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特表2022-521533リチウムイオンバッテリアノードに使用される組成変更されたシリコンコーティング
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  • 特表-リチウムイオンバッテリアノードに使用される組成変更されたシリコンコーティング 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-08
(54)【発明の名称】リチウムイオンバッテリアノードに使用される組成変更されたシリコンコーティング
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20220401BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220401BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20220401BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220401BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/36 C
H01M4/38 Z
H01M4/139
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549268
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(85)【翻訳文提出日】2021-10-15
(86)【国際出願番号】 US2020019282
(87)【国際公開番号】W WO2020172564
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】62/808,843
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511261330
【氏名又は名称】アンプリウス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ユ、チェンタオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ウェイジー
(72)【発明者】
【氏名】ステファン、コンスタンチン イオネル
(72)【発明者】
【氏名】ボーンステイン、ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】セオ、ダニエル
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA17
5H050CB11
5H050DA03
5H050FA04
5H050FA08
5H050FA18
5H050GA24
5H050GA27
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA08
5H050HA15
(57)【要約】
本明細書では、リチウムイオンバッテリ電極のためのナノ構造及び製造方法が提供される。いくつかの実施形態において、シリコン系コーティングがコートされたナノ構造テンプレートが提供される。シリコンコーティングは、非コンフォーマルでより多孔質のシリコンリッチSiE層と、この非コンフォーマルでより多孔質の層上にある、コンフォーマルで密度のより高いSiE層とを含んでよい。いくつかの実施形態において、2つの異なる堆積プロセスが用いられる:非コンフォーマルシリコンリッチSiE層を堆積するためにPECVD層が、コンフォーマル層を堆積するために熱CVDプロセスが用いられる。シリコンリッチSiE材料は、シリコン結晶ドメインの成長を防止し、巨視的な膨張を制限し、リチウム拡散速度を増大させ、リチウムイオンバッテリの充放電サイクル中のバッテリ寿命を著しく向上させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムバッテリのためのアノードであって、
基板と、
前記基板に根付いたナノワイヤのアレイであって、前記ナノワイヤはそれぞれ表面を有する、ナノワイヤのアレイと、
前記ナノワイヤの前記表面のほとんど又は全てをコートする第1の層であって、前記第1の層は、SiE材料を含む、第1の層と、
前記第1の層と前記ナノワイヤの任意の露出された表面と前記基板との上の第2の層であって、前記第2の層は、シリコン又はSiF材料のいずれかを含む、第2の層と、
を備え、
xはゼロより大きく且つ1より小さく、
yはゼロより大きく且つ1より小さく、
E及びFは、窒素、炭素、ホウ素、リン、酸素、マグネシウム、アルミニウム、ゲルマニウム、錫、ニッケル、銅、及びそれらの組み合わせからなる群からそれぞれ独立して選択される、アノード。
【請求項2】
xは0.01~0.5である、請求項1に記載のアノード。
【請求項3】
xは0.01~0.3である、請求項1に記載のアノード。
【請求項4】
xは0.01~0.1である、請求項1に記載のアノード。
【請求項5】
Eの濃度プロファイルは、前記第1の層の厚さを通して変化し、及び/又は、Fの濃度プロファイルは、前記第2の層の厚さを通して変化する、請求項1から4のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項6】
前記第2の層の密度は、前記第1の層の密度より高い、請求項1から5のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項7】
前記第1の層の平均密度は、2.1g/cmより低い、請求項1から6のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項8】
前記第2の層の平均密度は、2.0g/cmより高い、請求項1から6のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項9】
前記第1の層の密度は、前記第1の層の全体を通して変化する、請求項1から8のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項10】
前記第2の層の密度は、前記第2の層の全体を通して変化する、請求項1から9のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項11】
前記第1の層は、前記ナノワイヤに対して非コンフォーマルである、請求項1から10のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項12】
前記第2の層は、前記第1の層に対してコンフォーマルである、請求項1から11のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項13】
前記第2の層上の第3の層であって、前記第3の層はシリコンを含まない、第3の層を更に備える、請求項1から12のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項14】
前記ナノワイヤは、シリサイドナノワイヤを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項15】
