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特表2022-521478薬剤を担持したプラズマポリマーナノ粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-08
(54)【発明の名称】薬剤を担持したプラズマポリマーナノ粒子
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/51 20170101AFI20220401BHJP
   A61K 47/58 20170101ALI20220401BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220401BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20220401BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20220401BHJP
   A61K 31/366 20060101ALI20220401BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20220401BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20220401BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20220401BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220401BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
A61K47/51
A61K47/58
A61K45/00
A61K38/20
A61K31/192
A61K31/366
A61K31/337
A61K31/436
A61P9/14
A61P9/10
A61K9/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546883
(86)(22)【出願日】2020-02-11
(85)【翻訳文提出日】2021-09-03
(86)【国際出願番号】 AU2020050111
(87)【国際公開番号】W WO2020163906
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】2019900427
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519223745
【氏名又は名称】ザ ハート リサーチ インスティテュート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワイズ,スティーヴン ギャリー
(72)【発明者】
【氏名】コレイア ドス サントス,ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】タン,リチャード フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ジュイ チーエン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA29
4C076AA94
4C076AA95
4C076BB12
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC11
4C076CC27
4C076EE03
4C076EE59
4C076FF31
4C076FF68
4C084AA03
4C084AA17
4C084BA44
4C084CA23
4C084CA53
4C084DA12
4C084DA16
4C084MA05
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA10
4C084NA12
4C084ZA44
4C084ZA45
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086BA17
4C086CB22
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA10
4C086NA12
4C086ZA44
4C086ZA45
4C206JA19
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA86
4C206NA10
4C206NA12
4C206ZA44
4C206ZA45
(57)【要約】
本開示は、ナノ粒子、それらの複合体、及び血管炎症の治療または予防方法におけるそれらの使用の分野に関する。本開示はまた、患者のある血管のある領域への薬剤の送達方法であって、a)上記薬剤をナノ粒子と複合体化して複合体を製造することと、b)上記複合体を上記血管の上記領域に送達することとを含む上記方法にも関する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のある血管のある領域への薬剤の送達方法であって、
a)前記薬剤をナノ粒子と複合体化して複合体を製造することと、
b)前記複合体を前記血管の前記領域に送達することと
を含む前記方法。
【請求項2】
前記薬剤が生物学的に活性な薬剤または造影剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
患者のある血管のある領域における炎症の調節方法または治癒の促進方法であって、
a)生物学的に活性な薬剤をナノ粒子と複合体化して複合体を製造することと、
b)前記複合体を前記血管の前記領域に送達することと
を含む前記方法。
【請求項4】
前記複合体が、複合体化されていない生物学的に活性な薬剤が前記血管の前記領域に保持される期間よりも長い期間、前記血管の前記領域に保持される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記複合体が、前記血管中の前記送達部位に少なくとも1日保持される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記複合体が、前記血管中の前記送達部位に少なくとも5日間保持される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複合体が、前記血管中の前記送達部位に少なくとも14日間保持される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記生物学的に活性な薬剤が、抗炎症性サイトカイン、抗炎症薬、リムス系薬物、スタチン系薬物、または抗増殖薬である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記生物学的に活性な薬剤が抗炎症性サイトカインである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗炎症性サイトカインがインターロイキン-4またはインターロイキン-10である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗炎症薬がスリンダクであるか、または
前記スタチン系薬物がシンバスタチンであるか、または
前記抗増殖薬が、パクリタキセル、シロリムス、もしくはmTOR阻害剤である、
請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記炎症の調節がマクロファージの極性化を介する、請求項3~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
生物学的に活性な薬剤を、患者のある血管のある領域に少なくとも14日の期間保持させる方法であって、
a)前記生物学的に活性な薬剤をナノ粒子と複合体化して複合体を製造することと、
b)前記複合体を前記血管に送達することと
を含む前記方法。
【請求項14】
前記複合体がカテーテルを使用して前記血管に送達される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記カテーテルが閉塞灌流カテーテルまたはsweatingバルーンカテーテルである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記患者が血管内介入を受けている、または受けたことがある、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
平均径が約1nm~約50nmであり、アルケン、アルキン、シクロアルケン、シクロアルキン、もしくはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーを含むプラズマから形成されるナノ粒子状ポリマー;または、2つ以上の前記ナノ粒子状ポリマーを含み、平均径が約5nm~約500nmである凝集体と、
抗炎症性サイトカイン、抗炎症薬、スタチン系薬物、及び抗増殖薬からなる群より選択される生物学的に活性な薬剤と
を含む複合体。
【請求項18】
前記生物学的に活性な薬剤が抗炎症性サイトカインである、請求項17に記載の複合体。
【請求項19】
前記抗炎症性サイトカインがインターロイキン-4またはインターロイキン-10である、請求項18に記載の複合体。
【請求項20】
前記抗炎症薬がスリンダクであるか、または
前記スタチン系薬物がシンバスタチンであるか、または
前記抗増殖薬が、パクリタキセル、シロリムス、もしくはmTOR阻害剤である
請求項17に記載の複合体。
【請求項21】
平均径が約1nm~約50nmであり、アルケン、アルキン、シクロアルケン、シクロアルキン、もしくはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーを含むプラズマから形成されるナノ粒子状ポリマー;または、2つ以上の前記ナノ粒子状ポリマーを含み、平均径が約100nm~約200nmである凝集体と、
i)インターロイキン-10、
ii)スリンダク、または
iii)シロリムス
とを含む複合体。
【請求項22】
請求項17~21のいずれか1項に記載の複合体を、それを必要とする患者のある血管のある領域に送達することを含む、血管損傷または血管疾患の治療または予防方法。
【請求項23】
前記複合体がカテーテルを使用して前記血管の前記領域に送達される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記カテーテルが閉塞灌流カテーテルまたはsweatingバルーンカテーテルである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記血管損傷が血管内介入の結果である、請求項22~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記血管損傷が新生内膜過形成または再狭窄である、請求項22~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記血管疾患がアテローム性動脈硬化症である、請求項22~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
それを必要とする患者の血管損傷または血管疾患の治療または予防用の薬剤の製造における、請求項17~21のいずれか1項に記載の複合体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月11日出願のオーストラリア仮特許出願第2019900427号の優先権を主張し、上記出願の内容は本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、ナノ粒子、それらの複合体、及び血管炎症の治療方法または予防方法におけるそれらの使用の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
冠状動脈アテローム硬化症は、西洋社会における死亡及び障害の主要な原因である。冠血管の閉塞によって、心筋への血流の低下、心筋組織の損傷、及び最終的には心筋梗塞が起こる。しかしながら、薬剤溶出性ステント及び血管形成術用バルーンなど、アテローム性動脈硬化症の治療に使用される医療器具の長期的な性能は、損傷部位の慢性的な炎症によって制限される。
【0004】
外科的及び血管的介入の長期的な成功は、新生内膜過形成(NIH)によって制限される。動脈においては、NIHは、血管形成術、ステント留置術、または外科的修復などの損傷後の動脈内膜の肥厚である。NIHはまた、内腔径及び流量が減少し、最終的には移植片の閉塞及び血栓症につながる静脈移植片及び人工バイパス移植片の肥厚を説明するためにも使用される。NIHは、静脈導管ならびに冠状動脈及び末梢動脈のバイパスで使用される人工導管の両方、ならびに血液透析アクセス用に作製された自己血管動静脈瘻(AVF)を含む、すべての形態の血管移植片で発症する。
【0005】
再狭窄は、ステントの挿入、バルーン血管形成術、または血管手術などの血管内処置の一般的な有害事象である。再狭窄の原因となる因子の1つは、血管内処置に応答して誘発される炎症性免疫反応である。再狭窄は血管の狭小化である狭窄の再発であり、血流の低下に繋がる。
【0006】
したがって、抗炎症剤などの生物学的に活性な薬剤及び薬物の血管への送達方法に対するニーズが依然として存在する。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、例えば、炎症を調節するかまたは血管における疾患の治癒もしくは治療もしくは予防を促進するために、ある血管のある領域に生物学的に活性な薬剤または薬物を局在化させるための新規な治療法を記載する。特に、本発明者らは、ナノ粒子またはnanoPが、生物学的に活性な薬剤、薬物、及び造影剤などの薬剤に、インビトロ及びインビボの両方でそれらの薬剤の生物活性を保持しながら結合することができることを特定している。
【0008】
したがって、一態様において、本開示は、患者のある血管のある領域への薬剤の送達方法であって、
a)上記薬剤をナノ粒子と複合体化して複合体を製造することと、
b)上記複合体を上記血管の上記領域に送達することと
を含む上記方法を提供する。
【0009】
別な態様において、本開示は、患者のある血管のある領域における炎症の調節方法または治癒の促進方法であって、
a)生物学的に活性な薬剤をナノ粒子と複合体化して複合体を製造することと、
b)上記複合体を上記血管の上記領域に送達することと
を含む上記方法を提供する。
【0010】
別な態様において、本開示は、生物学的に活性な薬剤を、患者のある血管のある領域に少なくとも14日の期間保持させる方法であって、
a)上記生物学的に活性な薬剤をナノ粒子と複合体化して複合体を製造することと、
b)上記複合体を上記血管に送達することと
を含む上記方法を提供する。
【0011】
