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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-11
(54)【発明の名称】黒色光起電力デバイス
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/06 20060101AFI20220404BHJP
   G04C 10/02 20060101ALI20220404BHJP
   H01L 31/075 20120101ALI20220404BHJP
【FI】
G04B19/06 C
G04C10/02 A
H01L31/06 500
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549244
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(85)【翻訳文提出日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 EP2020054593
(87)【国際公開番号】W WO2020169789
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】19158681.7
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】バイラ,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ファーヴル,エリザ
(72)【発明者】
【氏名】シュットアウフ,ヤン-ヴィレム
【テーマコード(参考)】
2F101
5F151
【Fターム(参考)】
2F101DA00
2F101DB06
5F151AA05
5F151CB11
5F151DA04
5F151FA03
5F151HA01
(57)【要約】
光起電力デバイス(1)であって、光起電力デバイス(1)は、-導電性表接触層(5)と、-前記前接触層(5)よりも入射光源から遠くに位置することが意図される導電性裏接触層(13)と、-半導体ベースのPIN接合部(7、9、11)とを備え、半導体ベースのPIN接合部(7、9、11)は、P型ドープ半導体層(7、11)とN型ドープ半導体層(11、7)との間に挟まれた実質的に非晶質の真性シリコン層(9)を備え、前記裏接触層(13)の最も近くに位置する前記PIN接合部の層(11)は、少なくとも2mol%のゲルマニウムを含むシリコン-ゲルマニウム合金層であることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光起電力デバイス(1)であって、前記光起電力デバイス(1)は、
-導電性表接触層(5)と、
-前記表接触層(5)よりも入射光源から遠くに位置することが意図される導電性裏接触層(13)と、
-半導体ベースのPIN接合部(7、9、11)と
を備え、前記半導体ベースのPIN接合部(7、9、11)は、P型ドープ半導体層(7、11)とN型ドープ半導体層(11、7)との間に挟まれた実質的に非晶質の真性シリコン層(9)を備える、光起電力デバイス(1)において、前記裏接触層(13)の最も近くに位置する前記PIN接合部の前記層(11)は、少なくとも2mol%のゲルマニウムを含むシリコン-ゲルマニウム合金層であることを特徴とする、光起電力デバイス(1)。
【請求項2】
前記シリコン-ゲルマニウム合金は、少なくとも10mol%のゲルマニウム、更に好ましくは、15%から25%のゲルマニウム、更に好ましくは、実質的に20%のゲルマニウムを含む、請求項1に記載の光起電力デバイス(1)。
【請求項3】
前記表接触層(5)の光入射側上に位置する反射防止層(19)を更に備える、請求項1又は2に記載の光起電力デバイス(1)。
【請求項4】
前記反射防止層(19)は、前記表接触層(5)の屈折率よりも低い屈折率を呈する、請求項3に記載の光起電力デバイス(1)。
【請求項5】
前記表接触層(5)の方に面する前記シリコン-ゲルマニウム合金層(11)の表面は、少なくとも10nmのrms粗さを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の光起電力デバイス(1)。
【請求項6】
前記表接触層(5)の光入射側上に位置する、実質的に透過性の基体(3)を更に備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の光起電力デバイス(1)。
【請求項7】
