(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-11
(54)【発明の名称】改善された可読性を有するコーティングされているグレージング及びその方法
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20220404BHJP
G06K 19/08 20060101ALI20220404BHJP
G06K 19/06 20060101ALI20220404BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20220404BHJP
H01Q 1/40 20060101ALI20220404BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20220404BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
G06K19/077 144
G06K19/077 280
G06K19/08 030
G06K19/06 009
H01Q1/22 A
H01Q1/40
B32B7/025
B32B17/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549871
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(85)【翻訳文提出日】2021-10-25
(86)【国際出願番号】 IN2020050174
(87)【国際公開番号】W WO2020174493
(87)【国際公開日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】201941007427
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン-ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】アルンベル タンガマーニー
(72)【発明者】
【氏名】サムソン リチャードソン ディー
【テーマコード(参考)】
4F100
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
データトランスポンダ装置のための改善された可読性を提供するコーティングされている積層グレージングを開示する。このコーティングされている積層グレージングは、積層グレージングの第2面又は第3面のうちの少なくとも1つに提供されている表面コーティング層を有しており、この表面コーティング層が、その上に選択的に提供されているエッチング領域を有している。コーティングされている積層グレージングは、エッチング領域の下方に位置しており積層グレージングの第1の基材と第2の基材との間に挟持されているデータトランスポンダ又はアンテナを有している。代替的には、コーティングされている積層グレージングは、エッチング領域に近接して、積層グレージングの第1面又は第4面に固定されている。エッチング領域は、RF透過性を通じて改善されたデータ可読性を提供するための複数の非統一的なパターンによって、特徴づけられる。コーティングされている積層グレージングは、さらに、第1の基材と第2の基材との間に配置されている1又は複数の中間層を有する。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基材100a、第2の基材100b、及び1又は複数の中間層100cを有するコーティングされている積層グレージング100であって、
少なくとも前記第1の基材100a又は前記第2の基材100bの上に提供されている表面コーティング層、及び、前記表面コーティング層に選択的に提供されている1又は複数のエッチング領域104、106、並びに、
前記エッチング領域に近接して前記第1の基材と前記第2の基材との間に挟持されており、又は、前記エッチング領域に近接して前記第1の基材及び前記第2の基材に外部から取り付けられている、データトランスポンダ又はアンテナ102、
によって特徴づけられ、
ここで、前記エッチング領域が、前記データトランスポンダ又は前記アンテナの改善された可読性を提供するための複数の非統一的なパターンによって特徴づけられる、
コーティングされている積層グレージング。
【請求項2】
前記エッチング領域104、106が、レーザーエッチングによって、前記表面コーティング層に選択的に提供されている、請求項1に記載のコーティングされている積層グレージング100。
【請求項3】
前記エッチング領域104、106が、研磨エッチング又は化学的エッチングによって、前記表面コーティング層に選択的に提供されている、請求項1に記載のコーティングされているグレージング。
【請求項4】
前記1又は複数の非統一的なパターン112が、前記コーティング領域において、ワイヤレスで受信されたRF電力の無限の伝導性及び電気伝導性を無効化するために提供されている、請求項1に記載のコーティングされている積層グレージング100。
【請求項5】
前記表面コーティング層114が、前記第1の基材の外側層、前記第1の基材の内側層、前記第2の基材の外側層、及び、前記第2の基材の内側層の上に存在している、請求項1に記載のコーティングされている積層グレージング100。
【請求項6】
前記1又は複数の非統一的なエッチングパターン112が、電磁反射を最小化する、請求項1に記載のコーティングされている積層グレージング100。
【請求項7】
前記表面コーティング層114が、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、亜鉛、プラチナ、クロム、チタン、及びインコネル、アルミニウム酸化物、インジウム酸化物、酸化クロム、酸化チタン、チタンジルコニウム酸化物、亜鉛酸化物からなる、金属又は金属酸化物のうちの少なくとも1つから構成されている、請求項1に記載のコーティングされている積層グレージング100。
【請求項8】
前記データトランスポンダに関する機械的一体性、紫外線保護、耐熱性、及び電気絶縁性を提供するために前記第1の基材と前記第2の基材との間に選択的に配置されている保護層110を、随意に有している、請求項1に記載のコーティングされている積層グレージング100。
【請求項9】
前記保護層110が、下記のうちの少なくとも1つ、又は下記の組み合わせから構成されている、請求項5に記載のコーティングされている積層グレージング100:
パリレン、シリコーン、アクリル、エポキシ、に基づく樹脂、セラミック、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリイミド、PVB、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、及び/又は、ポリイミド、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、及び、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、芳香族ポリマー、ポリp-フェニレン、エチレンプロピレンゴム、架橋ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PDMS、及び、PDMS金属酸化物混合体、及びテフロン(登録商標)。
【請求項10】
前記エッチングが、前記データトランスポンダのチップに近接する領域における第1パターン206、及び、前記データトランスポンダの前記アンテナに近接する領域における第2パターン204を達成するために実行されており、
ここで、前記第1パターン204及び前記第2パターン206が、非均一的であり、かつ相違している、
請求項1に記載のコーティングされている積層グレージング100。
【請求項11】
前記エッチングが、10~98%の範囲における可読性を達成するために、前記伝導性の表面層の10~90%の範囲で選択的に実行されている、請求項1に記載のコーティングされている積層グレージング100。
【請求項12】
前記エッチングが、前記データトランスポンダの前記アンテナの領域におけるRF透過性を可能とするために選択的に実行されており、
一方で、表面コーティング層が、UV保護を可能とするために、前記データトランスポンダの前記チップの領域で保持されている、
請求項1~9に記載のコーティングされている積層グレージング100。
【請求項13】
前記1又は複数の非統一的なパターンが、バーコード、QRコード(商標)、若しくは任意のグリッドパターン、又はこれらの組み合わせを有している、請求項1に記載のコーティングされているグレージング。
【請求項14】
リーダーと通信するように構成されており、それによって、そこからのシグナルを受信し、かつ送信する、請求項1に記載のコーティングされている積層グレージング100。
【請求項15】
乗り物に取り付けられるように構成されている、請求項1又は2に記載のコーティングされている積層グレージング100。
【請求項16】
自動車の、ウィンドシールド、ウィンドスクリーン、及び/又はサンルーフとして用いられる、請求項1又は2に記載のコーティングされている積層グレージング100。
【請求項17】
改善された可読性を有するコーティングされている積層グレージング100を製造する方法であって:
第1又は第2の基材の上に、コーティングを均一に堆積すること、このコーティングは、少なくとも部分的に、無線周波数(RF)放射に対して非伝達性である、
前記基材の領域を選択的にエッチングして、前記コーティングの一部を除去し、それによって、前記基材の上に1又は複数の非統一的なパターンを形成すること、
前記第1の基材及び前記第2の基材を曲げて、凹形状を形成すること、
前記第1の基材又は前記第2の基材のうちの少なくとも1つの上に、保護層を堆積すること、
前記エッチングされた領域又は処理された領域に対して特定の角度で、データトランスポンダを配置すること、
前記第1の基材の下方に第2の基材を配置し、それにより、前記データトランスポンダが、前記第1の基材と前記第2の基材との間に挟持されるようにすること、
第1の基材と第2の基材との間に1又は複数の中間層を配置して、積層アセンブリを形成すること、
前記サンドイッチ状の積層アセンブリを真空脱気すること、並びに
前記サンドイッチ状の積層アセンブリをオートクレーブすること、
を含む、方法。
【請求項18】
前記リーダーからの前記無線信号の反射を最小化するように、前記1又は複数の非統一的なパターンをエッチングする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の基材に、金属コーティングを堆積する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
第1又は第2の基材の上に堆積された前記表面コーティング層に、選択的なエッチングを行う、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
1又は複数の非統一的なパターンを形成する工程が、前記1又は複数のパターンにQRコード(商標)情報及び/又はバーコード情報をエンコードすることをさらに含む、請求項17及び19に記載の方法。
【請求項22】
前記コーティングのうちの10パーセント超がエッチングによって除去されるように、1又は複数の非統一的なパターンを前記基材の上に形成する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
エッチングの実行が、下記を含む、請求項17及び19に記載の方法:
前記データトランスポンダチップに近接する領域に、第1パターンをエッチングすること、及び、
前記データトランスポンダの前記アンテナの領域に近接する領域に、第2パターンをエッチングすること。
【請求項24】
前記第1パターンが、密にエッチングされており、前記第2パターンが、疎にエッチングされている、請求項17及び22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、1又は複数のデータトランスポンダが埋め込まれている、乗り物のコーティングされている積層グレージングに関し、より特には、データトランスポンダの比較的良好な可読性性能を有する積層グレージングに関する。
【背景技術】
【0002】
背景の記載は、本開示の理解において有用でありうる情報を含む。これは、ここで提供される情報のいずれかが、従来技術であること、特許請求の範囲に記載されている発明に関係すること、を認めるものではなく、又は、特定的若しくは暗黙に参照されている刊行物のいずれかが従来技術であることを認めるものでもない。
【0003】
現在、RFID及びNFCタグが、乗り物のウィンドシールドに、ステッカーの形態で提供されており、乗り物に関係するデータ又は情報を保持するためのデータ保持装置として使用されている。また、データトランスポンダを積層グレージング又はウィンドシールドの間に埋め込むことを開示している解決策も存在する。
