(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-12
(54)【発明の名称】吸引アンカおよび吸引アンカの製造方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/20 20060101AFI20220405BHJP
B63B 77/10 20200101ALI20220405BHJP
B63B 21/27 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
E02B3/20 A
B63B77/10
B63B21/27
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547583
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(85)【翻訳文提出日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 US2020017973
(87)【国際公開番号】W WO2020176262
(87)【国際公開日】2020-09-03
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521358497
【氏名又は名称】アールシーエイエム テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】コトレル ジェイソン
(57)【要約】
一般的観点では、構造体を水底に固定するための吸引アンカが提供される。吸引アンカは、少なくとも一部分がセメント系材料で形成されるとともに閉鎖端部および開放端部を備えた管状本体を有する。管状本体は、開放端部の開口部を画定する縁部を有する。縁部は、水底を突き刺すよう構成されている。吸引アンカは、管状本体内の空所を管状本体の外部に流体結合するよう構成されたポートをさらに有する。吸引アンカは、さらに、管状本体の外面から延びるとともに係留索に結合するよう構成されたパッドアイを有する。別の観点では、吸引アンカを製造する方法もまた、提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引アンカを製造する方法であって、
流動性セメント系材料の層を互いの上に堆積させて管状本体の少なくとも一部を形成するステップを含み、前記流動性セメント系材料は、硬化して凝固したセメント系材料になることができ、前記管状本体は、
閉鎖端部および開放端部と、
前記開放端部の開口部を画定するとともに水底を突き刺すよう構成された縁部と、
前記管状本体内の空所の少なくとも一部を前記管状本体の外部に流体結合するよう構成されたポートとを有し、
パッドアイを前記管状本体の外壁に固定するステップを含み、前記パッドアイは、係留索に結合するよう構成されている、方法。
【請求項2】
前記流動性セメント系材料の層によって形成された前記管状本体の前記部分は、前記管状本体の形状を定める周壁を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記流動性セメント系材料の層を硬化させて凝固セメント系材料の層にするステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記層の堆積前に補強要素を前記誘導性セメント系材料内に配置するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記流動性セメント系材料層を堆積させる前記ステップは、支持構造体を前記流動性セメント系材料の層中に埋め込むステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、鉄筋要素を互いに結合して前記支持構造体の少なくとも一部を構成するステップを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記管状本体は、前記流動性セメント系材料の層を貫通するチャネルを有し、前記方法は、
ポストテンショニング装置を前記チャネルに通して配置するステップと、
前記流動性セメント系材料層が硬化して凝固セメント系材料の層になった後に前記ポストテンショニング装置を張力調整するステップとを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記流動性セメント系材料の層を堆積させる前記ステップは、前記流動性セメント系材料の層内に空間を残して前記チャネルを形成するステップを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記流動性セメント系材料層が硬化する前に導管を前記流動性セメント系材料の層中に挿入するステップを含み、前記導管は、前記チャネルを構成する、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記流動性セメント系材料の層を堆積させる前記ステップは、導管を前記流動性セメント系材料の層内に埋め込むステップを含み、前記導管は、前記チャネルを構成する、請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記流動性セメント系材料の層を堆積させる前記ステップは、前記流動性セメント系材料の層を互いの上に吹き付けるステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記流動性セメント系材料の層を堆積させる前記ステップは、前記流動性セメント系材料の層を互いの上にプリンティングするステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記流動性セメント系材料の層により形成された前記管状本体の前記部分は、第1の部分および第2の部分を含み、
前記流動性セメント系材料の層を堆積させる前記ステップは、
流動性セメント系材料の第1の層を互いの上に堆積させて前記第1の部分を形成するステップと、
前記流動性セメント系材料の第1の層を硬化させて前記第1の部分を凝固させるステップと、
流動性セメント系材料の第2の層を前記凝固した第1の部分上に堆積させて前記第2の部分を形成するステップとを含み、前記第2の層は、互いの上に堆積する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記管状本体は、
前記管状本体内の前記空所をスカートチャンバおよび少なくとも1つの浮力チャンバの状態に仕切る1つ以上の内壁を有し、前記スカートチャンバは、前記管状本体の前記開放端部および前記縁部を有し、前記ポートは、前記スカートチャンバを前記管状本体の前記外部に流体結合し、
前記少なくとも1つの浮力チャンバを前記管状本体の前記外部に流体結合するよう構成された第2のポートを有する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記流動性セメント系材料の層によって形成された前記管状本体の前記部分は、前記1つ以上の内壁を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記管状本体の前記縁部は、金属で形成され、
前記流動性セメント系材料層を堆積させる前記ステップは、前記縁部の表面を流動性セメント系材料の1つ以上の層に接触させるステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記流動性セメント系材料層によって形成された前記管状本体の前記部分内に埋め込まれるよう構成される支持構造体を組み立てるステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記ポートを前記支持構造体に結合するステップを含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記パッドアイを前記外壁に固定する前記ステップは、前記パッドアイを前記支持構造体に結合するステップを含み、前記支持構造体は、前記パッドアイに隣接する外壁を補強するよう構成された部分を含む、請求項17記載の方法。
【請求項20】
構造体を水底に固定する吸引アンカであって、前記吸引アンカは、
少なくとも一部がセメント系材料で形成されていて閉鎖端部および開放端部を備えた管状本体を有し、前記管状本体は、前記開口端部の開口部を画定する縁部を有し、前記縁部は、前記水底を突き刺すよう構成され、
前記管状本体内の空所の少なくとも一部を前記管状本体の外部に流体結合するよう構成されたポートを有し、
前記管状本体の外面から延びていて係留索に結合するよう構成されるパッドアイを有する、吸引アンカ。
【請求項21】
前記管状本体の前記縁部を受け入れるとともに前記開放端部の前記開口部を施栓するよう構成された蓋を有する、請求項20記載の吸引アンカ。
【請求項22】
前記蓋は、少なくとも一部がセメント系材料で作られている、請求項21記載の吸引アンカ。
【請求項23】
前記管状本体の前記縁部は、前記開放端部の前記開口部に向かってテーパしている、請求項20記載の吸引アンカ。
【請求項24】
前記管状本体の前記縁部は、金属で作られている、請求項20記載の吸引アンカ。
【請求項25】
セメント系材料で作られた前記管状本体の前記部分は、連続して堆積したセメント系材料の層を含む、請求項20記載の吸引アンカ。
【請求項26】
セメント系材料で作られた前記管状本体の前記部分は、前記部分を貫通して配置されたポストテンショニング装置を含む、請求項20記載の吸引アンカ。
【請求項27】
セメント系材料で作られた前記管状本体の前記部分は、前記管状本体内に配置された補強要素を含む、請求項20記載の吸引アンカ。
【請求項28】
前記管状本体は、前記管状本体内の前記空所をスカートチャンバおよび少なくとも1つの浮力チャンバの状態に仕切る1つ以上の内壁を有し、前記スカートチャンバは、前記開放端部および前記縁部を有し、
前記ポートは、第1のポートであり、前記スカートチャンバは、前記第1のポートを通って前記管状本体の前記外部に流体結合し、
前記吸引アンカは、第2のポートを有し、前記少なくとも1つの浮力チャンバは、前記第2のポートを通って前記管状本体の前記外部に流体結合する、請求項20記載の吸引アンカ。
【請求項29】
前記1つ以上の内壁は、少なくとも一部がセメント系材料で作られている、請求項28記載の吸引アンカ。
【請求項30】
セメント系材料で作られた前記1つ以上の内壁の前記部分は、前記部分を貫通して配置されたポストテンショニング装置を含む、請求項29記載の吸引アンカ。
【請求項31】
セメント系材料で作られた前記1つ以上の内壁の前記部分は、該部分内に配置された補強要素を含む、請求項29記載の吸引アンカ。
【請求項32】
前記1つ以上の内壁は、前記管状本体の前記空所を第1の導管および第2の導管にさらに仕切り、前記第1の導管は、前記スカートチャンバを前記第1のポートに流体結合し、前記第2の導管は、前記少なくとも1つの浮力チャンバを前記第2のポートに流体結合する、請求項28記載の吸引アンカ。
【請求項33】
前記少なくとも1つの浮力チャンバは、前記管状本体の前記閉鎖端部に隣接して位置する第1の浮力チャンバおよび前記第1の浮力チャンバと前記スカートチャンバとの間に設けられた第2の浮力チャンバを含む、請求項28記載の吸引アンカ。
【請求項34】
