(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-07
(54)【発明の名称】官能化ポリエーテルイミド由来の架橋性ネットワークおよびそれから得られる熱硬化性ポリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
C08G59/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549574
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(85)【翻訳文提出日】2021-10-22
(86)【国際出願番号】 US2020019621
(87)【国際公開番号】W WO2020176456
(87)【国際公開日】2020-09-03
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521198963
【氏名又は名称】エスエイチピーピー グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パティル ダーダーサーハバ ブイ
(72)【発明者】
【氏名】シスタ プラカシュ
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AD08
4J036FB14
4J036HA12
4J036JA06
4J036JA07
4J036JA11
4J036JA15
(57)【要約】
分子当たり少なくとも2個のエポキシ基をそれぞれ独立して有する1種以上のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物と、エポキシ樹脂硬化剤と、任意選択で硬化触媒と、置換または非置換C4-40ビス無水物と、置換または非置換C1-40有機ジアミンと、任意選択で有機化合物とから調製された官能化ポリエーテルイミドとを含む硬化性エポキシ組成物であって、官能化ポリエーテルイミドが、式(C1-40ヒドロカルビレン)-NH2、(C1-40ヒドロカルビレン)-OH、(C1-40ヒドロカルビレン)-SH、(C4-40ヒドロカルビレン)-G(式中、Gは、無水物基、カルボン酸、カルボン酸エステルまたはそれらの組合せである)の反応性末端基を含み、官能化ポリエーテルイミドが、50~1,500μeq/gの全反応性末端基濃度と、0.05~1,000重量ppmの残留有機ジアミンとを有し、官能化ポリエーテルイミドが、有機逆溶媒を使用する溶液からの沈殿または脱揮発により得られ、有機化合物が、少なくとも2個の官能基/分子を含む、硬化性エポキシ組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子当たり少なくとも2個のエポキシ基をそれぞれ独立して有する1種以上のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物と、
エポキシ樹脂硬化剤と、
任意選択で硬化触媒と、
置換または非置換C
4-40ビス無水物と、置換または非置換C
1-40有機ジアミンと、任意選択で有機化合物とから調製された官能化ポリエーテルイミドであって、前記エポキシ樹脂組成物100重量部当たり5~75重量部の量で存在する官能化ポリエーテルイミドと
を含む硬化性エポキシ組成物であって、
前記官能化ポリエーテルイミドが、式(C
1-40ヒドロカルビレン)-NH
2、(C
1-40ヒドロカルビレン)-OH、(C
1-40ヒドロカルビレン)-SH、(C
4-40ヒドロカルビレン)-Gまたはそれらの組合せの反応性末端基を含み、
式中、Gが、無水物基、カルボン酸、カルボン酸エステルまたはそれらの組合せであり、
前記官能化ポリエーテルイミドが、核磁気共鳴分光法により決定される、前記官能化ポリエーテルイミドの50~1,500マイクロ当量/グラム、好ましくは50~1,000マイクロ当量/グラム、より好ましくは50~750マイクロ当量/グラムの全反応性末端基濃度を有し、
ポリエーテルイミド組成物が、超高性能液体クロマトグラフィーにより決定される、前記ポリエーテルイミド組成物の全重量に基づいて0.05~1,000重量ppm、好ましくは0.05~500重量ppm、より好ましくは0.05~250重量ppmの残留有機ジアミンを有し、
前記官能化ポリエーテルイミドが、有機逆溶媒を使用する溶液からの沈殿または脱揮発により得られ、
前記有機化合物が、分子当たり少なくとも2個の官能基を含み、第1の官能基が、無水物基、アミン基またはそれらの組合せに対して反応性であり、前記第1の官能基が、第2の官能基と異なることを特徴とする硬化性エポキシ組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の硬化性エポキシ組成物であって、前記エポキシ樹脂組成物が、式
【化1】
(式中、
Aは、価数nの無機基またはC
1-60ヒドロカルビル基であり、Xは、酸素または窒素であり、mは、1または2であり、かつXの価数と一貫しており、Rは、水素またはメチルであり、nは、1~100、好ましくは1~8、より好ましくは2~4である)の化合物を含み、
好ましくはAがC
6-18ヒドロカルビル基であり、nが、2または3または4であり、
より好ましくは前記エポキシ樹脂組成物が、N,N-ジグリシジルアニリン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、4,4’-ジ(1,2-エポキシエチル)ビフェニル、4,4’-ジ(1,2-エポキシエチル)ジフェニルエーテル、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジル-p-アミノジフェニルエーテル、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ビス[4-(グリシジルオキシ)フェニル]メタン、テトラグリシジルジアミノジフェニルエーテル、テトラキス(4-グリシジルオキシフェニル)エタン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-ジアミノフェニルスルホン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFエポキシ樹脂、エポキシフェノールノボラック樹脂、エポキシクレゾールノボラック樹脂、スピロ環を含むエポキシ樹脂、ヒダントインエポキシ樹脂またはそれらの組合せを含むことを特徴とする硬化性エポキシ組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の硬化性エポキシ組成物であって、前記エポキシ樹脂硬化剤が、ジアミン化合物、好ましくはm-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、3,3’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、4,4’-オキシジアニリン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレンジアニリン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、2,4-ビス(p-アミノベンジル)アニリン、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミンまたはそれらの組合せ、より好ましくは4,4’-ジアミノジフェニルスルホンであることを特徴とする硬化性エポキシ組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ組成物であって、前記官能化ポリエーテルイミドが、
ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される5,000~45,000グラム/モル、好ましくは10,000~45,000グラム/モル、より好ましくは15,000~35,000グラム/モルの重量平均分子量;
前記官能化ポリエーテルイミドを単離するために使用された篩の孔径により決定される1~1,000マイクロメートル、好ましくは1~500マイクロメートル、より好ましくは1~100マイクロメートル、さらにより好ましくは1~75マイクロメートルの最大絶対粒径;
ポリエーテルイミド鎖当たりの反応性末端基の平均数と定義される0.75超、好ましくは0.9超、より好ましくは1.1超、さらにより好ましくは1.5超の平均反応性末端基官能性度;
ASTM D341にしたがって示差走査熱量測定法により決定される155℃~280℃、好ましくは175℃~280℃、より好ましくは190℃~280℃のガラス転移温度;
核磁気共鳴分光法により決定される、前記官能化ポリエーテルイミドの0.5~5000マイクロ当量/グラム、好ましくは0.5~1000マイクロ当量/グラム、より好ましくは0.5~500マイクロ当量/グラムのアミド-酸濃度;
核磁気共鳴分光法により決定される0.05重量ppm超、好ましくは100重量ppm、より好ましくは500重量ppm超、さらにより好ましくは1000重量ppm超の非反応性末端基;
超高性能液体クロマトグラフィーにより決定される、前記ポリエーテルイミド組成物の前記全重量に基づいて0.05~1,000重量ppm、好ましくは0.05~500重量ppm、より好ましくは0.05~250重量ppmの残留有機ジアミン;および
ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される4.5未満、好ましくは4.0未満、より好ましくは3.0未満、さらにより好ましくは2.8未満の多分散性
のうちの1つ以上を含むことを特徴とする硬化性エポキシ組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ組成物であって、前記官能化ポリエーテルイミド粉末が、式
【化2】
(式中、
各Rは、同じかまたは異なり、かつ独立して置換もしくは非置換二価C
1-40有機基、好ましくは置換もしくは非置換二価C
6-20芳香族炭化水素基、置換もしくは非置換C
4-20アルキレン基または置換もしくは非置換C
3-8シクロアルキレン基であり、
Tは、-O-または式-O-Z-O-の基(式中、Zは、1~6個のC
1-8アルキル基、1~8個のハロゲン原子またはそれらの組合せで任意選択で置換された芳香族C
6-24単環式または多環式部分であるが、Zの価数は超えないものとする)である)
の単位を含むことを特徴とする硬化性エポキシ組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化性エポキシ組成物であって、
各Rが、独立して式
【化3】
(式中、
Q
1は、-O-、-S-、-C(O)-、-SO
2-、-SO-、-P(R
’)(=O)-(式中、R
’は、C
1-8アルキルまたはC
6-12アリールである)、-C
yH
2y-およびそのハロゲン化誘導体(式中、yは、1~5の整数である)または-(C
6H
10)
z-(式中、zは、1~4の整数である)である)の二価基であり、
Zが、式
【化4】
(式中、
R
aおよびR
bは、それぞれ独立してハロゲン原子または一価C
1-6アルキル基であり、
pおよびqは、それぞれ独立して0~4の整数であり、
cは0~4であり、
X
aは、単結合、-O-、-S-、-S(O)-、-SO
2-、-C(O)-、-P(R
a)(=O)-(式中、R
aは、C
1-8アルキルまたはC
6-12アリールである)またはC
1-18有機架橋基である)の基であり、
好ましくは各Rが、独立してメタ-フェニレン、オルト-フェニレン、パラ-フェニレン、ビス(4,4’-フェニレン)スルホニル、ビス(3,4’-フェニレン)スルホニル、ビス(3,3’-フェニレン)スルホニル、ビス(4,4’-フェニレン)オキシ、ビス(3,4’-フェニレン)オキシ、ビス(3,3’-フェニレン)オキシまたはそれらの組合せであり、各Zが4,4’-ジフェニレンイソプロピリデンであることを特徴とする硬化性エポキシ組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ組成物であって、前記ポリエーテルイミドが、式
【化5】
(式中、
各Rは、同じかまたは異なり、かつ独立して置換もしくは非置換二価C
1-40有機基、好ましくは置換もしくは非置換二価C
6-20芳香族炭化水素基、置換もしくは非置換C
4-20アルキレン基または置換もしくは非置換C
3-8シクロアルキレン基であり、
Zは、1~6個のC
1-8アルキル基、1~8個のハロゲン原子またはそれらの組合せで任意選択で置換された芳香族C
6-24単環式または多環式部分であるが、Zの価数は超えないものとする)
の単位を含むことを特徴とする硬化性エポキシ組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ組成物であって、前記有機化合物が、式
R
c-L
n-Q
2-L
n-R
d
(式中、
R
cおよびR
dは異なり、かつそれぞれ独立して-OH、-NH
2、-SHまたは無水物基またはカルボン酸またはカルボン酸エステルであり、
各Lは、同じかまたは異なり、かつそれぞれ独立して置換もしくは非置換C
1-10アルキレンまたは置換もしくは非置換C
6-20アリーレンであり、
Q
2は、-O-、-S-、-S(O)-、-SO
2-、-C(O)-またはC
1-40有機架橋基、好ましくは置換もしくは非置換C
1-10アルキレンまたは置換もしくは非置換C
6-20アリーレンであり、
各nは、独立して0または1である)のものであり、
