(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-08
(54)【発明の名称】加齢関連炎症および障害を治療する、予防するまたは逆転させるための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20220401BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220401BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220401BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20220401BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220401BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20220401BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220401BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20220401BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220401BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20220401BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20220401BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220401BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220401BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220401BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220401BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220401BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20220401BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20220401BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220401BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20220401BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20220401BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220401BHJP
C12N 9/99 20060101ALN20220401BHJP
C12N 9/12 20060101ALN20220401BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P29/00 ZNA
A61P43/00 111
A61P17/02
A61P25/28
A61P21/02
A61P25/16
A61P25/14
A61P27/02
A61P27/16
A61P25/02
A61P9/00
A61P25/00
A61P19/02
A61P17/00
A61P9/10 101
A61P7/00
A61P19/10
A61P11/00
A61P25/22
A61P25/24
A61K45/00
A61P43/00 121
C12N9/99
C12N9/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543271
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(85)【翻訳文提出日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 US2020015043
(87)【国際公開番号】W WO2020154656
(87)【国際公開日】2020-07-30
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】512241232
【氏名又は名称】ブラウン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】セディヴィ ジョン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ディ チェコ マルコ
【テーマコード(参考)】
4B050
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B050GG02
4C084AA19
4C084NA05
4C084NA14
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4C086ZA16
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4C086ZA23
4C086ZA33
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4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZA97
4C086ZB11
4C086ZC01
4C086ZC41
4C086ZC52
4C086ZC54
4C086ZC75
(57)【要約】
その必要がある患者に治療有効量の少なくとも1つの逆転写酵素阻害剤(RTI)を投与する工程によって、加齢関連炎症を予防する、遅延させるまたは逆転させるための方法が、開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その必要がある患者において加齢関連炎症を治療する、予防するおよび/または逆転させるための方法であって、治療有効量の逆転写酵素阻害剤(RTI)を該患者に投与する工程を含み、該RTIがセンサブジンまたはエルブシタビンを含む、前記方法。
【請求項2】
加齢関連炎症が、長鎖散在反復配列1(L1)の上方制御、細胞質長鎖散在反復配列1(L1)cDNAの蓄積、I型インターフェロン(IFN-I)応答の活性化、および老化関連分泌表現型(SASP)炎症誘発状態の強化に関連する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
組成物が、L1の上方制御を予防するまたは逆転させるのに十分な量で投与される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
組成物が、細胞質L1 cDNAの蓄積を予防するまたは逆転させるのに十分な量で投与される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
組成物が、IFN-I応答の活性化を予防するまたは逆転させるのに十分な量で投与される、請求項2記載の方法。
【請求項6】
組成物が、SASP炎症誘発状態を予防するまたは逆転させるのに十分な量で投与される、請求項2記載の方法。
【請求項7】
加齢関連炎症が、創傷治癒もしくは組織再生を必要とする患者、またはアルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、ハンチントン病、視力喪失、聴力損失、末梢変性疾患、または心血管機能障害、前頭側頭型認知症(FTD)、多発性硬化症(MS)、エカルディ・グティエール症候群、進行性核上性麻痺(PSP)、変形性関節症、皮膚老化、アテローム性動脈硬化症、化学療法誘発性有害作用、造血幹細胞機能、骨粗鬆症、身体機能、および肺線維症からなる群より選択される疾患もしくは障害を有する患者に存在する、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
加齢関連炎症がアルツハイマー病を有する患者に存在する、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
加齢関連炎症がALSを有する患者に存在する、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
加齢関連炎症によって引き起こされた障害の基礎病理の進行を遅延または逆転させるための方法であって、その必要がある患者に治療有効量のRTIを投与する工程を含み、該RTIがセンサブジンまたはエルブシタビンを含む、前記方法。
【請求項11】
前記患者が、アルツハイマー病またはALSを有し、該患者への最初の投与の前と比較してアルツハイマー病またはALSの1つまたは複数の症状の減少を経験する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記患者がアルツハイマー病を有し、1つまたは複数の症状が、記憶喪失、物の置き忘れ、場所または物体の名前忘れ、質問の繰り返し、柔軟性の低下、錯乱、見当識障害、強迫行動、強制行動、妄想、失語症、睡眠障害、気分変動、うつ病、不安、欲求不満、動揺、空間課題の実施困難、失認、歩行障害、体重減少、発語喪失、短期記憶の喪失または長期記憶の喪失を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記患者がアルツハイマー病を有し、1つまたは複数の症状の減少がDSM-5に従って評価される、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記患者がアルツハイマー病を有し、症状の減少が、アルツハイマー病評価尺度の認知機能下位尺度(cognitive subscale of Alzheimer's Disease Assessment Scale)(ADAS-cog)を使用して決定される、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記患者がアルツハイマー病を有し、症状の減少が、臨床面接による認知症変化印象尺度(Clinician's Interview-Based Impression of Change)(CIBIC-plus)を使用して決定される、請求項10記載の方法。
【請求項16】
前記患者がアルツハイマー病を有し、症状の減少が、日常生活動作尺度(Activities of Daily Living Scale)(ADL)を使用して決定される、請求項10記載の方法。
【請求項17】
基礎病理の任意の変化が、RTI投与の前後のバイオマーカの検出によって同定される、請求項11~16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
バイオマーカがβ-アミロイドまたはタウタンパク質である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
バイオマーカがPETイメージングによって検出される、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
バイオマーカが脳脊髄液中での測定によって検出される、請求項17または18記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの第2の治療薬を患者に投与する工程をさらに含む、請求項1~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
患者がアルツハイマー病を有し、少なくとも1つの第2の治療薬がアルツハイマー病の症状の治療に有用である、パラグラフ21記載の方法。
【請求項23】
患者がALSを有し、少なくとも1つの第2の治療薬がALSの治療に有用である、パラグラフ21記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は医薬品化学の分野にある。特に、本発明は、逆転写酵素阻害剤(RTI)を、その必要がある患者に投与する工程によって加齢関連炎症を治療する、予防するまたは逆転させるための方法に関する。加齢関連炎症は、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、ハンチントン病、視力喪失、聴力損失、末梢変性疾患、または心血管機能障害、前頭側頭型認知症(FTD)、多発性硬化症(MS)、エカルディ・グティエール症候群、進行性核上性麻痺(PSP)、変形性関節症、皮膚老化、アテローム性動脈硬化症、化学療法誘発性有害作用、造血幹細胞機能、骨粗鬆症、身体機能、および/もしくは肺線維症を有する患者、または創傷治癒もしくは組織再生を必要とする患者に存在し得る。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発に関する記載
本発明は、以下の資金提供を受けて開発された:Glenn/AFAR Postdoctoral Fellowship,NIH P20 GM119943 COBRE pilot award;NIH F31 AG043189;NIH T32 AG041688;NIH F31 AG050365;Biotechnology and Sport Medicine Fellowships,School of Pharmacy,University of Bologna,Bologna,Italy;NIH R37 AG016667,R01 AG024353,P01 AG051449,Glenn-AFAR Breakthroughs in Gerontology Award;NIH R01 AG050582,P20 GM109035;NIH R37 AG016694,P01 AG051449。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
60歳またはそれを超えて生存する人の数は世界的に増えつつある。2012年から2050年の間に、60歳およびそれ以上の人口の割合は、8億900万人から20億人に(または人口の11%から22%に)増加すると予想されている。1高齢者の主な死因の中には、心臓病、癌、糖尿病、アルツハイマー病、および感染症を含むいくつかの慢性状態がある。重要なことに、これらの加齢性疾患の多くおよび老化自体が、低レベルの慢性炎症と密接に関連している2,3,4。全身性慢性炎症は老化を加速させ得る5。実際に、多くの炎症マーカは、高齢者における死亡率の重要な予測因子である6。
【0004】
老化、炎症、および慢性疾患の間のこの共通の関連性にもかかわらず、加齢性炎症を制御する機構を理解するための歩みは限られており、これらの調節因子と慢性変性疾患との因果関係は完全には理解されていない。加齢性炎症におけるこれらの調節因子の役割をよりよく理解することは、高齢者の健康を増進するための新しい戦略をもたらすはずである。
【0005】
したがって、当技術分野では、加齢性炎症および加齢性障害のより良い治療および予防が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
発明の簡単な概要
本発明は、加齢性炎症の根底にある機構および老化におけるその役割のより良い理解、ならびに加齢関連炎症および障害を予防し、軽減するための組成物および方法を提供する。
【0007】
レトロトランスポーザブルエレメント(RTE)は複数のレベルで有害であり、したがって宿主の監視システムの不具合は負の影響を及ぼし得る。しかしながら、老化および加齢関連疾患へのRTE活性の寄与は知られていなかった。本発明は、細胞老化の間に、LINE-1(L1)エレメントが転写的に上方制御され、I型インターフェロン(IFN-I)応答を活性化することを含むいくつかの経験的観察に基づく。IFN-I応答は、後期老化の新規な表現型であり、老化関連分泌表現型(SASP)の維持に寄与する。IFN-I応答は、細胞質L1 cDNAによって引き起こされ、L1逆転写酵素(RT)を阻害する逆転写酵素阻害剤(RTI)によって拮抗される。RTIラミブジンによる老齢マウスの処置は、いくつかの組織におけるIFN-I活性化および加齢関連炎症を下方制御した。したがって、RTE活性化は、老化の特徴である無菌性炎症の重要な構成要素であり、L1 RTは加齢関連障害の治療に関連する標的である。
【0008】
本発明は、その必要がある患者に治療有効量の少なくとも1つの逆転写酵素阻害剤(RTI)を投与する工程によって、加齢関連炎症を治療する、予防するおよび/または逆転させるための方法を、提供する。
【0009】
L1活性の阻害の用量反応アッセイにおけるいくつかのRTI薬の比較評価では、2つのRTI薬、センサブジンおよびエルブシタビンが、マウスおよびヒトのL1活性を阻害する予想外の優れた能力を示した。本発明は、治療有効量のセンサブジンおよび/またはエルブシタビンを患者に投与する工程によって、その必要がある患者において加齢関連炎症を治療する、予防するおよび/または逆転させるための方法を、さらに提供する。
【0010】
加齢関連炎症は、L1の上方制御、細胞質L1 cDNAの蓄積、IFN-I応答の活性化、および/またはSASPの炎症誘発状態の強化に関連する。RTI薬は、L1の上方制御、細胞質L1 cDNAの蓄積、IFN-I応答の活性化、および/またはSASPの炎症誘発状態の少なくとも1つを予防するまたは逆転させるのに十分な量で投与される。
【0011】
本発明の方法で予防する、治療する、または逆転させることができる加齢関連炎症は、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、ハンチントン病、視力喪失、聴力損失、末梢変性疾患、または心血管機能障害、前頭側頭型認知症(FTD)、多発性硬化症(MS)、エカルディ・グティエール症候群、進行性核上性麻痺(PSP)、変形性関節症、皮膚老化、アテローム性動脈硬化症、化学療法誘発性有害作用、造血幹細胞機能、骨粗鬆症、身体機能、および/もしくは肺線維症を含むがこれらに限定されない疾患もしくは障害を有する患者、または創傷治癒もしくは組織再生を必要とする患者に存在する。一態様では、加齢関連炎症は、アルツハイマー病を有する患者に存在する。代替の態様では、加齢関連炎症は、ALSを有する患者に存在する。
【0012】
また、加齢関連炎症によって引き起こされた疾患障害の基礎病理の進行を遅らせるまたは逆転させるための方法であって、その必要がある患者に治療有効量の少なくとも1つのRTIを投与する工程を含む方法も提供される。いくつかの態様では、患者は、アルツハイマー病またはALSを有し、患者へのRTIの最初の投与の前と比較してアルツハイマー病またはALSの1つまたは複数の症状の減少を経験する。いくつかの態様では、アルツハイマー病の1つまたは複数の症状は、記憶喪失、物の置き忘れ、場所または物体の名前忘れ、質問の繰り返し、柔軟性の低下、錯乱、見当識障害、強迫行動、強制行動、妄想、失語症、睡眠障害、気分変動、うつ病、不安、欲求不満、動揺、空間課題の実施困難、失認、歩行障害、体重減少、発語喪失、短期記憶の喪失または長期記憶の喪失を含む。
【0013】
いくつかの態様では、アルツハイマー病の1つまたは複数の症状の減少は、DSM-5に従って評価される7。いくつかの態様では、症状の減少は、アルツハイマー病評価尺度の認知機能下位尺度(cognitive subscale of Alzheimer's Disease Assessment Scale)(ADAS-cog)を使用して決定される。いくつかの態様では、症状の減少は、臨床面接による認知症変化印象尺度(Clinician's Interview-Based Impression of Change)(CIBIC-plus)を使用して決定される。いくつかの態様では、症状の減少は、日常生活動作(Activities of Daily Living)(ADL)尺度を使用して決定される。いくつかの態様では、症状の減少は1~36ヶ月間である。
【0014】
いくつかの態様では、基礎病理の任意の変化は、RTI投与の前後のバイオマーカの検出によって同定される。いくつかの態様では、バイオマーカはβ-アミロイドまたはタウタンパク質である。いくつかの態様では、バイオマーカはPETイメージングによって検出される。いくつかの態様では、基礎病理は、脳脊髄液中のβ-アミロイドまたはタウタンパク質の測定によって同定される。いくつかの態様では、基礎病理は、RTI投与の前後の脳体積の測定によって同定される。いくつかの態様では、基礎病理は、1~36ヶ月で逆転または遅延される。
【0015】
いくつかの態様では、少なくとも1つのRTIはヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)である。いくつかの態様では、少なくとも1つのNRTIは、アバカビル(ZIAGEN(商標))、アバカビル/ラミブジン(Epzicom)、アバカビル/ラミブジン/ジドブジン(TRIZIVIR(商標))、アデホビル、アロブジン、アムドキソビル、アプリシタビン、ATRIPLA(登録商標)、BARACLUDE(登録商標)、BIKTARVY(登録商標)、センサブジン、COVIRACIL(商標)、DAPD/DXG、D-D4FC、デキセルブシタビン、ジダノシン(VIDEX(商標))、ジダノシン持続放出(Videx EC)、dOTC、EFdA、エムトリシタビン(EMTRIVA(商標))、エムトリシタビン/テノホビルアラフェナミド(DESCOVY(登録商標))、エムトリシタビン/テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(TRUVADA(登録商標))、エルブシタビン、フォサルブジン、ラミブジン/ジドブジン(COMBIVIR(商標))、EVIPLERA(商標)、GENVOYA(登録商標)、HIVID(商標)、KIVEXA(商標)、ラミブジン(EPIVIR(商標))、LODENOSINE(商標)、ODEFSEY(登録商標)、PREVEON(登録商標)、ラシビル、スタンピジン、スタブジン(ZERIT(商標))、STRIBILD(登録商標)、TENOFOVIR(商標)、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(VIREAD(商標))、TRIUMEQ(登録商標)、トリジビル、VEMLIDY(登録商標)、および/またはジドブジン(RETROVIR(商標))から選択される。いくつかの態様では、少なくとも1つのNRTIはセンサブジンである。いくつかの態様では、少なくとも1つのNRTIはエルブシタビンである。
【0016】
いくつかの態様では、少なくとも1つのRTIは非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)である。いくつかの態様では、少なくとも1つのNNRTIは、デラビルジン(DLV)、エファビレンツ(EFV)、エトラビリンネビラピン(NVP)、および/またはリルビピリンから選択される。
【0017】
いくつかの態様では、患者はアルツハイマー病を有し、方法は、アルツハイマー病の症状の治療に有用な少なくとも1つの第2の治療薬を投与する工程をさらに含む。いくつかの態様では、少なくとも1つの第2の治療薬は、ドネペジル、ガランタミン、メマンチン、および/またはリバスチグミンから選択される。いくつかの態様では、少なくとも1つの第2の治療薬は、β-アミロイドまたはタウタンパク質に結合する抗体である。いくつかの態様では、抗体はβ-アミロイドに結合し、バピネオズマブである。いくつかの態様では、抗体はタウタンパク質に結合し、ABBV-8E12である。いくつかの態様では、少なくとも1つの第2の治療薬は、β-アミロイドまたはタウタンパク質に対するワクチンである。いくつかの態様では、少なくとも1つの第2の治療薬は、β-アミロイドまたはタウの脳含有量を減少または変化させる薬剤である。いくつかの態様では、第2の治療薬は、β-アミロイドの脳含有量を減少または変化させ、β-セクレターゼ1(BACE)阻害剤である。いくつかの態様では、BACE阻害剤は、CTS-21166、ラナベセスタット(AZD3293)、LY2886721、およびベルベセスタット(MK-8931)から選択される。いくつかの態様では、第2の薬剤は、タウの脳含有量を減少または変化させ、ニコチンアミド、またはMPT0G211である。
【0018】
いくつかの態様では、患者はALSを有し、方法は、ALSの症状の治療に有用な少なくとも1つの第2の治療薬を投与する工程をさらに含む。いくつかの態様では、ALSの治療に有用な少なくとも1つの第2の薬剤は、エダラボンおよび/またはリルゾールである。他の態様では、少なくとも1つの第2の薬剤はインテグラーゼ阻害剤である。いくつかの態様では、インテグラーゼ阻害剤は、オーリントリカルボン酸、オーリントリカルボン酸の誘導体、BMS-538158、コーヒー酸フェネチルエステル、コーヒー酸フェネチルエステルの誘導体、クルクミン、クルクミンの誘導体、チコリ酸、チコリ酸の誘導体、3,5-ジカフェオイルキナ酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸の誘導体、GSK364735C、L-870812、およびL-25 870810、MK-0518、ケルセチン、ケルセチンの誘導体、ラルテグラビル、S-1360、チルホスチン、チルホスチンの誘導体、および/またはジンテビル(AR-177)から選択される。
【0019】
いくつかの態様では、患者は、RTIの患者への最初の投与後1~36ヶ月間、1つまたは複数の症状または疾患病理について評価される。
【0020】
いくつかの態様では、RTIは、患者の細胞におけるL1逆転写酵素活性を阻害する。
【0021】
軽度認知障害または前臨床アルツハイマー病を有することが疑われる患者におけるアルツハイマー病の発症を予防するための方法であって、治療有効量の少なくとも1つのRTIを、その必要がある患者に投与する工程を含む方法も提供される。
【0022】
他の実施態様も本明細書に記載および列挙される。
【0023】
例示の目的で、本発明の特定の態様を以下に説明する図面に示す。図面中の同様の数字は、全体を通して同様の要素を示す。しかしながら、本発明は、示されている正確な配置、寸法、および機器に限定されるわけではないことが理解されるべきである。図面において:
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、老化細胞におけるL1、IFN-IおよびSASPの活性化を示す。遺伝子発現をRT-qPCRによって評価した。ポリ(A)精製RNAをすべてのL1アッセイで使用した。
図1a、L1活性化の時間経過。P値をEP、初期継代対照と比較して計算した。
図1b、L1 RT-PCR戦略の概略図。青色、センス;赤色、アンチセンス(AS)。プライマー特異性については、
図6f~hを参照;プライマー設計については、「方法」を参照。アンプリコンFのプライマーを(a)および(e)で使用した。
図1c、アンプリコンA~Fを使用して鎖特異的L1転写を評価した。5'UTRアンチセンスプロモータからの転写も検出した。SEN(L)、後期老化(16週間)。
図1d、IFN-αおよびIFN-β1 mRNAレベルの誘導。
図1e、DNA損傷(p21、CDKN1Aとしても公知)、SASP(IL-1β、CCL2、IL-6、MMP3)、およびIFN-I応答(IRF7、IFN-α、IFN-β1、OAS1)に関連する遺伝子の時間的誘導。行のクラスタリングを1-ピアソン相関として計算した。RS、複製老化;OIS、癌遺伝子誘導性老化(Ha-RAS感染によって誘発される);SIPS、ストレス誘導性早期老化(ガンマ線照射)。対照:EP、初期継代;EV、空ベクター感染;CTR、非照射。(a、c~e)、n=3の独立した生物学的試料、2つの独立した実験で反復。(a、c、d)データは平均±s.d.である。*P≦0.05、**P≦0.01、対応のない両側t検定。
【
図2-1】