前記第1の層は、その最大直径における厚さが約5~20ミクロンである、請求項1から14のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項16】
前記第2の層は、厚さが5~500ナノメートルである、請求項1から15のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項17】
前記第2の層は、厚さが5~100ナノメートルである、請求項1から15のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載のアノードと、
リチウムを含有するカソードと、
前記アノード及び前記カソードの両方とイオン的に連通している電解質と、
を備える、リチウムバッテリ。
【請求項19】
リチウムバッテリのためのアノードを作成する方法であって、
基板を設ける段階と、
前記基板からナノワイヤを成長させる段階であって、前記ナノワイヤはそれぞれ表面を有する、段階と、
PECVD法を用いて、前記ナノワイヤの前記表面のほとんど又は全てをコートするように第1の層を堆積する段階であって、前記第1の層は、第1のシリコンリッチSiEを含む、段階と、
熱CVD法を用いて、前記第1の層と前記ナノワイヤの任意の露出表面と前記基板との上に第2の層を堆積する段階であって、前記第2の層は、第2のシリコンリッチSiEを含む、段階と、
を含む、方法。
【請求項20】
前記PECVD法は、膨張熱プラズマ法である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ナノワイヤは、シリサイドナノワイヤである、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記熱CVD法の間のチャンバ圧は、約2Torr未満である、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
PCTリクエストフォームは、本願の一部として本明細書と同時に提出されている。同時に提出されたPCTリクエストフォームにおいて特定されているように本願が利益又は優先権を主張する各出願は、参照により、その全体が全ての目的のために本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
本発明は、概して、ナノ構造に関し、より具体的には、バッテリアノードにおいて有用な多層シリコンナノワイヤ構造に関する。
【0003】
リチウムバッテリアノードにおいてシリコンを使用する方法を見出すために、多くの研究が行われてきた。シリコンは、現用のグラファイトの10倍高いリチウム容量を有するので、かなり有望である。しかしながら、残念なことに、シリコンは、非常に多くのリチウムを吸収する際に400%膨張し、たいていはその結果として、シリコンが崩壊するとともにバッテリ寿命が短縮する。
【発明の概要】
【0004】
本開示の1つの態様は、リチウムバッテリのためのアノードであって、基板と、上記基板に根付いたナノワイヤのアレイであって、上記ナノワイヤはそれぞれ表面を有する、ナノワイヤのアレイと、上記ナノワイヤの上記表面のほとんど又は全てをコートする第1の層であって、上記層は、SiE材料を含む、第1の層と、上記第1の層と上記ナノワイヤの任意の露出された表面と上記基板との上の第2の層であって、上記第2の層は、シリコン又はSiF材料のいずれかを含む、第2の層と、を備え、xはゼロより大きく且つ1より小さく、yはゼロより大きく且つ1より小さく、E及びFは、窒素、炭素、ホウ素、リン、酸素、マグネシウム、アルミニウム、ゲルマニウム、錫、ニッケル、銅、及びそれらの組み合わせからなる群からそれぞれ独立して選択される、アノードに関する。いくつかの実施形態において、xは0.01~0.5であるか、0.01~0.3であるか、又は0.01~0.1である。いくつかの実施形態において、yは0.01~0.5であるか、0.01~0.3であるか、又は0.01~0.1である。いくつかの実施形態において、x及び/又はyのより低い値を使用してよい。
【0005】
いくつかの実施形態において、Eの濃度プロファイルは、上記第1の層の厚さを通して変化し、及び/又は、Fの濃度プロファイルは、上記第2の層の厚さを通して変化する。いくつかの実施形態において、上記第2の層の密度は、上記第1の層の密度より高い。いくつかの実施形態において、上記第1の層の平均密度は、2.1g/cmより低い。いくつかの実施形態において、上記第2の層の平均密度は、2.0g/cmより高い。いくつかの実施形態において、上記第1の層の密度は、上記第1の層の全体を通して変化する。いくつかの実施形態において、上記第2の層の密度は、上記第2の層の全体を通して変化する。いくつかの実施形態において、上記第1の層は、上記ナノワイヤテンプレートに対して非コンフォーマルである。いくつかの実施形態において、上記第2の層は、上記第1の層に対してコンフォーマルである。いくつかの実施形態において、アノードは、上記第2の層上の第3の層であって、上記第3の層はシリコンを含まない、第3の層を更に備える。いくつかの実施形態において、上記ナノワイヤテンプレートは、シリサイドナノワイヤを含む。いくつかの実施形態において、上記第1の層は、その最大直径における厚さが約5~20ミクロンである。いくつかの実施形態において、上記第2の層は、厚さが5~500ナノメートルである。いくつかの実施形態において、上記第2の層は、厚さが5~100ナノメートルである。
【0006】
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるようなアノードと、リチウムを含有するカソードと、上記アノード及び上記カソードの両方とイオン的に連通している電解質と、を備える、リチウムバッテリに関する。
【0007】
本開示の別の態様は、リチウムバッテリのためのアノードを作成する方法であって、基板を設ける段階と、上記基板からナノワイヤを成長させる段階であって、上記ナノワイヤはそれぞれ表面を有する、段階と、PECVD法を用いて、上記ナノワイヤの上記表面のほとんど又は全てをコートするように第1の層を堆積する段階であって、上記第1の層は、第1のシリコンリッチSiEを含む、段階と、熱CVD法を用いて、上記第1の層と上記ナノワイヤの任意の露出表面と上記基板との上に第2の層を堆積する段階であって、上記第2の層は、第2のシリコンリッチSiEを含む、段階と、を含む、方法に関する。
【0008】
いくつかの実施形態において、上記PECVD法は、膨張熱プラズマ法である。いくつかの実施形態において、上記ナノワイヤは、シリサイドナノワイヤである。いくつかの実施形態において、上記熱CVD法の間のチャンバ圧は、約2Torr未満である。
【0009】
本開示のこれらの態様及び他の態様は、図面を参照しながら下記で更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
前述の態様及び他の態様は、添付図面とともに読まれた場合、例示的な実施形態の以下の説明から当業者によって容易に理解される。
【0011】
図1】PECVD(プラズマ強化化学気相成長)を用いてシリコン系材料層が上に堆積されたナノワイヤの概略図である。
【0012】
図2】本発明の一実施形態に係る、PECVDを用いて第1のシリコン系材料層が堆積され、次に、熱CVDを用いて第2のシリコン系材料層が上に堆積された、ナノワイヤの概略図である。
【0013】