前記実質的に透過性の基体の表側に配設した反射防止コーティング(17)を更に備え、前記反射防止コーティング(17)は、好ましくは、前記基体(3)の屈折率よりも低い屈折率を呈する、請求項6に記載の光起電力デバイス(1)。
【請求項8】
前記表接触層(5)は、酸化亜鉛及び/又は酸化スズを含む、請求項5又は6に記載の光起電力デバイス(1)。
【請求項9】
前記裏接触層(13)の光入射側から離れて面する前記裏接触層(13)の表面上に配置した基体(15)を更に備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の光起電力デバイス(1)。
【請求項10】
前記裏接触層(13)は、酸化亜鉛及び/又は酸化スズを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の光起電力デバイス(1)。
【請求項11】
前記シリコン-ゲルマニウム合金ベースの層(11)以外の前記PIN接合部(7、9)の層は、非晶質シリコンベースの層である、請求項1から10のいずれか一項に記載の光起電力デバイス(1)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の光起電力デバイス(1)を備える計時器(21)。
【請求項13】
前記光起電力デバイス(1)は、前記計時器(21)が備える文字板(23)又はベゼル(25)の少なくとも一部を形成する、請求項12に記載の計時器(21)。
【請求項14】
前記シリコン-ゲルマニウム層(11)は、以下の条件:
-シラン流30~50sccm、
-ゲルマン流6~10sccm、
-水素流1200~1500sccm、
-ホスフィン流0.5~1.5sccm、又はジボラン流0.5~1.5sccm
-圧力3.0~3.5mbar
-プラズマ電力100~150W
下、13.56MHzプラズマ励起周波数、15mm電極間距離、45×55cm電極面寸法の反応器で、プラズマ援用化学蒸着によって堆積する、請求項1から13のいずれか一項に記載の光起電力デバイス(1)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電力(PV)デバイスの技術分野に関し、この光起電力(PV)デバイスは、例えば、電子計時器、若しくは計算器等の電子デバイスに給電するためのものであるか、又はより大規模な太陽発電のためのものである。
【背景技術】
【0002】
薄膜非晶質シリコンをベースとする典型的な太陽電池は、約650nmよりも長い波長を有する光を反射するため、赤味を帯びた色/なす紺色を呈する。このことは、美観的ではないと知覚されることが多いため、特に室内照明条件(LED、管形電球、白熱電球等)下での優れた効率及び開回路電圧にもかかわらず、特定の用途では望ましくない。
【0003】
電気又は電子計時器の特定のケースでは、時間表示の可読性を最大化するため、計時器が従来の針を組み込むか、デジタル表示を組み込むかに関わらず、濃い黒色の文字板が望ましい。電気又は電子計時器の場合、従来の薄膜太陽電池を文字板内に統合し、計時器に給電し、電池を充電することができる。しかし、赤味を帯びた色/なす紺色の電池は、通常、望ましくなく、そのような計時器の市場浸透を制限する。結晶シリコン太陽電池(多結晶、単結晶、微結晶等)は、非晶質シリコン電池よりも黒い色を有するが、室内照明条件下では、吸光スペクトルのためにあまり効率的ではなく、したがって、計時器等の室内用途にはあまり適していない。
【0004】
この問題に対する典型的な解決策は、例えば、従来の黒色ラッカでコーティングすることによって、又は半透過性の文字板を太陽電池の上に配置することによって、非晶質太陽電池を少なくとも部分的に隠すことである。後者のケースに関し、文献特開2000-131463(特許文献1)及び特開2002-148360は(特許文献2)、太陽電池の前に位置する前文字板が、例えば目盛りとして働く開口を備え、これにより、少量の光が文字板によって隠された太陽電池に到達可能にする構成を開示している。このことにより、文字板の大部分を時計製造業者のニーズに応じて従来通りに仕上げ、着色することを可能にするが、下にある太陽電池に到達する光の量をかなり制限する。したがって、電気生成量は低く、そのような構成の利用可能性を電力消費のかなり低い時計に制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-131463
【特許文献2】特開2002-148360
【特許文献3】米国特許第9726786号
【特許文献4】国際公開第2008112047号
【特許文献5】独国特許出願第102015114877号
