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特表2022-521546車両コンポーネントの運動を補償するためのシステムおよび方法
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  • 特表-車両コンポーネントの運動を補償するためのシステムおよび方法 図1
  • 特表-車両コンポーネントの運動を補償するためのシステムおよび方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-08
(54)【発明の名称】車両コンポーネントの運動を補償するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/02 20060101AFI20220401BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20220401BHJP
【FI】
B60W40/02
B60W60/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549608
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(85)【翻訳文提出日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2020052012
(87)【国際公開番号】W WO2020173642
(87)【国際公開日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】19159015.7
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェネー ボーカ
(72)【発明者】
【氏名】アダム セルレーシ
(72)【発明者】
【氏名】ガーボル シェレシュ
(72)【発明者】
【氏名】バラージュ ガール
(72)【発明者】
【氏名】アンドラーシュ バータイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトル ティハニー
(72)【発明者】
【氏名】アンドラーシュ サッパノシュ
(72)【発明者】
【氏名】フーバ ネーメト
(72)【発明者】
【氏名】チャバ ホルヴァート
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA50
3D241CA15
3D241CE04
3D241CE05
3D241DB02Z
3D241DC45Z
3D241DC51Z
(57)【要約】
別の車両コンポーネントまたは地面(60)に対する車両コンポーネント(50,55)の運動(R,T)を補償するためのシステムであって、1つもしくは複数のセンサ(70)が車両コンポーネント(50,55)に支持されている、システムに関する。当該システムは制御ユニット(110)を含み、制御ユニット(110)は、前記1つもしくは複数のセンサ(70)からセンサデータを受信するステップ、前記車両コンポーネント(50,55)の前記運動(R,T)を検出するステップ、および前記運動(R,T)によって生じたセンサデータにおける偏差の補償を可能とする補償データを決定するステップ、を実行するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
別の車両コンポーネントまたは地面(60)に対する車両コンポーネント(50,55)の運動(R,T)を補償するためのシステムであって、1つもしくは複数のセンサ(70)が前記車両コンポーネント(50,55)に支持されている、システムにおいて、
制御ユニット(110)が、
・前記1つもしくは複数のセンサ(70)からセンサデータを受信するステップ、
・前記車両コンポーネント(50,55)の前記運動(R,T)を検出するステップ、および
・前記運動(R,T)によって生じたセンサデータにおける偏差の補償を可能とする補償データを決定するステップ、
を実行するように構成されていることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記1つもしくは複数のセンサ(70)が、前記車両コンポーネント(50,55)または別の車両コンポーネントに支持された複数のセンサ(71,72,73,…)であり、
前記制御ユニット(110)が、さらに、
・前記補償データの前記決定を、前記複数のセンサのうちの1つもしくは複数によって受信されたデータに基づいて行い、
・前記補償データを、前記複数のセンサ(71,72,73,…)の幾つかもしくは全てからのセンサデータの補正のために供給する
