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  • 特表-水性顔料インク 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-12
(54)【発明の名称】水性顔料インク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/00 20140101AFI20220405BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20220405BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220405BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20220405BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
C09D11/00
A61Q1/02
A61K8/81
A61K8/25
A61K8/73
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549940
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(85)【翻訳文提出日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2020055185
(87)【国際公開番号】W WO2020174061
(87)【国際公開日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】202019101134.3
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】306041363
【氏名又は名称】シュワン-スタビロ コスメティクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Schwan-STABILO Cosmetics GmbH&Co.KG
【住所又は居所原語表記】Schwanweg 1,D-90562 Heroldsberg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】インゴルフ カーレ
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス ヴォルフ
(72)【発明者】
【氏名】ユーリア ザント
【テーマコード(参考)】
4C083
4J039
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB232
4C083AB371
4C083AB431
4C083AB432
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC272
4C083AC302
4C083AD052
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD202
4C083AD261
4C083AD262
4C083AD351
4C083AD352
4C083AD662
4C083BB21
4C083EE03
4J039AB01
4J039AB02
4J039BA20
4J039BA21
4J039BE01
4J039BE15
4J039BE19
4J039BE21
4J039BE22
4J039BE23
4J039EA41
4J039EA44
(57)【要約】
毛管貯蔵システムで使用するための水性顔料インクであって、少なくとも1種の顔料、少なくとも1種の水分散性皮膜形成成分、約0.5~約4.5質量%の少なくとも1種の懸濁物質、および約0.01~約0.5質量%のゲル形成剤の組み合わせを水性ビヒクル中に含み、前記ゲル形成剤の組み合わせは、少なくとも1種の鉱物質ゲル形成剤と少なくとも1種の有機増粘剤とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の顔料と、少なくとも1種の水分散性皮膜形成成分と、約0.5~約4.5質量%の少なくとも1種の懸濁物質と、約0.01~約0.5質量%のゲル形成剤の組み合わせとを水性ビヒクル中に含有する、毛管貯蔵システム中で使用するための水性顔料インクであって、前記ゲル形成剤の組み合わせが、少なくとも1種の鉱物質ゲル形成剤と、少なくとも1種の有機増粘剤とを含む、水性顔料インク。
【請求項2】
前記鉱物質ゲル形成剤が、少なくとも1種の膨潤性層状ケイ酸塩を含み、かつ/または前記有機増粘剤が、増粘特性を有する少なくとも1種の多糖類を含むことを特徴とする、請求項1に記載の水性顔料インク。
【請求項3】
前記膨潤性層状ケイ酸塩が、少なくとも1種のヘクトライトおよび/またはその誘導体および/またはその変異体を含み、かつ/または増粘特性を有する前記多糖類が、少なくとも1種のキサンタンガムおよび/またはその誘導体および/またはその変異体、および/またはセルロースおよび/またはその誘導体および/またはその変異体を含むことを特徴とする、請求項2に記載の水性顔料インク。
【請求項4】
前記水分散性皮膜形成成分が、少なくとも1種のアクリレート系皮膜形成剤を含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の水性顔料インク。
【請求項5】
前記懸濁物質の少なくとも1種がヒュームドシリカであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の水性顔料インク。
【請求項6】
前記ゲル形成剤の組み合わせがヘクトライト、キサンタンガムおよびセルロースを含むことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の水性顔料インク。
【請求項7】
5~100μmの粒径を有する少なくとも1種の効果顔料を含有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の水性顔料インク。
【請求項8】
前記水性顔料インクが、1~3質量%の少なくとも1種の懸濁物質および/または0.01~0.25質量%のゲル形成剤の組み合わせを含有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の水性顔料インク。
【請求項9】