【特許文献6】米国特許第9817155号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Transparent Conducting Oxides-An Up-To-Date Overview、Andreas Stadler、Materials(Basel)、2012年4月;5(4):661~683頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の一目的は、従来技術の上述の欠点を少なくとも部分的に克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
より詳細には、本発明は、光起電力デバイスに関し、光起電力デバイスは、
-例えば、透過性導電性酸化物等を含む導電性表接触層と、
-例えば、金属層、透過性導電性酸化物等を含む導電性裏接触層であって、前記裏接触層は、デバイスに対する「表」及び「裏」側を画定するように、前記表接触層よりも入射光源から遠くに位置することが意図される、導電性裏接触層と、
-半導体ベースのPIN接合部と
を備え、半導体ベースのPIN接合部は、P型半導体層とN型半導体層との間に挟まれた実質的に非晶質の真性シリコン層(水素化、即ちa-Si:Hであっても、非水素化、即ちa-Siであってもよい)を備える。PIN接合部は、いずれかの向きで配置することができる。即ち、P型層又はN型層のいずれかがデバイスの表側に近い。
【0009】
本発明によれば、前記裏接触層の最も近くに位置する前記PIN接合部の層(即ち、3つの層のうち、裏接触部に最も近い層)は、少なくとも2mol%のゲルマニウムを含むシリコン-ゲルマニウム合金層である。
【0010】
Si-Ge合金は、赤色波長範囲内、即ち、通常、非晶質シリコンベースのデバイスによって伝達される波長範囲内で可視光を特に強力に吸収する。これにより、PVデバイスに濃い黒色がもたらされ、非晶質シリコンPVデバイスが有する典型的な赤色、なす紺色又はスミレ色を補償し、時計(例えば、文字板として使用する際、又はベゼル若しくは他の目に見える時計部品内に統合する際)、計算器、スマートフォン及び他の可搬電子デバイス内に統合する際、デバイスを目立たずに使用するのに特に有用にし、高品質の美観を保つために部分的に隠す必要がない。非晶質電池は、より効率的で、(LED、蛍光管等から)典型的な室内照明に露出した際に結晶電池よりも高い開回路電圧を有するため、このことにより、従来技術の結晶電池解決策と比較して、黒色光起電力デバイスの発電量の著しい増大を可能にする。
【0011】
有利には、前記シリコン-ゲルマニウム合金は、少なくとも10mol%のゲルマニウム、更に好ましくは、15%から25%のゲルマニウム、更に好ましくは、実質的に20%のゲルマニウムを含む。
【0012】
有利には、デバイスは、実質的に透過性の反射防止層(酸化窒化シリコン層等)を更に備え、反射防止層は、前記表接触層の光入射側に位置し、鏡面反射の低減を助ける。この反射防止層は、多層構造を備えることができる。
【0013】
有利には、前記反射防止層は、前記表接触層の屈折率よりも低い屈折率を呈し、鏡面反射を低減するのに更に役立つ。
【0014】
有利には、表接触層の方に面するシリコン-ゲルマニウム合金層の表面は、特定の粗さを有する。この粗さは、例えば、積層体が裏側から堆積されているか、表側から堆積されているかに応じて(即ち、デバイスが表側基体を有するか、裏側基体を有するかに応じて)、テクスチャ表(又は裏)接触層から積層体を通じて入れ替えることによって形成することができる。このテクスチャは、この境界面で光を拡散するのに役立ち、反射を低減し、デバイスの黒さを濃くする。表(又は裏)接触層のrms粗さに対する典型的な値は、10~500nm、より詳細には20~300nmの範囲内である。
【0015】
一構成において、デバイスは、前記表接触層の光入射側に位置する実質的に透過性の基体を備えてもよく、この場合、基体の表側上に反射防止コーティングを設けることが有利である。この反射防止コーティングが前記基体の屈折率よりも低い屈折率を呈する場合、鏡面反射を最小化する。この反射防止層は、多層構造を備えてもよい。
【0016】
この表基体構造において、表接触層は、有利には、堆積の結果としてテクスチャ面を有する酸化亜鉛及び/又は酸化スズを含んでもよい。次に、このテクスチャは、次に堆積される層を通じて、PV接合部のI型層とシリコン-ゲルマニウム合金層との間の境界面に入れ替えられる。やはり、このテクスチャは、この境界面で光を拡散するのに役立ち、反射を低減し、デバイスの黒さを濃くする。
【0017】