ように構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記車両コンポーネント(50,55)が商用車両のキャビン(50)であり、
前記制御ユニット(110)が、さらに、地面(60)に対する前記キャビン(50)の位置または該位置の偏差を決定するように構成されている、
請求項1または2記載のシステム。
【請求項4】
前記車両コンポーネント(50,55)が商用車両のシャーシ(55)であり、
前記制御ユニット(110)が、さらに、地面(60)に対する前記シャーシ(55)の位置または該位置の偏差を決定するように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項5】
前記制御ユニット(110)が、さらに、
・決定された前記キャビン(50)の位置または該位置の偏差に基づいてセンサデータを補正し、かつ/または
・決定された前記シャーシ(55)の位置または該位置の偏差に基づいてセンサデータを補正する
ように構成されている、請求項3または4記載のシステム。
【請求項6】
前記制御ユニット(110)は、前記車両コンポーネント(50,55)に対する地平面を決定するために前記センサ(70)のうちの1つを使用するように構成されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項7】
前記1つもしくは複数のセンサ(70)が、該1つもしくは複数のセンサ(70)によって検出された地面反射(67)からの点群を生成するように構成されており、
前記制御ユニット(110)が、さらに、前記点群に基づいて前記地平面を決定し、決定された地平面を前記補償データの前記決定に使用するように構成されている、
請求項6記載のシステム。
【請求項8】
前記制御ユニット(110)は、前記1つもしくは複数のセンサ(70)のうちのセンサと前記車両の任意の別のセンサとの組み合わせからのセンサデータに基づいて前記地平面(60)を決定するように構成されている、
請求項6または7記載のシステム。
【請求項9】
前記車両が、車両データおよび/または環境データを取得するための別のセンサを含み、
前記制御ユニット(110)が、さらに、前記補償データの前記決定を、前記車両データおよび/または前記環境データに部分的に基づいて行うように構成されている、
請求項1から8までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項10】
他の車両コンポーネントから独立に懸架されたコンポーネント(50,55)を備えた商用車両であって、前記コンポーネント(50,55)が少なくとも1つのセンサ(70)を支持している、商用車両において、
請求項1から9までのいずれか1項記載のシステムが設けられている
ことを特徴とする商用車両。
【請求項11】
前記1つもしくは複数のセンサ(70)は、LIDAR(71)、モノカメラもしくはステレオカメラ(72,73)、レーダー(74)、超音波センサ(74)のセンサのうちの1つもしくは複数を含む、
請求項10記載の商用車両。
【請求項12】
別の車両コンポーネントまたは地面(60)に対する車両コンポーネント(50,55)の運動(R,T)を補償するための方法であって、少なくとも1つのセンサ(70)が前記コンポーネント(50,55)に支持されている、方法において、
・前記少なくとも1つのセンサ(70)からセンサデータを受信し(S110)、
・前記コンポーネント(50,55)の前記運動(R,T)を検出し(S120)、
・前記運動(R,T)によって生じたセンサデータにおける偏差の補償を可能とする補償データを決定する(S130)、
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記車両の運転中、前記車両の種々のセンサから受信されるセンサデータのダイナミックな補正を可能とする補償データを連続的に決定する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
プログラムコードがプロセッサ上で実行される際に、請求項12または13記載の方法を実行するためのプログラムコードを含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、別の車両コンポーネントまたは地面に対する車両コンポーネントの運動を補償するための、特に商用車両上のセンサの地面認知における運動を補償するためのシステムおよび方法に関する。
【0002】