別な態様において、本開示は、平均径が約1nm~約50nmであり、アルケン、アルキン、シクロアルケン、シクロアルキン、もしくはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーを含むプラズマから形成されるナノ粒子状ポリマー;または、2つ以上の上記ナノ粒子状ポリマーを含み、平均径が約5nm~約500nmである凝集体と、
抗炎症性サイトカイン、抗炎症薬、スタチン系薬物、及び抗増殖薬からなる群より選択される生物学的に活性な薬剤と
を含む複合体を提供する。
【0012】
別な態様において、本開示は、平均径が約1nm~約50nmであり、アルケン、アルキン、シクロアルケン、シクロアルキン、もしくはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーを含むプラズマから形成されるナノ粒子状ポリマー;または、2つ以上の上記ナノ粒子状ポリマーを含み、平均径が約100nm~約200nmである凝集体と、
インターロイキン-10と
を含む複合体を提供する。
【0013】
別な態様において、本開示は、平均径が約1nm~約50nmであり、アルケン、アルキン、シクロアルケン、シクロアルキン、もしくはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーを含むプラズマから形成されるナノ粒子状ポリマー;または、2つ以上の上記ナノ粒子状ポリマーを含み、平均径が約100nm~約200nmである凝集体と、
シロリムスと
を含む複合体を提供する。
【0014】
別な態様において、本開示は、平均径が約1nm~約50nmであり、アルケン、アルキン、シクロアルケン、シクロアルキン、もしくはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーを含むプラズマから形成されるナノ粒子状ポリマー;または、2つ以上の上記ナノ粒子状ポリマーを含み、平均径が約100nm~約200nmである凝集体と、
スリンダクと
を含む複合体を提供する。
【0015】
別な態様において、本開示は、本明細書に開示の複合体を、それを必要とする患者のある血管のある領域に送達することを含む、血管損傷または血管疾患の治療または予防方法を提供する。
【0016】
別な態様において、本開示は、それを必要とする患者の血管損傷または血管疾患の治療または予防用の薬剤の製造における、本明細書に開示の複合体の使用を提供する。
【0017】
以下の図は本明細書の一部を形成し、本開示の特定の態様をさらに示すために含まれている。本開示は、本明細書に提示される具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせてこれらの図の1つ以上を参照することによって、理解をより深めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】心血管疾患を軽減するための治療薬としての、NP3と複合体化されたIL-4(NP3+IL-4)の評価を示す図である。血管構造が減少した部位への治療用カーゴの直接の送達を検討した。A)NP3プラットフォームの固有の特性により、治療用化合物を迅速に複合体化すること、及びこれらの化合物の、インビボで送達された際の生物学的利用能を向上させることが可能である。B)血管損傷/心血管疾患の病理を駆動するM1マクロファージは炎症誘発性である。これらのマクロファージの表現型を該マクロファージのM2抗炎症性状態へと誘導することによって、血管損傷のさらなる進行が緩和され、疾患の退行が促進される可能性がある。IL-4及びIL-10を含む、インターロイキンファミリーのさまざまなサイトカインが、このM1からM2への表現型のシフトを促進する。C)血管のラット頸動脈モデルを使用して、NP3結合インターロイキンの心血管病理の治療に対する有効性を判定した。
図2】NP3上へのIL-4(青)及びIL-10(赤)の負荷容量を示す図である。Cy5標識を使用してIL-4及びIL-10を標識化し、NP3上に複合体化した。洗浄液のCy5標識の蛍光読み取り値を定量化し、溶液中に残存しているカーゴ(NP3に結合していない)を測定し、NP3への負荷量を測定した。A)溶液中のカーゴの関数としての結合したカーゴの総量。B)IL-4及びIL-10の、負荷容量の関数としてのNP3に対する結合効率。C)IL-4及びIL-10の結合を確認するための、結合したIL-4及びIL-10の発光スペクトル。
図3】インビトロでのM2マクロファージの極性化に対するNP3+IL-4の検証を示す図である。A)RAW264.76マウスマクロファージの走査型電子顕微鏡(SEM)によって、未処理の対照及びNP3のみと比較して、NP3+IL-4処理により、伸展(spreading)(上の列)及び表面粗さ(下の列)が増加することが示され、これらはM2活性化と一致する。B)共焦点顕微鏡を使用すると、高発現M2酵素であるアルギナーゼ-1(ARG-1)(緑)の免疫染色によって、NP3+IL-4により、ARG-1の発現が有意に上方制御されることが示され、このことは、対照及びNP3のみと比較して、M2が強固に活性化されたことを示した。
図4】血管損傷のインビボモデル及びNP3の保持を示す図である。A)血管損傷の手順のワークフロー:1.結紮/分離した頸動脈ラットセグメントに微小眼内鉗子を挿入する。2.鉗子を拡張し、360度回転させて、バルーン損傷過拡張損傷/裸出を模擬する。3.鉗子を抜き出し、同一の切開部を通して小径カテーテルを挿入する。4.上記カテーテルを通してNP3+IL-4溶液を送達し、上記分離した血管中で2分間インキュベートする。5.切開部を縫合し、血流を回復させる。B)Cy5標識を使用して、上記分離した血管中のIL-4の保持を追跡することにより、遊離のIL-4は血流の回復後すぐに血管壁から洗い流されることが判る。しかし、IL-4をNP3に結合すると(NP3+IL-4)血管中に有意に保持され、これは5日後も実質的なレベルで持続する。
図5】新生内膜形成の阻害機序を示す図である。A)処理した頸動脈セグメントにおけるM2マクロファージの存在の免疫染色(黄色/緑色)によって、裸出、NP3+IL-4、及び遊離のIL-10と比較して、NP3+IL-10群で有意に増加することが示される。B)損傷した血管内皮の修復の免疫染色による評価によって、NP3+IL4及びNP3+IL-10の両方により、損傷後14日までに十分な血管内皮の完全性が回復することが示されるが、遊離のIL-10で処理した場合にはこれが見られない。
図6A】治療用NP3送達後2週間での新生内膜形成の分析を示す図である。各処理群における新生内膜形成の程度を示す代表的な組織像。
図6B】治療用NP3送達後2週間での新生内膜形成の分析を示す図である。処理した頸動脈セグメントの長さ方向に沿った3つの区画における、定量化した新生内膜形成率。「近位」及び「遠位」という表示は、心臓に対する近接度で血管吻合の位置を示すものである。裸出した損傷は、2週間後には概略60%が血管閉塞につながる。これが、NP3+IL-4群及びNP3+IL10群においてそれぞれ約35%及び20%まで顕著に低下する。遊離のIL-10及びNP3のみでは血管閉塞に有意な効果はなく、このことは、NP3プラットフォームがIL-10の治療効果を促進することを示唆している。
図7】ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色を使用したラット頸動脈損傷モデルにおける新生内膜過形成のインビボ分析を示す図である。被検化合物としては、遊離の状態でまたは200nmのNP3と複合体化された状態で送達される、抗炎症性サイトカインであるインターロイキン-10(IL-10)、抗増殖薬であるシロリムス、及び非ステロイド系抗炎症薬(スリンダク)が挙げらる。200nmのNP3上で送達される場合、すべての処理が、それぞれの遊離の状態で送達された対照と比較して、新生内膜過形成の抑制を示す。
図8】フォン・ウィルブランド因子(vwf)染色を使用したラット頸動脈損傷モデルにおける血管再内皮化のインビボ分析を示す図である。被検化合物としては、遊離の状態でまたは200nmのNP3と複合体化された状態で送達される、抗炎症性サイトカインであるインターロイキン-10(IL-10)、抗増殖薬であるシロリムス、及び非ステロイド系抗炎症薬(スリンダク)が挙げられる。NP3で送達されたIL-10は、血管の治癒(内皮化)を刺激する。驚くべきことに、NP3で送達されたシロリムスも血管の治癒を刺激する。
図9】マンノース受容体(CD206)とCD68細胞表面受容体との共染色を使用したラット頸動脈損傷モデルにおける血管炎症/マクロファージ極性化のインビトロ分析を示す図である。被分析化合物としては、遊離の状態でまたは200nmのNP3と複合体化された状態で送達される、抗炎症性サイトカインであるインターロイキン-10(IL-10)及び非ステロイド系抗炎症薬(スリンダク)が挙げらる。NP3-IL-10は、M2マクロファージの極性化を促進することによって抗炎症反応を刺激する。
図10】腸骨動脈損傷のウサギモデルにおけるインビボでのIL-10と複合体化した200nmのNP3の性能評価結果を示す図である。A)腸骨動脈損傷のウサギモデル。B)新生内膜過形成のH&E染色。C)血栓症のCD31染色(白い点線)。D)炎症性マクロファージ浸潤のCD68染色(白色の染色)。
図11】腸骨動脈損傷のウサギモデルにおけるインビボでのIL-10と複合体化した200nmのNP3の性能評価結果を示す図である。A)H&E染色分析によって、未処理の対照と比較して、IL-10+NP3で処理した血管では、7日間にわたって過形成が低下したことが示される。B)CD31染色分析によって、7日間にわたって血栓症の発生が増加し、これがIL-10+NP3で処理した血管では有意に低下することが明らかになっている。C)血管炎症のCD68染色によって、未処理の対照と比較して、IL-10+NP3は7日間にわたって、炎症誘発性マクロファージの浸潤を低下させ、炎症を低下させることが示される。
図12】100nm及び200nmの両方のnanoP3が7日後に保持され、100nmのnanoP3も送達後2週間で保持されていたことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
当業者であれば、本開示の広範な概括的範囲から逸脱することなく、上記の実施形態に対して多数の変形及び/または変更を行うことができることを認識しよう。したがって、本実施形態は、すべての点において例示であり、限定するものではないと理解されるべきである。
【0020】
全般的な技法及び用語の定義
特に別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、(例えば、免疫学、分子生物学、免疫組織化学、生化学、腫瘍学、及び薬理学の)当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有すると解釈されるべきである。
【0021】
本開示は、別段の指示がない限り、分子生物学、組換えDNA技術、免疫学、及び薬理学の従来の技法を使用して、過度の実験を行うことなく実施される。かかる手順は、例えば、Sambrook,Fritsch & Maniatis,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratories,New York,Fourth Edition(2012),第I巻、第II巻、及び第III巻のすべて;DNA Cloning: A Practical Approach,第I巻及び第II巻(D.N.Glover,Second Edition.,1995),IRL Press,Oxford,本文のすべて;Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach(M.J.Gait,ed,1984)IRL Press,Oxford,本文のすべて、ならびに特にその中の,Gait,ppl-22;Atkinson et al,pp35-81;Sproat et al,pp 83-115;及びWu et al,pp 135-151による論文;4.Nucleic Acid Hybridization: A Practical Approach(B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.,1985)IRL Press,Oxford,本文のすべて;Immobilized Cells and Enzymes: A Practical Approach(1986)IRL Press,Oxford,本文のすべて;Perbal,B.,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)、ならびにMethods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan,eds.,Academic Press,Inc.),全シリーズに記載される。
【0022】
当業者であれば、本開示が、具体的に記載されたもの以外の変形及び変更が可能であることを理解しよう。本開示は、すべてのかかる変形及び変更を含むことを理解されたい。本開示はまた、本明細書において個別にまたは包括的に言及または示されるすべてのステップ、特徴、組成物、及び化合物、ならびに上記ステップまたは特徴の任意の2つ以上の任意且つすべての組み合わせを含む。
【0023】
本開示は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではなく、上記実施形態は例示のみを目的とすることを意図している。機能的に等価な製品、組成物、及び方法は、本明細書に記載されるように、明確に本開示の範囲内にある。
【0024】
本開示の任意の特定の態様または実施形態もしくは実施形態のそれぞれの特徴は、必要な変更を加えて、本開示の任意の他の態様または実施形態もしくは実施形態に適用することができる。
【0025】
本明細書全体を通して、特に別段の明記がない限り、または文脈により別段の解釈をすべきではない限り、単一のステップ、組成物、ステップの群、または組成物の群への言及は、1つ及び複数(すなわち1つ以上)のこれらのステップ、組成物、ステップの群、または組成物の群を包含すると解釈されるべきである。
【0026】
本明細書では、単数形の「a」、「及び(and)」、及び「the」は、文脈による明確な別段の指示がない限り、これらの単語の複数形を含む。例えば、「細菌(a bacterium)」への言及は、複数のかかる細菌を包含し、「アレルゲン(an allergen)」への言及は、1種以上のアレルゲンへの言及である。
【0027】
本明細書では、用語「約」は、その語に繋がる任意の値(複数可)における10%の許容誤差を包含する。誤解を避けるために、用語「約」は当該の整数への明確に限定された言及を包含することを理解されたい(例えば、「約10」は10への明示的な言及を包含すると理解されたい)。
【0028】
