IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーネル ユニバーシティーの特許一覧

特表2022-521772核酸を検出するための係留酵素の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-12
(54)【発明の名称】核酸を検出するための係留酵素の使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20220405BHJP
   C12Q 1/26 20060101ALI20220405BHJP
   C12N 11/02 20060101ALI20220405BHJP
   C12N 11/14 20060101ALI20220405BHJP
   C12N 9/02 20060101ALN20220405BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20220405BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20220405BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20220405BHJP
   C07K 17/00 20060101ALN20220405BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20220405BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALN20220405BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C12Q1/26 ZNA
C12N11/02
C12N11/14
C12N9/02
C12N9/10
C07K16/18
C07K16/46
C07K17/00
C12Q1/686 Z
C12Q1/6813 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549748
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(85)【翻訳文提出日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 US2020019924
(87)【国際公開番号】W WO2020176638
(87)【国際公開日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】62/810,448
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513249770
【氏名又は名称】コーネル ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】コーエン ロイ
(72)【発明者】
【氏名】トラヴィス アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4B033
4B050
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B033NA02
4B033NA23
4B033NA25
4B033NB22
4B033NB32
4B033ND05
4B033NG09
4B033NH02
4B050CC07
4B050KK03
4B050KK07
4B050LL03
4B063QA01
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR54
4B063QR58
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045DA76
4H045EA50
(57)【要約】
本出願は、試料中の標的核酸分子の検出方法に関する。本方法は、標的核酸分子を含む試料及び捕捉オリゴヌクレオチド分子を用意する工程を含む。一実施形態において、上記捕捉オリゴヌクレオチド分子は、(i)30~60塩基対の長さを有し、(ii)その3’末端に4~8塩基対のオーバーハングを有し、(iii)5’尾部を有し、(iv)3’末端と5’尾部との間に標的特異的部分を有し、(v)40~50%のデオキシアデノシン二リン酸含有量を有し、(vi)3’末端または5’尾部にデオキシチミジンリン酸を有さず、且つ(vii)上記捕捉オリゴヌクレオチド分子のATP含有量の40~50%であるATP含有量を有する上記3’末端及び5’尾部を有する。本検出方法の別の態様において、特定の試薬が固体支持体に結合している。本出願はまた、本出願の方法を実施するのに有用な組成物及びキットにも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の標的核酸分子の検出方法であって、
標的核酸分子を含む試料を用意する工程と、
前記試料を、前記標的核酸分子の少なくとも一部に相補的な捕捉オリゴヌクレオチド分子と接触させて、その結果、前記捕捉オリゴヌクレオチド分子を標的ヌクレオチド分子の相補的部分にハイブリダイズさせ、二本鎖核酸分子を形成させる工程であって、前記捕捉オリゴヌクレオチド分子は、(i)30~60塩基対の長さを有し、(ii)その3’末端に4~8塩基対のオーバーハングを有し、(iii)5’尾部を有し、(iv)前記3’末端と前記5’尾部との間に標的特異的部分を有し、(v)40~50%のデオキシアデノシン二リン酸含有量を有し、(vi)前記3’末端または前記5’尾部にデオキシチミジンリン酸を有さず、且つ(vii)前記捕捉オリゴヌクレオチド分子のATP含有量の40~50%であるATP含有量を有する前記3’末端及び前記5’尾部を有する、工程と、
前記二本鎖核酸分子、ポリメラーゼ、及びdNTP混合物を接触させて、ポリメラーゼ伸長混合物を形成させる工程と、
前記ポリメラーゼ伸長混合物を、前記標的核酸分子が伸長され遊離リン酸を放出する条件に供する工程と、
前記放出された遊離リン酸からアデノシン三リン酸を生成させる工程と、
前記遊離リン酸から生成した前記アデノシン三リン酸をルシフェラーゼで代謝させて、前記試料中に前記標的核酸分子が存在することを示す生物発光読み出しシグナルを生成させる工程と
を含む前記方法。
【請求項2】
DNAポリメラーゼが固体支持体に結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記DNAポリメラーゼが、His-Si、His、Si、ビオチン、ストレプトアビジン、Pt、Au、Ag、His-Pt、His-Au、His-Ag、GST、抗体、及びエピトープタグからなる群より選択されるリンカーによって前記固体支持体に結合している、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ルシフェラーゼが固体支持体に結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ルシフェラーゼが、His-Si、His、Si、ビオチン、ストレプトアビジン、Pt、Au、Ag、His-Pt、His-Au、His-Ag、GST、抗体、及びエピトープタグからなる群より選択されるリンカーによって前記固体支持体に結合している、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アデノシン三リン酸を生成させる工程が、前記放出された遊離リン酸を、結合したグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ-ホスホグリセリン酸キナーゼの酵素反応に供して、アデノシン三リン酸を生成させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記放出された遊離リン酸を、結合したグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ-ホスホグリセリン酸キナーゼの酵素反応に供する工程が、アデノシン二リン酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、及びグリセルアルデヒド3-リン酸を接触させて、前記結合したグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ-ホスホグリセリン酸キナーゼの酵素反応を達成させることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ及び前記ホスホグリセリン酸キナーゼが固体支持体に結合している、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アデノシン三リン酸を生成させる工程が、前記放出された遊離リン酸をアデノシン三リン酸スルフリラーゼの存在下でアデノシン5’-ホスホ硫酸と接触させて、アデノシン三リン酸を生成させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記アデノシン三リン酸スルフリラーゼが固体支持体に結合している、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記標的核酸分子が、前記試料中に1リットル当たり10-5モル未満の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記標的核酸分子がマイクロRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記供する工程が0~100℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記供する工程が25~40℃の温度で実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリメラーゼが、全長BST DNAポリメラーゼ、ラージフラグメントBST DNAポリメラーゼ、BST 2.0 DNAポリメラーゼ、クレノウフラグメント(3’→5’エキソ)、及びDNAポリメラーゼI(ラージクレノウフラグメント)である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記生物発光読み出しシグナルを定量化して、前記試料中の前記標的核酸分子の存在または濃度を決定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記試料中の前記標的核酸分子の存在が決定される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記試料中の前記標的核酸分子の存在が、
生物発光シグナル生成の初期速度を計算する工程と、
ピーク生物発光を達成するために必要な期間を計算する工程と、
生物発光シグナルのピークの大きさまたは時間ゼロからピーク生物発光までの積分生物発光シグナルを計算する工程と
を含む手順によって決定される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記試料中の前記標的核酸分子の濃度が決定される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
デオキシアデノシン三リン酸が前記ポリメラーゼ伸長混合物から除外される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記試料が、血液、尿、脳脊髄液、唾液、組織、及び合成材料からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
溶液中で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
複数種の標的核酸分子を検出するために、複数種の捕捉オリゴヌクレオチド分子が提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
試料中の標的核酸分子の検出方法であって、
標的核酸分子を含む試料を用意する工程と、
前記試料を、前記標的核酸分子の少なくとも一部に相補的な捕捉オリゴヌクレオチド分子と接触させて、その結果、前記捕捉オリゴヌクレオチド分子を前記標的核酸分子の相補的部分にハイブリダイズさせ、二本鎖核酸分子を形成させる工程と、
前記二本鎖核酸分子、ポリメラーゼ、及びdNTP混合物を接触させて、ポリメラーゼ伸長混合物を形成させる工程と、
前記ポリメラーゼ伸長混合物を、前記標的核酸分子が伸長され遊離リン酸を放出する条件に供する工程と、
前記放出された遊離リン酸からアデノシン三リン酸を酵素的に生成させる工程と、
前記遊離リン酸から生成した前記アデノシン三リン酸をルシフェラーゼで代謝させて、前記試料中に前記標的核酸分子が存在することを示す生物発光読み出しシグナルを生成させる工程であって、DNAポリメラーゼ、ルシフェラーゼ、及びアデノシン三リン酸を生成する酵素はそれぞれ固体支持体に結合している、工程と
を含む前記方法。
【請求項25】
