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特表2022-521706抗BAG2抗体および癌を治療する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-12
(54)【発明の名称】抗BAG2抗体および癌を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220405BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20220405BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220405BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220405BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220405BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220405BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220405BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220405BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220405BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220405BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20220405BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/18 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P35/00
A61P35/04
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K38/20
A61K39/395 N
A61K39/395 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547311
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(85)【翻訳文提出日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 IB2020051136
(87)【国際公開番号】W WO2020165794
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】10-2019-0016347
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0016359
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】521355289
【氏名又は名称】メドパクト,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】キム,セオン ジン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ドン ウー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AA87Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AB02
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084AA19
4C084DA12
4C084DA14
4C084DA15
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA23
4C084MA24
4C084MA31
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA58
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB072
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG08
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本出願は、BAG2ポリペプチドまたはそのフラグメントに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント、およびその癌を処置する方法を開示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BAG2ポリペプチドまたはそのフラグメントに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
SEQ ID NO:33のアミノ酸配列からなる相補性決定領域(VH-CDR)1と、SEQ ID NO:39のアミノ酸配列からなるVH-CDR2と、SEQ ID NO:45のアミノ酸配列からなるVH-CDR3とを含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:51のアミノ酸配列からなる相補性決定領域(VL-CDR)1と、SEQ ID NO:57のアミノ酸配列からなるVL-CDR2と、SEQ ID NO:63のアミノ酸配列からなるVL-CDR3とを含む軽鎖可変領域、
SEQ ID NO:34のアミノ酸配列からなるVH-CDR1と、SEQ ID NO:40のアミノ酸配列からなるVH-CDR2と、SEQ ID NO:46のアミノ酸配列からなるVH-CDR3とを含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:52のアミノ酸配列からなるVL-CDR1と、SEQ ID NO:58のアミノ酸配列からなるVL-CDR2と、SEQ ID NO:64のアミノ酸配列からなるVL-CDR3とを含む軽鎖可変領域、
SEQ ID NO:35のアミノ酸配列からなるVH-CDR1と、SEQ ID NO:41のアミノ酸配列からなるVH-CDR2と、SEQ ID NO:47のアミノ酸配列からなるVH-CDR3とを含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:53のアミノ酸配列からなるVL-CDR1と、SEQ ID NO:59のアミノ酸配列からなるVL-CDR2と、SEQ ID NO:65のアミノ酸配列からなるVL-CDR3とを含む軽鎖可変領域、
SEQ ID NO:36のアミノ酸配列からなるVH-CDR1と、SEQ ID NO:42のアミノ酸配列からなるVH-CDR2と、SEQ ID NO:48のアミノ酸配列からなるVH-CDR3と、を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:54のアミノ酸配列からなるVL-CDR1と、SEQ ID NO:60のアミノ酸配列からなるVL-CDR2と、SEQ ID NO:66のアミノ酸配列からなるVL-CDR3と、を含む軽鎖可変領域、
SEQ ID NO:37のアミノ酸配列からなるVH-CDR1と、SEQ ID NO:43のアミノ酸配列からなるVH-CDR2と、SEQ ID NO:49のアミノ酸配列からなるVH-CDR3とを含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:55のアミノ酸配列からなるVL-CDR1と、SEQ ID NO:61のアミノ酸配列からなるVL-CDR2と、SEQ ID NO:67のアミノ酸配列からなるVL-CDR3とを含む軽鎖可変領域、ならびに
SEQ ID NO:38のアミノ酸配列からなるVH-CDR1と、SEQ ID NO:44のアミノ酸配列からなるVH-CDR2と、SEQ ID NO:50のアミノ酸配列からなるVH-CDR3とを含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:56のアミノ酸配列からなるVL-CDR1と、SEQ ID NO:62のアミノ酸配列からなるVL-CDR2と、SEQ ID NO:68のアミノ酸配列からなるVL-CDR3とを含む軽鎖可変領域、
を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
SEQ ID NO:21~26から選択される任意の1種のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;
SEQ ID NO:27~32から選択される任意の1種のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
SEQ ID NO:21の重鎖可変領域およびSEQ ID NO:27の軽鎖可変領域;SEQ ID NO:22の重鎖可変領域およびSEQ ID NO:28の軽鎖可変領域;SEQ ID NO:23の重鎖可変領域および
SEQ ID NO:29の軽鎖可変領域;SEQ ID NO:24の重鎖可変領域およびSEQ ID NO:30の軽鎖可変領域;SEQ ID NO:25の重鎖可変領域およびSEQ ID NO:31の軽鎖可変領域;もしくはSEQ ID NO:26の重鎖可変領域およびSEQ ID NO:32の軽鎖可変領域;またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
モノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
検出可能な標識または検出可能なシグナルを発することができる標識を付けられる、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
前記抗体が、ヒト化される、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
ホットスポットが、前記抗体のCDRの外部および内部で操作される(engineered out in)、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
前記モノクローナル抗体が、一価、Fab、または一本鎖可変領域フラグメント抗体(scFv)である、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
前記モノクローナル抗体が、二価、二重特異性、または三重特異性である、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
前記モノクローナル抗体が、化学物質またはタンパク質に融合される、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
前記モノクローナル抗体が、毒素またはサイトカインに融合される、請求項11に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
アクセッション番号KCTC 13737BP、KCTC 13738BP、KCTC 13739BP、KCTC 13740BP、KCTC 13741BP、KCTC 13742BP、KCTC 13743BP、KCTC 13744BP、KCTC 13745BPおよびKCTC 13746BPで寄託されたハイブリドーマ細胞から選択されるハイブリドーマ細胞により生成される、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項14】
複数の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項15】
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド。
【請求項16】
ベクターである、請求項15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
検出可能な標識または検出可能なシグナルを発することができる標識が、前記ポリヌクレオチドとコンジュゲートされる、請求項16に記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
請求項15に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項19】
請求項18に記載の宿主細胞を培養すること;および
前記得られた培養物から抗体またはその抗原結合フラグメントを分離すること、
を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを生成する方法。
【請求項20】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントを印付けることをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
個体における原発または転移癌である癌を処置するための方法であって、請求項1に記載の抗BAG2またはその抗原結合フラグメントをそれを必要とする前記個体に投与することを含む、方法。
【請求項22】
既存の治療薬を共投与することまたは連続で投与することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記既存の治療が、癌免疫療法薬である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記免疫療法薬が、免疫チェックポイント分子への阻害薬である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記免疫チェックポイント分子が、PD-1、PD-L1、またはCTLA-4である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記免疫療法薬が、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン15(IL-15)、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、4-1BBリガンド、GITRL、OX-40L、抗CD3抗体、抗CD27抗体、抗CTLA4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗GITR抗体、抗OX-40抗体、抗4-1BB抗体、抗LAG-3抗体、および抗TIM-3抗体からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記癌が、例えば、乳癌、大腸癌、頭頸部癌、結腸癌、皮膚癌、膵臓癌、肺癌、胃癌、前立腺癌、膀胱癌、尿道癌、肝臓癌、腎臓癌、淡明細胞肉腫、黒色腫、脳脊髄腫瘍、脳癌、胸腺、中皮腫、食道癌、胆管癌、精巣癌、胚細胞腫瘍、甲状腺癌、副甲状腺癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、リンパ腫、骨髄異形成症候群(MOS)、骨髄線維症、急性白血病、慢性白血病、多発性骨髄腫、ホジキン病、内分泌癌、および肉腫から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記癌が、乳癌、肺癌、黒色腫、大腸癌、または膵臓癌である、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本開示は、BAG2ポリペプチドまたはそのフラグメントに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。本出願はまた、本発明の組成物を用いた抗癌治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
2.一般的背景および最新技術
コシャペロンBcl-2関連アタノジーン(BAG)タンパク質ファミリーは、細胞内タンパク質フォールディング、ストレス応答、神経細胞分化、アポトーシス、および細胞増殖を含む種々の生理学的プロセスを媒介し、様々な協調的タンパク質に機能的に結合する。抗アポトーシス活性を有するBAGドメインファミリーのメンバーの1種であるBAG2は、シャペロン関連ユビキチンリガーゼであるHsc70相互作用タンパク質のC-末端(CHIP)の負の調節因子である。CHIP活性の阻害を通したタンパク質調節におけるBAG2の主な役割は、PINK1およびCFTRなどのシャペロンに関係するタンパク質の安定化を通して神経変性疾患および常染色体劣性遺伝疾患に関連する。BAG2の発現がプロテアソーム阻害剤に誘導されたアポトーシスを増加させ、甲状腺癌細胞がプロテアソーム阻害剤MG132に暴露されるとBAG2ノックダウンがアポトーシスを部分的に阻害する、というように、BAG2がアポトーシス促進活性を有することが報告されている。BAGタンパク質は、BAG2-Hsp70複合体の形成とは別に、種々の結合パートナーと機能的に相互作用し、ストレスシグナル伝達、細胞分裂、アポトーシスおよび細胞分化などの様々な細胞プロセスを調節する。様々な変異体K-Rasに誘導された腫瘍において、BAG2の過剰発現が強力な腫瘍遺伝子であるSTK33タンパク質の安定化を促進し、これにより腫瘍の発達を促進することも、報告されている。加えて、BAG2タンパク質の発現および場所が、乳癌の進行または転移の間に癌細胞の組織病理学的および分子遺伝子学的病態に応じて変動し得ることが、示唆されている。BAG2タンパク質が、腫瘍形成の間に、タンパク質分解酵素であるカテプシンBとの相互作用により細胞から分泌されることが見出されており、かつBAG2タンパク質の損失が、乳癌の動物モデルにおいて癌形成および肺への転移を完全に阻害することが、確認されている。結果として、BAG2タンパク質阻害剤の開発は、癌患者の処置および生存に寄与するであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、これらの知見にもかかわらず、癌の進行および転移におけるBAG2の役割は、明確には知られていない。加えて、詳細な試験は、BAG2モノクローナル抗体で実行されていない。したがって、BAG2ポリペプチドまたはそのフラグメントに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
本発明のこれらおよび他の目的は、本発明の以下の記載、それに付属の参照図面および添付の特許請求の範囲からより完全に理解されよう。
【0005】
一態様は、BAG2ポリペプチドまたはそのフラグメントに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0006】
別の態様は、抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0007】
別の態様は、このポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供する。
【0008】
別の態様は、この抗体またはその抗原結合フラグメントを生成する方法を提供する。
【0009】
追加の態様は、一部は以下の記載に表され、一部は以下の記載から明白となるか、または本開示で提示された実施形態の実践により学習され得る。
【0010】
一態様は、BAG2ポリペプチドまたはそのフラグメントに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0011】
BAG2ポリペプチドは、哺乳動物に由来してよい。哺乳動物は、ヒト(ホモ・サピエンス)、マウス(ハツカネズミ)、サル、ウシ、またはウマであってよい。BAG2は、SEQ ID NO:69のアミノ酸配列を含んでよい。SEQ ID NO:69のアミノ酸配列は、NCBI参照SEQ ID NO:NM_004282.4に対応する配列である。BAG2タンパク質は、SEQ ID NO:69のアミノ酸配列と生物学的に同等の活性を有する変異体を含むが、それらのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:69のアミノ酸配列と一致しない場合がある。BAG2ポリペプチドは、SEQ ID NO:69の配列に対して少なくとも60%、例えば少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでよい。BAG2タンパク質は、少なくとも1つのアミノ酸残基、少なくとも2つのアミノ酸残基、少なくとも3つのアミノ酸残基、少なくとも4つのアミノ酸残基、少なくとも5つのアミノ酸残基、少なくとも6つのアミノ酸残基、または少なくとも7つのアミノ酸残基以外は、SEQ ID NO:69と同じ配列を有するポリペプチドであってよい。本明細書において、「ポリペプチド」は、「タンパク質」と互換的に用いられてよい。
【0012】
抗体は、抗原性部位に対する特異的免疫グロブリンを指す。抗体は、BAG2ポリペプチドまたはそのフラグメントに特異的に結合するポリペプチドまたはポリペプチドの組み合わせを指す。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、または組換え抗体、例えばScFvフラグメント、ダイアボディ、一本鎖抗体および同様のものを包含してよく、全ての免疫グロブリン抗体を包含してよい。抗体は、2つの完全長軽鎖および2つの完全長重鎖を有する抗体の完全形態を包含してよく、かつ2つの軽鎖および2つの重鎖を有する完全形態のインタクト抗体の構造が存在しないにもかかわらず、特異的抗原結合部位、即ち結合ドメインを有することの包含により、抗原結合機能を保持する抗体分子の機能的フラグメントを含んでもよい。
【0013】
抗原結合フラグメントは、免疫グロブリンの全構造のフラグメントであり、それに抗原が結合できる部分を含むポリペプチドの部分を指す。例えば、その抗原結合フラグメントは、scFv、(scFv)2、Fv、Fab、Fab’、FvF(ab’)2、またはそれらの組み合わせであってよい。
【0014】
5種の重鎖γ、δ、α、μおよびεが存在し、重鎖は、抗体の型を決定してよい。αおよびγはそれぞれ、450のアミノ酸を含み、μおよびεはそれぞれ、550のアミノ酸を含む。重鎖は、2つの領域、即ち、可変領域および定常領域を有する。
【0015】
2種の軽鎖カッパおよびラムダが存在し、約211のアミノ酸~約217のアミノ酸を含んでよい。軽鎖は、定常領域および可変領域を有してよい。
【0016】