一代替構造では、デバイスは、前記裏接触層の光入射側から離れて面する前記裏接触層の表面上に直接又は間接的に配置される基体を備えてもよい。
【0018】
この裏基体構造において、裏接触層は、有利には、上記と同じ理由で、酸化亜鉛及び/又は酸化スズを含むことができる。やはり、このことにより、シリコン-ゲルマニウム合金層の表向き面がテクスチャ加工され、I型層との境界面で光の拡散を改善する。
【0019】
有利には、シリコン-ゲルマニウム合金ベースの層以外のPIN又はNIP接合部の層は、非晶質シリコンベースである(a-Si)。この非晶質シリコンは、安価で十分に理解されている技術であり、Si-Ge層が、典型的にはa-Siが吸収しない赤色波長光を吸収するため、a-Siベースの層と下にあるSi-Ge層との間には相乗効果が存在する。完全にするため、PIN接合部がデバイスの表(光入射)側の方に位置するP型層を有する場合において、P型層及びI型層は、a-Siベースであり、Si-Ge層は、N型ドープSi-Ge層であり、N型層が表の方に位置する反対の場合、N型層及びI型層がa-Siベースであり、Si-Ge層がP型ドープSi-Ge層であることに留意されたい。
【0020】
本発明のPVデバイスは限定せずに幅広く適用することができるが、例えば、計時器の文字板及び/又はベゼルの少なくとも一部を形成することによって、前記計時器に組み込むことが特に有利であり得る。
【0021】
最後に、本発明は、上記の光起電力デバイスの製造方法に関し、前記シリコン-ゲルマニウム層は、以下の条件下、本ケースで使用される特定の反応器型の寸法(13.56MHz、15mm電極間距離、45×55cm電極面寸法)で、プラズマ援用化学蒸着によって堆積される:
-シラン流30~50sccm、
-ゲルマン流6~10sccm、
-水素流1200~1500sccm、
-ホスフィン流0.5~1.5sccm(N型ドーピングの場合)、又はジボラン流0.5~1.5sccm(P型ドーピングの場合)
-圧力3.0~3.5mbar
-プラズマ電力100~150W。
【0022】
本発明の更なる詳細は、以下の図面に関連する下記の説明を読めばより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】表側基体を有する、本発明によるPVデバイスの概略断面図である。
図2】裏側基体を有する、本発明による更なるPVデバイスの概略断面図である。
図3】本発明による更なるPVデバイスの概略断面図である。
図4】従来の電池及び図3による電池に対する、入射光波長を関数とする拡散反射のグラフであり、吸光層は、2つの異なる厚さを有する。
図5】本発明による更なるPVデバイスを備える計時器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明による最も単純な形態の黒色光起電力(PV)デバイス1の変形形態の概略断面図を示す。
【0025】
PVデバイス1は、実質的に透過性の、任意の所望の厚さの基体3を備え、基体3は、ガラス、ポリマー、サファイア若しくはアルミナ等の透明セラミック、ガラスセラミック、又は任意の他の好都合な材料から作製してもよい。PVデバイス1は、材料及び材料の厚さに応じて、実質的に剛性であっても、可撓性であってもよく、平坦であっても、湾曲であっても、あらゆる所望の形状に形成してもよい。本文において、「実質的に透過性」とは、少なくとも95%の可視光(350~750nm)透過率を呈するものであり、全ての屈折率は、可視光波長に関するものであると理解されたい。
【0026】
当分野で慣習であるように、デバイス1は、表側と裏側とを有し、表側は、デバイス1の表側の方を見ている観察者の視点を表す目の記号により概略的に示され、入射光を受け入れることが意図され、裏側は、表側の反対側であり、使用中、隠れる。
【0027】
表側から離れて面する基体3の第1の面3a上に、実質的に透過性の表接触部5が設けられる。この表接触部5は、図1に示すように前記第1の面3a上に直接配置してもよい、又は一般に公知であり、以下でより詳細に説明するように、1つ若しくは複数の補足層を基体3と表接触部5との間に介挿して前記第1の面3a上に間接的に配置してもよい。
【0028】
表接触部5は、例えば、ドープ又は非ドープ透過性導電性酸化物、例えば酸化亜鉛の層としてもよく、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)等により第1の面3a上に形成され、これにより、ジグザグ線により概略的に表されるように、基体3aから離れて面する表接触層5の表面5aが複数のピラミッド形状を含むテクスチャを呈するようにする。この層に特に適切な別の材料は、CVD蒸着酸化スズであり、透過性で、鋭角に画定されるピラミッド形状の酸化亜鉛よりも丸い面形態を呈する。酸化インジウムスズ(ITO)等の他の物質を等しく使用することができる。例えば、刊行物Transparent Conducting Oxides-An Up-To-Date Overview、Andreas Stadler、Materials(Basel)、2012年4月;5(4):661~683頁(非特許文献1)を参照。典型的なシート抵抗は、5~100オーム/平方の領域内である。