図3】テンプレートナノワイヤ上の非コンフォーマルシリコンコーティングの表現の概略図を示している。
【0014】
図4A】特定の実施形態に係る、本明細書に記載の電極を使用する部分的に組み立てられた電気化学セルの平面図の概略表現である。
【0015】
図4B】特定の実施形態に係る、本明細書に記載の電極を使用する部分的に組み立てられた電気化学セルの電極スタックの断面図の概略表現である。
【0016】
図5A】特定の実施形態に係る、セルを形成するように2枚のセパレータシートと一緒に巻かれた電極の様々な図の概略表現である。
図5B】特定の実施形態に係る、セルを形成するように2枚のセパレータシートと一緒に巻かれた電極の様々な図の概略表現である。
図5C】特定の実施形態に係る、セルを形成するように2枚のセパレータシートと一緒に巻かれた電極の様々な図の概略表現である。
【0017】
図6A】特定の実施形態に係る複数のセルを含む積み重ねられたセルの断面図の概略表現である。
図6B】特定の実施形態に係る複数のセルを含む積み重ねられたセルの斜視図の概略表現である。
【0018】
図7】特定の実施形態に係る、巻かれた円筒型セルの断面図の概略表現である。
【0019】
図8】SiEアノードと比較した、シリコンアノードについての、サイクル指数の関数としての容量維持率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
特定の実施形態は、リチウムバッテリセルのためのアノード構造を形成するために、シリサイドナノワイヤ上にシリコンを堆積させる文脈において示されている。しかしながら、本明細書に開示されている材料及び方法は、固有の特徴を有する層又は粒子を生成するために堆積を調整することが有用である複数の他の文脈における用途を有することが、当業者には容易に理解される。例えば、様々な実施形態が、ナノワイヤに言及しながら本明細書において説明される。しかしながら、別途明記されない限り、本明細書におけるナノワイヤへの言及には、ナノチューブ、ナノ粒子、ナノスフェア、ナノロッド、ナノウィスカ等のような、参照により本明細書に援用される米国特許第8,257,866号に記載されている他のタイプのナノ構造が含まれることを理解されたい。
【0021】
一般に、「ナノ構造」という用語は、少なくとも1つの寸法が約1ミクロン未満の構造を指す。いくつかの実施形態において、構造は、少なくとも1つの寸法が500ナノメートル又は100ナノメートル未満である。この寸法は、ナノ構造(例えば、シリサイドテンプレートナノワイヤ)又は最終的なコート済み構造の直径であり得る。しかしながら、最終的なコート済み構造の全寸法(長さ及び直径)のいずれかは、ナノスケールでなくてもよい。例えば、最終的な構造は、最大直径における厚さが約10ミクロンである層であって、直径が約100ナノメートル且つ長さが20ミクロンであるテンプレート上にコートされる層を含んでよい。この全構造は、最大直径において約10.1ミクロンであるとともに長さが20ミクロンであるが、テンプレートの寸法を理由として、概して「ナノ構造」と称され得る。具体的な実施形態において、「ナノワイヤ」という用語は、細長いテンプレート構造上に配置されるナノスケールシェルを伴う構造を指す。
【0022】
様々な実施形態において、(ナノ構造の具体例としての)ナノワイヤは、1より大きい、少なくとも約2、又は少なくとも約4のアスペクト比を有する。様々な実施形態において、ナノワイヤは、少なくとも10、少なくとも100、又は少なくとも500のアスペクト比を有する。ナノワイヤは、他の電極構成要素(例えば、導電性基板、他の活性材料構造、又は導電性添加剤)に接続してよい。例えば、ナノワイヤは、ナノワイヤの一方の端部が基板と接触するように基板に根付いていてよい。
【0023】
「シリコン系材料」という用語は、専らシリコンである材料又はシリコンリッチSiEである材料を指し、Eは、窒素、炭素、ホウ素、リン、酸素、マグネシウム、アルミニウム、ゲルマニウム、錫、ニッケル、銅、及びそれらの組み合わせ等の、シリコンと金属間若しくは合金化合物を形成できる任意の単数又は複数の元素である。シリコンは、シリコン系材料の少なくとも50原子%である。
【0024】
1より多い元素Eが、シリコンと混合されてよい。このような場合、xは、元素の値の合計である(例えば、SiE1x1E2x2;x=x+x2等)。様々な実施形態において、xの値は、1未満、0.001~0.5、0.005~0.3、0.01~0.3、0.03~3、0.01~0.1、0.01~0.05である。
【0025】
下記で理解されるように、いくつかの実施形態において、ナノ構造は、E及び/又はxが同じである及び/又は各層で異なる、シリコンリッチSiExの2つの異なる層を含む。第2のSiEx材料は、このような例において、代替的にSiFyと称される。したがって、本明細書におけるE及びxのいかなる説明も、F及びyにそれぞれ当てはまり得ることが理解される。例えば、Fは、窒素、炭素、ホウ素、リン、酸素、マグネシウム、アルミニウム、ゲルマニウム、錫、ニッケル、銅、及びそれらの組み合わせ等の、シリコンと金属間若しくは合金化合物を形成できる任意の単数又は複数の元素であり、yは、特定のxの値とは無関係に、独立して、xについて記載される任意の値であることができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のナノ構造は、まず基板上でナノワイヤテンプレート構造を成長させることによって作成できる。多くの実施形態において、ナノワイヤテンプレート構造は、導電性材料から作成される。ナノワイヤテンプレート構造を形成するのに使用できる導電性材料の例としては、金属及び金属シリサイドが挙げられる。いくつかの実施形態において、導電性テンプレートは、酸化物を含んでよい。ナノワイヤテンプレート構造は、次に、シリコン系電極活性材料の1又は複数の層でコートされる。熱CVD(化学気相成長)、HWCVD(ホットワイヤCVD)、PECVD(プラズマ強化化学気相成長)、及び/又は蒸着(熱又はレーザ支援を伴うか又は伴わない)を使用して、シリコン系電極活性材料層を堆積してよい。
【0027】
ナノワイヤテンプレート上にシリコン系電極活性材料層を堆積する際に、様々な堆積プロセスが異なるプロファイルを生成する。例えば、熱CVDは、コンフォーマルな非晶質シリコン系電極活性材料コーティングを作り出す。HWCVD(触媒CVDとしても知られている)は、ナノワイヤの先端において又はその付近でより厚く、基板付近のナノワイヤの根元においてより薄い、高密度の非コンフォーマルな非晶質シリコン系電極活性材料コーティングを作成する。PECVDもまた、ナノワイヤの末端部においてより厚く、基板付近のナノワイヤの根元においてより薄い、非コンフォーマルな非晶質シリコン系電極活性材料コーティングを生成する。PECVDコーティングは、多くの小さなボイドを有し、低密度である。
【0028】
シリコンリッチSiEは、xが1未満又はそこに包含される任意の範囲であるシリコン化合物を含む。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態において、シリコンリッチSiEは、反応チャンバ内で、PECVDを用いてナノワイヤテンプレート上に堆積される。このような堆積に用いられ得るプロセスガスの例としては、限定されるものではないが、水素若しくはアルゴンで希釈され、元素E前駆体と混合されたシラン(SiH)が挙げられる。このようなガスは、反応種になり、AC/DCプラズマ下でナノワイヤテンプレートの表面上にシリコンリッチSiEコーティングを生成する。元素Eの量、したがってxの値は、プロセスガスの比率を調整することによって制御できる。反応チャンバ温度は、200℃~600℃又は300℃~500℃の範囲であってよい。プラズマ出力は、チャンバサイズに応じて500W~1000Wの範囲にあってよい。プロセスチャンバ内の圧力は、1~200mTorrの範囲にあってよい。