抗体またはその抗原結合フラグメントは、SEQ ID NO:33のアミノ酸配列からなる相補性決定領域(VH-CDR)1と、SEQ ID NO:39のアミノ酸配列からなるVH-CDR2と、SEQ ID NO:45のアミノ酸配列からなるVH-CDR3、を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:51のアミノ酸配列からなる相補性決定領域(VL-CDR)1と、SEQ ID NO:57のアミノ酸配列からなるVL-CDR2と、SEQ ID NO:63のアミノ酸配列からなるVL-CDR3、を含む軽鎖可変領域;SEQ ID NO:34のアミノ酸配列からなるVH-CDR1と、SEQ ID NO:40のアミノ酸配列からなるVH-CDR2と、SEQ ID NO:46のアミノ酸配列からなるVH-CDR3、を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:52のアミノ酸配列からなるVL-CDR1と、SEQ ID NO:58のアミノ酸配列からなるVL-CDR2と、SEQ ID NO:64のアミノ酸配列からなるVL-CDR3、を含む軽鎖可変領域;SEQ ID NO:35のアミノ酸配列からなるVH-CDR1と、SEQ ID NO:41のアミノ酸配列からなるVH-CDR2と、SEQ ID NO:47のアミノ酸配列からなるVH-CDR3、を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:53のアミノ酸配列からなるVL-CDR1と、SEQ ID NO:59のアミノ酸配列からなるVL-CDR2と、SEQ ID NO:65のアミノ酸配列からなるVL-CDR3、を含む軽鎖可変領域;SEQ ID NO:36のアミノ酸配列からなるVH-CDR1と、SEQ ID NO:42のアミノ酸配列からなるVH-CDR2と、SEQ ID NO:48のアミノ酸配列からなるVH-CDR3、を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:54のアミノ酸配列からなるVL-CDR1と、SEQ ID NO:60のアミノ酸配列からなるVL-CDR2と、SEQ ID NO:66のアミノ酸配列からなるVL-CDR3、を含む軽鎖可変領域;SEQ ID NO:37のアミノ酸配列からなるVH-CDR1と、SEQ ID NO:43のアミノ酸配列からなるVH-CDR2と、SEQ ID NO:49のアミノ酸配列からなるVH-CDR3、を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:55のアミノ酸配列からなるVL-CDR1と、SEQ ID NO:61のアミノ酸配列からなるVL-CDR2と、SEQ ID NO:67のアミノ酸配列からなるVL-CDR3、を含む軽鎖可変領域;SEQ ID NO:38のアミノ酸配列からなるVH-CDR1と、SEQ ID NO:44のアミノ酸配列からなるVH-CDR2と、SEQ ID NO:50のアミノ酸配列からなるVH-CDR3、を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:56のアミノ酸配列からなるVL-CDR1と、SEQ ID NO:62のアミノ酸配列からなるVL-CDR2と、SEQ ID NO:68のアミノ酸配列からなるVL-CDR3、を含む軽鎖可変領域;またはそれらの組み合わせを含んでよい。
【0017】
SEQ ID NO:39中の6番目および7番目のXaaは、グリシン(Gly)またはアラニン(Ala)であってよい。SEQ ID NO:35中の2番目のXaaは、チロシン(Tyr)またはヒスチジン(His)であってよい。SEQ ID NO:41中の8番目のXaaは、セリン(Ser)またはトレオニン(Thr)であってよい。SEQ ID NO:47中の12番目のXaaは、チロシン(Tyr)またはヒスチジン(His)であってよい。SEQ ID NO:53中の3番目のXaaは、メチオニン(Met)またはイソロイシン(lie)であってよい。SEQ ID NO:59中の2番目のXaaは、AlaまたはSerであってよい。
【0018】
抗体またはその抗原結合フラグメントは、SEQ ID NO:21~26から選択される任意の1種のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;SEQ ID NO:27~32から選択される任意の1種のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;またはその重鎖可変領域およびその軽鎖可変領域を含んでよい。
【0019】
抗体またはその抗原結合フラグメントは、SEQ ID NO:21の重鎖可変領域およびSEQ ID NO:27の軽鎖可変領域;SEQ ID NO:22の重鎖可変領域およびSEQ ID NO:28の軽鎖可変領域;SEQ ID NO:23の重鎖可変領域およびSEQ ID NO:29の軽鎖可変領域;SEQ ID NO:24の重鎖可変領域およびSEQ ID NO:30の軽鎖可変領域;SEQ ID NO:25の重鎖可変領域およびSEQ ID NO:31の軽鎖可変領域;もしくはSEQ ID NO:26の重鎖可変領域およびSEQ ID NO:32の軽鎖可変領域;またはそれらの組み合わせを含んでよい。
【0020】
SEQ ID NO:21中の56番目のXaaおよび57番目のXaaは、それぞれGlyまたはAlaであってよい。SEQ ID NO:23において、1番目のXaaは、グルタミン(Gin)またはグルタミン酸(Glu)であってよく、7番目のXaaは、Serまたはプロリン(praline)(Pro)であってよく、12番目のXaaは、バリン(Val)またはアラニン(Ala)であってよく、27番目のXaaは、TyrまたはHisであってよく、58番目のXaaは、SerまたはThrであってよく、61番目のXaaは、アスパラギン(Asn)またはSerであってよく、74番目のXaaは、アルギニン(Arg)またはリシン(Lys)であってよく、83番目のXaaは、フェニルアラニン(Phe)またはロイシン(Leu)であってよく、92番目のXaaは、GlyまたはAlaであってよく、108番目のXaaは、HisまたはTyrであってよい。SEQ ID NO:27における53番目のXaaは、lieまたはPheであってよい。SEQ ID NO:29において、23番目のXaaは、Metまたはlieであってよく、45番目のXaaは、AlaまたはSerであってよく、73番目のXaaは、Gluまたはアスパラギン酸(Asp)であってよく、100番目のXaaは、Metまたはlieであってよい。
【0021】
抗体またはその抗原結合フラグメントは、複数の抗体またはその抗原結合フラグメントを包含し、No.1の組の1つおよびNo.2の組の1つ;No.1の組の1つおよびNo.3の組の1つ;ならびにNo.2の組の1つおよびNo.3の組の1つ、から選択される抗体の組み合わせであってよい。No.1の組は、SEQ ID NO:21のVHおよびSEQ ID NO:27のVL、ならびにSEQ ID NO:22のVHおよびSEQ ID NO:28のVLを含む、BAG2タンパク質の中央領域に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであってよい。No.2の組は、SEQ ID NO:23のVHおよびSEQ ID NO:29のVL、ならびにSEQ ID NO:24のVHおよびSEQ ID NO:30のVLを含む、BAG2タンパク質のN-末端領域に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであってよい。No.3の組は、SEQ ID NO:25のVHおよびSEQ ID NO:31のVL、ならびにSEQ ID NO:26のVHおよびSEQ ID NO:32のVLを含む、BAG2タンパク質のC-末端領域に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであってよい。
【0022】
抗体またはその抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体であってよい。
【0023】
抗体またはその抗原結合フラグメントは、検出可能な標識、または検出可能なシグナルを発することができる標識でマーキングされてよい。標識は、抗体に直接的または間接的にコンジュゲートされて標識された抗体またはその抗原結合フラグメントを生成する検出可能な化合物または組成物を指す。標識は、それ自体が検出可能であってよく、検出可能な基質化合物または組成物の化学修飾を触媒してよい。
【0024】
標識は、免疫蛍光標識、化学発光標識、リン光標識、放射性標識、エピトープタグ、アビジン/ビオチン、コロイド金粒子、着色粒子、磁気粒子、クロモフォア標識、ECL標識、酵素、または同様のものであってよい。
【0025】
抗体またはその抗原結合フラグメントは、アクセッション番号KCTC 137378P、KCTC 137388P、KCTC 137398P、KCTC 137408P、KCTC 137418P、KCTC 137428P、KCTC 137438P、KCTC 137448P、KCTC 137458PおよびKCTC 137468Pで寄託されたハイブリドーマ細胞から選択されるハイブリドーマ細胞により生成されてよい。
【0026】
ハイブリドーマ細胞は、2種の細胞の人工的融合による腫瘍形成能を有するハイブリッド細胞を指し、一般に、B細胞と免疫化された対象から単離された形質細胞腫細胞とを融合させることにより抗体を連続的に生成するために用いられてよい。本明細書において、ハイブリドーマ細胞はまた、ハイブリッド細胞または融合細胞と称される場合がある。
【0027】
本発明者らは、SEQ ID NO:21のVHおよびSEQ ID NO:27のVL(2A11、4C2、8C4);SEQ ID NO:22のVHおよびSEQ ID NO:28のVL(3B5);SEQ ID NO:23のVHおよびSEQ ID NO:29のVL(9B3、9B12、3B10);SEQ ID NO:24のVHおよびSEQ ID NO:30のVL(10H7);SEQ ID NO:25のVHおよびSEQ ID NO:31のVL(3G8);ならびにSEQ ID NO:26のVHおよびSEQ ID NO:32のVL(3F12)を含む抗BAG2抗体、およびそれを生成するハイブリドーマ細胞を同定した。同定された抗BAG2抗体は乳癌細胞において抗原-抗体反応を示すことが、確認された。
【0028】
別の態様は、抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを提供する。
【0029】
ポリヌクレオチドは、重鎖可変領域をコードするSEQ ID NO:1~10からなる群から選択される任意の1つのヌクレオチド配列、および軽鎖可変領域をコードするSEQ ID NO:11~20からなる群から選択される任意の1つのヌクレオチド配列であってよい。
【0030】
ポリヌクレオチドは、ベクターであってよい。ベクターは、細胞内でポリヌクレオチドを複製および/または発現させることにより得られてよい。細胞は、真核細胞または原核細胞であってよい。真核細胞は、哺乳動物細胞、植物細胞、酵母細胞、または昆虫細胞であってよい。哺乳動物は、ヒト、サル、ウサギ、ラット、ハムスターまたはマウスであってよい。原核細胞は、バクテリア細胞であってよい。バクテリアは、E.コリであってよい。ベクターは、発現ベクターであってよい。発現ベクターにおいて、ポリヌクレオチドは、適当な調節領域に動作可能に連結され、そのためポリヌクレオチドは、宿主細胞中で発現される。調節領域は、プロモーター、エンハンサー、またはターミネーターであってよい。ベクターはまた、選択マーカも含んでよい。ベクターは、ファージ、プラスミド、コスミド、ミニ染色体、ウイルス、またはレトロウイルスベクターであってよい。ベクターは、抗体の重鎖可変領域もしくは軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドを含んでよく、または重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドおよび軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドの両方を含んでよい。
【0031】
ポリヌクレオチドは、検出可能な標識または検出可能なシグナルを発することが可能な標識でコンジュゲートされていてよい。標識は、蛍光色素、リン光色素、放射性同位体、クロモフォア、量子ドット、クエンチャー、磁気ビーズナノ粒子、金ナノ粒子、ナノ蛍光体、ケイ素ナノ粒子、発光特性を有する半導体微粒子、および同様のものであってよい。例えば蛍光色素は、シアニン(シアニン2)、アミドメチルクマリン、フルオロセイン、インドカルボシアニン(シアニン3)、シアニン3.5、テトラメチルローダミン、ローダミンレッド、テキサスレッド、インディアンカルボシアニン(シアニン5)、シアニン5.5、シアニン7、Oysterおよび同様のものであってよい。例えば、半導体微粒子は、セレン化カドミウム(cadmium selenium)(CdSe)、テルル化カドミウム(cadmium tellurium)(CdTe)、インジウムガリウムリン(InGaP)、銀インジウム亜鉛硫化物(silver indium zinc sulfide)(AgInZnS)、または同様のものであってよい。標識とのコンジュゲーション方法は、標識物質をポリヌクレオチド3’末端に結合させる方法、標識物質を5’末端に結合させる方法、または標識物質が結合されたヌクレオチドをポリヌクレオチド中に含める方法であってよい。3’末端または5’末端への標識のコンジュゲーティングは、酵素反応により実施されてよく、酵素は、T4 RNAリガーゼ、末端トランスフェラーゼ、ポリAポリメラーゼ、または同様のものであってよい。標識は、蛍光顕微鏡、走査電子顕微鏡、透過電子顕微鏡、コンピュータ断層撮影、磁気共鳴画像法、または同様のものであってよい。
【0032】
別の態様は、ポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供する。
【0033】
ポリヌクレオチドは、上記と同じである。
【0034】
宿主細胞は、それぞれがポリヌクレオチドを含有する、バクテリア細胞、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞、動物細胞または植物細胞であってよい。バクテリア細胞は、エシェリヒア・コリ(E.コリ)、ストレプトマイセス属、またはサルモネラ・ティフィムリウムであってよい。酵母細胞は、ピキア・パストリスであってよい。昆虫細胞は、ドロソフィラ、またはスポドプテラ(Spodofterra)Sf9細胞であってよい。動物細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、マウス骨髄腫(SP2/0)、ヒトリンパ芽球様、COS、マウス骨髄腫(NSO)、293T、ウシ(bow)黒色腫細胞、HT-1080、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、ヒト胎児腎臓細胞(HEK)、またはPERC.6(ヒト網膜細胞)であってよい。
【0035】
ポリヌクレオチドは、宿主細胞中に導入されてよい。導入は、抗体をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターを宿主細胞に送達する方法を指す。そのような導入は、リン酸カルシウム-DNA共沈法、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、ポリブレン媒介トランスフェクション、電気ショック、マイクロインジェクション、リポソーム融合、Lipofectamineおよびプロトプラスト融合を含む、当該技術分野で公知の様々な方法により実行されてよい。加えて、形質導入は、感染によるウイルス粒子を用いた細胞内への標的生成物の送達を指す。加えて、ベクターは、遺伝子ボンバードメントまたは同様のものにより宿主細胞内に導入されてよい。導入はまた、形質転換と称される場合がある。
【0036】
別の態様は、抗体またはその抗原結合フラグメントを生成する方法を提供する。
【0037】
方法は、宿主細胞を培養すること;および得られた培養物から抗体またはその抗原結合フラグメントを分離すること、を含んでいてよい。
【0038】
宿主細胞は、上記のものと同じである。
【0039】
培養は、当該技術分野で公知の適切な培地および培養条件に従って実施されてよい。当業者は、選択された微生物に応じた培地および培養条件を容易に制御し得る。培養方法は、例えばバッチ、連続およびフェドバッチ培養を包含してよい。
【0040】
培地は、様々な炭素供給源、窒素供給源、および微量元素の構成成分を含んでいてよい。
【0041】
炭素供給源は、例えばグルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デンプン、もしくはセルロースなどの炭水化物;大豆油、ひまわり油、ひまし油もしくはココナッツ油などの脂肪;パルミチン酸、ステアリン酸およびリノール酸などの脂肪酸グリセロール;エタノールなどのアルコール;酢酸などの有機酸;またはそれらの組み合わせであってよい。窒素供給源は、例えばペプトン、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカー(CSL)、および大豆小麦(Soybean wheat)などの無機窒素供給源、尿素、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウムおよび窒素アンモニウムなどの有機窒素供給源、またはそれらの組み合わせを包含してよい。リンの供給源としての培地は、例えばリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムおよび対応するナトリウム含有塩、またはマグネシウム抗酸化剤もしくは鉄抗酸化剤などの金属塩を含んでよい。加えて、アミノ酸、ビタミン、適当な前駆体および同様のものが、培地に含まれてよい。培地または個々の構成成分が、培養物にバッチ方式または連続で添加されてよい。
【0042】
加えて、宿主細胞が培養される期間の間、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アンモニア、リン酸および硫酸などの化合物が、適切な手法で細菌培養物に添加されて、培養物のpHを調整してよい。加えて、宿主細胞の培養の間、脂肪酸ポリグリコールエステルなどの消泡剤を用いて、泡の形成を抑制してよい。
【0043】
細胞は、好気的、微好気的、または嫌気的条件で培養されてよい。微好気的条件は、大気中の酸素レベルより低いレベルの酸素が培地中に溶解されている培養条件を指す。低レベルの酸素は、例えば約0.1%~約10%、約1%~約9%、約2%~約8%、約3%~約7%、または約4%~約6%であってよい。加えて、微好気的条件は、培地中に溶解された酸素の濃度が、約0.9ppm~約3.6ppmの範囲である条件を包含してよい。培養温度は、例えば、約20℃~約45℃、または約25℃~約40℃であってよい。インキュベーションは、所望の量の抗体またはその抗原結合フラグメントが標的レベルに達するまで、継続されてよい。
【0044】
分離は、抗体を分離するための当該技術分野で公知の方法により実施されてよい。分離は、遠心分離、濾過、抽出、噴霧、乾燥、蒸発、沈殿、結晶化、電気泳動、分別溶解、およびクロマトグラフィーから選択される1種または複数の工程を実施することを包含してよい。
【0045】
方法は、分離された抗体またはその抗原結合フラグメントを標識することをさらに含んでよい。標識は、免疫蛍光標識、化学発光標識、リン光標識、放射性標識、エピトープタグ、アビジン/ビオチン、金コロイド粒子、着色粒子、磁気粒子、クロモフォア標識、ECL標識、酵素、または同様のものであってよい。
【0046】
一態様において、本発明は、個体において原発または転移癌のどちらかである癌を処置するための方法であって、先に議論された抗BAG2またはその抗原結合フラグメントを、それを必要とする個体に投与することを含む、方法を対象とする。方法は、既存の治療薬を共投与することまたは連続で投与することを含んでよい。既存の治療は、癌免疫療法薬であってよく、それは、PD-1、PD-L1、またはCTLA4などの、免疫チェックポイント分子への阻害剤を含んでよい。免疫療法薬は、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン15(IL-15)、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、4-1BBリガンド、GITRL、OX-40L、抗CD3抗体、抗CD27抗体、抗CTLA4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗GITR抗体、抗OX-40抗体、抗4-1BB抗体、抗LAG-3抗体、および抗TIM-3抗体であってよい。癌は、乳癌、大腸癌、頭頸部癌、結腸癌、皮膚癌、膵臓癌、肺癌、胃癌、前立腺癌、膀胱癌、尿道癌、肝臓癌、腎臓癌、淡明細胞肉腫、黒色腫、脳脊髄腫瘍、脳癌、胸腺、中皮腫、食道癌、胆管癌、精巣癌、胚細胞腫瘍、甲状腺癌、副甲状腺癌、子宮頸癌、卵巣癌、子宮内膜癌、リンパ腫、骨髄異形成症候群(MOS)、骨髄線維症、急性白血病、慢性白血病、多発性骨髄腫、ホジキン病、内分泌癌、および肉腫であってよい。
【0047】
本特許または出願ファイルは、有色で実行された少なくとも1つの図面を含む。有色の図面を有する本特許または特許出願公開のコピーは、要求に応じて、必要な料金の支払いを受けて、特許事務所により提供されよう。
【0048】
本発明は、本明細書の以下に与えられた詳細な記載および添付の図面からより完全に理解され、添付の図面は、例示に過ぎず、このため本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】10種のマウスハイブリドーマ細胞から生成された抗BAG2抗体のウェスタンブロッティングの結果を示す。
図2A】抗BAG2抗体またはそのフラグメントの完全長BAG2ポリペプチドについてのウェスタンブロッティングの結果を示す。
図2B】抗BAG2抗体またはそのフラグメントの完全長BAG2ポリペプチドについてのウェスタンブロッティングの結果を示す。
図3】各抗BAG2抗体と反応するBAG2ドメインを示す。
図4A】乳癌モデルにおける抗PD-L1抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(a)BALB/cマウスに、2×10のEMT6細胞を注射した。腫瘍細胞注射後12日目から、いくらかのマウスに、抗BAG2抗体3B10(200μg/マウス)またはアイソタイプ対照抗体を2日に1回、腹腔内(i.p.)注射した。14日目から、いくらかのマウスは、抗PD-L1抗体(100μg/マウスi.p.)またはアイソタイプ対照抗体の単独注射を2日に1回受けた。実験計画を表す。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、***p<0.001(対照マウスIgG2a投与群との対比)。
図4B】乳癌モデルにおける抗PD-L1抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(bおよびc)対照マウス(黒色の線、n=5)、抗BAG2抗体3B10のみで処置されたマウス(緑色の線、n=5)、抗PD-L1抗体のみで処置されたマウス(青色の線、n=5)、ならびに3B10および抗PD-L1抗体の両方で処置されたマウス(赤色の線、n=5)の腫瘍体積。腫瘍の成長を、モニタリングし、腫瘍体積を、電子キャリパーで12、14、16、18、20、22、および24日目に測定した。25日目に、マウスを殺処分した。(b)群内の個々のマウスの腫瘍体積。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、***p<0.001(対照マウスIgG2a投与群との対比)。
図4C】乳癌モデルにおける抗PD-L1抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(bおよびc)対照マウス(黒色の線、n=5)、抗BAG2抗体3B10のみで処置されたマウス(緑色の線、n=5)、抗PD-L1抗体のみで処置されたマウス(青色の線、n=5)、ならびに3B10および抗PD-L1抗体の両方で処置されたマウス(赤色の線、n=5)の腫瘍体積。腫瘍の成長を、モニタリングし、腫瘍体積を、電子キャリパーで12、14、16、18、20、22、および24日目に測定した。25日目に、マウスを殺処分した。(c)4つの処置群の平均腫瘍成長。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、***p<0.001(対照マウスIgG2a投与群との対比)。