特に搬送車両の自律運転には、種々のタイプの環境センサを含む高性能のハードウェアおよびソフトウェアのインフラストラクチャに基づく洗練された機能がますます必要となってきている。したがって、車両周囲の環境をいっそう詳細に捕捉するセンサユニットがその数を増大させてこうした商用車両に設けられるようになっている。
【0003】
こうしたセンサは車両キャビンに取り付けられるのが普通であるが、このことは、部分的には、商用車両のうちキャビンが最も高い位置にある部分であり、車両の環境および周囲の良好な俯瞰が得られることに負っている。他方、キャビンの典型的なサスペンションにより、環境センサの認知結果に大きく影響するキャビンとシャーシ/車台との間で相当の運動/変位が生じうる。これにより、例えば先行車両までの距離を測定する際に、センサデータに偏差が生じて誤差が発生することがある。多くの用途、特に自律運転の用途にとっては、このことは許容できない。
【0004】
国際公開第2018/142057号には、LIDARレンジファインダを含む知覚システムのキャリブレーションのための従来の装置が開示されており、ここでは、少なくとも1つのビデオカメラとランドマークの検出とから較正パラメータが決定されている。別の従来のシステムは米国特許出願公開第2015/317781号明細書に開示されており、ここでは、イメージセンシング装置の外部較正が使用され、複数のセンサを基礎とした3D点群が生成されている。特に、当該システムは、カメラとLIDARシステムとの組み合わせを基礎として、較正パラメータを取得する。
【0005】
当該システムは車両上のセンシング装置の較正に使用可能であるが、こうした従来のシステムは、地面または商用車両の車台に対するキャビンの相対運動を考慮していない。
【0006】
したがって、上述した問題の少なくとも幾つかを克服することのできるシステムへの需要が存在する。
【0007】
従来のシステムの問題の少なくとも幾つかは、請求項1記載のシステム、請求項12記載の方法、および請求項14記載のコンピュータプログラム製品によって克服される。各従属請求項は、各独立請求項の主題のさらに有利な実現形態に関する。
【0008】
本発明は、別の車両コンポーネントまたは地面に対する車両コンポーネントの運動を補償するためのシステムであって、1つもしくは複数のセンサが車両コンポーネントに支持されている、システムに関する。当該システムは制御ユニットを含み、当該制御ユニットは、
・1つもしくは複数のセンサからセンサデータを受信するステップ、
・車両コンポーネントの運動を検出するステップ、および
・運動によって生じたセンサデータにおける偏差の補償を可能とする補償データを決定するステップ、
を実行するように構成されている。
【0009】
車両コンポーネントは、車両の任意のコンポーネント、例えばキャビン、フレーム、シャーシ、車台などであってよい。コンポーネントは、特に、他の車両コンポーネントに比較して独立に懸架されている。こうした独立の懸架のために、運転中、他の車両コンポーネント(例えば運転中の車輪)に対する当該コンポーネントの運動が生じ、これを補償しなければならない。車両の種々のセンサのセンサデータの対応する補償は、制御ユニットまたは任意の他の制御ユニットにおいて行うことができる。補償量は環境認知の改善に使用可能であり、このことは特に自律運転にとって有利である。
【0010】
1つもしくは複数のセンサは、当該車両コンポーネントまたは他の車両コンポーネントに支持されたもしくは保持された複数のセンサであってよい。任意手段として、制御ユニットは、さらに、補償データの決定を、複数のセンサのうちの1つもしくは複数によって受信されたデータに基づいて行うように構成されている。さらに、制御ユニットは、補償データを、複数のセンサのうちの幾つかもしくは全てからのセンサデータの補正のために供給するように構成可能である。よって、補償データは、1つのセンサのデータに基づきうるが、車両上の他のセンサに対しても使用される。
【0011】
車両コンポーネントは商用車両のキャビンであってよく、制御ユニットは、地面に対するキャビンの位置および/または当該位置の偏差を決定するように構成可能であって、これは、上述した場合と同様に、1つもしくは複数のセンサによって検出された運動に基づいていてよい。
【0012】
車両コンポーネントは、商用車両のシャーシもしくは車台であってよく、制御ユニットは、地面に対するシャーシの位置および/または当該位置の偏差を決定するように構成可能である。
【0013】
任意手段として、制御ユニットは、さらに、
・決定されたキャビンの位置または当該位置の偏差に基づいてセンサデータを補正し、かつ/または
・決定されたシャーシの位置または当該位置の偏差に基づいてセンサデータを補正する
ように構成される。
【0014】
任意手段として、制御ユニットは、車両コンポーネントに対する地平面を決定するためにセンサのうちの1つを使用するように構成される。地平面は道路面または街路面であってよい。
