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特表2022-521436歯内治療用途における連続洗浄および活性化のための装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-07
(54)【発明の名称】歯内治療用途における連続洗浄および活性化のための装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/40 20170101AFI20220331BHJP
   A61C 17/02 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
A61C5/40
A61C17/02 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549655
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(85)【翻訳文提出日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 US2020019590
(87)【国際公開番号】W WO2020176438
(87)【国際公開日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】62/809,899
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517264281
【氏名又は名称】デンツプライ シロナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ショットン,ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ウィルキンソン,ケヴィン
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052AA10
4C052AA16
4C052BB07
4C052CC28
4C052CC30
4C052EE03
4C052GG09
(57)【要約】
歯内治療用途において流体を連続で送達しながら活性化させるための歯科用装置が、本明細書で開示される。歯科用装置は、チップエンドおよびコネクター部を有する中空針と、ハンドルと、を含む。ハンドルの一方の端部は、中空針のコネクター部に固定されるように構成される。ハンドルの反対の端部は、活性化のために歯内治療用ハンドピースまたは音波式撹拌機に取り付けることが可能である。コネクター部は、中空針のコネクター部の不可欠な部分である少なくとも1つのチューブコネクター、または中空針をコネクターに適応させるためのコネクター部の複数の開口部を含む。コネクターは、再使用され得るように針から着脱自在であるモジュール式流体送達コネクターである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空針およびハンドルを含む、歯内治療用途において流体を連続で送達しながら活性化させるための歯科用装置であって;前記中空針が、先端部と、中間部と、コネクター部と、を含み;前記中間部と先端部が一緒になって、作業部を形成しており;前記作業部が、チップ内で終結していて、根管で作動するように構成されており;前記ハンドルの一方の端部が、前記中空針の前記コネクター部に固定されるように構成され;前記ハンドルの反対の端部が、前記活性化のために歯内治療用ハンドピースまたは音波撹拌機に取り付けることが可能である、歯科用装置。
【請求項2】
前記中空針が、前記コネクター部の不可欠な部分である少なくとも1つのチューブコネクターまたは前記コネクター部の複数の開口部と、中空針を通して流体を送達させるための前記先端の少なくとも1つの開口部と、を含む、請求項1に記載の歯科用装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのチューブコネクターが、前記コネクター部の不可欠な部分である場合、前記コネクター部が、バーブドコネクター(barbed connector)である、請求項2に記載の歯科用装置。
【請求項4】
着脱自在なモジュール式流体送達コネクターが、前記中空針に連結され、前記コネクターが、前記流体を前記中空針の前記複数の開口部の少なくとも1つの開口部に連通させるための流体送達導管を含む、請求項2に記載の歯科用装置。
【請求項5】