図4D】乳癌モデルにおける抗PD-L1抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(d)全群のEMT6腫瘍微小環境(TME)におけるCD3+/CD8+ T細胞のプロファイル。フローサイトメトリーデータは、2回の独立した実験の平均である。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、***p<0.001(対照マウスIgG2a投与群との対比)。
図5A】肺癌モデルにおける抗PD-L1抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(a)C57BL/6マウスに、5×10のLLC細胞を注射した。約8日後、平均腫瘍サイズが約60~80mmに達したら、マウスを、全群の平均腫瘍サイズが類似するように群(n=5)に選別し、i.p.注射による処置を開始した。腫瘍細胞注射後8日目から、いくらかのマウスに、抗BAG2抗体3B10(200μg/マウス)、抗PD-L1抗体(100μg/マウス)、抗PD-L1抗体と3B10の組み合わせ、またはアイソタイプ対照抗体を、試験終了まで3日に1回、i.p.注射した。実験計画を表す。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、**p<0.01(対照マウスIgG2a投与群との対比)。
図5B】肺癌モデルにおける抗PD-L1抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(bおよびc)対照マウス(黒色の線、n=5)、抗BAG2抗体3B10のみで処置されたマウス(緑色の線、n=5)、抗PD-L1抗体のみで処置されたマウス(青色の線、n=5)、ならびに抗BAG2および抗PD-L1抗体の両方で処置されたマウス(赤色の線、n=5)の腫瘍体積。腫瘍の成長を、モニタリングし、腫瘍体積を、電子キャリパーで8、11、14、17および20日目に測定した。20日目に、マウスを殺処分した。(b)群内の個々のマウスの腫瘍体積。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、**p<0.01(対照マウスIgG2a投与群との対比)。
図5C】肺癌モデルにおける抗PD-L1抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(bおよびc)対照マウス(黒色の線、n=5)、抗BAG2抗体3B10のみで処置されたマウス(緑色の線、n=5)、抗PD-L1抗体のみで処置されたマウス(青色の線、n=5)、ならびに抗BAG2および抗PD-L1抗体の両方で処置されたマウス(赤色の線、n=5)の腫瘍体積。腫瘍の成長を、モニタリングし、腫瘍体積を、電子キャリパーで8、11、14、17および20日目に測定した。20日目に、マウスを殺処分した。(c)4つの処置群の平均腫瘍成長。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、**p<0.01(対照マウスIgG2a投与群との対比)。
図5D】肺癌モデルにおける抗PD-L1抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(d)全群のLLC腫瘍微小環境(TME)におけるCD3+/CD8+ T細胞のプロファイル。フローサイトメトリーデータは、2回の独立した実験の平均である。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、**p<0.01(対照マウスIgG2a投与群との対比)。
図6A】黒色腫の肺転移モデルにおける抗PD-L1抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(a)C57BL/6マウスに、2×10のB16-F10-Luc2細胞を静脈内注射した。BLIを実施する場合、マウスは、D-ルシフェリンの腹腔内(i.p.)注射を受け、それらのBLIシグナルをバックグランドとした。黒色腫肺転移腫瘍の成長を、BLIシグナルにより14、20、26、32および38日目にモニタリングし、マウスを、4群の平均BLIシグナルが類似するように、群(n=4)に選別した。腫瘍細胞注射後15日目から、いくらかのマウスに、抗BAG2抗体3F12(200μg/マウス)またはアイソタイプ対照抗体を4日に1回、腹腔内(i.p.)注射した。23日目から、いくらかのマウスは、抗PD-L1(100μg/マウスi.p.)またはアイソタイプ対照抗体の単独注射を試験終了まで4日に1回受けた。39日目に、マウスを殺処分した。実験計画を表す。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(対照マウスIgG2a投与群との対比)。
図6B】黒色腫の肺転移モデルにおける抗PD-L1抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(b)38日目に、対照マウス(n=4)、抗PD-L1抗体のみで処置されたマウス(n=4)、抗BAG2抗体3F12のみで処置されたマウス(n=4)、ならびに抗BAG2抗体3F12および抗PD-L1抗体の両方で処置されたマウス(n=4)の代表的なBLIシグナル。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(対照マウスIgG2a投与群との対比)。
図6C】黒色腫の肺転移モデルにおける抗PD-L1抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(c)4つの処置群の腫瘍のBLIシグナルの定量。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(対照マウスIgG2a投与群との対比)。
図7A】大腸癌モデルにおける抗PD-1抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(a)C57BL/6マウスに、5×10のMC38細胞を注射した。約8日後、平均腫瘍サイズが約30mmに達したら、マウスを、全群の平均腫瘍サイズが類似するように群(n=6)に選別し、i.p.注射による処置を開始した。腫瘍細胞注射後8日目から、いくらかのマウスを、抗BAG2抗体3B10(200μg/マウス)、抗PD-1抗体(50μg/マウス)、抗PD-1抗体と3B10の組み合わせ、またはアイソタイプ対照抗体で、試験終了まで4日に1回処置した。実験計画を表す。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(対照マウスIgG2a投与群との対比)。
図7B】大腸癌モデルにおける抗PD-1抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(bおよびc)対照マウス(黒色の線、n=6)、抗BAG2抗体3B10のみで処置されたマウス(緑色の線、n=6)、抗PD-1抗体のみで処置されたマウス(青色の線、n=6)、ならびに抗BAG2および抗PD-1抗体の両方で処置されたマウス(赤色の線、n=6)の腫瘍体積。腫瘍の成長を、モニタリングし、腫瘍体積を、電子キャリパーで8、10、12、14、16、18、および20日目に測定した。20日目に、マウスを殺処分した。(b)群内の個々のマウスの腫瘍体積。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(対照マウスIgG2a投与群との対比)。
図7C】大腸癌モデルにおける抗PD-1抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(bおよびc)対照マウス(黒色の線、n=6)、抗BAG2抗体3B10のみで処置されたマウス(緑色の線、n=6)、抗PD-1抗体のみで処置されたマウス(青色の線、n=6)、ならびに抗BAG2および抗PD-1抗体の両方で処置されたマウス(赤色の線、n=6)の腫瘍体積。腫瘍の成長を、モニタリングし、腫瘍体積を、電子キャリパーで8、10、12、14、16、18、および20日目に測定した。20日目に、マウスを殺処分した。(c)4つの処置群の平均腫瘍成長。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(対照マウスIgG2a投与群との対比)。
図7D】大腸癌モデルにおける抗PD-1抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(d)全群のMC38腫瘍微小環境(TME)におけるCD3+/CD8+ T細胞のプロファイル。フローサイトメトリーデータは、2回の独立した実験の平均である。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(対照マウスIgG2a投与群との対比)。
図8A】肺癌モデルにおける抗PD-L1抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(a)BALB/cマウスに、3×10のCT26細胞を注射した。約11日後、平均腫瘍サイズが約70mmに達したら、マウスを、全群の平均腫瘍サイズが類似するように群(n=7)に選別し、i.p.注射による処置を開始した。腫瘍細胞注射後11日目から、いくつかのマウスを、抗BAG2抗体3B10(250μgまたは750μg/マウス)、抗PD-L1抗体(200μg/マウス)、抗PD-L1抗体と3B10(250μgまたは750μg/マウス)の組み合わせ、またはアイソタイプ対照抗体で、試験終了まで2日に1回処置した。実験計画を表す。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、***p<0.001(対照マウスIgG2a投与群との対比)。
図8B】肺癌モデルにおける抗PD-L1抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(bおよびc)対照マウス(黒色の線、n=7)、3B10のみで処置されたマウス(250μg、緑色の線、n=7)、3B10のみで処置されたマウス(750μg、褐色の線、n=7)、抗PD-L1抗体のみで処置されたマウス(青色の線、n=7)、3B10(250μg)および抗PD-L1抗体の両方で処置されたマウス(赤色の線、n=7)、ならびに3B10(750μg)および抗PD-L1抗体の両方で処置されたマウス(紫色の線、n=7)の腫瘍体積。腫瘍の成長を、モニタリングし、腫瘍体積を、電子キャリパーで11、13、15、17、19、21および23日目に測定した。20日目に、マウスを殺処分した。(b)群内の個々のマウスの腫瘍体積。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、***p<0.001(対照マウスIgG2a投与群との対比)。
図8C】肺癌モデルにおける抗PD-L1抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(bおよびc)対照マウス(黒色の線、n=7)、3B10のみで処置されたマウス(250μg、緑色の線、n=7)、3B10のみで処置されたマウス(750μg、褐色の線、n=7)、抗PD-L1抗体のみで処置されたマウス(青色の線、n=7)、3B10(250μg)および抗PD-L1抗体の両方で処置されたマウス(赤色の線、n=7)、ならびに3B10(750μg)および抗PD-L1抗体の両方で処置されたマウス(紫色の線、n=7)の腫瘍体積。腫瘍の成長を、モニタリングし、腫瘍体積を、電子キャリパーで11、13、15、17、19、21および23日目に測定した。20日目に、マウスを殺処分した。(c)4つの処置群の平均腫瘍成長。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、***p<0.001(対照マウスIgG2a投与群との対比)。
図8D】肺癌モデルにおける抗PD-L1抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(d)全群のMC38腫瘍微小環境(TME)におけるCD3+/CD8+ T細胞のプロファイル。フローサイトメトリーデータは、2回の独立した実験の平均である。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、***p<0.001(対照マウスIgG2a投与群との対比)。
図9A】膵臓癌モデルにおける抗PD-1抗体または抗CTLA4抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(a)C57BL/6マウスに、2×10のPANC02-Luc細胞を同所性注射した。約15日後に、BLIを実施する場合、マウスは、D-ルシフェリンの腹腔内(i.p.)注射を受け、それらのBLIシグナルをバックグランドとした。原発膵臓腫瘍の成長を、BLIシグナルによりモニタリングし、マウスを、15群の平均BLIシグナルが類似するように、群(n=6~7)に選別した。マウスを、200μg(低用量)/マウス(16日目~32日目に8回)および400μg(高用量)/マウス(35日目~39日目に3回)の4種の抗BAG2抗体(3B10、3F12、3B5、および3G8)、またはアイソタイプ対照抗体で試験終了まで週3回処置した。インプラント後28日目から、マウスを、抗PD-1抗体(75μg/マウス)もしくは抗CTLA4抗体(200μg/マウス)、またはアイソタイプ対照抗体で試験終了まで週3回処置した。40日目に、マウスを殺処分した。実験計画を表す。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(対照マウスIgG2a投与群との対比)。n.s.(非有意性)。腫瘍特異性リンパ球(CD3+/CD8+ T細胞およびCD45+/CD3-/CD19+ B細胞);腫瘍特異性NK細胞(CD45+/CD3-/CD49b+);腫瘍特異性骨髄細胞(CD45+/CD11b+/Gr1-/F4/80+ マクロファージ、CD45+/CD11b+/Gr1+ MDSC);腫瘍特異性間質細胞(CD45-/CD90.2+)。
図9B】膵臓癌モデルにおける抗PD-1抗体または抗CTLA4抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(b)腫瘍成長を、インプラント後15、27、および39日目にBLIシグナルのIVIS画像によりモニタリングした。4種の抗BAG2抗体のみ(3B10、3F12、3B5、および3G8)またはアイソタイプ対照抗体で処置されたマウス(白色のバー、n=7/群)、追加的に抗PD-1抗体で処置されたマウス(黒色のバー、n=6/群)、および追加的に抗CTLA4抗体で処置されたマウス(灰色のバー、n=4/群)のBLIシグナル。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(対照マウスIgG2a投与群との対比)。n.s.(非有意性)。腫瘍特異性リンパ球(CD3+/CD8+ T細胞およびCD45+/CD3-/CD19+ B細胞);腫瘍特異性NK細胞(CD45+/CD3-/CD49b+);腫瘍特異性骨髄細胞(CD45+/CD11b+/Gr1-/F4/80+ マクロファージ、CD45+/CD11b+/Gr1+ MDSC);腫瘍特異性間質細胞(CD45-/CD90.2+)。
図9C】膵臓癌モデルにおける抗PD-1抗体または抗CTLA4抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(c)40日目の、群内の個々のマウスの原発腫瘍重量(mg)。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(対照マウスIgG2a投与群との対比)。n.s.(非有意性)。腫瘍特異性リンパ球(CD3+/CD8+ T細胞およびCD45+/CD3-/CD19+ B細胞);腫瘍特異性NK細胞(CD45+/CD3-/CD49b+);腫瘍特異性骨髄細胞(CD45+/CD11b+/Gr1-/F4/80+ マクロファージ、CD45+/CD11b+/Gr1+ MDSC);腫瘍特異性間質細胞(CD45-/CD90.2+)。
図9D】膵臓癌モデルにおける抗PD-1抗体または抗CTLA4抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(d)15の処置群における肝臓(左)、胸膜(中央)および横隔膜(右)への平均転移。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(対照マウスIgG2a投与群との対比)。n.s.(非有意性)。腫瘍特異性リンパ球(CD3+/CD8+ T細胞およびCD45+/CD3-/CD19+ B細胞);腫瘍特異性NK細胞(CD45+/CD3-/CD49b+);腫瘍特異性骨髄細胞(CD45+/CD11b+/Gr1-/F4/80+ マクロファージ、CD45+/CD11b+/Gr1+ MDSC);腫瘍特異性間質細胞(CD45-/CD90.2+)。
図9E】膵臓癌モデルにおける抗PD-1抗体または抗CTLA4抗体と組み合わせた抗BAG2抗体の治療有効性を示す。(e)全群のPANC02-Luc腫瘍微小環境(TME)におけるリンパ球細胞、NK細胞、骨髄細胞、間質細胞集団のプロファイル。腫瘍特異性CD45+/CD11b+/Gr1-/F4/80+マクロファージ、CD45+/CD11b+/Gr1+ MDSC、およびCD45-/CD90.2+ 間質細胞。フローサイトメトリーデータは、2回の独立した実験の平均である。t検定:データは全て、平均±SEM(平均の標準誤差)として表している。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(対照マウスIgG2a投与群との対比)。n.s.(非有意性)。腫瘍特異性リンパ球(CD3+/CD8+ T細胞およびCD45+/CD3-/CD19+ B細胞);腫瘍特異性NK細胞(CD45+/CD3-/CD49b+);腫瘍特異性骨髄細胞(CD45+/CD11b+/Gr1-/F4/80+ マクロファージ、CD45+/CD11b+/Gr1+ MDSC);腫瘍特異性間質細胞(CD45-/CD90.2+)。
【発明を実施するための形態】
【0050】
好ましい実施形態の詳細な記載
定義
本出願において、「1つの(a)」および「1つの(an)」は、単数および複数の両方の物体を指すために用いられる。
【0051】
本明細書で用いられる「約」または「実質的に」は一般に、厳密な数への限定からの許容量を提供する。例えば、ポリペプチド配列の長さの文脈で用いられる「約」または「実質的に」は、ポリペプチドが列挙されたアミノ酸数に限定されないことを示す。N-末端またはC-末端に加えられる、またはそれから引かれる2、3個のアミノ酸が、結合活性などの機能的活性が存在する限り、含まれてよい。
【0052】
本明細書で用いられる、1種または複数のさらなる治療薬「と組み合わせた」投与は、任意の順序で同時の(同時発生の)および連続の投与を包含する。
【0053】
本明細書で用いられる、相補性決定領域内の配列に関係する「ホットスポット」は、抗原結合領域にとって不安定性を引き起こすアミノ残基の存在を意味し、したがってそのようなモチーフは、より良好な結合効率のために置き換えられるべきである。典型的に置き換えられるアミノ酸のリストは存在しないが、CDR上のアミノ酸残基を置き換えることを考慮する一方法は、生殖系保存および抗体配列構造を考慮し、アミノ酸を選択し類似構造で置き換えることである。例えば、両方のアミノ酸の構造が類似しているため、NGは、NAに変異され得る。そのような修飾は、BAG2へのCDRのより大きな結合効率を可能にする。
【0054】
本明細書で用いられる「アミノ酸」および「複数のアミノ酸」は、全てが天然由来のL-α-アミノ酸を指す。この定義は、ノルロイシン、オルニチン、およびホモシステインを包含することを意味する。
【0055】
一般に本明細書で用いられる用語「アミノ酸配列変異体」は、参照(たとえば、ネイティブ配列)ポリペプチドに比較して、アミノ酸配列中に幾つかの差を有する分子を指す。アミノ酸改変は、ネイティブアミノ酸配列における置換、挿入、欠失またはそのような変更の任意の所望の組み合わせであってよい。
【0056】
置換変異体は、除去されたネイティブ配列における少なくとも1つのアミノ酸残基と、同じ位置で代わりに挿入された異なるアミノ酸を有するものである。置換は単一であってよく、その場合、分子における唯一のアミノ酸が置換されており、または置換は複数であってよく、その場合、2つ以上のアミノ酸が同じ分子中で置換されている。
【0057】
配列内のアミノ酸の置換は、アミノ酸が属する分類の他のメンバーから選択されてよい。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが挙げられる。極性中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられる。正電荷(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リシンおよびヒスチジンが挙げられる。負電荷(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。本発明の範囲にまた含まれるのは、同様または類似の生物活性を呈するタンパク質またはそのフラグメントもしくは誘導体、および例えばグリコシル化、タンパク質分解切断、抗体分子または他の細胞リガンドへの連結などにより、翻訳の間または翻訳後に差次的に修飾された誘導体である。
【0058】
挿入変異体は、ネイティブアミノ酸配列内の固有の場所でアミノ酸に直接隣接する位置に挿入された1つまたは複数のアミノ酸を有するものである。アミノ酸に直接隣接する、は、アミノ酸のα-カルボキシまたはα-アミノ官能基のどちらかにつながれることを意味する。
【0059】
欠失変異体は、ネイティブアミノ酸配列中の1つまたは複数のアミノ酸が除去されたものである。普通、欠失変異体は、分子の固有の領域中に欠失された1つまたは2つのアミノ酸を有するであろう。
【0060】
本明細書で用いられる「フラグメント」または「機能的誘導体」は、本発明のポリペプチドの生物活性アミノ酸配列またはフラグメント、ならびに有機誘導体化剤との反応、翻訳語修飾により得られた誘導体、非タンパク質性ポリマーとの誘導体、および免疫接着剤を含む、共有結合の修飾を指す。
【0061】
本明細書で用いられる「担体」は、用いられる投与量および濃度で暴露される細胞または哺乳動物にとって非毒性である医薬的に許容できる担体、賦形剤または安定化剤を包含する。多くの場合、医薬的に許容できる担体は、水性pH緩衝溶液である。医薬的に許容できる担体の例としては、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノースもしくはデキストロースを含む単糖類、二糖類および他の炭水化物;EDTAなどのクレート化剤;マンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;ならびに/またはTWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)およびPLURONICS(登録商標)などの非イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書で用いられる「医薬的に許容できる担体および/または希釈剤」は、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング抗菌剤および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤、ならびに同様のものを包含する。医薬的活性物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が有効成分と不適合である場合を除き、治療組成物中のそれらの使用が企図される。補助的有効成分もまた、組成物に組み入れられ得る。