前記捕捉オリゴヌクレオチド分子が、30~60塩基対の長さを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記捕捉オリゴヌクレオチド分子が、その3’末端に4~8塩基対のオーバーハングを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記捕捉オリゴヌクレオチド分子が5’尾部を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記捕捉オリゴヌクレオチド分子が、前記3’末端と前記5’尾部との間に標的特異的部分を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記捕捉オリゴヌクレオチド分子が、40~50%のデオキシアデノシン二リン酸含有量を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記捕捉オリゴヌクレオチド分子が、前記3’末端または前記5’尾部にデオキシチミジンリン酸を有さない、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記捕捉オリゴヌクレオチド分子が、共に前記捕捉オリゴヌクレオチド分子のATP含有量の40~50%であるATP含有量を有する3’末端及び5’尾部を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
複数種の標的核酸分子を検出するために、複数種の捕捉オリゴヌクレオチド分子が提供される、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
試料中の標的核酸分子を検出するためのキットであって、
前記標的核酸分子の少なくとも一部に相補的であり、その結果、前記標的核酸分子の相補的部分にハイブリダイズし、二本鎖核酸分子を形成する、捕捉オリゴヌクレオチド分子と、
固体支持体に結合したポリメラーゼと、
dNTP混合物と、
放出された遊離リン酸からアデノシン三リン酸を生成させるための、固体支持体に結合した酵素と、
生物発光読み出しシグナルを生成させるための、固体支持体に結合したルシフェラーゼと
を含む前記キット。
【請求項34】
複数種の標的核酸分子を検出するための複数種の捕捉オリゴヌクレオチド分子を含む、請求項33に記載のキット。
【請求項35】
試料中の標的核酸分子を検出するためのキットであって、
前記標的核酸分子の少なくとも一部に相補的であり、その結果、前記標的核酸分子の相補的部分にハイブリダイズし、二本鎖核酸分子を形成する、捕捉オリゴヌクレオチド分子であり、(i)30~60塩基対の長さを有し、(ii)その3’末端に4~8塩基対のオーバーハングを有し、(iii)5’尾部を有し、(iv)前記3’末端と前記5’尾部との間に標的特異的部分を有し、(v)40~50%のデオキシアデノシン二リン酸含有量を有し、(vi)前記3’末端または前記5’尾部にデオキシチミジンリン酸を有さず、且つ(vii)前記捕捉オリゴヌクレオチド分子のATP含有量の40~50%であるATP含有量を有する前記3’末端及び前記5’尾部を有する、前記捕捉オリゴヌクレオチド分子と、
ポリメラーゼと、
dNTP混合物と、
放出された遊離リン酸からアデノシン三リン酸を生成させるための酵素と、
生物発光読み出しシグナルを生成させるためのルシフェラーゼと
を含む前記キット。
【請求項36】
複数種の標的核酸分子を検出するための複数種の捕捉オリゴヌクレオチド分子を含む、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
捕捉オリゴヌクレオチド分子を含む組成物であって、前記捕捉オリゴヌクレオチド分子が、(i)30~60塩基対の長さを有し、(ii)その3’末端に4~8塩基対のオーバーハングを有し、(iii)5’尾部を有し、(iv)前記3’末端と前記5’尾部との間に標的特異的部分を有し、(v)40~50%のデオキシアデノシン二リン酸含有量を有し、(vi)前記3’末端または前記5’尾部にデオキシチミジンリン酸を有さず、且つ(vii)前記捕捉オリゴヌクレオチド分子のATP含有量の40~50%であるATP含有量を有する前記3’末端及び前記5’尾部を有する、前記組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年2月26日出願の米国仮特許出願第62/810,448号の優先権を主張し、該出願は本記述をもって、参照によりその全体が援用される。
【0002】
分野
本出願は、核酸を検出するための係留(tethered)酵素の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
核酸増幅を使用して、試料中に特定のテンプレート核酸が存在するかどうかを決定することができる。増幅産物が生成する場合、これは当該試料中に当該テンプレート核酸が存在したことを示す。逆に、いずれの増幅産物も生成しない場合は、該試料中にテンプレート核酸がないことを示す。かかる技法は、診断用途、例えば、試料中に病原体が存在するかどうかを決定する場合に非常に重要である。
【0004】
核酸は、様々な熱サイクリング(thermocycling)技法及び等温技法によって増幅することができる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの熱サイクリング技法は、温度サイクリングを使用してDNA合成のサイクルを繰り返し、テンプレートDNAの当初の量に応じて大量の新しいDNAを合成する。最近、増幅反応を駆動するための熱サイクリングに依拠しない多くの等温技術も開発されている。RNA合成ステップを伴わない増幅反応を目的として、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを利用する等温技法が開発されている。同様に、RNA合成ステップを伴う増幅反応については、逆転写酵素、RNアーゼH、及びDNA依存性RNAポリメラーゼを使用する等温技法が開発されている。
【0005】
それにもかかわらず、微生物の同定及び分類、感染症の診断、遺伝的異常の検出及びキャラクタリゼーション、がんに関連する遺伝的変化の識別、疾患に対する遺伝的感受性の研究、ならびに様々な種類の治療に対する応答の測定のためには、特定の核酸配列の検出及び/または定量化は重要な技法である。かかる手順は、食品、水、工業及び環境上の試料、原種、及び特定の微生物の存在を監視する必要がある場合がある他の種類の材料中の微生物の検出ならびに定量にも有用である。他の用途は、法科学、人類学、考古学、及び生物学にあり、これらの分野において、核酸配列の関連性の測定を使用して、犯罪容疑者を特定し、父性紛争を解決し、系統樹(genealogical tree)及び進化系統樹(phylogenetic tree)を構築し、且つ様々な生命の分類を支援している。
【0006】
過去20年間の分子生物学の分野における進歩により、患者及び他の対象から得られた試験試料中の特定の核酸配列の検出が可能になっている。かかる検査試料としては、血清、尿、便、唾液、羊水、及びその他の体液が挙げられる。したがって、核酸配列を検出及び/または定量化するための多くの方法が当技術分野で周知である。しかしながら、高感度の核酸増幅システムの固有の結果として副生成物の発生がある。副生成物には、一部のシステムにおいて増幅反応を妨害し、それによって特異性を低下させる可能性のある分子が含まれる。これは、プライマー伸長及び転写産物の形成に必要なプライマー及び酵素を含む限られた増幅資源が、副生成物の形成に転用されるためである。場合によっては、副生成物の出現により、様々な分子技法によるアンプリコン生成の解析が複雑になる場合もある。さらに、対象となる多くの場合において、求める核酸配列について試験をしている試料中に、特定の核酸配列が非常に低濃度でしか存在しない。かかる場合、アッセイ感度を高めることができないと、求める分子の存在を検出することができない。
【0007】
本出願は、当技術分野におけるこれらの及び他の欠陥を克服することを目的とする。
【発明の概要】
【0008】
概要
本出願の一態様は、試料中の標的核酸分子の検出方法に関する。本方法は、標的核酸分子を含む試料を用意する工程と、上記試料を、上記標的核酸分子の少なくとも一部に相補的な捕捉オリゴヌクレオチド分子と接触させて、その結果、上記捕捉オリゴヌクレオチド分子を標的ヌクレオチド分子の相補的部分にハイブリダイズさせ、二本鎖核酸分子を形成させる工程とを含む。上記捕捉オリゴヌクレオチド分子は、(i)30~60塩基対の長さを有し、(ii)その3’末端に4~8塩基対のオーバーハングを有し、(iii)5’尾部を有し、(iv)3’末端と5’尾部との間に標的特異的部分を有し、(v)40~50%のデオキシアデノシン二リン酸含有量を有し、(vi)3’末端または5’尾部にデオキシチミジンリン酸を有さず、且つ(vii)上記捕捉オリゴヌクレオチド分子のATP含有量の40~50%であるATP含有量を有する上記3’末端及び5’尾部を有する。上記二本鎖核酸分子、ポリメラーゼ、及びdNTP混合物を互いに接触させて、ポリメラーゼ伸長混合物を形成させる。上記ポリメラーゼ伸長混合物を、上記標的核酸分子が伸長され遊離リン酸を放出する条件に供する。次いで上記放出された遊離リン酸からアデノシン三リン酸を生成させ、上記遊離リン酸から生成した上記アデノシン三リン酸をルシフェラーゼで代謝させて、上記試料中に上記標的核酸分子が存在することを示す生物発光読み出しシグナルを生成させる。
【0009】
本出願の別の態様は、試料中の標的核酸分子の検出方法に関する。本方法は、標的核酸分子を含む試料を用意する工程と、上記試料を、上記標的核酸分子の少なくとも一部に相補的な捕捉オリゴヌクレオチド分子と接触させて、その結果、上記捕捉オリゴヌクレオチド分子を上記標的核酸分子の相補的部分にハイブリダイズさせ、二本鎖核酸分子を形成させる工程とを含む。上記二本鎖核酸分子、ポリメラーゼ、及びdNTP混合物を互いに接触させて、ポリメラーゼ伸長混合物を形成させる。上記ポリメラーゼ伸長混合物を、上記標的核酸分子が伸長され遊離リン酸を放出する条件に供する。次いで上記放出された遊離リン酸からアデノシン三リン酸を酵素的に生成させ、上記遊離リン酸から生成した上記アデノシン三リン酸をルシフェラーゼで代謝させて、上記試料中に上記標的核酸分子が存在することを示す生物発光読み出しシグナルを生成させる。DNAポリメラーゼ、上記ルシフェラーゼ、及びアデノシン三リン酸を生成する酵素はそれぞれ固体支持体に結合している。
【0010】
本出願の別の態様は、試料中の標的核酸分子を検出するためのキットに関する。上記キットは、上記標的核酸分子の少なくとも一部に相補的であり、その結果、上記標的核酸分子の相補的部分にハイブリダイズし、二本鎖核酸分子を形成する、捕捉オリゴヌクレオチド分子と、固体支持体に結合したポリメラーゼと、dNTP混合物と、放出された遊離リン酸からアデノシン三リン酸を生成させるための、固体支持体に結合した酵素と、生物発光読み出しシグナルを生成させるための、固体支持体に結合したルシフェラーゼとを含む。
【0011】
本出願の別の態様は、試料中の標的核酸分子を検出するためのキットに関する。上記キットは、上記標的核酸分子の少なくとも一部に相補的であり、その結果、上記標的核酸分子の相補的部分にハイブリダイズし、二本鎖核酸分子を形成する捕捉オリゴヌクレオチド分子を含む。上記捕捉オリゴヌクレオチド分子は、(i)30~60塩基対(bp)の長さを有し、(ii)その3’末端に4~8塩基対のオーバーハングを有し、(iii)5’尾部を有し、(iv)3’末端と5’尾部との間に標的特異的部分を有し、(v)40~50%のデオキシアデノシン二リン酸含有量を有し、(vi)3’末端または5’尾部にデオキシチミジンリン酸を有さず、且つ(vii)上記捕捉オリゴヌクレオチド分子のATP含有量の40~50%であるATP含有量を有する上記3’末端及び5’尾部を有する。上記キットはまた、ポリメラーゼと、dNTP混合物と、放出された遊離リン酸からアデノシン三リン酸を生成させるための酵素と、生物発光読み出しシグナルを生成させるためのルシフェラーゼも含む。
【0012】
本出願の別の最後の態様は、捕捉オリゴヌクレオチド分子を含む組成物であって、上記捕捉オリゴヌクレオチド分子が、(i)30~60塩基対の長さを有し、(ii)その3’末端に4~8塩基対のオーバーハングを有し、(iii)5’尾部を有し、(iv)3’末端と5’尾部との間に標的特異的部分を有し、(v)40~50%のデオキシアデノシン二リン酸含有量を有し、(vi)3’末端または5’尾部にデオキシチミジンリン酸を有さず、且つ(vii)前記捕捉オリゴヌクレオチド分子のATP含有量の40~50%であるATP含有量を有する前記3’末端及び5’尾部を有する、上記組成物に関する。
【0013】
本出願は、例えば、酵素反応であって、当該酵素が表面(例えばナノ粒子)に係留されている上記酵素反応を使用することによって核酸を検出する方法における顕著な進歩を開示する。本明細書に記載のアッセイは一般的な発光出力に変換される。すなわち、特定の実施形態において、上記アッセイはすべて、光を放出する及び読み取ることが可能な生物発光(BL)タンパク質または基質と繋がっており、その光の量は、当該の系または生物学的試料中の標的核酸の量と相関する。この技法は、様々な核酸分子の定性的ならびに定量的な結果を生み出すのに好適である。
