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特表2022-521468非晶質医薬組成物における結晶化度の試験方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-08
(54)【発明の名称】非晶質医薬組成物における結晶化度の試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20220401BHJP
   G01N 21/33 20060101ALI20220401BHJP
   C07D 417/12 20060101ALI20220401BHJP
   A61K 31/5415 20060101ALI20220401BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220401BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220401BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20220401BHJP
   C07D 239/47 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
G01N21/27 Z
G01N21/33
C07D417/12
A61K31/5415
A61P29/00
A61P43/00 111
A61K31/505
C07D239/47 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545977
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(85)【翻訳文提出日】2021-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2020052175
(87)【国際公開番号】W WO2020160980
(87)【国際公開日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】1901579.1
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521345844
【氏名又は名称】コルビステック アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】ベルクハウス,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】スパンジェンバーグ,アンジェラ
【テーマコード(参考)】
2G059
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059BB08
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE12
2G059EE13
2G059HH02
2G059HH03
2G059MM01
2G059MM03
2G059MM05
4C063AA01
4C063BB09
4C063CC64
4C063DD12
4C063EE01
4C086AA10
4C086BC42
4C086BC89
4C086GA08
4C086GA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZB11
4C086ZC20
(57)【要約】
紫外/可視分光計を用いて、非晶質固体分散液又は固体状態溶液中の医薬品有効成分(API)の結晶化度の存在又は不存在について医薬組成物を試験する方法を提供する。試験は、単独で、又は医薬組成物の製造中に、実施することができる。予測モデルは、対応する参照試料の紫外/可視データに基づき、結晶質APIの量の定量分析を提供する。医薬組成物を製造するための装置も提供する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質固体分散液又は固体状態溶液中の医薬品有効成分(API)の結晶化度の量を決定するための予測モデルを作成する方法であって、
(i)API結晶化度がある範囲にわたる分散液又は溶液の複数の参照試料を紫外/可視分光法に供する段階、
(ii)各参照試料の反射率及び/又は透過スペクトルを測定する段階、及び
(iii)段階(ii)で収集されたスペクトルを処理して予測結晶化度モデルを作成する段階、
を含む、前記方法。
【請求項2】
参照試料の数が5以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スペクトルを正規化及び/又は平滑化するために、段階(iii)の前にスペクトルを前処理する、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
参照試料のスペクトルを処理して、前記結晶化度の範囲の少なくとも一部にわたる結晶化度と相関する特徴を導出する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記特徴が、
スペクトルの主成分分析(PCA)から導出される少なくとも第1主成分、ここで、結晶化度による前記第1主成分のバリアンスは、前記複数の分散液又は溶液の結晶化度の範囲にわたって実質的に線形であってもよい;又は、
スペクトルから導出されるCIELAB色空間の明度値L
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
非晶質固体分散液又は固体状態溶液中にAPIを含む医薬組成物をAPIの結晶化度について試験する方法であって、
(i)分散液又は溶液を紫外/可視分光法に供する段階、
(ii)反射率及び/又は透過率スペクトルを測定する段階、及び
(iii)測定された反射率及び/又は透過率スペクトルを、完全に非晶質の試料について予想されるものと比較することによって、APIの結晶化度の存在又は不存在を決定する段階、
を含む、前記方法。
【請求項7】
さらに、
(iv)結晶質APIが存在することが見出された場合、観察されたスペクトルを予測モデルと比較することによって、分散液又は溶液における結晶化度の量を決定する段階、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
予測モデルが請求項1~5のいずれか1項に従って作成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