前記モジュール式流体送達コネクターが、前記針の前記コネクター部を少なくとも部分的に包み込むことにより前記装置に組み立てられて、前記モジュール式流体送達コネクターから前記中空針への流体連通を可能にする、請求項4に記載の歯科用装置。
【請求項6】
前記モジュール式流体送達コネクターが前記中空針に組み立てられる時に、ユーザーが前記モジュール式流体送達コネクターを前記ハンドルよりも高く配置させることを防ぎ、そして前記中空針の前記少なくとも1つの開口部を前記モジュール式流体送達コネクターの少なくとも1つの開口部と心合わせするために、前記ハンドルが止め具を含む、請求項1に記載の歯科用装置。
【請求項7】
前記ハンドルが、標準の歯内治療用ハンドピースに接続される、請求項1に記載の歯科用装置。
【請求項8】
前記活性化が、前記中空針の外側の流体を前記根管内に押出しながらの前記中空針の回転を含む、請求項1に記載の歯科用装置。
【請求項9】
前記活性化が、前記中空針の外側の流体を前記根管内に押出しながらの前記中空針の振動を含む、請求項1に記載の歯科用装置。
【請求項10】
前記モジュール式流体送達コネクターが、内部ハウジングと、外部ハウジングと、少なくとも2組のOリングと、少なくとも2つの玉軸受けアセンブリと、をさらに含む、請求項4に記載の歯科用装置。
【請求項11】
前記少なくとも2組のOリングが、大きな内径のOリングの組よりも小さな内径を有する小さな内径のOリングの組を含む、請求項10に記載の歯科用装置。
【請求項12】
前記小さな内径のOリングの組が、前記針を前記モジュール式流体送達コネクターの前記内部ハウジングに密封するように構成されている、請求項11に記載の歯科用装置。
【請求項13】
前記大きな内径のOリングの組が、前記内部ハウジングのモジュール式流体送達コネクターおよび前記モジュール式流体送達コネクターの外部ハウジングを密封するように構成されている、請求項11に記載の歯科用装置。
【請求項14】
前記玉軸受けアセンブリが、前記内部および外部ハウジングを心合わせして、それらを互いの周囲で自由に回転させるために用いられる、請求項10に記載の歯科用装置。
【請求項15】
前記外部ハウジングが、前記流体を前記外部ハウジングのルアーロックから、そしてその後、内部ハウジングに送達させる前記ルアーロック式の接続を含む、請求項10に記載の歯科用装置。
【請求項16】
前記内部ハウジングが、前記洗浄針内の前記複数の開口部を通して加圧された流体を送達するように構成された流体チャンバーをさらに含む、請求項10に記載の歯科用装置。
【請求項17】
前記中空針が、前記モジュール式流体送達コネクターの前記内部ハウジング内で前記小さな内径のOリングを受け入れるように構成された溝を含む、請求項11に記載の歯科用装置。
【請求項18】
前記モジュール式流体送達コネクターが、ステンレス鋼金属、プラスチック、またはそれらの組み合わせから作製されている、請求項4に記載の歯科用装置。
【請求項19】
前記コネクター部が、バーブドコネクターである場合、前記中空針が、振動針である、請求項3に記載の歯科用装置。
【請求項20】
前記洗浄針の前記作業部が、直線状フィン、らせん状フィン、多数のポート、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の歯科用装置。
【請求項21】
前記作業部が、ブラシを含む、請求項1に記載の歯科用装置。
【請求項22】
前記洗浄針の前記作業部が、針の軸からずれて、概ねC形になっている、請求項1に記載の歯科用装置。
【請求項23】
前記洗浄針の前記作業部が、二次元空間内で前記針からずれている、請求項22に記載の歯科用装置。
【請求項24】
前記作業部が、少なくとも2つの異なる平面において前記針の軸から延在する、請求項22に記載の歯科用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2019年2月25日出願の米国特許仮出願第62/809,899号への利益および優先権を主張するものであり、該特許仮出願は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示は、歯内治療用途において流体を連続で送達しながら活性化させるための歯科用装置を提供する。歯科用装置は、チップエンドおよびコネクター部を有する中空針と、ハンドルと、を含む。ハンドルの一方の端部は、中空針のコネクター部に固定されるように構成される。ハンドルの反対の端部は、活性化のために歯内治療用ハンドピースまたは音波式撹拌機に取り付けることが可能である。コネクター部は、中空針のコネクター部の不可欠な部分である少なくとも1つのチューブコネクター、または中空針をコネクターに適応させるためのコネクター部の複数の開口部を含む。コネクターは、再使用され得るように針から着脱自在であるモジュール式流体送達コネクターである。