【0030】
最初に、PECVDは、1ミクロン未満又は0.1~0.4ミクロンの厚さを有する非常に薄いシリコン系電極活性材料層を、基板上及び基板に隣接するナノワイヤの根元地点を含む全表面に沿って、ナノワイヤテンプレート上に堆積し得る。しかしながら、堆積が続くにつれて、より多くのシリコン系電極活性材料がナノワイヤテンプレートにおけるナノワイヤの先端に又はその付近に蓄積し、基板領域を陰にする。その結果、基板上のシリコン系電極活性材料の非常に薄い層は、基板表面に沿ったナノワイヤの密度及び不均一性に応じて、連続したり連続しなかったりする場合がある。
【0031】
図1は、PECVDを用いてシリコンリッチSiE層が上に堆積されたナノワイヤの概略図である。ナノワイヤテンプレート110は、基板120に根付いている。シリコン系電極活性材料(SiE)層140は、ナノワイヤテンプレート110上に堆積されている。SiE層140は、ナノワイヤテンプレート110のナノワイヤの先端において又はその付近において最も厚く、先細っていき、最終的にナノワイヤの根元においてはSiEがほとんど無くなるか又は全く無くなることに留意されたい。SiE層140は、非コンフォーマルコーティングである。すなわち、SiE層140は、SiE層140がその上に堆積された形状に一致しない。図1は、基板120上においてもSiEが本質的に無い例を示している。いくつかの構成において、薄い連続的なSiE層が基板120上に存在する。いくつかの構成において、薄い非連続的なSiE層が基板120上に存在する。いくつかの構成において、基板に隣接するナノワイヤ領域(ナノワイヤの根元)のいくつか又は全ては、薄い(0.1~0.4ミクロンの)SiEコーティングを有する。
【0032】
図2は、一実施形態に係る、2つのシリコン系電極活性材料層が上に堆積されたナノワイヤテンプレートの概略図である。最適なシリコン系電極活性材料コーティングを提供するために、2つの異なる堆積方法が用いられている。ナノワイヤテンプレート210は、基板220に根付いている。PECVDを用いて、シリコンリッチSiEを含有する第1のシリコン系電極活性材料層240がナノワイヤテンプレート210上に堆積されている。第1のSiE層240は、ナノワイヤテンプレート110のナノワイヤの先端において又はその付近において最も厚く、先細っていき、最終的にナノワイヤの根元においてはSiEがほとんど無い又は全く無い、プロファイルを有する。いくつかの実施形態において、第1のシリコン層240は、ナノワイヤの先端において又はその付近において、0.5~50ミクロンの厚さ、0.5~20ミクロンの厚さ、又は10~20ミクロンの厚さを有する。熱CVDを用いて、シリコンリッチSiEを含有する第2のシリコン系電極活性材料層230がナノワイヤの第1の層240上に堆積されている。(上記で示したように、元素「E」の同一性及び/又は量は、第1のシリコン系電極活性材料層240におけるものと同じ又は異なってよく、その材料は、層240におけるシリコンリッチSiE材料と区別するために、シリコンリッチSiFと称され得る。)いくつかの実施形態において、第2のSiE層230は、5~500nm、10~200nm、又は10~90nm厚の厚さを有する。第2のSiE層230は、コンフォーマルコーティングである。すなわち、第2のSiE層230は、第2のSiE層230がその上に堆積される形状に一致する。第2のSiE層230は、第1のシリコン系電極活性材料層240の表面、基板220、及びナノワイヤテンプレート210の任意の露出部分に対してコンフォーマルである。第2のSiE層230は、略均一な厚さを有する。結果として得られる構造は、ナノワイヤの根元端部におけるよりも先端において又はその付近において、(第1のシリコン系電極活性材料層240の非コンフォーマルな性質に起因して)はるかに多いシリコン系電極活性材料を有する。
【0033】
第1のSiE層240は、表面粗さ及び多孔性を有する。第1のSiE層240が有するものよりも滑らかな表面を有する第2のSiE層230の厚さは、第1のSiE層240の表面粗さを軽減するために調整されてよい。滑らかな第2のSiE層230により、コートされたナノワイヤの全表面積が減少する。表面積が減少するとはつまり、バッテリがサイクルするのにつれてSEI(固体電解質界面)層が上に形成され得る表面が小さくなることを意味する。SEIがより少ないとはつまり、リチウム消費がより少なくなり、サイクルに利用可能なリチウムがより多く残されることを意味する。いくつかの構成において、第1のSiE層の表面粗さが増大するのにつれて、第2のSiE層230の厚さを増大させることが有用である。いくつかの構成において、第2のSiE層230の厚さは、5~500nm、10~200nm、又は10~90nmの厚さである。
【0034】
本明細書に記載の構造は、多くの利点を有する。いくつかの実施形態において、SiE材料は、ナノワイヤの根元よりも先端付近に多く存在するが、根元には、SiE材料の薄い層が依然として存在する。根元にこのような薄いシリコン層を有することで、ナノワイヤテンプレートのナノワイヤと基板との間の機械的接続が強化され、これはサイクル中にナノワイヤが基板から分離しないことを確実にするのに役立つ。
【0035】
別の利点は、PECVD SiE層が熱CVD SiE層ほど高密度でないことである。PECVDを用いて作成されるSiE層は、大量のボイド及び空孔を含んでよい。このような欠陥部は、バッテリセルの充電中にシリコン系電極活性材料がリチウムを吸収するのにつれて、シリコン系電極活性材料がその中へと膨張できる空間を提供する点で非常に有用であり得る。
【0036】
いくつかの構成において、少量でも追加の元素Eが、シリコン系電極活性材料がリチウムイオンを吸収するのにつれて膨張するのをサポート及び緩衝し、これにより、シリコン系電極活性材料の割れが低減し、バッテリセルの回復性及びサイクル寿命が改善される。また、元素Eは、シリコン系電極活性材料を通したリチウムイオン輸送を劇的に改善させる。いくつかの実施形態において、元素Eは、材料マトリクス中にナノサイズのシリコンドメインを分散させる構造を作り出すように、シリコンと結合する。シリコングレイン又はドメインは、上記構造によるシリコングレインの物理的分離に起因して、より多数のサイクルの間、それらのナノサイズ寸法を維持する。更に、リチオ化時にリチウムと反応してリチウムシリケート化合物を不可逆的に形成し、非常に高い第1サイクル損失及びセル容量減少をもたらすSiOとは異なり、シリコンリッチSiE材料は、高い第1サイクル損失及びセル容量減少をもたらさない。いくつかの実施形態において、シリコンリッチ層中のEのレベルは、少なくとも0.005、0.01、0.05、0.07、0.1、又は0.15である。
【0037】
