IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 博瑞生物医薬(蘇州)股▲分▼有限公司の特許一覧

特表2022-521529CD44標的化マルチアームコンジュゲート
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-08
(54)【発明の名称】CD44標的化マルチアームコンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/60 20170101AFI20220401BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20220401BHJP
   A61K 47/58 20170101ALI20220401BHJP
   A61K 47/59 20170101ALI20220401BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20220401BHJP
   A61K 47/66 20170101ALI20220401BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20220401BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220401BHJP
   C07D 491/22 20060101ALN20220401BHJP
【FI】
A61K47/60
C07K7/06 ZNA
A61K47/58
A61K47/59
A61K47/61
A61K47/66
A61K31/4745
A61P35/00
C07D491/22
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549200
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(85)【翻訳文提出日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 CN2020075578
(87)【国際公開番号】W WO2020169004
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】201910131331.1
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】516355265
【氏名又は名称】博瑞生物医薬(蘇州)股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BRIGHTGENE BIO-MEDICAL TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】BUILDING C25, NO.218, XINGHU STREET, BIO-BAY, SUZHOU INDUSTRIAL PARK, SUZHOU, JIANGSU 215123, PEOPLE’S REPUBLIC OF CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100094248
【弁理士】
【氏名又は名称】楠本 高義
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】袁建棟
(72)【発明者】
【氏名】黄仰青
(72)【発明者】
【氏名】宋云松
【テーマコード(参考)】
4C050
4C076
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050AA07
4C050BB04
4C050CC07
4C050DD02
4C050EE02
4C050FF02
4C050GG03
4C050HH01
4C050HH04
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE09
4C076EE11
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE30
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF32
4C076FF34
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086FA06
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA15
4H045DA83
4H045EA28
4H045FA51
(57)【要約】
CD44を特異的に標的化する能力を有する多分岐薬物コンジュゲートのクラスが開示される。この化合物のクラスは、CD44に特異的に結合し、且つCD44の高発現を有する腫瘍細胞及び組織を標的化し得、それにより、標的組織中のコンジュゲートの濃度が高く、その臨床治療効果が改善され、且つ毒性が低減される。本発明の化合物は、限定はされないが、胃癌、膵癌、小細胞肺癌、結腸癌、乳癌、肺腺癌、肝癌、上咽頭癌、悪性神経膠腫、リンパ腫、腎癌、卵巣癌、頭頸部癌、扁平上皮癌などを含む、CD44の高発現を有するあらゆる腫瘍の治療に好適である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(I):
【化48】
(式中、Rは、有機コアであり、POLYは、ポリマーであり、Lは、多価リンカーであり、Tは、ターゲティング分子であり、Dは、活性薬剤であり、及びqは、3~8の任意の整数であり、ここで、Dは、以下の式:
【化49】
(式中、R~Rは、互いに独立に、以下の基:水素、ハロゲン、アシル、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アジド、アミド、ヒドラジン、アミン、置換アミン、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルオキシ、任意選択で置換されたカルバモイルオキシ、アリールスルホニルオキシ、アルキルスルホニルオキシ及びRC(O)O-(ここで、Rは、ハロゲン、アミノ、置換アミノ、ヘテロ環及び置換ヘテロ環である)から選択され;Rは、H又はORであり;Rは、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ハロアルキル又はヒドロキシアルキルであり;Rは、ヒドロキシ、アミノ又はチオールである)
によって表されるカンプトテシン系薬物であり;及び
Tは、CD44標的化ポリペプチドである)
の多分岐薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
請求項1に記載の多分岐薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容可能な塩
【化50】
(式中、Rは、有機コアであり、POLYは、ポリマーであり、Lは、多価リンカーであり、Tは、ターゲティング分子であり、Dは、活性薬剤であり、及びqは、3~8の任意の整数であり、ここで、Dは、以下の式:
【化51】
(式中、R~Rは、互いに独立に、以下の基:水素、ハロゲン、アシル、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アジド、アミド、ヒドラジン、アミン、置換アミン、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルオキシ、カルバモイルオキシ、アリールスルホニルオキシ及びアルキルスルホニルオキシから選択され;Rは、H又はORであり;Rは、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ハロアルキル又はヒドロキシアルキルであり;Rは、ヒドロキシである)
によって表されるカンプトテシン系薬物であり;及び
Tは、CD44標的化ポリペプチドである)。
【請求項3】
POLYは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシアルキルアミン)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシアルキル)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリホスファジン、ポリオキサゾリン又はポリ(N-アクリロイルモルホリン)である、請求項1又は2に記載の多分岐薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
POLYは、
【化52】
(式中、kは、5~500、好ましくは50~200であり、及び最も好ましくは、kは、113であり;rは、1~10の任意の整数であり;「&」を付された酸素原子は、前記有機コアRに結合された原子であり;及び前記kは、繰り返し単位の平均数を表す)
である、請求項3に記載の多分岐薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