より好ましくは前記有機化合物が、パラ-アミノフェノール、メタ-アミノフェノール、オルト-アミノフェノール、4-ヒドロキシ-4’-アミノジフェニルプロパン、4-ヒドロキシ-4’-アミノジフェニルメタン、4-アミノ-4’-ヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-アミノジフェニルエーテル、2-ヒドロキシ-4-アミノトルエン、4-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、2-アミノチオフェノール、4-ヒドロキシフタル酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物、6-アミノ-2-ナフトール、5-アミノ-2-ナフトール、8-アミノ-2-ナフトール、3-アミノ-2-ナフトールまたはそれらの組合せであることを特徴とする硬化性エポキシ組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ組成物であって、前記硬化性エポキシ組成物の粘度が、ASTM D4440-1にしたがって100℃で測定される2,000Pa・s以下、好ましくは1,000Pa・s以下、より好ましくは500Pa・s以下であることを特徴とする硬化性エポキシ組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ組成物であって、粒子状充填剤、繊維状充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外光安定剤、紫外光吸収化合物、近赤外光吸収化合物、赤外光吸収化合物、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、貯蔵安定剤、オゾン防止剤、光学安定剤、増粘剤、伝導性影響剤、放射妨害剤、核剤、防曇剤、抗菌剤、金属不活性化剤、着色剤、表面効果添加剤、放射安定剤、難燃剤、アンチドリップ剤、芳香剤、接着促進剤、流動性向上剤、コーティング添加剤、前記1種以上のエポキシ樹脂と異なるポリマーまたはそれらの組合せをさらに含むことを特徴とする硬化性エポキシ組成物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ組成物であって、ポリアリレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリ(アミドイミド)、ポリ(アリールエーテル)、フェノキシ樹脂、ポリ(アリールスルホン)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(フェニレンスルホン)、ポリ(エーテルケトン)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(エーテルケトンケトン)、ポリ(アリールケトン)、ポリ(フェニレンエーテル)、ポリカーボネート、カルボキシル末端ブタジエン-アクリロニトリルゴム(CTBN)、アミン末端ブタジエン-アクリロニトリルゴム(ATBN)、エポキシ末端ブタジエン-アクリロニトリルゴム(ETBN)、コア-シェルゴムまたはそれらの組合せをさらに含むことを特徴とする硬化性エポキシ組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ組成物の製造のための方法であって、
前記エポキシ樹脂組成物と、前記官能化ポリエーテルイミドとを70~200℃の温度で組み合わせて、反応混合物を与える工程と、
前記エポキシ樹脂硬化剤と、任意選択で前記硬化触媒とを前記反応混合物に加えて、前記硬化性エポキシ組成物を与える工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ組成物の硬化生成物を含むことを特徴とするエポキシ熱硬化性物質。
【請求項14】
請求項13に記載のエポキシ熱硬化性物質であって、硬化後、
ASTM D3418にしたがって示差走査熱量測定法により決定される50~300℃、好ましくは150~300℃、より好ましくは190~300℃、さらにより好ましくは210~300℃もしくはさらにより好ましくは230~300℃のガラス転移温度;または
ASTM D5045にしたがって測定される150ジュール/平方メートル以上、好ましくは200ジュール/平方メートル以上、より好ましくは250ジュール/平方メートル以上の破壊靭性;または
塩化メチレン、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロエタン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、酢酸エチル、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、液圧流体、ジェット燃料、ガソリン、アルコールもしくはそれらの組合せに対する耐溶媒性
のうちの少なくとも1つを有することを特徴とするエポキシ熱硬化性物質。
【請求項15】
請求項13または14に記載のエポキシ熱硬化性物質を含み、好ましくは複合材、接着剤、膜、層、コーティング、封止材、シーラント、部品、プリプレグ、ケーシングまたはそれらの組合せの形態であることを特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、官能化ポリエーテルイミド由来の架橋性ネットワークおよびそれから得られる熱硬化性ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容の全体を本願に引用して援用する、2019年2月25日に出願された欧州特許出願公開第19159168.4号の利益を主張する。
【0003】
ポリイミド、特にポリエーテルイミド(PEI)は、180℃超のガラス転移温度(Tg)を有する非晶性の透明な高性能熱可塑性ポリマーである。ポリエーテルイミドは、高い強度、靭性、耐熱性および弾性率ならびに広範な耐薬品性をさらに有し、したがって、自動車、電気通信、航空宇宙、電気/電子工学、輸送およびヘルスケアといった多様な産業において広く使用されている。ポリエーテルイミドは、様々な物品を調製する様々な製造プロセスにおいて、射出成形、押出および熱成形を含む技法に適用できることを示しながら、多用性を示してきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリエーテルイミドは、硬化性エポキシ組成物に加えて、硬化熱硬化性物質に取り込み、例えば強化剤として機能することができる。しかし、ポリエーテルイミドは典型的には高粘度材料であり、高Tgと組み合わさった高粘度は、ある種の製造操作におけるその使用を妨げ得る。硬化熱硬化性物質は、一般に使用される溶媒に対する耐薬品性に欠けることもある。したがって、改善された特性を有する熱硬化性材料の製造における使用に適したポリエーテルイミドが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある態様によれば、硬化性エポキシ組成物は、分子当たり少なくとも2個のエポキシ基をそれぞれ独立して有する1種以上のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物と、エポキシ樹脂硬化剤と、任意選択で硬化触媒と、置換または非置換C4-40ビス無水物と、置換または非置換C1-40有機ジアミンと、任意選択で有機化合物とから調製された官能化ポリエーテルイミドであって、エポキシ樹脂組成物100重量部当たり5~75重量部の量で存在する官能化ポリエーテルイミドとを含み、官能化ポリエーテルイミドは、式(C1-40ヒドロカルビレン)-NH2、(C1-40ヒドロカルビレン)-OH、(C1-40ヒドロカルビレン)-SH、(C4-40ヒドロカルビレン)-Gまたはそれらの組合せの反応性末端基を含み、式中、Gは、無水物基、カルボン酸、カルボン酸エステルまたはそれらの組合せであり、官能化ポリエーテルイミドは、官能化ポリエーテルイミドの50~1,500マイクロ当量/グラム、好ましくは50~1,000マイクロ当量/グラム、より好ましくは50~750マイクロ当量/グラムの全反応性末端基濃度を有し、ポリエーテルイミド組成物は、超高性能液体クロマトグラフィーにより決定される、ポリエーテルイミド組成物の全重量に基づいて0.05~1,000重量ppm、好ましくは0.05~500重量ppm、より好ましくは0.05~250重量ppmの残留有機ジアミンを有し、官能化ポリエーテルイミドは、有機逆溶媒を使用する溶液からの沈殿または脱揮発により得られ、有機化合物は、分子当たり少なくとも2個の官能基を含み、第1の官能基は、無水物基、アミン基またはそれらの組合せに対して反応性であり、第1の官能基は、第2の官能基と異なる。
【0006】
別の態様は、硬化性エポキシ組成物の製造のための方法であって、エポキシ樹脂組成物と、官能化ポリエーテルイミドとを70~200℃の温度で組み合わせて、反応混合物を与える工程と、エポキシ樹脂硬化剤と、任意選択で硬化触媒とを反応混合物に加えて、硬化性エポキシ組成物を与える工程とを含む方法を提供する。
【0007】
他の態様は、硬化性エポキシ組成物の硬化生成物を含むエポキシ熱硬化性物質、およびエポキシ熱硬化性物質を含み、好ましくは複合材、接着剤、膜、層、コーティング、封止材、シーラント、部品、プリプレグ、ケーシングまたはそれらの組合せの形態である物品を含む。
【0008】
以下の図は、同様の要素が同様に番号付けされた例示的な実施形態である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】1つ以上の態様による熱可塑性ポリマー強化エポキシサンプルの破面の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【
図2】1つ以上の態様による溶媒への曝露前後の表面のSEM像である。
【
図3】1つ以上の態様による熱可塑性ポリマー強化エポキシサンプルの破面のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、官能化ポリエーテルイミドオリゴマーを含むエポキシ配合物が、同様の添加量レベルでポリエーテルスルホンエポキシ配合物よりも明らかに低い粘度およびポリエーテルスルホンエポキシ配合物と同等の耐薬品性を有するように官能化ポリエーテルイミドオリゴマーを調製した。開示されている、より低分子量の官能化ポリエーテルイミドオリゴマーは、2,000パスカル秒(Pa・s)以下の粘度を有する硬化性エポキシ組成物を与える良好な溶解度を有しながら、改善された処理性で硬化性エポキシ組成物に加えることができる。硬化すると、官能化ポリエーテルイミドオリゴマーは、硬化熱硬化性樹脂の架橋したマトリックスに取り込まれ、これは、機械的特性を改善する。例えば、硬化生成物は、ASTM D5045にしたがって測定されたとき150ジュール/平方メートル(J/m2)超の破壊靭性を有することができる。驚くべきことに、官能化ポリエーテルイミドオリゴマーを含むある種の硬化エポキシ配合物は、ポリエーテルスルホンを含む硬化エポキシ配合物と比べて、より高い破壊靭性を与える。これは、高分子量ポリエーテルスルホンをより低分子量の官能化ポリエーテルイミドオリゴマーに置き換えるときに予想されることに反する。
【0011】
したがって、本開示のある態様は、分子当たり少なくとも2個のエポキシ基をそれぞれ独立して有する1種以上のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物と、エポキシ樹脂硬化剤と、任意選択で硬化触媒と、置換または非置換C4-40ビス無水物と、置換または非置換C1-40有機ジアミンと、任意選択で有機化合物とから調製された官能化ポリエーテルイミドであって、エポキシ樹脂組成物100重量部当たり5~75重量部の量で存在する官能化ポリエーテルイミドとを含む硬化性エポキシ組成物であって、官能化ポリエーテルイミドが、式(C1-40ヒドロカルビレン)-NH2、(C1-40ヒドロカルビレン)-OH、(C1-40ヒドロカルビレン)-SH、(C4-40ヒドロカルビレン)-Gまたはそれらの組合せの反応性末端基を含み、式中、Gが、無水物基、カルボン酸、カルボン酸エステルまたはそれらの組合せであり、官能化ポリエーテルイミドが、官能化ポリエーテルイミドの50~1,500マイクロ当量/グラム、好ましくは50~1,000マイクロ当量/グラム、より好ましくは50~750マイクロ当量/グラムの全反応性末端基濃度を有し、ポリエーテルイミド組成物が、超高性能液体クロマトグラフィーにより決定される、ポリエーテルイミド組成物の全重量に基づいて0.05~1,000重量ppm、好ましくは0.05~500重量ppm、より好ましくは0.05~250重量ppmの残留有機ジアミンを有し、官能化ポリエーテルイミドが、有機逆溶媒を使用する溶液からの沈殿または脱揮発により得られ、有機化合物が、分子当たり少なくとも2個の官能基を含み、第1の官能基が、無水物基、アミン基またはそれらの組合せに対して反応性であり、第1の官能基が、第2の官能基と異なる硬化性エポキシ組成物である。
【0012】
エポキシ樹脂組成物は、式(1)
【化1】
(式中、Aは、価数nの無機基またはC
1-60ヒドロカルビル基であり、Xは、酸素または窒素であり、mは、1または2であり、かつXの価数と一貫しており、Rは、水素またはメチルであり、nは、1~100、好ましくは1~8、より好ましくは2~4である)の化合物を含む。例えば、AはC
6-18ヒドロカルビル基であり、nは、2または3または4である。
【0013】
エポキシ樹脂化合物は、式(1a)~(1f)
【化2】
(式中、Rの各存在は、独立して水素またはメチルであり、Mの各存在は独立して、オキシラン、カルボキシ、カルボキサミド、ケトン、アルデヒド、アルコール、ハロゲンまたはニトリルを任意選択でさらに含むC
1-C
18ヒドロカルビレンであり、Xの各存在は独立して、水素、クロロ、フルオロ、ブロモ、またはカルボキシ、カルボキサミド、ケトン、アルデヒド、アルコール、ハロゲンもしくはニトリルを任意選択でさらに含むC
1-C
18ヒドロカルビルであり、Bの各存在は、独立して炭素-炭素単結合、C
1-C
18ヒドロカルビル、C
1-C
12ヒドロカルビルオキシ、C
1-C
12ヒドロカルビルチオ、カルボニル、スルフィド、スルホニル、スルフィニル、ホスホリル、シラン、またはカルボキシアルキル、カルボキサミド、ケトン、アルデヒド、アルコール、ハロゲンもしくはニトリルをさらに含むこのような基であり、nは、1~20であり、pおよびqの各存在は、独立して0~20である)のものを含むことができる。
【0014】
