(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-08
(54)【発明の名称】燃料電池用触媒
(51)【国際特許分類】
H01M 4/88 20060101AFI20220401BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20220401BHJP
H01M 4/92 20060101ALI20220401BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20220401BHJP
B01J 23/89 20060101ALI20220401BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20220401BHJP
B01J 37/06 20060101ALI20220401BHJP
B01J 35/08 20060101ALI20220401BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20220401BHJP
【FI】
H01M4/88 K
H01M4/90 M
H01M4/92
H01M4/86 B
H01M4/86 M
B01J23/89 M
B01J37/08
B01J37/06
B01J35/08 Z
H01M8/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549581
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(85)【翻訳文提出日】2021-08-23
(86)【国際出願番号】 GB2020050743
(87)【国際公開番号】W WO2020193958
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512269535
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、フュエル、セルズ、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY FUEL CELLS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス-ボナストル、アレハンドロ
(72)【発明者】
【氏名】オマリー、レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】テオボルド、ブライアン
【テーマコード(参考)】
4G169
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA05
4G169AA08
4G169BA08B
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC31A
4G169BC39A
4G169BC40A
4G169BC44A
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC75A
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4G169CC32
4G169DA06
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4G169FB13
4G169FB27
4G169FB29
4G169FB49
4G169FC04
4G169FC07
4G169FC08
5H018AA06
5H018BB01
5H018BB13
5H018BB16
5H018DD10
5H018EE02
5H018EE03
5H018EE04
5H018EE10
5H018HH05
5H018HH08
5H126BB06
(57)【要約】
【解決手段】 触媒前駆体を調製するためのプロセスであって、
(i)PtaXb合金粒子を担体材料上に準備する工程と、
(ii)Xのシェルを、PtaXb合金粒子に適用して、PtaXbコアとXシェルとを有する粒子を含む触媒前駆体を準備する工程と、を含む。a対bの比は、10:1~1:2.5の範囲であり、Xは、Co、Ni、Y、Gd、Sc又はCuである。また、触媒材料を調製するためのプロセスも提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒前駆体を調製するためのプロセスであって、
(i)Pt
aX
b合金粒子を担体材料上に準備する工程と、
(ii)Xのシェルを、前記Pt
aX
b合金粒子に適用して、Pt
aX
bコアとXシェルとを有する粒子を含む触媒前駆体を準備する工程と、を含み、
a対bの比が、10:1~1:2.5の範囲であり、かつ、Xが、Co、Ni、Y、Gd、Sc又はCuである、プロセス。
【請求項2】
工程(ii)が、制御表面反応を実施することによって実行される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
Xが、Co、Ni、又はCuである、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
Xが、Y、Gd、又はScである、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項5】
a対bの比が、5:1~1:2.5の範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
触媒材料を調製するためのプロセスであって、
(i)Pt
aX
b合金粒子を担体材料上に準備する工程と、
(ii)Xのシェルを、前記Pt
aX
b合金粒子に適用して、Pt
aX
bコアとXシェルとを有する粒子を含む触媒前駆体を準備する工程と、次いで
(iii)前記触媒前駆体を、900℃以下の温度で加熱する工程と、次いで
(iv)工程(iii)で生成された前記材料を、前記材料から金属Xの一部を浸出させるのに十分な条件にさらす工程と、を含み、
a対bの比が、10:1~1:2.5の範囲であり、かつ、Xが、Co、Ni、Y、Gd、Sc又はCuである、プロセス。