【0029】
このテクスチャは強制的ではないが、以下で明らかになるように、望ましいものであり、異なる透過性導電材料を堆積した後、前記表面5aを個別ステップでテクスチャ加工することも可能であり、この異なる透過性導電材料は、透過性導電性ポリマー等、堆積中にテクスチャ面を本質的に形成せず、下にある層の表面形態に従うものである。このテクスチャ加工は、機械的に(例えば機械加工、研削、研摩ブラシ、サンド・ブラスト、ビード・ブラスト等よって)、イオン・エッチング、レーザー・エッチング若しくはレーザー・アブレーションにより、又は化学エッチングによって実行することができる。(存在する場合)テクスチャの形成の仕方は重要ではないが、理想的には、テクスチャは、20~300nmの範囲の最小rms粗さ値を有するべきであり、形成の仕方に応じて、確率的であっても、非確率的であってもよい。RMS粗さは、ASME B46.1規格に記載されているため、当業者に周知である。
【0030】
代替的に、基体の表面3a自体にテクスチャ加工することができる。このテクスチャは、テクスチャ層5の表面5aがテクスチャ面を本質的に形成しない材料から作製される場合でさえ、テクスチャ層5の表面5aに転写される。
【0031】
表接触層5の形成の仕方とは無関係に、表接触層5の厚さは、理想的には0.1から5μmの間の厚さ、好ましくは、1.5から2μmの間の厚さである。
【0032】
前記表接触層5の表面5a上に直接又は間接的に、一般に公知であるようにPIN又はNIP接合部が配置される。例えば、以下でより詳細に論じるように、層7は、Pドープ非晶質シリコンとすることができ、層9は、真性非晶質シリコン層(a-Si又はa-Si:H)であり、層11は、Nドープ半導体層である。層7がN型非晶質シリコン層であり、層11がP型半導体層である、反対の構成も可能である。表面5aがテクスチャ加工されるケースでは、テクスチャは、層の間のジグザグ境界面によって概略的に表されている次に堆積される層全体を通して、入れ替えられる。不確かな場合、「非晶質」層又は「実質的に非晶質な」層を5%未満のラマン結晶化度を有するものとしてパラメータ化することができる。
【0033】
金属又は他の導電性物質(例えば透過性導電性酸化物等)である裏接触部13は、層11上に位置し、様々な層は、必要に応じて、一般に公知であるようにパターン加工、相互接続される。
【0034】
本発明によれば、裏接触部13の方に最も近くに位置するPIN又はNIP接合部の層11は、適切にドープしたシリコン-ゲルマニウム合金を含み、ゲルマニウムのモル・パーセンテージは、少なくとも2%、好ましくは、10%から30%のゲルマニウム、更に好ましくは、15%から25%のゲルマニウム、更に好ましくは、実質的に20%のゲルマニウムであり、この残りは、実質的に全てシリコンである(層を水素化したケースでは水素、即ちSiGe:H)。この層は、典型的には、10から500nmの間、より詳細には30から200nmの間の厚さを有し、典型的には、N型SiGe:Hの場合、以下の堆積パラメータでCVDによって堆積される。
【0035】
【表1】
【0036】
P型SiGe:Hの場合、パラメータは同様であるが、ホスフィンではなく、ジボラン又は他のP型ドーパントが使用され、その結果として流量が適合される。
【0037】
シリコン-ゲルマニウム合金は、可視光波長を、特に赤色波長範囲(650nm超の波長)内で特に強力に吸収する。この波長範囲は、典型的には、350nmから650nm波長範囲内で典型的に吸収する従来の薄膜非晶質シリコンPV電池では吸収されない。更に、Si-Ge合金は、a-Si:Hと同様の約3~4の屈折率を有し、この屈折率は、典型的には、PVデバイス1の表側の方に位置する他の層の屈折率をかなり超過している。したがって、Si-Ge層11は、a-Si/Si-Ge境界面で更なる反射を加えず、残りの赤色光が直接Si-Ge層に入ることを可能にする。更に、表テクスチャは、光が多重反射によって吸光層内で再循環するのを向上させ、したがって、真性非晶質シリコン層が、典型的には赤色波長(>700nm)を吸収しないために、通常は紫色/なす紺色/赤味を帯びた色を有するにもかかわらず、最大の吸光をもたらし、濃い黒色電池の生成を可能にする。本質的に、本発明は、所望の濃い黒色をもたらす一方で、可搬用途での非晶質電池の利点(開回路電圧、室内照明条件下での効率)を可能にする。