エポキシ樹脂化合物には、フェノール系化合物とのエピクロルヒドリンまたはエピブロモヒドリンの反応により生成されたものが含まれる。例示的なフェノール系化合物には、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2-(ジフェニルホスホリル)ヒドロキノン、ビス(2,6-ジメチルフェノール)2,2’-ビフェノール、4,4-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、3,4’-ビフェノール、3,3’-ビフェノール、2,2’,6,6’-テトラメチルビフェノール、2,2’,3,3’,6,6’-ヘキサメチルビフェノール、3,3’,5,5’-テトラブロモ-2,2’6,6’-テトラメチルビフェノール、3,3’-ジブロモ-2,2’,6,6’-テトラメチルビフェノール、2,2’,6,6’-テトラメチル-3,3’-ジブロモビフェノール、4,4’-イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)、4,4’-イソプロピリデンビス(2,6-ジブロモフェノール)(テトラブロモビスフェノールA)、4,4’-イソプロピリデンビス(2,6-ジメチルフェノール)(テトラメチルビスフェノールA)、4,4’-イソプロピリデンビス(2-メチルフェノール)、4,4’-イソプロピリデンビス(2-アリルフェノール)、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(ビスフェノールM)、4,4’-イソプロピリデンビス(3-フェニルフェノール)、4,4’-(1,4-フェニレンジイソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールP)、4,4’-エチリデンジフェノール(ビスフェノールE)、4,4’-オキシジフェノール、4,4’-チオジフェノール、4,4’-チオビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-スルホニルビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-スルフィニルジフェノール、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノール(ビスフェノールAF)、4,4’-(1-フェニルエチリデン)ビスフェノール(ビスフェノールAP)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジクロロエチレン(ビスフェノールC)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、ビス(2,6-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’-(シクロペンチリデン)ジフェノール、4,4’-(シクロヘキシリデン)ジフェノール(ビスフェノールZ)、4,4’-(シクロドデシリデン)ジフェノール、4,4’-(ビシクロ[2.2.1]ヘプチリデン)ジフェノール、4,4’-(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ジフェノール、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソベンゾフラン-1(3H)-オン、1-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-オール、1-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1,3,3,4,6-ペンタメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-オール、3,3,3’,3’-テトラメチル-2,2’,3,3’-テトラヒドロ-1,1’-スピロビ[インデン]-5,6’-ジオール(スピロビインダン)、ジヒドロキシベンゾフェノン(ビスフェノールK)、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、トリス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、テトラキス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ジシクロペンタジエニルビス(2,6-ジメチルフェノール)、ジシクロペンタジエニルビス(2-メチルフェノール)、ジシクロペンタジエニルビスフェノールまたは同種のものおよびそれらの組合せが含まれる。
【0015】
エポキシ樹脂化合物の例には、アニリンなどの芳香族アミンに基づくポリエポキシド、例えばN,N-ジグリシジルアニリン、ジアミノジフェニルメタン、ならびに3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、4,4’-(1,2-エポキシエチル)ビフェニル、4,4’-ジ(1,2-エポキシエチル)ジフェニルエーテルおよびビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテルなどの脂環式エポキシ化合物が含まれる。エポキシ樹脂化合物の他の例は、上述の官能基の組合せを含む化合物、例えば4-アミノフェノールから得られる混合多官能性エポキシ化合物である。
【0016】
例のエポキシ樹脂化合物には、フェノール-ホルムアルデヒドノボラックのグリシジルエーテルなどのフェノール系化合物のグリシジルエーテル、クレゾール-ホルムアルデヒドノボラック、t-ブチルフェノール-ホルムアルデヒドノボラック、sec-ブチルフェノール-ホルムアルデヒドノボラック、t-オクチルフェノール-ホルムアルデヒドノボラック、クミルフェノール-ホルムアルデヒドノボラック、デシルフェノール-ホルムアルデヒドノボラックを含むアルキル置換フェノール-ホルムアルデヒド化合物が含まれる。他の例示的な補助的なポリエポキシド化合物は、ブロモフェノール-ホルムアルデヒドノボラック、クロロフェノールホルムアルデヒドノボラック、フェノール-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼンノボラック、フェノール-ビス(ヒドロキシメチルビフェニル)ノボラック、フェノール-ヒドロキシベンズアルデヒドノボラック、フェノール-ジシクロペンタジエンノボラック、ナフトール-ホルムアルデヒドノボラック、ナフトール-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼンノボラック、ナフトール-ビス(ヒドロキシメチルビフェニル)ノボラック、ナフトール-ヒドロキシベンズアルデヒドノボラックおよびナフトール-ジシクロペンタジエンノボラック類または同種のものならびにそれらの組合せのグリシジルエーテルである。
【0017】
エポキシ樹脂化合物の例には、複素環式環系に基づくもの、例えばヒダントインエポキシ化合物、トリグリシジルイソシアヌレートおよびそのオリゴマー、N-グリシジルフタルイミド、N-グリシジルテトラヒドロフタルイミド、ウラゾールエポキシド類、ウラシルエポキシド類ならびにオキサゾリジノン修飾エポキシ化合物が含まれる。オキサゾリジノン修飾エポキシド樹脂化合物には、Angew.Makromol.Chem.,vol.44,(1975),pages 151-163およびシュラム(Schramm)による米国特許第3334110号に開示されたものが含まれる。一例は、適切な促進剤の存在下でのジフェニルメタンジイソシアネートとのビスフェノールAジグリシジルエーテルの反応生成物である。
【0018】
エポキシ樹脂化合物のさらなる例には、エピクロルヒドリンまたは同様のエポキシ化合物をシュウ酸、アジピン酸、グルタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸またはヘキサヒドロフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸および二量化脂肪酸などの脂肪族、脂環式または芳香族ポリカルボン酸と反応させることにより得られるポリグリシジルエステルが含まれる。例には、ジグリシジルテレフタレートおよびジグリシジルヘキサヒドロフタレートが含まれる。さらに、分子鎖にわたって不規則な分布でエポキシド基を含み、これらのエポキシド基を含むオレフィン不飽和化合物、例えばアクリル酸またはメタクリル酸のグリシジルエステルなどを使用する乳化共重合により調製することができるポリエポキシド化合物を使用することができる。
【0019】
他の例示的なエポキシ樹脂化合物には、多価脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテルが含まれる。このような多価アルコールの例には、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンおよびペンタエリトリトールが含まれる。
【0020】
単官能性エポキシ樹脂化合物の例には、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、t-ブチルグリシジルエーテル、o-クレシルグリシジルエーテルおよびノニルフェノールグリシジルエーテルが含まれる。
【0021】
他の例示的なエポキシ樹脂化合物には、スチレンオキシド、ネオヘキセンオキシドおよびジビニルベンゼンジオキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどのエポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ならびにジシクロペンタジエンジエポキシドなどのジシクロペンタジエン型エポキシ化合物が含まれる。
【0022】
好ましくは、エポキシ樹脂化合物は、N,N-ジグリシジルアニリン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、4,4’-ジ(1,2-エポキシエチル)ビフェニル、4,4’-ジ(1,2-エポキシエチル)ジフェニルエーテル、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジル-p-アミノジフェニルエーテル、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ビス[4-(グリシジルオキシ)フェニル]メタン、テトラグリシジルジアミノジフェニルエーテル、テトラキス(4-グリシジルオキシフェニル)エタン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-ジアミノフェニルスルホン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFエポキシ樹脂、エポキシフェノールノボラック樹脂、エポキシクレゾールノボラック樹脂、スピロ環を含むエポキシ樹脂、ヒダントインエポキシ樹脂またはそれらの組合せである。
【0023】
エポキシ樹脂化合物は、ビスフェノールなどのフェノールとのエポキシ化合物のさらなる縮合により調製することができる。一例は、オリゴマーのジグリシジルエーテルを生成するビスフェノールAジグリシジルエーテルとのビスフェノールAの縮合である。別の例では、エポキシ化合物を誘導するために使用されたものと異なるフェノールを使用することができる。例えば、テトラブロモビスフェノールAをビスフェノールAジグリシジルエーテルと縮合して、ハロゲンを含むオリゴマーのジグリシジルエーテルを生成することができる。
【0024】
エポキシ樹脂化合物は、室温で固体であり得る。したがって、いくつかの態様において、エポキシ樹脂化合物は、25~150℃の軟化点を有する。軟化点は、例えば、示差走査熱量測定法(DSC)、動的機械分析(DMA)、またはASTM E28-67、ASTM E28-99、ASTM D36、ASTM D6493-11およびISO 4625に記載されているような環球試験法により決定することができる。エポキシ樹脂化合物は、室温で液体または軟化した固体であり得る。したがって、いくつかの態様において、エポキシ樹脂化合物は、25℃未満の軟化点を有する。
【0025】
エポキシ樹脂硬化剤は、ジアミン化合物、好ましくはm-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、3,3’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、4,4’-オキシジアニリン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレンジアニリン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、2,4-ビス(p-アミノベンジル)アニリン、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミンまたはそれらの組合せ、より好ましくは4,4’-ジアミノジフェニルスルホンであり得る。硬化性エポキシ組成物は、硬化性組成物の全重量に基づいて0.5~50wt%、好ましくは2.5~25wt%、より好ましくは5~15wt%の量の硬化剤を含むことができる。
【0026】
硬化性エポキシ組成物は、硬化触媒を任意選択で含む。本明細書において使用される「硬化触媒」という用語は、エポキシ化合物の硬化におけるその役割が、硬化剤、促進剤、触媒、共触媒または同種のものの役割として様々に記載される化合物を包含する。硬化触媒の量は、化合物のタイプ、ならびに組成物の他の成分の独自性および量に依存することになる。例えば、硬化性エポキシ組成物は、硬化性組成物の全重量に基づいて0.5~50wt%、好ましくは2.5~25wt%、より好ましくは5~15wt%の量の硬化触媒を含むことができる。
【0027】
硬化触媒は芳香族二無水物であり得る。例示的な芳香族二無水物には、3,3-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、2,2-ビス[4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル-2,2-プロパン二無水物、4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物または同種のものが含まれる。
【0028】
本明細書において使用されるとき、「無水物基」という用語は、カルボン酸およびカルボン酸塩などの無水物誘導体を含む。
【0029】
