(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-08
(54)【発明の名称】トランスポゾンに基づく免疫細胞の改変
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20220401BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20220401BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20220401BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220401BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20220401BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20220401BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20220401BHJP
C12N 5/0781 20100101ALN20220401BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20220401BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/867 Z
C12N15/85 Z
C12N5/10
C12Q1/02
C12Q1/6869 Z
C12N5/0783
C12N5/0781
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547309
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(85)【翻訳文提出日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 US2020017283
(87)【国際公開番号】W WO2020163755
(87)【国際公開日】2020-08-13
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521354019
【氏名又は名称】ディーエヌエイ ツーポイント インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】599124736
【氏名又は名称】ザ・ジエネラル・ホスピタル・コーポレーシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コボールド、マーク
(72)【発明者】
【氏名】リー、マギー
(72)【発明者】
【氏名】ミンシュル、ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】シー、フェン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、イーファン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA08
4B063QA13
4B063QA17
4B063QQ08
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4B065CA24
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、免疫細胞の安定した遺伝子修飾のための方法および組成物を提供する。遺伝子修飾は、治療目的用または診断目的用の免疫細胞を作製するために使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫細胞内でのタンパク質の発現に有効な異種調節配列に作動可能に連結されたタンパク質をコードする核酸を含み、それにより前記免疫細胞の生存を増強する、免疫細胞生存増強遺伝子を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記免疫細胞生存増強遺伝子が、活性化突然変異を含む天然に存在するタンパク質をコードする、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記免疫細胞生存増強遺伝子が、活性化突然変異を含むSTAT3、CD28、RhoA、PLCG、STAT5BまたはCCND1から選択されるタンパク質をコードする、請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記免疫細胞生存増強遺伝子がSTAT3をコードし、前記STAT3が以下の活性化突然変異、すなわち、F174S、H410R、S614R、E616K、G618R、Y640F、N647I、E652K、K658Y、K658R、K658N、K658M、K658R、K658H、K658N、D661YまたはD661Vのうちの1つ以上を含む、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記免疫細胞生存増強遺伝子がCD28をコードし、前記CD28が以下の活性化突然変異、すなわち、D124E、D124V、T195IまたはT195Pのうちの1つ以上を含む、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記免疫細胞生存増強遺伝子がRhoAをコードし、前記RhoAが以下の活性化突然変異、すなわち、G17VまたはK18Nのうちの1つ以上を含む、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記免疫細胞生存増強遺伝子がPLCGをコードし、前記PLGCが以下の活性化突然変異、すなわち、S345F、S520FまたはR707Qのうちの1つを含む、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
前記免疫細胞生存増強遺伝子がSTAT5Bをコードし、前記STAT5Bが以下の活性化突然変異、すなわち、N642H、T648S、S652Y、Y665FまたはP267Aのうちの1つ以上を含む、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
前記免疫細胞生存増強遺伝子がCCND1をコードし、前記CCND1が以下の活性化突然変異、すなわち、E36G、E36Q、E36K、A39S、S41L、S41P、S41T、V42E、V42A、V42L、V42M、Y44S、Y44D、Y44C、Y44H、K46T、K46R、K46N、K46E、C47G、C47R、C47S、C47W、P199R、P199S、P199L、S201F、T285I、T285A、P286L、P286H、P286S、P286TまたはP286Aのうちの1つ以上を含む、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記免疫細胞生存増強遺伝子が、天然に存在するヒトタンパク質をコードする、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
前記免疫細胞生存増強遺伝子が、サバイビン、Bcl2、Bcl6またはBcl-XLから選択されるタンパク質をコードする、請求項10に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
前記免疫細胞生存増強遺伝子がアポトーシス阻害剤をコードする、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
前記異種プロモーターが、EF1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、EEF2プロモーター、ユビキチンプロモーター、SV40プロモーターまたはHSVTKプロモーターから選択される、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
前記異種プロモーターが配列番号94~154から選択される、請求項12に記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
配列番号6および配列番号7、または配列番号14および配列暗号15、または配列番号18および配列番号19、または配列番号20および配列番号21、または配列番号26および配列番号27、または配列番号399および配列番号400から選択される1対の配列をさらに含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含む免疫細胞の半減期が、そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含まない免疫細胞の半減期と比較して少なくとも25%長くなっている、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含む免疫細胞の最長寿命が、そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含まない免疫細胞の最長寿命と比較して少なくとも25%長くなっている、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含まない免疫細胞の倍加時間が、そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含む免疫細胞の倍加時間と比較して少なくとも25%長い、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含む免疫細胞の増殖速度が、そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含まない免疫細胞の増殖速度と比較して少なくとも25%高くなっている、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含むT細胞の抗原チャレンジの反復の際の生存が、そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含まない免疫細胞の生存と比較して少なくとも25%高くなっている、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項21】
請求項1~20のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む、トランスポゾン。
【請求項22】
請求項1~20のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、レンチウイルスベクター。
【請求項23】
異種プロモーターに作動可能に連結された、アポトーシス阻害剤をコードするポリヌクレオチドを、免疫細胞内へと導入することを含む、改変された免疫細胞を作製するための方法。
【請求項24】
前記ポリヌクレオチドがトランスポゾン末端をさらに含み、かつ前記方法が、前記アポトーシス阻害剤をコードする前記ポリヌクレオチドが前記免疫細胞のゲノム内へと転位するように、対応するトランスポザーゼを前記免疫細胞内へと導入することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記トランスポザーゼが、前記トランスポザーゼをコードする核酸として導入される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記核酸がmRNAである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記トランスポザーゼをコードする前記核酸が、前記免疫細胞において活性のあるプロモーターに作動可能に連結されている、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記トランスポゾンおよび前記トランスポザーゼが同じ時点で前記免疫細胞内へと導入される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記トランスポゾンおよび前記トランスポザーゼが異なる時点で前記免疫細胞内へと導入される、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記免疫細胞がT細胞であり、前記方法が、抗原に結合することができる受容体をコードする遺伝子を前記免疫細胞内へと導入することをさらに含み、前記抗原をその表面に提示する標的細胞への前記受容体の結合が、前記T細胞に前記標的細胞を死滅させる、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記アポトーシス阻害剤が、サバイビン、Bcl2、Bcl6、Bcl-XLまたはCasp3、Casp7、Casp8、Casp9もしくはCasp10のドミナントネガティブ突然変異体から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
改変された免疫細胞を作製するための方法であって、前記方法が、STAT3、CD28、RhoA、PLCG、STAT5BまたはCCND1から選択されるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを免疫細胞内へと導入することを含み、前記タンパク質が、異種プロモーターに作動可能に連結された活性化突然変異を含む、方法。
【請求項33】
改変された免疫細胞を作製するための方法であって、
a.阻害シグナルを免疫細胞に正常に伝達する受容体の細胞外ドメインに由来する配列
b.刺激シグナルを免疫細胞に伝達する受容体の細胞内ドメインの細胞内ドメインに由来する配列
c.膜貫通ドメイン
を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを免疫細胞内へと導入することを含み、
前記ポリペプチドがCD3ゼータ細胞内ドメインを含まない、方法。
【請求項34】
前記細胞外ドメインが、配列番号322~配列番号340から選択される配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞内ドメインが、配列番号341~配列番号364から選択される配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリペプチドが、配列番号274~配列番号318から選択される配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
そのゲノムが請求項1に記載のポリヌクレオチドを含む、免疫細胞。
【請求項38】
前記免疫細胞の半減期が、そのゲノムが請求項1に記載のポリヌクレオチドを含まない免疫細胞の半減期と比較して少なくとも25%長くなっている、請求項37に記載の免疫細胞。
【請求項39】
前記免疫細胞の最長寿命が、そのゲノムが請求項1に記載のポリヌクレオチドを含まない免疫細胞の最長寿命と比較して少なくとも25%長くなっている、請求項37に記載の免疫細胞。
【請求項40】
そのゲノムが請求項1に記載のポリヌクレオチドを含まない免疫細胞の倍加時間が、そのゲノムが請求項1に記載のポリヌクレオチドを含む免疫細胞の半減期と比較して少なくとも25%長くなっている、請求項37に記載の免疫細胞。
【請求項41】
前記免疫細胞の増殖速度が、そのゲノムが請求項1に記載のポリヌクレオチドを含まない免疫細胞の増殖速度と比較して少なくとも25%高くなっている、請求項37に記載の免疫細胞。
【請求項42】
そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含むT細胞の、抗原チャレンジの反復の際の生存が、そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含まない免疫細胞の生存と比較して少なくとも25%高くなっている、請求項37に記載の免疫細胞。
【請求項43】
前記免疫細胞がT細胞である、請求項37に記載の免疫細胞。
【請求項44】
前記免疫細胞がB細胞である、請求項37に記載の免疫細胞。
【請求項45】
前記免疫細胞がヒト細胞である、請求項37に記載の免疫細胞。
【請求項46】
前記免疫細胞が霊長類細胞、齧歯類細胞、ネコ細胞、イヌ細胞またはウマ細胞である、請求項37に記載の免疫細胞。
【請求項47】
前記免疫細胞生存増強遺伝子がシグナル伝達増強受容体(ESR)をコードし、前記ESRが
a.阻害シグナルを免疫細胞に正常に伝達する受容体の細胞外ドメインに由来する配列
b.刺激シグナルを免疫細胞に伝達する受容体の細胞内ドメインの細胞内ドメインに由来する配列
c.膜貫通ドメイン
を含み、かつ前記ESRがCD3ゼータ細胞内ドメインを含まない、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項48】
前記細胞外ドメイン(a)が、TNFRSF3(LTRβ)、TNFRSF6(Fas)、TNFRSF8(CD30)、TNFRSF10A(DR4)、TNFRSF10B(DR5)、TNFRSF19(TROY)、TNFRSF21(DR6)およびCTLA4から選択されるヒトタンパク質に由来する、請求項47に記載のポリヌクレオチド。
【請求項49】
前記ESRが、配列番号322~340から選択される配列と少なくとも90%同一である配列を含む、請求項47に記載のポリヌクレオチド。
【請求項50】
前記細胞内ドメイン(b)が、TNFRSF4(OX40)、TNFRSF5(CD40)、TNFRSF7(CD27)、TNFRSF9(4-1BB)、TNFRSF11A(RANK)、TNFRSF13B(TACI)、TNFRSF13C(BAFF-R)、TNFRSF14(HVEM)、TNFRSF17(CD269)、TNFRSF18(GITR)、CD28、CD28H(TMIGD2)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS/CD278)、DNAXアクセサリー分子1(DNAM-1/CD226)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM/CD150)、T細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン(TIM-1/HAVcr-1)、インターフェロン受容体α鎖(IFNAR1)、インターフェロン受容体β鎖IFNAR2)、インターロイキン2受容体βサブユニット(IL2RB)、インターロイキン2受容体γサブユニット(IL2RG)、腫瘍壊死因子スーパーファミリー14(TNFSF14/LIGHT)、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D/CD314)およびCD40リガンド(CD40L)から選択されるヒトタンパク質に由来する、請求項47に記載のポリヌクレオチド。
【請求項51】
前記ESRが、その配列が配列番号341~配列番号364から選択される配列と少なくとも90%同一であるポリペプチドを含む、請求項47に記載のポリヌクレオチド。
【請求項52】
前記ESRが、その配列が配列番号365~配列番号396から選択される配列と少なくとも90%同一であるポリペプチドを含む、請求項47に記載のポリヌクレオチド。
【請求項53】
前記ESRが、その配列が配列番号274~配列番号318から選択される配列と少なくとも90%同一であるポリペプチドを含む、請求項45に記載のポリヌクレオチド。
【請求項54】
前記ポリヌクレオチドが異種プロモーターに作動可能に連結された、アポトーシス阻害剤をコードするセグメントをさらに含む、請求項47に記載のポリヌクレオチド。
【請求項55】
そのゲノムが請求項47に記載のポリヌクレオチドを含む、免疫細胞。
【請求項56】
前記免疫細胞ゲノムが、異種プロモーターに作動可能に連結された、アポトーシス阻害剤をコードするセグメントをさらに含む、請求項55に記載の免疫細胞。
【請求項57】
改変された免疫細胞を作製するための方法であって、
a.請求項47に記載のポリヌクレオチドを前記免疫細胞内へと導入すること
b.異種プロモーターに作動可能に連結された、アポトーシス阻害剤をコードするポリヌクレオチドを、前記免疫細胞内へと導入することを含む、方法。
【請求項58】
前記2つのポリヌクレオチドが同じ時点で前記免疫細胞内へと導入される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
免疫細胞の生存を増強するタンパク質を同定する方法であって、
癌性免疫細胞由来のタンパク質をコードする核酸を配列決定して、突然変異を有するタンパク質をコードする核酸を同定することと、
前記突然変異を有するタンパク質をコードする核酸を用いて免疫細胞を形質転換することと、前記免疫細胞が生存を増強したかどうかを判定することとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月8日出願の第62/803,142号からの優先権を主張し、その全体はすべての目的のために参照により組み込まれる。
【0002】
配列表の参照
本出願は、参照により組み込まれる2020年1月28日作成の889,000バイトのST25_20200128という名称のtxtファイルに開示されている配列を指す。
【背景技術】
【0003】
免疫細胞の遺伝子修飾を使用して、免疫細胞の特性を改変することができる。遺伝子修飾可能な免疫細胞特性には、免疫細胞によって認識される分子、免疫細胞内での細胞応答、ある特定の環境条件下で免疫細胞が生存する能力、および免疫細胞によって産生されるタンパク質が含まれる。免疫細胞の遺伝子修飾は、疾患を標的指向する応答を改善するために使用してよい。特定の免疫細胞の機能を増強することによって、例えば、長期持続性の癌退縮を達成するために、免疫応答を増強してよい。
【0004】
免疫細胞の安定した遺伝子修飾は、異種ポリヌクレオチドを免疫細胞のゲノム内へと組み込むことによって行うことができる。異種DNAは、裸のプラスミドDNAを移入することによって、免疫細胞を感染させるために使用されるウイルス粒子内へと該DNAをパッケージングすることによって、または免疫細胞内へとトランスポゾンおよびその同族トランスポザーゼを導入することによって、種々の方法で免疫細胞内へと導入してよい。
【0005】
プラスミドDNAをはじめとする非ウイルスベクター系は一般に、非効率的な細胞送達、顕著な細胞毒性、および移入した細胞集団においてゲノム挿入がないことならびに結果として生じるベクターの分解および/または希釈に起因する、導入遺伝子発現の持続時間の制限を被る。ウイルス以外でのアプローチによって送達される導入遺伝子は、ヘテロクロマチン形成による転写サイレンシングに対する標的である長い反復アレイ(コンカテマー)を形成することがよくある。
【0006】
ウイルスパッケージングは一般に、ウイルスベクター内へと挿入することができるDNAのサイズに制限を課す。いくつかのウイルス(AAVなど)は、複製されていないエピソームとして保有され、それゆえ細胞が分裂するにつれて希釈される。ゲノムを標的細胞ゲノム内へと組み込むウイルスについては、ウイルス組み込み部位に関する安全性の懸念がある。すべてのウイルス送達方法について、ウイルスの製造経費およびウイルス構成要素の潜在的な免疫原性に関する懸念がある。
【0007】
トランスポゾンは、裸のDNAのように製造が単純で非免疫原性であるが、標的細胞ゲノム内へと組み込むのに非常に効率的である代替送達系を提供する。トランスポゾンは、トランスポザーゼによって認識される2つの末端を含む。トランスポザーゼは、あるDNA分子からトランスポゾンを切り出し、別のDNA分子内へと組み込むために、トランスポゾンに作用する。この過程は、転位と称される。2つのトランスポゾン末端間のDNAは、トランスポゾン末端と共にトランスポザーゼによって転位される。トランスポザーゼによって認識されおよび転位するように、一対のトランスポゾン末端が隣接する異種DNAは、本明細書では合成トランスポゾンと称される。合成トランスポゾンおよび対応するトランスポザーゼを真核細胞の核内へと導入することは、細胞のゲノムへのトランスポゾンの転位をもたらすことができる。トランスポゾン/トランスポザーゼ遺伝子送達プラットフォームは、裸のDNAおよびウイルスを送達することに関する制限を克服する可能性を有する。特に、piggyBac様トランスポゾンは、該トランスポゾンの遺伝子荷役容量が無制限であるので、魅力的である。
【0008】
細胞のゲノム内へと組み込まれたポリヌクレオチド上にコードされる遺伝子の発現レベルは、ポリヌクレオチド内での配列要素の立体配置に依存する。組込みの効率、したがって各ゲノム内へと組み込まれたポリヌクレオチドのコピー数、および組込みが起こるゲノム遺伝子座はまた、ポリヌクレオチド上にコードされる遺伝子の発現レベルにも影響を及ぼす。ポリヌクレオチドを標的細胞のゲノム内へと組み込むことができる効率は、該ポリヌクレオチドをトランスポゾン内へと置き換えることによって上昇することができることはよくある。
【0009】
piggyBac様トランスポザーゼによる転位は完全に可逆的である。トランスポゾンは、レシピエントDNA分子内の組込み標的配列に組み込まれ、その間、該標的配列は、トランスポゾン逆方向末端反復塩基配列(ITR)の各末端で複製される。それに続く転位は、該トランスポゾンを除去し、該標的配列の複製および該トランスポゾンが除去された状態で、レシピエントDNAをその以前の配列へと復元する。しかしながら、このことは、トランスポゾンが第1の組込み標的配列から切り出されるが、ゲノム中の第2の組込み標的配列内へと組み込まれる可能性が高いので、トランスポゾンがゲノム内に組み込まれた該ゲノムからトランスポゾンを除去するのに十分ではない。一方、組込み機能が欠損しているトランスポザーゼは、トランスポゾンを第1の標的配列から切り出すことはできるが、第2の標的配列内へと組み込むことはできない。したがって、組込み欠損トランスポザーゼは、トランスポゾンのゲノム組込みを逆転させるのに有用である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
免疫細胞のゲノムを安定して修飾することができるトランスポゾンは、本発明の一態様である。免疫細胞を改変してその機能を増強する上で有利である遺伝子は、本発明の一態様である。免疫細胞を改変してその機能を増強するための方法は、本発明の一態様である。
【0011】
免疫細胞のゲノムを修飾するための方法を説明する。免疫細胞には、T細胞およびB細胞などのリンパ球ならびにナチュラルキラー細胞、Tヘルパー細胞、抗原提示細胞、樹状細胞、好中球およびマクロファージが含まれる。修飾には、免疫細胞がある特定の条件下またはある特定の環境で生存および/または増殖する能力を増強すること、免疫細胞表面に発現するタンパク質の量または種類を変化させること、ならびに免疫細胞と接触するタンパク質または小分子に対する該細胞の応答を変化させることが含まれる。免疫細胞のゲノム修飾をもたらすためのポリヌクレオチド構築物の配列が提供されており、本発明の一態様である。
【0012】
ヒトT細胞の機能、持続性および増殖を増強する能力は、癌免疫療法のための現在の支障である。T細胞の性能、増殖および遺伝子操作の改善を可能にする技術が強く求められている。T細胞を制御するおよび増殖させる能力は、以下を含む多くの応用を有する。(i)例えば、CAR-Tと組み合わせて、より大きな有効性および/または安全性のためにT細胞療法の機能を改善すること。(ii)T細胞の枯渇および/または腫瘍浸潤T細胞の再刺激誘導性細胞死を逆転させ、T細胞が腫瘍微小環境内で生存するおよび機能することを可能にすること。(iii)前臨床試験(インビボ)のためのマウスにおけるヒトT細胞の生存を改善すること。(iv)抗原特異的T細胞の同定およびインビトロでのT細胞受容体のクローン化。(v)エクスビボで維持することができ、T細胞の生物学的機能(細胞死滅など)を依然として行うT細胞株を開発すること。
【0013】
免疫細胞生存増強遺伝子には、サバイビン、Bcl2、Bcl6、Bcl-XLなどの抗アポトーシス遺伝子、およびCasp3、Casp7、Casp8、Casp9またはCasp10のドミナントネガティブ突然変異体などのドミナントネガティブ効果を発揮する正常なアポトーシス経路の突然変異体をコードする遺伝子が含まれる。免疫細胞生存増強遺伝子にはまた、以下の突然変異、すなわちF174S、H410R、S614R、E616K、G618R、Y640F、N647I、E652K、K658Y、K658R、K658N、K658M、K658R、K658H、K658N、D661YまたはD661Vのうちの1つを含むSTAT3突然変異体を含む、STAT3の活性化突然変異体も含まれる。免疫細胞生存増強遺伝子にはまた、以下の突然変異、すなわちD124E、D124V、T195IまたはT195Pのうちの1つを含むCD28突然変異体を含む、CD28の活性化突然変異体も含まれる。免疫細胞生存増強遺伝子にはまた、以下の突然変異、すなわちG17VまたはK18Nのうちの1つを含むRhoA突然変異体を含む、RhoAの活性化突然変異体も含まれる。免疫細胞生存増強遺伝子には、以下の突然変異、すなわちS345F、S520FまたはR707Qのうちの1つを含むホスホリパーゼCガンマ突然変異体を含む、ホスホリパーゼCγの活性化突然変異体も含まれる。免疫細胞生存増強遺伝子にはまた、以下の突然変異、すなわちN642H、T648S、S652Y、Y665FまたはP267Aのうちの1つを含むSTAT5B突然変異体を含む、STAT5Bの活性化突然変異体も含まれる。免疫細胞生存増強遺伝子にはまた、以下の突然変異、すなわち:E36G、E36Q、E36K、A39S、S41L、S41P、S41T、V42E、V42A、V42L、V42M、Y44S、Y44D、Y44C、Y44H、K46T、K46R、K46N、K46E、C47G、C47R、C47S、C47W、P199R、P199S、P199L、S201F、T285I、T285A、P286L、P286H、P286S、P286TまたはP286Aのうちの1つを含むCCND1突然変異体を含む、CCND1の活性化突然変異体も含まれる。
【0014】
免疫細胞生存増強遺伝子はまた、増強されたシグナル伝達受容体(ESR)も含み、この中で、ESRは、通常、免疫細胞に阻害シグナルを伝達する受容体の細胞外ドメインに由来する配列と、刺激シグナルを免疫細胞に伝達する受容体の細胞内ドメインの細胞内ドメインに由来する配列と、膜貫通ドメインとを含む。例示的な細胞外ドメインとしては、配列番号322~340などのTNFRSF3(LTRβ)、TNFRSF6(Fas)、TNFRSF8(CD30)、TNFRSF10A(DR4)、TNFRSF10B(DR5)、TNFRSF19(TROY)、TNFRSF21(DR6)およびCTLA4から選択されるヒトタンパク質がある。例示的な細胞内ドメインとしては、配列番号341~364などのTNFRSF4(OX40)、TNFRSF5(CD40)、TNFRSF7(CD27)、TNFRSF9(4-1BB)、TNFRSF11A(RANK)、TNFRSF13B(TACI)、TNFRSF13C(BAFF-R)、TNFRSF14(HVEM)、TNFRSF17(CD269)、TNFRSF18(GITR)、CD28、CD28H(TMIGD2)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS/CD278)、DNAXアクセサリー分子1(DNAM-1/CD226)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM/CD150)、T細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン(TIM-1/HAVcr-1)、インターフェロン受容体α鎖(IFNAR1)、インターフェロン受容体β鎖IFNAR2)、インターロイキン2受容体βサブユニット(IL2RB)、インターロイキン2受容体γサブユニット(IL2RG)、腫瘍壊死因子スーパーファミリー14(TNFSF14/LIGHT)、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D/CD314)およびCD40リガンド(CD40L)から選択されるヒトタンパク質がある。例示的な膜貫通ドメインとしては、365~396から選択されるヒトタンパク質がある。例示的な増強されたシグナル伝達受容体としては、配列番号274~318から選択される配列を含む配列がある。
【0015】
好ましくは、免疫細胞生存増強遺伝子は、トランスポゾンベクターを使用して免疫細胞に提供される。トランスポゾンは、対応するトランスポザーゼによって免疫細胞ゲノム内へと効率的に組み込まれる。いくつかの異なるクラスのトランスポゾンは、遺伝子を免疫細胞のゲノム内へと組み込むのに有用である。配列番号18および19を含むITR配列を含むシャクガ(looper moth)piggyBacトランスポゾン、または配列番号20および21を含むITR配列を含むpiggyBatトランスポゾン、または配列番号6および7を含むITR配列を含むゼノパス属(Xenopus)piggyBac様トランスポゾン、または配列番号14および15を含むITR配列を含むカイコガ属(Bombyx)piggyBac様トランスポゾンなどのpiggyBac様トランスポゾンはすべて、対応するトランスポザーゼによって免疫細胞ゲノム内へと転位することができる。また、配列番号26および27を含むITRを含むSleeping BeautyなどのMariner型トランスポゾンは、対応するトランスポザーゼによって免疫細胞ゲノム内へと転位することができる。また、配列番号399および400を含むITRを含むTcBusterなどのhAT型トランスポゾンは、対応するトランスポザーゼによって免疫細胞ゲノム内へと転位することができる。これらのトランスポゾンのいずれも、生存増強遺伝子を免疫細胞ゲノム内へと組み込むために使用することができる。トランスポゾンは、対応するトランスポザーゼを用いて免疫細胞内へと導入することができる。トランスポザーゼは、タンパク質として、または該トランスポザーゼをコードする配列が、免疫細胞内で発現可能なプロモーターに作動可能に連結されたmRNA分子もしくはDNA分子など、トランスポザーゼをコードする核酸として提供することができる。他の遺伝子もまた、その機能を改変するために免疫細胞内へと導入することができる。例えば、免疫細胞が標的細胞の表面上の抗原に結合することを可能にする受容体をコードする遺伝子を導入することができる。免疫細胞を死滅させるために使用することができる遺伝子もまた導入することができる。トランスポゾンを使用して遺伝子の組み合わせを免疫細胞に送達する利点は、トランスポザーゼが、典型的には、トランスポゾンITR間のDNAをすべて、免疫細胞のゲノム内へと組み込むことである。したがって、複数の遺伝子を同時に導入することができる。
【0016】
免疫細胞の生存遺伝子を幹細胞などの免疫細胞前駆細胞のゲノム内へと組み込んだ後、免疫細胞前駆細胞を免疫細胞へと分化させることは実現可能である。このような操作は、明示的に企図されている。免疫細胞の生存を増強するために、生存増強遺伝子は、生存増強遺伝子が免疫細胞において発現可能であるように、プロモーターに作動可能に連結されるものとする。例示的なプロモーターとしては、配列番号94~154から選択されるプロモーターなどのEF1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、EEF2プロモーター、ユビキチンプロモーター、SV40プロモーター、またはHSVTKプロモーターがある。
【0017】
改変されたヒト免疫細胞は、本発明の一態様である。加えて、生存または増殖を増強するように改変された動物免疫細胞は、実験モデルおよび動物治療薬としても価値がある。霊長類、齧歯類、ネコ、イヌおよびウマを含む哺乳動物由来の改変された免疫細胞は、本発明の一態様である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ゼノパス属(Xenopus)またはカイコガ属(Bombyx)のpiggyBac様遺伝子移入系を移入したJurkatヒトT細胞株のFACS分析。ヒトJurkat細胞に、トランスポザーゼ、および第6.1.1節に説明するCD19遺伝子を含む対応するトランスポゾンを移入した。70日後、FACSソーターを使用してCD19発現細胞を選択し、培養においてさらに85日間成長させた。次いで、細胞をCD19について染色し、FACSで分析した。パネルA:配列番号223によって与えられる配列を有するトランスポゾンを元々移入しておいた細胞を、CD19(y軸)およびGFP(x軸)について分析した。パネルB:配列番号224によって与えられる配列を有するトランスポゾンを元々移入しておいた細胞を、CD19(y軸)およびRFP(x軸)について分析した。
【0019】
【
図2】突然変異したSTAT3をコードする遺伝子を移入した初代T細胞のFACS分析。トランスポザーゼ、およびSTAT3:STAT3-Y640Fの突然変異版をコードする遺伝子と緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子とを含む対応するトランスポゾンを、ヒト初代T細胞に同時移入した。パネルA:細胞を様々な時間培養し(上部に表示)、その後、試料を採取し、蛍光標識抗CD8抗体で標識し、蛍光活性化セルソーターを用いて分析した。T細胞の表面上に発現したCD8をy軸に示し、GFP(STAT3 Y640F遺伝子を含むトランスポゾンの存在を示す)をx軸に沿って示す。パネルB:GFP蛍光を示すCD8+細胞の分率を、パネルAに示されるデータから計算した。
【0020】
【
図3】移入した初代T細胞とJY B細胞株由来の細胞との混合物のFACS分析。トランスポザーゼ、および配列番号229によって与えられる配列を有するキメラ抗原受容体をコードする遺伝子と第6.2.1.3節に説明されているGFPレポーターとを含む3つの対応するトランスポゾンのうちの1つを、ヒト初代T細胞に同時移入した。1つのトランスポゾンは、さらなる遺伝子を含まず(パネルAおよびパネルD)、1つのトランスポゾンは、サバイビンをコードする遺伝子をさらに含み(パネルBおよびパネルE)、1つのトランスポゾンは、CD28-D124E-T195Pをコードする遺伝子をさらに含んでいた(パネルCおよびパネルF)。細胞をおおよそ5週間培養し、その時点で、T細胞のおおよそ10%が発現性GFPであった。その時点で、200,000個のT細胞(=20,000個のGFP発現T細胞)をJY形質転換B細胞株の200,000個の細胞と混合した。混合の3日後(パネルA、パネルCおよびパネルE)または7日後(パネルB、パネルDおよびパネルF)に、蛍光標識した抗CD8抗体および抗CD19抗体で細胞を標識し、蛍光活性化セルソーターを用いて分析した。T細胞の表面上に発現したCD8をy軸に、JY細胞の表面上に発現したCD19をx軸に示す。
【0021】
【
図4】Bcl-2およびBcl-6をコードする遺伝子を移入した初代T細胞のFACS分析。トランスポザーゼ、およびBcl2およびBcl6をコードする遺伝子と緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子とを含む対応するトランスポゾンを、ヒト初代T細胞に同時移入した。パネルA:細胞を様々な時間培養し(上部に表示)、その後、試料を採取し、蛍光標識抗CD8抗体で標識し、蛍光活性化セルソーターを用いて分析した。T細胞の表面上に発現したCD8をy軸に示し、GFP(Bcl2-2A-Bcl6遺伝子を含むトランスポゾンの存在を示す)をx軸に沿って示す。パネルB:GFP蛍光を示すCD8+細胞の分率を、パネルAに示されるデータから計算した。
【0022】
【
図5】Bcl-XLをコードする遺伝子を移入した3つのドナー由来の初代T細胞のFACS分析。トランスポザーゼ、およびBcl-XLをコードする遺伝子と緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子とを含む対応するトランスポゾンを、ヒト初代T細胞に同時移入した。細胞を培養において240日間成長させ、ヒトCD8に対する蛍光標識抗体で染色し、フローサイトメーターで分析した。パネルA:ドナー81、パネルA:ドナー82、パネルA:ドナー84。T細胞の表面上に発現するCD8をy軸に示し、GFP(Bcl-XL遺伝子を含むトランスポゾンの存在を示す)をx軸に沿って示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
5.1 定義