用語「及び/または」、例えば「X及び/またはY」とは、「X及びY」または「XまたはY」のいずれかを意味すると解釈され、両方の意味またはいずれかの意味を明示的に支持するものと解釈されるものとする。
【0029】
本明細書全体を通して、語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変化形は、明記された要素、整数、もしくはステップ、または要素、整数、もしくはステップの群を含むことを意味するが、任意のその他の要素、整数、もしくはステップ、または要素、整数、もしくはステップの群を排除することは意味しないことが理解されよう。
【0030】
本発明者らは、WO2018/112543(その内容の全体が本明細書に援用される)において、本明細書において「nanoP」、「nanoP3」、「NanoP」、「nanoP材料」、「NanoP材料」、または「NP3」と記述されるナノ粒子状材料の製造を実証した。これらのnanoP材料は、容易に機能化することができる、多用途且つ多機能の一群のナノ担体として機能することができる。上記nanoP材料は、nanoP材料内に包埋され、nanoP材料の表面に拡散するラジカルとの反応によって、及び/またはnanoP材料もしくはその複合体の表面上に形成された部分/官能基との反応によって、広範囲の生体分子及び薬物と複合体化することができる。
【0031】
本発明者らは、ナノ粒子と複合体化した生物学的に活性な薬剤及び/または造影剤の送達により、ある血管のある領域、例えばある血管の損傷部位において、上記血管の上記領域に遊離の状態で注入した場合の当該薬剤(すなわち、該薬剤は、本明細書に記載のナノ粒子と複合体化されていない形態で送達される)と比較して、インビボで送達した薬剤及び薬物の生物学的利用能及び/または持続性を延長することができることを見出した。
【0032】
したがって、いくつかの実施形態において、上記複合体は、上記血管の上記領域に、複合体化されていない生物学的に活性な薬剤が上記血管の上記領域に保持される期間よりも長い期間保持される。
【0033】
本開示は、血管介入に反応した血管における、生物学的に活性な薬剤の局在化方法及び炎症の調節方法を提供する。本開示はまた、血管の疾患または損傷の治療または予防方法も提供する。
【0034】
炎症、再狭窄、及び新生内膜過形成
本開示の方法を使用して、薬剤、例えば生物学的に活性な薬剤または造影剤を患者のある血管のある領域に送達及び/または局在化することができる。それに代えてまたはそれに加えて、本開示の方法を使用して、患者のある血管のある領域において、炎症を調節するまたは治癒を促進することができる。
【0035】
一態様において、本開示は、患者のある血管のある領域への薬剤の送達方法であって、
a)上記薬剤をナノ粒子と複合体化して複合体を製造することと、
b)上記複合体を上記血管の上記領域に送達することと
を含む上記方法を提供する。
【0036】
一実施形態において、上記ナノ粒子は、平均径が約1nm~約50nmであり、アルケン、アルキン、シクロアルケン、シクロアルキン、もしくはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーを含むプラズマから形成されるナノ粒子状ポリマー;または、2つ以上の上記ナノ粒子状ポリマーを含み、平均径が約5nm~約500nmである凝集体である。
【0037】
一実施形態において、上記薬剤は生物学的に活性な薬剤である。
【0038】
別の実施形態において、上記薬剤は造影剤である。
【0039】
一態様において、本開示は、患者のある血管のある領域における炎症の調節方法であって、
a)生物学的に活性な薬剤をナノ粒子と複合体化して複合体を製造することと、
b)上記複合体を上記血管の上記領域に送達することと
を含む上記方法を提供する。
【0040】
一例において、炎症の調節はマクロファージの極性化を介する。
【0041】
一態様において、本開示は、患者のある血管のある領域における治癒の促進方法であって、
a)生物学的に活性な薬剤をナノ粒子と複合体化して複合体を製造することと、
b)上記複合体を上記血管の上記領域に送達することと
を含む上記方法を提供する。
【0042】
炎症は、組織が1つ以上のさまざまな損傷を受けた際に誘発される。この反応は、さまざまな化学的メディエータの放出ならびに循環血液細胞(血小板及び白血球)の損傷部位へのリクルートメント、及びその後の上記循環血液細胞の活性化を含む事象のカスケードから構成される。
【0043】
理論に拘束されることを望むものではないが、再狭窄は、あらゆる形態の血管形成術中に発生する動脈損傷に応答する自然な治癒過程であると考えられている。この非常に複雑な治癒過程によって内膜過形成、より詳細には、内側の平滑筋細胞(SMC)の遊走及び増殖が起こる。この動脈の治癒過程に関連する問題は、該治癒過程が停止されない場合があることである。動脈は、その動脈が閉塞するようになるまで「治癒」し続ける。再狭窄は、当該の動脈を当初閉塞させたプラーク様コレステロール物質の再沈着ではないことに留意されたい。
【0044】
理論に拘束されることを望むものではないが、狭窄病変の血管形成術が成功により、プラークの破砕、中膜への切開、内皮細胞の裸出及び破壊、血栓形成性コラーゲンの曝露、組織トロンボプラスチンの放出、及び活性化血小板の凝集につながるプロスタサイクリン産生の低下の拡大が生じると考えられている。
【0045】
活性化血小板は、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮成長因子、及びトランスフォーミング成長因子を含む数種の有糸分裂促進因子を放出する。PDGFは有糸分裂促進性及び走化性の両方の特性を有しており、そのため、SMCの中膜から内膜への遊走及び増殖(内膜過形成)の両方を誘発する可能性がある。PDGFは、特定のPDGF受容体に結合することにより、SMCの増殖を引き起こす。PDGFが上記受容体に結合すると、デオキシリボ核酸(DNA)合成を生じ、新たな細胞が複製される。軽度の内皮損傷によって、血小板の接着及び結果として生じるPDGFによる活性化が生じる可能性がある。したがって、単層の血小板の沈着ですら、SMCの増殖を誘発する可能性が十分にある。
【0046】
複雑な狭窄病変に関連する場合があるより深い動脈損傷によって、血小板がより広範に沈着し、且つ活性化され、それにより有糸分裂誘発因子のさらにより大きな利用能が生じ、延いてはSMCの増殖及び内膜過形成が増加する可能性がある。血管形成術に由来する動脈損傷によって、血小板のみならず、マクロファージ、単球、内皮細胞、またはSMC自体からもPDGF様化合物が放出される可能性がある。
【0047】
ヒトアテローム由来または後述の実験的動脈損傷由来の活性化SMCはPDGF様分子を分泌し、このことにより、該SMC自体のPDGF様物質の放出によって、SMCの増殖がSMC自体によって永続化されるように思われる。したがって、PDGF関連物質(血小板、マクロファージ、単球、内皮細胞、及び平滑筋細胞)を分泌することができる細胞のいずれかまたはすべてが、血管形成術後の再狭窄のカスケード作用に寄与する可能性がある。
【0048】
再狭窄を予防する1つの方法は、平滑筋細胞の増殖を止めることである。したがって、理論に拘束されることを望むものではないが、再狭窄を止める可能性のあるいくつかの方法としては、
・動脈損傷部位での血小板の接着及び凝集を低減すること、
・成長因子及びそれらの受容体の発現をブロックすること、
・上記成長因子の競合的アンタゴニストを開発すること、
・応答性細胞における受容体シグナル伝達を妨害すること、または
・平滑筋の増殖を阻害すること
がある。
【0049】
ナノ粒子
用語「ナノ粒子」は、「nanoP」または「NP3」と同義で使用することができる。用語「ナノ粒子」または「nanoP」または「NP3」とは、別段の指定がない限り、または該用語が使用される文脈から明らかでない限り、粒径が100ミクロン未満のナノ粒子状材料をいう。例えば、上記nanoPは、粒径が、約50~500、100~500、200~500、5~200、5~100、5~50、5~20、20~100、100~300、または200~400nm、例えば、約5、10、20、30、40、50、100、150、200、250、300、350、400、450、もしくは500nm、または約5~約400nm、もしくは約5~約300nm、もしくは約5~約200nm、もしくは約5~約100nm、もしくは約50~約100nm、もしくは約100~約500nm、もしくは約150~約500nm、もしくは約180nm~約500nm、もしくは約100~約400nm、もしくは約150~約400nm、もしくは約180~約400nm、もしくは約100~約300nm、もしくは約150~300nm、もしくは約180~300nm、もしくは約100~約200nm、もしくは約150~約200nm、もしくは約180~約200nm、もしくは約150~約250nm、もしくは約180~約250nm、もしくは約200~約400nm、もしくは約200nm~約300nmの範囲、またはそれらの混合物であってよい。一実施形態において、上記nanoP3は約200nmである。別の実施形態において、上記nanoP3は約50~約100nmである。本明細書に記載の粒径とは、上記ナノ粒子状材料の径または平均径をいうことが理解されよう。用語「nanoP」または「NP3」は、別段の指定がない限り、または該用語が使用される文脈から明らかでない限り、本明細書で定義される「ナノ粒子状ポリマー」及び「凝集体」の両方を包含する。したがって、例えば、上述の粒径は、ナノ粒子またはナノ粒子の凝集体に等しく適用される。1つの好ましい実施形態において、上記ナノ粒子状材料はプラズマポリマーを含む。上記プラズマポリマーはプラズマ中のフラグメントの縮合によって形成することができ、上記材料は、1種以上の化合物、例えば、有機種または有機金属種を含む1種以上の反応剤と共有結合することができる。
【0050】
上記nanoP3材料は、ホモポリマーまたはコポリマーであってよい。好適なnanoP3材料の例及び好適なnanoP3材料の誘導方法は、PCT公開第WO2018/112543号の21ページ、2行~28ページ、12行に記載され、該公開は参本明細書に援用される。
【0051】
ナノ粒子状ポリマーは、窒素などの、周期表の第15、16、または17族のガスの存在下で生成させることができる。このガスのフラグメントはナノ粒子状ポリマー中に取り込まれる場合がある。例えば、窒素が存在することによって、ナノ粒子状ポリマーまたはnanoP材料中に、アミン基、イミン基、もしくはニトリル基、またはそれらの混合物が存在する場合がある。したがって、本明細書に開示のナノ粒子状ポリマーは窒素を含む場合がある。
【0052】
窒素は、キャリアーとしてだけでなく、反応性の非重合性ガスとしても好適であることが見出されている。このことは、窒素は上記ナノ粒子状材料中に導入され、得られる官能化ナノ粒子状材料に特定の物理化学的特性を与える可能性もあることを意味する。さらに、窒素によって、窒素を使用しない場合には不可能である異なる形態のナノ粒子の生成が可能になることも考えられる。窒素と同一の族のガスなどの他のガスを含めることで、ナノ粒子の生成機構及び物理化学的特性を調節における自由度がさらに高まることも期待される。
【0053】
一実施形態において、上記nanoP材料は、少なくとも1種の本明細書に記載のモノマーを含むプラズマから得られる。任意選択で、上記nanoP材料は、ガス、例えば窒素の存在下で生成され、上記ガスのフラグメントは上記ナノ粒子状ポリマー中に導入される。
【0054】
上記nanoP材料の窒素:炭素元素比は約0.01:1~約2:3であってよい。例えば、上記ナノ粒子状ポリマーの窒素:炭素元素比は、約0.05~約1、または約0.1~約1、または約0.15~約1、または約0.2~約1、または約0.25~約1、または約0.3~約1、または約0.35~約1、または約0.4~約1、または約0.45~約1、または約0.5~約1、または約0.55~約1、または約0.6~約1、または約0.65~約1であってよい。あるいは、上記ナノ粒子状ポリマーの窒素:炭素元素比は約0.1~約1:2であってよい。一例において、上記ナノ粒子状ポリマーの窒素:炭素元素比は、約0.35~約0.5または約0.35~約1であってよい。別の例において、上記ナノ粒子状ポリマーの窒素:炭素元素比は約0.38であってよい。
【0055】
本明細書に記載のnanoP材料は、好ましくは、1種以上の化合物、例えば、有機化合物もしくは有機金属化合物、または本明細書で定義される第2の種を結合することができる少なくとも1種の結合部位を含む。
【0056】
一実施形態において、本明細書に記載のnanoP材料は、少なくとも、1種以上の化合物を結合することができる結合部位を含み、該結合部位は、有機化合物もしくは有機金属化合物、または本明細書で定義される第2の種を結合することができる不対電子を含む。
【0057】
上記nanoP材料は上記ポリマー中に不対電子を含んでいてもよい。これらの不対電子は、上記ナノ粒子の表面上または表面近傍に存在していてもよい。上記不対電子は、ナノ粒子状材料の粒子内の40nm以下の深さ、または表面の約30、20、もしくは10nm以内に存在していてもよく、あるいは表面から約10~約40nm、または表面から約10~30nm、20~40nm、もしくは20~30nm、または表面から約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、もしくは40nmである。上記不対電子は約0~約40nmのさまざまな深さに存在していてもよい。場合により、上記不対電子は40nmを超える深さに存在していてもよい。上記不対電子は上記ナノ粒子状材料の体積全体にわたって存在していてもよい。これによって、この材料が、有機種または有機金属種などの第2の種と反応することができ、上記種を上記ナノ粒子状ポリマーに共有結合させて複合体を形成するようにすることができる。
【0058】
一実施形態において、nanoP材料であって、その粒子の平均径が約5nm~約500nmであり、上記nanoP材料は有機プラズマポリマーを含み、上記nanoP(ナノ粒子状ポリマーまたはその凝集体)は不対電子を含み、それにより有機種または有機金属種と共有結合することができる上記nanoP材料が提供される。
【0059】
別の実施形態において、上記ナノ粒子状材料またはnanoP材料は、第2の種と化学的または物理的に結合することができる少なくとも1つの機能的部分を含む。
【0060】
上記nanoP材料の粒径は、走査型電子顕微鏡法、透過型電子顕微鏡法、小角レーザー光散乱法、光子相関分光法、微分型電気移動度分析法、またはいくつかのその他の適宜の技法によって測定することができる。上記nanoP材料の粒子の粒径分布は、狭くてもまたは広くてもよい。上記粒径分布の標準偏差は、平均粒径の約1%~約500%、または約1~200、1~100、1~50、1~20、1~10、1~5、1~2、10~500、20~500、50~500、100~500、200~500、10~100、10~50、または50~100%、例えば、約1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、または500%であってよい。場合によって、上記粒子は略単分散であってもよい、すなわち、すべての粒子の径が略同一(例えば、同一の径の約10%、または約5%、または約2%以内)であってもよい。
