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特表2022-521672単分子定量検出方法及び検出システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-12
(54)【発明の名称】単分子定量検出方法及び検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20220405BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20220405BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20220405BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G01N33/543 575
G01N21/64 F
C12Q1/6813 Z
C12M1/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544827
(86)(22)【出願日】2020-01-03
(85)【翻訳文提出日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 CN2020070283
(87)【国際公開番号】W WO2020156029
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】201910091631.1
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】521338994
【氏名又は名称】スチョウ アストラバイオ テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180699
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 渓
(72)【発明者】
【氏名】グァン,ヂーチャオ
【テーマコード(参考)】
2G043
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043AA03
2G043BA16
2G043CA03
2G043DA01
2G043EA01
2G043FA01
2G043GA08
2G043GB21
2G043HA01
2G043HA09
2G043JA02
2G043JA03
2G043KA09
2G043LA03
2G043MA04
2G043NA01
2G043NA11
4B029AA23
4B029BB20
4B029FA12
4B063QA01
4B063QQ01
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR71
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
タンパク質、小分子、核酸分子の単分子レベルの定量検出に用いることができる単分子定量検出方法及び検出システムを提供する。本願発明は、光学的特性を有するインサイチュシグナル増強ナノ粒子を用い、化学修飾技術および分子認識技術により、被検分子をマーキングし、それにより、光学イメージング装置によって、単分子信号を捕捉・認識することができる。インサイチュシグナル増強ナノ粒子の個数を統計することにより、超高感度で被検分子の定量検出を実現できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) 標的分子に結合可能な捕捉抗体を固相担体に固定し、捕捉抗体を標的分子の第1部位に結合させてサンプル中の標的分子を捕捉する工程、
(2) 標的分子の第2部位に結合する検出抗体を添加し、次いで、検出抗体に直接的または間接的に結合可能なインサイチュシグナル増強ナノ粒子を添加する工程、又は
検出抗体をインサイチュシグナル増強ナノ粒子に結合させて複合体を形成してから、該複合体を添加する工程、
(3) 光学イメージング装置を用いて、前記インサイチュシグナル増強ナノ粒子によって放出された光信号を検出する工程、及び、
(4) インサイチュシグナル増強ナノ粒子の個数をカウントし、さらに計算してサンプル中の標的分子の濃度情報を得る工程
を含む、単分子定量的検出分析方法であって、
工程(2)において、前記インサイチュシグナル増強ナノ粒子は、発光材料及びナノ粒子担体を含み、且つ180~480nmの粒径を有する、単分子定量的検出分析方法。
【請求項2】
(1) 検出抗体をサンプル中の標的分子の第2部位に結合させ、次いで、前記検出抗体に直接的又は間接的に結合できるインサイチュシグナル増強ナノ粒子を添加する工程、又は
インサイチュシグナル増強ナノ粒子を検出抗体に結合させて複合体を形成してから、該複合体をサンプルに添加して、該複合体をサンプル中の標的分子の第2部位に結合させる工程、
(2) 標的分子に結合可能な捕捉抗体を固相担体に固定し、次いで、前記捕捉抗体を前記標的分子の第1部位に結合させて標的分子を捕捉する工程、
(3) 光学イメージング装置を用いて、前記インサイチュシグナル増強ナノ粒子から放出された光信号を検出する工程、及び、
(4) インサイチュシグナル増強ナノ粒子の個数をカウントし、さらに計算してサンプル中の標的分子の濃度情報を得る工程
を含む、単分子定量的検出分析方法であって、
工程(1)において、前記インサイチュシグナル増強ナノ粒子は、発光材料及びナノ粒子担体を含み、且つ180~480nmの粒径を有する、単分子定量的検出分析方法。
【請求項3】
前記インサイチュシグナル増強ナノ粒子が、200~450nm、好ましくは200~350nm、さらに好ましくは220~350nmの粒径を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の単分子定量的検出分析方法。
【請求項4】
前記標的分子は、タンパク質、多糖類、または生物活性を有する小分子を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の単分子定量的検出分析方法。
【請求項5】
前記工程(4)において、以下の方法を用いて、前記サンプル中の前記標的分子の濃度を算出することを特徴とし、
前記方法において、生成された画像中のインサイチュシグナル増強ナノ粒子によって形成された輝点の個数を直接的に分析・統計し、輝点の個数をサンプル中の標的分子の濃度情報に直接的または間接的に換算し;又は
生成された画像中のインサイチュシグナル増強ナノ粒子によって形成された輝点の面積を統計・積分し、積分結果を各インサイチュシグナル増強ナノ粒子によって形成された輝点の面積を平均化した平均面積で割ることで、インサイチュシグナル増強ナノ粒子の近似個数に換算し、さらに、その数値を標的分子のサンプルにおける濃度情報に換算する、請求項1または2に記載の単分子定量的検出分析方法。
【請求項6】
前記固相担体は、磁気ビーズ、マルチウェルプレート、遠心チューブ、チップ、マイクロスケール微小球、ナノスケール微小球などであり、前記インサイチュシグナル増強ナノ粒子における発光材料は、フルオレセインまたは量子ドットであり、前記インサイチュシグナル増強ナノ粒子におけるナノ粒子担体は、シリカ、ポリアクリルアミド、ポリスチレンまたはポリメチルメタクリレートであり、前記工程(4)において、単分子計数モードと蛍光強度積分モードとを併用することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の単分子定量的検出分析方法。
【請求項7】
(1) 標的分子に結合可能な捕捉プローブを固相担体に固定し、前記捕捉プローブは、標的分子の第1配列と相補的であり、該捕捉プローブによってサンプル中の標的分子を捕捉する工程、
(2) 標的分子の第2配列に相補し得る検出プローブを添加して、捕捉プローブ-標的分子-検出プローブの3本鎖ハイブリッドを形成し、次いで、検出プローブに直接的または間接的に結合可能なインサイチュシグナル増強ナノ粒子を添加する工程、又は
検出プローブをインサイチュシグナル増強ナノ粒子に結合させて複合体を形成してから、該複合体を添加する工程、
(3) 光学イメージング装置を用いて、前記インサイチュシグナル増強ナノ粒子によって放出された光信号を検出する工程、及び、
(4) インサイチュシグナル増強ナノ粒子の個数をカウントし、さらに計算してサンプル中の標的分子の濃度情報を得る工程、
を含む、単分子定量的検出分析方法であって、
工程(2)において、前記インサイチュシグナル増強ナノ粒子は、発光材料及びナノ粒子担体を含み、且つ180~480nmの粒径を有する、単分子定量的検出分析方法。
【請求項8】
(1) 検出プローブをサンプル中の標的分子の第2配列に相補的にし、次いで、検出プローブに直接的または間接的に結合可能なインサイチュシグナル増強ナノ粒子を添加する工程、又は
インサイチュシグナル増強ナノ粒子を検出プローブに結合させて複合体を形成してから、該複合体をサンプル中の標的分子の第2配列に相補的にする工程、
(2) 標的分子に結合可能な捕捉プローブを固相担体に固定し、次いで、前記捕捉プローブを前記標的分子の第1配列に相補的にして、該捕捉プローブによって標的分子を捕捉する工程、
(3) 光学イメージング装置を用いて、前記インサイチュシグナル増強粒子から放出された光信号を検出する工程、
(4) インサイチュシグナル増強粒子の個数をカウントし、さらに計算してサンプル中の標的分子の濃度情報を得る工程、
を含む、単分子定量的検出分析方法であって、
工程(1)において、前記インサイチュシグナル増強ナノ粒子は、発光材料及びナノ粒子担体を含み、且つ180~480nmの粒径を有する、単分子定量的検出分析方法。
【請求項9】
前記インサイチュシグナル増強ナノ粒子が、200~450nm、好ましくは200~350nm、さらに好ましくは220~350nmの粒径を有することを特徴とする、請求項7または8に記載の単分子定量的検出分析方法。
【請求項10】
前記標的分子は、DNAまたはRNAを含むことを特徴とする、請求項7または8に記載の単分子定量的検出分析方法。
【請求項11】
前記工程(4)において、以下の方法でサンプル中の標的分子の濃度を算出することを特徴とし、
前記方法において、生成された画像中のインサイチュシグナル増強ナノ粒子によって形成された輝点の個数を直接的に分析・統計し、輝点の個数をサンプル中の標的分子の濃度情報に直接的または間接的に換算し;又は
生成された画像中のインサイチュシグ増強ナルナノ粒子によって形成された輝点の面積を統計・積分し、積分結果を各インサイチュシグナル増強ナノ粒子によって形成された輝点の面積を平均化した平均面積で割ることで、インサイチュシグナル増強ナノ粒子の近似個数に換算し、さらに、その数値を標的分子のサンプルにおける濃度情報に換算する、請求項7または8に記載の単分子定量的検出分析方法。