【化53】
である、請求項4に記載の多分岐薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項6】
前記多価リンカーLは、
【化54】
(式中、記号「*」は、前記多価リンカーLの前記ターゲティング分子Tへの結合点を表し、「#」は、前記多価リンカーLの前記活性薬剤Dへの結合点を表し、及び「%」は、前記多価リンカーLの前記POLYへの結合点を表し、mは、1~20の任意の整数であり、且つl及びnは、独立に、1~10の任意の整数であり、及び
好ましくは、lは、5であり、mは、3であり、及びnは、4である)
である、請求項5に記載の多分岐薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項7】
Dは、イリノテカン又はSN38である、請求項6に記載の多分岐薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項8】
Tは、Ac-KPSSPPEE-NH、Ac-NASAPPEE-NH、ヒアルロン酸(HA)、オステオポンチン(OPN)、セルグリシン、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、コンドロイチン硫酸C(CSC)、ヘパラン硫酸(HS)、アンキリン、ガレクチン-3、L-セレクチン、P-セレクチン、C型レクチン又はアドレシンである、請求項1~7のいずれか一項に記載の多分岐薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項9】
Tは、Ac-KPSSPPEE-NH又はAc-NASAPPEE-NH並びにその置換変異体、付加変異体及び化学修飾誘導体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の多分岐薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項10】
【化55】
【化56】
(式中、化合物A、化合物B、化合物C及び化合物Dの分子構造中の各kは、独立に、101~125であり、好ましくは、各kは、独立に、113である)
である、請求項8に記載の多分岐薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項11】
【化57】
【化58】
である、請求項9に記載の多分岐薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項12】
化合物a、化合物b、化合物c及び化合物dの塩酸塩であって、各分岐鎖は、それぞれ塩酸の1つ又は2つの分子に結合されている、塩酸塩;又は化合物a、化合物b、化合物c及び化合物dの酢酸塩であって、各分岐鎖は、それぞれ酢酸の1つ又は2つの分子に結合されている、酢酸塩である、請求項11に記載の多分岐薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項13】
CD44の高発現を有する腫瘍を治療するための薬物の調製における、請求項1~12のいずれか一項に記載の多分岐薬物コンジュゲートの使用。
【請求項14】
前記CD44の高発現を有する腫瘍は、胃癌、膵癌、小細胞肺癌、結腸癌、乳癌、肺腺癌、肝癌、上咽頭癌、悪性神経膠腫、リンパ腫、腎癌、卵巣癌、頭頸部癌及び扁平上皮癌から選択される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の多分岐薬物コンジュゲート又は薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項16】
CD44の高発現を有する腫瘍を治療するための薬物の調製における、請求項15に記載の組成物の使用。
【請求項17】
前記CD44の高発現を有する腫瘍は、胃癌、膵癌、小細胞肺癌、結腸癌、乳癌、肺腺癌、肝癌、上咽頭癌、悪性神経膠腫、リンパ腫、腎癌、卵巣癌、頭頸部癌及び扁平上皮癌から選択される、請求項16に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、マルチアームターゲティングコンジュゲートに関する。詳細には、本発明は、CD44を標的にする分子と抗癌剤とが相乗効果を付与する、マルチアームコンジュゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、悪性腫瘍は、死亡率及び罹患率の両方が明らかな上昇傾向を見せており、ヒトの健康にとって深刻な脅威となっている。
【0003】
CD44は、広範に分布する様々な分子型の内在性膜糖タンパク質の群であり、細胞外領域と、膜貫通領域と、膜近位領域とを含む。CD44は、I型膜貫通糖タンパク質であり、初めにヒアルロン酸に結合して細胞内シグナル伝達経路を惹起し、次にシェディング、転移及び浸潤を含めた一連の細胞応答を引き起こす。細胞接着分子ファミリーのメンバーであるCD44は、組織構造の完全性の維持に極めて重要な細胞間及び細胞と細胞外マトリックスとの間の接着及び結合の調節において重要な役割を果たす。CD44は、細胞内シグナルを伝達し、乳癌細胞及び結腸直腸癌細胞などの腫瘍細胞の発生、活性等を調節することもできる。現在、多くの研究が明らかにしているところによれば、CD44は、腫瘍の発生、発達、浸潤及び転移に密接に関連し、多くの場合に腫瘍発生の初期に発現して、腫瘍の発達に伴って発現の差が大きくなり、及び例えばCD44が一部の前癌病変で発現する。
【0004】
用語「CD44標的化ポリペプチド」は、CD44を標的として結合する能力を有するポリペプチドを指す。典型的には、「CD44標的化ポリペプチド」は、以下の構造:Ac-KPSSPPEE-NH及びAc-NASAPPEE-NHを有するポリペプチドを含む。上述の2つのポリペプチドは、CD44の連結ドメインの一部と一定の配列相同性を有し、CD44を標的として結合する能力を有する。
【0005】
具体的には、Ac-KPSSPPEE-NHの構造を有するポリペプチドはA6ポリペプチドとも称され、A6の構造は、以下:
【化1】
のとおりであり、及びAc-NASAPPEE-NHの構造を有するポリペプチドは、以下:
【化2】
のとおりである。
【0006】
国際公開第2005028539号パンフレット、国際公開第2010019233号パンフレット、国際公開第2011063156号パンフレット及び国際公開第2011063158号パンフレットは、臨床第3相開発段階にある、主に転移性乳癌に使用されるNektar Therapeuticsからの薬物nktr-102を開示している。この薬物は、水溶性の多分岐ポリマープロドラッグであり、以下の構造を有して薬物負荷量の向上を実現する。
【化3】
【0007】
この化合物は、マルチアームPEGがイリノテカンに連結していることにより、抗癌効果が影響を受けることなく、水溶性の増加、薬物負荷量の向上、副作用の低下を呈し得る。しかしながら、この薬物には、なおも欠点があり、例えば、これは、ターゲティング能力が低くて特異的癌細胞に作用することができず、また、これは、癌細胞の殺傷時に正常細胞の特性にも影響を及ぼし得るため、比較的高い有害作用発生率につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
中国特許出願公開第108727583 A号明細書は、マルチアームのポリマー修飾されたターゲティング抗癌コンジュゲートを開示しており、これは、高い負荷能力を呈する化合物のクラスであり、且つターゲティング能力を有するため、標的組織中のコンジュゲート濃度が高くなる。しかしながら、悪性腫瘍細胞の構造、機能及び代謝が異常であることに起因して、そうした細胞は、無秩序な方法で無限に分裂及び増殖することができ、従って除去が極めて困難である。従って、医薬品研究開発では、より良好な治療効果を有する抗癌薬を引き続き開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ターゲティング多分岐薬物コンジュゲートを開示し、このコンジュゲートは、3つ以上の分岐鎖を有し、以下の式:
【化4】
(式中、Rは、有機コアであり、POLYは、ポリマーであり、Lは、多価リンカーであり、Tは、ターゲティング分子であり、Dは、活性薬剤であり、及びqは、3~8の任意の整数である)
によって表され得る。
【0010】
有機コア、「R」
構造式(I)において、「R」は、1~100個の原子を有する有機コア基である。好ましくは、Rは、3~50個の原子を含有し、より好ましくは、Rは、約3~30個の原子を含有する。Rは、全ての原子が炭素原子であるコア基であり得るか、又は使用される具体的な中心分子に応じて、O、S、N及びPなど、1個以上のヘテロ原子を選択的に含有し得る。Rは、直鎖、分枝又は環状コア基であり得、少なくとも3つの独立したポリマー分岐鎖を有する。構造式(I)において、「q」は、「R」のポリマー分岐鎖の数に対応する数である。
【0011】
一部の詳細な実施形態において、「R」は、3つのポリマー分岐鎖を有し、「R」は、好ましくは、
【化5】
である。
【0012】