図2は、L1活性化およびIFN-I誘導の調節を示す。
図2a、RB1の発現とChIP、および
図2b、FOXA1の発現とChIP。発現をRT-qPCRおよび免疫ブロッティングによって測定した(左パネル)。L1エレメントへの結合をChIP-qPCRで評価した(右パネル)。プライマー特異性については、
図6b RB1:5'UTR、ORF1およびORF2、それぞれアンプリコンA、EおよびFのプライマーを参照。FOXA1:アンプリコンA~Eのプライマー。qPCRをインプットクロマチンに対して正規化した。SEN(E)、早期老化(8週間)。ゲルソースデータについては、
図16を参照。
図2c~e、RB1、FOXA1またはTREX1を過剰発現(OE)させるかまたはshRNAで除去し、L1、IFN-αおよびIFN-β1の発現への影響をポリ(A)精製RNAのRT-qPCRによって決定した。すべての場合に、レンチウイルスベクターを使用して、12週目(点D、
図6a)に老化細胞に介入を直接送達し、4週間後(点E、16週)に分析のために細胞を回収した。対照は、同時(点E、16週)に採取した非感染老化細胞であった。2つの異なるshRNA(a、b)を各遺伝子に使用した。L1にはアンプリコンFのプライマーを使用した。
図2f、RB1を上記のように過剰発現させ、5'UTRへのその結合をChIP-qPCR(アンプリコンA)によって評価した。
図2g、初期継代細胞におけるshRB1(a)、shTREX1(a)およびFOXA1-OEを使用した三重(3X)介入後のL1、IFN-αおよびIFN-β1発現の活性化。レンチウイルス感染を、各工程で薬物を選択して連続的に実施した(shRB1、ピューロマイシン→shTREX1、ハイグロマイシン→FOXA1-OE、ブラストサイジン)。
図2h、IFN-I経路遺伝子の発現をRT2 Profiler PCRアレイ(Qiagen)を用いて決定した。正規化した平均発現をアレイ中の84個の遺伝子すべてについて示している。赤色記号:有意に上方制御された遺伝子。破線は±2倍の範囲を示す。(a、b、h)、n=3の独立した生物学的試料、2つの独立した実験で反復。(c~g)、n=3の独立した実験。(a~g)データは平均±s.d.である。*P≦0.05、**P≦0.01、対応のない両側t検定。
【
図3-1】
図3は、L1の除去がIFN-I活性化を軽減し、SASP応答を鈍らせることを示す。
図3a、細胞を、一本鎖DNA(ssDNA)またはL1 ORF1タンパク質に対する抗体を使用した免疫蛍光(IF)顕微鏡検査によって調べた。ORF1の顕著な点と共局在した老化細胞における明るいssDNAの点に注目されたい。実験を独立して3回繰り返し、同様の結果を得た。スケールバー=10μm。
図3b、老化細胞を、老化の12週から16週の間、L1 shRNA(
図2c、e、fに記載されるレンチウイルスベクターを使用)または3TC(7.5μM)で処理した。IFN-I応答への効果をRT-qPCR、ELISAまたは免疫ブロッティングによって決定した。ゲルソースデータについては、
図16を参照。
図3c、細胞をBrdUで2週間標識し(7.5μM 3TCありまたはなし)、標識DNAを免疫沈降させ、TaqManマルチプレックスqPCRアッセイ16(
図1b、アンプリコンF)を使用してそのL1配列含有量を定量化した。EP(qui)、初期継代静止細胞。
図3d、左パネル、RS細胞:IFNAR1およびIFNAR2遺伝子を、レンチウイルスベクターと共に老化細胞に直接送達されるCRISPR/Cas9システムを使用して変異誘発した。shRNA介入と同様に、細胞を老化の12週目に感染させ、老化の16週目に採取した(
図1d~fを参照、「方法」を参照)。右パネル、SIPS細胞:初期継代細胞においてCRISPR/Cas9介入を実施し、検証されたクローンを照射してSIPSを誘導した。
図3e、OISおよびSIPSを
図1dのように誘導し、細胞を20日後(OIS)または30日後(SIPS)に採取した。3TC(7.5μM)が全体にわたって存在した。IFN-I遺伝子発現(IFN-α、IRF7、OAS1)をRT-qPCRによって測定した。
図3f、細胞を、3TC(10μM)が全体にわたって存在する複製老化(RS)に連続継代し、SASP応答遺伝子(IL-1β、CCL2、IL-6、MMP3)の時間的誘導を評価した。(b~d、f)、n=3の独立した実験。(e)n=3の独立した生物学的試料、2つの独立した実験で反復。(b~f)データは平均±s.d.である。*P≦0.05、**P≦0.01。(b、d~f)対応のない両側t検定、(c)Tukeyの多重比較検定を用いた一元配置分散分析。
【
図4-1】
図4は、L1がマウス組織において加齢と共に活性化され、IFN-I炎症誘発性応答がRTI処置によって軽減されることを示す。
図4a、組織中のL1 Orf1タンパク質の存在をIF顕微鏡検査によって調べた。ORF1発現細胞の定量化を右パネルに示す;各条件について、3匹の動物および動物あたり少なくとも200個の細胞をスコア化した。スケールバー=4μm。
図4b、老化細胞におけるL1の活性化を、IFによるSA-β-Gal活性およびOrf1タンパク質についての共染色によって調べた(雄の肝臓、5ヶ月および26ヶ月)。スケールバー=4μm。実験を独立して3回繰り返し、同様の結果を得た。
図4c、マウスに、示されている月齢で2週間、飲料水中の3TC(2mg/ml)を投与し、処置後に犠死させた。p16、IFN-I応答遺伝子(IFN-α)、および炎症誘発状態のマーカ(Il-6)の発現をRT-qPCRによって評価した。さらなる組織および遺伝子については
図14を参照。箱ひげ図は、データの範囲(ひげ)、25パーセンタイルと75パーセンタイル(ボックス)、平均(破線)、および中央値(実線)を示す。各点は1匹の動物を表す。5ヶ月、n=8;26ヶ月、n=12;29ヶ月、n=6。
図4d、6ヶ月齢のマウスを非致死的に照射し、L1、p16および代表的なIFN-I応答遺伝子(Ifn-α、Oas1)の発現を、照射後の示されている時間にRT-qPCRによって評価した。グラフィック表示は(c)と同様である;非照射、3ヶ月にn=3匹の動物、6ヶ月にn=5匹の動物;照射、3ヶ月にn=4匹の動物、6ヶ月にn=5匹の動物。
図4e、白色脂肪組織および腎臓へのマクロファージ浸潤をF4/80陽性細胞(全核の%)としてスコア化した。n=5匹の動物の群(脂肪);n=8匹の動物の群(腎臓)。骨格筋線維直径を測定し(詳細については「方法」を参照)、集合箱ひげ図としてプロットした。n=群あたり5匹の動物、合計500本の線維。糸球体硬化症を、過ヨウ素酸-シッフ(PAS)染色切片(詳細については「方法」を参照)において、3または4のスコアを有するすべての糸球体の総和を合計で割ったものとしてスコア化した。n=群あたり7匹の動物、動物あたり40の糸球体。グラフィック表示は(c)と同様である。3TC処置は、白色脂肪については2週間、他の組織については6ヶ月(20~26ヶ月)であった。破線の円は単一の糸球体を示す。スケールバー=50μm。
図4f、L1監視機構の破壊はIFN-I応答の慢性的な活性化をもたらす。ISD:インターフェロン刺激DNA経路。*P≦0.05、**P≦0.01、対応のない両側t検定(a、d、e)またはTukeyの多重比較検定を用いた一元配置分散分析(c、e 白色脂肪)。
【
図5】
図5は、加齢関連「無菌性」炎症につながる細胞老化の分子経路を概説するフローチャートである。
【
図6-1】
図6は、老化培養物の確立ならびにL1およびIFN-I活性化の分析を示す。
図6a、長期の複製老化細胞を得るための継代レジメン(「方法」に詳細)。点Aを老化時間ゼロと指定した。
図6b~d、培養物の老化状態の確認。代表的な実験を示す;他の実験を同じ方法で監視し、これらの基準を満たすデータを生成した。EP、早期継代対照;SEN(E)、早期老化(8週);SEN(L)、後期老化(16週)。
図6b、細胞をBrdUで6時間標識した。BrdU取り込み
8および老化関連β-ガラクトシダーゼ(SA-β-Gal)活性
9を示されているように決定した。DNA損傷の病巣を、γ-H2AX抗体および免疫蛍光顕微鏡検査(IF)を使用して可視化した
10。
図6c、p21(CDKN1A)およびp16(CDKN2A)タンパク質の発現を免疫ブロッティングによって決定した。GAPDHをローディング対照とした。ゲルソースデータについては、
図16を参照。
図6d、SASPに特徴的な遺伝子の発現をRT-qPCRによって測定した。
図6e、線維芽細胞のIMR-90およびWI-38株の老化中のL1活性化を、ポリ(A)精製RNAおよびアンプリコンFのプライマーを使用したRT-qPCRによって評価した(
図1b)。
図6f、長距離RT-PCRを、プライマーA-フォワードおよびC-リバース(アンプリコンG)ならびにプライマーA-フォワードおよびD-リバース(アンプリコンH)(
図1b、表1)を用いて実施し、cDNAをクローニングし、配列決定した。初期継代増殖細胞で同じプロトコルを使用したいくつかの試みでは、L1クローンは得られなかった。配列を、100%の同一性を要求するマスクされていない参照ゲノムにマッピングした。したがって、658個のクローンをマッピングすることができ、51個のさらなるクローンは少なくとも1つのミスマッチを含み、したがって細胞株において多型であるエレメントを表している可能性が高く、58個はクローニングアーチファクトであった。658個のマッピング可能なクローンの中で、224個のユニークなエレメントが示された(表3)。インタクトなエレメントは、ORF不活性化変異を有さない注釈付けられた完全長エレメントのサブセットである。特徴のサイズは、658個のクローンの中でエレメントが表された回数に対応する。
図6g、
図6fおよび表3に提示されている長距離PCRデータの要約。
図6h、本発明者らのアンプリコンで検出されたエレメントの見かけのゲノムコピー数(アンプリコンの位置については
図1b、プライマー設計戦略については「方法」を参照)。予測:インシリコPCR(詳細については「方法」を参照)。所見:qPCRを1ngのゲノムDNAで実施し、公知の単一コピー遺伝子座に正規化した。
図6i、WI-38およびIMR-90細胞の老化中のIFN-αおよびIFN-β1遺伝子の活性化をRT-qPCRによって測定した。
図6j、SA-β-Gal活性によるOIS(20日目、
図6e)およびSIPS(30日目、
図6e)における細胞の老化状態の確認。EV、空ベクター対照;CTR、非照射細胞。
図6k、ポリ(A)精製RNA上のアンプリコンAおよびFのプライマーを用いたRT-qPCRを使用したすべての形態の老化における完全長L1 mRNA発現の確認。遅発性活性化を、OISについては9日目と20日目、SIPSについては12日目と30日目を比較することによって示す。(b~e、i~k)、n=3の独立した生物学的試料、2つの独立した実験で反復。データは平均±s.d.である。*P≦0.05、**P≦0.01、対応のない両側t検定。
【
図7A-1】
図7は、細胞老化中に活性化されるL1エレメントにおける転写開始部位のマッピングを示す。5'RACEを、後期老化細胞(16週、
図6aの点D)でプライマーCおよびD(
図1a、表1)を用いて実施し、産物をクローニングし、個々のクローンをサンガー配列決定した(詳細については「方法」を参照)。
図7a、L1HSコンセンサスに対する50個のマッピング可能なクローンの多重配列アラインメントを、MAFFTソフトウェアを用いて作製した。L1HSコンセンサスを上部に示す。整列したクローンの青色の陰影は、コンセンサスとの同一性の程度を示す。緑色の縦線は、L1HSコンセンサスの開始(位置1)を示す。赤色の縦線は、個々のクローンによってL1HSコンセンサスに開かれた短いギャップ(1~4ヌクレオチド)を示す。50個のクローンのコンセンサスを下部に示しており、Jalviewで生成した。L1転写の開始は不正確であることが公知であり、開始部位の大部分はコンセンサス開始部位の+/-50bpに存在し、サブセットは+180bpまで存在する
11。
図7b、マッピングデータおよびL1エレメントのファミリーへのクローンの分類の要約。相対的な開始部位を、L1HSコンセンサス開始部位に対して計算した。RepEnrichソフトウェア
12を使用して、クローンをL1ファミリーに割り当てた。
【
図8-1】
図8は、細胞老化の進行中のトランスクリプトーム変化の進展を示す。RNA-seqを、初期増殖LF1細胞(EP)ならびに老化の8週目(SEN-E)および16週目(SEN-L)の培養物(
図6aの拡張データのそれぞれ点Cおよび点D)で実施した。EP対SEN-E、EP対SEN-L、およびSEN-E対SEN-Lの3者間比較を用いてデータを分析した(詳細については「方法」を参照)。
図8a、以下のデータセットの3つの比較の共通部分を示す面積比例一般化ベン図である。i~ii、有意に上方制御および下方制御された遺伝子(パネルbの行2×)。iii~iv、GSEAによって同定された重要なKEGG経路。差次的に発現される遺伝子および経路の大きな変化(特に上方制御)によって例示される、後期老化におけるトランスクリプトームのかなりの進展に留意されたい。v~vi、IFN-IおよびSASP遺伝子セットにおける有意に変化する遺伝子(遺伝子セットの注釈については表4を参照)。SASP遺伝子の変化の大部分は早期に起こるが、IFN-I変化の大きな割合が後期老化に特異的であることに留意されたい。
図8b、固定FDR(<0.05)および可変倍率変化カットオフ(2x、1.75xおよび1.5x)を使用した有意に変化する遺伝子の要約。
図8c、KEGG経路のGSEA分析。ヒートマップ表示は、有意に上方制御された経路を赤色で示し(パネルeも参照)、下方制御された経路を青色で示す。有意でない比較は黒色で示す;垂直方向の注釈は、(a、iii~iv)のベン図を参照する。SASP遺伝子セットは早期に上方制御されるが、IFN-I遺伝子セットは後期に上方制御されることに留意されたい。
図8d、IFN-IおよびSASP遺伝子セットにおける有意に変化する遺伝子のヒートマップ。垂直方向の注釈は、(a、v~vi)のベン図を参照する。
図8e、GSEAを使用して同定された有意に上方制御されたKEGG経路のリスト(すべての経路のリストについては表5を参照)。NES、正規化した濃縮スコア。IFN-IおよびSASP遺伝子セットを黄色で強調表示する。老化早期と老化後期の間のIFN-Iの有意な上方制御に留意されたい。赤色の活字は、後期のサイトゾルDNAセンシングおよびI型インターフェロン応答を示すKEGG経路を特定する。
図8f~g、すべての比較についてのIFN-IおよびSASP遺伝子セットのGSEAプロフィール;FDRを黄色で強調表示する。IFN-Iの上方制御は、EP_SEN-LおよびSEN-E_SEN-Lについては有意であるが、EP_SEN-Eについては有意ではなく、SASPの上方制御は、EP_SEN-EおよびEP_SEN-Lについては有意であるが、SEN-E_SEN-Lについては有意ではないことに留意されたい。n=3つの独立した生物学的試料。差次的発現データを、GSEA GenePatternインターフェースを使用して有意性について分析し、Benjamini-Hochberg法を使用して公称p値を調整することによって多重比較のためにアウトプットを補正した(詳細については「方法」を参照)。
【
図9-1】
図9は、L1エフェクタおよびIFN-I応答の特性付けを示す。
図9a、TREX1の発現をRT-qPCRおよび免疫ブロッティングによって決定した。ゲルソースデータについては、
図16を参照。
図9b、RBファミリー遺伝子の発現をRT-qPCRによって比較した。すべての遺伝子のプライマー対は、同等の効率であることが確認された。
図9c、L1エレメントでのH3K9me3およびH3K27me3の濃縮をChIP-qPCRによって調べた(
図1bに示すPCRプライマーを使用した:5'UTR、アンプリコンA;ORF1、アンプリコンE;ORF2、アンプリコンF)。
図9d、ENCODEからのChIP-seqデータを、L1コンセンサス配列に結合する転写因子について検討した。示されている細胞株についてインプット対照と比較したlog
2倍率変化濃縮を示す。L1プロモータへのYY1の結合は文書で記録されており
13、陽性対照として使用した。CEBPBを陰性対照として使用した。L1座標および関連する特徴を示す概略図を上に示す。アンプリコンA~Eは、
図1bに示すものと同じである。
図9e、インタクトなL1 5'UTRまたはFOXA1結合部位を欠くUTR(UTR-Δ)の転写活性を、FOXA1発現プラスミドまたは空ベクター(EV)のいずれかで初期継代LF1細胞に同時トランスフェクトしたセンスレポータおよびアンチセンスレポータを使用して決定した。
図9f、FOXA1を老化細胞においてshFOXA1(a)でノックダウンし(
図2eおよび
図10aも参照)、L1 5'UTR(アンプリコンB)への結合をChIP-qPCRによって決定した。
図9g、RB1、TREX1のノックダウンおよびFOXA1の異所性発現を、すべての単一(1X)、二重(2X)および三重(3X)の組合せで初期継代細胞において実施し、L1、IFN-αおよびIFN-β1発現の活性化についてポリ(A)精製RNAを使用するRT-qPCRによって評価した(アンプリコンFのプライマー)。3つの対照が示されている:無関係なshRNAに感染した細胞(shGFP)、発現構築物(LacZ)、または非感染初期継代細胞(EP)。
図9h、3X細胞におけるRB1およびFOXA1のL1 5'UTR占有率を、
図2a、bのように実施したChIP-qPCRによって決定した。アンプリコンAおよびBのプライマーを、それぞれRB1およびFOXA1に使用した。比較のために、shRB1(a)またはFOXA1 cDNA発現(EP FOXA1-OE)による初期継代細胞への単一の介入も示されている。
図9i、ポリ(A)精製RNA上のアンプリコンAおよびFのプライマーを用いたRT-qPCRを使用した3X細胞における完全長L1 mRNA発現の確認。CTR、無関係なshRNA(shGFP)に感染した細胞。
図9j、SENおよび/または3X細胞(
図2h、表6)において発現が有意に変化する67個の遺伝子についてのすべての生物学的複製物を示すヒートマップ表示。列のクラスタリングは1-ピアソン相関として計算した。行は、IFN-I応答の機能的サブセットにグループ分けされている。
図9k、67個の有意に変化する遺伝子間の重複を示すベン図。(a~f、h)n=3個の独立した生物学的試料、2つの独立した実験で反復。(g、i)、n=3の独立した実験。(a~i)データは平均±s.d.である。*P≦0.05、**P≦0.01、対応のない両側t検定。
【
図10-1】
図10は、遺伝的および薬理学的介入の有効性を示す。
図10a、2つの異なるshRNA(a、b)によるノックダウンまたは
図10b、異所性cDNA発現を、
図2d、e、gに記載されているように老化細胞において実施した(「方法」も参照のこと)。それらの標的に対するこれらの操作の有効性を、RT-qPCRおよび免疫ブロッティングによって評価した。ゲルソースデータについては、
図16を参照。
図10c、三重(3X)介入後のRB1、TREX1およびFOXA1のmRNAおよびタンパク質発現(
図2f)。
図10d、老化細胞におけるL1HS配列の相対的存在量への3TC処理の効果を、全DNAに対するマルチプレックスTaqMan qPCRによって決定した(プライマーセット6、表1)。SENの開始、老化の0週(
図1a;
図6aの点A)。3TCを、SENの開始から16週間後の採取まで継続的に投与した。
図10e、二重ルシフェラーゼL1レポータ系
14を使用して、レトロ転位への3TC投与の効果を決定した。レンチウイルスベクターを使用してL1レポータを初期継代細胞に導入し(詳細については「方法」を参照)、細胞を3TCで4日間処理した後、回収し、アッセイした。JM111、ORF1に変異を担持する欠陥レポータ(3TCの非存在);L1RP、レトロ転位コンピテントレポータ。
図10f、IFN-I応答への3TC投与の効果。上記の実験(d)をRT-qPCRによって処理して、IFN-αおよびIFN-β1の発現を決定した。
図10g、L1のノックダウンを、老化細胞(
図2d、e、gのように)または3X細胞(
図2gのように)において2つの異なるshRNA(a、b)を用いて実施した。L1発現に対する有効性を、ポリ(A)精製RNAおよびプライマーFを使用したRT-qPCRによって評価した。
図10h、(g)の実験の細胞を免疫蛍光(IF)によってORF1タンパク質のレベルについて調べた。CellProfilerソフトウェア(詳細については「方法」を参照)を用いて画像分析を行った。>200個の細胞を各条件について調べた(a.f.u.、任意の蛍光単位)。
図10i、(g)の実験におけるL1 shRNA処理を、同じ期間、3TC処理(10μM)で置き換えた。
図10j、5つの異なるRTI(または組合せ)をIFN-I応答への効果について試験した。AZT(ジドブジン、15μM)、ABC(アバカビル、15μM)、FTC(エムトリシタビン、10μM)、3TC(別名ラミブジンまたはエピビル、10μM)、TZV(トリジビル、15μM AZT、15μM ABCおよび7.5μM 3TCの組合せ)。細胞を、老化の12週から16週(
図1a;
図1aの点Dおよび点E)の間の4週間処理した。最後の薬物選択の完了後48時間、3X細胞(
図2f)を3TCで処理した。IFN-α発現をRT-qPCRによって測定した。
図10k、天然のL1レポータ(pLD143)
15をshRNAプラスミドベクターでHeLa細胞に同時トランスフェクトした(詳細については「方法」を参照)。レトロ転位をGFP陽性細胞としてスコア化し、shL1ノックダウンをshLuc陰性対照に対して正規化した。絶対平均レトロ転位頻度(GFP陽性細胞のパーセンテージ)は4.1であり、これは、使用したレポータ(pLD143)についての公表値53と一致する。
図10l、cGASおよびSTINGのノックダウンを、他のshRNA(
図2d、e、gおよび上記のa、g)と同様に老化細胞または3X細胞において実施した。
図10m、IFNAR1およびIFNAR2遺伝子のCRISPR媒介不活性化後のインターフェロンシグナル伝達の下方制御が、インターフェロン刺激に応答したIRF9核移行およびSTAT2リン酸化の非存在によって検証された。細胞を、Cas9およびIFNAR1とIFNAR2の両方に対するgRNAを発現するレンチウイルスベクター(ΔIFNAR、「方法」を参照)に感染させた。感染後、細胞をカバーガラス上に再播種し、インターフェロンで2時間処理し、IF顕微鏡検査によって調べた。実験を3回繰り返し、同様の結果を得た。(a~i、l)n=3の独立した実験。(k)n=3の独立した生物学的試料、2つの独立した実験で反復。(a~l)データは平均±s.d.である。*P≦0.05、**P≦0.01、対応のない両側t検定。
【
図11-1】
図11は、老化細胞における細胞質DNAの特徴付けを示す。
図11a、静止細胞および老化細胞を
図3aのようにBrdUで処理し、BrdU取り込みの細胞局在をIF顕微鏡検査によって可視化した。増殖細胞、EP(Prol)は、核のBrdU取り込みの陽性対照として示されている。CellProfilerソフトウェア(右パネル、「方法」を参照)を使用してシグナルを定量化した。>200個の細胞を各条件について調べた(a.f.u.、任意の蛍光単位)。
図11b、老化(およびEP対照)細胞(いずれもBrdUで標識されていない)を核画分および細胞質画分に分画し、これらの区画(ならびに全細胞)内のL1配列の表示を
図3aのようにqPCRで評価した(TaqManマルチプレックスqPCRアッセイ16、アンプリコンF、
図1b)。Y軸の単位は左右のパネルで10倍異なることに留意されたい。
図11c、細胞を、ORF1タンパク質、RNA-DNAハイブリッド、および一本鎖DNA(ssDNA)の存在についてIF顕微鏡検査によって調べた。抗体については、「方法」および表2を参照。老化細胞におけるRNA-DNAシグナルは、大部分がORF1シグナルと共局在し、RNase A処理後に失われた。ssDNAシグナルもORF1シグナルと共局在し、RNase処理によって曝露された。実験を3回繰り返し、同様の結果を得た。
図11d、プルダウンされたBrdU含有DNA(
図3c、上記のパネル(a)、「方法」を参照)をクローニングし、サンガー配列決定した。調べた96個の全クローンのうち、37個がL1にマッピングされた。赤色のボックスは、L1コンセンサス配列上のこれらのクローンの相対的位置を表す。
図11e、BrdUで標識された老化細胞(
図3c、上記のパネル(a))を抗BrdU抗体で免疫沈降させ、プルダウンされたDNA中のL1配列の表示を、L1エレメント全体にわたるプライマーを用いたqPCRを使用して評価した(
図1b、c)。
図11f、老化細胞を、老化の12週から16週の間、L1 shRNAで処理し(
図10gに記載されているようにレンチウイルスベクターを使用)、SASP遺伝子の発現を測定した。
図11g、マウスL1エレメント全体の転写を、ヒトL1エレメントに適用したのと同じ戦略を使用して鎖特異的な方法で評価した(
図1b、c)。アンプリコン(ヒト特異的プライマーと区別するためにW~Zと指定)は、5'UTR(W)、Orf1(X)、Orf2(Y)および3'UTR(Z)に対応する。プライマー配列(プライマーセット37、48~50)については「方法」および表1も参照のこと。ポリ(A)RNAを雄の白色脂肪組織から調製した。合計12匹の動物(それぞれ4匹の動物の3つのプール)を3つの独立した実験で評価した。
図11h、マウスL1エレメントの3つの現在活性なファミリーの発現。プライマーを、MdA、MdNおよびTfファミリーの5'UTR多型を区別するように設計した(「方法」、表1のプライマーセット51~53を参照)。RT-qPCRを上記(f)のように実施した(非鎖特異的)。(a、b、e)、n=3の独立した生物学的試料、2つの独立した実験で反復。(f)、n=3の独立した実験。(a、e~h)データは平均±s.d.である。*P≦0.05、**P≦0.01。(a)Tukeyの多重比較検定を用いた一元配置分散分析、(b、e~h)対応のない両側t検定。
【
図12-1】
図12は、IFN-IおよびSASP応答の発現に対するL1活性化、細胞質DNAセンシング経路、またはインターフェロンシグナル伝達の除去の影響を示す。
図12a、
図10g、iに記載されているように、3X細胞をL1 shRNAまたは3TCで48時間処理した。IFN-I応答への効果をRT-qPCR、ELISAまたは免疫ブロッティングによって決定した。ゲルソースデータについては、
図16を参照。
図12b、細胞を、
図3fのように3TC(10μM)が全体にわたって存在する複製老化(RS)に連続継代し、Cdk阻害因子p21およびp16の発現をRT-qPCRによって評価した。
図12c、老化細胞を、老化の12週から16週の間、cGASまたはSTINGに対するshRNAで処理し(
図10lに記載されているように)、IFN-I応答遺伝子(IFN-α、IRF7、OAS1)の発現を測定した。
図12d、cGASおよびSTINGノックダウンを、3X細胞においてshRNAを用いて実施し(上記のパネル(c)のように)、IFN-I遺伝子の発現をRT-qPCRによって調べた。
図12e、cGASおよびSTINGを、shRNAを用いて老化細胞においてノックダウンし(上記のパネル(c)のように)、SASP応答遺伝子(IL-1β、CCL2、IL-6、MMP3)の発現をRT-qPCRによってアッセイした。
図12f、g、K-9の活性を老化細胞および3X細胞において3TCと比較した。老化培養物を12週から16週の間処理し(
図3bのように)、3X培養物を48時間処理した(上記パネル(a)のように)。IFN-I遺伝子(IFN-α、IRF7、OAS1)およびSASP遺伝子(IL-1β、IL-6、MMP3)の発現への効果をRT-qPCRによって評価した。(a~g)、n=3の独立した実験。(a~g)データは平均±s.d.である。*P≦0.05、**P≦0.01、対応のない両側t検定。
【
図13-1】
図13は、老化細胞および老齢のヒト由来の皮膚標本におけるp16、L1 ORF1およびpSTAT1発現の評価を示す。
図13a、初期継代、3Xおよび老化細胞におけるp16およびORF1の免疫蛍光(IF)検出。