「a」、「an」、および「the」という単数形の使用は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「ポリヌクレオチド」に対する指示対象は複数のポリヌクレオチドを含み、「基質」に対する指示対象は複数のこのような基質を含み、「変異体」に対する指示対象は複数の変異体を含むなどである。
【0024】
「結合した」、「付着した」、「連結された」、および「共役した」などの用語は、本明細書では相互交換可能に使用され、文脈上他に明確に指示されない限り、直接的および間接的な結合、付着、連結または共役を包含する。値の範囲が列挙されている場合、該範囲の列挙された上限と下限との間の各介在する整数値およびその各分数もまた、このような値の間の各部分範囲と共に具体的に開示されていることは理解されるべきである。何らかの範囲の上限および下限は、該範囲に独立して含まれることができ、または該範囲から除外されることができ、いずれかの限界を含むか、いずれの限界も含まないか、またはいずれの限界も含む各範囲もまた本発明内に包含される。論議されている値が固有の限界を有する場合、例えば、構成要素が0~100%の濃度で存在することができる場合、または水溶液のpHが1~14の範囲であることができる場合、それらの固有の限界が具体的に開示される。値が明示的に列挙されている場合、列挙された値とほぼ同じ数量または量の値もまた本発明の範囲内であることは理解されるべきである。組み合わせが開示されている場合、該組み合わせの要素の各部分組み合わせもまた具体的に開示されており、本発明の範囲内である。逆に、異なる要素または要素群が個別に開示される場合、それらの組み合わせもまた開示される。本発明の何らかの要素が複数の代替形態を有するものとして開示される場合、各代替形態が単独で、または他の代替形態との何らかの組み合わせで除外される本発明の例もまた本明細書によって開示され、本発明の2つ以上の要素がこのような除外を有することができ、このような除外を有する要素のすべての組み合わせが本明細書により開示される。
【0025】
本明細書で他に定義されない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。Singleton,et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology,2nd Ed.,John Wiley and Sons,New York(1994)、およびHale&Marham,The Harper Collins Dictionary of Biology,Harper Perennial,NY,1991は、当業者に、本発明で使用する用語の多くの一般的な辞書を提供する。本明細書に説明されるものと類似のまたは同等のいかなる方法および材料もまた、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料を説明する。他に示されない限り、核酸は、5’から3’への向きに左から右へと書かれ、アミノ酸配列は、それぞれアミノからカルボキシへの向きに左から右に書かれている。すぐ下に定義される用語は、全体として本明細書に対する参照によってより完全に定義される。
【0026】
ポリヌクレオチドの「立体配置」とは、ポリヌクレオチド内での機能的配列要素、ならびに該要素の順序および向きを意味する。
【0027】
「対応するトランスポゾン」および「対応するトランスポザーゼ」という用語は、トランスポザーゼとトランスポゾンとの間の活性の関連性を示すために使用される。トランスポザーゼは、その対応するトランスポゾンをトランスポザーゼ処理する。
【0028】
「対抗選択可能マーカー」という用語は、宿主細胞に選択的欠点を付与するポリヌクレオチド配列を意味する。対抗選択戒能マーカーの例としては、sacB、rpsL、tetAR、pheS、thyA、gata-1、ccdB、kidおよびbarnase(Bernard,1995,雑誌/Gene,162:159-160、Bernard et al.,1994.雑誌/Gene,148:71-74、Gabant et al.,1997,雑誌/Biotechniques,23:938-941、Gababt et al.,1998,雑誌/Gene,207:87-92、Gababt et al.,2000,雑誌/Biotechniques,28:784-788、Galvao and de Lorenzo,2005,雑誌/Appl Environ Microbiol,71:883-892、Hartzog et al.,2005,雑誌/Yeat,22:789-798、Knipfer et al.,1997,雑誌/Plasmid,37:129-140、Reyrat et al.,1998,雑誌/Infect Immun,66:4011-4017、Soderholm et al.,2001,雑誌/Biotechniques,31:306-310,312、Tamura et al.,2005,雑誌/Appl Environ Microbiol,71:587-590、Yazynin et al.,1999,雑誌/FEBS Lett,452:351-354)がある。対抗選択可能マーカーは、特定の状況下で該マーカーの選択的欠点を付与することが多い。例えば、該マーカーは、宿主細胞の環境に添加することが可能である化合物に対する感受性を付与することができるか、または該マーカーは、ある遺伝子型を有する宿主を死滅させることはできるが、別の遺伝子型を有する宿主を死滅させることはできない。対抗選択可能マーカーを担持しない細胞に選択的欠点を付与しない条件は、「許容がある」と説明される。対抗選択可能マーカーを担持する細胞に選択的欠点を付与する条件は、「制限がある」と説明される。
【0029】
「カップリング要素」または「翻訳カップリング要素」という用語は、第1のポリペプチドの発現を第2のポリペプチドの発現に連結することを可能にするDNA配列を意味する。内部リボソーム進入部位要素(IRES要素)およびシス作用性加水分解酵素要素(CHYSEL要素)は、カップリング要素の例である。
【0030】
「DNA配列」、「RNA配列」または「ポリヌクレオチド配列」という用語は、連なっている核酸配列を意味する。該配列は、何千もの塩基対のうちの何千または何百もの完全長ゲノム配列に対して長さ2~20ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドであることができる。
【0031】
「増強されたシグナル伝達受容体」(または「ESR」)という用語は、免疫細胞に阻害シグナルを伝達する受容体の細胞外/リガンド結合ドメインが、刺激シグナルを伝達する受容体の細胞内ドメインに融合したタンパク質を意味する。
【0032】
「発現コンストラクト」という用語は、RNAを転写するように設計された何らかのポリヌクレオチドを意味する。例えば、下流の遺伝子、コード領域、またはポリヌクレオチド配列(例えば、ポリペプチドもしくはタンパク質をコードするcDNA断片もしくはゲノムDNA断片、またはRNAエフェクター分子、例えば、アンチセンスRNA、三重鎖形成RNA、リボザイム、人為的に選択された高親和性RNAリガンド(アプタマー)、二本鎖RNA、例えばステム-ループ二本鎖RNAもしくはヘアピン二本鎖RNA、または二本指もしくは多数指の二本鎖RNAもしくはマイクロRNAを含むRNA分子、または何らかのRNA)に作動可能に連結されているか、または連結されることができる少なくとも1つのプロモーターを含有するコンストラクトである。「発現ベクター」とは、第2のポリヌクレオチドに作動可能に連結されることができるプロモーターを含むポリヌクレオチドである。レシピエント細胞内への発現コンストラクトの移入または形質転換は、該細胞が、RNAエフェクター分子、該発現コンストラクトによってコードされるポリペプチド、またはタンパク質を発現することを可能にする。発現コンストラクトは、遺伝子操作されたプラスミド、ウイルス、組換えウイルス、または例えば、バクテリオファージ、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルスもしくはヘルペスウイルスに由来する人為染色体であってよい。このような発現ベクターは、細菌、ウイルスまたはファージに由来の配列を含むことができる。このようなベクターには、染色体、エピソームおよびウイルスに由来のベクター、例えば、細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵母エピソーム、酵母染色体要素、およびウイルスに由来するベクター、ならびにこれらの組み合わせに由来するベクター、例えば、プラスミドおよびバクテリオファージの遺伝要素、コスミド、ならびにファージミドに由来するものなどが含まれる。発現コンストラクトは、生細胞内で複製することができ、または合成で作製することができる。本出願の目的のために、「発現コンストラクト」、「発現ベクター」、「ベクター」、および「プラスミド」という用語は、一般的な実例としての意味で本発明の適用を実証するために相互交換可能に使用されており、本発明を特定の種類の発現コンストラクトに限定することを意図していない。
【0033】
「発現ポリペプチド」という用語は、発現コンストラクト上の遺伝子によってコードされるポリペプチドを意味する。
【0034】
「発現系」という用語は、ポリヌクレオチドによってコードされる1つ以上の遺伝子産物を産生するために使用される何らかのインビボまたはインビトロの生物系を意味する。
【0035】
「遺伝子移入系」は、ベクターもしくは遺伝子移入ベクター、またはベクター内へとクローン化された移入予定の遺伝子を含むポリヌクレオチド(「遺伝子移入ポリヌクレオチド」または「遺伝子移入コンストラクト」)を含む。遺伝子移入系はまた、遺伝子移入の過程を促進するための他の特徴を含んでよい。例えば、遺伝子移入系は、第1のポリヌクレオチドが細胞に入ることを可能にするためのベクターおよび脂質またはウイルスパッケージングミックスを含んでよく、またはトランスポゾンを含むポリヌクレオチドと、トランスポゾンの生産的ゲノム組込みを増強するための対応するトランスポザーゼをコードする第2のポリヌクレオチド配列とを含んでよい。遺伝子移入系のトランスポザーゼおよびトランスポゾンは、同じ核酸分子上または異なる核酸分子上にあってよい。遺伝子移入系のトランスポザーゼは、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドとして提供されてよい。
【0036】
2つの要素は、天然に関係していない場合、互いに「異種」である。例えば、異種プロモーターに連結されたタンパク質をコードする核酸配列は、該タンパク質の発現を天然に駆動するプロモーター以外のプロモーターを意味する。トランスポゾン末端またはITRに隣接する異種核酸は、該トランスポゾン末端またはITRに天然に隣接しない異種核酸、例えば、抗体の重鎖または軽鎖をはじめとする、トランスポザーゼ以外のポリペプチドをコードする核酸などを意味する。核酸は、細胞内に天然には認められない場合、または細胞内に天然に認められるが説明される位置とは異なる位置(例えば、エピソームまたは異なるゲノムの位置)にある場合、細胞に対して異種である。
【0037】
「宿主」という用語は、核酸のレシピエントであることができる何らかの原核生物または真核生物を意味する。「宿主」は、この用語が本明細書で使用される場合、遺伝子操作されることができる原核生物または真核生物を含む。このような宿主の例については、Maniatis et al.,Molecular Cloning.A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1982)を参照されたい。本明細書で使用される場合、「宿主」、「宿主細胞、」、「宿主系」および「発現宿主」という用語は相互互換可能に使用することができる。
【0038】
「IRES」または「内部リボソーム進入部位」は、キャップ構造とは無関係に、リボソーム結合を直接的に促進する特化した配列を意味する。
【0039】
「単離された」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、その自然環境から取り出されたか、組換え技術を使用して産生されたか、または化学的にもしくは酵素で合成された、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを意味する。本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、精製することができ、すなわち、何らかの他のポリペプチドまたはポリヌクレオチドおよび関係する細胞産物または他の不純物を本質的に非含有であることができる。
【0040】
「ヌクレオシド」および「ヌクレオチド」という用語は、公知のプリン塩基およびピリミジン塩基だけでなく、修飾された他の複素環塩基も含有する、ヌクレオシドおよびヌクレオチドの部分を含む。このような修飾としては、メチル化プリンもしくはメチル化ピリミジン、アシル化プリンもしくはアシル化ピリミジン、または他の複素環がある。修飾ヌクレオシドまたは修飾ヌクレオチドはまた、例えば、ヒドロキシル基の1つ以上がハロゲン、脂肪族基で置き換えられ、またはエーテル、アミンなどとして官能化されている、糖部分の修飾を含むことができる。「ヌクレオチド単位」という用語は、ヌクレオシドおよびヌクレオチドを包含することを意図している。
【0041】
「オープンリーディングフレーム」または「ORF」は、アミノ酸へと翻訳されたとき、終止コドンを含有しないポリヌクレオチドの一部を意味する。遺伝暗号は、3塩基の対の群でDNA配列を読み取るが、これは、二本鎖DNA分子が、順方向に3つ、逆方向に3つの、6つの可能ないかなるリーディングフレームにおいても読み取ることができることを意味する。ORFは、典型的には、翻訳を開始することができる開始コドンも含む。
【0042】
「作動可能に連結された」という用語は、1つの配列がもう1つの配列の挙動を改変するような、2つの配列間の機能的連結を指す。例えば、核酸発現制御配列(プロモーター、IRES配列、エンハンサーまたは転写因子結合部位アレイ)を含む第1のポリヌクレオチド、および第2のポリヌクレオチドは、第1のポリヌクレオチドが第2のポリヌクレオチドの転写および/または翻訳に影響を及ぼす場合に作動可能に連結されている。同様に、分泌シグナル、または細胞内局在化シグナルを含む第1のアミノ酸配列と、第2のアミノ酸配列とは、第1のアミノ酸配列が第2のアミノ酸配列を分泌させるかまたは細胞内位置に局在させる場合に作動可能に連結されている。
【0043】
「オーバーハング」または「DNAオーバーハング」という用語は、二本鎖DNA分子の末端にある一本鎖部分を意味する。相補的なオーバーハングとは、互いに塩基対合することになるオーバーハングである。
【0044】
「piggyBac様トランスポザーゼ」は、イラクサキンウワバ(Trichoplusia ni)(配列番号30)由来のpiggyBacトランスポザーゼに対するTBLASTNアルゴリズムを使用して同定されるように、およびSakar,A.et.al.,(2003).Mol.Gen.Genomics 270:173-180.「Molecular evolutionary analysis of the widespread piggyBac transposon family and related ’domesticated’ species」においてより完全に説明されるように、少なくとも20%の配列同一性を有するトランスポザーゼを意味し、最大アラインメント時のイラクサキンウワバ(Trichoplusia ni)piggyBacトランスポザーゼのD268、D346、およびD447に対応する位置にアスパラギン酸残基により、DDE様DDDモチーフをさらに特徴とする。piggyBac様トランスポザーゼはまた、該トランスポザーゼがトランスポゾンを高頻度で正確に切除する能力も特徴とする。「piggyBac様トランスポゾン」は、piggyBac様トランスポザーゼをコードする天然に存在するトランスポゾンのトランスポゾン末端と同じである、または該トランスポゾン末端と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90、95、96、97、98または99%同一である、トランスポゾン末端を有するトランスポゾンを意味する。piggyBac様トランスポゾンは、各末端におおよそ12~16塩基の逆方向末端反復塩基配列(ITR)の配列を含む。これらの反復塩基配列は、2つの末端において同一であってよく、または2つの末端における反復塩基配列は、2つのITRにおいて1もしくは2もしくは3もしくは4の位置において異なっていてよい。トランスポゾンには、トランスポゾン組込みの際に複製する組込み標的配列(標的部位複製または標的配列複製またはTSD)に対応する4塩基配列が両側から隣接している。
【0045】
「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」および「遺伝子」という用語は、何らかの長さのヌクレオチドのポリマー形態を指すために相互互換可能に使用されており、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、これらの類似体、またはそれらの混合物を含むことができる。この用語は、該分子の一次構造のみを指す。したがって、該用語は、三本鎖、二本鎖および一本鎖のデオキシリボ核酸(「DNA」)、ならびに三本鎖、二本鎖および一本鎖のリボ核酸(「RNA」)を含む。該用語にはまた、例えばアルキル化によって、および/またはキャッピングによって修飾された形態、および修飾されていない形態のポリヌクレオチドも含まれる。より詳細には、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」という用語は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボースを含有する)、スプライシングされているか否かにかかわらずtRNA、rRNA,hRNA、siRNAおよびmRNAをはじめとするポリリボヌクレオチド(D-リボースを含有する)、プリン塩基もしくはピリミジン塩基のN-グリコシドもしくはC-グリコシドである何らかの他の種類のポリヌクレオチド、ならびに非ヌクレオチド骨格を含有する他のポリマー、例えば、ポリアミド(例えば、ペプチド核酸(「PNA」))ポリマーおよびポリモルホリノ(NeugeneとしてAnti-Virals,Inc.,オレゴン州コーバリス市より市販)ポリマー、ならびにDNAおよびRNAにおいて認められるものなど、塩基対合および塩基積層を可能にする立体配置においてポリマーが核酸塩基を含有することを条件とする他の合成配列特異的核酸ポリマーを含む。「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」という用語間の長さに意図された区別はなく、これらの用語は、本明細書において相互互換可能に使用される。これらの用語は、該分子の一次構造のみを指す。したがって、これらの用語には、例えば、3’-デオキシ-2’,5’-DNA、オリゴデオキシリボヌクレオチドN3’P5’ホスホラミダート、2’-O-アルキル置換RNA、二本鎖および一本鎖のDNA、ならびに二本鎖および一本鎖のRNA、ならびに例えばDNAとRNAとの間またはPNAとDNAもしくはRNAとの間の複合体をはじめとするこれらの複合体が含まれ、また、公知の種類の修飾、例えば、標識、アルキル化、「キャッピング」、ヌクレオチドのうちの1つ以上の類似体との置換、ヌクレオチド間修飾、例えば、負に帯電した結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を有する非帯電結合を有するもの(例えば、メチルホスホナート、ホスホトリエステル、ホスホルアミダート、カルバマートなど)、および正に帯電した結合を有するもの(例えば、アミノアルキルホスホルアミダート、アミノアルキルホスホトリエステル)、例えば、タンパク質(酵素(ヌクレアーゼ)、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジンなどをはじめとする)などのペンダント部分を含有するもの、挿入剤(例えば、アクリジン、プソラレンなど)を有するもの、(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属などの)キレートを含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を有するもの(例えば、αアノマー核酸など)、ならびに該ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの修飾されていない形態も含まれる。
【0046】
「プロモーター」は、作動可能に連結された核酸分子の転写を指令するのに十分な核酸配列を意味する。プロモーターは、プロモーター依存性遺伝子発現を細胞型特異的、組織特異的、もしくは時間特異的な様式で制御可能にするのに十分である、または外部シグナルもしくは作用薬によって誘導可能である、他の転写制御エレメント(例えば、エンハンサー)と共に使用することができ、このようなエレメントは、遺伝子の3’領域内でまたはイントロン内で存在してよい。望ましくは、プロモーターは、核酸配列、例えばcDNAもしくは遺伝子配列、またはエフェクターRNAコード配列に、核酸配列の発現を可能にするような方法で作動可能に連結されており、またはプロモーターは、転写予定の選択された核酸配列が都合よく挿入されることのできる発現カセットに提供される。
【0047】
「選択可能マーカー」という用語は、多くの場合、特定の条件下で、それを含有する分子もしくは細胞について選択することまたは該分子もしくは細胞を選択しないことを可能にするポリヌクレオチドセグメントを意味する。これらのマーカーは、限定されないが、RNA、ペプチド、もしくはタンパク質の産生などの活性をコードすることができ、またはRNA、ペプチド、タンパク質、無機および有機の化合物もしくは組成物に対して結合部位を提供することができる。選択可能マーカーの例としては、以下があるが、これらに限定されない。すなわち、(1)他では毒性のある化合物(例えば、抗生物質)に対する耐性を提供する生成物をコードするDNAセグメント、(2)他ではレシピエント細胞内で欠けている生成物(例えば、tRNA遺伝子、栄養素要求性マーカー)をコードするDNAセグメント、(3)遺伝子産物の活性を抑制する生成物をコードするDNAセグメント、(4)容易に同定することができる生成物をコードするDNAセグメント(例えば、βガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、および細胞表面タンパク質などの表現型マーカー)、(5)細胞の生存および/もしくは機能に他では有害である産物を結合するDNAセグメント、(6)先の1~5に説明するDNAセグメントのうちのいずれかの活性を他では阻害するDNAセグメント(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)、(7)基質を修飾する産物(例えば、制限エンドヌクレアーゼ)を結合するDNAセグメント、(8)所望の分子(例えば、特異的タンパク質結合部位)を単離するために使用することができるDNAセグメント、(9)他では機能しない可能性がある特異的ヌクレオチド配列(例えば、分子の亜集団のPCR増幅用)をコードするDNAセグメント、ならびに/または(10)存在しないとき、特定の化合物に対して感受性を直接的にもしくは間接的に付与するDNAセグメント、である。
【0048】
配列同一性は、既定のギャップパラメータを用いて、Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,ウィスコンシン州マディソン市)におけるBESTFIT、FASTA、およびTFASTAなどのアルゴリズムを使用して配列を整列させることによって、または検査、および最良の整列(すなわち、比較ウィンドウにわたる配列類似性の最大の百分率をもたらす)によって決定することができる。配列同一性の百分率は、比較ウィンドウにわたる2つの最適に整列した配列を比較すること、両配列において同一の残基が生じる位置の数を決定してマッチした位置の数を得ること、マッチした位置の数を、比較ウィンドウ内のギャップを計数しないマッチした位置とミスマッチした位置との総数(すなわち、ウィンドウの大きさ)によって除算すること、およびその結果に100を乗算して配列同一性の百分率を得ることによって計算される。他に示されない限り、2つの配列間の比較のウィンドウは、該2つの配列のうちの短い方の完全長によって定義される。
【0049】
Sleeping Beautyトランスポザーゼとは、配列番号28と少なくとも90、95、99または100%同一の配列を有する、左端の配列が配列番号24で右端の配列が配列番号25であるトランスポゾンを宿主細胞のゲノム内へと転位することができる、Mariner型トランスポザーゼである。Sleeping Beautyトランスポゾンは、配列番号26と少なくとも90、95、99または100%同一である左ITRと、配列番号27と90%同一である右ITRとを含む。Sleeping Beautyトランスポゾンは、配列番号24と少なくとも90、95、99、または100%同一であるトランスポゾン末端(ITRを含む)と、配列番号25と少なくとも90、95、99、または100%同一であり、かつ配列番号28のSleeping Beautyトランスポザーゼによって宿主細胞のゲノム内へと転位することができる右トランスポゾン末端(ITRを含む)とを含んでよい。
【0050】
「標的核酸」は、トランスポゾンが挿入されるべき核酸である。このような標的は、染色体、エピソームまたはベクターの一部であってよい。
【0051】
トランスポザーゼについての「組込み標的配列」または「標的配列」または「標的部位」は、トランスポザーゼによってトランスポゾンを挿入することができる標的DNA分子内の部位または配列である。イラクサキンウワバ(Trichoplusia ni)由来のpiggyBacトランスポザーゼは、そのトランスポゾンを主として標的配列5’-TTAA-3’へと挿入する。piggyBac様トランスポザーゼは、カットアンドペースト機序を使用してそれらのトランスポゾンを転位し、DNA分子への挿入の際にそれらの4塩基対標的配列の重複をもたらす。したがって、標的配列は、組み込まれたpiggyBac様トランスポゾンの各側に認められる。
【0052】
「翻訳」という用語は、ポリペプチドが、ポリヌクレオチドの配列を「読み取る」リボソームによって合成される過程を指す。
【0053】
「トランスポザーゼ」とは、対応するトランスポゾンのドナーポリヌクレオチド、例えばベクターからの切除と、(該トランスポザーゼが組込み欠損ではないことを条件として)その後のトランスポゾンの標的核酸への組込みと、を触媒するポリペプチドである。トランスポザーゼは、piggyBac様トランスポザーゼまたはSleeping Beautyなどのマリナー型トランスポザーゼであってよい。
【0054】
「転位」という用語は、本明細書では、トランスポザーゼが1つのポリヌクレオチドからトランスポゾンを切り出し、次いで同じポリヌクレオチド内の異なる部位内または第2のポリヌクレオチド内のいずれかへと該トランスポゾンを組み込む上での作用を意味するために使用される。
【0055】
「トランスポゾン」という用語は、対応するトランス作用性トランスポザーゼの作用によって、第1のポリヌクレオチド、例えばベクターから切り出され、同じポリヌクレオチド内の第2の位置へと、または第2のポリヌクレオチド、例えば細胞のゲノムDNAもしくは染色体外DNA内へと組み込まれることができるポリヌクレオチドを意味する。トランスポゾンは、トランスポザーゼによって認識されおよび転位するポリヌクレオチド配列である、第1のトランスポゾン末端と第2のトランスポゾン末端とを含む。トランスポゾンは通常、トランスポザーゼの作用によって第1のポリヌクレオチド配列が2つのトランスポゾン末端と共に転位するように、2つのトランスポゾン末端の間に第1のポリヌクレオチド配列をさらに含む。天然トランスポゾンは、トランスポゾンに作用するトランスポザーゼをコードするDNAをよく含む。本発明のトランスポゾンは、2つのトランスポゾン末端間の並置によって転位可能である異種ポリヌクレオチド配列を含む「合成トランスポゾン」である。トランスポゾンは、piggyBac様トランスポゾンまたはSleeping Beautyなどのマリナー型トランスポゾンであってよい。
【0056】
「トランスポゾン末端」という用語は、対応するトランスポザーゼによる認識および転位に十分であるシス作用性ヌクレオチド配列を意味する。piggyBac様トランスポゾンのトランスポゾン末端は、2つのトランスポゾン末端におけるそれぞれの反復が互いに逆相補であるように完全なまたは不完全な反復を含む。これらは、逆方向末端反復(ITR)または末端の逆方向反復(TIR)と称される。トランスポゾン末端は、転位を促進するまたは増強するITRに近位の追加の配列を含んでも含まなくてもよい。
【0057】
「ベクター」または「DNAベクター」または「遺伝子移入ベクター」という用語は、別のポリヌクレオチドについて「担持する」機能を実施するために使用されるポリヌクレオチドを指す。例えば、ベクターは、ポリヌクレオチドを生細胞内で増殖させることを可能にするために、またはポリヌクレオチドを細胞への送達のためにパッケージングすることを可能にするために、またはポリヌクレオチドを細胞のゲノムDNA内へと組み込むことを可能にするために使用されることが多い。ベクターは、追加の機能的要素をさらに含むことができ、例えば、トランスポゾンを含むことができる。
【0058】
免疫細胞は、適応免疫系および先天免疫系の細胞を含む、ならびに骨髄起源またはリンパ系起源の細胞を含む免疫系の何らかの細胞を指すことができる。免疫細胞の例としては、白血球、リンパ球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、リンパ系細胞、マスト細胞好酸球好塩基球およびナチュラルキラー細胞がある。リンパ球には、Bリンパ球およびTリンパ球が含まれる。Tリンパ球には、キラーT細胞、ヘルパーT細胞およびγδT細胞が含まれる。免疫細胞は、対象体から単離された初代細胞であってよいか、または細胞株の形態をはじめとするさらなる培養の結果であってよい。免疫細胞は、本明細書に説明するものに加えて、遺伝子工学の題目、例えば、CAR-T受容体の発現であってよい。
【0059】
本開示は、いくつかのタンパク質の野生型ヒト配列を表す例示的な配列番号を提供する該タンパク質を指す。文脈から明らかでない限り、タンパク質に対する参照は、例示された配列番号、ならびにそれと少なくとも90、95、または99%の同一性を有するその対立遺伝子、種および誘導変異体を含むと理解されるものとする。対立遺伝子変異体および種変異体の例は、SwissProtおよび他のデータベースにおいて認めることができる。該タンパク質についての何らかのこのような配列は、本明細書にさらに説明するタンパク質を発現する免疫細胞の生存の増強を付与するために、本明細書に説明する活性化突然変異のうちの1つ以上を含むように修飾することができる。
【0060】
突然変異は、XnYの形態で称されることがあり、式中、Xは野生型アミノ酸であり、nは野生型配列中のXのアミノ酸位置であり、Yは置換アミノ酸である。突然変異が、野生型配列とは異なる数のアミノ酸を有する配列において生じる場合、それぞれの配列が最大限に整列したとき、該突然変異は、野生型配列における位置nと整列した配列における位置に存在する。
【0061】
核酸が特定のタンパク質の活性化突然変異体をコードするといわれる場合、核酸が活性化突然変異を含むタンパク質をコードすることを意味する。
【0062】
アポトーシス阻害剤は、プログラム細胞死(アポトーシス)の過程を妨害する物質である。アポトーシスは、細胞内カスパーゼプロテアーゼの活性化によって細胞死が誘導される高度に調節された過程である。アポトーシス阻害剤には、天然の機能がアポトーシスに対抗するタンパク質、および天然の機能がアポトーシスに関与するが、アポトーシスを妨害する突然変異を含むタンパク質がある。
【0063】
アポトーシスアッセイは、カスパーゼ活性化、ホスファチジルセリン(PS)の細胞表面曝露およびDNA断片化をはじめとする、プログラム細胞死と関係する細胞事象を検出しおよび定量する。開始因子カスパーゼおよび作動体カスパーゼは、細胞におけるアポトーシスを検出するための特に良好な標的である。カスパーゼ活性アッセイは、カスパーゼによって開裂するペプチド基質か、または生細胞において活性化カスパーゼに結合する同様の基質のいずれかを用いる(McStay et al.,2014 Cold Spring Harbor Protocols,Measuring Apoptosis:Caspase Inhibitors and Activity assays、Niles et al,2008,Methods Mol Biol.,414:137-50)。アポトーシス阻害を測定するための例示的なアッセイは、段落[0064]において本明細書に説明するルシフェラーゼを使用する生物発光アッセイである。蛍光または発光のいずれかの読み取り値を使用するいくつかのカスパーゼアッセイキットが市販されており、例えば、Promega製カスパーゼ-Glo(登録商標)アッセイは、発光性カスパーゼ8テトラペプチド基質(Z-LETD-アミノルシフェリン)、カスパーゼ9テトラペプチド基質(Z-LEHD-アミノルシフェリン)、カスパーゼ3/7基質(Z-DEVD-アミノルシフェリン)、カスパーゼ6基質(Z-VEID-アミノルシフェリン)、またはカスパーゼ2基質(Z-VDVAD-アミノルシフェリン)と、安定したルシフェラーゼを専用緩衝液中で使用する。活性のあるカスパーゼの非存在またはカスパーゼの阻害の下では、カスパーゼ基質はルシフェラーゼのための基質として作用せず、したがって光を生じない。それぞれのカスパーゼによる基質の開裂の際に、アミノルシフェリンが遊離し、発光反応における光の発生に寄与することができる。得られた発光シグナルは、試料中に存在するカスパーゼ活性の量に正比例する。カスパーゼ3のための蛍光基質N-アセチルAsp-Glu-Val-Asp-7-アミノ-4-メチルクマリンまたはAc-DEVDAMCを使用するカスパーゼ活性アッセイキットの例は、Cell Signaling Technology製のカスパーゼ3活性アッセイキットである。活性化カスパーゼ3は、DEVDとAMCとの間でこの基質を開裂させ、蛍光リーダーを使用して検出することができる非常に蛍光性のあるAMCを生成し、380nmで励起し、420~460nmで発光する。基質の開裂は、アポトーシス細胞の溶解物中でのみ起こり、それゆえ、産生されるAMCの量は、試料中のアポトーシス細胞の数に比例する。
【0064】
5.2 免疫細胞における発現に有用な遺伝要素
5.2.1 トランスポゾン要素
異種ポリヌクレオチドが宿主細胞のゲノム内へと組み込まれる場合、免疫細胞における異種ポリヌクレオチド由来の遺伝子の発現の一貫性を改善することができる。ポリヌクレオチドの宿主細胞のゲノム内への組込みはまた、ゲノムDNAの複製および分裂を確実にするのと同じ機序に供することによって、一般に、該ポリヌクレオチドを安定して遺伝可能にする。このような安定した遺伝力は、長い成長期間にわたって良好かつ一貫した発現を達成するために望ましい。免疫細胞の安定した改変のために、特に治療用途のために、該改変の安定性および発現レベルの一貫性が重要である。
【0065】
異種ポリヌクレオチドは、トランスポゾンの一部である場合、例えばトランスポザーゼによって組み込まれることができるように、標的ゲノム内へとより効率的に組み込まれることができる。トランスポゾンの特定の利点は、トランスポゾンITR間のポリヌクレオチド全体が組み込まれることである。このことは、真核細胞内へと導入されたポリヌクレオチドが細胞内でしばしば無作為に断片化され、ポリヌクレオチドの一部のみが通常は低頻度で標的ゲノム内へと組み込まれる任意組込みとは対照的である。piggyBac様トランスポゾン内へと組み込まれた異種ポリヌクレオチドは、免疫細胞、ならびに、肝細胞、神経細胞、筋肉細胞、血液細胞、胚性幹細胞、体性幹細胞、造血細胞、胚、接合体および精子細胞(これらのいくつかは、インビトロ設定において操作されるために開放されている)内へと組み込まれることができる。好ましい細胞はまた、多能性細胞(その子孫が造血幹細胞または他の幹細胞などのいくつかの制限された細胞型へと分化することができる細胞)または全能性細胞(すなわち、その子孫が生物においていかなる細胞型にもなることができる細胞、例えば、胚性幹細胞)でもあってよい。
【0066】
好ましい遺伝子移入系は、トランスポゾンをトランスポザーゼ処理する対応するトランスポザーゼタンパク質、または対応するトランスポザーゼタンパク質をコードし、標的細胞において発現可能である核酸と組み合わせて、トランスポゾンを含む。piggyBac様トランスポゾンは、いくつかの理由のため、レンチウイルスベクターと比較して、本明細書に説明する用途のための遺伝子移入系として有利である。レンチウイルスは、ある特定のサイズを超えると効率的にパッケージングされず、レンチウイルスのDNAのかなりの量は、ウイルスの合成、組み立ておよびパッケージングに必要な配列で既に占有されている。レンチウイルスベクターを経て組み込まれた遺伝子は、プロモーターサイレンシングにより、非常に可変的な発現を示すことができる(Antoniou et al.,2013.Hum Gene Ther 24,363-374.「Optimizing retroviral gene expression for effective therapies」)。サイレンシングは、コピー数を増加させることによって、または組み込むポリヌクレオチド内へとインスレーターを組み込むことによって低減させることができる(Emery,2011.Hum Gene Ther 22,761-774.「The use of chromatin insulators to improve the expression and safety of integrating gene transfer vectors」。)。レンチウイルスコンストラクト内にインスレーターを含めることは、サイズの制限という理由、ならびにウイルスのパッケージングおよび力価に対するインスレーターの配列を含める効果という理由から、かなりの労力を要する可能性がある。対照的に、piggyBac様トランスポゾンを標的ゲノム内へと、その対応するトランスポザーゼによって効率的に組み込むことは、トランスポゾンのサイズを増すことによって乱されない。それゆえ、免疫細胞の特性の改変のために、複数の遺伝子を単一のトランスポゾン内へと、隣接するインスレーターとともに、対応するトランスポザーゼの能力を損なうことなく含めて、トランスポゾンを免疫細胞のゲノム内へと組み込むことは可能である。ヒトの内部へと配置予定の細胞のゲノムを修飾するとき、安全性も重要な懸念事項である。それゆえ、腫瘍細胞を死滅させる能力を増強し、生存しおよび増殖する能力を改善するために、T細胞などの免疫細胞の改変を行うとき、改変された免疫細胞を死滅させる手段を提供する遺伝子を細胞のゲノム内へと組み込むこともできることが有用である。このような「死滅スイッチ」の例としては、既存の治療薬によって効率的に認識される抗原(例えば、通常はB細胞上にのみ認められ、リツキシマブ薬によって認識され処置されるCD20、または通常はB細胞上にのみ認められ、ブリノツモマブ薬によって認識され処置されるCD19などの表面発現抗原)および誘導性カスパーゼ9自殺スイッチの発現がある(Straathof et.al.,2005.Blood 105,4247-4254.’’An inducible caspase 9 safety switch for T-cell therapy’’)。死滅スイッチが有用であるためには、該スイッチは、改変されたあらゆる細胞のゲノム内に存在しなければならない。キメラ抗原受容体に対する遺伝子と、CD19選択可能マーカーをコードする配列および死滅スイッチとしての誘導性カスパーゼ9をコードする配列とを保有するレンチウイルスベクターにおいてこのことを行う試行の一例が、Buddeら(PLoS One 8(12):e82742.doi:10.1371/journal.pone.0082742.eCollection 2013.「Combining a CD20 chimeric antigen receptor and an inducible caspase 9 suicide switch to improve the efficacy and safety of T cell adoptive immunotherapy for lymphoma。」)によって説明されている。死滅スイッチをキメラ抗原受容体遺伝子と組み合わせるために、本著者らは、ウイルスCHYSL/2A配列を使用して、キメラ抗原受容体を含むポリペプチドを誘導性カスパーゼ9から分離しなければならず、CD19遺伝子を切断しなければならなかった。このカーゴおよび発現用調節要素は、レンチウイルスベクターの能力の本質的に全体を占め、インスレーターの付加のための、またはT細胞の生存もしくは増殖もしくは機能を増強するための遺伝子などの他の遺伝子のための、追加の空間が残っていなかった。したがって、piggyBac様トランスポゾンとその対応するトランスポザーゼとを含む遺伝子移入系は、キメラ抗原受容体をコードする遺伝子をはじめとする遺伝子を、T細胞をはじめとする免疫細胞のゲノム内へと組み込むのに有利である。