観察されたスペクトルを予測モデルと比較することが、請求項1~5のいずれか1項に記載の前記複数の参照試料のスペクトルと同じ方法で観察されたスペクトルを処理することを含む、請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項10】
分散液又は溶液における結晶化度の量が50重量%以下で測定される、請求項6~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
分散液又は溶液における結晶化度の量が1重量%以上で測定される、請求項6~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
(i)APIを非晶質固体分散液又は固体状態溶液の形に形成する段階、
(ii)分散液又は溶液を、請求項6~10のいずれか1項に記載の方法によりAPIの結晶化度について1回以上試験する段階、及び
(iii)分散液又は溶液が許容範囲内の結晶化度の量を有する場合、組成物を最終医薬品に加工する段階、
を含む、医薬組成物の製造方法。
【請求項13】
分散液又は溶液の形へのAPIの形成が、押出、ボールミル粉砕、又は噴霧乾燥によって実施され;及び/又は、
分散液又は溶液の結晶化度の存在又は不存在に関する1回以上の試験が、インラインで実施される、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
形成が押出によって実施され、試験が、API投入点のうちの1以上、押出点の上流、及び押出点で実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
形成が、1以上の透明点を有するボールミルでのボールミル粉砕によって実施され、試験が、運動軸に実質的に垂直な1以上の透明点を通して実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
形成が噴霧乾燥によって実施され、試験が、API投入点のうちの1以上、乾燥チャンバー内の霧化点、又は霧化後の沈降点で実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
結晶化度の許容範囲が1重量%以下である、請求項12~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
スクリュー押出機、ボールミル、又は噴霧乾燥機へのAPI投入量が、必要な場合、結晶化度が許容範囲内にあることが確実になるように自動的に調整される、請求項13~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
スクリュー押出機、ボールミル、又は噴霧乾燥機の速度が、必要な場合、結晶化度が許容範囲内にあることが確実になるように自動的に調整される、請求項13~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
押出機バレル、ボールミラー、又は噴霧乾燥機の温度が、必要な場合、結晶化度が許容範囲内にあることが確実になるように自動的に調整される、請求項13~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
紫外/可視反射率及び/又は透過率が連続的に測定される、請求項12~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
反射率及び/又は透過率スペクトルが210~800nmの波長で測定される、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
反射率スペクトルのみが測定される、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
透過スペクトルのみが測定される、請求項13~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
分散液又は溶液の粒子サイズを、紫外/可視分光法に供する前に測定する、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
分散液又は溶液が、結晶化度が公知である1以上の参照試料のサイズに匹敵するようにサイズ決定され、該参照試料が、分散液又は溶液のAPI及び担体に匹敵する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
APIが、分子量が2000g/mol以下の化合物である、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
APIが、前記分散液又は溶液に組み込まれる前に、少なくとも95%純粋である、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
APIが5重量%以下の水を含む、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
APIが、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、好ましくはエトラビリン(ETR)、又は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、好ましくはピロキシカム(PRX)である、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
分散液又は溶液の担体が非晶質ポリマーを含む、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
非晶質ポリマーが、セルロースポリマー、ビニルポリマー、ポリメタクリレートポリマー、及びポリアルキレングリコールポリマーのうちの1以上である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
非晶質ポリマーが、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMCアセテートスクシネート(HPMCAS);ポリビニルアセテートフタレート;ポリメタクリレート;ポリアルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG、ポリプロピレングリコール(PPG)のコポリマー、ポロキサマー(2つの親水性PEGブロックが両側に位置する中央疎水性PPGブロックを有するトリブロックポリマー)、ソルプラス(PEG-ポリビニルアセテート-ポリビニルカプロラクタムグラフトコポリマー(PVAc-PVCap-PEG));ポリビニルピロリドン(ポビドン)、コポビドン、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、及びN-ビニル-2-ピロリドンと酢酸ビニルの線状ランダムコポリマー(例えば、60:40)のうちの1以上である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
