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特表2022-521502脆弱X精神遅滞タンパク質干渉オリゴヌクレオチドおよびその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-08
(54)【発明の名称】脆弱X精神遅滞タンパク質干渉オリゴヌクレオチドおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7088 20060101AFI20220401BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20220401BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220401BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220401BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220401BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20220401BHJP
   A61K 31/7115 20060101ALI20220401BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20220401BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20220401BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20220401BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
A61K31/7088
C12N15/113 ZNA
A61P1/00
A61P1/04
A61P35/00
A61P35/04
A61K31/7115
A61K31/7125
A61K31/712
A61K31/713
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547879
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(85)【翻訳文提出日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2020055071
(87)【国際公開番号】W WO2020174023
(87)【国際公開日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】62/810,697
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511134621
【氏名又は名称】ノグラ ファーマ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ヴィティ フランチェスカ
(72)【発明者】
【氏名】ベリンヴィア サルバトーレ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA57
4C086MA60
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZA68
4C086ZB26
4C086ZC19
(57)【要約】
【解決手段】脆弱X精神遅滞タンパク質(FMRP)に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド配列、ならびに、FMRPの活性または発現の上昇に関連した大腸癌および炎症性腸疾患(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎)などの腸疾患を処置するためのその使用方法が、本明細書に開示される。また、腸疾患の処置に有用なFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有する医薬組成物、ならびに、腸疾患の処置で使用される、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有する薬剤の製造が、本明細書に開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする患者の腸疾患を処置する方法であって、該方法は、脆弱X精神遅滞タンパク質(FMRP)発現を阻害する有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを前記患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記腸疾患は大腸癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記腸疾患は炎症性腸疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炎症性腸疾患はクローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
必要とする患者の固形腫瘍、腫瘍浸潤または腫瘍転移を処置する方法であって、該方法は、脆弱X精神遅滞タンパク質(FMRP)発現を阻害する有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを前記患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項6】
必要とする患者の腫瘍浸潤または腫瘍転移を予防または改善する方法であって、該方法は、脆弱X精神遅滞タンパク質(FMRP)発現を阻害する有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを前記患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項7】
必要とする患者の大腸癌腫瘍浸潤または大腸癌腫瘍転移を予防または改善する方法であって、該方法は、脆弱X精神遅滞タンパク質(FMRP)発現を阻害する有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを前記患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項8】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ネクロプトーシスを誘導する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、
5’-CCACCACCAGCTCCTCCA-3’(配列番号1)、
5’-CTTCCACCACCAGCTCCT-3’(配列番号2)、
5’-TCCACCACCAGCTCCTCC-3’(配列番号3)、
5’-CTTCCACCACCAGCTCC-3’(配列番号4)、および
5’-TCACCCTTTATCATCCTC-3’(配列番号5)からなる群から選択される配列、あるいはその補体を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、
5’-TCCACCACCAGCTCCTCCAT-3’(配列番号6)、
5’-ACTTCCACCACCAGCTCCTC-3’(配列番号7)、
5’-TTCCACCACCAGCTCCTCCA-3’(配列番号8)、
5’-ACTTCCACCACCAGCTCCT-3’(配列番号9)、および
5’-CTCACCCTTTATCATCCTCA-3’(配列番号10)からなる群から選択される配列、あるいはその補体を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上のリボヌクレオチドを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上のデオキシリボヌクレオチドを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドの混合物を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、5-メチルシチジン、5-メチル-2’-デオキシシチジン、デオキシシチジン、5-メチル-2’-デオキシシチジン5’-モノホスフェート、および5-メチル-2’-デオキシシチジン-5’-モノホスホロチオエートからなる群から選択される1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2’-O-メチルシチジン、2’-O-メチルグアノシン、2’-O-メチルチミジン、2’-O-メチルウリジン、および2’-O-メチルアデノシンからなる群から選択される1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、5-メチルシトシンおよび5-メチルグアニンからなる群から選択される1つ以上の修飾ヌクレオチドを含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2’-O-(2-メトキシエチル)ヌクレオシド、2’-デオキシ-2’-フルオロヌクレオシド、および2’-フルオロ-β-D-アラビノヌクレオシドからなる群から選択される1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、架橋核酸、ロックド核酸(LNA)、拘束エチル(cET)核酸、トリシクロDNA(tcDNA)、2’-O,4’-C-エチレン架橋核酸(ENA)、およびペプチド核酸(PNA)から選択される群の1つ以上を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、ホスホトリエステル結合、アルキルホスホネート結合、アミノアルキルホスホトリエステル結合、アルキレンホスホネート結合、ホスフィネート結合、ホスホロアミデート結合、ホスホロモルホリデート結合、ホスホロピペラジデート結合、アミノアルキルホスホロアミデート結合、チオホスホロアミデート結合、チオノアルキルホスホネート結合、チオノアルキルホスホトリエステル結合、チオホスフェート結合、セレノホスフェート結合およびボラノホスフェート結合からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオシド間結合を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの全てのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である、請求項1~20のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのメチルホスホネート結合を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、20~40ヌクレオチドの長さである、請求項1~22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、20~24ヌクレオチドの長さである、請求項1~23のいずれか1つに記載の方法。
【請求項25】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、
5’-TCCACCACCAGCTCCTCCAT-3’(配列番号6)、
5’-ACTTCCACCACCAGCTCCTC-3’(配列番号7)、
5’-TTCCACCACCAGCTCCTCCA-3’(配列番号8)、
5’-ACTTCCACCACCAGCTCCT-3’(配列番号9)、および
5’-CTCACCCTTTATCATCCTCA-3’(配列番号10)からなる群から選択される配列、あるいはその補体からなる、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの全てのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのメチルホスホネート結合を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、受容体相互作用タンパク質キナーゼ1(RIPK1)、受容体相互作用タンパク質キナーゼ3(RIPK3)、および混合系統キナーゼドメイン様タンパク質(MLKL)からなる群から選択される1つ以上のキナーゼの活性の上昇をもたらす、請求項8に記載の方法。
【請求項30】
前記アンチセンスリゴヌクレオチドは、前記患者に経腸投与または非経口投与される、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
経腸投与は、経口投与、舌下投与、胃投与または直腸投与である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
非経口投与は、静脈内投与、腫瘍内投与、空腸内投与、回腸内投与、結腸内投与または直腸内投与である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記患者は、ヒトである、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
アンチセンスオリゴヌクレオチドであって、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、
5’-CCACCACCAGCTCCTCCA-3’(配列番号1)、
5’-CTTCCACCACCAGCTCCT-3’(配列番号2)、
5’-TCCACCACCAGCTCCTCC-3’(配列番号3)、
5’-CTTCCACCACCAGCTCC-3’(配列番号4)、および
5’-TCACCCTTTATCATCCTC-3’(配列番号5)からなる群から選択される配列、あるいはその補体を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項35】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、
5’-TCCACCACCAGCTCCTCCAT-3’(配列番号6)、
5’-ACTTCCACCACCAGCTCCTC-3’(配列番号7)、
5’-TTCCACCACCAGCTCCTCCA-3’(配列番号8)、
5’-ACTTCCACCACCAGCTCCT-3’(配列番号9)、および
5’-CTCACCCTTTATCATCCTCA-3’(配列番号10)からなる群から選択される配列、あるいはその補体を含む、請求項34に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項36】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上のリボヌクレオチドを含む、請求項34または35に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項37】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上のデオキシリボヌクレオチドを含む、請求項34~36のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項38】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドの混合物を含む、請求項34~37のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項39】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、5-メチルシチジン、5-メチル-2’-デオキシシチジン、デオキシシチジン、5-メチル-2’-デオキシシチジン5’-モノホスフェート、および5-メチル-2’-デオキシシチジン-5’-モノホスホロチオエートからなる群から選択される1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む、請求項34~38のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項40】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2’-O-メチルシチジン、2’-O-メチルグアノシン、2’-O-メチルチミジン、2’-O-メチルウリジン、および2’-O-メチルアデノシンからなる群から選択される1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む、請求項34~39のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項41】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、5-メチルシトシンおよび5-メチルグアニンからなる群から選択される1つ以上の修飾ヌクレオチドを含む、請求項34~40のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項42】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2’-O-(2-メトキシエチル)ヌクレオシド、2’-デオキシ-2’-フルオロヌクレオシド、および2’-フルオロ-β-D-アラビノヌクレオシドからなる群から選択される1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む、請求項34~41のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項43】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、架橋核酸、ロックド核酸(LNA)、拘束エチル(cET)核酸、トリシクロDNA(tcDNA)、2’-O,4’-C-エチレン架橋核酸(ENA)、およびペプチド核酸(PNA)から選択される群の1つ以上を含む、請求項34~42のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項44】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、ホスホトリエステル結合、アルキルホスホネート結合、アミノアルキルホスホトリエステル結合、アルキレンホスホネート結合、ホスフィネート結合、ホスホロアミデート結合、ホスホロモルホリデート結合、ホスホロピペラジデート結合、アミノアルキルホスホロアミデート結合、チオホスホロアミデート結合、チオノアルキルホスホネート結合、チオノアルキルホスホトリエステル結合、チオホスフェート結合、セレノホスフェート結合およびボラノホスフェート結合からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオシド間結合を含む、請求項34~43のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項45】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含む、請求項34~44のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項46】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの全てのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である、請求項34~45のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項47】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのメチルホスホネート結合を含む、請求項34~44のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列。
【請求項48】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、20~40ヌクレオチドの長さである、請求項34~47のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項49】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、20~24ヌクレオチドの長さである、請求項34~48のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項50】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、
5’-TCCACCACCAGCTCCTCCAT-3’(配列番号6)、
5’-ACTTCCACCACCAGCTCCTC-3’(配列番号7)、
5’-TTCCACCACCAGCTCCTCCA-3’(配列番号8)、
5’-ACTTCCACCACCAGCTCCT-3’(配列番号9)、および
5’-CTCACCCTTTATCATCCTCA-3’(配列番号10)からなる群から選択される配列、あるいはその補体からなる、請求項34~49のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項51】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含む、請求項50に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項52】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの全てのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である、請求項50または51に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項53】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのメチルホスホネート結合を含む、請求項50に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項54】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、FMRP siRNA、あるいはその薬学的に許容可能な塩である、請求項34または35に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項55】
