(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-07
(54)【発明の名称】直腸および局所投与のためのゲル
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4422 20060101AFI20220331BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20220331BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220331BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220331BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220331BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220331BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20220331BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
A61K31/4422
A61K31/167
A61K9/06
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/02
A61P9/14
A61P43/00 121
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572255
(86)(22)【出願日】2019-02-25
(85)【翻訳文提出日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 RU2019000120
(87)【国際公開番号】W WO2020176004
(87)【国際公開日】2020-09-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521375209
【氏名又は名称】ノヴァメディカ リミテッド ライアビリティー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】イクサノフ、 ルスタム ムニロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ルツコ、 アレキサンドル ヨシフォヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】シスエフ、 ボリス ボリソヴィチ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB29
4C076CC01
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4C076DD09
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4C086AA01
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4C086ZA81
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4C086ZC75
4C206AA01
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4C206GA19
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4C206KA01
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4C206MA48
4C206MA76
4C206MA80
4C206NA02
4C206NA03
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4C206NA06
4C206ZA21
4C206ZA81
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、医薬に関し、主に、裂肛、痔核およびそれらに関連する医学状態の予防および/または治療ならびに痔核切除後の痛覚の低減のために意図されたゲルのベースを形成する医薬組成物、及びゲルを製造する方法を含む。とくに、本発明は、ニフェジピンおよびリドカイン塩酸塩を含むゲルの製剤および製造方法および使用に関する。技術効果は、ニフェジピン及びリドカイン塩酸塩を含むゲル製剤の製造によって達成される。各変形は、ゲル様特性を安定化させ、透明性を提供し、3年以上の特性の安定性を維持し、その使用は、痔核の臨床症状の完全な消失までの低減、裂肛の治癒、痔核切除後を含む痛みのマネージメントが可能となる。提示されたすべての発明は、産業上利用可能であり、実験室条件での試験により、実際に実施することができることが示され、医薬品産業において広く適用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直腸および局所投与のためのゲルの製造方法であって:
(a)1.0~19.0重量%のポロキサマー407と、0.01~10.0重量%のポロキサマー188と、1.0~30.0重量%の水とを混合して水溶液1を製造することと;
(b)1.5~3.2重量%のリドカイン塩酸塩を1.0~30.0重量%の水に溶解して水溶液2を製造することと;
(c)0.25~0.55重量%のニフェジピンと、0.01~34.0重量%の低分子ポリエチレングリコールとを混合して溶液3を製造することと;
(d)均質な溶液を製造するように溶液2と溶液3とを組み合わせることと;
(e)撹拌しながら、前の工程で得られた溶液と溶液1とを組み合わせることと;
(f)前の工程で製造された混合物に、0.01~0.072重量%のメチルパラベン(ニパギン)および0.01~0.032重量%のプロピルパラベン(ニパゾール)を加えることと;
(g)前の工程で製造された混合物に1.0~19.0重量%のポロキサマー407を加え、均質になるまで撹拌することと;
(h)前の工程で製造された混合物にpH調整剤を加えてpH値を調整することと、
を含み、
工程(a)~(h)の各工程は、均質なかたまりが得られるように、少なくとも5分間激しく撹拌しながら行われ;
工程(a)は、8~17℃の温度、10~99kPaの圧力で、光への曝露なしに行われ;工程(b)および(c)は、18~25℃の温度で行われ;工程(g)および(e)は、8~17℃の温度で行われ;
