(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-12
(54)【発明の名称】化学的に処理された紙を含む段ボール板紙及び段ボール紙の製造
(51)【国際特許分類】
B31F 5/04 20060101AFI20220405BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20220405BHJP
C09J 103/04 20060101ALI20220405BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20220405BHJP
B31F 1/28 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
B31F5/04
D21H27/30 B
C09J103/04
C09J11/08
B31F1/28 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021548159
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(85)【翻訳文提出日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 EP2020054347
(87)【国際公開番号】W WO2020169661
(87)【国際公開日】2020-08-27
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513013182
【氏名又は名称】ボレガード アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】シンノーベ ホルタン
(72)【発明者】
【氏名】スティーン ヤコプスン
(72)【発明者】
【氏名】カタリーナ リアピス
(72)【発明者】
【氏名】沼田 安秀
(72)【発明者】
【氏名】山森 康弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏典
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ベルグ
(72)【発明者】
【氏名】オッド ヘンリー ペデルセン
【テーマコード(参考)】
3E078
4J040
4L055
【Fターム(参考)】
3E078AA20
3E078BB01
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3E078CC23X
3E078CC42
4J040BA022
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4L055CF36
4L055EA08
4L055EA12
4L055FA22
4L055GA06
(57)【要約】
本発明は、段ボール板紙又は段ボール紙を製造するための高速方法に関し、前記段ボール板紙又は段ボール紙は化学的に処理された紙を含み、前記方法は、ミクロフィブリル化セルロースを含むデンプンベースの接着剤組成物を使用する。本発明はまた、ミクロフィブリル化セルロースを含む前記デンプンベースの接着剤組成物及び前記化学的に処理された紙を含む段ボール板紙又は段ボール紙に関する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボール板紙又は段ボール紙を製造する方法であって、前記方法が、少なくとも以下の工程を含む、方法:
以下を含むデンプンベースの接着剤組成物を提供すること:
・前記接着剤組成物の全体の乾物量の5%w/w~60%w/wの量の、少なくとも1つのデンプン及び/又は少なくとも1つのデンプン誘導体;
・前記接着剤組成物の全体の30%w/w~95%w/wの量の、少なくとも1つの溶媒、前記溶媒が好ましくは、水を含むか又は水からなり;
・前記接着剤組成物の全体の乾物量の0.001%w/w~10%w/w、好ましくは前記接着剤組成物の全体の乾物量の0.01%w/w~5%w/wの量の、ミクロフィブリル化セルロース;
段ボール板紙又は段ボール紙のためのフルーティング紙及びライナー紙を提供すること;フルート若しくはライナー又はその両方のための前記紙が、少なくとも部分的に化学的に処理されるか又はすでにされており;
前記デンプンベースの接着剤組成物を、波形の紙片の前記フルートの先端の少なくとも一部に、少なくとも片側に、好ましくは両側に塗布すること;そして
コルゲーターにおいて、前記波形の紙片に少なくとも1つのライナーを適用すること、好ましくは前記波形の紙片のもう一方の側に更なるライナーを適用すること、かつ
シングル、ダブル、トリプル又は更に複数の壁の段ボールを、好ましくは連続プロセスで準備すること。
【請求項2】
前記接着剤組成物中のミクロフィブリル化セルロースの量が、前記組成物の全量に対して、0.01%w/w~8%w/w、好ましくは0.01%w/w~5%w/w、更に好ましくは0.01%w/w~2%w/w、更に好ましくは0.01%w/w~0.5%、更に好ましくは0.01%w/w~0.15%w/w又は0.015%w/w~0.3%w/wであり、かつ/又は前記ミクロフィブリル化セルロースの量が、前記接着剤組成物中のデンプンの全量に対して測定される場合、0.003%w/w~16%w/w、好ましくは0.02%w/w~16%w/w、好ましくは0.04%w/w~4%w/w、好ましくは0.04%w/w~2%w/w、更に好ましくは0.04%w/w~1.4%w/w、より更に好ましくは0.04%w/w~0.6%w/wである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物中のデンプンの全量が、接着剤組成物の全体の、15%w/w~50%w/w、好ましくは25%w/w~48%w/w又は22%w/w~35%w/w、好ましくは30%w/w~46%w/w、更に好ましくは35%w/w~45%w/wである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記接着剤組成物のpH値が、8~14、好ましくは10~13、更に好ましくは11.5~12.5である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのデンプンが、天然デンプン、化学的若しくは物理的に修飾されたデンプン、デンプン誘導体、又はそれらの混合物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ミクロフィブリル化セルロースが、溶媒としてのポリエチレングリコール(PEG)中に測定され、かつ0.65%のMFCの固形分で、測定される場合、少なくとも2000Pa・s、好ましくは少なくとも3000Pa・s又は4000Pa・s、更に好ましくは少なくとも5000Pa・s、更に好ましくは少なくとも6000Pa・s、更に好ましくは少なくとも7000Pa・sのゼロせん断粘度η
0を有するゲル状分散液を生成することによって特徴付けられており、前記測定方法が、明細書に記載されているとおりである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ミクロフィブリル化セルロースが、MFCサンプルを水中で0.3%の固形分に希釈し、そして、サンプルを1000Gで15分間遠心分離した後、澄んだ水相を堆積物から分離し、堆積物の重さを量ることによって測定される場合、30超、好ましくは40又は50超、更に好ましくは60又は70又は75超、更に好ましくは80又は90超、更に好ましくは100超の、しばしば保水能力とも呼ばれる、水保持能力によって特徴付けられており、前記水保持能力が、(mV/mT)
-1として与えられ、ここで、mVが、湿った堆積物の重量であり、かつmTが分析された乾燥MFC重量であり、前記測定方法が、明細書に記載されているとおりである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ミクロフィブリル化セルロースが、非修飾(天然)ミクロフィブリル化セルロースであり、好ましくは植物材料に由来する非修飾ミクロフィブリル化セルロースである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも部分的に化学的に処理された紙が、水又は任意の溶媒を含んでよいが、水又は溶媒以外の少なくとも1つの化合物を含む化学組成物を少なくとも1つ用いて、含浸又は表面コーティング若しくは処理、表面又は内部サイジング、ウェットエンド処理、ドライエンド処理、サイズ又はフィルムプレス、又はそれらの任意の組み合わせにすでにさらされているか、又はさらされる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの化学組成物が、以下の少なくとも1つであるか、又はそれを含む、請求項9に記載の方法:pHを制御する手段、保持を改善する手段、添加剤を繊維に固定する手段、液体の浸透を制御する手段、破裂及び引張強度を改善する手段、酸湿潤強度を改善する手段、光学及び印刷特性を改善する手段、所望の色を改善又は調整する手段、排水及びシート形成を改善する手段、保水又は水分除去を改善する手段、(光学)輝度を改善する手段、沈着を防止する手段、成長又は生物を制御又は阻害する手段、腐食を制御する手段、表面張力(接触角)、(鉱物)フィラー、特にカオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、二酸化チタン、染料に影響を与える手段。
【請求項11】
前記少なくとも1つの化学組成物が、以下の少なくとも1つであるか、又はそれを含む、請求項9に記載の方法:顔料、(ミネラル)フィラー、多価カチオン、特にAl
3+およびFe
3+、天然若しくは化学修飾デンプン(カチオンデンプン、アニオンデンプン、酸化デンプン、デキストリン)、天然ガム若しくは化学修飾ガム、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース若しくはヘミセルロース等)、天然若しくは化学的若しくは物理的に修飾されたミクロフィブリル化セルロース、微結晶性セルロース、合成ポリマー、特にフェノール、アルコール(ポリビニルアルコール等)、アセテート(ポリ酢酸ビニル等)、ポリアミン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸および化合物、ポリアシル化合物、ホルムアルデヒド含有樹脂若しくはポリマー、例えば尿素-若しくはメラミン-ホルムアルデヒド、ポリアミド、ラテックス、又は樹脂、特にウッドピッチ若しくは樹脂、ワックス若しくはロジン等の天然に存在するポリマー。
【請求項12】