【0061】
上記nanoP材料は有機プラズマポリマーを含んでいてもよい。プラズマポリマーは、不均一で、密な、高度に架橋されたネットワークを特徴とする。上記プラズマポリマーは非晶性であってもよい。このプラズマポリマーは、プラズマ中で、ガス混合物中の有機ガス及び他の反応性ガスから生成する活性種の反応(例えば、イオン化及びフラグメンテーション)によって、またはプラズマ/ガス混合物中で、上記ガス混合物中のガスのイオン化及びフラグメンテーションから生じる反応性種によって生成させることができる。
【0062】
上記nanoP材料は、電子常磁性共鳴(EPR)分光法、赤外線分光法(フーリエ変換赤外線分光法など)、ラマン分光法、UV-VIS分光法、元素分析(例えばX線光電子分光法)、軟X線分光法、ゼータ電位の測定、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法、ゲル浸透クロマトグラフィー、走査型電子顕微鏡法(SEM)、透過型電子顕微鏡法(TEM)、小角レーザー光散乱法、光子相関分光法、微分型電気移動度分析法、弾性反跳検出分析(ERDA)法、または中性子散乱法を含む、但しこれらに限定されない多くの方法によってキャラクタライズすることができる。
【0063】
上記nanoP材料(例えば上記ナノ粒子状ポリマー状または凝集体)は、以下の特徴の1つ以上によってキャラクタライズすることができる:
・約3470G~約3520Gの範囲を中心とし、及び/または約2.001~約2.005の範囲のg因子に相当するブロードな電子常磁性共鳴ピーク、
・合成後約0時間~約2時間内に電子常磁性共鳴法によって測定された、約1019~約1015スピン/cmの範囲のスピン密度、
・合成後約0時間~約240時間内に電子常磁性共鳴法によって測定された、約1017~約1015スピン/cmの範囲のスピン密度、
・以下を中心とする赤外線スペクトルの吸収帯の1つ以上:
*約3680~約2700cm-1の範囲、
*約1800~約1200cm-1の範囲、
*約2330~約2020cm-1の範囲、
*約1200~約1010cm-1の範囲、及び/または
*約1010~約700cm-1の範囲、
・以下を中心とする赤外線スペクトルの吸収帯の1つ以上:
*約3600~3100cm-1の範囲、及び/または
*約3100~2700cm-1の範囲、
・約-100mV~約+100mVの範囲のゼータ電位、
・約2~約10のpH範囲内の溶液中で測定された約-80mV~約+80mVの範囲のゼータ電位、または
・約0.1:1~約2:3の窒素:炭素元素比。
【0064】
一実施形態において、上記nanoP材料、ナノ粒子状ポリマー、または凝集体は、EPR分光法を使用してキャラクタライズされる。上記ナノ粒子状ポリマーまたは凝集体は、約3470G~約3520Gの範囲を中心とし、及び/または約2.001~約2.005の範囲のg因子に相当するブロードな電子常磁性共鳴ピークを示してもよい。
【0065】
一実施形態において、上記nanoP材料、ナノ粒子状ポリマー、または凝集体は、合成後約0時間~約2時間内にEPR分光法によって測定された、約1019~約1015スピン/cmの範囲のスピン密度を有する。上記測定は、合成後約5分、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約35分、約40分、約45分、約50分、約55分、約60分、約65分、約70分、約75分、約80分、約85分、約90分、約95分、約100分、約105分、約110分、約115分、または約120分に行ってもよい。
【0066】
一実施形態において、上記nanoP材料、ナノ粒子状ポリマー、または凝集体は、合成後約0時間~約240時間内に電子常磁性共鳴法によって測定された、約1017~約1015スピン/cmの範囲のスピン密度を有する。上記測定は、合成後約0.5時間、約1時間、約2時間、約4時間、約5時間、約6時間、約8時間、約10時間、約20時間、約30時間、約40時間、約50時間、約60時間、約70時間、約80時間、約90時間、約100時間、約110時間、約120時間、約130時間、約140時間、約150時間、約160時間、約170時間、約180時間、約190時間、約200時間、約210時間、約220時間、約230時間、または約240時間に行ってもよい。
【0067】
一実施形態において、上記nanoP材料、ナノ粒子状ポリマー、または凝集体は、赤外線分光法(フーリエ変換赤外線分光法など)を使用してキャラクタライズされる。例えば、上記ナノ粒子状ポリマーまたは凝集体は、以下を中心とする赤外線スペクトルの吸収帯の1つ以上を示してもよい:
・約3680~約2700cm-1の範囲、
・約1800~約1200cm-1の範囲、
・約2330~約2020cm-1の範囲、
・約1200~約1010cm-1の範囲、
・約1010~約700cm-1の範囲、
・約3600~3100cm-1の範囲、
・約3100~2700cm-1の範囲、及び/または
・それらの混合物。
【0068】
別の実施形態において、上記nanoP材料、ナノ粒子状ポリマー、または凝集体は、該ナノ粒子状ポリマーまたは凝集体のゼータ電位を使用してキャラクタライズされる。例えば、上記nanoP材料、ナノ粒子状ポリマー、または凝集体のゼータ電位は約-100mV~約+100mVであってよい。例えば、上記ゼータ電位は約-50mV~約60mVの範囲であってよい。
【0069】
さらなる実施形態において、上記nanoP材料、ナノ粒子状ポリマー、または凝集体の、約2~約10のpH範囲内の溶液中で測定した場合のゼータ電位は、約-80mV~約+80mVの範囲である。
【0070】
上記nanoP材料の表面モルホロジーは粗いカリフラワー様である場合がある。これは、上記nanoP材料の生成が上記ナノ粒子状ポリマーの凝集によることに起因する可能性がある。したがって、上記nanoP材料は上記ナノ粒子状ポリマーの凝集体であってもよい。上記nanoP材料及び凝集体は球形であっても、または略球形であってもよい。上記ナノ粒子状ポリマーの粒径は、約1~約50nm、または約5~10、5~10、10~50、20~50、または10~30nm、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50nmであってよい。凝集体(及び関連するナノ粒子状ポリマー)には、経時的に量が減少する反応性の高いラジカルが包埋されている場合がある。上記nanoP材料は、炭素クラスターの非局在化軌道中の長寿命で安定したラジカルが包埋されている場合もある。上記安定ラジカル(二次ラジカル)は、反応性の高いラジカル(一次ラジカル)が関与する反応から生じる場合がある。上記nanoP材料の表面は親水性である場合がある。したがって、上記表面によって、上記nanoP材料を水中に容易に分散することができる場合がある。そのことによって、表面に固定化された生物活性分子の生物活性を保持することが可能になる場合がある。上記表面は、該表面を空気に曝露することによって、生成中または生成後にラジカルが酸化される結果親水性になる可能性がある。1種以上の第2の種との複合体化後に、上記nanoP材料複合体は親水性であるかまたは疎水性である場合がある。あるいは、上記nanoP材料複合体は両親媒性を示す場合がある。
【0071】
使用されるモノマーまたは重合中に適用される条件に応じて、上記nanoP材料は架橋される場合がある。本明細書における用語「架橋」とは、分子内及び/または分子間結合を含むポリマー組成物をいう。これらの架橋結合は本質的に共有結合であってもまたは非共有結合であってもよい。非共有結合としては、水素結合、静電結合、及びイオン結合が挙げられる。
【0072】
架橋によって得られる潜在的な利点の1つは、得られるnanoP材料及び、潜在的には、かかる材料から形成される複合体の安定性である。例えば、架橋によって、架橋されていない類似の組成物と比較して、上記nanoP材料(または結果として得られる複合体)の溶解性が低下する可能性がある。さらに、上記nanoP材料(またはそれから形成される複合体)の架橋後の性質によって、上記ナノ粒子状材料または結果として得られる複合体の耐薬品性が向上する場合がある。
【0073】
上記nanoPにはさらに無機元素もしくは化合物、または有機金属化合物をドープすることができ、これらは医用画像診断技法における画像強調造影剤として作用する。上記nanoPには、酸化鉄またはガドリニウム化合物などの磁気共鳴画像診断法(MRI)造影剤をドープすることができる。画像強調造影剤の例としては、蛍光色素(例えば、Alexa 680、インドシアニングリーン、及びCy5.5);11C、13N、15O、18F、32P、51Mn、52mMn、52Fe、55Co、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、72As、73Se、75Br、76Br、82mRb、83Sr、86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、110In、111In、120I、123I、124I、125I、131I、154Gd、155Gd、156Gd、157Gd、158Gd、177Lu、186Re、188Re、及び223Raなどの同位体及び放射性核種;クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジミウム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、またはエルビウム(III)などの常磁性イオン;ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、及びビスマス(III)などの金属;クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジミウム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、またはエルビウム(III)の酸化物;酸化鉄及び酸化ガドリニウムを含む、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、及びビスマス(III)などの金属;リポソームなどの超音波造影剤;バリウム、ガリウム、及びタリウム化合物などの放射線不透剤が挙げられる。上記画像強調造影剤は、上記nanoP材料上に直接導入しても、またはキレート剤などの中間官能基を使用することによって間接的に導入してもよい。
【0074】
例示的なプロセスにおいて、上記nanoP3材料は、150mTorrのN/C/Arのガス状混合物の活性化及び50Wの高周波電力の印加を介したプラズマ重合によって調製することができる。
【0075】
モノマー
本明細書に記載のnanoP材料は、1種以上のモノマーから誘導される。
【0076】
一実施形態において、上記1種以上のモノマーはガス状の形態で使用され、上記nanoP材料を生成する。
【0077】
モノマーは炭化水素であってよい。炭化水素の例としては、アルケン、アルキン、シクロアルケン、及びシクロアルキンが挙げられる。
【0078】
好適なアルケンモノマーの例としては、エチレン、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、それらの異性体、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0079】
好適なアルキンモノマーの例としては、エチン(アセチレン)、プロピン、1-ブチン、1-ペンチン、1-ヘキシン、1-ヘプチン、1-オクチン、1-ノニン、1-デシン、それらの異性体、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0080】
好適なシクロアルケンモノマーの例としては、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、1,3-シクロヘキサジエン、1,4-シクロヘキサジエン、1,5-シクロオクタジエン、それらの異性体、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0081】
好適なシクロアルキンモノマーの例としては、シクロヘプチン、シクロオクチン、シクロノニン、それらの異性体、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0082】
一実施形態において、モノマーとしてアルケンが使用される。上記アルケンは、ナノ粒子状ポリマーの生成に利用される唯一のモノマーであってもよく、あるいは該アルケンは、コポリマーを生成させるための少なくとも1種の他のモノマー、例えば、別のアルケン及び/またはアルキン、シクロアルケン、もしくはシクロアルキンの存在下で使用されてもよい。
【0083】
一実施形態において、モノマーとしてアルキンが使用される。上記アルキンは、ナノ粒子状ポリマーの生成に利用される唯一のモノマーであってもよく、あるいは該アルケンは、コポリマーを生成させるための少なくとも1種の他のモノマー、例えば、別のアルキン及び/またはアルケン、シクロアルケン、もしくはシクロアルキンの存在下で使用されてもよい。さらなる実施形態において、モノマーとしてアセチレンが、単独で、または少なくとも1種の他のモノマーの存在下で使用される。
【0084】
別の実施形態において、モノマーとしてアセチレンが、少なくとも1種の他のモノマー、例えば、アルケン、アルキン、シクロアルケン、またはシクロアルキンである少なくとも1種の他のモノマーとの組み合わせで使用される。
【0085】
一実施形態において、モノマーとしてシクロアルケンが使用される。上記シクロアルケンは、ナノ粒子状ポリマーの生成に利用される唯一のモノマーであってもよく、あるいは該シクロアルケンは、コポリマーを生成させるための少なくとも1種の他のモノマー、例えば、別のシクロアルケン及び/またはアルケン、アルキン、もしくはシクロアルキンの存在下で使用されてもよい。
【0086】
一実施形態において、モノマーとしてシクロアルキンが使用される。上記シクロアルキンは、ナノ粒子状ポリマーの生成に利用される唯一のモノマーであってもよく、あるいは該シクロアルキンは、コポリマーを生成させるための少なくとも1種の他のモノマー、例えば、別のシクロアルキン及び/またはアルケン、アルキン、もしくはシクロアルケンの存在下で使用されてもよい。
【0087】
上記nanoPを生成させるために使用することができる他のモノマーとしては、ペルフルオロカーボン、エーテル、エステル、アミン、アルコール、またはカルボン酸が挙げられる。
【0088】
