(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-08
(54)【発明の名称】植込み型医療デバイス内の多軸加速度計のための最適化されたベクトル選択
(51)【国際特許分類】
A61N 1/37 20060101AFI20220401BHJP
A61N 1/36 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
A61N1/37
A61N1/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544803
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2019074967
(87)【国際公開番号】W WO2020173582
(87)【国際公開日】2020-09-03
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512158181
【氏名又は名称】バイオトロニック エスエー アンド カンパニー カーゲー
【氏名又は名称原語表記】BIOTRONIK SE & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Woermannkehre 1 12359 Berlin Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タフ、ブライアン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ク、ミン
(72)【発明者】
【氏名】スウェンソン、カート
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ06
4C053JJ18
4C053JJ23
4C053KK01
(57)【要約】
本開示は、医療システム(1)であって、植込み型医療デバイス(5)と、複数のベクトル(V1、V2、V3)に沿った当該植込み型医療デバイス(5)の加速度を測定するための、当該植込み型医療デバイス(5)に含まれる多軸加速度計(6)であって、当該多軸加速度計(6)は、各ベクトル(V1、V2、V3)に対して、当該ベクトル(V1、V2、V3)それぞれの方向の当該植込み型医療デバイス(5)の当該加速度を示す信号を提供するように構成されている、多軸加速度計(6)と、を少なくとも備える、医療システム(1)に関する。当該医療システム(1)は、当該信号を評価して、当該複数のベクトル(V1、V2、V3)のうちのベクトルであって、予め定義されたベクトル(g)との最良のアライメントを形成する、ベクトルを自動的に選択又は提案するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療システム(1)であって、
-植込み型医療デバイス(5)と、
-複数のベクトル(V1、V2、V3)に沿った前記植込み型医療デバイス(5)の加速度を測定するための、前記植込み型医療デバイス(5)に含まれる多軸加速度計(6)であって、前記多軸加速度計(6)は、各ベクトル(V1、V2、V3)に対して、前記ベクトル(V1、V2、V3)それぞれの方向の前記植込み型医療デバイス(5)の前記加速度を示す信号を提供するように構成されている、多軸加速度計(6)と、
を少なくとも備え、
前記医療システム(1)は、前記信号を評価して、前記複数のベクトル(V1、V2、V3)のうちのベクトルであって、予め定義されたベクトル(g)との最良のアライメントを形成する、ベクトルを自動的に選択又は提案するように構成されている、医療システム(1)。
【請求項2】
前記植込み型医療デバイス(5)は、前記植込み型医療デバイス(5)が動いているときにデータを収集するように構成されており、収集される前記データは、各ベクトル(V1、V2 V3)について、前記ベクトル(V1、V2、V3)それぞれの方向の前記植込み型医療デバイス(5)の前記加速度を示している前記加速度計(6)のAC信号を少なくとも含み、選択又は提案される前記ベクトルは、前記信号の中で最大の振幅を有する、DC信号に関連付けられたもの、又は前記信号の中で最大の振幅を有する、前記AC信号に関連付けられたものである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記植込み型医療デバイスは、心臓内ペースメーカ(5)、植込み型心臓モニタ、神経刺激のための植込み型パルス発生器(IPG)、のうちの1つである、請求項1又は2に記載の医療システム。
【請求項4】
前記植込み型医療デバイス(5)は、心臓内ペースメーカであり、前記植込み型医療デバイス(5)は、患者の心臓に対して、ペーシングパルスをレートで生成及び印加するように構成されており、前記植込み型医療デバイス(5)は、選択又は提案される前記ベクトルに関する前記植込み型医療デバイス(5)の加速度に応じて、前記レートを適合させるように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の医療システム。
【請求項5】
前記予め定義されたベクトル(g)は、重力ベクトルである、請求項1から4のいずれか一項に記載の医療システム。
【請求項6】
前記医療システム(1)又は前記植込み型医療デバイス(5)は、複数の加速度計ベクトル(V1、V2、V3)の各々からシーケンシャルな態様でデータを収集するように構成されている、請求項2又は請求項2を参照する場合の請求項3から5のいずれか一項に記載の医療システム。
【請求項7】
前記植込み型医療デバイス(5)は、収集される前記データを、医療インプラントデバイス(5)に記憶するように構成されている、請求項2又は6に記載の医療システム。
【請求項8】
前記医療システム(1)は、患者の体の外側に配置されるように構成された監視デバイス(114)を備え、前記植込み型医療デバイス(5)は、収集される前記データを前記監視デバイス(114)に送信するように構成されている、請求項2又は6に記載の医療システム。
【請求項9】
前記医療システム(1)は、収集される前記データを前記植込み型医療デバイス(5)又は前記監視デバイス(114)から受信するように構成された、プログラマ(110)を備え、前記プログラマ(110)は、収集される前記データを評価して、前記予め定義されたベクトル(g)との最良のアライメントを形成する前記ベクトルを自動的に選択又は提案するように構成されている、請求項2、6、7又は8のいずれか一項に記載の医療システム。
【請求項10】
前記医療システム(1)又はプログラマ(110)は、グラフィカル・ユーザ・インターフェース(112)を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の医療システム。
【請求項11】
グラフィカル・ユーザ・インターフェース(112)は、収集される前記データ若しくは収集される前記データから導出される情報をグラフィカルに表示し、及び/又は選択若しくは提案される前記ベクトルを表示し、並びに/又は選択若しくは提案される前記ベクトルを示す前記植込み型医療デバイス(5)の画像を表示するように構成されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の医療システム。