【0004】
米国特許第6275157号明細書(Maysら)は、ガラスパネル、及び、少なくとも部分的にガラスパネルに埋め込まれているびRFID装置、を有するデータトランスポンダを開示している。本願の出願人の別のインド特許出願に係る201741020258号明細書は、積層グレージングを開示しており、この積層グレージングは、積層グレージングの第1基材と第2基材との間に配置されているRFID/NFC装置を有している。しかしながら、第1基材又は第2基材が金属層又は金属酸化物層でコーティングされている場合には、RFID装置の可読性(リーダビリティ)が影響を受ける。金属層又は金属酸化物層は、データトランスポンダがそれの近傍に配置されている場合に、後方散乱、及び範囲の変化を生じる。積層グレージングの第3面がコーティングされておりRFID装置がそこに埋め込まれている場合では、第3面において接地効果が起こり、伝導性妨害となる。したがって、コーティングされている積層グレージングにおけるデータトランスポンダの性能に関係する上記の課題に対処するための解決策が、必要とされている。
【0005】
コーティングされている積層グレージングの第1面及び第4面にRFIDが貼られている場合にも、金属性コーティングからのRF波の反射によって、RFID装置の可読性及び性能が、影響を受ける。RFID装置に隣接している領域又はこれにそろっている領域において積層グレージングからコーティングの特定の部分を除去することは、RF波反射及びRFID装置の可読性の問題への対処法となる。コーティングの除去は、RFID装置が太陽、UVにさらされる結果をもたらし、損傷しやすくさせる結果をもたらす。したがって、データトランスポンダ装置への保護を確保しつつ、積層グレージングにおけるデータトランスポンダ装置の性能を向上させる方法への必要性が存在する。
【0006】
米国特許第9758021号明細書は、コーティングされている表面の部分全体を除去することによって、コーティング表面にウィンドウを作成する方法について言及している。これは、除去された部分の機能、例えばUV保護、霜除去特性などの喪失を生じる。この機能性が、局所的に切り出された部分において完全に失われる。したがって、コーティングの機能性を保持し、タグの性能を損なわない解決策が、必要とされている。
【0007】
グレージングに取り付けられたデータトランスポンダの可読性の問題に対処するための方法が開発されている。レーザービームを用いて周波数選択的な表面を有するグレージングを製造する方法を開示している特許が存在する。欧州特許第2640549号明細書は、基材上にコーティングを堆積させてRF透過性を提供する方法を開示している。その後、レーザービームをコーティング上に提供し、レーザー除去によって、所望の波長のRF放射に対するコーティングの透過性を提供するように選択された間隔を有するラインを、形成する。欧州特許第2640549号明細書は、コーティング層にランダムなスリットを提供し、それによってデータトランスポンダのための性能を達成することに焦点を当てている。これらのランダムなスリットは、読取性能を促進することができる。しかしながら、露出されるスリットは、比較的厳しい方法パラメータの場合には、タグの劣化及びRFID装置の誤作動を生じる可能性がある。さらには、ランダムなスリットは、RF波の金属性の反射を生じ、それによって、可読性に影響を及ぼす。既存の解決策は、タグの性能の適格性を評価する方法を説明していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の議論に鑑みて、RFID装置又はアンテナに関して改善された可読性を提供するコーティングされているグレージングへの必要性が存在する。さらには、向上した保護性、耐久性、及びデータ可読性性能を有するデータトランスポンダ装置を有するウィンドシールドを提供することが望まれている。さらには、コーティングされている積層グレージングのコーティングを選択的に除去して、電磁妨害、RF波の金属性反射、及びRFID装置の接地に関連する問題を排除する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の他の特徴及び側面が、下記の記載及び添付の図面から明らかとなるであろう。背景において言及した不利な点を克服するために、本開示は、RFID装置のための保護を確保しつつ、埋め込まれたRFID装置又はアンテナに関する改善された可読性を有する、コーティングされている積層グレージングを提供する。グレージングのコーティングされている基材上に、RF透過性をもたらす、非統一的なエッチングパターンを、選択的に提供することによって、可読性が、改善される。本発明の他の目的は、データトランスポンダをマスキングする(覆い隠す)選択的なエッチングパターンによって、耐久性を有する最適な性能を提供するデータトランスポンダを有するウィンドシールドを提供することである。本発明は、コーティングを通る電気伝導性に起因する電磁妨害の問題、グレージングにおける金属層に起因するRF波の反射の問題を解決することを目的としており、積層グレージング上へのRFID装置の埋め込みに起因する接地を排除する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、本開示の1つの実施態様に係る、本開示のコーティングされている積層グレージングの分解図を描写している。
【
図1B】
図1Bは、本開示の別の実施態様に係る、本開示のコーティングされている積層グレージングの分解図を描写している。
【
図1C】
図1Cは、本開示の1つの実施態様に係る、保護層を有しているコーティングされている積層グレージングの断面図を描写している。
【
図2A】
図2Aは、本発明の例示的な実施態様に係る、エッチングパターンを有しているウィンドシールドの斜視図を描写している。
【
図2B】
図2Bは、本発明の例示的な実施態様に係る、エッチングパターンを有しているウィンドシールドの斜視図を描写している。
【
図2C】
図2Cは、1又は複数の非統一的なパターンを有する、ウィンドシールドのためのコーティングされている積層グレージングを描写している。
【
図4A】
図4Aは、コーティングされている積層グレージングに埋め込まれているRFID装置の性能を計測するための実験セットアップを描写している。
【
図4B】
図4Bは、種々のエッチングパターンで得られる可読性データを描写している。
【
図5】