好適なペルフルオロカーボンの例としてはペルフルオロアリルベンゼンが挙げられるが、これに限定はされない。
【0089】
好適なエーテルの例としては、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0090】
好適なアミンの例としては、アリルアミン、シクロプロピルアミン、ポリ(ビニルアミン)、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0091】
好適なアルコールの例としては、ポリ(ビニルアルコール)、アリルアルコール、エタノール、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0092】
好適なカルボン酸の例としてはアクリル酸が挙げられるが、これに限定はされない。
【0093】
生物学的に活性な薬剤
本明細書では、用語「生物学的に活性な薬剤」とは、インビボで生物学的及び/または薬理学的活性を有する任意の薬剤(例えば、ペプチド、ポリペプチド、核酸、または小分子薬物)をいう。当業者であれば、再狭窄を予防するもしくは炎症を予防することが知られている生物学的に活性な薬剤もしくは薬物、または心血管疾患を治療する薬剤が、本明細書に記載のナノ粒子と複合体化するのに適した薬剤である可能性があることを理解しよう。好適な生物学的に活性な薬剤の例としては、抗血小板剤及び抗凝血剤、抗血栓剤及び線維素溶解剤、抗複製剤及び抗増殖剤、抗炎症剤、心血管系薬剤、タンパク質、ペプチド、及びヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0094】
本明細書では、用語「ペプチド」は、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸を含む任意のポリマーを意味することを意図する。用語「ペプチド」は、リボソームを使用して組み立てられるポリマーのみならず、酵素によって組み立てられるポリマー(すなわち、非リボソームペプチド)、及び合成的に組み立てられるポリマーも包含することを意図する。種々の実施形態において、用語「ペプチド」は、「タンパク質」または「ポリペプチド」と同義であると見なされる場合がある。種々の実施形態において、用語「ペプチド」は、50個を超えるアミノ酸、あるいは、50個以下のアミノ酸のポリマーに限定される場合がある。種々の実施形態において、用語「ペプチド」は、当該ポリマーのモノマー単位としてアミノ酸のみを含むことを意図する一方で、種々の実施形態において、用語「ペプチド」は、アミノ酸骨格に対する追加の成分及び/または修飾を含む。例えば、種々の実施形態において、用語「ペプチド」は、アミノ酸のコアポリマーのみならず、上記コアポリマーの誘導体、例えば、ペンダントポリエチレングリコール基を有するコアポリマーまたはアミノ酸鎖のアミノ末端もしくはカルボキシ末端にアミド基を有するコアポリマーにも適用される場合がある。
【0095】
「ペプチド模倣物」は、活性なリガンド、または酵素基質もしくはサイトカインなどの生体分子を生物学的に模倣する、ペプチド、修飾ペプチド、または任意の他の分子などの分子であってよい。例えば、ペプチド模倣物は、炎症過程に関与するサイトカインの生理学的活性に拮抗し、該活性を刺激し、または他の方法で該活性を調節する場合がある。あるいは、上記ペプチド模倣物は、その天然のタンパク質の心血管疾患の治療における活性を模倣する。
【0096】
本明細書では、用語「タンパク質」とは、アミノ酸の配列であって、鎖長が、より高いレベルの該アミノ酸の配列の三次構造及び/または四次構造を形成するのに十分な上記アミノ酸の配列をいう。上記タンパク質の分子量は、約300Da~約150kDaの範囲であってよい。上記タンパク質の分子量は、150kDaを超えていてもよく、または300Da未満であってもよい。
【0097】
抗血小板剤及び抗凝血剤
接着及び血小板凝集は、抗血小板剤及び抗凝血剤によって予防することができる。一例において、上記生物学的に活性な薬剤は抗血小板剤である。別の例において、上記生物学的に活性な薬剤は抗凝血剤である。
【0098】
好適な抗血小板剤の例としては、アスピリン及びジピリダモールが挙げられるが、これらに限定はされない。アスピリンは、鎮痛薬、解熱薬、抗炎症薬、抗血小板薬に分類される。アスピリンは臨床試験が行われ、心筋梗塞(心臓発作)後の患者の突然死及び/または非致死的再梗塞のリスクを軽減することが証明されている。提案されたアスピリンの作用機序は血小板に直接関係する。アスピリンは何らかの理由で血小板を遮断し、凝血を制限する。これにより、血栓に見られるカスケード血小板凝集及びその後の再狭窄が予防される。したがって、アスピリンは再狭窄阻害剤の候補である。ジピリダモールは、抗血小板特性を有するという点で、アスピリンに類似する薬物である。ジピリダモールは冠血管拡張剤としても分類される。ジピリダモールは、全身血圧または末梢動脈の血流を変化させることなく、冠動脈の一次選択的拡張によって冠動脈血流を増加させる。これらの血管拡張特性は、再狭窄の予防に有益である可能性があると考えられている。
【0099】
好適な抗凝血薬の例としては、ヘパリン、クマジン、プロタミン、及びヒルジンが挙げられるが、これらに限定はされない。これらの薬物は、血液を凝固させる結合剤であるトロンビンの産生を防ぐことにより、抗凝血剤として機能する。これもまた、病変部位における血小板凝集のカスケード効果を低減し、したがって再狭窄を低減する可能性がある。ヘパリンの存在下でプロタミンを使用すると、プロタミンはヘパリンアンタゴニストとして作用し、ヘパリンの効果を遮断する。但し、単独で使用されたプロタミンは抗凝血剤として作用する。ヒルジンは通常人体中に存在しないために選択される。ヒルジンはヒルの唾液腺中に存在する薬物である。ヒルジンは、ヘパリン、クマジン、及びプロタミンと類似の形態で作用する、非常に高濃度の抗凝血剤である。
【0100】
抗血栓剤及び線維素溶解剤
一例において、上記生物学的に活性な薬剤は抗血栓剤である。別の例において、上記生物学的に活性な薬剤は線維素溶解剤である。
【0101】
抗血栓剤及び線維素溶解剤の例としては、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤、直接トロンビン阻害剤、ヘパリン、低分子量ヘパリン、血小板アデノシン二リン酸(ADP)受容体阻害剤、線維素溶解剤(ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、組換え組織プラスミノーゲン活性化因子、レテプラーゼ、及びテネクテプラーゼを含む)、酵素(ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、及びプラスミンを含む)、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0102】
抗複製剤及び抗増殖剤
細胞の複製を妨げる薬物にはいくつかの種類がある。理論に拘束されることを望むものではないが、有糸分裂阻害剤(細胞毒性剤)は直接作用して細胞の有糸分裂(複製)を防ぐ一方、代謝拮抗剤はデオキシリボ核酸(DNA)合成を防ぎ、延いては複製を防ぐ。一例において、上記生物学的に活性な薬剤は抗複製薬である。一例において、上記生物学的に活性な薬剤は抗増殖剤である。
【0103】
好適な抗複製薬の例としては、メトトレキサート、コルヒチン、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、アドリアマイシン、及びムタマイシンが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0104】
好適な抗増殖薬の例としては、ラパマイシンの標的(mTOR)阻害剤(シロリムス、エベロリムス、及びABT-578を含む)、パクリタキセル及び抗腫瘍剤(アルキル化剤、例えば、シクロホスファミド、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン、ロムスチン、イホスファミド、プロカルバジン、ダカルバジン、テモゾロミド、アルトレタミン、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンを含む)が挙げられるが、これらに限定はされない。一実施形態において、上記生物学的に活性な薬剤はパクリタキセルである。
【0105】
別の実施形態において、上記生物学的に活性な薬剤は、シロリムス((1R,9S,12S,15R,16E,18R,19R,21R,23S,24E,26E,28E,30S,32S,35R)-1,18-ジヒドロキシ-12-[(2R)-1-[(1S,3R,4R)-4-ヒドロキシ-3-メトキシシクロヘキシル]プロパン-2-イル]-19,30-ジメトキシ-15,17,21,23,29,35-ヘキサメチル-11,36-ジオキサ-4-アザトリシクロ[30.3.1.04,9]ヘキサトリアコンタ-16,24,26,28-テトラエン-2,3,10,14,20-ペントン;CAS番号53123-88-9)である。ラパマイシンとしても知られるシロリムスは、mTOR阻害によってT細胞及びB細胞のIL-2に対する感受性を低下させることにより、T細胞及びB細胞の活性化を阻害すると考えられているマクロライド化合物である。シロリムスは免疫抑制薬であり、創傷治癒に禁忌であると以前報告されている。この薬の投与を受けている患者の多くにおいて、手術部位の創傷治癒が害されることが観察される。シロリムスによる治療を受けた血管の領域は、その薬物の抗増殖作用に起因して再内皮化が遅れることが知られている。シロリムスは式Iとして示される。
式I:
【0106】
【化1】
【0107】
抗炎症剤
抗炎症性の生物学的に活性な薬剤または薬物はまた、血管形成術中の管腔組織への損傷によって生じた炎症を局所的に抑制することにも有用である場合がある。
【0108】
一例において、上記生物学的に活性な薬剤は抗炎症剤である。例えば、上記抗炎症剤は抗炎症薬または生体分子であってよい。
【0109】
好適な抗炎症薬としては、デキサメタゾン、ベタメタゾン、及びプレドニゾンなどのコルチコステロイド、ならびにスリンダク(2-[(3Z)-6-フルオロ-2-メチル-3-[(4-メチルスルフィニルフェニル)メチリデン]インデン-1-イル]酢酸;CAS番号38194-50-2)、ナプロキセン(CAS番号22204-53-1)、及びアスピリン(CAS番号50-78-2)などの広範囲に使用される免疫抑制剤が挙げられるが、これらに限定はされない。一実施形態において、上記生物学的に活性な薬剤はスリンダク(2-[(3Z)-6-フルオロ-2-メチル-3-[(4-メチルスルフィニルフェニル)メチリデン]インデン-1-イル]酢酸;CAS番号38194-50-2)である。式IIとして示されるスリンダクは非ステロイド系抗炎症薬である。
式II:
【0110】
【化2】
【0111】
好適な抗炎症剤としてはサイトカインまたはそのフラグメントが挙げられる。サイトカインは細胞シグナル伝達において重要な小タンパク質(約5~20KDa)である。炎症は炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインとの間の相互作用によりキャラクタライズされる。サイトカインとしては、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、及び腫瘍壊死因子を挙げることができる。好適な例としては、IL4、IL-10、IL-13、IFN-α、及びトランスフォーミング成長因子-βなどの抗炎症性サイトカインが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0112】
当技術分野では、マクロファージの極性化がインターロイキンによって二者択一的に活性化される場合があることは公知である。M1表現型は炎症誘発性であり、M2表現型は抗炎症性である。したがって、当業者であれば、M2抗炎症性表現型を活性化することが知られているインターロイキンが、本明細書に記載のナノ粒子に複合体化するのに好適な生物学的に活性な薬剤であることが理解されよう。一例において、上記生物学的に活性な薬剤はサイトカインまたはそのフラグメントである。一例において、上記生物学的に活性な薬剤はインターロイキン-4(IL-4)である。別の例において、上記生物学的に活性な薬剤はインターロイキン-10(IL-10)である。
【0113】
心血管系薬剤
一例において、上記生物学的に活性な薬剤は心血管疾患を治療するための医薬であってよい。好適な医薬としては、ACE阻害剤、抗ゴテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、血管拡張剤、及びスタチン(HMG-CoAレダクターゼ阻害剤としても知られる)が挙げられるが、これらに限定はされない。例えば、上記生物学的に活性な薬剤は、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチンなどのスタチン、またはそれらの混合物である。一実施形態において、上記生物学的に活性な薬剤はシンバスタチンである。
【0114】
一酸化窒素放出薬剤が、本明細書に記載のナノ粒子に複合体化するのに好適な薬剤である場合があることも企図される。
【0115】
抗体
一実施形態において、上記生物学的に活性な薬剤は抗体である。上記抗体は、上記生物学的に活性な薬剤を血管中の正しい位置に標的化することができる抗体であってもよい。それに加えてまたはそれに代えて、上記抗体は、アンタゴニスト、例えばサイトカイン阻害剤であってもよい。
【0116】
本明細書では、用語「抗体(antibody)」または「複数種の抗体(antibodies)」は、1つ以上の免疫グロブリン鎖、例えば、Vを含むポリペプチド及びVを含むポリペプチドから構成される可変領域を含むタンパク質を包含すると解釈されるものとする。抗体はまた、定常ドメインを含んでいてもよく、定常ドメインの一部は、定常領域または定常フラグメントまたは結晶化可能フラグメント(Fc)に配置されていてもよい。VとVは相互作用して、1つまたは少数の密接に関連した抗原に特異的に結合することができる抗原結合領域を含むFvを形成する。一般に、哺乳動物由来の軽鎖は、κ軽鎖またはλ軽鎖のいずれかであり、且つ哺乳動物由来の重鎖は、α、δ、ε、γ、またはμである。上記抗体は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、及びIgA)、またはサブクラスであってよい。用語「抗体」はまた、ヒト化抗体、脱免疫化抗体、非枯渇性抗体、非作動性抗体(non-activating antibodies)、霊長動物化抗体、ヒト抗体、及びキメラ抗体も包含する。本明細書では、用語「抗体」はまた、エピトープ決定基に結合することができる、Fab、F(ab’)2、及びFvなどの、完全長の、インタクトな、または全抗体分子以外の形式を含むことも意図する。これらの形式は、抗体の「フラグメント」と呼ばれることもある。これらの抗体形式は標的タンパク質に選択的に結合する何らかの能力を保持しており、これらの抗体形式の例としては、以下、すなわち、