【請求項12】
前記グラフィカル・ユーザ・インターフェース(112)は、
-ユーザによる入力を受け取って、プログラマ(110)に、前記予め定義されたベクトル(g)との最良のアライメントを形成する前記ベクトルを自動的に選択させることと、
-利用可能なベクトル構成に関する情報を表示して、前記予め定義されたベクトルと最良にアライメントされるものに関するユーザの洞察を導くことと、
-前記ユーザによる入力を受け取って、提案される前記ベクトルを、選択される前記ベクトルとして確認することと、
-ユーザによる入力を受け取って、活動試験を開始することであって、前記活動試験中、患者が、予め定義された時間量の間、運動を実行し、かつ前記植込み型医療デバイス(5)は、前記患者の心拍数及び/又は前記加速度計からの生の活動信号出力を記録するのであり、前記植込み型医療デバイス(5)によるペーシングパルスのレート適合が、選択又は提案される前記ベクトルに関する前記植込み型医療デバイス(5)の前記加速度に基づく、ことと、
-前記活動試験中に記録された前記心拍数及び/又は前記生の活動信号出力を表示することと、
-ユーザからの入力を受け取って、前記植込み型医療デバイス(5)の治療プログラム設定を変更することと、
-変更された前記治療プログラム設定への、予想される心拍数の反応のプレビューを表示することと、
のうちの少なくとも1つを実行するように構成されている、請求項10又は11に記載の医療システム。
【請求項13】
植込み型医療デバイス(5)の多軸加速度計(6)のいくつかのベクトルのうちの、ベクトルを自動的に選択又は提案するための方法であって、前記加速度計(6)は、前記ベクトル(V1、V2、V3)に沿った前記植込み型医療デバイス(5)の加速度を測定するように構成されており、前記方法は、
-予め定義されたベクトル(g)とアライメントして患者の体が向き付けられているときに、データを収集するステップであって、前記加速度計のベクトル(V1、V2、V3)の各々から収集される前記データが、前記予め定義されたベクトルの方向の前記植込み型医療デバイス(5)の静的加速度の大きさを示す、ステップと、
-前記いくつかのベクトル(V1、V2、V3)のうちのベクトルであって、信号の中で最大の振幅を有する信号に関連付けられたものである、ベクトルを自動的に選択又は提案するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療システム及び対応する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の植込み型医療デバイス(implantable medical devices:IMDs)は、患者の動き/活動を検知するための加速度計を、例えばその患者の活動の増加が検知されたときにペースメーカのペーシングレートを適合させるために、備える。
【0003】
多軸加速度計は、動きを最良に測定する能力によって動きの検知を可能にする。それは、関心のある動きベクトルと最良にアライメントされたチップ上の軸(又は複数の軸)によって取得される、データの収集による。最も単純な形態では、単一の軸から収集されるデータは、指定された方向の(又は、軸に沿った動きの極性は重要ではないため、反対方向の)動きを報告するために、最小のシステムオーバーヘッド(例えば、電流割当て、計算など)を必要とする。あるいは、チップ上の単一のどの軸も、関心のある動き方向とうまくアライメントしない場合、数学的に生成されるベクトルを関心のある動き方向と最良にアライメントさせるデータを報告するために、多数の軸から収集されたデータを(例えば、重み付け、ベクトル数学などによって)計算的に組み合わせることができる。
【0004】
アプローチに関係なく、重力は、支配的な下向き加速度ベクトルをインプラントに与え、それは、重力ベクトルとアライメントされた任意の加速度計軸から収集される信号伝達に対して付加的な、「DCオフセット」(DC-直流(direct current)、AC-交流(alternating current))応答を効果的に生成する。「動きのない」状態で加速度計チップの軸の各々を調査して、それらのベースライン振幅を評価することにより、どの軸又は軸の組み合わせがこの重力ベクトルとアライメントするかを決定することを、容易に促進することができる。そのような情報は、どのベクトルが製品の機能サポートのために好ましいかを、選択するために十分であることが多い。
【0005】
現在、植込み型医療デバイス(IMD)内の加速度計ベクトルの選択は、製品の開発及び/若しくは工場での構成中に「ハードコードされた」構成として確立されているか、又は、その選択には、一連の患者の動き/運動を実行することと結果として生成されたデータを分析することの後にベクトルを選択することを必要とする、臨床医のフォローアップインタラクションを必要とする。前者のプロセスは、患者集団の大部分のために役立ちそうなベクトルを選ぶために、製品開発中における十分な洞察を必要とする。アプローチは、それによって、応答が個々のニーズに応えることを拒む。代替のフォローアップベースのアプローチでは、時間のかかるプロセスが要求される。現在知られているデバイスでは、単一のベクトルがデータ収集のために選択され、それから動き/運動ルーチンが患者によって実行される。複数の軸への影響を評価するために、チップ上の利用可能な軸の各々についてルーチンを繰り返す必要がある。この反復プロセスの各サイクルは、典型的には、15分以上のクリニック内でのフォローアップ時間を要求し得る。一旦すべての軸が評価されたら、それから、最適なベクトルを選択することが可能になる。そのため、3軸加速度計については、そのようなプロセスは、約45分(3軸×15分)を必要とする。この継続時間は、このようなスパンにわたって長びく身体的活動を誰もが持続できるわけではなく、かつ臨床的資源はしばしば限られているため、最適化された患者ケアへのアクセスを課題とする。
【0006】
さらに、シーケンシャルな試験(すなわち、一度に1つのベクトル)は、1つのラウンドから次へ、同一の結果を示すことが保証されておらず、したがって、1つのベクトルから収集される結果は、別のものとの直接比較にはあまり適していない場合がある。そういうものとして、手順はしばしばスキップされ、デフォルト値が選択されるのであり、IMDの向きがデフォルトが不適切であるようなものである場合、依存するあらゆる機能は、それらの意図された性能レベルでは動作しない。
【0007】
患者内でのIMDの向きは、ユニークであることが多い。植込み型心臓モニタ(implantable cardiac monitors:ICMs)及びリードレス・ペースメーカ・システムについては、この状態は、ポケットベースのインプラントと比較してひどくなっている。ここで、当該ポケットベースのインプラントは、既知のリード・ポート・アップ位置で患者の解剖学的構造内に配置され、デバイスを通した縫合プロセスによって定位置にいつも保持されていることが最も多い。ICM及びリードレス・ペースメーカ・システムと適合するインプラント部位の数の多さは、デバイス内の多軸加速度計のどの軸が、関連する機能サポートにとって決定的に重要な肉体的な生理学的基準(例えば、頭からつま先までのベクトル)と、最良にアライメントするかを決定することが、より難題であることを意味する。