分散液又は溶液の担体が5重量%以下の水を含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
非晶質固体分散液又は固体状態溶液として医薬組成物を製造するための装置であって、反射率及び/又は透過率の強度を測定するように構成された1以上の紫外/可視分光計によって組成物中のAPIの結晶化度の量を試験するための品質管理システムを含む、前記装置。
【請求項36】
スクリュー押出機、ボールミル、又は噴霧乾燥機を含み、分散液又は溶液の反射率及び/又は透過率を測定するために、前記又は各紫外/可視分光計がインライン測定点に位置付けられる、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
スクリュー押出機を含み、前記又は少なくとも1つの紫外/可視分光計が、API投入点、押出点の上流、及び押出点のうちの1以上において反射率及び/又は強度を測定するように構成される、請求項36に記載の装置。
【請求項38】
1以上の透明点を有するボールミルを含み、前記又は少なくとも1つの紫外/可視分光計が、1以上の透明点を通る反射率及び/又は透過率を測定するように構成され、運動軸に実質的に垂直である、請求項36に記載の装置。
【請求項39】
噴霧乾燥機を含み、前記又は少なくとも1つの紫外/可視分光計が、API投入点、乾燥チャンバー内の霧化点、及び霧化後の沈降点のうちの1以上において反射率及び/又は透過率を測定するように構成される、請求項36に記載の装置。
【請求項40】
前記又は各紫外/可視分光計が、光ファイバーによって前記又は各測定点に光子的に接続されている、請求項35~39のいずれか1項に記載の装置。
【請求項41】
装置が、必要な場合に、前記又は各紫外/可視分光計のインライン測定値に応答して、スクリュー押出機、ボールミル、又は噴霧乾燥機へのAPI投入量を自動的に調整するように構成される、請求項36~40のいずれか1項に記載の装置。
【請求項42】
装置が、必要な場合に、前記又は各紫外/可視分光計のインライン測定値に応答して、スクリュー押出機、ボールミル、又は噴霧乾燥機の速度を自動的に調整するように構成される、請求項36~41のいずれか1項に記載の装置。
【請求項43】
装置が、必要な場合に、前記又は各紫外/可視分光計のインライン測定値に応答して、スクリュー押出機、ボールミル、又は噴霧乾燥機の温度を自動的に調整するように構成される、請求項36~42のいずれか1項に記載の装置。
【請求項44】
前記又は各紫外/可視分光計が、210~800nmの領域にわたって反射率及び/又は透過率強度を測定するように構成される、請求項35~43のいずれか1項に記載の装置。
【請求項45】
前記又は各紫外/可視分光計が、反射率及び/又は透過率を連続的に測定するように構成される、請求項35~44のいずれか1項に記載の装置。
【請求項46】
請求項12~32のいずれか1項に従って非晶質固体分散液又は固体状態溶液として医薬組成物を製造するための、請求項35~45のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本願は2019年2月5日に出願されたGB1901579.1からの優先権を主張するものであり、その内容及び要素をすべての目的のために本明細書に援用する。
[0002]開示の分野
[0003]本発明は、通常なら非晶質である医薬組成物における結晶化度の存在に関する。とりわけ、本発明は、通常なら非晶質である医薬組成物の結晶化度を検出し、所望により定量する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0004]背景
[0005]医薬業界で製造される製品は、非常に厳しい品質基準を満たすことが要求される。これは、基準以下の医薬品の有害作用が公衆の安全性に広範な脅威をもたらすからである。以前は、市場に到達する基準以下の医薬組成物の発生率が高かった。市場に到達する基準以下の医薬組成物の発生率を減少させる試みにおいて、医薬業界は、広範囲にわたりますます増加する規制上の要求を認識している。
【0003】
[0006]製薬会社は、それらの医薬組成物が関連規制基準を満たすことを確実にするために、専門の品質管理部門を有することが多い。規制基準を満たすことは、必要とされる時間、人員、及び設備により大きな金銭的負担を伴う。品質を損なうことなく、規制基準を満たすのに要する時間及び金銭の量を減少させることが望ましい。
【0004】
[0007]プロセス分析技術(PAT)は、特定の品質指標及びパラメータをモニタリングすることによって、医薬品製造プロセスを効果的に設計及び制御するのに使用される。製薬業界は発展中であり、バッチベースの製造から連続製造に切り替えるためには規制上の圧力が存在する。PATは、新たに生じた連続的製造法にとりわけ関連性がある。
【0005】
[0008]医薬組成物の品質管理において評価される因子はいくつかある。これらの因子の1つは物理的形態である。医薬品有効成分(API)は、多形体、溶媒和物、水和物、塩、共結晶、及び非晶質固体を含めたさまざまな異なる固体形態で存在することができる。各形態は、バイオアベイラビリティー、製造可能性、精製、安定性、及び他の特徴に大きな影響を及ぼしうる独特の物理化学的特性を示す。
【0006】
[0009]結晶化度、とりわけ結晶多形性は、多くのAPIの溶解性、バイオアベイラビリティー、及び安定性に大きな影響を及ぼす可能性がある。小分子APIを水溶性ポリマーと一緒に共製剤化することによって、薬物吸収動態及び全体的なバイオアベイラビリティーの著しい増大が観察される。
【0007】
[0010]したがって、APIの「非晶質固体分散液」の生産に寄せられる関心は大きく、これに関し、結晶質材料は、溶融ポリマー相中に組み込まれることにより「溶解」、すなわち、分子分散され、もはや結晶質ではなくなるため、非晶質になる。
【0008】