前記FMRP siRNAは、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、ホスホトリエステル結合、アルキルホスホネート結合、アミノアルキルホスホトリエステル結合、アルキレンホスホネート結合、ホスフィネート結合、ホスホロアミデート結合、ホスホロモルホリデート結合、ホスホロピペラジデート結合、アミノアルキルホスホロアミデート結合、チオホスホロアミデート結合、チオノアルキルホスホネート結合、チオノアルキルホスホトリエステル結合、チオホスフェート結合、セレノホスフェート結合およびボラノホスフェート結合からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオシド間結合を含む、請求項54に記載のFMRP siRNA。
【請求項56】
前記FMRP siRNAは、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含む、請求項54または55に記載のFMRP siRNA。
【請求項57】
前記FMRP siRNAの全てのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である、請求項54~56のいずれか1項に記載のFMRP siRNA。
【請求項58】
前記FMRP siRNAの少なくとも1つのシチジンは、5-メチルシチジンで置換される、請求項54~57のいずれか1項に記載のFMRP siRNA。
【請求項59】
前記FMRP siRNAは、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、20~40、または20~24ヌクレオチドの長さである、請求項54~58のいずれか1項に記載のFMRP siRNA。
【請求項60】
前記FMRP siRNAは、20~40ヌクレオチドの長さである、請求項54~59のいずれか1項に記載のFMRP siRNA。
【請求項61】
前記FMRP siRNAは、20~24ヌクレオチドの長さである、請求項54~60のいずれか1項に記載のFMRP siRNA。
【請求項62】
請求項32~54のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは請求項55~61のいずれか1項に記載のFMRP siRNAと、薬学的に許容可能な担体とを含む薬学的に許容可能な組成物。
【請求項63】
腸疾患を処置するための薬剤の製造における、請求項32~54のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは請求項55~61のいずれか1項に記載のFMRP siRNAの使用。
【請求項64】
前記腸疾患は大腸癌である、請求項63に記載の使用。
【請求項65】
前記腸疾患は炎症性腸疾患である、請求項63に記載の使用。
【請求項66】
前記炎症性腸疾患はクローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項65に記載の使用。
【請求項67】
前記薬剤は、患者に経腸投与または非経口投与される、請求項63~66のいずれか1項に記載の使用。
【請求項68】
経腸投与は、経口投与、舌下投与、胃投与または直腸投与である、請求項67に記載の使用。
【請求項69】
非経口投与は、静脈内投与、腫瘍内投与、空腸内投与、回腸内投与、結腸内投与または直腸内投与である、請求項67に記載の使用。
【請求項70】
前記薬剤は、ヒトの腸疾患を処置するためのものである、請求項63~69のいずれか1項に記載の使用。
【請求項71】
固形腫瘍、腫瘍浸潤または腫瘍転移を処置するための薬剤の製造における、請求項32~54のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは請求項55~61のいずれか1項に記載のFMRP siRNAの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月26日に出願された米国仮特許出願第62/810,697号の利益および優先権を主張するものであり、その開示は、全ての目的のために全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
RNA結合タンパク質(RBP)は、転写後制御プロセスの全てのステップに事実上関与しており、細胞の各転写産物に関する運命および機能を指令して、細胞のホメオスタシスを維持する。RBPは、タンパク質ならびにコーディングRNAおよびノンコーディングRNAとの高度に動的な相互作用を確立し、RNAスプライシング、ポリアデニル化、安定化、局在化、翻訳および分解を制御するリボ核タンパク質複合体と呼ばれる機能単位を作成する。
【0003】
RBPは、様々な種類の癌において制御不全になっており、腫瘍形成促進タンパク質および腫瘍抑制タンパク質ならびに炎症性メディエーターの発現および機能に影響することが、現在明らかになっている。いくつかの研究から、癌では、隣接している正常組織に比べてRBPが異常に発現し、この発現が患者の予後と相関するという証拠が得られている。近年、脆弱X精神遅滞タンパク質(FMRP)は、多くの様々な種類のヒトの癌の発症・増殖を制御するのに極めて重要であると認知されつつある。FMRPが突然変異または欠失することで、最も頻度が高い、ヒトの遺伝性知的障害の形態である脆弱X症候群(FXS)を引き起こす。FMRPは、RNA代謝の複数のステップに関与しているRBPである。脳において、FMRPが機能的に欠失することで、シナプスにおける細胞骨格の構成や受容体の移動性の欠損に起因したシナプス可塑性を引き起こす。標的mRNAの同一性、ノンコーディングRNAの存在、および/または、細胞状況に応じて、FMRPは、翻訳の負の制御因子として機能するか、mRNAの安定性を調節するか、mRNA輸送を制御するか、あるいは、RNA編集に影響し得る。注目すべきは、FMRP制御mRNAは、癌の進行や転移を制御するいくつかの機構に関与している。
【0004】
FMRPは様々な種類の癌において関与していることが、収束証拠によって強調されており、FMRPをコードするFMR1遺伝子は、様々な組織や癌細胞型で発現し、FMR1の常染色体パラログや、相互作用するFXR1は、トリプルネガティブ乳癌の遠隔転移の予測因子として近年認識され、また、いくつかのFMRP mRNA標的は、癌の進行に関与している。さらに、一般集団における割合と比較して、FSX患者における癌の標準化発生率は大幅に低く、FSX患者は、特定の形態の癌に対して防御されている可能性がある。
【0005】
大腸癌(CRC)は、世界で最も一般的な癌の1つであり、毎年50万を超える死亡者が出ている。CRC腫瘍形成のモデルは、癌の発症および進行に必要とされるいくつかの遺伝子変化を含む。これらの変化は、腫瘍形成シグナル伝達経路および/または腫瘍抑制シグナル伝達経路によって大部分は指令され、正常粘膜から腺腫様ポリープ、その後癌腫に進行する原因となる。結腸腫瘍細胞は、内因性・細胞外のシグナルに応じてタンパク質発現レベルを素早く安定した適応することができる転写後の機構をハイジャックし、細胞が局所微小環境に適応することに結びつくことが明らかになった。
【0006】
疫学/遺伝学研究はまた、拡張したトリヌクレオチド(CGG)反復要素を含むFMR1の前突然変異対立遺伝子を保有する女性において、免疫関連疾患(例えば、甲状腺炎、関節リウマチ、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデスおよび多発性硬化症)を頻繁に発症することを報告している。このようなFMRP遺伝子変化が免疫病態に対する素因を引き起こすという基本的機構は不明なままであるものの、2つの最近の研究では、FSXを有している小児において、サイトカインプロファイルが変更されることを報告している。
【0007】
炎症性腸疾患(IBD)は、アメリカ合衆国で約140万名の患者が患っている消化管の慢性炎症性疾患である。これは、アメリカ合衆国で最も蔓延している5つの消化器疾患負荷のうちの1つであり、その医療費全体は、17億ドルを超えるものである。アメリカ合衆国では毎年、IBDは、700,000件を超える受診、100,000件を超える入院、119,000名の患者における障害の原因となっている。現在のところ、医学的治癒は存在せず、したがって、疾患管理には、生涯にわたるケアが必要となる。
【0008】
IBDの2つの最も一般的な形態は、クローン病および潰瘍性大腸炎である。クローン病は、消化管全体に影響を及ぼす可能性もあるが、主に回腸(小腸の遠位部または下部)および大腸に影響を及ぼす。潰瘍性大腸炎は、主に結腸および直腸に影響を及ぼす。炎症性腸疾患の病因は完全には理解されていないが、環境因子および遺伝因子の両方が当該疾患において役割を果たしていると考えられる。環境構成成分は、摂取された食物および薬物への曝露の影響を受ける腸の細菌叢の変化を含み得る。
【0009】
IBDは、腹痛、嘔吐、下痢、直腸出血、激しい痙攣、筋痙攣、体重減少、栄養失調、発熱、および貧血を伴う。IBDを有している患者は、皮膚病変、関節痛、眼炎、および肝障害を患う可能性があり、潰瘍性大腸炎を患っている小児は、成長欠陥を患う可能性がある。死に至ることは稀であるが、これらの症状は患者の生活の質を低下させるものである。
【0010】
したがって、CRCおよびIBDなどの腸疾患を処置する確実な方法を開発する必要に迫られている。広範囲の患者にわたって症状を効果的かつ恒久的に軽減し、負の副作用や、寛解および/または炎症の周期を伴わない処置方法を特定するさらなる必要がある。
【発明の概要】
【0011】
本明細書には、脆弱X精神遅滞タンパク質(FMRP)発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびその使用方法が記載されている。いくつかの実施形態では、本開示は、必要とする患者の腸疾患を処置する方法を提供し、該方法は、FMRPの発現を阻害する有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを患者に投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、腸疾患は、大腸癌、あるいはクローン病または潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患であってもよい。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドはネクロトーシスを誘導する。
【0012】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とする患者の固形腫瘍、腫瘍浸潤または腫瘍転移を処置する方法を提供し、該方法は、FMRP発現を阻害する有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを患者に投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、腫瘍浸潤または腫瘍転移を予防または改善する方法を提供する。ある実施形態では、本開示は、大腸癌腫瘍浸潤または大腸癌腫瘍転移を予防または改善する方法を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、FMRP発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、
5’-CCACCACCAGCTCCTCCA-3’(配列番号1)、
5’-CTTCCACCACCAGCTCCT-3’(配列番号2)、
5’-TCCACCACCAGCTCCTCC-3’(配列番号3)、
5’-CTTCCACCACCAGCTCC-3’(配列番号4)、および
5’-TCACCCTTTATCATCCTC-3’(配列番号5)からなる群から選択される配列、あるいはその補体を含む。
【0014】
さらなる実施形態では、FMRP発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、
5’-TCCACCACCAGCTCCTCCAT-3’(配列番号6)、
5’-ACTTCCACCACCAGCTCCTC-3’(配列番号7)、
5’-TTCCACCACCAGCTCCTCCA-3’(配列番号8)、
5’-ACTTCCACCACCAGCTCCT-3’(配列番号9)、および
5’-CTCACCCTTTATCATCCTCA-3’(配列番号10)からなる群から選択される配列、あるいはその補体を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、FMRP発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、
5’-TCCACCACCAGCTCCTCCAT-3’(配列番号6)、
5’-ACTTCCACCACCAGCTCCTC-3’(配列番号7)、
5’-TTCCACCACCAGCTCCTCCA-3’(配列番号8)、
5’-ACTTCCACCACCAGCTCCT-3’(配列番号9)、および
5’-CTCACCCTTTATCATCCTCA-3’(配列番号10)からなる群から選択される配列、あるいはその補体からなる。
【0016】
いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列の少なくとも1つのヌクレオシド間結合がホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、ホスホトリエステル結合、アルキルホスホネート結合、アミノアルキルホスホトリエステル結合、アルキレンホスホネート結合、ホスフィネート結合、ホスホロアミデート結合、ホスホロモルホリデート結合、ホスホロピペラジデート結合、アミノアルキルホスホロアミデート結合、チオホスホロアミデート結合、チオノアルキルホスホネート結合、チオノアルキルホスホトリエステル結合、チオホスフェート結合、セレノホスフェート結合またはボラノホスフェート結合であるアンチセンスオリゴヌクレオチドであってもよい。特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド配列の少なくとも1つのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド配列の全てのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である。いくつかの実施形態では、配列の少なくとも1つのヌクレオシド結合は、メチルホスホネート結合である。
【0017】
本明細書に記載のFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドに含まれるヌクレオチドの数は変動してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、20~40ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、20~24ヌクレオチドの長さである。
【0018】
いくつかの実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、受容体相互作用タンパク質キナーゼ1(RIP1またはRIPK1)-受容体相互作用タンパク質キナーゼ3(RIP3またはRIPK3)-混合系統キナーゼドメイン様タンパク質(MLKL)複合体の活性化を介してネクロトーシスを誘導する。例えば、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、RIPK1発現を増加させる可能性がある。
【0019】
いくつかの実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上のリボヌクレオチド、1つ以上のデオキシリボヌクレオチド、あるいはリボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドの混合物を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾ヌクレオシド、例えば、5-メチルシチジン、5-メチル-2’-デオキシシチジン、デオキシシチジン、5-メチル-2’-デオキシシチジン5’-モノホスフェート、または5-メチル-2’-デオキシシチジン-5’-モノホスホロチオエートを含む。ある実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾ヌクレオシド、例えば、2’-O-メチルシチジン、2’-O-メチルグアノシン、2’-O-メチルチミジン、2’-O-メチルウリジン、または2’-O-メチルアデノシンを含む。いくつかの実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾ヌクレオチド、例えば、5-メチルシトシンまたは5-メチルグアニンを含む。いくつかの実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾ヌクレオチド、例えば、2’-O-(2-メトキシエチル)ヌクレオシド、2’-デオキシ-2’-フルオロヌクレオシド、または2’-フルオロ-β-D-アラビノヌクレオシドを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、架橋型核酸、ロックド核酸(LNA)、拘束エチル(cET)核酸、トリシクロDNA(tcDNA)、2’-O,4’-C-エチレン架橋核酸(ENA)、またはペプチド核酸(PNA)を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、FMRP siRNA、あるいはその薬学的に許容可能な塩である。
【0023】
いくつかの実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、患者に経腸投与または非経口投与される。例えば、いくつかの実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、患者に経口投与、舌下投与、経胃投与または直腸投与される。他の実施形態では、患者へのFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与は、静脈内投与、腫瘍内投与、空腸内投与、回腸内投与、結腸内投与、または直腸内投与である。
【0024】
特定の実施形態では、本開示のFRMPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヒト患者の腸疾患を処置するためのものである。
【0025】
また、本明細書では、本明細書に記載のFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび薬学的に許容可能な担体を含む薬学的に許容可能な組成物が記載されている。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、経口投与、舌下投与、胃投与または直腸投与に適したものである。他の実施形態では、医薬組成物は、静脈内投与、腫瘍内投与、空腸内投与、回腸内投与、結腸内投与または直腸内投与に適したものである。
【0026】
また、本明細書には、腸疾患の処置のための薬剤の製造におけるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用が記載されている。いくつかの実施形態では、腸疾患は、CRC、あるいはクローン病または潰瘍性大腸炎などのIBDである。他の実施形態では、薬剤は、患者に経腸投与または非経口投与される。例えば、いくつかの実施形態では、薬剤は、経口投与、舌下投与、胃投与または直腸投与に適したものである。いくつかの実施形態では、薬剤は、静脈内投与、腫瘍内投与、空腸内投与、回腸内投与、結腸内投与または直腸内投与に適したものである。いくつかの実施形態では、薬剤は、ヒトの腸疾患を処置するためのものである。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示は、固形腫瘍、腫瘍浸潤または腫瘍転移の処置のための薬剤の製造におけるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】ヒトCRC試料のFMRPの染色を示す免疫組織像である(IgG=アイソタイプ対照、NC=正常対照の結腸試料、P=腫瘍周囲試料、T=腫瘍試料)。
図1B】RT-PCR分析によって求められた、腫瘍周囲試料(P)およびCRC腫瘍試料(T)におけるFMRP mRNA発現レベルを示す線グラフである(**p<0.01)。
図1C】CRC患者のペアの腫瘍周囲試料(P)およびCRC腫瘍試料(T)におけるFMRPタンパク質発現を示すウエスタンブロットである。
図1D】ウエスタンブロット分析の定量できる濃度測定によって測定された、ペアの腫瘍周囲試料(P)およびCRC腫瘍試料(T)におけるβ-アクチン発現と比較したFMRPタンパク質発現を示すグラフである(相対的発現は任意の単位(a.u.)で示される)。
図2A】無処置の野生型(WT)マウスおよびFMR1ノックアウト(KO)マウス、あるいはアゾキシメタン(AOM)の腹腔内注射の21週間後のマウスの結腸の内視鏡画像である。
図2B】AOMの腹腔内注射の21週間後のWTマウスおよびFMR1 KOマウスの結腸における腫瘍負荷(左)および腫瘍サイズ(右)を示す棒グラフである(*p<0.05、**p<0.01)。
