対象物濃度に関連付けられる高調波関係のセットを高調波関係データベースに記憶するステップとを含み得る。
【0009】
別の例示的な実施形態では、持続的分析物モニタリング(CAM)システムは、分析物含有流体に周期的励起信号を印加するように構成された第1の回路と、電流測定信号を生成するように構成された第2の回路であって、電流測定信号が、分析物含有流体中の電流を示す大きさを有し、その大きさが、分析物含有流体中の分析対象物濃度に少なくとも部分的に依存する、第2の回路と、電流測定信号をサンプリングするように構成された第3の回路であって、デジタル化された時間領域サンプルデータを生成するようにさらに構成された、第3の回路と、メモリに結合されたプロセッサであって、メモリが、記憶された高調波関係データベースを有し、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、デジタル化された時間領域サンプルデータから複数の高調波信号を抽出することと、複数の高調波信号の少なくとも一部に基づいて、高調波関係のセットを計算することと、高調波関係データベースにアクセスすることであって、高調波関係データベースが、複数の高調波関係のセットを含み、高調波関係の各セットが、対応する分析対象物濃度に関連付けられる、アクセスすることと、高調波関係データベースおよび計算された高調波関係のセットに基づいて、分析物含有流体中の分析対象物濃度の大きさを決定することとを行わせる、記憶された命令をさらに有する、プロセッサとを含み得る。
【0010】
別の例示的な実施形態では、持続グルコースモニタリング(CGM)システムは、ユーザの間質液の領域に挿入するように構成されたCGMセンサと、CGMセンサに結合するように構成され、ユーザの外面に取外し可能に取り付けられるように構成された第1の電子回路であって、第1の電子回路が、CGMセンサに結合するように構成された周期的励起信号発生器と、CGMセンサに結合するように構成された電流センサと、電流センサに結合するように構成されたサンプリング回路とを含み、サンプリング回路が、サンプリングされた時間領域データを出力するように構成される、第1の電子回路と、第1の電子回路に結合された第2の電子回路であって、第2の電子回路が、サンプリングされた時間領域データからあらかじめ定められた数の高調波を抽出することと、抽出された高調波に基づいて高調波関係のセットを生成することと、高調波関係のセットに基づいて血糖値を決定することとを行うように構成される、第2の電子回路とを含み得る。
【0011】
別の例示的な実施形態では、持続グルコースモニタリング(CGM)の方法は、周期的励起信号発生器によって、振幅および基本周波数を有する周期的励起信号を生成するステップと、周期的励起信号をCGMセンサの電極に印加するステップと、電流センサ回路によって、測定された電流信号を生成するためにCGMセンサを通る電流を検知するステップと、サンプリング回路によって、時間領域サンプルデータのセットを生成するために、測定された電流信号をサンプリングレートで、一定期間、ビット分解能でサンプリングするステップと、時間領域サンプルデータのセットを周波数領域データのセットに変換するステップであって、周波数領域データのセットが、少なくとも、基本周波数のあらかじめ定められた数の高調波の各々の強度を含む、ステップと、あらかじめ定められた数の高調波の各々の強度に基づいて高調波関係のセットを生成するステップと、高調波関係のセットに基づいて血糖値を決定するステップとを含み得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、分析物モニタリングシステムは、分析物含有流体に周期的励起信号を印加するように構成された第1の回路と、電流測定信号を生成するように構成された第2の回路であって、電流測定信号が、分析物含有流体中の電流を示す大きさを有し、その大きさが、分析物含有流体中の分析対象物濃度に少なくとも部分的に依存する、第2の回路と、電流測定信号をサンプリングするように構成された第3の回路であって、デジタル化された時間領域サンプルデータを生成するようにさらに構成された、第3の回路と、メモリに結合されたプロセッサであって、メモリが、記憶された高調波関係データベースを有し、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、(a)デジタル化された時間領域サンプルデータから複数の高調波信号を抽出することと、(b)複数の高調波信号の少なくとも一部に基づいて、高調波関係のセットを計算することと、(c)計算された高調波関係のセットに基づいて、分析物含有流体中の分析対象物濃度の大きさを決定することとを行わせる、記憶された命令をさらに有する、プロセッサとを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、分析物モニタリングシステムは、(1)分析物含有流体に周期的励起信号を印加するように構成された第1の回路であって、周期的励起信号が、分析物含有流体中のおおよその分析対象物濃度に少なくとも部分的に基づいて選択された基本周波数を有する、第1の回路と、(2)電流測定信号を生成するように構成された第2の回路であって、電流測定信号が、分析物含有流体中の電流を示す大きさを有し、その大きさが、分析物含有流体中の分析対象物濃度に少なくとも部分的に依存する、第2の回路と、(3)電流測定信号をサンプリングするように構成された第3の回路であって、デジタル化された時間領域サンプルデータを生成するようにさらに構成された、第3の回路と、(4)メモリに結合されたプロセッサであって、メモリが、記憶された高調波関係データベースを有し、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、(a)デジタル化された時間領域サンプルデータから複数の高調波信号を抽出することと、(b)複数の高調波信号の少なくとも一部に基づいて、高調波関係のセットを計算することと、(c)高調波関係データベースにアクセスすることであって、高調波関係データベースが、複数の高調波関係のセットを含み、高調波関係の各セットが、対応する分析対象物濃度に関連付けられる、アクセスすることと、(d)高調波関係データベースおよび計算された高調波関係のセットに基づいて、分析物含有流体中の分析対象物濃度の大きさを決定することとを行わせる、記憶された命令をさらに有する、プロセッサとを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、分析物含有流体中の酸化還元反応を電子的に精査する方法は、(a)分析物含有流体中のおおよその分析対象物濃度を決定するステップと、(b)決定されたおおよその分析対象物濃度に少なくとも部分的に基づいて、分析物含有流体に印加するために、周期的励起信号の周波数を決定するステップと、(c)第1の回路によって、周期的励起信号を分析物含有流体に印加するステップと、(d)第1の回路が周期的励起信号を印加している間に、第2の回路によって、電流測定信号を生成するステップであって、電流測定信号が、分析物含有流体中の酸化還元反応によって生成される電流を示す大きさを有し、その大きさが、少なくとも部分的に、分析物含有流体中の分析対象物濃度に依存する、ステップと、(e)第3の回路によって、電流測定信号をサンプリングするステップと、(f)第3の回路によって、電流測定信号を表すデジタル化された時間領域サンプルデータを提供するステップと、(g)デジタル化された時間領域サンプルデータに少なくとも部分的に基づいて複数の高調波信号を抽出するステップであって、高調波信号が周期的励起信号の基本周波数の高調波であり、各高調波信号は対応する強度を有する、ステップと、(h)複数の高調波信号の少なくとも一部に基づいて、高調波関係のセットを計算するステップと、(i)計算された高調波関係のセットに基づいて、分析物含有流体中の分析対象物濃度の大きさを決定するステップとを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、分析物モニタリングシステムは、(1)分析物含有流体に周期的励起信号を印加するように構成された第1の回路であって、周期的励起信号が、分析物含有流体中のおおよその分析対象物濃度に少なくとも部分的に基づいて選択された基本周波数を有する、第1の回路と、(2)電流測定信号を生成するように構成された第2の回路であって、電流測定信号が、分析物含有流体中の電流を示す大きさを有し、その大きさが、分析物含有流体中の分析対象物濃度に少なくとも部分的に依存する、第2の回路と、(3)電流測定信号をサンプリングするように構成された第3の回路であって、デジタル化された時間領域サンプルデータを生成するようにさらに構成された、第3の回路と、(4)メモリに結合されたプロセッサであって、メモリが記憶された命令を有し、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、(a)デジタル化された時間領域サンプルデータから複数の高調波信号を抽出することと、(b)複数の高調波信号の少なくとも一部に基づいて、高調波関係のセットを計算することと、(c)計算された高調波関係のセットに基づいて、分析物含有流体中の分析対象物濃度の大きさを決定することとを行わせる、プロセッサとを含む。
【0016】
本開示による実施形態の他の特徴、態様、および利点は、いくつかの例示的な実施形態および実施形態を示すことによって、以下の詳細な説明、サブ結合された特許請求の範囲、および添付の図面からより完全に明らかになる。本開示による様々な実施形態はまた、他の異なる用途が可能であり得、そのいくつかの詳細は、すべて特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなしに、様々な点において変更され得る。したがって、図面および説明は、本質的に例示的なものと見なされるべきであり、限定的なものとして見なされるべきではない。図面は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】本開示による、CGMシステムのウェアラブル部分に記憶された高調波関係データベースを備えたCGMシステムの第1の例示的な実施形態の高レベルのブロック図である。
【
図1B】本開示による、CGMシステムのポータブルユーザデバイス部分に記憶された高調波関係データベースを備えたCGMシステムの第2の例示的な実施形態の高レベルのブロック図である。
【
図1C】本開示によるCGMシステムの第3の例示的な実施形態の高レベルのブロック図である。
【
図2】本開示の例示的な実施形態による、別のCGMシステムの高レベルのブロック図である。
【
図3】本開示の例示的な実施形態による、さらに別のCGMシステムの高レベルのブロック図である。
【
図4】本開示の例示的な実施形態による、高調波関係を分析対象物濃度にマッピングするためのデータ構造を高レベルで示す図である。