【請求項12】
(1) 検出試薬と、
(2) 励起光源と光信号収集ユニットとを含む光学イメージング装置と、
を含む、単分子定量的検出分析システムであって、
前記検出試薬は、(a)標的分子の第1部位に結合することでサンプル中の標的分子を捕捉することができる捕捉抗体と、(b)標的分子の第2部位に結合可能であり、かつインサイチュシグナル増強ナノ粒子に結合可能である検出抗体と、(c) 発光材料およびナノ粒子担体を含み、且つ180~480nmの粒径を有するインサイチュシグナル増強ナノ粒子とを含み、又は
前記検出試薬は、(a)標的分子の第1配列に結合することでサンプル中の標的分子を捕捉することができる捕捉プローブと、(b)標的分子の第2配列に結合して捕捉プローブ-標的分子-検出プローブの3本鎖ハイブリッドを形成し得る検出プローブと、(c)検出プローブに結合可能であり、発光材料およびナノ粒子担体を含み、且つ180~480nmの粒径を有するインサイチュシグナル増強ナノ粒子とを含む、
単分子定量的検出分析システム。
【請求項13】
前記インサイチュシグナル増強ナノ粒子が、200~450nm、好ましくは200~350nm、さらに好ましくは220~350nmの粒径を有する、請求項12に記載の単分子定量的検出分析システム。
【請求項14】
前記光学イメージング装置は、受光素子によって捕捉された光信号を受信し、デジタル信号に変換するためのデータ収集モジュールと、デジタル信号の変換、光学画像の形成および処理のためのデータ処理モジュールと、を含むデータ処理ユニットをさらに備えることを特徴とする、請求項12に記載の単分子定量的検出分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、タンパク質、核酸、小分子の超高感度定量検出に用いることができる、単分子計数による定量検出方法及び検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトにおけるバイオマーカー、特に重篤な疾患に関連するバイオマーカーの量は、様々な生物学的過程と密接に関係している。疾患の発症初期には、これらのバイオマーカーの濃度が比較的低いので、従来の方法では効率的に精度の高い検出分析を達成することが困難である。早期にDNA、RNA、酵素などのバイオマーカーを精度よく検出するためには、超高感度の定量検出手段が必要である。
【0003】
従来の検出方法、例えばタンパク質検出用の化学発光法、酵素免疫法、蛍光免疫法、及び核酸検出用の蛍光定量PCR法は、溶液全体としての光信号に基づいて検出を行い、得られた光強度シグナルを検量線と対比することにより、定量検出を実現している。しかし、検出器にはバックグラウンド信号があるため、サンプル中の標的分子の濃度がある程度低い場合には、溶液全体の光強度信号がバックグラウンド信号により埋もれてしまい、低値区間での偏差が大きくなり、正確な定量分析が困難となる。したがって、これらの従来の検出方法では、原理上の制約により、高感度の検出分析を実現することが困難であった。
【0004】
単分子検出またはデジタル単分子検出は、従来の検出方法とは全く異なる検出原理に基づくものである。すなわち、被検分子(タンパク質、小分子または核酸分子)に酵素分子や蛍光染料分子を直接的に標識することにより、または被検分子を増幅させることにより、単分子レベルの信号増幅または信号標識を実現し、次いで検出デバイスを用いて信号増幅後の単分子信号を読み取り、被検分子の個数を直接カウントし、最終的に被検分子の数を検出し、検量線校正により単分子レベルの定量検出を実現する。
【0005】
現在報告されている単分子レベルの定量検出には、主に以下の2種類がある:
(1) 単分子標識技術により、被検分子に蛍光分子または光シグナル、電気シグナル、磁気シグナル等を有するナノ材料を直接的にマーキングし、その後、極めて高精度な光、電気、磁気検出装置(例えば、単分子蛍光応答を実現できる全反射顕微鏡、近接場光学顕微鏡、エアリーディスクフォーカス検出装置(特許文献1に記載の、米国Singulex社製SMC技術で用いられている光学装置)、単ナノ粒子検出を実現できる電子顕微鏡等)を用いて検出する。これらの検出装置は、数個の蛍光分子信号または単一の蛍光分子信号を識別する必要があるため、装置の精度に対する要求が非常に高く、装置コストが非常に高くなり、これらの技術の科学研究分野および医療診断分野への適用を著しく阻害する。
【0006】
(2) 信号増幅方式で、極めて微弱な単分子信号を検出されやすいレベルまで増幅する。現在、デジタルPCR及びデジタル単分子酵素触媒技術が一般的である。デジタルPCRでは、検出すべき核酸分子を、ポリメラーゼ連鎖反応によって指数関数的に直接増幅し、蛍光プローブによってシグナル増幅を行う。デジタル化単分子酵素触媒技術では、被検分子に高い触媒効率を有する酵素または触媒基質をマーキングし、蛍光特性を有する生成物分子を生成し、シグナル増幅を達成する。一般に、信号増幅法は、検出装置に対する要求が低く、コストが比較的低いので、単分子蛍光検出より、応用範囲が広い。しかし、デジタルPCR又はデジタル単分子酵素触媒技術のいずれにおいても、生成物からのシグナルが低い。検出の信号対雑音比を高めるためには、通常、体積の極めて小さい(ナノリットルからピコリットル程度)液滴に被検分子を分散させる必要がある(特許文献2参照)。このため、操作が煩雑であり、操作経験に対する要求が高く、高精度な液滴生成補助装置が必要であった。
【0007】
さらに、現在、核酸への単分子検出技術は、主に単分子PCR技術により急速な開発段階にあるが、核酸と比較して、タンパク質は構造が複雑であり、複製増幅することが困難である。PCRの指数関数的なシグナル増幅方法の欠如のため、従来のタンパク質検出方法の感度は十分に高くなく、タンパク質の単分子検出技術は、実質的に空白状態にあり、通常の蛍光顕微鏡を用いたタンパク質の単分子検出を実現する技術については言うまでもない。
【0008】
このことから、従来の単分子検出技術は、検出系が複雑であり、検出機器に対する精度の要求が極めて高く、検出試薬の安定性が悪く、補助消費材に対する精度の要求が高く、コストの制御が難しく、タンパク質検出に良好に適用できないなどの多くの問題点を有している。これらの問題は、科学研究及び医療診断市場における単分子検出技術の適用を大きく阻害する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】CN101438146A
【特許文献2】CN102884431A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、簡単な単分子信号標識で単分子検出を達成でき、光学デバイスに対する要求が低い、新規な単分子検出方法及び単分子検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本願発明者は、鋭意研究を重ねた結果、イメージングによる高感度かつ低コストの新規な単分子定量検出方法及び単分子検出システムを見出した。
【0012】
本願発明の一つの態様は以下の通りである。
(1) 標的分子に結合可能な捕捉抗体を固相担体に固定し、捕捉抗体を標的分子の第1部位に結合させてサンプル中の標的分子を捕捉する工程、
(2) 標的分子の第2部位に結合する検出抗体を添加し、次いで、検出抗体に直接的または間接的に結合可能なインサイチュシグナル増強ナノ粒子を添加する工程、又は
検出抗体をインサイチュシグナル増強ナノ粒子に結合させて複合体を形成してから、該複合体を添加する工程、
(3) 光学イメージング装置を用いて、前記インサイチュシグナル増強ナノ粒子によって放出された光信号を検出する工程、及び、
(4) インサイチュシグナル増強ナノ粒子の個数をカウントし、さらに計算してサンプル中の標的分子の濃度情報を得る工程
を含む、単分子定量的検出分析方法であって、
工程(2)において、インサイチュシグナル増強ナノ粒子は、発光材料及びナノ粒子担体を含み、且つ180~480nmの粒径を有する、単分子定量的検出分析方法を提供している。
【0013】
好ましくは、インサイチュシグナル増強ナノ粒子は、200~450nmの粒径を有する。
【0014】
好ましくは、インサイチュシグナル増強ナノ粒子は、200~350nmの粒径を有する。
【0015】
更に好ましくは、インサイチュシグナル増強ナノ粒子は、220~350nmの粒径を有し、より好ましくは、220nm以上330nm未満の粒径を有し、最も好ましくは、220nm以上300nm未満の粒径を有する。
【0016】
本願発明の対象としての標的分子は、タンパク質、多糖、または生物活性を有する小分子を含む。
【発明の効果】
【0017】
本願発明の単分子定量検出方法は、タンパク質や核酸の検出、特にタンパク質の検出に、超高感度かつ極めて低いコストで適用できる。タンパク質の検出に使用される場合、本願発明者らは、驚くべきことに、いくつかの実施形態において、1 pg/mLの感度を達することができ、他の実施形態において、100 fg/mLの感度を達することができ、いくつかの実施形態において、10 fg/mL(1 fg/mLまで)の感度を達することができる。また、本願発明は、高い検出感度を確保した上で、短い時間(インキュベーション時間が数分間)で検出を実現し、臨床上の検出時間を短縮する。
【0018】
本願発明の単分子定量的検出分析システムは、特定の検出系(特に、特定のインサイチュシグナル増強ナノ粒子を使用して、被検分子を標識すること)に基づいて、簡単な方法で超高感度検出を達成する。本願発明の単分子定量的検出分析システムは、検出感度において従来法より顕著な技術的効果(2~4桁の向上)を得られる。
【0019】
本願発明は、従来の単分子検出技術に比べて、タンパク質分子検出と核酸分子検出の間の障壁を破り、タンパク質分子と核酸分子を1台の装置で検出でき、超高感度で特にタンパク質検出に使用できる。また、特定の検出系(例えば、特定のインサイチュシグナル増強ナノ粒子)の使用により、前記システムは、全反射顕微鏡などの高価な装置を必要とせず、CCDまたはCMOSの低コストの感光素子のみにより、インサイチュで被検分子のイメージングを実現することができ、単分子検出の困難さ、工程の煩雑さ、及び装置の精密さに対する要求を大幅に低減し、低コストで単分子検出技術を科学研究分野及び生物医学的検出分野に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本願発明のタンパク質検出方法の模式図である。
図2図2は、本願発明の核酸検出方法の模式図である。
図3図3は、実施例1で得られた検量線(縦軸、すなわちCPN (copy number)は単分子信号数である)である。
図4図4は、比較例1で得られた検量線である。
図5図5は、比較例2で得られた検量線である。
図6図6は、実施例2で得られた検量線である。
