(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-12
(54)【発明の名称】疎水性分析物のIN VITRO診断アッセイにおけるリポタンパク質妨害を軽減する組成物、デバイス、および方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/531 20060101AFI20220405BHJP
G01N 35/10 20060101ALI20220405BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20220405BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G01N33/531 B
G01N35/10 A
G01N37/00 101
C12M1/34 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556430
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2021-11-02
(86)【国際出願番号】 US2020013629
(87)【国際公開番号】W WO2020190358
(87)【国際公開日】2020-09-24
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ティエ・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジエ・リ
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ユエ
【テーマコード(参考)】
2G058
4B029
【Fターム(参考)】
2G058CC08
2G058DA09
4B029AA07
4B029BB15
4B029BB16
4B029CC01
4B029FA12
4B029FA15
4B029GA08
4B029GB10
(57)【要約】
標的疎水性分析物のin vitro診断アッセイにおけるリポタンパク質妨害を軽減する方法、ならびに前記方法に有用な組成物、キット、およびデバイスが開示される。リポタンパク質を消化する少なくとも1つの酵素を含む前処理試薬を利用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨床化学機器を使用するためのマイクロ流体デバイスであって:
標的疎水性分析物を含むことが疑われる試料を受け入れることが可能な少なくとも1つのコンパートメントを含み、ここで、該少なくとも1つのコンパートメントは:
リポタンパク質を消化する少なくとも1つの酵素を含む前処理試薬;および
該試料中に存在する標的疎水性分析物の濃度を決定するための、疎水性分析物を検出することが可能な少なくとも1つのアッセイ試薬
を含む、前記マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
マイクロ流体デバイスが、少なくとも2つのコンパートメントを含むものとしてさらに定義され、ここで、前処理試薬は、試料を受け入れることが可能な第1のコンパートメントに配置され、少なくとも1つのアッセイ試薬は、第1のコンパートメントと流体連通していることが可能な第2のコンパートメントに配置され、ここで、該第1のコンパートメントまたは該第2のコンパートメントは、試料中に存在する標的疎水性分析物の濃度を決定するための検出アッセイが実行される読み取りチャンバーである、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
リポタンパク質を消化する少なくとも1つの酵素が、リパーゼおよび/または少なくとも1つの消化酵素を含む、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
酵素が、約0.1mg/mL~約20mg/mLの範囲の濃度で前処理試薬中に存在する、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
前処理試薬が、酵素の補助因子、界面活性剤、プロテアーゼ、およびその組合せからなる群から選択される少なくとも1つの追加物質をさらに含む、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
リポタンパク質を消化する少なくとも1つの酵素がリパーゼであり、前処理試薬が、リパーゼの補助因子として胆汁酸および/またはその塩を含む、請求項5に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
標的疎水性分析物が、ビタミンD、タクロリムス、シロリムス、エベロリムス、エストロゲン、エストロン、エストラジオール、エストリオール、アルファトラジオール、シクロスポリン、エチニルエストラジオール、エステル化エストロゲン、モキセストロール、キネストロール、プロゲスチン、プロゲステロン、アンドロゲン、テストステロン、ジヒドロテストステロン(DHT)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、硫酸DHEA、アンドロステンジオン、アルドステロン、コルチゾール、カテコールアミン、25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、1,25-ジヒドロキシビタミンD2、および1,25-ジヒドロキシビタミンD3からなる群から選択される、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
少なくとも1つのアッセイ試薬が、さらに免疫アッセイ試薬と定義される、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
生物学的試料中の標的疎水性分析物の存在および/または濃度を検出する方法であって:
同時に、または全体的にもしくは部分的に連続して:
(1)該標的疎水性分析物を含むことが疑われる試料;
(2)リポタンパク質を消化する少なくとも1つの酵素を含む前処理試薬;および
(3)疎水性分析物を検出することが可能な少なくとも1つのアッセイ試薬
を組み合わせる工程、ならびに
1つまたはそれ以上の(3)に基づく検出アッセイを実行し、該試料中に存在する標的疎水性分析物の濃度を決定する工程
を含む、前記方法。
【請求項10】
リポタンパク質を消化する少なくとも1つの酵素が、リパーゼおよび/または少なくとも1つの消化酵素を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
