(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-08
(54)【発明の名称】新規魚トティウイルス
(51)【国際特許分類】
C12N 15/40 20060101AFI20220401BHJP
C12N 7/00 20060101ALI20220401BHJP
C12Q 1/6888 20180101ALI20220401BHJP
C07K 16/10 20060101ALI20220401BHJP
C07K 14/08 20060101ALI20220401BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20220401BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20220401BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20220401BHJP
【FI】
C12N15/40 ZNA
C12N7/00
C12Q1/6888 Z
C07K16/10
C07K14/08
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
C12N15/113 100Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021545295
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(85)【翻訳文提出日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2020052683
(87)【国際公開番号】W WO2020161105
(87)【国際公開日】2020-08-13
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521341547
【氏名又は名称】ファルマック アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】ニールンド スティアン
(72)【発明者】
【氏名】エークランド アーンフィン エル
(72)【発明者】
【氏名】サンドルンド リヴ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ02
4B063QQ10
4B063QQ52
4B063QR62
4B063QS24
4B063QS34
4B063QX02
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065CA43
4B065CA46
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA75
4H045EA05
4H045EA53
(57)【要約】
本発明は、魚を死亡させる、トティウイルスであることが示された新規魚ウイルス、および魚において前記ウイルスを検出する方法、ならびに関連する使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸であって、前記核酸の配列が、ORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YおよびORF-Zからなる群から選択される少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)配列を含み、
ORF-1が、配列番号1の核酸配列に対して少なくとも80%同一であり、
ORF-2が、配列番号2の核酸配列に対して少なくとも80%同一であり、
ORF-Xが、配列番号3の核酸配列に対して少なくとも80%同一であり、
ORF-Yが、配列番号4の核酸配列に対して少なくとも80%同一であり、かつ
ORF-Zが、配列番号5の核酸配列に対して少なくとも80%同一である、核酸。
【請求項2】
(a)前記核酸の配列が、請求項1において定義される、少なくともORF-1およびORF-2を含む、ならびに/または
(b)前記核酸の配列が、配列番号6によるウイルスゲノムに対して少なくとも80%同一である、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
核酸であって、
(a)前記核酸の配列が、配列番号1および/または配列番号2に対して相補的である、ならびに/または
(b)前記核酸の配列が、配列番号6に対して相補的である、核酸。
【請求項4】
ランプサッカーフィッシュ(キクロプテルス・ルンプス)に感染し、それを死滅させることが可能であるウイルスであって、ウイルスゲノムが、請求項1~3のいずれか1項に記載の核酸の配列を含み、前記核酸配列が、塩基チミン(T)の代わりに塩基ウラシル(U)を含有する、ウイルス。
【請求項5】
請求項1に定義されるORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YおよびORF-Zを含み、前記ORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YおよびORF-Zが、それぞれ、配列番号7~11に対して少なくとも80%同一であるウイルスポリペプチドをコードする、請求項4に記載のウイルス。
【請求項6】
前記ORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YおよびORF-Zが、それぞれ、配列番号7~11に対して少なくとも95%同一であるウイルスポリペプチドをコードする、請求項5に記載のウイルス。
【請求項7】
前記ORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YおよびORF-Zが、それぞれ、配列番号7~11の保存的に置換されたバリアントであるウイルスポリペプチド、またはそれぞれ、配列番号7~11のアミノ酸配列を含むウイルスポリペプチドをコードする、請求項5または請求項6に記載のウイルス。
【請求項8】
ウイルスによるランプサッカーフィッシュの感染が、魚において以下の症状:
(i)腸における組織損傷、および/もしくは
(ii)下痢、または
(iii)心筋症
をもたらす、請求項4~7のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項9】
(a)非エンベロープウイルスである、および/または
(b)トティウイルスである、請求項4~8のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項10】
オリゴヌクレオチドプライマーであって、
(a)少なくとも9個の連続するヌクレオチドの配列を含み、前記配列が、請求項4~6のいずれか1項に記載のウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列に対して相補的であるか、
(b)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6からなる群から選択される参照核酸配列の一部であるまたは前記参照核酸配列の一部に対して相補的である配列の少なくとも9個の連続するヌクレオチドを含むか、あるいは
(c)配列番号12~配列番号40からなる群から選択される配列であるまたは前記配列に対して相補的である配列、に対して少なくとも80%同一である配列の少なくとも9個の連続するヌクレオチドを含み、
但し、前記オリゴヌクレオチドプライマーが配列番号41~配列番号49からなる群から選択される配列を含まないことを条件とする、オリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項11】
請求項4~9のいずれか1項に記載のウイルスを検出する方法における少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーの使用であって、少なくとも1つのプライマーが、少なくとも9個の連続するヌクレオチドの配列を含み、前記配列が、前記ウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列に対して相補的である、使用。
【請求項12】
魚に感染し、それを死滅させることが可能であるウイルスを検出するための方法であって、
(a)魚の生体試料から抽出した核酸を少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーと接触させて混合物を形成するステップであって、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーが、請求項4~9のいずれか1項に記載のウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列に対して相補的である、ステップと、
(b)a)の混合物を増幅に供した際に、増幅産物が存在するか否かを決定するステップであって、増幅産物の存在が、ウイルスに関連するRNAの存在、したがって、生体試料中のウイルスの存在を示す、ステップ
とを含み、
オリゴヌクレオチドプライマーが、請求項10に記載のオリゴヌクレオチドプライマーであってもよい、方法。
【請求項13】
魚に感染し、それを死滅させることが可能であるウイルスを検出するための方法であって、
(a)魚の生体試料から抽出した核酸をシーケンシングするステップと、
(b)得られた核酸配列を、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6からなる群から選択される参照配列であるまたは前記参照配列に対して相補的である核酸配列と比較するステップであって、2つの配列間の少なくとも80%の配列同一性が、生体試料中のウイルスの存在を示す、ステップ
とを含む方法。
【請求項14】
ポリペプチドに結合する抗体であって、ポリペプチドが、請求項4~9のいずれか1項に記載のウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列によってコードされ、
ポリペプチドが、
(i)配列番号7に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(ii)配列番号8に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(iii)配列番号9に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(iv)配列番号10に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、および
(v)配列番号11に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群から選択されてもよい、抗体。
【請求項15】
魚からの生体試料においてウイルスを検出するためのキットであって、請求項10に記載のオリゴヌクレオチドプライマーおよび/または請求項14に記載の抗体を含み、
リアルタイムRT-PCRアッセイであってもよいキット。
【請求項16】
請求項4~9のいずれか1項に記載のウイルスに感染した魚の処置に使用するための、請求項14に記載の抗体。
【請求項17】
ワクチンを製造するための、請求項4~9のいずれか1項に記載のウイルスの使用。
【請求項18】
配列番号7~11のいずれか1つに対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むウイルスポリペプチド。
【請求項19】
配列番号7~11のいずれか1つに対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項18に記載のウイルスポリペプチド。
【請求項20】
配列番号7~11のいずれか1つに対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項18に記載のウイルスポリペプチド。
【請求項21】
配列番号7~11のいずれか1つまたはその保存的に置換されたバリアントを含むアミノ酸配列を含む、請求項18~20のいずれか1項に記載のウイルスポリペプチド。
【請求項22】
配列番号7~11のいずれか1つを含むアミノ酸配列を含む、請求項18~20のいずれか1項に記載のウイルスポリペプチド。
【請求項23】
(i)請求項4~9のいずれか1項に記載のウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列、
(ii)請求項1~3のいずれか1項に記載の核酸配列、
(iii)請求項4~9のいずれか1項に記載のウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列によってコードされるウイルスポリペプチド、
(iv)請求項18~22のいずれか1項に記載のウイルスポリペプチド、または
(v)請求項4~9のいずれか1項に記載のウイルス
を含むワクチン。
【請求項24】
核酸の配列が、請求項1~3のいずれか1項に記載の核酸の配列であり、前記核酸配列が、塩基チミン(T)の代わりに塩基ウラシル(U)を含有する、請求項23に記載のワクチン。
【請求項25】
ウイルスに感染した魚の処置に使用するための干渉RNA(iRNA)分子であって、請求項4~9のいずれか1項に記載のウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列の、または前記核酸配列に対して相補的な、少なくとも12個の連続するヌクレオチドを含む干渉RNA(iRNA)分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ、魚を死亡させる、トティウイルスであることが示された新規魚ウイルス、ならびに魚において前記ウイルスを検出し、前記ウイルスによる感染から魚を保護する方法、ならびに関連する薬剤(試薬)および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
魚は主要な食料源であり、養殖業は、特に、乱獲と生息地の喪失により野生魚の捕獲率に変化がないかまたは低下が見られるため、重要な産業となっている。養殖される魚の例としては、タイセイヨウサケ(サルモ・サラー(Salmo salar))およびランプサッカー(キクロプテルス・ルンプス(Cyclopterus lumpus))が挙げられる。
しかし、水産養殖における感染症は魚の生産を脅かし、野生魚の集団にも影響を与える可能性がある。例えば、心臓骨格筋炎症(HSMI)は、養殖されたタイセイヨウサケにしばしば見られる致命症であることが公知である。罹患した魚は、異常な遊泳行動に先立って食欲の減退を示すことが多く、一部の場合には突然死する。通常、外部病変は認められない。検死では、心臓は、色が薄く、幾分か弛緩しているように見えることが多い。一部の場合には、心膜が血液で満たされている。組織学的実験により、罹患した網のケージ内のほとんどの魚は、表面的には健康に見えるが、重度の病変を示すことが示されている。1999年にノルウェーで最初に認識されたが(Kongtorp et al., J Fish Dis 27, 2004)、HSMIは、その後、ノルウェーおよび英国の他の養殖場でのいくつかのアウトブレイクに関与した。レオウイルス(Reoviridae)科のスピナレオウイルス(Spinareovirinae)亜科に属する魚ウイルスである魚のオルソレオウイルス(piscine reovirus)(PRV)が、HSMIの可能性の高い原因物質であると考えられる(Kibenge et al., Virol J. 10, 2013)。1999年以降、アウトブレイクの回数が増加しており、この疾患はサケ養殖産業に有害な経済的影響を及ぼすと考えられる。
【0003】