図7図7は、実施例11で得られた検量線である。
図8図8は、実施例14で得られた検量線である。
図9図9は、実施例15で得られた検量線である。
図10図10は、実施例16で得られた検量線である。
図11図11は、実施例17で得られた検量線である。
図12図12は、実施例18で得られた検量線である。
図13図13は、実施例18における臨床検体との比較結果である。
図14図14は、実施例19で得られた検量線である。
図15図15は、実施例19における臨床検体との比較結果である。
図16図16は、実施例20で得られた検量線である。
図17図17は、実施例22で得られた検量線である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
本願発明の第1実施形態は、以下の通りである。
【0022】
(1) 標的分子に結合可能な捕捉抗体を固相担体に固定し、捕捉抗体を標的分子の第1部位に結合させてサンプル中の標的分子を捕捉する工程、
(2) 標的分子の第2部位に結合する検出抗体を添加し、次いで、検出抗体に直接的または間接的に結合可能なインサイチュシグナル増強ナノ粒子を添加する工程、又は
検出抗体をインサイチュシグナル増強ナノ粒子に結合させて複合体を形成してから、該複合体を添加する工程、
(3) 光学イメージング装置を用いて、前記インサイチュシグナル増強ナノ粒子によって放出された光信号を検出する工程、及び、
(4) インサイチュシグナル増強ナノ粒子の個数をカウントし、さらに計算してサンプル中の標的分子の濃度情報を得る工程
を含む、単分子定量的検出分析方法であって、
工程(2)において、インサイチュシグナル増強ナノ粒子は、発光材料及びナノ粒子担体を含み、且つ180~480nmの粒径を有する、単分子定量的検出分析方法を提供した。
【0023】
本願発明において、前記固相担体は、検体と試薬との分離および洗浄に用いられる。前記捕捉抗体は、物理吸着又は化学修飾により固相担体表面に固定化され、標的分子(以下、被検分子ともいう)の一つの結合部位に結合してサンプルから分離することができる。
【0024】
前記検出抗体は、被検分子の別の結合部位に結合することができる。「インサイチュシグナル増強ナノ粒子が検出抗体に直接的に結合する」とは、検出抗体が物理吸着又は化学修飾によって、インサイチュシグナル増強ナノ粒子に直接吸着又は結合され、被検分子に対するインサイチュシグナル増強ナノ粒子の機能的修飾(認識及び標識)を達成することを意味する。「インサイチュシグナル増強ナノ粒子が検出抗体に間接的に結合する」とは、抗検出抗体(すなわち二次抗体)又はビオチン-ストレプトアビジン系による結合によって、インサイチュシグナル増強ナノ粒子を検出抗体に特異的に標識することを意味する。
【0025】
標的分子は、タンパク質、多糖、または生物活性を有する小分子、および小分子とタンパク質との複合体を含む。具体的には、cTnI抗原、IL-6抗原、PCT (プロカルシトニン)抗原、Sema4D (シグナル素4D)抗原、Nt-proBNP (脳ナチュラルペプチドアミノ末端前駆体タンパク質)抗原、腫瘍マーカー、ビタミンD、ビタミンB、葉酸、ビタミンD-BSA複合体、葉酸-BSA複合体、細菌、ウイルス等が挙げられる。
【0026】
前記固相担体は、形態によって、磁気ビーズ、マルチウェルプレート、遠心チューブ、チップ、マイクロスケール微小球、ナノスケール微小球などであってもよく、材質によって、ポリマー、シリカ、シリコン又はこれらの複合体などであってもよく、機能によって、磁性固相担体、非磁性固相担体であってもよい。これらの固相担体の中でも、特に磁気ビーズが好ましい。従来、磁気ビーズをタンパク質の単分子定量検出に適用する場合、磁気ビーズが溶液で懸濁状態にあり定量検出が困難であり、また、磁気ビーズに方向性があるため、イメージングの際に輝度に差異がある、といった問題があった。しかしながら、驚くべきことに、本願発明者は、タンパク質の単分子定量検出の場合、担体として磁気ビーズを用いた方が、ガラスチップよりも特に優れた感度が得られ、検出効率も大幅に向上できることを見出した。
【0027】
固相担体の表面は、抗体と共有結合により結合できる反応性官能基、例えば、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、スクシンイミドエステル基、スルホニル(例えばトシル)、およびそれらの誘導基のうちの一種又は複数種で修飾される。
【0028】
捕捉抗体は、抗体特異的特性によって、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の一方または両方であってもよい。捕捉抗体は、その由来によって、マウス抗体、ウサギ抗体、ヒツジ抗体、アルパカ抗体の一種又は複数種であってもよい。具体的には、Hytest 19C7、Hytest 20C6、Hytest 16A11、Medix 2703、Meridian M86101M、Biospacific A45160、Biospacific G-131-Cなどが挙げられる。
【0029】
検出抗体は、抗体特異的特性によって、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体のいずれか一方または両方であってもよい。検出抗体は、その由来によって、マウス抗体、ウサギ抗体、ヒツジ抗体、アルパカ抗体の一種又は複数種であってもよい。具体的には、Hytest 16A11、Medix 2704、Meridian M86201M、Biospacific A45502などが挙げられる。
【0030】
抗検出抗体は、検出抗体のその由来によって、抗マウス抗体、抗ウサギ抗体、抗ヒツジ抗体、抗ラマ抗体の一種又は複数種であってもよい。抗検出抗体は、その由来によって、マウス由来の二次抗体、ウサギ由来の二次抗体、ヒツジ由来の二次抗体、アルパカ由来の二次抗体のうちの一種又は複数種であってもよい。
【0031】
インサイチュシグナル増強ナノ粒子とは、インサイチュ(in-situ)で蛍光シグナルを、通常の光学イメージング装置によって検出可能なレベルまで増強する材料を指し、発光材料及びナノ粒子担体の両方を含有しなければならない。
【0032】
インサイチュシグナル増強ナノ粒子において、ナノ粒子担体は非常に重要な役割を果たす。例えば、ナノ粒子担体は、多くの発光材料と結合して、発光信号を補強することができ;官能化修飾のため部位を提供し、多くの抗体と結合して反応活性を向上させることができ;通常の蛍光顕微鏡による単分子検出を可能にする。ナノ粒子担体がなければ単分子検出を達成することができない。ナノ粒子担体は、材料によって、シリカ、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、デキストラン、アガロース、無機金属化合物のうちの一種又は複数種であってもよい。前記ナノ粒子担体は、構造によって、中空構造、コアシェル構造、多孔性構造、合金構造、ヒドロゲル構造のうちの一種又は複数種であってもよい。これらの中でも、発光材料を均一に分布させ、発光材料の輝度を高くする観点から、ナノ粒子担体は、シリカ、ポリアクリルアミド、ポリスチレンまたはデキストランであることが好ましく、ポリアクリルアミドが特に好ましい。
【0033】
インサイチュシグナル増強ナノ粒子における発光材料も単分子検出を達成するために必要であり、ナノ粒子担体のみでは感度が非常に低いである。発光材料は、蛍光染料分子、希土類元素、希土類キレート、蛍光タンパク質、量子ドット、アップコンバートナノ粒子のうちの一種又は複数種であってもよい。発光材料としては、フルオレセインイソチオシアネートなどのフルオレセイン類、ローダミン緑、ローダミンBなどのローダミン類、クマリン類、CdS、CdSe、CdTe、ZnSeなどの量子ドット類、Eu、Ceなどの希土類元素、及びこれらの錯体などが好ましい。発光材料は、共有結合、キレート作用、空間被覆、疎水作用、静電吸着作用のうちの一種又は複数種によって、ナノ粒子担体の表面または内部に吸着(または被覆)する。なお、発光材料は、ナノ粒子担体の内部に均一に内包されていることが、光学画像の認識に有利であり、感度を向上させる観点から好ましい。
【0034】
本願発明において、インサイチュ信号増強ナノ粒子は、蛍光染料分子(例えばフルオレセイン)をシリカで被覆した蛍光粒子、蛍光染料分子(例えばフルオレセイン)をポリアクリルアミドで被覆した蛍光粒子、量子ドットをポリスチレンで被覆した蛍光粒子、希土類元素や希土類キレート化合物をポリスチレンで被覆した蛍光粒子、蛍光タンパク質をデキストランで被覆した蛍光粒子、量子ドットを架橋アガロースで被覆した蛍光粒子等が好ましい。
【0035】
なお、上記発光材料と上記ナノ粒子担体は任意に組み合わせてもよい。
【0036】
本願発明において、インサイチュシグナル増強ナノ粒子は、抗体、DNAまたはRNAと共有結合により結合できる反応性官能基で表面修飾されており、該反応性官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、チオール、アルケニル、アルキニル、スクシンイミドエステル基およびそれらの誘導基のうちの1つ以上を含む。
【0037】
本願発明において、インサイチュシグナル増強ナノ粒子の表面は、一定長さの連結アームで修飾されてもよく、前記連結アームは、多炭素直鎖、多炭素分枝鎖、ポリマー鎖、ペプチド鎖、タンパク質、核酸分子を含む。連結アームの長さは、1~100nmであることが好ましく、2~20nmであることがさらに好ましく、5~10nmであることが最も好ましい。
【0038】
本願発明において、インサイチュシグナル増強ナノ粒子の粒径は、180~480nmの範囲内にある必要があり、例えば、190nm、200nm、210nm、220nm、230nm、240nm、250nm、260nm、270nm、280nm、290nm、300nm、310nm、320nm、330nm、340nm、350nm、360nm、370nm、380nm、390nm、400nm、410nm、420nm、430nm、440nm、450nm、460nm、470nmである。本出願の発明者らは、インサイチュ信号増強ナノ粒子の粒径が180nm未満(例えば150nm)である場合、通常の光学イメージング装置では、いかなる信号を検出することもできず、粒径が480nmを超える(例えば500nm)場合、検出感度が非常に低く、臨床的に要求される感度を達成することが困難であることを見出した。ここで、インサイチュシグナル増強ナノ粒子の粒径は、好ましくは200~450nmであり、さらに好ましくは200~350nmであり、より好ましくは220~350nmであり、より好ましくは220nm以上330nm未満であり、最も好ましくは220nm以上300nm未満である。なお、前記粒子径は、一次粒子径であってもよく、二次粒子径であってもよい。二次粒子径とは、一次粒子と二次粒子とが凝集したものの粒子径をいう。