前記少なくとも1つの化学組成物が、以下の少なくとも1つであるか、又はそれを含む、請求項9に記載の方法:乾燥強度を改善する手段、特に水溶性高分子電解質、乾燥強度樹脂、アクリルアミドのアニオン性若しくはカチオン性コポリマー、アクリルアミドポリマー、両性製品(アニオン性基とカチオン性基の両方を有する)を含み、線状及び分岐状、低分子量若しくは高分子量ポリアクリルアミド、合成乾燥強度剤、分子量値が1モルあたり100万グラム未満の合成乾燥強度剤、デンプン、デンプン誘導体若しくはカチオン性デンプン、天然若しくは化学的若しくは物理的に修飾されたミクロフィブリル化セルロース、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースおよびグアーガム誘導体を含む天然物の誘導体、粘土、炭酸カルシウム、二酸化チタン、プラスチック顔料などの顔料、ポリリン酸塩などの分散剤、リグノスルホン酸塩若しくはケイ酸塩等のリグニン又はリグニン誘導体、水溶性接着剤(接着剤、ガム、カゼイン、デンプン、大豆タンパク質)及びポリマーエマルジョン(ラテックス、アクリル、ポリ酢酸ビニル)などのバインダー、ホルムアルデヒドドナー、グリオキサール、ラテックスなどの不溶化剤、ステアリン酸塩、ワックスエマルジョン及びアジトなどの可塑剤、天然ポリマー、セルロース誘導体及び合成ポリマーなどのレオロジー制御剤、ホルムアルデヒド及びベータナフトールなどの防腐剤、消泡剤(専売品)並びにレーキ、直接若しくは酸性染料等の染料。
【請求項13】
水または溶媒以外の前記少なくとも1つの化合物が、ポリマー組成物、好ましくはポリアクリルアミドを含む組成物である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記化学的に処理された紙が、ISO 8791-2:2013、つまりBendtsenエアフロー法にしたがって測定された表面粗さによって特徴付けられており、前記表面粗さが、ISO 8791-2:2013にしたがって測定される場合、1000ml/min未満、好ましくは500ml/min未満、好ましくは250ml/min未満、更に好ましくは200ml/min未満、更に好ましくは100ml/min未満、更に好ましくは50ml/min未満若しくは25ml/min未満である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記化学的に処理された紙が、ISO 5636-5、つまりガーリー法にしたがって測定された空気抵抗によって特徴付けられており、前記空気抵抗が、20sec/100ml超、好ましくは50sec/100ml超、更に好ましくは100sec/100ml超、更に好ましくは150sec/100ml超、更に好ましくは200sec/100ml超、又は更に好ましくは250若しくは300sec/100ml超である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ライナーとして使用される前記紙の重量が、25~600g/m
2、好ましくは40~400g/m
2、より好ましくは100~350g/m
2であり、かつ/又はフルートとして使用される前記紙の重量が、25~500g/m
2、好ましくは40~300g/m
2、より好ましくは100~260g/m
2である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つのフルート及び少なくとも1つのライナーを有する段ボール板紙又は段ボール紙であって、それらの少なくとも一つ、又は両方が、少なくとも部分的に化学的に処理されており、かつ任意選択的に請求項9~13のいずれか一項に記載の化合物若しくは組成物の少なくとも1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含み、前記段ボール板紙又は段ボール紙が、請求項1~8のいずれか一項に記載のミクロフィブリル化セルロースを含むデンプンベース接着剤組成物を含む、段ボール板紙又は段ボール紙。
【請求項18】
前記フルーティング紙が、補強若しくは強化されたリサイクル紙又は再生紙であり、好ましくは前記フルーティング紙が、強化剤で強化されたリサイクル紙であり、好ましくは前記強化剤が、ポリマー組成物、好ましくはポリアクリルアミドおよび/またはデンプン組成物を含み、かつ/又は前記フルーティング紙が、特に、ISO 5636-5、つまりガーリー法にしたがって測定された高い空気抵抗を特徴とするリサイクル紙であり、前記紙の前記空気抵抗が、20sec/100ml超、好ましくは30sec/100ml超、更に好ましくは40sec/100ml超、更に好ましくは50sec/100ml超、更に好ましくは80sec/100ml超、又は更に好ましくは100若しくは150sec/100ml超である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法、又は請求項17に記載の段ボール板紙若しくは段ボール紙。
【請求項19】
段ボール板紙又は段ボール紙を製造する方法におけるミクロフィブリル化セルロースを含む接着剤組成物の使用であって、前記ミクロフィブリル化セルロースが、接着剤組成物の全体の乾物量の0.001%w/w~10%w/w、好ましくは前記接着剤組成物の全体の乾物量の0.01%w/w~5%w/wであり、少なくとも1つのフルーティング紙若しくはライナー紙、又はその両方が、少なくとも部分的に化学的に処理されるか又はすでにされており;ここで、紙は、任意選択的に、ISO 8791-2:2013、つまりBendtsenエアフロー法にしたがって測定された表面粗さが、1000ml/min未満、好ましくは500ml/min未満、好ましくは250ml/min未満、更に好ましくは200ml/min未満、更に好ましくは100ml/min未満、更に好ましくは50ml/min未満若しくは25ml/min未満であり、あるいは、紙は、任意選択的に、ISO 5636-5、つまりガーリー法にしたがって測定された空気抵抗が20sec/100ml超、好ましくは50sec/100ml超、更に好ましくは100sec/100ml超、更に好ましくは150sec/100ml超、更に好ましくは200sec/100ml超、又は更に好ましくは250若しくは300sec/100ml超である、
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール板紙及び段ボール紙を製造するための高速プロセスに関し、前記段ボール板紙及び段ボール紙は、化学的に処理された紙を含み、前記プロセスは、ミクロフィブリル化セルロースを含むデンプンベース接着剤組成物を使用する。本発明はまた、ミクロフィブリル化セルロース及び前記化学的に処理された紙を含む前記デンプンベース組成物を含有する段ボール板紙及び段ボール紙に関する。
【背景技術】
【0002】
デンプンベース接着剤(またはデンプン誘導体に基づく接着剤)は、特に製紙産業において一般的に知られている。
【0003】
例えば、US3434901は、適切な液体担体中の生または未調理のデンプンの懸濁液を開示している。例えば、例えば、接着剤の最大40重量%を含み、水並びに少量の調理済みのデンプン、ホウ砂及び苛性ソーダからなる担体に懸濁された生トウモロコシ、タピオカまたはジャガイモデンプンは、典型的な生デンプン配合物を構成するであろう。この状態では、デンプンの接着性は限られているか、又はない。しかしながら、特定の温度で、使用されるデンプンの種類並びに担体に溶解する添加剤の種類および量に応じて、デンプン粒は利用可能な懸濁液の液体を吸収して膨潤し、懸濁液のゲル化を引き起こす。この状態では、デンプンは、優れた接着能力を持ち、紙を含む多くの基材間に結合を形成する。
【0004】
US2,884,389及びUS2,886,541は、本質的に耐水性または防水性が高いデンプンベースの波形接着剤(corrugating adhesive)を製造できることを開示している。これらの2つの特許は、イン・サイチュでフェノール-アルデヒド樹脂-デンプン反応生成物を形成するために、ペーストされたデンプンの存在下で、アルカリ性条件下で、レゾルシノールなどのフェノール化合物をホルムアルデヒドなどのアルデヒドと反応させることを開示している。これらの2つの特許の開示は、防水性の段ボールおよびラミネート板紙製品の耐水性の高い製品の製造に商業規模で採用されている。US3,294,716は、一般的なフェノール-アルデヒド-澱粉配合にホウ砂を添加し、フェノール化合物の濃度を下げることで、高度な耐水性を必要としない特定の段ボール製品のコストを削減し、機械の速度を上げことを開示している。
【0005】
CN105542676は、デンプンベースの接着剤のマトリックスとしての酸化ナノセルロースセルロースの使用を開示している。組成物は、一般的に、100部の5~30%の酸化率を有する酸化ナノセルロースパルプ。10~40部のデンプン、2~5部の酸化剤、0.1~2部の安定剤、0.1~2部の防腐剤、および0.1~2部の乳化パラフィンを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現在使用されているデンプンベースの接着剤組成物は、特殊紙、例えば化学的に処理された紙、特に高級段ボールにますます使用される含浸紙または表面コート紙の処理に関して制限されている。
【0007】
特に、段ボール紙の生産ラインにおける初期の粘着性と接着性、および処理速度は、一般的に改善する必要がある。
【0008】
上に概説した問題に基づいて、先行技術を考慮して、本発明の目的は、段ボール板紙又は段ボール紙(corrugated paperboards or cardboards)を製造するための方法を提供することであり、この方法は、当技術分野で知られているプロセスよりも速い速度および/または効率で実行することができ、特に、上記で概説した不利な点のいずれかを回避または最小化するプロセスおよび段ボール製品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、この問題及び他の問題は、段ボール板紙又は段ボール紙を製造する方法によって解決され、前記方法は、少なくとも以下の工程を含む:
デンプンベースの接着剤組成物を提供すること、前記組成物は、以下を含む:
・接着剤組成物の全体の乾物量の5%w/w~60%w/wの量の、少なくとも1つのデンプン及び/又は少なくとも1つのデンプン誘導体;
・接着剤組成物の全体の30%w/w~95%w/wの量の、少なくとも1つの溶媒、前記溶媒が好ましくは、水を含むか又は水からなり;
・接着剤組成物の全体の乾物量の0.001%w/w~10%w/w、好ましくは前記接着剤組成物の全体の乾物量の0.01%w/w~5%w/wの量の、ミクロフィブリル化セルロース;
段ボール板紙又は段ボール紙のためのフルーティング紙(fluting paper)及びライナー紙(liner paper)を提供すること;フルート若しくはライナー又はその両方のための前記紙が、少なくとも部分的に化学的に処理されるか又はすでにされており;
前記デンプンベースの接着剤組成物を、波形(corrugated)の紙片の前記フルートの先端の少なくとも一部に、少なくとも片側に、好ましくは両側に塗布すること;そして
コルゲーター(corrugator)において、前記波形の紙片に少なくとも1つのライナーを適用すること、好ましくは前記波形の紙片のもう一方の側に更なるライナーを適用すること、かつ
シングル、ダブル、トリプル又は更に複数の壁の段ボールを、好ましくは連続プロセスで準備すること。
【0010】