【背景技術】
【0003】
伝統的には歯内治療において、洗浄工程は、臨床医が洗浄剤(次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、Qmixほか)をシリンジ内に配置し、その後、ルアーロック式接続を介してシリンジを洗浄針に接続することにより行われる。臨床医はその後、手動でシリンジバレル内のプランジャーを押圧して、洗浄剤を洗浄針から根管内に押し出す。その後、臨床医は、音波、超音波、手動などを利用して洗浄剤を撹拌して根管内の壊死組織片の除去を容易にすることができ、加えて根管をより徹底して消毒するために洗浄剤を根管内のエリア(例えば、細管)の中に送り出す(加圧を介して)ことができる。しかし、活性化が行われながら洗浄剤が根管内に補充されるように洗浄と活性化が同時に行われればより有効であることが、より明白になっている。
【0004】
米国特許第8,215,958号には、 金属製「ステント様」設計を介して根管内で運動を適用しながら洗浄もするという方法が開示されている。この設計の問題は、ステント内の開口部が相対的に大量であり、デバイスを出る時に流体の任意の加圧が可能でないことである。その上、装置がニッケル・チタンで作製され、つまり圧縮可能であるため、このことが根管壁への装置の接触を増加させて任意の高度の撹拌を妨害する(即ち、所望より低い周波数)。この「ステント様」設計は、脆弱性を上昇させ易く、デバイスが使用の間に損傷されるようになるリスクが上昇し易い。
【0005】
米国特許出願公開第2017/0258552号および米国特許第9,492,244号には、根管の内側に配置された針を通して洗浄剤を高圧下で送達するためのシステムが記載されている。任意の型の活性化を有するが、デバイスの有効性を限定し、根管内の洗浄剤活性化の欠如に合わせてはるかに高圧の洗浄剤を必要とする針についての議論はない。
【0006】
米国特許出願公開第2018/0153644号には、根管処置の間に根管内に洗浄剤を送達および排除するための方法が開示されている。洗浄剤が根管内に送達されている時の洗浄剤の撹拌のためのいずれかの方法への言及がない。これもまた、圧力をかなり高くしなければ洗浄の効能を限定して、洗浄剤が根尖孔外に溢出し、これにより潜在的に毒性化学薬品が血流に導入されるリスクが上昇する可能性がある。
【0007】
米国特許第5,725,370号には、歯周または歯内処置のための洗浄水を用いた回転スケーラーまたはエアースケーラーで使用される歯科用チップが記載されている。このデバイス部分は、超音波周波数で機能するために金属製であり、内部で洗浄剤を送達するために中空である。その上、チップの振動が減少しなければ、チップからの超音波エネルギーが最も効果的になる。超音波周波数(>20kHz)で動作するチップが、根管壁に接触すると、チップの周波数を減少させ、加えてチップの接触がレッジを生成し、これにより小さなくぼみが根管の表面に生成されて、超音波チップに接触されると根管をさらに破壊する。
【0008】
米国特許第8,506,293号には、 根管デブリドマンのための器具と接続して用いられる洗浄針に超音波エネルギーを組み込む歯内洗浄システムが開示されている。このシステムは、少なくとも1つの溶液リザーバーを含む。リザーバーは、少なくとも1つの流体出口を有する1つまたは複数のハンドピースに接続されている。
【0009】
米国特許出願公開第2016/0067023号には、硬質プラスチック材料で作製された本体と、本体に取り付けられたねじ式スチール接続ソケットと、プラスチック製の切り詰めた菱形(truncated rhomboid)の接続ジョイントと、円筒区分を有する中空導管と、円形プラスチック接続ジョイントと、ステンレス鋼冠状カニューレと、頂端に穴の開いたNi-Tiマイクロカニューレと、からなる頂端の陰圧吸引力(negative apical suction)を有する連続超音波洗浄を用いた歯内治療のための装置が開示されている。
【0010】
米国特許第8,043,088号には、超音波式活性化(>20KHz)を有する超音波式ハンドピースに接続可能であるコントラアングルチップアセンブリを含む液化および歯根管のアコースティックデブリドマンが同時に行われる使用のためのシステムが開示されている。