【
図5】本開示の例示的な実施形態による、高調波関係を分析対象物濃度にマッピングするための高調波関係データベースを高レベルで示す図である。
【
図6A】本開示の例示的な実施形態による、3つの異なる濃度のグルコース含有流体に印加される周期的励起信号の基本周波数の第3の高調波の強度に対する第2の高調波の強度の比の片対数プロットを示す図である。
【
図6B】本開示の例示的な実施形態による、3つの異なる濃度のグルコース含有流体に印加される周期的励起信号の基本周波数の第5の高調波の強度に対する第3の高調波の強度の比の片対数プロットを示す図である。
【
図6C】本開示の例示的な実施形態による、3つの異なる濃度のグルコース含有流体に印加される周期的励起信号の基本周波数の第3の高調波の強度に対する第4の高調波の強度の比の片対数プロットを示す図である。
【
図6D】本開示の例示的な実施形態による、3つの異なる濃度のグルコース含有流体に印加される周期的励起信号の基本周波数の第4の高調波の強度に対する第2の高調波の強度の比の片対数プロットを示す図である。
【
図7A】本開示の例示的な実施形態による、持続的分析物モニタリングシステムのための高調波関係データベースを生成する方法の流れ図である。
【
図7B】本開示の例示的な実施形態による、持続的分析物モニタリングシステムのための高調波関係データベースを生成する方法の流れ図である。
【
図8】本開示の例示的な実施形態による、分析対象物濃度を決定する方法の流れ図である。
【
図9】本開示の例示的な実施形態による、持続グルコースモニタリングの方法の流れ図である。
【
図10】本開示の実施形態による、分析対象物濃度モニタリングの別の例示的な方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
CGMシステムは、これらに限定されないが、フィンガースティックの数を減らしたり、血糖値の急激な変化を検出したりするなどの多くの利点を人々に提供する。しかしながら、CGMシステムを実装する際の技術的な課題のうちの1つは、人の血液を直接測定するのではなく、間質液でグルコース測定を行うと、信号対雑音比(SNR)が低下する可能性があることである。信号対雑音比が低いと、患者の間質液から取得された信号の処理が困難になる可能性がある。
【0019】
本明細書で提供され、以下でより詳細に説明される様々な実施形態では、低周波周期的励起信号は、グルコース含有流体に注入され(たとえば、流体中のグルコース酸化/還元(レドックス)反応を駆動する)、流体中の電流の対応する測定における非線形信号歪みを生成する。高調波は、非線形信号歪みによって生成された複雑な波形から抽出され得、液体におけるグルコース濃度と相関する高調波比のセットまたは高調波間の他の関係など、高調波関係のセットを生成するために使用され得る。異なるグルコース濃度に対して、高調波関係のセットは、対応する一意の値のセットを有する。すなわち、高調波関係のセットは、グルコース濃度空間においてベクトルとして機能し得、ベクトル座標(すなわち、高調波関係の評価されたセット)は、グルコース濃度を指しているか、定義している。より一般的には、高調波関係のセットは、他の分析物含有流体に対して生成され、そのような流体内の分析対象物濃度を定義するために採用され得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、複数の分析物が分析される流体中に同時に存在し、高調波関係の依存性が、異なる分析物および/または分析対象物濃度に対して異なる場合、複数の分析物の濃度が同時に決定され得る。同様に、1つまたは複数の干渉物が、分析対象物濃度の検出中に検出、分析、および/または補正され得る。一例として、分析される流体は、グルコースおよび少なくとも1つの干渉物を含み得、これは、電気化学的測定においてグルコースを模倣することができる。しかしながら、グルコース濃度は、干渉濃度とは異なる高調波関係のセットに影響を与える可能性がある。このように、高調波関係は、グルコース濃度および干渉物濃度を決定するために、および/または干渉物の存在を補正しながらグルコース濃度を決定するために使用され得る。
【0021】
CGM装置
CGMシステムで持続グルコースモニタリングを実行するために、患者にセンサが挿入される。挿入されたセンサは、患者の間質液内に配置された電極を提供する。電気回路がセンサに結合され得る。電気回路、あるいは電気回路を含む筺体または他のパッケージは、患者の皮膚に付着し、数日以上の間付着したままであってよい。センサと電気回路は一緒になって、CGMシステムのウェアラブル部分として構成される。そのようなウェアラブル部分は、追加の特徴および機能を実装するための追加の電気回路を有し得る。
【0022】
電気回路は、間質液からセンサによって取得された電気信号を処理するために使用され得る。これらの信号は、人の血糖値に依存している。これらの信号は、たとえば1日に複数回自動的に取得され得る。ウェアラブル部分の電気回路は、患者の血糖値に関する情報を記憶、表示、および/または通信するようにさらに構成され得る。
【0023】
上記のように、BGMシステムは、たとえばフィンガースティックで採血すると同時に、人の血液サンプルにおける血糖値を決定する。人の単一のグルコース測定値をできるだけ早く取得するために、BGM測定を加速することに多くの努力が注がれている。BGMシステムによって血糖値を決定するための現在の最先端技術は5秒未満である。しかしながら、CGMシステムの場合、動脈血中のグルコースと間質液中のグルコースの間の約5分の固有のタイムラグよりも大幅に速い時間スケールで間質液中のグルコースを測定することにはほとんど利点がない場合がある。したがって、CGMシステムによって血糖値を決定するための意味のある時間制約は1分程度である。すなわち、CGMシステムにおいては、BGMシステムよりも多くの時間が利用可能であり、その余分な時間は、血糖値を決定するために、間質液から取得される(BGMシステムと比較して)低いSNR信号を処理するために使用され得る。したがって、本明細書で提供される実施形態は、動脈血と比較して間質液中の比較的低いSNRを補償し得る(たとえば、より多くの励起サイクルの追加によってスケーラブルなSNRを提供し得る周波数領域アルゴリズムの使用を通じて)。他のタイプの分析物、干渉物、またはマルトース、ガラクトース、ヘマトクリット、アセトアミノフェンなどの薬物などの他の物質の持続的なモニタリングシステムは、本明細書に記載の実施形態に従って同様に採用され得る。
【0024】
図1Aは、本明細書で提供される実施形態による例示的なCGMシステム100の高レベルのブロック図を示している。
図1Aには示されていないが、様々な電子部品および/または回路は、これに限定されないが、バッテリなどの電源に結合するように構成されていることを理解されたい。CGMシステム100は、CGMセンサ104に結合するように構成され得る第1の回路102を含む。第1の回路102は、周期的電圧信号などの周期的励起信号を、CGMセンサ104を介して分析物含有流体に印加するように構成され得る。この例示的な実施形態では、分析物含有流体はヒト間質液であり得、周期的電圧信号は、CGMセンサ104の電極105に印加され得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、CGMセンサ104は2つの電極を含み得、周期的電圧信号は、電極のペアに印加され得る。そのような場合、電流は、CGMセンサ104を通して測定され得る。他の実施形態では、CGMセンサ104は、作用電極、対電極、および参照電極などの3つの電極を含み得る。そのような場合、周期的電圧信号が対電極と参照電極との間に印加され得、電流は、たとえば、作用電極を通して測定され得る。CGMセンサ104は、還元酸化反応においてグルコース含有溶液と反応する化学物質を含み、これは、電荷担体の濃度およびCGMセンサ104の時間依存インピーダンスに影響を与える。3電極センサが使用される場合などのいくつかの実施形態では、第1の回路102は、ポテンシオスタットを含むように構成され得、その出力端子は、第1の回路102の出力端子を形成する。
【0026】
第1の回路102によって生成される周期的電圧信号は、たとえば、これらに限定されないが、DCオフセットの有無にかかわらず、正弦波、正方形、鋸歯状、三角形などであり得る、時間変化する信号である。後続の信号処理を簡素化するために、周期的信号は、分析物含有流体に印加される前に安定化され得る(たとえば、レドックス反応によって生成されない高調波の導入を回避するため)。しかしながら、周期的電圧信号が、たとえば、1kHzよりはるかに小さいが0.01Hzよりも大きい、センサの化学反応ダイナミクス程度の基本周波数を有する実施形態では、そのような低周波周期信号の生成は最初から非常に「クリーン」になる可能性があるため、安定化プロセスまたは待機期間が短縮または排除される可能性がある。1kHzよりはるかに高い周波数においては、センサの化学反応ダイナミクスが電流応答に影響を与えないことが多いため、信号安定化期間は必要ない。いくつかの実施形態では、第1の回路102によって生成される周期的電圧信号は、DCオフセット電圧を含み得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、周期的電圧信号は、固定された、またはゆっくりと変化する周波数を有し得る。他の実施形態では、周期的電圧信号は、異なる離散周波数間で変化する周波数を有し得る(たとえば、10以上などの周期的電圧信号の複数の周期の間、各周波数において維持される)。周期的電圧信号の例示的な励起周波数は、約0.1Hzから10Hzの範囲であり、いくつかの実施形態では、約0.5から2Hzの範囲であるが、他の値も使用され得る。例示的なピーク電圧は、約0.5から500ミリボルトの範囲であり、いくつかの実施形態では、最大約1ボルトであるが、より大きいまたはより小さい値が使用され得る(たとえば、DCオフセットの有無にかかわらず)。
【0028】
周期的電圧信号に応答する分析物含有流体内のCGMセンサ104を通る電流は非線形であり、CGMセンサ104から第2の回路106に伝達され得る。第2の回路106は、CGMセンサ104から伝達される電流の大きさを示す大きさを有する電流測定信号を生成するように構成され得る。いくつかの実施形態では、第2の回路106は、知られている公称値および知られている公称精度(たとえば、いくつかの実施形態では、0.1%から5%、またはさらには0.1%よりも小さい)を有する抵抗器を含み得、それを通して、CGMセンサ104から伝達された電流が流される。第2の回路106の抵抗器の両端に発生する電圧は、電流の大きさを表し、電流測定信号と呼ばれ得る。
【0029】