【0014】
本出願は、他の検出方法及びシステムに勝る複数の利点を与える。これらの利点としては以下が挙げられる。すなわち、1)速度-酵素反応を使用したアッセイが迅速に行われ、数分以内に読み出し情報が得られること;2)発光に基づく読み出し情報が使用され、大きな励起のための要素(蛍光に必要な要素など)を必要としない、独立型で携帯性の高いシステム及びデバイスが可能になること;3)感度-各ハイブリダイゼーションイベントで複数種の遊離リン酸が放出され、酵素反応アッセイにより、検出及び読み出しの両方のステップでシグナル増幅が促進されることに起因;4)低い製造コスト-例えばナノ粒子を始めとする、かかるシステムの可能性のある構成要素は、安価な材料から製造することができ、容易に大量生産することができること;5)多重化能力-生化学反応の併用によって、本出願の特定の実施形態において、単一のシステムで複数種の核酸分子を検出することができる場合があること;6)係留酵素の使用によって容易に最大限の酵素の安定性及び活性が得られること;7)係留酵素を使用することによって、反応及び読み出しが当該の系の特定の領域(例えば、カードの特定の領域)に限定され、リーダー中の光検出器の大きさ低減されること;8)係留酵素を使用することによって、反応及び読み出しが限定され、これによりインラインでの陰性対照及びバックグラウンド発光用の対照が可能となること;9)係留酵素を使用することによって、反応及び読み出しが限定され、これにより同一系内の他の核酸分子の検出に由来する光の混入が低減されること;10)捕捉オリゴヌクレオチドの固定化によって、当該の系の特定の領域(例えば、カードの特定の領域)において複数の標的オリゴヌクレオチドを検出する能力が向上すること;11)等温増幅を使用することによって、温度サイクリングを必要とせずに周囲温度での検出が可能になること;ならびに12)捕捉オリゴヌクレオチドの設計によって、副生成物の干渉/阻害のない単一ステップ反応が可能になり、生物発光酵素を上記単一ステップ反応に導入することができることにより、代謝されたAP分子から放出される遊離リン酸(ATP生成反応に戻される)から生じるさらなるレベルのシグナル増幅が可能になることである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】係留酵素技術(TET)-miRNA反応の実施形態を示す図である。miRNA(または他の一本鎖核酸ポリマー)が捕捉オリゴヌクレオチド内の相補的挿入配列にアニーリングし、二本鎖を生成する。これによりDNAポリメラーゼが結合して重合反応を開始することができ、この重合反応により、ヌクレオチドの取り込み(等温複製)を通じて遊離リン酸(PPi)が放出される。次いで、ADP、NAD+、及びGAPの存在下で、これらのPPi基は、結合したGAPDH-PGKの酵素反応によって使用され、ATPを生成する。最後に、ルシフェラーゼがATPを加水分解して生物発光シグナルを生成させる。
図2】TET-miRNA反応の別の実施形態を示す図である。miRNA(または他の一本鎖核酸ポリマー)が捕捉オリゴヌクレオチド内の相補的挿入配列にアニーリングし、二本鎖を生成する。これによりDNAポリメラーゼが結合して重合反応を開始することができ、この重合反応により、ヌクレオチドの取り込み(等温複製)を通じて遊離リン酸(PPi)が放出される。次いで、APSの存在下で、これらのPPi基は、酵素ATP-スルフリラーゼによって使用され、ATPを生成する。最後に、ルシフェラーゼがATPを加水分解して生物発光シグナルを生成させる。
図3】捕捉オリゴヌクレオチド(Capオリゴ)の設計及び特徴を示す図である。
図4】上記反応混合物からdATPを除外することにより、アッセイの速度論及び感度が向上することを示す図である。
図5A】TET-miRNAアッセイが標的オリゴヌクレオチドの3’末端におけるミスマッチ(mm)ヌクレオチドを検出することができること、ならびにデータの様々な解析または定量化を示す図である。
図5B】TET-miRNAアッセイが標的オリゴヌクレオチドの3’末端におけるミスマッチヌクレオチドを検出することができること、ならびにデータの様々な解析または定量化を示す図である。
図5C】TET-miRNAアッセイが標的オリゴヌクレオチドの3’末端におけるミスマッチヌクレオチドを検出することができること、ならびにデータの様々な解析または定量化を示す図である。
図5D】TET-miRNAアッセイが標的オリゴヌクレオチドの3’末端におけるミスマッチヌクレオチドを検出することができること、ならびにデータの様々な解析または定量化を示す図である。
図6】A及びBは、標的オリゴヌクレオチドの検出に対するTET-miRNAアッセイの感度の範囲の試験を示す図である。
図7】A~Cは、捕捉オリゴヌクレオチドの5’及び3’尾部の設計がTET-miRNA反応速度論に影響を与えることを示す図である。
図8】A及びBは、捕捉オリゴヌクレオチドのdATP含有量がTET-miRNA反応速度論に影響を与えることを示す図である。
図9】A及びBは、捕捉オリゴヌクレオチドの3’尾部長がTET-miRNA反応活性及び速度論に影響を与えることを示す図である。
図10】A~Cは、TET-miRNAアッセイが、MIR-340標的オリゴヌクレオチド(肺癌関連マイクロRNA)の配列の変異に感受性であることを示す図である。
図11】A及びBは、TET-miRNAアッセイがヒト血清中に天然に存在するmiRNAを検出できることを示す図である。
図12】TET-miRNAアッセイが、ヒト血漿中に天然に存在するmiRNAを検出することができることを示す図である。
図13】A及びBは、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)処理によってTET-miRNA活性が消失することを示す図である。
図14】A及びBは、(非配向性)NP固定化での反応と溶液中での反応を用いた標的オリゴヌクレオチド検出の比較を示す図である。
図15】A及びBは、市販BST2.0をビオチン-ストレプトアビジン結合を介してNP上に固定化することによって、TET-miRNA反応アッセイが阻害されることを示す図である。
図16】A~Cは、TET-miRNAアッセイが温度によってわずかに影響を受けるのみであることを示す図である。
図17-1】A~Cは、ヒト血清中のmiRNAを検出するための2種の異なる捕捉オリゴヌクレオチド設計の試験(非係留)を示す図である。
図17-2】D及びEは、ヒト血清中のmiRNAを検出するための2種の異なる捕捉オリゴヌクレオチド設計の試験(非係留)を示す図である。
図18A-1】TET-miRNAアッセイにおける種々のDNAポリメラーゼの活性の比較を示す図である。
図18A-2】図18A-1の続きの図である。
図18B】TET-miRNAアッセイにおける種々のDNAポリメラーゼの活性の比較を示す図である。
図19-1】A及びBは、係留された場合と溶液中の場合での、TET-miRNAを使用した標的オリゴヌクレオチド検出の比較を示す図である。
図19-2】C及びDは、係留された場合と溶液中の場合での、TET-miRNAを使用した標的オリゴヌクレオチド検出の比較を示す図である。
図20】A~Cは、係留された場合と溶液中の場合でのTET-miRNAアッセイにおける、His-Si-クレノウとHis-Si-BSTの活性の比較を示す図である。
図21】A及びBは、His-Si-ATPS/His-Si-BST/NPの様々な比率を使用した標的オリゴヌクレオチド検出の比較を示す図である。
図22】A~Cは、TET-miRNA(His-Si-酵素)及びDNA捕捉オリゴヌクレオチドを使用したmiRNA(RNAオリゴヌクレオチド)検出を示す図である。
図23】A~Cは、異なる非係留DNAポリメラーゼ(His-Si-クレノウとHis-Si-BST)の標的オリゴヌクレオチドミスマッチに対する感度の試験の比較を示す図である。
図24】捕捉オリゴヌクレオチドが溶液中にある場合と固定化されている場合(非配向性)でのTET-miRNA反応の試験の比較を示す図である。
図25A】捕捉オリゴヌクレオチドが溶液中にある場合とビオチン-ストレプトアビジンを介してSiO NPに固定化されている場合のTET-miRNA反応の試験の比較を示す図である。
図25B】捕捉オリゴヌクレオチドが溶液中にある場合とビオチン-ストレプトアビジンを介してSiO NPに固定化されている場合のTET-miRNA反応の試験の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
本出願の一態様は、試料中の標的核酸分子の検出方法に関する。本方法は、標的核酸分子を含む試料を用意する工程と、上記試料を、上記標的核酸分子の少なくとも一部に相補的な捕捉オリゴヌクレオチド分子と接触させて、その結果、上記捕捉オリゴヌクレオチド分子を標的ヌクレオチド分子の相補的部分にハイブリダイズさせ、二本鎖核酸分子を形成させる工程とを含む。上記捕捉オリゴヌクレオチド分子は、(i)30~60塩基対の長さを有し、(ii)その3’末端に4~8塩基対のオーバーハングを有し、(iii)5’尾部を有し、(iv)3’末端と5’尾部との間に標的特異的部分を有し、(v)40~50%のデオキシアデノシン二リン酸含有量を有し、(vi)3’末端または5’尾部にデオキシチミジンリン酸を有さず、且つ(vii)上記捕捉オリゴヌクレオチド分子のATP含有量の40~50%であるATP含有量を有する上記3’末端及び5’尾部を有する。上記二本鎖核酸分子、ポリメラーゼ、及びdNTP混合物を互いに接触させて、ポリメラーゼ伸長混合物を形成させる。上記ポリメラーゼ伸長混合物を、上記標的核酸分子が伸長され遊離リン酸を放出する条件に供する。次いで上記放出された遊離リン酸からアデノシン三リン酸を生成させ、上記遊離リン酸から生成した上記アデノシン三リン酸をルシフェラーゼで代謝させて、上記試料中に上記標的核酸分子が存在することを示す生物発光読み出しシグナルを生成させる。
【0017】
本出願の別の態様は、試料中の標的核酸分子の検出方法に関する。本方法は、標的核酸分子を含む試料を用意する工程と、上記試料を、上記標的核酸分子の少なくとも一部に相補的な捕捉オリゴヌクレオチド分子と接触させて、その結果、上記捕捉オリゴヌクレオチド分子を上記標的核酸分子の相補的部分にハイブリダイズさせ、二本鎖核酸分子を形成させる工程とを含む。上記二本鎖核酸分子、ポリメラーゼ、及びdNTP混合物を互いに接触させて、ポリメラーゼ伸長混合物を形成させる。上記ポリメラーゼ伸長混合物を、上記標的核酸分子が伸長され遊離リン酸を放出する条件に供する。次いで上記放出された遊離リン酸からアデノシン三リン酸を酵素的に生成させ、上記遊離リン酸から生成した上記アデノシン三リン酸をルシフェラーゼで代謝させて、上記試料中に上記標的核酸分子が存在することを示す生物発光読み出しシグナルを生成させる。DNAポリメラーゼ、上記ルシフェラーゼ、及びアデノシン三リン酸を生成する酵素はそれぞれ固体支持体に結合している。
【0018】
図1に示すように、DNAポリメラーゼが1つのナノ粒子に係留されており、GAPDH、PGK、及びルシフェラーゼ(「Luc」)が別のナノ粒子に係留されている。miRNA標的が、用意した、係留されたまたは溶液中のいずれかの捕捉オリゴヌクレオチド内の相補的挿入配列にアニーリングし、二本鎖を生成する。これによりDNAポリメラーゼが結合して重合反応を開始することができ、この重合反応により、ヌクレオチドの取り込みを通じて遊離リン酸(PPi)が放出される。ADP、NAD+、及びグリセルアルデヒド3-リン酸がアッセイに添加される。これらの成分の存在下で、遊離リン酸が係留されたGAPDH及びPGKによって使用され、ATPを生成する。次いでこのATPは、ルシフェリンと共に、係留されたLucによって使用されることになり、生物発光シグナルを生成する。放出される光の量は当該系中のATPの量に正比例し、その結果該系中の標的miRNAの量に対応する。放出される光は、一実施形態において、その放出されたシグナルを捕捉するように配置された光検出器によって定量的及び/または定性的に読み取ることができる。
【0019】
あるいは、図2に示すように、DNAポリメラーゼが1つのナノ粒子に係留されており、ATPスルフリラーゼ(ATP-sul)及びルシフェラーゼ(「Luc」)は別のナノ粒子に係留されている。miRNA標的が、用意した、係留されたまたは溶液中のいずれかの捕捉オリゴヌクレオチド内の相補的挿入配列にアニーリングし、二本鎖を生成する。これによりDNAポリメラーゼが結合して重合反応を開始することができ、この重合反応により、ヌクレオチドの取り込みを通じて遊離リン酸(PPi)が放出される。アデノシン5’-ホスホ硫酸(APS)がアッセイに添加される。APSの存在下で、遊離リン酸が係留されたたATP-sulによって使用され、ATPを生成する。次いでこのATPは、ルシフェリンと共に、係留されたLucによって使用されることになり、生物発光シグナルを生成する。放出される光の量は当該系中のATPの量に正比例し、その結果該系中の標的miRNAの量に対応する。放出される光は、一実施形態において、その放出されたシグナルを捕捉するように配置された光検出器によって定量的及び/または定性的に読み取ることができる。
【0020】