硬化触媒は二環式無水物であり得る。二環式無水物化合物の例には、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、cis-5-ノルボルネン-endo-2,3-ジカルボン酸無水物または同種のものが含まれる。
【0030】
他の硬化触媒は、ベンゾトリアゾール類;トリアジン類;ピペラジン類;1-メチルイミダゾールなどのイミダゾール類;4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、ジアザビシクロウンデセン、2-フェニルイミダゾリンもしくは同種のものなどの環式アミジン;N,N-ジメチルアミノピリジン;スルファミデート;またはそれらの組合せを含む複素環式化合物である。
【0031】
硬化性エポキシ組成物は、ASTM D4440-1にしたがって100℃で測定される2,000パスカル秒(Pa・s)以下、好ましくは1,000Pa・s以下、より好ましくは500Pa・s以下である粘度を有することができる。
【0032】
官能化ポリエーテルイミドは、核磁気共鳴分光法により決定される、官能化ポリエーテルイミドの50~1,500マイクロ当量/グラム、好ましくは50~1,000マイクロ当量/グラム、より好ましくは50~750マイクロ当量/グラムの全反応性末端基濃度を有する。例示的なC1-40ヒドロカルビレンには、置換もしくは非置換C1-10アルキレンまたは置換もしくは非置換C6-40アリーレンが含まれる。
【0033】
本明細書において使用されるとき、反応性末端基は、別のポリマーまたはプレポリマーと相互作用して、硬化中に化学的または物理的結合を通じて架橋ネットワークの形成を促進することができ、かつ/または硬化熱硬化性ポリマーに靭性を与えるのに寄与する形態を有する相分離ポリエーテルイミドドメインの形成を促進することができる基である。反応性末端基は、鎖末端基としてポリエーテルイミド鎖の原子に結合される。
【0034】
全反応性末端基濃度は、官能化ポリエーテルイミドの50~1,500マイクロ当量/グラム(μeq/g)、好ましくは50~1,000μeq/g、より好ましくは50~750μeq/gである。末端基の濃度は、当技術において周知の様々な滴定法および分光法により分析することができる。いくつかの態様において、末端基の濃度は、核磁気共鳴分光法により決定することができる。
【0035】
末端基の濃度は、当技術において周知の様々な滴定法および分光法により分析することができる。分光法には、赤外、核磁気共鳴、ラマン分光法および蛍光が含まれる。赤外法の例が、J.A.クロイツ(J.A.Kreuz),et al.,and J.Poly.Sci.Part A-1,vol.4,pp.2067-2616(1966)に記載されている。滴定法の例が、Y.J.キム(Y.J.Kim),et al.,Macromolecules,vol.26,pp.1344-1358(1993)に記載されている。ポリマー末端基の誘導体を調製して、例えば、K.P.チャン(K.P.Chan) et al.,Macromolecules,vol.27,p.6731(1994)およびJ.S.チャオ(J.S.Chao),Polymer Bull.,vol.17,p.397(1987)に記載されているような方法の変種を使用して、測定感度を向上させることが有利な場合がある。
【0036】
ポリエーテルイミドは、1個超、例えば2~1000個または5~500個または10~100個の式(1)
【化3】
(式中、各Rは、独立して同じかまたは異なり、かつ置換または非置換C
6-20芳香族炭化水素基、置換または非置換の直鎖または分岐鎖C
4-20アルキレン基、置換または非置換C
3-8シクロアルキレン基、特に、前述のいずれかのハロゲン化誘導体などの置換または非置換二価C
1-40有機基である)の構造単位を含む。いくつかの実施形態において、Rは、以下の式(2)
【化4】
(式中、Q
1は、-O-、-S-、-C(O)-、-SO
2-、-SO-、-P(R
a)(=O)-(式中、R
aは、C
1-8アルキルまたはC
6-12アリールである)、-C
yH
2y-(式中、yは、1~5の整数である)もしくはそのハロゲン化誘導体(ペルフルオロアルキレン基を含む)または-(C
6H
10)
z-(式中、zは、1~4の整数である)のうちの1つ以上の二価基である。いくつかの実施形態において、Rは、m-フェニレン、p-フェニレンまたはジアリーレンスルホン、特にビス(4,4’-フェニレン)スルホン、ビス(3,4’-フェニレン)スルホン、ビス(3,3’-フェニレン)スルホンまたは前述のうちの少なくとも1つを含む組合せである。いくつかの実施形態において、R基の少なくとも10モルパーセントまたは少なくとも50モルパーセントはスルホン基を含み、他の実施形態において、R基はスルホン基を含まない。
【0037】
さらに、式(1)中、Tは、-O-または式-O-Z-O-の基(式中、-O-または-O-Z-O-基の二価結合は、3,3’位、3,4’位、4,3’位または4,4’位にあり、Zは、1~6個のC
1-8アルキル基、1~8個のハロゲン原子または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せで任意選択で置換された芳香族C
6-24単環式または多環式部分であるが、Zの価数は超えないものとする)である。例示的なZ基には、式(3)
【化5】
(式中、R
aおよびR
bは、それぞれ独立して同じかまたは異なり、かつハロゲン原子または一価C
1-6アルキル基であり、例えば、pおよびqは、それぞれ独立して0~4の整数であり、cは0~4であり、X
aは、ヒドロキシ置換芳香族基を結合する架橋基であり、架橋基および各C
6アリーレン基のヒドロキシ置換基は、互いに対してC
6アリーレン基のオルト、メタまたはパラ(特にパラ)に配置されている)の基が含まれる。架橋基X
aは、単結合、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)
2-、-C(O)-またはC
1-18有機架橋基であり得る。C
1-18有機架橋基は、環式もしくは非環式芳香族または非芳香族であり得、かつハロゲン、酸素、窒素、硫黄、ケイ素またはリンなどのヘテロ原子をさらに含むことができる。C
1-18有機基は、それに結合されたC
6アリーレン基が共通のアルキリデン炭素またはC
1-18有機架橋基の異なる炭素にそれぞれ結合されるように配置され得る。Z基の具体例は、式(3a)
【化6】
(式中、Qは、-O-、-S-、-C(O)-、-SO
2-、-SO-、-P(R
a)(=O)-(式中、R
aは、C
1-8アルキルまたはC
6-12アリールである)または-C
yH
2y-(式中、yは、1~5の整数である)もしくはそのハロゲン化誘導体(ペルフルオロアルキレン基を含む)である)の二価基である。ある特定の実施形態において、Zは、式(3a)中のQが2,2-イソプロピリデンであるように、ビスフェノールAから誘導される。
【0038】
ある実施形態において、式(1)中、Rは、m-フェニレン、p-フェニレンまたは前述のうちの少なくとも1つを含む組合せであり、Tは-O-Z-O-(式中、Zは、式(3a)の二価基である)である。あるいは、Rは、m-フェニレン、p-フェニレンまたは前述のうちの少なくとも1つを含む組合せであり、Tは-O-Z-O(式中、Zは、式(3a)の二価基である)であり、Qは2,2-イソプロピリデンである。このような材料は、SABICから商品名ULTEMで入手できる。あるいは、ポリエーテルイミドは、式(1)(式中、R基の少なくとも50モルパーセント(mol%)は、ビス(4,4’-フェニレン)スルホン、ビス(3,4’-フェニレン)スルホン、ビス(3,3’-フェニレン)スルホンまたは前述のうちの少なくとも1つを含む組合せであり、残りのR基は、p-フェニレン、m-フェニレンまたは前述のうちの少なくとも1つを含む組合せであり、Zは、2,2-(4-フェニレン)イソプロピリデン、すなわち、ビスフェノールA部分である)の追加の構造ポリエーテルイミド単位を含むコポリマーであり得、これの一例は、SABICから商品名EXTEMで市販されている。
【0039】
いくつかの態様において、ポリエーテルイミドは、コポリマー、例えば、式(1)(式中、R基の少なくとも50モル%は式(2)(式中、Q1は-SO2-である)のものであり、残りのR基は、独立してp-フェニレン、m-フェニレンまたはそれらの組合せであり、Zは2,2’-(4-フェニレン)イソプロピリデンである)の構造単位を含むポリエーテルイミドスルホンコポリマーであり得る。
【0040】
いくつかの実施形態において、ポリエーテルイミドは、ポリエーテルイミド単位ではない追加の構造イミド単位、例えば、式(4)
【化7】
(式中、Rは、式(1)に記載の通りであり、各Vは、同じかまたは異なり、かつ置換または非置換C
6-20芳香族炭化水素基、例えば、式
【化8】
(式中、Wは、単結合、-O-、-S-、-C(O)-、-SO
2-、-SO-、C
1-18ヒドロカルビレン基、-P(R
a)(=O)-(式中、R
aは、C
1-8アルキルまたはC
6-12アリールである)または-C
yH
2y-(式中、yは、1~5の整数である)もしくはそのハロゲン化誘導体(ペルフルオロアルキレン基を含む)である)の四価リンカーである)のイミド単位を任意選択で含むコポリマーである。この追加の構造イミド単位は、好ましくは、単位の総数の20mol%未満を含み、より好ましくは、単位の総数の0~10mol%、または単位の総数の0~5mol%、または単位の総数の0~2モル%の量で存在し得る。いくつかの実施形態において、追加のイミド単位はポリエーテルイミド中に存在しない。
【0041】
ポリイミドまたはポリエーテルイミドは、式(6)
【化9】
H
2N-R-NH
2(6)
(式中、TおよびRは、上述の通り定義される)のC
1-40有機ジアミンとの式(5)のC
4-40ビス無水物またはその化学的等価物の反応を含む、当業者に既知の方法のいずれかにより調製することができる。ポリエーテルイミドのコポリマーは、式(5)の芳香族ビス(エーテル無水物)およびビス(エーテル無水物)ではない追加のビス(無水物)、例えばピロメリト酸二無水物またはビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物の組合せを使用して製造することができる。
【0042】
C4-40ビス無水物の例示的な例には、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(ビスフェノールA二無水物またはBPADAとしても既知)、3,3-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル-2,2-プロパン二無水物、4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物および4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物が含まれる。異なる芳香族ビス(エーテル無水物)の組合せを使用することができる。
【0043】
例示的なC1-40有機ジアミンには、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリメチル化1,6-n-ヘキサンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,18-オクタデカンジアミン、3-メチルヘプタメチレンジアミン、4,4-ジメチルヘプタメチレンジアミン、4-メチルノナメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,2-ジメチルプロピレンジアミン、N-メチル-ビス(3-アミノプロピル)アミン、3-メトキシヘキサメチレンジアミン、1,2-ビス(3-アミノプロポキシ)エタン、ビス(3-アミノプロピル)スルフィド、1,4-シクロヘキサンジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2-メチル-4,6-ジエチル-1,3-フェニレンジアミン、5-メチル-4,6-ジエチル-1,3-フェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、1,5-ジアミノナフタレン、ビス(4-アミノフェニル)メタン、ビス(2-クロロ-4-アミノ-3,5-ジエチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,4-ビス(p-アミノ-t-ブチル)トルエン、ビス(p-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-メチル-o-アミノフェニル)ベンゼン、ビス(p-メチル-o-アミノペンチル)ベンゼン、1,3-ジアミノ-4-イソプロピルベンゼン、オキシジアニリン、ビス(アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(DDS)としても既知)およびビス(4-アミノフェニル)エーテルが含まれる。C1-40有機ジアミンは、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-オキシジアニリン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホンまたはそれらの組合せであり得る。
【0044】
官能化ポリエーテルイミドは、式(1)のポリエーテルイミド単位と、式(8)
【化10】
(式中、Eは、2~100、2~31、5~75、5~60、5~15または15~40の平均値を有し、各R’は、独立してC
1-13一価ヒドロカルビル基である)のシロキサンブロックとを含むポリ(シロキサン-エーテルイミド)コポリマーも含む。例えば、各R’は独立して、任意選択でハロゲン化された、C
1-13アルキル、C
1-13アルコキシ、C
2-13アルケニル、C
2-13アルケニルオキシ、C
3-6シクロアルキル、C
3-6シクロアルコキシ、C
6-14アリール、C
6-10アリールオキシ、C
7-13アリールアルキル、C
7-13アリールアルコキシ、C
7-13アルキルアリールまたはC