一部の詳細な実施形態において、「R」は、4つのポリマー分岐鎖を有し、「R」は、好ましくは、
【化6】
である。
【0013】
一部の詳細な実施形態において、「R」は、6つのポリマー分岐鎖を有し、「R」は、好ましくは、
【化7】
である。
【0014】
一部の詳細な実施形態において、「R」は、8つのポリマー分岐鎖を有し、「R」は、好ましくは、
【化8】
である。
【0015】
ポリマー、「POLY」
構造式(I)において、「POLY」は、ポリマー、好ましくは水溶性ポリマーであり、本発明のコンジュゲートの形成には、任意の水溶性ポリマーを使用することができる。本発明のポリマーは、任意の幾何学的形状又は形態であり得る。代表的なポリマーとしては、限定はされないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシアルキルアミン)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシアルキル)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリホスファジン、ポリオキサゾリン及びポリ(N-アクリロイルモルホリン)が挙げられる。
【0016】
典型的な化合物において、「POLY」は、ポリエチレングリコールであり、これは、線状、分岐状及びフォーク状の形状又は形態を含む任意の幾何学的形状又は形態であり得;好ましくは、本発明の好ましい「POLY」は、線状ポリエチレングリコールであり、これは、典型的には、以下のとおりの構造を有する:
【化9】
は、原子間の結合を表し、及び「&」を付された酸素原子は、有機コア「R」に結合された原子であり、kは、約5~500、最も好ましくは50~200、好ましくは101~125の範囲であり、より好ましくは、kは、113である)。ポリマーの分野では、kは、ポリマーの重合度、即ちポリマーの分子量に応じてポリマーの高分子鎖に含まれる繰り返し単位の平均数を表すことが当業者に公知のはずである。例えば、kが113であるとき、高分子鎖に含まれる繰り返し単位の平均数は、113である。ポリマーの高分子鎖に含まれる繰り返し単位の平均数が113であるとき、ポリマーの分子鎖は、実際には異なる数の繰り返し単位を含み得る。例えば、ポリマーの異なる分子鎖は、実際には例えば100~130個の繰り返し単位を含み得る。
【0017】
rは、1~10の任意の整数であり;より好ましくは、本発明の「POLY」は、
【化10】
である。
【0018】
本発明のPOLYは、
【化11】
等でもあり得る。
【0019】
本発明の詳細な実施形態において、「R」は、5個の炭素原子を有する有機コア基であり、各分岐鎖が線状ポリエチレングリコール連結アームを含む4つのポリマー分岐鎖に結合され得る。
【0020】
構造式(I)の多分岐薬物コンジュゲートの詳細な調製では、所要のマルチアームポリマー、即ちq本のポリマーアームに結合するR
【化12】
は、予め調製又は購入することができる。
【0021】
詳細な実施形態において、マルチアームポリマー
【化13】
は、3アームPEG20K-SCM、4アームPEG20K-SCM又は8アームPEG20K-SCMであり得、ここで、
【化14】
は、好ましくは、約20kDaの分子量を有する。表現「約20kDa」は、20000±2000の間の分子量を指す。
【0022】
本発明の例で使用される4アーム-PEG20K-SCMは、以下のとおりの構造を有する。
【化15】
【0023】
本発明の好ましい実施形態において、「POLY」は、線状ポリエチレングリコール連結アームであり、即ち、本発明のコンジュゲートは、好ましくは、以下のとおりの化合物である。
【化16】
【0024】
本発明において、多価リンカーLは、好ましくは、
【化17】
であり、式中、記号「*」は、多価リンカーLのターゲティング分子Tへの結合点を表し;「#」は、多価リンカーLの活性薬剤Dへの結合点を表し;及び「%」は、多価リンカーLのPOLYへの結合点を表し、mは、1~20の任意の整数であり、且つl及びnは、独立に、1~10の任意の整数である。最も好ましくは、lは、5であり、mは、3であり、及びnは、4であり、即ち、本発明の好ましい多価リンカーLは、
【化18】
である。
【0025】
Dは、以下の式:
【化19】
によって表されるカンプトテシン系薬物である。R~Rは、互いに独立に、以下の基:水素、ハロゲン、アシル、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アジド、アミド、ヒドラジン、アミン、置換アミン、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルオキシ、任意選択で置換されたカルバモイルオキシ、アリールスルホニルオキシ、アルキルスルホニルオキシ及びRC(O)O-(ここで、Rは、ハロゲン、アミノ、置換アミノ、ヘテロ環又は置換ヘテロ環である)から選択され;Rは、H又はORであり;Rは、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ハロアルキル又はヒドロキシアルキルであり;Rは、ヒドロキシ、アミノ又はチオールである。
【0026】
ヘテロ環は、好ましくは、含窒素ヘテロ環、より好ましくは5~6員含窒素ヘテロ環である。置換基を有する上述の基に関して、その置換基は、ヒドロキシ、シアノ、C1~C5直鎖又は分枝アルキル、C3~C7シクロアルキル、C1~C5直鎖又は分枝アルコキシ、5~6員環ヘテロシクリル、5~12員環アリール又は5~12員環ヘテロアリールから選択され得、好ましくは、5~12員環ヘテロアリール及び5~6員環ヘテロシクリルのヘテロ原子は、窒素原子である。ヘテロ環は、例えば、ピロール、ピペリジン等であり得、5~6員環ヘテロシクリルは、例えば、ピロリル又はピペリジニルであり得;アリールは、フェニル、ナフチル、ビフェニル及びその類似体を含む。
【0027】
加えて、置換カルバモイルオキシに関して、その置換基は、それが結合するN原子と一緒になって6員環を形成することもでき、この6員環も上述の置換基を有することができる。
【0028】
好ましくは、Dは、イリノテカン又はSN38である。
【0029】
イリノテカンは、以下のとおりの構造を有する。
【化20】
【0030】
SN38は、以下のとおり構造を有する。
【化21】
【0031】
Tは、ターゲティング分子であり、これは、CD44への結合能を有する「CD44標的化ポリペプチド」である。典型的には、「CD44標的化ポリペプチド」は、以下の配列を有するポリペプチドを含む:
Ac-KPSSPPEE-NH;Ac-NASAPPEE-NH;QETWFQNGWQGKNP;KEKWFENEWQGKNP;KEQWFGNRWHEGYR;及びQIRQQPRDPPTETLELEVSPDPAS。
【0032】
上述のポリペプチドの置換変異体、付加変異体及び化学修飾誘導体も含まれる。
【0033】
Tは、国際公開第99/05263号パンフレットに開示されるポリペプチド、即ち以下の配列:Lys-Pro-Ser-Ser-Pro-Pro-Glu-Glu(KPSSPPEE)及びAsn-Ala-Ser-Ala-Pro-Pro-Glu-Glu(NASAPPEE)を有するポリペプチド又はその置換変異体、付加変異体及び化学修飾誘導体でもあり得る。加えて、Tは、国際公開第2007141533号パンフレットに開示されるFKBP-Lポリペプチドであり得る。
【0034】
ターゲティング分子Tは、CD44への結合能を有するモノクローナル抗体又はその天然リガンドでもあり得る。CD44への結合能を有する天然リガンドとしては、限定はされないが、ヒアルロン酸(HA)、オステオポンチン(OPN)、セルグリシン、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、コンドロイチン硫酸C(CSC)、ヘパラン硫酸(HS)、アンキリン、ガレクチン-3、L-セレクチン、P-セレクチン、C型レクチン及びアドレシンが挙げられる。
【0035】
本発明のターゲティング分子Tは、好ましくは、Ac-KPSSPPEE-NH又はAc-NASAPPEE-NH-であり、これらの2つのポリペプチドは、末端基のNH端を介して多価リンカーLに連結される。
【0036】
本発明の詳細な実施形態において、構造式(I)の多分岐薬物コンジュゲートは、以下のとおりの化合物A、化合物B、化合物C及び化合物D:
【化22】
【化23】
(式中、化合物A、化合物B、化合物C及び化合物Dの分子構造中の各kは、独立に、101~125であり、好ましくは、各kは、独立に、113である)
を含む。
【0037】
本発明の詳細な実施形態において、構造式(I)の多分岐薬物コンジュゲートは、
【化24】
(化合物aにおいて、Dは、イリノテカンであり、及びTは、A6、即ちAc-KPSSPPEE-NHである);
【化25】
(化合物bにおいて、Dは、イリノテカンであり、及びTは、Ac-NASAPPEE-NHである);
【化26】
(化合物cにおいて、Dは、SN38であり、及びTは、A6、即ちAc-KPSSPPEE-NHである);
【化27】