[0011]適切に分散している非晶質生成物を生じさせるためには、効率的な混合及び十分な機械的エネルギーが必要である。しかしながら、とりわけオンライン状態において、溶解/分散の程度を決定することは簡単ではない。
【0009】
[0012]典型的には、固体試料中に存在する残留結晶質材料のレベルを決定するために、最初に固体を均質な粉末へミル粉砕した後、粉末X線回折計で分析することが必要である。粉末XRDは迅速なプロセスではなく、オフラインで実施され、通常は結果を出すのに15分~1時間かかる。
【0010】
[0013]このような固体試料の結晶化度のレベルを測定するために、ラマン分光法を使用することも可能である。例えば、フェノフィブラート錠剤における経時的な結晶成長に関する研究を報告している、Thielら、Manufacturing Amorphous Solid Dispersions with a Tailored Amount of Crystallized API for Biopharmaceutical Testing, Mol. Pharmaceutics, 2018, 15(5), pp. 1870-1877を参照。しかしながら、ラマン分光法は、レーザー光に不随する複雑さ、レーザーの安全性、及び有用なスペクトルを得るのに要する一般に長い積分時間により、インライン製造状態で使用することが難しい。
【0011】
[0014]上記に鑑みて、高品質の非晶質医薬組成物をモニタリング及び製造するための改善された方法及び装置が必要とされている。
[0015]WO2016/118633 A1には、医薬グレードのカンタリジンの定量及び調製が記載されている。US2008/0165354 A1には、固体物質を液体に溶解するための方法及び装置が記載されている。
【0012】
[0016]ホットメルト押出を使用する、製品開発の初期段階の高速処理プロセス分析技術(PAT)としてのインライン紫外/可視分光法の使用は、公知である。Pharmaceutics 2018, 10, 166を参照。
【0013】
[0017]本開示は、上記の考察に鑑みて考案されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO2016/118633 A1
【特許文献2】US2008/0165354 A1
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Mol. Pharmaceutics, 2018, 15(5), pp. 1870-1877
【非特許文献2】Pharmaceutics 2018, 10, 166
【発明の概要】
【0016】
[0018]開示の概要
[0019]本発明の第1の観点において、非晶質固体分散液又は固体状態溶液(solid-state solution)中のAPIの結晶化度の量を決定するための予測モデルを作成する方法であって、(i)APIの結晶化度の量がある範囲にわたる分散液又は溶液の複数の参照試料を紫外/可視分光法に供する段階、(ii)各参照試料の反射率及び/又は透過スペクトルを測定する段階、及び(iii)段階(ii)で収集されたスペクトルを処理して予測結晶化度モデルを作成する段階、を含む方法を提供する。
【0017】
[0020]本明細書中の「分散液」及び「溶液」への言及は、それぞれ「非晶質固体分散液」及び「固体状態溶液」を意味する。
[0021]このように予測モデルを作成することにより、本発明の第1の観点で提供される方法などにおいて、分散液又は溶液中のAPIの結晶化度の定量的量を決定することが可能である。
【0018】
[0022]いくつかの場合では、参照試料の数は5以上である。
[0023]場合により、スペクトルを正規化及び/又は平滑化するために、段階(iii)の前にスペクトルを前処理する。
【0019】
[0024]いくつかの場合では、参照試料のスペクトルを処理して、前記結晶化度の範囲の少なくとも一部にわたる結晶化度と相関する特徴を導出する。
[0025]場合により、前記特徴は、スペクトルの主成分分析(PCA)から導出される少なくとも第1主成分、ここで、結晶化度による前記第1主成分のバリアンスは、前記複数の分散液又は溶液の結晶化度の範囲にわたって実質的に線形であってもよい;又は、スペクトルから導出されるCIELAB色空間の明度値L;を含む。
【0020】
[0026]本発明の第2の観点において、非晶質固体分散液又は固体状態溶液中にAPIを含む医薬組成物をAPIの結晶化度について試験する方法であって、(i)分散液又は溶液を紫外/可視分光法に供する段階、(ii)反射率及び/又は透過率スペクトルを測定する段階、及び(iii)測定された反射率及び/又は透過率スペクトルを、完全に非晶質の試料について予想されるものと比較することによって、APIの結晶化度の存在又は不存在を決定する段階、を含む方法を提供する。
【0021】
[0027]非晶質固体分散液又は固体状態溶液の透過/吸光度及び反射率は、APIの結晶化度と相関することが見出されている。ここで適用される場合、紫外/可視分光法は、軌道間の電子の遷移に依存しない。理論に拘束されることを望むものではないが、本発明は、通常なら非晶質の医薬組成物中に存在するAPI結晶による光の散乱に依存する。利点は、通常なら非晶質の分散液又は溶液のAPI結晶化度の検出が迅速かつ安価な点である。
【0022】
[0028]いくつかの場合では、結晶質APIが存在することが見出された場合、観察されたスペクトルを標準曲線などの予測モデルと比較することによって、分散液又は溶液における結晶化度の量を決定する段階が存在する。
【0023】
[0029]場合により、予測モデルは本発明の第1の観点に準ずる。
[0030]いくつかの場合では、観察されたスペクトルを予測モデルと比較することは、前記複数の参照試料のスペクトルと同じ方法で観察されたスペクトルを処理することを含む。
【0024】
[0031]場合により、分散液又は溶液における結晶化度の量は、50重量%以下、例えば、25重量%以下又は20重量%以下又は15重量%以下で測定される。
[0032]いくつかの場合では、分散液又は溶液における結晶化度の量は、1重量%以上、例えば、2重量%以上又は3重量%以上又は5重量%以上で測定される。
【0025】
[0033]本発明の第3の観点では、(i)APIを非晶質固体分散液又は固体状態溶液の形に形成する段階、(ii)分散液又は溶液を、本発明の第2の観点に従ってAPIの結晶化度について1回以上試験する段階、及び(iii)分散液又は溶液が許容範囲内の結晶化度の量を有する場合、組成物を最終医薬品に加工する段階、を含む医薬組成物の製造方法を提供する。
【0026】