前記管状本体の前記空所内に配置されたバルーンを有する、請求項20記載の吸引アンカ。
【請求項35】
前記パッドアイは、前記管状本体の一側部の外面から延びている、請求項20記載の吸引アンカ。
【請求項36】
前記パッドアイは、前記管状本体の閉鎖端部の先端の外面から延びている、請求項20記載の吸引アンカ。
【請求項37】
前記管状本体に結合されたエネルギー貯蔵チャンバを有し、前記エネルギー貯蔵チャンバは、水を貯蔵するとともに放出してそれぞれエネルギーを貯蔵するとともに供給するよう構成されている、請求項20記載の吸引アンカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国エネルギー省によって与えられた助成金番号DE‐SC0018822契約下において合衆国政府支援によりなされたものである。合衆国政府は、本発明に関してある特定の権利を有する。
【0002】
〔関連出願の参照〕
本願は、2019年2月13日に出願された米国特許仮出願第62/804,952号(発明の名称:Systems and Methods for Manufacturing, Assembling, Transporting, and Installing Large Structures)の優先権主張出願である。この優先権主張出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
以下の説明は、大型構造体の製造、組み立て、輸送、および設置ならびにかかる構造体を水底に固定するために用いられる吸引アンカに関する。
【発明の概要】
【0004】
以下の開示内容に照らして、本発明の一観点によれば、吸引アンカを製造する方法であって、
流動性セメント系材料の層を互いの上に堆積させて管状本体の少なくとも一部を形成するステップを含み、流動性セメント系材料は、硬化して凝固したセメント系材料になることができ、管状本体は、
閉鎖端部および開放端部と、
開放端部の開口部を画定するとともに水底を突き刺すよう構成された縁部と、
管状本体内の空所の少なくとも一部を管状本体の外部に流体結合するよう構成されたポートとを有し、
パッドアイを管状本体の外壁に固定するステップを含み、パッドアイは、係留索に結合するよう構成されていることを特徴とする方法が提供される。
【0005】
本発明の別の観点によれば、構造体を水底に固定する吸引アンカであって、
少なくとも一部がセメント系材料で形成されていて閉鎖端部および開放端部を備えた管状本体を有し、管状本体は、開口端部の開口部を画定する縁部を有し、縁部は、水底を突き刺すよう構成され、
管状本体内の空所の少なくとも一部を管状本体の外部に流体結合するよう構成されたポートを有し、
管状本体の外面から延びていて係留索に結合するよう構成されるパッドアイを有することを特徴とする吸引アンカが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1A】3Dキャスティング(打設)を用いて製作された例示のタワー構造体を示す図である。
【
図1B】3Dキャスティングを用いて製作された例示のタワー構造体を示す図である。
【
図2】3DCPまたは3Dキャスティングを用いてアディティブ材料から大型構造体を製作する例示のシステムを示す図である。
【
図3A】3Dコンクリートプリンティングまたは他のコンクリート製造方法により製造された例示のタワー、下部構造体、および基礎構造体を示す図である。
【
図3B】3Dコンクリートプリンティングまたは他のコンクリート製造方法により製造された例示のタワー、下部構造体、および基礎構造体を示す図であり、風力タービンロータナセル組立体が設置されている状態を示す図である。
【
図3C】3Dコンクリートプリンティングまたは他のコンクリート製造方法により製造された例示のタワー、下部構造体、および大きなアスペクト比の重力基礎構造体を示す図であり、風力タービンロータナセル組立体が設置されている状態を示す図である。
【
図3D】3Dコンクリートプリンティングまたは他のコンクリート製造方法により製造された例示のタワー、下部構造体、および大きなアスペクト比の吸引アンカ基礎構造体を示す図であり、風力タービンロータナセル組立体が設置されている状態を示す図である。
【
図3E】例示の風力タービンロータナセル組立体が設置された状態で示されている例示のタワー、下部構造体、または大きなアスペクト比の吸引アンカ基礎構造体の製造、組み立て、または移動のための例示の輸送システムを示す図である。
【
図3F】
図3Bの例示の基礎の例示の基礎構造体レッグコンポーネントおよび例示の中央部の断面図である。
【
図3G】タワー、下部構造体、および大きなアスペクト比の浮動基礎を含む例示の支持構造体システム、ならびに係留または投錨索に加わる上向きおよび横方向力に抵抗するよう吸引アンカを用いて海底に固定された第2の基礎システムを示す図である。
【
図3H】3Dコンクリートプリンティングまたは他のコンクリート製造方法によって製造された例示の下部構造、および大きなアスペクト比の吸引アンカ基礎構造体を示す図であり、電気機器が設置されている状態を示す図である。
【
図4】下部構造体区分、基礎区分、アンカリング(固定)システム、浮力空所、およびタワーインターフェースを含む例示のタワー、下部構造体、および基礎システムを示す図である。
【
図5A】例示のタワー、下部構造体、および陸上に固定されていて充填状態の外部空所を備えた基礎区分を有する基礎構造体システムを示す図である。
【
図5B】例示のタワー、下部構造体、および海底に固定されていて充填状態の外部空所を備えた基礎区分を有する基礎構造体システムを示す図である。
【
図6A】海洋環境中に配置されるとともに風力タービンまたは水力用途のために幾つかの区分をなした状態で水平に製造された例示のタワー、下部構造体、および基礎を示す図である。
【
図6B】海洋環境の外部に位置する
図6Aの例示のタワー、下部構造体、および基礎を示す図である。
【
図6C】
図6Aおよび
図6Bの例示のタワー、下部構造体、および基礎の例示の中央部断面図である。
【
図7】3DCPまたは他の方法を用いて製造された風力タービンまたは水力用途向きの例示のタワー、下部構造体、および基礎システム700を示す図である。
【
図8A】各種構造体を水底に固定する例示の吸引アンカの概略斜視図である。
【
図8B】
図8Aの例示の吸引アンカの概略側面図および底面図であり、かかる側面図および底面図と関連した種々の断面図を含む図である。
【
図8C】例示の吸引アンカの開口部を施栓する蓋に結合する
図8Aの例示の吸引アンカの断面図である。
【
図8D】風力タービンを水底に固定する
図8Aの例示の吸引アンカの多くの場合の立面図である。
【
図9A】3Dプリンティング済み吸引アンカ(3DSA)ユニットが製造されて組み立てられた波止場からタグボートによって水平に湿式曳航されている一群の3DSAの概略斜視図である。
【
図9B】海洋域(an open body of water)に沿ってタグボートによって水平に湿式曳航されている
図9Aの組み立て状態の3DSAユニットの概略斜視図である。
【
図10A】設置プロセスの際、クレーンによって持ち上げられているモノ吸引杭の概略斜視図である。
【
図10B】設置プロセスの際、水域中に沈められている
図10Bのモノ吸引杭の概略斜視図である。
【
図11】エネルギー貯蔵チャンバを有する例示の吸引バケットの概略断面図である。
【
図12】3DCPプロセスを用いて製造された例示の吸引アンカの特徴および利点を説明する略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
現代型沖合風力タービン、陸上風力タービンまたは他の機器設備、例えば変圧器や変電所、および水力装置、例えば波力エネルギー変換器を支える多くの高いタワー、下部構造体、および基礎(本明細書において「支持構造体」という)は、個々のコンポーネントとしてあるいは組立体として、これらの極めて大きな寸法に起因し、大きすぎて道路、水路、またはレール上で輸送することができない。さらに、多くの既存の現場生産方法、例えば溶接物や従来型コンクリート建造法は、現代型の風力発電所に必要とされる大型の生産手段にとって費用が高くつきすぎしかも遅すぎる。幾つかの具体化例では、本明細書において説明する製造技術およびプロセスは、ある特定の既存の技術およびプロセスと比較して技術改良をなすことができる。例えば、説明する技術は、ある特定の場合、生産速度を高め、輸送費を減少させ、大型装置またはエネルギー装置、例えば風力および水力技術または他の形式の構造体のための高いタワーおよび基礎の資本費を減少させることができる。加うるに、部分的にまたは完全に組み立てられた大型エネルギー装置、タワー、下部構造体、設備、および基礎を組み立ててこれらを組み立て領域から設置場所に輸送する方法は、大型の特殊化ヘビーリフトジャッキアップ設置船舶が利用できない領域では必要とされる。
【0008】
沖合および陸上風力タービンおよび水力装置ならびに他の設備のための従来型タワー、支持構造体、および基礎は、典型的には、圧延および溶接鋼材円筒形区分で作られている。これら区分は、道路、水路、およびレール上の制約、例えば橋、トンネルおよび頭上信号に起因する重さおよびサイズの制限に起因して大型でかつ背丈のあるタービンおよび水力装置にとって輸送が次第にコスト高になっている。例えば、陸上を輸送できる陸上風力タービン用のタワーの最大直径は、大抵のアメリカ合衆国領域では4.6m未満であるが、圧延鋼材で作られた高さ160mのタワーの最適直径は、約8mである。沖合風力および水力装置用の沖合タワー、下部構造体(すなわち、水面下のタワー部分)、および基礎は、現場でのまたは現場近くでの建造方法を必要とするタワーよりもサイズがかなり大きい。例えば、沖合構造体に用いられる従来型スチールジャケット下部構造体および基礎の製造は、時間がかかり、しかも非常に高価である。沖合風力タービン用の1,500tジャケット下部構造体およびタワーは、約500万ドル以上の費用がかかる場合がある。
【0009】
本明細書において説明する内容の幾つかの観点では、大型構造体を現場で付加的に(additively)製造しまたは基礎およびタワーコンポーネントを組み立て現場への輸送のために小さなモジュール化区分の状態で製造するシステムおよび方法が開示される。かかるシステムおよび方法は、大型構造体を水底(例えば、海底、湖底、川床など)に固定する吸引アンカ(またはその幾つかの部分)を付加的に製造するためにも使用できる。大型構造体としては、陸上および沖合風力タービンまたは水力装置のためのタワー、下部構造体、および対応の基礎構造が挙げられる。システムおよび方法は、従来型材料よりも費用がかからずまたは小型のモジュール化コンポーネントを製造するアディティブマニュファクチャリング(積層造形法と呼ばれる場合がある)または他の製造方法を使用するアディティブ(付加)材料を採用することができる。例えば、アディティブマニュファクチャリングシステムおよび方法は、従来製造されていた構造体と比較して沖合下部構造体およびタワーの資本費を最大80%まで減少させることができ、高価な一時的骨組みを必要としないで安価なその場その場で調達できるセメント系またはセラミック材料を利用でき、そしてオートメーションを用いて生産速度を上げることができる。
【0010】