本発明の実施形態では、少なくとも部分的に化学的に処理された紙は、水又は任意の溶媒を含んでよいが、水又は溶媒以外の少なくとも1つの化合物を含む化学組成物を少なくとも1つ用いて、含浸又は表面コーティング若しくは処理、表面又は内部サイジング、ウェットエンド処理、ドライエンド処理、サイズ又はフィルムプレス、又はそれらの任意の組み合わせにすでにさらされているか、又はさらされる。
【0011】
本発明の実施形態では、少なくとも部分的に化学的に処理された紙は、含浸又は表面コーティング若しくは処理、表面又は内部サイジング、ウェットエンド処理、又はそれらの任意の組み合わせにすでにさらされているか、又はさらされる。前記表面又は内部サイジング、ウェットエンド処理、又はそれらの任意の組み合わせは、以下の少なくとも1つを含む:pHを制御する手段、保持を改善する手段、添加剤を繊維に固定する手段、液体の浸透を制御する手段、破裂及び引張強度を改善する手段、酸湿潤強度を改善する手段、光学及び印刷特性を改善する手段、所望の色を改善又は調整する手段、排水及びシート形成を改善する手段、保水又は水分除去を改善する手段、(光学)輝度を改善する手段、沈着を防止する手段、成長又は生物を制御又は阻害する手段、腐食を制御する手段、表面張力(接触角)、(鉱物)フィラー、特にカオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、二酸化チタン、染料に影響を与える手段。
【0012】
本発明の実施形態では、少なくとも部分的に化学的に処理された紙は、以下から選択される少なくとも1つの化学物質にすでにさらされているか、又はさらされる:顔料、(ミネラル)フィラー、多価カチオン、特にAl3+およびFe3+、天然若しくは化学修飾デンプン(カチオンデンプン、アニオンデンプン、酸化デンプン、デキストリン)、天然ガム若しくは化学修飾ガム、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース若しくはヘミセルロース等)、天然若しくは化学的若しくは物理的に修飾されたミクロフィブリル化セルロース、微結晶性セルロース、合成ポリマー、特にフェノール、アルコール(ポリビニルアルコール等)、アセテート(ポリ酢酸ビニル等)、ポリアミン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸および化合物、ポリアシル化合物、ホルムアルデヒド含有樹脂若しくはポリマー、例えば尿素-若しくはメラミン-ホルムアルデヒド、ポリアミド、ラテックス、又は樹脂、特にウッドピッチ若しくは樹脂、ワックス若しくはロジン等の天然に存在するポリマー。
【0013】
本発明の好ましい実施形態では、水または溶媒以外の少なくとも1つの化合物は、ポリマー組成物である。
【0014】
本発明のさらに好ましい実施形態では、ポリマー組成物は、ポリアクリルアミド、好ましくはアニオン性、カチオン性または両性ポリマーおよび/またはアクリルアミドのコポリマーであるか、またはそれらを含む。
【0015】
本発明の実施形態では、少なくとも部分的に化学的に処理された紙は、以下から選択される少なくとも1つの化学物質にすでにさらされているか、又はさらされる:乾燥強度を改善する手段、特に水溶性高分子電解質、乾燥強度樹脂、アクリルアミドのアニオン性若しくはカチオン性コポリマー、アクリルアミドポリマー、両性製品(アニオン性基とカチオン性基の両方を有する)を含み、線状及び分岐状、低分子量若しくは高分子量ポリアクリルアミド、合成乾燥強度剤、分子量値が1モルあたり100万グラム未満の合成乾燥強度剤、デンプン、デンプン誘導体若しくはカチオン性デンプン、天然若しくは化学的若しくは物理的に修飾されたミクロフィブリル化セルロース、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースおよびグアーガム誘導体を含む天然物の誘導体、粘土、炭酸カルシウム、二酸化チタン、プラスチック顔料などの顔料、ポリリン酸塩などの分散剤、リグノスルホン酸塩若しくはケイ酸塩等のリグニン又はリグニン誘導体、水溶性接着剤(接着剤、ガム、カゼイン、デンプン、大豆タンパク質)及びポリマーエマルジョン(ラテックス、アクリル、ポリ酢酸ビニル)などのバインダー、ホルムアルデヒドドナー、グリオキサール、ラテックスなどの不溶化剤、ステアリン酸塩、ワックスエマルジョン及びアジトなどの可塑剤、天然ポリマー、セルロース誘導体及び合成ポリマーなどのレオロジー制御剤、ホルムアルデヒド及びベータナフトールなどの防腐剤、消泡剤(専売品)並びにレーキ、直接若しくは酸性染料等の染料。
【0016】
本発明の実施形態では、ライナーとして使用される前記紙の重量が、25~600g/m2、好ましくは40~400g/m2、より好ましくは100~350g/m2であり、かつ/又はフルートとして使用される前記紙の重量が、25~500g/m2、好ましくは40~300g/m2、より好ましくは100~260g/m2である。
【0017】
本発明の実施形態では、化学的に処理された紙は、ISO 8791-2:2013、つまりBendtsenエアフロー法にしたがって測定された表面粗さによって特徴付けられており、前記表面粗さが、ISO 8791-2:2013にしたがって測定される場合、1000ml/min未満、好ましくは500ml/min未満、好ましくは250ml/min未満、更に好ましくは200ml/min未満、更に好ましくは100ml/min未満、更に好ましくは50若しくは25ml/min未満である。
【0018】
本発明の実施形態では、化学的に処理された紙は、特に、ISO 5636-5、つまりガーリー法にしたがって測定された比較的高い空気抵抗/低い空気透過性によって特徴付けられており、紙中の前記空気抵抗は、sec/100mlとして測定され、接着剤の浸透能力に関連している可能性があり、前記空気抵抗は、20sec/100ml超、好ましくは50sec/100ml超、更に好ましくは100sec/100ml超、更に好ましくは150sec/100ml超、更に好ましくは200sec/100ml超、又は更に好ましくは250若しくは300sec/100ml超である。
【0019】
本発明の実施形態では、バージンファイバー、特にクラフトライナー、および/またはリサイクルファイバーに由来する、コーティングされた、白いトップ、白、茶色、またはプレプリントから選択される。
【0020】
本発明の実施形態では、フルーティングとして使用される紙は、半化学的、リサイクル紙、またはリサイクル強化紙であってよい。
【0021】
好ましい実施形態では、フルーティングとして使用される紙は、リサイクル若しくはリサイクルコート若しくはリサイクル含浸若しくはリサイクルサイズ(デンプン処理あり又はなし)紙、又はバリア性が向上したリサイクル紙、例えば改善された耐水性若しくはリサイクル強化紙、特に強化剤、特にポリマー組成物、好ましくはポリアクリルアミドおよび/またはデンプン組成物を含む強化剤で強化されたリサイクル紙である。
【0022】
本発明の実施形態では、化学的に処理されたリサイクルフルーティング紙は、特に、ISO 5636-5、つまりガーリー法にしたがって測定された比較的高い空気抵抗/低い空気透過性によって特徴付けられており、紙中の前記空気抵抗は、sec/100mlとして測定され、接着剤の浸透能力に関連している可能性があり、前記空気抵抗は、20sec/100ml超、好ましくは30sec/100ml超、更に好ましくは40sec/100ml超、更に好ましくは50sec/100ml超、更に好ましくは80sec/100ml超、又は更に好ましくは100若しくは150sec/100ml超である。
【0023】
本発明の実施形態では、フルーティングとして使用される紙は、特に、ISO 5636-5、つまりガーリー法にしたがって測定された比較的高い空気抵抗/低い空気透過性を特徴とする(高性能)半化学紙であり、紙中の前記空気抵抗は、sec/100mlとして測定され、接着剤の浸透能力に関連している可能性があり、前記空気抵抗は、20sec/100ml超、好ましくは30sec/100ml超、更に好ましくは40sec/100ml超、更に好ましくは50sec/100ml超、更に好ましくは80sec/100ml超、又は更に好ましくは100若しくは150sec/100ml超である。
【0024】
半化学フルーティングは、1プライ(ply)のみを含む紙であり、一方で、クラフトライナーは、1、2、または3(またはそれ以上)のプライ製品でありうる。
【0025】
1、2または3層は、バージンファイバーと再生ファイバーの混合物を含みうる。層は漂白される(通常、印刷の可能性のために白いトップ)場合がある。異なる層は、ヘッドボックスから(パルプ濃度約1%)、またはプレスセクションの直前(パルプ濃度約20%)に一緒に追加できる。
【0026】
テストライナーは通常、1プライの紙で構成されるが、2プライにすることもできる。テストライナーの種類に応じて、古紙の種類の混合物のファイバー組成は、各層で異なってよい。一般に、外観と強度の理由から、上層にはより良いグレードのミックスが使用される。その強度を高めるために、ライナーはサイズプレスで表面処理を受けることができる。これは、例えば、ライナーの片面または両面へのデンプン溶液の塗布を含み得る。テストライナーの上層は、物質を着色することによって、またはサイズプレス処理によって、均一な、ほとんど茶色の色を与えることが好ましい。特殊な添加剤を(大量に、またはサイズプレスを使用して)追加すると、追加の撥水性、低胚芽、防食グレードなどの特殊な特性を備えたライナーを製造することができる。
【0027】
段ボール材として使用されるリサイクル/再生紙の表面処理は、サイズプレスやフィルムプレスで行われることが多い。基本的に、サイズプレスは、紙のウェブが通過する、一緒にプレスされた2つの回転するゴムで覆われたロールで構成される。ロール間に形成されたニップに、表面処理液、例えばデンプン溶液が塗布される。紙はこの溶液の一部を吸収し、2つのロールの間でプレスされ、余分な水分を蒸発させるために抄紙機の「アフタードライヤー」セクションに進む。ポリアクリルアミドなどの他の化学物質もサイズプレスに追加して、紙の強度を高めることができる。フィルムプレスでは、例えば、デンプンおよび他の乾燥材料の量は、一般に、よりよく制御することができる。
【0028】
フルーティングペーパーの保持、排水、および強度をさらに制御するために、選択した化学物質が、単独で、またはペーパーメイキングのウェットエンドで組み合わせて使用される。この化学物質の塗布は、紙の含浸または表面コーティングと呼ばれることがある。より重要な化学添加物の1つは、高分子量のポリアクリルアミドであり、これは、上質紙での適切な保持と排水を実現するのに役立つ。カチオン性の高いポリマー、例えばポリエチレンイミンは、フルーティング紙の保持/排水補助剤としても使用できる。
【0029】
しかしながら、段ボールの製造に使用されるフルート紙及びライナー紙の保持、排水及び強度を制御するために化学化合物を適用すると、接着剤による紙の含浸を妨げる可能性があり、特に粘着性や初期接着強度などの接着特性を低下させる傾向がある。したがって、一般的にボード(board)の生産ラインを遅くする必要がある。
【0030】
