IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スーチョウ ペンスー ファーマテック カンパニー,リミティッドの特許一覧 ▶ ゼァージァン イージー ファームケム カンパニー,リミティッドの特許一覧

特表2022-521568抗うつ薬SAGE‐217の結晶型及びその調製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-11
(54)【発明の名称】抗うつ薬SAGE‐217の結晶型及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07J 43/00 20060101AFI20220404BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20220404BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
C07J43/00 CSP
A61P25/24
A61K31/58
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541735
(86)(22)【出願日】2020-01-19
(85)【翻訳文提出日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 CN2020072924
(87)【国際公開番号】W WO2020147852
(87)【国際公開日】2020-07-23
(31)【優先権主張番号】201910050777.1
(32)【優先日】2019-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521318985
【氏名又は名称】スーチョウ ペンスー ファーマテック カンパニー,リミティッド
(71)【出願人】
【識別番号】521318996
【氏名又は名称】ゼァージァン イージー ファームケム カンパニー,リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ペン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ピシュ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シピン
【テーマコード(参考)】
4C086
4C091
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086DA12
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086ZA12
4C091AA01
4C091BB01
4C091CC01
4C091DD01
4C091EE04
4C091FF01
4C091GG01
4C091HH01
4C091JJ01
4C091KK01
4C091LL01
4C091MM03
4C091NN01
4C091PA02
4C091PA07
4C091PB02
4C091QQ01
4C091RR12
(57)【要約】
本願は、抗うつ薬SAGE‐217の結晶型04、結晶型06、結晶型D‐1、結晶型D‐2及びそれらの調製方法、それらを含む、医薬組成物に関する。結晶型04のXRPDにおいて、2theta値が11.6±0.2°、 13.5±0.2°、16.2±0.2°、16.5±0.2°及び23.2±0.2°に特徴的なピークを有し、結晶型06のXRPDにおいて、2theta値が8.7±0.2°、10.0±0.2°、13.2±0.2°、15.0±0.2°、15.8±0.2°及び17.3±0.2°に特徴的なピークを有し、結晶型D‐1のXRPDにおいて、2theta値が7.2±0.2°,8.6±0.2°,13.3±0.2°,19.6±0.2°及び23.0±0.2°に特徴的なピークを有し、結晶型D‐2のXRPDにおいて、2theta値が7.3±0.2°、8.6±0.2°、13.4±0.2°、19.7±0.2°及び23.3±0.2°に特徴的なピークを有する。本願が提供する新型結晶型は、非常に良い安定性を有し、薬剤開発のためのより多くのオプションを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学名は1‐(2‐((3R,5R,8R,9R,10S,13S,14S,17S)‐3‐ヒドロキシル‐3,13‐ジメチルヘキサデカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐17‐イル)‐2‐オキソエチル)‐1H‐ピラゾール‐4‐ニトリルである化合物SAGE‐217の結晶型04であって、X線粉末回折パターンは、2theta値が11.6±0.2°、13.5±0.2°、16.2±0.2°、16.5±0.2°、及び21.3±0.2°に特徴的なピークを有する、ことを特徴とする。
【請求項2】
そのX線粉末回折パターンは、2theta値が6.8±0.2°、14.7±0.2°、18.7±0.2°、19.2±0.2°、及び21.3±0.2°に特徴的なピークを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の結晶型04。
【請求項3】
そのX線粉末回折パターンは図1とほぼ一致している、ことを特徴とする請求項1に記載の結晶型04。
【請求項4】
前記結晶型04は、化合物SAGE‐217のギ酸溶媒和化合物である、ことを特徴とする請求項1に記載の結晶型04。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物SAGE‐217の結晶型04の調製方法であって、SAGE‐217をギ酸エステルやギ酸と有機溶剤の混合系において結晶させて結晶型04を得ることを含む、ことを特徴とする。
【請求項6】
前記ギ酸塩のエステル基は、含有炭素数C1~C10の基から選択され、前記 有機溶剤は、含有炭素数C1~C10のアルコール溶剤、ジクロロメタン、アセトニトリルから選択される、ことを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項7】