図13b、ヒト真皮におけるコンビナトリアルORF1およびp16またはORF1pおよびpSTAT1染色の代表的な画像。パネル(a、b)に示す実験を独立して3回繰り返し、同様の結果を得た。
図13c、「方法」に記載されているように、細胞をカバーガラス上にプレーティングし、染色し、定量化した。複数の視野における200個の細胞を各条件についてスコア化した。a.f.u.、任意の蛍光単位。挿入図は、各象限に見られる細胞の%を示す。
図13d、e、ヒト皮膚におけるORF1およびp16またはpSTAT1細胞の存在量。皮膚生検を、「方法」に記載されているように凍結切片化し、染色した。複数の視野における200個の皮膚線維芽細胞を各対象についてスコア化した。4人の対象(800個の細胞)の集合データを示す。
図13f、(c)および(d)のデータを再計算して、すべての細胞中のp16+細胞、および細胞のp16+プール中のORF1+細胞の相対的存在量を示した。
図13g、(e)のデータを(f)のように再計算した。
図13h、皮膚線維芽細胞の分析に使用されるヒト対象の特性。これらの標本は、進行中のライデン寿命試験(Leiden Longevity Study)の一部として収集された
16。本明細書で使用した標本は、残った材料からランダムに選択された。TIFアッセイ
17は、テロメアの2パラメータ(色)可視化(FISHプローブを使用)およびDNA損傷病巣の免疫蛍光検出(53BP1に対する抗体を使用)に依存する。材料が限られているため、3色実験においてp16の検出をTIFと組み合わせることはできなかった。
【
図14-1】
図14は、マウス組織におけるL1、p16、IFN-IおよびSASP遺伝子発現への3TCまたはK-9処置の効果を示す。
図14a~c、示されている月齢のマウスを2週間連続して3TCで処置した(
図4c、e、
図15d~f、および「方法」も参照のこと)。すべての条件について、L1 mRNA、p16、3つの代表的なIFN-I応答遺伝子(Ifn-α、Irf7、Oas1)および3つの代表的なSASP遺伝子(Il-6、Mmp3、Pai1)の発現をRT-qPCRによって評価した。5ヶ月の+3TCでの発現は薬物なしの対照と有意に異ならなかった;したがって、これらのデータは図には示されていない(収集されたすべてのデータについては、表7を参照)。箱ひげ図は、データの範囲(ひげ)、25パーセンタイルと75パーセンタイル(ボックス)、平均(破線)、および中央値(実線)を示す。各点は1匹の動物を表す。
図14a、内臓白色脂肪、雄性マウス。5ヶ月、n=8匹の動物;26ヶ月、n=12匹の動物;26ヶ月+3TC、n=12匹の動物。
図14b、内臓白色脂肪、雌性マウス。5ヶ月、n=8匹の動物;26ヶ月、n=12匹の動物;26ヶ月+3TC、n=12匹の動物。
図14c、肝臓、雄性マウス。5ヶ月、n=8匹の動物;26ヶ月、n=10匹の動物;26ヶ月+3TC、n=10匹の動物。
図14d、26ヶ月齢のマウスを飲料水中のK-9または3TCで2週間処置し、上記のようにRT-qPCRによって分析した。NT、未処理。内臓白色脂肪、雄性マウス、各群につきn=7匹の動物。データは平均±s.d.である。*P≦0.05、**P≦0.01、Tukeyの多重比較検定を用いた一元配置分散分析。
【
図15-1】
図15は、老化、IFN-I、SASPおよびL1マーカのコンビナトリアル評価、ならびにマウス組織における加齢関連表現型に対する3TCの効果を示す。
図15a、b、ホールマウントIFを、5ヶ月齢および26ヶ月齢(2週間の3TC処置ありおよびなし)の雄性マウスの白色脂肪に対して実施した。(a)では、ラミンB1(老化マーカ)の喪失がIL-6(SASPマーカ)と共局在した。(b)では、pStat1(IFN-Iマーカ)がOrf1(L1マーカ)と共局在した。
図15c、(a)および(b)に示す実験の定量化。各条件について、4匹の動物および動物あたり少なくとも200個の細胞をスコア化した。
図15d、中性脂質をBODIPYで染色して、ホールマウント調製物中の成熟脂肪細胞を可視化し、F4/80抗体を使用したIFによってマクロファージを検出した。
図15e、脂肪生成に対する2週間の3TC処置の効果を、平均脂肪細胞サイズを測定することによって(左パネル)、および重要な脂肪生成遺伝子(右パネル;Acaca、アセチル-CoAカルボキシラーゼ1;Cebpa、CCAAT/エンハンサ結合タンパク質アルファ;Fasn、脂肪酸シンターゼ;Srebp1、ステロール調節エレメント結合タンパク質1)の発現を決定するためのRT-qPCRによって評価した。箱ひげ図は、データの範囲(ひげ)、25パーセンタイルと75パーセンタイル(ボックス)、平均(破線)、および中央値(実線)を示す。脂肪細胞のサイズ(BODIPY染色面積)を、CellProfilerを使用して計算し、5匹の動物および500個の総細胞の集合データを示している。RT-qPCRデータの場合、各点は1匹の動物を表す;n=6匹の動物。
図15f、褐色脂肪組織におけるUcp1遺伝子(サーモゲニン)の発現をRT-qPCRによって決定し、(e)のように表している。n=5匹の動物。
図15g、L1 mRNAの発現をRT-qPCRによって決定し、(e)のように表している。5ヶ月、n=8匹の動物;26ヶ月、n=12匹の動物;29ヶ月、n=6匹の動物。(e~g)データは平均±s.d.である。*P≦0.05、**P≦0.01。(c、eの左パネル、f、g)Tukeyの多重比較検定を用いた一元配置分散分析、(eの右パネル)対応のない両側t検定。
【
図16-1】
図16は生の免疫ブロットのスキャンを示す。
図16A:パネルaは、ブロット1-RB1:1.EP;2.SEN(L);3.OE-SEN;4.SEN(E)を示す;パネルbは、ブロット2-TREX1:1.EP;2.SEN(E);3.SEN(L)を示す;およびパネルcは、ブロット3-FOXA1:1.EP;2.停止;3.SEN(E);4.SEN(L)を示す。
図16B:パネルdは、ブロット4-RB1:1.EP;2.3Xを示す;パネルeは、ブロット5-TREX1:1.EP;2.3Xを示す;およびパネルfは、ブロット6-FOXA1:1.EP;2.3Xを示す。
図16C:パネルgは、ブロット7-RB1:1.SEN(L);2.shRB1(b);3.shRB1(a);4.OE-RB1を示す;パネルhは、ブロット8-TREX1:1.SEN(L);2.shTREX1(b);3.shTREX1(a);4.OE-TREX1を示す;およびパネルiは、ブロット9-FOXA1:1.shFOXA1(a);2.shFOXA1(b);3.SEN(L);4.OE-FOXA1を示す。
図16D:パネルjは、ブロット10-STAT2:1.3X;2.shL1;3.NRTI;4.ΔIFNAR;5.EPを示す;パネルkは、ブロット11-IRF7:1.EP;2.shL1;3.3X;4.shL1;5.ΔIFNARを示す;パネルlは、ブロット12-STAT2:1.SEN(L);2.ΔIFNAR;3.shL1;4.NRTIを示す;およびパネルmは、ブロット13-IRF7:5.SEN(L);6.ΔIFNAR;7.shL1;8.NRTIを示す。
図16E:パネルnは、ブロット14-p16(CDKN2A):1.EP;2.SEN(E);3.SEN(L)を示す;およびパネルoは、ブロット15-p21(CDKN1A):1.EP;2.SEN(E);3.SEN(L)を示す。
【
図17】
図17は、L1配列の存在量、インターフェロン遺伝子発現、およびSASP遺伝子発現の老化誘導性増加に対するアデホビルおよびラミブジンの効果を示す。
図17aは、qPCRアッセイを使用した、3つの異なるヒト線維芽細胞株:LF1、IMR90、WI38におけるL1配列存在量(コピー数)に対する5μMのアデホビルおよびラミブジンの効果を示す。
図17bは、2つの細胞株(LF1およびIMR90)における2つのインターフェロン遺伝子(IFN-αおよびIFN-β1)のインターフェロン遺伝子発現に対する5μMのアデホビルおよびラミブジンの効果を示す。
図17cは、LF1細胞株における2つのSASP遺伝子(IL-6およびMMP3)に対する5μMのアデホビルおよびラミブジンの効果を示す。
図17dは、LF1細胞株におけるインターフェロン遺伝子発現(IFN-αおよびIFN-β1)に対するより高用量のアデホビルおよびラミブジン(10μMおよび50μM)の効果を示す。
【
図18A】
図18は、8つのRTI化合物:ラミブジン(3TC);スタブジン;エムトリシタビン;アプリシタビン;テノフィルジシプロキシル(Tenofir Disiproxil);センサブジン;エルブシタビン;およびテノフィルによるマウスL1活性の阻害を示す。第1の実験(
図18A)および第2の独立した実験(
図18B)において、HeLa細胞を使用して活性マウスLINE-1のレトロ転位活性に対する用量反応を得た。
【
図19】
図19は、3つのRTI化合物:ラミブジン(3TC);センサブジン;およびエルブシタビンによるヒトL1活性の阻害を示す。ラミブジン(3TC);センサブジン;およびエルブシタビンを使用した第1の実験(
図19A)、ならびにラミブジン(3TC)およびエルブシタビンを使用した第2の実験(
図19B)において、HeLa細胞を使用して活性ヒトLINE-1のレトロ転位活性に対する用量反応を得た。
【
図20】
図20は、10種の異なるRTI化合物:ラミブジン(3TC);スタブジン;エムトリシタビン;アプリシタビン;テノフィルジシプロキシル;センサブジン;エルブシタビン;テノフィル;およびスタウロスポリンで処理した後のHeLa細胞の細胞生存率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明の実質的な理解を提供するために、本発明の特定の局面、方法、態様、変形および特徴が様々なレベルの詳細さで以下に説明されることが理解されるべきである。
【0026】
特定の局面(1つまたは複数)の以下の説明は、本質的に単なる例示であり、決して本発明の範囲、その適用、または使用を限定することを意図するものではなく、それらは、当然ながら変化し得る。本発明は、本明細書に含まれる非限定的な定義および用語に関連して説明される。これらの定義および用語は、本発明の範囲または実施に対する限定として機能するようには設計されておらず、例示および説明の目的でのみ提示されている。組成物またはプロセスは、特定の材料または個々の工程の順序を使用するものとして説明されているが、当業者によって容易に理解されるように、本発明の説明が多くの方法で配置された複数の部分または工程を含み得るように、材料または工程は交換可能であり得ることが理解される。
【0027】
定義
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語の定義を以下に提供する。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、一般に、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0028】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「細胞(a cell)」への言及は、2つまたはそれ以上の細胞の組合せなどを含む。
【0029】
値またはパラメータに関する「およそ」または「約」という用語は、一般に、特に明記されない限り、または文脈から明らかでない限り、数のいずれかの方向(より大きいまたはより小さい)で5%、10%、15%、または20%の範囲内に入る数を含むと解釈される(そのような数が可能な値の0%未満であるかまたは100%を超える場合を除く)。本明細書で使用される場合、値またはパラメータの「およそ」または「約」への言及は、その値またはパラメータに関する態様を含む(および説明する)。例えば、「約X」に言及する説明は、「X」の説明を含む。
【0030】
本明細書で使用される場合、「または」という用語は、「および/または」を意味する。本明細書で「Aおよび/またはB」などの語句で使用される「および/または」という用語は、AとBの両方;AまたはB;A(単独);およびB(単独)を含むことが意図されている。同様に、「A、B、および/またはC」などの語句で使用される「および/または」という用語は、以下の態様:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)のそれぞれを包含することを意図されている。
【0031】
態様が「含む」という文言で本明細書に記載されている場合は常に、「からなる」および/または「本質的にからなる」に関して記載されている他の類似の態様も提供されることが理解される。また、態様が「本質的にからなる」という文言で本明細書に記載されている場合は常に、「からなる」に関して記載されている他の類似の態様も提供されることが理解される。
【0032】
明確にするために、別個の態様の文脈で本明細書に記載されている本発明の特定の特徴はまた、単一の態様において組み合わせて提供され得ることが理解されるべきである。逆に、簡潔にするために、単一の態様の文脈で説明されている本発明の様々な特徴はまた、別個にまたは任意の部分的組合せで提供され得る。さらに、範囲に記載されている値への言及は、その範囲内のありとあらゆる値を含む。
【0033】
「対象」という用語は、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、げっ歯動物、または霊長動物を含むがこれらに限定されるわけではない哺乳動物を指す。対象は、家庭用ペット(例えば、イヌ、ネコ)、農業用家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ニワトリなど)、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギなど)であり得るが、そのように限定されるわけではない。対象にはヒト対象が含まれる。ヒト対象は、小児対象、成人対象または高齢対象であり得る。ヒト対象は、どちらの性別であってもよい。
【0034】
「有効量」および「治療有効量」という用語は、加齢関連障害などの疾患または医学的状態の症状発現を予防または改善するのに十分な量を含む。所与の用途の有効量を決定するための当技術分野で公知の多くの方法があることが理解されよう。例えば、投薬量決定のための薬理学的方法は、治療状況で使用され得る。治療的または予防的適用の文脈において、対象に投与される組成物の量は、疾患の種類および重症度ならびに対象の特徴、例えば全身の健康、年齢、性別、体重および薬物に対する耐性に依存する。また、疾患の程度、重症度および種類にも依存する。当業者は、これらおよび他の要因に応じて適切な投与量を決定することができるであろう。組成物はまた、1つまたは複数のさらなる治療用化合物と組み合わせて投与することができる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「治療すること」または「治療」または「治療する」または「緩和すること」または「緩和する」という用語は、(1)診断された疾患または感染症を治癒する、減速させる、症状を軽減する、および/または進行を停止させる治療的手段と、(2)疾患または感染症の発症を予防するまたは遅らせる予防的または防止手段の両方を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「長期」投与という用語は、治療薬または薬物が少なくとも12週間の期間投与されることを意味する。これは、治療薬または薬物が、少なくとも12週間を超えてまたは少なくとも12週間のあいだ有効であるように投与されることを含み、例えば、徐放性組成物または長時間作用型治療薬または薬物が使用される場合、投与自体が12週間行われることを必ずしも意味しない。したがって、対象は、少なくとも12週間の期間治療される。多くの場合、長期投与は、少なくとも4、5、6、7、8、9ヶ月間もしくはそれ以上、または少なくとも1、2、3、5、7もしくは10年間もしくはそれ以上である。
【0037】
本明細書で使用される場合、「加齢性炎症」(または「加齢関連炎症」)という用語は、炎症、典型的には慢性、特に加齢と共に起こる慢性全身性炎症である。そのような炎症は、30、35または40歳を超えて観察され得るが、典型的には45、50、55または60歳またはそれ以上の対象に見られる。多くの場合、これは低レベルの炎症であり得る。
【0038】
本明細書で使用される場合、「慢性炎症」という用語は、対象の体内で持続的であるかまたは長期間にわたる炎症(例えば、炎症状態)を意味する。一般的に言えば、これは、20、25もしくは30日もしくはそれ以上または1ヶ月もしくはそれ以上、より具体的には少なくとも2もしくは3ヶ月もしくはそれ以上の持続期間の炎症反応または状態を意味する。慢性炎症は、炎症部位に存在する細胞のタイプの進行性の変化をもたらす。慢性炎症は、特に変性疾患、または若い機能の喪失もしくは老化に関連する疾患もしくは状態を含む、多くの疾患または障害の発症の要因であり得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、「全身性炎症」という用語は、体内の特定の組織または部位または位置に限定されない炎症である。炎症は全身に広がり得る。全身性炎症は、典型的には、内皮および他の器官系を含む。
【0040】
本明細書で使用される場合、「低レベルの炎症」という用語(この用語は本明細書では「低悪性度の炎症」と同義として使用される)は、例えば、血漿または血清中で測定される場合、TNFα、IL-6、およびCRPなどのサイトカインの全身濃度の2~3倍の増加を特徴とする。増加は、正常濃度または基準濃度、例えば特定の基準コホートまたは対象の集団、例えば、若年対象(例えば、若年成人)または健常対象、例えば炎症性疾患を含む疾患もしくは状態に罹患していない対象、または炎症を有していない対象で決定される濃度に対して、またはそれとの比較として、であり得る。増加はまた、炎症の発症前の対象における濃度のレベルに対してであり得る。低レベルの炎症は、疾患の明白な徴候または症状がない場合に観察され得る。したがって、低レベルの炎症は亜臨床的炎症であり得る。あるいは、低レベルの炎症を有する対象は、臨床的に診断された状態または疾患を有さない可能性があるが、炎症反応または炎症状態の特定の徴候または症状を示し得る。言い換えれば、体内に炎症の影響の徴候または症状が存在し得るが、これはまだ明白なまたは認識された疾患に進行していない可能性がある。
【0041】
本明細書で使用される場合、「癌炎症」という用語は、癌の状況で発生する炎症であり、代替的に「癌関連炎症」と定義され得る。炎症は、癌の特徴として同定されており、腫瘍形成および癌状態の維持に必要であり得る。癌症状は炎症に関連する。したがって、癌を有する対象は、炎症を有するかまたは示す可能性があり、これは、上記で論じたような低レベルまたは末梢炎症、特に上記で論じたような慢性または全身性炎症であり得る。
【0042】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書で定義されるような用語は、関連技術および本開示の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的にそのように定義されない限り、理想化されたまたは過度に形式的な意味で解釈されないことがさらに理解される。
【0043】
薬学的組成物
本発明の組成物および方法は、その必要がある個体を治療するために利用され得る。特定の態様では、個体は、ヒトなどの哺乳動物、または非ヒト哺乳動物である。ヒトなどの動物に投与される場合、組成物または化合物は、好ましくは、例えば、本発明の化合物および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物として投与される。薬学的に許容される担体は当技術分野で周知であり、例えば、水もしくは生理学的に緩衝された生理食塩水などの水溶液、またはグリコール、グリセロール、オリーブ油などの油、もしくは注射可能な有機エステルなどの他の溶媒もしくはビヒクルが含まれる。好ましい態様では、そのような薬学的組成物がヒトへの投与用、特に侵襲的投与経路(すなわち、上皮バリアを通る輸送または拡散を回避する注入または移植などの経路)用である場合、水溶液は発熱物質を含まないか、または発熱物質を実質的に含まない。賦形剤は、例えば、薬剤の遅延放出をもたらすために、または1つもしくは複数の細胞、組織もしくは器官を選択的に標的とするために選択することができる。薬学的組成物は、錠剤、カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、顆粒剤、再構成用凍結乾燥製剤、散剤、液剤、シロップ、坐剤、注射剤などの投薬単位剤形であり得る。組成物はまた、経皮送達システム、例えば皮膚パッチ中に存在することができる。組成物はまた、ローション、クリーム、または軟膏などの局所投与に適した溶液中に存在することができる。
【0044】
薬学的に許容される担体は、例えば、本発明の化合物などの化合物を安定化する、溶解度を高める、または吸収を高めるように作用する生理学的に許容される薬剤を含むことができる。そのような生理学的に許容される薬剤には、例えば、グルコース、スクロースもしくはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸もしくはグルタチオンなどの抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質または他の安定剤もしくは賦形剤が含まれる。生理学的に許容される薬剤を含む薬学的に許容される担体の選択は、例えば、組成物の投与経路に依存する。調製物または薬学的組成物は、自己乳化型薬物送達システムまたは自己マイクロ乳化型薬物送達システムであり得る。薬学的組成物(調製物)はまた、例えば、本発明の化合物をその中に組み込むことができる、リポソームまたは他のポリマーマトリックスであり得る。例えば、リン脂質または他の脂質を含むリポソームは、作製および投与が比較的簡単な、非毒性で、生理学的に許容され、代謝可能な担体である。
【0045】
「薬学的に許容される」という語句は、健全な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずにヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適した化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために本明細書で使用される。
【0046】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という語句は、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入材料などの薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性であり、患者に有害ではないという意味で「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体として役立つことができる材料のいくつかの例には、以下が含まれる:(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;(2)トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;(3)セルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオバターおよび坐剤ワックスなどの賦形剤;(9)落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、大豆油などの油;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;ならびに(21)薬学的製剤に使用される他の非毒性の適合性物質。
【0047】
薬学的組成物(調製物)は、例えば、経口(例えば、水溶液または非水溶液または懸濁液のようなドレンチ剤、錠剤、カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、ボーラス、散剤、顆粒剤、舌に塗布するためのペースト);口腔粘膜を介した吸収(例えば、舌下);皮下;経皮(例えば、皮膚に貼付されるパッチとして);ならびに局所(例えば、皮膚に塗布されるクリーム、軟膏またはスプレーとして)を含むいくつかの投与経路のいずれかによって対象に投与することができる。化合物はまた、吸入用に製剤化され得る。特定の態様では、化合物は、滅菌水に単に溶解または懸濁され得る。適切な投与経路およびそれに適した組成物の詳細は、例えば、米国特許第6,110,973号;同第5,763,493号;同第5,731,000号;同第5,541,231号;同第5,427,798号;同第5,358,970号;および同第4,172,896号、ならびにその中で引用されている特許に見出すことができる。
【0048】
製剤は、単位剤形で好都合に提供され得、薬学の技術分野で周知の任意の方法によって調製され得る。単一剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、治療される宿主、特定の投与様式に応じて変化する。単一剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に、治療効果を生じる化合物の量である。一般に、100%のうち、この量は、活性成分の約1%~約99%、好ましくは約5%~約70%、最も好ましくは約10%~約30%の範囲である。
【0049】
これらの製剤または組成物を調製する方法は、本発明の化合物などの活性化合物を担体および、任意で、1つまたは複数の副成分と結合させる工程を含む。一般に、製剤は、本発明の化合物を液体担体、または微細に分割された固体担体、またはその両方と均一かつ密接に結合させ、次いで、必要に応じて生成物を成形する工程によって調製される。
【0050】
経口投与に適した本発明の製剤は、カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(風味付けした基剤、通常はスクロースおよびアカシアもしくはトラガカントを使用する)、凍結乾燥製剤、散剤、顆粒剤の形態であり得るか、または水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油型もしくは油中水型液体エマルジョンとして、またはエリキシル剤もしくはシロップとして、またはトローチ剤(ゼラチンおよびグリセリン、もしくはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤を使用する)として、ならびに/または口内洗浄液などとしてであり得、それぞれが所定量の本発明の化合物を活性成分として含む。組成物または化合物は、ボーラス、舐剤またはペーストとしても投与され得る。
【0051】
経口投与用の固体剤形(カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤など)を調製するために、活性成分を、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの1つまたは複数の薬学的に許容される担体、および/または以下のいずれかと混合する:(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸などの充填剤または増量剤;(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシアなどの結合剤;(3)グリセロールなどの保湿剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5)パラフィンなどの溶解遅延剤;(6)第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(7)例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなどの湿潤剤;(8)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの潤滑剤;(10)修飾および非修飾シクロデキストリンなどの錯化剤;ならびに(11)着色剤。カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、錠剤および丸剤の場合、薬学的組成物は緩衝剤も含み得る。同様のタイプの固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として使用され得る。