7-13アルキルアリールオキシ基であり得る。ある態様において、臭素または塩素は存在せず、別の態様において、ハロゲンは存在しない。ある態様において、ポリシロキサンブロックは、メチル基などの最小限の炭化水素分を有するR’基を含む。
【0045】
ポリ(シロキサン-イミド)は、上述の通りビス無水物(6)と、有機ジアミン(6)とから、または有機ジアミンおよび式(9)
【化11】
(式中、R’およびEは、式(8)に記載の通りであり、R
4は、それぞれ独立してC
2-C
20炭化水素、特にC
2-C
20アリーレン、アルキレンまたはアリーレンアルキレン基である)のポリシロキサンジアミンの混合物から調製することができる。ある態様において、R
4はC
2-C
20アルキレン基であり、Eは、5~100、5~60、5~15または15~40の平均値を有する。ジアミン成分は、例えば米国特許第4404350号に記載されているように、10~90mol%、または20~50mol%、または25~40mol%のポリシロキサンジアミン(9)および10~90mol%、または50~80mol%、または60~75mol%の有機ジアミン(3)を含むことができる。ポリ(シロキサン-イミド)コポリマーは、ブロック、ランダムまたはグラフトコポリマーであり得る。
【0046】
特定のポリ(シロキサン-イミド)の例が、米国特許第4404350号、同4808686号および同4690997号に記載されている。ある態様において、ポリ(シロキサンイミド)はポリ(シロキサン-エーテルイミド)であり、かつ式(10)
【化12】
(式中、シロキサンのR’およびEは、式(8)中の通りであり、イミドのRおよびZは、式(2)および(3)中の通りであり、R
4は、式(9)中のようなR
4と同じであり、nは、5~100の整数である)の単位を有する。ある特定の態様において、エーテルイミドのRはフェニレンであり、Zは、ビスフェノールAの残基であり、R
4はn-プロピレンであり、Eは、2~50、5~30または10~40であり、nは、5~100であり、各R’はメチルである。
【0047】
ポリ(シロキサン-イミド)中のポリシロキサン単位およびイミド単位の相対量は、所望の特性に依存し、かつ本明細書に記載の指針を用いて選択される。ある態様において、ポリ(シロキサン-イミド)は、ポリ(シロキサン-イミド)の全重量に基づいて10~50wt%、10~40wt%または20~35wt%のポリシロキサン単位を含む。
【0048】
いくつかの態様において、官能化ポリエーテルイミドはポリ(シロキサン-イミド)コポリマーではない。例えば、いくつかの態様において、官能化ポリエーテルイミドはポリ(シロキサン-イミドコポリマー)を含まない。
【0049】
任意選択の有機化合物は、分子当たり少なくとも2個の官能基を含む。第1の官能基は、無水物、アミンまたはそれらの組合せに対して反応性であり、第1の官能基は、第2の官能基と異なる。例えば、有機化合物は、式(7)
Rc-Ln-Q2-Ln-Rd(7)
(式中、RcおよびRdは異なり、かつそれぞれ独立して-OH、-NH2、-SHまたは無水物基、カルボン酸またはカルボン酸エステルである)のものであり得る。式(7)中、各Lは、同じかまたは異なり、かつそれぞれ独立して置換もしくは非置換C1-10アルキレンまたは置換もしくは非置換C6-20アリーレンであり、Q2は、-O-、-S-、-S(O)-、-SO2-、-C(O)-またはC1-20有機架橋基、好ましくは置換もしくは非置換C1-10アルキレンまたは置換もしくは非置換C6-20アリーレンであり、各nは、独立して0または1である。式(7)は、当業者に理解されるであろう通り、化学的に実現可能な有機化合物に限定されると理解されるべきである。例えば、有機化合物はHO-O-OHではあり得ず、したがって、式(7)中、Qが-O-である場合は、nは1である。
【0050】
例示的な有機化合物には、パラ-アミノフェノール、メタ-アミノフェノール、オルト-アミノフェノール、4-ヒドロキシ-4’-アミノジフェニルプロパン、4-ヒドロキシ-4’-アミノジフェニルメタン、4-アミノ-4’-ヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-アミノジフェニルエーテル、2-ヒドロキシ-4-アミノトルエン、4-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、2-アミノチオフェノール、4-ヒドロキシフタル酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物、6-アミノ-2-ナフトール、5-アミノ-2-ナフトール、8-アミノ-2-ナフトールおよび3-アミノ-2-ナフトールまたは同種のものが含まれる。1種以上の有機化合物を使用することができる。
【0051】
官能化ポリエーテルイミドは、官能化ポリエーテルイミドを与えるのに効果的な反応条件下で置換または非置換C4-40ビス無水物と、置換または非置換C1-40有機ジアミンと、任意選択で有機化合物とを反応させることにより調製することができる。例えば、官能化ポリエーテルイミドは、ビス無水物および有機ジアミンの重縮合により調製することができる。あるいは、反応は、ポリエーテルイミドオリゴマーを与えるのに効果的な条件下で置換または非置換C4-40ビス無水物と、置換または非置換C1-40有機ジアミンとを重合する工程と、官能化ポリエーテルイミドを与えるのに効果的な条件下でポリエーテルイミドオリゴマーと、有機化合物とを溶融混合する工程とを含む。
【0052】
特定の態様において、官能化ポリエーテルイミドは、溶媒を使用せずに調製される。
【0053】
ビス無水物および有機ジアミンは、実質的に等モル量で、またはモル過剰のアミンまたはビス無水物で反応させることができる。「実質的に等モル量」という用語は、0.9~1.1、好ましくは0.95~1.05、より好ましくは0.98~1.02の有機ジアミンに対するビス無水物のモル比を意味する。例示的なモル過剰は、26以下、もしくは20以下、より好ましくは15以下、または2~26、好ましくは5~26、より好ましくは10~26の有機ジアミンに対するビス無水物のモル比により表される。
【0054】
ポリエーテルイミドを与えるのに効果的な条件は、170~380℃の温度、および1~50wt%、好ましくは20~40wt%、より好ましくは25~35wt%の固形分を含むことができる。重合は、2~24hr、好ましくは3~16hr行うことができる。重合は、減圧、大気圧または高圧において実施することができる。
【0055】
末端封鎖剤、特に、アミンまたは無水物と反応することができる単官能性化合物が、重合中に存在し得る。例示的な化合物には、無水フタル酸などの単官能性芳香族無水物、無水マレイン酸などの脂肪族一無水物、または単官能性アルデヒド、ケトン、エステル、イソシアネート、アニリンなどの芳香族モノアミン、またはC1-C18直鎖状もしくは環状脂肪族モノアミンが含まれる。加えることができる末端封鎖剤の量は、所望の量の連鎖停止剤に依存し、例えば、末端封鎖剤およびジアミンまたはビス無水物反応物のモル数に基づいて0超~10モルパーセント(mol%)、または0.1~10mol%、または0.1~6mol%であり得る。ある特定の態様において、追加の末端封鎖剤は使用されない。
【0056】
いくつかの態様において、官能化ポリエーテルイミドは、官能化ポリエーテルイミドの全重量に基づいて0.05重量ppm超、好ましくは100ppm超、より好ましくは500ppm超、さらにより好ましくは1,000重量ppm超の非反応性末端基を有する。
【0057】
イミド化触媒が、反応中に存在し得る。例示的なイミド化触媒には、アリールホスフィン酸ナトリウム、グアニジニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、テトラ(C7-24アリールアルキレン)アンモニウム塩、ジアルキルヘテロ脂環式アンモニウム塩、ビス-アルキル四級アンモニウム塩、(C7-24アリールアルキレン)(C1-16アルキル)ホスホニウム塩、(C6-24アリール)(C1-16アルキル)ホスホニウム塩、ホスファゼニウム塩およびそれらの組合せが含まれる。塩の陰イオン性成分は特に限定されず、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、マクレート(maculate)、トシル酸イオンおよび同種のものであり得る。触媒の触媒活性量は、必要以上の実験をすることなく当業者により決定することができ、例えば、有機ジアミンのモル数に基づいて0超~5mol%、または0.01~2mol%、または0.1~1.5mol%、または0.2~1.0mol%であり得る。
【0058】
ある実施形態において、官能化ポリエーテルイミドは、ビス無水物、有機ジアミンおよび有機化合物の全重量に基づいて50~90wt%、好ましくは60~90wt%、より好ましくは70~90wt%の置換または非置換C4-40ビス無水物と、5~50wt%、好ましくは15~50wt%、より好ましくは15~35wt%の置換または非置換C1-40有機ジアミンと、0~45wt%、好ましくは0~35wt%、より好ましくは0~25wt%の有機化合物とを含む反応混合物から調製される。
【0059】
別の実施形態において、官能化ポリエーテルイミドは、ビス無水物、有機ジアミンおよび有機化合物の全重量に基づいて50~90wt%、好ましくは60~90wt%、より好ましくは70~90wt%の置換または非置換C4-40ビス無水物と、5~50wt%、好ましくは15~50wt%、より好ましくは15~35wt%の置換または非置換C1-40有機ジアミンと、1~45wt%、好ましくは3~45wt%、より好ましくは5~45wt%の有機化合物とを含む反応混合物から調製される。
【0060】
官能化ポリエーテルイミドは、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される5,000~45,000グラム/モル(g/mol)、好ましくは10,000~45,000g/mol、より好ましくは15,000~35,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有することができる。多分散性(PDI)は、4.5未満、好ましくは4.0未満、より好ましくは3.0未満、さらにより好ましくは2.8未満であり得る。
【0061】
官能化ポリエーテルイミドは、1~1,000マイクロメートル(μm)、好ましくは1~500μm、さらには1~100μm、さらにより好ましくは1~75μmの最大絶対粒径を有することができる。最大絶対粒径は、官能化ポリエーテルイミド粒子を単離するために使用された篩の孔径により定義され、平均粒径を表さない。
【0062】
官能化ポリエーテルイミドは、0.75超、好ましくは0.9超、より好ましくは1.1超、さらにより好ましくは1.5超の平均反応性末端基官能性度を有することができる。平均反応性末端基官能性度は、ポリエーテルイミド鎖当たりのヒドロキシル、アミノおよびカルボン酸末端基の平均数と定義される。
【0063】
官能化ポリエーテルイミドは、155℃超、好ましくは175℃超、より好ましくは190℃超のガラス転移温度(Tg)を有することができる。例えば、Tgは、ASTM D3418にしたがって示差走査熱量測定法により決定される155~280℃、好ましくは175~280℃、より好ましくは190~280℃であり得る。
【0064】
官能化ポリエーテルイミドは、核磁気共鳴分光法により決定される、官能化ポリエーテルイミドの0.5~5000マイクロ当量/グラム、好ましくは0.5~1000マイクロ当量/グラム、より好ましくは0.5~500マイクロ当量/グラムのアミド-酸濃度を有することができる。
【0065】
硬化性組成物は、官能化ポリエーテルイミドの全重量に基づいて0.05未満~5,000重量ppm、好ましくは0.05~1000重量ppm、より好ましくは0.05~500重量ppm、さらにより好ましくは0.05~250ppmの残留溶媒を含むことができる。
【0066】
硬化性組成物は、官能化ポリエーテルイミドを調製するために使用された、硬化性組成物の全重量に基づいてそれぞれ0.05~1,000重量ppm、好ましくは0.05~750重量ppm、より好ましくは0.05~500重量ppmの残留ビス無水物および残留有機化合物を含むことができる。
【0067】
硬化性組成物は、官能化ポリエーテルイミドを調製するために使用された、硬化性組成物の全重量に基づいて0.05~3,000重量ppm、好ましくは0.05~2,000重量ppm、より好ましくは0.05~1,000重量ppm、さらにより好ましくは0.05~500重量ppmの残留ビス無水物、残留ジアミンおよび残留有機化合物の総含有量を含むことができる。
【0068】
本明細書において使用されるとき、「残留ビス無水物」は、官能化ポリイミドの調製に由来して残っている置換または非置換C4-40ビス無水物を意味する。本明細書において使用されるとき、「残留有機化合物」は、官能化ポリイミドの調製に由来して残っている有機化合物(存在する場合)を意味する。本明細書において使用されるとき、「残留ジアミン」は、官能化ポリイミドの調製に由来して残っている置換または非置換C1-40有機ジアミンを意味する。
【0069】
硬化性組成物は、硬化性組成物の全重量に基づいて0.1~100重量ppm、0.1~75重量ppm、0.1~25重量ppmの金属イオンを含むことができる。金属イオンの例には、Na、K、Ca、Zn、Al、Cu、Ni、P、Ti、Mg、Mn、Si、Cr、Mo、CoおよびFeが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0070】
硬化性組成物は、硬化性組成物の全重量に基づいて0.1~200重量ppm、0.1~100重量ppm、0.1~50ppm、0.1~25重量ppmの金属イオンの総含有量を含むことができる。金属イオンの例には、Na、K、Ca、Zn、Al、Cu、Ni、P、Ti、Mg、Mn、Si、Cr、Mo、CoおよびFeが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0071】
硬化性組成物は、硬化性組成物の全重量に基づいて0.3~500重量ppm、0.3~250重量ppmの陰イオンを含むことができる。陰イオンの例には、リン酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、臭化物イオン、フッ化物イオンおよび塩化物イオンが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0072】