心筋障害症候群(CMS)は、主に、漁獲間近の海水中で2年目の大きなタイセイヨウサケに罹患する重度の心疾患である。罹患した魚は、疾患の兆候を見せることなく突然死する場合があり、または異常な遊泳行動および食欲不振などの症状を見せる場合がある。この疾患は、1985年にノルウェーの養殖されたタイセイヨウサケにおいて最初に認められ、次に、フェロー諸島、英国およびアイルランドの養殖されたサケにおいて認められた。CMSについては、ノルウェーの野生のタイセイヨウサケにおいても記載されている。2010年には、ピシン心筋炎ウイルス(PMCV)と称されるトティウイルス科の二本鎖RNAウイルスが、CMSの原因物質として記載された(Haugland et al, J. Virol, 85, 2011)。PMCVは、サケ生産会社にとって主要な金銭上の損失をもたらす、タイセイヨウサケ生産における最大の問題のうちの1つであると考えられる。
【0004】
ランプフィッシュ(キクロプテルス・ルンプス)の生産における疾患の問題は、ある程度まで細菌感染に左右される。この中で、エロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)亜種(非典型的なフルンケル症)、パスツレラ(Pasteurella)種、ビブリオ・アンギラルム(Vibrio anguillarum)およびテナシバキュラム(Tenacibaculum)種は最も重要な種である。標的化ワクチン接種プログラム、疾患の体系的なモニタリングおよび生産の改善の適用によって、非典型的なフルンケル症、ビブリオ症およびパスツレラ症の症例数は徐々に減少されてきた。しかし、ウイルス性出血性敗血症(VHSV)(Gudmundsdottir et al, J. Fish Dis, 42, 2019)、ウイルス性神経壊死症(VNN)および新規ラナウイルスを含むいくつかの種のウイルスが、野生ランプフィッシュにおいて検出されている。最近、養殖されたランプフィッシュに罹患するウイルスが同定された:ランプフィッシュフラビウイルス(lumpfish flavivirus)(LFV/CLuV)(Skoge et al, Arch Virol, 163, 2018)。LFV/CLuVは、所属不明のタマナバットウイルス(TABV)に対して、低いが別個の類似性を示す。LFV/CLuVは、罹患した魚のすべての種類のランプフィッシュ組織において存在することが判明したが、病態は主に肝臓および腎臓において観察された。このウイルスは、ランプフィッシュの重篤な疾患と関連する。LFV/CLuVの特徴付けがなされた後、ウイルスの分布と疾患とのその関連をマッピングすることによって、LFV/CLuVが比較的高い有病率を伴って広がっていることが示された。
【0005】
現在、ある特定の養殖場は、リアルタイムRT-PCRおよび組織学では魚においていずれの公知の病原体も見出すことができないが、高い死亡率、例えば一部のランプサッカー集団では最大80%を経験している。
よって、魚、特に養殖されたランプサッカーフィッシュに感染し、それを死滅させるさらなる病原体を同定する需要が継続して存在する。さらに、病原体による感染症の存在について養殖魚の生産をモニターし、感染のアウトブレイクを回避し、可能であれば感染した魚を処置する方法に対する需要が継続して存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、驚くべきことに、ランプサッカーフィッシュにおいて、本明細書においてキクロプテルス・ルンプストティウイルス(CLuTV)と称される新規ウイルスを見出した。配列解析と共に、ゲノムの長さおよび構成は、CLuTVが、その最も近い近縁としてタイセイヨウサケウイルスであるPMCVを有するトティウイルスであることを示す。
したがって、本発明の一態様は、ORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YおよびORF-Zからなる群から選択される少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)配列を含む核酸であって、
ORF-1が、配列番号1の核酸配列に対して少なくとも80%同一であり、
ORF-2が、配列番号2の核酸配列に対して少なくとも80%同一であり、
ORF-Xが、配列番号3の核酸配列に対して少なくとも80%同一であり、
ORF-Yが、配列番号4の核酸配列に対して少なくとも80%同一であり、かつ
ORF-Zが、配列番号5の核酸配列に対して少なくとも80%同一である、核酸を提供する。
【0007】
本発明の別の態様は、核酸であって、(a)前記核酸の配列が、配列番号1および/もしくは配列番号2に対して相補的である、ならびに/または(b)前記核酸の配列が、配列番号6に対して相補的である、核酸を提供する。
本発明の別の態様は、配列番号7~11のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%同一であるか、または配列番号7~11もしくは保存的に置換されたそのバリアントのいずれか1つであるアミノ酸配列を含むウイルスポリペプチドを提供する。
本発明の別の態様は、ランプサッカーフィッシュ(キクロプテルス・ルンプス)に感染し、それを死滅させることが可能であるウイルスであって、ウイルスゲノムが本明細書に開示される核酸配列を含み、前記核酸配列が、塩基チミン(T)の代わりに塩基ウラシル(U)を含有する、および/あるいはウイルスが、配列番号7~11のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%同一であるか、または配列番号7~11もしくは保存的に置換されたそのバリアントのいずれか1つであるアミノ酸配列を含むウイルスポリペプチドを含む、ウイルスを提供する。
本発明の別の態様は、少なくとも9個のヌクレオチドの配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーであって、前記配列が、本明細書に開示されるウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列に対して相補的である、オリゴヌクレオチドプライマーを提供する。
本発明の別の態様は、オリゴヌクレオチドプライマーであって、(a)少なくとも9個の連続するヌクレオチドの配列を含み、前記配列が、本明細書に開示されるウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列に対して相補的であるか、(b)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6からなる群から選択される参照核酸配列の一部であるもしくは前記参照核酸配列の一部に対して相補的である配列の少なくとも9個の連続するヌクレオチドを含むか、または(c)配列番号12~配列番号40からなる群から選択される配列であるもしくは前記配列に対して相補的である配列、に対して少なくとも80%同一である配列の少なくとも9個の連続するヌクレオチドを含み、但し、好ましくは、前記オリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号41~配列番号49からなる群から選択される配列を含まない、オリゴヌクレオチドプライマーを提供する。
【0008】
本発明の別の態様は、魚に感染し、それを死滅させることが可能であるウイルスを検出するための方法であって、
(a)魚の生体試料から抽出した核酸を少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーと接触させて混合物を形成するステップであって、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーが本明細書に開示されるウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列に対して相補的である、ステップと、
(b)a)の混合物を増幅に供した際に、増幅産物が存在するか否かを決定するステップであって、増幅産物の存在が、ウイルスに関連するRNAの存在、したがって、生体試料中のウイルスの存在を示す、ステップ
とを含む方法を提供する。
【0009】
本発明の別の態様は、魚に感染し、それを死滅させることが可能であるウイルスを検出するための方法であって、
(a)魚の生体試料から抽出した核酸をシーケンシングするステップと、
(b)得られた核酸配列を、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6からなる群から選択される参照配列であるまたは前記参照配列に対して相補的である核酸配列と比較するステップであって、2つの配列間の少なくとも80%の配列同一性が、生体試料中のウイルスの存在を示す、ステップ
とを含む方法を提供する。
【0010】
本発明の別の態様は、魚に感染し、それを死滅させることが可能であるウイルスを検出するための方法であって、
(a)魚の生体試料から抽出した核酸をシーケンシングするステップと、
(b)得られた核酸配列をアミノ酸配列へと翻訳するかまたは前記得られた核酸配列に対して相補的な核酸配列をアミノ酸配列へと翻訳するステップと、
(c)得られたアミノ酸配列を、配列番号7~11からなる群から選択される参照配列と比較するステップであって、2つの配列間の少なくとも80%の配列同一性が、生体試料中のウイルスの存在を示す、ステップ
とを含む方法を提供する。
【0011】
本発明の別の態様は、ポリペプチドに結合する抗体であって、ポリペプチドが、本明細書に開示されるウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列によってコードされる、および/あるいはポリペプチドが、配列番号7~11のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%同一であるまたは配列番号7~11もしくは保存的に置換されたそのバリアントのいずれか1つであるアミノ酸配列を含む、抗体を提供する。
本発明の別の態様は、魚からの生体試料中のウイルスを検出するためのキットであって、本明細書に開示されるオリゴヌクレオチドプライマーおよび/または本明細書に記載の抗体を含むキットを提供する。
本発明の別の態様は、本明細書に開示されるウイルスに感染した魚の処置に使用するための抗体を提供する。
本発明の別の態様は、ワクチンを製造するための、本明細書に開示されるウイルスの使用を提供する。
【0012】
本発明の別の態様は、
(i)本明細書に開示されるウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列、
(ii)本明細書に開示される核酸配列、
(iii)本明細書に開示されるウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列によってコードされるウイルスポリペプチド、
(iv)配列番号7~11のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%同一であるまたは配列番号7~11もしくは保存的に置換されたそのバリアントのいずれか1つであるアミノ酸配列を含むウイルスポリペプチド、あるいは
(v)本明細書に開示されるウイルス
を含むワクチンを提供する。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、ウイルスに感染した魚の処置に使用するための干渉RNA(iRNA)分子であって、本明細書に開示されるウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列の、または前記核酸配列に対して相補的な、少なくとも12個の連続するヌクレオチドを含む干渉RNA(iRNA)分子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】6,353ヌクレオチド長であり、5つの可能なオープンリーディングフレーム(ORF)を含有する、本明細書において同定したCLuTVの配列の概略図である。
【
図2】CLuTVのゲノムのヌクレオチド配列を示す図である。
【
図3】CLuTVのORF-1のヌクレオチド配列を示す図である。
【
図4】CLuTVのORF-2のヌクレオチド配列を示す図である。
【
図5】CLuTVのORF-X、ORF-YおよびORF-Zのヌクレオチド配列を示す図である。
【
図6】CLuTVのORF-1のアミノ酸配列を示す図である。
【
図7】CLuTVのORF-2のアミノ酸配列を示す図である。
【
図8】CLuTVのORF-X、ORF-YおよびORF-Zのアミノ酸配列を示す図である。
【
図9】胃内の体液(矢印)の蓄積を示す、罹患したランプサッカーの断面全体のヘマトキシリンエオシン染色を示す写真である。
【
図10】粘液、および細胞排出物(矢印)の蓄積を示す、ランプサッカーの腸の断面のヘマトキシリンエオシン染色を示す写真である。
【
図11】粘液(矢印)、および細胞排出物の蓄積を示すランプサッカーの腸の断面のヘマトキシリンエオシン染色を示す写真である。
【
図12】粘液(矢印)の蓄積を示すランプサッカーの腸の断面のヘマトキシリンエオシン染色を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本発明が容易に理解されるために、本発明の過程において使用される用語のいくつかの定義を以下に示す。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「ランプサッカー」または「ランプフィッシュ」は、ダンゴウオ(Cyclopteridae)科全体から選択されるいずれかの種を意味することを意図する。本発明による最も好ましい種は、キクロプテルス・ルンプス(Cyclopterus lumpus)である。
用語「核酸」は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、ヌクレオチド類似体(例えば、ペプチド核酸および天然に存在しないヌクレオチド類似体)を使用して生成したDNAまたはRNAの類似体、ならびにこれらのハイブリッドを含む。よって、
図2~5および配列番号1~6に与えられる核酸配列は、塩基グアニン、シトシン、アデニンおよびチミンを使用する一方、本発明の実施形態は、塩基グアニン、シトシン、アデニンおよびウラシル(すなわち、チミンの代わりにウラシルを用いる)を使用する対応するRNA配列に関し、したがって、このRNA配列も本明細書において提供される。核酸分子は、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。別段に特定されていなければ、本明細書において議論される任意の一本鎖核酸配列の左側の末端は5’末端である。新生RNA転写物の5’から3’への付加の方向は、転写方向である。
【0017】
用語「オリゴヌクレオチド」は、200個またはそれより少ないヌクレオチドを含む核酸を意味する。オリゴヌクレオチドは、例えばプライマー、クローニングプライマーもしくはハイブリダイゼーションプローブとして使用するための一本鎖であってもよく、またはオリゴヌクレオチドは、例えば突然変異遺伝子の構築物において使用するための二本鎖であってもよい。オリゴヌクレオチドは、センスオリゴヌクレオチドであっても、アンチセンスオリゴヌクレオチドであってもよい。オリゴヌクレオチドは、検出アッセイのための、放射標識、蛍光標識、ハプテンまたは抗原標識を含む標識を含んでもよい。
本明細書で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチドプライマー」または「プライマー」は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による標的核酸配列の増幅のための、またはin situハイブリダイゼーションのための、核酸のある領域に対して活性を指示するのに好適な(例えば、少なくとも9ヌクレオチド長、かつ60ヌクレオチド長未満の)核酸配列を指すことが理解されるべきである。
【0018】
本明細書で使用される場合、核酸配列の文脈における用語「相補的な」は、塩基対をマッチさせることによって(T(またはU)に対してAおよびCに対してG)、二本鎖構造を形成する核酸配列を意味する。例えば、G-T-A-Cに対して相補的な核酸配列は、C-A-T-Gである。相補的核酸配列の他の例は以下の通りである:
相補的核酸配列(例えば、核酸がDNAである場合):