驚くべきことに、本発明者らは、デンプン接着剤に比較的少量のミクロフィブリル化セルロースを添加することにより、化学的に処理された紙、例えばポリアクリルアミド処理されたフルーティング紙を含む段ボールをより高速で実行できることを発見した。実際、これらの化学的に処理されたフルーティング紙では、生産ラインを最大250m/minの速度で稼働させることができる。より高い走行速度は容量を増加させ、それは経済的に有益である。
【0031】
理論に拘束されることなく、化学的に処理された紙を含む段ボールの製造におけるデンプン接着剤へのミクロフィブリル化セルロースの適用は、接着剤の表面への濡れと流れを改善し、これらの特殊紙への接着剤の(空洞)浸透を増加させると考えられる。この効果は、特にホウ砂(のみ)の参照接着剤と比較して、化学的に処理された紙を含む段ボールのより高速な製造を可能にする。紙の間の結合を改善することを確実にするために、紙の内部の接着剤の湿潤と浸透との間の適切なバランスが好ましくは達成される。
【0032】
更なる態様によれば、本発明はまた、少なくとも1つのフルート及び少なくとも1つのライナーを有する段ボール板紙又は段ボール紙に関し、それらの少なくとも一つ、又は両方が、少なくとも部分的に化学的に処理されており、前記段ボール板紙又は段ボール紙は、上述したミクロフィブリル化セルロースを含むデンプンベース接着剤組成物を含む。
【0033】
実施形態では、接着剤組成物中のミクロフィブリル化セルロースの量は、組成物の全量に対して、0.01%w/w~8%w/w、好ましくは0.01%w/w~5%w/w、更に好ましくは0.01%w/w~2%w/w、更に好ましくは0.01%w/w~0.5%、更に好ましくは0.01%w/w~0.15%w/w又は0.015%w/w~0.3%w/wであり、かつ/又はミクロフィブリル化セルロースの量は、接着剤組成物中のデンプンの全量に対して測定される場合、0.003%w/w~16%w/w、好ましくは0.02%w/w~16%w/w、好ましくは0.04%w/w~4%w/w、好ましくは0.04%w/w~2%w/w、更に好ましくは0.04%w/w~1.4%w/w、より更に好ましくは0.04%w/w~0.6%w/wである。
【0034】
本発明の実施形態では、接着剤組成物中のミクロフィブリル化セルロースの量は、0.015%乾物量から組成物の全量に対して1%までであり、更に好ましくは0.02%から0.1%までであり、かつ/又はミクロフィブリル化セルロースの量は、接着剤組成物中のデンプンの全量に対して測定される場合、0.003%w/w~22%w/w、好ましくは0.01%w/w~20%w/w、又は0.02%w/w~4%w/w又は0.04%w/w~1%w/wである。
【0035】
本発明者らは、驚くべきことに、デンプンベースの接着剤に比較的少量のMFCを使用できること、例えば、10%w/w以下、または5%w/w以下でありながら、MFCが添加剤として有する利点を達成できることを見出しており、その利点は、本開示全体を通して説明される。
【0036】
一般に、当業者は、必要とされる可能性のある添加剤の量を可能な限り低く保ちたいと考えている。理論に拘束されることを望まないが、接着剤組成物全体の特性に有意に影響を与える添加剤として少量のMFCを使用する効果は、MFCのネットワーク形成(架橋)能力によると考えられている。一般に、MFCの量が少なすぎる場合、たとえば0.001%w/w未満の場合、クロスリンクされたネットワークは十分に強力ではない可能性がある。あるいは、更に少ない量では、ファイバーの量が少なすぎて連続的なネットワークを形成できない場合がある。一方、MFCが多すぎる場合、例えば10%w/wを超える場合は、粘度が高すぎて、全体の組成を処理するのが困難になる可能性がある。
【0037】
本発明によれば、「乾物」(または「固形分」)という用語は、すべての溶媒(通常は水)が除去された場合に残っているミクロフィブリル化セルロース(および/またはデンプン)の量を指す。次に、その量は、接着剤組成物(溶媒、デンプン、および存在する場合は他のアジュバントを含む)の総重量に対する重量%として計算される。
【0038】
本発明の実施形態では、溶媒の量は、組成物の全量に対して、30%~80%、更に好ましくは40%~75%w/w又は55%w/w~70%、w/w、又は60%w/w~80%、w/wである。
【0039】
本発明の実施形態では、デンプン及び/又はデンプン誘導体の量は、組成物の全量に対して、10%~50%、乾物で、更に好ましくは15%~35%、w/wである。
【0040】
本発明の実施形態では、前記組成物中のデンプンの全量は、接着剤組成物の全体の、15%w/w~50%w/w、好ましくは25%w/w~48%w/w又は22%w/w~35%w/w、より好ましくは30%w/w~46%w/w、そして更に好ましくは35%w/w~45%w/wである。
【0041】
本発明者らは、驚くべきことに、MFCを含まない他の同じ組成物と比較して、MFCも含むデンプンベースの接着剤組成物においてより大量のデンプンを使用できることを見出した。理論に拘束されることを望まないが、より多くのデンプンを全体の組成物に組み込むこの可能性は、MFCのチキソトロピー(ずり流動化)能力によるものであると考えられる。保管中、MFCは分散液を安定させ、安定した(高い)粘度を維持する。加工(例えば、フルートおよび/または段ボールのライナーに接着剤を塗布する)では、MFCのずり流動化特性により、連続加工を困難にする大量のデンプンが含まれている場合でも、組成物全体を広げて塗布することができる。
【0042】
本発明の実施形態では、少なくとも1つのデンプンは、天然デンプン、化学的若しくは物理的に修飾されたデンプン、デンプン誘導体、又はそれらの混合物である。
【0043】
本発明によれば、デンプンベースの接着剤は、ホウ砂を含みうる(しかし、含まなければならないではない)。
【0044】
本発明によれば、「ホウ砂」とホウ酸は一般に同じ化合物ではないと理解されているが;[ホウ砂はホウ酸の塩であり、つまり、ホウ砂は(テトラ)ホウ酸ナトリウムであり、ホウ酸はハイドロゲンボロネートである]、「ホウ砂」という用語が使用されるときはいつでも、その用語はホウ酸およびそのアルカリ金属塩を指す。特に、主にそれらの結晶含水量が異なる多くの関連する鉱物または化合物は「ホウ砂」と呼ばれ、本発明の範囲、特に十水和物に含まれる。市販のホウ砂は通常、部分的に脱水されている。本発明によれば、「ホウ砂」という用語は、ホウ酸またはホウ砂誘導体、例えば、化学的または物理的に修飾されたホウ酸またはホウ砂も包含する。
【0045】
実施形態では、MFCを有利に使用して、デンプンベースの接着剤の添加剤として通常使用されるホウ砂の一部または全部を置き換えることができる。
【0046】
特に明記しない限り、本発明の組成物中の任意の成分の量について与えられる全ての範囲または値は、接着剤組成物の全重量に対する成分の重量%で与えられること(「w/w」)を意味する。
【0047】
本発明による接着剤組成物は、他の成分、特に苛性ソーダ、ホウ砂、および/または少なくとも1つの防腐剤を含みうる。
【0048】
本発明によれば、「接着剤」は、接着剤結合プロセスによってこれらの表面を恒久的に接合するために物品の表面に塗布される材料であると理解される。接着剤は、2つの部分のそれぞれに結合を形成できる物質であり、最終的な目的物は、互いに結合された2つのセクションで構成される。接着剤の特定の特徴は、最終的な目的物の重量と比較して、必要とされる量が比較的少量である。
【0049】
本発明によれば、デンプンは、多数のグリコシド結合を含む高分子炭水化物である。デンプンの好ましい供給源は、とりわけ、トウモロコシ、小麦、ジャガイモ、米、タピオカ、およびサゴである。
【0050】
本発明によれば、修飾デンプンは、例えば加水分解によって化学的に修飾されたデンプンである。本発明の実施形態における好ましい修飾デンプンは、デキストリンである。
【0051】
本発明の実施形態では、デンプンは、好ましくは、未修飾の小麦デンプンまたはコーンスターチであるが、接着剤で一般的に使用されるデンプンのいずれかであってよく、つまり、共重合反応が他の反応物との間で起こり得るように十分な利用可能なヒドロキシル基を含むすべてのデンプンおよび誘導体であってよい。
【0052】
ミクロフィブリル化セルロース(とりわけ、「網状」セルロースまたは「超微細」セルロース、または「セルロースナノフィブリル」としても知られる)は、セルロースベースの製品であり、例えば、US4481077、US4374702及びUS4341807に記載されている。本発明によれば、ミクロフィブリル化セルロースは、非フィブリル化セルロースに対して少なくとも1つの短縮された長さスケール(直径、繊維長)を有する。ミクロフィブリル化セルロース(通常は「セルロースパルプ」として存在する)を製造するための出発物質である(非フィブリル化)セルロースでは、個別化された及び「分離された」セルロースフィブリル、又はその少なくとも重要な部分若しくは目立つ部分さえも、発見されない。木質ファイバーのセルロースはフィブリルの凝集体である。セルロース(パルプ)では、基本的なフィブリルはミクロフィブリルに凝集し、ミクロフィブリルは更に大きなフィブリル束に凝集し、最終的にセルロースファイバーに凝集する。木質系ファイバーの直径は、通常10~50μmの範囲である(これらのファイバーの長さは更に長くなっている)。セルロースファイバーがミクロフィブリル化される場合、断面の寸法及び長さがnmからμmの「放出された」フィブリルの不均一な混合物が生じうる。フィブリル及びフィブリルの束は、得られるミクロフィブリル化セルロースの中に共存できる。本発明のマイクロブリル化セルロースの直径は、典型的にはナノメートルの範囲である。
【0053】
本開示の全体を通して説明されるミクロフィブリル化セルロース(「MFC」)において、個々のフィブリルまたはフィブリル束は、従来の光学顕微鏡、例えば40倍の倍率、または電子顕微鏡の使用によって、識別し、かつ容易に見分けることができる。
【0054】
実施形態において、本発明によるミクロフィブリル化セルロースは、とりわけ、以下の特徴のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる:
【0055】
本発明の実施形態において、ミクロフィブリル化セルロースは、溶媒としてのポリエチレングリコール(PEG)中に測定され、かつ0.65%のMFCの固形分で、測定される場合、少なくとも2000Pa・s、好ましくは少なくとも3000Pa・s又は4000Pa・s、更に好ましくは少なくとも5000Pa・s、更に好ましくは少なくとも6000Pa・s、更に好ましくは少なくとも7000Pa・sのゼロせん断粘度η0を有するゲル状分散液を生成することによって特徴付けられており、前記測定方法が、明細書に記載されているとおりである。
【0056】
ゼロせん断粘度η0(「静止時の粘度」)は、ゲル状の分散液を構成する3次元ネットワークの安定性の尺度である。
【0057】
本明細書及び特許請求の範囲に記載の「ゼロせん断粘度」は、以下に記載されるように測定される。具体的には、MFC分散液のレオロジー特性(「比較例」および「本発明による」)は、溶媒としてPEG400を使用して実施された。「PEG400」は、分子量が380~420g/molのポリエチレングリコールであり、製薬用途で広く使用されているため、一般的に知られており、入手可能である。