本出願にかかる好適な生物学的試料としては、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、組織を含む、但しこれらに限定されない生物学的試料が挙げられる。工業上の試料としては、食品、飲料、及び合成材料が挙げられる。環境上の試料としては、水、空気、または地表の試料が挙げられる。
【0021】
用語「核酸」とは、DNA、RNA、及びそれらの下位カテゴリー(cDNA、mRNA、miRNAなど)を含むヌクレオチド(例えば、天然及び非天然の両方の、リボヌクレオチド及びデオキシリボヌクレオチド)のポリマーをいう。核酸は一本鎖であってもよく、通常、5’-3’ホスホジエステル結合を含むこととなるが、場合によっては、ヌクレオチド類似体が他の結合を有する場合もある。核酸は、天然に存在する塩基(アデノシン、グアノシン、シトシン、ウラシル、及びチミジン)ならびに非天然の塩基を含んでいてもよい。
【0022】
本明細書では、「標的核酸」または「標的」とは、検出または分析の対照である、試料中の核酸配列の一部をいう。用語「標的」は、標的配列のすべての変異体、例えば、1種以上の変異による変異体及び野生型変異体を含む。
【0023】
一実施形態において、上記標的核酸分子はマイクロRNAである。
【0024】
本明細書では、「捕捉オリゴヌクレオチド」とは、標準的な塩基対形成によって標的核酸中の標的配列に特異的にハイブリダイズする核酸フラグメントをいう。本明細書では、「特異的にハイブリダイズする」とは、ストリンジェントなハイブリダイゼーションアッセイ条件下で、捕捉オリゴヌクレオチドがそれらの標的配列、またはそれらの複製物にハイブリダイズして、安定な捕捉オリゴヌクレオチド:標的ハイブリッドを形成すると同時に、安定な捕捉オリゴヌクレオチド:非標的ハイブリッドの形成が最小限に抑制されることを意味する。したがって、捕捉オリゴヌクレオチドは、標的配列、またはその複製物に対して、非標的配列に対するよりも十分に大きな程度でハイブリダイズする。好適なハイブリダイゼーション条件は当技術分野で周知であり、配列組成に基づいて予測することができるか、または慣用的な試験方法(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989(該文献は本記述をもってその全体が援用される)を参照のこと)を使用することによって決定することができる。
【0025】
図3は捕捉オリゴヌクレオチドの設計の一実施形態を示す。図3に示すように、捕捉オリゴヌクレオチドは、長さが、5’伸長尾部、内部の相補的挿入配列、及び3’尾部を含めて30~60ヌクレオチドであってよい。5’伸長尾部配列及び3’尾部配列にはdTTPを含まない。5’伸長尾部及び3’尾部のATP含有量は、当該オリゴヌクレオチド全体の40~50%である。最適な捕捉オリゴヌクレオチド配列は、3’尾部に4~8個のさらなるヌクレオチドを含む。捕捉オリゴヌクレオチドは、それ自体とハイブリダイズして、標的核酸へのハイブリダイゼーションを妨害する形態のヘアピン構造を形成しないように設計されていることが好ましい。
【0026】
本明細書では、「ルシフェラーゼ」とは、以下のように発光反応を触媒するオキシゲナーゼをいう。
【0027】
したがって、ルシフェラーゼは、生物発光反応(生物発光を生成する反応)を触媒する酵素または発光タンパク質をいい、別段の明示がない限り、天然に存在するルシフェラーゼ、組換えルシフェラーゼ、または変異ルシフェラーゼである。天然に存在する場合、ルシフェラーゼは、当業者によって生物から容易に得ることができる。上記ルシフェラーゼが天然に存在するルシフェラーゼ、または組換えもしくは変異ルシフェラーゼ(例えば、天然に存在するルシフェラーゼのルシフェラーゼ-ルシフェリン反応における活性を保持するルシフェラーゼ)である場合、当該ルシフェラーゼをコードする核酸が発現される。ルシフェラーゼは、細菌、酵母、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞などの培養物から容易に入手することができる。さらに、組換えまたは変異ルシフェラーゼは、ルシフェラーゼをコードする核酸を使用するインビトロ無細胞系から容易に得ることができる。ルシフェラーゼはPromega Corporation, Madison, WIから入手可能である。ルシフェラーゼの改変された変異体(mutants)または変異体(variants)である複数のルシフェラーゼも当技術分野で公知であり、それらは、例えば、Thorne et al, “Illuminating Insights into Firefly Luciferase and Other Bioluminescent Reporters Used in Chemical Biology,” Chemistry & Biology 17(6):646-657 (2010)(該文献は本記述をもってその全体が援用される)に記載される。
【0028】
本出願にかかる「ポリメラーゼ伸長」反応としては、全ての形態の、テンプレート指向性のポリメラーゼによって触媒される核酸合成反応が挙げられる。プライマー伸長反応の条件及び試薬は当技術分野で公知であり、任意の標準的な方法、試薬、及び酵素等をこの段階で使用することができる(例えば、Sambrook et al ., (editors), Molecular Cloning: a Laboratory Manual (1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press(該文献は本記述をもってその全体が援用される)を参照のこと)。したがって、その最も基本的な形態での上記伸長反応は、プライマー、デオキシヌクレオチド(dNTP)、及び好適なポリメラーゼ酵素、例えば、クレノウ、または実際に任意の利用可能且つ適宜の酵素ポリメラーゼの存在下で行われる。例として、本出願の方法での使用に好適なポリメラーゼは当技術分野で周知であり、全長BST DNAポリメラーゼ、ラージフラグメントBST DNAポリメラーゼ、BST 2.0 DNAポリメラーゼ、クレノウフラグメント(3’→5’エキソ)、及びDNAポリメラーゼI(ラージクレノウフラグメント)が挙げられるが、これらに限定はされない。上記条件は、当技術分野で公知の手順に従って、取捨により選択することができる。
【0029】
本出願の方法で使用するためのポリメラーゼ伸長技法は、等温技法(すなわち、単一の温度で実施される、または増幅過程の主要な態様が単一の温度で実行される技法)である。かかる技法は、増幅されるテンプレート鎖をコピーし、結合した二重鎖を形成するポリメラーゼの能力に依拠する。上記等温技法は、二重鎖の2本のストランドを分離/置換し、テンプレートを再コピーするための鎖置換型ポリメラーゼに依拠する。この周知の特性は、多数の科学論文の主題となっている(例えば、Y. Masamute et al., J. Biol. Chem. 246:2692-2701 (1971);R. L. Lechner et al., J. Biol. Chem. 258:11174-11184 (1983);及びR. C. Lundquist and B. M. Olivera, Cell 31:53-60 (1982)(該文献は本記述をもってそれらの全体が援用される)を参照のこと)。
【0030】
簡単に説明すると、本出願の方法で使用される場合、ポリメラーゼ伸長は、DNAポリメラーゼが捕捉オリゴヌクレオチド-標的ハイブリッド(すなわち、二本鎖DNA)に結合し、捕捉オリゴヌクレオチド配列に基づいて相補的DNA鎖を伸長する際に起こる。上記伸長反応は、反応混合物に添加されたデオキシヌクレオチド(dNTP)混合物中で与えられる利用可能なヌクレオチドを使用して生じる。これらのdNTPには、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、及びデオキシグアノシン三リン酸(dGTP)が含まれる。一実施形態において、デオキシアデノシン三リン酸は上記ポリメラーゼ伸長混合物から除外される。
【0031】
上術のように、本出願の方法で使用するためのポリメラーゼ伸長技法は、等温技法(すなわち、単一の温度で実施される、または増幅過程の主要な態様が単一の温度で実行される技法)である。したがって、特定の実施形態において、上記ポリメラーゼ伸長反応は、0~100℃、5~100℃、10~100℃、15~100℃、20~100℃、25~100℃、30~100℃、35~100℃、40~100℃、45~100℃、50~100℃、55~100℃、60~100℃、65~100℃、70~100℃、75~100℃、80~100℃、85~100℃、90~100℃、または95~100℃の温度で実施される。一実施形態において、上記ポリメラーゼ伸長反応は25~40℃の温度で実施される。
【0032】
上記ポリメラーゼ伸長反応によって、DNA鎖に付加されたヌクレオチド毎に2つのリン酸基(PPi)が放出すされる。本出願の方法において、次にこれらの遊離リン酸(PPi)の放出を使用して、試料中の標的核酸分子の検出を容易にすることができる。詳細には、酵素反応によるPPiのATPへの変換と、それに続くシグナル伝達分子ルシフェラーゼを使用したATPの生体発光検出により、標的核酸分子の有無を検出することができる。
【0033】
ルシフェラーゼ及びルシフェリンを組み合わせて使用して標的核酸を同定する。というのも、生成する光の量は生成するATPの量に実質的に比例し、同様に、取り込まれるヌクレオチド及び存在する標的核酸の量に正比例することによる。したがって、本方法は、ルシフェリン及びOを用意することを含み、ルシフェリン及びOが反応混合物に添加される。
【0034】
上記のように、本明細書に記載の方法は、ポリメラーゼ伸長混合物を、標的核酸分子が伸長され遊離リン酸を放出する条件に供することを含む。次に、放出された遊離リン酸から、酵素反応を介してアデノシン三リン酸(ATP)を生成させ、次いでATPをルシフェラーゼで代謝させて生物発光読み出しシグナルを生成させる。この態様によれば、一実施形態において、アデノシン三リン酸を生成することは、放出された遊離リン酸を、結合したグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ-ホスホグリセリン酸キナーゼ(GAPDH-PGK)の酵素反応に供して、アデノシン三リン酸を生成させることを含む。
【0035】
この実施形態において、上記酵素反応は、GAPDHが、PPi、アデノシン二リン酸(ADP)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)、及びグリセルアルデヒド3-リン酸(GAP)の存在下で、PGKと反応して、ATPを生成することを含む。次いでATPはルシフェラーゼと反応して、測定可能なシグナルを生成する。反応スキームを以下に示す。
【0036】
別の実施形態において、アデノシン三リン酸は、放出された遊離リン酸をアデノシン三リン酸スルフリラーゼ(ATP-sul)の存在下でアデノシン5’-ホスホ硫酸(APS)と接触させ、アデノシン三リン酸を生成させることによって生成させることができる。次いで、ATPがルシフェラーゼと反応して測定可能なシグナルを生成する。反応スキームを以下に示す。
【0037】
上記の実施形態によれば、上記グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ、上記ホスホグリセリン酸キナーゼ、及び/または上記アデノシン三リン酸スルフリラーゼは、上記の固体支持体に結合していてもよい。
【0038】
生成する光の量は、ルミノメーターなどの、妥当な光において鋭敏なデバイスを使用して容易に決定することができる。したがって、ルミノメトリー法は定量化が可能であるという利点がある。
【0039】
一実施形態において、上記生物発光読み出しシグナルを定量化して、試料中の標的核酸分子の存在または濃度を決定する。標的核酸の量は、発光シグナルのピークの大きさ、及び/またはシグナルがそのピークの大きさに到達するのに要する時間、及び/またはある期間にわたって放出されるシグナルの積分量、及び/または発光が生成する速度から決定することができる。
【0040】
一実施形態において、標的核酸分子は1リットル当たり10-5モル未満の濃度で試料中に存在する。
【0041】
一実施形態において、試料中の標的核酸分子の存在は、生物発光シグナル生成の初期速度の計算、生物発光のピークに達するのに要する時間の計算、及び生物発光シグナルのピークの大きさまたは生物発光の、時間ゼロから生物発光のピークまで積分した生物発光シグナルの計算を含む手順によって決定される。
【0042】
これらの手順は、個別に使用してもよく、またはより良好な定量を行うための、2種以上の手順を組み込んだ分析方法の一部として使用してもよい。各手順または手順の組み合わせについて、閾値を事前に決定し、既知量の標的核酸標的に合わせて較正してもよい。所定の値はまた、所望の標的オリゴヌクレオチドに類似しているが同一ではない配列(すなわち変異)を識別するのに有用である場合がある。さらに、これらの分析手順によって得られる値をカットオフ値に対して評価して、存在/非存在の測定を行ってもよく、または定量的な読み取りを可能にするための尺度として評価してもよい。
【0043】