5’-ATTCGCTTAACGCAA-3’
3’-TAAGCGAATTGCGTT-5’
チミンをウラシルで置換する対応する相補的配列(例えば、核酸がRNAである場合):
5’-AUUCGCUUAACGCAA-3’
3’-UAAGCGAAUUGCGUU-5’
本明細書で使用される場合、用語「アミノ酸」は、20個の天然に存在するアミノ酸のうちの1つまたはいずれかの非天然の類似体を指す。好ましくは、用語「アミノ酸」は、20個の天然に存在するアミノ酸のうちの1つを指す。
【0019】
用語「ポリペプチド」または「タンパク質」は、アミノ酸の配列から構成される高分子を意味する。タンパク質は、天然タンパク質、すなわち、天然に存在する、非組換え細胞によって産生されるタンパク質であってもよく、あるいはタンパク質は、遺伝子操作された細胞または組換え細胞によって産生され、かつ天然タンパク質のアミノ酸配列を有する分子、または天然の配列からの欠失、それへの付加、および/もしくはそのうちの1つまたは複数のアミノ酸の置換を有する分子を含んでもよい。この用語は、1つまたは複数のアミノ酸が、対応する天然に存在するアミノ酸ポリマーの化学的類似体であるアミノ酸ポリマーも含む。
【0020】
用語「配列同一性」は、核酸(ヌクレオチドとも称される)配列またはアミノ酸配列であり得る2つの配列間の相同性の程度の定量的尺度を示す。比較される2つの配列が等しい長さのものではない場合、これらは、最大限に適合するように配列され、ギャップの挿入またはその代わりに、核酸配列またはアミノ酸配列の末端におけるトランケーションを可能にしなければならない。
【0021】
例えば、ヌクレオチド配列の場合には、よって、用語「少なくとも80%同一」は、配列全体にわたってヌクレオチドの少なくとも80%が、別の配列からの同一のヌクレオチドと配列され得ることを意味する。特定のパーセンテージのヌクレオチドは、例えば、最大一致に関して比較し、配列させた場合に、特定の領域に対して80%同一、85%同一、90%同一、95%同一、99%同一、またはそれを超えるものとして言及することができる。例えば、10ヌクレオチド長である配列、例えば、GGGAAACCTTは、連続配列(例えば、GGGAAACCGG)と、または非連続配列(例えば、GGGACCCCTT)と80%同一であってもよい。
100%の同一性の例:
GGGAAACCTT
||||||||||
GGGAAACCTT
80%の同一性の例:
GGGAAACCTT
||||||||
GGGAAACCGG
80%の同一性の例:
GGGAAACCTT
|||| ||||
GGGACCCCTT
当業者は、配列を比較するための様々な手段が利用可能であることを認めるであろう(以下を参照されたい)。
【0022】
本明細書で使用される場合、アミノ酸に言及する用語「保存的に置換された(conservatively substituted)」は、アミノ酸が、以下の6つの群に従って、その各群における別のアミノ酸によって置換され得ることを意味する:[1]アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、[2]アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、[3]アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、[4]アルギニン(R)、リシン(K)、[5]イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、および[6]フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。ポリペプチドまたはタンパク質に言及する「保存的に置換されたバリアント」は、前記ポリペプチドまたはタンパク質におけるアミノ酸のいずれかが、上記に定義したように保存的に置換され得ることを意味する。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続した少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質、またはその抗体断片(抗原結合部位)を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域(CH)から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2およびCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLから構成される。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存される領域に散在する相補性決定領域(CDR)と称される超変異性の領域にさらに細分化することができる。VHおよびVLはそれぞれ、以下の順にアミノ末端からカルボキシ末端に配列した3つのCDRと4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1の構成成分(C1q)を含む宿主細胞または因子への結合を媒介することができる。本発明の抗体は、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)およびポリクローナル抗体、全抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体または二重もしくは多重抗原もしくはエピトープ特異性を有するハイブリッド抗体、抗体断片および抗体亜断片、例えば、特異的抗原に結合して複合体を形成することによって抗体のように作用するいずれかの免疫グロブリンまたはいずれかの天然、合成もしくは遺伝子操作されたタンパク質のハイブリッド断片を含む、Fab、Fab’、F(ab’)2断片などを含む。本発明の抗体は、Fc融合タンパク質であってもよい。
【0024】
「ベクター」は、それに連結した別の核酸(または「構築物」)を細胞内に導入するために使用することができる核酸である。ベクターの1つの種類は「プラスミド」であり、さらなる核酸セグメントをライゲーションすることができる直鎖状または環状の二本鎖DNA分子を指す。ベクターの別の種類はウイルスベクター(例えば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)であり、さらなるDNAセグメントがウイルスゲノム中に導入され得る。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞における自律複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を含む細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に、宿主細胞のゲノムに組み込まれ、選択圧下で培養され、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。ベクターを使用して、細胞内で選択された核酸の発現を指示することができる。
【0025】
「宿主細胞」は、核酸、例えば本明細書に開示される核酸を発現するために使用され得る細胞である。宿主細胞は、原核生物、例えば大腸菌(E. coli)であってもよく、または宿主細胞は、真核生物、例えば単細胞真核生物(例えば、酵母または他の真菌)、植物細胞(例えば、タバコまたはトマト植物細胞)、動物細胞(例えば、ヒト細胞、サル細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、マウス細胞、または昆虫細胞)またはハイブリドーマであってもよい。例示的な宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株またはそれらの誘導体が挙げられる。典型的には、宿主細胞は、後に宿主細胞内で発現され得るポリペプチドをコードする核酸により形質転換またはトランスフェクトされ得る培養細胞である。用語宿主細胞は、特定の対象細胞だけでなく、このような細胞の後代または可能性のある後代を指すことが理解される。ある種の改変が後続の世代において、例えば突然変異または環境の影響により起こり得るため、このような後代は、実際に、親細胞と同一ではない可能性があるが、それでも本明細書において使用される用語の範囲内に含まれる。
【0026】
用語「処置する」および「処置」は、治療処置、予防処置、および障害の症状を低減するかまたは対象(例えば、魚)が障害(例えば、ウイルス感染の症状)を発症するリスクを低減する適用を含む。
【0027】
用語「ワクチン」は、本明細書で使用される場合、本発明に関しては、魚、例えばランプサッカーに感染するウイルスである、感染病原体の感染力を部分的または全体的に遮断する免疫応答をもたらし得る物質を指す。よって、魚に投与する場合、本発明のワクチンは、ウイルスによって引き起こされる疾患に対して魚を免疫化する。ワクチンの免疫化成分は、例えば、DNAワクチンにおけるDNA、RNAワクチンにおけるRNA、本発明による組換えタンパク質もしくはその断片、または生もしくは弱毒化組換えウイルスであってもよい。
【0028】
「iRNA剤」(「干渉RNA剤」の略語)は、本明細書で使用される場合、標的遺伝子、例えばORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YまたはORF-Zによってコードされるタンパク質の発現を下方調節する(低減する)ことができるRNA剤である。iRNA剤は、当技術分野では「RNAi」と称されることもある標的mRNAの転写後切断、または転写前もしくは翻訳前の機序を含む、1つまたは複数の機序によって作用することができる。iRNA剤は、二本鎖(ds)iRNA剤であってもよい。iRNA剤は、「低分子干渉RNA」(siRNA)であってもよい。
用語「本発明の」または「本発明による」は、本明細書で使用される場合、本明細書において開示されるおよび/または請求される本発明のすべての態様および実施形態を指すことを意図する。逆に、「本明細書に開示される」または「本明細書に記載の」と、本明細書において言及されるいずれの態様、項目または実施形態も、「本発明の」または「本発明による」態様、項目または実施形態であることが理解されるべきである。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」および「からなる(consisting of)」の両方(いずれも、本発明による実施形態が具体的に意図され、よって、個々に開示されることを意味する)を包含するものとして解釈されるべきである。
本明細書で使用される場合、要素および構成成分に先行する、冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、要素または構成成分の例の数(すなわち、発生率)に関して非限定的であることが意図される。したがって、「1つの(a)」または「1つの(an)」は1つまたは少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、要素または構成成分の単数の語形は、数が単数であることが明示されていなければ複数も含む。
【0030】
本明細書で使用される場合、用いられる物質、成分、構成成分、またはパラメーターの量を修飾する用語「約」は、例えば、典型的な測定および取り扱い手順、例えば濃縮物または溶液を作製するために使用される液体の取り扱い手順を介して生じる可能性のある数値量の変動を指す。さらに、変動は、測定手順における意図しないエラー、方法を実行するために用いられる製造、供給源、または複数の成分の差異などから生じる可能性がある。一実施形態では、用語「約」は、報告された数値の10%以内を意味する。より具体的な実施形態では、用語「約」は、報告された数値の5%以内を意味する。
【0031】
ウイルス核酸配列およびウイルスポリペプチド
本発明の一態様は、ORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YおよびORF-Zからなる群から選択される少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)配列を含む核酸であって、
ORF-1が、配列番号1の核酸配列に対して少なくとも80%同一であり、
ORF-2が、配列番号2の核酸配列に対して少なくとも80%同一であり、
ORF-Xが、配列番号3の核酸配列に対して少なくとも80%同一であり、
ORF-Yが、配列番号4の核酸配列に対して少なくとも80%同一であり、かつ
ORF-Zが、配列番号5の核酸配列に対して少なくとも80%同一である、核酸を提供する。
一部の実施形態では、
ORF-1は、配列番号1の核酸配列に対して少なくとも85%同一であり、
ORF-2は、配列番号2の核酸配列に対して少なくとも85%同一であり、
ORF-Xは、配列番号3の核酸配列に対して少なくとも85%同一であり、
ORF-Yは、配列番号4の核酸配列に対して少なくとも85%同一であり、かつ
ORF-Zは、配列番号5の核酸配列に対して少なくとも85%同一である。
好ましい実施形態では、
ORF-1は、配列番号1の核酸配列に対して少なくとも90%同一であり、
ORF-2は、配列番号2の核酸配列に対して少なくとも90%同一であり、
ORF-Xは、配列番号3の核酸配列に対して少なくとも90%同一であり、
ORF-Yは、配列番号4の核酸配列に対して少なくとも90%同一であり、かつ
ORF-Zは、配列番号5の核酸配列に対して少なくとも90%同一である。
より好ましい実施形態では、
ORF-1は、配列番号1の核酸配列に対して少なくとも95%同一であり、
ORF-2は、配列番号2の核酸配列に対して少なくとも95%同一であり、
ORF-Xは、配列番号3の核酸配列に対して少なくとも95%同一であり、
ORF-Yは、配列番号4の核酸配列に対して少なくとも95%同一であり、かつ
ORF-Zは、配列番号5の核酸配列に対して少なくとも95%同一である。
さらにより好ましい実施形態では、
ORF-1は、配列番号1の核酸配列に対して少なくとも98%同一であり、
ORF-2は、配列番号2の核酸配列に対して少なくとも98%同一であり、
ORF-Xは、配列番号3の核酸配列に対して少なくとも98%同一であり、
ORF-Yは、配列番号4の核酸配列に対して少なくとも98%同一であり、かつ
ORF-Zは、配列番号5の核酸配列に対して少なくとも98%同一である。
さらにまたより好ましい実施形態では、
ORF-1は、配列番号1の核酸配列に対して少なくとも99%同一であり、
ORF-2は、配列番号2の核酸配列に対して少なくとも99%同一であり、
ORF-Xは、配列番号3の核酸配列に対して少なくとも99%同一であり、
ORF-Yは、配列番号4の核酸配列に対して少なくとも99%同一であり、かつ
ORF-Zは、配列番号5の核酸配列に対して少なくとも99%同一である。
特に好ましい実施形態では、
ORF-1は、配列番号1の核酸配列であり、
ORF-2は、配列番号2の核酸配列であり、
ORF-Xは、配列番号3の核酸配列であり、
ORF-Yは、配列番号4の核酸配列であり、かつ
ORF-Zは、配列番号5の核酸配列である。
【0032】
特定の実施形態では、本明細書に開示される核酸は、本明細書に開示されるこれらの実施形態のいずれかに従って、少なくともORF-1および/またはORF-2を含む。
【0033】
本明細書に開示される核酸の配列は、配列番号6によるウイルスゲノムに対して少なくとも80%同一であってもよい。一部の実施形態では、本明細書に開示される核酸の配列は、配列番号6によるウイルスゲノムに対して少なくとも85%同一である。好ましい実施形態では、本明細書に開示される核酸の配列は、配列番号6によるウイルスゲノムに対して少なくとも90%同一である。より好ましい実施形態では、本明細書に開示される核酸の配列は、配列番号6によるウイルスゲノムに対して少なくとも95%同一である。さらにより好ましい実施形態では、本明細書に開示される核酸の配列は、配列番号6によるウイルスゲノムに対して少なくとも98%同一である。さらにまたより好ましい実施形態では、本明細書に開示される核酸の配列は、配列番号6によるウイルスゲノムに対して少なくとも99%同一である。特に好ましい実施形態では、本明細書に開示される核酸の配列は、配列番号6(CLuTV)によるウイルスゲノムの配列に対して100%の同一性を有する。