【0039】
インサイチュシグナル増強ナノ粒子の適切な粒径は、ナノ粒子担体に対する蛍光材料の質量比、ナノ粒子担体の種類、蛍光材料の種類、溶媒の種類及び量などのパラメータを調節することによって得る。
【0040】
本願発明の工程(1)において、サンプルと捕捉抗体のインキュベーション温度は10~50℃、好ましくは20~40℃、特に好ましくは37℃であり、インキュベーション時間は1分~60分、好ましくは3分~30分、特に好ましくは10分~30分である。本願発明の工程(2)において、検出抗体(又は検出抗体が結合されたインサイチュシグナル増強ナノ粒子)とサンプルとのインキュベーション温度は、10~50℃、好ましくは20~40℃、特に好ましくは37℃であり、インキュベーション時間は、1分~60分、好ましくは2分~30分、特に好ましくは15分~25分である。
【0041】
本願発明において、前記光学イメージング装置は、励起光源、対物レンズ、フィルター、受光素子、データ収集モジュール、データ処理モジュール、ダイクロイックミラー(正置顕微鏡であれば、ダイクロイックミラーはなくてもよい)を主に備える。前記励起光源は、反応後のサンプルを励起して光信号を発する光放射装置である。対物レンズは、サンプルの信号取得及び増幅のために使用される。ダイクロイックミラーは、励起光路の反射とサンプルからの光信号の取得に用いられる。フィルターは、励起光帯域のフィルタリング及びサンプルからの光信号のフィルタリングのために使用される。前記受光素子は、サンプルからの光信号の取得に用いられる。データ収集モジュールは、受光素子によって捕捉された光信号を受信し、デジタル信号に変換するように構成される。データ処理モジュールは、デジタル信号の変換、光学画像の形成および処理のために使用される。
【0042】
本装置のいくつかの実施形態では、励起光源は、気体レーザー、固体レーザー、半導体レーザー、液体レーザー、自由電子レーザーのうちの一種又は複数種を含む。本装置のいくつかの実施形態では、対物レンズは、倍率によって、1倍、2倍、4倍、5倍、10倍、20倍、40倍、50倍、100倍の一種又は複数種を含む。前記対物レンズは、像面湾曲補正によって、平面対物レンズ又は曲面対物レンズを含む。本装置のいくつかの実施形態では、前記受光素子は、CCD (Charge Coupled Device)またはCMOS (Complementary Metal-Oxide Semiconductor)の一方または両方を含む。
【0043】
上述のように、本願発明は、特定の検出系を採用することで、光学イメージング装置に対する要求が低く、光学イメージング装置は通常の光学イメージング装置(すなわち、光学回折限界を突破していない光学イメージング装置)でよく、全反射蛍光顕微鏡、落射蛍光顕微鏡、走査型近接場光学顕微鏡、共焦点蛍光顕微鏡などの高価な、光学回折限界を突破したイメージング装置を必要としない。
【0044】
本願発明において、標的分子濃度の算出方式には、単分子計数モードと蛍光強度積分モードという2種類がある。ここで、前記単分子計数モードは、生成された画像中のインサイチュシグナル増強ナノ粒子によって形成された輝点の個数を直接的に分析・統計し、輝点の個数に基づいて標的分子のサンプルにおける濃度情報に直接的または間接的に換算する。「標的分子のサンプルにおける濃度情報に直接的に換算する」とは、絶対的に定量すること、すなわち、検量線校正をすることなく濃度情報に換算することを意味する。「間接的に標的分子のサンプルにおける濃度情報に換算する」とは、輝点の個数と検量線(または校正パラメータ)により濃度情報に換算することを意味する。前記蛍光強度積分モードは、生成された画像における、インサイチュシグナル増強ナノ粒子により形成された輝点の面積を統計・積分し、積分結果を特定パラメータ、例えば、各インサイチュシグナル増強ナノ粒子によって形成された輝点の面積を平均化した平均面積や、輝点面積に相関する変数(例えば、べき乗、二乗、多項式など)で割ることで、インサイチュシグナル増強ナノ粒子の近似個数に換算し、さらに、その数値を標的分子のサンプルにおける濃度情報に換算する。ここで、平均輝点面積は、1分子あたりの輝点面積を比較的低濃度で統計し平均することにより得られる。より大きな検出ダイナミックレンジを得る観点からは、低濃度域では単分子計数モード、高濃度域では蛍光強度積分モードを採用し、該二種類のモードで描かれた検量線を合わせて完全な検量線を作成することが重要である。なお、上記低濃度と高濃度との境界線は、一般的には、1つの磁気ビーズ表面に複数の被検分子が結合している場合の濃度であるが、検量線に基づくフィッティング結果によって、1つの磁気ビーズ表面に平均で0.5個の被検分子が結合している場合の濃度や、1つの磁気ビーズ表面に2つの被検分子が結合している場合の濃度であることが好ましい。
【0045】
<第2実施形態>
本願発明の第2実施形態は、以下の通りである。
【0046】
(1) 検出抗体をサンプル中の標的分子の第2部位に結合させ、次いで、前記検出抗体に直接的又は間接的に結合できるインサイチュシグナル増強ナノ粒子を添加する工程、又は
インサイチュシグナル増強ナノ粒子を検出抗体に結合させて複合体を形成してから、該複合体をサンプルに添加して、該複合体をサンプル中の標的分子の第2部位に結合させる工程、
(2) 標的分子に結合可能な捕捉抗体を固相担体に固定し、次いで、前記捕捉抗体を前記標的分子の第1部位に結合させて標的分子を捕捉する工程、
(3) 光学イメージング装置を用いて、前記インサイチュシグナル増強ナノ粒子から放出された光信号を検出する工程、及び、
(4) インサイチュシグナル増強ナノ粒子の個数をカウントし、さらに計算してサンプル中の標的分子の濃度情報を得る工程
を含む、単分子定量的検出分析方法であって、
工程(1)において、インサイチュシグナル増強ナノ粒子は、発光材料及びナノ粒子担体を含み、且つ180~480nmの粒径を有する、単分子定量的検出分析方法を提供している。
【0047】
第2実施形態は、第1実施形態と比べて、工程の順序のみにおいて相違点があり、他の条件、例えばインサイチュシグナル増強ナノ粒子などは同じである。
【0048】
<第3実施形態>
本願発明の第3実施形態は、以下の通りである。
【0049】
(1) 標的分子に結合可能な捕捉プローブを固相担体に固定し、前記捕捉プローブは、標的分子の第1配列と相補的であり、該捕捉プローブによってサンプル中の標的分子を捕捉する工程、
(2) 標的分子の第2配列に相補し得る検出プローブを添加して、捕捉プローブ-標的分子-検出プローブの3本鎖ハイブリッドを形成し、次いで、検出プローブに直接的または間接的に結合可能なインサイチュシグナル増強ナノ粒子を添加する工程、又は
検出プローブをインサイチュシグナル増強ナノ粒子に結合させて複合体を形成してから、該複合体を添加する工程、
(3) 光学イメージング装置を用いて、前記インサイチュシグナル増強ナノ粒子によって放出された光信号を検出する工程、及び、
(4) インサイチュシグナル増強ナノ粒子の個数をカウントし、さらに計算してサンプル中の標的分子の濃度情報を得る工程、
を含む、単分子定量的検出分析方法であって、
工程(2)において、インサイチュシグナル増強ナノ粒子は、発光材料及びナノ粒子担体を含み、且つ180~480nmの粒径を有する、単分子定量的検出分析方法を提供している。
【0050】
本実施形態において、標的分子は、DNA又はRNAを含む。
【0051】
検出試薬は、固相担体、捕捉プローブ、検出プローブ、及びインサイチュシグナル増強ナノ粒子を含む。ここで、固相担体は、試薬からのサンプルの分離及び洗浄のために使用される。前記捕捉プローブは、化学修飾により固相担体の表面に固定化され、被検分子の一部とハイブリダイゼーションで結合して、サンプルから分離させる。検出プローブは、被検分子の他の部分とハイブリダイゼーションで結合することができ、ハイブリダイゼーション位置から離れた検出プローブの一端は、共有結合によってインサイチュシグナル増強ナノ粒子と連結される。インサイチュシグナル増強ナノ粒子は十分な強度の光信号を放出することができ、光学イメージング装置に独立して識別可能な画像信号を形成する。
【0052】
前記固相担体は、形態によって、磁気ビーズ、マルチウェルプレート、遠心チューブ、チップ、マイクロスケール微小球、ナノスケール微小球のうちの一種又は複数種であってもよく、材質によって、ポリマー、シリカ、シリコンのうちの一種又は複数種であってもよく、機能によって、磁性固相担体、非磁性固相担体のうちの一種又は複数種であってもよい。これらの固相担体の中でも、特に磁気ビーズが好ましい。従来、磁気ビーズを核酸の単分子定量検出に適用する場合、磁気ビーズが溶液で懸濁状態にあり定量検出が困難であり、また、磁気ビーズに方向性があるため、イメージングの際に輝度に差異がある、といった問題があった。しかしながら、驚くべきことに、本願発明者は、核酸への単分子定量検出の場合、担体として磁気ビーズを用いた方が、ガラスチップよりも特に優れた感度が得られ、検出効率も大幅に向上できることを見出した。
【0053】
本願発明において、固相担体は、プローブと共有結合により結合できる反応性官能基で表面修飾されており、該反応性官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、チオール、アルケニル、アルキニル、スクシンイミドエステル基およびそれらの誘導基のうちの一種又は複数種を含む。
【0054】
本願発明において、前記捕捉プローブは、被検分子の配列の一部と相補的な配列を有し、二本鎖を形成可能なリボ核酸またはデオキシリボ核酸であってもよい。
【0055】
本願発明において、前記捕捉プローブは、一端がカルボキシル、アミノ、チオール、スクシンイミドエステル基のうちの一種又は複数種で修飾されており、固相担体の表面と共有結合することができ、固相担体の表面に安定に結合している。
【0056】
本願発明において、検出プローブは、被検分子の他の配列(捕捉プローブに相補的な配列とは異なる配列)に相補的な配列を有するリボ核酸またはデオキシリボ核酸であってよく、二本鎖を形成し、よって、捕捉プローブ-標的分子-検出プローブの3本鎖ハイブリッドを形成することができる。
【0057】
本願発明において、前記検出プローブの一端は、カルボキシル、アミノ、チオール、スクシンイミドエステル基のうちの1種または数種で修飾されており、インサイチュシグナル増強ナノ粒子と共有結合することができ、インサイチュシグナル増強ナノ粒子の表面に安定的に結合している。
【0058】
その他の条件、例えば、インサイチュシグナル増強ナノ粒子、光学イメージング装置、標的分子濃度の計算方式等については、上記第1実施形態と同様である。
【0059】
<第4実施形態>
本願発明の第4実施形態は、以下の通りである。
【0060】