一実施形態において、複数種の標的核酸分子を検出するために、複数種の捕捉オリゴヌクレオチド分子が添加される。
【0044】
この実施形態に従って企図される方法は、複数種の捕捉オリゴヌクレオチドを利用して、複数種の所定の核酸標的配列のうちの1種以上が試料中に存在するかまたは存在しないかを決定する多重アッセイである。かかる多重アッセイが特に有用な分野は、通常の分析出力で対象の核酸が存在しないことを示すスクリーニングアッセイである。
【0045】
上記の方法の多重化された実施形態では、試料は、複数種の異なる捕捉オリゴヌクレオチドと混合される。この実施形態において、1種の捕捉オリゴヌクレオチドによるある特定の結果に関する分析出力は、すべての捕捉オリゴヌクレオチドによる反対の結果に関する分析出力と区別可能である。
【0046】
この実施形態によれば、例えば、1つの固体支持体が、複数種の標的核酸に特異的な複数種の捕捉オリゴヌクレオチドを含んでいてもよい。それぞれの捕捉オリゴヌクレオチドは、固体支持体の画定された位置もしくは領域に局在化させてもよく、またはイン・サイチュウで、固体支持体の表面上の画定された位置もしくは領域で合成してもよい。かかる支持体によって、複数の、捕捉オリゴヌクレオチドが結合した標的核酸を並行して分析することが容易になる。かかる支持体は大量処理スクリーニングにも適している。
【0047】
特定の実施形態において、本出願の反応は溶液中で行われる。用語「溶液中」とは、溶液中または懸濁液中で標的核酸が検出される任意のアッセイをいう。例えば、標的核酸に対する第1のハイブリダイゼーションは第1の捕捉オリゴヌクレオチドを用いて行うことができ、標的核酸に対する第2のハイブリダイゼーションは第2の捕捉オリゴヌクレオチドを用いて行うことができる。かかる複数のハイブリダイゼーションは、いずれの望ましくない(例えば、非ハイブリダイゼーション配列)成分を除去するための洗浄ステップを含んでいてもよい。
【0048】
特定の実施形態において、本出願にかかる方法の酵素は固体支持体に結合していてもよい。他の実施形態において、本方法の酵素は溶液中に残っていてもよい。
【0049】
好適な支持体としては、有機または無機材料が挙げられ、任意且つ適宜の大きさまたは形状の材料(例えば、スキャフォールドシート、プラットフォーム、及び/またはナノ粒子)であってよい。本出願にかかるアッセイの成分を係留または固定化することは、例えば、上記成分を空間的に閉じ込めるのみならず、例えば、特定のアッセイの一部として段階反応もしくは逐次反応を実施する際に、上記成分の安定性及び/または機能を向上させるのにも役立つ。特定の実施形態において、上記支持材料としては、例えば、ヌクレオチド配列またはゲルが挙げられる。特定の実施形態において、本出願にかかるアッセイの酵素または成分は、例えば、ナノ粒子もしくは、プラットフォームなどの支持材料のチャネル(例えばマイクロ流体チャネル)の管腔表面上に固定化されるか、またはそれらに係留されていてもよい。
【0050】
本出願にかかるアッセイの成分(例えば酵素)を表面上に固定化するためには、いくつかの技法を使用することができる。例えば、成分は、非特異的に結合させてもよく、または特異的であるが非配向性の化学反応(カルボキシ-アミド結合など)を介して結合させてもよい。配向性酵素固定化も本出願の方法に従って使用することができる。配向性酵素固定化により、例えば、係留された酵素の活性及び安定性が最適化されるように結合タグ(例えばアフィニティータグ)を配置することを含む、いくつかの利点が与えられる(Mukai et al., “Sequential Reactions of Surface-Tethered Glycolytic Enzymes,” Chem. Biol. 16(9):1013-20 (2009)(該文献は本記述をもってその全体が援用される)を参照のこと)。
【0051】
核酸検出に関与する酵素の表面への係留方法の一例は配向性固定化の使用である。本出願にかかるアッセイの特定の実施形態において、アッセイの反応に関与する組換え酵素またはアッセイ成分は、アフィニティータグを用いて操作され、上記酵素がシリカもしくはニッケルなどの表面、またはニッケル-ニトリロ三酢酸など表面の成分に結合することが可能になる。例えば、アフィニティータグは、固定化しようとするタンパク質のアミノ末端またはカルボキシ末端に結合することができるか、または固定化しようとするタンパク質内に包埋することができる。係留するドメインの最適な位置は、当該酵素の触媒ドメイン(複数可)、基質結合ドメイン(複数可)の性質及び位置、ならびに該酵素に起こることが必要ないずれかの高次構造の変化に依存することとなる。
【0052】
アフィニティータグ付きタンパク質の使用は、本出願の方法で使用されるタンパク質(すなわち、DNAポリメラーゼ、ルシフェラーゼなど)は、対応する捕捉結合部分を含む固体支持体への固定化を容易にするための適宜の結合タグとの融合物として容易に発現させることが可能であることから、特に利便性がある。本出願のこの実施形態に従って使用することができる好適な捕捉部分及び結合タグパートナーとしては、His-Si、His、Si、ビオチン、ストレプトアビジン、Pt、Au、Ag、His-Pt、His-Au、His-Ag、GST、抗体、及びエピトープタグが挙げられるが、これらに限定はされない。オリゴヌクレオチドを固体支持体に共有結合させる方法は当技術分野で周知であり、例えば、Gosh et al., “Covalent Attachment of Oligonucleotides to Solid Supports,” Nucleic Acids Res. 15(13): 5353-5372 (1987), Joos et al., “Covalent Attachment of Hybridizable Oligonucleotides to Glass Supports,” Anal. Biochem. 247(1):96-101 (1997);Lund et al., “Assessment of Methods for Covalent Binding of Nucleic Acids to Magnetic Beads, Dynabeads, and the Characteristics of the Bound Nucleic Acids in Hybridization Reactions,” Nucleic Acids Res. 16(22):10861-80 (1988)を参照されたく、これらの文献は本記述をもってそれらの全体が援用される。
【0053】
特定の実施形態において、上記DNAポリメラーゼ及び/または上記ルシフェラーゼは固体支持体に結合されている。
【0054】
本出願のこの態様によれば、上記DNAポリメラーゼ及び/または上記ルシフェラーゼは、His-Si、His、Si、ビオチン、ストレプトアビジン、Pt、Au、Ag、His-Pt、His-Au、His-Ag、GST、抗体、及びエピトープタグからなる群より選択されるリンカーを用いて固体支持体に結合することができる。
【0055】
支持体、プラットフォーム、またはスキャフォールドとして機能する表面は、例えば、種々のナノ粒子、または核酸の鎖を含む複数の形態をとることができ、種々の幾何学を含むことができる。
【0056】
本出願にかかる特定の実施形態において、上記支持体はナノ粒子である。本明細書では、用語「ナノ粒子」とは、任意の粒子であって、その平均径がナノメートルの範囲にある、すなわち、平均径が最大で1μmの上記粒子をいう。使用されるナノ粒子は、当業者に公知となる任意且つ適宜の有機または無機の物質で製造ことができる。例えば、ナノ粒子は、任意のポリマー、酸化鉄(II、III)、金、銀、炭素、シリカ、CdSe、及び/またはCdSから構成されていてもよい。一実施形態において、上記ナノ粒子は磁性ナノ粒子である。別の実施形態において、上記ナノ粒子は磁性のシリカ被覆ナノ粒子(「MSP」)である。
【0057】
ナノ粒子(NP)に加えて、種々の材料の支持体またはスキャフォールドが、ロッド、平面、グラフェンシート、ナノチューブ、DNAスキャフォールド、ゲル、ミクロスフェア、またはより大きな支持体のマイクロチャネルの内部チャネル壁の形態をとることができる。量子ドットも、本出願にかかる支持体としての使用が企図される。酵素固定化は、非特異的結合、化学修飾、アフィニティータグ、または他の複合体化技法によって実現することができる。
【0058】
本出願にかかる一実施形態において、上記方法は、陽性対照及び/または陰性対照を実施することをさらに含む。標的核酸の診断量または予後量の検出は、対照量との比較によって実施される。標的核酸の対照量は、標的核酸の試験量と比較されることになる任意の量または量の範囲であってよい。対照量は、本出願にかかるアッセイの一部として実施される陽性対照または陰性対照試料中の標的核酸の量であってよい。対照量は、絶対量(例えば、μg/ml)または相対量(例えばシグナルの相対強度)のいずれかであってよい。
【0059】
本出願の方法で使用するための例示的な陰性対照としては、標的オリゴヌクレオチドを標的とするブロッキングオリゴヌクレオチド(標的オリゴヌクレオチドに対して完全にまたは部分的に相補的な配列)、捕捉オリゴヌクレオチドを標的とするブロッキングオリゴヌクレオチド(伸長を阻害するために3’/5’末端において修飾)、反応混合物に添加されたリボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、捕捉オリゴヌクレオチドを含まない反応混合物、ヌクレオチド(dNTP)を含まない反応混合物、及び基質のいずれかを含まない反応混合物が挙げられる。本出願の方法で使用するための例示的な陽性対照としては、様々な濃度(飽和量を含む)の標的オリゴヌクレオチド模倣物(当該の試料に由来する標的オリゴヌクレオチドの配列と同一の配列を有するDNAオリゴヌクレオチド)、及び上記ポリメラーゼによる伸長が可能である、オーバーハングを有する一本鎖配列をもつ、事前にアニーリングされた二本鎖DNAが挙げられる。
【0060】
様々な関連する態様において、本出願はまた、本明細書に記載の方法を実施するためのデバイス及びキットにも関する。かかるキットは、臨床環境または研究環境で利用することができる、または臨床現場での検査または現場での使用のいずれかに適合することができる、モニター、試薬、及び手順を含む。特に、本明細書に記載の方法を実施する際に使用される、開示される試薬を含むキットは、捕捉された標的核酸分子を検出する、及び標的の捕捉後に生成する生物発光シグナルを測定するためのいくつかの手段のいずれかを、適宜の説明書と共に含む。好適なキットは、標的核酸分子を検出するためのアッセイを実施するのに十分な試薬を含む。
【0061】
かかるキットは、本出願の任意の方法に有用であることを理解されたい。特定の成分の選択は、特定の方法であって、当該キットがその方法を実施するように設計されている上記方法によって異なる。ATPの放出及び生物発光シグナルの検出によって測定される分析出力を検出するために、さらなる成分を添加してもよい。
【0062】
上記のように、本キットは任意選択で、本明細書に記載の方法によって標的核酸を検出するための説明書をさらに含む。かかるキット中に存在する上記説明書は、本出願の様々な方法を実施するための、本キットの構成要素の使用方法について使用者に説明する。これらの説明書には、発光による検出を含む、本出願の検出方法の説明が含まれていてもよい。
【0063】
したがって、本出願の別の態様は、試料中の標的核酸分子を検出するためのキットに関する。上記キットは、
上記標的核酸分子の少なくとも一部に相補的であり、その結果、上記標的核酸分子の相補的部分にハイブリダイズし、二本鎖核酸分子を形成する捕捉オリゴヌクレオチド分子と、
固体支持体に結合したポリメラーゼと、
dNTP混合物と、
放出された遊離リン酸からアデノシン三リン酸を生成させるための、固体支持体に結合した酵素と、
生物発光読み出しシグナルを生成させるための、固体支持体に結合したルシフェラーゼと
を含む。
【0064】
本出願の別の態様は、試料中の標的核酸分子を検出するためのキットに関する。上記キットは、上記標的核酸分子の少なくとも一部に相補的であり、その結果、上記標的核酸分子の相補的部分にハイブリダイズし、二本鎖核酸分子を形成する捕捉オリゴヌクレオチド分子を含む。上記捕捉オリゴヌクレオチド分子は、(i)30~60塩基対の長さを有し、(ii)その3’末端に4~8塩基対のオーバーハングを有し、(iii)5’尾部を有し、(iv)3’末端と5’尾部との間に標的特異的部分を有し、(v)40~50%のデオキシアデノシン二リン酸含有量を有し、(vi)3’末端または5’尾部にデオキシチミジンリン酸を有さず、且つ(vii)上記捕捉オリゴヌクレオチド分子のATP含有量の40~50%であるATP含有量を有する上記3’末端及び5’尾部を有する。上記キットはまた、ポリメラーゼと、dNTP混合物と、放出された遊離リン酸からアデノシン三リン酸を生成させるための酵素と、生物発光読み出しシグナルを生成させるためのルシフェラーゼも含む。
【0065】