幾つかの実施例では、システムおよび方法は、アディティブマニュファクチャリング(additive manufacturing:AM)、他のコンクリート製造方法、またはこれらの組み合わせを用いて支持構造体を組み立てまたは設置する場所にまたはその近くに設置される風力タービン用のタワー、下部構造体、基礎、吸引アンカ、またはこれらの任意の組み合わせを製造する。かかる製造は、それぞれ、現場製造および現場近傍製造と呼ばれる場合がある。水力装置の場合、沖合風力タービン施設および設備、アディティブマニュファクチャリング、他のコンクリート製造方法、またはこれらの組み合わせをタービンおよび基礎が組み立てられて段階的に実現されるドックまたは港湾のところまたはその近くでの現場または現場近傍での建造のために使用でき、その後、船で沖合設置場所に輸送される。アディティブマニュファクチャリング法または他の製造方法を用いて構造体、および基礎を現場でまたは現場近くで製造することによって、輸送は、大型コンポーネントを内陸工場での設置現場から遠く離れたところで大型コンポーネントを製造するよりも実質的に容易でありかつ安価になると言える。例えば、基礎用の特大風力タービンタワー区分およびコンクリートを輸送するのではなく、業者または他の建設要員が比較的少量のアディティブマニュファクチャリング材料と一緒に可動アディティブマニュファクチャリングシステムを製造または設置現場にまたはその近くに輸送するだけで良い。コンクリートキャスティング、マッチキャスティング、またはプレキャスティングを用いてアディティブマニュファクチャリング方法を補完しまたはこれに取って代わることができる。すなわち、本明細書において説明する構造体および/または基礎は、ハイブリット構造体または基礎を製造するための関連技術を用いて製造できる。大型風力発電所に関し、既存の材料生産インフラストラクチャ、例えば基礎のために用いられるコンクリートバッチプラントを用いると、製造システム用の材料を作ることができる。このように、本明細書において説明するシステムおよび方法は、特大の構造体を道路で、鉄道で、または水路で輸送する費用を減少させるとともに構造体を構成するのに必要な時間および費用を減少させることができる。
【0011】
「3Dプリンティング」と呼ばれる場合のあるアディティブマニュファクチャリングは、材料層の上に材料層を付加することによって三次元(3D)構造体を形成する層状化成層(積層)プロセスを用いて部品を作る。セメント系またはセラミック材料を用いる3Dコンクリートプリンティング(3DCP)と呼ばれる場合のあるアディティブマニュファクチャリングは、大型構造体、例えば風力タービンまたは水力装置用のタワー、下部構造体、または基礎のために使用できる。
図1Aおよび
図1Bに示されているように、この場合「3Dキャスティング」と呼ばれる3DCPの迅速な方法は、アディティブマニュファクチャリングを用いて一時的枠組みを用いないで数メートル以上の高さまで外部および内部壁面の最初の区分102,152を直接3Dプリンティングする。硬化期間後、コンクリートまたは他のセメント系材料を表面相互間に流し込みまたは「キャスティング(打設)」して硬化させる。補強材料、例えば鋼鉄筋または繊維状メッシュを壁面相互間に堆積させるのが良く、その後注型材料を追加して壁区分の追加の強化を行う。繊維状補強材料もまた、壁または注型材料中に混ぜ込むのが良くその後、構造体に加える。注型材料および3Dプリンティングされまたは注型された材料の十分な硬化後、次に、アディティブ材料の追加の層104,154を3D注型コンポーネントの下側区分102,152の頂部上に堆積させて追加の区分内に壁またはタワーの上方部分を作ることによって構造体の高さを増大させることができる。変形例として、壁面の1つ以上の追加の区分154を製造して初期壁面152上に積み重ね、その後、追加の補強材または注型材料を初期のかつ積み重ねられた壁面中に挿入するのが良く、その目的は、巻き上げられるべきアディティブ層104の質量および重量を減少させることにある。いずれの場合においても、3Dキャスティングプロセスを繰り返すと、追加の上側区分を製造することができ、その結果、高さ数十mまたは数百mに達する場合のある背の高い支持構造体が得られる。
【0012】
今、
図2を参照すると、3DCPまたは3Dキャスティングを用いて大型構造体をアディティブ材料から製作する例示のシステム200が提供されている。
図2は、必ずしも、縮尺通りには描かれていない。例示のシステム200は、製造のためにタワーまたは基礎本体部分を支持するとともに位置決めする固定されたまたは可動のプラットホームを含む。システム200は、関節連結アームによって位置決めされていてアディティブマニュファクチャリング材料、例えばセメント系または他の材料を堆積させるプリントヘッドをさらに含む。プリントヘッドは、補強材をアディティブマニュファクチャリング材料中に埋め込む手段を含むのが良い。システム200は、さらに、プリントヘッドがアディティブマニュファクチャリング材料を少なくとも1つの壁上に出力するよう構成された関節連結アームの垂直位置を調節するプラットホーム・駆動システムを含む。幾つかの変形例では、プリントヘッドは、ガントリ構造体によって支持された移動可能なアームを用いて位置決めされる。
図2は、プラットホーム203、ガイド204、駆動ユニット205、関節連結アーム206、プリントヘッド207、送出管208、支持アーム209、および足部210,211を含むものとして例示のシステム200を示している。例示のシステム200は、製造された構造体212を支持するとともに位置決めする手段を含むのが良く、この構造体212は、ターンテーブル214、および軌道またはホイール215を備えた状態で位置決めされているカート213を含むのが良い。
図2は、構造体製作システムの一例を示している。より多くのまたはより少ない、あるいは異なるコンポーネントを含む他の構造体製作システムを他の実施形態において使用することができる。
【0013】
幾つかの具体化例では、例示のプリントヘッド207は、セメント系、セラミック、補強材、または他のアディティブ材料をプリント表面上に押し出すことによってこれらを堆積させるよう構成されている。プリントヘッド207は、アディティブ材料が堆積されているときにアディティブ材料を造形するよう構成されているのが良い。幾つかの具体化例ではプリントヘッド207は、例えばセメント系またはセラミック材料のためのショットクリートと一般的に呼ばれているプロセスによりアディティブ材料を表面に吹き付けるよう構成されている。ショットクリートプロセスは、迅速材料堆積を許容でき、水平にまたは下から材料を堆積させる能力、および構造体に手動でまたは自動方式で付加される補強材料を一層完全に覆う能力の実現を可能にする。
【0014】
幾つかの具体化例では、例示のシステム200は、構造体212の表面を仕上げる1つ以上の追加のコンポーネント(例えば、センサ、アームなど)を含むのが良い。かかる仕上げは、美観上の目的のためでありまたは1つ以上の本体部分の接合を容易にするための場合がある。アディティブマニュファクチャリング中、例示のシステム200は、構造体212の建造中に意図的にまたは偶発的にでこぼこの表面を生じさせる場合がある。かくして、例示のシステム200は、かかるでこぼこをならす追加のコンポーネントを含むのが良い。追加のコンポーネントは、関節連結アームに取り付けられるのが良くまたは1つ以上の追加のアームとして付加されるのが良い。
【0015】
今、
図3A、
図3B、
図3C、
図3D、
図3E、
図3F、
図3G、および
図3Hを参照すると、3DCP、3DCP‐キャスティング、他の製造プロセス、または製造実務の組み合わせによって製造された例示のタワーおよび基礎構造体300が提供されている。例示の支持構造体300は、タワーまたは下部構造体区分322、基礎区分323、アンカリング(固定)システム324(例えば、吸引アンカシステム)、浮力空所325、インターフェース326、および追加の質量体または浮力コンポーネント329を有するのが良い。
【0016】
例示の支持構造体300は、一体形であって単一品として建造されても良く、あるいは、締結具、ポストテンショニング緊張材(テンドン)などを用いて互いに接合される2つ以上の別々の個別品として製造されても良い。さらに、幾つかの変形例では、関連構造体、例えばコンクリートまたは圧延鋼異形物で作られたタワー区分は、タワー高さをさらに延ばすようタワーまたは下部構造体区分322の頂部上に配置してこれに直接接合しても良く、あるいは、本明細書において説明する基礎の頂部上に直接配置しても良い。すなわち、本明細書において説明する構造体および/基礎を関連技術と組み合わせてハイブリット構造体および基礎を作ることができる。締結具またはポストテンショニング緊張材もまた、圧縮応力を構造体に加えることによって構造体をさらに強化するよう使用でき、それにより、コンクリート中の引張荷重の回数または大きさを減少させることができる。締結具またはポストテンショニング緊張材は、構造体にあらかじめ応力を加える方法の一部であるのが良い。
【0017】
タワーおよび支持構造体区分322ならびに基礎コンポーネント323は、タワーおよびレッグが垂直または水平に位置決めされた状態でアディティブマニュファクチャリングまたは他の製造プロセスを用いて製造できる。
図3Fに示された実施例では、
図3Bに示された基礎のための基礎支持コンポーネント(「レッグ」)が建て上げられ、レッグは、各々が高さ2mの10個の区分の状態で垂直に位置決めされている。
図3Fの断面A‐Aは、製造できる中間区分のうちの1つの一例である。3Dキャスティング製造プロセスでは、レッグの内面および外面輪郭形状および任意の内部特徴、例えば空所をほぼ2インチ(5.08cm)高さの連続して位置する層の状態にプリンティングするのが良い。幾つかの場合、補強材(例えば、ガラス繊維、玄武岩、または鋼鋼鉄または繊維)を区分高さがほぼ1~3mに達した後であって追加の注型材料がこの区分に追加される前に、各区分の内面と外面との間に位置決めするのが良い。壁の強固が行われた後、潜在的に補強繊維と混合されたセメント系、セラミック、または他のアディティブ材料を内面と外面との間の容積部中に注ぎ込む。例示の補強設計例は、人工セメント系複合材(ECC)コンクリートおよび層および区分を横切るポストテンショニングを用いてレッグに加わる荷重に耐えるようにすることであり、それにより手作業による鋼鉄配置の必要性が潜在的になくなる。ECCコンクリートは、特別に選択された短ランダム繊維、例えば鋼繊維、ポリマー繊維または有機繊維で補強されたモルタルを主成分とする複合材を含むのが良い。注型材料の強化が行われた後、次の3DCP注型区分のための内面および外面を先の区分上にプリンティングするのが良い。区分の上に区分を積み上げる建造プロセスは、橋梁および幾つかのコンクリート製風力タービンタワーのためのマッチキャスティングと呼ばれているコンクリート建造プロセスに類似している場合がある。3DCPマッチキャスティングは、高価なモルタルの必要性をなくしまたは新たな区分を下側区分の頂部上にプリンティングすることにより層相互間の機械加工作業をなくすことができる。幾つかの実施例では、プリンティング後、3DCPコンポーネントは、材料に応じて最高4週間までの期間にわたって硬化する。次に、これら区分を種々の方向に、例えば、組み立ての際、ポストテンショニングロッド、緊張材または締結具などを用いてアディティブ層およびマッチキャスティング継手を横切ってポストテンショニング(事後張力調整)するのが良く、その目的は、これら区分を種々の方向に強化することにある。次に、追加の3DCPコンポーネント、例えば吸引アンカ324、下部構造体、およびタワー322または両方をポストテンショニングロッド、緊張材または締結具の使用により構造体に取り付けるのが良い。