【0058】
レオロジー特性、特にゼロせん断粘度は、タイプAnton Paar Physica MCR301のレオメーターで測定された。すべての測定の温度は25°Cで、「プレート-プレート」ジオメトリが使用された(直径:50mm)。レオロジー測定は、分散液の構造の程度を評価するための振動測定(振幅スイープ)として、および回転粘度測定として実行されて、この場合、静止時の粘度(せん断力→0)を評価するために、分散液のずり流動化特性も同様に、せん断速度の関数として粘度を測定した。測定方法については、PCT/EP2015/001103(EP3149241)で詳しく説明されている。
【0059】
実施形態では、ミクロフィブリル化セルロースは、30超、好ましくは40超、好ましくは50超、更に好ましくは60超、好ましくは70超、好ましくは75超、好ましくは80超、好ましくは90超、更に好ましくは100超の、水保持能力(保水能力)を有する。保水能力は、MFC構造内に水を保持するMFCの能力を表し、これもアクセス可能な表面積に関連する。水保持能力は、MFCサンプルを水中で0.3%の固形分に希釈して、サンプルを1000Gで15分間遠心分離することによって、測定される。澄んだ水相を堆積物から分離し、堆積物の重さを量った。水保持能力が、(mV/mT)-1として与えられ、ここで、mVが、湿った堆積物の重量であり、かつmTが分析された乾燥MFC重量である。測定方法については、PCT/EP2015/001103(EP3149241)で詳しく説明されている。
【0060】
理論に拘束されることを望まないが、デンプンとのMFCのネットワーク形成を含むMFCの良好な保水性質は、処理中に接着剤から段ボールへの水の浸出を回避するのに有利である。
【0061】
本発明の実施形態では、MFCは、EN ISO 5267-1(1999のバージョン)で定義された標準に従って得られた、95未満、好ましくは90未満のショッパーリーグラー(SR)値を有し、あるいは、MFCファイバーが非常に小さいので、これらのファイバーの大部分がSR法で定義されるように単にスクリーンを通過するので、MFCは、ショッパーリーグラー法に従って合理的に測定することができない。
【0062】
本発明の実施形態では、ミクロフィブリル化セルロースは、非修飾(天然)ミクロフィブリル化セルロースであり、好ましくは植物材料に由来する非修飾ミクロフィブリル化セルロースである。
【0063】
本出願を通して、特に実施例において記載されるデンプンベースの接着剤の粘度は、「秒」の単位での「ロリー粘度(Lory viscosity)」として決定され、以下の方法によって決定される。ロリー粘度は、標準ASTM D1084-DまたはASTMD4212に従って、ロリー粘度カップ(Elcometerモデル2215/1)で測定される。Elcometerデバイスは、底に針が固定された従来の円筒形のカップで構成されていている。カップは最初に接着剤に浸され、次に脱出穴から空になる。針の先が識別できるようになったら、流動時間が測定される。
【0064】
本発明の実施形態では、最終接着剤組成物のpH値は、8~14、好ましくは10~13更に好ましくは11.5~12.5である。
【0065】
理論に縛られることを望まずに、デンプン(誘導体)ベースの接着剤へのミクロフィブリル化セルロースの添加は、水素結合によるミクロフィブリル化セルロースユニットとデンプン(誘導体)ユニットとの間の物理的および/または化学的相互作用に基づくネットワーク構造をもたらすと考えられる。ミクロフィブリル化セルロースは、極性溶媒系、特に水中で効率的な増粘剤であり、水素結合によって安定化されたフィブリルの大きな三次元ネットワークを構築すると考えられる。
【0066】
これらのフィブリルは表面にヒドロキシル基を有しており、それは、デンプン接着剤に広まっている高いpHで解離(O-)されて、これは、内部及び中間の特定の相互作用に繋がる。上記のように、デンプンはアミロースとアミロペクチンで構成されている。アミロースは、α(1→4)に結合したD-グルコース単位で構成されたらせん状の線状ポリマーであり、らせんの外側に向いているヒドロキシル基を有する。ミクロフィブリル化セルロースのフィブリルネットワークは、これらの基との水素結合を介して相互作用し、アミロース鎖の周りに保護層を構築し、したがってデンプンを高せん断劣化から保護し、粘度を安定化すると考えられる。全体として、MFCは、デンプン分子を閉じ込めることができる絡み合ったフィブリルのネットワークであり、そのようにしてデンプン組成物を強化し、接着特性を改善する。
【0067】
さらに、再び理論に拘束されることを望まないが、ミクロフィブリル化セルロースの保水能力は、水が紙に移動したり、紙を通ったりするのを防ぐと考えられる。したがって、デンプン(誘導体)ベースの接着剤にミクロフィブリル化セルロースを添加することは、段ボールの製造に特に有用であり、接着剤から紙への水の移動は、最終的な段ボール製品を不安定にし、とりわけ反りおよび層間剥離を引き起こす可能性がある。
【0068】
本発明によれば、本明細書に開示されるデンプンベースの組成物において、特に段ボールの製造においてミクロフィブリル化セルロースを使用すると、以下の利点の少なくとも1つ、好ましくは本質的に以下の利点の全てがもたらされ、結果として得られる段ボールに現れうる:
・ミクロフィブリル化セルロースは、デンプン(誘導体)ベースの接着剤によく分散する
・ミクロフィブリル化セルロースを使用して、最終接着剤の粘度を調整し、特に保管中および高せん断下での耐性に関して、経時的に安定させることができる
・ミクロフィブリル化セルロースは、プロセスの任意の段階で粘度補正に柔軟性を提供する
・ミクロフィブリル化セルロースはチキソトロピー性であり(つまり、ずり流動化を示す)、より高い全体的な粘度に耐えることができる
・ミクロフィブリル化セルロースはずり流動化を示し、接着剤の塗布特性を向上させる
・ミクロフィブリル化セルロースは、硬化前の液相と接着剤の硬化後の両方の液相で、デンプン接着剤の貯蔵弾性率を高める(
図6及び10を参照)
・ミクロフィブリル化セルロースは、長期間、特に長期間の保管で粘度安定性を提供する
・ミクロフィブリル化セルロースは、高せん断衝撃下で粘度安定性を提供する
・段ボールを製造するためのラインでの実験では、ミクロフィブリル化セルロースを含むデンプンベースの接着剤を使用する(以下の実施例の項目で説明)と、化学処理された(特殊)紙での生産速度が25%向上され、同等以上の品質の段ボールを実現することを示している。
・MFCは、特に化学的に処理された紙の場合、デンプン接着剤の初期粘着力と初期接着強度を向上させる
・ミクロフィブリル化セルロースは、水ベースの欠陥を減らすことにより、ボードの品質を向上させ、つまり、よりフラットなボードが得られるため、後処理ステップ(印刷、切断、スタッキング)の速度を向上させる
・工場での試験では、ミクロフィブリル化セルロースを含むデンプンベースの接着剤を使用して段ボールを製造すると、接着剤の消費量を33%削減できることが示されている
・ミクロフィブリル化セルロースは、ボードの接着強度を高めることにより、ボードの品質を向上させる
・全体として、本発明による接着剤組成物を使用すると、例えば、ピン接着試験PATによって測定されるように、より強いボードが得られる。
【0069】
更なる態様では、本発明は、少なくとも部分的に化学的に処理されるか又はすでに処理されている少なくとも1つのフルート、及び上記開示された実施形態のいずれか1つによるデンプンベースの接着剤組成物を含む少なくとも1つのライナーを有する段ボール板紙又は段ボール紙に関する。
【0070】
更なる態様では、本発明は、接着剤組成物の全体の乾物量の0.001%w/w~10%w/w、好ましくは接着剤組成物の全体の乾物量の0.01%w/w~5%w/wのミクロフィブリル化セルロースを含む接着剤組成物の使用に関し、段ボール板紙又は段ボール紙を製造するための方法において、少なくとも1つのフルーティング紙若しくはライナー紙、又はその両方が、少なくとも部分的に化学的に処理されるか又はすでにされており、ここで、紙は、任意選択的に、ISO 8791-2:2013、つまりBendtsenエアフロー法にしたがって測定された表面粗さが、1000ml/min未満、好ましくは500ml/min未満、好ましくは250ml/min未満、更に好ましくは200ml/min未満、更に好ましくは100ml/min未満、更に好ましくは50ml/min未満若しくは25ml/min未満であり、かつ/又は紙は、任意選択的に、ISO 5636-5、つまりガーリー法にしたがって測定された空気抵抗が20sec/100ml超、好ましくは50sec/100ml超、更に好ましくは100sec/100ml超、更に好ましくは150sec/100ml超、更に好ましくは200sec/100ml超、又は更に好ましくは250若しくは300sec/100ml超である。
【0071】
実施形態では、段ボール板紙又は段ボール紙の製造に使用される接着剤組成物中のミクロフィブリル化セルロースの量は、組成物の全量に対して、0.001%w/w~10%w/w、好ましくは0.01%w/w~10%w/w、好ましくは0.02%w/w~8%w/w、更に好ましくは0.05%w/w~5%w/w、更に好ましくは0.05%w/w~2%w/w、更に好ましくは0.05%w/w~0.5%、更に好ましくは0.05%w/w~0.15%w/wであり、あるいは、ミクロフィブリル化セルロースの量は、デンプンの全量に対して測定される場合、0.003%w/w~22%w/w、好ましくは0.02%w/w~20%w/w、好ましくは0.04%w/w~4%w/w、好ましくは0.1%w/w~2%w/w、更に好ましくは0.2%w/w~1.4%w/w、より更に好ましくは0.2%w/w~0.6%w/wである。
【0072】
実施形態では、段ボール板紙又は段ボール紙の製造に使用される接着剤組成物中のミクロフィブリル化セルロースの量は、組成物の全量に対して、0.01%w/w~8%w/w、好ましくは0.01%w/w~5%w/w、更に好ましくは0.01%w/w~2%w/w、更に好ましくは0.01%w/w~0.5%、更に好ましくは0.01%w/w~0.15%w/w又は0.015%w/w~0.3%w/wである、あるいは、ミクロフィブリル化セルロースの量は、デンプンの全量に対して測定される場合、0.003%w/w~16%w/w、好ましくは0.02%w/w~16%w/w、好ましくは0.04%w/w~4%w/w、好ましくは0.04%w/w~2%w/w、更に好ましくは0.04%w/w~1.4%w/w、より更に好ましくは0.04%w/w~0.6%w/wである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
(原文記載なし。)
【発明を実施するための形態】
【0074】
本発明によれば、出版されたVolume 15.06-接着剤1984年ASTM規格年次書のSTM D 907-82の接着剤に関連する用語の標準定義で更に指定されているように、「接着剤」は、接着剤結合プロセスによってこれらの表面を恒久的に結合するために物品の表面に塗布される材料であると理解される。接着剤は、最終的な目的物が互いに結合された2つのセクションで構成される場合に、2つの部分のそれぞれに結合を形成できる物質である。接着剤の特別な特徴は、最終的な物体の重量と比較して必要な量が比較的少ないことである。