【0034】
その配列が本明細書に開示される核酸のいずれかの配列に対して相補的である核酸も本明細書において提供される。
【0035】
前記核酸の配列は、本明細書に開示されるこれらの実施形態のいずれかに従って、ORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YまたはORF-Zに対して相補的であってもよい。核酸の配列は、配列番号6(CLuTV)によるウイルスゲノムの配列に対して、少なくとも80%同一、一部の実施形態ではそれに対して少なくとも85%同一、好ましい実施形態ではそれに対して少なくとも90%同一、より好ましい実施形態ではそれに対して少なくとも95%同一、さらにより好ましい実施形態ではそれに対して98%同一、さらにまたより好ましい実施形態ではそれに対して少なくとも99%同一、および特に好ましい実施形態ではそれに対して100%同一である核酸配列に対して相補的であってもよい。
【0036】
したがって、本発明は、核酸であって、(a)前記核酸の配列が、配列番号1~配列番号5のいずれか1つに対して相補的である、および/または(b)前記核酸の配列が、配列番号6に対して相補的である、核酸も提供する。
したがって、本発明は、核酸であって、(a)前記核酸の配列が、配列番号1および/もしくは配列番号2に対して相補的である、ならびに/または(b)前記核酸の配列が、配列番号6に対して相補的である、核酸も提供する。
【0037】
好ましい実施形態では、本明細書に開示される核酸配列はRNA核酸配列である、すなわち、これらは、塩基チミン(T)の代わりに塩基ウラシル(U)を含有する。したがって、本明細書に開示されるウイルスは、このようなRNA核酸配列の形態でそれらの遺伝情報を含有する。
当業者は、それがコードするタンパク質のアミノ酸配列の改変をもたらす核酸配列の変更が、あったとしても、得られるタンパク質の三次元構造にほとんど影響を及ぼさない可能性があることをさらに認めるであろう。例えば、疎水性アミノ酸である、アミノ酸アラニンに関するコドンは、別の疎水性がより低い残基、例えばグリシンをコードするコドン、またはより疎水性が高い残基、例えばバリン、ロイシン、もしくはイソロイシンをコードするコドンによって置換されてもよい。同様に、1つの負に帯電した残基による別の残基の置換、例えばアスパラギン酸によるグルタミン酸の置換、または1つの正に帯電した残基による別の残基の置換、例えばリシンによるアルギニンの置換をもたらす変化は、実質的に同じ機能活性を有するタンパク質を産生することが期待され得る。
【0038】
以下の6つの群はそれぞれ、互いに典型的な保存的置換であるアミノ酸を含有する:[1]アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、[2]アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、[3]アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、[4]アルギニン(R)、リシン(K)、[5]イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、および[6]フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)(例えば、米国特許出願公開第20100291549号を参照されたい)。
好ましくは、ORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YおよびORF-Zは、それぞれ、配列番号7~11のアミノ酸配列、またはそれぞれ、アミノ酸配列である配列番号7~11に対して少なくとも80%同一(例えば、少なくとも85%同一または少なくとも90%同一、または少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一)であるアミノ酸配列を含むウイルスポリペプチドをコードする。ある特定の実施形態では、ORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YおよびORF-Zは、上記のように、それぞれ、配列番号7~11の保存的に置換されたバリアントであるウイルスポリペプチドをコードする。
【0039】
したがって、別の態様では、それぞれ、配列番号7~11のアミノ酸配列、またはそれぞれ、アミノ酸配列である配列番号7~11に対して少なくとも80%同一(例えば、少なくとも85%同一または少なくとも90%同一、または少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一)であるアミノ酸配列を含むウイルスポリペプチドが、本明細書において提供される。ある特定の実施形態では、ウイルスポリペプチドは、上述のように、それぞれ、配列番号7~11の保存的に置換されたバリアントである。上記のように、本発明のウイルスポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクター、例えばプラスミドベクターまたはウイルスベクターも提供される。
【0040】
タンパク質および/または核酸配列の同一性(相同性)は、当技術分野で公知の様々な配列比較アルゴリズムおよびプログラムのいずれかを使用して評価することができる。配列比較では、典型的には、1つの配列が、試験配列が比較される参照配列(例えば、本明細書に開示される配列)として作用する。次いで、配列比較アルゴリズムによって、プログラムパラメーターに基づいて、参照配列と比較した試験配列に関するパーセント配列同一性が計算される。
【0041】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント同一性は、例えば、コンピュータープログラムGAP、すなわちGenetics Computer Group(GCG; Madison、WI)のWisconsinパッケージバージョン10.0プログラム、GAP(Devereux et al. (1984), Nucleic Acids Res. 12: 387-95)を使用して配列情報を比較することによって決定することができる。パーセント同一性を計算する際に、比較される配列は、典型的には、配列間で最大にマッチするように整列される。GAPプログラムに関する好ましいデフォルトパラメーターとして、以下のものが含まれる:(1)ヌクレオチドに関する単一要素からなる比較マトリックスのGCG実装(同一性に対して値1、非同一性に対して0を含有する)、およびAtlas of Polypeptide Sequence and Structure, Schwartz and Dayhoff, eds., National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358 (1979)に記載されているGribskov and Burgess ((1986) Nucleic Acids Res. 14: 6745)の加重アミノ酸比較マトリックスまたは他の同等の比較マトリックス、(2)アミノ酸配列では、各ギャップに対してペナルティー8および各ギャップの各記号に対して追加のペナルティー2、またはヌクレオチド配列では、各ギャップに対してペナルティー50および各ギャップの各記号に対して追加のペナルティー3、(3)各ギャップに対するペナルティーなし、ならびに(4)長いギャップに対する最大ペナルティーなし。
【0042】
配列の同一性および/または類似性は、Smith and Waterman, 1981, Adv. Appl. Math. 2:482の局所配列同一性アルゴリズム、Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48:443の配列同一性アラインメントアルゴリズム、Pearson and Lipman, 1988, Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 85:2444の類似性の検索方法、これらのアルゴリズムのコンピューター処理されるインプリメンテーション(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group, 575 Science Drive、Madison、WisのBESTFIT、FASTA、およびTFASTA)の使用によって決定することができる。
【0043】
有用なアルゴリズムの別の例は、PILEUPである。PILEUPは、プログレッシブに対形成するアラインメントを使用して、関連配列の群から複数の配列アラインメントを作出する。アラインメントを作出するために使用されるクラスター相互関係を示すツリーもプロットすることができる。PILEUPは、Feng & Doolittle, 1987, J. Mol. Evol. 35:351-360のプログレッシブアラインメント方法の単純化を使用し、この方法は、Higgins and Sharp, 1989, CABIOS 5:151-153に記載された方法に類似している。デフォルトギャップ質量3.00、デフォルトギャップ長質量0.10、および加重された末端ギャップを含む有用なPILEUPパラメーター。
有用なアルゴリズムの別の例は、Altschul et al., 1990, J. Mol. Biol. 215:403-410;Altschul et al., 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402;およびKarin et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:5873-5787に記載されるBLASTアルゴリズムである。特に有用なBLASTプログラムは、Altschul et al., 1996, Methods in Enzymology 266:460-480から得られるWU-BLAST-2プログラムである。WU-BLAST-2は、いくつかの検索パラメーターを使用し、そのほとんどはデフォルト値に設定される。調整可能なパラメーターは以下の値に設定される:オーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.125、ワード閾値(T)=11。HSP SおよびHSP S2のパラメーターは動的な値であり、問題の配列が検索されている特定配列の組成および特定データベースの組成に応じて、プログラム自体によって確立されるが、しかし、これらの値は、感度を増加させるために調整される場合がある。
【0044】
さらに有用なアルゴリズムは、Altschul et al., 1993, Nucl. Acids Res. 25:3389-3402によって報告されているギャップ付きBLASTである。ギャップ付きBLASTは、BLOSUM-62置換スコア、9に設定された閾値Tパラメーター、ギャップなしの伸長を誘発するための2ヒット法、ギャップ長kに10+kのコストを負荷、16に設定されたXu、ならびにデータベース検索段階で40に、およびアルゴリズムの出力段階で67に設定されたXgを使用する。ギャップ付きアラインメントは、約22ビットに対応するスコアによって誘発される。
本明細書に記載のウイルスポリペプチドを作製するための方法は、当業者にとって周知である。例えば、限定することなく、配列番号7~11または配列番号7~11の保存的に置換されたバリアントを含む、配列番号7~11に対して少なくとも80%同一な配列を含むウイルスポリペプチドをコードする核酸配列を、例えばプラスミドまたはウイルスベクターなどのベクター中にクローニングし、魚の細胞、哺乳動物の細胞、細菌の細胞、植物の細胞、および昆虫の細胞などの好適な宿主において発現させ、発現したウイルスポリペプチドをそこから分離した。
【0045】
ウイルス
本発明の別の態様は、ランプサッカーフィッシュ(キクロプテルス・ルンプス)に感染し、それを死滅させることが可能であるウイルスであって、ウイルスゲノムが本明細書に開示される核酸配列を含み、前記核酸配列が塩基チミン(T)の代わりに塩基ウラシル(U)を含有する、ウイルスを提供する。
【0046】
本発明の別の態様は、ランプサッカーフィッシュ(キクロプテルス・ルンプス)に感染し、それを死滅させることが可能であるウイルスであって、配列番号7~11のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%同一であるか、または配列番号7~11もしくはその保存的に置換されたバリアントのいずれか1つであるアミノ酸配列を含むウイルスポリペプチドを含むウイルスを提供する。
本発明の別の態様は、ランプサッカーフィッシュ(キクロプテルス・ルンプス)に感染し、それを死滅させることが可能であるウイルスであって、ウイルスゲノムが本明細書に開示される核酸配列を含み、前記核酸配列が塩基チミン(T)の代わりに塩基ウラシル(U)を含有し、ウイルスが、列番号7~11のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%同一であるか、または配列番号7~11もしくはその保存的に置換されたバリアントのいずれか1つであるアミノ酸配列を含むウイルスポリペプチドを含む、ウイルスを提供する。
【0047】
好ましい実施形態では、ウイルス内に含まれる核酸は、二本鎖RNA転写物(dsRNA)の形態である。
一部の実施形態では、ウイルスゲノムは、本明細書に開示されるこれらの実施形態のいずれかにより、ORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YまたはORF-Zの少なくとも1つを含む核酸配列を含む。好ましい実施形態では、ウイルスゲノムの配列は、本明細書に開示されるこれらの実施形態のいずれかにより、少なくともORF-1およびORF-2を含む。一部の実施形態では、ウイルスゲノムは、配列番号6(CLuTV)によるウイルスゲノムの配列に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、またより好ましくは少なくとも95%、さらにまたより好ましくは98%、特に好ましくは99%、もしくはまた100%同一である核酸配列であるまたは前記核酸配列に対して相補的である核酸配列を含む。
【0048】
一部の実施形態では、ウイルスは、ORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YおよびORF-Zを含み、
ORF-1は、配列番号1の核酸配列に対して少なくとも80%同一であり、
ORF-2は、配列番号2の核酸配列に対して少なくとも80%同一であり、
ORF-Xは、配列番号3の核酸配列に対して少なくとも80%同一であり、
ORF-Yは、配列番号4の核酸配列に対して少なくとも80%同一であり、かつ
ORF-Zは、配列番号5の核酸配列に対して少なくとも80%同一であり、
ORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YおよびORF-Zは、それぞれ配列番号7~11、またはそれぞれ、配列番号7~11に対して少なくとも80%同一である配列を含むウイルスポリペプチドをコードする。
【0049】
一部の実施形態では、ウイルスのゲノムは、配列番号7~11またはそれに対して少なくとも80%同一な(例えば、配列番号7~11に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一な)配列を含む各アミノ酸配列を含むウイルスポリペプチドをコードする。好ましくは、ウイルスは、本明細書で定義されるORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YおよびORF-Zを含み、前記ORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YおよびORF-Zは、それぞれ、配列番号7~11に対して少なくとも95%同一であるウイルスポリペプチドをコードする。より好ましくは、ウイルスは、本明細書で定義されるORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YおよびORF-Zを含み、前記ORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YおよびORF-Zは、それぞれ配列番号7~11の保存的に置換されたバリアントであるウイルスポリペプチド、またはそれぞれ配列番号7~11のアミノ酸配列を含むウイルスポリペプチドをコードする。