【0015】
1つもしくは複数のセンサは、当該1つもしくは複数のセンサ(例えばLIDAR)によって検出された地面反射からの点群を生成するように構成可能であり、制御ユニットは、点群に基づいて地平面を決定するように構成可能である。決定された地平面は、補償データの決定に使用可能である。地平面の決定は、平面を点群にフィットさせる統計回帰分析によって実行可能である。車両の運転中(例えば道路上を走行中)、決定された地平面は車両コンポーネントに対して静的ではなく、検出された運動に従って変化することが理解される。当該変化は、補償データを用いて補償可能である。
【0016】
任意手段として、制御ユニットは、1つもしくは複数のセンサのうちのセンサと車両の任意の別のセンサとの組み合わせからのセンサデータに基づいて地平面を決定するように構成可能である。例えば、全てのセンサデータが統合された後に地平面が決定可能となる。また、これらのセンサのそれぞれが地平面を決定可能であり、この冗長性を使用して、(例えば平均化または別の統計分析により)精度を改善することもできる。
【0017】
車両は、車両データおよび/または環境データを取得するための別のセンサを含むことができ、制御ユニットは、補償データの決定を、車両データおよび/または環境データに部分的に基づいて行うように構成可能である。車両データは、車両速度、荷重、制動イベント、コーナリングなどに関しうる。環境データは、ナビゲーションデータ、気象条件(例えば降雪)、路面勾配などを含みうる。
【0018】
さらなる実施形態により、車両の運転中に(例えば車両の任意の制御ユニットにおいて)受信されたセンサデータのダイナミックな補正が可能となる。特に、車両の運転中、制御ユニットは、少なくとも相対運動による影響を受けるかぎり、補正情報に基づいて、任意のセンサからのセンサデータを補償することができる。
【0019】
実施形態はまた、他の車両コンポーネントから独立に懸架されたコンポーネントを備えた商用車両であって、少なくとも1つのセンサがコンポーネントに支持されている(例えば取り付けられている)、商用車両に関する。車両は上述したシステムを含む。任意手段として、1つもしくは複数のセンサは、LIDAR(=light detecting and ranging)、モノカメラおよび/またはステレオカメラ、レーダー、超音波センサのうちの1つもしくは複数を含む。
【0020】
さらに別の実施形態は、別の車両コンポーネントまたは地面に対する車両コンポーネントの運動を補償するための方法であって、少なくとも1つのセンサがコンポーネントに支持されている、方法に関する。当該方法は、
・少なくとも1つのセンサからセンサデータを受信するステップ、
・コンポーネントの運動を検出するステップ、および
・運動によって生じたセンサデータにおける偏差の補償を可能とする補償データを決定するステップ
を含む。
【0021】
任意手段として、方法は、車両の運転中、車両の種々のセンサから受信されるセンサデータのダイナミックな補正を可能とする補償データを連続的に決定することを含みうる。
【0022】
さらに、上述したシステムの任意の機能が、任意のさらなる方法ステップによって実現可能である。
【0023】
方法はまた、ソフトウェアまたはコンピュータプログラム製品として実装可能であり、ステップの順序は所望の効果の達成にとってはさほど重要でない。本発明の実施形態は、特に、車両のいずれかのECU(電子制御ユニット)内のソフトウェアまたはソフトウェアモジュールによって実装可能である。したがって、実施形態は、プロセッサ上で実行される際に、上記の方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムにも関する。
【0024】
本発明の実施形態は、1つもしくは複数の例示的な知覚センサが取り付けられうる車両のフレーム(または任意の相対運動が可能なコンポーネント)の実際位置に対する地面(または地平面)を推定することのできるシステムにより、上述した問題のうちの少なくとも幾つかを解決する。当該フレームは、商用車両のキャビンもしくはシャーシ、または車両の独立に懸架された任意の他の部分のいずれかであってよい。当該フレームは、車両の運転中のダイナミックな力の作用に起因する変位(または何らかの運動)を被る。少なくとも1つの環境知覚センサのデータから、システムは、地面または他の車両コンポーネントに対するフレームの変位を推定することができる。変位は、3次元空間軸の1つでの並進運動に関しうるのみでなく、さらに、対応する車両コンポーネントの回転もしくは振動もしくは揺動も含みうる。決定された当該変位は、センサデータにおける対応する誤差の補償(例えば車両前部までの距離の補正)に用いられる。