[0034]APIの結晶化度について分散液又は溶液を1回以上試験することによって、必要とされる規制基準を満たす高品質の医薬組成物を、改善された信頼性及び一貫性で製造することができるという利点がある。製造効率が向上するため、時間、資金、及び資源の浪費が減少する。
【0027】
[0035]いくつかの場合では、分散液又は溶液の形へのAPIの形成は、押出、ボールミル粉砕、又は噴霧乾燥によって実施され;及び/又は、分散液又は溶液の結晶化度の存在又は不存在に関する1回以上の試験は、インラインで実施される。
【0028】
[0036]場合により、形成は押出によって実施され、試験は、API投入点、押出点の上流、及び押出点のうちの1以上で実施される。
[0037]いくつかの場合では、形成は、1以上の透明点を有するボールミルでのボールミル粉砕によって実施され、試験は、運動軸に実質的に垂直な1以上の透明点を通して実施される。
【0029】
[0038]場合により、形成は噴霧乾燥によって実施され、試験は、API投入点、乾燥チャンバー内の霧化点、又は霧化後の沈降点のうちの1以上で実施される。
[0039]いくつかの場合では、結晶化度の許容範囲は1重量%以下である。結晶化度の許容範囲は、0.25重量%以下、0.5重量%以下、2重量%以下、又は3重量%以下であってもよい。
【0030】
[0040]場合により、スクリュー押出機、ボールミル、又は噴霧乾燥機へのAPI投入量は、必要な場合、結晶化度が許容範囲内にあることが確実になるように自動的に調整される。
【0031】
[0041]いくつかの場合では、スクリュー押出機、ボールミル、又は噴霧乾燥機の速度は、必要な場合、結晶化度が許容範囲内にあることが確実になるように自動的に調整される。
【0032】
[0042]場合により、押出機バレル又は噴霧乾燥機の温度は、必要な場合、結晶化度が許容範囲内にあることが確実になるように自動的に調整される。
[0043]いくつかの場合では、紫外/可視反射率及び/又は透過率は、毎秒7回、毎秒5回、又は毎秒2回など、連続的に測定される。
【0033】
[0044]場合により、反射率及び/又は透過率スペクトルは、210~800nm、例えば300~700nm、好ましくは315nm~400nm(UVA)の波長で測定される。
【0034】
[0045]いくつかの場合では、反射率スペクトルのみが測定される。
[0046]場合により、透過スペクトルのみが測定される。
[0047]いくつかの場合では、分散液又は溶液の粒子サイズは、紫外/可視分光法に供する前に測定する。分散液又は溶液の公知のサイズ決定(sizing)法としては、篩分析、直接的画像化及びレーザー回折が挙げられる。本開示では、Mastersizer(Malvern Instruments)レーザー回折計を使用した。
【0035】
[0048]場合により、分散液又は溶液は、結晶化度が公知である1以上の参照試料のサイズに匹敵するようにサイズ決定され、該参照試料は、分散液又は溶液のAPI及び担体に匹敵する。
【0036】
[0049]いくつかの場合では、APIは、分子量が2000g/mol以下の化合物、例えば1000g/mol以下の小分子薬物である。いくつかの場合では、APIは、分子量が100g/mol以上、例えば200g/mol以上の化合物である。
【0037】
[0050]場合により、APIは、前記分散液又は溶液に組み込まれる前に、少なくとも95%純粋であり、例えば、少なくとも97%純粋又は少なくとも99%純粋である。
[0051]いくつかの場合では、APIは5重量%以下の水を含む。好ましくは、APIは3重量%以下の水、例えば1重量%以下の水を含む。
【0038】
[0052]場合により、APIは、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、好ましくはエトラビリン(ETR)、又は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、好ましくはピロキシカム(PRX)である。APIは、少なくとも1つの結晶質形態を有する任意のクラスの経口投与可能な薬物であることができる。
【0039】
[0053]いくつかの場合では、分散液又は溶液の担体は非晶質ポリマーを含む。当然のことながら、非晶質固体分散液又は固体状態溶液は、他の成分が分散又は「溶解」している担体を含む。
【0040】
[0054]場合により、非晶質ポリマーは、セルロースポリマー、ビニルポリマー、ポリメタクリレートポリマー、及びポリアルキレングリコールポリマーのうちの1以上である。
[0055]いくつかの場合では、非晶質ポリマーは、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMCアセテートスクシネート(HPMCAS);ポリビニルアセテートフタレート;ポリメタクリレート;ポリアルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG、ポリプロピレングリコール(PPG)のコポリマー、ポロキサマー(2つの親水性PEGブロックが両側に位置する中央疎水性PPGブロックを有するトリブロックポリマー)、ソルプラス(soluplus)(PEG-ポリビニルアセテート-ポリビニルカプロラクタムグラフトコポリマー(PVAc-PVCap-PEG));ポリビニルピロリドン(ポビドン)、コポビドン、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、及びN-ビニル-2-ピロリドンと酢酸ビニルの線状ランダムコポリマー(例えば、60:40)のうちの1以上である。
【0041】
[0056]場合により、非晶質プレーポリマーは、BASFによって提供されるKollidon(登録商標) VA 64、Soluplus(登録商標)、Kollidon(登録商標) 12 PF、Kollidon(登録商標) 17 PF、Kollidon(登録商標) 30、Kollidon(登録商標) 90 F、Kollidon(登録商標) SR、Kollicoat(登録商標) MAE 100P、Kollicoat(登録商標) IR、Kollicoat(登録商標) Protect、Kolliphor(登録商標) P407、Kolliphor(登録商標) P407 micro、Kolliphor(登録商標) P188、Kolliphor(登録商標) P188 micro、Kolliphor(登録商標) PEGグレード、Kolliphor(登録商標) RH 40及びKolliphor(登録商標) TPGSのうちの1以上である。
【0042】