化学名は1‐(2‐((3R,5R,8R,9R,10S,13S,14S,17S)‐3‐ヒドロキシル‐3,13‐ジメチルヘキサデカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐17‐イル)‐2‐オキソエチル)‐1H‐ピラゾール‐4‐ニトリルである化合物SAGE‐217の結晶型06であって、X線粉末回折パターンは、2theta値が8.7±0.2°、10.0±0.2°、13.2±0.2°、15.0±0.2°、15.8±0.2°及び17.3±0.2°に特徴的なピークを有する、ことを特徴とする。
【請求項8】
そのX線粉末回折パターンは、2theta値が5.0±0.2°、5.5±0.2°、19.4±0.2°、20.0±0.2°、及び21.9±0.2°に特徴的なピークを有する、ことを特徴とする請求項7に記載の結晶型06。
【請求項9】
そのX線粉末回折パターンは図4とほぼ一致している、ことを特徴とする請求項7に記載の結晶型06。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一項に記載の化合物SAGE‐217の結晶型06の調製方法であって、SAGE‐217をニトロメタン系において結晶させて結晶型06を得ることを含む、ことを特徴とする。
【請求項11】
化学名は1‐(2‐((3R,5R,8R,9R,10S,13S,14S,17S)‐3‐ヒドロキシル‐3,13‐ジメチルヘキサデカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐17‐イル)‐2‐オキソエチル)‐1H‐ピラゾール‐4‐ニトリルである化合物SAGE‐217の結晶型D‐1であって、X線粉末回折パターンは、2theta値が7.2±0.2°、8.6±0.2°、13.3±0.2°、19.6±0.2°及び23.0±0.2°に特徴的なピークを有する、ことを特徴とする。
【請求項12】
そのX線粉末回折パターンは、2theta値が7.9±0.2°、10.6±0.2°、15.7±0.2°、16.3±0.2°、21.3±0.2°及び21.6±0.2°に特徴的なピークを有する、ことを特徴とする請求項11に記載の結晶型D‐1。
【請求項13】
そのX線粉末回折パターンは図7とほぼ一致している、ことを特徴とする請求項11に記載の結晶型D‐1。
【請求項14】
14.前記結晶型D‐1は、化合物SAGE‐217の4‐メチル‐2‐ペンタノン溶媒和化合物である、ことを特徴とする請求項11に記載の結晶型D‐1。
【請求項15】
請求項11~14のいずれか一項に記載の化合物SAGE‐217の結晶型D‐1の調製方法であって、SAGE‐217を4‐メチル‐2‐ペンタノン系において結晶させて結晶型‐1を得ることを含む、ことを特徴とする。
【請求項16】
化学名は1‐(2‐((3R,5R,8R,9R,10S,13S,14S,17S)‐3‐ヒドロキシル‐3,13‐ジメチルヘキサデカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐17‐イル)‐2‐オキソエチル)‐1H‐ピラゾール‐4‐ニトリルである化合物SAGE‐217の結晶型D‐2であって、X線粉末回折パターンは、2theta値が7.3±0.2°、8.6±0.2°、13.4±0.2°、19.7±0.2°及び23.3±0.2°に特徴的なピークを有する、ことを特徴とする。
【請求項17】
17.そのX線粉末回折パターンは、2theta値が7.8±0.2°,10.6±0.2°,15.5±0.2°,16.4±0.2°,19.0±0.2°及び21.3±0.2°に特徴的なピークを有する、ことを特徴とする請求項16に記載の結晶型D‐2。
【請求項18】
そのX線粉末回折パターンは図10とほぼ一致している、ことを特徴とする請求項16に記載の結晶型D‐2。
【請求項19】
請求項16~18のいずれか一項に記載の化合物SAGE‐217の結晶型D‐2の調製方法であって、SAGE‐217を酢酸イソブチルと有機溶剤の混合系において結晶させて結晶型D‐2を得ることを含む、ことを特徴とする。
【請求項20】
前記有機溶剤は、含有炭素数C3~C6のケトン溶剤から選択される、ことを特徴とする請求項19に記載の調製方法。
【請求項21】
活性成分を含む医薬組成物であって、前記活性成分は、請求項1~4、7~9、11~14、16~18のいずれか一項に記載の化合物SAGE‐217の結晶型を含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学医薬分野に関し、特に、抗うつ薬SAGE‐217に係る結晶型及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SAGE‐217は、産後うつ病や大うつ病性障害などの症状を治療する薬物候補である。従来の抗うつ薬は、単一手段で治療を行うものとして限界がある。SAGE‐217は、次世代のGABA受容体調節薬物として、シナプスとシナプス外におけるGABA受容体の選択性及び経日の経口投与の薬物動態学特徴について最適化したものである。GABAシステムは、大脳と中枢神経系の主要な抑制シグナル経路であり、中枢神経システム機能の調節にとって大切なものである。GABA受容体の調節は比較的に顕著な治療効果がある。
【0003】
SAGE‐217化合物の構造式は、式Iに示すように、化学名は1-(2-((3R,5R,8R,9R,10S,13S,14S,17S)-3-ヒドロキシ-3,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)-2-オキソエチル)-1H-ピラゾール-4-カルボニトリルである。
【0004】
【化1】
【0005】
国際特許出願WO2018039378A1には、SAGE‐217の結晶型A、B、C、D、E、F、H、I、J、K、L、M、N、O、Pが記載され、さらに多結晶型の調製方法が記載される。
【0006】