【0025】
従来のシステムとは異なり、実施形態は、車両コンポーネントの相対運動を考慮に入れて、続いてこれを補償する。したがって、実施形態は、環境センサのキャリブレーションとしては(または少なくともそれのみとしては)使用されず、上述した相対変位が考慮され、ダイナミックな補償が可能となりうる。
【0026】
実施形態の特段の利点は、地面に対するフレームの変位のリアルタイム推定が可能となり、このためフレームに取り付けられたセンサのセンサデータを車両(全体)に関連づけられた座標系に良好に変換可能となるということに関する。したがって、良好かつより精確な環境認知が達成される。特に、これにより、センサによって検出された対象物の位置特定の精度が有意に改善される。
【0027】
システムおよび/または方法の幾つかの実施例を、例示のためのみであるが、添付図を参照しながら以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態による、基面に対する車両コンポーネントの運動を補償するためのシステムを示す図である。
図2】別の実施形態による、補償すべき(相対)運動を被るキャビンを備えた商用車両を示す図である。
図3】さらに別の実施形態による方法を示すフローチャートである。
【0029】
図1には、本発明の一実施形態による、センサ70(または複数のセンサ)を備えた車両コンポーネント50,55の運動を補償するためのシステムが示されている。車両コンポーネント50,55は、キャビン50もしくは任意の他の独立に懸架された商用車両のコンポーネントであってよい。運動は、変位または並進運動Tに関連しうるが、また、車両コンポーネント50,55のあらゆるタイプの揺動もしくは回転運動Rであってよい。システムは、少なくとも1つの制御ユニット110を含み、当該制御ユニット110は、少なくとも、
・センサ70からセンサデータを受信するステップ、
・コンポーネント50,55の運動R,Tを検出するステップ、および
・運動R,Tによって生じたセンサデータにおける偏差の補償を可能とする補償データを決定するステップ、
を実行するように構成されている。
【0030】
センサ70は、地面60を検出し、地面60または他の車両コンポーネントに対する車両コンポーネント50,55のあらゆる運動を決定するように構成可能である。このことを達成するために、センサ70は、道路面または街路面であってよい地面60からの反射67から点群を作成するLIDAR(=light detecting and ranging)センサであってよい。当該点群から、制御ユニット110は、統計回帰分析によって平面のフィットを行うように構成可能である。コンポーネント50,55が運動R,Tを被る場合、決定された平面は(コンポーネント50,55に対して)変化する。ここでの分析から、制御ユニット110は変化量を決定することができ、この変化量は、回転角度または地面に対するコンポーネント50,55の回転運動/振動に関連づけられたより全体的な座標変換であってよい。
【0031】
地平面60を連続的に監視することにより、制御ユニット110は、商用車両の運転中、時間に関する任意の偏差を検出し、コンポーネント50,55の相対運動R,Tの補償に適した補償データを形成することができる。
【0032】
図2には、知覚センサとして使用可能な複数のセンサ71,72,…を支持するキャビン50を備えた商用車両が示されている。図1のセンサ70はこれらのうちの1つであってよい。センサは、第1のセンサ71、第2のセンサ72、第3のセンサ73および第4のセンサを含んでいてよい。センサ71~74は、キャビン50に直接に取り付けることができるが、商用車両の運転中、キャビン50と共に運動する任意のタイプのフレームに取り付けることもできる。第1のセンサ71は例えばLIDARセンサを含み、第2のセンサ72は前向きカメラ(2Dまたは3D)を含むことができ、第3のセンサ73は例えば後ろ向きカメラを含み、第4のセンサ74は例えばレーダーまたは超音波センサを含む。
【0033】
キャビン50は、シャーシ55に取り付けられており、制御ユニット110を含むことができる。こうしたキャビン50のサスペンションは運転者の快適性のために最適化されているので、車両シャーシ55または地面60に対して有意の運動が生じうる。このため、キャビン50はシャーシまたは車台55に対して剛性的に取り付けられておらず、水平面、例えば地平面60に対して平行な平面内に存在する回転軸線に関して揺動Rを行いうる(図2の下図を参照)。例示的なキャビン50のサスペンションにより、例えば、キャビン50とシャーシ55との間の、および/または地面60に対する任意の自由度での運動が生じうる。運動R,Tは、車両に作用するダイナミックな力、例えば制動および/または加速および/または路面凹凸および/またはコーナリングまたはキャビン50に力を生じさせる他の運動によって起こる。