(化合物dにおいて、Dは、SN38であり、及びTは、Ac-NASAPPEE-NHである)
である。
【0038】
本発明のある実施形態において、構造式(I)の多分岐薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容可能な塩を調製する方法は、
活性薬剤Dを多価リンカーLに連結してD-L部分を得ること;
D-L部分をマルチアームポリマー
【化28】
に連結して、
【化29】
を得ること;及び
【化30】
をターゲティング分子Tに連結すること
を含む。
【0039】
本発明は、マルチアームポリマーで修飾されたターゲティング抗癌コンジュゲートに関し、ここで、水溶性ポリマーによる修飾は、コンジュゲートの水溶性を増強し、従って薬物負荷量を増加させることができ;及びターゲティング分子は、ターゲティング能力が向上するため、標的組織中のコンジュゲートの濃度が高くなり;Lは、第一にターゲティング分子を抗癌薬に連結し、次にターゲティング分子及び抗癌薬をポリマーアームに連結する機能を有する任意の連結リンカーであるため、コンジュゲート全体が有機的統一体を形成することになる。本発明のコンジュゲートは、典型的には、プロドラッグであり、活性薬剤Dは、加水分解又は酵素性分解によって親から放出及び分離されて、生理学的活性を発揮する。非コンジュゲート化薬物と比較すると、本発明のコンジュゲートは、一層強力な効果を示し、ヒト又は他の動物の体内で一層高濃度化する。
【0040】
本発明のコンジュゲートの薬学的に許容可能な塩は、無機塩類及び有機塩類を含み、典型的には硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、フッ化水素塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、ギ酸塩、乳酸塩、安息香酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ジクロロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、混合クロロフルオロ酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、スルホン酸塩、メシル酸塩、トリフルオロメシル酸塩、ヘプタンスルホン酸塩等、好ましくは塩酸塩及び酢酸塩を含み、ここで、これらの塩は、医薬品化学の分野における従来手段により調製することができる。
【0041】
本発明の詳細な実施形態において、化合物A、化合物B、化合物C及び化合物Dの塩は、典型的には、塩酸塩及び酢酸塩を含み、ここで、塩酸塩は、典型的には、各分岐鎖がそれぞれ塩酸の1つ又は2つの分子に結合されている、塩酸塩であり、酢酸塩は、典型的には、各分岐鎖がそれぞれ酢酸の1つ又は2つの分子に結合されている、酢酸塩である。
【0042】
化合物a、化合物b、化合物c及び化合物dの塩酸塩は、典型的には、各分岐鎖がそれぞれ塩酸の1つ又は2つの分子に結合されている、塩酸塩であり、このコンジュゲートは、好ましくは、4つ又は8つの分子を含む塩酸塩である。
【0043】
化合物a、化合物b、化合物c及び化合物dの酢酸塩は、典型的には、各分岐鎖がそれぞれ酢酸の1つ又は2つの分子に結合されている、酢酸塩であり、このコンジュゲートは、好ましくは、4つ又は8つの分子を含む酢酸塩である。
【0044】
本発明の化合物は、CD44への特異的結合能を有し、且つCD44の高発現を有する腫瘍細胞及び組織を標的とし得、それにより、標的組織中のコンジュゲートの濃度が高く、その臨床治療効果が改善され、且つ毒性が低減される。
【0045】
本発明の化合物は、限定はされないが、胃癌、膵癌、小細胞肺癌、結腸癌、乳癌、肺腺癌、肝癌、上咽頭癌、悪性神経膠腫、リンパ腫、腎癌、卵巣癌、頭頸部癌、扁平上皮癌などを含む、CD44の高発現を有するあらゆる腫瘍の治療に好適である。
【0046】
本発明は、CD44の高発現を有する腫瘍を治療する方法も提供し、この方法は、CD44の高発現を有する腫瘍に罹患している哺乳類に、治療有効量の、本発明によって提供される構造式(I)の多分岐薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含み、ここで、哺乳類は、ヒトを含む。
【0047】
本発明は、CD44の高発現を有する腫瘍を治療する方法も提供し、この方法は、CD44の高発現を有する腫瘍に罹患している哺乳類に治療有効量の医薬組成物を投与することを含み、ここで、哺乳類は、ヒトを含み、及びこの医薬組成物は、構造式(I)の多分岐薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明を以下に詳細に記載する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で特別に具体化され得、本明細書に記載される例に限定されるべきでなく、これらの例は、本開示をより完全で徹底したものとするために提供される。使用される試薬及び原材料は、その調製方法が提供されるものを除いて、市販のものである。4アームPEG20K-SCMは、Beijing Jenkem Technology Co.,Ltd.から購入され、分子量が約20kDaである。特に定義しない限り、本明細書における全ての科学技術用語は、特許請求の範囲の主題が関係する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。
【0049】
4アーム-PEG20K-SCMは、以下のとおりの構造を有する。
【化31】
【0050】
【表1】
【実施例
【0051】
実施例1
【化32】
1.BP103aの調製
250ml三つ口フラスコに18.20gの化合物BP103a05及び100mlのEAを加え;この化合物を撹拌しながら溶解させて、次に混合物を0℃に冷却し;150mlのHCl/EA(3.5M)を加え、温度を0℃に維持し;TLCにより反応が完了したことが検出された後、反応液を濃縮乾固し、メチルtert-ブチルエーテルを加えることによりスラリー化してろ過し;及びろ過ケーキをTBMEで洗浄し、真空乾燥させて、10.40gのBP103aを白色固体として得た。
【0052】
2.BP103a07の調製
100mLフラスコに3.00gのBP103a(1.0当量)、4.02g(1.0当量)のBP102c07、40mlのDCM及び4.0mlのDIEA(2.0当量)を加え、この混合物を室温で撹拌し;TLCにより反応が完了したことが検出された後、有機溶媒を蒸発除去し;及び残渣をカラムクロマトグラフィーに供して6.4gのBP103a07を油として得た。
【0053】
3.BP103a08の調製
200ml三つ口フラスコに9.00gのBP103a07(1.0当量)、3.96gのHOSU(1.53当量)、90mlのDCM及び6.60gのEDC・HCl(1.53当量)を加え、室温で2時間反応させ;及びTLCにより反応が完了したことが検出された後、混合物をDCMで希釈し、次に50mmol/Lのリン酸二水素カリウム水溶液で2回洗浄し、飽和ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、5.93gのBP103a08を無色の油として得た。
【0054】
4.BP103a30の調製
200mLフラスコに2.93gの化合物NH-Lys(Boc)-OH・HCl(1.0当量)、60mlの水及び2.00gのNaHCO(2.0当量)を加え;60mlのDME中5.91gのBP103a08(1.0当量)の溶液を撹拌しながら滴下して加え;60mlのTHFを補足し;この混合物を一晩撹拌し;TLCにより反応が完了したことが検出された後、有機溶媒を蒸発除去し;及び残渣を希塩酸でpH≒3に調整し、EAで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、4.50gのBP103a30を無色の油として得た。
【0055】
5.BP103a31の調製
100ml三つ口フラスコに5.00gのBP103a30(1.0当量)、1.40gのHOSU(1.53当量)、50mlのDCM及び2.33gのEDC・HCl(1.53当量)を加え、室温で2時間反応させ;及びTLCにより反応が完了したことが検出された後、混合物をDCMで希釈し、次に50mmol/Lのリン酸二水素カリウム水溶液で2回洗浄し、飽和ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、4.89gのBP103a31を無色の油として得た。
【0056】
実施例2 中間体Ac-KPSSPPEEC-NHの合成
【化33】
当業者に周知のFmoc固相合成法を用いてAc-KPSSPPEEC-NHを合成し;Fmocは、Rinkアミド樹脂及び20%のピペリジン/DMFを使用することにより除去し;カップリング試薬としてHOBT/DICを使用し、反応溶媒としてDMFを使用し;反応は、ニンヒドリン検出法によりモニタし;以下の保護されているアミノ酸を樹脂に順次カップリングし:Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Pro-OH及びFmoc-Lys(Boc)-OH;得られた生成物を無水酢酸及びピリジンでアセチル化し、次にDMF、メタノール及びDCMで洗浄し、乾燥させ;溶解試薬(TFA:チオアニソール:フェノール:TIS=85:5:5:5)を加え;2時間反応させた後、氷冷TBMEを用いて混合物を沈殿させて遠心すると、粗製Ac-KPSSPPEEC-NHが得られ、これを分取HPLCにより精製し、次に凍結乾燥させて、純粋な生成物を得た。