この特許文献に記載の多結晶型A、C、Kは無水結晶型、結晶型B、F、N、O、Pは溶媒和化合物、結晶型L、M、H、I、Jは準安定状態にあり、結晶型D、Eについては具体的に記載されていない。
【0007】
化合物の多結晶型とは、化合物中に2種類以上の異なる結晶型が存在する物質の状態をいう。多結晶型現象は有機化合物に広く存在する。溶媒和化合物は、多結晶型現象における重要な物質の状態の一種である。同一化合物の異なる結晶型は、溶解度、融点、密度、安定性等に大きな差があるため、化合物の安定性、均一性を、異なる程度で左右する。異なる結晶型は、化合物の精製過程において、結晶による化合物の精製能力が大きく異なる。そこで、薬品開発プロセスにおいて、全般的かつ体系的な多結晶型スクリーニングを行い、開発に最も適切な結晶型を選択するのは、無視できない重要な研究内容の一つである。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、SAGE‐217の新規結晶型及びその調製方法を提供することを目的とする。
【0009】
特定の実施形態において、本願は、SAGE‐217の結晶型04、結晶型06、結晶型D‐1及び結晶型D‐2に関し、これらの結晶型は、主にX線粉末回折(「XRPD」)データによって表されるとともに、示差走査熱量法(「DSC」)、熱重量分析(「TGA」)、発生ガス分析(「EGA」)等の相関データによって表される。
【0010】
また、本発明は、結晶化法により結晶SAGE‐217を調製する方法を提供する。その中に使用されたSAGE‐217原料は、本分野で知られている合成方法を含む任意の適切な方法により調製することができる。
【0011】
本願が採用する態様の一つは、X線粉末回折パターンは、2theta値が11.6±0.2°、13.5±0.2°、16.2±0.2°、及び16.5±0.2°に特徴的なピークを有する、SAGE‐217の結晶型04である。
【0012】
さらに、そのX線粉末回折パターンは、2theta値が6.8±0.2°、14.7±0.2°、18.7±0.2°、19.2±0.2°、及び21.3±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0013】
本願に係る一部の具体的な実施形態では、前記結晶型04のX線粉末回折パターン(ピーク位置)は、図1とほぼ一致している。
【0014】
本発明は、図1のC、Dにおける例示的なXRPDスペクトルのような、優先配向現象から影響を受ける可能性がある高結晶のSAGE‐217結晶型04をさらに提供する。XRPDスペクトルにおける一部のピークの相対的強度は、優先配向現象により明らかに変化することが知られているから、配向度の高い結晶型04結晶粉末に対して、測定前に適切に処理していないと、XRPDスペクトルにおける2theta値が19.4±0.2°、20.3±0.2°で、27.2±0.2°、及び34.1±0.2°のピーク強度の著しい上昇が観察可能になる。
【0015】
一方、本願は、ギ酸エチルやギ酸とアルコール、ジクロロメタン又はアセトニトリルとを混合した溶液から、結晶を降温または蒸発させることにより、SAGE‐217結晶型04を調製する方法を提供する。
【0016】
一つ具体的な実施形態において、結晶SAGE‐217結晶型04は、実施例1~5で報告する方法により調製することができる。
【0017】
結晶型04は、ギ酸エステルやギ酸とアルコール類の混合溶媒が完全に溶解した後、結晶を降温または蒸発させることで調製することができる。一般に、溶媒和化合物の化学的及び物理的安定性は比較的に劣る。発明者は、0‐8℃、9ヶ月の保存過程では、結晶型04の化学的安定性が良好であり、純度が殆ど変化せず、結晶型が保持されたことを偶然に発見した。結晶型04は、曝される粉末の状態で一日保持されたとしても、結晶型が安定しており、25℃/45%RHで密閉されたバイアルに格納された状態では、7日を超えた結晶型安定性を有する。加速安定性試験条件25℃/60%湿度及び40℃/75%湿度下では、結晶型は、1ヶ月間、変化せず安定的に保存できる。結晶型04のDVS曲線に示すように、結晶型04に吸湿性がない。より重要なのは、従来報告された結晶型Kと比較して、結晶型04は、より優れた機械的応力安定性を持ち、すなわち機械加工性がより良好である。これは、結晶型04の製剤への応用に重要な意味がある。
【0018】
一つ具体的な実施形態では、SAGE‐217の結晶の結晶型04の特徴は、図2のAに示すDSC曲線と、図3のAに示すTGA曲線とを有し、そのうち、DSC曲線が、120℃~160℃(113.9℃からスタート)にブロードな吸熱ピークがあり、173.3℃より高い(167.5℃からスタート)とサンプルの溶融が始まることを表す。TGA曲線は、85~190℃の間に12.4%の重量損失があることを表し、EGAスペクトルからギ酸とギ酸エチルの放出があると証明し、それが1:1のギ酸溶媒和化合物と推察され、結合したギ酸はギ酸エステル溶媒の分解から由来するべきである。
【0019】
一つ具体的な実施形態では、SAGE‐217の結晶の結晶型04の特徴は、図2のBに示すDSC曲線と、図3のBに示すTGA曲線とを有し、そのうち、DSC曲線が、100℃~180℃にブロードな吸熱ピークがある。TGA曲線は、60~190℃の間に13.5%の重量損失があることを表し、EGAスペクトルからギ酸とギ酸エチルの放出があると証明し、それが1:1のギ酸溶媒和化合物と推察され、結合したギ酸はギ酸エステル溶媒の分解から由来するべきである。
【0020】
一つ具体的な実施形態では、SAGE‐217の結晶の結晶型04の特徴は、図2のCに示すDSC曲線と、図3のCに示すTGA曲線と、を有し、そのうち、DSC曲線は、110.5℃(98.5℃からスタート)におけるブロードな吸熱ピークと、147℃(144℃でからスタート)の緩やかな吸熱ピークと、155.5℃におけるシャープな吸熱ピーク(152.5℃からスタート)を表す。208.8℃より高い(205.7℃からスタート)と、サンプルの溶融が始まる。TGA曲線は、70~185℃の間の3種類の異なるかつ連続的な重量損失はぞれぞれ、1.9%、1.6%、6.3%であることを表し、EGAスペクトルからギ酸の放出があると証明した。EGAでは、放出したギ酸はサンプルの総重量に対して9.8%であると検出した。計算によりSAGE‐217とギ酸とのモル比は1:0.97であり、1:1のギ酸溶媒和化合物を形成したと表明する。