【0067】
ゼノパス属(Xenopus)トランスポゾンは、免疫細胞のゲノムを修飾するのに有利なpiggyBac様トランスポゾンであり、配列が配列番号6によって与えられたITRと、転位予定の異種ポリヌクレオチドと、配列が配列番号7によって与えられた第2のITRとを含む。トランスポゾンはさらに、ITRのすぐ近くであって、異種ポリヌクレオチドの遠位にある、テトラヌクレオチド5’-TTAA-3’のコピーに両側から隣接していてもよい。トランスポゾンはさらに、ITRのすぐ近くであって、異種ポリヌクレオチドの片側、好ましくは左側において配列番号1または配列番号2と少なくとも95%同一である異種ポリヌクレオチドに対して近位の配列と、ITRのすぐ近くであって、異種ポリヌクレオチドのもう片方の側、好ましくは右側において配列番号4または配列番号5と少なくとも95%同一である異種ポリヌクレオチドに対して近位の配列とを含むことができる。このトランスポゾンは、配列番号31または配列番号32によって与えられる配列と少なくとも90%同一の配列、例えば配列番号33~63のうちのいずれかを含むトランスポザーゼによって転位することができる。好ましくは、トランスポザーゼは、天然に存在するトランスポザーゼの機能亢進型変異体である。好ましくは、機能亢進型変異体トランスポザーゼは、配列番号31の配列と比較して以下のアミノ酸変化のうちの1つを含む。すなわち、Y6L、Y6H、Y6V、Y6I、Y6C、Y6G、Y6A、Y6S、Y6F、Y6R、Y6P、Y6D、Y6N、S7G、S7V、S7D、E9W、E9D、E9E、M16E、M16N、M16D、M16S、M16Q、M16T、M16A、M16L、M16H、M16F、M16I、S18C、S18Y、S18M、S18L、S18Q、S18G、S18P、S18A、S18W、S18H、S18K、S18I、S18V、S19C、S19V、S19L、S19F、S19K、S19E、S19D、S19G、S19N、S19A、S19M、S19P、S19Y、S19R、S19T、S19Q、S20G、S20M、S20L、S20V、S20H、S20W、S20A、S20C、S20Q、S20D、S20F、S20N、S20R、E21N、E21W、E21G、E21Q、E21L、E21D、E21A、E21P、E21T、E21S、E21Y、E21V、E21F、E21M、E22C、E22H、E22R、E22L、E22K、E22S、E22G、E22M、E22V、E22Q、E22A、E22Y、E22W、E22D、E22T、F23Q、F23A、F23D、F23W、F23K、F23T、F23V、F23M、F23N、F23P、F23H、F23E、F23C、F23R、F23Y、S24L、S24W、S24H、S24V、S24P、S24I、S24F、S24K、S24Y、S24D、S24C、S24N、S24G、S24A、S26F、S26H、S26V、S26Q、S26Y、S26W、S28K、S28Y、S28C、S28M、S28L、S28H、S28T、S28Q、V31L、V31T、V31I、V31Q、V31K、A34L、A34E、L67A、L67T、L67M、L67V、L67C、L67H、L67E、L67Y、G73H、G73N、G73K、G73F、G73V、G73D、G73S、G73W、G73L、A76L、A76R、A76E、A76I、A76V、D77N、D77Q、D77Y、D77L、D77T、P88A、P88E、P88N、P88H、P88D、P88L、N91D、N91R、N91A、N91L、N91H、N91V、Y141I、Y141M、Y141Q、Y141S、Y141E、Y141W、Y141V、Y141F、Y141A、Y141C、Y141K、Y141L、Y141H、Y141R、N145C、N145M、N145A、N145Q、N145I、N145F、N145G、N145D、N145E、N145V、N145H、N145W、N145Y、N145L、N145R、N145S、P146V、P146T、P146W、P146C、P146Q、P146L、P146Y、P146K、P146N、P146F、P146E、P148M、P148R、P148V、P148F、P148T、P148C、P148Q、P148H、Y150W、Y150A、Y150F、Y150H、Y150S、Y150V、Y150C、Y150M、Y150N、Y150D、Y150E、Y150Q、Y150K、H157Y、H157F、H157T、H157S、H157W、A162L、A162V、A162C、A162K、A162T、A162G、A162M、A162S、A162I、A162Y、A162Q、A179T、A179K、A179S、A179V、A179R、L182V、L182I、L182Q、L182T、L182W、L182R、L182S、T189C、T189N、T189L、T189K、T189Q、T189V、T189A、T189W、T189Y、T189G、T189F、T189S、T189H、L192V、L192C、L192H、L192M、L192I、S193P、S193T、S193R、S193K、S193G、S193D、S193N、S193F、S193H、S193Q、S193Y、V196L、V196S、V196W、V196A、V196F、V196M、V196I、S198G、S198R、S198A、S198K、T200C、T200I、T200M、T200L、T200N、T200W、T200V、T200Q、T200Y、T200H、T200R、S202A、S202P、L210H、L210A、F212Y、F212N、F212M、F212C、F212A、N218V、N218R、N218T、N218C、N218G、N218I、N218P、N218D、N218E、A248S、A248L、A248H、A248C、A248N、A248I、A248Q、A248Y、A248M、A248D、L263V、L263A、L263M、L263R、L263D、Q270V、Q270K、Q270A、Q270C、Q270P、Q270L、Q270I、Q270E、Q270G、Q270Y、Q270N、Q270T、Q270W、Q270H、S294R、S294N、S294G、S294T、S294C、T297C、T297P、T297V、T297M、T297L、T297D、E304D、E304H、E304S、E304Q、E304C、S308R、S308G、L310R、L310I、L310V、L333M、L333W、L333F、Q336Y、Q336N、Q336M、Q336A、Q336T、Q336L、Q336I、Q336G、Q336F、Q336E、Q336V、Q336C、Q336H、A354V、A354W、A354D、A354C、A354R、A354E、A354K、A354H、A354G、C357Q、C357H、C357W、C357N、C357I、C357V、C357M、C357R、C357F、C357D、L358A、L358F、L358E、L358R、L358Q、L358V、L358H、L358C、L358M、L358Y、L358K、L358N、L358I、D359N、D359A、D359L、D359H、D359R、D359S、D359Q、D359E、D359M、L377V、L377I、V423N、V423P、V423T、V423F、V423H、V423C、V423S、V423G、V423A、V423R、V423L、P426L、P426K、P426Y、P426F、P426T、P426W、P426V、P426C、P426S、P426Q、P426H、P426N、K428R、K428Q、K428N、K428T、K428F、S434A、S434T、S438Q、S438A、S438M、T447S、T447A、T447C、T447Q、T447N、T447G、L450M、L450V、L450A、L450I、L450E、A462M、A462T、A462Y、A462F、A462K、A462R、A462Q、A462H、A462E、A462N、A462C、V467T、V467C、V467A、V467K、I469V、I469N、I472V、I472L、I472W、I472M、I472F、L476I、L476V、L476N、L476F、L476M、L476C、L476Q、P488E、P488H、P488K、P488Q、P488F、P488M、P488L、P488N、P488D、Q498V、Q498L、Q498G、Q498H、Q498T、Q498C、Q498E、Q498M、L502I、L502M、L502V、L502G、L502F、E517M、E517V、E517A、E517K、E517L、E517G、E517S、E517I、P520W、P520R、P520M、P520F、P520Q、P520V、P520G、P520D、P520K、P520Y、P520E、P520L、P520T、S521A、S521H、S521C、S521V、S521W、S521T、S521K、S521F、S521G、N523W、N523A、N523G、N523S、N523P、N523M、N523Q、N523L、N523K、N523D、N523H、N523F、N523C、I533M、I533V、I533T、I533S、I533F、I533G、I533E、D534E、D534Q、D534L、D534R、D534V、D534C、D534M、D534N、D534A、D534G、D534F、D534T、D534H、D534K、D534S、F576L、F576K、F576V、F576D、F576W、F576M、F576C、F576R、F576Q、F576A、F576Y、F576N、F576G、F576I、F576E、K577L、K577G、K577D、K577R、K577H、K577Y、K577I、K577E、K577V、K577N、I582V、I582K、I582R、I582M、I582G、I582N、I582E、I582A、I582Q、Y583L、Y583C、Y583F、Y583D、Y583Q、L587F、L587D、L587R、L587I、L587P、L587N、L587E、L587S、L587Y、L587M、L587Q、L587G、L587W、L587KまたはL587Tである。
【0068】
カイコガ属(Bombyx)トランスポゾンは、免疫細胞のゲノムを修飾するのに有利なpiggyBac様トランスポゾンであり、配列が配列番号14によって与えられたITRと、転位予定の異種ポリヌクレオチドと、配列が配列番号15によって与えられた第2のITRとを含む。トランスポゾンはさらに、ITRのすぐ近くであって、異種ポリヌクレオチドの遠位にある、テトラヌクレオチド5’-TTAA-3’のコピーに両側から隣接していてもよい。トランスポゾンはさらに、ITRのすぐ近くであって、異種ポリヌクレオチドの片側、好ましくは左側において配列番号12と少なくとも95%同一である異種ポリヌクレオチドに対して近位の配列と、ITRのすぐ近くであって、異種ポリヌクレオチドのもう片方の側、好ましくは右側において配列番号13と少なくとも95%同一である異種ポリヌクレオチドに対して近位の配列とを含むことができる。このトランスポゾンは、配列番号64によって与えられる配列と少なくとも90%同一の配列、例えば配列番号65~86のうちのいずれかを含むトランスポザーゼによって転位することができる。好ましくは、トランスポザーゼは、天然に存在するトランスポザーゼの機能亢進型変異体である。好ましくは、機能亢進型変異体トランスポザーゼは、配列番号BM-Tpアーゼ1の配列と比較して、以下のアミノ酸変化のうちの1つを含む。すなわち、Q85E、Q85M、Q85K、Q85H、Q85N、Q85T、Q85F、Q85L、Q92E、Q92A、Q92P、Q92N、Q92I、Q92Y、Q92H、Q92F、Q92R、Q92D、Q92M、Q92W、Q92C、Q92G、Q92L、Q92V、Q92T、V93P、V93K、V93M、V93F、V93W、V93L、V93A、V93I、V93Q、P96A、P96T、P96M、P96R、P96G、P96V、P96E、P96Q、P96C、F97Q、F97K、F97H、F97T、F97C、F97W、F97V、F97E、F97P、F97D、F97A、F97R、F97G、F97N、F97Y、H165E、H165G、H165Q、H165T、H165M、H165V、H165L、H165C、H165N、H165D、H165K、H165W、H165A、E178S、E178H、E178Y、E178F、E178C、E178A、E178Q、E178G、E178V、E178D、E178L、E178P、E178W、C189D、C189Y、C189I、C189W、C189T、C189K、C189M、C189F、C189P、C189Q、C189V、A196G、L200I、L200F、L200C、L200M、L200Y、A201Q、A201L、A201M、L203V、L203D、L203G、L203E、L203C、L203T、L203M、L203A、L203Y、N207G、N207A、L211G、L211M、L211C、L211T、L211V、L211A、W215Y、T217V、T217A、T217I、T217P、T217C、T217Q、T217M、T217F、T217D、T217K、G219S、G219A、G219C、G219H、G219Q、Q235C、Q235N、Q235H、Q235G、Q235W、Q235Y、Q235A、Q235T、Q235E、Q235M、Q235F、Q238C、Q238M、Q238H、Q238V、Q238L、Q238T、Q238I、R242Q、K246I、K253V、M258V、F261L、S263K、C271S、N303C、N303R、N303G、N303A、N303D、N303S、N303H、N303E、N303R、N303K、N303L、N303Q、I312F、I312C、I312A、I312L、I312T、I312V、I312G、I312M、F321H、F321R、F321N、F321Y、F321W、F321D、F321G、F321E、F321M、F321K、F321A、F321Q、V323I、V323L、V323T、V323M、V323A、V324N、V324A、V324C、V324I、V324L、V324T、V324K、V324Y、V324H、V324F、V324S、V324Q、V324M、V324G、A330K、A330V、A330P、A330S、A330C、A330T、A330L、Q333P、Q333T、Q333M、Q333H、Q333S、P337W、P337E、P337H、P337I、P337A、P337M、P337N、P337D、P337K、P337Q、P337G、P337S、P337C、P337L、P337V、F368Y、L373C、L373V、L373I、L373S、L373T、V389I、V389M、V389T、V389L、V389A、R394H、R394K、R394T、R394P、R394M、R394A、Q395P、Q395F、Q395E、Q395C、Q395V、Q395A、Q395H、Q395S、Q395Y、S399N、S399E、S399K、S399H、S399D、S399Y、S399G、S399Q、S399R、S399T、S399A、S399V、S399M、R402Y、R402K、R402D、R402F、R402G、R402N、R402E、R402M、R402S、R402Q、R402T、R402C、R402L、R402V、T403W、T403A、T403V、T403F、T403L、T403Y、T403N、T403G、T403C、T403I、T403S、T403M、T403Q、T403K、T403E、D404I、D404S、D404E、D404N、D404H、D404C、D404M、D404G、D404A、D404Q、D404L、D404P、D404V、D404W、D404F、N408F、N408I、N408A、N408E、N408M、N408S、N408D、N408Y、N408H、N408C、N408Q、N408V、N408W、N408L、N408P、N408K、S409H、S409Y、S409N、S409I、S409D、S409F、S409T、S409C、S409Q、N441F、N441R、N441M、N441G、N441C、N441D、N441L、N441A、N441V、N441W、G448W、G448Y、G448H、G448C、G448T、G448V、G448N、G448Q、E449A、E449P、E449T、E449L、E449H、E449G、E449C、E449I、V469T、V469A、V469H、V469C、V469L、L472K、L472Q、L472M、C473G、C473Q、C473T、C473I、C473M、R484H、R484K、T507R、T507D、T507S、T507G、T507K、T507I、T507M、T507E、T507C、T507L、T507V、G523Q、G523T、G523A、G523M、G523S、G523C、G523I、G523L、I527M、I527V、Y528N、Y528W、Y528M、Y528Q、Y528K、Y528V、Y528I、Y528G、Y528D、Y528A、Y528E、Y528R、Y543C、Y543W、Y543I、Y543M、Y543Q、Y543A、Y543R、Y543H、E549K、E549C、E549I、E549Q、E549A、E549H、E549C、E549M、E549S、E549F、E549L、K550R、K550M、K550Q、S556G、S556V、S556I、P557W、P557T、P557S、P557A、P557Q、P557K、P557D、P557G、P557N、P557L、P557V、H559K、H559S、H559C、H559I、H559W、V560F、V560P、V560I、V560H、V560Y、V560K、N561P、N561Q、N561G、N561A、V562Y、V562I、V562S、V562M、V567I、V567H、V567N、S583M、E601V、E601F、E601Q、E601W、E605R、E605W、E605K、E605M、E605P、E605Y、E605C、E605H、E605A、E605Q、E605S、E605V、E605I、E605G、D607V、D607Y、D607C、D607N、D607W、D607T、D607A、D607H、D607Q、D607E、D607L、D607K、D607G、S609R、S609W、S609H、S609V、S609Q、S609G、S609T、S609K、S609N、S609Y、L610T、L610I、L610K、L610G、L610A、L610W、L610D、L610Q、L610S、L610FまたはL610Nである。
【0069】
piggyBatトランスポゾンは、免疫細胞のゲノムを修飾するのに有利なpiggyBac様トランスポゾンであり、配列が配列番号20によって与えられたITRと、転位予定の異種ポリヌクレオチドと、配列が配列番号21によって与えられた第2のITRとを含む。トランスポゾンはさらに、ITRのすぐ近くであって、異種ポリヌクレオチドの遠位にある、テトラヌクレオチド5’-TTAA-3’のコピーに両側から隣接していてもよい。トランスポゾンはさらに、ITRのすぐ近くであって、異種ポリヌクレオチドの片側、好ましくは左側において配列番号22と少なくとも95%同一である異種ポリヌクレオチドに対して近位の配列と、ITRのすぐ近くであって、異種ポリヌクレオチドのもう片方の側、好ましくは右側において配列番号23と少なくとも95%同一である異種ポリヌクレオチドに対して近位の配列とを含むことができる。このトランスポゾンは、配列番号29と少なくとも90%同一の配列を含むトランスポザーゼによって転位することができる。好ましくは、トランスポザーゼは、天然に存在するトランスポザーゼの機能亢進型変異体である。好ましくは、機能亢進型変異体トランスポザーゼは、配列番号29の配列と比較して、以下のアミノ酸変化のうちの1つを含む。すなわち、:A14V、D475G、P491Q、A561T、T546T、T300A、T294A、A520T、G239S、S5P、S8F、S54N、D9N、D9G、1345V、M481V、EI lG、K130T、G9G、R427H、S8P、S36G、DlOG、S36Gである。
【0070】
免疫細胞のゲノムを修飾するのに有利なpiggyBac様トランスポゾンは、配列が配列番号16によって与えられたITRと、転位予定の異種ポリヌクレオチドと、配列が配列番号17によって与えられた第2のITRとを含む。トランスポゾンはさらに、ITRのすぐ近くであって、異種ポリヌクレオチドの遠位にある、テトラヌクレオチド5’-TTAA-3’のコピーに両側から隣接していてもよい。トランスポゾンはさらに、ITRのすぐ近くであって、異種ポリヌクレオチドの片側、好ましくは左側において配列番号18と少なくとも95%同一である異種ポリヌクレオチドに対して近位の配列と、ITRのすぐ近くであって、異種ポリヌクレオチドのもう片方の側、好ましくは右側において配列番号19と少なくとも95%同一である異種ポリヌクレオチドに対して近位の配列とを含むことができる。このトランスポゾンは、配列番号30と少なくとも90%同一の配列を含むトランスポザーゼによって転位することができる。好ましくは、トランスポザーゼは、天然に存在するトランスポザーゼの機能亢進型変異体である。好ましくは、機能亢進型変異体トランスポザーゼは、配列番号30の配列と比較して、以下のアミノ酸変化のうちの1つを含む。すなわち、G2C、Q40R、I30V、G165S、T43A、S61R、S103P、S103T、M194V、R281G、M282V、G316E、I426V、Q497L、N505D、Q573L、S509G、N570S、N538K、Q591P、Q591R、F594L、M194V、I30V、S103P、G165S、M282V、S509G、N538K、N571S、C41T、A1424G、C1472A、G1681A、T150C、A351G、A279G、T1638C、A898G、A880G、G1558A、A687G、G715A、T13C、C23T、G161A、G25A、T1050C、A1356G、A26G、A1033G、A1441G、A32G、A389C、A32G、A389C、A32G、T1572A、G456A、T1641C、Tl 155C、G1280A、T22C、A106G、A29G、C137T、A14V、D475G、P491Q、A561T、T546T、T300A、T294A、A520T、G239S、S5P、S8F、S54N、D9N、D9G、1345V、M481V、E1LG、K130T、G9G、R427H、S8P、S36G、DL0G、S36G、A51T、C153A、C277T、G201A、G202A、T236A、A103T、A104C、T140C、G138T、T118A、C74T、A179C、S3N、I30V、A46S、A46T、I82W、S103P、R119P、C125A、C125L、G165S、Y177K、Y177H、F180L、F180I、F180V、M185L、A187G、F200W、V207P、V209F、M226F、L235R、V240K、F241L、P243K、N258S、M282Q、L296W、L296Y、L296F、M298V、M298A、M298L、P311V、P311I、R315K、T319G、Y327R、Y328V、C340G、C340L、D421H、V436I、M456Y、L470F、S486K、M503I、M503L、V552K、A570T、Q591P、Q591R、R65A、R65E、R95A、R95E、R97A、R97E、R135A、R135E、R161A、R161E、R192A、R192E、R208A、R208E、K176A、K176E、K195A、K195E、S171E、M14V、D270N、I30V、G165S、M282L、M282I、M282VまたはM282Aである。
【0071】
免疫細胞のゲノムを修飾するのに有利なMariner型トランスポゾンは、配列番号26の配列を有するITRと、異種ポリヌクレオチドと、配列番号27の配列を有する第2のITRとを含むSleeping Beautyトランスポゾンである。ITRは、より長いトランスポゾン末端配列の一部であってよく、例えば、トランスポゾンは、配列番号24と少なくとも95%同一の配列を有する左端と、配列番号25と少なくとも95%同一の配列を有する右端とを含んでよい。このトランスポゾンは、その機能亢進型変異体を含む、配列番号28と少なくとも90%同一の配列を含むトランスポザーゼによって転位することができる。
【0072】
免疫細胞のゲノムを修飾するのに有利なhAT型トランスポゾンは、配列番号399の配列を有するITRと、異種ポリヌクレオチドと、配列番号400の配列を有する第2のITRとを含むTcBusterトランスポゾンである。ITRは、より長いトランスポゾン末端配列の一部であってよく、例えば、トランスポゾンは、配列番号397と少なくとも95%同一の配列を有する左端と、配列番号398と少なくとも95%同一の配列を有する右端とを含んでよい。このトランスポゾンは、その機能亢進型変異体を含む、配列番号401と少なくとも90%同一の配列を含むトランスポザーゼによって転位することができる。
【0073】
トランスポザーゼタンパク質は、タンパク質として、またはトランスポザーゼをコードする核酸として、例えば細胞の翻訳機構によって認識されるmRNAもしくは何らかのポリヌクレオチドをはじめとするリボ核酸として、DNAとして、例えばエピソームDNAをはじめとする染色体外DNAとして、プラスミドDNAとして、またはウイルス核酸として、細胞内へと導入することができる。さらに、トランスポザーゼタンパク質をコードする核酸は、プラスミドなどの核酸ベクターとして、またはウイルスベクターをはじめとする遺伝子発現ベクターとして、細胞内へと移入することができる。核酸は、環状または線状であってよい。トランスポザーゼタンパク質をコードするDNAは、構成性発現または誘導性発現のために細胞のゲノム内へとまたはベクター内へと安定して挿入することができる。トランスポザーゼタンパク質が細胞内へと移入されるかまたはDNAとしてベクター内へと挿入される場合、トランスポザーゼコード配列は、好ましくは異種プロモーターに作動可能に連結されている。構成性プロモーター、組織特異的プロモーター、誘導性プロモーターなどをはじめとする、使用することができる様々なプロモーターがある。piggyBac様トランスポザーゼタンパク質をコードするDNA配列またはRNA配列はすべて、明示的に企図されている。あるいは、トランスポザーゼは、例えば細胞透過性ペプチドを用いて(例えば、Ramsey and Flynn(2015)Pharmacol.Ther.154:78-86「Cell-penetrating peptides transport therapeutics into cells」において説明されているように)、塩+プロパンベタインをはじめとする小分子(例えば、Astolfo et al(2015)Cell 161:674-690において説明されているように)、または電気穿孔法(Morgan and Day(1995)Methods in Molecular Biology 48:63-71「The introduction of proteins into mammalian cells by electroporation」)を用いて、タンパク質として細胞内へと直接導入することができる。
【0074】
5.2.2 遺伝子移入系
遺伝子移入系は、宿主細胞に導入予定のポリヌクレオチドを含む。遺伝子移入系は、本明細書に説明するトランスポゾンもしくはトランスポザーゼのいずれかを含むことができるか、またはトランスポザーゼもしくはトランスポゾンを必要とせずに効率的な遺伝子移入を容易にする他の特徴を有する1つ以上のポリヌクレオチドを含むことができる。
【0075】
遺伝子移入系の複数の構成要素、例えば、標的細胞における発現のための遺伝子を含む、および場合によりトランスポゾン末端とトランスポザーゼ(タンパク質としてまたは核酸によってコードされるかのいずれかで提供することができる)とを含む、1つ以上のポリヌクレオチドがあるとき、これらの構成要素は、同じ時点でまたは異なる時点で細胞内へと移入することができる。例えば、トランスポザーゼタンパク質またはそのコード核酸は、対応するトランスポゾンの移入の前に、移入と同時に、または移入に続いて、細胞内へと移入することができる。加えて、遺伝子移入系のいずれかの構成要素の投与は、例えば、この構成要素の少なくとも2用量を投与することによって、繰り返し行うことができる。
【0076】
トランスポザーゼタンパク質は、RNAまたはDNAを含むポリヌクレオチドによってコードすることができる。トランスポザーゼがDNA内でコードされた遺伝子として提供される場合、トランスポザーゼは、好ましくは、標的細胞において活性のあるプロモーターに作動可能に連結されているものとする。好ましいRNA分子としては、細胞に対する毒性効果を低減するための適切な置換を有するもの、例えばウリジンのプソイドウリジンへの置換、およびシトシンの5-メチルシトシンへの置換を有するものがある。同様に、本発明のトランスポゾンまたはトランスポザーゼをコードする核酸は、プラスミドとしてまたは組換えウイルスDNAとしてのいずれかで、線状断片としてまたは環状断片として、細胞内へと移入することができる。
【0077】
遺伝子移入系の構成要素は、粒子衝突、電気穿孔法、微量注射、構成要素を脂質ナノ粒子またはカチオン性脂質小胞などの脂質含有小胞と組み合わせること、DNA濃縮試薬(例えば、リン酸カルシウム、ポリリジンまたはポリエチレンイミン)、またはその構成要素(すなわち、核酸)をウイルスベクター内へと挿入すること、およびウイルスベクターを細胞と接触させることなどの技術によって、1つ以上の細胞内へと移入することができる。ウイルスベクターを使用する場合、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクターからなる群から選択されるウイルスベクターをはじめとする、当技術分野で公知の様々なウイルスベクターのうちのいずれかを含むことができる。遺伝子移入系は、当技術分野で公知の適切な様式で、または医薬組成物もしくはキットとして配分することができる。
【0078】
5.2.3 プロモーター要素
免疫細胞においてポリペプチドを発現するための遺伝子移入系は、宿主細胞に移入予定のポリヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチドは、免疫細胞において活性のあるプロモーターを含む。例としては、哺乳動物グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)遺伝子(例えば、配列番号97~107によって与えられる配列)、哺乳動物ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)遺伝子(例えば、配列番号115~118によって与えられる配列)、哺乳動物伸長因子1a(EF1a)遺伝子(例えば、配列番号94、96および128~146によって与えられる配列)、哺乳動物伸長因子2(EEF2)遺伝子(例えば、配列番号1108、109、114および147~154によって与えられる配列)およびユビキチン遺伝子(例えば、配列番号95または125~127によって与えられる配列)をはじめとする構成的に発現する遺伝子由来のプロモーターがある。これらの遺伝子は、それらの天然のイントロン配列をはじめとするイントロン配列とともに、またはそれなしで、使用することができる。例示的なイントロン配列は、配列番号155~159として与えられている。
【0079】
5.2.4 ポリアデニル化要素
遺伝子移入系は、発現のための遺伝子を真核細胞内へと導入するのに有用である。動物細胞および高等植物細胞をはじめとする多くの真核細胞は、遺伝子発現の間に転写されたmRNAをプロセシングする。タンパク質をコードする遺伝子は、しばしばポリアデニル化され、細胞内のmRNAを安定化する。ポリアデニル化シグナルはまた、転写を終結させるのにも役立つことができる。このことは、2つのプロモーター間の干渉を低減させるのに役立つので、2つ以上のオープンリーディングフレームがポリヌクレオチドから発現予定であるときに特に有用である可能性がある。1つのプロモーターからの転写を終結させ、それによって第1のプロモーターの3’に位置する第2のプロモーターとの干渉を低減させるのに有効であるポリアデニル化配列は、合成で設計することができる。配列番号160~配列番号217の配列はすべて、転写された配列のポリアデニル化を開始するために、および転写を終結させる上で有用である。配列番号160~配列番号217のポリアデニル化配列は、脊椎動物または無脊椎動物の細胞をはじめとする動物細胞における遺伝子の発現のための遺伝子移入系のポリヌクレオチドに含まれることができる。配列番号160~配列番号217のポリアデニル化配列は、ラット、マウス、およびハムスターなどの齧歯類、ウシ、ヤギまたはヒツジなどの有蹄動物、ブタをはじめとする哺乳動物に由来の細胞、ヒト組織およびヒト幹細胞に由来の細胞をはじめとする脊椎動物細胞において遺伝子を発現させるのに有用である。配列番号160~配列番号217のポリアデニル化配列は、免疫細胞、リンパ球、肝細胞、神経細胞、筋肉細胞、血液細胞、胚性幹細胞、体性幹細胞、造血細胞、胚、接合体および精子細胞(これらのいくつかは、インビトロ設定において操作されるために開放されている)をはじめとする種々の細胞型において有用である。配列番号160~配列番号217のポリアデニル化配列は、多能性細胞(その子孫が造血幹細胞または他の幹細胞などのいくつかの制限された細胞型へと分化することができる細胞)または全能性細胞(すなわち、その子孫が生物においていかなる細胞型にもなることができる細胞、例えば、胚性幹細胞)において遺伝子を発現させるのに有用である。配列番号160~配列番号217のポリアデニル化配列は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはヒト胎児由来腎(HEK293)細胞などの培養細胞において遺伝子を発現させるのに有用である。
【0080】
配列番号160~配列番号217のポリアデニル化配列は、piggyBac様トランスポゾン、もしくはSleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾン、またはTcBusterなどのhAT型トランスポゾン内へと、または非トランスポゾンに基づく遺伝子送達ポリヌクレオチドに組み込むことができる。配列番号160~配列番号217のポリアデニル化配列は、好ましくは、発現予定のオープンリーディングフレームの3’末端までポリヌクレオチド内へと組み込まれる。配列番号160~配列番号217のポリアデニル化配列は、発現予定の2つの遺伝子の間に配置されると、第1のプロモーターからの転写を終結させプロモーター干渉を低減させるのに有用である。有利な遺伝子移入系は、配列番号160~配列番号217のいずれかと少なくとも80%または90%または95%または96%または97%または98%または99%または100%同一の配列を含む。
【0081】
5.2.5 インスレーター要素
異種ポリヌクレオチドが免疫細胞のゲノム内へと組み込まれるとき、異種ポリヌクレオチド内の遺伝要素が内在性免疫細胞遺伝子の発現に影響を及ぼすのを防止することがしばしば望ましい。同様に、異種ポリヌクレオチド内の遺伝子が免疫細胞ゲノム内の要素によって影響を及ぼされること、例えばヘテロクロマチン内への組み込みによってサイレンシングされること、を防止することはしばしば望ましい。インスレーター要素は、エンハンサー遮断活性(異種ポリヌクレオチド内の遺伝子が内在性免疫細胞遺伝子の発現に影響を及ぼすのを防止するのに役立つ)およびバリア活性(異種ポリヌクレオチド内の遺伝子がヘテロクロマチンへの組み込みによってサイレンシングされるのを防止するのに役立つ)を有することが公知である。エンハンサー遮断活性は、転写抑制体CTCFタンパク質の結合からもたらすことができる。バリア活性は、USF1およびVEZF1などの脊椎動物バリアタンパク質の結合からもたらすことができる。有用なインスレーター配列は、CTCF、USF1またはVEZF1に対する結合部位を含む。有利な遺伝子移入系は、CTCF、USF1またはVEZF1に対する結合部位を含むインスレーター配列を含むポリヌクレオチドを含む。より好ましくは、遺伝子移入系は、各々がCTCF、USF1またはVEZF1に対する結合部位を含む2つのインスレーター配列を含むポリヌクレオチドを含み、該2つのインスレーター配列は、異種ポリヌクレオチド内の何らかのプロモーターまたはエンハンサーに隣接する。インスレーター配列の有利な例は、配列番号87~配列番号93として与えられている。
【0082】
プロモーターまたはエンハンサーを含む異種ポリヌクレオチドがインスレーター配列なしで免疫細胞のゲノム内へと組み込まれる場合、異種ポリヌクレオチド内のプロモーター要素もしくはエンハンサー要素のいずれかが内在性免疫細胞遺伝子(例えば、癌遺伝子)の発現に影響を及ぼすというリスク、または異種ポリヌクレオチド内のプロモーター要素もしくはエンハンサー要素がヘテロクロマチン内への組み込みによってサイレンシングされるというリスクがある。異種ポリヌクレオチドが無作為な断片化の後に標的ゲノム内へと組み込まれるとき、いくつかの遺伝要素がしばしば失われ、他の遺伝要素が再構成されることがある。したがって、異種ポリヌクレオチドがエンハンサー要素およびプロモーター要素に隣接するインスレーター要素を含む場合、インスレーター要素が再構成されるまたは喪失されることがあり、エンハンサー要素およびプロモーター要素は、それらが組み込まれるゲノム環境に影響を及ぼし、影響を及ぼされる可能性があることがあるという重大なリスクがある。それゆえ、2つのトランスポゾンITR間の配列全体が再構成なしに免疫細胞ゲノム内へと組み込まれるトランスポゾン遺伝子移入系を使用することが有利である。したがって、免疫細胞ゲノム内へと組み込むための有利な遺伝子移入系は、要素が以下の順序で配置されたトランスポゾンを含む。すなわち、左トランスポゾン末端、第1のインスレーター配列、免疫細胞内での発現のための配列、第2のインスレーター配列、右トランスポゾン末端、である。免疫細胞内での発現のための配列には、何らかの数のオープンリーディングフレームに作動可能に連結された何らかの数の調節配列を含めることができる。トランスポゾン末端は、好ましくは、piggyBac様トランスポゾンまたはSleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾン、またはTcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンのものである。
【0083】
5.3 免疫細胞の生存を増強するのに有用な遺伝要素
免疫細胞が身体に対する脅威に適切に応答するためには、免疫細胞は、それらの標的を攻撃するのに十分長く生存することができなければならない。免疫細胞のエクスビボ操作を必要とする療法および研究には、免疫細胞が増殖することが有利である。しかしながら、エクスビボ培養条件も、ある特定のインビボ環境(例えば、固形腫瘍内の環境)も、免疫細胞の成長にとって最適ではない。例えば、かなり前処置されたリンパ腫患者に由来のT細胞は、抗CD19キメラ抗原受容体で操作されたとき、未処置患者に由来のT細胞よりも低いエクスビボ拡大速度および臨床応答を示す。それゆえ、特に免疫細胞に対して自然に敵対的である条件下では、ヒト免疫細胞の機能、持続性および増殖を増強する方法が必要とされている。
【0084】
5.3.1 T細胞形質転換要素
ヒト免疫細胞の持続性および増殖を増強するための1つのアプローチは、成長および/または生存を高めるための遺伝要素を免疫細胞のゲノム内へと組み込むことである。免疫細胞の生存を増強するための候補遺伝要素には、免疫細胞癌において突然変異することがわかっている遺伝子がある。しかしながら、細胞から癌細胞への形質転換は、典型的には、一連の突然変異を必要とすると考えられており、各突然変異の役割は、細胞の生存または成長に直接関連していないことがある。例えば、多くの突然変異は、追加の突然変異が起こる可能性を単に高めることが公知である。したがって、ある特定の遺伝子における突然変異が免疫細胞癌においてしばしば生じる相関が存在する可能性があるとしても、一般に、その同じ突然変異した遺伝子を免疫細胞内へと導入することがその細胞の成長または生存を増強するということにはならない。それゆえ、天然に存在する突然変異を含む遺伝子を含む異種ポリヌクレオチドの、免疫細胞のゲノム内への組み込みがその細胞の生存および増殖を高めるかどうかを判定するために試験を行うことができる。