【0011】
米国特許第8,235,719号および同第8,328,552号ならびに米国特許出願公開第2010/0092922号には、音波駆動式アクチベーターを含む歯内治療用ツールが開示されている。スナップオンカップラーが、このツールをドライバーに取り付けるように適合されている。ドライバーは、歯根管内で可撓性アクチベーターを音波または超音波により振動させる。該ツールは、アクチベーターを通して洗浄試薬を送達させることが可能な流体通路が設けられ得る。この構築物の設計は、洗浄剤がハンドピースを介して装置内に送達されることを伴うが、これがどのように収容されるかについてのいずれかの開示がない。
【0012】
米国特許第10,022,203号には、洗浄剤を撹拌しながら洗浄剤を送達するためのハンドピースが開示されている。この設計は、洗浄剤がハンドピースを介して装置に送達されることを示す。ハンドピースは、洗浄溶液の原液を含むリザーバーと、エンドピースを用いて洗浄溶液がリザーバーから根管内に運搬され得るポンピングおよび排出装置と、を含む。さらに、根管内に存在する洗浄溶液を撹拌するように設計されたエンドピースを運転するための撹拌装置も含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
洗浄および活性化を同時に行う歯内治療用根管処置における装置が、引き続き必要とされている。同じく、より高速の洗浄剤が根管壁に接触し、より多くの不規則な解剖学的構造に進入して、根管のより徹底した消毒を可能にするように加圧された洗浄剤を提供することが、望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示は、歯内治療用途において流体を連続で送達しながら活性化させるための歯科用装置を提供する。歯科用装置は、チップエンドおよびコネクター部を有する中空針と、ハンドルと、を含む。ハンドルの一方の端部は、中空針のコネクター部に固定されるように構成される。ハンドルの反対の端部は、活性化のために歯内治療用ハンドピースまたは音波式撹拌機に取り付けることが可能である。コネクター部は、中空針のコネクター部の不可欠な部分である少なくとも1つのチューブコネクター、または中空針をコネクターに適応させるためのコネクター部の複数の開口部を含む。コネクターは、再使用され得るように針から着脱自在であるモジュール式流体送達コネクターである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】歯内治療用ハンドピースのためのハンドルが付いた洗浄針を表す。
図2】音波式ハンドピースのためのハンドルが付いた洗浄針を表す。
図3】モジュール式流体送達コネクターが付いた洗浄針を表す。
図4A】モジュール式流体送達コネクターを実証する。
図4B】モジュール式流体送達コネクターの断面を表す。
図4C】モジュール式流体送達コネクター内の流体チャンバーの配置を表す。
図4D】外部ハウジングの雄型ルアーロック式コネクターへの雌型ルアーロック式コネクターの取り付けを表す。
図5】モジュール式流体送達コネクターの内側の洗浄針を表す。
図6A】モジュール式流体送達コネクターの内側の洗浄針を表し、矢印は小さな内径のOリングが配置された溝を指す。
図6B】モジュール式流体送達コネクターの内側の洗浄針を表し、矢印はモジュール式流体送達コネクターの内部ハウジング内で小さな内径のOリングを受け入れるように構成された溝を指す(小さな内径のOリングはない)。
図7】洗浄剤を送達するモジュール式流体送達コネクターが付いた洗浄針を表す。
図8】洗浄剤を500RPMで送達するモジュール式流体送達コネクターが付いた洗浄針を表す。
図9】洗浄剤を1000RPMで送達するモジュール式流体送達コネクターが付いた洗浄針を表す。
図10】洗浄剤を音波式撹拌機で送達するモジュール式流体送達コネクターが付いた洗浄針を表す。
図11】洗浄剤を音波式撹拌機で送達するモジュール式流体送達コネクターが付いた洗浄針を表す。
図12】模擬根管内での1000RPMおよび洗浄剤流量15ml/分で1分間の回転式洗浄針を表す。
図13】模擬根管内での1000RPMおよび連続洗浄なしで1分間の回転式洗浄針を表す(洗浄剤を開始時、30秒後、および1分後にあてて、壊死組織片を除去)。
図14】模擬根管内での15ml/分での連続洗浄および回転なしで1分間の回転式洗浄針を表す。
図15】模擬根管内での180Hzおよび洗浄剤流量14ml/分で1分間の音波式活性化針を表す。