前記ゲル形成剤の組み合わせがヘクトライト、キサンタンガムおよびセルロースからなり、これら3種類のゲル形成剤が、0.8~1.2:0.8~1.2:0.8~1.2の質量比で、より好ましくは1:1:1の質量比で存在することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の水性顔料インク。
【請求項10】
前記効果顔料が、フレーク、パール顔料、ホウケイ酸塩、金雲母またはこれらの混合物から選択される少なくとも1種の顔料を含むことを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項に記載の水性顔料インク。
【請求項11】
毛管貯蔵システムおよび請求項1から10までのいずれか1項に記載の水性顔料インクを含むペン。
【請求項12】
容器および請求項1から10までのいずれか1項に記載の水性顔料インクを含む、毛管貯蔵システムに基づくペンのためのレフィル容器。
【請求項13】
毛管貯蔵システムおよび請求項1から10までのいずれか1項に記載の水性顔料インクを含む化粧用ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛管貯蔵システムに基づくペンにおいて使用することができる水性顔料インクに関する。
【背景技術】
【0002】
顔料を含有する水性インクは、昔から様々な用途に関して知られている。インクは、基材上に永久的な線またはパターンを生成するために使用される。基材上で不透明な色の層を得るためには顔料を使用しなければならない。というのも、可溶性染料は一般に退色し、背景が透けて見え、色合いが変化し、特に光および温度によって変化するからである。顔料は、使用する媒体中で実質的に不溶性である無機もしくは有機の、有彩色もしくは無彩色の着色剤のための用語である。顔料は、種々な粒径で使用することができる。いずれの場合でも、実質的に不溶性の顔料粒子が水性ビヒクル中に分散されている分散系が存在する。この種の系は懸濁液とも呼ばれる。顔料粒子の比重は一般に、ビヒクル材料として使用される水の比重よりも大きいので、顔料粒子は容易に沈降し、貯蔵容器内で凝集体を形成する。顔料を微分散した状態に維持するためには、界面活性剤を使用することが知られている。界面活性剤は、懸濁液中で微細に分散された非常に小さい粒子を長時間にわたって保持することができ、かつ少なくとも沈降を遅らせることができる。しかし、一定の時間の後には沈降が発生し、最終的に不均質性につながる可能性がある。そのままで直接使用される顔料分散液の場合には、振とうすることによって均一な分散液を再度確立することができるので、これはしばしば大きな問題ではない。しかし、毛管貯蔵システム中で使用されるインクについては、沈降が貯蔵システムの目詰まりを引き起こし、および/または沈降していない物質の液状成分のみがシステム内に運ばれるため、許容することができない。
【0003】
沈降の問題は、微細に分散された小さい粒子であっても影響を及ぼす。効果顔料として知られている顔料がインクに添加されると、この問題は悪化する。効果顔料は一般に、フレーク、ビーズ、層状ケイ酸塩などの形態をとる比較的大きな粒子である。水性ビヒクル中でのこのような粒子の沈降を防止するために、界面活性剤はもはや十分ではない。また、その効果を損なうことなく効果顔料の形状や大きさを変更することができず、これは、このような種類の顔料をミリングの工程で粉砕することはできないことを意味する。
【0004】
効果顔料のような比較的大きな粒子顔料を長期間にわたって懸濁液中で維持するためには、懸濁物質を添加することが知られている。これらは任意で比較的小さい密度を有する非常に微細に分散された粒子であり、懸濁液中で沈降物を形成せず、より大きな効果顔料の沈降を部分的に防止することができる。公知の懸濁物質は、セルロース粒子、すなわち不溶性セルロースの粒子、シリカのような二酸化ケイ素、および不溶性デンプン誘導体またはセルロース誘導体である。
【0005】
しかし、公知の懸濁物質はしばしば沈降を本当に防止するのではなく、沈降の過程を遅らせるにすぎないことが判明した。さらに、特に沈降のプロセスを遅らせるために必要とされる比較的高い濃度では、公知の懸濁物質は分散液の粘度を著しく増大させることも多く、これは、インクがもはや流動することができないか、または毛管貯蔵システムを通って十分に流れることができないことを意味する。
【0006】
さらに、レオロジー添加剤によって顔料、特に効果顔料の沈降に影響を及ぼす試みがなされてきた。ここで特に意図されているのはゲル形成剤であり、ゲル形成剤とは溶媒系、たとえば水性系との特異的相互作用を介してゲルを形成する化合物である。このゲルは、一種の網目構造を有しており、懸濁液中の顔料を維持することができ、かつその沈降を防止することができるか、または少なくとも沈降を低減もしくは遅延させることができる。公知のレオロジー添加剤は高分子量のポリマー鎖であり、これは水溶性ポリマー鎖を編成することによって系を増粘する。増粘剤の効力は、特にポリマーの分子量によって決定される。分子量が大きいほど増粘剤はより効果的である。しかし、高分子増粘剤の一部の高い分子量は相溶性の問題をもたらし、成分の凝集を引き起こす可能性があり、かつ皮膜形成剤との望ましくない相互作用を生じることもある。ここでいう網目構造は、レオロジー添加剤単独、または他の成分、たとえば皮膜形成剤との組み合わせにより生じるものであってもよい。
【0007】
従って、これまでにも毛管貯蔵システムで使用することができるために十分に低い粘度を有するだけでなく、粒状材料を分散した状態に維持するために十分な分散性を有するインクを提供する多くの試みが存在していたにも関わらず、優れた解決策はいまだ判明していない。
【0008】
従って、本発明の課題は、効果顔料を含む顔料を懸濁液中で安定化させるために十分な分散性を有すると同時に、毛細管の目詰まりを防止するのに十分な流動性を有するインクを提供することであり、このインクは、比較的長い期間にわたって、かつ比較的高い温度であっても沈降に対して安定しており、それにもかかわらず流動性である。さらに、安定化のために使用される添加剤は、化粧品および日用品において使用するために必要な全ての要件を満たすものである。つまり、これらの成分は、毒性がなく、皮膚を刺激することがなく、また人体に使用された場合にその他の有害な品質を生じないことを意味する。さらに、本発明の課題は、毛管系から表面および特に皮膚に容易に、かつ優れた再現性で適用することができるインクを提供することであった。
【0009】
これらの課題は全て、本特許出願の特許請求の範囲に定義されているとおりの水性顔料インクにより解決される。
【0010】