【0085】
本発明者らは、免疫細胞に成長または生存利益を付与するために、異種ポリヌクレオチド上に提供され、免疫細胞のゲノム内へと組み込まれることができる遺伝子を同定しようと探索した。これを行うために、本発明者らは、免疫細胞におけるタンパク質の発現に有効な異種プロモーターに作動可能に連結された活性化突然変異をはじめとする天然に存在する突然変異体ヒトタンパク質をコードする配列を有する遺伝子を含むポリヌクレオチドを合成し、これらの異種ポリヌクレオチドをT細胞のゲノム内へと組み込んだ。次に、本発明者らは、第6.2節において説明するように、エクスビボ培養におけるこれらのT細胞の成長および生存を測定した。
【0086】
5.3.1.1 STAT3
STAT3(転写のシグナル伝達因子および活性化因子3)をコードする遺伝子は、大顆粒リンパ球性白血病において突然変異していることがしばしば認められる。これらの活性化突然変異は、STAT3のSH2ドメインに頻繁に存在し、S614R、E616K、G618R、Y640F、N647I、E652K、K658Y、K658R、K658N、K658M、K658R、K658H、K658N、D661YおよびD661Vを含む。STAT3における活性化突然変異はまた、SH2ドメインの外側でも認められており、例えば、F174SおよびH410Rである。第6.2.1.1節および第6.2.1.5節において説明するように、本発明者らは、STAT3タンパク質の活性化突然変異体をコードする異種ポリヌクレオチドが、免疫細胞の生存または免疫細胞の増殖を増強するために免疫細胞内へと導入されることができることを実証しており、STAT3の活性化突然変異体をコードする遺伝子は、第6.2節において説明するような免疫細胞生存増強遺伝子および免疫細胞増殖増強遺伝子である。その配列がF174S、H410R、S614R、E616K、G618R、Y640F、N647I、E652K、K658Y、K658R、K658N、K658M、K658R、K658H、K658N、D661YおよびD661Vから選択される1つ以上の突然変異を含む、STAT3の修飾版を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチド、例えば、配列番号232)は、本発明の一実施形態である。突然変異した例示的なSTAT3タンパク質としては、配列番号246~配列番号250がある。好ましい実施形態は、活性化突然変異を含むSTAT3タンパク質をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含み、該核酸は異種プロモーターに作動可能に連結されている。STAT3の活性化突然変異体をコードする核酸に作動可能に連結されることができる例示的な異種プロモーターとしては、EF1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、EEF2プロモーター、ユビキチンプロモーター、SV40プロモーターまたはHSVTKプロモーター、例えば配列番号94~配列番号154から選択される配列がある。好ましい実施形態は、STAT3の活性化突然変異体をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含み、該核酸は、異種ポリアデニル化シグナル、例えば哺乳動物細胞を感染させるウイルスに由来のポリアデニル化シグナル、哺乳動物EF1ポリアデニル化シグナル、哺乳動物成長ホルモンポリアデニル化シグナルまたは哺乳動物グロビンポリアデニル化シグナル、例えば配列番号160~配列番号217から選択される配列に作動可能に連結されている。好ましい実施形態は、STAT3の活性化突然変異体をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号6および配列番号7を有する配列、または配列番号14および配列番号15を有する配列、または配列番号18および配列番号19を有する配列、または配列番号20および配列番号21を有する配列をさらに含む、piggyBac様トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、STAT3の活性化突然変異体をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号24と90%同一である配列と、配列番号25と90%同一である配列とをさらに含む、Sleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、STAT3の活性化突然変異体をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号397と90%同一である配列と、配列番号398と90%同一である配列とをさらに含む、TcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。STAT3の活性化突然変異体をコードするポリヌクレオチドを含むトランスポゾンは、対応するトランスポザーゼまたは対応するトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドと共に免疫細胞内へと導入することができる。好ましい実施形態は、STAT3の活性化突然変異体をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、レンチウイルスベクターの一部であるポリヌクレオチドを含む。突然変異したSTAT3タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターは、パッケージングされ、免疫細胞を感染させるために使用することができる。免疫細胞は、好ましくはT細胞である。
【0087】
本発明の一態様は、そのゲノムが、活性化突然変異を有するSTAT3タンパク質をコードする遺伝子を含む異種ポリヌクレオチドを含む、免疫細胞である。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、レンチウイルスベクター、またはpiggyBac様トランスポゾン、またはSleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾン、またはTcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンを含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞ゲノムは、3コピーのSTAT3遺伝子と、2つの内在性コピーと、1つの異種突然変異体コピーとを含む。
【0088】
5.3.1.2 CD28
CD28(分化クラスター28)遺伝子はしばしば、末梢T細胞リンパ腫において突然変異していることが認められる。最も一般的な活性化突然変異は、D124E、D124V、T195IおよびT195Pである。第6.2.1.2節および第6.2.1.3節において説明するように、本発明者らは、CD28タンパク質の活性化突然変異体をコードする異種ポリヌクレオチドが、免疫細胞の生存または免疫細胞の増殖を増強するために、および再刺激誘導性細胞死を低減させるために免疫細胞内へと導入されることができることを実証しており、CD28の活性化突然変異体をコードする遺伝子は、第6.2節において説明するような免疫細胞生存増強遺伝子および免疫細胞増殖増強遺伝子である。その配列がD124E、D124V、T195IおよびT195Pから選択される1つ以上の突然変異を含む、CD28の修飾版を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチド(例えば、配列番号233)は、本発明の一実施形態である。突然変異した例示的なCD28タンパク質は、配列番号251として与えられている。突然変異したCD28は、配列番号233の最初の18アミノ酸における分泌シグナルを別の機能活性のある分泌シグナルで置き換えることをさらに含むことができる。好ましい実施形態は、CD28の活性化突然変異体をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含み、該核酸は異種プロモーターに作動可能に連結されている。突然変異したCD28をコードする核酸に作動可能に連結されることができる例示的な異種プロモーターとしては、EF1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、EEF2プロモーター、ユビキチンプロモーター、SV40プロモーターまたはHSVTKプロモーター、例えば配列番号94~配列番号154から選択される配列がある。好ましい実施形態は、CD28の活性化突然変異体をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含み、該核酸は、異種ポリアデニル化シグナル、例えば哺乳動物細胞を感染させるウイルスに由来のポリアデニル化シグナル、哺乳動物EF1ポリアデニル化シグナル、哺乳動物成長ホルモンポリアデニル化シグナルまたは哺乳動物グロビンポリアデニル化シグナル、例えば配列番号160~配列番号217から選択される配列に作動可能に連結されている。好ましい実施形態は、CD28の活性化突然変異体をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号6および配列番号7を有する配列、または配列番号14および配列番号15を有する配列、または配列番号18および配列番号19を有する配列、または配列番号20および配列番号21を有する配列をさらに含む、piggyBac様トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、CD28の活性化突然変異体をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号24と90%同一である配列と、配列番号25と90%同一である配列とをさらに含む、Sleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、CD28の活性化突然変異体をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号397と90%同一である配列と、配列番号398と90%同一である配列とをさらに含む、TcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。CD28の活性化突然変異体をコードするポリヌクレオチドを含むトランスポゾンは、対応するトランスポザーゼまたは対応するトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドと共に免疫細胞内へと導入されることができる。好ましい実施形態は、CD28の活性化突然変異体をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、レンチウイルスベクターの一部であるポリヌクレオチドを含む。CD28の活性化突然変異体をコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターは、パッケージングされ、免疫細胞を感染させるために使用することができる。免疫細胞は、好ましくはT細胞である。
【0089】
本発明の一態様は、そのゲノムが、活性化突然変異を有するCD28タンパク質をコードする遺伝子を含む異種ポリヌクレオチドを含む、免疫細胞である。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、レンチウイルスベクター、またはpiggyBac様トランスポゾン、またはSleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾン、またはTcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンを含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞ゲノムは、3コピーのCD28遺伝子と、2つの内在性コピーと、1つの異種突然変異体コピーとを含む。
【0090】
5.3.1.3 RhoA
RhoA小型GTPアーゼは、末梢T細胞リンパ腫において頻繁に突然変異している。リンパ腫と関係する最も一般的な突然変異は、G17VおよびK18Nである。RhoAタンパク質の活性化突然変異体は、免疫細胞の生存または免疫細胞の増殖を増強するために免疫細胞内へと導入されることができ、RhoAの活性化突然変異体をコードする遺伝子は、第6.2節において説明するような免疫細胞生存増強遺伝子および免疫細胞増殖増強遺伝子である。その配列がG17VおよびK18Nまたはこれらの組み合わせから選択される突然変異を含む、RhoAの修飾版を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチド、例えば、配列番号234は、本発明の一実施形態である。突然変異した例示的なRhoAタンパク質は、配列番号252および配列番号253として与えられている。好ましい実施形態は、突然変異したRhoAタンパク質をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含み、該核酸は異種プロモーターに作動可能に連結されている。突然変異したRhoAをコードする遺伝子に作動可能に連結されることができる例示的な異種プロモーターとしては、EF1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、EEF2プロモーター、ユビキチンプロモーター、SV40プロモーターまたはHSVTKプロモーター、例えば配列番号94~配列番号154から選択される配列がある。好ましい実施形態は、突然変異したRhoAタンパク質をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含み、該核酸は、異種ポリアデニル化シグナル、例えば哺乳動物細胞を感染させるウイルスに由来のポリアデニル化シグナル、哺乳動物EF1ポリアデニル化シグナル、哺乳動物成長ホルモンポリアデニル化シグナルまたは哺乳動物グロビンポリアデニル化シグナル、例えば配列番号160~配列番号217から選択される配列に作動可能に連結されている。好ましい実施形態は、突然変異したRhoAタンパク質をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号6および配列番号7を有する配列、または配列番号14および配列番号15を有する配列、または配列番号18および配列番号19を有する配列、または配列番号20および配列番号21を有する配列をさらに含む、piggyBac様トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、突然変異したRhoAタンパク質をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号24と90%同一である配列と、配列番号25と90%同一である配列とをさらに含む、Sleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、突然変異したRhoAタンパク質をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号397と90%同一である配列と、配列番号398と90%同一である配列とをさらに含む、TcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。突然変異したRhoAタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むトランスポゾンは、対応するトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドと共に免疫細胞内へと導入することができる。好ましい実施形態は、突然変異したRhoAタンパク質をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、レンチウイルスベクターの一部であるポリヌクレオチドを含む。突然変異したRhoAタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターは、パッケージングされ、免疫細胞を感染させるために使用することができる。免疫細胞は、好ましくはT細胞である。
【0091】
本発明の一態様は、そのゲノムが、活性化突然変異を有するRhoAタンパク質をコードする遺伝子を含む異種ポリヌクレオチドを含む、免疫細胞である。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、レンチウイルスベクター、またはpiggyBac様トランスポゾン、またはSleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾン、またはTcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンを含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞ゲノムは、3コピーのRhoA遺伝子と、2つの内在性コピーと、1つの異種突然変異体コピーとを含む。
【0092】
5.3.1.4 ホスホリパーゼCのγ1
活性化ホスホリパーゼCγ(PLCG)突然変異は、皮膚T細胞リンパ腫と関係している。リンパ腫と関係する最も一般的な活性化突然変異は、S345F、S520FおよびR707Qである。第6.2.1.5節において説明するように、本発明者らは、PLCGタンパク質の活性化突然変異体をコードする異種ポリヌクレオチドが、免疫細胞の生存または免疫細胞の増殖を増強するために免疫細胞内へと導入されることができることを実証しており、PLCGの活性化突然変異体をコードする遺伝子は、第6.2節において説明するような免疫細胞生存増強遺伝子および免疫細胞増殖増強遺伝子である。その配列がS345F、S520FおよびR707Qから選択される1つ以上の突然変異を含む、PLCGの修飾版を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチド、例えば、配列番号235は、本発明の一実施形態である。突然変異した例示的なPLCGタンパク質は、配列番号254として与えられている。好ましい実施形態は、PLCGの活性化突然変異体をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含み、該核酸は異種プロモーターに作動可能に連結されている。突然変異したPLCGをコードする遺伝子に作動可能に連結されることができる例示的な異種プロモーターとしては、EF1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、EEF2プロモーター、ユビキチンプロモーター、SV40プロモーターまたはHSVTKプロモーター、例えば配列番号94~配列番号154から選択される配列がある。好ましい実施形態は、PLCGの活性化突然変異体をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含み、該核酸は、異種ポリアデニル化シグナル、例えば哺乳動物細胞を感染させるウイルスに由来のポリアデニル化シグナル、哺乳動物EF1ポリアデニル化シグナル、哺乳動物成長ホルモンポリアデニル化シグナルまたは哺乳動物グロビンポリアデニル化シグナル、例えば配列番号160~配列番号217から選択される配列に作動可能に連結されている。好ましい実施形態は、PLCGの活性化突然変異体をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号6および配列番号7を有する配列、または配列番号14および配列番号15を有する配列、または配列番号18および配列番号19を有する配列、または配列番号20および配列番号21を有する配列をさらに含む、piggyBac様トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、PLCGの活性化突然変異体をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号24と90%同一である配列と、配列番号25と90%同一である配列とをさらに含む、Sleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、突然変異したPLCGタンパク質をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号397と90%同一である配列と、配列番号398と90%同一である配列とをさらに含む、TcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。突然変異したPLCGタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むトランスポゾンは、対応するトランスポザーゼまたは対応するトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドと共に免疫細胞内へと導入することができる。好ましい実施形態は、突然変異したPLCGタンパク質をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、レンチウイルスベクターの一部であるポリヌクレオチドを含む。突然変異したPLCGタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターは、パッケージングされ、免疫細胞を感染させるために使用することができる。免疫細胞は、好ましくはT細胞である。
【0093】
本発明の一態様は、そのゲノムが、活性化突然変異を有するPLCGタンパク質をコードする遺伝子を含む異種ポリヌクレオチドを含む、免疫細胞である。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、レンチウイルスベクター、またはpiggyBac様トランスポゾン、またはSleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾン、またはTcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンを含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞ゲノムは、3コピーのPLCG遺伝子と、2つの内在性コピーと、1つの異種突然変異体コピーとを含む。
【0094】
5.3.1.5 STAT5B
STAT5B(転写のシグナル伝達因子および活性化因子5B)をコードする遺伝子は、T細胞白血病において突然変異していることが時折認められる。白血病と関係する最も一般的な活性化突然変異は、SH2ドメイン内のN642Hである。T細胞癌と関係する他のSTAT5B活性化突然変異には、SH2ドメイン突然変異T648S、S652YおよびY665F、ならびにSH2ドメイン外のP267Aがある。STAT5Bタンパク質の活性化突然変異体をコードする異種ポリヌクレオチドは、免疫細胞の生存または免疫細胞の増殖を増強するために免疫細胞内へと導入されることができ、STAT5Bの活性化突然変異体をコードする遺伝子は、第6.2節において説明するような免疫細胞生存増強遺伝子および免疫細胞増殖増強遺伝子である。その配列がN642H、T648S、S652Y、Y665FおよびP267Aから選択される1つ以上の突然変異を含む、STAT5Bの修飾版を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチド(例えば、配列番号236)は、本発明の一実施形態である。突然変異した例示的なSTAT5Bタンパク質は、配列番号255として与えられている。好ましい実施形態は、突然変異したSTAT5Bタンパク質をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含み、該核酸は異種プロモーターに作動可能に連結されている。突然変異したSTAT5Bをコードする遺伝子に作動可能に連結されることができる例示的な異種プロモーターとしては、EF1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、EEF2プロモーター、ユビキチンプロモーター、SV40プロモーターまたはHSVTKプロモーター、例えば配列番号94~配列番号154から選択される配列がある。好ましい実施形態は、突然変異したSTAT5Bタンパク質をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドを含み、該遺伝子は、異種ポリアデニル化シグナル、例えば哺乳動物細胞を感染させるウイルスに由来のポリアデニル化シグナル、哺乳動物EF1ポリアデニル化シグナル、哺乳動物成長ホルモンポリアデニル化シグナルまたは哺乳動物グロビンポリアデニル化シグナル、例えば配列番号160~配列番号217から選択される配列に作動可能に連結されている。好ましい実施形態は、突然変異したSTAT5Bタンパク質をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号6および配列番号7を有する配列、または配列番号14および配列番号15を有する配列、または配列番号18および配列番号19を有する配列、または配列番号20および配列番号21を有する配列をさらに含む、piggyBac様トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、STAT5Bの活性化突然変異体をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号24と90%同一である配列と、配列番号25と90%同一である配列とをさらに含む、Sleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、突然変異したSTAT5Bタンパク質をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号397と90%同一である配列と、配列番号398と90%同一である配列とをさらに含む、TcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。突然変異したSTAT5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むトランスポゾンは、対応するトランスポザーゼまたは対応するトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドと共に免疫細胞内へと導入することができる。好ましい実施形態は、突然変異したSTAT5Bタンパク質をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、レンチウイルスベクターの一部であるポリヌクレオチドを含む。突然変異したSTAT5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターは、パッケージングされ、免疫細胞を感染させるために使用することができる。免疫細胞は、好ましくはT細胞である。
【0095】
本発明の一態様は、そのゲノムが、活性化突然変異を有するSTAT5Bタンパク質をコードする遺伝子を含む異種ポリヌクレオチドを含む、免疫細胞である。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、レンチウイルスベクター、またはpiggyBac様トランスポゾン、またはSleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾン、またはTcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンを含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞ゲノムは、3コピーのSTAT5B遺伝子と、2つの内在性コピーと、1つの異種突然変異体コピーとを含む。
【0096】
5.3.1.6 サバイビン
サバイビン(タンパク質のアポトーシス阻害剤ファミリーのメンバー)をコードする遺伝子は、T細胞白血病において上方調節されることが時折認められる。第6.2.1.3節において説明するように、本発明者らは、異種プロモーターに作動可能に連結されたサバイビン遺伝子をコードする異種ポリヌクレオチドが、免疫細胞の生存または免疫細胞の増殖を増強するために、および再刺激誘導性細胞死を低減させるために免疫細胞内へと導入されることができることを実証しており、異種プロモーターに作動可能に連結されたサバイビン遺伝子は、第6.2節において説明するような免疫細胞生存増強遺伝子および免疫細胞増殖増強遺伝子である。異種プロモーターに作動可能に連結された、配列番号237を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、本発明の一実施形態である。サバイビンをコードする遺伝子に作動可能に連結されることができる例示的な異種プロモーターとしては、EF1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、EEF2プロモーター、ユビキチンプロモーター、SV40プロモーターまたはHSVTKプロモーター、例えば配列番号94~配列番号154から選択される配列がある。好ましい実施形態は、サバイビンをコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドを含み、該遺伝子は、異種ポリアデニル化シグナル、例えば哺乳動物細胞を感染させるウイルスに由来のポリアデニル化シグナル、哺乳動物EF1ポリアデニル化シグナル、哺乳動物成長ホルモンポリアデニル化シグナルまたは哺乳動物グロビンポリアデニル化シグナル、例えば配列番号160~配列番号217から選択される配列に作動可能に連結されている。好ましい実施形態は、サバイビンをコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号6および配列番号7を有する配列、または配列番号14および配列番号15を有する配列、または配列番号18および配列番号19を有する配列、または配列番号20および配列番号21を有する配列をさらに含む、piggyBac様トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、サバイビンをコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号24と90%同一である配列と、配列番号25と90%同一である配列とをさらに含む、Sleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、サバイビンをコードする遺伝子をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号397と90%同一である配列と、配列番号398と90%同一である配列とをさらに含む、TcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。サバイビンをコードするポリヌクレオチドを含むトランスポゾンは、対応するトランスポザーゼまたは対応するトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドと共に免疫細胞内へと導入することができる。好ましい実施形態は、サバイビンをコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、レンチウイルスベクターの一部であるポリヌクレオチドを含む。サバイビンをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターは、パッケージングされ、免疫細胞を感染させるために使用することができる。免疫細胞は、好ましくはT細胞またはB細胞である。
【0097】
本発明の一態様は、そのゲノムが、サバイビンをコードする遺伝子を含む、かつレンチウイルスベクター、またはpiggyBac様トランスポゾン、またはSleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾン、またはTcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンをさらに含む、異種ポリヌクレオチドを含む、免疫細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞ゲノムは、3コピーのサバイビン遺伝子と、2つの内在性コピーと、異種プロモーターに作動可能に連結された1つの異種コピーとを含む。
【0098】
5.3.1.7 Bcl-XL
Bcl-XL(抗アポトーシスタンパク質)をコードする遺伝子は、B細胞リンパ腫において上方調節されることが時折認められる。第6.2.1.5節および第6.2.1.6節において説明するように、本発明者らは、異種プロモーターに作動可能に連結されたBcl-XL遺伝子をコードする異種ポリヌクレオチドが、免疫細胞の生存または免疫細胞の増殖を増強するために、および再刺激誘導性細胞死を低減させるために免疫細胞内へと導入されることができることを実証しており、異種プロモーターに作動可能に連結されたBcl-XL遺伝子は、第6.2節において説明するような免疫細胞生存増強遺伝子および免疫細胞増殖増強遺伝子である。異種プロモーターに作動可能に連結された、配列番号238を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、本発明の一実施形態である。Bcl-XLをコードする核酸に作動可能に連結されることができる例示的な異種プロモーターとしては、EF1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、EEF2プロモーター、ユビキチンプロモーター、SV40プロモーターまたはHSVTKプロモーター、例えば配列番号94~配列番号154から選択される配列がある。好ましい実施形態は、Bcl-XLをコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含み、該核酸は、異種ポリアデニル化シグナル、例えば哺乳動物細胞を感染させるウイルスに由来のポリアデニル化シグナル、哺乳動物EF1ポリアデニル化シグナル、哺乳動物成長ホルモンポリアデニル化シグナルまたは哺乳動物グロビンポリアデニル化シグナル、例えば配列番号160~配列番号217から選択される配列に作動可能に連結されている。好ましい実施形態は、Bcl-XLをコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号6および配列番号7を有する配列、または配列番号14および配列番号15を有する配列、または配列番号18および配列番号19を有する配列、または配列番号20および配列番号21を有する配列をさらに含む、piggyBac様トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、Bcl-XLをコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号24と90%同一である配列と、配列番号25と90%同一である配列とをさらに含む、Sleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、Bcl-XLをコードする遺伝子をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号397と90%同一である配列と、配列番号398と90%同一である配列とをさらに含む、TcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。Bcl-XLをコードするポリヌクレオチドを含むトランスポゾンは、対応するトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドと共に免疫細胞内へと導入することができる。好ましい実施形態は、Bcl-XLをコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、レンチウイルスベクターの一部であるポリヌクレオチドを含む。Bcl-XLをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターは、パッケージングされ、免疫細胞を感染させるために使用することができる。免疫細胞は、好ましくはT細胞またはB細胞である。
【0099】
本発明の一態様は、そのゲノムが、Bcl-XLをコードする遺伝子を含む、かつレンチウイルスベクター、またはpiggyBac様トランスポゾン、またはSleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾン、またはTcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンをさらに含む、異種ポリヌクレオチドを含む、免疫細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞ゲノムは、3コピーのBcl-XL遺伝子と、2つの内在性コピーと、異種プロモーターに作動可能に連結された1つの異種コピーとを含む。
【0100】
5.3.1.8 CCND1
CCND1(サイクリンD1)をコードする遺伝子は、白血病において突然変異していることが時折認められる。癌と関係するCCND1突然変異には、E36G、E36Q、E36K、A39S、S41L、S41P、S41T、V42E、V42A、V42L、V42M、Y44S、Y44D、Y44C、Y44H、K46T、K46R、K46N、K46E、C47G、C47R、C47S、C47W、P199R、P199S、P199L、S201F、T285I、T285A、P286L、P286H、P286S、P286TおよびP286Aがある。CCND1タンパク質の活性化突然変異体をコードする異種ポリヌクレオチドは、免疫細胞の生存または免疫細胞の増殖を増強するために免疫細胞内へと導入されることができ、CCND1の活性化突然変異体をコードする遺伝子は、第6.2節において説明するような免疫細胞生存増強遺伝子および免疫細胞増殖増強遺伝子である。その配列がE36G、E36Q、E36K、A39S、S41L、S41P、S41T、V42E、V42A、V42L、V42M、Y44S、Y44D、Y44C、Y44H、K46T、K46R、K46N、K46E、C47G、C47R、C47S、C47W、P199R、P199S、P199L、S201F、T285I、T285A、P286L、P286H、P286S、P286TおよびP286Aから選択される1つ以上の突然変異を含む、CCND1の修飾版を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチド(例えば、配列番号239)は、本発明の一実施形態である。突然変異した例示的なCCND1タンパク質は、配列番号256として与えられている。好ましい実施形態は、突然変異したCCND1タンパク質をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含み、該核酸は異種プロモーターに作動可能に連結されている。突然変異したCCND1をコードする核酸に作動可能に連結されることができる例示的な異種プロモーターとしては、EF1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、EEF2プロモーター、ユビキチンプロモーター、SV40プロモーターまたはHSVTKプロモーター、例えば配列番号94~配列番号154から選択される配列がある。好ましい実施形態は、突然変異したCCND1タンパク質をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含み、該核酸は、異種ポリアデニル化シグナル、例えば哺乳動物細胞を感染させるウイルスに由来のポリアデニル化シグナル、哺乳動物EF1ポリアデニル化シグナル、哺乳動物成長ホルモンポリアデニル化シグナルまたは哺乳動物グロビンポリアデニル化シグナル、例えば配列番号160~配列番号217から選択される配列に作動可能に連結されている。好ましい実施形態は、突然変異したCCND1タンパク質をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号6および配列番号7を有する配列、または配列番号14および配列番号15を有する配列、または配列番号18および配列番号19を有する配列、または配列番号20および配列番号21を有する配列をさらに含む、piggyBac様トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、CCND1の活性化突然変異体をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号24と90%同一である配列と、配列番号25と90%同一である配列とをさらに含む、Sleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、CCND1の活性化突然変異体をコードする遺伝子をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号397と90%同一である配列と、配列番号398と90%同一である配列とをさらに含む、TcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。突然変異したCCND1タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むトランスポゾンは、対応するトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドと共に免疫細胞内へと導入することができる。好ましい実施形態は、突然変異したCCND1タンパク質をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、レンチウイルスベクターの一部であるポリヌクレオチドを含む。突然変異したCCND1タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターは、パッケージングされ、免疫細胞を感染させるために使用することができる。免疫細胞は、好ましくはT細胞またはB細胞である。