(1) 検出プローブをサンプル中の標的分子の第2配列に相補的にし、次いで、検出プローブに直接的または間接的に結合可能なインサイチュシグナル増強ナノ粒子を添加する工程、又は
インサイチュシグナル増強ナノ粒子を検出プローブに結合させて複合体を形成してから、該複合体をサンプル中の標的分子の第2配列に相補的にする工程、
(2) 標的分子に結合可能な捕捉プローブを固相担体に固定し、次いで、前記捕捉プローブは前記標的分子の第1配列に相補的にして、該捕捉プローブによって標的分子を捕捉する工程、
(3) 光学イメージング装置を用いて、前記インサイチュシグナル増強粒子から放出された光信号を検出する工程、
(4) インサイチュシグナル増強粒子の個数をカウントし、さらに計算してサンプル中の標的分子の濃度情報を得る工程、
を含む、単分子定量的検出分析方法であって、
工程(1)において、インサイチュシグナル増強ナノ粒子は、発光材料及びナノ粒子担体を含み、且つ180~480nmの粒径を有する、単分子定量的検出分析方法を提供している。
【0061】
第4実施形態は、第3実施形態と比べて、工程の順序のみにおいて相違点があり、他の条件、例えばインサイチュシグナル増強ナノ粒子などは同一である。
【0062】
<第5実施形態>
本願発明の第5実施形態は、以下のとおりである。
【0063】
(1) 検出試薬と、
(2) 励起光源と光信号収集ユニットとを含む光学イメージング装置と、
を含む、単分子定量的検出分析システムであって、
前記検出試薬は、(a)標的分子の第1部位に結合することでサンプル中の標的分子を捕捉することができる捕捉抗体と、(b)標的分子の第2部位に結合可能であり、かつインサイチュシグナル増強ナノ粒子に結合可能である検出抗体と、(c) 発光材料およびナノ粒子担体を含み、且つ180~480nmの粒径を有するインサイチュシグナル増強ナノ粒子とを含み、又は
前記検出試薬は、(a)標的分子の第1配列に結合することでサンプル中の標的分子を捕捉することができる捕捉プローブと、(b)標的分子の第2配列に結合して捕捉プローブ-標的分子-検出プローブの3本鎖ハイブリッドを形成し得る検出プローブと、(c)検出プローブに結合可能であり、発光材料およびナノ粒子担体を含み、且つ180~480nmの粒径を有するインサイチュシグナル増強ナノ粒子とを含む、
単分子定量的検出分析システムを提供している。
【0064】
本願発明の検出システムは、検出試薬と光学イメージング装置の両方を含む。検出試薬は、捕捉抗体、検出抗体、及び特定のインサイチュシグナル増強ナノ粒子(タンパク質、多糖、又は生物活性を有する小分子の検出の場合)を含むか、又は捕捉プローブ、検出プローブ、及び特定のインサイチュシグナル増強ナノ粒子(DNA又はRNAの検出の場合)を含む。光学イメージング装置は、全反射蛍光顕微鏡、落射蛍光顕微鏡、走査近接場光学顕微鏡、共焦点蛍光顕微鏡などの高価な、光学回折限界を超える光学イメージング装置を必要としない、通常の光学イメージング装置でもよい。
【実施例
【0065】
以下、実施例及び比較例を挙げて本願発明をさらに詳細に説明したが、本願発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
1、インサイチュシグナル増強ナノ粒子の粒径の測定
シリカ蛍光ナノ粒子を例にとると、各実施例及び比較例で得られたシリカ蛍光ナノ粒子を水で1000倍希釈した後、100μLを取って清浄シリコンウエハ表面に滴下し、空気で干す。その表面に小型スパッタ装置を用いて5nmの白金をスパッタ堆積し、SEM (日立ハイテクノロジーズ社製SU3900)を用いてイメージング分析を行い、粒径を求めた。
【0067】
ポリアクリルアミド蛍光ナノ粒子を例にとると、得られたポリアクリルアミド蛍光ナノ粒子を純水で1000倍希釈し、マルバーン粒度分布計(Zetasizer Nano S90)を用いて粒子の粒子径を測定した。
【0068】
2、単分子イメージング
単分子イメージングは、通常の蛍光顕微鏡、例えば、ニコンEclipse Ti-U蛍光顕微鏡を用いて行うが、他のニコンEclipse Tiシリーズの蛍光顕微鏡、ライカDMi8蛍光顕微鏡等を用いてもよい。
【0069】
3、検量線作成方法
本願発明において、単分子計数モードと蛍光強度積分モードとを併用することにより、検出マーカーの検量線のダイナミックレンジを著しく向上させることができる。具体的な実施方法は、以下の通りである。
【0070】
被検分子の濃度が低い場合、磁気ビーズの数が磁気ビーズに結合した被検分子の数より多いため、単分子計数モードを用いて、異なる濃度で被検分子を含むサンプルに対して検量線を作成し;
被検分子の濃度がある閾値を超えると、1つの磁気ビーズ表面に1つ以上の被検分子が結合している可能性があり、単分子信号が重なりやすくなり、検出結果にばらつきが生じるため、蛍光強度積分モードを用いることがより好適である。
【0071】
具体的には、1つの撮像画像における単分子の数が設定された閾値を超えない場合、単分子計数モードを用い、検量線の作成を行う。一方、1つの撮影画像における単分子量が設定した閾値を超えた場合には、蛍光強度積分モードを用い、総蛍光強度面積を1分子当たりの平均蛍光強度面積で除して「単分子の近似数」に換算して検量線を作成する。
【0072】
最後に、単分子計数モードで得られた検量線と蛍光強度積分モードで得られた検量線とを合わせ、フィッティング式によりカーブフィッティングを行い、完全な検量線を作成した。
【0073】
実施例1:磁気ビーズ法(シリカ蛍光ナノ粒子:粒子径220nm)によるヒト血清中のcTnI抗原分子の検出。
【0074】
1、実験成分
トシル活性化M280磁気ビーズ(Thermo)、捕捉抗体(Hytest19C7)、検出抗体(Hytest16A11)、シランカップリング剤(APTES)、アンモニア水、オルトケイ酸エチル(TEOS)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、コハク酸無水物、被検血清サンプル、PBS緩衝液、Buffer C (3mM (NH4)2SO4を10mM PBS緩衝液に溶解し、pH =7.4)、Buffer D (0.01% NaCl、0.5% BSAを10mM PBSに溶解し、pH =7.4)、Buffer E (0.0088% NaCl、0.1% BSAを10mM PBSに溶解し、pH =7.4)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、1- (3-ジメチルアミノプロピル) -3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、微小球保存液、サンプル希釈液、PBS洗浄液。
【0075】
2、調製方法
2.1、シリカ蛍光ナノ粒子の合成及び表面カルボキシル化修飾
(1) 平底のプラスチック製合成フラスコに、無水エタノール16.5mL、アンモニア水1.2mL、超純水0.9mL、TEOS 0.7 mL、APTES 0.3μL、FITC 0.6 mgを加えて均一に混合させる。回転数400rpmで5時間、50℃で撹拌し、無水エタノール20mLで洗浄(5回)して遠心した後、FITCを内包したシリカ微小球を得て、無水エタノール20mLに懸濁させた。
【0076】
(2) 等モルのAPTESと無水コハク酸を1mLのDMFに溶かし、常温で3時間撹拌した後、(1)で得られたシリカ微小球(その内部にFITCが均一に分布している)が懸濁された無水エタノール溶液を加え、超純水2mLとアンモニア水1.2mLを加え、回転数400rpmで50℃で5時間撹拌し、無水エタノール20mLで洗浄(3回)して遠心した後、引き続き超純水20mLで洗浄(3回)して遠心した後、再び超純水20mLに懸濁させて、粒径220nmの表面カルボキシル化されたシリカ蛍光ナノ粒子を得た。
【0077】
2.2磁気ビーズと捕捉抗体との共有結合によるカップリング
(1) 30mg/mLのトシル活性化M280磁気ビーズ166.6μLを取り、10mM PBS緩衝液で5回洗浄し、バッファーを取り除いた。
【0078】
(2) 捕捉抗体(Hytest 19C7)を100μg取り、10mM PBS緩衝液150μLで希釈した後(1)の磁気ビーズに加え、均一に混合し、Buffer C100μLを加え、37℃で回転し、均一に混合させ、1時間反応させた。
【0079】
(3) 10mM PBS緩衝液で5回洗浄し、1mLのBuffer Dを加えて密閉状態で反応を行った。37℃で回転し、均一に混合させ、1時間反応させた。
【0080】
(4) 10mM PBS緩衝液で5回洗浄し、250μL Buffer Eで保存し、使用に供した。
【0081】
2.3、検出抗体とシリカ蛍光ナノ粒子との共有結合によるカップリング
(1) 10μLのシリカ蛍光ナノ粒子を取り、40μLのPBS緩衝液を添加して1分間超音波処理した。
【0082】
(2) EDC 0.005gを、50μLのPBS緩衝液に溶解し、また、NHS 0.0135gを150μLのPBS緩衝液に溶解した。
【0083】
(3) シリカ蛍光ナノ粒子を12000rpmで遠心分離し、上清を除去し、50μLのPBS緩衝液を加えて再懸濁し、1分間超音波処理した後、2.5μLのEDC溶液を加える。1分間超音波処理した後、7.5μLのNHS溶液を加え、混合した後、37℃で15分間反応させ、12000rpmで15分間遠心分離し、上清を除去し、50μLのPBS緩衝液を用いてナノ粒子を再懸濁した。
【0084】
(4) 20μgの検出抗体(Hytest 16A11)を加え、37℃で2時間反応させた。
【0085】
(5) 25μLのBuffer Dを添加し、37℃で密閉状態で1時間反応させた。その後、12000rpmで15分間遠心し、100μLのBuffer Eを用いて再懸濁保存した。
【0086】
3、実験方法
検量線の作成
(1) cTnI抗原の濃度をウシ胎児血清を用いて、それぞれ0、0.01、0.1、0.5、1、5、10、100pg/mLに希釈した。
【0087】
(2) 捕捉抗体で標識された磁気ビーズを1mg/mLに希釈し、50μLの希釈液を採取し、(1)で得た各濃度のサンプルをそれぞれ50μL加えて、37℃で60分間インキュベートした。100μLの洗浄緩衝液で3回洗浄し、残存したサンプルを洗い流し、上清を吸引除去した。
【0088】
(3) 検出抗体が結合されたシリカ蛍光ナノ粒子10μLを加え、37℃で45分間インキュベートし、バッファーで4回洗浄し、残存したシリカ蛍光ナノ粒子を洗い流し、上清を除去した。
【0089】
(4) 検出液5μLを加えて磁気ビーズを再懸濁させ、検出ウェルに移した。磁石を用いて検出ウェルの底に磁気ビーズを吸着し、蛍光顕微鏡(ニコンEclipse Ti-U)を用いて単分子イメージングを行う。単分子計数モードと蛍光強度積分モードを組み合わせて用いて、単分子計数統計及び分析を行った。
【0090】