ある特定の実施形態では、ウイルスのゲノムは、少なくとも配列番号7および8、または配列番号7および8の保存的に置換されたバリアントを含む、それに対して少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である配列をコードする。
【0050】
一部の実施形態では、本明細書に開示されるウイルスによるランプサッカーフィッシュの感染は、魚に以下の症状をもたらす:
(i)腸における組織損傷、および/もしくは
(ii)下痢、または
(iii)心筋症。
好ましい実施形態では、本明細書に開示されるウイルスによるランプサッカーフィッシュの感染は、心筋症をもたらす。
【0051】
腸における組織損傷は、腸組織の破壊、例えば絨毛構造の破壊、他の層の厚みの増加を観察するために、組織学または電子顕微鏡を使用して診断することができる。好ましくは、組織断片をヘマトキシリンエオシン(H&E)組織学的染色を使用して染色する。このような染色を用いる際に、感染した個体では、胃と腸の両方において体液および未消化の食物粒子の蓄積を有することが観察され(例えば、
図9~12を参照されたい)、これらの魚には下痢様状態がもたらされる。加えて、細胞排出物および粘液産物の増加を伴う腸壁への損傷を観察することができる(例えば、
図10~12を参照されたい)。魚の下痢は、養殖魚の水槽で観察することができる。
【0052】
生体高分子構成成分(一般的にはタンパク質、鉄親和性タンパク質、中性ムコ多糖、グリコーゲンおよび酸ムコ多糖)における変化も、従来法、例えばウエスタンブロッティング、ELISA、組織断片の染色などによって、腸組織試料において観察することができる。
【0053】
心筋症は、心筋(心室)の海綿状部分の重度の炎症および変性ならびに心房における同様の変化に関して、好ましくはヘマトキシリンエオシン(H&E)組織学的染色を再度使用して、組織病理学によって診断することができる。筋細胞の変性および炎症性の変化は、心臓の緻密層では高頻度では見られず、通常、海綿状部分の変化より後に生じる。肝臓の多巣性壊死による循環障害も起こり得る。CMSに罹患している魚は、異常な遊泳行動などの症状を示す場合がある。検死では、知見には、心膜内の血液による心タンポナーデおよび中程度から顕著な腹水が含まれる(Haugland et al, J. Virol, 85, 2011)。
一部の実施形態では、ウイルスは、非エンベロープウイルスである。エンベロープウイルスとは対照的に、非エンベロープウイルスは、化学的および物理的力に対するより高い耐性によって特徴付けられ、例えば、これらは熱耐性である。
好ましい実施形態では、ウイルスは、トティウイルスである。このようなウイルスは、非エンベロープウイルスであり、二十面体対称およびT=2構造を有する。直径は、典型的には、40nm程度である。
一部の実施形態では、本明細書に開示されるウイルスは、細胞内リボソーム侵入部位(IRES)として機能する5’非翻訳領域(5’UTR)を含む。
好ましい実施形態では、ORF-1およびORF-2は、キャプシドタンパク質(CP)およびRNA依存性RNA転写物ポリメラーゼ(RDRP)をコードする。
これらの実施形態のすべてに関して本明細書に開示されているように、少なくとも1つのORFをコードする核酸を含むベクターも本明細書において提供される。一部の実施形態では、ベクターは、本明細書に開示される完全なウイルスをコードする核酸を含む。ベクターを使用して、前記核酸を、細胞、例えば宿主細胞中に導入することができる。
本明細書に記載のウイルスを含む宿主細胞も本明細書において提供される。宿主細胞は、細菌細胞、魚の細胞または哺乳動物の細胞であってもよい。
【0054】
オリゴヌクレオチドプライマー
本発明の別の態様は、少なくとも9個のヌクレオチドの配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーであって、前記配列が、本明細書に開示されるウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列に対して相補的である、オリゴヌクレオチドプライマーを提供する。
【0055】
本発明の別の態様は、オリゴヌクレオチドプライマーであって、(a)少なくとも9個の連続するヌクレオチドの配列を含み、前記配列が本明細書に開示されるウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列に対して相補的であるか、(b)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6からなる群から選択される参照核酸配列の一部であるもしくは前記参照核酸配列の一部に対して相補的である配列の少なくとも9個の連続するヌクレオチドを含むか、または(c)配列番号12~配列番号40からなる群から選択される配列であるもしくは前記配列に対して相補的である配列、に対して少なくとも80%同一である配列の少なくとも9個の連続するヌクレオチドを含み、但し、好ましくは、前記オリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号41~配列番号49からなる群から選択される配列を含まない、オリゴヌクレオチドプライマーを提供する。
【0056】
一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマーは、9~60ヌクレオチド長である。好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマーは、12~40ヌクレオチド長である。より好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマーは、15~30ヌクレオチド長である。またより好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマーは、18~25ヌクレオチド長である。
【0057】
当業者は、核酸配列に対して相補的であるオリゴヌクレオチドプライマーが、ストリンジェントな条件下でその配列にハイブリダイズすることを容易に認識するであろう。「ストリンジェントな条件」は、核酸のハイブリダイゼーションが行われる温度、イオン強度、および有機溶媒などの他の化合物の存在の条件を指す。ストリンジェントな条件下で、核酸塩基の対合は、相補的塩基の頻度が高い核酸配列間でのみ起こることになる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、当業者に公知である(例えば、Green M. R., Sambrook, J., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press; 4th edition, 2012を参照されたい)。ストリンジェントなハイブリダイゼーションに関する正確な条件は、典型的には、当業者が容易に認識するように、配列依存的であり、状況が異なると異なることになる。より長い配列は、より短い配列と比較して、高温でハイブリダイズする。一般的に、ストリンジェントな条件は、特定の配列に対する熱融解点(Tm)より約5℃低いように選択される。Tmは、二重鎖分子の50%がそれらの構成成分である一本鎖へと解離した温度として定義される。標的配列は、一般的に過剰に存在するため、Tmにおいて、核酸プライマーの50%は、一般的に、平衡時には占有することになる。典型的には、ストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH6.8~8.3で約1.0M未満のナトリウムイオン、典型的には約0.01~1.0Mのナトリウムイオン(または他の塩)であり、温度が、短いプライマー(例えば、10ヌクレオチド~50ヌクレオチド)では少なくとも約30℃であり、より長いプライマーでは少なくとも約60℃である条件であろう。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドのような不安定化剤の添加により達成することもできる。配列の配列相補性によって当業者であれば容易に認識するため、したがって、本発明によるオリゴヌクレオチドプライマーは、本明細書に開示されるウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列にハイブリダイズする。
【0058】
本発明によるオリゴヌクレオチドプライマーは、標的配列へのハイブリダイゼーションの可視化または標的配列の増幅の定量を可能にするために、分子マーカーで標識されてもよい。種々な分子マーカーまたは標識は当業者に公知である。
特定の実施形態では、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5または配列番号6からなる群から選択される参照核酸配列の一部(例えば、9~60ヌクレオチド長、好ましくは12~40ヌクレオチド長、より好ましくは15~30ヌクレオチド長、またより好ましくは18~25ヌクレオチド長)であるまたは前記参照核酸配列の一部に対して相補的である配列、の少なくとも9個の連続するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドプライマーが本明細書において提供され、但し、好ましくは、前記オリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号41~配列番号49からなる群から選択される配列を含まないことを条件とする。特定の好ましい実施形態では、前記オリゴヌクレオチドプライマーの配列は、連続するヌクレオチドの前記配列からなる。
【0059】
別の特定の実施形態では、配列番号12~配列番号40からなる群から選択される配列であるまたは前記配列に対して相補的である配列、に対して少なくとも80%同一である配列の少なくとも9個(好ましくは少なくとも12個、より好ましくは少なくとも15個、またより好ましくは少なくとも18個)の連続するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドプライマーが本明細書において提供され、但し、好ましくは、前記オリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号41~配列番号49からなる群から選択される配列を含まないことを条件とする。
【0060】
本発明の別の態様は、本明細書に開示されるウイルスを検出する方法における少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーの使用であって、少なくとも1つのプライマーが、少なくとも9個のヌクレオチド、例えば9個の連続するヌクレオチド、(好ましくは、少なくとも12個、より好ましくは少なくとも15個、さらにより好ましくは少なくとも18個)の配列を含み、前記配列は、前記ウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列に対して相補的である、使用を提供する。
一部の実施形態では、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーはプライマー対、すなわち2つのプライマー、すなわち1つのフォワードプライマーおよび1つのリバースプライマーであり、これらは、核酸配列の2つ領域に対して相補的であり、前記2つの領域間の配列を増幅するために使用することができる。このことは当業者に周知であり、対を構成するのに好適なオリゴヌクレオチドプライマーを見つけることは当業者の技術の範囲内にある。本発明の使用によれば、「プライマー対」を使用して、本明細書に記載のウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列を増幅することができる。
一部の実施形態では、本使用は、本明細書に開示されるウイルスを検出する方法において、cDNA合成を用いる。例えば、ランダムオリゴヌクレオチドプライマー(例えば、ヘキサヌクレオチド)を使用して、前記ウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列からcDNAを合成する。
【0061】
一部の実施形態では、本使用は、本明細書に開示されるウイルスを検出する方法において、PCRを用いる。一部の実施形態では、本使用は、本明細書に開示されるウイルスを検出する方法において、RT-PCRを用いる。一部の実施形態では、本使用は、本明細書に開示されるウイルスを検出する方法において、RT-qPCRを用いる。一部の実施形態では、本使用は、本明細書に開示されるウイルスを検出する方法において、ランダムマルチプレックスRT-PCRを用い、本方法では、プライマー-ダイマー増幅が生じにくいように設計されたプライマーの混合物が使用される(Clem et al, Virol J, 4, 2007を参照されたい)。一部の実施形態では、本使用は、本明細書に開示されるウイルスを検出する方法において転写に媒介される増幅(TMA)を用いる。一部の実施形態では、本使用は、本明細書に開示されるウイルスを検出する方法において鎖置換増幅(SDA)を用いる。
【0062】
一部の実施形態では、本使用は、本明細書に開示されるウイルスを検出する方法においてin situハイブリダイゼーション(ISH)とも称されるin situ検出、例えばin situハイブリダイゼーションにおける蛍光(FISH)を用いる。ISHでは、標識された相補的DNA、RNAまたは改変されたオリゴヌクレオチドプライマー配列(プローブ)が使用され、形態学的に保存された細胞および組織の断片における特定の核酸の可視化を可能にする。プローブは、放射標識、蛍光標識または抗原標識(例えば、ジゴキシゲニン)で標識することができ、次いで、それぞれオートラジオグラフィー、蛍光顕微鏡、または免疫組織学を使用して、組織内で局在化および定量することができる。
【0063】
診断方法
本発明の別の態様は、魚に感染し、それを死滅させることが可能であるウイルスを検出するための方法であって、
(a)魚の生体試料から抽出した核酸を少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーと接触させて混合物を形成するステップであって、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーが、本明細書に開示されるウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列に対して相補的である、ステップと、
(b)a)の混合物を増幅に供した際に、増幅産物が存在するか否かを決定するステップであって、増幅産物の存在が、ウイルスに関連するRNAの存在、したがって、生体試料中のウイルスの存在を示す、ステップ
とを含む方法を提供する。
一部の実施形態では、本方法のステップ(a)における核酸、例えばRNAは、固相抽出、例えばシリカゲル膜の固相を使用するオンカラム精製(on-column purification)の使用によって、生体試料から抽出される。一部の実施形態では、本方法のステップ(a)における核酸、例えばRNAは、フェノール/クロロホルム抽出を使用して、生体試料から抽出される。
【0064】