[0057]いくつかの場合では、分散液又は溶液の担体は、5重量%以下の水を含む。好ましくは、分散液又は溶液は、3重量%以下の水、例えば1重量%以下の水を含む。
[0058]場合により、分散液又は溶液は、5重量%以下の水を含む。好ましくは、分散液又は溶液は、3重量%以下の水、例えば1重量%以下の水を含む。
【0043】
[0059]本発明の第4の観点では、非晶質固体分散液又は固体状態溶液として医薬組成物を形成するための装置であって、反射率及び/又は透過率の強度を測定するように構成された1以上の紫外/可視分光計によって組成物中のAPIの結晶化度の量を試験するための品質管理システムを含む、前記装置を提供する。
【0044】
[0060]このような装置を有することによって、非晶質固体分散液中の結晶質APIの量を、別個の装置を必要とすることなく、迅速かつ安価に決定することができる。したがって、品質管理は、別個のオフラインのものではなく、装置に不可欠である。
【0045】
[0061]場合により、装置は、スクリュー押出機、ボールミル、又は噴霧乾燥機を含み、分散液又は溶液の反射率及び/又は透過率を測定するために、前記又は各紫外/可視分光計がインライン測定点に位置付けられる。紫外/可視分光計をインラインに位置付けることによって、反射率及び/又は透過率測定の結果を直ちに使用して、必要に応じて押出のパラメータを修正することができる。
【0046】
[0062]いくつかの場合では、装置はスクリュー押出機を含み、前記又は少なくとも1つの紫外/可視分光計は、API投入点、押出点の上流、及び押出点のうちの1以上において反射率及び/又は強度を測定するように構成される。
【0047】
[0063]場合により、装置は、1以上の透明点を有するボールミルを含み、前記又は少なくとも1つの紫外/可視分光計は、1以上の透明点を通る反射率及び/又は透過率を測定するように構成され、運動軸に実質的に垂直である。
【0048】
[0064]いくつかの場合では、装置は噴霧乾燥機を含み、前記又は少なくとも1つの紫外/可視分光計は、API投入点、乾燥チャンバー内の霧化点、及び霧化後の沈降点のうちの1以上において反射率及び/又は透過率を測定するように構成される。
【0049】
[0065]場合により、前記又は各紫外/可視分光計は、光ファイバーによって、前記又は各測定点におけるプローブに光子的に接続される。各プローブの先端はサファイア窓を含んでいてもよい。好ましくは、各光ファイバーは長さが20m以下である。紫外/可視分光計は、光ファイバーを介して照明するためのキセノンフラッシュランプを含むことができる。
【0050】
[0066]反射ポリマー溶融プローブ(reflection polymer melt probe)(RPMP)では、各光ファイバーが、円周方向に位置付けられた6つの照明用ガラス繊維と、中心に位置付けられた反射率用ガラス繊維とを有することができる。光は、円周方向に位置付けられたガラス繊維によって測定点まで進み、中心に位置付けられた反射率用ガラス繊維を通って戻る。
【0051】
[0067]透過ポリマー溶融プローブ(transmission polymer melt probe)(TPMP)では、溶液又は分散液の経路を横切る距離に置かれた2つの別個のユニットが存在する。一方のユニットは照明を提供するが、他方のユニットは、経路を横切って溶液又は分散液を透過した光を収集する。2つのユニット間の距離を変動させて、経路内の分散液又は溶液の場合の測定を最適化することができる。
【0052】
[0068]場合により、装置は、必要な場合に、前記又は各紫外/可視分光計のインライン測定値に応答して、スクリュー押出機、ボールミル、又は噴霧乾燥機へのAPI投入量を自動的に調整するように構成される。
【0053】
[0069]場合により、装置は、必要な場合に、前記又は各紫外/可視分光計のインライン測定値に応答して、スクリュー押出機、ボールミル、又は噴霧乾燥機の速度を自動的に調整するように構成される。
【0054】
[0070]いくつかの場合では、装置は、必要な場合に、前記又は各紫外/可視分光計のインライン測定値に応答して、スクリュー押出機、ボールミル、又は噴霧乾燥機の温度を自動的に調整するように構成される。
【0055】
[0071]いくつかの場合では、分光計は、210~800nm、例えば、300~700nm又は315nm~400nm(UVA)の領域にわたって反射率及び/又は透過率強度を測定するように構成される。
【0056】
[0072]いくつかの場合では、前記又は各紫外/可視分光計は、反射率及び/又は透過率を連続的に、例えば、少なくとも毎秒1回、少なくとも毎秒2回、少なくとも毎秒5回、又は少なくとも毎秒7回測定するように構成される。
【0057】
[0073]場合により、装置は、本発明の第3の観点に従った方法と一緒に使用するためのものである。
[0074]図面の概要
[0075]本発明を理解することができ、そのさらなる観点及び特徴を正しく評価することができるように、ここで、本発明の原理を例示する態様を、添付の図面を参照してさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】[0076]図1は、230~810nmにおける15、18、20、23、及び25重量%のPRX試料の5つの紫外/可視透過スペクトルを示す。全体的な吸光度の増大がPRXの量の増大に伴い見られ、全体的な吸光度の特に大きな増大は、23%~25%のPRXで観察される。
図2】[0077]図2は、Bruker計器で得た、純粋な固体PRX、Kollidon VA64、並びに20、25、及び30重量%のPRX混合物の5つのXRDスペクトルを示す。結晶質PRXのXRD指紋(fingerprint)の痕跡は、30%のPRXスペクトルにおいて初めて観察される。
図3】[0078]図3は、20、10、5、2.5、1.25、及び0.625重量%の結晶質エトラビリンを有する、HMPC-E5(VIVAPHARM(登録商標)ヒドロキシプロピルメチルセルロース)とフマル酸ステアロイルナトリウム(sodium stearoyl fumarate)(SSF)とのポリマー混合物についての、重ね合わされた紫外/可視スペクトルを示す。
図4】[0079]図4は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HMPC-E5)中に分散されたETRについての重ね合わされた紫外/可視反射率スペクトルを示し、ETRの総量は20又は25重量%である。