【0057】
実施例3 中間体Ac-NASAPPEEC-NHの合成
【化34】
当業者に周知のFmoc固相合成法を用いてAc-NASAPPEEC-NHを合成し;Fmocは、Rinkアミド樹脂及び20%のピペリジン/DMFを使用することにより除去し;カップリング試薬としてHOBT/DICを使用し、反応溶媒としてDMFを使用し;反応は、ニンヒドリン検出法によりモニタし;以下の保護されているアミノ酸を樹脂に順次カップリングし:Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Ala-OH及びFmoc-Asn(Trt)-OH;得られた生成物を無水酢酸及びピリジンでアセチル化し、次にDMF、メタノール及びDCMで洗浄し、乾燥させ;溶解試薬(TFA:チオアニソール:フェノール:TIS=85:5:5:5)を加え;2時間反応させた後、氷冷TBMEを用いて混合物を沈殿させて遠心すると、粗製Ac-NASAPPEEC-NHが得られ、これを分取HPLCにより精製し、次に凍結乾燥させて、純粋な生成物を得た。
【0058】
実施例4
【化35】
1.BP143b02の調製
250mL丸底フラスコに3.50gの塩酸イリノテカン三水和物(1.0当量)及び52.5mlのDMFを加え、60℃に加熱してそれを溶解させ;5~10分後、DMFを減圧下で蒸発除去し;300mlのn-ヘプタンを加え、混合物を減圧下で3回蒸留し、ロータリーエバポレーターにかけ;次に、105mlのDCM、1.08gのBoc-Gly-OH(1.2当量)及び63mgのDMAP(0.1当量)を加え;10mlのDCM中1.59gのDCC(1.5当量)の溶液を滴下して加え、混合物を20℃で4時間反応させ;TLCにより反応が完了したことが検出された後、混合物をろ過し、元の容積の25%に濃縮し、120mlのIPAを加え;溶媒の75%を蒸発除去し;及び150mlのn-ヘプタンを加え、混合物を室温で1時間撹拌し、ろ過し、n-ヘプタンで2回洗浄し、乾燥させて、4.02gのBP143b02を淡黄色固体として得た。
【0059】
2.BP143b03の調製
100ml三つ口フラスコに4.02gのBP143b02及び50mlのDCMを加え、この化合物を撹拌しながら溶解させ;次に11.6mlのTFAを滴下して加え、混合物を室温で2時間反応させ;TLCにより反応が完了したことが検出された後、150mlのアセトニトリルを加え;120mlの溶媒を減圧下で留去し、残渣を320mlのTBME溶液に注入し;この混合物を30分間撹拌し、ろ過し;及びろ過ケーキをTBMEで洗浄して、4.00gのBP143b03を淡黄色固体として得た。
【0060】
3.BP143b04の調製
200ml三つ口フラスコに3.69gのBP143b03、100mlのDCM、3.21g(1.05当量)のBP103a30、2.7mlのDIEA(3.0当量)及び1.2mlのDEPC(1.5当量)を加え、室温で1時間反応させ;TLCにより反応が完了したことが検出された後、混合物をDCMで希釈し、次に水で2回洗浄し、飽和ブラインで1回洗浄し、乾燥させて、濃縮し、HPLCにより精製し、次に凍結乾燥して、1.85gのBP143b04を淡黄色固体として得た。
【0061】
4.BP143b05の調製
50mL丸底フラスコに1.20gのBP143b04及び10mlの10%TFA/DCMを加え、室温で反応させ;TLCにより反応が完了したことが検出された後、得られた生成物をTBMEに注入し、この混合物を遠心し、乾燥させて、210mgの化合物BP143b05を淡黄色固体として得た。
【0062】
5.BP143b06の調製
10mL丸底フラスコに51mgのBP143b05(4.0当量)、2mlのDCM、11ulのTEA(8.0当量)及び201mgの4アームPEG20K-SCM(1.0当量)を加え、室温で一晩反応させて濃縮し;得られた生成物をTBMEに加え、混合物を遠心し、分取HPLCにより精製し、凍結乾燥して、85mgの化合物BP143b06を黄色がかった緑色の固体として得た。
【0063】
実施例5
【化36】
1.BP149a01の調製
100ml三つ口フラスコに10.00gの化合物SN38(1.0当量)及び110mlのDMSOを加え;化合物が溶解して澄明な溶液が生じた後、5.56gの(Boc)O(1.0当量)及び9.82gのDIEA(3.0当量)を加え、混合物を2時間反応させ;TLCにより反応が完了したことが検出された後、反応液を精製水に注入し、この混合物を酢酸エチルで3回抽出し;有機相を合わせ、精製水及び飽和ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させると、オフホワイトの固体が得られ、これを、メチルtert-ブチルエーテルを加えることによりスラリー化し、ろ過し、乾燥させて、7.95gの化合物BP149a01をオフホワイトの固体として得た。
【0064】
2.BP149a02の調製
250mL丸底フラスコに7.95gの化合物BP149a01(1.0当量)、2.83gのBoc-Gly-OH(1.0当量)、80mlのジクロロメタン及び390mgのDMAP(0.2当量)を加え;20mlのDCM中5.00gのDCC(1.5当量)の溶液を滴下して加え、混合物を室温で1時間反応させ;TLCにより反応が完了したことが検出された後、混合物をろ過し、液体が全て蒸発するまで濃縮し;30mlのIPAを加えて溶解させることにより澄明な溶液を生じさせ、次に200mlのn-ヘプタンを加え;及びこの混合物を30分間撹拌してスラリー化し、ろ過し、n-ヘプタンで2回洗浄し、乾燥させて、8.73gの化合物BP149a02を淡黄色固体として得た。
【0065】
3.BP149a03の調製
100ml三つ口フラスコに8.73gの化合物BP149a02及び40mlのDCMを加え;この化合物を撹拌しながら溶解させて、次に混合物を0℃に冷却し;40mlのTFAを滴下して加え、混合物を室温で2時間反応させ;TLCにより反応が完了したことが検出された後、反応液を800mlのTBME溶液に注入し、この混合物を30分間撹拌し、ろ過し;及びろ過ケーキをTBMEで洗浄し、真空乾燥させて、4.95gのBP149a03を淡黄色固体として得た。
【0066】
4.BP149b01の調製
200ml三つ口フラスコに2.3gの化合物BP149a03、45mlのDCM、3.196gの化合物BP103a31(1.05当量)及び1.75mlのTEA(3.0当量)を加え、室温で4時間反応させ;TLCにより反応が完了したことが検出された後、混合物をDCMで希釈し、希塩酸で1回洗浄し、水で2回洗浄し、飽和ブラインで1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて濃縮すると、粗製生成物が得られ、これを分取HPLCにより精製し、DCMで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、濃縮し、乾燥させて、2.20gのBP149b01を淡黄色固体として得た。
【0067】
5.BP149b02の調製
200ml三つ口フラスコに2.0gの化合物BP149b01及び40mlの10%TFA/DCMを加え、室温で反応させ;TLCにより反応が完了したことが検出された後、得られた生成物をTBMEに注入し、この混合物を遠心し、乾燥させて、1.75gのBP149b02を淡黄色固体として得た。
【0068】
6.BP149b03の調製
200ml三つ口フラスコに4.08gの化合物BP149b02(5.0当量)、100mlのDMF、1.96gのDIEA(20当量)及び16.05gの4アームPEG20K-SCM(1.0当量)を加え、室温で2時間反応させて、得られた生成物を1Lのメチルtert-ブチルエーテルに注入し;この混合物を30分間撹拌し、次にろ過し、乾燥させると、20.50gの粗製生成物がオフホワイトの固体として得られ、これを分取HPLCにより精製し、凍結乾燥して、12.36gの純粋なBP149b03を得た。
【0069】
実施例6
【化37】
室温において、100ml三つ口反応フラスコに2.00g(1.0当量)のBP143b06及び35mlのpH=7.0のPBS溶液を加え、撹拌しながら溶解させることにより、澄明な溶液を生じさせ;0.45g(5.0当量)のターゲティングポリペプチド1(Ac-KPSSPPEEC-NH)を30mlの精製水に溶解させ、この混合物を重炭酸ナトリウム溶液でpH≒6.5に調整し、次に反応フラスコに加え;0.5時間後、HPLCにより反応が完了したことが検出され、得られた生成物を分取HPLCにより精製し、凍結乾燥して、MALDI-TOFにより検出して分子量が28810.73の、1.65gの純粋な化合物aを得た。