いくつかの実施形態において、シリコンリッチ層中のEのレベルは、十分な量のシリコン活性材料が利用可能であるようなレベルに維持される。いくつかの実施形態において、層のうちの一方又は両方におけるSiE中のEのレベルxは、0.3、0.2、0.15、0.1、0.07、0.05、0.03、又は0.01以下である。いくつかの実施形態において、2つの層のうちの一方のみがSiE層を含み、他方の層は、純粋なシリコンであるか又は別の元素を含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、PECVDを用いて堆積された第1のSiEシリコン層は、非晶質であり、2.25g/cm未満、2.10g/cm未満、又は1.70g/cm未満である平均密度を有しており、多くの小さなボイドを含んでよい。熱CVDを用いて堆積された第2のSiE層は、非晶質であり、2.0g/cmより高いか又は2.25g/cmより高い平均密度を有する。いくつかの実施形態において、2つの層の密度は、それらの絶対密度によってではなく、それらの層の間の密度差に関して記載され得る。いくつかの実施形態において、第2のSiE層は、第1の層の平均密度よりも、少なくとも0.05g/cm、少なくとも0.1g/cm、少なくとも0.2g/cm、少なくとも0.3g/cm高い平均密度を有する。当業者によって理解されるように、非晶質シリコン系電極活性材料の密度は、結晶又は多結晶形態での同じ材料の密度より低い。
【0039】
様々な実施形態によれば、本明細書に記載のナノ構造は、第1のSiE層上に第2のSiE層を有し、第2の層は、第1の層の密度より高い密度を有することを特徴とし得る。このような構造は、リチウムバッテリセル内のアノードを形成するのに用いることができる。いくつかの実施形態において、第1のSiE層は、低密度の非晶質であり、いくつかのボイドを含んでもよく、それらのボイドの全ては、セルサイクル中にSiEがリチウムイオンを吸収するのにつれて、SiEがその中へと膨張できる空間を提供する役割を果たす。これは、より高い密度を有しており、リチウムイオンを吸収する際に応力割れを生じ得る、結晶又は多結晶シリコン系電極活性材料に対する利点である。加えて、リチウムイオンは、結晶又は多結晶シリコン系電極活性材料を通してよりも、非晶質材料を通しての方が拡散しやすい。したがって、各層の密度は、シリコンサイクル容量、電力又はサイクル速度要件、及びナノワイヤテンプレート密度に応じて調整されてよい。
【0040】
特定の実施形態において、リチウムバッテリセルのためのアノードは、アノードのための電流コレクタとして機能し得る導電性基板上に根付いたナノワイヤテンプレート構造から形成される。導電性基板材料の例としては、銅、金属酸化物でコートされた銅、ステンレススチール、チタン、アルミニウム、ニッケル、クロム、タングステン、他の金属、金属シリサイド及び他の導電性金属化合物、炭素、カーボンファイバ、グラファイト、グラフェン、カーボンメッシュ、導電性ポリマー、ドープシリコン、又は多層構造を含む上記の組み合わせが挙げられる。基板は、箔、フィルム、メッシュ、発泡体、積層体、ワイヤ、チューブ、粒子、多層構造、又は任意の他の好適な形態として形成されてよい。特定の実施形態において、基板は、約1ミクロン~50ミクロン又はより具体的には約5ミクロン~30ミクロンの厚さを有する金属箔である。
【0041】
ナノワイヤは、基板に物理的及び導電的に取り付けられてよい。物理的取り付けは、単なる機械的接触を超えるものであってよく、これは、例えば、基板上に別個のナノ構造を有するバインダをコートした結果としてもたらされ得る。いくつかの実施形態において、物理的取り付けは、ナノ構造を基板に融合させた結果として、又は、例えばCVD技法を用いて若しくは蒸気-液体-固体CVD成長を用いて、ナノ構造若しくはナノ構造のいくつかの部分を基板上に直接堆積させた結果としてもたらされる。いくつかの実施形態において、物理的取り付けは、ナノワイヤを、基板上に弾道的に突き刺した(ballistic impalement)結果としてもたらされる。様々な実施形態において、物理的取り付けは、2つの結合材料の合金(例えば、シリサイド)の形成等の、金属結合を含む。他の実施形態において、ナノワイヤは、同様の形状及び寸法を有する構造を生み出す他のナノワイヤ成長技法を用いて、基板から成長させられる。
【0042】
多くの実施形態において、ナノワイヤテンプレートのナノワイヤは、金属又は金属シリサイドを含有し、電子導電性である。いくつかの実施形態において、ナノワイヤは、1又は複数の酸化物を含む。導電性テンプレートは、シリコン系電極活性材料から基板又は電流コレクタへの電子輸送路を設けるために有用とすることができる。様々な実施形態において、ナノワイヤテンプレートにおけるナノワイヤは、直径が10ナノメートル~100ナノメートルであり、長さが10ミクロン~100ミクロンである。ナノワイヤテンプレートを含むリチウムバッテリセルのアノードは、参照により本明細書に援用される米国特許第7,816,031号に更に記載されている。
【0043】
いくつかの実施形態において、シリコン系材料ナノ構造は、概して円対称である。概して円対称のナノワイヤのアレイは、2つのナノワイヤが、それらのコーティングが互いに当接するのに十分なほど接近していることに起因して非対称性が導入され得るアレイを含むことに留意されたい。
【0044】
図3は、本明細書で記載されるように、異なる堆積法を用いて堆積された2つのSiE層でコートされたナノワイヤを示す概略断面図を示している。寸法dl、d2、及びhが示されている。dlは、コーティングの最大直径であり、d2は、コーティングの底部直径であり、hは、コートされたナノワイヤの高さである。非コンフォーマルコーティング(多孔質の非コンフォーマルコーティング単体、又は高密度のコーティングでコンフォーマルにコートされた多孔質の非コンフォーマルコーティング)は、いくつかの実施形態において、以下の比率:dl/hが1/2~1/9であり、d2/hが1/400~1/70であり、dl/d2の比率が50:1~1.5:1であることを特徴としてよい。様々な実施形態において、dlは、4~15ミクロン又は4~12ミクロンであり、d2は、0.2~2ミクロンであり、hは、20~50ミクロン又は30~40ミクロンである。
【0045】
1つの例において、直径が約10~50nmであるとともに長さが約10~25ミクロンであるナノワイヤが、コートした後では、ナノ構造の根元における直径が100~400nmであり、最大直径が2~20ミクロンであり、アノードの総高さが20~50ミクロンであるように、シリコンリッチ窒化シリコンでコートされる。
【0046】
いくつかの実施形態において、PECVDによって堆積されたシリコン系電極活性材料の非コンフォーマル層は、少なくとも10%の水素含有量を含んでよい。いくつかの実施形態において、熱CVDによって堆積されたシリコン系電極活性材料のコンフォーマル層は、7%以下又は5%以下の水素含有量を含んでよい。
【0047】
いくつかの実施形態において、非コンフォーマルSiE層は、PECVDの代わりに又はそれに加えて、蒸着若しくは物理気相成長(PVD)、又はホットワイヤ化学気相成長(HWCVD)によって堆積される。
【0048】
PECVD堆積プロセスにおいて、プラズマは、基板が配置されているチャンバ内か又はチャンバの上流のいずれかで生成されて、チャンバに供給されてよい。容量結合プラズマ、誘導結合プラズマ、及び導電結合プラズマを含む、任意のタイプのプラズマを使用してよい。DC、AC、RF、及びマイクロ波源を含む、任意のプラズマ源を使用してよい。
【0049】