電流測定信号の非線形成分は、分析されている分析物含有流体内の分析物(たとえば、グルコースおよび/または他の分析物)濃度に依存する。以下でさらに説明するように、本明細書で提供される実施形態によれば、電流測定信号の非線形特性(分析対象物濃度に依存する)は、印加された周期信号の基本周波数の高次高調波を抽出することによって定量化され得る。たとえば、振幅、電力などの基本周波数の各高調波の「強度」は、基本周波数fの整数倍(高調波n*fなどであり、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上)に対して抽出され得る。特定の周波数と同様に、非線形電流測定信号のスペクトル全体または周波数の一部が採用され得る(たとえば、フーリエ、高速フーリエ、離散フーリエ、ゲルツェル、または他の変換を使用する)。
【0030】
第3の回路108は第2の回路106に結合され得、電流測定信号をサンプリングするように構成され得、そして電流測定信号を表すデジタル化された時間領域サンプルデータを生成し得る。たとえば、第3の回路108は、アナログ信号である電流測定信号を受信し、それを出力として所望のビット数を有するデジタル信号に変換するように構成された任意の適切なよく知られているA/D変換器回路であり得る。第3の回路108によって出力されるビット数は、いくつかの実施形態では16であり得るが、他の実施形態では、より多いまたはより少ないビットが使用され得る。いくつかの実施形態では、第3の回路108は、毎秒約10サンプルから毎秒1000サンプルの範囲のサンプリングレートにおいて電流測定信号をサンプリングし得る。より速いまたはより遅いサンプリングレートが使用され得る。たとえば、約10kHzから100kHzなどのサンプリングレートが使用され得、信号対雑音比をさらに低減するためにダウンサンプリングされ得る。
【0031】
第3の回路108は、サンプリングウィンドウと呼ばれる期間、サンプリングレートにおいて電流測定信号をサンプリングし得る。様々な実施形態では、サンプリングウィンドウは、約10秒から300秒の間であり得る。より長いまたはより短いサンプリングウィンドウが使用され得る。
【0032】
引き続き
図1Aを参照すると、プロセッサ110は、第3の回路108に結合され得、さらにメモリ112に結合され得る。いくつかの実施形態では、プロセッサ110および第3の回路108は、ワイヤード経路を介して互いに直接通信するように構成される。いくつかの実施形態では、プロセッサ110と第3の回路108との間のワイヤード経路は、デジタルデータの1ビットが一度に転送される直列経路である。他の実施形態では、プロセッサ110と第3の回路108との間のワイヤード経路は、2つ以上のビットのデジタルデータが一度に転送される並列経路である。さらに他の実施形態では、プロセッサ110と第3の回路108との結合は、メモリ112を介することができる。この構成では、第3の回路108はデジタルデータをメモリ112に書き込み、プロセッサ110はデジタルデータをメモリ112から読み取る。
【0033】
メモリ112は、その中に高調波関係データベース114(以下で詳細に説明される)を記憶し得る。メモリ112はまた、その中に複数の命令を記憶し得る。様々な実施形態では、プロセッサ110は、これらに限定されないが、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、組込みマイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、マイクロコントローラとして実行するように構成されたフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの計算リソースであり得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、メモリ112に記憶された複数の命令は、プロセッサ110によって実行されると、プロセッサ110に、(a)第3の回路108によって生成された、デジタル化された時間領域サンプルデータから複数の高調波信号を抽出することと、(b)複数の高調波信号の少なくとも一部に基づいて、高調波関係のセットを計算するか、さもなければ決定することと、(c)高調波関係データベース114にアクセスすることと、(d)高調波関係データベース114および決定された高調波関係のセットに基づいて、CGMセンサ104によって検知された分析物含有流体中の分析対象物濃度の大きさを決定することとを行わせる命令を含み得る。
【0035】
メモリ112は、これらに限定されないが、揮発性メモリおよび/または不揮発性メモリの1つまたは複数などの任意の適切なタイプのメモリであり得る。たとえば、メモリ112は、揮発性メモリおよび不揮発性メモリなどの異なるタイプのメモリの組合せを含み得る。揮発性メモリは、これらに限定されないが、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)または動的ランダムアクセスメモリ(DRAM)を含み得る。不揮発性メモリは、これらに限定されないが、電気的にプログラム可能な読取り専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラム可能な読取り専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ(たとえば、NORまたはNAND構成のいずれか、および/あるいはスタックまたは平面配置のいずれか、および/あるいはシングルレベルセル(SLC)、マルチレベルセル(MLC)、またはSLC/MLCの組合せの配置のEEPROMのタイプ)、抵抗メモリ、フィラメントメモリ、金属酸化物メモリ、相変化メモリ(カルコゲニドメモリなど)、または磁気メモリを含み得る。メモリ112は、たとえば、単一のチップまたは複数のチップとしてパッケージ化され得る。いくつかの実施形態では、メモリ112は、1つまたは複数の他の回路とともに、たとえば、特定用途向け集積回路(ASIC)などの集積回路に埋め込まれ得る。
【0036】
上記のように、メモリ112は、プロセッサ110によって実行されると、プロセッサ110に、記憶された複数の命令のうちの1つまたは複数によって指定された様々なアクションを実行させる複数の命令を記憶し得る。メモリ112はさらに、複数の命令のうちの1つまたは複数の命令の実行に応答して、プロセッサ110による読取りまたは書込み動作に使用され得る1つまたは複数の「スクラッチパッド」ストレージ領域のために予約された部分を有し得る。
【0037】
図1Aの実施形態では、第1の回路102、CGMセンサ104、第2の回路106、第3の回路108、プロセッサ110、および高調波関係データベース114を含むメモリ112は、CGMシステム100のウェアラブルセンサ部分116内に配置され得る。いくつかの実施形態では、ウェアラブルセンサ部分116は、(たとえば、外部機器を使用せずに)グルコース濃度情報などの情報を表示するためのディスプレイ117を含み得る。ディスプレイ117は、これらに限定されないが、液晶ディスプレイ(LDC)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、または有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイなどの任意の適切なタイプの人間が知覚できるディスプレイであり得る。
【0038】
引き続き
図1Aを参照すると、CGMシステム100は、ポータブルユーザデバイス部分118をさらに含む。プロセッサ120およびディスプレイ122は、ポータブルユーザデバイス部分118内に配置され得る。ディスプレイ122は、プロセッサ120に結合され得る。プロセッサ120は、ディスプレイ122によって示されるテキストまたは画像を制御し得る。ウェアラブルセンサ部分116、およびポータブルユーザデバイス部分118は、通信可能に結合することができる。いくつかの実施形態では、ウェアラブルセンサ部分116とポータブルユーザデバイス部分118との通信結合は、ワイヤレス通信によるものであり得る。そのようなワイヤレス通信は、これらに限定されないが、ブルートゥース(登録商標)通信プロトコルなどの標準ベースの通信プロトコルを含む任意の適切な手段によるものであり得る。様々な実施形態では、ウェアラブルセンサ部分116とポータブルユーザデバイス部分118との間のワイヤレス通信は、代替的に、近距離通信(NFC)、無線周波数(RF)通信、赤外線(IR)通信、または光通信によるものであり得る。いくつかの実施形態では、ウェアラブルセンサ部分116およびポータブルユーザデバイス部分118は、1つまたは複数のワイヤによって接続され得る。
【0039】
ディスプレイ122は、これらに限定されないが、液晶ディスプレイ(LDC)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、または有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイなどの任意の適切なタイプの人間が知覚できるディスプレイであり得る。
【0040】
次に
図1Bを参照すると、
図1Aにおいて示される実施形態と同様の例示的なCGMシステム150が示されているが、コンポーネントのパーティションが異なる。CGMシステム150において、ウェアラブルセンサ部分116は、CGMセンサ104に結合された第1の回路102と、CGMセンサ104に結合された第2の回路106とを含む。CGMシステム150のポータブルユーザデバイス部分118は、プロセッサ120に結合された第3の回路108と、プロセッサ120に結合されたディスプレイ122とを含む。プロセッサ120は、その中に記憶された高調波関係データベース114を有するメモリ112にさらに結合される。いくつかの実施形態では、CGMシステム150内のプロセッサ120はまた、たとえば
図1AのCGMシステム100のプロセッサ110によって実行される前述の機能を実行し得る。CGMシステム150のウェアラブルセンサ部分116は、第3の回路108、プロセッサ110、メモリ112などがその中に含まれていないため、
図1AのCGMシステム100のウェアラブルセンサ部分116よりも小さく、軽量であり、したがって侵襲性が低い可能性がある。
【0041】
次に
図1Cを参照すると、
図1Bにおいて示される実施形態と同様の例示的なCGMシステム170が示されているが、コンポーネントのパーティションが異なる。CGMシステム170において、ウェアラブルセンサ部分116は、CGMセンサ104に結合された第1の回路102と、CGMセンサ104に結合された第2の回路106と、第2の回路106に結合された第3の回路108とを含む。CGMシステム170のポータブルユーザデバイス部分118は、プロセッサ120と、プロセッサ120に結合されたディスプレイ122とを含む。プロセッサ120は、その中に記憶された高調波関係データベース114を有するメモリ112にさらに結合される。CGMシステム170のウェアラブルセンサ部分116は、プロセッサ110、メモリ112などがその中に含まれていないため、