【請求項7】
工程(iii)において、前記触媒前駆体が、少なくとも150℃の温度で加熱される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
工程(ii)が、制御表面反応を実施することによって実行される、請求項6又は7に記載のプロセス。
【請求項9】
Xが、Co、Ni、又はCuである、請求項6~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
Xが、Y、Gd、又はScである、請求項6~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記a対bの比が、5:1~1:2.5の範囲である、請求項6~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
工程(iv)が酸洗浄によって実施される、請求項6~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
請求項6~12のいずれか一項に記載のプロセスによって得ることができる触媒材料。
【請求項14】
請求項13に記載の触媒材料を含む触媒層。
【請求項15】
請求項14に記載の触媒層と、イオン伝導性膜とを含む触媒コーティング膜。
【請求項16】
請求項14に記載の触媒層と、ガス拡散層とを含むガス拡散電極。
【請求項17】
請求項14に記載の触媒層、請求項15に記載の触媒コーティング膜、又は請求項16に記載のガス拡散電極を含む、膜電極接合体。
【請求項18】
請求項14に記載の触媒層、請求項15に記載の触媒コーティング膜、請求項16に記載のガス拡散電極、又は請求項17に記載の膜電極接合体を含む、燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された触媒材料、特に燃料電池のカソードにおける酸素還元反応のための改善された触媒材料を調製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電解質によって分離された2つの電極を含む電気化学セルである。燃料、例えば水素、メタノール若しくはエタノールなどのアルコール、又はギ酸が、アノードに供給され、酸化剤(例えば酸素又は空気)がカソードに供給される。電気化学反応は電極で発生し、燃料及び酸化剤の化学エネルギーは、電気エネルギー及び熱に変換される。電極触媒は、アノードにおける燃料の電気化学的酸化、及びカソードにおける酸素の電気化学的還元を促進するために使用される。
【0003】
燃料電池は、通常、使用される電解質の性質に応じて分類される。多くの場合、電解質は固体高分子膜であり、この膜は電子的に絶縁性であるがイオン伝導性である。プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)において、膜はプロトン伝導性であり、アノードで生成されたプロトンは、膜を介してカソードに輸送され、そこで酸素と結合して水を形成する。
【0004】
PEMFCの主な構成要素は、本質的に5つの層から構成される膜電極接合体(MEA)である。中心層は、ポリマーイオン伝導性膜である。イオン伝導性膜の両側には、特定の電解反応用に設計された電極触媒を含有する電極触媒層が存在する。最後に、各電極触媒層に隣接して、ガス拡散層が存在する。ガス拡散層は、反応物質が電極触媒層に到達できるようにする必要があり、電気化学反応によって生成される電流を伝導する必要がある。したがって、ガス拡散層は多孔質であり、電気伝導性である必要がある。
【0005】
従来的に、MEAは、以下に概説される多くの方法によって構築することができる:
(i)ガス拡散層に電極触媒層を適用して、ガス拡散電極を形成してもよい。イオン伝導性膜の各側にガス拡散電極を配置し、互いに積層して、5層MEAを形成する。
(ii)イオン伝導性膜の両面に電極触媒層を適用して、触媒コーティングされたイオン伝導性膜を形成してもよい。続いて、触媒コーティングされたイオン伝導性膜の各面にガス拡散層を適用する。
(iii)片側に電極触媒層でコーティングされたイオン伝導性膜、その電極触媒層に隣接するガス拡散層、及びイオン伝導性膜の反対側のガス拡散電極から、MEAを形成することができる。
【0006】
典型的には、大部分の用途に十分な電力を提供するには、数十又は数百のMEAが必要とされるので、燃料電池スタックを作製するための複数のMEAが組み立てられる。フローフィールドプレートを使用してMEAを分離する。このプレートは、MEAに反応物質を供給することと、製品を除去することと、電気的接続を提供することと、物理的担持を提供することと、のいくつかの機能を実行する。
【0007】
燃料酸化及び酸素還元のための電極触媒は、典型的には、白金又は1つ以上の他の金属と合金化された白金に基づく。白金又は白金合金触媒により、担持されていないナノメートルサイズの粒子(例えば、金属ブラック)の形態にすることも、個別のナノ粒子として担体材料(担持された触媒)上に堆積させることもでき、これにより、非常に高い金属表面積がもたらされる。電極触媒はまた、担体材料上に堆積されたコーティング又は伸長フィルムの形態であってもよい。改善された活性及び/又は安定性を有する触媒、特に酸素還元触媒が継続的に求められているため、高価な白金触媒がより効果的に利用される。このことにより、MEAの性能を向上させること、MEAに使用される触媒の担持量(したがってコスト)を削減すること、又は両方の利点を組み合わせることが可能になる。
【0008】
Pt二元合金、Pt単層触媒、Ptスキン触媒、及びナノ構造薄膜(NSTF)触媒などの広範囲の触媒概念が、過去十年間にわたって調査されてきた。近年で報告されている高活性触媒への別のアプローチは、脱合金Pt-Mコンセプトのもの、すなわち、粒子表面からの卑金属の選択的浸出プロセスに供される、塩基金属(M)リッチ粒子の合成によって得られる材料である。得られた、脱合金化された電極触媒粒子の白金リッチのシェルは、電子効果を介して、高活性酸素還元反応(ORR)触媒をもたらす圧縮ひずみを呈する。回転ディスク電極(RDE)及びMEA実験の両方において有望な性能が報告されている。しかしながら、このような触媒の活性及び安定性の更なる向上を可能にするために、白金リッチのシェル及び下層のコア材料の構造をより良好に制御する、更なる改善された触媒を設計する必要性が依然として存在する。