【0101】
本発明の一態様は、そのゲノムが、活性化突然変異を有するCCND1タンパク質をコードする遺伝子を含む異種ポリヌクレオチドを含む、免疫細胞である。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、レンチウイルスベクター、またはpiggyBac様トランスポゾン、またはSleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾン、またはTcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンを含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞ゲノムは、3コピーのCCND1遺伝子と、2つの内在性コピーと、1つの異種突然変異体コピーとを含む。
【0102】
5.3.1.9 Bcl2
Bcl2(抗アポトーシスタンパク質)をコードする遺伝子は、B細胞リンパ腫において上方調節されることが時折認められる。第6.2.1.4節において説明するように、本発明者らは、異種プロモーターに作動可能に連結されたBcl2遺伝子をコードする異種ポリヌクレオチドが、免疫細胞の生存または免疫細胞の増殖を増強するために、免疫細胞内へと導入されることができることを実証しており、異種プロモーターに作動可能に連結されたBcl2遺伝子は、第6.2節において説明するような免疫細胞生存増強遺伝子および免疫細胞増殖増強遺伝子である。異種プロモーターに作動可能に連結された、配列番号v270または272を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、本発明の一実施形態である。Bcl2をコードする核酸に作動可能に連結されることができる例示的な異種プロモーターとしては、EF1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、EEF2プロモーター、ユビキチンプロモーター、SV40プロモーターまたはHSVTKプロモーター、例えば配列番号94~配列番号154から選択される配列がある。好ましい実施形態は、Bcl2をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含み、該核酸は、異種ポリアデニル化シグナル、例えば哺乳動物細胞を感染させるウイルスに由来のポリアデニル化シグナル、哺乳動物EF1ポリアデニル化シグナル、哺乳動物成長ホルモンポリアデニル化シグナルまたは哺乳動物グロビンポリアデニル化シグナル、例えば配列番号160~配列番号217から選択される配列に作動可能に連結されている。好ましい実施形態は、Bcl2をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号6および配列番号7を有する配列、または配列番号14および配列番号15を有する配列、または配列番号18および配列番号19を有する配列、または配列番号20および配列番号21を有する配列をさらに含む、piggyBac様トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、Bcl2をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号24と90%同一である配列と、配列番号25と90%同一である配列とをさらに含む、Sleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、Bcl2をコードする遺伝子をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号397と90%同一である配列と、配列番号398と90%同一である配列とをさらに含む、TcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。Bcl2をコードするポリヌクレオチドを含むトランスポゾンは、対応するトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドと共に免疫細胞内へと導入することができる。好ましい実施形態は、Bcl2をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、レンチウイルスベクターの一部であるポリヌクレオチドを含む。Bcl2をコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターは、パッケージングされ、免疫細胞を感染させるために使用することができる。免疫細胞は、好ましくはT細胞またはB細胞である。
【0103】
本発明の一態様は、そのゲノムが、Bcl2をコードする遺伝子を含む、かつレンチウイルスベクター、またはpiggyBac様トランスポゾン、またはSleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾン、またはTcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンをさらに含む、異種ポリヌクレオチドを含む、免疫細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞ゲノムは、3コピーのBcl2遺伝子と、2つの内在性コピーと、異種プロモーターに作動可能に連結された1つの異種コピーとを含む。
【0104】
5.3.1.10 Bcl6
Bcl6(抗アポトーシスタンパク質)をコードする遺伝子は、B細胞リンパ腫において上方調節されることが時折認められる。第6.2.1.4節において説明するように、本発明者らは、異種プロモーターに作動可能に連結されたBcl6遺伝子をコードする異種ポリヌクレオチドが、免疫細胞の生存または免疫細胞の増殖を増強するために、免疫細胞内へと導入されることができることを実証しており、異種プロモーターに作動可能に連結されたBcl6遺伝子は、第6.2節において説明するような免疫細胞生存増強遺伝子および免疫細胞増殖増強遺伝子である。異種プロモーターに作動可能に連結された、配列番号271または配列番号272を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、本発明の一実施形態である。Bcl6をコードする核酸に作動可能に連結されることができる例示的な異種プロモーターとしては、EF1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、EEF2プロモーター、ユビキチンプロモーター、SV40プロモーターまたはHSVTKプロモーター、例えば配列番号94~配列番号154から選択される配列がある。好ましい実施形態は、Bcl6をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含み、該核酸は、異種ポリアデニル化シグナル、例えば哺乳動物細胞を感染させるウイルスに由来のポリアデニル化シグナル、哺乳動物EF1ポリアデニル化シグナル、哺乳動物成長ホルモンポリアデニル化シグナルまたは哺乳動物グロビンポリアデニル化シグナル、例えば配列番号160~配列番号217から選択される配列に作動可能に連結されている。好ましい実施形態は、Bcl6をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号6および配列番号7を有する配列、または配列番号14および配列番号15を有する配列、または配列番号18および配列番号19を有する配列、または配列番号20および配列番号21を有する配列をさらに含む、piggyBac様トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、Bcl6をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号24と90%同一である配列と、配列番号25と90%同一である配列とをさらに含む、Sleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、Bcl6をコードする遺伝子をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号397と90%同一である配列と、配列番号398と90%同一である配列とをさらに含む、TcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。Bcl6をコードするポリヌクレオチドを含むトランスポゾンは、対応するトランスポザーゼまたは対応するトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドと共に免疫細胞内へと導入することができる。好ましい実施形態は、Bcl6をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、レンチウイルスベクターの一部であるポリヌクレオチドを含む。Bcl6をコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターは、パッケージングされ、免疫細胞を感染させるために使用することができる。免疫細胞は、好ましくはT細胞またはB細胞である。
【0105】
本発明の一態様は、そのゲノムが、Bcl6をコードする遺伝子を含む、かつレンチウイルスベクターまたはpiggyBac様トランスポゾンをさらに含む異種ポリヌクレオチドを含む、免疫細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞ゲノムは、3コピーのBcl6遺伝子と、2つの内在性コピーと、異種プロモーターに作動可能に連結された1つの異種コピーとを含む。
【0106】
5.3.2.増強型シグナル伝達受容体
T細胞などの免疫細胞は、天然リガンドおよび合成リガンドに結合する細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達経路と相互作用する細胞内ドメインとを含む、膜タンパク質を発現する。本発明者らは、第1のタンパク質に由来する細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、刺激シグナルまたは共刺激シグナルを免疫細胞に伝達する受容体に由来する細胞内ドメインとを含む、増強型シグナル伝達受容体(ESR)と呼ばれるキメラ受容体のセットを設計、合成および試験した。しかしながら、キメラ抗原受容体とは異なり、ESRは、CD3ゼータ鎖の細胞内部分を含む配列を含まない。ESRの1つの機能は、免疫細胞の生存を増強することである。ESRの別の機能は、例えば阻害性受容体に作用する腫瘍細胞によるT細胞阻害経路の関与を打ち消すことである(Tay et al,2017.Immunotherapy 9,1339-1349)。ESRが有効に機能するためには、腫瘍微小環境内に提示されている阻害性リガンドについて天然の阻害性受容体と競合するのに十分高いレベルで発現しなければならない。
【0107】
一実施形態では、ESRの細胞外ドメインは、免疫細胞に阻害シグナルを自然に伝達する受容体の細胞外リガンド結合ドメインに由来する可能性があり、この場合、ESRは、通常、阻害シグナルとして解釈されるものを受け取り、それを刺激シグナルとして伝達する。例えば、ESRの細胞外ドメインは、TNFRSF1A、TNFRSF3(LTRβ)、TNFRSF6(Fas)、TNFRSF8(CD30)、TNFRSF10A(DR4)、TNFRSF10B(DR5)、TNFRSF19(TROY)、TNFRSF21(DR6)およびCTLA4から選択されるタンパク質の細胞外ドメインに由来する配列を含むことができ、好ましくは、細胞外ドメインはヒトタンパク質に由来する。本発明のいくつかの実施形態では、ESRの細胞外ドメインは、その配列が配列番号322~配列番号330から選択される配列と少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%または100%同一であるポリペプチドを含む。
【0108】
別の実施形態では、ESRの細胞外ドメインは、免疫細胞の表面上に発現するタンパク質、好ましくはその正常な機能が免疫機能を刺激することであるタンパク質に結合するタンパク質に由来する可能性がある。この場合、ESRは、刺激シグナルを別の免疫細胞に伝達し、刺激シグナルを、該ESRが発現する免疫細胞に導入する。例えば、ESR細胞外ドメインは、TNFRSF4(OX40)、TNFRSF5(CD40)、TNFRSF7(CD27)、TNFRSF9(4-1BB)、TNFRSF11A(RANK)、TNFRSF13B(TACI)、TNFRSF13C(BAFF-R)、TNFRSF14(HVEM)、TNFRSF17(CD269)、TNFRSF18(GITR)、CD28、CD28H(TMIGD2)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS/CD278)、DNAXアクセサリー分子1(DNAM-1/CD226)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM/CD150)、T細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン(TIM-1/HAVcr-1)、インターフェロン受容体α鎖(IFNAR1)、インターフェロン受容体β鎖IFNAR2)、インターロイキン2受容体βサブユニット(IL2RB)およびインターロイキン2受容体γサブユニット(IL2RG)から選択されるタンパク質の細胞外ドメインに結合する抗体、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、ナノボディ、VHH断片またはVNAR断片の可変ドメインを含むことができる。例示的な一本鎖抗CD28抗体は、配列番号340のTGN1412である。
【0109】
別の実施形態では、ESRの細胞外ドメインは、免疫細胞の表面上に発現する受容体、好ましくはその正常な機能が免疫細胞において刺激シグナルまたは共刺激シグナルを伝達することである受容体に結合するリガンドに由来する可能性がある。この場合、ESRは、刺激シグナルを別の免疫細胞に伝達し、該ESRが発現する免疫細胞に刺激シグナルを導入する。例えば、ESR細胞外ドメインは、TNFSF4(OX40リガンド)、TNFSF5(CD40リガンド)、TNFSF9(4-1BBリガンド)、TNFSF11(RANKL)、TNFSF14(HVEMリガンド)、TNFSF13B、CD80、CD86およびICOSリガンドから選択されるタンパク質の細胞外ドメインに由来する配列を含むことができ、好ましくは、細胞外ドメインはヒトタンパク質に由来する。本発明のいくつかの実施形態では、ESRの細胞外ドメインは、その配列が配列番号331~配列番号339から選択される配列と少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一であるポリペプチドを含む。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態では、増強型シグナル伝達受容体は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーの細胞内ドメインに由来する配列、または通常は刺激シグナルを免疫細胞に伝達する別の免疫細胞受容体に由来する配列を含み、本発明のいくつかの実施形態では、ESRは、TNFRSF4(OX40)、TNFRSF5(CD40)、TNFRSF7(CD27)、TNFRSF9(4-1BB)、TNFRSF11A(RANK)、TNFRSF13B(TACI)、TNFRSF13C(BAFF-R)、TNFRSF14(HVEM)、TNFRSF17(CD269)、TNFRSF18(GITR)、CD28、CD28H(TMIGD2)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS/CD278)、DNAXアクセサリー分子1(DNAM-1/CD226)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM/CD150)、T細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン(TIM-1/HAVcr-1)、インターフェロン受容体α鎖(IFNAR1)、インターフェロン受容体β鎖IFNAR2)、インターロイキン2受容体βサブユニット(IL2RB)、インターロイキン2受容体γサブユニット(IL2RG)、腫瘍壊死因子スーパーファミリー14(TNFSF14/LIGHT)、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D/CD314)およびCD40リガンド(CD40L)から選択されるタンパク質の細胞内ドメインに由来する配列を含み、好ましくは、細胞内ドメインはヒトタンパク質のものである。本発明のいくつかの実施形態では、ESRは、その配列が配列番号341~配列番号364から選択される配列と少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%または100%同一であるポリペプチドを含む。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態において、増強型シグナル伝達受容体は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーの膜貫通ドメインに由来する配列、または通常は阻害シグナルまたは刺激シグナルを免疫細胞に伝達する別の免疫細胞受容体に由来する配列を含み、本発明のいくつかの実施形態では、ESRは、TNFRSF1A、TNFRSF1B、TNFRSF3(LTRβ)、TNFRSF6(Fas)、TNFRSF8(CD30)、TNFRSF10A(DR4)、TNFRSF10B(DR5)、TNFRSF19(TROY)、TNFRSF21(DR6)、CTLA4、TNFRSF4(OX40)、TNFRSF5(CD40)、TNFRSF7(CD27)、TNFRSF9(4-1BB)、TNFRSF11A(RANK)、TNFRSF13B(TACI)、TNFRSF13C(BAFF-R)、TNFRSF14(HVEM)、TNFRSF17(CD269)、TNFRSF18(GITR)、CD28、CD28H(TMIGD2)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS/CD278)、DNAXアクセサリー分子1(DNAM-1/CD226)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM/CD150)、T細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン(TIM-1/HAVcr-1)、インターフェロン受容体α鎖(IFNAR1)、インターフェロン受容体β鎖IFNAR2)、インターロイキン2受容体βサブユニット(IL2RB)、インターロイキン2受容体γサブユニット(IL2RG)、腫瘍壊死因子スーパーファミリー14(TNFSF14/LIGHT)、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D/CD314)およびCD40リガンド(CD40L)から選択されるタンパク質の膜貫通ドメインに由来する配列を含み、好ましくは、膜貫通ドメインはヒトタンパク質のものであり、本発明のいくつかの実施形態では、ESRは、その配列が配列番号365~配列番号396から選択される配列と少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一、または100%同一であるポリペプチドを含む。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態では、増強型シグナル伝達受容体は、配列番号274~配列番号318から選択される配列と少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%または100%同一の配列を含む。これらの配列は、N末端分泌シグナルを含む(例えば、MLGIWTLLPLVLTSVARLSSKSVNA、MEQRPRGCAAVAAALLLVLLGARAQG、MGLSTVPDLLLPLVLLELLVGIYPSGVIG、MGTSPSSSTALASCSRIARRATATMIAGSLLLLGFLSTTTA、MEQRGQNAPAASGARKRHGPGPREARGARPGPRVPKTLVLVVAAVLLLVSAESおよびMAVMAPRTLVLLLSGALALTQTWAは、これらのESRについてのシグナル配列である)。シグナル配列は、ESRを膜内へと転移させるように機能する。ESRのシグナル配列はシグナルペプチダーゼによって取り出され、最終受容体の一部を形成しないので、ESRの活性を変化させることなく、何らかの機能的分泌シグナルを別の機能的分泌シグナルによって置き換えてよい。このような置き換えは、明示的に企図される。増強型シグナル伝達受容体は、配列番号274~配列番号318から選択される配列の非シグナル配列部と少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一、または少なくとも96%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%または100%同一の配列を含む。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態では、ESRをコードする遺伝子は、免疫細胞、例えばT細胞において発現し、免疫細胞の生存もしくは増殖、または腫瘍微小環境内で細胞を死滅させるT細胞の能力を高める。そのゲノムが、免疫細胞の生存もしくは増殖、または腫瘍微小環境内で細胞を死滅させるT細胞の能力を高めるESRをコードする遺伝子を含む免疫細胞は、本発明の一態様である。
【0114】
好ましい実施形態は、ESRをコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドを含み、該遺伝子は、異種プロモーターに作動可能に連結されている。ESRをコードする遺伝子に作動可能に連結されることができる例示的な異種プロモーターとしては、EF1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、EEF2プロモーター、ユビキチンプロモーター、SV40プロモーターまたはHSVTKプロモーター、例えば配列番号94~配列番号154から選択される配列がある。好ましい実施形態は、ESRをコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドを含み、該遺伝子は、異種ポリアデニル化シグナル、例えば哺乳動物細胞を感染させるウイルスに由来のポリアデニル化シグナル、哺乳動物EF1ポリアデニル化シグナル、哺乳動物成長ホルモンポリアデニル化シグナルまたは哺乳動物グロビンポリアデニル化シグナル、例えば配列番号160~配列番号217から選択される配列に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態は、ESRをコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、レンチウイルスベクターの一部であるポリヌクレオチドを含む。ESRをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターは、パッケージングされ、免疫細胞を感染させるために使用することができる。より好ましくは、ESRは、piggyBac様トランスポゾンの一部である遺伝子移入ポリヌクレオチド、例えば、配列番号6および配列番号7を有する配列、または配列番号14および配列番号15を有する配列、または配列番号18および配列番号19を有する配列、または配列番号20および配列番号21を有する配列をさらに含むポリヌクレオチド上にコードされる。ESRは、配列番号24と90%同一である配列と、配列番号25と90%同一である配列とをさらに含む、Sleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾンの一部である、遺伝子移入ポリヌクレオチド上にコードされることができる。ESRは、配列番号397と90%同一である配列と、配列番号398と90%同一である配列とをさらに含む、TcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンの一部である、遺伝子移入ポリヌクレオチド上にコードされることができる。トランスポゾンとESRをコードするポリヌクレオチドとを含む遺伝子移入ポリヌクレオチドは、キメラ抗原受容体をコードする遺伝子をさらに含むことができる。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドとして提供されることができる対応するトランスポザーゼと共に免疫細胞内へと導入することができる。免疫細胞は、好ましくはT細胞である。
【0115】
本発明の一態様は、そのゲノムが、ESRをコードする遺伝子を含む異種ポリヌクレオチドを含む、免疫細胞である。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、レンチウイルスベクター、またはpiggyBac様トランスポゾン、またはSleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾン、またはTcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンを含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、免疫細胞において発現する第2の遺伝子は、免疫細胞の生存または増殖を高めるESRの効果を増強する。そのゲノムが、ESRをコードする遺伝子と、免疫細胞の生存または増殖を高める上でESRの活性を増強する第2の遺伝子(ESR強遺伝子)とを含む、免疫細胞は、本発明の一態様である。いくつかの実施形態では、第2の遺伝子は、異種プロモーターに作動可能に連結されており、いくつかの実施形態では、第2の遺伝子は、アポトーシス経路の阻害剤をコードし、いくつかの実施形態では、アポトーシス経路の阻害剤は、カスパーゼ経路におけるドミナントネガティブ遺伝子、例えばカスパーゼ3、カスパーゼ7、カスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ10またはCASP8・FADD様アポトーシス調節因子(CFLAR)のドミナントネガティブ突然変異体であり、いくつかの実施形態では、アポトーシス経路の阻害剤は、配列番号240~245のうちから選択される配列のドミナントネガティブ突然変異体を含み、いくつかの実施形態では、アポトーシス経路の阻害剤は、配列番号237、238または261~272のうちから選択される配列を含む。
【0117】
好ましくは、ESRおよびESR増強遺伝子を発現させている免疫細胞の半減期は、免疫細胞生存増強遺伝子を発現させていない免疫細胞の半減期と比較して、少なくとも5%、または少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも25%、または少なくとも30%、または少なくとも35%、または少なくとも40%、または少なくとも45%、または少なくとも50%、または少なくとも55%、または少なくとも60%、または少なくとも65%、または少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも100%長くなっている。好ましくは、ESRおよびESR増強遺伝子を発現させている免疫細胞の最長寿命は、免疫細胞生存増強遺伝子を発現させていない免疫細胞の最長寿命と比較して、少なくとも5%、または少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも25%、または少なくとも30%、または少なくとも35%、または少なくとも40%、または少なくとも45%、または少なくとも50%、または少なくとも55%、または少なくとも60%、または少なくとも65%、または少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも100%長くなっている。好ましくは、ESRおよびESR増強遺伝子を発現させていない免疫細胞の倍加時間は、ESRおよびESR増強遺伝子を発現させている免疫細胞の倍加時間と比較して、少なくとも5%、または少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも25%、または少なくとも30%、または少なくとも35%、または少なくとも40%、または少なくとも45%、または少なくとも50%、または少なくとも55%、または少なくとも60%、または少なくとも65%、または少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも100%長い。好ましくは、ESRおよびESR増強遺伝子を発現させている免疫細胞の増殖速度は、ESRおよびESR増強遺伝子を発現させていない免疫細胞の増殖速度と比較して、少なくとも5%、または少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも25%、または少なくとも30%、または少なくとも35%、または少なくとも40%、または少なくとも45%、または少なくとも50%、または少なくとも55%、または少なくとも60%、または少なくとも65%、または少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも100%高くなっている。
【0118】
好ましい実施形態は、アポトーシス阻害剤をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含み、該核酸は、異種プロモーターに作動可能に連結されている。アポトーシス阻害剤をコードする遺伝子に作動可能に連結されることができる例示的な異種プロモーターとしては、EF1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、EEF2プロモーター、ユビキチンプロモーター、SV40プロモーターまたはHSVTKプロモーター、例えば配列番号94~配列番号154から選択される配列がある。好ましい実施形態は、アポトーシス阻害剤をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含み、該核酸は、異種ポリアデニル化シグナル、例えば哺乳動物細胞を感染させるウイルスに由来のポリアデニル化シグナル、哺乳動物EF1ポリアデニル化シグナル、哺乳動物成長ホルモンポリアデニル化シグナルまたは哺乳動物グロビンポリアデニル化シグナル、例えば配列番号160~配列番号217から選択される配列に作動可能に連結されている。好ましい実施形態は、アポトーシス阻害剤をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号6および配列番号7を有する配列、または配列番号14および配列番号15を有する配列、または配列番号18および配列番号19を有する配列、または配列番号20および配列番号21を有する配列をさらに含む、piggyBac様トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、アポトーシス阻害剤をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号24と90%同一である配列と、配列番号25と90%同一である配列とをさらに含む、Sleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態は、アポトーシス阻害剤をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、配列番号397と90%同一である配列と、配列番号398と90%同一である配列とをさらに含む、TcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンの一部である、ポリヌクレオチドを含む。アポトーシス阻害剤をコードするポリヌクレオチドを含むpiggyBac様トランスポゾンは、対応するトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチドと共に免疫細胞内へと導入することができる。好ましい実施形態は、アポトーシス阻害剤をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドであって、レンチウイルスベクターの一部であるポリヌクレオチドを含む。アポトーシス阻害剤をコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターは、パッケージングされ、免疫細胞を感染させるために使用することができる。免疫細胞は、好ましくはT細胞またはB細胞である。
【0119】
本発明の一態様は、そのゲノムが、アポトーシス阻害剤をコードする遺伝子を含む異種ポリヌクレオチドを含む、免疫細胞である。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、レンチウイルスベクター、またはpiggyBac様トランスポゾン、またはSleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾン、またはTcBusteトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンを含む。
【0120】
場合により、ESRをコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドは、異種プロモーターに作動可能に連結された、アポトーシス阻害剤をコードする第2の遺伝子をさらに含む。
【0121】
5.3.2.1 FAS/4-1BB
阻害性受容体の細胞外ドメインが共刺激受容体の細胞内ドメインに融合した例示的なESRとして、本発明者らは、TNFRSF6(Fas)の細胞外ドメイン(配列番号323)を含み、さらにTNFRSF6(Fas)の膜貫通ドメイン(配列番号387)を含み、さらにTNFRSF9(4-1BB)の細胞内ドメイン(配列番号344)を含む、ESRを設計した。配列番号274を含むこのESR(Fas/4-1BB)は、第6.2節に説明するような免疫細胞生存増強遺伝子および免疫細胞増殖増強遺伝子である。
Fas/4-1BBの活性は、アポトーシス阻害剤Casp7:Casp7-DNのドミナントネガティブ版(配列番号262)によって増強される。免疫細胞の生存および免疫細胞の増殖を増強させる上でのFas/4-1BB+Casp7-DNの有効性は、第6.2.1.2節および第6.2.2.2節に示されている。
【0122】
Fas/4-1BBをコードする遺伝子を含むポリヌクレオチド(配列番号274)は、本発明の一態様である。そのゲノムが、Fas/4-1BBをコードする遺伝子を含む免疫細胞は、本発明の一態様である。Fas/4-1BBをコードする遺伝子を含み、アポトーシス阻害剤をコードする遺伝子をさらに含むポリヌクレオチドは、本発明の一態様であり、いくつかの実施形態では、アポトーシス阻害剤は、Casp7のドミナントネガティブ突然変異体、例えば配列番号262である。好ましくは、ポリヌクレオチドはトランスポゾンである。そのゲノムが、Fas/4-1BBとアポトーシスのドミナントネガティブ阻害剤とをコードする遺伝子を含む免疫細胞は、本発明の一態様である。このような免疫細胞は、細胞培養におけるエクスビボ成長に特に有利である。
【0123】
5.3.2.2 抗CD28/OX40は、増殖増強活性を有するESRである
細胞外ドメインが、共刺激受容体の細胞内ドメインに融合した抗体由来の結合ドメインを含む例示的なESRとして、本発明者らは、その細胞外ドメインが、TNFRSF4(OX40)についての膜貫通ドメイン(配列番号373)とTNFRSF4(OX40)の細胞内ドメイン(配列番号341)とに融合したCD28アゴニスト抗体TGN1412(配列番号340)の結合ドメインを含むESRを設計した。抗CD28/OX40 ESRの配列は、(配列番号307)として与えられている。T細胞増殖を促進する上でのこのESRの有効性は、第6.2.2.1において説明されている。
【0124】
抗CD28/OX40 ESRをコードする遺伝子を含むポリヌクレオチド(例えば、配列番号ESR34)は、本発明の一態様である。そのゲノムが、抗CD28/OX40 ESRをコードする遺伝子を含む免疫細胞は、本発明の一態様である。このような免疫細胞は、細胞培養におけるエクスビボ成長に特に有利である。
【0125】
5.4 キット
本発明はまた、タンパク質としてのもしくは核酸によってコードされたトランスポザーゼ、および/またはトランスポゾンを含む、キット、あるいはタンパク質としてのまたは本明細書に説明するような核酸によってコードされたトランスポザーゼを、トランスポゾンと組み合わせて、場合により医薬として許容され得る担体、アジュバントまたはビヒクルと共に、場合により使用のための説明書と共に含む、本明細書に説明するような遺伝子移入系も特徴とする。本発明のキットの構成要素のいずれもが、立て続けにまたは併行して細胞内へと投与および/または移入することができ、例えば、トランスポザーゼタンパク質またはそのコード核酸は、トランスポゾンの投与および/もしくは移入の前に、該投与および/もしくは移入と同時に、または該投与および/もしくは移入の後に、先に定義した細胞内へと投与および/または移入することができる。あるいは、トランスポザーゼタンパク質またはそのコード核酸の移入の前に、該移入と同時に、または該移入の後に、トランスポゾンは、先に定義した細胞内へと移入することができる。併行して移入する場合、好ましくは、移入の前の転位を回避するために、いずれの構成要素も別個の製剤で提供され、および/または移入の直前に互いに混合される。加えて、キットの少なくとも1つの構成要素の投与および/または移入は、例えば、この構成要素の複数回用量を投与することによって、時間差モードで行うことができる。
【0126】
6.例
以下の例は、本明細書に開示される方法、組成物およびキットを例示するものであり、いかなる方法においても限定するものと解釈されないものとする。様々な同等物が以下の例から明らかになるであろうが、このような同等物もまた、本明細書に開示される本発明の一部であるよう企図される。
【0127】
6.1 免疫細胞における発現のための遺伝子移入系要素
6.1.1 ヒトT細胞株におけるトランスポゾン要素