【0063】
投与の容易さおよび投与量の均一性のために、非経口組成物を投与単位剤形で配合することは、特に有利である。本明細書で用いられる投与単位剤形は、処置される哺乳動物対象のために単一投与量として適する物理的に分離した単位を指し;各単位は、必要とされる医薬担体に関連して所望の治療効果を生成するために計算された活性材料の所定の量を含有する。本発明の投与単位剤形についての仕様は、(a)活性材料の特有の特徴および実現される固有の治療効果、ならびに(b)身体の健康が損なわれる疾患状態を有する生存する対象における疾患の処置のためのそのような活性材料を化合することの当該技術分野に内在する制限、により定められ、それらに直接依存する。
【0064】
主たる有効成分は、投与単位剤形において適切な医薬的に許容できる担体と有効量での簡便かつ効果的投与のために化合される。単位投与剤形は、例えば、主たる活性化合物を0.5μg~約2000mgの範囲の量で含有し得る。割合で表すと、活性化合物は一般に、約0.5μg/mlの担体の中に存在する。補助的有効成分を含有する組成物の例では、投与量は、上記成分の通常の用量および投与方式を参照することにより決定される。
【0065】
本明細書で用いられる「ベクター」、「ポリヌクレオチドベクター」、「構築物」および「ポリヌクレオチド構築物」は、本明細書において互換的に用いられる。本発明のポリヌクレオチドベクターは、非限定的に、レトロウイルスコート中にカプセル化されたRNA、DNA、RNA、アデノウイルスコート中にカプセル化されたDNA、別のウイルスまたはウイルス様形態(単純ヘルペスおよびポリアミドなどのアデノ構造など)にパッケージングされたDNAを含む、複数の形態のいずれかで存在してよい。
【0066】
本明細書で用いられる「宿主細胞」は、本発明のベクターのレシピエントであり得る、またはレシピエントであった個々の細胞または細胞培養物を包含する。宿主細胞としては、単一宿主細胞の子孫が挙げられ、子孫は、自然な、偶発的な、または故意の突然変異および/または変化による本来の親細胞と必ずしも完全に同一(形態学的に、または相補的な総DNAにおいて)でなくてよい。
【0067】
本明細書で用いられる「対象」は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。
【0068】
本明細書で用いられる、処置の目的での「哺乳動物」は、ヒト、家畜および農用動物、ならびに動物園用、競技用、または愛玩動物、例えばイヌ、ネコ、畜牛、ウマ、ヒツジ、ブタなどを含む、哺乳動物として分類される任意の動物を指す。好ましくは哺乳動物は、ヒトである。
【0069】
本明細書で用いられる、障害または病気を「予防する」治療薬は、統計標本において、非処置対照試料に相対的に処置試料中で障害もしくは病気の発生を低減する、または非処置対照試料に相対的に障害もしくは病気の1つもしくは複数の症状の開始を遅延させる、または障害もしくは病気の重症度を低減させる化合物を指す。
【0070】
用語「減少する」、「低減された」、「低減」、または「阻害する」は全て、統計学的に有意な量による特性、レベルまたは他のパラメータの減少または低下を意味するために本明細書で用いられる。幾つかの実施形態において、「低減する」、「低減」または「減少させる」または「阻害する」は典型的には、参照レベル(例えば、所与の処置の非存在)に比較して少なくとも10%の減少を意味し、例えば少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはより多くの減少を包含し得る。本明細書で用いられる「低減」または「阻害」は、参照レベルに比較した完全な阻害または低減を含まない。「完全な阻害」は、参照レベルに比較した100%阻害である。減少は、好ましくは所与の障害を有しない個体にとって正常範囲内として受け入れられるレベルへの降下であり得る。
【0071】
用語「増加された」、「増加する」または「増強する」または「活性化する」は全て、一般には統計学的に有意な量での特性、レベルまたは他のパラメータの増加を意味するために本明細書で用いられ、いずれかの疑念を回避するために、用語「増加された」、「増加する」または「増強する」または「活性化する」は、参照レベルに比較した少なくとも10%の増加、例えば参照レベルに比較した少なくとも20%、もしくは少なくとも30%、もしくは少なくとも40%、もしくは少なくとも50%、もしくは少なくとも60%、もしくは少なくとも70%、もしくは少なくとも80%、もしくは少なくとも90%、もしくは100%を含むそれ以下の増加、もしくは10~100%の間の任意の増加を意味するか、または参照レベルに比較して少なくとも約2倍の増加、もしくは少なくとも約3倍の増加、もしくは少なくとも約4倍の増加、もしくは少なくとも約5倍の増加、もしくは少なくとも約10倍の増加、もしくは少なくとも約20倍の増加、もしくは少なくとも約50倍の増加、もしくは少なくとも約100倍の増加、もしくは少なくとも約1000倍、またはより多くの増加を意味する。
【0072】
本明細書で用いられる「癌」または「腫瘍」は、身体臓器および身体組織の正常機能と干渉する細胞の非制御な成長を指す。癌または腫瘍を有する対象は、対象の体内に存在する客観的に測定可能な癌細胞を有する対象である。この定義に含まれるのは、良性および悪性の癌、ならびに休眠状態の腫瘍または微小転移である。本来の場所から遊走して重要な臓器に播種した癌は、最終的に罹患した臓器の機能的壊滅を通して対象の死をもたらす可能性がある。癌の例としては、B細胞リンパ腫(ホジキンリンパ腫および/または非ホジキンリンパ腫)、脳腫瘍、乳癌、結腸癌、肺癌、肝細胞癌、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路の癌、甲状腺癌、腎臓癌、癌腫、黒色腫、頭頸部癌、膠芽腫などの脳癌、ならびに非限定的にアンドロゲン依存性前立腺癌およびアンドロゲン非依存性前立腺癌を含む、前立腺癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
本明細書で用いられる用語「有効量」または「治療有効量」は、疾患または障害の少なくとも1つまたはより多くの症状を減少させるための、本明細書に開示された1種または複数の抗BAG2抗体もしくはそのフラグメントの量、または1種または複数の抗BAG2抗体もしくはそのフラグメントを含む医薬組成物の量を指し、所望の効果を提供するための薬理学的組成物の充分量に関する。本明細書で用いられる語句「治療有効量」は、任意の医学的処置に適用可能な合理的利益/リスク比で障害を処置するための組成物の充分量を意味する。
【0074】
本明細書で用いられる用語「投与すること」は、所望の部位での薬剤または組成物の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路による、対象への本明細書に開示された薬剤または組成物の配置を指す。「投与経路」は、非限定的に、経口、外用、エアロゾル、鼻孔、吸入を介した、肛門、肛門内、肛門周囲、経粘膜、経皮、非経口、腸内または局所を含む、当該技術分野で公知の任意の投与経路を指し得る。「非経口」は、腫瘍内、頭蓋内、脳室内、髄腔内、硬膜外、硬膜内、眼窩内、輸液、嚢内、心内、皮内、筋肉内、腹腔内、肺内、脊髄内、胸骨内、髄腔内、血管内、静脈内、動脈内、クモ膜下、被膜下、皮下、経粘膜、または経気管を含む、一般に注射に関連する投与経路を指す。非経口経路を介し、薬剤または組成物は、輸液もしくは注射のための溶液もしくは懸濁液の形態、または凍結乾燥粉末としてであってよい。腸内経路を介し、薬剤または組成物は、制御放出を可能にするカプセル、ゲルカプセル、錠剤、糖衣錠、シロップ、懸濁液、溶液、粉末、顆粒、エマルジョン、マイクロスフェアもしくはナノスフェア、または脂質小胞もしくはポリマー小胞の形態であり得る。外用経路を介し、薬剤または組成物は、エアロゾル、ローション、クリーム、ゲル、軟膏、懸濁液、溶液またはエマルジョンの形態であり得る。一実施形態において、薬剤または組成物は、粉末形態で提供され、水などの液体と混合されて、飲料を形成してよい。本発明によれば、「投与すること」は、自己投与であり得る。例えば、対象が本明細書に開示された組成物を消費することは、「投与すること」と見なされる。
【0075】
本明細書で用いられる「対象」は、ヒトまたは動物を意味する。通常、動物は、霊長類、げっ歯類、家畜または狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類としては、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびマカク、例えばアカゲザルが挙げられる。げっ歯類としては、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウラギおよびハムスターが挙げられる。家畜および狩猟動物としては、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ科の種、例えば家ネコ、およびイヌ科の種、例えばイヌ、キツネ、オオカミが挙げられる。用語「患者」、「個体」および「対象」は、本明細書では互換的に用いられる。一実施形態において、対象は、哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマまたはウシであり得るが、これらの例に限定されない。加えて、本明細書に記載された方法は、家畜および/またはペットを処置するために用いられ得る。一実施形態において、対象は、ヒトである。
【0076】
本明細書で用いられる「哺乳動物」は、非限定的にチンパンジーおよび他の類人猿およびサルの種などのヒトおよび非ヒト霊長類;畜牛、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマなどの農用動物;イヌおよびネコなどの家畜哺乳動物;マウス、ラットおよびモルモットなどのげっ歯類を含む実験動物、ならびに同様のものを含む、哺乳綱の任意のメンバーを指す。この用語は、固有の年齢を表さない。したがって成体および新生児対象、ならびに胎児が、この用語の範囲内に含まれるものとする。
【0077】
対象は、処置を必要とする病気(例えば、癌または自己免疫疾患)または病気に関係する1つもしくは複数の合併症に罹患している、または病気を有すると過去に診断または同定されたことがあるもの、かつ場合により病気または病気に関係する1つもしくは複数の合併症への処置を既に受けたものであり得る。あるいは対象は、病気、または病気に関係する1つもしくは複数の合併症を有すると過去に診断されたことのないものであってもよい。例えば、対象は、病気、または病気に関係する1つもしくは複数の合併症の1つまたは複数のリスクを呈するもの、あるいは危険因子を呈さない対象であり得る。例えば対象は、病気、または病気に関係する1つもしくは複数の合併症の1または複数の症状を呈するもの、あるいは症状を呈さない対象であり得る。固有の病気のための診断または処置を「必要とする対象」は、その病気を有することが疑われる対象、その病気を有すると診断された対象、その病気を既に処置されたか、もしくは処置される対象、その病気を処置されない対象、またはその病気を発症するリスクがある対象であり得る。
【0078】
「リスクがある」は、正常対象に比較して、または対照群、例えば患者集団に比較して増加したリスクを意味するものとする。したがって、固有のマーカを担持する対象は、特異的疾患または障害について増加したリスクを有してよく、さらなるテストを必要とすると同定されてよい。「増加したリスク」または「上昇したリスク」は、例えば対象が障害を有する確率の、任意の統計学的に有意な増加を意味する。リスクは、比較が行われる対照群よりも好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも50%増加される。
【0079】
用語「統計学的に有意な」または「有意に」は、統計学的有意性を指し、一般に参照レベルから少なくとも2標準偏差(2SD)離れていることを意味する。この用語は、差が存在することの統計学的証拠を指す。それは、帰無仮説が実際に真実である場合に、帰無仮説を拒絶することを決意する確率と定義される。
【0080】
本明細書で用いられる用語「共投与する」は、例えば臨床処置レジメンの一部として、互いに24時間以内の2種以上の治療、または2種以上の治療薬(例えば、抗BAG2抗体および追加的な抗癌治療)の投与を指す。他の実施形態において、「共投与する」は、互いに12時間以内、6時間以内、5時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、1時間以内、45以内、30分以内、20以内、15分以内、10分以内、または5分以内の投与を指す。他の実施形態において、「共投与する」は、単一配合剤の一部として、または同じもしくは異なる経路により投与される複数の配合剤として、のいずれかでの同時の投与を指す。例えば、抗BAG2抗体および追加の抗癌治療が、異なる医薬組成物中で、または異なる時間に投与される場合、投与経路は、同じであるか異なり得る。
【0081】
本明細書で用いられる「処置」は、有益な、または所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的では、有益な、または所望の臨床結果としては、検出可能または検出不能にかかわらず、症状の緩和、疾患の程度の減弱、疾患の安定化した(即ち、増悪していない)状態、疾患進行の遅延または緩徐化、疾患状態の好転または軽減、および寛解(部分または完全のどちらかにかかわらず)が挙げられるが、これらに限定されない。「処置」はまた、処置を受けない場合に予測される生存に比較して長期化した生存を意味し得る。「処置」は、治療的処置および防護的または予防的手段の両方を指す。処置を必要とするものとしては、障害を既に有するもの、ならびに障害が予防されるべきものが挙げられる。疾患を「軽減すること」は、処置のない状況に比較して、疾患状態の程度および/もしくは望ましくない臨床症状発現が減少されること、ならびに/または進行の時間経過が緩徐化もしくは延長されること、を意味する。
【0082】
本明細書で用いられる用語「キメラ」抗体は、ラットまたはマウス抗体などの非ヒト免疫グロブリン由来の可変配列と、典型的にはヒト免疫グロブリンテンプレートから選択される、ヒト免疫グロブリン定常領域とを有する抗体を指す。キメラ抗体を生成するための方法は、当該技術分野で公知である。例えばMorrison, 1985, Science 229(4719):1202-7;Oi et al., 1986, BioTechniques 4:214-221;Gillies et al., 1985, J. Immunol. Methods 125:191-202;米国特許第5,807,715号;同第4,816,567号;および同第4,816,397号を参照されたい。
【0083】
非ヒト(例えば、ネズミ)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含有するキメラ免疫グロブリンである。一般にヒト化抗体は、実質的に全ての、または少なくとも1つの、かつ典型的には2つの可変ドメインを含み、そこではCDR領域の全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものを含み得る。抗体ヒト化の方法は、当該技術分野で公知である。例えばRiechmann et al., 1988, Nature 332:323-7; Queenらへの米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,761号;同第5,693,762号;および同第6,180,370号; 欧州特許第239400号;PCT公開WO91/09967号;米国特許第5,225,539号;欧州特許第592106号;欧州特許第519596号;Padlan, 1991, Mol. Immunol., 28:489-498;Studnicka et al., 1994, Prot. Eng. 7:805-814;Roguska et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. 91:969-973;ならびに米国特許第5,565,332号を参照されたい。
【0084】
「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を包含し、1種または複数のヒト免疫グロブリンのためのヒト免疫グロブリンライブラリから、またはトランスジェニックの動物から単離され、内在性免疫グロブリンを発現しない抗体を包含する。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリを用いたファージディスプレイ法を含む当該技術分野で公知の種々の方法により作製され得る。米国特許第4,444,887号および同第4,716,111号;ならびにPCT公開WO98/46645号;WO98/50433号;WO98/24893号;WO98/16654号;WO96/34096号;WO96/33735号;およびWO91/10741号を参照されたい。ヒト抗体はまた、機能的な内在性免疫グロブリンを発現できないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを用いて生成され得る。例えば、PCT公開WO98/24893号;WO92/01047号;WO96/34096号;WO96/33735号;米国特許第5,413,923号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,569,825号;同第5,661,016号;同第5,545,806号;同第5,814,318号;同第5,885,793号;同第5,916,771号;および同第5,939,598号を参照されたい。加えて、LakePharma, Inc.(カリフォルニア州ベルモント)またはCreative BioLabs(ニューヨーク州シャーリー)などの会社は、上記のものと類似の技術を利用して選択された抗原に対するヒト抗体を提供することに従事し得る。選択されたエピトープを認識する全てヒトの抗体は、「ガイデッドセレクション」と称される技術を利用して作製され得る。このアプローチでは、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えばマウス抗体が、同じエピトープを認識する完全にヒトの抗体の選択を案内するのに用いられる(Jespers et al., 1988, Biotechnology 12:899-903参照)。
【0085】
本明細書で用いられる用語「抗体様」は、抗体の一部を含有するように遺伝子操作され得るが本質的に天然由来の抗体ではない、分子を意味する。例としては、CAR(キメラ抗原受容体)T細胞技術およびYlanthia(登録商標)技術が挙げられるが、これらに限定されない。CAR技術は、身体の免疫系が特異的な標的タンパク質または細胞を攻撃することに向けられるように、T細胞の一部に融合された抗体エピトープを利用する。Ylanthia(登録商標)技術は、合成ヒトfabの収集物であり後に標的タンパク質からのペプチドエピトープへの結合についてスクリーニングされる、「抗体様」ライブラリからなる。選択されたFab領域はその後、それらが抗体に似るように、足場またはフレームワーク中に操作され得る。
【0086】
本明細書で用いられる「免疫療法薬」または「免疫調整物質」は、免疫応答を誘発もしくは増幅するように、またはその応答を低減もしくは抑制するように設計された薬剤である。
【0087】
本明細書で用いられる「高い相同性」は、任意の2つのポリペプチドの間の設計された重複領域において少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または97%の同一性があると見なされる。
【0088】
ホットスポットの除去
製造、貯蔵の間および生体内で、治療抗体は、多くの経路を介する分解のリスクがある。とりわけ、タンパク質で最も頻繁に発生する分解反応は、AsnおよびAsp残基の化学分解である。これらの反応は、最終的な薬物物質および薬物製品の適当な貯蔵および配合条件により抑制され得るが、発酵、下流の加工の間、および生体内での分解は多くの場合、充分に制御され得ない。AsnおよびAsp残基が抗原認識に関与する場合、それらの化学的改変は、重度の能力損失をもたらす可能性がある。複数の例で、これらの分解事象が、長期mAb機能を妨害することが報告された。生体内では、タンパク質分解事象は、タンパク質の経年変化と、アポトーシスを惹起することによる癌と、または他の生物学的機能に及ぼす重度の影響、例えばヒト水晶体ベータA3クリスタリンの安定性減少、異常なMAPKシグナル伝達、Aベータ生成過程の潜在的ベータセクレターゼ有効性および特異性の改変、またはバクテリア細胞に対するリゾチーム溶解活性の増加、と関連して記載される。分解を受け易い薬物候補の同定は、理想的には薬物開発工程の早期に実施され、それに応じて製造および配合工程を調整するか、または問題となる候補を再度操作して、そのようなホットスポットを除去する。
【0089】
AsnおよびAsp残基は、環状スクシンイミド中間体の形成を介して進行する分解経路を共有する。スクシンイミドは、Asn/Asp側鎖γ-カルボニル基上の連続するアミノ酸の骨格窒素の求核攻撃によるAsnの脱アミド化またはAspの脱水から生じる。転移可能な環状イミドは、加水分解条件および立体構造の制限に応じて、2つのカルボニル基のどちらか一方で加水分解して、異なる比率でアスパルチルまたはイソアスパルチル結合を形成し得る。加えて、環状イソイミドを形成する骨格カルボニル酸素による求核攻撃、またはAsnからAspへの直接的加水分解などのAsnの代替的分解メカニズムが、提案された。複数の分析法、ほとんどはイオン交換クロマトグラフィーなどの電荷感受性の方法、または等電点電気泳動が、分解産物、即ちスクシンイミド、AspまたはイソAspのいずれかを検出するために記載された。タンパク質中の分解部位の定量および定位に最も適するのは、液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC-MS/MS)による分析である。doi: 10.1371/journal.pone.0100736として2014年6月24日にオンラインで公開された参考資料Sydow et al., “Structure-Based Prediction of Asparagine and Aspartate Degradation Sites in Antibody Variable Regions”, PLoS One. 2014; 9(6):e100736は、抗体の抗原結合領域上のホットスポットの存在と、タンパク質により多くの安定性を提供するためにそのようなホットスポットモチーフを置き換えることの好適性とのよく確立された知識の開示について、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0090】