硬化性組成物は、当技術において一般に既知のポリエーテルイミド組成物用添加剤をさらに含むことができる。ただし、(1種または複数種の)添加剤は、組成物の所望の特性、特にポリ(イミド)の生成に著しく悪影響を及ぼさないように選択されるものとする。このような添加剤には、粒子状充填剤、繊維状充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外光安定剤、紫外光吸収化合物、近赤外光吸収化合物、赤外光吸収化合物、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、貯蔵安定剤、オゾン防止剤、光学安定剤、増粘剤、伝導性影響剤、放射妨害剤、核剤、防曇剤、抗菌剤、金属不活性化剤、着色剤、表面効果添加剤、放射安定剤、難燃剤、アンチドリップ剤、芳香剤、接着促進剤、流動性向上剤、コーティング添加剤、1種以上のエポキシ樹脂と異なるポリマーまたはそれらの組合せが含まれる。添加剤組成物の総量は、硬化性組成物の全重量に基づいて0.001~20wt%、または0.01~10wt%であり得る。
【0073】
官能化ポリエーテルイミドをさらに処理して、指定の最大粒径を有する粉末を得ることができる。処理には、粉砕、ミル粉砕、低温粉砕、篩分けおよびそれらの組合せが含まれる。処理は重量平均分子量、PDIおよび反応性末端基含有量に影響を及ぼさないので、処理されたポリエーテルイミド粉末は、官能化ポリエーテルイミドと一致するこれらの特性を有する。処理された粉末を篩分けして、所望の最大粒径を得ることができる。1つの態様において、最大粒径は1,000マイクロメートルである。別の態様において、官能化ポリエーテルイミドを単離するために使用された篩の孔径により決定される1~1,000マイクロメートル、好ましくは1~500マイクロメートル、より好ましくは1~100マイクロメートル、さらにより好ましくは1~75マイクロメートルの最大絶対粒径。
【0074】
官能化ポリエーテルイミドを他のポリマーと組み合わせて、例えばブレンドして、ポリマーブレンドを生成することもでき、ポリマーブレンドを、硬化性エポキシ組成物中で使用することができる。使用することができるポリマーには、ポリアセタール、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリ(メタ)アクリロニトリル類、ポリアミド、ポリカーボネート類、ポリジエン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフルオロカーボン、ポリフルオロクロロカーボン、ポリイミド、ポリ(フェニレンエーテル)、ポリケトン、ポリオレフィン、ポリオキサゾール類、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリスチレン類、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル類、ポリ塩化ビニル類、ポリ塩化ビニリデン類、ポリビニルエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリビニルピリジン類、ポリビニルピロリドン類およびそれらのコポリマー、例えばポリエーテルイミドシロキサン、エチレン酢酸ビニル類、アクリロニトリルブタジエンスチレンまたはそれらの組合せが含まれる。好ましくは、官能化ポリエーテルイミドは、ポリアリレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリ(アミドイミド)、ポリ(アリールエーテル)、フェノキシ樹脂、ポリ(アリールスルホン)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(フェニレンスルホン)、ポリ(エーテルケトン)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(エーテルケトンケトン)、ポリ(アリールケトン)、ポリ(フェニレンエーテル)、ポリカーボネート、カルボキシル末端ブタジエン-アクリロニトリル(CTBN)、アミン末端ブタジエン-アクリロニトリル(ATBN)、エポキシ末端ブタジエン-アクリロニトリル(ETBN)、コア-シェルゴム粒子またはそれらの組合せなどの別のポリマーと組み合わせることができる。
【0075】
また、提供されるのは、硬化性エポキシ組成物の製造のための方法であって、エポキシ樹脂組成物と、官能化ポリエーテルイミドとを70~200℃の温度で組み合わせて、反応混合物を与える工程と、エポキシ樹脂硬化剤、任意選択で硬化触媒を反応混合物に加えて、硬化性エポキシ組成物を与える工程とを含む方法である。不溶性の粒子およびエポキシ硬化剤を加える前に加熱することにより樹脂混合物に溶解される粒子として、官能化ポリエーテルイミドを含む(1種または複数種の)熱可塑性ポリマーをエポキシ樹脂組成物に加えることができる。(1種または複数種の)熱可塑性ポリマーが高温のマトリックス樹脂前駆体(すなわち、エポキシ樹脂のブレンド)に実質的に溶解したら、前駆体を冷却することができ、残りの成分(例えば、エポキシ硬化剤、不溶性の熱可塑性物質、他の添加剤またはそれらの組合せ)が加えられる。
【0076】
エポキシ熱硬化性物質の製造のための方法は、硬化性エポキシ組成物を重合および架橋する工程を含む。硬化は、当技術において既知の任意の方法、例えば加熱、UV-可視放射、マイクロ波放射、電子ビーム、ガンマ放射またはそれらの組合せを使用して達成することができる。
【0077】
硬化エポキシ熱硬化性物質は、50~300℃、好ましくは150~300℃、より好ましくは190~300℃、さらにより好ましくは210~300℃またはさらにより好ましくは230~300℃のガラス転移温度を有することができる。
【0078】
硬化エポキシ熱硬化性物質は、ASTM D5045にしたがって測定される150ジュール/平方メートル(J/m2)以上、好ましくは200J/m2以上、より好ましくは250J/m2以上の破壊靭性を有することができる。
【0079】
硬化エポキシ熱硬化性物質は、塩化メチレン、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロエタン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、酢酸エチル、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたはそれらの組合せに対する耐溶媒性を有することができる。硬化エポキシ熱硬化性物質は、液圧流体、ジェット燃料、ガソリン、アルコールおよび他の有機溶媒を含むあまり攻撃的でない溶媒に対する耐溶媒性を有することができる。本明細書において使用されるとき、「耐溶媒性」は、硬化エポキシ熱硬化性物質が、30分超、好ましくは24時間超、より好ましくは2~7日の間、20~25℃の溶媒に浸漬されたとき、顕微鏡により観察される熱可塑性材料の実質的な減少を示さないこと(エッチングなし)を意味する。
【0080】
エポキシ熱硬化性物質は、複合材(例えば、炭素繊維およびガラス繊維強化材を使用するものなどの複合材料)、発泡体、繊維、層、コーティング、封止材、接着剤、シーラント、サイジング樹脂、プリプレグ、ケーシング、部品またはそれらの組合せを含め、様々な目的のために様々な形態で使用することができる。エポキシ熱硬化性物質を使用して、航空宇宙、自動車、鉄道、海洋、エレクトロニクス、工業、石油およびガス、運動用品、インフラ、エネルギー、ならびに改善された靭性、より高い耐熱性および溶媒に対する良好な耐性が必要とされる他の産業において多くの物品を生成することができる。特定の態様において、複合材は、ガラス繊維ベースの複合材、炭素繊維ベースの複合材またはそれらの組合せである。
【0081】
複合材を生成する方法は、補強構造物に硬化性エポキシ組成物を含浸させる工程と、硬化性組成物を部分的に硬化させて、プリプレグを生成する工程と、複数のプリプレグを積層する工程とを含むことができ、硬化性エポキシ組成物は、補助的なコモノマーと、任意選択で、1種以上の追加の添加剤とを任意選択で含む。
【0082】
硬化性エポキシ組成物の例示的な用途には、例えば、酸浴容器;中和タンク;航空機部品;橋桁;橋床;電解セル;排気筒;スクラバー;運動用具;階段;歩道;ボンネットおよびトランクリッドなどの自動車外装パネル;フロアパン;エアスクープ;ヒーターダクトを含むパイプおよびダクト;工業用ファン、ファンハウジングおよびブロワ;工業用ミキサー;艇体および甲板;埠頭防舷材;タイルおよびコーティング;建築用パネル;事務機ハウジング;ケーブルトレイを含むトレイ;コンクリート改質剤;食器洗い機および冷蔵庫部品;電気封止材;電気パネル;電気精錬タンク、軟水装置タンク、燃料タンクおよび様々なフィラメントワインディングタンクを含むタンクならびにタンクライニング;家具;ガレージドア;格子;保護ボディーギア;鞄;アウトドア自動車両;圧力タンク;プリント回路基板;光導波路;レドーム;柵;タンク車などの鉄道部品;ホッパー車カバー;車のドア;トラックのベッドライナー;衛星通信用パラボラアンテナ;標識;太陽エネルギーパネル;電話開閉器ハウジング;トラクター部分;変圧器カバー;フェンダー、ボンネット、ボディー、キャブおよびベッドなどのトラック部品;接地絶縁材、ターン絶縁材および相分離絶縁材を含む回転機械用絶縁材;整流器;コア絶縁材およびコードおよびレーシングテープ;駆動軸継手;プロペラ羽根;ミサイル部品;ロケットモーターケース;翼部;サッカーロッド;胴体部;翼外板およびフレア;エンジンナセル;貨物口;テニスラケット;ゴルフクラブシャフト;釣竿;スキー板およびスキーストック;自転車部品;横向きリーフスプリング;自動車用スモッグポンプなどのポンプ;電気ケーブルジョイントなどの電気部品、埋込材および工具;巻線および高密度実装多素子アセンブリ;電気機械装置のシーリング;バッテリーケース;抵抗器;ヒューズおよびサーマルカットオフデバイス;プリント配線板用コーティング;コンデンサー、変圧器、クランクケースヒーターなどの注型品;コイル、コンデンサー、抵抗器および半導体を含む小型成型電子部品;化学処理、パルプおよび紙、発電ならびに廃水処理における鋼の代替として;スクラブ塔;構造部材、格子およびガードレールを含む構造用途向け引抜部品;水泳プール、水泳プールの滑り台、温水浴槽およびサウナ;ボンネット下用途向けドライブシャフト;複写機用乾式トナー;海用工具および複合材;遮熱材;潜水艦の艦体;プロトタイプ生成;実験モデルの開発;積層トリム;穴開け治具;結合治具;検査治具;工業用金属成形型;航空機用ストレッチブロックおよびハンマー型;真空成形工具;生産区域および組立区域、クリーンルーム、機械工場、制御室、実験室、駐車場、冷凍庫、冷却器ならびに屋外の積降場向け床を含む床;帯電防止用途向け導電性組成物;装飾床用;橋用伸縮継手;構造コンクリートにおける亀裂の補修および修復のための注入用モルタル;タイル用グラウチング;機械用レール;金属ダボ;ボルトおよび柱;油および燃料貯蔵タンクの修復、ならびに多くの他の用途が含まれる。
【0083】
本開示を非限定的な以下の例によりさらに説明する。
【実施例】
【0084】
表1中の成分を使用して、実施例1~8を調製した。
【表1】
【0085】
粘度
ARES G2歪みコントローラーレオメーターを使用して、ASTM D4440-1にしたがって、使い捨ての8mmプレートを使用して1mmの一定の間隙および一定の周波数(15rad/s)で歪み10%で粘度測定を実施した。140℃に平衡化させた平行プレートレオメーターの2枚のプレートの間にサンプルを充填した。プレートおよびサンプルが70℃まで冷却するときの温度の関数として複素粘度を測定した。
【0086】
破壊靭性
硬化後、サンプルを型から取り出し、ミル粉砕して、実質的に平坦で均一な表面を得た。サンプル注型を600番のサンドペーパーで8mmの最終の厚さまで両側を乾式研磨した。剃刀タップ法を使用して、試験サンプルの上に置かれた鋭い剃刀の刃に小さい衝撃力を加えることにより、切欠き先端から鋭い予亀裂を起こした。予亀裂の後、引張試験用クレビスにサンプルを取り付け、万能試験機(Zwick Z2.5)により加えられた開口モードI荷重下で試験した。変位制御下1mm/minで荷重を加えた。サンプルの試験後の破面を光学顕微鏡下で画像化して、ASTM D5045にしたがってタッピング法により生成された亀裂の長さを測定した。亀裂の長さを破面上で5つの等間隔で測定し、平均して、各試験片の平均亀裂の長さを得た。破壊荷重を試験片の幾何形状および平均亀裂の長さと共に記録および使用して、ASTM D5045にしたがってエポキシ材料の破壊靭性(KIC)を計算した。臨界歪みエネルギー解放率(GIC)も計算した。
【0087】
ガラス転移温度
TA Q1000 DSC装置を用いて、ASTM D3418にしたがって示差走査熱量測定法(DSC)を実施した。窒素雰囲気下40℃から325℃まで20℃/minの加熱速度でサンプルを走査した。第2の加熱走査からガラス転移温度(Tg)および溶融温度(Tm)を決定した。
【0088】
JEOL JSM-IT500 HR走査電子顕微鏡を使用して、サンプルのSEM画像化を行った。二次電子モード下10~15kVの動作電圧でSEM像を撮影した。画像化の前にサンプルを空気洗浄し、10nm金/パラジウムでスパッタコーティングした。形態およびZコントラストイメージングのために二次電子および後方散乱電子検出器を使用した。
【0089】
表2は、サンプルの硬化プロファイルを示す。時間は、指定の温度における平衡時間または保持時間の量として記載されている。最終ステップの後、熱応力を最小にするために、サンプルを周囲温度までゆっくり徐冷した。
【表2】
【0090】
実施例1
アミン末端PEIオリゴマーの合成