図1AのCGMシステム100のウェアラブルセンサ部分116よりも小さく、軽量であり、したがって侵襲性が低い可能性がある。
【0042】
図2を参照すると、本明細書で提供される例示的なCGMシステム200は、ウェアラブル部分202(破線ボックス内に示される)およびポータブルユーザデバイス部分204(破線ボックス内に示される)を含む。ウェアラブル部分202は、CGMセンサ208の電極207に結合された周期信号発生器206を含み、その1つは、たとえば、作用電極209であり得る。CGMセンサ208の電極207は、分析物含有流体210内にあることが示されている。いくつかの実施形態では、分析物含有流体はヒト間質液であり、分析物はグルコースである。CGMセンサ208の電極207は、電流測定回路212にさらに結合されている(信号発生器206および電流測定回路212は、それぞれ、
図1A、
図1B、および
図1Cの第1の回路102および第2の回路106と同様であり得る)。
【0043】
電流測定回路212は、分析物含有流体210における酸化還元反応によって生成された電流を電極207から受け取り、その電流は、信号発生器206によって電極207に印加された電圧に応答する。電流測定回路212は、電流測定信号を生成し、その大きさは、信号発生器206によって電極207に印加される電圧に応答する。電流測定回路212は、サンプリング回路214に結合されている。
【0044】
図1A、
図1B、および
図1Cの第3の回路108と同様のサンプリング回路214は、電流測定回路212によって生成された電流測定信号を入力として受信するように構成されている。サンプリング回路214は、電流測定信号をサンプリングするように構成され得、電流測定信号を表すデジタル化された時間領域サンプルデータを生成し得る。いくつかの実施形態では、サンプリング回路214は、任意の適切なビット分解能を備えたA/D変換器であり得る。いくつかの実施形態では、サンプリング回路214は、16ビットのビット分解能を有し得る。より多いまたはより少ないビットが使用され得る。サンプリング回路214は、たとえば、毎秒約10サンプルから毎秒1000サンプルの範囲のサンプリングレートにおいて電流測定信号をサンプリングし得る。より速いまたはより遅いサンプリングレートが使用され得る。たとえば、約10kHzから100kHzなどのサンプリングレートが使用され得、信号対雑音比をさらに低減するためにダウンサンプリングされ得る。さらに、サンプリング回路214は、サンプリングウィンドウと呼ばれる期間、サンプリングレートにおいて電流測定信号をサンプリングし得る。様々な実施形態では、サンプリングウィンドウは、約10秒から300秒の間であり得る。他のサンプリングレートおよび/またはサンプリングウィンドウが使用され得る。
【0045】
引き続き
図2を参照すると、サンプリング回路214はメモリ216に結合されている。いくつかの実施形態では、サンプリング回路214は、電流測定信号を表すデジタル化された時間領域サンプルデータをメモリ216に書き込むように構成され得る。
【0046】
メモリ216は、これらに限定されないが、
図1A、
図1B、および
図1Cを参照して前述したように、揮発性メモリまたは不揮発性メモリなどの任意の適切なタイプのメモリであり得る。たとえば、メモリ216は、揮発性メモリおよび不揮発性メモリなどの異なるタイプのメモリの組合せを含み得る。
【0047】
メモリ216は、その中に記憶された複数の命令を有し得る。ウェアラブル部分202のメモリ216は、アンテナ220に結合されたトランシーバ218にさらに結合されている。メモリ216は、マイクロコントローラ222にさらに結合されている。メモリ216に記憶された複数の命令は、マイクロコントローラ222によって実行されると、マイクロコントローラ222に、記憶された複数の命令のうちの1つまたは複数によって指定された様々なアクションを実行させる。いくつかの実施形態では、メモリ216は、その中に記憶された高調波関係データベース(HRD)223を有し得る。
【0048】
引き続き
図2を参照すると、マイクロコントローラ222は、スタンドアロンマイクロコントローラ、組込みマイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、マイクロコントローラとして実行するように構成されたフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などであり得る。
【0049】
例示的なCGMシステム200では、トランシーバ218は、メモリ216から情報を読み取り、トランシーバ224およびそのアンテナ226を介してそのデータをポータブルユーザデバイス部分204に送信するように構成された無線送信機/受信機であり得る。いくつかの実施形態では、トランシーバ224は、トランシーバ218から受信した情報をポータブルユーザデバイス部分204に配置されたメモリ228に書き込むことができる。以下に説明する代替の実施形態では、1つまたは複数の他の電気部品は、サンプリング回路214とメモリ216の間のデータの転送を容易にし得る。様々な実施形態では、トランシーバ218、224間のワイヤレス通信は、ブルートゥース(登録商標)通信、近距離通信(NFC)、無線周波数(RF)通信、赤外線(IR)通信、光通信などによるものであり得る。いくつかの実施形態では、ウェアラブルセンサ部分202およびポータブルユーザデバイス部分204は、1つまたは複数のワイヤによって接続され得る。
【0050】
メモリ228は、マイクロプロセッサ230にさらに結合されている。メモリ228は、これらに限定されないが、
図1A、
図1B、および
図1Cを参照して前述したように、揮発性メモリおよび/または不揮発性メモリなどの任意の適切なタイプのメモリであり得る。
【0051】
マイクロプロセッサ230は、任意の適切な方法で実装される計算リソースであり得る。たとえば、マイクロプロセッサ230は、これらに限定されないが、スタンドアロンチップ、複数の論理的に結合されたチップ、マイクロプロセッサ、組込みプロセッサ、デジタル信号プロセッサなどの機能を実行するように構成されたFPGAであり得る。
【0052】
マイクロプロセッサ230は、ディスプレイ232にさらに結合され得る。ディスプレイ232は、任意の適切なディスプレイであり得る。たとえば、ディスプレイ232は、これらに限定されないが、LDC、またはLED、あるいはOLEDディスプレイなどの人間が知覚できるディスプレイであり得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、ウェアラブルセンサ部分202は、(たとえば、外部機器を使用せずに)グルコース濃度情報などの情報を表示するための、
図1Aのディスプレイ117と同様のディスプレイ233を含み得る。ディスプレイ233は、これらに限定されないが、LDC、またはLED、あるいはOLEDディスプレイなどの任意の適切なタイプの人間が知覚できるディスプレイであり得る。
【0054】
いくつかの代替の実施形態では、サンプリング回路214からのデータは、メモリ216に直接書き込まれなくてもよく、マイクロコントローラ222によってサンプリング回路214から読み取られ、次いでマイクロコントローラ222によってメモリ216(または、ポータブルユーザデバイス部分204)に書き込まれ得る。このデータ経路は、
図2の破線の矢印234a、234bによって示されている。
【0055】
図1A、
図1B、
図1C、および
図2の例示的なCGMシステム100、150、170および200はそれぞれ、ウェアラブル部分およびポータブルユーザデバイス部分を有するツーピースCGMシステムを示している。
図3は、前述のウェアラブル部分およびポータブルユーザ部分の機能を含む例示的なワンピースCGMシステム300を示している。すなわち、例示的なワンピースCGMシステム300は、分析物含有流体に周期的励起電圧を印加することと、結果として生じる電流を表す電流測定信号を生成することと、電流測定信号に基づいて高調波を抽出することと、抽出された高調波から高調波関係のセットを生成することと、および/または生成された高調波関係のセットに少なくとも部分的に基づいて、分析物含有流体中の分析対象物濃度の大きさを決定することとを行うように構成される。いくつかの実施形態では、ワンピースCGMシステム300は、決定された分析対象物濃度を、CGMシステム300から物理的に分離された1つまたは複数の受信機にワイヤレスで送信するようにさらに構成され得る。
【0056】
図3に示されるように、例示的なCGMシステム300(破線のボックス内に示される)は、CGMセンサ208の電極207に結合された周期的信号発生器206を含む。
図3は、分析物含有流体210中に配置されたCGMセンサ208の電極207を示している。電流測定回路212は、CGMセンサ208の電極207に結合され、メモリ302に結合されるサンプリング回路214にさらに結合される。トランシーバ304およびその対応するアンテナ306も、CGMシステム300に含まれ得る。トランシーバ304は、メモリ302に結合されている。メモリ302は、マイクロプロセッサ308にさらに結合されている。メモリ302は、
図2のメモリ216および/または228と同様であり得、たとえば、高調波関係データベース(HRD)223を含む。上述したように、分析物含有流体210中の分析対象物濃度を決定するために、信号発生器206、電流測定回路212、サンプリング回路214、メモリ302、高調波関係データ(HRD)223、およびマイクロプロセッサ308が採用され得る。次いで、トランシーバ304およびアンテナ306は、決定された分析対象物濃度を、CGMシステム300から物理的に分離された1つまたは複数の受信機にワイヤレスで送信し得る。いくつかの実施形態では、CGMシステム300は、分析物および/または他の情報(たとえば、分析対象物濃度)を表示するためのディスプレイ310を含み得る。たとえば、ディスプレイ310は、LDC、あるいはLEDまたはOLEDディスプレイ、あるいは別の適切なディスプレイであり得る。
【0057】
図4および
図5は、本明細書で提供される実施形態による、高調波関係のセットを対応する分析対象物濃度値にマッピングするためのデータ構造を示す。
図4は、高レベルの抽象化における高調波比と分析対象物濃度の関係を示している。
図5は、高調波比と分析対象物濃度との関係をさらに詳細に示している。一方、
図4および
図5は、高調波の比率に関して記載されており、たとえば、2つ以上の高調波の特性(たとえば、強度)の乗算、加算、または減算、2つ以上の高調波の特性(たとえば、強度)に基づく三角関数、対数関数、指数関数、または多項式関数、上記の組合せなどを含む、他の高調波関係が使用され得ることが理解されよう。