(5) 各濃度について、検出を6回繰り返し、その結果をもとに検量線を作成し、各ポイントのCV%値を算出した。
【0091】
4、実験結果
検量線の結果
検出結果を図3に示す。この実施例では、cTnIの検出範囲が30 fg/mL~10 ng/mLであり、この区間内で単分子信号数(即ち、CPN)とサンプル濃度とが良好な直線関係にあり、その検出下限が30 fg/mLである。
【0092】
比較例1:磁気ビーズ法によるヒト血清中のcTnI抗原分子の検出(シリカ蛍光ナノ粒子:粒子径150nm)。
【0093】
1、調製方法
1.1、シリカ蛍光ナノ粒子の合成及び表面カルボキシル化修飾
(1) 平底のプラスチック製合成フラスコに、無水エタノール16.5mL、アンモニア水1.2mL、超純水0.9mL、TEOS 0.5 mL、APTES 0.3μL、FITC 0.6 mgを加えて均一に混合させる。回転数400rpmで50℃で5時間撹拌し、無水エタノール20mLで洗浄(5回)し、遠心分離した後、FITCを内包したシリカ微小球を得て、これを無水エタノール20mLに懸濁させた。
【0094】
(2) 等モルのAPTESと無水コハク酸を1mLのDMFに溶解し、常温で3時間撹拌した後、(1)で得られたシリカ微小球が懸濁された無水エタノール溶液を加え、超純水2mLとアンモニア水1.2mLを加え、回転数400rpmで5時間、50℃で撹拌し、無水エタノール20mLで洗浄(3回)し、遠心分離した後、引き続き超純水20mLで洗浄(3回)し、遠心分離した後、再び超純水20mLに懸濁させて、粒径150nmの表面カルボキシル化されたシリカ蛍光ナノ粒子を得た。
【0095】
1.2磁気ビーズと捕捉抗体との共有結合によるカップリング
実施例1と同様にした。
【0096】
1.3、検出抗体とシリカ蛍光ナノ粒子との共有結合によるカップリング
粒子径150nmの表面カルボキシル化されたシリカ蛍光ナノ粒子をとる以外は、実施例1と同様にした。
【0097】
2、実験方法
検量線の作成
実施例1と同様にした。
【0098】
3、実験結果
図4から、150nmの粒径を有するシリカ蛍光ナノ粒子を用いると、検出装置で蛍光シグナルが全く検出されず、該サイズを有するシリカ蛍光ナノ粒子は単分子定量検出に使用できないことが分かる。試薬はサンプルに全く応答しないため、臨床検査は行わなかった。
【0099】
比較例2:磁気ビーズ法によるヒト血清中のcTnI抗原分子の検出(シリカ蛍光ナノ粒子:粒子径500nm)。
【0100】
1、調製方法
1.1、シリカ蛍光ナノ粒子の合成及び表面カルボキシル化修飾
(1) 平底のプラスチック製合成フラスコに、無水エタノール16.5mL、アンモニア水1.0mL、超純水0.9mL、TEOS 1.2 mL、APTES 0.3μL、FITC 0.6 mgを加えて均一に混合させる。回転数400rpmで50℃で5時間撹拌し、無水エタノール20mLで洗浄(5回)し、遠心分離した後、FITCを内包したシリカ微小球を得て、これを無水エタノール20mLに懸濁させた。
【0101】
(2) 等モルのAPTESと無水コハク酸を1mLのDMFに溶解し、常温で3時間撹拌した後、(1)で得られたシリカ微小球が懸濁された無水エタノール溶液を加え、超純水2mLとアンモニア水1.2mLを加え、回転数400rpmで5時間、50℃で撹拌し、無水エタノール20mLで洗浄(3回)し、遠心分離した後、引き続き超純水20mLで洗浄(3回)し、遠心分離した後、再び超純水20mLに懸濁させて、粒径500nmの表面カルボキシル化されたシリカ蛍光ナノ粒子を得た。
【0102】
1.2、磁気ビーズと捕捉抗体との共有結合によるカップリング
実施例1と同様にした。
【0103】
1.3、検出抗体とシリカ蛍光ナノ粒子との共有結合によるカップリング
粒子径500nmの表面カルボキシル化されたシリカ蛍光ナノ粒子をとる以外は、実施例1と同様にした。
【0104】
2、実験方法
検量線の作成
実施例1と同様にした。
【0105】
3、実験結果
検出結果は、図5の通りである。図5から、比較例2では、cTnIの検出下限がただ0.1ng/mL(すなわち、100pg/mL)であり、感度が劣ることが分かる。比較例2は、粒子径500nmの粒子を使用しているため、検出感度が実施例1よりもはるかに低かった。
【0106】
実施例2:磁気ビーズ法によるヒト血清中のcTnI抗原分子の検出(シリカ蛍光ナノ粒子:粒子径350nm)
1、調製方法
1.1、シリカ蛍光ナノ粒子の合成及び表面カルボキシル化修飾
(1) 平底のプラスチック製合成フラスコに、無水エタノール16.5mL、アンモニア水1.0mL、超純水0.9mL、TEOS 0.7 mL、APTES 0.3μL、FITC 0.6 mgを加えて均一に混合させる。回転数400rpmで50℃で5時間撹拌し、無水エタノール20mLで洗浄(5回)し、遠心分離した後、FITCを内包したシリカ微小球を得て、これを無水エタノール20mLに懸濁させた。
【0107】
(2) 等モルのAPTESと無水コハク酸を1mLのDMFに溶解し、常温で3時間撹拌した後、(1)で得られたシリカ微小球が懸濁された無水エタノール溶液を加え、超純水2mLとアンモニア水1.2mLを加え、回転数400rpmで5時間、50℃で撹拌し、無水エタノール20mLで洗浄(3回)し、遠心分離した後、引き続き超純水20mLで洗浄(3回)し、遠心分離した後、再び超純水20mLに懸濁させて、粒径350nmの表面カルボキシル化されたシリカ蛍光ナノ粒子を得た。
【0108】
1.2磁気ビーズと捕捉抗体との共有結合によるカップリング
実施例1と同様にした。
【0109】
1.3検出抗体とシリカ蛍光ナノ粒子との共有結合によるカップリング
粒子径350nmの表面カルボキシル化されたシリカ蛍光ナノ粒子をとる以外は、実施例1と同様にした。
【0110】
2、実験方法
検量線の作成
実施例1と同様にした。
【0111】
3、実験結果
検出結果は図6の通りである。図6から、実施例2ではcTnIの検出下限が80fg/mLであり、感度に優れることが分かった。
【0112】
比較例3
表面カルボキシル化されたシリカ蛍光ナノ粒子の粒径が160nmであること以外は、実施例1と同様にして、その検出下限に関する結果は比較例1と同じであった。
【0113】
実施例3
表面カルボキシル化されたシリカ蛍光ナノ粒子の粒子径が180nmであること以外は、実施例1と同様に操作し、その結果を表1に示す。
【0114】
実施例4
表面カルボキシル化されたシリカ蛍光ナノ粒子の粒子径が250nmであること以外は、実施例1と同様に操作し、その結果を表1に示す。
【0115】
実施例5
表面カルボキシル化されたシリカ蛍光ナノ粒子の粒子径が295nmである以外は、実施例1と同様に行い、その結果を表1に示した。
【0116】
実施例6
表面カルボキシル化されたシリカ蛍光ナノ粒子の粒子径が300nmであること以外は、実施例1と同様に操作し、その結果を表1に示す。
【0117】
実施例7
表面カルボキシル化されたシリカ蛍光ナノ粒子の粒子径が400nmであること以外は、実施例1と同様に操作し、その結果を表1に示す。
【0118】
実施例8
表面カルボキシル化されたシリカ蛍光ナノ粒子の粒径が450nmであること以外は、実施例1と同様に操作し、その結果を表1に示す。
【0119】
実施例9
表面カルボキシル化されたシリカ蛍光ナノ粒子の粒子径が480nmであること以外は、実施例1と同様に操作し、その結果を表1に示す。
【0120】
実施例10
固相担体と捕捉抗体との共有結合によるカップリング工程において、トシル基活性化磁気ビーズをトシル基活性化ガラスチップに代えた以外は、実施例1と同様にして、その結果を表1に示す。
【0121】
実施例11
単分子イメージングのデータを処理する工程において、全濃度区間に亘って、単分子計数モードと蛍光強度積分モードの併用を単分子計数モードに代えたこと以外は、実施例1と同様にしたところ、図7に示すように、実施例1に比べて検出上限が低下し、検出ダイナミックレンジが小さくなる。
【0122】
実施例12
単分子イメージング工程において、ニコンEclipse Ti-UをライカDMi8蛍光顕微鏡に代えた以外は、実施例1と同様に操作し、その結果を表1に示す。
【0123】
実施例13
実施例1の手順2.3及び3.1において、検出抗体とシリカ蛍光ナノ粒子の複合体をあらかじめ形成せず、ビオチンで修飾した検出抗体を先に被検分子の2番目部位に結合させるように添加し、その後、ストレプトアビジンで修飾したシリカ蛍光ナノ粒子を添加したこと以外は、実施例1と同様に操作して、その結果を表1に示した。
【0124】
実施例14:磁気ビーズ法によるIL-6抗原分子の検出(ポリアクリルアミド蛍光ナノ粒子:粒径220nm)
1、実験成分
トシル活性化M280磁気ビーズ(Thermo)、IL-6捕捉抗体(Medix2703)、IL-6検出抗体(Medix2704)、アクリルアミド、N,N-メチレンビスアクリルアミド、アクリル酸、ヘキサン、スルホコハク酸オクチルナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル35(Brij35)、亜硫酸水素ナトリウム、過硫酸アンモニウム(開始剤)、テトラメチルエチレンジアミン、アクリルアミド- (PEG)8-フルオレセイン、1- (3-ジメチルアミノプロピル) -3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、エタノール、被検血清、PBS緩衝液、Buffer C (3mM (NH4)2SO4が溶解した10mM PBS緩衝液、pH =7.4)、Buffer D (0.01% NaCl、0.5% BSAが溶解した10mM PBS緩衝液、pH =7.4)、Buffer E (0.0088% NaCl、0.1% BSAが溶解した10mM PBS緩衝液、pH =7.4)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、1- (3-ジメチルアミノプロピル) -3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、蛍光粒子保管液、サンプル希釈液、PBS洗液
2、調製方法
2.1、カルボキシル化ポリアクリルアミド蛍光ナノ粒子の合成、及び検出抗体との複合体の合成
(1) 23%アクリルアミド、3% N,N-メチレンビスアクリルアミド、2%アクリル酸、1%アクリルアミド- (PEG)8-ルシフェリンを含む10mM PBS緩衝液1mLをヘキサン20mLに添加し、次いで2% Brij-35を添加し、室温で回転数1000rpmで一晩撹拌した。10%亜硫酸ナトリウム溶液50μL、10%過硫酸アンモニウム24μLおよびテトラメチルエチレンジアミン12μLを加えた。室温で2時間撹拌を続ける。ヘキサンを室温で完全に揮発させ、揮発後に残ったポリアクリルアミド蛍光粒子を10mM PBS緩衝液で再懸濁し、界面活性剤および残存モノマーを100kD限外ろ過管(Millipore)で濾過した。再度10mM PBS緩衝液100μLを用いて、再懸濁した。