【0034】
例示的な回転Rの影響を種々のセンサ71,72,…が受けると、信頼性の高い結果が得られるようにするには、得られたセンサデータを補正しなければならない。言い換えれば、キャビン50の運動Rが補償されないかぎり、対応するセンサデータを信頼することができない。例えば、こうした運動は、センサデータまたはこのセンサデータから導出された量の精度が低くなるために、地面60と瞬時の車両座標系との間の転換を可能とする変換が必要となるという効果を有する。言い換えれば、センサ自体の座標系が当該相対運動の影響を受けるので、初期のキャリブレーションがもはや有効でなくなるのである。
【0035】
こうした運動の推定は、地平面60を検出することによって取得可能となる。センサ71,72,…が固定されたフレーム(可動の車両コンポーネント50,55)に比較して、地平面60に対する相対運動が既知である場合、車両または地面の座標系へのセンサデータの変換が、すなわち正しいフレーム変位情報によって、補正可能となる。結果として、キャビン50の運動によって生じるセンサ変位が補償可能となり、これにより、得られたセンサ結果の精度が改善される。
【0036】
知覚センサ71,72,73,74の少なくとも1つは、例えば、車両の運転中に地平面60をつねに取得するために、例示的な点群を決定することができる。また、レーダーイメージングに基づき、または1つもしくは複数の超音波センサを用いて、地平面60を取得することもできる。この場合、シャーシ55に対するキャビン50の相対運動および/または地面60に対するシャーシ55の相対運動が推定可能もしくは決定可能となり、結果は、同じフレーム71~74に組み付けられた上記のセンサのいずれかの認知結果の補償に用いられる。
【0037】
さらに、センサ71,72,…は、初期的に地平面に対して較正(基準キャリブレーション)可能である。基準キャリブレーションは、例えば、センサ71,72,…の第1のセットアップ中に取得可能であり、車両の静止時に取得される。補償データは、決定された地平面60と、制御ユニット110または他のストレージに保存可能な初期のキャリブレーション地平面とを比較することにより導出可能である。ここでの比較から、制御ユニット110は、2つの座標系間、すなわち静止時の車両座標系とコンポーネントの運動中の座標系との間の変換を取得することができる。
【0038】
制御ユニット110は、キャビン50内または車両内の任意の他の位置に配置可能であり、センサ71,72、…からのセンサデータを受信する。制御ユニット110は、任意のタイプの車両電子制御ユニットであってよく、(対応するソフトウェアをインストールすることにより)補償データを決定して提供するように適応化されている。補償データは、運転中の例示的なキャビン50の運動R,Tを補償するための種々のセンサ71,72,…または他のセンサからのセンサデータの補正に適するものであれば、任意のタイプの情報であってよい。当該補償は、車両の運転中にダイナミックに実行可能であり、車両コンポーネント50の連続する運動R,Tが連続的に補償される。
【0039】
例示的な、地平面60に対するフレーム運動の推定により、さらに、同じフレームに取り付けられた任意の他のセンサの変位の補償が可能となる。例えば、図2において変位の補正量が第1のセンサ71から導出されると、その結果は、キャビン50の当該対象物の種々の位置を考慮しており、カメラ72,73においても使用可能となる。なぜなら、第2のセンサ72および第3のセンサ73に対する第1のセンサ71の相対位置は運動R,T中にも変化しないからである。言い換えれば、決定された補償量が、フレーム(車両コンポーネント50,55)の座標系を初期のキャリブレーションの基礎である初期の座標系に戻す変換に使用可能となる。結果として、同じ座標系を使用するセンサからのあらゆるセンサデータが補償可能となる。
【0040】
他の車両フレームのセンサにも同じ基本方式が使用可能であり、これらもさらにその座標系での変化を決定することにより補償可能である。
【0041】
図3には、他の車両コンポーネントまたは地面60に対する車両コンポーネント50,55の運動R,Tを補償する方法であって、少なくとも1つのセンサ70がコンポーネント50,55に取り付けられている方法のフローチャートが示されている。当該方法は、
・少なくとも1つのセンサ70からセンサデータを受信するステップS110、
・コンポーネント50の運動R,Tを検出するステップS120、および