図2C】AOMを腹腔内注射したWTマウスおよびFMR1 KOマウスの生存率を示すグラフである。
図2D】WTマウスおよびFMR1 KOマウスにおけるAOM誘導腫瘍から調製した試料のヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色を示す組織像である。
図2E】無処置のWTマウスおよびAOMで処置したマウス(P=腫瘍周囲試料、T=CRC腫瘍試料)から調製した結腸試料におけるFMRPおよびβ-アクチン(ローディング対照)タンパク質発現を示すウエスタンブロットである。
図2F】WTマウスおよびFMR1 KOマウスにおけるAOM誘導腫瘍から調製した試料のTUNEL染色を示す組織像である。
図2G】WTマウスおよびFMR1 KOマウスのAOM誘導腫瘍試料におけるKi67染色を示す免疫組織像である。
図3A】DLD-1およびHCT-116ヒト結腸癌細胞株、およびHCEC-1ct非癌性ヒト結腸上皮細胞株におけるFMRPおよびβ-アクチン(ローディング対照)タンパク質発現を示す代表的なウエスタンブロットである。
図3B図3Aに記載のウエスタンブロットの濃度測定分析によって求められた、DLD-1細胞株、HCT-116細胞株およびHCEC-1ct細胞株におけるβ-アクチン発現と比較したFMRPタンパク質発現を示すグラフである(相対的発現は任意の単位(a.u.)で示される)(**p<0.01、***p<0.001)。
図3C】FMRP発現に対して染色したDLD-1細胞、HCT-116細胞およびHCEC-1ct細胞を示す免疫蛍光画像である。
図3D】センスFMRPオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチド(U=無処置、S=センス、AS=アンチセンス)で48時間処置したDLD-1細胞におけるFMRPおよびβ-アクチン(ローディング対照)タンパク質発現を示すウエスタンブロットである。
図3E】センスFMRPオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチド(Neg=陰性の染色対照、U=無処置、S=センス、AS=アンチセンス)で処置し、ヨウ化プロピジウム(PI)およびAnnexin V(AnnV)で染色したDLD-1細胞におけるフローサイトメトリードットプロットを示す。
図3F図3Eの対応するフローサイトメトリードットプロットのデータの棒グラフを示す(**p<0.01)。
図3G】センスFMRPオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチド(U=無処置、S=センス、AS=アンチセンス)で48時間処置したHCT-116細胞におけるFMRPおよびβ-アクチン(ローディング対照)タンパク質発現を示すウエスタンブロットである。
図3H】センスFMRPオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチド(Neg=陰性の染色対照、U=無処置、S=センス、AS=アンチセンス)で処置し、ヨウ化プロピジウム(PI)およびAnnexin V(AnnV)で染色したHCT-116細胞におけるフローサイトメトリードットプロットを示す。
図3I】センスFMRPオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチド(U=無処置、S=センス、AS=アンチセンス)で48時間処置したHCEC-1ct細胞におけるFMRPおよびβ-アクチン(ローディング対照)タンパク質発現を示すウエスタンブロットである。
図3J】センスFMRPオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチド(Neg=陰性の染色対照、U=無処置、S=センス、AS=アンチセンス)で処置し、ヨウ化プロピジウム(PI)およびAnnexin V(AnnV)で染色したHCEC-1ct細胞におけるフローサイトメトリードットプロットを示す。
図3K図3Jの対応するフローサイトメトリードットプロットデータの棒グラフを示す(**p<0.01)。
図4A】無処置のCRC細胞(U)、センスFMRPオリゴヌクレオチドで処置したCRC細胞(S)、アンチセンスFMRPオリゴヌクレオチドで処置したCRC細胞(AS)、あるいはスタウロスポリンで処置したCRC細胞(Stauro)におけるカスパーゼ8およびカスパーゼ3の染色を示すフローサイトメトリーヒストグラムである。
図4B図4Aの対応するフローサイトメトリーのデータの棒グラフである(***p<0.001)。
図4C】PI染色したCRC細胞およびAnnV染色したCRC細胞のフローサイトメトリーで分析することによって求められた、相対的細胞死を示す棒グラフである。CRC細胞は、センスFMRPオリゴヌクレオチド(S)、アンチセンスFMRPオリゴヌクレオチド(AS)、またはスタウロスポリン(Stauro)で処置する前に前処置を施されなかったか、あるいは汎カスパーゼ阻害剤(Cas in)で前処置した。
図4D】無処置のDLD-1細胞(U)、あるいはセンスFMRPオリゴヌクレオチド(S)またはアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチド(AS)で処置したDLD-1細胞のBrdu染色およびPI染色を示すフローサイトメトリードットプロットである。
図4E図4Dの対応するフローサイトメトリードットプロットのデータを示す棒グラフである。
図4F】36時間のBrdU取り込みアッセイ(U=無処置、S=センス、AS=アンチセンス)によって評価したHCT-116細胞増殖を示す棒グラフである。
図4G】センスFMRPオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチド(U=無処置、S=センス、AS=アンチセンス)で36時間処置したHCT-116細胞における細胞周期分布を示す棒グラフである。
図5A】ヒトCRC細胞溶解物のRNA免疫沈降を示す。ヒトCRC細胞溶解物のRNA免疫沈降のために使用されるFMRP抗体の特異性を確認するウエスタンブロットである。
図5B】ヒトCRC細胞溶解物のRNA免疫沈降を示す。アクチン、E-カドヘリン、RIPK3およびRIPK1に特異的なプライマーを使用したRT-PCR分析によって求められた、FMRPと共沈降したmRNAの濃縮を示す棒グラフである。
図5C】ヒトCRC細胞溶解物のRNA免疫沈降を示す。アクチン、ビメンチン、RIPK3およびRIPK1に特異的なプライマーを使用したRT-PCR分析によって求められた、CRC細胞株溶解物のFMRPと共沈降したmRNAの濃縮を示す棒グラフである。
図6A】無処置のヒト結腸細胞株(U)、FMRPセンスオリゴヌクレオチドで処置したヒト結腸細胞株(S)、あるいはFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置したヒト結腸細胞株(AS)におけるFMRP、リン酸化RIPK1(pRIPK1)、RIPK1、リン酸化RIPK3(pRIPK3)、RIPK3、リン酸化MLKL(pMLKL)、MLKLおよびβ-アクチン(ローディング対照)のタンパク質/リン酸化タンパク質発現を示す代表的なウエスタンブロットである。
図6B図6Aに記載のウエスタンブロットの濃度測定分析によって求められた、pRIPK1発現レベルを示す棒グラフである(**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001)。
図6C図6Aに記載のウエスタンブロットの濃度測定分析によって求められた、pRIPK3発現レベルを示す棒グラフである(**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001)。
図6D図6Aに記載のウエスタンブロットの濃度測定分析によって求められた、pMLKL発現レベルを示す棒グラフである(**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001)。
図6E】RIPK1の特異的阻害剤(NEC1)、ならびにセンスFMRPオリゴヌクレオチド(S)またはアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチド(AS)のいずれかで処置した、PI染色したヒトCRC細胞株およびAnnV染色したヒトCRC細胞株のフローサイトメトリーで分析することによって求められた、相対的細胞死を示す棒グラフである。
図6F】MLKLの特異的阻害剤(NSA)、ならびにセンスFMRPオリゴヌクレオチド(S)またはアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチド(AS)のいずれかで処置した、PI染色したヒトCRC細胞株およびAnnV染色したヒトCRC細胞株をフローサイトメトリーで分析することによって求められた、相対的細胞死を示す棒グラフである。
図6G】無処置のHCEC-1ct細胞、FMRPセンスオリゴヌクレオチドで処置したHCEC-1ct細胞(S)、またはFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置したHCEC-1ct細胞(AS)におけるFMRP、pRIPK1、RIPK1、pRIPK3、RIPK3、pMLKL、MLKLおよびβ-アクチン(ローディング対照)のタンパク質/リン酸化タンパク質発現を示す代表的なウエスタンブロットである。
図7A】腫瘍周囲試料(P)およびCRC腫瘍試料(T)におけるCREB mRNA発現レベルのRT-PCR分析を示す線グラフである(***p<0.001)。
図7B】CRC患者のマッチドペアの腫瘍周囲試料(P)およびCRC腫瘍試料(T)におけるCREB、FMRPおよびβ-アクチン(ローディング対照)のタンパク質発現を示す代表的なウエスタンブロットである。
図7C図7Bに記載のウエスタンブロットの濃度測定分析によって求められた、β-アクチン発現と比較したCREBタンパク質発現を示す棒グラフである(**p<0.01)。
図7D】無処置のCRC細胞株(U)、FMRPセンスオリゴヌクレオチドで処置したCRC細胞株(S)、あるいはFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置したCRC細胞株(AS)におけるCREB、FMRPおよびβ-アクチン(ローディング対照)タンパク質発現を示す代表的なウエスタンブロットである。
図7E図7Dに記載のウエスタンブロットの濃度測定分析によって求められた、β-アクチンと比較したCREBタンパク質発現を示す棒グラフである(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
図7F図7Dに記載のウエスタンブロットの濃度測定分析によって求められた、β-アクチンと比較したFMRPタンパク質発現を示す棒グラフである(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
図8A】センスFMRPオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチドで処置し(U=無処置、S=センス、AS=アンチセンス)、ibidi(登録商標)製のカルチャーインサートの各側に播種した、インサートの取り外し時(T0)、24時間および48時間のインキュベート後(それぞれ、T24およびT48)のHCT-116細胞の細胞遊走を示す顕微鏡画像である。
図8B図8Aの顕微鏡画像に対応した、細胞で覆われた面積の割合を示す棒グラフである(T24:U vs AS、**p<0.01、S vs AS、*p<0.05、T48:U vs AS および S vs AS、***p<0.001)。
図8C】センスFMRPオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチドで処置した(U=無処置、S=センス、AS=アンチセンス)、48時間のインキュベート後のMatrigel(登録商標)をコーティングしたTranswell(登録商標)製のインサートを遊走するHCT-116細胞の顕微鏡画像である。
図8D】センスFMRPオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチドで処置した(U=無処置、S=センス、AS=アンチセンス)、48時間のインキュベート後のMatrigel(登録商標)をコーティングしたTranswell(登録商標)製のインサートを遊走するHCT-116細胞の対応する細胞数棒グラフである(***p<0.001、****p<0.0001)。
図8E】センスFMRPオリゴヌクレオチド(S)またはアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチド(AS)で48時間処置したHCT-116細胞におけるFMRP、E-カドヘリン、β-カテニンおよびβ-アクチン(ローディング対照)タンパク質発現を示す代表的なウエスタンブロットである。
図8F図8Eに記載のウエスタンブロットの濃度測定分析によって求められた、HCT-116細胞におけるβ-アクチン発現と比較したE-カドヘリンタンパク質発現を示す棒グラフである(**p<0.01、***p<0.001)。
図8G図8Eに記載のウエスタンブロットの濃度測定分析によって求められた、HCT-116細胞におけるβ-アクチン発現と比較したβ-カテニンタンパク質発現を示す棒グラフである(**p<0.01、***p<0.001)。
図9A】無処置のHCT-116細胞(U)、あるいはセンスオリゴヌクレオチド(S)またはアンチセンスオリゴヌクレオチド(AS)で48時間処置したHCT-116細胞におけるFMRP、MCCおよびβ-アクチン(ローディング対照)タンパク質発現を示す代表的なウエスタンブロットである。
図9B図9Aに記載のウエスタンブロットの濃度測定分析によって求められた、HCT-116細胞におけるβ-アクチン発現と比較したMCCタンパク質発現を示す棒グラフである。
図9C】無処置のHCT-116細胞(U)、あるいはセンスオリゴヌクレオチド(S)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(AS)および/または対照siRNA(siRNA Ctrl)もしくはMCCに特異的なsiRNA(siRNA MCC)で48時間処置したHCT-116細胞におけるMCC、FMRP、e-カドヘリン、β-カテニンおよびβ-アクチン(ローディング対照)タンパク質発現を示す代表的なウエスタンブロットである。
図9D図9Cに記載のウエスタンブロットの濃度測定分析によって求められた、HCT-116細胞におけるβ-アクチン発現と比較したE-カドヘリンタンパク質発現を示す棒グラフである(*p<0.05、**p<0.01)。
図9E図9Cに記載のウエスタンブロットの濃度測定分析によって求められた、HCT-116細胞におけるβ-アクチン発現と比較したβ-カテニンタンパク質発現を示す棒グラフである(*p<0.05、**p<0.01)。
図9F】センスFMRPオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチド(U=無処置、S=センス、AS=アンチセンス)、および/または、siRNA CtrlもしくはsiRNA MCCで処置し、ibidi(登録商標)製のカルチャーインサートの各側に播種した、インサートの取り外し時(T0)、24時間および48時間のインキュベート後(それぞれ、T24およびT48)のHCT-116細胞の細胞遊走を示す顕微鏡画像である。
図9G図9Fの顕微鏡画像に対応する細胞で覆われた面積の割合を示す棒グラフである(T24:アンチセンスFMRPオリゴヌクレオチドおよびsiRNA MCCでトランスフェクトしたHCT-116細胞vsアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチド単独でトランスフェクトしたHCT-116細胞、***p<0.001、T48:アンチセンスFMRPオリゴヌクレオチドおよびsiRNA MCCでトランスフェクトしたHCT-116細胞vsアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチド単独でトランスフェクトしたHCT-116細胞、****p<0.0001)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド
「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、本明細書で使用される場合、標的タンパク質(例えばFMRP)をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)と相補的な短い合成オリゴヌクレオチド配列を指す。アンチセンスオリゴヌクレオチド配列は、mRNAにハイブリダイゼーションし、それにより、二本鎖分子を認識して分解するヌクレアーゼの活性化をもたらし得る二本鎖分子を生成し、したがって、mRNAの翻訳を防止する。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一本鎖DNAオリゴヌクレオチド、小ヘアピンRNA(shRNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、ならびに、2’-O-アルキル、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)およびモルホリノオリゴマーといった化学物質を含むがこれに限らない修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドを含んでもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的mRNAと相補的である(例えばFMRP)ヌクレオチド配列を含む一本鎖核酸分子であってもよい。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、FMRP mRNAと相補的な配列を有する一本鎖DNAオリゴヌクレオチドであってもよい。FRMPアンチセンスオリゴヌクレオチドの標的mRNAへのハイブリダイゼーションは、DNA/RNAハイブリッド鎖を認識して分解するRNase Hなどの偏在するヌクレアーゼの活性化をもたらし得る二本鎖DNA/RNAハイブリッドを生成し、したがって、標的タンパク質(例えばFMRP)の翻訳を防止する。
【0031】
あるいは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、二本鎖であってもよい。二本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドは、自己相補的なセンス領域およびアンチセンス領域を有する一本鎖オリゴヌクレオチドで構成されてもよい。他の実施形態では、二本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2つの別々のオリゴヌクレオチドで構成されてもよく、ここで、一方のオリゴヌクレオチドはセンス鎖であり、他方のオリゴヌクレオチドはアンチセンス鎖であり、アンチセンス鎖は標的mRNA(例えばFMRP)と相補的なヌクレオチド配列を有する。
【0032】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、各アンチセンスオリゴヌクレオチドの組み込まれたヌクレオチド配列の標的部分が、FMRP mRNA配列と完全にまたはほぼ完全に相補的になるように設計されていてもよい。このような相補的なまたはほぼ相補的なヌクレオチド配列を組み込むことにより、所与の標的に対する特異性の程度が高いアンチセンスオリゴヌクレオチドを操作することが可能になる。特異性は、解離定数などのパラメータの測定、あるいはタンパク質またはRNAの発現レベルの変化などの他の判定基準、あるいはFMRP活性または発現を測定する他のアッセイによって評価してもよい。
【0033】
本開示は、FMRP mRNAを分解の標的とすること、mRNAスプライシングに干渉すること、あるいはFMRP遺伝子発現またはタンパク質の翻訳を防止することが可能なFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを患者に投与する工程を含む方法を提供する。本開示のFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヒトFMRP mRNAの様々な領域を結合の標的としてもよい。ヒトFMRP mRNAは、NCBI Reference Sequenceの配列である、NM_001185075(配列番号18)、NM_001185076(配列番号19)、NM_001185081(配列番号20)、NM_001185082(配列番号21)、またはNM_002024(配列番号22)を有する。
【0034】
本明細書に開示されているようなFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5~100ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチド配列であってもよく、例えば、10~40ヌクレオチドの長さ、例えば、14~40ヌクレオチドの長さ、例えば、10~30ヌクレオチドの長さ、例えば、14~30ヌクレオチドの長さ、例えば、14~25ヌクレオチドの長さ、例えば、15~22オリゴヌクレオチドの長さ、例えば、18~40ヌクレオチドの長さ、例えば、18~24ヌクレオチドの長さ、例えば、20~40ヌクレオチドの長さ、または例えば、20~24ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチド配列であってもよい。いくつかの実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40ヌクレオチドの長さであってもよい。FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、FMRP mRNA配列の1つ以上の部分と相補的なオリゴヌクレオチド配列を含んでもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、本開示のFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、小ヘアピンRNA(shRNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、モルホリノオリゴマー、マイクロRNA、ならびに、これらの化合物を含む組成物、例えば、薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物であってもよいがこれに限らない。