【0018】
図示の例示の構造体322,323は、陸上風力システムのための地上レベルの上方にまたは沖合用途向きの海底の上方に位置するのが良い。しかしながら、幾つかの変形例では、構造体322,323は、全体がまたは一部が地上レベルよりも下にまたは水域中に展開された構造体の場合には海底の下に位置するのが良い。加うるに、構造体322,323,329は、沖合用途では水面の上方に延びるのが良い。
【0019】
図3A、
図3B、
図3C、
図3D、
図3E、
図3F、および
図3Hは、タワーまたは支持構造体322を全体として円筒形のものとして示している。この円筒形の形は、連続していても良く、あるいは基礎323、他の下部構造体もしくはタワー区分322、タワー風力または波力エネルギー発生装置328もしくは機器333を備えた1つまたは多数のインターフェース326を有しても良い。幾つかの具体化例では、タワーもしくは下部構造体322または基礎323は、別の形状、例えば長方形、ピラミッド形、円錐形、多角形、または他の形状のものであって良い。タワー構造体322の壁は、比較的複雑な幾何学的形状、例えば戸口もしくは構造的支持体、バッフル、導管、作業プラットホーム327または他のカスタマイズ可能な幾何学的形状を呈することができる。
【0020】
支持構造体システム300は、陸上施設のための地面または沖合底部固定施設用のための海底とインターフェースする底部固定基礎として使用できる。今、
図3Gを参照すると、他の沖合施設では、基礎構造体システム300は、浮動風力タービン基礎323として使用できる。浮動風力タービン基礎構造体システム300の運動は、ケーブル、チェーン、または他形式の係留または投錨索331を用いて拘束できる。海底上の基礎システム323のうちの1つ以上もまた、係留または投錨索に加わる上方および横方向力に抵抗するためにも使用できる。海底上の基礎システム323は、吸引アンカシステム324、バラストまたは浮力空所325、追加の浮力または質量体および1本以上の係留または投錨索331を含むのが良い。浮動基礎システム300および浮動基礎システム300および海底323に固定された基礎システムは、3Dコンクリートプリンティングまたは他のコンクリート製造方法を用いて製造でき、そして
図3A、
図3B、
図3C、
図3D、
図3E、
図3F、および
図3Hの基礎システムについて説明した方法とほぼ同じ方法を用いて組み立てられ、輸送され、または設置されるのが良い。
【0021】
図3Gの実施形態では、浮動下部構造体システム300およびアンカリングシステム323は、張力レッグプラットホーム構造と呼ばれる場合があり、この張力レッグプラットホーム構造では、浮動下部構造体システム300は、浮力質量体329および空所325が水面330の下に完全にまたは部分的に位置した状態で垂直に係留される。他の例示の構成例では、浮動基礎システム300は、半浸漬構造の状態に構成されるのが良く、この半浸漬構造では、浮力質量体329および空所325は、部分的に水面の上方に延びる。係留索は、他の形態、例えば懸垂または半緊張係留の形態を取ることができる。他の実施例では、浮動風力タービン基礎300は、浮動はしけ基礎またはスパー基礎の形態を取ることができる。すなわち、海底上の基礎区分323は、種々の浮動基礎構造体を固定しまたは係留する手段として使用できる。
【0022】
今、
図3Hの実施例を参照すると、他の沖合施設では、本明細書において説明する基礎構造体システムは、オプションとして、他形式の施設334、例えば風力もしくは波力エネルギー装置からの電気を調整するのに必要な電気設備もしくはエンクロージャ、または風力または波力エネルギー装置からの電気を用いて水素を生じさせるのに必要な電気分解設備を支持するために使用できる。例示の支持構造体300は、タワーまたは下部構造体区分322、基礎区分323、アンカリングシステム324(例えば、吸引アンカシステム)、浮力空所325、インターフェース326、および追加の質量体または浮力コンポーネント329を有するのが良い。設備基礎システム300のコンポーネントは、3Dコンクリートプリンティングまたは他のコンクリート製造方法を用いて製造でき、そして
図3A~
図3Gのシステムについて説明したほぼ同じ方法を用いて組み立てられ、輸送され、または設置できる。
【0023】
基礎区分323は、アームを備えずまたは多数のアームを備えるよう製造できる。例えば、
図3A、
図3B、
図3C、
図3D、
図3E、
図3F、
図3G、および
図3Hに示されている幾つかの場合では、基礎区分323は、3本のアームを有する。構造体323,322の質量は、風力タービンシステムが浮力荷重または水力荷重に起因して横転するのを阻止するよう作用することができる。アームに通して挿入されまたはこれらアームに取り付けられた吸引アンカを用いて基礎区分323を海底にさらに固定するのが良い。沖合設備の場合、鋼またはセメント系吸引アンカ324を変形例としてアームに締結して基礎を海底に固定しても良く、あるいは、吸引アンカを例えば3DCPもしくは3DCPキャスティングプロセス、または他の製造プロセスの使用により一体形コンポーネントとして作っても良い。薄いナイフエッジまたは表面を吸引アンカの底部中にまたは作り込んで特に厚肉吸引アンカのために海底の突き刺しを容易にしても良い。吸引アンカ(吸引ケーソンまたは吸引パイル(杭)とも呼ばれる)を船舶への海底堆積物中に埋め込まれた上向きバケットとして効果的に説明することができる。この実施形態は、押し込むとともに/あるいは負圧を吸引アンカのスカート内に生じさせることによって達成できる。これら技術の両方は、ケーソンを水底(または海底)中に固定する効果を有する。基礎区分323はまた、設置プロセスを逆にし、圧力を空気、水、または他の流体によりケーソンスカート内に加えることによって迅速に取り外し可能である。
【0024】
基礎区分323を製作するために用いられるある量のアディティブ材料を減少させるには、空所325を構造体内の応力が小さくなる傾向がありまたは必要とされる材料が少ない構造体領域に設けるのが良い。空所325はまた、カバーを用いてまたは3DCP、3DCPキャスティングもしくは他の製造方法を用いて基礎内にチャンバを作ってタワー322または基礎323の一部として製造された表面で封止されるのが良い。チャンバは、基礎区分323、タワー322、およびオプションとしてタワー322に取り付けられた風力または水力装置328の輸送および設置の際の助けとなる浮力を生じさせるよう用いられるのが良い。変形例として、空所325を水、砂、鉄鉱石、再生利用された粉砕状態のコンクリート、砂利、石または他の材料で満たして追加の重量を提供しそれにより構造体の設置後における風力荷重または波力荷重に起因する構造体の横転に抵抗するようにしても良い。
【0025】
支持構造体300は、費用が安く、質量が小さく、生じる廃棄物が少なく、迅速な製造が可能であり、しかも従来型製造方法、例えば鋼溶接、スリップ成形コンクリート、打設コンクリートまたは予備打設コンクリートと比較して、現場または現場近くでの製造ができる。アディティブマニュファクチャリング方法は、コンクリート建造に必要な一時的枠組みの必要性を軽減する一方で、安価なアディティブ材料および補強材を依然として用いることによって、費用および建造上の無駄を減少させるとともに生産速度を上げるよう使用できる。自動アディティブマニュファクチャリングプロセスは、速度を上げることができ、さらに従来方法よりも小さな作業団を用いてコストをさらに減少させる。他のプロセス、例えばコンクリートキャスティング、マッチキャスティング、スリップ成形、またはプレキャスティングをアディティブマニュファクチャリング方法に代えてまたはこれに関連して使用できる。アディティブマニュファクチャリングプロセス、および小さなモジュール化コンポーネントを用いた他のコンクリート製造プロセスは、現場近くまたは現場での製造を容易にし、それにより道路、鉄道線または水路による大型構造体または区分の運搬距離を減少させることによってコストを減少させるよう使用できる。鋼構造体と比較して、本明細書において説明するアディティブおよびモジュール化コンクリート製造プロセスは、費用が高くつきしかも遅い溶接プロセス、溶接検査、および表面仕上げ、例えば下塗りおよび塗料の必要性をなくすことができる。さらに、3DCPプロセスによって使用されるセメント系材料は、代表的には、質量当たり、鋼構造体よりも極めて安価である。
【0026】
今、
図3Cおよび
図3Dを参照すると、3DCPまたは他のコンクリート製造プロセスによって製造された例示の風力タービン、タワー、および大きなアスペクト比の基礎構造体323が提供されている。
図3Cおよび
図3Dの例示の基礎構造体323は、基礎構造体アームの長さおよびアスペクト比の点で
図3Aおよび
図3Bの例示の基礎構造体323とは異なっている。
図3Cおよび
図3Dの基礎構造体323の基礎アームは、
図3Aおよび
図3Bの場合よりも特徴的に長く、しかもエネルギー発生装置328のエネルギー捕捉機構体のサイズと比較して長い。
図3Aおよび
図3Bに対する
図3Cおよび
図3Dの長い基礎アームは、基礎構造体300の組み立て、輸送、設置、および撤去中、基礎および下部構造体300の安定性を増す。長い基礎アームはまた、エネルギー装置328の作動中、基礎および下部構造体300の安定性を増すとともに極めて強い風雨天候事象中における横転に対する支持構造体300の耐性を増大させる。下部構造体コンポーネント300のセメント系材料の使用、および小さなアスペクト比のアームの使用の結果として、オプションとしてエネルギー収集装置328が設置された状態で支持構造体300の輸送中における安定性をさらに助長する重心の低いシステムが得られる。
【0027】
図3Cおよび
図3Dの実施例では、基礎アームは、エネルギー装置の翼の長さの少なくとも約1/4(四分の一)であり、
図3Bでは、基礎アームは、翼長さのほぼ1/8(八分の一)に過ぎない。さらに、
図3Cおよび
図3Dの実施例では、基礎アーム長さは、基礎アーム幅およびアーム高さに対して大きく、これは、
図3Aおよび
図3Bの基礎よりも大きなアスペクト比を有するものとして説明できる。
図3Cおよび
図3Dに示された実施形態では、基礎323のアーム長さと高さのアスペクト比は、約5:1であり、このアスペクト比は、約2:1の
図3Bのアスペクト比よりも実質的に大きい。
【0028】
図3Aおよび
図3Bの小さなアスペクト比の基礎323の設計と同様、
図3Cおよび
図3Dの大きなアスペクト比の基礎323は、構造体中の応力が低い傾向があり、しかも必要な材料が少ない構造体領域に設けられた空所325を有するのが良い。空所325はまた、カバーを用いて封止されるのが良くまたは3DCP、3DCP‐キャスティング、または製造方法を用いてタワー322または基礎323の一部として製造された表面で封止され、それにより基礎中にチャンバが形成される。空所325を砂、鉄鉱石、再生利用された粉砕状態のコンクリート、砂利、石または他の材料で満たして輸送中の追加のバラストおよび安定性を提供しまたは構造体の設置後における風力荷重または波力荷重に起因する構造体の横転に抵抗するようにするのが良い。チャンバは、支持構造体300およびオプションとしてタワー322に取り付けられた風力または水力装置328の輸送、設置、および撤去の際の助けとなる浮力を生じさせるよう用いられるのが良い。浮力により、浸漬可能な掘削プラットホームを典型的には運搬および設置に用いられる大型の特殊化ヘビーリフト設置船の使用なしに支持して曳航する仕方と同様に、支持構造体およびエネルギー装置組立体を安価な曳船または他の船舶によってあちこちに曳航することができる。