図5は、埋め込まれたデータトランスポンダを有している、乗り物で用いられるコーティングされている積層グレージングの製造方法に関するフローチャートを、描写している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、第1の基材、第2の基材、及び1又は複数の中間層を有しており、改善された可読性を提供するように設計されている、コーティングされている積層グレージングを提供する。グレージングは、少なくとも1つの基材の上に提供されている表面コーティング層、及び、表面コーティング層に選択的に提供されている1又は複数のエッチング領域(エッチングされた領域)を、有する。さらに、グレージングが、エッチング領域に近接して第1の基材と第2の基材との間に挟まれているデータトランスポンダ若しくはアンテナ、又は、エッチング領域に近接して第1の基材及び第2の基材に外部から取り付けられているデータトランスポンダ若しくはアンテナを、有している。エッチング領域は、データトランスポンダ又はアンテナの改善された可読性を提供するための複数の非統一的なパターンで特徴づけられる。1又は複数の非統一的なパターンは、コーティング領域において、ワイヤレスで受信されるRF電力の無限の伝導性及び電気伝導性を無効化するために、提供されている。
【0012】
1つの実施態様では、表面コーティング層が、第1の基材の外側層、第1の基材の内側層、第2の基材の外側層、及び、第2の基材の内側層に存在している。1又は複数の非統一的なエッチングパターンが、電磁反射を最小化する。コーティングされているグレージングは、第1の基材と第2の基材との間に選択的に配置されている保護層を有しており、それによって、データトランスポンダのための機械的な一体性、紫外線保護、耐熱性、及び電気絶縁性を提供している。エッチングは、データトランスポンダのアンテナ領域においてRF透過性を有効化するために選択的に実行されており、一方で、UV保護を有効化するために、データトランスポンダのチップ領域において、表面コーティング層が維持されている。
【0013】
本発明の1つの実施態様によれば、埋め込まれたデータトランスポンダを有している、乗り物で用いられるコーティングされている積層グレージングを製造する方法である。この方法は、積層グレージングの基材の上に均一にコーティングを堆積することを含み、このコーティングは、無線周波数(RF)放射に対して非伝達性である。コーティングは、金属又は金属酸化物の表面コーティング層で形成されている。コーティングは、第1基材の内側層、又は第2基材の外側層に提供される。その後、コーティングされた基材の領域を選択的にエッチングして、コーティングの一部を除去し、それによって、選択された領域における電気伝導性を無効化する、基材上の1又は複数の非統一的なパターンを、形成する。非統一的なパターンは、エッチング領域において均一的又は非均一的であってよい。非統一的なパターンは、第1の領域で密であり、第2の領域で最小限である。その後、コーティングされた基材を曲げ、それにより、コーティングされた第2面が凹形状へと形成されるようにする。保護層を堆積して、エッチング領域をマスキングする。その後、データトランスポンダを、基材上で、エッチング領域に対して垂直方向でそろえて、配置する。第2の基材を、データトランスポンダを有する基材の下方に配置し、データトランスポンダが、第1の基材と第2の基材との間に挟持される。サンドイッチ状になった第1の基材及び第2の基材の、真空脱気を行う。最後に、サンドイッチ状になった第1の基材及び第2の基材のオートクレーブ処理を行う。
【0014】
実施態様を、例示によって描写する。実施態様は、添付の図面に限定されない。
【0015】
当業者は、図面中の要素は、簡便さ及び明確さのために描写されており、必ずしも縮尺どおりでないことを理解する。例えば、図中の要素のいくつかの寸法は、他の要素に対して誇張されていることがあり、それによって、本発明の実施態様の理解の向上を助けている。
【0016】
ここで、本発明を、本願に付随する図面を参照して、より詳細に記述する。添付の図面では、類似のかつ/又は対応する要素が、同様の参照番号で言及されている。
【0017】
可能な場合には、同一の参照番号を、図面を通じて用いて、同一又は類似の部品に言及する。本開示は、通常の機能に加えて他の機能を取り込んでいる改善された自動車グレージングを提供する。本開示は、さらに、1又は複数のデータトランスポンダが埋め込まれている改善された自動車グレージング、より特には、データトランスポンダの比較的良好な可読性性能を有する積層グレージングを、提供する。
【0018】
本開示は、第1の基材、第2の基材、及び、1又は複数の中間層を有し、改善された可読性を提供するように設計されている、コーティングされている積層グレージングを提供する。グレージングが、少なくとも1つの基材の上に提供されているデータトランスポンダ、及び、表面コーティング層に選択的に提供されている1又は複数のエッチング領域を有している。さらに、グレージングが、エッチング領域の近くで第1の基材と第2の基材との間に挟持されているデータトランスポンダ若しくはアンテナ、又は、エッチング領域の近くで第1の基材と第2の基材に対して外部から取り付けられているデータトランスポンダ若しくはアンテナを、有している。
【0019】
図1Aは、データトランスポンダ装置102が埋め込まれている本開示に係るコーティングされている積層グレージング100の分解図を描写している。1つの実施態様では、データトランスポンダ装置102が、RFID装置、近距離無線通信(NFC)装置、又はアンテナである。1つの実施態様では、コーティングされている積層グレージング100が、積層グレージングの第2面又は第3面のうちの少なくとも1つに提供されている表面コーティング層を有している。コーティングされている積層グレージング100が、さらに、表面コーティング層に選択的に提供されているエッチング領域104、106を有している。
【0020】
さらに、コーティングされている積層グレージングが、エッチング領域の下方に配置されておりグレージング100の第1の基材100aと第2の基材100bとの間に挟持されているデータトランスポンダ102又はアンテナを、有している。代替的には、データトランスポンダ102が、エッチング領域108の近くで、積層グレージングの外側面、例えば第1面又は第4面に、接着剤又はテープを用いて、固定されている。エッチング領域は、RF透過性を通じて改善されたデータ可読性を提供するための、複数の非統一的なパターンで特徴付けられる。エッチングは、レーザー、除去、化学エッチングなどによって行われる。1つの実施態様では、第2の基材100bが、エッチング領域108を有する。エッチング領域108は、バーコード又はQRコード(商標)のタイプのパターンを有しており、このパターンが、コーティングされているグレージングから物理的に除去されている。このパターンは、表面コーティング層の電気的な非連続性を提供し、そのようにして、電磁妨害を防止する。さらに、この非統一的なパターンは、電気的な伝導性を無効化し、それによって、コーティング領域における、ワイヤレスで受信されるRF電力の反射及び/又は無限の伝導性を防止し、かつ、電磁反射を防止する。