PECVDプロセスの条件は、特定のプロセス及び使用されるツールに応じて変化し得る。かなり広範囲の温度、例えば、180℃~600℃を使用してよい。圧力は、プラズマプロセスの場合は通常低く、例えば、プロセスに応じて、1mTorr~400Torr、又は10mTorr~100mTorrの範囲である。
【0050】
いくつかの実装において、本明細書に記載の新規な構造を形成するのに用いられるPECVDプロセスは、膨張熱プラズマ化学気相成長(ETP-CVD)プロセスである。このようなプロセスにおいて、プラズマ生成ガスは、直流アークプラズマジェネレータを通過して、隣接する真空チャンバ内のナノワイヤテンプレートを含むウェブ又は他の基板とともに、プラズマを形成する。シリコン系原料ガスは、生成されたラジカルとともに、プラズマに注入される。プラズマは、発散ノズルを介して拡大されて、真空チャンバ内へ基板に向けて注入され、非晶質SiEの非コンフォーマル層がナノワイヤテンプレート上に形成される。プラズマ生成ガスの例としては、限定されるものではないが、アルゴン(Ar)及びアンモニウム(NH)、並びに窒素(N)が挙げられる。いくつかの実施形態において、プラズマ中のイオン化アルゴン及びNH/N種がシラン分子と衝突して、シリコン原料のラジカル種を形成し、その結果、ナノワイヤテンプレート上にSiEが堆積される。DCプラズマ源に関する電圧及び電流の範囲例は、60~80ボルト又は50~70アンペアである。
【0051】
いくつかの実施形態において、コンフォーマルな高密度シリコン層は、熱CVDの代わりに又はそれに加えて、原子層堆積(ALD)を用いて堆積される。減圧CVD(LPCVD)等の、任意の適切な熱CVDプロセスを用いてよい。ナノワイヤと基板との接触面の周囲に金属シリサイドが形成されないことを確実にするように金属基板に注意が払われている限り、温度は、サーマルバジェットが許すだけ高く上がってよい。いくつかの実施形態において、熱CVDプロセス中のチャンバ圧は、気相反応及び非コンフォーマル堆積を防止するために、低く、例えば、100mTorr~2Torrに維持される。圧力がより高い、例えば、2Torr又は500Torrよりも高いと、非コンフォーマル堆積がもたらされる可能性がある。
【0052】
元素E原料と組み合わされる任意の適切なシリコン原料は、非コンフォーマル及びコンフォーマルSiEに用いられ得る。シリコン原料についての例としては、限定されるものではないが、シラン(SiH)、ジクロロシラン(HSiCl)、モノクロロシラン(HSiCl)、トリクロロシラン(HSiCl)、四塩化ケイ素(SiC1)が挙げられる。窒素原料についての例は、限定されるものではないが、シリコンリッチ窒化シリコン層を形成するように、アンモニウム(NH)及び窒素(N)が挙げられる。他の元素を、有機金属前駆体の場合のように、ガス前駆体(CH、GeH、B等)又は蒸発した液体前駆体からプラズマに導入できる。
【0053】
制御された密度を有する活性材料層を堆積することについての更なる説明は、参照により本明細書に援用される米国特許出願第13/277,821号に見出され得る。
【0054】
また更に、いくつかの実施形態において、非Siドミナント層がナノ構造の最外殻であってよい。層の例としては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化コバルト、及び酸化ジルコニウム等の金属酸化物、金属窒化物、並びに、窒化シリコン又は炭素系層が挙げられる。いくつかの実施形態において、これらのうちのいずれかの薄い層が、上述した高密度Si層に加えて又はその代わりに堆積されてよい。
【0055】
いくつかの実施形態において、元素を添加又は除去して、異なる化学組成、例えば酸化物又はハロゲン化物の1~10nm厚の層を作り出すために、外側SiEx層の表面が、ガス又は溶液相処理/曝露によって化学修飾されてよい。
【0056】
様々な実施形態によれば、第1のSiE層及び第2のSiE層は、それぞれ均一な密度を有する。いくつかの実施形態において、堆積条件は、一方又は両方の層において密度勾配を付けるように、堆積中に調整されてよい。例えば、一方又は両方の層は、層の外側部分に向かうにつれて密度がより高くなってよい。そのような実施形態において、層の密度を特徴付けるのに、層の平均密度が用いられてよい。
【0057】
様々な実施形態によれば、第1のSiE層及び第2のSiE層は、それぞれE元素の均一な濃度を有する。SiEは、一層におけるSi及びEの総量を指す。しかしながら、いくつかの実施形態において、堆積条件は、一方又は両方の層において濃度勾配を付けるように、堆積中に調整されてよい。1つの例において、一方又は両方の層は、層の外側部分に向かってE濃度が増大してよい。別の例において、一方又は両方の層は、層の外側部分に向かってE濃度が減少してよい。更に別の例において、一方又は両方の層は、層全体を通して増大及び減少の両方があるように、E濃度が変化してよい。そのような実施形態において、層のE濃度を特徴付けるのに、層の平均E濃度が用いられてよい。Eの濃度プロファイルは、層の厚さを通して変化すると言える。平坦(均一)なプロファイルの1又は複数の領域、及び、増大及び/又は減少する1又は複数の領域を含む濃度プロファイルが含まれる。
アセンブリ
【0058】
図4Aは、特定の実施形態に係る、本明細書に記載の電極を使用する部分的に組み立てられた電気化学セルの平面図である。セルは、正電流コレクタ403の大部分を覆うものとして示されている正極活性層402を備える。また、セルは、負電流コレクタ405の大部分を覆うものとして示されている負極活性層404を備える。正極活性層402と負極活性層404との間には、セパレータ406が存在する。
【0059】
1つの実施形態において、負極活性層404は、正極活性層402から放出されるリチウムイオンが負極活性層404の活性材料によって捕捉されることを確実にするように、正極活性層402より僅かに大きい。1つの実施形態において、負極活性層404は、1又は複数の方向に、正極活性層402を少なくとも約0.25ミリメートル~7ミリメートル超えて延在する。より具体的な実施形態において、負極活性層404は、1又は複数の方向に、正極活性層402を約1ミリメートル~2ミリメートルだけ超えて延在する。特定の実施形態において、セパレータ406の縁部は、負極が他のバッテリ構成要素から完全に電子的に絶縁されるように、少なくとも負極活性層404の外縁部を超えて延在する。
【0060】
図4Bは、特定の実施形態に係る、本明細書に記載の電極を使用する部分的に組み立てられた電気化学セルの電極スタック400の断面図である。片側に正極活性層402aを、その反対側に正極活性層402bを備える、正電流コレクタ403が存在する。片側に負極活性層404aを、その反対側に負極活性層404bを備える負電流コレクタ405が存在する。正極活性層402aと負極活性層404aとの間には、セパレータ406aが存在する。セパレータシート406a及び406bは、正極活性層402aと負極活性層404aとの間の機械的分離を維持する役割を果たし、後で追加される液体電解質(図示せず)を吸い取るスポンジとして機能する。電流コレクタ403、405の端部上には活性材料が存在せず、これらの端部は、セル(図示せず)の適切な端子に接続するために使用できる。
【0061】
電極層402a、404aと、電流コレクタ403、405と、セパレータ406aとは、一緒に、1つの電気化学セルユニットを形成すると言える。図4Bに示されている完全なスタック400は、電極層402b、404bと、更なるセパレータ406bとを備える。電流コレクタ403、405は、隣接するセルの間で共有できる。このようなスタックを繰り返し設けると、単一のセルユニットの容量より大きな容量のセル又はバッテリが得られる。