【0036】
本開示のいくつかの実施形態では、FMRPを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、
5’-CCACCACCAGCTCCTCCA-3’(配列番号1)、
5’-CTTCCACCACCAGCTCCT-3’(配列番号2)、
5’-TCCACCACCAGCTCCTCC-3’(配列番号3)、
5’-CTTCCACCACCAGCTCC-3’(配列番号4)、および
5’-TCACCCTTTATCATCCTC-3’(配列番号5)のいずれか1つから選択される配列または配列の一部(例えば、長さにわたって90%、95%または99%の同一性を有する配列を含む)、あるいはその補体を含む。
【0037】
さらなる実施形態では、FMRPを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、
5’-TCCACCACCAGCTCCTCCAT-3’(配列番号6)、
5’-ACTTCCACCACCAGCTCCTC-3’(配列番号7)、
5’-TTCCACCACCAGCTCCTCCA-3’(配列番号8)、
5’-ACTTCCACCACCAGCTCCT-3’(配列番号9)、および
5’-CTCACCCTTTATCATCCTCA-3’(配列番号10)のいずれか1つから選択される配列または配列の一部(例えば、長さにわたって90%、95%または99%の同一性を有する配列を含む)、あるいはその補体を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、本開示のFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上のリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、あるいは、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドの混合物を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、本開示のFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5-メチルシチジン、5-メチル-2’-デオキシシチジン、デオキシシチジン、5-メチル-2’-デオキシシチジン5’-モノホスフェート、および5-メチル-2’-デオキシシチジン-5’-モノホスホロチオエートからなる群から選択される1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む。
【0040】
ある実施形態では、本開示のFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、2’-O-メチルシチジン、2’-O-メチルグアノシン、2’-O-メチルチミジン、2’-O-メチルウリジン、および2’-O-メチルアデノシンからなる群から選択される1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、本開示のFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5-メチルシトシンおよび5-メチルグアニンからなる群から選択される1つ以上の修飾ヌクレオチドを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、本開示のFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、2’-O-(2-メトキシエチル)ヌクレオシド、2’-デオキシ-2’-フルオロヌクレオシド、および2’-フルオロ-β-D-アラビノヌクレオシドから選択される1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む。
【0043】
ある実施形態では、本開示のFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、架橋核酸、ロックド核酸(LNA)、拘束エチル(cET)核酸、トリシクロDNA(tcDNA)、2’-O,4’-C-エチレン架橋核酸(ENA)、およびペプチド核酸(PNA)から選択される群の1つ以上を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、ホスホトリエステル結合、アルキルホスホネート結合、アミノアルキルホスホトリエステル結合、アルキレンホスホネート結合、ホスフィネート結合、ホスホロアミデート結合、ホスホロモルホリデート結合、ホスホロピペラジデート結合、アミノアルキルホスホロアミデート結合、チオホスホロアミデート結合、チオノアルキルホスホネート結合、チオノアルキルホスホトリエステル結合、チオホスフェート結合、セレノホスフェート結合および/またはボラノホスフェート結合などの修飾結合を有していてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドの1つまたは2つ以上、例えば、全てのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であってもよい。他の実施形態では、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドの1つまたは2つ以上、例えば、全てのヌクレオシド間結合は、メチルホスホネート結合であってもよい。
【0045】
例えば、一実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’-CCACCACCAGCTCCTCCA-3’(配列番号1)の配列を含む、FMRPに対するホスホチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの各ヌクレオチド間結合は、ホスホロチオエート結合である。いくつかの実施形態では、FMRPに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’-CCACCACCAGCTCCTCCA-3’(配列番号1)の配列を含むホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つ以上のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である。
【0046】
別の実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’-CTTCCACCACCAGCTCCT-3’(配列番号2)の配列を含む、FMRPに対するホスホチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの各ヌクレオチド間結合は、ホスホロチオエート結合である。
いくつかの実施形態では、FMRPに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’-CTTCCACCACCAGCTCCT-3’(配列番号2)の配列を含むホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つ以上のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である。
【0047】
別の実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’-TCCACCACCAGCTCCTCC-3’(配列番号3)の配列を含む、FMRPに対するホスホチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの各ヌクレオチド間結合は、ホスホロチオエート結合である。いくつかの実施形態では、FMRPに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’-TCCACCACCAGCTCCTCC-3’(配列番号3)の配列を含むホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つ以上のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である。
【0048】
別の実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’-CTTCCACCACCAGCTCC-3’(配列番号4)の配列を含む、FMRPに対するホスホチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの各ヌクレオチド間結合は、ホスホロチオエート結合である。いくつかの実施形態では、FMRPに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’-CTTCCACCACCAGCTCC-3’(配列番号4)の配列を含むホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つ以上のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である。
【0049】
別の実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’-TCACCCTTTATCATCCTC-3’(配列番号5)の配列を含む、FMRPに対するホスホチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの各ヌクレオチド間結合は、ホスホロチオエート結合である。いくつかの実施形態では、FMRPに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’-TCACCCTTTATCATCCTC-3’(配列番号5)の配列を含むホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つ以上のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である。
【0050】
別の実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’-TCCACCACCAGCTCCTCCAT-3’(配列番号6)の配列を含む、FMRPに対するホスホチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの各ヌクレオチド間結合は、ホスホロチオエート結合である。いくつかの実施形態では、FMRPに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’-TCCACCACCAGCTCCTCCAT-3’(配列番号6)の配列を含むホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つ以上のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である。
【0051】
別の実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’-ACTTCCACCACCAGCTCCTC-3’(配列番号7)の配列を含む、FMRPに対するホスホチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの各ヌクレオチド間結合は、ホスホロチオエート結合である。いくつかの実施形態では、FMRPに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’-ACTTCCACCACCAGCTCCTC-3’(配列番号7)の配列を含むホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つ以上のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である。
【0052】
別の実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’-TTCCACCACCAGCTCCTCCA-3’(配列番号8)の配列を含む、FMRPに対するホスホチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの各ヌクレオチド間結合は、ホスホロチオエート結合である。いくつかの実施形態では、FMRPに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’-TTCCACCACCAGCTCCTCCA-3’(配列番号8)の配列を含むホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つ以上のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である。
【0053】
別の実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’-ACTTCCACCACCAGCTCCT-3’(配列番号9)の配列を含む、FMRPに対するホスホチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの各ヌクレオチド間結合は、ホスホロチオエート結合である。いくつかの実施形態では、FMRPに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’-ACTTCCACCACCAGCTCCT-3’(配列番号9)の配列を含むホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つ以上のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である。
【0054】
別の実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’-CTCACCCTTTATCATCCTCA-3’(配列番号10)の配列を含む、FMRPに対するホスホチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの各ヌクレオチド間結合は、ホスホロチオエート結合である。いくつかの実施形態では、FMRPに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’-CTCACCCTTTATCATCCTCA-3’(配列番号10)の配列を含むホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つ以上のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である。
【0055】
いくつかの実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1~10のいずれか1つのヌクレオチド配列、あるいはその薬学的に許容可能な塩を含むsiRNAである。
例えば、
5’-CCACCACCAGCTCCTCCA-3’(配列番号1)、
5’-CTTCCACCACCAGCTCCT-3’(配列番号2)、
5’-TCCACCACCAGCTCCTCC-3’(配列番号3)、
5’-CTTCCACCACCAGCTCC-3’(配列番号4)、
5’-TCACCCTTTATCATCCTC-3’(配列番号5)、
5’-TCCACCACCAGCTCCTCCAT-3’(配列番号6)、
5’-ACTTCCACCACCAGCTCCTC-3’(配列番号7)、
5’-TTCCACCACCAGCTCCTCCA-3’(配列番号8)、
5’-ACTTCCACCACCAGCTCCT-3’(配列番号9)、および
5’-CTCACCCTTTATCATCCTCA-3’(配列番号10)のいずれか1つの配列、あるいは配列番号1~10のいずれか1つの配列を含むFMRP siRNAの薬学的に許容可能な塩を含んでもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、FMRP siRNAは、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、ホスホトリエステル結合、アルキルホスホネート結合、アミノアルキルホスホトリエステル結合、アルキレンホスホネート結合、ホスフィネート結合、ホスホロアミデート結合、ホスホロモルホリデート結合、ホスホロピペラジデート結合、アミノアルキルホスホロアミデート結合、チオホスホロアミデート結合、チオノアルキルホスホネート結合、チオノアルキルホスホトリエステル結合、チオホスフェート結合、セレノホスフェート結合およびボラノホスフェート結合からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオシド間結合を含む。
ある実施形態では、FMRP siRNAの少なくとも1つのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である。例えば、いくつかの実施形態では、FMRP siRNAの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、1~5、1~10、1~14、1~15、1~16、1~19、5~10、5~14、5~15、5~19、10~14、10~15または10~19のヌクレオシド間結合は、ホスホチオエート結合である。
【0057】
いくつかの実施形態では、FMRP siRNAの全てのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である。様々な実施形態では、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、FMRP siRNA)は、随意に、配列に、少なくとも1つの修飾核酸塩基、例えば、5-メチルシトシン、および/または、少なくとも1つのメチルホスホネートヌクレオチドを有していてもよく、これは、例えば、5’末端もしくは3’末端の一方のみ、または5’末端および3’末端の両方、またはオリゴヌクレオチド配列に沿ってのいずれかに配置される。
【0058】
FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、FMRP siRNA)は、随意に、少なくとも1つの修飾糖を含んでもよい。例えば、オリゴヌクレオチドを構成する少なくとも1つのヌクレオチドの糖部分は、2’-OH基がOR、R、R’OR、SH、SR、NH、NR、N、CN、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択されるいずれか1つによって置換されてもよいリボースであってもよい(ここで、Rはアルキルまたはアリールであり、R’はアルキレンである)。
【0059】
いくつかの実施形態では、ある開示されたヌクレオチドは、修飾されても、変異を有してもよく、例えば、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、FMRP siRNA)内のあるシチジンは、例えば、5-メチル-2’-デオキシシチジン5’-モノホスフェート、および5-メチル-2’-デオキシシチジン-5’-モノホスホロチオエートを含むがこれに限らない5-メチル-2’-デオキシシチジンであってもよい。
【0060】
ある実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、FMRP siRNA)は、化学修飾ヌクレオシド、例えば、2’-O-メチル(2’-OMe)リボヌクレオシド、例えば、2’-O-メチルシチジン、2’-O-メチルグアノシン、2’-O-メチルチミジン、2’-O-メチルウリジン、および/または2’-O-メチルアデノシンを含んでもよい。本明細書に記載のFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、FMRP siRNA)はまた、5-メチルピリミジン、例えば、5-メチルシトシン、および/または、5メチルプリン、例えば、5-メチルグアニンを含む1つ以上の化学修飾塩基を含んでもよい。いくつかの実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、FMRP siRNA)には、1つ以上の2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)ヌクレオシド、2’-デオキシ-2’-フルオロヌクレオシド、2’-フルオロ-β-D-アラビノヌクレオシド、架橋核酸、ロックド核酸(LNA)、拘束エチル(cET)核酸、トリシクロDNA(tcDNA)、2’-O,4’-C-エチレン架橋核酸(ENA)、および/またはペプチド核酸(PNA)が含まれてもよい。
【0061】
いくつかの実施形態は、企図されるアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、FMRP siRNA)のヌクレオチド間結合の少なくとも一つは、O,O-結合ホスホロチオエートである。例えば、配列番号1~10のヌクレオチド間結合はそれぞれ、O,O-結合ホスホロチオエートであってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、薬学的に許容可能な塩、例えば、随意に、1~24以上のO,O-結合ホスホチオエートのヌクレオチド間結合を含んでもよい、開示される配列のアンチセンスオリゴヌクレオチドのナトリウム塩を含んでもよい。企図されるオリゴヌクレオチドの塩には、完全中和塩が含まれ、例えば、各ホスホロチオエート結合がNaなどのイオンと結合する。オリゴヌクレオチドは、天然に存在する核酸塩基、糖、および共有結合性ヌクレオシド間(骨格)結合ならびに非天然に存在する部分を含んでもよい。