工程(h)において、混合物のpH値は3.5~7.5の範囲の値に調整され;
ニパギンおよびニパゾールを加える工程(f)は、工程(b)より前に行ってもよく;
前記方法により得られるゲルの粘度は3~75Pa・sの範囲である、
方法。
【請求項2】
工程(e)中に、または工程(g)より前に、0.01~10.0重量%の低分子ポリエチレングリコールを溶液または混合物に加えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
低分子ポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール400およびポリエチレングリコール600から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
pH調整剤が、水酸化ナトリウムおよび塩酸から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ゲルの製造の工程(a)~(h)を行う合計時間が4~6時間以下であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
製造されたゲルの品質をチェックする工程(i)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程(i)が、以下のパラメータの全体の少なくとも1つの測定を含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法:
-リドカイン塩酸塩の含有量が0.25~0.55%であり、ニフェジピンの含有量が1.5~3.2%である;
-同定されたリドカイン不純物の含有量が0.1%以下である;
-同定されたニフェジピン不純物の含有量の合計が2.5%以下である;
-単一の同定不可能な不純物の含有量が0.2%以下である;
-製造されたゲルの粒径が100ミクロン以下である;
-pHが3.5~7.5の範囲である;
-ゲル粘度が3~75Pa・sの範囲である;
-微生物学的純度が、公式薬局方の有効な版による非殺菌医薬品のカテゴリーに相当する。
【請求項8】
直腸および局所投与のためのゲルであって、裂肛、痔核および関連疾患の予防および/または治療、痔核切除後の痛覚の低減を提供し、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法によって製造され、ニフェジピン、リドカイン塩酸塩、ポロキサマー188、低分子ポリエチレングリコール、ニパギン、ニパゾール、ポロキサマー407、pH調整剤および精製水を、重量%で下記の成分比で含む、ゲル。
ニフェジピン 0.25~0.55
リドカイン塩酸塩 1.5~3.2
ポロキサマー407 1.0~19.0
ポロキサマー188 0.01~10.0
低分子ポリエチレングリコール 0.01~34.0
ニパギン 0.01~0.072
ニパゾール 0.01~0.032
pH調整剤 pH3.5~7.5となるように
精製水 100.0となるように
【請求項9】
低分子ポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール400またはポリエチレングリコール600であることを特徴とする、請求項8に記載のゲル。
【請求項10】
pH調整剤が、水酸化ナトリウムおよび塩酸から選択されることを特徴とする、請求項8に記載のゲル。
【請求項11】
ゲルが、最終医薬製品1g当たり下記の成分比を有することを特徴とする、請求項8に記載のゲル。
リドカイン塩酸塩水和物 0.0213g
ニフェジピン 0.0030g
ポロキサマー188 0.0500g
ポロキサマー407 0.1750g
ポリエチレングリコール400 0.3000g
ニパギン 0.0007g
ニパゾール 0.0003g
水酸化ナトリウムまたは塩酸 pH7.0となるように
精製水 1.0gとなるように
【請求項12】
痔核の臨床症状を完全に消失するまで低減させ、裂肛を治癒させ、痔核切除後の疼痛症候群を低減させるための、請求項8~11のいずれか1項に記載のゲルの使用。
【請求項13】
直腸および局所投与のためのゲルの製造方法であって:
(i)1.0~19.0重量%のポロキサマー407と、0.01~10.0重量%のポロキサマー188と、1.0~30.0重量%の水とを混合して水溶液1を製造することと;
(ii)1.5~3.2重量%のリドカイン塩酸塩を1.0~30.0重量%の水に溶解して水溶液2を製造することと;
(iii)0.25~0.55重量%のニフェジピンと、0.01~34.0重量%の低分子ポリエチレングリコールとを混合して溶液3を製造することと;
(iv)均質な溶液を得るように、溶液2と、溶液3と、0.01~0.072重量%のメチルパラベン(ニパギン)および0.01~0.032重量%のプロピルパラベン(ニパゾール)とを組み合わせることと;
(v)撹拌しながら、前の工程で得られた溶液と溶液1とを組み合わせることと;
(vi)前の工程で製造された混合物に1.0~19.0重量%ポロキサマー407を加え、さらに、均質になるまで撹拌することと;
(vii)前の工程で製造された混合物にpH調整剤を加えてpH値を調整することと、
を含み、
工程(i)~(vii)の各工程は、均質なかたまりが得られるように、少なくとも5分間激しく撹拌しながら行われ;
工程(i)は、8~17℃の温度、大気圧より1~80%低い圧力で、光への曝露なしに行われ;工程(ii)および(iii)は、18~25℃の温度で行われ;工程(iv)および(v)は、8~17℃の温度で行われ;
工程(vi)において、pH値は3.5~7.5の範囲の値に調整され;
最終ゲル粘度は3~75Pa・sの範囲である、
方法。
【請求項14】
低分子ポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール400およびポリエチレングリコール600から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
pH調整剤が、水酸化ナトリウムおよび塩酸から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ゲルの製造の工程(i)~(vii)を行う全時間が4~6時間以下であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
製造されたゲルの品質をチェックする工程(viii)をさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