【0075】
本発明によれば、デンプン(「アミラム」としても知られている)は、グリコシド結合によって結合された多数のグルコース単位からなるポリマーである。デンプンは、ジャガイモ、小麦、トウモロコシ(トウモロコシ)、米、タピオカ、サゴなどの食品に多く含まれている。デンプンは通常、線状およびらせん状のアミロースと分岐したアミロペクチンの2種類の分子を含む。植物にもよるが、デンプンは一般に重量で20~25%のアミロースと75~80%のアミロペクチンを含んでいる。
【0076】
アミロペクチンは冷水に可溶な形で供給することができるが、アミロースは一般に不溶性である。アミロースは、例えば、ホルムアルデヒドで調理することによって、または圧力下で150~160℃の水中で調理することによって、強アルカリで溶解することができる。冷却または中和すると、そのようなアミロース分散液は通常、2%を超える濃度でゲルを形成し、2%未満の濃度で沈殿する。アミロース画分は決して真に水に溶けることはなく、やがて水素結合によって結晶性の凝集体を形成し、これは、老化(retrogradation)またはセットバック(setback)として知られるプロセスである。老化は、上記の粘度不安定性の原因であり、デンプンベースの接着剤ではさまざまな程度で見られる。アミロペクチンは溶解性が高く、老化しにくい。
【0077】
本発明の実施形態において、デンプンは、好ましくは未修飾小麦デンプンであるが、接着剤分野で一般的に使用されるデンプンのいずれかであってよく、すなわち、全てのデンプン及び誘導体、特に、デキストリンであってよい。ここで、デキストリンは、十分な利用可能なヒドロキシル基および/または官能基を含み、それによって、それらとその他の2つの反応物との間で共重合反応が起こりうる。
【0078】
修飾デンプンは、例えば加水分解によって化学的に修飾されたデンプンであり、高熱、高せん断、高pH、凍結/解凍および冷却などの処理または貯蔵中に頻繁に遭遇する条件下でデンプンが適切に機能することを可能にする。本発明の実施形態における好ましい修飾デンプンは、デキストリンである。
【0079】
デキストリンは、デンプンまたはグリコーゲンの加水分解によって生成される低分子量炭水化物のグループである。デキストリンは、α-(1→4)またはα-(1→6)グリコシド結合によって結合されたD-グルコース単位のポリマーの混合物である。デキストリンは、アミラーゼなどの酵素を使用して、またはたとえば酸性条件下で乾熱を加えることによって(熱分解)、デンプンから生成することができる。熱によって生成されるデキストリンは、ピロデキストリンとしても知られている。デキストリンは部分的または完全に水溶性であり、通常、低粘度の溶液を生成する。
【0080】
ほとんどのデンプンは、20~30重量%のアミロースを含むが、特定の特殊なタイプは、少なくて0%で多くて80%有する場合がある。アミロース画分のため、冷水に懸濁されたデンプンは、デンプンが結晶領域で非常に緊密に結合されているため、最初は接着剤として機能することができない。これらの顆粒(granules)は、接着結合を得るために、加工によって開く必要がある。水中での加熱は、デンプン粒を砕く最も簡単な方法である。水中で加熱すると、デンプン粒は最初に膨潤し、次に破裂して開き、懸濁液が増粘する。この懸濁液の増粘が起こる温度は、ゲル化温度と呼ばれる。
【0081】
本発明の実施形態において、(修飾された)デンプンベースの接着剤は、少なくとも1つのテトラホウ酸ナトリウム(「ホウ砂」)と共に処方される。ホウ砂は通常、優れた接着性(粘着性)と機械加工特性を提供する。
【0082】
ホウ砂は、乾燥デンプンの重量に基づいて、最大10%w/wの量で添加することが好ましい。
【0083】
水酸化ナトリウムを添加して、ホウ砂をより活性の高い代謝ナトリウムに変換することができる。
【0084】
可塑剤は、接着剤ラインの脆さを制御し、乾燥速度を調整するために使用されることがある。一般的な可塑剤には、グリセリン、グリコール、ソルビトール、ブドウ糖、砂糖が含まれる。これらのタイプの可塑剤は、フィルムの乾燥速度を低下させるための吸湿剤として作用する可能性がる。樹液、ポリグリコール、およびスルホン化油誘導体に基づく可塑剤は、乾燥した接着剤内の層を潤滑し、したがって柔軟性を与える。尿素、硝酸ナトリウム、サリチル酸、ホルムアルデヒドは、乾燥した接着剤で固溶体を形成することにより可塑化する。
【0085】
本発明の実施形態において、塩化カルシウム、尿素、硝酸ナトリウム、チオ尿素およびグアニジン塩などのさらなる添加剤が、粘度を低下させるための液化剤として使用されうる。これらの添加剤は、乾燥デンプンに基づいて約5~20%で添加することができる。改善された耐冷水性は、ポリビニルアルコールまたはポリ酢酸ビニルのブレンドを加えることによって達成されうる。これらの接着剤はまた、熱い水にも溶けて、これは通常の利点である。最適な耐湿性は、尿素ホルムアルデヒドやレゾルシノールホルムアルデヒドなどの熱硬化性樹脂を添加することで実現できる。
【0086】
カオリンクレー、炭酸カルシウム、二酸化チタンなどの鉱物フィラーを追加して、コストを削減し、多孔質基材への浸透を制御することができる。これらの添加剤は、5~50%の濃度で添加することができる。
【0087】
添加できる他の添加剤には、防腐剤、漂白剤、および消泡剤が含まれるが、これらに限定されない。微生物活動を防ぐために好ましい防腐剤には、0.02~1.0%のホルムアルデヒド(35%固形分)、約0.2%の硫酸銅、硫酸亜鉛、安息香酸塩、フッ化物およびフェノールが含まれる。好ましい漂白剤には、亜硫酸水素ナトリウム、水素および過酸化ナトリウム、ならびに過ホウ酸ナトリウムが含まれる。ワックスを塗った表面への接着を改善するために、有機溶剤を加えることができる。
【0088】
図7は、段ボール紙(単一面(single facer))を製造するための連続生産ラインを概略的に示している。
【0089】
図8は、先端が接着剤でコーティングされたフルート並びに上部及び株のライナーを有する1層の段ボール紙を含む段ボールの層を概略的に示している。波形(「フルート付き(fluted)」)の形状にするために、「フルート付き」(「波形」)の紙片、つまり、波形ロール上に熱、蒸気、又はその両方接触した紙片の概略図が示されて、これはまた、フルートの先端に接着剤を適用する方法を例示的に示している。本発明の実施形態では、接着剤は、先端全体に沿って、またはその一部に沿ってのみ塗布することができる。この図はまた、ボードの単一面及びダブルバッカー側と呼ばれる、フルート付きの紙の上部および下部の先端に適用された上部および下部のライナーを示しており、結果として単一の壁の段ボールになる。
【0090】
初期接着強度と初期粘着性グレードを測定するための実験を組み合わせて、BHS(ウェットエンド)およびFosber(ドライエンド)のコルゲーターマシンで実行された実験とともに、ミクロフィブリル化セルロースを含むデンプンベースの接着剤を使用すると(以下の実施例の項目で説明)、とりわけ次の利点が得られることが示されている:
・特に化学処理された(特殊)紙での生産速度が最大で25%向上されると同時に、同等以上の品質の段ボールを実現し、したがって、ボードが平らにするための時間が節約され、後処理ステップが容易になる。
・フルートとボードのライナー間の接着強度の増加。
【0091】
これは、時間と処理コストの節約につながる[接着剤の塗布量が少ないと蒸発する水が少なくなるため、硬化に必要な熱(エネルギー)が少なくなる;プロセス中および後プロセス中の紙への水の影響/欠陥/反りの推定:よりフラットな段ボールを実現する]。
【0092】
本発明による「ミクロフィブリル化セルロース」(MFC)は、比表面積の増加およびセルロースファイバーのサイズの減少をもたらす機械的処理を受けたセルロースファイバーに関するものとして理解されるべきであり、断面(直径)および/または長さに関して、前記サイズの縮小は、好ましくは、ナノメートル範囲の直径およびマイクロメートル範囲の長さを有する「フィブリル」をもたらす。
【0093】
ミクロフィブリル化セルロース(「網状」セルロース若しくは「超微細」セルロース、又は中でも「セルロースナノフィブリル」としても知られており、以下では「MFC」と呼ばれる)は、セルロース系製品であり、例えば文献US4481077、US4374702及びUS4341807に記載されている。US4374702(「Turbak」)によれば、ミクロフィブリル化セルロースは、US4374702に開示されている機械的処理を受けていないセルロース製品とは異なる特性を持っている。特に、これらの文書に記載されているセルロースファイバーは、長さスケール(直径、フィブリル長)が減少しており、水の保持及び調整可能な粘弾性特性を改善している。とりわけ、WO2007/091942及びWO2015/180844から、更に改善された特性及び/又は特定の用途に合わせてオーダーメイドされた特性を有するMFCが知られている。
【0094】
ミクロフィブリル化セルロース(通常は「セルロースパルプ」として存在する)を製造するための出発物質であるセルロースでは、個別化された及び「分離された」セルロースフィブリル、又はその少なくとも重要な部分若しくは目立つ部分さえも、発見されない。木質ファイバーのセルロースはフィブリルの凝集体である。セルロース(パルプ)では、基本的なフィブリルはミクロフィブリルに凝集し、ミクロフィブリルは更に大きなフィブリル束に凝集し、最終的にセルロースファイバーに凝集する。木質系ファイバーの直径は、通常10~50μmの範囲である(これらのファイバーの長さは更に長くなっている)。セルロースファイバーがミクロフィブリル化される場合、断面の寸法及び長さがnmからμmの「放出された」フィブリルの不均一な混合物が生じうる。フィブリル及びフィブリルの束は、得られるミクロフィブリル化セルロースの中に共存できる。
【0095】
本開示の全体を通して説明されるミクロフィブリル化セルロース(「MFC」)において、個々のフィブリルまたはフィブリル束は、従来の光学顕微鏡、例えば40倍の倍率、または電子顕微鏡の使用によって、識別し、かつ容易に見分けることができる。
【0096】
元のセルロースパルプに存在するファイバー束がMFCの製造プロセス中に十分に崩壊し、得られるフィブリルの平均直径がナノメートル範囲になり、したがって、元のセルロース材料で利用可能な表面に対してセルロース系の材料の全体の表面がより多く作られている限り、原則として、本発明によれば、任意のタイプのミクロフィブリル化セルロース(MFC)を使用することができる。MFCは、上述した「背景技術」の項目で具体的に引用された先行技術を含み、当技術分野で説明されている任意の方法にしたがって、製造されうる。
【0097】
本発明によれば、セルロース源、したがって、ミクロフィブリル化セルロース源に関して、特定の制限はない。原則として、セルロースミクロフィブリルの原料は、任意のセルロース材料、特に木材、一年生植物、綿、亜麻、わら、ラミー、バガス(サトウキビ由来)、適切な藻類、ジュート、テンサイ、柑橘系の果物、食品加工産業又はエネルギー作物からの廃棄物、又はバクテリア由来若しくは動物由来(例えば、尾索類由来)のセルロースであってよい。