【0038】
このPVデバイス1の変形形態は、各個の層に適したあらゆる適切な1つ又は複数の工程によって、一般に公知であるように透過性基体3から裏接触部13に向かって所望の順序の層を堆積することによって形成される。この目的で、化学蒸着(プラズマ援用有り又は無しのCVD等)、物理蒸着(PVD、スパッタリング等)、スピン・コーティング、スプレー・コーティング等の変形形態を、使用する材料に応じて、一般に公知であるように適用することができる。
【0039】
PVデバイス1は、構成後、必要に応じてカプセル化することができる。
【0040】
この構成は、PVデバイス1に特に強固な上面をもたらし、従来の手段によって容易に取り扱い、掃除することができる。
【0041】
図2は、裏基体15から表接触部5の方に構成したPVデバイス1の更なる変形形態を示す。本実施形態では、基体15は、透過性であるか不透過性であるかにかかわらず、あらゆる従来の材料のものであってよく、層は、参照符号13-11-9-7-5の順序で堆積される。これらの層は、図1の実施形態から変化しておらず、保護層等の1つ又は複数の更なる層を表接触部5上に堆積してもよい。
【0042】
この構成において、裏接触部13が、酸化亜鉛又は酸化スズ等の物質であり、堆積方法に応じて、前述のような表面テクスチャを自動的に呈することが有利である。代替的に、裏接触部13の表面又は基体15の表面は、上記のようにテクスチャ加工することができ、金属を含むあらゆる適切な導電材料を裏接触部13のために使用することができる。テクスチャは強制的ではないが、このテクスチャにより、Si-Ge層11の表側境界面もテクスチャ加工され、上記した光拡散を最大化するという同じ利点を与えることが保証される。
【0043】
図3は、図1の実施形態の有利な変形形態を示し、更なる層は、PVデバイス1の黒さを改善するように組み込まれている。同じ原理は、基体の位置とは無関係に適用することができ、したがって、必要な変更を加えて、図2の実施形態に直接適用することができる。したがって、対応する実施形態を詳細に説明する必要はない。
【0044】
図3の実施形態は、PVデバイス1の黒さを更に改善する2つの方策を適用しており、これらの方策は、図示のように、個別に適用しても、組み合わせて適用してもよい。
【0045】
色を更に濃くする第1の方策は、1つ又は複数の層を備える反射防止コーティング17の存在であり、反射防止コーティング17は、見られることが意図される方向の方に面する、即ち、Si-Ge合金層11から離れて面する基体3の表面上に施される。この反射防止コーティング17は、耐引っ掻き性及び耐摩耗性も有することができ、そのようなコーティングは、それ自体が特に眼鏡の分野で周知であり、鏡面反射、したがって、光沢を低減する。この例は、例えば米国特許第9726786号(特許文献3)、国際公開第2008112047号(特許文献4)、独国特許出願第102015114877号(特許文献5)、米国特許第9817155号(特許文献6)及び無数の他の文献で開示されている。代替的に、反射防止コーティングが、使用中に引掻きに露出される可能性があり、耐引っ掻き性が乏しい場合、更なる耐引っ掻き性コーティングを反射防止コーティング11の上に設けてもよい(図示せず)。
【0046】
本発明の文脈において、反射防止コーティング17は、有利には、直接下にある層の屈折率よりも低い屈折率を有し、直接下にある層は、図3の実施形態のケースでは、基体3である。このことにより、後方反射を低減し、したがって、色を濃くする。
【0047】
色を濃くする第2の方策は、更なる反射防止層19を基体3と表接触層5との間に介挿することである。この層は、典型的には、基体3の屈折率とテクスチャ層5の屈折率との間にある値の屈折率を有し、例えば、10から200nmの間、より好ましくは、70から90nmの間の厚さを有する酸化窒化シリコン層とすることができる。この層は、層の厚さ部を通じて増大する段階的な屈折率を呈する多層とすることもできる。
【0048】
更に有利には、屈折率が表側からPIN又はNIP接合部のI層までの積層体を通じて漸増する場合、反射が更に低減する。例えば、以下の値の屈折率を使用することができる。
【0049】
【表2】
【0050】
本発明の効果は、以下の特性を有する一連のPVデバイス1を作製することによって実験的に示されている。
【0051】
デバイスA:層11がn型μc-Si:H及びSiOx:Hを含むことを除き、図1の構造を有する最新技術のPV電池。層の構造は、以下の通りである。