工程(vii)が、以下のパラメータの全体の少なくとも一つの測定を含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法:
-リドカイン塩酸塩の含有量が0.25~0.55%であり、ニフェジピンの含有量が1.5~3.2%である;
-同定されたリドカイン不純物の含有量が0.1%以下である;
-同定されたニフェジピン不純物の含有量が2.5%以下である;
-単一の同定不可能な不純物の含有量が0.2%以下である;
-製造されたゲルの粒径が100ミクロン以下である;
-pHが3.5~7.5の範囲である;
-ゲル粘度が3~75Pa・sの範囲である;
-微生物学的純度が、公式薬局方の有効な版による非殺菌医薬品のカテゴリーに相当する。
【請求項19】
直腸および局所投与のためのゲルであって、裂肛および痔核、並びに関連疾患の予防および/または治療、痔核切除後の痛覚の低減を提供し、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法によって製造され、ニフェジピン、リドカイン塩酸塩、ポロキサマー188、低分子ポリエチレングリコール、ニパギン、ニパゾール、ポロキサマー407、pH調整剤、および精製水を、重量%で下記の成分比で含む、ゲル。
ニフェジピン 0.25~0.55
リドカイン塩酸塩 1.5~3.2
ポロキサマー407 1.0~19.0
ポロキサマー188 0.01~10.0
低分子ポリエチレングリコール 0.01~34.0
ニパギン 0.01~0.072
ニパゾール 0.01~0.032
pH調整剤 pH3.5~7.5となるように
精製水 100.0となるように
【請求項20】
低分子ポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール400またはポリエチレングリコール600であることを特徴とする、請求項19に記載のゲル。
【請求項21】
pH調整剤が、水酸化ナトリウムおよび塩酸から選択されることを特徴とする、請求項19に記載のゲル。
【請求項22】
ゲルが、最終医薬製品1g当たり下記の成分比を有することを特徴とする、請求項19に記載のゲル。
リドカイン塩酸塩水和物 0.0213g
ニフェジピン 0.0030g
ポロキサマー188 0.0500g
ポロキサマー407 0.1750g
ポリエチレングリコール400 0.3000g
ニパギン 0.0007g
ニパゾール 0.0003g
水酸化ナトリウムまたは塩酸 pH7.0となるように
精製水 1.0gとなるように
【請求項23】
痔核の臨床症状を完全に消失するまで低減させ、裂肛を治癒させ、痔核切除後の疼痛症候群を低減させるための、請求項19~22のいずれか1項に記載のゲルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野に関し、特に、直腸および局所投与のために意図されたゲルのためのベースを形成する医薬組成物、ならびに痔核および裂肛の治療に使用するために意図された前記ゲルの製造方法に関する。提案される発明に用いられる主な活性物質はニフェジピンおよびリドカイン塩酸塩である。
【背景技術】
【0002】
医薬における実際の傾向の1つは、ゲル、軟膏、エマルションなどの脂肪ベースの薬物などの、直腸および局所投与のための新しい医薬品の開発である。
【0003】
局所投与のための軟膏またはエマルションの形態で提示される脂肪ベースの医薬品が当該分野で知られ、このなかには、ニフェジピンを含むものがある[1-3]。
【0004】
この点を目指した研究が現在続けられている。このように、ニフェジピンの作用機序により、血管弛緩活性を必要とする種々の疾患の治療にそれを使用することが可能となり、例えば、肛門科においても使用することができる[4、5]。
【0005】
ニフェジピンはカルシウム拮抗薬であり、カルシウムイオンの細胞内への輸送を阻害することにより、肛門括約筋の緊張を低下させる。痔核および裂肛の患者では、肛門括約筋の痙縮を低減することが痛覚を低減するための主要な方法である[6]。ニフェジピンの薬理活性は、また、炎症反応強度の低減を調整し[7]、微小循環に対する調節効果を有し[8]、肛門管粘膜における欠損の発生を予防する[9]。
【0006】
ゲル、軟膏、懸濁剤として提供される医薬品の利点は、それらの持続作用、湿潤効果の存在、および使用における便利さを含む。例えば、ゲルは、皮膚に適用される場合、軟膏とは対照的に、水によって容易に洗い流され、このような場合に医薬品の種類を選択する際にゲルを選択することを可能にする[10]。
【0007】
裂肛を治療するための医薬組成物が、当技術分野で公知であり[11]、これは、基剤、平滑筋の痙攣を低減させる薬剤、およびリドカインを含み、ここで、基剤は、チタングリセロソルベートアクア錯体であり、平滑筋の痙攣を低減させる薬剤は、ニフェジピンまたはニトログリセリンであり、組成物成分は、グラムでの一定の比率で含有される。その発明は、低減された活性物質の濃度で効果的な治療を提供し、副作用を低減し、治療期間を短縮する。
【0008】
裂肛の原因は、便秘による損傷などの肛門管壁の損傷であることが知られている。そのため、予防および治療を行う際には、下剤および0.2%ニトログリセリン軟膏が一般的に使用される。この軟膏は現在、裂肛の保存的治療のための重要な成分と考えられており、その理由は、ニトログリセリンが肛門括約筋を弛緩させ、それにより、痙攣を取り除くためであり、痙攣は、虚血、すなわち血流障害をもたらすことから裂肛発生の病原因子である。しかし、ニトログリセリン軟膏を使用する場合、高用量で使用すると、全身の血流に入り、頭痛やめまいを引き起こす可能性があるため、少量のみを塗布すべきである[12]。
【0009】
カルシウム拮抗薬の使用も当技術分野で知られており、例えば、ニフェジピン、ジルチアゼム、または他の薬剤等で、心臓疾患の治療に使用され、最近、裂肛の治療に適用可能であることが見出され、それらの作用原理はニトログリセリン軟膏のそれと同じであり、肛門括約筋の痙攣を除去する[12]。
【0010】
ニフェジピンを直腸および局所投与のためのゲル製剤に使用する場合、活性物質としてのニフェジピンの疎水性挙動のために、水性媒体中のニフェジピン含有医薬組成物の調製は、水性媒体中でのニフェジピンの溶解に起因するある種の特異性を有するという事実を考慮する必要がある。
【0011】
水性媒体にニフェジピンを溶解する方法、およびニフェジピン水溶液を含む医薬組成物が当技術分野で公知であり[13]、この方法は、ニフェジピン、ポロキサマー407、マクロゴール400、ポロキサマー188を含む水溶液を20~37℃の範囲の温度で調製することを含み、0.8~4.0mg/gの濃度へのニフェジピンの溶解を確実にする。