【0062】
また、本明細書には、開示されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの同位体分子、それを含有する医薬組成物、およびそれを使用する方法が提供される。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書には、複数の水素(H)を含み、ここで、複数の水素の1つ以上の水素が重水素(D)によって置換される、配列番号1~10の重水素化アンチセンスオリゴヌクレオチドが提供される。
【0063】
腸疾患
本開示は、腸疾患の処置および/または予防のためのオリゴヌクレオチドを提供する。本明細書で使用される場合、「腸疾患」は、胃の次にある消化管部分、すなわち小腸、大腸、結腸および直腸に影響を及ぼす任意の疾患、障害および/または症候群を指す。例えば、腸疾患には、結腸癌、炎症性腸疾患、家族性腺腫性ポリポーシス、ガードナー症候群、ターコット症候群、リンチ症候群、セリアック病、胃腸カルチノイド腫瘍、小腸癌(small intestine cancer)、十二指腸癌、小腸癌(small bowel cancer)および消化管間質腫瘍が含まれてもよいがこれに限らない。例えば、本明細書には、腸疾患を患っている患者を処置する方法が提供され、該方法は、有効量の開示されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを患者に投与する工程を含む。
【0064】
大腸癌
「大腸癌」とは、本明細書で使用される場合、結腸および/または直腸に影響を及ぼす任意の癌を指す。大腸癌は、結腸上皮細胞または直腸上皮細胞における腫瘍抑制遺伝子を減弱化し、癌遺伝子を活性化する遺伝子変化および/またはエピジェネティック変化の進行性蓄積を引き起こす任意の1つ以上の環境因子および遺伝因子によって引き起こされ得る。大腸腫瘍は、多くの場合、ゲノム安定性および/またはエピゲノム安定性の喪失を伴い、それにより、悪性形質転換が加速される。
【0065】
大腸癌に存在する特定の遺伝子突然変異には、大幅な不均一性が存在し、これには、APC、CTNNB1、KRAS、BRAF、SMAD4、TGFBR2、TP53、PIK3CA、ARID1A、SOX9、FAM123BおよびERBB2の変化が含まれるがこれらに限らない。大腸癌は、多くの場合、突然変異によって開始し、Wntシグナル伝達の制御不全をもたらし、また、RAS-RAF-MAPK、TGFβおよびPI3K-AKT経路を含む他のシグナル伝達経路のさらなる制御不全に伴い腫瘍の進行をもたらす。開示される配列は、Wnt、RAS-RAF-MAPK、TGFβおよびPI3K-AKT経路の全てにおける癌遺伝子、腫瘍抑制因子、および重要なシグナル伝達タンパク質の発現を転写後に制御してもよい。本明細書には、大腸癌を患っている患者を処置する方法が提供され、該方法は、開示されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを患者に投与する工程を含む。
【0066】
炎症性腸疾患
「炎症性腸疾患」は、本明細書で使用される場合、クローン病、潰瘍性大腸炎、胃十二指腸クローン病、クローン(肉芽腫性)大腸炎、膠原性大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、空置大腸炎、ベーチェット病、顕微鏡的大腸炎、潰瘍性直腸炎、直腸S状結腸炎、空回腸炎、左側大腸炎、汎大腸炎、回結腸炎、回腸炎、および鑑別が困難な大腸炎を含む、多くの慢性炎症性疾患を指す。クローン病および潰瘍性大腸炎は、炎症性腸疾患の2つの最も一般的な形態である。炎症性腸疾患は、消化器系の自己免疫疾患である。クローン病は、回腸末端部を含む消化管の任意の部分に限局され得、消化管の全ての細胞型に影響を及ぼし得る。潰瘍性大腸炎は、結腸および直腸に局在し、粘膜の細胞のみに影響を及ぼす。本明細書には、炎症性腸疾患を患っている患者を処置する方法が提供され、該方法は、開示されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを患者に投与する工程を含む。
【0067】
炎症性腸疾患は、腹痛、嘔吐、下痢、直腸出血、激しい痙攣、筋痙攣、体重減少、栄養失調、発熱、貧血、皮膚病変、関節痛、眼炎、肝疾患、関節炎、壊疽性膿皮症、原発性硬化性胆管炎、および非甲状腺疾患症候群を含む症状を伴い、実施形態ではまた、開示されるアンチセンス化合物を使用してこれらの症状を処置すること、例えば、潰瘍性大腸炎を患い、成長欠陥を患う可能性もある小児を処置することが企図されている。いくつかの実施形態では、例えば、有効量の開示されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを患者に投与することによって、このような症状を改善または処置する方法が本明細書で企図されている。
【0068】
「ネクロトーシス」は、本明細書で使用される場合、制御されたカスパーゼ非依存性細胞死を指し、アポトーシス耐性癌細胞を排除するための代替方法となり得る。受容体相互作用タンパク質キナーゼ1(RIP1またはRIPK1)-受容体相互作用タンパク質キナーゼ3(RIP3またはRIPK3)-混合系統キナーゼドメイン様タンパク質(MLKL)複合体からなる、中核をなすネクロトーシス経路は、「ネクロソーム」とも呼ばれる。ネクロソームは、活性酸素種(ROS)のバーストの生成、原形質膜の透過性化、および細胞質ゾルのATPの減少などの下流エフェクターの機能を開始し、それにより、不可逆的なネクロトーシス実行機構をさらに駆動する。本明細書には、ネクロトーシスを調節することによって患者を処置する方法が提供され、該方法は、開示されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを患者に投与する工程を含む。
【0069】
「必要とする患者」は、本明細書で使用される場合、腸疾患の症状または兆候のいずれかを患っている患者、腸疾患の症状または兆候のいずれかを患う可能性がある患者、あるいは腸疾患を処置するための本開示の方法から利益を受ける可能性がある任意の患者を指す。必要とする患者には、腸疾患を発症するリスクがあると診断された患者、過去に腸疾患を患った患者、あるいは以前に腸疾患の処置を受けた患者が含まれてもよい。特に関連があるのは、FMRPの発現レベルまたは活性レベルの上昇を伴う腸疾患を患っている個体である。
【0070】
「処置する(treat)」、「処置(treatment)」、「処置すること(treating)」などの用語は、本明細書において、概して、所望の薬理学的効果および/または生理学的効果を得ることを意味するために使用される。効果は、疾患またはその症状を完全にまたは部分的に予防するという点で予防的なものであってもよく、および/または、疾患および/または疾患に起因した有害作用を部分的にまたは完全に治癒するという点で治療的であってもよい。「処置(treatment)」という用語は、本明細書で使用される場合、哺乳動物、特にヒトにおける疾患のあらゆる処置を包含し、(a)疾患にかかりやすい可能性があるが、まだ疾患を有していると診断されていない被験体において、疾患が生じるのを予防すること、(b)疾患を抑制すること、すなわち、疾患の重症度または範囲が上昇するのを予防すること、(c)疾患を軽減すること、すなわち、疾患を部分的にまたは完全に改善すること、あるいは(d)疾患の再発を防止すること、すなわち、以前の疾患の症状の処置の成功後または疾患の処置後に疾患が活性状態に戻るのを予防することが含まれる。
【0071】
「有効量」は、本明細書で使用される場合、患者に投与したときに疾病の症状を少なくとも部分的に処置または改善するのに十分な薬剤の量を指す。有効量は、疾病の重症度、構成成分の投与経路、および処置する患者の年齢、体重などに応じて変動する。したがって、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効量は、患者の腸疾患を処置するのに必要なFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドの量であり、これにより、薬剤を患者に投与することにより、被験体において腸疾患が生じるのを予防し、腸疾患が進行するのを予防し(例えば、直腸出血、貧血、または胃腸炎などの腸疾患の症状の発症または重症度の上昇を予防し)、あるいは腸疾患に伴う全ての症状を軽減または完全に改善し、すなわち、疾患の退行を引き起こす。
【0072】
いくつかの実施形態では、開示される方法は、少なくとも1μg、少なくとも5μg、少なくとも10μg、少なくとも20μg、少なくとも30μg、少なくとも40μg、少なくとも50μg、少なくとも60μg、少なくとも70μg、少なくとも80μg、少なくとも90μg、または少なくとも100μgのアンチセンスオリゴヌクレオチドを患者に投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、35mg~500mg、1mg~10mg、10mg~20mg、20mg~30mg、30mg~40mg、40mg~50mg、50mg~60mg、60mg~70mg、70mg~80mg、80mg~90mg、90mg~100mg、100mg~150mg、150mg~200mg、200mg~250mg、250mg~300mg、300mg~350mg、350mg~400mg、400mg~450mg、450mg~500mg、500mg~600mg、600mg~700mg、700mg~800mg、800mg~900mg、900mg~1g、1mg~50mg、20mg~40mg、または1mg~500mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドを患者に投与する工程を含む。
【0073】
処置の有効性は、腸疾患に伴う総体症状の評価、組織の組織学分析、生化学アッセイ、例えば、磁気共鳴画像法などの画像法、または他の公知の方法によって評価してもよい。例えば、処置の有効性は、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを腸疾患を患っている患者に投与した後の、腹痛、嘔吐、下痢、直腸出血、痙攣、筋痙縮、体重減少、栄養不良、発熱、貧血または腸疾患に伴う肉眼病理の他の態様の変化などの疾患の総体症状を分析することによって評価してもよい。
【0074】
処置の有効性はまた、組織レベルまたは細胞レベルで評価してもよく、例えば、組織生検(例えば、腫瘍または消化管組織生検)を得て、肉眼的組織または細胞形態または染色性を評価することによって評価してもよい。処置の有効性を評価するために、タンパク質またはRNAの発現を検査する生化学アッセイを使用してもよい。例えば、FMRP、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ3またはカスパーゼ8)、RIPK1、リン酸化RIPK1、RIPK3、リン酸化RIPK3、MLKL、リン酸化MLKL、CREB、IL-6、IL-8、TNF-α、または、大腸癌、ネクロトーシス、炎症性腸疾患もしくは炎症性サイトカイン生産を示す別のタンパク質もしくは遺伝子産物のレベルを、免疫細胞化学法、免疫組織化学法、ウエスタンブロット法またはノーザンブロット法、あるいは、定量もしくは半定量できるポリメラーゼ連鎖反応などのRNAレベルを評価するのに有用な方法によって評価してもよい。また、糞便、血漿または血清において見られる有用なバイオマーカーの存在または発現レベルを評価して、病態および処置の有効性を評価してもよい。
【0075】
処置の有効性を評価する上で、確実に有効に評価をできるようにするために、適切な対照を選択してもよい。例えば、腸疾患を有している患者において、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを患者に投与した後に評価した症状と、同患者において、処置する前または処置する過程の早期の時点に評価した症状とを比較しても、あるいは腸疾患と診断されていない別の患者において評価した症状とを比較してもよい。あるいは、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを患者に投与した後の腸組織の生化学分析または組織学分析の結果と、同患者、あるいは腸疾患と診断されていない個体、あるいはFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを患者に投与する前の同患者の腸組織の生化学分析または組織学分析の結果とを比較してもよい。さらに、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを患者に投与した後の血液、血清、細胞または糞便試料と、腸疾患と診断されていない個体、またはFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与する前の同患者の同等の試料とを比較してもよい。
【0076】
FMRP阻害の妥当性は、FMRPの発現レベルまたは活性を直接または間接的に評価することによって求められてもよい。例えば、FMRPタンパク質またはRNA発現を測定する生化学アッセイを使用して、総体的なFMRP阻害を評価してもよい。例えば、腸組織におけるFMRPタンパク質レベルをウエスタンブロットによって測定して、総体的なFMRPレベルを評価してもよい。また、FMRP mRNAレベルをノーザンブロットまたは定量できるポリメラーゼ連鎖反応によって測定して、総体的なFMRP阻害を求められてもよい。解離細胞、非解離組織もしくは糞便における、FMRPタンパク質レベルまたはFMRP活性/発現を示す別のタンパク質レベルを、免疫細胞化学法または免疫組織化学法によって評価してもよい。
【0077】
FMRP阻害は、ネクロトーシスに伴うRIPK1発現の亢進および/またはRIPK1-RIPK3-MLKL複合体の活性化などのパラメータを測定することによって間接的に評価してもよい。例えば、腸組織におけるリン酸化RIPK1、リン酸化RIPK3またはリン酸化MLKLのレベルをウエスタンブロットによって測定してもよい。
【0078】
また、FMRPのダウンレギュレーションは、CREB発現などのパラメータを測定することによって間接的に評価してもよい。例えば、CREBタンパク質またはRNA発現を測定する生化学アッセイを使用して、総体的なFMRP阻害を評価してもよい。例えば、腸組織におけるCREBタンパク質レベルをウエスタンブロットによって測定してもよい。また、CREB mRNAレベルをノーザンブロットまたは定量できるポリメラーゼ連鎖反応によって測定して、総体的なFMRP阻害を求められてもよい。解離細胞、非解離組織もしくは糞便における、CREBタンパク質レベルまたはCREB活性/発現を示す別のタンパク質レベルを、免疫細胞化学法または免疫組織化学法によって評価してもよい。
【0079】
本開示は、結腸癌を処置するための方法を提供する。結腸癌の処置は、例えば、疾患の完全な改善、腫瘍の数および/またはグレードの低下、転移の低下、再発の低下、ならびに、症状(例えば、下痢、便秘、血便、直腸出血、腹痛、衰弱、疲労および体重減少)の発症または重症度の低下のうちの1つ以上をもたらすことが企図されている。
【0080】
本開示はまた、IBD(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎)を処置するための方法を提供する。IBDの処置は、例えば、疾患の完全な改善、免疫細胞の炎症性サイトカイン生産の低下および消化管浸潤の低下を含む炎症の低下、消化管構築/粘膜構築の回復、再発の低下、ならびに、症状(例えば、下痢、便秘、血便、出血、腹痛、衰弱、疲労および体重減少)の発症または重症度の低下のうちの1つ以上をもたらすことが企図されている。「炎症性サイトカイン産生」は、炎症性サイトカイン応答を開始および/または促進するサイトカインの発現を指す。「炎症性サイトカイン応答」は、顆粒球動員、リンパ球動員、全身性炎症(特に消化管またはその一部分(複数可)の炎症)、発熱、組織破壊、ショックおよび/または死亡によって特徴付けられ得る免疫応答を指す。炎症性サイトカイン応答は、個々のサイトカインとそれらの細胞表面受容体と、ならびに、その後の細胞機能および遺伝子発現を変化させる細胞内シグナル伝達のカスケードによって特徴付けられ得る。炎症性サイトカインは、IL-1、IL-6、IL-8およびTNFαを含むがこれに限らない。炎症性サイトカイン発現は、例えば、マクロファージ、単球、粘膜固有層単核球、または、消化管の他の細胞もしくは免疫系の細胞において生じ得る。炎症性サイトカイン産生を阻害する方法は、炎症性腸疾患を患っている患者において炎症性サイトカインの一部または全ての発現レベルを低下させる方法を含む。炎症性サイトカイン産生を阻害する方法はまた、炎症性疾患を患っている患者の細胞において炎症性サイトカインの一部または全ての発現レベルを低下させる方法を含む。
【0081】
本開示はまた、腸疾患を患っている患者の細胞におけるFMRPを阻害する方法を提供する。FMRPは、消化管、免疫系および血液の細胞を含む、FMRP発現または活性が生じる任意の細胞において阻害してもよい。消化管の細胞(胃、十二指腸、空腸、回腸、結腸、直腸および肛門管の細胞を含む)には、円柱上皮細胞、粘膜上皮細胞、酵素原細胞、頚部粘液細胞、壁細胞、ガストリン細胞、杯細胞、パネート細胞、オリゴ粘液(oligomucus)細胞および絨毛吸収細胞が含まれる。免疫系の細胞には、白血球、食細胞(例えば、マクロファージ、好中球および樹状細胞)、単球、肥満細胞、好酸球、好塩基球、ナチュラルキラー細胞、自然細胞、リンパ球、B細胞およびT細胞が含まれる。
血液の細胞には、赤血球細胞(赤血球)および白血球細胞(白血球、単球および血小板)が含まれる。
【0082】
腫瘍浸潤および腫瘍転移
腫瘍浸潤は、癌細胞の増殖および腫瘍サイズの増加を指し、癌細胞の伸展、破損、浸透、および、周辺組織への拡散をもたらす。腫瘍転移は、癌細胞が原発巣から離脱し、血液またはリンパを通って移動し、体内の他の器官および組織に新たな腫瘍遺伝子座を形成したときに生じる。
【0083】
いくつかの実施形態では、有効量の本開示のFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを必要とする患者に投与して、固形腫瘍、腫瘍浸潤または腫瘍転移を処置することができる。いくつかの実施形態では、有効量の本開示のFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用して、腫瘍浸潤または腫瘍転移を予防または改善することができる。ある実施形態では、有効量の本開示のFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用して、大腸癌腫瘍浸潤または大腸癌腫瘍転移を予防または改善することができる。
【0084】
医薬組成物および投与経路
本開示はまた、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物を患者に投与することによって腸疾患を処置するための方法を提供する。別の態様では、本開示は、腸疾患の処置に使用するための医薬組成物を提供する。医薬組成物は、開示される、FMRPを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドと、薬学的に許容可能な担体とで構成されてもよい。本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、例えば、腸疾患を処置するために、哺乳動物、例えば、ヒトに投与される、薬学的に許容可能な担体中に指定量の治療化合物、例えば、有効量の治療化合物を含有する混合物を意味する。いくつかの実施形態では、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物が本明細書で企図されている。別の態様では、本開示は、炎症性疾患を処置するための薬剤の製造における、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を提供する。「薬剤」は、本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語と本質的に同じ意味を有する。
【0085】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」とは、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずにヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適し、妥当なリスク・ベネフィット比に見合った緩衝液、担体および賦形剤を意味する。担体(複数可)は、製剤の他の成分と適合性があり、レシピエントにとって有害ではないという意味で「許容可能」なものとする。薬学的に許容可能な担体には、医薬投与と適合性がある緩衝液、溶媒、分散媒、コーティング剤、等張化剤および吸収遅延剤などが含まれる。医薬活性物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野において公知である。一実施形態では、医薬組成物は、患者に経口投与され、消化器系または腸内における内包物質の吸収部位を制御するのに適切な腸溶コーティングを含む。例えば、腸溶コーティングには、アクリル酸エチル-メタクリル酸共重合体が含まれてもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびその任意の医薬組成物は、経腸送達または非経口送達、あるいは腫瘍内注射を含む1つまたはいくつかの経路によって患者に投与してもよい。本明細書中で使用される場合、経腸投与または経腸送達は、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを消化管を介して患者に投与することを指し、これには、経口送達、舌下送達、胃送達および直腸送達が含まれてもよい。本明細書で使用される場合、非経口投与は、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを消化管以外の経路を介して患者に投与することを指し、これには、腫瘍内注射または注入、鼻腔内注射または注入、経皮注射または注入、皮下注射または注入、筋肉内注射または注入、腹腔内注射または注入、腸内注射または注入(例えば、空腸内、回腸内)、結腸内注射または注入、あるいは直腸内注射または注入が含まれるがこれに限らない。