酵素が、約0.1mg/mL~約20mg/mLの範囲の濃度で前処理試薬中に存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前処理試薬が、酵素の補助因子、界面活性剤、プロテアーゼ、およびその組合せからなる群から選択される少なくとも1つの追加物質をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
リポタンパク質を消化する少なくとも1つの酵素がリパーゼであり、前処理試薬が、リパーゼの補助因子として胆汁酸および/またはその塩を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
標的疎水性分析物が、ビタミンD、タクロリムス、シロリムス、エベロリムス、エストロゲン、エストロン、エストラジオール、エストリオール、アルファトラジオール、シクロスポリン、エチニルエストラジオール、エステル化エストロゲン、モキセストロール、キネストロール、プロゲスチン、プロゲステロン、アンドロゲン、テストステロン、ジヒドロテストステロン(DHT)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、硫酸DHEA、アンドロステンジオン、アルドステロン、コルチゾール、カテコールアミン、25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、1,25-ジヒドロキシビタミンD2、および1,25-ジヒドロキシビタミンD3からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのアッセイ試薬が、さらに免疫アッセイ試薬と定義される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
試料が、尿、全血またはその任意の部分、溶解された血液またはその任意の部分、唾液、痰、脳脊髄液(CSF)、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、涙液、粘液、膀胱洗浄液、精液、およびその任意の組合せからなる群から選択される生物学的試料である、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
生物学的試料中の標的疎水性分析物の存在および/または濃度を検出する方法に使用するためのキットであって:
リポタンパク質を消化する少なくとも1つの酵素を含む前処理試薬;および
該試料中に存在する標的疎水性分析物の濃度を決定するための、疎水性分析物を検出することが可能な少なくとも1つのアッセイ試薬
を含む、前記キット。
【請求項18】
リポタンパク質を消化する少なくとも1つの酵素がリパーゼおよび/または少なくとも1つの消化酵素を含み、ここで該酵素は、約0.1mg/mL~約20mg/mLの範囲の濃度で前処理試薬中に存在する、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前処理試薬が、酵素の補助因子、界面活性剤、プロテアーゼ、およびその組合せからなる群から選択される少なくとも1つの追加物質をさらに含む、請求項17に記載のキット。
【請求項20】
リポタンパク質を消化する少なくとも1つの酵素がリパーゼであり、ここで前処理試薬が、リパーゼの補助因子として胆汁酸および/またはその塩を含む、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
標的疎水性分析物が、ビタミンD、タクロリムス、シロリムス、エベロリムス、エストロゲン、エストロン、エストラジオール、エストリオール、アルファトラジオール、シクロスポリン、エチニルエストラジオール、エステル化エストロゲン、モキセストロール、キネストロール、プロゲスチン、プロゲステロン、アンドロゲン、テストステロン、ジヒドロテストステロン(DHT)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、硫酸DHEA、アンドロステンジオン、アルドステロン、コルチゾール、カテコールアミン、25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、1,25-ジヒドロキシビタミンD2、および1,25-ジヒドロキシビタミンD3からなる群から選択される、請求項19に記載のキット。
【請求項22】
少なくとも1つのアッセイ試薬が、さらに免疫アッセイ試薬と定義される、請求項19に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照/参照による組み入れの説明
該当しない。
【0002】
連邦政府の助成による研究または開発に関する説明
該当しない。
【背景技術】
【0003】
in vitro診断アッセイは、生物学的試料中の疎水性分析物を検出するために使用される。しかし、生物学的試料中に存在するリポタンパク質(例えば、これらに限定されないが、それらのコレステロール含有量によってしばしば定量化される低密度リポタンパク質(LDL)、超低密度リポタンパク質(VLDL)、中密度リポタンパク質(IDL)、高密度リポタンパク質(HDL)、およびカイロミクロンなど)は、特に小さな疎水性分析物(例えば、これらに限定されないが、疎水性薬物およびホルモン)の場合、そのようなアッセイを妨害することが知られている。これらの疎水性ハプテンは、親水性の血液または血清中に存在する場合、リポタンパク質粒子の疎水性コアに入り込む傾向があるため、現在、この妨害を排除する方法がない。このため、分析物の一部がリポタンパク質粒子内で拘束(tied up)され、したがってアッセイ試薬が利用できないため、リポタンパク質(コレステロール)による負の妨害がしばしば観察される。
【0004】
コレステロールまたはリポタンパク質妨害を克服するための現在の試みは、有機溶媒を用いた分析物の抽出を含む。この手法は、リポタンパク質を分解し、それによって疎水性分析物が有機溶媒に溶けるようにすることである。しかし、抽出工程は、手動で実施する必要があり、したがって完全に自動化された分析器で実施されるアッセイにおける妨害を軽減するのに適していない。
【0005】
別の手法では、有機溶媒または界面活性剤を試薬混合物に加えて、分析物の可溶化を助け、それがリポタンパク質粒子の疎水性コアに入るのを部分的に防いでいる。しかし、この手法によるリポタンパク質妨害の軽減は限定的であり、リポタンパク質妨害を完全に解消することはできない。
【0006】