機械式撹拌装置、窒素アダプターおよびDean-Stark凝縮器を備えた、オーブン乾燥した500mL三口丸底フラスコに、50.06グラム(g)のBPA-DA(94.6mmol)、14.6gのmPD(134.5mmol)および200gのoDCBを加えた。油浴温度を180℃まで上げ、反応物をこの温度で3~4時間還流させた。少量サンプルを分子量測定のために取り出した。目標Mwを得るために、反応をDAまたはアミンで化学量論的に補正した。Mwが達成されたら、反応混合物を室温(約25℃)まで徐冷し、次いで、150gのDCMをそれに加え、内容物を撹拌しながら激しく混合して、オリゴマー溶液を得た。800~850mLのMeOHが入った2Lビーカーにオリゴマー溶液を高剪断混合条件下でゆっくり加え、その結果、沈殿物が生成した。得られた微細なオフホワイト色の粉末を濾過し、MeOH(2×50mL)で洗浄した。単離された固体を130~135℃の真空オーブン内で12時間乾燥して、5,766g/molのMwおよび2.37の多分散性指数(PDI)を有する粉末としてアミン末端PEIオリゴマーを得た。
【0091】
実施例2
アミン末端PEIオリゴマーの合成
50gのBPA-DA(94.17mmol)、12.40gのmPD(114mmol)および200gのoDCBが、9,872g/molのMwおよび2.12のPDIを有するアミン末端PEIオリゴマー粉末を与えたことを除いて、実施例1と同じ手順にしたがった。
【0092】
実施例3
ヒドロキシ末端PEIオリゴマーの合成
56.10gのBPA-DA(107.74mmol)、7.80gのmPD(72.13mmol)、8.01gのPAP(73.31mmol)および200gのoDCBは、4,598g/molのMwおよび2.32のPDIを有するヒドロキシ末端PEIオリゴマー粉末を与えたことを除いて、実施例1と同じ手順にしたがった。
【0093】
実施例4
ヒドロキシ末端PEIオリゴマーの合成
52.20gのBPA-DA(97.47mmol)、8.97gのmPD(82.95mmol)、3.50gのPAP(32.07mmol)および200gのoDCBは、9,214g/molのMwおよび2.42のPDIを有するヒドロキシ末端PEIオリゴマー粉末を与えたことを除いて、実施例1と同じ手順にしたがった。
【0094】
実施例5
添加剤を含まないエポキシ注型の調製
液体エポキシ化合物(例えば、TGAP、TGDDM、BFDGEまたはDGEBA)を含み、熱可塑性添加剤を含まないエポキシ注型を調製するために、以下の手順を使用した。機械式撹拌装置およびN2ガス入口を備えた500mL反応釜に80gの液体エポキシを注いだ。釜をN2ガスで約5分間パージし、次いで、140℃に保たれた油浴中に浸漬した。N2雰囲気下で約15~20分加熱後、24g(N-H基当たり15%過剰のエポキシ)のDDSを釜に注意深く加えた。固体DDSを液体エポキシに約15分間溶解させた。DDSが完全に溶解した後、次いで、釜の内容物を真空下に5分間置き、続いてN2パージした。このプロセスを合計3サイクル繰り返し、次いで、生じた混合物を、140℃のオーブン内で予熱されたシリコーン型に注いだ。表2の熱硬化手順にしたがってサンプルを硬化した。
【0095】
実施例6
添加剤を含むエポキシ注型の調製
液体エポキシ化合物(例えば、TGAP、TGDDM、BFDGEまたはDGEBA)および熱可塑性添加剤(例えば、実施例1~4のPEIオリゴマー、PEIまたはPESU)を含むエポキシ注型を調製するために、以下の手順を使用した。各サンプルについて、15、30または50wt%の熱可塑性添加剤(液体エポキシ化合物の全重量に基づく)を釜内で液体エポキシ化合物と合わせ、140℃まで加熱した。熱可塑性添加剤が液体エポキシ化合物に完全に溶解(透明な混合物の生成により目視で判定)した後、得られたエポキシ混合物にDDSを加えた。実施例5の方法にしたがって残りのステップを実施した。
【0096】
液体エポキシ化合物への溶解度を高めるため、熱可塑性添加剤を粉末として調製し、300μmの篩を使用して、より大きい径の粒子を除去した。目視監視により、PEIまたはPESUを溶解するのに45~60分必要であったのと比べて、実施例1~4の熱可塑性添加剤が液体エポキシ化合物に約20~25分で溶解したことが示された。実施例1~4については、反応性官能基(アミン対ヒドロキシ)の性質および分子量(5対10kg/mol)は、溶解時間を大幅に変化させなかった。
【0097】
実施例7
アミン末端PEIオリゴマーの合成
実施例1と同じ手順にしたがって、65gのBPA-DA(121.56mmol)、14.83gのmPD(137.14mmol)および230gのoDCBは、17,819g/molのMwおよび2.42のPDIを有するアミン末端PEIオリゴマー粉末を与えた。
【0098】
実施例8
アミン末端PEIオリゴマーの合成
実施例1と同じ手順にしたがって、65gのBPA-DA(121.37mmol)、14.12gのmPD(130.57mmol)および230gのoDCBは、26,180g/molのMwおよび2.36のPDIを有するアミン末端PEIオリゴマー粉末を与えた。
【0099】
実施例9
アミン末端PEIオリゴマーの合成
実施例1と同じ手順にしたがって、64.8gのBPA-DA(121.00mmol)、13.84gのmPD(127.99mmol)および230gのoDCBは、32,968g/molのMwおよび2.35のPDIを有するアミン末端PEIオリゴマー粉末を与えた。
【0100】
硬化性エポキシ組成物の粘度ならびにBISFおよび熱可塑性添加剤(0~50wt%)の硬化サンプルの臨界歪みエネルギー解放率を表4に示す。
【表3】
【0101】
硬化性エポキシ組成物の粘度ならびにDGEBAおよび熱可塑性添加剤(0~50wt%)の硬化サンプルの臨界歪みエネルギー解放率を表5に示す。
【表4】
【0102】
硬化性エポキシ組成物の粘度ならびにTGAPおよび熱可塑性添加剤(0~50wt%)の硬化サンプルの臨界歪みエネルギー解放率を表6に示す。
【表5】
【0103】
硬化性エポキシ組成物の粘度、硬化サンプルの臨界歪みエネルギー解放率ならびにTGDDMおよび熱可塑性添加剤(0~50wt%)の硬化サンプルのT
gを表7に示す。
【表6】
【0104】
表4~7の結果は、70℃では添加量50wt%の実施例2および4の熱可塑性添加剤を含む硬化性エポキシ組成物の粘度が、PESUを含む硬化性エポキシ組成物の粘度よりも高いが、100℃では一部の硬化性エポキシ組成物が、PESUと比べてより低い粘度を有することを示す。添加量レベル30wt%では、70℃で実施例1および3の熱可塑性添加剤を含む硬化性エポキシ組成物は、実施例2および4の熱可塑性添加剤を含む硬化性エポキシ組成物と比べてより高い粘度を有していた。
【0105】
実施例2および4の熱可塑性添加剤を含む硬化性エポキシ組成物から誘導されたサンプルは、熱可塑性添加剤を含まない硬化性組成物と比べて、破壊靭性の著しい改善、例えば破壊靭性の最大160%の向上を示した。実施例2および4の熱可塑性添加剤を含むサンプルの破壊靭性は、添加量30wt%で最大値に達するまで、添加量がより高くなるにつれて向上した(BISFエポキシ配合物を除く)。添加量を50wt%までさらに増やしても、破壊靭性はさらに向上しなかった。全体として、実施例2および4の熱可塑性添加剤を含むサンプルは、実施例1および3の熱可塑性添加剤を使用したサンプルと比べて、破壊靭性のより大きな改善を示した。
【0106】
熱可塑性添加剤の分子量がより低いとき、硬化熱硬化性物質の機械的特性、特に破壊靭性が著しく低下することが予想される。驚くべきことに、実施例2および4の熱可塑性添加剤の添加量30wt%で、DGEBAおよびTGDDM硬化サンプルは、より高い分子量を有する添加量30wt%のPESUを含むDGEBAおよびTGDDM硬化サンプルよりも大きい臨界歪みエネルギー解放率を有していた。
【0107】
表7に示す通り、実施例2または4のいずれかの熱可塑性添加剤を含む硬化サンプルのTgは、PEIまたはPESUを含む硬化サンプルのTgと同様であった。すべてのサンプルが単一のTgを有していた。これらの結果は、高温への長期間の曝露を伴う用途に官能化ポリエーテルイミドを使用することができることを示す。硬化性エポキシ組成物へのより低分子量の熱可塑性物質の取込みは、得られる硬化エポキシ熱硬化性物質の熱性能を低下させることが予想される。驚くべきことに、DSC測定は、高温性能を損なわずに5または10kg/molの分子量を有するアミン末端またはヒドロキシル末端PEIオリゴマーと共にTGDDM樹脂を配合することができることを示す。
【0108】
図1は、破壊靭性評価から得られた、熱可塑性ポリマー強化TGDDMエポキシサンプルの破面のSEM顕微鏡写真を示す。PEIの添加量15wt%で、明確な相分離(球状の特徴)が破面のSEM像に観察される。加えて、PEIにより結合された架橋エポキシを球状粒子が含む相反転領域もここで示されている。実施例2および4の硬化組成物は、エポキシマトリックス中に均一に分布したより小さい熱可塑性ドメイン(0.1~0.2μm)を含む二相形態を示す。理論によって制限されることなく、実施例2および4のPEIオリゴマーはエポキシ樹脂と反応し、エポキシネットワークに組み込まれ、それによって、架橋間の平均分子量を増加させる。驚くべきことに、特徴は、実施例1および3の硬化組成物については観察されなかった。したがって、実施例2および4の熱可塑性添加剤を含むサンプルのより高い破壊靭性は、相形態のこの違いによって説明することができる。さらに、分子量が33,000g/molまで増加し、添加量レベルが30wt%まで上昇すると、断続的な共連続相を有する二相形態が分子量26,000g/molおよび30,000g/mol両方のアミン末端PEIオリゴマーにおいて観察された。
【0109】
硬化熱硬化性物質を塩化メチレンに30分間~1時間液浸することにより耐薬品性を評価した。
図2は、塩化メチレンへの曝露前後の表面のSEM像を示す。PEIを含むサンプルについては、PEIが塩化メチレンに溶解したために、エッチングされた領域が表面に観察された。実施例2および4のPEIオリゴマーを含む硬化熱硬化性物質は、目視観察およびSEM画像化により表面の損傷を示さず、改善された耐薬品性を示した。
【0110】
本開示は、非限定的な以下の態様をさらに包含する。
【0111】
態様1.分子当たり少なくとも2個のエポキシ基をそれぞれ独立して有する1種以上のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物と、エポキシ樹脂硬化剤と、任意選択で硬化触媒と、置換または非置換C4-40ビス無水物と、置換または非置換C1-40有機ジアミンと、任意選択で有機化合物とから調製された官能化ポリエーテルイミドであって、エポキシ樹脂組成物100重量部当たり5~75重量部の量で存在する官能化ポリエーテルイミドとを含む硬化性エポキシ組成物であって、官能化ポリエーテルイミドが、式(C1-40ヒドロカルビレン)-NH2、(C1-40ヒドロカルビレン)-OH、(C1-40ヒドロカルビレン)-SH、(C4-40ヒドロカルビレン)-Gまたはそれらの組合せの反応性末端基を含み、式中、Gが、無水物基、カルボン酸、カルボン酸エステルまたはそれらの組合せであり、官能化ポリエーテルイミドが、官能化ポリエーテルイミドの50~1,500μeq/g、好ましくは50~1,000μeq/g、より好ましくは50~750μeq/gの全反応性末端基濃度を有し、ポリエーテルイミド組成物が、ポリエーテルイミド組成物の全重量に基づいて0.05~1,000重量ppm、好ましくは0.05~500重量ppm、より好ましくは0.05~250重量ppmの残留有機ジアミンを有し、官能化ポリエーテルイミドが、有機逆溶媒を使用する溶液からの沈殿または脱揮発により得られ、有機化合物が、分子当たり少なくとも2個の官能基を含み、第1の官能基が、無水物基、アミン基またはそれらの組合せに対して反応性であり、第1の官能基が、第2の官能基と異なる硬化性エポキシ組成物。
【0112】
態様2.態様1に記載の硬化性エポキシ組成物であって、エポキシ樹脂組成物が、本明細書に記載の式(1)の化合物を含む硬化性エポキシ組成物。
【0113】
態様3.態様1または2に記載の硬化性エポキシ組成物であって、エポキシ樹脂硬化剤が、ジアミン化合物、好ましくはm-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、3,3’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、4,4’-オキシジアニリン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレンジアニリン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、2,4-ビス(p-アミノベンジル)アニリン、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミンまたはそれらの組合せ、より好ましくは4,4’-ジアミノジフェニルスルホンである硬化性エポキシ組成物。
【0114】
態様4.態様1から3のいずれか1つに記載の硬化性エポキシ組成物であって、官能化ポリエーテルイミドが、GPCにより決定される5,000~45,000g/mol、好ましくは10,000~45,000g/mol、より好ましくは15,000~35,000g/molの重量平均分子量;1~1,000マイクロメートル、好ましくは1~500マイクロメートル、より好ましくは1~100マイクロメートル、さらにより好ましくは1~75マイクロメートルの最大絶対粒径;ポリエーテルイミド鎖当たりの反応性末端基の平均数と定義される0.75超、好ましくは0.9超、より好ましくは1.1超、さらにより好ましくは1.5超の平均反応性末端基官能性度;ASTM D341にしたがって示差走査熱量測定法により決定される155℃~280℃、好ましくは175℃~280℃、より好ましくは190℃~280℃のガラス転移温度;核磁気共鳴分光法により決定される、官能化ポリエーテルイミドの0.5~5000マイクロ当量/グラム、好ましくは0.5~1000マイクロ当量/グラム、より好ましくは0.5~500マイクロ当量/グラムのアミド-酸濃度;核磁気共鳴分光法により決定される0.05重量ppm超、好ましくは100重量ppm超、より好ましくは500重量ppm超、さらにより好ましくは1000重量ppm超の非反応性末端基;超高性能液体クロマトグラフィーにより決定される、ポリエーテルイミド組成物の全重量に基づいて0.05~1,000重量ppm、好ましくは0.05~500重量ppm、より好ましくは0.05~250重量ppmの残留有機ジアミン;およびポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される4.5未満、好ましくは4.0未満、より好ましくは3.0未満、さらにより好ましくは2.8未満の多分散性のうちの1つ以上を含む硬化性エポキシ組成物。