Jurkat細胞は、ヒトT細胞の不死化株であり、該細胞は、ヒト免疫細胞、特にT細胞における該細胞の有効性について遺伝子移入系を試験するために有用である。本発明者らは、ゼノパス属(Xenopus)およびカイコガ属(Bombyx)のpiggyBac様トランスポザーゼがそれらの対応するトランスポゾンをJurkatヒトT細胞株のゲノム内へと転位させる能力を試験した。
【0128】
ゼノパス属(Xenopus)トランスポゾンを含むポリヌクレオチド(CD19-GFP-LPN1、ヌクレオチド配列は配列番号223によって付与)を構築し、この中で、CD19をコードする核酸(アミノ酸配列は配列番号228によって付与)を、配列番号94によって配列が与えられたEF1プロモーターと、配列番号174を有するウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル配列とに作動可能に連結していた。CD19遺伝子には、片側でHS4インスレーター(配列番号92)が、もう片方の側でD4Z4インスレーター(配列番号88)が隣接していた。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、1つのインスレーターの遠位側に、標的配列5’-TTAA-3’を、直後に続く配列番号ITR8のpiggyBac様トランスポゾン逆方向末端反復配列(これは配列番号6の実施形態である)を、直後に続く配列番号1を有する追加のトランスポゾン末端配列をさらに含んでいた。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、もう1つのインスレーターの遠位側に、配列番号4を有する追加のトランスポゾン末端配列を、直後に続く配列番号9のpiggyBac様トランスポゾン逆方向末端反復配列(これは配列番号7の実施形態である)を、直後に続く標的配列5’-TTAA-3’をさらに含んでいた。トランスポゾンは、CMVプロモーターと、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル配列とに作動可能に連結されたGFPをコードするポリヌクレオチドをさらに含んでいた。piggyBac様ゼノパス属(Xenopus)トランスポゾンの対応するトランスポザーゼによる該トランスポゾンの転位が、CD19遺伝子を転位させるが、プラスミド内にGFP遺伝子を残すように、CD19遺伝子およびGFP遺伝子を配置した。
【0129】
カイコガ属(Bombyx)トランスポゾンを含むポリヌクレオチド(CD19-RFP-LPN2、ヌクレオチド配列は配列番号224によって付与)を構築し、この中で、CD19(配列番号228)をコードする遺伝子を、配列番号94によって配列が与えられたEF1プロモーターと、配列番号174を有するウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル配列とに作動可能に連結していた。CD19遺伝子には、片側でHS4インスレーター(配列番号92)が、もう片方の側でD4Z4インスレーター(配列番号88)が隣接していた。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、1つのインスレーターの遠位側に、標的配列5’-TTAA-3’を、直後に続く配列番号14のpiggyBac様トランスポゾン逆方向末端反復配列を、直後に続く配列番号12を有する追加のトランスポゾン末端配列をさらに含んでいた。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、もう1つのインスレーターの遠位側に、配列番号13を有する追加のトランスポゾン末端配列を、直後に続く配列番号15のpiggyBac様トランスポゾン逆方向末端反復配列の直後に続く標的配列5’-TTAA-3’をさらに含んでいた。トランスポゾンは、CMVプロモーターと、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル配列とに作動可能に連結されたRFPをコードするポリヌクレオチドをさらに含んでいた。piggyBac様カイコガ属(Bombyx)トランスポゾンの対応するトランスポザーゼによる該トランスポゾンの転位が、CD19遺伝子を転位させるが、プラスミド内にRFP遺伝子を残すように、CD19遺伝子およびRFP遺伝子を配置した。
【0130】
Jurkat細胞の1つの試料(1回の移入あたり200,000個の細胞)に、製造元の説明書により、Neonエレクトロポレーターを使用して、1μgのCD19-GFP-LPN1プラスミドDNAおよび配列番号37によって配列が与えられたゼノパス属(Xenopus)トランスポザーゼをコードする100ngのトランスポザーゼmRNAを移入した。Jurkat細胞の第2の試料(1回の移入あたり200,000個の細胞)に、製造元の説明書により、Neonエレクトロポレーターを使用して、1μgのCD19-RFP-LPN2プラスミドDNAおよび配列番号68によって配列が与えられたトランスポザーゼをコードする100ngのカイコガ属(Bombyx)トランスポザーゼmRNAを移入した。様々な時間の後、細胞を抗CD19抗体で標識し、CD19を発現する細胞の百分率をフローサイトメトリーによって決定した。結果を表1に示す。最初に、移入した細胞の約85%がCD19発現を示した(表1の第1の行)。これは、細胞内へと取り込まれたプラスミドからの発現と、T細胞株ゲノム内へと安定して組み込まれたトランスポゾンからの発現との組み合わせに相当する。次の10日間にわたって、CD19を発現する細胞の百分率は、ゼノパス属(Xenopus)piggyBac様トランスポゾンを移入した細胞では18%まで、カイコガ属(Bombyx)piggyBac様トランスポゾンを移入した細胞では27%まで落ち込んだ(表1の第3の行)。これは、CD19遺伝子がゲノム内へと組み込まれなかった細胞からの発現の喪失に相当する。移入約15日後から移入の少なくとも55日後まで、CD19を発現する細胞の百分率はおおよそ一定のままであった(表1の第3~6の行)。この間ずっと、細胞は成長しており、分裂していた。プラスミドは、ヒト細胞において複製する方法がないので、細胞がCD19を発現し続ける唯一の方法は、CD19遺伝子がゲノム内へと組み込まれ、次いで、ゲノムの残りの部分と共に各細胞分裂でCD19遺伝子を複製する場合である。無作為な断片化を経た組込みの割合は非常に低い。細胞の0.01~1%が移入DNAを組み込むと予想することができる。CD19遺伝子を組み込んだ細胞の百分率は、無作為な組込みから生じると予想される頻度よりもはるかに高かったが、転位から予想することができる頻度と一致していた。細胞をまたGFPおよびRFPの発現についても分析した。55日後までに、検出可能なGFPまたはRFPの発現はなかった。先に説明したように、GFP遺伝子およびRFP遺伝子を、トランスポザーゼによって転位することができなかった遺伝子移入プラスミドの一部に配置した。それゆえ、遺伝子移入プラスミドが無作為な断片化および組込みによって細胞ゲノム内へと組み込まれたかどうかについてGFPおよびRFPの発現が予想されるであろう。しかしながら、転位の結果として組み込まれたCD19遺伝子の場合、GFP遺伝子またはRFP遺伝子はプラスミド内に残され、経時的に徐々に分解されるであろう。高いゲノム組込み頻度および転移不可能な遺伝子の発現の欠如によって、本発明者らが、ゼノパス属(Xenopus)およびカイコガ属(Bombyx)のpiggyBac様トランスポゾン系に基づく遺伝子移入系が両方とも、ポリヌクレオチドをヒトT細胞内へと組み込むことができると結論付けることにつながる。
【0131】
移入の70日後、本発明者らは、蛍光標示式細胞分取法を使用して、CD19を発現している細胞を、CD19を発現していない細胞と選別した。次いで、これらの細胞を液体培養において240日間にわたって維持し、様々な時点で分析して組込みの安定性を評価した。
図1は、移入の155日後およびFACS分取法の85日後のCD19の発現をy軸に、蛍光タンパク質の発現をx軸に示す。細胞は本質的にすべて、依然としてCD19を発現しており、いずれの細胞も蛍光タンパク質を発現していなかった。移入の240日後に同一の結果が得られた。本発明者らは、ゼノパス属(Xenopus)およびカイコガ属(Bombyx)piggyBac様トランスポゾンが、選択圧がない場合でさえ、少なくとも240日間安定して維持されると結論付ける。本発明者らはまた、発現の維持は、トランスポゾン上にコードされた遺伝子が200を超える細胞世代の間にサイレンシングされていなかったことを示すことも注記する。したがって、ゼノパス属(Xenopus)およびカイコガ属(Bombyx)piggyBac様トランスポゾン系に基づく遺伝子移入系は両方とも、発現のための遺伝子をヒトT細胞内へと送達するのに有用である。
【0132】
6.1.2 T細胞におけるプロモーター要素
6.1.2.1 Jurkat細胞におけるプロモーター試験
Jurkat細胞は、ヒトT細胞の不死化株であり、該細胞は、ヒト免疫細胞、特にT細胞における該細胞の有効性について遺伝子移入系を試験するために有用である。
【0133】
配列番号218によって配列が与えられた第一のポリヌクレオチドと配列番号219によって配列が与えられた第二のポリヌクレオチドとの間に、場合によりイントロン要素と組み合わされたプロモーター要素を導入することによって、ヒトCD19の発現のためのトランスポゾン内へと、該プロモーター要素をクローン化して、配列が配列番号90によって与えられたインスレーター配列と、配列が配列番号93によって与えられたインスレーター配列とを含み、一対のトランスポゾン末端が隣接しており、片方が配列番号6の実施形態である配列番号8を含み、もう片方が配列番号7の実施形態である配列番号9を含む、環状プラスミドを生成した。Jurkat細胞(1回の移入あたり200,000個の細胞)に、製造元の説明書により、Neonエレクトロポレーターを使用して、1μgのプラスミドDNAと、配列番号37のアミノ酸配列を有するゼノパス属(Xenopus)トランスポザーゼをコードする100ngのトランスポザーゼmRNAとを移入した。
【0134】
移入後の様々な時点でFACS分析のために試料を採取し、生細胞に関してCD19を発現する生細胞の割合を計数したので、表2に示す。表2は、CD19がEF1(例えば、配列番号94および配列番号132)およびEEF2(例えば、配列番号108)に作動可能に連結された細胞が、CD19発現細胞の高い初期百分率を示した(D列)が、これは持続されなかった(例えば、F列およびG列)ことを示す。例えば、ラットEF1駆動性CD19を発現する細胞の百分率は、2日後と23日後との間で87%から25%まで落ち込み、同様に、ヒトEF1駆動性CD19を発現する細胞の百分率は、2日後と23日後との間で76%から37%まで落ち込んだ。対照的に、CD19がGAPDH、ユビキチンおよびPGKプロモーターに作動可能に連結されたとき、細胞は、2日後と23日後との間の各試料時点で、CD19を発現する細胞の約50%で、はるかに一貫して発現レベルを持続させていたことを示した(D列~G列)。H列は、2日後と23日後との間のCD19発現細胞の低下率を示す。
【0135】
CD19は、細胞表面上に発現する分子である。膜貫通タンパク質の実質的な過剰発現は毒性である可能性がある。それゆえ、本発明者らは、CD19発現細胞の最も劇的な喪失を示したプロモーターが、最も強い発現を駆動していたものであるかもしれないと推論した。プロモーター強度を評価するために、本発明者らは、各プロモーターを、GFPをコードする遺伝子に作動可能に連結し、該遺伝子をHEK細胞内へと三つ組で移入した。2日後、蛍光光度計で蛍光を測定した。平均蛍光値を表2のI列に示す。最も強いプロモーターはEF1およびEEF2(I列の第1、第2および第6の行)であり、これらはCD19発現細胞の百分率の最も実質的な低下を示した同じプロモーターであった(表2のH列)。対照的に、PGK、GAPDHおよびユビキチンプロモーターは、最も強いEF1プロモーターの8.6%、28%および22%しか活性がなかったが、これらのプロモーターに作動可能に連結されたCD19を発現する細胞の百分率は維持された。したがって、中程度に活性のあるプロモーターは、毒性を引き起こすことなく機能を達成するのに十分に高レベルの膜貫通タンパク質を産生するので、T細胞における膜貫通タンパク質をコードする遺伝子の発現にとって非常に活性のあるプロモーターよりも有利であるようである。膜貫通タンパク質としては、T細胞受容体、キメラ抗原受容体および増強型シグナル伝達受容体がある。中程度に活性のあるプロモーターとしては、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素プロモーターおよびユビキチンプロモーターがある。中程度に活性のあるプロモーターにはまた、例えば、減弱したEF1プロモーターまたは減弱したEEF2プロモーターなど、イントロンの除去またはプロモーターの部分的欠失によって減弱した高度に活性のあるプロモーターが含まれてもよい。
【0136】
これは予想外の結果である。キメラ抗原受容体を発現する際の最新の研究は、CMVプロモーターまたはEF1プロモーターなどの強力な活性のあるプロモーターを用いて行われる。対照的に、本書で本発明者らは、このような高度に活性のあるプロモーターが、膜貫通タンパク質に作動可能に連結されている時に不利であることを発見した。T細胞における膜貫通タンパク質をコードする遺伝子の発現に有利な遺伝子移入系は、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素プロモーターユビキチンプロモーター、減弱したEF1プロモーターまたは減弱したEEF2プロモーターから選択されるプロモーターに作動可能に連結された膜貫通タンパク質をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドを含む。例示的なホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター配列は、配列番号115~118として与えられる。例示的なグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素プロモーター配列は、配列番号97~107として与えられる。例示的なユビキチンプロモーター配列は、配列番号95および125~127として与えられる。該ポリヌクレオチドはさらに、配列番号87~93から選択されるインスレーター配列を含んでもよい。好ましくは、遺伝子移入ポリヌクレオチドは、トランスポゾン末端が、対応するトランスポザーゼによって認識されおよび転位し、このような転位がプロモーターおよびその作動可能に連結された遺伝子をT細胞などの免疫細胞のゲノム内へと挿入することができるように、トランスポゾン末端を含む。該ポリヌクレオチドは、配列番号6および配列番号7を有する配列、または配列番号14および配列番号15を有する配列、または配列番号18および配列番号19を有する配列、または配列番号20および配列番号21を有する配列をさらに含む、piggyBac様トランスポゾンの一部であってよい。該ポリヌクレオチドは、配列番号24と90%同一である配列と、配列番号25と90%同一である配列とをさらに含む、Sleeping BeautyトランスポゾンなどのMariner型トランスポゾンの一部であってよい。該ポリヌクレオチドは、配列番号397と90%同一である配列と、配列番号398と90%同一である配列とをさらに含む、TcBusterトランスポゾンなどのhAT型トランスポゾンの一部であってよい。実験を繰り返し、8日後、細胞を抗CD19抗体で標識し、8日後にCD19を発現する細胞の平均蛍光強度をフローサイトメトリーによって測定した。平均蛍光強度値を表3のD列に示す。比較のために、CD19を天然に発現するヒトB細胞を細胞1個あたり約22,000分子で標識し、平均蛍光強度を測定した。B細胞の平均蛍光強度を使用して、表3のE列に示すように、Jurkat細胞の表面上に発現したCD19分子の数を計算した。試験したプロモーターすべてについて、各細胞の表面上のCD19分子の数は、B細胞上に天然に認められる数の2~5倍であった。EF1プロモーターに作動可能に連結されたCD19を移入した細胞の平均蛍光強度は、例えば、表2のI列、第5および第6の行に示されるように、PGKプロモーターがEF1プロモーターよりもはるかに活性が低いことが公知であるにもかかわらず、PGKプロモーターに作動可能に連結されたCD19を移入した細胞の値の20%以内であった(表3の第5および第6の行を比較されたい)。本発明者らはこのことを、CD19の発現がB細胞の表面に通常見られる数の約5倍を超える細胞が毒性を受けるからであると解釈している。EF1はより強力なプロモーターであるので、EF1プロモーターに作動可能に連結されたCD19を移入した、より高い割合の細胞は、この毒性限界を超えて死滅する。このことは、表2の第6の行において2日後から8日後の間に観察されたCD19発現細胞の喪失をもたらす。したがって、中程度に活性のあるプロモーターは、膜貫通タンパク質の高レベルの発現を生じさせることはできるが、そのレベルは、毒性であるほど高いという可能性は低い。このことは、キメラ抗原受容体などの膜貫通タンパク質のT細胞への移入の上で有利である。
【0137】
表3は、配列番号94、配列番号95、配列番号98、配列番号108、配列番号115および配列番号132によって配列が与えられたプロモーターが、Jurkat不死化T細胞における高レベルのCD19発現を駆動する上ですべて有効であったことを示す。T細胞における遺伝子の発現に有利な遺伝子移入系は、配列番号94、95、98、108、115および132から選択される配列を有するプロモーターを含むポリヌクレオチドを含む。T細胞における遺伝子の発現に有利な遺伝子移入系は、配列番号87~91から選択されるインスレーター配列と、配列番号92および93から選択されるインスレーター配列とを含むポリヌクレオチドを含む。T細胞における遺伝子の発現に有利な遺伝子移入系は、配列番号6の配列を含むトランスポゾン末端と、配列番号7の配列を含むトランスポゾン末端とを含むポリヌクレオチドを含む。
【0138】
6.1.2.2 初代T細胞におけるプロモーター試験
配列番号220によって配列が与えられた第一のポリヌクレオチドと配列番号221によって配列が与えられた第二のポリヌクレオチドとの間に、プロモーター要素を導入することによって、ヒトCD19の発現のためのトランスポゾン内へと、該プロモーター要素をクローン化して、配列が配列番号88によって与えられたインスレーター配列と、配列が配列番号92によって与えられたインスレーター配列とを含み、一対のトランスポゾン末端が隣接しており、片方が標的部位5’-TTAA-3’、直後に続く配列番号8の配列、および直後に続く配列番号1を含み、もう片方が配列番号4、直後に続く配列番号9の配列、および直後に続く標的部位5’-TTAA-3’を含む、環状プラスミドを生成した。初代T細胞(1回の移入あたり200,000個の細胞)に、製造元の説明書により、Neonエレクトロポレーターを使用して、1μgのプラスミドDNAと、配列番号37のポリペプチド配列を有するゼノパス属(Xenopus)トランスポザーゼをコードする100ngのトランスポザーゼmRNAとを移入した。11日後、細胞を抗CD19抗体で標識し、平均蛍光強度をフローサイトメトリーによって測定した。
【0139】
表4は、配列番号97、配列番号98および配列番号108~配列番号114によって配列が与えられたプロモーターが、初代T細胞における高レベルのCD19発現を駆動する上ですべて有効であったことを示す。さらに、表4は、異なるプロモーターを使用することによって、異なる発現レベルを達成することができることを示す。T細胞における遺伝子の発現に有利な遺伝子移入系は、配列番号97、98および108~114から選択される配列を有するプロモーターを含むポリヌクレオチドを含む。T細胞における遺伝子の発現に有利な遺伝子移入系は、配列番号8の配列の直後に配列番号1の配列を含むトランスポゾン末端と、配列番号4の直後に配列番号9の配列を含むトランスポゾン末端とを含むポリヌクレオチドを含む。
【0140】
6.2 免疫細胞の生存および有効性を増強するための要素
本発明の一態様は、免疫細胞の生存、増殖または拡大を増強するために使用することができる配列の開示である。
【0141】
細胞生存は、集団中の細胞の半分だけが生存したままであるのにかかる時間の長さ(半減期)、または集団中の細胞がすべて死滅するのにかかる時間の長さ(最長寿命)として測定することができる。免疫細胞生存増強遺伝子を発現する免疫細胞は、免疫細胞生存増強遺伝子を発現していない免疫細胞よりも長く生存したままである。この効果を測定する1つの方法は、異種ポリヌクレオチドを免疫細胞のゲノム内へと組み込むことであって、該異種ポリヌクレオチドは、免疫細胞内で発現する調節配列に作動可能に連結された免疫細胞生存増強遺伝子を含み、言い換えれば、免疫細胞における発現に有効である。異種ポリヌクレオチドは、選択可能マーカー、例えば蛍光タンパク質または細胞表面タンパク質などの容易に同定されることができるものをコードする遺伝子をさらに含む。そのゲノムが異種ポリヌクレオチドを含む細胞は、免疫細胞生存増強遺伝子を発現し、該細胞は選択可能マーカーの存在によって同定することができる。生存の増強は、免疫細胞生存増強遺伝子を発現していない免疫細胞と比較した、免疫細胞生存増強遺伝子を発現している免疫細胞の半減期の延長として測定することができる。免疫細胞生存増強遺伝子を発現させている免疫細胞の半減期は、免疫細胞生存増強遺伝子を発現させていない免疫細胞の半減期と比較して、少なくとも5%、または少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも25%、または少なくとも30%、または少なくとも35%、または少なくとも40%、または少なくとも45%、または少なくとも50%、または少なくとも55%、または少なくとも60%、または少なくとも65%、または少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも100%長くなっている。この延長は、生存増強遺伝子を有する特定の免疫細胞の生存と生存増強遺伝子を有しない特定の免疫細胞の生存とを等しいサイズの集団において比較することによって測定することができる。免疫細胞生存増強遺伝子を発現させている免疫細胞の最長寿命は、免疫細胞生存増強遺伝子を発現させていない免疫細胞の最長寿命と比較して、少なくとも5%、または少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも25%、または少なくとも30%、または少なくとも35%、または少なくとも40%、または少なくとも45%、または少なくとも50%、または少なくとも55%、または少なくとも60%、または少なくとも65%、または少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも100%長くなっている。最長寿命の変化率は、生存増強遺伝子を有する特定の免疫細胞と生存増強遺伝子を有さない特定の免疫細胞との等しいサイズの集団を比較することによって測定することができる。
【0142】
細胞増殖は、集団中の細胞の数が2倍になるのにかかる時間の長さ(倍加時間)として、または細胞集団が単位時間内に大きくなる割合(増殖速度)として測定することができる。免疫細胞増殖増強遺伝子を発現する免疫細胞は、免疫細胞増殖増強遺伝子を発現していない免疫細胞よりも、長く分裂することができるか、または迅速に分裂することができる。この効果を測定する1つの方法は、異種ポリヌクレオチドを免疫細胞のゲノム内へと組み込むことであって、該異種ポリヌクレオチドは、免疫細胞内で発現する調節配列に作動可能に連結された免疫細胞増殖増強遺伝子を含む。異種ポリヌクレオチドは、選択可能マーカー、例えば蛍光タンパク質または細胞表面タンパク質などの容易に同定されることができるものをコードする遺伝子をさらに含む。そのゲノムが異種ポリヌクレオチドを含む細胞は、免疫細胞増殖増強遺伝子を発現し、該細胞は選択可能マーカーの存在によって同定することができる。増殖の増強は、免疫細胞増殖増強遺伝子を発現していない免疫細胞と比較した、免疫細胞増殖増強遺伝子を発現している免疫細胞の倍加時間の短縮として測定することができる。免疫細胞増殖増強遺伝子を発現させていない免疫細胞の倍加時間は、免疫細胞増殖増強遺伝子を発現させている免疫細胞の倍加時間と比較して、少なくとも5%、または少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも25%、または少なくとも30%、または少なくとも35%、または少なくとも40%、または少なくとも45%、または少なくとも50%、または少なくとも55%、または少なくとも60%、または少なくとも65%、または少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも100%長い。免疫細胞増殖増強遺伝子を発現させていない免疫細胞の増殖速度は、免疫細胞増殖増強遺伝子を発現させている免疫細胞の増殖速度と比較して、少なくとも5%、または少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも25%、または少なくとも30%、または少なくとも35%、または少なくとも40%、または少なくとも45%、または少なくとも50%、または少なくとも55%、または少なくとも60%、または少なくとも65%、または少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも100%高い。増殖速度または倍加時間は、免疫細胞が免疫細胞増殖増強遺伝子を発現し始めた後の様々な時点で測定することができる。免疫細胞増殖増強遺伝子を発現する免疫細胞の増殖速度は、異種ポリヌクレオチドが免疫細胞のゲノム内へと組み込まれた、または免疫細胞が免疫細胞増殖促進遺伝子を発現し始めた、または免疫細胞が免疫細胞増殖増局遺伝子を発現し始めた5日後、または10日後、または15日後、または20日後、または25日後、または30日後、または35日後、または40日後、または45日後、または50日後、または55日後、または60日後に、免疫細胞増殖増強遺伝子を発現していない同じ免疫細胞の増殖速度と比較して高い可能性がある。
【0143】
本発明の別の態様は、正常な免疫細胞の有効性を低減させる条件下で免疫細胞が有効なままであることができる時間の長さを延長するために使用することができる配列の開示である。正常なT細胞は、抗原に繰り返し曝露されるとアポトーシスを起こし(「再刺激誘導性細胞死」)、死滅しないT細胞は、抗原を発現する細胞を死滅させることができなくなる(Voss et.,al.(2017)Cancer Lett.408:190-196.「Metabolic reprogramming and apoptosis sensitivity:defining the contours of a T cell response」)。このことは自己免疫を低減させるのに役立つが、T細胞が固形腫瘍と有効に戦うのを妨げる上で寄与する因子であった。したがって、これらの状況下では、免疫細胞機能を保持し、抗原曝露の反復中の再刺激誘導性細胞死を防ぐことが望ましい。再刺激誘導性細胞死は、抗原、例えば腫瘍細胞上の抗原への2回、3回、4回またはそれより多数回の曝露後に生存するT細胞の数を計数することによって測定することができる。再刺激誘導性細胞死を防ぐための異種発現配列の能力は、該配列を発現するT細胞の生存を、該配列を発現していないT細胞の生存と、両方の集団が同じ程度および頻度の抗原曝露を有するときに比較することによって測定することができる。生存の増強は、抗原への曝露の反復の際に免疫細胞生存増強遺伝子を発現していない免疫細胞と比較した、免疫細胞生存増強遺伝子を発現している残りの免疫細胞の数の増加として測定することができる。例えば、腫瘍細胞において発現した抗原に対する曝露の反復の際に免疫細胞生存増強遺伝子を発現させていない生存中の免疫細胞の数と比較した、免疫細胞生存増強遺伝子を発現させている生存中の免疫細胞の数は、少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも100%、または少なくとも150%、または少なくとも200%、または少なくとも250%、または少なくとも300%、または少なくとも350%、または少なくとも400%、または少なくとも450%、または少なくとも500%増加している。
【0144】
再刺激誘導性細胞死に対する抵抗性および免疫細胞の有効性の持続は、腫瘍細胞への2回、3回、4回またはそれより多数回の曝露後に腫瘍細胞などの細胞を死滅させるT細胞の能力を計数することによって測定することができる。免疫細胞機能を持続させる異種発現配列の能力は、該配列を発現しているT細胞および該配列を発現していないT細胞の両方の集団が、抗原曝露の同じ程度および頻度を有するとき、該T細胞の死滅活性を比較することによって測定することができる。T細胞有効性増強遺伝子を発現させるT細胞の細胞死滅活性は、腫瘍細胞への曝露の反復の際にT細胞有効性増強遺伝子を発現させていない生存中の免疫細胞の数と比較して、少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも100%、または少なくとも150%、または少なくとも200%、または少なくとも250%、または少なくとも300%、または少なくとも350%、または少なくとも400%、または少なくとも450%、または少なくとも500%上昇する。
【0145】
6.2.1 T細胞形質転換要素
6.2.1.1 初代T細胞における突然変異したSTAT3の発現
STAT3:STAT3-Y640Fの突然変異型をコードする遺伝子を、配列番号115によって配列が与えられたPGKプロモーターと、配列番号182の配列を有するウサギグロビンポリアデニル化シグナルとに作動可能に連結し、遺伝子移入ポリヌクレオチドへとクローン化した。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)プロモーターとウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列とに作動可能に連結されたDasherGFPをコードする遺伝子を含むGFPレポーター(配列番号222の配列を有する)をさらに含んでいだ。2つのオープンリーディングフレームを、多様に転写するように構成した(2つのプロモーターは互いに隣接し、反対方向に転写された)。2つのオープンリーディングフレームには、片方の側からHS4インスレーター(配列番号92の配列を有する)が、もう片方の側からD4Z4インスレーター(配列番号88の配列を有する)が隣接していた。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、1つのインスレーターの遠位側に、標的配列5’-TTAA-3’を、直後に続く配列番号10のpiggyBac様トランスポゾン逆方向末端反復配列(これは配列番号6の実施形態である)を、直後に続く配列番号3を有する追加のトランスポゾン末端配列(これは、配列番号1と>95%同一である)をさらに含んでいた。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、もう1つのインスレーターの遠位側に、配列番号5の追加のトランスポゾン末端配列(配列番号4と>95%同一である)を、直後に続く配列番号11のpiggyBac様トランスポゾン逆方向末端反復配列(これは配列番号7の実施形態である)を、直後に続く標的配列5’-TTAA-3’をさらに含んでいた。
【0146】
Stemcell Technologies製のEasySep Human CD8陽性選別キットを製造元の説明書により使用して、T細胞を正常ドナー末梢血単核細胞(PBMC)から調製した。T細胞を、放射線照射されたフィーダー細胞とのインキュベーションによって2~3日間刺激して、分泌されたCD3、CD28、IL-2、IL-7およびIL-15を提供した。おおよそ100,000個のT細胞に、製造元の説明書により、Neonエレクトロポレーターを使用して、1μgのトランスポゾンDNAと、配列番号37のポリペプチド配列を有するトランスポザーゼをコードする100ngのmRNAとを移入した。移入したT細胞をフィーダー細胞と混合し、37℃でインキュベートした。移入後の様々な時点で試料を採取し、蛍光標識した抗CD8抗体とともにインキュベートし、CD8およびDasher GFPについて蛍光活性化セルソーター(FACS)で分析した。
【0147】
図2は、細胞染色の経時的な分布を示す。CD8染色は、CD8+T細胞についてのマーカーとして使用され、パネルAに示される各FACSプロットのy軸に示されている。GFP蛍光は、各FACSプロットのx軸に示されている。GFP蛍光は、細胞がGFPを発現していることを示しており、本書では、細胞内の遺伝子移入ポリヌクレオチドの存在を示すためのマーカーとしても使用される。14日後に、細胞のおおよそ97.8%は、強いCD8染色を示し(すなわち、該細胞はFACSプロットの上半分にある)、分析した細胞のおおよそ9.8%がいずれもCD8+であり、GFP蛍光を示した。CD8を発現しかつGFP蛍光を呈する細胞の割合は、経時的に上昇した。すなわち、28日後で23.9%、34日後で41.1%、41日後で62.4%および48日後で79.3%であった。GFPを発現しているT細胞集団の割合の上昇は、そのゲノムが遺伝子移入ポリヌクレオチドを含むT細胞が、そのゲノムが遺伝子移入ポリヌクレオチドを含まないT細胞と比較して生存の利点を有することを示しているか、またはそのゲノムが遺伝子移入ポリヌクレオチドを含むT細胞が、そのゲノムが遺伝子移入ポリヌクレオチドを含まないT細胞と比較して増殖の利点を有することを示している。このような生存または増殖の利点は、GFPの発現ではなく(本発明者らは、GFP発現が生存または増殖の利点と相関していない多くの例をみている)、STAT3-Y640Fの発現に由来する。本発明者らは、T細胞におけるSTAT3-Y640Fの発現が、T細胞に生存または増殖の利点を提供する、およびSTAT3の活性化突然変異体をコードする遺伝子が、第5.3.1.1節において説明するような免疫細胞生存増強遺伝子および免疫細胞増殖増強遺伝子である、と結論付ける。
【0148】
6.2.1.2 初代T細胞におけるT細胞形質転換要素およびESRの発現
T細胞形質転換要素と増強型シグナル伝達受容体とのセットをコードする遺伝子を、別々の遺伝子移入ポリヌクレオチド内へと個別にクローン化した。各場合では、該遺伝子を、配列が配列番号115によって与えられたPGKプロモーターと、配列番号182の配列を有するウサギグロビンポリアデニル化シグナルとに作動可能に連結し、遺伝子移入ポリヌクレオチド内へとクローン化した。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)プロモーターとウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列とに作動可能に連結されたDasherGFPをコードする遺伝子を含むGFPレポーター(配列番号222の配列を有する)をさらに含んでいだ。2つのオープンリーディングフレームを、多様に転写するように構成した(2つのプロモーターは互いに隣接し、反対方向に転写された)。2つのオープンリーディングフレームには、片方の側からHS4インスレーター(配列番号92の配列を有する)が、もう片方の側からD4Z4インスレーター(配列番号88の配列を有する)が隣接していた。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、1つのインスレーターの遠位側に、標的配列5’-TTAA-3’を、直後に続く配列番号10のpiggyBac様トランスポゾン逆方向末端反復配列(これは配列番号6の実施形態である)を、直後に続く配列番号3を有する追加のトランスポゾン末端配列(これは、配列番号1と>95%同一である)をさらに含んでいた。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、もう1つのインスレーターの遠位側に、配列番号5の追加のトランスポゾン末端配列(配列番号4と>95%同一である)を、直後に続く配列番号11のpiggyBac様トランスポゾン逆方向末端反復配列(これは配列番号7の実施形態である)を、直後に続く標的配列5’-TTAA-3’をさらに含んでいた。
【0149】
Stemcell Technologies製のEasySep Human CD8陽性選別キットを製造元の説明書により使用して、T細胞を正常ドナー末梢血単核細胞(PBMC)から調製した。T細胞を、放射線照射されたフィーダー細胞とのインキュベーションによって2~3日間刺激して、分泌されたCD3、CD28、IL-2、IL-7およびIL-15を提供した。おおよそ100,000個のT細胞に、製造元のプロトコルにより、Neonエレクトロポレーターを使用して、1μgのトランスポゾンDNAと、配列番号37のポリペプチド配列を有するトランスポザーゼをコードする100ngのmRNAとを移入した。移入したT細胞をフィーダー細胞と混合し、37℃でインキュベートした。移入24日後に試料を採取し、蛍光標識した抗CD8抗体とともにインキュベートし、CD8およびDasher GFPについて蛍光活性化セルソーター(FACS)で分析した。データを表5に示す。
【0150】
第6.2.1.1節に説明されているように、GFPを発現するCD8+細胞の濃度は、第5.3.1.1節にも説明されているように、遺伝子移入ポリヌクレオチドが、T細胞に生存または増殖の利点を付与する遺伝子を含む、という指標である。この遺伝子移入ポリヌクレオチドのセットでは、T細胞生存に影響を及ぼさないと予想される細胞表面マーカーとしてCD19が含まれており、それゆえ、本発明者らは、CD19を移入した細胞におけるGFP発現細胞の百分率(3%、表5の第10の行を参照されたい)を、推定される生存増強遺伝子を基準と比較して測定するためのレベルとして使用した。2つの活性化突然変異D124EおよびT195Pを有するCD28をコードする遺伝子を移入したT細胞は、CD19を移入した細胞の10倍を超える数のGFP発現細胞を有していた(表5の第1の行)。CD3eまたはCD3dに融合した表皮成長因子受容体(EGFR)を認識する抗体断片をコードする遺伝子は、CD19と比較してGFP発現細胞の百分率の4倍増を付与するように見えた(それぞれ表5の第2および第3の行)が、本発明者らは、CD3d融合の第2の測定がはるかに低いGFP発現率を示したことを注記する(表5の第15の行)。天然のサバイビン遺伝子は、CD19と比較してGFP発現の3倍増を付与するようであった(表5の第4および第5の行)。2つのESRもまた示されている。CD28膜貫通ドメイン(配列番号395の配列を有する)とT195P活性化突然変異を含むCD28細胞内ドメイン(配列番号352の配列を有する)とに融合した抗CD28抗体(配列番号340の配列を有する)を含む第1のものにより、GFP発現細胞の数が約2倍増加した(表5の第6および第7の行)。TNFRSF1A細胞外ドメイン(配列番号330の配列を有する)と、膜貫通ドメイン(配列番号394の配列を有する)と、4-1BB細胞内ドメイン(配列番号344の配列を有する)とを含む第2のESRは、GFP発現細胞の数の2倍増をわずかに下回った(表5の第8および第9の行)。2つの同時移入は、GFP発現細胞の百分率を上昇させるのに特に有効であった。表5の第16の行に示される1つの同時移入は、Fas受容体(TNFRSF6)の細胞外ドメインおよび膜貫通ドメイン(それぞれ配列番号323および配列番号387の配列を有する)と、4-1BB(TNFRSF9)の細胞内ドメイン(配列番号344の配列を有する)とを含むESR(第5.3.2.1節においても説明)をコードする第1の遺伝子、ならびにカスパーゼ7のドミナントネガティブ突然変異体をコードする第2の遺伝子(配列番号262の配列を有する)を含んでいた。表5の第17の行に示す第2の同時移入は、STA3-Y640Fをコードする第1の遺伝子(配列番号246の配列を有する)と、PIK3CA-L1001Pをコードする第2の遺伝子(配列番号257の配列を有する)とを含んでいた。これらの同時移入は、24日後にGFP発現細胞のそれぞれ51%および46%をもたらした。
【0151】
本発明者らは、T細胞におけるCD28-D124E-T195Pの発現、またはESR Fas/4-1BB+Casp7-DNの共発現、またはSTAT3-Y640F+PIK3CA-L1001Pの共発現が、T細胞に生存または増殖の利点を提供し、これらの遺伝子または遺伝子の組み合わせが、第5.3.1.1節に説明されているような免疫細胞生存増強遺伝子および免疫細胞増殖増強遺伝子であると結論付ける。
【0152】
6.2.1.3 サバイビンとCD28の活性化突然変異体とはT細胞機能を増強する