本発明は、水性ビヒクル中に少なくとも1種の顔料、少なくとも1種の水分散性皮膜形成成分、約0.5~約4.5質量%の少なくとも1種の懸濁物質および約0.01~約0.5質量%のゲル形成剤の組み合わせを含有する、毛管貯蔵システムで使用するための水性顔料インクであって、前記ゲル形成剤の組み合わせが少なくとも1種の鉱物質ゲル形成剤および少なくとも1種の有機増粘剤を含む、水性顔料インクを提供する。
【0011】
驚くべきことに、特許請求の範囲に記載した、少なくとも1種類の懸濁物質および少なくとも2種類のゲル形成剤を含むその成分の組合せが、ガラスフレーク、パール顔料およびその他の効果顔料のような比較的大きな粒子を含む分散液中で顔料を永続的に維持できることが判明した。何らかの理論に拘束されるものではないが、少なくとも2種類のゲル形成剤と少なくとも1種類の懸濁物質との組み合わせが、比較的大きな粒子でさえ、その中に永続的に保持することができるような構造を形成し、この組み合わせは同時に、インクが使用される毛管貯蔵システムの表面と十分な適合性を有することで、フィルタ効果、保持効果または他の望ましくない効果を伴うことなく、インクが容易に流動させることができることが仮定される。
【0012】
一方では膨潤性層状ケイ酸塩の群から選択され、他方では増粘特性を有する多糖類の群から選択される少なくとも2種類の異なったゲル形成剤を含むゲル形成剤の組み合わせは、それ自体が非常に適していることが判明している。さらに、以下に示すようなゲル形成剤を添加してもよい。何らかの理論に拘束されるものではないが、層状ケイ酸塩および多糖類は、それらのレオロジー活性およびそれらの膨潤能力において、効果顔料粒子のような比較的大きな顔料でさえも一緒に安定化できることで、互いに相補的であることが仮定される。これら全ての成分が存在しない場合、および特定のクラスのうちの1つの成分が欠けている場合には、有利な効果は得られない。
【0013】
本発明は水性顔料インクに関する。ここでインクとは、水性媒体に懸濁している粒状成分を含有する水性組成物を指す。より具体的には、インクとは、水性媒体中に着色剤を含む組成物であり、着色剤の例は、微細に分散されたおよび/または比較的粗い顔料粒子であり、また場合によっては可溶性染料である。本発明による水性インクは、塗布装置、たとえばペンの一部である毛管貯蔵システムにおいて使用するために役立つ。描画、描画、塗装および印刷の装置のための毛管貯蔵システムは公知である。このような装置に適した毛管貯蔵システムは、液体を保持するための容器と、液体ラインを介して容器に接続され、かつその装置の性質に応じて、線画、描画、塗装または印刷のアプリケータ装置であってもよいアプリケータ要素とを有しており、前記容器は大気から遮断されている。毛管貯蔵部(capillary reservoir)は、インクを貯蔵し、かつアプリケータ装置を介して所望の時間および所望の量でインクを送達するためのものである。適切な毛管貯蔵部は、好ましくは流れの進行方向、一般に貯蔵部の長手方向の進行方向を有する、相互接続された空隙を含む多孔質の繊維状材料を含む装置である。毛管貯蔵部に適した繊維状材料は、当業者に周知である。例を挙げるならば、ジャケットとして機能する円筒状皮膜によって取り囲まれており、従って漏れが防止される特定のポリエステル、ポリアミドまたはセルロースアセテート繊維である。
【0014】
毛管貯蔵部はインクで含浸され、このインクは内部の空隙内に取り込まれる。アプリケータ装置が表面に接触すると、インクはアプリケータ装置を介して流れ出し、毛管貯蔵システムから流れ出るインクは新たに供給される。液体を輸送する空隙および流路が非常に小さいため、公知の顔料含有調製物、特に効果顔料を含有するこれまでのインクは、そのような貯蔵部に十分に適していない。粒子をさらに小さいサイズに粉砕するとしても、しばしば再凝集が生じ、これは毛管貯蔵部の目詰まりを引き起こす可能性がある。従ってこれまでは、ペン、特に化粧用ペンの分野では、毛管貯蔵システムは、可溶性染料を含有するインクのために使用されるにすぎないことがほとんどである。
【0015】
本発明に関連して、毛管貯蔵システムは、毛細管を有する装置内での適用のためにインクを貯蔵することができる任意のシステムを指す。本発明による水性顔料インクは、ペン、特に化粧用ペンに使用される毛管貯蔵システムにおける使用に特に適している。
【0016】
本発明による水性顔料インクは、その特定の組成の結果として達成される高い安定性および同時に十分な流動性を考慮して、毛管貯蔵システムに適している。従って、本発明のインクは、顔料および水分散性の皮膜形成成分の他に、顔料を持続的に懸濁状態に保持するために、少なくとも1種類の懸濁物質および少なくとも2種類のゲル形成剤を含んでいなければならない。個々の成分は、以下により詳細に記載されている。
【0017】
本発明によるインクは、少なくとも1種の水分散性皮膜形成成分を含み、これは、たとえば線の形態で、安定した皮膜を形成するために適用される。皮膜形成成分の目的は、揮発性物質が乾燥することにより、塗布後に塗布面に皮膜を残すことである。皮膜は、耐水性およびスミア防止性(smearproof)を維持することが望ましい。さらに、インクが化粧目的のために使用されている場合には、皮膜がたとえば皮膚上に存在し得るような脂肪物質と接触しないように形成されることが望ましい。そのような使用に適した皮膜形成ポリマー自体は公知である。このような皮膜の耐水性およびスミア防止性だけでなく、脂肪抵抗性および流れ防止性をも高めるためには、皮膜形成成分の混合物を使用することが有用であり得る。1実施態様では、本発明によるインクに使用される水分散性皮膜形成成分は、乾燥後、塗布部位に耐久性のある皮膜を残す化合物または化合物の混合物を含む。さらに、形成された皮膜は、適用部位において効果顔料を含む顔料などの色および効果物質を安定化し、かつ保護する働きをする。さらに、皮膜は、塗布部位からの色および/または効果物質の転写または移行を防止することが意図されている。水溶性ではないが水分散性である適切な皮膜形成成分は、筆記用具産業および美容業界の両方から周知であり、一般的に知られている皮膜形成剤も本発明の目的のために使用することができる。
【0018】