プロテイナーゼを利用してイムノフィリンFK506結合タンパク質(FKBP)を消化し、それによってFKBPが結合しているタクロリムスを開放する、小分子免疫抑制剤タクロリムス(別名FK506)のためのELISAアッセイが以前に開発された。しかし、タンパク質を消化するためのプロテイナーゼの使用による、アッセイにおけるコレステロール/リポタンパク質妨害に対する影響は限定的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、特に自動化された分析器と使用するための、リポタンパク質妨害を軽減する新規の改善された方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示が対象としているのは、そのような方法、ならびにそれらで利用される組成物、キット、およびデバイスである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の概念の少なくとも1つの実施形態を、例示的文言および結果によって詳細に説明する前に、本発明の概念は、それらの適用が、以下の説明に記載されている構成要素の構造および配置の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明の概念は、他の実施形態が可能であり、または種々の方法で実行もしくは実施されることが可能である。このため、本明細書で使用される文言は、可能な限り広い範囲および意味が与えられるものとし、実施形態は、例示的なものであり、網羅的なものではない。また、本明細書で使用される語法および専門用語は、単に説明のためであり、限定的とみなすべきではないことを理解されたい。
【0010】
本明細書に別段の定義がない限り、本開示に関して使用される科学用語および技術用語は、当業者に一般に理解されている意味を有するものである。また、文脈によって他に必要とされない限り、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。前述の技術および手順は、一般に、当該技術分野でよく知られている従来の方法に従って、そして本明細書を通じて引用および論じられている種々の一般的およびより特定した参考文献に記載されるよう実行されている。本明細書に記載される分析化学、有機合成化学、ならびに医薬品化学および製薬化学に関して利用される命名法、ならびにそれらの実験手順および技術は、当技術分野でよく知られており、一般的に使用されている。標準的な技術が化学合成および化学分析に使用されている。
【0011】
本明細書に言及された、全ての特許、特許出願公開および非特許刊行物は、本開示が属する技術分野の当業者の技術レベルを示している。本出願の任意の部分で参照されている全ての特許、特許出願公開および非特許刊行物は、個々の特許または刊行物が、具体的におよび個別に参照によって組み入れられるように指示されているような場合と同程度まで、その全体が参照によって本明細書に明確に組み入れられる。
【0012】
本明細書に開示されている物品、組成物、キット、および/または方法の全ては、本開示に照らして必要以上の実験を行うことなく、作製および実行されることが可能である。物品、組成物、キット、および/または方法は、特定の実施形態に関して記載されているが、物品、組成物、キット、および/または方法、ならびに本明細書に記載されている方法の工程もしくは工程の順序に、本開示の概念、精神、および範囲から逸脱することなく変形を適用できることは、当業者には明らかである。当業者に明らかなそのような類似の代替および変更の全ては、添付の特許請求の範囲によって定義されている本発明の概念の精神、範囲、および概念の範囲内にあるとみなされる。
【0013】
本開示に従って利用する場合、以下の用語は、特に指示がない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする:
【0014】
「1つ(a)」または「1つ(an)」という用語の使用は、特許請求の範囲および/または本明細書において「含む」という用語と併用される場合、「1つの」を意味することもあるが、「1つまたはそれ以上の」、「少なくとも1つの」および「1つまたは1つより多い」という意味とも一致する。このため、「1つ(a)」、「1つ(an)」および「その(the)」という用語は、内容が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つ(a)の化合物」への言及は、1つまたはそれ以上の化合物、2つ以上の化合物、3つ以上の化合物、4つ以上の化合物、またはそれより多い化合物を指すことがある。「複数」という用語は、「2つ以上」を指す。
【0015】
「少なくとも1つ」という用語の使用は、1つ、ならびに1つより多い任意の数量を含むものと理解され、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含むが、それだけには限定されない。「少なくとも1つ」という用語は、それが付加される用語に応じて、最大100または1000もしくはそれ以上に拡張されることがあり;加えて、100/1000の数量は、それより多い制限値も満足する結果をもたらすことがあるので、限定的なものと考えるべきではない。加えて、「X、Y、およびZのうち少なくとも1つ」という用語の使用は、X単独、Y単独、およびZ単独、ならびにX、Y、およびZの任意の組合せを含むものと理解される。序数の用語(すなわち、「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」など)の使用は、単に2つ以上の項目を区別するためのものであり、例えば、1つの項目の別の項目に対する任意の順序もしくは順番もしくは重要性または任意の追加の順序を含意することを意図するものではない。
【0016】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替物のみを指すことがはっきりと示されていない限り、または代替物が相互排他的でない限り、包括的な「および/または」を意味するために使用される。例えば、「AまたはB」という条件は、以下のいずれかを満たす:Aは真であり(または存在し)かつBは偽である(または存在しない)、Aは偽であり(または存在せず)かつBは真である(または存在する)、ならびにAとBとの両方が真である(または存在する)。
【0017】
本明細書では、「一(one)実施形態」、「一(an)実施形態」、「いくつかの(some)実施形態」、「一(one)例」、「例えば」、または「1つの(an)例」のいずれかの言及は、その実施形態に関して記載されている特定の要素、構成、構造、または特徴が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。例えば、本明細書の様々な箇所で出現する「いくつかの実施形態では」または「一例」という表現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、1つまたはそれ以上の実施形態または例に関する全ての言及は、特許請求の範囲を限定するものではないと解釈されるべきである。