【0058】
図4は、1つまたは複数の高調波比に少なくとも部分的に基づいて、分析物含有流体の分析対象物濃度を決定するために有用な例示的なデータ構造400の簡略化された高レベルブロック図を示している。いくつかの実施形態では、高調波関係データベース114および/または223は、データベース構造400と同様の1つまたは複数のデータ構造を含み得る。
図5を参照して以下に示されるように、分析対象物濃度を決定するために、一般に、いくつかの高調波比が使用され得る。
【0059】
データ構造400は、たとえば、あらかじめ定められた数の行および列を有するテーブル(たとえば、ルックアップテーブル)であり得る。
図4に示される例示的なデータ構造400においては、402、404、406、408、410、および412の6つの行と、414、および416の2つの列がある。例示的なデータ構造400において、各行は、少なくとも1つの高調波比のセットの各々の範囲指定を含む第1のエントリを含む。たとえば、Xは、特定の分析対象物濃度、または分析対象物濃度の範囲に関連付けることができる高調波比のセットを表す。
図4に示される例では、行402におけるXは0以上1以下であると特徴付けられ、これは、1の分析対象物濃度に関連付けられる。同様に、行404におけるXは1より大きく2以下であると特徴付けられ、これは、2の分析対象物濃度に関連付けられる。行406におけるXは、2より大きく3以下であると特徴付けられ、これは、3の分析対象物濃度に関連付けられる。行408におけるXは、3より大きく4以下であると特徴付けられ、これは、4の分析対象物濃度に関連付けられる。行410におけるXは4より大きく5以下であると特徴付けられ、これは、5の分析対象物濃度に関連付けられる。同様に、行412におけるXは5より大きいと特徴付けられ、これは、6の分析対象物濃度に関連付けられる。例示的なデータ構造400において提供される例示的な値は、対応する分析対象物濃度にマッピングするための高調波比のセットの使用を単に説明するためのものである。様々な実施形態は、そのようなデータ構造により多いまたはより少ないエントリを有し得る。
【0060】
図5は、1つまたは複数の高調波比に少なくとも部分的に基づいて、分析物含有流体の分析対象物濃度を決定するために有用な例示的な高調波関係データベース500の高レベルのブロック図を示している。分析物の例は、グルコース、マルトース、ガラクトース、ヘマトクリット、アセトアミノフェンなどの薬物などを含む。いくつかの実施形態では、
図1A~
図3の高調波関係データベース114および/または223は、同様に構成され得る。
【0061】
上記のように、AC励起信号などの周期的励起を分析物含有流体に提供することは、分析物含有流体中の分析物の濃度に特徴的な時間領域電流信号を生成し得る。励起信号の基本周波数の高調波は、時間領域の電流信号から抽出され得る。本明細書では高調波比と呼ばれる、抽出された高調波の様々なペアの強度の比のセットなどの、複数の高調波間の高調波関係が決定され得る。時間領域の電流信号のような高調波比または他の高調波関係は、分析対象物濃度の特徴である。高調波比は、第1の高調波の強度を第2の高調波の強度で割った商である。強度は、たとえば、振幅、パワーなどを含み得る。高調波比は、時間領域のサンプルデータから抽出された高調波強度値の任意のペアから生成され得る。したがって、分析対象物濃度は、対応する高調波比のセットによって表され得る。特定の(あらかじめ定められた)分析対象物濃度の高調波比の特性セットを決定し、それらの特性セットをそれらのあらかじめ定められた対応する分析対象物濃度とともにデータベースに記憶することによって、知られていない分析対象物濃度を有する分析物含有流体から取得された後続の生成された高調波比のセットを、高調波比セットのデータベースと比較し、対応する分析対象物濃度値と照合することができる。前述のように、高調波比に加えて、またはその代わりに、他の高調波関係が使用され得る。
【0062】
基本周波数finの場合、高調波はfn=n*finであり、ここでnは高調波の(整数)次数である。高調波強度から、異なる属性を形成することができ、これらの属性は、グルコースの濃度、グルコース干渉物質、および/またはセンサ温度に相関するように最適化され得る。属性の例は、(1)高調波強度、(2)基本周波数強度に対する高調波強度の比率(たとえば、電流検出電子機器のハードウェアキャリブレーションを正規化するため)、(3)電流検出電子機器におけるキャリブレーション係数を低下し得る、2つ以上の高調波強度の比率、および/または(4)2つ以上の高調波強度を含む任意の他の機能的関係を含み得る。
【0063】
高調波比の利点は、いくつかの異なる属性を生成することである。Nが測定可能な高調波の最大数である場合、グルコース濃度、温度、および/またはグルコース干渉物質との相関関数に含まれ得るN(N-1)/2の異なる属性がある。たとえば、N=15の高調波の場合、高調波比のみから、インデックス関数などのより複雑な関数を構築するために使用され得る105の異なる属性がある。
【0064】
より一般的には、高調波とその派生属性(たとえば、振幅、パワーなど)は、これらに限定されないが、多変量回帰、ニューラルネットワーク、ニュートンラプソン法、または分析対象物濃度または他のプロパティを分析するための共役勾配最適化を含む、幅広い機械学習アルゴリズムで使用され得る。
【0065】
図5を参照すると、例示的な高調波関係データベース500は、n個の高調波比のセットを含み、高調波比の各セットは、対応する分析対象物濃度へのリンクまたはポインタを有する。高調波比の各セットはnタプルであり、分析対象物濃度空間のベクトルと考えることができる。例示的な高調波関係データベース500において、n個のベクトルはそれぞれm次元であり、m次元の各々の値は、高調波強度のペアの比の値によって設定される。一般に、任意の数の高調波比が使用され得る。
【0066】
ここでは、n個のベクトルが、それぞれ第1のベクトル502、第2のベクトル506、第3のベクトル510、およびn番目のベクトル514として示されている。各ベクトル502、506、510、および514は、m個の高調波比、および対応する分析対象物濃度値504、508、512、および516へのリンク、またはポインタ、503、507、511、および515をそれぞれ含む。
【0067】
一例として、分析物含有流体の高調波比ha1b1、ha2b2、ha3b3...hambmを決定することによって、高調波比ha1b1、ha2b2、ha3b3...hambmは、高調波関係データベース500において設定された各高調波比と比較され得る。たとえば、高調波比ha1b1、ha2b2、ha3b3...hambmが、分析物含有サンプルの高調波比ha1b1-1、ha2b2-1、ha3b3-1...hambm-1と一致する場合、サンプルはConc.-1の分析対象物濃度値を有すると決定し得る。同様に、高調波比ha1b1、ha2b2、ha3b3...hambmが分析物含有サンプルの高調波比ha1b1-2、ha2b2-2、ha3b3-2...hambm-2と一致する場合、サンプルはConc.-2の分析対象物濃度値を有し、以下同様である。ベクトルnあたりの高調波比の数mは、任意の適切な値であり得る(たとえば、高調波比の完全なセットのサイズまでの2、3、4、5、10、15など)。任意の数のベクトルnが使用され得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、高調波比および/または他の高調波関係は、実験的に測定されたデータセット間で、多変量多項式などの数値近似、3次スプラインを使用するなどの多次元補間を使用して、グルコース濃度と相関させることができる。
【0069】
図6A~
図6Dは、本開示の例示的な実施形態による、3つの異なる濃度でグルコース含有流体に印加される周期的電圧信号の基本周波数の様々な高調波の強度の比の片対数プロットを示している。
図6A、
図6B、
図6C、および
図6Dを参照すると、それぞれ、サンプル中の様々なグルコース濃度(たとえば、1デシリットルあたり50、100、および300ミリグラム(mg/dl))に対する、第2の高調波の強度と第3の高調波の強度との比h23、第3の高調波の強度と第5の高調波の強度との比h35、第4の高調波の強度と第5の高調波の強度との比h45、および第2の高調波の強度と第4の高調波の強度との比h24の、様々な例示的な高調波比曲線が示されている。高調波の強度は、デジタル化された時間領域電流測定信号から(たとえば、
図1A、
図1B、または
図1Cの第3の回路108から、あるいは
図2または
図3のサンプリング回路214から)高調波を抽出することと、デジタル化された時間領域電流測定信号のこれらのスペクトル成分の強度(たとえば、振幅、電力など)を識別することとを行うことによって決定される。スペクトル成分を抽出するために、たとえば、フーリエ変換、離散フーリエ変換、高速フーリエ変換、ゲルツェル変換などが使用され得る。
図6A~
図6Dは、任意の特定のグルコース濃度に対して、一意の高調波比値のセットがあることを示している。したがって、与えられた高調波比値のセットは、一意の対応するグルコース濃度にマッピングされる。
【0070】
図7A~
図7Bは、本開示の例示的な実施形態による、持続的分析物モニタリングシステムのための高調波関係データベースを生成する方法700の流れ図を示している。たとえば、高調波比および/または他の高調波関係が使用され得る。
図7Aを参照すると、例示的な方法700は、分析物含有流体中の分析対象物濃度の対応する値に相関するあらかじめ定められた高調波関係情報のセットを生成する方法を提供する。このように、たとえば、本開示によるCGM製品において、ヒト間質液中の血糖値を決定するために使用され得る高調波関係データベースが生成され得る。方法700は、複数の分析物含有流体サンプルを提供するステップであって、複数の分析物含有流体サンプルの各々が、知られている分析対象物濃度を有する、ステップ702を含み得る。グルコース含有流体の高調波関係データベースを生成するために、流体サンプルは知られている濃度のグルコースを含む。代替の実施形態では、異なる分析物の高調波関係データベースは、その分析物の知られている濃度を含む流体サンプルを使用することによって生成され得る。複数の分析物含有流体サンプルの各々について高調波関係情報のセットを生成するために方法700が使用され得るため、すべての分析物含有流体サンプルが処理されたかどうかを決定するために決定動作704が実行される。すべての流体サンプルが処理された場合、方法700は終了する。一方、処理するべきより多くの流体サンプルがある多い場合、方法700は、残りの複数の分析物含有流体サンプルの各々について、
図1A、