(1)Fab:抗体分子の一価の結合性フラグメントを含み、全抗体を酵素パパインで消化して、インタクトな軽鎖及び1つの重鎖の一部分を生成させることによって製造することができるフラグメント;
(2)Fab’:全抗体をペプシンで処理し、その後還元してインタクトな軽鎖及び1つの重鎖の一部分を生成させることによって得ることができる抗体分子のフラグメント;抗体分子当り2つのFab’フラグメントが得られる;
(3)(Fab’):全抗体を酵素ペプシンで処理し、その後還元することなく得ることができる抗体のフラグメント;F(ab)2は、2つのジスルフィド結合によって結合した2つのFab’フラグメントの二量体;
(4)Fv:軽鎖の可変領域及び2本鎖として表される重鎖の可変領域を含む遺伝子操作されたフラグメントとして定義される;
(5)単鎖抗体(「SCA」):遺伝子的に融合した単鎖分子としての、適宜のポリペプチドリンカーによって連結された軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域を含む、遺伝子操作された分子として定義される;かかる単鎖抗体は、多重特異性であってもそうでなくてもよい、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディなどの多量体の形態であってよい;ならびに
(6)単一ドメイン抗体、一般的には軽鎖を含まない可変重鎖ドメイン
が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0117】
したがって、本明細書に記載の抗体は、別個の重鎖、軽鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fc、いずれの重鎖を含まない可変軽鎖ドメイン、軽鎖を含まない可変重鎖ドメイン、及びFvを含んでいてもよい。かかるフラグメントは組換えDNA技法によって、またはインタクトな免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的分離によって製造することができる。本明細書に記載される、及びその他の当技術分野で公知の抗体またはそれらのフラグメントのいずれも、本明細書に開示のnanoP粒子と複合体化することができる。
【0118】
したがって、上記生物学的に活性な薬剤は、炎症過程に関与する因子を標的とする抗体またはタンパク質またはペプチドであってよい。
【0119】
本明細書において、用語「標的化リガンド」とは、標的分子に結合するかまたは標的分子と相互作用する分子をいう。一般的には、上記相互作用または結合の性質は非共有結合、例えば、水素、静電、またはファンデルワールス相互作用によるものあるが、共有結合であってもよい。
【0120】
本明細書では、用語「リガンド」とは、生物学的マーカーを標的とする化合物をいう。リガンドの例としては、タンパク質、ペプチド、抗体、抗体フラグメント、糖類、炭水化物、グリカン、サイトカイン、ケモカイン、ヌクレオチド、レクチン、脂質、受容体、ステロイド、神経伝達物質、表面抗原分類(Cluster of Designation/Differentiation)(CD)マーカー、インプリントポリマーなどが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0121】
標的化リガンドの例としては、核局在化シグナル(例えば、KR[PAATKKAGQA]KKKK)、RGD、NGR、葉酸、トランスフェリン、GM-CSF、ガラクトサミン、抗VEGFR、抗ERBB2、抗CD20、抗CD22、抗CD19、抗CD33、抗CD25、抗テネイシン、抗CEA、抗MUC1、抗TAG72、抗HLA-DR10、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0122】
ポリヌクレオチド
上記生物学的に活性な薬剤は、炎症過程を調節することができるポリヌクレオチドであってもよい。本明細書では、用語「ポリヌクレオチド」は、DNA、RNA、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、干渉RNA、siRNA、マイクロRNA、及び当技術分野で公知の任意の他のポリヌクレオチドを包含すると解釈されるものとする。上記ポリヌクレオチドは、炎症を破壊する可能性のあるタンパク質または機能的RNA(干渉RNAなど)をコードしていてもよい。したがって、上記ポリヌクレオチドはポリヌクレオチドベクターまたはプラスミドであってもよい。
【0123】
遺伝子ターゲティング薬の例としては、DNA(gDNA、cDNA)、RNA(センスRNA、アンチセンスRNA、mRNA、tRNA、rRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(ShRNA)、マイクロRNA(miRNA)、核小体低分子RNA(SnoRNA、核内低分子RNA(snRNA))、リボザイム、アプタマー、DNAザイム、アンチセンスオリオゴヌクレオチド、ベクター、プラスミド、その他のリボヌクレアーゼ型複合体、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。例えば、上記生物学的に活性な薬剤は、NF-κBのp65サブユニットに対して し、延いてはNF-κB媒介性炎症を改変するsiRNA、あるいはサイトカイン発現及び/またはサイトカイン受容体発現をコードする、IkBキナーゼまたはAP-1に対する遺伝子ターゲティング薬であってもよい。
【0124】
幹細胞
上記生物学的に活性な薬剤は、幹細胞、例えば、骨格筋芽細胞、骨髄由来幹細胞、骨髄由来単核細胞、骨髄由来造血幹細胞及び内皮前駆細胞、間葉系間質細胞/幹細胞、心筋幹細胞及び前駆細胞、人工多能性幹細胞、またはそれらの混合物であってもよい。例えば、上記幹細胞は、炎症性サイトカインの存在下で免疫抑制性表現型をとる間葉系間質細胞/幹細胞であってもよい。
【0125】
造影剤
一実施形態において、上記薬剤は造影剤である。造影剤をインビボで使用して、血管の構造、機能、及び血管新生を調べることができる。好適な造影剤の例としては、ルシフェラーゼ;蛍光標識した色素及び抗体、造影剤(イオパミドール、イオヘキソール、及びイオキシランを含む);硫酸バリウム;インドシアニングリーン(ICG)、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0126】
上記造影剤は画像強調造影剤であってもよい。好適な画像強調造影剤の例としては、蛍光色素(例えば、Alexa 680、インドシアニングリーン、及びCy5.5);蛍光色素(例えば、Alexa 680、インドシアニングリーン、及びCy5.5);11C、13N、15O、18F、32P、51Mn、52mMn、52Fe、55Co、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、72As、73Se、75Br、76Br、82mRb、83Sr、86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、110In、111In、120I、123I、124I、125I、131I、154Gd、155Gd、156Gd、157Gd、158Gd、177Lu、186Re、188Re、及び223Raなどの同位体及び放射性核種;クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジミウム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、またはエルビウム(III)などの常磁性イオン;ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、及びビスマス(III)などの金属;クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジミウム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、またはエルビウム(III)の酸化物;酸化鉄及び酸化ガドリニウムを含む、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、及びビスマス(III)などの金属;リポソームなどの超音波造影剤;バリウム、ガリウム、及びタリウム化合物などの放射線不透剤が挙げられるが、これらに限定はされない。上記画像強調造影剤は、上記nanoP材料上に直接複合体化しても、またはキレート剤などの中間官能基を使用することによって間接的に複合体化してもよい。
【0127】
複合体
本明細書では、用語「複合体」とは、1種以上の化合物を、ナノ粒子状ポリマーまたはナノ粒子状ポリマーを含む凝集体に結合することによって形成される分子をいう。上記「1種以上の化合物」は本明細書で定義される生物学的に活性な薬剤であってよい。上記結合は共有結合または静電相互作用を介する場合がある。
【0128】
本明細書に記載のナノ粒子状ポリマー、凝集体、またはnanoP材料は薬剤と複合体化される。上記薬剤は生物学的に活性な薬剤または造影剤であってよい。一実施形態において、上記薬剤は生物学的に活性な薬剤である。別の実施形態において上記薬剤は造影剤である。上記薬剤の結合は、複合体化過程中の反応条件のpHを変化させることによって調節することができる。溶液のpHは、アミン基及びカルボン酸基などの表面官能基のプロトン化または脱プロトン化を通じてnanoPの電荷を調節する。例えば、正に荷電した複合体のnanoP材料への結合は、上記nanoP材料及び上記薬剤を含む溶液のpHを高めることによって改善される場合がある。高アルカリ性の媒体では、nanoPはカルボン酸表面基の脱プロトン化によって負に荷電した状態となり、これにより、負に荷電した粒子間の反発に起因してナノ粒子の安定化も起こる。あるいは、負に荷電した複合体のnanoP材料への結合は、上記nanoP材料及び上記薬剤を含む溶液のpHを低下させることによって改善される場合がある。
【0129】
本明細書では、複合体の形成におけるnanoP材料(例えば、ナノ粒子ポリマー、凝集体、またはそれらの混合物)の使用が開示される。
【0130】
上記複合体は単一の薬剤のみを含んでいてもよい。あるいは、上記複合体は、2種以上の異なる薬剤、例えば、2種、3種、または4種の第2の薬剤を含んでいてもよい。
【0131】
上記nanoP材料は、一般に、例えば共有結合またはイオン結合によって、薬剤、例えば生物学的に活性な薬剤または造影剤に直接結合することができる。上記ナノ粒子ポリマーまたは凝集体がプラズマポリマーである場合、上記結合過程は一般に迅速であり、穏やかな条件下で進行することができる。上記結合は、ポリマー構造中の不対電子(すなわち、ラジカル部位)、あるいは上記nanoP材料上に生成した、または適宜の生物学的に活性な薬剤の添加によって、または上記nanoP材料が曝露される空気(もしくは別のガス)、もしくは何らかの他の流体との反応によって、得られる複合体上に導入された官能基によるものである。上記nanoP材料は、薬剤を化学的に結合することができる官能基を含むモノマー単位を含んでいてもよい。1種以上の薬剤と上記nanoP材料との複合体化により、得られる複合体上または複合体中に官能基を導入してもよく、これらの官能基は、さらなる化学反応に使用する、またはインビトロもしくはインビボ条件で行われる生化学的/生物学的過程などの過程のための結合部位として使用することができる。
【0132】
本明細書では、官能基(functional moieties)(または「官能基(functional groups)」)とは、モノマー、nanoP材料、またはnanoP材料を含む複合体上に存在する原子の群であって、他の相補的な官能基、例えば薬剤上に存在する他の官能基と反応することができる上記原子の群をいう。官能基としては、以下の基、すなわち、カルボン酸(-(C=O)OH)、カルボニル、第一級または第二級アミン(-NH、-NH-)、一酸化窒素、マレイミド、チオール(-SH)、スルホン酸(-(O=S=O)OH)、炭酸エステル、カルバミン酸エステル(-O(C=O)N<)、ヒドロキシ(-OH)、アルデヒド(-(C=O)H)、ケトン(-(C=O)-)、ヒドラジン(>N-N<)、イソシアナート、イソチオシアナート、リン酸(-O(P=O)OHOH)、ホスホン酸(-O(P=O)OHH)、ハロアセチル、ハロゲン化アルキル、アクリロイル、フッ化アリール、ヒドロキシルアミン、ジスルフィド、ビニルスルホン、ビニルケトン、ジアゾアルカン、オキシラン、及びアジリジン、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0133】
したがって、一態様において、本開示は、
平均径が約1nm~約50nmであり、アルケン、アルキン、シクロアルケン、シクロアルキン、もしくはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーを含むプラズマから形成されるナノ粒子状ポリマー;または、2つ以上の上記ナノ粒子状ポリマーを含み、平均径が約5nm~約500nmである凝集体と、
抗炎症性サイトカイン、抗炎症薬、スタチン系薬物、及び抗増殖薬からなる群より選択される生物学的に活性な薬剤と
を含む複合体を提供する。
【0134】
一実施形態において、上記凝集体の平均径は、約5~500nm、もしくは約5~約400nm、もしくは約5~約300nm、もしくは約5~約200nm、もしくは約5~約100nm、もしくは約50~約100nm、もしくは約100~約500nm、もしくは約150~約500nm、もしくは約180nm~約500nm、もしくは約100~約400nm、もしくは約150~約400nm、もしくは約180~約400nm、もしくは約100~約300nm、もしくは約150~300nm、もしくは約180~300nm、もしくは約100~約200nm、もしくは約150~約200nm、もしくは約180~約200nm、もしくは約150~約250nm、もしくは約180~約250nm、もしくは約200~約400nm、もしくは約200nm~約300nmの範囲、またはそれらの混合物である。一実施形態において、上記凝集体の平均径は約200nmである。一実施形態において、上記凝集体の平均径は約100nmである。一実施形態において、上記凝集体の平均径は約100nm~約200nmである。別の実施形態において、上記凝集体の平均径は約50~約100nmである。
【0135】
一実施形態において、上記抗炎症性サイトカインはIL-4である。上記IL-4は、約0.5μg、約0.6μg、約0.7μg、約0.8μg、約0.9μg、約1.0μg、もしくは約1.1μg IL-4/10-nanoP3の負荷容量、またはそれに代わる量のnanoP3における等価の濃度でnanoP3に結合させてもよい。
【0136】