適切な水分散性皮膜形成成分は市販されている。たとえば、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、および前記のポリマーの混合物および誘導体、ならびにそれらのコポリマーおよびブロックコポリマーなどのアクリレート系ポリマーが適切である。また、上記ポリマー、コポリマーおよび/またはブロックコポリマーの混合物を使用することもできる。好ましい皮膜形成成分は、ポリアクリレートおよび/またはポリウレタンおよびそれらの混合物およびコポリマーを含む。特に好適であることが証明されているのは、スチレン/アクリレート/アンモニウムメタクリレートコポリマー、ポリウレタンコポリマーおよびアクリレート/オクチルアクリルアミドコポリマーであるが、それというのも、これらのポリマーは、形成される皮膜の耐水性を向上するからである。水分散性成分は清澄な溶液を形成しない一方で、水溶性成分は清澄な溶液を形成するため、本発明によるインクに適した水分散性成分は、本発明によるインクにそれほど適していない水溶性皮膜形成剤からは容易に区別することができる。一般に市販されている種類の製品は、水性分散液の形態で存在し、水相、特に水中に微細に分散された液滴または粒子として皮膜形成剤を含有している。
【0019】
それぞれの場合に適切な皮膜形成剤または皮膜形成剤混合物は、日常的な実験によって容易に選択することができる。1種または複数の皮膜形成剤は、インクのその他の成分と相溶性であり、使用される濃度で、毛細管を通って流れることができるインクを生成することが不可欠である。皮膜形成剤が約0.5~約15質量%の量でインク中に含まれている場合には、十分な皮膜形成が可能であることが判明した。この量は使用される皮膜形成剤の全量に基づいている。特定の最適量は、使用される具体的なポリマーの性質および他の成分とのそれらの相溶性によって導かれる。0.5質量%未満の量は一般に、均一で耐久性のある皮膜を形成するためには不十分である。皮膜形成剤の量が約15質量%を超える場合、分散性および流動性がもはや十分ではないことが多い。上記の量は、それぞれの場合に使用されるポリマーの量に基づいている。水分散性皮膜形成成分は一般に、水性分散液の形態で提供される。このような水性分散液は一般に30~50質量%の範囲のポリマー割合を有する。この特許出願において特定されるポリマーの量は、文脈にその他の記載がない限り、純粋なポリマーに関する。本発明によるインクを製造するための皮膜形成剤は、純粋な物質として、または既製の水性分散液として添加することができる。
【0020】
水性インク中の皮膜形成剤の割合が2~13質量%、好ましくは5~12質量%の範囲である(いずれも完成したインクに基づくポリマーの質量)場合に良好な結果が達成される。
【0021】
上記のとおり、1種類の皮膜形成ポリマーまたは皮膜形成ポリマーの組み合わせのいずれかを使用することができる。この数量の値は、インクに使用される皮膜形成剤の全量に基づいている。
【0022】
本発明によるインクの必須成分は、少なくとも1種の懸濁物質である。粒子、特に比較的大きな粒子を長期にわたって分散した状態に維持するためには、少なくとも1種の懸濁物質が必要であることが判明した。懸濁物質は、ビヒクル媒体中で不溶性の物質であると理解され、懸濁物質は、そのサイズが小さいこと、その密度が低いこと、および/またはその比重が小さいことから、懸濁した状態が保持される。懸濁物質の例は、鉱物質および有機質のいずれでもよく、密度が低く、かつ/またはビヒクル媒体の密度の領域にある微細に分散した固体である。懸濁物質は一般に、0.005~10μmの範囲の非常に小さい粒径を有する。有機および無機懸濁物質のいずれも、本発明によるインクを安定化するために適している。これらの例は、繊維、木材およびナッツ殻のような天然産物の微粉末、十分に高い軟化温度を有する微細なポリマー粒子のような合成生成物、たとえばPMMAまたはスチレン/アクリレートコポリマー、および無機生成物、たとえばガラス繊維、鉱物粉末またはセラミック粉末、たとえばカオリン、および特に非晶質または半結晶の形態のシリカ質土、シリカ粉末、ケイソウ土などの二酸化ケイ素系材料である。本発明のインクについては、懸濁物質の組み合わせを使用することも可能であり、この場合、懸濁物質は、異なった材料から製造されていてもよく、および/または異なったサイズを有していてもよい。従って、たとえば、有機および無機の懸濁物質の混合物、異なった二酸化ケイ素系材料の混合物、または異なった粒径を有するシリカ生成物の混合物を使用することができる。シリカが好適であり、シリカとは、二酸化ケイ素に基づく生成物、特に粉末を指す。それらの例は、100nm以下の一次粒子径を有するケイ酸、シリカゲルまたはエアロゲルであり、その例は、5~50nmの範囲の粒径および50~600m/gの比表面積、好ましくは100~500m/gの比表面積を有するヒュームドシリカであり、この比表面積はBET法により測定されるものである。ヒュームドシリカは、たとえば「Aerosil」という名称で市販されている。
【0023】
本発明によるインク中の懸濁物質は流動性に影響を与え、かつ懸濁物質の割合が高すぎることはインクが毛管貯蔵システム中で流動できないことを意味するため、懸濁物質の割合は重要である。従って、本発明によるインク中の懸濁物質の割合は、(完成したインクに基づいて、全ての懸濁物質の量が)約0.5~約4.5質量%の範囲であるべきである。懸濁物質の割合が約0.5質量%未満であると、安定化は十分でないことがある。懸濁物質の割合が約4.5質量%を超えると、インクの流動性に悪影響を及ぼすことがある。
【0024】
ヒュームドシリカは、本発明によるゲル形成剤の組み合わせと組み合わせた場合、顔料および皮膜形成剤を持続的に懸濁状態に維持するために特に適していることが判明した。
【0025】
従って、本発明によるインクのさらに重要な成分は、ゲル形成剤の組み合わせである。1種以上の懸濁物質の存在のみでは、顔料、特に効果顔料を持続的に分散液として維持することはできないことが判明した。何らかの理論に拘束されるものではないが、比較的大きな粒子の持続的な分散は、懸濁物質のみによって形成することはできないが、ゲル形成剤もまた寄与しなければならない比較的実質的な構造を必要とすることが仮定される。さらに、懸濁物質およびゲル形成剤の両方が、分散状態で保持されている粒子のみでなく、分散された皮膜形成成分とも相溶性でなければならないことが必須である。従って、全てのゲル形成剤が本発明によるインクに適しているわけではない。種々のゲル形成剤を試験し、ゲル形成剤の組合せが少なくとも1種の鉱物質ゲル形成剤と、少なくとも1種の有機増粘剤とを含む場合に、非常に良好な結果が達成され得ることが判明した。
【0026】