【0012】
[13]に開示されている方法および対応する医薬組成物の処方は、裂肛、痔核の予防および治療、ならびにこれらの疾患に伴う痛覚の低減が意図される、ニフェジピンおよびリドカイン塩酸塩を主要活性物質として含むゲルの製造方法の変形および同ゲルの変形を開発するためのベースとして考えられた(特許RU2641570、[14])。
【発明の概要】
【0013】
従って、特許RU2641570による、ニフェジピン、リドカイン、ポロキサマー407、マクロゴール400、ポロキサマー188を含むゲルの製造方法、およびその方法によって製造されたゲルは、その本質的特徴の全体において、本発明で提案されたゲルおよびその製造方法に最も近いものであり、最も近い先行技術と考えることができる。
【0014】
最も近い先行技術の欠点には以下が含まれる。
-ゲルの製造方法における多数の添加剤の複雑さおよび使用;
-Cekol 2000TまたはCarbopol Ultrez 10などの増粘剤および/または安定化剤が組成物中に使用されることを考慮しても、組成物の比較的低い安定性。
【0015】
さらなる臨床研究により、処方と量の両方で、他のゲル形成アジュバントの使用により治療結果が得られ得ることが示された。
【0016】
達成される特性の安定性、透明性、2年を超える(3年以上)期間の安定性の維持を提供し、また、裂肛または痔核が存在する場合、それらの完全な消失までの疼痛症状の低減を確実にし、様々な段階で裂肛の治癒を促進し、痔核切除後の疼痛などの疼痛を緩和し、アジュバントの含有量が原型より少なく、水性媒体中の活性物質の溶解によって必要な生物学的利用能が提供されるであろう医薬品の方法および処方を開発する必要性がある。
【0017】
本発明の目的は、ニフェジピンおよびリドカイン塩酸塩を活性物質として含むゲル組成物を製造することであり、それらの各変形は、安定なゲル様特性、透明性、2年を超える特性の安定性の維持を提供し、それらの使用は、痔核の臨床症状の完全な消失までの低減、裂肛の治癒、痔核切除後を含む疼痛症候群の低減を確実にすることを可能にし、活性物質およびアジュバントの両方の含有量が最適であり、水性媒体に活性物質を溶解することによって必要な生物学的利用能が確保される。
【0018】
本発明のさらなる目的は、ニフェジピンおよびリドカイン塩酸塩を含むゲルの製造方法であって、水性媒体中に活性物質を溶解することによって必要な生物学的利用能が確保され、増粘剤および/または安定化剤を使用することなく最終ゲルの安定なゲル様特性を提供し、組成物の安定性を高めることができる、方法を開発することである。
【0019】
本発明群によって達成される技術的効果は、医薬品の薬理学的特性を維持しつつ、ゲル様特性の安定性および透明性を改善することである。
【0020】
上記目的および技術的効果は、直腸および局所投与のためのゲルの製造方法であって、
(a)1.0~19.0重量%のポロキサマー407と、0.01~10.0重量%のポロキサマー188と、1.0~30.0重量%の水とを混合して水溶液1を製造すること;
(b)1.5~3.2重量%のリドカイン塩酸塩を1.0~30.0重量%の水に溶解して水溶液2を製造することと;
(c)0.25~0.55重量%のニフェジピンと、0.01~34.0重量%の低分子ポリエチレングリコールとを混合して溶液3を製造することと;
(d)均質な溶液を製造するように、溶液2と溶液3とを組み合わせることと;
(e)撹拌しながら、前の工程で得られた溶液と溶液1とを組み合わせることと;
(f)前の工程で製造された混合物に、0.01~0.072重量%のメチルパラベン(ニパギン)および0.01~0.032重量%のプロピルパラベン(ニパゾール)を加えることと;
(g)前の工程で製造された混合物に1.0~19.0重量%のポロキサマー407を加え、均質になるまで撹拌することと、
(h)前の工程で製造された混合物にpH調整剤を加えてpH値を調整することと、
を含み、
工程(a)~(h)の各工程は、均質なかたまり(homogenous mass)が得られるように、少なくとも5分間激しく撹拌しながら行われ;
工程(a)は、8~17℃の温度、10~99kPaの圧力で、光への曝露なしに行われ;工程(b)および(c)は、18~25℃の温度で行われ;工程(d)および(e)は、8~17℃の温度で行われ;
工程(h)において、混合物のpH値は3.5~7.5の範囲の値に調整され;
ニパギンおよびニパゾールを加える工程(f)は、工程(b)より前に行ってもよく;
このようにして製造されるゲルの粘度は、3~75Pa・sの範囲である、
方法によって達成される。
【0021】
好ましい実施形態によれば、上述の技術的効果は、以下によっても達成される。
-工程(e)中に、または工程(g)より前に、0.01~10.0重量%の低分子ポリエチレングリコールを混合物に加える;
-低分子ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール400およびポリエチレングリコール600から選択される;
-pH調整剤は、水酸化ナトリウムおよび塩酸から選択される;
-ゲルの製造の工程(a)~(h)を行う合計時間は4~6時間以下である;
-方法は、製造されたゲルの品質をチェックする工程(i)をさらに含む;
-工程(i)は、以下の全体の少なくとも1つの測定を含む:
・リドカイン塩酸塩の含有量が0.25~0.55%であり、ニフェジピンの含有量が1.5~3.2%である;
・同定されたリドカイン不純物の含有量が0.1%以下である;
・同定されたニフェジピン不純物の含有量の合計が2.5%以下である;
・単一の同定不可能な不純物の含有量が0.2%以下である;
・製造されたゲル成分の粒径が100ミクロン以下である;
・pH値が3.5~7.5の範囲である;
・ゲル粘度が3~75Pa・sである;
・微生物学的純度が、公式薬局方(State Pharmacepeia)の有効なエディションによる非殺菌医薬品のカテゴリーに相当する。
【0022】
目的および技術的効果は、また、直腸および局所投与のためのゲルであって、裂肛、痔核および関連疾患の予防および/または治療、痔核切除後の痛覚の低減を提供し、上記に記載の方法で製造され、ニフェジピン、リドカイン塩酸塩、ポロキサマー188、低分子ポリエチレングリコール、ニパギン、ニパゾール、ポロキサマー407、pH調整剤及び精製水を、重量%で下記の成分比で含む、ゲルの開発により、達成される。
ニフェジピン 0.25~0.55
リドカイン塩酸塩 1.5~3.2
ポロキサマー407 1.0~19.0
ポロキサマー188 0.01~10.0