図16】模擬根管内での180Hzおよび連続洗浄なしで1分間の音波式活性化洗浄針を表す(洗浄剤を開始時、30秒後、および1分後にあてて、壊死組織片を除去)。
図17】模擬根管内での180Hzおよび連続洗浄なしで1分間のEndoActivator Medium Tipを備えた現行のEndoActivatorを表す(洗浄剤を開始時、30秒後、および1分後にあてて、壊死組織片を除去)。
図18】音波式ハンドピースのためのハンドルの付いた振動洗浄針(非回転式)を表す。
図19】バーブドコネクター(barbed connector)のついた振動洗浄針(非回転式)を表す。
図20】直線状フィンを有する洗浄針を表す。
図21】らせん状フィンを有する洗浄針を表す。
図22】多数のポートを有する洗浄針を表す。
図23】ブラシを有する洗浄針を表す。
図24A】二次元空間内に延在するC形作業部を有する洗浄針を表す。
図24B】二次元空間内に延在するC形作業部を有する洗浄針の断面を表す。
図24C】三次元空間内に延在するC形作業部を有する洗浄針を表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の上述の態様に加え、他の態様、特色および利点を、添付の図面を参照しながら、様々な実施形態に関連して以下に記載する。
【0017】
用語「洗浄剤」および「流体」は、互換的に用いられる。
【0018】
本開示による歯科用装置は、歯内治療用途において連続洗浄および活性化の両方の機能を同時または断続的に実施するように設計されている。洗浄剤は、活性化が行われながら根管壁内に補充される。
【0019】
歯科用装置は、チップエンド(11)およびコネクター部(12)を有する中空針(1)と、ハンドル(13)と、を含む。コネクター部は、中空針のコネクター部の不可欠な部分である図19に示された少なくとも1つのチューブコネクター(191)、または図1および5に示されたコネクター部の複数の開口部(51)を含む。ハンドルの一方の端部は、中空針のコネクター部に固定されるように構成されている。一方で、ハンドルの反対の端部は、活性化のための歯内治療用ハンドピース(14a)または音波式撹拌機(14b)に取り付けることが可能である。中空針は、コネクターに接続されている。コネクターは、再使用され得るように針から着脱自在であるモジュール式流体送達コネクターである。中空針は、プラスチック、金属(超弾性または非超弾性)、または両者の複合体で構築されていてもよい。好ましくは、中空針は、実質的に、または完全にプラスチックであるが、但し必須ではない。
【0020】
中空針とそれに組み立てられた異なるハンドル構成が、図1および2に示されている。中空針(1)は、先端部(2)と、中間部(4)と、コネクター部(12)と、を含む。先端部は、0.20mm~0.50mmの範囲内の直径を有していてもよい。作業部(8)は、中間部および先端部を含む。作業部は、先細型または非先細型であってもよい。先細は、長さに沿って一定の先細または可変的先細であってもよい。先細の範囲は、0%~10%であってもよい。作業部は、チップエンド(11)で終結していて、根管の表面で作動するように構成されている。作業部(8)のための針の長さは、15mm~35mmの範囲の長さである。先端部、中間部およびコネクター部は、1つの部品として一緒に成形されている。ハンドルは、摩擦嵌め、超音波溶接、オーバーモールディング、または接着などの方法によりコネクターに固定されている。針は、コネクター部の複数の開口部(51)と、先端部の少なくとも1つの開口部(6)と、を含むことで、針を通して流体を送達させる。中空針は、コネクターに連結され、ハンドルは、活性化のためにハンドピース(回転式、往復運動式、および/または他の方式用)または音波式攪拌機に接続させることができる。
【0021】
コネクターからの流体を受け入れるための針の開口部の数は、およそ1~4の範囲内であってもよい。針の開口部は、非限定的に、円形、細長い形、または卵形をはじめとする幾何学的構造を有していてもよい。円形開口部の直径は、0.1mm~1.5mmの範囲内であってもよい。細長い形または卵形の開口部は、長さ、例えば0.1mm~1.5mmの範囲内の長さと異なる幅を有していてもよい。
【0022】
針の先端および中間エリアに沿った開口部の数は、1~10の範囲内であってもよい。針の先端および中間エリアに沿った開口部は、非限定的に、円形、細長い形、または楕円形をはじめとする幾何学的構造を有していてもよい。円形開口部の直径は、0.1mm~0.8mmの範囲内であってもよい。細長い形または卵形の開口部は、長さと異なる幅を有していてもよく、例えば長さは、0.1mm~0.8mmの範囲内であってもよい。