【発明の概要】
【0008】
上記の欠点に関して、解決すべき問題は、要するに、「最良の」デバイス内加速度計ベクトルを決定するために必要な、クリニック内での手順の継続時間及び複雑さに見ることができる。
【0009】
特に、本開示は、スキームを詳述する。このスキームによって、インプラントは、ルーチンを実行してベクトルの各々に関する信号伝達を評価し得、特徴センシングのニーズと最良にペアリングされる加速度計軸の最適化された選択を可能にし得る。このサポートは、フォローアップ間の機能サポートのための自動化された(及び潜在的に適合的な)ルーチン、又は、GUIによる提示を介したユーザへの決定的に重要なメトリクスの中継を通して、最適化されたベクトルを選択又は奨励するためのフォローアップ中の臨床的なワークフローにおける容易さをサポートするもののいずれかとして、可能にされることができる。
【0010】
特に、さらなる目的は、以下の目的のうちの1つ以上に見ることができる。
-患者が身体的に制限されており、かつ「運動」試験を完了することにおいて難題に直面する(すなわち、およそ45分間、歩くことも、他の要求される運動を行うこともできない)シナリオまで、ベクトル最適化をサポートする能力を拡張し、
-「最良の」デバイス内加速度計ベクトルを選択するときに、有効なトレードオフについて臨床医により良好に通知するために、IMD加速度計応答の改善されたGUIによる報告を提供し、
-関連するIMD機能サポートのための加速度計ベースの入力の改善されたセンシングを提供し、それによってフォローアップ間のIMDの改善された患者エクスペリエンスを提供し、及び
-フォローアップ間で加速度計ベクトルを定期的に評価して、代替の選択肢が優先的なものとして現れた場合に選択を適合するための手段を提供する。
【0011】
請求項1に記載の医療システム、及び請求項13に記載の方法が、提供される。
【0012】
一態様では、医療システムであって、植込み型医療デバイスと、複数のベクトル(本明細書では加速度ベクトル又は軸とも表記される)に沿った当該植込み型医療デバイスの加速度を測定するための、当該植込み型医療デバイスに含まれる多軸加速度計であって、特に、当該多軸加速度計は、各ベクトルに対して、考慮される当該ベクトルの方向の当該植込み型医療デバイスの当該加速度を示す信号を提供するように構成されている、多軸加速度計と、を少なくとも備える、医療システムが、開示される。
【0013】
医療システム(特に医療インプラントデバイス)は、当該信号を評価して、加速度計の当該複数のベクトルの中から、予め定義されたベクトルとの最良のアライメントを形成するベクトルを自動的に選択又は提案するように構成されている。
【0014】
特に、この選択又は提案されるベクトルは、当該複数のベクトルの中で、予め定義されたベクトルの方向の成分が最大のものである。
【0015】
特に、当該複数のベクトルは、(例えば、x、y、及びz方向の)3つの直交又は線形独立ベクトルを含むか、又はそれらからなる。
【0016】
特に、システム、特に植込み型医療デバイスは、選択される(又は提案される)ベクトルの方向で、デバイスの動作中に、植込み型医療デバイスの加速度を測定するように構成される。
【0017】
植込み型医療デバイスは、患者の姿勢が特定の体位(例えば、立位又は坐位)で静止しているように指示されているときに、データを収集するように構成され得る。収集されるデータは、各ベクトル(V1、V2、V3)について、ベクトル(V1、V2、V3)それぞれの方向の植込み型医療デバイスの加速度を示している加速度計のDC信号を少なくとも含み得、ここで、選択又は提案されるベクトルは、信号の中で最大の振幅を有する、信号に関連付けられたものであり得る。
【0018】
医療システムの一実施形態によれば、医療システムは、加速度計ベクトルを自動的に選択する植込み型医療デバイス単独からなってもよい。しかしながら、システムは、植込み型医療デバイス(本明細書ではインプラントとも表記される)とインタラクションし得る、追加のデバイスを含んでもよい。
【0019】
言い換えれば、本開示は、スキームを詳述する。このスキームによって、インプラントは、ルーチンを実行してベクトルの各々に関する信号伝達を評価し得、特徴センシングのニーズと最良にペアリングされる加速度計軸/ベクトルの最適化された選択を可能にし得る。このサポートは、フォローアップ間の機能サポートのための自動化された(及び潜在的に適合的な)ルーチン、又は、GUIによる提示を介したユーザへの決定的に重要なメトリクスの中継を通して、最適化されたベクトルを選択又は奨励するためのフォローアップ中の臨床的なワークフローにおける容易さをサポートするもののいずれかとして、可能にされることができる。
【0020】
一実施形態では、植込み型医療デバイスは、複数の加速度計軸/ベクトルのうちの任意の1つから、自動性及び/又はトリガされた応答として、データを取得する能力を有する。
【0021】
さらに、一実施形態では、インプラントは、多数の加速度計軸/ベクトルから収集されるデータに基づいて、目標とする機能サポート(特にレート適合)のための最良の加速度計軸/ベクトルを決定する能力を有する。
【0022】
さらに、一実施形態によれば、植込み型医療デバイスは、植込み型医療デバイスが予め定義されたベクトルに沿って移動されているときにデータを収集するように構成されており、収集されるデータは、各ベクトルについて、当該ベクトルの方向の植込み型医療デバイスの加速度の大きさを示している加速度計の信号を少なくとも含み、選択又は提案されるベクトルは、信号の中で最大の振幅を有する、信号に関連付けられたものである。
【0023】
さらに、一実施形態によれば、植込み型医療デバイスは、心臓内ペーシングシステム(植込み型リードレスペースメーカとも呼ばれる)、植込み型心臓モニタ(ループレコーダとも呼ばれる)、及び神経刺激のための植込み型パルス発生器(implantable pulse generator、IPG)、のうちの1つである。
【0024】
特に、植込み型医療デバイスが心臓内ペーシングシステムである場合、後者は、好ましくは、加速度計からの信号に基づいて、レート適合に使用される加速度計ベクトルを自動的に選択及び/又は適合するように構成される。
【0025】
さらに、一実施形態によれば、植込み型医療デバイスが心臓内ペーシングシステムである場合、植込み型医療デバイスは、患者の心臓に対して、ペーシングパルスをレートで生成及び印加するように構成されており、植込み型医療デバイスは、選択又は提案される当該ベクトルに関する植込み型医療デバイスの加速度に応じて、当該レートを適合させるように構成されている。
【0026】
一実施形態によれば、予め定義されたベクトルは、重力ベクトル、すなわち重力の方向である。
【0027】