図1B、または
図1Cの第1の回路102などの第1の回路、あるいは
図2または
図3の信号発生器206によって、分析物含有流体サンプルに周期的な励起(たとえば、電圧)信号(基本周波数を有する)を印加するステップ706をさらに含む。方法700はまた、第1の回路が周期的電圧信号を印加している間に、第2の回路によって電流測定信号を生成するステップ708を含み、電流測定信号は、第1の回路が周期的電圧信号を印加している間に、分析物含有流体サンプルにおける酸化還元反応によって生成される電流を示す大きさを有し、電流測定信号の大きさは、分析物含有流体サンプル中の分析対象物濃度に少なくとも部分的に依存している。第2の回路は、たとえば、
図1A、
図1B、または
図1Cの第2の回路106
、あるいは
図2または
図3の電流測定回路212であり得る。方法700は、第3の回路によって、電流測定信号をサンプリングするステップ710と、第3の回路によって、電流測定信号を表すデジタル化された時間領域サンプルデータを提供するステップ712とをさらに含む。第3の回路は、たとえば、
図1A、
図1B、または
図1Cの第3の回路108、あるいは
図2または
図3のサンプリング回路214であり得る。
【0071】
電流測定信号は、たとえば、時間領域から周波数領域へのフーリエ変換を使用して、それぞれが独自の周波数、振幅、および位相特性を有する一連の信号の合計によって表され得る複雑な時変信号である。複雑な時変信号のスペクトル内容は、たとえば、時間領域信号を周波数領域信号に変換し、スペクトルピークの周波数を識別することによって抽出することができる。フーリエ変換、離散フーリエ変換、高速フーリエ変換、ゲルツェル変換などの任意の適切な変換が使用され得る。高調波信号は、基本周波数の整数倍の周波数を有する信号であり、この例では、分析物含有流体サンプルに印加される周期的電圧信号の周波数である。
【0072】
図7Bを参照すると、デジタル化された時間領域サンプルデータが利用可能になると、方法700は、デジタル化された時間領域サンプルデータから複数の高調波信号強度を抽出するステップ714と、複数の高調波信号の少なくとも一部に基づいて、高調波比などの高調波関係のセットを計算するステップ716とによって続行される。
【0073】
抽出された各高調波信号成分は、対応する高調波周波数の強度、たとえば振幅、電力などを表す値を有する。方法700のいくつかの実施形態によれば、決定される高調波関係は、少なくとも2つの高調波信号の強度の商である高調波比(たとえば、少なくとも2つの高調波信号の強度の比)であり得る。限定ではなく例として、高調波比は、基本周波数の第3の高調波と基本周波数の第5の高調波の強度の比であり得る。述べたように、高調波信号および/または高調波信号強度の間の他の機能的関係は、高調波比に加えて、またはその代わりに使用され得る。本開示による様々な実施形態では、分析物含有流体中の少なくとも1つの分析物の濃度を識別するために、複数の高調波の強度の比などの複数の高調波関係が使用され得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、
図1A~
図3のプロセッサおよび/またはマイクロコントローラ110、120、222、230および/または308は、たとえば、1つまたは複数の時間領域から周波数領域への変換(たとえば、デジタル化された周波数領域データの形成)を使用して、高調波抽出および/または高調波関係計算を実行および/または支援し得る。方法700は、高調波関係のセットを、分析物含有流体の知られている分析対象物濃度と関連付けるステップ718と、知られている分析対象物濃度に関連付けられる高調波関係のセットを高調波関係データベースに記憶するステップ720とによって続行される。たとえば、
図5の高調波関係データベース500と同様の高調波関係データベースが開発される可能性がある。
【0075】
図8は、本開示の例示的な実施形態による、分析対象物濃度を決定する方法800の流れ図を示している。
図8を参照すると、例示的な方法800は、流体中の少なくとも1つの分析物の濃度を決定するために、分析物含有流体中の酸化還元反応を電子的に精査するステップを提供する。方法800は、
図1A、
図1B、または
図1Cの第1の回路102、あるいは
図2または
図3の信号発生器206によって、周期的励起(たとえば、電圧)信号(基本周波数を有する)を分析物含有流体に印加するステップ802と、第1の回路が、周期的電圧信号、分析物含有流体中の酸化還元反応によって生成された電流を示す大きさを有する電流測定信号を印加している間に、第2の回路によって、分析物含有流体中の分析対象物濃度に少なくとも部分的に依存する大きさを生成するステップ804とを含む。第2の回路は、たとえば、
図1A、
図1B、または
図1Cの第2の回路106、あるいは
図2または
図3の電流測定回路212であり得る。1つの実施形態では、分析物はグルコースであり得、代替の実施形態では、1つまたは複数の他の分析物は、分析物含有流体中にあり得る。方法800は、第3の回路によって、電流測定信号をサンプリングするステップ806と、第3の回路によって、電流測定信号を表すデジタル化された時間領域サンプルデータを提供するステップ808とをさらに含む。いくつかの実施形態では、サンプリング回路は、適切なビット分解能を有するA/D変換器であり得る。第3の回路は、たとえば、
図1A、
図1B、または
図1Cの第3の回路108、あるいは
図2または
図3のサンプリング回路214であり得る。
【0076】
電流測定信号を表すデジタル化された時間領域サンプルデータが利用可能になると、方法800は、デジタル化された時間領域サンプルデータに少なくとも部分的に基づいて複数の高調波信号を抽出するステップ810であって、高調波信号が基本周波数の高調波であり、各高調波信号は対応する強度を有する、ステップによって続行される。方法800は、抽出された複数の高調波信号の少なくとも一部に基づいて、高調波比などの少なくとも2つの高調波強度の高調波関係のセットを計算するステップ812と、高調波関係データベースにアクセスするステップ814であって、高調波関係データベースが複数の高調波関係(
図5を参照)のセットを含み、高調波関係の各セットが対応する分析対象物濃度に関連付けられる、ステップとによって続行される。方法800は、高調波関係データベースおよび計算された高調波関係のセットに基づいて、分析物含有流体中の分析対象物濃度を決定するステップ816をさらに含む。いくつかの実施形態では、分析対象物濃度を決定するステップは、計算された高調波関係のセットを、高調波関係データベース(たとえば、
図5の高調波関係データベース500)内の1つまたは複数のベクトルと比較するステップを含み、計算された高調波関係のセットと高調波関係データベース内のベクトルとの間に一致が見つかった場合、関連付けられる分析対象物濃度値へのマッチングベクトルに関連付けられたリンクまたはポインタをたどる。いくつかの実施形態では、
図1A~
図3のプロセッサおよび/またはマイクロコントローラ110、120、222、230および/または308は、計算された高調波関係のセットを、高調波関係データベース内の1つまたは複数のベクトルと比較することによって、高調波抽出、高調波関係計算、および/または分析対象物濃度の決定を実行および/または支援し得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、高調波比および/または他の高調波関係は、実験的に測定されたデータセット間で、多変量多項式などの数値近似、3次スプラインの使用などの多次元内挿などを使用して、分析対象物濃度と相関させることができる。さらに、いくつかの実施形態では、高調波とその派生属性(たとえば、振幅、パワーなど)は、これらに限定されないが、多変量回帰、ニューラルネットワーク、ニュートンラプソン法、または分析対象物濃度または他のプロパティを分析するための共役勾配最適化を含む、幅広い機械学習アルゴリズムで使用され得る。
【0078】
図9は、本開示の例示的な実施形態による、持続グルコースモニタリングの方法900の流れ図を示している。
図9を参照すると、CGMセンサが人の皮膚の下に挿入され、CGMシステムのウェアラブル部分が人の皮膚に付着された後、方法900は、周期的励起信号(たとえば、AC励起信号、周期的電圧信号など)発生器によって、振幅および基本周波数を有する周期的信号を生成するステップ902と、励起信号をCGMセンサの電極に印加するステップ904とを提供する。方法900は、測定された電流信号を生成するために、電流センサ回路を用いてCGMセンサを通る電流を検知するステップ906によって続行される。測定された電流信号は、少なくとも部分的には励起信号に依存し、少なくとも部分的には人の間質液中のグルコース濃度に依存する。方法900は、時間領域サンプルデータのセットを生成するために、サンプリング回路を用いて、サンプリングレートで、一定期間、ビット分解能で測定された電流信号をサンプリングするステップ908によって続行される。様々な実施形態では、サンプリングレートは、たとえば、これに限定されないが、50倍、100倍、さらには200倍、さらには400倍、励起信号の基本周波数よりも大きい。方法900は、時間領域サンプルデータのセットを周波数領域データのセットに変換することによって続行され、周波数領域データのセットは、基本周波数のあらかじめ定められた数の高調波の各々の強度を含む。方法900は、あらかじめ定められた数の高調波の各々の強度に基づいて、高調波関係のセットを生成するステップ912をさらに含む。方法900は、高調波関係のセットに基づいて血糖値(たとえば、濃度)を決定するステップ914をさらに含む。上記のように、いくつかの実施形態では、高調波関係のセットは、高調波関係データベース内のグルコースの濃度にマッピングされ得る。方法900は、たとえば、CGMシステム100、150、170、200または300のうちの1つまたは複数によって実行され得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、分析物含有流体に印加される周期的励起信号の周波数は、少なくとも部分的に、分析物含有流体中の分析物のおおよその濃度に基づいて選択され得る。たとえば、おおよその分析対象物濃度は、予想される分析対象物濃度である可能性がある(たとえば、患者について観察された典型的な分析対象物濃度、患者について測定された以前の濃度レベル、時刻、患者が最後に食べた時間および/またはものなどに基づく)。いくつかの実施形態では、おおよその分析対象物濃度を決定するために、単純なDCまたは他の分析対象物濃度測定が実行され得る。
【0080】