【0023】
装置の幾つかの実施形態において、洗浄針の作業部は、複数の直線状フィン、複数のらせん状フィン、または多数のポートを含む。
【0024】
洗浄針の一実施形態において、複数の直線状フィン(10)は、図20に示される通り、周囲の表面から中間部に沿って放射状および長手方向に延在し、先端部のチップエンドで終結していてもよい。
【0025】
洗浄針の1つの特有の実施形態において、直線状フィンは、針と同じ材料で作製されていてもよく、またはより可撓性の異なる材料でオーバーモールディングされていてもよい。
【0026】
洗浄針の一実施形態において、複数の放射状に延在するらせん状フィン(20)は、図21に示される通り、洗浄針の作業部の外面上に延在してもよい。
【0027】
洗浄針の一実施形態において、洗浄針は、作業部に沿って多数のポート(30)を有していてもよく、洗浄針内の中央通路は、図22に示される通りこれら多数のポートで流体を同時に送達する。針内に多数のポートを有することの利点は、根管の異なるエリアを同時に浄化することができ、根管内で針を上下運動させる必要がないことである。その上、根管壁により接近した洗浄ポートを有することで、根管のより徹底した浄化のために根管壁により高い流体速度および圧力を施すことができる。
【0028】
洗浄針の一実施形態において、洗浄針の作業部は、ブラシ(40)を含む。ブラシは、針の先端部の外面上に配置されている。ブラシ上の毛は、ナイロン、ポリエステル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリアセタール、または任意の他の成形可能なプラスチック、またはそれらの任意の組み合わせから作製されていてもよい。
【0029】
幾つかの実施形態において、ハンドルおよび針は両者とも、同じタイプの材料(例えば、プラスチック)で作製されて、超音波溶接、接着、ねじなどの異なる方法を介して互いに結合されていてもよい。
【0030】
本開示の1つの特有の実施形態において、針およびハンドルに作製されるプラスチック材料は、同一であってもよい。針およびハンドルは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリオキシメチレンなどの材料で射出成形されていてもよい。
【0031】
洗浄針の一実施形態において、洗浄針は、概ね軸70に沿って延在する。洗浄針の作業部は、細長い非直線状部71を含む。細長い非直線状部は、オフセット部72を含む。非直線状部の少なくとも一部は、針の軸と異なる軸に沿って延在し、それにより概ね非直線状になる。
【0032】
1つの特有の実施形態において、非直線状部は、図24Aおよび図24Bに示される通り二次元空間内に延在する。
【0033】
より詳細には一具体的実施形態において、洗浄針の作業部は、針の軸からずれて、概ねC形になっている。オフセット部は、概ね針の軸に沿った2つの場所の間に延在する非直線状部の区分を含んでいてもよい。例えばオフセット部は、非直線状部が針の軸から離れて延在し始める第一の場所と、非直線状部が針の軸に戻る第二の場所との間に延在してもよい。オフセット部は、クレストを含んでいてもよい。クレストは、針の軸から最大距離を有する、非直線状部に沿った対応するオフセット部内の最も外側のポイントであってもよい。クレストと針の軸の間の距離は、クレストの変位距離により定義されてもよい。さらにチップエンドは、針の軸70からずれたままであってもよく、または軸70に戻ってそこから延在してもよい。
【0034】
別の実施形態において、非直線状部71は、三次元空間内に延在し、即ち図24Cに示される通り多数の平面内で針の軸70からずれている。より詳細には非直線状部71は、少なくとも2つの異なる平面(例えば、コルク栓抜きのような形状)の中で針の軸から延在してもよい。非直線状部は、第一のオフセット部および第二のオフセット部を含む少なくとも1つのオフセット部を含んでいてもよく、非直線状部の第一のオフセット部および針の軸70が、第一の平面を画定し、第二のオフセット部が、第一の平面と異なる第二の平面を画定するように、第一のオフセット部および第二のオフセット部のそれぞれが、針の軸から変位している。各オフセット部は、クレストと、対応するクレスト変位を含んでいてもよい。クレスト変位は、1つのオフセット部から別のオフセット部まで減少し、オフセット部が、洗浄針のチップエンドに比較してより接近していてもよい。