【0087】
例えば、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを患者、被験体に皮下投与してもよい。ある実施例では、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを被験体に経口投与してもよい。様々な実施例では、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを、非経口投与を介して患者の消化管系、または消化管系の特定の領域(例えば、空腸、回腸、結腸または直腸)に直接投与してもよい。
【0088】
本明細書に開示されているものなどの開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有する医薬組成物は、投薬単位の剤形で提示されてもよく、任意の適した方法によって調製してもよい。医薬組成物は、その意図される投与経路に適合するように製剤化されるものとする。有用な製剤は、薬学技術分野において周知の方法によって調製してもよい。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th ed. (Mack Publishing Company, 1990)を参照されたい。
【0089】
医薬製剤は、例えば、無菌である。滅菌は、例えば、滅菌濾過膜を通して濾過することによって達成してもよい。組成物が凍結乾燥されている場合、凍結乾燥および再構成の前またはその後に濾過滅菌を行ってもよい。
【0090】
非経口投与
本開示の医薬組成物は、非経口投与するために製剤化されてもよく、例えば、静脈内経路、腫瘍内経路、筋肉内経路、皮下経路、病巣内経路、腸内経路(例えば、 空腸内経路、回腸内経路)、結腸内経路または直腸内経路または腹腔内経路を介して注射するために製剤化されてもよい。開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有する水性医薬組成物などの水性組成物の調製は、本開示に鑑みて当業者に公知であろう。概して、このような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとしての注射剤として調製してもよく、注射前に液体を添加して溶液または懸濁液を調製するために使用するのに適切な固体形態も調製してもよく、製剤を乳化してもよい。
【0091】
注射用途に適切な医薬形態には、無菌水溶液または分散液、ゴマ油、落花生油または含水プロピレングリコールを含む製剤、および無菌注射溶液または分散液を即座に調製するための無菌粉末が含まれる。全ての場合において、当該形態は無菌でなければならず、容易に注射可能な程度の流動性を有さなければならない。当該形態は、製造条件および保管条件下で安定したものでなければならず、細菌および真菌などの微生物の混入作用から保護されていなければならない。
【0092】
遊離塩基または薬理学的に許容可能な塩としての活性化合物の溶液を、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合した水中で調製してもよい。また、分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中、ならびに油中で調製してもよい。さらに、無菌の不揮発性油を溶媒または懸濁媒として使用してもよい。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激の不揮発性油を使用してもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を注射剤の調製において使用してもよい。無菌注射用製剤は、例えば、1,3-ブタンジオールの溶液として非毒性の非経口で許容可能な希釈剤または溶媒の無菌注射溶液、懸濁液またはエマルジョンであってもよい。使用することができる許容可能なビヒクルおよび溶媒は、水、リンゲル液、USPおよび等張塩化ナトリウム溶液である。一実施形態では、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを1%(w/v)のカルボキシメチルセルロースナトリウムおよび0.1%(v/v)のTWEEN(商標)80を含む液体担体に懸濁されてもよい。通常の保管条件および使用条件下で、これらの製剤は、微生物の増殖を防止するために防腐剤を含有する。
【0093】
注射用製剤、例えば、無菌注射用水性懸濁液または油性懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、公知の技術に従って製剤化してもよい。概して、分散液は、様々な滅菌済みの活性成分を、基礎分散媒および以上に列挙されているものから必要とされる他の成分を含有する無菌ビヒクルに組み入れることによって調製する。本開示の無菌注射液は、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを、必要量の適切な溶媒に、必要に応じて以上に列挙されている様々な量の他の成分と共に組み入れ、その後、濾過滅菌を行うことによって調製してもよい。無菌注射液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥技術および凍結乾燥技術であり、それにより、予め滅菌濾過したその溶液から活性成分と任意のさらなる所望の成分からなる粉末を生じさせる。注射用製剤は、例えば、バクテリア保留フィルターを通して濾過することによって滅菌してもよい。
【0094】
筋肉内注射するために、さらにまたは高度に濃縮された溶液を調製することも企図されている。この点について、溶媒としてDMSOを使用することが好ましく、これは、非常に素早く透過して、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを高濃度で小さな面積に送達するからである。
【0095】
そのような溶液に使用するための適切な防腐剤には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール、チメロサールなどが含まれる。適切な緩衝液には、約pH6~pH8の間、および例えば、約pH7~pH7.5の間にpHを維持するのに十分な量のホウ酸、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウムおよびホウ酸カリウム、10炭酸ナトリウムおよび10炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどが含まれる。適切な等張化剤は、溶液の塩化ナトリウムの同等物が0.9プラスまたはマイナス0.2%の範囲になるようなデキストラン40、デキストラン70、デキストロース、グリセリン、塩化カリウム、プロピレングリコール、塩化ナトリウムなどである。適切な抗酸化剤および安定剤には、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ亜硫酸ナトリウム、チオ尿素などが含まれる。適切な湿潤剤および清澄剤には、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー282およびチロキサポールが含まれる。適切な増粘剤には、デキストラン40、デキストラン70、ゼラチン、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ラノリン、メチルセルロース、ペトロラタム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースなどが含まれる。
【0096】
経腸投与
いくつかの実施形態では、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドの経口送達、舌下送達、胃送達または直腸送達に適した組成物が本明細書で企図されている。
【0097】
例えば、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む組成物は、経口送達に適したものであってもよく、組成物がFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを、例えば、患者の消化管に送達することができるように、例えば、腸溶コーティング、例えば、胃耐性コーティングを含む錠剤であってもよい。例えば、このように患者に投与することにより、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを患者の消化管の影響を受けている部分に直接、実質的に局所的に適用して、局所的な効果をもたらすことができる。このように患者に投与することにより、いくつかの実施形態では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドの望ましくない全身吸収を実質的に回避することができる。
【0098】
例えば、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド、例えば、配列番号1~10のいずれか1つで表されるアンチセンスオリゴヌクレオチドと、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む顆粒を含む(例えば、顆粒から少なくとも部分的に形成される)、経口投与するための錠剤が提供される。このような錠剤は、腸溶コーティングでコーティングされていてもよい。企図される錠剤は、充填剤、結合剤、崩壊剤、および/または潤滑剤、ならびに、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、ウィンターグリーン、オレンジ、キシリトール、ソルビトール、フルクトースおよびマルトデキストリンなどの香味剤、および、香料、防腐剤および/または抗酸化剤などの薬学的に許容可能な賦形剤を含んでもよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、企図される医薬製剤は、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド、例えば、配列番号1~10で表されるアンチセンスオリゴヌクレオチド、薬学的に許容可能な塩、および/または、薬学的に許容可能な充填剤を含む粒内相を含む。例えば、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび充填剤に、随意に、他の賦形剤を配合し、顆粒を形成してもよい。いくつかの実施形態では、粒内相は、湿式造粒法を使用して形成してもよく、例えば、配合したFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド化合物および充填剤に液体(例えば、水)を添加し、次いで、この組み合わせを乾燥し、粉砕し、および/またはふるいにかけて顆粒をもたらす。粒内相を実現するために他の処理を使用してもよいことが当業者に理解されよう。
【0100】
いくつかの実施形態では、企図される製剤は、粒外相を含み、当該粒外相は、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含んでもよく、当該粒外相に粒内相を配合して、開示される製剤を形成してもよい。
【0101】
開示される製剤は、充填剤を含む粒内相を含んでもよい。例示的な充填剤には、セルロース、ゼラチン、リン酸カルシウム、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、結晶セルロース、ペクチン、ポリアクリレート、デキストロース、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、部分アルファー化デンプン、炭酸カルシウム、およびこれらの組み合わせを含むその他が含まれるがこれに限らない。
【0102】
いくつかの実施形態では、開示される製剤は、概して医薬製剤の成分を共に保持するように機能し得る結合剤を含む粒内相および/または粒外相を含んでよい。本開示の例示的な結合剤には、ヒドロキシプロピルセルロース、ラクトース、アルファー化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、糖アルコール、およびこれらの組み合わせを含むその他などのデンプン、糖、セルロースまたは修飾セルロースが含まれてもよいがこれに限らない。
【0103】
製剤、例えば、粒内相および/または粒外相を含む製剤は、デンプン、セルロース、架橋ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギネート、トウモロコシデンプン、クロスメロースナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、アカシア、およびこれらの組み合わせを含むその他などの崩壊剤が含まれてもよいがこれに限らない。例えば、粒内相および/または粒外相が崩壊剤を含んでもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、企図される製剤は、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド、ならびに、マンニトール、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびデンプングリコール酸ナトリウムまたはこれらの組み合わせから選択される賦形剤を含む粒内相と、結晶セルロース、デンプングリコール酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムまたはこれらの混合物のうちの1つ以上を含む粒外相とを含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、製剤は、潤滑剤を含んでもよく、例えば、粒外相が潤滑剤を含有してもよい。潤滑剤には、タルク、シリカ、脂肪、ステアリン、ステアリン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸金属塩、水素添加植物油、トウモロコシデンプン、安息香酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、酢酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、タルクおよびステアリン酸が含まれるがこれに限らない。
【0106】
いくつかの実施形態では、医薬製剤は、腸溶コーティングを含む。概して、腸溶コーティングにより、消化管に沿って薬物が吸収される場所を制御する、経口薬剤に対するバリアを生成する。腸溶コーティングは、pHに応じて異なる速度で崩壊する重合体を含んでもよい。腸溶コーティングには、例えば、酢酸フタル酸セルロース、アクリル酸メチル-メタクリル酸共重合体、酢酸コハク酸セルロース、フタル酸ヒドロキシルプロピルメチルセルロース、メタクリル酸メチル-メタクリル酸共重合体、アクリル酸エチル-メタクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体C型、ポリビニルアセテートフタレートおよび酢酸フタル酸セルロースが含まれてもよい。
【0107】
例示的な腸溶コーティングには、Opadry(登録商標)AMB、Acryl-EZE(登録商標)、Eudragit(登録商標)のグレードのものが含まれる。いくつかの実施形態では、腸溶コーティングは、意図される錠剤の約5重量%~約10重量%、約5重量%~約20重量%、8重量%~約15重量%、約8重量%~約20重量%、約10重量%~約20重量%、または約12重量%~約20重量%、または約18重量%を構成してもよい。
【0108】
例えば、腸溶コーティングには、アクリル酸エチル-メタクリル酸共重合体が含まれてもよい。例えば、企図される実施形態では、約0.5重量%~約70重量%、例えば、約0.5重量%~約10重量%、または約1重量%~約20重量%の開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド、あるいはその薬学的に許容可能な塩を含むか、または本質的にこれからなる錠剤が提供される。このような錠剤は、例えば、約0.5重量%~約60重量%のマンニトール、例えば、約30重量%~約50重量%のマンニトール、例えば、約40重量%のマンニトール、および/または、約20重量%~約40重量%の結晶セルロースもしくは約10重量%~約30重量%の結晶セルロースを含んでもよい。
例えば、開示される錠剤は、約30重量%~約60重量%、例えば、約45重量%~約65重量%、あるいは約5重量%~約10%重量の開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド、約30重量%~約50重量%、あるいは約5重量%~約15重量%のマンニトール、約5重量%~約15重量%の結晶セルロース、約0重量%~約4重量%、または約1重量%~約7重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、および約0重量%~約4重量%、例えば、約2重量%~約4重量%のデンプングリコール酸ナトリウムを含む粒内相を含んでもよい。
【0109】
様々な実施形態では、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを経口投与するための医薬錠剤製剤は、粒内相を含み、粒内相は、開示されるFMRPアンチセンス、あるいはその薬学的に許容可能な塩(ナトリウム塩など)、ならびに、薬学的に許容可能な充填剤を含み、当該医薬錠剤製剤はまた、崩壊剤などの薬学的に許容可能な賦形剤を含んでもよい粒外相を含んでもよい。粒外相は、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、およびそれらの混合物から選択される構成成分を含んでもよい。医薬組成物はまた、錠剤の約12重量%~20重量%の腸溶コーティングを含んでもよい。例えば、経口使用するための薬学的に許容可能な錠剤は、約0.5重量%~10重量%の開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを含んでもよく、例えば、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド、あるいはその薬学的に許容可能な塩、約30重量%~50重量%のマンニトール、約10重量%~30重量%の結晶セルロース、および、エチルアクリル酸-メタクリル酸共重合体を含む腸溶コーティングを含んでもよい。
【0110】
いくつかの実施例では、経口使用するための薬学的に許容可能な錠剤は、約5重量%~約10重量%の開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド、例えば、開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド、あるいはその薬学的に許容可能な塩、約40重量%のマンニトール、約8重量%の結晶セルロース、約5重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびに、約2重量%のデンプングリコール酸ナトリウムを含む粒内相と、約17重量%の結晶セルロース、約2重量%のデンプングリコール酸ナトリウム、約0.4重量%のステアリン酸マグネシウムを含む粒外相と、錠剤を覆う、アクリル酸エチル-メタクリル酸共重合体を含む腸溶コーティングとを含んでもよい。
【0111】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約13重量%または約15重量%、16重量%、17重量%もしくは18重量%の、例えば、Acryl-EZE(登録商標)(例えば、全体が参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2010/054826号パンフレットを参照)を含む腸溶コーティングを含有してもよい。
【0112】
当該コーティングが溶解し、活性成分が放出される点での率が溶解率である。いくつかの実施形態では、錠剤は、例えば、USP/EP2型機器(パドル)において、pH7.2のリン酸緩衝液で、100rpm、37℃で試験すると、約120分~約240分後、例えば、180分後に約50%~約100%のFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドが放出されるという溶解プロファイルを有してもよい。ある実施形態では、錠剤は、例えば、USP/EP2型機器(パドル)において、pH1.0の希釈HCl中で、100rpm、37℃で試験すると、120分後にFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドが実質的に放出されないという溶解プロファイルを有してもよい。錠剤は、いくつかの実施形態では、例えば、USP/EP2型機器(パドル)において、pH6.6のリン酸緩衝液で、100rpm、37℃で試験すると、30分後に約10%~約30%、または約50%以下のFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドが放出されるという溶解プロファイルを有してもよい。
【0113】
製剤、例えば、錠剤は、いくつかの実施形態では、患者に経口投与したときに、患者におけるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドの血漿中濃度が最低になり得る。別の実施形態では、開示される製剤は、患者に経口投与したときに、患者の結腸または直腸、例えば、患者の影響を受けている部位または疾患にかかっている部位に局所的に送達される。
【0114】