【0052】
錠剤は、任意で1つまたは複数の副成分と共に、圧縮または成形によって作製され得る。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤または分散剤を使用して調製され得る。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械で成形することによって作製され得る。
【0053】
錠剤、ならびに糖衣錠、カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、丸剤および顆粒剤などの薬学的組成物の他の固体剤形は、任意で、腸溶コーティングおよび薬学的製剤分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて割線を入れるかまたは調製され得る。それらはまた、例えば、所望の放出プロフィールを提供するための様々な比率のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフェアを使用して、その中の活性成分の徐放または制御放出を提供するように製剤化され得る。それらは、例えば、細菌保持フィルタでの濾過によって、または使用直前に滅菌水もしくは他の何らかの滅菌注射用媒体に溶解することができる滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を組み込むことによって滅菌され得る。これらの組成物はまた、任意で乳白剤を含んでもよく、活性成分(1つまたは複数)を胃腸管の特定の部分においてのみ、または優先的に、任意で遅延した方法で放出する組成物であり得る。使用され得る埋め込み組成物の例には、ポリマー物質およびワックスが含まれる。活性成分はまた、適切な場合、上記の賦形剤の1つまたは複数と共にマイクロカプセル化された形態であり得る。
【0054】
経口投与に有用な液体剤形には、薬学的に許容されるエマルジョン、再構成用の凍結乾燥製剤、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップおよびエリキシル剤が含まれる。活性成分に加えて、液体剤形は、当技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、シクロデキストリンおよびその誘導体、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含み得る。
【0055】
不活性希釈剤に加えて、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤および防腐剤などの補助剤も含むことができる。
【0056】
懸濁液は、活性化合物に加えて、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにそれらの混合物などの懸濁剤を含み得る。
【0057】
局所または経皮投与用の剤形には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入剤が含まれる。活性化合物は、滅菌条件下で薬学的に許容される担体、および必要とされ得る任意の防腐剤、緩衝剤または噴射剤と混合され得る。
【0058】
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、活性化合物に加えて、動物性および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはそれらの混合物などの賦形剤を含み得る。
【0059】
粉末およびスプレーは、活性化合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含むことができる。スプレーは、クロロフルオロ炭化水素ならびにブタンおよびプロパンなどの揮発性非置換炭化水素などの慣用的な噴射剤をさらに含むことができる。
【0060】
経皮パッチは、本発明の化合物の身体への制御された送達を提供するというさらなる利点を有する。そのような剤形は、活性化合物を適切な媒体に溶解または分散させることによって作製することができる。吸収促進剤を使用して、皮膚を横切る化合物の流動を増加させることもできる。そのような流動の速度は、速度制御膜を提供するか、または化合物をポリマーマトリックスまたはゲルに分散させることによって制御することができる。
【0061】
本明細書で使用される「非経口投与」および「非経口的に投与される」という語句は、通常は注射による、経腸および局所投与以外の投与様式を意味し、限定されることなく、静脈内、眼内(硝子体内など)、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内および胸骨内の注射および注入が含まれる。非経口投与に適した薬学的組成物は、1つまたは複数の活性化合物を、1つまたは複数の薬学的に許容される滅菌等張水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液もしくはエマルジョン、または使用直前に滅菌注射液もしくは分散液に再構成され得る滅菌粉末と組み合わせて含み、これは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、製剤を意図するレシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含み得る。
【0062】
本発明の薬学的組成物に使用され得る適切な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが含まれる。本発明の薬学的組成物に使用され得る適切な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが含まれる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散液の場合には必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散液の場合には必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0063】
これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などの補助剤を含み得る。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確保され得る。また、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含めることが望ましい場合がある。さらに、注射用薬学的形態の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を含めることによってもたらされ得る。
【0064】
場合によっては、薬物の効果を延長するために、皮下注射または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅らせることが望ましい。これは、水溶解度が低い結晶性または非晶質材料の液体懸濁液の使用によって達成され得る。薬物の吸収速度はその溶解速度に依存し、次に、溶解速度は結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。あるいは、非経口投与された薬物形態の遅延吸収は、薬物を油性ビヒクルに溶解または懸濁することによって達成される。
【0065】
注射用デポ形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で対象化合物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作製される。薬物対ポリマーの比率、および使用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が含まれる。デポ注射用製剤はまた、体組織と適合性のリポソームまたはマイクロエマルジョンに薬物を封入することによって調製される。
【0066】
本発明の方法で使用するために、活性化合物は、それ自体で、または例えば、薬学的に許容される担体と組み合わせて0.1~99.5%(より好ましくは0.5~90%)の活性成分を含む薬学的組成物として与えることができる。
【0067】
導入の方法はまた、再充電可能なデバイスまたは生分解性デバイスによって提供され得る。タンパク質性バイオ医薬品を含む薬物の制御送達のために、近年、様々な徐放性ポリマーデバイスが開発され、インビボで試験されている。生分解性ポリマーおよび非分解性ポリマーの両方を含む様々な生体適合性ポリマー(ヒドロゲルを含む)を使用して、特定の標的部位で化合物を徐放するためのインプラントを形成することができる。
【0068】
薬学的組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に対する毒性を伴わずに、特定の患者、組成物、および投与様式に対して所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量が得られるように変化させ得る。
【0069】
選択される投与量レベルは、使用される特定の化合物もしくは化合物の組合せ、またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物(1つまたは複数)の排泄速度、治療期間、使用される特定の化合物(1つまたは複数)と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康および以前の病歴、ならびに医学分野で周知の同様の要因を含む様々な要因に依存する。
【0070】
当技術分野の医師または獣医は、必要とされる薬学的組成物の治療有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医は、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで薬学的組成物または化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることができる。「治療有効量」とは、所望の治療効果を引き出すのに十分な化合物の濃度を意味する。化合物の有効量は、対象の体重、性別、年齢、および病歴に応じて変化することが一般に理解されている。有効量に影響を及ぼす他の因子には、患者の状態の重症度、治療される障害、化合物の安定性、および所望する場合は、本発明の化合物と共に投与される別の種類の治療薬が含まれ得るが、これらに限定されるわけではない。薬剤の複数回投与によって、より多くの総用量を送達することができる。有効性および投与量を決定する方法は、当業者に公知である18。
【0071】
一般に、本発明の組成物および方法で使用される活性化合物の適切な1日用量は、治療効果をもたらすのに有効な最低用量である化合物の量である。そのような有効用量は、一般に上記の因子に依存する。
【0072】
所望する場合、活性化合物の有効1日用量は、1日を通して適切な間隔で別々に投与される1、2、3、4、5、6またはそれ以上のサブ用量として、任意で単位剤形で投与され得る。本発明の特定の態様では、活性化合物は、1日に2回または3回投与され得る。他の態様では、活性化合物は1日1回投与される。
【0073】
この治療を受ける患者は、霊長動物、特にヒト、ならびにウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ネコ、およびイヌなどの他の哺乳動物、家禽、ならびにペット全般を含む、必要のある任意の動物である。
【0074】
特定の態様では、本発明の化合物は、単独で使用され得るか、または別の種類の治療薬と一緒に投与され得る。
【0075】
本開示は、本発明の組成物および方法における本発明の化合物の薬学的に許容される塩の使用を含む。特定の態様では、本発明の企図される塩には、アルキル、ジアルキル、トリアルキルまたはテトラアルキルアンモニウム塩が含まれるが、これらに限定されるわけではない。特定の態様では、本発明の企図される塩には、L-アルギニン、ベネタミン、ベンザチン、ベタイン、水酸化カルシウム、コリン、デアノール、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2-(ジエチルアミノ)エタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、ヒドラバミン、1H-イミダゾール、リチウム、L-リジン、マグネシウム、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、ピペラジン、カリウム、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、ナトリウム、トリエタノールアミン、トロメタミン、および亜鉛塩が含まれるが、これらに限定されるわけではない。特定の態様では、本発明の企図される塩には、Na、Ca、K、Mg、Znまたは他の金属塩が含まれるが、これらに限定されるわけではない。特定の態様では、本発明の企図される塩には、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2,2-ジクロロ酢酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-オキソグルタル酸、4-アセトアミド安息香酸、4-アミノサリチル酸、酢酸、アジピン酸、l-アスコルビン酸、l-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、(+)-ショウノウ酸、(+)-カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸(デカン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、d-グルコヘプトン酸、d-グルコン酸、d-グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、l-リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、l-ピログルタミン酸、サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、l-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、およびウンデシレン酸の塩が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0076】
薬学的に許容される酸付加塩は、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミドなどとの様々な溶媒和物として存在することもできる。そのような溶媒和物の混合物も調製することができる。そのような溶媒和物の供給源は、結晶化の溶媒由来のもの、調製もしくは結晶化の溶媒に固有のもの、またはそのような溶媒に付随的なものであり得る。
【0077】
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤および潤滑剤、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、防腐剤および抗酸化剤も組成物中に存在することができる。
【0078】
薬学的に許容される抗酸化剤の例には、(1)アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤;および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤が含まれる。
【0079】
老化および加齢関連疾患における細胞老化の役割
図5は、加齢関連無菌性炎症につながる細胞老化の分子経路を概説するフローチャートを提供しており、これを以下でさらに詳細に説明する。
【0080】
レトロトランスポーザブルエレメント(RTE)の上方制御
RTEは、老化細胞19およびいくつかのマウス組織20で転写的に活性化されることが公知である。3つの調節因子がL1の調節に関与することが以前に示されている:FOXA1、RB、TREX1。FOXA1は、老化細胞で上方制御され21、L1プロモータに結合する22ことが報告された。RBは、L1エレメントを抑制することが報告されている23。TREX1の完全な喪失(生殖系列欠失)は、L1活性化に関連する自己免疫疾患(エカルディ・グティエール症候群、AGS)を引き起こすことが報告されている24。
【0081】
これらの3つの調節因子がL1の調節において役割を有することが報告されていたが、本開示のデータは、これらの3つの因子の組合せの誤調節が正常細胞における内因性L1エレメントの活性化を可能にするのに十分であることの最初の実証を提供する。実施例2を参照。さらに、本開示は、別個の時間的な、これまで知られていなかった老化の段階としての後期老化、ならびにL1エレメントの上方制御およびIFN-I応答の誘発を特徴とする後期老化の最初の説明を提供する。実施例1を参照。
【0082】
細胞質L1 cDNAの蓄積
細胞質L1 cDNAの存在は公知である。1つの供給源はミトコンドリア由来であることが示されている25。核は、老化細胞において染色体DNAを細胞質に「漏出させる」ことが報告されている26。これらはその後「細胞質クロマチン断片」(CCF)と命名され27、後に老化細胞で説明された28。しかしながら、これらの報告はいずれも、CCFの構成要素としてRTEおよびL1に言及していない。
【0083】
本開示のデータは、L1 DNA配列が老化細胞の細胞質に見出されることを示すだけでなく、それらが核DNA配列と比較して濃縮されていることも示す。実施例3を参照。したがって、以前に報告されたバルク染色体DNAの核から細胞質への単純な押出は、本明細書で観察されたL1配列の濃縮を説明することはできない。
【0084】
L1 DNAがTREX1ヌル細胞(AGS)において濃縮されており29、TREX1ノックアウト細胞に蓄積するL1 cDNAが細胞質局在性であることが以前に報告されていたが30、稀な自己免疫疾患におけるAGSは加齢関連ではない。対照的に、本開示のデータは、細胞質L1 DNAの存在を、老化および加齢関連疾患の主要な促進因子の1つである細胞老化に一般化する。
【0085】
IFN-Iの誘導と免疫系へのクロストーク、SASPの強化
細胞質DNA(および特にCCF)は、cGAS/STINGセンサ経路によって認識され、その結果、炎症状態を促進することが以前に報告されている31。細胞老化の文脈では、この炎症誘発状態は老化関連分泌表現型(SASP)として公知である。これらの報告は、cGAS/STING経路成分のノックダウンがSASPを減少させたので、SASPが少なくとも部分的にはCCFに依存することを示した。IFN-I応答も、この炎症誘発性カスケードの一部であると報告された32。上記のように、これらの以前の報告のいずれも、CCFによるSASPの促進にL1エレメントを関連付けていなかった。
【0086】
本開示のデータは、L1 DNAが、核配列と比較して細胞質DNAが濃縮されたCCFの有意な割合を含むだけでなく、SASPの促進にも機能的に関連することを立証する。特に、本開示のデータは、L1に対するshRNAによって、またはRTI薬によるL1逆転写のブロックによって、細胞質L1 DNAの量を減少させると、老化細胞におけるIFN-I応答およびSASPの両方が減少したことを示す。重要なことに、本開示のデータは、RTI処置が、IFN-Iおよび炎症誘発性SASPの両方を、それらが老化細胞において完全に確立された後に、有効に逆転させることができるという最初の証拠を表す。実施例3および4を参照。
【0087】
治療に関連する以前のすべての試験は、cGAS/STINGセンサ経路を妨げることに限定されており、例えば、cGAS/STING経路の成分に対するshRNAがIFN-I応答およびSASPを下方制御することを示した33,34。SASPを下方制御するためにcGAS/STING経路の小分子阻害剤を使用することが想定され得るが、そのような処置は、ウイルス、細菌および他の病原体感染に対する感受性の増加をもたらす。
【0088】
RTI薬を用いたL1 DNAの合成を標的とする本発明のアプローチは、cGAS/STINGセンサ経路、またはさらには下流のインターフェロンもしくは免疫シグナル伝達成分などの下流プロセシング事象とは対照的に、主要な原因物質(L1 DNA自体)を標的とするので、問題の根本的な解決になる。本発明では、これらの下流成分のすべてが必須の細胞機能を有し、したがってそれらを標的とすることは、ある局面では、正常な生理学的プロセスを損なうであろうことが理解されている。他方で、L1 DNAは独特の「非自己」成分であり、その薬理学的標的化は「オフターゲット」効果によってのみ損なわれる。
【0089】
近年、細胞老化が生物の老化および加齢関連疾患の主要な促進因子の1つであることが明らかになった35。したがって、老化細胞の有害な影響をブロックするための「セノテラピー(seno-therapy)」にかなりの関心が寄せられている36。主な取り組みは、組織から老化細胞を選択的に死滅させる(したがって、除去する)「老化細胞溶解(senolytic)」薬に向けられてきた。「セノモルフィック(senomorphics)」は、細胞を死滅させることなく老化表現型を抑制する小分子として分類されている。本発明者らは、その主な効果が老化細胞、特にSASPの有害作用を停止またはブロックすることであることを強調するために、そのような薬物を「老化細胞静止(senostatic)」薬と称することを選ぶ。
【0090】
本開示のデータは、ヒト細胞およびマウスモデルにおいて、RTIが老化細胞のSASPを逆転させ、したがって加齢関連炎症誘発状態を緩和する老化細胞静止薬であることを実証する。本開示のデータはまた、いずれの特定のRTI、およびいずれの用量がSASPを逆転させるのに特に有効であるかを説明する。複数の加齢関連状態を治療することができる老化細胞静止薬としてのRTIの幅広い有効性は、当技術分野でこれまで記載されていなかった。
【0091】
加齢関連「無菌性」炎症の促進
炎症老化(inflammaging)としても公知の無菌性炎症は、加齢の顕著な特徴であり、多くの加齢性疾患の一因である37,38。本開示のデータは、L1エレメント(およびおそらく他のRTE)の活性化が炎症老化を促進すること、ならびにL1 RTが加齢関連炎症および障害の治療に関連する標的であることを示す。
【0092】
本開示のデータは、加齢関連病態がRTIの投与によって逆転され得るか、または少なくとも下方制御され得る、加齢マウスにおける特定の例を提供する。例えば、NRTIラミブジン(別名3TCまたはエピビル)は、以下を逆転または下方制御することが示された:
・複数の組織でRT-qPCRによって測定された、IFN-IマーカおよびSASPマーカのパネル;
・IF顕微鏡検査によって測定された白色脂肪組織および腎臓組織へのマクロファージの浸潤;
・筋線維直径によって測定された筋萎縮;
・PAS染色切片の病理学的評価によって測定された腎糸球体硬化症;
・細胞サイズおよび主要な脂肪生成遺伝子のRT-qPCR分析によって顕微鏡的に測定された脂肪細胞萎縮;ならびに
・Ucp1発現のRT-qPCR分析によって測定された熱発生。
【0093】
したがって、本発明は、RTIが老化細胞、特にSASPの有害な影響を停止またはブロックし、加齢性炎症および障害を予防または逆転させることができる「老化細胞静止」薬として使用できることを提供する。
【0094】
ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)
NRTIは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのレトロウイルスに見られる逆転写酵素の活性阻害剤である。異なるヌクレオシド逆転写酵素阻害剤は異なって活性化され得るが、それらは同じ作用機序を有する。NRTIは、一般に、細胞酵素による三リン酸型へのリン酸化によって活性化される。次いで、ウイルス逆転写酵素によるプロウイルスDNAの基質である細胞三リン酸と競合する。NRTIは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV感染)および後天性免疫不全症候群(AIDS)の治療に利用可能な最初の種類の薬物であった。
【0095】
表8は、HIV感染およびAIDSの治療に使用される一般的に承認されているNRTI薬またはNRTI併用薬のリストを提供する。上記のように、本発明の方法によれば、NRTIは老化細胞、特にSASPの有害作用を停止またはブロックし、加齢性炎症および障害を予防または逆転させることができる「老化細胞静止」薬として使用することができる。
【0096】
本発明の方法で使用できるNRTI薬には、以下が含まれるが、これらに限定されるわけではない:アムドキソビル、アプリシタビン(ATC)、ATRIPLA(登録商標)(エファビレンツ/エムトリシタビン/テノホビルジソプロキシル)、BARACLUDE(登録商標)(エンテカビル;ETV);BIKTARVY(登録商標)(ビクテグラビル/エムトリシタビン/テノホビルアラフェナミド)、センサブジン(INN;BMS-986001;OBP-601;フェスチナビル)、COMBIVIR(商標)(ジドブジン/ラミブジン)、COVIRACIL(商標)(エムトリシタビン;FTC)、DAPD/DXG(DAPD-2,6-ジアミノプリンジオキソランの活性代謝物)、DESCOVY(登録商標)(エムトリシタビン/テノホビルアラフェナミド)、D-D4FC(デキセルブシタビン;レベルセット;INCB-8721;DPC 817)、dOTC(2'-デオキシ-3'-オキサ-4'-チオシチジン;BCH-10652)、エルブシタビン、EMTRIVA(商標)(エムトリシタビン)、EPIVIR(商標)(ラミブジン;3TC)、EFdA(4'-エチニル-2-フルオロ-2'-デオキシアデノシン;MK-8591)、EVIPLERA(商標)(リルピビリン/エムトリシタビン/テノホビルジソプロキシル)、GENVOYA(登録商標)(エルビテグラビル/コビシスタット/エムトリシタビン/テノホビルアラフェナミド)、HIVID(商標)(ザルシタビン;ddC)、KIVEXA(商標)(アバカビル/ラミブジン)、LODENOSINE(商標)(F-ddA)、ODEFSEY(登録商標)(リルピビリン/テノホビルアラフェナミド/エムトリシタビン)、PREVEON(登録商標)(アデホビルジピボキシル)、ラシビル(RCV;(+/-)エムトリシタビン)、RETROVIR(商標)(ジドブジン;ZDV;アジドチミジン;AZT)、スタンピジン、STRIBILD(登録商標)(エルビテグラビル/コビシスタット/エムトリシタビン/テノホビルジソプロキシル)、TENOFOVIR(商標)(TDF、ビス-POC PMPA)、TRIUMEQ(登録商標)(ドルテグラビル/アバカビル/ラミブジン)、TRIZIVIR(商標)(アバカビル/ラミブジン/ジドブジン)、TRUVADA(登録商標)(エムトリシタビン/テノホビルジソプロキシル)、VEMLIDY(登録商標)(テノホビルアラフェナミド;TAF)、VIDEX(商標)(ジダノシン ddl)、VIREAD(商標)(テノホビルジソプロキシル)、ZIAGEN(商標)(アバカビル;159U89)、およびZERIT(商標)(スタブジン;d4T)。
【0097】