【0021】
本願が採用する第2の態様は、X線粉末回折パターンは、2theta値が8.7±0.2°,10.0±0.2°,13.2±0.2°,15.0±0.2°,15.8±0.2°及び17.3±0.2°に特徴的なピークを有するSAGE‐217結晶型06。
【0022】
さらに、そのX線粉末回折パターンは、2theta値が5.0±0.2°、5.5±0.2°、19.4±0.2°、20.0±0.2°、及び21.9±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0023】
一部の具体的な実施形態において、SAGE‐217結晶型06のX線粉末回折図は、図4とほぼ一致している。
【0024】
一方、本願は、溶媒としてニトロメタンを用い、結晶を降温または蒸発させることによりSAGE‐217結晶型06を調製する方法を提供する。
【0025】
一つ具体的な実施形態では、結晶SAGE‐217結晶型06は、実施例6~7で報告する方法により、結晶で調製することができる。
【0026】
結晶型06は、曝される粉末の状態で16時間保持しても安定しており、25℃/45%RHで密閉されたバイアルに格納された状態では、7日を超えた安定性を有する。
【0027】
一つ具体的な実施形態では、SAGE‐217の結晶の結晶型06の特徴は、図5に示すDSC曲線と、図6に示すTGA曲線と、を有する。結晶型06のDSC曲線は、2つの温度が240℃未満の吸熱ピークが存在することを表明し、その一つは93.2℃にあり、溶媒の放出吸熱により形成されたものであり、もう一つは、Tが209.4℃にあり、溶融吸熱により形成されたものである。TGAで表すように、1回目の重量損失が水の放出によるものであり、25℃から95℃までは0.6%であり、2回目の重量損失が2.1%であり、EGAに検出されたニトロメタン放出と一致している。計算によりSAGE‐217とニトロメタンとのモル比は1:0.14であり、トラップした溶媒は、非化学量論比の溶媒和化合物となる可能性があると表明する。化合物が220℃より高いと分解する。
【0028】
本願が採用する第3の態様は、X線粉末回折パターンは、2theta値が7.2±0.2°,8.6±0.2°,13.3±0.2°,19.6±0.2°及び23.0±0.2°に特徴的なピークを有する、SAGE‐217の結晶型D‐1である。
【0029】
さらに、そのX線粉末回折パターンは、2theta値が7.9±0.2°、10.6±0.2°、15.7±0.2°、16.3±0.2°、21.3±0.2°及び21.6±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0030】
一部の具体的な実施形態において、SAGE‐217結晶型D‐1のX線粉末回折図は、図7とほぼ一致している。
【0031】
一方、本願は、溶媒として4‐メチル‐2‐ペンタノンを用い、降温または蒸発より結晶SAGE‐217の結晶型D‐1を調製する方法を提供する。
【0032】
一つの実施形態では、結晶SAGE‐217の結晶型D‐1は、実施例8~10で報告する方法により、結晶で調製することができる。
【0033】
結晶型D‐1は、4‐メチル‐2‐ペンタノン溶液で結晶を蒸発させることにより調製することができる。4‐メチル‐2‐ペンタノン溶液が室温から40℃までに減圧することで結晶を蒸発させる。結晶型D‐1は、曝される粉末の状態で18時間保持しても結晶型が安定しており、25℃/45%RHで密閉されたバイアルに格納された状態では、7日を超えた結晶型定性を有する。0‐8℃、9ヶ月の保存過程では、化学的安定性が良好であり、結晶型が保持された。
【0034】
一つ具体的な実施形態では、SAGE‐217の結晶の結晶型D‐1の特徴は、図8に示すDSC曲線と、図9に示すTGA曲線とに基づく。結晶型D‐1のDSC曲線から、3つの吸熱ピークが存在すると表明し、そのうち、93℃と99.6℃にある2つの吸熱ピークが溶媒放出によるものである。209.2℃にある吸熱ピークは、溶融によるものである。TGAは、2つの連続的な重量損失を表し、その一つは85℃~110℃の間で3.2%であり、もう一つは110℃~145℃の間で7.8%であり、EGAで検出された4‐メチル‐2‐ペンタノンの放出と一致している。合計重量損失は11%であり、計算により、SAGE‐217と4‐メチル‐2‐ペンタノンとのモル比は1:0.5であり、半溶媒和物を形成したと表明する。化合物が300℃以上で分解する。
【0035】
本願はさらに、X線粉末回折パターンは、2theta値が7.3±0.2°,8.6±0.2°,13.4±0.2°,19.7±0.2°及び23.3±0.2°に特徴的なピークを有する、SAGE‐217の結晶型D‐2を提供する。
【0036】
さらに、そのX線粉末回折パターンは、2theta値が7.8±0.2°、10.6±0.2°、15.5±0.2°、16.4±0.2°、19.0±0.2°及び21.3±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0037】
一部の具体的な実施形態では、SAGE‐217結晶型D‐2のX線粉末回折図は、図10とほぼ一致している。
【0038】
一方、本願は、溶媒として酢酸イソブチルとケトンの混合物を用い、蒸発により結晶SAGE‐217の結晶型D‐2を調製する方法を提供する。
【0039】
一部の実施形態では、結晶SAGE‐217の結晶型D‐2は、実施例11~12で報告する方法により結晶により調製することができる。
【0040】
結晶型D‐2は、4‐メチル‐2‐ペンタノン/酢酸イソブチルの混合溶媒から結晶を降温または蒸発させることにより調製することができる。結晶型D‐2は、曝される粉末の状態で18時間保持しても結晶型が安定しており、25℃/45%RHで密閉されたバイアルに格納された状態では、7日を超えた結晶型定性を有する。0‐8℃、9ヶ月の保存過程では、化学的安定性が良好である。