開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを患者に投与するのは、直腸様式を介して行われてもよい。直腸投与するための医薬組成物には、泡沫剤、溶液(注腸剤)、および坐剤が含まれる(Block, Chapter 87 In: Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Gennaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990)。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、本明細書に開示される疾患および障害を処置することを対象とした少なくとも1つの他の薬剤を患者に投与する工程をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、企図される他の薬剤を患者に共投与(例えば、逐次または同時)してもよい。
【0116】
例えば、このような薬剤には、ダウノルビシン、ダウノマイシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、エソルビシン、ブレオマイシン、マフォスファミド、イホスファミド、シトシンアラビノシド、ビスクロロエチルニトロソ尿素、ブスルファン、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、ミトラマイシン、プレドニゾン、ヒドロキシプロゲステロン、テストステロン、タモキシフェン、ダカルバジン、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ペンタメチルメラミン、ミトキサントロン、アムサクリン、クロラムブシル、メチルシクロヘキシルニトロソ尿素、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、シクロホスファミド、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン(CA)、5-アザシチジン、ヒドロキシ尿素、デオキシコホルマイシン、4-ヒドロキシペルオキシシクロホスホラミド、5-フルオロウラシル(5-FU)、5-フルオロデオキシウリジン(5-FUdR)、メトトレキサート(MTX)、コルヒチン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド、トリメトレキサート、テニポシド、シスプラチンおよびジエチルスチルベストロール(DES)などの化学療法剤が含まれるがこれに限らない。
【0117】
薬剤にはまた、グルココルチコイド、細胞増殖抑制剤、抗体、イムノフィリンに作用する薬剤、インターフェロン、オピオイド、TNF結合タンパク質、ミコフェノール酸および微小生物学的製剤を含む免疫抑制剤が含まれる。例えば、企図される免疫抑制剤には、タクロリムス、シクロスポリン、ピメクロリムス、シロリムス、エベロリムス、ミコフェノール酸、フィンゴリモド、デキサメタゾン、フルダラビン、シクロホスファミド、メトトレキサート、アザチオプリン、レフルノミド、テリフルノミド、アナキンラ、抗胸腺細胞グロブリン、抗リンパ球グロブリン、ムロモナブ-CD3、アフツズマブ、リツキシマブ、テプリズマブ、エファリズマブ、ダクリズマブ、バシリキシマブ、アダリムマブ、インフリキシマブ、セルトリズマブペゴル、ナタリズマブおよびエタネルセプトが含まれるがこれに限らない。他の薬剤には、抗生物質、止瀉薬、緩下剤、鎮痛剤、鉄補給剤、および、カルシウム補給剤またはビタミンD補給剤もしくはビタミンB12補給剤が含まれる。
【0118】
投与量および投与回数
例示的な製剤は、約35mg~約500mgの開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むか、または本質的にこれからなる剤形を含む。例えば、約35mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、または250mgの開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む製剤が本明細書で企図されている。一実施形態では、製剤は、約40mg、80mg、または160mgの開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを含んでもよい。いくつかの実施形態では、製剤は、少なくとも100μgの開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを含んでもよい。例えば、製剤は、約0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、15mg、20mg、または25mgの開示されるFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドを含んでもよい。患者に投与する量は、処置する対象の疾患または適応症の種類および程度、患者の健康全般および大きさ、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドのin vivo効力、医薬製剤、ならびに、投与経路などの変数に応じるものとする。所望の血中レベルまたは組織中レベルを素早く実現するために、初回投与量を上限を超えるまで増加させてもよい。初回投与量を最適量よりも少なくしてもよく、処置の過程で投与量を徐々に増加させてもよい。ヒトへの投与量は、例えば、40mg~160mgまで実施するように設計された従来の第I相用量漸増試験において最適化してもよい。投与回数は、投与経路、投与量および処置する疾患などの因子に応じて変動してもよい。例示的な投与回数は、1日1回、1週間1回、および2週間毎1回である。いくつかの実施形態では、投薬は、7日間にわたり1日1回である。
【0119】
診断方法
本開示はまた、患者の1つ以上の生体試料におけるFMRP発現シグナルレベルの検出に基づいた、腸疾患を有している患者を診断する方法を提供する。本明細書で使用される場合、「FMRP発現シグナル」という用語は、FMR1遺伝子発現、FMR1遺伝子産物またはFMRP活性の任意の指標を指し得る。FMR1遺伝子産物は、RNA(例えば、mRNA)、ペプチドおよびタンパク質(例えば、FMRP、変異体、類似体および/またはその一部)を含む。評価することができるFMR1遺伝子発現の指標には、FMR1遺伝子またはクロマチンの状態、FMR1遺伝子と遺伝子発現を制御する細胞構成成分との相互作用、FMR1遺伝子産物の発現レベル(例えば、FMRP RNA発現レベル、FMRPタンパク質発現レベル)、あるいはFMRP RNAまたはタンパク質と転写機構、翻訳機構または翻訳後プロセシング機構との相互作用が含まれるがこれに限らない。FMRP活性の指標には、RIPK/MLKL経路活性の評価(例えば、RIPK1、RIPK3および/またはMLKLリン酸化の評価)およびCREB発現(例えば、mRNAおよびタンパク質発現)の評価が含まれるがこれに限らない。
【0120】
FMRP発現シグナルの検出は、in vivo法、in vitro法またはex vivo法によって達成してもよい。好ましい実施形態では、本開示の方法は、in vitroで実施してもよい。検出方法は、患者の血液、血清、糞便、組織または細胞における検出を伴ってもよい。検出は、全組織、組織外植片、細胞培養物、解離細胞、細胞抽出物、あるいは血液または血清を含む体液におけるFMRP発現シグナルを測定することによって実現してもよい。企図される検出方法には、FMR1遺伝子産物発現レベルを測定するアッセイ、例えば、ウエスタンブロット、フローサイトメトリー、ELISA、他の定量できる結合アッセイ、細胞増殖アッセイまたは組織増殖アッセイ、ノーザンブロット、定量もしくは半定量できるポリメラーゼ連鎖反応、医療用画像撮影法(例えば、MRI)または免疫染色法(例えば、免疫組織化学または免疫細胞化学)が含まれる。
【0121】
実施例
以下の実施例によって本開示をさらに例示する。実施例は、単に例示目的のために提示でされ、本開示の範囲または内容をいかなる形でも限定するものと解釈してはならない。
【0122】
実施例1:FMRPは、ヒト大腸癌においてアップレギュレーションされる
CRC腫瘍形成におけるFMRPの役割を調べるために、ヒトCRC試料におけるFMRP mRNAレベルおよびタンパク質レベルを分析した。この実施例では、ヒトCRC試料におけるFMRP発現の増加を実証する。
【0123】
患者および試料
Tor Vergata University Hospital(イタリア、ローマ)で、散発的CRCに対して結腸切除術を受けた患者48名から、ヒトCRC腫瘍と、明らかな影響を受けていない、隣接している領域とのマッチドペア(match-paired)試料を採取した。どの患者も手術前に放射線療法も化学療法も受けていなかった。
【0124】
免疫組織化学
CRC患者から得た、ホルマリン固定パラフィン包埋した正常組織切片および腫瘍試料と腫瘍周囲試料とのペア試料に免疫組織化学を実施した。キシレンおよびエタノールを使用して結腸切片を脱パラフィンおよび脱水し、98℃の恒温槽にあるTris-EDTAクエン酸緩衝液(pH7.8)で30分間抗原の賦活化を行った(Dako Agilent Technologies、デンマーク、グロストルプ)。ヒトFMRPに対するモノクローナル抗体(最終希釈1:500、LifeSpan BioSciences,Inc.)を使用して免疫組織化学染色を実施し、室温で1時間インキュベートし、その後、3,3’ジアミノベンジジン(DAB)を色原体として用いてビオチンフリーHRPポリマー検出法を実施した(MACH 4(商標) Universal HRP-Polymer Kit、Biocare Medical、カリフォルニア州パチェコ)。切片は、ヘマトキシリンを用いて対比染色し、脱水してマウントした。以上に記載されるものと同一の免疫組織化学条件下であるが、一次抗体を精製マウス正常IgG対照抗体(R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス)に変えて、アイソタイプ対照IgG染色切片を調製した。
【0125】
ヒトCRC腫瘍と隣接している領域とのマッチドペア試料から採取した切片(n=40)、ならびに、正常対照(NC)の結腸から採取した試料におけるFMRP発現を分析した。図1Aに示されるように、CRC腫瘍試料(T)では、腫瘍周囲領域(P)およびNCと比較してFMRPタンパク質発現が大幅に増加した。約61%(24/40)のCRC試料で発現したFMRPのレベルは大きく、これと比較して、隣接している非腫瘍領域およびNCで発現したFMRPのレベルは比較的小さかった。
【0126】
FMRP mRNA発現
PureLink(登録商標)mRNA mini kit(Thermo Fisher Scientific、アメリカ合衆国、マサチューセッツ州ウォルサム)を使用して、製造業者の指示に従って、ヒトCRC腫瘍と、明らかな影響を受けていない、隣接している領域とのマッチドペア試料からRNAを抽出した。一定量のRNA(試料当たり1μg)を相補的DNA(cDNA)に逆転写し、これを以下の条件、すなわち、95℃で1分間の熱変性、ヒトFMRPに対して59℃で、ヒト/マウスβ-アクチンに対して60℃で30秒間のアニーリング、72℃で30秒間の伸長という条件を使用して増幅した。ハウスキーピング遺伝子としてβ-アクチンを使用した。遺伝子発現は、ΔΔCtアルゴリズムを使用して計算した。プライマー配列は、ヒトFMRP(フォワード 5’-GTTGAGCGGCCGAGTTTGTCAG-3’(配列番号11)、リバース 5’-CCCACTGGGAGAGGATTATTTGGG-3’(配列番号12))、ヒトβ-アクチンおよびマウスβ-アクチン(フォワード 5’-AAGATGACCCAGATCATGTTTGAGACC-3’(配列番号13)、リバース 5’-AGCCAGTCCAGACGCAGGAT-3’(配列番号14))であった。
【0127】
図1Bで見られるように、RT-PCRによって、免疫組織化学分析を確認し、ヒトCRC腫瘍試料(T)では、同患者の明らかな影響を受けていない領域から採取した腫瘍周囲試料(P)と比較してFMRP mRNAが大幅にアップレギュレートされたことを認めた。
【0128】
FMRPタンパク質発現
総タンパク質をヒト結腸組織から抽出し、緩衝液にて氷上で溶解した。当該緩衝液は、10mMのHEPES[pH7.9]、10mMのKCl、0.1mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、0.2mMのエチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)および0.5%のNonidet P40を含有し、1mMのジチオトレイトール(DTT)、10mg/mlのアプロチニン、10mg/mlのロイペプチン、1mMのフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、1mMのNaVO、および1mMのNaFが補足されている。溶解物を遠心分離して清澄化し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によって分離した。ブロットを、FMRP(Cell Signaling、マサチューセッツ州ダンバース)に対する抗体を用いてインキュベートし、その後、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(Dako、イタリア、ミラノ)に結合させた二次抗体を用いてインキュベートした。分析後に、各ブロットを剥離し、マウス抗ヒトモノクローナルβ-アクチン抗体(Sigma-Aldrich)を用いてインキュベートして、レーンの同等の負荷を確認した。
【0129】
図1Cおよび図1Dで見られるように、ウエスタンブロット解析によって、免疫組織化学を確認し、RT-PCR解析によって、ヒトCRC腫瘍試料(T)では、同患者の明らかな影響を受けていない領域から採取した腫瘍周囲試料(P)と比較してFMRPタンパク質が大幅にアップレギュレートされたことを認めた。
【0130】
実施例2:FMR1ノックアウトマウスは、アゾキシメタン誘導腫瘍形成に対して耐性を示す
CRCにおけるFMRPの役割を解明するために,アゾキシメタン(AOM)によって誘導された散発性CRCのマウスモデルを使用した。この実施例では、AOM誘導CRCモデルにおけるFMR1ノックアウトマウスの腫瘍耐性表現型について説明する。
【0131】
CRCのAOM誘導
野生型(WT)およびFMR1ノックアウト(KO)マウスに、アルキル化剤であるAOM(10mg/kg、Sigma Aldrich、イタリア、ミラノ)を5週間にわたり週1回腹腔内注射して、腫瘍形成を誘導した。マウスの腫瘍形成をモニタリングし、高解像度内視鏡システムを使用して内視鏡検査によってスクリーニングし、その7日後に屠殺した。22週目に子宮頸部脱臼によってマウスを屠殺し、解析のために結腸組織を回収した。
【0132】
高解像度マウス内視鏡システムを使用して結腸内視鏡検査を盲検的に実施し、腫瘍形成をモニタリングした。21週目に実施した内視鏡検査中に腫瘍を検出した。処置終了後に、腫瘍を計数して結腸病変の総数を求めた。全ての腫瘍をそのサイズに基づいて評価し、Becker C. et al., Gut. 2005;54(7):950-4.に記載のプロトコールを使用してスコアを付けた。当該文献は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。簡単に説明すると、腫瘍を、グレード1(非常に小さいが検出可能な腫瘍)、グレード2(結腸周囲の最大8分の1を覆う腫瘍)、グレード3(結腸周囲の最大4分の1を覆う腫瘍)、グレード4(結腸周囲の最大半分を覆う腫瘍)、およびグレード5(結腸周囲の半分を超えて覆う腫瘍)にグレード分けした。
【0133】
図2Aおよび図2Bで見られるように、AOMで処置したWTマウスは複数の大きな腫瘍を発症したが、AOMで処置したFMR1 KOマウスでは、腫瘍の数およびサイズは大幅に減少した。これらの結果は、22週目に屠殺したマウスの腫瘍を直接評価することによって確認した(データは示さず)。図2Cに示されるように、AOMで処置したWTマウスでは、AOMで処置したFMR1 KO動物と比較して生存能力が20%低下したことを示した。
【0134】
免疫組織化学
ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色後に、WTおよびFMR1 KOマウスの腫瘍および腫瘍周囲領域から採取したマウス凍結切片に組織学分析を実施した。キシレンおよびエタノールを使用して結腸切片を脱パラフィンおよび脱水し、98℃の恒温槽にあるtris-EDTAクエン酸緩衝液(pH7.8)で30分間抗原の賦活化を行った(Dako Agilent Technologies,グロストルプ,デンマーク)。ヒトFMRPに対するモノクローナル抗体(最終希釈1:500、LifeSpan BioSciences,Inc.)を使用して免疫組織化学染色を実施し、室温で1時間インキュベートし、その後、3,3’ジアミノベンジジン(DAB)を色原体として用いてビオチンフリーHRPポリマー検出法を実施した(MACH 4(商標) Universal HRP-Polymer Kit、Biocare Medical、カリフォルニア州パチェコ)。切片は、ヘマトキシリンを用いて対比染色し、脱水してマウントした。以上に記載されるものと同一の免疫組織化学条件下であるが、一次抗体を精製マウス正常IgG対照抗体(R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス)に変えて、アイソタイプ対照IgG染色切片を調製した。
【0135】
AOM処置を行わない場合、FMRP-KOマウスの腸は正常であり、WTマウスと比較して明らかな異常はなかった(データは示さず)。しかし、図2Dに示されるように、AOM処置後22週目に摘出した腫瘍は、WTマウスでは広汎異形成を伴う腫瘍を発症していたのに対し、FMR1 KO動物は異形成領域に隣接して正常な粘膜組織構築を維持していたことを認めた。
【0136】
FMRPタンパク質発現
総タンパク質をマウス結腸組織から抽出し、緩衝液にて氷上で溶解した。当該緩衝液は、10mMのHEPES[pH7.9]、10mMのKCl、0.1mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、0.2mMのエチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)および0.5%のNonidet P40を含有し、1mMのジチオトレイトール(DTT)、10mg/mlのアプロチニン、10mg/mlのロイペプチン、1mMのフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、1mMのNaVO、および1mMのNaFが補足されている。溶解物を遠心分離して清澄化し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で分離した。ブロットを、FMRP(Cell Signaling、マサチューセッツ州ダンバース)に対する抗体を用いてインキュベートし、その後、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(Dako、イタリア、ミラノ)に結合させた二次抗体を用いてインキュベートした。分析後に、各ブロットを剥離し、マウス抗ヒトモノクローナルβ-アクチン抗体(Sigma-Aldrich)を用いてインキュベートして、レーンの同等の負荷を確認した。
【0137】
図2Eに示されるように、ヒトCRC試料と一致して、AOMで処置したWTマウスの粘膜腫瘍(T)では、同動物の隣接している腫瘍周囲領域(P)と比較してFMRPタンパク質発現が増加した。
【0138】
TUNEL染色およびKi67染色
FMR1 KO動物で観察された腫瘍形成の減少が細胞死の増加によるのか、腫瘍細胞増殖の減少によるのかを求めるために、TUNEL染色およびKi67による免疫組織化学染色を実施した。WTおよびFMR1 KOマウスから採取したマウス凍結切片では、TUNEL法によるin situ細胞死検出キット(Roche Applied Science)を使用して、製造業者の指示に従ってアポトーシス細胞を検出した。3-アミノ-9-エチルカルバゾールをクロモゲンとして使用し、切片はヘマトキシリンを用いて対比染色した。青紫色の背景に対して、アポトーシス細胞核が赤色染色構造として現れた。
【0139】
免疫組織化学切片はまた、マウスKi67に対するマウスモノクローナル抗体(clone MIB-5、最終希釈1:100、DaKo、Agilent、アメリカ合衆国、カリフォルニア州サンタクララ)を用いて、室温で30分間インキュベートし、その後、3,3’ジアミノベンジジンを色原体(DaKo、Agilent)として用いてビオチンフリーHRPポリマー検出法を実施した(Ultravision Detection System、Thermo Scientific、アメリカ合衆国、マサチューセッツ州ウォルサム)。切片は、ヘマトキシリンを用いて対比染色し、脱水してマウントした。
【0140】
図2Fに示されるように、TUNEL染色により、TUNEL染色は、AOMで処置したFMR1 KOマウスでは、AOMを処置したWT動物と比較してDNA断片化レベルが上昇したことを示したことが明らかになった。しかし、図2Gで見られるように、Ki67陽性細胞の数において差は観察されなかった。これらの結果は併せて、FMRPが腫瘍の細胞死耐性の増加に関連していることを示唆している。
【0141】
実施例3:FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、CRC細胞株において細胞死を誘導する
FMRPがCRCの生存にいかに影響を及ぼすかを求めるために、ヒトCRC上皮細胞株において細胞死を特異的FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置した。この実施例では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドが、アポトーシスに依存しない機構を介してCRC細胞株において細胞死を誘導してもよいことを実証する。