【0021】
図1Bに関して、表面コーティング層が、積層グレージング101の第2面及び第4面に提供されている。さらに、コーティングされている積層グレージング100が、さらに、表面コーティング層に選択的に提供されているエッチング領域108、110を有している。したがって、表面コーティング層114は、積層グレージングの、第1面、第2面、第3面、若しくは第4面の一部であってよく、又はそれらの組み合わせであってよい。
【0022】
1つの実施態様では、第1の基材100a及び第2の基材100bのうちの1つ又は両方が、ガラス又はポリマーである。ガラスは、アニール化されていてよく、又は強化されていてよい。ポリマーが、ポリカーボネート(PC)又はポリプロピレン(PP)である。第1の基材100a及び第2の基材100bは、種々の形状であってよく、例えば、平坦、湾曲、くさび形状、又は起伏のある形状であってよい。少なくとも、第1の基材100a、第2の基材100bが、表面コーティング層でコーティングされて、UV保護及び熱保護を提供する。表面コーティング層114は、スズ酸化物、インジウム酸化物、クロム、チタン、銀、金、アルミニウム、銅、若しくはニッケル、又はそれらの組み合わせの金属層堆積物からなる。第1の基材100a、第2の基材100b、又は、第1及び第2の基材100a、100bが、少なくとも0.5mmの厚みを有してよい。第1の基材100aと第2の基材100bとの間に1又は複数の中間層100cが提供されて、積層アセンブリを形成する。その後、RFID装置102が、第1の基材100a、第2の基材100b、又は、1若しくは複数の中間層100cの間に、統合されている。RFID装置102が、エッチング領域104に対して垂直方向でそろって配置されている。このようにして、エッチング領域が、行き来するシグナルの伝達のためのゲートウェイを提供する。さらには、エッチング領域104は、作成されたパターンを通じて情報を保持することを可能にする。
【0023】
1つの実施態様では、データトランスポンダのチップ領域102bにおける第1パターン及びデータトランスポンダのアンテナ領域102aにおける第2パターンを達成するように、エッチングが、行われる。第1パターン及び第2パターンは、類似していてよく、又は異なっていてよい。チップ領域に近い第1パターンは、疎にエッチングされ、アンテナに近い第2パターンは、密にエッチングされる。複合的なパターンが、アンテナの最適な可読性を提供しつつ、チップへの保護を確保する。エッチングは、金属に基づくコーティングの10~90%の範囲の除去で選択的に行われ、それによって、30~98%の範囲の可読性が達成される。別の例では、データトランスポンダのアンテナ領域102aと垂直方向でそろって配置されている領域のみにおいて、エッチングが選択的に行われる。しかしながら、データトランスポンダのチップ領域102bに対して垂直方向でそろっている領域は、エッチングされない。
【0024】
本発明の実施態様によれば、QRコード(商標)又はバーコードが、データを有しており、データは、バッチ番号、ガラスのタイプ、コーティングの詳細、製造月、処理ステーションIDコード、ガラスの具体的な詳細、例えば、ガラスは、音響性、又はくさび、又は標準PVBのためのものであるかどうか、品質規格特定番号、ガラスモデル名、ERPデータベース参照番号、顧客の具体的な詳細、例えば、いずれの取引のためにガラスが製造されているか、M1、M2、M3、等。上述のデータは、製造されたガラスのバッチ全体に関して独自となるようにしてよく、又はさらには、バッチに関して同じままにしてもよい。
【0025】
1つの実施態様では、1又は複数の中間層100cが、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリカーボネート(PC)、音響PVB、シェードバンドPVB、熱制御PVB、エチレンビニルアセテート(EVA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、アイオノマー、熱可塑性材料、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポチエチレンビニルアセテート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリビニルフルオリド(PVf)、ポリアクリレート(PA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリウレタン(PUR)、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択されるポリマーを含有する。
中間層100cは、全体にわたって均一な厚みを有するか、又は、非均一的な厚みを有する。中間層100cは、少なくとも0.38mmの厚みを有することができる。随意に、中間層100cが、1又は複数のデータトランスポンダ、例えばNFC装置及びRFIDタグを収容するように、変形されている。
【0026】
データトランスポン装置は、プリント、堆積又はパッチングによって、積層グレージングに統合される。データトランスポンダ装置は、互いに重なり合っている複数の層を伴うスクリーンプリント又は任意の既知のプリント方法によって、第1又は第2の基材100a、100b、又は中間層100cに、直接的に印刷することができる。データトランスポンダ装置は、物理気相成長コーティング若しくは化学気相成長コーティングのいずれかによって、又は任意のコーティング技術によって、直接的に、第1又は第2の基材100a、100bにわたって堆積することもできる。いくつかの例では、データトランスポンダ装置が、別個の薄いフィルムパッチであってよく、このフィルムパッチを、随意に接着剤によって、第1若しくは第2の基材100a、100bのいずれかに、又は中間層100cに、固定することができる。随意に、データトランスポンダ装置を、積層グレージングにおける統合の間に、硬化する。データトランスポンダ装置の硬化を、赤外線又は紫外線によって行ってもよい。