HIV/AIDS治療に使用される用量では、これらの薬物は広範囲の副作用を引き起こす可能性がある。NRTIの一般的な副作用には、とりわけ、ミトコンドリア毒性(ミトコンドリアポリメラーゼの阻害に関連する)、神経障害、膵炎、肝脂肪症および乳酸アシドーシス、骨髄抑制、症候性ミオパシー、ならびに心筋症が含まれる39。NRTIは、HIV/AIDS治療について承認されている投与量で使用することができるが、より高い用量に関連する副作用を回避するために、より低い投与量を加齢性炎症および障害の予防または治療に使用することができる。一態様では、加齢性炎症および障害の予防または治療に使用される投与量は、HIV/AIDS治療について承認されている投与量の半分(50%)である(表9を参照)。代替の態様では、使用される投与量は、HIV/AIDS治療について承認されている投与量の75%である。さらに別の代替の態様では、使用される投与量は、HIV/AIDS治療について承認されている投与量の25%である。他の代替の態様では、使用される投与量は、HIV/AIDS治療について承認されている投与量の90%、80%、70%、60%、40%、30%、20%、または10%である。さらに他の代替の態様では、使用される投与量は、HIV/AIDS治療について承認されている投与量の0.1~99.5%、10~90%、20~80%、25~75%、30~70%、40~60%または45~55%である。
【0098】
いくつかの態様では、対象は、本明細書で定義されるように、1つまたは複数のRTI薬の長期投与を受ける。一態様では、対象は少なくとも12週間治療される。多くの場合、長期投与は、少なくとも4、5、6、7、8、9ヶ月間もしくはそれ以上、または少なくとも1、2、3、5、7もしくは10年間もしくはそれ以上である。
【0099】
加齢関連障害
細胞老化が生物の老化および加齢関連疾患の主要な促進因子の1つであることを考慮すると40、本発明の方法は、1つまたは複数の老化細胞静止RTI薬の投与によって、細胞老化に関連している障害または疾患、特に老化細胞の存在が有害な影響を及ぼす可能性が高い障害または疾患を予防または治療するために使用することができる。
【0100】
細胞性老化に関連している障害または疾患には、アルツハイマー病41、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アテローム性動脈硬化症42、ハンチントン病、視力喪失、聴力損失、末梢変性疾患、心血管機能障害43、アテローム性動脈硬化症、前頭側頭型認知症(FTD)、多発性硬化症(MS)、エカルディ・グティエール症候群、進行性核上性麻痺(PSP)、化学療法誘発性有害作用(例えば、骨髄抑制、心毒性、癌の再発、血餅、疲労)44、造血幹細胞機能45、変形性関節症46、骨粗鬆症47、骨粗鬆症、パーキンソン病48、身体機能49、肺線維症50、皮膚老化、創傷治癒、および/または組織再生51が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0101】
RTIによる加齢関連炎症の治療、予防および逆転の方法
逆転写酵素阻害剤(RTI)を、その必要がある患者に投与する工程によって、その必要がある患者において加齢関連炎症を治療する、予防するおよび逆転させるための方法が、提供される。加齢関連炎症は、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、ハンチントン病、視力喪失、聴力損失、末梢変性疾患、および心血管機能障害を有する患者において存在し得る。
【0102】
一態様では、加齢関連炎症性障害の基礎病理の進行を遅延または逆転させるための方法であって、その必要がある患者に治療有効量の少なくとも1つの逆転写酵素阻害剤(RTI)を投与する工程を含む方法が提供される。いくつかの態様では、患者は、患者へのRTIの最初の投与の前と比較してアルツハイマー病の1つまたは複数の症状の減少を経験する。
【0103】
別の態様では、軽度認知障害を有することが疑われる患者における加齢関連炎症性障害の発症を予防するための方法であって、その必要がある患者に少なくとも1つのRTIを投与する工程を含む方法が提供される。
【0104】
いくつかの態様では、NRTIは、アバカビル、ラミブジン、ジドブジン、エムトリシタビン、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩、テノホビルアラフェナミド、ジダノシン、スタブジン、アプリシタビン、アロブジン、デキセルブシタビン、アムドキソビル、フォサルブジンまたはエルブシタビンである。他の態様では、RTIは、アバカビル(Ziagen)、アバカビル/ラミブジン(Epzicom)、アバカビル/ラミブジン/ジドブジン(Trizivir)、ラミブジン/ジドブジン(Combivir)、ラミブジン(Epivir)、ジドブジン(Retrovir)、エムトリシタビン/テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(Truvada)、エムトリシタビン(Emtriva)、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(Viread)、エムトリシタビン/テノホビルアラフェナミド(Descovy)、ジダノシン(Videx)、ジダノシン徐放(Videx EC)、またはスタブジン(Zerit)である。別の態様では、NRTIはセンサブジンである。
【0105】
いくつかの態様では、少なくとも1つのRTIは非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)である。いくつかの態様では、少なくとも1つのNRTIは、エファビレンツ(EFV)、ネビラピン(NVP)、デラビルジン(DLV)、エトラビリンまたはリルビピリンである。
【0106】
さらなる態様では、RTIは、患者の細胞、例えば脳細胞におけるL1逆転写酵素活性を阻害する。
【0107】
RTIがFDA承認薬である場合、RTIは、治療的使用について承認されている治療有効量で投与され得る。他の態様では、通常の実験のみで有効量を決定することができる。例えば、有効量は、約1ng/kg~約200mg/kg、約1μg/kg~約100mg/kg、または約1mg/kg~約50mg/kgの範囲であり得る。組成物の投与量は、約1μg/kgを含むが、これに限定されるわけではない任意の投与量であり得る。組成物の投与量は、約1μg/kg、約10μg/kg、約25μg/kg、約50μg/kg、約75μg/kg、約100μg/kg、約125μg/kg、約150μg/kg、約175μg/kg、約200μg/kg、約225μg/kg、約250μg/kg、約275μg/kg、約300μg/kg、約325μg/kg、約350μg/kg、約375μg/kg、約400μg/kg、約425μg/kg、約450μg/kg、約475μg/kg、約500μg/kg、約525μg/kg、約550μg/kg、約575μg/kg、約600μg/kg、約625μg/kg、約650μg/kg、約675μg/kg、約700μg/kg、約725μg/kg、約750μg/kg、約775μg/kg、約800μg/kg、約825μg/kg、約850μg/kg、約875μg/kg、約900μg/kg、約925μg/kg、約950μg/kg、約975μg/kg、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約60mg/kg、約70mg/kg、約80mg/kg、約90mg/kg、約100mg/kg、約125mg/kg、約150mg/kg、約175mg/kg、約200mg/kg、またはそれ以上を含むが、これらに限定されるわけではない任意の投与量であり得る。他の態様では、投与量は1mg~500mgである。いくつかの態様では、投与量は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、または150mgである。これらの用量は、単一であっても分割されていてもよく、1日1回または複数回投与され得る。上記の投与量は平均的な場合の例示であるが、より高い投与量またはより低い投与量が適切である個々の場合があり得、そのような投与量は本開示の範囲内である。実際には、医師は、個々の対象に最も適した治療有効量および実際の投与レジメンを決定し、これらは特定の対象の年齢、体重、および応答によって異なり得る。
【0108】
RTIは、1日1回、2回または3回、1日から寿命の終わりまで、または1日から1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10年もしくはそれ以上にわたって、またはRTIが許容できない副作用を引き起こすかもしくはもはや有用でなくなるまで投与され得る。
【0109】
患者は、加齢性炎症性疾患の症状の変化について監視される。一態様では、症状の軽減がある。別の態様では、症状はほぼ同じままであり、進行の証拠はない。アルツハイマー病に関連して、そのような症状には、記憶喪失、物の置き忘れ、場所または物体の名前忘れ、質問の繰り返し、柔軟性の低下、錯乱、見当識障害、強迫行動、強制行動、妄想、失語症、睡眠障害、気分変動、うつ病、不安、欲求不満、動揺、空間課題の実施困難、失認、歩行障害、体重減少、発語喪失、短期記憶の喪失または長期記憶の喪失が含まれる。これらの症状の任意の変化を監視および定量化するための方法は、日常的な方法または日常的な実験によって実施することができる。
【0110】
一態様では、軽度認知障害の症状およびアルツハイマー病の症状の任意の変化は、DSM-5に記載されている基準を使用して決定される。別の態様では、軽度認知障害の症状およびアルツハイマー病の症状の任意の変化は、臨床面接による認知症変化印象尺度(CIBIC-plus)を使用して決定される。別の態様では、軽度認知障害の症状および症状の任意の変化は、臨床面接による認知症変化印象尺度(CIBIC-plus)を使用して決定される。
【0111】
症状の任意の変化は、1~36ヶ月間またはそれ以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、または36ヶ月間監視され得る。
【0112】
別の態様では、患者は、アルツハイマー病の基礎病理の変化について監視される。一態様では、基礎病理の減少がある。別の態様では、基礎病理はほぼ同じままであり、進行の証拠はない。
【0113】
いくつかの態様では、基礎病理の任意の変化は、RTI投与の前後のバイオマーカの検出によって同定される。一態様では、バイオマーカはβ-アミロイドまたはタウタンパク質である。別の態様では、バイオマーカはPETイメージングによって検出される。別の態様では、基礎病理は、RTI投与の前後の脳体積の測定によって同定される。
【0114】
いくつかの態様では、基礎病理の減少は、RTIの最初の投与後1~36ヶ月で、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、または36ヶ月で逆転または遅延される。
【0115】
いくつかの態様では、患者はまた、加齢関連炎症性障害の症状の治療に有用な少なくとも1つの第2の治療薬を投与される。一態様では、患者は、アルツハイマー病の治療に有用な少なくとも1つの第2の治療薬を投与される。いくつかの態様では、少なくとも1つの第2の治療薬は、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、またはメマンチンである。別の態様では、少なくとも1つの第2の治療薬は、β-アミロイドまたはタウタンパク質に結合する抗体である。別の態様では、抗体はβ-アミロイドに結合し、バピネオズマブである。別の態様では、抗体はタウタンパク質に結合し、ABBV-8E12である。別の態様では、少なくとも1つの第2の治療薬は、β-アミロイドまたはタウタンパク質に対するワクチンである。別の態様では、少なくとも1つの第2の治療薬は、β-アミロイドまたはタウの脳含有量を減少または変化させる薬剤である。別の態様では、第2の治療薬は、β-アミロイドの脳含有量を減少または変化させ、β-セクレターゼ1(BACE)阻害剤である。別の態様では、BACE阻害剤は、CTS-21166、ベルベセスタット(MK-8931)、ラナベセスタット(AZD3293)またはLY2886721である。別の態様では、第2の薬剤は、β-アミロイドまたはタウの脳含有量を減少または変化させ、ニコチンアミド、またはMPT0G211である。
【0116】
少なくとも1つのRTIおよび少なくとも1つの第2の治療薬は、別々に、または単一の薬学的組成物の一部として一緒に投与され得る。
【0117】
加齢関連炎症性障害がALSである場合、患者は、ALSの症状の治療に有用な少なくとも1つの第2の薬剤を投与され得る。いくつかの態様では、少なくとも1つの第2の薬剤はインテグラーゼ阻害剤である。いくつかの態様では、インテグラーゼ阻害剤は、ラルテグラビル、クルクミン、クルクミンの誘導体、チコリ酸、チコリ酸の誘導体、3,5-ジカフェオイルキナ酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸の誘導体、オーリントリカルボン酸、オーリントリカルボン酸の誘導体、コーヒー酸フェネチルエステル、コーヒー酸フェネチルエステルの誘導体、チルホスチン、チルホスチンの誘導体、ケルセチン、ケルセチンの誘導体、S-1360、ジンテビル(AR-177)、L-870812、およびL-25 870810、MK-0518、BMS-538158、またはGSK364735Cである52。
【0118】
患者は、ALSの症状の改善について監視される場合がある。そのような症状には、以下のうちの1つまたは複数が含まれる:歩行または通常の日常活動を行うことの困難さ、つまずきおよび転倒、脚、足または足首の衰弱、手の衰弱または不器用さ、不明瞭な発話または嚥下困難、筋痙攣、腕、肩または舌の単収縮、不適切な泣き叫び、認知変化、および行動変化。
【0119】
症状の任意の変化は、1~36ヶ月間またはそれ以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、または36ヶ月間監視され得る。いくつかの態様では、基礎病理の減少は、RTIの最初の投与後1~36ヶ月で、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、または36ヶ月で逆転または遅延される。
【0120】
塩、薬学的組成物、およびキット
本開示の方法は、少なくとも1つのRTIをニート化合物としてまたは薬学的組成物として投与する工程によって達成することができる。RTIの薬学的組成物またはニート化合物の投与は、加齢関連炎症に関連する障害の臨床診断の前または後に行うことができる。典型的には、薬学的組成物は無菌であり、投与された場合に有害反応を引き起こすであろう毒性、発癌性または変異原性化合物を含まない。
【0121】
少なくとも1つのRTIおよび、任意で、別々にまたは一緒に包装された、加齢関連炎症に関連する障害の治療または予防に有用な少なくとも1つの第2の治療薬、およびこれらの活性薬剤を使用するための説明書を有するインサートを含むキットがさらに提供される。一態様では、少なくとも1つのRTIは、少なくとも1つの第2の治療薬と一緒に投与するための説明書と共に単独で包装される。少なくとも1つのRTIおよび少なくとも1つの第2の治療薬は、所望の効果を達成するために同時にまたは連続的に投与することができる。さらに、RTIおよび少なくとも1つの第2の治療薬は、単一の組成物または2つの別個の組成物から投与することができる。
【0122】
キットに含まれ得るアルツハイマー病の治療に有用な少なくとも1つの第2の治療薬の例には、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンおよびメマンチンが含まれる。キットに含まれ得る他の任意の治療薬には、β-アミロイドまたはタウタンパク質に結合する抗体が含まれる。一態様では、抗体はβ-アミロイドに結合し、バピネオズマブである。別の態様では、抗体はタウに結合し、ABBV-8E12である。
【0123】
別の態様では、キットは、β-アミロイドまたはタウタンパク質に対するワクチンである少なくとも1つの第2の治療薬を含み得る。
【0124】
別の態様では、キットは、β-アミロイドまたはタウタンパク質の脳含有量を減少または変化させる少なくとも1つの第2の治療薬を含み得る。いくつかの態様では、β-アミロイドの脳含有量を変化または減少させる第2の治療薬は、β-セクレターゼ1(BACE)阻害剤である。いくつかの態様では、BACE阻害剤は、CTS-21166、ベルベセスタット(MK-8931)、ラナベセスタット(AZD3293)またはLY2886721であり、これらのそれぞれがアルツハイマー病の治療のための臨床試験中である。
【0125】
別の態様では、キットは、タウの脳含有量を減少または変化させる、ニコチンアミドまたはMPT0G211である第2の薬剤を含み得る。
【0126】
いくつかの態様では、患者はALSを有し、キットは、ALSの治療に有用な少なくとも1つの第2の薬剤をさらに含む。他の態様では、RTIは、ALSの治療のための少なくとも1つの第2の治療薬を投与するための説明書と共に単独で包装される。いくつかの態様では、ALSの治療のための少なくとも1つの第2の治療薬は、エダラボンまたはリルゾールである。
【0127】
いくつかの態様では、少なくとも1つの第2の薬剤はインテグラーゼ阻害剤である。いくつかの態様では、インテグラーゼ阻害剤は、ラルテグラビル、クルクミン、クルクミンの誘導体、チコリ酸、チコリ酸の誘導体、3,5-ジカフェオイルキナ酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸の誘導体、オーリントリカルボン酸、オーリントリカルボン酸の誘導体、コーヒー酸フェネチルエステル、コーヒー酸フェネチルエステルの誘導体、チルホスチン、チルホスチンの誘導体、ケルセチン、ケルセチンの誘導体、S-1360、ジンテビル(AR-177)、L-870812、およびL-25 870810、MK-0518、BMS-538158、またはGSK364735Cである53。
【0128】
第2の治療薬は、その所望の治療効果を提供する量で投与される。それぞれの任意の治療薬の有効投与量範囲は当技術分野で公知であり、任意の治療薬は、その必要がある個体にそのような確立された範囲内で投与される。
【0129】
本開示は、RTIの塩の調製および使用を包含する。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、RTIの塩または双性イオン形態を指す。RTIの塩は、化合物の最終的な単離および精製の間に、または化合物を適切な酸と反応させることによって別個に調製することができる。RTIの薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される酸で形成された酸付加塩であり得る。薬学的に許容される塩を形成するために使用できる酸の例には、硝酸、ホウ酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸などの無機酸、ならびにシュウ酸、マレイン酸、コハク酸およびクエン酸などの有機酸が含まれる。RTIの塩の非限定的な例には、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ギ酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、アスコルビン酸塩、イセチオン酸塩、サリチル酸塩、メタンスルホン酸塩、メシチレンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンジスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、およびp-トルエンスルホン酸塩が含まれるが、これらに限定されるわけではない。さらに、RTI中に存在する利用可能なアミノ基は、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピルおよび塩化ブチル、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピルおよび臭化ブチル、ならびにヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピルおよびヨウ化ブチル;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチルおよび硫酸ジアミル;塩化デシル、塩化ラウリル、塩化ミリスチルおよび塩化ステリル、臭化デシル、臭化ラウリル、臭化ミリスチルおよび臭化ステリル、ならびにヨウ化デシル、ヨウ化ラウリル、ヨウ化ミリスチルおよびヨウ化ステリル;ならびに臭化ベンジルおよび臭化フェネチルで四級化することができる。上記に照らして、本明細書に現れるRTIへの言及は、RTIならびにその薬学的に許容される塩、水和物、または溶媒和物を含むことが意図されている。
【0130】
本開示は、RTIの溶媒和物の調製および使用を包含する。溶媒和物は、典型的には化合物の生理学的活性または毒性を有意に変化させず、それ自体が薬理学的等価物として機能し得る。本明細書で使用される「溶媒和物」という用語は、溶媒分子と本開示の化合物との組合せ、物理的会合および/または溶媒和、例えば、溶媒分子対本開示の化合物の比がそれぞれ約2:1、約1:1または約1:2である、二溶媒和物、一溶媒和物または半溶媒和物である。この物理的会合は、水素結合を含む様々な程度のイオン結合および共有結合を含む。特定の場合に、溶媒和物は、例えば1つまたは複数の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に組み込まれる場合に、単離され得る。したがって、「溶媒和物」は、溶液相および単離可能な溶媒和物の両方を包含する。RTIは、水、メタノール、およびエタノールなどの薬学的に許容される溶媒との溶媒和形態として存在することができ、本開示は、溶媒和形態および非溶媒和形態の両方のRTIを含むことが意図されている。1つの種類の溶媒和物は水和物である。「水和物」は、溶媒分子が水である溶媒和物の特定のサブグループに関する。溶媒和物は、典型的には薬理学的等価物として機能することができる。溶媒和物の調製は当技術分野で公知である。例えば、酢酸エチルとの、および水とのフルコナゾールの溶媒和物の調製を記載する、Caira et al.(2004)54を参照。溶媒和物、半溶媒和物、水和物などの同様の調製は、Van Tonder et al.(2004)55およびBingham et al.(2001)56によって記載されている。溶媒和物を調製する典型的な非限定的方法は、少なくとも1つのRTIまたは少なくとも1つの第2の治療薬を20℃超~約25℃の温度で所望の溶媒(有機物、水、またはそれらの混合物)に溶解し、次いで、結晶を形成するのに十分な速度で溶液を冷却し、公知の方法、例えば濾過によって結晶を単離する工程を含む。赤外分光法などの分析技術を使用して、溶媒和物の結晶中の溶媒の存在を確認することができる。
【0131】
少なくとも1つのRTIおよび少なくとも1つの第2の治療薬は、典型的には、意図される投与経路および標準的な製薬慣行に関して選択された薬学的組成物を得るために、薬学的担体と混合して投与される。本開示に従って使用するための薬学的組成物は、少なくとも1つのRTIおよび少なくとも1つの第2の治療薬の処置を容易にする賦形剤および/または補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容される担体を使用して従来の方法で製剤化される。
【0132】
これらの薬学的組成物は、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥工程によって製造することができる。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。治療有効量の少なくとも1つのRTIおよび/または少なくとも1つの第2の治療薬が経口投与される場合、組成物は、典型的には錠剤、カプセル、粉末、溶液またはエリキシルの形態である。錠剤形態で投与される場合、組成物は、ゼラチンまたはアジュバントなどの固体担体をさらに含むことができる。錠剤、カプセル、および粉末は、約0.01%~約95%、好ましくは約1%~約50%の少なくとも1つのRTIおよび少なくとも1つの第2の治療薬を含む。液体形態で投与される場合、水、石油、または動物もしくは植物起源の油などの液体担体を添加することができる。組成物の液体形態は、生理食塩水、デキストロースもしくは他の糖類溶液、またはグリコールをさらに含むことができる。液体形態で投与される場合、組成物は、約0.1重量%~約90重量%、好ましくは約1重量%~約50重量%の少なくとも1つのRTIおよび少なくとも1つの第2の治療薬を含む。
【0133】
治療有効量の少なくとも1つのRTIおよび少なくとも1つの第2の治療薬が静脈内、皮膚、または皮下注射によって投与される場合、組成物は、発熱物質を含まない非経口的に許容される水溶液の形態である。pH、等張性、安定性などを十分に考慮した、そのような非経口的に許容される溶液の調製は、当技術分野の技術の範囲内である。静脈内注射、皮膚注射または皮下注射のための好ましい組成物は、典型的には等張性ビヒクルを含む。
【0134】
少なくとも1つのRTIおよび少なくとも1つの第2の治療薬は、当技術分野で周知の薬学的に許容される担体と容易に組み合わせることができる。標準的な薬学的担体は、Remington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている57。そのような担体は、治療される対象による経口摂取のために、活性薬剤を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤などとして製剤化することを可能にする。経口使用のための薬学的製剤は、少なくとも1つのRTIおよび/または少なくとも1つの第2の治療薬を固体賦形剤に添加し、任意で得られた混合物を粉砕し、所望する場合は、錠剤または糖衣錠コアを得るために、適切な補助剤を添加した後に顆粒の混合物を処理することによって得ることができる。適切な賦形剤には、例えば、充填剤およびセルロース調製物が含まれる。所望する場合は、崩壊剤を添加することができる。
【0135】
少なくとも1つのRTIおよび少なくとも1つの第2の治療薬は、注射による、例えばボーラス注射による非経口投与、または連続注入による非経口投与のために製剤化することができる。注射用製剤は、防腐剤を添加した単位剤形、例えばアンプルまたは複数回用量容器で提供することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態をとることができ、懸濁剤、安定剤、および/または分散剤などの製剤化剤を含むことができる。
【0136】
非経口投与のための薬学的組成物には、水溶性形態の活性薬剤の水溶液が含まれる。さらに、少なくとも1つのRTIおよび少なくとも1つの第2の治療薬の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製することができる。適切な親油性溶媒またはビヒクルには、脂肪油または合成脂肪酸エステルが含まれる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質を含むことができる。任意で、懸濁液はまた、適切な安定剤、または化合物の溶解度を増加させ、高濃度溶液の調製を可能にする薬剤を含むことができる。あるいは、本組成物は、使用前に、適切なビヒクル、例えば滅菌の発熱物質を含まない水で構成するための粉末形態であり得る。
【0137】
少なくとも1つのRTIおよび少なくとも1つの第2の治療薬はまた、例えば従来の坐剤基剤を含む、坐剤または停留浣腸などの直腸組成物に製剤化することができる。前述の製剤に加えて、少なくとも1つのRTIおよび少なくとも1つの第2の治療薬はまた、デポ製剤として製剤化することができる。そのような長時間作用型製剤は、埋め込み(例えば、皮下もしくは筋肉内)によって、または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、少なくとも1つのRTIおよび少なくとも1つの第2の治療薬は、適切なポリマーもしくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂を用いて製剤化することができる。
【0138】