【0029】
締結具、ポストテンショニング、緊張材などを用いて追加の質量体または浮力コンポーネント329を基礎323中に一体化しまたはこれに取り付けるのが良く、それにより追加の浮力をもたらして現場から現場への輸送中および設置中に助けとすることができる。浮力コンポーネント329は、輸送中または設置中、水面の上方に部分的に延びて例えば輸送中における風力および波力による力に起因して生じる場合のある傾き(heeled)位置から基礎323を直立させる回復力を提供することによって、構造体の安定性を増大させるよう寸法決めされるのが良い。浮力コンポーネント329または基礎レッグ323は、オプションとして水面の上方に延びる柱状体により浮力を提供するよう水面の下に位置するはしけとして機能する円筒形の状態に製作されるのが良い。設置場所にいったん位置すると、浮力コンポーネント329またははしけ構造体を制御された仕方で冠水させ、それにより支持構造体300が海底まで下降するようにする。浮力コンポーネント329は、設置後に追加の質量体となって風力タービンシステムが風力または波力に起因して横転するのを阻止するよう使用されるのが良い。追加の質量体または浮力コンポーネント329を例えば
図3Cに示されているように基礎323に永続的に取り付けても良く、または配備できる他の支持構造体300とともに再使用できるよう例えば
図3Dに示されているように設置後の取り外しが容易であるよう一時的に取り付けても良い。
【0030】
今、
図3Eを参照すると、例示のタワー、下部構造体、基礎システム300、およびオプションとして風力または波力装置328、および船舶330が、オプションとしてかかるエネルギー収集装置328を設置した状態で、支持構造体システム300を波止場から水中に移送するために提供されている。輸送船330はまた、支持構造体300またはエネルギー装置328を利用可能な水深が例えば多くの米国の港の場合のように支持構造体浮力だけで浮動するのに十分に深くない場所に輸送して支持構造体300およびエネルギー収集装置328を現場から現場への輸送のために浮動させることができるよう使用できる。
【0031】
船舶システム330は、基礎システム300、浮力機構体333、および種々の幾何学的特徴部を支持して基礎システムコンポーネント300のためのクリアランスを提供するためのプラットホーム332を含む。船舶システム330は、スラスタまたは他の手段によって自己推進可能でありまたは曳船または他の推進船による曳航または押し進めを利用することができる。船舶プラットホーム332は、輸送または保管中、基礎システムコンポーネント300を固定する手段を有するのが良い。船舶プラットホーム332は、構造体中の応力が低い傾向があり、しかも必要とする材料が少ない構造体領域に設けられた空所を有するのが良い。かかる空所を水、砂、鉄鉱石、再生利用された粉砕状態のコンクリート、砂利、石または他の材料で満たして風力荷重または波力荷重に起因する構造体の横転に抵抗する追加のバラストおよび安定性を提供するのが良い。空所は、船および任意の貨物を浮動させるための浮力を生じさせるよう利用できる。追加の船舶浮力機構体333を用いると、支持構造体システム300またはエネルギー収集装置328を備えた状態でまたはこれを備えていない状態で船舶の昇降を助けることができる。浮力機構体333は、例えば、輸送中、船330、支持構造体300、またはエネルギー装置328に加わる風力、波力、または重力のような力に起因して生じる場合のある傾き位置から船330を直立させる回復力を提供することによって昇降中、構造体の安定性を増大させるよう使用できる。
【0032】
船舶330は、荷積み中、荷下ろし中、悪天候期間中、または有用な場合がある他の種々の状況において、安定性をもたらすようドック入れ中にしっかりと支持されるよう設計されているのが良い。かかる支持は、例えば、船プラットホーム332の底部を下降させてこの底部が港の海底または海底に取り付けられた組み立て支持体など上に載るようにすることによって提供されるのが良い。船舶は、プラットホームから地下に下方に延長させることができる1つまたは複数のジャッキ操作レッグを用いて海底によって支持できる。
【0033】
船舶システムは、基礎システム300およびオプションとしてエネルギー装置328を組み立てて現場から現場に輸送するために使用でき、その目的は、基礎システムまたはエネルギーシステムのさらなる組み立て、設置、または取り外しを行うことにある。かかる技術は、以下のプロセス、すなわち、1)波止場または船舶330上における支持構造体システム300およびオプションとしてエネルギー装置328の組み立てまたは部分組み立て、2)クレーン、自己推進モジュール化輸送装置などを用いる船舶システム330上への組み立て状態または部分組み立て状態のシステムの移動、3)船舶330上に位置したままの状態での基礎システム300またはエネルギー装置328のさらなる組み立て、4)さらなる組立のために別の場所への船舶330、支持構造体300、またはエネルギーシステム328の浮動および輸送、5)一時的係留を伴うオプションとしての待機現場への浮動および輸送、または最終の設置現場への輸送、6)基礎システム300を船舶システムから浮動させることができるまでの船舶システム330の下降、7)港または次の作業現場に輸送して戻すための船舶システム330の上昇、8)最終設置のために曳船または他の船による支持構造体300およびオプションとしてのエネルギー装置328の移動および位置決め、9)オプションとしてエネルギー収集装置328を用いる海底への基礎システム300の制御された下降、10)基礎システムの海底に固定するのに必要な最終の作業、例えば設けられている場合の吸引アンカ324の排気または浮力チャンバ320および機構体329の冠水、11)支持構造体300または必要ならばエネルギー収集装置328の追加の組み立て作業、および12)再使用のための補助基礎システム浮力機構体329の取り外し、浮動、および輸送のうちの1つ、幾つか、または全てが挙げられる。
【0034】
船舶システムはまた、エネルギーシステムまたはロジスティクスの作動のために使用できる。例えば、船舶システムは、関連の上述のステップをほぼ逆の順序で進めることによって基礎システムまたはエネルギー装置を取り外し、点検整備し、または分解するための方法の一部として使用できる。別の実施例として、船舶システムはまた、上述の基礎システム300において説明したように海底にしっかりと取り付けるのではなく、海底に固定されまたは係留されている種々の設計の浮動風力タービン基礎(すなわち、例えば半浸漬可能風力またははしけタービン基礎)を輸送するために使用できる。
【0035】
今、
図4を参照すると、下部構造体区分432、基礎区分433、アンカリングシステム434、空所435、およびタワーインターフェース436を含む例示のタワー、下部構造体、および基礎システム400が提供されている。システム400は、アームがないことおよび吸引アンカを1つ(モノバケットという)だけを有することによって、
図3の支持構造体システム300とは異なっている。これら特徴により、システム400は、小さな直径および潜在的に小さな質量を有することができる。基礎区分433は、円筒形の形をしていても良いが、他の形状、例えば六角形または四角形の形を取ることができる吸引アンカを有する。吸引アンカは、下部構造体区分432中に一体化されるのが良く、あるいは変形例として、下部構造体および基礎壁を貫通しまたはタワーおよび基礎内部内に設けられたボルトまたは引張ケーブルを用いて下部構造体区分432に締結されても良い。吸引アンカをセメント系材料、セラミック材料、金属材料、またはこれらの任意の組み合わせで作ることができる。鋼または他の材料で作られた薄いナイフエッジまたは表面434を吸引杭の底部に付加して特にコンクリートで作られる場合のある薄肉吸引杭のために海底の突き刺しを容易にするのが良い。空所435は、水を密度の低い物質、例えば空気またはフォームで置き換えることによって浮力を提供するためまたはバラスト材料をシステム300に加えるために、構造体の質量を減少させる目的を達成することができる容積部である。
【0036】
今、
図5Aおよび
図5Bを参照すると、例示のタワー、下部構造体、および基礎構造体システム500が提供されており、このシステムでは、基礎区分543は、砂、鉄鉱石、再生利用コンクリートまたは他の材料で満たされた外部空所を有する。
図5Aは、陸上に固定されたシステム500の一変形例を提供している。
図5Bは、海底に固定されたシステム500の別の変形例を提供している。満たされた状態の外部空所は、風力または水力に起因する構造体の横転に抵抗するよう所要の重量を提供し、または横転力への追加の耐性を提供するよう吸引パイルと連係して働くよう吸引パイルに取って代わるのが良い。
【0037】
今、
図6Aおよび
図6Bを参照すると、3DCP、3DCPキャスティング方法、または他の製造方法を用いて風力タービンまたは水力用途向きに水平に区分をなして製造された例示のタワー、下部構造体、および基礎600が提供されている。他の形態では、タワー、下部構造体、および基礎600は、垂直に製造されても良い。
図6Aは、海洋環境に設置されるとともに海底に固定されるものとして例示のタワー、下部構造体、および基礎600を提供している。
図6Cは、
図6Aおよび
図6Bの例示のタワー、下部構造体、および基礎の断面で示された例示の中央区分650を提供している。
【0038】
タワー区分は、タワーが垂直に位置決めされた状態で製造されるのが良く、注型区分652,654は、水平に製造されても良い。かかる水平製造法は、
図3のシステム300に類似するのが良い。図示の実施例では、一体形の主要な中央タワー/下部構造体/基礎支持部材(以下、「タワー」という)が建造されており、タワーは、各々が高さ2mの4つの区分の状態で水平に位置決めされている。タワーの内側および外側表面輪郭形状および内部特徴、例えば空所は、高さ約2インチまでの連続した層をなしてプリンティングされている。必要ならば、補強材(例えば、ガラス繊維、玄武岩、または鋼鉄筋または繊維)をこの区分高さが約1~3mに達した後であって追加の注型材料をこの区分に追加する前に各区分が内面と外面との間に位置決めされるのが良い。壁の強化を行った後、セメント系、セラミックまたはアディティブ材料―オプションとして、補強繊維と混合されている―が内面との外面との間の容積部中に注ぎ込まれる。幾つかの変形例では、補強材は、レッグに加わる荷重に耐えるようにするために人工セメント系複合材(ECC)コンクリートおよび層および区分を横切るポストテンショニングを用いて達成できる(または促進できる)。この補強材は、潜在的に、手動による鉄筋配置の必要性をなくす。ECCコンクリートは、特別に選択された短ランダム繊維、例えば鋼、ポリマー、または有機繊維で補強されたモルタルを主成分とする複合材を含むのが良い。注型材料の強化が行われた後、次の3DCP‐注型区分のための内面および外面を先の区分上にプリンティングするのが良い。区分の上に区分を積み上げる建造プロセスは、橋梁および幾つかのコンクリート製風力タービンタワーのためのマッチキャスティングと呼ばれているコンクリート建造プロセスに類似している場合がある。3DCPマッチキャスティングは、高価なモルタルの必要性をなくしまたは新たな区分を下側区分上にプリンティングすることにより層相互間の機械加工作業をなくすことができる。プリンティング後、3DCPコンポーネントは、材料に応じて最高4週間までの期間にわたって硬化する。次に、ポストテンショニングロッド、緊張材または締結具などを用いて追加の3DCPコンポーネント、例えばタワー「足部」、撤去可能な上側タワー区分、およびフラップを構造体に取り付けるのが良い。