上記のキットはまた、複数種の標的核酸分子を検出するための複数種の捕捉オリゴヌクレオチド分子を含んでいてもよい。多重化捕捉オリゴヌクレオチドに媒介される特異的核酸検出を企図するキットにおいて、該キットは、対象とする複数種の核酸標的のための複数種の捕捉オリゴヌクレオチドを含む。上記キットが複数種の捕捉オリゴヌクレオチドを含む場合、該捕捉オリゴヌクレオチドのそれぞれは、異なる標的核酸配列を識別する(interrogate)ように設計されていることが好ましい。
【0066】
本出願の最後の態様は、捕捉オリゴヌクレオチド分子を含む組成物であって、上記捕捉オリゴヌクレオチド分子が、(i)30~60塩基対の長さを有し、(ii)その3’末端に4~8塩基対のオーバーハングを有し、(iii)5’尾部、を有し(iv)3’末端と5’尾部との間に標的特異的部分を有し、(v)40~50%のデオキシアデノシン二リン酸含有量を有し、(vi)3’末端または5’尾部にデオキシチミジンリン酸を有さず、且つ(vii)上記捕捉オリゴヌクレオチド分子のATP含有量の40~50%であるATP含有量を有する上記3’末端及び5’尾部を有する、上記組成物に関する。
【実施例
【0067】
以下の実施例は本開示の実施形態の実施を例示することを意図しているが、その範囲を限定することは何ら意図しない。
【0068】
実施例1 反応混合物からdATPを除外することによりアッセイの速度論及び感度が向上
0.05μl ATPスルフリラーゼ(NEB、M0394S、300U/ml)、0.25μl クレノウ(NEB、Lgフラグメント、M0210S、5000U/ml)、5μl His-Si-ルシフェラーゼ(実験室での自家製)、5μl ルシフェリン(200mM)、5μlの20×ルシフェラーゼ緩衝液(50mM HEPES、40mM KCl、200mM MgCl)、2μl APS(30mM)、1μl 捕捉オリゴヌクレオチド(T2(配列番号:7)、1μM)、1.8μlのdNTP Mix(各33mM)、及び+/- dATPを混合することによって、総容量100ulの反応混合物を調製した。この反応混合物を、1μlの標的オリゴヌクレオチド(R6(配列番号:6)、1μM)が入った白色96ウェルプレートの個々のウェルに添加した。次いで、この反応混合物を直ちにTECANプレートリーダー中に載置し、室温、400ミリ秒の積分時間で2000秒間、発光シグナルを読み取った。
【0069】
図4に示すように、2つの同一の反応混合物を上記の条件を使用して試験した。但し、反応混合物Aに添加されたヌクレオチド混合物dATP(デオキシアデノシン三リン酸)を除外した。dATPのルシフェラーゼへの結合及びdATPのルシフェラーゼによる加水分解によって、初期発光シグナルの減弱(1)、応答位相のピークの遅延(delayed peak response phase)(2)、及びシグナル全体の大きさの低下(3)が生じる。このことは、純粋な塩基配列決定と、ここで使用される、生物発光が読み出し情報として生成する係留検出法との関係を示している。これらのデータの結果として、上記補足オリゴヌクレオチドは、上記反応混合物中にdATPが存在しなくてもよいように、その配列中にdTPSを全く含まないように設計される。
【0070】
実施例2 TET-miRNAアッセイにより標的オリゴヌクレオチドの3’末端のミスマッチヌクレオチドの検出が可能
0.05μl ATPスルフリラーゼ(NEB、M0394S、300U/ml)、0.25μl クレノウ(NEB、Lgフラグメント、M0210S、5000U/ml)、5μl His-Si-ルシフェラーゼ(実験室での自家製)、5μl ルシフェリン(200mM)、5μlの20×ルシフェラーゼ緩衝液(50mM HEPES、40mM KCl、200mM MgCl)、2μl APS(30mM)、1μl 捕捉オリゴヌクレオチド(T2(配列番号:7)、100uM)、及び1.8μlのdNTP Mix(各33mM)を混合することによって、総容量100μlの反応混合物を調製した。この反応混合物を、1μlの各標的オリゴヌクレオチド(R1~R6(配列番号:1~6)、100μM)が入った白色96ウェルプレートの個々のウェルに添加し、直ちにTECANプレートリーダー中に載置し、室温、400ミリ秒の積分時間で3500秒間、発光シグナルを読み取った。
【0071】
図5Aは、図5Bに示す、標的オリゴヌクレオチド配列の3’末端におけるミスマッチヌクレオチド(下線付き文字で示す)の割合が増加するにつれて発光シグナルが減少することを示す。2種の相補的標的オリゴヌクレオチド(捕捉オリゴヌクレオチド内でシフトし且つ重複する配列に相補的なR1(配列番号:1)及びR6(配列番号:6))ならびに4種のミスマッチオリゴヌクレオチド(ミスマッチヌクレオチドの割合を付記して表示)を試験し、ヌクレオチドミスマッチ時のTET反応の強力な阻害を実証し、これを図5Cにまとめた。図5Dは、標的オリゴヌクレオチドの存在及び捕捉オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションを決定するための、想定されるデータ解析手順の図解を示し(図5Aに示した標的オリゴヌクレオチドR1(配列番号:1)及びR6(配列番号:6)に関するデータに対して示す)、但し、a/a’:発光シグナル生成の初期速度(勾配)の計算、b/b’:発光のピークまでの時間、c/c’:発光シグナルのピークの大きさ、d/d’:時間0からピークまで積分した発光シグナルである。
【0072】
実施例3 TET-miRNAアッセイの使用した標的オリゴヌクレオチド検出の感度範囲の決定
0.05μl ATPスルフリラーゼ(NEB、M0394S、300U/ml)、0.25μl クレノウ(NEB、Lgフラグメント、M0210S、5000U/ml)、5μl His-Si-ルシフェラーゼ(実験室での自家製)、5μl ルシフェリン(200mM)、5μlの20×ルシフェラーゼ緩衝液(50mM HEPES、40mM KCl、200mM MgCl)、2μl APS(30mM)、0.5μl 捕捉オリゴヌクレオチド(T2(配列番号:7)(図7のAを参照のこと)、1μM)、及び1.8μlのdCTP/dTTP/dGTP混合物(各33mM)を混合することによって、総容量100μlの反応混合物を調製した。この反応混合物を、反応混合物を、漸減する濃度の標的オリゴヌクレオチド(R6(配列番号:6)、0mM、1pM、10pM、100pM、1nM、10nM、1μM)が入った白色96ウェルプレートの個々のウェルに添加し、直ちにTECANプレートリーダー中に載置し、室温、400ミリ秒の積分時間で2000秒間、発光シグナルを読み取った。
【0073】
図6のAは、標的オリゴヌクレオチドの濃度の漸減に応答した発光シグナルを示している。1ピコモル濃度(10-12mol/L)~1マイクロモル濃度(10-6mol/L)の濃度の検出範囲が示されている。図6のBは、さらなる最適化が必要ではあるが、反応速度論から計算した図6のAのまとめ(すなわち、ピコMで表した上記オリゴヌクレオチドの濃度の関数としての初期反応段階の傾き)が、高感度及び広いダイナミックレンジを示すことを表している。
【0074】
実施例4 捕捉オリゴヌクレオチドの5’及び3’尾部の設計がTET-miRNA反応速度に影響
0.05μl ATPスルフリラーゼ(NEB、M0394S、300U/ml)、0.25μl クレノウ(NEB、Lgフラグメント、M0210S、5000U/ml)、5μl His-Si-ルシフェラーゼ(実験室での自家製)、5μl ルシフェリン(200mM)、5μlの20×ルシフェラーゼ緩衝液(50mM HEPES、40mM KCl、200mM MgCl)、2μl APS(30mM)、1μl 標的オリゴヌクレオチド(R6(配列番号:6)、100μM)、及び1.8μlのdNTP Mix(各33mM)を混合することによって、総容量100μlの反応混合物を調製した。この反応混合物を、1μlの各捕捉オリゴヌクレオチド(T2~T6(配列番号:7~11)、100μM)が入った白色96ウェルプレートの個々のウェルに添加し、直ちにTECANプレートリーダー中に載置し、室温、400ミリ秒の積分時間で1000秒間、発光シグナルを読み取った。
【0075】
図7のAに示すように、数種の設計の捕捉オリゴヌクレオチドを生成させた(T2~T6(配列番号:7~11))。すべての設計に類似する相補的挿入配列(R6標的オリゴヌクレオチドに相補的、下線付き文字で示す)が含まれる。図7のBは、種々の捕捉オリゴヌクレオチド(図7のAに提示)の存在下で測定した、標的オリゴヌクレオチドの添加に応答した発光シグナルを示す。図7のCは図7のBのまとめであり、種々の捕捉オリゴヌクレオチドについて計算した反応勾配によって示される、アニーリング速度論の違いを示している。
【0076】
実施例5 捕捉オリゴヌクレオチドdATPの含有量がTET-miRNA反応速度論に影響
0.05μl ATPスルフリラーゼ(NEB、M0394S、300U/ml)、0.25μl クレノウ(NEB、Lgフラグメント、M0210S、5000U/ml)、5μl His-Si-ルシフェラーゼ(実験室での自家製)、5μl ルシフェリン(200mM)、5μlの20×ルシフェラーゼ緩衝液(50mM HEPES、40mM KCl、200mM MgCl)、2μl APS(30mM)、1μl 標的オリゴヌクレオチド(R6(配列番号:6)、100μM)、及び1.8μlのdNTP Mix(各33mM)を混合することによって、総容量100μlの反応混合物を調製した。この反応混合物を、1μlの各捕捉オリゴヌクレオチド(T1(配列番号:12)+T1A~T1E(配列番号:13~17)、100μM))が入った白色96ウェルプレートの個々のウェルに添加し、直ちにTECANプレートリーダー中に載置し、室温、400ミリ秒の積分時間で1000秒間、発光シグナルを読み取った。
【0077】
図8のAに示すように、上記標的オリゴヌクレオチド、hsa-let-7a-5pの検出のために、漸増する割合のdATP(27%~63%)を含む6種の捕捉オリゴヌクレオチドを設計した(すべてが、下線付き文字で示す類似する相補的挿入配列を有する)。図8のBは、上記捕捉オリゴヌクレオチド配列内のdATP含有量が40%~50%で最上の活性を示すデータのまとめである。この知見は驚くべきものであり、顕著な向上を表している。
【0078】
実施例6 捕捉オリゴヌクレオチドの3’尾部長がTET-miRNA反応の活性及び反応速度論に影響
0.05μl ATPスルフリラーゼ(NEB、M0394S、300U/ml)、0.25μl クレノウ(NEB、Lgフラグメント、M0210S、5000U/ml)、5μl His-Si-ルシフェラーゼ(実験室での自家製)、5μl ルシフェリン(200mM)、5μlの20×ルシフェラーゼ緩衝液(50mM HEPES、40mM KCl、200mM MgCl)、2μl APS(30mM)、1μl 標的オリゴヌクレオチド(R6(配列番号:6)、100μM)、及び1.8μlのdNTP Mix(各33mM)を混合することによって、総容量100μlの反応混合物を調製した。この反応混合物を、1μlの各捕捉オリゴヌクレオチド(T1~T9(配列番号:12及び配列番号:18~25)、100μM))が入った白色96ウェルプレートの個々のウェルに添加し、直ちにTECANプレートリーダー中に載置し、室温、400ミリ秒の積分時間で1000秒間、発光シグナルを読み取った。
【0079】
図9のAに示すように、上記標的オリゴヌクレオチド、hsa-let-7a-5pの検出のために、9種の捕捉オリゴヌクレオチドを設計した。上記9種の捕捉オリゴヌクレオチドは、miRNAの相補的挿入部位に続く、該オリゴヌクレオチドの配列の3’末端に、漸減する数のヌクレオチド(下線付き文字で示す)を含む。図9のBは、5~8個のヌクレオチドが上記標的オリゴヌクレオチドの相補的挿入配列の3’に付加されると、最適なTET-miRNAアッセイの活性が得られることを示している。
【0080】
実施例7 TET-miRNAアッセイはMIR-340標的オリゴヌクレオチドの配列の変異に敏感
0.05μl ATPスルフリラーゼ(NEB、M0394S、300U/ml)、0.25μl クレノウ(NEB、Lgフラグメント、M0210S、5000U/ml)、5μl His-Si-ルシフェラーゼ(実験室での自家製)、5μl ルシフェリン(200mM)、5μlの20×ルシフェラーゼ緩衝液(50mM HEPES、40mM KCl、200mM MgCl)、2μl APS(30mM)、1μl 捕捉オリゴヌクレオチド(T2、100μM)、及び1.8μlのdNTP Mix(各33mM)を混合することによって、総容量100μlの反応混合物を調製した。この反応混合物を、1μlの各標的オリゴヌクレオチド(MIR-340#1~MIR-340#7(配列番号:27~33)、100μM)が入った白色96ウェルプレートの個々のウェルに添加し、直ちにTECANプレートリーダー中に載置し、室温、400ミリ秒の積分時間で1200秒間、発光シグナルを読み取った。
【0081】
図10のAに示すように、MIR340標的オリゴヌクレオチド(MIR-340#1(配列番号:27))及び種々の変異配列(MIR-340#2-#7)(配列番号:28~33)をこの実験で使用し、且つ2種の対照(未変異のMIR-340#2に対するもの、及びいずれの標的オリゴヌクレオチドも除外した反応混合物である対照)も使用した(変異ヌクレオチドを下線付き文字で示す)。図10のB及びCは、Aに示す種々の変異に対して測定した発光シグナル及び速度論を示す。図10のAのデータは、試験したすべての変異により、測定したシグナルにおいて検出可能な差異が誘発されたことを示す。