・運動R,Tによって生じたセンサデータにおける偏差の補償を可能とする補償データを決定するステップS130、
を含む。
【0042】
当該方法は、コンピュータ実装方法であってもよい。上述した種々の方法の各ステップがプログラミングされたコンピュータによって実行可能であることは、当業者が容易に認識できるはずである。また、各実施形態は、機械可読またはコンピュータ可読であって、機械実行可能プログラム命令またはコンピュータ実行可能プログラム命令、すなわちコンピュータ上またはプロセッサ上で実行される際に上述した方法の幾つかもしくは全ての動作を実行するためのものである命令を符号化したプログラムストレージデバイス、例えばデジタルデータ記憶媒体をカバーすることも意図している。
【0043】
本発明の実施形態の特段の利点は、地面60に対する知覚センサ71,72,…を保持するコンポーネント50,55の位置のリアルタイム推定を可能とするということに関する。当該推定は、環境を検出しかつ地平面60を検出可能な1つもしくは複数のセンサ71,72、…から導出可能である。
【0044】
本発明において、地平面60を推定可能なセンサ71,72、…は特定のセンサに限定されるべきでないことが理解される。さらに、本発明の実施形態は、地平面60の推定に限定されず、他の対象物または車両コンポーネントに対する任意の相対運動の導出にも使用可能である。
【0045】
また、補償データは、必要とされる環境の認知の品質、例えば対象物検出、自由空間検出の品質、または複数のセンサによって提供される他の機能の認知の品質を改善するために使用可能である。このように、環境の良好な認知が達成可能であり、特に自律型商用車両に実装される場合、より安全な車両の運転が可能となる。
【0046】
有利な実施形態には、以下の1つもしくは複数が含まれる。
【0047】
実施形態は、商用車両の環境知覚システムに関しており、ここで、知覚システムは、同じフレーム50,55に取り付けられた少なくとも1つの環境知覚センサ70を使用して、地平面60に対する、商用車両の独立に懸架されたコンポーネントの位置を計算する。
【0048】
実施形態はさらに、商用車両の環境知覚システムに関しており、ここで、知覚システムは、キャビン50に取り付けられた環境知覚センサ70から、地平面60に対するキャビンの位置を計算する。
【0049】
実施形態はさらに、商用車両の環境知覚システムに関しており、ここで、知覚システムは、車台55に取り付けられた環境知覚センサ70から、地平面60に対するシャーシの位置を計算する。
【0050】
環境知覚システムでは、環境知覚センサデータは、推定された地面対キャビンの位置によって補正可能である。
【0051】
環境知覚システムでは、環境知覚センサデータは、推定された地面対車台の位置によって補正可能である。
【0052】
環境知覚システムでは、地平面推定は、地面ポイントのセグメンテーションの後、平面を点群へフィットさせることに基づいて行うことができる。
【0053】
環境知覚システムでは、地平面60を検出するセンサ70は、少なくとも1つのLIDAR71であってよい。
【0054】
環境知覚システムでは、地平面60を検出するセンサ70は、少なくとも1つのモノカメラ72またはステレオカメラ73であってよい。
【0055】
環境知覚システムでは、地平面60を検出するセンサ70は、少なくとも1つのレーダー74であってよい。
【0056】
環境知覚システムでは、地平面60を検出するセンサ70は、少なくとも1つの超音波センサ74であってよい。
【0057】
環境知覚システムでは、地平面60を検出するセンサ70は、上述したセンサの組み合わせであってよい。
【0058】
環境知覚システムでは、知覚センサデータは、制御システムによって計算されたデータによって補償可能である。
【0059】
説明および図面は単に開示の基本方式を示すものに過ぎない。よって、当業者は、本明細書に明示的に説明もしくは図示されていなくとも、開示の基本方式を具現化した、本発明の範囲に含まれる種々の装置を考察できることを理解されたい。
【0060】
さらに、各実施形態は、個々の実施例としてそれ自体で独立しうるものであるが、規定された特徴を他の実施形態において種々に組み合わせることができ、すなわち1つの実施形態において説明した特定の特徴を他の実施形態においても実現できることに注意されたい。こうした組み合わせは、特定の組み合わせを意図しないことが言明されていないかぎり、本明細書における開示によってカバーされている。
【符号の説明】
【0061】
50 (独立に懸架された)車両コンポーネント、キャビン
55 シャーシ
60 地面
67 反射
70,71,… センサ
110 制御ユニット
R,T 運動(回転、変位、並進など)
図1
図2
図3
【国際調査報告】