さらに、一実施形態では、システム又は植込み型医療デバイスは、シーケンシャルにスキャンされるフォーマットで、複数の加速度計軸/ベクトルの各々からデータを収集する能力を有する。
【0028】
さらに、一実施形態では、医療システム又は植込み型医療デバイスは、複数の加速度計ベクトルの各々からシーケンシャルな態様で当該データ又は信号を収集するように構成されている。特に、医療システム/植込み型医療デバイスは、各ベクトルを通して1つずつ循環し、それによって各ベクトルについて加速度計のそれぞれの信号の振幅を取得する。さらに、一実施形態では、植込み型医療デバイスは、収集されるデータを、医療インプラントデバイスに記憶するように構成されている。
【0029】
さらに、一実施形態によれば、システムは、活動試験を行うように構成されており、当該活動試験中、患者は、予め定義された時間量の間、運動を実行し、植込み型医療デバイスは、患者の心拍数をサンプリングし、選択又は提案される当該ベクトルに関する植込み型医療デバイスの加速度に基づいて、植込み型医療デバイスのペーシングパルスのレートを適合するように構成されている。
【0030】
特に、一実施形態によれば、植込み型医療デバイスは、調査された任意の加速度計ベクトルの活動応答を詳述するデータを、インプラント内に記憶する能力を有する。
【0031】
さらに、一実施形態によれば、医療システムは、患者の体の外側に配置されるように構成された監視デバイス(例えば、ホルターデバイス)を備え、植込み型医療デバイスは、収集されるデータを監視デバイスに送信するように構成されている。特に、監視デバイスは、患者の心臓を監視するための心臓監視デバイスであり、特に、監視デバイスは、患者の心電図をサンプリングするように構成されている。
【0032】
したがって、医療システムは、加速度計ベクトル又は軸の信号伝達のためのインプラントのストレージを排除し、かつ代わりに、示されるデータを患者装着型監視デバイスに流すオプションを有してもよい。特に、監視デバイスは、後のプログラマ照会のために、インプラントにおいて流される加速度計ベクトル/軸データを収集することができてもよい。
【0033】
さらなる実施形態によれば、医療システムは、収集されるデータを植込み型医療デバイス又は監視デバイスから受信するように構成された、プログラマ(プログラミングデバイスとも表記される)を備え、当該プログラマは、収集されるデータを評価して、当該予め定義されたベクトルとの最良のアライメントを形成する当該ベクトルを自動的に選択又は提案するように構成されている。
【0034】
したがって、医療システムのプログラマは、インプラント及び/又は監視/ホルターデバイスによって収集されたデータを解釈することと、意図される機能サポート(特にレート適合)のための最良の加速度計ベクトル選択を計算することと、のための能力を有してもよい。
【0035】
さらに、一実施形態によれば、医療システム、特にプログラマは、特に運動及びベクトル最適化試験を構成、開始、解釈するための、グラフィカル・ユーザ・インターフェース(graphical user interface:GUI)を含む。
【0036】
特に、グラフィカル・ユーザ・インターフェースは、収集されるデータ若しくは収集されるデータから導出される情報をグラフィカルに表示し、及び/若しくは選択若しくは提案される加速度ベクトルを表示し、並びに/又は選択若しくは提案される加速度ベクトルを示す植込み型医療デバイスの画像を表示するように構成されている。
【0037】
特に、医療システム、特に当該GUIは、収集されるデータに従って植込み型医療デバイスの画像を向き付けて、どの加速度ベクトルが予め定義されたベクトル(例えば、重力ベクトル)と最良にアライメントされているかを強調する能力を有する。特に、GUIは、最良の選択としての単一の加速度ベクトルの奨励を含む、加速度ベクトル応答データの予め定義されたベクトル(例えば、重力ベクトル)に対する比較アライメントを示すように構成される。
【0038】
さらに、一実施形態によれば、グラフィカル・ユーザ・インターフェースは、
-ユーザによる入力を受け取って、プログラマ又はシステムに、当該複数のベクトルのうちの当該ベクトルであって、予め定義されたベクトルとの最良のアライメントを形成するものを自動的に選択させることと、
-利用可能なベクトル構成に関する情報を表示して、予め定義されたベクトルと最良にアライメントされるものに関するユーザの洞察を導くことと、
-ユーザによる入力を受け取って、提案されるベクトルを、選択されるベクトルとして確認する(又はユーザによる入力を受け取って、別の加速度計ベクトルを選択する)ことと、
-ユーザによる入力を受け取って、活動試験を開始することであって、当該活動試験中、患者が、予め定義された時間量の間、運動を実行し、かつ植込み型医療デバイスは、患者の心拍数及び/又は加速度計からの生の活動信号出力を記録するのであり、植込み型医療デバイスによるペーシングパルスのレート適合が、選択又は提案される当該ベクトルに関する植込み型医療デバイスの加速度に基づく、ことと、
-活動試験中に記録された心拍数及び/又は生の活動信号出力を(例えば、1つ以上のトレンドプロットとして)表示することと、
-ユーザからの入力を受け取って、植込み型医療デバイスの治療プログラム設定を変更することと、
-変更された治療プログラム設定への、予想される心拍数応答のプレビューを表示することと、のうちの少なくとも1つを実行するように構成されている。
【0039】
さらに、一実施形態では、プログラマは、運動及びベクトル最適化試験の「前」及び「後」に関する情報を保持/表示し、及び同時にそのような情報をユーザに提示する能力を有する。そのようなサポートは、単に、複数のシーケンシャルなベクトル最適化及び/又は運動試験が実行された場合について有用であることが分かる。そのような状況では、「前」データは、最後に実行された試験による出力を表し、「後」データは、現在の試験による出力を表す。ここで、当該現在の試験は、純理論的には、最後の(すなわち、「前」の)最適化試験で評価されたデータに応じてセンサ構成に対してなされた調節に応じて、行われる。「プレビュー」オプション/機能は、あらゆる「後」データの収集/管理の必要性を置き換えることができる。それは、GUI内でのセンサ設定に対する調節を、それらの変更されたセンサ設定を条件として応答がどのようなものだったであろうかを予測するために、代わりに使用することができるからである。このアプローチは、「前」及び「後」の運動レジメンが、センサ構成設定の比較を最良に容易にするための手段として、労作、体の動き、及び継続時間において調和することを必要とすることに関連する、複雑化を回避する。
【0040】
さらに、一実施形態によれば、システムは、シーケンシャルにスキャンされる「同時の」方法で取得されたかどうかにかかわらず、又は単一のインプラント/プログラマのフォローアップセッション内の別々の試験で1つずつ収集された場合、加速度計軸/ベクトルのいずれかであってデータが収集されたものに関する、プロットされた活動応答データをレンダリングする能力を有する。
【0041】