【0070】
実施例7
【化38】
室温において、100ml三つ口反応フラスコに2.00g(1.0当量)のBP143b06及び35mlのpH=7.0のPBS溶液を加え、撹拌しながら溶解させることにより、澄明な溶液を生じさせ;0.38g(5.0当量)のターゲティングポリペプチド2(Ac-NASAPPEEC-NH)を30mlの精製水に溶解させ、この混合物を重炭酸ナトリウム溶液でpH≒6.5に調整し、次に反応フラスコに加え;0.5時間後、HPLCにより反応が完了したことが検出され、得られた生成物を分取HPLCにより精製し、凍結乾燥して、MALDI-TOFにより検出して分子量が28931.52の、1.42gの純粋な化合物bを得た。
【0071】
実施例8
【化39】
室温において、100ml三つ口反応フラスコに2.00g(1.0当量)のBP149b03及び35mlのpH=7.0のPBS溶液を加え、撹拌しながら溶解させることにより、澄明な溶液を生じさせ;0.46g(5.0当量)のターゲティングポリペプチド1(Ac-KPSSPPEEC-NH)を30mlの精製水に溶解させ、この混合物を重炭酸ナトリウム溶液でpH≒6.5に調整し、次に反応フラスコに加え;0.5時間後、HPLCにより反応が完了したことが検出され、得られた生成物を分取HPLCにより精製し、凍結乾燥して、MALDI-TOFにより検出して分子量が28191.63の、1.45gの純粋な化合物cを得た。
【0072】
実施例9
【化40】
室温において、100ml三つ口反応フラスコに2.00g(1.0当量)のBP149b03及び35mlのpH=7.0のPBS溶液を加え、撹拌しながら溶解させることにより、澄明な溶液を生じさせ;0.39g(5.0当量)のターゲティングポリペプチド2(Ac-NASAPPEEC-NH)を30mlの精製水に溶解させ、この混合物を重炭酸ナトリウム溶液でpH≒6.5に調整し、次に反応フラスコに加え;0.5時間後、HPLCにより反応が完了したことが検出され、得られた生成物を分取HPLCにより精製し、凍結乾燥して、MALDI-TOFにより検出して分子量が27982.32の、1.53gの純粋な化合物dを得た。
【0073】
実施例10 ビオチン標識ターゲティングポリペプチド3の合成
【化41】
当業者に周知のFmoc固相合成法を用いてビオチン標識ターゲティングポリペプチド3を合成し;Fmocは、Rinkアミド樹脂及び20%のピペリジン/DMFを使用することにより除去し;カップリング試薬としてHOBT/DICを使用し、反応溶媒としてDMFを使用し;反応は、ニンヒドリン検出法によりモニタし;以下の保護されているアミノ酸を樹脂に順次カップリングし:Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Lys(Dde)-OH;Fmocの保護を除去した後、得られた生成物を無水酢酸及びピリジンでアセチル化し;DMF中のヒドラジン水和物の溶液を加え、Dde保護基を除去し;得られた生成物をFmoc-PEG3-OH及びビオチンに順次カップリングし、次にDMF、メタノール及びDCMで洗浄し、乾燥させ;溶解試薬(TFA:チオアニソール:フェノール:EDT=82.5:5:5:2.5:5)を加え;2時間反応させた後、氷冷TBMEを用いて混合物を沈殿させ、遠心すると、粗製生成物が得られ、これを分取HPLCにより精製し、次に凍結乾燥させて、純粋な生成物を得た。
【0074】
実施例11 ビオチン標識ターゲティングポリペプチド4の合成
【化42】
当業者に周知のFmoc固相合成法を用いてビオチン標識ターゲティングポリペプチド4を合成し;Fmocは、Rinkアミド樹脂及び20%のピペリジン/DMFを使用することにより除去し;カップリング試薬としてHOBT/DICを使用し、反応溶媒としてDMFを使用し;反応は、ニンヒドリン検出法によりモニタし;以下の保護されているアミノ酸を樹脂に順次カップリングし:Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-Lys(Dde)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH及びFmoc-Ala-OH、Fmoc-Asn(Trt)-OH;Fmocの保護を除去した後、得られた生成物を無水酢酸及びピリジンでアセチル化し;DMF中のヒドラジン水和物の溶液を加え、Dde保護基を除去し;得られた生成物をFmoc-PEG3-OH及びビオチンに順次カップリングし、次にDMF、メタノール及びDCMで洗浄し、乾燥させ;溶解試薬(TFA:チオアニソール:フェノール:EDT=82.5:5:5:2.5:5)を加え;2時間反応させた後、氷冷TBMEを用いて混合物を沈殿させ、遠心すると、粗製生成物が得られ、これを分取HPLCにより精製し、次に凍結乾燥させて、純粋な生成物を得た。
【0075】
実施例12 化合物a-ビオチンコンジュゲートの調製
【化43】
室温において、100ml三つ口反応フラスコに2.00g(1.0当量)のBP143b06及び35mlのpH=7.0のPBS溶液を加え、撹拌しながら溶解させることにより、澄明な溶液を生じさせ;0.57g(5.0当量)のビオチン標識ターゲティングポリペプチド3を30mlの精製水に溶解させ、この混合物を重炭酸ナトリウム溶液でpH≒6.5に調整し、次に反応フラスコに加え;0.5時間後、HPLCにより反応が完了したことが検出され、得られた生成物を分取HPLCにより精製し、凍結乾燥して、MALDI-TOFにより検出して分子量が30325.51の、1.24gの純粋な生成物を得た。
【0076】
実施例13 化合物b-ビオチンコンジュゲートの調製
【化44】
室温において、100ml三つ口反応フラスコに2.00g(1.0当量)のBP143b06及び35mlのpH=7.0のPBS溶液を加え、撹拌しながら溶解させることにより、澄明な溶液を生じさせ;0.60g(5.0当量)のビオチン標識ターゲティングポリペプチド4を30mlの精製水に溶解させ、この混合物を重炭酸ナトリウム溶液でpH≒6.5に調整し、次に反応フラスコに加え;0.5時間後、HPLCにより反応が完了したことが検出され、得られた生成物を分取HPLCにより精製し、凍結乾燥して、MALDI-TOFにより検出して分子量が30596.56の、1.33gの純粋な生成物を得た。
【0077】
実施例14 化合物c-ビオチンコンジュゲートの調製
【化45】
室温において、100ml三つ口反応フラスコに2.00g(1.0当量)のBP149b03及び35mlのpH=7.0のPBS溶液を加え、撹拌しながら溶解させることにより、澄明な溶液を生じさせ;0.55g(5.0当量)のビオチン標識ターゲティングポリペプチド3を30mlの精製水に溶解させ、この混合物を重炭酸ナトリウム溶液でpH≒6.5に調整し、次に反応フラスコに加え;0.5時間後、HPLCにより反応が完了したことが検出され、得られた生成物を分取HPLCにより精製し、凍結乾燥して、MALDI-TOFにより検出して分子量が30223.25の、1.26gの純粋な生成物を得た。
【0078】
実施例15 化合物d-ビオチンコンジュゲートの調製
【化46】
室温において、100ml三つ口反応フラスコに2.00g(1.0当量)のBP149b03及び35mlのpH=7.0のPBS溶液を加え、撹拌しながら溶解させることにより、澄明な溶液を生じさせ;0.58g(5.0当量)のビオチン標識ターゲティングポリペプチド4を30mlの精製水に溶解させ、この混合物を重炭酸ナトリウム溶液でpH≒6.5に調整し、次に反応フラスコに加え;0.5時間後、HPLCにより反応が完了したことが検出され、得られた生成物を分取HPLCにより精製し、凍結乾燥して、MALDI-TOFにより検出して分子量が30491.18の、1.33gの純粋な生成物を得た。
【0079】
実施例16 CD44に特異的に結合する本発明の化合物
1.材料及び方法
1.1 本発明の化合物のビオチン標識コンジュゲート
化合物a-ビオチンコンジュゲート、化合物b-ビオチンコンジュゲート、化合物c-ビオチンコンジュゲート及び化合物d-ビオチンコンジュゲートは、実験ではそれぞれコンジュゲートa、コンジュゲートb、コンジュゲートc及びコンジュゲートdと称され、その構造及びその調製方法は、実施例10~15に示されるとおりである。
【0080】
1.2 細胞培養
SKOV3細胞をMcCoy 5A培養液で培養した。細胞培養液に10%のFBS、1000U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン及び4mmol/L L-グルタミンを補足した。
【0081】
1.3 SKOV3細胞へのコンジュゲートの結合