【0035】
非線形部71は、針の軸70からオフセット部72に沿って約0.5mmより大きな量、好ましくは約5mm未満の量、より好ましくは約1~2mmの量、変位していてもよい。
【0036】
本開示による一実施形態において、コネクターは、モジュール式流体送達コネクターである。モジュール式流体送達コネクターは、再使用され得るように針から着脱自在である。
【0037】
図3~6は、モジュール式流体送達コネクター、およびそれと洗浄針との関連性を示す。図3は、流体を送達するための使用の間に針のコネクター部(12)の上で装置に組み立てられるモジュール式流体送達コネクター(121)を示す。具体的には図4Aは、モジュール式流体送達コネクターを表す。図4Bは、内部ハウジング(41)と、外部ハウジング(42)と、少なくとも2組のOリング(43)と、少なくとも2つの玉軸受けアセンブリ(44)と、を有するモジュール式流体送達コネクター(121)の断面を提供している。少なくとも2組のOリングは、小さな内径のOリングの組と、大きな内径のOリングの組と、を含む。小さな内径のOリングの組は、洗浄針をモジュール式流体送達コネクターの内部ハウジングに密封するように構成されている。モジュール式流体送達コネクターとその内側の針の断面である図6A(矢印は小さな内径のOリングが配置された溝(61)を指す)に表された通り、小さな内径のOリングは、洗浄針を内部ハウジングに密封する。図6Bは、中空針が、モジュール式流体送達コネクターの内部ハウジングにおいて小さな内径のOリングを受けるように構成された溝(61)を含むことを、表す。大きな内径のOリングの組は、内部ハウジングおよび外部ハウジングを密封するように構成されている。少なくとも2つの玉軸受けアセンブリは、内部および外部ハウジングを心合わせして、それらを互いの周囲で自由に回転させるために用いられる。玉軸受けは、Oリングの圧迫、および内部ハウジングと外部ハウジングの間の密封を保つための支援となる。玉軸受けが存在しない場合、内部ハウジングは、外部ハウジングに片側だけ支えられるようになり、このためOリングの圧迫が損なわれ、コネクター内での洗浄剤の漏出を引き起こす可能性がある。図4Bに示される通り、外部ハウジングは、ルアーロック式接続(45)を有し、それが洗浄剤をルアーロック式コネクターの内部から外部ハウジングへ、そしてその後、内部ハウジングへ送達させる。図4Dに示される通り、雄型ルアーロック式コネクター(47)を含む管構造は、外部ハウジングの雌型ルアーロック式コネクター(48)に取り付けられている。内部ハウジング(図4C内)は、洗浄針内の複数の開口部を通して加圧された流体を送達するように構成された流体チャンバー(46)をさらに含む。
【0038】
図5は、モジュール式流体送達コネクターの内側の洗浄針のコネクター部(12)を示す。洗浄針内の小さな穴(51)は、内部ハウジングから洗浄剤を受け入れる。ハンドル(13)は、モジュール式流体送達コネクターが中空針に組み立てられる時に、ユーザーがモジュール式流体送達コネクターをハンドルよりも高く配置することを防ぐことにより、コネクターと針を心合わせするのを支援する止め具(52)を含む。それを実行する際、内部ハウジングからのモジュール式流体送達システムの流体送達導管(53)が、針の1つまたは複数の穴(51)に心合わせされる(そして密封される)。
【0039】
歯科用装置の特定の実施形態において、モジュール式流体送達コネクターの内部および外部ハウジングは、ステンレス鋼金属もしくは射出成形プラスチック、またはそれらの組み合わせから作製されていてもよい。
【0040】
複数の実施形態において、洗浄剤をコネクターに送達する方法は、手動で、コネクターに接続された管構造に接続されたシリンジ、洗浄剤の流速がシリンジポンプにより規定され得るシリンジポンプ内のシリンジ、または該装置に接続された管構造を有するリザーバーを介することなど、複数の異なる方法であり得る。リザーバーまたはシリンジまたはシリンジポンプは、手動で、または電子的に活性化され得る。電子的に活性化される場合、流体を駆動および加圧して、該装置に所与の流速で送達するポンプまたはモーターが存在する。
【0041】