分析物含有流体中の分析物のおおよその濃度に基づいて、周期的励起信号の基本周波数が決定され得る。たとえば、グルコースの場合、おおよその分析対象物(たとえば、グルコース)濃度が、分析される流体中に中間のグルコース濃度が存在することを示す場合、約0.5から1.5Hzの周波数が周期的励起信号に使用され得る。別の例として、おおよその分析対象物(たとえば、グルコース)濃度が、分析される流体中に低グルコース濃度が存在することを示す場合、約4.5~5.5Hzの周波数が周期的励起信号に使用され得る。これらおよび/または他の分析対象物濃度には、他の周波数が使用され得る。いくつかの実施形態では、周期的励起信号の周波数の選択を少なくとも部分的におおよその分析対象物濃度に基づいて行うことにより、分析対象物濃度のより正確な周波数領域ベースの決定を提供し得る。
【0081】
図10は、本開示の例示的な実施形態による、分析対象物濃度モニタリングの方法1000の流れ図を示している。
図10を参照すると、分析物含有流体中の分析対象物濃度を決定するために、方法1000は、分析物含有流体のおおよその分析対象物濃度を決定するステップ1002を提供する。上述したように、これは、推定または概算の分析対象物濃度レベルを取得するために、予想される分析対象物濃度を採用するステップ、単純なDC分析対象物濃度測定を採用するステップなどを含み得る。次いで、方法1000は、おおよその分析対象物濃度に基づいて、分析物含有流体に印加する周期的励起(たとえば、電圧)信号の周波数を決定するステップ1004を含む。たとえば、いくつかの実施形態では、中または高分析対象物濃度よりも低分析対象物濃度に対してより高い周波数が使用され得る。次いで、方法1000は、周期的信号を分析物含有流体に印加するステップ1006と、電流測定信号を生成するステップ1008とを含む。測定された電流信号は、少なくとも部分的には励起信号に依存し、少なくとも部分的には分析物含有流体中の分析対象物濃度に依存する。方法1000は、時間領域サンプルデータのセットを生成するために(1012)、測定された電流信号をサンプリングするステップ1010によって続行される。様々な実施形態では、サンプリングレートは、たとえば、これに限定されないが、50倍、100倍、さらには200倍、さらには400倍、励起信号の基本周波数よりも大きい。方法1000は、デジタル化された時間領域サンプルデータに少なくとも部分的に基づいて複数の高調波信号を抽出するステップ1014と、複数の高調波信号の少なくとも一部に基づいて高調波関係のセットを計算するステップ1016とによって続行される。たとえば、高調波関係のセットを形成するために、高調波比および/または2つ以上の高調波強度の他の組合せが採用され得る。次いで、方法1000は、高調波関係のセットに基づいて、分析物含有流体の分析対象物濃度を決定するステップ1018を含む。いくつかの実施形態では、分析対象物濃度を決定するために、高調波関係データベース、多変量多項式、3次スプラインを使用するなどの多次元補間などが使用され得る。方法1000は、たとえば、モニタリングシステム100、150、170、200または3
00のうちの1つまたは複数によって実行され得る。
【0082】
記載されるように、本明細書に記載される方法およびシステムは、マルトース、ガラクトース、ヘマトクリットなどのグルコース以外の分析物の濃度、そのような分析物の干渉物、アセトアミノフェンなどの薬物の濃度を決定するために採用され得る。
【0083】
持続グルコースモニタリングの主な課題の1つは、間質液中のセンサのキャリブレーションである。アルゴリズム属性としての少なくとも2つの高調波強度の比率または他の関係は、絶対電流測定を利用する場合と比較して、キャリブレーションへの依存度が低い場合がある。1回の測定で1つのデータポイントを生成するDC測定と比較すると、高調波の関係に基づいて構築された基底関数セットを備えたアルゴリズムの利点は、多くの高調波(通常は10~20以上の範囲)を抽出できることであり、これらすべての高調波間の比率または他の機能的関係は、何百もの独立した同時測定を表し得る。高調波は、励起パルスの基本周期の整数倍である任意の時間範囲から抽出され得る。高調波の関係の使用は主にキャリブレーションに依存しないため、A/Dコンバータ段のビット分解能が緩和され、コンポーネントのコストが削減され、アナログフロントエンドの複雑さが軽減される可能性がある。高調波ベースのアルゴリズムはスケーラブルであり、小型マイクロコントローラにおける効率的なゲルツェル変換から、高性能プロセッサ向けのフルスケールのリアルタイムフーリエ解析まで、様々なCPUプラットフォームにおける最適な展開を可能にする。
【0084】
本明細書に記載されているように、電流応答における非線形成分は、反復可能な方法でグルコース濃度に依存している。非線形の寄与を定量化する1つの方法は、基本周波数のより高い高調波を抽出することである。
[1] fn=n*fin、この式で、nは整数高調波の次数である。
【0085】
本明細書に記載の実施形態は、作用電極を通る電流のスペクトルにおけるいくつかの高調波次数の振幅または電力成分を抽出することを含み得る(たとえば、n=2からn=10の次数を超える高調波を含む)。これらに限定されないが、離散フーリエ変換、高速フーリエ変換、またはゲルツェル変換を含む、スペクトル全体、または特定の周波数の寄与のみを抽出するための任意の適切な数値的方法が使用され得る。たとえば、式[1]に基づく離散フーリエ変換は次のようになる。
【0086】
【0087】
上式で、timebinsはサンプリング間隔であり、
[3] k/timebins=nfintである。
【0088】
式[3]から高調波周波数fnにおいて抽出された、式[2]からのフーリエ変換Skは、高調波強度hnと呼ばれ得る。高調波強度から、異なる属性が形成され得、これらの属性は、グルコースの濃度、グルコース干渉物質、および/またはセンサ温度に相関するように最適化され、相関関係は、最も単純な機能的関係を通じて説明され得る。属性は、たとえば、適切な高調波強度hn、基本波に対する高調波強度の比率:hn1=hn/h1、2つの高調波強度の比率:hnm=hn/hm、および/または2つ以上の高調波強度を含む任意の他の機能的関係を含み得る。基本波に対する高調波強度の比率hn1=hn/h1に関して、この手法の利点は、電流検出電子機器のハードウェアキャリブレーションを実質的に正規化することである。たとえば、DCオフセットが削除された場合(たとえば、高調波の抽出が適切に調整されたデジタルフィルタとして設定されている場合)、電流検出電子機器の絶対的なキャリブレーションは必要ない場合がある。2つの高調波強度の比率:hnm=hn/hmに関しては、これにより、電流検出電子機器におけるキャリブレーション係数がなくなるなど、同様の利点が得られる可能性がある。さらに、高調波比は、いくつかのN(N-1)/2の異なる属性を生成し、これは、グルコース、温度、またはグルコース干渉物質との相関関数に含まれ得、ここで、Nは測定可能な高調波の最大数である。N=15の場合、単純な高調波比のみから、インデックス関数などのより複雑な関数を構築するために、105の異なる属性が使用され得る。
【0089】
本明細書に開示される実施形態は、センサの作用電極を流れる電流中の高調波の比をモニタリングすることによって、水溶液中の試薬の濃度の持続的な測定を提供し得る。多数の電流高調波を持続的にモニタリングすることで、CGMにおける信号のセルフキャリブレーションが可能になる(たとえば、DC電流測定および頻繁なキャリブレーションは必要ない)。高調波を使用して抽出された属性は、絶対電流スケールを排除し、センサの電子機器およびキャリブレーションに対する要求(およびコスト)を削減し得る。属性は取得とは無関係であり、任意の適切なアルゴリズムを使用して簡単に分析することができる。
【0090】
上記の実施形態は、たとえば、デジタルフィルタを介するなどの連続アルゴリズムとして実装され得る。連続データストリームでの動作は、有限インパルス応答(FIR)フィルタ、無限インパルス応答(IIR)フィルタ、または再帰応答(RR)フィルタなどのフィルタとして説明することができる。正確な実装形態は、アルゴリズムが展開される処理環境、ならびに抽出される高調波の数によって異なる。FIRフィルタの一般的な定義を上記の式[2]におけるフーリエ変換と組み合わせると、次のようになる。
【0091】
【0092】
および、
[5] btimebin,k=exp(-2πi*tbink/timebins)であり、
上式で、周波数モードkごとにFIR係数btimebin,kのセットがあり、これらは時間的に「振り返って」統合される。抽出された中程度の数の周波数の場合、式[4]におけるフーリエ変換は、timebin=0の場合は「最新」の項btimebin,kImeas(-timebin)を追加し、timebin=timebinsの場合は「最も古い」を減算することによって更新され得る。これにより、測定電流の変化に対する反応時間が最速になるが、多数の周波数を抽出することが所望される場合は、最適な手法ではない可能性がある。多数の周波数を抽出することが所望される場合、高速フーリエ変換(FFT)などのバッチアルゴリズムが使用され得、これはウィンドウ(式[4]および[5]における「timebins」)に適用され得るが、印加の周期性はサンプリング時間よりはるかに長くなる(たとえば、この場合は基礎となる化学の予想される変化率によって決定される)。たとえば、CGMシナリオでは、FFTは1~5分ごとに適用され得、データウィンドウのカバー範囲は1~5分よりも短くなる(CPUの制約が厳しい場合は数秒など、おそらくはるかに短くなる)。少数の高調波のみが抽出されるさらに他の場合には、ゲルツェル変換が採用され得る。
【0093】
本明細書に記載の実施形態は、連続取得および信号処理モードでグルコースおよびおそらく他の分析対象物濃度の測定を実行するためのより効率的な方法を提供し、動脈血と間質液の間の遅延と比較して小さい時間間隔で間質液中のグラウンドトゥルースから遅延する時間領域測定値を生成し得る。このアルゴリズムは、低血糖/高血糖イベントの予測モデリング(たとえば、線形回帰、自己回帰予測モデリング、カルマンフィルタ処理、または人工ニューラルネットワーク)の任意の実装形態と互換性がある。いくつかの実施形態では、高調波比などの1つまたは複数の高調波関係のセットを採用する1つまたは複数の予測方程式を生成することと、持続的分析物検知中の分析対象物濃度を決定することとを行うために(たとえば、高調波関係データベースの使用の代わりに、または使用に加えて)、予測モデリングが採用され得る。たとえば、いくつかの実施形態では、多変量回帰は、回帰ターゲットとして知られている分析対象物濃度および高調波比ならびに/あるいは他の項および/または交差項などの多数の高調波関係を、周期的励起信号に対する非線形電流応答から収集された情報を提供する入力パラメータとして用いて採用され得る。いくつかの実施形態では、そのような予測方程式の1つまたは複数は、持続的分析物検知デバイスのメモリに記憶され、持続的分析物検知中に高調波関係の使用を通じて分析物値を計算するために使用され得る。たとえば、1つまたは複数の予測方程式は、CGMシステム100、150、170、200または300のメモリ112、228および/または302に記憶され得る。