さらに別の態様によれば、植込み型医療デバイスの多軸加速度計のいくつかのベクトルの中から、ベクトルを自動的に選択又は提案するための方法が、開示され、当該加速度計は、当該ベクトルに沿った植込み型医療デバイスの加速度を測定するように構成されている。方法は、
-(例えば、指導されるフォローアップ手順中に、)予め定義されたベクトルとアライメントして患者の体が向き付けられているときに、(例えば、植込み型医療デバイスによって)データを収集するステップであって、加速度計のベクトルの各々から収集されるデータが、予め定義されたベクトルの方向の植込み型医療デバイスの静的加速度の大きさを示す、ステップと、
-当該いくつかのベクトルのうちのベクトルであって、信号の中で最大の振幅を有する信号に関連付けられたものである、ベクトルを自動的に選択又は提案するステップと、を含む。
【0042】
方法は、ベクトル選択のための上記で概説したルーチンを、フォローアップ間で使用される適合性のある形式に修正することをさらに含んでもよく、ここで、デバイスは、利用可能な加速度計軸からの情報を定期的にサンプリングして、別個の利用可能な軸上の信号伝達の相対的な大きさを示す、(歩ける状態における)(非静的、すなわち動的な)加速度計情報による実行履歴を構築して、(今度は)収集された当該履歴に基づいて動的な態様で「最良の」ベクトル選択を能動的に変更するか、又は単純にそのような履歴を、「最良の」ベクトルを別の選択肢に変更する必要がある可能性をユーザに知らせることができる、アクセス可能な統計量として利用可能にする。
【0043】
さらなる実施形態によれば、方法は、収集されたデータを植込み型医療デバイス又は監視デバイスからプログラマで受信して、収集されたデータを当該プログラマで評価して、信号の中で最大の振幅を有する信号に関連付けられた当該ベクトルを自動的に選択又は提案する、さらなるステップを含む。医療植込み型デバイスは、加速度計の好ましいベクトルがフォローアップ間に「最良の」状態に更新される、適合性のある実施形態それ自体において、当該選択を管理するように構成されてもよい。
【0044】
方法のさらなる実施形態によれば、システム又はプログラマは、グラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)を含む。
【0045】
さらなる実施形態によれば、方法は、収集されるデータ若しくは収集されるデータから導出される情報をGUIを介してグラフィカルに表示し、及び/若しくは選択若しくは提案されるベクトルをGUIを介してグラフィカルに表示し、並びに/又は選択若しくは提案されるベクトルを示す植込み型医療デバイスの画像をGUIを介してグラフィカルに表示する、さらなるステップを含む。
【0046】
さらなる実施形態によれば、本方法は、
-GUIへの対応する入力を通じて、予め定義されたベクトルとの最良のアライメントを形成する提案されるベクトルを選択するステップと、
-GUIへの対応する入力を通じて、提案されるベクトルを、選択されるベクトルとして確認するステップと、
-GUIへの対応する入力を通じて、活動試験であって、当該活動試験中、患者が、予め定義された時間量の間、運動を実行する、活動試験を開始し、植込み型医療デバイスによって、患者の心拍数及び/又は加速度計からの生の活動信号出力を記録し、選択又は提案される当該ベクトルに関する植込み型医療デバイスの加速度に基づいて、植込み型医療デバイスのペーシングパルスのレートを適合する、ステップと、
-活動試験中に記録された、心拍数及び/又は加速度計からの生の活動信号出力を(例えば、1つ以上のトレンドプロットとして)表示するステップと、
-GUIへの対応する入力を通じて、植込み型医療デバイスの治療プログラム設定を変更するステップと、
-変更された治療プログラム設定についての、予想される心拍数のプレビューをGUIを介して表示するステップと、のうちの少なくとも1つのさらなるステップを含む。
【0047】
さらなる態様によれば、植込み型医療デバイス(IMD)、例えば、心臓内ペーシングシステム(リードレスペースメーカとも呼ばれる)、植込み型心臓モニタ(ループレコーダとも呼ばれる)、又は神経刺激のための植込み型パルス発生器(IPG)が、提供される。IMDは、加速度計を備えてもよい。加速度計は、2つ以上の軸、例えば3つの軸で加速度ベクトルを決定するように構成された、多軸加速度計であってもよい。
【0048】
さらに別の態様によれば、方法が、提供される。方法は、いくつかの加速度ベクトルの中から(例えば3つの加速度ベクトルの中から)、選択される加速度ベクトルを決定することを含んでもよく、ここで、選択される加速度ベクトルは、重力加速度とアライメントされていてもよい。選択される加速度ベクトルの、重力加速度とのアライメントは、重力加速度の方向に向けられている、加速度ベクトルのうちの部分に基づいてもよい。
【0049】
当該方法は、加速度計、例えば多軸加速度計を有する、植込み型医療デバイス(IMD)に適用することができる。
【0050】
医療システムに関して説明した特徴は、方法に適用することもでき、逆もまた同様である。
【0051】
以下では、本発明の例示的な実施形態並びにさらなる特徴及び利点が、図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】医療システム(例えば、心臓内ペーシングシステム)の一実施形態の概略図である。
【
図2A】ベクトル選択のための、心臓内ペースメーカの2つの向きを示す図である。
【
図2B】ベクトル選択のための、心臓内ペースメーカの2つの向きを示す図である。
【
図3】加速度計応答を示すためのインターフェースを示す図である。
【
図4】グラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)を示す図である。
【
図5】別のグラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)のいくつかの図を示す。
【
図6A】別のグラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)のいくつかの図を示す。
【
図6B】別のグラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)のいくつかの図を示す。
【
図7】別のグラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)のいくつかの図を示す。
【
図8】別のグラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)のいくつかの図を示す。
【
図9】別のグラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)のいくつかの図を示す。
【
図10】別のグラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)のいくつかの図を示す。
【