本方法は、本明細書に開示される任意の適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用してもよい。一般的に、本方法のステップ(a)の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーは、45ヌクレオチド長~3000ヌクレオチド長を有するステップ(b)による増幅産物を生成するために選択される。しかし、より短いかまたはより長い増幅産物であっても、本明細書に開示される方法およびオリゴヌクレオチドプライマーによって好適に生成することができる。
【0065】
一部の実施形態では、本方法のステップ(a)の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーは、PCRまたはRT-PCRアッセイに関するステップ(b)による増幅産物を生成するために選択され、100ヌクレオチド長~2500ヌクレオチド長を有する。好ましい実施形態では、本方法のステップ(a)の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーは、PCRまたはRT-PCRアッセイに関するステップ(b)による増幅産物を生成するために選択され、200ヌクレオチド長~1500ヌクレオチド長を有する。より好ましい実施形態では、本方法のステップ(a)の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーは、PCRまたはRT-PCRアッセイに関するステップ(b)による増幅産物を生成するために選択され、300ヌクレオチド長~1000ヌクレオチド長を有する。
【0066】
一部の実施形態では、本方法のステップ(a)の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーは、リアルタイムRT-PCRアッセイに関するステップ(b)による増幅産物を生成するために選択され、45ヌクレオチド長~500ヌクレオチド長を有する。好ましい実施形態では、本方法のステップ(a)の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーは、リアルタイムRT-PCRアッセイに関するステップ(b)による増幅産物を生成するために選択され、50ヌクレオチド長~350ヌクレオチド長を有する。より好ましい実施形態では、本方法のステップ(a)の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーは、リアルタイムRT-PCRアッセイに関するステップ(b)による増幅産物を生成するために選択され、55ヌクレオチド長~250ヌクレオチド長を有する。
一部の実施形態では、本方法のステップ(b)の増幅は、PCRを用いる。一部の実施形態では、本方法のステップ(b)の増幅は、RT-PCRを用いる。一部の実施形態では、本方法のステップ(b)の増幅は、RT-qPCRを用いる。
【0067】
一部の実施形態では、本方法のステップ(b)の増幅産物は、サザンブロットによって決定される。一部の実施形態では、本方法のステップ(b)の増幅産物は、ノーザンブロットによって決定される。一部の実施形態では、本方法のステップ(b)の増幅産物は、分光光度法によって決定される。一部の実施形態では、本方法のステップ(b)の増幅産物は、DNA染料の使用によって決定される。一部の実施形態では、本方法のステップ(b)の増幅産物は、標識されたオリゴヌクレオチドプライマーの存在を定量することによって、例えば、蛍光標識されたオリゴヌクレオチドプライマーの存在を定量することによって、決定される。
【0068】
本発明の別の態様は、魚に感染し、それを死滅させることが可能であるウイルスを検出するための方法であって、
(a)魚の生体試料から抽出した核酸をシーケンシングするステップと、
(b)得られた核酸配列を、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6からなる群から選択される参照配列であるまたは前記参照配列に対して相補的である核酸配列と比較するステップであって、2つの配列間の少なくとも80%の配列同一性が、生体試料中のウイルスの存在を示す、ステップ
とを含む方法を提供する。
一部の実施形態では、本方法のステップ(a)における核酸、例えばRNAは、固相抽出、例えばシリカゲル膜の固相を使用するオンカラム精製を使用することによって、生体試料から抽出される。一部の実施形態では、本方法のステップ(a)における核酸、例えばRNAは、フェノール/クロロホルム抽出を使用して、生体試料から抽出される。
一部の実施形態では、本方法のステップ(a)におけるシーケンシングは、サンガーシーケンシング(連鎖終止反応法)によって実施される。好ましい実施形態では、本方法のステップ(a)におけるシーケンシングは、次世代シーケンシング(NGS)、好ましくはイルミナ(Solexa)シーケンシング、Roche 454シーケンシング、Ion TorrentまたはSOLiDシーケンシング(Goodwin S, et al., (2016) Coming of age: Ten years of next-generation sequencing technologies. Nature reviews, Genetics, 17, 333-351)によって実施される。
【0069】
好ましい実施形態では、本発明のステップ(a)におけるシーケンシングは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6からなる群から選択される参照DNA配列と直接比較することができるDNA配列を提供する。
一部の実施形態では、本方法のステップ(b)における2つの配列間の少なくとも85%の配列同一性は、生体試料中のウイルスの存在を示す。
好ましい実施形態では、本方法のステップ(b)における2つの配列間の少なくとも90%の配列同一性は、生体試料中のウイルスの存在を示す。
より好ましい実施形態では、本方法のステップ(b)における2つの配列間の少なくとも95%の配列同一性は、生体試料中のウイルスの存在を示す。
さらにより好ましい実施形態では、本方法のステップ(b)における2つの配列間の少なくとも98%の配列同一性は、生体試料中のウイルスの存在を示す。
さらにまたより好ましい実施形態では、本方法のステップ(b)における2つの配列間の少なくとも99%の配列同一性は、生体試料中のウイルスの存在を示す。
特に好ましい実施形態では、本方法のステップ(b)における2つの配列間の100%の配列同一性は、生体試料中のウイルスの存在を示す。
【0070】
本発明の別の態様は、魚に感染し、それを死滅させることが可能であるウイルスを検出するための方法であって、
(a)魚の生体試料から抽出した核酸をシーケンシングするステップと、
(b)得られた核酸配列をアミノ酸配列へと翻訳するかまたは前記得られた核酸配列に対して相補的な核酸配列をアミノ酸配列へと翻訳するステップと、
(c)得られたアミノ酸配列を、配列番号7~11からなる群から選択される参照配列と比較するステップであって、2つの配列間の少なくとも80%の配列同一性が、生体試料中のウイルスの存在を示す、ステップ
とを含む方法を提供する。
【0071】
抗体
本発明の別の態様は、ポリペプチドに結合する抗体であって、ポリペプチドが、本明細書に開示されるウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列によってコードされる、および/あるいはポリペプチドが、配列番号7~11のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%同一であるか、または配列番号7~11のいずれか1つもしくは保存的に置換されたそのバリアントであるアミノ酸配列を含む、抗体を提供する。
【0072】
一部の実施形態では、ポリペプチドは、以下からなる群から選択される:
(i)配列番号7に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにまたより好ましくは少なくとも98%、特に好ましくは少なくとも99%、またはまた100%同一であるか、または配列番号7であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(ii)配列番号8に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにまたより好ましくは少なくとも98%、特に好ましくは少なくとも99%、またはまた100%同一であるか、または配列番号8であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(iii)配列番号9に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにまたより好ましくは少なくとも98%、特に好ましくは少なくとも99%、またはまた100%同一であるか、または配列番号9であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(iv)配列番号10に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにまたより好ましくは少なくとも98%、特に好ましくは少なくとも99%、またはまた100%同一であるか、または配列番号10であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、および
(v)配列番号11に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにまたより好ましくは少なくとも98%、特に好ましくは少なくとも99%、またはまた100%同一であるか、または配列番号11であるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
一部の実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0073】
本明細書に開示される抗体は、未変性のタンパク質が、通常の転写後修飾によりin vivoで発現される遺伝子免疫方法によって調製することができ、抗原の単離または合成を回避することができる。例えば、ネイキッドプラスミドDNA発現ベクターの流体力学による尾静脈または肢静脈送達を使用して、マウス、ラット、およびウサギにおいて、in vivoで目的の抗原を生成し、それによって、抗原特異的抗体を誘導することができる(Tang et al, Nature 356(6365): 152-4 (1992);Tighe et al, Immunol. Today 19(2) 89-97 (1998);Bates et al, Biotechniques, 40(2) 199-208 (2006))。これにより、高力価抗原特異的抗体の効率的な生成が可能になる。抗体は、in vitro方法によっても送達され得る。好適な例としては、以下に限定されないが、ハイブリドーマ技術、ファージディスプレイ、イーストディスプレイなどが挙げられる。
【0074】
キット
本発明の別の態様は、魚からの生体試料においてウイルスを検出するためのキットであって、本明細書に開示されるオリゴヌクレオチドプライマーおよび/または本明細書に開示される抗体を含むキットを提供する。
【0075】
一部の実施形態では、キットは、リアルタイムRT-PCRアッセイであり、例えば、キットは、リアルタイムRT-qPCRアッセイである。
一部の実施形態では、キットは、魚からの生体試料においてトティウイルスを検出するためのものである。好ましい実施形態では、キットは、ランプサッカーフィッシュからの生体試料においてトティウイルスを検出するためのものである。
【0076】
医学的使用およびワクチン
本発明の別の態様は、トティウイルスによって引き起こされる疾患に対して、魚、特にランプサッカーフィッシュの処置に使用するための抗体を提供する。好ましい実施形態では、抗体は、本明細書に開示されるウイルス(CLuTV)によって引き起こされる疾患に対して、魚、特にランプサッカーフィッシュの処置に使用するためのものである。抗体は、本明細書に開示されるウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列によってコードされるポリペプチドに結合する。
好ましい実施形態では、魚は、ランプサッカーフィッシュである。
一部の実施形態では、魚は、以下の症状を示す:
(i)腸における組織損傷、および/もしくは
(ii)下痢、または
(iii)心筋症。
症状は、上記のように決定することができる。好ましい実施形態では、魚は、心筋症の症状を示す。
【0077】
本発明の別の態様は、前記ウイルスによって引き起こされる疾患に対するワクチンを生産するための本明細書に開示されるウイルスの使用を提供する。
本発明の別の態様は、
(i)本明細書に開示されるウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列、
(ii)本明細書に開示される核酸配列、
(iii)本明細書に開示されるウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列によってコードされるウイルスポリペプチド、
(iv)配列番号7~11のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%同一であるまたは配列番号7~11のいずれか1つであるかもしくは保存的に置換されたそのバリアントであるアミノ酸配列を含むウイルスポリペプチド、あるいは
(v)本明細書に開示されるウイルス
を含むワクチンを提供する。
【0078】
ある特定の実施形態では、ワクチンは、いくつかのウイルスポリペプチド、例えば、配列番号7に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドおよび配列番号8に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドを含有する。ワクチンは、1、2、3、4、または5種のウイルスポリペプチドを含有することができる。
【0079】
ワクチンは、トティウイルス感染によって引き起こされる疾患に対して、魚、特にランプサッカーフィッシュを保護するためのものである。好ましい実施形態では、ワクチンは、本明細書に開示されるウイルス(CLuTV)による感染によって引き起こされる疾患に対して、魚、特にランプサッカーフィッシュを保護するためのものである。
ワクチンが本明細書に開示されるウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列を含む一部の実施形態では、前記核酸配列は、本明細書に開示されるこれらの実施形態のいずれかに従って、ORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YまたはORF-Zの少なくとも1つを含む。ワクチンが本明細書に開示されるウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列を含む好ましい実施形態では、前記核酸配列は、本明細書に開示されるこれらの実施形態のいずれかに従って、少なくともORF-1およびORF-2を含む。ワクチンが本明細書に開示されるウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列を含む一部の実施形態では、前記核酸配列は、配列番号6(CLuTV)によるウイルスゲノムの配列に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、またより好ましくは少なくとも98%、特に好ましくは少なくとも99%、もしくはまた100%同一である核酸配列であるまたは前記核酸配列に対して相補的である。
核酸は、DNAであってもRNAであってもよい。
【0080】
ワクチンが本明細書に開示されるウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列によってコードされるウイルスポリペプチドを含む一部の実施形態では、前記ポリペプチドは、以下からなる群から選択される:
(i)配列番号7に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにまたより好ましくは少なくとも98%、特に好ましくは少なくとも99%、またはまた100%同一であるか、または配列番号7であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(ii)配列番号8に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにまたより好ましくは少なくとも98%、特に好ましくは少なくとも99%、またはまた100%同一であるか、または配列番号8であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(iii)配列番号9に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにまたより好ましくは少なくとも98%、特に好ましくは少なくとも99%、またはまた100%同一であるか、または配列番号9であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(iv)配列番号10に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにまたより好ましくは少なくとも98%、特に好ましくは少なくとも99%、またはまた100%同一であるか、または配列番号10であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、および
(v)配列番号11に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにまたより好ましくは少なくとも98%、特に好ましくは少なくとも99%、またはまた100%同一であるか、または配列番号11であるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0081】
ワクチンが本明細書に開示されるウイルスを含む一部の実施形態では、前記ウイルスのゲノムは、本明細書に開示されるこれらの実施形態のいずれかに従って、ORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YまたはORF-Zの少なくとも1つを含むRNA核酸配列である核酸配列を含む。ワクチンが本明細書に開示されるウイルスを含む一部の実施形態では、前記ウイルスのゲノムは、配列番号6(CLuTV)によるウイルスゲノムの配列に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにまたより好ましくは少なくとも98%、特に好ましくは99%、もしくはまた100%同一である核酸配列であるまたは前記核酸配列に対して相補的であるRNA核酸配列である核酸配列を含む。
【0082】
一部の実施形態では、ワクチンは、0.05~1.0mg/ml、例えば0.1~0.5mg/ml、0.15~0.4mg/ml、または0.2~0.3mg/mlの範囲内にある抗原の量を含む。ワクチンは、1個体当たり0.005~0.5mg、好ましくは1個体当たり0.01~0.05mg、より好ましくは1個体当たり0.01~0.02mgの投薬量で投与するためのものであってもよい。
一部の実施形態では、ワクチンは、投薬量当たり105~1010のTCID50、好ましくは投薬量当たり106~109のTCID50に相当する抗原の量を含む。
【0083】
ワクチンは、ウイルスの懸濁液の形態であってもよく、またはワクチンは、凍結乾燥されていてもよい。凍結乾燥されたワクチンでは、1種または複数の安定剤を添加することが有用であり得る。好適な安定剤は、例えば、ソルビトール、マンニトール、デンプン、スクロース、デキストランなどの炭水化物、ウシ血清またはスキムミルクなどの薬剤を含有するタンパク質、およびアルカリ金属リン酸塩などの緩衝剤である。
【0084】
本発明によるワクチンは、さらに、アジュバントを含む製剤中に存在してもよい。魚および甲殻類の養殖において使用されることの多いアジュバントの例は、ムラミルジペプチド、リポ多糖、いくつかのグルカンおよびグリカン、鉱油、Montanide(商標)およびCarbopol(登録商標)である。魚のワクチンに好適なアジュバントの概要は、Sommersetのレビュー論文(Expert Rev. Vaccines 4(1), 89-101 (2005))に与えられる。
本発明のワクチンは、好適な医薬担体をさらに含んでもよい。一部の実施形態では、ワクチンは、油中水型のエマルションとして製剤化される。ワクチンは、いわゆる「ビヒクル」を含んでもよい。ビヒクルは、それに共有結合することなく、抗原が接着するデバイスである。このようなビヒクルは、とりわけ、いずれも当技術分野で公知のPLGA(ポリラクチド-co-グリコール酸)、アルギン酸またはキトサン、リポソーム、ニオソーム、ミセル、複数のエマルションおよびマクロソル(macrosol)の生分解性ナノ/マイクロ粒子またはカプセルである。抗原がビヒクル内に部分的に埋め込まれる、このようなビヒクルの特定の形態は、いわゆるISCOMである。
【0085】
加えて、ワクチンは、1種または複数の好適な表面活性化合物または乳化剤、例えばCremophore(登録商標)、Tween(登録商標)およびSpan(登録商標)を含んでもよい。また、インターロイキン、CpGおよび糖タンパク質などのアジュバントを使用してもよい。
一部の実施形態では、ワクチンは、魚餌中に提供され、前記餌は、例えばペレット化または押出された餌であってもよい。
【0086】
本発明の別の態様は、トティウイルス感染によって引き起こされる疾患に対して、魚、特にランプサッカーフィッシュの処置に使用するための干渉RNA(iRNA)分子を提供する。好ましい実施形態では、iRNAは、本明細書に開示されるウイルス(CLuTV)によって引き起こされる疾患に対して、魚、特にランプサッカーフィッシュの処置に使用するためのものである。特定の実施形態では、iRNA分子は、本明細書に開示されるウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列の、または前記核酸配列に対して相補的な、少なくとも12個の(好ましくは、連続した)ヌクレオチドを含む。
好ましい実施形態では、魚は、ランプサッカーフィッシュである。
【0087】
一部の実施形態では、魚は、以下の症状を示す:
(i)腸における組織損傷、および/もしくは
(ii)下痢、または
(iii)心筋症。
症状は、上記のように決定することができる。好ましい実施形態では、魚は、心筋症の症状を示す。
一部の実施形態では、iRNA分子は、本明細書に開示されるこれらの実施形態のいずれかに従って、ORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YまたはORF-Zを含む核酸配列の、または前記核酸配列に相補的な、少なくとも12個の(好ましくは連続した)ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、iRNA分子は、配列番号6(CLuTV)によるウイルスゲノムの配列に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにまたより好ましくは98%、特に好ましくは99%、もしくはまた100%同一である核酸配列であるか、または前記核酸配列に対して相補的である、少なくとも12個の(好ましくは連続した)ヌクレオチドを含む。
【0088】
配列
本開示において言及される配列は、以下の通りである(図面および配列表も参照されたい):
【表1】
【0089】
本明細書において言及される他の好適なオリゴヌクレオチドプライマーは、表2に与えられる:
【表2】
【0090】
本明細書において言及されるさらなるオリゴヌクレオチドプライマーは、表3に与えられる:
【表3】
【実施例】
【0091】
以下の実施例は、本発明を例証する。これらは、本発明の理解を助けることを意図し、本発明の範囲を限定するものと決して解釈されるべきではない。
【0092】
(実施例1)
CLuTVの同定
高い致死率(60~80%)を経験しているランプサッカー(キクロプテルス・ルンプス)の養殖現場から、魚の試料を得た。標準的なリアルタイムRT-PCRおよび組織学を使用して、試料を分析した。リアルタイムRT-PCRを使用して、公知の病原体は同定されなかった。組織学的分析は、罹患した個体の腸における組織損傷の兆候を示したが、潜在的に病原性の細菌および寄生微生物は観察することができなかった。
フェノール/クロロホルム抽出プロトコール(Qiagen RNeasy
(登録商標) 96 Universal Tissue Kit)において、瀕死状態の魚から全RNAを抽出し、このRNAを次世代シーケンシング(NGS)分析における鋳型として使用した。BaseClear社(https://www.baseclear.com/)によってNGS分析を実施し、およそ9800万個のシーケンスリードを得たが、ここで、大多数は宿主のトランスクリプトームに由来した。NGS分析からアセンブルされたリードのおよそ28,600個は、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のGenBankにおいて有意なヌクレオチドマッチを有さないことが判明した。本発明者らは、これらのリードから、本明細書においてキクロプテルス・ルンプストティウイルスまたはCLuTVと称される新規ウイルス配列を同定し、特徴付けた。NGS分析から得たDNA配列を
図2~5に与える(配列番号1~6も参照されたい)。しかし、対応するRNA配列が、ウイルスCLuTV中に存在することが認識されるであろう。
CLuTVの配列は、6,353ヌクレオチド長であることが本明細書において特定され、これは、5つの可能なオープンリーディングフレーム(ORF)を含有する。
図1に概略図を示す。CLuTVと他の公知のウイルスの間の関係は、翻訳されたアミノ酸配列の比較によってのみ決定することができた。下流配列の分析と共に、ゲノムの長さおよび構成は、CLuTVが、その最も近い近縁としてタイセイヨウサケウイルスであるPMCVを有する、トティウイルス科の新規ウイルスであることを示す。
予備的な結果は、少なくともノルウェーにおいて、CLuTVが養殖されたランプサッカー中に有意に存在することを示す。
ランプサッカー中のCLuTVに関連する病理を
図9~12に示す。ランプサッカーの断面をヘマトキシリンエオシン(H&E)組織学的染色を使用して染色した。
図9は、罹患したランプサッカーの断面全体であり、胃内の体液の蓄積(矢印)を示す。
図10は、粘液、および細胞排出物(矢印)の蓄積を示す、ランプサッカーの腸の断面である。
図11は、粘液(矢印)、および細胞排出物の蓄積を示すランプサッカーの腸の断面である。
図12は、粘液(矢印)の蓄積を示すランプサッカーの腸の断面である。
【0093】
(実施例2)
CLuTVのヌクレオチド配列の分析
NGS分析からのCLuTVのヌクレオチド配列を、瀕死状態の魚から抽出した全RNAに由来するRT-PCR産物の従来のサンガーシーケンシングによって確認した。
CLuTV配列を使用する標準的なヌクレオチドBLAST検索を実施した際に、NCBI GeneBankにおいてマッチは見られなかった。検索のパラメーターを検索においてより類似しない配列を含むように変更した場合、他の公知のウイルスからのいくつかの配列領域が同定された。これらのCLuTV領域と他の公知のウイルスからの領域の間のヌクレオチド配列同一性(「Seq.Id.」)のパーセンテージを表2に示す。
【0094】
【表4】
CLuTVと比較して最も近いPMCVは、そのゲノム内に3つのORFを含有する。PMCVからのORF3は、CLuTV中のORFX-Yと同じ領域中に存在する。
【0095】
(実施例3)
CLuTVのアミノ酸配列の分析
CLuTVのORFの翻訳によって全部で5つの潜在的タンパク質が得られる。CLuTV ORFと他のウイルスに由来する他の公知のタンパク質の間のアミノ酸同一性を表3に示す。各ORFに対するベストマッチのみを提供する。
【0096】
【0097】
(実施例4)
養殖したランプフィッシュ集団におけるCLuTVの存在の評価
それぞれ、配列番号12~14、15~17および18~20によるプライマーを使用して、3つの別々のリアルタイムRT-PCRアッセイ(CLP01、CLP02およびCLP03)を設計した。CLP01はORF-1を標的とし、CLP02はORF-2を標的とし、CLP03はPRF-Yを標的とした。これらのアッセイの3つすべてを使用して、元の魚の試料材料がCLuTVに対して陽性であることを確認した。
より広範な調査として、既存の養殖されたランプフィッシュ集団におけるCLuTVの存在を評価するために、アッセイCLP01を選択した。ノルウェーの様々なランプフィッシュ集団のスクリーニングからの結果を表4に示す。
【0098】
【0099】
表に示すように、ある特定のランプフィッシュ集団、特にフィンマルクおよびルーガラン県からの集団は、90%を超えるCLuTVの有病率を有する。
本明細書において提供される開示を考慮して、本発明は、以下の項目も包含することが認識されるであろう:
【0100】
1.核酸であって、前記核酸の配列が、
(a)ORF-1、ORF-2、ORF-X、ORF-YおよびORF-Zからなる群から選択される少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)配列、または
(b)それに対して相補的な配列を含み、
ORF-1が、配列番号1の核酸配列に対して少なくとも80%同一であり、
ORF-2が、配列番号2の核酸配列に対して少なくとも80%同一であり、
ORF-Xが、配列番号3の核酸配列に対して少なくとも80%同一であり、
ORF-Yが、配列番号4の核酸配列に対して少なくとも80%同一であり、かつ
ORF-Zが、配列番号5の核酸配列に対して少なくとも80%同一である、核酸。
2.
ORF-1が、配列番号1の核酸配列に対して少なくとも85%同一であり、
ORF-2が、配列番号2の核酸配列に対して少なくとも85%同一であり、
ORF-Xが、配列番号3の核酸配列に対して少なくとも85%同一であり、
ORF-Yが、配列番号4の核酸配列に対して少なくとも85%同一であり、かつ
ORF-Zが、配列番号5の核酸配列に対して少なくとも85%同一である、項目1に記載の核酸。
3.
ORF-1が、配列番号1の核酸配列に対して少なくとも90%同一であり、
ORF-2が、配列番号2の核酸配列に対して少なくとも90%同一であり、
ORF-Xが、配列番号3の核酸配列に対して少なくとも90%同一であり、
ORF-Yが、配列番号4の核酸配列に対して少なくとも90%同一であり、かつ
ORF-Zが、配列番号5の核酸配列に対して少なくとも90%同一である、項目1または2に記載の核酸。
4.
ORF-1が、配列番号1の核酸配列に対して少なくとも95%同一であり、
ORF-2が、配列番号2の核酸配列に対して少なくとも95%同一であり、
ORF-Xが、配列番号3の核酸配列に対して少なくとも95%同一であり、
ORF-Yが、配列番号4の核酸配列に対して少なくとも95%同一であり、かつ
ORF-Zが、配列番号5の核酸配列に対して少なくとも95%同一である、項目1~3のいずれか1つに記載の核酸。
5.
ORF-1が、配列番号1の核酸配列に対して少なくとも98%同一であり、
ORF-2が、配列番号2の核酸配列に対して少なくとも98%同一であり、
ORF-Xが、配列番号3の核酸配列に対して少なくとも98%同一であり、
ORF-Yが、配列番号4の核酸配列に対して少なくとも98%同一であり、かつ
ORF-Zが、配列番号5の核酸配列に対して少なくとも98%同一である、項目1~4のいずれか1つに記載の核酸。
【0101】
6.
ORF-1が、配列番号1の核酸配列に対して少なくとも99%同一であり、
ORF-2が、配列番号2の核酸配列に対して少なくとも99%同一であり、
ORF-Xが、配列番号3の核酸配列に対して少なくとも99%同一であり、
ORF-Yが、配列番号4の核酸配列に対して少なくとも99%同一であり、かつ
ORF-Zが、配列番号5の核酸配列に対して少なくとも99%同一である、項目1~5のいずれか1つに記載の核酸。
7.