図7~9は、歯内治療用ハンドピース(14a)に接続されたモジュール式流体送達コネクターを備えた洗浄針の様々な実施例を示し、洗浄剤は洗浄針から送達される。ハンドルがISO1707-1に準じて設計され、ハンドピースがISO3964に準じて設計された標準のコネクターを用いて、ハンドルがハンドピースに接続される。モーターが入力されると、ハンドピースが活性化され、これによりは洗浄針を特定の速度で回転させる。これらの図面はまた、洗浄針が異なるRPM(図8では500RPM、図9では1000RPM)で回転している時に、洗浄剤がどのように分配されるかを示している。洗浄剤は、外部ハウジングのルアーロック式コネクターの内部からコネクターの内部ハウジングに相対的に低い圧力で送達される。内部ハウジング(図4C)は、洗浄針内の複数の開口部を通して相対的に高い圧力で加圧された流体を送達するように構成された流体チャンバー(46、小さなOリングと中空針と大きなOリングと内部ハウジングの間の空間の容積として示される)をさらに含む。回転速度が急速であるほど、洗浄針の回転軸から放射状の洗浄剤の分散が増加する。回転速度が高いほど、同じ流量の洗浄剤についてより高い流体の速度が示されることが企図される。
【0042】
図10~11は、音波撹拌機(14b)に接続されたモジュール式流体送達コネクターを備えた洗浄針の実施例を示し、洗浄剤は洗浄針から送達される。これもまた、洗浄針が約180Hzの周波数で振動している時に、洗浄剤がどのようにして分配されるかを示している(図11)。さらに、振動の周波数が高いほど、同じ流量の洗浄剤についてより高い流体の速度が示されることが企図される。
【0043】
図12~14は、壊死組織片を模擬するためにシリコーンゲルを充填された模擬根管内での異なる条件(回転と洗浄(図12)、回転のみ(図13)、および洗浄のみ(図14))で回転式洗浄針を比較している。例えば図12では、洗浄針が、シリコーンゲルを充填された模擬根管内で1000RPMおよび洗浄剤流量15mL/分で1分間回転している。図13は、模擬根管内で15ml/分および回転なしで1分間連続洗浄した回転式洗浄針を表す(洗浄剤を開始時、30秒後および1分後にあてて、壊死組織片を除去)。図14は、模擬根管内で洗浄針を回転させずに15mL/分で1分間の連続洗浄のみを行うことを示している。これら3つのシナリオを比較した結果から、洗浄と回転の組み合わせが回転のみまたは洗浄のみに比較して根管の浄化に最適であることが視覚的に示される。
【0044】
図15~16は、壊死組織片を模擬するためにシリコーンゲルを充填された模擬根管内で異なる条件(振動と洗浄(図15)、および振動のみ(図16))で振動式洗浄針を比較している。図15は、模擬根管内で180Hzおよび洗浄剤流量14ml/分で1分間の音波活性化針を表す。図16は、模擬根管内で180Hzおよび連続洗浄なしで1分間の音波活性化洗浄針を表す(洗浄剤を開始時、30秒後および1分後にあてて、壊死組織片を除去)。これら2つのシナリオを比較した結果から、洗浄および振動の組み合わせが振動のみに比較して根管の浄化に最適であることが視覚的に示される。
【0045】
図17は、模擬根管内での180Hzおよび連続洗浄なしで1分間のMidium Tipを備えた標準のEndoActivatorについての結果を示す(洗浄剤を開始時、30秒後および1分後にあてて、壊死組織片を除去)。結果から、これが、より良好な浄化のために提供された振動と洗浄を組み合わせた図15に比較して、視覚的にそれほど良好でないことが示される。
【0046】
本開示の別の実施形態において、洗浄針が振動針である場合、コネクターは、図18に示された通り外部ハウジングおよび軸受けが存在しないモジュール式流体送達コネクターである。
【0047】
本開示の一実施形態において、洗浄針が振動針である場合、コネクターは、洗浄針と一体化されたバーブドコネクター(191)である(図19に示される)。
【0048】
本開示を、1つまたは複数の実施形態を参照して記載したが、本開示の範囲を逸脱することなく、様々な変更を施し得ること、およびそれらの要素を均等物で置き換えられ得ることが、当業者に理解されよう。加えて、本開示の本質的範囲を逸脱することなく、特有の状況または材料を本開示の教示に適合させるために、多くの修正を行い得る。それゆえ、本開示は、本開示を実行するために企図される最良の態様として開示された特有の実施形態に限定されないものとし、本開示は、添付の特許請求の範囲に含まれる全ての実施形態を含むものとする。加えて、詳細な説明で確認された全ての数値は、精密な値および近似値の両者とも明白に確認されたかのように解釈される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24A
図24B
図24C
【国際調査報告】