図11】別のグラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)のいくつかの図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、心臓内ペーシングシステム5(本明細書では心臓内ペースメーカとも表記される)の形態の少なくとも植込み型医療デバイス(インプラントとも表記される)を備える、医療システム1の概略図を示す。特に、心臓内ペースメーカ5は、エネルギーストレージ102(例えば、バッテリ)と、電子モジュール103と、通信ユニット104と、を取り囲むハウジング100を備える。ハウジング100は、チタンを含んでもよく、又はチタンで作られてもよい。
【0054】
ハウジング100の遠位端には、第1の電極106(ペーシング電極とも呼ばれる)が配置されている。ハウジング100の近位領域には、第2の電極101(センシング電極とも呼ばれる)が配置されている。第2の電極101は、リング電極として形成されてもよい。
【0055】
ペースメーカシステム5は、固定要素105によって心臓組織に固定されてもよい。固定要素は、タインとして形成されてもよい。それは、ニチノールを含んでもよく、又はニチノールで作られてもよい。一実施形態では、ニチノールで作られた4つのタイン105が、ハウジング100の遠位端に形成されてもよい。
【0056】
エネルギーストレージ102は、心臓内ペースメーカシステム10の構成要素、特に電子モジュール103、通信ユニット104、及び第1の電極106に電気エネルギーを提供するように構成されてもよい。
【0057】
電子モジュール103は、心臓イベントをセンシングすること及びペーシングパルスを提供することを含む、ペースメーカの機能を実行するように構成されてもよい。電子モジュール103は、プロセッサ及びメモリを備えてもよい。さらに、ペースメーカ10は、好ましくは、例えば加速度計6の3つの線形独立ベクトル/軸に沿って、植込み型医療デバイス/ペースメーカ10の加速度を測定するように構成された、多軸加速度計6を備える。
【0058】
通信ユニット104は、外部デバイス(例えば、プログラマ)110との通信のために構成されてもよい。通信ユニット104は、RF通信(RF-無線周波数(radio frequency))のためのコイルを備えてもよい。
【0059】
図2Aは、多軸加速度計6を備える心臓内ペースメーカシステム(intracardiac pacemaker system:IPS)5におけるレート適合サポートのための、「最良の」ベクトル(ここではベクトル2)の例示的な描写を示す。
図2Aの左側のグラフィックは、IPS5それ自体によって評価された通りの、患者内のIPS5の向きを示し、一方、
図2Aの右側のプロットは、ベクトルV1、V2、V3と予め定義されたベクトルとの比較アライメントを示す。ここで、当該予め定義されたベクトルは、この場合には、好ましくは重力ベクトルg(すなわち、重力加速度の方向)によって形成される。ベクトルV1、V2、V3と重力ベクトルgとのアライメントは、例えば「g」に対するそれぞれのベクトルV1、V2、V3の絶対値の、パーセンテージとして測定されてもよい。
【0060】
IPS5の別の向きが、
図2Bの左側に示されている。加速度ベクトルV1、V2、V3と重力加速度gとのアライメントは、
図2Bの右側に示されている。ここで、ベクトルV1は、レート適合のための「最良の」ベクトルである。
【0061】
IPS5は、
図1に示すIPS5のいくつか又は全部の構成要素を含むことができる。
【0062】
一実施形態は、迅速に、多軸加速度計の各軸をシーケンシャルにスキャンして、多軸加速度計の各軸からデータを収集するための、IMD内(例えばIPS内)サポートを含むことを伴う。理想的には、そのような能力は、自動アルゴリズム、及びまたトリガされた応答と、ペアリングすることができる。言い換えれば、フォローアップ間でのベクトル選択の適合が有益である場合、インプラント5は、選択された設定が「最良」であることを確実にするために3つのベクトルV1、V2、V3すべてを定期的に評価し得、又は患者がレート閾値を超える(若しくはそれ以外の)場合、そのような条件によって、患者の一般的なニーズに基づいてベクトル選択チェックが開始され得る。トリガされた応答によって、運動及びベクトル最適化試験を可能にするためにそのような情報を取得するように臨床医がインプラントに強制する、クリニック内でのフォローアップ評価が可能になる。
【0063】
IPS5の向きは、患者の解剖学的構造、デバイス植込み部位の特性及び堅牢性、並びに植込みを行う医師のスキルに高度に依存する。任意の単一のデバイス内加速度計の軸V1、V2、V3と患者の解剖学的構造全体との間のアライメントを規範的に強制するための手段は、ほとんど存在しない。そのような実施形態では、インプラント内加速度計6の重要な使用は、レート適合をサポートすることに集中する。最小のシステムオーバーヘッドでそのようなサポートを最適に可能にするために、患者の頭からつま先までの軸とアライメントする単一の軸を選ぶことが、純理論的には最良である。おそらく偶然にも、この軸は、重力ベクトルgとアライメントされた軸でもある。自動性として行われるか、又はトリガされた応答として行われるかにかかわらず、患者が座っているか又は立っているがそれ以外に動いていないときの、デバイス内加速度計の軸/ベクトルV1、V2、V3の3つすべてに関するデータの収集は、多数あるシステム内ベクトルV1、V2、V3のうちのどれが、患者の頭からつま先までの向きgと最良にアライメントされているかを決定するための手段を提供する。そのような手順は、gベクトル方向の、自動化された決定を容易にすることができ、何らかのユーザ入力を要求することを必ずしも必要とせずに、そのベクトル(V1、V2、又はV3)を奨励/設定することができる。言い換えれば、インプラント5又はシステム1自体は、レート適合に最良に適した加速度計軸選択を、容易に設定及び適合することができる。さらには、可能な実施形態は、このプロセスをユーザに見えなくすることができて、臨床医に対し、より堅牢性の低い方法でレート適合に役立ち得る別のベクトルを選ぶための、いかなる手段も拒むことができる。
【0064】
言い換えれば、「g」と最良にアライメントされた応答がある軸V1、V2、V3が決定されてユーザに報告されることができる。このタイプのそのような表示の1つが、
図2A及び
図2Bに示されている。ここで、付随する多軸オーバーレイ(図の左側)及び/又はデータグラフィック(図の右側)を伴う、インプラント5の視覚的表現を使用して、患者の頭からつま先までの向きと、すなわち重力ベクトルgと最良にアライメントされたベクトル(例えば、
図2AのV2及び
図2BのV1)を強調することができる。すると、インプラント5によって自動化されるか、又は臨床医によって選択されるかにかかわらず、そのような最良にアライメントされたベクトルの選択は、製品におけるレート適合のニーズをサポートするように十分に調整されたベクトル選択を、最良に容易にする。「最良の」軸は、その選択を奨励又は報告するために、プロット及びグラフィックにおいて色分けされてもよい。
【0065】