【0009】
炭素上に担持された脱合金化された二元PtNi3触媒は、Journal of The Electrochemical Soc,165(6)F3316-F3327(2018)でMyersらによって、及びJ.Phys.Chem.C2015,119,757-765でRamakerらによって文書化されているように、燃料電池用途のためのカソード触媒として知られている。しかしながら、好適に活性な合金を形成するために、約1000℃でアニーリングする工程が必要とされる。この高温アニーリングは焼結を引き起こすことがあり、これは金属表面積を減少させ、したがって、Ptの単位質量当たりの触媒活性を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、改善された触媒を調製するためのプロセス、特に燃料電池のカソードにおける酸素還元反応のための改善された触媒を調製するためのプロセスを提供することである。特に、このプロセスによって調製された改善された触媒は、性能及び安定性の向上を示す。
【0011】
したがって、本発明の第1の態様は、触媒前駆体を調製するためのプロセスを提供し、当該プロセスは、
(i)PtaXb合金粒子を担体材料上に準備する工程と、
(ii)XのシェルをPtaXb合金粒子に適用して、PtaXbコアとXシェルとを有する粒子を含む触媒前駆体を準備する工程と、を含み、
式中、a対bの比は、10:1~1:2.5の範囲であり、かつ、
Xは、Co、Ni、Y、Gd、Sc又はCuである。
【0012】
本発明の文脈における触媒前駆体は、触媒材料、例えば、本発明の第2の態様のプロセスによって得ることができる触媒材料を、追加の変換工程を実行することによって調製することができる材料である。
【0013】
本発明の第2の態様は、触媒材料を調製するためのプロセスを提供し、当該プロセスは、
(i)PtaXb合金粒子を担体材料上に準備する工程と、
(ii)XのシェルをPtaXb合金粒子に適用して、PtaXbコアとXシェルとを有する粒子を含む触媒前駆体を準備する工程と、次に、
(iii)触媒前駆体を900℃以下の温度で加熱する工程と、次に、
(iv)工程(iii)で生成された材料を、材料から金属Xの一部分を浸出させるのに十分な条件にさらす工程と、を含み、
式中、a対bの比は、10:1~1:2.5の範囲であり、かつ、
Xは、Co、Ni、Y、Gd、Sc又はCuである。
【0014】
本発明の第2の態様の工程(i)及び(ii)が、本発明の第1の態様の工程(i)及び(ii)に相当することが理解されるであろう。したがって、本明細書で論じられる全ての特徴は、本発明の第1及び第2の態様と組み合わせることができる。しかしながら、工程(iii)及び(iv)は、本発明の第1の態様において必須ではない。
【0015】
本発明のプロセスによって得られる触媒材料は、例えば、燃料電池、特にプロトン交換膜燃料電池(PEMFC)などの電気化学セルのガス拡散電極に使用するために、触媒層において特に使用されている。
【0016】
したがって、本発明の第2の態様のプロセスによって得られる触媒材料は、触媒材料を含む触媒層と共にまた提供される。
【0017】
本発明の触媒層と、イオン伝導性膜と、本発明の触媒層及びガス拡散層を含むガス拡散電極と、を含む触媒コーティング膜も提供される。
【0018】
また、触媒層若しくは触媒コーティング膜、又は本発明のガス拡散層を含む膜電極接合体(MEA)も提供される。
【0019】
本発明のMEA、ガス拡散層、触媒コーティング膜、又は本発明の触媒層を含む燃料電池も提供される。
【0020】
本発明の触媒材料は、燃料電池のアノード又はカソードのいずれかで、特にカソードで使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、実施例1~3並びに比較例1及び2の触媒を含むMEAの電圧対電流密度を、Pt/Cと共に、H
2/空気下及び完全加湿条件で示すプロットである。
【
図1A】
図1Aは、H
2/空気下及び完全加湿条件下での、実施例1~3並びに比較例1及び2の触媒を含むMEAの2.0A/cm
2の電流密度(高電流密度)での電圧を示すチャートである。
【
図2】
図2は、H
2/空気下及び乾燥条件下での、実施例1~3並びに比較例1及び2の触媒を含むMEAの電圧対電流密度を示すプロットである。
【
図2A】
図2Aは、H
2/空気下及び完全加湿条件下での、実施例1~3並びに比較例1及び2の触媒を含むMEAの1.5A/cm
2の電流密度(高電流密度)での電圧を示すチャートである。
【
図3】
図3は、実施例1~3、Pt/C比較、及び比較例2の、多数のセル反転サイクルにわたる電気化学的表面積の変化を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここで、本発明の好ましい及び/又は任意選択的な特徴が、記載される。本発明のいずれの態様も、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの他の態様とも組み合わせることができる。いずれの態様の好ましい又は所望による特徴のいずれも、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの態様とも、単一又は組み合わせで、組み合わせることができる。
【0023】
Xは、Co、Ni、Y、Gd、Sc又はCuである。したがって、Xは、好適にはCo、Ni又はCuである。あるいは、Xは、好適には、Y、Gd又はScである。好ましくは、XはNiである。
【0024】
工程(i)で提供されるPtaXb合金粒子において、a対bの比は、10:1~1:2.5、好適には5:1~1:2.5の範囲である。XがCo、Ni又はCuである場合、a対bの比は、好ましくは、4:1~1:2.5の範囲であり、典型的には3:1~1:2.5、例えば4:1~1:1、又は3:1~1:1の範囲である。