【0039】
沖合構造体用のタワーおよび基礎コンポーネントは、ドック上にまたは乾式ドック内に製造されて水平に組み立てられるよう設計されているのが良い。種々の方法を用いると、組み立て状態のタワーおよびフラップ組立体をドック、例えばクレーンまたは船舶移動リフトおよびボート進水部から水のところまで移動させることができる。3DCP製造の融通性により、一体形浮力チャンバを支持構造体またはタワーに組み込んで完全に組み立てられた状態の波力エネルギー装置を安価で容易に利用できる曳船の使用により設置現場まで浮いた状態で移動させることができる。設置現場に達した後、浮力チャンバを冠水させて沈むようにし、そしてシステム600を制御した仕方で垂直に回転させるのが良い。次に、浮力チャンバを浚渫材料、例えば砂、または鉄鉱石もしくは再生利用破砕コンクリートのような地域的に利用できる材料で満たしてバラストを提供し、それにより横転力に抵抗することができる。
【0040】
次に、
図7を参照すると、風力タービンまたは水力用途のために3DCP方法を用いて製造できる例示のタワー、下部構造体、および基礎システム700が提供されている。例示のシステム700は、3DCP方法のための追加の用途の一例として3DCP方法によって製造されたフラップ752を備えた状態で示されている。例示のシステム700の主要コンポーネントは、複数のタワー側部材753、タワー中央柱状体754、および複数の吸引アンカ755を含む。タワーおよび基礎コンポーネントは、一体部品として製造されても良くあるいは締結具もしくは張力ケーブルに連結された別個の部品として製造されても良い。3Dプリンティングまたは3Dキャスティングを用いると、これらコンポーネントを製造することができる。側部材753内に設けられた空所756は、追加の浮力またはバラストのために包囲されるのが良く、あるいは変形例として、タワーおよび基礎に加わる波力および水流力を減少させるよう
図7に示されているように開放状態のままにされても良い。
【0041】
本明細書に説明する内容の幾つかの観点では、本明細書において開示するシステムおよび方法はまた、構造体を水底(例えば、海底、湖底、川床など)に固定するための吸引アンカ(またはこれらの幾つかの部分)を付加的に製造(アディティブマニュファクチャリング)するよう使用できる。これら構造体は、例えば、沖合風力タービン用のタワー、支持構造体、および基礎に対応するのが良い。しかしながら、他形式の構造体が可能である。米国沖合風力資源領域のほぼ60%は、60mを超える水深に位置し、―従来型の底部が固定された下部構造体については深すぎる水深のところに位置している。しかしながら、浮動風力タービンは、特にステーション維持および係留に関して幾つかの課題、例えば、高いアンカ製作および設置費、設置場所の正確さ、設置時間、強い風力、波力、および水流条件における設置、係留凌波性性能、および恒常的信頼性という課題に直面する。
【0042】
浅い浮動現場(例えば、最高100mまで)では、係留は、困難な波対策と係留水力学的剛性の減少の両方によって促進される索スナップ荷重を回避する必要があるために特に要求が厳しく、これは、特に懸垂システムの場合について言える。これには索およびアンカ荷重の増大、特に従来型埋め込みアンカによって容易に取り扱うことができないサイクル垂直荷重が伴う。これらの場合、波により誘発する荷重によって引き起こされる海底応力が底土中に伝搬し、間隙水圧力を増大させ、それにより液状化の潜在的可能性が生じる。深い水深(例えば、250~1000m)では、係留索は、長く、重く、しかも高価である。さらに、特に鋼懸垂係留の場合、重量のある索は、浮動基礎に対する要求を厳しくし、しかも漁獲作業に影響を及ぼす広いフットプリントを有する。
【0043】
吸引アンカは、好ましい浮動タービンアンカ解決策であり、というのは、サクションアンカは、ほぼ水深全体に設置でき、全方向の加重に耐えることができ、しかも高い設置場所精度で設置できるからである。吸引アンカは、事実上任意の下部構造体形態(例えば、半浸漬性、はしけ、スパー、および張力レッグ)を備えるとともに任意の係留レイアウト(例えば、懸垂、半緊張、および緊張状態)で60mを超える水深全体に使用できる可能性を秘めている。吸引アンカは、迅速な設置速度を提供し、多方向加重に耐え、係留フットプリントを減少させ、設置位置精度を向上させ、しかも共有係留および合成係留索で良好に働く。しかしながら、サクションアンカは、1つには多くの鋼量および大規模な製造労力に起因し、そして1つには配備のために用いられる特殊化アンカ取り扱い船のゆえに、高いコストと関連していた。加うるに、多くの国は、鋼アンカを輸入しており、というのは、多くの国は、吸引バケットを国内で製造するには既存の注型チェーン効率を備えていないからである。
【0044】
本明細書において開示するシステムおよび方法は、3Dコンクリートプリンティング吸引アンカ(3DSA)を実現するために使用できる。3DSAは、業界においてすでに存在しているアンカリング解決策により提供される利点を引き出してこれを組み合わせて革新的な費用破壊的な設計にすることができる。3DSAはまた、国内で利用できるコンクリート材料とともに安価な3Dコンクリートプリンティング技術を利用して安価な吸引アンカを製造し、かかる吸引アンカを安価ですぐに利用できる曳船を用いて設置現場まで浮いた状態で移動させることができる。
【0045】
今、
図8Aを参照すると、構造体を水底に固定する類似の吸引アンカ800の概略斜視図が示されている。例示の吸引アンカ800は、吸引杭、吸引ケーソン、吸引バケット、または吸引設置ケーソンアンカとも呼ばれる場合がある。
図8Bは、
図8Aの例示の吸引アンカ800の概略側面図および底面図であり、
図8Aは、側面図および底面図と関連した種々の断面図を含む。
図8Cは、例示の吸引アンカ800の開口部を施栓する蓋820に結合される
図8Aの例示の吸引アンカ800の断面図である。この断面図は、例示の吸引アンカ800を中間平面で長手方向に二分する中間平面によって得られる。例示の吸引アンカ800は、浸漬して水底に突き刺さり、そしていったん突き刺さると、例えば例示の吸引アンカ800の外面に加わる水圧によって埋め込み状態のままであるよう構成されているのが良い。水底の例示としては、海洋底、海底、湖底、または川床が挙げられる。
図8Dは、風力タービン構造体850を水底852に固定する
図8Aの例示の吸引アンカ800の多数の場合の概略側面図である。
【0046】
吸引アンカ800は、少なくとも一部がセメント系材料で形成され、そして閉鎖端部804および開放端部806を備えた管状本体802を有する。セメント系材料で形成された管状本体802の部分は、連続的に堆積させたセメント系材料の層、例えば3DCPまたはキャスティングプロセスにより堆積させた層を含むのが良い。かかるプロセスは、流動性セメント系材料(例えば、押し出し、吹き付け、プリンティングなどにより)を操作することができ、かかる流動性セメント系材料は、次に、硬化して凝固したセメント系材料になる。例えば、流動性セメント系材料を硬化して凝固本体になる連続した層として堆積させることができる。連続した層を互いの上に配置するのが良く、その結果、次の層は、先の層に直接接触するようになる。しかしながら、介在する構造体、例えば支持メッシュ、鉄筋などを隣り合う層相互間に配置することが可能である。すると、凝固本体は、管状本体802の一部または全てを構成することができる。管状本体802は、開放端部806の開口部を画定するとともに水底852に突き出すよう構成されたエッジまたは縁部808を有する。幾つかの変形例では、縁部808は、開放端部806の開口部に向かってテーパしている。これらの変形例では、テーパは、水底852に突き刺すのに十分鋭い先端で終端するのが良いが、機械的に破損(例えば、亀裂破砕など)しないのが良い。幾つかの変形例では、縁部808は、金属または金属合金(例えば、鋼)で作られる。これらの変形例では、縁部808は、セメント系材料に結合するよう構成された表面を有するのが良い。例えば、これら表面は、セメント系材料と結合する(またはかかる結合部を強くする)よう模様付きであるのが良くまたは化学的に処理されるのが良い。
【0047】
多くの具体化例では、周壁810は、管状本体802の形状を定める。周壁810は、閉鎖端部804から開放端部806まで一定でありまたは変化する断面を有するのが良い。断面の例としては、円形断面、長方形断面、六角形断面、正弦波断面、およびリブ付き断面が挙げられる。他の断面の採用が可能である。
図8A~
図8Dでは、管状本体802は、閉鎖端部804の半球形テーパに沿う部分を除き、閉鎖端部804から開放端部806までほぼ一定である円形断面を備えた周壁810を有する。半球形テーパ部に沿って、円形断面の形状は、一定のままであるが、断面の半径は、閉鎖端部804の頂点(半径がゼロであるところ)に達するまで減少する。
【0048】
例示の吸引アンカ800は、管状本体802内の空所816(または、空所816のそれぞれの部分)を管状本体802の外部に流体結合するよう構成された1つ以上のポート812,813,814(またはハッチ)をさらに有する。1つ以上のポート812,814(またはハッチ)は、周壁810を貫通して設けられても良くあるいは周壁に設けられたオリフィスを含んでも良い。1つ以上のポート812,814(またはハッチ)はまた、吸引源(例えば、ポンプ)、流体源(例えば、空気圧縮機)、またはこれら両方が例示の吸引アンカ800に結合することができるよう構成されているのが良い。幾つかの変形例では、1つまたは2つ以上のポート812,814の一部または全ては、金属(例えば、鋼)で作られている。幾つかの変形例では、空所816は、閉鎖端部804から開放端部806(またはその開口部)まで途切れていない状態で延びている。例えば、管状本体802は、単純なバケットの形をしているのが良い。これらの変形例では、類似の吸引アンカ800は、空所816を管状本体802の外部に流体結合する単一のポートを有するのが良い。例えば
図8Bおよび
図8Cに示されているような他の変形例では、空所816は、閉鎖端部804から開放端部806(またはその開口部)まで延び、そして空所816をチャンバに仕切る1つ以上の壁に中断されている。各チャンバは、単一のそれぞれのポートを通って管状本体802の外部に流体結合されるのが良い。かかる流体結合は、例示の吸引アンカ800の内部に位置する導管によって可能になる。
【0049】