特に、少なくとも1つのRTIおよび少なくとも1つの第2の治療薬は、デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤を含む錠剤の形態で、または単独でもしくは賦形剤と混合してカプセルもしくは小卵中で、または香味剤もしくは着色剤を含むエリキシルもしくは懸濁液の形態で、経口的に、口腔内に、または舌下に投与することができる。そのような液体製剤は、懸濁剤などの薬学的に許容される添加剤を用いて調製することができる。少なくとも1つのRTIおよび少なくとも1つの第2の治療薬はまた、非経口的に、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、または冠動脈内に注射することができる。非経口投与の場合、少なくとも1つのRTIおよび少なくとも1つの第2の治療薬は、典型的には、溶液を血液と等張にするために、他の物質、例えば、塩またはマンニトールもしくはグルコースなどの単糖を含むことができる滅菌水溶液の形態で使用される。
【0139】
本明細書に記載される技術のいくつかの態様は、以下の番号付けされたパラグラフのいずれかに従って定義することができる。
1. その必要がある患者において加齢関連炎症を治療する、予防するおよび/または逆転させるための方法であって、治療有効量の逆転写酵素阻害剤(RTI)を、その必要がある患者に投与する工程を含み、該RTIがセンサブジンまたはエルブシタビンを含む、前記方法。
2. 加齢関連炎症が、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、ハンチントン病、視力喪失、聴力損失、末梢変性疾患、または心血管機能障害、前頭側頭型認知症(FTD)、多発性硬化症(MS)、エカルディ・グティエール症候群、進行性核上性麻痺(PSP)、変形性関節症、皮膚老化、アテローム性動脈硬化症、化学療法誘発性有害作用、造血幹細胞機能、骨粗鬆症、身体機能、および/もしくは肺線維症を有する患者、または創傷治癒もしくは組織再生を必要とする患者に存在する、パラグラフ1の方法。
3. 加齢関連炎症がアルツハイマー病を有する患者に存在する、パラグラフ1の方法。
4. 加齢関連炎症がALSを有する患者に存在する、パラグラフ1の方法。
5. 加齢関連炎症によって引き起こされた障害の基礎病理の進行を遅延または逆転させるための方法であって、その必要がある患者に治療有効量の逆転写酵素阻害剤(RTI)を投与する工程を含み、該RTIがセンサブジンまたはエルブシタビンを含む、前記方法。
6. 前記患者が、アルツハイマー病またはALSを有し、該患者への最初の投与の前と比較してアルツハイマー病またはALSの1つまたは複数の症状の減少を経験する、パラグラフ5の方法。
7. 前記患者がアルツハイマー病を有し、1つまたは複数の症状が、記憶喪失、物の置き忘れ、場所または物体の名前忘れ、質問の繰り返し、柔軟性の低下、錯乱、見当識障害、強迫行動、強制行動、妄想、失語症、睡眠障害、気分変動、うつ病、不安、欲求不満、動揺、空間課題の実施困難、失認、歩行障害、体重減少、発語喪失、短期記憶の喪失または長期記憶の喪失を含む、パラグラフ6の方法。
8. 前記患者がアルツハイマー病を有し、1つまたは複数の症状の減少が、DSM-5に従って評価される、パラグラフ6の方法。
9. 前記患者がアルツハイマー病を有し、症状の減少が、アルツハイマー病評価尺度の認知機能下位尺度(ADAS-cog)を使用して決定される、パラグラフ6の方法。
10. 前記患者がアルツハイマー病を有し、症状の減少が、臨床面接による認知症変化印象尺度(CIBIC-plus)を使用して決定される、パラグラフ6の方法。
11. 前記患者がアルツハイマー病を有し、症状の減少が、日常生活動作尺度(ADL)を使用して決定される、パラグラフ6の方法。
12. 症状の減少が1~36ヶ月間である、パラグラフ6~11のいずれか1つの方法。
13. 基礎病理の任意の変化が、RTI投与の前後のバイオマーカの検出によって同定される、パラグラフ6~11のいずれか1つの方法。
14. バイオマーカがβ-アミロイドまたはタウタンパク質である、パラグラフ13の方法。
15. バイオマーカがPETイメージングによって検出される、パラグラフ13または14の方法。
16. バイオマーカが脳脊髄液中での測定によって検出される、パラグラフ13または14の方法。
17. 基礎病理が、RTI投与の前後の脳体積の測定によって同定される、パラグラフ6~11のいずれか1つの方法。
18. 基礎病理の減少が1~36ヶ月間逆転または遅延される、パラグラフ6~17のいずれか1つの方法。
19. 軽度認知障害を有することが疑われる患者におけるアルツハイマー病の発症を予防するための方法であって、その必要がある患者に治療有効量の逆転写酵素阻害剤(RTI)を投与する工程を含み、該RTIがセンサブジンまたはエルブシタビンを含む、前記方法。
20. 患者がアルツハイマー病または軽度認知障害を有し、アルツハイマー病の症状の治療に有用な少なくとも1つの第2の治療薬を投与する工程をさらに含む、パラグラフ1~19のいずれか1つの方法。
21. 少なくとも1つの第2の治療薬が、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、またはメマンチンである、パラグラフ20の方法。
22. 少なくとも1つの第2の治療薬が、β-アミロイドまたはタウタンパク質に結合する抗体である、パラグラフ20の方法。
23. 抗体がβ-アミロイドに結合し、バピネオズマブである、パラグラフ22の方法。
24. 抗体がタウタンパク質に結合し、ABBV-8E12である、パラグラフ22の方法。
25. 少なくとも1つの第2の治療薬が、β-アミロイドまたはタウタンパク質に対するワクチンである、パラグラフ20の方法。
26. 少なくとも1つの第2の治療薬が、β-アミロイドまたはタウの脳含有量を減少または変化させる薬剤である、パラグラフ20の方法。
27. 第2の治療薬がβ-アミロイドの脳含有量を減少または変化させ、β-セクレターゼ1(BACE)阻害剤である、パラグラフ26の方法。
28. BACE阻害剤が、CTS-21166、ベルベセスタット(MK-8931)、ラナベセスタット(AZD3293)またはLY2886721である、パラグラフ27の方法。
29. 第2の薬剤が、タウの脳含有量を減少または変化させ、ニコチンアミド、またはMPT0G211である、パラグラフ26の方法。
30. 患者がALSを有し、ALSの治療に有用な少なくとも1つの第2の薬剤を投与する工程をさらに含む、パラグラフ1、2、または4のいずれか1つの方法。
31. ALSの治療に有用な薬物がエダラボンまたはリルゾールである、パラグラフ30の方法。
32. 少なくとも1つの第2の薬剤がインテグラーゼ阻害剤である、パラグラフ30の方法。
33. インテグラーゼ阻害剤が、ラルテグラビル、クルクミン、クルクミンの誘導体、チコリ酸、チコリ酸の誘導体、3,5-ジカフェオイルキナ酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸の誘導体、オーリントリカルボン酸、オーリントリカルボン酸の誘導体、コーヒー酸フェネチルエステル、コーヒー酸フェネチルエステルの誘導体、チルホスチン、チルホスチンの誘導体、ケルセチン、ケルセチンの誘導体、S-1360、ジンテビル(AR-177)、L-870812、およびL-25 870810、MK-0518、BMS-538158、またはGSK364735Cである、パラグラフ32の方法。
34. 患者が、RTIの患者への最初の投与の1~36ヶ月後に1つまたは複数の症状または疾患病理について評価される、パラグラフ1~33のいずれか1つの方法。
35. RTIが患者の細胞におけるL1逆転写酵素活性を阻害する、パラグラフ1~34のいずれか1つの方法。
36. RTIがエルブシタビンである、パラグラフ1~35のいずれか1つの方法。
37. RTIがセンサブジンである、パラグラフ1~35のいずれか1つの方法。
38. 少なくとも1つの第2の治療薬を患者に投与する工程をさらに含む、パラグラフ1~35のいずれか1つの方法。
39. 患者がアルツハイマー病を有し、少なくとも1つの第2の治療薬がアルツハイマー病の症状の治療に有用である、パラグラフ38の方法。
40. 患者が筋萎縮性側索硬化症(ALS)を有し、少なくとも1つの第2の治療薬がALSの治療に有用である、パラグラフ38の方法。
【実施例】
【0140】
ここで本発明を一般的に説明するが、本発明の特定の局面および態様の例示のみを目的として含まれ、本発明を限定することを意図しない以下の実施例を参照することによって、本発明がより容易に理解されるであろう。
【0141】
方法
細胞培養
正常ヒト線維芽細胞のいくつかの異なる株をこの試験で使用した。LF1細胞は、記載されているように胚性肺組織に由来した58。これらの細胞は、1996年に単離されて以来、本発明者らの研究室で継続的に使用されている。この試験のために、1996年に凍結され、本発明者らの研究室で継続的に保存されていた元の試料を回収し、使用した。IMR-90およびWI-38細胞をATCCから入手した。これらの細胞株はいずれも、国際細胞株認証委員会(International Cell Line Authentication Committee)(ICLAC)データベースにリストされていない。これらの正常線維芽細胞株を、生理学的酸素条件(92.5%N2、5%CO2、2.5%O2)を使用して、15%ウシ胎仔血清(FBS、Hyclone)を含むHam's F-10栄養混合物(Thermo Scientific)中で培養した。培地にL-グルタミン(2mM)、ペニシリンおよびストレプトマイシンをさらに添加した59。MycoAlert(登録商標)マイコプラズマ検出キット(Lonza)を用いて、細胞培養物をマイコプラズマ汚染について定期的に試験した。
【0142】
複製老化(RS)細胞を得るために、LF1培養物を増殖が停止するまで連続的に増殖させた。各継代で、80%コンフルエンスに達した後、細胞をトリプシン処理し、1:4に希釈した。したがって、各継代は、およそ2回の集団倍加に相当する。初期継代培養では、継代間の時間は約3日で一定である。培養物が老化に近づくにつれて、継代間の時間は徐々に増加した。2~3週間の間隔は、培養物が最後から2番目の継代にあることを示した。この時点で、80%のコンフルエンスに達した後、細胞を1:2希釈で再播種し、この時点を最後の継代として指定した(
図2aの点A)。一部の細胞増殖は、典型的には次の2~3週間で起こるが、培養物は80%に達しない。この実験レジメンの下で、培養物中の細胞の大部分は、ほぼ最後の継代の時間を中心とする3~4週間のウインドウ内で老化に入る(
図2aの灰色のバー)。点B(4週目)で、培養物をトリプシン処理し、記載されているように再播種して
60、ごくわずかな残存する接触阻害細胞を除去した。培養物を点C(8週目)で再び再播種した。
【0143】
増殖中のLF1細胞をpLenti CMV RasV12 Neo(AddgeneプラスミドNo.22259)に感染させることによって癌遺伝子誘導性老化(OIS)を誘発した。レンチウイルス粒子の作製および感染手順を以下に記載する。感染の終了時に、細胞を15~20%のコンフルエンシーで再播種し、実験の終了まで継続的に維持してG418(250μg/ml)で選択した。示されている時点で培養物を回収するまで、培地を3日ごとに交換した。セシウム137ガンマ線源(Nordion Gammacell 40)を使用して、1フラクション中87cGy/分の速度で与えられる20GyのX線照射によってストレス誘発性早期老化(SIPS)を誘発した。細胞は、照射時に15~20%コンフルエントであった。照射直後およびその後3日間隔で培地を交換した。293T細胞(Clontech)を使用してレンチウイルスベクターをパッケージングし、正常酸素条件下(5%CO2を添加した空気)で10%FBSを含むDMEM中37℃で培養した。
【0144】
逆転写酵素阻害剤(RTI)
この試験で使用したすべてのRTI(ラミブジン、3TC;ジドブジン、AZT;アバカビル、ABC;エムトリシタビン、FTC)は、USPグレードであり、Aurobindo Pharma,Hyderabad,Indiaから入手した。トリジビル(TZV)については、その構成成分(ABC、AZTおよび3TC)を適切な量で組み合わせた。
【0145】
マウスの飼育
雌および雄のC57BL/6Jマウスを、5ヶ月齢および18ヶ月齢でNIA老齢齧歯動物コロニー(NIA Aged Rodent Colonies)61から入手した。5ヶ月齢の動物を短い(1週間)馴化期間後に犠死させ、様々な組織を採取し、LN2中で急速凍結し、-80℃で保存した。18ヶ月齢の動物を、所望の年齢に達するまで飼育した。マウスを特定病原体除去AAALAC認証バリア施設に収容した。ケージ、寝具(サニチップ(Sani-chip)広葉樹寝具)および食餌(Purina Lab Chow 5010)をオートクレーブ滅菌した。食餌および水(これも滅菌済み)は自由に摂取させた。12時間の明暗サイクルを使用した(午前7時オン、午後7時オフ)。温度を70°F、湿度を50%に維持した。すべての動物を毎日観察し、週に1回体重を測定した。パイロット実験では、それぞれ10匹の動物の3つのコホートを、18ヶ月から24ヶ月で犠死させるまで、飲料水(1.5mg/ml、2.0mg/ml、2.5mg/ml)に溶解した3TCで継続的に処置した。第4の(対照)コホートには、薬物を含まない同じ水を与えた。実験全体を通して、4つのコホート間で行動、体重または生存率の有意差は観察されなかった。実験中に一度(20ヶ月齢で)、動物を約70μLの単回尾部採血に供した。収集した血漿を、3TCの分析のためにUniversity of North Carolina CFAR Clinical Pharmacology and Analytical Chemistry Coreに送った。2mg/mLコホートの場合、血漿中の3TCの濃度は平均7.2μMであった。この用量の薬物を、ヒトHIV治療用量(300mg/日、血漿中5~8μM)を模倣するさらなる実験のために選択した62。このコミュニケーションで提示された実験のために、動物を26ヶ月齢に達するまで飼育室内で老化させた。次に、それらを、動物の外観または他の特徴について盲検化された技術者によって2つのコホートに無作為に割り当てた。1つのコホートを飲料水中2mg/mLの3TCで2週間処置し、他の(対照)コホートには薬物を含まない同じ水を同じ方法で投与した。処置期間の終了時に、すべての動物を犠死させ、上記のように組織を採取した。両方のコホートのすべての動物をその後のすべての分析に含めた。実験は、雄性および雌性動物を用いて別々の機会に実施した。非致死性全身照射(6Gy)を記載されているように実施し63、組織標本をドライアイス上に保持した。
【0146】
PCR
ABI ViiA 7装置(Applied Biosystems)をすべての実験に使用した。DNAのqPCRを、Coufal et al.(2009)64によって記載されているようにTaqManシステム(Applied Biosystems)を使用して実施した。100pgの精製ゲノムDNAを示されているプライマーと共に使用した(表1を参照)。SYBR Greenシステム(Applied Biosystems)を使用して、RNAの逆転写qPCR(RT-qPCR)を実施した。L1エレメントの転写を評価するすべての実験でポリアデニル化RNAを使用し、他のすべての遺伝子については全RNAを使用した。トリゾール試薬(Invitrogen)を使用して全RNAを回収した。NEBNext Poly(A)mRNA Magnetic Isolation Module(New England Biolabs)を使用して、全RNAからポリ(A)RNAを単離した。1μgの全RNA、または10ngのポリ(A)RNAを、TaqManキット(Applied Biosystems)を使用して50μLの反応液中でcDNAに逆転写した。鎖特異的転写を評価するために、RT反応におけるランダムプライマーを標的RNAに対する鎖特異的プライマーで置換した。1μLの各RT反応物をその後のqPCR反応に使用した。GAPDHを、ヒト細胞を用いた実験における正規化対照として使用した。Gapdhおよび2つのさらなる対照(Hsp90およびGusB)の算術平均を、Hsp90およびGusBに正規化した肝臓を除いて、マウス組織を用いたRT-qPCR実験の正規化のために使用した。L1転写を測定するために、cDNA6の合成の前に、ポリ(A)RNA試料をRNaseフリーDNase(Qiagen)で徹底的に消化した。RT酵素を除いた対照を使用して、DNase消化の有効性を評価した。
【0147】
PCRプライマーの設計
ヒトL1に対するプライマーセット1~5(表1、
図1bのアンプリコンA~E)を、以下のように、ヒト特異的L1HSおよび進化的に最近の霊長類特異的L1PA(2~6)サブファミリーのエレメントを優先的に増幅するように設計した。最初に、L1HSおよびL1PA2~L1PA6エレメントのコンセンサス配列をRepbase(Genetic Information Research Institute
65)から入手した。第2に、Clustal Omega多重配列アラインメントツール
66,67を用いてこれら6つの配列のコンセンサス配列を作製した。次に、NCBI Primer-BLASTツール
68,69を使用して、Primer3およびBLASTとの全体的なコンセンサスに基づいてプライマー設計を行った。L1プライマー対を、最新のゲノムアセンブリ(hg38)に対してIn-Silico PCR
70ツールを使用してそれらの標的について評価し、各プライマーの3'末端での最小完全一致は15に等しかった。ORF2に対するプライマー(プライマーセット6、
図1bのアンプリコンF)は、L1HSを優先的に標的とするためにCoufal et al.(2009)によって開発された。活性マウスL1エレメント(プライマーセット37、表1)の転写を評価するためのプライマーを、Repbaseから取得したL1MdAおよびL1Tfファミリーのコンセンサス配列を組み合わせて設計し、上記のように検証した。これらのエレメントの全長にわたるL1プライマー対(プライマーセット48~50)を、同じ戦略を用いて設計した。マウスL1エレメントの3つの活性ファミリーに特異的なプライマー対(プライマーセット51~53)を、5'UTR領域における多型を利用して設計した。L1転写のRT-qPCR分析を、SYBR Green法を使用してポリ(A)精製RNAで実施した。他のすべての(非L1)遺伝子については、可能な場合は常に、プライマーをゲノムDNA配列内の少なくとも1つのイントロンによって分離する(表1に示されているように)。ヒトIFNαファミリーに対するプライマーを、Clustal Omega多重配列アライメントツールを用いて作製したすべてのヒトIFNα遺伝子配列(IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNA8、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA16、IFNA17、IFNA21)のコンセンサス配列に対して設計した。マウス標的に対するすべてのプライマーを上記のように設計し、表1に列挙している。すべてのマウスIFNαファミリー遺伝子、ならびにIFNB1遺伝子のコンセンサスに対応するプライマーの配列を、Gautier et al.
71による刊行物から得た。相対的なL1ゲノムコピー数(ヒト細胞)を定量化するために、Coufal et al.(2009)
72によって開発されたTaqManマルチプレックス法を使用した。これらのプライマーを、セットNo.6およびセットNo.7(それらの対応するVICおよび6FAMプローブと共に)として表1に列挙している。
【0148】
クロマチン免疫沈降
すべてのChIP実験は、ChromatrapスピンカラムChIPキット(Porvair)を使用して実施した。簡単に説明すると、2×106個の細胞をそれらの培養皿において1%ホルムアルデヒドで架橋し(10分、室温)、グリシンでクエンチし、氷冷PBS(プロテアーゼ阻害剤を含む)で2回洗浄し、最後に微量遠心管に掻き取った。細胞ペレットを0.4mLの低張緩衝液に再懸濁し、氷上で10分間インキュベートした。核をスピンダウンし、0.3mLの溶解緩衝液に再懸濁し、パルスオンハイ(pulse on high)(30秒、続いて30秒休止)に設定したBioruptor UCD-200装置(Diagenode)を使用して合計10分間超音波処理した。抽出物を微量遠心機(最高速度、5分、4℃)で遠心分離して破片を除去し、上清を新しいチューブに移し、-80℃で保存した。2μgのDNAを含む量の抽出物を4μgの抗体と合わせ、Chromatrap固相プロテインAマトリックスにロードした。免疫複合体を、穏やかに撹拌しながら4℃で一晩形成させ、続いて、試料を洗浄し、製造者のプロトコルに従って溶出した。ウサギIgGおよび1%インプットを対照として使用した。1μLの免疫沈降DNAを各qPCR反応で使用した。
【0149】
BrdUプルダウン
静止細胞を得るために、増殖細胞を50%コンフルエンスまで成長させ、培地の血清補充を0.1%FBSに変更し、回収までインキュベーションを続けた。静止細胞および老化細胞を、培養細胞を標識するための製造者のプロトコルに従ってBrdU(BrdU標識試薬、Thermo Fisher)で2週間継続的に標識した。細胞を回収し、計数した:条件ごとに5×105個の細胞を処理した。ゲノムDNAをフェノール:クロロホルム抽出によって精製し、RNase A処理し、その後Bioruptor UCD-200装置を用いて剪断した(パルスオンロー(pulse on Low)、30秒オンおよび30秒オフ、合計10分)。DNAチューブをヒートブロック(100℃)中で正確に1分間インキュベートし、次いで液体窒素中で急速凍結した。チューブを室温で解凍し、1μgの精製抗BrdU抗体(BD Pharmingen、カタログ番号555627)を、磁性プロテインA/GビーズおよびChIP希釈緩衝液と共にチューブごとに添加した。免疫スラリーを一定の回転で4℃にて一晩インキュベートした。免疫捕捉BrdU標識DNAを、Magna ChIP(商標)A/Gクロマチン免疫沈降キット(Millipore Sigma)に従って精製した。未結合DNAをインプットとして保持した。1μLの免疫沈降DNAを各qPCR反応で使用した。あるいは、一本鎖BrdU標識DNAを濃縮するために、熱媒介変性を省き、試料を上記のようにBrdUプルダウン用に処理した。次いで、ランダムプライマー(Thermo Fisher)、第2鎖合成反応緩衝液、dNTPおよびDNA Pol I(New England Biolabs)の混合物を添加することによってDNAの第2鎖を生成した。反応物を16℃で4時間インキュベートし、その後フェノール-クロロホルム抽出によって精製した。第2鎖の合成後、dsDNAをEnd-It DNA End-Repair Kit(Epicenter、カタログ番号ER0720)で末端修復した。平滑末端断片を、Zero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(Thermo Fisher)を使用してクローニングし、次いで、One Shot TOP10化学的コンピテント大腸菌(E.coli)(Thermo Fisher、カタログ番号C404010)を形質転換するために使用した。個々のコロニーを採取し、Beckman Coulter GenomicsでT7プロモータプライマーを使用してサンガー配列決定に供した。
【0150】
RNA-seq
初期継代、初期および深部老化細胞(
図6a)からの全RNAを上記のように抽出した。全RNAをIllumina TruSeq Stranded Total RNA Ribo-Zeroキットで処理し、Beckman Coulter Genomics Inc.でv4化学を使用してIllumina HiSeq2500 2×125bpペアエンドシーケンシングに供した。各試料について7000万を超えるリードを得た。RNA-seq実験を3つの生物学的複製物で実施した。
【0151】
生のRNAシーケンシングリードを、HiSat2を使用してヒトゲノムのGrCh38ビルドに整列させた73。ゲノムにマッピングするカウントは、featureCountsを使用して決定した74。次いで、EdgeRにおいてM値のトリム平均(TMM)法を用いてカウントを正規化した75。EdgeRをさらに使用して、正規化したデータセットから差次的発現を導出した。次いで、差次的発現データをlog2倍率変化によってランク付けし、1000の順列を使用してGSEA PrerankedのGenePatternインターフェースに入力して、KEGG経路、SASP、およびインターフェロン応答の濃縮を決定した76,77。次に、Benjamini-Hochberg法を使用して公称p値を調整することによって、多重比較のためにアウトプットを補正した78。GENE-Eソフトウェアを使用してデータを表示した79。
【0152】
L1に結合する転写因子のインシリコ分析
転写因子プロフィールを、ENCODEプロジェクトからのChIP-seqデータを使用して作成した(GEOアクセッション番号GSE2961およびGSE32465)。転写因子ChIP-seqおよびインプット対照リードを、bowtie1を使用してL1HSのコンセンサス配列に整列した80。インプット対照RPM値に対する100万マッピングリード(RPM)あたりの転写因子ChIP-seqリードカバレッジを使用して、L1HSコンセンサスの塩基対ごとにlog2倍率変化濃縮を計算し、LOESS平滑化によってパラメータα=0.1で平滑化した。RPM正規化に使用されるマッピングリードの総数を、ヒトゲノム(hg19)に対する別個のbowtie1アラインメントから決定した。
【0153】
FOXA1レポータの構築
L1プロモータレポータプラスミドL1WTおよびL1 del(390~526)をSergey Dmitriev,Institute of Bioorganic Chemistry,Moscowから入手した
81,82。両方とも、センス方向でクローニングされたレポータとしてルシフェラーゼを含む。同じプラスミドからのアンチセンス転写を決定するために、EYFPを以下のようにL1 5'UTRの上流に逆方向に挿入した。EYFP配列を、AgeIおよびNotIを用いてpEYFP-N1(Clontech、カタログ番号6006-1)から切り出し、平滑末端化した。プラスミドL1WTおよびL1delをXbaIで消化し、平滑末端化し、FastAP(Fermentas)で処理した。アンチセンスEYFPの挿入の成功を、PCRプライマー
ならびにサンガーシーケンシングを使用して検証した。プラスミドpcDNA3.1/LacZを同時トランスフェクション対照として使用した。ルシフェラーゼおよびβ-ガラクトシダーゼアッセイを記載されているように実施した
83。EYFP-N1を、EYFPシグナルを検出するための陽性対照として使用した。Lipofectamine with Plus Reagent(Invitrogen)を製造者の指示に従って使用して、初期継代LF1細胞で同時トランスフェクションを実施した。
【0154】
レンチウイルスベクター
構築物を、以下に示すように公的寄託機関から入手した。記載されているように、ビリオンを作製し、標的細胞を感染させた
84。shRNA配列をThe RNAi Consortium(TRC)
85から入手し、第3世代のpLKO.1ベクターにクローニングし、有効性について試験した。複数の薬物選択を可能にするために4つの選択マーカを使用した:pLKO.1 puro(2μg/ml)およびpLKO.1 hygro(200μg/ml)(AddgeneプラスミドNo.8453、24150)、pLKO.1 blast(5μg/ml)(AddgeneプラスミドNo.26655)、pLKO.1 neo(250μg/ml)(Addgeneプラスミド13425)。pLKO-RB1-shRNA63およびpLKO-RB1-shRNA19(AddgeneプラスミドNo.25641および25640)