【0082】
実施例8 TET-miRNAアッセイはヒト血清及びヒト血漿中の天然に存在するmiRNAを検出することが可能
0.05μl ATPスルフリラーゼ(NEB、M0394S、300U/ml)、0.25μl クレノウ(NEB、Lgフラグメント、M0210S、5000U/ml)、5μl His-Si-ルシフェラーゼ(実験室での自家製)、5μl ルシフェリン(200mM)、5μlの20×ルシフェラーゼ緩衝液(50mM HEPES、40mM KCl、200mM MgCl)、2μl APS(30mM)、1μlの、図10のAに列挙する、天然に存在するmiRNAを標的とする捕捉オリゴヌクレオチド(100μM)、及び1.8μlのdNTP Mix(各33mM)を混合することによって、総容量40μlの反応混合物を調製した。この反応混合物を、60μlのヒト血清またはヒト血漿が入った白色96ウェルプレートの個々のウェルに添加し、直ちにTECANプレートリーダー中に載置し、室温、400ミリ秒の積分時間で500秒間、発光シグナルを読み取った。
【0083】
図11のAに示すように、市販のヒト血清中の6種の異なる天然に存在するmiRNAを検出するように、6種の捕捉オリゴヌクレオチドを設計した。TET-miRNA反応のリアルタイムでの速度論を示す。図11のBは図11のAのまとめであり、生物発光シグナルを500秒間積分し、試験した血清試料中の種々のmiRNAの相対量を示す。
【0084】
図12に示すように、3名のヒトドナー由来の血漿試料(Guthrie Medical Center, Sayre PAにて採取)を、6種の天然に存在するmiRNAのパネルについてTET-miRNAを用いて試験した。
【0085】
実施例9 リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)処理によってTET-miRNA活性が消失
0.05μl ATPスルフリラーゼ(NEB、M0394S、300U/ml)、0.25μl クレノウ(NEB、Lgフラグメント、M0210S、5000U/ml)、5μl His-Si-ルシフェラーゼ(実験室での自家製)、5μl ルシフェリン(200mM)、5μlの20×ルシフェラーゼ緩衝液(50mM HEPES、40mM KCl、200mM MgCl)、2μl APS(30mM)、1μlの、図12に記載の天然に存在するmiRNAを標的とする捕捉オリゴヌクレオチド(100μM)、及び1.8μlのdNTP Mix(各33mM)を混合することによって、総容量40μlの反応混合物を調製した。この反応混合物を、60μlのヒト血漿が入った白色96ウェルプレートの個々のウェルに添加し、直ちにTECANプレートリーダー中に載置し、室温、400ミリ秒の積分時間で500秒間、発光シグナルを読み取った。
【0086】
図13のAは、3名の対象由来の血漿試料(Guthrie(Sayre, PA)にて採取)を、4種の天然に存在するmiRNAのパネルについてTET-miRNAを用いて試験した結果示す。図13のBは、室温で30分間RNアーゼ-Aで処理した後に観測された、シグナルの顕著な減少を示す。
【0087】
実施例10 NPへの固定化による反応と溶液中での反応による標的オリゴヌクレオチド検出の分析
ストレプトアビジンでコーティングしたミクロスフェア(500nm SiO,Bangs Laboratory,IN,USA)上に、製造元の説明に従ってビオチン化酵素を固定化し、次いで未結合のタンパク質を遠心分離によって3回洗浄した。NPに係留した酵素または係留していない酵素の等量を、反応混合物当りの総容量が100μlの、5μl His-Si-ルシフェラーゼ(実験室での自家製)、5μl ルシフェリン(200mM)、5μlの20×ルシフェラーゼ緩衝液(50mM HEPES、40mM KCl、200mM MgCl)、2μl APS(30mM)、1μl 捕捉オリゴヌクレオチド(Cap-HAS-MIR-451a、1μM)、及び1.8μlのdCTP/dTTP/dGTP混合物(各33mM)の反応混合物に添加した。この反応混合物を、標的オリゴヌクレオチド(HAS-MIR-451a、1μM)が入った白色96ウェルプレートの個々のウェルに添加し、直ちにTECANプレートリーダー中に載置し、室温、400ミリ秒の積分時間で2000秒間、発光シグナルを読み取った。
【0088】
市販のヒト血清試料に等量の標的オリゴヌクレオチド、HSA-MIR-451aをスパイクし、これを、可溶性の酵素ルシフェラーゼ/ATP-スルフリラーゼ/クレノウ(図14のA、溶液)、またはNPに係留した上記酵素(図14のB、NP)を含むTET-miRNA反応混合物に添加した。ビオチン化による非配向性固定化を使用して、DNAポリメラーゼ及びATP-スルフリラーゼをNPに係留したことに留意されたい。ATPスルフリラーゼ(NEB、M0394S、300U/ml)及びクレノウ(NEB、Lgフラグメント、M0210S、5000U/ml)を、EZ-Link Sulfo-NHS-LC-ビオチン化キット(Thermo Scientific,USA)を使用し、製造元の説明に従ってビオチン化した。
【0089】
実施例11 ビオチン-ストレプトアビジン結合を介した市販BST2.0のNPへの固定化によりTET-miRNA反応アッセイが阻害される
BST2.0(NEB、M0537S、8000U/ml)を、EZ-Link Sulfo-NHS-LC-ビオチン化キット(Thermo Scientific,USA)を使用し、製造元の説明に従ってビオチン化した。ストレプトアビジンでコーティングしたミクロスフェア(500nm SiO,Bangs Laboratory,IN,USA)上に、製造元の説明に従って上記ビオチン化酵素を固定化し、次いで未結合のタンパク質を遠心分離によって3回洗浄した。NPに係留したBST2.0または係留していないBST2.0の等量を、反応混合物当りの総容量が100μlの、0.05μl ATPスルフリラーゼ(NEB、M0394S、300U/ml)、5μl His-Si-ルシフェラーゼ(実験室での自家製)、5μl ルシフェリン(200mM)、5μlの20×ルシフェラーゼ緩衝液(50mM HEPES、40mM KCl、200mM MgCl)、2μl APS(30mM)、1μl 捕捉オリゴヌクレオチド(Cap-HSA-MIR-451a、1μM)、及び1.8μlのdCTP/dTTP/dGTP混合物(各33mM)の反応混合物に添加した。この反応混合物を、標的オリゴヌクレオチド(HSA-MIR-451a、1μM)が入った白色96ウェルプレートの個々のウェルに添加し、直ちにTECANプレートリーダー中に載置し、室温、400ミリ秒の積分時間で2000秒間、発光シグナルを読み取った。
【0090】
市販のヒト血清試料に等量のHSA-MIR-451aをスパイクし、これを、可溶性の酵素ルシフェラーゼ/ATP-スルフリラーゼ/Bst2.0(図15のA、溶液)、またはビオチン化を介してBst2.0をNP上に固定化したものに換えたもの(図15のB、NP)を含むTET-miRNA反応混合物に添加した。これらのデータは、その活性にビオチン化が悪影響を及ぼしたことを示しており、Bst2.0が非配向性固定化を介してNPに係留された場合はさらに悪影響があった。
【0091】
実施例12 TET-miRNAアッセイは温度の影響をわずかにしか受けない
0.05μl ATPスルフリラーゼ(NEB、M0394S、300U/ml)、0.25μl クレノウ(NEB、Lgフラグメント、M0210S、5000U/ml)、5μl His-Si-ルシフェラーゼ(実験室での自家製)、5μl ルシフェリン(200mM)、5μlの20×ルシフェラーゼ緩衝液(50mM HEPES、40mM KCl、200mM MgCl)、2μl APS(30mM)、1μlのHas-let-7a-5p miRNAを標的とする捕捉オリゴヌクレオチド(100μM)、1.8μlのdNTP Mix(各33mM)、及びHas-let-7a-5pオリゴヌクレオチドを混合することによって、総容量100μlの反応混合物を調製した。この反応混合物を白色96ウェルプレートの個々のウェルに添加し、直ちにTECANプレートリーダー中に載置し、示した種々の温度において発光シグナルを読み取った。発光は400ミリ秒の積分時間で1000秒間測定した。
【0092】
図16のAに示すように、市販のヒト血清試料に等量の標的オリゴヌクレオチドをスパイクし、これを種々の温度(25℃~40℃)でTET-miRNA反応混合物に添加した。初期における反応速度論のパラメータ(勾配から測定、図16のB)及び効率(積分シグナルから測定、図16のC)に僅かな差異が観測されたのみであった。
【0093】
実施例13 ヒト血清中のmiRNAを検出するための2種の異なる捕捉オリゴヌクレオチド設計の分析
0.05μl ATPスルフリラーゼ(NEB、M0394S、300U/ml)、0.25μl クレノウ(NEB、Lgフラグメント、M0210S、5000U/ml)、5μl His-Si-ルシフェラーゼ(実験室での自家製)、5μl ルシフェリン(200mM)、5μlの20×ルシフェラーゼ緩衝液(50mM HEPES、40mM KCl、200mM MgCl)、2μl APS(30mM)、1μlのCAP1(ない列番号34)またはCAP2(配列番号:35)捕捉オリゴヌクレオチド(100μM)、1.8μlのdNTP Mix(各33mM)、及び被検オリゴヌクレオチドを混合することによって、総容量100μlの反応混合物を調製した。この反応混合物を白色96ウェルプレートの個々のウェルに添加し、直ちにTECANプレートリーダー中に載置し、室温で発光シグナルを読み取った。発光は400ミリ秒の積分時間で1000秒間測定した。
【0094】
図17Aは、ヒト血漿中の天然に存在する6種の異なるmiRNAを検出するために試験した2種の捕捉オリゴヌクレオチドの設計を示す。CAP1はランダムなヌクレオチド配列であり、CAP2においては、5’尾部及び3’尾部はアデノシンのみを含む。図17Bは、天然に存在するmiRNA、ならびに類似の配列であるDNA系標的オリゴヌクレオチド(試験オリゴヌクレオチド)の両方を検出するTET-miRNA反応のリアルタイム速度論を示す。図17C図17Bに示したデータの拡大部分であり、種々のmiRNA分子の発光シグナルを示す。図17D図17Aのまとめであり、発光シグナルを500秒間積分し、種々のmiRNAの相対量を示す。図17Eは天然に存在するmiRNA(図17Cに示す)のみの測定値のまとめである。
【0095】
実施例14 TET-miRNAアッセイにおける種々のDNAポリメラーゼ活性の比較
0.05μl ATPスルフリラーゼ(NEB、M0394S、300U/ml)、DNAポリメラーゼ(図17Aに示す)、5μl His-Si-ルシフェラーゼ(実験室での自家製)、5μl ルシフェリン(200mM)、5μlの20×ルシフェラーゼ緩衝液(50mM HEPES、40mM KCl、200mM MgCl)、2μl APS(30mM)、1μlのhsa-let-7a-5p miRNAを標的とする捕捉オリゴヌクレオチド(100μM)、1.8μlのdNTP Mix(各33mM)、及びhsa-let-7a-5pオリゴヌクレオチドを混合することによって、総容量100μlの反応混合物を調製した。この反応混合物を白色96ウェルプレートの個々のウェルに添加し、直ちにTECANプレートリーダー中に載置し、室温、400ミリ秒の積分時間で500秒間、発光シグナルを読み取った。
【0096】
図18Aは、この実験で使用したDNAポリメラーゼ、及びいくつかのそれらの重要な特徴の一覧である。図18Bに示すように、市販のヒト血清試料に等量のmiRNAオリゴヌクレオチドをスパイクし、これを種々のDNA-ポリメラーゼの存在下で(室温で)TET-miRNA反応混合物に添加した。反応速度論の棒グラフ(反応の初期勾配から計算)は、Bst、クレノウ、及びTerminator DNA-Polyがこれらの実験条件下で最速の反応速度論を与えることを示す。対照1(CTRL1)の反応混合物は捕捉オリゴヌクレオチド含まない一方、対照2(CTRL2)はDNAポリメラーゼを含まない。前の図のデータを得るために使用したBst及びクレノウ変異体の棒を強調表示している。
【0097】
実施例15 TET-miRNAを係留して使用した場合と溶液で使用した場合での標的オリゴヌクレオチドの検出の比較
等量のNP係留酵素または非係留酵素、5μl His-Si-ルシフェラーゼ、5μl ルシフェリン(200mM)、5μlの20×ルシフェラーゼ緩衝液(50mM HEPES、40mM KCl、200mM MgCl)、2μl APS(30mM)、1μl 捕捉オリゴヌクレオチド(T2(配列番号:7)、100μM)、及び1.8μlのdCTP/dTTP/dGTP混合物(各33mM)からなる反応混合物を調製した。この反応混合物を、漸増する量の標的オリゴヌクレオチド(R6(配列番号:6)、200nM、500nM、及び1uM)が入った白色96ウェルプレートの個々のウェルに添加し、直ちにTECANプレートリーダー中に載置し、室温、400ミリ秒の積分時間で1400秒間、発光シグナルを読み取った。