【0025】
担体材料は、それ自体が微粒子状であってもよく、炭素粒子、例えば、市販のカーボンブラック(Cabot Corp.(Vulcan XC72R)及びAkzo Nobel(Ketjen black series)から入手可能なカーボンブラックなど)、又はこれらのカーボンブラック若しくはアセチレンブラックなどの他の市販のカーボンブラックの黒鉛化体又は改変バージョン(例えば、Denka Co.,Ltdから入手可能なもの)であってもよい。炭素はまた、国際公開第2013/045894号に記載されているものなど、燃料電池で使用するために、特別に設計されているものでもよい。あるいは、微粒子は、金属酸化物(例えば、チタニア、ジルコニア、シリカ、又は混合酸化物、特に、国際公開第2012/080726号に開示されているような、ニオビアドープチタニア、リンドープ酸化スズ、及び混合白金族金属酸化物又は混合金属酸化物などの伝導性混合酸化物)、炭化物(例えば、炭化タングステン又は炭化チタン)、窒化物、特に伝導性窒化物(例えば、窒化チタン又は窒化チタンアルミニウム)であってもよい。
【0026】
担体材料は、複数の個々の担体粒子又は集合体を含む。語句「個々の担体粒子」とは、2つ以上のより小さい部分に分解できない、別名「一次粒子」として知られる、最小の単一部分を意味する。用語「集合体」は、2つ以上の一次粒子から構成されるクラスターに会合され、互いに恒久的に結合された一次粒子を指すために使用される。集合体の総比表面積は、集合する前の一次粒子の表面積の合計よりも小さい。2つ以上の個々の担体粒子又は集合体を組み合わせて、弱凝集体を提供することができる。弱凝集体は、緩く保持された個々の担体粒子又は弱い力によって互いに保持された集合体を含み、低エネルギー振動を課すことにより、個々の担体粒子又は集合体に容易に分解することができる。
【0027】
個々の担体粒子又は集合体は、好適には、5nm~500nmの範囲の平均粒径又は集合体サイズを有する。典型的には、個々の担体粒子は、10~70nmの範囲の平均粒径を有し、集合体は、100nm~500nmの範囲の平均粒径を有する。弱凝集体は、典型的には、BET窒素吸着法により測定したとき、20m2/g以上、好適には200m2/g以上、典型的には2000m2/g以下、好適には1000m2/g以下の表面積を有する。
【0028】
工程(i)で提供される担持されたPtaXb合金粒子は、Pt及び金属Xを担体粒子上に最初に共堆積させることによって調製することができる。例えば、好適な溶媒(例えば、水)中のPt塩(例えば、H2PtCl6)の溶液を、好適な媒体(例えば、水)中の担体粒子の分散液に添加し、次いで、好適な溶媒(例えば、水)中の金属Xの塩(例えば、硝酸塩)の溶液を添加する。次いで、混合物を加熱し、冷却し、濾過する。濾過された材料を乾燥させ、その後アニールする。担持されたPtaXb合金粒子を提供する際、アニーリングは、好適には1000℃以下、典型的には800℃以下、特に700℃以下の温度で行われる。アニーリングは、400℃以上の温度で好適に実行される。例えば、アニーリングは約600℃で行われてもよい。好適には、Pt塩及び金属Xの塩は、同時に、又は逆の順序で添加されてもよい。あるいは、当業者に既知の任意の他の一般的な調製方法は、コロイド堆積法又は制御された加水分解堆積法を含む方法など、担持されたPtaXb合金粒子を作製するように適合され得る。
【0029】
プロセスの工程(ii)において、XのシェルをPtaXb合金粒子に適用して、PtaXbコア及びXシェルを有する粒子を含む触媒前駆体を提供する。シェルは、好適には3原子の厚さ以下、典型的には2原子の厚さ以下である。好ましくは、シェルは単層であり、すなわち、1原子の厚さである。
【0030】
シェルは、制御表面反応を使用して適用され得る。制御表面反応の前に、プロセスの工程(ii)で調製された前駆体を、酸溶液、例えばH2SO4の溶液で洗浄することができる。制御表面反応(CSR)は、Tessierらにより、ECS Transactions,16(37)1-11(2009)で文書化された別の種で、吸着種が置換されるレドックス反応である。CSR技術の基礎は、金属前駆体を、以前に堆積され(例えば、担体上に)、化学反応によって前還元された金属ナノ粒子基材の表面に選択的に添加することである。通常のアプローチは、金属ナノ粒子基材を水素で被覆することであり、次いで、低原子価の有機金属錯体(金属前駆体)と反応することができる。CSR法は、金属ナノ粒子基材表面又はその付近で金属前駆体を反応させることを必要とするため、アルケン配位子を含有するカルボニル錯体が通常選択される。次いで、これらの配位子は還元され、錯体に使用される金属の単層厚層の背後に残る。したがって、この方法を順序通りに使用することにより、一連の単層を、金属ナノ粒子基材の上に、堆積した金属の位置を制御して構築することができ、担体上に堆積しないようにする。
【0031】
したがって、本発明における制御表面反応は、PtaXb合金粒子の表面に吸着した水素を金属Xで置換することを好適に伴う。この置換は、金属Xの有機錯体を、好ましくは溶液中で、表面に吸着した水素を有するPtaXb合金粒子の分散液に添加することによって達成される。したがって、制御表面反応は、好適な媒体(例えば、ヘプタン又はトルエンなどの炭化水素溶媒)中にPtaXb合金粒子の分散液を形成すること、分散液をH2ガスでパージすること、次いで金属Xの有機錯体の溶液、例えば、金属Xの(シクロペンタジエニル)2又はアセチルアセトネート水和物錯体を添加することを含む。
【0032】
このような制御反応を実施するための実際の条件の選択は、当業者の能力の範囲内である。実際の条件は、金属Xの同一性及び使用される錯体の同一性(すなわち、その配位子が存在する)に依存する。Pt3Ni合金粒子の場合、不活性雰囲気(例えば、N2)中の好適な媒体(例えば、トルエン又はヘプタン)中の担持Pt3Ni合金の分散液が提供される。次いで、分散液をH2-ガスでパージし、好適には100℃~300℃、好ましくは150℃~250℃の範囲の温度まで、30分~1.5時間の範囲の時間にわたって適切に加熱する。続いて、Niの有機錯体、好適には[Ni(シクロペンタジエニル)2]の脱気溶液(例えば、トルエン又はヘプタン中の)を、分散液に添加する。次いで、分散液を、50℃~150℃の範囲の温度に好適に加熱することができる。次いで、分散液を濾過して、Pt3Niコア及びNiシェルを有する粒子を提供する。