ホットスポットの検出および置き換えのそのような一例は、抗体3B5で認められ得る。VH CDR2は、YIDPYNGGNTYNRKFKGであるが、ホットスポットが「NG」の存在により検出され、ホットスポットが除去された配列がYIDPYNAGNTYNRKFKGであるように、このホットスポットが除去され「NA」で置き換えられる。CDR2の始点のYの存在がCDR2の一部とみなされなければならないことに、本出願者は留意している。CDR配列は、N-末端またはC-末端でいくつかの配列が2、3個のアミノ酸だけ短縮されているか短くなっているとしても、結合活性を維持することが、当該技術分野で一般に認められている。活性を保持するためのCDRの長さは充分に、決定するための合理的実験の範囲内であると考えられる。
【0091】
抗体のヒト化
抗体をヒト化する工程は、周知であり、したがって従来の技術を用いて、ヒト化抗体を作製してよい。1つの例証されたプロトコルが、以下の通りであってよい:
【0092】
マウスモノクローナル抗体を、CDRグラフティングによりヒト化し、親マウス抗体フレームワークの重要な残基を、同定し、ヒト化配列に導入する。その後、ヒト化VH/VLを、完全長hIgG1形式に変換する。変異体を、一過性トランスフェクションにより発現し、アフィニティークロマトグラフィーにより精製する。精製された抗体を、SEC-HPLC、SDS-PAGE、ELISA、およびBiacore(親和性の特徴づけ)により特徴づける。親和性および能力の損失が3倍以下である最良の候補を、選択する。
【0093】
5つの相が、抗体ヒト化工程に含まれてよい。最初に、抗体のヒト化設計(ホットスポット除去の実行可能性および抗体ヒト化の設計)を、完了する。
【0094】
VH/VL CDR残基を、決定し、Kabatナンバリングシステムでアノテーションする。配列解析を適用して、CDR内の不対合システイン残基、N-グリコシル化部位、および脱アミノ化部位を含む主要な危険性のあるホットスポットを同定する。遺伝子操作の作業を適用して、有害なホットスポットモチーフを除去してよい。CDR中にホットスポットが存在するならば、ホットスポット除去の実行可能性を、チェックし、実行する。
【0095】
ホットスポットの除去を設計し、相対的なマウスVHおよびマウスVLを、複数のキメラ抗体に組み合わせる。各キメラ抗体を、100mLの293細胞で一過的に発現させ、上清を、Mabselect PrismA(GE、17549801)により捕捉および精製し、アフィニティー精製の収率を記録する。精製されたキメラ抗体を、SDS-PAGEおよびHPLC-SECによりテストした後、ELISAまたはBiacoreにより親和性を確認する。キメラ抗体の親和性ランキングを実施して、ホットスポット除去の実行可能性を確認する。
【0096】
そのようなヒト化配列は、以下の抗体に関して以下の通りであってよい;
【0097】
3B5サブクローン1:VH領域;下線は、ホットスポットをチェックした後のCDR領域である。
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYSFTDYTFYWVRQAPGQRLEWIGYIDPYNAGNTYNRKFKGRVTITVDKSASTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGYYRYGGGGDFDYWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO:75)
【0098】
3B5サブクローン1:VL領域;下線は、ホットスポットをチェックした後のCDR領域である。
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQSLVHSNGNTYLHWFQQRPGQSPRLLIHKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCSQNTHIPPTFGGGTKVEIK(SEQ ID NO:76)
【0099】
3B5サブクローン2:VH領域;下線は、ホットスポットをチェックした後のCDR領域である。
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYSFTDYTFYWVRQAPGQRLEWIGYIDPYNAGNTYNRKFKGKVTITVDKSASTAYMELNSLRSEDTAVYYCARGYYRYGGGGDFDYWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO:77)
【0100】
3B5サブクローン2:VL領域;下線は、ホットスポットをチェックした後のCDR領域である。
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQSLVHSNGNTYLHWFQQRPGQSPRLLIHKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCSQNTHIPPTFGGGTKVEIK(SEQ ID NO:78)
【0101】
3B10サブクローン1:VH領域;下線は、ホットスポットをチェックした後のCDR領域である。
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGHAFTNYMIEWVRQAPGQGLEWMGVINPGSGGTYNSEKVKGRVTLTADRSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCRIYGNYKGYFDHWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO:79)
【0102】
3B10サブクローン1:VL領域;下線は、ホットスポットをチェックした後のCDR領域である。
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQDMNSYLSWFQQKPGKAPKSLIYRSNRLVDGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQNDEFPFTFGQGTKLEIK(SEQ ID NO:80)
【0103】
3B10サブクローン2:VH領域;下線は、ホットスポットをチェックした後のCDR領域である。
QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYSFTKYGMNWVKQAPGQGLEWMGWINTNTGEATYGEEVKGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARLGLRYLDYWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO:81)
【0104】
3B10サブクローン2:VL領域;下線は、ホットスポットをチェックした後のCDR領域である。
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASKSVSTSDYSYMHWYQQKPGKAPKLLIYLASNLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHNRELPPTFGQGTKLEIK(SEQ ID NO:82)
【0105】
3G8サブクローン1:VH領域;下線は、ホットスポットをチェックした後のCDR領域である。
QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYSFTKYGMNWVRQAPGQGLEWMGWINTNTGEATYGEEVKGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARLGLRYLDYWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO:83)
【0106】
3G8サブクローン1:VL領域;下線は、ホットスポットをチェックした後のCDR領域である。
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASKSVSTSDYSYMHWYQQKPGKAPKLLIYLASNLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHNRELPPTFGQGTKLEIK(SEQ ID NO:84)
【0107】
3G8サブクローン2:VH領域;下線は、ホットスポットをチェックした後のCDR領域である。
QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYSFTKYGMNWVKQAPGQGLEWMGWINTNTGEATYGEEVKGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARLGLRYLDYWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO:85)
【0108】
3G8サブクローン2:VL領域;下線は、ホットスポットをチェックした後のCDR領域である。
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASKSVSTSDYSYMHWYQQKPGKAPKLLIYLASNLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHNRELPPTFGQGTKLEIK(SEQ ID NO:86)
【0109】
癌の処置のための抗Bag2抗体の使用
癌の成長またはより転移性の状態への移行を阻害するそれらの抗体を、抗癌治療薬としての使用のために選択し、癌の処置または予防のために患者に投与してよい。選択された抗体は、例えばヒトキメラ抗体または完全なヒト抗体を遺伝子操作または作製することにより、さらに最適化されてよい。このアプローチの有効性を実証するために、
【0110】
患者試料中のBag2のレベル上昇の検出は、癌の存在、またはより攻撃的もしくは転移性の状態への進行の診断である。患者試料中のBAG2種のレベル上昇の検出は、患者が癌を有すること、または癌を発症するリスクがあることの指標であろう。BAG2種のレベルは、PCR、ハイブリダイゼーションスキーム、サイクリングプローブ技術、FISH、免疫細胞化学、IHC、ウェスタンブロット、免疫沈降法、サンドイッチアッセイ、ELISAアッセイおよび同様のものにより測定または評定され得る。患者試料は、流体試料、血液試料、乳、尿、細胞、液体生検、生検および同様のものであってよい。癌と診断された患者において、BAG2のレベル上昇は、転移の潜在能力増加の指標である。BAG2のレベル上昇は、前立腺癌の指標である。本発明の抗体は、BAG2を検出するために用いられ、診断ツールとして用いられる。
【0111】
細胞および組織は通常BAG2を分泌しないため、癌を診断するため、またはより攻撃的もしくは転移性の形態を診断するため、またはより攻撃的形態へのシフトを診断するための効果的方法は、健常試料中のBAG2レベルに比較して、または健常成人細胞もしくは組織の中に存在することが知られるBAG2のレベルに比較して、患者からの、細胞もしくは組織の採取物からの、または培養細胞からの試料中のBAG2のレベルを測定することである。BAG2のレベル上昇は、癌の存在、転移癌の存在または転移の開始を示す。BAG2の存在についてアッセイされる試料は、患者からの培養細胞株もしくは細胞であり得る細胞の採取物、体液、血液試料、組織標本、または生検標本であってよい。それゆえ、癌の存在または癌の進行を検出する診断アッセイは、1)癌を有する患者または癌を発症するリスクがある患者からの試料を得るステップと;2)BAG2を検出することまたはBAG2のレベルを測定することが可能なアッセイにその試料を供するステップと;3)テスト試料中の測定されたBAG2タンパク質のレベルを対照患者または対照細胞中のレベルに比較するステップと;4)BAG2のレベルが対照に比較して上昇されることを決定するステップと;5)試験物を比較した対照が、予め癌と診断されたドナーからのものであれば、テスト試料のドナーが癌を有する、または癌の進行を有していると結論づけるステップ、を含む。
【0112】
このアッセイにおいて、テスト試料を比較する対照試料は、非癌性細胞、培養細胞、健常ドナーからの試料、ドナーからの非癌性試料、またはテスト試料のドナーからの試料であり得、対照試料は、過去の時点でドナーから回収されている。そのような試料の供給源は、体液、脳脊髄液、骨髄試料、血液、組織、細胞、生検組織または細胞、患者細胞由来の培養細胞および同様のものを含む、癌の存在または進行についてテストされる患者から採取された任意の標本であり得る。テスト試料を比較する試料の供給源は、体液、脳脊髄液、骨髄試料、血液、組織、細胞、生検組織もしくは細胞、または健常ドナーもしくはテスト患者に由来し得る培養細胞であり得、試料は、過去の時点で回収されている。テスト試料を比較する測定レベルは、予め記録されたデータからのものおよびテスト試料への比較のためにリストに編集されたものであってよい。
【0113】
併用療法
第一の薬剤は、別の薬剤と併せて投与される。「~と併せて」は、同じ個体への抗BAG2抗体またはそのフラグメントの投与に加えた、本明細書に記載された免疫調整物質の投与などの、別の処置モダリティーに加えた1つの処置モダリティーの投与を指す。そのため、「~と併せて」は、個体への他の処置モダリティーの送達前、送達の間、または送達後の1つの処置モダリティーの投与を指す。そのような組み合わせは、単一処置レジメンまたはレジメの一部と見なされる。
【0114】
免疫調整剤
免疫調整剤または免疫療法薬は大まかに、4種のカテゴリー:チェックポイント阻害剤、サイトカイン、アゴニスト、およびアジュバント、に分別できる。チェックポイント阻害剤は、免疫応答をシャットダウンし腫瘍自体を防護するために腫瘍が頻繁に操作する免疫チェックポイント、即ち免疫系の「ブレーキ」を遮断することにより作用する。その結果、チェックポイント阻害剤は、癌に対する新しい免疫応答を引き出し、ならびに既存の応答を増強して癌細胞の排除を促進できる。2020年現在で、チェックポイント阻害剤は、おそらくこれまで開発された中で最も周知され、最も広く成功した免疫調整物質であろう。
【0115】
例えば、PD-1/PD-L1免疫チェックポイント経路は、癌標的化T細胞をシャットダウンし得る。しかし、チェックポイント阻害剤がPD-1/PD-L1経路を遮断すると、それらは、T細胞に癌細胞を排除させることができる。
【0116】
サイトカインは、免疫細胞の成熟、成長、および応答性を調節するメッセンジャー分子である。現在、腎臓癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、および肉腫の患者のサブセットの処置のための、4種のFDA認可されたサイトカイン免疫療法薬が存在する。
【0117】
アゴニストは、癌細胞を直接攻撃する「キラー」T細胞の活性化を支援すること、または樹状細胞のような自然免疫細胞の活性を刺激すること、のどちらかにより適応免疫応答を促進する経路を活性化し、それは癌マーカを提示することおよびT細胞活性を増強することにより癌に対する全体的免疫応答を協調させる。
【0118】
アジュバントは、全般的な免疫応答を刺激し究極的に適応免疫応答を促進し得る自然免疫系に関与する経路を活性化する。1種のFDA認可された補助的免疫療法は現在、皮膚癌の1種である扁平上皮癌の患者のサブセットの処置に利用可能である。
【0119】
そのような免疫調整物質の例は、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン15(IL-15)、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、4-1BBリガンド、GITRL、OX-40L、抗CD3抗体、抗CD27抗体、抗CTLA4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗GITR抗体、抗OX-40抗体、抗4-1BB抗体、抗LAG-3抗体、および抗TIM-3抗体である。
【0120】
補助療法
抗BAG2抗体は、抗癌特性を有する他の薬剤または処置の補助として、またはそれと共に用いられてよい。抗BAG2抗体および他の薬剤(複数可)は、補助的に用いられる場合、単一の併用薬物配合剤として一緒に配合されてよく、または単一の協調的投与レジメンで、もしくは異なる投与レジメンで、別個に配合および投与されてよい。抗BAG2抗体へ補助的に、または抗体と共に投与される薬剤は典型的には、抗BAG2抗体への補足的活性を有し、そのため抗体または他の薬剤は、互いに有害に影響しない。
【0121】
抗CD40抗体へ補助的に、または抗体と共に投与され得る薬剤としては、アルキル化剤、血管新生阻害剤、抗体、代謝拮抗剤、抗有糸分裂薬、抗増殖剤、抗ウイルス薬、オーロラキナーゼ阻害剤、細胞死受容体経路の活性化剤、Bcr-Ablキナーゼ阻害剤、BiTE(Bi特異性T細胞エンゲージャー)抗体、抗体薬物コンジュゲート、生体応答調節剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、細胞周期阻害剤、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、DVD、白血病ウイルス癌遺伝子ホモログ(ErbB2)受容体阻害剤、成長因子阻害剤、熱ショックタンパク質(HSP)-90阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、ホルモン療法、免疫剤(immunologicals)、アポトーシスタンパク質の阻害剤(IAP)、挿入性抗生物質、キナーゼ阻害剤、キネシン阻害剤、Jak2阻害剤、哺乳動物ラパマイシン標的タンパク質(mTor)の阻害剤、マイクロRNA、マイトジェン活性化細胞外シグナル調節キナーゼ阻害剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ポリADP(アデノシン二リン酸)-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤、白金化学療法薬、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤(例えば、イブルチニブ、アカラブルチニブ)、ポロ様キナーゼ(PlK)阻害剤、ホスホイノシチド-3キナーゼ(PI3K)阻害剤、プロテアソーム阻害剤、プリン類似体、ピリミジン類似体、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、レチノイド/デルトイド植物アルカロイド、低分子阻害性リボ核酸(small inhibitory ribonucleic acids)(siRNA)、トポイソメラーゼ阻害剤、ユビキチンリガーゼ阻害剤および同様のもの、ならびにこれらの薬剤の1種または複数の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
免疫剤の例としては、インターフェロン、免疫チェックポイント阻害薬、および他の免疫増強剤が挙げられるが、これらに限定されない。インターフェロンとしては、インターフェロンアルファ、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ-1a、インターフェロンγ-1b、またはインターフェロンγ-nl、それらの組み合わせおよび同様のものが挙げられる。免疫チェックポイント阻害薬としては、PD-1(例えば、ペムブロリズマブおよびニボルマブ)、PD-L1(例えば、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、MEDI4736、MSB0010718CおよびMPDL3280A)、およびCTLA4(細胞障害性リンパ球抗原4;例えば、イピリムマブ、トレメリムマブ)を標的とする抗体が挙げられる。免疫増強剤としては、T細胞を活性化する抗OX40アゴニスト抗体が挙げられる。
【0123】
抗BAG2抗体はまた、放射線療法の有効性を増強するために用いられてよい。放射線療法の例としては、体外照射療法、体内照射療法(即ち、ブラキテラピー)、および全身照射療法が挙げられる。
【0124】
セラノスティクス
分泌されたBAG2タンパク質のレベル上昇を有すると診断された患者はその後、BAG2に特異的に結合する治療薬で処置される。それゆえ、BAG2の分泌レベル上昇と診断された患者は、BAG2を阻害する治療薬での処置から利益を享受するであろう。したがって、癌処置と、癌の処置または予防のための治療薬の有効量の投与との適切性を評定することは、1)癌を有することが疑われる患者、または癌を発症するリスクがある患者、または転移癌を発症するリスクがある患者から試料を得るステップと;2)分泌されたBAG2の量を測定するステップであって、測定されたレベルが、対照試料中で測定されたものを有意に上回る、ステップと;3)患者が癌を有すること、またはより攻撃的な癌もしくは転移癌を発症していることを決定するステップと;4)BAG2の発現を抑制する治療薬の有効量を患者に投与するステップ、からなる。
【0125】
化学修飾ペプチド
ポリペプチドまたは抗体治療薬は、短い循環半減期およびタンパク質分解および低溶解度の影響を被る可能性がある。本発明のバイオ医薬の薬物動態および薬力学特性を改善するために、アミノ酸配列の操作などの方法を行って、免疫原性を低下または上昇させ、タンパク質分解切断を減少させてよく、免疫グロブリンおよびアルブミンなどの血清蛋白質へのペプチドの融合またはコンジュゲーションを行ってよく;防護および徐放のための本発明のペプチドおよび抗体などのバイオ医薬のための薬物送達ビヒクルへの組み込みもまた行ってよく;天然または合成ポリマーへのコンジュゲーティングもまた企図される。詳細には、合成ポリマーコンジュゲーションのために、ペグ化、またはアシル化、例えばN-アシル化、S-アシル化なども、企図される。
【0126】
核酸構築物
また提供されるのは、本明細書に記載された本発明の核酸分子を含む発現ベクターであり、ここで核酸分子は、発現制御配列に動作可能に連結される。また提供されるのは、ポリペプチドの発現に適した宿主細胞に導入された本発明の発現ベクターを含むポリペプチドの生成のための宿主-ベクター系である。適切な宿主細胞は、E.コリなどのバクテリア細胞、ピキア・パストリスなどの酵母細胞、スポドプテラ・フルギペルダなどの昆虫細胞、またはCOS、HEKもしくはCHO細胞などの哺乳動物細胞であってよい。
【0127】
本発明はまた、本発明のポリペプチドの生成を可能にする条件下で、本明細書に記載された宿主-ベクター系の細胞を生育すること、およびそのように生成されたポリペプチドを回収すること、により本発明のポリペプチドを生成する方法を提供する。本発明を実践するのに有用なポリペプチドは、原核生物または真核生物発現系における発現により調製されてよい。
【0128】
任意の数の方法を利用して、組換え遺伝子を発現させ、ポリペプチドを精製してよい。遺伝子は、例えば非限定的にpZErOなどの、バクテリア発現ベクターにサブクローニングされてよい。
【0129】
ポリペプチドは、その後の安定な生物活性タンパク質の形成を可能にする任意の技術により精製されてよい。例えば、かつ限定ではなく、因子を、可溶性タンパク質または封入体のどちらかとして細胞から回収してよく、それらを8Mグアニジン塩酸塩および透析により定量的に抽出してよい。因子をさらに精製するために、非限定的に、従来のイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、異なる糖クロマトグラフィー(different sugar chromatography)、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーまたはゲル濾過を含む、任意の数の精製方法が、用いられてよい。