例示の吸引アンカ800は、さらに、管状本体802の外面から延びていて係留索に結合するよう構成されたパッドアイ818を有する。例えば、パッドアイ818は、管状本体の外面から延びる板状構造体であるのが良く、この板状構造体は、ケーブルを取り付けるための穴を有する。しかしながら、パッドアイ818の他の形態の採用が可能である。パッドアイ818は、水底852上への配備の際に例示の吸引アンカ800に加わる荷重に抵抗することができ、さらに、例示の吸引アンカ800の取り扱いを容易にすることができる。例えば、パッドアイ818により、例示の吸引アンカ800を輸送車両、例えばトラックまたはボートに積み降ろしすることができる。幾つかの変形例では、パッドアイ818は、管状本体802の側部の外面から延びている。これらの変形例では、パッドアイ818により、例示の吸引アンカ800は、配備時に、垂直(例えば、軸方向)および接線方向荷重に加えて、管状本体802に加わる水平(横方向)荷重に良好に耐えることができる。幾つかの変形例では、パッドアイ818は、管状本体802の閉鎖端部804の頂点の外面から延びている。かかる変形例では、パッドアイ818により、例示の吸引アンカ800は、配備時に、水平(例えば、横方向)および接線方向荷重に加えて、管状本体802に加わる垂直(例えば、軸方向)荷重に良好に耐えることができる。
【0050】
例えば
図8Cに示された幾つかの具体化例では、例示の吸引アンカ800は、管状本体802の縁部808を受け入れるとともに開放端部806の開口部を施栓するよう蓋820を有する。蓋820は、管状本体802に結合されると、開放端部806の開口部を覆って縁部808とシールを形成し、それにより空所816を包囲する。この形態では、蓋820は、空所816を浮力チャンバに効果的に変換することができる。例示の吸引アンカ800の配備中、蓋820は、管状本体802に結合して開放端部806の開口部を施栓するとともに空所816内の空気を封止することができる。かくして、例示の吸引アンカ800は、水上に浮遊することができ、したがって、水上の標的場所まで輸送可能である。例えば、パッドアイ818は、ケーブルを介して例示の吸引アンカ800を標的場所まで水平に曳航するまでのタグボートに結合可能である。幾つかの場合、蓋820は、例示の吸引アンカ800の配備を助ける1つ以上のパッドアイを有するのが良い。蓋820は、プラスチック(例えば、ABS)、ゴム、金属(例えば、鋼)またはこれらの幾つかの組み合わせで形成できる。幾つかの蓋820は、少なくとも一部がセメント系材料で作られる。セメント系材料で作られた蓋820の部分は、例えば3DCPまたは3Dキャスティングプロセスによって連続して堆積されているセメント系材料の層を含むのが良い。これらの変形例では、蓋820は、縁部808とシールを形成するのを助けるプラスチックまたはゴムのガスケットまたはOリングを有するのが良い。
【0051】
例示の吸引アンカ800は、水上輸送可能にする(または、かかる輸送を助ける)他の特徴を有するのが良い。幾つかの具体化例では、例示の吸引アンカ800は、管状本体802の空所816内に設けられたバルーンを有する。吸引アンカ800の配備中、バルーンをインフレートさせて管状本体802を水上に配置する。例示の吸引アンカ800を標的場所まで浮動させた後、バルーンをデフレートさせ、かくして例示の吸引アンカ800は、水中に浸漬することができる。バルーンを空所816から取り外すのが良く、その後、例示の吸引アンカ800を完全に沈める。変形例として、バルーンは、例示の吸引アンカ800が水底852まで下降しているときにデフレート状態で空所816内に位置したままであっても良い。
【0052】
バルーンは、インフレート時、空所816の一部または全てを占めるよう構成されているのが良い。例えば、管状本体802が単一のバケットの形を定める場合、バルーンをインフレートさせてこれが空所816の全体を占めるのが良い。しかしながら、空所816がチャンバに仕切られている場合、バルーンは、管状本体802の特定のチャンバ、例えば端チャンバ(例えば、開口端部806に隣接して位置するスカートチャンバ)を占めるよう構成されているのが良い。幾つかの変形例では、バルーンは、蓋820によって空所816内に収容されても良い。これらの変形例では、蓋820は、バルーンをデフレートさせる前に管状本体802から取り外される。
【0053】
例えば
図8Bおよび
図8Cに示された幾つかの具体化例では、管状本体802内の空所816をスカートチャンバ824およびスカートの1つの浮力チャンバ826に仕切る1つ以上の内壁822を有する。スカートチャンバ824は、開放端部806および縁部808を有し、このスカートチャンバは、第1のポート812を通って管状本体802の外部に流体結合する。スカートチャンバとスカートの1つの浮力チャンバ826の両方は、例示の吸引アンカ800の浮動能力を制御するために流体(例えば、水、空気など)を受け入れたり吐き出したりするよう構成されている。これらの具体化例では、例示の吸引アンカ800は、第2のポート814を有し、少なくとも1つの浮力チャンバ826は、第2のポート814を通って管状本体802の外部に流体結合している。多くの変形例では、1つ以上の内壁822は、少なくとも一部がセメント系材料で作られる。セメント系材料で作られた1つ以上の内壁822の部分は、例えば3DCPまたは3Dキャスティングプロセスによって連続して堆積されているセメント系材料の層を含むのが良い。
【0054】
幾つかの具体化例では、少なくとも1つの浮力チャンバ826は、管状本体802の閉鎖端部804に隣接して位置する第1の浮力チャンバ826aおよび第1の浮力チャンバ826aとスカートチャンバ824との間に位置する第2の浮力チャンバ826bを有する。第1の浮力チャンバ826aは、閉鎖端部804を定める周壁810の一部分を有するのが良い。多くの変形例では、第1の浮力チャンバ826aは、第2のポート814を通って管状本体802の外部に流体結合し、第2の浮力チャンバ826bは、第3のポートを通って管状本体802の外部に流体結合している。幾つかの変形例では、第2の浮力チャンバ826bは、1つ以上の内壁822によって例えば
図8Bおよび
図8Cに示された複数のサブチャンバに仕切られるのが良い。複数のサブチャンバは、第2の浮力チャンバ826bを管状本体802の外部に流体結合する単一のポートを共有するのが良い。変形例として、各サブチャンバは、それぞれのポートを通って管状本体802の外部に流体結合されても良い。幾つかの変形例では、複数のサブチャンバは、1つ以上の内壁822に設けられた穴またはオリフィスを経て互いに流体結合されている。
【0055】
例えば
図8Bおよび
図8Cに示された幾つかの変形例では、1つ以上の内壁822は、管状本体802の空所816を第1の導管828および第2の導管830にさらに仕切っている。第1の導管828は、スカートチャンバ824を第1のポート812に流体結合するのが良く、第2の導管830は、少なくとも1つの浮力チャンバ826を第2のポート814に流体結合するのが良い。第1および第2の導管828,830は、少なくとも一部がセメント系材料で作られるのが良い。しかしながら、第1および第2の導管828,830は、別の材料、例えば金属(例えば、鋼)またはプラスチック(例えば、ABS)で作られた部分を有しても良い。
【0056】
上述したように、管状本体802および1つ以上の内壁822は、少なくとも一部がセメント系材料で作られるのが良い。幾つかの具体化例では、セメント系材料は、セメント系材料を機械的に強化する手段を含む。例えば、セメント系材料を貫通してポストテンショニング装置が設けられるのが良い。ポストテンショニング装置は、セメント系材料中に設けられたチャネルを貫通するとともに引張状態に設定されたケーブルを有するのが良い。ケーブルは、セメント系材料と直接接触状態にある(またはこれに結合される)のが良い。変形例として、ケーブルは、セメント系材料中に埋め込まれてチャネルを構成する導管を貫通して設けられても良い。引張状態により、ケーブルは、圧縮圧力または圧縮力をセメント系材料に加えることできる。別の実施例では、セメント系材料中に補強要素が設けられるのが良い。補強要素は、繊維、メッシュ、鉄筋などとして構成されるのが良く、また補強要素は、セメント系材料と配合される(そしてこれに結合される)のが良い。種々の材料、例えば鋼、玄武岩、ポリマー、またはガラスを用いて補強要素を形成することができる。しかしながら、他の材料の採用が可能である。
【0057】
作動の際、例示の吸引アンカ800が配備、自己突き刺し、埋め込み、および取り外しを含む多数の使用段階を経て移行するのが良い。配備段階に関し、例示の吸引アンカ800(または3DSA)および蓋820は、オプションとして他のユニットに連接された3DSAユニットの状態に製造されるとともに組み立てられ、そして共通タグで設置現場まで水平に湿式曳航される。
図9Aは、3DSAユニット900を製造して組み立てた波止場904からタグボート902によって水平に湿式曳航されている一群の3DSAユニット900の概略斜視図である。波止場904は、吸引アンカ908、蓋910、またはこれら両方の製造を3DCPまたは3Dキャスティングプロセスによって製造するためのシステム906を有する。
図9Bは、標的場所までオープン水域に沿ってタグボート902によって水平に湿式曳航されている
図9Aの組み立て状態の3DSAユニット900の概略斜視図である。同様な方式は、例えば
図10Aおよび
図10Bに示された自動設置モノパイルにとって首尾良い好結果を生むことが判明した。従来型の吸引アンカによる輸送および設置方法、例えば設置現場への輸送のために3DSAユニット900をアンカ取り扱い船またははしけのデッキ上に載せるのを所望ならば用いるのが良い。今、
図8A~
図8Dに戻ってこれらを参照すると、標的場所では、スカートチャンバ824(または空所816)を冠水させることによって蓋820を取り外す。少なくとも1つの浮力チャンバ826を制御された仕方で、例えばポンプ・弁システムにより水で冠水させることによって例示の吸引アンカ800を下降させる。
【0058】
例示の吸引アンカ800が水底852上に下降した後、スカートチャンバ824(または管状本体802)の縁部808が水底852に突き刺さり、スカートチャンバ824(または管状本体802)は、路上条件および例示の吸引アンカ800の特性に応じて、自重によりその高さの最高約60%まで部分的に埋まる。かかる埋め込みは、水底852中への例示の吸引アンカ800の自己突き刺しに対応している。セメント系材料を組み込むことによって、例示の吸引アンカ800は、従来設計と比較して重い。この重い構造物は、配備と相乗効果があり、というのは、適度に重い質量体は、スカートチャンバ824(または管状本体802)の自己突き刺し深さを増大させるとともに直径、長さ、およびコストを減少させることによって例示の吸引アンカ800の耐リフトおよび横転能力を向上させる。
【0059】
埋め込み段階中、水底852中への埋め込み(またはそれ以上の埋め込み)は、例えば1つ以上のポート812,814(またはハッチ)を通るスカートチャンバ824(または空所816)からの水のポンプ送りで生じる圧力差によって達成される。かかるポンプ送り出しは、「圧力不足」と呼ばれる状態を作り出し、この圧力不足は、水のポンプ送り出し時にスカートチャンバ824(または空所816)内に生じる負の圧力差(周囲圧力に対して)である。スカートチャンバ824(または空所816)を構成する壁前後の結果としての圧力差は、例示の吸引アンカ800を水底852中に効果的に押し込む。次に、3DSAポンプおよび蓋820を再使用のためにポート側出発点(例えば、ドック、波止場など)に戻す。