【0142】
大腸癌細胞培養物におけるFMRP発現
ヒトCRC細胞株であるDLD-1およびHCT-116は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC、バージニア州マナサス)から入手し、RPMI1640(DLD-1)およびマッコイ5A(HCT-116)培地でそれぞれ培養した。全ての培地に、10%のウシ胎児血清、1%のペニシリン/ストレプトマイシン(両方ともLonza、ベルギー、ヴェルヴィエから入手)を補足した。ヒト正常結腸上皮細胞株(HCEC-1ct)は、EVERCYTE GmbH(オーストリア、ウィーン)から入手し、ColoUp(登録商標)培地(EVERCYTE GmbH)で培養した。細胞は、37℃、5%COの十分に加湿したインキュベーターで維持した。細胞株溶解物を調製し、実施例2に先に記載されるような方法を使用して、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法/免疫ブロット法によって分析した。免疫蛍光染色のために、細胞株を3.7%のホルムアルデヒドを用いて、4℃で10分間固定し、0.1%のトリトンを用いて、室温で10分間透過処理し、室温で1時間ブロッキングした(1%のウシ血清アルブミン、0.1%のTween、2%のグリシン)。固定し、ブロッキングした細胞を、抗FMRPモノクローナル抗体(1:500、Cell Signaling、マサチューセッツ州ダンバース)を用いて、4℃で一晩インキュベートした。PBSを用いて洗浄した後に、二次抗体であるヤギ抗ウサギAlexa488(1:2000、A11008、Invitrogen)を室温で1時間適用した。スライドは、PBSを用いて洗浄し、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドールを含むProlong gold(登録商標)退色防止試薬(P36931、Invitrogen)を使用してマウントして、Leica DMI4000 B顕微鏡によってLeica application suiteソフトウェア(V4.6.2)を用いて分析した。
【0143】
図3A図3Cに示されるように、CRCヒト細胞株(DLD-1およびHCT-116)では、HCEC-1ct上皮細胞(すなわち、正常な結腸細胞)と比較してFMRPがさらに高発現した。
【0144】
大腸癌細胞培養物におけるFMRPノックダウン
ヒトFMRPと相補的であるホスホロチオエート一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド[5’-TCCACCACCAGCTCCTCCAT-3’(配列番号6)]、および一本鎖センスオリゴヌクレオチド [5’-ATGGAGGAGCTGGTGGTGGA-3’(配列番号15)] を合成した。CRC細胞株およびHCEC-1ct細胞は、Opti-MEM培地およびlipofectamine 3000 reagent(Thermo Fisher Scientific、アメリカ合衆国、マサチューセッツ州ウォルサム)を使用して、製造業者の指示に従って、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド(AS)(最終濃度0.5~100nM)またはFMRPセンスオリゴヌクレオチド(S)(最終濃度100nM)のどちらかを用いて、24時間および48時間トランスフェクトした。
【0145】
図3D図3Gおよび図3Iで見られるように、DLD-1細胞(図3C)、HCT-116細胞(図3G)およびHCEC-1ct細胞(図3I)をMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド(AS)で処置することによって、FMRP発現が大幅に阻害されたが、センスオリゴヌクレオチドで処置した細胞では、大幅な阻害は観察されなかった。
【0146】
FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置した細胞における細胞死。
細胞は、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド(AS)(最終濃度0.5nMおよび100nM)またはFMRPセンスオリゴヌクレオチド(S)(最終濃度100nM)のどちらかを用いてトランスフェクトした。24時間後(図3E図3F図3Jおよび図3K)または48時間後(図3H)に、細胞を回収し、Annexin V(AV)緩衝液で2回洗浄し、FITC-AnnexinV(最終希釈1:1 0 0、Immunotools、ドイツ、フリーゾイテ)を用いて、製造業者の指示に従って染色し、5mg/mlのヨウ化プロピジウム(PI)を用いて、4℃で30分間インキュベートした。細胞はまた、FMRPセンスオリゴヌクレオチドまたはFMRP ASオリゴヌクレオチド(最終濃度100nM)のどちらかを用いて、36時間トランスフェクトし、カスパーゼ3およびカスパーゼ8が活性化されるかを分析した。陽性対照および陰性対照として、細胞は、それぞれ、スタウロスポリン(最終濃度1μM、Sigma-Aldrich、イタリア、ミラノ)またはQ-VD-OPh(汎カスパーゼ阻害剤、最終濃度1μM)(R&D Systems,Inc、ミネソタ州ミネアポリス)で処置した。さらに、トランスフェクトした36時間後(図4Fおよび図4G)または48時間後(図4Dおよび図4E)、細胞に10Mのブロモデオキシウリジンを60分間パルスし、70%の冷エタノールで固定し、-20℃で少なくとも3時間保存した。次いで、細胞は、2MのHclで変性させ、抗ブロモデオキシウリジンモノクローナル抗体(Immunotech、フランス、マルセイユ)を用いて染色し、その後、フルオレセインイソチオシアネート結合二次抗マウス免疫グロブリンG(Molecular Probes、イタリア、ミラノ)および100g/mlのPIを用いて染色した。蛍光を、Gallios Flow Cytometer (Beckman Coulter、Life Sciences、アメリカ合衆国、カリフォルニア州パサデナ) を使用して測定し、Kaluzaソフトウェア(Beckman Coulter)を使用して分析した。生存細胞はAV/PI細胞とみなした。
【0147】
図3Eおよび図3Fに示されるように、DLD-1細胞をFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置することで、AnnexinVまたはAnnexinVPIの細胞数の増加をもたらしたが、これは、これらのCRC細胞が自発的アポトーシスまたはネクロトーシスを起こしていたことを示している。しかし、図3H図3Jおよび図3Kに示されるように、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置したHCT-116細胞およびHCRC-1ct細胞は共に、AnnexinVまたはAnnexinVPIの細胞数の増加を示すことはなかった。細胞株にトランスフェクトした特異的FMRP siRNAを使用して、同様の結果が観察された(データは示さず)。
【0148】
FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導性細胞死の機構を解明するために、プロアポトーシスであるカスパーゼ8およびカスパーゼ3の活性化に対するFMRPノックダウンの効果を分析した。図4Aおよび図4Bに示されるように、CRC細胞をFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置することで、活性化カスパーゼ3陽性細胞の割合または活性化カスパーゼ8陽性細胞の割合を変化させることはなかった。想定されるように、スタウロスポリン(Stauro)は、活性化カスパーゼ3陽性細胞の割合を大幅に増加させた。
【0149】
図4Cで見られるように、細胞を汎カスパーゼ阻害剤(Q-VD-OPh、Cas in)で前処理することで、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導細胞死を変化させることはなかった。さらに、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導細胞死が、細胞の増殖停止に続発したものかを確認するために、DLD-1細胞株における細胞周期進行を分析した。図4D図4Gに示されるように、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞死を誘導する前のG2/M期、S期、またはG0/G1期の細胞周期相において細胞の相対的割合に影響を及ぼすことはなかった。これらの発見を合わせると、FMRPは、細胞周期に影響を及ぼすことがない、アポトーシスに依存しない経路を介してCRC細胞死に影響することを示唆している。
【0150】
実施例4:FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ネクロトーシスを誘導する
癌細胞は、プログラム細胞死を免れるために様々な機構を展開させてきた。ネクロトーシスは、制御された、カスパーゼに依存しない細胞死経路であり、アポトーシス耐性細胞を排除するための代替機構である。この実施例では、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドが、ネクロトーシス経路の活性化を介してCRC細胞において細胞死を誘導することを実証する。
【0151】
FMRPは、ネクロトーシス経路に関連したmRNAに関連する
ヒトCRC試料およびCRC細胞株からのFMRPを、それに関連したRNAと共に、FMRP特異的抗体(図5A)を使用して免疫沈降させ、リアルタイムPCRによって結合転写物を識別した。陰性対照としてβ-アクチンを使用し、陽性対照としてE-カドヘリンおよびビメンチンを使用した。図5Bおよび図5Cに示されるように、RIPK3 mRNAは、ヒトCRC試料またはCRC細胞株のFMRPと共免疫沈降しない。一方、RIPK1 mRNAは、IgGアイソタイプ対照と比較して、大幅なレベルでFMRPと共免疫沈降した。
【0152】
FMRPがネクロトーシス経路の構成成分に関連していることを確認するために、細胞を処理しないままにするか、あるいはFMRPアンチセンスオリゴヌクレオチド(最終濃度0.5nMおよび100nM)またはFMRPセンスオリゴヌクレオチド(最終濃度100nM)のどちらかを用いてトランスフェクトし、pMLKL阻害剤(スルホンアミド、NSA、最終濃度1μM)(Calbiochem)またはpRIPK1阻害剤(ネクロスタチン1、NEC1、最終濃度10μM)(Cayman Chemical、アメリカ合衆国、ミシガン州アナーバー)を用いてインキュベートした。24時間後に、細胞を回収し、実施例1~3に先に記載されるように、ウエスタンブロットによって分析するか、あるいはFITC-Annexin VおよびPIを用いて染色し、フローサイトメトリーで分析した。
【0153】
図6A図6Dに示されるように、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置することで、ヒトCRC細胞株においてRIPK1の総タンパク質発現レベルを増加させた。FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置することで、さらに、RIPK1、RIPK3およびMLKLのリン酸化の増加をもたらした。しかし、図6Gで見られるように、FMRPアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置したHCEC-1ct細胞では、同様のリン酸化の増加は観察されなかった。
【0154】
図6Eおよび図6Fに示されるように、RIPK1特異的阻害剤、ネクロスタチン1(NEC1)、およびMLKL特異的阻害剤、ネクロスルホンアミド(NSA)を用いてインキュベートしたヒトCRC細胞株は、FMRPアンチセン誘導細胞死から保護されていた。これらの結果は併せて、FMRPがRIPK1シグナル伝達カスケードを阻害し、それによって、ネクロトーシスを抑制することによって、CRC細胞においてネクロトーシスを抑止することを示唆している。
【0155】
実施例5:FMRP発現は、CREBによって制御される
例えば、mTORおよびMAPKなどのいくつかの細胞内タンパク質キナーゼ、ならびに、例えば、CREBなどの転写因子は、FMRP発現を正に制御することが報告されている。この実施例では、FMRP発現がCREB転写因子によって正に制御されることを実証する。
【0156】
CREB mRNA発現およびタンパク質発現
CREBがFMRP発現を制御するかを評価するために、CRC細胞株を、CREBアンチセンス(ASc)(5’-GCATCTCCACTCTGCTGGTT-3’)(配列番号16)またはCREBセンス(Ss)(5’-AACCAGCAGAGTGGAGATGC-3’)(配列番号17)(最終濃度200nM)のどちらかを用いて、24時間または48時間トランスフェクトした。mRNAおよび総タンパク質溶解物を調製し、実施例1~3に先に記載されるように、RT-PCRおよびウエスタンブロットによってそれぞれ分析した。
【0157】
図7Aに示すように、ヒトCRC腫瘍(T)は、腫瘍周囲試料(P)のレベルと比較して大幅に高いレベルのCREB mRNA転写物を有していた。同様に、図7Bおよび図7Cに示されるように、ヒトCRC腫瘍(T)では、腫瘍周囲組織試料(P)と比較してCREBタンパク質発現が大幅に高い。
【0158】
CREBがCRC細胞株においてFMRP発現を制御するかを調べるために、特異的ASオリゴヌクレオチドを使用してCREB発現を阻害した。図7D図7Fに示されるように、CREBアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置したヒトCRC細胞株は、無処置の細胞またはセンスオリゴヌクレオチド対照で処置した細胞と比較してCREBタンパク質発現を低下させた。さらに,CREBアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置することで,付随して、FMRPタンパク質発現の低下をもたらした。これらの発見は、ヒトCRCでは、CREBがFMRP発現を正に制御することを示唆している。
【0159】
実施例6:FMRPレベルは、CRC遊走およびCRC浸潤に影響する
CRC遊走およびCRC浸潤におけるFMRPの役割を調べるために、創傷閉鎖および細胞浸潤のin vitroモデルを使用した。この実施例では、FMRPが、E-カドヘリン、β-カテニン、および大腸癌変異遺伝子(mutated in colorectal cancer)(MCC)を含む、細胞遊走および細胞浸潤に関連したタンパク質を制御することを説明する。MCCは、大腸癌において、特に、リンパ節転移が増加した患者において、その遺伝子がプロモーターのメチル化によってサイレンシングされる腫瘍抑制因である。
【0160】
FMRPレベルは、E-カドヘリンおよびβ-カテニンを制御することによってCRC細胞遊走およびCRC細胞浸潤に影響を及ぼす
腫瘍細胞遊走および腫瘍細胞浸潤におけるFMRPの役割を調べるために、HCT-116細胞をibidi(登録商標)製のカルチャーインサートの各側に播種し、コンフルエントまで増殖させ、次いで、細胞を処理しないままにするか(U)、あるいはセンスFMRPオリゴヌクレオチド(S)(最終濃度0.5nM)またはアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチド(AS)(最終濃度0.5nM)を用いてトランスフェクトした。さらに、HCT-116細胞を、Matrigel(登録商標)を事前にコーティングしたTranswell(登録商標)製のインサートに播種し、細胞を処置しないままにするか(U)、あるいはセンスFMRPオリゴヌクレオチド(S)(最終濃度100nM)またはアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチド(AS)(最終濃度0.5nM)を用いて、48時間トランスフェクトするかのどちらかとした。
【0161】
図8Aおよび図8Bで示されるように、HCT-116細胞をアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチドを用いてトランスフェクトすることで、無処置の細胞またはセンスオリゴヌクレオチドを用いてトランスフェクトした細胞と比較して疑似「創傷」を覆う細胞の割合を大幅に低下させた。グラフは、3つの別々の実験における細胞で覆われた面積の平均比率±標準偏差を示す。
【0162】
同様に、図8Cおよび図8Dに示されるように、アンチセンスFMRPオリゴヌクレオチドを用いてトランスフェクトしたHCT-116細胞は、Matrigel(登録商標)をコーティングしたTranswell(登録商標)製のインサート全体にわたって、無処置の細胞またはセンスオリゴヌクレオチドを用いてトランスフェクトした細胞と比較して遊走を大幅に低下させたことを示した。グラフは、独立した3つの実験における遊走細胞の平均数±標準偏差を示す。
【0163】
FMRPが、細胞接着、骨格再構築、ならびに、腫瘍遊走および腫瘍浸潤の阻害に関連した鍵となるタンパク質であるE-カドヘリンレベルおよび/またはβ-カテニンレベルを制御するかを求めるために、細胞を処置しないままにするか(U)、あるいはFMRPセンス(S)オリゴヌクレオチド(最終濃度0.5nM)またはFMRPアンチセンス(AS)オリゴヌクレオチド(最終濃度0.5nM)のどちらかを用いて、48時間トランスフェクトした。
【0164】
図8E図8Gで示されるように、HCT-116細胞をアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチドを用いてトランスフェクトすることで、無処置の細胞またはセンスオリゴヌクレオチドを用いてトランスフェクトした細胞と比較してE-カドヘリン発現およびβ-カテニン発現を大幅に増加させた。図8Fおよび図8Gは、値を任意の単位(a.u.)で表しており、3つの別々の実験における平均±標準偏差を示す。
【0165】
FMRPは、E-カドヘリン発現およびβ-カテニン発現を制御するタンパク質であるMCCをダウンレギュレートする。
FMRPが、E-カドヘリン/β-カテニン複合体と相互作用することが公知のタンパク質であるMCCを制御するかを調べるために、HCT-116細胞を処置しないままにするか(U)、あるいはセンスFMRPオリゴヌクレオチド(S)(最終濃度0.5nM)またはアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチド(AS)(最終濃度0.5nM)を用いて、48時間トランスフェクトした。
【0166】
図9Aおよび図9Bに示されるように、アンチセンスFMRPオリゴヌクレオチドを用いてトランスフェクトしたHCT-116細胞は、無処置の細胞またはセンスFMRPオリゴヌクレオチドを用いてトランスフェクトした細胞と比較してMCC発現が大幅に増加したことを示した。
【0167】
最近の研究では、大腸細胞におけるE-カドヘリン/β-カテニン複合体を介した細胞間接着を制御する上でMCCの新規な腫瘍抑制機能について説明している。アンチセンスFMRPオリゴヌクレオチドを用いてトランスフェクトしたHCT-116細胞において観察されたE-カドヘリン発現およびβ-カテニン発現の増加(例えば、図8E図8G)は、MCCが媒介しているかを調べるために、細胞を処置しないままにするか(U)、あるいはセンスFMRPオリゴヌクレオチド(最終濃度0.5nM)もしくはアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチド(最終濃度0.5nM)、および/または、対照siRNA(siRNA Ctrl)もしくはMCCに特異的なsiRNA(siRNA MCC)を用いて、48時間トランスフェクトした。
【0168】
代表的なウエスタンブロット(図9C)および対応する定量できる分析(図9Dおよび図9E)に示されるように、siRNA MCCが存在することで、アンチセンスFMRPオリゴヌクレオチド単独でトランスフェクトした細胞においてE-カドヘリン発現およびβ-カテニン発現のアップレギュレーションを抑止した。
【0169】
大腸細胞株遊走および大腸細胞株浸潤において観察された阻害は(例えば、図8Aおよび図8B)、MCCがE-カドヘリン/β-カテニン複合体を制御する必要があるのかを調べるために、HCT-116細胞をibidi(登録商標)製のカルチャーインサートの各側に播種し、コンフルエントまで増殖させ、次いで、細胞を処理しないままにするか(U)、あるいはセンスオリゴヌクレオチド(S)(最終濃度0.5nM)もしくはアンチセンスオリゴヌクレオチド(AS)(最終濃度0.5nM)、および/または、siRNA CtrlもしくはsiRNA MCCを用いてトランスフェクトした。
【0170】
図9Fおよび図9Gに示されるように、MCCに特異的なsiRNAが存在することで、大腸癌細胞株遊走および大腸癌細胞浸潤においてアンチセンスFMRPオリゴヌクレオチドを介した阻害を大幅に低下させた。これらのデータを合わせると、FMRPは、MCC/E-カドヘリン/β-カテニン複合体を制御することによって、結腸癌細胞における細胞間接着を調節することを示唆している。
【0171】
参照による組み込み
本明細書で引用される特許文献および科学論文のそれぞれの開示全体は、全ての目的のために参照により組み込まれる。
【0172】
等価物
本開示は、その本質的な特性から逸脱することなく他の特定の形態で具体化してもよい。したがって、前述の実施形態は、本明細書に記載される開示に限定するのではなく、例示的なものとみなされるべきである。本開示の範囲は、前述の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と同等の意味および範囲内に入る変更は全て特許請求の範囲に包含されるものとする。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
【配列表】
2022521502000001.app
【国際調査報告】