クリニック内での運動試験をサポートするために、インプラント5は、理想的には、30分以下の最大の継続時間の間、加速度計の軸/ベクトルV1、V2、V3のすべてに関する情報を収集する。それぞれの情報は、それぞれの方向V1、V2、V3における加速度計の加速度を示す、それぞれのベクトルV1、V2、V3についての加速度計6の信号に対応してもよい。好ましくは、そのような情報は、例えば1分又は30秒に1回の頻度タイプのアプローチで、繰り返し取得され得る。このアプローチでは、すべての軸を同時にオンにするのではなく、一度に1つの軸又はベクトルV1、V2、V3が、入力を取得するためにアクティブ化され得、完全な一式が評価されるまですべての軸/ベクトルV1、V2、V3を通して循環する。この仕事によって収集されたデータは、各軸V1、V2、V3に関する生成されたデータの相対的な比較を介して、
図2A及び
図2Bに見られるもののようなグラフィックを生成することを容易にすることができる。フォローアップシナリオでは、これらの10秒間のわずかな継続時間の試験に基づく計算は、インプラントのリソースへの重い負担を回避するためにプログラマ110によって最良に実行され得る。
【0066】
インプラントのデータストレージのオーバーヘッドを大幅に減少させる変形実施形態は、加速度計6の軸V1、V2、V3の各々に関して観察される信号伝達に関連するデータを収集するために、一時的な監視デバイス(例えば、ホルターデバイス)114を患者の体上に(名目上、心臓上に)配置することができるものであろう(
図1を参照されたい)。そのようなデータは、プログラマ110からの試験開始コマンドをインプラントが受信した後、体を通したネットワーク接続される通信戦略を介して、監視デバイス(例えば、ホルターデバイス)114に中継されるであろう。次いで、監視デバイス(例えば、ホルターデバイス)114は、試験の実行の終了時にプログラマワンド113に情報を中継することができる。このアプローチは、インプラント5が、試験中に加速度計データを監視(例えば、ホルター)デバイス114に単に流すけれども、そのインプラント5のオンボードのメモリにそのような情報を記憶しないことを意味する。
【0067】
フォローアップ間の手順については、この仕事は、どのベクトルV1、V2、V3が、より短いデータ収集周期(すなわち、実質的に10秒間未満の議事録調査)を使用してレート適合機能を最適にサポートするかの、インプラントベースの決定を必要とする。このフォローアップ間のアプローチは、やがてレート適合のために使用されるプライマリベクトルを適合/更新することができ、又は後続のフォローアップ時に変化を通知するために統計量として(プログラムされたベクトルを更新することなく)報告されることができる。そのような適合及び/又は追跡は、心臓の形状が経時的に変化する進行性疾患、並びに/又はインプラントが次第にカプセル化され(及び所与の方向への動きやすさがより小さくなる可能性がある)状態を有する患者に、特に有用であることが分かる。
【0068】
旧式のポケットベースのペースメーカで可能になった運動試験と同様に、フォローアップ時の運動試験中に取得されたデータは、
図3に示すように、収集及びプロット(試験照会の終了時)されることができる。応答は、レート又は活動カウントとして表されてもよく、1つのGUI実施形態(GUI-グラフィカル・ユーザ・インターフェース)では、臨床医は、2つのオプションの間で切り替えることができる。特に、GUI112は、データを受信又は送信するために構成されたワンド113に接続されることができる、プログラマ110において実現できる(
図1を参照されたい)。
【0069】
図示の描写では、一度に1つのベクトルV1、V2、V3が、インターフェース(ドロップダウンメニューを見られたい)112内で見るためにどれが選択されているかに応じて、表示される。「前」プロットは、第1の運動試験の完了後のインプラント軸V1、V2、又はV3のベースライン応答を表す意味がある。試験パラメータに変更が加えられた場合、見られている軸V1、V2、又はV3上でのインプラント5の挙動を、編集されたパラメータの変更に照らして予測するように「プレビュー」曲線が生成される。そのようなフィードバックは、ユーザが、デバイス5の応答を調整して、それが応答をどのように変化させ得るかを、パラメータ調節された第2の運動及びベクトル最適化試験を実行する前に見るために役立ち得る。新たなパラメータ設定を適用して試験を再び実行した後、プログラマ110は、最後に収集されたデータを「前」として保持し、それから新たな試験データを「後」としてオーバーレイする。このようにして、「前」、予測(すなわち、「プレビュー」)、及び「後」データは、目標とするシステム応答を臨床医に最良に知らせるために示され得る。前述したように、使用/サポートは、「前」データと「後」データの両方の表示のためのサポートを、除外することを好む場合がある。したがって、直近の実行によるデータのみが、表示及びインタラクションに利用可能にされ、それには、変更された加速度計構成設定を条件として応答がどのようなものだったであろうかを予測する「プレビュー」機能が含まれる。
【0070】
運動及びベクトル最適化試験の変形実施形態は、インプラント内で利用可能な複数の軸のうちの、臨床医が選択可能な単一の軸のみを調査することである。そうすることによって、インプラントのデータストレージの必要性が、3つの軸すべてに関するデータを取得及び記憶する戦略に必要なものの1/3に減少する。
図2A、
図2B、及び
図3に示すのと同じインターフェースをこのアプローチに使用することができるが、利用可能なデータは、3つの軸の各々が選択されることができるまで、完全な一式に相当しない。そのような例では、
図2A及び
図2Bにおける左の図は、試験の完全な一式が実行されるまで、利用可能でない可能性がある。それら左の図の場所には、標準的なリードレスペースメーカであって、臨床医によって選択されたベクトルを反映するように更新する、軸を含んでいたものを示すことができる。
【0071】
この機能のためのGUIサポートに関連付けられたいくつかの要素が、
図4においてブロックフォーマットで示されており、そこでは、
図3において細部が示されている内容は、「プロットされたレートセンサ応答データ」の詳細な実施形態に相当し、
図2A及び
図2Bは、「インプラントの向きの図/フィードバック」の詳細な実施形態に相当する。運動及びベクトル最適化試験のサポートのためのこのGUIインターフェース112内では、IEGM(IEGM-心内電位図(intracardiac electrogram))は、システムがインプラントと通信している間、リアルタイムのフィードバックを提供する。ページは、「試験実行パラメータの入力/設定」フィールドを介して、試験の動作を変更/推進するための手段をさらに提供する。試験は、「試験「スタート」ボタン」で開始され、試験実行によって収集された結果は、IMDをプログラマとの通信に戻すこと、及び「インプラント「照会」ボタン」を使用することによってサポートされる(一実施形態では、このことは、自動化され得、そのため、そのようなボタンの必要性を強制しないのであり得る)。
【0072】
GUI112のいくつかの図が、
図5~