【0041】
一つ具体的な実施形態では、SAGE‐217の結晶型D‐2の特徴は、図11に示すDSC曲線と、図12に示すTGA曲線と、を有する。結晶型D‐2のDSC曲線から、2つの吸熱ピークが存在すると表明し、それぞれが92.4℃の溶媒放出によるものと、209.4℃の融解吸熱によるものである。TGA曲線は、85℃~150℃の間の重量損失が11.5%であることを表し、EGAで検出された酢酸イソブチルの放出と一致している。計算によりSAGE‐217と酢酸イソブチルとのモル比は1:0.5であり、半溶媒和化合物が形成したと表明する。化合物が220 ℃以上で分解する。
【0042】
SAGE‐217の結晶型D‐1と、結晶型D‐2と、特許WO2018039378A1における溶媒系(テトラヒドロフラン/水)を分離して得た結晶型DとのサンプルのXRPDスペクトルをプロットし対比を行ったところ、三者は異なる結晶型であると考えられる。図13に報告されたXRPDスペクトルの比較に示すように、本発明に記載された結晶型D‐1とD‐2は、回折図において結晶型Dに対して明らかに異なるシフト信号があり、それらは異なる結晶型であることが証明された。また、EGAデータによれば、結晶型D‐1及び結晶型D‐2は、それぞれ、4‐メチル‐2‐ペンタノン及び酢酸イソブチルの半溶媒和化合物結晶型であるが、結晶型Dの獲得に用いる溶媒系には、4‐メチル‐2‐ペンタノンまたは酢酸イソブチルが存在しない。
【0043】
もう一つの具体的な実施形態では、本発明により提供される結晶型D‐1及び結晶型D‐2のSAGE‐217結晶相は、WO2018039378A1に報告された溶媒系から分離した結晶型Dに対して、より良好な安定性を示す。
【0044】
また、本願は、SAGE‐217結晶型01、結晶型02、結晶型03、結晶型05、結晶型07、結晶型08及び結晶型09に関する。これらは、それぞれ実施例18‐24で報告する方法により、結晶で調製することができる。本願が提供するSAGE‐217結晶型01、結晶型02、結晶型03、結晶型05、結晶型07、結晶型08、及び結晶型09の、SAGE‐217結晶の結晶型の特徴は、図14~20に報告されたXRPDスペクトルである。そのうち、前記結晶型の安定性は比較的低く、より安定な無水結晶型に転化する傾向がある。
【0045】
本願は、従来技術と比べると、より多くのSAGE‐217の新規結晶型を提供し、薬剤開発のためのより多くのオプションを提供する。新規結晶型では、結晶型04、結晶型06、結晶型D‐1、結晶型D‐2は、さらに、非常に良好な安定性を有し、そのうち、結晶型04は従来の結晶型に比べて著しく向上した機械的安定性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】化合物Iの結晶型04のXRPD図であり、Aは、実施例1で得られた結晶型04のXRPD図、Bは、実施例2で得られた結晶型04のXPRD図、CおよびDは、実施例4、5で得られた結晶型04のXRPD図である。
図2】化合物Iの結晶型04のDSC図であり、Aは、実施例1で得られた結晶型04のDSC図、Bは、実施例2で得られた結晶型04のDSC図、CおよびDは、実施例4、4で得られた結晶型04のDSC図である。
図3】化合物Iの結晶型04のTGA図と熱流曲線であり、Aは、実施例1で得られた結晶型04のTGA図(上)と熱流曲線(下)、Bは、実施例2で得られた結晶型04のTGA図(上)と熱流曲線(下)、Cは、実施例4で得られた結晶型04のTGA図(上)と熱流曲線(下)である。
図4】化合物Iの結晶型06のXRPD図である。
図5】化合物Iの結晶型06のDSC図である。
図6】化合物Iの結晶型06のTGA図(上)と熱流曲線(下)である。
図7】化合物Iの結晶型D‐1のXRPD図である。
図8】化合物Iの結晶型D‐1のDSC図である。
図9】化合物Iの結晶型D‐1のTGA図(上)と熱流曲線(下)である。
図10】化合物Iの結晶型D‐2のXRPD図である。
図11】化合物Iの結晶型D‐2のDSC図である。
図12】化合物Iの結晶型D‐2のTGA図(上)と熱流曲線(下)である。
図13】化合物Iの結晶型D‐1、D‐2とWO2018039378A1にに報告された結晶型DののXRPD対比図である。
図14】化合物Iの結晶型01のXRPD図である。
図15】化合物Iの結晶型02のXRPD図である。
図16】化合物Iの結晶型03のXRPD図である。
図17】化合物Iの結晶型05のXRPD図である。
図18】化合物Iの結晶型07のXRPD図である。
図19】化合物Iの結晶型08のXRPD図である。
図20】化合物Iの結晶型09のXRPD図である。
図21】化合物Iの結晶型04のDVS図である。
図22】化合物Iの結晶型04に2トンの機械的圧力を加える前後のXRPD図である。
図23】WO2018/039378A1の特許結晶型Kに2トンの機械的圧力を加える前後のXRPD図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明の保護範囲を制限するものではない。また、当業者は、特許請求の範囲において、調製方法及び使用機器を改良することができ、これらの改良も、本発明の保護範囲と見なされるべきである。従って、本発明の特許請求の範囲は、請求項の範囲に準ずる。
【0048】
下記実施例において、記載された試験方法は、通常の条件やメーカーが提案した条件に従って実施され、前記化合物Iは特許WO2014169833の方法により調製される。
【0049】
本発明で使用される略語についての説明は下記通りである。
XRPD:X線粉末回折
DSC:示差走査熱量分析
TGA:熱重量分析
【0050】
本発明に記載されたX線粉末回折図は、Rigaku Miniflex 600X線粉末回折装置に採集された。
XRPD走査パラメータ初期位置[°2Th.]:3;終了位置[°2Th.]:40;走査ステップ幅:0.01°走査速度:10°/min;銅陽極(λ=1.54);電圧:15mA;電流:40kV。