ゲル形成剤の組み合わせの必須成分は、少なくとも1種の鉱物質ゲル形成剤であることが明らかになった。鉱物質ゲル形成剤は公知である。少なくとも1種の鉱物質ゲル形成剤が膨潤性層状ケイ酸塩である場合には有利であることが証明されている。膨潤性層状ケイ酸塩は、その層間に水を収容することができ、その結果、ケイ酸塩は膨潤し、水溶液中での安定性に寄与することができる。従って、カオリンのような膨潤性ではない層状ケイ酸塩は、本発明において重要な効果に寄与することができない。膨潤性層状ケイ酸塩は周知であり、商業的に入手可能であり、これは水を結合することができる層状ケイ酸塩であって、このことによりしばしば、その構造を変化させることが多く、たとえばフィロケイ酸塩の場合、個々の層の間の距離が増大することを観察することができた。膨潤性層状ケイ酸塩の例は、フィロケイ酸塩およびその誘導体、たとえばヘクトライトおよびその誘導体、たとえばクアテルニウム18ヘクトライト、ベントナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、およびそれらの誘導体である。層状ケイ酸塩の混合物も使用することができる。層状ケイ酸塩は、ゲルを形成するために非常に適しており、効果顔料と適合性があるが、それらを単独のゲル形成剤として使用すると、顔料の安定化に必要とされる割合が高すぎるため、レオロジー問題が生じることが明らかになった。
【0027】
従って、安定化のためには有機増粘剤を添加する必要がある。有機増粘剤は公知であり、市販されている。ゲル形成剤の組み合わせにおける少なくとも1種の有機増粘剤が、第2の種類のゲル形成剤として増粘特性を有する多糖類を含む場合、有利であることが証明されている。「増粘多糖類」の種類は、それ自体周知であり、化粧品および食料品の製造において頻繁に使用される。増粘特性を有する多糖類は、糖単位から構成され、分子間相互作用、たとえば、水素結合、ファンデルワールス力またはイオン結合を介して互いに相互作用することができ、水を結合して構造を提供することができる直鎖もしくは分枝鎖状のマクロモノマーである。これらの相互作用および水結合は粘度の増加をもたらす。このような多糖類の例は、キサンタンガム、ローカストビーンガム、デンプン、セルロース、およびそれらの誘導体および変異体、ならびにこれらの多糖類の混合物である。セルロースおよびその誘導体は、それらが水適合性/膨潤性である場合に特に適しており、その例は、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムである。不溶性であり、および/または水とほとんど適合性を示さないか、もしくは適合性を有しておらず、水の存在下でその構造を変化させないセルロース誘導体は一般に、水の取り込みが不十分であるために増粘特性を欠いているので、増粘多糖類としての使用には適していない。以下の文脈において、用語「ヘクトライト」は、ヘクトライトの誘導体および変異体も含み、用語「キサンタンガム」は、キサンタンガムの誘導体および変異体も含み、用語「セルロース」は、セルロースの誘導体および変異体も含み、用語「デンプン」は、デンプンの誘導体および変異体も含むこと等を意図している。誘導体および変異体は、文脈においてその他の記載がない限り、加水分解された多糖類、エーテル化されたおよび/またはエステル化された多糖類、架橋された生成物などを含む。
【0028】
有機増粘剤は、キサンタンガムおよび/またはセルロースであってもよく、またはそれぞれの場合において、誘導体および/または変異体であってもよく、またそれらの混合物であってもよい。以下の文脈において、用語「セルロース」は、本明細書で使用される場合、文脈がその他の意味を示唆していない限り、それぞれの場合において、セルロース誘導体およびセルロース変異体またはそれらの混合物、たとえばセルロースエステルおよびセルロースエーテルを含む。本明細書で使用される用語「キサンタンガム」はまた、文脈がその他の意味を示唆していない限り、キサンタンガムの誘導体および変異体、および混合物、たとえば、キサンタンガムとローカストビーンガムの混合物も含む。
【0029】
2つのグループ、つまり鉱物質ゲル形成剤および有機増粘剤のそれぞれからの少なくとも1つの構成員を含むゲル形成剤の組合せを特徴とする組成物は有利な特性を有することが判明した。2つのグループのそれぞれからの2つまたはそれ以上の構成員が含まれていてもよい。ゲル形成剤および増粘剤の総量は、流動性および沈降性が悪影響を受ける可能性があるので、以下に詳細に定義する量を超えてはならない。たとえば、1種類の鉱物質ゲル形成剤と1種類の有機増粘剤を組み合わせてもよいし、または1種類の鉱物質ゲル形成剤と2種類の有機増粘剤とを組み合わせてもよい。従って、たとえば、セルロースを組み合わせること、ひいてはセルロースおよび/またはセルロース誘導体および/またはセルロース変異体または混合物、および/またはキサンタンガムまたはキサンタンガム誘導体またはキサンタンガム変異体または混合物を、ヘクトライトまたはヘクトライト誘導体またはヘクトライト変異体と組み合わせることが可能である。好ましくは3種類のゲル形成剤であるセルロース、ヘクトライトおよびキサンタンガムがゲル形成剤の組み合わせ中に存在する。驚くべきことに、少なくとも1種の鉱物質ゲル形成剤、少なくとも1種の有機増粘剤および少なくとも1種の懸濁物質を用いて、粒子が小さい顔料だけでなく、層状、フレーク状、球状、または代替的に形成された効果顔料を、懸濁液中に含有し、かつ保持することができる網目構造もしくは構造を形成できることが証明された。たとえば、セルロースのような多糖類をインクの充填剤として使用できることは確かに既に知られていた。しかし、懸濁物質と組み合わせて多糖類を用いるのみで十分に安定化された効果顔料を提供することはできなかった。定義された少なくとも2つの成分を有するゲル形成剤の組み合わせが存在し、かつ懸濁物質と組み合わされた場合にのみ、以下の例に示すように、所望の結果を達成することが可能である。
【0030】
ゲル形成剤の組み合わせの量は少なすぎてはいけない。というのも、少なすぎれば効果が得られないからである。他方、その量は多すぎてはいけない。というのも、多すぎればインクの流動性が否定的な影響を受けるからである。ゲル形成剤の組合せの量が約0.01~約0.25質量%の範囲であると所望の目的を達成できることが判明した。完成したインク中でゲル形成剤の組合せの割合が約0.05~0.15質量%の範囲であれば、良好な結果が得られる。この量は、インク中に存在するゲル形成剤の全体に基づくものである。本発明で使用されるゲル形成剤の組み合わせは、2種類以上のゲル形成剤からなっていてもよく、ゲル形成剤の少なくとも2種類は、上記の群から選択される。2種類以上のゲル形成剤を使用する場合、上記のグループの第3の成分および1種以上の追加のゲル形成剤が含まれていてもよい。インクがヘクトライト、キサンタンガムおよびセルロースを含む場合、非常に良好な結果が得られる。存在するゲル形成剤の割合は、ゲル形成剤の総量が0.01~0.25質量%の間である限り、変化してよい。上記のグループからの2種類のゲル形成剤を使用する場合、これらのゲル形成剤は、たとえば、0.8~1.2:1.2~0.8の比で存在してもよい。このグループの3種類のゲル形成剤が、ほぼ同じ割合で、たとえば約1:約1:約1、たとえば1:1:1の比で使用される場合、非常に良好な結果が得られた。