【0027】
1つの実施態様では、データトランスポンダ装置が、アンテナ102a、及び、チップ102bを有している。アンテナ102a及びチップ102bは、一緒にカップリングしている(一緒に連結している)。アンテナ102aは、シグナルを受信し、送信するように設計されている。チップは、情報を処理するための集積回路を有している。チップ102bは、メモリを有する。メモリは、読み取り専用部分及び書き換え可能部分からなる。読み取り専用部分は、変更不可なデータを保持し、書き換え可能部分は、変更可能なデータを保持する。
【0028】
図1Cは、本開示の1つの実施態様に係る、保護層110を有するコーティングされている積層グレージングの断面図を描写している。1つの実施態様では、コーティングされている積層グレージングが、表面コーティング層114上のエッチング領域112を有している第1の基材100aを有している。エッチング領域112のある部分が、さらに、保護層110によってマスキングされている(覆い隠されている)。さらには、コーティングされている積層グレージングが、第1の基材100aと第2の基材100bとの間に提供されている1又は複数の中間層100cを有し、それによって、積層アセンブリを形成している。その後、RFID装置102が、中間層100cに堆積され、それにより、RFID装置102が、第1の基材100aと第2の基材100bとの間に挟持されるようになっている。RFID装置102が、位置合わせされており、それによって、エッチング領域112と垂直方向でそろうようになっており、そのようにして、チップ102bが、保護層110の下方に位置するようになっている。このようにして、保護層110が、データトランスポンダのために、機械的一体性、紫外線遮断、耐熱性、及び電気絶縁性を提供する。エッチング領域(エッチングされている領域)又は透明区域における保護層は、比較的厳しい環境においてRFIDに劣化が起こらないことを確実にする。保護層は、また、RF透過性を確保する一方で、腐食保護、摩耗保護、及びUV保護を提供する。
【0029】
本発明の1つの実施態様によれば、保護層110が、統合の間に、機械的、電気的、かつ熱的な特性の向上を提供するように、設計される。層の厚み及び種類は、用途条件、操作条件に基づいて選択される。1つの実施態様では、積層グレージングが、要求される特性に応じて、1又は複数の保護層を有する。必要な場合には、センサーに基づくシステムのいくつかに関して、例えば湿分及び/又は湿度のセンサーに基づくシステムのいくつかに関して、センサ要素がデータ取得のために露出されるようにするための切り欠きを、層に設けることができる。機械的な一体性のために用いられる保護層の例としては、パリレン、シリコーン、アクリル、エポキシ、に基づく樹脂のコーティング又は層、セラミックのコーティング又は層、セラミック及びステンレス鋼の封入体、が挙げられる。電気絶縁のために用いられる保護層の例としては、ポリマー層、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリイミド、PVB、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及び、セラミックコーティングが挙げられる。耐熱性のために用いられる保護層の例としては、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリイミド、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、及び/又は、ポリイミド、ポリスルフォン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、並びに、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、芳香族ポリマー、ポリp-フェニレン、エチレンプロピレンゴム、架橋ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びテフロン(登録商標)が挙げられる。例示的な実施態様では、保護層(例えばポリアミド)の、文献からの、引張強度の残率に関する、経年劣化の実験値が、ポリマーの性能を明確に示す。引張強度の残率は、4000hrs最大において60%~100%の範囲である。
【0030】
図2A及び
図2Bは、本発明の例示的な実施態様に係る、エッチングパターンを有するウィンドシールド200の斜視図を描写している。例示では、コーティングされている積層グレージングが、バーコードパターン202としてエッチングを有している。バーコードパターン202は、データトランスポンダの領域のアンテナ領域204において密である。エッチングは、データトランスポンダのチップ領域206において、最小限である。
【0031】
図2Bに関して、エッチングが、QRに基づくパターン204で実行されている。NFC装置102及びRFIDタグ104の作動周波数は、3キロヘルツ(KHz)~10ギガヘルツ(GHz)の範囲である。データトランスポンダ装置は、受動的であるか、又は能動的である。コーティング層がガラス表面から除去されているので、パターンは、その区域において伝導性が無効化されることを、確実にする。コーティング又は表面コーティング層の除去は、レーザーに基づく又は化学的な種々の表面エッチング方法によって行われる。アンテナは、理想的には、エッチングされている区域の背後に配置され、それにより、アンテナが、コーティング層に起因して生成される妨害及び/又はノイズを受けないようになる。このようにして、コーティングされたグレージングにおけるエッチングパターンは、データトランスポンダの機能性又は性能の点で差異が生じないことを確実にする。提供されるパターンは、また、バーコード又はQRコード(商標)における情報の保持も確実にする。
【0032】
本発明の1つの実施態様によれば、データトランスポンダ装置が、金属、伝導性ポリマー、金属グリッド、カーボンナノチューブ(CNT)層、グラフェン、透明伝導性酸化物又は伝導性酸化物からなる群から選択される材料を含む。金属は、銅、アルミニウム、銀又はプラチナからなる群から選択される。透明伝導性酸化物は、亜鉛酸化物又はインジウムスズ酸化物からなる群から選択される。伝導性ポリマーは、ポリアニリン又はポリインドールからなる群から選択される。
【0033】