低分子ポリエチレングリコール 0.01~34.0
ニパギン 0.01~0.072
ニパゾール 0.01~0.032
pH調整剤 pH3.5~7.5となるように
精製水 100.0となるように
【0023】
好ましい実施形態によれば、上述の技術的効果は、以下によっても達成される。
-低分子ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール400およびポリエチレングリコール600から選択される;
-pH調整剤は、水酸化ナトリウムおよび塩酸から選択される;
-ゲルは、最終医薬製品1g当たり下記の成分比を有する。
リドカイン塩酸塩水和物 0.0213g
ニフェジピン 0.0030g
ポロキサマー188 0.0500g
ポロキサマー407 0.1750g
ポリエチレングリコール400 0.3000g
ニパギン 0.0007g
ニパゾール 0.0003g
水酸化ナトリウムまたは塩酸 pH7.0となるように
精製水 1.0gとなるように
【0024】
目的および技術的効果は、また、痔核の臨床症状を完全に消失するまで低減させ、裂肛を治癒させ、痔核切除後の疼痛症候群を低減させるための上記ゲルの投与によっても、達成する。
【0025】
目的および技術的効果は、また、直腸および局所投与のためのゲルの製造方法であって:
(i)1.0~19.0重量%のポロキサマー407と、0.01~10.0重量%のポロキサマー188と、1.0~30.0重量%の水とを混合して水溶液1を製造することと;
(ii)1.5~3.2重量%のリドカイン塩酸塩を1.0~30.0重量%の水に溶解して水溶液2を製造することと;
(iii)0.25~0.55重量%のニフェジピンと、0.01~34.0重量%の低分子ポリエチレングリコールとを混合して溶液3を製造することと;
(iv)均質な溶液を製造するように、溶液2と、溶液3と、0.01~0.072重量%のメチルパラベン(ニパギン)および0.01~0.032重量%のプロピルパラベン(ニパゾール)とを組み合わせることと;
(v)撹拌しながら、前の工程で製造された溶液と溶液1とを組み合わせることと;
(vi)前の工程で製造された混合物に1.0~19.0重量%のポロキサマー407を加え、続いて、均質になるまで撹拌することと;
(vii)前の工程で製造された混合物にpH調整剤を加えてpH値を調整することと、を含み、
工程(i)~(vii)の各工程は、均質なかたまりが得られるように、少なくとも5分間激しく撹拌しながら行われ;
工程(i)は、8~17℃の温度、大気圧より1~80%低い圧力で、光への曝露なしに行われ;工程(ii)および(iii)は、18~25℃の温度で行われ;工程(iv)および(v)は、8~17℃の温度で行われ;
工程(vi)において、混合物のpH値は3.5~7.5の範囲の値に調整され;
この方法により得られるゲルの粘度値は、3~75Pa・sの範囲である、
方法によって達成される。
【0026】
好ましい実施形態によれば、上述の技術的効果は、以下によっても達成される。
-低分子ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール400およびポリエチレングリコール600から選択される;
-pH調整剤は、水酸化ナトリウムおよび塩酸から選択される;
-ゲル製造工程(i)~(vii)を行う合計時間が4~6時間以下である;
-方法は、製造されたゲルの品質をチェックする工程(viii)をさらに含む;
-工程(viii)は、以下の全体の少なくとも1つの測定を含む:
・リドカイン塩酸塩の含有量が0.25~0.55%であり、ニフェジピンの含有量が1.5~3.2%である;
・同定されたリドカイン不純物の含有量が0.1%以下である;
・同定されたニフェジピン不純物の含有量の合計が2.5%以下である;
・単一の同定不可能な不純物の含有量が0.2%以下である;
・製造されたゲル成分の粒径が100ミクロン以下である;
・pH値が3.5~7.5の範囲である;
・ゲル粘度が3~75Pa・sである;
・微生物学的純度は、公式薬局方の有効な版による非殺菌医薬品のカテゴリーに相当する。
【0027】
目的および技術的効果は、直腸および局所投与のためゲルであって、裂肛、痔核およびそれらに関連する疾患の予防および/または治療、痔核切除術後の痛覚の低減を提供し、上記方法で製造され、ニフェジピン、リドカイン塩酸塩、ポロキサマー188、低分子ポリエチレングリコール、ニパギン、ニパゾール、ポロキサマー407、pH調整剤および精製水を、重量%で下記の成分比で含む、ゲルの開発によっても達成される。
ニフェジピン 0.25-0.55
リドカイン塩酸塩 1.5-3.2
ポロキサマー407 1.0-19.0
ポロキサマー188 0.01-10.0
低分子ポリエチレングリコール 0.01-34.0
ニパギン 0.01-0.072
ニパゾール 0.01-0.032
pH調整剤 pH3.5~7.5となるように
精製水 100.0となるように
【0028】
好ましい実施形態によれば、上述の技術的効果は、以下によっても達成される。
-低分子ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール400およびポリエチレングリコール600から選択される;
-pH調整剤は、水酸化ナトリウムおよび塩酸からから選択される;
-ゲルは、最終医薬製品1g当たり下記の成分比を有する。
リドカイン塩酸塩水和物 0.0213g
ニフェジピン 0.0030g
ポロキサマー188 0.0500g
ポロキサマー407 0.1750g
ポリエチレングリコール400 0.3000g
ニパギン 0.0007g
ニパゾール 0.0003g
水酸化ナトリウムまたは塩酸 pH7.0となるように
精製水 1.0gとなるように
【0029】
目的および技術的効果は、上記のゲルを、痔核の臨床症状を完全に消失するまで低減させ、裂肛を治癒させ、痔核切除後の疼痛症候群を低減させるために、使用することによっても達成される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