【0031】
本発明のインクのさらなる必須成分は、着色成分、特に効果顔料を含む顔料である。着色剤の選択は、好ましくは、その使用および使用量が、EUなどの消費者の国における化粧品についての規定に合致するように、かつ他方では所望の色合いが得られるように行われる。
【0032】
本発明による懸濁物質およびゲル形成剤の安定化組合せは、すべての公知の顔料に適しており、粒径が1μmを超える顔料の安定化にとって有利な特性を発揮し、特に粒径が5~100μm、たとえば10~50μmである効果顔料の安定化にとって有利な特性を発現する。従って、流動性の問題を生じることなく、少なくとも1種の効果顔料を含むインクに優先的に使用される。粒径は、たとえば、ISO 1332020に定義されているように、レーザー回折法を使用して、慣用の方法で測定することができる。粒径を測定するのに適した器具には、Bluewave S3500モデルとして市販されているMicrotrac装置が含まれる。
【0033】
ここで効果顔料とは、組成物ならびに着色剤において、たとえば、光沢、光輝性、構造のような他の視覚的および/または審美的効果に寄与し、かつ/または染料の場合のように光の特定の波長を吸収することによってその光学的効果が達成されるのではなく、反射によって光学効果が達成される成分、たとえば金属粒子、または透明層における干渉によって光学的効果が達成される成分、たとえば真珠光沢顔料であるか、またはこれらの組み合わせによって、たとえば見る角度によって異なった色調または色を示す顔料である。公知の効果顔料の例は、光輝剤、たとえばコーティングされた雲母、合成または天然の、コーティングまたは他の機能化を伴うか、もしくは伴わない雲母、金雲母、たとえば合成フルオロフロゴパイト、オキシ塩化ビスマス、コーティングされたオキシ塩化ビスマス、ガラス、少なくとも部分的に他の材料で被覆されている小板状金属粉末、少なくとも部分的に他の材料で被覆されている微分散ポリマー小板、たとえばPET小板、または適切なポリマーマトリックス、たとえばポリエステル-3中の染料の固溶体をベースとする物質が挙げられる。効果顔料として同定されるこれらの物質は、それらの流動性を誘導しない大きさおよび外形を有し、たとえばフレークまたは小板がそれらの例であるが、それにもかかわらず、本発明によるインクでは、これらの効果剤が、毛管貯蔵システムを通って流れることができるように懸濁させることが可能である。何らかの理論に拘束されるものではないが、ゲル形成剤の組合せおよび懸濁物質は、得られる構造が毛管を通って滑るような形態で効果剤を収容することができる構造を構築することが仮定される。従って、本発明による組み合わせにより、真珠光沢顔料の場合に存在することがあるように、5μm超から100μm以下、たとえば10~50μmの粒径を有する効果顔料または効果剤を懸濁液中で安定化することができる。
【0034】
本発明のインクについては、効果顔料とは別に、または効果顔料に加えて、慣用の顔料を、微細に粉砕された形態、すなわち、毛管貯蔵部の毛管開口部を通過することができる粒径で使用することができる。これらは一般的に、1μm未満、特に0.2μm未満の粒径である。顔料はごく一般的に、白色もしくは着色された、有機もしくは無機の粒子であると理解され、これは特に、水または使用媒体中で不溶性であり、組成物に色および/または濁度を与えることが意図されている。
【0035】
化粧品調製物および日用品において使用するために適した顔料は周知である。本発明のインクに適した着色剤から例を挙げるとすれば、二酸化チタン(C.I.No.7789)、酸化鉄(C.I.No.77491、77492、77499)、ウルトラマリン(C.I.No.77007)、プルシアンブルー/フェリックブルー(C.I.No.77510)、カーボンブラック(C.I.No.77267)、酸化クロムグリーン(C.I.No.77288)、酸化クロム水和物グリーン(C.I.No.77289)、マンガンバイオレット(C.I.No.77742)、酸化亜鉛(C.I.No.77947)、硫酸バリウム(C.I.No.77120)、少なくとも部分的に二酸化チタン(C.I.No.77891)で、および/またはその他の金属酸化物、たとえば酸化鉄、酸化クロムグリーンまたは酸化クロム水和物グリーンで、またはウルトラマリンで被覆された雲母のような光輝剤、および同様の着色剤、オキシ塩化ビスマスおよびその雲母(C.I.No.77163)との混合物、少なくとも部分的に二酸化チタンで、および/または前記の他の金属酸化物または他の着色剤で被覆された、小板状の、任意で微細に分散された金属粉末、たとえばアルミニウム(C.I.No.77000)、銅(C.I.No.77400)、青銅(C.I.No.77400)、黄銅(C.I.No.77400)、銀(C.I.No.77820)または金(C.I.No.77480)である。有機着色剤は有利には、カルミン酸(C.I.75470)の錯体塩から選択されるか、および/または蛍光性染料、モノアゾ染料、ジスアゾ染料、インジゴチン染料、ピラゾール染料、キノリン染料、トリフェニルメタン染料、アントラキノン染料およびキサンタン染料から選択される着色剤から選択され、これらはレーキ化することよって適切な方法で不溶化されている。ここでの例には、FD&C Red No.3(C.I.No.45430)、D&C Red No.6(C.I.No.15850)、D&C Red No.7(C.I.No.15850:1)、D&C Red No.21(C.I.No.45380:2)、D&C Red No.22(C.I.No.45380)、D&C Red 27(C.I.No.45410:1)、D&C Red 28(C.I.45410)、D&C Red 30(C.I.No.73630)、D&C Red No.33(C.I.No.17200)、D&C Red No.34(C.I.No.15880:1)FD&C Yellow No.5(C.I.No.19140)、FD&C No.7(C.I.No.45350:1)、D&C Yellow No.10(C.I.No.47005)、D&C Orange No.5(C.I.No.45370:1)、D&C Orange No.10(C.I.No.45425:1)、FD&C Green No.3(C.I.No.42053)、D&C Green No.5(C.I.No.61570)、D&C Green No.6(C.I.No.61565)、FD&C Blue No.1(C.I.No.42090)、D&C Violet No.2(C.I.No.60725)が含まれる。さらに適切な着色剤は、顔料として、窒化ホウ素、および小板状および球状の両方のポリマー粒子およびシリカ粒子を含み、これらの粒子は、被覆されていてもよいし、前記の顔料と組み合わされてもよく、たとえば「光拡散顔料」(LDP)という用語の下で当業者に公知である。特に好ましい顔料は、酸化鉄、二酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、カーマイン、鉄フェロシアン化物、水酸化クロムグリーン、酸化クロムグリーン、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルーおよびイエロー5から選択される。というのも、これらは、特に有効な色をカバーし、かつ大部分の組合せ色を生みだすことができるからである。