図11に示されており、ベクトルV1、V2、V3の中で「最良の」ベクトルを決定するためにユーザが実行し得るステップと一緒に、以下でさらに説明される。
【0073】
ユーザは、デバイスに最初に照会したことによるパラメータ(すなわち、通信スタート時のインプラントにおける設定)が事前入力された、試験ページ(
図5に示す)にアクセスする。ページ内で、ユーザは、最適ベクトル選択を開始することができ、(任意的に、続いて)「試験をスタート」ボタンを押下することによって活動応答データを収集することができる。
【0074】
「試験をスタート」ボタンを押した後、GUI112は、30秒間座るか又は直立するようにユーザに指示する(
図6A)。「記録をスタート」ボタンの押下に続くこの30秒の継続時間(
図6B)の間、インプラント5は、インプラント5の3つの軸/ベクトルV1、V2、V3の各々からDC測定値(DC-直流)を収集する。各軸(すなわち、トリム)V1、V2、V3についてIC設計(IC-集積回路(integrated circuit))においてオフセット補正がうまく行われていることを前提として、インプラントは、3つのベクトルV1、V2、V3の各々についてDC振幅を返す。プログラマ110は、3つのベクトルV1、V2、V3の振幅のうちの最大のものを取り、それを好ましいベクトルとしてGUI112を介してユーザに報告する。
【0075】
プログラマ110は、推奨ベクトルを右手側で報告し、メインページの治療プログラム設定内でベクトル値を変更する(
図7)。推奨ベクトルが、プログラマ110によって初めに照会されたものと異なる場合、その推奨ベクトルは、治療プログラム設定内で色(例えば、青)によって示される。ユーザは、この時点で、推奨ベクトル選択を変更されないままにしておいて活動試験を実行するか、又はベクトル設定を変更してそれから活動試験を実行することができる。試験の実行は、活動試験インターフェース(
図8)を開く「進む」オプションの、ユーザによる押下によって促がされる。治療プログラム内で選択されるどのベクトルV1、V2、V3も、活動試験がデータを収集するために使用するものである。ユーザは、活動試験さえも実行しないことを選んでもよく、代わりに推奨ベクトルを単純に受け入れてそれを用いてデバイス5をプログラムすることを選んでもよい。
【0076】
活動試験インターフェースは、活動試験を行うように患者に指示するために必要な、すべての関連情報を提供する(
図8)。「活動をスタート」ボタンを押下した後、ユーザは、ワンド113(プログラマ110とインプラント5との間の通信に使用される)を取り外して、示される運動をしながら動き回る。インプラント5は、およそ例えば20分に相当する、患者のレート/活動データを収集する。
【0077】
運動を実行した後、ユーザは、プログラマ110に戻り、ワンド113をインプラント5上に戻して配置する。「照会」ボタン(
図9)を押すことにより、システム1は、(最大)20分の運動継続時間において収集されていた、レートデータを収集する。
【0078】
収集された情報は、試験ページ上に、すなわち「照会」ボタンを押したことに応答して、プロットされる(
図10)。2つの曲線C1、C2が、照会された表示の一部であるプレビュー曲線C2及び元の曲線C1として現れる。最初、2つの曲線C1、C2は、重なり合っており、両方が、ページの治療プログラム部分内のパラメータ設定に関連する応答を反映している。
【0079】
ユーザは、治療プログラム設定の1つを、活動試験中に使用されたもの以外のものに、例えば「オート」から「低」に調節し、GUI112は、この変更(
図11)に対して、治療プログラムにおける改められた設定と整合するようにプレビュー曲線C2を変更することによって応答する。
図3には、3つの曲線が示されている。本実施形態では、プレビュー曲線C2及び元の曲線C1のみが示されている。いつでも、ユーザが、GUI112内に存在する(すなわち、
図10においても行うことができたであろう)設定を好む場合、彼/彼女は、それらを、「プログラムにコピー」ボタンを押すことによって永続的プログラム構成ページに送ることができる。次いで、ユーザは、必要に応じて、治療をさらに微調整してデバイスを再プログラムすることができる。
【0080】
選択されたベクトルはまた、特定の短い継続時間の大きな大振幅の信号伝達が検知された場合、例えば、患者が、発作及び転倒、若しくはその患者を転倒させる痛みイベントを起こしたか、又はその患者に意識を緩めさせる可能性がある不整脈を起こした場合、転倒検知のために使用されてもよい。
【0081】
以下に、本発明において単独で、又は互いとの任意の組み合わせで使用したのであり得る、さらなる特徴のリストを提供する。
-IMD内の多軸加速度計、
-インプラントが、複数の加速度計軸の任意の1つから、自動性及び/又はトリガされた応答として、データを取得する能力、
-シーケンシャルにスキャンされるフォーマットで、複数の加速度計軸の各々からデータを収集する能力、
-インプラントが、多数の加速度計軸から収集されたデータに基づいて、目標とする機能サポート(特にレート適合)のための「最良の」加速度計軸を決定する能力、
-前述の箇条に基づいて、レート適合に使用される軸を自動的に選択及び適合する能力、
-調査された任意の加速度計ベクトルの活動応答を詳述するデータを、インプラント内に記憶する能力、
-加速度計軸の信号伝達のためのインプラントのストレージを排除し、かつ代わりに、示されるデータを患者装着型ホルターデバイスに流すオプション、
-後のプログラマ照会のために、インプラントにおいて流される加速度計軸データを収集することができる、患者装着型ホルターデバイス、
-運動及びベクトル最適化試験を構成、開始、解釈するためのプログラマGUI、
-インプラント及び/又はホルターデバイスによって収集されたデータを解釈し、意図される機能サポート(特にレート適合)のための「最良の」加速度計ベクトル選択を計算するプログラマ能力、
-プログラマが、運動及びベクトル最適化試験の「前」及び「後」に関する情報を保持し、同時にそのような情報をユーザに提示する能力、
-シーケンシャルにスキャンされる「同時の」方法で取得されたかどうかにかかわらず、又は単一のインプラント/プログラマのフォローアップ「セッション」内の別々の試験で1つずつ収集された場合、加速度計軸のいずれかであってデータが収集されたものに関する、プロットされた活動応答データをレンダリングする能力、
-「最良の」選択としての単一のベクトルの奨励を含む、ベクトル応答データの「g」重力ベクトルに対する比較アライメントを示す、データグラフィックを提示する能力、及び
-どのベクトルが「g」と最良にアライメントされているかを強調するために、前述の箇条において収集された情報に従って、デバイスの画像を向き付ける能力。
【0082】
さらに、本開示のさらなる実施形態は、以下の利点のうちの1つ以上を有することができる。
-加速度計ベースの機能サポートが、個々の患者ニーズと最良に整合され、
-フォローアップ間の疾患状態の進行及び/又はカプセル化に適応する能力を促進し、並びに
-所与の関連する機能をサポートするための「最良の」加速度計軸を選択するために必要なトータルの臨床時間の、顕著な短縮。
【国際調査報告】