【0094】
持続グルコースモニタリングの主な課題の1つは、間質液中のセンサのキャリブレーションである。アルゴリズム属性としての高調波の比率または他の関係により、絶対電流測定を利用する場合と比較して、アルゴリズムのキャリブレーションへの依存度が大幅に低下する可能性がある。1つの測定に対して1つのデータポイントを生成するDC測定と比較して、本明細書で説明する実施形態の利点は、多くの高調波(通常は10~20の範囲)が抽出され得ることであり、これらすべての高調波間の比率または他の機能的関係は、数百程度の真に独立した同時測定を備え得る。BGM測定から導出された多くの既存のアルゴリズムとは対照的に、本明細書に記載の実施形態は、時不変であり得るアルゴリズムを実証する(たとえば、グルコース値は、励起パルスの周期の整数倍である任意の時間範囲から抽出され得る)。高調波の比率を使用すると、「絶対」センサキャリブレーションの必要性がなくなり、アナログ-デジタルコンバータステージのビット分解能が緩和され、コンポーネントのコストが削減され、アナログフロントエンドの複雑さが軽減される可能性がある。アルゴリズムは非常にスケーラブルであり、小型マイクロコントローラにおける効率的なゲルツェル変換から、高性能プロセッサ向けのフルスケールのリアルタイムフーリエ解析まで、異なるCPUプラットフォームでの最適化された展開を可能にする。
【0095】
いくつかの実施形態では、位相角および/またはパワースペクトル密度データは、デジタル化された周波数領域データから生成され得、高調波強度情報に使用され得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、分析物モニタリングシステムの非ウェアラブル部分は、スマートフォン、スマートウォッチなどのモバイル電話を含み得る。
【0097】
図1Aに関連して上述したように、様々な電子部品および回路は、これに限定されないが、バッテリなどの電源に結合するように構成されている。いくつかの実施形態では、バッテリの代替品は、スーパーキャパシタを含み得る。いくつかの実施形態では、キャパシタまたはスーパーキャパシタを充電するために、RFIDタグにおける使用でよく知られているユビキタスエネルギーハーベスティング回路のクラスなどの1つまたは複数のエネルギーハーベスティング回路が使用され得、これは次にバッテリとして機能する。よく知られているクラスのエネルギーハーベスティング回路は、RFエネルギー場からのエネルギーを安定化されたDC電圧に変換するように構成されている。いくつかの代替の実施形態では、キャパシタまたはスーパーキャパシタの充電電流は、熱電発電機によって供給され得る。熱電発電機によって電圧を生成するために必要な温度勾配は、たとえば、CGM取付け点におけるユーザの皮膚と、取付け点から離れて配置されたCGMの遠位端との間の差から取得され得る。
【0098】
本明細書で使用される「アンペロメトリ」という用語は、溶液中のイオンの検出を指し、その検出は、少なくとも部分的に、電流の検知、または電流における変化の検知に基づく。
【0099】
「プロセッサ」は、任意の1つまたは複数のマイクロプロセッサ、1つまたは複数の中央処理装置(CPU)、1つまたは複数のグラフィックス処理装置(GPU)、1つまたは複数のコンピューティングデバイス、1つまたは複数のマイクロコントローラ、1つまたは複数のデジタル信号プロセッサ(DSP)、システムオンチップ(SoC)内の組込みプロセッサなどの1つまたは複数の組込みプロセッサ、デバイスなどの1つまたは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、あるいは前述の様々な組合せを意味する。
【0100】
適切にプログラムされた汎用コンピュータまたはコンピューティングデバイスが使用され得ることが企図される一方で、ハードワイヤード回路またはカスタムハードウェア(たとえば、特定用途向け集積回路(ASIC))が、様々な実施形態のプロセスを実装するためのソフトウェア命令の代わりに、またはソフトウェア命令と組み合わせて使用され得ることも企図される。したがって、実施形態は、ハードウェアとソフトウェアの任意の特定の組合せに限定されない。
【0101】
「コンピュータ可読媒体」という用語は、コンピュータ、プロセッサ、または同様のデバイスによって読み取られる可能性のあるデータ(たとえば、命令)の提供に関与する任意の法定媒体を指す。そのような媒体は、これらに限定されないが、不揮発性媒体、揮発性媒体、および特定のタイプの伝送媒体を含む多くの形態をとることができる。不揮発性媒体は、たとえば、光ディスク、磁気ディスク、および他の永続メモリを含み得る。揮発性媒体は、これらに限定されないが、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)および動的ランダムアクセスメモリ(DRAM)を含み得る。伝送媒体のタイプは、たとえば、同軸ケーブル、導電性ワイヤ、トレース、あるいはプロセッサに結合されたシステムバスを備えるワイヤ、トレース、またはラインを含むライン、および光ファイバを含み得る。コンピュータ可読媒体の一般的な形態は、たとえば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD-ROM、デジタルビデオディスク(DVD)、任意の他の光学式媒体、パンチカード、紙テープ、穴のパターンを有する任意の他の物理媒体、読取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、プログラム可能な読取り専用メモリ(PROM)、電気的にプログラム可能な読取り専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラム可能な読取り専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ(EEPROMの一種)、抵抗メモリ、フィラメントメモリ、金属酸化物メモリ、位相変化メモリ、スピン転送メモリ、USBメモリスティック、任意の他のメモリチップまたはカートリッジ、あるいはコンピュータまたはプロセッサがそこに記憶されているデータまたは命令にアクセスできる任意の他の媒体を含み得る。本明細書で使用される場合、「コンピュータ可読メモリ」および/または「有形媒体」という用語は、信号、波、および波形、またはそれにもかかわらずコンピュータによって読める可能性がある他の無形または一時的な媒体を特に除外する。
【0102】
本明細書で使用される「公称」という用語は、コンポーネント、製品、信号、またはプロセスの特性、測定値、または他のパラメータの所望の、または目標の値を、所望の値より上または下の値の範囲とともに指す。値の範囲は、通常、製造プロセスのわずかな変動、または公差によるものである。
【0103】
本明細書で使用される場合、「または」は、排他的論理和ではなく、包括的論理和を意味する。すなわち、本明細書で使用される場合、AまたはBは、Aのみ、Bのみ、およびAとBを一緒に含むことを意味する。AとBを一緒にではなく、Aのみ、Bのみを表現することを意図している場合、これは明示的に述べられる。AとBの少なくとも1つは、Aのみ、Bのみ、およびAとBを含むことを意味する。
【0104】
列挙された項目のリスト(番号が付けられている場合も、付けられていない場合もある)は、特に明記されていない限り、項目の一部またはすべてが相互に排他的であることを意味するものではない。同様に、列挙された項目のリスト(番号が付けられている場合も、付けられていない場合もある)は、特に明記されていない限り、項目の一部またはすべてが任意のカテゴリを包括していることを意味するものではない。たとえば、列挙されたリスト「コンピュータ、ラップトップ、スマートフォン」は、そのリストの3つの項目の一部またはすべてが相互に排他的であることを意味するものではなく、そのリストの3つの項目の一部またはすべてが任意のカテゴリを包括していることを意味するものでもない。
【0105】
第1、第2などの用語は、本明細書では様々な要素、コンポーネント、領域、部品、またはセクションを説明するために使用され得るが、これらの要素、コンポーネント、領域、部品、またはセクションは、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある要素、コンポーネント、領域、部品、またはセクションを、別の要素、コンポーネント、領域、部品、またはセクションから区別するために使用され得る。たとえば、上記で論じた第1の要素、コンポーネント、領域、部品、またはセクションは、本開示の教示から逸脱することなく、第2の要素、コンポーネント、領域、部品、またはセクションと呼ぶことができる。第1、第2、または第3の回路は、1つまたは複数の他の回路のサブコンポーネントであり得る。
【0106】
前述の説明は、例示的な実施形態のみを開示している。本開示の範囲内にある上記で開示された装置および方法の変更は、当業者には容易に明らかになるであろう。
【符号の説明】
【0107】
100 CGMシステム
102 第1の回路
104 CGMセンサ
105 電極
106 第2の回路
108 第3の回路
110 プロセッサ
112 メモリ
114 高調波関係データベース
116 ウェアラブルセンサ部分
117 ディスプレイ
118 ポータブルユーザデバイス部分
120 プロセッサ
122 ディスプレイ
150 CGMシステム
170 CGMシステム
200 CGMシステム
202 ウェアラブル部分
204 ポータブルユーザデバイス部分
206 周期信号発生器
207 電極
208 CGMセンサ
209 作用電極
210 分析物含有流体
212 電流測定回路
214 サンプリング回路
216 メモリ
218 トランシーバ
220 アンテナ
222 マイクロコントローラ
223 高調波関係データベース(HRD)
224 トランシーバ
226 アンテナ
228 メモリ
230 マイクロプロセッサ
232 ディスプレイ
233 ディスプレイ
234a 矢印
234b 矢印
300 CGMシステム
302 メモリ
304 トランシーバ
306 アンテナ
308 マイクロプロセッサ
310 ディスプレイ
400 データ構造
400 データベース構造
500 高調波関係データベース
502 第1のベクトル
506 第2のベクトル
510 第3のベクトル
514 n番目のベクトル
504、508、512、および516 分析対象物濃度値
503、507、511、および515 リンク、またはポインタ
700 方法
704 決定動作
800 方法
900 方法
1000 方法
【国際調査報告】