【0033】
制御表面反応を使用することが特に有利であるが、Xのシェルは、代替的に、原子層堆積法、化学蒸着法、又は低電位堆積若しくは関連方法などの電着アプローチなどの他の薄膜堆積法を使用して適用されてもよい。
【0034】
触媒材料を調製するために、工程(ii)の後、好ましくは900℃以下の温度で、N2などの不活性雰囲気中で触媒前駆体を加熱する工程(iii)が行われる。好適には、加熱は850℃以下、例えば800℃以下の温度で行われる。触媒前駆体を加熱する工程(iii)は、少なくとも150℃、好適には少なくとも190℃、例えば少なくとも200℃の温度で実施されてもよい。好ましくは、触媒前駆体を加熱する工程(iii)は、少なくとも400℃、より好ましくは少なくとも500℃、例えば少なくとも600℃の温度で実施される。加熱する工程は、金属シェルを材料のコア内に拡散させる。このプロセスの最適温度は、好ましくは少なくとも400℃、より好ましくは少なくとも500℃、例えば、少なくとも600℃である。しかしながら、実施例で実証されるように、この加熱工程が少なくとも150℃、好適には少なくとも190℃、例えば少なくとも200℃の温度で実施される場合にも、利点が見られる。触媒前駆体が加熱される時間は、触媒前駆体が必要な温度で一定時間保持されるという条件で、特に限定されない。例えば、材料は、少なくとも10分間、好適には少なくとも30分間、必要な温度で保持されてもよい。例えば、材料は、10時間以下、好適には5時間以下、典型的には3時間以下で、必要な温度で保持されてもよい。例えば、材料は、約1時間又は2時間、必要な温度で保持されてもよい。理論に束縛されるものではないが、既知のPtNi3触媒と比較して必要とされるより低い温度処理は、合金粒子の焼結及び弱凝集が少ないため、高電流密度で見られる性能の増大に寄与すると考えられる。したがって、900℃以下の温度で加熱工程を行うことが有利である。
【0035】
触媒材料を調製するために、工程(iii)の後、工程(iii)で生成された材料は、工程(iii)で生成された材料から金属Xの一部を浸出させるのに十分な条件に供される。好適には、浸出は、粒子の表面における金属Xの原子百分率の減少をもたらし、粒子を粒子の表面付近のPtに比較的豊富に残す。換言すれば、金属Xの原子百分率は、粒子の残りの部分よりも粒子の表面で少ない。触媒材料中のPtと金属Xとのバルク(すなわち、全体の)原子比は、好適には、50:50~95:5、好適には50:50~85:15の範囲である。XがCo、Ni又はCuである場合、触媒材料中のPtと金属Xとのバルク原子比は、好適には、50:50~80:20、典型的には50:50~75:25の範囲である。
【0036】
浸出は、工程(iii)中に形成された粒子を、0.5M硫酸水溶液などの酸性溶液と接触させることによって行うことができる。硫酸溶液は、アルコール、好適にはプロパノールなどの追加の溶媒を含んでもよい。典型的には、粒子は、0.5M硫酸などの酸性溶液に、1~48時間、好適には12~36時間の範囲で、酸性溶液に曝露され得る。浸出プロセスは、1回以上、好適には2回実施されてもよい。典型的には、浸出プロセスは、140℃以下、好適には120℃以下、好ましくは60℃以下の温度で実施される。典型的には、浸出プロセスは、少なくとも20℃、好適には少なくとも40℃、好ましくは少なくとも60℃の温度で実施される。したがって、浸出プロセスは、20℃~140℃、好適には40℃~120℃、好ましくは60℃~100℃の範囲の温度で実施され得る。酸性溶液の同一性及び濃度、並びに浸出の時間及び温度の決定は、当業者の能力の範囲内である。
【0037】
浸出プロセスはまた、工程(iii)からの粒子を電気化学反応に供することによって実施されてもよく、これは、in situで実施され得る(例えば、工程(iii)からの材料を含む電極又はMEAの電気化学サイクリングを実行する)。
【0038】
本発明は、本発明に記載のプロセスによって得ることができる触媒材料を更に提供する。好適には、触媒材料は、10nm以下、典型的には6nm以下の平均粒径を有する。好適には、触媒材料は、少なくとも2nm、典型的には少なくとも3nmの平均粒径を有する。平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)における検査によって決定され、金属粒径を直接測定する。典型的には、平均粒径を計算するために、この方法で1~200個の粒子が測定される。
【0039】
本発明のプロセスによって得られる触媒材料は、安定性の増加などの同様の従来技術の触媒よりも1つ以上の改善された特性を有し、MEAに組み込まれると、MEAは、特に高電流密度で改善された性能を示す。理論に束縛されるものではないが、触媒前駆体を調製するプロセスにおけるXシェルのPtaXbへの適用は、触媒材料の調製中により低い温度処理(例えば、1000℃未満)を可能にすると考えられる。より低い温度の処理は、特により高い電流密度で、触媒材料の性能の改善を促進する。
【0040】
本発明の触媒層は、追加の成分を含んでもよい。このような成分としては、層内のイオン伝導性を改善するために含まれるプロトン伝導性ポリマーなどのイオン伝導性ポリマー、酸素発生触媒、過酸化水素分解触媒、反応物及び水輸送特性を制御するための疎水性添加剤(表面処理を伴う又は伴わない、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)若しくは無機固体などのポリマー)又は親水性添加剤(酸化物などのポリマー若しくは無機固体)が挙げられるが、これらに限定されない。追加成分の選択は、触媒層がアノード又はカソードで使用されるかどうかに依存し、それは、どの追加の成分が適切であるかを決定するための当業者の能力の範囲内である。
【0041】