【0098】
好ましい実施形態では、木材系の材料、ハードウッド又はソフトウッド、あるいはその両方(混合物で)は、原材料として使用される。更に好ましくは、ソフトウッド、1種類又は異なるソフトウッドタイプの混合物のいずれかは、原料として使用される。バクテリアのミクロフィブリル化セルロースはまた、その比較的に高い純度のために好ましい。
【0099】
原則として、本発明によるミクロフィブリル化セルロースは、その官能基に関して非修飾であってよく、あるいは物理的に修飾若しくは化学的に修飾されてもよく、又はその両方であってよい。好ましい実施形態では、ミクロフィブリル化セルロースは、非修飾または物理的に修飾されており、好ましくは非修飾である。
【0100】
セルロースミクロフィブリルの表面の化学修飾は、セルロースミクロフィブリルの表面官能基、より具体的にはヒドロキシル官能基が、好ましくは、酸化、シリルか反応、エーテル化反応、イソシアナートとの縮合、アルキレンオキシドとのアルコキシル化反応、又はグリシジル誘導体との縮合若しくは置換反応によって、達成することができる。化学修飾は、脱フィブリル化(defibrillation)工程の前又は後に行ってよい。
【0101】
セルロースミクロフィブリルは、原則として、表面での吸着、噴霧、コーティング、又はミクロフィブリルのカプセル化のいずれかによる、物理的経路によっても修飾されうる。好ましい修飾ミクロフィブリルは、少なくとも1つの化合物の物理吸着によって得ることができる。MFCは、両親媒性化合物(界面活性剤)との会合によって修飾されてもよい。
【0102】
本発明の好ましい実施形態では、工程(iii)で使用されるミクロフィブリル化セルロースは、少なくとも以下の工程を含むプロセスによって調製される:
(a)セルロースパルプを少なくとも1つの機械的前処理工程に受けさせること;
(b)工程(a)の前記機械的に前処理されたセルロースパルプを均質化工程に受けさせること、結果として、工程(a)の機械的に前処理されたセルロースパルプに存在するセルロースファイバーと比較して、長さ及び直径が減少されたフィブリル及びフィブリルの束が生じ、前記工程(b)が結果としてミクロフィブリル化セルロースをもたらし;
ここで、均質化工程(b)が、工程(a)からのセルロースパルプを圧縮すること及び前記セルロースパルプを圧力降下にさらすことを含む。
【0103】
機械的前処理工程は、好ましくは、精製工程であるか、又は精製工程を含む。機械的な前処理の目的は、細胞壁へのアクセス性を高めるために、すなわち表面積を増やすために、セルロースパルプを「叩く」ことである。
【0104】
機械的前処理工程で好ましく使用される精製器は、少なくとも1つの回転ディスクを含む。その中で、セルロースパルプスラリーは、少なくとも1つの回転ディスクと少なくとも1つの静止ディスクとの間のせん断力を受ける。
【0105】
機械的前処理工程の前に、又は機械的前処理工程に加えて、セルロースパルプの酵素的(前)処理は、任意的な追加工程であり、いくつかの用途にとって好ましいでありうる。ミクロフィブリル化セルロースと組み合わせた酵素的前処理に関して、WO2007/091942のそれぞれの内容は参照により本明細書に組み込まれる。化学的前処理を含む他のタイプの前処理もまた、本発明の範囲内である。
【0106】
(機械的)前処理工程の後に実施される均質化工程(b)において、工程(a)からのセルロースパルプスラリーを、ホモジナイザーを少なくとも1回、好ましくは少なくとも2回通過させ、例えば、PCT/EP2015/001103に記載されているように、そのそれぞれの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0107】
例1
ミクロフィブリル化セルロースの準備
本発明による組成物を作製するために使用されるMFCは、例えば、ノルウェートウヒ(ソフトウッド)からのセルロースパルプに基づく「Exilvaミクロフィブリル化セルロースPBX 01-V」としてBorregaardによって市販され、商品化されている。
【0108】
実施例で使用したMFCは、固形分10%のペーストとして存在した。つまり、MFCペースト中のミクロフィブリル化ファイバーの乾物含量は10%であり、残りの90)は水であり、この場合の唯一の溶媒であった。
【0109】
例2
ホウ砂を含むデンプンベースの接着剤の準備(比較例)
当技術分野で知られているデンプンベースの接着剤は、以下の成分に基づいて、以下の工程を使用して調製された:
750kgの一次水(primary water)
180kgの一次デンプン(小麦)
30秒間攪拌、温度36.5℃;以下を追加:
100kgの水
16.5kgの一次苛性ソーダ(31%)
80kgの水
30秒間攪拌
粘度制御1:10秒
840秒間攪拌
粘度制御2:33.8秒
260kgの二次水
消毒剤:0.4kg
280kg二次澱粉(小麦)
35℃の温度で30秒間攪拌
2.5kgのホウ砂
600秒間攪拌
粘度制御3、最終:28秒
【0110】
二次非膨潤デンプンの添加および混合後にホウ砂を添加した。最終製剤中のホウ砂の濃度は0.15%であった。ホウ砂を含む当技術分野によるこのデンプンベースの接着剤のロリー粘度は、高剪断において、混合時間とともに容易に減少していた。
【0111】
ミクロフィブリル化セルロースを含むデンプンベースの接着剤の準備(本発明による)
本発明によるデンプンベースの接着剤は、以下の成分に基づいて、以下のステップを使用して調製された:
750kgの一次水(primary water)
180kgの一次小麦デンプン
30秒間攪拌、温度36.5℃;以下を追加:
100kgの水
16.5kgの一次苛性ソーダ(31%)
80kgの水
30秒間攪拌
粘度制御1:10秒
840秒間攪拌
粘度制御2:33.8秒
260kgの二次水
消毒剤:0.4kg
280kg二次澱粉(小麦)
35℃の温度
280kgの二次小麦デンプン
30秒間攪拌
2.5kgのホウ砂
60秒間攪拌
20 kgのMFC (Exilva PBX 01-V)
60秒間攪拌
21kgの水
濃度制御3、最終:32秒
ロリー粘度が34であった。
【0112】
接着剤は、ほとんどの顆粒が部分的に膨潤し、未調理の生デンプンが懸濁された一次澱粉部分から構成されていた。ホウ砂を加えて混合した後、高速攪拌(1500rpm)下でミクロフィブリル化セルロースを加えた。最終製剤中のMFCの濃度は0.12%であった。
【0113】
ロリー粘度は、接着剤、塗料、コーティング業界で一般的に使用されているロリー粘度カップ(Elcometer 2215/1)を使用して測定した。このロリー粘度カップは、基本的に、底に針が固定された従来の円筒形のカップで構成されている。カップは最初に接着剤に浸され、次に脱出穴から空になる。針の先が見えるとすぐに流動時間を測定した。
【0114】
経時的な安定性試験
参照用とMFCを使用したデンプンベースの接着剤の両方について、ロリー粘度とブルックフィールド(Brookfield)粘度を最初に測定し、実験室条件下、つまり20°Cおよび標準的な周囲条件下で経時的に測定した。サンプルは攪拌せずにベンチに置いた。 参照接着剤の場合、初期のロリー粘度は36秒であった。1時間後、粘度は137秒(臨界粘度)であり、参照接着剤は、プロペラミキサーによって30秒間予備攪拌されなければ、ロリー粘度によってもはや測定することができなかった。4時間後、参照接着剤の粘度が高すぎて、30秒間の予備攪拌を行っても、ロリーの粘度で測定できなかった(
図1を参照)。
【0115】
本発明によるデンプンベースの接着剤、すなわちMFCを有する接着剤の場合、初期のロリー粘度は34であり、調製後1時間および2時間で43秒にしか増加しなかった。さらに、ロリー粘度は調製後22.5時間で測定可能であり、ロリー粘度を測定するための臨界粘度限界は調製後25時間前に到達しなかった。25時間後、測定前にプロペラミキサーで30秒間予備攪拌する必要があった。ロリー粘度の最終測定は、接着剤を調製してから94時間後に行った(
図2を参照)。
【0116】
参照デンプンベースの接着剤およびMFCを使用したデンプンベースの接着剤のブルックフィールド粘度測定は、同様に、デンプンベースの接着剤にMFCを添加すると、時間の経過とともに粘度の増加が遅くなることを示している(
図1および2を参照)。ブルックフィールド粘度は、ブルックフィールド粘度計-RVTモデル、スピンドル番号4で測定された。
【0117】
全体として、粘度測定は、ミクロフィブリル化セルロースを含むデンプンベースの接着剤が、ミクロフィブリル化セルロースを含まない参照デンプンベースの接着剤よりも、粘度に関して、および経時的にはるかに安定していることを一貫して示している。
【0118】
例3
段ボール紙における本発明による実施例2からのデンプンベースの接着剤の試験
MFCを有するデンプンベースの接着剤のロリー粘度と温度も、貯蔵タンク内で経時的に測定されて、
図3を参照する。デンプンベースの接着剤の沈降を防ぎ、粘度を下げるために、接着剤を1時間ごとに5分間攪拌する。MFCを有するデンプンベースの接着剤について、攪拌されている間に十分な時間でテストした:保存の最初の24時間、接着剤を1時間ごとに5分間攪拌し、24~48時間後、3時間ごとに5分間攪拌し、48~72時間の間、接着剤を4時間ごとに5分間攪拌した。参照デンプンベースの接着剤と比較して、MFCを使用した接着剤では、保管中の攪拌の頻度が大幅に減少した。
【0119】
MFCを有するデンプンベースの接着剤のロリー粘度は、タンクに72時間保管した後、48秒と測定され、デンプンベースの接着剤は、水で調整せずに直接使用して、段ボールを製造できた。タンク内のデンプンベースの接着剤の温度は37℃であった(
図3を参照)。
【0120】
MFCを有するデンプンベースの接着剤(72時間)と参照デンプンベースの接着剤(新鮮)の両方を、高品質のBB25 b-フルート(180g/m2 EKライナー/110g/m2SCフルーティング(空気抵抗が200sec/100ml超の場合)/180g/m2EKライナー)でテストした。
【0121】
【0122】
段ボール紙の製造には、BHS(ウェットエンド)とフォスバー(ドライエンド)のコルゲーターを使用した。これは、数枚の紙を集めて1枚、2枚、または3枚の壁板を連続プロセスで形成するように設計された一連の機械である。このプロセスは、単一面でフルート付きの形状を与えるために、波形ロール上で熱と蒸気で調整された紙シートから始まる。
【0123】
次に、デンプンベースの接着剤を片側のフルートの先端に塗布し、内側のライナーをフルートに接着する(このようなプロセスの概略図については、
図7および8を参照してください)。次に、1つのライナーが取り付けられた段ボールのフルーティング媒体(単一面)がダブルバッカーに運ばれ、そこでアウターライナーが単一面に接着される。
【0124】
図4は、300m/minで実行されたMFCを使用したデンプンベースの接着剤(それぞれ右の列)と比較して、219m/minで実行された参照デンプンベースの接着剤(左の列)を使用して、段ボールの坪量と接着粘度の対比を示している。