【0062】
大容量のバッテリ又はセルを作成する別の方法は、1つの非常に大きなセルユニットを作成し、それを巻き回して、複数のスタックを作成することである。図5Aにおける断面概略図は、ジェリーロール500と称されることもあるバッテリ又はセルを形成するために、電極を2枚のセパレータシートと一緒にどれだけ長く細く巻くことができるかを示している。ジェリーロールは、曲線形の、多くの場合は円筒型の、ケース502の内寸にフィットするような形状及びサイズである。ジェリーロール500は、正極506と、負極504とを備える。電極間の白い空間は、セパレータシートである。ジェリーロールは、ケース502に挿入できる。いくつかの実施形態において、ジェリーロール500は、その中心にマンドレル508を備えてよい。マンドレル508は、初期巻き径を確立し、内側の巻きが中心軸領域を占領することを防止する。マンドレル508は、導電性材料から作成されてよく、いくつかの実施形態において、セル端子の一部であってよい。図5Bは、正電流コレクタ(図示せず)及び負電流コレクタ(図示せず)からそれぞれ延在する正側タブ512及び負側タブ514を備えるジェリーロール500の斜視図を示している。タブは、電流コレクタに溶接されてよい。
【0063】
電極の長さ及び幅は、セルの全寸法と、活性層及び電流コレクタの厚さに依拠する。例えば、直径18mm且つ長さ85mmの従来の18650タイプのセルは、約300~1000mmの長さの電極を備えてよい。より低いレート及び/又はより高い容量の用途に対応するより短い電極は、より厚く、巻き数がより少ない。
【0064】
円筒型設計は、特にサイクル中に電極が膨張し、ひいてはケーシングに圧力を加える可能性がある場合に、一部のリチウムイオンセルに使用され得る。(十分な安全マージンを取った状態で)セルにかかる圧力を依然として満足な状態に維持可能としながらできる限り薄い円筒型ケーシングを使用することが有用である。角柱型(平坦)セルは同様に巻かれ得るが、それらのケースは可撓性であり得るので、内圧に対応するように長辺に沿って屈曲する可能性がある。また、セルの異なる部分内では、圧力が同じでない場合があり、角柱型セルの隅部は空のままとなる場合がある。リチウムイオンセル内には空ポケットが無いようにされてよい。なぜなら、電極が膨張する間、電極がこれらのポケットに不均一に押し込まれやすいからである。また、電解質が空ポケット内に集中して、電極間に乾燥領域が残され、電極間のリチウムイオン輸送に悪影響を及ぼし得る。しかしながら、矩形のフォームファクタにより規定される用途等の特定の用途については、角柱型セルが適切である。いくつかの実施形態において、角柱型セルは、巻かれた角柱型セルの場合に直面する困難の一部を回避するために、矩形の電極及びセパレータシートのスタックを使用する。
【0065】
図5Cは、巻かれた角柱型ジェリーロール520の上面図を示している。ジェリーロール520は、正極524と、負極526とを備える。電極間の白い空間は、セパレータシートである。ジェリーロール520は、矩形の角柱型ケース522に封入されている。円筒型ジェリーロールとは異なり、角柱型ジェリーロールの巻きは、ジェリーロールの中央における平坦な延在セクションで開始する。1つの実施形態において、ジェリーロールは、ジェリーロールの中央にマンドレル(図示せず)を備えてよく、電極及びセパレータは、このマンドレル上に巻き付けられる。
【0066】
図6Aは、複数のセル(601a、601b、601c、601d、及び601e)を備える積み重ねられたセルの断面図を示しており、複数のセルはそれぞれ、正極(例えば、603a、603b)と、正電流コレクタ(例えば、602)と、負極(例えば、605a、605b)と、負電流コレクタ(例えば、604)と、電極間のセパレータ(例えば、606a、606b)とを備える。各電流コレクタは、隣接するセルによって共有される。積み重ねられたセルは、略いかなる形状でも作成でき、このことは角柱型バッテリに特に好適である。電流コレクタタブは、通常、スタックから延出して、バッテリ端子につながっている。図6Bは、複数のセルを備える積み重ねられたセルの斜視図を示している。
【0067】
電極が上述したように構成されると、セルには電解質が充填される。リチウムイオンセル内の電解質は、液体、固体、又はゲルであってよい。固体電解質を伴うリチウムイオンセルは、リチウムポリマーセルと称される。
【0068】
通常の液体電解質は、1又は複数の溶媒及び1又は複数の塩を含み、これらのうちの少なくとも一方は、リチウムを含む。最初の充電サイクル(形成サイクルと称されることもある)中、電解質中の有機溶媒が負極表面上で部分的に分解して、SEI層を形成する可能性がある。その界面は、通常、電気絶縁性であるがイオン伝導性であり、それによりリチウムイオンを通過させることができる。また、その界面は、その後の充電サブサイクルにおいて電解質の分解を防止する。
【0069】
一部のリチウムイオンセルに好適な非水溶媒の例をいくつか挙げると、環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)及びビニルエチレンカーボネート(VEC))、ビニレンカーボネート(VC)、ラクトン(例えば、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン(GVL)及びα-アンゲリカラクトン(AGL))、直鎖カーボネート(例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルブチルカーボネート(NBC)及びジブチルカーボネート(DBC))、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-ジエトキシエタン及び1,2-ジブトキシエタン)、亜硝酸塩(例えば、アセトニトリル及びアジポニトリル)、直鎖エステル(例えば、プロピオン酸メチル、ピバル酸メチル、ピバル酸ブチル及びピバル酸オクチル)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド)、有機リン酸塩(例えば、リン酸トリメチル及びリン酸トリオクチル)、及び、S=O基を含む有機化合物(例えば、ジメチルスルホン及びジビニルスルホン)、並びに、それらの組み合わせがある。
【0070】
非水液体溶媒は、組み合わせで使用できる。これらの組み合わせの例を挙げると、環状カーボネート-直鎖カーボネート、環状カーボネート-ラクトン、環状カーボネート-ラクトン-直鎖カーボネート、環状カーボネート-直鎖カーボネート-ラクトン、環状カーボネート-直鎖カーボネート-エーテル、及び、環状カーボネート-直鎖カーボネート-直鎖エステルといった組み合わせがある。1つの実施形態において、環状カーボネートは直鎖エステルと組み合わされてよい。また、環状カーボネートは、ラクトン及び直鎖エステルと組み合わされてよい。具体的な実施形態において、環状カーボネートと直鎖エステルとの体積比は、約1:9~10:0であり、好ましくは2:8~7:3である。
【0071】