【0018】
本出願を通して、「約」という用語は、ある値が組成物/装置/デバイスに固有の誤差のばらつきを含むことを示すために使用され、その値、または研究対象間に存在するばらつきを決定するためにその方法が使用される。例えば、限定をするものではないが、「約」という用語が利用される場合、指定値は、特定された値からプラスまたはマイナス20パーセント、もしくは15パーセント、もしくは12パーセント、もしくは11パーセント、もしくは10パーセント、もしくは9パーセント、もしくは8パーセント、もしくは7パーセント、もしくは6パーセント、もしくは5パーセント、もしくは4パーセント、もしくは3パーセント、もしくは2パーセント、もしくは1パーセント変動することがあり、それは、そのような変動は開示された方法を実行するのに適切であり、当業者に理解されるからである。
【0019】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「含む(comprising)」(ならびに「comprise」および「comprises」のようなcomprisingの任意の形態)、「有する(having)」(ならびに「have」および「has」のようなhavingの任意の形態)、「含む(including)」(ならびに「includes」および「include」のようなincludingの任意の形態)、または「含む(containing)」(ならびに「contains」および「contain」のようなcontainingの任意の形態)という単語は、包括的または非制限的であり、付加的で説明されていない要素または方法の工程を除外するものではない。
【0020】
本明細書で使用される「またはその組合せ」という用語は、その用語に先行して列挙された項目の、全ての順列および組合せを指す。例えば、「A、B、C、またはその組合せ」は:A、B、C、AB、AC、BC、またはABCのうち少なくとも1つを含むものとし、特定の文脈において順序が重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、またはCABも含むものとする。この例を続けると、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、およびCABABBなどのような、1つまたはそれ以上の項目または用語の繰り返しを含む組合せが明らかに含まれる。当業者は、文脈からそうでないことが明白でない限り、通常、任意の組合せにおいて項目または用語の数に限定がないことを理解されよう。
【0021】
本明細書で使用される、「実質的に」という用語は、その次に記載されている事象もしくは状況が完全に発生すること、またはその次に記載されている事象もしくは状況が大きな程度または度合いで発生することを意味する。例えば、特定の事象または状況に関連する場合、「実質的に」という用語は、その次に記載される事象または状況が、少なくとも80%の確率で、または少なくとも85%の確率で、または少なくとも90%の確率で、または少なくとも95%の確率で発生することを意味する。「実質的に隣接している」という用語は、2つの項目が互いに100%隣接していること、または2つの項目が互いに非常に近接しているが、互いに100%隣接しているわけではないこと、または2つの項目のうち1つの項目の部分がもう1つの項目に100%隣接しているわけではないが、もう1つの項目と非常に近接していることを意味することがある。
【0022】
本明細書で使用される、「~に結びついている」および「~に連結している」という表現は、2つの部分の互いへの直接的な結びつき/結合と、2つの部分の互いへの間接的な結びつき/結合との両方を含む。結びつき/連結の非限定的な例には、例えば、直接結合による、またはスペーサー基を介した、1つの部分と別の部分との共有結合、直接的な、または両部分に結合した特異的結合対メンバーを用いた、1つの部分と別の部分との非共有結合、1つの部分を別の部分に溶かすこと、および1つの部分を別の部分に被覆することによるような、1つの部分の別の部分への組み入れが含まれる。
【0023】
本明細書で使用される「試料」という用語は、本開示に従って利用できる任意のタイプの生物学的試料を含むものと理解される。利用できる流体状生物学的試料の例には、全血またはその任意の部分(血漿または血清を含むが、それだけには限定されない)、全血細胞または溶解された血液細胞(全赤血球または溶解された赤血球を含むが、それだけには限定されない)、尿、唾液、痰、脳脊髄液(CSF)、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙液、粘液、膀胱洗浄液、精液、糞便、胸膜液、鼻咽頭液、その組合せなどが含まれるが、それだけには限定されない。
【0024】
本明細書で使用される「ハプテン」という用語は、in vitro診断アッセイ(抗体(に限定されないが)のような標的分析物に特異的な結合パートナーを含み得る)で認識されることが可能な低分子のタンパク質または非タンパク質の抗原決定基(または「エピトープ」)を指す。
【0025】
「分析物」という用語は、in vitro診断アッセイ(抗体(に限定されないが)のような標的分析物に特異的な結合パートナーを含み得る)で認識されることが可能な分子を指す。アッセイが免疫アッセイの場合、分析物は、標的分析物に特異的な結合パートナー(すなわち、抗体)に結合する分析物の領域である抗原決定基または「エピトープ」を、少なくとも1つ含む。分析物がハプテンの場合、ハプテン分子全体は、通常エピトープを形成する。
【0026】
本明細書で使用される「標的分析物に特異的な結合パートナー」という用語は、標的分析物と特異的に結びつくことが可能な任意の分子を指すものと理解される。例えば、限定するものではないが、結合パートナーは、抗体、受容体、リガンド、アプタマー、分子インプリントポリマー(すなわち、無機マトリックス)、その組合せまたは誘導体、ならびに標的分析物に特異的に結合することが可能な任意の他の分子である。
【0027】
「抗体」という用語は、本明細書において最も広義で使用され、例えば、インタクトなモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、分析物の結合の望ましい生物学的活性を示す抗体断片およびそのコンジュゲート(これらに限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、ダイアボディ、単鎖抗体、ならびにインタクトな抗体の可変領域の少なくとも一部を保持している他の抗体断片およびそのコンジュゲートなど)、抗体代替タンパク質またはペプチド(すなわち、改変結合タンパク質/ペプチド)、ならびにその組合せまたは誘導体を指す。抗体は、任意のタイプもしくはクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、およびIgA)またはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)のものとすることができる。