【0125】
(2) 上記(1)で製造したポリアクリルアミド蛍光ナノ粒子の懸濁液10μLをとり、10mM PBS緩衝液で100μLに希釈し、EDC 0.5%を含む水溶液10μLとNHS 0.5%を含む水溶液5μLを加え、37℃で1時間活性化し、100kD限外ろ過管で残存活性剤を除去し、10mM PBS緩衝液100μLを加えて再懸濁し、IL-6検出抗体(Medix2704)20μgを加え、37℃で2時間反応させた。残存抗体を150KD限外ろ過チューブを用いて除去し、10mM PBS緩衝液100μLを用いて再懸濁し、限外ろ過および再懸濁を1回繰り返し、得られたポリアクリルアミド蛍光ナノ粒子と検出抗体との複合体を4℃で保存した。
【0126】
2.2磁気ビーズと捕捉抗体との共有結合によるカップリング
(1) 30mg/mLのトシル活性化M280磁気ビーズ166.6μLを取り、10mM PBS緩衝液で5回洗浄し、バッファーを取り除いた。
【0127】
(2) 捕捉抗体(Medix2703)100μgをとり、10mM PBS緩衝液150μLで希釈した後、(1)で得られた磁気ビーズに加え、均一に混合し、Buffer C 100μLを加え、37℃で回転し、均一に混合させ、1時間反応させた。
【0128】
(3) 10mM PBS緩衝液で5回洗浄し、1mL Buffer Dを加えて密閉状態で反応を行った。37℃で回転し、均一に混合させ、1時間反応させた。
【0129】
(4) 10mM PBS緩衝液で5回洗浄し、250μL Buffer Eで保存し、使用に供した。
【0130】
3、実験方法
3.1、ポリアクリルアミド蛍光ナノ粒子の粒径測定
得られたポリアクリルアミド蛍光ナノ粒子を純水で1000倍希釈し、マルバーン粒度分析計を用いて粒子の粒子径を測定した。
【0131】
3.2、IL-6抗原の検出
(1) 牛胎児血清を用いてIL-6抗原の濃度をそれぞれ0、0.01、0.1、0.5、1、5、10、50、100pg/mLに希釈した。
【0132】
(2) 捕捉抗体で標識された磁気ビーズを0.1mg/mLに希釈し、50μL分取した後、(1)で得られた各濃度のサンプルをそれぞれ50μL加え、37℃で30分間インキュベートした。100μLの洗浄緩衝液で3回洗浄し、残存サンプルを洗い流し、上清を吸引除去した。
【0133】
(3) 検出抗体が結合されたポリアクリルアミド蛍光ナノ粒子10μLを加え、37℃で15分間インキュベートし、洗浄緩衝液で4回洗浄し、残ったポリアクリルアミド蛍光ナノ粒子を洗い流し、上清を除去した。
【0134】
(4) 5μLの検出液を加えて磁気ビーズを再懸濁させ、検出ウェルに移し、磁石を用いて検出ウェルの底に磁気ビーズを吸着し、蛍光顕微鏡(ニコンEclipse Ti-U)を用いて単分子イメージングを行い、蛍光強度積分モードを利用して後続の単分子計数統計と分析を行った。
【0135】
(5) 各濃度について、検出を3回繰り返し、その結果をもとに検量線を作成し、各ポイントのCV%値を算出した。
【0136】
4、実験結果
4.1、ポリアクリルアミド蛍光ナノ粒子の粒径測定結果
ポリアクリルアミド蛍光ナノ粒子のマルバーン粒度分析器で測定した粒子径は220nmであった。
【0137】
4.2、IL-6抗原の検出結果
IL-6抗原の検出結果を図8に示す。図8から、0.01pg/mLの希釈サンプルがバックグラウンドと明らかに区別できることがわかり、計算すると、本実施例の検出下限は0.006 pg/mL (すなわち6fg/mL)である。このことから、本願発明の検出方法は、感度が極めて優れていることがわかる。
【0138】
実施例15:磁気ビーズ法によるcTnI抗原分子の検出(ポリアクリルアミド蛍光ナノ粒子:粒子径220nm)
実施例14において、捕捉抗体をMedix 2703からHytest 16A11 (すなわち、cTnI抗原に対する捕捉抗体)に、検出抗体をMedix 2704からHytest 19C7 (すなわち、cTnI抗原に対する検出抗体)に、被検分子をIL-6抗原からcTnI抗原に代えた以外は、実施例14と同様にした。cTnI抗原の検出結果を図9に示す。図9から、0.01pg/mLの希釈サンプルがバックグラウンドと明らかに区別できることがわかり、計算すると、本実施例の検出下限は0.008 pg/mL(すなわち8fg/mL)である。このことから、本願発明の検出方法は、感度が極めて優れていることがわかる。
【0139】
実施例16
表面カルボキシル化されたポリアクリルアミド蛍光ナノ粒子の粒径が300nmであること以外は、実施例15と同様にした。cTnI抗原の検出結果を図10に示す。図10から、0.01pg/mLの希釈サンプルがバックグラウンドと明らかに区別できることがわかり、計算すると、本実施例の検出下限は0.020 pg/mL(すなわち20fg/mL)である。このことから、本願発明の検出方法は、感度が優れていることがわかる。
【0140】
実施例17:磁気ビーズ法によるcTnI抗原分子の検出 (ポリアクリルアミド蛍光ナノ粒子:二次粒子径250nm)
1、実験成分
トシル活性化M280磁気ビーズ(Thermo)、捕捉抗体(Hytest 16A11)、検出抗体(Hytest 19C7)、ストレプトアビジン(SA、Roche)、アクリルアミド、アクリルアミド- (PEG)8-ビオチン、アクリルアミド- (PEG)8-フルオレセイン。
【0141】
2、調製方法
2.1、一次ポリアクリルアミド蛍光粒子の合成およびカルボキシル化修飾
(1) 23%アクリルアミド、3% N,N-メチレンビスアクリルアミド、2%アクリル酸、1%アクリルアミド- (PEG)8-ビオチン及び1%アクリルアミド- (PEG)8-フルオレセインを含む10mM PBS緩衝液1mLをヘキサン20mLに加え、4% Brij-35を加え、室温で1200rpmで一晩撹拌した。10%亜硫酸ナトリウム溶液50μL、10%過硫酸アンモニウム24μLおよびテトラメチルエチレンジアミン12μLを加えた。室温で2時間撹拌を続ける。ヘキサンを室温で完全に揮発させ、揮発後に残ったポリアクリルアミド蛍光粒子を10mM PBS緩衝液で再懸濁し、100kD限外濾過チューブを用いて界面活性剤と残存モノマーを濾別した。100μLの10mM PBS緩衝液を用いて再懸濁した。
【0142】
(2) 上記(1)で得られたポリアクリルアミド蛍光ナノ粒子の懸濁液15μLを取って、10mM PBS緩衝液で100μLに希釈し、EDC 0.5%を含む水溶液10μLとNHS 0.5%を含む水溶液5μLを添加して、37℃で1時間活性化し、100kD限外濾過チューブで残存活性剤を除去した。その後、10mM PBS緩衝液100μLを添加して再懸濁し、検出抗体20μgを添加して、37℃で2時間反応させた。150KD限外ろ過チューブを用いて残存抗体を除去し、100μLの10mM PBS緩衝液を用いて再懸濁し、限外ろ過および再懸濁をさらに1回繰り返し、得られた一次ポリアクリルアミドナノ粒子懸濁液を4℃で保存した。
【0143】
2.2、2級ポリアクリルアミド蛍光粒子の合成およびカルボキシル化修飾
(1) 23%アクリルアミド、3% N,N-メチレンビスアクリルアミド、2%アクリル酸、1%アクリルアミド- (PEG)8-ルシフェリンを含む10mM PBS緩衝液1mLをヘキサン20mLに加え、4% Brij-35を加え、室温で1200rpmの回転数で一晩撹拌した。10%亜硫酸ナトリウム溶液50μL、10%過硫酸アンモニウム24μLおよびテトラメチルエチレンジアミン12μLを加えた。室温で2時間撹拌を続ける。ヘキサンを室温で完全に揮発させ、揮発後に残ったポリアクリルアミド蛍光粒子を10mM PBS緩衝液で再懸濁し、100kD限外濾過チューブを用いて界面活性剤と残存モノマーを濾別した。100μLの10mM PBS緩衝液を用いて再懸濁した。
【0144】
(2) 上記(1)で得られたポリアクリルアミド蛍光粒子15μLを10mM PBS緩衝液で100μLに希釈し、EDC 0.5%水溶液10μLとNHS 0.5%水溶液5μLを加え、37℃で1時間活性化し、100kD限外濾過チューブで残存活性剤を除去した。その後、10mM PBS緩衝液100μLを加えて再懸濁し、さらにストレプトアビジン10μgを加え、37℃で2時間反応させた。残存ストレプトアビジンを、150KD限外ろ過チューブを用いて除去し、100μLの10mM PBS緩衝液を用いて再懸濁し、限外ろ過および再懸濁工程を1回繰り返し、得られた二次ポリアクリルアミド蛍光粒子懸濁液を、4℃で保存した。
【0145】
2.3磁気ビーズと捕捉抗体との共有結合によるカップリング
実施例1と同様にした。
【0146】
3、実験方法
3.1、ポリアクリルアミド蛍光粒子の粒径測定
1次および2次ポリアクリルアミド蛍光粒子について、それぞれ純水で2000倍に希釈し、マルバーン粒度分析計を用いて粒子径を測定した。二次ポリアクリルアミド蛍光粒子(すなわち、1次粒子をコアとし、2次粒子をシェルとするクラスター粒子)の粒子径は、1次粒子に対して過剰の2次粒子を採取し、1次粒子と反応させる。得られた二次粒子について、マルバーン粒度分析計で粒子径を測定した結果、2つのピークが得られ、大きい方のピークを二次粒子の粒子径とする。
【0147】
3.2 cTnI抗原の検出
(1)ウシ胎児血清を用いて、cTnI抗原の濃度を0、0.01、0.1、0.5、1、5、10、50、100pg/mLに希釈した。
【0148】
(2) 捕捉抗体で標識された磁気ビーズを0.1mg/mLに希釈し、50μLを採取し、(1)で得られた各濃度のサンプルをそれぞれ50μL加え、さらに100倍に希釈した1次ポリアクリルアミド蛍光粒子10μLを加えて37℃で30分間インキュベートした。100μLの洗浄緩衝液で3回洗浄し、残存サンプルを洗い流し、上清を吸引除去した。
【0149】
(3) 100倍に希釈した2次ポリアクリルアミド蛍光粒子10μLを加え、37℃で15分間インキュベートし、洗浄緩衝液で4回洗浄し、残ったポリアクリルアミド蛍光粒子を洗い流し、上清を除去した。
【0150】
(4) 検出液5μLを加えて磁気ビーズを再懸濁させ、検出ウェルに移し、磁石を用いて検出ウェルの底に磁気ビーズを吸着し、蛍光顕微鏡(ニコンEclipse Ti-U)を用いて単分子イメージングを行いる。単分子計数モードと蛍光強度積分モードの併用により、単分子計数統計及び分析を行った。
【0151】
(5) 各濃度について、検出を3回繰り返し、その結果をもとに検量線を作成し、各ポイントのCV%値を算出した。
【0152】
4、実験結果
4.1、ポリアクリルアミド蛍光粒子の粒径
1次および2次ポリアクリルアミド蛍光粒子の粒径はいずれも約80nmであり、二次ポリアクリルアミド蛍光粒子の粒径は約250nmであった。
【0153】
4.2 cTnI抗原の検出