触媒層を調製するには、本発明の触媒材料及び任意の追加の構成要素を、水性及び/又は有機溶媒中に分散させて、触媒インクを調製する。必要に応じて、高剪断混合、ミリング、ボールミリング、マイクロフルイダイザーなどの通過、又はこれらの組み合わせなど、当該技術分野において既知の方法によって、粒子の破壊を行い、好適な粒径分布を達成する。
【0042】
触媒インクの調製後、インクを基材(例えば、ガス拡散層、イオン伝導性膜、又は支持材料/転写基材)上に堆積させて、触媒層を形成する。グラビアコーティング、スロットダイ(スロット、押出)コーティング、スクリーンプリント、ロータリースクリーンプリント、インクジェットプリント、スプレー、塗装、バーコーティング、パッドコーティング、ナイフ又はドクターブレードオーバーロールなどのギャップコーティング技術、及び計量ロッドの適用を含むが、これらに限定されない、当該技術分野において既知の任意の好適な手法によって、インクを堆積してもよい。
【0043】
触媒層の特性、例えば厚さ、電極触媒の担持量、多孔率、細孔径分布、平均細孔径、及び疎水性は、それがアノード又はカソードのどちらかで使用されているかによって異なる。具体的には、触媒層は、カソードで使用されるものである。アノードにおいて、触媒層の厚さは、好適には少なくとも1μm、典型的には少なくとも5μmである。アノードにおいて、触媒層の厚さは、好適には15μm以下、典型的には10μm以下である。カソードにおいて、触媒層の厚さは、好適には少なくとも2μm、典型的には少なくとも5μmである。カソードにおいて、触媒層の厚さは、好適には20μm以下、典型的には15μm以下である。
【0044】
触媒層中の電極触媒からの白金の担持量は、それがアノード又はカソードで使用されるかどうかに依存する。アノードにおいて、触媒層中の白金の担持量は、好適には、0.02~0.2mgPt/cm2、典型的には0.02~0.15mgPt/cm2、好ましくは0.02~0.1mgPt/cm2の範囲である。カソードにおいて、触媒層中の白金の担持量は、好適には、0.05~0.5mgPt/cm2、典型的には0.05~0.3mgPt/cm2、好ましくは0.1~0.2mgPt/cm2の範囲である。
【0045】
触媒層を、ガス拡散層上に堆積して、本発明のガス拡散電極を形成してもよい。ガス拡散層は、好適には、従来のガス拡散基材をベースとするものである。典型的な基材としては、炭素繊維のネットワーク及び熱硬化性樹脂結合剤を含む不織布紙若しくはウェブ(例えば、Toray Industries Inc.,Japanから入手可能な炭素繊維紙のTGP-Hシリーズ、若しくはFreudenberg FCCT KG,Germanyから入手可能なH2315シリーズ、若しくはSGL Technologies GmbH(Germany)から入手可能なSigracet(登録商標)シリーズ、若しくはBallard Power Dystems Inc.からのAvCarb(登録商標)シリーズ、又は炭素織布が挙げられる。炭素紙、ウェブ、又は布を前処理した後、電極を製作し、MEAに組み込んで、湿潤性(親水性)を高める、又は耐湿性(疎水性)を高めることができる。任意の処理の性質は、燃料電池の種類及び使用される動作条件により異なる。基材は、液体懸濁液からの含浸による非晶質カーボンブラックなどの材料を組み込むことにより、湿潤性を高めることができる、又はPTFE若しくはポリフルオロエチレンプロピレン(FEP)などのポリマーのコロイド懸濁液で基材の細孔構造を含浸させ、続いてポリマーの融点を超えて乾燥及び加熱することによって、疎水性を高めることができる。PEMFCなどの用途の場合、電極触媒層に接触する面上のガス拡散基材に微多孔質層を適用してもよい。微多孔質層は、典型的には、カーボンブラックとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのポリマーとの混合物を含む。
【0046】
本発明の触媒コーティング膜において、触媒インクを膜上に直接コーティングするか、間接的に支持材料若しくは転写基材からの転写によってイオン伝導性膜上に触媒層を堆積して、触媒コーティング膜を形成する。イオン伝導性膜は、PEMFCでの使用に好適な任意の膜であってもよく、例えば、膜は、Nafion(商標)(Chemours Company)、Aquivion(登録商標)(Solvay Specialty Polymers)、Flemion(登録商標)(AGC)、及びAciplex(商標)(旭化成ケミカルズ)などのペルフルオロ化スルホン酸材料をベースとしたものであってもよい。あるいは、膜は、FuMA-Tech GmbHからfumapem(登録商標)P、E又はKシリーズの製品として入手可能なもの、JSR Corporation、Toyobo Corporation、及び他の企業から入手可能なものなどの、スルホン化炭化水素膜をベースとしたものであってもよい。あるいは、膜は、120℃~180℃の範囲で動作するリン酸でドープされたポリベンゾイミダゾールをベースとしたものであってもよい。
【0047】
イオン伝導性膜構成要素は、イオン伝導性膜構成要素に機械的強度を付与する1つ以上の材料を含んでもよい。例えば、イオン伝導性膜構成要素は、膨張PTFE材料又はナノファイバーネットワーク、例えば、電界紡糸ファイバーネットワークなどの多孔質補強材料を含んでもよい。
【0048】
イオン伝導性膜は、膜の片面若しくは両面上の層として、又は膜内に埋め込まれた層として、層全体を通して又は層内に均一に分散されて、1つ以上の過酸化水素分解触媒を含んでもよい。使用に好適な過酸化水素分解触媒の例は、当業者に既知であり、酸化セリウム、酸化マンガン、酸化チタン、酸化ベリリウム、酸化ビスマス、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、及び酸化ランタンなどの金属酸化物が挙げられ、好適には、酸化セリウム、酸化マンガン又は酸化チタンであり、好ましくは、二酸化セリウム(セリア)である。
【0049】