【0098】
図19AはHis-Si-酵素の設計の概略図である(ATPS:ATP-スルフリラーゼ、DNA-Pol:DNAポリメラーゼ、Luc:ルシフェラーゼ)。以下をコードする遺伝子、すなわち、ATP-スルフリラーゼ(MET3、硫酸アデニリルトランスフェラーゼ、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、BST(バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus) DNAポリメラーゼI(pol)遺伝子)、及びクレノウ(大腸菌(Escherichia coli)株LD93-1 DNAポリメラーゼI)を、His-Siタグと融合させてpET17bベクター中に挿入し、細菌タンパク質を発現させた。上記His-Si-タンパク質はNi-NTAビーズを使用して精製し、使用するまでソルビトールを含む天然タンパク質緩衝液(native protein buffer)(NPB)中で保存した。図19Bは、上記反応混合物を使用して実施した、係留の場合と溶液中の場合の酵素活性の測定を示す。これらのデータは、TET-miRNA酵素が500nm SiO NPに固定化されている場合(NP、左の図)、または溶液中の場合(Sol、右)の個々の反応混合物の速度論を示す。図19Cは反応速度論(当該の反応混合物の初期勾配から計算)の棒グラフであり、TET-miRNA酵素がNPに係留されている場合、カップリング反応がより速い反応速度論で起きていることを示す。図19Dは、漸増する濃度のR6標的オリゴヌクレオチドの検出におけるNP TET-miRNA反応のまとめである。
【0099】
実施例16 TET-miRNAアッセイにおけるHis-Si-クレノウとHis-Si-BSTの活性の比較(係留と非係留の比較)
等量のNP係留酵素または非係留酵素、5μl His-Si-ルシフェラーゼ、5μl ルシフェリン(200mM)、5μlの20×ルシフェラーゼ緩衝液(50mM HEPES、40mM KCl、200mM MgCl)、2μl APS(30mM)、1μl 捕捉オリゴヌクレオチド(T2(配列番号:7)、100μM)、及び1.8μlのdCTP/dTTP/dGTP混合物(各33mM)からなる反応緩衝液使用して、係留の場合と溶液中の場合の酵素活性の測定を実施した。この反応混合物を、標的オリゴヌクレオチド(R6(配列番号:6)、1μM)が入った白色96ウェルプレートの個々のウェルに添加し、直ちにTECANプレートリーダー中に載置し、室温、400ミリ秒の積分時間で1200秒間、発光シグナルを読み取った。
【0100】
図20のAに示すように、E.coli由来のラージクレノウフラグメント(大腸菌(Escherichia coli)株LD93-1 DNAポリメラーゼI)を、His-Siアフィニティータグの下流の融合タンパク質として発現させた。図20のBは、His-Si-クレノウの溶液中での活性を、DNA-pol I、His-Si-BST2(バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus Stearo Thermophilus)由来)の活性と比較して示す。His-Si-BSTは、初期反応速度及び全体にわたる活性に関する限り、わずかにより良好な活性速度論を示した。図20のCは、上記反応酵素が500nm SiOナノ粒子に係留する場合の上記2種のDNAポリメラーゼの活性の比較を示す。ここでも、His-Si-BSTはより良好活性を示した。さらに、上記反応混合物が係留酵素を含んでいた場合には、クレノウとBSTの両方が活性の向上を示した。
【0101】
実施例17 種々の比率のHis-Si-ATPS/His-Si-BST/NPを使用した標的オリゴヌクレオチド検出の比較
20μl NP-His-Si-BST(図20のBに示す、種々の酵素/NPの比率の)、20μl NP-His-Si-ATPS、5μl His-Si-ルシフェラーゼ、5μl ルシフェリン(200mM)、5μlの20×ルシフェラーゼ緩衝液(50mM HEPES、40mM KCl、200mM MgCl)、2μl APS(30mM)、1μl 捕捉オリゴヌクレオチド(T2(配列番号:7)、100μM)、及び1.8μlのdCTP/dTTP/dGTP混合物(各33mM)からなる反応混合物を使用して酵素活性の測定を実施した。この反応混合物を、1μlの標的オリゴヌクレオチド(R6、100μM)が入った白色96ウェルプレートの個々のウェルに添加し、直ちにTECANプレートリーダー中に載置し、室温、400ミリ秒の積分時間で2000秒間、発光シグナルを読み取った。
【0102】
図21のAは、His-Si-BST2(DNA-Pol):ATPSの比率が0.1:1から2.5:1へと漸増する場合の実験のまとめである。図21のBは、His-Si-BST2(DNA-Pol):NPの比率が0.1:1から10:1へと漸増する場合の実験のまとめである。
【0103】
実施例18 TET-miRNA(His-Si-酵素)及びDNA捕捉オリゴヌクレオチドを使用したmiRNA(RNAオリゴヌクレオチド)検出
20μl NP-His-Si-BST、20μl NP-His-Si-ATPS、5μl NP-His-Si-ルシフェラーゼ、5μl ルシフェリン(200mM)、5μlの20×ルシフェラーゼ緩衝液(50mM HEPES、40mM KCl、200mM MgCl)、2μl APS(30mM)、1μl 捕捉オリゴヌクレオチド(T2(配列番号:7)、100μM)、及び1.8μlのdCTP/dTTP/dGTP混合物(各33mM)からなる反応混合物を使用して酵素活性の測定を実施した。この反応混合物を、DNAまたはRNA標的オリゴヌクレオチド(R5(配列番号:38及び39)またはR6(配列番号:36及び37)、1μM)が入った白色96ウェルプレートの個々のウェルに添加し、直ちにTECANプレートリーダー中に載置し、室温、400ミリ秒の積分時間で2500秒間、発光シグナルを読み取った。
【0104】
図22のAは、製造会社(IDT,San Diego CA)によって提供されたままの標的オリゴヌクレオチド(RNA及びDNA)の配列、及びそれらを検出するように設計した捕捉オリゴヌクレオチド(T2)の配列を示す。図22のBは、係留酵素を使用して、RNAと相当するDNA標的オリゴヌクレオチドを検出するTET-miRNA反応を示す。図22のCは、図22のAに示すデータのまとめであり、計算した反応の初期速度(勾配)を示す。
【0105】
実施例19 異なる非係留DNAポリメラーゼ(His-Si-クレノウとHis-Si-BST)の標的オリゴヌクレオチドのミスマッチに対する感度を比較する分析
20μl NP-His-Si-BSTまたはNP-His-Si-クレノウ、20μl NP-His-Si-ATPS、5μl NP-His-Si-ルシフェラーゼ、5μl ルシフェリン(200mM)、5μlの20×ルシフェラーゼ緩衝液(50mM HEPES、40mM KCl、200mM MgCl)、2μl APS(30mM)、1μl の捕捉オリゴヌクレオチド(T2(配列番号:7)、100μM)、及び1.8μlのdCTP/dTTP/dGTP混合物(各33mM)からなる反応混合物を使用して酵素活性の測定を実施した。この反応混合物を、1μlの各標的オリゴヌクレオチド(1μM)が入った白色96ウェルプレートの個々のウェルに添加し、直ちにTECANプレートリーダー中に載置し、室温、400ミリ秒の積分時間で2000秒間、発光シグナルを読み取った。
【0106】
図23のAに示すように、本実施例で試験した標的オリゴヌクレオチド中の、該標的オリゴヌクレオチド配列の3’末端に、漸増する割合の捕捉オリゴヌクレオチドT2の配列に対するミスマッチヌクレオチドを導入した(下線付き文字で示す)。R1(配列番号:1)及びR6(配列番号:6)オリゴヌクレオチドの両方が捕捉オリゴヌクレオチド配列とマッチするが、それらのGC含量は異なるレベルである。図23のBは、種々のオリゴヌクレオチドに対するTET-miRNA反応の初期速度のまとめであり、クレノウを用いた場合及びBSTを用いた場合の両方の場合において、100%マッチの配列では、初期の反応勾配から計算される、顕著に速い速度論を示す。図23のCは、種々のミスマッチオリゴヌクレオチドの存在下と、100%マッチオリゴヌクレオチドの存在下での反応速度の比を計算することによって、上記2種のDNAポリメラーゼが、標的オリゴヌクレオチド中のミスマッチ含有量に対してどの程度敏感であるかの尺度が提供されることを示しており、BSTポリメラーゼはミスマッチの割合に応じて2~5倍より敏感になる。
【0107】
実施例20 捕捉オリゴヌクレオチドが溶液中の場合と固定化される(非配向性)場合でのTET-miRNA反応の係留化の比較
20μl NP-His-Si-BSTまたはNP-His-Si-クレノウ、20μl NP-His-Si-ATPS、5μl NP-His-Si-ルシフェラーゼ、5μl ルシフェリン(200mM)、5μlの20×ルシフェラーゼ緩衝液(50mM HEPES、40mM KCl、200mM MgCl)、2μl APS(30mM)、1μl 捕捉オリゴヌクレオチド(T2(配列番号:7)、100μM)、及び1.8μlのdCTP/dTTP/dGTP混合物(各33mM)からなる反応混合物を使用して酵素活性の測定を実施した。この反応混合物を、1μlの標的オリゴヌクレオチド(1μM)が入った白色96ウェルプレートの個々のウェルに添加し、直ちにTECANプレートリーダー中に載置し、室温、400ミリ秒の積分時間で1500秒間、発光シグナルを読み取った。
【0108】
上記TET-miRNA反応は、捕捉オリゴヌクレオチドを、溶液中の形態、または非特異的吸着によってSiO NP上に固定化した形態(捕捉オリゴヌクレオチドをSiO NPと室温で30分間インキュベートし、次いで遠心分離により洗浄して、天然タンパク質緩衝液中に保存)のいずれかで使用して実施した。図24は、NP上に上記捕捉オリゴヌクレオチドを吸着させることにより、標的オリゴヌクレオチドを検出する該捕捉オリゴヌクレオチドの能力が著しく低下することを示す。
【0109】
実施例21 捕捉オリゴヌクレオチドが溶液中の場合とビオチン-ストレプトアビジンを介してSiO NPに固定化されている場合のTET-miRNA反応を比較する分析
20μl His-Si-BST、20μl His-Si-ATPS、5μl His-Si-ルシフェラーゼ、5μl ルシフェリン(200mM)、5μlの20×ルシフェラーゼ緩衝液(50mM HEPES、40mM KCl、200mM MgCl)、2μl APS(30mM)、1μlのNP-捕捉オリゴヌクレオチド(T2(配列番号:7)、100μM)、及び1.8μlのdCTP/dTTP/dGTP混合物(各33mM)からなる反応混合物を使用して酵素活性の測定を実施した。この反応混合物を、1μlの標的オリゴヌクレオチド(R6(配列番号:6)、1μM)が入った白色96ウェルプレートの個々のウェルに添加し、直ちにTECANプレートリーダー中に載置し、室温、400ミリ秒の積分時間で2000秒間、発光シグナルを読み取った。
【0110】
図25Aは、生成した固定化可能な2種の形態の捕捉オリゴヌクレオチドを同定し、上記オリゴヌクレオチドにおいて、ビオチンタグは5’または3’末端のいずれかに結合している(ビオチン化オリゴヌクレオチドはIDT,CA,USAから購入した)。上記3’及び5’ビオチン化オリゴヌクレオチドを、ストレプトアビジンでコーティングされたSiO NP(500nm,Bangs Laboratory,IN,USA)上に、製造元の説明に従って固定化し、次いで未結合のたんぱく質を遠心分離によって3回洗浄した。TET-mRNA反応は、酵素(DNA-Pol、ATP、及びLuc)が溶液中であり、ストレプトアビジンでコーティングされた500nm SiO NPに係留した捕捉オリゴヌクレオチドを使用すると、低い活性を示した。図25Bは、5’ビオチン化した捕捉オリゴヌクレオチドの存在下で、TET-mRNA酵素も(Siタグを介して)NPに固定化された場合に、顕著により高い活性が得られたが、3’ビオチン化した捕捉オリゴヌクレオチドは、非常に低い活性しか示さないか、または全く活性を示さなかったことを示す。
【0111】
本明細書において、好ましい実施形態を詳細に描き且つ説明してきたが、関連技術分野の当業者であれば、本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な改変、追加、置換などを行うことができること、及び、したがって、これらは添付の特許請求の範囲において規定される本発明の範囲内にあると見なされることは明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17-1】
図17-2】
図18A-1】
図18A-2】
図18B
図19-1】
図19-2】
図20
図21
図22
図23
図24
図25A
図25B
【手続補正書】
【提出日】2021-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2022521772000001.app
【国際調査報告】