【0130】
ベクターへのDNAフラグメントの挿入のための当業者に知られる方法のいずれかが、適当な転写/翻訳制御シグナル、およびタンパク質コード配列を用いて本発明のポリペプチドをコードする発現ベクターを構築するために用いられてよい。これらの方法は、インビトロ組換えDNAおよび合成技術、ならびにインビボ組換え(遺伝子組換え)を包含してよい。ポリペプチドをコードする核酸配列の発現は、本発明のポリペプチドが組換えDNA分子を形質転換された宿主の中で発現されるように、第二の核酸配列により調節されてよい。例えば、本明細書に記載されたポリペプチドの発現は、当該技術分野で公知の任意のプロモーター/エンハンサーエレメントにより制御されてよい。ポリペプチドの発現を制御するために用いられ得るプロモーターとしては、Squinto et al.,(1991, Cell 65:1-20)に記載されたロングターミナルリピート;SV40初期プロモーター領域(Bernoist and Chambon, 1981, Nature 290:304-310)、CMVプロモーター、M-MuLV 5’ターミナルリピート、ラウス肉腫ウイルスの3’ロングターミナルリピートの中に含有されるプロモーター(Yamamoto, et al., 1980, Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al., 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:144-1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster et al., 1982, Nature 296:39-42);β-ラクタマーゼプロモーターなどの原核生物発現ベクター(Villa-Kamaroff, et al., 1978, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 75:3727-3731)、またはtacプロモーター(DeBoer, et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:21-25)、Scientific American, 1980, 242:74-94の中の“Useful proteins from recombinant bacteria”も参照;Gal4プロモーター、ADH(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼプロモーターなどの酵母または他の真菌からのプロモーターエレメント、ならびに組織特異性を呈し、トランスジェニック動物内で利用されてきた以下の動物転写制御領域:膵臓腺房細胞内で活性のエラスターゼI遺伝子制御領域(Swift et al., 1984, Cell 38:639-646; Ornitz et al., 1986, Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409; MacDonald, 1987, Hepatology 7:425-515);膵臓ベータ細胞内で活性のインスリン遺伝子制御領域(Hanahan, 1985, Nature 315:115-122)、リンパ細胞内で活性の免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedl et al., 1984, Cell 38:647-658; Adames et al., 1985, Nature 318:533-538; Alexander et al., 1987, Mol. Cell. Biol. 7:1436-1444)、精巣、乳房、リンパおよび肥満細胞(Leder et al., 1986, Cell 45:485-495)、センダイウイルス、レンチウイルス内で活性のマウス哺乳動物腫瘍ウイルス制御領域、肝臓内で活性のアルブミン遺伝子制御領域(Pinkert et al., 1987, Genes and Devel. 1:268-276)、肝臓内で活性のアルファ-フェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlauf et al., 1985, Mol. Cell. Biol. 5:1639-1648; Hammer et al., 1987, Science 235:53-58);肝臓内で活性のアルファ1-アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelsey et al., 1987, Genes and Devel. 1:161-171)、骨髄細胞内で活性のベータ-グロブリン遺伝子制御領域(Mogram et al., 1985, Nature 315:338-340; Kollias et al., 1986, Cell 46:89-94);脳内の乏突起膠細胞内で活性のミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readhead et al., 1987, Cell 48:703-712);骨格筋内で活性のミオシン軽鎖-2遺伝子制御領域(Shani, 1985, Nature 314:283-286)、および視床下部内で活性のゴナドトロピン放出ホルモン遺伝子制御領域(Mason et al., 1986, Science 234:1372-1378)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
したがって、本発明によれば、本明細書に記載されたポリペプチドをコードする核酸を含むバクテリアまたは真核生物宿主において複製され得る発現ベクターを用いて、宿主をトランスフェクトし、それによりそのような核酸の発現を指揮してポリペプチドを生成し、それがその後、生物活性形態で回収されてよい。本明細書で用いられる生物活性形態は、関連の受容体に結合すること、および分化された機能を引き起こすこと、および/または受容体を発現する細胞の表現型に影響を及ぼすことが可能な形態を包含する。
【0132】
核酸挿入物を含有する発現ベクターは、非限定的に、少なくとも3種の一般的アプローチ:(a)DNA-DNAハイブリダイゼーション、(b)「マーカ」遺伝子機能の存在または非存在、および(c)挿入された配列の発現、により同定され得る。第一のアプローチにおいて、発現ベクター内に挿入された外来核酸の存在が、挿入された核酸配列に相同的な配列を含むプローブを用いるDNA-DNAハイブリダイゼーションにより検出され得る。第二のアプローチにおいて、組換えベクター/宿主系が、ベクター内の外来核酸配列の挿入により引き起こされる特定の「マーカ」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質への耐性、形質転換表現型、バキュロウイルス内の包埋体形成ほか)の存在または非存在に基づいて同定および選択され得る。例えば、efl核酸配列が、ベクターのマーカ遺伝子配列内に挿入されるなら、挿入部を含有する組換え体が、マーカ遺伝子機能の非存在により同定され得る。第三のアプローチにおいて、組換え発現ベクターが、組換え構築物により発現された外来核酸生成物をアッセイすることにより同定され得る。そのようなアッセイは、例えばリガンドの、例えば検出可能な抗体もしくはその一部でタグづけられ得る受容体もしくはその一部への結合、または該当するタンパク質もしくはその一部に対して生成された抗体への結合による、該当する核酸生成物の物理的または機能的特性に基づき得る。
【0133】
特に本発明の修飾された、ポリペプチドは、一過的に、構成的にまたは恒久的に宿主細胞で発現されてよい。
【0134】
本出願内で示された疾患または障害を処置するために有用な有効用量は、当業者に公知の方法を用いて決定されてよい(例えば、Fingl, et al., The Pharmacological Basis of Therapeutics, Goodman and Gilman, eds. Macmillan Publishing Co, New York, pp. 1-46 (1975)参照)。本発明による使用のための医薬組成物は、インビボ投与に先立ち、担体もしくは標的分子(例えば、抗体、ホルモン、成長因子ほか)に連結され、かつ/またはリポソーム、マイクロカプセルおよび制御放出調製物内に組み込まれる、薬理学的に許容できる液体、固体または半固体担体の中に先に記載されたポリペプチドを含む。例えば、医薬組成物は、滅菌水、生理食塩水、リン酸緩衝液またはデキストロース溶液などの水性溶液中にポリペプチドを含んでよい。あるいは活性剤は、そのような処置を必要とする患者にインプラントされ得る固体(例えば、ワックス)または半固体(例えば、ゼラチン性)配合剤の中に含まれてよい。投与経路は、非限定的に、静脈内、髄腔内、皮下、子宮内、関与する組織への注射による、動脈内、鼻内、経口、またはインプラントデバイス経由を含む、当該技術分野で公知の任意の投与様式であってよい。
【0135】
投与は、体全体への、または局所エリアへの本発明の活性剤の分布をもたらし得る。例えば、神経系の離れた領域を含む幾つかの条件において、薬剤の静脈内または髄腔内投与が、望ましいかもしれない。幾つかの状況において、活性剤を含有するインプラントが、病巣エリアに、またはその付近に配置されてよい。適切なインプラントとしては、ゲルフォーム、ワックス、スプレー、またはマイクロ粒子に基づくインプラントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
本発明はまた、薬理学的に許容できるビヒクル中に本明細書に記載されたポリペプチドを含む医薬組成物を提供する。組成物は、全身または局所投与されてよい。非限定的に静脈内、髄腔内、動脈内、鼻内、経口、皮下、腹腔内、または局所注射もしくは外科インプラントを含む、当該技術分野で知られる任意の適当な投与様式が、用いられてよい。徐放性配合剤もまた、提供される。
【0137】
遺伝子療法
遺伝子療法は、発現されたまたは発現可能な核酸の対象への投与により実施される治療を指す。本発明のこの実施形態において、核酸は、治療効果を媒介するそれらのコード化タンパク質を生成する。
【0138】
当該技術分野で利用可能な遺伝子療法のための方法のいずれかが、本発明により用いられ得る。例示的方法を、以下に記載する。
【0139】
遺伝子療法の方法の一般的レビューについては、Goldspiel et al., Clinical Pharmacy 12:488-505 (1993); Wu and Wu, Biotherapy 3:87-95 (1991); Tolstoshev, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573-596 (1993); Mulligan, Science 260:926-932 (1993);およびMorgan and Anderson, Ann. Rev. Biochem. 62:191-217 (1993); May, TIBTECH 11(5):155-215 (1993)を参照されたい。用いられ得る組換えDNA技術の当該技術分野で一般に知られる方法は、Ausubel et al. (eds.)、 Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY (1993);およびKriegler, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY (1990)に記載される。
【0140】
患者への核酸の送達は、直接的であってよく、その場合、患者は核酸もしくは核酸を担持したベクターに直接暴露され、または間接的であってよく、その場合、細胞は最初に、インビトロで核酸で形質転換され、その後患者に移植される。これらの2つのアプローチは、それぞれインビボまたはエクスビボ遺伝子療法として知られる。
【0141】
具体的実施形態において、核酸配列は、インビボで直接投与され、そこで発現されてコード化生成物を生成する。これは、当該技術分野で公知の数多くの方法のいずれかにより、例えば核酸配列を適当な核酸発現ベクターの一部として構築すること、および核酸配列が細胞内になるようにベクターを投与することにより、例えば欠損もしくは弱毒レトロウイルスもしくは他のウイルスベクターを用いる感染により、またはネイキッドDNAの直接注射、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクション剤でコーティングすること、またはリポソーム、マイクロ粒子もしくはマイクロカプセル中のカプセル化により、または核に進入することが知られるペプチドに連結されたそれらを投与することにより、受容体介在性エンドサイトーシスを受けたリガンドに連結されたそれを投与すること(例えば、Wu and Wu, J. Biol. Chem. 262:4429-4432(1987)参照)(これは、受容体を特異的に発現する細胞型を標的にするために用いられ得る)などにより、遂行され得る。別の実施形態において、核酸-リガンド複合体が形成され得、その中でリガンドは、エンドソームを破壊するために融合性ウイルスペプチドを含み、核酸にリソゾーム分解を回避させる。さらに別の実施形態において、核酸は、特異性受容体を標的にすることにより、細胞特異性の取り込みおよび発現のためにインビボで標的にされ得る。あるいは、核酸は、相同組換えにより、細胞内に導入され発現のために宿主細胞DNA内に組み込まれ得る(Koller and Smithies, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:8932-8935 (1989); Zijlstra et al., Nature 342:435-438(1989))。
【0142】
具体的実施形態において、ポリペプチドをコードする核酸配列を含有するウイルスベクターが、用いられる。遺伝子療法に用いられるポリペプチドをコードする核酸配列が、1種または複数のベクター中にクローニングされ、それは患者への遺伝子送達を容易にする。レトロウイルスベクターなどのレンチウイルスベクター、ならびにアデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスなどの他のベクターが、用いられ得るウイルスベクターの例である。レトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムの正しいパッケージングおよび宿主細胞DNAへの取り込みに必要な構成成分を含有する。
【0143】
アデノウイルスは、それらが呼吸器上皮に自然に感染して軽度の疾患を引き起こすため、呼吸器上皮に遺伝子を送達するための特に魅力的なビヒクルである。アデノウイルスに基づく送達システムのための他の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞、および筋肉である。アデノウイルスは、非分裂細胞に感染できるという利点を有する。加えて、アデノ随伴ウイルス(AAV)もまた、遺伝子療法における使用に提案されてきた。
【0144】
遺伝子療法の別のアプローチは、電気穿孔、リポフェクション、リン酸カルシウムを介したトランスフェクション、またはウイルス感染のような方法により組織培養物中の細胞に遺伝子を移入することを含む。通常、移入の方法は、細胞への選択マーカの移入を含む。細胞をその後、選択下に置いて、移入された遺伝子を取り込んで発現しているそれらの細胞を単離する。それらの細胞をその後、患者に送達する。
【0145】
この実施形態において、核酸は、得られた組換え細胞のインビボ投与に先立ち、細胞内に導入される。そのような導入は、非限定的にトランスフェクション、電気穿孔、マイクロインジェクション、核酸配列を含有するウイルスまたはバクテリオファージベクターでの感染、細胞融合、染色体を媒介した遺伝子移入、マイクロセルを介した遺伝子移入、スフェロプラスト融合などを含む、当該技術分野で公知の任意方法により実行され得る。数多くの技術が、細胞内への外来遺伝子の導入のために、当該技術分野で知られており、レシピエント細胞の必要な発達および生理学的機能が破壊されないことを条件に、本発明により用いられてよい。その技術は、核酸が細胞により発現可能であるように、好ましくは細胞子孫により継承可能かつ発現可能であるように、細胞への核酸の安定な移入を提供しなければならない。
【0146】
その中に核酸が遺伝子療法の目的で導入され得る細胞は、任意の望ましい利用可能な細胞型を包含し、上皮細胞、内皮細胞、角化細胞、線維芽細胞、筋肉細胞、肝細胞;Tリンパ球、B-リンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球などの血液細胞;様々な幹細胞または前駆細胞、特に、例えば骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝臓などから得られるような、造血幹細胞または前駆細胞を含むが、これらに限定されない。
【0147】
好ましい実施形態において、遺伝子療法に用いられる細胞は、患者に対し自己である。
【0148】
組換え細胞が遺伝子療法に用いられる実施形態において、ポリペプチドをコードする核酸配列は、細胞またはその子孫により発現可能になるように細胞に導入され、組換え細胞はその後、治療効果のためにインビボ投与される。具体的実施形態において、幹細胞または前駆細胞が、用いられる。単離されてインビトロで維持され得る任意の幹細胞および/または前駆細胞が潜在的に、本発明のこの実施形態により用いられ得る。
【0149】
具体的実施形態において、遺伝子療法の目的で導入される核酸は、転写の適当な誘導物質の存在または非存在を制御することにより核酸の発現が制御可能になるように、コード領域に動作可能に連結された誘導型プロモーターを含む。
【0150】
治療組成物
治療化合物の配合剤は、当該技術分野で一般に知られており、簡便にはRemington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., USAで参照され得る。例えば、約0.05ng~約20mg/キログラム体重/日が、投与されてよい。投与レジメンは、最適な治療応答を提供するように調整されてよい。例えば複数の分割用量が、連日投与されてよく、または用量は、治療状況の急迫性により示される通り、比例して低減されてよい。活性化合物は、経口、静脈内(水溶性なら)、筋肉内、皮下、鼻内、眼内、皮内もしくは坐剤経路による、または埋め込み(例えば、腹腔内経路により徐放性分子を用いて、またはインビトロで感作されてレシピエントに養子移入された細胞、例えば単球もしくは樹状細胞を用いることにより)によるなどの、簡便な手法で投与されてよい。投与経路に応じて、ペプチドは、上記成分を不活性化し得る酵素、酸および他の自然条件の作用から防護するために材料でコートされることが必要とされてよい。
【0151】
例えば、ペプチドの低い親油性は、ペプチド結合を切断できる酵素により消化管内で、および酸加水分解により胃内で、ペプチドを破壊させるであろう。非経口投与以外によりペプチドを投与するために、それらは、不活性化を予防する材料によりコートされるか、または材料と共に投与されるであろう。例えばペプチドは、アジュバント中で投与されても、酵素阻害剤と共投与されても、またはリポソーム中にあってもよい。本明細書で企図されるアジュバントとしては、レゾリシノール、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、およびn-ヘキサデシルポリエチレンエーテルが挙げられる。酵素阻害剤としては、膵トリプシン阻害剤、ジイソプロピルフルオロリン酸(DEP)およびトラシロールが挙げられる。リポソームとしては、水中油中水CGFエマルジョンおよび従来のリポソームが挙げられる。
【0152】
活性化合物はまた、非経口または腹腔内投与されてよい。分散体もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール(glycerol liquid polyethylene glycols)、およびそれらの混合物中、ならびに油中で調製され得る。貯蔵および使用の通常条件下では、これらの調製物は、微生物の生育を予防する防腐剤を含有する。
【0153】
注射可能な使用に適した医薬形態としては、滅菌水性溶液(水溶性ならば)または分散液、および滅菌注射可能溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。全ての例で、その形態は、滅菌されていなければならず、容易な注入可能性(syringability)が存在する程度に流動的でなければならない。これは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、バクテリアおよび真菌などの微生物の汚染作用から防御されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールおよび同様のもの)、それらの適切な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。適正な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用により、分散液の場合には要求される粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により、維持され得る。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばクロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、テオメルサール(theomersal)および同様のものによりもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射可能な組成物の持続的吸収は、組成物中での吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によりもたらされ得る。
【0154】
滅菌注射可能溶液は、先に列挙され様々な他の成分と共に適当な溶媒に必要量の活性化合物を組み込むこと、必要に応じて次に濾過滅菌することにより、調製され得る。一般的に分散液は、基本的な分散媒と、先に列挙された成分からの必要とされる他の成分とを含有する滅菌ビヒクル中に様々な滅菌有効成分を組み込むことにより調製される。滅菌注射可能溶液を調製するための滅菌粉末の例では、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥の技術であり、これらは、予め濾過滅菌されたその溶液から、有効成分および任意の追加の所望の成分の粉末を生じる。
【0155】
ペプチドが、先に記載された通り適切に防護される場合、活性化合物は、例えば不活性希釈剤もしくは同化可能な食用担体と共に経口投与されてよく、またはそれは、硬もしくは軟ゼラチンカプセルの中に封入されてよく、または打錠されてよく、または直接食事の食物と組み込まれてよい。経口治療投与では、活性化合物は、賦形剤と組み込まれ、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハースおよび同様のものの形態で用いられてよい。そのような組成物および調製物は、少なくとも1重量%の活性化合物を含有しなければならない。組成物および調製物の割合%は、もちろん変動してよく、簡便には約5~約80重量%の間の単位であってよい。そのような治療有用性組成物中の活性化合物の量は、適切な投与量が得られるようなものである。本発明による好ましい組成物または調製物は、経口投与単位剤形が約0.1μg~約2000mgの間の活性化合物を含有するように調製される。