【0028】
本明細書で使用される「マイクロ流体デバイス」という用語は、本明細書に記載されている少なくとも1つの診断アッセイを実行することが可能な任意のデバイスを含む。マイクロ流体デバイスは、通常、診断アッセイの実行を自動化するシステムの中に挿入される。非限定的な一実施形態では、マイクロ流体デバイスは、例えば、限定するものではないが、Siemens Healthcare Diagnostics,Inc.(Newark、DE)から市販されているDIMENSION(登録商標)統合化学システムのうちの1つによって実施される自動診断アッセイに使用するために構築される。しかし、マイクロ流体デバイスは、本開示に従って1つまたはそれ以上の診断アッセイを実行することができる、本明細書に記載されているか、そうでなければ企図されている任意の市販の製品とすることができると理解される。加えて、マイクロ流体デバイスは、臨床化学システムと使用される単一のマイクロ流体デバイスに搭載された複数のアッセイを統合する複数のコンパートメントを含むことができ、それによって単一量の生物学的試料がマイクロ流体デバイスに挿入され、次いで複数のアッセイコンパートメントに送達される。
【0029】
次に本発明の概念に目を向けると、本開示のいくつかの非限定的な実施形態は、一般に、疎水性分析物のin vitro診断アッセイの性能および信頼性を改善するための組成物、キット、デバイス、および方法に関する。特に、本開示のいくつかの実施形態は、疎水性分析物のin vitro診断アッセイにおけるリポタンパク質妨害を軽減するための組成物、キット、デバイス、および方法に関する。
【0030】
本開示のいくつかの非限定的な実施形態は、生物学的試料中の標的疎水性分析物の存在および/または濃度を検出する方法を対象とする。いくつかの特定の(しかし非限定的な)実施形態では、方法はさらに、疎水性分析物のin vitro診断アッセイにおけるリポタンパク質妨害を最小化する方法と定義される。
【0031】
方法は、同時に、または全体的にもしくは部分的に連続して:(1)標的疎水性分析物を含むことが疑われる試料;(2)リポタンパク質を消化する少なくとも1つの酵素(例えば、これらに限定されないが、リパーゼおよび/または少なくとも1つの他の消化酵素(例えば、これらに限定されないが、胃酵素、例えば(これらに限定されないが)ペプシンならびに膵酵素、例えば(これらに限定されないが)アミラーゼおよびプロテアーゼ))を含む前処理試薬;および(3)疎水性分析物を検出することが可能な少なくとも1つのアッセイ試薬を組み合わせることを含む。方法は、1つまたはそれ以上の(3)に基づく検出アッセイを実施し、試料中に存在する標的疎水性分析物の濃度を決定することをさらに含む。
【0032】
(1)および(2)を一緒にインキュベートする場合、前処理試薬中に存在する酵素は、リポタンパク質中の脂質およびタンパク質を消化する。これにより、リポタンパク質粒子の疎水性コアから標的分析物が放出され、それによって標的分析物がアッセイ試薬(すなわち、これらに限定されないが、標的分析物を特異的に認識する抗体など)に接近可能になる。このため、標的分析物は、前処理試薬が利用されていないアッセイと比較して高効率で検出され、それによって影響をより受けにくい標的分析物のアッセイがもたらされる。
【0033】
1つまたはそれ以上の方法の工程は、手動で実施でき;あるいは、方法の工程は、本明細書に記載されているように、臨床化学分析システム上で完全に自動化されることもある。
【0034】
本明細書に記載されるin vitro診断アッセイで使用するための当技術分野で既知の生物学的試料はいずれも、本開示に従って利用される。利用できる生物学的試料の例には、尿、全血またはその任意の部分(血漿または血清を含むが、それだけには限定されない)、全血細胞(すなわち、実質的に溶解されていない)または溶解された血液細胞(全赤血球または溶解された赤血球を含むが、それだけには限定されない)、唾液、痰、脳脊髄液(CSF)、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、涙液、粘液、膀胱洗浄液、精液、組合せなどが含まれるが、それだけには限定されない。本明細書に開示されているか、そうでなければ企図されているアッセイ方法によって検出が可能な任意の疎水性分析物は、本開示の方法によって検出される。標的分析物の例には、小さな疎水性分子、例えば(これらに限定されないが)ビタミンD、タクロリムス、シロリムス、エベロリムス、エストロゲン、エストロン、エストラジオール、エストリオール、アルファトラジオール(エストラジオール、エストロン、およびエストリオール)、シクロスポリン、エチニルエストラジオール、エステル化エストロゲン、モキセストロール、キネストロール、プロゲスチン、プロゲステロン、アンドロゲン、例えばテストステロン、ジヒドロテストステロン(DHT)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)および硫酸DHEA(DEHE-S)、アンドロステンジオン、アルドステロン、他のステロイドホルモン、コルチゾール、カテコールアミン、25-ヒドロキシビタミンD2(25-OHビタミンD2)、25-ヒドロキシビタミンD3(25-OHビタミンD3)、1,25-ジヒドロキシビタミンD2(1,25-OHビタミンD2)、および1,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25-OHビタミンD3)などが含まれる。
【0035】
前処理試薬は、リポタンパク質上の脂質をより水溶性およびより小さな化合物に消化する少なくとも1つの酵素を含み;前記酵素は、リパーゼおよび/または少なくとも1つの他の消化酵素(例えば、これらに限定されないが、胃酵素、例えば(これらに限定されないが)ペプシンならびに膵酵素、例えば(これらに限定されないが)アミラーゼおよびプロテアーゼ)とすることができる。加えて、前処理試薬は、酵素活性を高めるために機能する、1つまたはそれ以上の追加物質を含むことができる。前処理試薬中に存在し得る追加物質の非限定的な例には、少なくとも1つの酵素の補助因子(これらに限定されないが、胆汁酸および/またはその塩など)、少なくとも1つの界面活性剤(これらに限定されないが、PLURONIC(登録商標)ブロックコポリマー(BASF Corporation,Ludwigshafen,Germany)など)、または少なくとも1つのプロテアーゼ、ならびにその任意の組合せが含まれる。