一実施形態において、上記抗炎症性サイトカインはIL-10である。上記IL-10は、約0.5μg、約0.6μg、約0.7μg、約0.8μg、約0.9μg、約1μg、約1.1μg、約1.2μg、約1.3μg、もしくは約1.4μg IL-10/10-nanoP3の負荷容量、またはそれに代わる量のnanoP3における等価の濃度でnanoP3に結合させてもよい。一例において、上記IL-10は約1.3μg IL-10/10-nanoP3の負荷容量、またはそれに代わる量のnanoP3における等価の濃度でnanoP3に結合させてもよい。
【0137】
したがって、別の態様において、本開示は、
平均径が約1nm~約50nmであり、アルケン、アルキン、シクロアルケン、シクロアルキン、もしくはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーを含むプラズマから形成されるナノ粒子状ポリマー;または、2つ以上の上記ナノ粒子状ポリマーを含み、平均径が約100nm~約200nmである凝集体と、
IL-10と
含む複合体を提供する。それに代わる本明細書に記載の平均径を使用してもよい。
【0138】
一実施形態において、上記抗増殖薬はシロリムスである。上記シロリムスは、約1.5μg~約3μg、もしくは約1.5μg~約2.5μg、もしくは約2μg~約2.5μg、もしくは約2μg~約3μg シロリムス/10-nanoP3の負荷容量、またはそれに代わる量のnanoP3における等価の濃度でnanoP3に結合させてもよい。一例において、上記シロリムスは約2.50μg シロリムス/10-nanoP3の負荷容量、またはそれに代わる量のnanoP3における等価の濃度でnanoP3に結合させてもよい。
【0139】
驚くべきことに、本発明者らは、nanoP3に結合した上記シロリムスによって再内皮化が増加し、延いては血管の治癒が促進されることを見出した。この知見は遊離のシロリムスの作用に反する。
【0140】
したがって、別の態様において、本開示は、
平均径が約1nm~約50nmであり、アルケン、アルキン、シクロアルケン、シクロアルキン、もしくはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーを含むプラズマから形成されるナノ粒子状ポリマー;または、2つ以上の上記ナノ粒子状ポリマーを含み、平均径が約100nm~約200nmである凝集体と、
シロリムスと
含む複合体を提供する。それに代わる本明細書に記載の平均径を使用してもよい。
【0141】
一実施形態において、上記抗炎症薬はスリンダクである。上記スリンダクは、約2μg~約3.5μg、もしくは約2.5μg~約3.5μg、もしくは約2.5μg~約3.1μg スリンダク/10-nanoP3の負荷容量、またはそれに代わる量のnanoP3における等価の濃度でnanoP3に結合させてもよい。一例において、上記スリンダクは、約3.05μg スリンダク/10-nanoP3の負荷容量、またはそれに代わる量のnanoP3における等価の濃度でnanoP3に結合させてもよい。
【0142】
したがって、別の態様において、本開示は、
平均径が約1nm~約50nmであり、アルケン、アルキン、シクロアルケン、シクロアルキン、もしくはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーを含むプラズマから形成されるナノ粒子状ポリマー;または、2つ以上の上記ナノ粒子状ポリマーを含み、平均径が約100nm~約200nmである凝集体と、
スリンダクと
含む複合体を提供する。それに代わる本明細書に記載の平均径を使用してもよい。
【0143】
上記ナノ粒子状ポリマー、それらの凝集体または複合体は、切り傷/創傷または血管損傷の治療に好適なスキャフォールドに組み込むことが可能であることが企図される。例えば、上記ナノ粒子状ポリマー、それらの凝集体または複合体は、心臓パッチ、血管移植片、及びステントなどのインプラント上またはインプラント中で使用することができる。
【0144】
複合体の製造
上記nanoP3材料及びnanoP3複合体の製造の詳細は、PCT公開第WO2018/112543号の49ページ、18行~71ページ、7行に記載され、該公開は本明細書に援用される。例示的な複合体の製造のためのプロセスを以下に提示する。
【0145】
nanoP3材料は、150mTorrのN/C/Arのガス状混合物の活性化及び50Wの高周波電力の印加を介したプラズマ重合によって調製することができる。Cy5などの蛍光標識分子を使用して、nanoP3のIL-4及びIL-10などの生物学的に活性な薬剤に対する負荷容量及び結合効率を測定し、インビトロ及びインビボの両方の処理に関する最適なインキュベーションパラメータを確立することができる。
【0146】
上記生物学的に活性な薬剤を超純水中の上記nanoP3と1mlの総反応容量で混合し、室温で1時間、静置でインキュベートする。1時間インキュベートした後に、残余の洗浄液を使用し、Clariostarモノクロメーターマイクロプレートリーダー(BMG Labtech,Germany)で結合速度論の解析を行うことができる。
【0147】
医薬組成物
上記複合体を医薬組成物中に存在するようにしてもよい。好適な医薬組成物及び好適な医薬組成物の誘導方法の詳細は、PCT公開第WO2018/112543号の40ページ、7行~44ページ、26行に記載され、該公開は本明細書に援用される。
【0148】
血管への複合体の送達
本明細書では、生物学的に活性な薬剤のある血管のある領域への局在化方法、ある血管のある領域における炎症の調節方法、及び生物学的に活性な薬剤の血管中の送達部位への保持方法であって、上記生物学的に活性な薬剤をナノ粒子と複合体化し、それによって複合体を製造すること、及び上記複合体を上記血管の上記領域に送達することによる上記方法が開示される。
【0149】
上記複合体は、当技術分野で公知の任意且つ適宜の送達方法によって上記血管に送達することができる。好適な送達方法の例としては、カテーテル、ステント、ステント内挿型人工血管、移植、及び弁、または血管中への直接注入が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0150】
一例において、上記カテーテルは閉塞灌流カテーテルである。別の例において、上記カテーテルはsweatingバルーンカテーテルである。
【0151】
送達後、上記複合体は上記血管中の上記送達部位に保持される。一実施形態において、上記複合体は、複合体化されていない生物学的に活性な薬剤が上記血管の上記領域に保持される期間よりも長い期間、上記血管の上記領域に保持される。例えば、上記複合体は、上記血管の上記領域に、上記複合体化されていない生物学的に活性な薬剤が上記血管の上記領域に保持される期間の少なくとも1.2倍、1.2倍、1.5倍、1.7倍、もしくは2倍の期間保持されてもよく、または上記複合体は、上記送達部位に少なくとも1日、もしくは少なくとも2日間、もしくは少なくとも3日間、もしくは少なくとも4日間、もしくは少なくとも5日間、もしくは少なくとも6日間、もしくは少なくとも7日間、もしくは少なくとも8日間、もしくは少なくとも9日間、もしくは少なくとも10日間、もしくは少なくとも11日間、もしくは少なくとも12日間、もしくは少なくとも13日間、もしくは少なくとも14日間保持される。一例において、上記複合体は上記送達部位に少なくとも1日保持される。別の例において、上記複合体は上記送達部位に少なくとも5日間保持される。別の例において、上記複合体は上記送達部位に少なくとも14日間保持される。
【0152】
治療方法
本明細書では、本明細書において規定される複合体、または本明細書において規定される複合体を含む医薬組成物を対象に送達するステップ含む、血管損傷または血管疾患の治療または予防方法も開示される。用語「治療する」は、本明細書では、治療的処置及び予防的処置の両方を包含するように使用される。したがって、本明細書に開示の治療方法は、疾患、障害、または疾病の1つ以上の症状の予防方法を包含する場合がある。「治療する」は、疾患、障害、または疾病の任意の1つ以上の症状を軽減することと解釈される場合があることが理解されよう。したがって、「治療する」は、本明細書に開示の複合体の投与を受けていない、または複合体化されていない生物学的に活性な薬剤のみの投与を受けた患者と比較して、血管閉塞もしくは新生内膜形成が低下すること及び/または再内皮化の速度が増加することを包含する。本明細書では、「治癒を促進する」とは、本明細書に開示の複合体の投与を受けていない、または複合体化されていない生物学的に活性な薬剤のみの投与を受けた患者と比較して、治癒のいずれかの指標マーカーが増加することをいう。「治癒」とは、血管の創傷の治癒を指す場合がある。用語「治癒」は内皮化などの過程を包含することが理解されよう。したがって、本明細書における治癒を促進することへの如何なる言及も、内皮化の促進を指すものとして理解されたい。
【0153】
一態様において、本開示は、それを必要とする患者のある血管のある領域に本明細書で規定される複合体を送達することを含む、血管損傷または血管疾患の治療または予防方法を提供する。
【0154】
したがって、一例において、本開示は、
平均径が約1nm~約50nmであり、アルケン、アルキン、シクロアルケン、シクロアルキン、もしくはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーを含むプラズマから形成されるナノ粒子状ポリマー;または、2つ以上の上記ナノ粒子状ポリマーを含み、平均径が約100nm~約200nmである凝集体と、
i)インターロイキン-10、または
ii)スリンダク、または
iii)シロリムスと
を含む複合体を送達することを含む、血管損傷または血管疾患の治療または予防方法を提供する。
【0155】
別の態様において、本開示は、本明細書で規定される複合体を、それを必要とする患者のある血管のある領域に送達することを含む治癒の促進方法を提供する。
【0156】
したがって、一例において、本開示は、
平均径が約1nm~約50nmであり、アルケン、アルキン、シクロアルケン、シクロアルキン、もしくはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーを含むプラズマから形成されるナノ粒子状ポリマー;または、2つ以上の上記ナノ粒子状ポリマーを含み、平均径が約100nm~約200nmである凝集体と、
i)インターロイキン-10、または
ii)シロリムスと
を含む複合体を送達することを含む、治癒の促進方法を提供する。
【0157】
本明細書では、患者の疾病の治療または予防用の薬剤の製造における、本明細書で規定される複合体の使用も開示される。
【0158】
一態様において、本開示は、それを必要とする患者の血管損傷または血管疾患の治療または予防用の薬剤の製造における、本明細書で規定される複合体の使用を提供する。
【0159】
一態様において、本開示は、それを必要とする患者の治癒の促進用の薬剤の製造における、本明細書で規定される複合体の使用を提供する。
【0160】
一実施形態において、本明細書で規定される複合体は、薬剤として使用されるかまたは薬剤の製造に利用される。
【0161】
別の実施形態において、本明細書で規定される複合体は、血管疾患の治療または予防に使用するためのものである。
【0162】
別の実施形態において、本明細書で規定される複合体は、治癒の促進に使用するためのものである。
【0163】
別の態様において、本開示は、血管疾患の治療または予防に使用される場合の本明細書で規定される複合体を提供する。
【0164】
別の態様において、本開示は、治癒の促進に使用される場合の本明細書で規定される複合体を提供する。
【0165】
上記複合体は、例えば、適宜の化合物が医薬組成物に添加される場合に、「有効量」で提供することができる。語句「有効量」は、上記化合物を含む組成物の上記化合物を投与する、研究者、獣医、医師、または他の臨床医が求めている組織、系、動物、またはヒトの所望の生物学的または医学的応答を誘発することとなる上記複合体の量を意味すると解釈される。
【0166】
上記「有効量」は、特定の複合体の有効性を含む多くの因子に依存することとなる。患者の体重及び年齢も、患者が投与を受け取るべき化合物の濃度を決定する際の、当業者にとっての因子となる場合がある。
【0167】
語句化合物「の投与」及び/または化合物を「投与する」は、治療を必要とする患者に、本明細書で規定される複合体または複合体を含む医薬組成物を提供することを意味すると理解されるべきものである。
【0168】
本明細書で規定される複合体の投与を受ける者は、男性または女性のヒトであってよい。
【0169】
あるいは、ナノ粒子、凝集体、もしくは複合体;または、ナノ粒子、凝集体、もしくは複合体を含む医薬組成物の投与を受ける者は、非ヒト動物であってもよい。「複数の非ヒト動物」または「非ヒト動物」は、ヒトを除く動物界を対象とし、オスまたはメスの脊椎動物及び無脊椎動物の両方を含み、哺乳動物を含む温血動物(霊長動物、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラット、モルモット、ウマ、またはその他のウシ属、ヒツジ属、ウマ属、イヌ属、ネコ属、げっ歯動物、もしくはマウス種を含む、但しこれらに限定されない)、鳥、昆虫、爬虫類、魚、及び両生類を含む。
【0170】
上記複合体及び薬学的に許容される組成物の投与を受ける者は、本明細書では、同義の用語「患者」、「投与を受ける者」、「個体」、及び「対象」を用いて言及される。これらの4種の用語は同義で使用され、本明細書で定義される任意のヒトまたは動物をいう(別段の指示がない限り)。上記患者は血管内介入を受けているかまたは以前に受けていてもよい。一例において、上記患者は血管内介入を受けている。別の例において、上記患者は血管内介入を以前に受けていた。上記血管損傷は血管内介入に起因していてもよい。例えば、上記血管内介入は、ステント留置術またはバルーン血管形成術であってよい。一例において、上記血管内介入はステント留置であってよい。別の例において、上記血管内介入はバルーン血管形成術である。
【0171】
本明細書に記載の複合体を使用して治療することができる可能性のある疾患、障害、または疾病としては、アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患、急性冠症候群などの血管疾患;胃腸疾患、及び腎疾患が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0172】
本明細書に含まれる文書、法令、物質、装置、または論文などの議論は、それが添付の特許請求の範囲の各項の優先日よりも前に存在していたことによって、これらの事項のいずれかまたはすべてが先行技術基準の一部を形成するか、または本開示に関連する分野における共通の一般的な知識であったことを認めると解されるべきものではない。
【実施例
【0173】
実施例1 nanoP3へのインターロイキンの表面結合