図8Dは、種々の形式の構造体、例えば半浸漬性構造体(すなわち、左側の風力タービン構造体850)およびスパー基礎(すなわち、右側の風力タービン構造体850)を固定する例示の吸引アンカ800の場合を示している。
図8Dもまた、互いに異なる係留形式を備えた風力タービン構造体850に結合された例示の吸引アンカ800を示しており、かかる係留形式は、緊張(ぴんと張った)および半緊張係留(左側)および弛みまたは懸垂係留(右側)を含む。取り外しのため、例示の吸引アンカ800は埋め込みプロセスを逆にすることによって、例えば「過剰圧力」をスカートチャンバ824(または空所816)内に加えることによって使用後に回収可能である。過剰圧力は、水をスカートチャンバ824(または空所816)からポンプにより送り出して例示の吸引アンカ800を取り出すときに管状本体802内に正の圧力差(周囲圧力に対して)である。かかるポンプ送り出しはまた、空気圧縮機によってスカートチャンバ824(または空所816)中に導入するのをさらに含むのが良い。
【0060】
幾つかの具体化例では、例示の吸引バケット800は、水を蓄えたり放出したりしてそれぞれエネルギー(例えば、油圧エネルギー、電気エネルギーなど)を蓄えたり供給したりするよう構成されたエネルギー貯蔵チャンバを有するのが良い。例えば、管状本体802の閉鎖端部804は、少なくとも一部がセメント系材料で作られたエネルギー貯蔵チャンバに結合されているのが良い。エネルギー貯蔵チャンバは、3DSPまたは3Dキャスティングプロセスを用いて製造されるのが良い。
図11は、エネルギー貯蔵チャンバ1102を含む例示の吸引バケット1100の概略断面図である。例示の吸引バケット1100は、
図8A~
図8Dに関して説明した例示の吸引バケットに類似しているのが良い。例示の吸引バケット1100は、閉鎖端部1106および開放端部1800を備えた管状本体1104を有し、さらにポートまたはハッチ(図示せず)および多数のパッドアイ1110を有する。管状本体1104は、平坦な表面1112に沿ってエネルギー貯蔵チャンバ1102に結合されている。
【0061】
エネルギー貯蔵チャンバ1102は、水を蓄えたり放出したりするよう構成されたチャンバ1114を有する。エネルギー貯蔵チャンバ1102は、チャンバ1114内に設けられた内側導管または筒体1116によって構成されたポンプタービンウェルをさらに有する。エネルギー貯蔵チャンバ1102はさらに、電気エネルギーを油圧エネルギーに変換し(この逆の関係が成り立つ)よう構成された1つ以上のタービンまたはポンプ1118を有する。電気ケーブル1120が1つ以上のタービンまたはポンプ1118を電気エネルギー源、例えば風力タービンに電気的に結合するのが良い。電気ケーブル1120はまた、1つ以上のタービンまたはポンプ1118を電気エネルギーのシンク、例えば電気エネルギーの消費者(例えば、電気機器)に電気的に結合するのが良い。幾つかの変形例では、エネルギー貯蔵チャンバ1102は、水底への構造体の固定を容易にするパッドアイ1122を有するのが良い。パッドアイ1122はまた、例えば配備中、自己突き刺し中、埋め込み中、および取り外し中、例示の吸引バケット1100の取り扱いおよび操作を容易にすることができる。
【0062】
例えば本明細書において説明した3DCP吸引アンカは、鋼板が圧延することによって製作されるとともに特殊化されるとともにコスト高のアンカ取り扱い船により設置される従来型吸引バケットと比較して、設置費用を最高80%減少させることができる。
図12は、3DCPプロセスを用いて製造された例示の吸引アンカの特徴および利点の略図である。さらに、3DCP吸引アンカは、国のほぼあらゆる地域に設置された既存のコンクリート供給チェーンを用いて製造できる。3Dコンクリートプリンティングまたは3DCPは、建造枠組みをなくし、自動化を高め、そして安価な耐食性かつ国内で入手できるコンクリート材料を用いることによって製造資本費を減少させる比較的新規なコンクリート製造技術である。幾つかのコンクリート製造方法は、3D吸引アンカモジュール(例えば、プレキャスト強化コンクリート、現場打ちコンクリート、またはスリップ成形コンクリート)を製造することができるが、3DCPは、自動現場製作の程度および複雑な形状を製造する能力に起因して最も大きなコスト減少の可能性を秘めている。
【0063】
3DCPプロセスは、従来型枠組みを建造しないで、機能的に最適な形状内で最適材料分布を容易にする。例えば、スカートチャンバの縁部を定める壁を容易にテーパしてさらなる製作または工具段取りを必要としないで、埋め込みを容易にすることができる。同様に、3D吸引アンカは、水平湿式曳航に必要な浮力を実現するよう空のチャンバを備えるのが良い。かかる区分化浮動チャンバは、追加の構造性能および質量を提供して上昇に抵抗し、種々のチャンバおよびポストテンショニング補強チャンバ中の空気圧内側ダクトは、プリンティングプロセスにおいて製作されて一体化される。
【0064】
3DSAを用途の要件およびサイズに応じて、必要ならば1つの物品としてまたはサブモジュールの状態で波止場で直接製造することができる(例えば、
図9A参照)。3DCPプロセスは、あらかじめ製造された蓋の次に3D吸引アンカをプリンティングして水密嵌合を保証することができる。吸引アンカにスカートチャンバの周囲に沿って配置された緊張材ジャッキで事後張力付与することができる。吸引アンカは、空気圧弁、ポンプコネクタ、底部プラグをさらに備えるのが良く、次に、これについて圧力試験する。
【0065】
幾つかの具体化例では、吸引アンカを製造する方法は、流動性セメント系材料の層を互いの上に堆積させて管状本体の少なくとも一部を形成するステップを含む。流動性セメント系材料の層を互いに上に連続して堆積させ、その結果、次の層は、先の層と直接接触するようになる。流動性セメント系材料は、硬化して凝固したセメント系材料になることができる。管状本体は、閉鎖端部および開放端部を有する。管状本体は、開放端部の開口部を画定するとともに水底を突き刺すよう構成された縁部をさらに有する。管状本体は、さらに、管状本体内の空所の少なくとも一部を管状本体の外部に流体結合するよう構成されたポートを有する。本方法は、パッドアイを管状本体の外壁に固定するステップをさらに含む。パッドアイは、係留索に結合するよう構成されている。幾つかの変形例では、流動性セメント系材料の層によって形成された管状本体の部分は、管状本体の形状を定める周壁を含む。
【0066】
本方法は、流動性セメント系材料の層を硬化させて凝固セメント系材料の層にするステップを含む。幾つかの具体化例では、本方法は、層の堆積前に補強要素を誘導性セメント系材料内に配置するステップを含む。幾つかの具体化例では、流動性セメント系材料層を堆積させるステップは、支持構造体を流動性セメント系材料の層中に埋め込むステップを含む。支持構造体は、メッシュ、貨物、または互いに結合された鋼製のロッドもしくはバー、玄武岩、あるいはガラス繊維を含むのが良い。別の具体化例では、本方法は、鉄筋要素を互いに結合して支持構造体の少なくとも一部を構成するステップを含む。
【0067】
幾つかの具体化例では、管状本体は、流動性セメント系材料の層を貫通するチャネルを有する。これらの具体化例では、本方法は、ポストテンショニング装置をチャネルに通して配置するステップと、流動性セメント系材料層が硬化して凝固セメント系材料の層になった後にポストテンショニング装置を張力調整するステップとを含む。幾つかの変形例では、流動性セメント系材料の層を堆積させるステップは、流動性セメント系材料の層内に空間を残してチャネルを形成するステップを含む。幾つかの変形例では、本方法は、流動性セメント系材料層が硬化する前に導管を流動性セメント系材料の層中に挿入するステップを含む。導管は、チャネルを構成する。幾つかの変形例では、流動性セメント系材料の層を堆積させるステップは、導管を流動性セメント系材料の層内に埋め込むステップを含む。導管は、流動性材料の層を貫通するチャネルを構成する。
【0068】
幾つかの具体化例では、流動性セメント系材料の層を堆積させるステップは、流動性セメント系材料の層を互いの上に吹き付けるステップを含む。幾つかの具体化例では、セメント系材料の層を堆積させるステップは、流動性セメント系材料の層を互いの上にプリンティングするステップを含む。
【0069】
幾つかの具体化例では、流動性セメント系材料の層により形成された管状本体の部分は、第1の部分および第2の部分を含む。かかる具体化例では、流動性セメント系材料の層を堆積させるステップは、流動性セメント系材料の第1の層を互いの上に堆積させて第1の部分を形成するステップを含む。流動性セメント系材料の層を堆積させるステップは、流動性セメント系材料の第1の層を硬化させて第1の部分を凝固させるステップと、流動性セメント系材料の第2の層を凝固した第1の部分上に堆積させて第2の部分を形成するステップとをさらに含む。第2の層は、互いの上に堆積する。
【0070】
幾つかの具体化例では、管状本体は、管状本体内の空所をスカートチャンバおよび少なくとも1つの浮力チャンバの状態に仕切る1つ以上の内壁を有する。スカートチャンバは、管状本体の開放端部および縁部を有し、ポートは、スカートチャンバを管状本体の外部に流体結合する。管状本体は、少なくとも1つの浮力チャンバを管状本体の外部に流体結合するよう構成された第2のポートをさらに有する。幾つかの変形例では、流動性セメント系材料の層によって形成された管状本体の部分は、1つ以上の内壁を含む。
【0071】
幾つかの具体化例では、管状本体の縁部は、金属で作られている。これら具体化例では、流動性セメント系材料層を堆積させるステップは、縁部の表面を流動性セメント系材料の1つ以上の層に接触させるステップを含む。幾つかの変形例では、本方法は、ポートを支持構造体に結合するステップを含む。幾つかの変形例では、パッドアイを外壁に固定するステップは、パッドアイを支持構造体に結合するステップを含む。支持構造体は、パッドアイに隣接する外壁を補強するよう構成された部分を含む。
【0072】
本明細書は、多くの細部を含むが、これら細部は、クレーム請求可能な内容の範囲に対する限定と理解されるべきではなく、これとは異なり、特定の実施例に特有の特徴の説明として理解されるべきである。別々の具体化例との関係において、本明細書に記載されまたは図面に示されたある特定の特徴もまた組み合わせることができる。これとは逆に、単一の具体化例との関連で説明されまたは図示された種々の特徴もまた、多数の実施形態において別々にまたは他の任意適当なサブコンビネーションの状態で具体化することができる。
【0073】
同様に作用を特定の順序で図面で示したが、これは、所望の結果を達成するためにかかる作用を図示の特定の順序でまたは順番に実施し、あるいは全ての図示の作用を実施することを必要とするものとして理解されるべきではない。ある特定の環境では、並行作業および並行処理が有利である場合がある。上述の具体化例における種々のシステムコンポーネントの分離は、全ての具体化例にかかる分離を必要とするものとして理解されるべきではなく、説明したコンポーネントおよびシステムは、全体として、単一製品の状態に互いに一体化できまたは多数の製品にパッケージ化できることが理解されるべきである。
【0074】
多くの実施形態を説明した。それにも関わらず、種々の改造を行うことができることは理解されよう。したがって、他の実施形態は、本発明の範囲に属する。
【国際調査報告】