【0036】
リポタンパク質を消化する酵素は、リポタンパク質粒子の疎水性コアが標的分析物を放出するように十分な濃度で提供され、その結果それがアッセイ試薬に接近可能にならなければならず、それにより高効率で標的分析物の検出が可能になる。酵素の濃度は、存在する分析物の量および前処理反応の時間によって決まることになる。
【0037】
リポタンパク質を消化する酵素は、前処理試薬中に存在し、本明細書に記載されているように酵素が機能することを可能にする任意の濃度で存在し得る。特定の濃度の例には:約0.01mg/mL、約0.05mg/mL、約0.1mg/mL、約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、約0.6mg/mL、約0.7mg/mL、約0.8mg/mL、約0.9mg/mL、約1mg/mL、約1.5mg/mL、約2mg/mL、約2.5mg/mL、約3mg/mL、約3.5mg/mL、約4mg/mL、約4.5mg/mL、約5mg/mL、約5.5mg/mL、約6mg/mL、約6.5mg/mL、約7mg/mL、約7.5mg/mL、約8mg/mL、約8.5mg/mL、約9mg/mL、約9.5mg/mL、約10mg/mL、約11mg/mL、約12mg/mL、約13mg/mL、約14mg/mL、約15mg/mL、約16mg/mL、約17mg/mL、約18mg/mL、約19mg/mL、約20mg/mL、約21mg/mL、約22mg/mL、約23mg/mL、約24mg/mL、約25mg/mL、約26mg/mL、約27mg/mL、約28mg/mL、約29mg/mL、約30mg/mL、約31mg/mL、約32mg/mL、約33mg/mL、約34mg/mL、約35mg/mL、約36mg/mL、約37mg/mL、約38mg/mL、約39mg/mL、約40mg/mL、約41mg/mL、約42mg/mL、約43mg/mL、約44mg/mL、約45mg/mL、約46mg/mL、約47mg/mL、約48mg/mL、約49mg/mL、約50mg/mL、約55mg/mL、約60mg/mL、約65mg/mL、約70mg/mL、約75mg/mL、約80mg/mL、約85mg/mL、約90mg/mL、約95mg/mL、約100mg/mL、またはそれ以上が含まれるが、それだけには限定されない。特定の(しかし非限定的な)実施形態では、前処理試薬中の酵素の濃度は、上記の値のいずれか2つの範囲、例えば(これらに限定されないが)約0.01mg/mL~約100mg/mLの範囲、約0.05mg/mL~約50mg/mLの範囲、約0.1mg/mL~約20mg/mLの範囲、約0.5mg/mL~約10mg/mLの範囲などの範囲内にあると定義される。しかし、上記の特定の濃度範囲は、例示の目的のみのためのものであり、限定的とみなすべきではなく;上記の値の1つの下限値および上記の別の値の上限値を有する任意の濃度範囲は、本開示の範囲内に明示的に含まれることを理解されたい。
【0038】
同様に、前処理試薬の1つまたはそれ以上の追加物質はそれぞれ、物質が酵素活性を高めるために機能することを可能にする任意の濃度で存在することができる。例えば、それぞれの追加物質(これらに限定されないが、胆汁酸および/またはその塩のような酵素補助因子、PLURONIC(登録商標)ブロックコポリマーのような界面活性剤、またはプロテアーゼなど)は、以下の濃度の非限定的な例:約0.001%、約0.005%、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.1%、約0.15%、約0.2%、約0.25%、約0.3%、約0.35%、約0.4%、約0.45%、約0.5%、約0.55%、約0.6%、約0.65%、約0.7%、約0.75%、約0.8%、約0.85%、約0.9%、約0.95%、約1%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%、約2%、約2.1%、約2.2%、約2.3%、約2.4%、約2.5%、約2.6%、約2.7%、約2.8%、約2.9%、約3%、約3.25%、約3.5%、約3.75%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、またはそれ以上から選択された濃度で提供することができる。特定の(しかし非限定的な)実施形態では、前処理試薬中に存在する各追加物質の濃度は、上記の値のいずれか2つの範囲、例えば(これらに限定されないが)約0.001%~約25%の範囲、約0.005%~約15%の範囲、約0.01%~約5%の範囲などの範囲内にあると定義される。しかし、上記の特定の濃度範囲は、例示の目的のみのためのものであり、限定的とみなすべきではなく;上記の値の1つの下限値および上記の別の値の上限値を有する任意の濃度範囲は、本開示の範囲内に明示的に含まれることを理解されたい。
【0039】
いくつかの非限定的な実施形態では、疎水性分析物の検出が可能な少なくとも1つのアッセイ試薬は、免疫アッセイ試薬(すなわち、標的分析物に特異的な結合パートナー(これらに限定されないが、抗体など))である。少なくとも1つの標的分析物に特異的な結合パートナーは、次に標的分析物または少なくとも1つの免疫アッセイ試薬と結合させることができる。
【0040】
前処理およびアッセイ/検出工程は、マイクロ流体デバイスの同じコンパートメントで実施することができる。あるいは、前処理工程は、第1のコンパートメントで実施し、次いで検出工程を実施するために前処理した試料を第2のコンパートメントに移すことができる。
【0041】
生物学的試料は、その天然形態で前処理工程に加えるか、または生物学的試料は、前処理工程の前に溶解する。したがって、特定の(しかし非限定的な)実施形態では、本明細書に記載されているか、そうでなければ企図されている方法は、第1のコンパートメントで生物学的試料を溶解し、次いで溶解した生物学的試料を、前処理工程で利用した第2のコンパートメントに移す工程をさらに含むことができる。
【0042】
本明細書に記載されている方法工程のいずれも、例えば、限定するものではないが、ユーザーによって実施することができる。しかしながら、本明細書で使用される、「ユーザー」という用語は、人間による使用に限定されるものではなく;むしろ、「ユーザー」という用語は、(例えば、限定するものではないが)コンピューター、サーバー、ウェブサイト、プロセッサー、ネットワークインターフェイス、人間、ユーザー端末、仮想コンピューター、その組合せなどを含むことができる。