本発明者らは、第6.2.1.2節および表5に示されるように、T細胞の成長/生存および/または増殖を増強する、サバイビンまたはCD28のD124E/T195P活性化二重突然変異体の発現を発見した。これらの遺伝子がまたT細胞の挙動性能も増強することができるかどうかを試験するために、本発明者らは、該遺伝子を、B細胞上にのみ天然に認められるエピトープであるCD19を標的とするキメラ抗原受容体と共にT細胞のゲノム内へと組み込み、改変T細胞が形質転換B細胞株の細胞を死滅させる能力を試験した。
【0153】
3つの遺伝子移入ポリヌクレオチドを、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)プロモーターとウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列とに作動可能に連結されたDasherGFPをコードする遺伝子を含むGFPレポーター(配列番号222の配列)を各々含んで構築した。GFP遺伝子には、片側でHS4インスレーター(配列番号92)が、もう片側でD4Z4インスレーター(配列番号88)が隣接していた。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、1つのインスレーターの遠位側に、標的配列5’-TTAA-3’を、直後に続く配列番号10のpiggyBac様トランスポゾン逆方向末端反復配列(これは配列番号6の実施形態である)を、直後に続く配列番号3の追加のトランスポゾン末端配列(これは、配列番号1と>95%同一である)をさらに含んでいた。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、もう1つのインスレーターの遠位側に、配列番号5の追加のトランスポゾン末端配列(配列番号4と>95%同一である)を、直後に続く配列番号11のpiggyBac様トランスポゾン逆方向末端反復配列(これは配列番号7の実施形態である)を、直後に続く標的配列5’-TTAA-3’をさらに含んでいた。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、第6.1.2節に説明され、表3に示されるようにT細胞において同等に活性があるようであるプロモーターであるPGKプロモーターまたはGAPDHプロモーターのいずれかに作動可能に連結された、配列が配列番号229によって付与されたポリペプチドであるCD10結合キメラ抗原受容体をコードする遺伝子をさらに含んでいた。キメラ抗原受容体遺伝子は、該遺伝子がDasher GFP遺伝子から分岐して転写され、トランスポザーゼによって転位可能である遺伝子移入ポリヌクレオチドの一部にあるように、遺伝子移入ポリヌクレオチド中に存在した。第1の遺伝子移入ポリヌクレオチド(配列番号225によって与えられる配列を有する346463は、追加の転位可能な遺伝子を含んでいなかった。第2の遺伝子移入ポリヌクレオチド(配列番号226によって与えられる配列を有する346776)は、キメラ抗原受容体と同じ向きで転写され、またトランスポザーゼによって転位可能である遺伝子移入ポリヌクレオチドの一部においても転写される、PGKプロモーターに作動可能に連結されたサバイビンをコードするオープンリーディングフレームをさらに含んでいた。第3の遺伝子移入ポリヌクレオチド(配列番号227によって与えられる配列を有する346777)は、キメラ抗原受容体を含んでおり、キメラ抗原受容体と同じ向きで転写され、またトランスポザーゼによって転位可能である遺伝子移入ポリヌクレオチドの一部においても転写される、PGKプロモーターに作動可能に連結されたCD28-D124E-T195Pをコードするオープンリーディングフレームをさらに含んでいた。
【0154】
6.2.1.3a サバイビンおよび活性化CD28増強型エクスビボCAR細胞死滅試験1
Stemcell Technologies製のEasySep Human CD8陽性選別キットを製造元の説明書により使用して、T細胞を、2つの異なる正常ドナー由来の末梢血単核細胞(PBMC)から調製した。T細胞を、放射線照射されたフィーダー細胞とのインキュベーションによって2~3日間刺激して、分泌されたCD3、CD28、IL-2、IL-7およびIL-15を提供した。おおよそ200,000個のT細胞に、製造元のプロトコルにより、Neonエレクトロポレーターを使用して、1μgのトランスポゾンDNAと、配列番号37のトランスポザーゼをコードする100ngのmRNAとを移入した。移入したT細胞をフィーダー細胞と混合し、37℃でインキュベートした。細胞を培養でおおよそ5週間成長させ、おおよそ5週間の時点で、各遺伝子移入ポリヌクレオチドを移入した細胞の約10%がGFPを発現していた。次いで、T細胞(200,000)の試料を同数のJY細胞と混合した。JYは、CD19を発現し、したがって抗CD19キメラ抗原受容体についての標的であるエプスタイン・バーウイルス不死化B細胞リンパ芽球様株である。細胞の試料を混合3日後および7日後に細胞混合物から採取し、抗CD8抗体および抗CD19抗体で染色した(それぞれT細胞およびJY細胞を標識するため)。結果を
図3および表6に示す。混合3日後までに、キメラ抗原受容体のみを発現するT細胞は、JY腫瘍細胞に圧倒されてほとんど消失していた。検出可能な細胞の8%のみがCD8を発現していたのに対し、89%はCD19を発現していた(
図3のパネルA、表6のA列、第3および第4の行)。混合7日後までに、細胞の2.3%のみがCD8発現T細胞であった(
図3のパネルD、表6のA列、第5および第6の行)。対照的に、キメラ受容体+サバイビンまたはCD28-D124E-T195Pのいずれかを発現するT細胞は、JY腫瘍細胞の存在下で生存することができた。3日後、
図3のパネルBおよびパネルCならびに表6のB列およびC列、第3および第4の行に示されるように、細胞の40~50%がCD8(T細胞マーカー)を発現しており、23~29%のみがCD19(腫瘍細胞マーカー)を発現していた。7日後までに、腫瘍細胞は有効に排除され、全細胞のおおよそ90%がCD8を発現していた(
図3のパネルEおよびパネルF、ならびに表6のB列およびC列、第5および第6の行)。本発明者らは、サバイビンまたは、CD28のD124E/T195P活性化二重突然変異体の発現が、T細胞の成長/生存および/または増殖を増強するだけでなく、T細胞が腫瘍細胞の存在下で生存することができ、腫瘍細胞を死滅させるために活性があるままであることができることによってT細胞の挙動もまた増強することができると結論付ける。
【0155】
6.2.1.3b サバイビンおよび活性化CD28増強型インビボCAR細胞の死滅
移入したT細胞の第2の試料を、FACSを使用して選別して、GFP(トランスポゾンのT細胞ゲノムにおける存在の指標である)発現細胞を選択した。選択した細胞を培養でさらに1週間成長させ、インビボでJY腫瘍細胞を死滅させる能力について試験した。100万個のJY細胞をNSG免疫不全マウスに腹腔内注射によって投与した。7日後、100万個のGFP発現T細胞を、JY処理マウスへの腹腔内注射によって投与した。2匹のマウスに、T細胞の代わりにリン酸緩衝塩類溶液(PBS)の不活性対照処理を行った。表7に示すように、PBSを投与したマウスは、JY細胞注射後24日間または25日間生存した(表7の第1および第2の行)。キメラ抗原受容体を発現するT細胞の投与は、JY注射後5~6日間から30日間まで生存を延長した(表7の第3の行)。キメラ抗原受容体+サバイビンまたはCD28-D124E-T195Pを発現するT細胞の投与は、JY注射後さらに4日間から34日間まで生存を延長した(表7の第4および第5の行)。本発明者らは、サバイビンまたは、CD28のD124E/T195P活性化二重突然変異体の発現が、T細胞のエクスビボでの成長/生存および/または増殖を増強するだけでなく、T細胞が腫瘍細胞の存在下で生存することができ、腫瘍細胞を死滅させるために活性があるままであることができることによってT細胞のインビボでの挙動もまた増強することができると結論付ける。
【0156】
6.2.1.3c サバイビンおよび活性化CD28増強型エクスビボCAR細胞死滅試験2
本発明者らはまた、抗CD19キメラ抗原受容体のみ、またはサバイビンもしくはCD28-D124E-T195Pと共発現するキメラ抗原受容体、のいずれかを発現するT細胞に対する腫瘍再負荷試験も行った。標準的な単回負荷エクスビボ腫瘍溶解アッセイは、比較的短い共培養時間および高いT細胞対腫瘍比により、T細胞の真の抗腫瘍能をしばしば過大評価する。生存増強遺伝子(この場合、サバイビンおよびCD28-D124E-T195P)がT細胞機能も増強することができるかどうかを決定するために、本発明者らは、T細胞の生存を困難にする周囲の腫瘍微小環境をよりよく模倣するために再発性腫瘍細胞多量負荷を使用した。総量200μlのマイクロタイタープレートウェル内で、1、2、3、4または5連続用量の100,000個のNALM6(CD19+、CD20-、CD21-である)のいずれかをT細胞(100,000)に負荷した。各100,000個の細胞のNALM6用量は、48時間間隔とした。各再負荷について、100μlの上清を抜去し、100,000個のNALM6細胞を含有する100μlの新鮮な培地を添加した。試料に対する最後の負荷の24時間後、NALM6細胞死を生物発光の低減として、製造元の説明書によるD-ルシフェリンの添加およびBioTekシナジーNeo2ハイブリッドマイクロプレートリーダーを用いて発光を測定することによって測定した(例えば、Karimi et al.,(2014)Measuring Cytotoxicity by Bioluminescence Imaging Outperforms the Standard Chromium-51 Release Assay.PLoS ONE 9(2):e89357を参照されたい)。
【0157】
第6.2.1.3a節に説明するように、抗CD19 CARと、場合によりサバイビンをコードする遺伝子またはCD28における活性化突然変異をコードする遺伝子とを含むトランスポゾンを移入した細胞を、エクスビボで10か月間培養した。この時点までに、細胞は>95%がGFPを発現していた(推論により、CAR、および存在する場合は生存増強遺伝子も発現していた。T細胞がエクスビボ培養で10か間生存することはまれである。生存遺伝子を発現するT細胞について、本発明者らは、この寿命がサバイビンまたはCD28-D124E-T195Pの発現に起因すると考える。しかしながら、本発明者らはまた、キメラ抗原受容体のみを発現するT細胞のこの長期生存も観察しているが、該T細胞は生存遺伝子も発現する細胞よりも緩徐に成長した。本発明者らは、このことは、キメラ抗原受容体をコードする遺伝子がPGKプロモーターまたはGAPDHプロモーターまたは同等の発現レベルを駆動するプロモーターに作動可能に連結されているとき、最適なCARレベルの発現に起因すると考える。長期のエクスビボ培養が、腫瘍細胞を死滅させるT細胞の能力を低下させた場合、本発明者らは、異なるドナー由来のT細胞内への、第6.2.1.3a節に説明する移入を反復し、該細胞をエクスビボで4か月培養した後、腫瘍再負荷アッセイを用いて該細胞を試験した。NALM6細胞死の結果を表8に示す。
【0158】
表8の第1の行は、T細胞にNALM6細胞を負荷した回数を示す。表8の第2~第4の行は、エクスビボで10か月間成長させた抗CD19キメラ抗原受容体を発現するT細胞集団によるNALM6の死滅を示す。T細胞はまた、サバイビン(第3の行)またはCD28-D124E-T195P(第4の行)のいずれかも発現していた。キメラ抗原受容体のみを発現する細胞は、第1の負荷で100%のNALM6細胞を死滅させたが、その後の負荷では死滅効率が落ち込んだ。第2の負荷の後のNALM6の85%、第3の後の47%、第4の後の23%が、および第5の負荷の後では10%のみを死滅させた(表8の第2の行を参照されたい)。対照的に、サバイビンも発現する細胞は、第5の負荷で76%のNALM6細胞を死滅させることができ(表8の第3の行)、CD28-D124E-T195Pも発現する細胞は、第5の負荷で82%のNALM6細胞を死滅させることができた(表8の第4の行)。同様のパターンの死滅が、エクスビボでわずか4か月間培養された細胞において見られたが、死滅の効率は一般に高かった(表8の第5~第7の行)。キメラ抗原受容体のみを発現する細胞は、第1および第2の負荷で100%のNALM6細胞を死滅させたが、その後の負荷では死滅効率が落ち込んだ。第3の負荷の後のNALM6の51%、第4の後の28%、および第5の負荷の後では27%を死滅させた(表8の第5の行を参照されたい)。対照的に、サバイビンも発現する細胞は、第5の負荷で90%のNALM6細胞を死滅させることができ(表8の第6の行)、CD28-D124E-T195Pも発現する細胞は、第5の負荷で91%のNALM6細胞を死滅させることができた(表8の第7の行)。
【0159】
このことは、キメラ抗原受容体を発現するT細胞によるサバイビンまたはCD28-D124E-T195Pの発現が、該細胞による標的細胞死滅を増強し、細胞が疲労する速度を低減させることを示している。腫瘍細胞を死滅させるのに有利なT細胞は、発現可能なサバイビン遺伝子またはCD28-D124E-T195P遺伝子を含む異種ポリヌクレオチドを含む。
【0160】
6.2.1.4 初代T細胞におけるBcl2およびBcl6の発現
ウイルスCHYSL(2A)配列(完全なオープンリーディングフレームBcl2-2A-Bcl6の配列は配列番号272として与えられる)によって分離されたBcl2およびBcl6をコードするオープンリーディングフレームを、配列番号115によって与えられた配列を有するPGKプロモーターと配列番号182の配列を有するウサギグロビンポリアデニル化シグナルとに作動可能に連結し、遺伝子移入ポリヌクレオチド内へとクローン化した。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)プロモーターとウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列とに作動可能に連結されたDasherGFPをコードする遺伝子を含むGFPレポーター(配列番号222の配列)をさらに含んでいだ。2つのオープンリーディングフレームを、多様に転写するように構成した(すなわち、2つのプロモーターは互いに隣接し、反対方向に転写された)。2つのオープンリーディングフレームには、片方の側からHS4インスレーター(配列番号92の配列)が、もう片方の側からD4Z4インスレーター(配列番号88の配列)が隣接していた。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、1つのインスレーターの遠位側に、標的配列5’-TTAA-3’を、直後に続く配列番号10のpiggyBac様トランスポゾン逆方向末端反復配列(これは配列番号6の実施形態である)を、直後に続く配列番号3の追加のトランスポゾン末端配列(これは、配列番号1と>95%同一である)をさらに含んでいた。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、もう1つのインスレーターの遠位側に、配列番号5の追加のトランスポゾン末端配列(配列番号4と>95%同一である)を、直後に続く配列番号11のpiggyBac様トランスポゾン逆方向末端反復配列(これは配列番号7の実施形態である)を、直後に続く標的配列5’-TTAA-3’をさらに含んでいた。
【0161】
Stemcell Technologies製のEasySep Human CD8陽性選別キットを製造元の説明書により使用して、T細胞を正常ドナー末梢血単核細胞(PBMC)から調製した。T細胞を、放射線照射されたフィーダー細胞とのインキュベーションによって2~3日間刺激して、分泌されたCD3、CD28、IL-2、IL-7およびIL-15を提供した。おおよそ100,000個のT細胞に、製造元のプロトコルにより、Neonエレクトロポレーターを使用して、1μgのトランスポゾンDNAと、配列番号37の配列を有するトランスポザーゼをコードする100ngのmRNAとを移入した。移入したT細胞をフィーダー細胞と混合し、37℃でインキュベートした。移入後の様々な時点で試料を採取し、蛍光標識した抗CD8抗体とともにインキュベートし、CD8およびDasher GFPについて蛍光活性化セルソーター(FACS)で分析した。
【0162】
図4は、細胞染色の経時的な分布を示す。CD8染色は、CD8+T細胞についてのマーカーとして使用され、パネルAに示される各FACSプロットのy軸に示されている。GFP蛍光は、各FACSプロットのx軸に示されている。GFP蛍光は、細胞がGFPを発現していることを示しており、GFP蛍光は、本書では、細胞内の遺伝子移入ポリヌクレオチドの存在を示すためのマーカーとしても使用される。パネルBは、GFPも発現しているCD8発現T細胞の百分率を示すグラフである。移入1日後に、CD8発現細胞のおおよそ26%もまたGFPを発現していた。10日後までに、細胞の88.7%が強いCD8染色を示したが、GFP発現は示さず、CD8発現細胞の11.3%もまたGFPを発現し、該CD8発現細胞がまた遺伝子移入ポリヌクレオチドも含有していたことを示した。GFP蛍光も呈するCD8発現細胞の割合は、経時的に上昇した。19日後で29.4%、42日後で80%であった。GFPを発現しているT細胞集団の割合の上昇は、そのゲノムが遺伝子移入ポリヌクレオチドを含むT細胞が、そのゲノムが遺伝子移入ポリヌクレオチドを含まないT細胞と比較して生存の利点を有することを示しているか、またはそのゲノムが遺伝子移入ポリヌクレオチドを含むT細胞が、そのゲノムが遺伝子移入ポリヌクレオチドを含まないT細胞と比較して増殖の利点を有することを示している。本発明者らは、T細胞におけるBcl2およびBcl6の発現が、T細胞に生存または増殖の利点を提供する、ならびにBcl2およびBcl6をコードする遺伝子が、第5.3.1.1節において説明するような免疫細胞生存増強遺伝子および免疫細胞増殖増強遺伝子である、と結論付ける。
【0163】
6.2.1.5 初代T細胞におけるT細胞形質転換要素およびESRの発現
T細胞形質転換要素と増強型シグナル伝達受容体とのセットをコードする遺伝子を、別々の遺伝子移入ポリヌクレオチド内へと個別にクローン化した。各場合では、該遺伝子を、配列が配列番号115によって与えられたPGKプロモーターと、配列番号182の配列を有するウサギグロビンポリアデニル化シグナルとに作動可能に連結した。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)プロモーターとウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列とに作動可能に連結されたDasherGFPをコードする遺伝子を含むGFPレポーター(配列番号222の配列)をさらに含んでいだ。2つのオープンリーディングフレームを、多様に転写するように構成した(すなわち、2つのプロモーターは互いに隣接し、反対方向に転写された)。2つのオープンリーディングフレームには、片方の側からHS4インスレーター(配列番号92の配列)が、もう片方の側からD4Z4インスレーター(配列番号88の配列)が隣接していた。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、1つのインスレーターの遠位側に、標的配列5’-TTAA-3’を、直後に続く配列番号10のpiggyBac様トランスポゾン逆方向末端反復配列(これは配列番号6の実施形態である)を、直後に続く配列番号3を有する追加のトランスポゾン末端配列(これは、配列番号1と>95%同一である)をさらに含んでいた。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、もう1つのインスレーターの遠位側に、配列番号5の追加のトランスポゾン末端配列(配列番号4と>95%同一である)を、直後に続く配列番号11のpiggyBac様トランスポゾン逆方向末端反復配列(これは配列番号7の実施形態である)を、直後に続く標的配列5’-TTAA-3’をさらに含んでいた。
【0164】
Stemcell Technologies製のEasySep Human CD8陽性選別キットを製造元の説明書により使用して、T細胞を2ドナーの末梢血単核細胞(PBMC)から調製した。T細胞を、放射線照射されたフィーダー細胞とのインキュベーションによって2~3日間刺激して、分泌されたCD3、CD28、IL-2、IL-7およびIL-15を提供した。おおよそ100,000個のT細胞に、製造元の説明書により、Neonエレクトロポレーターを使用して、1μgのトランスポゾンDNAと、配列番号37のトランスポザーゼをコードする100ngのmRNAとを移入した。移入したT細胞をフィーダー細胞と混合し、37℃でインキュベートした。移入後の様々な時点で試料を採取し、蛍光標識した抗CD8抗体とともにインキュベートし、CD8およびDasher GFPについて蛍光活性化セルソーター(FACS)で分析した。データを表9に示す。
【0165】
第6.2.1.1節に説明されているように、GFPを発現するCD8+細胞の濃度は、第5.3.1.1節に説明されているように、遺伝子移入ポリヌクレオチドが、T細胞に生存または増殖の利点を付与する遺伝子を含む、という指標である。この遺伝子移入ポリヌクレオチドのセットでは、T細胞生存に対して影響を及ぼさないと予想される対照遺伝子としてHSV-TKを含めた。それゆえ、本発明者らは、HSV-TKを移入した細胞におけるGFP発現細胞の百分率を、推定される生存増強遺伝子を基準と比較して測定するためのレベルとして使用した。表9に見られるように、2ドナー由来のT細胞の2つの独立した移入は、7.5%~15.3%の細胞において最初のGFP発現(移入効率を示す)をもたらした(表9の第7および第8の行)。14日後までに、これらの百分率は有意に落ち込み、その後の時点で、GFPを発現する細胞の百分率はおおよそ一定のままであるかまたは低下した。このことは、予想通り、HSV-TKがT細胞に成長の利点または増殖の利点を提供しないことを示している。対照的に、STAT3:STAT3-D661YおよびSTAT3-S614R-Y640Fの突然変異体をコードする遺伝子を含む試験した遺伝子移入ポリヌクレオチドのうちの2つは、両ドナーにおいてGFP発現細胞の百分率の漸増を示し(表9の第1および第3の行)、これらの遺伝子が、第6.2.1.1節のSTA3-Y640Fについて見られたものと同様の成長の利点または増殖の利点をT細胞に提供することを示した。本発明者らは、T細胞におけるSTAT3-D661YおよびSTA3-S614R-Y640Fを含む活性化STAT3突然変異体の発現が、該T細胞に生存または増殖の利点を提供する、およびSTAT3の活性化突然変異体をコードする遺伝子が、第5.3.1.1節において説明するような免疫細胞生存増強遺伝子および免疫細胞増殖増強遺伝子である、と結論付ける。
【0166】
試験した遺伝子移入ポリヌクレオチドのうちの1つは、アポトーシス阻害剤Bcl-XLをコードする遺伝子を含んでいた。これらの細胞は、両ドナーにおいてGFPを発現する細胞の百分率の漸増を示し(表9の第2の行)、Bcl-XLの発現がT細胞に成長または増殖の利点を提供する、およびBcl-XLをコードする遺伝子が、第5.3.1.1節に説明されるような免疫細胞生存増強遺伝子および免疫細胞増殖増強遺伝子であることを示した。
【0167】
試験した遺伝子移入ポリヌクレオチドの1つは、ホスホリパーゼC:PLCG1-S345Fの活性化突然変異をコードする遺伝子を含んでいた。これらの細胞は、両ドナーにおいてGFPを発現する細胞の百分率の漸増を示し(表9の第6の行)、PLCG1-S345Fの発現がT細胞に成長または増殖の利点を提供する、およびPLCG1-S345Fをコードする遺伝子が、第5.3.1.1節に説明されるような免疫細胞生存増強遺伝子および免疫細胞増殖増強遺伝子であることを示した。
【0168】
本実験では、2つのESRも試験した。1つのTNFR1/CD27(配列は配列番号301によって付与)は、TNFRSF1A由来の細胞外ドメイン(配列は配列番号330によって付与)と、TNFRSF1A由来の膜貫通ドメイン(配列は配列番号394によって付与)と、CD27由来の細胞内ドメイン(配列は配列番号343によって付与)とを含んでいた。第2のTNFR1/4-1BB(配列は配列番号302によって付与)は、TNFRSF1A由来の細胞外ドメイン(配列は配列番号330によって付与)と、この場合、4-1BB由来の細胞内ドメイン(配列は配列番号344によって付与)に融合したTNFRSF1A由来の膜貫通ドメイン(配列は配列番号394によって付与)とを含んでいた。ESR TNFR1/CD27およびESR TNFR1/4-1BBは両方とも、ドナーのうちの1個体においてGFP発現細胞の高い百分率をもたらし(表9の第4の行)、ESR TNFR1/CD27またはESR TNFR1/4-1BBの発現が、T細胞に成長または増殖の利点を提供することができる、およびESR TNFR1/CD27またはESR TNFR1/4-1BBをコードする遺伝子が、第5.3.1.1節に説明するような免疫細胞生存増強遺伝子および免疫細胞増殖増強遺伝子であることを示した。
【0169】
6.2.1.6 初代T細胞による腫瘍細胞死滅に対するBcl-XLの効果
6.2.1.6a Bcl-XL増強型エクスビボBiTE細胞死滅試験
Bcl-XL(ポリペプチド配列は配列番号238によって付与)をコードする遺伝子を遺伝子移入ポリヌクレオチド内へとクローン化した。該遺伝子を、配列が配列番号115によって与えられたPGKプロモーターと、配列番号182の配列を有するウサギグロビンポリアデニル化シグナルとに作動可能に連結した。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)プロモーターとウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列とに作動可能に連結されたDasherGFPをコードする遺伝子を含むGFPレポーター(配列番号222の配列)をさらに含んでいだ。2つのオープンリーディングフレームを、多様に転写するように構成した(すなわち、2つのプロモーターは互いに隣接し、反対方向に転写された)。2つのオープンリーディングフレームには、片方の側からHS4インスレーター(配列番号92の配列を有する)が、もう片方の側からD4Z4インスレーター(配列番号88の配列を有する)が隣接していた。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、1つのインスレーターの遠位側に、標的配列5’-TTAA-3’を、直後に続く配列番号10のpiggyBac様トランスポゾン逆方向末端反復配列(これは配列番号6の実施形態である)を、直後に続く配列番号3を有する追加のトランスポゾン末端配列(これは、配列番号1と>95%同一である)をさらに含んでいた。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、もう1つのインスレーターの遠位側に、配列番号5の追加のトランスポゾン末端配列(配列番号4と>95%同一である)を、直後に続く配列番号11のpiggyBac様トランスポゾン逆方向末端反復配列(これは配列番号7の実施形態である)を、直後に続く標的配列5’-TTAA-3’をさらに含んでいた。
【0170】
Stemcell Technologies製のEasySep Human CD8陽性選別キットを製造元の説明書に従って使用して、T細胞を3ドナーの末梢血単核細胞(PBMC)から調製した。T細胞を、放射線照射されたフィーダー細胞とのインキュベーションによって2~3日間刺激して、分泌されたCD3、CD28、IL-2、IL-7およびIL-15を提供した。おおよそ100,000個のT細胞に、製造元のプロトコルにより、Neonエレクトロポレーターを使用して、1μgのトランスポゾンDNAと、配列番号37のトランスポザーゼをコードする100ngのmRNAとを移入した。移入したT細胞をフィーダー細胞と混合し、37℃でインキュベートした。
【0171】
細胞をT細胞培地中で240日間培養して成長させた。第6.2.1.6節および表9において説明されるように、Bcl-XLは、T細胞に対する選択的利点を提供する。本発明者らがこれらの細胞を8か月間培養することができたことは、T細胞におけるBcl-XL遺伝子の発現がエクスビボで該T細胞の生存を増強することを実証している。生存に加えて、本発明者らは、これらのT細胞が該T細胞を腫瘍細胞株と混合することによって該T細胞の細胞毒性を保有しているかどうかを試験した。細胞毒性を試験する前に、本発明者らは、T細胞ゲノム内へと組み込まれた同じトランスポゾンから発現するGFPを測定することによって、Bcl_Xlを発現する細胞の割合を決定した。
図5は、該T細胞に形質移入した240日後の3個体の異なるドナー由来のT細胞のフローサイトメトリー分析を示し、x軸はGFPを、y軸はT細胞マーカーCD8についての染色である。パネルAは、ドナー81由来のT細胞の90%超がGFPを発現したことを示し、パネルBは、ドナー82由来のT細胞の99%超がGFPを発現したことを示し、パネルCは、ドナー84由来のT細胞の98%超がGFPを発現したことを示す。したがって、240日後に、各ドナー由来のT細胞の大部分はGFPを、推論によりBcl-XLを発現していた。
【0172】
細胞毒性を測定するために、本発明者らは、100,000個のT細胞を、ルシフェラーゼをコードするゲノムに組み込まれた遺伝子を含有する100,000個のB細胞腫瘍株であるNALM6(CD19+、CD20-、CD21-である)と混合した。T細胞を腫瘍標的細胞に運ぶために、CD3(T細胞表面上)およびCD19(NALM6表面上)に対する結合ドメインを有する二重特異性T細胞結合剤(BiTE)をいくつかの反応に含めた。翌日、本発明者らは、生物発光アッセイ(例えば、Karimi et.al.,(2014)Measuring Cytotoxicity by Bioluminescence Imaging Outperforms the Standard Chromium-51 Release Assay.PLoS ONE 9(2):e89357を参照されたい)を用いて、溶解したNALM6細胞の割合を決定した。
【0173】
細胞毒性試験を腫瘍再負荷として行った。標準的な単回負荷エクスビボ腫瘍溶解アッセイは、比較的短い共培養時間および高いT細胞対腫瘍比により、T細胞の真の抗腫瘍能をしばしば過大評価する。生存増強遺伝子(この場合、Bcl-XL)がT細胞機能も増強することができるかどうかを決定するために、本発明者らは、T細胞の生存を困難にする周囲の腫瘍微小環境をよりよく模倣するために再発性腫瘍細胞多量負荷を使用した。総量200μlのマイクロタイタープレートウェル内で、1、2、3、4または5連続用量の100,000個のNALM6をT細胞(100,000)に負荷した。各100,000個の細胞のNALM6用量は、48時間間隔とした。各再負荷について、100μlの上清を抜去し、100,000個のNALM6細胞を含有する100μlの新鮮な培地を添加した。試料に対する最後の負荷の24時間後、D-ルシフェリンを添加し、BioTekシナジーNeo2ハイブリッドマイクロプレートリーダーを製造元の説明書により使用して発光を測定することによって、生物発光の低減としてNALM6細胞死を測定した。NALM6細胞死の結果を表10に示す。
【0174】
表10の第1の行は、T細胞にNALM6細胞を負荷した回数を示す。表10の第2~第5の行は、あらゆるBiTEの非存在下での4つの異なるT細胞集団によるNALM6の死滅を示す。これらの条件下での細胞死滅は、一般的な異質遺伝子的死滅を反映しており、腫瘍抗原に対する特異的なターゲティングはない。Bcl-XLを発現する3つのT細胞集団によって達成される死滅(表10の第2~第4の行)は、ナイーブT細胞によって達成された死滅(表10の第5の行)と非常に同等であった。注目すべきは、8か月間培養したBcl-XL発現T細胞とは対照的に、ナイーブT細胞を本実験で使用する前に数週間のみ培養したという事実である。このことは、Bcl-XL発現が、T細胞の細胞毒性を保有しながら培養で8か月間成長させておくことができることを示す。
【0175】
第2のセットの負荷を、NALM6細胞の表面上のCD19抗原を標的とするBiTEの存在下で行った。表10の第9の行は、BiTEの存在下でナイーブT細胞によってもたらされるNALM6の死滅を示す。第1および第2の負荷後の死滅は、BiTEを用いない場合よりもはるかに効率的であった。第1の負荷の際には88%のNALM6細胞が死滅し、第2の負荷の後では97%が死滅した。次いで、死滅の効率が低下した。72%のNALM6細胞は、第3の負荷の後に、62%が第4の負荷の後に、および59%が第5の負荷の後に死滅した。この低下は、長期腫瘍再負荷後に見られるT細胞有効性の喪失を象徴している(例えば、Voss et.,al.(2017)Cancer Lett.408:190-196.「Metabolic reprogramming and apoptosis sensitivity:defining the contours of a T cell response」を参照されたい)。Bcl-XLを発現する3つのT細胞集団は、ナイーブT細胞と同様に、BiTEの存在下で1回または2回の負荷後にNALM6を死滅させるのに有効であった(表10の第6~第8の行)。ナイーブT細胞とは異なり、Bcl-XL発現T細胞のNALM6死滅効率率は、連続的な負荷の際に低下しなかった。第5の負荷の後、Bcl-XL発現T細胞集団のうちの2つ(ドナー81およびドナー84由来)は、ナイーブT細胞についての59%の死滅と比較して、95%のNALM6細胞を死滅させ(表10の第6および第8の行)、第3の集団(ドナー82由来)は、94%のNALM6細胞を死滅させた(表10の第7の行)。このことは、8か月間エクスビボで成長させたBcl-XLを発現するT細胞だけでなく、数週間培養しただけのナイーブT細胞も依然として腫瘍細胞を死滅させることができることを示し、該ナイーブT細胞はまた、腫瘍抗原への曝露の反復後にT細胞有効性を低減させる因子の影響も受けにくいようである。
【0176】
6.2.1.6b Bcl-XL増強型エクスビボCAR細胞死滅試験
本発明者らは、第6.2.1.3c節に説明されているような抗CD19キメラ抗原受容体を発現するT細胞に対して腫瘍再負荷試験を行った。サバイビンまたはCD28-D124E-T195Pと共発現したキメラ抗原受容体を含んでいるトランスポゾンは、第6.2.1.3節において説明されるとおりであり、Bcl-XLと共発現したキメラ抗原受容体を含む追加のトランスポゾンを生成した。生存増強遺伝子(この場合、サバイビン、CD28-D124E-T195PおよびBcl-XL)がT細胞機能も増強することができるかどうかを決定するために、本発明者らは、T細胞の生存を困難にする周囲の腫瘍微小環境をよりよく模倣するために再発性腫瘍細胞多量負荷を使用した。総量200μlのマイクロタイタープレートウェル内で、1、2、3、4、5または6連続用量の100,000個のNALM6(CD19+、CD20-、CD21-である)のいずれかをT細胞(100,000)に負荷した。各100,000個の細胞のNALM6用量は、48時間間隔とした。各再負荷について、100μlの上清を抜去し、100,000個のNALM6細胞を含有する100μlの新鮮な培地を添加した。試料に対する最後の負荷の24時間後、D-ルシフェリンを添加し、BioTekシナジーNeo2ハイブリッドマイクロプレートリーダーを製造元の説明書により使用して発光を測定することによって、生物発光の低減としてNALM6細胞死を測定した(例えば、Karimi et.al.,(2014)Measuring Cytotoxicity by Bioluminescence Imaging Outperforms the Standard Chromium-51 Release Assay.PLoS ONE 9(2):e89357を参照されたい)。
【0177】
抗CD19 CARと、場合によりサバイビンをコードする遺伝子またはCD28における活性化突然変異をコードする遺伝子、またはBcl-XLをコードする遺伝子を含むトランスポゾンを移入した細胞を、エクスビボで4か月間培養した。この時点までに、細胞は>95%がGFPを発現していた(推論により、CAR、および存在する場合は生存増強遺伝子も発現していた。NALM6細胞死の結果を表11に示す。
【0178】
表11の第1の行は、T細胞にNALM6細胞を負荷した回数を示す。表11の第2の行は、抗CD19キメラ抗原受容体を発現するT細胞集団によるNALM6の死滅を示す。T細胞はまた、サバイビン(第3の行)、CD28-D124E-T195P(第4の行)、またはBcl-XL(第5の行)のいずれかも発現していた。キメラ抗原受容体を有しない細胞を第6の行に示す。キメラ抗原受容体のみを発現する細胞は、第1の負荷で70%のNALM6細胞を死滅させ、死滅効率は第2の負荷で97%まで上昇したが、次いで、その後の負荷では再度落ち込んだ。第3の負荷の後で69%、第4の後で59%、第5の際に58%、および第6の負荷の後では53%のNALM6細胞が死滅した(表11の第2の行を参照されたい)。対照的に、サバイビンも発現した細胞は、第6の負荷で85%のNALM6細胞を死滅させることができ(表11の第3の行)、CD28-D124E-T195Pも発現した細胞は、第6の負荷で85%のNALM 6細胞を死滅させることができ(表11の第4の行)、Bcl-XLも発現した細胞は、第6の負荷で94%のNALM6細胞を死滅させることができた(表11の第5の行)。このことは、キメラ抗原受容体を発現するT細胞によるサバイビンまたはCD28-D124E-T195PまたはBcl-XLの発現が、該細胞による標的細胞死滅を増強し、細胞が腫瘍細胞を死滅させることができなくなる速度を低減させることを示している。腫瘍細胞を死滅させるのに有利なT細胞は、キメラ抗原受容体をコードする遺伝子と、発現可能なサバイビン遺伝子またはCD28-D124E-T195P遺伝子またはBcl-XL遺伝子を含む異種ポリヌクレオチドとを含む。
【0179】
アポトーシス阻害剤であるサバイビン、Bcl-XL、Bcl2およびBcl6はすべて、本書では免疫細胞生存遺伝子として作用することが示されている。カスパーゼ経路におけるドミナントネガティブ遺伝子、例えばカスパーゼ3、カスパーゼ7、カスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ10またはCASP8のドミナントネガティブ突然変異体およびFADD様アポトーシス調節因子(CFLAR)は、同様の効果を有すると予想される。本発明のいくつかの実施形態では、免疫細胞は、配列番号240~245のうちから選択される配列のドミナントネガティブ突然変異体を含むアポトーシス経路のドミナントネガティブ阻害剤をコードする遺伝子を含み、いくつかの実施形態では、アポトーシス経路の阻害剤は、配列番号237、238または261~272のうちから選択される配列を含む。
【0180】
6.2.2 増強型シグナル伝達受容体
6.2.2.1 抗CD28/OX40は増殖増強活性を有するESRである
TNFRSF4についての膜貫通ドメイン(OX40)(配列は配列番号373によって付与)とTNFRSF4についての細胞内ドメイン(OX40)(配列は配列番号341によって付与)とに融合した抗CD28抗体TGN1412(配列は配列番号340によって付与)を含む抗CD28/OX40 ESR(配列は配列番号307によって付与)をコードするよう遺伝子を設計した。該遺伝子を、配列が配列番号115によって与えられたPGKプロモーターと、配列番号182を有するウサギグロビンポリアデニル化シグナル配列とに作動可能に連結した。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)プロモーターとウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列とに作動可能に連結されたDasherGFPをコードする遺伝子を含むGFPレポーター(配列番号222の配列を有する)をさらに含んでいだ。2つのオープンリーディングフレームを、多様に転写するように構成した(2つのプロモーターは互いに隣接し、反対方向に転写された)。2つのオープンリーディングフレームには、片方の側からHS4インスレーター(配列番号92の配列を有する)が、もう片方の側からD4Z4インスレーター(配列番号88の配列を有する)が隣接していた。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、1つのインスレーターの遠位側に、標的配列5’-TTAA-3’を、直後に続く配列番号10のpiggyBac様トランスポゾン逆方向末端反復配列(これは配列番号6の実施形態である)を、直後に続く配列番号3を有する追加のトランスポゾン末端配列(これは、配列番号1と>95%同一である)をさらに含んでいた。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、もう1つのインスレーターの遠位側に、配列番号5の追加のトランスポゾン末端配列(配列番号4と>95%同一である)を、直後に続く配列番号11のpiggyBac様トランスポゾン逆方向末端反復配列(これは配列番号7の実施形態である)を、直後に続く標的配列5’-TTAA-3’をさらに含んでいた。