【0051】
本発明に記載された示差走査熱量分析(DSC)図は、メトラー・トレドDSC1に採集された。示差走査熱量分析(DSC)の方法パラメータは下記通りである。
走査範囲:25~250℃;走査速度:10℃/min
シールドガス:窒素ガス
【0052】
本発明に記載された熱重量分析(TGA)図は、メトラー・トレドTGA/DSC1Mettler‐Toledo DSC1)に採集された。
熱重量分析(TGA)の方法パラメータは下記通りである。
走査範囲:25~320 ℃;走査速度:10℃/min
シールドガス:窒素ガス
【0053】
以下、実施例により本願の実施形態を説明するが、当業者にとって、これらの実施例は、発明の技術案を限定するものではなく本願の目的を達成するために選択した実施案であるのは明らかなことである。本願の示唆に従って従来技術と組み合わせて本願の技術案を改良して得られたものは明らかなものであり、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0054】
実施例1 Sage‐217結晶型04の調製
10mg/mLのSage‐217ギ酸エチル溶液を調製し、この溶液を25℃で60min撹拌し、完全に溶解させ、有機フィルター(25mm/0.45μm)で溶液を濾過して得られたろ液を10℃で静置し、ろ過して白色固体が得られ、そのXRPDスペクトルを図1のスペクトル線Aに示し、対応するXRPDデータを以下の表に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例2(実施例1の操作を繰り返す)
10mg/mLのSage‐217ギ酸エチル溶液を調製し、この溶液を25℃で60min撹拌し、完全に溶解させ、有機フィルター(25mm/0.45μm)で溶液を濾過して得られたろ液を10℃で静置し、ろ過して白色固体が得られ、そのXRPDスペクトルを図1のスペクトル線Bに示す。
【0057】
実施例3 Sage‐217結晶型04の調製
25 mg/mLのSage‐217ギ酸エチル溶液を調製し、この溶液を25℃で6h撹拌し、完全に溶解させ、有機フィルター(25mm/0.45μm)で溶液を濾過して得られたろ液を25 ℃で静置し、ろ過して白色固体が得られ、そのXRPDスペクトルは図1Aと一致している。
【0058】
実施例4 Sage‐217結晶型04の調製
10mg/mLのSage‐217ギ酸/イソブタノール(1/1,v/v)溶液を調製し、この溶液を25℃で60min撹拌し、完全に溶解させ、有機フィルター(25mm/0.45μm)で溶液を濾過して得られたろ液を25 ℃で減圧させて結晶を析出させ、ろ過して白色固体が得られ、そのXRPDスペクトルを図1のスペクトル線Cに示す。
【0059】
実施例5 Sage‐217結晶型04の調製
10mg/mLのSage‐217ギ酸/イソブタノール(1/1,v/v)溶液を調製し、この溶液を25℃で60min撹拌し、完全に溶解させ、有機フィルター(25mm/0.45μm)で溶液を濾過して得られたろ液を40 ℃で減圧させて結晶を析出させ、ろ過して白色固体が得られ、そのXRPDスペクトルを図1のスペクトル線Dに示す。
【0060】
実施例6 Sage‐217結晶型06の調製
10mg/mLのSage‐217ニトロメタン溶液を調製し、この溶液を25℃で60min撹拌し、完全に溶解させ、有機フィルター(25mm/0.45μm)で溶液を濾過して得られたろ液を25 ℃で減圧させて結晶を析出させ、ろ過して白色固体が得られ、そのXRPDスペクトルを図4に示し、対応するXRPDデータは以下の通りである。
【0061】
【表2】
【0062】
実施例7 Sage‐217結晶型06の調製
10mg/mLのSage‐217ニトロメタン溶液を調製し、この溶液を25℃で60min撹拌し、完全に溶解させ、有機フィルター(25mm/0.45μm)で溶液を濾過して得られたろ液を40 ℃で減圧させて結晶を析出させ、ろ過して白色固体が得られ、そのXRPDスペクトルは図4と一致している。
【0063】
実施例8 Sage‐217結晶型D‐1の調製
10mg/mLのSage‐217 4‐メチル‐2‐ペンタノン溶液を調製し、この溶液を25℃で60min撹拌し、完全に溶解させ、有機フィルター(25mm/0.45μm)で溶液を濾過して得られたろ液を25 ℃で減圧させて結晶を析出させ、ろ過して白色固体が得られ、そのXRPDスペクトルを図7に示し、対応するXRPDデータは以下の通りである。
【0064】
【表3】
【0065】
実施例9 Sage‐217結晶型D‐1の調製
10mg/mLのSage‐217 4‐メチル‐2‐ペンタノン溶液を調製し、この溶液を25℃で60min撹拌し、完全に溶解させ、有機フィルター(25mm/0.45μm)で溶液を濾過して得られたろ液を40 ℃で減圧させて結晶を析出させ、ろ過して白色固体が得られ、そのXRPDスペクトルは図7と一致している。
【0066】
実施例10 実施例9の操作を繰り返す
10mg/mLのSage‐217 4‐メチル‐2‐ペンタノン溶液を調製し、この溶液を25℃で60min撹拌し、完全に溶解させ、有機フィルター(25mm/0.45μm)で溶液を濾過して得られたろ液を40 ℃で減圧させて結晶を析出させ、ろ過して白色固体が得られ、そのXRPDスペクトルは図7と一致している。
【0067】
実施例11 Sage‐217結晶型D‐2の調製
10mg/mLのSage‐217 4‐メチル‐2‐ペンタノン/酢酸イソブチル(1/1、v / v)溶液を調製し、この溶液を25℃で60min撹拌し、完全に溶解させ、有機フィルター(25mm/0.45μm)で溶液を濾過して得られたろ液を25 ℃で減圧させて結晶を析出させ、ろ過して白色固体が得られ、そのXRPDスペクトルを図10に示し、対応するXRPDデータは以下の通りである。
【0068】
【表4】
【0069】
実施例12 Sage‐217結晶型D‐2の調製