【0036】
本発明のインク中の顔料の量は、選択された顔料の着色特性および所望の色強度に従って選択することができる。本発明のインクを着色するために、1つの顔料または顔料の混合物、顔料と効果顔料との混合物、または顔料、効果顔料および可溶性着色剤の混合物のいずれを使用することも可能である。顔料の量は、インク中に存在する着色剤、すなわち、顔料、効果顔料および可溶性染料のすべてに基づく。わずかな色合いの調整のためには数質量パーセントまたは数部、たとえば1質量%未満の量で使用することができ、一方、非常に強く着色された色合いおよび/または強力な効果を有する色合いのためには、20質量%までの顔料割合を使用することができるため、その使用範囲は非常に広い。上限は、インクの流動性によって決まる、つまり顔料の割合は、毛管貯蔵部内のインクの流動性が悪影響を受けるほど高くてはならない。流動性への悪影響は、その量が20質量%を超えるとリスクになる。ここでのパーセンテージは、それぞれの場合において、完成したインクの質量に基づいている。本発明のインクにおける顔料の量は、好適には約5~約15質量%、好ましくは約7~約12質量%である。7~12質量%の顔料を用いると、十分に流動性であり、従って長期にわたって安定し、ひいては筆記用具産業および化粧品業界に非常に適した、効果的に隠蔽性のある、強く着色されたインクを得ることができる。
【0037】
本発明のインクは、湿潤剤、防腐剤、香料など、このような製品に慣用される種類のさらなる成分を含んでいてもよく、また、それぞれの場合において当業者に公知の通常の量で、1種以上の界面活性剤を含んでいてもよい。
【0038】
本発明のインクは保湿剤を含んでいてもよい。適切な湿潤剤の例は、一価および多価アルコール、尿素誘導体および植物抽出物を含んでいてもよく、プロピレングリコール、メチルプロパンジオールおよびブチレングリコールは、インクの他の成分との適合性が高く、従ってインクを不安定にすることがないので、非常に適している。
【0039】
本発明のインクは、上記の成分によって適切に安定化され、従って界面活性剤を使用する必要は全くない。しかし、水相の表面張力を低下させ、かつ適用範囲にわたってインクをより良好に拡散させるために界面活性剤を添加することは可能である。適切な界面活性剤は、当業者であれば一般に筆記用具および化粧品の分野で使用される市販の界面活性剤から選択することができる。市販の原料の量は、当業者であれば日常的な実験により容易に決定することができる。
【0040】
筆記用具および化粧品産業において一般に使用される香料および防腐剤は、本発明のインクにとっても適しており、所望であれば通常の量で使用することができる。
本発明のインクは、毛管貯蔵システムを備えた任意の種類の筆記用具に適している。従って、毛管貯蔵システムを備えた対応するペンおよび毛管貯蔵システムを有する化粧用ペンのために使用することができる。そのような例は、チークシャドウ、アイライナー、口紅、リップライナー、アイシャドウ、マスカラまたはリキッドアイブロウである。
【0041】
従って、本発明の主題は、上記のとおり、毛管貯蔵システムを有し、水性顔料インクを含有するペンである。本発明は、さらに具体的には、上記のとおり、水性顔料インクを含有する毛管貯蔵システムを有する化粧用ペンに関する。
【0042】
毛管貯蔵システムを備えたペンは、単純なボールペンよりも製造が複雑である。そのようなペンの場合、レフィルを提供することが有用である。従って、本発明の別の主題は、毛管貯蔵システムに基づくペン用のレフィル容器であって、水性顔料インクが貯蔵された容器を含むレフィル容器である。
【0043】
従って本発明は、その良好なレオロジーおよび美的特性に基づいて、毛管貯蔵システムを有するペンにおいて使用するために好適なインクを提供する。良好な特性は、懸濁物質とゲル形成剤の組み合わせとを組み合わせることによって達成され、これは、皮膜形成剤および着色剤のようなインクの他の成分と適合性であり、すべての粒状成分に対して安定化効果を発揮し、この安定化効果は、たとえば45℃以上の高温においても維持される。従って、このインクは、たとえば南国のような特定の気候条件を示す場所でも使用されるペンのために使用することができる。この安定性は、本発明のインクを製造し、輸送し、保存し、かつ使用することを容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】10%の作用剤割合および2%のヒュームドシリカの懸濁物質含有量を有するインクを用いた比較実験の結果を示す。
【0045】
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例
【0046】
例1
ゲル形成剤としてキサンタンガム、ヘクトライトおよびセルロース、皮膜形成剤としてスチレン/アクリレート/アンモニウムメタクリレートコポリマーの水性分散液、顔料として雲母77019および酸化鉄77491/77492/77499を含有する水性インクを製造した。このインクはまた、一般的に使用される成分、たとえば界面活性剤、すなわちポロキサマー407、ココ-グルコシドおよび水、ならびにエチルヘキシルグリセロールおよびトコフェロール、フェノキシエタノールおよびソルビン酸カリウムを保存剤系として、さらにpHを確立するためのクエン酸を含有しており、pHは約5.5~6.5の範囲、すなわちわずかに酸性の範囲で適切に確立される。本発明によればインクのpHは重要ではない。懸濁物質およびゲル形成剤から構成される本発明による安定剤系は、酸性から塩基性まで安定している。当業者が認識しているように、アクリレートを使用して、わずかに塩基性またはわずかに酸性の環境を確立し、溶解度の変動を防止するために、環境があまり強く酸性になることがないようにする場合には有利であり得る。当業者は、日常的な実験により、それぞれの場合において最適なpH範囲を決定することができる。実験のために、このインクは、懸濁物質としての様々な量のシリカと混合され、水分含量はそれぞれの場合に応じて調整される(水を加えて100)。この配合を以下の第1表に示す。