【0052】
【表3】
【0053】
デバイスB:図1の構造を有する本発明によるPVデバイス1。層の構造は、以下の通りである。
【0054】
【表4】
【0055】
デバイスC:図3の構造を有するが、反射防止層19を除外した、本発明によるPVデバイス1。層の構造は、以下の通りである。
【0056】
【表5】
【0057】
デバイスD:図3の構造を有するが、反射防止コーティング17を除外した、本発明によるPVデバイス1。層の構造は、以下の通りである。
【0058】
【表6】
【0059】
デバイスE:図3の構造を有する本発明によるPVデバイス3。層の構造は、以下の通りである。
【0060】
【表7】
【0061】
各電池に対する色のパラメータを、知覚的に均等で人間の目と相関するL系で測定した。このモデルでは、Lは、輝度(L=0である黒からL=100である白まで)を表し、aは、緑-赤の規模(a=-128である緑からa=+127である赤まで)であり、bは、青-黄色の規模(b=-128である青からb=+127である黄色まで)である。したがって、完全な黒は、L=a=b=0によって規定される。サンプルは、SCI、即ち、鏡面反射成分を含むモードで、及びSCE、即ち、拡散反射成分のみを含むモードで、同時に測定される。反射防止コーティングは、鏡面反射成分の低減に役立ち、したがって、その影響は以下で報告するSCIモードの測定で見られる。一方、積層体内側の層を修正すると、主として、拡散反射成分に影響を及ぼし、したがって、その影響はSCEモード測定で見られる。標準光源D65を使用し、10°の観察者視野を用いた。
【0062】
どのくらいの黒さの色が得られるかを定量化するため、「漆黒度」と呼ばれるパラメータMcが以下のように定義されている。
【0063】
【数1】
【0064】
式中、
【0065】
【数2】
【0066】
であり、L*、a*、b*は、測定したL色パラメータであり、Xn、Yn及びZnは、基準成分の白である(n=中性)。Mc計算の場合、Xn=94.811、Yn=100.000及びZn=107.304を使用した。X、Y及びZは、測定中、L*、a*、b*と同時に分光計によって直接計算される。
【0067】
この定義から分かるように、「漆黒度」Mcがより高いほど、サンプルはより黒い。
【0068】
得られた結果は以下の通りであった。
【0069】
【表8】
【0070】
この表において、SiGe合金層11による色値範囲は、この層の厚さを関数として変動し、層の厚さは、変動の制御のために変動する。
【0071】
デバイス1の「漆黒度」は、最裏光起電力接合層11のSiGe合金の使用により著しく改善すること、反射防止コーティング17及び/又は反射防止層19の使用が黒さを改善すること、並びにSCIデータにおけるL値の低減から分かるように、両方の測定の組合せが、鏡面反射成分を含む際に特に有効であることが明確にわかる。
【0072】
図4は、層11が従来のN型積層体である基準と比較した、上記デバイスEの構造を有するデバイス1内の層11で様々な厚さのn-SiGeを使用する影響を示す。明確にわかるように、拡散反射率R拡散の差異は、約590nm波長を上回ると高度に際立っており、180nmの厚さの吸光層11は、30nmの厚さの層よりも強力に吸光する。
【0073】
図5は、本発明による2つのPVデバイスを備える計時器21を概略的に示す。PVデバイスの第1のPVデバイスは、計時器の文字板23の全て又は一部を形成し、もう一方は、ベゼル25内に統合される。言うまでもないが、あらゆる特定の計時器は、これらPVデバイスのいずれか1つを組み込むことができ、例えば、目盛りを文字板23として働くPVデバイス1の表面上に設けることができる。また、本発明のPVデバイス1を時計ケース、バンド等内、又は計算器等の他のデバイス、スマートフォン、タブレット・コンピュータ等の筐体内に組み込むことが可能である。
【0074】
最後に、種類Aのデバイス1は、典型的には、9mW/cm2の電力出力を有する一方で、種類Eのデバイスは、約8mW/cm2の電力出力を有し、このことは、例えば、序論で説明した従来技術のようにPVデバイスを部分的に透過性の時計文字板で遮蔽することと比較すると、比較的わずかな低減であることに留意されたい。
【0075】
本発明を特定の実施形態に関して説明してきたが、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、これら特定の実施形態に対する変形形態が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】