【0115】
態様5.態様1から4のいずれか1つに記載の硬化性エポキシ組成物であって、官能化ポリエーテルイミド粉末が、式:
【化13】
(式中、TおよびRは、本明細書に記載の通りである)の単位を含む硬化性エポキシ組成物。
【0116】
態様6.態様5に記載の硬化性エポキシ組成物であって、各Rが、独立して式
【化14】
(式中、Q
1は、-O-、-S-、-C(O)-、-SO
2-、-SO-、-P(R
’)(=O)-(式中、R
’は、C
1-8アルキルまたはC
6-12アリールである)、-C
yH
2y-およびそのハロゲン化誘導体(式中、yは、1~5の整数である)または-(C
6H
10)
z-(式中、zは、1~4の整数である)である)の二価基であり、Zが、式
【化15】
(式中、R
aおよびR
bは、それぞれ独立してハロゲン原子または一価C
1-6アルキル基であり、pおよびqは、それぞれ独立して0~4の整数であり、cは0~4であり、X
aは、単結合、-O-、-S-、-S(O)-、-SO
2-、-C(O)-、-P(R
a)(=O)-(式中、R
aは、C
1-8アルキルまたはC
6-12アリールである)またはC
1-18有機架橋基である)の基であり、好ましくは各Rが、独立してメタ-フェニレン、オルト-フェニレン、パラ-フェニレン、ビス(4,4’-フェニレン)スルホニル、ビス(3,4’-フェニレン)スルホニル、ビス(3,3’-フェニレン)スルホニル、ビス(4,4’-フェニレン)オキシ、ビス(3,4’-フェニレン)オキシ、ビス(3,3’-フェニレン)オキシまたはそれらの組合せであり、各Zが4,4’-ジフェニレンイソプロピリデンである硬化性エポキシ組成物。
【0117】
態様7.態様1から6のいずれか1つに記載の官能化ポリエーテルイミドであって、ポリエーテルイミドが、式
【化16】
(式中、RおよびZは、本明細書に定義の通りである)の単位を含む官能化ポリエーテルイミド。
【0118】
態様8.態様1から6のいずれか1つに記載の硬化性エポキシ組成物であって、有機化合物が、式Rc-Ln-Q2-Ln-Rd(式中、RcおよびRdは異なり、かつそれぞれ独立して-OH、-NH2、-SHまたは無水物基、カルボン酸もしくはカルボン酸エステル基であり、各Lは、同じかまたは異なり、かつそれぞれ独立して置換もしくは非置換C1-10アルキレンまたは置換もしくは非置換C6-20アリーレンであり、Q2は、-O-、-S-、-S(O)-、-SO2-、-C(O)-またはC1-40有機架橋基、好ましくは置換もしくは非置換C1-10アルキレンまたは置換もしくは非置換C6-20アリーレンであり、各nは、独立して0または1である)のものであり、より好ましくは有機化合物が、パラ-アミノフェノール、メタ-アミノフェノール、オルト-アミノフェノール、4-ヒドロキシ-4’-アミノジフェニルプロパン、4-ヒドロキシ-4’-アミノジフェニルメタン、4-アミノ-4’-ヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-アミノジフェニルエーテル、2-ヒドロキシ-4-アミノトルエン、4-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、2-アミノチオフェノール、4-ヒドロキシフタル酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物、6-アミノ-2-ナフトール、5-アミノ-2-ナフトール、8-アミノ-2-ナフトール、3-アミノ-2-ナフトールまたはそれらの組合せである硬化性エポキシ組成物。
【0119】
態様9.態様1から8のいずれか1つに記載の硬化性エポキシ組成物であって、硬化性エポキシ組成物の粘度が、ASTM D4440-1にしたがって100℃で測定される2,000Pa・s以下、好ましくは1,000Pa・s以下、より好ましくは500Pa・s以下である硬化性エポキシ組成物。
【0120】
態様10.態様1から9のいずれか1つに記載の硬化性エポキシ組成物であって、粒子状充填剤、繊維状充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外光安定剤、紫外光吸収化合物、近赤外光吸収化合物、赤外光吸収化合物、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、貯蔵安定剤、オゾン防止剤、光学安定剤、増粘剤、伝導性影響剤、放射妨害剤、核剤、防曇剤、抗菌剤、金属不活性化剤、着色剤、表面効果添加剤、放射安定剤、難燃剤、アンチドリップ剤、芳香剤、接着促進剤、流動性向上剤、コーティング添加剤、1種以上のエポキシ樹脂と異なるポリマーまたはそれらの組合せをさらに含む硬化性エポキシ組成物。
【0121】
態様11.態様1から10のいずれか1つに記載の硬化性エポキシ組成物であって、ポリアリレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリ(アミドイミド)、ポリ(アリールエーテル)、フェノキシ樹脂、ポリ(アリールスルホン)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(フェニレンスルホン)、ポリ(エーテルケトン)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(エーテルケトンケトン)、ポリ(アリールケトン)、ポリ(フェニレンエーテル)、ポリカーボネート、カルボキシル末端ブタジエン-アクリロニトリルゴム(CTBN)、アミン末端ブタジエン-アクリロニトリルゴム(ATBN)、エポキシ末端ブタジエン-アクリロニトリルゴム(ETBN)、コア-シェルゴムまたはそれらの組合せをさらに含む硬化性エポキシ組成物。
【0122】
態様12.態様1から11のいずれか1つに記載の硬化性エポキシ組成物の製造のための方法であって、エポキシ樹脂組成物と、官能化ポリエーテルイミドとを70~200℃の温度で組み合わせて、反応混合物を与える工程と、エポキシ樹脂硬化剤と、任意選択で硬化触媒とを反応混合物に加えて、硬化性エポキシ組成物を与える工程とを含む方法。
【0123】
態様13.態様1から11のいずれか1つに記載の硬化性エポキシ組成物の硬化生成物を含むエポキシ熱硬化性物質。
【0124】
態様14.態様13に記載のエポキシ熱硬化性物質であって、硬化後、ASTM D3418にしたがってDSCにより決定される50~300℃、好ましくは150~300℃、より好ましくは190~300℃、さらにより好ましくは210~300℃もしくはさらにより好ましくは230~300℃のガラス転移温度;またはASTM D5045による150J/m2以上、好ましくは200J/m2以上、より好ましくは250J/m2以上の破壊靭性;または塩化メチレン、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロエタン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、酢酸エチル、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、液圧流体、ジェット燃料、ガソリン、アルコールもしくはそれらの組合せに対する耐溶媒性のうちの少なくとも1つを有するエポキシ熱硬化性物質。
【0125】
態様15.態様13または14に記載のエポキシ熱硬化性物質を含み、好ましくは複合材、接着剤、膜、層、コーティング、封止材、シーラント、部品、プリプレグ、ケーシングまたはそれらの組合せの形態である物品。
【0126】
組成物、方法および物品は、本明細書に開示の任意の適切な構成要素またはステップを代替的に含む、これらからなる、またはこれらから本質的になることができる。組成物、方法および物品は、追加的または代替的に、他の場合には組成物、方法および物品の機能または目的の達成に必要ではない任意のステップ、構成要素、材料、成分、補助剤または化学種を含まないように、または実質的に含まないように構築することができる。
【0127】
単数形「a」、「an」および「the」は、文脈により特に明確に定められていない限り、複数の指示対象を含む。「または」は、文脈により特に明確に示されていない限り、「および/または」を意味する。「第1の」、「第2の」などの用語は、何らかの順序、量または重要性を表さず、むしろある要素を別の要素と区別するために使用される。本明細書全体を通じて「ある態様」への言及は、この態様に関連して記載されたある特定の要素が、本明細書に記載の少なくとも1つの態様に含まれ、他の態様に存在しても、しなくてもよいことを意味する。記載された要素は、様々な態様において任意の適した方法で組み合わせることができる。「組合せ」は、ブレンド、混合物、アロイ、反応生成物および同種のものを含む。本明細書において使用される「それらの組合せ」は開放語であり、挙げられた項目のうちの1つ以上と、任意選択で、挙げられていない1つ以上の同様の項目とを含む組合せを指す。
【0128】
本明細書に開示のすべての範囲は端点を含み、端点は、互いに独立して結合可能である。同じ構成要素または特性を対象とするすべての範囲の端点は包括的かつ独立して結合可能である。より広い範囲に加えて、より狭い範囲またはより具体的な群の開示は、より広い範囲またはより大きい群を放棄するものではない。
【0129】
他に定義されていない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語は、本出願が属する技術の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。すべての引用された特許、特許出願および他の参考文献の全体を本願に引用して援用する。しかし、本出願の用語が、援用された参考文献の用語と相反または矛盾する場合、本出願の用語が、援用された参考文献の矛盾する用語に優先する。
【0130】
本明細書において使用されるとき、「ヒドロカルビル」という用語は、炭素と、水素と、任意選択で1個以上のヘテロ原子(例えば、ハロゲン、O、N、S、PまたはSiなどの1個、2個、3個または4個の原子)とを含む基を含む。「アルキル」は、分岐鎖または直鎖の飽和一価炭化水素基、例えば、メチル、エチル、i-プロピルおよびn-ブチルを意味する。「アルキレン」は、直鎖または分岐鎖の飽和二価炭化水素基(例えば、メチレン(-CH2-)またはプロピレン(-(CH2)3-))を意味する。「アルケニル」および「アルケニレン」は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有するそれぞれ一価または二価の直鎖または分岐鎖の炭化水素基(例えば、エテニル(-HC=CH2)またはプロペニレン(-HC(CH3)=CH2-)を意味する。「アルキニル」は、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する直鎖または分岐鎖の一価炭化水素基(例えば、エチニル)を意味する。「アルコキシ」は、酸素を介して結合されたアルキル基(すなわち、アルキル-O-)、例えばメトキシ、エトキシおよびsec-ブチルオキシを意味する。「シクロアルキル」および「シクロアルキレン」は、式-CnH2n-xおよび-CnH2n-2x-(式中、xは、(1個または複数の)環化の数である)のそれぞれ一価および二価の環式炭化水素基を意味する。「アリール」は、一価の単環式または多環式芳香族基(例えば、フェニルまたはナフチル)を意味する。「アリーレン」は、二価アリール基を意味する。「アルキルアリール」は、アルキル基で置換されたアリール基を意味する。「アリールアルキル」は、アリール基で置換されたアルキル基(例えば、ベンジル)を意味する。接頭語「ハロ」は、同じでも、異なっていてもよい1個以上のハロゲン(F、Cl、BrまたはI)置換基を含む基または化合物を意味する。接頭語「ヘテロ」は、ヘテロ原子(例えば、1個、2個または3個のヘテロ原子)である少なくとも1個の環員を含む基または化合物を意味し、ここで、各ヘテロ原子は、独立してN、O、SまたはPである。
【0131】
置換基が特に具体的に示されていない限り、前述の基のそれぞれは非置換でも、置換されてもよいが、置換は、化合物の合成、安定性または使用に著しく悪影響を及ぼさないものとする。「置換」は、化合物、基または原子が水素の代わりに少なくとも1個(例えば、1個、2個、3個または4個)の置換基で置換されていることを意味し、ここで、各置換基は、独立してニトロ(-NO2)、シアノ(-CN)、ヒドロキシ(-OH)、ハロゲン、チオール(-SH)、チオシアノ(-SCN)、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ハロアルキル、C1-9アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、C3-12シクロアルキル、C5-18シクロアルケニル、C6-12アリール、C7-13アリールアルキル(例えば、ベンジル)、C7-12アルキルアリール(例えば、トルイル)、C4-12ヘテロシクロアルキル、C3-12ヘテロアリール、C1-6アルキルスルホニル(-S(=O)2-アルキル)、C6-12アリールスルホニル(-S(=O)2-アリール)またはトシル(CH3C6H4SO2-)であるが、置換された原子の通常の価数は超えず、かつ置換は、化合物の製造、安定性または所望の特性に著しく悪影響を及ぼさないものとする。基中に示された炭素原子の数は、すべての置換基を除く。例えば-CH2CH2CNは、ニトリルで置換されたC2アルキル基である。
【0132】
特定の態様を説明してきたが、現在予見されない、または現在予見することができない代替、変形、変種、改善および実質的な等価物を出願人または当業者は思いつくであろう。したがって、出願された、および補正される可能性のある添付の特許請求の範囲は、すべてのこのような代替、変形、変種、改善および実質的な等価物を包含することが意図される。
【国際調査報告】