【0181】
Stemcell Technologies製のEasySep Human CD8陽性選別キットを製造元の説明書により使用して、T細胞を、2つの異なる正常ドナー由来の末梢血単核細胞(PBMC)から調製した。T細胞を、放射線照射されたフィーダー細胞とのインキュベーションによって2~3日間刺激して、分泌されたCD3、CD28、IL-2、IL-7およびIL-15を提供した。おおよそ100,000個のT細胞に、製造元のプロトコルにより、Neonエレクトロポレーターを使用して、1μgのトランスポゾンDNAと、配列番号37の配列を有するトランスポザーゼをコードする100ngのmRNAとを移入した。移入したT細胞をフィーダー細胞と混合し、37℃でインキュベートした。移入1日後、14日後および28日後に試料を採取し、蛍光標識した抗CD8抗体とともにインキュベートし、CD8およびDasher GFPについて蛍光活性化セルソーター(FACS)で分析した。データを表12に示す。
【0182】
第6.2.1.1節に説明されているように、GFPを発現するCD8+細胞の濃度は、第5.3.1.1節に説明されているように、遺伝子移入ポリヌクレオチドが、T細胞に生存または増殖の利点を付与する遺伝子を含む、という指標である。抗CD28/OX40 ESR遺伝子を移入したT細胞は、GFPの極めて急速な蓄積を示した。1個体のドナー由来の細胞では、94%のCD8+細胞が14日以内にGFP+であった。第2のドナー由来の細胞では、98%の細胞が28日以内にGFP+であった。対照遺伝子を移入した対照細胞では、HSV-TKは、同等の最初(1日後)のGFPレベルを示したが、該GFPレベルはGFP発現細胞が濃縮されるのではなく減少した。このデータは、抗CD28/OX40 ESRの発現が、ESRを発現するT細胞に非常に有意な成長/増殖の利点を提供したことを示している。
【0183】
6.2.2.2 ESR Fas/4-1BBはCasp7-DNの存在下で増殖を刺激する
TNFRSF6(Fas)の細胞外ドメイン(配列は配列番号323によって付与)を含み、さらにTNFRSF6(Fas)の膜貫通ドメイン(配列は配列番号387によって付与)をさらに含み、TNFRSF9(4-1BB)の細胞内ドメイン(配列が配列番号344によって付与)をさらに含むESRをコードするように遺伝子を設計した。このESR(Fas/4-1BB)は、配列番号274の配列を含んでいた。アポトーシス阻害剤であるCasp7:Casp7-DNのドミナントネガティブ版(配列は配列番号262によって付与)をコードする第2の遺伝子も設計した。
【0184】
ESRおよびCasp7-DNを、トランスポゾンに基づく遺伝子移入ベクター内へと別々にクローン化した。各遺伝子を、配列が配列番号115によって与えられたPGKプロモーターと、配列が配列番号182によって与えられたウサギグロビンポリアデニル化シグナル配列とに作動可能に連結した。各遺伝子移入ポリヌクレオチドは、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)プロモーターとウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列とに作動可能に連結されたDasherGFPをコードする遺伝子を含むGFPレポーター(配列番号222の配列を有する)をさらに含んでいだ。2つのオープンリーディングフレームを、多様に転写するように構成した(2つのプロモーターは互いに隣接し、反対方向に転写された)。2つのオープンリーディングフレームには、片方の側からHS4インスレーター(配列番号92の配列を有する)が、もう片方の側からD4Z4インスレーター(配列番号88の配列を有する)が隣接していた。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、1つのインスレーターの遠位側に、標的配列5’-TTAA-3’を、直後に続く配列番号10のpiggyBac様トランスポゾン逆方向末端反復配列(これは配列番号6の実施形態である)を、直後に続く配列番号3を有する追加のトランスポゾン末端配列(これは、配列番号1と>95%同一である)をさらに含んでいた。遺伝子移入ポリヌクレオチドは、もう1つのインスレーターの遠位側に、配列番号5の追加のトランスポゾン末端配列(配列番号4と>95%同一である)を、直後に続く配列番号11のpiggyBac様トランスポゾン逆方向末端反復配列(これは配列番号7の実施形態である)を、直後に続く標的配列5’-TTAA-3’をさらに含んでいた。
【0185】
Stemcell Technologies製のEasySep Human CD8陽性選別キットを製造元の説明書により使用して、T細胞を、2つの異なる正常ドナー由来の末梢血単核細胞(PBMC)から調製した。T細胞を、放射線照射されたフィーダー細胞とのインキュベーションによって2~3日間刺激して、分泌されたCD3、CD28、IL-2、IL-7およびIL-15を提供した。おおよそ100,000個のT細胞に、製造元のプロトコルにより、Neonエレクトロポレーターを使用して、0.5μgの各トランスポゾンDNAと、配列番号37の配列を有するトランスポザーゼをコードする100ngのmRNAとを移入した。移入したT細胞をフィーダー細胞と混合し、37℃でインキュベートした。移入1日後、7日後、28日後、48日後および54日後に試料を採取し、蛍光標識した抗CD8抗体とともにインキュベートし、CD8およびDasher GFPについて蛍光活性化セルソーター(FACS)で分析した。データを表13に示す。
【0186】
第6.2.1.1節に説明されているように、GFPを発現するCD8+細胞の濃度は、第5.3.1.1節に説明されているように、遺伝子移入ポリヌクレオチドが、T細胞に生存または増殖の利点を付与する遺伝子を含む、という指標である。ESR Fas/4-1BB+Casp7-DNをコードする遺伝子を同時移入したT細胞は、GFP発現細胞の百分率の上昇を経時的に示した。トランスフェクションの翌日、4.5%のCD8+細胞もまたGFPを発現した。7日後、1.9%のCD8+細胞はGFPを発現しており、2%未満のCD8+T細胞が遺伝子移入ポリヌクレオチドを該T細胞の核内へと組み込んだことを示した。移入の28日後までに、31%のCD8+細胞もまたGFPを発現しており、遺伝子移入ポリヌクレオチド上の遺伝子によってレシピエント細胞がより良好に生存することができるかまたはより迅速に増殖することができることを示した。移入の48日後までに、50.4%のCD8+細胞もまたGFPを発現しており、移入の54日後までに97%超のCD8+T細胞もまたGFPを発現していた。このデータは、ESR Fas/4-1BB+抗アポトーシス遺伝子Casp7-DNの発現が、有意な生存/増殖の利点を提供したことを示している。
【0187】
表の簡単な説明
表1.ヒトJurkat T細胞株におけるゼノパス属(Xenopus)およびカイコガ属(Bombyx)のpiggyBac様トランスポゾン
【0188】
piggyBac様トランスポゾンを含む配列番号223および配列番号224によって配列が付与された遺伝子移入ポリヌクレオチドを、第6.1.1節において説明されるとおり構築した。Jurkat細胞(1回の移入あたり200,000個の細胞)に、製造元の説明書により、Neonエレクトロポレーターを使用して、1μgのプラスミドDNAと、トランスポザーゼをコードする対応する100ngのトランスポザーゼmRNAとを移入した。様々な時間(A列に示す)の後、細胞を抗CD19抗体で標識し、細胞の集団をFACSによって分析して、CD19を発現する細胞集団の百分率を決定した。B列は、配列番号223の遺伝子移入ポリヌクレオチド内に含有されるゼノパス属(Xenopus)トランスポゾンについての百分率を示し、C列は、配列番号224によって配列が付与された遺伝子移入ポリヌクレオチド内に含有されるカイコガ属(Bombyx)トランスポゾンについての百分率を示す。
【0189】
表2.Jurkat細胞における異種プロモーター活性の持続時間
【0190】
A列に命名され、配列がB列に示される配列番号によって付与されたプロモーターと、場合によりC列に示される配列番号によって配列が付与されたイントロンとを含み、配列がプロモーターの5’に対して配列番号218によって付与されたポリヌクレオチドと、配列が3’に対して配列番号219によって付与されたポリヌクレオチドとをさらに含むプラスミドを、第6.1.2.1節において説明するようなJurkat細胞内へと移入した。細胞を抗CD19抗体で蛍光標識し、移入後の様々な時点でフローサイトメトリーによって分析した。表面上にCD19を発現する細胞の百分率を、2日後(D列)、8日後(E列)、16日後(F列)および23日後(G列)に示す。H列は、2日後と23日後との間のCD19発現細胞の低下率を示す。同じプロモーターおよびイントロンもまた、GFPをコードする遺伝子に作動可能に連結し、ヒト胎児腎(HEK)細胞内へと三つ組で一過性に移入した。細胞を移入の48時間後に蛍光光度計で計数した。3つの読み取り値からの平均蛍光強度をI列に示す。
【0191】
表3.Jurkat細胞における異種プロモーター活性
【0192】
A列に命名され、配列がB列に示される配列番号によって付与されたプロモーターと、場合によりC列に示される配列番号によって配列が付与されたイントロンとを含み、配列がプロモーターの5’に対して配列番号218によって付与されたポリヌクレオチドと、配列が3’に対して配列番号219によって付与されたポリヌクレオチドとをさらに含むプラスミドを、第6.1.2.1節において説明するようなJurkat細胞内へと移入した。8日後、細胞を抗CD19抗体で蛍光標識し、フローサイトメトリーによって分析した。D列は平均蛍光強度を示す。E列は、Jurkat細胞の表面上のCD19分子の計算された平均数を示す。
【0193】
表4.初代T細胞における異種プロモーター活性
【0194】
A列に命名され、配列がB列に示される配列番号によって付与されたプロモーターと、配列が5’に対して配列番号218によって付与されたポリヌクレオチドと、配列がプロモーターの3’に対して配列番号219によって付与されたポリヌクレオチドとをさらに含むプラスミドを、第6.1.2.2節において説明するような初代T細胞内へと移入した。11日後、細胞を抗CD19抗体で蛍光標識し、フローサイトメトリーによって分析した。C列は平均蛍光強度を示す。
【0195】
表5.初代T細胞の生存の増強
【0196】
piggyBac様トランスポゾンを含む遺伝子移入ポリヌクレオチドを、第6.2.1.2節において説明されるとおり構築した。各トランスポゾンは、1つの推定上の生存増強遺伝子を含んでいた。単一トランスポゾンの1μgのDNAと、配列が配列番号37によって付与されたトランスポザーゼをコードする100ngのmRNAとの同時移入によって、ヒト初代T細胞の15個の試料を調製した(第1~第15の行)。遺伝子の名称をA列に付与し、遺伝子の配列番号をB列に示す。2つの異なるトランスポゾンの0.5μgのDNA(推定生存増強遺伝子の配列においてのみ異なる)と、配列が配列番号37によって付与されたトランスポザーゼをコードする100ngのmRNAとの同時移入によって、ヒト初代T細胞の8つの試料を調製した(第16~第23の行)。第一の遺伝子の名称をA列に付与し、第一の遺伝子の配列番号をB列に付与し、第二の遺伝子の名称をC列に付与し、第二の遺伝子の配列番号をD列に付与する。細胞を24日間培養した後、T細胞マーカーとしてのCD8の存在、およびT細胞のゲノム内の遺伝子移入ポリヌクレオチドの存在の指標としてのGFPの発現についてFACSによって分析した。E列はリンパ球である分析された細胞の百分率を示し、F列は生存している分析された細胞の百分率を示し、G列は表面上にCD8を発現した生細胞の百分率を示し、H列はGFPを発現しているCD8+細胞の百分率を示す。
【0197】
表6.サバイビンとCD28-D124E-T195Pとを発現する初代T細胞のエクスビボ抗腫瘍活性
【0198】
抗CD19キメラ抗原受容体をコードする遺伝子移入ポリヌクレオチドを、第6.2.1.3節において説明するようなpiggyBac様トランスポゾン上に構築した。トランスポザーゼ、および配列番号229によって与えられる配列を有するキメラ抗原受容体をコードする遺伝子と第6.2.1.3節に説明されているGFPレポーターとを含む3つの対応するトランスポゾンのうちの1つを、ヒト初代T細胞に同時移入した。1つのトランスポゾンは、さらなる遺伝子を含まず(A列)、1つのトランスポゾンは、サバイビンをコードする遺伝子をさらに含み(B列)、1つのトランスポゾンは、CD28-D124E-T195Pをコードする遺伝子をさらに含んでいた(C列)。遺伝子移入ポリヌクレオチドの配列は、第1の行に示される配列番号として与えられる。細胞をおおよそ5週間培養し、その時点で、GFP発現T細胞の百分率をFACSを用いて測定した(第2の行)。その時点で、200,000個のT細胞(約20,000個のGFP発現T細胞)をJY形質転換B細胞株の200,000個の細胞と混合した。混合の3日後(第3および第4の行)または7日後(第5および第6の行)を蛍光標識した抗CD8抗体および抗CD19抗体で標識し、蛍光活性化セルソーターを用いて分析した。CD8発現細胞の百分率を第4および第6の行に示し、CD19発現細胞の百分率を第3および第5の行に示す。
【0199】
表7.サバイビンとCD28-D124E-T195Pとを発現する初代T細胞のインビボ抗腫瘍活性
【0200】
ヒト初代T細胞を、トランスポザーゼと、第6.2.1.3節および表6において説明されるように構築したトランスポゾンを含む3つの対応する遺伝子移入ポリヌクレオチドのうちの1つとを同時移入した。トランスポゾンの名称をA列に示し、遺伝子移入ポリヌクレオチドの配列をB列に配列番号として示す。細胞を移入後おおよそ5週間培養し、次いでFACSを用いて選別して、トランスポゾンのT細胞ゲノム内の存在の指標であるGFP発現細胞を選択した。選択した細胞をさらに1週間成長させ、次いで、100万個の細胞を、7日前に100万個のJY細胞の腹腔内注射を受けたマウスに腹腔内注射によって投与した。JY細胞の投与後にマウスが生存した時間の長さ(日)をC列に示す。第1および第2の行では、T細胞を投与されなかったが、代わりにリン酸緩衝塩類溶液(PBS)の対照注射が行われた。
【0201】
表8.サバイビンとCD28-D124E-T195Pとを発現する初代T細胞の活性の増強
【0202】
piggyBac様トランスポゾンを含む遺伝子移入ポリヌクレオチドを、第6.2.1.3節において説明されるとおり構築し、異なる2ドナー由来のT細胞内へと移入した。片方のドナー由来の細胞をエクスビボで10か月間培養し、第2のドナー由来の細胞をエクスビボで4か月間培養した。GFP発現CD8+T細胞をFACSによって選別し、次いで、第6.2.1.3節において説明されるように、NALM6 B細胞腫瘍株を負荷した。A列は、エクスビボ培養時間を示し、B列は、細胞が異種ポリヌクレオチド上にコードされたサバイビン遺伝子を発現していたかどうかを示し、C列は、細胞が異種ポリヌクレオチド上にコードされたCD28-D124E-T195P遺伝子を発現していたかどうかを示す。D列~H列は、発光アッセイを使用して観察されたNALM6の死滅の%を示す。D列:0日後にNALM6を負荷し、1日後に死滅を測定された細胞。E列:0日後および2日後にNALM6を負荷し、3日後に死滅を測定された細胞。F列:0日後、2日後および4日後にNALM6を負荷し、5日後に死滅を測定された細胞。G列:0日後、2日後、4日後および6日後にNALM6を負荷し、7日後に死滅を測定された細胞。H列:0日後、2日後、4日後、6日後および8日後にNALM6を負荷し、9日後に死滅を測定された細胞。
【0203】
表9.初代T細胞の生存の増強
【0204】
piggyBac様トランスポゾンを含む遺伝子移入ポリヌクレオチドを、第6.2.1.5節において説明されるとおり構築した。各トランスポゾンは、1つの推定上の生存増強遺伝子、ESR遺伝子または対照遺伝子を含んでいた。ドナー1からのヒト初代T細胞の8つの試料(C列~F列)とドナー2からのヒト初代T細胞の8つの試料(G列~J列)を、単一トランスポゾンの1μgのDNAと、配列が配列番号37によって付与されたトランスポザーゼをコードする100ngのmRNAとの同時移入によって調製した。遺伝子の名称をA列に付与し、遺伝子の配列番号をB列に示す。細胞を42日間培養し、移入後の様々な時点で、T細胞マーカーとしてのCD8の存在と、T細胞のゲノム内の遺伝子移入ポリヌクレオチドの存在の指標としてのGFPの発現とのFACSによる分析のために、試料を採取した。C列~J列は、移入1日後(C列およびG列)、14日後(D列およびH列)、28日後(E列およびI列)および42日後(F列およびJ列)にGFPも発現している、表面上にCD8を発現する分析された細胞(すなわち、CD8+T細胞)の百分率を示した。
【0205】
表10.Bcl-XLを発現する初代T細胞の活性の増強
【0206】
piggyBac様トランスポゾンを含む遺伝子移入ポリヌクレオチドを、第6.2.1.6節において説明されるとおり構築し、異なる3ドナー由来のT細胞内へと移入した。240日後に、第6.2.1.6節において説明されるように、細胞にNALM6 B細胞腫瘍株を負荷した。A列はドナーIDを示し、B列は細胞がBcl-XLをコードする遺伝子を含むトランスポゾンを含有していたかどうかを示し、C列は培養物がCD3/CD19結合BiTEも含有していたかどうかを示す。D列~H列は、発光アッセイを使用して観察されたNALM6の死滅の%を示す。D列:0日後にNALM6を負荷し、1日後に死滅を測定された細胞。E列:0日後および2日後にNALM6を負荷し、3日後に死滅を測定された細胞。F列:0日後、2日後および4日後にNALM6を負荷し、5日後に死滅を測定された細胞。G列:0日後、2日後、4日後および6日後にNALM6を負荷し、7日後に死滅を測定された細胞。H列:0日後、2日後、4日後、6日後および8日後にNALM6を負荷し、9日後に死滅を測定された細胞。
【0207】
表11.サバイビンとCD28-D124E-T195Pとを発現する初代T細胞の活性の増強
【0208】
piggyBac様トランスポゾンを含む遺伝子移入ポリヌクレオチドを、第6.2.1.6b節において説明されるとおり構築し、T細胞内へと移入した。GFP発現CD8+T細胞をFACSによって選別し、次いで、第6.2.1.6b節において説明されるように、NALM6 B細胞腫瘍株を負荷した。A列は、細胞が異種ポリヌクレオチド上にコードされたサバイビン遺伝子を発現していたかどうかを示し、B列は、細胞が異種ポリヌクレオチド上にコードされたCD28-D124E-T195P遺伝子を発現していたかどうかを示し、C列は、細胞が異種ポリヌクレオチド上にコードされたBcl-XL遺伝子を発現していたかどうかを示す。D列~I列は、発光アッセイを使用して観察されたNALM6の死滅の%を示す。D列:0日後にNALM6を負荷し、1日後に死滅を測定された細胞。E列:0日後および2日後にNALM6を負荷し、3日後に死滅を測定された細胞。F列:0日後、2日後および4日後にNALM6を負荷し、5日後に死滅を測定された細胞。G列:0日後、2日後、4日後および6日後にNALM6を負荷し、7日後に死滅を測定された細胞。H列:0日後、2日後、4日後、6日後および8日後にNALM6を負荷し、9日後に死滅を測定された細胞。I列:0日後、2日後、4日後、6日後、8日後および10日後にNALM6を負荷し、11日後に死滅を測定された細胞。
【0209】
表12.抗CD28/OX40 ESRによって刺激された初代T細胞の増殖
【0210】
piggyBac様トランスポゾン上にコードされた抗CD28/OX40 ESRを含む遺伝子移入ポリヌクレオチドを、第6.2.2.1節において説明するように構築した。対照トランスポゾンは、ESRの代わりに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を含んでいた。トランスポゾンの1μgのDNAと、配列が配列番号37によって付与されたトランスポザーゼをコードする100ngのmRNAとの同時移入によって、2ドナー由来のヒト初代T細胞の試料を調製した。細胞を、A列に示される日数の間培養した後、T細胞マーカーとしてのCD8の存在、およびT細胞のゲノム内の遺伝子移入ポリヌクレオチドの存在の指標としてのGFPの発現についてFACSによって分析した。GFPも発現したCD8発現細胞の百分率をB列~E列に示す。抗CD28/OX40 ESRを移入したドナー1の細胞(B列)、HSV-TKを移入したドナー1の細胞(B列)、抗CD28/OX40 ESRを移入したドナー2の細胞(C列)、HSV-TKを移入したドナー2の細胞(D列)。ND=未実施。
【0211】
表13.ESR FAS/4-1BB+Casp7-DNによって刺激された初代T細胞の増殖
【0212】
FASの細胞外ドメインを4-1BBの膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインと融合させたESRをコードする遺伝子移入ポリヌクレオチドを、第6.2.2.2節において説明されるようなpiggyBac様トランスポゾン上に構築した。アポトーシスのドミナントネガティブ阻害剤Casp7-DNをコードする第2の遺伝子移入ポリヌクレオチドを、第6.2.2.2節において説明するような第2のpiggyBac様トランスポゾン上に構築した。各トランスポゾンの0.5μgのDNAと、配列が配列番号37によって付与されたトランスポザーゼをコードする100ngのmRNAとの同時移入によって、2ドナー由来のヒト初代T細胞の試料を調製した。細胞をA列に示される日数の間培養した後、T細胞マーカーとしてのCD8の存在、およびT細胞のゲノム内の遺伝子移入ポリヌクレオチドの存在の指標としてのGFPの発現について、FACSによって分析した。B列は、GFPも発現したCD8発現細胞の百分率を示す。
表
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
本発明は、以下の番号が付けられた実施形態を含む。
1. 免疫細胞内でのタンパク質の発現に有効な異種調節配列に作動可能に連結されたタンパク質をコードする核酸を含み、それにより前記免疫細胞の生存を増強する、免疫細胞生存増強遺伝子を含む、ポリヌクレオチド。
2. 前記免疫細胞生存増強遺伝子が、活性化突然変異を含む天然に存在するタンパク質をコードする、実施形態1に記載のポリヌクレオチド。
3. 前記免疫細胞生存増強遺伝子が、活性化突然変異を含むSTAT3、CD28、RhoA、PLCG、STAT5BまたはCCND1から選択されるタンパク質をコードする、実施形態1または2に記載のポリヌクレオチド。
4. 前記免疫細胞生存増強遺伝子がSTAT3をコードし、前記STAT3が以下の活性化突然変異、すなわち、F174S、H410R、S614R、E616K、G618R、Y640F、N647I、E652K、K658Y、K658R、K658N、K658M、K658R、K658H、K658N、D661YまたはD661Vのうちの1つ以上を含む、実施形態3に記載のポリヌクレオチド。
5. 前記免疫細胞生存増強遺伝子がCD28をコードし、前記CD28が以下の活性化突然変異、すなわち、D124E、D124V、T195IまたはT195Pのうちの1つ以上を含む、実施形態3に記載のポリヌクレオチド。
6. 前記免疫細胞生存増強遺伝子がRhoAをコードし、前記RhoAが以下の活性化突然変異、すなわち、G17VまたはK18Nのうちの1つ以上を含む、実施形態3に記載のポリヌクレオチド。
7. 前記免疫細胞生存増強遺伝子がPLCGをコードし、前記PLGCが以下の活性化突然変異、すなわち、S345F、S520FまたはR707Qのうちの1つを含む、実施形態3に記載のポリヌクレオチド。
8. 前記免疫細胞生存増強遺伝子がSTAT5Bをコードし、前記STAT5Bが以下の活性化突然変異、すなわち、N642H、T648S、S652Y、Y665FまたはP267Aのうちの1つ以上を含む、実施形態3に記載のポリヌクレオチド。
9. 前記免疫細胞生存増強遺伝子がCCND1をコードし、前記CCND1が以下の活性化突然変異、すなわち、E36G、E36Q、E36K、A39S、S41L、S41P、S41T、V42E、V42A、V42L、V42M、Y44S、Y44D、Y44C、Y44H、K46T、K46R、K46N、K46E、C47G、C47R、C47S、C47W、P199R、P199S、P199L、S201F、T285I、T285A、P286L、P286H、P286S、P286TまたはP286Aのうちの1つ以上を含む、実施形態3に記載のポリヌクレオチド。
10. 前記免疫細胞生存増強遺伝子が、天然に存在するヒトタンパク質をコードする、実施形態1に記載のポリヌクレオチド。
11. 前記免疫細胞生存増強遺伝子が、サバイビン、Bcl2、Bcl6またはBcl-XLから選択されるタンパク質をコードする、実施形態10に記載のポリヌクレオチド。
12. 前記免疫細胞生存増強遺伝子がアポトーシス阻害剤をコードする、実施形態1に記載のポリヌクレオチド。
13. 前記異種プロモーターが、EF1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、EEF2プロモーター、ユビキチンプロモーター、SV40プロモーターまたはHSVTKプロモーターから選択される、実施形態1~12のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
14. 前記異種プロモーターが配列番号94~154から選択される、実施形態1~12のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド。
15. 配列番号6および配列番号7、または配列番号14および配列暗号15、または配列番号18および配列番号19、または配列番号20および配列番号21、または配列番号26および配列番号27、または配列番号399および配列番号400から選択される1対の配列をさらに含む、実施形態1~14のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
16. そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含む免疫細胞の半減期が、そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含まない免疫細胞の半減期と比較して少なくとも25%長くなっている、実施形態1~15のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
17. そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含む免疫細胞の最長寿命が、そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含まない免疫細胞の最長寿命と比較して少なくとも25%長くなっている、実施形態1~16のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
18. そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含まない免疫細胞の倍加時間が、そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含む免疫細胞の倍加時間と比較して少なくとも25%長い、実施形態1~17のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
19. そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含む免疫細胞の増殖速度が、そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含まない免疫細胞の増殖速度と比較して少なくとも25%高くなっている、実施形態1~18のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
20. そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含むT細胞の抗原チャレンジの反復の際の生存が、そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含まない免疫細胞の生存と比較して少なくとも25%高くなっている、実施形態1~19のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
21. 実施形態1~20のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む、トランスポゾン。
22. 実施形態1~20のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドを含む、レンチウイルスベクター。
23. 異種プロモーターに作動可能に連結された、アポトーシス阻害剤をコードするポリヌクレオチドを、免疫細胞内へと導入することを含む、改変された免疫細胞を作製するための方法。
24. 前記ポリヌクレオチドがトランスポゾン末端をさらに含み、かつ前記方法が、前記アポトーシス阻害剤をコードする前記ポリヌクレオチドが前記免疫細胞のゲノム内へと転位するように、対応するトランスポザーゼを前記免疫細胞内へと導入することをさらに含む、実施形態23に記載の方法。
25. 前記トランスポザーゼが、前記トランスポザーゼをコードする核酸として導入される、実施形態23または24に記載の方法。
26. 前記核酸がmRNAである、実施形態25に記載の方法。
27. 前記トランスポザーゼをコードする前記核酸が、前記免疫細胞において活性のあるプロモーターに作動可能に連結されている、実施形態24または25に記載の方法。
28. 前記トランスポゾンおよび前記トランスポザーゼが同じ時点で前記免疫細胞内へと導入される、実施形態24に記載の方法。
29. 前記トランスポゾンおよび前記トランスポザーゼが異なる時点で前記免疫細胞内へと導入される、実施形態24に記載の方法。
30. 前記免疫細胞がT細胞であり、前記方法が、抗原に結合することができる受容体をコードする遺伝子を前記免疫細胞内へと導入することをさらに含み、前記抗原をその表面に提示する標的細胞への前記受容体の結合が、前記T細胞に前記標的細胞を死滅させる、実施形態23~29のいずれ一つに記載の方法。
31. 前記アポトーシス阻害剤が、サバイビン、Bcl2、Bcl6、Bcl-XLまたはCasp3、Casp7、Casp8、Casp9もしくはCasp10のドミナントネガティブ突然変異体から選択される、実施形態23~29のいずれか一つに記載の方法。
32. 改変された免疫細胞を作製するための方法であって、前記方法が、STAT3、CD28、RhoA、PLCG、STAT5BまたはCCND1から選択されるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを免疫細胞内へと導入することを含み、前記タンパク質が、異種プロモーターに作動可能に連結された活性化突然変異を含む、方法。
33. 改変された免疫細胞を作製するための方法であって、
a.阻害シグナルを免疫細胞に正常に伝達する受容体の細胞外ドメインに由来する配列
b.刺激シグナルを免疫細胞に伝達する受容体の細胞内ドメインの細胞内ドメインに由来する配列
c.膜貫通ドメイン
を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを免疫細胞内へと導入することを含み、
前記ポリペプチドがCD3ゼータ細胞内ドメインを含まない、方法。
34. 前記細胞外ドメインが、配列番号322~配列番号340から選択される配列を含む、実施形態33に記載の方法。
35. 前記細胞内ドメインが、配列番号341~配列番号364から選択される配列を含む、実施形態33または34に記載の方法。
36. 前記ポリペプチドが、配列番号274~配列番号318から選択される配列を含む、実施形態33に記載の方法。
37. そのゲノムが実施形態1~22いずれか一つに記載のポリヌクレオチドを含む、免疫細胞。
38. 前記免疫細胞の半減期が、そのゲノムが実施形態1に記載のポリヌクレオチドを含まない免疫細胞の半減期と比較して少なくとも25%長くなっている、実施形態37に記載の免疫細胞。
39. 前記免疫細胞の最長寿命が、そのゲノムが実施形態1に記載のポリヌクレオチドを含まない免疫細胞の最長寿命と比較して少なくとも25%長くなっている、実施形態37または38に記載の免疫細胞。
40. そのゲノムが実施形態1に記載のポリヌクレオチドを含まない免疫細胞の倍加時間が、そのゲノムが実施形態1に記載のポリヌクレオチドを含む免疫細胞の半減期と比較して少なくとも25%長くなっている、実施形態37~39のいずれか一つに記載の免疫細胞。
41. 前記免疫細胞の増殖速度が、そのゲノムが実施形態1に記載のポリヌクレオチドを含まない免疫細胞の増殖速度と比較して少なくとも25%高くなっている、実施形態37~40のいずれか一つに記載の免疫細胞。
42. そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含むT細胞の、抗原チャレンジの反復の際の生存が、そのゲノムが前記ポリヌクレオチドを含まない免疫細胞の生存と比較して少なくとも25%高くなっている、実施形態37~41のいずれか一つに記載の免疫細胞。
43. 前記免疫細胞がT細胞である、実施形態37~42のいずれか一つに記載の免疫細胞。
44. 前記免疫細胞がB細胞である、実施形態37~42のいずれか一つに記載の免疫細胞。
45. 前記免疫細胞がヒト細胞である、実施形態37~42のいずれか一つに記載の免疫細胞。
46. 前記免疫細胞が霊長類細胞、齧歯類細胞、ネコ細胞、イヌ細胞またはウマ細胞である、実施形態37~42のいずれか一つに記載の免疫細胞。
47. 前記免疫細胞生存増強遺伝子がシグナル伝達増強受容体(ESR)をコードし、前記ESRが
a.阻害シグナルを免疫細胞に正常に伝達する受容体の細胞外ドメインに由来する配列
b.刺激シグナルを免疫細胞に伝達する受容体の細胞内ドメインの細胞内ドメインに由来する配列
c.膜貫通ドメイン
を含み、かつ前記ESRがCD3ゼータ細胞内ドメインを含まない、実施形態1に記載のポリヌクレオチド。
48. 前記細胞外ドメイン(a)が、TNFRSF3(LTRβ)、TNFRSF6(Fas)、TNFRSF8(CD30)、TNFRSF10A(DR4)、TNFRSF10B(DR5)、TNFRSF19(TROY)、TNFRSF21(DR6)およびCTLA4から選択されるヒトタンパク質に由来する、実施形態47に記載のポリヌクレオチド。
49. 前記ESRが、配列番号322~340から選択される配列と少なくとも90%同一である配列を含む、実施形態47に記載のポリヌクレオチド。
50. 前記細胞内ドメイン(b)が、TNFRSF4(OX40)、TNFRSF5(CD40)、TNFRSF7(CD27)、TNFRSF9(4-1BB)、TNFRSF11A(RANK)、TNFRSF13B(TACI)、TNFRSF13C(BAFF-R)、TNFRSF14(HVEM)、TNFRSF17(CD269)、TNFRSF18(GITR)、CD28、CD28H(TMIGD2)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS/CD278)、DNAXアクセサリー分子1(DNAM-1/CD226)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM/CD150)、T細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン(TIM-1/HAVcr-1)、インターフェロン受容体α鎖(IFNAR1)、インターフェロン受容体β鎖IFNAR2)、インターロイキン2受容体βサブユニット(IL2RB)、インターロイキン2受容体γサブユニット(IL2RG)、腫瘍壊死因子スーパーファミリー14(TNFSF14/LIGHT)、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D/CD314)およびCD40リガンド(CD40L)から選択されるヒトタンパク質に由来する、実施形態47~49のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド。
51. 前記ESRが、その配列が配列番号341~配列番号364から選択される配列と少なくとも90%同一であるポリペプチドを含む、実施形態47~50のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド。
52. 前記ESRが、その配列が配列番号365~配列番号396から選択される配列と少なくとも90%同一であるポリペプチドを含む、実施形態47~51のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド。
53. 前記ESRが、その配列が配列番号274~配列番号318から選択される配列と少なくとも90%同一であるポリペプチドを含む、実施形態45~52のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド。
54. 前記ポリヌクレオチドが異種プロモーターに作動可能に連結された、アポトーシス阻害剤をコードするセグメントをさらに含む、実施形態47~53のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド。
55. そのゲノムが実施形態47~54のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドを含む、免疫細胞。
56. 前記免疫細胞ゲノムが、異種プロモーターに作動可能に連結された、アポトーシス阻害剤をコードするセグメントをさらに含む、実施形態55に記載の免疫細胞。
57. 改変された免疫細胞を作製するための方法であって、
a.実施形態47に記載のポリヌクレオチドを前記免疫細胞内へと導入すること
b.異種プロモーターに作動可能に連結された、アポトーシス阻害剤をコードするポリヌクレオチドを、前記免疫細胞内へと導入することを含む、方法。
58. 前記2つのポリヌクレオチドが同じ時点で前記免疫細胞内へと導入される、実施形態57に記載の方法。
59. 免疫細胞の生存を増強するタンパク質を同定する方法であって、
癌性免疫細胞由来のタンパク質をコードする核酸を配列決定して、突然変異を有するタンパク質をコードする核酸を同定することと、
前記突然変異を有するタンパク質をコードする核酸を用いて免疫細胞を形質転換することと、前記免疫細胞が生存を増強したかどうかを判定することとを含む、方法。
【0213】
7.参考文献
本明細書に引用された参考文献はすべて、あたかも各個々の公表物または特許もしくは特許出願がすべての目的のためにその全体が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されているのと同程度に、その全体がすべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。異なる内容が異なる時点での引用と関係している場合、本発明の優先日における引用と関係している内容を意味する。
【0214】
当業者には明らかなように、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の多くの改変および変形を行うことができる。本明細書に説明する具体的な実施形態は、例としてのみ提供されており、本発明は、添付の特許請求の範囲が権利を与えられた同等物の全範囲と共に、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ制限されるものとする。
【配列表フリーテキスト】
【0215】
配列表1~401 <223>未知の配列または合成配列
【配列表】
【国際調査報告】