直腸および局所投与のためゲルの製造方法は、ポロキサマー407およびポロキサマー188を水と混合して水溶液No.1を製造することを含む。次に、リドカイン塩酸塩を水に溶かして溶液No.2を調製する。次に、ニフェジピンと低分子ポリエチレングリコールとを混合して混合物No.3を調製する。次に、製造された溶液を組み合わせる-溶液No.2と溶液No.3とを組み合わせ;そして、製造された均質な溶液を、撹拌しながら、溶液No.1と組み合わせる。混合操作は、均質なかたまりが得られるように、磁気ミキサーまたはオーバーヘッドミキサー中で、または粘性液体用ミキサー中で、5分間以上行われる。均質化は、15℃以下の温度で、10~99kPaの真空中で行う。均質な混合物を製造した後、ニパギン、ニパゾール、および残りの量のポロキサマー407を加え、均質になるまで撹拌する。ニパギンおよびニパゾールは、溶液No.1に、溶液No.1を溶液No.2およびNo.3を組み合わせた液と組み合わせる前、または、溶液No.2およびNo.3とともに、加えてもよい。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、溶液1を製造する工程は、8~17℃の温度、10~99kPaの圧力で、光への曝露なしに(または、暗色ガラス製容器内で)行われる。本発明者らが予想外に見出したように、この技術的解決策は、気泡含有量を減少させることを可能にし、その結果、空気酸素の不存在および酸化還元反応の電位低下に起因してシステム安定性を向上させる。溶液2および3は、18~25℃の範囲の温度で調製される。これらの溶液は8~17℃の温度で混合される。
【0032】
最終混合物(ゲル)を製造する際に、水酸化ナトリウムまたは塩酸の水溶液を用い、8~17℃の温度範囲でpH値を3.5~7.5に調整する。これを行いながら、製品の粘度をモニターするが、製品の粘度は、3~75Pa・sの範囲であるべきである。
【0033】
提案された実施形態における直腸および局所投与のための提案されたゲルは、慢性裂肛および外痔核の症状を除去し、痔核切除術後の痛覚を低減するために非常に有効である。
【0034】
提案された技術はゲル組成物の安定性を改善でき、増粘剤や安定化剤を必要としない。
【0035】
本発明のゲルを製造する際には、ポロキサマー407の代わりに、等価なブロック共重合体である、ポリオキシエチレンブロックの含有量が20~40重量%以下であるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのブロック共重合体(プロキサノール(proxanols))を用いてもよい。
【0036】
本発明のゲル製造方法と、最も近い先行技術または特許RU2606858に開示された方法との間には、著しい差が存在することに留意されたい。対応する中間体ポロキサマー化合物が熱可逆構造であること、すなわちある温度でサーモトロピック相転移を示すことにより、ポロキサマーの中間生成物の粘度を低下させるために、その温度でのゲルは、ポロキサマーミセルネットワークであり、8℃から17℃の範囲の温度レジメンを維持することにより、単純な液体ミセル懸濁液に変換される。これにより、製造工程に要する時間を大幅に短縮(4~6時間に)することが可能となり、まずミセル懸濁液を製造することにより、製造されたゲルのレオロジー構造を改善することができ、その結果、ゲルの脱ガスをより速く行うことが可能となり、より安定なゲル形態の製造が可能となり、最も重要な点として、プロトタイプと比較してゲルの安定性が向上する。使用された成分は、ゲル構造の完全なバランスがとれるまではpH変化に鈍感であるので、包装されていない最終ゲルについて直接的に最終中和することが選択され、全ての中間pH調整は除外される。これにより、製造プロセスの時間が大幅に短縮される(3~5時間)。
【実施例】
【0037】
以下では、例示的な実施形態について説明するが、これらの実施形態は、本発明のすべての可能な実施形態を含むものではなく、請求項に係る発明を限定するものではない。
【0038】
本発明の例示的な実施形態およびその実施
例1
直腸および局所投与のためのゲルの製造方法は、0.7重量%のポロキサマー407と、0.01重量%のポロキサマー188と、1.0重量%の水とを混合して水溶液No.1を製造することを含む。次に、1.5重量%のリドカイン塩酸塩を1.0重量%の水に溶解して溶液No.2を調製する。そして、0.25重量%のニフェジピンと0.01重量%のポリエチレングリコール400とを混合して混合物No.3を調製する。次いで、溶液No.2を溶液No.3と組み合わせ、これにより均質な溶液が得られ、これを溶液No.1と撹拌しながら組み合わせる。すべての混合操作は、均質なかたまりが得られるように、15分間、オーバーヘッドミキサー中で行われる。0.01重量%のニパギンおよび0.01重量%のニパゾールの混合物と、残りの量のポロキサマー407(0.3重量%)とを、撹拌しながら、溶液No.2およびNo.3を組み合わせたものに加える。
【0039】
溶液No.1の製造は、8℃の温度、大気圧より低い圧力(99.0kPa)で、無光で行われる。溶液No.2及びNo.3は、18℃の温度で調製される。溶液は8℃の温度で混合される。
【0040】
最終溶液(ゲル)を製造した後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて温度8℃でpH値を4.5に調整する。これを行いながら、製品の粘度をモニターするが、粘度は、3~75Pa・sの範囲であるべきである。
【0041】
上記方法により製造されたゲルの例を表1に示す。
【0042】
【0043】
例2
直腸および局所投与用ゲルの製造方法は、12.0重量%のポロキサマー407と、10.0重量%のポロキサマー188と、30.0重量%の水とを混合して水溶液No.1を製造することを含む。次に、3.2重量%のリドカイン塩酸塩を30.0重量%の水に溶解して溶液No.2を調製する。そして、0.55重量%のニフェジピンと34.0重量%のポリエチレングリコール400とを混合して混合物No.3を調製する。次いで、溶液No.2と溶液No.3とを組み合わせ、これにより均質な溶液を製造し、これを溶液No.1と撹拌しながら組み合わせる。全ての混合操作は、均質なかたまりが得られるように、5分間、磁気ミキサー中で撹拌しながら行われる。0.072重量%のニパギンおよび0.03重量%のニパゾールの混合物と、残りの量のポロキサマー407(0.5重量%)とを、撹拌しながら、溶液No.2およびNo.3を組み合わせたものに加える。
【0044】
溶液No.1液の調製の操作は、17℃の温度、大気圧より低い圧力(80kPa)で、光への曝露なし(暗色ガラス製容器内)で行う。溶液No.2およびNo.3は、25℃の温度で調製される。溶液は17℃の温度で混合される。
【0045】
最終溶液(ゲル)を製造した後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて温度17℃でpH値を7.5に調整する。これを行いながら、製品粘度をモニターするが、粘度は、3~75Pa・sの範囲であるべきである。
【0046】
上記方法により製造されたゲルの例を表2に示す。
【0047】
【0048】