イオン伝導性膜構成要素は、任意選択で、再結合触媒、特に、アノード及びカソードからそれぞれ膜に拡散して水を生成することができる未反応のH2及びO2の再結合のための触媒を含んでもよい。好適な再結合触媒は、高表面積酸化物担体材料(シリカ、チタニア、ジルコニアなど)上に金属(例えば白金)を含む。再結合触媒の更なる例は、欧州特許第0631337号、及び国際公開第00/24074号に開示されている。
【0050】
触媒インクが支持材料/転写基材上にコーティングすることによって、支持材料/転写基材上に触媒層が堆積されると、触媒支持材料/転写基材を形成する。支持材料/転写基材は、後続の工程で層から除去されることが意図される。例えば、触媒層は、デカール転写によって、ガス拡散層又はイオン伝導性膜に転写されてもよく、支持材料/転写基材は、転写プロセスの直後、又はその後のある時点で除去される。
【0051】
支持材料/転写基材を除去する前に、追加の層を触媒層の露出面上に堆積させることができ、例えば、イオン伝導性アイオノマー層は、触媒層の堆積に関して上述したように既知の任意の好適な堆積技術を使用して、アイオノマーの分散液から適用されてもよい。例えば、PCT特許出願第GB2015/050864号に記載されているように、必要に応じて更なる追加の層を追加することができる。支持材料/転写基材は、適切な時間に触媒層から除去される。支持材料/転写基材は、触媒層が損傷することなく除去することができる任意の好適な材料から形成され得る。好適な材料の例としては、フルオロポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ペルフルオロアルコキシポリマー(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP-ヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとのコポリマー)及びポリオレフィン、例えば二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)が挙げられる。
【0052】
以下の実施例を参照して、本発明を更に説明するが、こは例示的なものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0053】
実施例1~3の一般的な調製方法
工程(i)-担体材料上のPtaXb合金粒子
100.0gのカーボン(Ketjen EC300J)を、8Lの脱塩水中でスラリー化し、Silverson(商標)ミキサーで分散した。次いで、NaHCO3を混合物に添加し、混合物を、加熱して2時間還流した。次いで、30.0gのPt塩化白金酸CPA 25.07%Pt(119.67g、0.1538molのPt)を1000mL脱塩水に溶解した。その後、3.01gのNi(NO3)H2O(20.19%のNi)i)を700mLの脱塩水に溶解した。次いで、Pt塩混合物を制御流量で炭素水混合物に添加し、混合物を10分間沸騰させた。その後、調製したNi混合物を容器に添加し、温度を沸騰させた。必要に応じて、NaHCO3を混合物に添加して、pHを塩基性に戻した。得られた混合物を加熱して10分間還流した後、一晩撹拌しながら放冷した。次いで、PtNi/C材料を濾過し、濾液の導電率が20mSを下回るまで、洗浄した。
【0054】
次いで、PtNi/C材料を複数のアルミナボートに入れ、制御速度でN2下で600℃まで加熱し、2時間保持した。次いで、PtNi/C材料を室温まで放冷させた。XRD分析により、Pt及びNiの大部分が混合されて、73:27のPt対Ni原子比を有する主要な立方相が得られたことが明らかになった。したがって、PtNi/C材料は、Pt3Ni/Cである。
【0055】
工程(ii)-PtaXb合金粒子へのXのシェルの適用
プロセスにおける次の工程は、PtNi/C材料への[Ni(シクロペンタジエニル)2]の添加を伴う。20.0gのPtNi/C材料を250mLのヘプタンと混合し、凝縮器を備えた5つ口500mLの反応フラスコに入れた。次いで、システムを排気し、N2で5回パージした後、N2パージ下で一晩放置した。その後、混合物をH2でパージし、200℃に加熱し、この温度で1時間保持した後に、室温まで冷却した。一方、ヘプタン500mLをN2で1時間パージした。次いで、5.25g(0.0278mol)のNi[Ni(シクロペンタジエニル)2]を、パージしたヘプタンに添加した。次いで、この混合物を、Pt3Ni/C混合物を含有する500mLの反応容器に取り付けられた滴下漏斗に移した。次に、N2圧力を用いて、[Ni(シクロペンタジエニル)2]溶液を混合物に添加した。全ての[Ni(シクロペンタジエニル)2]溶液を容器に添加したら、滴下漏斗を分離し、次いで、室温まで一晩放冷させる前に、90℃で5時間加熱しながら混合物を通してH2をバブリングした。次いで、得られたPtNi/C材料を濾過し、濾液の導電率が20mSを下回るまで、洗浄した。PtNi/C材料のPt及びNiをを分析しところ、Pt(45.1)Ni(54.9)の原子比であった。
【0056】
工程(iii)-触媒前駆体の加熱処理
次いで、異なる量の得られたPtNi/C材料をアルミナボート上に置き、N2下にて、200、600又は800℃に制御された速度で加熱し、最終温度で2時間保持した。実施例1を200℃に加熱し、実施例2を600℃に加熱し、実施例3を800℃に加熱した。次いで、PtNi/C材料を室温まで放冷させた。
【0057】
工程(iv)-工程(iii)で生成された材料から金属Xの一部の浸出
加熱後、PtNi/C材料を2段階の浸出において0.05g/mLで酸洗浄して、PtNi/C材料の表面からNiを除去した。第1の酸洗浄工程は、0.5MのH2SO4で行い、続いて、0.5MのH2SO4と水中の20%のプロパノールとの混合物中の第2の工程を行った。両方の場合、懸濁液を80℃で24時間撹拌した。次いで、濾液導電率が20mS未満になるまで、真空濾過により触媒粉末を脱イオン水で洗浄した。バルクPt:Ni比を得るために、誘導結合プラズマ質量分析法によって触媒粉末を分析した。実施例1では、Pt:Ni比は7.8:1であり、実施例2では、Pt:Ni比は2.5:1であり、実施例3ではPt:Ni比は2.2:1であった。
【0058】
比較例