86。FOXA1 shRNAについては、TRCN0000014881(a)およびTRCN0000014882(b)を使用した。TREX1 shRNAについては、TRCN0000007902(a)およびTRCN0000011206(b)を使用した。L1のノックダウンのために、9つのshRNAを設計および試験し、そのうち2つ(shL1_11からORF1、
、およびshL1_44からORF2
)が有意なノックダウンを示し(
図10g)、さらなる作業のために選択した。残りの7つのshRNAは、ノックダウンを全く生成しなかったか、または最小限しか生成しなかった。cGAS shRNAについては、TRCN0000128706(a)およびTRCN0000128310(b)を使用した。STING shRNAについては、TRCN0000161345(a)およびTRCN0000135555(b)を使用した。
【0155】
すべての異所性発現実験は、レンチウイルスベクターpLX304(ブラスチシジン耐性、Addgeneプラスミド25890)においてORFeome Collaboration87によって生成された構築物を使用し、DNASU plasmid repository88から入手した。RB1(ccsbBroad304_06846、HsCD00434323)、TREX1(ccsbBroad304_02667、HsCD00445909)、FOXA1(ccsbBroad304_06385、HsCD00441689)。
【0156】
老化細胞におけるすべての介入は、老化の12週目に細胞を感染させることによって開始した(
図6aの点D)。適切な薬物選択後、細胞を老化の16週目までインキュベートし(
図6aの点E)、その時点でさらなる分析のために回収した。
【0157】
3X介入は、初期継代LF1細胞をベクターpLKO.1 puro shRB、pLKO.1 hygro shTREX1およびpLX304 blast FOXA1に連続的に感染させることによって実施した(
図10c)。各感染後、生じた薬物耐性細胞プールを直ちに次のベクターに感染させた。3回目の感染後、薬物選択が完了した48時間後に、細胞をさらなる分析のために回収した。感染を様々な組合せでも実施し、いずれの場合も、L1発現の活性化、老化への移行、およびIFN-I応答の誘導がもたらされた。上記の配列は、さらなる分析のための細胞の最も効率的な選択を与えたことから選択した。3X細胞(shL1、shSTING、またはshCGAS)へのさらなる(第4の)介入を可能にするために、RB1を標的とするヘアピンをpLKO.1 neoに再クローニングし、したがって、関心対象の4番目の遺伝子についてpLKO.1 puroを遊離させた。これにより、効率的な薬物選択プロセスおよび最後の選択の48時間後の試料採取が可能になった。
【0158】
レトロ転位レポータ
Xie et al.(2011)89によって報告された2ベクターデュアルルシフェラーゼレポータシステムをレンチウイルス送達に適合させた。L1RP-FlucレポータをプラスミドpWA355およびpWA366からレンチウイルス骨格pLX304に再クローニングした。pWA355は機能的で活性なL1RPエレメントを含んでいたのに対し、pWA366は、レトロ転位することができない、ORF1中に2つのミスセンス変異を担持する変異エレメントであるL1RP(JM111)を含んでいる。初期継代LF1細胞を、Rlucを発現するピューロマイシン耐性レンチウイルスに感染させた。次いで、プールした薬物耐性細胞をpLX304-WA355またはpLX304-WA366構築物の高力価粒子に感染させた。感染直後に、細胞を3TC(示されている濃度)で4日間処理した。次いで、細胞を回収し、RlucおよびFlucルシフェラーゼ活性についてアッセイした。天然のL1レトロ転位レポータpLD14390を、FuGene HD(Promega)を使用して、pLKOベクター(shLuc、shL1_11およびshL1_44)と共にHeLa細胞に同時トランスフェクトした。細胞培養、トランスフェクションおよびレトロ転位アッセイを上記のように行った。レトロ転位活性を、shLucと同時トランスフェクトしたL1RPの活性に対して正規化した。各構築物について3つの独立した実験を行った。
【0159】
長距離RT-PCRおよび5'RACEによる発現されたL1エレメントの同定
トリゾール試薬(Invitrogen)を使用して細胞から全RNAを回収した。DNase I消化を伴うPurelink RNA Miniキット(Invitrogen)を使用してRNAをさらに精製した。溶出した全RNAから、NEBNext Poly(A)mRNA Magnetic Isolation Module(New England Biolabs)を使用してポリ(A)RNAを単離した。フォワードプライマー(MDL15UTRPRAF、プライマーセット1、表1)を、2つのリバースプライマー(MDL15UTRPRCR、プライマーセット3、アンプリコンサイズ537bp)またはMDL15UTRPRDR、プライマーセット4、アンプリコンサイズ654bp)のいずれかと共に使用した。高忠実度の耐熱性逆転写酵素(PyroScript RT-PCR Master Mix Kit,Lucigen)を、反応あたり10ngのポリ(A)mRNAと共に使用し、10サイクル増幅した。鋳型なしおよびRNaseA処理試料を陰性対照として使用した。生成したアンプリコンをTOPO-TA(Invitrogen)ベクターにクローニングし、得られたプラスミドを使用してOne Shot TOP10化学的にコンピテント大腸菌を形質転換した。個々のコロニーを採取し、Beckman Coulter GenomicsでT7プロモータ配列決定プライマーを使用してサンガー配列決定に供した。合計768個の配列決定されたクローンについて、4つの実験で各プライマー対について96の配列決定反応(1プレート)を実施した。配列決定データをトリミングしてRT-PCRプライマーを除去し、+1、-4のマッチ/ミスマッチコストでヒトゲノム(GRCh38)に対してBLASTを実施し、ホモサピエンスの種特異的反復を可能にした。完全なヒットのみをスコア化し、ゲノム座標について注釈付けた。658個のクローンを参照ゲノムにマッピングすることができ、51個は少なくとも1つのミスマッチを含み、したがって細胞株において多型であるエレメントを表している可能性が高く、58個はクローニングアーチファクトであった。クローンが完全な同一性の複数のインスタンスを提示する場合は常に、分数カウントを採用し、同じ配列を共有するエレメントの数でカウントを除した。L1Xplorer91を使用して各マッピング可能なクローンをさらに分析して、L1エレメントの分類特徴およびそれがインタクトであるかどうかを再確認した。
【0160】
あるいは、上記のように単離したポリ(A)RNAを、cDNA末端の迅速増幅(RACE)に供した。各反応物は10ngのポリ(A)RNAを含み、5'RACE Systemキット(Thermo Fisher、カタログ番号18374-041)を使用して処理した。5'RACEに使用した2つのアンチセンス遺伝子特異的プライマー(GSP)は、GSP1についてはMDL15UTRPRDR(プライマーセット4、表1)、およびネストされたGSP2についてはMDL15UTRPRCR(プライマーセット3、表1)であった。増幅産物をクローニングし、Beckman Coulter GenomicsによるT7プロモータ配列決定プライマーを使用して上記のように配列決定した。合計94個のクローンを配列決定した;26個は、主にRACEプロトコルのテーリング工程によって生成されたポリGストレッチを含み、18個はヒトゲノムにマッピングすることができなかった。残りの50個のマッピング可能なクローンはL1配列を含み、1~450位で>95%の同一性の設定を使用してL1HSコンセンサスに整列させた92。マッピング可能なクローンを、RepEnrichソフトウェアを使用して個々のL1ファミリーにも割り当てた93。LALIGNを用いてコンセンサスへのペアワイズアラインメントを実施した94。多重配列アラインメントは、MAFFT(高速フーリエ変換を使用したマルチプルアラインメント)とL-INS-iアルゴリズム(200未満の配列のアラインメントについて正確)を使用して計算した95。アラインメントの可視化、%同一性のカラーリングおよびコンセンサスをJalviewによって生成した96。
【0161】
CRISPR-Cas9ノックアウトの作製および分析
GeCKO v2.0リソース(Feng Zhang Lab,MIT
97)
98にリストされているIFNAR受容体(IFNAR1およびIFNAR2)の各鎖について3つの異なるgRNA配列を試験し、以下のものを選択した:
Cas9およびgRNAを、ピューロマイシン耐性遺伝子を担持する単一のレンチウイルスベクター(LentiCRISPR_v2、Feng Zhang Lab,MIT;AddgeneプラスミドNo.52961)を使用して送達した。上記の2つのgRNAを選択する根拠となったCRISPR-Cas9変異誘発の有効性を、感染細胞と薬物選択細胞をインターフェロン(ユニバーサルI型インターフェロン、PBL Assay Science、カタログ番号11200-1)で処理し、ホスホ-STAT2およびIRF9の核移行を免疫蛍光によって監視することによって評価した。転座が存在しないことは、IFN-I応答性の欠如、したがって、IFNAR機能の喪失を意味する。実験手順は、Zhang labによって提供されたプロトコルに従った
99,100。
図3h(RS)および
図10kに示す実験では、IFNAR1 gRNAおよびIFNAR2 gRNAの両方を使用して、INF-I応答を消失させる効果をさらに高めるために同じ細胞を処理した。初期継代細胞および老化細胞について、IFNAR1およびIFNAR2ベクターの同時感染を実施し、続いてピューロマイシンで選択した。老化細胞の場合、高力価レンチウイルス粒子を老化の12週目に老化細胞に適用し(点D、
図6a)、4週間後に細胞をアッセイした(点E、
図6a)。
図3h(SIPS)に示す実験では、編集した初期継代細胞を単一細胞クローニングした。CellRaft技術(Cell Microsystems)を使用して24個の単一細胞を単離し、増殖させた。CRISPR切断部位のゲノムスクリーニングは、CRISPR Sequencing Service(CCIB DNA Core,Massachusetts General Hospital)によって実施された
101。IFNAR1およびIFNAR2のノックアウトの成功は、24の増殖したクローン細胞株のうちの4つで確認された。
【0162】
免疫ブロッティング
細胞をLaemmli試料緩衝液(60mMトリスpH6.8、2%SDS、10%グリセロール、100mM DTT)中で回収し、100℃で5分間煮沸した。全細胞抽出物(60μgのタンパク質)をSDS-PAGEによって分離し、Immobilon-FL膜(Millipore)に移した。非特異的結合を、4%ウシ血清アルブミン(BSA;Thermo Fisher)および0.1%Tween-20を含むPBS中で室温にて1時間インキュベートする工程によってブロックした。一次抗体をブロッキング溶液で希釈し、4℃で一晩インキュベートした。すべての一次抗体のリストを表2に示す。二次抗体をブロッキング溶液で希釈し、室温で1時間インキュベートした。LI-COR Odyssey赤外線イメージングシステム(LI-COR Biosciences)を使用してシグナルを検出した。シグナルの定量化のために、比較するすべての試料を同じゲル上で泳動した。ローディング標準を、LI-COR 2カラーシステムを使用して試験試料と同じブロットで可視化した。LI-CORソフトウェアを使用してバンドを画像化し、定量化した。比較するすべてのバンドが同じ画像上で定量化され、装置の検出の線形範囲内にあった。
【0163】
培養中の細胞に対して実施した免疫蛍光顕微鏡検査
細胞をガラスカバースリップ上で増殖させ、試料を以前に記載されているように処理した102。一次抗体を表2に列挙する。ssDNAの染色を、Thomas et al.によって記載されているように実施した103。簡単に説明すると、カバースリップに播種した細胞を、4%パラホルムアルデヒド(PFA)を用いて氷上で20分間固定し、次いで、100%メタノール中、-20℃で一晩インキュベートした。次に、細胞を200mg/mLのRNase Aで37℃にて4時間処理した。細胞を3%BSAでブロックし、3%BSAで希釈した一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。Zeiss LSM 710共焦点レーザー走査型顕微鏡またはNikon Ti-S倒立蛍光顕微鏡を使用して画像を取得した。すべての顕微鏡設定は、飽和未満の画像を収集するように設定し、以前に記載されているように、1つの実験で撮影されたすべての画像について一定に保った104。組織については、以下に説明するように画像解析を行った。
【0164】
PCRアレイ
全RNAを上記のように細胞から採取し(定量PCR)、Qiagen RT2 Profiler(商標)Human Type I Interferon Response PCR Array(カタログ番号PAHS-016ZE-4)を使用して分析した。1μgの全RNAを出発物質として使用して、Qiagen RT2 First Strand Kit(カタログ番号330404)を用いて逆転写反応を行った。102μLの完了した反応物を650μLのQiagen RT2 SYBR Green ROX qPCR Mastermix(カタログ番号330521)および548μLのRNaseフリー分子グレード水と合わせ、ViiA 7 Applied Biosystems装置の384ウェルブロックで分析した。すべての手順は、製造者のプロトコルに従った。すべての条件を3回実施した。Qiagen GeneGlobe Data Analysis Centerを使用して結果を分析した105。簡単に説明すると、Ct値をハウスキーピング遺伝子(HKG)のパネルに正規化した。ΔCt値を関心対象の遺伝子(GOI)と平均HKG値との間で計算した。次いで、2-ΔΔCT式を使用して倍率変化を計算した。検出下限はCt=35に設定した。GOIが有意と見なされるために、以下のフィルタを設定した:(i)発現の2倍超の変化;および(ii)p値>0.05。さらに、対照および試験試料の両方で平均Ct>32の遺伝子も排除した。
【0165】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)
インターフェロンβレベルを、VeriKine-HS Human IFN Beta Serum ELISA Kit(PBL Assay Science、カタログ番号41415)を用いて定量化した。細胞培養培地を回収前に48時間馴化した。粒子および破片を除去するために、1mLのアリコートを5,000×gで5分間回転させた。すべてのインキュベーションは、プレートを温度変動から遠ざけて、室温(22~25℃)の密閉チャンバ内で実施した。50μLの試料緩衝液、続いて50μLの希釈抗体溶液を各ウェルに添加した。最後に、ウェルごとに50μLの試験試料、標準またはブランクを添加した。プレートを密封し、450rpmで2時間振とうした。インキュベーション期間の終わりに、プレートの内容物を取り出し、ウェルを300μLの希釈洗浄溶液で3回洗浄した。100μLのHRP溶液を各ウェルに添加し、一定の振とう下で30分間インキュベートした。ウェルを空にし、洗浄液で4回洗浄した。100μLのTMB基質溶液を各ウェルに添加した。プレートを暗所で30分間インキュベートした。最後に、100μLの停止溶液を各ウェルに添加し、5分以内に450nmでの吸光度を記録した。ブランク対照について記録した値を、バックグラウンドを排除するために標準および試料の値から差し引いた。光学密度(OD)単位を、標準曲線に対する4パラメータ適合を使用してプロットし、試料中のインターフェロン力価を計算するために使用した。
【0166】
ヒト組織標本
ヒト皮膚標本は、Leiden Longevity Study106,107の一部として収集され、Leiden University Medical Centre,Netherlandsによって提供された。インフォームドコンセントが得られ、すべてのプロトコルがLeiden University Medical Centreの倫理委員会によって承認された。試料を厚さ4mmの全層パンチ生検として収集し、最適切断化合物(optimal cutting compound)(OCT)に包埋し、急速凍結し、-80℃で保存した。試験者は、対象の年齢および性別以外のすべてについて盲検化された。OCT包埋標本を、Leica CM3050Sクライオミクロトームを使用して厚さ8μmの凍結切片にした。スライドを、PBS中の4%PFAおよび0.5%Triton X-100(37℃に予熱)で室温にて20分間固定した。さらなる透過処理は行わなかった。抗体インキュベーションの前に、PBS中の4%ウシ血清アルブミン(BSA;フラクションV、Thermo Fisher)、2%ロバ血清、2%ウサギ血清および0.1%Triton X-100を用いたブロッキング工程を室温で1時間実施した。一次抗体を上記のブロッキング溶液で希釈し(1:200)、加湿チャンバ内で揺り動かしながら4℃で一晩インキュベートした。二次抗体(AlexaFluor 546およびAlexaFluor 647、Life Technologies)もブロッキング溶液で希釈し、室温で2時間インキュベートした。0.2%Triton X-100を含むPBS中で15分間洗浄する3回の工程に続いて、各抗体をインキュベートした。核を、0.2%Triton X-100を含むPBS中の2μg/mL DAPIで15分間対比染色した。染色されたスライドを、DAPI(Life Technologies)を使用せずにProLong Antifade Mountantでマウントし、Zeiss LSM 710共焦点レーザー走査型顕微鏡で画像化した。組織の全厚を網羅するz系列を各視野について収集した。すべての顕微鏡設定および露光時間は、飽和未満の画像を収集するように設定し、1つの実験で撮影されたすべての画像について一定に保った。画像分析は、CellProfilerソフトウェア108またはNIHのImageJオープンソースソフトウェア109のいずれかを使用して実施した。核は、DAPIチャネルを使用して定義した。AlexaFluor 546およびAlexaFluor 647チャネルの強度閾値に達するまで、関数Propagateを使用して核マスクを放射状に拡張することによって細胞輪郭を定義した。次いで、これらの領域内の蛍光強度を両方のチャネルで記録した。各試料について、合計200個の核を複数の視野で記録した。マウス組織切片を上記と同じ方法で処理および分析した。
【0167】
マウス組織標本
全RNAを、50mgの内臓脂肪、小腸、骨格筋、褐色脂肪または肝臓組織から、ミンチにした後、Power Gen 125ホモジナイザ(Fischer Scientific)を使用してトリゾール(Invitrogen)中でホモジナイズすることによって抽出した。相分離後、水層のRNAを、DNase I消化を伴うPurelink RNA Miniキット(Invitrogen)を使用して精製した。RT-qPCRによって遺伝子発現を評価するために、1μgの全RNAを上記のように逆転写した。各個々の実験では、すべての試料を並行して処理し、盲検化は導入しなかった。
【0168】
全載白色脂肪組織のイメージングは、Martinez-Santibanez et al.(2014)110によって記載された方法に従った。簡単に説明すると、白色脂肪組織(内臓デポ)を0.5~1cm3の大きさの小片に細分し、10mLの新鮮な固定緩衝液(PBS pH7.4中1%PFA)中で、穏やかに揺り動かしながら室温で30分間インキュベートした。PBSによる3回の洗浄工程の後、組織ブロックを6等分に切断した。その後のインキュベーションはすべて、2mLの円筒形微量遠心管中で行った。一次抗体のインキュベーションの前に、5%BSA、0.1%サポニンを含むPBS中で室温にて30分間、ブロッキング工程を実施した。一次抗体を上記ブロッキング溶液で希釈し(1:200)、穏やかに揺り動かしながら4℃で一晩インキュベートした。二次抗体(AlexaFluor 546、AlexaFluor 594およびAlexaFluor 647、Life Technologies)もブロッキング溶液で希釈し、室温で2時間インキュベートした。PBS中で10分間洗浄する3回の工程に続いて、各抗体をインキュベートした。核および脂質の抗体非依存性染色を免疫染色後に実施した:DAPIおよびBODIPY(Thermo Fisher)を、5%BSAを含むPBSで希釈し、組織標本と共に20分間インキュベートした後、上記のように3回の洗浄工程を行った。染色した試料を、共焦点イメージングに最適化されたNo.1.5ホウケイ酸ガラスチャンバスライド上に注意深く配置した。少量のPBSが乾燥を防止した。取得した画像を上記のように分析した。
【0169】
肝臓切片におけるSA-β-Gal活性およびORF1タンパク質の共染色を、記載されているように最初にSA-β-Galを染色することによって実施した111。その後、試料を抗原回収緩衝液(10mMトリス、1mM EDTA、0.05%Tween 20、pH9.0)中で20分間蒸気処理することによって、熱誘導エピトープ回収に供した。次いで、試料を上記のように免疫蛍光染色のために処理した(ヒト組織標本)。
【0170】
OCTで保存した腎組織を凍結切片化し、0.5%(w/v)過ヨウ素酸で10分間処理し、次いで、過ヨウ素酸シッフ(PAS)試薬(Fisher Scientific、カタログ番号SS32-500)で10分間染色した。染色した組織切片をShandon Aqua Mount(Fisher Scientific、カタログ番号14-390-5)でマウントし、明視野照明下で画像化した。糸球体硬化症を記載されているようにスコア化した
112。簡単に説明すると、動物あたり40の糸球体を盲検法で評価し、1~4のスコアを割り当てた:スコア1、<25%硬化症;スコア2、25~50%硬化症;スコア3、50~75%硬化症;スコア4、>75%硬化症。硬化症を評価するために使用した特徴は、糸球体内のPAS陽性病変の強度および広がりであった。
図4eに例示されるように、硬化性糸球体は、より収縮し、PASでより強く染色される。
【0171】
四頭筋をOCTに包埋し、12μmの厚さで切片化し、正に帯電したスライドにマウントした。切片をH&E(ヘマトキシリン、3分、続いてエオシン、30秒)で染色した。Zeiss MRC5カラーカメラを備えたZeiss Axiovert 200M顕微鏡で、マウントしたスライドを画像化した。筋線維直径を測定するために、記載されているようにImageJソフトウェアを使用して動物あたり約100本の筋線維を横切る最短距離を測定した113。コルモゴロフ-スミルノフ検定を使用して、得られた分布間の差の統計的有意性を評価した。
【0172】
統計処理
Excelを使用して一般的な統計分析(平均、s.d.、t検定など)を行った。統計計算のためのRソフトウェア(64ビットバージョン3.3.2)を、一元配置分散分析およびTukeyの多重比較事後検定に使用した。比較の一貫性のために、すべての図における有意性を以下のように示す:*P<0.05、**P<0.01。サンプルサイズは、以前に公開された実験および差が認められた以前の経験に基づいた。サンプルサイズを事前に決定するための統計的検定は使用しなかった。除外された試料はなかった。複製の試みはすべて成功した。複製されなかった、または再現できなかった所見はなかった。各実験で分析された試料の性質および数(nとして定義)を図の凡例に列挙している。独立した実験の数も図の凡例に列挙されている。試験者は、免疫蛍光結果を定量化するときに盲検化された。個々の実験について示されている方法を使用して、定量化のための組織の領域または切片をランダムに選択し、スコア化した。試験者はまた、糸球体硬化症および筋線維直径をスコア化するときにも盲検化された。RNA-seqおよびPCRアレイ実験については、統計処理をそれらのセクション(上記)に記載している。
【0173】
実施例1 細胞老化におけるL1およびインターフェロンの活性化
RTE活性は、異常な転写、選択的スプライシング、挿入突然変異誘発、DNA損傷およびゲノム不安定性を促進することができる114。RTE由来の配列はヒトゲノムの最大3分の2を構成するが115、大部分は数百万年前に活性であり、もはやインタクトではない。自律的なレトロ転位が可能な唯一のヒトRTEは、長鎖散在反復配列1(LINE-1、またはL1)である。しかしながら、L1の生殖細胞系活性は、ヒト構造多型の主要な原因である116。増加しつつある証拠は、いくつかの癌、成人の脳、および加齢中のRTE活性化を示している117,118,119,120。細胞防御には、エレメントのヘテロクロマチン化、転写産物を標的とする小分子RNA経路、および抗ウイルス自然免疫機構が含まれる121。加齢に伴うRTEの体細胞活性化は酵母およびショウジョウバエで保存されており、RTE活性の低下は有益な効果を有する122。
【0174】
図1aおよび
図6a~eに示すように、L1転写は、ヒト線維芽細胞の複製老化(RS)中に指数関数的に活性化され、後期老化と称される増殖停止後16週間までに4~5倍増加した。進化的に最近のL1エレメント(L1HS-L1PA5;
図1b、
図6h)を検出するために、複数のRT-qPCRプライマーを設計した。L1ポリA+RNAのレベルは、エレメント全体にわたってアンチセンス方向ではなくセンス方向で後期老化細胞(RS)において4~5倍増加した(
図1c)。長距離RT-PCRアンプリコン(
図1b)をサンガー配列決定して、ゲノム全体に分散した224個のエレメントを同定した;3分の1(75、33.5%)はL1HSであり、そのうち19(25.3%、全体の8.5%)はインタクトであった(すなわち、ORF不活性化変異がないと注釈されている;
図6f、g)。5'RACEも同じプライマーを用いて実施し、L1転写産物の大部分が5'UTR内またはその付近で開始される老化細胞において上方制御されることが見出された(
図7)。
【0175】
L1エレメントはIFN-I応答を刺激することができる
123。
図1dおよび
図6iに示すように、インターフェロンIFN-αおよびIFN-β1が後期老化細胞において高レベルに誘導された。細胞老化は、初期DNA損傷応答段階、続いてSASP応答を経て進行する
124。ここで本データによって実証されるのは、L1の上方制御およびIFN-I応答(
図1e)を特徴とする第3の段階およびさらに後の段階であり、これは、おそらくほとんどの試験がより早い時期に集中しているためにこれまで言及されていなかった。全トランスクリプトームRNA-seq分析により、SASPおよびIFN-I応答が時間的に異なることが確認された(
図8)。L1活性化およびIFN-I誘導の後期は、癌遺伝子誘導性老化(OIS)およびストレス誘導性早期老化(SIPS)においても観察された(
図1e、
図1j、k)。
【0176】
実施例2 L1活性化の機構
老化の間にどのように監視が失敗するかを調査するために、3つの因子:TREX1、RB1およびFOXA1を調べた。TREX1は、外来侵入DNAを分解する3'エキソヌクレアーゼであり、その喪失は細胞質L1 cDNAの蓄積に関連している
125。
図9aに示すように、TREX1の発現は老化細胞において有意に減少した。RB1は、L1を含む反復エレメントに結合し、それらのヘテロクロマチン化を促進することが示されている
126。
図2aに示すように、RB1の発現は老化細胞(RS;)において強く低下したが、他のRBファミリーメンバー(RBL1、RBL2)の発現は変化しなかった(
図9b)。L1エレメントの5'UTRにおけるRB1濃縮は、増殖中の細胞で明らかであり、早期老化で減少し、後の時点では検出不能になった(
図2a)。これは、これらの領域におけるH3K9me3およびH3K27me3マークの減少と一致した(
図9c)。
【0177】
L1 5'UTRと相互作用する新規因子を同定するために、本発明者らはENCODE ChIP-seqデータベースを調べ、先駆けとなる転写因子FOXA1がいくつかの細胞株でこの領域に結合することを見出した(