【0047】
【表1】
*所望の色合いに従った割合
【0048】
第1表に規定された成分から水性インクを製造した。このインクは一連の試験インクのための基材であり、それぞれの試験インクはヒュームドシリカであるAerosilの様々な割合と混合された。次いで、これらのインクを、それらの安定性および流動性に関して毛細管現象を利用した筆記用具(capillary writing system)で試験した。懸濁物質を含んでない比較インクの場合には、効果顔料は著しく沈降し、インクは短時間でもはや書くことができなかったことが判明した。約1質量%の懸濁物質の添加の驚くべき効果は、安定性および流動性の両方における著しい改善であった。1質量%未満の割合は一般に安定性を得るのに十分ではなかった。3質量%を超える割合では、流動性の問題が生じる可能性があった。2質量%のシリカを含むインクで最適な特性が得られた。
【0049】
例2
懸濁物質としてシリカ、皮膜形成剤としてスチレン/アクリレート/アンモニウムメタクリレートコポリマーの水性分散液、顔料として雲母77019および酸化鉄77491/77492/779999を含有する水性インクを製造した。このインクはまた、一般的に使用される成分、たとえば界面活性剤、すなわちポロキサマー407、ココ-グルコシドおよび水、ならびにエチルヘキシルグリセロールおよびトコフェロール、フェノキシエタノールおよびソルビン酸カリウムを保存剤系として、さらにpHを確立するためのクエン酸を含有していた。実験のために、このインクを、種々の量のゲル形成剤であるキサンタンガム、ヘクトライトおよびセルロースと混合し、水含有量をそれぞれの例において調整した(水を加えて100)。配合を以下の第2表に示す。
【0050】
【表2】
*所望の色合いに従った割合
【0051】
第2表に規定された成分から水性インクを製造した。次いで、ゲル形成剤を含有していないこのインクを、その安定性および流動性に関して、毛細管現象を利用した筆記用具で試験した。顔料は著しく沈降し、インクは短時間でもはや書くことができなかったことが判明した。
【0052】
次いで、インクを、異なった割合のゲル形成剤の組み合わせ(ヘクトライト+キサンタンガム+セルロース1:1:1)と混合し、インクのレオロジー挙動に対する影響、および沈降安定性および毛管系におけるインクの流れに対する作用を調べた。約0.05質量%の添加により、流れが良好で、顔料の沈降がないインクが得られたことが判明した。
これらの結果を第3表にまとめた。記号の意味は以下の通りである:
+ 顔料は沈降しなかったか、または実質的に沈降せず、インクの流れは良好
0 顔料は沈降し、かつ/またはインクの流れは不適切
- 顔料は著しく沈降し、かつ/またはインクの流れは不十分
nd 測定されなかった。
【0053】
【表3】
**いずれも質量%
【0054】
第3表のデータは、インクに添加されるレオロジー添加剤およびシリカの量が非常に重要であることを示している。懸濁物質の割合およびレオロジー添加剤の量が互いに本発明により調和している場合にのみ、顔料がほとんど、または全く沈降せず、毛管貯蔵システムのために使用され得るインク流れを示すインクが得られる。
【0055】
懸濁物質の量は4.5質量%を超えてはならず、ゲル形成剤成分は、約0.05~約0.5質量%の非常に小さな割合においてのみ所望の結果を与えることができることが判明した。懸濁物質および/またはゲル形成剤が特許請求の範囲外で使用される場合には、一般に、第3表の実験によって示されるように、顔料の沈降挙動またはインクの流動性のいずれか、または両方が悪影響を受ける。
【0056】
例3
アクリレートコポリマーが適切な有機増粘剤となるかどうかを調べた。従って、第2表に記載されているとおりに比較インクを製造し、本発明のゲル形成剤の組み合わせの代わりに、安定剤としてアクリレートコポリマーと混合した。インクは実際に、例2に記載されたインクと同様の粘度および例2に匹敵する流れ挙動を有することが明らかになった。それにもかかわらず、アクリレートコポリマーを用いたサンプルは、顔料の沈降が大きく、ひいては毛管貯蔵システム内でのインクの流れがはるかに劣っていることが示された。さらに、これらの特性は、アクリレート割合により組成物のpHに大きく依存していることが判明した。
【0057】
対照的に、第2表の配合によるインクをキサンタンガム、ヘクトライトおよびセルロースの混合物と混合した場合、非常に良好な結果が得られた。この場合、顔料の安定性および毛管貯蔵システムにおける流れ挙動の両方が優れていた。
【0058】
これらの結果を以下の第4表にまとめる。
【0059】
【表4】
***25℃および1s-1の剪断速度でPhysica MCR301レオメーターを使用して測定
【0060】
例4
さらに、唯一のゲル形成剤としてのキサンタンガムの添加が所望の特性を得るために十分であるかどうかを調べた。2%のシリカ(Aerosil、Evonik社から市販)を用いて第2表と同様に比較インクを製造し、ここに0.1%のキサンタンガムを安定剤として添加した。このインクは、実際に最も低い粘度を有しており、顔料も貯蔵容器内での沈降に対して実質的に安定していた。しかし、このインクを毛管貯蔵システムで使用した場合、不十分な流れの挙動を示した。従って、このインクは意図した目的に適していなかった。
【0061】
さらに、10%の作用剤割合および2%のヒュームドシリカの懸濁物質含有量を有するインクを用いて比較実験を行った。流れの曲線を記録し、これを図1に示す。
【0062】
インクは似たような粘度を有し、レオグラムにおいて同等の流れ挙動を示しているが、レオロジー添加剤として0.3%のアクリレートコポリマーを含有するサンプル(正方形を用いたプロット)は、ペンシステムにおけるインクの流れが不十分であり、インク中の顔料の著しい沈降を示す。さらに、インクの品質は、組成物のpHに大きく依存する。0.1%のキサンタンガムを含有するインク(円を用いたプロット)は、レオグラムにおいて最も低い粘度を示し、顔料は、バルク中での沈降に対して実質的に安定している。それにもかかわらず、ペンシステムでは、このインクは最も劣った流れ挙動を示す。ペンにおける顔料安定性および流れ挙動に関して非常に良好な結果は、キサンタン、ヘクトライトおよびセルロースの混合物を0.1%および0.2%含有するインク(三角形およびダイヤモンドを用いたプロット)によって示されている。
図1
【国際調査報告】