データトランスポンダは、さらに、基材、アンテナ、チップ、及びオーバーレイ(上覆い)からなる層のスタック(層の積層体)を有し、基材及びオーバーレイは、ガラス又はポリマーから構成されており、ポリマーは、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリカーボネート(PC)、音響性PVB、シェードバンドPVB、熱制御PVB、エチレンビニルアセテート(EVA)、熱可塑性ポリウレタン、及び/又は、ポリビニルクロリド、及び/又は、ポリエステル、及び/又は(TPU)、アイオノマー、熱可塑性材料、ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリエチレンビニルアセテート(PET)、及び/又はポリカーボネート、及び/又はポリプロピレン、及び/又はポリエチレン、及び/又はポリウレタクリレート)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリビニルフルオリド(PVf)、ポリアクリレート(PA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリウレタン(PUR)、PDMS、及び混合PDMS金属酸化物、又はこれらの組み合わせ、からなる群から選択される。
【0034】
図2Cは、1又は複数の非統一的なパターン202を有する、ウィンドシールドのためのコーティングされている積層グレージング200を描写している。この積層グレージング100は、埋め込まれているデータトランスポンダ、例えばNFC装置及びRFIDタグ又はアンテナ、を備えている。データトランスポンダ104は、エッチング領域206の近傍に配置されており、又は、エッチング領域206に対して垂直にそろって、配置されている。1つの実施態様では、データトランスポンダ104が、グレージング100内に存在する中間層に堆積されている。別の実施態様では、データトランスポンダ104が、積層グレージングの第2面又は第3面に配置されている。さらに別の実施態様では、データトランスポンダ104が、積層グレージングの第1面又は第4面に固定されている。
【0035】
非統一的なパターン202は、QRパターン204とバーコードパターン206との組み合わせを有している。密にエッチングされているQRパターン208が、データトランスポンダのアンテナ領域の近傍に提供されている。さらには、疎にエッチングされているバーコードパターン206が、データトランスポンダのチップ領域の近傍に配置されている。これらのパターンは、RFシグナルに関して、異なる反射率が存在することを確実にする。非統一的なパターンは、金属層を通る電気伝導性の可能性がないことを、可能にする。
【0036】
図3A、3B及び3Cは、エッチングパターンの種々の例を描写している。
図3Aに関して、エッチングが、70パーセントの範囲に行われて、非統一的なパターンを形成している。
図3Bに関して、エッチングが、50パーセントの範囲に行われて、非統一的なパターンを形成している。
図3Cに関して、エッチングが、30パーセントの範囲に行われて、非統一的なパターンを形成している。必要とされるエッチングの割合(パーセント)は、種々の用途に関して要求されるRFID装置の性能に基づいて、決定される。
【0037】
図4Aは、コーティングされている積層グレージングに埋め込まれているRFID装置の性能を計測するための実験セットアップを描写している。この実験セットアップでは、コーティングされているグレージングにおけるエッチングの領域が、(
図3A、3B、及び3Cで示されたように)、種々の割合(パーセント)で異なっており、例えば、アンテナの10%、30%、50%、70%、88%となっている。これらのサンプルについて、開かれた環境において、標準的な携帯型のRFIDリーダーで、計測を行う。アンテナ強度は、標準的な強度270dBに維持され、タグ可読性を、受信信号強度インジケータ(RSSI)数に基づいて、評価した。
【0038】
図4Bは、種々のエッチングパターンで得られた可読性データを示している。エッチングパターンは、RFシグナルに関して、反射率における変化を生じる。変化は、開かれた環境で計測され、また、種々のパターンで計測される。結果をグラフ4Bに提供する。異なる反復に対応して、増加して、性能のレベルに差異があることが観察される。アンテナ近傍のグリッド様のエッチングパターンを種々の態様にし、シグナル受信に関する変化を適宜観察する。性能は、50~70パーセントのエッチングで最適である。1つの実施態様では、エッチングを、部分的に、伝導性材料の上層を事前決定された厚みまで除去することによって、行うことができる。これは、コーティング層を完全に排除するのではなく、表面コーティング層の薄層を残すエッチングである。
【0039】
図5は、埋め込まれているデータトランスポンダを有する、乗り物で用いられるコーティングされている積層グレージングを製造する方法に関するフローチャートを示す。この方法は、積層グレージングの基材の上にコーティングを均一に堆積することを含み、コーティングが、無線周波数(RF)放射に対して非伝達性である(502)。コーティングは、金属又は金属酸化物の表面コーティング層で形成されている。コーティングは、第1の基材の内側層、又は第2の基材の外側層に提供される。その後、コーティングされた基材の領域を、コーティングの一部を除去するために選択的にエッチングして、選択された領域における電気伝導性を無効化する1又は複数の非統一的なパターンを、基材上に形成する(504)。非統一的なパターンは、エッチング領域において、均一又は非均一であってよい。非統一的なパターンは、第1領域において密であり、第2領域に置いて最小限である。その後、コーティングされた基材を曲げ、それにより、コーティングされた第2面を、凹形状へと成形する(506)。保護層を堆積して、エッチング領域をマスキングする(508)。その後、データトランスポンダを、エッチングされた又は処理された領域に対して特定の角度で配置する(510)。第2の基材を、データトランスポンダを有している基材の下方に配置し、データトランスポンダは、第1の基材と第2の基材との間に挟持される(512)。サンドイッチ状になった第1の基材及び第2の基材の真空脱気を行う(514)。真空脱気の後に、サンドイッチ状になった第1の基材及び第2の基材のオートクレーブを行う。
【0040】
<利点>