ORF-1が、配列番号1の核酸配列に対して100%同一であり、
ORF-2が、配列番号2の核酸配列に対して100%同一であり、
ORF-Xが、配列番号3の核酸配列に対して100%同一であり、
ORF-Yが、配列番号4の核酸配列に対して100%同一であり、かつ
ORF-Zが、配列番号5の核酸配列に対して100%同一である、項目1~6のいずれか1つに記載の核酸。
8.核酸であって、前記核酸の配列が、配列番号6内に存在する対応する配列に対して少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、さらにより好ましくは少なくとも95%同一、さらにより好ましくは少なくとも98%同一、さらにまたより好ましくは少なくとも99%同一、および特に好ましくは100%同一である、核酸。
9.核酸であって、前記核酸の配列が、配列番号6に対して相補的である配列内に存在する対応する配列に対して少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、さらにより好ましくは少なくとも95%同一、さらにより好ましくは少なくとも98%同一、さらにまたより好ましくは少なくとも99%同一、および特に好ましくは100%同一である、核酸。
【0102】
10.前記核酸の配列が、200個以下のヌクレオチドを含む、項目8または9に記載の核酸。
11.前記核酸の配列が、少なくとも60個のヌクレオチドを含む、項目8~10のいずれか1つに記載の核酸。
12.前記核酸の配列が、少なくとも100個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも150個のヌクレオチドを含む、項目11に記載の核酸。
13.前記核酸の配列が、少なくとも200個のヌクレオチドを含む、項目8または9に記載の核酸。
14.(a)ハイブリダイゼーションプローブとしての、
(b)魚、特にランプフィッシュの生体試料中の本明細書に開示されるウイルスを検出するための、
(c)魚、特にランプフィッシュに感染し、それを死滅させることが可能であるウイルスを検出するための方法における、
(d)本明細書に開示される対応する方法のいずれかに従って、魚、特にランプフィッシュに感染し、それを死滅させることが可能であるウイルスを検出するための方法における、
(e)トティウイルス感染によって引き起こされる疾患に対して、魚、特にランプサッカーフィッシュを保護するためのワクチンを調製するための、または
(f)以下の項目18~25のウイルスなどの、本明細書に開示されるウイルスによって引き起こされる疾患に対して、魚、特にランプサッカーフィッシュを保護するためのワクチンを調製するための、
項目1~13のいずれか1つに記載の核酸の使用。
【0103】
15.前記核酸の配列が、項目1~7のいずれかにおいて定義される、少なくともORF-1およびORF-2、またはそれに対して相補的である配列を含む、項目1に記載の核酸。
16.前記核酸の配列が、配列番号6によるウイルスゲノムに対して少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、さらにより好ましくは少なくとも95%同一、さらにより好ましくは少なくとも98%同一、さらにまたより好ましくは少なくとも99%同一、および特に好ましくは100%同一である、項目1に記載の核酸。
17.前記核酸の配列が、配列番号6に対して相補的である配列に対して少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、さらにより好ましくは少なくとも95%同一、さらにより好ましくは少なくとも98%同一、さらにまたより好ましくは少なくとも99%同一、および特に好ましくは100%同一である、項目1に記載の核酸。
18.ウイルス、特にランプサッカーフィッシュ(キクロプテルス・ルンプスなど)に感染し、それを死滅させることが可能であるウイルスであって、ウイルスゲノムが、項目1~13および15~17のいずれか1つの項目に記載の核酸の核酸配列を含み、ウイルスゲノム内に含まれる前記核酸配列が、塩基チミン(T)の代わりに塩基ウラシル(U)を含有する、ウイルス。
19.ウイルスによるランプサッカーフィッシュの感染が、魚において以下の症状:
(i)腸における組織損傷、および/もしくは
(ii)下痢、または
(iii)心筋症
を引き起こす、項目18に記載のウイルス。
【0104】
20.ORF1、2、X、Y、およびZのうちの1つまたは複数、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上、より好ましくは4つ以上、さらにより好ましくは5つを含むウイルスであって、前記ORF1、2、X、Y、Zが、それぞれ配列番号7~11のウイルスポリペプチド、またはそれぞれ、配列番号7~11に対して少なくとも80%同一であるウイルスポリペプチドをコードする、ウイルス。
21.前記ORF1、2、X、Y、およびZが、それぞれ、配列番号7~11のウイルスポリペプチド、またはそれぞれ、配列番号7~11に対して少なくとも90%同一であるウイルスポリペプチドをコードする、項目20に記載のウイルス。
22.前記ORF1、2、X、Y、およびZが、それぞれ、配列番号7~11のウイルスポリペプチド、またはそれぞれ、配列番号7~11に対して少なくとも95%同一であるウイルスポリペプチドをコードする、項目20に記載のウイルス。
23.前記ORF1、2、X、Y、およびZが、それぞれ配列番号7~11の保存的に置換されたバリアントであるウイルスポリペプチドをコードする、項目20~22のいずれか1つに記載のウイルス。
24.ウイルスが、非エンベロープウイルスである、項目18~23のいずれか1つに記載のウイルス。
【0105】
25.ウイルスが、トティウイルスである、項目18~24のいずれか1つに記載のウイルス。
26.少なくとも9個の連続するヌクレオチド、好ましくは少なくとも12個の連続するヌクレオチド、より好ましくは少なくとも15個の連続するヌクレオチド、および特に好ましくは少なくとも18個の連続するヌクレオチドの配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーであって、前記配列が、項目18~25のいずれか1つに記載のウイルスのゲノム内に含まれ、但し、好ましくは、前記プライマーが配列番号41~49を含まないことを条件とする、オリゴヌクレオチドプライマー。
27.少なくとも9個の連続するヌクレオチド、好ましくは少なくとも12個の連続するヌクレオチド、より好ましくは少なくとも15個の連続するヌクレオチド、および特に好ましくは少なくとも18個の連続するヌクレオチドの配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーであって、前記配列が、項目18~25のいずれか1つに記載のウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列に対して相補的であり、但し、好ましくは、前記プライマーが配列番号41~49を含まないことを条件とする、オリゴヌクレオチドプライマー。
28.少なくとも9個の連続するヌクレオチド、好ましくは少なくとも12個の連続するヌクレオチド、より好ましくは少なくとも15個の連続するヌクレオチド、および特に好ましくは少なくとも18個の連続するヌクレオチドの配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーであって、前記配列が、配列番号6内に含まれる配列に対して少なくとも80%同一であり、但し、好ましくは、前記プライマーが配列番号41~49を含まないことを条件とする、オリゴヌクレオチドプライマー。
29.少なくとも9個の連続するヌクレオチド、好ましくは少なくとも12個の連続するヌクレオチド、より好ましくは少なくとも15個の連続するヌクレオチド、および特に好ましくは少なくとも18個の連続するヌクレオチドの配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーであって、前記配列が、配列番号6に対して相補的な配列内に含まれる配列に対して少なくとも80%同一であり、但し、好ましくは、前記プライマーが配列番号41~49を含まないことを条件とする、オリゴヌクレオチドプライマー。
【0106】
30.前記配列同一性のパーセンテージが、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、さらにまたより好ましくは少なくとも99%、および特に好ましくは100%である、項目28または29に記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
31.前記オリゴヌクレオチドプライマーが、9~60ヌクレオチド長、好ましくは12~40ヌクレオチド長、より好ましくは15~30ヌクレオチド長、特に好ましくは18~25ヌクレオチド長である、項目22~26のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
32.その中に含まれる前記配列が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5または配列番号6からなる群から選択される参照核酸配列の一部を表すか、または前記参照核酸配列の一部に対して相補的である、項目22~24のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
33.配列番号12~配列番号40からなる群から選択される配列であるまたはそれに対して相補的である配列、に対して少なくとも80%同一である配列の少なくとも9個の連続するヌクレオチド、好ましくは少なくとも12個の連続するヌクレオチド、より好ましくは少なくとも15個の連続するヌクレオチド、および特に好ましくは少なくとも18個の連続するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドプライマーであり、但し、好ましくは、配列番号41~49を含まないことを条件とする、オリゴヌクレオチドプライマー。
34.項目18~25のいずれか1つに記載のウイルスを検出する方法における少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーの使用であって、少なくとも1のプライマーが、少なくとも9個の連続するヌクレオチド、好ましくは少なくとも12個の連続するヌクレオチド、より好ましくは少なくとも15個の連続するヌクレオチド、および特に好ましくは少なくとも18個の連続するヌクレオチドの配列を含み、前記配列が、前記ウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列に対して相補的であり、但し、好ましくは、前記プライマーが、配列番号41~49を含まないことを条件とする、使用。
【0107】
35.魚のウイルスを検出する方法における、項目1~13もしくは15~17のいずれか1つに記載の少なくとも1つの核酸または項目26~34のいずれか1つに記載の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーの使用であって、任意に、ウイルスが、ランプサッカーフィッシュに感染し、それを死滅させることが可能である、使用。
36.前記核酸、または前記オリゴヌクレオチドプライマーが、項目18~25のいずれか1つに記載のウイルスを検出する方法において使用される、項目35に記載の使用。
37.魚、特にランプサッカーフィッシュに感染し、それを死滅させることが可能であるウイルスを検出するための方法であって、
(a)魚の生体試料から抽出した核酸を、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーと接触させて混合物を形成するステップであって、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーが、項目18~25のいずれか1つに記載のウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列に対して相補的である、ステップと、
(b)a)の混合物を増幅に供した際に、増幅産物が存在するか否かを決定するステップであって、増幅産物の存在が、ウイルスに関連するRNAの存在、したがって、生体試料中のウイルスの存在を示す、ステップ
とを含む方法。
38.オリゴヌクレオチドプライマーが、項目26~34のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチドプライマーである、項目37に記載の方法。
39.方法のステップ(a)における核酸、例えばRNAが、固相抽出、例えばシリカゲル膜の固相を使用するオンカラム精製によって生体試料から抽出される、項目37または38に記載の方法。
【0108】
40.方法のステップ(a)における核酸、例えばRNAが、フェノール/クロロホルム抽出を使用することによって、生体試料から抽出される、項目37~38のいずれか1つに記載の方法。
41.魚、特にランプサッカーフィッシュに感染し、それを死滅させることが可能であるウイルスを検出するための方法であって、
(a)魚の生体試料から抽出した核酸をシーケンシングするステップと、
(b)得られた核酸配列を、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6からなる群から選択される参照配列であるまたは前記参照配列に対して相補的である核酸配列と比較するステップであって、2つの配列間の少なくとも80%の配列同一性が、生体試料中のウイルスの存在を示す、ステップ
とを含む方法。
42.2つの配列間の配列同一性のパーセンテージが、生体試料中のウイルスの存在が、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、さらにまたより好ましくは少なくとも99%、および特に好ましくは100%であることを示す、項目41に記載の方法。
43.配列番号7~11のいずれか1つに対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むウイルスポリペプチド。
44.配列番号7~11のいずれか1つに対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目43に記載のウイルスポリペプチド。
【0109】
45.配列番号7~11のいずれか1つに対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、項目43または44に記載のウイルスポリペプチド。
46.配列番号7~11のいずれか1つを含むアミノ酸配列またはその保存的に置換されたバリアントを含む、項目43~45のいずれか1つに記載のウイルスポリペプチド。
47.配列番号7~11を含むアミノ酸配列を含む、項目43~45のいずれか1つに記載のウイルスポリペプチド。
48.ポリペプチドに結合する抗体であって、ポリペプチドが、項目18~25のいずれか1つに記載のウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列によってコードされるか、または項目1~13および15~17のいずれか1つに記載の核酸によってコードされるウイルスポリペプチドである、抗体。
49.
(i)配列番号7に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにまたより好ましくは少なくとも98%、特に好ましくは少なくとも99%、またはまた100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(ii)配列番号8に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにまたより好ましくは少なくとも98%、特に好ましくは少なくとも99%、またはまた100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(iii)配列番号9に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにまたより好ましくは少なくとも98%、特に好ましくは少なくとも99%、またはまた100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(iv)配列番号10に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにまたより好ましくは少なくとも98%、特に好ましくは少なくとも99%、またはまた100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、および
(v)配列番号11に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにまたより好ましくは少なくとも98%、特に好ましくは少なくとも99%、またはまた100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチドに結合する抗体。
【0110】
50.魚からの生体試料においてウイルスを検出するためのキットであって、項目1~13または15~17のいずれか1つに記載の核酸、項目26~34のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチドプライマーおよび/または項目48または項目49に記載の抗体を含むキット。
51.リアルタイムRT-PCRアッセイを行うのに好適であるか、またはそれを行うために使用する、項目50に記載のキット。
52.ウイルスに感染した魚、特にランプサッカーフィッシュの処置に使用するための、項目48または項目49に記載の抗体。
53.ウイルスが、項目18~25のいずれか1つに記載のウイルスである、項目52に記載の抗体。
54.ワクチンを製造するための、項目18~21のいずれか1つに記載のウイルスの使用。
【0111】
55.
(i)項目18~25のいずれか1つに記載のウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列、
(ii)項目1~13または15~17のいずれか1つに記載の核酸配列、
(iii)項目18~25のいずれか1つに記載のウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列によってコードされるウイルスポリペプチド、
(iv)項目1~13または15~17のいずれか1つに記載の核酸配列によってコードされるウイルスポリペプチド、
(v)項目43~47のいずれか1つに記載のウイルスポリペプチド、または
(vi)項目18~25のいずれか1つに記載のウイルス
を含むワクチン。
56.核酸の配列が、項目1~13または17のいずれか1つにおいて言及される核酸の配列であり、前記核酸配列が、塩基チミン(T)の代わりに塩基ウラシル(U)を含有する、項目55に記載のワクチン。
57.ウイルスに感染した魚、特にランプサッカーフィッシュの処置に使用するための干渉RNA(iRNA)分子であって、項目18~25のいずれか1つに記載のウイルスのゲノム内に含まれる核酸配列の、または前記核酸配列に対して相補的な、少なくとも12個の(好ましくは連続する)ヌクレオチドを含む干渉RNA(iRNA)分子。
58.ウイルスに感染した魚、特にランプサッカーフィッシュの処置に使用するための干渉RNA(iRNA)分子であって、配列番号6(CLuTV)によるウイルスゲノムの配列に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにまたより好ましくは98%、特に好ましくは99%同一、またはまた100%同一である核酸配列の、または前記核酸配列に対して相補的な、少なくとも12個の(好ましくは連続する)ヌクレオチドを含む干渉RNA(iRNA)分子。
59.前記iRNA分子が、少なくとも15個の、より好ましくは少なくとも18個の前記(好ましくは連続する)ヌクレオチドを含む、項目57または項目58に記載の干渉RNA。
【0112】
当業者は、わずかな日常的実験および/または通常の一般的知識を使用して、実施例と特許の記載全体の本体との両方において、本明細書に開示される特定の態様、項目および実施形態に対して多数の均等物を認識することになるか、またはそれらを確認することができるであろう。このような均等物は、本発明の範囲内にあると考えられ、以下の請求項、または本開示に基づいて追求され得る任意の請求項によって包含されることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】