【0043】
本開示のいくつかの非限定的な実施形態は、本明細書に上述されている診断アッセイ方法を簡便に実施するのに有用な試薬キットを対象とする。試薬キットは、本明細書に記載されているか、そうでなければ企図されている、1つまたはそれ以上の前処理試薬のいずれかと、本明細書に記載されているか、そうでなければ企図されている、疎水性分析物の検出が可能な1つまたはそれ以上のアッセイ試薬のいずれかとを組み合わせて含む。
【0044】
本開示のいくつかの他の非限定的な実施形態は、本明細書に記載されているか、そうでなければ企図されている、少なくとも1つの前処理試薬のいずれか、および本明細書に記載されているか、そうでなければ企図されている、少なくとも1つのアッセイ試薬のいずれかを含むアッセイデバイス(これらに限定されないが、マイクロ流体デバイスなど)を対象としており、ここで、アッセイデバイスは、本明細書に上述されているin vitro診断アッセイ方法のいずれかで使用するためのものである。
【0045】
例えば、マイクロ流体デバイスは、標的疎水性分析物を含むことが疑われる試料を受け入れることが可能な少なくとも1つのコンパートメントを含むことができ、ここで、少なくとも1つのコンパートメントは、本明細書に詳細に上述されている少なくとも1つの前処理試薬を含む。コンパートメントは、本明細書に記載されているか、そうでなければ企図されている、1つまたはそれ以上のアッセイ試薬のいずれかをさらに含むことができる。あるいは、マイクロ流体デバイスは、前処理試薬を含んでいる第1のコンパートメントと流体連通していることが可能な第2のコンパートメントが少なくとも備えられており、アッセイ試薬は、第2のコンパートメントに含まれていることがある。第2のコンパートメントは、試料中に存在する標的疎水性分析物の濃度を決定するための検出アッセイが実施される読み取りチャンバーであってもよく;あるいは、マイクロ流体デバイスは、第2のコンパートメントと流体連通していることが可能な読み取りチャンバーをさらに含むことがある。
【0046】
加えて、本開示の試薬キットおよび/またはマイクロ流体デバイスは、本明細書に記載されているか、そうでなければ企図されている、特定の診断アッセイのうちのいずれかを行うための他の構成要素および/または試薬をさらに含んでもよい。これらの追加の構成要素/試薬の性質は、特定のアッセイ形式によって決まり、その同定は、十分に当業者の技術の範囲内である。本開示の試薬キットおよび/またはマイクロ流体デバイスの中に存在し得る追加の試薬/構成要素の例には、それだけには限定されないが、希釈剤、(赤血球を溶解するための)溶解剤、洗浄液(これらに限定されないが、等張液など)、陽性対照、陰性対照、品質対照、および/または作動装置、ならびにその任意の組合せが含まれる。
【0047】
キットおよび/またはマイクロ流体デバイスの中の種々の構成要素/試薬の相対量は、アッセイ方法中に生じる必要がある反応を実質的に最適化する構成要素/試薬の濃度をもたらすために、そしてさらにアッセイの感度を実質的に最適化するために、大幅に異なることもある。
【0048】
本開示の試薬キットは、キットの使用法を説明する書面の説明書一式をさらに含むこともある。この性質のキットは、マイクロ流体デバイスのいずれかとともに、および/または本明細書に記載されているか、そうでなければ企図されている方法のうちのいずれかにおいて、使用することができる。
【0049】
マイクロ流体デバイスは、これに関連する1つまたはそれ以上の手動機能を有することもあり(すなわち、この場合、1つまたはそれ以上の試薬の添加および/または2つのコンパートメント間の混合物の移動のためにピペット操作が必要である);あるいは、マイクロ流体デバイスは、デバイスの構成中に、必要な試薬/構成要素が種々のコンパートメントの中に配置され(種々のコンパートメントは、連続流体連通している(または連続流体連通が可能である))、それにより、マイクロ流体デバイスに試料が追加された後は、アッセイの実行のために試料および/または試薬の手動操作が不要である、全自動の閉鎖系であることもある。
【0050】
本明細書の上記のように、マイクロ流体デバイスは、本明細書に上述されている構成要素/試薬を含む1つまたはそれ以上のコンパートメントを含む。しかしながら、マイクロ流体デバイスは、本開示に従ってデバイスが機能し得る限り、任意の数のコンパートメント、任意の配置のコンパートメント、およびその間の任意の配分の構成要素/試薬が備えられていることを理解されたい。複数のコンパートメントが備えられている場合、コンパートメントは互いから完全に分離されているか、または1つもしくはそれ以上のコンパートメントが互いに流体連通していることが可能なこともある。本開示に従って使用できるマイクロ流体デバイスの種々の構造は、当技術分野でよく知られており、したがって、そのさらなる説明は不要と思われる。
【0051】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、少なくとも第1および第2のコンパートメントを含む。第1のコンパートメントは、生物学的試料を受け入れることが可能であり、望むなら(限定するものではないが)、赤血球を溶解するため、さもなければ前処理およびアッセイ用の試料を調製するための機構を含む。前記分離機構は、マイクロ流体デバイスの技術分野でよく知られており、したがって、そのさらなる説明は不要と思われる。第2のコンパートメントは、第1のコンパートメントと流体連通していることが可能であり、少なくとも1つの前処理試薬を含む。第2のコンパートメントは、少なくとも1つのアッセイ試薬をさらに含んでいてもよく;あるいは、マイクロ流体デバイスは、少なくとも1つのアッセイ試薬を貯蔵するための第3のコンパートメントを含んでいてもよく、少なくとも1つのアッセイ試薬は、第3のコンパートメントから第2のコンパートメントへと移され、その後試料を前処理工程の前処理試薬とインキュベートすることができる。
【0052】
マイクロ流体デバイスはまた、臨床化学システムによって調査される(例えば、これらに限定されないが、分光計によって光学的に調査される)ことが可能な読み取りチャンバー(これらに限定されないが、光学式読み取りチャンバーなど)も含むこともある。読み取りチャンバーは、本明細書に上述されているコンパートメントのうちのいずれかに結びついていてもよく、または読み取りチャンバーは、本明細書に上述されているものから分離したコンパートメントに結びついていることもある。
【0053】
引入れ口チャネルおよびコンパートメント、ならびに2つのコンパートメントは、互いに「流体連通していることが可能」と記載されてもよく;この表現は、コンパートメントは依然としてシールされているが、2つのコンパートメントが、その中またはその間に形成されたシールが穿刺されると、その間に流体流を有することが可能であることを示す。