比較例として用いた材料は、上記の工程(i)で調製したPt3Ni/C材料(比較例1)と、Pt/C比較と共に、ベンチマークアニールされ(1000℃)及び脱合金化されたPt3Ni/C触媒材料(比較例2)である。
【0059】
ベンチマークアニールされ(1000℃)及び脱合金化されたPt3Ni/C触媒を調製するために、まず、国際公開第2013/045894号に記載の炭素担持白金触媒の一般的な調製方法と同様の方法を使用して、粒子状カーボンブラック担持ナノ粒子白金(Pt/C)材料を調製した。硝酸ニッケル(10.66g、3.43g、0.0585molのNi)の水溶液を、乾燥Pt/C触媒(19.0g、3.8g、0.0195molのPt)に分割量で添加し、混合して、均質な分散液を確保した。堆積が完了したら、PtNi/C材料を回収し、1000℃で1時間、5%のH2/N2の還元雰囲気中で1時間アニールして、白金及びニッケルを合金化した。次いで、合金化されたPtNi/C材料を水性で洗浄し、続いてアルコールH2SO4溶液(20mlg-1材料)で洗浄して、Niの少なくとも一部を浸出させた。両方の洗浄工程を80℃で24時間実施した。
【0060】
MEAの製造
アノード及びカソード触媒層をPTFEシート上に堆積させ、150℃~200℃の温度でPFSA強化膜(20μm厚)のいずれかの側に適切な層を転写することにより、50cm2の活性領域の触媒コーティングされたイオン伝導性膜(CCM)を調製した。実施例1~3及び比較例を使用して、カソード触媒層を形成し、各CCM中のアノード触媒層は、担持量0.1mgPt/cm2で市販のアノード触媒(炭素担体上の60重量%のPtの公称Pt担持量を有するHiSPEC(登録商標)9100)を含んだ。
【0061】
各CCMの各面にガス拡散層を適用して、完全なMEAを形成した。使用したガス拡散層は、炭素を含有する疎水性微多孔質層と、CCMと接触する面に適用されたPTFEとを有する炭素繊維紙であった。
【0062】
MEA性能試験
50cm
2のMEAの分極(電流対電圧)性能を、完全加湿及び加圧カソード(100%RH、100kPa
gauge)及び低減加湿カソード(50%RH、50kPa
gauge)条件下で、80℃のH
2/空気中で測定した。全ての測定において、セル湿度(RH)及び圧力は、アノード及びカソード入口で制御された。
図1は、完全加湿条件の分極曲線のプロットである。
図2は、より乾燥した条件の分極曲線のプロットである。2.0A/cm
2(完全加湿条件)及び1.5A/cm
2(低減されたRH条件)におけるセル電圧を、それぞれ
図1A及び
図2Aに示し、すなわち、
図1Aは、
図1のプロットから2.0A/cm
2のデータ点を取るグラフであり(比較例2について提供された値は、
図1の曲線から外挿である)、
図2Aは、
図2のプロットから1.5A/cm
2のデータ点を取るグラフである(比較例2について提供された値は、
図2の曲線から外挿である)。
【0063】
本発明のプロセスによって調製された触媒材料の利点は、加湿条件(100%RH)及び低減RH条件(50%RH)下で、高電流密度で特に見られる。特に、
図1A及び2Aは、比較例1及び2、特に比較例2と比較して、実施例1~3の触媒材料を使用して調製したMEAのより良好な性能を示す。比較例と比べて実施例1の性能に見られるように、400℃を超える温度まで加熱することは、利点を確認するのに必要ではない。
【0064】
表面積の電気化学測定
触媒粉末(0.5g)を秤量し、110%のアイオノマー対炭素比でNafion(登録商標)1100EWアイオノマー溶液と混合した。インクを3000rpmで1分間混合した。その後、5つのイットリア安定化酸化ジルコニウム研削ビーズを混合釜に添加し、3000rpmで更に2分間混合した。インクを、ガス拡散層として使用されるToray(登録商標)TGPH-60紙にブラシ塗装した。Pt担持量を0.40mgPt/cm2に設定し、重量差で算出した。インク層を、85℃のStuart SD160ホットプレート上で乾燥させてから、塗装されたボタンの質量を測定して、第2の層が必要であるかどうかを判定した。インク層を、必要な担持量が達成されるまで、この方法で適用した。各ボタンの中央を切り取り、直径20mmの円形電極を得た。電気化学試験の前に、電極を200mbarの真空下で1MのH2SO4中で一晩濡らして、電解質が全電極を貫通し、完全に湿潤されることを確実にした。このようにして、触媒層の完全利用が達成される。
【0065】
250mLの3つの電極ガラスセルを電気化学実験に使用した。コーティングされた触媒、参照電極及び対電極を有する作用電極を、ポテンシオスタット(AUTOLAB PGSTAT30)を用いて電気回路に接続した。対電極は、コイル状Ptワイヤであり、参照電極は、H2ガスをバブリングしたカーボンToray紙上のPd/C触媒から構成された可逆水素電極(RHE)であった。電解質は、Fisher Scientificからの1MのH2SO4 150mLであり、フリットエンドを有するガラス管から窒素ガスでパージした。80℃の水浴をセルの底部に取り付け、試験期間中に、セルを排出付きドラフト内に配置した。
【0066】
電極(ECA)の電気化学面積を、予め吸着されたCO層の酸化的ストリッピング(COストリッピング)によって測定した。この場合、電極電位を0.125V対RHEに保持し、セルを100%のCOガスで15分間パージして、触媒電極表面へのCOの飽和吸着を可能にした。次いで、セルをN2で30分間パージして、溶液から残留COを除去した。最後に、線形掃引ボルタンメトリーを、50mV/sで0.1~1.0V間で行った。CO吸着層の酸化除去による電流密度のピークは、ベースラインボルタモグラムに対してCO酸化に使用される電荷を見出すために、0.3~0.8Vの間で積分した。
【0067】
電荷を電極の幾何学的表面積に対する電気化学表面積に関連させる定数は、CO酸化については、420μCcm
-2Ptであった。これらの値を、以下の式に示されるように、電極上のPt担持量で除算して、ECAを得た。
【数1】
【0068】
図3に見られるように、実施例2及び3は、多数の電位サイクル後であっても、比較例2及びPt/Cよりも高いECAを有する。
【国際調査報告】