図5】[0080]図5は、Kaiser計器で得られたラマン分光法によって事前に決定された異なる結晶化度をそれぞれ有する13個のミル粉砕していないETR試料のL値と結晶化度との間の良好な相関を示す。各試料中のETRの総量は、非晶質及び結晶質含有物の両方を含めて、25重量%であった。ミル粉砕されていない試料は、押出後の固化により生じる直接的固体モノリシック形態である。
図6】[0081]図6は、図5と同じ13個のETR試料に関する、220~800nmにおける反射率紫外/可視透過スペクトルを示す。
図7】[0082]図7は、図5と同じ13個のETR試料に関する、Rigaku計器で得られたXRDスペクトルを示す。
図8】[0083]図8は、図5の13個のETR試料のうち実質的に結晶化度を有さない(ラマン分光法による測定で<1%)5個に関するUV反射スペクトルを示す。これら非常に似た試料の間で、全体的なスペクトル形状及び反射率量の良好な信頼性及び再現性が観察される。
図9】[0084]図9は、290~400のnmでの波長(x軸)に対する、方法3に記載するようなETR含有試料の反射率スペクトルに関するPCAの結果生じる第1主成分である因子1に寄与する負荷(y軸)のプロットを示す。図示するように、因子1は、データセットにおけるバリアンスを説明する第1固有ベクトルを提供する。
図10】[0085]図10は、PCAにおける因子(x軸)に対するバリアンス(y軸)のプロットを示し、因子1及び因子2が、それぞれ、データセットのバリアンスの約98%及び2%を説明することを示す。
図11】[0086]図11は、方法3におけるPCA分析から導出された因子1(x軸)に対する因子2(y軸)の散布図を示す。見てわかるように、試料は、結晶化度(すなわち、結晶化度2.5%の試料(四角)、結晶化度5%の試料(円)、結晶化度10%の試料(三角)、及び結晶化度20%の試料(菱形))に従ってクラスター化する。
図12】[0087]図12は、試料の公知(参照)の結晶化度レベル(x軸)に対する因子1による予測結晶化度(y軸)のプロットを示す。差し込み図は、相関の線形性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
[0088]詳細な説明
[0089]具体的な形態で表現された、あるいは、開示された機能を実施するための手段、又は開示された結果を得るための方法若しくはプロセスに関して表現された、上記記載、又は以下の特許請求の範囲、又は添付の図面に開示された特徴は、必要に応じて、別々に、又はそのような特徴の任意の組合せで、本発明をその多様な形態で実現するために利用することができる。
【0060】
[0090]本発明を上記代表的態様に関連して記載してきたが、本開示を与えられたときに、多くの同等の修正及び変形が当業者には明らかになるであろう。したがって、上記本発明の代表的態様は例示的なものであり、限定的なものではないとみなされる。本発明の範囲から逸脱することなく、記載した態様にさまざまな変更を加えてもよい。
【0061】
[0091]いかなる疑いも回避するために、本明細書で提供されるあらゆる理論的説明は、読者の理解を改善する目的で提供される。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれによっても制約されることを望まない。
【0062】
[0092]本明細書で使用される任意のセクション見出しは、編成目的のためのものに過ぎず、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
[0093]以下の特許請求の範囲を含む本明細書全体にわたって、文脈による別段の要求がない限り、単語「有する」、「含む」、及び「包含する」、並びに「有している」、「含む(単数形)」、「含んでいる」、及び「包含している」などの変形は、述べられた整数若しくは段階又は整数若しくは段階の群を包含することを意味するが、任意の他の整数若しくは段階又は整数若しくは段階の群を排除するわけではないことを意味することを、理解されたい。
【0063】
[0094]本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈による明確な別段の指示がない限り、複数の指示対象を包含することに、留意しなければならない。本明細書では、範囲を、「約」がつく1つの特定の値から、及び/又は「約」がつく他の特定の値までとして表すことができる。このような範囲が表される場合、他の態様は、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までを包含する。同様に、値が近似値として表される場合、先行する「約」を使用することによって、特定の値が他の態様を形成することが理解されるであろう。数値に関する「約」という用語は所望によるものであり、例えば±10%を意味する。
【0064】
[0095]本明細書において、「好ましい」及び「好ましくは」という単語は、いくつかの状況下で特定の利益をもたらすことができる本発明の態様を表す。しかしながら、他の態様も、同じ又は異なる状況下で好ましくてもよいことを、理解すべきである。したがって、1以上の好ましい態様の列挙は、他の態様が有用でないことを意味又は暗示するものではなく、本開示の範囲から、又は特許請求の範囲から、他の態様を排除することを意図するものではない。
【実施例
【0065】
[0096]実施例
[0097]方法1:Kollidon VA64におけるピロキシカムのインライン結晶化度検出
[0098]二軸スクリュー押出機を使用して、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)ピロキシカム(PRX)と担体ポリマーKollidon VA64との混合物の溶解度最大値を評価した。インライン紫外/可視分光計のシステムを使用して、押出機スクリューを横に移動させながら混合物を連続的に分析し、PRXの投入量を、結晶化度が最初に検出されるまで調整した。
【0066】
【化1】
【0067】
[0099]試料を紫外/可視分光計の透過モードによって分析し(図1)、比較及び検証のために同じ試料のXRDスペクトルも得た(図2)。XRD試料はオフラインでのミル粉砕及び分析を必要としたが、紫外/可視は、ミル粉砕せずに迅速にインラインで実施することができるという利点を有する。
【0068】
[0100]15、18、20、23、及び25重量%のPRX試料について、紫外/可視透過スペクトルを得た。23~25重量%のPRX試料に明確な全体的な吸光度の増大がある。これは、混合物が、25重量%未満のPRX負荷では、非晶質で、均質で、透明に見えるという観察と相関する。しかしながら、25重量%のPRXでは、最初の微結晶質ドメインが観察され、散乱の増加及び透過光の減少(すなわち、吸光度の増大)がもたらされる。