【0156】
錠剤、丸薬、カプセルおよび同様のものもまた、以下のものを含有してよい:トラガカントガム、アラビアゴム、コーンスターチもしくはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、じゃがいもデンプン、アルギン酸および同様のものなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;ならびにスクロース、ラクトースもしくはサッカリンなどの甘味剤、またはペパーミント、ウィンターグリーンオイル、もしくはサクランボフレーバなどの香味剤が、添加されてよい。投与単位剤形がカプセルである場合、それは、上記タイプの材料に加え、液体担体を含有してよい。様々な他の材料が、コーティングとして、または他の方法で投与単位の物理的形態を改良するために、存在してよい。例えば錠剤、丸薬、またはカプセルが、シェラック、糖、またはその両方でコーティングされてよい。シロップまたはエリキシルが、活性化合物、甘味剤としてのスクロース、防腐剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、サクランボまたはオレンジフレーバなどの色素および香料を含有してよい。もちろん、任意の投与単位剤形を調製する際に用いられる任意の材料は、医薬的に純粋であり、用いられる量で実質的に非毒性でなければならない。加えて、活性化合物は、徐放性調製物および配合剤中に組み込まれてよい。
【0157】
送達システム
様々な送達システム、例えばリポソーム中のカプセル化、マイクロ粒子、マイクロカプセル、化合物を発現することが可能な組換え細胞、受容体介在性エンドサイトーシス、レトロウイルスまたは他のベクターの一部としての核酸の構築など、が公知であり、本発明の化合物を投与するために用いられ得る。導入の方法としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、眼内、硬膜外、および経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。化合物または組成物は、任意の簡便な経路により、例えば輸液またはボーラス注射により、上皮または皮膚粘膜ライニング(mucocutaneous lining)(例えば、口腔粘膜、直腸および腸管粘膜ほか)を通した吸収により投与されてよく、および他の生物活性剤と一緒に投与されてよい。投与は、全身または局所であり得る。加えて、本発明の医薬化合物または組成物を、脳室内および髄腔内注射を含む、任意の適切な経路により中枢神経系に導入することが望ましく、脳室内注射は、例えばOmmayaリザーバーなどのリザーバーに取り付けられた、脳室内カテーテルにより容易にされ得る。肺投与もまた、例えば吸入器またはネブライザーの使用、およびエアロゾル化剤の配合により、用いられ得る。
【0158】
具体的実施形態において、本発明の医薬化合物または組成物を、処置を必要とするエリアに局所投与することが望ましく、これは、例えば限定ではなく、手術の間の局所輸液により、例えば手術後の創傷包帯と併せた、外用塗布により、注射により、カテーテルの手段により、坐剤の手段により、またはインプラントの手段により実現されてよく、上記インプラントは、Sialastic膜などの膜または繊維を含む、多孔質、非多孔質、またはゼラチン状材料である。好ましくは、本発明の抗体またはペプチドを含むタンパク質を投与する場合、タンパク質が吸収されない材料を使用することに、注意しなければならない。別の実施形態において、化合物または組成物は、小胞、特にリポソーム中で送達され得る。さらに別の実施形態において、化合物または組成物は、制御放出システム中で送達され得る。一実施形態において、ポンプが、用いられてよい。別の実施形態において、ポリマー材料が、用いられ得る。さらに別の実施形態において、制御放出システムが、治療ターゲットの付近に配置され得、これにより全身投与の一部のみを必要とする。
【0159】
以下の実施例は、本発明の例示として提供され、限定ではない。
【0160】
実施例
実施例1:抗BAG2抗体の選択、シーケンシングおよび抗原-抗体反応
1.BAG2を標的とするモノクローナル抗体の選択およびそのアミノ酸配列の解析
本発明者らは、BAG2を標的とする抗体を選択し、それらのアミノ酸配列を解析し、抗体のそれぞれの相補性決定領域(CDR)を決定した。
【0161】
詳細には、SEQ ID NO:69のアミノ酸配列からなるヒトBAG2タンパク質をコードするSEQ ID NO:70のヌクレオチド配列からなる遺伝子を、pCAGGSプラスミドにクローニングし直鎖状にし、直鎖状にされた構築物をその後、電気ショックをあてることにより、5匹の6週齢雌BALB/cマウスの筋肉に接種した。この構築物を、3週間間隔で3回、筋肉内に接種し、それは100μlのPBS中の100μgのDNAからなった。この時、対照群のプラスミドも同じ手法に供した。治療抗体および診断抗体を生成するために、タンパク質を基にした抗原注射よりも効率的な、DNAワクチンを基にした免疫方策を実施した。血液を、マウスの眼底大静脈または尾静脈から採取し、酵素免疫測定法により検査し血清抗体価を示し、脾臓を、充分な抗体価を示したマウスから、最後の免疫化の3日後に摘出した。Bリンパ球を、脾臓から単離し、単離されたBリンパ球、即ちATCCのSP2/0-Ag14細胞株と培養された骨髄腫細胞による融合が続き、それにより融合された細胞を得た。融合された細胞を、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含有するHAT培地中で培養した後、骨髄腫およびBリンパ球のみで融合されたハイブリドーマ細胞を、およそ130のクローンを選択することにより得た。免疫ブロッティングによる選択工程を通して得られたハイブリドーマ細胞から、ヒトBAG2タンパク質に特異的に結合する抗体を生成する10種のハイブリドーマ細胞を、得た。
【0162】
抗Bag2抗体の総RNAを、5×10ハイブリドーマ細胞から生成し、5’-RACE-cDNAを、製造業者の使用説明に従いSMART RACE cDNA Amplificationキット(Clontech)を用いることにより、100ngの総RNAから生成した。重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)をコードする領域を、PCRにより増幅し、増幅された遺伝子を、pGEM-Tベクター(Promega、USA)に挿入し、クローニングし、そのヌクレオチド配列を、自動遺伝子解析装置(ABI Prism 310、Applied Biosystem Co.)を用いることにより解析した。解析された遺伝子のヌクレオチド配列を、過去に報告されたヌクレオチド配列との比較により同定し、同定されたヌクレオチド配列を、相補性決定領域VH-CDR1、-CDR2、および-CDR3、ならびにVL-CDR1、-CDR2、および-CDR3の配列を決定することにおける使用のために人工的に翻訳した。相補性決定領域の配列を決定することを、Kabatのデータベース(http://www.bioinf.org.uk/abs/)を用いることにより実施した。
【0163】
結果として、BAG2に特異的に結合する10種の抗BAG2抗体を、ハイブリドーマ細胞から得た。10種の抗BAG2抗体は、2A11、4C2、8C4、3B5、9B3、9B12、3B10、10H7、3GB、および3F12抗体であった。加えて、表1~3に示された重鎖可変領域、軽鎖可変領域およびそれらの相補性決定領域のアミノ酸配列、ならびに抗体をコードする遺伝子のヌクレオチド配列を、決定した。
【0164】
2A11、4C2、および8C4抗体は、SEQ ID NO:21のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、SEQ ID NO:27のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含む。2A11抗体では、SEQ ID NO:21の56および57番目のXaaは、それぞれGlyであり、SEQ ID NO:27の53番目のXaaは、lieである。4C2抗体では、SEQ ID NO:21の56番目のXaaおよび57番目のXaaは、それぞれGlyおよびAlaであり、SEQ ID NO:27の53番目のXaaは、Pheである。8C4抗体では、SEQ ID NO:21の56番目のXaaおよび57番目のXaaは、それぞれAlaおよびGlyであり、SEQ ID NO:27の53番目のXaaは、Pheである。
【0165】
2A11、4C2、および8C4抗体のVH-CDR1、-CDR2および-CDR3は、それぞれSEQ ID NO:33、39および45のアミノ酸配列からなり、VL-CDR1、-CDR2および-CDR3は、それぞれSEQ ID NO:51、57および63のアミノ酸配列からなる。2A11抗体では、SEQ ID NO:21の56および57番目のXaaは、それぞれGlyである。4C2抗体に関しては、SEQ ID NO:21では56番目のXaaは、Glyであり、57番目のXaaは、Alaである。8C4抗体に関しては、SEQ ID NO:21では56番目のXaaは、Alaであり、57番目のXaaは、Glyである。
【0166】
9B3、9B12および3B10抗体は、SEQ ID NO:23のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、SEQ ID NO:29のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含む。9B3抗体に関しては、SEQ ID NO:23では1番目のXaaは、Gluであり、7番目のXaaは、Serであり、12番目のXaaは、Valであり、27番目のXaaは、Tyrであり、58番目のXaaは、Serであり、61番目のXaaは、Asnであり、74番目のXaaは、Lysであり、83番目のXaaは、Pheであり、92番目のXaaは、Alaであり、108番目のXaaは、Tyrである。9B3抗体に関しては、SEQ ID NO:29では23番目のXaaは、lieであり、45番目のXaaは、Alaであり、73番目のXaaは、Gluであり、100番目のXaaは、lieである。9B12抗体に関しては、SEQ ID NO:23では1番目のXaaは、Ginであり、7番目のXaaは、Serであり、12番目のXaaは、Valであり、27番目のXaaは、Tyrであり、58番目のXaaは、Serであり、61番目のXaaは、Asnであり、74番目のXaaは、Argであり、83番目のXaaは、Pheであり、92番目のXaaは、Glyであり、108番目のXaaは、Hisである。9B12抗体に関しては、SEQ ID NO:29では23番目のXaaは、Metであり、45番目のXaaは、Alaであり、73番目のXaaは、Gluであり、100番目のXaaは、Metである。3B10抗体に関しては、SEQ ID NO:23では1番目のXaaは、Ginであり、7番目のXaaは、Proであり、12番目のXaaは、Alaであり、27番目のXaaは、Hisであり、58番目のXaaは、Thrであり、61番目のXaaは、Serであり、74番目のXaaは、Argであり、83番目のXaaは、Leuであり、92番目のXaaは、Glyであり、108番目のXaaは、Hisである。3B10抗体に関しては、SEQ ID NO:29では23番目ではXaaは、Metであり、45番目のXaaは、Serであり、73番目のXaaは、Aspであり、100番目のXaaは、lieである。
【0167】
9B3、9B12および3B10抗体に関しては、VH-CDR1、-CDR2、および-CDR3は、それぞれSEQ ID NOS:35、41、および47のアミノ酸配列からなり、VL-CDR1、-CDR2、および-CDR3は、それぞれSEQ ID NOS:53、59、および65のアミノ酸配列からなる。9B3抗体に関しては、SEQ ID NO:35の2番目のXaaは、Tyrであり、SEQ ID NO:41の8番目のXaaは、Serであり、SEQ ID NO:47の12番目のXaaは、Tyrであり、SEQ ID NO:53の3番目のXaaは、lieであり、SEQ ID NO:59の2番目のXaaは、Alaである。9B12抗体に関しては、SEQ ID NO:35の2番目のXaaは、Tyrであり、SEQ ID NO:41の8番目のXaaは、Serであり、SEQ ID NO:47の12番目のXaaは、Hisであり、SEQ ID NO:53の3番目のXaaは、Metであり、SEQ ID NO:59の2番目のXaaは、Alaである。3B10抗体に関しては、SEQ ID NO:35の2番目のXaaは、Hisであり、SEQ ID NO:41の8番目のXaaは、Thrであり、SEQ ID NO:47の12番目のXaaは、Hisであり、SEQ ID NO:53の3番目のXaaは、Metであり、SEQ ID NO:59の2番目のXaaは、Serである。
【表1】
【表2】
【表3】
【0168】
2.乳癌細胞における抗BAG2抗体の抗原-抗体応答の同定
図1は、10種のマウスハイブリドーマ細胞から生成された抗BAG2抗体の免疫ブロッティングの結果を示す。具体的には、ヒト乳癌細胞であるMDA-MB-231細胞を、10%FBS、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを含有するDMEM(Welgene)培地中にて、37℃の温度で培養した。細胞を、ウェルから剥離し、PBSで洗浄し、1% Brij97、5mM EDTA、0.02M HEPES pH7.3、0.15M NaCl、1mM PMSF、0.5mM NaF、10μg/rni アプロチニン、0.2mMオルトバナジン酸ナトリウムを含有する溶解緩衝溶液に溶解した。氷上での15分のインキュベーション後に、核を、遠心分離により細胞から除去し、上清を、採取した。20%グリセロール、4.6%SOS、0.125M Tris pH6.8、0.1%ブロモフェノールブルーからなる2X試料緩衝液を、適当な量の上清に添加した。10μgのタンパク質試料を、mini-Protean IIシステム(Bio-Rad、カリフォルニア州ハーキュリーズ所在)を用いることによる、標準条件下の12%ゲル上でのSOS-PAGE解析に供した。免疫ブロッティングのために、タンパク質を、Millipore PVDF膜の上に移した。TBS中の0.1%Tween 20および5%ウシ血清アルブミン(BSA)からなるブロッキング溶液を、1時間反応させた。次に一次抗体は、ハイブリドーマ細胞培養物から抽出された抗BAG2抗体の1/2000希釈液であり、二次抗体として用いられるヤギ抗マウスHRPコンジュゲート(Dako)を、1/5000に希釈した。フィルム感光を、EGL試薬(Amersham Pharmacia Biotech)を基質として用い暗所で実施した。感光されたバンドを、標準の分子マーカと比較して、BAG2のサイズに対応するバンドを同定した。
【0169】
結果として図1に示す通り、陽性対照として用いた市販のポリクローナル抗BAG2抗体であるab58682(Abeam)と比較して、抗体2A11、3B5、3B10、3F12、3GB、4C2、8C4、9B3、9B12および10H7は、BAG2を標的とする抗原-抗体反応を示した。
【0170】
次いで、それに対し10種の抗体が先の第1節で同定されたBAG2抗原のドメインマッピングのために、約26kDaの分子量を有するGST-エンプティベクター(pcDNA3.1+/GSTベクター、NovoPro Bioscience Inc.、中国)が導入された細胞を、陰性対照として用いた。それぞれがヒトBAG2タンパク質をコードするポリヌクレオチドとBAG2タンパク質のフラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む、GST-Bag Fullベクター、GST-Bag F1ベクター、GST-Bag F2ベクター、GST-Bag F3 ベクター、およびGST-Bag F4ベクターを、細胞に導入し、ベクターが導入された細胞を、培養して遺伝子を発現させ、その後、細胞溶解物を得た。細胞溶解物のために、免疫ブロッティングを、10種の抗体それぞれを用いて実施した。ヒトBAG2タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:70のヌクレオチド配列を有する。GST-Bag F1、-Bag F2、-Bag F3、および-Bag F4ベクターは、それぞれSEQ ID NO:71~74のヌクレオチド配列からなる。
【0171】
図2Aおよび2Bは、抗BAG2抗体またはそのフラグメントの完全長BAG2ポリペプチドについての免疫ブロッティングの結果を示す。図2において、Aは、ベクターおよびBAG2タンパク質およびそのフラグメントの図表を示し、Bは、免疫ブロッティングの結果を示す。詳細には、免疫ブロッティングを、以下のとおり実施した:ベクターのそれぞれを、Lipofectamineトランスフェクション(Thermo Fisher Scientific, Inc.、米国マサチューセッツ州ウォルサム所在)方法によりHEK2T細胞に導入し、得られた形質転換細胞を、10%FBS、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを含有するDMEM(Welgene)培地中にて37℃の温度で30時間培養し、その後、細胞を単離した。単離された細胞を、図1に関連して記載されたものと同じ方法を利用して破壊し、12%ゲル上でSOS-PAGE解析に供した。免疫ブロッティングのために、図1に関連して記載されたものと同じブロッキング溶液で1時間反応させた後、2mg/mlの濃度を有する10種の精製抗BAG2抗体のそれぞれを、1/10000希釈して一次抗体として用い、細胞に結合させた。二次抗体として用いたヤギ抗マウスHRPコンジュゲートを、1/5000希釈濃度で用い、フィルム感光を、EGL試薬(Amersham Pharmacia Biotech)を基質として用いて暗所で実施した。標準の分子マーカサイズを発現させて、BAG2のサイズを確認した。
【0172】
結果として、図2に示された通り、各抗BAG2抗体は、完全長BAG2ポリペプチドまたはそのフラグメントに差別的に結合した。特に、10種の抗BAG2抗体のそれぞれについて、シグナルが、GST-Bag Fullベクター導入細胞の溶解物において、約50KDaの位置で共通して検出された。この結果は、これらの抗体の全てが完全長BAG2抗体に結合し得ることを示す。最後に、各BAG2抗体が反応するBAG2のドメイン領域を、同定した。
【0173】
図3は、各抗BAG2抗体と反応するBAG2ドメインを示す。図3に示された通り、9B3、9B12、3B10、および10H7抗体を、BAG2タンパク質のN-末端に結合させ、2A11、3B5、4C2および8C4抗体を、BAG2タンパク質の中央領域に結合させ、3F12および3GB抗体を、BAG2タンパク質のC-末端に結合させた。N-末端は共通して、21~60アミノ酸のコイルドコイル領域を含み、中央領域は、109~189アミノ酸のBNB領域の一部に結合される。それゆえ、異なる部位に結合する一組の抗体を用いることにより、試料中に存在するBAG2タンパク質またはそのフラグメントを、高い感度および特異度で検出してよい。
【0174】
一態様によるBAG2ポリペプチドまたはそのフラグメントに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、様々な長さのBAG2ポリペプチドまたはそのフラグメントとの抗原-抗体反応を引き起こし得る。
【0175】
別の態様による抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチド、およびそれを含む宿主細胞は、抗体またはその抗原結合フラグメントを生成するために用いられ得る。
【0176】
別の態様による抗体またはその抗原結合フラグメントを生成する方法によれば、抗体またはその抗原結合フラグメントは、効率的に生成され得る。
【0177】
実施例2.癌の処置方法のための薬物およびマウスモデルの調製
抗BAG2の10種のハイブリドーマ細胞株を、製造業者(GE Healthcare Biosciences AB)の使用説明に従いSepharoseタンパク質A/Gカラムでのアフィニティークロマトグラフィーにより各培養上清から精製した。対照Mu-IgG2a(ATCC、CCL-167(商標))を、アイソタイプ対照抗体として用い、American Type Culture Collectionから得た。インビトロおよびインビボ試験で用いられた抗BAG2マウス抗体およびアイソタイプ対照抗体を、Nanotoolによりエンドトキシン不含条件(<0.01EU/ug)で生成した。
【0178】
抗PD-L1モノクローナル抗体(BioXCell、cat, No.BE0101)、抗PD-1モノクローナル抗体 (BioXCell、Cat. No.BE0033-2)、および抗CTLA4モノクローナル抗体(BioXCell、Cat. No.BE0131)を、製造業者の使用説明に従って調製した。
【0179】
インビボ抗腫瘍効果を検証するために、雄5週齢SPF C57BL/6およびBALB/cマウスを、Koatech Co.(韓国)から購入した。これらのマウスを、約22℃の温度に制御された室内で飼育し、マウスに飼料および水を自由に供給した。1週間後に、マウスEMT6乳癌細胞株(ATCC、CRL-2755(商標))2×10細胞、マウスルイス肺癌(LLC)細胞株(ATCC、CRL1642(商標))5×10細胞、マウスMC38結腸癌細胞株(Kerafast、ENH204-FP)5×10細胞、およびマウスCT26大腸癌細胞株(ATCC、CRL2638(商標))3×10細胞を、皮下注射によりこれらの6週齢マウスに注射した。7~8週齢マウスを、EMT6、LLC、MC38、およびCT26細胞株の注射後8~12日目に、実験に用いた。1週間後に、マウスB16-F10-Luc2皮膚黒色腫細胞株(ATCC, CRL-6475-Luc2(商標))2×10細胞を、尾静脈内注射によりこれらの7週齢マウスに注射した。9週齢のマウスを、B16-F10-Luc2の注射後15日目に、実験に用いた。1週間後に、マウスPANC02-Luc膵臓腺癌細胞株(Professor Kyu Lim、Chungnam National University、大韓民国)2×10細胞を、7週齢マウスの膵尾部に同所移植した。10週齢のマウスを、PANC02-Luc細胞株の注射後16日目に、実験に用いた。
【0180】
作用機序
腫瘍分泌BAG2タンパク質は、腫瘍微小環境において、抗免疫性(適応または自然免疫)のためにリンパ、骨髄、および間質細胞に結合し得る。本発明者らは、BAG2中和が、リンパ、骨髄、または間質に媒介された免疫抑制を標的とし、一方で免疫チェックポイント阻害薬が、アネルギー化された抗腫瘍T細胞の機能および骨髄細胞の抗炎症性を回復させると仮定した。
【0181】
2.1.マウスモデルにおける乳癌処置の結果
結果は、以下を示す。
【0182】
抗BAG2抗体は単独で、マウス乳癌モデルにおいて抗腫瘍活性を有する。
【0183】
抗BAG2抗体と抗PD-L1抗体の併用療法は、マウス乳癌モデルにおいて相乗的な抗腫瘍活性を有する。