【0054】
本開示のキット/マイクロ流体デバイスは、当技術分野において公知か、そうでなければ本明細書で企図されている、任意の他の望ましい構成を備える。例えば、限定するものではないが、本開示のキット/マイクロ流体デバイスは、それだけには限定されないが、(赤血球を溶解するための)溶解剤、希釈剤、洗浄液、標識剤、干渉溶液、陽性対照、陰性対照、品質対照のような他の溶液、および/または作動装置、ならびにその任意の組合せを含む1つまたはそれ以上の追加のコンパートメントをさらに含むこともある。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を記載する。しかしながら、本開示は、その適用において、本明細書に開示された特定の実験、結果、および実験手順に限定されるものではないと理解されたい。むしろ、本実施例は、単に種々の実施形態のうちの1つとして提供され、網羅的ではなく、例示的なものであることを意味する。
【0056】
本実施例では、DIMENSION(登録商標)統合化学システム(Siemens Healthcare Diagnostics,Inc.,Newark、DE)でのエベロリムス(EVRO)アッセイにおいてコレステロール妨害に対する前処理試薬の使用の効果を試験した。様々な量のリパーゼ、胆汁塩(リパーゼの補助因子として)、およびPLURONIC(登録商標)ブロックコポリマー(BASF Corporation,Ludwigshafen,Germany)を前処理試薬に加え、それを既知量のコレステロールを含む試料とインキュベートしてから、処理された試料のエベロリムス(EVRO)アッセイをDIMENSION(登録商標)統合化学システム(Siemens Healthcare Diagnostics,Inc.,Newark、DE)で実施した。
【0057】
表1に示すとおり、前処理工程がない場合、EVROアッセイで観察されたコレステロール妨害の量は、コレステロール濃度300mg/mL、350mg/mL、および400mg/mLに対して、それぞれ、-7.6%、-12%、および-19%であった。リパーゼ、その補助因子の胆汁酸/塩(酵素活性増強のため)、および界面活性剤としてPLURONIC(登録商標)を含む試薬による前処理工程の追加は、コレステロール妨害の量を、コレステロール濃度300mg/mL、350mg/mL、および400mg/mLにおいて、それぞれ1%(-7.6%から)、-0.4%(-12%から)、および-3%(-19%から)に減少させた。このため、コレステロール妨害は、本開示の組成物および方法を用いて400mg/mLコレステロールで実質的に消失した。
【0058】
【0059】
このように、本開示に従い、上記の目的および利点を十分に満たす、組成物、キットおよびデバイス、ならびにそれらを製造し、使用する方法が提供されてきた。本開示は、上記の特定の図面、実験、結果、および言葉と共に記載されてきたが、多くの代替、変更および変形が当業者には明らかであることは明白である。したがって、本明細書に開示されている本発明の概念の精神および広い範囲の中に含まれるそのような代替、変更、および変形を全て包含するものとする。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨床化学機器を使用するためのマイクロ流体デバイスであって:
標的疎水性分析物を含むことが疑われる試料を受け入れることが可能な少なくとも1つのコンパートメントを含み、ここで、該少なくとも1つのコンパートメントは:
リポタンパク質を消化する少なくとも1つの酵素を含む前処理試薬;および
該試料中に存在する標的疎水性分析物の濃度を決定するための、疎水性分析物を検出することが可能な少なくとも1つのアッセイ試薬
を含む、前記マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
マイクロ流体デバイスが、少なくとも2つのコンパートメントを含むものとしてさらに定義され、ここで、前処理試薬は、試料を受け入れることが可能な第1のコンパートメントに配置され、少なくとも1つのアッセイ試薬は、第1のコンパートメントと流体連通していることが可能な第2のコンパートメントに配置され、ここで、該第1のコンパートメントまたは該第2のコンパートメントは、試料中に存在する標的疎水性分析物の濃度を決定するための検出アッセイが実行される読み取りチャンバーである、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
リポタンパク質を消化する少なくとも1つの酵素が、リパーゼおよび/または少なくとも1つの消化酵素を含む、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
酵素が、約0.1mg/mL~約20mg/mLの範囲の濃度で前処理試薬中に存在する、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
前処理試薬が、酵素の補助因子、界面活性剤、プロテアーゼ、およびその組合せからなる群から選択される少なくとも1つの追加物質をさらに含む、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
リポタンパク質を消化する少なくとも1つの酵素がリパーゼであり、前処理試薬が、リパーゼの補助因子として胆汁酸および/またはその塩を含む、請求項5に記載のマイクロ
流体デバイス。
【請求項7】
標的疎水性分析物が、ビタミンD、タクロリムス、シロリムス、エベロリムス、エストロゲン、エストロン、エストラジオール、エストリオール、アルファトラジオール、シクロスポリン、エチニルエストラジオール、エステル化エストロゲン、モキセストロール、キネストロール、プロゲスチン、プロゲステロン、アンドロゲン、テストステロン、ジヒドロテストステロン(DHT)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、硫酸DHEA、アンドロステンジオン、アルドステロン、コルチゾール、カテコールアミン、25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、1,25-ジヒドロキシビタミンD2、および1,25-ジヒドロキシビタミンD3からなる群から選択される、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
少なくとも1つのアッセイ試薬が、さらに免疫アッセイ試薬と定義される、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【国際調査報告】