【0069】
[0101]XRDスペクトルは、Bruker計器で、純粋な固体PRX、Kollidon VA64、並びに20、25、及び30重量%のPRX混合物のそれぞれについて別個に得た。比較すると、XRDにより、25重量%のPRX混合物において結晶化度の存在は検出されない。実質的により高い結晶化度が存在する場合で、最大溶解度をはるかに超えている、30重量%のPRX負荷においてのみ、XRDスペクトルは初めて、純粋なPRXのXRDスペクトルと相関するピークを示す。Kollidon VA64スペクトルは、混合物のポリマー成分が非晶質であることを示す。
【0070】
[0102]この実験は、紫外/可視が、XRDと比較して、低量の結晶化度に対してより高い感度を有することができることを実証している。
【0071】
[0103]方法2:ミル粉砕した結晶質ETR希釈系列を使用した紫外/可視較正
[0104]エトラビリン(0.82271g)、フマル酸ステアロイルナトリウム(0.03291g)、及びHMPC-E5(2.444g)を小さな密封可能なプラスチックバッグに加えて、25重量%のETR混合物を得た。ETRは100%結晶質であった。HMPC-E5を20分間にわたり凍結ミル粉砕(cryomill)し、使用前に乾燥させた。
【0072】
【化2】
【0073】
[0105]成分の粒子サイズ分布をMastersizerを用いて測定し、以下の表に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
[0106]あるいは、密封したバッグを混練し、合計2分間にわたり振とうした。得られた粉末を連続希釈系列で使用して、20、10、5、2.5、1.25、0.625、及び0.3125重量%の結晶質ETRを有する混合物を得た。希釈剤は、ETR負荷を25%に維持するために、同じ比率のETF、SSF、及びHPMC-E5を有する完全に非晶質の固体分散液であった。
【0076】
[0107]複数の紫外/可視反射率スペクトルを連続希釈の各試料について得た。20、10、5、2.5、1.25、及び0.625重量%の結晶質ETRを有する混合物のスペクトルを図3に示す。
【0077】
[0108]全体的な反射率は、すべての測定波長において結晶化度に伴い増大する。結晶質ETRの量(20~0.6重量%)と、各紫外/可視スペクトルで観察された反射率との間には明確な相関がある。結晶質ETRの量は、オフラインXRD及びラマン分光法を用いて、同じ試料について独立して検証した。
【0078】
[0109]さらに、図4は、結晶化度が異なる別の一連のETR調製物の重ね合わされた紫外/可視スペクトルを示す。結晶質ETRの量(0~9.8重量%)と、各紫外/可視スペクトルで観察された反射率との間には、同様の明確な相関がある。
【0079】
[0110]方法3:結晶化度の予測モデル化
[0111]結晶化度を決定するための予測モデルを作製するために、方法2における各量の結晶質ETRについての各反射率スペクトルを、最初にその2次導関数に変換した後、標準正規変量(standard normal variate)(SNV)分析によって処理し、Savitzky Golay分析を実施して、各スペクトルにおけるすべてのデータ点にわたる移動平均を作成した。スペクトルデータを正規化し平滑化するこれらのデータ処理段階に続いて、データを主成分分析(PCA)にかけて、スペクトルのバリアンスの約98%を説明することが見出された第1主成分(因子1)を得た(図9及び10参照)。290~400nmの範囲の波長(x軸)に対する因子1(y軸)のプロットを図9に示す。これは、試験した結晶化度の範囲全体にわたる試料の全データセットにもっともよく適合する単純化された「スペクトル」を表す。
【0080】
[0112]因子2は、データセットにおける残りの2%の変動を主に説明する(図10)。因子1(x軸)に対する因子2(y軸)の散布図を図11に示す。試料は、結晶化度(すなわち、結晶化度2.5%の試料(四角)、結晶化度5%の試料(円)、結晶化度10%の試料(三角)、及び結晶化度20%の試料(菱形))に従ってクラスター化することが見出された。これは、紫外/可視スペクトルデータを処理してPCAモデルを形成することによりスペクトルは良好に分解され、試料が2.5~20%の範囲の結晶化度によって識別されることを示す。
【0081】
[0113]図12において、因子1による予測結晶化度(y軸)を、試料の公知(参照)の結晶化度レベル(x軸)に対してプロットする。高度の相関が認められる(R値は0.99を超える)。この実施例は、紫外/可視スペクトルを、所望によりデータの正規化及び/又は平滑化の後に、処理してPCAモデルを作成すると、本発明の方法による1以上の試料の結晶化度の決定が容易になることを示している。
【0082】
[0114]重要なことに、いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、本発明者らは、多くの他のAPI/担体の組み合わせが、このようなPCAモデリングに従うと考える。これは、PCAが、特定のスペクトル形状又はパターンの原因を理解することを必要とすることなく、スペクトルデータの複雑性又は次元を低減するために用いることができる適応可能な分析であるためである。
【0083】
[0115]いくつかの場合では、データを部分最小2乗回帰(PLSR)によってさらに処理すると、試料(1以上)の結晶化度を、とりわけ、結晶化度が公知で、対象試料(1以上)と同じAPI及び担体を有する複数の参照試料から得られる値から形成される「標準曲線」を参照して、紫外/可視スペクトルに基づき好都合に比較及び予測することができる。
【0084】
[0116]試料の全反射率及び全吸光度は結晶化度に伴い変動するので、紫外/可視スペクトルデータをモデル化する他の方法は、公知の異なる結晶化度を有する参照試料のL値を生成し、プロットすることである。
【0085】
[0117]Lは、国際照明委員会(CIE)によって定義される「CIELAB色空間」に従ったLの明度値成分であり、もっとも暗い黒はL=0で、もっとも明るい白はL=100である。結晶化度に対するL値のこのようなプロットを図5に示す。結晶化度とL値との間、とりわけ1%を超える結晶化度との間に、明確な線形の相関が観察される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】