無担体組換えラットIL-4及びIL-10(R&D Systems,USA)を、100ng/μlの原液濃度でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解した。結合速度論を確認するために、各インターロイキンにLightning-link Cy5抗体標識(Novus Biologicals,USA)をタグ付けした。超純水(Thermofisher,USA)中の1×10のnanoP3(200nm径)毎に、1.42μgのIL-4または1.32μgのIL-10のいずれかを添加した。総反応容量が1mlになるように水を追添加し、室温で1時間、静置でインキュベートした。1時間インキュベートした後に、残余の洗浄液を使用し、Clariostarモノクロメーターマイクロプレートリーダー(BMG Labtech,Germany)で結合速度論の解析を行った。
【0174】
溶液中のIL-4に対するnanoP3の結合効率は99%で最大であったが、これは0.5±0.01μg/10-粒子の負荷容量に相当する。上記負荷容量はさらに1.1±0.02μg/10-粒子まで増加したが、より低い53.1%の結合効率における値である。nanoP3のIL-10に対する最大結合効率は99.9%であったが、これは0.5±0.02μg/10-粒子の総質量負荷容量に相当する。IL-10がnanoP3上に、0.80±0.02μg/10-粒子までさらに負荷されることが観測されたが、これは40%の結合効率に相当する。すべての実験は、室温の超純水(pH=6.5)中で実施した。インキュベーション時間は30分であった。
【0175】
図1のAは、nanoP3の機能化の概略図である。小分子、造影剤、ターゲティングリガンド、またはタンパク質をnanoP3と共にインキュベートして、上記nanoP3を機能化する。
【0176】
図1のBは、IL-4及びIL-10に対するマクロファージの応答を示す。IL-4及びIL-10は、M1マクロファージ(炎症誘発性)の表現型をM2マクロファージ(抗炎症性)にシフトさせることができる。
【0177】
図2はnanoP3に対するIL-4及びIL-10の負荷容量を示す。IL-4及びIL-10の結合効率は100%である。発光スペクトルによって、nanoP3がIL-4及びIL-10に結合することができることが確認されている。
【0178】
実施例2 nanoP3に結合したIL-4によってM2マクロファージの極性化が生じる
マクロファージの表現型をマクロファージのM2抗炎症性の状態へと誘導することによって、血管損傷のさらなる進行が緩和され、疾患の退行が促進される可能性がある。IL-4及びIL-10を含む、インターロイキンファミリーのさまざまなサイトカインが、M1からM2への表現型のこのシフトを促進する。
【0179】
本発明者らは、インビトロでのマクロファージの極性化に対するNP3+IL-4の効果の検討を模索した。未処理の246.7マウスマクロファージ細胞(ATCC,USA)を、96ウェルプレート中、5×10細胞/ウェルで培養した。IL-4結合nanoP3を1×10 nanoP3/ウェルの濃度でマクロファージ培養物中に添加した。24時間後に、マクロファージを4%パラホルムアルデヒド中で固定化し、その後走査型電子顕微鏡(SEM)法及び共焦点顕微鏡画像法を実施した。共焦点染色は、Actin細胞骨格染色(Abcam,USA)及び抗アルギナーゼ-1抗体(Abcam,USA)を使用して実施した。
【0180】
図3は、未処理のマクロファージ及びnanoP3のみで処理したマクロファージと比較して、nanoP3-IL4によってM2が活性化されることを示す。共焦点染色により、NP3-IL4で処理したマクロファージにおいて、高度に発現されたM2酵素であるARG-1が有意に上方制御されることが確認され、M2の活性化がさらに確認される。
【0181】
実施例3 ラット頸動脈損傷及びnanoP3送達のモデル(I)
血管損傷のラット頸動脈モデルを使用して、心血管病理を治療するためのNP3結合インターロイキンの有効性をインビボで判定した(図1のC)。
【0182】
研究の認可はSydney Local Health District Animal Welfare Committeeから得た(プロトコル番号2017/006)。実験は、Australian Code of Practice for the Care and Use of Animals for Scientific Purposeに準拠して実施した。ラット(Sprague Dawley、オス、7週齢)はLaboratory Animal Service(NSW,Australia)から購入した。ラットにケタミン(75mg/kg)及びメデトミジン(0.5mg/kg)の単回筋肉内注射を行い、麻酔を誘導した。総頸動脈を分離し、二重結紮を約1cm離して行った。遠位端を小さく切開し、そこから微小眼内鉗子(World Precision Instruments,USA)を挿入し、該鉗子全幅まで拡張し、360度回転させて、血管の管腔表面領域全体を損傷させた。これを5回繰り返した後、鉗子を引き抜き、22Gカテーテルを同一の切開部に挿入した。このカテーテルを通して、約80μlの総容量のRPMI培地中、2×10 nanoP3の濃度のIL-4結合nanoP3またはIL-10結合nanoP3の溶液を注入した。このnanoP3溶液を2分間インキュベートし、次いでこの血管から完全に抜き出した。切開部を、9-0ナイロン縫合糸を使用して縫合して閉じ、両方の結紮を元に戻して血流を再確立した。次に、病理学的評価のために、上記分離した血管セグメントを14日後に外植した。
【0183】
図4のBは、血流が回復すると、遊離IL-4は血管壁から迅速に洗い流されることを示す。しかし、nanoP3に結合したIL-4は血管中に顕著に保持され、且つ5日後もかなりのレベルで存続している。
【0184】
図5は、新生内膜の形成が阻害されていることを示す。処理した頸動脈セグメントにおけるM2マクロファージの存在の免疫染色(黄色/緑色)が、裸出、NP3+IL-4、及び遊離IL-10と比較して、NP3+IL-10群において有意に増加していること示している。免疫染色による損傷した内皮の修復の評価によって、NP3+IL4及びNP3+IL-10の両方が損傷後14日までに十分な内皮の完全性を回復することが示されている。しかし、このことは遊離IL-10で処理した場合に見られない。
【0185】
インビボでの14日後に、血管外植片を4% PFAで終夜固定化し、エタノール脱水に供した後、パラフィンに包埋した。次いで、包埋した血管セグメントを、長さ方向に5μmの厚さの切片に切り分けた。M2マクロファージ及び管腔内皮の染色を、抗CD206(Abcam,USA)及び抗フォン・ウィルブランド因子(Sigma,USA)抗体を使用して実施した。Alexa-fluor 594二次抗体を使用することによって蛍光画像化を行った。新生内膜形成の染色をヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色を使用して行った。正規化した過形成を、過形成の総面積を当初の血管内腔の面積で除したものとして算出した。
【0186】
治療用nanoP3送達後2週間の新生内膜形成の解析により、血管閉塞が、NP3+IL-4群及びNP3+IL-10群においてそれぞれ、約35%及び20%の断面内腔面積に減少することを示している。遊離IL-10及びnanoP3のみでは血管閉塞に有意な効果はなく、このことは、nanoP3プラットフォームがIL-10の治療効果を促進することを示唆している(図6)。
【0187】
実施例4 ラット頸動脈損傷及びnanoP3送達のモデル(II)
血管損傷のラット頸動脈モデルを使用して、心血管病変を治療するためのNP3+IL-10、NP3+シロリムス、またはNP3+スリンダクの有効性をインビボで判定した。無担体組換えラットIL-10(1.34μg/10-nanoP3;R&D systems,USA)、シロリムス(2.50μg/10-nanoP3;ラパマイシン,Sigma-Merck,USA)、スリンダク(3.05μg/10-nanoP3;Sigma-Merck,USA)、またはCy7蛍光標識(5.03μg/10-nanoP3;CF750 Antibody Label,Sigma-Merck,USA)を滅菌水で希釈し、2×10 nanoP3と複合体化した。
【0188】
上記カテーテルを通して、約80μlの総容量のRPMI培地中、2×10 nanoP3の濃度のIL-10結合nanoP3、シロリムス結合nanoP3、またはスリンダク結合nanoP3の溶液(IL-10、0.268μg;シロリムス、0.5μg;スリンダク0.61μg;Cy7、1.01μg)を注入したことを除いて、実施例3に記載したように、ラットを血管損傷に供した。
【0189】
図7は、NP3+IL-10、NP3+シロリムス、またはNP3+スリンダクの送達によって、ラット頸動脈損傷モデルにおける遊離の薬剤の送達と比較して、新生内膜過形成が抑制されることを示している。
【0190】
NP3+IL-10、NP3+シロリムス、またはNP3+スリンダクで処理したラット頸動脈モデルにおける血管再内皮化も、実施例3に記載のフォン・ウィルブランド因子(vwf)染色を使用して検討した。シロリムスは、創傷治癒を損なうことが知られている薬剤である。驚くべきことに、本発明者らは、シロリムスが創傷治癒を損なうと以前に記載されているが、NP3+シロリムス及びNP3+IL10の両方が治癒(内皮化)を刺激することを明らかにしている(図8)。
【0191】
実施例5 nanoP3に結合したIL-10及びスリンダクによりM2マクロファージの極性化が生じる
本発明者らは、インビトロでのマクロファージの極性化に対するNP3+IL-10及びNP3+スリンダクの効果の検討を模索した。
【0192】
未処理の246.7マウスマクロファージ細胞(ATCC,USA)を、96ウェルプレート中、5×10細胞/ウェルで培養した。IL-10(1.34μg/10-nanoP3)及びスリンダク(3.05μg/10-nanoP3)を、実施例4に記載の通りにしてnanoP3に結合させた。
【0193】
NP3+IL-10またはNP3+スリンダクを1×10 nanoP3/ウェルの濃度でマクロファージ培養物中に添加した。24時間後に、マクロファージを4%パラホルムアルデヒド中で固定化し、その後走査型電子顕微鏡(SEM)法及び共焦点顕微鏡画像法を実施した。共焦点染色は、Actin細胞骨格染色(Abcam,USA)及び抗アルギナーゼ-1抗体(Abcam,USA)を使用して実施した。
【0194】
図9は、未処理のマクロファージ(「裸出」)及びnanoP3のみで処理したマクロファージ(「+NP3」)と比較して、NP3+IL-10によってM2が活性化されることを示す。共焦点染色により、NP3+IL10で処理したマクロファージにおいて、高度に発現されたM2酵素であるARG-1が有意に上方制御されされることが確認され、M2の活性化がさらに確認される。
【0195】
実施例6 ウサギ腸骨損傷及びnanoP3送達のモデル
ウサギ腸骨損傷モデルを使用して、NP3+IL-10処理の有効性を評価した。
【0196】
研究の認可はUniversity of Sydney Animal Ethics Committee(AEC)(プロトコル2019-1653)から得た。実験は、Australian Code of Practice for the Care and Use of Animals for Scientific Purposeに準拠して実施した。鼠径部の皮膚の中央に切開(長さ約1cm)を行い、筋層の鈍的切開後に右大腿動脈を露出させた。この動脈を遠位端で結紮し、該結紮の上に、5Fシース(Abbott,TREK冠状動脈拡張カテーテル、3.25mm)を挿入できるように小さく切開を行った。上記シースを縫合糸(3-0、絹)で所定の位置に固定した。上記シースを通して0.014インチのガイドワイヤーを挿入し、腹部大動脈中を逆行させた。次に、3.25mmの血管形成バルーンカテーテルをガイドワイヤー上に挿入し、大動脈中に進入させた。NP3送達及び周囲の血管系の位置を、造影剤流体ISOVUE 370またはOMNIPAQUE(75.5g/100ml)、25%~50%(v/v)造影剤/生理食塩水の静脈内注射によって測定し、その後血管造影法を実施した。
【0197】
腹部大動脈の分岐部でバルーンを3.1mm径に膨張させ、大腿動脈へとゆっくりと3回引き抜くことによって腸骨動脈の裸出を行った(1回の裸出当り1分)。主切開部を通して、同一のバルーンを損傷した腸骨中に分岐部まで再挿入し、6~8気圧に膨張させて近位の血流を閉鎖した。血流が閉鎖された直後に、上記シースを通してIL-10 nanoP3溶液(3×10、計2ml)を送達し、動脈を膨張させ、2分間インキュベートし、その後上記シースを通して残留した溶液を吸い出した。シースを取り出し、大腿動脈を3-0絹縫合糸で恒久的に結紮し、続いてシースを取り出した。露出領域を3-0絹縫合糸により、個別の縫い目及び二層縫合で閉じた。
【0198】
図10は、腸骨動脈損傷のウサギモデルにおけるインビボでの、IL-10を複合体化した200nmのNPの性能評価結果を示す。A)腸骨動脈損傷のウサギモデル。B)新生内膜過形成のH&E染色。C)血栓症のCD31染色(白い点線)。D)炎症性マクロファージ浸潤のCD68染色(白色染色)。NP3+IL10で処理した血管は、閉塞、血栓症、及び炎症の減少を示した。図11は、NP3+IL-10で処理した血管において、未処理の対照と比較して、7日間にわたって過形成が減少したことを示す。さらに、血栓症の発生率は7日間にわたって増加し、これがNP3+IL-10で処理した血管では有意に減少する。血管炎症のCD68染色により、未処理の対照と比較して、NP3+IL-10が炎症誘発性マクロファージの浸潤を減少させ、且つ7日間にわたって炎症を軽減することが示される。
【0199】
実施例7 ラット頸動脈損傷モデルにおけるnanoP3の保持
ラット頸動脈損傷モデルにおいて、200nm径のnanoP3と100nm径のnanoP3(NP3)の保持を比較検討した。
【0200】
Cy7フルオロフォアを200nm径または100nm径のnanoP3のいずれかに複合体化した。
【0201】
カテーテルを通して、約80μlの総容量のRPMI培地中、2×10 nanoP3の濃度の、100nmのnanoP3に結合したCy7または200nmのnanoP3に結合したCy7を含む溶液を注入したことを除いて、実施例3に記載のようにしてラットを血管損傷に供した。
【0202】
図12は、100nm及び200nmの両方のnanoP3が7日後に保持され、100nmのnanoP3も送達後2週間で保持されていたことを示す。
【0203】
nanoP3は、いずれの粒径を使用した場合でも14日後に検出された。使用したnanoP3の粒径に応じて、保持プロファイルに多少の変動があった。したがって、特に好ましい保持時間は、好適なnanoP3粒径を選択することによって達成することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】