【0184】
図4aに示される通り、腫瘍接種の12日後、EMT6腫瘍担持BALB/cマウスを、薬物投与を実行する前に腫瘍サイズにより無作為化した。腫瘍細胞注射後12日目に、マウスを、抗BAG2抗体3B10で処置した。次に、14日目に、マウスは抗PD-L1抗体の単独注射を受けた。
【0185】
図4bおよび4cに示された通り、24日目に、抗PD-L1抗体投与群、抗BAG2抗体3B10投与群、および抗PD-L1抗体と3B10の組み合わせ投与群の腫瘍体積は、アイソタイプ対照群の腫瘍体積に比較して、それぞれ約20.2%、約39.8%、および約70.1%減少した。抗PD-1抗体での処置は、腫瘍成長に対してわずかな効果を有したが、3B10と一緒での処置は、腫瘍成長を有意に阻害した。抗PD-L1抗体と3B10の組み合わせでの処置は、どちらかの単独の薬剤より大きな度合いに腫瘍成長を阻害した。
【0186】
図4dに示された通り、抗PD-L1抗体投与群、抗BAG2抗体3B10投与群、および抗PD-L1抗体と3B10の組み合わせ投与群の腫瘍特異性CD3+/CD8+ T細胞(癌細胞を殺傷する際のエフェクターメモリー細胞)は、アイソタイプ対照群のCD3+/CD8+ T細胞の量に比較して、それぞれ約2.4倍、2.8倍および8.2倍増加した。抗PD-L1抗体と3B10の組み合わせでの処置は、どちらかの単独の薬剤より大きな度合いに腫瘍特異性CD3+/CD8+ T細胞を活性化した。活性化は、直接的または間接的、即ちサプレッサ細胞の阻害であり得る。
【0187】
2.2.マウスモデルにおける肺癌処置の結果
結果は、以下を示す。
【0188】
抗BAG2抗体および免疫チェックポイント阻害薬の併用療法は、マウス肺癌モデルにおいて相乗的な抗腫瘍効果を有する。
【0189】
図5aに示された通り、LLC腫瘍担持C57BL/6マウスを最初に、腫瘍細胞注射後8日目に抗BAG2抗体3B10で処置した。次に、14日目に、マウスは、抗PD-L1抗体の単独注射を受けた。
【0190】
図5bおよび5cに示された通り、20日目に、抗PD-L1抗体投与群、抗BAG2抗体3B10投与群、および抗PD-L1抗体と3B10の組み合わせ投与群の腫瘍体積は、アイソタイプ対照群の腫瘍体積に比較して、それぞれ約8.7%、約17.8%、および約62.2%減少した。抗PD-L1抗体と3B10の組み合わせでの処置は、どちらかの単独の薬剤より大きな度合いに腫瘍成長を阻害した。
【0191】
図5dに示された通り、抗PD-L1抗体投与群、抗BAG2抗体3B10投与群、および抗PD-L1抗体と3B10の組み合わせ投与群の腫瘍特異性CD3+/CD8+ T細胞(癌細胞を殺傷する際のエフェクターメモリー細胞)は、アイソタイプ対照群のCD3+/CD8+ T細胞レベルに比較して、それぞれ約1.3倍、2.8倍および6.6倍増加した。抗PD-L1抗体と3B10の組み合わせでの処置は、どちらかの単独の薬剤より大きな度合いに腫瘍特異性CD3+/CD8+ T細胞を活性化した。活性化は、直接的または間接的、即ちサプレッサ細胞の阻害であり得る。
【0192】
2.3.マウスモデルにおける黒色腫処置の結果
結果は、以下を示す。
【0193】
抗BAG2抗体は、マウス黒色腫の肺転移モデルにおいて抗腫瘍活性を有する。
【0194】
抗BAG2抗体および抗PD-L1抗体の併用療法は、マウス黒色腫の肺転移モデルにおいて相乗的な抗腫瘍活性を有する。
【0195】
図6aに示された通り、B16-F10-Luc2腫瘍担持C57BL/6マウスを最初に、腫瘍細胞静脈内注射後15日目に抗BAG2抗体3F12で処置した。次に、23日目に、マウスは、抗PD-L1抗体の単独注射を受けた。
【0196】
図6bおよび6cに示された通り、38日目に、抗PD-L1抗体投与群、抗BAG2抗体3F12投与群、および抗PD-L1抗体と3F12の組み合わせ投与群の腫瘍体積は、アイソタイプ対照群のBLIシグナルに比較して、それぞれ約19%、約54%、および約92%減少した。抗PD-1抗体での単独処置は、肺における黒色腫の腫瘍成長へのわずかな効果を有したが、抗BAG2抗体3F12は、肺における黒色腫の腫瘍成長を有意に阻害した。抗PD-L1抗体と3F12の組み合わせでの処置は、どちらかの単独の薬剤より大きな度合いに腫瘍成長を阻害した。
【0197】
2.4.大腸癌の処置
背景
高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI)の大腸癌(CRC)は、ミスマッチ修復性(MMR)の欠損、ならびにPD-L1、LAG-3およびIDOのレベル増加を有し、抗プログラム細胞死(PD)療法に対し明確に応答する。臨床現場において腫瘍の大部分を構成する低頻度MSIまたはマイクロサテライト安定性(MSS)CRCは、PD-1阻害によるいずれの利益も認めなかった。MSS CRCは、MSI CRCに比較してより高い割合のKRAS発癌性変異を有する。抗BAG2抗体と抗PD-1剤の併用療法を、C57BL/6(MC38;KRASwt、MSI)およびBALB/c(CT26;KRASmut、MSS)マウスの相乗性モデルにおいて試験した。
【0198】
2.4.1.マウスモデルにおける大腸癌高頻度MSI型の処置の結果
結果は、以下に示す。
【0199】
抗BAG2抗体単独は、高頻度MSI型のマウス大腸癌モデルにおいて抗腫瘍活性を有する。抗BAG2抗体および抗PD-1抗体の併用療法は、マウスCRCモデルにおいて相乗性の抗腫瘍効果を有する。
【0200】
図7aに示された通り、MC38腫瘍担持C57BL/6マウスを最初に、腫瘍細胞注射後8日目に抗BAG2抗体3B10で処置した。次に、10日目に、マウスは、抗PD-1抗体の単独注射を受けた。
【0201】
図7bおよび7cに示された通り、20日目に、抗PD-1抗体投与群、抗BAG2抗体3B10投与群、および抗PD-1抗体と3B10の組み合わせ投与群の腫瘍体積は、アイソタイプ対照群の腫瘍体積に比較して、それぞれ約43%、約40.8%、および約86.8%減少した。抗PD-1抗体または抗BAG2抗体3B10での単独処置は、腫瘍成長を有意に阻害した。抗PD-1抗体と3B10の組み合わせでの処置は、どちらかの単独の薬剤より大きな度合いに腫瘍成長を阻害した。
【0202】
図7dに示された通り、抗PD-1抗体投与群、抗BAG2抗体3B10投与群、および抗PD-1抗体と3B10の組み合わせ投与群の腫瘍特異性CD3+/CD8+ T細胞(癌細胞を殺傷する際のエフェクターメモリー細胞)は、アイソタイプ対照群のCD3+/CD8+ T細胞に比較して、それぞれ約4.4倍、3.9倍および36.2倍増加した。抗PD-1抗体と3B10の組み合わせでの処置は、どちらかの単独の薬剤より大きな度合いに腫瘍特異性CD3+/CD8+ T細胞を活性化した。活性化は、直接的または間接的、即ちサプレッサ細胞の阻害であり得る。
【0203】
2.4.2.マウスモデルにおける大腸癌MSS型の処置の結果
結果は、以下を示す。
【0204】
抗BAG2抗体単独は、マウスMSS型大腸癌モデルにおいて抗腫瘍活性を有する。
【0205】
抗BAG2抗体および抗PD-L1抗体の併用療法は、マウスMSS型CRCモデルにおいて相乗的な抗腫瘍効果を有する。
【0206】
図8aに示された通り、CT26腫瘍担持BALB/cマウスを、腫瘍細胞注射後11日目に、250μg(低用量)または750μg(高用量)/マウスの抗BAG2抗体3B10、抗PD-L1抗体、3B10と抗PD-L1抗体の組み合わせ、または対照抗体で処置した。マウスに、試験終了まで2日に1回i.p.注射により投与した。腫瘍成長を、モニタリングし、腫瘍体積を、電子キャリパーで示されたタイムポイントで測定した。
【0207】
図8bおよび8cに示された通り、23日目に、低用量3B10投与群、高用量3B10投与群、抗PD-L1抗体投与群、抗PD-L1抗体と低用量3B10の組み合わせ投与群および抗PD-L1抗体と高用量3B10の組み合わせ投与群の腫瘍体積は、アイソタイプ対照群の腫瘍体積に比較して、それぞれ約9.1%、約78.8%、約17.4%、約52.2%、および約95.1%減少した。高用量の3B10での単独処置は、CT26腫瘍の成長を強力に阻害した。抗PD-L1抗体での処置は、単独の薬剤として腫瘍成長阻害においてそれほど成功しなかった。抗PD-L1抗体と低用量3B10の組み合わせでの処置は、どちらかの単独の薬剤より大きな度合いに腫瘍成長を阻害した。その上、抗PD-L1抗体と高用量3B10での併用処置は、処置マウスの大部分において検出不能レベルに、個々の腫瘍の退縮を示した。
【0208】
図8dに示された通り、低用量3B10投与群、高用量3B10投与群、抗PD-L1抗体投与群、抗PD-L1抗体と低用量3B10の組み合わせ投与群および抗PD-L1抗体と高用量3B10の組み合わせ投与群の腫瘍特異性CD3+/CD8+ T細胞(癌細胞を殺傷する際のエフェクターメモリー細胞)は、アイソタイプ対照群のCD3+/CD8+ T細胞レベルに比較して、それぞれ約1.4倍、3.8倍、-1.5倍、6.6倍および8.7倍増加した。抗PD-L1抗体と3B10の組み合わせでの処置は、どちらかの単独の薬剤より大きな度合いに腫瘍特異性CD3+/CD8+ T細胞を活性化した。活性化は、直接的または間接的、即ちサプレッサ細胞の阻害であり得る。
【0209】
2.5.マウスモデルにおける膵臓癌処置の結果
結果は、以下を示す。
【0210】
抗BAG2抗体単独は、マウス膵臓癌モデルにおいて抗腫瘍効果を有する。
【0211】
抗BAG2抗体と免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体および抗CTLA4抗体)の併用療法は、マウス膵臓癌モデルにおいて相乗的な抗腫瘍活性を有する。
【0212】
図9aに示される通り、PANC02-Luc腫瘍担持C57BL/6マウスを、腫瘍細胞注射後に200μg(低用量)/マウス(16日目~32日目)および400μg(高用量)/マウス(35日目~39日目に3回)の4種の抗BAG2抗体(3B10、3F12、3B5、および3G8)または対照抗体で処置した。マウスに、試験終了まで週3回、i.p.注射により投与した。30日目~39日目に、マウスは、抗PD-1抗体または抗CTLA4抗体の注射を受けた。腫瘍成長を、インプラント後15、27および39日目に生物発光(BLI)シグナルのIVIS画像によりモニタリングした。
【0213】
図9bに示された通り、40日目に、抗BAG2抗体を個別に投与された群である、3B10投与群、3F12投与群、3B5投与群、および3G8投与群のBLIシグナルは、アイソタイプ対照群に比較して、それぞれ約79.3%、約68.4%、約24.8%、および約8.3%減少した。抗PD-1抗体投与群、抗PD-1抗体と3B10の組み合わせ投与群、抗PD-1抗体と3F12の組み合わせ投与群、抗PD-1抗体と3B5の組み合わせ投与群および抗PD-1抗体と3G8の組み合わせ投与群のBLIシグナル強度は、アイソタイプ対照群に比較して、それぞれ約-14.7%、約95.9%、約92.8%、約62.3%、および約-10.9%減少した。抗CTLA4抗体単独の投与群、抗CTLA4抗体と3B10の組み合わせ投与群、抗CTLA4抗体と3F12の組み合わせ投与群、抗CTLA4抗体と3B5の組み合わせ投与群、および抗CTLA4抗体と3G8の組み合わせ投与群のBLIシグナル強度は、アイソタイプ対照群に比較して、それぞれ約-14.5%、約91.1%、約85.3%、約66.3%、および約10.9%減少した。
【0214】
図9cに示された通り、40日目に、抗BAG2抗体のみの3B10投与群、3F12投与群、3B5投与群、および3G8投与群の原発腫瘍重量は、アイソタイプ対照群に比較して、それぞれ約63.8%、約56.7%、約27.8%、および約18.9%減少した。抗PD-1抗体のみの投与群、抗PD-1抗体と3B10の組み合わせ投与群、抗PD-1抗体と3F12の組み合わせ投与群、抗PD-1抗体と3B5の組み合わせ投与群および抗PD-1抗体と3G8の組み合わせ投与群のBLIシグナル強度は、アイソタイプ対照群に比較して、それぞれ約17.8%、約85.7%、約87.4%、約58.1%、および約-24.8%減少した。抗CTLA4抗体のみの投与群、抗CTLA4抗体と3B10の組み合わせ投与群、抗CTLA4抗体と3F12の組み合わせ投与群、抗CTLA4抗体と3B5の組み合わせ投与群、および抗CTLA4抗体と3G8の組み合わせ投与群のBLIシグナル強度は、アイソタイプ対照群に比較して、それぞれ約3.4%、約76.1%、約74.2%、約54.8%、および約29.7%減少した。
【0215】
図9bおよび9cに示された通り、3B10および3F12での単独処置は、BLIシグナル強度を強力に阻害し、PANC02-Luc腫瘍担持マウスの原発腫瘍重量を減少させたが、3B5および3G8は、BLIシグナル強度を有意に阻害せず、マウスの原発腫瘍重量を有意に低減しなかった。4種のクローンでの異なる現象は、マウスおよびヒトでの交差反応への親和性により引き起こされる可能性がある。
【0216】
抗PD-1抗体での処置は、単独薬剤として腫瘍成長阻害においてそれほど成功しなった。抗BAG2抗体(3B10、3F12または3B5)と抗PD-1抗体または抗CTLA4抗体の組み合わせでの処置は、どちらかの単独の薬剤より大きな度合いに腫瘍成長を阻害した。その上、抗BAG2抗体(3B10、3F12または3B5)と抗PD-1抗体または抗CTLA4抗体での併用処置は、どちらかの単独の薬剤に比較して肝臓、胸膜および横隔膜への転移発生を減少させた(図9d)。
【0217】
図9eに示された通り、抗PD-1抗体投与群、3F12投与群、抗PD-1抗体と3F12の組み合わせ投与群の腫瘍特異性CD3+/CD8+ T細胞(癌細胞を殺傷する際のエフェクターメモリー細胞)は、アイソタイプ対照群に比較して、それぞれ約1.8倍、3.5倍、および14.2倍増加した。
【0218】
図9eに示された通り、抗PD-1抗体投与群、3F12投与群、抗PD-1抗体と3F12の組み合わせ投与群の腫瘍特異性CD45+/CD3-/CD19+ B細胞は、アイソタイプ対照群に比較して、それぞれ約-1.1倍、-1.05倍、および1.04倍増加した。
【0219】
図9eに示された通り、抗PD-1抗体投与群、3F12投与群、抗PD-1抗体と3F12の組み合わせ投与群の腫瘍特異性CD45+/CD3-/CD49b+ NK(NK細胞)細胞は、アイソタイプ対照群に比較して、それぞれ約1.3倍、2.1倍、および3.6倍増加した。
【0220】
図9eに示された通り、抗PD-1抗体投与群、3F12投与群、抗PD-1抗体と3F12の組み合わせ投与群の腫瘍特異性CD45+/CD11b+/Gr1-/F4/80+ マクロファージは、アイソタイプ対照群に比較して、それぞれ約1.1倍、1.7倍、および2.7倍減少した。
【0221】
図9eに示された通り、抗PD-1抗体投与群、3F12投与群、抗PD-1抗体と3F12の組み合わせ投与群の腫瘍特異性CD45+/CD11b+/Gr1+ MDSC(骨髄由来サプレッサー細胞)は、アイソタイプ対照群に比較して、それぞれ約1.07倍、1.15倍、および1.9倍減少した。
【0222】
図9eに示された通り、抗PD-1抗体投与群、3F12投与群、抗PD-1抗体と3F12の組み合わせ投与群の腫瘍特異性CD45-/CD90.2+ 間質細胞は、アイソタイプ対照群に比較して、それぞれ約-1.06倍、1.35倍、および1.86倍減少した。
【0223】
抗PD-L1抗体と3F12の組み合わせでの処置は、どちらかの単独の薬剤より大きな度合いに腫瘍特異性CD3+/CD8+ T細胞およびCD45+/CD3-/CD49b+ NK(NK細胞)細胞を活性化した。しかしCD45+/CD3-/CD19+ B細胞集団は、増加しなかった。抗PD-L1抗体と3F12の組み合わせでの処置は、どちらかの単独の薬剤より良好な度合いにCD45+/CD11b+/Gr1-/F4/80+ マクロファージ、CD45+/CD11b+/Gr1+ MDSC、およびCD45-/CD90.2+ 間質細胞を減少させた。
【0224】
活性化は、直接的または間接的、即ちサプレッサ細胞の阻害であり得る。
【0225】
したがって、1)抗BAG2抗体は、アイソタイプ対照群に比較して有意な腫瘍成長および転移阻害効果を有することが見出された。2)免疫チェックポイント阻害薬としての抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、および抗CTLA4抗体と、抗BAG2抗体の組み合わせは、マウス乳癌、肺癌、黒色腫、大腸癌および膵臓癌モデルにおいて、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、抗CTLA4抗体および抗BAG2抗体単独のそれぞれに比較して、有意な腫瘍阻害効果を有することが見出された。
【0226】
本明細書に記載された実施形態が記載のみの意味と見なされ、限定の目的とみなされるべきでないことが、理解されなければならない。各実施形態における特色または態様の記載が、典型的には他の実施形態の他の類似の特色または態様に利用可能と見なされなければならない。1種または複数の実施形態を、図面を参照して記載したが、以下の特許請求の範囲により定義される本開示の主旨および範囲を逸脱することなく形態および詳細の様々な変更が行われ得ることが、当業者に理解されよう。
【0227】
本明細書に記載された実施形態が記載のみの意味と見なされ、限定の目的とみなされるべきでないことが、理解されなければならない。各実施形態における特色または態様の記載が、典型的には他の実施形態の他の類似の特色または態様に利用可能と見なされなければならない。1種または複数の実施形態を、図面を参照して記載したが、以下の特許請求の範囲により定義される本開示の主旨および範囲を逸脱することなく形態および詳細の様々な変更が行われ得ることが、当業者に理解されよう。
【0228】
[アクセッション番号]
寄託:韓国生命工学研究院(Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnology)
アクセッション番号:KCTC13737BP
寄託日:2018年11月28日

寄託:韓国生命工学研究院
アクセッション番号:KCTC13738BP
寄託日:2018年11月28日

寄託:韓国生命工学研究院
アクセッション番号:KCTC13739BP
寄託日:2018年11月28日

寄託:韓国生命工学研究院

アクセッション番号:KCTC13740BP
寄託日:2018年11月28日

寄託:韓国生命工学研究院
アクセッション番号:KCTC13741BP
寄託日:2018年11月28日

寄託:韓国生命工学研究院
アクセッション番号:KCTC13742BP
寄託日:2018年11月28日

寄託:韓国生命工学研究院
アクセッション番号:KCTC13743BP
寄託日:2018年11月28日

寄託:韓国生命工学研究院
アクセッション番号:KCTC13744BP
寄託日:2018年11月28日

寄託:韓国生命工学研究院
アクセッション番号:KCTC13745BP
寄託日:2018年11月28日

寄託:韓国生命工学研究院
アクセッション番号:KCTC13746BP
寄託日:2018年11月28日
【0229】
本明細書に引用された参考資料は全て、全体として参照により組み入れられる。
【0230】
当業者は、日常的実験法を利用するだけで、本明細書に具体的に記載された発明の具体的実施形態の多くの均等物を認識する、または確かめることができるであろう。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
【手続補正書】
【提出日】2021-11-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
SEQ ID NO:21中の56番目のXaaおよび57番目のXaaは、それぞれGlyまたはAlaであってよい。SEQ ID NO:23において、1番目のXaaは、グルタミン(Gn)またはグルタミン酸(Glu)であってよく、7番目のXaaは、Serまたはプロリン(Pro)であってよく、12番目のXaaは、バリン(Val)またはアラニン(Ala)であってよく、27番目のXaaは、TyrまたはHisであってよく、58番目のXaaは、SerまたはThrであってよく、61番目のXaaは、アスパラギン(Asn)またはSerであってよく、74番目のXaaは、アルギニン(Arg)またはリシン(Lys)であってよく、83番目のXaaは、フェニルアラニン(Phe)またはロイシン(Leu)であってよく、92番目のXaaは、GlyまたはAlaであってよく、108番目のXaaは、HisまたはTyrであってよい。SEQ ID NO:27における53番目のXaaは、IleまたはPheであってよい。SEQ ID NO:29において、2番目のXaaは、MetまたはIleであってよく、51番目のXaaは、AlaまたはSerであってよく、79番目のXaaは、Gluまたはアスパラギン酸(Asp)であってよく、10番目のXaaは、MetまたはIleであってよい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0166
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0166】
9B3、9B12および3B10抗体は、SEQ ID NO:23のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、SEQ ID NO:29のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含む。9B3抗体に関しては、SEQ ID NO:23では1番目のXaaは、Gluであり、7番目のXaaは、Serであり、12番目のXaaは、Valであり、27番目のXaaは、Tyrであり、58番目のXaaは、Serであり、61番目のXaaは、Asnであり、74番目のXaaは、Lysであり、83番目のXaaは、Pheであり、92番目のXaaは、Alaであり、108番目のXaaは、Tyrである。9B3抗体に関しては、SEQ ID NO:29では2番目のXaaは、Ileであり、51番目のXaaは、Alaであり、7番目のXaaは、Gluであり、10番目のXaaは、Ileである。9B12抗体に関しては、SEQ ID NO:23では1番目のXaaは、Ginであり、7番目のXaaは、Serであり、12番目のXaaは、Valであり、27番目のXaaは、Tyrであり、58番目のXaaは、Serであり、61番目のXaaは、Asnであり、74番目のXaaは、Argであり、83番目のXaaは、Pheであり、92番目のXaaは、Glyであり、108番目のXaaは、Hisである。9B12抗体に関しては、SEQ ID NO:29では2番目のXaaは、Metであり、51番目のXaaは、Alaであり、7番目のXaaは、Gluであり、10番目のXaaは、Metである。3B10抗体に関しては、SEQ ID NO:23では1番目のXaaは、Gnであり、7番目のXaaは、Proであり、12番目のXaaは、Alaであり、27番目のXaaは、Hisであり、58番目のXaaは、Thrであり、61番目のXaaは、Serであり、74番目のXaaは、Argであり、83番目のXaaは、Leuであり、92番目のXaaは、Glyであり、108番目のXaaは、Hisである。3B10抗体に関しては、SEQ ID NO:29では2番目ではXaaは、Metであり、51番目のXaaは、Serであり、7番目のXaaは、Aspであり、10番目のXaaは、Ileである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2022521706000001.app
【国際調査報告】