コンジュゲートa、コンジュゲートb、コンジュゲートc及びコンジュゲートd(それぞれ100μmol/Lの濃度が実現するように氷冷PBSに溶解させた)に5mmol/Lのスベリン酸ビス(スルホスクシンイミド)を加えて、コンジュゲートをSKOV3細胞に結合させた。Triton X-100溶解緩衝液を加え;細胞を溶解させて、次に遠心し;及び上清をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に転写し、ウエスタンブロット分析に供した。PVDF膜を西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートストレプトアビジン(HRP-SA)と共にインキュベートし、コンジュゲートと架橋したタンパク質を検出した。抗CD44モノクローナル抗体DF1485及びペルオキシダーゼ標識ロバ抗マウス免疫グロブリンを使用したウエスタンブロットによりCD44を検出した。検出には、配合したての化学発光試薬及びHypermax ECLフィルム露光を用いた。
【0082】
1.4 コンジュゲート標識タンパク質の免疫沈降
コンジュゲートと架橋したSKOV3細胞をTriton X-100によって溶解し、プロテインAセファロースと共に室温で2時間インキュベートし、予洗し;100μgの洗浄後の溶解緩衝液を、2μgのDF1485(抗CD44抗体)又はマウスIgG1を補足した20μLのプロテインAセファロースと共に室温で一晩インキュベートした。溶解緩衝液で5回洗浄した後、混合物をSDS-PAGE負荷緩衝液中で煮沸し、免疫沈降したタンパク質をプロテインAセファロースから溶出させた。溶出した材料及び5μgの初期材料をSDS-PAGEに加え、PVDF膜に転写し、次にHRP-SAで染色した。
【0083】
2.結果
SKOV3細胞は、コンジュゲートに結合する。この細胞から調製したライセートをDF1485で免疫沈降させた。溶出したタンパク質及び初期ライセートをPAGE/ブロッティングに供し、ここで、それぞれHRP-SA染色を用いてビオチン標識を検出し、DF1485染色を用いてCD44を検出した。
【0084】
反応系に初期ライセート、コンジュゲート及びHRP-SAが含まれたとき、0~250kDaの範囲に多くの非特異的バンドが現れ;反応系に初期ライセート及びHRP-SAが含まれたとき、0~250kDaの範囲にバンドが現れなかったことから、従ってHRP-SAがコンジュゲート標識タンパク質を特異的に染色したことが示された。反応系に免疫沈降タンパク質、コンジュゲート及びHRP-SAが含まれたとき、85kDaに特異的バンドが現れ;反応系に免疫沈降タンパク質及びHRP-SAが含まれたとき、0~250kDaの範囲にバンドが現れなかったことから、従って約85kDaのコンジュゲート標識タンパク質がDF1485によって特異的に沈降したことが示された。初期ライセートと比較すると、免疫沈降したタンパク質のバンドの染色強度は、一層明確であったことから、抗CD44免疫沈降によってこのタンパク質が大幅に濃縮されたことが示される。
【0085】
反応系に初期ライセート、コンジュゲート及びDF1485が含まれたとき、85kDaに特異的バンドが現れ;反応系に初期ライセート及びDF1485が含まれたとき、85kDaに特異的バンドが現れ;反応系に免疫沈降タンパク質、コンジュゲート及びDF1485が含まれたとき、85kDaに特異的バンドが現れ;反応系に免疫沈降タンパク質及びDF1485が含まれたとき、85kDaに特異的バンドが現れたことから、従って85kDaのバンドがCD44であり、全ての試料中にCD44が存在したことが示された。
【0086】
上記の結果から、本発明の化合物は、CD44に特異的に結合し、且つCD44の高発現を有する腫瘍細胞及び組織を標的とし得、それにより、標的組織中のコンジュゲートの濃度が高く、その臨床治療効果が改善され、且つ毒性が低減されることが示される。
【0087】
実施例17~21において、全ての動物実験操作は、動物の使用及び管理に関する要求事項を厳守する。腫瘍関連パラメータの計算に関して、中国CFDAからの
を参照することができ、ここで、%T/C≦40%及び統計的分析によるP<0.05は、有効であることの指標である。相対腫瘍増殖速度が低いほど、抗腫瘍効果が高い。
【0088】
腫瘍容積(TV)の計算式は、TV(mm)=l×w/2であり、式中、lは、腫瘍の長径(mm)を表し;及びwは、腫瘍の短径(mm)を表す。
【0089】
相対腫瘍容積(RTV)の計算式は、RTV=TV/TVinitialであり、式中、TVinitialは、群分け及び投与時に測定された腫瘍容積を表し、及びTVは、投与中の各測定時の腫瘍容積を表す。
【0090】
相対腫瘍増殖速度(%T/C)の計算式は、%T/C=100%×(RTV/RTV)であり、式中、RTVは、治療群のRTVを表し、及びRTVは、溶媒対照群のRTVを表す。
【0091】
腫瘍成長抑制率TGI(%)の計算式は、TGI=100%×[1-(TVt(T)-TVinitial(T))/(TVt(C)-TVinitial(C))]であり、式中、TVt(T)は、各測定時の治療群の腫瘍容積を表し;TVinitial(T)は、群分け及び投与時の治療群の腫瘍容積を表し;TVt(C)は、各測定時の溶媒対照群の腫瘍容積を表し;及びTVinitial(C)は、群分け及び投与時の溶媒対照群の腫瘍容積を表す。
【0092】
動物体重の減少率の計算式は、動物体重の減少率=100%×(BWinitial-BW)/BWinitialであり、式中、BWは、投与中の各測定時の動物の体重を表し;及びBWinitialは、群分け及び投与時の動物の体重を表す。
【0093】
腫瘍重量抑制率IR(%)の計算式は、IR(%)=100%×(W-W)/Wであり、式中、Wは、対照群の腫瘍重量を表し、及びWは、治療群の腫瘍重量を表す。
【0094】
試験データは、Microsoft Office Excel 2007ソフトウェアで計算し、関係する統計処理にかけた。特に指定されない限り、データは、平均値±標準誤差(平均値±SE)として表し;群間のデータの比較には、t検定を用い;及びP<0.05を統計的に有意と見なした。
【0095】
実験動物:雌BALB/cヌードマウス(6~8週齢)を約1週間にわたり通常どおり飼育し;獣医による診察後、この実験用のために、良好な身体的徴候を有するマウスを選択した。群分け前、マウスの尾の基部にマーカーを使用して印を付けて群分けし、次に各マウスの耳をカットして印を付けた。
【0096】
化合物M、化合物a及び化合物bの投与製剤の調製:薬物は、各投与前に正確に秤量し;2.5mLの生理食塩水を加え、ボルテックスを実施して薬物を完全に溶解させ;及び溶液中のイリノテカンの有効濃度は、4.0mg・mL-1であった。
【0097】
化合物c及び化合物dの投与製剤の調製:薬物は、各投与前に正確に秤量し;2.5mLの生理食塩水を加え、ボルテックスを実施して薬物を完全に溶解させ;及び溶液中のSN38の有効濃度は、4.0mg・mL-1であった。
【0098】
無作為化群分け:マウスに腫瘍細胞を接種し、腫瘍容積が100~300mmに達したところで、マウスを、乱塊法に基づき、各群6匹のマウスの、群間で腫瘍容積及び体重を均一とした6群に分けた。各群の平均腫瘍容積と全ての実験動物の平均腫瘍容積との間の差は、±10%以下であった。
【0099】
実験の開始後、腫瘍径を週2回測定して腫瘍容積を計算し、且つ体重も秤量し、記録した。
【0100】
実施例17~20におけるマウスへの投与は、群分け当日の初回投与を含む。第1の群は、溶媒対照群であり、ここで、尾静脈注射によって生理食塩水を投与した。群2~6にそれぞれ試験試料:化合物M、化合物a、化合物b、化合物c及び化合物dを尾静脈注射によって投与した。
【0101】
実験の完了後、体重の秤量後にマウスを安楽死させ(CO)、腫瘍径を測定した。腫瘍組織を剥ぎ取って秤量し、RTV及び%T/Cを計算した。
【0102】
実施例に関わる対照試験試料化合物Mは、中国特許出願公開第108727583 A号明細書に開示されたものであり、以下のとおりの構造を有する。
【化47】
【0103】
実施例17 ヌードマウスにおけるヒト乳癌MDA-MB-231の異種移植片腫瘍に対する本発明の化合物の抗腫瘍薬力学実験
試験試料:化合物M、化合物a、化合物b、化合物c及び化合物d。
【0104】
試薬:DMEM培養液、ウシ胎仔血清(FBS)、トリプシン、ペニシリン-ストレプトマイシン二重抗体及び生理食塩水。
【0105】
移植した腫瘍株:ヒト乳癌MDA-MB-231、中国科学院(CAS)のCell Bank of Type Culture Collection Committeeから得て、本発明者らの研究室で液体窒素中に凍結保存した。
【0106】
細胞培養:10%ウシ胎仔血清FBS(GIBCO、USA)を含有するDMEM培地(DMEM、USA)でMDA-MB-231株を培養し、インキュベーターにおいて37℃、5%COで培養した。
【0107】
動物モデルの調製:細胞接種法を用いてヌードマウスに皮下移植腫瘍モデルを樹立し;対数増殖期の腫瘍細胞を収集し、カウントし、1×PBSに再懸濁して、細胞懸濁液の濃度を1×10細胞/mlに調整した。1mlシリンジ(4ゲージ針)を使用してヌードマウスの右背部に腫瘍細胞を皮下接種した(1×10細胞/マウス)。
【0108】
投与頻度及び投与量:各群について週1回、合計3回投与し(QW×3)、各投与量は、6mg・kg-1であった(イリノテカン又はSN38として計算した)。
【0109】
結果を表1に示す。
【0110】