cTnI抗原の検出結果を図11に示す。図11から、0.005 pg/mLの希釈サンプルがバックグラウンドと明らかに区別できることがわかり、計算すると、本実施例の検出下限は0.002 pg/mL(すなわち2fg/mL)である。このことから、本願発明の検出方法は、感度が極めて優れていることがわかる。
【0154】
実施例18:磁気ビーズ法によるIL-6抗原分子の迅速検出(ポリアクリルアミド蛍光ナノ粒子:粒径220nm)
実施例14において、3.2(2)におけるインキュベーション時間を30分間から3分間に短縮し、3.2(3)におけるインキュベーション時間を15分間から2分間に短縮した以外は、実施例14と同様にした。
【0155】
IL-6抗原の迅速検出結果は図12に示す。図12から、検出時間が大幅に短縮されても1pg/mLの希釈サンプルがバックグラウンドと明らかに区別できることが分かり、計算すると、実施例18の検出下限は1pg/mLである。また、本例では、臨床血液サンプル20個を対象として試験した。図13に示すように、横軸はRoche Cobas 6000全自動電気化学発光デバイスによって測定された基準値を表し、縦軸は本願発明の検出方法によって得られた測定値を表す。相関分析から、R2値は0.9887であり、本願発明の方法が、市販の装置による方法と良好な相関性を有することが実証された。
【0156】
実施例19:磁気ビーズ法によるcTnI抗原分子の迅速検出(ポリアクリルアミド蛍光ナノ粒子:粒径220nm)
実施例15において、3.2(2)におけるインキュベーション時間を30分間から3分間に短縮し、3.2(3)におけるインキュベーション時間を15分間から2分間に短縮した以外は、実施例15と同様にした。
【0157】
cTnI抗原の迅速な検出結果を図14に示す。図14から、検出時間が大幅に短縮されても、1pg/mLの希釈検体がバックグラウンドと明らかに区別できることが分かり、計算すると、実施例19の検出下限は0.5pg/mLである。また、図15に示すように、臨床血液サンプル20個を対象として試験した。横軸はAbbott i1000sr全自動電気化学発光装置によって測定された基準値を表し、縦軸は本願発明の検出方法によって得られた測定値を表す。相関分析から、R2値は0.9842であり、本願発明の方法が、市販の装置による方法と良好な相関性を有することが実証された。
【0158】
実施例20:磁気ビーズ法によるヒト血清中のcTnI抗原分子の検出(ポリスチレンが量子ドットを包んでなる蛍光微小球(以下、ポリスチレン蛍光ナノ粒子という):粒子径210nm)。
【0159】
1、実験成分
量子ドット(Qdot 605、Thermo)、表面カルボキシル化ポリスチレン微小球(粒子径210nm、Hangzhou weizhu生物)
【0160】
2、調製方法
2.1、ポリスチレン蛍光ナノ粒子
(1) 表面カルボキシル化ポリスチレン微小球0.1gを秤量して0.25% SDS5 mLに分散させ、Qdot 605およびジクロロメタン1mLを加え、超音波機を用いて室温で1時間超音波処理を行った。
【0161】
(2) 溶媒を除去するために、回転蒸留を行い、残った液を遠心分離し、上清を除去した。回収した固体をエタノールで3回、次いで超純水で5回洗浄した後、超純水10mLで再懸濁させて保存した。
【0162】
2.2磁気ビーズと捕捉抗体との共有結合によるカップリング
実施例1と同様にした。
【0163】
2.3検出抗体とポリスチレン蛍光ナノ粒子との共有結合によるカップリング
(1) (2.1)で作製したポリスチレン蛍光ナノ粒子を5μL取り、PBS緩衝液40μLを加え1分間超音波処理を行った。
【0164】
(2) EDC 0.01gを50μLのPBS緩衝液に溶解し、また、NHS 0.015gを150μLのPBS緩衝液に溶解した。
【0165】
(3) 10000rpmで遠心分離して、上清を除去し、さらに、50μLのPBS緩衝液を加えて再懸濁し、超音波処理を1min行った。その後、EDC溶液2.5μLとNHS溶液7.5μLを加え、混合した後、37℃で15分間反応させ、12000rpmで15min遠心分離して上清を除去した。50μLのPBS緩衝液を用いてナノ粒子を再懸濁した。
【0166】
(4) 5μgの検出抗体(Hytest 16A11)を加え、37℃で2時間反応させた。
【0167】
(5) 25μLのBuffer Dを添加し、密閉状態で37℃で1時間反応した後、12000rpmで15分間遠心し、100μLのBuffer Eを用いて再懸濁し、保存した。
【0168】
3、実験方法
検量線の作成
3.1(3)において、検出抗体が結合されたポリスチレン蛍光ナノ粒子を加える以外は、実施例1と同様にした。
【0169】
4、実験結果
検出結果を図16に示す。図16から、この実施例では、cTnIの検出範囲が50fg/mL~100pg/mLであり、この区間で単分子の信号数とサンプルの濃度は良好な直線関係にあり、その検出下限は約50fg/mLであることが分かる。
【0170】
実施例21(本願発明の第2実施形態に対応)
実施例1の3.1及び3.2において、検出抗体が結合されたシリカ蛍光ナノ粒子を臨床サンプルと反応させ、その後、捕捉抗体が標識した磁気ビーズを加える以外は、実施例1と同様にして、その結果を表1に示す。
【0171】
実施例22:ガラスチップ法による緩衝液中のDNA分子の定量検出(シリカ蛍光ナノ粒子:粒径220nm)。
【0172】
1、実験成分
低吸着スライドガラス(Thermo)、捕捉プローブ(上海生合成、配列は下記を参照)、検出プローブ(上海生合成、配列は下記を参照)、鋳型DNA(上海生合成、配列は下記を参照のこと)、シランカップリング剤(APTES)、アンモニア水、オルトケイ酸エチル(TEOS)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、コハク酸無水物、二末端カルボキシル化ポリエチレングリコール、PBS緩衝液、
捕捉プローブ配列:NH2-TTTTTTTTTTTGTGTGACATGTTCTAATATAGTCACAT
検出プローブ配列:TCTGATATAATCTTGTACAGTGTGTTTTTTTTTT-NH2
鋳型DNA配列:
CACACTGTACAAGATTATATCAGAATGTGACTATATTAGAACATGTCACAC
【0173】
2、調製方法
2.1、シリカ蛍光ナノ粒子の合成及び表面カルボキシル化修飾
実施例1と同様にした。
【0174】
2.2、スライドの表面活性化および捕捉プローブの修飾
(1) 低吸着スライドガラス(Thermo)を取り出し、超純水で超音波処理を1時間行い、無塵条件下で70℃で12時間乾燥した。スライドガラス表面をプラズマ洗浄機で洗浄し、スライドガラスの表面に高活性を有する水酸基が生成された。
【0175】
(2) 活性化後のスライドガラスを1%のAPTESに浸漬し、37℃で2時間反応させて、スライドガラスの表面にアミノを有させる。超純水で5回洗浄した後、37℃で乾燥させた。
【0176】
(3) 二末端カルボキシル化ポリエチレングリコール0.5%を取り、EDC 5倍量とNHS 10倍量を加える。10分間後に、(2)で得られたスライドガラスを活性したポリエチレングリコール溶液に浸漬した。反応15分後、超純水でスライドガラスの表面を5回洗浄した後、窒素ブローで乾燥した。
【0177】
(4) スライドグラスの表面に1μMの捕捉プローブを300μL滴下し、室温で1時間反応させ、超純水で5回洗浄し、未反応の捕捉プローブを除去した。
【0178】
(5) 捕捉プローブが結合されたスライドをBuffer Dに浸漬し、37℃で一晩インキュベートする。その後、超純水で5回洗浄し、窒素で乾燥させ、50℃で一晩乾燥させる。
【0179】
2.3検出プローブとシリカ蛍光ナノ粒子との共有結合によるカップリング
(1) シリカ蛍光ナノ粒子10μLを取り、PBS緩衝液40μLを加え、超音波処理を1分間行った。
【0180】
(2) EDC 0.01gを50μLのPBS緩衝液に溶解し、また、NHS 0.025gを150μLのPBS緩衝液に溶解した。
【0181】
(3) シリカ蛍光ナノ粒子を12000rpmで遠心分離し、上清を除去した。50μLのPBS緩衝液を加えて再懸濁し、超音波処理を1分間行った後、2.5μLのEDC溶液を加え、超音波処理を1分間行った。その後、7.5μLのNHS溶液を加え、混合後、37℃で15分間反応させ、12000rpmで15分間遠心分離し、上清を除去した。50μLのPBS緩衝液を用いてナノ粒子を再懸濁した。
【0182】
(4) 10μMの検出プローブ10μLを加え、37℃で2時間反応させた。
【0183】
(5) 25μLのBuffer Dを添加し、密閉状態で37℃で1時間反応した後、12000rpmで15分間遠心し、100μLのBuffer Eを用いて再懸濁した。
【0184】
3、実験方法
検量線の作成
(1) サンプル希釈液を用いて、鋳型DNA分子の濃度をそれぞれ0、1、10、50、100、1000pMに希釈した。
【0185】
(2) スライドガラスの反応領域に50μLのサンプルを滴下し、常温で30分間反応させた。
【0186】
(3) 検出プローブが結合されたシリカ蛍光ナノ粒子を50μL入れ、常温で30分間インキュベートし、洗浄緩衝液で4回洗浄し、残ったシリカ蛍光ナノ粒子を洗い流し、上清を除去した。
【0187】
(4) 蛍光顕微鏡(ニコンEclipse Ti-U)を用いて単分子イメージングを行い、さらに、単分子計数モードと蛍光強度積分モードの組み合わせによって、単分子計数統計及び分析を行った。
【0188】
(5) 各濃度について、検出を6回繰り返し、その結果をもとに検量線を作成し、各ポイントのCV%値を算出した。
【0189】
4、実験結果
検出結果を図17に示す。図17から、本実施例では、鋳型DNA分子の検出下限が0.5pMであり、PCR検出感度に近いことがわかる。
【0190】
実施例23:磁気ビーズ法による緩衝液中のDNA分子の定量検出 (シリカ蛍光ナノ粒子:粒径220nm)。
【0191】
実施例22において、低吸着スライドガラスをトシル活性化M280磁気ビーズに代えた以外は、実施例22と同様にして、その結果を表2に示す。
【0192】
また、出願人は、インサイチュシグナル増強ナノ粒子が、希土類元素(ユーロピウム)をポリスチレンで被覆した蛍光粒子、蛍光タンパク質(GFP)をデキストランで被覆した蛍光粒子、量子ドット(硫化カドミウム)を架橋アガロースで被覆した蛍光粒子である場合についても実験を行った。具体的には、実施例1において、フルオレセインをシリカで被覆した蛍光粒子を上記3種類の蛍光粒子に置き換えた。結果として、いずれも優れた感度を得た(50fg/mL~5fg/mL)。
【0193】
【表1】
【0194】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】