10mg/mLのSage‐217 4‐メチル‐2‐ペンタノン/酢酸イソブチル(1/1、v / v)溶液を調製し、この溶液を25℃で60min撹拌し、完全に溶解させ、有機フィルター(25mm/0.45μm)で溶液を濾過して得られたろ液を40 ℃で減圧させて結晶を析出させ、ろ過して白色固体が得られ、そのXRPDスペクトルは図10と一致している。
【0070】
実施例13 Sage‐217結晶型04のDVS試験
実施例1で調製された結晶型04のサンプルを、密閉試料室にあるマイクロバランスパン上に置き、その後、異なる相対湿度で、相対湿度の変動範囲を0%または40%~90%とし、相対湿度を10%増分で変化させる。各湿度レベルにおいて、10分以内にdm / dtが0.002%未満になると、サンプルのバランスがとれる。乾燥サンプルの質量と各湿度レベルにおいてのバランス質量を記録し、重量変化を相対湿度に対応付けてプロットし、すなわちサンプルの水分吸着等温線をプロットする。結果を図15に示す。
【0071】
図21によれば、結晶型04は、25℃の条件において、相対湿度が40%から90%まで変化すると、結晶型04の吸収水量が0.06%であり、結晶型04がほとんど吸湿性がないと表明する。
【0072】
吸湿性の特徴の説明と、吸湿性による重量増加の規定(中国薬局方(「Chinese Pharmacopoeia」)2010年版附録XIXJ薬物吸湿性試験指導原則、実験条件:25±1℃、80%相対湿度)
潮解:十分な量の水分を吸収して液体を形成する
吸湿性が非常に高い:吸湿性による重量増加が15%以上
吸湿性がある:吸湿性による重量増加が15%未満2%以上
吸湿性が少しある:吸湿性による重量増加が2%未満0 .2%以上
吸湿性がない又はほとんどない:吸湿性による重量増加が0.2%未満
【0073】
実施例14異なる温度と湿度条件での結晶型04の安定性
実施例1で調製された結晶型04のサンプルを取って、それぞれ、25℃/60%湿度と、40℃/75%湿度で一ヶ月放置、2~8 ℃で9ヶ月放置し、放置終了後、上記サンプルを取り出してその結晶型を測定し、結果を下記表に示す。
【0074】
【表5】
【0075】
本発明の結晶型04のサンプルを取って2~8 ℃で9ヶ月放置し、放置前後に高速液体クロマトグラフィーにより純度測定を行いその化学安定性を評価し、高速液体クロマトグラフィーによる純度結果を下記表に示す。結果から結果型04の化学安定が良好であると表明する。
【0076】
【表6】
【0077】
実施例15 結晶型D‐1の安定性実験
実施例8で調製された結晶型D‐1を2‐8℃9ヶ月放置し、取り出して結晶型を評価した結果から結晶型が変化しないと表明する。本発明で調製された結晶型D‐1を2~8 ℃で9ヶ月放置し、放置前後に高速液体クロマトグラフィーにより純度測定を行いその化学安定性を評価し、高速液体クロマトグラフィーによる純度結果を下記表に示す。結果から結果型06の化学安定が良好であると表明する。
【0078】
【表7】
【0079】
実施例16 結晶型D‐2の安定性実験
本発明で調製された結晶型D‐2を2~8 ℃で9ヶ月放置し、放置前後に高速液体クロマトグラフィーにより純度測定を行いその化学安定性を評価し、高速液体クロマトグラフィーによる純度結果を下記表に示す。0‐8℃、9ヶ月の保存過程では、化学的安定性が良好である。
【0080】
【表8】
【0081】
実施例17 結晶型04の熱力学的溶解度及び機械的耐圧安定性試験
熱力学的溶解度試験:固体粉末を水に加えて飽和溶液にし、次にその懸濁液をマグネチックスターラーで25℃で24時間撹拌した。完成後にそれを0.20μmフィルターでろ過してHPLCにより分析を行った。試験は並行して実行され、各グループに対して2回試験を行って平均値を取った。
【0082】
【表9】
【0083】
上記表に熱力学溶解結果を示す。これらのサンプルの計算結果から熱力学溶解度を求めたところ、結晶型04の値は437.5ng/mLであり、結晶型Kの値は398.0ng/mLであり、両者の熱力学溶解度は誤差範囲内にあり、その結果はほぼ一致している。
【0084】
さらに、本願の結晶型04及びWO2018/039378A1に報告する結晶型Kの機械的安定性を評価し、試料100mgに2トンの機械的圧力を加え、回収した錠剤を軽く粉砕し、XRPDにより試験を行った。
【0085】
結晶型04のXRPD試験は、それが明らかに変化しないこと(図22)を表し、一方、WO2018/039378A1に報告された晶型Kに対しては、その結晶化度がやや低下した(図23)ことが観察された。これは、本願の結晶型04の物理的安定性は、結晶型Kよりも優れることを示している。
【0086】
実施例18 Sage‐217結晶型01の調製
10mg/mLのSage‐217p-キシレン溶液を調製し、この溶液を75℃から25℃まで冷却し、攪拌させて結晶を析出させ、濾過して固体が得られ、XRPD測定の結果、そのXRPDスペクトルを図14に示し、対応するXRPDデータは以下の通りである。実際には、この結晶型の安定性は、前述の結晶型04、結晶型06、結晶型D‐1、結晶型D‐2より劣っていることが見出されている。
【0087】
【表10】
【0088】
実施例19 Sage‐217結晶型02の調製
10mg/mLのSage‐217エチレンジアミン溶液を調製し、攪拌下でこの溶液を50 ℃から25℃まで冷却し、攪拌させて結晶を析出させ、濾過して固体が得られ、乾燥させ、XRPD測定の結果、そのXRPDスペクトルを図15に示し、対応するXRPDデータは以下の通りである。実際には、この結晶型の安定性は、前述の結晶型04、結晶型06、結晶型D‐1、結晶型D‐2より劣っていることが見出されている。
【0089】
【表11】
【0090】
実施例20 Sage‐217結晶型03の調製
10mg/mLのSage‐217炭酸ジエチル溶液を調製し、この溶液を75℃から25℃まで冷却し、攪拌させて結晶を析出させ、濾過して固体が得られ、XRPD測定の結果、そのXRPDスペクトルを図16に示し、対応するXRPDデータは以下の通りである。実際には、この結晶型の安定性は、前述の結晶型04、結晶型06、結晶型D‐1、結晶型D‐2より劣っていることが見出されている。
【0091】