例3 ゲルの製造
直腸および局所投与用ゲルの製造方法は、7.0重量%のポロキサマー407と、5.0重量%のポロキサマー188と、25.0重量%の水とを混合して水溶液No.1を製造することを含む。次いで、0.03重量%のニパギンおよび0.02重量%のニパゾールの混合物を溶液No.1に加える。次に、3.2重量%のリドカイン塩酸塩を15.0重量%の水に溶解して溶液2を調製する。そして、0.55重量%のニフェジピンと17.0重量%ポリエチレングリコール400とを混合して混合物No.3を調製する。次いで、溶液No.2を溶液No.3と組み合わせ、均質な溶液を形成し、これを、ニパギンおよびニパゾールを含む溶液No.1と撹拌しながら組み合わせる。全ての混合操作は、均質なかたまりが得られるように、15分間、粘性液体用ミキサーで撹拌しながら行われる。ポロキサマー407の残量(0.3重量%)を撹拌しながら製造された溶液に加える。
【0049】
溶液No.1の製造の操作は、12℃の温度、10.0kPaの圧力で、光への曝露なしに行う。溶液No.2およびNo.3は20℃の温度で調製される。溶液は12℃の温度で混合される。
【0050】
最終溶液(ゲル)を製造した後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて温度12℃でpH値を6.5に調整する。これを行いながら、製品粘度をモニターするが、粘度は、3~75Pa・sの範囲であるべきである。
【0051】
上記方法により製造されたゲルの例を表3に示す。
【0052】
【0053】
例4
直腸および局所投与用ゲルの製造方法は、10.5重量%のポロキサマー407と、5.0重量%のポロキサマー188と、35.0重量%の水とを混合して水溶液No.1を製造することを含む。次に、3.2重量%のリドカイン塩酸塩を15.0重量%の水に溶解して溶液2を調製する。そして、0.40重量%のニフェジピンと17.0重量%のポリエチレングリコール600とを混合して混合物No.3を調製する。次いで、溶液No.2を溶液No.3と組み合わせ、均質な溶液を形成し、これを、溶液No.1と撹拌しながら組み合わせる。全ての混合操作は、均質なかたまりが得られるように、15分間、粘性液体用ミキサー中で撹拌しながら行われる。0.05重量%のニパギンおよび0.032重量%のニパゾールの混合物と、残りの量のポロキサマー407(4.5重量%)とを、撹拌しながら、製造された均質な混合物に加える。
【0054】
溶液No.1の製造の操作は、15℃の温度、50.0kPaの圧力で、光への曝露なしに行う。溶液No.2およびNo.3は22℃の温度で調製される。溶液は15℃の温度で混合される。
【0055】
最終溶液(ゲル)を製造した後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて8℃~17℃の温度でpH値を7.5に調整する。これを行いながら、製品粘度をモニターするが、粘度は3~75Pa・sの範囲であるべきである。
【0056】
上記方法により製造されたゲルの例を表4に示す。
【0057】
【0058】
例5 製造されたゲルの安定性の検討
提案された製剤の安定期間の延長は、表5に示すデータ(5回の平均測定値)によって確認される。
【0059】
【0060】
このように、提案された方法は、プロトタイプとは対照的に、関連不純物の含有量およびリドカインとニフェジピンの量は変化せず、不純物を許容限界内に留まるため、少なくとも3年まで製剤安定性を向上させることができる。
【0061】
例6
直腸および局所投与用ゲルの製造方法は、0.7重量%のポロキサマー407と、0.01重量%のポロキサマー188と、1.0重量%の水とを混合して水溶液No.1を製造することを含む。次に、1.5重量%のリドカイン塩酸塩を1.0重量%の水に溶解して溶液2液を調製する。そして、0.25重量%のニフェジピンと0.01重量%のポリエチレングリコール400とを混合して混合物No.3号を調製する。次いで、溶液No.2を、溶液No.3と、0.01重量%のニパギンおよび0.01重量%のニパゾールの混合物と組み合わせ、均質な溶液を形成し、これを、溶液No.1と撹拌しながら組み合わせる。混合操作は、均質なかたまりが得られるように、15分間、オーバーヘッドミキサー中で撹拌しながら行われる。均質化は8℃の温度および真空中で行う。製造された溶液にポロキサマー407の残量(0.3重量%)を撹拌しながら加える。
【0062】
溶液No.1の製造は、8℃の温度、大気圧より低い99.0kPaの圧力で、無光で行う。No.2およびNo.3の溶液は18℃の温度で調製される。溶液は8℃の温度で混合される。
【0063】
最終溶液(ゲル)を製造した後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて温度8℃でpH値を4.5に調整する。これを行いながら、製品粘度をモニターするが、粘度は、3~75Pa・sの範囲であるべきである。
【0064】
上記の方法によって製造される例示的なゲルを表6に示す。
【0065】
【0066】
例7
直腸および局所投与用ゲルの製造方法は、12.0重量%のポロキサマー407と、10.0重量%のポロキサマー188と、30.0重量%の水とを混合して水溶液No.1を製造することを含む。次に、3.2重量%のリドカイン塩酸塩を30.0重量%の水に溶解して溶液2を調製する。そして、0.55重量%のニフェジピンと34.0重量%のポリエチレングリコール400とを混合して混合物No.3を調製する。次いで、溶液No.2を、溶液No.3と、0.072重量%のニパギンおよび0.03重量%のニパゾールの混合物と組み合わせ、均質な溶液を形成し、これを、溶液No.1と撹拌しながら組み合わせる。混合操作は、均質なかたまりが得られるように、5分間、磁気ミキサー中で撹拌しながら行う。製造された溶液にポロキサマー407の残量(0.5重量%)を撹拌しながら加える。
【0067】
溶液No.1の製造は、17℃の温度、大気圧よりも低い80kPaの圧力で、光への曝露なし(暗色ガラス製容器内)で行う。溶液No.2およびNo.3は25℃の温度で調製される。溶液は17℃の温度で混合される。
【0068】
最終溶液(ゲル)を製造した後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて温度17℃でpH値を7.5に調整する。これを行いながら、製品粘度をモニターするが、粘度は3~75Pa・sの範囲であるべきである。
【0069】
上記の方法によって製造される例示的なゲルを表7に示す。
【0070】
【0071】
例8