部分的にエッチングされた金属コーティンググレージングに関して、これは、全体的にエッチングされたウィンドウの場合には局所区域における加熱が実行可能でないガラスを加熱する場合に、利点を提供する。部分エッチングの場合には、熱が、小さいエッチング領域を通って伝達され、金属コーティングも、部分的に加熱される。これは、カメラが取り付けられている領域に関して、非常に重要である。カメラ区域近傍の、適切に加熱されない全体的にエッチングされた部分は、困難な状況をもたらしうる。
【0041】
部分的にエッチングされたコーティングは、UV保護、高い太陽光負荷誤作動などの観点で、データトランスポンダのために、さらなる安全性を提供する。部分的なエッチングによって、電気的な連続性が無効化され、一方で、熱的な利点が、なおも有効となる。提案されている解決策は、金属コーティングに関する既存の切り欠きに対して、コスト効率が良い。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本開示のコーティングされている積層グレージングは、建物に設置することができる積層ガラスペインであり、又は、動力乗り物に設置することができるウィンドシールド、ウィンドスクリーン若しくはサンルーフ、若しくは自動車グレージングである。
【0043】
上記の基本的な構成によれば、本発明の自動車グレージングシステムは、特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、材料、寸法、構成上の細部、並びに/又は、機能性かつ/若しくは装飾的な構成における変更を受けることができる。
【0044】
上記の一般的な記載又は例示的な記載におけるすべての操作(手順)が必要とされているわけではないこと、特定の操作の一部は必要とされないことがあること、及び、記載されている操作に加えて1又は複数のさらなる操作を行うことができることに、留意する必要がある。さらには、操作が列記されている順番は、必ずしも、それらを実行する順番ではない。
【0045】
利益、他の利点、及び課題への解決策が、具体的な実施例に関して、上述されている。しかしながら、利益、利点、及び課題への解決策、並びに、何らからの利益、利点、又は解決策を生じうる又はより顕著にしうるような任意の1又は複数の特徴は、特許請求の範囲の請求項のいずれか又は全部の、重要な、要求される、又は必須の特徴であるとみなされるべきではない。
【0046】
ここに記載されている実施態様の具体例及び描写は、種々の実施態様の構造の一般的な理解を提供することを意図している。具体例及び描写は、ここに記載されている構造又は方法を用いる装置及びシステムの全ての要素及び特徴の排他的かつ包括的な記載としての役割を有することは意図されていない。明確さのために別個の実施態様に関連してここで記載された特定の特徴は、組み合わせにおいて、単一の実施態様においても提供されうる。逆に、簡便さのために単一の実施態様に関連して記載された種々の特徴は、別個に、又はサブコンビネーションにおいて、提供されてもよい。さらに、範囲で示された値への言及は、その範囲内のすべての値を含む。他の多くの実施態様が、この明細書を読んだ後でのみ、当業者に明らかとなりうる。他の実施態様を使用してもよく、また、他の実施態様が本開示から派生することがあり、そのため、構造的な置換、論理的な置換、又は他の変更を、本開示の範囲から逸脱することなく、行うことができる。したがって、本開示は、限定的なものではなく、説明的なものとみなされる必要がある。
【0047】
図面と組み合わせた記載は、ここで記載されている教示の理解を助けるために提供されており、教示の記載を助けるために提供されており、教示の範囲又は適用性における限定として解釈されるべきではない。しかしながら、他の教示を、本願において用いることは、明らかに可能である。
【0048】
ここで用いられているように、用語「含む」、「含有する」、「有する」、「有している」、「備える」、又はこれらの任意の他のバリエーションは、非排他的な包含を意図している。例えば、一連の特徴を有する方法、物品、又は装置は、必ずしも、これらの特徴のみに限定されず、明示的に列挙されていない他の特徴、又は、そのような方法、物品、又は装置に内在的な他の特徴を、有することができる。さらに、別段の明示的な表示がない限り、「又は(若しくは)」は、包含的な「又は」に言及しており、排他的な「又は」に言及していない。例えば、A又はBという条件は、下記のいずれか1つを満たす:Aが真であり(又は存在し)Bが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在せず)Bが真である(又は存在する)、A及びBがともに真である(又は存在する)。
【0049】
また、「a」又は「an」の使用は、ここで記載されている要素及び構成成分を記載するために用いられている。これは、単に、便宜性のために行われており、本発明の範囲の一般的な意義を与えるために行われている。別段の意味であることが明らかでない限り、この記載は、1又は少なくとも1を含むものとして読まれるべきであり、単数は、複数を含み、逆もまたそうである。例えば、単一の物がここで記載されている場合、単一の物の代わりに、1超の物を用いることができる。同様に、1超の物がここで記載されている場合に、単一の物を、この1超の物と置き換えることができる。
【0050】
別段の定義がない限り、ここで用いられている科学技術的な用語は、本発明が属する分野における当業者によって慣用的に理解されるのと同じ意味を有している。材料、方法、及び例示は、説明的なものに過ぎず、制限的であることを意図していない。特定の材料及び方法操作に関する一定の詳細が記載されていない場合、そのような詳細は、慣用的なアプローチを含んでよく、慣用的なアプローチは、製造技術に関する参考文献及び他の情報源で見出すことができる。
【0051】
本開示の側面が、特に、上記の実施態様を参照して示されかつ記載された一方で、当業者は、開示されたものの精神及び範囲から逸脱することなく、開示された機械、システム、及び方法の修正によって、種々の追加的な実施態様を想定することができることを、理解するであろう。そのような実施態様は、請求項及びその任意の等価物に基づいて決定されるとおりの、本開示の範囲内に属するものとして、理解されるべきである。
【符号の説明】
【0052】
100 積層グレージング
100a 第1の基材
100b 第2の基材
100c 中間層
102 RFIDタグ
102a RFIDアンテナ
102b RFIDチップ
112 UV保護層
116 表面コーティング層
104、106、108、110 エッチング領域(エッチングされた領域)
【国際調査報告】