【表12】
【0092】
実施例21 Sage‐217結晶型05の調製
10mg/mLのSage‐217エチレングリコールジメチルエーテル
のスラリーを調製し、このスラリーを25℃で15日攪拌し、濾過して固体が得られ、XRPD測定の結果、そのXRPDスペクトルを図17に示し、対応するXRPDデータは以下の通りである。実際には、この結晶型の安定性は、前述の結晶型04、結晶型06、結晶型D‐1、結晶型D‐2より劣っていることが見出されている。
【0093】
【表13】
【0094】
実施例22 Sage‐217結晶型07の調製
10mg/mLのSage‐217 トルエン溶液を調製し、この溶液を75 ℃から10 ℃まで冷却し、攪拌させて結晶を析出させ、濾過して固体が得られ、XRPD測定の結果、そのXRPDスペクトルを図18に示し、対応するXRPDデータは以下の通りである。実際には、この結晶型の安定性は、前述の結晶型04、結晶型06、結晶型D‐1、結晶型D‐2より劣っていることが見出されている。
【0095】
【表14】
【0096】
実施例23 Sage‐217結晶型08の調製
10mg/mLのSage‐217トルエン溶液を調製し、この溶液を75℃から10℃まで急冷し、攪拌させて結晶を析出させ、濾過して固体が得られ、XRPD測定の結果、そのXRPDスペクトルを図19に示す。対応するデータは下記である。
【0097】
【表15】
【0098】
実施例24 Sage‐217結晶型09の調製
10mg/mLのSage‐217アセトニトリル溶液を調製し、この溶液を50 ℃から25 ℃まで冷却し、攪拌させて結晶を析出させ、濾過して固体が得られ、XRPD測定の結果、そのXRPDスペクトルを図20に示し、対応するXRPDデータは以下の通りである。実際には、この結晶型の安定性は、前述の結晶型04、結晶型06、結晶型D‐1、結晶型D‐2より劣っていることが見出されている。
【0099】
【表16】
【0100】
本願には上記の実施形態が含まれるが、これらに限定されず、本願の旨に従って行ったあらゆる同等の置換または部分的な改良は、本願の保護範囲内にあると見なされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【手続補正書】
【提出日】2021-09-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学名は1‐(2‐((3R,5R,8R,9R,10S,13S,14S,17S)‐3‐ヒドロキシル‐3,13‐ジメチルヘキサデカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐17‐イル)‐2‐オキソエチル)‐1H‐ピラゾール‐4‐ニトリルである化合物SAGE‐217の結晶型04であって、X線粉末回折パターンは、2theta値が11.6±0.2°、13.5±0.2°、16.2±0.2°、16.5±0.2°、及び21.3±0.2°に特徴的なピークを有するとを特徴とする。
【請求項2】
そのX線粉末回折パターンは、2theta値が6.8±0.2°、14.7±0.2°、18.7±0.2°、19.2±0.2°、及び21.3±0.2°に特徴的なピークを有するとを特徴とする請求項1に記載の結晶型04。
【請求項3】
そのX線粉末回折パターンは図1とほぼ一致しているとを特徴とする請求項1に記載の結晶型04。
【請求項4】
前記結晶型04は、化合物SAGE‐217のギ酸溶媒和化合物であるとを特徴とする請求項1に記載の結晶型04。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物SAGE‐217の結晶型04の調製方法であって、SAGE‐217をギ酸エステルやギ酸と有機溶剤の混合系において結晶させて結晶型04を得ることを含むとを特徴とする。
【請求項6】
前記ギ酸塩のエステル基は、含有炭素数C1~C10の基から選択され、前記機溶剤は、含有炭素数C1~C10のアルコール溶剤、ジクロロメタン、アセトニトリルから選択されるとを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項7】
活性成分を含む医薬組成物であって、前記活性成分は、請求項1~4いずれか一項に記載の化合物SAGE‐217の結晶型を含むことを特徴とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
実施例13 Sage‐217結晶型04のDVS試験
実施例1で調製された結晶型04のサンプルを、密閉試料室にあるマイクロバランスパン上に置き、その後、異なる相対湿度で、相対湿度の変動範囲を0%または40%~90%とし、相対湿度を10%増分で変化させる。各湿度レベルにおいて、10分以内にdm / dtが0.002%未満になると、サンプルのバランスがとれる。乾燥サンプルの質量と各湿度レベルにおいてのバランス質量を記録し、重量変化を相対湿度に対応付けてプロットし、すなわちサンプルの水分吸着等温線をプロットする。結果を図21に示す。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
実施例15 結晶型D‐1の安定性実験
実施例8で調製された結晶型D‐1を2‐8℃9ヶ月放置し、取り出して結晶型を評価した結果から結晶型が変化しないと表明する。本発明で調製された結晶型D‐1を2~8 ℃で9ヶ月放置し、放置前後に高速液体クロマトグラフィーにより純度測定を行いその化学安定性を評価し、高速液体クロマトグラフィーによる純度結果を下記表に示す。結果から結果型D‐1の化学安定が良好であると表明する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
実施例16 結晶型D‐2の安定性実験
本発明で調製された結晶型D‐2を2~8 ℃で9ヶ月放置し、放置前後に高速液体クロマトグラフィーにより純度測定を行いその化学安定性を評価し、高速液体クロマトグラフィーによる純度結果を下記表に示す。‐8℃、9ヶ月の保存過程では、化学的安定性が良好である。
【国際調査報告】