直腸および局所投与用ゲルの製造方法は、7.0重量%のポロキサマー407と、5.0重量%のポロキサマー188と、25.0重量%の水とを混合して水溶液No.1を製造することを含む。次に、3.2重量%のリドカイン塩酸塩を15.0重量%の水に溶解して溶液2を調製する。そして、0.55重量%のニフェジピンと17.0重量%のポリエチレングリコール400とを混合して混合物No.3を調製する。次いで、溶液No.2を、溶液No.3と、0.03重量%のニパギンおよび0.02重量%のニパゾール0.02重量%の混合物と組み合わせ、均質な溶液を形成し、これを、溶液No.1と撹拌しながら混合する。混合操作は、均質なかたまりが得られるように、15分間、粘性液体用ミキサー中で撹拌しながら行われる。製造された溶液にポロキサマー407の残量(0.3重量%)を撹拌しながら加える。
【0072】
溶液No.1の製造は、12℃の温度、大気圧より低い10.0kPaの圧力で、光への曝露なしで行う。溶液No.2およびNo.3は20℃の温度で調製される。溶液は12℃の温度で混合される。
【0073】
最終溶液(ゲル)を製造した後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて12℃の温度でpH値を6.5に調整する。これを行いながら、製品粘度をモニターするが、粘度は3~75Pa・sの範囲であるべきである。
【0074】
上記の方法によって製造される例示的なゲルを表8に示す。
【0075】
【0076】
例9
直腸および局所投与用ゲルの製造方法は、10.5重量%のポロキサマー407と、5.0重量%のポロキサマー188と、35.0重量%の水とを混合して水溶液No.1を製造することを含む。
【0077】
次に、3.2重量%のリドカイン塩酸塩を15.0重量%の水に溶解して溶液2を調製する。そして、0.40重量%のニフェジピンと17.0重量%のポリエチレングリコール600とを混合して混合物No.3を調製する。次いで、溶液No.2を、溶液No.3と、0.05重量%のニパギンおよび0.032重量%のニパゾールの混合物と組み合わせ、均質な溶液を形成し、これを、溶液No.1と撹拌しながら混合する。混合操作は、均質なかたまりが得られるように、20分間、粘性液体用ミキサー中で撹拌しながら行われる。製造された溶液にポロキサマー407の残量(4.5重量%)を撹拌しながら加える。
【0078】
溶液No.1の製造は、15℃の温度、50.0kPa圧力で、無光で行う。溶液No.2およびNo.3は22℃の温度で調製される。溶液は15℃の温度で混合される。
【0079】
最終溶液(ゲル)を製造した後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて8~17℃の温度でpH値を7.5に調整する。これを行いながら、製品粘度をモニターするが、粘度は3~75Pa・sの範囲であるべきである。
【0080】
上記の方法によって製造される例示的なゲルを表9に示す。
【0081】
【0082】
例10 製造されたゲルの安定性の検討
提案された製剤の安定期間の延長は、表10に示すデータ(5回の平均測定値)によって確認される。
【0083】
【0084】
従って、提案された方法は、最も近い先行技術とは対照的に、関連する不純物の含有量およびリドカインおよびニフェジピンの量が変化しないので、製剤安定性を少なくとも3年まで増加させることができる。
【0085】
例11 例1~4および6~9で製造された製剤の品質指標の解析結果
【0086】
【0087】
例12 例1~4および6~9で製造された、提案された製剤の有効性の検討、in vivo実験。
例1~4および6~9で製造された、提案された処方のゲルの有効性を、ラットで試験した。
【0088】
ゲルを裂肛モデルラットの肛門周囲に1日2回14日間投与した。ゲルの投与は裂肛に典型的な形態学的変化を完全に排除することを可能にした。すなわち、完全治癒は試験したラットの95%で達成された。ニフェジピンおよびリドカインの活性物質を含まないゲル基剤を使用した対照群では、裂肛症状が低減した動物の割合は15%であった。
【0089】
ゲルを急性痔核モデルラットの肛門周囲および直腸に1日2回14日間投与した。ゲルの投与により92.5%の動物で痔核症状が完全に消失したが、ゲル基剤で処置された対照群では45%の動物で痔核症状が完全に緩和した。
【0090】
痔核切除後の痛覚を低減するためのゲル投与の有効性をラットで間接的に評価した。痔核を手術により取り除いた後のとう痛の主な原因は肛門括約筋痙攣であることが知られている。このため、痔核モデルラットにおける痛覚の緩和を、初期レベルに向けた肛門直腸マノメトリー指標の安定な回復として評価した。ゲルは、肛門周囲および直腸に、1日2回14日間投与した。ゲル投与は100%の動物で肛門直腸マノメトリー指数を初期レベルに戻すことを可能にしたが、ゲル基剤で処置された対照群では指数の完全回復は17.5%の動物でのみ観察された。さらに、上記の方法によって製造された全てのゲル製剤は、in vivoで同様の有効性を示した。
【0091】
提案されたゲルの上記例示的な変形およびそれらを製造するための方法は、提案された発明のすべての可能な実施形態を例示しているが、すべてではない。
【0092】
技術的効果は、ニフェジピンおよびリドカイン塩酸塩を含む直腸および局所投与のためのゲル製剤の変形を製造することによって達成され、各変形は、ゲル様特性の安定性、透明性を提供し、少なくとも3年間安定した特性を維持する。ゲル剤の変形の投与により、痔核の臨床症状の完全な消失までの低減、裂肛の治癒、痔核切除後を含む疼痛症候群の低減が可能となる。また、性質の異なるゲルの範囲を広げる。
【0093】
さらに、ニフェジピンとリドカイン塩酸塩を含む、直腸および局所投与のためのゲルの製造方法が開発されることで技術効果が達成され、ゲル様特性の安定性、透明性、少なくとも3年間安定した特性の維持が確保される。
【0094】
ゲルのベースである本発明の医薬組成物およびゲルの製造方法は、主に、裂肛、痔核および関連疾患の予防および/または治療、痔核切除後の痛覚の低減を意図する。本発明は、ニフェジピンおよびリドカイン塩酸塩を主な活性物質として含むゲルの製剤、製造方法、および使用に関する。
【0095】
提案したゲルは、提案した方法で作製した全ての提示した変形において、直腸または局所投与に用いた場合、慢性裂肛、外痔核の症状の除去およびそれらの除去までの痛覚の低減において高い有効性を保証する。
【0096】
提示されたすべての発明は、産業上利用可能であり、実験室条件で試験され、実際に実施することができ、医薬品産業において広く使用されるであろう。
【0097】
文献
【0098】
【国際調査報告】