【表2】
【0111】
これらの実験結果から、本発明の化合物がヌードマウスのヒト乳癌MDA-MB-231の移植腫瘍に良好な阻害効果を及ぼすことが示され、この効果は、化合物Mよりも良好であった。
【0112】
実施例18 本発明の化合物がヌードマウスにおけるヒト胃癌NCI-N87細胞株の移植腫瘍モデルのインビボ腫瘍成長に及ぼす阻害効果
試験試料:化合物M、化合物a、化合物b、化合物c及び化合物d。
【0113】
試薬:RPMI-1640培養液、ウシ胎仔血清(FBS)、トリプシン、ペニシリン-ストレプトマイシン二重抗体及び生理食塩水。
【0114】
移植腫瘍株:ヒト胃癌NCI-N87、中国科学院(CAS)のCell Bank of Type Culture Collection Committeeから得て、本発明者らの研究室で液体窒素中に凍結保存した。
【0115】
細胞培養:5%CO及び37℃下、10%ウシ胎仔血清を含有するRPMI-1640培養液でNCI-N87細胞を常法どおり培養し、0.25%トリプシンによる消化に供し、継代し;細胞成長に応じて、細胞は、1:2~1:6の継代比で週1~2回継代した。
【0116】
動物モデルの調製:対数増殖期のNCI-N87細胞を収集し、カウントし、無血清RPMI-1640培地に再懸濁して、細胞の濃度を5×10細胞/mLに調整し;細胞をピペッティングにより均一に分散させ、次に50mL遠心管に移し、次にそれをアイスボックスに置き;1mLシリンジを使用して細胞懸濁液を吸引し、ヌードマウスの右腋窩前部に皮下注射し、各マウスに100μL(5×10細胞/マウス)を接種することにより、ヌードマウスにNCI-N87移植腫瘍モデルを樹立した。
【0117】
投与頻度及び投与量:各群について週1回、合計4回投与し(QW×4)、各投与量は、200mg・kg-1であった。
【0118】
結果を表2に示す。
【0119】
【表3】
【0120】
これらの実験結果から、本発明の化合物がヌードマウスにおけるヒト胃癌NCI-N87細胞株の移植腫瘍モデルの腫瘍成長に良好な阻害効果を及ぼすことが示され、この効果は、化合物Mよりも良好であった。
【0121】
実施例19 ヌードマウスにおけるHT-29移植腫瘍モデルのインビボ有効性評価
試験試料:化合物M、化合物a、化合物b、化合物c及び化合物d。
【0122】
試薬:McCoy 5A培養液、ウシ胎仔血清(FBS)、トリプシン、ペニシリン-ストレプトマイシン二重抗体、注射用水、生理食塩水、乳酸及びソルビトール。
【0123】
移植腫瘍株:ヒト結腸癌HT-29、中国科学院(CAS)のCell Bank of Type Culture Collection Committeeから得て、本発明者らの研究室で液体窒素中に凍結保存した。
【0124】
細胞培養:5%CO及び37℃下、10%ウシ胎仔血清を含有するMcCoy 5A培養液でHT-29細胞を常法どおり培養し、0.25%トリプシンによる消化に供し、継代し;細胞成長に応じて、細胞は、1:4~1:6の継代比で週2~3回継代した。
【0125】
動物モデルの調製:対数増殖期のHT-29細胞を収集し、カウントし、無血清McCoy 5A培地に再懸濁し、細胞の濃度を4×10細胞/mLに調整し;細胞をピペッティングにより均一に分散させ、次に50mL遠心管に移し、次にそれをアイスボックスに置き;1mLシリンジを使用して細胞懸濁液を吸引し、ヌードマウスの右腋窩前部に皮下注射し、各マウスに100μL(4×10細胞/マウス)を接種することにより、ヌードマウスにHT-29移植腫瘍モデルを樹立した。
【0126】
投与頻度及び投与量:各群について週1回、合計4回投与し(QW×4)、各投与量は、200mg・kg-1であった。
【0127】
結果を表3に示す。
【0128】
【表4】
【0129】
これらの実験結果から、本発明の化合物がヌードマウスにおけるヒト結腸癌HT-29細胞株の移植腫瘍モデルのインビボ腫瘍成長に良好な阻害効果を及ぼすことが示され、この効果は、化合物Mよりも良好であった。
【0130】
実施例20 ヌードマウスにおけるヒト膵癌MIA Paca-2の異種移植モデルに対する阻害効果
試験試料:化合物M、化合物a、化合物b、化合物c及び化合物d。
【0131】
移植腫瘍株:ヒト膵癌MIA Paca-2、Shanghai Institute of Biochemistry and Cell Biology、中国科学院から購入した。
【0132】
細胞培養:10%ウシ胎仔血清FBS(GIBCO、USA)及び2.5%HSを含有するDMEMでMIA Paca-2細胞を培養し;及び細胞を5%CO、37℃のインキュベーターに置いた。
【0133】
動物モデルの調製:細胞接種法を用いてヌードマウスにヒト膵癌MIA Paca-2の皮下移植腫瘍モデルを樹立し;対数増殖期の腫瘍細胞を収集し、カウントし、1×PBSに再懸濁して、細胞懸濁液の濃度を3×10細胞/mlに調整した。1mlシリンジ(4ゲージ針)を使用してヌードマウスの右背部に腫瘍細胞を皮下接種した(3×10細胞/0.1ml/マウス)。
【0134】
投与頻度及び投与量:各群について週1回、合計3回投与し(QW×3)、各投与量は、6mg・kg-1であった。
【0135】
結果を表4に示す。
【0136】
【表5】
【0137】
これらの実験結果から、本発明の化合物がヌードマウスにおけるヒト膵癌MIA Paca-2の移植腫瘍に良好な阻害効果を及ぼすことが示され、この効果は、化合物Mよりも良好であった。
【0138】
実施例21 ヌードマウスにおけるヒト小細胞肺癌細胞NCI-H446の異種移植モデルに対する阻害効果
試験試料:イリノテカン、nktr-102、化合物a、化合物b、化合物c及び化合物d。
【0139】
イリノテカン(原薬)を購入した。nktr-102の調製方法は、以下を含む。
【0140】
実施例4のBP143b03(829mg、4.5当量)を250mL反応フラスコに加え;DCM(50mL)及びトリエチルアミン(221mg、9.0当量)を加え、溶解させ;及び次に4アーム-PEG20K-SCM(5.00g、1.0当量)を反応フラスコに加えた。反応に明らかな進行がなくなったことをHPLCによりモニタした後、約20mLのDCMを減圧下で留去し;この溶液を300mLのTBMEに注入し、撹拌し、沈殿させて、ろ過すると、5.4gの粗製生成物が得られ、これを分取HPLCにより精製し、脱塩し、希塩酸で約pH5~6に調整し、凍結乾燥して、2.71gのnktr-102を淡緑色粉末として得た。
【0141】
イリノテカンの投与製剤の調製:12.0mgのイリノテカンを秤量し;0.15mLの1%乳酸を加え、ボルテックスを実施して薬物を完全に溶解させ;次に2.85mLの1%ソルビトール水溶液を加え、混合物をボルテックスして溶液を均一に混合し、ここで、1%乳酸と1%ソルビトール水溶液との比は、約5:95(v/v)であり、及びイリノテカンの有効濃度は、4.0mg・mL-1であった。
【0142】
nktr-102の投与製剤の調製:各投与前に101.5mgのnktr-102を正確に秤量し;2.5mLの生理食塩水を加え、ボルテックスを実施して薬物を完全に溶解させ;及び溶液中のイリノテカンの有効濃度は、4.0mg・mL-1であった。
【0143】
移植腫瘍株:小細胞肺癌細胞NCI-H446、中国科学院のCell Bank of Type Culture Collection Committeeから得た。
【0144】
細胞培養:5%CO、37℃及び飽和湿度下において、10%ウシ胎仔血清を含有するRPMI-1640培養液でNCI-H446細胞を常法どおり培養し、細胞成長に応じて、細胞を0.25%トリプシンによる消化に供し、1:3~1:4の継代比で週2~4回継代した。
【0145】
動物モデルの調製:細胞接種法を用いてヌードマウスに皮下移植腫瘍モデルを樹立し;対数増殖期のNCI-H446細胞を収集し、カウントし、50%のRPMI-1640及び50%のマトリゲルを含有する最少培地に再懸濁し;及び細胞の濃度を4×10細胞/mLに調整し;細胞をピペッティングにより均一に分散させ、次に50mL遠心管に移し、次にそれをアイスボックスに置き;好適なシリンジを使用して細胞懸濁液を吸引し、ヌードマウスの右腋窩前部に皮下注射し、各マウスに200μL(8×10細胞/マウス)を接種することにより、ヌードマウスにNCI-H446移植腫瘍モデルを樹立した。
【0146】
マウスへの投与は、群分け当日の初回投与を含む。第1の群は、溶媒対照群であり、ここで、尾静脈注射によって生理食塩水を投与した。群2~7にそれぞれ試験試料:イリノテカン、nktr102、化合物M、化合物a、化合物b、化合物c及び化合物dを尾静脈注射によって投与し;各群について週1回、合計3回投与し(QW×3)、各投与量は、6mg・kg-1であった。
【0147】
結果を表5に示す。
【0148】
【表6】
【0149】
これらの実験結果から、本発明の化合物がヌードマウスにおけるヒト小細胞肺癌NCI-H446の移植腫瘍に良好な阻害効果を及ぼすことが示され、この効果は、イリノテカン及びnktr102よりも良好であった。
【配列表】
2022521529000001.app
【国際調査報告】