図9d)。FOXA1は老化細胞において上方制御される
127。
図2bに示すように、FOXA1はL1 5'UTRの中央領域に結合した。転写レポータを使用して、本発明者らは、FOXA1結合部位の欠失がL1 5'UTRからのセンス転写とアンチセンス転写の両方を減少させることを見出した
128(
図9e)。したがって、老化細胞で観察されたこれらの3つの因子の誤調節は、3つの付加的な機構によってL1の活性化を促進し得る:ヘテロクロマチン抑制を軽減することによるRB1の喪失、L1プロモータを活性化することによるFOXA1の獲得、およびL1 cDNAの除去を損なうことによるTREX1の喪失。
【0178】
したがって、レンチウイルスベクターを使用して、完全に老化した細胞におけるRB1、FOXA1またはTREX1の発現を操作することの効果を試験した(
図10a、b)。RB1の異所性発現は、老化細胞におけるL1、IFN-αおよびIFN-β1の発現上昇を抑制し、一方、そのノックダウンは、それらの発現をさらに増強した(
図2d)。RB1の過剰発現はまた、L1 5'UTRのその占有率も回復させた(
図2c)。逆に、FOXA1のノックダウンは、L1 5'UTRへのその結合を減少させ(
図9f)、L1、IFN-αおよびIFN-β1の発現を減少させ、一方、FOXA1の過剰発現は、L1、IFN-αおよびIFN-β1レベルを増加させた(
図2e)。TREX1を操作することによっても一致する結果が得られた(
図2g)。したがって、これらの因子の各々は、老化細胞におけるL1およびIFN-I応答の調節に明白な影響を及ぼした。
【0179】
これらの因子を標的とする単一または二重の介入は、増殖中の初期継代細胞におけるL1およびIFN-I発現のわずかな変化しか誘発しなかった。これらの効果のいくつかは統計的に有意であったが、それらは、FOXA1過剰発現と組み合わせたRB1およびTREX1ノックダウンの三重の介入(3X)によって矮小化され、L1およびIFN-I発現の大量の誘導をもたらした(
図2f、
図9g~i、および
図10c)。したがって、正常な健康細胞では、L1を効果的に解き放つ(unleash)ためには、3つのエフェクタすべてを損なわなければならない。
【0180】
実施例3 L1活性化の結果
L1によるIFN-I活性化をより詳細に評価するために、本発明者らは、PCRアレイを使用してこの経路における84個の遺伝子の発現を調べた。本発明者らは、広範な応答を観察し、遺伝子の大部分が上方制御されていた(
図2h、
図9j、k):68%(57/84)が老化細胞で有意に上方制御され、52%(44/84)が3X細胞で上方制御された。これらのデータは、RNA-seqトランスクリプトーム解析を検証し、さらに拡張する(
図8)。
【0181】
HIVに対して開発されたいくつかのNRTIは、L1 RT活性も阻害することが認められている
129。本発明者らはまた、L1に対するshRNAを開発し、そのうちの2つは、後期老化細胞および3X細胞においてそれぞれ転写産物レベルを40~50%および70~90%低下させた(
図10g)。ORF1タンパク質レベルは、後期老化細胞において対応して減少した(
図5h)。最後に、shRNAは、組換えL1レポータ構築物のレトロ転位も減少させた(
図10k)。
【0182】
TREX1を欠く細胞は細胞質L1 DNAを示し、その蓄積はNRTIで阻害することができる
130。BrdU取り込みの欠如は老化細胞の標準的な特徴であるが(
図6b)、より長期間の標識は、主に細胞質であり、L1配列が高度に濃縮されたDNAを明らかにした(
図11a、b)。細胞質L1 DNAの合成は、NRTIラミブジン(3TC)またはL1に対するshRNAでほぼ完全にブロックすることができた(
図3a、c)。DNA:RNAハイブリッドに対する抗体は、大部分がORF1タンパク質と共局在し、RNase消化後にssDNAシグナルに変化する、老化細胞における細胞質シグナルを検出した(
図11c)。老化細胞におけるBrdU標識L1配列の分析は、それらがL1エレメント全体に局在することを示した(
図11d、e)。全細胞DNAにおけるL1HS配列の相対的な増加も、qPCRアッセイ6、16によって検出することができる
131,132。7.5~10μMの範囲の3TCは、老化細胞におけるこの増加を完全にブロックし、L1レトロ転位レポータの活性もクエンチした(
図10d、e)。
【0183】
shRNAによるL1ノックダウンまたは3TCでの細胞の処理は、インターフェロンレベルを有意に低下させ、ならびに後期老化細胞および3X細胞の両方でIFN-I応答をより広範に低下させた(
図3b、
図12a)。7.5~10μMの範囲の3TCは、IFN-I応答を最適に阻害し、試験した4つのNRTIの中で最も有効であった(
図10f、j)。NRTIの相対的な有効性は、ヒトL1 RT15を阻害するそれらの能力と一致する。3TCはまた、他の形態の老化、OISおよびSIPSにおいてもIFN-I応答に拮抗した(
図3e)。
【0184】
細胞を増殖期から後期老化まで、3TCの継続的存在下で継代した。3TCは、老化への移行のタイミング、p21もしくはp16の誘導、またはIL-βの上方制御などの初期SASP応答に有意な影響を及ぼさなかった(
図3f、
図12b)。しかしながら、後期SASP応答(CCL2、IL-6およびMMP3の誘導など)の大きさは有意に減弱した。L1 shRNAでの処理はまた、後期老化細胞におけるIL-6およびMMP3の発現レベルを低下させた(
図11f)。したがって、L1活性化およびその後のIFN-I応答は発症が比較的遅いが、それらは、重要なことに、老化細胞の成熟SASPおよび炎症誘発性表現型に寄与する。
【0185】
3TCはL1転写産物レベルに影響を及ぼさず(
図10i)、INF-I応答がL1 cDNAによって引き起こされることを示唆した。このモデルが予測するように、サイトゾルDNAセンシング経路成分であるcGASまたはSTING
133のノックダウンは、後期老化細胞および3X細胞の両方でIFN-I応答を阻害し(
図10lおよび
図12c、d)、後期老化細胞におけるSASP応答も下方制御した(
図12e)。
【0186】
5'リボース位置でアルキル修飾されたNRTIはリン酸化することができず、したがってRT酵素を阻害しない。しかしながら、それらは、NLRP3インフラマソーム経路を活性化するP2X7媒介事象を阻害することによる固有の抗炎症活性を有する
134。トリメトキシ-3TC(K-9)は、10μMまたは100μMでは、後期老化細胞または3X細胞のいずれにおいてもIFN-I応答を阻害しなかった(
図12f)。したがって、IFN-I経路に対する3TCの効果はRT阻害を必要とする。高濃度(100μM)では、K-9は炎症マーカに対して多少の阻害活性を有していた(
図12g)。
【0187】
SASPにおけるインターフェロンシグナル伝達の役割を試験するために、CRISPR/Cas9を使用してIFN-α/β受容体(IFNAR1および2)を不活性化した。IFN-Iシグナル伝達の効果的な消失が、初期継代細胞および後期老化細胞の両方で達成された(
図10m)。複製型およびSIPS型の両方の老化において、インターフェロンシグナル伝達の喪失は、後期SASPマーカ(CCL2、IL-6、MMP3)に拮抗したが、初期SASPマーカ(IL-1β)には拮抗しなかった(
図3d)。これは、IFN-Iシグナル伝達が老化細胞における完全で成熟したSASP応答の確立に寄与することをさらに実証する。
【0188】
実施例4 ヒトおよびマウス組織におけるL1の活性化
ヒト癌におけるL1発現の活性化は、ORF1抗体で検出されている
135。同じ試薬は、老化細胞と3X細胞の両方で広範なORF1発現を示した(
図8a、c、f)。正常な老齢ヒト個体の皮膚生検において、本発明者らは、皮膚線維芽細胞の10.7%が老化マーカp16について陽性であり、これは老化した霊長動物で記録された範囲内であることを認めた
136(
図13b、d、f、h)。p16陽性皮膚線維芽細胞の一部は、ORF1についても陽性であった(10.3%)。特に、本発明者らは、p16発現の非存在下ではORF1を全く観察しなかった。本発明者らはまた、組織微小環境におけるインターフェロンシグナル伝達の存在と一致して、単一細胞レベルでリン酸化STAT1の存在を検出した
137(
図13b、e、g)。したがって、正常なヒト個体における老化細胞の一部は、老化の進行中に蓄積するこれらの事象と一致して、L1の活性化を示す。
【0189】
本発明者らは次にマウスを調べ、L1 mRNAがいくつかの組織で年齢と共に徐々に上方制御されることを見出した(
図15g)。検出されたL1 RNA配列は主にセンス鎖であり、エレメント全体にわたって示され、3つの活性なL1ファミリーすべてが検出可能であった(
図11g、h)。タンパク質レベルでは、L1 Orf1陽性細胞の頻度が年齢と共に組織で増加した(
図4a)。Orf1染色の領域は、老化関連β-ガラクトシダーゼ(SA-β-Gal)活性と共局在していた(
図4b)。いくつかのIFN-I応答遺伝子(Ifn-α、Irf7、Oas1)、ならびに炎症誘発性マーカおよびSASPマーカ(Il-6、Mmp3、Serpine1としても公知のPai1)が老齢マウスの組織で上方制御された(
図4c、
図14)。L1発現およびIFN-I応答遺伝子(Ifn-α、Oas1)の増加は、実験的に誘導された細胞老化のモデル(亜致死線量の照射を受けた若齢動物;
図4d)でも観察された。
【0190】
老齢動物(26ヶ月)を3TC(ヒト治療用量で水中で投与)で2週間処置した。本発明者らは、IFN-I応答の広範で有意な下方制御およびSASP炎症誘発状態の緩和を認めた(
図4c;完全なデータセットについては、
図14および表7を参照)。L1 mRNAおよびp16の発現はわずかに下方制御されたが、ほとんどの場合、統計的有意性には達しなかった。K-9は、IFN-I応答またはSASP応答のいずれにも影響を及ぼさなかった。組織切片の免疫蛍光分析は、老化細胞がSASPを発現し、Orf1発現細胞がIFN-Iシグナル伝達を活性化することを確認した(
図15a~c)。3TCによる処置は、IFN-IとSASPの両方を有意に減少させたが、L1発現または老化細胞の存在は減少させなかった。したがって、NRTIは、組織から老化細胞を除去する「老化細胞溶解」治療とは対照的に、「老化細胞静止」剤として分類することができる
138,139。
【0191】
脂肪生成
140および熱生成
141の減少は自然老化の特徴であり、どちらも2週間の3TC処置によって老齢動物で増加した(
図15d~f)。
図4eに示すように、より長期の処置(20ヶ月齢から26ヶ月齢まで)は、老化のいくつかの公知の表現型に対抗するのに有効であった:(i)慢性炎症の特徴である、組織のマクロファージ浸潤
142,143、(ii)腎臓の糸球体硬化症
144、および(iii)骨格筋萎縮
145。白色脂肪のマクロファージ浸潤は特に応答性であり、わずか2週間の3TCで若い(5ヶ月)レベルに戻った。
【0192】
内因性L1エレメントの活性化およびその後のIFN-I応答の堅固な活性化は、組織中に天然に存在する老化細胞を含む、老化細胞の新規な表現型である。この表現型は、老化応答の間に徐々に進化し、重要であるがこれまで認識されていなかったSASPの構成要素であるようである。本発明者らは、3つの調節因子、RB1、FOXA1およびTREX1の発現が老化の間に変化すること、ならびにこれらの変化がL1の転写活性化を可能にするのに十分かつ必要であることを示す(
図4g)。したがって、L1を解き放つためには複数の監視機構を打ち負かす必要があり、これは、体細胞においてこれらの要素を抑制し続けることの重要性を強調する。
【0193】
自然免疫シグナル伝達の活性化は、細胞老化および老化中のL1活性化に応答して、インターフェロン刺激DNA(ISD)経路を介して進行する。細胞質DNAは、ストレスを受けたミトコンドリアから放出されるmtDNA146または損傷した核から放出される細胞質クロマチン断片(CCF)147,148などのいくつかの供給源に由来し得る。今回の結果は、L1 cDNAが老化細胞におけるIFN-Iの重要な誘導因子であることを示唆する。注目すべきことに、NRTI処置は、IFN-I応答に効果的に拮抗しただけでなく、より広範に、複数の組織における加齢関連慢性炎症も減少させた。
【0194】
炎症老化(inflammaging)としても公知の無菌性炎症は、加齢の顕著な特徴であり、多くの加齢性疾患の一因である149,150。本データは、L1エレメント(およびおそらく他のRTE)の活性化が炎症老化を促進すること、およびL1 RTが加齢関連炎症および障害の治療に関連する標的であることを示す。
【0195】
実施例5 L1配列の存在量、インターフェロン遺伝子発現、およびSASP遺伝子発現の老化誘導性増加に対するアデホビルおよびラミブジンの効果
L1配列の存在量、インターフェロン遺伝子発現、およびSASP遺伝子発現の老化誘導性増加に対するアデホビルおよびラミブジンの効果をヒト線維芽細胞株で評価した。
【0196】
L1配列の存在量(コピー数)を、qPCRアッセイを使用して3つの異なるヒト線維芽細胞株:LF1、IMR90、WI38で評価した。アッセイを5S rDNAの存在量に対して正規化した。対照(CTRL)は、未処理の初期継代増殖細胞であった。薬物を、培地中で、老化前の数継代から老化に、次いで後期老化に継続的に適用した。老化の開始から4ヶ月後に「老化」試料を採取した。両薬物を培地中に5μMで添加した。「老化」状態の赤色バー:老化の4ヶ月目の薬物を含まない培養物。
図17aに示すように、L1コピー数は、3つの細胞株にすべてで老化において増加し、両方の薬物がこの増加を有意に防止し、アデホビルはラミブジンよりも幾分有効であった。
【0197】
インターフェロン遺伝子発現に対する5μMのアデホビルおよびラミブジンの効果を、示されている遺伝子の発現をRT-qPCRによって測定したことを除いて、
図17aで実施したように2つの細胞株(LF1およびIMR90)ならびに2つのインターフェロン遺伝子(IFN-αおよびIFN-β1)で評価した。
図17bに示すように、老化細胞における高いインターフェロン遺伝子発現は、両方の薬物によってすべての場合に有意に減少し、やはりアデホビルはラミブジンよりも幾分有効であった。赤色バーは、老化の4ヶ月目の薬物を含まない培養物である。
【0198】
SASP遺伝子発現に対する5μMのアデホビルおよびラミブジンの効果を、2つのSASP遺伝子(IL-6およびMMP3)を使用して1つの細胞株(LF1)で評価した。CTRLは、正常な老化前の未処理細胞における発現であった。
図17cに示すように、老化に伴う発現の増加(赤色バー)が観察され、両方の場合に、SASP遺伝子発現は薬物処置で有意に減少し、アデホビルはラミブジンよりも幾分有効であった。
【0199】
最後に、インターフェロン遺伝子発現(IFN-αおよびIFN-β1)に対する高濃度のラミブジンおよびエムトリシタビン(10μMおよび50μM)の効果をLF1細胞株で評価した。これらは、LF1細胞を継代して老化させ、3ヶ月間老化状態に保ち、薬物を添加し、細胞を薬物の存在下で1ヶ月間保持し、次いで4ヶ月目に回収することによって行った。インターフェロン遺伝子発現をRT-qPCRによって評価した。対照(CTRL)は、上記のように処理したが薬物を含まない細胞であった。
図17dに示すように、10μMでは、ラミブジンはIFN-I誘導を減少させ、エムトリシタビンよりも幾分有効であった。50μMでは、ラミブジンは実際にインターフェロンの発現の増加を誘導し、未処理細胞で見られるレベルをも上回った。この増加は、これらの高レベルでの薬物の毒性によって引き起こされると考えられる。対照的に、50μMのエムトリシタビンはインターフェロンの発現を減少させ、10μMで観察された減少をさらに下回った。
【0200】
したがって、高用量では、RTIの毒性は、老化細胞の有害な影響を停止またはブロックする能力、ならびに加齢関連炎症および障害を予防または逆転させる能力を損なう可能性がある。
【0201】
実施例6 マウスおよびヒト細胞におけるL1活性の阻害の用量反応アッセイにおけるいくつかのRTIの比較評価
8つのRTI化合物を、マウスL1レトロ転位アッセイにおいてLINE-1(L1)活性を阻害する能力について評価した:ラミブジン(3TC);スタブジン;エムトリシタビン;アプリシタビン;テノフィルジシプロキシル;センサブジン;エルブシタビン;およびテノフィル。3つのRTI化合物をヒトL1レトロ転位アッセイで評価した:ラミブジン(3TC);センサブジン;およびエルブシタビン。
【0202】
マウスLINE-1レトロ転位アッセイ
マウスL1エレメントを含むデュアルルシフェラーゼをコードするプラスミドpYX016は、Xie et al.,2011151に記載されていた。ラミブジン(3TC)、スタブジン(d4T)、エムトリシタビン、アプリシタビン、テノホビルジソプロキシルおよびテノホビルはAK Scienceから購入した。エルブシタビンはカスタム合成によって得た。センサブジンはOncolys BioPharmaによって合成された。HeLa子宮頸癌細胞を、10%の熱不活化ウシ胎仔血清(Thermo Fisher)を添加した、4500mg/Lグルコース、L-グルタミン、ピルビン酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウム(Sigma)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)-高グルコース中、加湿5%CO2インキュベータ内で37℃で培養した。
【0203】
アッセイは、いくつかの修正を加えてXie et al.,2011151に記載されているように実施した。レポータアッセイを96ウェルの白色オプティカルボトムプレートで実施した。6000個のHeLa細胞を、トランスフェクションおよび化合物処理の24時間前に各ウェルに播種した。すべての化合物をDMSOに再懸濁した。原液の濃度は、化合物の溶解度に応じて50mMから1.25mMまで変化した。段階希釈液(1:3)をDMSOで調製した。各化合物の10の異なる濃度を3回試験した。異なる濃度の化合物を含む培地を、2μLの化合物希釈液を1mLの培地に添加することによって調製した。培地中のDMSOの最終濃度は0.2%であった。FuGENE(登録商標)HDトランスフェクション試薬(Promega)を使用して、プラスミドpYX016を細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションミックスを、OpiMEM(Thermo Fisher)中で、製造者の指示に従って3.5:1の試薬対DNA比を使用して調製した。培地を細胞から除去し、廃棄した。トランスフェクションミックス(5μL)を化合物含有培地(100μL/ウェル)と混合し、これを各ウェルの細胞に添加した。細胞を37℃/5%CO2で48時間インキュベートした。
【0204】
ルシフェラーゼレポータ活性を、Dual-Luciferase(登録商標)Reporter Assay System(Promega)をマルチウェルプレートについての製造者の指示に従って用いて、以下の変更を加えて定量化した:細胞を、30μLの受動溶解緩衝液(PLB)を用いて室温で20分間、完全な細胞溶解を確実にするために穏やかに振とうしながら(15分間の20μLのPLBの代わりに)、マルチウェルプレート上で直接溶解した。SpectraMax i3xマルチモードマイクロプレートリーダを使用して、ホタルおよびウミシイタケルシフェラーゼシグナルを測定した。100ミリ秒および10ミリ秒の積分時間を使用して、それぞれホタルおよびウミシイタケのシグナルを測定した。相対的L1活性をホタル/ウミシイタケ*10,000として計算した。用量反応阻害データを、非線形回帰を使用して(Graphpad Prism 8を使用して)4パラメータロジスティック方程式に当てはめて、各阻害剤のIC50値を決定した。実験は独立して2回行った。
【0205】
結果
2つの独立した実験における8つのRTI化合物の阻害用量反応曲線をそれぞれ
図18Aおよび
図18Bに示す。IC
50値を表10に要約する。驚くべきことに、2つのRTI化合物、センサブジンおよびエルブシタビンは、他のRTI化合物よりもはるかに低いIC
50値(約100nM)を有しており、したがって予想外のマウスL1阻害活性を示した。
【0206】
ヒトLINE-1レトロ転位アッセイ
マウスL1活性を阻害する予想外の能力を考慮して、センサブジンおよびエルブシタビンを、ヒトL1活性を阻害する能力について試験した。ラミブジンも比較のために試験した。
【0207】
ヒトL1についてのアッセイを、マウスのアッセイと非常に類似した方法で実施した。ヒトLINE-1配列151をコードするpYX017をpYX016の代わりに使用した。ヒト構築物はより低いシグナルを生じるので、化合物を細胞と共に48時間ではなく72時間インキュベートし、細胞を6000/ウェルではなく2000/ウェルの密度で播種した。さらに、トランスフェクション試薬対DNAの比は、3.5:1ではなく2:1であった。
【0208】
結果
3つのRTI化合物の阻害用量反応曲線を
図19A~Bに示し、IC
50値を表11に要約する。この場合も、センサブジンおよびエルブシタビンは、ラミブジン(800nMを超えるIC
50)と比較した場合、驚くべきヒトL1阻害活性(約100nMのIC
50)を示した。
【0209】
細胞生存率アッセイ
上記のように、RTIの毒性は、老化細胞の有害な影響を停止またはブロックする能力、ならびに加齢性炎症および障害を予防または逆転させる能力を損なう可能性がある。ラミブジン(3TC);スタブジン;エムトリシタビン;アプリシタビン;テノフィルジシプロキシル;センサブジン;エルブシタビン;およびテノフィルの潜在的毒性を、L1阻害用量反応曲線を作成するために使用した用量で細胞生存率アッセイにおいて評価した。
【0210】
HeLa細胞を異なる濃度の8つのRTI化合物で48時間処理した。細胞生存率をCellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイ(Promega(登録商標))で測定し、未処理細胞に対する細胞生存率のパーセンテージとして提示した。細胞死を誘導することが公知のスタウロスポリンを対照として使用した。
【0211】
結果
図20に示すように、8つのRTI化合物は、対照のスタウロスポリンとは対照的に、有意なレベルの細胞死を誘導しなかった。
【0212】
要約すると、センサブジンおよびエルブシタビンはどちらも、2μMまでの用量で細胞生存率アッセイにおいて毒性を誘発することなく、マウスおよびヒトのL1活性を阻害する予想外の能力(約100nMのIC50)を示した。
【0213】
本開示に記載されている表を以下に提供する。
【0214】
(表1)PCR分析で使用したプライマーのリスト
1 すべての配列は5'→3'方向に列挙されている。プライマーセット1~30は列挙されているヒト遺伝子に特異的である;プライマーセット31~53はマウスに特異的である。
2 すべてのLINE-1位置はL1Hsコンセンサス配列に対してである(Repbase,http://www.girinst.org/repbase/)。
3 Coufal,N.G.et al.L1 retrotransposition in human neural progenitor cells.Nature 460,1127-31(2009)を参照。
4 Gautier,G.et al.A type I interferon autocrine-paracrine loop is involved in Toll-like receptor-induced interleukin-12p70 secretion by dendritic cells.J.Exp.Med.201,1435-46(2005)を参照。
【0215】
(表2)抗体のリスト
1 Rodic,N.et al.Long interspersed element-1 protein expression is a hallmark of many human cancers.Am.J.Pahtol.184,1280-6(2014)を参照。
【0216】
(表3)長距離RT-PCRによって同定された発現L1エレメントのリスト
【0217】
(表4)IFN-IについてのGSEAで使用した遺伝子のリスト(50個の遺伝子)
【0218】
(表5)初期継代を早期老化と比較するKEGG経路のGSEA解析
【0219】
(表6)Qiagen PCRアレイ分析の要約
1 すべてのパーセンテージは、アレイ上に見出された遺伝子の総数(84)に対して計算している。散布図として表示した84遺伝子すべてについてのデータを
図2hに示す。
2 有意性フィルタのセットを通過する上方制御された遺伝子と下方制御された遺伝子の合計、フィルタの定義については「方法」を参照。
3 SEN(L)細胞または3X細胞のいずれかに固有である、有意性フィルタを通過する変化した遺伝子。
4 SEN(L)細胞および3X細胞に共通する(両方で見出される)、有意性フィルタを通過する変化した遺伝子。
5 SEN(L)細胞および/または3X細胞で見出される、有意性フィルタを通過する変化した遺伝子。このセットの遺伝子(67)についてのヒートマップ表示を拡張した
図4j、kに示す。
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
(表10)マウスL1活性の阻害
HeLa細胞における活性マウスLINE-1のレトロ転位活性を阻害する9つの化合物のIC
50の決定。レトロ転位活性を、デュアルルシフェラーゼpYX016レポータを用いて決定した。細胞を異なる濃度の各化合物で処理し、同時にpYX016でトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後に発光を測定した。実験は独立して2回行った。
【0224】
(表11)ヒトL1活性の阻害
HeLa細胞における活性ヒトLINE-1のレトロ転位活性を阻害する3つの化合物のIC
50の決定。レトロ転位活性を、デュアルルシフェラーゼpYX017レポータを用いて決定した。細胞を異なる濃度の各化合物で処理し、同時にpYX017でトランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後に発光を測定した。実験は独立して2回行った。
【0225】
【0226】
本明細書で引用したすべての特許、特許出願、および刊行物は、参照により本明細書に完全に組み入れられる。
【0227】
概要および要約書のセクションではなく、詳細な説明のセクションが、添付の特許請求の範囲を解釈するために使用されることを意図していることが理解されるべきである。概要および要約書のセクションは、本発明者(1または複数)によって企図される本発明の1つまたは複数の例示的な態様を説明し得るが、すべての例示的な態様というわけではなく、したがって、いかなる意味でも本発明および添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0228】
特定の態様の前述の説明は、本発明の一般的な性質を十分に明らかにするので、他者は、当技術分野の技術範囲内で知識を適用することによって、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、過度の実験を行わずに、そのような特定の態様を様々な用途のために容易に修正するおよび/または適合させることができる。したがって、そのような適合および修正は、本明細書に提示される教示およびガイダンスに基づいて、開示される態様の等価物の意味および範囲内にあることが意図されている。本明細書の表現または用語は、限定ではなく説明を目的とするものであるので、本明細書の用語または表現は教示およびガイダンスに照らして当業者によって解釈されるべきであることが理解されるべきである。
【0229】
本発明の範囲および意図は、上述の例示的な態様のいずれによっても限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物に従ってのみ定義されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】