【0125】
テストされた参照接着剤が、段ボールの製造と同じ日に作られた新鮮な接着剤であった一方で、MFCの接着剤は72時間経過しており、水を加えずに使用したことは注目に値する。
【0126】
図4から、MFCを有するデンプンベースの接着剤は、生産が37%速くなった場合でも、段ボール(両側、内側と外側のライナー、それぞれRVとLV)への接着強度が高いことが分かる。段ボールの坪量は両方の接着剤で類似していたので、接着強度の改善を比較することができ、改善は、MFCを使用したデンプンベースの接着剤のより良い性能に起因する可能性がある。また、MFCデンプンベースの接着剤で製造されたボードは、参照デンプン接着剤で製造されたボードよりも平坦であることが観察された。
【0127】
全体として、MFCを有するデンプンベースの接着剤の粘度は、長時間にわたって予想外に安定しており、特に、MFCを含まないデンプンベースの接着剤と対照的に、保管中(少なくとも72時間)、その粘度は1時間後にすでに劇的に増加する。
【0128】
さらに、MFCを使用したでんぷんベースの接着剤は、72時間の保管後でも段ボールの製造に使用でき、高速製造で新たに作成された対照よりも優れた性能を発揮する。したがって、より良い品質とよりフラットなボードが得られる一方で、生産はより高速で実行できる。
【0129】
最後に、
図5(上の曲線:ホウ砂とミクロフィブリル化セルロースを含むデンプンベースの接着剤;下の曲線:ホウ砂を含むがミクロフィブリル化セルロースを含まないデンプンベースの接着剤)及び
図6(左の列:ミクロフィブリル化セルロースなし)から分かるように、ミクロフィブリル化セルロースを添加剤として使用すると、接着剤の貯蔵弾性率が増加する(25°Cでの振幅掃引で測定)。
【0130】
ミクロフィブリル化セルロースを含む本発明によるデンプン接着剤はまた、挑戦的な接着性を有することが知られている一連の特殊紙を含む段ボールの製造のための工場試験で試験された。ここで、特殊紙は、Hidroplus saica(Saica)、Powerflute(Mondi)、及びNew Billerud Flute(BillerudKorsnas)などの高性能セミケミカルタイプのフルーティングペーパー並びにHoya Papier 125RC-HP3やRoermond150 RC-HP3などのSmurfit Kappaの高性能再生紙(通常は強化または繊維選択)を含む。その結果、ミクロフィブリル化セルロースを含む本発明によるデンプン接着剤はミクロフィブリル化セルロースを含まない比較参照接着剤と比較して、接着性、ボード品質、および生産速度が向上する。
【0131】
例4
硬化した接着剤の糊化速度と貯蔵弾性率に及ぼすMFC濃度の影響
図9及び
図10は、澱粉接着剤の糊化速度と硬化接着剤の貯蔵弾性率に対するMFC濃度の影響を示している。固形分と苛性ソーダ濃度は、ホウ砂を含まない3つの接着剤で同じである。MFC含有量は、接着剤組成全体の0.05~0.25w-%の範囲で変化する。MFC濃度が高いほど、硬化した接着剤の貯蔵弾性率が高くなり、硬化した接着剤が強くなる(
図10を参照)。これは、0.25%w/wまでの濃度のミクロフィブリル化セルロースが結合強度の増加に寄与していることを明確に示している。それに加えて、MFCの濃度が高いほど、糊化速度が遅くなり、接着剤の開放時間が長くなる(
図9を参照)。本格的な生産での長い開放時間の利点は、ボードの反りを調整する時間が長くなり、ボードがより平坦で安定することである。さらに、「開放」時間が長いほど、二次デンプンが完全にゼラチン化するための時間、および強力に絡み合ったミクロフィブリルセルロース-デンプンゲルネットワークの形成のための時間が長くなる。実際、MFC濃度を変化させて、接着剤の接着強度とその開放時間を制御することができ、これにより、反りの制御が向上し、段ボールの全体的な品質が向上する。
【0132】
例5
高せん断衝撃に対するMFCのレオロジーと粘度安定化効果
ミクロフィブリル化セルロースは、非常に高いせん断安定粘度を提供し、これは、0.1%MFCを含み、かつホウ砂を含まないStein-Hallデンプン接着剤で示されている(
図11B)。MFCの添加により粘度が瞬時に上昇した後、15分間の高せん断攪拌下で粘度は一定に保たれる(
図11B)。比較すると、0.3%のホウ砂を含む参照接着剤の粘度(
図11A)は、15分間の高せん断攪拌後に27%減少した。MFCを使用してデンプン接着剤を調製する場合、接着剤の目標粘度は、製造中の攪拌時間に関係なく、コルゲーターで使用する前、または貯蔵タンクに移す前に、事前に決定して達成できる。MFCが提供する粘度安定性のあるデンプン接着剤を使用しているため、コルゲーターは接着剤の同じ設定で長期間稼働できるため、コルゲートボードの連続生産と大量生産が容易になる。この例は、デンプンベースの接着剤の添加剤として通常使用されるホウ砂の一部またはすべてを置き換えるために、MFCを有利に使用できることを示す。
【0133】
例6
ホウ砂を含むデンプンベースの接着剤(比較例、表2の接着剤1)並びにホウ砂およびミクロフィブリル化セルロースを含むデンプンベースの接着剤(本発明によれば、表2の接着剤2)は、以下の成分及び表2に示されている手順に基づいて、調製された。
【0134】
【0135】
接着剤1および2の両方について、担体および主要接着剤成分は、それぞれ38℃で35秒間、高速で攪拌しながら調製された。ホウ砂を含む参照デンプン接着剤(接着剤1)は、1.7%のホウ砂(デンプンに対する比率)を含む。接着剤2は、0.1%のミクロフィブリル化セルロース(乾燥固形分対デンプンの比率)および1.0%のホウ砂(対デンプンの比率)を含む。ミクロフィブリル化セルロースは、ホウ砂の前に加えられた。最終接着剤の粘度は、ロリー粘度カップを使用して測定した。Loryの粘度は、ホウ砂参照接着剤(接着剤1)とMFCを使用した接着剤(接着剤2)の両方で30秒であった。
【0136】
アイロン法(ironing method)を使用した紙の接着
各接着剤、ホウ砂参照接着剤(接着剤1)、並びにホウ砂及びMFCを含む接着剤(接着剤2)の5つの別々のバッチ(平行)を準備した。それぞれの接着剤3.5g/m2をバーコーター#46でガラス板に塗布し、そしてフルート側を下にして片面板を薄膜上に置き、5cm/11フルートの片面板に塗布した。接着剤でコーティングされたフルートにライナーボードを配置した。130℃の熱い鉄板上で圧力下で3秒間加熱した。温度制御のために、小さな温度センサーがフルートとライナーボードの間に配置された。接着テストボードは、K280ライナーを含み、それは、紙重量200g/m2、空気抵抗(ガーリー)が80秒/100mlを超えるポリアクリルアミド含浸強化フルート(=単一面板)を有し、ライナーボードとしてK280ライナーと接着した。
【0137】
初期強度測定および初期粘着性の推定のための剥離試験
最初の強度測定は、前述のアイロン法を使用して接着された5cm/11フルートのテストボードで3秒後に実行された。テストボードは、(同じ検査技師によって)林六の公称標準手の強さで一端から引き離される(剥がされる)。そして、この標準的な剥離後に見えるフルートの数を記録することにより、初期接着強度を間接的に測定する。結果(各レシピでの接着剤の5つのバッチのそれぞれでの4回の繰り返しからの平均数-レシピごとに20回のテスト)を表3に示す。
【0138】
【0139】
初期粘着性の定性的等級付け
さらに、剥離力によって直立に引っ張られた繊維の数の観察に従って定性的に測定された、各剥離試験について初期粘着性が決定された。より多くの繊維が上向きに付着していることは、それらが結合面に強く付着しており、初期の粘着性が大きくなっていることを示す。結果は、1が粘着性なし、5が最も粘着性のスケール(粘着性グレード)に従って評価される。初期粘着性の減少順は次のとおりである:接着剤2(ホウ砂およびMFC)>接着剤1(ホウ砂参照)。初期の粘着性グレードは、以下の表4に示されている。
【0140】
【0141】
機械の運転速度を推定するための初期接着強度と初期粘着性グレードの組み合わせ
初期接着強度および粘着性グレードの測定値を組み合わせて、当業者は、商業環境で達成可能な機械速度について推定を行うことができる。剥離試験後に見えるフルートの数の結果が低く(初期接着強度が高い)、粘着性グレードの数が多い(初期粘着が高い)と、最適に接着された製品を生産しながら、機械の生産速度を上げることができる。機械速度推定の基準点は、接着剤レシピ1(ホウ砂参照)に合理的に基づくことができる。これは、日本の段ボール業界で使用される接着剤の標準レシピの代表であるからである。この領域内では、ポリアクリルアミドを含浸させた強化フルートを接着する場合、機械の速度が200m/minに制限されることが知られている。初期の接着強度と粘着性のグレードの結果、および達成可能な機械速度の結果の推定値は、以下の表5にまとめられている。
【0142】
【0143】
標準の接着剤レシピ1(ホウ砂参照)と比較して、接着剤レシピ2(ホウ砂およびMFC)の初期接着強度と初期粘着性の明らかに改善された組み合わせに基づいて、ミクロフィブリル化セルロースを含む接着剤レシピ2を使用すると、ポリアクリルアミドを含浸させた強化フルートを使用した段ボールの工業生産で、機械速度(250m/min)が25%向上すると推定される。
【0144】
実証されているように、デンプンベースの接着剤にミクロフィブリル化セルロースを組み込むと、デンプン接着剤の初期粘着力と初期接着強度の両方が改善され、段ボール紙の高速生産が可能になる。これは、特に、化学的に処理された、特に含浸または表面コーティングされたフルーティング紙を含む段ボール紙の製造に適用され、ここでは、ポリアクリルアミド含浸フルーティング紙について示されている。
【0145】
接着強度(硬化)を測定するための試験手順
ニュートン(N)の接着強度は、上記のアイロン法に従って接着した後、周囲の実験室条件で24時間接着した後、標準のピンテスター(TCM-R-500)で測定した。接着強度は、ポリアクリルアミドを含浸させた強化フルートで作られた標準の長さ5cmの11フルートテストボードで測定された。使用されているピンテスターは、段ボール紙業界の標準的な機器である。標準の5cmテストボードを機械に挿入すると、ピンが両側からフルートに入る。次に、機器がテストボードを引き離し、これを行うために必要な力が記録される(N単位)。各接着剤レシピの5つのバッチが作成された。接着強度の10回の繰り返しが各接着剤バッチに対して行われた(レシピごとに50回の繰り返し)。接着剤1(ホウ砂参照)および2(ホウ砂およびMFC)の測定された接着強度(レシピごとの平均50回の繰り返し)を表6に示す。
【0146】
【0147】
テストボードの24時間の硬化後の接着強度は、接着剤1、ホウ砂参照接着剤と比較して、ミクロフィブリル化セルロースを含む接着剤2の方が幾分高かった(表6を参考)。1.7%のホウ砂(デンプンに対する比率)を含む参照接着剤1と、1.0%のホウ砂及び0.1%のミクロフィブリル化セルロース(デンプンに対する比率)を含む接着剤2との両方が、手で剥離させて測定した優れた強度を達成した。
【国際調査報告】