液体電解質に用いられる塩は、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiCFSO、LiC(CFSO、LiPF(CF)2、LiPF(C、LiPF(CF、LiPF(iso-C、LiPF(iso-C)、環状アルキル基を含むリチウム塩(例えば、(CF(SO2xLi及び(CF(SO2xLi)、並びに、それらの組み合わせのうちの1又は複数を含んでよい。一般的な組み合わせとしては、LiPF及びLiBF、LiPF及びLiN(CFSO、並びにLiBF及びLiN(CFSOが挙げられる。
【0072】
1つの実施形態において液体非水溶媒(又は溶媒の組み合わせ)中の塩の総濃度は、少なくとも約0.3Mであり、より具体的な実施形態において、塩濃度は、少なくとも約0.7Mである。濃度の上限は、溶解度の上限によって決定されてもよいし、又は、約2.5M以下としてもよい。より具体的な実施形態において、それは、約1.5M以下であってよい。
【0073】
固体電解質は、通常、それ自体セパレータとして機能するので、セパレータを伴わずに使用される。固体電解質は、電気絶縁性であり、イオン伝導性であり、電気化学的に安定している。固体電解質構成において、上述した液体電解質セルの場合と同じであり得るリチウム含有塩が用いられるが、これは、有機溶媒に溶解されるのではなく、固体ポリマー複合体の内部に保持される。固体ポリマー電解質の例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)若しくは塩化ポリビニリデン若しくはそれらの派生物のコポリマー、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(エチレン-クロロトリフルオロ-エチレン)、又は、ポリ(フッ素化エチレン-プロピレン)、酸化ポリエチレン(PEO)及びオキシメチレンがリンクされたPEO、三官能性ウレタンで架橋されたPEO-PPO-PEO、ポリ(ビス(メトキシ-エトキシ-エトキシド))-ホスファゼン(MEEP)、二官能基ウレタンで架橋されたトリオール型PEO、ポリ((オリゴ)オキシエチレン)メタクリレート-co-アルカリ金属メタクリレート、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PNMA)、ポリメチルアクリロニトリル(PMAN)、ポリシロキサン及びそれらのコポリマー及び派生物、アクリレートをベースにするポリマー、その他の同様の無溶媒ポリマー、前述のポリマーを凝縮又は架橋のいずれかで組み合わせて形成した異なるポリマー、並びに、前述のポリマーのうちの任意のものを物理的に混合したもの等の、電解質の塩のリチウムイオンが結合し且つ伝導時にその間で移動するために利用可能な孤立電子対を有する原子を含むモノマーから用意されるイオン伝導性ポリマーが挙げられ得る。薄い積層体の強度を向上させるために上記のポリマーと組み合わせて用いられ得る、他の導電性がより低いポリマーとしては、ポリエステル(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリカーボネート(PC)、硫化ポリフェニレン(PPS)、及び、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。
【0074】
図7は、1つの実施形態に係る、巻かれた円筒型セルの断面図を示している。ジェリーロールは、螺旋状に巻かれた正極702と、負極704と、2枚のセパレータシート706とを備える。ジェリーロールはセルケース716に挿入されており、セルを密封するのにキャップ718及びガスケット720が用いられる。特定の実施形態において、後続の操作が行われた後になるまで、セルは密封されないことに留意されたい。いくつかの場合において、キャップ718又はセルケース716は、安全デバイスを備える。例えば、過剰な圧力がバッテリ内に蓄積した場合に開放するように、安全ベント又はバーストバルブが使用されてよい。特定の実施形態において、正極材料の活性化時に放出される酸素を放出するように、一方向ガス放出バルブが備えられる。また、セルが短絡した場合にもたらされ得る損傷を低減するように、キャップ718の導電性経路に正温度係数(PTC)デバイスを組み込んでもよい。キャップ718の外面を正側端子として使用してよく、そのとき、セルケース716の外面は負側端子として機能し得る。代替的な一実施形態において、バッテリの極性は反転され、キャップ718の外面が負側端子として使用され、そのとき、セルケース716の外面は正側端子として機能する。タブ708及び710は、正極及び負極と、対応する端子との間の接続を確立するのに使用されてよい。内部短絡の可能性を防止するために、適切な絶縁ガスケット714及び712が挿入されてよい。例えば、内部絶縁のために、Kapton(商標)フィルムを使用してよい。製造時、セルを密封するために、キャップ718をセルケース716に圧着してよい。しかしながら、この操作の前に、ジェリーロールの多孔質空間を充填するように、電解質(図示せず)が添加される。
【0075】
通常リチウムイオンセルには剛性ケースが使用されるが、リチウムポリマーセルは可撓性の箔タイプ(ポリマー積層体)のケースに詰めてもよい。これらのケースには、多様な材料を選択できる。リチウムイオンバッテリの場合、Ti-6-4、その他のTi合金、Al、Al合金、及び、300シリーズのステンレススチールが、正側の導電性ケース部分及び端部キャップに好適な材料であり得、市販の純Ti、Ti合金、Cu、Al、Al合金、Ni、Pb及びステンレススチールが、負側の導電性ケース部分及び端部キャップに好適な材料であり得る。
【0076】
上述したバッテリ用途に加えて、ナノ構造は、燃料セル(例えば、アノード、カソード、及び、電解質)、へテロ接合ソーラーセルの活性材料、様々な形態の電流コレクタ、及び/又は、吸収性コーティングにおいても使用され得る。
実験及び結果
【0077】
金属箔上のナノワイヤテンプレートは、PECVDプラズマチャンバ内で、シラン、アルゴン、及びアンモニウム又は窒素ガスに曝露され、その結果、ナノワイヤテンプレート上に、シリコンリッチSiN層である第1の層が堆積された。熱CVDを用いて、第1のSiN層上に、シリコンリッチSiNである第2のコーティングが堆積され、リチウムバッテリセルのためのアノードが形成された。上記で作成したアノードに加えて、セルは、酸化リチウムコバルトカソードと、セパレータと、LiPF塩を伴う炭酸塩系電解質とを含んでいた。
【0078】
図8は、シリコンリッチSiNセル及びシリコンのみを含有するアノードを備えるセルの両方についての、セルサイクル数の関数としての容量維持率を示すグラフである。両方のセルは、C/2の速度で充放電された。SiNセルについてのSiN容量維持率プロファイルは、Si単独セルについてのものよりはるかに遅く劣化した。SiNセルのライフサイクルは、Si単独セルのライフサイクルより約75%も長い。本明細書に記載したようにシリコンリッチSiEアノードを含むセルからのサイクルデータは、このようなアノードのサイクル寿命が、シリコン単体から作成されたアノードと比較すると増加したことを示している。
【0079】
本発明は、本明細書において、新規な原理の適用、及び必要とされるような特殊な構成要素の構築及び使用に関連する情報を当業者に提供するために、かなり詳細に記載されている。しかしながら、本発明は、異なる機器、材料、及びデバイスによって実行でき、本発明の範囲自体から逸脱することなく機器及び操作手順の両方に対する様々な変更を実現できることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8
【国際調査報告】